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1972-05-23 第68回国会 参議院 農林水産委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年五月二十三日(火曜日)    午前十時十七分開会     —————————————    委員の異動  五月十七日     辞任         補欠選任      向井 長年君     中村 利次君  五月十八日     辞任         補欠選任      山田 徹一君     塩出 啓典君      中村 利次君     向井 長年君  五月二十三日     辞任         補欠選任      塩出 啓典君     山田 徹一君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         高橋雄之助君     理 事                 亀井 善彰君                 中村 波男君                 前川  旦君                 宮崎 正義君     委 員                 梶木 又三君                 河口 陽一君                久次米健太郎君                 小林 国司君                 温水 三郎君                 初村滝一郎君                 堀本 宜実君                 山崎 五郎君                 川村 清一君                 工藤 良平君                 辻  一彦君                 戸叶  武君                 村田 秀三君                 向井 長年君                 塚田 大願君    国務大臣        農 林 大 臣  赤城 宗徳君    政府委員        環境庁水質保全        局長       岡安  誠君        農林政務次官   佐藤  隆君        水産庁長官    太田 康二君    事務局側        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君    説明員        科学技術庁原子        力局次長     大坂 保男君        厚生省環境衛生        局乳肉衛生課長  神林 三男君        運輸省港湾局技        術参事官     大久保喜市君        海上保安庁警備        救難監      貞広  豊君        郵政省電波監理        局無線通信部長  大塚 次郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○漁港法の一部を改正する法律案内閣提出、衆  議院送付) ○漁業協同組合整備促進法を廃止する等の法律案  (内閣提出衆議院送付) ○中小漁業振興特別措置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  漁港法の一部を改正する法律案漁業協同組合整備促進法を廃止する等の法律案及び中小漁業振興特別措置法の一部を改正する法律案、以上三案を一括して議題といたします。説明は前回聴取しておりますので、これより質疑を行ないます。質疑のある方は、順次御発言を願います。
  3. 辻一彦

    辻一彦君 私、きょう漁業三法についての各論にまで入らなければ、総論的な質疑を行ないたいと思います。  まず第一に長官にお伺いしたいと思いますが、日本漁業が、漁業白書を見ますと、その生産額におきましては世界の第二位、しかし、実質的な金額においては世界一と、こういうふうに出ておりますが、どういうことによって世界の実質的にいえば第一位になったのか、それからネックとして非常に多くの問題をあげておりますが、今後重点的に、これから日本漁業規制する大きなネックとしてどういうことが考えられるか、この点をまず最初に長官から伺いたいと思います。
  4. 太田康二

    政府委員太田康二君) 御承知のとおり、わが国海洋国家でございまして、昔から沿岸漁業による漁獲沖合い遠洋による漁業漁獲があったわけでございますけれども、最近におきます生産を見てまいりますと、どちらかと申しますと沿岸停滞気味で、やはり沖合い遠洋が伸びておるというような状況にあるわけでございまして、御承知のとおり、本年度白書でも明らかにいたしましたとおり、四十五年の生産は九百三十一万五千トンということになったわけでございまして、鯨等を入れますと、大体生産額で約一兆円に相なった次第でございます。まあ漁獲高で申しますと、ぺルーが御承知のとおり、アンチョビー等生産がございまして、たしか千二百万トンぐらいの漁獲量をあげておると思いますが、わが国は御承知のとおり、多種多様の中高級魚、多獲性大衆魚、多数の漁獲をあげておるのでございまして、そういった意味では実質的に世界第一位であるということを申し上げておるのでございます。ただ、最近におきましていま辻先生がおっしゃいましたように、国際漁業規制というものが漸次強化をされてまいりまして、資源保護のために世界各国は、関係国が条約を締結いたしまして資源保護中心とした漁獲の抑制というようなことを、漸次強化をいたしておりますし、後進国等におきまして、最近におきましては、漁業専管水域あるいは領海を二百海里というようなことで、漸次何と申しますか、先進国の従来の漁獲を抑制するような動きが出てまいっておりましたが、国内的に見ますと、沿岸におきましては、漁場がやや公害による汚染によって生産力が落ちておるというような問題もございますし、これは遠洋沖合い沿岸を通じての問題でございますが、若年労働力が流出して労働力老齢化、女性化している、農業と同じような現象が出ておりまして、なかなかきびしい現状にあるわけでございます。こういった現状を踏まえまして、私どもといたしましては将来に備えまして、御承知のとおり、昨年水産資源開発促進法を制定をいたしまして、沿岸につきましては増養殖事業振興ということを中心に政策を進めてまいり、沖合い遠洋につきましては、水産資源開発センターによる新漁場開発ということによりまして、国民の必要とする動物性たん白を供給する側に立っての水産業の確立ということを目ざして今後も努力を続けてまいりたいと、かように存じておる次第でございます。
  5. 辻一彦

    辻一彦君 いま伺うと、日本漁業というものが、一つは沿岸においては公害、あるいは工場の排水からくる、こういうものによる漁場汚染というか、それから遠洋漁業といいますか、国際漁場においてはいろんな沿岸諸国あるいは開発途上国規制を受けている。国内では若年労働力の流出というか、老齢化ということが言われますが、そういう状況の中で基地漁港強化をして中小漁業近代化をはかろうと、こういう方向が見出されている。こういうふうに私、受けとめているわけです。そこで第一点は、まず漁業中心基地は、漁港の問題になろうと思いますが、若干私、漁港の問題から入りたいと思うわけです。昨年九月に金沢全国漁港大会があって、私もそれに出席をしてごあいさつ申し上げたのですが、そのときに全国漁港関係の方からいわゆる特定三種の港については、漁港については、公共性という点からいっても、七五%まではどうしても補助率を上げよという非常に強い御要望があり、長い間懸案であったわけですが、とにもかくにも七〇%ということに一応なったわけですが、いままでそれだけの大事な特定三種漁港がなぜ六〇%に低迷をしておったのか、あるいはそれが七〇%にとどまったのか。それらの点をまず伺いたいと思います。
  6. 太田康二

    政府委員太田康二君) 御指摘のとおり、特定三種漁港につきましては、特定三種漁港法律でもはっきりきめられておりますように、第三種漁港のうち特に重要な漁港ということで現在十一港あるわけでございまして、昭和四十四年の漁港法の第四次漁港整備計画策定の際に、三港加え現在十一港になっておるわけでございます。実は特定三種漁港につきましては、旧年来その補助率引き上げという、国庫負担率引き上げ要望が強く出ておったわけでございまして、われわれといたしましても、その努力を続けてまいったのでございますが、従来どちらかといいますと、事業量の確保ということに追われまして、補助率国庫負担率引き上げということが実現をしなかったということであろうかと思います。それと政府の方針といたしまして、原則として公共事業費補助率引き上げを行なわないということが、毎度閣議で決定されるという経緯もございまして、われわれとしても何とか国庫負担率引き上げをいたしたい、まあ業界からの強い要望もございますので努力はいたしたのでございますが、いま申し上げましたような事情で、従来国庫負担率引き上げ実現を見なかったのでございます。  そこで、今回法律改正をお願いをいたしておりますのは、外郭施設水域施設につきまして、特定三種漁港国庫負担率を百分の六十から百分の七十にいたしたのでございますが、この点につきましても、実は、われわれの要望は、業界の御要望も受けまして百分の七十五ということで大蔵省とも折衝をいたしたのでございますが、最終的には百分の七十ということになったのでございます。これらにつきましても、私どもといたしましては、他の類似公共事業との関連というようなこともございまして、やはり同種の公共事業といたしましては、御承知のとおり港湾事業があるわけでございまして、これがこの横になるというような関係もございまして、不十分ではございましたが、かねて懸案国庫負担率引き上げということの実現をみたという経緯でございます。
  7. 辻一彦

    辻一彦君 いまの御発言の中に、基本施設の中で係留施設が据え置きになったということがありますが、これはいままでは同じ比率であったのが、なぜこれが据え置かれたのか、それから、これがこれからどういう見通しなのか、その点をお伺いしたいと思います。
  8. 太田康二

    政府委員太田康二君) 今回の特定三種漁港の国の負担割合引き上げ措置は、もちろんその整備を円滑に推進するためということで、漁港施設のうちで特に公共性が高い、かつ整備に多額の費用を要するという点に着目いたしまして、先ほど申し上げましたように、外郭施設水域施設についての国の負担割合引き上げる、これによりまして地元負担の軽減をはかるということになったのでございます。  そこで御指摘係留施設につきましても、その施設の持つ役割りたいへん重要であるということは論を待たないのでございますが、まあ私どもといたしまして、ある程度重点をしぼりまして今回の措置を講じたのでございまして、将来の問題といたしましては、私ども当然係留施設あるいは機能施設等につきましても、国の負担率引き上げというような点につきましては、検討すべき問題であるというふうに理解をいたしております。
  9. 辻一彦

    辻一彦君 この六〇%から七〇%に引き上げることによって特定三種漁港に対する国庫負担金増は大体総額幾らくらいになりますか。
  10. 太田康二

    政府委員太田康二君) 本年度事業といたしましては、三億強というふうに了解をいたしております。
  11. 辻一彦

    辻一彦君 負担増は三億強ですか。まあ非常に漁港法改正と名を打って補助率が一〇%上がったというので、非常に通常聞くとえらく上がったように思う筋もありますが、たった三億円ぐらいしかふえてないということは、私は世界一の生産額を実質的に持ち、これだけ周囲を海に囲まれているその重要な漁港の十一港に対して、わずかに国庫負担増が三億円というのは、どうもあまり内容的に貧弱に思うのですが、これはどうですか。
  12. 太田康二

    政府委員太田康二君) 私どもといたしましては、第四次漁港整備計画に従いまして計画的に漁港整備をいたしておるのでございますが、特定三種漁港につきましても、それぞれの年次計画があるわけでございます。先ほど申し上げましたように、外郭施設水域施設国庫負担率を百分の六十から百分の七十に引き上げることによりまして、全体として特定三種漁港予算額が四十二億八千万でございますが、そのうち外郭水域施設が二十七億五千九百万ということでございまして、先ほど申し上げましたように、国庫負担率引き上げによりましての国費の増は、三億六千万ということになっておる次第でございます。
  13. 辻一彦

    辻一彦君 まあ一〇%上げれば、計算では三億になるんでしょうが、これは二けたぐらい違ってもいい数字じゃないかと思うんですよ。この漁業の重大ないま時期において法改正して、これだけの審議をして三億というのは、どうもちょっと残念な気がするんですが、いまの長官発言のように、これはもう少しけたを上げるようにがんばってもらいたいと思います。  そこで、昨年も、私、いま申し上げたように、金沢漁港大会特定三種とあわせて第三種漁港、しかもその第三種漁港はかなり漁獲高が、水揚げが上がり、公共性も非常に強い、全国から船が集まると、こういうことで、特三に準ずる港がかなりあるように思うんですが、第三種も非常に重要と思いますが、これは発足以来五〇%どまりで、一回も引き上げがなされていないわけなんですが、これらについてなぜ、これが上げられないのか、あるいはこれからの見通しといいますか、どうする考えか、その点をお伺いしたい。
  14. 太田康二

    政府委員太田康二君) 御指摘のとおり、第三種漁港の国の負担割合につきましては、現在百分の五十ということになっておりまして、昭和四十年度に第一種及び第二種の補助率が百分の四十から百分の五十までに引き上げられたということもございまして、実質的には同率と相なっておるということでございます。第三種漁港の国の負担割合引き上げにつきましても、かねて業界方面から強い要望があることは、われわれも十分承知をいたしておりまして、従来とも検討を続けておるのでございますが、他の類似公共事業との関連、あるいはまあ、さしあたって極力事業促進につとめるということで、まあ今日まで補助率国庫負担率引き上げということの実現を見なかったのでございますが、先般この法案の審議過程におきまして、衆議院におきましても、第三種漁港国庫負担率引き上げというようなことにつきまして、政府がぜひ実現をしろというような決議もいただいておりますし、われわれ現在第四次漁港整備計画実施中でございますが、四十四年から四十八年ということになっておりますが、大体四十七年度予算の実行を見ますと、計画に対しまして七一・四%の進捗率に相なるわけでございます。  そこで、最近におきますところの、何と申しますか、漁船大型化の問題あるいは漁獲物生産増大の問題、それから沿岸におきましては、増養殖が非常に四十四年当時と比較いたしますと振興されたというような問題もございまして、できますれば、私どもといたしましては、昭和四十八年度を初年度とする昭和五十二年の第五次の漁港整備計画明年度予算にはぜひ実現をいたしたいということで、現在内々検討をいたしております。その過程におきまして、第三種漁港の国の負担割合引き上げというような点につきましても、附帯決議趣旨もございますので、十分前向きに検討をしていきたいというふうに考えております。
  15. 辻一彦

    辻一彦君 これは、まあ何日間かこの委員会においても十分論議されることでありますから、いろんな意見があとから出ると思いますが、ぜひ明年度に向けてがんばってもらいたいと思います。  そこで、私は日本海側になるんですが、日本海沿岸をずっと見ると、全国特定三種漁港が十一港あって、浜田だけが日本海の側に特三としてありますが、あと日本海側に残念ながら特定三種が、一港浜田以外にはないわけなんですね。漁獲量の全体あるいはその入港する船のトン数や隻数、いろいろなまあ私は基準があろうとは思いますが、日本海沿岸における漁業重要性から考えて、やはり将来この日本海側における第三種特定三種指定拡大する考えがあるかどうか、その点はどうですか。
  16. 太田康二

    政府委員太田康二君) 特定三種漁港は、現在全国で十一港ということは先ほど申し上げたとおりでございまして、   〔委員長退席理事亀井善彰君着席〕 日本海側は、四十四年度の第四次漁港整備計画の際に浜田港を追加指定をいたしたのみでございまして、それ以外には日本海側には現在のところ特定三種漁港というのはないわけでございます。しかし、先ほども申し上げましたように、四十四年度におきまして第四次漁港整備計画を立てました以後におきましての漁業情勢変化もございますし、漁港整備推進等によりまして水揚げ量が非常に増加しておるというような港も中にはあるわけでございますので、こういった何と申しますか港の状況進展等もあわせまして、私どもといたしましては、法に定められたところに従いまして、今回第五次の漁港整備計画を立てますときには、一応特定三種漁港につきましての基準等もあるわけでございますから、これらをにらみ合わせまして、これにつきましての基準に該当するものにつきましては、新しく指定をするというような方向で、現在検討いたしておる次第でございます。
  17. 辻一彦

    辻一彦君 この特定三種漁港選定基準というのは、四十年一月三十一日に漁港審議会で決定していますね。これを見ますと、「次の各号に該当する」という幾つかあって、それを「原則とするが、」と区切って水産業振興上の地域的重要性漁港の将来性を総合勘案して決定するとありますね。そうなりますと、各号として一、二、三とあがっておりますが、これに厳密に適合——まあちょっと距離があっても、地域的な水産業重要性ということになれば、日本海側には少なくも全国十一のうち幾つかこれからふやさるべきであるし、それから漁港の将来性ということになれば、どうしても瀬戸内海等があれだけ水が荒れてくるという中で、やはり日本海における漁業の将来というものは、かなり拡大をしていく可能性も私はあると思うんですが、そこらの点も勘案すれば、厳密にこれにびっしり合わなくても、これに近づきつつあると、そういうふうな条件に該当すれば特三に指定される用意があるのかどうか、その点どうですか。
  18. 太田康二

    政府委員太田康二君) 当然、特定三種漁港選定につきましては、いま御指摘のとおり、一応一号から三号までの基準があるわけでございますが、水産振興上の地域的な重要性及び将来性を総合勘案して決定するというような何と申しますか、原則に対する例外規定もあるわけでございます。現に、この一号から三号までの基準にほぼ該当いたしておる漁港も、たとえば鳥取県の境港等があるわけでございます。従来特定三種漁港指定という問題につきましては、まあ漁港整備計画の改定の際に実施をいたしておりますので、いま申し上げたような趣旨十分勘案をいたしまして、私どもといたしましては、四十八年度にまあ私ども計画では、第五次漁港整備計画を立てたいと考えておりますので、その際、前向きに対処してまいりたい、かように存じております。
  19. 辻一彦

    辻一彦君 まあすべては、その第五次にあるよですが、前向きはここだけに終わらずに、具体的な実現の中でぜひひとつ考えてもらいたいと思います。  そこで、先ほど長官からも発言がありましたが、この基本施設機能施設バランスというものが非常に大事だと思うんですが、この機能施設のほうへの助成というものが、まあ漁協の単独でやるような場合にあまりされていないようですが、この間、私、焼津のほうに行ったんですが、この焼津水揚げがあるいは金額においては一番大きいという理由には、これはまあ専門で御承知のとおりと思います。それは加工施設背後にあって、わりと魚価が加工のために安定をするというので、多くの漁船が、県内に限らず遠く各地から集まってここに水揚げをすると、こういうものが水揚げの増加、いわゆる水揚げ量の第一という原因になっておるということを見たわけなんですね。しかし、あの焼津においてもこの港の発展した経路から考えて、おかのほうに拡大をしていくということは非常にむずかしいと、そうなると海をかなり埋め立てて、そこに加工施設等をつくる、こういうことによっていわゆる漁港と、基本施設機能施設バランスがとれた発展が期せられると、こういうことに私はなろうと思うんですね。そこで、焼津等ではああいう埋め立てによる加工施設充実ということをどうしてもやりたい。それには、埋め立てには二百五十億ぐらいの膨大なお金がかかるということを計算をしておりましたが、こういうことについて、現在の制度では、融資とかあるいは助成とか、こういう方法があまりないように聞いておるんですが、どういうこれからの見通しを、これらに対して持たれるか。せっかく魚がとれても、こういう加工施設や、そういうものが伴わないと十分な成果が上がらないと思うんですが、その点の考え方を聞きたいと思います。
  20. 太田康二

    政府委員太田康二君) いま御指摘になりましたような焼津等につきましては、やはり流通拠点でもあるというような意味で、加工施設充実が強く要求されることは事実でございまして、特に私どもといたしましては、第五次の漁港整備計画を立てますときには、先ほど申し上げたような漁船大型化、あるいは漁獲量増大ということと合わせて、集中水揚げに伴いますところの漁港につきましては、特にそういった流通拠点であるというような観点から、その整備を進めなければならないというふうに考えております。そこで、現在の補助の体系で申し上げますと、基本施設のほかに、機能施設のうち公共性の高い輸送施設、あるいは漁港施設用地につきましては、漁港整備事業として補助対象といたしておるのでございまして、特にこの場合、漁港施設用地につきましては、いま御指摘のように、背後地がないような場合には、埋め立てによって実施される場合が多いわけでございますけれども、これらにつきましては、漁業協同組合が維持運営するような加工施設敷地、いわゆる加工場敷地等につきましては、公共施設用地といたしまして補助対象といたしておるのでございます。  このほか、漁港管理者単独事業として実施するというような埋め立て事業に対しましては、別途、起債による財源措置というものを講じておるのでございます。だから、拠点的な、流通拠点になるような漁港につきましては、いま言ったようなことで対処をいたしてまいりたいというふうに考えております。それ以外の、漁港の持ちますところの機能といたしまして、当然流通のセンター的な機能もあるわけでございますから、これらにつきましては、軽微なものにつきましては、沿岸漁業構造改善事業等による助成もございますし、それから流通の主産地形成事業というような事業実施いたしておりまして、これらによりましての施設助成等の道も講ぜられておるわけでございますから、事業実施にあたりましては、いわゆる基本施設整備とあわせまして、そういった事業が同時に行なわれるような、何と申しますか、事業実施体制整備してまいる必要があるというふうに考えております。
  21. 辻一彦

    辻一彦君 その問題は、若干あと関連するところがあるからまた、触れたいと思います。  そこで、第四次の計画最終年度は四十八年度と思ったんですが、それを待たずに打ち切って、四十八年度から第五次に入る、そういう計画が立てられようとしておるわけですが、そこら辺の経過といいますか、いきさつというか、それは、四次の最終年度を待たずに、さらに計画をして第五次に入るその理由というか、そのいきさつというものは、どういうことなのか伺いたいと思います。
  22. 太田康二

    政府委員太田康二君) 先ほども申し上げましたように、昭和四十四年から四十八年までの五カ年間の第四次漁港整備計画というものを昭和四十四年にお立てをいたしまして、国会の承認を得て計画を樹立いたしたわけでございますけれども、その後におきますところの、何と申しますか、情勢変化、特に漁獲量が非常に増大をいたしておるというようなこと、さらには漁船大型化が顕著になっておるというようなこと、それから、先ほど申し上げましたように、漁港生産基盤の施設であると同時に、特定三種漁港等の大きな漁港におきましては、流通拠点としての役割りを果たしておるというようなこと、さらには、最近におきましては、増養殖事業沿岸におきましては、非常に行なわれておるというようなこともございまして、これらとの関連におきましての漁港施設のあり方というような問題が、最近におきましては四十四年度の当時と違った情勢に相なっております。他の公共事業等の長期計画におきましても、こう申し上げてはなんでございますが、大体計画最終年度を待たずに、まあ大体七割ぐらい達成をいたしますと、新しい計画に切りかえるというような例もあるわけでございますから、私どもといたしましては、いま言ったような新しい事態を踏まえまして、四十八年度最終年度を待たずに、四十八年度を初年度とし五十二年度最終年度とする第五次漁港整備計画というものをぜひ四十八年度には確立をいたしたいということで、現在せっかく計画検討をいたしておるという経過でございます。
  23. 辻一彦

    辻一彦君 特定三種に力を入れるということはたいへん必要だし、けっこうだと思うわけです。しかし、その陰で、それ以外の小さな小規模の漁港がどういう状態になっておるのか、そこにいろんなしわ寄せがされてはいけないんじゃないか、こう思うわけなんですね。これを手抜きをしていくと、私は一種、二種あるいは四種、そういうところにいろいろな形のしわ寄せがくると思うんですね。そういうしわ寄せがきますと、漁船の安全だとか人命の尊重であるとか、こういう点にいろいろな形で私はあらわれてくるんじゃないか。そこで、第三種は別として、一種、二種、あるいは四種ですね、そういうものも私は非常に、今日、日本漁業の実態からすると、大事な漁港であると思いますが、そこらの考え方はどうなのか、まず伺いたいと思います。
  24. 太田康二

    政府委員太田康二君) 漁港の場合には、確かにまあ先般の第四次の漁港整備計画におきましても、整備計画対象漁港としては、全国漁港のうち三百七十港を対象整備計画を取り上げておるのでございますが、それ以外に、御承知のとおり、改修事業あるいは局部改良事業として漁港整備を進めておることは御承知のとおりでございます。  そこで、大きな漁港に重点が置かれるために、一種、二種あるいは四種等の漁港に対する手当てがおそくなるのではないかというような御指摘があることは、われわれもよく承知をいたしておるのでございまして、まあ漁港の場合には、施設をいたしますと、施設それなりに部分効果を発揮いたしますので、むしろやや総花的ではないかというような御批判もいただいておるようなきらいもあるわけでございます。しかし、いずれにいたしましても、私どもといたしましては、ある程度長期的な見通しのもとに漁港整備計画というものを定めまして、計画的にその整備促進をはかっておるというようなことでございまして、その際もちろん、計画を立てました以後、あらかじめ予測できないような問題が起こってくるというようなこともあるわけでございまして、そういった地域的な情勢変化に対しましては、漁港ごとの計画の内容の変更あるいは工事の手順の変更等によりまして対処する。さらに必要に応じましては、先ほど申し上げました局部改良事業等の実施によりまして応急的な措置を講ずるということで、計画実施までの間に若干の期間がございますし、計画策定時におきますところの予測できないような事態に対しましては、いま言ったようなことで対処してまいるということにいたしておるのでございますが、全体といたしまして、私どもといたしまして、いま申し上げましたように、特定漁港整備に重点を置くのあまり、何と申しますか、比較的地域的な利用に偏しておるような漁港にしわ寄せがならぬように、計画の策定時に十分配慮してまいりたい、かように考えております。
  25. 辻一彦

    辻一彦君 そこで私は若干具体的な例をあげて、どうも小さいところにしわ寄せがかなりきているのではないかということについて少し論議をしてみたいと思うんです。  まず、いま日本海沿岸はイカ釣りの最中ですね。これは山口のほうから北海道のほうへ季節的にだんだん上がっていくわけですが、ちょうど福井県から石川県、ここらがシーズンになっている。で、日本じゅうの船が、まあ船といいましてもイカ釣り船、これは許可が要らないもんですから、ずいぶんとここへ集まっておるんですが、大体イカ釣り船がどのぐらいいま日本海に稼動しているか、その数はおよそどのくらいか、一ぺん伺いたいと思います。
  26. 太田康二

    政府委員太田康二君) 全国で三万二千隻ほどがイカ釣りに従事をいたしておるのでございまして、日本海におきましては、二万隻操業いたしておるというふうに考えております。
  27. 辻一彦

    辻一彦君 その二万隻のうちのかなりな部分が、いま石川から福井あたりの沖合いに出漁している。そこで、その船がどこへおるかというと、特定三種港というものが日本海沿岸には、浜田を除いてない。いまこれは確認したとおりです。そうなりますと、このたくさんの船が、結局はいまのシーズンでは福井や石川の沖合いにおりますから、停泊をする、水揚げをする場所は、結局この小さないまの港に船を入れざるを得ない。そこで、非常に福井あたりの漁港を見ましても、混雑が起こっておるわけですね。しかも、その港の設備等を見ると、非常に貧弱で整備がおくれている。こういう中で、事故が起こらないのは、ふしぎなぐらいに思うわけですが、最近まあ、そういう意味の事故がだんだんと起こっておる。たとえば、これはまあ福井県で私一日、越前町四ケ浦から三国のほうをずっと漁港を見てみたのでありますが、これはまあ、そう大きな港ではありません。しかし、ここでもやっぱり漁協が御存じのように合併がまだできないでたくさんある。その中で、それぞれの港はかなり小さいので、先ほどお話しのように総花的なやり方がなされておるわけですね。ところが、波止場に立ってみると、防波堤に一年にケーソンが二つか三つふえていく。こんな形でやっておっても、なかなか私は港の修築というものは進まないし、あるいはあらしなんかがくれば非常な事故が起きて危険だ。しかし、地元の港だから地元以外の船はだめだといっても、船のほうから言えば、天下の港だから入れぬという法はないだろうと、こうなればやっぱり入れなくちゃいけない。そこに従来の船に比べてたくさんの船が入って混雑する。だから、非常に危険な状況にある、こういうことが私は言えると思う。たとえば、ことしの三月三十日から三十一日に春のあらしといいますか、非常に日本海が荒れたときがあります。そのときにたとえば、これは越前の四ケ浦の港ですが、三月三十日と三十一日のあらしで防波堤の上にあった二十五トンのテトラポット、これは二十五トンのは、かなり大きいはずです。鹿島やあるいは焼津に行っても、二十五トンというのは外洋のほうに、一番問題になっているところにこれから並べようとしているところで、まだ並べていない。十トンや十五トンは多い。二十五トンというのは、かなり大きいのですが、これを防波堤の上にずっと並べておったのが、二十五トンだからだいじょうぶだと、こういうので船を全部ロープをつないでおった。それが三月三十一日のあらしで吹きとばされてしまった、二十五トンのテトラポットが。全部海の中に投げ込まれた。人間が立ってもその上の背丈の大きなポットだけれども、この間の波で動いて、漁民の人が足をはさまれて動けなくなった。まあのこぎりで足を切らなくちゃいかぬというところまでいった。のこぎりを用意したところ、また大きな波がきて、人間もこのテトラポットも一緒に海へ投げ込んでしまったということで、逆に言えば助かったわけですが、そのくらい日本海にはやはり荒れれば荒い波がくるわけです。その結果、二十五トンのポットがまん中がみんな折れて、二十一並べておったのが十九海の中に投げ込まれて、全部といっていいほど折られている。しかも、大きなケーソンがそのまま何メーターか港のほうに押し込められてこういう形になっている。そのくらい波が実態として日本海のほうは荒い。そこへこのたくさんの漁船が入っている。しかし、そういう状況の中でケーソンが一年の計画で二つ、三つ広げていくと、こういうことでは、私は、非常に長く時間がかかるし、港の船の安全ということも守ることができないのじゃないか。そういう点で、どうも見てみると、しわ寄せがそういう小さな港のほうに、しかも、そこへやむを得ないという形でたくさんの船を受け入れている、そういうところに寄っているように思うのですが、こういう実態の中で、長官どうお考えになるか、伺いたい。
  28. 太田康二

