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1972-05-11 第68回国会 参議院 内閣委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年五月十一日(木曜日)    午前十時三十三分開会     —————————————    委員の異動  五月十日     辞任         補欠選任      世耕 政隆君     柴立 芳文君      足鹿  覺君     戸叶  武君  五月十一日     辞任         補欠選任      戸叶  武君     足鹿  覺君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         柳田桃太郎君     理 事                 町村 金五君                 安田 隆明君                 鈴木  力君                 水口 宏三君     委 員                 黒住 忠行君                 源田  実君                 柴立 芳文君                 田口長治郎君                 土屋 義彦君                 長屋  茂君                 細川 護熙君                 山本茂一郎君                 足鹿  覺君                 上田  哲君                 山崎  昇君                 沢田  実君                 峯山 昭範君                 中村 利次君                 岩間 正男君    国務大臣        国 務 大 臣  大石 武一君        国 務 大 臣  中村 寅太君        国 務 大 臣  山中 貞則君    政府委員        中央公害審査委        員会委員長    小澤 文雄君        中央公害審査委        員会事務局長   川村 皓章君        土地調整委員会        事務局長     上原 達郎君        行政管理庁長官        官房審議官    大田 宗利君        行政管理庁行政        管理局長     平井 廸郎君        経済企画庁総合        開発局長     岡部  保君        環境庁水質保全        局長       岡安  誠君        沖繩北方対策        庁長官      岡部 秀一君        沖繩北方対策        庁調整部長    田辺 博通君        厚生政務次官   登坂重次郎君        厚生省環境衛生        局長       浦田 純一君        厚生省児童家庭        局長       松下 廉蔵君        農林大臣官房長  中野 和仁君        通商産業省企業        局参事官     田中 芳秋君        通商産業省化学        工業局長     山形 栄治君        建設大臣官房会        計課長      山岡 一男君    事務局側        常任委員会専門        員        相原 桂次君    説明員        水産庁調査研究        部長       松下 友成君        運輸大臣官房観        光部長      住田 俊一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○沖繩開発庁設置法案(第六十七回国会内閣提  出、第六十八回国会衆議院送付) ○公害等調整委員会設置法案内閣提出衆議院  送付)     —————————————
  2. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  沖繩開発庁設置法案を議題といたします。  御質疑のあるお方は順次御発言を願います。
  3. 水口宏三

    水口宏三君 沖繩開発庁設置法につきましては、すでに先日も当委員会同僚議員からさまざまな角度で質問がなされておりますので、私からはできるだけそれとダブらないような形で御質問申し上げたいと思いますけれども、最初に、政府がお出しになった開発庁設置法案、この間長官がお読みになった説明理由の中で、まず、平和で豊かな沖繩県の再建ということが目的であり、そのためには、あくまで明るく平和で豊かな沖繩県建設こそ沖繩復帰の基本的な目標であるということと、しかもこれを達成するために沖繩県自治権最大限に尊重しつつこれを行なうということを提案理由説明の中でおっしゃっているわけでございますが、このことはあらためて再確認する必要もないと思いますけれども、私、きょう質問したいのは、この二点に関する問題で再確認いたしたいと思うのですけれども、そのとおり考えてよろしゅうございますか。
  4. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) もちろんそのとおりでありますし、自治権最大限尊重ということばは、あるいはもっと言いかえて、自治権が完全に守られた上で、ということの意識に立っておりますので、おっしゃるとおりに考えております。
  5. 水口宏三

    水口宏三君 それでは、初めに自治権の問題につきまして、われわれは自治権あるいは自治ということばをしばしば使いますが、一体自治なりあるいは自治権というものをどういうふうにとらえているのかということの共同の認識がありませんと議論が食い違うと思いますので、まず、いま長官がおっしゃった自治権最大どころではない、これを完全に保障したいとおっしゃる、その自治とか自治権というものについての具体的な考え方を聞きたいと思います。
  6. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは法的な解釈あるいは常識的な言い方、いろいろあると思いますが、要するに住民の手によって、住民のための、住民意思によって行なわれる地方政治ということだろうと思います。
  7. 水口宏三

    水口宏三君 いまの、住民の手によって、住民のための地方政治とおっしゃいましたけれども地方政治というのはどういうことでございましょうか。
  8. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私が地方と使いましたのは、国家政治、いわゆる国の政治地方自治体政治というものを分けて言うために使ったわけでございます。
  9. 水口宏三

    水口宏三君 それで、私も大体長官と同じように、私は自治という問題につきましては、法的な解釈の問題と、常識的と申しますか、むしろ歴史的な一つの変遷を経てきた概念、二つの概念のない合わさったものが現実の自治の問題ではないか、そういう意味におきまして、おそらく法的な概念ということになれば、憲法の九十二条に「地方自治本旨」ということばが出ておるわけですね。ところが憲法自体自治本旨が何であるかということについては、具体的には解明をしておらない。しかし、これは一般的に国家の固有な統治権に属するもの、たとえば立法権あるいは司法権あるいは外交権行政権の中で一番問題になりますのが国家固有行政事務地方自治体事務との区分をどこにするかということについては、これは常に論争のあるところであります。立法権にいたしましても、国会唯一立法機関ではあるが、条例という形で準立法的な機能を地方自治体に持たしておる。しかし、いずれにしても国家固有のそういう統治権に属するさまざまな権利を除いた、それ以外のものはできるだけこれを自治体に持たせるということであり、また国家統治権というものができるだけ、地方自治体政治に介入をするとかあるいはこれを支配するという形態ではなしに、これらの権利が行使される場合に、地方自治体自治権というものの、むしろ実施についてこれを助成をし、援助をし、発展させるような、そういう方向をとるのがこれは私は憲法の言う「自治本旨」という、あいまいではございますけれども法的な概念一つだろうというふうに考えておりますが、その点はいかがでございますか。
  10. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私もそのとおりだと思いますし、異論はありませんし、地方条例も、国の法律範囲内ということにおいて地方独自の条例制定というものが認められておるわけでありますから、その間一方的な押しつけとか、あるいは法律を越えた条例国家権力との対抗ということは、基本的には起こらないはずであると思います。
  11. 水口宏三

    水口宏三君 それでは、大体まあ自治本旨につきましての法的なと申しますか、そういう考え方については、ほぼ長官も私も考え方がそう大きな開きはないと思いますが、もう一つ、私は自治という問題については歴史的な側面がある。つまり歴史的に自治というものの考え方が逐次変わってきているという側面があるんじゃないか。この歴史的意味には、もちろん地理的、自然的な条件も含めての問題でございますけれども、一般的に自治の問題が特にまあきわ立って特殊な形態で出てくるのは島嶼の場合ですね。島ですね。島の場合に、島というのは、もちろん無人島は問題になりませんし、ごく小人数の人が住んでいる島は問題になりませんけれども相当数住民があり、一定産業のある島の場合には、その島嶼というものが、一つの経済的に文化的に自己完結的な一つ発展をしてきたという歴史があるわけですね。したがって、そこに住んでいる民族の問題、あるいはそれと結びつく文化問題等で、大陸諸国との結合あるいはその他の結びつきがあっても、島嶼自治権という、こういうものは、一般的に、地理的にも歴史的にも、一般的な自治概念より以上に、さっき長官のおっしゃったような、その島嶼における自治制というものを強く主張もし、また容認もされてきたという事実があろうかと思うのでございますけれども、その点はいかがでございますか。
  12. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 国際的に見ますと、日本自身もやはり島嶼国であると思います。その中で県庁所在地ぐるみ全部俗に言う島嶼概念に当てはまるとすれば、沖繩県唯一の県であろうと思います。まあ沖繩県の問題はこれから出るんでありましょうが、やはりその島嶼によって、島の範囲内において経済、文化政治というものが形成されてきた長い歴史を持つ地域については、国家全体の立場から見て、私もその成立の経過過程等において異なったものが形成されておる。こういうもののよきものはなるべく尊重するという気持ちを持って、国の政治というものはこれは行なわれなければならぬ、そう考えます。
  13. 水口宏三

    水口宏三君 いま長官、先にまあ沖繩の問題をおっしゃったわけでございますけれども、もちろん沖繩、その意味で私申し上げたんでございますけれども、これは事、沖繩だけでなく、世界的にも、たとえばギリシャとキプロスの関係とか、デンマークとアイスランドの関係とか、セイロンとマルジブ諸島関係とか、デンマークフェレルネ諸島関係、あるいはイタリアとシチリア島の関係、こういうものは、自治というものがしばしば自治権にまで発展をしていく条件がある。そういう意味では、自治自治権というものは必ずしも画然と区別がつかない場合があるわけでございますね。ある程度自治の中に一定のまあ立法権の一部のものを認めるとか、あるいは、完全ではないにしても多少外交権認めるとかという形で、特にその島嶼の場合には、自治がしばしば自決権にまで発展をする条件があるということはこれはその国際的な状況、これまでの歴史的な関係から言ってもあり得ると思うんでございますけれども、そういう点について、長官、どう考えますか。
  14. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これはまあ私の立場を越えての政治家としての考え方となると思うのですが、やはりそういうケース・バイ・ケースになると思うんですけれども、ときには宗教の問題があり、ときにはまた構成する民族の本質的な差という問題があり、あるいはまた日常使用される基本的な言語の問題がある。こういうような問題等がからまって、ときには島嶼と半島、あるいは大陸というようなものとの問題として、地方自治というものがいわゆるおっしゃるように自治権の問題として国際的な問題を提起し、国内においてもその問題を避けて通れなくなっておるというようなケースがあることも、私は承知いたしております。
  15. 水口宏三

    水口宏三君 いま私があげました事例はですね、必ずしもいま長官のおっしゃったような異なった民族の問題、あるいは異なった宗教というような、きわ立った、いわば自治権そのものの基礎をなすような条件のないところでございますね、そういうところで、ただまあ島嶼であるがゆえに、むしろ自治権というものが自決権というふうにまで発展していった事例を申し上げたわけですが、これは議論してもしかたがないのでそのままおきます。問題は、沖繩の問題を考える場合に、これらの事例というものは非常に重要な意味をなすのではないだろうか。なぜかと申しますと、沖繩自治の問題を考えます場合に、現在の憲法におきます自治本旨というものを沖繩県に当てはめて考えた場合に、われわれは単に形式的な法的な概念でこれを規制するのではなしに、当然長官のおっしゃった、平たいことばで言えば、常識的、具体的に言えばやはり歴史的、地理的な概念というものがそれに加わらなければならないのではないか。そうなれば、私が申し上げるまでもなく、中世、沖繩琉球国として独立をしておりましたし、近世になって島津支配が行なわれるし、明治になって沖繩処分という形でこれが沖繩県に組み込まれた。ところが敗戦後さらに中断されて、大統領行政命令という一片行政命令によって、憲法を持たない実に変則的な形ではありますが、一応その後琉球政府がつくられるというように、そういう歴史的経過をたどってきた沖繩であるということ、これは事実でございますので、別に問題はないと思うんでございますけれども、この中から、われわれは沖繩自治というものを考える場合に、それが本土におきますむしろ長い歴史の中からつくられた鳥取県とかあるいは滋賀県、愛知県、こういう一つ本土政府本土の各県との関係とは異なった意味で、沖繩自治というものについて、そういう歴史的背景というものを考慮しなければならないんじゃないだろうかということについては、いかがでございましょうか
  16. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 沖繩のそのような過去の特異な歩いてまいりました歴史の道のりというものは、私どもはよく理解し、またそれを知らなければなりませんし、現に米軍施政権下においても琉球独立運動というものがありました。先般行なわれました国政参加参議院選挙においても、琉球独立党を名乗って立候補した者もあります。それらのことを考えますと、それらの支持者の数がきわめてわずかであったとは言え、ほかの県でかりに選挙が行なわれて、その県の独立ぐらいのことを言う者がかりにおるとしても、独立党といって党首の名前で立候補するということが、ほかの県であるだろうかということは、私どもは、やはり単にそこに選挙につきまとう一つのとっぴな行動として見のがしてはならない、単なる泡沫候補と見のがしてはならないものを、琉球沖繩歴史というものはあるんだと、その点を私たちは知らなければならぬと思います。したがって今後の沖繩県の、新生沖繩の出発以後の足取りというものは、私たちとして十分理解をして、そうして沖繩から見た自治というもの、沖繩から見た県のあり方というものに期待し、こたえ得るような姿勢を堅持していかなければならぬ。このことは十分戒心していくべきことであろうと考えます。
  17. 水口宏三

    水口宏三君 いま総務長官、もうこのことを、非常に総務長官は頭がおよろしくて、先取りされても困るんですけれども、確かに例の一九五一年の講和条約締結前に、琉球がどうなるかということについて、これは私の記憶では五一年の第六回の沖繩群島会議会議の席上で、沖繩は将来むしろアメリカ信託統治を経て独立をすべきか、あるいはむしろ本土復帰という方向を目ざすかという論議が、相当大々的に行なわれておるわけですね。しかし、結局、独立論というのは非常に少数である。やはり本土復帰ということのほうが、これは沖繩県民大勢であったということ。ただし問題は、本土復帰というこの沖繩県民大勢というものに対して、それではアメリカは何で報いたか。さっき申し上げたように、大統領行政命令という一片行政命令によって沖繩統治を行なったわけですね。これは私、不明にして、少なくとも一定文化一定教育一定産業あるいは一定行政能力を持ったそういう国民で、憲法によって保障されない、そういう人たちというのは世界広しといえども一体どこにあるのかと田−うと、ないと思うのでございますね。沖繩だけが、一片大統領行政命令というような形で、基本的な人権を全く大統領の生殺与奪の権にまかされている。もちろんアメリカ憲法が施行されているわけでもございませんし、日本憲法も施行されているわけではないわけですね。そういう意味で、沖繩県民は、一九五一年の沖繩処分以後全く無権利な状態に放置されたと言っても言い過ぎじゃないと思いますが、その点いかがですか。
  18. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私も基本的にはそう思いますし、明らかに日本潜在主権のある領土、民族が居住しておるにもかかわらず、その本国の一切の、憲法をはじめとする基本的ないわゆる国民の一人一人に与えられる基本的な人権を含めた保護というものが、あるいは権利というものが行き渡っていなくて、逆に言いますと戦勝国敗戦国立場での力関係そのものが持ち込まれて、しかも戦勝国憲法そのものはまた別途あるにもかかわらず、それの憲法の庇護も享受されてなかった。いわば植民地、という名前はつけられませんが、実際上の行政相当期間植民地行政のもとに沖繩人々が置かれてきた。この点は、私もまことに残念なことでありますが、事実であると思います。
  19. 水口宏三

    水口宏三君 長官がそういう御認識に立っているとすれば非常にこれからの御質問はやりやすいわけでありますけれども、にもかかわらず、沖繩県民がみずからの力、みずからの戦いによって、教育の問題にいたしましても、教育の問題が一番大きいと思うのでございますけれども自治を逐次獲得をしていった。たとえば労働権の問題にいたしましても、さまざまな面でみずからの生活を守るということを中心にした自治権利をつくり上げてきたという事実でございますね。これは決して日本本土政府が援助したわけでもない。むしろアメリカ政府はこれを弾圧をしようとした。それに対してまさに沖繩県民みずからの力、戦いによってそういう自治権を逐次積み上げてきたということをわれわれは非常に評価しておるわけでございますけれども総務長官はこの点についての評価はどうお考えになっていらっしゃいますか、伺いたい。
  20. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは、同じアメリカ日本本土沖繩に対してとった教育委員に対する態度は、実際は全くうらはらでありまして、御承知のように、日本本土においては、むしろ教育委員公選制というものをアメリカ側意思が相当強く入り込んだ形でやってきた。しかし、沖繩においては、逆に主席任命という形からくる任命制度というものを、中央から連合教育区というものに広げていこうとした。それに対して、教職員会中心にした地域住民人々抵抗、みずから選ぶんだというその民主主義の基本というものに立った抵抗が成功して現時点に立ち至っていると、そういうふうに私は理解をいたしております。
  21. 水口宏三

    水口宏三君 そうすると、じゃ教育委員公選制にしても、これは決して民政府の恩恵でないのであって、沖繩県民自治意識に立った力、戦いによってかちとられたものである。私はまあ教育委員任命制の問題あるいは選挙制の問題だけをここで質問しようとは思いませんけれども、全体的に、いま沖繩にある少なくとも自治の問題というものは、基本的に沖繩県民の力によってかちとられたものである。これを最大限にやっぱり尊重するということは、抽象的な法的概念における国家統治権自治権との調整というような問題ではなしに、歴史的な問題、長官に言わせればまさに常識的に言ってわれわれは最大限に尊重するということが、これはまたわれわれの義務であり、また沖繩返還という問題にとっての最大の課題であるというふうに私は認識しておりますが、その点について、いかがでしょう。
  22. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) いまの問題が教育委員の問題でなくて全般的な問題であるとすれば、私もそういう方向で対処しなきゃならぬと思います。
  23. 水口宏三

    水口宏三君 どうも教育委員の問題、よほど問題があるんですが、長官認めになりますけれども。  次に、それでは私は、さっき申し上げました国家統治権自治体との関係で、立法権の問題について、法律範囲内で自主性というものが、ある意味立法範囲内においても自治体一つ自主性認める道を開いている。これは事実悪用されておりますけれども、そういう道が開かれている。もう一つの救済の道は、第九十五条だと思うのですね。その地域だけに適用される法律については、住民投票によってその可否を決定する、この問題、やはり唯一立法機関である国会国会法律をつくる場合に住民意思を尊重するという、いわば国家統治権自治体自治権との調整の重要な一つの窓口として憲法が規定していることだろうと思う。そういう意味で、まずこれまでのこの憲法九十五条に基づく住民投票が行なわれた事例があるのかないのか、あるとすればどの問題についてあったのか、それを簡潔に二、三教えていただきたいと思う。
  24. 山中貞則

