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1972-05-25 第68回国会 参議院 内閣委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年五月二十五日(木曜日)    午前十時四十一分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         柳田桃太郎君     理 事                 町村 金五君                 安田 隆明君                 鈴木  力君                 水口 宏三君     委 員                 黒住 忠行君                 源田  実君                 田口長治郎君                 土屋 義彦君                 長屋  茂君                 細川 護煕君                 山本茂一郎君                 足鹿  覺君                 上田  哲君                 山崎  昇君                 沢田  実君                 峯山 昭範君                 中村 利次君                 岩間 正男君    国務大臣        国 務 大 臣  江崎 真澄君        国 務 大 臣  山中 貞則君    政府委員        中央公害審査委        員会委員長    小澤 文雄君        中央公害審査委        員会事務局長   川村 皓章君        警察庁刑事局保        安部長      本庄  務君        土地調整委員会        委員長      谷口  寛君        土地調整委員会        事務局長     上原 達郎君        行政管理政務次        官        岩動 道行君        行政管理庁行政        管理局長     平井 廸郎君        防衛庁参事官   鶴崎  敏君        防衛庁人事教育        局長       江藤 淳雄君        防衛施設庁総務        部長       長坂  強君        防衛施設庁施設        部長       薄田  浩君        科学技術庁研究        調整局長     千葉  博君        環境庁企画調整        局長       船後 正道君        環境庁大気保全        局長       山形 操六君        環境庁水質保全        局長       岡安  誠君        通商産業省公害        保安局長     久良知章悟君    事務局側        常任委員会専門        員        相原 桂次君    説明員        防衛庁長官官房        防衛審議官    大西誠一郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○公害等調整委員会設置法案内閣提出、衆議院  送付) ○靖国神社国家護持早期実現に関する請願(第  一〇号)(第四八二号)(第八〇六号)(第八  四四号)(第八五六号)(第八六三号)(第八  六四号)(第八六五号)(第八六六号)(第八  六七号)(第八六八号)(第八六九号)(第八  七〇号)(第八七一号)(第八七二号)(第八  七三号)(第八七四号)(第八七五号)(第八  七六号)(第八七七号)(第八七八号)(第八  七九号)(第八八〇号)(第八八一号)(第八  八二号)(第八八三号)(第八八四号)(第八  八五号)(第八八六号)(第八八七号)(第八  八八号)(第八八九号)(第八九〇号)(第八  九一号)(第九〇四号)(第九〇五号)(第九  〇六号)(第九〇七号)(第九七四号)(第九  七五号)(第九七六号)(第九七七号)(第九  七八号)(第九七九号)(第九八〇号)(第九  八一号)(第九八二号)(第九八三号)(第一  〇一一号)(第一〇一五号)(第一〇二〇号)  (第一〇二四号)(第一〇三五号)(第一〇五  七号)(第一〇六七号)(第一一〇二号)(第  一一〇三号)(第一一一八号)(第一一七八  号)(第一一九四号)(第一二四四号)(第一  二七五号)(第一七一九号)(第  一七二四号) ○一世一元制法制化促進に関する請願(第二六  号)(第一五〇号)(第一九八号) ○恩給共済年金受給者処遇改善に関する請願  (第五九号)(第二二三号) ○靖国神社国家管理立法化反対に関する請願  (第一一一号)(第一一二号)(第一一三号)  (第一一四号)(第一一五号)(第一一六号)  (第一一七号)(第一一八号)(第一一九号)  (第一二〇号)(第一二八号)(第一二九号)  (第一三〇号)(第一三一号)(第一三二号)  (第一三三号)(第一三四号)(第一三五号)  (第一三六号)(第一三七号)(第一五九号)  (第一六〇号)(第一六一号)(第一六二号)  (第一六三号)(第一六四号)(第一六五号)  (第一六六号)(第一六七号)(第一六八号)  (第一七九号)(第一八〇号)(第一八一号)  (第一八二号)(第一八三号)(第一八四号)  (第一八五号)(第一八六号)(第一八七号)  (第一八八号)(第二〇三号)(第二〇四号)  (第二〇五号)(第二〇六号)(第二〇七号)  (第二〇八号)(第二〇九号)(第二一〇号)  (第二一一号)(第二一二号)(第四五四号)  (第四五五号)(第四五六号)(第四五七号)  (第四五八号)(第四五九号)(第四六〇号)  (第四六一号)(第四六二号)(第四六三号)  (第四九五号)(第四九六号)(第四九七号)  (第四九八号)(第四九九号)(第五〇〇号)  (第五〇一号)(第五〇二号)(第五〇三号)  (第五〇四号)(第五三八号)(第五三九号)  (第五四〇号)(第五四一号)(第五四二号)  (第五四三号)(第五四四号)(第五四五号)  (第五四六号)(第五四七号)(第六〇六号)  (第六〇七号)(第六〇八号)(第六〇九号)  (第六一〇号)(第六一一号)(第六一二号)  (第六一三号)(第六一四号)(第六一五号)  (第六七二号)(第六七三号)(第六七四号)  (第六七五号)(第六七六号)(第六七七号)  (第六七八号)(第六七九号)(第六八〇号)  (第六八一号)(第七〇六号)(第七〇七号)  (第七〇八号)(第七〇九号)(第七一〇号)  (第七一一号)(第七一二号)(第七八八号)  (第七八九号)(第七九〇号)(第七九一号)  (第七九二号)(第七九三号)(第七九四号)  (第七九五号)(第七九六号)(第七九七号)  (第八二九号)(第八三〇号)(第八三一号)  (第八三二号)(第八三三号)(第八三四号)  (第八三五号)(第八三六号)(第八三七号)  (第八三八号)(第九八五号)(第九八六号)  (第九八七号)(第九八八号)(第九八九号)  (第九九〇号)(第九九一号)(第九九二号)  (第九九三号)(第一〇一七号)(第一〇四四  号)(第一〇六八号)(第一〇七一号)(第一  〇八八号)(第一〇八九号)(第一〇九〇号)  (第一〇九一号)(第一〇九二号)(第一〇九  三号)(第一〇九四号)(第一一〇四号)(第  一一三一号)(第一一三二号)(第一一七七  号)(第一二〇五号)(第一三二〇号)(第一  六五五号)(第一八〇六号)(第一八〇七号)  (第一八六六号)(第一八八一号)(第二〇〇  五号)(第二〇〇六号)(第二〇〇七号)(第  二〇〇八号)(第二〇〇九号)(第二〇一〇  号)(第二〇一一号)(第二〇一二号)(第  二〇一三号)(第二〇一四号)(第二〇一五  号)(第二二五五号)(第二二五六号)(第二  二五七号)(第二二五八号)(第二二五九号)  (第二二六〇号)(第二二六一号)(第二二六  二号)(第二二六三号)(第二二六四号) ○元満鉄職員恩給共済年金通算等に関する請  願(第一八九号)(第二〇二号)(第二二二  号)(第二九七号)(第九一〇号)(第一〇三  四号)(第二三二六号) ○従軍日赤看護婦に対する恩給法適用に関する  請願(第四〇〇号)(第四三五号) ○立川基地への自衛隊移駐反対等に関する請願  (第四六八号) ○旧財団法人満州農産物検査所恩給法並びに国  家公務員共済組合法上の外国特殊法人として指  定することに関する請願(第六〇五号)(第六  五八号)(第七九九号) ○立川基地への自衛隊移駐即時中止等に関する請  願(第一一九三号) ○岐阜県益田郡馬瀬村の寒冷地手当改定に関する  請願(第一三二一号) ○兵庫県生野町の寒冷地手当改定に関する請願  (第一三二八号)(第一三二九号)(第一三三  〇号)(第一三三一号)(第一三三二号) ○兵庫県山東町の寒冷地手当改定に関する請願  (第一三三三号)(第一三三四号)(第一三五  五号)(第一四三九号) ○兵庫県和田山町の寒冷地手当改定に関する請願  (第一三三五号)(第一三三六号)(第一三三  七号)(第一三三八号)(第一三三九号) ○兵庫県朝来町の寒冷地手当改定に関する請願  (第一三四〇号)(第一三四一号)(第一三四  二号)(第一三四三号)(第一三四四号) ○兵庫山崎町の寒冷地手当改定に関する請願  (第一三五四号)(第一三六〇号) ○兵庫県村岡町及び美方町の寒冷地手当改定に関  する請願(第一三八五号) ○兵庫県豊岡市の寒冷地手当改定に関する請願  (第一三八六号) ○兵庫県佐用町の寒冷地手当改定に関する請願  (第一三九六号) ○兵庫県加美町の寒冷地手当改定に関する請願  (第一三九七号) ○兵庫県神崎町の寒冷地手当改定に関する請願  (第一三九八号) ○兵庫県八千代町の寒冷地手当改定に関する請願  (第一三九九号) ○兵庫県中町の寒冷地手当改定に関する請願(第  一四〇〇号) ○航空自衛隊美保基地の滑走路付替え反対に関す  る請願(第一四一〇号) ○新潟県の寒冷地手当改定に関する請願(第一四  四〇号)(第一四四一号)(第一四四二号)  (第一四六〇号)(第一四八三号)(第一五一  二号)(第一五五六号)(第一六〇五号)(第  一六一三号)(第一六二〇号)(第一六四三  号)(第一六七〇号)(第一六七五号) ○長野県の寒冷地手当改定に関する請願(第一四  四七号)(第一四六一号)(第一四七八号) ○石川県七尾市、羽咋市、鹿島郡及び羽咋郡の寒  冷地手当改定に関する請願(第一四四八号)  (第一四六六号)(第一五四九号) ○長野県小海町等の寒冷地手当改定に関する請願  (第一四七七号) ○岐阜県上石津町の寒冷地手当改定に関する請願  (第一四八〇号) ○岐阜県美山町の寒冷地手当改定に関する請願  (第一四八一号) ○岐阜県武儀郡板取村の寒冷地手当改定に関する  請願(第一四八二号) ○岐阜県八幡町の寒冷地手当改定に関する請願  (第一四九〇号) ○岐阜県山岡町の寒冷地手当改定に関する請願  (第一四九一号) ○岐阜県金山町の寒冷地手当改定に関する請願  (第一四九二号) ○岐阜県上矢作町の寒冷地手当改定に関する請願  (第一四九三号) ○岐阜県明智町の寒冷地手当改定に関する請願  (第一四九四号) ○岐阜県萩原町の寒冷地手当改定に関する請願  (第一四九五号) ○岐阜県白鳥町の寒冷地手当改定に関する請願  (第一四九六号) ○岐阜郡上郡高鷲村の寒冷地手当改定に関する  請願(第一四九七号) ○岐阜郡上郡和良村の寒冷地手当改定に関する  請願(第一四九八号) ○岐阜県恵那郡串原村の寒冷地手当改定に関する  請願(第一四九九号) ○岐阜郡上郡大和村の寒冷地手当改定に関する  請願(第一五〇〇号) ○軍人恩給等改善に関する請願(第一五一一  号)(第一六二五号) ○山梨県の寒冷地手当改定に関する請願(第一五  三九号) ○甲府市御岳町及び黒平町の寒冷地手当改定に関  する請願(第一五四〇号) ○山梨県富沢町の寒冷地手当改定に関する請願  (第一五四一号) ○富山県の寒冷地手当改定に関する請願(第一六  六九号)(第一六七六号)(第一八四九号)  (第二〇五二号) ○米軍北富士演習場における国による入会権侵害  行為の中止に関する請願(第一七八七号)(第  一九四一号) ○両眼失明重度戦傷病者に対する恩給等改善に関  する請願(第一七八八号)(第一八五二号) ○国家公務員たる看護婦等給与改善に関する請  願(第一八九九号)(第一九四三号)(第二〇  八一号)(第二〇八三号)(第二〇八四号)  (第二一〇八号)(第二一〇九号)(第二一一  〇号)(第二一一一号)(第二一一二号)(第  二一一三号)(第二一一四号)(第二一一五  号)(第二一一六号)(第二一一七号)(第二  一一八号)(第二一一九号)(第二一二〇号)  (第二一八六号)(第二一八七号)(第二一八  八号)(第二一八九号)(第二一九〇号)(第  二一九一号)(第二一九二号)(第二一九三  号)(第二二二八号)(第二二二九号)(第二  二三〇号)(第二二三一号)(第二二三二号)  (第二二三三号)(第二二三四号)(第二二三  五号)(第二二三六号)(第二二三七号)(第  二二八七号)(第二三二四号)(第二三二五  号) ○米軍北富士演習場賃貸借契約終了に関する請  願(第一九四〇号) ○元満鉄社員に対し恩給法適用に関する請願  (第二〇四六号) ○継続調査要求に関する件 ○委員派遣承認要求に関する件     —————————————
  2. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  公害等調整委員会設置法案を議題といたします。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 足鹿覺

    足鹿覺君 ちょっと健康の都合上すわったまま失礼いたします。よろしくお願いいたします。なお政府委員の方にはたいへん失礼でございますが、すわったままで質疑をいたします。  最初に、総務長官なり土地調整委員長に伺いますが、公害等調整委員会設置法案の内容を見ますると、中央公害審査委員会土地調整委員会とを統合し、総理府の外局として、公害等調整委員会を設置することになっておりますが、土地調整委員会はこの措置に当初反対なさった。過日の当委員会でも総務長官土地調整委員会委員長が首相に反対意見を述べたとの発言がなされましたが、土地調整委員会委員長反対された理由は何なのか、土地調整委員長またはその他関連のある方からまず御答弁願いたいのと、行政委員会改廃についてでありますが、昨年の九月七日の朝日新聞によりますと、土地調整委員会谷口委員長は三点にわたって反対理由を述べて佐藤総理に直訴したと伝えております。  次に申しますから、間違っておるかどうか、まだその他に理由があれば御発言願いたいのでありますが、一つは、「担当閣僚といえども、独立の機関である同委員会の廃止を一方的に決めるのはおかしい」二つは、「委員会仕事が少ないといわれるが、国民利益をはかるため地味だが重要な仕事をしている」三つは、「行政不服審査仕事と、公害のような民事紛争処理をいっしょにするのは誤りだ」と、このような御趣旨であったと伝えられております。以上の三つのことから御反対なさったといたしまするならば、御承知のように行政委員会というのは、行政中立性確保専門的知識必要性などからできたものであるが、総務長官及び土地調整委員長並び行政管理庁当局は、行政委員会改廃については普通の行政機関と全く同じでいいとお考えになっておるかどうか、それぞれの御見解を明らかにしていただきたいと思います。
  4. 谷口寛

    政府委員谷口寛君) 今回提案になっておりまする土地調整委員会公害委員会との統合の案につきましては……。
  5. 足鹿覺

    足鹿覺君 よくわからぬですが、もっと大きい声で……。
  6. 谷口寛

    政府委員谷口寛君) 今回の提案されておる案につきましては、昨年の八月の十七日であったと記憶いたしまするが、総理府の筋からわれわれのほうへ統合の要綱という書類を提出してこられたのであります。で、その要点は、両委員会統合する、そして公害審査委員会裁定権を持たせるというのがポイントであります。  これに対しましてわれわれといたしましては反対意見を表明をいたしまして、八月二十六日に総理に対して御意見を申し上げたのでございます。総理文書によってそれを提出しなさいと、かように御指示をいただきましたので、同日付で総理大臣あて並びに総務長官あてにその文書を提出いたしました。  反対を申し述べました趣旨のものは、御承知のとおり国の行政機関各種行政処分を行ないまするが、この行政処分に対して不服がある国民は、いわゆる行政不服審査法の規定に基づきましてそれぞれその不服の処理を願い出ることに相なっておりまするが、この制度国民権利保障の上で非常に意義のある制度ではありまするけれども、処分を直接行ないました処分行政庁、あるいはその系統の上級の行政庁がその不服をさばくというような制度になっておりまするので、ものによりましては公平感を欠くような問題も起こってくるわけでございます。したがいまして、行政処分のうちで特に土地等に関連する行政処分、しかもその利害関係は一省のみならず数省権限関係その他利害関係がまたがっておる、こういうような事案で、公益一般産業利益その他の調整を広い広域的観点から判断をしなければならないというような事案につきましては、さらに公平なる第三者機関をもってこれを裁定せしめることが妥当であろうというような趣旨合いのもとに、昭和二十六年に土地調整委員会が設置せられたのでございます。しかし、いま申し上げましたような行政不服審査法特例制度でありまするだけに、各省関係権限調整等につきまして、いろいろとその間の調整がございまして、実際の権限としてわれわれに与えられてきたものは非常にしぼられた、各種の法規で限定せられた権限にすぎません。しかしその権限だけは公平な第三者機関で少なくともさばいていくことが行政公正確保並びに国民権利保障の上から非常に大事なものであって、これこそ民主主義制度一つ保障の一端であるというような趣旨合いから、二十六年から今日までいろいろと仕事をやってまいったのでございます。で、そのような権限が非常に制限されておる、また原処分について満足をいたしておる者があれば裁定を求める人はございませんから、原処分が公平に行なわれる限りにおいては裁定を求める人はございません。原処分に不服があって権限関係裁定を求められると法律的になっておるそういう事案について、受け身裁定をするわけであります。したがいまして現実事案といたしましては、しばしば御指摘があったようでございまするけれども、一年平均いたしますると数件というような事案でありまするけれども、毎年度その程度の事案は持ってきて、今日までそれぞれ結論を出しつつあるわけでございます。このような国民行政を公平に確保していこうというその制度でつくられました裁定制度、こういうものと、同じ裁定の名前をつけましても、公害紛争処理一つ制度として取り上げられました裁定制度とは、そういう意味において根本的に相違があろうかと思うのでございます。それで、これらの点からぜひその点は考慮していただきたいというのがまず反対理由の第一点でございます。  それから第二の点は、土地調整委員会は、鉱区禁止地域指定と申しまする行政処分をいたします。この行政処分は、保護すべき公益目的と採掘すべき鉱業権というものとの間の調整判断をいたしまして、一定地域については将来半永久的にわたって鉱業の掘採ができない地域というものを、各省大臣あるいは都道府県知事が、われわれのほうに請求をいたします。これを公益観点と、その鉱物掘採が与える影響の関係鉱物自体の価値の関係、そういうものを総合的に判断し、またその間に存在するいろいろな鉱業権者土地所有者、あるいは森林業者水利権者、そういったような利害関係人事情聴取等も十分にいたしまして、その請求された範囲が妥当であるかどうかという判断を下しまして、一定の線を引いてその線内の鉱業は掘採を禁止いたすのであります。これはその禁止処分が一たんございますというと、解除の申請があって新たに認められる場合を除きましては、永久的にそこに鉱業権が設定できない、こういう処分でございまして、この処分は年々十数件、関係大臣あるいは都道府県知事から出てまいりまして、今日まで百五十数件の鉱区禁止地域指定をいたしております。その総面積は実に十六万数千ヘクタールに及び、全国各府県鉱区禁止地域設定がない府県はほとんどないというような実情でございまして、これは間接的には環境保全、あるいは自然の維持というような点について相当な寄与もいたしておると思います。このような処分もわれわれの権限に与えられておるのは、その鉱業権を半永久的に禁止するのでありまするから、鉱業権公益との調整関係について正しい判断を公平に独立して行なうという趣旨から、われわれのような委員会権限にされておるものと、かように考えておるのであります。そういうような趣旨委員会であるから、これまた統合することについてはひとつ十分考慮をしてもらいたいというのが、反対の第二点でございます。  第三点は、統合するメリットと申しますか、逆に申せば必要性というものにつきましては、われわれは何ら今日それを統合しなければならない大きな事情変化その他があるものとは考えていないという点でございます。と申しますのは、権限は先ほど申し上げたとおり法律で縛られ、事件はあまり多くはございませんけれども、御案内のとおり、年々、土地調整委員会のいわゆる法律権限としては、毎年権限がふえてきておるのでございます。   〔委員長退席理事町村金五君着席〕 現実に申し上げまするならば、昭和二十六年にできまして、二十七年、三十一年、三十二年、三十三年、三十九年、四十一年、四十三年、四十三年、かように、それぞれ先ほど申し上げました趣旨で、これだけは土地に関連する問題として第三者委員会に持たせるほうがいいということで、だんだん権限追加されておるのでございます。追加されておることとそれの現実裁定申請が続々追加に応じてふえてくること、こういうことは問題は別でございまして、必ずしもそれに即応して事件数はふえてきておりませんけれども、権限として、こういうものこそ土地調整委員会に持たすべきであるということは年々ふえまして、まあ率直に申し上げますれば、現在いろいろ御審議いただいておる法案、当関係以外で政府から提出しました法案、あるいはそういうものを出そうとして検討せられた法案の中にも、追加権限の問題はたくさん出ておるのでございます。こういうような実情にありますものにつきまして、これを統合するということについては、何ら事情変化はないじゃないか。それで、普通俗説、通説には、ひまで遊んでおるとか、あるいは何も仕事がない、任務の終わった委員会であるとかいうことを申されますが、これは全く事実に反することでございます。事実を事実として見詰めていただきたいと思います。権限が限定せられ、受け身行政であるから、事件数が比較的少ないということは率直に認めます。しかしそういうことと、仕事がないとか用がないとかいう問題とは全然問題が別だ。そういう意味において、これを統合すべき何ら事情変化はあり得ない、こういうことが反対の第三点でございます。  それから第四点といたしまして、その点は初めから明らかに私はいたしているつもりでございまするけれども、いやしくも行政機構というものは、これは社会情勢変化、変転に応じまして、大胆率直に改変すべきものであるということにつきましては、私はその考え方について人後に落ちるつもりは毛頭ございません。したがいまして、委員会のこういういま申し上げましたような行政事務が社会事情及びその国民のほんとうの考え方から見て不必要なものであるということでありまするならば、その姿勢がはっきりいたしまするならば、廃止されること、あるいはその他の措置がとられることについて何ら異存はございません。しかしながら、公平な行政委員会として、いま申し上げましたような組織で今日まできたものでございまするから、それを改廃するということについての基本的な政府の姿勢をきめていただきたい。そのためには、行政機構についていろいろ世話をする役所の部局もあるであろう。それ以外の委員会もございますでしょう。あるいは有識者その他の第三者の意見を聞くこともできるでございましょう。そういう態度で、根本的に行政委員会改廃について、どういう態度をもって政府が臨むかという基本姿勢を明らかにしていただきまして、その位置づけのもとに、土地調整委員会をどうするかという態度でありまするならば、われわれ、ことに公務員の一人といたしまして何らその点については異存がございません。どうかそういう方法をおとりください、かように申し上げたのが、何と言いますか、意見の第四点、要約でございます。その点について、その後の情勢といたしまして、せっかくお尋ねをいただきますから率直に申し上げますと 今度の統合案そのものにはそういう態度で意見を申し上げましたが、自今この案の成否につきましては、われわれははっきり申し上げますが何ら関与をいたしておりません。したがいまして、この統合の、公害との関係の専門的な分野における反対意見等は、これまた個人としては勉強いたした上でいろいろ持っておりまするけれども、われわれの立場として関与をいたしておりませんから、積極的に申すべきものではないというので、その後何らその点については意見書らしいものも申し述べておりません。  大体以上が私の申し上げたい点でございます。
  7. 足鹿覺

    足鹿覺君 谷口さんにお尋ねいたしますが、総理に書面で意見を具申されたということでありますが、その書面に対する総理の回答と申しますか、御意思が何か返ってまいりましたか。
  8. 谷口寛

    政府委員谷口寛君) 先ほども申し述べましたが、まずそういう統合の要綱案が去年の八月十七日に、事務的にただ書類としてわれわれに届けられましたので、これに関連して、私はもちろん総務長官にもお話をするつもりでございましたが、総理府の長は内閣総理大臣でございます。総理府の長は内閣総理大臣でございまするから、内閣総理大臣に御面接のアレンジを申し上げました。幸いに御面接をいただきましたので、総理にいまのような趣旨のことを口答で申し上げたのであります。そうしたら総理は、お聞きをいただいた上で、それを書類で出せと、かように申されましたので、二十六日付で、二十六日にお会いしたのでございますが、その二十六日付で書類にそれをしたためまして、総理大臣あて、並びに総務長官あてにその書類を提出した、かようなことでございます。それに対しては、総理並びに総務長官から、土地調整委員会に正式にその問題に関連して御下問なり、こういう点はどうなるだろうかといったような御相談、これは今日まで、はっきり申し上げまして、ございません。
  9. 足鹿覺