    政府委員太田康二君) 私ども漁港整備事業実施するにあたりましては、水揚げの実態、あるいは漁村の利用状況、さらに気象条件等を十分勘案いたしまして効率的な事業の施行につとめておるつもりでございます。御指摘のとおり、福井県の四ケ浦漁港におきましては、去る三月三十一日の風浪によりましてテトラポットが波で流された。これに伴いまして漁船が被害を受けたというようなことも聞いておりますので、私どもといたしましては、被害の実態等につきまして十分調査検討を行ないまして、今後このような被害が生じないように、事業促進をはかってまいりたいというふうに考えております。  それから、先ほど申し上げましたように、計画策定時に予測できないところの地域情勢変化等がございまして、その場合には漁港ごとの計画の内容を変更する、あるいは工事の手順の変更等によりまして対処することにいたしておりますが、現に私どもといたしまして、先ほど指摘のとおり、日本海におきますところのイカ釣り漁業の操業が非常にふえてまいりまして、境港等は非常にイカ釣り漁船が大量に水揚げするというようなことがございましたので、実は、従来境港は私ども整備計画の中には取り上げていなかったのでございますが、そういった実態もございますので、改修事業実施するというようなことで、地元の方々の要望にもこたえたというようなこともあるわけでございますので、私どもといたしましては、今後そういったことを必要に応じまして実施をいたしまして、応急的な措置というようなものも講じてまいる必要があろうというふうに考えております。
  29. 辻一彦

    辻一彦君 いま長官発言のとおり、これはまあ越前町の港ですが、テトラポットにつないだ綱が切れて、漁船が座礁というかほかの船にぶつかって、この一覧表によると、全損漁船四隻、それから半損漁船六隻、沈没二隻、座礁二隻と、こういうものが一晩のあらしで被害が起こっておるというように、小さな港にとっては非常に大きな被害なんです。だから、いまの御発言のように、こういう状態をひとつ踏まえて、できるだけ応急的な手当て、長期的な手当て、こういうことを十分に私はやってもらいたいと思うのです。さらに、こういう中でまだ矛盾が内部にあるのは、ここは御存じのように幾つかの漁協単位に港がある。そうなりますと、いまここが基幹母港というので、まだそれでも重点的に行なわれているのだが、舟だまり場といいますか、そういうところを幾つか持っておるところは、まあさっき言ったように、ケーソンは一、二個一年につくという程度であって、一番しわ寄せが零細な漁民の漁港に寄っている点がありますから、これについても私はひとつあわせて特定三種港もちろんけっこう、大いにやってもらわなければいかぬですが、そういう小さな港のことも忘れないで、日本の漁民のためにがんばってもらう、このことをぜひ確認をしておきたいと思うのです。
  30. 太田康二

    政府委員太田康二君) 今回の第五次の漁港整備計画の策定にあたりましては、私どもといたしまして全水産庁の各部が全面的にあらゆる角度から検討をして、計画の策定に当たっておるのでございます。もちろん、その際、各県からも最近におきますところの漁業情勢等につきまして、各県ごとの計画というものを十分ヒヤリングいたしまして、これらを基礎にいたしまして、私どもといたしましての漁港整備計画の策定ということをいたすわけでございますので、私どもといたしましては、そういった地元の実態等も十分計画の中に織り込んで、今度の第五次漁港整備計画の策定に当たりたい、かように存じております。
  31. 辻一彦

    辻一彦君 もう一つ、私、実例を取り上げてみたいと思うのですが、日本海のほうで、時間の点から自分の県の港しか見る余裕がなかったわけですから、恐縮ですが了解をいただきたいと思うのです。  三国に三国港というのがあります。これは福井県の一番大きな九頭竜川の河口港で、この河口港というのは、銚子もそうですが、十分御存じのとおり、川の流れと潮の流れによって横波、三角波というのが起きて、これが港に入るときに船の横っ腹に当たると、かなり大きな船でも転覆をするという非常に危険な波が、天候によって生ずるわけなんです。で、五月の十四日に、ここを私、見に行ったときに、県の漁連の三階の建物から様子を見たのですが、非常にたくさんのイカ釣り船がやっぱりここにも入っている、夕方になると、さらに百隻ほどまだ方々から帰ってくるここに百隻近く船が入ったらどんな混雑がするのかと、こう思って見ておったのですね。そのときに、この漁業関係の方は、防波堤を少なくももう少し、これは計画でやっておりますが、早く延長してほしい、あるいは岸壁を少なくも船がもう少し安心して着けるように延長してくれとか、あるいは川ですから砂がしょっちゅうたまる。このしゅんせつが前はずっとやっておったのが、いまは常時やっていないというので、砂がたまる。そうなると、非常に船の動ける水面が狭くなるので、そのしゅんせつを常時やってもらいたいとか、あるいは無線も超短波しかないので中短波の設置を認めてもらいたい、非常に人命上、漁船の安全上心配が多いのだ、こういうことをそのときに言っていました。なお、貯蔵・冷凍等の機能施設を合わせてできるようにしてほしいのだ、こう言っておりましたが、ところが先ほどのとおり、北海道から、山口から、裏日本全部から、あるいは表からも船が来る。これは入れないわけにいかぬので、船を入れると地元の船との間にいざこざがいろいろ起こって、困っているという話だったですね。三日して、三日目に、五月の十六日に、その三角波によって漁船が、六十七トンの鉄鋼船が沈没をして、転覆をして、五人——一人は浜へあがってすぐ死亡した。四人は行方不明 ——結局、五名がこのときに転覆によって犠牲になったという、こういう新聞が出ております事実があります。ここは、この沿岸では、大体春先から三回こういう事故が起きておるわけなんですね。  そこで、私はお伺いしたいのは、二月の十三日と三月の十四日ですか、そして五月の十六日と三回、これと似たような事故がこの近辺で起きておるわけなんです。で、合計十七人、死亡と行方不明、結局は犠牲になった方ですが、十七名出ている。非常に私は、大きな犠牲であると思うわけです。そこで、まず私は、三国漁港において最近、この間起こった海難について、海上保安庁から、一応その経過を調査するようにきのう伝えてあったので、ごく要点だけ、どういう経過であったかということを、わかっておれば知らせていただきたい。
  32. 貞広豊

    説明員(貞広豊君) お答えいたします。お話しの第十新生丸は、五月の十五日の午後三時ごろ、僚船三隻とともに金沢沖約五十マイルで操業しておりまして、荒天となりましたので、当日、十六日の十一時四十分、小浜の漁業無線を経由しまして、三国の漁業無線へ、海がしけてきた、三国に帰る、こういう連絡をしてきました。おっかけて小浜のほうから、三国はあぶないから敦賀に回れ、こういう通信をやりましたが、そのときは確認の応答がなかった。当時イカを約三百キロ積んでおりました。これは三国の防波堤の西側約二、三十メートルー——言いますが、そのあとから漁船がもう一隻ついておりましたので、その現認でございますが、——防波堤から二、三十メートル離して南下しまして、防波堤の捨て石のところをぎりぎりに大きく左に転進をして入港しようとした。そこで、いま先生が言われましたように、典型的な三角波による転覆を受けております。それで一人は反対側の海岸に上がりましたけれども、この船は灯台のある防波堤の捨て石に乗り上げて、七分ぐらい船底を見せて転覆して、あとの乗り組み員は、お気の毒ながら全員死亡したという事件でございます。この船は、北海道から来たイカ釣り船でございましたので、三国の入港について十分承知していなかったのか、あるいはまた敦賀に入ると、魚価等のことも考えて無理して三国に入ったのか、そこらについては疑問が残りますけれども、こういった三国のような河口港で、しかも、それがいやな北ないしは西風に強く吹かれる方向に港が開いておるというふうな、港に入る場合の注意事項としましては、地元の漁業組合等を通じまして、あるいは漁船の船主、船長を集めて、十分その入港方法について指導してきたところであります。たとえば三国港におきましては、そういう三角波が立つので、ちょうど港の位置が西南西に向かって開いておりますから、この間約五百メートルは転進してはならぬ。うんと遠回りして直進でもって五百メートル入ってくる。そうして防波提をかわって初めて川筋のほうに転進するというように指導しており、かつ地元の船はそれが防災上、常識化しておったところでありまするけれども、遺憾ながらこの船はそういうことで、そういう原則を守らない、防波堤の近くわずか三十メートルぐらいを大きく左に転進したために転覆した、このように推定されております。
  33. 辻一彦

    辻一彦君 それはそういう経過だと思いますが、ただ地元の漁民の方のいろんな話を聞きますと、長年、何十年船に乗っておった人も港に入るまで、着くまでは安心ができないという、そういうやっぱり慎重にやらなければいけないし、そういう心配が多い波が往々にして出るのだということで、やはり長い経験を持っている人たちが恐れているということがありますね。そこで、それは海上保安庁として、そういう指導を私はされておったと思いますが、運輸省の、これは河口港ですから所管になるものですから、そこで河口港の安全という点から防波堤の延長や、岸壁の延長、あるいは常時しゅんせつ、こういう問題について所管である運輸省のほうはどうお考えになっておるかお伺いしたい。
  34. 大久保喜市

    説明員大久保喜市君) お答えいたします。  私どものほうで所管いたします港湾の整備につきましては、まあ港湾を利用する船の中には、ただいまのお話しのような漁船もございます。大型船も小型船もいろいろございますが、その港々の利用船舶の船型、それから操船の方法等を考慮いたしまして港湾の整備を進めているわけでございます。  ただいま御指摘の三国港でございますが、先生のお話のように九頭龍川の河口港でございまして、また、これも先生の御指摘のように、河口港の場合には、川から流れてくる水とそれから海のほうの波との関係で、非常に口の付近が一つは埋没という問題がございます。一つには一番外側のところでは、通常の港と違った形の波が立つという問題がございます。それで御指摘の三国港につきましては、これまでも九頭龍川の河口の水深を十分の深さに維持するために右岸側の、川でいうと右岸側になります、三国側の導流堤をこれまでも延ばしてきたわけでございます。それでこの際に、導流堤の延ばし方を川の流れを十分考慮して延ばしませんというと、今度は港口部の埋没という問題が起こってしまいますものですから、その点技術的に延ばしながら模様を見ながらこれまで延ばしてまいったわけでございます。それで、川の流れに沿いまして若干こう湾曲するような形で導流堤をずっと延ばしてきて、今日に至っておるわけでございますが、こういうような口のところを入りますときには、ただいま海上保安庁のほうから御説明ございましたように、入り方はその防波堤に、まああそこの場合には、導流堤から先のほうは防波堤的な機能も持っておりますが、この防波堤の陰に大回りして逃げ込みまして、それで遮蔽された中で転進をして入る、こういうような措置をとる以外に方法がないわけでございます。それで、現状におきましては、相当に防波堤が沖まで延びておりますから、今回のような漁船程度のものでございますれば、そういうような方法で入るに必要な水深はあったわけでございますが、不幸にいたしまして、これがそこいらの事情が十分のみ込めなかったのか、あるいは非常に気象状態が特異なために、そういう判断をする余裕がなかったのか、結果的にはこのような不幸なことになりましたことについては、非常に遺憾に存ずるわけでございますが、私どもといたしましても、港湾管理者に対しましては、利用船舶の安全について海上保安官署のほう、その他関係者のほうと十分相談しながら、その施設整備の上での安全性を高めるということ、それからいま一つは、利用船舶の安全の指導をするということを港湾管理者を通じて要請をし、指導しておるわけでございます。  なお、ちなみにいまの導流堤の長さにつきましては、現在はもう相当程度沖合いに出ておりまして、先ほど海上保安庁の御説明のような航法で出入港は可能と考えられるわけでございます。ただ、異常の気象時におきますところの波の反射という問題がございます。そういうようなことに対しまして、より一そうの安全をはかるために、いわゆる防波堤からの波の反射を防ぐようなテトラポットの投入等によりまして、いわゆるわれわれ消波工と称しております、波を消す法と称しておりますが、消波工を引き続き現在やっておる状況でございます。  なお、この消波工をやりますと、やはりこの消波工のすそがございますから、その意味からも漁船は若干大回りをしていただかなければ危険なんでございますが、そこいらの点も十分考慮しながら、一そうの安全対策を進めておるのでございます。  それから中に入りましての港内の埋没ということで、利用可能な空間が限定されるという問題がございます。これにつきましても、先ほど言いましたような航路筋を技術的に可能な限りでの維持をはかるようにいたしておりますが、何と申しましても、川ですから上流から砂が流れてまいります。それで、この維持しゅんせつは、通常でございますれば港湾法の定めるところでは、いわゆる維持工事になりますから、そういう点からは補助対象にはならないわけでございますが、まあ未完成段階の港湾の埋没状態、まあある意味からすると港湾工事の手戻りみたいな形ともとれる部分がございますので、その段階におきましては、埋没しゅんせつと称しまして若干の必要最小限のしゅんせつ工事は、補助対象として取り上げてまいったわけでございます。  それから、係留施設整備につきましても、必要に応じまして港湾管理者と相談いたしまして、港湾管理者の必要とするものにつきましては、われわれといたしましても予算的にバックアップするようにいたしておる次第でございます。
  35. 辻一彦

    辻一彦君 時間がないので、聞いた防波提の延長、岩壁延長、常時しゅんせつ、この三点を答えてもらえばいいわけですから大体——まあ伺いました。ただ、残念ながら死人に口なしといいますけれども、海上保安庁にしても運輸省にしても、全部運航方法が間違ったからこういうことが起きたので、まともにやれば心配ないというようなどうも私、聞き方になったんですが、これはやはり運航の問題もあったと思いますが、しかし、そういうことがやっぱり起こらないような条件を積極的に整備してもらうということが大事なんで、この点を重点に置いて考えていただきたいと思うのです。  そこで、ちょっと時間が、きょうは午前一時間になっておりますので急ぎますが、前にも聞いたことですが、今回もそうですが、三国の漁港では中短波の無線設備がない。そのために港を出た船が大和堆のほうに行けば二十四時間から三十時間ぐらい出漁のため時間がかかる。ところが荒れた場合も、港へ入る四時間か五時間前でなければ連絡がつかないわけですね。その間どうしているか地元が心配だ。しけたり荒れた場合には、非常に心配が多い。そういう点で、人命の尊重、船の安全という点から無電の中短波の設備を、小浜にもありますが福井県では、もう一カ所だけぜひ認めてほしい。こういう声が強かったんです。それは十四日に聞いて、三日ほどしたらこの事故が、海難があったんですが、新聞を見ますと、やはり無電で先ほど保安庁のお話にもありましたように、小浜から第十新生丸に連絡をしたら、それが十分傍受できなかった。そういうことで連絡がつかなかったのでありますが、私は三国に、かなりな地域があるわけですから、ここに中短波の無電基地を設置することが認められるならば、この人命尊重、漁船の安全という点においてかなり違ったものになると思うのですが、一県に二つ中短波のそういう設備をあわせて認めることができるのかどうか。これは郵政省所管と思いますから、郵政省からお願いしたいと思います。
  36. 大塚次郎

    説明員(大塚次郎君) お答えいたします。  ただいまのお話の中短波の海岸局の問題でございますが、これは御承知のことと存じますが、漁船に使っております中短波の周波数といいますものは、国際混信を起こすおそれのある周波数でございまして、条約に従いまして国際的な承認を得た周波数を使っていくということになっておりまして、漁船の数からいたしますと、非常に数の少ない周波数でございますので、この周波数を有効に使っていきますためには、海岸局によってそこに所属さした漁船に対して統制をとって使っていくという方向でやっております。その海岸局も、全国的に見ますれば周波数が非常に少ないので、数局以上の海岸局で一つの周波数を共用してやっていく、そういたしまして、この共用のしかたも相互に混信がなるべく起きないように、同じ周波数を使っている海岸局では時間をお互いに協定して、何時何分から何時何分まではAの海岸局、その次の時間はBの海岸局、こういうふうにして時間を協定し、また、船の通信は海岸局で統制をとっている。したがいまして、海岸局がそういう形で電波の使い方を運用していきますと、乱立いたしますと、必ずしも効率的にうまく運用がしにくくなっていくということがございます関係から、私どものほうでは電波法に基づきまして、省令でございますが、開設の根本基準というものがございまして、その開設の根本基準で審査をする条項がきめられておりますが、海岸局につきましては、一応船等の免許人が中心になる団体組織で海岸局をつくっていく。その団体の結成基盤は、原則として都道府県または隣接府県を合わせた地域を考える。それから開設地域は、主として重要な漁業根拠地であって、近隣の漁民も迅速確実にその局が利用できやすい局を選ぶ、それから他の海岸局を利用することが不可能または不適当な場合は、それはまたその地域に海岸局を認めることができる、こういうような、まだ詳しくは付則できめられておりますが、主としてそういうような条項に従って審査いたして海岸局の免許をいたしております。参考までに申し上げますと、隣の石川県では小木、新潟県では新潟、京都府の日本海側では宮津というようなところに、ただいま先生のお話の一県として一局が大体原則、必ずしもそういうふうに絶対的とは申しませんが、この近隣はそういうふうになって配置されておるわけでございます。ただいまお話しの三国港につきましては、したがいまして、そういう原則で、福井県におきましては小浜が免許されておるわけでございますが、まあ非常に特定の時期に非常に漁船が集中するとかというような事情がありますれば、また、そういうことも考慮をいたしまして、こうした開設根本基準に照らし合わせまして審査するということになろうかと思います。  なお、御参考までに、先ほど先生お話しのありましたように、超短波というのは、比較的近距離に電波が届くものでございますが、この周波数は外国との混信が比較的問題になりませんので、この周波数は比較的数多く漁業のほうにも回し得る周波数でございますので、足の長い遠距離通信用には中短波を使いまして、非常に短い近距離用には超短波をなるべく併用して、国際的に非常に周波数の獲得の困難な中短波をなるべく能率的に使っていきたいというような方法で、あわせ考えてやっておるような次第でございます。
  37. 辻一彦

    辻一彦君 超短波のほうは、いまあるわけですね。しかし、大和堆のほうに二十四時間も三十時間も出ると、足が短いというか、連絡が全然つかない。それからいま言った非常にイカ釣りの船が集中するという条件、この点から、原則的な線は私、わかりますが、これは遭難事故は今回だけでなしに、前にも何回か繰り返しているわけですから、これは十分人命の尊重、漁船の安全のためにも考えてもらいたいと思うんです。そういう考慮の余地はあるわけですね、考えられる。
  38. 大塚次郎

    説明員(大塚次郎君) ただいま先生の御指摘の点でございますが、なお、私ども検討さしていただきますが、やはり全国的なバランスというような面もあわせて考えなければならないかと思いますので、そうした面も考え合わせながら実情を調べまして、検討さしていただきたいと思います。
  39. 辻一彦

    辻一彦君 大体午前午後一時間ということで終わってきたのですが、もう一つだけ安全の問題なので尋ねておきたいと思うのです。  いま全国に地域開発がずっと進められて、新しいところに港ができている、臨海工業地帯がつくられ、そのために港ができる典型的な例が私は鹿島であると思うのですが、これに準じた、スケールは違っても準じた計画が各地において進んでいる。そこで地域開発が進んで新しい港ができた場合、そこに従来の漁船の安全という点についていろいろな問題が起こってくるわけなんです。で、すでに鹿島において前にも大きな船が、タンカーが漁船の操業中の中を通って事故を起こして、あれはどろをひいていた船ですか、それのロープが切れて死亡したとか、そういうことが四十五年あたりにも起こって、すでに四十五年の八月の十日に、これは大型船舶のトラブル防止、廃油処理について運輸省や海上保安庁に陳情しておりますし、続いて水産庁のほうにもこういう問題を申し入れていると思うのですが、これについてちょっとお伺いしたいと思うのです。先日私も鹿島を見て、この鹿島港が、港の地図はそちらのほう専門家ですからわかると思いますが、東京湾のほうからずっと船が出て、それからあるいは外洋船が入る場合に大回りをして港に入れば心配はないんだけれども、しかし往々漁場を横切ったりする場合には、非常に問題があると、特に鹿島港の銚子寄りのほうには、東京湾のほうには、幅十二キロぐらいの岩礁というか漁場があって、そこは主要な漁場地帯になっている。だから、夜でもそこにみな小さな船が操業しているという、そういうところに大きな船が来れば、これはたいへんなことになるので、いま国会で海上交通安全法案が審議をされている、この行くえがどうなるかは別として、内域、東京湾、伊勢湾あるいは瀬戸内海において大型船優先というようなことがかりに通るとすれば、そういう考え方がほかの場合にも何か考え方が通されて、外洋から鹿島港等に入る場合に、非常に漁場漁船に影響があるんじゃないか、こういう懸念も過去の経験にからんで心配しておるようです。そこで、過去に運輸省や海上保安庁にもそれぞれ、水産庁にも陳情があったと思いますが、そういう大型船が鹿島港、ああいう港に入る場合にどういう指導がなされておるのか、今後においてもそういう点が厳密に心配のない指導ができるのかどうか、このことを伺いたいと思うのです。これは鹿島に限らず、これから全国幾つかの新港が開港され、同じように漁場があれば起こる問題じゃないか、こういう点から伺いたいと思います。
  40. 太田康二

    政府委員太田康二君) 私どもの調査によりますと、この鹿島新港付近におきましては、現時点におきまして小型底びき、中型まき網、小型まき網あるいは刺し網、かなりの漁船が操業いたしておるのでございます。それに対しまして外洋大型船による漁業への影響ということは、現段階におきましては、ほとんどないというふうに現に聞いております。しかし、鹿島新港が完成いたしました暁におきましては、やはり外洋大型船の出入がかなりひんぱんになるということが予想されるわけでございますので、その際には、当然外洋大型船による何と申しますか、漁業への影響というものは出てまいろうかと思うのでございます。御承知のとおり現在海上衝突予防法という法律でこういったところは規制がされておりまして、どちらかといいますと漁船よりも、こういった大型の船のほうが避航義務を負っておるようなことでございまして、どちらかと申しますと、そういった規制が行なわれておるという実態にあるわけでございますけれども、私どもといたしましては、やはりいろいろな漁業がそこで行なわれておるというような実態を十分何と申しますか、関係の外航船等にも周知させるということ、当然その上に立ちまして航行の際の注意を喚起するというようなことが必要であろうかと思っております。  なお、この点につきましては、当然保安庁、関係の保安部それから港湾建設局、こういったところとも十分協議をいたしまして、漁業に対する支障がないように、こういった方向で指導してまいりたい。県も当然関係いたすわけでございますので、県にもその向きを話しまして指導に遺憾なきを期してまいりたい、かように存じております。
  41. 辻一彦

    辻一彦君 じゃあもう一つだけ伺いたいと思います。これはやはり安全の問題ですが、小型漁船の事故防止、これはもっと小さな船、たとえばこれは日本海で、私らのほうで言いますと、二月十三日の朝、栄丸というのが、これは水産庁からも調査に来られたのですが、十四・八八トン、十五トン未満で五人死亡ですね。これはプラスチック船で安定性といいますか、重心の点から、復原力の問題から非常に問題がある船だといわれておりますが、これが転覆して事故を起こしている。三月十二日、一月置いてなぎさ丸、これはまた〇・五トンという非常に小さな船で、これは七十四歳の老人が乗り込んで、五十歳代の二人がやはり死亡している。  そこで、二月十三日の栄丸の十五トンのプラスチック船ですが、これがいま福井県でも半永久的であるという点から、二百三十三隻にいまのぼっている。しかも、どんどんプラスチック船がふえる傾向にある。そういう中で安定性や復原力に非常に問題があると言われておるんですが、この間、転覆のあと水産庁においては調査に見えて中間報告がありましたが、その後実態をどうまとめておるのか、これをまず伺いたいと思います。これは時間の点があるので、要点だけ簡単にやってもらいたいと思います。
  42. 太田康二

    政府委員太田康二君) 先般事故がありましたときに県の要請もございまして、私どもすぐ漁船研究室から係官をたした二人派遣いたしましていろいろ調査をいたしたのでございます。FRP漁船につきましては、一般的に材料の性質上、船の重心が高くなるという傾向にございまして、適正な復原力を保持させるためには、私どもといたしまして、さらにFRP漁船の主要な寸法あるいは船型等についての研究を急いでおるのでございます。  今回の私どもが周知しております中間報告によりますと、非常に何と申しますか天候も悪かった。確かに復原力に問題があったことは事実でございますが、天候も悪かった。他の船は、僚船は何か避難をしたので、この船は避難しなかったようなこともございまして、それに復原力が悪かったというようなことも加わりまして事故を見たことは、まことに遺憾でございます。実際問題として最終的な結論は、まだ出ていないわけでございますが、私どもといたしましては、当面の対策といたしましては特に問題のあるものにつきまして、バラストを船底に塔載をする等の指導を行なって、その安全性の確保をはかってまいるわけでございますけれども、なお、最終的な取りまとめまでには、若干の時日をちょうだいいたしたい、かように存じております。
  43. 辻一彦

    辻一彦君 水産庁の係官が来られて、そして県庁で記者会見をして報告をされている。そうすると僚船が避難したのに避難しなかった問題もありますが、現実に船も海に浮かべてローリングをやって、復原力が非常に悪かったということは、はっきりしておるのですから、死んでなくなった人は口がないので、みんなそちらのほうに責任があるようなことになると困るので、私はその指導上の問題をひとつはっきりさしてほしいと思うのです。  そこで、二十トン以下の船を建造する場合に、これは許可制になっていないために船舶の安全、船舶の規制というか、そういう点、法的な規制ができないという問題がありますね。しかし、二十トン以下の船というのは、日本漁船のおそらく九〇%以上というのは、そういう二十トン以下の小さな船じゃないかと思われますが、そういうものに対する安全の確保というか、指導ということは、私は水産庁の重大な責任であると思います。そういう点で過日も新聞等で見ると、水産庁は小型船の安全基準を用意をしている、こういうように聞いておったのですが、きのうプリントをもらいましたが、まだ十分読んではおりませんが、これはどういうようにひとつ準備をされて、これをどう徹底するのか、そこらをひとつ伺いたい。
  44. 太田康二

    政府委員太田康二君) 御指摘の二十トン未満の小型漁船というのは隻数で申しますと、漁船全体の九六%くらいを占めておりますし、御指摘のとおり、船舶安全法の適用除外になっておりまして、安全基準がないわけでございます。保安庁の要救助海難統計によりますと、例年漁船の海難事故のほぼ半数がこの階層が占めておるというようなことで、非常に私ども船舶の安全確保というようなことは、意を日ごろ用いておるわけでございますけれども、問題があることは事実でございます。  そこで私どもといたしましては、昭和四十一年から学識経験者の方にお集まりいただきまして、こういった小型漁船につきましての安全基準というようなものの策定作業を進めてまいったのでございますが、本年三月に結論を得ましたわけでございます。その中身といたしましては、運航点検、整備あるいは構造、設備及び性能並びに救助体制の整備の問題及び気象、海象等の情報の提供の問題、こういった点に触れまして、小型漁船の安全基準というものを作成をいたしたわけでございますので、この普及をはかるということで沿岸漁業者並びに漁業協同組合等を通じましてこの基準を早急に徹底し、漁船の乗組員の方々がこれを実行するように指導するということにいたしておる次第でございます。
  45. 辻一彦