  25. 水口宏三

    水口宏三君 その中でも、私は、三つ範疇にいま長官お分けになりましたけれども、特に重要なのは第三の範疇の問題だと思う。たとえば首都建設法をつくるときに住民投票が行なわれた。これはやはり首都圏という特殊的な条件、そこに施行する法だからおそらく住民投票が行なわれた。沖繩については、長官も先ほどお認めになったように、歴史的に沖繩における自治というものがいかに貴重なものであるか、沖繩自治の重みというものは、たとえば香川県に住んでいる人が香川県の自治というものを意識する以上に、これはまさに沖繩県民にとっては唯一最大のみずから戦いとった権利として持っているわけですね。その沖繩県民にのみ適用される今回の沖繩開発庁設置法をなぜ九十五条によって沖繩県民住民投票にかけないのか、それをひとつお伺いしたい。というのは、逆に言えば、先ほど申し上げました首都建設法の場合にはかけたにもかかわらず、今回はなぜかけないのか。
  26. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) まず沖繩は、おっしゃるように、特殊な環境のもとに本土復帰をいたします。その特殊な環境の中に、いろいろ理由がありますが、機構的に見ますと、国家事務というものを、これはやれないのでありますが、あるいは機能的には完全にもう一段上の民政府というものがおったもとではありますけれども、そういう制肘の中であっても、やはり国家行政に属することまで全部やっておりました。したがって、今回沖繩県になるにあたって、国家行政固有事務はやはり国に全部一応参りますので、それらの点から見ても、沖繩県のいままでやっていた、自分たち範囲でできた自治の中で相当な部分、国家固有事務というものが離れていく、このことは、やはり自治が後退したような気持ちも私はあると思うのです。それらの意識の上に今回開発庁がつくられて、出先の総合事務局沖繩現地に置かれる、これがいろいろ御議論のありますように、各省庁の実際の現業部門も含めた膨大な機構を持っている。この点と沖繩県自治とどうなんだ、九十五条とはどうなるかという問題になるわけでありましょうが、これは国家行政機構として、沖繩県民のために現地に、地方の通常のブロック機関の長が有する権限を与えながら進出するわけでありますから、これが本来沖繩県の、他県の持っているような自治権というものを侵すような部門があってはこれはならないわけであります。またこの問題は、国の出先機関のあり方としての問題でありますから、沖繩県民のためにのみこれは置かれるものでありまして、沖繩県が完全にほかの本土各県との立ちおくれを取り戻して、沖繩県独自の県政というものの基礎が固まれば、こういうものは必要のなくなるのが当然なことであります。したがって、恒久的に沖繩自治体としての権能を制肘していく性格を持っておりませんし、また現時点であっても、出発当時であっても、本来持っておる自治の権能をこの設置法に置かれた法律、機構によって侵す分野は全くない。そういう配慮は細心の注意をいたしておりますので、沖繩県のみに適用されるという意味地方自治を侵す、一部分的にでも侵すというようなことはあり得ない。すなわち、沖繩県の、住んでおる住民の本来持っておる住民自治権利というものに対しては侵害をしておらないということから、沖繩県民に対してそれの賛否の必要等は、九十五条の住民投票という必要はないだろうという立場をとっておるわけであります。  なお法的な議論になりますと、法制局でも呼んで一応議論したいと思います。
  27. 水口宏三

    水口宏三君 首都圏設置法の場合——それじゃ首都圏設置法をなぜ住民投票にかけられたかについては、これは機会があれば質問いたしますけれども、省略いたしますけれども、いま長官のお話の中に、沖繩県のみに適用される法である。沖繩県自治はこれを侵害しないと。だから住民投票にかける必要はないんだという、そういう御答弁なんですね。そう理解してよろしゅうございますね。そこで、九十五条は特定の県のみに適用される法について住民投票にかけろというんだから、その点についてはむしろ九十五条のまさに該当するそのものでございますね。  で、問題は後段の問題です。沖繩県の県民の自治を侵害するものでないというのは政府の判断であって、地域住民がそれをどう判断するかを聞くために住民投票をやるわけでございましょう。もし、政府が考えさえすればそれは正しいんだというお考えなら、九十五条の住民投票なんて空文化ですよ。政府がそう考えても住民はそう考えているかどうか。それを聞くために住民投票をおやりになるわけでしょう。だからいまの長官の答弁からいくと、全然逆であって、だからこそ、九十五条によって住民投票やるべきじゃないですか。沖繩県のみに適用されるんだから、政府沖繩県自治を侵害しない。沖繩県民のためを思っている。それなら堂々と住民投票をおやりになって、過半数獲得できる見通しがおありになるんでしょう。それじゃ何でおやりにならないか。むしろ長官のいまの御説明は、だからこそ住民投票をやるべきだということの、むしろ私のほうから言いたいことを逆に長官のほうからおっしゃっているように受け取るんですが。
  28. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) そうではありませんで、沖繩県民のみに適用される法律ではなくて、沖繩県に対して国家の組織として、行政としてどのような形をとったらよろしいかということをきめておる法律でありますから、沖繩県民を拘束し、沖繩県自治をそれによって奪うという性格のものが入っておりません。これは実際上の法律の運用にあたって、こまかく知事、市町村長の申請、もしくはそれぞれの港湾、道路、河川等の管理者というものの申請等があった場合に初めて直轄工事、十分の十の国の工事といえども、初めて行なうことができるのであって、申請というもののないのに押しつけるということはあり得ないことが法律の中で明確になっておるわけでありますから、その沖繩県のみに適用される法律といっても、沖繩県民のみを拘束する法律ではなくて、沖繩県に対して国が行なう法律であるということでありますから、まあ全然形は違いますけれども、北海道開発の場合にもその適用はなかったものと思っております。
  29. 水口宏三

    水口宏三君 だから、長官がそうお考えになることと、沖繩住民立場に立てばこれはあとで質問して伺いたいのですけれども、まさに総合事務局というものが設置されることが沖繩県民自治を侵すのではないか。これは異例の機関ですね。他にそういう機関はございません。したがって、長官に言わせれば、国の都合で、国の行政事務をやりやすいように沖繩県民のためになるようにつくったんだとおっしゃるけれども沖繩県民からすれば、他の府県にはないこの総合事務局がつくられるということに対して、みずからの自治権を侵されるのではないかという危惧を持ち、それに対する反対すらあるわけですね。とすればですよ、当然沖繩県民意思を聞くということに、逆に言えば聞いてはならぬという理由は何にもないのであって、むしろ憲法というものは、そういう意味で私はできるだけこれを国民立場に立って、それが国民のためになるようにむしろ適用されるべきものであることは言うまでもないと思うのですね。これは主権者が制定した憲法なんだから、憲法の趣旨からいってもいま長官のおっしゃったような見通しがおありになるならば、沖繩県民の危惧というものを払拭するためにもなぜ住民投票におかけにならないか。その点をどうも、私はいつも常識論を前提にお出しになる長官の感覚としてわからないのです。それを住民投票にかけては違法になるのですか。
  30. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私は違法とかなんとかいうことじゃなくて、住民投票にかけることを要しない法律である。すなわち、国の地方支分部局の構成を形づける設置法でありますから、これがそのことによって沖繩県民自治を侵害し、沖繩県民のみずから自治を行なう県民個々の権利というものを圧迫するというような内容のものでありますればこれは別ですけれども、単なる国の地方支分部局の機構を取りまとめたものを設置するということに、中央においては開発庁地方においては総合事務局というものをつくるわけでありますから、その限りにおいて、法の内容においてもその精神においても機構においても九十五条の適用を受けるべき法律ではない、そう思うわけです。
  31. 水口宏三

    水口宏三君 この点はどうも議論をこれ以上してもあるいは平行線をたどるかと思いますので、最後に申し上げたいのは、何回も申し上げますように、これは国の行政事務沖繩県に適用することであって、沖繩県民とはいわば無関係なんだと、だからこれは国がきめればいいんだという、端的に言えばそういうことになるのだと思います。ところが、国の行政事務がしばしば住民権利を侵してきている事例は、沖繩だけでなしに本土でもたくさんあるわけなんですね。そういうことが沖繩総合事務局が設置されることによって非常に増大するおそれがあると、そういう危惧を住民が持っているのであれば、それが違法でない限り、違憲でない限り、むしろ先ほど長官沖繩における自治というものの重みを歴史的にも十分評価なさっておるならば、何で、住民投票にかけてですよ、ほんとうの、沖繩住民がみずからの意思によってこれを歓迎するとかこれを支持するという、そういうむしろ政治的な配慮をなさらないのか、私にはどうしても理解できません。したがって、まあこの点は平行線でございますので、どうも日ごろの長官の常識論、歯切れのいい答弁としては至ってどうも理解しにくい点でございます。私はいやみになるが、その点だけつけ加えさしていただきます。  そこで、次に今度伺いたいのは、まあこれは開発庁そのものの問題で、これまでにも同僚議員から出されておりますのであまり詳しくは申し上げませんけれども一つは、御承知のように沖繩県が、面積からいっても沖繩本島の二二%、今度多少削減されますから何%になりますか、これは例の米軍の基地になっておるわけでございますね。なおかつ今度新しく自衛隊の基地もつくる。しかもその基地が沖繩のいわば非常に枢要な地点を占めている。しかもこの沖繩の軍事基地の評価については、アメリカ側は極東における後方展開補給基地として非常に重要視をしている。なおかつ日本の防衛庁も、どういうわけか知りませんけれども、これはまああとで論議になると思いますけれども、相当多数の自衛隊を沖繩に送り込んでいく、そうなってまいりますと、むしろ国の観点から言うと、沖繩における軍事的価値という評価が非常に優先すると思うんです。これは日米安保条約というものが現実に結ばれており、安保条約によってあれだけの米軍基地があり、しかも、自衛隊法によって自衛隊がつくられ、あるいは返還協定と並行的に、法的拘束力はないといいますけれども、久保・カーチス協定までつくって自衛隊を送り込む。そうすると、沖繩県民は少なくとも、沖繩の軍事的な価値というものに対しては、もちろんみずからの防衛というふうには考えないでしょうし、むしろこれは御承知のように被害者という意識しかないわけです。そこで、問題は、こういう開発庁がつくられた場合に、当然この開発庁によってつくられる開発計画というものが国の観点ということになると、防衛計画というものが優先され、少なくとも防衛計画がこの開発計画の中に非常に大きな影を落とす。あるいは直接的には防衛計画は無関係でしょうが、間接的に開発計画の中に組み込まれていくというおそれが多分に感ぜられるんですけれども、その点について長官どう考えられますか。
  32. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私は沖繩開発の今後の方向で大きなネックの一つは、沖繩本島並びにその周辺の若干の島嶼における米軍基地の広大な密度、高い密度というものが問題になることは、前から申しております。外交折衝によってアメリカ沖繩と手を切って帰っていくと、そのときに自衛隊の一部局地防衛、そういうものの機能を肩がわりしてもらうことも要求してきた。あるいは肩がわりは日本がするのが当然だという日本側の立場だったのか、その辺のところはよくわかりませんが、そこのところと、これから開発していく場合に、防衛計画というものが沖繩発展を阻害するかという問題は少し別な問題ではなかろうかと思います。防衛庁も、米軍がどんどん引き揚げていく土地を、これはあたかも国有財産であったものが返ってくるかのごとく、次々と自分たちの展開の基地にするわけではないわけでありますから、さしあたりアメリカと防衛庁とが局地防衛について取りきめをかわして、アメリカが下がっていくという約束事になっていると私は思います。  したがって、今後の基地縮小、そして縮小されたものは当然沖繩県民の、直接は地主、県民、そして県の発展に貢献すべきものとして返還さるべきものである。それらはスピードも上げなければなりませんし、そしてそれらの返還のあと地というものは沖繩全体のために、地主の了解を得て発展計画の中に組み込まれていくべきものであると考えますので、今後やはり日本の防衛計画がどのように変遷しましても、沖繩発展日本側の防衛庁が阻害をする要因をつくっていくということはないだろうと思いますし、そういうことはないように努力をいたしたいと思います。
  33. 水口宏三

    水口宏三君 いまの長官の答弁では満足いたしません。たとえば一番いい例が、那覇空港一つとっても、もしこれがもっとあとでP3問題が起きた場合にはどうなりますか。これは民間に返還をするという約束があったはずですね。にもかかわらず民間には完全に返還できない。むしろ別の協定で那覇空港の一部、一部というか三分の一ぐらいは米軍が使用することになる、これはまさに国家的な観点からの安保条約上の問題として国家が処理をしているわけですね。そこで、私が申し上げたいのは、沖繩の開発計画をつくる場合の姿勢として、長官は終始いまおっしゃったようなことを言っておりますけれども長官が総理におなりになって、もう日本の基本的方針をお変えになるならいざ知らず、現在少なくとも安保条約が締結され、安保条約六条に基づいての沖繩の地位というものは、どんどんアメリカの基地が返還されるなどという状況は全くないと思います。これは那覇空港一つ見ても明らかでございますし、これはベトナムの問題を見ても明らかであります。だからどんどん返ってきますから別に支障ございませんというのは、これはむしろ悪い意味の常識論だと思う。むしろ現実の事態の推移というものは、アメリカ自身も上院でもしばしば言っておるように、沖繩におけるその軍事的な価値というものの評価は決して変わっておりません。そうなってくると、私は最初申し上げたように、まさに沖繩における米軍基地の問題というのは、安保条約上の国家的なむしろ観点、国家的な行政対象と申しますか、そういう問題になるわけです。これに付随して、むしろ防衛庁の問題になるでしょう。ここで防衛論争をやろうとは思いません。ただ問題は、そういうものを踏まえた国家がいま長官のおっしゃるような、どんどんどうせ沖繩の軍事基地は返ってくるのだから、それを民生に役立てるようにしていくから別に心配はない、こんなことばだけで私は納得できませんし、むしろ国が沖繩の開発計画のいわば決定権を持つということは、逆に沖繩開発に沖繩の防衛問題によって歯どめをかけるという危険のほうが非常に多いと思うんです。これは那覇空港が一番いい例でございます。そういう意味におきましては、私はどうも開発庁が最終的な計画の案をつくる、これはあとで問題にいたしたいと思いますけれども、総理がこれを決定するということ、国が開発の計画の決定権を持っておる、そのいわば主たる機関である沖繩開発庁の機能というものに非常に疑義を持っております。これはひとつ常識論でなく、現状を踏まえて、もう少し長官の誠意のある御答弁を伺いたい。
  34. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) いまの那覇空港が典型的な例であると言われるんですが、那覇空港は返還時においては返還をされておるという約束だったわけです。しかしながら、それが復帰前において工事の着工が困難である、あるいはまた暫定予算の関係等からやむを得ざる予算の執行等のおくれもありまして、当方のたとえばP3でありますなら普天間空港の滑走路の補強工事というものに早期に着工できないままでいるというようなことが、遅延をいたしておる最大理由でありまして、この約束が一方的に破られて、アメリカ側がからんでおるだけということではないわけであります。しかしそのまますみやかに約束の実行を迫りませんと、ずるずるいく可能性が、アメリカの軍・官の対立をよく知っておりますだけにあり得ると思いましたので、先般の閣議でそのことを担当大臣として強く発言をして、外務大臣もそういうことを受けてきのうあたり答弁もいたしておるようでありますが、ずるずるになって、約束事がなかったようなことにしてしまうということには私は断じて承知できません。さらに、今後那覇市の県庁所在地としての都市計画等の阻害要因である牧港米人住宅の問題とか、あるいは将来の大きな展望として那覇軍港の問題、こういう基本的な問題について、私たちは遠慮することなく米側との交渉を持ち、これは私は先ほどどんどん米側の基地が返されるからという表現を使った覚えはありません。中には相当長期間返されないところもあると存じます。この中には交渉いかんによっては返してもらわなければおかしい、返さないといってアメリカがそれに抵抗するはずがない場所等もたびたび見ておりますし、そういう問題は、外交当事者でありませんが、県の幸福のための青写真の設計に支障になると思われるものについて、私は担当大臣に、開発庁ができて開発庁長官ということになりますれば、開発庁長官立場から、政府の一員として当然外交当局、あるいは必要があるならば防衛当局に、県民の立場に立ってものを言うのが開発庁長官である、そういうふうに考えます。
  35. 水口宏三

