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1972-04-20 第68回国会 参議院 法務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年四月二十日(木曜日)    午前十時十三分開会     —————————————    委員異動  四月二十日     辞任         補欠選任      内藤誉三郎君     木島 義夫君      黒住 忠行君     星野 重次君      金井 元彦君     重宗 雄三君      鶴園 哲夫君     松井  誠君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         阿部 憲一君     理 事                 後藤 義隆君                 原 文兵衛君                 佐々木静子君     委 員                 木島 義夫君                 平泉  渉君                 星野 重次君                 吉武 恵市君                 加瀬  完君                 野々山一三君                 松井  誠君                 松下 正寿君    衆議院議員        法務委員長代理        理事       大竹 太郎君    国務大臣        法 務 大 臣  前尾繁三郎君        国 務 大 臣  竹下  登君    政府委員        警察庁刑事局長  高松 敬治君        防衛庁長官官房        長        宍戸 基男君        法務大臣官房司        法法制調査部長  貞家 克巳君        法務省刑事局長  辻 辰三郎君        外務大臣官房長  佐藤 正二君    事務局側        常任委員会専門        員        二見 次夫君    説明員        警察庁警備局参        事官       斉藤 一郎君        警察庁警備局警        備課長      鈴木 貞敏君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  (外務省機密漏洩問題に関する件) ○火炎びん使用等処罰に関する法律案(衆議  院提出)     —————————————
  2. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨十九日、金井元彦君、内藤誉三郎君、黒住忠行君及び鶴園哲夫君が委員を辞任され、その補欠として重宗雄三君、木島義夫君、星野重次君及び松井誠君が選任されました。     —————————————
  3. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) 検察及び裁判運営等に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 野々山一三

    野々山一三君 身がってなことで恐縮なんですけれども、私実はまだ公傷療養中でございまして、医者から禁止されているんですけれども、事件事件でありますので特別に質問いたしますので、答弁される方もぜひその意義を体していただいて、形式的、観念的にすらすらと答えりゃいいんじゃないかという、そういう扱いをされるならば私は質問を保留をさせてもらって、よろしいという許可が出てからあらためてまたしますので、その点前もって御了解をいただきたいと思います。
  5. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) はい、わかりました。
  6. 野々山一三

    野々山一三君 最初委員長及び理事さんにひとつ見解を承りたいのでありますけれども、この間佐々木委員の御質問に関連して、私は秘密及び秘密問題についての関連質問をした結果、十分な掌握ができないし、はっきりしたことがないんで、通称まあ七十万ともいわれ百二十万ともいわれている秘密というものについて、法律上の秘密ということばがあるならば、それは一体何ものであるか、事実を全部示してもらいたい、それで審査したほうがいい、そういう立場で秘密に関する資料要求をいたしたわけですけれども、この二ページ——二ページといったって、これ一ページなんですけれども、その私の趣旨を体して委員長委員長においてその資料提出について処理をするからまかしてほしい、こういう趣旨でしたね。そこでこの文書そのものが、私は長いことおしゃべりするのはどうも適当でないから、めんどうくさいことを言いませんけれども、委員長及び理事さんがこの出されたものを、これが私の要求した資料に合致しているものだとお考えになってこれを受け取られたのですか。その点は委員長及び各理事皆さんに率直にそれを伺いたいのです。
  7. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) それじゃ野々山委員に対して御返事申し上げますけれども、当時、理事会としまして外務省のほうに申し出の書類の提出方要求したわけでございますけれども、ごらんのとおりの答えがはね返ってきたわけでございます。それについて、私ども決してこれでよろしいというふうに思っておりませんが、それできょうは、それについては提案者である野々山委員からあらためてこの席でもって、こういうものが不足している、あるいはまた提出された資料の中でもってこれは不明確じゃないか、これじゃだめだ、そういうふうな御要求、御不満についてお述べくださってはっきりさせていただきたと思います。どうかそういうことでお願いしたいと思います。
  8. 野々山一三

    野々山一三君 では念のために伺っておきますが、私がこれから伺いますものについて、項目別に明細に言えるかどうかわかりませんけれども、私の質問趣旨に対して適合する資料委員会として正式に要求されるということになるといまの委員長答えを私は受けとめて質問してよろしゅございますか。——わかりました。それじゃ、そういうように願いたいと思います。  最初にこの事件そのものについて、これは私は佐々木委員その他ほかの委員からこういう秘密問題というものが問題になったいきさつなどについて御質問なさっていらっしゃるから、そのことについてはあまり触れたくないのですが、避けて伺いたいのですけれども、この秘密ということば——ことばというのは音じゃなくて中身名実とも中身が整ってなければならないわけですけれども、で、この秘密というもの、この秘密を漏洩したということで外務省蓮見事務官やあるいは毎日新聞の西山君が、機密漏洩をそそのかした、片方は機密を漏洩したということで逮捕、起訴されたわけですけれども、その秘密機密というのはどういうふうに違いがあるのでしょうか。その資料によると「秘密文書基準及び種類」と書いてあります。社会的には機密ということば秘密ということばとがありまして、法律上に機密ということばはあるんでしょうか、ないんでしょうか。で佐々木委員からもこの委員会質問された内容というのは機密漏洩事件ということばでいわれているわけですし、国家的にも——国家的にもと言っては悪いけれども、いろんな委員会でいわれているのはみんな機密漏洩といわれているんですけれども、その機密秘密というのはどういうことになるんでしょうか。その機密秘密の問題は、あとで詳細なことは資料要求内容とともに伺いますけれども、何かそのことば法律上のことば、文言、そういうもの二つが違うんですか、違わないんですか。それと同時にそれがそのまま——蓮見君及び西山君がそのまま、前者機密を漏洩したと、後者はそれをそそのかしたというんですけれども、それというのは、つまり機密ということばだと解しますが、そういうように直接警察権が介入してくる要因になっているわけですね。で、その機密というものは、あるいは秘密というものは公法上分類されて歴然と違いがあるのかどうか、そのことをまず第一に聞きたいわけです。  それから第二に、その論のもとであるこの文書は一体どこの省のどういう、だれがつくってどうした資料ですか。この紙きれにちょっとコピーしてあるだけなんですけれども、これそんなものは知らぬと言われればそれまでなんですけれども、国会委員会の席で問題になっているんですから知らぬと言ったってしょうがないだろうと思うんですけれども、文書課というのは日本じゅうに山ほどあると思うんですね。「四十七年四月十一日文書課」と書いてありますが、政府関係機関にも山ほどあるんですけれども、これは一体どこが出したものでしょうか。いま委員長お話の中にも外務省にと、外務省からというおことばがありましたけれども、私は外務省だけのことを指摘したわけじゃないんで、秘密という総称的なものを指摘している。わけても「外務省防衛庁など」という、「など」ということばを使ったんですから政府関係機関のすべての機関に、つまり国のすべての機関にやっぱり私の質問趣旨からいえば総称的に包括されていなければならないものだと解してもらって資料が整わなければ私のあれの基本に反するわけですけれども、前者後者とあわせて見解を言っていただきたいと思います。
  9. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) 御質問の第一点についてお答え申し上げます。  今回の西山記者及び蓮見事務官の両名にかかります起訴は、御案内のとおり国家公務員法上の秘密を漏らしたあるいはその秘密を漏らすことをそそのかしたということで起訴されたわけでございます。そこで、この国家公務員法の百条の秘密というのは何をいうかという問題になるわけでございますが、この国家公務員法百条第一項前段は「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。」と、こう定めております。そしてこの秘密には職員職務上知ることのできた個人の秘密職務上の秘密と両方が含まれているわけでございます。このうちで職務上の秘密についてかつその漏洩罪に関する第百九条第十二号または第百十一条の適用関係がどうなるかという問題になるわけでございますが、この関係におきましては、この国家公務員法百条第一項の秘密というのは、純粋に実質秘とされているもののほか、国家機関により秘密扱い指定表示がなされたいわゆる指定秘とされたものであって、その実体刑罰による保護に価するものをいうというふうに解されるわけでございます。したがいまして、この国家公務員法の百条の秘密のうちでいわゆる職務上の秘密というものにつきましてこれはただいま申し上げたような観念であろうと思うのでございます。その観念前提にいたしまして、その秘密度合いによりまして各所管の行政庁等におきまして、またこの機密であるとか極秘であるとか、こういう秘密性度合いに応じてそれぞれ各行政機関指定をされておるという関係に相なっておるわけでございまして、国家公務員法百条の関係秘密という意味につきましてはただいま私が申し上げたとおりに解しておるわけでございます。
  10. 野々山一三

    野々山一三君 後段の質問に対してどういう見解を持っておられるか。それからあなた国家公務員法でいっている百条の一項の秘密というのですから、あらためて聞きますけれども、国家公務員法に抵触する秘密、つまり国家公務員という名前のつくもの及び国家公務員法に準ずるという規定を持っている関係機関もそれに適用される場合もある、可能性があるんじゃないかと思いますけれども、それ全部資料で示していただきたい、答弁ももちろんしてもらいたい。あなたの答弁は、だから私が最初に断わったように、秘密総称について質問をしているのになぜ西山君及び蓮見君の問題についてだけ答えるんですか。そういう態度だからこういう資料しか出てこないんだよ。私の最初委員長に断わり委員会に断わって質問している趣旨が君にはわかっているのかね、そのことからまず聞きたい。法務大臣お見えですから、いまの答弁とぼくとのやりとり及び委員会に私が約束したこととの関係について法務大臣のまず見解を聞きたい。それから第一、第二の問題について関係局長見解を聞きたい。
  11. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ただいまの答弁、ちょっと的をはずれたというと悪いのですが、お聞きになった第一の御質問は、機密秘密と同じかということだったと思います。まあこれは重大なる秘密機密だと私は理解いたしておりますが、その点多少むしろ技術的に補足しようというつもりで刑事局長現実の問題を出したんだと思います。
  12. 野々山一三

    野々山一三君 答弁してください。
  13. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) 国家公務員法にいいますこの職務上の秘密という観念につきまして、この職務上の秘密観念のうちにこのいわゆる機密というものもございましょうし、極秘というものもあろうと思います。要するに、国家公務員法にいう職務上の秘密というものは純粋に秘密と、実質秘といわれているもののほか、国家機関により秘密扱い指定表示がなされたいわゆる指定秘とされたものであって、その実体刑罰による保護に価するものがこの国家公務員法処罰対象になる秘密であると、かように申し上げておるわけでございまして、その総称がこの国家公務員法にいう秘密のうちの内訳と申しますか、そういうものについて機密もあり、極秘もありと、こういう理解になると思います。
  14. 野々山一三

    野々山一三君 あなたは先ほど私がわざわざ聞いている私の質問趣旨、つまり委員皆さん了解を得て質問をしている趣旨を解して質問答えていると考えているの。そのことについてまず答えてください。大臣が当を得てない答弁をしたと思うと、こう言われたわけですが、そうですね、大臣
  15. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ちょっと最初の御質問が……
  16. 野々山一三

    野々山一三君 その大臣見解さえも君は無視する答弁をしていたのと違いますか。そのことについてまず見解を明らかにしたまえ。  それから機密秘密などというんだけれども、秘密——君の言うことばによると秘密という観念は、概念はというお話ですけれども、秘密というのは一体何と何と何とあるんですか。一つなんですか、二つなんですか、三つなんですか、四つなんですか。一つなんですか。もう一ぺんあらためて言ってください。国家公務員法上の国家公務員に関する秘密というもので示されているものは何であるか、各条章、法律すべてを並べて答えて、それを資料で出しなさいといっているんだけれども、それに答えないのかね。
  17. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) 国家公務員法秘密漏泄あるいは秘密漏泄をそそのかしたということで処罰対象になっております場合の秘密でございますが、この秘密実質秘と言われておる、これを漏らすことによっていろんな行政目的が阻害されるという意味の実質的な秘密と、それから各役所におきましていわゆる指定をいたしております——秘であるとか極秘とか機密とかいうことを指定いたしておりますが、そういう指定しておるうちでその実体刑罰による保護に値する秘密、これが国家公務員法上の処罰対象になっております、この国家公務員法上の職務上の秘密でございます。で、それを前提にいたしまして、その範囲内で各役所におきまして機密秘密性強度いかんによりこれが機密であるとか極秘であるとか、そういう指定がなされておるわけでございますが、この罰則の関係におきましては秘密という観念になっておるわけでございます。いわば、その機密であるとか極秘であるというのは、その内訳ということに相なろうかと思うわけでございます。で、国家公務員法上の処罰対象になります職務上の秘密ということはこれに尽きるわけでございまして、あとは各役所指定の取り扱い、各役所における秘密実体の問題、これによってこの内容が確定してくるものと考えているわけでございます。
  18. 野々山一三

    野々山一三君 そのことの賛否は私は別にして、最初に聞いた、この文書はどこのだれがどういう手続を経て出したんですか。それを聞かないとこの中身が聞けませんから、そのことについて先ほどから質問しているんだけれども、だれも答えられないんで、答えてください。文書課と書いてあるけれども、どこの文書課ですか。
  19. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) この文書課と申しますのは、私のところの文書課でございます。外務省文書課でございます。こちらのほうの委員会から資料の御要求がございましたので、外務省関係秘密文書基準及び種類という意味でこの文書を出しましたわけでございます。文書ていさいなど非常に不備で相すみませんでした。
  20. 野々山一三

    野々山一三君 君、この文書出して、この委員会から、つまり国会から正規に求められた資料提出したと、公務員法上の君の職務上の地位義務使命からいって正しいと考えるか、正しくないと考えるか。不手ぎわとかいう抽象的なことばじゃなくて、日本人だれでもわかるように間違いでしたというなら間違いでした、訂正しますなら訂正します、何々省何何何何の何々ですと、こう考えてもらいたい。そしてそれが、単にこういうインチキ——私に言わせるとこれはインチキです。紙に何か黒いものが塗ってあるだけで、そういうものにしか見られませんがね。なぜそういうことを私が言うかというと、これは事実、事件に関するけれども、公務員なら公務員のだれかが、これは秘密だぞといってことばで言われた。それをちょっと何かの関係で漏らした。そうすると、これは公務員法上ことによると刑罰責任を問われるということになるでしょう。だから、君の地位からいって、法律上どこからたたいても職務上間違いがありませんでしたなら、ありませんでしたと言いなさい。間違いがあったら、間違いでした、あるいは不適当でした、うそでした、証拠としては十分のものではありませんでしたというなら言いなさい。
  21. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) 先ほど申し上げましたのは、この「文書課」と書きまして、——当然「外務省」と書くべきものでございまして、「外務省文書課」あるいは「外務省」と書くべきものでしたということを申し上げたわけでございます。  この内容につきましては、基準につきましては、私のほうの機密保持規程がございまして、極秘、秘の指定基準につきましてはこれだけしか規則がございませんので、規則についてお答えするとすればこれ以上のものがないわけでございます。その種類につきましては、これはどういうふうな目的でお聞きになりましたか私はあんまりわかりませんだったものでございますから、この点につきましてはもう少し内容の多いものを出すべきであったかと思います。
  22. 野々山一三

    野々山一三君 内容の多いもの以前の問題として、君は私が質問している公務員法上のなすべき職務上の義務がありますね。ありますか、ないですか。あるかないか、答えてください。
  23. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) 国会としては国政調査権がございますから、当然お聞きになれば私のほうでお答えをしなくちゃいけないと思っております。
  24. 野々山一三

    野々山一三君 出したのか出さないのか、やったのかやらないのかと言っている。職務上の地位を完全に果たしたのか果たさないのかと聞いている。
  25. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) 先ほど申し上げましたとおり、基準につきましてはこれ以上のものは出せないと思うのでございますが、この種類につきましてはもっとこまかいものが出せると思います。
  26. 野々山一三

    野々山一三君 出したのか出さないのかと聞いているんだ。
  27. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) 種類につきましてはしたがって不備なものを……
  28. 野々山一三

    野々山一三君 同時に私が聞いている、公務員法上、君が職務上なすべき義務を果たしたのかということを君に聞いているんです。果たしてないなら、ない、果たしたなら、果たしたと言いたまえと言っている。何もむずかしいことを言っているんじゃない。世の中だったらだれでもそんなこと聞きますわ。だれでも通用することばで言いたまえ。
  29. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) 質問の御趣旨がわかりませんでしたから……。
  30. 野々山一三

    野々山一三君 私の聞いているうちに言わぬでもいいだろう。
  31. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) この種類につきましては、質問の御趣旨がわかりませんでございましたので、——これでは不備だと思います。
  32. 野々山一三

    野々山一三君 職務上の義務を果たしたということなのかということを聞いている。
  33. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) 私は果たしたと思っております。
  34. 野々山一三

    野々山一三君 じゃあ、君のところに政府委員とかなんとかいう諸君がいますね。質問の前に、質問すると言うたら、山ほどわしのところへわいわいいってきて、どういう質問するんですか、こういう質問するんですか、私が聞くか聞かないのかわかりもしないことを聞きに来るのだ。それはどういう地位に基づいて、どういう権利に基づいて聞きに来るんですか。そういうことについては、君たちは必ずそういうことをやらない諸君がおったら、おまえ横着しているじゃないかと責めるでしょうよ。にもかかわらず、職務上の地位を果たしたかどうかと言うたら、やったと思いますと言いながら、君、ただの一ぺんだってそれじゃ、不完全な資料だと委員長にまで言われ、委員会皆さんが了承されていることについてただの一ぺんだってぼくのところへ聞きに来たことはない。そんなことは、君に悪いけれども、この間ぼくの質問した趣旨速記録を取り寄せてここで吟味さしてください。そんなこと一々私は、国会という地位をどうこうじゃない。イロハのイからおしまいのンまで聞かなければ答えられぬなら速記録なんか必要ないんだよ。国会審議権について君たちが何か文句言う地位があるのか。聞かなかったから——質問で聞かなかったから十分なものができなかったということが合法か、そのことについて聞きたい。だから、君は正しいことをやっているのかと言ったら、やっていませんでしたということを言えばいい。それならそれで私は納得するのですよ。それはお互いに仕事があって十分聞いてないからということは、それは裏話であって、公式には、記録に基づいて君たちは要求された資料を出すべき義務がある。政府委員というものはそういうものじゃないですか。委員長及び官房長官も来たから、政府を代表して見解をお聞きしたい。政府委員とは何か。資料作成義務を持っている。国会審議に基づいて資料作成義務を持っている。義務というよりは、職務上の責任を持っている人のなすべきことは何か。いまの一々イロハのイからおしまいのンまで言わなければ万全でありませんでしたと、しかられても、こんなことは私はしかられる関係のものじゃありませんと、いま答えたと同じになるのだけれども、そういうものかね、あらためて聞く。君が、事本来の内容について質問をする前に、出たのはどうも外務省らしいから外務省だけを聞いているので、私は政府関係機関全部について聞くために、確かめるために資料を求める。まともじゃないから、政府を代弁して官房長官ただいま出てきてほしいと要求したわけなんです。だけれども、その内容のごく一部を、それについて君にもう一回聞く。何回でも聞きますよ。何時間かかるかわからない。何回でも聞きますよ。
  35. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) 先ほども、たびたび申し上げますように、種類につきましては不備でありましてまことに申しわけございません。
  36. 野々山一三

    野々山一三君 私は聞いている。君は、公務員法上定められていること及び政府委員としてなすべき使命を果たしたのか、果たさないのかと聞いているので、不備とか、不備でないとかの話はあとの話です。果たしたのかね、果たさないのかね。
  37. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) 不備なものを出しましたことはまことに申しわけございません。
  38. 野々山一三

    野々山一三君 それじゃあらためて聞くが、職務上の地位を君は全うしていないと考えていいのですね。
  39. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) その点に関してはそのとおりでございます。
  40. 野々山一三

    野々山一三君 申しわけないの話じゃない。果たしているのか、してないのかと聞いている。果たしてないと考えていいのかと言っている。そのことに答えてください。私は頭がこわれているからよくわからぬ。君のような取ってつけたような返事はわからぬから、だれでもわかるように、小学校の子供でもわかるように答えてください。私の言っていることが無理だったら、与党の諸君からでも関連して言って、君の言うのが無理なら無理と指摘してもらってもいいのですよ。やったのかね、やらないのかねと聞いている。不適当であったのか、ないのかということは、感想の問題、感情の問題、認識の問題です。
  41. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) 先ほど来申し上げているように不完全でございました。
  42. 加瀬完

    ○加瀬完君 関連。  この前、外務省はお出になっておらなかったかも存じませんが、例の秘密漏洩の問題で、犯罪としての秘密漏洩の対象になる条件はどういうことだという質問があった。そうしましたら、それはマル秘が押されているとか、極秘が押されているとかという、そういう形式的なものではない、具体的な内容を備えたものだと、こういう御答弁があった。それでは、具体的内容の要件というのは、どういうものになるのか。ただ、マル秘というものを押されておって、マル秘の押されているものは全部それが犯罪の対象になり漏れた場合には犯罪の対象になるというようなことでなければ具体的な内容が問題だと言うなら、その具体的な内容というものはどういうものなんだと。したがって、たとえば外務省なら外務省は、ここに出されたものに、「次に定める基準により、」ということが書いてありますが、いかなる基準によって、どういうワクがきめられているのか。これが明瞭に出されなければ、犯罪の対象としてその秘密というものが考えられるか考えられないかの判断ができないんじゃないかと。ですから、そういう点を詳しく、どういう基準によって、どういう具体的な内容としてのワクがきめられておるのかというものを出してもらわなければ審議ができない、こういう質問であったわけです。そうして出されましたものはこのとおりなものであります。たとえば、「事務次官会議申合せに基づき、次に定める基準により、」と、事務次官会議はどういう申し合わせをして、どういう定める基準によって各省にマル秘、あるいは極秘というもののきめ方をしたのかということも具体的に出してもらわなければ困る。そうでなかったら、具体的な内容というものは判断がつかない。こういうやりとりがありまして、それを出してもらえないかということになりましたら、これだけの資料しか出てこない。前後しますが、そのときにも具体的な内容の説明はなかった。具体的な内容というものは、そうすると、その係官の恣意の働く余地というものがあれば、これは問題ではないか。法のいわゆる処罰対象としては、人によって、これは秘密の、漏らしてはならない、犯罪を構成する内容だと、こういう判断をAがしたら、Bが、いや、その議に及ばずという判断をする。恣意の働く余地というものが残されておってはどうにもならないということが問題になって、いや、そういうことはありませんということがここで問題になって、それじゃ具体的にどういう基準があるかという問題になった。
  43. 野々山一三