    辻一彦君 これをきのうもらったのですが、何かきのう印刷ができたとかいうのですけれども、三月というのとはだいぶ違いますが、実態はどうですか。
  46. 太田康二

    政府委員太田康二君) 正式の印刷としてでき上がりましたものは、昨日でき上がりましたわけでございますが、この中身につきましては、すでにこの趣旨を都道府県等を通じまして趣旨の普及徹底をはかっておる次第でございます。
  47. 辻一彦

    辻一彦君 どういう形で都道府県が末端の漁村に指導徹底普及をはかっておるのか、どうやっていくか、簡単でけっこうですが伺いたい。
  48. 太田康二

    政府委員太田康二君) 私どもといたしましては、漁船の安全確保ということには、日ごろ意を用いておるのでございまして、漁船の講習会等も開いておるのでございます。そういった機会を通じまして県に助成もいたしておりますが、その場等を通じましてこの趣旨を十分県の係官を通じ、必要とあれば私ども出向きまして、漁民の方々に趣旨の徹底をはかるということをやってまいりたい、かように存じております。
  49. 辻一彦

    辻一彦君 この趣旨の徹底は、なかなか容易じゃないと思うので、よほど腹を据えてやってもらわないと、しょっちゅう私は、こういう事故が起こると思うので、この点ひとつしっかりお願いしたいと思います。  そこで、運輸省にお伺いしたいのですが、昭和四十年にマリアナ海難事件というのがあって、その後、運輸省のほうでもその海難対策をされているということを聞いたのですが、何か具体的な対策をその後されておるのかどうか、その点どうですか。
  50. 貞広豊

    説明員(貞広豊君) 先生の御質問の内容がはっきりのみ込めないんでございますが、マリアナ海難のような、遠距離海難があった場合にどうするかという御質問かと思いまするが、それに対しましては、当時海上保安庁としましては、施設面ではYS11型の遠距離捜索能力のある航空機、それから高速力で長い間——少なくも二十日以上行動できるような大型巡視船の整備、こういうことを予算化して、現にそれが実現しておりまするが、この大型巡視船にレーダーをつけまして、そうしてマリアナ海難が起きた原因となった異常台風の発生、これを早く現場においてつかんで、気象官署に連絡するとともに、付近船舶に台風発生、それから発生後の状況を刻々付近漁船に周知をする、そういう任務を付加した装置、いわゆるレードームを持っておりまして、そのようにして遠く太平洋中部に出ておる漁船の海難防止を実施いたしております。
  51. 辻一彦

    辻一彦君 そこで、さっきに戻るんですが、三月十二日になぎさ丸というたいへん小さな船が遭難をしておる。で、私はこれを見て、零細漁業老齢化ということを非常に痛感をしたんです。五十四歳の方は別として、七十四歳の老人が船に乗って荒波の中に出て遭難をしているという、ここに私は日本漁業の一つの典型的な問題点があるように感じたわけです。そこで、こういう年配の方を乗せた船は、遭難のときに老人を抱えて、この方は海に飛び込んで二人ともなくなったといわれております。そこで、こういう老齢な、高い年齢の方に対しては、これは社会保障の問題が一つあると思うのですが、それは別として、小さな漁船に対して救命用の用具——救命道具とか、救命胴衣ですね、あるいはブイだとか、こういうものが義務づけられていないので、持たずに出て、そして持っておれば助かる場合があるのに、大事な人命を失ってしまうと、こういう場合が多いわけですが、そこで福井県の越前町では、町議会の条例においてこういう小さな漁船に対して救命用の用具を装備する場合には、これに助成をするという条例をきめているわけですね。そして援助しておりますが、私は大型船、あるいはそういう近代化のためにそういうところに力を入れることが、まず第一に大事ですが、しかし、なかなかこういう零細な漁民、漁業というものがそうすぐには転身、変わっていくわけにはいかないとすれば、現実にこのようなことが存在する中で、もう少し零細なこういう漁民に対しても、非常用の救命用具等の助成を国においても、私は考える必要がある、こういうように思うのですが、これについての長官のひとつ御見解を伺いたい。
  52. 太田康二

    政府委員太田康二君) 小型漁船の救命具の備えつけに対する助成の問題でございますが、現在、いわゆる補助金は計上はいたしておらないのでございますが、農林漁業金融公庫、あるいは漁業近代化資金等で融資の対策は行なっておるのでございます。そこで、私どもといたしましては、漁業協同組合連合会、あるいは漁業協同組合等を通じまして、まとめてそういった各地域におきますところの漁船の救命具の備えつけというようなための融資というものを積極的に受けますよう、今後指導をいたしてまいりたい、かように存じております。
  53. 辻一彦

    辻一彦君 私の時間は午後にありますので、まだ問題を残しておりますが、午前中、一応これで終わることにいたします。
  54. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 水産三法に対する質問を行なうわけでございますが、午前は十二時までと、午後一時からというような時間の割り当てがあるわけですが、それでまず、私は、漁業協同組合整備促進法を廃止する等の法律案についてお尋ねをしてみたいと思います。  今回、漁業協同組合整備促進法が昭和三十五年に制定されてから、同法に基づいて設立された漁業協同組合整備基金を中心として、これまでに不振組合の整備、あるいは組合の合併について、かなりの実績があったと私は思うわけでございます。ところが、今回、漁業協同組合整備基金の解散を含めて漁業協同組合整備促進法を廃止する理由に至った原因をまずお尋ねしたいと思います。
  55. 太田康二

    政府委員太田康二君) 先般、提案の理由でも御説明申し上げたのでございますが、漁業協同組合整備促進法は、ただいま御指摘のとおり、昭和三十五年に漁協の整備について指導及び助成を行なうことを目的とする特殊法人としての漁業協同組合整備基金の設立及び漁協の整備促進するための措置について制定されたものでございます。そして同法に基づきまして漁業協同組合整備基金が設立されまして、基金の業務といたしましては、一つは債権の利子を免除した金融機関に対しまして、免除した利子に相当する部分を補給をするということと、合併奨励金の交付の事務があったのでございます。そこで、その基金のおもな業務の一つでございますところの整備計画の達成の最終期限というものが、昭和四十七年三月三十一日になって、その最終期限の到来をもってその業務が終了するということに相なっております。この間、漁協の整備につきましては、同基金の業務を通じまして私どもといたしましては、所要の成果をあげたと判断をいたしますし、特殊法人の、なお整理統合に関する政府の方針もあったわけでございまして、この際・同基金を解散するということでございまして、その根拠法でございますところの漁業協同組合整備促進法を廃止するということにいたしたのでございます。
  56. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 ただいま長官から、四十七年の三月三十一日までにとの法律は期限が切れるからやったというように説明があったわけでございますが、最近の漁業協同組合は、その経営状況は最近まで年々好転をしておるようでございまするけれども、その中で信用事業におきましても、目ざましい発展があったわけでございます。ところが、この漁協を取り巻く環境というものは、漁場の条件の悪化と労働力の緊迫化等で今後一そうきびしくなるおそれがあると思われます。ましてや信用事業につきましても、現今は特にきびしい事情下にあるのではないかと、かように考えるわけであります。そこで、特に沿岸漁場は、公害等によって生産条件は悪化の一途をたどっておると申し上げても過言でないと思いますし、したがって、将来不振組合が出てこないということは、これはもう断言できないと思うのでありまするが、今後のそういった不振組合が出た場合の対策についてどのようにお考えになっておられるのか、御所見を賜わりたいと思います。
  57. 太田康二

    政府委員太田康二君) 漁協の現状を見てまいりますと、先ほどの、法律が制定されました昭和三十五年当時とだいぶ違いまして、御指摘のとおり、損益状況というものは漸次改善をされてきております。私どもといたしましては、今後、災害あるいは極端に不漁等が発生しない限り、整促法制定当時のような不振組合の多発ということはないというふうに考えておるのでございます。しかし、御指摘のとおり、漁協の規模はなお農協等に比べますと非常に弱小でございまして、不振組合の発生を防止する基本的な方策としては、やはり経営基盤の拡充強化、特に合併の推進ということをはかることが急務であろうというふうに考えております。  この点につきましては、昨年、漁業協同組合合併助成法が昭和五十一年三月三十一日まで五カ年間延長されたことでもございますし、今後とも漁協の合併というものを積極的に推進してまいる必要があろうというふうに存じております。  で、御承知のとおり、漁業協同組合漁業権の管理の団体というようなことで発足した経緯もございますし、そういった意味でなかなか合併がむずかしい事情もございますし、漁業協同組合間の何と申しますか実力に格差があるというようなことで、いろいろ合併には困難が伴いますが、私どもといたしましては、やはり国、県が積極的に育成する必要があるという漁協につきまして、駐在指導あるいは巡回指導、こういったことをじみちに行なうための経費、これをまず県に助成をする。そのほか、合併推進活動のための経費につきましても県に助成をいたしまして、合併を積極的に推進するということを四十七年度以降やってまいりたい、かように考えております。  この点につきましては、全漁連をはじめ全国漁業協同組合一丸となって、一体となって、系統運動の一環といたしまして積極的に合併を推進するということをおきめになっておることでございますので、私どももいま申し上げたような施策によりまして、その裏打ちをしてまいりたいというふうに考えております。  そこで、不振組合が今後発生した場合にどうするかというような問題があるわけでございますけれども、やはり基本的には系統運動の中で整備対策を措置すべきであるというふうに考えております。  なお、その一環として今回系統の自主的な運動といたしまして、全国漁協信用事業相互援助制度というような制度もできたわけでございまして、こういった援助制度が裏打ちとなりまして、経営不振組合の発生を、系統運動によって未然に不振組合の発生というものを防止してまいりたい、かように存じております。
  58. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 漁業協同組合についてはこれでとどめますが、次に漁港法の一部改正についてお尋ねをいたします。  先ほど来、辻さんが質問したので、重複の点もあろうと思いますが、なるたけ重複な要点を避けて質問をいたしたいと思います。  今回の漁港法の改正に基づきまして、特定三種基本施設のうちに外郭施設及び水域施設のみについて、事業に対する国の負担割合を従来の百分の六十から百分の七十に今回引き上げて、地元負担の軽減をはかっておるわけでございますが、現在の百分の六十に引き上げたのは昭和三十八年に百分の五十から引き上げられて今日に至っておるわけでございます。自来、漁業関係者は、全国の毎年開かれる漁港大会でこの関係比率を百分の七十五にぜひとも引き上げてもらいたいというような強い要請があったにかかわらず百分の七十で押えられたということ、非常に残念であったろうと私も思うわけでありますが、これを建設省の河川あるいは国道の改良とか空港、干拓、こういう公共事業の例を見ますると、すべて七五%を補助しているわけであります。また、港湾についても外国貿易関連施設については、九〇%という国の補助率がきまっておるわけでございます。したがって、こういう比率と、今回行なわれた第三種特別漁港に対する百分の七十との比較、そういうものが妥当であるかどうか、長官はどう考えられるか。さらにまた、将来これを引き上げる一つの考え方はないか。これについてお尋ねしたいと思います。
  59. 太田康二

    政府委員太田康二君) 特定三種漁港補助率国庫負担率引き上げの問題でございますが、私どもも他の公共事業との関連におきまして百分の七十五ということで要求をいたしたことは事実でございますが、最終的には百分の七十にとどまったと。力及ばなかった点につきましては、申しわけなく思っておりますが、この際とにかく、かねての要望でございますので、まあ数少ない国庫負担率引き上げということの実現を見ましたので、百分の七十ということで、最終的には決定をいたしたのでございますが、そこで他の類似公共事業との関連で確かにいろいろな制度がありますから、どれをとっての比較ということの問題が出てくるわけでございますけれども、やはり私ども漁港の場合には、港湾との関連が問題になろうかと存ずるのでございます。そこで、特定重要港湾という制度がございまして、これは外郭水域施設につきましては、百分の五十から百分の八十五までの国庫負担率に相なっております。しかし、一般的にはやっぱり百分の五十というのが通例でございまして、高率のものは一部の一定施設のみであるということになっておりまして、特定重要港湾全体の平均といたしましては、特定三種漁港のほうが高率であるというようなこともございまして、最終的に百分の七十になったというふうに思うのでございます。まあ、公共事業補助率国庫負担率等の問題につきましては、毎年予算の編成の際に問題になるわけでございますので、私どもといたしましては、将来の問題といたしまして、他の公共事業補助率等の見合いも十分勘案の上、対処してまいりたい、かように存じております。
  60. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 同じ漁港基本施設の中で、今回、係留施設を国の負担割合引き上げから除外したことについて、そこでその係留施設を除外したその理由。さらにまた機能施設についても、全然今回の引き上げについて黙認されておる。これを考えた場合に、どうしても納得がいかぬわけでございまするが、その辺の経過について御説明願いたいと思います。
  61. 太田康二

    政府委員太田康二君) この点につきましては、漁港施設のうちで、特に公共性が高い、かつ整備に多額の費用を要するということで、私どもといたしましては、御指摘のとおり、それ以外に係留施設機能施設等があるわけでございますけれども外郭施設水域施設にしぼりまして、国の負担割合引き上げるということを実施いたしまして、地元負担の軽減に資することにいたしたのでございます。欲をいえばきりがないわけでございまして、私どもといたしましても、確かに係留施設、あるいは機能施設、これが重要であるということは論をまたないのでございますが、いま申し上げたような事情もございまして、まあ今回は、これにとどまったということであるわけでございますけれども、なお、係留施設機能施設等の重要であることはいうまでもないわけでございますので、今後の検討課題にさせていただきたいと思っております。
  62. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 私は、漁港整備というものは、基本施設機能施設を含めて、総合的に整備していくということが、漁港機能をより発揮する上で最も肝要であると考えるわけでございます。そこで機能設備の整備と、関連性の最も深い沿岸漁業構造改善事業あるいはまた水産物流通加工センター形成事業等と、この漁港整備事業との関係はいかにあればいいのか、この点について長官のお考えをただしたいと思います。
  63. 太田康二

    政府委員太田康二君) 漁港につきましては、漁港法で「水域及び陸域並びに施設の総合体」と定義されておりまして、御指摘のとおり、基本施設と各種の機能施設、これが一体となって有効にその機能が発揮されるということでなければならないということは、御指摘のとおりであろうと存ずるのでございます。そこで、私どもといたしましては、従来の公共事業、特に漁港整備実施のしかたにつきまして、いろいろ反省をいたしておるのでございまして、御指摘のとおり、全機能が一体的に発揮されるというような意味におきましては、基本施設機能施設が一体的に整備されるということが必要であることは、論をまたないのでございます。そこでまあ、一部の機能施設については、特に公共性の高い輸送施設あるいは漁港施設用地につきましては、公共事業でございますところの漁港整備事業実施をしておるのでございます。それ以外の機能施設につきましては、ただいま御指摘のございましたような沿岸漁港構造改善事業、あるいは水産物産地流通加工センター改修事業、これで助成をいたしておるのでございますから、やはり事業実施する際に、できる限り、これらの漁港の基本的な施設整備事業と、これらの事業とが両々相まちまして実施されるように、事業実施の面における配慮として当然考えていかなければならない。このことにつきましては、私どもの内部でそういったことを十分連絡をとって実施すればできることでございますので、今後事業実施にあたりましては、そういった面につきましては十全の配慮を払ってやってまいりたい、かように存じております。
  64. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 今回第三種漁港、この中の最もすぐれたというか、利用度の最も高い特三につきましては、補助率が百分の七十に上がったのでございますが、第三種漁港の今日における需要度、また漁港の実態からいたしましても、この第三種漁港につきまして今回の国庫負担率引き上げがなかったということは、私は非常に残念に思うものであります。なぜ、当然上がるべき第三種漁港国庫負担が上がらなかったか。それを申す理由の一つとして漁港法昭和二十五年に制定されておる。したがって、以来一回もこの補助率が上がっておらないというのが第三種漁港に対する実情でございます。ところが昭和四十年に第一種漁港と第二種漁港補助率を上げられまして、したがって第一、第二、第三ともどもにすべての国庫補助率が同一である。したがって、私は、当初昭和二十五年にこの漁港法をつくったときの、補助率をつくったときの考え方がくずれるのじゃなかろうか、かように考えるわけでございますが、そうなりますと、この第三種漁港指定した、そのものに矛盾を感じはしないか、かように考えるわけでございますが、この点についても先ほど来、辻さんの質問に御答弁があったわけでございますが、将来こういう点をどういうふうに取り組んでいくのか。第一種、第二種との関係について、第三種漁港がどうであるべきかという点について長官のお考えをただしたいと思います。
  65. 太田康二

    政府委員太田康二君) 確かに、第三種漁港につきましての国の負担割合の問題につきましては、昭和四十年に第一種、第二種につきまして、当分の間国庫負担率引き上げということで百分の四十が百分の五十になりました結果、実質的にはこれと同率となったのでございます。第三種漁港につきましても、かねて漁港大会等で国庫負担率引き上げ要望もあることは、われわれ十分承知をいたしておったのでございますが、他の類似公共事業との関連等もございまして、さしあたってはまあ事業の推進というものに重点を置きまして、今回補助率引き上げ国庫負担の引き上げというのは見送りになったわけでございますので、この点につきましては、先ほど辻先生の御質問にお答え申し上げましたが、今回漁港法の一部改正の審議過程におきまして、衆議院におきましても附帯決議をつけられておりますし、私ども新しい漁港整備計画というものの検討にも入っておりますので、その過程におきまして他の類似公共事業負担率等の関連も横にらみににらみながら検討をしてまいりたい、かように存じております。
  66. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 現在、第三種漁港の中で水揚げ量が急増いたしまして、特定三種漁港に匹敵する規模のものも出てきていると思うのでありますが、先ほど来、長官は辻さんの質問に、第五次整備計画のときに、これを取り上げて考えてみたい、かように答弁があったわけでありますが、現在十一港の特三があるわけでありますが、長官が現在考えている他の特三に引き上げてもよろしいというような、指定してもよろしいというような第三種漁港がどの辺にどのくらいあるのか、お考えがあれば、この際お聞きしておきたいと思います。
  67. 太田康二

    政府委員太田康二君) 特定三種漁港につきましては、昭和三十四年にその制度が設けられまして、この際、漁港審議会等におはかりをいたしまして基準をつくってもらいまして、これの基準に即しまして、昭和三十五年に入港指定をいたしました。その後第四次漁港整備計画を策定をいたしました昭和四十四年に三港追加いたしまして、現在御指摘のとおり十一港ということに相なっております。しかし、その後漁業情勢変化等もございますし、漁港整備等の推進によりまして、水揚げ量増大した、あるいは利用漁船が増加したというような傾向を示している漁港もあるわけでございます。そこで、私どもといたしましては、さらにこの基準にございますところの水産業振興上の地域的な重要性あるいは漁港の将来性等を勘案して、実は幾つかの港につきまして現在検討をいたしております。いずれこの点につきましては、昭和四十八年に第五次の漁港整備計画をぜひ私ども策定をいたしたいと考えておりますので、その際いま申し上げた基準あるいは将来の見通し等を勘案いたしまして、何港かを特定三種漁港にいたしたいということで、これは決定をいたしますれば財政当局とも相談をいたしました上で、政令で指定をしてまいりたい、かように存じております。
  68. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 どの海域、どういう港があるかということを聞き出したかったのでございますが、答弁がされないということであれば、第五次の場合に当然わかることだし、それまで保留することにいたします。  そこで、この漁港の区域内における行為の制限は、現在水域にのみ行なわれていたのでありまするが、今回公共空地においてこの行為の制限を及ぼすこととなったその事由、この点について御意見を賜わりたいと思います。
  69. 太田康二

    政府委員太田康二君) 従来は、漁港の区域内におきまするところの行為の制限につきましては、水域が主体となっておりまして、陸域については土地、竹木、工作物等の所有者等に対して漁港保全上必要な施設を設けることを命ずることができるという範囲にとどまっておったのでございます。しかしながら、最近におきますところの漁港につきましては、掘り込み式の漁港というものがふえてまいりまして、当然公共空地、砂浜地でございますが、ここにおきますところの漁港施設整備の必要が非常にふえてきているのでございまして、これらの事業の遂行を確保する必要性が生じているという実態にございます。また、このような実情のもとで、国有財産法に基づきますところの財産管理というだけでは、各種の行為に対しまして漁港の保全を適正に処理するということがむずかしくなってきているということもございまして、こういった状況考えまして、今回公共空地につきましても漁港法上の行為の制限を及ぼす、そして漁港の維持管理の一そうの適正化をはかってまいりたい、こういうことで公共空地、いわゆる砂浜地も対象にいたしたいということでございます。
  70. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 先ほどもまあお尋ねがあって答弁をしたわけでございますが、第四次漁港整備計画の進捗状況が現在まで、四十七年度予算を消化した場合に、七四%の進捗率というふうに言われたのでありまするが、この七四%の進捗率がさらにまた四十八年度から根本的に考えを新たにして、第五次整備計画をつくるというふうな考え方をしておるようでございますが、最近漁獲量が非常に増大しまして、漁船大型化、特に私ども関係しておるまき網等についても四百トンの専用運搬船を使用しておるというような実態を聞かされておる。したがって、また船腹の増大、さらにまた水産物の流通改善あるいはまた公害問題を起こしている水産加工場の団地化、こういうものの解決を私は早急にする必要がありはしないかというように考えるわけでございます。  そこで今日の状況に対処するために、先ほど長官は第五次整備計画で練り直すというような御答弁をされたのでございますが、その際に漁港整備計画の基本的な考え方を従来のとおりで私はやっていいのかどうか、従来の助成とか指導のあり方をそのまま踏襲してやっていてはいけないと考えるわけでございますが一根本的にどういう考え方から第五次整備計画を進めていくのか、この辺について長官の御答弁を賜わりたいと思います。
  71. 太田康二

    政府委員太田康二君) 私どもが四十四年の漁港整備計画を立てましたときに目標年度が四十八年であったわけでございますけれども漁業生産におきましては、当時四十八年の目標年次におきましては八百五十二万トンと想定をいたしておりましたが、すでに四十五年におきまして九百三十一万トンということで、この目標をオーバーをいたしておる実態があるわけでございます。  それから漁船勢力の増加の問題でございますが、海面の動力漁船で見ますと、隻数がやはり四十八目標年度では二十五万六千隻というふうに考えたわけでございますが、四十五年にこれが二十六万六千隻ということで目標をオーバーいたしておる。トン数につきましては、四十八年が二百五十九万トンでございますので、四十五年は二百四十四万トンでございますから、目標には達しておりませんが、いま申し上げたように、漁業生産の面におきましても、漁船の隻数におきましても、非常に目標をすでにオーバーをいたしておるという実態があるわけでございます。  それから水揚げ特定基地への集中化の傾向もその後非常に強くなっておりますし、加工生産量も増大をいたしております。さらに輸送手段も非常に変化をいたしております。その後、生産の面におきましても沿岸におきますところの増養殖事業が非常に推進をしておるというような実態もあるわけでございます。  そこで、われわれといたしましては、いま申し上げたようないろいろ漁業を取り巻く条件の変化があるわけでございまして、漁船大型化漁獲量増大、特に大きな漁港に対する集中水揚げの問題、さらには増養殖振興というような点がございますから、これらを踏まえまして漁港先ほど申し上げましたような機能を十全の意味で発揮するというようなことで、単にいわゆる土木事業としての漁港整備ということではなしに、そこが同時に、生産の基盤であると同時に流通拠点でもあるというような面を強く勘案をいたしまして、そういった施設整備をするということに重点を置きながら、現在第五次の漁港整備計画というものを全水産庁あげてこの問題に取り組んで、生産面からどこの漁港整備したらよろしいか、流通面から見ればどこの漁港整備したらよろしいかというような注文をできればつけを漁港部へ回すというようなこと、それを最終的に私どもの段階で討議をした上で漁港整備計画をつくっていくということで、現在せっかく策定中であるということでございます。
  72. 亀井善彰

    ○理事(亀井善彰君) 暫時休憩をいたします。    午後零時十五分休憩      —————・—————    午後一時十一分開会
  73. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  午前に引き続き質疑を行ないます。質疑のある方は、順次御発言を願います。
  74. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 先ほど来、漁港法の一部について、それぞれ質問したのでございますが、今後の水産振興にあたっては、とる漁業だけでなく育てる漁業、すなわち、増養殖に取り組むべきであるという意見があちこちにあるわけなんです。そこで、水産業全体として、その方向努力が傾注されており、また農林省においても民間においても、いろいろな試験研究が続けられているところであります。水産に関する技術面におきましても、漁獲、漁労に関する技術や資本の装備あるいは増養殖に関する技術の水準についても、きわめて高度のものが見受けられるところでありますが、一番根本的であり、かつ最もおくれているものは何かと申しますと、私見ではありますが、増養殖について欠くことのできない潮流の変化の掌握に対する試験研究が疑問視されるのであります。さらにまた、海底の地盤は、沿岸部においては洪水流出による土砂が風と潮の流れの影響で堆積する現象が起こって、同時に浅海化していく。浅くなっていくと同時に、潮の流れも当然変化が生ずるわけでございますが、そのことから、いろいろな増養殖に対する微妙な影響が生ずることに対する調査というものがはたして行なわれておるかどうか。こうした調査、試験研究が私は立ちおくれておりはしないかと、かように考えるわけでございます。  そこで、潮の流れをよくし、かつ土砂堆積による浅海化をできるだけ除き、そしてまた、魚の育ちやすい環境をつくり出すための海底工学的土木事業に対する試験研究の必要性を痛感するものでございます。いまさら私が申し上げるまでもなく、種々検討は加えられていることと思いますが、水産資然の食生活に及ぼす影響が今後ますます重要視されるおりから、いままで立ちおくれぎみであったこの種の土木学的研究に一段の配慮があって私はいいのじゃなかろうかと、かように考えまするが、この点について長官の御所見を賜わりたいと思います。
  75. 太田康二

    政府委員太田康二君) 御指摘のとおり、水産におきますところの土木工学的研究は、農業等におきます研究に比較いたしますとおくれておることは事実でございます。われわれこの分野といたしましては、いま御指摘のございましたところの増養殖漁場の改良造成をはかるためのものと、それから漁港等の漁業根拠地を機能化するためのものがあるわけでございまして、いずれも御指摘のとおり、漁業生産基盤の整備等を効率的に進めるため重要な研究分野であるというふうに存じております。水産におきますところの、これらの研究につきましては、農林省の付属機関として農業土木試験場がございまして、そこの水産土木部が中心になって実施をいたしておるのでございまして、国、府県連係をとりつつ技術の開発に努力してきておるのでございますが、その中でも、漁港等の漁業根拠地の機能化のための研究につきましては、すでに港湾等の技術もあるわけでございますので、まあ、かなり進んでおると自負をいたしておりますが、増養殖漁場の改良造成のための水産の土木工学的研究という分野につきましては、確かに、増養殖が今後沿岸漁業振興のために本命の事業であると言われながらもおくれておるという点は、御指摘のとおりでございまして、私どもといたしましては、今後さらに施設充実をはかり、積極的に研究を推進する必要があるというふうに考えておりまして、農林省の水産試験場のあり方等の関連におきましても、やはり工学的な研究をする専門的な機関をつくる必要があるのではないかというようなことで、現在機構のあり方を中心検討を進めておるところでございまして、今後はこの面における研究につきましては一段と力を入れなければならぬというふうに存じております。
  76. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 日本のすべての沿岸にわたって、各地域ごとに、その場所、場所に最も適応した養殖業のために、先ほど来申し上げた水産的土木事業を長期的に、漁港整備計画とは別に立てる必要がありはしないかというふうに考えるのでございますが、この点について長官の御所見を賜わりたいと思います。
  77. 太田康二