    足鹿覺君 長い御意見の御開陳を願ったのは、基本的な今後の問題にもつながることでありますので、十分御意見の御開陳を願ったわけであります。しかし、こういう調子でありますと、私の質問時間がもう全くなくなりますので、今後は簡潔にひとつ御答弁をお願いしたい。  私は、いまの谷口委員長の勇気のある態度に対して、筋を通す態度については敬意を表します。そうあってしかるべきだと思うのです。新聞によりますと、四十六年九月七日、朝日新聞によりますと、まあいろんなことが出ておりますが、要するにあなた方の言い分は、「大臣が気に入らなければ、公正取引委員会でも何でもつぶせるとなったら大変。行政委員会改廃は、第三者機関の調査研究を経てきめるべきだ」と、こういうやはりただいまの長々と心境なり御決意を御披瀝になりましたことはこういうことに通じる。したがって、私はあなたのいまのを筋論として御傾聴申し上げた。これに対して山中さん、あなたは、新聞によると、「行政管理庁などを通じて改廃話を進めても官僚の抵抗でラチがあかない。私はやります」と、こうまあ言ったというのですよ。あなたは閣僚の中でも、若手で、豪気で、実行力の強い大臣として、日ごろから私どももあなたに期待をしておる一人でありますが、はしなくもここで、まあ筋論と、あなたの第三者機関意見を聞かないで強引にやられたことが対立をしておる。今後こういうことは、行政委員会をつぶす場合にはあっては私はならぬと思うのです。そういう点において、ひとつなぜ第三者機関意見を聞かなかったのか。その理由は、この新聞が伝えておるように、他の官庁にまかせておいたんじゃらちがあかぬと、まあこういう新聞の記事をたてにとるわけじゃありませんが、その心境なり理由をひとつ承りたいし、またそれは岩動さんね、大臣がお見えになっておられませんが、次官としても、あなた方のこけんにかかわると思うんですね。山中さんがどういう答弁をされるか知りませんが、その点についても行管次官としてのき然たるひとつ御方針を承っておきたい。
  10. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) 当初私は、総務長官に就任いたしまして、審議会とかあるいは行政機関とか、いろんなものが一ぱいございますので、あるいはまた国会の指摘を待つ前に政府のいわゆる許認可法人等の実態等もメスを入れ始めたわけであります。まあいろいろとやりましたが、その中で土地調整委員会というものが、占領中にでき上がった背景を持って、その後、砂利採取法、あるいは採石法、そういうものが公害等にも関係しながら逐次立法整備されてきつつあります。それらの背景の中で、昭和二十六年以来のずっとやってこられました実績というものを見て、必要であるということは私も最終的には認めましたから、今回の公害等調整委員会の中にはそのまま権限、あるいはまた権能も取り入れて残してあります。当初、もっと換骨奪胎して、いま日本の政治の中で一番大きな問題である土地政策というものに大きくこの委員会が貢献するような内容はできないだろうかということで、委員長あるいは事務局長等にも、調整委員会の委員の皆さんと御相談をして、今後の日本の一大課題である土地政策に土地調整委員会はかくのごとき貢献をなし得るといういいものがあれば、そういうことを換骨奪胎してつくることにしようということで、案をつくってきてもらったのでありますが、これは私自身のものさしでありますけれども、それだけではちょっと、日本の今後の土地政策、そういうものにこの委員会が大きく貢献するという判断を得るまでには至りませんでした。しかし、その間において二年余りかかったわけでありますから、土地調整委員会がそれなりに果たしてきた理由、存在価値というものはただいまの谷口委員長のお話しのとおりございます。ことに最近の立法では、数々の土地関係の立法から逆に土地調整委員会を引っぱってきておる例もありますので、これを廃止することは不可能であるということは私も承知いたしました。したがって、一方において中央公害審査委員会を発足させましたが、衆参両院における裁定権を与えるべきだという附帯決議、三条機関に移向させるべきであるという附帯決議、こういうものをやはり真剣に検討しなければなりません。私もまたその点当事者の合意のもとに行なわれる範囲の中央公害調整委員会の仲裁、調停等の権限だけでは、今日の公害紛争に対する国民の要望に沿い得ないものであることを自覚もいたしましたし、したがって、これらのものを三条機関として二つつくることができればこれはあるいは問題はなかったかもしれませんが、しかし、やはり三条機関というものは、ほぼ性格の共通点がある。一方は行政紛争であり、一方は最終的に民事紛争の場であるものを行政の場で最終審に近い形のぎりぎり一ぱいの権限を与えながら取り組んでいくにしても、同じような立場の法律の権能として機能することが可能である、そのような判断をいたしました。しかしながら、これは私のいわゆる——新聞のことは私は別段触れませんが、私の独断専行というものではありませんで、当然谷口委員長に言われるまでもなく、総理府の長は内閣総理大臣でありますから、佐藤総理の意向も受けておりますし、委員長の直訴されましたその書類、それに基づいて、総理が、君のやっていることはひどく乱暴なことかというようなこともありました。もともと乱暴は、いまお話しのとおり、正しいことに向かって私は相当乱暴にやってもいいと思いますから、その点は認めますが、しかし私がやらなかったら、やはりこの土地調整委員会というものはずっと今後も十年ないし二十年続いていくであろうと思います。したがって、委員会そのものを三条機関として、独立の形にはなりませんが、統合合併してここに公害等調整委員会というものをつくる、これは総理もそれを了承しておられますから、出してあるわけであります。なお、これらのものをつくったりやめたりするときに大臣の独断でできるか、これはできないのです。したがって、国会に提案をして、その了承、最終的な両院の議決を得なければできません。したがって、またその議決を得るまで、国会に提案した政府の意思は明確であっても、これがたとえば暫定予算になりましたならば、当然暫定予算期間中には国会の意思が決定されないということは明らかでありますから、その間は、予算措置としても、この土地調整委員会のそのままの予算を残すという当然の仕組みをとっておりますので、国会がもしだめであるという御意見であるというならば、大臣がどのように独断専行と言われようと、これは実現をしないわけでありますから、したがって、最終的に国会の御意思を受けて決定をするという手続を踏んでおるつもりであります。
  11. 岩動道行

    政府委員岩動道行君) 私どもに対しましては、まずこういう行政委員会改廃についての手順といったようなことがまず御質問があったと思いますが、この点につきましては、ただいま総務長官からもお話がございましたように、戦後占領下におきましてこういう行政委員会というものがかなり多数設置されました。しかし、わが国の責任内閣制度のもとにおいては必ずしもなじむ性質のものでもない点もかなりあったわけでございます。したがいまして、二十三年以降、二、三年にわたりまして、第三者機関の多数の御意見もありまして、政府といたしましては、昭和二十七年に、十あまりのいわゆる行政委員会を整理統合いたしました。その後はわずか二つほどの統廃合といったようなことがございましたのですが、今後の問題につきましては、特に私どもも慎重に検討をいたしました。特に国の行政機関全般を預かる役所といたしましては、総理府総務長官とも十分に御意見を伺いまして、私どもといたしましては、このような三条機関を新たに公害等調整委員会として設置することは好ましいことである。その一つ理由は、新たに公害等調整委員会裁定権限を与えるという点が一つございます。また国の行政機構を簡素、合理化して行なってまいるということは、これは国の行政機関のあり方としては至上命令でもございます。かような観点から、谷口委員長のいろいろな御意見も私どもわかるわけでございますので、土地調整委員会を廃止するということではなくて、その権限は十分確保しながら、簡素、合理化の姿において国民の要望にこたえる、こういう意味におきまして、今回の措置に相なったわけでございます。したがいまして、第三者機関による意見の聴取ということはいたしませんでしたけれども、十分に政府部内においては慎重な検討をいたしたわけでございます。なお、私どもの役所におきましては、行政監理委員会というものがございます。この委員会に私どもは重要な案件は全部はかることにいたしておるわけでございまするが、あいにくと昨年の十月以降本年の四月までおおよそ半年の間、新しい行政監理委員の任命がないままに、その間におきましてこの公害等調整委員会を設置せざるを得なかったということでございまして、この点は政府部内においても一つの重要な意見を聞くという機会がなかったことはまことに遺憾でございまするが、これもやむを得なかったことと御了承賜わりたいと思うわけでございます。
  12. 足鹿覺

    足鹿覺君 第三者機関意見問題でありますが、戦後の行政委員会が設けられた理由は、アメリカ占領軍によるアメリカ法的の直接的な指導、影響があったことは確かだろうと思います。いまも長官は日本になじまないということばを使われましたが、そういうものもあるいはあったかもしれない。しかし、その行政委員会を置く主たる目的は、その理由は、官僚主義的な行政を排除していく、内閣への権力の集中の排除と住民の行政参加の促進が一つの機軸になって進められたことは高く評価すべきだろうと思うわけであります。  そこで、重ねて行管長官に伺いますが、戦後、行政委員会制度について、いろいろな審議会が意見を出しておりますが、これらについて御説明を願いたい。もし間違っておったら御訂正も願い、私の意見に対して反対をされてもけっこうですし、また新しく大きな問題が落ちておりましたらお聞かせ願いたいが、私の調べたところによりますと、昭和二十三年六月に、臨時行政機構改革審議会が行政委員会制度について勧告をしておる。さらに、昭和二十六年、政令諮問委員会昭和二十八年に地方制度調査会がそれぞれ答申を出しておる。特に政令諮問委員会は、当時かなりたくさんあった行政委員会のうち、廃止すべき具体的な名称をあげ、これに基づいてかなりの行政委員会が廃止された。具体的にいいますと、二十三の行政委員会が十四程度に削られたように聞いております。で、政令諮問委員会が廃止を勧告した中で現在でも残っておるものは、国家公安委員会と首都圏整備委員会があるようであります。この残っておる理由はともかくとしても、一省庁一局削減で、文部省の文化財保護委員会という行政委員会が、第三者の意見を聞かずに文化庁になったのを除けば、ほとんど第三者の意見を聞かずに廃止した例はないと私は思います。その点いかがですか。
  13. 岩動道行

    政府委員岩動道行君) 足鹿委員のおっしゃるとおりでございます。
  14. 足鹿覺

    足鹿覺君 とおりでございますというのでは困るのですけれども、そうしてすまし込んでおったらだめですよ。だからこの際には当然やるべきであった、手続をとるべきであったと、ただ行監が休んでおったというならば、それにかわるべき第三者機関意見を聞き、慎重を期すべきではなかったか。あなたの御在任中であったかどうか知りませんが、行管当局としてはこの点を御一考あってしかるべきだったと思うのですが、私がいま言ったことと同じであるならば、なぜこの問題だけを、第三者機関からの意見を聞かなかったか、その理由を承りたい。
  15. 岩動道行

    政府委員岩動道行君) 先ほど申し上げましたように、また足鹿委員からも御指摘がありましたように、昭和二十七年に大幅にこの行政委員会制度に関する統廃合を政府としては行なったわけでございます。そうしてそのとき残りました行政委員会というものは、いわばただいまお話のように民主的な、そしてある程度独立した権限を行使しなければいけないという、そういう要請に基づいたものだけが残ったわけでございます。さような意味におきまして、政府としては、残っております行政委員会というものが、すでに政府部内においても定着をしたものである。かような考え方を持っております。したがいまして、土地調整委員会を廃止するならばこれは別でございます。これはそのままその権限を存続させて、その機能を簡素、合理的な姿において発揮させていただく、こういうことでございますので、私は廃止ということには今回は当たらない。したがいまして、特別な機関を設けてその意見を聞くというほどのことでもないのじゃないか、かように考えるわけでございます。  なお、先ほど申しましたように、行政監理委員会というものが活動をいたしておりますならば、当然私どももその意見を聞きたかったのでありますが、これは遺憾ながら国会の同意を得ないままに空白の状態が続いたので、その間にこのような措置が講じられた、かように御了承をいただきたいと思います。
  16. 足鹿覺

    足鹿覺君 山中さんなり岩動さんの先ほど来のお話、御説明を聞きますと、一応それなりに配慮はされたと思う。しかし何としても、次に申し上げるようなことについて私は少し疑念を持っておるのでありますが、その前に山中総務長官一つ特に伺っておきますが、行政委員会というのは、先ほども述べましたような一つ国民行政参加的な重大な意義を持っておる。いわゆる官僚主義行政を排除していく、内閣への権限集中を排除していく、こういう目的で設置されて、大体これが定着したものも相当ありますね。大きく日本の国民の期待にこたえている行政委員会もあることを私は知っております。必要もお認めになるでしょう。その所掌事務については内閣の指揮監督からある程度独立性を有するものだと私は思うのですが、これは行政委員会に対する今後の総務長官なり行管長官の基本姿勢として、ひとつ承っておきたい。いかがですか。
  17. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) それは言われるまでもないことで、たとえば公正取引委員会などというものは、もっともっと権限を強化しろというようなことで、今国会でも知事に権限を委譲する等の法律がきのう通ったくらいでありますから、定着をしていると思いますし、また国民も歓迎していると思います。三条機関に対する基本的な姿勢は、やはりこれは先ほど申しましたとおり、廃止をする場合は問題がありましょうが、廃止ではなくて、そのまま今回の公害等調整委員会の中に持ち込まれるわけでありますから、全然その機能においても権限においても変わったところはありません。それならば問題を起こさずに三条機関として新たに公害紛争処理委員会というものをつくったらどうだということも、これは当然の前提として考えられるわけですが、先ほど行管の政務次官から話がありましたように、やたらと必要だからといって三条機関というものをふやすことも、われわれ政府の姿勢としては行政の簡素化、合理化ということを言っておりますので、これは三条機関のみひとり例外であるとは思いません。したがって、今回時勢の要望、国民の要望にこたえるために、公害紛争処理法の改正を行なって、三条機関に移して裁定権を与える等、この機会に三条機関たる土地調整委員会を、廃止はいたしませんが、一緒になっていただいて、そして公害等調定委員会としての三条機関として出発してもらいたい、こう言っておるわけでありますから、基本的には足鹿委員のおっしゃるとおりだと私も思います。
  18. 足鹿覺

    足鹿覺君 そこで、いま岩動政務次官が申されたことばじりをとらえるわけではありません。新しくできる調整委員会の所掌事務が、審査、審判を行なう等独立公正に行なう必要のある性格のものであって、この意味からいえば、公害等調整委員会公害紛争の調停、仲裁、今度あらためて裁定をするという性格のものになる、それと土地調整委員会にかかわる不服の裁定権限を持つ行政委員会としたことは、一応わからぬではありません。だが、一つ行政委員会で全く異質の事務を取り扱うということに、私はやっぱり筋として納得のいかないものが残るわけです。他にそういう行政委員会がありますか、ございませんか、行政管理庁長官に伺いたい。
  19. 岩動道行

    政府委員岩動道行君) ただいま御指摘のように、土地調整委員会の従来の権限と、それから公害等に関する権限とは多少質を異にしておると申しまするか、権限の内容が異なっております。しかし、これは必ずしも一つ機関が全然権限が、内容が違うから、別の役所でなければならないというものではないと私どもは考えております。同一の機関で異なる権限を行使しても、これは行政簡素化、合理化という観点からも、私は必ずしも否定すべきものではなくて、十分にそれが調整されて、その機関が運用されるならば、あえて私はこのやり方が悪いというふうには考えておらないわけでございます。
  20. 鈴木力

    ○鈴木力君 関連。  直接に関係ないかもしれませんけれども、岩動行管政務次官にお伺いしたいんですが、さっきちょっと気になる御答弁をいただいたので、これははっきりしておいて、今後の審議を進めたいと思う。それは、先ほど足鹿委員の御質問に御答弁をいただいた中に、行管とすれば、行政監理委員会にかけるのが筋である。しかし、当時国会の承認を得られなかったために、行監が機能を停止しておったのでかけずにやった、こういう趣旨の御答弁があったと思うんです。その辺のいきさつをはっきりしておいていただきたいと思うんです。
  21. 岩動道行

    政府委員岩動道行君) 私が申し上げたのは、昨年の十月の中ごろに行政監理委員会の委員の任期が切れまして、そして政府の方針といたしましては、全員新しい委員をお願いしたいということで、政府部内において人選を鋭意進めておりました。また国会の同意が必要であるということで、国会筋にもいろいろと御協議を申し上げておったんでありまするが、残念ながら、その作業が具体的に進まないままに半年過ぎたわけでございます。かような観点から、私どもは昨年の暮れから新年にかけて、予算編成の時期において、このような機構の問題も当然政府部内において審議をし、また決定をする。その段階において監理委員会がもし作業をしておるという実態であるならば、当然かけなければならない。それが諸般の事情から、監理委員の任命がまだ行なわれていなかったということで、やむを得ない姿できめたと、こういうことでございますので、その点は誤解のないように御了承いただきたいと思います。
  22. 鈴木力

    ○鈴木力君 これは誤解でなしに正解ですから、たいへんだと思う。行監委員会というあるべきものがあるんですね。それが国会の承認といいますか、同意を得られなかったために、機能を発動できなかった。しかし、こちらは予算審議や何かの作業の過程で間に合わなかったからもうやってしまったんだ、こういうことですね。そういうことになってくると、行監委員会に対する行政管理庁の姿勢というものがきわめて無責任なものになってしまう。都合いいときにあれば使うけれども、なければ使わないでどんどん突っ走る、こういうことになってきたらたいへんなことになる。やはりその点については、行管とすれば間違いは間違いであったということをはっきりして、今後の行政監理委員会というもののあるべき権威というものをきっちり認めていく、こういう態度をきっちりしてもらわないと、どうも私は承服できないわけです。いかがです。
  23. 岩動道行

    政府委員岩動道行君) まさにおっしゃるとおりでありますが、私どもも具体的に行政監理委員会が活動いたしておれば当然かけるべきものである——これは法律的にかけなければいけないという性質のものではございません。しかし、私どもが作業を進めてまいるためには、かけることが望ましい、また私どもはかけるべきであるという信念で、このような問題を善処してまいりたい、かように考えておるわけであります。しかし、他面においてこの公害等調整委員会というものは早急に発足をさせなければ、国民権利義務を十分に守ってまいるわけにはいかない、こういうまた別の至上命令があるわけでございます。かような観点から私どもは、したがって、委員会が存在していなかったためにかけられなかったというその事態は、まことに遺憾であるということは認識をいたしておりまするが、それなるがゆえに間違いであったというふうには考えておらないわけでございます。
  24. 鈴木力

    ○鈴木力君 どうもくどいようですけれども、もう一ぺん念を押しておきますが、いまの政務次官の御答弁を伺いますと、作業をしておればかけるべきであった、かけるはずであった、これはそのとおりおっしゃったわけですね。だから法律的にはどうこうというよりも、こっちのほうをやらなければ国民が困るという判断、ほんとうを言うとぼくは、監理委員会だとか、第三者機関というのが、そういう判断をする機関だと思うんです。だから政府は、自分の判断がこうであったから、監理委員会はなければなしに、法律的にはかける必要がないように出ておるからやっちゃった、これは少しどうも独断的な手続論だと私は思う。最後に、答弁はいただかなくてもいいと思いますけれども、こういうことであれば、行管庁といいますか、行政管理庁の今後のあり方を私どももっとよほど勉強していかないとあぶなくてしようがない、こういう印象だけは強く受けたということだけを申し上げます。関連ですからこれでやめておきます。
  25. 足鹿覺

    足鹿覺君 私は先ほど岩動政務次官にお尋ねをいたしましたのは、土地調整委員会公害紛争処理委員会統合される、一つ行政委員会で全く異質の事務を扱うことはどうかと思うがということだったわけです。ほかにそういう行政委員会がありますかということを聞いておるんです。あなたでなくてもけっこうです。事務局でもけっこうですが、あるならある、幾つある、何と何だ、ないならない、こう言ってください。
  26. 岩動道行

    政府委員岩動道行君) 私の承知しておる限りでは、ございません。
  27. 足鹿覺

    足鹿覺君 といたしますと、私どもは先ほどの谷口委員長の、事業量も、仕事の分量もだんだんふえておるという実態も踏まえて、いささかこの取り扱いとしても欠くるところがあり、全く異質の事務を取り扱うこのような重要な行政委員会を、総務長官の、行政機構の簡素合理化を勘案した、これを中心にお考えになって断固おやりになった強引さというものはなかなか相当なものでありますが、あまりこのたびの長官のやり方に対しては、私どもは遺憾の意を表さざるを得ない。仕事の分類云々ということは、これは先ほど谷口委員長が言われたように、いろいろな法律で縛られたその当該委員会事情というものもやはり相当勘案すべきであったと、かように思います。この点については、私は納得がいきかねるということをはっきり申し上げて、次に移ります。  行政委員会のあり方について行管長官に伺いますが、行政委員会のあり方と欠陥というか短所というものについてどういうふうにお考えになっておりますか。
  28. 岩動道行

    政府委員岩動道行君) まず、いわゆる行政委員会でございますが、これは法律的には、所管大臣の指揮監督を受けないでみずから独立してその権限を行なうというところに法律的な特色がまずあろうかと思います。それでそのねらいは、やはり権限国民権利、義務に関連をして自由裁量的な余地を少なくしていくことが好ましいと、かつまた独任制でやることがややもすれば一方的に走るおそれなきにしもあらず、かつまた専門的な知識も必要であるというようなことから、合議制の複数の委員会制度で処置することが好ましいと、こういうようなことからいわゆる行政委員会というものが設けられておるわけでありまして、その必要性は今回の公害等調整委員会のその権限の中身から見てもうなずけるところでございまするし、いわゆる公取等においてはまさにその真価を発揮しておられるものと思うわけであります。地面、この行政委員会につきましては、責任内閣制度ということから、国会あるいは国民に対してどのような形で責任をその決定に対してとるかという点においては、いささか一般の行政の決定におきましては、主任の大臣が国会を通して国民に責任を負うという姿が必ずしもここでは明らかにならないというような理論的な欠点と申しまするか、批判というものがあることは御承知のとおりだと思います。また合議制であるために事務処理に相当の時間がかかるというようなことから、迅速な処理という面において多少問題があるのではないかというようなこともいわれておるわけでございまするが、私どもはそのような批判を乗り越えて、やはり行政委員会というものの存在価値というものは、民主的な一つ機関としてりっぱにその存在価値はあると、かように評価をいたしておるわけであります。
  29. 足鹿覺

    足鹿覺君 私も資料を調べてみましたが、臨時行政機構改革審議会の勧告は、行政委員会の短所について要約すると次のように述べておるわけです。行政委員会というのは、その独立性が強くなり、かつ、その所掌事務が政策的になる場合には責任内閣制の原則に反するおそれがあるということ、次に、いま政務次官も触れられたようですが、機動性、迅速性を欠くおそれがある、第三点は、委員の人選に当を得ない場合には、事実上事務局の専制となるおそれがある等と指摘をしておると思いますが、この点について御所見いかがですか。
  30. 岩動道行

    政府委員岩動道行君) 私もその文書を手元に持っておりますが、かねてからその点については全く同感でございます。しかし、この特に事務当局の専制となるということは、これは人選を誤った場合にはそうなると思いまするが、今日まで私どもは慎重に人選を行ない、また国会の同意もいただいておるという観点から、誤った人選はまずなかったわけでございますので、これは単なる杞憂というふうにも考えておるわけであります。
  31. 足鹿覺

    足鹿覺君 私もそういうふうに言っておるんです。委員の人選に当を得ない場合には、事実上事務局の専制になるおそれがある、こう申し上げておるんです。では一致いたしましたね。そこで、最近の公正取引委員会の例を見ましても、異質脂肪を混入して巨利を博した大手メーカーの名前がなかなか新聞に一年以上載りませんでしたね。これについては私どもは非常に疑惑を持っております。いずれこれはしかるべき機会に事態を究明いたしたいと思っておりますが、少なくとも公正取引委員長自体が特定なメーカーの名前を一年以上も公表せず、そのデータの公表もしなかったというようになりますと、これは行政委員会としての使命を忘れ、国家機関への従属に堕したきらいなしと言えないと私は思いますが、行管長官いかがですか。
  32. 岩動道行

    政府委員岩動道行君) 私どもはそのような具体的な事例については承知をいたしておりませんけれども、もしも公取委におきましてそのような偏向的な、特定企業に対しては特に調査を行なわないとか、あるいは調査を行なったけれども、公取として国民にこれを明らかにすべきものであるというような問題があるにもかかわらずこれを明らかにしないというような事実があるといたしまするならば、これは公取委員会のあり方について私どもも疑問を持たざるを得ないわけでございまするが、ただいまはそのような事実があるというふうには私どもは聞いておりません。
  33. 足鹿覺

    足鹿覺君 この問題を追及しますと時間がかかりますが、ほんとうに御存じないですか。あれだけ、ここ数日来新聞も大きく報道しており、そのメーカーの社長以下三役が責任辞職をせざるを得ないような重大事態まで起きたことを御存じないですか。
  34. 岩動道行

    政府委員岩動道行君) 私は新聞では承知いたしております。しかし行政管理庁としては、そのようなことをまだ公取から伺ってもおりませんし、また、直接行政管理庁として公正取引委員会からそのような報告を受けるとか、あるいはこちらからいまの段階で積極的に公正取引委員会行政の運営のしかたについてこれを調査監察をするという段階にはまだなっておりませんが、これらは国民の健康にも関する重大な行政の一環といたしまして、今後十分にこの問題については注目をして善処してまいりたいと、かように考えております。
  35. 足鹿覺

    足鹿覺君 岩動次官が御存じないということについては、私はいささかがっかりしましたね。それでいいですか、そういう態度で。そういうことになりますと、午後の、午後には農林省も、公取も呼んでやらざるを得ない。少なくとも行政管理庁としては、あれだけ世間を騒がし、異質脂肪を混入して不当の利益を三十億ないし四十億あげたと一般的には類推しております。国民に新鮮な自然の牛乳を飲ませることを忘れて、合成牛乳を飲ます、その疑いがある。こういう重大な問題が、最も経済の裁判所といわれる公取が疑いを受けておる。その監督、指導を誤ったんじゃないか。一年以上もそのデータを秘しておる。厚生省は会社から始末書をもらっておる。そういう一連の大きな疑惑を受けておる際に、行管当局が知らぬというようなことでは私は許すわけにはまいりません。もっと事務局とよく打ち合わせをして、そしてこれに対する処置、今後の方針を明らかにしていただきたい、かように思います。
  36. 岩動道行

    政府委員岩動道行君) 政府としてはさっそく関係省庁と十分な連絡をとって、その対策を進めてまいりたいと思います。
  37. 足鹿覺

    足鹿覺君 しかとお約束願えますね。よろしいですね。やっていただけますね。
  38. 岩動道行

    政府委員岩動道行君) やります。
  39. 足鹿覺

    足鹿覺君 委員会権限はできるだけ詳細に法律で規定をし、行政処分は自由裁量処分の面を少なくして、覊束処分の面を多くするという行政委員会のあり方の第一にはあるんですが、やはり第二の問題としては、独立の命令制定権について、その範囲、手続等についても、責任内閣制の趣旨と矛盾しないように調和をはかっていく。委員の任免等については、ただいまも述べられたように、この人選にあやまちなきを期す。しかし、あなた方としても、ある程度内閣の統制保持ということはお考えにならざるを得ないでしょう。四は、他の行政機関との連絡をよくするよう特に留意をさせるということ、五は、委員は原則として専任とすること、等、それぞれの委員会の設置の趣旨及びその所掌事務に照らして適当な措置を私は講ずべきだと思います。これは現在でも行政委員会について一般的に私は言えることだと思いますが、総務長官いかがですか。
  40. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) 大体そのとおりだと思います。
  41. 足鹿覺

    足鹿覺君 そこで、このいま議題になっておる委員会の委員の人選の問題でありますが、法案によりますと、委員長及び委員六人、そのうち三人は非常勤となっておりますが、六人とした理由、委員は原則として専任とするといういま長官が御答弁になったとおりにもかかわらず、半数は非常勤にされた理由、これはどういう事情でこういうふうになったのか。しかも谷口委員長の先ほどのお話によりますと、現在土地調整委員会は六人ですか、委員が……。
  42. 谷口寛