    野々山一三君 中身を全部出せ。
  44. 加瀬完

    ○加瀬完君 中身です。この回答では、いま野々山委員が指摘をするように、これでは、そういう問題があったあと質問に対する回答ということにならないでしょう。だから、これはどうしたことだと。少なくも資料提出する限りにおいては、どういう関係資料要求されたかという、前後の関係を知っておるはずだ。知っておってこういうものを出すというのは、これはもう委員会なりあるいは議会の調査活動というものをおちゃらかしている以外の何ものでもないじゃないか。こんなもので、けっこうでございます、よくわかりましたというわけにはいかない。こういうことがありますから、いまのような質問が繰り返されておるわけです。  ですから、さっきも野々山委員が指摘したとおり、これでよろしいですか、こんなことでないんで、質問はこれこれこういう内容だよと言ったならば、いや、そこまでは出せませんけれども、御指示に沿うてこれだけのことはそれでは出せますといったようなことを個人的に話し合ったって一向におかしくない。これではだめですからね。そういう打ち合わせを十分にして、議会の要求に対する資料というものを外務省としてはお出しをいただくお考えがありますか。
  45. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) よくわかりました。この関係でございますが、実は一番初めに申し上げましたとおり、この次官会議の申し合わせに基づきまして私のほうにも規則をつくっておりますが、規則の面ではこれだけしかないわけでございます。それで、あとどういうふうにきめるかと申しますと、それぞれ、官房に関しましては私、ほかの各局につきましては各局長が指定しておりますわけでございます、極秘、秘を。それでこれは疑義があるときには大臣の決裁を仰いでおりますが——と申しますのは、やはり、それぞれ非常に場合場合がございまして、一つのある何らかの基準をつくって規則にするというようなものになじまないものでございまして、たとえば交渉中のものは全部極秘にするとか、あるいはたとえば工作をして情報をとったものはみんな極秘にするとかというようなものをつくりましても、それぞれの場合場合によりまして、それが極秘の場合もございますし、そうでない場合もあるわけでございます。それと、もう一つは、私のほうの特殊な問題といたしまして、裏に暗号のあるものがございますわけでございます。暗号を使ったために極秘になっている分があるわけでございます。そういういろいろの事情がございますためにはっきりした基準がつくれないわけでございます、実際問題として。したがって、何か非常にそっけないような、一つ基準だけしかなくなっておりますために、御要求のいわゆるもう少し詳しいものを出せとおっしゃるのに合わない形になってしまったわけでございますが、そういうことで規則自体にはないということなんでございます。
  46. 加瀬完

    ○加瀬完君 基準もなければ規則もない、そのために犯罪人が出るというようなことは、これはまことに不自然な話ですね。まことに不合理な話ですね。したがいまして、あなたのおっしゃるように、基準になじまないというけれども、基準になじまないといったって、極秘とか秘とかいうものをきめるには何かの基準があるに違いない。その基準が十分に説明されなければどうにもならないんじゃないですか。この前の審議のときにも、秘密が犯罪の対象になるということは国益を大きくそこなう、あるいは将来、そこなうおそれがあると、こういう前提があるはずだ、国益か国益でないかというようなことを抜きにして、これは極秘にしよう、これは秘密にしようと、こういうふうに担当の者によってきめられるということはあり得ない。これはきめることは自由だけれども、それによって第三者の犯罪が構成されるということは、これは不合理な話だというようなことも審議されたわけでございます。場合場合によって違うというけれども、刑事上の犯罪を構成するというときに、この場合は犯罪になるけれどもこの場合は犯罪にはならないというようなことがあったら、一体これ、法律的に合理性、があるということになりますか。じゃ、犯罪にしたり犯罪にしなかったりするのはだれがきめるのですか。その担当の役人がかってにきめたり、政府の権力がかってにこうこうきめたりするということは法律上あり得ませんね、これは。そういうあいまいなことで犯罪構成を運ぼとしているところに疑義があるし、問題があるわけです。  で、これはあと野々山委員から官房長官質問があると思われますけれども、各省もまちまちですね。基準もないです。それから、時によっては犯罪になりもすれば、時によっては犯罪にはならないという、こういう時間においてまた判断もまちまちということになりますね。そんな基準というのがありますか。そんな、いやきめたんだからありますと言うかもしれない。そんな不合理な形できめられたものによって何人かの人が犯罪人にさせられるというようなことが——一あなた方はそういうきめ方やそういう存在に合理性を認められますか。隠すことないじゃないですか。基準がなくて秘や極秘がきめられることはない。じゃ、それは十分文書をもって報告をすべきだ。個々の議員に対してじゃない、国民に対して。なお、国民が場合によっては犯罪にもなります、場合によっては犯罪にもなりませんよ。じゃ、どういう基準できめるんですか、基準はなかなか、極秘とか秘とかきめることは、基準をきめることになじみませんから、それは、基準はありません——これで国民が納得しますか。私ども一、二の議員の質問は、おまえらは立場を異にしてことさらにわれわれに質問をすると解してもいい。それならそれで私どもは、だれもがそう考えられることならば、質問をわれわれも訂正するにやぶさかでありませんよ。しかし国民が、こういう大きな問題が起こっているときに、どういう基準で秘とか極秘というものがきめられるんでしょうか。基準もありませんよ。場合場合によって違うんです、場合によっては犯罪にさせられることもあるし、場合によっては犯罪にさせられないこともありますね。さようでございますと答えるよりほかないでしょう。こんなばかな不合理なきめ方というものがありますか。だから、ますますわからなくなるから同じような質問が繰り返されることになるわけです。これは法務省に伺ってもいい。基準にはなじみませんから、別に基準はよりどころといたしません、場合場合によって犯罪になったり犯罪にならなかったりいたしますので、その場合場合できめます——こんなことで次官会議が申し合わせをして、その次官会議の申し合わせによって各省庁のマル秘や極秘というものがきめられたとして、そのきめられたものに基づいて犯罪が構成されるということでも、法体系からいってあなた方は当然なことでございますとお答えになりますか。
  47. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) 国家公務員法上の職務上の秘密の漏泄等に関連いたしまして、どういう秘密がこの罰則の対象になるかという問題でございますが、これはもちろん最終的には裁判所が——争った場合にはこの刑事の場合には裁判所が認定するわけでございます。ところで、現在までのこの関係裁判例を見てまいりますと、いわゆる実質秘でなければならないという一つの考え方の裁判例がございます。それからまた逆に、この指定秘——役所指定しておる、秘とか極秘とかいうふうに指定しておる指定秘だけで足りるという裁判例もございます。それから、なお指定秘であって、かつ、実質秘である、両方の要件がなければこの刑罰による保護にはならないのだという裁判例もございます。いまだ最高裁の確定した判例はこの点についてはございません。高等裁判所以下の裁判例でございます。こういうふうに裁判例を見てまいりますと、三つに大体区分できると思うのでございます。  ところで、裁判関係はさようになっておりますけれども、私どもといたしましては、これは指定秘であって、かつ、実質秘という点に近い考え方を持っておるわけでございまして、それは、先ほど来、私が申し上げておりますように、実質秘であることが一つと、それから指定秘のうちで実質的に刑罰をもって保護するに値するものと、こういうふうに私ども行政解釈としては、こういう裁判例も踏まえて考えておるわけでございます。
  48. 加瀬完

    ○加瀬完君 済みません。これでやめます。  この前から最高裁のほうでも、あなたのほうでもおっしゃるように、指定秘だけではこれは十分でないと、実質秘を伴うものということも定説として出されておるわけです。そうすると、指定秘だけでいいということになると、この間、同僚の黒柳委員が指摘したように、判こだけ押せば全部これが犯罪の対象になるということになったら、これは国益という前提で行なうマル秘の指定が国民の権利というものを非常に圧迫することになりますから、これをすなおに判だけ押せば、それを漏らした者はみんな犯罪対象者だと言うことは、これはどうしたって常識的に成り立たない。そうすると、おっしゃるように実質秘ということが問題になる。実質秘ということが問題になれば、どういう実質だということを問題にしなければならない。どういう実質だという内容がなければ実質秘の判定というのはできないんじゃないですか。それが、それは場合によって違います、だから基準がつくれません——これでは、その犯罪対象にされる一般の国民の権利というのは守られるということになりますか。そんな不合理な処罰対象処罰の方法というものが許されますか。私ども聞いておるのはそこですよ。実質秘というものが問題になるのなら、その内容というものが問題になるというのであれば、どういう内容というものに区分けをして、これは極秘だ、これは秘だと、こういうことになっておらなければならないはずではないか、少なくもそういうことをそれぞれきめる官庁は。それがなくてその場合その場合適当に使われるということであってはこれは法律とはいわれない、近代法律とはいわれない。だからそれをくっきりと区分けをして出しなさいと要求しておったわけです。私ども言おうとするところはその点ですが、お答えには及びません。
  49. 野々山一三

    野々山一三君 官房長官お見えですから、時間がないかもしれませんが聞きますけれども、いま加瀬委員から秘密というものについて外務省側の見解との間に意見の違いがあったことはお聞き及びのとおりですが、問題は一つは、この文書で出てきておりますものの中にあります「昭和40年4月15日事務次官会議申合せに基づき、」云々というものだけが出てきているわけですが、それによれば「極秘及び秘の2種類に区分され、それぞれ当該文書極秘及び秘の標記が付される。」ということで、極秘とは「秘密保全の必要が高く、その漏洩が国の安全、利益に損害を与えるおそれのあるもの。」、秘とは「極秘に次ぐ程度の秘密であって、関係者以外に知らせてはならないもの。」ということが次官会議できめられたというのです。これはどうも私の考えるところ、あなたが副長官時代におきめになったことだと思います。そうしてあなたはこの間、日曜日に放送討論会で国民の前で秘密というものについて見解を述べられましたね。私が間違って言ったのじゃいかぬので、そのことをもう一回ここで、第一はこれをきめたことが何であるか、第二はテレビを通して国民の前に明らかにされた真意を間違いなくここで一ぺん述べていただきます。
  50. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) まず第一点からお答えいたします。  野々山委員御指摘のとおり、昭和四十年四月十五日、私が内閣官房副長官の際であります。これが両院のそれぞれの委員会で取り上げられました。そのときの趣旨は、率直に申し上げまして、大体昭和二十八年四月三十日の次官会議申し合わせに基づいて各省は秘密文書等の取り扱規程をつくっておる。それが機密極秘、秘、部外秘というようなことに、四種類の区分をしてなされておるが、今日、先ほど加瀬委員の発言の御趣旨と同じように、言うなれば、秘文書というものが非常に便宜的に取り扱われ、それなりに数が多くなり過ぎて、いわゆる秘というものに対するある種の何と申しましょうか、まあ秘になれっこになってしまっているという背景で、実は四十年の事務次官申し合わせというものは、いかにしてそういうものを少なくするかという趣旨で実はつくったわけであります。したがいまして、今日御議論をいただいておるような背景とはその点は若干背景を異にいたしておるわけであります。そこでその二十八年四月三十日の次官会議申し合わせを踏まえながら、それを廃止して新たに、ただいま野々山委員御指摘のように、これを申し合わせとしてきめまして、内閣官房長官名をもって各省事務次官宛にこれを通達いたしたわけであります。  そのあとこれにつきまして、お手元におそらく資料としてお出し申し上げていると思うのでありますが、これそのものをそれなりに最近になって読み返してみますと、この取り扱いについてしかもそれに基づいて各省がそれぞれに行なっておるわけでありますが、いうなれば追跡——ことばは適当でございませんが——追跡調査がきわめて欠けておったと、こういうことであろうと思います。もっとも最近できました環境庁の文書取り扱い規定が、昭和二十八年のその廃止された分の基準に基づいてできておる、こういう残念な事実も確かにございます。  したがいましてこのたび行ないましたのは、もう一度この四十年の事務次官申し合わせの線に返って各省においてこれを整理検討して、少なくとも一つのアベレージをそろえてもらいたいと、こういうことであります。とは申しますものの、いままで御議論なすっておりますように、外務省防衛庁と他省とはかなり秘文書そのものの扱う件数とかあるいは接触の度合いというのが、いろいろ、たいへんな相違がございます。普通私どもが指定秘であると同時にまさに実質秘であるという社会通念上から考えられるものに、たとえば入学試験問題でありますとか、あるいは入札以前におきますところの設計単価、入札の予定価格でありますとか、またいわゆる人事案件にいたしましても、本人に通知するまでの間、すなわち公表までの秘ということは、私はそれなりに常識的に洗い直してみたら、なるほどな、ある種の基準だと御認識をいただけるものがあるんじゃないか。しかし、それすらいままできちっとしているわけでありませんので、これは私は早急に整理することができると、このように思っておるわけであります。  そこで、先ほど来御議論にありますいわゆる特に外務省とか防衛庁とかその他繊維交渉の過程における通産省とかそういうものも例外としてはもとよりあるわけでありますが、非常に多い外務省防衛庁等におきますところの極秘、これは抽象的には「秘密保全の必要が高く、その漏洩が国の安全、利益に損害を与えるおそれのあるもの。」とこういうふうに記されておりますが、これが私が最近いろいろ御議論をしておりますところの秘密とは、国益とは、こういう議論になるわけであります。  ことばの足りない点がありますればのちほど御質疑をいただくことにいたしまして、私が申しておりますのは、極秘とか秘とかいうものが非常に国益をそこなう場合、あるいは加瀬委員も御指摘の、そこなうおそれのある場合、というようにそういう判断が新しいこの基準になれば、さすれば国益とは何であるかという、こういう議論になります。国益とは、これも一般的社会通念上のことばといたしましては、国家国民の利益あるいは国家の安全に関する事項と、こういうことに一応統一されると思いますが、その国益とは、たとえば国益を阻害するおそれがあるという判断はだれがするかという御議論にもなるわけであります。これは私は最終的には国民がするものであると、基本的には国民がきめるものであると申しております。それからそれが犯罪を構成するかどうかという争いになった場合には、これは裁判所がきめる。これは国益とは当然憲法というものが大前提になりますだけに、そこには最高裁判所の違憲審査会と、こういうところが争いになった場合に考え方としては成り立つと思うわけであります。  そこで一般的な国益につきましては、私はそれを決定するものは国民である。しかしその国民の、主権者たる国民の代議制のもとに選ばれた国会というものがある。そうして、その国会が行政権の最高責任者を指名をする。そうすれば、行政権の存在する限りにおいては、すなわち行政上の取り扱いとしての秘というものはいわゆる内閣がきめると、まあこういう論理は一応の原理として成り立ち得るんじゃないか。しかし、そういうことで最も危険なことは、さようしからばそれが、国益ということが、そのそれぞれの分類によって、官房長、局長ないしはこれに準ずるもの、また秘扱い文書は課長、こういうことになりますと、いわばそこの非常に主観が働いてそれらのものが決定されていく場合、いわば議会制民主主議の中においてよく議論される、多数を取ったものが与えられた任期の間、言うなれば、かってなことをやればいいじゃないか、こういう最も危険な論理にこれは結びつく危険性がある。そこでこれをチェックするものは、そこに国会というものが、問題によっては国会の承認を受けなければならないとか、そういうことで国会というものがそれをチェックする大きな国民の代表機関としてになっておる。そうしてまた一つのテーマによっては、国益の存するところ国民自体に直接これを問うと、すなわち総選挙とか各種の選挙というものがある。だから、行政上の取り扱いとしては、国益をそこなうおそれのあるなしの判断は政府責任においてやるわけであるが、それはそのような国会、そうしてまた最終的にはたび重なる選挙というようなところで国民次元の中に返っていくものであるだけに、さらに最近の動向からいたしまして、そこに知る権利を持つ国民と、言うなれば主権者たる国民に対し知らせる義務がある政府との間に存在する厳正なる報道機関というものが媒体活動をなして、絶えず世論を背景にこれを監視しておる、さようしからばおのずから社会通念上の良識というものが働いて、それが大きな混乱、大きな間違いを生ずることはなかろうではないかと、まあこういう一応の私の主張でございます。ただし、それに対してはまず国会というものが国権の最高機関であり、そして国政審議権をお持ちになっているだけに国会が監視いただける、また報道機関が世論を背景にこれを監視していけるだけの、できるだけの常識の素材というものは提供するという最大限の努力というものは、これは行政府そのものが絶えず持ち続けていかなければならない、いわゆる民主国家における鉄則であると、このようなことを申し上げておるわけであります。
  51. 野々山一三

    野々山一三君 四十年四月十五日のそれというのは、いまのあなたの論理からすれば、行政権者たる者が行政行為をする上で必要な秘密、そういうことですか。
  52. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) そのとおりでございます。
  53. 野々山一三

    野々山一三君 そうすると、いまいろいろなことをおっしゃったあなた言おうとしておること、賛否は別としてわかるわけですけれども、先ほどあなたがお見えになったときに、外務省の官房長ですか、とやりとりをしておったようですのでお聞き及びだから大体おわかりだと思いますが、国会でこれこれの資料が必要なんだからということできめられたのに、委員長も御指摘のように、この資料じゃ委員会が求めたものと違うと、こう言われているわけです。そうすると、最後のところで、国会にその素材を提供することを通じて国民の利益を守る、国益という観点からそれを処理するというあなたの御説との間には違いがあるでしょう。そうですね、お答え、お気持ちを。
  54. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いまおっしゃいました野々山委員のおっしゃること、それから加瀬委員の御指摘なすったことも、私にも認識のできるところであります。そこで、ただ一番この問題は、これは私もこの間来、まあ自分が昔やっておったことのあと始末ということもありますし、責任を感じていろいろ検討いたしておりますが、一般的に入学試験問題とか何であるとかいうような社会通念上確かにこれは極秘であると、あるいは公表まで秘であるというようなものが一般官庁には多いわけであります。だから、いまむしろ国民に一番関心になっている問題は、いわゆる外交秘密あるいは防衛庁秘密と、まあこういうことになろうと思うわけであります。そこで、これについては官房長のお答え一つ一つ聞いておったわけじゃございませんが、今日、なかんずく外務省におきましては、これは民主外交の三原則というと少しオーバーな言い方になりますが、いわゆる基本方針は公開である、交渉の過程はこれは秘密である、そして結果はまた公開であるということに照らして、交渉過程における秘密というものはたくさん実際まあ実存しておることは事実であります。で、むしろこれから外務省と協議して、防衛庁とも協議してきめなければならないのは、それらが、ある過程では国民の中に公開されてしかるべきものがある——相手側の了承を得る必要がある場合があるかもしれません。そういうむしろ外交交渉の過程における秘密の原則というものは解除する時期がいつであるかと、まあこういう段階で検討をもう一ぺん加えてみてもいいんじゃないか。永久秘というものも確かにあるであろう。私またこの間、外務省百年史というものを、これはまことに私見を交えますが、読んでみますと、いわゆる賠償請求、日華平和条約の際の。そのときの大使館のだれがどう言ったとか、向こうがどう言ったとかいって、まあ思い出話として記録されておる。そうしてそれは、交渉のまさに経過であるから当時部外秘であったものが、今では公開されてそれに何らのわれわれも抵抗も感じもしないし、また国益をそこなうものでもないというようなものであるだけに、私はむしろ今度は角度を変えて両省にお願いしておるところであります。お願いしたばかりでありますが、そういうものを一応ある種の時限が来たときに、それを焼却する、あるいはそれは公開してもよろしいとか、そういう観点で考えてしかるべきではないか、こういうことをお互いにいま、佐藤官房長ともいま議論のさなかでございます。  そこでもう一つ野々山委員、加瀬委員に御了承をいただかなければならないなにも、私もしみじみ思いましたのは、外務省は事務次官通達に基づきますところの申し合わせに基づきましてつくりましたところのいわゆる文書取扱規程そのものを極秘にしておると、こういう点が存在をいたしておるわけであります。それはなぜかと、どうせ各省似たようなものがあるならば、まあ一般的な私どもの平凡な常識でいいますと、その取扱規程そのものが極秘扱いということは、いかにも他省に比べてアンバランスじゃないか、こういう感じも私自身持っていました。しかしこれはやっぱり一番問題は暗号の問題もございます。が、いま一つ秘密文書の取扱規程というものが大使館ごとに、出先の在外公館ごとに存在しておるということが、これは諸外国とも同じような傾向であるそうでございます。私のいままでの乏しき知識において研究した過程にすぎませんが、そういう文書が存在しておるということが、その国の機密というものを取りたかろうというアプローチの焦点になっていくと、こういうことが私はやはり外交上の特異性になるんではないか、こういうことを思いますにつけ、いわゆるきょう御指摘のいかにも事務的な、しかもこれが秘密のほとんどない省なんかございますが、人事の秘密を別にいたしまして、そういうところへ流しておると同じようなものを出して、これによって外務省要求したいわゆる秘密基準とかあるいはその秘の基準とかいうものとはおよそ縁遠いものを出したでないかという御疑問なり御理解私も素朴にそれと同じ意見を持って検討したわけでありまして、私も別に外交官僚であったこともございませんし、しかしそれをやるにつけしみじみと感じましたのは、いわゆる外務当局のよって立つところの国際的慣行の中における特殊性ということが私は御意に沿わない資料提出となった、こういうふうに理解いたしますにつきましては、私はこれは近い将来の課題として、おおよそ外務省極秘文書というものはこういうものでございますとかいうようなものを秘密理事会の取り扱いでもちろん御説明申し上げるとか、というような性格のものにして扱わなければならぬではなかろうか、こういう最近抱いております素朴な感じを、野々山委員の御質問を少しオーバーをいたしまして意見をつけ加えてお答えを申し上げたわけであります。
  55. 野々山一三

    野々山一三君 最後のことについては私も——時間がないようですから先に言いますが、第一に、いまの御答弁趣旨からして四十年四月十五日にきめたという「秘密文書基準及び種類」というのですか、これは変えなければいけないと考えている、こういうふうに私は受け取るのですが、再検討するというふうに解していいですか。
  56. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 各省事務次官通達は、私はこれをいま変える考えは持っておりません。一般的にはこれでいいんじゃないか。それに対して特に私が社会通念上といって申しておりました諸問題は、いつでも説明できるように各省とも整理しておいて、そして、むしろ筋はこれでけっこうでございますが、この趣旨に沿って外務と防衛、この両省が特に期限つき秘密というものが解除できるという角度から別の検討を加えたほうがいいんじゃないか、こういう考え方に、私は勉強させられたばかりでございますから乏しき知識でまことに中間でありますが、そういう認識に立っておる、こういうことであります。
  57. 野々山一三

    野々山一三君 まことに済まぬのですけれども、私が秘密というものを問題にして資料を求めたのは、いまあなたが御指摘の外務省防衛庁、防衛関係というだけを問題にしているんじゃないのです。最初に担当局長にも言ったのですけれども、まだ足りぬの趣旨要求したのですけれども、日本中には山ほど秘密ということばが、公権的にどういうものかよくわかりませんけれども文字があるだけだろうと思いますし、扱いがあるだけだろうと思いますが、あるけれども、そこまで広げてというわけにはまいりませんから、政府関係機関秘密と称するもの、その法律の根拠、どういう法律があって、どういう理由があって、どういう条件があるということの資料を正式に出してもらいたい、そういうことを言ってあるわけです。  それをまずあらためてお聞きしながら、第二の問題ですけれども、変える意思がないというお話ですけれども、それだと、この中身について私はこまかくあなたと議論をしてみないと、いまのところ、これ簡単な表現をすると、判こをぽんぽんと押したら全部秘密ですから何も言えませんということなら、それは三権分立の立場では行政権者としては都合いいかもしれませんが、国会を無視しているということになりやしませんか。むずかしい理屈はここで申し上げませんけれども、そういうことに及びませんか。いかがですか。
  58. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは野々山委員、私がこれを変える意思がないと申しましたのは、大筋ではこれでけっこうじゃないかという判断の上に立ってみたわけであります。ただ、それをさらに試験のときにはどうだとか、そういうものをずっと書き出してそれなりにつけ加えさしたらいいじゃないか。規則のまた細則みたいなものになるでございましょう。が、このいま御指摘のことは、すなわちそれぞれ行政府の権限あるものがやたらと押してしまえば、それは国権の最高機関たる国会資料要求として国政審査権というものの発動に基づいて要求しても、それに対してぺたぺた判を押せば出せなくなってしまう、こういうことであろうと思います。その危険性が、これだけ読んだ限りにおいては、先ほどの御議論でも申し上げましたように、心の持ち方で皆無とは言えません、率直に言って。そこは心がまえの問題だろうと思うわけなんです。それだけに私は、資料要求等については従来とも出すべきものはすべてお出しする、そうして、どうしても公開できないものは理事懇談会を開いて閲覧願うとかいうような処置をとってやってきさしたつもりではございます。しかし、いろいろな遺憾な点がそれは途中において、私も各種委員会へ出まして指摘された経験ももとより持っております。  したがって、いまのおっしゃることはよくわかりますが、外務省が申しておりますのは、いわゆる秘密とか極秘とか秘とかいうことに対する各種法律上そういうものが浮き彫りにされた法令をむしろ整理してお出しするということのほうがよかったかもしらぬということになりますと、これはやはり内閣法制局に整理さしてみたほうがいい。私なりにかってな定義づけを私がしておって、基本的にはあくまでも社会通念になると思います。その社会通念がいろんな問題を決定していくことが、率直に言って議会制民主主義の中におけるいわゆる話し合いの過程とかいろんなことで定着しておる点があると思います。  加瀬委員を前に置いてはなはだ失礼でございますが、今次暫定予算というものを御審議ただくに際して、暫定予算とはということをいろいろ議論いたしましたが、昭和三十九年の三月三十日加瀬委員が予算委員会において水田大蔵大臣との間にやりとりをいただいた、これが結局いま定着した一つの社会通念上の暫定予算の性格づけになったというような問題でありますだけに、私は、議論する中で秘密とかいうものに対する概念づけというものは定着していくものがかなり多いのではないか。法律そのものをいろいろ考えてみますと、私も引き出してみましたが、率直に言って、秘密とはという定義があってその基準が定められるというところを、私自身いまのところまだ引き出していない、今日の法制上の文句の中から引き出していくということは、憲法の精神とかいろんなものから出せますものの、明瞭な基準というものがない。だから、外務省資料要求をいただきますよりも、あるいは私どものほうで内閣法制局に命じまして、そういう根拠法規らしきもの、いわゆる場合によってはらしきものでございます、これらを整理して御提示申し上げて御審議の参考に供すればけっこうではなかろうかというような印象を、ただいまお話を承りまして受けました。
  59. 野々山一三