    政府委員太田康二君) ただいまお尋ねの増養殖のための水産的土地事業につきましては、いま御説明申し上げましたように技術的な基盤のおくれ等もございまして、残念ながら土地改良法に基づきますところの土地改良の長期計画あるいは漁港法に基づきますところの漁港整備計画というような長期計画は、現在のところ策定されていないのでございます。  それでは、現在どういうふうな状況になっておるかということでございますが、御承知のとおり、第二次の沿岸漁業の構造改善事業におきましては、増養殖の推進を大きな柱としておるわけでございますが、地域ごとに作成をされましたところの沿岸漁業の構造改善計画に基づきまして、漁場の改良事業、これは主として消波施設あるいは海水交流、つきいそ、並み型魚礁等の設置をいたしておるわけでございますが、こういった漁場の改良事業実施いたしておりますし、それからさらに、より大きな事業といたしましては、漁場造成事業ということで、やはり大きな規模の海水交流の事業あるいは大型魚礁の設置事業等の事業実施をいたしております。さらに浅海漁場開発事業公共事業として実施をいたしておりまして、これは作れいとか、やはり海水交流等の事業でございまして、いままで解明された技術を駆使いたしまして、一応増養殖推進のための生産基盤整備事業を重点的に取り上げておることは御承知のとおりでございまして、四十七年度から定着性の水産生物、主として海藻類を当面目標にいたしておりますが、これらの増殖を積極的に進めるための大規模の増殖場開発事業の調査ということを、全国でまだ三カ所でございますが、新しく着手をするということもいたしたのでございます。  それから試験研究のほうといたしましては、浅海域における増養殖漁場の開発に関する総合研究というものを、大型プロジェクト事業によりまして、現在農業土木試験場が中心になりまして、私どもの北海道、東北、南西海区、東海区、漁船研究室、これらが一体となりまして、主として資源培養のための排除すべき減耗要因の解明に関する研究あるいは水産土木工学的手法などの導入による生物環境の改変に関する研究、さらには環境の改変を行なった漁場における生物の培養に関する研究。昭和四十七年度予算で申し上げますと、一億七千七百六十万七千円の経費をもちまして実施をいたしております。これらの研究は四十五年から実施されておりますので、その研究の過程において得られました成果を踏まえまして、先ほど申し上げたような大規模増殖場開発事業の調査というようなものも着手することができることになっておるのでございます。しかしながら、御指摘のとおり、現在の水産物に対する需要の状況から見まして、従来の生産基盤整備事業の規模では必ずしも十分とは言いがたいというふうに思っておりますので、私どもといたしましては、今後事業充実をはかっていく、それはやはり技術の進歩の状況に応じまして取り上げていかなければならないだろうというふうに考えております。そこで、やはり何と申しましても、技術開発の一そうの促進をはかるということで、その成果を得次第、すみやかにこれを取り入れて事業化するということでございまして、いま少し長期計画の策定というような点につきましては、技術の進歩を待ちましてやはり取り上げるべき課題であるというふうに存じております。
  78. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 いま長官からいろいろと御説明を願ったわけでございますが、この種の学問については、私はいままで体系そのものが確立されておるとは思いません。そこで、各関係者の、各界各層の代表によって研究会あるいはまた推進団体を創設してこの推進をはかることが、最も肝要であるというふうに考えるわけでございますが、これに対する御所見を賜わりたいと思います。
  79. 太田康二

    政府委員太田康二君) 増養殖のための生産基盤の整備技術に関しましては、農林省においても先ほど申し上げましたように、農業土木試験場が中心になりまして、地域の水産試験場ともタイアップし、さらに大学等の協力も得まして、先ほど申し上げましたように、増養殖漁場の開発に関する大型の共同研究を四十五年から五カ年間で推進いたしておりますことは、先ほど申し上げたとおりでございます。なお、学界サイドにおきましても、農業土木学会と日本水産学会との提携によりますところの浅海開発の研究委員会等が設けられておりまして、研究及び技術面での検討も推進されておるのでございますが、やはり技術の開発並びにその成果の事業化という面での総合的かつ体系的に推進していくための組織活動が、まだ不十分であるというふうに存じておりまして、その点は御指摘のとおりと考えております。  そこで、何と申しましても今後増養殖事業というものを積極的に推進する必要があるわけでございますので、この種の組織活動が必要と考えておりますので、各方面の意見を聞きながら、その組織研究の推進につきまして検討を行なってまいりたいと、かように存じております。
  80. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 次に、中小漁業振興対策特別措置法についての質問に移ります。  この中小漁業振興は、重要な漁業政策の課題と考えるわけなんです。そこで、今後の中小漁業振興対策の基本的な考え方について長官の御所見を賜わりたいと思うのですが、わが国漁業生産量は年々増加しておる。配付された統計によりますと、四十五年度生産量で九百三十二万トン、金額にして九千九百六十四億円、史上最高の記録を残しておるわけです。したがって、国民の食生活は言うまでもなく、国民経済上きわめて重要な役割りを果たしておりますが、中でも中小漁業は、供給増大が要請されておる中・高級魚及び多獲性魚の供給上、主要な地位を占めでおるのでありますが、近年、わが国の中小漁業を取り巻く環境というものは、あらゆる面できびしくなっておるのであります。したがって、水産資源の制約、労働力の不足、特に国際漁場規制等は一段ときびしさを加えられておるのであります。そこで、このような諸情勢の中で、中小漁業わが国漁業に占める重要性にかんがみ、中小漁業施設強化あるいは拡充よりも、私はその経営の安定をはかることが最も重要であると考えるわけでございます。  そこで今後の中小漁業振興対策の基本的な考え方について、まず長官の御所見を賜わりたいと思います。
  81. 太田康二

    政府委員太田康二君) 御指摘のとおり、中小漁業わが国漁業の中に占める地位はたいへん重要なものでありまして、特に、需要の旺盛な中。高級魚並びに多獲性魚の供給上果たす役割りがたいへん大きいことは御指摘のとおりであります。しかしながら、中小漁業自身といたしまして、経営規模の拡大あるいは資本装備の高度化等についての合理化努力を続けておるわけでございますけど、これまた中小漁業を取り巻く漁業環境は、水産資源の制約あるいは労働力の不足、さらには国際規制強化等、一段ときびしさを増しておることも御指摘のとおりであります。  そこで政府といたしましては、四十二年に中小漁業振興特別措置法を制定をいたしまして、その近代化を促進してきておるのでございますが、さらに、その間におきまして漁業近代化資金制度の創設あるいは中小漁業融資保証制度の充実、さらには漁船損害補償制度あるいは漁業災害補償制度等の充実をはかってまいったのでございまして、予算上の措置といたしましては、さらに中小漁業に対しますところの経営診断事業実施いたしまして経営の安定に資する、あるいは乗り組み員の医療対策の充実等をはかってまいったのでございます。やはり何と申しましても、経営の安定をはかるということが施策の中心であることは言うまでもないわけでございまして、今回、中小漁業振興特別措置法につきましては、昭和四十二年制定当時指定いたしましたところの特定業種、指定業種の指定期間の経過期間が一応五年経過いたしたわけでございますので、さらにどうするかというような問題もあったわけでございますけど、新しい観点からさらに経営の規模の拡大生産の協業化の促進、これらをはかるために、今回、中小漁業振興特別措置法の一部を改正する法律を提案をいたしまして御審議をいただいておるわけでございまして、これらを通じまして、中小漁業経営の安定というものの施策を積極的に進めてまいりたいというふうに考えております。
  82. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 あわせて国際漁場規制を受けておるところの魚種別の種類それから相手国ですね、中小漁業のみでなくして大手も含めて、一応日本漁業漁場規制されておる個所をあらまし御説明願えれば幸いだと思います。
  83. 太田康二

    政府委員太田康二君) 現在わが国政府間の協定として加盟をいたしておる条約関係が全部で十五ございまして、さらに民間協定で実施いたしております協定等が四協定あるわけでございます。いろいろなものがあるわけでございまして、順次申し上げますと、まず捕鯨につきましては国際捕鯨取締条約がございます。米、英、ソ、南ア、日本等十三カ国が加盟をいたしておりまして、鯨類が対象になっておることは御承知のとおりでございます。  それから、北太平洋の公海漁業に関する国際条約がございまして、これは日米加の業種でございまして、主として対象魚種としては、サケ・マス、ニシン等が対象になっておりまして、これは御承知のとおり、サケ、ニシン、オヒョウにつきましては、自発的抑止の原則が行なわれているのでございます。  それから、北西太平洋の公海における漁業に関する日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の条約ということで、サケ・マス、ニシンが対象になっていることは御承知のとおりでございます。  それから、北太平洋のおっとせいの保存に関する暫定条約がございまして、日米加ソ等が加盟をいたしまして、オットセイについての捕獲の規制をいたしておるのでございます。  それから、日米たらばがに協定、これは日米間でタラバガニ、ズワイガニの協定をいたしております。  それから、日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定、これは日韓の間のアジ、サバ、底魚等を対象とした協定でございます。  それから、日本国とアメリカ合衆国政府との間の漁業に関する協定といたしまして、日米間でズワイガニ、タラバガニ、オヒョウ、カレイ、赤魚、ギンダラ等を対象にいたしましての協定がございます。  それから、日本国とメキシコ合衆国との間の漁業に関する協定ということで、日本とメキシコの間でメバチ、キハダ、カジキ等を対象といたしました協定がございます。  それから、日本国とニュー・ジーランドとの間の漁業に関する協定ということで、タイ、マグロ等を対象にした協定がございます。  それから、大西洋のまぐろ類の保存のための国際条約というのがございまして、これは日本、アメリカ、南ア、カナダ、フランス等十三カ国が加盟をいたしておりまして、マグロ類などの規制をいたしております。  それから、行政協定でございますが、日ソかに協定、これは御承知のとおり日ソ間のタラバガニ、アブラガニ、ズワイガニ、毛ガニ、イバラガニ、花咲ガニ等を対象とした協定でございます。  それから、日本国とオーストラリア連邦との間の漁業に関する協定ということで、日本と豪州の間にマグロ類とカツオについての協定をいたしております。  それから、全米熱帯まぐろ委員会の設置に関するアメリカ合衆国とコスタ・リカ共和国との間の条約という条約がございまして、メキシコ、アメリカ、カナダ、パナマ、コスタ・リカ、日本が加盟をいたしております。マグロ類、カツオを対象とした条約でございます。  それから、北西大西洋の漁業に関する国際条約ということで、これは米、加、仏、西独、日本等十六カ国が加盟をいたしておりますが、主として、カレイ、赤魚、ニシン等を対象といたした条約でございます。  それから、南東大西洋の生物資源の保存に関する条約ということで、メルルーサ、タコ、イカ、タイ等を対象にいたしまして、日本、南ア、ポルトガル、ソ連等が加盟した条約がございます。  それから、民間協定といたしましては、日ソこんぶ採取協定、これは御承知のとおり日ソ間で、貝殻島のコンブを対象とした協定でございます。  それから、日中民間漁業協定がございまして、これは日中間でアジ、サバ、底魚についての協定をいたしております。  それから、インドネシア諸島間水域における日本漁船の操業に関する暫定取極めということで、日本業界とインドネシアとの間でマグロはえなわを対象魚種としての暫定協定が結ばれております。  それから、モーリタニア回教共和国政府と社団法人日本トロール底魚協会との間の漁業に関する契約ということで、日本業界とモーリタニア間におきまして、イカ、タコ等を対象魚種といたしまして、遠洋トロールについての契約が結ばれているというような実情でございます。
  84. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 いろいろな協定を聞いたわけでございますが、私は特に、日中間のアジ、サバを対象とする協定が、非常に中国側の強い要請で日本の中小漁業は弱っておるわけでございますが、この点については、民間協定を政府側においても格段のアップをして、これの善処方を特に要望いたしたいと思います。  次に、中小漁業者の定義についてお尋ねをいたしますが、法律によりまして、漁船の使用トン数を二千トンから三千トンに今回引き上げた、その範囲を拡大しておるのでございますが、引き上げたその理由ですが、中小漁業振興特別措置法の定義に次のようなことが書いてあるわけです。「その常時使用する従業者の数が三百人以下であり、かつ、その使用する漁船の合計総トン数が二千トンをこえない」ものというふうにあるわけなんです。それが今回二千トンを三千トンに引き上げれば、当然従業者の数もこれに比例して上げるのが妥当ではないか、かように考えるわけでございますが、この点について御答弁をお願いしたいと思います。
  85. 太田康二

    政府委員太田康二君) 御承知のとおり、昨年水産業協同組合法の一部改正を提案いたしまして、先生方に御審議をいただいたわけでございますけれど、その際、法人の組合員資格につきまして、その使用漁船合計総トン数を三千トンまでに拡大した経緯があるわけでございまして、本法もこの趣旨に沿いまして、常時使用合計総トン数三千トンということで、従来の二千トンを三千トンに引き上げたのでございます。  そこで、いまお尋ねの常時使用従事者数の引き上げ——三百人というのについては今回改正をいたしていないのでございますが、私ども近年の漁船大型化あるいは経営規模の拡大ということが、最近の労働事情の逼迫に対応いたしまして、やはり省力化、近代化に重点が置かれておる、そこで使用漁船の合計総トン数の増加に伴う使用従事者数の増加というものは、それほど大きくないという実態を承知をいたしております。特に二千五百トンから三千トンの規模では、常時使用従事者数というのは平均百九十三人ということでございまして、二千トンから二千五百トンの場合には二百三十人でございますが、二千五百トンから三千トンの場合には——これは平均の数値でごさいますけれども、百九十三人と、かえって減小する傾向がある。そこで、今回の総トン数の引き上げに伴いまして、実際現行の三百人でどうかということも検討いたしたわけでございますけれども、一応現在の状態が三百人以下で十分対応できるという状況にあると判断をいたしまして、今回改正はしなかったと、こうした経過でございます。
  86. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 長官のその御答弁は、私は詭弁だと思う。漁船のトン数が二千トンから三千トンに大きくなるということは、船腹の増大等からして加算した総トン数を三千トンにしたという解釈を私はするわけなんですが、たとえば五十トンの船には十名乗っておる、それが八十トンになった場合に、はたして十人でよろしいかということなんです。したがって、私は二千トンから三千トンに上げた、一倍半に従業者の数を増せとは言いませんけれども、やっぱりある程度の——三百人を一倍半にして四百五十人であるけれども、これを三百人から四百人の間ぐらいまで上げるべきではなかったかと思うわけです。  そこで、なぜ今回上げなかったかということは、私はやはり中小企業の定義が三百人以下というふうにあるから、ここに何か問題があったのではなかろうかと考えるのでありまするが、漁業と陸上の中小企業との問題をとらえた場合に、私はやはり安全性から見ても、漁業のほうの中小漁業者に対する定義の三百人というものは若干上げる必要がある、かように考えるのでございますが、この点いかがでしょうか。
  87. 太田康二

    政府委員太田康二君) 私言い落としまして逆に先生から御指摘いただいたわけでございますけれども、確かに中小企業の側で常時使用従事者数が三百人以下というのが定義に書かれておりまして、これとの関係があったことは事実でございます。しかし、漁業生産の特殊性というような面からいいまして、これは引き上げるべきではないか、せっかく船の常時使用総トン数も三千トンに引き上げたので引き上げるべきではないかという御意見、確かに御意見として承っておるわけでございますけれど、私どもの調査によりますと、確かに現在の労働事情の逼迫というような事情もございまして、これが問題であるわけでございますけれども、省力化という点に技術の重点が置かれておるというような実態もございましたので、今回の改正には取り上げなかったという経緯がございます。しかし、なお従来の問題として検討をさせていただきたい、かように存じます。
  88. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 今回の法改正の重点は、五カ年の第一次振興計画が終了した業種について、さらに特定業種として業界ぐるみの体質改善をはかることとし、業界が自主的に構造改善計画を作成し、これについて農林大臣の認定を受け、この認定を受けた構造改善計画に従って、その中小漁業者が構造改善事業実施する場合に、金融及び税制上の特別措置を講ずるように法律で明記しておるわけでございます。近年の中小漁業をめぐる諸情勢にかんがみると、個々の中小漁業者の経営の近代化にとどまらず、さらに一歩進んで構造改善の推進が必要であるということは十分理解できるわけでございますが、第一次振興計画をそのまま延長して第二次振興をはかるべきではないかというような意見があるわけなんです。ところが、第一次振興に引き続いて第二次振興をはかるという考え方をとらなくて、今回、特に特定漁業について構造改善という考え方をとっておるわけなんですが、この理由をお聞かせ願いたいと思います。
  89. 太田康二

    政府委員太田康二君) 私どもも、この法律が、期限がまいりました業種があるわけでございますから、さらに近代化、合理化を進める必要があるということで、どういうふうな対処をしたらよろしいかということを内部的に検討をいたしたのでございます。この法律がねらいといたしておりますところが、一つは長期低利の資金の融通であり、一つは租税上の優遇措置であったわけでございますけれど、制度改正をしないで、第一次の振興計画を引き続き第二次振興計画によってやってまいるというような意見もあったのでございまして、そういう考え方もとったことがあったわけでございますけれど、先ほど申し上げました、制度の二本の柱の一つでございますところの税制面における優遇措置、これは御承知のとおり、租税特別措置法によって措置をいたしておるのでございまして、最初の五年間に限られるということになっておったのでございまして、さらに本制度の対象とするためには、これと同様の制度でございますところの中小企業近代化促進法、これでも、やはり当初は振興計画を立てまして、さらに構造改善計画というものに一歩進めるというような制度もとっておりましたので、私ども中小漁業振興特別措置法におきましても、やはり一歩を進めまして、構造改善に関する制度というものを取り上げる必要があるというふうに考えまして今回の改正をいたしたと、こういう経緯でございます。
  90. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 今回の法律によりますと、特定業種というものは、指定業種のうちから政令でこれを定めるというようになっておるわけでございます。そこで特定業種になると、中小漁業振興計画と、業界が自主的に作成する構造改善計画と二本立てになるわけなんです。そこで、そうなりますと、中小漁業振興計画と構造改善計画との関係をどういうふうに考えておるのか。換言して申し上げてみますると、政府による中小漁業振興方向づけと業界の自主性との間の調和等をどういうふうにはかっていくのか問題があろうかと思いますが、この点について御答弁をお願いしたいと思います。
  91. 太田康二

    政府委員太田康二君) 御承知のとおり、特定業種は、今回、かつての指定業種のうちから政令で定めるということに相なっておりまして、特定業種につきましても、当然政府が中小漁業振興計画というものを新たに定めることになるのでございます。そこで、これを策定するにあたりましては、その内容につきまして、最近の中小漁業をめぐりますところの情勢に対処いたしまして、十分経営の安定をはかるということができるようにすることが第一点でございます。また一方で、業界が自主的に作成する構造改善計画という制度をとったわけでございますから、業界がお立てになりますところの構造改善計画の指針となるように配慮することは言うまでもないわけでございまして、その点につきましては、特定業種につきましての中小漁業振興計画というのは、いわば私ども考えでは基本方針的な性格を持つものである。そこで具体的な点につきましては、構造改善計画の作成段階で十分業界の自主性が生かされるように指導をしてまいりたいというふうに考えておるのでございまして、この点は、過般の衆議院におきますところの審議過程におきましても、両者の関係につきまして、いろいろ御議論があったわけでございます。十分、その間の調整につきましては、業界の自主性が反映され、過度に無理なことにならないような振興計画の策定というようなことが言われたわけでございまして、幸いにして御審議をいただいて、法律が通過いたしました上におきましては、私ども業界等とも十分話し合いをいたしまして、私どもの立てますところの振興計画が基本的な方針を定めるもの、それを受けての具体的な計画が構造改善事業計画に盛られるというような形で運営してまいりたい、かように存じておる次第でございます。
  92. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 この特定業種とはということで、「指定業種のうちその業種に係る中小漁業の構造改善を図ることが当該業種に係る漁業を営む中小漁業者の経営を安定させるため緊急に必要であると認められるもので政令で定める」と、そういうふうになっておるわけでございますが、そのような業種として、当面何を予定しておるのか。また、その業種についての構造改善計画の内容としては、どのようなものを織り込んでいきたいかということを御答弁願いたいと思います。
  93. 太田康二

    政府委員太田康二君) 特定業種は、第四条の二で、政令で定めることになっておりますが、その要件につきましては、ただいま先生がおっしゃったとおりでございます。そこで、私どもといたしましては、この法律が成立をいたしました暁におきましては、現段階において考えておりますのは、四十六年度末をもって五年間の振興計画の期間が満了する以西底びき網漁業及びカツオマグロ漁業を予定をいたしておるのでございまして、これらは、いずれも新しい法律の第四条の二で規定いたしておりますような要件に該当するものというふうに考えております。そこで、構造改善計画業界が自主的に作成するものであるわけでございますが、私どもが現在考えておりますのは、以西底びき網漁業につきましては、水産資源の利用の適正化といたしまして、操業漁船隻数が過剰であるという認識がございますので、その操業漁船隻数の減少の問題と、なお漁場につきましては、南シナ海への漁場拡大する、そのための大型船の導入というようなことが一つございます。それから、経営規模の拡大といたしましては、一経営体当りの漁船の隻数の増加。最も好ましい経営規模に達するような漁船隻数の増加というようなこと。それから、生産行程の協業化をはかるための施策といたしましては、やはり共同運搬体制の確立、これに資するための高性能な冷凍設備等の鮮度保持施設の設置、これらを構造改善事業の内容として盛り込まれるものというふうに考えております。  それから「カツオ・マグロ漁業でございますが、やはりこれも水産資源の利用の適正化というような観点から漁獲量が減少傾向にあり、しかも国際規制が非常に強化されておりますところのマグロはえなわ漁業を、むしろ資源的にもまだゆとりのあると言われておりますところのカツオの釣り漁業へ転換させるということ。それから経営規模の拡大といたしましては、漁船設備が総合的に高度化かつ合理化された標準仕様船による一経営体当たりの漁船隻数の増加というような問題。それから資本装備の高度化としては、カツオにつきましての自動釣り機等の導入、こういったことが構造改善事業の中に盛り込まれるべきものというふうに現段階においては考えておるのでございます。
  94. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 今回の、過日通過した予算で、以価底びき網についての国の財政援助が可決されたわけでございますが、この以西底びき網漁業漁船減船の考え方、これと構造改善計画との関連についてお聞きしたいわけですが、以西底びき網漁業については、近年漁獲高の漸減に伴って操業効率の低下等が非常に問題化されておる。その経営基盤の整備をはかるために業界が自主的に操業隻数の減船措置実施することにいたしまして、これに対して国は財政援助を行なうことといたしましたが、その底びきの自主的減船の考え方及びこれと以西底びき網漁業の構造改善との関連が将来どういうふうになっていくのか、これをお聞きしたいと思います。
  95. 太田康二

    政府委員太田康二君) 御承知のとおり、構造改善事業計画は水産資源の利用の適正化とか、経営規模の拡大生産行程についての協業化その他構造改善に関する事業ということに相なっておりまして、これは漁業協同組合その他の政令で定める法人が作成をすることになっております。そこで、今回の以西底びき網の減船問題でございますが、私どもは現在の以西底びき網の資源の状況から見ますと、やはり水産資源についての利用の適正化というような観点から、水産資源につきましての永続的かつ効率的な利用というようなことを確保し、あわせて以西底びき網の将来にわたっての経営の安定というような観点から、やはり今日の実情から見ますと、減船ということが必要であろうというふうに認識をいたしておるのでございます。そうして、この点につきましては、業界自身もさように感じておられるわけでございまして、今回自主減船に踏み切られたわけでございますが、これは以西底びき網漁業者の団体でございますところの日本遠洋底びき網漁業協会が昭和四十七年度、四十八年度の二カ年にわたりまして、許可総トン数の初年度は一五%、次年度は五%に相当する漁船を減船しようとする計画だというふうに理解をいたしておるのでございまして、その趣旨先ほど申し上げたような趣旨に合致するものというふうに理解をいたしておるのでございまして、国としてもこの減船がスムーズにまいりますように、残った方々が相補償をする、そのための金融のあっせん並びに借り入れ金利を引き下げるための利子助成ということで、昭和四十七年度予算におきましては、末端の金利が三分五厘になりますように、一億二千六百万の予算を計上して、減船が円滑に進むようにということで予算上の措置を講じたということでございます。
  96. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 特定業種は、この指定業種のうち、その経営を安定させるために緊急に構造改善をはかる必要のあるものであるが、これに対する助成策としての農林漁業金融公庫からの特別融資及び税制上の特別措置の内容をお聞きしたいと思います。  また、これらの助成策の内容は、特定業種でない指定業種に比べて強化されていると思うが、この点はどうか。さらにまた特定業種についての漁船の建造等に対する特別措置については金利の軽減等、さらに拡充すべきであると思われますが、この点について長官のお考えをただしたいと思います。
  97. 太田康二

    政府委員太田康二君) 先ほど申し上げましたように、金融と税制上の優遇措置があるわけでございますけど、金融につきましては、農林漁業金融公庫から特定業種にかかる漁業を営む中小漁業者に対しまして、その方々が農林大臣の認定を受けた構造改善計画に従って構造改善事業実施するために必要な資金であって漁船の建造等を行なうために必要なもの、これにつきまして長期低利、年利率六・五%、償還期限十八年以内、据え置き期間三年以内という長期低利の資金の融通を行なうということが一点でございます。  それから、税制につきましては、特定業種にかかる漁業を営む中小漁業者であって、農林大臣の認定を受けましたところの構造改善計画に従って構造改善事業実施する方々に対しまして、認定後五年間、その有する漁船につきまして二分の一の割り増し償却を認める。それと当該計画に従いまして合併出資を行なう場合に、法人税と登録免許税を軽減するということにいたしたのでございます。  そこで、前回実施いたしました指定業種に対する助成策との相違でございますが、一つは、構造改善事業というのが一つの目玉になっておりますので、今回の助成策の対象となる中小漁業者というものは、農林大臣の認定を受けた構造改善計画に従って構造改善事業実施するものに限ったということでございます。  それから、税制上の特例措置につきましては、従来は漁船の割り増し償却の限度が三分の一であったわけでございますけど、二分の一にこれを引き上げたということでございます。  それから、農林漁業金融公庫の融資の条件につきましては、指定業種と今回の特定業種との場合に、特段の差異がないということであるわけでございますけど、私どもといたしましては、まあ、金利等につきましてさらに引き下げたらどうかというような意見もあったわけでございますけど、漁船関係資金についての制度金融における金利体系等を勘案いたしまして六・五%ということに定めたのでございます。  なお、今後特定業種につきましては、構造改善計画実施に基づきましてその他の金融上の措置も生じようかと考えますが、その点につきましては、私ども漁業近代化資金等の融通あっせん、これらには十分つとめてまいりまして、構造改善計画が円滑に推進されますようお手伝いいたしだい、かように存じております。
  98. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 先ほど長官から、指定業種は、現在、以西底びき網漁業、カツオ・マグロ漁業、まき網漁業及び沖合い底びき網漁業の四業種が指定されておるというふうになっておるわけでございますが、これ以外に指定業種の要件である漁獲量の変動、漁業経費増大等により中小漁業者の経営が不安定となっており、または不安定となるおそれがある実態にあり、かつ指定を希望しておる中小漁業はないものかどうか、また、今後の指定業種の新規指定見通しを聞いてみたいと思います。また、今後指定業種を新規に指定した場合、現在の租税特別措置法による税制上の特別措置は講じられないということに聞き及んでおりますが、その場合の振興措置の取り扱い方について、どういうふうに考えておられるのか御答弁をお願いしたいと思います。
  99. 太田康二