    水口宏三君 どうもことばじりをとらえて言うわけではありませんけれども長官非常に能弁でいらっしゃるので、どんどん基地が返ってくるからとさっきおっしゃったわけです、それはことばじりではなしに。そういう感覚でこの沖繩開発というものにお取り組みになるとするとこれは非常に危険である。つまり国家沖繩における最大のむしろ行政対象というのは米軍基地ですよ、これは国家自身のですよ、安保条約に基づくこの米軍基地をどうするかということなんですがね。だから当然、いまの佐藤内閣がいつまで続くかわかりませんけれども、この安保条約というものを尊重し、安保条約というものを背景にしての日本の防衛というたてまえをとっておる限りにおいて、私は、何といってもやはり沖繩においてこの安保条約に基づくさまざまな軍事基地の問題というもの、この問題というものが沖繩の経済開発というものに大きな影響を与えるおそれがある。この場合、国家的観点に立てばどうしても安保条約というものに比重がいくおそれがあるんではないか。したがって、山中総務長官が、開発庁長官になったら自分はこうするというお話がございましたが、だれがなるかわからないし、どういうふうに内閣がなるかわからないので、これは私は、法制的に、そういう過程を踏むのではなしに、だれがなっても沖繩のむしろ自治の問題なり経済開発の問題なりが沖繩県民のために行なわれるような仕組みをつくるべきだ。もし、たまたま山中長官のかわりにもっと防衛に熱心な人が開発庁長官になるかもしれない。次につくられるのは、佐藤内閣以上に安保条約を尊重する者がなるかもしれない。そういう者がなった場合でも、私は法的にそういうものがきちんとできるようなことをするのが国会の任務だと思うんですね。そういう意味から私は申し上げているのであって、山中長官が、私が開発庁長官になったら努力しますと、それでは国会における法的な拘束性というものは、これはもう長官を全面的に信頼しますからよろしくお願いしますという機関に落ちてしまう。したがって、私が申し上げておるのは決して主観的な問題ではなしに、客観的に現実にそういう事態があるわけですから、こういうものを少しでも防止するような法的なとらえ方が必要だ。ところが、現在の開発庁のとらえ方というものは、国がその開発の最終的な決定権を持っているということは、これは多分に安保条約による防衛上の任務というものが優先する、あるいは、優先するかしないかは別としても、開発の問題について大きな影を落とし、これを阻害するおそれがある、そういうことを指摘しているのであって、そういう意味からいっても、私は、どうもこの開発庁というものの存在が、先ほど申し上げた沖繩住民にとっては非常なむしろ危惧のもとになる側面を持っているわけですね。だから、またもとへ戻って九十五条の適用ということになるわけですけれども、それはよしましょう。少なくともものの考え方として、長官が主観的に、私がなればこうやる、こうなればこうなるというような、そういうことではわれわれは納得できません。法的にいかがでございましょうか、現在の関発庁は。
  36. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) かと申しまして、おっしゃることをそのとおり受け取ることにしても、そういう心配があるから開発庁設置法あるいは沖繩振興開発法等において安保条約を部分的にそこで否定するとか、及ばない範囲をつくるとかということは、なかなかこれは法律上もむずかしいし、これはまあ与党、野党によって感触は違うわけでありますが、政府はやはり一体としての立場がありますので、それを、かりにそういう理想的な姿にしようとしても、煮詰めるには相当むずかしい外交折衝が要るのではないかと思います。したがって、この法律はこの法律で、いまおっしゃるように振興開発計画を定めて振興開発を進めていく場合に、相当な部分の障害が米軍基地にあるだろう、この点は私も初めから肯定をしておるわけであります。でありますから、開発あるいはまた沖繩の繁栄を願う担当の大臣たる者の立場というものは、それらのものがすみやかに沖繩の経済発展の障害から除去されていくように、そういう努力を続けていかなければならない責務がありますということを言う以外には、法律的に書くのはむずかしいんじゃないかと思うんです。
  37. 水口宏三

    水口宏三君 長官のおっしゃった、法律的に書くのは非常にむずかしいとおっしゃいますから、それじゃ私、その点で提案いたしたいと思います。たとえば現在、安保条約があるのでこれを否定できない。これはそうでございましょう。いますぐに、われわれ安保条約廃棄論を言っても、現在の佐藤内閣が安保条約を廃棄するわけはない。だから第六条は堅持をする。第六条によって沖繩に米軍が膨大な軍事基地を持っているのが現実です。その中で先ほど申し上げた沖繩の開発というものが行なわれる場合に、沖繩県民がこれまでの本土政府の姿勢からいって多分に軍事優先になるのではないかという危惧を持っているわけですね。したがって、もし、これを長官のそういう善意に信頼するということは、これは私は、さっき申し上げたように、国会立法機関である以上、たまたま何年、長官が在職なさるか、あるいはなさらないか、その方の善意だけに信頼して、それじゃ、それをお願いしますとは言えないという意味で、法的に、たとえば開発会議委員の任命と、それからもう一つは、振興開発の決定、これは現在、総理が行なうことになっておりますね、法律上は。これを沖繩県知事の同意を要する、ないしは沖繩県知事の拒否権を認めるということを一本入れたら、これは、私がいま申し上げた点は、法的に沖繩県民自治という観点からの経済開発というものを沖繩県民が安心して進めていく大きなよりどころになると思う。したがって決して法的に不可能ではないのであって、なぜそういう配慮をしなかったのかということをむしろ伺いたい。
  38. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 沖繩県知事の最終的な決定権とか、拒否権とか、そうぎらぎらしなければならないような内容のものを沖繩県に押しつけるようなことをするのかどうかということをまず考えなければなりませんが、沖繩県知事が反対であるような計画を沖繩に押しつけるようなことは、私はあり得ないことだと思うのです。沖繩のためにそういう振興開発計画をつくるわけでありますから、知事の原案作成権を認め、そして審議会——国会の御意思等も加わりまして修正された定員において、過半数沖繩の人が任命されるようにします。そして、その中には当然知事は優先的に入ります。そういうことを申し上げておるわけでありますから、それでも、なおかつ沖繩県知事が地方自治体の長としての責任をかけて拒否権を発動しなければならぬというような内容のものを押しつけるようなことをするのかという、私は、そういう事態というものが大体ないことがこの法律なんであって、沖繩県民のためにいいと思うこと、この点で合意する点を実行していくということでありまして、沖繩県民のためにいけないことだと思うことは、まずそういうことをつくらない、そういうものを国がやらないということが前提になって、私たちとしては善意のつもりでおりますし、また沖繩県に何か法律のからくりでもって最悪の場合は国の意思を押しつけてやるぞというようなことを考えて法律をつくるとするなら、初めからこの法律をつくらないほうがよろしいと私は思います。私たち沖繩に対してそういうようなことを寸毫だに思っていない立場にある本土人たちでありますので、その意味においては、いろいろの御質問にはお答えしますが、基本的な姿勢において私たちはそういうつもりで出発をしておるわけであります。
  39. 水口宏三

    水口宏三君 どうもその点に関しては平行線なんで、あるいはこれ以上申し上げてもしかたがないと思いますけれども、ただ、長官が論法をお変えになるので私は非常に困るのでございますけれども、さっきは法的に、安保条約というものがある、そうすれば法的にいまどうこうすることはできないから自分たちはそういう考えで取り組むのだという御説明をなさったので、法的にそういうことをやり得る可能性はあり得る、つまり同意を求める、このことは決して私は無理でも何でもないと思うのでございます。あるいはもし、長官がそういうようなことを考えていらっしゃるなら、当然、沖繩県知事の同意を求めるということは、よりそれを法律的に明らかにすることであり、しかも、これまでの経過を見ますと、軍事基地問題、あるいは軍事問題についてはしばしば政府沖繩住民との考え方には大きなズレがあるわけなんでございますね。そういう意味で、私はむしろ同意を求めるとか、拒否権といっても全体的な拒否権は必要はないと思う。部分的拒否権でもけっこうだと思う。そういう法的な道がありますということを申し上げておるのであって、それを初めから——また論法がもとへ戻って、われわれは善意でやるのだから、そんなことをやる必要はない、そんなことを言えるくらいなら初めからこの法律はつくることはない、そんな答弁では納得できない。もし長官が、それほど沖繩県民の今後の経済発展、あるいは福祉というものをお考えになってこの法律をおつくりになったのなら、そういう行政的な立場からの善意というものが法的に何か保障されるために、私はこの二つの道がありますよということを申し上げたので、さっきは法的な方法はないとおっしゃったから私は申し上げたのであって、やる意思がないということなんでございますね。
  40. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) それは違うのです。さっきおっしゃったのは、安保条約と米軍に対する基地の提供という問題に議論を置いて言われたから、そういうことを法律に持ち込むことは困難です。そういうことから、それに引き続いて、しからば道があるとおっしゃって、拒否権なり同意なりということでおっしゃるならば、沖繩県知事が日米安保条約というものに対して異論を持つ、あるいは基地の提供というものに対して異論を持つ、したがって典型的な例をあげれば、嘉手納基地というものは、嘉手納は五カ年計画でこのような開発計画を昭和四十八年度から進めてくれというような案をつくってくる。それを知事が、国が了承しなかったから知事が拒否権を発動する。そういうような具体的な点を念頭に置いて議論を展開しておられるとすれば、私はそういうことは話し合いの中で、知事が拒否するようなことであるならばそれはやらないことになるでしょうし、知事が最終的に法的な権限で同意を要するようなことであるならば、それは事前に話のつく問題であって、これは国の安全とか何とかいう軍事的な要素も何もない、沖繩県民のための振興開発を推進するための行政上の機構でありますから、あるいは計画でありますから、それに対して現実的に処理をしていけばよろしいことでありますから、いまの御提案は、安保条約に関係をして法律上の道があるということであれば、私はそういう問題とこの開発庁なり振興開発というものはこれは全く別なものであると、そう割り切っておりますので、答弁としてはそういうことを申し上げたつもりであります。
  41. 水口宏三

    水口宏三君 それはたしかです。私も別に安保条約そのものについて県知事に拒否権を持たせろと言っておるわけではない。ただ、開発計画の決定権が首相にある、国家が持っている。国家という観点から、たとえば少なくとも現在の佐藤内閣、これはやっぱり安保条約を非常に尊重をし、なおかつアメリカ側沖繩における軍事基地というものの価値を非常に強く強調しておる。そうすると、国家が決定をする場合には、どうしてもこの基地の問題というものは優先される。ないしは開発計画の中へ非常に大きな影響を与えてくる。こういうものに対して沖繩県知事が、沖繩の経済開発に対する計画について同意なり拒否権を持つということは、これは私は、先ほど申し上げた沖繩県における歴史的な自治権の問題を振り返ってお考えになればわかると思うのです。沖繩県民がどれだけ反戦・復帰という形で長い苦難の道を歩いてきたか。その上で獲得したもし復帰であるなら、少なくとも沖繩県民がみずからの経済開発に対して少しでも基地からの悪い影響というものを少なくしていきたいという気持ちが起こるのは当然だと思うのです。長官は、自分は同じ立場だとおっしゃいますけれども、そういうものを法律的にある程度可能にするには、経済開発の内容についても、国家が考える開発計画と沖繩県民が要望する開発計画との間に大きなズレが起こる可能性がある、そういう場合に、私は同意なりあるいは部分的拒否権というものをつくることによって法律的な道がつくられますよということを申し上げたのである。ですから、長官法律的な道はないとおっしゃるから私は申し上げたのです。そういう観点から、なおかつそれは全然長官としては納得できない問題でありましょうか。
  42. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これはどうもずっと議論しても見解の相違になるのじゃないかと思うのですけれども、たとえば沖繩県知事が原案をつくり、沖繩県知事が決定をした計画に国が責任を持ちなさいということをかりに法律としてつくるといたしますと、これはなかなかむずかしい問題を起こすことになると思います。国が決定をするというのは、国の責任においてその計画を定めるということでありますから、定めた計画は国を拘束する、すなわちその沖繩県知事の原案作成から出発した過程を踏まえ、国の責任においてつくられる計画というものは、それに対して国が推進し執行する責任を持たなければならぬということになっておるわけでありますから、もちろん県の主張を基本的な土台とするにしても、県がつくったものを、県知事が決定したものを国が行なう義務を負えということになりますと、これはやはり地方自治体の意向を最大限に尊重しなければならぬ地方自治体の開発なんだから、その自治体の責任者の意向に沿ってやれということと、現実に知事のつくった案そのもので知事が決定をして国が責任を負えと言われることとは、やはり問題は法律的に提起されるのではないか。そのようなことは、やはり自治を尊重し、沖繩県民の開発計画をつくるのであっても、県知事のつくったものに全部国が責任を持てということは、なかなか私どもとして法律上つくりにくいという気持ちがいたします。
  43. 水口宏三

    水口宏三君 どうも長官、私の申し上げたことを誤解していらっしゃるのですね。知事のつくったものをどうこう言っているのじゃないのだ。決定権、つまり計画の決定権は総理が持っているわけなんです。これを私は決して否定していないのです。総理が国の計画としてつくることも否定していないのです。ただ問題は、行政事務というものはしばしばその人の、さっきも例に出たように、おれは、長官は非常に沖繩のことを考えておるのだ、善意なんだ、そういう、沖繩立場に立つのだから、自分が長官だったらこうしますとおっしゃいますけれども行政事務というものは、その人の立場によって、法律的な幅が非常に広ければ広いほど変わってくるし、また国家意思というものを住民に押しつけるという傾向がある、これはもう大かたの学者の認めておることです。だからこそ私は、むしろ国で決定したものに対する沖繩県知事の同意ということを言っておるのです。決定をするときに同意を求めて決定をする。だからもし長官がおっしゃるように、初めから県知事がつくった原案について国が十分配慮をして話し合いをしてつくるんだと、これは行政行為ですね、法的行為ではございませんよ。だからそういう行政行為というものがその人によって非常に変わってくるおそれがある。だから最終的に、もし長官考え方でいけばそういう計画を立ててやっていくからよろしい、それを沖繩県知事が同意をするのはあたりまえなんだ、沖繩のためにやるからあたりまえだということで、同意というものを変な、決定というふうにとって、同意は必要はないじゃないかとおっしゃるけれども、私はむしろ沖繩県知事の同意ということを法的に規定することによって、だれが長官になろうが、あるいはだれが総合開発局の事務局長になろうが、沖繩県民自治というもの、あるいは自治権に基づく沖繩の経済開発というものは法的に保障されるということを申し上げておるのですね。だから、どうも行政上の問題と法的な問題をときどき使い分けをなさるので議論が混乱すると思う。私は決して沖繩県知事がかってにきめた、かってというか独自にきめた開発計画を国がそのまま責任を持てということを一言も言っておりません。逆に、長官自身が、十分相談をしてやるんだから沖繩県知事が同意するのは当然だとおっしゃるならば、同意を持たせることにどういう支障がありますか。
  44. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私は沖繩県知事が同意するのは当然だと言っているのではなくて、原案を作成するのは知事である、その知事は過半数を沖繩の代表によって占められる審議会の構成者でもある。したがって、そこで知事が退場をしたり反対を表明するものを多数決できめたりということは現実にあり得ないと思う。したがって、そのきまった審議会の議を経たものについては国が責任を持って執行いたしますからということで、形が総理大臣の決定ということになっておるのでありまして、初めからそういうぎすぎすしたものになるだろうということを考えておるわけではございませんから、その経過において、審議会の議論の中において、そういういま想像もしていないような、多数決において、あるいは知事が退場するような事態において決定されるようなことはあり得ないと私は思っておりますので、あえてその必要はないと考えます。
  45. 水口宏三

    水口宏三君 これは非常に重要な問題ですから、しつこいですが伺いますけれども、いま審議会のことを強調されましたけれども、現在ある審議会で決定された答申を政府がどこまでやっておりますか。私は全部事例をあげてもいい。私もきのう決算委員会で対外経済協力の問題について質疑をしたのでありますが、これは対外経済協力審議会というのがございます。そこで出した答申がございまして、これは内閣総理大臣が委託をして答申をしたが、この答申が何一つ実行されていない。だから形の上で審議会があり、審議会で十分出たのだからこれはいいのだということではない。そういうことでは私は納得できないと思う。だから、行政というものはそういう危険性を持っておるわけですよ。だから、こういうものを国家立場で法的に、沖繩県民の福祉なりあるいは沖繩県民の独自の経済発展というものができるような法律的な安全弁をつくっていこうということが、これは私はむしろ重要だと思う。行政的な立場からの善意とかあるいは形式とか、そういうものだけでもって済ませるというなら、何も国会でこれを審議をし、法律をつくる必要はないと思うのですね。全部おまかせすればいいということになっちゃう。だから、そこのところはもう平行線だから、答弁の必要はないとおっしゃれば答弁していただかなくてもけっこうでございますけれども、どうも私には納得できない。  そこで、議論は逆になりますけれども、それほど長官が、この法案というものは沖繩県民の福祉のためだとおっしゃるなら、もとへ戻って、九十五条の住民投票を適用して投票をすべきだと思う。沖繩県民はどういう反応を示すか、見ていただきたい。その点いかがですか。
  46. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは疑義があるとか心配があるとかいうことで、九十五条の適用、運用というものはなさるべきものでないので、その実態が憲法九十五条の住民投票を必要とする内容であるかどうか、それによってきめられるべき問題だと思います。
  47. 水口宏三

    水口宏三君 必要があるかないかということは、さっき申し上げたように、私は住民投票にかけるべき性格のものである。ただ、政府はかけなくていいといっておるだけのことであって、住民投票にかけることによって何ら違憲にもならなければ、違法にもならなければ、そういう点は全然ないわけですね。とすれば、いま長官のおっしゃったようなそういう考え方というものを、沖繩住民がほんとうに支持するかどうか。逆に言えば、沖繩住民の支持を得るために九十五条に戻って住民投票にかけるべきだということを申し上げて、これ以上もうこれは論議になりませんので打ち切りたいと思います。
  48. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これはそこまでの議論にはなっていないんですけれども、手続としてはどうしてもやるんだということであれば、国会法の定めたところによって、この法律が通過いたしますときに、制定する前に住民投票に付すべきことを、憲法九十五条の適用を国会でおきめになって、それを受けて地方自治法というものが動いていくという過程をたどるわけでありますから、私ども政府はそう思っておりませんというだけにとどまっておるわけでございまして、そのあとは国会の御意思におまかせするということで、反対とか賛成とかいうものじゃないと思います。
  49. 水口宏三