    野々山一三君 結論のことばだけ印象を持ちましたというだけでは、つかんだのかつかまえないのかとてもわからないんでね。若いあなたがそんなばかなこと言ってとぼけたんじゃ困る。あなたみたいにいろいろ学を出られてそういう点を知っていらっしゃるはずの、しかも政府のスポークスマンだとおっしゃる、だから呼んだんです。こうしますと言ったらどうです、しないならしないと。
  60. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いわゆる野々山委員のおっしゃったことに対して私の印象を申し述べましたが、その印象を踏まえてそれなりに整理したものを、私の責任で内閣法制局に作業をさして提出をいたします。
  61. 野々山一三

    野々山一三君 長官のところに、私どもにきている資料がありますか。——ありましたらごらんをいただきたいのですが、ありませんか。ちょっと出してください。これ二ページの内容の問題、あとであれしますけれども、二ページ目のところに、「最近一年間における一般文書の総数、秘文書の件数、割合」、昭和四十七年四月十一日というやつがありますね。これによると、「うち秘文書の件数」、これはあなたのおきめになったと称するその次官会議の二種類に区分するということとどういう関係になりますか。これ一種類ですね。こういううその文書をどうして出されるのですか。うそでしょう、これは。先ほどどなたですか、局長のほうからお話がありましたですね、極秘もあれば、秘もあれば、部外秘もあれば何とかもという、何種類あるのですか。なぜこういううその資料を出すのですか。これはうそじゃないですか。うそかほんとうかということで答えてください、官房長官
  62. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私がいまこの資料を見た限りにおいてですが、いわゆる極秘、秘、部外秘、それを全部寄せたものを俗に秘文書と、こう言っておりますので、この数字は一つ一つを点検しておりませんが、それらをまとめたもので、正しい文書であると、このように思います。
  63. 野々山一三

    野々山一三君 正しいか正しくないかの話は、私はまだ議論していないからお答えただかなくてもいいのです。これは扱い上やられているここに書いてあることばですよ。これを日本じゅう持って歩きましょうか。官房長官日本じゅう持って歩きましょうか。国民全部に聞きましょうか。あなたのあるいは関係局長の言っている秘密とはというのにはこういう種類がありますとかということをちょっと並べた、まだそれは本物じゃないのですけれども、それとあなたの言う総称なら総称とか、かくかくしかじかのものがあって、それを総称すると秘密文書といい、その数はこれこれこういう——これは日本語じゃないでしょう。そういう意味で、うそかうそでないかということを聞いた。むずかしいことを言わぬでもいい。うその書類を出す、うその資料を出したということじゃないですか。
  64. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは先生、いわゆる極秘、秘、部外秘全部を総称した秘文書として件数をあげたものである。だから、これはうそではございませんが、しかし、これを区分して出すだけの誠意はあってしかるべきだったと、こう思います。
  65. 野々山一三

    野々山一三君 これ質問をするから——うそじゃありませんか。かくかくしかじかという、まだほかにもあるのですよ。まだほかにもあるでしょう。機密極秘、秘、取り扱い注意、部外秘と五種類ある。あなたのことばでも三つしかことばがない。何とか局長のことばでも三つしかことばがない。事実五つあるのだから。あるのでしょう、——ないのかね。
  66. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) 私のところは次官会議の決定に従いましてつくっておりますが、極秘と秘だけしかつくっておりません。機密という区分もございますが、機密という区分にしている文書はいまのところ一つもございません。したがって、この秘文書と申しますのは極秘と秘の総称でございます。
  67. 野々山一三

    野々山一三君 総称とか何とかの話の前に、うそだったかどうかを聞いてるんだ。書いてあること、事実と違うでしょう。あんたに聞くけれども、経歴を述べなさい。どういう学校を出て、どういう教育を受けて、どういうあれをして、日本語はどういう勉強をしたか、全部述べなさい。そうじゃないと、こんなことを何べんでもやらなければなりませんよ。ばかげた話でありますが、こうやって議論しなければ、君のように白状しない——白状しないと言うのは悪いけれども、こんなふざけた話がありますか。  官房長官並びに法務大臣に聞きたい。こういうことで、国会を思うのあまりに、質問しちゃいけないという人間に質問させなければならぬようになっている。これで私は倒れるかもしらぬ。こういうばかげたことをやるから、問題が発展するんですよ。政治に信頼を失わせるんだよ。どの党が政権をとるかとらないかは、それは国民の審判でしょう。もとより、大事なことは、国民の信頼を失うようなことをやっているのはそういう官僚諸君ではないのか。適当な表現はそれこそちょっとできぬけれども、あまりにもみじめだよ。あまりにもなめてるよ。あまりにも軽視しているよ。はっきりした両大臣見解を伺いたい。あなた方がそんな単純なことさえ私の納得するだけの答弁ができないならば、直ちに総理大臣の出席を求めます。
  68. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは野々山委員の御指摘、私がまた先ほど申し述べましたように、したがって、国政審査権のある国会については、できるだけ、あらん限りの最大限の資料を出すべきである。こういう背景から申し上げますと、外務省極秘と秘と、それを総称したものの件数で本委員会資料として提出したということは配慮に欠けておったと、率直に私も思います。
  69. 野々山一三

    野々山一三君 この際、いまのお答えがありましたから、その趣旨に従って各種日別に全部出してください。そうしてそれが、これは刑事当局の話によれば、刑法上あるいは法律上罰則によって——保護されるかされないか問題になった事例が、場合によってとか、状況によってとか、ケースによっては極秘であろうとあるいは部外秘であろうとそれとは関係なしに、事実の問題として罰則の適用を受けたとか受けないとかいうことがありますか。それらの事件を全部一ぺん見てみなければ、いまのような態度で——外務省だけをとらえて悪いんですけれども、外務省をして言わしめるような態度で問題になりませんから、私はあらためていま言ったようなことを、今後間違いのないようにするために、資料を出してください。いかがですか。これは出しますか、出しませんか。
  70. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) 極秘、秘の区分をつけまして資料提出いたします。
  71. 野々山一三

    野々山一三君 あなたは極秘、秘と言ったな。ほかにもあるでしょう。官房長官に聞いているのに、あなたが答えるなんて、あなたもえらくなったものですけれども、間違ったことばっかりおっしゃらないでください。官房長官に聞くんですけれども、官房長官いらっしゃる前に——いろんな区分がある、そうしてその区分は、事実とそれから状況によって違うというお話がありましたけれども、それはもうしょせんは、公務員法上からいうならば、百条による秘密ということによって罰せられたりするわけですけれども、罰せられる以前に逮捕されたり、尋問を受けたり、任意出頭を求めたりするというような、何だかわけのわからぬと言っちや悪いけれども、個人にとってはたいへん心配事に及ぶ、人権を侵害すると評したらいい、そういう事態が起こるわけですね。ですから、そういうことを避けなければならない。避けなければならないというか、厳格、客観的に適正でなければならないということを望んでこの問題を問題にしますので、そういう資料を正式に出すと答えていただけますか。
  72. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 外務省につきましては、ただいま官房長からお答えいたしまして、外務省極秘と秘と、二つの区分しかございません。これを提出いたします。それから、名省庁につきましては、実は私は一応はここに持っておるわけでありますが、まだ不正確なものがございますので、整理をして提出をさせます。
  73. 野々山一三

    野々山一三君 それに関連して、この際、一般問題としてあなたに、基準をつくられた当時の副長官として、今日の政府官房長官としてちょっと申し上げておきたいことがあるんですけれども、たとえばこの防衛庁の問題なんかの例をとってみますと、四十二年までは機密極秘というところまではきびしく、そして四十三年になったら秘というところまで及んでたいへんきびしく取り扱っておる。で、現在ではどうかというと、取り扱い注意まではいわゆる秘なんだ、法律上の秘なんだということなんです。  そこで、この際、内容的にちょっと申し上げて、議論になるかもしれませんけれども、申し上げたいと思いますけれども、一例を言いましょう。たとえば防衛庁は、年度見積もりというようなものは全くこれは極秘と称して一切問題にしませんね。どんなことを国会議員が言ったって、これは言えません、ありません、知りませんと、こういうことばで述べた人がいますね、この間沖繩問題で。ありましたね。——等々事実があった、証拠を出した、そうしたら、ニュースソースの関連者が罰則を受ける。こういうことですからこれはたいへんなことなんですよ。とにかく年度見積もりなんというものは、一切これは問題にさせない。それから今度は、四十二年、三年ごろですか、問題になった三矢計画なんというものは、これは極秘といわれて、これも、とても、とても、とても問題にしていた。国会議員だって政治生命をかけて問題にしなければならない。こういう性質のものが、だれの判こできまるのか知りませんけれども、先ほどの話によると、課長以上の諸君が全部それに判こを押せばそれで、極秘、秘という判こを押せば極秘、秘ということでしょうが、審議はできませんね。防衛計画が出たって国会では審議できませんね。感じで言えば、この間の楢崎君の事件のように、だれかがうそだと言えばそれはうそかほんとかという水かけ論をやっておればそれで終わり。国会の権威はまさに国民の前に下落をしていくだけですよ。どんなにおれが勝ったと言ってみたところで、これは理想的な、それはその人の主観ですね。そういうことで問題である。  今度は、四十三年に至って技術研究計画。防衛庁の場合、これは秘ですね。秘に及びましたら一切これは資料要求したって出さないでしょうし、議論の対象にしないでしょう。めんどうくさいから中身のことは言いませんよ。言うとまた、それこそ楢崎君じゃないが、横路君じゃないけれども、あなた方とまたやったって、出すとか出さないとかいうことになるのでしょうからね。そういうようなことです。さらには、今度は、現在ではどういうふうになるかというと、取り扱い注意という年度業務計画。年度業務計画というものは、全部これは秘なんだということで一切資料を出さないでおります。違いますか。いまの事実について官房長官見解を聞きたい。
  74. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私も実は各省のそれぞれの事実についてはさだかに存じておりません。率直に申しまして、それぞれの事情はあるかと思います。基本的には私が申し上げましたように、国政審査権に対しあらん限りの御協力を申し上げるということを徹底さすべきである。防衛庁に存在しております書類の全般等について、また野々山委員の御指摘に対してお答えするだけの自信がございませんので、基本的な考え方を述べるにとどめさしていただきます。
  75. 野々山一三

    野々山一三君 問題が二つあるわけですよ。一つは、秘ということについて非常にかってな解釈があって、かってな取り扱いがあって、だれかが判こを押せば秘というものになって、それでそれが漏れるし、漏らしたら罰則を受ける、懲戒戒告を受ける、こういう身分上の問題。それから内容的に言うならば、たいへんな重大な問題ですね。事業計画だの技術研究計画だの何だのというのは、これはたいへんな問題でしょう。きょうは中身の問題に触れるときじゃないですからやめますけれども、たとえば何億というジェット機をつくって格納庫の中に何年もほうっておいても、それでもこれは、防衛計画がいいか悪いかといったら、そういう事実があるかどうかどこかへ行って調べてこなければならない。あなた方には警察権力もあるだろうし、何でもあるでしょう。国会議員にはそういう調査権という抽象的な表現があったって、実際に全国にわたってそういう事実を調べてあなた方と対等にけんかする権利がない。権利というか条件がない。それならば国会法全体を変えて内閣総理大臣と同じような権限を持っている機関国会議員一人一人に与えてもらいたいという問題にまで及ぶ性質の問題でしょう。そうでしょう。そして三番目には、年度別にだんだん、だんだんとべたべたと判こを押す。判こがふえていく。そして中身が厳重にふたをされる、こういうことなんですね。  あらためて聞きますが、よく知らないからいま答えられないと言うなら、いまここで答えられないと言うのに答えろとは言えないが、本来答えるべきですよ。あなたはテレビの前に行くと、おれは政府のスポークスマンだと言う。国会に来ると知りませんと言うんだ。そうしていわく——あなたはある意味では、私はこの間テレビを聞いていてなるほどなと思ったけれども、政府のスポークスマンである官房長官であると同時に国会議員としてということばを使った。そうでしょう。だから、二つ意味で私は聞くのだ、官房長官という意味国会議員としてという意味で。あなた方には、行政権というカテゴリーの中に機関があって、いろんなものを調べたり、ふたをしたり、隠したりという能力があるけれども、われわれにはない。そしてそれを、秘密ということばを使うのだ。全部を総称ということばでごまかしている。それが三権分立ということになるのかね。対等なわれわれの国政に関する調査権なり何なりという憲法五十一条の権利を一〇〇%行使して、あなたが先ほど一般論として答弁された、国益とは最終的には国民だ、それを代表しているのは国会議員だ、そこから選ばれたのが行政権者である総理大臣だ、選挙であとはものを聞くよりしようがない、そういう小学生がつづり方を書いたようなことばで、さも百点をとれるようなことばなんだけれども、中身からいったら、私に言わせるとたいへんなこれは国会自身を——あなた自身が国会議員だとみずからテレビを通して国民の前で言ったのだ、みずからを否定する、そういうことに通じはしませんか。だから私は、あえてこの問題について、あらためてスポークスマンであるとおっしゃる官房長官として、国会議員として、こういうふうに秘密がどんどん、どんどんと区分化されていって、中身がいま指摘をしたように変化をしていってふたをされちゃっているという事実を一ぺん明らかにしたらいいと思う。そして第二に、あらためて聞くことは、この中では四十二年、四十三年ということですから、これは事実全部、これはもうおそらく公にしたってかまわないことだろうと思う。先ほどの採用試験の話じゃないけれどもね、などあるから、各省庁に及んでかってに極秘と言ったり秘密と言ったり何とか言ったものだけれども、いまは時期、条件が云々であるからというようなものでもいいから、それだけじゃ私も不満なんだけれども、せめてそれぐらいの事実をひとつここで資料として出しなさい。私がもともと要求しているのは、何十万通か知らないけれども、あるものを数字を並べて全部出しなさい。それは、秘密を出せというのじゃないのです。立法府たる国会議員が、国民の意思を代表して国の動向に対していいか悪いかということを審判する権限に基づいて要求しておるのですからね、法律的な表現であるかどうかは別として。その趣旨をとらえる、あなた方がおとらえになるならここに出したらいいのです。これは秘密会でやるかどうかということは、私は委員長に言ったわけです、秘密会でもよろしい。秘密会というものがいいか悪いかの議論もありますが、この際秘密会でもいい、それを堂々と出しなさい。そのことについていますぐ返事をしていただきたい、その二つのことについて。
  76. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) まず最初の問題でありますが、私も特にたびたび放送討論会等で申し述べておりますのは、先般の沖繩案件審議の際、いわば横路委員の手によって明らかにされました、交渉の過程についての秘密電報というようなものが経過にあったかなかったか、こういう質問に対しまして、知りません、ありませんと答えたと、こういう問題につきまして、今日政府といたしましては、総理みずからむしろ堂々と言えませんとお答えをすべきものであったと、その限りにおいては、国会に対してそれなりの責任を感じておるという趣旨の弁明があり、また、福田外務大臣からもそれぞれ遺憾の意が表されておるところであります。  私はその問題をとらまえて、その問題を念頭に置きながら答えておりますことは、さようしからば、国会においてそのことは言えませんという、政府側の答弁というのが、今日そこまで言えませんという答弁が言えなければ、それはわかったというような状態に結びつくところまで定着していないではなかろうか、私自身が国会議員として考えるのは。だから、むしろいま野々山委員御指摘になりました、もとより会議はすべて公開が原則でございますものの、憲法五十七条でございましたか、私頭が悪いので忘れましたが、また国会法にも書かれてあるごとく、秘密会とか秘密理事会というようなものの活用というものがある時期必要ではなかろうかと、こういう趣旨の御発言を申し上げたわけであります。したがって、そういう受け皿をもつくって、なお政府としては国政審査権に対して誠心誠意応ずべきである、こういう趣旨の発言であったわけであります。  それから、ただいまの第二番目の問題につきましては、後刻、いわゆる全部、まあ率直に申しまして、前尾法務大臣が隣りにいらっしゃいますが、法務省は、人秘書類等を含めて四十六年では三十三件とか、あるいは総理府は、沖繩への現金輸送を発表いたしましたが、あれが発表になったらゼロでありますとか、あるいは公取が、比較的多く一万九千八百七十件もあるじゃないか、これは独禁法の規定によって秘を義務づけられておる文書だけであるというようなことを、一つ一つこれはまだ未熟な資料でございますけれども、御納得いただける限りの努力をして国会提出し、御説明申し上げてもよろしい、このように私は思っております。ただ、いま野々山委員御指摘の防衛庁に限ってのいろいろなやつをずっと整理してやるというところまでは私はまだ自信がございませんので、いま御提案のありました秘密会と秘密理事会というような御提案等も踏まえまして、できる限りのものは資料として御提出する、こういう考え方であります。
  77. 野々山一三

    野々山一三君 もう最後ですけれども、この申し合わせですか、「秘密保全の必要が高く、その漏洩が国の安全、利益に損害を与えるおそれのあるもの」——非常に抽象的です。で、秘密とは何かということを、少なくとも国会——これはたとえば大学の入学試験問題を送り届ける場合、それは試験前に漏洩するわけにいきません。私もそれはそう思います。秘密かどうかは別として、それを漏らすということはこれは良識的じゃない。それはそのとおりです。そういうようなものは、もう極端なものだから、それはそういうものとして言っちゃ悪いですけれどもね。つまり国益、国損というものを定義づける。そして国会が、憲法五十一条でいう定めに基づいて立法府としての国会政府に対してものを言う調査する、そういう原則といいますか、原則ということばじゃよくないと思いますが、けじめですか、筋を定めないと残念ながら今日のような議論になりますね。  たとえばこの間の横路君の事件お話などを見てみると、判こを押した書類を一、二の三でポケットからぽっと出した。そうしなければ——これが本物であったかなかったかということを言わないで、不適当な表現でしたというようなことばで逃げている。そんなばかなことはないですよ。そんなことなら国会議員なんというものは正直言ってまるっきり手足をしばられて、口をしばられて、あとは音を並べるやつに、うまくものを言うこと以外に何もないという極論まで出てくるのです。わかるでしょう、私の言うこと。だから、それは憲法に定める権限、立法府たる国会の権限、国会議員の調査権、国会調査権というものが何であるか、どこにまで及ぶか、どういう状況を通して何をとらえるかということについて明らかにしなければ、これはこの問題の解決は得られないと私は考えます。いかがでしょう。  あえてもう少し補足しますけれども、疑いだって、この疑いというやつもたいへんやっかいな文言でして、疑いがあるといえば幾らでも、これは警察当局もいらっしゃるけれども、疑いがあるというと何でもつかまっちゃうわけですね。その間、無罪になったかならなかったというためには、裁判だったら十年もかかっちゃう。その間、犯罪人的に、社会的地位でその人はたいへんな損失をこうむる。私もそういう事件がありましたよ、損失をこうむる。公訴棄却で私は何でもなかったけれども、一年半裁判所にしょっちゅう通うことになった。拘置所に入れられました、疑いというだけで。しかも、検察官が予断を得せしめるような起訴状をつくったというゆえをもって、だけでもって私は一年半裁判にかかりました。何十万円という金を使いました。だれも補償してくれません。私はもちろん公訴棄却ですから、罪もくそもなかった、その間。しかし決定的な私は損失を受けました。——てなことになるわけですね。  ですから、基本的人権に及んでまで、あるいは国政権そのものにまで及んで、この問題に対するプリンシプルというものをきめなければならない。これは私、非常に残念ですよ。あなたも国会議員、前尾さんも国会議員である、私も国会議員である。国会議員同士が、幸いか不幸か知りませんけれども、政権の何とかという、閣僚というのですか、大臣とかという、そういうものになったかならないかによって、あなたの配下がなすことは、みんな私どもに制限を加えるんですよ。さきに、ちょっと変なことを言った人がおやめになりましたね。この間、何べんか、何人かおやめになりましたね。これは、変なことを言うからだと思います、余分な話ですけれども。  ですから、秘密ということば法律の中にぽつんと二字だけある。それがどのようにでも運用されるということになればたいへんです。ですから、先ほど答えのように、明確な行為になるような事実を素材として制限——制限というか、基準を添えた資料を出されるということですから、それは、出たものを見て私はまた問題に移りますが、そのあとの、必要が高くというのは、これはもう全くおかしなものです。必要というのは、だれが必要ですか。竹下登衆議院議員が必要なんですか。官房長官が必要なんですか。野々山一三が必要なんですか。必要だと言えばそれでおしまい。漏洩が国の云々、私は、そういう行政上の問題行政権者の取りきめになった問題ですからあなた方の問題ですが、あなた方の、あなたや前尾法務大臣——よりもむしろ部長だ、局長だ、課長だという諸君が判こを押したらそれでおしまいおしまいと言っちゃ悪いけれども、それが秘密極秘、何とかということになって問題になるということじゃ困るから、それを土台にして国政の審議権を確保する、確保というか保障する、憲法上保障するということをあなた方はおっしゃるわけですから、事実として、国会に対して誓約書を出すというのはおかしいけれども、こうしますということを保障すべきじゃないでしょうか。それでなければ、この秘密問題及び機密問題——と言いましょう、きょうは。問題の中身は、いろいろ申し上げました問題というものの解決は得られない。そういう資料をお出し願えますか。
  78. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 御趣旨のすべてに沿い得るかどうかわかりませんけれども、できるだけの努力をしたいと思っております。
  79. 野々山一三