    政府委員太田康二君) 現在の中小漁業振興特別措置法は、四十二年に制定をされたわけでございますけれど、指定業種の指定要件につきましては、先生がおっしゃったとおりでございまして、現在までのところ、法律が施行になりました四十二年におきまして、以西底びき網漁業並びにカツオ・マグロ漁業指定をいたしました。その後、同様な条件に該当するということで、四十三年にはまき網漁業指定し、四十四年には沖合い底びき網漁業指定をいたしたのでございます。  それでは、その他の中小漁業について、かような要件に該当する業種として何が考えられるかというお話でございます。同種の業種といたしましてはイカ釣り漁業あるいはサンマ漁業、サケマス漁業等が考えられるわけでございます。そこで経営の実態を見てまいりますと、イカ釣り漁業並びにサンマ漁業につきましては、御承知のとおり、どちらを表作と言い、どちらを裏作と言ったらいいのか問題があるわけでございますけれども、周年操業というような経営形態ではなしに、兼業形態が大部分でございまして、これらを指定業種といたしますことは、他の兼業業種との関連におきまして、さらに検討をする必要があるということで、私どもといたしましては、現段階におきましては、これを指定業種として指定する用意はないわけでございまして、当面は漁業近代化資金等の活用によりまして対処してまいりたい、これによりまして経営の安定をはかってまいりたいというふうに考えております。それから、サケ・マス漁業につきましては、御承知のとおり、毎年、日ソ漁業委員会におきますところの漁業交渉によりまして漁獲量が定められるということになっておるのでございまして、近年におきます漁業の実態等から見ますと、どちらかといいますと、新しい設備投資を行なうということよりも、むしろ抑制して経費の節減をはかるというふうなことに向いておりまして、これらを通じまして、その収益性の向上をはかるということが望ましい方向であるというふうに考えておりますので、これらを当面、指定業種とするというふうに考えていないのでございます。ただ、私どもといたしまして、だんだん漁業の経営形態が変わってまいりまして、イカ釣り漁業等につきましては、船によりましては、だんだん兼業形態から脱して専業形態のものも出てきておるという実態もあるわけでございますから、いま少し事態の推移をながめまして、さらに漁業の実態等十分精査の上、検討してまいりたいと、こう考えております。  そこで、第二のお尋ねの租税特別措置法による税制上の特例措置、これが講じられるかどうかというお話しでございますが、新しい指定業種ということになりますと、現行法が直ちに働かないという問題がございます。したがいまして、私どもといたしましては、当然指定業種とし、さらにそれが特定業種になるという過程におきましては、税制上の優遇措置を受けさせるべきであるというふうに考えますので、財政当局とも折衝いたしまして、同様の特例措置が講ぜられますよう、租税特別措置法の改正をお願いするということになろうかと存じます。
  100. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 最後に私は、本法律による振興措置対象となる中小漁業のおもなものは漁業法に基づく指定漁業とされ、船舶ごとに農林大臣の許可を受けなければ当該漁業を営むことはできないというふうにされております。漁業法上、指定漁業の許可の有効期間は原則として五カ年間とし、その期間は「同一の指定漁業については同一の期日に満了するようにしなければならない」というふうに規定されておるわけでございます。これらの漁業法の規定に基づく第二回の一斉更新期に今年度は当たっておるわけでございますが、その処理に当たっての基本方針についてのお考え方をお聞きしたい。  また、中小漁業の経営規模の拡大等については、漁業法上の承継規模の上限の引き上げなど、許可制限の弾力的運用が私は必要でありはしないかと、かように考えるわけでございますが、今回の一斉更新についてどのような措置考えておられるのか御答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  101. 太田康二

    政府委員太田康二君) 漁業法上一斉更新の制度をとりましたのが、たしか昭和三十八年であったかと思いますが、三十八年の漁業法の改正によりまして、指定漁業の一斉更新の制度が採用されて以来、本年が二回目の一斉更新の時期であったわけでございますが、今回も一応前回の一斉更新と同様、現行法のワク内で措置するということにいたしまして、最近におきましところの各指定漁業の操業の実態あるいは経営の状況、さらには対象資源の動向、こういったものも勘案して、後ほど申し上げますように必要な改善措置を講じたのでございますが、残念ながら主要事項につきましては、おおむね現行どおりに措置することにいたしておるのでございます。特に、許可隻数等につきましては、現在の状況から見ますと、ある業種からある業種へふやしたいというような御意見があるわけでございますけれども、残念ながら現在の対象資源の状況から見ますと、現行の漁獲努力拡大するというような可能な業種が残念ながら現状においてないというような実態にもあるわけでございますので、隻数の増加ということはもちろんのこと、無補充大型化等の漁獲努力増大、こういったものをもたらすような形での漁船大型化ということは認めることはできなかったのでございます。しかしながら、やはり漁業経営の安定合理化の促進につきましては、十分配慮する必要があるわけでございますので、今回の一斉更新におきましても、経営規模の承継限度の拡大あるいは近海カツオ・マグロ漁業等につきましては、ただいま先生が御指摘になりましたように、使用漁船の範囲の引き上げということで、現在までは七十トン未満であったものを八十トン未満に引き上げるというようなことで、経営の安定をはかるというような改正を行なったのでございますが、内容的に見ますと、それほど大きな改変ということができなかったという実態にあるわけでございます。
  102. 村田秀三

    ○村田秀三君 私はいま提案されております水産関係三法、これに直接的には関係をしないのでありますけれども、しかし、大局的に見た場合、関係なしとしない問題だろうとも思うわけであります。それはどういう意味かといいますると、中小漁業振興法とも関連をするのではないかと思うんでありますが、ずっと法案の内容であるとか、あるいはその施策を見てまいりましても、これは沖合いであるとか、遠洋であるとか、中小といっても、われわれの認識からするならば、相当これは大型漁業に属する問題ではないか、こう実は思うわけです。しかし、ことし出されました漁業白書等を見てまいりましても、沿岸あるいは内湾も当然含んでおると思うんでありますが、沿岸漁業の問題というものを軽視してはならないような感じを実は、私は持っておるわけなんです。というのは、その生産高が横ばいである、ないしはむしろ下降ぎみであろうということ。そしてそのために需要の伸びがあるにもかかわらず、魚価が相当高騰しておるという問題。そしてまた、その生産が上がらないということは、主としては漁場の荒廃、これに起因するということも明らかに書かれておるわけでございます。これは一々私が申し上げる必要もないと思うのでありますけれども、そういうことを考えてみた場合に、最近とりわけ沿岸地域における有毒物による魚介の汚染、それが人体に重大なる影響を与えているという事例というものが、これは少なくないわけであります。最近に至りましては、水俣病に関して、熊本県の委嘱によって九大が第二次調査をした、こう理解をするわけでありますが、発表されましたそれは、まことにわれわれの認識では、水俣病であるから水俣周辺であろう、八代湾周辺であろうと、こう思っておったものが、ずっと拡散をして鹿児島県にも影響が出てくる、あるいは対岸の天草にも影響が出てくる。こういうことであるわけであります。しかも、その水俣病の直接的原因といいますか、これはやはり有機水銀に汚染されたところの魚を食ったから罹患したのだということは、これは定説でありまして、これをくつがえす何ものも現在はないということですね。そういうことをいろいろと考えてまいりますと、この沿岸漁業というものをこの辺であらためて見直してみる必要があるのではないか。もちろん、これは対策は立てておりますというお答えはありましょうけれども、あらためて沿岸漁業というものを見直してみることが、将来、良質なたん白質を国民に十分に供給できる体制をつくる一つのもとであろうと、こんなふうにも実は感じたわけでございまして、とりわけ三法に期待するわけじゃございませんけれども、そういう意味で素朴な疑問と、そして、まことに初歩的な質問になって恐縮ではございますけれども、そういう意味で質問をしてみたい、こんなふうに思っております。  そこで、環境庁の方、来ておりますか——環境庁が来ましたら環境庁に関する部分は質問することにいたしまして、この水俣病が論議をされてずっと久しいわけですね。その間で、魚との関係あるという、そういうことが明らかになった時点で、水産庁としてはどのような対策ですか、対処をしてきたかということについて、まあ何もなかったというのであればよろしいし、あったとすれば、その措置状況等について、ひとつお知らせをいただきたいと思います。
  103. 太田康二

    政府委員太田康二君) 現在の私どもが持ち合わせておる法制におきましては、公害等に伴いまして有害なものが含まれておる魚がとれたというような結果、その漁業をどうするかというような意味で、第一義的に規制措置を講ずるというわけにはまいらないのでございまして、実際の指導といたしましては、漁業者の方々の自主的な自粛措置というような形で、操業を自粛してもらって、何と申しますか国民の健康と安全の確保をはかるというような指導をいたしておるのでございます。なお、実際に原因が明らかで、加害者が明らかであるというような場合には、当然漁業者の受ける被害につきまして、私どもが——もちろん県が主になるわけでございますけれども、企業者との間の損害賠償等のことにつきましては、指導に当たっておるという実態でございます。
  104. 村田秀三

    ○村田秀三君 そうしますと、この水俣病に関して、これは私も水俣病について深く追及するつもりはございませんから、それほど積極的に調べてみたわけじゃございません。ただ、聞くところによると、それがどの程度の面積かは知りませんけれども、窒素工場の排水口周辺であろうと思います、いまの漁業の自粛、これが県の指導で行なわれたということは聞いております。そこで、それに対して漁業補償というようなものが当時なされたのかどうか。
  105. 太田康二

    政府委員太田康二君) 私ども承知しておる範囲では、補償といいますか見舞い金という形で、企業の側から漁業者に対する何と申しますか見舞い金の交付が行なわれておるというふうに承知いたしております。
  106. 村田秀三

    ○村田秀三君 実は、私もその辺のところは非常に問題だと思うわけでありますが、いずれそれは後ほどの問題にいたしまして、今度発表になりましたのは、それこそ水俣市が五百二十五人、田浦町七十四人、芦北町七十六人、津奈木町百二十八人、竜ケ岳町四十人、御所浦町四十一人。この津奈木までは大体不知火海の沿岸地帯なんですね。あとの二町は対岸である。非常に広範囲に拡散をしておるということになるのですね。で、魚にしるしはついておりません。これは回遊するものであります。あるいはまた、魚は移動しなかったかもしれないけれども、海流の関係で、汚染された海水が集中的にその部分にいったというようなことも、これはいろいろ、しろうとなりに想定をするわけでありますが、この因果関係というものは明らかにされておりますか。あるいは、これは環境庁の所管かと思われますが、水産庁でもそれを承知する私は責任があるような気がいたしますが、そういう点については、大体、いままで検討研究をした事例がございますか。
  107. 太田康二

    政府委員太田康二君) 私どもも事例的な調査をいたしたことがあるわけでございますけれども、魚の体内にどういうふうな過程を通じて蓄積されるかというようなことについての確たる、何と申しますか、研究の成果はまだ残念ながら得ていないというような実態でございます。海水を通じて入るのか海底を通じて入るのか、いろいろ蓄積の状況によって違うわけでございますけれども、まだ最終的にこういった過程を経てこういった種類の魚に、あるいは貝類に蓄積されるというような点につきましての研究は十分いたされていないという実態でございます。
  108. 村田秀三

    ○村田秀三君 環境庁が参ったようですから質問いたしますが、いま、実は水俣病の問題について、魚との関係、それについて質問を私はいたしておったところでありますが、この九大の第二次調査の結果が発表されて、いままでも予測はされていたことではあるけれども、とにかくこれはたいへんな問題であろうと、こう思わざるを得ない。そこで、あの広い不知火海——もちろん八代湾の湾沿いもそうでありましょうが、対岸の天草までもこれは拡大をしておる。これは湾に沿った町や村の話かもしれませんが、そこでとれた魚をどこで食べるかということは、これは流通の経過をよく見なければわかりませんけれども、食べたものが発病する、罹患する、こういうことであるとするならば、何らかの対策を立てなくちゃならぬのじゃないかというふうに実は考えられるわけでありますが、環境庁として今日まで調査をした、何といいますか、水俣病と魚との因果関係といいますか、まあ、しかし、食べたから罹患したということだけは、中毒症状を起こしたということだけは、これは言えるわけでありましょうが、その辺のところをひとつお答えをいただきたい。
  109. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 実は御質問の水俣病と水銀と、それから魚を経由して人体への影響ということの御質問でございますけれども、はなはだ申しわけございませんけれども、私、実は担当が水質保全局長でございまして、健康のほうは企画調整局でやっておるので的確なお答えにならないかもしれませんけれども、水俣病の中で魚にどれだけ起因があるかというような研究等につきましては、私承知しておる限りにおきましては、必ずしもまだ明らかになっておらないのじゃないか。むしろ、やはり魚も食べますけれども、水銀の入っておる水も飲んでいたのじゃなかろうかとか、いろいろ食物を経由して体内に蓄積されておるというふうに想像はされておるわけでございます。ですから、魚がどれだけ水俣病の発病に寄与したかという点につきましては、私残念ながら、いま手元に資料を持っておらないわけでございます。
  110. 村田秀三

    ○村田秀三君 これはどこに聞いても、担当でなくたって、そう違った答えが出てくるとは、私も期待していないのです。しかしながら、きわめて重大な問題であることだけは間違いないんですね。これは関係ないと断定する人はいないわけです。経口であることは間違いない。その経口は水を飲んだ、魚を食べた、こういうことでありますから、魚に関係することだけは間違いないと思います。先ほど水産庁としては、この際、特段に禁止措置は講じないとか、あるいは自主規制に待ったとか、こういうことでありましたが、自主規制を求めたこと自体が、やはり可能性の問題で、それは自主規制を求めたのだろうと思うのです。だとするならば、これはそういう事象が確認をできたならば、あるいはそのおそれがあると認められたとするならば、それは直ちに禁止措置をするとか、これはずいぶんと魚は回遊するわけでありますから、どうも広範囲にとった魚をいかぬというような、そういうことがはたしてできるかどうかということは非常にむずかしい問題ではあるけれども、しかし、起こるべき地域というのは、これは沿岸、内湾ということだけは現在のところ言えるわけなんです。だとするならば、この際に、それを禁止するとか、あるいは禁止をしたならば漁業の補償をするというようなことを考えなくてはならないのじゃないかという問題について、その考え方を聞いてみたいと思います。
  111. 太田康二

    政府委員太田康二君) 現行の法制面におきましては、そういった面での手当てができていないということを先ほど申し上げたわけでございます。しかし、最近におきましては、PCB汚染の問題等も出ておりまして、たとえば米のカドミウムの場合には、一PPMをこえるものは食品衛生法上の食品でないということで食管の買い上げは停止する。そのかわり、それ以下のものは食管は買い上げるけれども、配給はしないといろ形で安全の確保をはかったという事例もあるわけでございます。そこで、私どもといたしましては、当然、公害の場合には加害者負担の原則になっておりますので、私どもといたしましては、加害者が明らかな場合には、当然加害者に請求するようなことを指導をいたしておりますし、実際に時間がかかるかもわかりませんけど、民事による解決ということにもなっております。それから原因が不明な場合には、公害紛争処理法に基づきまして解決をはかる道も開かれておる。あと漁業規制をどうするかというような問題もあるわけでございます。私どもといたしまして、その面につきましては、現段階におきまして規制すべき措置がないものでございますから、一応自主規制に待つというようなことをやっておるわけでございますけど、将来の問題としてPCB等の、何と申しますか、ガイドラインがきめられる場合には、そういった問題も含めて漁業規制の問題につきましての考え方というものも考えていかなければならないだろうというふうに考えております。それ以外に、私どもといたしましては、やはり漁業者の方々としては、さらにそこにおいて漁業生産を続けたいというようなこともあるわけでございますから、その場合には、加害者が明らかな場合には加害者からの、何と申しますか、負担によりまして漁場の復旧をはかるという事業もやらなければいけませんし、加害者が明らかでないような場合には、国が実は助成措置も講じておりまして、地方公共団体等が漁場復旧事業をやる場合に補助をいたす道も開いております。これによりまして漁場の復旧をはかって、漁業活動が続けられるようなこともやってまいらなければならないだろうというふうに考えております。  いずれにいたしましても先生御指摘のとおり、やはり公害の実態を十分把握した上で、私どもといたしましては、まず第一に考えなければならぬのは、人の健康の問題でございますし、さらには漁業者がこれによって受ける損失をどういうふうに緩和するかというような問題、さらには漁業生産活動を続けたいという方々には漁場の復旧をやってまいる、それぞれの方策が考えられるわけでございますけど、その負担等の点につきましては、いま申し上げたように、加害者が明らかな場合には、加害者の負担においてこれを実施する。明らかでない場合には国の助成によって漁場の復旧をはかるというようなことで対処してまいりたい、かように存じております。
  112. 村田秀三

    ○村田秀三君 それでは、ただいまずっと総括的に答弁をされたようでありますが、一つ一つ詰めなくちゃならない問題もあろうかと思います。  それで、これは水俣じゃございませんが、最近、東京湾のPCBの汚染問題ということが新聞テレビ等でも報道されております。その濃度がだんだん高くなっていきつつある。それから、東京湾に生息する魚介類のPCBの含有量も逐次高まっておるというような問題が、これは東京都衛生局で調査したものが発表されておるようであります。  そこで、環境庁にお伺いいたしますが、東京湾のPCBの実態ですね、これをひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  113. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) PCBによります汚染につきましては、環境庁その他が全国的に調査した事例というものはございませんで、これから私ども、PCBによります主要汚染地域等につきまして、水質それから底質並びに土壌等の調査をいたしたいと思っております。東京湾におきます魚介類のPCBによる汚染状況でございますが、これは東京都が昨年の五月からことしの二月までに検査をいたしました調査結果がございますので、御報告申し上げますと、魚介類のうちPCBによる汚染が、三十七品日中四三・二%からのPCBが検出されておるようでございます。そのうちボラは、七検体からPCBが発見されたようでございますが、その平均は五・四九PPMのPCBを含んでおるというふうに報告されておりますし、セイゴにつきまして、これも七検体でございますけれども、平均二・〇四PPMというPCBが含まれておるということになっております。これは湾外の魚介類よりも、やっぱり湾内の魚介類につきましては、平均的にPCBの度は若干高いというふうに、調査結果として私どもは読み取っておるわけでございます。
  114. 村田秀三

    ○村田秀三君 厚生省、来ていますか——いまお答えをいただいたとおり、これは東京都の衛生局で調査をして発表した数字のようであります。多少の違いはこれは別といたしまして、そのように——同じ資料であろうと思いますが、私の手元にありますものを見ますと、いまお答えをいただいたとおりでございまして、肉と、内臓と、それから内臓の脂肪に分けてありますけれども、これはきわめて高い数値が出ております。肉よりも内臓、内臓よりも内臓の脂肪、これを見ますと、最大五九・五九PPM、こういうような数値も出ております。  そこで、厚生省の食品衛生関係を所管しておる方だろうと思うのですが、お答えをいただきたいと思うんですが、食品衛生上、PCBというのは、どの程度の含有を許容できるのであろうかと、こういう問題であります。いま、いろいろと作業をしておるということは聞いておりますけれども、アメリカ等の資料によりますると、アメリカは五PPMであるというふうに決定をしたということを聞いておるわけでありますが、今日の作業の状況なり、あるいはいつ結論が出るのか、結論を出そうとする数値は、ほぼどの程度に考えられるのか、お答えを願いたいと思います。
  115. 神林三男

    説明員(神林三男君) お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、PCBの、特に魚介類の汚染率というのはかなり高いということは、新聞紙上等で報道されているとおりでございますが、一応PCBの慢性毒性というものにつきまして——急性毒性は、これはある程度わかっておるわけでございますが、一番問題になります慢性毒性につきましては、目下国立衛生試験所を中心といたしまして研究中でございます。それからまた、魚介類そのもののPCBの汚染実態につきましては、一応国で統一した試験法をきめまして、それに基づき産して現在魚介類につきましては、水産庁においてこの調査を実施中でございます。いまだその成績はまとまっていないわけでございます。  しかし、ただいま先生も御指摘のとおり、アメリカにおいては魚介について五PPMというような一応基準もきめたというような情報もございまして、また、日本でも至急こうした基準をつくるべきであるという御意見も方々から上がってまいりましたものですから、厚生省といたしましては、食品衛生調査会の中にPCBの特別部会を設けまして、その基準を早急に設定するように、ただいま検討をお願いしておるところでございます。いまのところ、どの辺の数値になるか、あるいはどうなるかということはこれは全部特別部会のほうにお願いしてございまして、これもいろいろとデータが集まり次第、また、早急に部会を開きまして、この辺を検討してまいりたいというのが部会長の御意向でございます。
  116. 村田秀三

    ○村田秀三君 非常に私も、ほんとうは、これ、どういう質問をしたらいいかと思って実は迷っておるわけです。というのは、確かに東京都衛生局で調査したこの調査が信感性あるものとして私は申し上げるわけでございますが、アメリカの五PPMという決定と比較して見るならば、東京湾の魚は全然食えなくなるんですよ。しかしながら、確かにそれは慢性毒性がどの程度のものであるかという、そのことについては、非常に判断がむずかしかろうと思うけれども、しかしながら、有毒物質が重複して体内に蓄積されるという問題、これはいままでも公害等でおそらく論議され尽くされておる。がしかし、なお結論が出ない、こういう問題であろうと、こう思うんですね。しかし、アメリカが五PPMで結論を出したのに、日本が、どうもはっきりしませんから一〇PPMでございましたとか、二〇PPMでございましたというようなかっこうでよろしいものかというと、私はそうではないと。まあ調査会の検討に前もって一つの注文をつけるというふうにとられても困るわけでありますけれども、しかし、いずれにいたしましても、つけざるを得ないという客観条件というのはあると思うんです。その場合に、水産庁として東京湾内の魚、これは東京湾内ばかりじゃなく、数値は低いけれども、駿河湾にも出ておるし、大阪湾にも出ておるわけです。だとすれば、水産庁としては一体それをどうするか。もっとも、水産庁は、いや、それはおれのほうの問題じゃないんだ、食品衛生の関係からいえば、これは厚生省の問題である、そうしてまた、水質の環境基準を定めるのは環境庁であると、こういうようなことになって、いかにも責任が直接ないようなごとき発言というものが、あるいはあろうかと思うけれども、実際は放置できない問題なんです。水産庁としては、どういう考え方に立つのか伺いたい。
  117. 太田康二

    政府委員太田康二君) PCBの問題につきましては、先ほど厚生省のほうから御答弁があったわけでございますけれども、最近、PCBの分析方法につきまして、厚生省の統一的な分析方法が確立いたしましたので、国の試験研究機関それぞれ分担いたしまして、現在資料を収集いたしまして、その分析に当たっておるわけでございまして、私のほうも魚介藻類につきまして、一般汚染水域あるいは生産工場の周辺、主要工場の周辺水域あるいは対象水域等をそれぞれ定めまして、個々の検体につきましての分析をいたしておるところでございます。  なお、アメリカで定められておる五PPMなるものがどういろ性格のものかということにつきましては、私さだかでないわけでございますけれども、PCBの学者先生の話によりますと、日本人はアメリカ人に比べますと、魚の摂取量が三倍近くあるから、やはり五PPMではいけないんで、もっと基準はきびしくすべきであるというような御意見もあるようでございます。私、前に畜産局長をやっておりましたときに、牛乳中の汚染の問題で基準がきめられまして、BHCのガンマBHC、べーターBHCについての基準が定められたわけでございますけれども、あの場合には、たとえば体重何キログラムの人が一日どのくらいの量をとって、一生飲み続けた場合に有害なんだというような基準があったようでございますが、今回の五PPMというのは、必ずしもそういうのではないようでございます。しかし、いずれにいたしましても、基準値というものが、いまお話しのように近く定められることになっておりまして、その場合に私どもといたしましては、一つは、食生活の安全の確保ということが第一でございますから、これは当然その点を考えなければならない。しかし同時に、たいへんむずかしい問題でございますけれども、いたずらに不安を惹起させないという二つの面に十分配慮しながら対策を検討しなければならないだろうというふうに思っております。  そこで、そのような分野としてどういうものが考えられるかという問題でございますが、やはり消費者の食生活の安全をいかにして確保するかと、先ほどの米の例ではございませんが、場合によりましては地域を指定をして、そこで魚の個々に実はPCBを検査するわけにもまいりませんし、一つごとに検査するのはかなりの金もかかりますし、時間もかかるようでございますので、そういうこともできないわけでございますので、その辺がたいへんむずかしいわけですが、やはりある程度漁業規制というようなものもやらなければならぬ場面も出てくるかと思います。そうなりますと、食生活の安全は確保されるということになりますが、それによる漁業者の被害があるわけでございますので、これをいかに緩和するかということでございます。この点につきましては、先ほど来申し上げておりますように、原因者が明らかな場合には原因者から損害賠償を請求するというようなことも可能であろうかと思いますが、PCB汚染がどういう経路を通って魚に蓄積されたかというような問題の解明はむずかしいと思いますので、なかなか困難かと思いますが、やはり漁業者の受ける影響は企業が負担するとか、あるいは国が場合によっては負担しなければならぬ場面もあろうかと思いますが、そういったことを検討しなければならない。  それからもう一つは、やはりそこで漁業生産活動を続けたいというような方もあろうかと思いますので、そういった場合には、汚染された漁場をどういうふうに復旧するか、実はこの点につきましても、PCBはなかなかむずかしい処理を要するようでございまして、はたして、しゅんせつをすればいいのか客土をすればいいのかというようなこともございます。これらの点につきましては、私どももPCBの専門の学者に接しまして、どういった処理の方法をしたらよろしいかというようなこともお尋ねをすることにいたしております。まあ、いずれにいたしましても、そういったことを私ども検討をしなければならないということで、部内にPCBの対策の研究会をつくりまして、いま言ったような点につきましての有効適切な措置考えておるのでございます。いずれにいたしましても、近く食品衛生調査会のほうで、主として医学の見地からの立場から、暫定基準値というものが定まることになると思います。それが定まりますれば、その定まり方いかんにもよるわけでございますけれども、そういった見地から、私どもといたしましては、一方において調査を進めると同時に、その対策のあり方につきまして、せっかく検討をいたしておるという段階でございます。
  118. 村田秀三

    ○村田秀三君 どうも、そういうお答えきりあるいはできないのかもしれないのだけれども、しかし、事は急を要する問題だろうと思うんですね。これは東京都で行ないました調査——検出したこの含有量ですね。これが厚生省がかりにやったとしても環境庁でやったとしても、そう変わるものじゃないだろうと私は思う、科学的なことは私はわからないが。これは相当な数値が出ているわけですよ、五PPMなんというものじゃないんだと、これはボラが肉でもって一九・一PPM、非常に高い数値が出ているんですね。だから私が言うのは、別に困らせるために言うわけじゃございませんけれども、とにかく事は急を要する問題だ。でありますから、これは早急に厚生省は結論を出すべきであろうし、同時にまた水産庁は、いま、何といいますか抽象的なといいますか具体的なといいますか、厚生省がそれを決定したならば一直ちに、では東京湾の禁漁というものに踏み切るのかどうかという問題、これはずいぶんと意地悪い質問ですがね、その辺はどうなんですか。
  119. 太田康二