    水口宏三君 まあいずれにしても、それじゃこの問題は論議になりませんので、これ以上論議をしてもしかたがないと思いますので。私の申し上げたことは、これは決して杞憂でもなければ、沖繩県民そのものがそれを心配しているからこそ、今度の復帰についても全面的な喜びをあらわしていない。またベトナムのああいう情勢が起これば、沖繩がどういう役割りを果たしているか、どれだけいま沖繩が急速にまた軍事基地が活気を取り戻しているか、こういう状況を十分お考えになって、まあ長官、さっき口でちょっとおっしゃいましたことを、自分が長官になったらという御答弁ですが、長官になったらよほどその点は御配慮願いたいと思います。  以上で、一応それで私の第一段階の質問を終わりまして、次に総合事務局につきましては、きのう同僚議員からほとんど具体的な点は出ているかと思いますので、ここで私、あえて申し上げるのは、きのうと重複しないような形で私は申し上げたいと思うのでございますけれども、きのう長官でございましたか、あるいは長官でなかったかもわかりません——長官でございますね。大体まあ合同事務局をつくることによって、各官庁の現在の、たとえば地方農政局とか地方通産局の権限を合同事務局になればおろせないんだと、合同事務局になれば法律的におろせないんだという御答弁があったと思いますが、私のちょっと調べた限りにおいて、法律的におろせないという根拠はないような気がするんでございますけれども、その点いかがでしょう。
  50. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは確かに法的におろせないと言った覚えは私はないのですが、これはないだろうと思います。しかし現実的に沖繩県行政区画内においてのみ行なわれる国の地方支分部局である場合に、そこに通常のブロックの機関の長の有する許認可の最終権限その他がおろせるかという問題は、各省あまりにも小さい機構で出てまいりますから、これは現実的にはおそらく無理であると、私どもは行管やその他の折衝の過程においてもそういう気持ちがいたしました。したがって、これを統合された出先の集合体としての地方支分部局という形でとらえた場合に、そこの長に対して一括して通常の支分部局のブロックの長の有する権限を与えることは可能であるということでそういう措置をとったわけであります。もし私の答弁が間違っていたとしたら、ただいまの答弁が正しゅうございます。
  51. 水口宏三

    水口宏三君 それでは、きのう私が伺った法的な問題は、お取り消しになるならそれでけっこうでございます。  その次に伺いたいのは、他府県の場合には、大体まあそういうブロックの長の権限、その下に各府県の支分部局が一定の権限を持って行なっておる。沖繩だけに、他府県の持っていないブロックの長の権限をおろすということは、どうも規模的にも小さいし、やりにくい、そういうお話だったんでございますけれども、私はむしろそのために、前段であれほど沖繩における自治の問題というものの重み、このことを強調したわけでございます。しかもその点は長官も御同意なすったわけでございますね。とすれば、私は、沖繩にできる各省庁の地方支分部局に、本土におけるブロックの長の持っている権限をおろしたからといって、別に他府県の人たちが文句を言うわけでもないだろうし、むしろ沖繩における自治歴史的な重みというものを日本政府自身がこれだけ評価しているのだと、まさに私は沖繩県民に対する敬意である。長官がおっしゃったように、これまで放置していた日本政府の責任の幾分かでも果たす私はあかしになるのではないか。それを、ただ多少小さ過ぎるからおろしにくいとか、そんな手続問題、やはり長官がおっしゃっておられる常識論から割り切られたのでは、私は納得できません。法律的にも不可能でないなら、当然地方支分部局にこれをおろす道はあり得るのだから、むしろ総合事務局というようなことにせずに、地方支分部局にブロックの長の権限をおろす。これは本土で合同庁舎方式をとっておるわけです。ですから、不便なら合同庁舎をおつくりになるでしょう、黙っていたって。なぜ合同庁舎方式をとって、本土における地方の支分部局のブロックの長の権限をおろせないのですか。
  52. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これはもう絶対的にだめだという意見を私もした覚えはないので、それだけの数多くの出先がそれぞれ沖繩県行政区域内のみで事務を処理するために出ていった場合に、それが全部それぞれ通常のブロックの機関の長の有する許認可事務その他の権限をもつということは、これはいままでやってまいりました行政立場から見ても、作業の過程から見ても、そういうことは困難です。しかし沖繩県が今日まで、いびつな形であっても国家行政事務というものを処理してもらっておる。したがって、琉球政府のもとにおいて沖繩県の中において全部の事務の処理ができておった沖繩県民人たちが、国家事務に移ったために、国の一元になったために、それらの分野において、ブロック機関の長といえば九州まで行かなければならない場合等がある。そういう場合において、やはり非常に不便になったり、いままでと違って権力的にも国家権力が遠いところから指図しておるようなふうに見られてはいけないし、それがまた県民の利便、サービスその他の面において、身近なところで処理してあげるほうがいいんじゃないか、こういう合同事務局の形をとることによって、ここに集合体としてブロック機関の長の権限を与えていこう、こういう形をとったわけであります。いわば沖繩県民のためを考えて私どもやった措置でありますが、いまおっしゃったように、合同庁舎といえば、同じところにみんな入っているんだから、外から見た形においてもみんな同じだし、人間も同じだし、それぞれの国の出先のブロック機関の長が所轄していけばいい、これも私は一つの御意見だろうと思います。そういうふうにできるものは、十一管区海上保安本部等のように、できるものはしておるわけであります。あるいは金融公庫にしても、あるいは電力株式会社にしても、そういうものは別にやっておりますが、そういうもののできにくいものをここに集めて総合事務局にしたということであります。
  53. 水口宏三

    水口宏三君 どうもまた議論が混乱してきたのでございますけれども、できにくいものを集めたとおっしゃいましたけれども、私はむしろ何で財務局、農政局、通産局、海運局、陸運局、公取などというものは、これでありながら一体じゃ総合事務局に統合した支分部局と、しなかった支分部局、この二つの地方支分部局の基準を何でおとりになったのか。
  54. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 単独でブロック機関の長としての権能を持ったまま支分部局として進出できるもの、そういうものは単独で出ております。それに達しないもの、そういうものは大体総合事務局の中に入っているということであります。
  55. 水口宏三

    水口宏三君 単独でブロックの長の権限を行使し得るような支分部局は単独でおろしたというわけですか。
  56. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) そういうものさしも一つありますし、また行政監察事務所みたいに、国の行政を監察するのに国の行政の総合された総合事務局の中に入っていてはちょっとやりにくいだろうということで、公取と若干ニュアンスは異なりますが、これを外に出してあるというものもあります。
  57. 水口宏三

    水口宏三君 いまたまたま長官の話に出ましたが、私は公取を入れて行管を抜かしたのはどうも納得できないので、むしろいままでしばしば問題になるのは公取が非常に問題になっているわけです。公取こそ独自性を持たないと、ほんとうに県民の経済活動にとって非常な不安を与える。そういう意味では、やはり行管を入れて公取をはずすべきだと思うんです。  それからもう一つは、それじゃ何で財務局、農政局、通産局は本土のブロックの長の持っている権限を総合事務局にしなければ地方におろしにくいのか。
  58. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これはもう事業分量等において、沖繩県行政区画内においてのみ国の地方出先機関としての仕事をするわけでありますから、その量その他はごくわずかなものになり、実際上の本土のブロック的な立場から見ると、一県の中でも小さい区画になる。そういうことを考えれば、それぞれが単独で出先でブロックの長の権能を持つということはきわめて困難だということであります。
  59. 水口宏三

    水口宏三君 そうすると、総合事務局をつくると、そのおそらく機構は農政、通産、海運、それぞれできるでしょう。そうすると、農政に所属する人が海運の仕事もやる、海運に属する人が通産の仕事もやるということですか。
  60. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) そうではありませんで、海運は海運、陸運は陸運と分かれるわけですが、それはそれぞれ総合事務局長を通じての指揮は、直接の所轄官庁というものが、運輸省なり建設省なりが持って行なうことになるわけです。
  61. 水口宏三

    水口宏三君 とすれば、たとえば通産局なり農政局をとった場合に、本土において農政局長なりあるいは地方通産局長が持っている権限というものが、別に総合事務局にすることによって拡大されるわけじゃないわけですね。長官は一沖繩県の仕事の分量は非常に少ないから単独ではおろしにくいとおっしゃる。総合事務局をつくり、総合事務局に入れれば、ほかのその他を手伝って一つの大きなことができるのだというならわかります。ところがそうじゃなくて、相変わらず縦割りなんだ。とすれば、じゃ、総合事務局内の農政担当者がやる仕事の分量というものは、総合事務局になろうが単独の支分部局であろうが、同じわけじゃないですか。
  62. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) それぞれの、たとえば財務部とか農林水産部とか通商産業部とかそういうそれぞれの部を置きますけれども、それぞれの部を独立でそれぞれに置くということになりますると、それについての会計あるいは人事その他庶務、すべての仕事をそれぞれの部門ごとに置かなくてはならぬわけですが、総合事務局に各部として入りますると、そういう各部に共通するところの事務というのは一部門の総務部なりなんなりでやることができるという点で、行政簡素化の面に沿うことができるということであります。
  63. 水口宏三

    水口宏三君 私の質問に対して全然言っていませんよ。何でとんでもない御答弁をされるんですか。権限委譲の問題を言っているんです。長官は、沖繩県という小さな県に地方支分部局をつくった場合に事務量が非常に少ない、したがってそういうところに本土におけるブロックの長の権限をおろすということは困難であるから、総合事務局をつくることによってならそこにおろしやすいというお話だった。ところが中身を聞いてみると、総合事務局はつくるが、農林部は農林部、通産部は通産部として縦割りの行政が行なわれていく。そうすると、事実上は、別に総合事務局に入ったからといって地方支分部局としての任務が、あるいは仕事が拡大するわけじゃないんですね。だから何で、権限委譲の問題について、総合事務局にすれば権限を委譲しやすいが、単独の支分部局では権限を委譲しにくいのかということを伺っているんです。一緒に合同庁舎つくったら清掃事務の面でいいとか、お互いに連絡しやすいからということでつくったんでしょう。そんなことを私は聞いていないんです。それならばむしろ合同庁舎方式をおとりになったらどうですか。
  64. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) 各部の仕事をそれぞれおろしまして、この総合事務局においての仕事といたしましては、各部の仕事をそれぞれおろしたほかに、なお総合的にそれぞれの部局が個々的にやるという点でのちくはぐの問題の点がありますので、そういう点を総合的に行なう、こういう点で、総合事務局に統一して入れまして、そうして一人の長がそれを統合していくというねらいを持っているわけでございます。
  65. 水口宏三

    水口宏三君 いやそういうことじゃなくて、権限がなぜ委譲できないかを伺っているんです。権限は委譲できるんでしょう。
  66. 平井廸郎

    政府委員(平井廸郎君) この問題につきまして私どものほうもその審査に当たりましたので、審査についての考え方を申し述べたいと思いますが、ただいま先生御指摘のように、地区を小地区にいたしました場合に権限を法律的におろすことが絶対不可能であるかどうかという点については、必ずしも不可能ではない。これは長官も先ほど申されたとおりであります。また、現にこの沖繩開発庁総合事務局に置かれます各部の仕事の指揮権につきましては、それぞれの所管大臣が持つということでございますので、そういう意味では、この総務事務局の性格が総合事務局なるがゆえに変わってくるというものではなくて、内地の場合と同じものであるということは先生御指摘のとおりでございます。ただ、こういった沖繩というきわめて限られた地域につきましてそれぞれの支分部局を設けるということは、行政機構の観点からいたしますと、できるだけ簡素、合理的な行政機構をつくるという立場からいたしまして、それぞれの小さな事務所をつくるということになりますので、そういったことはできるだけ避けることが望ましい。通常でございますれば県単位の機関はつくらない、許認可関係は大体各局において所轄いたしておるわけでございますから、つくらないのでございますが、何ぶんにも、海を隔てて九州までいろいろ許認可関係の仕事のために出てまいられるということはたいへんだという考え方もございまして、そういった出先機関をつくることは必要であろう。その場合に、非常に小さな出先機関をたくさんつくりまして、それについて人事なり会計なりその他各種の庶務等を持つような機構を非常にたくさんつくることは必ずしも好ましいことではない。そういう観点から、総合事務局という形にすることが適当であろうと考えた次第でございまして、そういう意味で、一つずつつくることはつくりにくいと長官が申された意味は、おそらく、実態的に見てあまりにも小さな事務所をたくさんつくることは望ましくないというふうに私ども理解をしたわけでございます。
  67. 水口宏三

    水口宏三君 私は、実はきょう最初に沖繩自治の問題を長官に伺い、自治に関する限り長官と非常に近い立場にあるので、安心して実は質問したんです。しかし事、具体的な問題に入っていくと、どんどん変わっていく。ことに、いまの局長なり他の方々の御答弁を聞いていると、まさに長官の考えている沖繩自治の重みというものを全然無視しておるのですね。ただ便利だから簡素化するのだ。そうではなしに、むしろ沖繩県民にとって、沖繩県民自治にとってそれがどういうウエートを持つかという観点からのみ、まず第一に割り切るべきだと思うのです。そういう意味において、私の申し上げたように、個々の支分部局におろせるものなら支分部局におろし、なおかつ、小さな事務所がめんどうならば合同庁舎をおつくりになったらいい、何しろやっているのですから。なおかつ、私が伺いたいのは、総合事務局長の問題があるのですね。さっき岡部さんは、総合事務局長が総合調整すると言うけれども法律的には、少なくとも農林部の所管する事業、これは農林大臣の指揮監督下にあるわけでしょう。何を調整するのですか。
  68. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) 法律的には、一人の事務局長がそれぞれの各省大臣の指揮を受ける、そういうことになっております。それで、その権限が総合事務局にありませんで、それぞれ個々的にございますと、それぞれの、地建なら地建の局だけで、それぞれのその独自の立場でやるわけですが、ところが、総合事務局長はそれぞれの省の指揮系統を受けまして、一人の人間がすべての仕事をするということになりますが、それぞれの個々的な機関だけになりますと、それぞれの人がそれぞれの立場だけでやっておる。ところが一人の人は、それを集中的に自分のところで、それぞれの省の指揮命令がきますけれども、そこでそれを実際に実行に移す場合に、そちらのほうの仕事を先にすべきである、この仕事とこの仕事とはこういうふうに関連をしたほうがいい、そういう実際の運営ができるという点が長所になると思います。
  69. 水口宏三

    水口宏三君 しかし、実際、行政をやっていらっしゃる皆さん方のことですから、私からあえて申し上げる必要はないと思いますけれども、おそらく、こういう機構をつくった場合に、各官庁のなわ張り争いというものがいかにきついかということは皆さん御承知のとおりだと思うのです。経済企画庁一つとっても、そうでしょう。経済企画庁に通産省から行った方が、少しでも通産省の言い分を通せば、よくやったと、本来ならば、すぐ課長にはならないけれども、戻ったら課長にしてやろう。これは実例ですよ。私だって、行政内容について全然別にしろうとじゃない。あなたのおっしゃるのはお座敷議論で、局長は総合調整できるから、農林部はこういうふうにやりたいというけれども、まず通産部を先にやらして、農林部を押えます、そういう権限があるのです。それは農林省がぜひ早くやれという、そういう指示をした。これは農林部長なら農林部長は、それは一生懸命やりますよ。私はそういう意味において、局長立場というものが、これは私は、合同庁舎の管理事務と、あるいはさっきおっしゃった総務的な、あるいは経理事務、そんな点についての仕事はあるかもわからないけれども、実質的な行政内容に総務局長がタッチするという、大体そういうたてまえじゃないでしょう。
  70. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) なるほど、おっしゃいますとおりに、そういう点はあると思います。あると思いますけれども、それを野放しに置いたのと、それをそうでない、そういう面を配慮して、できるだけ総合的に各省の総合行政をやっていこうということにきめていき、そういう運用をやるのと、野放しにやるのとは違うと思うのです。なるほどむずかしい点はございますけれども、それがやりいいような機構をつくっていくというところに観点を置いているわけです。
  71. 水口宏三

    水口宏三君 一体、じゃああなたはあれですね、まるで沖繩総合事務局でもって沖繩統治しようという感覚ですね。沖繩の県の行政をやるのはだれですか。沖繩県知事ですよ。沖繩県知事こそ総合的にそういうものを考えているのであって、むしろ、もし、長官がさっきおっしゃったように、沖繩自治というものをほんとうに尊重をするならば、農政部ではこう言っておる、通産部ではこう言っておる、知事どうでしょうかと、むしろ知事の判断に基づいてそれらの緩急というものが調整されるところに、地方自治というもの、特に沖繩における地方自治の重要性があると思うのです。総合事務局長がそれをやる可能性があるし、やるほうがいいんだから総合事務局を置くんだというのは、むしろ全然沖繩自治を無視しております。  逆に伺います。総合事務局、あるいは総合事務局長というものと対応する沖繩県はどうなるんでございますか。たとえば、普通ならば、大体、地方支分部局というものは、県庁の中のそれぞれの部、あるいは課に対応をして、連絡をとりながら仕事をしておりますね。総合事務局長あるいは総合事務局に対応する沖繩県庁におけるそういう機構というのはどうなるんですか、それをちょっと伺います。
  72. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) 御質問の第一点の、その総合的にやるのは、県の行政を総合的にやるのではございません。各省の仕事は、これが個々ばらばらに向こうへ出ていくわけです。ところが、それにつきましては、各省はそれぞれのブロック的な、その省の観点のみで仕事をやるということが、従来、私たち実際に各県の行政をやってみて、それが一番大きな一つの問題点になっておるわけです。沖繩県においては、そういう問題点を除去しようというところにこの観点があるわけでございます。それは県のほうの行政を総合しようというのじゃなくて、国のほうの行政、これを総合しよう、調整をしようと。行き過ぎたり、また、ピッチの上がらないところをピッチを上げるようにするということで、逆に、国の行政のほうを総合調整しようということにございますので、決して県の行政を国の機関が総合行政をしようということではございません。この点は、いままでも、琉球政府といろいろ話をしておりましたときに、最初に琉球政府もそういう考え方を非常に持っておりましたのです。特に、総合ということばを、県のほうを総合行政するという考え方に最初誤解をいたしておりまして、その点で、なかなか、向こうのほうでも誤解があったようですけれども、そのうちに、話をしていきましたときに、その点の誤解が解けて合意に達したということなんでございます。  それから県との関係は、県にはそれぞれの部ができます。沖繩県には六部できるようでございまするが、それぞれの部が、普通の県と同じでございます。普通の県が、それぞれのブロックの機関と折衝すると同じようにいくわけであります。ところが、これもまた、個々的にやったり、それから沖繩県でも長い間の、二十七年間向こうにおりましたから、本土の制度になじんでおりません。それからまた、本省のほうも、各省、いままで隔絶がございましたから、その点が非常に向こうの事情も理解をしないという点がございますので、そういう点をよく歩調を合わしたり、実情をよく調査したりして、総合的に本土行政沖繩県のほうにマッチしていこうじゃないかというところにねらいがあるわけでございます。
  73. 水口宏三