    野々山一三君 予定しておった時間よりも非常に長くなってしまったんで、まだ私はこの種の中身の問題についてはほとんど触れておりませんので、あらためて、関係大臣以下関係局長も出てもらって、事実についてさらに資料要求をして、審議をよくしてもらわないと、どうも、おれがいなかったら答えられないというような、そんないいかげんな資料を出されるようなことじゃ困るので、そういう機会を与えてもらいたい。だから、ここでいま質問を保留して、中断をしておきたいと思います。いかがでしょうか。——よろしい。  それじゃ、そのこと、大臣、長官、あとまだ質問を保留いたしておきますから、また別の機会に、必ずいまの三つ、四つお約束いただいたものはそのときまでに資料提出していただいて、そうしてこの問題を続けたいと思います。  それから、あらためて申し上げておきますが、非常に遺憾なことは、あなた長官ですから申し上げるのですけれども、私は何べんも言いましたけれども、この機密漏洩——ということばがいいかどうかしれませんが、機密漏洩としての例の蓮見君及び西山君の問題に関する問題に質問があった際、関連として秘密全体について——その事件だけじゃないですよ、その省だけじゃないですよ、政府関係機関機密全体というものについてその事実を出してくれということで問題が始まったものなんですから、関係各省庁全部それを示してください、私は私なりに調べますけれども。それが一つ。  それから、最後に聞きたい。私は先ほどくどくど言ったように、あなた方は行政権者として行政機構をお持ちですが、国会議員には残念ながら、国政審議権というものはあっても、あるいは調査権というものはあっても、手と足がくっついているだけで、秘書が二人しかいないのですよ。これじゃ問題の解決ができませんね。国会法全体を変えるか、あるいはそれにかわるべきものとして、言われたものについてはかく正直に全部出しますということによって、立法府たる条件を保障するというようにするか、いろいろあるでしょうがね、とりあえずそのことだけひとつ最後に聞いておいて、いまの質問を中断したい、保留したいと思います。お答えただきたいと思います。
  80. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私も国会議員であります。たまたま今日内閣官房長官として行政府の一員であると、こういうだけの者であります。したがいまして、国会名実ともに国権の最高機関であるべきであるし、私もその一員として、そういう自覚と誇りのもとにその構成員の一人としておりたい、こういうかねてからの念願であります。と同時に、いわゆる、ただいま申されました国政調査権の問題につきましては、現実、行政府にある者が、手足をよけいに持ち、実態に即応しておるだけに、資料もたくさんに持っております。そういうものを、三権分立のたてまえからして、国権の最高機関たる国会に、できるだけ懇切丁寧に提供することによって、行政の筋がゆがまないように厳重な監視を受けたい、また私も、逆な意味において、国会議員としてそういう姿勢を貫きたい、このように思っております。
  81. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) 本件に対する質疑は本日はこの程度といたします。     —————————————
  82. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) 次に火炎びん使用等処罰に関する法律案を議題といたします。  前回に引き続き、これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  83. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) 速記を起こして。
  84. 野々山一三

    野々山一三君 先般の審議の際に加瀬委員から出た——私ちょっと不在だったんで正確ではありませんけれども、この火炎びんに関する法律を議員立法として出されたわけですが、どうも記録によりますと、実際はこれは議員がつくったわけじゃないんで、全くこれは取り締まり当局がつくったわけなんですね。それを議員立法ということでいっておるのは全く議会としては不見識な話なんですね。そんな内容が全部記録にあらわれていますので非常に残念なことです。これはひとつこういうことでこの種の問題を扱うことは、この間うちの皆さん質問を聞いておりまして、若い世代の過激派的行動派の諸君がこういうものを使うことによって、人命、財産に損害を与えるということであるから、これを特別の措置として立法するといわれるのですけれども、こういうようなものを実際は取り締まり当局が立案してですね、そうしてそれを議員立法と称してやるというようなことはたいへん不幸なことだ。本来、国会は立法機関ですから、立法府の諸君がたくさん立法案を出して決定するということは、たてまえとしていいことだと思います。けども、この問題については、どうもたいへんうまくないという感じがするんです。この点について見解を伺いたいことが第一点。  それから第二は、関係当局の答弁の中にもありましたが、この種のものを罰則を出してきめるというのだけれども、法制審議会にはかるとたいへん時間がかかってしまって、立法化された時分に、法律効果があがる時分には、事件が山場が越えちゃったとか、状況が適切でなかったとかいうおそれがあるので、立法府が、つまり議員が提案するんだということになったとおっしゃり、まあそれを受けて立ったのかどうか知りません、正確じゃありませんが、法制審議会の制度そのものについて、大臣が会長であることについてもよくないし、法制審議会自身の改組も必要だし、それからたいへん長い時間にわたって刑訴法なんか、刑法なんか審議されていて、まあ言うならば湯がさめた時分にお茶を飲むといったようなことを繰り返しているようなかっこうなんだから改組したいという御趣旨のようなことでしたがね。その結果、私は心配するのは、法制審議会の構成員諸君がどういうふうに考えるだろうかということが非常にまたまた問題になる危険性がある。で、政府は各種の審議会なり関係機関をたくさん持っていらっしゃる。たとえば行政管理機構の問題——まあこれはよそのことですけれども——なんかでも、どんな勧告をしたってちょっと都合の悪いものはかってに判断してさっさっとやるというので、その委員諸君も情熱がわいたりわかなかったり。私もかつてそういう関係機関審議委員をたくさんやりました。どんな答申を出しましても、御都合主義でさっさっと選択されるんです。だから多くの人は非常に情熱を失っちゃう。そういうことのために——と言っちゃ悪いんですけれども、そういうこともからんで、なかなか審議会の審議促進ということにならない。そのために今度のこの法律というものはどうも特別刑罰法ということですがね。そういうことなんですけれども、そういうことになると、そっちの法制審議会との兼ね合いにおいて大臣のお答えになったことが非常に大きくマスコミの俎上にのぼっております。いろいろ問題を残すのじゃないかと思いますが、どういうふうに処理をされるおつもりなんだろうかということが第二の問題です。  それから第三に、これは提案の先生に伺いたいのですけれども、これはあれですか、刑罰規定としての、提案理由書によると、冒頭にいう特別の処罰規定を新設するということです。処罰をすることが目的だとしか解されないわけですね。私は、この種の問題は、佐々木委員からもこの間質問され、また資料も出ていますように、非常に山がありますね、非常に時期によってね。昭和三十年前ごろと、それからちょっと引っ込んで、また出っ張ったりしたり、また最近急激にふえてきている。こういうことを考えてみますと、この法律は時限立法にするというならまたこの特別処罰規定としての価値の意味を感ずるのです。そうでないならば、もっと刑法そのものの中で補足できないからこれをやるというなら、刑法そのものの中でとらえるべきだと思います。  それからもっと積極的な意味で、この種の事件はいいことじゃないので、こういう法律が、まあ衆議院のほうでは通ってきたようですけれども、これは立案者の諸君にも聞きたいのです。それから提案者の方にも聞きたいのですけれども、こういう火炎びんをつくり、使い、そして人命財産に損害を与える、そういうようなことが起こらないようにという予防措置的観点というものは、この提案理由説明の中にも全然触れられてないわけですね。それは一体どういう意味なのか。  それから法三章ということばがありますが、まさにこれは法三章でして、これほど明白な法三章というものはない。私ども子供の時分から教えられた法三章というのですが、なぜこういう法律をつくってという目的も何にもない。定義から始まって、ただ定義だけ。これは罰するということが、これは紙に書いてあるから特別罰則規定を設けるということなんだなあと、こういうものを持っているとわかるんですが、持っていないとわからない。私もこれを見て初めてわかるのですけれどもね。そこらの趣旨が明白でない。だから、率直に言って、私の感じからいうと、こういう火炎びん使用等処罰に関する法律というものをつくるならば、目的がはっきりしていること。それから他の刑法との関係刑罰諸法規との関係、取り締しまり諸法規との関係が明白であること。そして、こういうことを抑圧するという——抑圧って、発生しないようにするという法律目的ですね。そういうものが当然記されてしかるべきで、それをやるとまた次に問題になりますけれども、その点は次の機会に質問することにいたします。そこののところだけ、基本的な四点について伺っておきます。
  85. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 第一点の、なぜ政府提案にしなかったかということでありますが、実は御承知のように、最近火炎びんの使用のやり方といいますか、戦略が非常に変わって残酷な犯罪が行なわれるというので、昨年になりまして急に火炎びん法をつくるべきでないかといういろいろな各方面の声があったわけであります。そこで、率直に申しまして、党側もぜひ法案をつくりたいと、われわれも、政府としましてつくるべきではなかろうかということであったわけであります。ところが御承知のように、法務省としましてもいろんな問題をかかえておりますし、また法制審議会のスピードで考えますと、急場にはなかなか間に合わない。むしろ党側に協力をしていくべきでなかろうか。やはり早く法案をぜひ通常国会で通していただくというのでなければ世間が納得しないんではなかろうか。そういうふうな判断のもとに、党側でおつくりになる案に法務省として全面的協力をする、こういう判断をいたしたわけであります。決して、私は何も法制審議会を回避するとかなんとかいう意味では全然ありませんでした。その点で、ただ法制審議会のことから考えますと、なかなか相当な期間がかかるということだけは現実であります。そういうようなところから議員提案として進行してきたと、こういうことであります。  それから第二点の、きのういろいろ法制審議会の問題に触れたのでありますが、実は私法務省に来まして非常にふしぎに思ったことは、基本的な法律がみんなかたかなである、二十五年たった現在においてまだかたかなの法律が、ことに基本法がかたかなであるということについて非常な疑問を持ったわけであります。そこで実は刑法の草案につきましてもよほど促進しないと、これから民法も全部変えていく、あるいは商法も全部ひらがなの新しい法律に直していくと、いまのスピードで考えて——私はよく明治時代の立法を考えるんであります。明治が四十五年間であります。しかしあの間にみんな法律がつくられた。五十年の間に全部がひらがなになるであろうかという疑問を非常に持っておるのであります。そこで、法制審議会について何かもっと審議をどんどん進める。ことに明治時代には御承知のように、草案ができますと、おそらく国会審議は非常に短かった。ところが現在で考えますと、国会に出してから相当な審議期間が私必要だと思う。でありまするから、何かもっともっと促進する。その点について法務省として、率直に言ってそういう自覚がないじゃないか。だから法務省の機構を直していく、あるいは法制審議会も根本的に考え直していかなきゃならぬ問題がある、そういうことを平素思っておりました。そういうのが昨日の答弁にはしなくも出てきたんだと思います。  こういう点は根本的に私自身よく考えてみたいと思っておる次第であります。決して私は法制審議会を無用なものだなんて絶対に考えておるわけじゃない。重要視するから、これをもっと率直に言いますと、いろいろ問題はぐるぐる回しでなかなかいま法律化が得られないということに帰着するかもわかりません。しかし、何かやらなけりゃ、このままでいきますと、まあ私だけじゃなしに存外子供の代までひらがなの基本法を読まないということになってはこれはいかぬと、かように考えておるわけであります。  それから、予防の問題でありますが、やはりこの火炎びん法は、未遂罪あるいは所持しておる者を罰する、そういう意味から予防に役だつものだ、かように考えておるわけであります。
  86. 大竹太郎

    衆議院議員(大竹太郎君) 提案者のほうに御質問の点が二点あったかと思いますが、なぜ特別法にしたかという問題と、いま一つはなぜ時限立法にしなかったかという二つではなかったかと思うわけでありますが、こまかい点を承知してない面もありますから、法務省のその係の方からお聞き取りをいただきたいと思いますが、この爆発物取締規則ということで爆発物は処罰されるわけになっておりますが、判例によりますと、この火炎ぴんというものは爆発物に入らないという見解が最高裁のほうから出ておるそうでありまして、記述あるいは内容について法務省のほうからお聞き取りをいただきたいと思いますが、そういうことからいたしまして、御承知のように、まあ緊急にこういう立法が必要ではないかという観点に立ちまして特別法、そうしてまあできるだけ早くつくるということで時限立法ということにいたさなかったわけでございます。  それから、この目的とかその他、まあこの法律自身では明らかでないというお話でございますが、まあ最近の立法その他では目的その他を明白にしてあるものも非常に多くなっているようでございますが、御承知のように、この刑罰法規は一般の刑法と同じことに特別予防としていわゆる犯人を処罰してまあ二度犯させないため、そうしてまたこういうものが相当重い処罰をされるということで一般的予防をもねらっているということでございますので、御承知をいただきたいと思います。  また、この時限立法になぜしなかったかという問題でございますが、これも審議の過程におきまして出た問題でございますが、御承知のように、この火炎ぴんというものはほかに使用の道がなくて、しかも非常に危険な凶器であるというわけでございまして、この種の行為がある一定の年限が過ぎればいわゆる反社会的な行為でなくなるという筋のものではないわけでございますので、これはやはり時限立法にはなじまない問題だと、こう私どもも考えましたし、また非常にこの審議の過程でそのことも問題になりましたので参考人においでをいただきました。藤木東大教授、それから専修の平出教授、このお二人にもたしかこの時限立法にするべきかどうかという御意見もお聞きしましたが、たしか両教授ともこれはやはり時限立法になじまないだろうという御意見でございました。そういうような点からいたしまして時限立法にしなかったというわけでございますので御了承いただきたいと思います。
  87. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) ただいまの大竹提案者の御答弁につきまして、技術的なこまかい点を多少補足さしていただきたいと存じます。  その一点は、今回の法案に目的規定がないのはどうしたかという点でございます。これはただいま大竹先生からも御質問がございましたけれども、純粋な刑罰法規の場合には目的を書かないのがむしろ通例でございます。一般の行政法規の場合には、御指摘のように目的が書かれるのが通例でございますが、刑罰法規というのは、先ほどの御答弁にございましたように、刑罰によって刑事責任を問い、特別予防と一般予防を期するということはもう明らかなことでございますので、むしろ書かないのが通例でございます。一昨年のいわゆるハイジャック法におきましても、この目的規定は規定されておりません。  それから第二点は、刑法で取り組まないかどうかという点でございますが、この点につきましては、当初、法制審議会での、刑事法特別部会で刑法の全面改正を調査審議いたしておったわけでございますが、その過程におきまして、この要否が検討されたわけでございます。この点につきましては、この調査検討の際の参考案として提出されておりました改正刑法準備草案というのがございます。その第百八十六条第二項には、一応、火炎ぴんというものを対象にいたしまして、「爆発物に類する破壊力を有する物を使用した者は、十年以下の懲役又は禁固に処する。」というような考え方もあったわけでございます。ところで、こういう文言になりますと、これは火炎ぴんというものを、一応、頭の中に置いた規定でございますけれども、それだけにはとどまらない。「爆発物に類する破壊力を有する物」というのは、限定としてはたいへんしぼりがかかっていないということで、火炎びんだけを目的にするならば、火炎ぴんというものは特別法でむしろ規定すべきじゃなかろうかと。刑法の規定というものは、ある程度包括的な規定でなければならないというような考え方が支配的になりまして、この審議の過程におきましては、火炎びんに対する処罰を刑法の規定には取り組まないというような意思決定ができた次第でございます。
  88. 野々山一三

    野々山一三君 委員長、長くなりますから保留さしていただきたいと思います。
  89. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時三十二分休憩      —————・—————    午後一時四十二分開会
  90. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  午前に引き続き、火炎びん使用等処罰に関する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  91. 松井誠

    松井誠君 この法律案についていろいろとお尋ねをいたしたいわけでありますが、私はあとで理由は述べますけれども、この法律案そのものよりも、むしろこの法律案の周辺といいますか、そういうところにこそ問題があると思いまして、そのことを中心にしばらくお尋ねをいたしたいと思います。  最初に、この法律案が立案された経過についてお尋ねをしたいと思うのでありますが、具体的に申し上げますと、衆議院の法務委員会の議事録を拝見しましたところが、この法律案というのは、もともと政府——警察庁か法務省かわかりませんけれども——そのたたき台として出してきたものを一言一句の修正もなしに原案として提案をされておるということを、高橋英吉さんでしたか、たいへん正直に言っておられるわけであります。この事実そのものに間違いがないかどうか。この問題は、あるいは前の委員からお尋ねがあったかもわかりませんが、あらためて私からもお尋ねをしたいと思います。
  92. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ちょっとその事実はそういう経過と私は考えていないんです、実は。昨年の十一月ごろだったと思います。例の松本楼、それから警察官の、あれは神山でございましたか、あそこで殺傷されましたですね。それで私自身も、これは火炎びん法案をつくらなきゃいかぬだろうということを考えまして、刑事局長に何かうまい法案を考えるべきだということを申して研究しておりました。片一方、党でも早う火炎びん法をつくろうじゃないかと、こういう話がありました。そこでまあ両方あったわけでありますが、率直に申しまして、私はやはり今通常国会に通さなければこれはとても一般的な要望にこたえられぬということを考えたわけでありますが、十二月に入りまして、いろいろいままでの事情を考えてまいりますと、これはとてもなかなか、こっちが政府提案でいくのでは今国会には間に合わないんじゃないか。一方、党のほうでもいろいろとお考えのようでありましたから、それにつきましては党に協力をして、党で出してもらうか、それからわれわれが間に合わなくても政府提案でいくべきかということで迷ったわけなんです。しかし、今国会にやっぱり提出するというんでなければ一般市民の要望にこたえられぬのではなかろうかというので、むしろこの際は党に協力して、われわれの法務省としてできるだけの知恵を出していくべきだと、そういう判断のもとに党にいろんな案を考えて行ったわけであります。  実はずいぶんまた法制審議会の問題が出てくるんでありますが、率直に申しますと、来年の通常国会には私はどうしても刑法の改正案を出していかなきゃならぬ。で、昨年の十一月に、やっと小委員会ができた。それで考えますと、まあいま法務省のいろんな職務のことを考えますと、なかなか来年の通常国会に刑法を提出するということがはたして可能であろうかどうかという心配なんです。これは刑法の改正を出すのにつきましては、第一、監獄法の新しい法律も一出さなきゃなりません。そうしていきますためには、よほど法制審議会にも急いでもらわなきゃならぬ。そうすると、ここで二月なり三月なり、こういう火炎びん法案で時間をとっておると、刑法も間に合わぬようなことになり、火炎びんも間に合わぬというようなことになりはしないか、そういう心配から結局党の方からぜひ出そうと、こういうことでありました。それでおまかせしたわけなんです。いきさつはそんなふうに私は考えております。
  93. 松井誠

    松井誠君 まあいきさつよりも、前に私がお尋ねをしたのは、内容政府がたたき台として出したものがそのまま出ているかどうかというお尋ねだったんです。それはそのとおりですね。
  94. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 大体において同じものです。出しましたあれでいろいろ党で審議されましたが、結局、まあ一応は同じ案でいこうじゃないかということになったように聞いております。これは刑事局長が持って行ったわけですから、そのときのみんなの話はどうか知りませんか……。
  95. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) 大臣の命によりまして、いわゆる火炎びん法案のたたき台を十分警察とも打ち合わせまして、法務省の考え方をまとめて自由民主党に提出したわけでございます。これは昨年の十二月でございますが、そして昨年の十二月のたしか三十日と思いますが、高橋英吉議員外数名の方々の議員提出の法案が出たわけでございますが、その段階におきましては、私どもが、いろいろ途中では御審議願いましたけれども、最終的には私どもがたたき台として出したものと同じ内容のものが高橋先生ほかの先生方から提案されたということになっております。
  96. 松井誠

    松井誠君 そこでひとつお尋ねをしたいのは、いま大臣が申されましたけれども、政府提案ですと時間がかかる、それは法制審議会にかけなければならぬからだと、こういうことですね。法制審議会にかければ時間がかかるというのはもちろん当然のことでありますけれども、しかしほんとうに緊急を要するものかどうかというような判断も法制審議会では当然私はやると思うんです。これはほんとうに急を要するものであると思えば、それなりの立案、審議の措置をとると思う。何でもかんでも法律案が刑法改正案のようにゆっくりやるというだけではおそらくはないだろうと思う。しかし緊急を要するかどうか、あるいはほんとうに必要かどうかという判断までが法制審議会の自主的な判断にゆだねられておるとすれば、それまで含めてやはり法制審議会にかけるというのが私は当然じゃないか。緊急だという政府の判断が何よりも優先をして立法をするということが、それで一体いいのかどうか、法制審議会を設けた趣旨からいって一体正しいのかどうか、大臣いかがですか。
  97. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 政府が提案するならこれは当然法制審議会にかけなければなりませんし、それは一番常道であると思います。ただ党として議員立法につきましては、私はただいまお話のように法制審議会を回避したというだけでそういうようなことを考えたんじゃないかというような問いでありますが、これは党としてまあ必要性ということについて、自民党内の党員諸君も、これは早う出して早く通せという声が高いわけでありまするから、そういうことでいったほうが早いことは間違いないということでありまして、でありまするから、まあ今国会に提案し、成立させるということになると、私はやはり議員立法でおやりくださるということ以外にないと思っておりました。
  98. 松井誠

    松井誠君 大臣は、大臣という立場と自民党の党員という立場をわざわざ意識的にこんがらがせて御答弁されているから話がわかりにくくなってしまう。最初大臣の発想というのは、法務省としてはこれは何とかしなければならぬという発想だったと思う。あとから議事録を読んでみればわかりますけれども、自民党でも同じような考えが出てきたというような言われ方をしたところをみると、最初の発想は法務省としての発想であったわけです。それを途中から自民党の党員としての態度のように問題をすりかえられた議論をするからわかりにくくなってしまう。なぜあなたがそういうことを言われるかというと、私はこの次に質問しようとしたことを大臣は先取りされましたけれども、法制審議会の審議を回避したのじゃないか、そういう質問が出てくることをおそれて政府としての立場というものを途中で消してしまいましたけれども、どう消そうと実際はそうです。ですから、私が最初に聞いた、実際上は政府が立案をしたものを党の立案という形で出してきたという経過というものは実はそこから出てきている。  そこでお伺いしますけれども、法制審議会はどうしても時間がかかる、そうすると時間がかかるものは法制審議会にはかけられない、一般的にいって。そういういわば法務省の仕組みなんですか。
  99. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 決してそういうふうには考えませんが、現実はそうなっておるということでありまして、それはまた先ほどお話にもありましたが、党で早く火炎びん法案をつくらなければということと同時だったわけです、正直なところ、これは。期せずしてあの松本楼事件でありましたか、神山事件であったか、あの直後みんなずっとだれしもおそらく思ったろうと思います。でありまするから、いずれにしましても法務省としての案を当然つくらなければならぬということで非常に急がして、案だけとにかく、どういうふうに取り扱うものかは別として、とにかく案をつくってみろということで出発したわけです。
  100. 松井誠

    松井誠君 私がお聞きしたのは、急ぐやつはこれから法制審議会にかけないかというお尋ねなんです。
  101. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) その考えでありません。それはもうもちろん、私実は法制審議会についても、昨日いろんなことを申したので、いろいろ御議論があると思うのです。だからかけないとか、そういうような考えは毛頭持っておりません。これはもうただ私一番困りますのは、大臣が法制審議会の会長でありながら、大臣が一回も出られないというところに非常な私疑問を持っておりますから、国会がありますともう法制審議会に出るというわけには全然いかないというような状況でございまして、ことに招集いたしますのにはやはりもう早くから通知をして、一カ月前に招集するというくらいでなければなかなかおそろいにならぬというような状況でありまするから、そういう点でいろいろ私みずからも矛盾を感じてはおるわけです。
  102. 松井誠

    松井誠君 ハイジャックに関する法律ができましたね、あのときも法制審議会にかけたんでしょう。
  103. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) これはかけたわけです。
  104. 松井誠