    政府委員太田康二君) 東京都の調査もあるわけでございますけれど、私どもといたしましても、実は私どもの担当研究機関をして東京湾についてのPCBの分析をいたしております。これらの結果を全部寄せ集めました結果に基づきまして、それらを参考にして、厚生省で食品衛生調査会でおきめになると思うわけでございます。それらの数値を見てまいりますれば、いま一般的に言われておりますことは、アメリカの五PPMよりもきつい基準をきめるべきである、日本人の場合には、食生活が動物性たん白を水産物に依存しているからということもありますので、実際問題として、漁業規制をしなければいかぬというような事態も、当然考えられると思っております。その際の救済措置等につきましては、まあ抽象的というおしかりをいただいたわけでございますけれども先ほど申し上げたような点につきまして、さらに今後こういったことが具体化するまでに私どもとしてはきめてまいりたい、かように存じております。
  120. 村田秀三

    ○村田秀三君 考え方はわかりました。しかし、具体的に手を加えるということになりますると、非常にむずかしいと思います。例として、いま土壌汚染防止法という例をおっしゃっておりましたけれども、土壌汚染の防止であるならば、これは限定された一区画ですね、まあ考えようによっては。阿武隈川の上流に工場があった、なるほど汚染された一PPM以上の米が生産される地域は一定のところである。それが〇・八、〇・七となると、ずっと流域に影響してくる、こういう問題もある。しかし、これを限定して一区画の事業というものは、そうむずかしい問題ではないですね。ところが事漁業の問題になりますと、これは非常にむずかしい。あるいは東京湾全部——観音崎から対岸まで線を引いて、これは全部ひとつ禁止であると、あるいはその汚染の復旧のための事業をしなくちゃならぬ。こういう問題も出てくると思うんですよ。そうしますと、これは単に水産庁の行政手続であるとか、あるいは指導であるとかいうことだけで事足りる問題ではなかろうと思うんですよ。でありまするから、やはりそこには強い態度、き然たる態度、そしてまた適切な、漁業者が安心をすることができるような施策というものが並行して当然必要である。こういうことになるわけでありますが、その辺の決意といいますか、考え方というものはどうですか。
  121. 太田康二

    政府委員太田康二君) PCBの問題は、最近起こった新しい問題で、解明されていない問題が多々あるわけでございまして、たしか環境庁が中心になりまして、関係各省それぞれ分担をして所管の物質につきましての分析をいたしておるという実情にございます。これらの成果を集めまして、関係者が寄りまして対策の検討をいたしておるわけでございますけど、それらの場を通じまして私ども考え方を十分披瀝いたしまして、これらの御批判を受けながら対策の樹立をはかってまいりたい、かように存じております。
  122. 村田秀三

    ○村田秀三君 それではその問題はその程度にしておきたいと思いますが、ここでやはり伺ってみたいと思うのでありますが、これはいま水俣の問題とそれから東京湾の問題を申し上げたわけでありますが、日本列島をめぐるところの沿岸、内湾の汚染が進行しておるといろ、そういうことは一般的にはわかるわけでありますが、その汚染の状態というものを正確に把握しておるのかどうかということが一つ。それと同時に、この沿岸漁業が停滞をしておるという、その裏には、汚染状況と並行して生産高と汚染の進度というのは交錯をすると思うのですが、線を引きますならば。そういう状態というものは適切に把握をされておるのかどうかという点について、ひとつお聞きをしておきたいと思います。
  123. 太田康二

    政府委員太田康二君) 私のほうも全国に手足を持っておるわけではございませんので、県を通じて調査をいたしておるのでございます。漁場汚染漁獲との関連につきましては、これを直ちに明らかにするということは、まことに困難でございますが、やはり漁場汚染に伴いまして操業に制約を受けた、あるいは魚価が低落をした、高級魚生産が減ったというようなことを一応の漁業被害のメルクマールといたしまして、各県に調査を依頼をいたしておるのでございます。昭和四十四年以来引き続き各県から調査の結果を求めておるのでございますが、複合汚染によりまして漁場の価値が低下したということで継続的に発生しておる漁業被害につきましては、先ほど申し上げたようなことを視点として調べてもらっておるわけでございますけど、個所につきまして約三百六十カ所を数えておりまして、関係の被害の組合の数が六百二十六組合、被害金額で約百四十六億、こういうふうに承知をいたしております。
  124. 村田秀三

    ○村田秀三君 これまた、まことに抽象的な質問になるわけですが、これは昭和四十四年以降の継続的慢性的汚染によるところの漁業被害、こういうことでいま承知をしておるわけでありますが、確かに直接的被害、これは私も水産庁から資料をいただきまして承知をいたしました。四十五年百六十億だと、こういうことでございます。百六十億といえば金額的にいいますると生産額の約二%、微々たるもののようにも見えますが、しかし、これは直接被害でありますからね。継続的慢性的漁場汚染と並行して減少する生産高。四十四年の百四十六億という数字をいまお聞きいたしましたが、これは年々高まっていっておることだけは間違いない。だとすれば、この汚染の状態というものを防止しなくてはならぬということが一つ。  それから、この汚染防止を、汚染防止というよりも復旧する、復元する、こういうことが考えられてもいいのではないか、当然そうされるべきである。もしも現状維持、そういう意味で、これ以上の防止措置をしないというようなことであるとするならば、私はこれはどんどん汚染されていくであろうというふうに考えるわけでありまして、その辺のところを水産庁としては、どのように考えておるのか。これは環境庁にも関係するわけであります。水の環境基準を定めてあるわけでありまして、A、B、Cと類型別に基準を定めてあるようでありますけれども、どのように水産庁としては考えるのか。現状維持以上にはもう汚染をしないように施策をしていこうとするのか、復旧をしなければならない、こう考えておるのか、その点はどうでございましょうか。
  125. 太田康二

    政府委員太田康二君) 私どもは、やはり沿岸におきましては、都市下水とか工場排水による被害というものは、つとに最も被害を受けておった立場でございますので、公害問題は早くから取り組んでおったのでございますが、最近ようやく公害に関する諸立法も整備をされてまいったわけでございます。そこで私どもといたしましては、現状以上に公害の発生が進行しないように、現在の水質汚濁防止法とか、あるいは海洋汚染防止法、これらの公害関係の諸法の厳正な運用によって工場排水や廃棄物の規制あるいは水質汚濁状況の監視、測定等について万全を期するということが一義的に必要であろうと思っております。特に都道府県等では、上乗せ基準等も定めることができるわけでございますので、これらの指導に相つとめておるという次第でございます。  それから、第二のお尋ねの点の、公害によって生産力の低下した漁場というものもあるわけでございますから、これにつきましては、先ほど申し上げましたように、原因者のさだかでないものにつきましては、しゅんせつ、あるいは導水、客土、これらの水産土木事業もすでに一部実施をいたしておりますので、これによりまして漁場機能の回復をはかるということを基本にこの問題に取り組んでおるということでございます。
  126. 村田秀三

    ○村田秀三君 まあ方向としてはわかりますが、では具体的に、つまりA、B、C海区に分けて、そうして環境庁が定めた環境基準を守るためには、この海区はどのような措置をしなくてはならぬ、あるいは定められた基準になっておらない——つまり、それよりももっと汚染が進行しておる、こういう海域というものもあろうかと思うんですね。その場合に、それを復旧するという具体的な措置というものが——確かに松川浦でしゅんせつをするとか、部分的にはこれは承知をしておるわけでありますが、そうではなくて、東京湾あるいは大阪湾、瀬戸内海、駿河湾であるとか、こういうぐあいに見て、私は小部分のことを申し上げておるのじゃなくて、もう少し大きなといいますか、大じかけなといいますか、こまかい具体的な計画とか、そうしてそれを実行するというような施策というものをいま水産庁として持っておるのかどうか、こういうことが知りたいわけです。
  127. 太田康二

    政府委員太田康二君) 率直に申し上げまして、個々の漁場につきましてここがどうであるかというような実態につきまして、私のほうも一々承知しておるわけではございません。したがいまして、私どもの態度といたしましては、先生のおっしゃるように、国全体をあげて大々的にこの問題に取り組まなければならぬわけでございますけれど、実際にはそういった態勢になっていない。結局県側の要望がございまして、個々について漁場の回復事業をやりたいというものに対して助成をいたしておるというのが実態でございます。  しかし、今回、環境庁が主催をされまして、瀬戸内海についての汚染の実態調査に——年四回やるということで、先般第一回の調査を実施されたわけでございますけれど、これらにつきましては、私どもの試験研究機関を動員して協力をいたしておるのでございまして、確かに取り組む姿勢が従来不十分であったというようなこともございまして、全体的にどういうふうに復旧するかという全体計画を持ち合わせないのは、まことに残念でございますが、さらに私どもといたしましては、いま用意されておりますところの予算等の拡充をはかりまして、各県の要望にできるだけこたえて漁場の復旧ができるように進めてまいりたい、かように存じております。
  128. 村田秀三

    ○村田秀三君 答弁としてはわかるんですよ。だから、そのことについて、とやこう言うつもりはないんですがね。これは的確な資料というものがないし、私も現場に行って見てきておるわけじゃございません。全部新聞情報であるとか、だれかが書いた資料をもとにして言っておるものですから、それだけ力が弱いと思うのですが、しかし、概念的にはわかるんですね。それからあと、この沿岸漁業振興法あるいは水産資源保護法、漁業に関する基本的な法律というもののどの部分を見ても、つまり漁場整備開発、しかも魚類が増殖をする条件あるいは成育する条件、これを維持するんだ、確保するんだ、こういうことが全部書かれておるわけですね。書かれておるんだけれども、年ごとに東京湾にしろ——東京湾であれば私らも見て知っておりますね、それから、小名浜であってもそのとおり。年ごとにその汚染の度合い、荒廃の度合いというものが進行しておる。進行しておるものだから、何かこれは水産庁として姿勢に欠けるものがあるんじゃないか、こう実は懸念をするわけですね。たとえば、今回出されておりますところの中小漁業振興法を見ましても、これはずっと遠くの話であります。沿岸のことも去年制定をされたところの海洋水産資源開発促進法には、これは書かれておる。これは沿岸のことは手がついてないのではないかという感じがしないでもない。あまりにも話がでかくて手がつけられないのだ。まあ汚染をされた、これは日本の高度成長の上では多少やむを得まい、それじゃひとつ魚のいるところへ行ってとろうじゃないか。汚染されたところには魚は住んでいない。しかし、住んでいないけれども、その魚は汚染されていない地域に移動しているのだから、移動しているところへ行ってとればいいじゃないかというような、そういう姿勢であったとすれば、これはたいへんなことじゃないかと思うんですね。まあ、そういう意味で私は質問をしておるわけでありますが、ほんとうにいま長官がおっしゃられたように、つまり農業では、農業地域振興法というのがこれはできておりますよね。これは漁場なんだと。漁場はこれは確保をしなくちゃならぬという強い姿勢があるのかないのか。私はこまかい資料——じゃ水産資源保護法でまあひとつ五十五カ所ばかりの指定きりしてないと。これはまあ日本列島めぐってみて、そんなものかというふうな疑問も実は持つ。それじゃその水産資源保護法で、つまり省令で保護基準を定めると、こういうことが言われているにもかかわらず、昭和二十六年に制定された法律であるにもかかわらず、まだ省令も政令も出ておらない。こういうようなことを見たりするものだから、はて、この重大だ重大だ、重要であるという沿岸漁業に対して水産庁は後退しているのじゃないか。これは日本の農業と同じで、これはまあ日本の船がインド洋までも大西洋までも行ってとってくる。これは日本がとるのだからいいじゃないかといえばそれまでかもしれませんけれども、つまり自分の周辺にある、これはきわめて重要な資源、これを放棄して、極論すればすよ、放棄して、つまりよそへ出ていこう出ていこうとする。そのために結局船のトン数も大型化しなくちゃならぬし、一トン当たりの漁獲生産高というものも、これは年々減少する。まあ私が見ました資料によりまするというと、ここ十年くらいの間に一トン当たり、五・何トンですか、それが現在は三トン程度に落ちてしまっている。こういうような問題がやっぱり関係してくる。それは今度はいわゆるコスト高になってくるから、魚価にも影響してくる。沿岸の魚種はこれまた、いわゆる価格の関係を見る限りにおいては、これは沿岸の、しかも多獲性魚種のほうがむしろ高騰しておる、こういう相関関係があるんじゃないか、こう思うのですね。でありますから、もう少しこの沿岸を大事にするという、そういう意味で水産の立場からむしろ環境庁であるとか、あるいは厚生省、通産省という関係もさまざまあるでしょうけれども、押し込んでいこうという、そういう強い姿勢というものがどうも見受けられない。まあ答弁としては、それなりに整っておるけれども、しかし、気迫や、あるいは出てくる政策を見た限りにおいて、そういう感じが受けられるか受けられないかというと、残念ながら私はいまだもって強い姿勢というものを受けるわけにはいかない、こう実は思うわけでございまして、まことにこれは抽象論議です、つまりいろいろと資料がほしいのだけれども、その資料もとっておらないということでありますから、これからひとついろいろな関係の資料というものは整備してもらわなくちゃならぬと、こう思いますけれども、その姿勢、これを再確認すると同時に、つまり、聞けば昨年できました法律の海洋資源開発促進法に基づく基本計画をいまだ作成をされておらないという話も聞きました。どうもやはり、まだまだ、何といいますか、その姿勢について欠くるものがあると、こう感ずるわけでございまして、もっと積極的にひとつ計画も立て、予算も確保し、そして事業もどんどん実施していくという、そういうやはり姿勢というものをひとつ求めたいと思うんです。いかがですか。
  129. 太田康二

    政府委員太田康二君) 沿岸漁業振興につきましては、私どもも、沿岸漁業が多数の零細な漁業者の従事している漁業でもございますし、そこで供給される魚類が国民の需要に適する中高級魚が多くとれるわけでございますので、沿岸漁業の育成ということには力をいたしていることは、御承知のとおりでございます。このための法制といたしまして、いま御指摘水産資源開発促進法という法律をつくりまして、沿岸におきましては増養殖振興ということを打ち出したのでございます。そこで、公害との関係で、取り組む姿勢が非常に不十分ではないかというおしかりを受けたわけでございますけれども、まあ公害問題がようやく世間の注目を浴びるようになりまして、法制的な整備も、ようやくおととし整備をいたしたというような状況でございまして、私どもだけの力では、これは何ともならないわけでございまして、県等の上乗せ基準が乗せられることにもなっておりますので、県ともどもタイアップいたしまして、先ほど申し上げましたように公害立法の厳正な運用によりまして、いま以上の漁場の悪化を防ぐということをまず第一にやらなければならないだろうと思っております。そうでございませんと、私どもが、せっかく開発の基本方針で増養殖を推進することが適当な水産動植物ということで、魚介類、海藻類含めまして、三十三種類のものにつきましての魚類、貝類を取り上げて、しかも、これに積極的に、まあ昭和五十年までに三十一万トンの増産をはかるというようなことも打ち出したわけでございますけれども、これ自身も結局絵にかいたもちになってしまうということもあるわけでございます。ただ、私ども水産資源開発促進法で直ちにいま開発区域の指定というような制度も設けておりますが、これによって公害を云々するというわけにはまいりませんので、それは別途の法律の厳正な運用ということに待つべきものであろうというふうに考えております。いずれにいたしましても、私どもがどんなに強い姿勢で取り組んでも、皆様方からごらんになりますと、まだ不十分であるというおしかりをいただくと思いますので、私どもといたしましては、今後この公害問題の取り組みの姿勢といたしましては、十分漁業の立場というものを私どもが代弁するわけでございますので、そういった姿勢で取り組んでまいりたい、かように存じております。
  130. 辻一彦

    辻一彦君 それじゃ、海上保安庁見えてますか。——見えてませんか、海上保安庁は。答弁者がおらぬと困る。——それじゃ、まあ答弁者がちょっといま見えてませんから、私、すぐ流通問題に入りたいと思います。  で、まずここ二、三年における魚価が、生産地と消費地の市場で、パーセントが大まかにどういうふうになっているか、ちょっと報告を願いたいと思います。
  131. 太田康二

    政府委員太田康二君) 水産物の最近における価格の推移でございますが、昭和四十年度を一〇〇といたしまして、水産物の生産地の市場価格、これは昭和四十五年でございますが、総合で一六五・三%ということに相なっております。それから水産物の消費者価格指数の推移でございますが、昭和四十年を一〇〇といたしまして、水産物総合では昭和四十五年が一五七・四、そのうち生鮮魚介が一七七・一、沿岸魚介が一三八・四、こういうことに相なっております。
  132. 辻一彦

    辻一彦君 漁業白書を見ても、魚価の下方硬直性ということが指摘をされております。で、それがどういう理由で下方硬直性が起こっておるか、これについての考え方をまず伺いたいと思います。
  133. 太田康二

    政府委員太田康二君) 私ども、今回の白書におきまして、水産物価格についての下方硬直性ということを申し上げておるのでございますが、これは特に消費者価格において下方硬直性ということが顕著にあらわれておるのでございます。これはやはり基本的には旺盛な需要に対しまして供給が十分対応できないということに基因いたすと考えておりますが、さらにやはり生産面におきましても、流通面におきましても、人件費等のコストアップの要因がございまして、これを合理化、近代化によりまして十分吸収できない。そこで一たん値上がりしました価格を維持して販売が続けられる、しかも、これについては根強い需要がついてくるというようなことで、まあ魚価が下がりましても消費者価格がなかなか下がらない、こういうことをもちまして下方硬直性ということを申し上げておるのでございます。   〔委員長退席理事亀井善彰君着席〕
  134. 辻一彦

    辻一彦君 まあ、その学問的な解釈はよくわかったんですがね。そこで、この大手の商社が冷凍技術の向上によって、まあ大きく船ごとマグロ等を買い入れて、そうして業者の人為的な介入、まあ大手商社の介入によって管理価格が形成されるんでないかという、こういう問題がいま指摘をされておりますけれども、私、幾つかのところを回って遠洋漁業のマグロの実態を見ると、市場にそのまま着かずに、漁をやって帰ってくる途中で無線で連絡をして、あるいは事前に話し合いをして、船ごと大手商社がマグロを買い入れているという、こういう実態がある。そうすると、私はコールドチェーンという、そういう保存技術が向上したということは、たいへんけっこうであるけれども、市場機構を通さずに直接そこへ船ごと入って、これが管理価格形成の有力な原因になっておるんじゃないかと、こういう懸念があるんですが、その辺についての長官の見解を伺いたい。
  135. 太田康二

    政府委員太田康二君) いまお尋ねのマグロの一般買い取引という形態でございますが、これは四十五年ごろから始まっておりまして、四十六年度後半から増加傾向を示しつつあるわけでございます。で、発生史的に見ますと、この取引の形態は、主として生産者側の要望によりまして始まったものであるというふうに理解をいたしておりますが、その原因は、マグロ等につきましては、最近資源の問題もございますし、国際規制の問題もございます。さらに、釣獲率の低下等によりまして航海が非常に長期化する、長いものは十一カ月ぐらい操業しておるというような実態もあるわけでございまして、水揚げ回数がしたがって減少する。そこで生産コストを下回らない安定した価格に対する要望というものが、生産者サイドで強まっておるわけでございまして、また水揚げ期間の短縮による船員の労働条件の改善が必要であったというようなことに基因するものというふうに理解をいたしております。  そこで、現在の実態を申し上げますと、マグロ類の取引数量の多い市場について見ますと、焼津とか三崎については、市場内で仲買い人が共同で一船取引をいたしておる。それから、清水では、市場外で商社が一船買い取引を行なっておるという実態にあるわけでございます。そこで、これにはやはり一船買い取りでございますから相当の資力を要するということで、今後この取引形態が大幅に増加するということは困難であろうというふうに考えておりますが、漸増傾向にあるということは、先ほど申し上げたとおりでございます。  そこで、問題になります買い取り価格でございますが、一概には断定できないのでございますが、ただいま先生の御指摘のとおり、漁船からの通報によりまして漁場位置あるいは魚種別の漁獲組成等の報告に基づきまして、需要を勘案して事前に入札する方法をとっているため、一般的に価格の乱高下が少ないというメリットがあるわけでございます。しかし、取引の大型化、省力化等によるコスト低減からマグロ類の価格の安定に資するという面があることも事実でございます。ただ、消費者価格への影響ということになりますと、実態を十分正確に把握することが困難でありますが、取引の形態というものは、いま申し上げましたように、価格の安定ということを目ざしておるのでございまして、価格の安定あるいは荷役の合理化というようなメリットがある反面におきまして、資力の乏しいところの仲買い人等では、やはり買い受けの場合に不利となるというような問題もあろうかと思うのでございます。全体としてどういった評価をしたらよろしいかという問題もあるわけで、一概に評価を行なうことは困難でありますが、私どもといたしまして、地域、地域の実情に応じた適切な対応策がとられますように、今後十分この点につきましては指導をいたしてまいりたい、かように存じております。
  136. 辻一彦

    辻一彦君 まあ価格安定に役立っているというような御見解のように、いま私、聞いたわけです。  そこで、片方では中央卸売り市場法を制定して、生鮮食料品、生鮮魚介の価格安定のために中央市場をみなつくってやっている。片方では、そこの市場を経由せずに大手商社がマグロを船ごと買い取ってしまう。それで冷蔵庫におさめて、自分のほうで価格を操作するような条件を持つ。これは私は政策的に考えた場合に、かなり背反した事実ではないかと思うけれども、こういう方向を価格の安定という面でとらえていいのか、あるいは農林省がやっているように、魚価の安定という方向からこれについて何らかの見解を持つべきなのか、そこらひとつ長官と、まあ大臣見えておりませんので、次官にも伺いたいと思います。
  137. 太田康二

    政府委員太田康二君) 商社の一船取引の場合は、御承知のとおり、冷凍マグロでございまして、これは原則として輸出用でございまして、冷凍マグロはアメリカのパッカーの原料として輸出をいたしておりますので、そういった形態のものであるというふうに理解をいたしております。で、これは主としてビンチョウマグロでございまして、あまり国内に市場がなくて、もっぱら外国に輸出をいたしておるというような形態でございますので、まあ市場取引が原則でございますが、輸出の場合、こういった形態が出てまいるということもある程度やむを得ないのではないかというふうに理解をいたしております。
  138. 辻一彦

    辻一彦君 まあ長官にいま伺いましたので——それで私も、輸出のためにカツオなんかの価格だとか、輸出のためにそれが船で、いろいろな点から、まあ水銀ですか、いろいろむずかしい問題がありますからね。だから、まとめていくという場合は、それはそういうような理由があると思うのですよ。しかし、懸念されることは、これがだんだん漸増の傾向にふえていくとすれば、国内市場にやっぱりこれが介入をしていくとなれば、非常に中央卸売り市場なんかの意図と違った方向にいくんじゃないか、そういう点の方向にいかないというような歯どめというか、指導措置を農林省として、水産庁としてとれるのかどうか、その点を伺いたい。
  139. 太田康二

    政府委員太田康二君) まあ市場取引が原則でございますが、冷凍もの等につきましては、市場の取引もせり取引ではなしに相対取引が行なわれる。しかも水産の場合には、通常産地市場を経由してさらに中央の消費地の卸売り市場に出荷されるものが多いわけでございますけれども、この二度ぜりが魚価が高い原因であるというようなこともいわれるわけでございますが、冷凍品等の場合には、むしろ産地市場を経由しないで直接中央卸売り市場に出荷される場合も非常に多いわけでございます。それは一般的な形態でございまして、マグロのいま申し上げた例の場合には、商社が一船買いをするというような場合には、先ほど申し上げましたように、やはり輸出用の冷凍マグロということで行なわれておるという特殊な事情もあるわけでございますので、これを全部市場を通した取引にしろと言いましても、その辺はにわかにそういう形に持っていくということが困難な面もあるわけでございますので、さらに先ほど申し上げましたように、地域、地域の実態をもうちょっと私ども掌握いたしまして、十分適切な対応策がとられるように指導をいたしてまいりたい、かように存じております。
  140. 辻一彦

    辻一彦君 いや、私は輸出の場合には一応別として、そういう傾向がだんだんふえていくと、国内に回る中に、この一船買いのマグロが介入してくるようになると、価格の安定においても問題があるから、そういう方向には少なくも歯どめをかけてきちっと指導すべきであると、こういうことを申し上げているんです。その点はいいんですか。
  141. 太田康二

    政府委員太田康二君) 当然お説のような場合には、私どもはやはり中央卸売り市場法を制定いたしまして、原則としての取引は、卸売り市場を通じての取引ということを奨励をいたしているわけでございますから、そういった指導につとめたいと思います。
  142. 辻一彦

    辻一彦君 商社の問題が出たので、関連がありますので一、二伺いたいんですが、これは確たる具体的な立証を持って聞く内容ではないんですが、しかし、いろんなところで私、耳に入るのは、国内においては、この遠洋漁業等に出る大型の船は、当然これは農林大臣の認可が要ると。だから、そうふやすことはできない。しかし、日本の大手商社が外国のある船会社等に資本を出して、そういうその船会社が日本の中古のマグロ船を買い集めて、これを外国、たとえば韓国に貸して、そこに韓国の船員を乗せてマグロをとって歩く。そのマグロはやはり日本の市場に水揚げされると、そのまま資本につながりのありそうな大手商社の冷凍庫にそのまま入ってしまうと、こういう事実は、前半のほうは具体的確証はあげていないけれども、揚がったマグロはどこへ行っているかということはわかっているんだけれども、こういうことがもし行なわれるとすれば、国内で船の建造や船をふやすことについて制限許可制をとっておっても、全く私はしり抜けになる懸念があると思う。その辺についての何か水産庁は何か具体的な把握をされていないかどうか、その点はどうですか。
  143. 太田康二

    政府委員太田康二君) わが国の商社に資本投下いたしました外国企業が、わが国から輸出されましたところの中古の漁船を利用して操業している実態というものはないと承知をいたしております。ただ、御承知のとおり、どうもこれも問題があるわけでございますけれども、やや耐用年数がこない前に漁船の代船建造をいたしまして、結局中古船を外国に輸出するというようなことがあるわけでございますので、この輸出された中古船によりまして外国人がマグロ漁業を営んでいるということは考えられるわけでございます。御承知のとおり、マグロにつきましてはすでに自由化をいたしておりますので、外国船によりまして漁獲されたマグロ類につきまして現産地証明をもちまして輸入されるという事実はあるわけでございます。そこで、私どもといたしまして、過剰投資の問題もあるわけでございますから、あまり早く償却年限がこない漁船を要するに代船建造で中古に落としてそれを輸出するというような形でございますと、ただでさえ国際漁場における競合問題、特にマグロにつきましては、資源問題もあるわけでございますし、国際規制強化されているわけでございますから、業界に呼びかけまして自主的にそういうことがないように指導をしてまいりたい、かように存じております。
  144. 辻一彦

    辻一彦君 まあ日本の中古船が輸出されて、外国の商社が買い入れてやるのは、これはまあ、その国の自由でしょうけれども、ただ、外国の船会社に日本の大手商社が出資をしているというか、資本を出して、国内では船を買えないから外国の手を通して買っているというそういうことが、どうも具体的にありそうだという問題を何カ所かで私、聞くのですが、そういうことは把握はされていないのかどうか、その点だけ。
  145. 太田康二