    政府委員谷口寛君) 五人でございます。
  43. 足鹿覺

    足鹿覺君 五人ですか。それと一緒にして六人にして、そして三人を常任とし、三人は非常勤とすると、しかも全く異質なものをこの委員会でやることに支障はないと行管長官が断言をされるにしては、あまりにもただいまの御答弁とも反し、委員会が迅速適正に設置の目的に沿う活動を私は阻害しやしないかと考えますが、いかがですか。
  44. 岩動道行

    政府委員岩動道行君) 委員の数でございまするが、現在までの土地調整委員会委員長と委員を含めて五人でございまするし、また中央公害審査委員会のほうは委員長一名と委員五名、うち非常勤が三と、こういうことになっております。したがいまして、それぞれの現在までの委員会を合わせますと、十一名になるわけでございます。今回は委員長及び委員六人、したがいまして七名になるわけで、そのうちの三名が非常勤ということになっております。これはただいまの「原則として」ということで、必ずしも全員が常勤でなければならないということでもございません。したがいまして、具体的な人選は総務長官のほうでお進めになっておられますので、私どもは承知いたしておりませんが、このような三人は従来にも公害等に関しては非常勤の方が三人おられたわけでございますので、そのようなことも勘案して、いまの時点におきましては、事務処理の案件等を勘案いたしましても十分に国民の要望にこたえる処理ができるものと、かように考えておるわけであります。
  45. 足鹿覺

    足鹿覺君 割り振りについてですが、山中総務長官、現在、土地調整委員会のほうは、委員長のほか、先ほどもお話があったように、常勤委員が四人ですね、中央公害審査委員会のほうは委員長のほか常勤の委員が二人ですね、非常勤が三人となっておりますが、今回新設されます公害等調整委員会は、委員長のほか常勤の委員が三人、先ほど申し述べましたように非常勤が三人ということになる。結局四人減ることになりますね。くどいようですが、異なった事務を同時にやる委員会としてこれだけの委員体制ではどうか、そういうことを私は案ずるものでありますが、それはそれなりとして、このあなた方の原案による委員の割り振りはどういうことになりますか。土地調整委員会を担当する委員と、常勤委員が何人、非常勤委員が何人、公害等調整委員会を担当する常勤委員と非常勤委員の数、そういった割り振りをどのように考えておいでになりますか。
  46. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) まず非常勤三人の問題は、これは常勤となりますと、他の職業を放棄してもらうというかあるいは離れてもらわなければなりませんし、やはり国会承認人事でありましても、その前に選考する場合に、だれが見ても、原案をつくるものとしても、公正安当、人格識見高明、そういう人々を選ばなければなりませんから、どうしても非常勤のワクを少し許していただかないと、人選に最適の人が選べない、非常勤であれば兼任その他も比較的できるわけでありますので、お願いしやすいということも一つにはございます。  そこで、その委員長並びに委員が六名という分担でありますが、これは全員が両方の事務を、今度は一緒になるわけでありますから、所掌事務全体を所管するわけであります。なお公害の問題等はことに専門的な知識をそのケースごとに必要とする場合が多うございますから、今回の法律で専門委員を置くことを認めてもらうようにしておりまして、三十名の専門委員を縦横に駆使して、そのつど最も適切なる人材をお願いすることにより、土地調整の今日までの事業も含めた新しい事務というものが消化されていくものと考えておりますので、別段六名の委員中何名が土地調整委員というような区分はありませんで、全員でそのケースごとに専門委員等と組み合わせながら仕事処理していくという態勢に入るわけであります。
  47. 足鹿覺

    足鹿覺君 委員長及び委員となる資格として、法案では「人格が高潔で識見の高い者」というきわめて抽象的なものであるが、そのうちから内閣総理大臣が両議院の同意を得て任命することになっておりますが、ネーム・バリューがあるからといって必ずしも能力があるとは限らないことは御承知のとおりでございます。今回の委員長及び委員はかなり専門的知識を必要とすることは明らかでありますが、よほどの主体性を持たないと結局は官僚に振り回される、かように私どもは案ずるものでありますが、大体委員長が四十万円ですか、委員が三十六万円、これは常勤の場合でしょうが、非常勤の場合はどの程度の手当をされて、十二分に活動を保障されますか、また専門委員制をとっておられるようでありますが、このものの選考の基準等もあわせて具体的に、長官でなくてもけっこうですから、御答弁願いたい。
  48. 川村皓章

    政府委員(川村皓章君) お答えをいたします。  非常勤の委員の場合も常勤の委員の場合も、選考基準といたしましては、それぞれ勤務の形態は異なりますけれども、選ぶべき資格としては、同一な観点、すなわち人格高潔、識見を有する者という観点で選んでございます。なお非常勤につきましては日額八千百円ということになっております。
  49. 足鹿覺

    足鹿覺君 百円という端数をつけたのはどういう……。
  50. 川村皓章

    政府委員(川村皓章君) 百円という端数という御質問でございますが、これは非常勤委員の全部の体系がございまして、これは百円単位までそれぞれついておりますので、そういうことで、別に特に百円つけているというような性格のものではございません。
  51. 足鹿覺

    足鹿覺君 デノミネーションでもやったら、これは変なものになりますね。そこら辺が私のほうもどうもあなた方のおやりになることは納得がいかない。  要するに現在でも中央公害審査委員会には専門調査員制度がとられておるが、総務長官権限外のことかとは思いますが、この専門委員というものは、いわゆる民間人を主として選ばれますか、各省関係の公務員をもってこれに充てられる所存でありますか、この点いかがですか。
  52. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) 委員ももちろん、私どもが中央公害審査委員会を選びますときには、各省庁のOBとかそういうようなことは念頭にありませんで、もっぱら学識経験者の中で人格高潔にして云々、というのはこれは例文で、一応そういう選び方をする場合にはそういう表現が全部なされておりますから、とっておりますが、やはりそれに対して最もふさわしいと思う人を選んで、国会の同意をお願いするわけであります。専門委員というのは、これまた先ほども申しましたが、ことに公害の態様等によっては特別なその分野の専門の日本最高の人たちにその問題が片づくまでの期間お願いをするというような、三顧の礼をとって知識をこの件に対して国家のため国民のためにかしていただきたいというお願い等をいたして迎えるわけでありますから、固定された人たちがきまるのではなくて、三十名以内において適宜適切にそのケースに最もふさわしい人を民間から選ぶというのが原則であります。もっとも国の研究所等で、その問題について民間も含めて、あの人は権威者だというような人がある場合に、国の役人だからこれを絶対にしないというつもりではございませんが、原則は当然民間の権威者と衆目の一致する人を選んでいくという配慮をしていきたいと思います。
  53. 足鹿覺

    足鹿覺君 その点については総務長官の常識と野人閣僚としての立場から十分配慮をされるであろうということを期待しておきます。  委員会の独立性と公正さの保障の確立について伺いますが、強力な事務局を設けて公害の発生原因、発生状況等について常にこの委員会は調査をする必要があろうと思うのですね。したがってこれに基づく必要な資料を収集し、具体的事件処理に資し得るような体制を委員会の存立上最も必要と私は思うのであります。調査体制とでもいいますか、そういったようなものは専門委員制度と別に事務局に設けられるわけでありますか、この点いかがですか。
  54. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) これまた一つの考え方でありますが、私もそういうことも一応念頭に置いてみたんですけれども、やはりこれは環境庁が主として所掌いたします公害規制の行政法、こういうものに付随して、常時、機能として国家が持っておらなければならない分野であると思います。この公害等調整委員会というものができますると、これは裁定等の申請にあたってもみんなそのケースごとにそのつど申請が行なわれますから、それを受けた形で調査等ももちろんいたしますが、ふだんそういうことが起こらぬようにする、被害者が訴えなくてもいいような状態をつくり出すということはやはり、そのために環境庁というものが公害規制処理法を全部まとめて役所として出発をいたしましたので、そのほうにゆだねるべきであると思います。当初私は、この中央公害審査委員会の段階で環境庁の付属機関——三条機関ということはそのとき念頭に一応ありませんでしたので——そういうことも考えてみましたが、やはり総理、内閣、いわゆるそれらの直轄——直接の指揮はいたしませんが——そういう形で総理府に置かれる三条機関というもののほうが正しかろうということで、これは行管とかあるいは法制局、そういうところも、当初私の原案には、環境庁をつくりますときには、中央公害審査委員会というものを付属機関に入れていたわけでありますが、やはりどの省にも所属しないで、文字どおり独立して、公正、厳正、中正な方針を打ち出して行くべきであるということで、一応総理府の外局にとどめるということにしたわけでありますが、そのようなことから考えますと、事件が提起された場合においては、これはあらゆる手段を尽くして、専門委員等の知識も活用しながら、あるいは調査権限等も活用しながら、その調査を、裁定等に誤りなきを期するための必要な資料を最大限つくらなければならないと思いますが、日常の行政は環境庁がやるべき仕事であろうと考えて、いまのところ事務局にそこまでの、ふだんの調査機能というものを与えておるわけではございません。
  55. 足鹿覺

    足鹿覺君 先ほど山中長官は公務員のOBの中からでも採ることは採るが、主として民間人を起用して何びとも納得し得るような人事をするということでありますが、私の手元にごく最近日本弁護士連合会会長今井忠男という人から要請書が、意見書ですか、要望といいますか、そういうものが届きました。読んでみまして、まことに具体的でもっともな意見が多いと感じます。そこで、一例を申しますと、この意見書、要請書の中に、人選問題に触れて、裁定委員会の委員のうち少なくとも一人は現に弁護士である者から選任すべきだとの意見も出してあります。私は、いわゆる民間人といいますと、法曹界、学界、公害関係の権威ある研究家等がやっぱり主軸にならざるを得ないと思うんですが、この日本弁護士連合会の意見書はまことに妥当な事項がたくさん、相当長文なものでありまして、読むことを省略いたしますが、ごらんいただいておりますか。よく御勘案をいただき、御検討いただいておりますか。
  56. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) これは三条機関に移行させるにあたっては、文字どおりいい意味での政府の守護からは手放すわけでありますから、独立してやっていくにふさわしい法律を整えて、権限を与えて、そうしてりっぱな内容のものとして出発をさせませんと、せっかく誕生させる立場においてもあとで後悔したらいけませんので、万手落ちのないようにいたしております。したがって、各方面からの批判なり意見なりというものは私も大体目を通しております。ただいまの、日弁連でありますか、その御主張の中の、弁護士である者を選ぶべきであるということは、現在の中央公害審査委員会においても、今回の公害等調整委員会においても、この委員のうち一人は弁護士の資格を持つ者でなければならぬ、こう規定してありますから、その点は別段いま開業している民間の弁護士さんを任命する、しないという、これはもう技術上の問題でありますから、その問題とは切り離して、その趣旨は原案にも十分盛り込んでございます。
  57. 足鹿覺

    足鹿覺君 防衛庁長官が何かあまり早く来過ぎてしまったので、早く帰るつもりらしいから、便宜をはかってあなたにお尋ねをいたします。これはだいぶあとにしようと思っていましたが……。
  58. 江崎真澄

    ○国務大臣(江崎真澄君) どうも恐縮です。
  59. 足鹿覺

    足鹿覺君 それは基地公害の問題であります。で、四十七年度の予算に四千七百万円の調査費がついておりますね。これは何を調査するんですか。
  60. 江崎真澄

    ○国務大臣(江崎真澄君) 詳細は政府委員からお答えいたさせます。
  61. 薄田浩

    政府委員(薄田浩君) 調査費四千七百万の詳細の内訳はあれでございますが、われわれ考えておりますのは、この中で基地公害と称しますか、騒音の対策等といたしまして、まず個人用の共同テレビアンテナとか、それから個人の防音の住宅の試験をしたい、そのほか調査費には、いわゆる演習場によります、これは騒音とは違いますが、演習場の及ぼすいろんな河川の損害等がございますので、そういう形のほうにも使いたい、こういう意味で、調査費はいろんな事案が混在しております。
  62. 足鹿覺

    足鹿覺君 その四千七百万円の調査費の内訳を資料として御提示願いたい。
  63. 薄田浩

    政府委員(薄田浩君) 承知いたしました。
  64. 足鹿覺

    足鹿覺君 民間個人の基地公害被害の実態は調査できておりますか。
  65. 薄田浩

    政府委員(薄田浩君) われわれの整備法は、発生的には大体公共的なもの、たとえば音で申しますと、学校とかいわゆる教育施設、あるいは医療施設等やっておりますが、近時いろいろ公害等につきまして地元に御迷惑をかけておる、あるいは世論の推移等も考えまして、個人につきましても調査等はいたしております。それで事例で申し上げますと、音の問題で限定してお答えいたしますと、音によりまして事業経営上損失をこうむる個人の方々については、特損法の規定等によって損失を補償させていただいております。それから騒音、音に伴います障害につきまして、個人につきましては、従来から騒音防止の電話機あるいは有線放送、それから有線放送電話施設、それから、これはNHKのほうと協力いたしまして、テレビの受信料の減免等、それから先ほど申し上げました共同テレビアンテナ等、こういうものを考えております。その他基地周辺におきましてある一定地域を限りまして、個々人の方のいわゆる基地があることに伴う危険感あるいは音の除去というようなことで、集団移転という制度をやっておりまして、この制度は、相当な範囲を御要望に応じて買収、あるいは移転等の措置をとっております。そのほか、先ほど調査費の項で申し上げました個人の方々の住宅の防音というものを手がけていきたいということで、四十七年度予算におきましては七百万円いただきまして、いろいろな試験的な建物による検討をいたしたいと、こういうふうに思っております。
  66. 足鹿覺

    足鹿覺君 ただいまあなたが述べられたもののほか、ことしから七百万円で調査をするということでありますが、民間個人を対象とした被害の実態、被害の補償の項目別補償額等必要な資料を御提示ください。質問の時間の節約上いただけますね。
  67. 薄田浩

    政府委員(薄田浩君) 先生のおっしゃいますような分類にし直しまして、御提示いたしたいと、こういうふうに思います。
  68. 足鹿覺

    足鹿覺君 現在基地なるがゆえに立ち入り調査も、個人被害の救済も行なわれておらないことは御承知のとおりであります、江崎長官。で、調査の結果、七百万円の調査費でこれから調査するということでありますが、私はいかにも片手落ちで、不相応だと思う。個人の被害を行政面から調査費をつけてこれから調査するというようなことでなしに、法律を改正してですね、私どもは基地を容認するものでありません。ありませんが、現実にあるものに対する、迷惑を及ぼしておるということはきわめて甚大であります。これをただ単なる、これから調査をして行政で解決をつけようということではなしに、法律を改正するくらいの考え方を持っておられるかどうか。特にこの今度の委員会ができましても立ち入り調査はできませんね、基地なるがゆえに。お認めになりますか、立ち入り調査を、どうですか。
  69. 薄田浩

    政府委員(薄田浩君) お答えいたします。  先ほど私の御説明がちょっと不十分で、ちょっと訂正、訂正といいますか、補正させていただきますが、七百万円といいますのは個人の防音でございまして、先生の御質問の個々人に対する施策としては後ほど資料で出しますが、いわゆる補償的な考え方で現在もやっております。これは後ほど資料でお届けいたします。  それから立ち入りの問題でございますが、これはまあいろいろ、特に例を米軍基地について申し上げたほうが適当だろうと思いますが、いわゆる……。
  70. 足鹿覺

    足鹿覺君 いや、自衛隊でやってください。
  71. 薄田浩

    政府委員(薄田浩君) 自衛隊のほうは立ち入りといいますか、これは現実にわかっております。  それから米軍のほうは、合同委員会の下部機構といたしまして航空機騒音対策につきまして分科会がございますので、ここでいろいろ発生源であるジェット機のほうの音を消すほうのくふう、あるいは何ホン何ホンと、こういうような検討はこういう委員会でやっておりますので、一々立ち入らなくてもある程度——ある程度と申しますか、立ち入らなくても音についての公害はわれわれ把握できるのではないか、こういうふうに思っております。
  72. 足鹿覺

    足鹿覺君 いずれにしましても一米軍、自衛隊を問わず基地周辺の騒音公害はジェット化が進むにつれて著しいものがあることは御承知のとおりなんです。おそらくえんきょくにではありますが、立ち入り調査については認めないと言わぬばかりの御答弁でありましたが、ということになりますと、この騒音被害の問題でかりに住民から苦情が出て、防衛庁が受け付けなかったときは、どこへ持っていけばいいんですか。地方の公害審査会や中央の審査会に申し出れば防衛庁へ働きかけてもらえるのですか。防衛庁は自分たちの判断だけで、第三者の意見も聞かないで、ただあてがいぶちでいいとお考えになっておるのでありますか。それらの点について立法措置をやるかやらないかということも含め、江崎長官の御見解を承っておきたい。
  73. 江崎真澄

    ○国務大臣(江崎真澄君) 非常に重要な点の御指摘だと思います。で、従来は、騒音等については迷惑をかけておるという、こちらが原因者であるということは非常にはっきりしておりまするので、苦情が出てまいりましたときに、そんなものは知りませんというような官僚的な形ではねつけるという例はこれはないように私自身も承知をいたしております。やはりその騒音防止のためのいろんな施設については的確な調査をして、そして御納得のいくように話しをし、話し合いですべてを解決するというたてまえですから、現在直ちに別な機関を設けてそして処理しなければならぬというようには考えておりませんが、しかしだんだん世の中が安定するにつけまして、この基地公害の問題騒音の問題というのはなおざりにできない重要問題ということで、このごろは非常に地域住民の方たちからも注目をされております。したがって、いま御指摘になるような点については、先ごろも山中総務長官等も何かやはり防衛庁においても当然考えるであろうというようなお答えがあったやに私も聞いております。したがいまして、これは現在の状況でまあいまのところはカバーできると思っておりまするが、しかしとうていそれでは承知できないというような雰囲気が出ますれば、御指摘のように新たな機関を設けるなり、何らかのやはり措置をとる必要があろうかというふうに思います。で、そういうようなすべての問題をひっくるめて、実は内閣委員会の皆さまに国防の審議のときにも申し上げましたが、戦前からの陸軍の基地であったからそれを米軍が引き継いだ、あるいは自衛隊が引き継いで今日に至っておる。   〔理事町村金五君退席、委員長着席〕 東京都のような巨大都市においては、周辺都市というものがもう戦前と戦後の今日とでは全然面目を一新しておる。ベッドタウン等の充実した隣接都市というものの状況等を考えますと、やはりそういうもののためにそういうものを全部ひっくるめてどうするかという、いま、防衛庁では検討に入ろう、こういう姿勢でおるわけでありまするが、これらとあわせて、この基地の公害問題、その対策、これは予算等においてもわれわれ毎年大蔵省側に議員各位の協力を得て相当強く対策費を要求するのですが、なかなか思うようにまかせません。本年度の予算折衝の経緯にかんがみましても非常に問題が多かった。あとからよほど追加をとったつもりでおりますが、決して地域住民の満足を得るところまでには至っておりません。したがって、そういう問題もひっくるめてそのプロジェクトチームで検討をいたしたい、こんなふうに考えております。
  74. 足鹿覺

    足鹿覺君 裁定制度と原因裁定の問題等について山中さんに伺いますが、運用問題を中心にこれから伺いますが、裁定制度には、公害被害の原因を調査する原因裁定と、損害賠償責任の所在を明らかにする責任裁定の二種類があるが、そのうち原因裁定は、被害者だけでなく加害者も申請することができることとなっていると法案に載っておるんですね。これは私は読んでみていささかふに落ちないわけでありますが、資料をずっとたぐってみますと、初めの政府案には、公害被害者だけの一方的な申請だけで裁定をすることで、長引く公害訴訟にかわって被害者救済の道を行政的に保障するという積極的な内容だったと伝えられておりますが、いかがですか。
  75. 山中貞則

    政府委員(山中貞則君) 私のところでは、最終的にきめたものがこの法案でありますから、その前に政府案というものが先にきまったことはありません。私どもは、事務当局と私をまじえて累次アメリカの連邦法を調べてみたり外国の例を調べたり、いろいろと新しい市民の声というものが行政にどのように反映するか等について検討もしてみました。しかし最終的には、いま申しましたように、原因裁定は、これは損害額をみずからこれぐらい払いましょうというようなことを不遜にも申し出る形になる責任裁定とはおのずから異にいたしまして、今回は、ことに私どもの法律では、水質とか大気だけでなくて、公害基本法の典型公害のすべてに関する、騒音、悪臭、振動、地盤沈下、そういう一切の案件を受け付けることになっておりますので、したがって、ともすればこまかな問題等も持ち込まれる可能性もあります。その場合等において、あながち加害者が企業であると断定するばかりでないケースもあるわけであります。したがって、みずからの立場において自分が被告あるいは加害者と見られて訴えられる、あるいは訴えられそうな環境である、しかし自分たちはそういうことはありません、このようにその原因と目されるものについては自分ではないという証明がきちんとできますというものは、みずから進んでその裁定を受ける資格を私は与えてもいい、そう思って、自分の判断で最終的にきめたわけであります。もちろんそれは、申し出て、逃げ隠れするために申し出たものであり、虚偽の申し出をしたものであれば、直ちに委員会が調査をして、そしてそれは裁定に服しなければなりませんから、すねに傷持つ者はとても当事者として見られていてもそれを持ち出すはずはないだろう、そう思うわけです。
  76. 足鹿覺

    足鹿覺君 四十七年二月十九日のサンケイ新聞によりますと、二月「十八日、自民党政調公害部会にはかった結果、「被害者だけでなく企業側の裁定申請も含めよ」との党側の要請を受け入れ、一部修正して同日午後持ち回り閣議で決定した。加害者側の裁定申請が一部認められたことで公害被害者救済のための同法の性格は大幅に後退した。」、かように報道されておるのであります。他の新聞も大同小異であります。このような最終決定は、それは長官の責任においてなされますが、経過をながめますと、当初は被害者申請だけを認めておった。それが審議の促進をし、結論を早く出せということにつながる、こういうことであったことは、私は長官もよもや御否定にならぬだろうと思うのです。これはこの席で、そうだったということは、これは言えませんよね。言えませんが、確かにそういう面があったと私は思います。この点で、私どもはこの公害と企業の癒着問題を非常にいままでも指摘して戦っておりますけれども、今回の場合ぐらいは筋を通してほしかった、かように思います。この点では、ただいまの長官の御答弁で納得がいきませんが、水かけ論をやっておってもきりがありませんから、原因裁定の嘱託については、被害者の側の同意がなければこれをすることができないというような、運用の面で、この問題をもう少し歯どめを置けることができないか。以上が、これらのことができない限り、国民のその裁判を受ける権利を事実において侵害をし、かつ被害者救済の障害となる危険があるので、この制度は、私は削除してほしいとさえ思っております。どうもこの点が私は納得がいきません。しかも、午後申し上げますが、一応裁定がきまった、一方側から、裁判を、訴訟を起こすということになりますと、現在の司法制度のもとにあって、三審制をたてまえとしておる現行司法制度が、事実、この調整委員会裁定に不服で、また裁判を申し出るということになると、事実上四審制のようなかっこうになって、裁判が長引く危険性がある。なるがゆえに、私はこの加害者を申請さすということについては、少なくともこれを削除してほしかった。もし一歩譲ったとしても、原因裁定の嘱託については、被害者の側の同意がなければこれができないと、こういう歯どめ措置をなりと運用の面で考えることはできませんか。御所信を承っておきます。
  77. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) 私もおっしゃることはわからぬでもありませんが、加害者、被害者と断定できるものは因果関係が明確なんですけれども、しかし、自分は加害者ではありませんという場合において、その因果関係は、やはり裁定でもってそれを決着をつけるということになるわけでありますから、その人は実際には加害者ではなかったということを証明されることもありましょうし、それはやっぱりおまえが犯人だったじゃないかということで裁定を受けることにもなりましょうから、私は、持ち出したものが、これは単に企業ばかりじゃありませんで、騒音とか、振動とかということになりますと、それが全部加害者であって、という断定もきわめてむずかしいケースまで入ってくると思います。ですから、やはり因果関係が存在するかしないかという問題の証明を裁定に仰ごうという場合において、自分はそういう原因者ではありませんというものも、原因裁定に関する限りは置いておいてもいいじゃないか。したがって、その場合には因果関係の、明確に加害、被害の関係ができる前の問題でありますから、いわゆる被害者というものも、自分は被害者だという人はおっても、その人の同意と直接直結して——同意がなければ、患者、あるいは患者と目される人でもいいですね、そういうことができないということについては、やはり少し問題があるケースが出てくるのではないかと思います。運用の問題というお話でもありますから、これは公害等調整委員会の出発にあたっての、重大なる、だれのための委員会かという疑問にこたえるためにも、委員会として相談はしてもらうことにいたしますが、いまのような複雑なケースでありますので、もちろん責任裁定については、そのようなことはもうとても、損害額をみずからきめて裁定を仰ぎたいというようなことは許さないという立場は、もちろん貫いております。
  78. 水口宏三