    松井誠君 あのときは大体どれくらいで立案が完成しましたか。
  105. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) 立案の完成でございますか、立案を命ぜられましてから一応の素案ができますまでは大体一週間ばかりあったかと思います。これが事務当局の案をつくる検討過程でございました。
  106. 松井誠

    松井誠君 完成……。
  107. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) 事務当局案の完成は約一週間くらいでございました。
  108. 松井誠

    松井誠君 法制審議会を通ったのはどれくらいかかりましたか。
  109. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) これは法制審議会に急遽諮問をしていただきまして、法制審議会の総会が最初にございます。そうして刑事法特別部会におろされたわけでございます。刑事法特別部会におきましてまた審議が一回ございまして、その結果をさらにもう一度次の総会に部会長から報告される、さらに審議が行なわれたわけでございまして、ハイジャック法案の場合には、法制審議会は合計三回行なわれておると考えております。
  110. 松井誠

    松井誠君 日数は……。
  111. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) これは急遽諮問ということで急いでいただきまして、五日間であったと思います。
  112. 松井誠

    松井誠君 今度の場合、この火炎びん法案というものを法制審議会にかけるとしたら審議期間はどのくらい必要かと思われましたか。
  113. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) 全く事務当局の立場での考え方でございますけれども、この火炎びん法案はハイジャック法案よりは相当御審議が手間取る法案であろうというふうにそれは考えておりました。具体的に申しますと、最初と最後にはどうしても法制審議会の総会がございますから、途中で部会というのがあるわけでございますが、部会はとうていこれは一回で済まないということで、最小うまくいって部会が二回かかる、御審議が手間取りますと、部会が三回くらいはかかったろうということに予想いたしておりました。
  114. 松井誠

    松井誠君 期間について……。
  115. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) そういたしますと、先ほど大臣の御答弁の中にもございましたように、十二月の初めといいますか、十一月十九日の事件が起きましてから急遽事務当局としてはたたき台をつくったわけでございまして、たたき台が完成いたしましたのが十二月の初めでございました。そういたしますと、それから諮問、審議ということになりますと、年末でもございますし、また沖繩国会中でございました関係で、とてもこれは事実上年内に御審議が完了するということは事務当局の立場では考えられないような状況でございました。
  116. 松井誠

    松井誠君 沖繩国会というのは法制審議会の委員はあまり関係ないんでしょう、政府の役人は多少は出るかもしれませんが。ですから、これがかかれば長くなるという、それは五日から見れば相当長いという見通しですけれども、いまのお話ですと、ハイジャックの見通しから見ると長くなるという見通しでしょう。その見通しの理由というのは、やっぱりこの法律がいろんな問題を含んでおる。へたすれば人権侵害になりかねない。ハイジャックの法律案というのはそう乱用されるということは考えられない。そこでこの基本的な考え方に違いがあって、だからなかなか法制審議会にかけるというふん切りがつかなかった。そういうことじゃないですか。
  117. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) これはハイジャック法案の場合は要するに強盗罪の特別法という性格を持っております。他の性格も持っておりますけれども、法律案としては比較的やさしいといいますか、やさしい法律案でございました。で、この火炎びん法案の場合は、実は昨年検討を命ぜられますよりも前に、法務省事務当局としては相当長い時間検討をしておったわけでございます。その問題で非常に困りましたのは、火炎ぴんというものをどう定義づけるかという点が一番の問題でございました。この定義がぴちっときまりますと、これはあとが比較的やさしい問題であろうというふうに考えておりますので、法律問題が複雑というよりも、火炎びんを刑事法的にどうとらえるかという点が一番の問題であったと思います。
  118. 松井誠

    松井誠君 それはしかし同じことですよ。つまり何を火炎ぴんとするかという定義がむずかしいということは、つまりやっぱり取り締りの段階で再びめんどうな問題が起こる。へたすれば人権問題が起こるということと関連をするのですから、私の質問に対する否定的な答弁ということにはならぬと思う。  そこで、経過を長々と聞いてもしようがありませんから、私はその経過についての結論的なことを私は申し上げたいのですが、一昨日ですか、佐々木委員に対する答弁で、その刑法改正案が長引いたので大臣はいらいらしているのだという新聞記事がありました。私がなぜ法制審議会のことを持ち出すかといえば、法制審議会というのは、いわばどれだけの期間をかけてやるべきかということも含めて、私は法制審議会の自主的な判断にまかしくおくべきものだ、ハイジャックの場合は五日という非常に異例な方法をとったのは、法制審議会がそれなりの判断をしたからに違いない。もし長引いたとすれば、長引いたのは法制審議会の自主的な判断ですから、それに従うべきだ。ところが、そういうものを避けて、わざわざ党が提案をするという形に、私はあえて言いますけれども、そういう形式をとって、実体政府が提案をするという、そういう、言ってみれば脱法行為のようなことをやったのが法律を守るという、そういう法務省のやり方として一体妥当かどうか、基本的に疑問を持つわけです。刑法の政正案も確かに長引いています。民法の改正案もずいぶん長引いておる。しかし、長引いておるというのは、それだけの理由があるはずなんです。なまけて長引いておるわけじゃない。それを政府の必要から、何かせっかちに法制審議会の自主性を失わして、いわば御用機関のようにしようという考え方が、この立案の形式の中にあらわれておる。それが、きのう、おとといの大臣の発言となってこれは出てきたんじゃないか。どうですか大臣
  119. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 私の法制審議会に対する考えは、あるいはこれは法制審議会に限らず法務省全体の考え方について、実は私しろうとでありますが、法務省へ来ていま一番痛感していることは、基本法である憲法がひらがなであり、またずいぶん現在つくられております特別法なりその他の法律がみんなひらがなでつくられている。ところが一番基本になる民法、刑法あるいは商法、こういうものは全部——全部とは言いませんが、かたかなで、しかもかなりむずかしい。われわれはなれておりますから、また法務省の人はなれておるからあれでしょうが、若い連中が見たら非常に奇異に感ずるんじゃないかということを、私は根本的に不思議に思っておったわけであります。それでいまのままでいきますと、これは午前中もお話したんですが、明治で四十五年間、あの間に刑法から民法から全部つくり上げた。しかし、あれが非常にゆうちょうな時代であったから、ずいぶん時間をかけたというふうに思っておりますが、いまの法律全体がひらがなになる、基本法である肝心の法律がひらがなになるというのに、何年かかるだろうか。もうすでに二十五年たっておる。これから二十五年たって全部があれ消えるかどうか。そうすると明治時代にずいぶんゆうちょうにやっておったというのが、いまのスピードで考えると、これはどうもいつになるかわからぬ。だからこれは法務省も、まあ現在の法務省はあまりに行政府というその仕事に追われ過ぎて、立法府という仕事を忘れておりやしないか。また、法制審議会の方々も一生傾けておやりくださる、これはありがたいが、しかし、こういうふうな時勢の進展するときに、はたしてそれで時代に即応した法律が次から次に政正されるであろうかということについては疑問をもって常に考えておるものですから、また刑法にしましても引き続き、佐々木委員もそのあと矯正保護的な要するに監獄法の改正も急いで出さなければならぬ、こういうような、——これは全くごもっともだと思っています。  そういうようなところから、よほどやはりこれは基本的に機構について十分われわれが反省し、もっと新制度というものをつくるべきか、私はまだ十分構想がまとまりませんし、その前に要するに法律家がなかなか最近は得られないというような問題もありますし、また法制審議会のメンバーを考えますと、刑法なり商法なり民法なり各大家を集めておられるんだが、これでやっぱりもう少し専門的に分けて、進捗して考えていくようなことをしないと、皆さんが全部おそろいになるというようなことは、やっぱり月に一回だから、その間にいろいろな手足になって働けるような体制をつくらなければだめじゃないかというような非常な疑問を持っておる、そういうところからそういう話が出たわけでありますが、そのいきさつはただいま申しましたようなわけでございます。
  120. 松井誠

    松井誠君 これはかたかなをひらがなにしたり、「ヘカラス」と書いてあるのを「できない」とするくらいのことはそんなに手間がかかるとは思わないですよ。そうでなくて手間どっておるのは、それなりの理由があって手間がかかっておる。だからいまの形式的なことさえも、二十五年かかって変えられないようなことを言うから、私はやめるつもりだったんですけれども、言わなければならなくなったんですけれども、問題はそういうことじゃないわけでしょう。ことに刑法などというほんとうに人権にかかわる問題をそのときそのときの都合で、いわばそのときの一種のはやりすたりみたいなものを一々取り入れてやったらたまらぬと思うんですよ。そういうところに動かされないところにまさに法制審議会の権威があると思う。政治の都合というより政府の都合でそんなのを早くしたりおそくしたりされたらほんとうに困る。  そういう発想というのを、逆の発想というのを大臣が言われたから言うわけですが、今度の場合だってまことに治安立法というのはあくまでも慎重にやらなければならぬと思う。慎重過ぎることはないと思う。しかし、その慎重にやらなきゃならぬとおそらく考えている法制審議会がハイジャックは五日でやったという、そういう教訓、いま私は大事だと思う。逆に言えば、この火炎びんがそれ以上かかると考えられて、あえてそれを回避をした、その事実そのものをやっぱり私は大事にしなきゃならぬと思う。そういう、わざわざ回避をして、そしてもともと国会というのは立法府ですから国会が立案をするというのは本来の形式でしょう。しかし現実はそうなってないし、それだけの率直にいっていろんなものが整っていなくて能力がない。現実やはり政府提案というのが主力になっておる。それをこの際何か本来の原則である立法府の立案だというようなことに、いわばことよせて、実際上は政府がつくった法律案を一言一句も直さないで提案して、これが議員立法でございます、したがって法制審議会にかけなくてもよろしゅうございますということを、法律を守るべき一体法務省がやるべきことだろうか。しかもそれは一番慎重であるべき治安立法について一体やるべきことか、そういう私は憤りを持つわけです。  その点は、まあしかしこれ以上御答弁要求はいたしません。  そこで、私はこの法律案についてその周辺をお尋ねをすると言いましたのは、確かにこの法律案の条文の解釈そのものも大事だと思います。それをこまかく概念規定するということも確かに非常に大事だと思うんです。しかし、こまかい概念規定をやってもそういうものが一々取り締まりの段階でものをいうという、残念ながら体質にはなってないということなんです。こまかい法律論争をやって、それで納得をして逮捕をしない、それで納得をして逮捕をされるなどという状態ではないわけでしょう。ですから間違って逮捕をされても十日や二十日ぶち込んでおけば、それで取り締まりの目的が達せられる。まあ言ってみればこの法律の運用というのは、まさにそこにある。ですから私は、むしろこの法律案内容そのものの検討よりも、むしろこの法律を運用をする取り締まり当局の体質というものと私は深く関係してほんとうは審議をしなきゃいけないと思う。  で、そういう意味でこの法律案内容について私は必ずしも深くお聞きをしようとは思いません。ただ、この三条二項、当初の提案から修正をされて出ておりまして、これは衆議院の法務委員会で東大の藤木先生ですか、あの人が参考人として言われたことが何か参考になって改正をされたようにうかがえるんでありますが、しかしこの修正が三条二項、本来持っておった非常に危険な性格というものをなくしてしまい得るかどうか。私は基本的にやっぱり疑問を持つわけです。これはこまかい相違なんかもうけ飛ばして取り締まり当局は一緒くたに逮捕してしまいますから、そういう意味から言えば、もともとナンセンスだと言っていい。しかしそうじゃなくて、そういう観点を離れてもこうしたからそれじゃもうこの三条二項はあっていいかということになると、私は決してそうではないと思う。やはりこの三条二項はないに越したことはない。やはり削除がベストだと思う。  そこでこれは法務省になりましょうか。この三条二項、あるいは修正前のやつでもいいですけれども、そういう法律規定がなかったために取り締まり上非常にたいへん難儀をして致命的なミスをした、こういう法律があればあのときにこうはならなかったのにというような具体的な事例があったら、ひとつ全部あげていただきたい。
  121. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) この三条二項の問題もさることながら、この三条一項の本来のこの火炎びんの所持の事犯でございますが、この条文がないために本来あるいは処罰すべきであろうという事犯が結局起訴できなかったという事例はございます。これは具体的に申しますと、昭和四十四年の秋でございますが、ともかく相当数の火炎びんを自分のアパートに持っており、そしてこの過激派集団が出ていきますときにそこから火炎びんを他の者に持たしてやるわけでございます。そういう場合に、現にそこの渡しておった、アパートに持っておるやっと一緒にいる人も検挙されておるわけでございますけれども、現場に出ました者は凶器準備集合罪ということでこれは起訴されておるのでございますけれども、アパートにおって渡しておるというだけではやはり本来の凶器準備集合、加害目的の集合というものとの結びつきはこれは証拠上明確でないということで、警察で検挙はいたしましたけれども、検察では証拠上十分でない、嫌疑なしということで不起訴にした事例が昭和四十四年十月に二件ほど私の手元に現在ございます。で、三条二項のほうになりますとこれは実はそういう事例というものが多々あるのでございますけれども、本来の火炎びんですらそういう状況でございます。  そこでこの三条二項といいますのは、現下の火炎びんの使用事犯を見ますと、現場において引火しやすい物質を入れたびんと、それから発火装置というものを本来は別々に持っておりまして、使う前にこれをドッキングするという事例が非常に最近ふえてきているということで、これは本人たちも危険であるという観点もあろうと思いまするし、あるいは取り締まりというものをのがれようという点もございましょう。そういう事例がたいへんふえてきておるという観点から、どうしてもこの三条一項の完成した火炎びんの所持だけではまかなえない事例がある。しかもその可罰性というものは同じじゃないかということで、この現実に即してこの三条二項というものの処罰の必要性が出てきたと思うのでございます。  そこでこの法案の考え方は、その半製品でございますけれども、半製品のうちの片方だけを処罰対象にしておるわけでございます。本来ドッキングならば発火装置を持っておった者もこれは処罰をすべきという考えが出てくるかもしれませんけれども、それではあまりにも処罰対象が広くなるということで、本体になります引火性の物質を入れておる、その容器を持っておる者、しかも  一定の火炎びんをつくるという、「火炎びんの製造の用に供する目的」ということでそういうものだけをしぼるということは現下の必要性との関係においてこれは妥当な一つ処罰法規でなかろうかと、かように考えておるわけでございます。
  122. 松井誠

    松井誠君 取り締まり当局……。
  123. 斉藤一郎

    説明員(斉藤一郎君) いま法務省からお答えがあったのでございますが、この法律がないために火炎びんが取り締まれなかったり、あるいはこの三条二項のような火炎びんの完成品に至らないものを常時取り締まれなかったということはこれは実務上いろいろございます。で、まず火炎びんのそのものの場合でも、できるだけ警察としましてはその実体から凶器準備集合罪が適用になるものはこれを適用する、あるいは放火あるいは放火予備罪が適用になるものは適用していく。あるいは場合によっては、持ち方によっては軽犯罪法を適用する。いろいろくふうしているのでありますが、それでもなお凶器準備集合罪については二人以上の人がおらなければならぬとか、あるいはまた共同加害の目的がなければならないとか、申し上げるまでもないことでございますが、そういったいろんな構成要件上の制約がございまして、そのために、明らかにこれはこういう法律があれば取り締まりができるのにできなかったという事例が幾多あるのでございます。  ただ、そういうものは表面上あまり取り締まりに乗っかっておらないものですから、記録として具体的に申し上げることがむずかしいのでございますが、一、二困った例を拾ってみますと、たとえば昭和四十六年の十一月十八日に大田区で、学生風の一名に機動警ら隊員が職務質問したところ、火炎びんを車に乗っけて持っておった。職務質問しますと、名前と住所もちゃんと申しますし、運転免許証に記載のとおりでございます。ただ火炎びんを車に積んで三十本ばかり持っておるのでございますが、これも先ほど申し上げたように、凶器準備集合罪を適用するためには、二人以上でなければならぬ、あるいは隠し持っているわけでもないようですし、何としても検挙ができなかったような事例がございます。  あるいはもう一つ、同じような事例でございますが、ことしの二月十五日に、東京水産大学から出動要請がございまして、警察官が出動したのでございます。その場合に、大学の中に入っておる者を排除したのですが、学生がたむろしておって、横に火炎びんを竹かごに入れたものを十数本置いておるのでございます。これも先ほど申し上げたようないろんな構成要件からいって、何ともならないというようなことで検挙ができなかったというふうに、明らかに火炎びんがあっても手が出ないという事例がございます。  さらにまた、それにしても、先ほど申し上げたように、数人集まっていて、状況からいって加害目的が出てくるようなときは、警察が逮捕するということがあるものですから、昨今ではたとえば赤軍関係なんかでは「夜想曲」と称する文書でもって、なるたけ、いわば一種の脱法行為でございますが、こういうことに引っかからないように分けて持て、ガソリンの入ったぴんと点火剤とは別にして持っておれ。したがって、甲の男がガソリンのびんを持ち、乙の男が一緒におって点火剤になる薬品を持っておるというような事例が時々ございます。それも例を申し上げると長くなりますが、そういう例を時々発見して取り締まりに困っておるわけであります。  例を申し上げますと、たとえば昭和四十四年の四月二十七日ですが、朝の十時五十分ごろ都内の新宿駅の中央口の付近で、手下げかばんの中にコーラびん七本、そのほかファンタびんとか、そういうものにガソリンと硫酸を入れたものを持っておる、同時にくっついておりませんが、塩素酸カリを含ませた包帯を十三本持っておる中核派の学生を発見したわけですが、まさに三条二項のようなもので、くっつけたらば火炎びんになる、半製品で別々に持っておりますものですから、この連中を発見したけれども、警察としては処置ができない。これは四月二十七日でございますから、翌日は四・二八と称するいわゆる沖繩闘争で、翌日の東京都内のいろんな要所を襲撃するという、そういう際の武器として用意しておったものだというふうに思われるのでありますが、取り締まりができなかったというような半製品的な——半製品といっても、ほとんどすぐに、まさに三条二項のとおりでございまして、すぐに点火剤をほどこしさえすれば、火炎びんになるというものを持っておっても取り締まれないという例がございます。
  124. 松井誠

    松井誠君 いまの警察庁の参事官お話でわかったのでありますけれども、私がいま問題にして言っておるのは三条の一項ではない。三条の一項はわれわれは不必要だとは思いません。私は三条の二項を問題にしているわけですから、三条一項の例を幾らあげられても御答弁にはならない。三条二項の問題としていまの警察庁の方の答弁をお聞きしたわけです。  三条二項は、今度のように書いても、いまあなたが言われたように、幾つかに分解ができて、そうしてそれをドッキングするという形式のものであれば、なるほど修正前と修正後とでは違う。しかし、そういう形でそのドッキングが必要でないもの、そういうものですと、この三条の二項の修正前と後とでは、実際は取り締まりの上からいえば何にも変わらないのではないか。たとえばびんの中にアルコールが入っておる、硫酸は入っていない。アルコールの場合に硫酸が入っているかどうかということは、取り締まりのときにはとてもわかっちゃいませんから、どっちみち一緒くたにする。ですから、単にアルコールだけが入っておったなら、この前の修正前ではひっくくれるかもしれませんけれども、今度はそれはひっくくれませんと言ったって、取り締まりの面からいえばほとんど大同小異、ひっくくろうと思えばひっくくれる。あなたがいみじくも言われた加害目的その他ということでそういう者を取り締まっていく、じゃ今度は液を分解して持とう、そういうところへ連中のいわば「夜想曲」なるものが出てきた。こういうことを言われたでしょう。ですから、つまり部品に分解できない、しなくてもいいようなもを持っておる限りにおいては、これは三条二項がどのような形になろうと取り締まり得るはずですね。本来ならば、火炎びんであるかも、あるいはないかもしれない。そういうものを加害目的その他でつかまえる。硫酸はあるいは入っていなかったかもしれません。それでもつかまえられる。それじゃ分解しようということにならぬとも限らない。戦術のエスカレートと取り締まりのエスカレートは、ニワトリと卵みたいなもので、なかなかやっぱり前後の判別はつけにくいと思うのです。いまの場合、火炎ぴんというのをそれこそほんとうに法律のワクの中できちっと取り締まっておったら、あるいはそういう戦術のエスカレートはなかったかもしれない。これはあるいは甘いかもしれませんけれども、そういうことだって観念的には言い得ると思う。で、それこそ二人以上になれば、凶器準備集合罪でやられるわけですから、部品を持っておる人同士二人が一緒になってドッキングしようと思えば、その段階では凶器準備集合罪になり得るわけですね。これは間違いないわけですね。
  125. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) いまの、三条一項は必要とするが、三条二項は要らないのではないか、こういう御意見でございますが、私どもが前から考えておりますのは、火炎びんを持っておること自体が非常に危険である。昨年十一月に池袋で、電車の中でダンボールに入った火炎びんをおっことして一名の女子学生が死亡し、八人がけがをしたという事案がございます。それから火炎びんの完成品を持って歩くこと自身非常に発見されやすい。それは本人自身の危険もありますし、それからまたそういうような逮捕を免れるといいますか、そういうことのためにわざと分離して歩く、わからないようにするというのが最近非常に出てきておりますし、先ほど申しました「夜想曲」というような——爆発物それから火炎びんは「手りゅう弾」と書いてありますが、そういうものの使用についてそういうふうなことを的確に指示をし始めてきている。そういうふうな状態から申しますと、かりに三条二項がないとすれば、三条一項がありましても、現実には三条一項は有名無実の状態になってしまう。三条一項の完成したもの以外は、分離して持って歩くこと自身は、それ自身取り締まることができない。こういうことになってまいりますと、三条一項というものは非常に、現実から実際に三条一項の規定というものが脱法的にこれがのがれられることになる。これはやはり何と申しましても、火炎ぴんというものは、昨日ももう実験でいろいろごらんに入れましたが、非常に簡便にできる。非常に簡単に材料が入手できる。非常に簡単にそれが使用できる。それからドッキング自体も、きわめて簡単にできるという、火炎びん自身の持っている一つの特徴、特性と申しますか、そういうものから、こういう脱法的な行為について、それを、それもやはり前項と同様禁止する、こういうものがなければ、せっかく製造、所持を禁止してもその効果というものが十分に担保できないのじゃないだろうか、かように考えます。
  126. 松井誠

    松井誠君 凶器準備集合罪の話はどうなんですか。
  127. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 二人以上あって、加害目的が立証できれば、それは凶器準備集合罪として処理できると思います。私ども問題は、この前も申し上げましたが、爆発物についてはやっぱり爆発物取締罰則というものがある。銃砲刀剣については銃砲刀剣類所持等取締法というようなかなりきつい法律がある。火炎びんについてはそういった統一的な法規はない。個々の行為について個々の犯罪の構成要件について該当しない限りは、これは取り締まりができないということが一つの問題点でございます。そういう意味では、どうしてもそこにちぐはぐと言いますか、あるいは穴ができるということは避けられない。今度のこの法律案によりますと、火炎びん自身を製造、所持することも、使用することも違法である。例をあげれば、拳銃の一般所持が認められないと同じように、火炎びん自身を違法にして、そうしてそれを処罰対象にしているというところに、この法案の持っている大きな意味があるのじゃなかろうかというふうに私は考えます。  それで、先生御指摘の、凶器準備集合罪でいけるではないかと、こうおっしゃいますけれども、その場合にも、やっぱり共同加害の目的というふうなものを立証していかなくてはいかぬ。それが立証できなければ凶器準備集合罪の適用はできない、こういう形になってまいるかと存じます。
  128. 松井誠