    政府委員太田康二君) まあ私ども考えられますケースとして、直接外国に輸出されて操業しているもののほかに、外国籍で外国人が乗船して操業しているケースとして次のような形態のものがあるというふうに聞いております。それは日本の商社等が日本の中古船を外国の法人に輸出して、さらにその漁船を第三国に延べ払い輸出して、第三国人を乗せて操業している形態、それから日本の商社等が日本の中古漁船を外国の法人に輸出いたしまして、同漁船を第三国人に貸与して、第三国人を乗せて操業していると、こういった形態があるようでございます。いずれにいたしましても、まあ、これは漁船の代船建造とからみまして、そのうらはらとして漁船の輸出というような問題が出てくるわけでございまして、確かに中古マグロ漁船の輸出というものが昭和四十六年度だけに見ましても、相当な数にのぼっております。これは一つには、先ほど申し上げましたように、まだ耐用年数のこないものを、代船建造というような形で中古船に落とすというようなこともあるわけでございますから、やはりこういった点につきましては業界の自粛と申しますか、をはかりまして、そういったことでの起こるトラブルというものを避けてまいる指導をしてまいりたい。これは業界自身の問題でもあるわけでございますので、その面の指導はこれから強化してまいりたい、かように存じております。
  146. 辻一彦

    辻一彦君 念のために、その昭和四十六年から相当数輸出されているという、相当数とは数は一体幾らか。
  147. 太田康二

    政府委員太田康二君) 私どもの調査によりますと、全部で百十九隻、韓国が四十五、パナマが二十五、フィリピンが二十五、沖縄十六、ミクロネシア五、インドネシア三、こういうことに相なっております。
  148. 辻一彦

    辻一彦君 まあパナマにそういう例があるということを私、何カ所かで聞きましたから、一ぺんひとつそういうことがないか調査してください。これはこういう形で、いま長官発言のように、代船建造ですね。まだ古くならないのに早く落として輸出をすると、こういうようにしてこの法の裏をくぐってこういうことをやるとすれば、私は非常にこれから問題になるのじゃないか、そういうように考えますが、この点はひとつよくやっていただきたいと思うのです。  そこで、もう一つ、商社の問題ですが、沖縄にまあ、こういう例がありましたが、いま、新聞にもよく出ておりますが、復帰前に沖縄においては土地を買うことは、農地法がないわけですけれども、しかし、屋良琉球当時の主席の判がなければ沖縄の農地は移動ができない。そこで、内地の観光資本や施設資本、大手資本が観光地等を数百町歩まとめて買うために、身がわりを立てて土地を買っておったというケースがある。これは私は去年の十月五日の本農林委員会のほうで指摘をして、十二月二十五日の沖特と農水の連合審査においても指摘をした問題なんです。現在非常に新聞等を見ると、社説等にも取り上げられるほどこの問題が大きくなっておる。これと私は同じようなやり方で、現地において漁船を何かの形で集めて、本土の資本が、復帰前に。そうしてその権利を確保して復帰すれば、それはもうみなしの認可というか許可になる。それを目当てにしてかなり漁船を確保しているということを聞いたのですが、そういう実態について水産庁つかんでおられるかどうか伺いたい。
  149. 太田康二

    政府委員太田康二君) マグロ漁業につきましては、沖縄の主要な漁船漁業でございますので、私どもは復帰前に現在許可になっておる隻数以上ふやさないということで、沖縄当局とも話し合いをしまして、いまおっしゃいましたように、みなし許可で本土の相当な漁業とみなすということで、近海カツオ、マグロそれぞれ、遠洋カツオ、マグロ漁業の許可の隻数というものを一定の隻数の中に押えたつもりでございます。御承知のとおり、マグロにつきましては、すでにまあ先ほど来申し上げておりますように、隻数を増加するというような実態になくて、カツオヘの転換ということを進めているような事態でございますので、業界自体も、その点につきましては、そういったことをやってお互いに足を引っ張ることはやめようということで、本土の業者の間でそういう話し合いが行なわれておるということを承知をいたしております。もちろん、それをくぐっていま申し上げたような例があるかもわかりませんけれども、まだ私はその実態は十分掌握いたしておりません。  それから、本土で、たとえばトロール漁業等につきましても、やはり隻数を制限しておるということで、これまた沖縄における隻数の打ち合わせをしまして、一定のワク内におさめたのでございます。これにつきまして、ある程度本土の有力会社の資本が入っておるというようなことも聞いておりますが、隻数につきましては、私のほうは厳重に、復帰時にかってに、何と申しますか、ふやすというようなことのないように、当初私どもと打ち合わせた線でおさめておるということでございます。
  150. 辻一彦

    辻一彦君 大臣も見えましたので、私、資源の問題と公害問題に入りたいんですが、その前に海上保安庁に、午前中、鹿島へ入る船、大型船についていろんな海上保安庁からの規制の問題について答弁をいただくことになっておったのが、そのままになっておりますので、おられたら、ちょっと先に御答弁いただきます。
  151. 貞広豊

    説明員(貞広豊君) お答えいたします。鹿島に臨海工業立地ができまして、それに出入りする船がふえてきたというふうなことから、一昨年、まあ気象も霧が多かったのでございますが、霧による衝突がかなり出まして、関係漁民からもいろいろ御意見がございましたので、直ちに巡視船を置きまして、二日間でございますけれども、銚子の犬吠沖に船を置きまして事故状況を調査いたしました。二日間の調査でございますが、平均して百五十隻ぐらい通航しているというふうなこと、それからそれを契機といたしまして、県の漁連、それから地元漁業組合、それと私どもの現場の銚子、那珂湊、鹿島、この保安部署でもって調査結果並びに漁民の要望等を十分加味しまして、これが対策を立てて今日に至っております。  それで霧等のときには、航行船舶は肉眼で見張ることができませんので、レーダーによって相手船を知るわけでございます。漁船は木船で、しかも小型のものはレーダーに写りにくいということから、漁船側においてはレーダー・デフレクターをできるだけ装備する。これはドラムかん——かんかんのようなものでもいいんでございますが、そういうようなものをできるだけ装備する。  それから一方、航行船舶に対しましては、鹿島におけるこれら入港船舶の船主並びに扱い店等、荷主も含めまして、これらで組織させまして、この団体を通じ、あるいはまた入港する直接船長に対して。パンフレットをつくりまして、海難の防止に業者みずからが実施するように指導いたしております。  その。パンフレットと申しますのは、季節的に、地域的にどういう状態で操業が行なわれておるか、そういったことをよく図面に書きまして、通航船舶は十分見張りをするとともに、衝突を起こさないように十分注意するように指導いたしております。  この場合に、大型船も含めまして、一般船舶に対する規制はどうかということにつきましては、午前中も水産庁のほうからお話がございましたように、国際的な海上交通ルールの基本であるところの海上衝突予防法によって、漁労中の船に対しては、大型船も含めてその他の船が避航するということになっております。要するに海上衝突防止法で規制をしておる、そのような状態でございます。
  152. 辻一彦

    辻一彦君 鹿島は大臣のところでもありますが、さっき私、ちょっと地図をさがしてわからなかったのですが、   〔地図を示す〕 保安庁のほう、これ御存じのように、ここが鹿島港ですね。東京湾のほうからこう出て、ここが非常に漁場になっておるのです。ここにいま漁船が多いわけですね。こう回ればかなり迂回になるし、斜めによぎれば非常に距離が短くなるので、そういう心配を漁民の方はしていますから、いまの発言のように、十分ひとつ規制等心配のないようにお願いをいたしたいと思うのです。  そこで、資源の問題に入りたいと思います。水産物の場合に、わが国漁業では、資源があると取れるだけ取る、根こそぎ取ってしまうという、こういう形が非常にいままでの傾向としてあるように思うのですが、資源保護という点からいえば、これはこれから非常に問題になっていくことではないか、こういうように思うのですが、まずこの問題について長官からひとつお伺いしたいと思います。
  153. 太田康二

    政府委員太田康二君) やはり漁業の安定的な経営を確保するというような意味におきましては、資源問題というのはたいへん重要な問題であるわけでございます。そこで、国際間で先ほど申し上げましたように十五の条約にも加盟し、民間でも四つの協定を締結して資源保護考えながら漁獲を続けておるということは、御承知のとおりでございます。  なお、私どもといたしましても、長期の観点からいいまして、従来の取る漁業からつくる漁業へということで、昭和三十七年以来瀬戸内海を中心に栽培漁業というものを進めてまいったのでございますが、昭和四十六年度日本海の調査に着手し、さらに昭和四十七年は残った太平洋の北区、太平洋の中区、さらに九州を含めまして栽培漁業全国化するというための調査にも着手をいたしたのでございまして、やはり資源の保護をはかりながら漁獲努力を続けると同時に、一方におきましては、つくる漁業振興をはかってまいるということを基本にしまして、今後の漁業行政を進めてまいりたい、かように存じております。
  154. 辻一彦

    辻一彦君 それで、私、具体的な問題に次に入りたい。  それではまず、日本海でいまちょうど最盛期であるイカ資源の問題。午前中長官の答弁がありましたように、イカ釣りの船が全国では三万二千隻ぐらいあるだろう、こういうお話でしたが、いま石川の沖とか、福井の沖にこのイカ漁船全国的に非常に隻中をしておる。これは許可制でないために、自由だから兼業というような形でどんどんイカ漁船がふえておるわけですね。そういう点で、私は、一つは、このイカ漁船に非常に過剰投資が見られるということと、それからもう一つは、こういう形でどんどん取っていったら、資源が枯渇をしないかという心配を持つわけです。たとえば過剰投資というのは——イカは光を好むのか、おそれるのか、まあどちらか私も詳しいことはわかりませんけれども、とにかく明るい電球をつけてイカを集める。規制では大体十キロワットというようになっておるのですが、これが事実はもう毎年電球の大きさと発電機がどんどん大きくなって、現在百キロから二百キロのような発電機をどんどん積んでいる。たとえば   〔写真を示す〕 ここにイカの漁船がありますが、これなんかもそう大きくない船ですが、三千五百ワット電球を五十個だから十七万五千ワットですか、かなりな光力を積んでいる。話を聞いてみると、みんなが電球を毎年大きくするので、自分も大きくしなくちゃだめだということで、年々船に積む発電機の量が大きくなる、電球が大きくなる。だから、この電球の下では暑くて汗が流れるようなところで操業をしなければならぬというような、こういう形でやっておりますが、私は、一つはこういう形になるとせっかく水揚げが多くても実態は赤字ということがかなり出ている。それで漁民の方はやめたいんだけれども、みんながやるので自分だけやめたらイカが得られないからやらざるを得ないと、こういう状況ですが、何か合理的な方法によってこういう過剰投資を押さえていくようなことはできないのか、これは単に漁民がいかないということじゃなしに、やはりむだな投資を押さえることによってかえってプラスになるわけですから、そういうことができないかということと、もう一つはそういう日本じゅうから集中してイカをとるという、こういうやり方の中でイカ資源の将来というものをどういうように考えておられるのか、その二点をひとつ伺いたいと思います。
  155. 太田康二

    政府委員太田康二君) 順序が逆になりますが、まずイカ資源の問題でございます。イカの需要がたいへん旺盛であるということで、イカの漁獲が非常に活発化しておることは御指摘のとおりでございます。最近五カ年間の漁獲量の推移を見た場合には、三十万トン台から六十万トン台という幅の中で変動を示しておるのでございまして、資源的に見ますと、一漁労体当たりの漁獲量も落ちておるということでございまして、イカは一年生といわれておりますが、安定した資源とは言いがたい。本年度白書におきましても、漁獲努力量の急激な増加については十分注意する必要があるという資源の評価をいたしております。そこで、私どもといたしましては、やはり禁止区域あるいは禁止期間等を設けまして資源維持をはかりつつ適切な繰業を行なうように指導をいたしておりますが、今後もそういったことで大型船と小型船との調整というような問題をはかりながらイカ漁業の安定をはかってまいりたいと思っております。  それから、集魚灯の問題でございますが、一部は規則できめておるものがございますけれども、大部分は県の海区漁業調整委員会の指示に基づいて指導をいたしておるというのが実態でございまして、実は全国的な規制は行なわれていないということでございます。そこで、この取り扱いにつきましては、御指摘のような問題があることは、われわれも問題意識として持っておりますので、目下関係者間で研究をいたしておるところでございます。その結論を待ちまして、業界等の意向も十分くみながら適切な措置を講じたいということで、いま検討いたしておる段階でございますので、いましばらく時間を拝借いたしたいと思います。
  156. 辻一彦

    辻一彦君 イカ資源について十分検討をする必要ありということですが、一年生というようなことで見込みがないということか、あるいはもう少しイカの資源というものを何か確保するような、維持するような、あるいは開発するような具体的な方策があるのかどうか、その点どうなんですか。
  157. 太田康二

    政府委員太田康二君) 残念ながら私どものいまの栽培漁業実施いたしております問題からいいますと、すでに瀬戸内海で実現を見ましたクルマエビあるいはタイ、さらには日本海で現在実施いたしておりますマダイ、ヒラメあるいはメバル、こういったものに比べますと、イカの場合には、ちょっとまだそこまで実は増養殖事業の解明ができておりませんので、積極的に先ほど申し上げましたとる漁業からつくる漁業への展開というような形で、スルメイカを取り上げておるというような実態にはないわけでございます。
  158. 辻一彦

    辻一彦君 これは大事な資源だと思いますから十分研究してもらいたいと思うんです。  で、その過剰投資ですが、これは漁民の人は泣く泣く毎年大きな発電機を買い込んでは積んでおるんですよ。前の発電機はもううんと値段が安くなっちゃって安くしか売れないし、新しいのはうんと値段が張ると、だから、せっかく水揚げがふえても実態は赤字というのが非常に大型になると多いわけですね。だから、これはなかなかむずかしい。まして県ごとに違うわけですからね。北海道や山口のほうからでかい電気積んで来れば、それは京都、石川の人だって、福井だってまたそれに合わしてやらなければイカが得られないというので無理にも大きくするし、地元がやればまたよその船が大きくするということで、こういうことで非常にむだな競争になっておる。   〔理事亀井善彰君退席、委員長着席〕 昔はガス灯でもバッテリーの電気でも十分集まったいうんですけれども、あれだけ光らさなくてもいいんじゃないか、その点でひとつ十分にこれは検討してもらう必要があるだろうと思うんです。そこで、先ほども出ておりましたが、資源確保、いわゆるとる漁業からつくる漁業へと、こういう点でいま瀬戸内海における漁業栽培センターのすでにまあ出発があるわけですが、最近日本海あるいは太平洋岸にさらに調査をして進めたいと、こういうことですが、日本海側のたとえば若狭湾あたりから石川等にかけて、この漁場あるいは湾内等は稚魚生産地にかなり向くということを県の水産試験場等では言っておるんですが、そういう点から関連して漁業栽培センターの調査によってどのぐらいの有効な場所であるかどうか、そこらのことがわかればひとつ知らせていただきたい。
  159. 太田康二

    政府委員太田康二君) 先ほども御答弁申し上げましたように、日本海沿岸海域につきましては昭和四十六年度から沿岸漁業振興のための栽培漁業の展開を目標といたしまして、主要水産資源の分布生態を明らかにいたしまして、種苗の放流によりますところの生産増の可能性あるいは適性放流種、それから放流海域、これを究明するための基礎資料を得るために、私ども日本海区水産研究所が中心になりまして、この指導のもとにプロジェクトチームをつくりまして各府県の水産試験場が調査を行なってきておるのでございます。そこで、四十六年度におきましては、共通の魚種といたしましてマダイとヒラメの調査を重点として発育段階別の分布生態の解明に当たったのでございまして、卵それから仔魚期、幼稚魚別に分布、成長、食生、移動生態等の新しい知見を得ておるのでございます。しかしながら、資料数がまだ十分とは言えませんので、今年度、四十七年度はさらに引き続き標識放流に重点を置きましての標識放流調査等を強化いたしまして、漁場資然環境の解明をはかりまして、栽培漁業に適したところの魚種並びに培養方式、これについての究明を現在お願いをいたしておるということでございます。これらの成果を得た上で、確信ができますれば私どもはその事業化ということに着手をしてまいりたい、かような段階でございます。
  160. 辻一彦

    辻一彦君 次に、私、遠洋漁業資源の問題について、これはひとつ大臣にお伺いをいたしたいと思います。まあ遠洋漁業の場合、沿岸諸国あるいは開発途上国が専管水域を拡大をしようとしている、あるいはそういう国家的な一つのエゴイズムもあろうと思います。しかし、また一面ではこの資源保護という点から正当なそういう考え方も私はあろうと思うわけなんです。そこで非常に日ソの漁業協定等では、大臣初め水産庁に努力を願ったわけですが、これは当然北洋の漁業場、サケやマスというのは日本の漁民の長い努力によって開拓されたわけですから、これは譲るわけにはいかないのは当然であると思う。しかし、この資源をともに協力をして保護するとか、あるいは開拓をしていくということは、これからの国際的なやっぱり漁業の場合、非常に大事なことでないか、こちらも利益があり向こうにも利益があるようなやり方をしなくちゃ長続きはしない、こういうように思いますが、そこでひとつ大臣にお伺いしたいのは、これは冬でありましたが、ある新聞の記事に出ておりましたが、日本と中国が協力をして大正エビの共同資源確保の構想というものが出て、水産庁の第二課長ですかの談話ですね、大いに技術的な援助もし支援をしなくちゃならない、こういう談話も出ておったのでありますが、こういう中国と日本との間で漁業間において協力をしながら資源を開発をしていく、そういう構想についていま水産庁のほうで積極的にお考えがあれば伺いたい。
  161. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 中国との間で大正エビの共同養殖をしたいということで話を持ってしかけたんですが、いまこれに対して返事がないんです。いまのお話しのように何としてもないものを分けるわけにはいきませんから、サケ・マス、エビでも。だから、漁業もとる漁業からつくる漁業になってきた状態、国際的に考えましても、資源の分け前になりますから、共同で養殖するという必要性がだんだんふえてくると思います。そこで、民間漁業協定の日本側当時者である日中漁業協議会から昭和四十五年六月の同協定改定交渉の際、口頭で話したんですが、中国側に大正エビの共同養殖をしようじゃないかという話をさして、技術者数名を大正エビの産卵期に中国へ派遣して共同で稚魚の養成、それから放流、こういうことの相談をいたしました。いまのところまだ向こうでそれについての適当な返事はまだないわけでありますが、機会あるたびにこういうものは進めていきたい、こう思っております。
  162. 辻一彦

    辻一彦君 私は、そういう問題はひとつ積極的にこれから水産庁としても農林省としてもぜひ努力を願いたいと思うのです。  そこで、日ソの協定の中で、これは日ソ両国でサケ・マスの資源維持、確保のために本格的な共同協力をやる、こういう問題がうたわれておりましたが、この交渉の経過についてまずお伺いをいたしたい。
  163. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) これは十数年前から話をしていたんですが、なかなかソ連側で乗り気にならなかったんです。で、昨年、ことしの漁業交渉をいつものように長引いたり何かしちや困るので、水産庁長官も一緒にソ連に行きましたときに、共同で増殖しようじゃないかという話をしておきましたところ、ことしの漁業交渉に行きましたときに、向こうから人工増殖の実施をしようじゃないかと非常に積極的になってきまして、そして日ソ両国の専門家の間でサケ・マス人工増殖問題が話し合われたわけであります。それで実験施設を設けようじゃないかとカムチャツカですか、ソ連の極東地方に建設、運営して人工ふ化、放流技術等の実験研究を推進するということに話ができたんであります。これが両国の共同の利益でもあるし、そしてまた北洋のサケ・マスというのは、日本にとっても大きな資源でございまするから、資源をふやさないことには、あるいは維持していかないことには、資源の分配問題ですから、日ソ漁業の交渉も。まずいから、これは非常に私どものほうでも乗り気ですし、ソ連も乗り気になりましたから、これはぜひ進めたいと思います。近く六月一日にイシコフ大臣も日本へ来るということですから、この問題をなおコンクリートに進めていきたい。それからまた、来た場合に、イシコフ漁業大臣にも増殖の状況などをひとつ視察、見学するように日程などもつくって、たとえば九州鹿児島のほうで増殖しているところなんかを見せる、こういうことも計画して、この問題を前向きというか、ずっと早く進めていきたい、こう思います。
  164. 辻一彦

    辻一彦君 長い努力によってそこまで進んできたのは非常にけっこうだと思いますし、六月にイシコフ漁業相の来日の機会に、その話をさらに具体的に大臣の手によって進めてもらうようにお願いしたいと思います。  それから、開発途上国との協力なんですが、いままで入漁料を払うとかあるいは大手商社が合弁会社をつくるとか、こういう形が多かったわけですが、これだけでは十分ではなくて、どうしても国が積極的にもっとひもつきでない経済的な援助であるとかいろいろな方法によって、資源の共同での開発、協力をやっていく、こういうことが私、非常に大事だと思うのですが、もっとこの開発途上国に対して漁業資源の開発等に積極的に政府は出るべきではないかと思いますが、この点、大臣いかがですか。
  165. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 確かに入漁料というような問題、領海とかそういうところでとる場合に、そういう問題が起きるのでございますけれども先ほど申し上げましたように何としても資源の開発が基本でございます。でございまするが、援助などにおきましても、これがひもつきでないような援助、全体的にもそうなんですが、そういう方針で国の援助を進めるということになっておりますが、漁業などにおきましてもひもつきということでなくて、援助などの面におきましても、資源の開発というところに力を入れていきたい、こう思っています。
  166. 辻一彦

    辻一彦君 いろいろ私、話を聞きますと、韓国や台湾等は日本の大手商社が自由に動かせるような漁業関係かなりあると、そういう形で私は進出してもいい結果生まないと思うので、いまの大臣答弁のように開発途上国について特に十分な手配をする必要があろうと思います。  そこで、国内資源にまた帰るわけでありますが、二、三お伺いしたいのは、結局国内資源の分配の問題なんですが、漁業区というか、海における漁業権の線の引き方はどんな原則で引いているのか、各県ごとに漁業権があるわけですが、その線の引き方はどういう原則に基づいて引いているのか、これを長官から伺いたい。
  167. 太田康二

    政府委員太田康二君) 漁業権の設定にあたりましては、私どもといたしまして従来から基本方針を定めまして、この方針のもとに各県知事に漁業権の設定を指導いたしてまいったのでございますが、具体的な問題といたしましては、特に隣接県との調整という問題が出るわけでございまして、やはり海面の高度利用というような観点から、それぞれの県間におきましては、もちろんのことでございますが、それぞれの海区漁業調整委員会があるわけでございますので、そこで十分話し合いを行ないまして、たいへん抽象的でございますが、適切な漁業権を設定するということで指導いたしております。しかし、県間のお互いに入り合っているような場合には、なかなかいろいろ問題もあることも承知をいたしておりますが、やはり基本的には海面の高度利用ということを基本として指導をいたしておるということでございます。
  168. 辻一彦

    辻一彦君 これは京都府、福井県、石川県の線の引き方を見ると、京都府の場合は経ケ岬から西北ですか線を引きますね。あそこは御存じのように石川県、福井県、京都府と三つあるわけですが、地形がこう曲がっているのです。曲がったところに福井県がありまして、左のほうから線を引くと右のほうに線が引かれる。それから石川県のほうから線を引くと左のほうに線が引かれて、福井県の海面は両方から線を引くとか、三角の頂点になって沖合いがなくなっちゃうということに線を引いてみてなるわけです。そうすると、ほかの場合は、ずっと沖まで延長して漁業権を主張するのだが、福井の漁業権の場合は、そういう地形の点から線を引くと三角に囲まれて沖合いがなくなるという、これはどうも私はおかしいように思うんですが、そこらは一体どういうような話し合いによってそういう線が引かれておるのか、参考に伺いたいと思います。
  169. 太田康二

    政府委員太田康二君) この点につきましては、先ほど漁業権設定の基本方針の際にも申し上げましたように、県間、あるいは県の海区漁業調整委員会の話し合いということできまっておると承知をいたしております。
  170. 辻一彦

    辻一彦君 これはなかなか利害のからむ問題で、そういう福井の漁民のことだけを言っているのじゃないんですが、ほかのほうは沖合いへ行くほど広がっていくんだし、ある県は沖合いへいくほど狭まってなくなっちゃうというのはどうもおかしいので、これはむずかしい利害が歴史的にもあると思いますから、しろうとの私にはわかりませんが、一ぺん公平で、合理的であるかどうか、こういうことをよく検討していただきたいと思うんです。  それから、国内資源の問題ですが、これはちょっとこまかいことになって恐縮ですが、琵琶湖の開発問題が出ております。あそこを開発すると、水面が一メーター半ぐらい下がるといわれておるんですが、その場合に、あの近辺、福井県を含めましてアユの稚魚を大量にあそこで生産している。前は私の県は、福井県は敦賀湾でかなりあったのですが、あそこらは木材貯蔵所等によってだめになり、そういう点で琵琶湖の稚魚、小さなアユ、これが非常に大事な資源元になっております。ことしでも十八トン、二千三百七十六万の稚魚を、アユを、小さいのを買い入れておる。ところが一メーター三十か、一メーター五十水面が琵琶湖で下がると、アユの採捕に甚大な影響ができて、海なし県と同様な状況になると、こういうことを私のほうに、県の内水面のほうから陳情が出ておるんですが、琵琶湖の開発、もちろん私は大事だと思いますが、そういう問題もひとつ開発の中で十分検討してもらいたいと思うんですが、そういう検討がなされて、それに対する保護というか、あるいは十分な手配が検討されておるかどうか、その点お伺いいたします。
  171. 太田康二

    政府委員太田康二君) 琵琶湖はアユをはめじとして各種の漁業が琵琶湖並びにその周辺で行なわれております。特にアユにつきましては、全国の放流数量の七割をここで供給をいたしておるというような実態もあるわけでございまして、わが国漁業上たいへん重要な湖水であるわけでございます。御承知のとおり今回琵琶湖の総合開発が計画をされまして、そのための法律も現在国会で審議をされております。私どもといたしましては、その際水産資源に与える影響というものをできる限り回避すると申しますか、影響を少なくするということの配慮を法律の規定の上にも明らかにいたしたのでございますが、いま申し上げましたように、琵琶湖が占めますところの漁業上の重要性にかんがみまして、海面が低下することに伴いまして、子供を生む産卵場が非常に荒廃するとか、それから漁港機能が低下するというような問題があるわけでございます。そこで、受益をするところの下流の県並びに水資源公団で実施をいたしてもらいますところの補償工事、これを一応現在の計画では約三十八億ぐらいを考えておりますが、これによりましていま申し上げたような水産の影響を回避するための人工の育苗施設をつくるとか、さまざまな補償工事をまず実施をするということが第一点でございます。  それ以外に、漁港につきまして機能低下が起こりますので、私ども漁港予算によりまして総事業費約十億ぐらいを実施をして、漁港機能の回復をはかるということも計画をいたしております。  さらに、琵琶湖は内水面であるわけでございますけれども、特別に沿岸漁業構造改善事業としてこれを取り上げまして、やはり琵琶湖の漁業振興ということにも取り組んでまいるという計画で、目下進めておるということでございます。
  172. 辻一彦