    ○水口宏三君 いまの関連でちょっと伺いたいのです。  この間の連合審査のときにもこの問題が非常に問題になりましたですね。長官のお話を聞いていると、たとえば、何となくこう亜硫酸ガスのにおいがしてきて、一体だれが出したかわからぬ。被害者は、少なくともそれによって被害を受けたから原因裁定というものを出すだろうと思う。ところが、加害者のほうはだれだかわからぬから、私は加害者じゃありませんと言って裁定を出すかもわからぬ、そういうことじゃないと思うんですね。これは大体そういう被害者がいて、被害者が、それらについていろいろと地域でも問題になり、紛争が起こり、ある場合には事前に仲裁なり、調停なりがあって、そういう過程の中から原因裁定というものが出てくるのであって、ぽこっと私は被害者、加害者じゃありませんよなんという原因裁定なんか起こるはずがないのでありますからね。大体においては、加害者と目される人たちというものがある。被害者は歴然とある。そこでそれを、ただ、原因がはっきりしないから原因裁定というものが設けられるとすれば、当然、もういままでの経過からいって、原因と目されるグループがあるわけですから、被害者のほうから、それらについて裁定を申し入れれば、それはもう委員会が、これらについて、はたしてほんとうの原因者であるかどうかということを裁定すればいいのであって、頭から、ただ何でもないところから、いきなり私は原因者じゃありませんなんという裁定が出てくるはずがないじゃありませんか。そうすると、どうも長官の御答弁は、何となく、そのまま聞いているともっとものような気がいたしますけれども、事実経過としては、私は、つまり加害者側からの原因裁定ということは、事実上、むしろ資力とか、あるいはさまざまなこれまでの経過を見てみると、むしろ、被害者側の行動というものを先に制約をしてしまうという経過が多いようです。私はあくまで公害等調整委員会というものは、被害者を、被害をなくなすためのこれは一つ制度だと思うのですね。そういう意味において、いまの長官の御答弁ですと、そのまますらっといったんでは納得できないと思うんです。これはもうこの前の連合審査でも、だからそれが責任裁定との関係で問題になっているのでございますから、本来なら、私は法を改正して、これは原因裁定については、加害者の裁定申請権がないとすべきだと思いますし、いま足鹿委員のおっしゃった、行政上は、むしろ、努力どころではない、何か制限をすべきもののように考えているのでございますけれども、その点についてはもう少し明確に御答弁いただきたいと思います。
  79. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) これは調停、仲裁といういままでの中央公害審査委員会権限では、当事者の合意を前提としておりますから、やはり附帯決議をまつまでもなく、その間の、質疑応答もいたしましたけれども、その国会の議論を振り返ってみても、当事者の合意が前提であれば、合意しないものはもう裁判でこいというふうになるであろうことは、今日の幾多の事例から見て明らかでありますから、そこで今回は裁定制度というものを持ち込もうということにするわけでありますので、裁定に持ち込んでくるものは、これは仲裁なり調定なりの段階から移行するんだということは、あながちそういう順序ばかりではないだろうと思うのです。やはり私たちとしては、直ちに裁定行政上決着をつけたいという姿勢で持ち込むものは圧倒的に被害者だろうと私は思います。しかし、先ほども申しましたとおり、水質とか、大気とか、ほぼ企業側が、しかも相当な規模の、中小企業も中にはあるとしても、企業側が原因者であるとはっきりしておるようなもの、こういうものに限れば、またあらためてその議論は私どもも耳を傾け、謙虚に直すところは直さなきゃならぬと思いますが、しかし、典型公害のすべてにこれをかぶしておりますので、その場合において、原因者がだれだということについては、私でないというものも申し出ることのできるようにしたらどうだ。しかしまた、一方、自分は被害者だと申し出て、あの工場が加害者だと言った人が、それを仲裁、調停、裁定に持ち込んできて、調査しているうちに、実はその工場じゃなくて別な工場だったという場合には、一方的に——訴えられていない工場であっても、立ち入りもし、そうして裁定の対象として委員会がさばいていくわけでありますから、そこらのところは私は相当機能していくものであるし、被害者救済をあくまでも基本とすべきであるという理念にいささかも狂いがあってはなりませんし、そのことは考えておりますが、被害者救済をきわめて困難にするものであるというふうには私は判断をいたしておらないということであります。
  80. 水口宏三

    ○水口宏三君 重ねてお尋ねをいたしますけれども、大体原因裁定を行なうという場合に、その企業が原因者と目されている場合にあるいは出すかもわからないわけですね。たとえば自転車工場が全然自分の使っていない薬か何かの公害があったという場合、自転車工場は、私のところじゃありませんと手を上げるばかはいないわけですね。やはりどうもその公害の発生源であるらしいと目されるような工場、こういうところが問題になるわけでございますね。だから、むしろ私はそういうことは被害者から訴えられた責任裁定なりあるいは原因裁定の中で明らかにされればいいのであって、初めから大体加害者と目されるような人たちが、私は加害者ではありませんと言って裁定へ持ち込む理由は全然ないではないか。もし被害者側からそういう原因裁定に持ち込まれた場合、大体いままでの通念からいってあの工場がどうも原因らしいと思われる人たちが呼ばれたと、その過程の中で、みずから原因者ではないということを明確にすればいいんですよ。それを初めから何か、長官のおっしゃることはその点があいまいなんでございますが、何か原因者でないということを自分が初めに言ってもいいじゃないかと。言って悪いことはないですよ。全然無関係な者が言うはずはないですね、事実問題としては。通念的にその工場が原因者であると思われている場合、先手を打つということになってくるのであって、そんなことをしなくたって、その原因裁定が始まった過程の中で、この間もさんざん審議になったように、自分が原因者でなければ原因者でないというあかしを立てればいいわけですから、何もその道を、加害者の側からの裁定の訴えの道を開いておくことは、これは公害というこの社会的な現象に対する、むしろ被害者に対する救済措置であるべき本法案趣旨と全然沿わないんじゃないかということを申し上げているんです。
  81. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) 私もおっしゃることはわかっているんです。しかしそれで、いわゆる私は被害を受けたということで、公害の被害者だということで仲裁を申し出ます。そうすると、当然だれが加害者ですかと、あの工場あの工場ということでそれは調べるでしょう、典型的な工場を。地域住民の例をとればですね。したがって、それはもうその企業が申し出ようと申し出まいと、あるいは申し出てきたってそれはもう全部被害者の申請にかかる裁定行為が始まるわけでありますから、調査の対象に全部、被害者のあげてないものまで含んで調査をしていくわけでありますから、そういうような典型的なケースでない場合、そういう場合に、自分はこういうことを周辺から言われているが、私の工場じゃありませんと、あるいは私自身が騒音なり振動なりと言われているけれども私ではありませんというようなことを、理由をちゃんときちんとつけて証明ができて、そして裁定を下されても私のところは何らすねに傷持っておりませんという者があれば、それを受けつけない——これは企業とはかりは言えませんで、おまえさんは受けつけられないということは、原因裁定の場合には、原因が因果関係として明確にされるための裁定でありますから、したがって、繰り返しますけれども、自分がうしろめたいところがあるのに持ち込んできてやぶをつついてヘビを出して、裁定を受けて、おまえさんが原因者であるというふうな裁定を受ける者があまりあろうとは思いませんが、足鹿さんがさっきおっしゃったことで、それを利用して引き延ばそうとはかるというようなケースは、私はこれから運用していってみなければわかりませんが、厳然として独立した司法の分野においてすら見られる現象でありますから、そういうことは場合によってはあるかもしれないと思いますが、かといって、それが当事者の双方が、これは同意を必要としないわけでありますから、申し出る道を原因裁定もふさぐということについて、私は直ちに被害者救済の姿勢がそれでそこなわれるというふうには考えておりません。運用は足鹿委員の御注意もありましたし、十分検討をしてまいりたいと思います。
  82. 足鹿覺

    足鹿覺君 警察庁おりますか。ずいぶん待たせましたが、あなたは一番最後の組にしておったけれども、あまり待ってもらっているから——あなたにお尋ねしたいのは、実は人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律、これは昭和四十六年七月一日から施行されて今日に至っておりますが、その当時の当院の法務委員会における審査の経過等を見ますと、かかし法案だと参考人の戒能通孝先生などは言っておられるんですね。そういうようなきらいがたぶんにあるということを言っておられるので、そこで、今度の公害等調整委員会もこの二の舞い的なものにならないために、その関連として実態を承りたい、こういう趣旨でありますからお答えをいただきたいと思いますが、このいわゆる公害罪処罰法と公害等調整委員会の運営との関連性といいますか、これは総務長官には御答弁をいただかなくてもけっこうですが、よく聞いておいていただきたい。公害等調整委員会設置法制定の趣旨は、国民公害紛争の簡易迅速な解決を要望する声にこたえるために、公害等調整委員会公害紛争に関する裁定を行なわせようとするものでありますが、本委員会において具体的な事案が審査されて裁定がなされるにあたって、その事案各種の取り締まり法規や、処罰法規の適用を受けたかいなかということは、委員会裁定に従って、また被害者の救済に著しい影響を及ぼすと私は思うのであります。いわゆる公害罪等処罰法について言いますならば、その施行前はもちろん、施行後も公害事件はあとを断っていない。一年間でありますからそう直ちに効果があがるとは思いませんが、また最近新しいPCBの公害がしきりに報ぜられておりますし、その他いろいろ複合公害が発生しておりますが、これらとは対照的に、公害罪処罰法の取り締まり法規が制定されて一年になっても、処罰法規の適用をされたというニュースはほとんど私は聞いておりません。私もあまり新聞報道等を詳細に読むほうではありませんが、いろいろ調べてみますがないようです。つまり戒能先生が法務委員会で指摘したように、これはいわゆる公害処罰法というものを設けてある程度示威してみたもののあまり効果がない、いわゆるかかし法的な、ざる法的なものだといわんばかりの御供述をしていらっしゃいますが、事実そのようになりつつあるのではないか。公害発生だと思われる企業その他に対する取り締まりの状況について聞きたいのであります。第一点は、この一年間に諸種の行政取り締まり法規に基づく取り締まり状況についてでありますが、取り締まり法規の名称と、その法規に基づく発生した警告件数、同じく右により処罰をされた件数。二が、この一年間におけるいわゆる公害処罰法に基づく取り締まり状況、捜査した件数と、その中で起訴となった起訴件数、裁判所の裁判の結果有罪となった件数と無罪となった件数、この模様を御報告願いたい。詳しく時間を要するならば資料として御提示願います。
  83. 本庄務

    政府委員(本庄務君) ただいまの御質問、幾つかの項目ございましたが、本日承ったばかりでございますので、正確な数字を手元に持っておらない点もございますので、現在承知している範囲内においてお答えをいたしたいと思います。  いわゆる公害犯罪と申しました場合に、狭い意味と広い意味で使われておりますが、御案内のように、最も狭い意味といたしましては、人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律という長い名称の法律、これを俗に公害罪と言っておりますが、先生の御質問の御趣旨は、この狭い公害罪についてだけではなくして、一般的にいわゆる公害といわれておる事犯の状況というふうに理解をいたしてお答えいたしたいと思いますが、そういう点から申しますと、四十六年一年間にいわゆる公害事犯として検挙いたしました件数は全国で四百八十二件でございます。この適用法令といたしましては、既存の公害関係のあらゆる法令を活用をいたして捜査、検挙をいたしております。  どういう法律があるかということでございますが、たいへんたくさんございますので、全部申し上げる時間もございませんから、二、三申し上げますと、たとえば河川法、水質資源保護法、それからへい獣処理場等に関する法律、と畜場法、港則法、砂利採取法、農薬取締法、騒音規制法、道路法、農地法、鉱山保安法、その他幾つかあるわけでございますが、ただ、先ほど御質問のございました、昨年新たにできました幾つかの公害関係の法令につきましては、仰せられましたとおり、直接検挙をしたという事例はきわめて少ないのが実情でございます。
  84. 足鹿覺

    足鹿覺君 ありはしないじゃないか。きわめてじゃなくて、ありはしないじゃないか。
  85. 本庄務

    政府委員(本庄務君) しかし、これは公害問題につきましてはきわめて専門技術的な要素が多い。したがいまして、御案内の新しい公害関係の法令に基づきまして、それぞれ所管の主務行政庁各種行政措置によって処理をしていく、改善していく、こういう措置がとられておるようでございまして、それと相まって警察で罰則を適用して成果をあげていくと、こういう考え方になっておるもので、したがいまして、その主務行政庁の措置がとられてもなおかつよくならない、刑罰法規を適用しなければ改善されないというふうな場合には、当然その刑罰法規を適用することになると思います。また、そういう主務行政庁の措置を待ってからということでなくして、並行して、まあ事案によってはいわゆる捜査権を発動しなければならぬ場合もあろうかと思いますが、主たる原則といたしましてはいま申し上げましたような考え方で臨んでおるわけでございます。  それから、一件もないと仰せられましたのは、おそらく一番最初に申し上げました狭い意味での公害罪、人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律、この違反という意味だろうと思いますが、これにつきましては、仰せのとおり、一件も現実にいままで検挙をしたのはございません。しかしこの法律は、御案内のように、「工場又は事業場における事業活動に伴って人の健康を害する物質を排出し、公衆の生命又は身体に危険を生じさせた者は、」という構成要件になっておりまして、この危険を生じさせるというのは、実害を発生させる一般的可能性のある状態というふうに普通解せられております。これは国会審議の過程においても論議されましたように、いわば公害に関する最後の切り札と申しますか、伝家の宝刀と申しますか、そういう意味に通常理解されておるようでありまして、これ以前に、以前にというのはおかしいんですが、これ以外に、御案内の大気汚染防止法、あるいは水質汚濁防止法、海洋汚染防止法、騒音規制法、その他幾つかの法令がございまして、これらによりまして、先ほど申しましたような主管行政庁の適当な措置、あるいは必要に応じて罰則の適用ということで大部分の目的を達していく。なおかつ、先ほど申しましたような構成要件を充足するような事態には、この公害罪、いわゆる狭い意味での公害罪を伝家の宝刀として抜くということであろうかと思いますが、伝家の宝刀でございますから、この伝家の宝刀をいつも抜かなければならないような事態があるとすれば、これはまことにたいへんなことでございまして、今後まあそういうものを抜かなきゃならないような事態が出てくるか出てこないか、出てこないことを希望はいたしておりますが、そういう意味におきまして、狭い意味での公害罪の適用は、いままで一件もなかったということはむしろしあわせであったのではなかろうかというふうにも解されると思うわけでございます。  それからさらに、先ほど警告件数等お話がございましたが、警告件数は、これは警察で把握しておりますが、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音、振動、地盤沈下、悪臭、こういった事案に関連いたしまして警告をいたしました数が全部で約一万五千件でございます。
  86. 足鹿覺

    足鹿覺君 あとで資料で出してください。
  87. 本庄務

    政府委員(本庄務君) はい。  それから事件になりましたものの起訴状況、あるいは判決の状況、これらにつきましては、検察庁あるいは裁判所のほうの資料でございますので、後刻それらにつきまして調べまして、資料として提出したいと思います。
  88. 足鹿覺

    足鹿覺君 私が聞いておるのは、人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律が、いわゆるざる法的な運営に堕して、かかし的な存在になりつつあるのではないか。いま審議中のこの法案にいたしましても、それがないという保証はないから、したがってきびしく伝家の宝刀、伝家の宝刀とおっしゃるが、伝家の宝刀を抜きかけたが実は抜けなかったという犯罪捜査はどのように、では行なえたか、具体的な事例を一つあげてください。ありますか。やっていないじゃないか。
  89. 本庄務

    政府委員(本庄務君) その点につきましては、いままでのところございません。
  90. 足鹿覺

    足鹿覺君 だから私は別に罪のないものをむやみに捜査をしなさいと言っておるのではありません。新聞紙上等をにぎわしております重大犯罪については、確たる証拠がない場合、別件逮捕ですね、たとえば道交法違反というようなものを行なって捜査を開始しておる事例はあるのです。いいですか。一方重大犯罪というべき公害罪というものに対する罪の意識がないからこういう状態になるのではないか。日本が世界一の公害国になり下がっておっても、企業側やその他の面に罪の意識がない。道義的にも申しわけない、こういう気持ちがないことが公害天国を招いた原因の一つであろうと私は思うのです。したがって、私は重大犯罪という認識のもとに伝家の宝刀などといって抜いてみたらさび刀だったというようなことでは困るんですよ。一件もない。捜査したこともない。では、警察法第二条、警察の責務は犯罪の予防をその責務の一つとして明確に規定しております。そこで、具体的に公害犯罪予防のためにあなた方は活動をしなければならぬ責任があると私は思う。が、あなた方自体が公害罪というものに対する認識が——きょうは警察庁長官を呼んでおるんでありますが、天皇陛下の随行で新潟においでになっているということでありますので私はやむを得ぬと思っておるんでありますが、たとえば最近海や河川に魚が浮いた、しかも大量に浮いておるという事実が新聞に発表されております。テレビでもなまなましい現実の姿を見ております。その原因は、排出された物質が工場等の事業活動に伴って排出されたかどうか、これは言うまでもないですね。たとえば先般鹿島灘で魚が大量に浮上した、これなどは茨城県知事の岩上君に対して漁民が水を一升びんに詰めて、これを飲んでみいと突きつけておる場面も御承知でしょう。したがって、知事にすらそういうきびしい住民の告発が行なわれておる。いわんやその知事の背後にある加害者である企業体は明確であるはずだ。魚が浮上するだけではなく、付近の住民が常食としておる河川の魚を食べているかどうか、こういった問題に対して本罪は成立しないから手をあげておられるのですか。あなた方はいわゆるこの法律適用の対象になるものがないかのようななまぬるい態度をとっておいでになりますが、そのようなことでは、私は、今日の世界に誇る捜査網を持つ日本の警察が、公害に対する意識がきわめて乏しいと私は指摘したい。いかがですか、その点は。
  91. 本庄務

    政府委員(本庄務君) 警察法二条に基づく警察の責務につきましては、まことに先生と全く同じ考え方でございます。先ほど私が一件もないと申しましたのは、実は公害につきましては、最初に申しましたようにいろんな法規を活用いたしまして事案処理をしていくという考え方でございます。たまたま昭和四十五年十二月二十五日の法律第百四十二号、人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律については一件も適用いたしておりませんが、いま御設例の、たとえば魚の問題につきましては、すでに六十七件検挙をいたしております。ただ、この場合の適用法令はそのときそのときの事案によりまして、毒物及び劇物取締法を適用したり、あるいは水産資源保護法を適用したりと、この法令の適用はそのときの事案の態様によって変わってくるわけでございますが、かようにまあいろんな法令を活用いたしまして、先生が御指摘になりましたような事案につきましては、警察といたしましてできる限りの努力をして対処をしておるつもりでございますが、なおいろいろとまだ不十分な点もあろうかと思います。と申しますのは、こういった特殊の技術的な要素を持った犯罪捜査と申しまするのは、一般の刑事犯罪と違いましてたいへん捜査自体が困難である、あるいは専門的な技術を要する。したがいまして、まあ捜査技能の練摩あるいは体制の整備というふうな問題もございまして、それらにつきましては目下一生懸命に体制の整備、技能の練摩をやっておりますので、さらに十分な成果をあげて国民の期待にこたえるようにやってまいりたいと、かように考えておりますので、よろしく御指導をお願いいたします。
  92. 足鹿覺

    足鹿覺君 ただいまの——何局長ですか、あなたは。
  93. 本庄務

    政府委員(本庄務君) 保安部長でございます。
  94. 足鹿覺

    足鹿覺君 保安部長か。政府委員じゃなかったのか。
  95. 本庄務

    政府委員(本庄務君) 政府委員でございます。
  96. 足鹿覺

    足鹿覺君 政府委員、そんならいい。それでですね、山中長官からは別にこの問題については御答弁承らなくてけっこうですが、いまのやりとりをお聞きになって、私は他の犯罪捜査に比べてきわめて公害というものの態様が複雑であり、原因捕捉が困難であるということを理由にして、いまだこの公害罪という法律適用、捜査も行なわれておらない、ほとんど。こういう事情はよくおわかりであると思います。これは所管大臣として警察庁等ともよく連絡をとられ、かつ法務省等とも連絡をとられて、いわゆるここへ持ち込んできたときにはこれはもう結末でありますから、いわゆるこの法律の完全適用、総合効果の上で、いま本件を審議しておるこの法律を必要としないような事態を、いかにしてそういう環境をつくり出すかということが最終目的にあるわけでありますから、そういう面からもう少し新しい公害に対するきびしい姿勢を政府全体としてとっていただきたいし、警察庁長官にしかとその旨をお伝え願いたい、よろしいですね。
  97. 岩間正男

    ○岩間正男君 議事進行。
  98. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 関連ですか。一つだけです。
  99. 岩間正男

    ○岩間正男君 一言。いまの伝家の宝刀ということばはよく公害に対する警察の態度を言い得て妙だと、ここに非常に大きな問題があるわけです。むしろ積極的にこの法律を実施して人権を守るという立場で、一昨年の暮れにあのようなわざわざ公害国会まで開いたのじゃないですか。これは国民の意思じゃなかったですか。ところが、あなたの答弁を聞いていると全部弁解に終始しているのだな。そうしてしかも、これは適用しない、できるだけ使わない、これが伝家の宝刀ということばだ。使いたくない。使われない。権力に対するあなたたちの姿勢というのははっきりわかる。したがって、当委員会の権威でこんなものはあなた、ことばを、伝家の宝刀などというああいう言い方は、断じてわれわれは許すことはできぬ。ここに参加している者の一人としてこれに許すことはできない。当委員会はそんななまぬるい公害に対する態度でやったとしたらこれは笑われる。したがって、先のことばの取り消しを命じたいと思うのだが、これはぜひ、みなさんの賛同を得たら、委員会の意思として、取り消しを私は要求します。
  100. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) ただいまの御発言に対しましては、休憩中に速記録を調べまして、委員長において必要に応じて処置いたしたいと思いますが、いかがでございますか。——本庄保安部長
  101. 本庄務

    政府委員(本庄務君) 実は私の説明のしかたがへたであったか、あるいは不十分であったために誤解を招いたのではないかと思いますが、私が伝家の宝刀ということばを使いましたのは、いわゆる公害関係する幾つかの法律がございますが、それらをひっくるめて伝家の宝刀という意味で申し上げたわけではございません。先ほども申しましたように、昭和四十五年にできました法律百四十二号につきましては、国会の審議の間におきましても世上伝家の宝刀ということばが使われておりましたので、そのことばをそのまま引用したわけでございまして、御案内のように、法律の仕組みといたしましては、大気汚染防止法、水質汚濁防止法、その他いろいろな各論的な法律がございまして、それらを十分に活用していけば、この最後の、人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律というものは適用しないで済むような仕組みになっておると、そういう意味におきまして、伝家の宝刀ということばが先般の国会審議の間にも言われておりますので、それを引用させていただいたわけでございまして、決して公害関係の犯罪全部が伝家の宝刀であるという意味ではございません。積極的に対処するということにつきましては再三申し上げて、ひとつ御理解をお願いいたしたいと思います。
  102. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 本案に対する午前中の審査はこの程度にいたします。  午後一時三十五分まで休憩いたします。    午後一時二分休憩      —————・—————    午後一時四十分開会
  103. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  公害等調整委員会設置法案を議題といたします。  御質疑のある方は順次御発言を願います。
  104. 足鹿覺

    足鹿覺君 午前中にも触れましたが、事案の迅速な処理、ひいては裁定期間の短縮の問題について伺いますが、これまで公害事件裁判の経過を見ますと、判決で終結した事件は平均三年八カ月、典型的な阿賀野川事件は一審の判決までに実に四年三カ月かかっておるわけであります。このような裁判に長時日を要する理由として、次の三つが指摘されておるようであります。一つは、裁判官の担当案件が手一ぱいであること、つまり、裁判官が手不足であるということ。二が、法律の専門家である裁判官に専門外の自然科学的知識が要求されてきたこと。三が、原告の数が多いという上に、公害事件のそれぞれが特異の性格を持っているために類型的な処理ができない、そのために膨大な証拠調べが要求されることなどがおもな理由としてあげられておるわけであります。  これらの実情にかんがみまして、今度の裁定制度では、公害専門の独立機関公害の専門家が当たられることになりますから、一と二の問題はある程度解決されると思います。問題は長官、あるいは中央公害審査委員会委員長両方に伺いますが、三の問題ですね、原告の数が多い場合、三の事由の解決に必要とされる訴訟手続の改正問題、従来の個人を中心として定められた手続の改善については手がつけられておらぬようでありますが、この点に対する具体的な措置はどのように御配慮になっておりますか、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  105. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) たとえば当事者の非常に多数な場合に、代表当事者の制度などを新たに創設しております。代表当事者の制度、当事者が非常に多数ある場合に、その中から、その事件について手続を担当するための代表当事者というのが、第四十二条の七以降に規定してございます。四十二条の七では、多数当事者がある場合に、「全員のために裁定手続における当事者となる一人又は数人を選定する」と、そういう人によってやると、それからまたその次の条文に、代表当事者の選定命令とか——もし当事者が自発的に選定しなかった場合に、委員会によって選定するとか、そういうようなのが一つの方法でございます。
  106. 足鹿覺

    足鹿覺君 現在の中央公害審査委員会は四十五年に発足をしましたね。現在の中央公害審査委員会はまだ日が浅いわけですが、四件の調停案件が申請されただけだと聞いておりますが、いずれもまだ未解決のようですね。これはどういう、現時点でどれぐらいの期間を要しておるのでありますか。今後どれぐらいの日数を要すれば実績が出るのでありますか。問題は、迅速な処理ということが裁定制度を設けたメリットの一つであると考えますので、現在の受理調停中の四件のおもなる案件名、中身、今後の、裁定を受理してからのどれぐらい短縮できるか、そういう見込みについて。
  107. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) 現在中央公害審査委員会で受理した事件は九件ございます。ただ、そのうち最初の一件は、本来中央公害審査委員会の管轄事件でなかったために、地方に移送いたしました。これは受理してからすぐに移送ですから、その直後に移送して済ましております。それから第二の事件は、これは現行法の規定に基づいて地方の審査会から中央に移送を受けた事件でございまして、これは昨年の三月、四月のちょうど境ごろ、三月の末でしたか四月の初めでしたかに移送を受けまして、そしてこれは実質的な審査に入っておりますが、一応双方の主張を聞きまして、そして争点整理をしました結果、最終的には、やはり水質汚濁の問題でございますけれども、水質汚濁の程度が漁業に影響を与える程度であったかどうかということが、すれすれの非常に微妙な問題がありまして、これは専門調査員にお願いして、その点についての専門的な調査と意見を求めております。これはたぶん今月中か、あるいは来月に入るかもしれませんが、最終的な意見が出るはずでございまして、そうすれば、それに基づいて実質的な処理が終わることになろうと思います。それからその次の事件は、これは瀬戸内海の工場排水による漁業被害の問題でございますが、これは昨年の十月に申請が出ました。申請者は一千何百人、それから相手方は七十何社という工場群でございます。これにつきましては、すぐに現地に行って視察をいたしまして、その上で何回か調停期日を開きまして、お互いにそのつど主張の不足している部分などについて補充がありましたが、最終的にはもう主張はこの程度で出尽くしているということになりまして、来月に双方から最終的な意見が出ることになっております。その意見を聞きました上で、その開きを見て、次に委員会としてさらにあっせんを進めるか、あるいは委員会自身の判断で調停案を作成して受諾を求めるか、まあそういったような段階になっております。それから第四号ないし第七号事件というのが、これが水俣の事件でございます。これは昨年の十一月、十二月、それから本年に入ってから出たのもございますが、これは同じような種類の案件でございまして、これは現地調査、それから何回かの調停委員会を開きまして、そして現在ではさらにこちらのほうの案をもっと具体化するために、必要な専門家の御意見を伺うためにその手続を進めております。これも間もなくその御意見を伺えることができるようになろうかと思いますが、いまその手続を進めております。それから第八号事件、第九号事件、これは足尾の鉱毒事件でございますが、八号のほうはことしの三月三十一日に出まして、九号は今月の十九日に出ました。これはあわせて千人近くの当事者でございますが、相手方は会社一社でございます。これはさらに引き続いて追加が出るということを予想しておりますが、これは出たばかりでございますから、この八号事件について、先日第一回調停期日を開きました。それから引き続いて、近いうちに現地を視察して実情を把握した上で、さらに自主的な調停を進めていく、そういう段階になっております。
  108. 足鹿覺