    松井誠君 そういうときには、加害の目的というようなことを言いますけれども、たとえば三条の二項にだって「製造の用に供する目的をもつて」という、こういう目的がちゃんと入っておるわけですね。しかし、そういう目的の有無などというものは、取り締まりのときにはもう別のようなものだということです。裁判所の段階に行ってそれが立証できるかできないか、それは致命的な問題になるでしょう。しかし、実際取り締まりの段階では、そういうことを幾ら強調したって、実際乱用を防ぐという保証には何にもならぬことなんですよ。いまその三条の二項がないために、それじゃ具体的にどういうことがあったかというのをたった一例おあげになりましたね、四十四年の四月二十七日か。さっきから火炎びんの製造、所持がいかぬ、いかぬと言っているけれども、私たちはそれをいかぬと言っているのじゃないのです。つまり、それ以前の段階の、火炎びんの段階に至らないものを持つということさえ、やはり三条の二項は問題にしている。ごっちゃにしないで——ピストルを持って歩くことは不法だ。ピストルを分解して持って歩くことは不法だと。火炎びんについては不法。それ以前の段階でも依然として不法だということになるかということでありますれば、それは「夜想曲」というものにそういうことが書いてあるそうですし、現実にそういうことがだんだん起きてくるかもしれない。それは取り締まりの当局のエスカレートに相応して私は出てくるだろうと思う。むしろ、この三条二項を設けることによって、ほんとうならば、それこそ加害目的のない容器が、やはり三条二項でくくられてぱくられるという、そういう危険性は依然として残っている。労働組合なら労働組合に何か事件で来て、びんの中にアルコールが入っているというようなものを持っておるなんというのはどこにだってたいがいありますよ。しかし、それが、その中にはアルコールのほかに幾らか硫酸も入っているのじゃないか、もう一つびんをくっつければ発火をするのじゃないかというようなことで容疑をかけようと思えば、少なくともいまの取り締まり当局の体質からいけば十分あり得ると思う。そういう危険性を、取り締まりをやっている人たちは、それとの対比で、それとの相関で、この規定の運用の実態というものを考えたことはないですか、一体。
  129. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 衆議院でもこの点についてはいろいろ御議論がございました。それから参議院でも先日来、問題はその点に集中していろいろ御質問があり、御議論がございました。私どもはそういう点につきまして目的罪という形のものは——実際には目的罪はこのほかにもいろいろたくさんございます。凶器準備集合罪にしても目的罪でございます。選挙法にしても目的罪。目的罪は非常にたくさんある。いわば法律全般を通じてその目的罪というものが、こういう、いいのかどうかということになると、私どもの立場から言えば、なるべく目的罪がなくて、はっきりしたほうがいいと思うんですけれども、しかし、現実にはこういうしぼりのかけ方という形でこの目的罪、目的というものにどうしてもしぼられてくる。それの認定については非常に、警察のわれわれのいまやっておりますことを御信用いただけないのはたいへん残念でございますけれども、私ども自身としては、これについては厳格にこの目的をいろんな状況から認定をしていく。そういうことについては非常に慎重、かつ厳格な運用を期してまいりたいということを、繰り返し、繰り返し申し上げているところでございます。
  130. 加瀬完

    ○加瀬完君 関連。  運用に慎重を期するというけれども、さっき松井委員のほうから御指摘がありましたように、たとえば発火、点火はとにかく——発火装置があるかないかということになれば、ガソリンの中に硫酸が含まれているかどうかというのが一つの大きな問題ですね。しかし、ビールびんみたいに色のついたものの中に、ガソリンだけか、硫酸が含まれているかどうかということは外見上判別ができますか。あなたがどんなに厳格に鑑別すると言ったって、厳格に鑑別できないような状態があるわけですね。そうなりますと、これはどうしても一応つかまえておいて、それであと目的があったかないかを判別する、こういう方法をとりがちになるのじゃないかと、いまの警察当局の取り締まりの方法、人員や、実態から判別すれば。そうなりますと、これは運用をどうやろうとしたって、運用とか、あなた方の弁明によって解決できない人権の侵害の場面というのは必ず出てくる。だから、三条の二項というものは非常に問題があるのじゃないかと、こういう御指摘なんですよね。私も前にこれを伺ったわけでありますけれども、きょうの松井委員への御回答も私に対するお答えと同じだ。それだけでは何ら人権侵害に及ぶようなことはないという保証にはなりませんよ。具体的に申しますよ。だから、ガソリンだけを持って、容器の中にガソリンだけを入れておる場合、これは一体取り締まりの対象にできるのですか。点火装置、発火装置とあわせてという考え方なら、点火装置はともかくも、発火装置ということであれば、これは硫酸かなんか入ってなければしようがない。硫酸が入っているかどうかというのは、外観からはわからない、こういう問題が当然出てくるのじゃないですか。慎重にやりますなんて、慎重にやれないじゃないですか。この点、私も非常に疑問を感じておりますので、ひとつ、あらためてお答えをいただきます。
  131. 斉藤一郎

    説明員(斉藤一郎君) お尋ねの、びんの中にガソリンだけを入れておる場合と、硫酸が入ておる場合とは、外から見てわかるかという点ですが、これはまことに実際問題としてわかりづらいのでございますけれども、三条二項の構成要件としては、必ずしも硫酸が入っておることを要件といたしませんのですが、試験管の外に——大体火炎びん実体として、ビールびんの中にガソリンを入れ、その横に試験管に硫酸を入れてくっつけたというような、きのう実験でごらんに入れたと思うのですが、こういう態様のものはこれは明らかに火炎びん、三条二項の目的のためにあるというものでございます。
  132. 加瀬完

    ○加瀬完君 そういう判別できるものはこれはわかりますよ、判別できないものがあるんじゃないですか。一つのびんの中に硫酸とガソリンと両方入れて装置したような場合、そのびんが色づきであったような場合判別できるか。できない場合はどうしたってこれはそうでないものをそうだという認定のもとに拘束するような原因をつくる、そういう原因をつくらないという保証はどこにも成り立たない、こういう心配があるから伺っているんです。
  133. 斉藤一郎

    説明員(斉藤一郎君) ただいまの点については構成要件的なものだけを申し述べれば、ガソリンだけの場合でも構成要件の対象になるわけですが、ただ硫酸がいま申し上げたようなかっこうであるとか、あるいは硫酸が中に入っていることが判定できるという場合には、なおその目的もあわせて取り締まりの対象になるという状況が明らかになると、こういうふうに私ども理解しております。
  134. 加瀬完

    ○加瀬完君 だんだん拡大解釈してくるわけだ。いままでの御説明の要点を集約すると、とにかく点火ということよりは発火装置があるかないか、あるいは発火装置をつければ火炎びんになるかどうかということを判定の中心にするという御説明であった。いまの御説明ですと、それは容器の中に可燃性のものがあれば、マッチで点火すればみんな爆発物になりがちなんですよ。拡大解釈です、いまの御説明から見れば。そういうしぼり方をすればしぼりにならない、そういうことになりませんか。とにかくびんの中に何か持っていそうならばみんなつかまえて、該当するか該当しないかはあとの問題でと、こういうことの取り締まりになって、これじゃしぼりにも何にもならないじゃないか。むしろ三条二項というのはあって危険だと、人権を守るという立場からすれば非常に三条二項があることによって危険を生ずる、こういう心配を私ども持っているわけです。
  135. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) ビールびんの中にガソリンだけが入っている場合、これがそれに該当するのかどうかということでございますが、これはこの法文でも明らかなように、火炎びんの製造の用に供する目的で持っているかどうかということでございます。そこで、その目的の認定につきましては、この間もそれについての何か基準を示せという御質問が加瀬先生からございました。私どももその際にも御説明申し上げましたが、いろいろ考えてみますと、やはりやや抽象的にならざるを得ませんが、たとえば問題は一般の市民に迷惑がかかる、全然そういう目的のない人が持っている場合に、それに対して迷惑がかかることは、それは極力そういうことのないようにしなければならないことは当然でございまして、私どもとしてはそういう目的の認定にあたっては、たとえば事前の情勢等によって火炎びんの使用または製造が予想される事態との関連において合理的に判断していく。第二番目には、所持者あるいは同伴者等の挙動、供述、それからその物件の形状、材質、内容物、数量、それからその所持あるいは運搬の態様、隠してひそかに持っているというような状態か、公然と——公然といいますか、ひそかに持っている状態かどうかというふうなこと、それからさらに業務その他その所持について正当な理由があるかどうか、そういうふうなことをやはり個々具体的に判断してまいるということが必要であろうと思います。もちろんこういう目的の認定につきましては、そういうふうないろんな点を総合的に判断して客観的かつ厳格な認定を行なって、そうしていやしくも恣意的、独断的な判断によって善良な国民の基本的な人権の侵害にわたることのないように厳重に配意してまいらなければならない、そうしたことを取り締まりにあたる第一線の警察官に対して十分に指導、教養を徹底していく、そうしてこの適正な運用をはかる、やや抽象的でございますけれども、そういうことによってそれらのいま申し上げましたような諸点を勘案してその認定を行ない、それによって火炎びんの製造の用に供する目的がある、あるいはそれは正当な業務あるいは家庭用のものであってそういう弊害、疑いは全くないものということによって、三条二項の適用があるかどうかということを判断してまいる、かようなことに相なろうか、こう思う次第であります。
  136. 松井誠

    松井誠君 私もいま聞いていてびっくりしたんですけれども、いままでですと、ガソリンだけ入っている場合は三条二項にはかからないと思っておったんです。ところがそうではなしに、なるほどビンにはガソリンしか入っていない、もう一つのこの絵でありますが、つまり分解できるような形になっておってその試験管に硫酸を入れて、それに何かきれを巻いて、これを二つをしばりつける、そうすると火炎びんになる、そのうちのガソリンだけ入ったぴんと試験管とを分離して持って歩いておる、そうするとガソリンが入っておるびんだけでもこれは点火装置ですか、発火装置ですか、試験管は発火装置ですか、そうすればその発火装置さえつければ発火するという形でガソリンだけ入っておるものも三条二項に入るわけですね。そうなりますと、三条二項というのはまさに目的という——きわめて取り締まりの段階では無視される、それにすがる以外にはない、乱用しないという保証は何にもないわけです。一体何のために大さわぎをしてこういう修正をしたのか、私はますます意味がわからなくなってくる。聞くところによりますと、三条二項は取り締まり当局が最も執着をして、これなくしてはこの法律意味がないということまで言ったそうですから、これを削除することは不可能であろうという話も聞いておるんです。なるほどこれは藤木先生も言ったような、ああいう考え方が一つの示唆になってこういう形になったんでしょうが、しかしこれはなっても結局はこれは修正前とほとんど同じじゃないですか、取り締まり上は。
  137. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) 修正されました現在の三条二項とそれから原案と申しますか、提出時の三条二項、この違いでございますが、この「火炎びんの製造の要に供する目的」、これは当然前後一緒でございます。問題は、修正後におきましては容器性というところにしぼりがかかっておるわけでございます。第二項にございますように、  「ガソリン、燈油その他引火しやすい物質を入れた物でこれに発火装置又は点火装置を施しさえすれば火炎びんとなる」そういう容器という点でしぼりができておるわけでございまして、原案とはその点で相当大きな違いがあろうと思います。この三条二項は要するに容器性というしぼりと、容器の中にこういう引火しやすい物質を入れておるということと、それからそれが火炎びんの製造の用に供する目的であるということで所持をしておる、この三つの要件でございます。  ところで、これは昨日も申し上げましたように、何といいましても一番大きいしぼりはこれはやはり目的でございます。その目的につきましてはいろいろ判例等もございますが、このたとえばよく似ております兇器準備集合罪における目的というものにつきましてこれは大体最高裁までははっきりした判例がございませんが、高裁段階で一応確定しておるという解釈でまいりますと、これは一つの認容でございます。目的というものは火炎びんの製造の用に供するということを認識しているのみでは足らずに、認識しておってさらにそれを認容する。容認するといいますか、認容というところまでこれは大体裁判例でいっておるわけでございまして、火炎びんの製造の用に供する目的というのは、これはそういう意味におきまして、特に火炎ぴんというものが社会的に何らの価値のないものでございまして、社会的に非常に異例なことに属するわけでございますから、この製造の用に供する目的というものの立証というものは相当厳格なものになるというふうに私どもは確信をしております。その意味におきましてこのしぼりは有効であるというふうに理解をするわけでございます。
  138. 松井誠

    松井誠君 裁判所へ行って何年もかかってそのしぼりがものをいって無罪になったってあとの祭りなんですよ。それは概念的にはこういう意味で頭の中で考えてきちっと区別はできるでしょう。しかし実際の取り締まりではそんなものは全く意味をなさい。私はあとで過剰警備の実態をお尋ねしますから、そのときにまた申し上げますけれども、いまの、さっきもちょっと言いましたガソリンが入ったぴんと硫酸が入った試験管と、これがこの前の修正前の三条二項ですと、これは試験管だけを持っておるほうが罰せられたわけです。それは罰せられない……。
  139. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) その点は修正前後を問わず同じでございます。要するに引火性物質を入れたものを持っておったということを起点にいたしまして、修正前におきましては火炎びんの製造の用に供する目的でそういう引火性の物質を入れたものを持っておるということでございましたが、修正後におきましてはその容器性にしぼりがかかったと、発火装置または点火装置を施しさえすれば火炎びんとなる、そういう容器という点で入れものにしぼりがかかったということでございます。
  140. 松井誠

    松井誠君 私はこの修正案のこの発想の根拠になった藤木先生というのは、私は火炎びんの実態を御存じなかったのだと思いますね、いまになって思うと。つまり発火装置、点火装置というのはきわめて簡単なもので、本体は引火しやすいものが入った容器にあると考えておったわけです。ですからそれを取り締まる、つまり発火寸前、点火寸前のものならばもっとしぼりがかかるだろうとおそらく先生も考えられたのだろうと思う。しかしどうもそうじゃなしに、ただのガソリンを入れたびんもまさに発火寸前、点火寸前だということになりますと、全くこれは意味がないわけですね。三条二項の修正というものは意味がないわけです。ところがあるときには単にアルコールを入れた、単にガソリンを入れたびんというものは日常持って歩く機会が多いんじゃないか、そういうものが引っかからないようにするためにはもっとしぼりをかけなければならぬじゃないか、そのしぼりをかけるとすれば発火装置、発火装置もそのつく直前というそういう段階のしぼりではどうだろう、そのもう一つ前の段階、そのまたもう一つ前の段階ということになったんでは困るから、つまり火炎びんになる直前ということにしぼりをかけたらどうかというのが藤木先生の発想だ。そうすれば単にガソリン入れたものは引っかからないというふうにおそらく考えられたんじゃないでしょうか。しかしいま話を聞けばそうですし、なるほど理屈を考えればそうです。ガソリンが入ったものだってまさにこれに引っかかる。だからそういう意味では三条二項の修正というのは全く徒労だったということになりますね。
  141. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) この三条二項の衆議院段階における御論議の過程におきまして、ただいま御指摘のようにこの容器性というもののほかに、その入っておるその容器で火炎ぴんとして使うというような意味の最終容器性と申しますか、そういうものにすべきかどうかというような御議論もあったわけでございます。そこでこのでき上がりました修正案を拝見いたしますと、容器性という点では明らかにしぼりがあるわけでございます。もともとこの容器というのはどういうものかというふうになってまいりますと、これは第一条の定義規定から考えられますように、この容器というものは中に入っておる引火しやすい物質が流出または飛散し得るような容器でなければならない、ということがこの定義規定のほうの照り返しと申しますか、そういう点から出てくるわけでございます。さような観点からまいりますと、この修正後の三条二項といいますものは容器性でしぼりをかけておりますけれども、その容器性というものがもともとこれは中のものが流出または飛散し得るような容器であるという実質的なしぼりがございます。そういうことになってまいりますと、やはり実際問題としてはこれはビールびんであるとかコカ・コーラびんであるとか、たまには一升びんもございましょう。現実の問題といたしましては、この実際問題としては最終的な火炎びんが使われる、それが使われる火炎ぴんというものに実際的にはほとんど一致するというふうになるのじゃなかろうかと、かように私どもは理解をいたしておるわけでございます。
  142. 松井誠

    松井誠君 容器ということを非常に強調されますけれども、確かに所持品の場合には石油かんはどうとか何とかいう話が出たものだから、容器ということでしぼろうということも一のつ発想だったに違いない。しかし幾ら何でも火炎びんを取り締まるというときに、石油かんまで取締まるというのはやりかねないと思われますけれども、そこまでいくことはめったにないですよ。だから容器の点でしぼるということは実際問題としてあまり意味がない。そうじゃなしにやはりほんとうに発火装置、点火装置をつけさえすればという、そういうものが引火しやすいものが入ったのがあくまでも本体だという形である場合に、つまりそれだけでだれが見たってこれはもうちょっとで火炎びんになりそうだという、そういう形のものだけで取り締まろうというのが三条二項の修正の発想だったと思う。しかし聞いてみれば単にガソリンが入ったびんだけでこれになるというのですから、そういう意味で全く修正の意味がないわけですよ、そうでしょう。つまり容器性のことを言っているのではないのですよ。
  143. 辻辰三郎

    政府委員辻辰三郎君) その点はいわゆる最終火炎びん容器というそういう目的から考えましても、結局はこれは何かと言えば火炎びんとなるような容器に入れておるということでございますから、現実にはビールびんであるとか、コカ・コーラびんであるとか、サイダーびんであるとか、たまには一升びんであるということに帰着するわけでございまして、先ほど申し上げましたとおり、この容器性のこの二項の文章からいきますと、現実は私は最終容器性というものとほぼ一致しておるというふうに考えられるのでございまして、藤木参考人がこの衆議院で述べた意見も結局はこれで最終容器に近いものにこれはなっておると、むしろ最終容器が大部分の場合であろうということで、この藤木参考人の意見にも合致しておるというふうに理解できると思うのでございます。
  144. 松井誠

    松井誠君 その点はその程度でやめます。私が一番実は問題にしたいのは、この法律を実際運用するいわば警察ですね、警察の取り締まりのあり方とこの法律審議というものとはほんとうは不離一体のものとしてやるべきものだと思うのです。そういう運用の実態を離れてこの法律の字句を幾ら解釈したって大して意味がない。そういう意味ではほんとうはもっと時間をかけて、いわゆる警察の過剰警備といわれる実態、これをほんとうは明らかにしなければならぬと思う。しかし伝えられるところによりますと、もう何か最終の点がきまっておるそうで、私はみずから国会の権威を軽んずるものだと思いますけれども、それはここでは触れません。あらためて過剰警備の問題は系統的に組織的に私は追及する機会を別に持ちたいと思う。しかしきょうはとりあえず先ほどからたいへん警察庁の刑事局長きれいごと言っておられますけれども、そういうきれいごとで一体乱用が防げるという実態かどうかということをもう一ぺんわかっていただくために過剰警備の実態の二、三をお尋ねしたいと思うのです。  何かどうも、いわゆる新左翼の連中、いわゆる過激派の連中は初めから無法者なんだから、初めから法律を踏み破っているんだから、こちらも法律を守る必要はないだろうというような観念が私はどうも警察取り締まりの中にあるんじゃないか。まさかそんなことはあり得るわけはないわけですけれども、そういうばかばかしい質問をしなきゃならぬような実は実態なんですね。これはたいへん残念なことですけれども、たとえばそういう人たちを弁護する弁護人に対してさえも、しかも弁護士の一部から何か非難めいた発言があったことがありました。そんなばからしいことはさすがに最近はなくなりましたけれども、しかしそういうように何か連中には基本的人権はない、憲法の保護はない、初めからないのがあたりまえだというような、何かそういう姿勢がもしあるとすれば、これはたいへんなんですね。しかし私はどうもこの取り締まりの、過剰警備の実態を見ておるというと、そうであるとしか思えないのですよ。  そこで、ちょっと古くなりますけれども、これは四十五年の六月の二十三日に日弁連から「警察官不当検問について」という警告が、これは警察庁にも行っているわけですね。行っておりますね。
  145. 斉藤一郎

    説明員(斉藤一郎君) いま御指摘の書類は昭和四十五年六月二十三日の日本弁護士連合会会長成富信夫という名前の「警察官不当検問について(警告)」という文書だと思います。ちょうだいしております。
  146. 松井誠

    松井誠君 その警告文の中にも出てますけれども、具体的な事例が九つぐらいあげられておる。その具体的な事例についてその真否、その有無を問いたいということで警察庁に協力を求めたけれども、拒否をされたというように書いてある。そういう事実があるのかないのか。もしあるとすれば、なぜそういう態度をとられたか。
  147. 斉藤一郎

    説明員(斉藤一郎君) いま御指摘がありました書類の中には何件もいろいろ事案がございまして、そしてそのそれぞれの事案について事案の関係者に調査の過程において協力をお求めになったということがございます。で、これはどの事案を通じて、同じというわけにもまいりませんので、それぞれの事案ごとに警察の調査に応じたしかたが違っておりますが、できるだけ警察としては、こういう事案の調査については警察の立場からしても御協力いたすというたてまえでおりますが、中には、それぞれ事案が違いますが、一般的に言って、その事案が別な手続で問擬されている場合があったり、あるいはまたその事案について文書で署名してお答えすることを署名はいたしませんというお答えをしたために拒否したというふうに受け取られたり、いろいろございますが、基本的には警察の立場としても事案を明らかにするということには極力努力してまいりたいという考えでおります。
  148. 松井誠

    松井誠君 そうしますと、部分的には協力し、部分的には拒否した、そういうように受け取っていいですか。
  149. 斉藤一郎

    説明員(斉藤一郎君) 基本的にはこういう事柄を明らかにしていくのは、先ほど来御指摘のような人権に対する警察のあり方というものをいろいろ御批判をなくするためにもやるべきことであるというふうに考えておりますが、状況によってはたとえば一方において提訴されておるというような場合は、やがてこの訴訟関係で明らかになるというような場合もございますので、そういう場合には別なルートでお答えするということをしかねる場合もあろうかと思っております。
  150. 松井誠

    松井誠君 いや、具体的にこの場合どうだったか……。
  151. 斉藤一郎

    説明員(斉藤一郎君) たとえばいま私がお答えしかねる場合があると申し上げた一例は、この警告書の中にもございますが、昭和四十五年の六月二十三日の書類の中で、少し古うございますが、四十四年の九月五日、日比谷公園においてあった事案について、日本弁護士連合会のほうからいろいろ調査がございました。これに対して警視庁のほうではこの事件が別に提訴されておるということがございますので、それについてお答えするということをいたしておらないのでございます。
  152. 松井誠

    松井誠君 いま言われたあれは何か全共闘の大会ですか、日比谷公園の入口の問題でしょう。そのきとの問題は、ここで出ているのは、法律を勉強しておる大学院の学生がやられたという、あともう一件ありますがね。これが提訴されておるのですか。そうじゃなくて新聞にも出ましたけれども、何か弁護士さんがひっかかってずいぶんえらい目にあったあれであって、この内容と違うのじゃないですか。
  153. 斉藤一郎

    説明員(斉藤一郎君) 私がいまお答えしたのは、九月五日の日比谷公園で全共闘結成大会の際に、弁護士さんが……。
  154. 松井誠

    松井誠君 それはここにないじゃないの、入っているのですか。
  155. 斉藤一郎

    説明員(斉藤一郎君) いまの書類の、先ほど申し上げました弁護士連合会の書類の中の付属の調査書の中の二二ページのところに「(10)参考人A弁護士」と書いてある問題だと思いますが……。
  156. 松井誠

