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源田実君 一応そういう
対策をとられていることについて、これは私は異存はないわけなんです。ところが、いまさっきエアマンシップというのがちょっと出ましたが、これについて御質問申し上げたいのは、実はICAOのアネックスの二に
——前から皆さん御存じでしょう。この三の二の二「ライト・オブ・ウェイ」、「進行権」というところですね、そこにどういう意味のことを書いてあるかというと、進行権を持っておる
飛行機は優先権をもってそこを走り得るのだ、これはそれだけの権利を持っておるのだ、しかし、この権利あるがゆえにどんなことがあっても、この権利をたてにして衝突防止を怠ることはできないのだ。こういうことが、これはICAOのアネックスの三章のジェネラル・ルールの中にはっきりある。
それから、これは同じく私が昔おったころは、
航空自衛隊のレギュレーションは、米
空軍のレギュレーションを大体翻訳して使ったんだから、似たようなものが載っとった。とにかく人間の命を助けるためには、生命を助けるためにはこのレギュレーションに違反することができる、
パイロットの責任において。しかし、それを違反するのはこういう場合、こういう場合、こういう場合においては違反してよろしい。しかし、違反した場合においては、直ちに、これは二十四時間以内ですか、道を通して上に
報告せよということがあるわけです。ところが、最近の
日本の
航空法を見ましても、いまのこのライト・オブ・ウェイのところにそういう意味のことは載っていない、
航空法にも。また
航空自衛隊のレギュレーションを見ましても、それはもうなくなってきておるのですね。これはひとつ重要な問題であろうと思う。なくなってきておるのを、これを
航空自衛隊に聞きましたところが、これは当然そういうことは言わぬでもわかっておることだから削除したという話でありました。
ところが、ここに問題があると思うのです。問題は、私はこういう見解でおるのです。
事故防止のためにいま
施設をやるとか、レーダーを整備するとか、
飛行場をよくするとかいうことは、
事故防止に対して、もちろん重要ではあるが、第一次的な問題ではない。それが一番効果があるのは、能率をあげることである。いままで一便しか運航できなかったのが、こういうことをやれば二便にふえるとか、こういう天気にはいままでは飛べなかったのが、こういう
施設をやればこの天気でも飛べるという。能率をあげるのには、
施設をよくしたりすることにすれば効果がある。ところが
事故防止については、それによって若干効果はあるけれ
ども、その
飛行場が広くなったら、広くなったつもりで、なったらなったように乱暴な大まかな操縦をやればやっぱり
事故は起きる。まあエアマンシップというのはそこだと思う。
問題は、
事故を全然なくすためにはどういうことであるかといえば、全然
飛行機が飛ばなければ
事故はない。その次には、あぶないとみたら飛ばなければ、
事故がまあほとんどない。しかし、どうしても飛ばなければならないということがあるわけです。その場合に飛ぶときは、普通の場合にはやらないような手だてをやらなければならない。たとえば私のことばかりでぐ
あいが悪いですが、ちょっと参考になるから私は言うのです。というのは、われわれ
戦闘機乗りというのは、敵の
飛行機が見えたら大急ぎでみな出てくる、演習でも何でも。
F104なんといったら四百ぐらいありますよ。計器とか、サーキットブレーカーとか、ノブとかいうものを全部点検するのに一分ぐらいの間にパッとやってしまわなければならない。ところが、いま、もうリーダーはどんどん出ているからぐずぐずするとおくれる、大急ぎで出なきゃならぬときにはみんな大急ぎでやるわけです。これが
事故の
もとなんです。それで、私はどういうことを
自分でやり、また人にもそれを言ったかというと、非常に急ぐときには二回やれというんです、点検を。非常に急ぐときには、念入りにやったつもりでも、実はあせておるから見落としがある。だから、非常に急ぐときは時間を半分にするのじゃなくて、時間を倍にする。要するに
事故を起こしたほど
——どんなに急いでも
事故を起こせば、どのくらいよけいおくれることはないわけであります。したがって私は、そういうしつけ
教育といいますか、こういうことが一番重要な問題である。
したがって、私がきょうお聞きしたいことの一番の重点は、
パイロットを選定する場合に、いままで、あれは勘がいいとか、早く単独になるとか、やれ頭がいいとかなんとかいうことを盛んにやるわけです。したがって
——またことに
自衛隊とか軍隊においては、ある一定時間の間にある
程度まで練度を上げなきゃならないから、そういう点、悪いやつは落としちまう。それに追っつかないやつはというんでエリミネーションが行なわれる、これは普通ならあたりまえなんですね。ところがいまの
自衛隊のように、もう数もそうたくさんはない、世界においても非常に少ないほうの
パイロットしかいない、そうして、ことに
パイロット志願者なんていうのはうんと多いわけであります。したがいまして、こういう場合に、これは私の
提案ですが、勘がいいとか、有能とか、頭がいいというのを優先的に
パイロットにつくり上げるんじゃなくて、本人の性格ということに重点を置いて
