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政府委員(
谷口寛君) 今回の提案されておる案につきましては、昨年の八月の十七日であったと記憶いたしまするが、
総理府の筋からわれわれのほうへ
統合の要綱という書類を提出してこられたのであります。で、その要点は、両
委員会を
統合する、そして
公害審査委員会に
裁定権を持たせるというのがポイントであります。
これに対しましてわれわれといたしましては
反対の
意見を表明をいたしまして、八月二十六日に
総理に対して御
意見を申し上げたのでございます。
総理は
文書によってそれを提出しなさいと、かように御指示をいただきましたので、同日付で
総理大臣あて並びに
総務長官あてにその
文書を提出いたしました。
反対を申し述べました
趣旨のものは、御
承知のとおり国の
行政機関が
各種の
行政処分を行ないまするが、この
行政処分に対して不服がある
国民は、いわゆる
行政不服審査法の規定に基づきましてそれぞれその不服の
処理を願い出ることに相なっておりまするが、この
制度は
国民の
権利の
保障の上で非常に意義のある
制度ではありまするけれども、
処分を直接行ないました
処分行政庁、あるいはその系統の上級の
行政庁がその不服をさばくというような
制度になっておりまするので、ものによりましては
公平感を欠くような問題も起こってくるわけでございます。したがいまして、
行政処分のうちで特に
土地等に関連する
行政処分、しかもその
利害関係は一省のみならず
数省に
権限関係その他
利害関係がまたがっておる、こういうような
事案で、
公益と
一般産業の
利益その他の
調整を広い
広域的観点から
判断をしなければならないというような
事案につきましては、さらに公平なる
第三者機関をもってこれを
裁定せしめることが妥当であろうというような
趣旨合いのもとに、
昭和二十六年に
土地調整委員会が設置せられたのでございます。しかし、いま申し上げましたような
行政不服審査法の
特例制度でありまするだけに、
各省関係の
権限調整等につきまして、いろいろとその間の
調整がございまして、実際の
権限としてわれわれに与えられてきたものは非常にしぼられた、
各種の法規で限定せられた
権限にすぎません。しかしその
権限だけは公平な
第三者機関で少なくともさばいていくことが
行政の
公正確保並びに
国民の
権利の
保障の上から非常に大事なものであって、これこそ
民主主義制度の
一つの
保障の一端であるというような
趣旨合いから、二十六年から今日までいろいろと
仕事をやってまいったのでございます。で、そのような
権限が非常に制限されておる、また
原処分について満足をいたしておる者があれば
裁定を求める人はございませんから、
原処分が公平に行なわれる限りにおいては
裁定を求める人はございません。
原処分に不服があって
権限関係で
裁定を求められると
法律的になっておるそういう
事案について、
受け身で
裁定をするわけであります。したがいまして
現実の
事案といたしましては、しばしば御指摘があったようでございまするけれども、一年平均いたしますると数件というような
事案でありまするけれども、毎年度その程度の
事案は持ってきて、今日までそれぞれ結論を出しつつあるわけでございます。このような
国民の
行政を公平に
確保していこうというその
制度でつくられました
裁定制度、こういうものと、同じ
裁定の名前をつけましても、
公害紛争処理の
一つの
制度として取り上げられました
裁定制度とは、そういう
意味において根本的に相違があろうかと思うのでございます。それで、これらの点からぜひその点は考慮していただきたいというのがまず
反対理由の第一点でございます。
それから第二の点は、
土地調整委員会は、
鉱区禁止地域指定と申しまする
行政処分をいたします。この
行政処分は、保護すべき
公益目的と採掘すべき
鉱業権というものとの間の
調整判断をいたしまして、
一定の
地域については将来半永久的にわたって
鉱業の掘採ができない
地域というものを、
各省大臣あるいは
都道府県知事が、われわれのほうに請求をいたします。これを
公益の
観点と、その鉱物掘採が与える影響の
関係、
鉱物自体の価値の
関係、そういうものを総合的に
判断し、またその間に存在するいろいろな
鉱業権者、
土地所有者、あるいは
森林業者、
水利権者、そういったような
利害関係人の
事情聴取等も十分にいたしまして、その請求された範囲が妥当であるかどうかという
判断を下しまして、
一定の線を引いてその線内の
鉱業は掘採を禁止いたすのであります。これはその
禁止処分が一たんございますというと、解除の
申請があって新たに認められる場合を除きましては、永久的にそこに
鉱業権が設定できない、こういう
処分でございまして、この
処分は年々十数件、
関係大臣あるいは
都道府県知事から出てまいりまして、今日まで百五十数件の
鉱区禁止地域の
指定をいたしております。その総面積は実に十六万数千ヘクタールに及び、全国各
府県で
鉱区禁止地域設定がない
府県はほとんどないというような