    足鹿覺君 簡単でいいですが、いまお取り扱い中のものは、本法がかりに施行した場合には、そのまま調停でまいりますか。あるいはそのものを取り下げて一たん裁定に持ち込む、こういう場合には、いままでの審査事項は続行をした上で裁定が下されると、こういう取り扱いになりますか。
  109. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) 経過的には、いままでの調停は新しい委員会ができましたら新しい委員会の調停としてそのまま続行していきます。しかし、新法が施行されてから後に、たとえ調停継続中であっても、裁定申請があればそれは裁定に入ります。そのときに、いままでの調停手続で調査したいろんな資料はそのままそっくり裁定の資料として使えます。そういうことになります。
  110. 足鹿覺

    足鹿覺君 この地方委員会の問題が、やはり声があるようです。と申しますのは、この委員会には法的な拘束力がありませんから、公害被害者から期待が寄せられるかどうか、まあやってみないとわかりませんが、先ほども申しましたように、当事者が気に入らなければ裁判に持ち込む。結局四審制というような形に実際はなるという危険性もあります。また災害が全国にまたがって多発し、地域的に特殊性を持っておりますので、現在の都道府県公害審査委員会に対して——当面公害紛争処理法所定の都道府県公害審査委員会も任意にこれを、裁定制度を持ち得ることにすべきではないか。そのことによって裁定のスピード化をやるべきではないか。ただ、能力のある地域とそうでないところがありますが、そういう道を開くべきではないかと考えますが、長官いかがですか。
  111. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) これは将来そういうことが考えられなければならない日もくるかと思います。しかしさしあたりは、地方の公害審査会と中央の公害審査委員会とは上下の機構関係はございませんし、またおっしゃるように、都道府県によって審査会の設置のしかたにも異なるものがあります。能力等もおのずから違うわけでありますが、問題は、裁定をいたしまする際には、これはやはり同じ物質、同じ症状というものに対しては同じような斉一性のある裁定が下されなければならぬと考えます。これが一般の訴訟事犯でありますれば、それぞれの地方の裁判所において一審がありましても、それが最高裁まで、三審制と申しますか、そういう立場がとられておりますために、そういう斉合性というものは補てんされておりますけれども、この場合において出発当初から地方の都道府県公害審査会に裁定権を持たせますと、その能力の問題もさりながら、そのような初めての事柄でありますし、先例等もございませんから、裁定そのもののケースが一審、二審の形もとられませんし、したがって斉合性を欠いた形になるのは好ましくない。したがって将来、中央公害審査委員会裁定が、どんどん事犯が発生して、それが処理をされていくことに従って、それらの判例とは申しませんが、処理例、先例というものが積み重なっていくことだと思います。そして将来においてそれが一審、二審の形の機構上の問題と相まって、地方において、ローカルにおいてそのような裁定まで行なっても差しつかえのない環境というようなものが醸成されれば、十分に検討に値する御意見だと考えますので、そういうことは、とりあえずこのような形で出発いたしますが、将来の問題として検討は続けてまいります。
  112. 足鹿覺

    足鹿覺君 十分御検討になりまして、もしこれに寄せられる被害者の期待がかなえられた場合には、相当この委員会は権威ある成果をあげるかもしれませんし、開店休業のような状態になる場合もなしといたしませんが、なるべく原則的に、公害そのものがある以上は、私はある程度裁定は、申請があれば実情に即して対処されることを強く要望いたします。  次には操業停止裁定等の問題についてのお考えをただしておきたいと思いますが、公害等調整委員会をつくって新たに裁定制度を取り入れても、新潟の水俣病、富山のイタイイタイ病を見ましても、地方組織の中には裁定制度がありません。したがって裁判になっておるわけでありますが、かりに被害者救済制度の見地から見ましても問題があると思うのですね。公害等調整委員会裁定申請しても、同委員会には公害の原因となっている企業活動に対して停止命令を出す権限政府提案のものにはない。しかも加害者企業が裁定を不服として訴訟に持ち込めば、被害者の苦しむ期間はいよいよ長くなる心配がある。この点は十二分に配慮すべきではないかと思いますが。  もう一点、最近の公害判決は被害者に有利な判決が出される傾向にあると私は見ております。そのため委員会の委員の人選が片寄ったり、専門委員の人選が片寄ったりいたし、また審理に時間がかかるようだと、被害者にとって裁判に直接訴えるより不利となるおそれがあると思われます。こういうことがあってはならぬと思いますが、こういう見地から、先ほども述べましたように、責任裁定のほか、操業一時停止の裁定、あるいは差しとめの裁定のかりの措置をとるべきではないか、かように思いますが、御見解いかがでありますか。
  113. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) まず初めに人選の問題ですが、これは申されるまでもなく、まず委員の人選というものは、両院の承認を得るために、国民に対して恥じないりっぱな人選をしなければならぬ、これは当然のことであります。専門委員の問題は先刻申し落としておりますが、これは法案に示すとおり、その最も厳選された委員の人たちが委員会として専門委員を選任をされまして、それに対して総理大臣が任命するという形をとっております。したがって、一方的に片寄った人たちを委員の方々が選任をされるようなことはあり得ないことであると考えますが、そのようなことがあってはなりませんので、ただいまの御忠告は十分体して出発をしなければならないと考えます。なお差しとめ命令その他の法的な行為については、これはやはり私どものほうは事件の受理をして処理を進めていくわけでありますから、それらの事柄については、やはり環境庁あるいは都道府県、そういうようなところの一般行政法規、公害法規等に照らした権限の中で行なわれていくべきものであろうと、そういうふうに考えておりますが、なお専門的な御質問でありますれば、小澤委員長のほうにお願いをしたいと思います。
  114. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) ただいまの大臣からのお答えで尽きていると思いますので、私から申し上げるのもどうかとも思いますが、この差しとめないし操業停止をなぜ認めないかという点について少しこまかく申しますと、問題点は四つばかり分けて申し上げたほうがいいかもしれませんが、まず第一点は、公害というのは広く紛争当事者、多数当事者を含めた地域住民全部の問題である。必ずしも裁定申請人だけの問題じゃなくて、広く地域住民全般の問題でありますから、ただいま大臣の申されましたように、これは公法上の一般規制の方法によるのが本来的であるということ、これが第一点でございます。  それから第二の問題点は、これは実際の機能の面から申し上げることになりますが、裁定当事者間の権利義務の関係で申しますと、それだけが裁定の問題になるわけでございますが、大体差しとめ請求ができるかどうかということは、それぞれの申請人各自のその場所、つまり公害の到達場所について判断することになりますので、かりによそのほうまでは、公害を出していても自分のほうまでは公害が届いていないということになりますというと、その届いていない申請人からの差しとめ請求というのは認めることができないということになるわけでございまして、結局一人一人別々になりますので、これは本来の解決方法としては公法上の一般規制に及ばないという点でございます。  それから第三の問題点は、かりに差しとめを認めた場合の効力の問題でございますけれども、かりに責任裁定について差しとめるという合意があったということを前提にしましても、これはすぐそのまま執行することができるわけではございませんし、強制力という点から考えるというと、やはり行政的な一般規制のほうがより実効的であるというふうに考えられます。  それから最後に四番目の点でございますが、実はこの差しとめ請求という問題は裁判所でもあまりやっておりません、例はございますけれども。実は非常にむずかしい法律上の問題がございまして、たとえば物権説とかあるいは人格権説とかそのほかいろんな根拠についての学説上の争いがありまして、それで裁判所でも必ずしもそうひんぱんにやっているわけではございませんし、そういう問題はむしろ司法権の範囲でそういう権利関係についての考え方の熟するのを待つのがむしろ適当ではないか、未熟のままで行政機関がそれにどんどん入っていくのはいかがかというような点が考えられるわけでございます。そういったような関係で、ずいぶん立案の途中では慎重に検討したのでございますけれども、最終的にはこれは認めないということになったわけでございます。
  115. 足鹿覺

    足鹿覺君 これは山中長官と委員長にお尋ねをいたしますが、この訟訴乱用の問題等にからみまして、被害者のこの弱い立場を助けるといいますか、そういう立場に立つといいますか、その味方になるといいますか、そういう運用の基本姿勢を踏まえなければならぬと私は思う。別にそれが片寄るという意味ではありませんが、そういう立場に立たないとこの運用は全きを期することができないと思う。そこで、もし裁定が下ったときには、加害者側は、つまり企業者側はできるだけ裁判へもっていこうとするだろうと思うんですね。そのために、先刻、午前中も述べましたように、裁定が裁判の前審のようなことになってしまう。迅速な解決を目ざして発足したこの制度が逆に解決を遅延させる手段になって裁判の四審というような実質的方向に行かないとも限らないわけです。そのような方向にいかないために何らかの私は歯どめの措置がほしかったと思うのですが、たとえて申しますと、裁定に従わないものに対し罰則を科することにより、その実効を確保すべきではないか。調停、仲裁が成立したときも同様とすべきではないかという意見もあるのであります。この点はいかがですか。いま問題にならなければ直ちにやることができなければ、次の課題として考えてほしい。
  116. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) 裁定に従わないときに罰則ということは確かに一つの御意見と思いますけれども、現状では、たとえば判決の場合でも、判決に従わないときに罰則が設けられているわけではございませんので、非常にむずかしい問題で、いますぐきめるわけにはいかないかと思います。  それから、一般的に裁定をすることによって訴訟上の救済の上にさらにもう一つ四審的な複雑な関係を生じないかというお尋ねでございましたが、これは裁定そのものが本来の性格からいって被害者に対する簡易迅速な救済を与えるということでございますので、これでやればこの内容が正しい限りは当事者は納得するものと思いますし、ことさらにそれに初めから従わないというものが出てくればこれはいたしかたないことでございますけれども、そういう被害者に不利益な、不当な負担をかけることのないように運用の点についても十分考慮さるべきものだと、そういうふうに考えます。
  117. 足鹿覺

    足鹿覺君 長官どうですか、これは政治家として。いまは行政官の立場ですが、政治家としての見解を承りたい。
  118. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) これは行政が司法権の前提として最終審を行なうことはできない。でありますから逆に言うと、いかなる場合でも裁判を受ける権利をこれは閉じる道は立法上は行政としてはできないわけでありますから、いま足鹿委員のおっしゃるように、そのためにこれは四審的なものになりはしないかといういわゆる裏からの御懸念というものは、私はやはり現実にはあるかもしれないと思います。しかし裁判の一審、二審、三審という形は、現在当然権利として国民が許されて持っておるわけでありますが、その前に行政がこれに拱手傍観、なすところなし、いわゆる行政上のやはり問題も、今日までの政策上の問題あるいはまたそれに対処する技術面、法律上、規制上の問題その他のものが積み重なって、やはり公害という日本において見られるような人身に対する影響まで起こるようになったことに一半の政治の責任があると私は思うのです。したがって、やはり政治すなわち実際の責任を持つ分野としての行政、その中において被害者に対する最大限の救済の迅速な措置を行なってみる、その努力が私はこの法律だと思うのです。しかし、世の中には法律を裏から読んでみる連中もいないとは限りませんから、したがってこの法律のために悪用されるというようなことは万ないように、行政の分野でありますけれども、その範囲内における最大限の努力を委員長以下運用の面においてはかっていただきたい、私もそう思います。
  119. 足鹿覺

    足鹿覺君 次に、この費用の分担でありますが、仲裁の例を見ますと、一千万円まで一万七千五百円ですか、五千万円まで七万七千五百円、一億円まで十二万七千五百円、五億円までが五十二万七千五百円、十億円までが百二万七千五百円と、こういうことになっておるわけですが、確かに一応は低く押えてあるようでありますけれども、この費用問題にはいろいろ問題をはらんでおると思うのです。民事訴訟法八十九条によりますと、民事における訴訟費用は敗訴した当事者が負担することになっておう、今度の裁定手続は民事訴訟に近い性格のもののように解釈できるんです。紛争処理法四十四条によれば、改正によって、裁定の手続に要する費用は敗訴者でなくて各当事者が負担すると、こういうことになっているんですね。それはおかしいじゃないかと思うのですが、私は。なぜならば、常識的には公害によって被害を与える者があったからこそこのような手続が必要になったのでありますから、その手続に要する費用は当然原因をつくった者、すなわち加害者が負担すべきものだと考えられます。それなのにどうして各当事者が負担することになるのか。おかしいじゃありませんか。この点はいかがですか。政府委員(川村皓章君) それではお答え申し上げます。  一応、現行法における調停または仲裁でございますけれども、これは行政上の制度としてこれが設けられた以上、できるだけこれにかかる費用は、いわば職権で調べるとか、そういう各種の処置がしてございますので、いわば裁判に比べましては国が持つほうの費用を大きくしてございますので、したがって四十四条にいうように、当事者負担という形が出てきてまいっております。具体的に申し上げますと、調停、仲裁に要する費用についていえば、現行法で参考人または鑑定人に支給する運賃、日当、宿泊料または鑑定料、もう一つ委員会に対して提出を命じられた文書、物件の提出費用、もう一つ事件担当委員または職員の出張に要する費用、事件処理のための通信料、送達料等がいわば当事者負担から除かれております。したがってこの部分が非常に大きくなっておりますので、その意味では四十四条のようなきめ方になっております。そこで四十四条の問題として、本来、敗者負担にすべきじゃないかという本質的な議論はあると思います。しかしながら、このような考え方で行政上の制度としてやる限りにおきまして、このような方針をとっておるわけでございます。
  120. 足鹿覺

    足鹿覺君 いや、私はそういうあまり詳しい中身をここで深く論議しようとは思いませんがね、公害そのものが、加害者があって被害者が出てくるんです。そこで、今度裁定という簡易な制度を活用しようというときに、この裁定の手続に要する費用は、敗訴者でなくて各当事者が負担するというのは、これは私はどうも納得がいかない。つまり理論的な解決のために被害者に負担をかけるということは、これは私は常識的な感覚からいっても、何としても納得ができない。この点は十分配慮してもらいたいと思いますし、問題は次の機会に、やはり運用されてみて……、これは問題点としてきょうは指摘しておきたいと思います。十分御検討願いたいと思います。  それから、先ほど述べましたように、費用は個人で見ますと低く押えてあるかに見えます。しかし、裁定申請手数料を仲裁の例に準じて計算をしてみますと、賠償請求額が一億円になりますと、先ほど述べましたように、十二万七千五百円、十億円だと百二万七千五百円ということになりまして、財産的な損害は、あるいは農業被害や漁業被害では、十億ぐらいの金額になることは私は珍しくないと思う。そうしますと、百二万七千五百円というものは、か弱い漁民や農民にとって、私はこれは相当負担が重いと思う。やりたいけれども費用がない。そこで減免に関する定めを施行令の十九条について見ますと、減免の対象になるのは、貧困により手数料を納付することができない者となっておりますが、「貧困により」とはどの程度の人々のことをさしますか、明らかにしていただきたい。
  121. 川村皓章

    政府委員(川村皓章君) 具体的に申し上げまして、その貧困の具体的な例は、かりに生活保護を受けている場合には全額免除でございます。それから所得税を納めていない場合には半額というかっこうになっております。
  122. 足鹿覺

    足鹿覺君 あなた、そんな事務的な答弁でいいでしょうか。それはまああなたは事務屋だからいいけれども、生活扶助を受けておる者と、所得税を納めぬ者が今日ありますか。五体まめ息災な者は生活扶助なんかを受けたくない。これはもうやむにやまれずしてそういうお気の毒な立場に立った者は、これは当然減免の対象になる。所得税を免除されておる者というものが、あなた、ありますか。
  123. 川村皓章

    政府委員(川村皓章君) 紋切り型にお答えをいたしまして失礼を申し上げましたが、具体例で申し上げまして、つい先週に、足尾鉱毒の問題で渡良瀬川の水質汚濁によりまして、結果的に農作物の被害を受けました農民の方々が具体的に申請にまいりました。その具体例で申し上げますと、八百四十二名が申請に及びましたが、そのうち、六百七十二名が所得税を納めていないということで、その半額の対象に具体的になっております。
  124. 足鹿覺

    足鹿覺君 半額にしてやった……。そうすると、今度の場合もそういう行政措置によってしんしゃくをし、減免はいま言われた生活扶助、生活困窮者と所得税免除された者以外に、そのケースによってしんしゃくをすると、こう解してよろしいですね。
  125. 川村皓章

    政府委員(川村皓章君) 具体的にケースによりましてしんしゃくするというよりも、これは一応法の規定に基づきまして、具体的には政令なり、あるいは私どもの規則によりまして、それは明らかにケースをきめまして、それに従ってこの減免の措置をとっております。実はその場合の状況を見てかってにというふうなことではございません。
  126. 足鹿覺

    足鹿覺君 だって、この施行令十九条について見ると、貧困により手数料を納付することができない者となっておるから、その貧困の範囲内を政令、省令等できめるということで——じゃあどういう基準がありますか。それを見せてください。そうしなきゃわかりませんよ。だからしんしゃくの余地を残すと、あなたは事務屋だからよろしいが、これは長官なり委員長から、運用上の一番微妙な点ですから、十分被害者の立場に立って、しかも何ら自分には過失がないのにかたわになるような病気になったり、あるいはその子供まで胎内で害を受けたり、ありとあらゆる悲劇を負わされるような立場の者が多いんですよ。そういう人たちに対して特別な減免規定を持つぐらいなことがなくして、何がほんとうの被害者救済といえますか。この点はせっかくのあなたの事務答弁ですけれども、私は納得いきません。長官または委員長から具体的に御親切な前向きな御答弁をお願いいたします。
  127. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) これはまあ所得税を免除されている者ではなくて、所得税の課税に達しない所得の人たちということだと思うんです。結果的には所得税がかかるに至っていない人たちについて配慮をしてあるということでありまして、しかしながら今度は最終的に裁定——今回は裁定あるいはまた調停等いたしまする金額の中に、訴訟に要した弁護士の費用、先ほど質問のありましたそういうもの等については、当然これは委員会の金額算定の場合に結果的にそれが含まれるような裁量をしてもらうということで、いま進んでいるわけであります。
  128. 足鹿覺

    足鹿覺君 何かはっきりしたようなしないようだな。  まあ、とにかく前向きでこの問題については被害者の立場に立ってなるべく範囲を広く弾力的な運用をすると、こういう方向であるというふうに理解してよろしゅうございますか。
  129. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) この法律がもし通りましたらできる公害等調整委員会も、国民が、いまおっしゃったような実態に苦しんでおる人たちのためにつくるわけでありますから、その運用についてただいまの御意見でありますので、今後ともさらに検討をいたします。
  130. 足鹿覺

    足鹿覺君 紛争処理の限界の問題につきまして、科学技術庁、通産省、環境庁、農林省と、一括して伺いますが、相手方が特定できない段階でも原因裁定なら申請ができるとされておりますね。法四十二条の二十八は被害者のためにきわめて有利な私は規定であろうと思います。しかし、その第三項を見ますと、相当の期間内に相手方の特定ができない場合には申請は取り下げられたものとみなされる、このようになっておるのでありますが、もしこれが、たとえば最近やかましいPCBの問題、光化学スモッグの問題、あるいは科学技術庁は解明書を、研究書を出しておりますが、魚類に大きな致命的な被害を与えます赤潮の問題、こういった問題、また柳町の騒音と鉛の被害の問題ですか。これは通産省にも特に申し上げたい。いずれも特定できない問題のように伺います。  しかし、よく自動車の問題を考えてみれば、自動車メーカーはハイオクタンのガソリンを使わなければならないような構造の自動車を頭からつくっておるんだ。通産省はそういう指導をしているんだ。そうしてハイオクタンで鉛をまぜて、そして走る自動車を頭でつくらしておるんだ。通産省来ていますか。あなた方はそういう、根本において全く企業の立場に立って、鉛公害をまき散らすようなハイオクタンのガソリンを使用するような構造の自動車をつくらしておるというならば、私はこれは明らかにそのような自動車をつくっておる企業者が特定した相手方だと、こういう論理も成り立たないことはないと思う。また赤潮にしてみましても、これは駿河湾のヘドロを私どもは何回も見ておりますが、これはもう明らかにパルプ工場の関係から起きておる。あるいは光化学スモッグの問題にしましても、十分わかっておりませんが、これはやはり自動車の排出ガスが特定な作用によって人体に被害を及ぼすような状態をかもし出す、こういうことになっておる。   〔委員長退席理事町村金五君着席〕 またこの土壌汚染の問題にしましても、昭和四十五年の十二月に、農用地の土壌汚染防止法が成立いたしましたが、有害物質はカドミウム以外に指定されておりますかどうか、その指定について作業の進行状況は一体どうか、汚染地域についての事業費予算はどうなっておるか、事業費負担法による加害者の負担金は順調に徴収されておるか等等の問題を見ますと、とにかく相手方が特定できないということはあり得ない。たとえば土壌汚染の場合は、そのメーカーにあることは間違いない、そうですね。そうしますとね、この四十二条の二十八第三項は、相当の期間内に相手方の特定ができない場合には申請は取り下げられたものとみなされることになっておりますが、この原因が解明され、事前防止が現在の科学では不可能な場合は、つまり科学的な解明が不十分で公害現象が起きる。相手方の特定は不可能だという解釈に立つんでありますか。この点はまあ非常に私どもはまだ勉強が足りませんので、どういうふうにお取り扱いになるものか、そういう人たちから裁定の申し入れがあった場合。自然災害については、それが激甚被害の場合にはこれは国の救済措置がすでに講じられておりますが、いま私が指摘したようなもので泣いておる者については全く救済の措置がない。したがって裁定に持ち込むと、特定の相手方があるかないかさだかでない、こういうきわめてむずかしい問題にぶつかってくると思いますが、この点についての御見解なり、今後の運営上の取り扱いはどうなりますか。
  131. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) 御指摘の問題、非常にむずかしい問題でございまして、しかも各いろんな方面にわたるかと思いますが、いま御指摘になりました四十二条の二十八、相手方特定留保の問題につきまして、この規定の運用がどうなるかということを三項までの全部について簡単に申し上げたいと思います。  相手方を特定しなければ裁定申請ができないということになりますと、これは被害者にとって非常に酷でございますから、本来ならこういう不特定のままの申請ということは、一般には司法の世界でも行政の世界でもないと思いますけれども、特にこの条文で、相手方を特定しないでも、その特定を留保して裁定申請をすることができるということに第一項で定めたわけでございます。  それで、ただ裁定は、やはり本来的に、加害者と被害者との間に損害賠償請求権を認めるというのが内容でございますから、最終的には特定しないというと——不特定の者との間の裁定というものはないわけでございます。だから、スタートは特定を留保して、留保したままで申請をさせるということになります。そこでそういう申請がありますと、委員会としては、まずその申請人がはたして自分の力でいつまでに特定してくるということが予定があるかどうか、それを聞きまして、そしてその予定がありますればもちろんそれを待ちますし、それから申請人にそれだけの力が十分ないときには、これは委員会自身が独自の調査でもってその相手方をさがします。そして、その調査した結果、これは相手方として何の何がし、どこの工場ということが一応認められる、そこを相手かとして手続を進めてよろしいという大体の見当がつきましたら、その場合には委員会から、第二項で相手方を特定するように命ずることになります。  そして、そういう具体的にもうわかってきてから、その相手方を特定するようにと命じたのにかかわらず、申請人のほうが何かの都合でその人間を、その工場を相手にするんだったらいやだということでなかなか特定してこない、それで、委員会として期間を定めて命じてもそれでもその工場を相手方とすることについてはどうしても承知しないで特定してこないということになりますれば、これはその相手方に対する裁定申請の意思がないことになりますので、その期間内に特定しないときには取り下げられたものとみなす、こうならざるを得ないので、第三項ができているわけでございます。   〔理事町村金五君退席、委員長着席〕  そこで、さいぜん御指摘になりました現在の科学技術をもってしても原因者を定めることができない場合はどうかという問題でございますが、これはそういう場合が相当あると思いますが、これはどうも相手方そのものがきめられないわけでございますから裁定制度にはのらない、何の何がしから被害者に対して幾らの金を払えというそういう裁定はできないわけでございまして、これは別の方法で考慮していただかなければならない。そういうふうに考えます。
  132. 足鹿覺