    水口宏三君 長官、ちょっとお立ちになるそうですから、一言だけ。いまの、どうも岡部さんの御答弁では満足いたしませんので。  重ねて伺いますけれども、しきりに、総合事務局長が国の事務を総合調整する、総合調整するということを看板にしていらっしゃいますけれども、実際できないということは、あなたはおそらく御存じだと思うんでございます。さっき申し上げたように、何回かの事例で、これまでそうです。むしろ今日は国の行政事務というものは、これは原点に返って、沖繩自治を尊重し、沖繩の平和で明るい経済建設にむしろ協力をする。支配し、指導するわけじゃないわけですね。とするなら、むしろ、県庁という、これはまさに総合的な自治体があるわけでございますから、むしろ、この県庁という総合自治体を尊重し、なおかつ、さっきおっしゃったような、一々熊本まで出て行くのが不便なら、権限は沖繩の支分部局におろして、そうしてそれらの総合調整というものを、まさに県知事の権限において、まさに、農林部は先に農水道をつくりたいかもしれないけれども、やっぱり飲料水が先なんだから、ぜひ上水道をつくらしてくれと、こういう調整を、むしろ県知事の立場に立って行なうことが、これがまさに長官御承認になった、沖繩自治的な今後の経済発展にとって非常に肝要であり、重要なことだと、そういう考えから申し上げているわけです。けれども、ただ、国の行政と総合調整をするんだから寄与するということをおっしゃる。そうじゃなくて、国の行政は総合調整じゃなくて、まさに、沖繩の今後の発展への協力なんでしょう。とするなら、むしろ沖繩県ないしは沖繩県知事というものを中心にしたまさに総合機関があるんですから、それに協力するためには、逆に、個々の支分部局があって、そうして個々の支分部局というものに対してある程度沖繩県知事の考えている総合調整というものがいくような、そういう機構をつくっておくことのほうが、私は、むしろ国の行政事務というものがまさに本来の自治を尊重した形で総合調整されるんじゃないか。そこに総合事務局があり、事務局長がいて、おそらく事務局長は県知事と話をするんですかね。これはまさに国と県とのむしろ、いわば対立関係と申すとおかしいですけれども、本来、県を主体にした行政ではない、国の行政立場からの主張というものが強くなってくる。これを少しでも弱めて、むしろ沖繩の県知事の権限における行政を助長し、これを助けるという観点に立つならば、私はどうも納得できないのでございますけれども、その点について、これはむしろ事務的なと申しますか、そういう御答弁よりは、まさに長官の最初の、原点に返った沖繩自治を尊重するという観点から、常識の政治論として御答弁を伺っておきたいと思います。
  74. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは、国の固有事務の推進にあたって、現地に総合事務局を置くということだけのものでありますから、沖繩県の本来持っている固有の事務、機能、行政というものをこの総合事務局が侵すものでもありませんし、ばらばらにみんなが、各省が出ていって、かりにそれに、行管等と合意ができて、ブロックの長の権限を与えたにしても、それもやっぱりみんな全部それぞれの直属の大臣の指揮をまっすぐにダイレクトに受けるだけのことでして、それを沖繩県知事の意向を聞いて出先がやればいいと言われますけれども、これはやっぱり国の事務ですから、県知事の指揮を受ける側には、やはりばらばらに出ていっても仕組み上むずかしかろう。その意味では、やはりまとめて、そこにブロックの長の権限を与えておろしておくということが、せめてもの、そういう行政の統一されない推進というものを、それをチェックしていく、そして沖繩県との連絡をスムーズにしていく上ではかえって私はプラスだろうと思います。
  75. 水口宏三

    水口宏三君 長官、ちょっとお立ちになるそうですから、けっこうでございますけれども、私は、いまの長官の御答弁の中で、国の固有の行政事務と申しますけれども、ここで問題になっているのは国の固有の行政事務の内容云々ではなくて、岡部さんがいまおっしゃったのは、これは、それぞれの支分部局でもってどっちが先だ、こっちが先だ、いやこっちはおれがやるということでもってごたごたすると困るから、その総合調整ということをやりたいのだ、とするなら、もちろん国の固有の事務地方支分部局がやること、そこまで県庁に移せとは私は申しません。だから、総合調整という観点についてならば、むしろ沖繩県の固有の、経済発展へのさまざまな行政事務というものを、これを助長するという観点から、沖繩県知事にむしろ総合調整をする余地を十分残しておくことのほうがプラスではないかということを申し上げたので、別に国の固有の事務の内容まで沖繩県知事に変更の発言権を持たせるということを申し上げているわけではないのであって、この点誤解があったらひとつ……。そういう観点に立ってこれはそう申し上げたわけですが、私は、やはり総合事務局というものは、決して、沖繩県民自治を尊重するという観点であるよりも、むしろ国の行政というものを沖繩県の中で国の立場からむしろ浸透さしていくために強力な国の機関をつくると、そういう印象を私自身も持ちますし、沖繩県民も持つであろう、このことがはたして将来、沖繩県の経済開発とか、あるいは自治的な発展にプラスになるかどうか非常に疑問であると思いますけれども、一応この点についての質問はこれで打ち切りたいと思います。  それから、いま申し上げた私のもう一つの裏打ちは、これはどうもいまの計画を見ますというと、沖繩総合事務局の人数は八百十人になるわけですね。沖繩県庁の人数はどのくらいになるのですか。  それじゃ、いまそれを御用意なさっているそうですから、そのほかにもう一つ伺います。それじゃ沖繩総合事務局の、いわば県知事と総合事務局長、こういうものは随時連絡をとるという形なのか、あるいは何らか定期的に会合をして、ある程度長期的な、中期的なそういうものに対する調整を行なうような、そういう公的な交渉の場をつくるというふうにお考えになっているのかどうか、その点もあわせて伺っておきたいと思います。  それじゃ時間がございませんので、総合事務局の問題、もう少し伺いたいのでございますけれども、一応総合事務局につきましては、基本的にどうも立場が、片一方は、これは沖繩自治にプラスになる、私はむしろ沖繩自治にとってマイナスだという観点から議論を展開しましたけれども、この点についてはだいぶ議論を展開しましたので、総合事務局についてはこれで質問を打ち切りたいと思います。
  76. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) 知事と局長との間、これは特に最初は緊密に連絡をし合わなくてはならぬと思います。そういう面で、おそらく少なくとも部長以上局長——部長以上と県の部長以上の会合というものはひんぱんに開かれて、意見の交換、事務調整等をやるということが考えられますし、当然そちらのほうで指導していきたいと思っております。  先ほどの御質問沖繩県の定員は、いま数のやりくりが、だいぶ現在も進行中でありますが、大体一万一千五百人というところでございます。
  77. 水口宏三

    水口宏三君 そうしますと、他府県の場合、国の一般行政事務の規模、これは大体は支分部局ですね、この支分部局の規模と比べて沖繩県の場合には、総合事務局の規模というものは、これは当然大きくなるのはあたりまえですけれども、あまりに大き過ぎるように思われる。むしろ県民の立場からすれば、八百十人の国家公務員がそこでもって国家行政事務と称してこまかい点にわたっての、これはあとから出てくる二級河川まで申請があればやるという、あるいは港湾についてもそう、そういうような事務までそこで行なわれるということになってくると、これは非常に常識的なことばでございますけれども沖繩への干渉というような印象を持つおそれが多分にあるのではないか、そういう点からも私は非常に反対なんでございますけれども、その点についてどうお考えになりますか、ひとつ伺っておきたいと思います。
  78. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) これは個々的に置きますと、あるいはさらにいろんな事務、会計等の事務が出てきますので大きくなるかもしれません。そういう点で、行政簡素化の面で一つにしたという点がございますわけです。それから、あるいはこの点はこういう点が一つはからまっております。八百十名という定員について、いろいろと事務の問題、人員の問題とか話をしている点が一つと、それからもう一つは、沖繩の職員、これを全部——一人も失業さしてはいけないという観点がございます。その点で、沖繩の職員を全部引き継ぐということをやります面で、八百十名のうちで約六百名ほどは沖繩の職員をそのまま引き継いでまいります。そういたしますと、ここで総合事務局の職員というのは、ほとんど沖繩の職員が仕事をやるということになりますので、その点は非常に密接な関係になっていく点がまた出てくるし、それから向こうの失業を一人も出さないという観点でこの人員がきまったりいたしておりますような次第でございます。
  79. 水口宏三

    水口宏三君 それじゃ一応総合事務局につきましては、まだ問題がたくさんありますけれども、前も同僚議員からも質問がございましたし、時間の点もございますので、この点は一応打ち切ります。  次に、沖繩のむしろ開発の問題について少し伺いたいのですけれども沖繩の開発というものを考える場合に、やはり現在の沖繩における産業構造というものは基地が基礎になっていると思いますね、という現実を出発点にしない限り対策はできないわけでございます。そうしますと、現在の沖繩におきます経済構造、御承知のようにむしろ基地というものが圧倒的な力を持っている。一言で言えば、今後の沖繩経済の開発は基地経済からの脱却だといわれておりますけれども、われわれもこういう観点に立って、今後の沖繩経済の開発についての御質問をしたいと思います。基地経済からの脱却こそ沖繩経済の今後の発展方向だということについて、御同意いただけますかどうか。
  80. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) 御意見のとおりだと思います。
  81. 水口宏三

    水口宏三君 それで、現在の沖繩におきます実際の経済的な構造の非常に特異性というものは、これはまあいままでは、いわば沖繩アメリカの施政権下にあったわけでございます。したがって、貿易収支というのも、私としては、いやな言い方でございますけれども、実際沖繩の、琉球政府中心とする経済の、貿易収支を見ますと、輸入が三億二千五百万ドル、それに対して輸出が八千七百万ドル、二億三千八百万ドルのいわば赤字になっておるわけです。こういう形というのは、おそらくもし本土における各県というものをとって、各県というものにそういう機能を持たした場合を考えてみても、これほどのいわば赤字というものを生ずる県というのは非常にまれだと思う。むしろこの赤字を実際には米軍関係のさまざまな収入によって補てんをする。不足の分は、最近、まあ本土からの助成という形でこれを補てんしておる。そうしますと、現在の沖繩経済というものは、全く基地に依存した経済であり、何ら拡大発展をするような基盤のない経済にまで追い込まれたというのが現状だと思います。そういう意味において、私はやはり何としてでも、この二億三千八百万円という赤字が、これはまあ県になればそういう統計はなくなるでしょうけれども、そういうものが解消する方向沖繩経済の発展というものがなければならないというふうに考えますが、その点いかがでしょう。
  82. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) 御意見のとおりだと思います。
  83. 水口宏三

    水口宏三君 その点、じゃ基地経済からの脱却ということも御同意願え、なおかつ、沖繩の自立的なそういう経済発展ということも御同意いただいたことは、私の今後の質問が、やりやすいと思いますけれども、これは私の調べた統計を見ても、県民所得、第一次産業が九・八%、第二次産業が一七・七%、第三次産業が七二・六%ですね。就業構造からいっても、第一次産業が二九・〇%、第二次産業が一六・七%、第三次産業が五四・一%と、圧倒的に第三次産業が多いという、このことは、ある意味で高度に発達した資本主義社会において出てくる現象のようにもとれますが、そうではなしに、基地の存在によって土地を奪われた農民、あるいは基地の存在によって生産活動の行なわれない中小企業、こういう状況の中から、いま言ったような県民所得なりあるいは就業構造のゆがみが出たというふうに考えるのですが、その点いかがですか。
  84. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) まあ全然基地から離れたとは言えないと思いますけれども、離島及び土地のやせている問題、あるいは水が不足である等、そういう点からもございますが、たしかに、大きな基地をあそこで占められたという点がやっぱり大きな要因になるという点は、私も同意できるわけでございます。
  85. 水口宏三

    水口宏三君 それじゃ一応それも御同意いただけたとすれば、いまその点でちょっと食い違うのですけれども、しかも、こういう状況というものが沖繩県民意思によってつくられたのではなしに、まさにアメリカ軍のむしろいわば強制力、経済外的な強制力によって農民は土地を取り上げられ、さまざまな産業がゆがめられ、経済外的要素によってこういうものがつくり上げられたわけでございますが、こういう経済外的要素というものをできるだけ少なくし、そしてやはり本来の沖繩の実質的な経済の基盤というものをつくっていくということ以外に今後の沖繩の経済発展はあり得ないというふうに考えますが、その点はいかがでしょう。
  86. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) 理想的に申し上げますならば、それは何といっても基地がなくなりまして、そしてその基地を振興開発に役立てるような経済計画を立てるということだと思いますので、御意見、大体私も同じでございます。
  87. 水口宏三

    水口宏三君 それでは、一応私のこれから御質問する実際の経済、産業開発の基本的な問題点について、その前提となるべき条件については御同意を得られたと思いますが、少し具体的な問題に入っていきたいと思います。  これはこまかい統計のことをここでもって一々申し上げてもしかたがないと思うのですが、たとえば沖繩県の年別の輸入の種類を見ますと、機械、運搬器具というものが二四・六%、原材料が二〇・四%、それから食料品及び動物が一九・二%というようなそれぞれ見合った形で行なわれております。事実上はもうほとんど民生というものは輸入によって、輸入にたよっている。これはおそらく機械というものは、実際はテレビであってみたり、あるいは電気冷蔵庫であってみたり、運搬器具というのは自動車だという形でもって、実際上非常に消費物資が中心になって輸入されている。しかも、それらを購入する県民の実際の金というものは、これは基地収入によって得られた、そういうものが、本土からの輸入の消費に充てられている。したがって、基地収入そのものは何ら沖繩の経済の拡大再生産というものに役立ち得る余地がない。沖繩県民が少なくとも憲法で保障する最低限度の文化的な健康な生活を保っていくためには、基地から得た収入というものを全部本土からの輸入にたよらなければならないというのが現状だと思いますので、さっき申し上げたことを逆に言い直せば、こういう点をどう解消していくかということが非常に問題だと思うわけです。この点についてもし総合的なお考えがあれば伺いたいと思います。
  88. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) その点についての計画は、まさに振興開発計画を立てて、今後十カ年の計画を立てていくということになるわけですけれども、まあ概略、私たちがいままでそれについてどういう大体方向なんだろうかということをディスカッションした点を申し上げますと、やはり総合的な、一次、二次、三次の総合的な計画を進めていかなければならぬと思うのでありますけれども、第一次産業、これは何といいましても、やはり沖繩では本島以外の離島というのは、ほとんどサトウキビ、パイン等を主とするところの農業でございますので、第一次産業の農業というのは、やはりこれに力を注いでいかなければならぬと思うのです。そういう意味で、基幹作物はサトウキビ、パインでございますから、これを助長いたしますけれども、しかし、この生産量というのは、現在の生産量をこれを生産力の向上で補っていくという程度にとどめるべき問題じゃなかろうか。そして、その他の特に亜熱帯性の地域という、これを強く生かす、農業の面で生かすべきだろうと思うのです。これは全く本土にない特殊な気候風土ですから、沖繩ではまさにこれを農業の面に生かすべきだろうということになりますと、ほとんど年中温暖なところでございますから、冬の東京で温室に入っているようなものでございますから、そういう面で花きや……。
  89. 水口宏三

    水口宏三君 こまかい点は各省から……。
  90. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) 花きや蔬菜そういう特殊技術を持ってそういう面の亜熱帯性の植物をこれにからませていく。それから牧畜これが一年中草があるわけですから牧草、雑草を高度に利用したところの牧畜、肉用牛の畜産関係に力を注ぐことも、大体そういう観点で第一次産業を伸ばしていくべきだろうと、こう思うのであります。第二次産業につきましては、これは、その前に何といいましても産か基盤の問題があると思います。電力、水の問題、港湾、道路の問題、これにまず第一に力を注いで産業基盤の問題を早急に整えていく必要があると思います。そうしてさらに地場産業の維持と振興、それから何といいましても、やはりこれは本土からの進出企業ということが必要だと思うのです。その点では繰り返し言われておりますように、地場産業とかみ合わないように育成をしながら、そしてまた公害を起こさないような企業、そういう面でたとえば振興法におきましては特別の工業開発地区というもの、あるいは自由貿易地域というものを指定をいたしまして、工業開発地区では財政上あるいは税制上その他施設上の特別の企業が来いいようなやり方をやっていくというようなことによりまして、第二次産業を伸ばしていくべきだろうと思います。第三次産業につきましては、これは全く海洋性の緑の海、島島、それからまた西表等の特別な秘境等がございますので、こういうものを十分に生かすということをやるし、また伝統、工芸品あるいは伝統の舞踊等がありますから、これを助長をしていく、あるいは南部戦跡等これまた保護していくというふうに第三次産業をも大きく伸ばしていくということで、それらの第一次、第二次産業、総体的に今後の振興計画で、沖繩県知事の、返還経済のもとに策がとられていくというふうにやってまいるべきだと思います。
  91. 水口宏三