実情でございまして、これは間接的には
環境保全、あるいは自然の維持というような点について相当な寄与もいたしておると思います。このような
処分もわれわれの
権限に与えられておるのは、その
鉱業権を半永久的に禁止するのでありまするから、
鉱業権と
公益との
調整関係について正しい
判断を公平に独立して行なうという
趣旨から、われわれのような
委員会の
権限にされておるものと、かように考えておるのであります。そういうような
趣旨の
委員会であるから、これまた
統合することについてはひとつ十分考慮をしてもらいたいというのが、
反対の第二点でございます。
第三点は、
統合するメリットと申しますか、逆に申せば
必要性というものにつきましては、われわれは何ら今日それを
統合しなければならない大きな
事情の
変化その他があるものとは考えていないという点でございます。と申しますのは、
権限は先ほど申し上げたとおり
法律で縛られ、
事件はあまり多くはございませんけれども、御案内のとおり、年々、
土地調整委員会のいわゆる
法律権限としては、毎年
権限がふえてきておるのでございます。
〔
委員長退席、
理事町村金五君着席〕
現実に申し上げまするならば、
昭和二十六年にできまして、二十七年、三十一年、三十二年、三十三年、三十九年、四十一年、四十三年、四十三年、かように、それぞれ先ほど申し上げました
趣旨で、これだけは
土地に関連する問題として
第三者委員会に持たせるほうがいいということで、だんだん
権限は
追加されておるのでございます。
追加されておることとそれの
現実の
裁定申請が続々
追加に応じてふえてくること、こういうことは問題は別でございまして、必ずしもそれに即応して
事件数はふえてきておりませんけれども、
権限として、こういうものこそ
土地調整委員会に持たすべきであるということは年々ふえまして、まあ率直に申し上げますれば、現在いろいろ御審議いただいておる
法案、当
関係以外で
政府から提出しました
法案、あるいはそういうものを出そうとして検討せられた
法案の中にも、
追加権限の問題はたくさん出ておるのでございます。こういうような
実情にありますものにつきまして、これを
統合するということについては、何ら
事情の
変化はないじゃないか。それで、
普通俗説、通説には、ひまで遊んでおるとか、あるいは何も
仕事がない、任務の終わった
委員会であるとかいうことを申されますが、これは全く事実に反することでございます。事実を事実として見詰めていただきたいと思います。
権限が限定せられ、
受け身の
行政であるから、
事件数が比較的少ないということは率直に認めます。しかしそういうことと、
仕事がないとか用がないとかいう問題とは全然問題が別だ。そういう
意味において、これを
統合すべき何ら
事情の
変化はあり得ない、こういうことが
反対の第三点でございます。
それから第四点といたしまして、その点は初めから明らかに私はいたしているつもりでございまするけれども、いやしくも
行政機構というものは、これは
社会情勢の
変化、変転に応じまして、大胆率直に改変すべきものであるということにつきましては、私はその考え方について人後に落ちるつもりは毛頭ございません。したがいまして、
委員会のこういういま申し上げましたような
行政事務が社会
事情及びその
国民のほんとうの考え方から見て不必要なものであるということでありまするならば、その姿勢がはっきりいたしまするならば、廃止されること、あるいはその他の措置がとられることについて何ら異存はございません。しかしながら、公平な
行政委員会として、いま申し上げましたような組織で今日まできたものでございまするから、それを
改廃するということについての基本的な
政府の姿勢をきめていただきたい。そのためには、
行政機構についていろいろ世話をする役所の部局もあるであろう。それ以外の
委員会もございますでしょう。あるいは有識者その他の第三者の
意見を聞くこともできるでございましょう。そういう態度で、根本的に
行政委員会の
改廃について、どういう態度をもって
政府が臨むかという基本姿勢を明らかにしていただきまして、その位置づけのもとに、
土地調整委員会をどうするかという態度でありまするならば、われわれ、ことに公務員の一人といたしまして何らその点については異存がございません。どうかそういう方法をおとりください、かように申し上げたのが、何と言いますか、
意見の第四点、要約でございます。その点について、その後の情勢といたしまして、せっかくお尋ねをいただきますから率直に申し上げますと 今度の
統合案そのものにはそういう態度で
意見を申し上げましたが、自今この案の成否につきましては、われわれははっきり申し上げますが何ら関与をいたしておりません。したがいまして、この
統合の、
公害との
関係の専門的な分野における
反対意見等は、これまた個人としては勉強いたした上でいろいろ持っておりまするけれども、われわれの立場として関与をいたしておりませんから、積極的に申すべきものではないというので、その後何らその点については
意見書らしいものも申し述べておりません。
大体以上が私の申し上げたい点でございます。