    松井誠君 わかりました。その点、裁判にでもなっておれば、あるいはそういう制約があるということまで私は否定しようと思いません。しかしどうもほかの事件でもそうなんですけれども、こういう弁護士会が告訴をしたり、告発をしたり、あるいは人権擁護委員会を通してこういう問題の提起をすると、あまり協力的でないということも文章にもなっておるわけですね。私はやはりこのところは積極的にやらなければ、その機動隊の人たちというのは反省をするチャンスというものはほとんどないのですよ。  私はいまでも思い出すと腹が立つのですけれどもね。これは私が衆議院におるときに、日韓国会のときでしたよ。機動隊にずいぶん悪口を言われた、先生は先生だけれども、あれは気違い病院の先生だと言うのですね。私はそういう侮辱を受けたのは生まれて始めてだからいまでも骨身にしみてあのときの憤りは覚えている。そういうことを平気で言う機動隊員があのころはずいぶんおりました。しかしそれでもあのときは直接国会議員に手出しすることはさすがにほとんどなかった。しかし最近はそれをやるそうです。何も国会議員は特権的な地位にあるとは思いませんよ。しかし少なくとも国会議員であるということを承知しておりながら、しかもデモに対して規制するために中に入る、そういうものに対して積極的にそれに襲いかかる、これはこの間でも何回かありました。  そういう意味では機動隊の体質はますます狂暴化してきておるわけです。それをどういうところでチェックするのか、皆さん方ここできれいごと言ったって、きれいごとは片っ端から現実には破られてしまっておるわけです。目的がどうの、しぼりがどうのといっても、それは全くむなしい議論になってしまっておる。そういうものをむなしくしないためには現時点における取り締まりが一番大事なわけでしょう。ですからそういうときに、弁護士会から抗議が出る、疑問が出る、積極的にやって、そうすると何か機動隊員の士気にかかわるというようなことをあのころの柏村長官なんか言っておりましたが、そういう意味では機動隊員の士気にかかってけっこうだ。少しでも行き過ぎがあったらそれをチェックするところがないと、エスカレートしてとどまるところがない。つまり、連中には基本的人権はないのだということが、何かそういう教育でもしているのじゃないかと疑いたくなる。そこでここに書いてある九つか十の事例、これは当然お調べになったと思いますけれども、一々はお伺いしませんが、総論的に言ってどうですか、結論的に言って、この弁護士会にもって出た事案、そして弁護士会がみずから調査をして警告をした事案、これの真疑はどうなっておりましたか。
  157. 斉藤一郎

    説明員(斉藤一郎君) 弁護士会から警告を受けました事案について、状況それぞれ異なりますが、私どもとしては先ほど来御指摘のございました警察官が職務執行の間においていやしくも人権じゅうりんにわたるようなことあるいは行き過ぎた警備をやらないようにということを心がけておるのでございますが、このように警告を受けましたことについては私どもも十分調査をした上で、そうして私どもの今後の運営のあり方に生かしていきたい。  で、先ほど来、過激派の連中について基本的人権を無視していいような考え方でおるような御指摘でございましたが、私どもの考えとしては、たとえ過激派の連中であっても私どもが職務を執行する場合には法律に準拠して、法の定められたところに従って、そして、なるだけ警察の執行において御批判を受ける、御指摘を受けるということができるだけないようにしてまいるつもりでおります。ただ、実際の場合は、なかなか現場が混乱して、混乱の中で大ぜいの中に御指摘を受けるような、御批判あるようなことができ得る可能性もございますので、その点については日弁連の警告の御趣旨を十分生かして、警察がほんとうに適正な御期待に沿うような仕事ができるようにやってまいりたいというふうに思っております。
  158. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) いまの御指摘の問題、日弁連あるいはその他ほかの弁護士会からもいろいろ御指摘のあることがございます。それで実は、この前に戒具の問題について日弁連からの抗議がまいったところでございます。その際に、人権擁護委員会の和島委員長以下の方と私どもお目にかかりまして、実際いろいろ話をしまして、まあ実物も見てもらい、実際にそれを着用もしてもらって、自分らのほうもいろいろ考え違いがあったというようなお話もございました。それが契機になりまして、それで日弁連の人権擁護委員会の方とこれから定期的にひとつわれわれも会合を持ちたいと、これは向こうのほうからも御要望がございました。で、ちょうどいま松井委員から御指摘のあったような、警察の行き過ぎをチェックする、それについて警察もあるいはその弁護士会のほうでも全くそれは異論がない、われわれももしそういう悪い点があれば十分に反省をいたしましょう、そういう点についての御指摘はどんどんいただきたい、しかし、いままでそれが、たとえば調査をしようとしても警察のほうで回答しないのは非常にけしからぬというふうな御指摘もいろいろございました。それについては私のほうからも、こういう事情があってこれについてはできないものもありましたというふうなことを、かなりまあ率直にお話しいたしまして、それで、三月の二十三日に第一回の会合を日弁連のほうの主催でいたしました。それから、この次は私のほうの主催でやることになって、当分まあ定期的にこれを続けていく。それで、もし第一線の署で非常に理不尽なことを言ってるというものがあればひとつ私のほうに御連絡いただきたい、私のほうでまた調べてみまして、署が悪ければ署に直させるようにいたします、それから、これはこういう点があってということであれば、その間の御説明も申し上げますと。  で、率直に言って何か日弁連人権擁護委員会というものとあるいは警察との間に何か一つのみぞがあるような状態があることは私どもも認めますけれども、そういうものを極力なくするようにこれからお互いの意思の疎通をはかっていきたい、こういうことで三月二十三日の会合でも同じような御意見でございました。これからもその点についてはそういうふうにやっていこうではないかということで、話がまあやっと糸口についてきたという感じがいたします。  で、私どもは、いま斉藤参事官が申しましたけれども、たとえ過激派の学生であろうとも、それに人権はないんだと、彼らに対しては何をやってもいいんだというふうには当然考えませんし、それから警察の行き過ぎというものをできるだけないように努力はいたしておりますけれども、もし現実にその行き過ぎがあればそれに相当した処置を当然とってまいらなければならない、そうして、やはりそこにほんとうの一つの正しい警察というものをつくっていかなければならない。たいへんきれいごとだというふうに先ほどもお叱りを受けましたけれども、私どもは真実そういうことのひとつ努力をしていきたい。で、御指摘のような警察の体質というものがやはりなかなか改善されにくい面もあることは、私も刑事警察についても率直にこれは認めざるを得ない。ただ、そういうものを何とか改善していくということが私どもの仕事であろうと思って、一生懸命にやっておるところであります。この点はひとつ、そういうものを放置してかってなことを言っているのじゃないのだ、ただうわべだけのきれいごとを申し上げているのじゃないのだ、ということは御了解ただきたいと思います。
  159. 松井誠

    松井誠君 率直に言って、機動隊というのも人の子ですからね、おまけに若いし。で、衝突がエスカレートしてきたときに感情的になるということは、これはあり得るだろうと思うのですよ。しかし、一方はともかく国家権力を背景にした膨大な力を持っているわけです。それとそうでない者とが同じようなレベルに下がってけんかをしたのじゃ、お話にならぬわけですね。だから、よほど平素の教育というものをきちっとしておかないと、これは感情のおもむくままやったら全く裸のけんかになってしまう。個人レベルのけんかに還元したような形になってしまう。  私の聞きたいのは、もう一つついでにくっつけてお尋ねしますけれども、これは、ことしの三月の六日にやはり日弁連から千葉の県警に対する警告でしょうかね、例のハイジャックのあとの容疑者の逮捕のために国府台にある東京医科歯科大学の学生寮へ行って三十名しょっぴいたということについて、やり方があまりむちゃだということで日弁連から警告が出ている。これも含めて具体的に調査をされた先ほど——これは主として検問が問題になるのですけれども、四十五年の六月二十三日のこの警告、それも含めて事実をお調べになったはずですから、つまり、日弁連の警告というものはどの程度真実性があったのかなかったのかということの、そのことのお答えをいただきたい。
  160. 斉藤一郎

    説明員(斉藤一郎君) 最初にお尋ねのございました千葉県の市川警察署における事案でございますが、四十五年の三月三十一日に御案内のように赤軍派によるハイジャック事件というのがございました。これをだんだん捜査していっているうちに、これとの関連でもって千葉県の市川市にある、ただいまお話に出ました東京医科歯科大学の学生寮に捜索、差し押え許可状の発付を得て捜索をするということになってきたわけでございます。これは、事件の主体は警視庁がやっておったのでございますが、令状を得て、この執行を千葉県警の管内のことでございますので千葉県の警察に捜査を委嘱しました。そこで、その委嘱を実行するために四十五年の六月十三日に、朝午前五時から六時十分ころの間に、千葉の国府台にございます東京医科歯科大学の教養学部の学生寮里見寮というところに捜索、差し押えをやったのであります。  その際のできごとでございますが、この捜索をやるのに関連して、かねてから赤軍派関係の者が出入りしておるという具体的な事実がございますので、警察としてはそれに備えて、千葉県の機動隊員を一部編成しましてこの捜索をやったのでありますが、その過程において、里見寮の中におった者たちが集まって来ましてがたがたと騒ぎ始める。しかもこの際に、かねて、いま申し上げました赤軍派の者が出入りすると同時に、この中に管理者の知らない、管理者の許可を受けないで不法に侵入しておる者がおる。それから一部赤軍の関係者じゃないかという者、そのほかに家出人保護願いの出ている少年が多数おるといったようなこと、そういうことがございましたので、約四十人ばかりの者が集まって捜索に抗議をしたのでありますが、この人たちのうち約三十名の人たちを——いやだという人はお帰りになったようでございますが、三十人の人たちに市川警察署に来ていただいて、そして職務質問を署においてやった。それは、相当大ぜいの人たちが騒然となっておる状況であったので、法規に基づいて職務執行の適切をはかるために、警察署へ入れてそして職務質問をしたということでございます。その結果、約二十人ぐらいの人は事情聴取が終わって帰ったのでありますが、あと十人ばかりの中で虞犯少年が一部家裁へ送られており、あとの五名は、先ほど申し上げました保護願いの出ておる少年であったので、これは保護者に引き渡しをしたということでございます。  この過程において、弁護士会のほうの主張では、いろいろ警察のやり方において違法なことがあったということでございまして、たびたび千葉県警に対しても調査の依頼をしましたが、私どものほうとしては、いまの過程において、その経過において、弁護士会のほうで御指摘のような事実はまだ認めておらないということでございます。それからもう一つ先ほども書面の中でたくさん御指摘がございますが、これも、調査した結果では、書面の中に御指摘になったような事実を、警察の側では詳細調査してございますけれども、それに該当する事実は私どもは認めておらないということでございます。
  161. 松井誠

    松井誠君 ですから、いつも警察は、調査をすれば、そういう事実はありませんというように、もう判こで押したように返事が返ってくるんですよ。そういうことが一体あり得ると思いますか。しかもこれは、いま千葉県の場合には、何も担当弁護士が調査したんじゃないんですね。人権擁護委員会調査をして、それで何とか警察に協力を求めて、ほとんど協力らしい協力は得られなかったという不満を述べておられますね。その結果、弁護士会が当事者から聞いた話というのは、およそ、三十名が任意の同行で署へ行ったなんというような、そんな白々しいことが言えるわけないですよ。それほど騒然たる中で三十名がどうして任意同行に応じますか。そうじゃないんですよ。手取り足取りトラックの中に積み込んだと書いてありますけれども、おそらくそういうことであったと思う。にもかかわらず、そういう事実はありません、ということになると、一体調査というものは何の意味になるのかということになる。そういうことをうのみに、警察署が言うとおりそのまま発表するから、チェックの機会というものはなくなってしまう。きわめてまれな、非常に立証に恵まれた幸運な事例だけが、警察官の凌辱罪というものをまれに成立をさせる。ですから、そういう警察署の体質そのものが変わらぬ限り、機動隊の体質が変わるわけないじゃないですか。しかも、いま言った四十五年というのはいろんな例がありますよ。  その中には実にこまかい描写が書いてある。大学院の法律専門の学生などというのは、実に経過を詳しく書いている、そういう手紙まできている。これは報告書の中に入っている。そういうものが、一体、全然あり得ないというところでつくりあげられる可能性というものはありっこないじゃないですか。それを、その現場の警察の士気に関するというようなことを言って、いいかげんにしておくものですから、士気というものが妙なほうに行ってエスカレートするんですよ。ですから、幾らこれやったって何にもならぬということになりますと、一体積もった不満というのはどこへ行きますか。そういう警察の、目撃したそのときにつかまえなければもう立証できないということになったら、一体どういうことになりますか。これは、警察庁が先ほどたいへんりっぱなことを言われたけれども、その何分の一かでもいいが、ほんとうに誠意があったら、いまのような答えが出てくるはずはないと思うんだ、ぼくは。そういう事実は一つもなかったということを、ほんとうに信じているんですか。
  162. 斉藤一郎

    説明員(斉藤一郎君) ただいまの千葉県の市川署の事件、それから書類で警告を受けました事件、さらにまだ実は、一連の関係で、神奈川県の稲田警察署においてやはりあの大菩薩峠というのがありました直後に似たような事件がございます。そしてこの場合も——これには先般浅間山荘でつかまった坂東国男というのが中におったのでございますが、これも同じようなことで明治大学の生田学生寮の外でもって、やはり千葉県と似たような事例がございました。  こういった事例、それぞれ相手方からいろいろ苦情がございますし、弁護士会のほうからも警告がございますので、私どもとしては、先ほど来申し上げておりますように、たとえ過激派の学生であっても人権を守って法律に準拠して仕事をすべきだという観点から、現場でもし行き過ぎということがあってはならないということで厳正な立場でこれを調査してみておりますが、いろいろ抗議があったり御指摘があったりしたような事実は認めることができない、いやしくもそういうことがあれば、私ども、ほんとうに警察が国民から信用を受けるための信頼、そのための大きな障害になるということを心から憂えておりますので、そういう事実があればこれは厳重に処分したいというふうに考えております。
  163. 加瀬完

    ○加瀬完君 関連。  いま松井委員が提示された、日弁連からの昭和四十五年六月二十三日の「警察官不当検問について」の報告書というのがありますね。この事実が全然ないというお答えでしたがね、ここに書かれているA、B、C、D……、多くのものの例は、うそをついているような内容でありますか。これが事実ないというなら、あるかないかをはっきりさせるまで、この火炎びん法案はわれわれのほうは再検討しなければなりませんよ。先ほどから松井委員が御指摘のように、火炎びん法案そのもの、賛成反対ということではなくて、これを扱う警察の扱い方にやはり問題があるということで質問が重ねられておった。そういう質問を重ねております根拠は、どうも過剰警備というか、検問なんかもう違法行為が非常に多いといういろいろわれわれは材料を持っておりますから、同じような筆法で火災びんの取り締まりをやられるならばこれは全く無法状態だ。ここに書かれておりますのは、この集会に集まった団体員ではありませんね、全くの第三者である。しかも法律の専門家の弁護士などもおるのであります。それがあり得べからざる仕打ちを受けておるのでしょう。そういう報告でしょう。それが事実ないというなら、この場合参考人に来てもらい、日弁連の代表に来てもらって十分にこの問題も国民の権利を守る意味において検討する。その保証がない限り、火炎びん法案なんというものを簡単に上げるわけにはまいりませんよ。  全く白々しいことを言っているけれども、私なんかも——具体的に申し上げましょうか。十五、六メートルの松の木の上に乗っていた者を放水車で振り落として、途中の枝につかまった者を今度は木をゆすぶって下へ落として、全治三カ月の重傷を負わしているじゃありませんか、成田の第一次執行で、警視庁で。そういうことを問題にしたって、一年たったって一年半たったって、ナシのつぶてだ。私どもが扱った問題でも、東京都の本州製紙というのの黒い水という事件があります。これは浦安の漁民方が大ぜい押しかけまして、警視庁はこれに暴行を加えました。しかし、その者は大なり小なりこの当時は処分をされましたよ、指揮官なり、実際の行動をした警察官は。このごろになりますと、どういうことをしても、知りません、存じません、そういう事実はありませんということでおおい隠したままで、これで警察が国民の信頼を得るということになりますか。私は警察を信頼したい。だから、あやまちは率直に改めて、少なくも国民の側に立って、いわゆる自治警察といわれた当時の、その自治の精神を失わないという態度を示してもらいたい。弁護士会から出されたこれを、知りません、一件も該当するものはありませんということでは、この審議はやめましょう。この問題が結着してから進めようじゃありませんか。そんなばかな話ありますか。あなた方は、ないど言うのだから、あるかないか、もう一回この人たち呼んで、確かに警察はそういう心配がありませんという保証だけを先に固めましょうよ。それを確立したら火炎びんに臨みましょう。火炎びんがわれわれ上げてやろうと思いましたけれども、そんな答弁では火炎びんを上げてやろうというわけにはまいりませんよ。保留ですよ。そういう心配がありますから重ねて松井委員が警備の問題で伺っておるわけですよ。一体調べたのですか。これを一々読み上げてもいいですよ。私はしろうとですけれども、やはりこの雑誌を見まして、あまりのことですからここへ書き抜いておいた。一体、検問というのは、どういう法律に基づいてどういう方法で行なわれることが常態ですか。その法律も、当然の検問に伴う行政的な立場というのを守っていないじゃありませんか。事実無根だというならそれは私の言っていることが悪いのでしょう。確かに無根ですか。無根なら無根、無根か無根でないかもう一回調べ直すことにひとつ警察も御協力くださいよ、どうですか。
  164. 斉藤一郎

    説明員(斉藤一郎君) 弁護士会の警告書の事案について、私、ことばが足りなかったかと思うのですが、警察としては、それぞれ警告書の中にある事案について、事実全然そういうことがないというのじゃなくて、それぞれ関係者の主張をこちら側についても調べたところ、関係者の間の主張に食い違いがあって、そうして人権じゅうりんといって警察がはっきり取り上げて責任をとるというような程度のものと判定しがたいものでございますということを申し上げたわけでございまして、その紛争の事案、いろいろ御批判を受け、御警告を受けるようなもとになった事案が全然何にもないということを申し上げたつもりじゃございません。市川署の説明でも稲田署の説明でも、先ほど申し上げたように、もとになる紛争の種になった事柄というのはございますし、あるいはまた、その間において、過程において、必ずしも百点満点のたいへんいいことをやっておるのだというふうに申し上げるわけじゃなくて、必ずしも適切でなかったかもしれないという反省、これはもう警告の御趣旨に従って十分やらなきゃならぬということを最初に申し上げておるのでございまして、どうか御了承いただきたいと思います。
  165. 加瀬完

    ○加瀬完君 ひとつこれは読みますよ。日弁連の警告書の内容一つですね。「私は去る昭和四四年九月五日午後二時四〇分頃、千代田区日比谷公園日比谷門付近において警視庁機動隊員多数が違法と思われる検問を執行しているのを目撃したので質問したところ、そのことで却って公務執行妨害の罪を犯したという理由で逮捕された。」、「当日、私は日比谷公園の日生劇場前の通称日比谷門を出て歩道上でタクシーを待っていたところ、同入口付近で機動隊員が隊列を作ってジュラルミン板を持ち入園者のバックや袋などを検査するため、いちいち停止させ、その中を開かせ、また応じない者に対してはみずから開いて手を中に入れるなどして所持品検査をしているのを見た。この状況を目撃したのであまりひどいと思い、機動隊員に近寄り「そのような検査は法律に基づいていなければ出来ないのではないか、若し許されるとしてもどのような根拠に基づいて検査をしているのか。」と尋ねたところ、機動隊員は「本日の集会の中には逮捕状の出ている者の参加も予想されるし、危険物の持ち込みも考えられるので検査をしている」ということであった。しかし私は「それにしても、一般通行者に対してまで、今あなたがやっている様な検査の方法はできないのではないか」と反問すると、その囲りの機動隊員四、五名が、すぐ私の周囲に集まり、口口に「何だ、何だ」「無用な口出しはするな」「お前は何者だ」といって、ちょっと身体を動かすと隊員の持っている楯にふれるような状態で囲まれた。そのうち私が後をふりむいたとき右足の靴先が前に立っていた機動隊員の持つジュラルミンの楯の下方に接触した。すると機動隊員が「蹴った」「公務執行妨害で逮捕する」と叫んだ。「私は公務執行妨害はしていない」というと機動隊員の一人が私の腕をつかみ、五、六メートル位引き出したところで「お前は何者だ」と再三しつつこく聞くので私は「身分など関係ないだろう、国民の一人である」と答えると「なんだ、なんだ」といって回りにいた機動隊員五、六人がまた私の身辺を取囲んだ。公園で口論したとき逮捕するといったのはジュラルミンの楯が接触した機動隊員ではなく、私の後にいた別の機動隊員であった。その機動隊員は私を実際逮捕することについては躊躇しているようすであったが、そばでトランシーバーを持っていた機動隊員が誰か上司を呼んだ。すると公園の中から一人出てきて機動隊員と話をしていたが「まあ、いいだろう」「逮捕しろ」といってその命令を受けた機動隊員が私のそばに来て「交番まで来てもらおう」といった。それからジュラルミンの楯の接触した機動隊員と一緒に私を日比谷公園入口の交番に連行した。交番で取調べを受けたとき、囲りにいた者から「馬鹿野郎」とか「貴様のような奴は」とかかなりひどい言葉で愚弄され、交番では「鞄の中を全部開けて見せろ」といわれて全部調べられた。私はそこで弁護士である身分を明かしたところ、私を連行した機動隊員が急に顔面が蒼白になった。私が相手の名前を聞くと「第四機動隊の玉橋だ」と名のったが、もう一人は名前もいわなかった。そのあと「麹町警察署まで来てもらう」というので「行く必要はない」といったが、私の主張を認めず、ジープに乗せられて連行された。同署では、所持品検査と氏名、職業等を問われ、機動隊員二人と一緒に写真を撮られた。そしてまた、「身柄は綾瀬警察署に移す」といわれたので「何故行く必要がある。行く必要はない」と抗議したが、取り上げられず、手錠まで掛けられた上、綾瀬警察署に移された。同警察署を出たのは九時一五分頃であった。本件によって私は七時間も身体を拘束され、かつその名誉を著しく侵害されたので、現在東京地方裁判所に損害賠償の訴を提起している」。  こういう訴えですがね、これは訴訟になっているということで、内容がどうこうということであれば、大同小異のことが何件も行なわれているではありませんか。荷物は強制的にみな調べられておりますし、それから身柄は強制的に拘束をされております。しかも、参会者だって問題でありますのに、一般通行人がこういう羽目にたくさんあっている。だから、あなた方のおっしゃるように、これは弁護士会とみぞがあるからそのみぞを埋める。弁護士会とあなた方の問題だけではありませんよ。国民の権利に関する問題です。こういう問題が通常のごとく行なわれておっては、当然火炎ぴんというのは、検問で調べられることになる、その検問は、火炎びん処罰法がなくとも、いまのような形で集会の検問が行なわれているのに、これは一般大衆が被害をこうむらないという保証はどこにもない。こういう検問にもかかわらず、警職法に抵触するようなことをやっておって何にも反省しない警察であっては、われわれあなた方を信頼するわけにはいかない。あえて私は一つ内容を提示して反省を求めます。
  166. 鈴木貞敏