    水口宏三君 いまどうも長官から非常にこまかく御説明いただきましたので、せっかく各省お呼びしたのでございますけれども、各省から伺う点があまりなくなるわけでございますけれども、少なくも、基本的にまず基地経済の縮小、もちろん前提になるのは基地の縮小でございますけれども、単に基地の縮小だけにとどまらず基地経済というものを縮小していくということがこれが前提である。それからそれに伴って第一次、第二次産業をむしろ並行的に進めていく。それに第三次産業といういまの構想、これはきのう実は同僚議員から伺った沖繩振興開発計画というのはいつできますか。まだはっきりわからないと思いますけれども、その中に織り込まれるということが方向としてあれば私一応了解できますし、ただしどうもきのうの議論にもありましたように、現在本土で行なわれている新全総と同じような形のものが沖繩に適用されるということは、これは非常に危惧を持っていますが、この点は十分御理解を願いたいと思います。新全総で進められているいろいろな開発にも、新全総そのものを見ますと、これは何か国民生活のむしろ環境問題とかいろんな点についてむしろ項目では並べているのですけれども、実際に行なう開発ですか、大規模開発と称して重化学工業重点の開発が中心的に進められた傾向がございますのでその点は御留意願いたいということで、一応その点については終わりたいと思います。  そこで、長官からお話しがあった個々の第一次産業、第二次産業、第三次産業につきまして、すでに各省とも四十七年度で一定の予算をお取りになっている。しかも、当然各省は各省なりに今後の沖繩における農業あるいは今後の沖繩における工業の、まあ具体的であるかどうかは別にして、発展方向というものをお考えになって四十七年度予算をお取りになったのであるし、またそれを今後の開発計画に組み入れようというお考えだろうと思いますので、そういう観点から少しいまの開発構想について、具体的な点について伺いたいのですけれども、第一に、まず開発計画がつくられて、この基礎的な第一次産業を確立し、次に第二次産業を振興してというような、白紙の上に絵を書くような開発ではいけないわけですね。現在すでに百万の県民が沖繩県にいるわけです。この方々が毎日働き、収入を得、食べていかなければならないわけですから、そういう意味沖繩の展望は展望として、私どももやはりどう取り組んでいくかということが非常に問題だと思うのです。そういう意味でひとつ、一番問題になるのは私は観光産業ですね。ところが、この観光産業といえば、一番大事な観光に依存している地域としてよくハワイが例に出されるわけですけれども、ハワイ等の実情を見ても、実際上観光収入というのは、ハワイ全体の経済収入の四分の一程度しかないわけですね。あとはやはりさまざまのものからの援助、あるいは第一、第二次産業から得てハワイというものの経済が成り立っている。もちろん将来的な沖繩が何か本土の人から見ると観光地としてのみ非常に強く印象づけられますけれども、観光産業というものにウエートを置くことは危険があるが、逆にいまの第三次産業沖繩で不当に基地経済の中で発展しているという現状からいけば、これをあす直ちに有効に使おうとすれば非常に可能性のある産業だというふうに私自身考えますが、これは運輸省の方おみえになっておりますね。ことし四十七年度予算の範囲内で何をおやりになり、それを基礎にして将来具体的にどんな構想をお持ちになっているか、簡単でよろしゅうございますから……。
  92. 住田俊一

    説明員(住田俊一君) お答え申し上げます。  ただいま先生が御指摘のように、沖繩の経済発展のために観光産業が非常に重要であるということは言うまでもないことでございます。ちなみに昭和四十五年度におきまして沖繩におきまする観光客数は十七万二千三百人でございます。また観光収入が三千三百七十八万ドル、邦貨に直しまして、三百六十円で換算しまして百二十一億円でございます。そういう意味から考えまして、観光産業は非常に重要な地位を占めていることは明らかでございますし、かつまた今後沖繩の経済振興のために運輸省といたしましても、極力関係機関と連絡いたしまして、この観光の発展に尽くしていきたい、かように考えておる次第でございまして、具体的に本年度の四十七年度予算によりますると次のように決定した次第でございます。  その第一点は沖繩におきまする売り込みの需要の予測調査といたしまして大蔵省から約二百万円の予算をちょうだいいたしました。第二点は具体的にただいま岡部さんからもお話ございましたように、沖繩の亜熱帯性の自然景観とそれから沖繩固有の民族文化、こういったものを柱といたしまして、いわゆる海洋性の観光レクリエーション地区というものを整備していきたい、こういうことで約一千万円の予算をちょうだいいたしました。こういうことで具体的にこのいまマスタープランをつくっていきたいと考えておりますのが二点でございます。第三点といたしまして、いわゆる青少年の振興策の一環といたしまして、青少年旅行村というものを現在運輸省で予算をいただきまして、その一つといたしまして沖繩に現在一カ所、約三百三十万円でございますが、これを沖繩に青少年旅行村をつくるということでいろいろと準備をしておる段階でございます。それから第四点といたしまして、今後相当に沖繩に人がふえてくるだろう、あるいは海洋博に伴いまして受け入れ施設ということが問題になりますので、それに関連しまして宿泊施設、こういうことからホテルあるいは旅館、政府登録関係のホテル並びに旅館の整備のために沖繩振興開発金融公庫から約十二億円の融資をいただくべくいろいろと各方面と連絡をしておるわけでございます。具体的にはこういった四十七年度においては構想を持っている次第でございます。さらに今後こういう状況を見まして予算の獲得その他具体的な振興策をはかっていきたい、かように考えておる次第でございます。
  93. 水口宏三

    水口宏三君 いまの御答弁の中で私非常に心配いたしますのは、特に沖繩の海洋博なんかは非常に宣伝されておりますね。何か沖繩というのは、最初に申し上げたように、将来の一大観光地になるんだという印象が本土人たちは非常に強いわけでありますね。ところが、実際観光産業というものは、これは本土でも多くの場合大企業が土地を囲い込んで、大企業がむしろ観光のいろいろな施設をつくる、むしろ地元の人たちは観光公害と言っています。これは能登半島に私行って事実そういうことを聞きましたし、御承知の北海道のあれは何ですか、何とか旅情のあそこなんかはまさに観光公害でありますわね。そういう意味で私はむしろ観光事業というものは、あくまでこれはいままでの沖繩の基地経済からつくられている肥大された第三次産業から本来の経済拡大発展を遂げていくための過渡的な役割りは果たし得るが、決して沖繩における産業構造の中で重要な位置を占めるものではないというふうに考えておるのでございますけれども、そういう意味で、ひとつ観光産業というものがいまのお話を聞くと何か非常にただ軽い展望があり、それだけで沖繩が何か非常によくなるように伺いますが、そういう点、そういう危惧はいかがなものでございますか。
  94. 住田俊一

    説明員(住田俊一君) お答え申し上げます。  私どもがただいまお話しいたしましたマスタープランの開発の策定にあたりましては、もちろんいま先生の御指摘のように、自然との調和並びに観光公害の是正と、こういった点は十分に配慮していきたいと、かように考えておるわけでございまして、ただいま能登半島の例もございましたけれども、こういったことがないように、先般もこの問題につきまして関係機関とも打ち合わせしたんでございますが、いろいろとお客が来ましてじんあい処理の問題がございます。こういった点につきましては厚生省と連絡をいたしまして、こういったじんあい処理の予算の増額の問題なり、あるいは私どものほうにおきまして、観光モラル運動と、こういったものも自主的に展開していきたい、こういうことで沖繩につきましてもいま先生御心配のようにこういった観光公害の是正なり、あるいは自然との調和という問題を常に考えながらマスタープランを考えていきたいというふうに思います。
  95. 水口宏三

    水口宏三君 これは最後に質問と申しますより私の危惧でございますが、現在すでに大企業が観光事業と称して土地の囲い込みをやっている、これはただでも軍事基地によって狭められた沖繩の土地が、観光事業の名目のもとにどんどん囲い込まれていく、これは非常に危険だと思います。これは将来の基本的な沖繩の経済発展にとって軍事基地に次ぐ大きな阻害要因になるおそれがある、これらの点については厳に戒めていただきたいこと。  それからもう一つは観光というものはいままさにお話のあったように、熱海に行くのが観光ではないんであって、むしろ沖繩の風土あるいは沖繩文化、そういうものが保存され、そこに行くことが私は本来の観光だとするなら、いたずらに大会社の観光事業というものを奨励するようなことは、それが行き過ぎになるようなことのないように厳に戒めていただきたいと思います。これは私の意見でございますので、御答弁は必要といたしません。  次に、それではいまの過渡的な観光産業についてその点御留意いただければ、当面重要な課題だと思いますが、何といっても私は、さっき岡部さんの御答弁にあった第一次産業、第二次産業を変身さしていくということが大事だと思いますが、この中でも特に農林水産業の問題について少し伺いたいんでございますけれども、これはまあ私もちょっと沖繩へ行って私一つ感じたことは、よく沖繩の地主地主ということばを使うんですね、今度にしても軍事基地の使用のために地主との契約云々、地主ということばは、それはわれわれまあ年寄りだからあるいはそう思うのかもしれませんけれども、土地を持っていて人に貸してむしろ生活をしている人という印象が非常に強いんです。ところが沖繩における地主というのは、これはむしろ本土でいえば小作農だったんですね。非常に小地域の土地を持って、その上で自分が農業をやってそうして生活をしてきた人たち、この人たちは、それは確かに土地を持っているのだから地主といえば地主でございますけれども、本来地主ではない。非常に零細な小作農が非常に多かったわけでございますが、それが事実上土地を取り上げられて農業を放棄せざるを得なかった、それだけではなしに、すでにもう基地ができてからでも沖繩県における県民所得の面から見ると農業所得というのは非常に減っているわけであります。六一年が一七%、六五年が一五%、六八年が九・七%。言いかえれば沖繩の農業は現状においてもどんどん後退をし衰退をしている、そうして唯一残っているのがこれはパインでありあるいはサトウキビというモノカルチュア、しかもこれも価格の面からいくと本土からのさまざまな援助でもってかろうじてこれを維持しているのが現状だと思うんです。  したがってこういう農業というものは基本的には零細性にもちろん問題がございます。そうして  これは農業の停滞を呼び起こし、現実に停滞ではなくて、後退を続けて当然労働力が流出していく、そうすると農家としては兼業をしなければ食べられない、兼業すればどうしても農業管理は不十分になってますます農業の生産力が低下をする、そうすればさらに何といいますか、新しく農業の規模を拡大するとかあるいは施設農業をつくるための資本が失われていくとか、とたんにまたもとの農業に返る、いまやもうちょうど石をころがすように沖繩における農業というものはむしろ後退しつつある、衰微しつつあるのが現状だと思うんです。  たまたま本土における農業問題もこれに似た形を持ちつつある、すでにまあいままでは兼業農家は第一種兼業、第二種兼業といっておりますが、第二種兼業についてはそうではなしに、むしろ土地持ちサラリーマン——農家ではないんですね。沖繩の場合には本土以上にこの基地経済によってこういうことが非常に急速に進められ、そういう悪循環におちいって、本来農業で生活をし、農業が産業の基盤であった沖繩というものが全く変貌しつつあるわけでございますけれども、こういうものをどう一体転換さしていくのか。これは農林省の方おいでになりましたら先ほども申し上げました四十七年度の予算とからめてこの悪循環からの脱却について将来展望を簡単にひとつお述べいただきたいと思います。
  96. 中野和仁

    政府委員(中野和仁君) 沖繩の農業につきまして御指摘がるるあったわけでございます。私も沖繩の農業が非常に零細な規模であるということ、それから就業人口が非常に減少してまいっているということ、非常に兼業が進んでおる、そのとおりだと思います。その上に自然条件といたしましても台風常襲地帯である、あるいは干ばつを受けるということでございます。しかしながらここで農林省としましても沖繩の農業を再建するということに立ちまして、いろいろ考えますれば、沖繩の地帯の特殊性を生かせる農業がやれるんではないかというふうに基本的に考えておるわけであります。  そこでわれわれといたしましては、先ほど岡部長官からもちょっとお話があったわけでございますが、まずやはり沖繩の農業をこれから生かす場合に、これは米に依存するということは必要ないと思います。やはりサトウキビ、それからパイン、それから肉用牛、野菜、こういう特殊性を生かせる農業を中心に考えるべきだと思います。その場合にまつ先に必要なことはやはり基盤整備だと思います。非常に立ちおくれております。就業者一人当たりの基盤整備の国の投資額を見ても、本土に比べまして沖繩はたしか三割くらい、ヘクタール当たりにしましてもそうであります。それを急速に本土並みにしたいということであります。すでに四十七年度の予算におきましては就業者一人当たりにいたしますればたしか八〇%くらいまで追いつきました。それからヘクタール当たりにいたしますと、内地に比べてみますと内地以上になっております、予算額では。しかし何しろ先ほど御指摘がありましたように、非常に規模が零細でありますので、そういう基盤整備事業をやっていく中でいろいろこれから問題が出てこようかと思いますが、これを克服いたしましてやっていきたいということをまず考えるわけでございます。その場合には、何と申しましても、水源の開発が必要でありましょうし、あるいは干ばつ地帯についてはこれを避けるための施設が必要であろうかと思いますと同時に、やはり零細な規模のままではなかなか生産性が上がりませんので、これはなかなか容易なことではないと思いますけれども、サトウキビあるいはその他につきましても機械化あるいは共同化のための、経営近代化のためのいろんな施設を導入したいと考えております。それと同時に、やはり試験、研究の面、あるいは改良、普及の面も非常におくれておりますので、これを急速に内地並みにして技術水準を向上いたしたいと、こういうふうな考え方で積極的に取り組みたいと考えております。
  97. 水口宏三

    水口宏三君 農業の問題はもちろん沖繩だけでなしに、むしろ本土の農業をどうするかということはおそらく農林省にとっては最大の課題であり、本土の農業が行き詰まっているさらに悪条件、さらに非常にレベルの低い次元での行き詰まりが沖繩にあるんだろうと思うんです。そういう意味においては、沖繩の農業の問題というものは、私は第一に、いまの御答弁にもありましたように、基盤整備が必要でしょう。いずれにしても、まず財政的に本土が金を出すと。使い方等については、むしろ私は沖繩の方々こそあの亜熱帯地帯の農業というものは長い歴史的経験をお持ちになっているんで、本土の農林省関係の専門家は本土の農業あるいは水田農業については高い技術的水準をお持ちかもしれませんけれども、亜熱帯農業については——そう言っちゃ失礼かもしれませんが——そう詳しい方、おいでにならないんじゃないか。そういう意味で、私はまず国が財政資金でもって思い切って沖繩農業の再建の基盤をつくっていくという財政的な面を非常に強調すべきだと思います。  それからもう一つは、やはり何と言っても農業技術、亜熱帯農業にそれは適するかどうかの選択は問題だと思いますけれども、これがまあ伝統的に本土農業では非常に強かった、重点が置かれておったと思うんですね。そういう意味で、惜しみなくひとつ沖繩農業への技術的な協力をしていくべきだと、それ以上に、むしろ沖繩農業の今後のあり方について本土がああしろ、こうしろ、これがいいんだ、あれがいいんだという干渉は、これは私はどうもかえって危険なような気がするんです。これはもう農林省自身がお認めになっているような、亜熱帯という特殊な条件があるわけです。  それからもう一つは、話がちょっと戻りますが、先ほど支分部局の中で、総合事務局の中に林野庁、水産庁の部局が入ってるんです。本土ではむしろカットされたものがたまたま沖繩県ではどうすべり込んだのか、入っております。そういう意味では、林業、水産業との総合的な——水産業は非常に特殊事情があると思います。時間がございませんので、特に水産業については伺いませんけれども、いずれにしても、農業、林業、水産業というものが支分部局に関する限り沖繩ではたまたま一緒にやれるわけでございます。そういう点についてまず財政援助をし、しかし干渉はしないと、技術援助はするが、経営についてのいわば介入はしないということができるかどうかですね。あるいは、そういうことをお考えになっていらっしゃるのか、そういう観点で今後の振興計画の中へ農業開発を盛り込む考えであるのか、そういう点をお伺いしたい。
  98. 中野和仁

    政府委員(中野和仁君) 農林省の場合は、これは一昨年でございますが、農業の地域分布農業地図というのをすでにもう描いております。沖繩につきましても、復帰いたしますれば、先ほど私が申し上げましたような考え方で地元とよく相談をしましてこの絵を描きたいと考えております。その場合に、本来農業の場合は、国営でやりますものも若干あるといたしましても、大部分はやはり地元の意向によりましてそれを助成していく、ある場合には指導していくということでございまして、国が一方的に干渉するという考え方は農林省としては持っておりません。
  99. 水口宏三