    辻一彦君 それから資源の問題で、これは資源になるかどうかでありますが、ひとつ日本の各地にも起きておると思うんですが、非常に観光ブームといいますか、都会から、工場からたくさん夏、春、秋と保養するために、あるいはレクリエーション観光のために海岸へたくさんの人が来ます。たとえば私は若狭湾でありますが、ここはある意味では運輸省の計画では、東の九十九里浜、西の若狭湾というように千五百万からの観光人口を夏に吸収しようという、そういう計画が新全総でも計画され、具体的には運輸省で進められている。それほどたくさん人が来る。五百万ぐらい夏、若狭湾に海水浴に来るのですが、来てくれるのはいいので、けっこうなんですが、その人たちが中には本職の漁民よりもりっぱなボンベを背負って、しろうとなら一分ぐらいしか海にもぐれないのが、何十分も海の底にくぐって貝なんかを洗いざらい根こそぎにしてしまう心配がある。そういう意味漁業権というか、来てくれるのはけっこうなんだが、こういう形でちょっととっていくのはけっこうなんだが、根こそぎにされるというのは非常に問題があるということを、ずいぶん漁民の皆さんが言っておるのですが、遊漁という点で遊漁法というか、県によってそれぞれ、地区によってもいろいろ規制したりしておりますが、まだ全国的にそういう規制がないと思うのですが、これらに対する対策を何か漁民の立場から考えておられるかどうか、その点ちょっと伺いたい。
  173. 太田康二

    政府委員太田康二君) 御指摘のとおり、海面におきますところのいわゆる漁業者と遊漁者との調整問題というのが大きな問題になっておりまして、遊漁人口が現在もうすでに延べ千七百万人、近く二千万人をこえるというようなこともいわれておるのでございまして、その間に御指摘のとおり、たとえば、せっかく養殖をしている貝類等をとってしまうというようなことで紛争が頻発しておることは事実でございます。そこで、私どもといたしましては、昭和四十五年度に沿海の都道府県に漁業者と遊漁者と学識経験者によって構成しますところの漁場利用の調整協議会というものを設置をいたしまして遊漁者と漁業者の間の調整をはかるということで指導をいたしてまいったのでございます。ただ、全体的に国全体の方針をどうするかというような問題もありましたので、これらの各県におきますところの漁場利用の調整協議会の結果等も参酌いたしまして、四十六年度、四十七年度引き続きまして中央にやはり先ほど申し上げたような代表の方々にお集まりいただいて、漁場利用の調整中央協議会というものを開催いたしまして、この間の調整問題を種々検討をいたしております。そこで、最近一応の結論を得ましたので、海面におきますところの遊漁と漁業との調整について事務処理上の基準となる基本的な考え方、当面こういったことをお互いにやったらどうかというような基本的考え方の結論を得ましたので、これを都道府県に示したところでございます。  なお、遊漁につきましては、やはり現在の何と申しますか、レジャーブームというようなこともございまして、これをとめようとしてもとめるわけにもまいりませんので、私どもやはりさらにこの協議会の場を通じまして引き続き検討をお願いするわけでございますけれども、法制上必要な面がございますれば、漁業法との調整もはからなければならぬという問題もございましょうし、さらに遊漁を健全に伸ばして海面漁業に影響を与えないような形でこれを育成するということも仕事の一つにもなっておりますので、必要とあらばそれらに対する予算上の助成措置等も検討をいたしたいということで、現在引き続き検討を願っておる、こういう段階でございます。
  174. 辻一彦

    辻一彦君 次に、私は、漁業公害問題に入りたいと思うのですが、ちょっとこれ配りたいんですが、沿岸漁業というものが公害によって非常に漁場が狭められてきておるという、これが日本漁業の非常に重要な問題であるということが漁業白書でもはっきり指摘をされております。一つは、いまそこに漁業公害の地図というのを簡単なのをつくって配付したので、ちょっとそれを見ていただきたいと思うのですが、一つはまあこの一覧表を見ても産業廃棄物が海へですね、どんどん廃棄されて、これによって沿岸漁業が非岸に大きな影響を受けているということが一つあると思います。きょうは私は、その問題には時間の点から触れないつもりですが、一つは最近問題になっている問題として廃油の処理の問題がある。でこれは鹿島港を見ると廃油処理場をつくっておりますが、まだ日本では廃油処理場というものがまだ数が少ないのではないか。そこで、運輸省にお伺いしたいのですが、どのくらい廃油が流されておるかということと、それからどういう処理の見通しがあるのか。それから水産庁に伺いたいのは、こういう廃油というものが水産資源にどういう影響を与えておるか、この三点をまず伺いたいと思います。
  175. 大久保喜市

    説明員大久保喜市君) 全国におきますところの船舶から発生いたしますところの廃油の量でございますが、昭和四十五年の実績、これも正確な把握ではございませんで、まあ推定でございますけれども、約千二百万トンというふうに推定されてございます。それで、この量は海上交通量の増加、船腹量の増大、こういうことに伴いまして、年々増加しているものと見込まれるわけでございます。それで私どもといたしましては、船舶から出されますところの廃油、これは大きく分けて三種類ございまして、一つは通常の船が船舶のエンジンの稼働、そういうようなことに伴って発生いたしますところのビルジでございます。それからいま一つは油を運ぶタンカー、これが船の運航の安定のために水を張って走ることがございます。そういたしますと、油がまじる。これはバラスト水と称しております。このバラスト水、それからいま一つは、今度はタンカーが違う質のものを入れる場合に、タンカーのタンクの中をクリーニングいたしますクリーニング水でございます。こういう三つの種類のものがございますけれども、こういう発生いたします廃油量、これはそのまま放置いたしますと、海が汚染するということで、海洋汚染防止法に基づいてこの廃油を放出することを規制しようとしておるわけでございますが、そのためには、そのどうしても出てまいります廃油を港で受けとめて、これを処理しなければならないということで、海洋汚染防止法の全面実施に先立ちまして、現在廃油処理施設整備を各港ごとにやっておりますが、それぞれの港の一応昭和五十年度における発生量を推定いたしまして、これに見合ったものを整備しようということで計画いたして整備を進めておるわけでございます。ただ、この廃油処理施設は、たとえばタンカーのバラスト水とかタンククリーニング水、こういうようなものにつきましては、石油精製工場とか、そういう企業が用意することが適切な場合もございます、あるいは造船所がやる場合が適切な場合がございます。それで民間にそういうような施設整備もお願いすると同時に、それ以外にも港湾管理者がそういう施設整備する場合には五割の補助をいたしまして、整備を進めているわけでございまして、四十七年の三月三十一日現在、全国で二十四港、四十一カ所が稼働している状況でございます。これは民間のもの、港湾管理者のものもひっくるめてでございます。それで四十七年度末には四十四港、六十七カ所の施設整備される予定でございます。それで、このような施設整備いたしまして、片一方におきましては、そういう廃油を放出することを規制するように取り締まっていただいて、それで海の清浄化をはかるように進めている次第でございます。
  176. 太田康二

    政府委員太田康二君) 油が水産物に及ぼす影響でございますが、二つございまして、一つは着臭の問題でございまして、一つは斃死という問題でございます。私どもの実験室における研究の結果あるいは実際に起こった問題等分析した経緯によりますと、魚種による有臭成分の吸収の差にも原因があるかもわかりませんが、水域の水で油のにおいのないことが限界でありまして、水の着臭限界の含油量は〇・〇一PPMが限界である。活性汚泥法によって処理した廃水ならば〇・一PPMを限界とする。底質——海の底の状態でございますが——については〇・二%の含油泥土において一日で確実に着臭するということが明らかにされております。  それから、斃死の問題でございますが、これも魚種により貝類によっていろいろ違いがあるようでございますが、ウニなどは非常に弱くて、二時間くらいで異常を示し始めるということが言われております。それからノリ等につきましては、やはり非常に被害が多いようでございまして、特に問題になりますのは、ノリの場合には実際に商品とならないというような問題が一番大きな問題になっておるようでございます。それから魚が成育するために必要でございますところのプランクトンでございますが、これは魚などよりも弱いということが言われておりまして、油の中の成分がプランクトン内に蓄積されて、その有害性が指摘されているというようなことでございまして、着臭・斃死ということでたいへん水産物に対する影響は大きいということでございます。
  177. 辻一彦

    辻一彦君 いまの発言のように非常に私は水産資源に与える影響が大きい、そういう点から、運輸省の推定でありますが、これはぜひ廃油処理は各港にしっかりして処理のできるように、それぞれひとつ努力を願いたいと思います。時間の点もありますから、これは問題を指摘した程度にとどめます。  最後に、私は公害の問題として、この一覧表にもありますが、廃棄物はこういうようにいま日本列島を各地でおおって、海をいろいろと汚染をしておる。しかし、これに私はこれから一つ大きな問題になるのは、原子力発電所の温排水の問題じゃないかと、こういうように考えるわけであります。これは全国で動いているのはまだ若狭湾やあるいは福島、東海という数カ所にすぎませんが、原子力や委員会等が一あとで科学技術庁から御説明をいただきますが——計画しておるものを見ると、数十カ所の基地が沿岸につくられて、そこから排出される温排水の問題は、将来の水産資源に私は大きな影響を与えるんじゃないか、この実態を若干ここで明らかにして、私はその対策を考えなければならないと、こういうふうに思うわけであります。そこで、まず科学技術庁のほうから昭和五十五年、六十年、六十五年と原子力委員会等で検討されておる原子力発電の展望といいますか、計画について報告をいただきたいと思います。あまりこまかいことはけっこうですが。
  178. 大坂保男

    説明員(大坂保男君) ただいま考えられております原子力発電所の計画でございますが、昭和五十五年度におきましては、運転開始するものを含めまして大体三千二百万キロワット程度、それから昭和六十年度では六千万キロワット程度というふうに想定いたしておりまして、その発電キロワットに対応いたします原子炉の基数といたしましては、これからの大型化を想定いたしまして、大体八十万キロワットないし百万キロワットクラスのむのということで考えておりまして、たとえば三千二百万キロワットでございますと大体四十基前後、それから六十年度の六千万キロワットになりますと七十基前後になるんじゃないかというふうに想定いたしております。
  179. 辻一彦

    辻一彦君 二月の十四日、原子力委員会山田原子力委員の発表によると、昭和六十五年には百基、一億キロワット、こういう計画が原子力委員会としてされておりますが、この点いかがですか、ひとつわかっておったらお尋ねいたします。
  180. 大坂保男

    説明員(大坂保男君) 原子力委員会といたしまして、まだ公式に発表できる数字はございませんが、原子力産業会議のほうで二〇〇〇年までの原子力発電の展望をいたしましたときに、昭和六十五年度で大体一億ないし一億一千万キロワットになるであろうというふうに想定いたしておりますので、その数字を引用したのじゃないかと考えております。
  181. 辻一彦

    辻一彦君 まあ、そのほかにもたとえば中央電力協議会が四月の二十日に発表しているのを見ても、やはり十年間に大体六十基、六千万キロワット着工すると、いまと同じであろうと思う。私は、これからのエネルギーの方向はいろいろ問題があろうと思いますが、もしこういう形で原子力発電所が全国の各地に建設されるとすると、これは企業の法則からいって、一つの敷地に一つというよりも、どうしても安上がりのためには、一つの敷地幾つかを求めていく。少なくとも原子力委員会が言うように二十数カ所の原子力基地が想定をされる。このときに出される温排水の量は、私、簡単に計算してみると百万キロワットにおいて一秒間に七十トン。だから、これが一千万キロワットでは当然七百トンになりますし、六千万キロワットであれば四千二百トン、一億キロワットになれば秒七千トンの温排水が海に流や込むということになる。日本の最大河川の信濃川は秒四百トンの水が大体流れているとすると、これが一億キロワットになれば十八本の信濃川が集中的に沿岸に流れ出すという計算になる。そこで、こういう状況の中で、温排水が水産物等に与える、漁業に与える影響というものは、これはどうもまだ世界のほうでも、世界的にも非常に研究は足りないようでありますが、アメリカあたりが非常にこれに気を使って調査をし検討をしている。こういうことから考えますと、非常に影響する点があるんじゃないかと、こう思うわけですが、そこらの状態を見て水産庁としては一体どういうように考えておられるか、まずこの点を伺いたいと思うのです。
  182. 太田康二

    政府委員太田康二君) 温排水の問題につきましては、一般に魚介類は生存可能な水温の範囲がかなり広いというふうに言われておりますが、温排水によりまして水温が恒常的に上昇したという場合には、その海域におきまするところの生物相が局部的に変化するということが、当然予測されるわけでございます。特にノリ等は高水温の影響を受けやすいのでございまして、漁場の冬季の水温が十度以上になるというふうな場合には、非常に病害が発生しやすいといわれておりまして、ノリ等につきましては、大きな問題になることが考えられるわけでございます。そこで私どもといたしましては、いままでは原子力発電所からの温排水の問題につきましては、ある程度局部的な問題であったわけでございますけれども、今後これが全国的に増設されてまいりますと、温排水の先ほど申し上げました生物相への影響の範囲も、局地的なものにとどまらないで、かなり全国化するおそれがあるということでございますので、関係省庁と共同いたしまして温排水の漁場環境への影響調査というものを促進しなければならないだろうというふうに考えております。さらに当然これは水産資源の維持上必要があろうと考えますので、水質汚濁防止法によりまして所要の規制を行なうということが考えられますので、これらの規制対象規制の方法等につきまして早急に必要な規制を行なうよう関係省庁と協議してやってまいりたいと、かように考えております。  なお、これは蛇足でございますが、先生も御承知のとおり、世界各国、特にイギリス、アメリカ等では温排水による冬季の魚類等の養殖にこれを積極的に利用するということも研究をいたしておりまして、私どももおくればせながら今回この研究に着手をいたしておるのでございまして、両々相まちましてこの問題については対処してまいりたい、かように存じております。
  183. 辻一彦

    辻一彦君 この問題は水産庁長官とはほかの場でも論議をしたことがあるので、私もあまり深くは時間の点もありますから触れませんが、なるほど取る漁業からつくる漁業へ、こういうことで養殖も私は大事なことを否定しません。また大事です。しかし、温排水の問題は、利用を先に考えるよりも、出る被害をどうするかという影響を先に考えるほうが先決であって、私はこれはちょっとさか立ちした発想であり、どうもやり方でないか。昨年の三月に水産庁から欧米原子力の温排水の視察にAB二班が行っておられる。二班が行ったならば、少なくとも私は一班は被害のほうを見てこられたらいいんじゃないかと思うのですが、どうも調査を聞くと、両方とも養殖のほうばかりごらんになって帰られた、こういうような報告を聞くわけなんです。だから、私は出発点から水産庁はこの温排水が水産資源に与える重要なる影響ということをどうも軽視をしておるのじゃないか、こういうように私には思えてならないんだが、その点重ねてでありますが、一ぺん長官からお伺いしたい。
  184. 太田康二

    政府委員太田康二君) 決して私ども原子力発電所から排出される冷却水としての温排水についての漁業に及ぼす影響ということを軽視をいたしておるのではないのでございまして、実は現実に設定されております原子力発電所等につきましては、それぞれ県をして監視をせしめると同時に、取水口におきまして毎度これを——これは放射能のほうの関係でございますが、調査をいたし、これを公表するということもいたしておりますし、私どもの試験研究機関でもこれを採取いたしまして分析をいたしておるというようなことでございます。  それから、沖合いに拡散するに従いまして一体温度差がどうなるかという点につきましても、すでに私どもの見解も表明をいたしておるわけでございまして、この広がり等の問題につきまして、なお科学技術庁との見解に開きがあるというような御指摘も受けておりますが、これらにつきましては、さらに科学技術庁あるいは環境庁等とも打ち合わせまして、先生御心配の向き、十分私どももわかるわけでございますし、現に先ほど申し上げましたように、ノリ等に対する影響もあるわけでございますから、さらに研究を一段と深めましてこの問題に対処してまいりたいと、かように存じております。
  185. 辻一彦

    辻一彦君 これは北海道の道庁が北海道大学と二カ年かかって共同で調査をした、この内容はすでに水産庁お持ちであろうと思いますが、私もこれを一部手に入れました。これを見ると、やっぱり北海道のスケソウダラの卵あるいは稚仔に与える影響というものがやはりかなりあるということ、そういうことがこれにかなり出ております。  それから私どものほうでもアワビ貝の人口養殖という問題があるが、アワビの貝はあまり専門じゃないのでわからないのですが、ベリジャーという中で浮遊卵が出て、これが二、三日で〇・一ミリぐらいの稚貝になる。これが植物性のプランクトンに、珪藻等について浮遊をしているという、こういうアワビの人口養殖の場合における貝の稚仔を見ても、〇・一ミリぐらいのものが浮遊をしている。こういうものに与える影響というものは、私はまだ世界のどこも解明していない、そういう問題だろうと思うんですよ。そういう点から私は、これはこれからの水産資源として考えると、この日本列島の周辺にこれだけの公害の拡散の、廃棄物の場がありますが、二十数カ所の原子力基地の出す温排水は、将来私は、漁業にとっては重大な問題になるんではないか、そういう点ではよほどしっかりした対策を立てないといかぬのでないか。特にアメリカにおいて最近百万キロワットをこえる大型の原子炉の建設許可をある程度ストップしている原因は、こういう熱汚染、熱公害という環境へ与える影響やあるいは水産資源に与える影響、こういうものを考えて私は、いまかなりこれを押えている、アメリカにおける最大の、原子力委員会考えておるのは、アメリカの環境庁がつける環境レポートにそういう問題がどうなるかということがつかなり限りは、審査がパスができない、こういうことになっておる、それほど大きな問題でありますから、これはもっともっと本格的にやってもらいたい、こう思うわけです。そこで、重ねてですが、そういう中で環境庁と科学技術庁がそれぞれこの国会の論議を踏まえて取り組みが行なわれている。環境庁においては原発環境研究会議というものが結成されたと聞いておりますし、科学技術庁では環境安全専門委員会というものが二月に構成されている。そこで環境庁と科学技術庁は、この問題についてどのような取り組みをしているのか、それをそれぞれまず伺って、あとでひとつ農林大臣から農林省としての考え方を私は承りたいと思います。
  186. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 先生のお話しのとおり、従来は火力発電等から出ております温排水、局所的な被害にとどまっていたわけでございますけれども、その建設が各地に行なわれてくるということになりますと、局所にとどまらず、その被害が相当大きくなってくるというところから、私どもといたしましては、やはり温排水被害を中心といたしまして原子力発電、火力発電等の一次産業等に対します影響、これは厳重に私どもとして調査をし規制をしなければならないということを考えておるわけでございます。そこで、排水の主たる被害は、温度による被害だと思っておりますけれども、温度被害につきましては、先生御承知のとおり、温排水の希釈、拡散のメカニズムもはっきりいたしておりませんし、また漁業に与えます被害についての因果関係も明らかでないというところで、四十六年度から環境庁で現にこの規制をするための基準の調査をいたしておるわけでございます。四十七年度におきましては、環境庁のみならず関係省庁——科学技術庁、水産庁その他企画庁、通産省等も入っていただきまして各省庁との連絡会議を持ちまして現在調査を、どういうような内容の調査をするか、またどういうような分担で調査をするか、取りまとめをどうするかということにつきまして現在検討いたしておるわけでございます。さらに学識経験者の意見を聞くという意味におきまして中央公害対策審議会の中に温排水の分科会を設けまして、これで学識経験者の御意見を伺うということをやっているわけでございます。私ども現在まで非常に温排水対策についておくれていたことを反省をいたしておりまして、できるだけ早く少なくとも排水につきましての基準を設定をいたしたいというふうに考えて作業を進めているわけでございます。
  187. 大坂保男

    説明員(大坂保男君) 温排水の問題につきましては、ただいま辻先生が御指摘のとおり科学技術庁におきまして環境安全専門部会を原子力委員会のもとに設けまして、六つの分科会を設けたわけでございますが、そのうち特に温排水の重要性に着目いたしまして、温排水分科会というものを一つの分科会として設けたわけでございます。一般的な温排水の調査その他につきましては、ただいま環境庁からお話しのございましたように、環境庁を中心として関係各省が協力して温排水の拡散の調査、水産資源に対する影響その他につきまして協力申し上げることになっておるわけでございますが、私どものほうの専門部会におきましても、温排水の拡散がどうなるか、あるいは水産資源等に対する影響はどうなるか、あるいはプラス面としまして温排水を利用する水産資源の養殖という方法等につきまして、さらに専門家の御意見をいただいて今後の温排水対策に資したいという意図で設けて、現在審議中でございます。
  188. 辻一彦

    辻一彦君 環境庁にもう一ぺん確認しますが、五月四日の新聞に「原発環境研究会議(仮称)」とありますが、発足されたとありますが、これは正式の名前はどうなっておりますか。
  189. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 私もそういうことが出ております新聞の写しをここに持ってきておりますけれども、環境庁といたしましては、現在正式にこのような原発環境研究会議ですか、そういう会議を発足さしているわけではございません。先ほど申し上げましたとおり、とりあえず温排水問題を中心といたしまして関係各省庁の連絡会議を設けているわけでございまして、それ以外の放射性物質その他によります環境汚染の問題につきましては、今後さらに必要に応じまして関係省庁との連絡その他のために必要あれば会議を設けたいというふうに考えておりますけれども、現在発足しておりますのは温排水を中心といたします関係各省庁の連絡会議でございます。
  190. 辻一彦

    辻一彦君 これは毎日新聞がこれだけのスペースで書いておるんですが、これは大石長官に直接聞いて書いたということを私、聞いたんですが、大石長官が言っていたのが間違いなのか、これは書き過ぎなのか、そこらの実態はどうなんですか。
  191. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) いや、私、申し上げましたのは、長官がこういう御意思で関係局長にそういう指示があったということは事実でございますけれども、それに基づきまして現在こういう会議をまだ設けていないということを申し上げたわけでございます。現在、とりあえず私どもといたしましては、緊急性の点から温排水についての各省庁の連絡会議を設けているということをお答え申し上げたわけでございまして、今後放射性物質等の問題につきましても、こういう趣旨に沿いまして検討はいたすつもりでございます。
  192. 辻一彦

    辻一彦君 そうするとあれですか、原発環境研究会議がそういう方向を大体進めていくというような考えがあるんですか。
  193. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) やはり必要に応じまして、そういうようなものも必要ではなかろうかというふうに実は考えております。
  194. 辻一彦

    辻一彦君 そこで大臣にお伺いをいたしたいんですが、科学技術庁はこの温排水の問題を重視をして環境安全専門委員会を構成をし設置をして、その中に温排水の分科会を設けて取り組んでいる、それから環境庁はいま言われたように温排水の各省連絡会議を設けている、中央公害審議会の中に温排水分科会を設けておる、また大石長官はこの問題で原発環境研究会議を大体発足をさしたいという意向をこれは言明をしている、これだけ温排水の問題をめぐって環境庁や科学技術庁がいま取り組んでいる中に、この一番影響を受ける漁業資源、その元締めである水産庁や農林省は私は体制として非常におくれておると思いますけれども、これについて大臣、どう思われますか。
  195. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) いまのお話しのように、四十七年度から関係省庁と共同して試験関係機関が参加して温排水の漁場環境への影響を調査促進しておりますので、おくれておりませんで、一緒にやっておりますから御安心ください。
  196. 辻一彦

    辻一彦君 しかしね、環境庁も科学技術庁も独自の専門部会を構成をしてやっている、その中で農林省、水産庁がそのメンバーになって一緒にやっていますというようなことでは、私は非常に消極的ではないか、むしろこの問題は水産庁、農林省が中心になってこういう取り組みをすべきであると思いますが、それらの見解はどうですか。
  197. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) これは主務官庁が環境庁ですから、そこで統一して共同で研究するというのは、これは当然だと思うんで、農林省で稲の研究ばかりやって、科学的な研究やその他不十分なところがありますから、専門的な官庁が、あるいは専門的な技術がそれに参加してやるということが、これは官庁同士の関係でございますからいいと思います。ですから、これをかまわないでいるというわけじゃないんですから、そこをよく御了解願いたいと思います。
  198. 辻一彦

    辻一彦君 私は、環境庁がその主管の官庁として、そこに農林省、水産庁が参加をしてやってもらうことけっこうですよ。しかし、農林省や水産庁の内部に、少なくもはその官庁以上の体制を私はとってもらう、そういう体制が必要だと思うんですが、その点をお伺いしたい。
  199. 太田康二

    政府委員太田康二君) この問題がたいへん水産業に及ぼす影響が大きいということで、先般もたしかお答え申し上げたんでございますが、四十六年度に機構改革いたしまして、私どもの東海区水産研究所の中に放射能部という部を設けました。この放射能部と海洋部、それと各水研にございます海洋調査部が中心になりまして、各県の水産試験場の担当の方々を集めまして、私のほうといたしましても、これの水産資源に及ぼす影響調査というふうなことについて、どういう調査をいたしたらよろしいかということの会議は持っておるのでございまして、決して私どもがこれに対する取り組みが不十分であるというふうには考えておりません。それと、先ほど申し上げましたように、大臣の申されましたように、各省庁と共同いたしまして、試験研究機関動員をいたしまして、いま申し上げましたようなことでやってまいる、そして問題の解明に当たりたい、こう思っております。
  200. 辻一彦

    辻一彦君 私、大臣と長官のそういう決意を聞いてけっこうだと思います。ただ、申し上げておくのは、この原子力発電に住民運動が起こっておる、その主力は漁民であるということ、一番関係が深いということを、これをひとつしっかり頭の中に入れておいていただかないと、よそごとのような態度でおってはたいへんだから、その点しっかりとどめたいと思います。まあ、この問題は、私、これで終わりたいと思います。  そこで、環境庁にそういう研究会議ができ、各省の研究会議ができ、そこが大体主管の、所管される官庁になるわけです、環境庁が。そこで科学技術庁の原子力委員会の中にも、環境安全専門委員会ができておりますが、こことの関係は、ちょっと名前がよく似ておるような点もありますが、どういうふうに行政上調整するか、その点どうですか。
  201. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 私どもは、水質汚濁防止法によりまして、少なくとも温排水の温度によります環境汚染ということにつきましては、規制をいたしたいという立場でございます。それにつきましては、先ほどお話しございましたとおり、水産庁のほうでいろいろ魚類等に対します影響の御研究その他をやっていただいておりますので、それらとも共同いたしまして、私どものほうは今後調査なり研究を進めるわけでございますし、また、原子力発電その他火力発電等につきまして、技術的に推進をいたしております科学技術庁におきましても、当然これはいろいろ御研究いただきまして、その成果等も一私どもはお聞きをし、またチェックをするところはチェックをし、そういうようなことで、政府の温排水対策が前進をするというふうに実は考えております。私どもやはり私どもだけで温排水対策ができるとは思っておりませんので、それぞれの部署を受け持っております官庁におきましては、この問題に当然その立場からの御協力をいただくというふうに私どもは願っているわけでございます。
  202. 辻一彦

    辻一彦君 科学技術庁は、見解どうでございますか。
  203. 大坂保男

    説明員(大坂保男君) ただいま環境庁のほうからお話しのございましたとおりでございまして、私どもといたしましては、先ほど申しましたように原子力発電からの温排水につきましては、問題が問題でございますので、環境庁で放出基準ですか、規制基準をつくるまでながめているということじゃいかぬというので、私どもといいますか、原子力委員会としましても、できるだけこの問題について、その実態の調査あるいは対策等を考えていきたいということで、先ほど申し上げました環境安全専門部会において、専門家の方々の御参加を得て審議しているわけでございまして、環境庁がもちろん規制基準をおつくりになりましたら、それにあわせてやっていくということでございますが、それまでの間でも、できるだけ環境庁のお手伝いをしたいということでございます。
  204. 辻一彦

    辻一彦君 きょうは、この温排水は、漁業との関連の問題ですからそれ以上私、触れません。また、別の場にいたしたいと思います。  非常に漁業の上に新しい公害問題として、温排水の問題が、これから日本のエネルギー開発の中に登場するだろうというふうに思われますから、これはひとつ農林省、水産庁、環境庁、科学技術庁、十分各省で積極的な取り組みをして、漁民が安心できるようにぜひしていただきたい、このことをひとつ要望して質問を終わります。
  205. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 三案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時四十六分散会      —————・—————