    足鹿覺君 通産省に、先刻の質問とあわせて具体的に伺いますが、企業の排出基準の順守とその責任の問題でありますが、企業が排出基準を守り、かつ環境基準も守られておるという場合に被害が生じたときは、一体それはだれの責任になるか、これは企業体の責任ではないと言うでしょう。ところが、現在の排出基準というものは実情より緩和した線で基準が定められておるということはこれは御案内のとおりです。したがって、これは民間企業の責任か国の責任か、環境庁にも聞きたいが、特に通産省の場合、先ほどの鉛公害の場合、自動車の排気ガスが主たる原因といわれる光化学スモッグの場合、これらの点について、科学技術庁もあわせて、どのようにこの法実施の暁における事態を想定して今後対処されようとするか、また原因解明に努力されようとするか。農林省は先ほど申し上げたとおりの問題に対しての御答弁を願いたいし、環境庁はいま述べたような点について、裁定あるいは調停、仲介の申請が、でき得る限りないことを、裁判その他がないことを、いわゆる公害の絶無の社会をわれわれは期待をしておるわけでありますから、そういう立場からもこの種のものがあまり繁盛しないことは言うまでもありません。そういう点で、まず通産省、環境庁、科学技術庁、農林省、以上関係省からそれぞれ御答弁願います。
  133. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) 先生のお尋ね、主要な点が二つございますので、最初に、この排出基準を守っておっても被害が出た場合に賠償の責任があるかどうかというお尋ねから申し上げたいと思います。  排出基準はかなりきびしい線できめられておりますので、これを守り、かつ環境基準が維持されておるという場合に、そういう排出で今後大きな被害が出るということはあまりないのではないかと考えておるわけでございますが、理論的にはやはり御指摘のようにあり得るわけでございますが、この場合には、私ども排出基準を守っておるということと、それから被害が生じ、それに対して賠償しなければいけないということは全然別個のことである、こういうふうに考えておるわけでございます。排出基準を守っておりましても、やはり被害が出た場合には、その被害に対して賠償する責任は企業の側にあるのだというように理解をいたしております。  それからその次に、自動車の鉛等の問題でございますが、確かに過去におきましていろいろな問題が起こったわけでございます。技術上のひとつの進歩がありまして、それが広く行なわれましたときに、予測しがたい公害というものが起こってくるということにつきましては、非常に私どもといたしましても今後真剣に取り組んでいかなければならない問題でございますが、やはり事実としてあるわけでございます。こういう問題については、やはり根源を断つということが基本的な問題であろうかと考えておるわけでございます。したがいまして、例で申しますと、PCB等につきましては、これは問題が明らかになりまして、最近この製造及び使用というものを一切禁止をいたすことにいたしました。ただその処理について最終的にまで責任を持てる場合であってやむを得ない場合に、ごく範囲を限って使用を認めるということにいたしたわけでございます。  それから鉛の問題につきましても、これはやはり即刻使用を中止したいわけでございますが、自動車の運行そのものに非常な障害を生ずることがやはり社会的に大きな問題になるわけでございます。四十九年の三月を期しまして鉛の使用は一切やめる。で、それに備えまして、自動車の構造そのものも、ことしの型として出ているものには鉛の全然入っていないガソリンを使えるようなものにかえるというふうなことで現在進めておるわけでございます。
  134. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 環境庁といたしましても、公害一般につきましては、一昨年の公害国会で各種公害立法が出ましたけれども、あれはすべて未然防止ということを原則にいたしましてすべての法制ができておるのでございます。  そこで、具体的な手段といたしましては、環境基準を設けまして、その環境基準を維持達成するためにきびしい排出規制を行なうというような手段で環境保全につとめておるわけでございますが、現在でも環境基準もまた排出基準も必ずしも十分なものとは考えておりません。今後いろいろ防止技術その他の発達によりまして、さらにきびしい基準に改善をしていくということを考えておるわけでございます。水準のみならず物質等につきましても、性質その他が解明され次第、環境基準、排出基準の対象に加えましてこれをきびしく規制する態度で現在研究調査を進めておるわけでございまして、十分に、たとえば土壌の環境基準とか大気につきましても、それぞれの物質について未設定の環境基準につきましては今後至急設定をいたしてまいりたい、かように考えております。  それから、一般的にやはり環境を汚染する物質につきましては、それを製造する事前の段階でこれを規制するということが望ましいわけでございます。たとえば製造された物質が廃棄物になりまして、それが環境を汚染するということのないように、でき得るならば製造を開始する前に事前にチェックをいたしまして、環境汚染がないようなことが確認されてから製造に着手するということが望ましいわけでございまして、そういうような方向で今後私どもは関係省庁と協力してまいりたいというように考えております。  それから被害に対します負担等につきましては、現在PPPということがいわれておりまして、加害者である企業が原則としてこれを全部負担をするというのが私どもの考え方でございます。もちろん現状によりましては、加害企業だけにその責任をしょわせるということも不可能な面もございます。また社会的な施設を整備するということも必要なことでございますので、国といたしましてもやはり公害の防止、またその被害の補てんのためには今後十分力を尽くしてまいりたい、かように考えております。
  135. 千葉博

    政府委員(千葉博君) 御案内のとおり、この科学技術庁は科学技術一般の総合調整を行なっておりまして、そういったような観点から、実は環境庁をバックアップいたしまして、それで私のほうの特にこの予算の面では特別研究促進調整費なるものを持っておりまして、それで緊急にこういったような環境の面で、この科学技術の振興と申しますか、そういった点の促進のためにそういったような費用を使っていま促進しております。それで、いま御指摘のとおり、こういったような環境汚染の問題につきましては、すでに環境庁ができる前に、以前から総合的な研究を促進いたしておりまして、いろいろ御指摘のございました、たとえば光化学スモッグの問題でございますが、こういった面につきましては、四十五年度から一億円ほどのお金を使いまして研究をやっております。これは関係各省の機関に、試験研究機関に研究をやっていただいておるわけでございます。自動車のこの排気ガス、そのメカニズム、スモッグになってくるそのメカニズム、特に過酸化窒素がどういうような状況で発生してくるか、こういったような点につきましてもいま鋭意研究中でございますが、御指摘のとおり、なかなかこの光化学スモッグの現象の解明がわかりません。研究室の中ではなかなかこれがつくれないというようなむずかしさがございます。しかしながら、先週はっきりしてきたのでございますが、この自動車がスピードを出すと、非常にエンジンの調子がいいと過酸化窒素が出るような状態になるというようなことが最近判明してきております。そうしますと、都心の中より外側のほうが起きる可能性が出てくるというようなことがだんだんわかってきております。こういった意味で、私のほうは、各省のプロジェクトチームをつくりまして、こういった原因の探求には鋭意努力をしておるところでございます。  それからPCBにつきましても、これは先ほど通産省のほうからお話がございましたけれども、これの原因、汚染のメカニズム、それから体に対する蓄積性、それが一体どういったメカニズムで入ってきて、それでこれがどういったような毒作用を起こしてくるか、こういったところもわかりませんし、それから実際には分析方法自体でさえわかってない。やっとこの二、三のものについての分析方法が確立されてきました。それで最近、各地方で、いろいろその方法でやりますとこんなのが出てきた、出てきたというのが出てきておるというような状態でございます。こういったものにつきましても、昨年三千七百万お金を出しまして、この研究をいまやっておる最中でございます。かように私のほうは——こういったような赤潮につきましても、これは瀬戸内海の赤潮が出た際に、先生の御指摘の赤潮でございますが、約三千万ほどのお金をかけまして、大体まあ定性的には原因がまあまあわかったというところまで持ち込んだというような状態に相なっております。今後もこういった問題につきましては環境庁をバックいたしまして、私のほうも先ほど申し上げましたように調整費を十分に活用いたしまして進めていきたい、かように考えておるわけでございます。
  136. 中村利次

    ○中村利次君 公害に基づく被害あるいは関連して公害紛争等が非常に深刻になっているところから、従来の制度を一歩進めて、公害等調整委員会を設置しようという趣旨は、これは確かに一歩前進であると思います。ところがそういう一歩前進であるという立場からこの内容をいろいろ検討いたしましても、どうもやはり問題になるようなところが数点あると思います。  まず、これは現在の制度が、調停にしてもあるいは仲裁にしても、紛争の当事者の合意に基礎を置いた解決方法であるから、したがっていろいろなやはり長短あわせ持っているわけであるから、公害等調整委員会の設置で、原因裁定あるいは責任裁定制度等を取り入れることによって、簡易迅速な解決方法を見出していくというような趣旨のようでありますけれども、とすれば、たとえば四十二条の二十にあるような、当事者に裁定書が送達された日から三十日以内に——これはどうもきわめて非迅速でありまして、控訴の問題でも判決が送達されてから二週間内に提起をしなければならないということになっているのですけれども、これを特に三十日とされた理由はどういうことなんでしょうか。
  137. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) この問題について、特に何十日でなければならないという一般の基準があるわけではございませんけれども、公害紛争につきましては、当事者が多数であるということ、それから、したがって裁定に対する態度決定について相互の間に話し合いを要するといったようなことのためには相当時間がかかるであろうといったようなこと、それから、公害裁定は内容が公害の原因などについて専門的な判断を示すことになりますが、そういうのを被害者なり当事者がよく理解するためには、普通の判決よりも時間がかかるのじゃないかといったようなことも考えまして、一応三十日としたわけでございますが、まあいろいろな例がございまして、たとえば行政処分に対して、一般の行政庁処分に対して不服のある人が裁判所にその取り消しの訴えを求めるといったときには、これはたしか三カ月の期間があったと思いますが、そんなようなものもございますし、それから、たとえば行政機関処分をしたときにそれに対して上級監督官庁に不服の申し立てをする、そういったときの考慮期間は、たしか六十日だったかと思います。まあそんなようなこともございまして、ただ公害については非常に迅速をとうとびますから、だからその点を、迅速のために特に三十日に短縮をしたといったようなわけでございます。
  138. 中村利次

    ○中村利次君 これはいろいろのやはり考え方があると思いますよ。しかしこの裁定は最終の決定じゃないわけですよ。やはり民事訴訟に持ち込むこともいわゆる司法権を侵害したものではないわけでありますから、民事訴訟に持ち込めば、控訴上告はこれは二週間なんです。どうもそこら辺に何か奇妙な感じがするのですよね。裁判に持ち込めばとにかく何千人いようと何万人いようと、関係者がですね、二週間と定められた、法律で定められたものに基づいてやはりその対応策を当然やらなければならないものですから、特にやはりここに、これは行政訴訟の問題とはおのずから事の性格からいきますと異なる異質のものだと思いますよね。とにかく不服があれば民事訴訟に持ち込めるわけですから、そういう関連を考えますと、非常に関係者が多数である、あるいは裁定そのものが多様多岐であるということだけではどうも割り切れない。そんならそういう考え方を延長していけば、しからば控訴も延ばすおつもりがあるのかどうかというところまでいっちゃうわけですから、何かもっとかちっとした、なるほどというような理由はありませんか。
  139. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) 問題の性質上、これはかちっとした線は引きにくいんでございますが、控訴上告の場合でございますと、これは同じ司法権の内部の問題でございまして、そしてしかも控訴審は一審の続審になるとかあるいは覆審の場合もございますけれども、いずれにしても前審のそのものの継続になります。ところがこの裁定と訴訟の場合には、これは全く行政権と司法権とに、異質の権力のほうにわたるわけでございますから、どうしても控訴上告のように短くすることはできない。あのように短くすると当事者の保護に欠けることがあるのではないかと、そう考えた次第でございます。
  140. 中村利次

    ○中村利次君 これはどうも非常に簡易迅速というたてまえからいって、趣旨からいってもどうもぴんとこないものがあったわけでありますけれども、これはこの程度にしておきましょう。  それから、同じやはり四十二条の二十ですね、少なくともこれは提案理由では、調停にしても仲裁にしても紛争の当事者の合意にその基礎を置いた解決方法である云々と。これはその制度を改めようというのに、「当事者間に当該責任裁定と同一の内容の合意が成立したものとみなす。」と、こういううたい方をしてあるわけですね。これはやはり三十日が妥当か二週間が妥当かは別にいたしまして、送達された日から三十日以内に提起されなければならないというやはりそういううたい方のほうがぴたっとするような気がしますけれども、やはりこの当事者の合意にその基礎を置いた解決方法からこういう裁定制度というものを取り入れておきながら、なおかつ結果としてその合意が成立したものとみなすといううたい方をなぜしなければいけないのか、いかがでしょう。
  141. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) 合意は当事者間の意思の合致でございますが、ここでいう四十二条の二十の「合意」というのは、ただそういうことばを書いただけでございまして、内容は、その裁定に定めた結果が当事者を拘束する、そういう趣旨で「合意が成立したものとみなす。」、こういうような表現をしたわけでございます。
  142. 中村利次

    ○中村利次君 それでは「合意が成立したものとみなす。」という表現と、送達された日から三十日以内に提起されなければならないという表現とはどう違って、そしてなぜ「内容の合意が成立したものとみなす。」という表現にしなければならなかったのか、その点をお伺いいたします。
  143. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) 三十日以内に訴えを提起しなければならないというふうに規定いたしました場合に、それはそれでけっこうなんですが、それにあわせて裁定の効力を、どういう内容の効力を生ずるかということをやはり規定しなければならないんでございますが、そしてこの裁定の内容について、それがどういう権利関係になるかというようなことは、これはもう裁定の内容が多種多様でございますから、それを一々個条書きの条文にするわけにもいきません。結局、三十日以内に訴えを提起しなければならないとし、しかもその裁定の効力についてはどういうふうにきめるか、これはきめなければ裁定の効力をあとで主張できませんから、きめるということになりますと、結局、その裁定に示された内容と同じ合意が当事者間に成立したものとみなすというのが、あらゆる場合を含めて全部に及びますので、一番簡潔な方法じゃないかと、そういうふうに考えたわけでございます。
  144. 中村利次

    ○中村利次君 簡潔な方法とおっしゃいますけれども、私はどうも簡潔な方法でないような気がするのですよね。損害賠償に関する訴えが提起されなければならないということになりますと、これは提起されなければ裁定に服したことになるわけですから、合意もハチの頭もないわけでございましてね、ここで合意が成立したものとみなすということでなくて、とにかく不服があれば三十日以内に提起しなければならないということになると、提起しなければ当然これは裁定に服したと、こういうことになるんでしょう。やはり私は裁判の控訴に関する法律がぴたっとこれは言い得て妙な表現をしていると思うのですよ。これはいかにも当事者の合意にその基礎を置いた解決方法そのものにまだるっこさを感じながら、なおかつこの法律でもそういうものを踏襲しようとしている意図がある、意図といいますか、何かそういう感じが相当に強く出ておるような感じがするのですがね、そういうことはありませんか。
  145. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) そういう意図は全くございません。
  146. 中村利次

    ○中村利次君 しかし、裁定というものに相当な権威を持たせようとしておるわけです。特に責任裁定の場合には、これは被害者の申請によって、そしていろいろ手段を講じて責任のあるぴたっとした答えを出してこれに服させるという、そういうたてまえですよね。そうなりますと、これはやはり「合意が成立したものとみなす。」という表現でなければどうも十分でないとする考え方がちょっと理解に苦しむのですけれどもね。
  147. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) このみなされた合意は当事者の意思には全く基礎を置いておりませんので、仰せのとおりにもう判決になると同じ内容、それではっきりきまると、そういうふうに考えております。そして合意が成立したものとみなされた結果、その裁定の内容どおりに権利関係が全部きまる、そういうふうに考えております。
  148. 中村利次

    ○中村利次君 そうすると、まあこういう表現をしたけれども、実質的にはこの「訴えが提起されなければ」は提起すべきであるという、それと同じ意味だと、こういうぐあいに解してよろしいですか。
  149. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) 結果としては同じことになろうかと思います。
  150. 中村利次

    ○中村利次君 ああ、そうですか。それではまあ……。  次に四十二条の二十六、これもやはりどうも設置の趣旨からいって、どうもすっきりしないものを感じるのですよ。第一項に「責任裁定申請があった事件について訴訟が係属するときは、受訴裁判所は、責任裁定があるまで訴訟手続を中止することができる。」とありますね。それから第二項があるわけです。むしろ、この四十二条の二十六、一項、二項から受ける感じは、二項のほうが相当重い意味を持っていて、一項で「訴訟手続を中止することができる。」という、この「できる。」ということを受けて、この「訴訟手続が中止されないときは、」「責任裁定の手続を中止することができる。」と、同じ「できる。」「できる。」ですが、二項のほうが非常に印象が強くて、その「訴訟手続が中止されないとき」には、責任裁定の手続は中止するんだという意味に受け取れるんですけれども、そうですか。
  151. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) これはむしろ一項のほうが強いんでございまして、一項のほうで訴訟手続を中止するかどうかを裁判所が裁量で決定いたします。そして、裁判所の裁量の結果、中止しないで訴訟手続を進行するんだということになったときに、初めて委員会のほうで「責任裁定の手続を中止することができる。」、そういうふうにしたわけでございます。
  152. 中村利次

    ○中村利次君 いや、そうでありますと、大体私の感じ、受け取り方と同じなんですよ。私は、それは、ちょっとどうも何か頭をかしげたくなるのですが……。むしろ、一項の「責任裁定があるまで訴訟手続を中止」しなければならないと言うほうが、この設置の趣旨からいったらぴたっとくるんですよね。どうでしょう。
  153. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) 仰せのとおりの問題がございまして、この規定は立案のときに非常に苦心した規定でございまして、手続の中止についてどちらの手続を優先させるかということをいろいろ考えまして、そして一方の手続を優先させるときにはほかのほうは中止しなければならない。そういうふうにしていろいろな場合を考えたんでございますけれども、これはどのように考えましても、それぞれ実情に合わない場合が出てまいります。それと、やはり裁判所の手続を裁定申請によって不当に訴訟引き延ばしの手段として悪用されるといったようなことがあっても困りますので、その辺の手当てもいたさなければなりませんし、この訴訟との関係で、手続の中止に関して、もし深く考えますというと、それは一カ条や二カ条では済まないわけでございますが、いろいろ考えまして、結局は裁判所の裁量と、それから裁判所で中止しないときには委員会のほうで、自分のほうで手続を中止することができるということにしようと、で、それによってこの間の調整が一番実情に合致した結果になるだろう、そういうふうに考えたわけでございます。
  154. 中村利次

    ○中村利次君 これは、どうも行政機関公害紛争に対して、迅速に、親切に、国民世論を背景として、とにかくこういうものをつくろうというわけでしょう。そうなりますと、その責任裁定がどうも悪用されるなんていうことは、これはとてもとても想像のできないことであります。これは、そうしますと、司法権を侵害するおそれがあるからこういうことになったんですか。そうじゃないですか。
  155. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) これによって司法権が侵害されるということは、これは考えません。
  156. 中村利次

    ○中村利次君 それをお考えにならないとすれば、どうも、こういうこの一項、二項のからみというのは、私はどこかやはりすっきりしないですね。とにかく、一項で「中止することができる。」ではなくて、中止しなければならないという、それくらいのはっきりしたものが当然あってしかるべきだと思うのですが、どうですか。
  157. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) ここでは「中止することができる。」としてあるのでございまして、責任裁定申請があれば裁判手続を中止しなければならないと、そういうふうになりますと、これは憲法上の司法権の限界に触れることになりますので、これは書けないだろうと思います。
  158. 中村利次

    ○中村利次君 それはおかしいですよ。憲法七十六条には、確かに「終審として裁判を行ふことができない。」ことになっておりますけれども、終審じゃないですから、むしろ三審制、四審制になりはしないかという議論すらあるようでありますから、これは決して終審じゃなくて、民事訴訟に持ち込めるあれは幾らでもある。憲法七十六条に全く合致した、中止しなければならないという表現にしても、合致した表現になると思いますが、その点違いますか。
  159. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) 私の申しましたのは、実質的な意味を申しましたので、裁判所に現に訴えを提起して訴訟を進行しているそういうときに、あとから出た責任裁定申請でもって、それを強制的に訴訟手続を中止させるというのは、実質的にはやはり国民の訴えを、裁判を受ける権利に対する実質的な制約になるのでございますので、これはやはり適当ではない、そういうふうに思うわけでございます。
  160. 中村利次

    ○中村利次君 ははあ、そうしますと、これはあと先の問題がからんでいるわけですか。もうちょっとそこを詳しくひとつ……。
  161. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) これは、第一項にありますとおりに、「責任裁定申請があった事件について訴訟が」すでに係属しているときには「受訴裁判所は、責任裁定があるまで訴訟手続を中止することができる。」直接的にはそこのところを規定しております。
  162. 中村利次

    ○中村利次君 「訴訟が係属するときは、」というのは、訴訟がすでに係属しているときはというふうに解釈してよろしいということですね、それでは。これは責任裁定申請をやった、あるいは同時に、あるいはその後訴訟が係属することもあり得るわけでしょう。ですから、これはそういうことをさすんじゃなくて、先に訴訟を起こしておいて、そして「訴訟が係属するときは、」というのは、訴訟がすでに係属していると、こういう解釈をしていいということですか。
  163. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) いや、第一項の一番普通の場合は、訴訟が係属中に責任裁定申請があった事件について、現にその前に訴訟が係属しているときにはというふうに普通は読めるのでございますけれども、それはおっしゃいますように、厳格に言いますれば、必ずしもその前後は問わないだろうと思います。
  164. 中村利次

    ○中村利次君 困りましたな、これは。やはり前後は問わないでこのあれを生かしたいということですか。それとも、政府の答弁の中で、これはこういうことなんだから、やはり責任裁定についてはこれは権威を持たせるんだという、そういう解釈の答弁ができるのですか、それともできないのですか。
  165. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) 先ほども申しましたように、私人がこの訴えを提起する権利は持っておる、裁判を受ける権利は持っておるわけでございますから、それについて責任裁定申請によってそれをかれこれすることはなるべく避けたいということの考え方が一つございます。  それから、この第一項の規定は、もともとここにありますように、受訴裁判所自身の裁量できめる問題でございまして、受訴裁判所の裁量できめることは、これは本来もういたしかたないこと、それを制約するという規定をつくることは非常にむずかしいんじゃないか、そういうふうに思います。
  166. 中村利次

    ○中村利次君 そんなことはないでしょう。行政機関は、終審でない裁判は行なうことができるんですよ。ですから、これは私は一向差しつかえないと思います。こういう前進したものの機関をこさえよういうときには、どうもそういうへっぴり腰の解釈というのは、これはやはりあまり好ましくないと思いますし、それから何といいますか、国民の訴訟の権利を侵害するなんというのは、そんなことはこれは全くどうも私はないんで、少なくとも責任裁定の申告をしようというからには、そこに相当な期待と信頼を求めて訴訟をするわけです。ですから、何かの都合で、それはどうも信頼感が薄れたとか何とかで、たとえば忌避条項もありますけれども、調停委員会でありますけれども、それが訴訟に持ち込むということもそれはないとは言えない。しかしそういうものは、やはり責任裁定の責任を持って、こうしてやろうという制度をつくるときに、何か弱腰の、あっちを見たりこっちを見たりするような表現ではいかにもどうも責任の甘さがあるというふうな感じがするんですよ。もっとぴたっとした御答弁がありませんか。
  167. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) 決して御懸念のような態度で立案されたのじゃございませんで、ただ、二つの手続が並行したときに、これをそのまま両方を並行させるということでは非常に不都合が起きるということは、これは明らかだろうと思います。そこで、その調整をどうするかということをいろいろ考えますと、結局こういうことになるのじゃないか。これが一番いい弾力的な、しかも裁定手続を生かす道ではないか、そういうふうに考えております。
  168. 中村利次

    ○中村利次君 どうもすっきりしませんけれども、次に移りますけれども、四十二条の十二の二項。これはもうずいぶん指摘をされたところでありますから、ここで再確認の必要はないでしょうけれども、これを逆に、被害の程度が軽微でなく、かつその範囲が限られていない、相当の被害が出た、これは先ほどの質問にも出ておりましたけれども、通産省からでしたか、どうも現在の科学技術陣を動員をして、認定をしようとしてもできないこともあるんだ、そういうのは、やはりこれはこの裁定にはのらないんだということでしたけれども、同時にやはり現在の科学技術陣を動員してやっても特定の、いわゆるこれが加害があるという認定ができない場合もこれはあり得るわけですけれども、これはやはり裁定にのらないということになりますね、あの答弁からしますと。それでは、国または地方自治体の監督上、これも先ほど質問がちょっと出ていたようですけれども、故意または重大な過失があって、共同不法行為と認定されることがあり得るのかどうか、こういう点はどうでしょうか。
  169. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) それぞれの事案によって考えなければならないと思いますが、理論的には、国または地方公共団体が共同不法行為者になるということも絶無ではないと思います。
  170. 中村利次

    ○中村利次君 そうしますと、そのときには当然賠償責任は国または地方自治体にあるということになるわけですね。
  171. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) さようでございます。
  172. 中村利次

    ○中村利次君 裁定の確定、裁定が三十日以内に不服の申し立てもしないで、両者の合意をしたものとみなされたあと、実際の賠償責任の不履行の場合ですね。一部にはありますけれども、不履行の場合は、どういう措置が講じられておりますか。
  173. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) 責任裁定が合意の効力を生じてきた後、その内容を履行しなかったときには、これはその履行を求めるために裁判所に訴えを起こすことができます。そして裁判所に訴えを起こした場合には、裁判所は、はたしてそれが公害であるかどうか、あるいは賠償責任の原因と責任との間に結びつきがあるかないか、そういうことの判断は一切なさらないで、双方間にこういう合意が成立しているものとみなされているというそれだけの理由で、合意の履行を求めるということになります。
  174. 中村利次