パイロットをつくる、そうすれば私は、その人が単独になる時間はほかの者の倍かかるかもしれないが、しかしながら、いわゆる大器晩成型であって、いよいよ最後に到達をするのはうんと高いところへ到達する可能性が多分にあると思うんです。
したがって、いままではずっと
アメリカ空軍のやり方をそのまま輸入してやってきたわけですが、もうここから先はあまり
自衛隊は数はふえないですからね、たぶん。したがって、そうするとここから先はすばらしくいい練度の者をつくる必要がある、これは
あとにも
技術の問題で関連して申し上げたいと思う。それには性格、どんなに器用で、どんなに頭がよくても、性格の悪い者を採用すれば、うまくなくっても
事故は起こすんです。その証拠には、
事故を起こしたケースと
事故の件数と
パイロットの熟練度、年数と、この比較をごらんになれば、年をとったベテランがやっぱり若い者と同じように
事故を起こしておるんです。率はそれはベテランのほうが少しは少ないけれ
ども、それほど変わらない。どんなベテランといえ
ども、
飛行機はへまをすればみんな墜落して死んでしまうので、ベテランなるがゆえにどんな
飛行機でも墜落しないということは絶対に言えない。
したがいまして、私は、今後
航空局が
民間パイロットを養成される場合も、
民間のほうは
自衛隊とことに違うんですね。
パイロットはともかくとして、あれはお客さんを乗せるんで、
自衛隊の
パイロットや軍隊の
パイロットは、まさかの場合
事故が起きて
自分は死んでもこれはやむを得ない、死にたくはないけれ
どもやむを得ないというだけの腹はみな持っておるはずです。ところが
民間機に乗るお客さんは、あれは
事故が起きても、死んでもやむを得ないとは、これは考えない。これはもう絶対安全を要する。そのために一番重要なことは、
パイロットのうまいへたじゃない、性格なんです。さっきの
長官の
お話にもありました、どんな場合でも、時間が何時間かかろうが、とにかくお客の命を助けるためには、
自分は五時間の間は
ほんとうに真剣になって見張りをやる、そういう性格が必要なんであります。
したがいまして、この
事故防止対策、いろいろな
施設も、それから法規もいいんですが、法規は幾らやっても
——法規はやるなということじゃないですよ、間違えないでいただきたいのは、法規をやっても、これは二千五百年前に、あんまりそういうものにたよってもだめだぞということを中国の偉い孔子さまと老子という人、あの偉い人が二人とも同じことを言っておる。あのくらい偉い人はちょっと世界中いないと思うんですけれ
ども、どう言っているかというと、孔子さまのほうは「之れを道びくに政を以ってし、之れを齊うるに刑を以ってすれば、民免れて恥じ無し」、要するに法律で縛り上げて、これを犯した者は刑罰に処するということをやれば、法網をくぐることをやり出す、うまくくぐったやつがりこうであるということになる。それで、その反対に徳をもってやれということを書いてある。老子のほうはどう書いてあるかというと「法令滋彰らかにして盗賊多く有り」ということ、うまいことを言ったと思うんです。あ
あいうものを幾らやっても、やらないよりはいいかもしれないが、やっても抜け穴があるんだから、人間の精神というものがとにかく一番重要であるということを言われておると思うんです。
ところが、それをいま
一般の社会全部にやろうなんて言ったって、それはそう簡単にいかない。しかし限定された数であって、多くの人々の中で特に洗練された人をもってつくる
パイロット団というものぐらいは、私は、さっきのライト・オブ・ウエイのときに申し上げたように、これは明らかに法規違反になる。しかしながら、これによって人が助けられるとなれば、
あとの責任は
パイロットが
自分で責任を負って罰せられるだけの覚悟をもって
事故を防止する。これは
専門家ならばだれでもおわかりになると思うんですよね。離陸、着陸をやり直す。前に、離陸した
飛行機がおる、普通ならば、そこのパターンが右ならば、右を通って前に出なければいけないのです、法規でいえば、
航空法でいえば。ところが、その場合にそれをやったら衝突の可能性があるから、これは
航空法違反によって左に避けてそれで前へ出ていくというようなことはあり得ると思う。こういうのは幾らでもある。そういう場合に、これを一々法規で詰められたら、これは罰せられる。しかし罰せられても、
パイロットは罰せられることをその場合おそれちゃいけない。人間を助けるためには、
自分は法規違反して罰せられる、これだけの覚悟のない者を
——全部の人に持てというんじゃない、私は、
パイロットぐらいのものは、このぐらいの覚悟を持った者を
パイロットにしなければならない。しかし、いまのところ、現実は、とにかく一定のスタンダードに合うためには、とにかく合うだけの能力のあるやつをとにかくそこまで早く持ってくるために、その性格的な面が非常にゆるやかだと思うんですよ。したがいまして、これは
航空局及び
防衛庁、この両方に対して私はこの点について十分な要望を申し上げたいと思います。この点については、まああまり長い御答弁必要ないんですが、実は私があまり長くしゃべり過ぎた。ところがこれについて何かそういう着想でおやりになっているかどうか、それだけひとつ
航空局と
長官にお願いします。