    水口宏三君 農業問題、ほんとうならもう少し時間をかけていろいろこまかい点伺いたいのでございますけれども、時間がございませんので、まあいずれにしましても、沖繩における農業というものが基地の存在によってまずゆがめられ、それ以後むしろ沖繩経済構造の中で自滅の一途をたどっている、こういう危機状況にあるということをぜひひとつ念頭に置いていただきたい。これはむしろ農林省だけではなしに、総合開発計画をおつくりになる長官にもぜひひとつ——長官がおつくりになるのかどうか知りませんけれども、将来おつくりになるとするならば、この点についてはぜひひとつ重大な問題点として御留意願いたいと思います。  次に、もちろん沖繩の現在の経済構造というものは、これは林業一つとりましても、沖繩林業というのは、聞いてみますと、非常に木ははえているようだけれども、地質の関係、あるいはこれまでの乱伐、台風等で、必ずしも林業がそう発展する条件はあまりないらしいですね。そうすると、第一次産業というものは沖繩のやはり主産業とはなり得ない、経済構造の中で主たる産業とはやはりなり得ないのだろうと思うんですね。むしろ、まずいまの後退を食いとめる、これをできるだけ発展させるということは不可能であっても、全体の経済的観点から言うならば、やはり主力となるのは私は工業だと思います。  で、工業の問題につきましては、これはたまたままあ災い転じて福となると申しますか、現在軍事基地があることによって道路が非常にたくさんある。あるいは電力も電力公社をつくってやっているとか、あるいは港湾もその他——軍港が多いんだろうと思いますが——港湾もある、空港もある、こういう点を、長官のお考えのように将来できるだけ軍事使用から切り離して、これをむしろ沖繩の第二次産業のむしろ一つの重要な基盤としていくとするなら、これはむしろ災い転じて福となるといいますけれども、それらの点について可能性があるのかどうか、これをひとつ伺いたい。
  100. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これはもうそういうことに向かって前進しなければなりませんし、かといって、いまの体制は沖繩本島に集中してアメリカの投資は行なわれておりますから、先島拠点とその他の四十をこえる有人離島というものに対しての配慮もまた怠ってはなりませんし、離島の通信、交通あるいは医療、そういう問題等に、離島に住んでもだいじょうぶだという条件の造成につとめなければなりませんが、沖繩本島においては、やはり今後の工業開発等についても、そういう現在の基地というもの、あるいは返還されても、本部の飛行場みたいに、地主の手には返っても賃借料は入らなくなって、飛行場の形態のままで一向に復元がなされない。まあ幸いにして今回は海洋博の敷地、あるいは海洋博の際における那覇空港から本部の空港を利用するピストン往復等の交通の基地にもなり得るということで、何とか息を吹き返すわけでありますけれども、なかなかそういう問題で、地域には必要と、そのままでは思われないもの等も返ってきたりいたします。ここらの点は十分にやはり経済開発、そして二次産業の振興の上においても、いまおっしゃったように災い転じて福となるような点は積極的にこれは先取りしてやっていかなければならぬ、その点は同感でございます。
  101. 水口宏三

    水口宏三君 いま長官のお答えで非常に意を強うするわけでございますけれども沖繩には御承知のように軍用道路はずいぶんあるわけなんですね。そのほかにまた産業道路をつくるというと二重投資をするようなことになる。軍事優先ということをやめさえすれば、これは道路にしてもあるいは港湾にしても電力にしても、かなり第二次産業に有効に使えるわけでございますので、そういう点を十分にひとつ御配慮願いたいと思います。  それからもう一つ、実はおとといの論議の中で、沖繩がたまたま地理的な位置の関係から東南アジアの窓口になる、したがって文化交流その他の点で重要な地位を占めるだろうという御意見があったんですが、これには私多分に疑問を持つのでございます。というのは、やはり何といっても文化交流というものを行なうとすれば、大体その頭脳が東京が中心であり、本土ならですね。むしろアジア各国とのそういうものの窓口に沖繩がなるということは、これは図としては考えられるけれども、現実にはあり得ない。むしろ産業的な面から考えるならば、それは私、沖繩の位置というものは、確かにアジアの中の、アジアというものを一つの面として考える場合には、かなり中心的な位置にある、したがって、今後の第二次産業の位置づけというものは、そういう広い視野に立って沖繩の第二次産業発展ということを考えるならば、これはむしろ地理的には非常に有利な条件になるだろうと思います。そういう点、通産省などどうお考えになっていらっしゃるか、伺ってみたいと思います。
  102. 田中芳秋

    政府委員(田中芳秋君) 御指摘のとおり、沖繩の地理的条件から見ますと、まさに長期展望におきましてはそうした有利性があるというふうに考えます。しかし私どもといたしまして、今後の開発の長期的な展望につきましては、やはり沖繩振興開発計画、これの線に沿って推進をしてまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  103. 水口宏三

    水口宏三君 それは一つの、さっき申し上げましたように、四十七年度予算の使い方いかんということが非常に問題なんで、結局その展望を持って四十七年度予算を消化なされるだろうと思いますので、そういう点御配慮願いたいと思います。これは配慮というよりは一つの展望でございますね。  で、むしろ問題は、そういう展望はあり得るが、沖繩の現状というもの、これは全く家内工業的な零細企業が、手工業が多いわけです。こういうものは本土においても非常な苦境に立っておる。まして沖繩の場合、よりおくれたこういう零細企業というものは、今後ますます苦境に立つであろうことは火を見るより明らかだと思うんです。で、きのうのラジオでございますか、テレビでございますか、ちょっと夜に私見たんでございますけれども、やはり工場が倒産をして失業保険をもらっているが、将来どうするのか。できれば本土へ行って働きたいという希望者がずいぶん出ている。だからそういうことをやっていけば、これはもうますます零細企業はつぶれる。そうして労働力は本土に入る。沖繩の過疎化が進む。過疎化が進めば沖繩産業基盤がなくなる、これはさっき申し上げました農業と同じ悪循環を繰り返すと思うんですけれども。これは零細企業について特に本土との賃金格差の問題もあろうと思います。こういう点について当面どういう手当てをなさろうとするのか。これをほっておけば、本年じゅうでも大量の私は労働力の流出が出てくるんじゃないかと思うんです。そういう点について、四十七年度予算との関連でひとつ……。
  104. 田中芳秋

    政府委員(田中芳秋君) これは、所管は中小企業庁でございますが、したがいまして、私からはその方針と申しますか、概要をお答えさしていただきたいと思います。  御承知のとおり、沖繩振興開発臨時措置法によりまして、沖繩の中小企業の近代化を促進し、自立経済の一つの柱とする必要があるというふうに考えているわけでございます。これによりまして、現在沖繩中小企業近代化促進法に指定業種として掲げられております、たとえば漆器等の業種に加えまして、本土の中小企業近代化促進法の指定業種約百四十ぐらいございますが、これ、要するに広範囲にこの指定業種の拡大をはかろうとするわけでございます。これによりまして、この助成措置の内容といたしましては、指定から五年以内、五年間にわたりまして本土は三分の一の償却を、割り増し償却の優遇措置がございますが、沖繩につきましては二分の一という、その中のしかも特定の業種につきましては、本土二分の一に対しまして四分の三の割り増し償却を認めるという形で、まず企業の体質を改善するような措置を講じますとともに、一方やはり金融面その他できわめて弱体でございますので、沖繩振興開発金融公庫、これよりの資金融通に遺憾なきを期したい、かように考えまして、四十七年度におきましては資金貸し出しベースで八十四億の中小企業資金ワクを設定をいたしておるわけでございます。しかも、その金利につきましては、本土を下回る基準金利、本土は八・二%でございますが一応七・三%の金利という形でこれが育成をはかることにしておるわけでございます。
  105. 水口宏三

    水口宏三君 まあ通産省のお答え、大体そういうことになろうかと私自身も考えておったわけでございますけれども、問題はでございますね、さっき申し上げたように、早急に行なわれないと私は沖繩からの労働力の流出というのはきっと奔流のように起こってくるおそれがある。これは大体本土の企業は若年労働力というものを非常に不足して要求しておるわけでございますから、だからそういう点について、きょうは労働省はあるいはお見えになっていないかもしれませんけれども、労働省等に十分ひとつ御連絡になって、すでにもう、沖繩が過疎化してから再建しようとしてもこれは不可能だと思うのです。そういう意味において、少なくとも現在ある家内工業を維持しこれを発展さして——家内工業だけじゃなくて現在ある零細企業ですね、こういうものをまず維持すると、こういうものを発展させることがやはり沖繩経済の基盤だという観点に立って早急に手を打っていただく。  同時にでございますね。私はむしろ非常に危惧いたしますのは、きのうまあ外国資本の沖繩への進出については同僚議員からもう質問がありましたので省略をいたします。まあ外国資本の場合、これはもう多少法制的にも私は規制をしていただきたいと思うのです。しかし、まあ本土企業が沖繩へ出ていく場合、これは法的規制というのはなかなか困難かもわかりません。困難かもわかりませんけれども、すでに本土における各種企業というものは非常にまあ巨大な企業に発達した企業が多いわけでございますね。こういう企業がいきなり沖繩へ進出した場合、それはもちろんその企業の雇用能力という点からいけばプラスかもわかりませんけれども、それによってむしろ破産をするといいますか、つぶされていく中小企業の状況というものを考えると、これは決して将来自立的な沖繩経済の発展にはならないのじゃないか。そういう意味において、海外資本の沖繩への進出ということについては、これは法制的に規制をしていただきたいし、本土の大企業の沖繩への進出ということについては沖繩の地場企業の保護育成ということを中心にして、それに決して大きなマイナスを与えないような形でこれを誘導していく法的措置がとれれば非常に私はいいと思う。法的措置がとれるかどうかをまず第一点伺いたい。法的措置がとれないとすれば、現在の通産省のお立場でそういうことをどの程度行政的に規制し得るのかですね。これはまあちょっと答弁しにくいかもわかりませんけれども行政力の強さをひとつ伺いたいと思います。
  106. 田中芳秋

    政府委員(田中芳秋君) 沖繩にあります外資の進出につきましては、過去の琉球政府時代とはやや違った形になろうかというふうに考えられますが、いずれにいたしましても、私どもといたしましては、沖繩の状況を十分判断いたしまして、外資法その他の運用適正を期したい、このように考えております。  続きまして、本土企業の進出につきましては、御指摘のとおり地場産業と競合しない業種を積極的に進出させたい。具体的にはまあ機械産業あるいは電子工業、こういったものを進出させるように努力してまいりたいと思っておりますが、法的にこれを規制し得るかという御質問でございますが、その点はきわめて、法的には規制することは困難と申し上げざるを得ないわけでございます。ただ最近におきます立地等につきましては、御承知のとおり地元の了解なくしてはなかなかこれが立地ができないわけでございます。その段階で私どもといたしましては事前に相当立地動向を把握することができる形にもなっておりますので、できる限りこうした沖繩への進出にあたり企業の動向をキャッチいたしまして、そうして御指摘のような方向に向かうように努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  107. 水口宏三

    水口宏三君 いまの御答弁で法的規制はできないというお話でございましたが、これは通産省の行政力をわれわれは信頼するほかはないんですが、たまたま非常にかっこうな法的規制の場がある。これは沖繩開発計画です。そこで、通産省としてそういうお考えを持っているならば、私はむしろ沖繩県知事の出す開発計画というものは、おそらく地場産業の保護育成ということが重点になろうかと思います。したがってそれをできるだけ尊重して、そうして本土企業の沖繩への進出については、幾つかの条件があると思います。たとえば、公害をなるべく起こさないような条件とか、最も重要なのは、いま言ったような地場産業を圧迫しないような条件とか、そういうことを十分通産省としてお考えになり、これは総務長官にぜひお願いしたいんですが、開発計画の中でこういう点を明確にして、これによって規制していく、これは私は計画ができれば、直接的な法的規制力はなくても、間接的には相当大きな規制力になると思います。その点の可能性についてお伺いします。
  108. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これはすでにもう通産省の法律でやることは私企業に対してでありますので、許認可事業は別ですけれども、そういうことで、たとえば振興開発の中のいまおっしゃったような計画の中で、特定事業所を知事が申請によって認可する場合、こういうものは競合産業であったとわかったら認可しませんけれども、したがって、税制の恩恵その他もありません。むしろ振興開発金融公庫から融資をいたします場合も、沖繩現地の既存産業と競合し、もしくは威圧するというようなものである場合において、融資の対象にしませんから、そうすると本土の開銀で、引っくるめて政策金融は振興開発金融公庫に入っておりますので、沖繩の振興開発金融公庫から融資を受けられないのに、沖繩に入るための融資を本土の親銀行のほうから借りてやるという網の目をくぐることはできないわけでありますから、そういう点はすでに判断の準備はいたしております。
  109. 水口宏三

    水口宏三君 いま通産省からのお答えを、特に総務長官が、むしろ間接的な方法であれば法的な規制ができる。しかもこれが通産省が、いまお述べになったようなそういう方向にこれを規制していくということ、これはぜひ実施していただきたいと思います。  それから最後に、いままでの、たとえば観光産業にいたしましても、あるいは第一次産業である農業にいたしましても、第二次産業である工業にいたしましても、これはやっぱり社会投資が不足しておる。いわば基盤整備が前提であるということは、これは各省からの御意見であるわけです。各省は各省なりに、みずからの予算の範囲内でおやりになる面もあろうかと思いますけれども、基本的には、何といっても建設省が担当していらっしゃる地域開発の基本的な基盤整備ということが問題だと建設省はお思いになっていらっしゃるとすれば、以上の各一次産業、二次産業、三次産業というものを含めて、これらが将来沖繩の健全な経済構造を持つ自立的発展に役立つような基盤整備というものは、どういうふうにお考えになっておるのか、四十七年度予算でどういうことを着手なさろうとしておるのか、これを伺いたいと思います。
  110. 山岡一男

    政府委員(山岡一男君) いま先生御指摘いただきましたけれども建設省といたしましては、所管の事業の中で、それらの産業の基盤となります特に道路の整備、それから災害の防御をいたします治山治水、それから生活関連の施設でございます公営下水道、公営住宅等の施設の整備をそれらのものに関連させまして、基礎となるべきものについて、なるべく早急に整備を進めてまいりたいと思っております。ただその場合に、本土並みの水準と比べまして、相当おくれております。当面の目標といたしましては、なるべく早く本土並み水準まで引き上げるということを当面の目標といたしまして、来年度予算等は計上をいたしております。国費の総額にいたしまして百四十七億七千三百万。この中で直轄事業費が四十八億二千九百万、補助事業が九十九億四千四百万、それらに地元の負担を入れますと、全体の事業費は百七十九億三千七百万、この事業費をもちまして、それらの事業を来年度やるわけでございますけれども、道路につきましては、国道の五十八号、三百二十九号、三百三十号を一部直轄、一部補助で進めます。その他地方道の交通安全等を進めますとともに、区画整理八カ所、街路二十二カ所。河川等につきましては、国場川ほか十河川、ダムにつきましては辺野喜川ほか六河川の調査、福地ダム、安波・普久・新川ダムの建設、宮良ダムの調査費補助。砂防は幸地川ほか五渓流、それから新里地区の地すべり等につきまして補助を行ないます。海岸につきましては辺土名ほか八海岸の事業に着手をいたします。公園につきましては、平和記念公園ほか十四カ所、下水道につきましては、中部流域下水道ほか十三カ所。公営住宅につきましては九百戸。以上を来年はやるようにしております。
  111. 水口宏三

    水口宏三君 いまたいへんこまかい御説明をいただいたのでございますけれども沖繩においては特にそういう社会資本の投資がおくれておる、あるいは基盤の整備がおくれている、それは事実だと思います。本土でも問題になっておりますたとえば高速道路一つ問題にとりましても、高速道路をつくるということによって利便を受ける人、これによって被害を受ける人があるわけです。ことに沖繩のように、まだ非常におくれている産業構造の中で、建設省は非常に優秀な技術を持ち、また建設会社は巨大な資本を持っておる。また基盤の整備、社会資本の整備ということばは流行ですから、国家財政につき合わせて、将来展望を持つことは必要でございますけれども、むしろ現在の沖繩の実態に即さないような、そういう形での行き過ぎた形での道路の建設が行なわれる、あるいは河川の改修が行なわれるということを私は多少心配しておる。先ほど申し上げましたように、幸か不幸かというよりは、災いを転じて福となすという意味において、現在の重要道路を軍事優先から産業優先に切りかえることによって、少なくとも新しく農民の土地をつぶす必要はないわけです。ことに沖繩にとって土地は希少価値だろうと思います。そういう意味においても、建設省の計画、それが非常に大きな意味をお持ちになることはけっこうでございますけれども、現状というものを考えた場合には、できるだけひとつ既存のものの有効な利用ということに重点を置かれることのほうが私は先決ではないか。あの零細な農業、あるいは非常におくれた零細企業、そういうところでブルトーザーが突っ走って、道路をつくったところで、この道路を利用できるのは、おそらく本土から来た観光客がぶっとばして沖繩はきれいだと眺めるとか、あるいは大産業がそれを適当に使うという程度であって、沖繩を私はほんとうに長期的に見た開発の第一歩としては、かえって逆になるおそれがある。そういう点で、たとえば、長官にお願いをするのでございますけれども、開発計画をおつくりになる場合に、ただ、はでに社会投資を行なってりっぱな道路をつくりますという形になるおそれが多分にどうもこれまでの本土の開発計画を見ると考えられるのでございますが、沖繩で二の舞いをしないように、ぜひ開発計画の中にそういう点を十分お考え願いたいんですが、その点いかがですか。
  112. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 現在の軍道並びに各政府道、これは全部復帰の時点において国道、県道、市町村道等に移管をされます。これについては、まだ地主に対しまして賃借料も払っていないようなところもございますし、そういうところは県の道路になりましても、全額国が賃借料もみる、そうして買収費も全額みるということで、逐次買収を進めて、文字どおり国道、文字どおり県の道路というふうに予算措置はいたしてございます。したがって、現在は那覇空港の米軍の住宅地帯のところが国道三号線、向こうで県道三号線といっておりまして、三号線閉鎖されておりますが、これも復帰の日には、現在外交折衝をいたしておりますが、ほぼ煮詰まっておりますけれども、そこは完全に復帰の日の時点において国道に編入される糸満から東海岸を通って那覇に戻ってくる循環線の一環としてそれはオープンされることになる予定であります。したがって、地域住民のために道路があってそれが利用されているものが拒まれているもの、あるいは道路の上の一切の取り締まり権限、そういうものが全部国、県の手に戻ってまいりますので、急速に進めてまいる過程の中で自主性を持った形で、それこそ本土並みの開発ができるものと考えます。
  113. 水口宏三