    ○中村利次君 賠償能力がない場合にはどうなりますか。これは先ほどの通産省の答弁によりますと、しようがないんだ、たとえば、現在の科学技術陣を動員いたしましてもどうしてもわからない場合には裁定にはのらないんだというお答えでしたが、賠償能力がないという場合にも、やはりやむを得ないんだということになりますか。
  175. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) この問題は、実はやはりこの公害等調整委員会が発足し、裁定行為が行なわれ始めて、そしてその後に被害を受けた国民が、幸いにして公害等調整委員会によって納得できる妥当な裁定を受けたとします。そのあとに残る現実の問題として、はたしてそれが確実に支払われて、一応被害がもとへ返らずとも、国のあり方について、政治行政のあり方について納得をするということが大事であります。問題は、そこで、これを悪意ではなくして、裁定を受けた結果、それには合意が成立したと同様にしたがった、しかしながら、自分にはさかさに振っても能力がないという問題がなしとしないと私は思います。水質汚濁とか大気汚染ばかりでありますと、これは大体において企業と一般地域住民というケースにはっきり出ると思いますが、そうでない典型公害の一般のものを全部受理いたしますと、ままそういうことも起こりがちだし、零細企業等において、そういうことが想像できないわけでもありません。私は交通安全の責任者でもありますが、交通事故についての追跡調査をいろいろいたしておりますが、やはり判決と申しますか、交通事故の加害者はこれだけ払いなさいということは一応きまっておりましても、本人が払えない、あるいは場合によっては払えないことを苦にして加害者が自殺した例等もあります。このことは非常に大きな問題です。しかしながら、この公害というものは、さらに交通事故よりももっと大きな政治上あるいは行政上の、場合によっては国もそういう事態に立ち至ったことに対する責任を感じなければならない社会的な問題だと思います。  そこで一方に、いま民間からともなく、あるいは政府サイドからともなく、国会からともなく、いろいろいわれておりますことに、そのような場合にあらかじめ対処しておくために、公害賠償支払い基金みたいなものをつくったらどうかという意見等があるようであります。これはその主張する側によっていろいろと、いやそれに対しては国庫の補助、出資等をしてもらいたいという意見もあるようでありますが、これはやはりいま全地球的な問題として、国際的にも議論がされておりまする大原則に、PPP、すなわち汚染者がその償いは自分で払うという原則等から考えますと、なかなかそう簡単にもまいらぬだろうと思いますが、いずれにしても、そのような高度の政治的な社会的な判断の上に立って、自分はいま加害者ではない企業であっても、少なくとも他日あるいはいつかなり得るかもしれないというようなことは、少なくとも企業活動においてみんなが感じなければならない時代になっておりますから、そういう企業、民間が集まりまして、不測の場合において、お互いのそういう事実上の危険を保険的にかけておくというようなこと等について、やはり私は相当議論し、検討がなされなければならぬと考えます。この点は、この法律が通りました後、やはり一番大きな問題として、今後さらに裁定したあとの追跡調査その他のものがなされなければならない問題点の一つであろうと、私も考えております。
  176. 中村利次

    ○中村利次君 非常にいい答弁をいただきました。これは、私は公害を憎むというのは、これはもう国民世論でありますから、したがって、これはもう公害は絶対に憎まなければいけないし、なくさなければいけない。公害の被害者に対する救済あるいは措置というものはどうやってもやり過ぎるということはない。非常にこれは取り上げやすいし、やりいいのですね。国民世論も必ずこれを支持してくださる。ところが、私は特に、この零細のみじゃなくて、中小企業、おびただしい中小企業が公害発生源に相当なっていることも、これは事実ですよね。幾ら何とか言ったってこれは事実ですよ。そうなりますと、支払い能力の、賠償能力の認定ですね。これは倒産をしても、つぶしてしまっても加害者負担なんだというようなことで——これは裁判ならそれでけっこうですよ。判決ならこれは冷酷であってもいい。しかし、少なくとも行政でやろうというのは、これは政治——何といいますかね、零細企業、中小企業、かわいそうな人たちで、公害は憎むべきだけれども、そういうものを流している者は倒産しても省みないのだと、賠償はばっちりやらせるのだという、そういうことで割り切っていいものかどうか。賠償能力の限界といいますか、認定といいますか、そういりものを含めて、相当大きな、重大な問題だと思いますが、そういう点はいかがでしょうか。
  177. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) これは全く意見の対立はありませんで、私どもも、この法律ができ、委員会ができ、そして裁定行為が行なわれ始めたときに、その次に来たる問題は——もちろん裁判にも移行しないで、逃げ延びもしないで、悪びれずその裁定に服従したという人であっても、さて実際に支払い能力ありやということになりますと、倒産どころか、一家夜逃げをしなければならないという状態の、たとえば一時騒がれましたメッキ工場等、ほとんど中小企業でありますから、そういうようなことを考えますと、この問題はやはり国も何らかの形でもって、そのような予測される物質、あるいは物質に関係のある物品等の製造者、そういうもの等には呼びかけを国のほうもいたしながら、かと言って、やはり自分たちは複合汚染であって、たぶん犯人としてつかまることはないだろうというような考え方でおりますような、どっちかというと大企業、そういう人たちも、これをやっぱり無視してはならないことであって、きょうは人の身、あすはわが身、やはり全部で、国民のだれにも迷惑をかけない企業活動のあり方ということに対して、良心的な、社会的な責めを果たしていくということであれば、私はこの問題は、そういう側からも、若干のニュアンスの差はありますが、そのような対応策をしておく必要があるという声が出ておるようでありますから、こういうものができますことを、この法律の運用に当たって私としても希望する、そういう気持ちであります。
  178. 中村利次

    ○中村利次君 そうしますと、やはり政府も、金を出すことに場合によってはやぶさかでないということ、こういうぐあいに解釈してよろしゅうございますね。
  179. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) そこまで問い詰められますと、ちょっと——私はいま公害担当大臣というわけではありません。環境庁ができております。環境庁の姿勢というものがどういう姿勢を示すでありましょうか、それは私の立場でちょっと介入できないんですが、しかし、私が先ほど申しましたのは、いまグローバルの問題として、国際間でやはりPPPの原則というものに立とうじゃないか。日本等の輸出品については、それらが、国がどうも目こぼしをしておるために、公害防止をやらないで、ダンピング可能な価格でもってなぐり込みをかけているやの批評も、ここ一両年前にございました。こういうようなことを考えますと、まず企業自身がみずからの社会的モラル、社会的な自分たちの存在の意義というものに対して答えを出していくという姿勢が先であろうと思います。それに対して国のほうが、場合によっては、公害防止事業費事業者負担法等に見られましたごとく、正当な、筋の通る範囲でありますならば、先ほど冒頭に申しましたとおり、国家的な責めもこれにある程度あるという自覚をもって、あるいは場合によっては、反省のもとに、そういうことに協力をする必要があるかもしれませんけれども、原則は、やはり国際的な常識に日本だけが逆行するという姿勢から出発するわけにはいかぬであろう。これは私の立場ではありませんけれども、一応、本法案を提出した立場としては、そういう気持ちでおります。
  180. 中村利次

    ○中村利次君 これはやはり何も観念的にいう政治の責任だとか、国の責任だとかいうことじゃなくて、いままでに、やはり戦後の経済成長の歴史、過程、そういうものを考えますと、国の反省と、やる責任というものは、当然これに伴ってくると思うのですね。と同時に、これは、いまのことは環境庁にも同じことをお伺いしたいんですけれども、同時に、これからの問題ですね、これはたとえば中小企業なんかが、公害が憎まれて、これはとんでもないことになるということは承知の上で、なおかつ、やはり製造するためには、どうも少しぐらい悪いことでも、ごまかしてでもというものが——私はここでこういう議論をするのが当を得ているのかどうか知らぬけれども、これは、ないとは断言できないと思う。そういうものを、やはり、これは科学技術等を動員をして、そして何かどうも、国が負担するのはやはり国際慣行からいって好ましくないというような御意見もございましたけれども、しかし、私は国民的課題であるその公害をなくするという点については、国がどれだけの役割りを果たすかということは、これは私はもうやはり当然国も考えてしかるべきことでありまして、とにかく、特に私はこの中小企業、零細企業が、公害は絶対に許すまじという当然の国民世論の前につぶされ、埋没される危険、どうしてもこれは公害をなくする以外にはないんですよ、あるいは、少なくしていく以外にはない。これは国の施策としての、私は政治としてのそういう措置、方法というものが当然とられなければならないと思うのですけれども、ここで具体的に一々羅列することはよしますが、どうでしょう、環境庁、お見えになっていますか。そういう将来の問題を含めて、ひとつ……。
  181. 船後正道

    政府委員(船後正道君) ただいま環境庁では、別途、大気及び水質に関する、人の健康被害につきましての、いわゆる無過失責任法、これを国会で御審議を願っております。この無過失立法に関連いたしまして、やはり同様、何らかの賠償措置制度必要性というものが痛感されております。過去の例に徴しましても、たとえば鉱業法におきましては「担保の供託」という制度がございますし、自動車につきましては自賠責法、あるいは労働基準法対労働災害保険法というようなことでもって、無過失責任に対しましては、加害者側の責任が過重される反面、そういった危険負担というものをどのように経済的、合理的に配分していくかという行政的な仕組みがくふうされておるわけでございます。  ところで、私ども公害被害を考えました場合に、制度のたて方といたしまして、個々の損害賠償債務というものを前提といたしまして、この履行の担保を確保する、あるいは負担の危険を分散するというような制度、あるいはまた、この環境汚染というものを考えまして、環境汚染に対する寄与者と、これによる被害者というものとの間に合理的なる調整をはかるというような考え方に立つこともできるわけでございます。どのような考え方に従ってわれわれが今後新しい制度を打ち立てていくか、非常にむずかしい問題がございまして、環境の汚染と申しましても、原因がかなり過去に発生しておるとか、あるいは原因者はすでにもう存在しないとかいうような要素もあるわけでございます。そういったあたりから公共負担というものの必要性というものも議論されてくるわけでございます。非常に技術的にむずかしい問題がございますので、現在、中央公害対策審議会に費用負担に関する特別部会を設けまして、この損害賠償措置に関する制度の問題について各方面の学識経験者を集めて御検討をお願いしておるところでございます。その制度に、ただいま御審議中のこの仲裁裁定制度といったものによる損害賠償債務をどのように考えていくか、これも大きな課題であろうと考えております。
  182. 中村利次

    ○中村利次君 それは無過失責任制度、大いにけっこうでしょう。しかし私がここで言っているのは——そういう法律でもって公害をなくしていくことも一つの方法であることは、これは否定できませんよ。しかし、たとえば国で何か公害をなくするためにやることはないのかということになりますと、いままでやらなければいけなかった、あるいは現在も将来もやらなければならないことが一ぱい私はあると思うんですよね。たとえば水質汚濁にしても大気汚染にしても、これは無過失責任を追及して賠償させる、罰する、それだけで、はたしてそれじゃ公害がなくなるのか。たとえばあわれな中小企業、零細企業なんかは、私に言わせると、やはりちゃんとした、水質汚染のごときは下水道設備を完備をして化学処理をぴしっとできるような、そういうものにすれば、これは水質汚濁だって軽くなることは間違いない。大気汚染にしたって、いまの、あんた、大気汚染の対策なんかを見てごらんなさい。とにかくそれは、月に人間が行くようになって、まことに幼稚でしょう、まだ。こういうものを、やはり法律をつくったり企業の行政指導だけで、大企業はまだ私はそういうものに対するいわゆる対応能力なんというものはやらせればあると思いますけれども、零細、中小のごときは、全くそれはあわれな、何かこう加害者保護みたいなことを言うような感じがあってはこれは困りますけれども、そうではなくて、やはり国民の健康は何としてもそこねてはならないという立場からして、そういうものをやはり考えるだけじゃなくて行動に移す対処をしていかなければならないんではないかと思うんですよ。この公害等の調整委員会の設置に伴って、そういうことをやはりお考えになっておるかどうかですね、構想として。
  183. 船後正道

    政府委員(船後正道君) 私の説明がことば足らずであったかと思いますが、現在、中央公害対策審議会に費用負担に関する特別部会を設けまして、公害にかかわる損害賠償をいかにして合理的かつ共同的に処理し得るかという問題につきまして、先生御指摘のような問題点も含めまして検討いたしておるところでございます。
  184. 岩間正男

    ○岩間正男君 時間の関係から重複を避けてお聞きしますから、端的にお答え願いたいと思います。  まずお聞きしたいのは、これは、現行の公害紛争処理法ですね、これがさらにこういうふうな改正になるんだと思うんですが、そうすると、現行法と比べて改善された、そういう諸点はどういうところにありますか。
  185. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) まず、基本的な問題を申し上げて御質問を待ちたいと思いますが、一番私が決断をするに至りました大きな要素は、いままで調停、仲裁だけでありましたし、それは当時者間の合意を前提といたしておりますから、そこにやはり合意し得ざるものが公害の被害については多いということ、また、しかもその中で原因と因果関係を定めることがきわめて困難な作業が多いし、できれば金額等も、裁判に移行して年月を要するよりも、行政機関としてこれを最終的に定める方法はないものか。そのためには、国会の附帯決議等で、まずこの中央公害審査委員会というものをはっきりと三条機関として、政党、政治、行政の介入の及ばない独立の機関にしなさい、そして、裁定権を与えなさいという附帯決議が衆参両院でありましたことが私自身の検討と決断の要素の大きな一つであります。したがってそれらの点を踏まえて、今回新たに三条機関に移行せしめて裁定権を与える、そして、原因裁定と責任裁定の両裁定を行なうということにいたしましたことが一番大きな国民の側から見てのメリットであると私は考えている次第であります。
  186. 岩間正男

    ○岩間正男君 われわれは現行法が制定されるとき反対した。反対理由はいろいろありますが、一つは委員の任命ですね。それがまあ国会の承認を得るということになっているけれども、これははたしてほんとうに国民の立場に立っているか。結局は政府の代弁機関みたいなことになっているのではないか。  第二の問題は、費用の分担の問題、これは今度の法案でも何ら解決を見ていない。  第三に、これは基地公害ですね。基地の問題はこの裁定の対象にしていないわけですね。この点は依然として同じなんです。これは最初からそうだったのですか。発案の当時、これを入れる、そういう考えがなかったのですか。何か自民党内のこれに対する強引な反対があって、これは、基地公害は抜いたというふうに聞いておりますが、この間の事情はどういうことになっておりますか。これは防衛庁長官。
  187. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) 公害基本法がつくられました当初のときに、昭和四十二年、どのような議論があったかは、私、関係大臣でもありませんでしたのでわかりません。しかし今回この法律をつくりますにあたって、防衛庁との間に、もしくは党のそれぞれの関係者との間に、防衛施設あるいは米軍に安保条約で提供している施設等の、公害といわれる各種地域住民に対する影響を取り入れる、あるいは取り入れることには反対だとか賛成だとかいう意見は、これは全くありませんでした。そのような問題提起もいたしておりません。したがって、なぜしなかったかといえば、すでに公害基本法でも、それをまず、防衛庁たるものがみずから国民のために、これは国自身として公害を出してはならない責任がありますから、そしてまた、安保条約に従って提供している米軍の施設であっても、これもまた国家の施設としての責任として、国民に対してその公害を出してはならない、出した場合には国の責任でそれは処理しなければならないという一義的な義務を負っているということが、まずほかの公害事犯と異なるものでありますし、また防衛庁は、国民の理解と協力、なかんずくその地域周辺住民の理解と協力がなくては、反感と反発というものの中ではとてもその主目的を、存在目的を果たすことは困難である。そういう性格から考えましても、防衛庁自身が、基地周辺整備その他の法律を例にとるまでもなく、みずからそれらの苦情等に処理すべき法律も予算も持っておりますので、その運用が全きを得ることが防衛庁自身のためであり、政府の果たさなければならない義務でありますから、防衛庁はみずからこれを完ぺきに果たすであろうということのもとに、防衛庁のあり方を私たちは信頼をして——政府でありますから——したがって今回の法律の中に防衛庁並びにそれに関する施設についての公害の対象としては取り入れていないということであります。
  188. 岩間正男

    ○岩間正男君 防衛庁長官は……。これは総務長官に聞いたってわからないし……。これは実際国民のそういう基地公害がいまの防衛庁のやり方でほんとうに払拭されていると思いますか。そうじゃないんだ。たくさんこれは公害起こってるんです。依然として続いてるんです。ところが、この問題を私は切り離して、いまのような説明は一応ある。同時に、なおかつこれは訴訟の対象にしたっていいんじゃないか、そういうことで、もっとやはり何と言いますかな、とにかく自衛隊の基地の公害、さらにまあ米軍の公害は全く今日ひどくなってきている。ことにベトナム戦争の激化の中では、ひんぴんとしてそういう訴えが出てきているわけでしょう。こういうものを当面やはりその中で取り上げるという、そういうやり方で私は当然いいんだと思う。ところがこれは除去している。排除している。ここだけはなぜ一体抜いたのか。それらにふさわしいだけの措置をやっているかというとそうではない。そこで私は、これは具体的にお聞きしたいんだが、いないんだね、相手が。困るんだ、施設部長じゃしようがないよ。そう言っちゃ悪いけれども、何しろ国策に関する問題だからね。代表して答えられますか。——時間の関係ありますから、待ってもしようがないから、来てからにこの問題は保留しておきます。  それじゃお聞きしますが、そういうかっこうで、今度の問題はいま言ったような問題——委員の民主的な選定の問題、あるいは費用負担の問題、あるいは基地公害に対する除外の問題、こういうものは何ら解決されていない、そのままこれは継続されていると、こういう点はこれは認めなくてはならない。  それから、先ほど長官の説明の中で、今度の法案の最も特徴的なところは、これは三条機関にしたと、そして相当な権力を与えて、これによって裁定をやる、こういうことだって言うんですね。そうような点をいま指摘されたわけでありますが、そんならこれ、徹底的にもっとやるなら、根本から公害をやはり防止するための差しとめ裁定というものはこれは含まれていないわけです。これはなぜやらなかったんです。
  189. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) いま、さいぜんも御説明があったんでございますが、差しとめそのものはその根拠についていろいろ説がまだ分かれておりまして、ほんとうに学問的に、法律的には定着した概念ではないように思います。ある場合には差しとめ請求ができますけれども、ここで問題にされている公害源に対して差しとめ請求をするということが、それが各被害者ごとに別々に差しとめ請求するということの、その法律構成が必ずしもはっきり定着しているところではないのでございまして、現に裁判例も比較的少のうございますし、そして、しかもそれが逐次いま変化しつつあるような現状でございますから、この際は、それを行政機関が取り上げてやるというよりも、もう少し裁判所の判例などの定着するのを待つのがいいのじゃないかというのが一つと、それから、もともと公害そのものが一般的に地域住民全般に大きな影響を及ぼす社会的、公共的な問題でございまして、それを抜本的に解決する方法としては公法上の規制が一番適切であるということ、それから、さらに実際の裁定の機能の面から申しまして、司法上の差しとめができるかどうかということは、それぞれ各申請人の所在する場所にその公害が到達するかどうかというそのことできまるのでございまして、したがって、公害源が一つであって、それをすべての請求人が一律に全部差しとめさせるかさせないかということをきめることができないのであります。各人ごとに、そこのところに公害が及んでおれば差しとめ請求が成り立つし、及んでいなければ、実際にほかの人たちには公害が及んでいても申請人に対しては、申請人の申請による差しとめはこれを認めることができないと、個々ばらばらになるのでございまして、こういうのはやはり問題の根本的解決にはならない。その意味では、やはり公法上の規制が最も適当なものと考えられますので、特にこの際は差しとめは入れなかったわけでございます。
  190. 岩間正男

    ○岩間正男君 だれが聞いても苦しい御答弁ですね。そうとしか言い得ません。これは差しとめるというだけの根拠があって、それで、それを取り上げるかどうかというのは、あなた方の判断も加わるでしょう。それだけの必要もある。そういうものは幾つもあるのです。全部差しとめたというわけじゃないから、当然それだけの必要があるのは、これはそれに基づく行政措置でもって差しとめることもできる。そういうような問題で非常に不徹底ですよ。結局はネコの首に鈴をつけるのがこわいのだ。そういうようなこの法案の性格になっています、どうしても。結局差しさわりがあるのだ、差しとめということを強行するのなら。しかし、そこまでいかなければこれは徹底していないと言われてもしようがない。この法案の、もしもほんとうにあくまでも人命を優先するという、そうして企業のそのような加害者の責任ははっきり明確にされる、そうして、これほどもうほんとうに、ことに運命的にさえなったこういう公害に対決するという姿勢をとるのだったら、やはりその問題が抜けたらこれは画竜点睛を欠くことになる。だから、いまいろいろな点からあげられました。非常に私は苦しいこれは御弁解だと思うのです。  その次にお聞きしたいのですが、原因裁定について、加害者のこれは申請を認めることによって、この前、これは私は関連質問でお聞きしたのですが、これは一方で責任裁定をやっている。そこに加害者が今度は原因裁定申請して、それを受理した。どういうふうにこれは運用することになるのですか。どうもこの前の説明ではわからない。もう一ぺんここを明らかにしてください。具体的にどういう運用をするのかね、委員会が。
  191. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) 責任裁定申請がございますと、一体言われているような公害の原因があったかないかを調べまして、そうして原因があったということになれば、責任の限度である支払うべき金額をきめるという順序になりますので、審理の順序は、まず原因があったかないかということになります。ところで、その途中で加害者から原因裁定申請があった。これは加害者からあっても被害者からあってもどっちでも同じことでございますけれども、途中で原因裁定申請がありますれば、その責任裁定申請の段階で調べていた程度に応じまして、原因があったということになれば原因裁定でその旨の裁定をいたしますし、それから責任裁定の段階で原因がないんだという結論になってしまえば、これは両方ともその趣旨裁定をいたします。両方の手続は全部一つでございまして、原因があったかないかという問題は二つにはなりませんので、たとえ原因裁定申請があってもなくても、審理する対象は全く一つでございますから、手続も合体してそのままで結論を出すことになります。
  192. 岩間正男

    ○岩間正男君 二つの事務を一つの中で合同して行なうと、こういうことになるわけですか。
  193. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) そのとおりでございます。
  194. 岩間正男

    ○岩間正男君 ところで、責任裁定が進行する、そうしてもうはっきりこの結果が出そうだ、おい待ったというので加害者がこれは原因裁定申請をする。それによって審理が相当長引く、あるいは横からいろいろな声が入らないという保証はない。こういうことは十分予測されることです。力関係なんです。力関係ですよ。一方は非常に弱い被害者の立場で、何人これは団結したって、結局はこの対象はあなたのほうで、最後には、全体できまらないときには、これはきめることになるわけでしょう。ところが加害者のほうは、これは非常にまず強力なのが多いわけだ。そういうことで、力関係でこれはどうなるかという問題です。結局は被害者が団結をしてこういう運動も起こして、そういう力の中で結局はこの問題を、どうしても公害をなくす、命を守る戦いをするのに対して、これは一つの圧力になったり妨害になるということは十分に予想される。もし私の考えが杞憂にすぎないんなら、それをさせないという歯どめの保証をはっきりここで明らかにしてほしいです。
  195. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) 御質問の前提が、責任裁定の手続でもう原因があることがわかったと、ところがその段階で加害者から原因裁定申請があるというと、これはまた問題がその問題に集中されてしまって、いつまでたっても責任裁定がなされないことになるんじゃないかという、そういう御質問のように理解したのでございますが、もしそういうことでございましたら、実はその前提は私どもの考えるのとちょっと違いますので、私どもの考えているのは、責任裁定の段階で原因があるということがわかれば、もうその問題はそれで済んでしまったので、あとは損害額だけの問題でございます。その損害額だけを調べている段階で、かりに加害者からでも被害者からでも原因裁定申請があれば、これはもうすでにわかっている原因関係をすぐ原因裁定の形で出すだけでございまして、もうわかっているものについてもう一ぺんこれがわからなくなるということは、これは考えられないのでございます。
  196. 岩間正男

    ○岩間正男君 あなたの答弁も仮定の上に立っている、わかればという……。わからない場合はどうする。
  197. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) 責任裁定の段階で原因がまだわからないときには、やはり原因がわかるまで審理を続けます。ですから、もしその原因がわからないままで原因がわかるまで審理を続けている、その途中に原因裁定申請がどちらからかありますれば、これはそれも承っておいて、その責任裁定についての原因の審査をそのまま続けることになります。
  198. 岩間正男

    ○岩間正男君 それぐらいの扱いなら、この法案にも二つわざわざ区別してはっきり書いておく、そういうことにならぬじゃないですか。これは実際の運営はそういうふうにはいかぬですよ。そんなすらすらあなたが御答弁なさるように、そういうふうにはいかぬですよ、これは。そうして非常に影響を持ちますよ。いままでの前例が示しているんですよ。そういうことをあなたたちは予測されないかもしらぬけれども、これは私たちはもういろいろなそういう実際の動きに接しているのだ。だからそういう点について、この原因裁定の問題というのは非常にやっぱり問題を含んでいると考えざるを得ないですね。そうしてこの運用のしかたについても、おそらくそんなにこの委員会の構成が、六人の委員、専門委員が何人いるか知りませんけれども、件数はたくさんある。そういう中で、巨大産業が動いてきて原因裁定申請した、そういう中で一体、日本のいまの政治の実態から見たらどうです。力関係から見たらどうです。そういうことをやすやすと答弁しておりますが、そんなことは通りませんよ。その点は私たちは非常に心配しているところなんです。だから、この前からこの問題をやはりもっと明確にしなきゃならぬということを言っているんです。しかしこれに対してほんとうにこたえる答弁にはなっていないんじゃないかと思う。  それからさらにですね、これはまあ最後に、代表当事者をきめることができない、そのときに、委員会が職権でこれはきめると、それから申請事項以外の事項についても裁定でこれはきめる、こういうことになるというと、やはり被害者をほんとうに守り切れるかどうかという問題が一つあります。  それからもう一つの問題は、裁判との関係です。裁判との関係ですが、これはどっちをとるか、訴訟をとるか裁定をとるかというのは、これは結局はそのときの当事者の考えによってこれはきまるわけですね。裁量によってこれはきまるわけでしょう。被害者の意思によってきまるんですか。申請者の意思によってきまるんですか。これはどうなります。
  199. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) いまの裁判との関係は、訴訟手続を中止するかどうかということは裁判所の裁定できまります。それから訴訟手続が中止されない場合に責任裁定の手続を中止するかどうかということは裁定委員会の裁量できまるのでございまして、当事者の裁量できまるわけではございません。
  200. 岩間正男

    ○岩間正男君 それじゃ、まあ防衛庁長官おいでになりましたから、保留しておった問題、実は今度の調整委員会の対象に基地公害がなっていない。つまり自衛隊と米軍基地の公害がなっていない。ことに最近非常にベトナム戦争なんかで、また本土もそうですが、そういうような中で、これが対象から除外されているわけです。これは現行法でもそうなんだが、今度の法案でも予想される。これに対して、いま山中長官の答弁としては、それは国家として責任を持って基地周辺整備法その他の手段を尽くしてこの被害を除去することを第一義としているんだからそれは差しつかえないんだと、こう言っている。しかしそれなら、それらを、それほど国民のそういう被害は、これは軽減されていますか。基地公害から国民は安全に守られていますか。そうお考えになりますか、どうですか。
  201. 江崎真澄