    説明員(鈴木貞敏君) お答えいたします。  いまの御質問の件でございますが、御承知のとおり、四十四年九月五日の日比谷公園におきまする事犯につきましては、御承知のとおり、当時、非常に学生運動その他が激しゅうございまして、同日は全国から九千五百名日比谷公園に集まったわけでございます。その際に、多数の指名手配者が、全国で当時百十一名ほどの指名手配者がおりまして、それもこの集会に集まるというようなことでございますし、また、火炎びんその他の危険物搬入をするというようなこと、さらにまた、会場内で各派閥の争いがあるということが十二分に予想されましたので、先ほど来の御質疑の中にありましたように、各門で機動隊を中心にいたしました警察部隊が検問を実施いたしまして、そういうことのないように予防的な措置をとった次第でございます。で、また、お説のこの当日、御承知のとおり、それで指名手配でありました、当時東大の全共闘議長でございました山本義隆等二名をこの検問等で発見し逮捕しているというふうな事実もあったことも御承知のとおりでございます。  で、この際、いまおっしゃいました件でございますけれども、宮本——この中ではIということで書いてございますが、結果的には、この方が宮本弁護士さんであったわけでございますけれども、この状況は、当時こういったものをいただきましていろいろ調べたわけでございますが、ちょうど午後の二時四十分ごろでございまして、先ほど言いましたように指名手配被疑者の発見逮捕、さらにまた、火炎びん凶器類等の会場内持ち込み防止ということで検問を実施しておった際に、先ほど言ったようなかっこうで、君たちは何の根拠によってこのようなことをやる権限があるのかというふうなことで、どなりまして、同所に勤務中の機動隊員の一人に対しまして、たてをいきなり足げりにするということがございましたので、現行犯であったということで、現認しました小隊長がその人を逮捕したというふうなことでございます。しかし、その後、九月五日の同じ日でございますが、夕方の九時十分になりまして、身分もはっきりいたしまして身柄も釈放しております。二日後の午後になりまして書類送致をいたしまして、翌年の三月の十八日に起訴猶予処分になっております。さらにまた、宮本弁護士は、その後損害賠償請求を提起いたしまして、これは四十四年の十月十八日でございますが、十五万円の支払いを内容としまする損害賠償請求が提起されまして、現在の段階まで十四回の弁論がございまして、ほぼ証人関係の尋問は終わっておるようでございますが、まだ結審には至っておらない、こういうふうに聞いております。
  167. 加瀬完

    ○加瀬完君 学生運動や学生騒動が激しくて、この検問によって何名かの被疑者をつかまえたと、だから、その犠牲で何人かの無事の民がいろいろの人権侵害を受けてもしかたがないという理屈にはなりませんよね。また宮本さんは——この弁護士、私は知りませんが、という人で、これこれこういうことで係争中だということもこれは問題にはなりませんよね。この人、一人ならば、そういう弁明もたつでしょう、こういうこともあるでしょう。これは被害者のDという名前で出ていますね。やっぱり四十四年の十月、二名の機動隊員に呼びとめられて、持っていた黒いかばんの中を見せろと言われたので、中身を見せないと断わったところ、中身を見せないと帰すわけにはいかない、身分証明書を見せろ、こう言われて麹町警察署まで連行された。そして、かばんの中には、友人あて書いた手紙や母親あて書いた封書の手紙等三通と運転免許証、それにバスケットシューズが入っていた、全部外に取り出されて、手紙を封筒から出して読んで、それを別室に持っていってコピーをされた、こういう事実もありますね。こういう事実があると訴えられている。幾らでもあるんですよ。Hだってそうでしょう。「検問の方法は複数の警察官が制止し、荷物をとりあげて中を調べるというやり方で、各別に承諾を求め、意思を確認するという態度は全くなかった。私が任意捜査の限界を越える調査であると抗議すると「法律も知らんくせに邪魔するな」と再びこづかれ、橋の外に押し出された。」、「あくまで拒否しようとしたところ、二、三発殴打され荷物をとりあげられた。これに対しても抗議するとまた橋外に押し出され、「邪魔する奴はこうなるんだ」と数回殴られた。」、これは大阪ですね、こういう例が幾らでもある。どういう指導をしどういう監督をしているんですか。これはわれわれ目撃しているんですよ。
  168. 鈴木貞敏

    説明員(鈴木貞敏君) お答えいたします。  いま仰せの被害者Dという方の内容でございますが、この件も、これは十月九日の事犯であるようでございます。霞が関ビル方面へ向かう歩道上でのできごとである、こういうことでございますが、この件は一〇・二一——二日後でございますが、その闘争に備えまして、国会、官邸周辺を警戒した事実はございます。そういうことで二日前から警戒をしておった事実はあるようでございます。警視庁の麹町署においても十分調査いたしましたが、ここで言われているような、そういうとっぴ的な事実はないという調査結果でございます。  また、大阪の被害者Hの方でございますが、これは公務員の方であるようでございますけれども、これは一一・二六、いわゆる四十六年の十一月二十六日、中之島公園に通ずる橋の上でのできごとのようでございます。この件につきましても、大阪府警といたしまして種々調べましたが、これは当時千二百名ほど参加した全大阪の反戦青年決起デモというふうな日であったようでございますけれども、そういう言われているような事実は調査の結果出てこない、こういう結果でございます。
  169. 加瀬完

    ○加瀬完君 訴えている者は一人で、弁明する者は警察官全体ということになれば、あなたのような上司に報告があるかもしれぬ。じゃ、これはどうですか。  成田空港の第一次執行で、先ほど私が提示したように、松の木の上に登っていた者を放水車で落として、救急車で運ばないで、放水車の中にそのけが人をほうり込んで病院に運んだという事実はありませんか。
  170. 鈴木貞敏

    説明員(鈴木貞敏君) いまの御質疑は九月段階の第二次執行の際でございますか、それとも二月の第一次執行でございますか。
  171. 加瀬完

    ○加瀬完君 二月。
  172. 鈴木貞敏

    説明員(鈴木貞敏君) 二月一日の第一次執行の際の具体的なそういう事実は、私は詳細に承知しておりませんけれども、故意に落としたという、そういうふうな事実は私の記憶にはございません。
  173. 加瀬完

    ○加瀬完君 私が目撃しておったんですからね。それで大ぜいの方から訴えられておる。千葉県の担当官はそれを認めた。どうして運んだと言ったら、いま放水をした警視庁の機動車で病院へ運びましたという答えでした。これは、私が目撃してるんですから、いつでも私が証人に立ちますよ。この間指摘をしたように、機動隊の隊長が指揮をしている、塔を倒せと、登っている十人の者が少なくも何カ月かの重傷を負う、そういう状態を知っていながら、黙認しながら塔を引っぱっているのをそれを認めている。千葉県の本部長は、これは代執行の違法行為だというので訴えようとしたといわれておる。ところが、それがいつの間にかうやむやになってしまった。荒木さんの考え方正しいんじゃないですか、取り締まりは取り締まり、しかし、代執行者に違法行為があればその違法行為はやっぱり警察で摘発をする、送検をする、当然じゃありませんか。どこでとまったのですか、それが。こういうことばかりやっておってはわれわれは警察を信用することはできませんよ。まじめな警察官がばかみたい。そのことは別の問題としても、少なくもこの問題弁護士会から出された問題でも、それじゃあなた方は、弁護士の代表を呼べばあなた方の出されたような事実はございませんと、きっぱりとお答えできるんですな。
  174. 斉藤一郎

    説明員(斉藤一郎君) まず最初御指摘の成田の関係については、松の木からの件は、先ほど警備課長がお答えしたとおりでございますし、それから塔を倒した件については、前回、一昨日加瀬委員の御質問、ここでお答えしたつもりでございますが、目下、先日もお答えしたように、関係者について事情を聴取し、あるいは参考人、被疑者に当たると思われる者を調べて、そして鑑定に出しておる鑑定結果をまって、最終的な判定をして、立件送致しようという考えでおります。そういう過程でございます。  それから、当時、千葉の県警本部長がどう言ったかちょっと存じませんが、そのときの県警本部長は、いまも本部長をやっておりますので、警察としてやるべき措置はやるというふうに私信じております。  それから弁護士会から警告を受けました件については、先ほど来お答えしたように、詳細の個々の一つ一つの事案について、なかなか関係者の主張が必ずしも一致するわけじゃございませんが、大筋この中の警告を受けたようなトラブルがあったということ、これはもう否定するものではございませんので、警察の執行が適正になるために、いやしくも、御批判を受けたり御指摘を受けたり、そうして警察の執行が国民の信頼を失することのないように十分自戒し、あるいは末端まで徹底してこれを教育するという点に努力してまいる覚悟でございます。
  175. 松井誠

    松井誠君 いまの鉄塔といいますか駒井野、こういうように衆人環視の中でやったやつは、しかもその当時の新聞にもいろいろ疑問が持たれた、やり方が乱暴じゃないかと疑問が持たれたそういうのは、隠しようがないし、告発をされているということもあって、いまのような答弁が出てくる。しかし、そうでない、弁護士会が取り上げておるような、四十五年の六月に出ておるような、いわば一対一のようなやつはほとんど出てきたためしがない。いわんや、取り調べの部屋の中における拷問の有無などというものは、密室の中における問題であるだけにこれは絶対に出てこないですね。歴然たる傷があっても出てこないのです。そういうことで、一体警察に対する信頼というようなことを百ぺん言ったってむなしいことですよ。あれですか、四十五年の六月の警告に基づいて調査をした結果、何がしかの行政上の処置をとられたという警察官は一人もいないのですか。このとおりの事実があったかどうかは別として、多少やはり何か行き過ぎがあったというようなことで何がしかの処置を受けた方は一人もなかったのですか。
  176. 斉藤一郎

    説明員(斉藤一郎君) この書類に基づいて詳細調査しておりますが、処分をしたという者はございません。
  177. 松井誠

    松井誠君 それでは、私自身が多少関係をした問題でちょっとお尋ねをしたいのですが、それはもう申し上げてあるからおわかりでしょうけれども、ことしの一月の下旬に社会党の党大会、そのときに社会党の大会を混乱させよう、そういうグループがあるといううわさがあって、党のほうでは社青同の人たちが大会場のまわりを警備をしておる。そして靖国神社の境内の中に朝早くからいたわけです。たぶん二人か三人でしたけれども、それを機動隊が任意同行という名前で手を引っぱって、あの近所に大きな詰め所があるでしょう、そこへ連れていった。そのときに、結局帰ってきたわけですけれども、その中の一入は強度の近眼なんですけれども、めがねを取ってなぐられた。別に逃げ隠れしたわけでない。ちゃんと学生証を見せてはっきりしているにもかかわらず、なぐられた。そこで、私自身が警視庁に抗議に行ったわけです。そのときに、その時間からいって、あのときには何名かがグループで警らをしておったそうですから、それの隊長の名前だけは、いまのうちにはっきりしておいてくれと言って、警視庁のあれは警備部長ですか、にお会いをして、そういう注文をつけてきた。その後、事実をお調べになったと思いますけれども、そのときの責任者の名前とともにひとつ報告をしてください。
  178. 斉藤一郎

    説明員(斉藤一郎君) いまお尋ねの件は、大体御指摘のような経過の事実がございまして、いきさつは、昨年の暮れ、例の松本楼が焼けたあとでございますが、松本楼を焼いた直後、靖国神社も松本楼と同じように焼き尽くそうという過激派の連中の主張——演説その他でそういう主張が出てまいりまして、警察としては、靖国神社を松本楼のように焼かれてはまたこれは困るということで、暮れから靖国神社の境内の周辺を警戒しておったわけでございます。ところが、年が明けまして一月の二十八日——ただいま御指摘がございました当時、同じように靖国神社の警備に警視庁の警察官がついておったところ、一月の二十八日の午前八時十五分ごろ、二人の学生風の不審な者を、警察官側からいうと不審な者を北門の付近で発見したので質問をしたところ、関係がないんだということで逃げるそぶりをされた。そこで、この人たちに、先ほどお話があったように、住所、氏名、行き先というものを質問しておったところ、一人の方は法政大学の学生の何のたれがしであるということをおっしゃったようでありますが、もう一人の方が下をうつむいて答えなかったということで、そうして、結局そのまま過ぎたわけでございますが、その過程において、警察官がめがねをこづいてとってしまった、こづいた、そして、めがねがはずれたということでございます。これについて、いまお話がございましたように、その日の午後三時、警視庁の警備部長のところへ松井先生御自身がおいでになって、そうして抗議をしておられますが、警視庁ではその経過について調べたのでございますが、いま申し上げたような経過でもって、乱暴して、顔をぶんなぐって、めがねがはずれたということはないということが調べの結果なっております。当時、そういうことで現場においてたいへん厳重な警戒をしておって、少し疑いが過ぎた、何でもない人を結果的にそうやって疑ぐったということは、まとに今後教訓として反省しなければならぬ。その責任者については、これは麹町の警察の管内で、麹町署長がすべて責任を持ってやっておることなのでございます。
  179. 松井誠

    松井誠君 責任者というのは、現場の責任者のことを言っているんです。形式的な責任者でなしに、現場におって引率をした責任者、これは私は許せない。というのは、乱闘になった、そういうときでは全然ないわけです。その詰め所の中に連れていかれて、めがねをとって、いきなりばーんとやったというんですから弁護のしようがないんです。そういうわかったものだけはきちっと責任を追及したい。いいかげんにほうっておきたくないんです。問題は、抵抗しなかったこうしたものを、はっきりしたものを一つでものがすと、もっと大きなやつが逃げてしまう。そういう意味で、私は、あの当時の時間からいえば交代時間わかっているんですから、責任者の名前わかるんです。一人か二人自分で名前を名のった人がいたそうです。それは当時の社青同の人に聞けばわかる。しかし私は責任者を明らかにしたい。それはあくまでも調べてください。  それから、いまも言われたけれども、めがねをとってなぐったことはない、確かにそのときそう言われました。しかし、あまり下を向いておるので、もっと顔をあげろと言って、あごをこうやって上に持ち上げたというのですね。そのことは、警察自体、警備部長がたぶん言われたですよ。とにかくそう言われたことは、少なくともからだにさわったということだけは認めた。  そこで、私は非常に奇異に思うのですけれども、まず、この弁護士会の例の警告の中にも、この質問の大学生について、やはり上を向けといって、あごをぐっと押し上げたというくだりがある。そういうことが日常茶飯事行なわれておるわけですか。そういうことが取り締まりの中で合法的だとされておるのですか、簡単にからだにさわるということが。
  180. 斉藤一郎

    説明員(斉藤一郎君) ただいま御指摘がございましたように、私がさっき答弁したような状況——さっきというか、先ほど団体行動の取り締まりについてお答え申し上げたように、たいへんエキサイトして、大ぜいが混乱の中において、執行が適切でなかったという場合と違いまして、こういう二人の、たった二人の、靖国神社の中の境内における二人を疑い過ぎて、そしてその処遇がよくなかったということ、これは十分反省しなければならぬと思っております。  それから、からだにさわることについては、これは、いやしくもわれわれの職務の遂行の過程において、法律に十分な根拠なしに相手方のからだにさわる——法律上許される範囲内でさわるということ以外にはしてはならないことでございまして、その点の限界などについても、教育を十分してまいりたいと思っております。
  181. 松井誠

    松井誠君 ですから、そのときに、からだにさわったときのきっかけとしては、もっと顔を上げろといって、本人は抗議の意思表示もあって、何か聞かれたけれども黙っていたというのですね。そうしたら、本人に言わせると、めがねをとれといって、ぱんとなぐられたということですが、警斉の言うところでは、顔を上げろといってあごをぐっと持ち上げた。少なくともからだにさわったという共通の土俵ができたということで、私は笑って帰ったけれども、少なくとも、そういうことなら許されるのですか、そういう状況で。つまり顔を上げろといってからだを、あごを持ち上げることは、日常茶飯事なんですか。
  182. 斉藤一郎

    説明員(斉藤一郎君) 原則として、そういう日常の茶飯事というようなやり方ではございませんが、個々の場合について、一がいにちょっとお答えしかねるのでございまするけれども、さわらなくて済めばこれはまあ一番いいんでございますが、法律に基づいて仕事をしておる間にさわるということも、状況によっては、個々のケースによってはあり得るというふうに思っております。
  183. 松井誠

    松井誠君 そんなことを言っているからだめなんです。右を向いているやつを左向けといってぐっと首を曲がらせる、そんなことが簡単にやれるのですか。そんなことを簡単に認めるからだんだんエスカレートしてしまう。からだにさわることを何とも思わなくなってくる。からだにさわりたくてしょうがないけれども、さわれないから机をどんとたたいておどかすとか、それは私はがまんできます。しかし、からだにわさることは大問題じゃないですか。下向いていようと、横向いていようと、自由じゃないか。黙否まである。なぜ上を向けといってあごを上げるのですか。そういうことはいけないと即座に言えないということがおかしいのです。そうじゃないですか。
  184. 斉藤一郎

    説明員(斉藤一郎君) 先ほど来申し上げておるように、いやしくも人権を尊重する立場からいって、からだにさわらないというふうにいたすべきでございますし、その点について、一般の方の人権を侵すことのないようにすべきだというふうに思っておりますが、職務執行の過程でやむを得ず法律に許されるさわり方でさわる場合が絶対にないということは申し上げられない、ケースによって判定するよりしかたがないというふうに思っております。
  185. 松井誠

    松井誠君 くだらぬことに時間を使いたくありませんけれども、警察の言うとおりであったとしても、下向いているから上向けといってあごを上げたというのでしょう。下向いたまましゃべってはいけないかということなんです。そういう理由ならさわってもいいかということなんです。
  186. 斉藤一郎

    説明員(斉藤一郎君) まあ前提がいろいろあると思いますが、その状況によって、先ほど来申し上げておりますが、原則としてそういう何でもないのにあごをさわって、上向けと言うのは適当でないと思います。
  187. 松井誠

    松井誠君 私は、あごにさわったといったことの重大性をほとんど意識していないようだから私にしゃべったし、したがって、しゃべった結果について、その真否もろくに確かめるすべもなかったというふうに思わざるを得ない。しかし、私はそれを重要にとったのです。ですから、どういう経過で、どういうわけでそういうふうにさわったのか。繰り返しますけれども、事案としては小さい。過剰警備としては全く小さい。しかし、そういう芽をつんでいかなければ私はだめだと。そういう意味でやはり責任者の名前をはっきりさせてください。そして、その経過をもっとはっきりさせてください。私は、持ち時間があまり超過すると悪いのでありますので、この辺でやめますけれども、率直にいって、最近いろいろな形で騒動がエスカレートしている。なぜ、一体若者がこういう形になって出てくるのかという、そういうことがちっとも問題にされていない。これはあなた方にいま言ってもしようがないことですが、しかし、ぼくはやはり日本の付近に戦争があり、硝煙のにおいのする間は、若者の心がおさまるわけはないと思うのですよ。それがいろんな形でふき出してくるわけです。そういうものを言わばそのままにしておいて、出てくる芽だけつもうというのですから、無理が生ずるのはあたりまえなんです。ですから、その辺の限界といいますか、そういうことを、やはり取り締まり当局も初めから考えておいて、取り締まり万能であって、権力で押えさえすれば何とでもなるというような考え方が、全体を悪化させておる一つの原因だと。全部だとは言いませんよ、だというそういう意味では、やはり限界なり本質なりというものはちゃんと意識をすべきだと思います。そういう意識なくして火炎びん法律を使うと、まさに火炎びん以上の私は暴力になる、そういう危惧を非常に強く抱くんです。それだけ申し上げて、私のきょうの質問を終わります。
  188. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 法務省の刑事局長、あるいはそれに聞いたほうがよかったかと思いますけれども、いま、何か予算委員会に入るからということで、出て向こうにいきましたから、警察庁の刑事局長にお聞きしますけれども、先ほどから、いろいろ、あなた方なりまた、法務省の刑事局長からいろいろ御答弁があったので、わかったような気もするけれども、どうもはっきりせないようなふうな気もするので、あらためて、ここでお聞きしますが、凶器準備集合罪は、二人以上が必要であると。そこで、一人の場合には、二人以上で凶器準備集合罪が成立する。同じ品物を持っておっても、一人の場合には犯罪が成立せないことがあるんだというふうにさっき説明されて、まあ私もそうであろうかとも思うが、そこまでよく調べておらないが、そういうふうな気もするんですが、そこで関連いたしまして、これは本件の第三条の二項に関連するわけですね。一人でガソリン、それから灯油その他引火しやすい物質を入れた品物を右手に持っておる。それから今度は左手に、装置または点火物を左手にさげている、一人の人ですが、その場合には、三条の第二項がなければ成立せない。すなわち、罰することが全然できないのかどうかという点が一つと、それから、ただこれはもちろん一人の話でありますが、三条二項の適用によって、発火装置または点火物だけを持っておった、その人には適用がないのかどうか。いわゆる三条二項の適用はないのかどうかという点について、二点だけお聞きします。
  189. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 凶器準備集合罪の問題につきましては、これは明白に法文は「二人以上の者」云々ということになっておりまして、もともとは、この間も佐々木委員から御指摘になりましたけれども、暴力団が凶器を持って集まっておるというのをたたくというところが、この規定の発想でございました。そういうふうに集合しておる者をたたくということを要件にしている。したがいまして、一人で火炎びんを持っていても、これはこの規定の対象にはならないということになると思います。それから、二つ、こう片手にガソリン、片手に発火装置、こういうことになれば、これは三条二項の適用ということになると思います。一項はやはり完成した火炎びんを持つということ、完成した火炎ぴんというのは、発火装置と点火装置とがくっついたものですから、一項ではできない。やっぱりそれは二項である。その場合、たとえば片手に発火装置を持って、片手にガソリンを持っておると、こういうことになれば、これはもう「火炎びんの製造の用に供する目的」という認定は非常に容易であろうというふうに考えます。それから発火装置だけを持っておると、これは先ほど辻局長も説明しておりましたけれども、それは三条二項の対象にはならないと、燃える本体だけを押さえるというのが三条二項の目的だというふうに、こういうふうに私ども理解しております。
  190. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 私お聞きしたのは、同一人で——同一人というのは、右手にガソリンとかそういうものを持って、左手には発火装置を持っておる場合に、三条の二項がなければ処罰対象にならないかどうかということをお聞きしているんです。
  191. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 三条二項がなければ処罰できないと思います。
  192. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 はい、けっこうです。
  193. 加瀬完

    ○加瀬完君 この前、火炎びん取り締まりについての警備側の基本姿勢といいますか、伺ったわけでありますが、どういう基本的な態度でおやりになるかと、これは文書か何かでお答えをくださいますか。あしたでけっこうです。
  194. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) まあこの法案が成立すれば、当然私どもとしては施行までの準備の期間が二十日間ございますので、立法の趣旨、あるいは審議の経過における御意見の数々、それから決議がすでに衆議院でもついておりますけれども、そういう決議の趣旨というふうなものもあわせまして、これについて第一線に対して通達を出すと、こういうことになると思います。さらにその細部の点については、またいろいろ機会をつくって説明を十分にして、趣旨の徹底をはかりたいと、その場合の骨子として、先ほど、こういうふうなことを認定の基準と申しますか、認定にあたっては考えたいと、そして、いやしくも善良な一般市民に迷惑のかかることのないように厳に注意してもらいたいと、こういうことを周知徹底をはかってまいりたい、その中身先ほど私大体申し上げたものでございます。
  195. 加瀬完

    ○加瀬完君 それは聞き漏らしましてどうも恐縮でした。それでは、その御説明になった中身と、それからさらに周知徹底をさすべき内容の概要でけっこうですから、あした文書でひとつ各委員に手元に届くように、委員長にもお取り計らいをいただきます。
  196. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) おとといの御質問で、それでいろいろ検討いたしまして、大体の骨子を考えて、やや抽象的ですがっくりました。それにつきまして、その内容は御要求がございますれば文書で差し上げます。
  197. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) 本案に対する質疑は本日はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十四分散会