    ○国務大臣(江崎真澄君) もうすでに基地周辺等の対策に関する法律がありまして、まあ毎年、満足とはいえませんが、予算措置をしまして、一つずつ片づけておるというのが現在の状況であることは御存じのとおりであります。したがって、この基地の公害は、やはり私どもも十分認識をいたしております。で、まあ今後この問題は、やはり予算措置を十分いたしまして、地元側の要望にこたえていかなけりゃならぬと思います。まあすでに法律があるということ、それからまた、原因者が基地公害の場合は非常に明瞭であるということ等々から、はずされたものというふうに私どもは承知をいたしております。対策については、十分ひとつ今後も予算措置を伴いまして、地元の期待にこたえていく方針でおります。
  202. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういうことを言われるんですが、今後予算を十分にとってなぞと言ってるんですね。そして実際は、この行なわれている防音装置の学校なんというのは、これは長官ごらんになったことがありますか。たとえば拝島小学校に行ってごらんなさい。ここの中で、防音装置をされたところで録音をとってみると、この録音の音量、あれで子供たちは学習できるかどうか。一緒に行ってみましょうか。
  203. 江崎真澄

    ○国務大臣(江崎真澄君) よく知っております。
  204. 岩間正男

    ○岩間正男君 それから夏、全くひどいんですよ。もうこんな暑くなったら、全部封鎖でしょう。その中で、あの高温の中で学習している子供たち、ごらんになったことがありますか。そいつも今度どうです。この前、これは秋多町だったと思いますけれどもね、あの横田基地の拡張反対の決議をした。そうするというと、予算やらないぞと、こういうことを言っている。だからこのやり方というのは、いま言ったようにはなっていないのです。予算をとるといっても、これは十全にはいかないんだ。ほんとにこれは申しわけ的なもんですよ。そういう中で、まあいま学校の例を出しましたけれども、一般の市民がどんな一体被害を受けているのか。実はきのう電話がかかってきた。それは、鹿屋市の基地周辺にいる非常に身体の弱い労働者からの電話です。それで、とにかくあそこでは、最近非常にもう練習が夜間に、深夜にわたって行なわれている。しかも低空だ。これは山中長官の郷里でもありますから、よく聞いてください。それで全く不眠の日が続くと、非常に病弱の自分にはもうとてもたまらないと、何とかこれ、問題にしてくれないか、こういうことなんですね。それでこういう具体例があります。きのうこれは起こったことですから、私は、そういう中でこういう問題がなぜ一体この委員会の課題にならないのか、切り離してやるんだと言うから、切り離してやるんなら、こういう広範な被害を受けている市民の数というものは、これは何万に及んでいるだろうと思うのです。その中には老病の人もいる、それから非常に病弱な人もいる。あるいは非常にかんの強い子供なんていうのは、これは夜中にやっぱり目をさまして泣き声をあげる。眠れない。こういう事態が起こるんですよ。国民の健康をむしばんでいるこういう問題について、これはどうなんです。そこで私、お聞きしますけれども、一体鹿屋ではどういう教育航空群の訓練をやっているんです。これは低空と言っているから、どのぐらいの一体高度でこれをやっているのか、一つ、それから夜間の訓練は一体どうなっているんです。これは聞くところによるというと、夜間の十二時、一時あたりにあるそうです。もっともこのごろは横田基地でもそうでしょうな。私たちが見ても、夜中にしばしば目をさまされることが起こってくるんですが、これはどうなんですか。
  205. 江崎真澄

    ○国務大臣(江崎真澄君) 実は私も自分の選挙区ではありませんが、すぐ隣の選挙区に小牧飛行場というのがあるんです。そしてその騒音を受けるのは私の選挙区、まことにどうも被害者の選挙区を持っておりまして、あの騒音にはもう、よく身にしみて悩まされておるわけでありまして、十全の措置がとられておるとは思っておりません。これはやはり世の中が落ち着いてくるに従いまして、いろいろ問題が出てまいりまするので、基地周辺の対策については、騒音防止対策についてはよくよく、やはり予算措置を十分にしなければならぬということを思っております。さて、その鹿屋でありまするが、これは夜間飛行を規制しておるというふうに私どもは報告を受けておるわけです。で、いまどういう方からの投書か存じませんが、それが御病人であるとすれば、全く気の毒なことでありまするし、こういうことはまあ一年じゅうのことですから、防衛庁としても十分自粛をしまして、大体朝の八時半から四時半ごろまでを鹿屋の練習の時間帯、まあスクランブルをかけたりなんかという場合はこれは別でありまするが、訓練時間帯は八時半から四時半まで、しかも午後十時以降の離着陸については、よほどのことでない限りは厳重な制限をしておるという報告を受けておるような次第でございます。実は小牧の飛行場でも、しばしば周辺に人家が密集しておりまするので問題が起こるわけです。消音器というものを——サイレンサーをつけまして、始動のときはそれをかけるとかいろいろなことをやっておりますが、これは私、聞きに行きましたが、サイレンサーをかけたからといって十分とはいえません。あれはやはりちょっと神経質な病人でもかかえておる家庭にしてみたら、さぞかし悩みの種であろうと同情をしておるようなことであります。したがいまして、こういった制限については口だけでなしに、全くこれは今後とも十分制限をし、民生にいささかも不安のないように協力体制をとっていきたいというのが私どもの方針であります。防衛庁においてもそういう心持ちで、それぞれの基地にはきびしく指導をいたしておるもののように承知をいたしております。
  206. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは自衛隊の一般の、航空自衛隊ないしは海上自衛隊の方針ですか。そのことをまずお聞きすることが一点。  それからあなたはこういうことを御存じですか。こう言っておるのです、この電話の人は。「国会で追及があるときはそうでもないが、国会で問題にならなくなってくるというと、昼間はもちろん、夜の一時、二時になっても飛行機が飛んでいる」と、こういう国会というのは便利なんで、そのときだけ何かあると、注意いたします。何もそのときだけじゃなくて、もうこれについては徹底的にいたします。その徹底が一週間たつと、のど元過ぎて熱さを忘れるというのがいまのやり方です。私はこれは要求しますけれども、フライング・スケジュールを出してください。これは一カ月ぐらいの、出してください。それから演習のスケジュールを出してください。鹿屋のを出すと同時に、これはどうなっているのか、一体。これはちゃんと見なきゃわからないですね。現地へ聞いたって、現地で言うとおりなんかなかなか報告しない。日本の官僚機構の絶妙なところです、これは。こっちではいま現地で聞きました、現地ではありのままなんか言ってくるものですか。だから、いつでもこれは国民との問題の把握、それからここのところのズレが出てくる。だから国会は危険なんです。そういう意味じゃ非常に危険です。国会で問題になると、きょうあたりはとまるかもしらぬ。二、三日だ。ほとぼりさめるというと、またぐっとやられたんじゃ、これは全然問題にならないわけですね。一時のがれの答弁じゃ話にならないのです。これはどうなんです、一体。だから、私はできればこれはどう言うか、自衛隊のとっている、海上自衛隊、航空自衛隊、陸上も加えてもいいです、これはヘリコプターもありますから……。どういう方針なのか。いま言ったように、八時半から四時半までを原則とする。十時以降についてはよほどのことでなければやらない。その間の、四時半以降はどうなのか、こういうような問題について、やはり基地公害の騒音防止の問題から、この問題を法案のらち外にしておくことはできない。そこへもってきて米軍が、御承知のように、最近のベトナム戦況の中で演習を激化しておる。こういう事態が起こってくるわけであります。富士の演習場あたりでは、今度は射撃が始まる。一万メートル以上の、二百三ミリりゅう弾自走砲をこれは演習したいという申し入れをすでに始めておる。北富士と東富士をつなぐ、こういうような問題まで。ついでに、こういう富士の問題についてはどういうふうにこれは対処されるか、このことを含めて御答弁願います。
  207. 江崎真澄

    ○国務大臣(江崎真澄君) 飛行場の騒音対策については、今後も十分留意をして適切な処置を講じたいと思います。まあこれは世界じゅう、軍隊を持っておるところの悩みであります。日本の国情から言うと、他国に比べるというと非常にこれが問題になる。しかし、これは民主主義国家ですから、この上とも十分努力したいと思います。  それから、ちょうどいま鹿屋の状況については詳しく知っておる政府委員の者が来ておりまするので、御報告を申し上げさせます。
  208. 岩間正男

    ○岩間正男君 それから富士のは……。
  209. 江崎真澄

    ○国務大臣(江崎真澄君) 富士の、これはまた……。
  210. 岩間正男

    ○岩間正男君 海兵隊。海兵隊の演習。砲弾をぶち込んでいる。
  211. 江崎真澄

    ○国務大臣(江崎真澄君) これも東とか、北とか、登山道越えはやらせないように現在話し合い、申し入れをしておるというのが実情であります。
  212. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは断わりますか。
  213. 江崎真澄

    ○国務大臣(江崎真澄君) まあ断わるというよりも、これは遠慮してくれいと、こういうことで、こっちは仲よくやっているものですから、お断わりなんというやり方でなしに、シーズンを迎えたら東北の登山道越えに砲弾をぶっぱなすようなことはどうです、御遠慮願ったらどうですかというような相談づくでやっておりまして、まあたいていいままではそういうやり方でも、向こうはわかりましたということで了解を取っておるというのが実情でございます。
  214. 岩間正男

    ○岩間正男君 遠慮しないでください。
  215. 江崎真澄

    ○国務大臣(江崎真澄君) 何でした……。
  216. 岩間正男

    ○岩間正男君 遠慮してくれというから、遠慮しなければどうです。背景が深いですよ、今度は。
  217. 江崎真澄

    ○国務大臣(江崎真澄君) 現在まではそういうことで話し合いがついておりますから、まあそういう話し合いをして、どうしても……。
  218. 岩間正男

    ○岩間正男君 そのとき、断わりますか、どうですかと聞いている。
  219. 江崎真澄

    ○国務大臣(江崎真澄君) それはまたその場面で判断をして善処をしたいと思っております。
  220. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういうことではだめですね。話し合いして、今度しかたない、万やむを得ません、安保条約を持っているのですから、米軍のこういう演習でございますから、これはやむを得ません、そうじゃないですか。そんなことでは話にならぬのですよ、これは。私はそういう問題を含めて、だからこのような国民の騒音に対する、軍事公害に対する、そういう意思表明を防衛庁や施設庁に持っていったって、なかなか快く受けてくれないんです。だから民間のそういう組織で、これはすなおにそういうものを引き受ける、そういう機関があっていいんじゃないですか。なぜ省いたんですか。山中長官らしくもないじゃないですか。軍事公害は入れるべきじゃなかったですか。なぜ省いたんですか。
  221. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) 先ほど答弁したとおりであります。繰り返しませんが、私が申したことで、防衛庁というものはそれだけの、公害防止についてもみずからを律する姿勢を示されるであろうということを申しておきましたから、その決意であるという長官の表明でありますので、私はそれでけっこうだと思います。
  222. 岩間正男

    ○岩間正男君 非常にきわめて不十分な答弁です、言われていることが。  最後にもう一つお聞きしますが、あれは何ですか、詳しくやってくれる人、それをちょっと聞いてからでないとだめです。
  223. 大西誠一郎

    説明員大西誠一郎君) 鹿屋におきましては、教育部隊が二群ございまして、P2JとP2Vの航空機が二十四機ございます。飛行の状況につきましては、飛行時間については、先ほど防衛庁長官からお答えいたしましたとおりでございまして、離発着の回数は、四月の実績で約二千回でございます。夜間の訓練は四月の実績で十一回でございます。この飛行場は、高さが標高七十メートルでございまして、回りが二十メートルぐらいで、部落といたしましては、鹿屋市が二千メートルぐらいの位置にございまして、あとの部落が少し飛行場の滑走路の延長上にございます。部隊といたしましては、騒音の問題について関心を持っておりますが、御指摘のような点がありますれば、さらに現地のほうで実情を調査いたしまして、必要な対策を講ずるように努力したいと思っております。
  224. 岩間正男

    ○岩間正男君 その報告は書面で下さいね。そして向こうにいま言ったようなことを知らして、それから、防衛庁として現在とっている訓練の方針、そして何時から何時まで、そしてちゃんと制限のそういうものはどういうふうになっているか、これは明確に出していただきたい。検討したいと思います。  最後にお聞きしたいんですが、これは沖繩の公害の問題です。この前開発庁設置法案、あれでも、これは山中長官と部分的には審議の問答やったわけですが、これはどうでしょう。とにかく軍事公害が沖繩はすごい。しかし、自然はこっちよりもなかなかきれいですよ。私は八重山にも行ったし、宮古にも一昨年行きました。八重山なんか、これはとにかく軍事公害が少ないから非常にきれいですよ。あそこでもあのとき、この前もちょっと私、歌つくったんだが、歌を出して恐縮ですが、  公害の蔽える本土より八重山へ今宵来て仰ぐ南十字星  非常にきれいなんですね。それから  産業公害をなおこの上に重ぬなと語りつついて胸熱きかな  実際そうなんで、あの沖繩のそういう自然というものは、自然環境のよさというものは、これは軍事公害をなくすとともに、これを絶対重ねちゃならぬと思うのです。ところが現在は、沖繩中部の東海岸では、平安座島ではアメリカのガルフ石油がすでに操業しておる。そして原油流出の事故が昨年十月に起こっていることは、これは長官もよくよく御承知だと思います。それから中城湾一帯では、エッソと東洋石油の二社が現在操業中です。沖繩の海は死につつある、こういわれております。現にこれは一昨年の選挙、秋ですね、私はあすこへ参りましたときに、東洋石油の中城湾における汚染状態はたいへん、そこで演説をしたら、古老が出てきて、なぜこの中城の問題やらないんだと言って宣伝カーに向かって追っかけてきた。そこで立ちどまって一発やったわけでありますけれども、そういう状態ですよ。だから、これは四日市を再び繰り返すなというのが、われわれの一つの命題になるわけですね。そこにさらに今度は三菱、丸善、アラビア、三石油会社が加わると、この沖繩の公害というのは、東海岸一体は日本有数の石油コンビナートになる。そうして自然破壊と公害がほんとうに重大な問題にのぼってきます。また最近の新聞報道によると、沖繩東海岸を航行するタンカーが捨てる原油廃液によって、海浜汚染がひどい状態になっている。油のかたまりが二、三センチから三、四十センチくらい、波打ちぎわを黒くするほど漂流している。このようにたいへんなそういう汚染の危険というものは、すでにもう汚染は始まっており、この深化がなされようとしているんですね。こういう点で、産業公害によって約八十カ所の海浜がこういう問題にさらされようとしている。これに対して一体どういう態度をとるのか。環境庁長官来ないんですね。私は環境庁長官に基本的に聞きたかった。どうしてこの公害から沖繩を守るのか、これをしない、させない、日本列島の、現在の世界最大の基地の列島、こういうものの中で、せめて沖繩をどうしても産業公害から守る、そうして軍事公害をなくす、基地の撤去をやる、こういう方向に変えなければならぬ。これは日本のやはり一つの大きな課題です。民族的課題であると言ってもいいんです。これに対して基本的な考え方を一体持っておるのかどうか、これはいままでのままでいったらものすごいことになりますよ。決してこれは本土にも劣らないほどの基地の島、公害の島になってしまう。これをさせないという保証はどうなんですか。こういうことをどうしても私はお聞きしたがったんです。これは答えるのは山中長官ですか、この前お答えになったのだが、環境庁長官は見えたんですか、環境庁長官。
  225. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) 開発庁長官としてお答えいたします。  仰せのとおりでありまして、先般屋良知事とお話をしましたときも、振興開発計画は沖繩県知事が策定されますが、もう石油産業というものは、国の政策としても、県としても、これ以上沖繩に立地することはやめましょうという話もいたしまして、合意をいたしております。  なお、今後の企業誘致についても、昭和五十年に沖繩で海洋博を開く際に、美しい海と空と緑の島というものが、文字どおりよごされている海洋の沖繩ということでは、これは私たち日本国民として世界に申しわけがたちませんので、そのようなことのないような沖繩の未来図を描きたいと思います。  最後に歌をひとつお返しいたします。美しい沖繩を私が読んだものであります。  屋我地海潮満ち来たる昼さがり火焔木一つ花残しおき
  226. 岩間正男

    ○岩間正男君 文学問答によって問題の本質をそらされちゃ困る。そのときにはあったかもしらぬけれども、ほんとうにそういう歌がたくさん読めるような、あなたほんとうにぴちっと歯どめができるかどうか、今後見守りますよ。決してこの質問はこれで終わったわけじゃないですが、きょうはとにかくこれで終わっておきましょう。
  227. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 他に御発言もないようですから、本案に対する質疑は終了したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
  228. 水口宏三

    ○水口宏三君 私は、日本社会党を代表して、本法律案に対し、次の理由によって反対いたします。  第一に、これまで国家行政組織法第八条の委員会であった中央公害審査委員会を同法第三条に基づく公害等調整委員会として、その独立性を高めたことは了解できますが、行政簡素化を理由に、本来異なる性格を持つ土地調整委員会統合したことは、その両機能を中途はんぱにするばかりでなく、たまたま行政監理委員会が空席であったことに便乗し、第三者機関意見を求めずに、行政担当者が一方的に決定したことは不当であること。  第二に、これまでの調停、仲裁に加えて裁定という重要な任務を果たす本委員会が、委員長と常勤の委員三名、非常勤の委員三名、合計七名という少数の委員から構成されていることは、公害紛争多発の現状にかんがみ、その機能が十分に発揮されないおそれがあること。  第三に、原因裁定について、特にその申請を被害者に限定しなかったことは、加害者と目される者に乱用されるおそれがあり、本来公害紛争裁定の目的である被害の防止と被害者の救済という趣旨に反すること。  第四に、調停、仲裁、裁定の手続費用について、被害者の負担を軽減する措置が不十分であることは、本来経済的に弱い立場にある国民大衆の利益を守れないこと。  第五に、紛争処理の対象となる公害にいわゆる基地公害を加えなかったこと。  以上であります。
  229. 安田隆明

    ○安田隆明君 私は、自由民主党を代表いたしまして、本法案に賛成の意を表明しようとするものであります。  公害問題は、まさに解決を迫られている国民的課題であります。政府は、一昨年の公害国会以来、この問題解決のため諸般の施策を講じてきておることは承知しているものでありますが、本法案も、公害紛争について迅速かつ適正な解決をはかるという現在の公害紛争処理制度を一そう整備強化しようとするものであり、時宜を得た措置と存ずるのであります。  本法案により設置される公害等調整委員会に寄せられる国民の期待の大きいのにかんがみ、新しく導入される裁定制度の運用についても、その公正、十全を期せられるよう要望いたしまして、私の討論を終わります。
  230. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私は、ただいま議題となりました公害等調整委員会設置法案に対し、公明党を代表して、反対の討論を行なうものであります。  反対の第一の理由は、総理府、法制局がまとめた原案では、原因裁定についても公害被害者側だけの申請に限定して、被害者救済の性格を鮮明にしておりましたが、本法律案はその精神を踏みにじり、加害者側にも原因裁定についての申請権を認めたことはまことに遺憾千万であります。なぜならば、公害紛争で最も重要な因果関係の白黒をきめる原因裁定を、加害者側が被害者の訴えより先に申請し、身の潔白をはかることができるのであります。ということは、企業者側の有利な裁定の出る可能性もあることを考えると、これは重大な問題であります。しかも、加害者側はこの制度を利用して、その場のがれや時間かせぎに利用することは当然予想されるところであります。  第二の理由は、裁定権の行使についてであります。被害の程度が軽微であり、かつその範囲が限られているもの等については申請を受理しないことができるとしていることは、ことばをかえていえば、人体の健康にかかわるなど重大かつ広範囲な場合に限定するということであります。このように、委員会の裁量によって受理、不受理がきめられることは、実情に合わず、被害者救済の機関とはならないのであります。  第三の理由は、責任裁定の効力の問題であります。本法案では、責任裁定が出された場合に、三十日以内にこの裁定に不満をもって訴訟に持ち込めば、裁定が不成立となるのであります。したがって、被害者に賠償について委員会裁定の形定があっても、加害者側の訴えの提起によって裁定が御破算となり、再び裁判でやり直さなければならない。これでは被害者にとって何のための裁定かわからないのであります。被害者のために裁定の効力の確保が十分とられていないし、また裁定が確定した場合にも、加害者にその裁定の履行を迫まる措置が十分とられていないのであります。  第四の理由は、委員の構成についてであります。委員六人でも少な過ぎるし、専門委員も一案件一人では不十分であり、紛争処理の適正、迅速を確保するために必要かつ十分な公害専門調査委員を置くべきであります。  今日、何よりも望まれているのは、公害による被害者の敏速で有効適切な救済であり、被害者救済の立場に立って紛争処理制度を運用していくことであります。裁定権という強権を持つ新機関になることは、大きな責任と複雑で困難な課題を背負わなければならないのであります。従来、裁判所において因果関係の立証が困難であったということは、新機関においても変わらないのであります。公害被害の態様の掌握、証拠調べ、保全及び事実の調査等々、容易なことではないのであります。それを敏速に的確に処理し、被害者にも加害者にも信頼される裁定機関になるには、人的、物的両面にわたって充実した体制の整備が不可欠であります。この点から見ても、本法案は不十分なものであると言わざるを得ません。  なお、基地公害処理については、本法案適用外となっておりますが、基地公害の一般住民に及ぼす影響のきわめて重大なことを考えると、本公害処理についても本法案に含めて、その紛争の処理に万全を期すべきであります。  最後に、政府に申し上げたいことは、公害の原因を明らかにし、発生責任者に損害賠償をさせたとしても、それで問題は片づくものではないと思います。損害賠償によって被害の一部は救済されても、根本は公害をなくさない限り、次から次と被害者はあとを断たないし、生命、健康はいかに金を積んでも償えるものではないのであります。これを機会に、政府公害防止という基本課題に力強く取り組まれるよう強く要望するものであります。  以上をもって反対の討論を終わります。
  231. 岩間正男

    ○岩間正男君 日本共産党を代表して、本法案反対します。  現行公害紛争処理法が昭和四十五年六月に公布されましたが、わが党はその制定当時から、現行法が被害者の利益を守りきれないばかりか、加害企業を擁護する役割りをすら果たすものであることを指摘して反対しました。  すなわち、  一、委員の任命については、国会の同意を要するとはいえ、その多くは政府の代弁者によって占められるおそれがある。  二、調停、仲裁の手続が非公開であること。  三、費用は各当事者が負担すること。  四、米軍や自衛隊の基地公害は対象からはずされていること。  こういう理由をあげて反対しました。今度の問題は、裁定の手続を公開した以外は、このような問題は根本から何ら解決されていません。  しかも、目玉商品にうたっている裁定については、  一、公害を根本から防止する、いわゆる差しとめ裁定は含まれていない。  第二に、原因裁定については、加害者の申請を認めることによって、被害者の運動を分裂または押え込む危険性が十分ある。  第三に、委員会が代表当事者を選定できることによって、また職権で原因裁定を行なうことができることによって、さらに申請事項以外の事項について裁定できることによって、被害者に不利な裁定が行なわれる危険性がある。  第四に、最後に、訴訟との関係だが、裁定と訴訟が同時に係属するとき、被害者の意思にかかわらず、裁判所の裁量により一方の手続を中止することができることにより、また委員会は、被害者の意思にかかわらず、裁判所の嘱託により原因裁定をすることができることにより、被害者が強引に裁定に持ち込まれる危険性が十分考えられる。  このような欠陥を持っており、これはほんとうに被害者を救済するという立場よりも、相変わらず企業本位のそのような体質をこの本案は十分に変えていない。そういう点から、われわれ共産党は反対するものであります。
  232. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 他に御発言もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決を行ないます。  公害等調整委員会設置法案全部を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  233. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
  234. 鈴木力

    ○鈴木力君 私は、ただいま可決されました公害等調整委員会設置法案に対し、自民、社会、公明、民社の四党共同提案にかかる附帯決議案を提出いたします。  まず、案文を朗読いたします。    公害等調整委員会設置法案に対する附帯決議案   政府は本法の施行にあたり、次の事項について速やかに検討を加え、公害紛争処理制度の実効性の確保に努めるべきである。  一、裁定測度においては、被害者保護に徹して適切な運用を行なうとともに、公害紛争の迅速かつ適正な処理を図るため、委員会の拡充と調査体制の確立等につき万全を期すること。  一、原因裁定については、努めて被害者救済の本旨に則り、裁定遅延にならざるよう配意すること。  一、裁定委員会が代表当事者を選定するときは、あらかじめ共同の利益を有する当事者の意見を徴すること。  一、調停、仲裁、裁定の手続に要する費用については、被害者の負担を軽減する措置を講ずること。  一、防衞施設の運用等から生ずる障害に係る紛争の処理制度については、自衛隊の飛行場を民間が共用する場合の紛争処理方法等を含め、その体制の整備を図ること。  右決議する。  本決議案の趣旨は、本法案審査の過程においてすでに明らかなところでありますので、説明は省略させていただきます。  以上であります。
  235. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 別に御発言もないようですから、鈴木君提出の附帯決議案の採決を行ないます。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  236. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 全会一致と認めます。よって、鈴木君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、山中総理府総務長官から発言を求められております。これを許します。山中総理府総務長官
  237. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) 政府は、ただいま議決されました附帯決議の趣旨を十分に尊重し、その実現に努力いたす所存であります。
  238. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 審査報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  239. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定します。     —————————————
  240. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 請願を議題といたします。  本委員会に付託されております請願は、第一〇号、靖国神社国家護持早期実現に関する請願外三百七十九件であります。これらの請願の審査は、先刻理事会で協議いたしましたとおり、国家公務員関係百九件、恩給共済関係十九件、防衛関係一件、計百二十九件の請願は議院の会議に付し、内閣に送付することを要するものとし、靖国神社国家護持早期実現に関する請願外二百五十件は留保するものと決定することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  241. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  審査報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  242. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定します。     —————————————
  243. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 継続調査要求に関する件についておはかりいたします。  国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調査並びに国の防衛に関する調査は、閉会中も継続して調査を行ないたいと存じますが、このように決することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  244. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定します。  継続調査要求書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  245. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定します。     —————————————
  246. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 閉会中の委員派遣についておはかりいたします。  ただいま決定されました二件の継続調査が承認されました場合、これらの調査のため委員派遣を行なうこととし、これが取り扱いにつきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  247. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十五分散会      —————・—————