    水口宏三君 実はもう少し伺いたい点がたくさんありますけれども、あと二点だけ伺ってやめたいと思います。  一つは、沖繩の県民の請求権の問題ですね。これはこの附則の第三条の読みかえによって、これはまだ審議に入っておりませんけれども、防衛施設庁が担当する請求権以外の請求権はこの開発庁が受け持つということになるわけですか。
  114. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 当初本土においては、駐留米軍との関係の一切の問題は法律も全部防衛施設庁の所管であり、その処理も講和前人身被害から始まって一切のものが防衛施設庁で処理されておりますので、全部を防衛施設庁というつもりでおったのですが、その後昨年の沖繩国会、今回の予算委員会等において総理のほうから、やはり沖繩においては数々の特殊な環境下にあったので、一番なじんでいる総理府というものがめんどうを見るようにしたい、こういう意向ととれる発言がございました。それを受けて、松井誠議員のたしか質問だったと思いますが、私も作業を進めてまいりまして、防衛庁とも合意をいたしましたし、そして総理も了解をいたしましたが、その後、講和前の問題ではなくて、本土降伏前の沖繩が六月二十六日から、戦闘終結のときから、あるいはニミッツ布告といっていいかもしれませんが、本土敗戦に至るまでの間において、やはり講和前人身被害の補償があるならば、これは降伏以前の人身被害も全く同様以上にあるに違いないし、あるいはまた最近、日本人同士の中における、軍という名と一般の地域住民という名と相違はあったとはいえ、信じられないような事態が表に出てまいっております。これらのことを考えますと、沖繩の気の毒な状態に置かれた戦争中、戦後の長い期間を通じて、これはちょっと本土法だけでは、既存の法だけでは解決できない問題が一ぱいあることがわかってまいりました。したがって、今回開発庁でやる仕事の、ただいま言われました政令の中にそのことを取り込んでまいった次第であります。  きのう松井委員の御意向を受けて、宮之原委員に対して一応答弁いたしましたが、その文章が最終的に法制局において検討の結果、表現が簡単になっておりますので、中身は同じでありますが、あらためてきょうここでその点を読ましていただきます。  「附則第三条第一項の政令で定めるものは次のとおりとする。一、通貨等の切替対策、土地の権利関係を明確にするために必要な資料の収集その他の調査、」、これは例の土地調査の問題が沖繩だけ特殊事情があるというので、明確に総理府が責任を持つことにいたしました。「アメリカ合衆国の軍隊に接収された校地に代えて借り受けている公立小学校の校地の購入の助成」、これから先がただいま申しましたことを含むわけであります。そのために書いたわけです。「その他復帰前における沖繩の特殊事情に起因する事項で、復帰に伴い、特に対策を講ずる必要があるもの」、これでもってその処理を総理府がいたしますということを明確にいたしました。まだほかにも項目がございますが、関係ございません。  以上申し上げます。
  115. 水口宏三

    水口宏三君 それでは一応附則第三条の問題点で、これは私が申し上げるまでもございませんけれども、例の屋良さんのお出しになった建議書の中でさまざまな請求権があるが、こういうものができるだけ満たされるように、今後具体的に法律案をおつくりになる場合、ぜひひとつ御考慮願いたいし、その時点でまた審議をしていきたいと思います。  もう一点だけ、簡単なことです。行管の方お見えになっておりますね。実はこれを見ますと、沖繩地方事務官制度がそのまま残るわけなんです。地方事務官制度については、これは何回か行政改革の中で逐次減らしていく、暫定的に置いておくんだということだったんですけれども、少なくとも沖繩開発庁をつくるということは全く新しいことであり、長官ことばをかりれば、まさに沖繩県民のためにほんとうに献身的に開発に従事する人たちと——。そういう意味では、地方事務官制度をいつまでもぶら下げておく必要はないので、いい機会なんで地方事務官制度を沖繩については廃止するという御意思はございませんか。
  116. 平井廸郎

    政府委員(平井廸郎君) 地方事務官制度の問題につきましては、先生御指摘のように第一次の行政改革におきましても、行政改革計画におきましても廃止する方向で検討するということを進めておりますし、第二次の行政改革計画におきまして、陸運行政機構並びに地方労働行政機構のあり方等を関連させて検討することが決定されているわけでございます。ただ、私いま申し上げましたように、事務官制度のみを廃止するというのは事実問題としてはなかなかむずかしゅうございまして、やはり行政機構のあり方、国と地方事務配分のあり方等を関連させて検討する必要があるわけでございまして、そういった点の検討は現在なお進められている段階でございますので、沖繩のみにつきまして直ちに地方事務官制度を廃止するということは、実際問題としてできなかったわけでございます。
  117. 水口宏三

    水口宏三君 それじゃこれで一応質問を終わりますが、いまの御答弁ではちょっと私不満なのは、沖繩自治ということ、これが重いということは、決して本土各県の自治とは違うということは長官もお認めになっておる。私はいい機会だと思いますので、より一そう御努力なさって、地方事務官制度が廃止できるものならばぜひこの際沖繩に関する限り廃止をしていただきたいと思います。これは希望意見でございます。  以上でもって私の質問を終わりたいと思います。
  118. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 もうすでにたくさんの同僚議員のほうから種々あらゆる角度から質問がございましたので、私も多少角度を変えて質問したいと思います。   〔委員長退席、理事町村金五君着席〕 まあ、今回の問題につきましては、あらゆる問題がふくそういたしておりますので、私はきょうは特に行管庁長官に御出席をいただきまして、行政改革という面から今回の沖繩開発庁あるいは総合事務局の設置という問題をこれから質問をしたいと思います。  先ほどの同僚議員質問の答弁にも、地方支分部局の改廃の問題が出てまいりましたが、こういうような問題も含めまして行政改革ということがずいぶん叫ばれて長くなるわけです。しかも相当な費用を費やしてこの行政改革という問題に行管当局も取り組んできたはずであります。しかしながら、この行革がなかなか進まないということはもういろんなところで言われております。そこで私は、今回の質問に入ります前提としまして、初めに行管庁長官にお伺いしたいのですが、今回の沖繩の返還に伴っていままでいろいろ質問がございました。開発庁あるいは総合事務局、あるいはそれに付随するいろんな行政機関ができるわけであります。それに伴い定員等もそれぞれきまるわけであります。また、あるいはこれらに配置される人たちは総定員法のワクからはずれるなんということもずいぶん出てまいります。いろいろあると思いますが、今回の沖繩の返還にあたって行管庁として特に配慮して、こういう点とこういう点とこういう点は配慮をして、今回のこの沖繩開発庁あるいは総合事務局の設置をやったのだというその主要なものを初めに大臣にお伺いしたいと思います。
  119. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 御質問の焦点であります沖繩の今回の本土復帰に伴う行政改革の問題でございますが、御承知のように本土復帰後の沖繩のあらゆる行政の実態が特殊事情がございますので、その沖繩の特殊事情を踏まえて、沖繩県民のためにどうしたらいいかというようなことから、沖繩の場合には一つの特例的な措置がとられてきておるところであります。その詳細の点につきましては、管理局長から答えさせていただきたいと思います。
  120. 平井廸郎

    政府委員(平井廸郎君) ただいま長官から申し上げましたように、沖繩の特殊事情を考慮しつつ、行政改革についての基本的な考え方を貫いていくというのが私どもの姿勢でございまして、一般的に申し上げますならば、一方では、国の出先機関の設置にあたりましては、住民の便益を考慮しつつ、かつ他方におきましては必要最小限度の簡素、効率的なものをつくるというのが行政機構の設置についての基本的な姿勢でございまして、沖繩における機構の新設にあたりましては、このような方針を貫いたつもりでございます。  ただ、県単位の機構として考えました場合に、沖繩の特殊性といたしまして、先般から議論されておりますように、国の出先機関として管区単位の機関は本来からいえば県単位の機関としては置かれないわけでございますが、先般来御説明申し上げておりますように、沖繩の県民の便益等を考慮いたしまして、特に総合開発事務局を設けることにいたしたような次第でございます。  その他の機構につきましても、私どもといたしましては、でき得る限り現地の実情を勘案しつつ、また具体的に沖繩県からの人員の引き継ぎ等もあることも考慮いたしまして、本土における類似各県の規模等をもしん酌しつつ、定員なり機構なりを査定してまいったつもりでございます。
  121. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣は、この沖繩の返還ということが具体的に出てまいりましてからもうすでに大臣としてずっとやっていらっしゃるわけですね。そういう点から考えますと、私は、大臣が特にこういう点には力を入れたというのは、やっぱり大臣自身の頭の中にぱちっと入っていなければいかぬと思うのですよね。といいますのは、これは私、質問の前提として申し上げるわけでありますが、いま大臣も局長も答弁の初めに、必ず沖繩は特殊事情があるので、あるいは沖繩のいろいろな実情に合わせて、こういうことばが出てくる。そうすると、行政改革という面から考えた場合に、大臣は国内におけるところの、いままで、あらゆる行政改革を進めてまいりました。そのための閣議決定なりあるいはあらゆるものがいっぱいありますね。そういうふうなものは一切無視をして、この沖繩のこういうふうな行政のいわゆる中心をなすそれぞれの機関を設けられたのか、あらゆることで特殊事情があったにしても、多少なりとも国内における、そういうふうな行政改革に必要な閣議決定なり何なり、そういうようなものを参考にしつつ今回のこういうようなものを立案されたのか。それはどうですか。
  122. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 御指摘のとおりでございます。本土行政改革の線にできるだけ沿わせていくというのは、それは基本でありますけれども、たとえて言いますと、人員等に関しましても、本土並みに一気に減らしていくというようなことにはかなりの無理がある。そういう点がやはり一つございますが、その他のいろいろさっきから申しますように特殊の事情がありますので、まあ一気に本土と同じような線でやっていくということにはやはり無理があるということで、なるべく無理をしないようにスムーズに、少し時間をかけましても、本土の線にそろえていくという基本的な態度で臨んだのでございます。
  123. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうすると、これはまだ私は質問に入る前提ですけれども、それらの特殊事情というのは、これは特殊事情ですから、いつまでも特殊事情じゃないと思うのです。どの程度特殊事情と考えられているのですか。要するに、これは沖繩の特殊事情というその頭の特殊事情というのは、いつになったらとれるのであろう。何年くらいたったらとれると考えて今回のあらゆるこの処置をされたのか。
  124. 平井廸郎

    政府委員(平井廸郎君) まず機構の問題につきましては、中心となっております沖繩開発庁、その総合事務局の基本的な考え方が、沖繩振興開発計画と即して考えられておるわけでございまして、そういった意味におきましては、沖繩総合事務局の機関というものも、やはりそういった開発計画とうらはらに推移するものと考えておるわけでございます。その他各省の出先で特に特例的に設けられておるもの等につきましては、これは現地の行政需要の推移等をよく見定めまして、それぞれの必要な期間が終わりまして、現地とも御了解がついた場合において解消することがあろうかと思います。その期間等につきましては、率直に申し上げましてどれだけの期間が必要であるかというのは、私ども、必ずしもつまびらかにいたしておりませんけれども、それは全体としての行政需要の推移等によって、決定されてくるものと考えている次第でございます。
  125. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これではまだなかなか中へ入れないわけですが、これは総務長官、私、いままでいろいろ答弁を聞いておりましてね、いまの沖繩の開発振興計画ですね、これは一応十年の時限立法になっておりますね。この十年の時限立法ということを頭に入れて、いま局長は答弁されたと思うのですよ。そうすると、沖繩開発庁というのはこれは十年間なんですがね、そういうふうな、私は少なくとも沖繩開発庁——北海道開発庁と多少内容は違うと思いますがね。北海道開発庁はすでに二十数年のあれがありますね。そういうような点から考えてみましても、沖繩開発庁そのものが、これは恒久的な機関であるかどうかということにもひっかかってくるわけですけれども、ここら辺のところは、いま局長がおっしゃったように、やはり沖繩振興開発計画ですか、十年の時限立法とうらはらのものであるという話がありましたけれども、そういうふうな考え方でいるのですか、沖繩開発庁というのは。
  126. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) ここは一応前提は、沖繩県本土各県と同じようなレベルに到達し、そして、沖繩県が占めるべき地位というものが県政の上で確立されるということを希望しておりますから、それが十カ年計画で終了して、その地位が確立される見通しが立てば、私はやはり、たくさんの疑問を持って質疑応答がありましたように、開発庁なり総合事務局というものは、できれば十年でなくなったほうがいいと思います。しかし、沖繩県民の希望になおかつ沿い得ないような場合がかりに起こる場合には、それはそのときの情勢に応じて、これは沖繩県民の側の、沖繩県側の意向というものを前提にして、その際に議論しなければならぬと思いますが、一応はただいまの平井局長の答弁いたしましたような線で出発したいと思います。
  127. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうすると、いま、私は沖繩開発庁というふうな意味で申し上げましたが、この沖繩開発庁とは別に、現地にできる総合事務局ですね、これはどうですか。
  128. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは沖繩開発庁の出先の総合事務局でありますから、やはり同じことであります。
  129. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ということは、出先の機関であるから同じだけ、十年間、とりあえずそういうような考え方でいいわけですね。——わかりました。  それじゃ、一応それだけを前提にしまして、いろいろと中へ入ってまいりたいと思いますが、すでに先日の質問で答弁がございましたですが、先日の新聞等で、琉球政府の職員の引き継ぎの問題が相当報道されております。とりあえず私は、先日お伺いした同僚議員質問を聞いておりましたら、琉球政府——琉政の職員の皆さん一万八千四百人、そのうち国へ六千四百人、それから県へ一万一千九百人、市町村へ百人、そういうふうに引き継がれる、そういうぐあいにお伺いしたんですが、この点はそのとおりですか。
  130. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) そのとおりでございます。
  131. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうすると、国へ六千四百人参るわけでありますが、この六千四百人の内訳というのは大体どういうぐあいになりますか。
  132. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) これはまだ、相当なお現在でも人員の増減がございますけれども、一応現在の状況を申し上げますと、裁判所が四百四十六、人事院が九、総理府が六百十八、そのうち警察庁が三十六、行政管理庁二十一、防衛施設庁三十五、環境庁一、沖繩開発庁が五百二十五、それから法務省が千四十一、大蔵省が七百十四、文部省が八百八十六、厚生省が六百七十六、農林省が九十二、通商産業省が二、運輸省が四百、郵政省が千二百五十一、労働省が二百五十八、建設省が七、合わせて六千四百人、大体こんな状況でございますが、いま盛んにその具体的な人間の当たりをしておりますので、数字の動きはなおあるわけでございます。
  133. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 先ほどの水口委員質問の中にもちょっとございましたが、この振り分けた数字だけを見ておりますと、非常に国の機関の人数が多いというのが非常に明快に出ております。そこで私は、こういうふうな人員の振り当てといいますかね、振り分けといいますのですか、これはどこでやるんですか。
  134. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) 各省と、それから琉球政府とで合意をいたしております。
  135. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私は、ここでお伺いしたいんですが、先ほど水口委員質問のときに出てまいりましたこの地方のいわゆる出先機関ですね、こういうふうなものは、行政改革という面から考えても、この際できるだけもう沖繩県のほうに譲ってしまうと、そういうふうな考え方というのはこの際やるべきだと私は思うんです。実際問題として、こういうふうな行政事務の配分ですね、こういうようなものの基本的な考え方というのは、先ほど局長からもちょっと答弁ございましたけれども、実際的にはこの臨調答申の中の勧告の中にも現実に、「行政事務の配分に関する改革意見」というのが現実に出ているわけですね。こういうふうなところの意見というのは、私は、現実に内地では、これはもうなかなか実行できない、このとおりならないということで、相当いろんな点で問題になっているわけですね。そういう点から考えてみますと、先ほど地方自治ということを相当尊重して、そして大幅な権限委譲ということもずいぶん話がございましたけれども、私は、こういうふうな何というか、戦後二十数年間にわたるそれこそ沖繩の県民の皆さんの苦労、あるいは沖繩県独自で国の機関の、いままで国でやる仕事も、また地方自治体としてやる仕事も、両方あわせてやっておった、両方やっていたわけですから、この際国で取り上げるというのじゃなくて、できるだけ国のほうでやるべきじゃないか、こういうぐあいに私たちは考えるわけでありますけれども、ここら辺のところはどうですか。   〔理事町村金五君退席、委員長着席〕
  136. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 国の固有の事務というものは、国が予算上も行政上も全責任をもってやらなければならない事務がございます。したがって沖繩県だけにそれを県でやらせるというのには、県のほうも場合によっては迷惑な仕事もありますし、なかなかむずかしい問題が法的にも現実的にもあると思います。沖繩県が、今日までの長きにわたって、不完全な形であったとはいえ、国家事務までやっていた事実から考えて、これが不便な、いわゆる住民から見て不便な状態に、復帰したらなったということがあってはなりませんので、そこで、いろいろな御批判をいただきながらも、現地に総合事務局をつくって、ブロックの長の権限でそれらの事務が処理できるようにしたいという配慮をしたわけでございます。お気持ちについてはわかりますけれども、個々に当たりますと、なかなかあるいは県も希望しないこともずいぶんあるわけでございます。
  137. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 趣旨よくわかりますけれども、しかし国の事務、県の事務の配分なんということを考える場合、やはりこういうふうなときにほんとうのあるべき姿というものに私はしないと、内地のほかの府県と同じように、たとえばいま内地で問題になっております職安とか、社会保険とか、陸運事務所とか、これは行政改革の第一次から順番に出てきていまだに解決しない、こういう問題が現実にあるわけですね。そして、これは当然地方自治体でやったほうが住民のためにもいい、現実にそういうような声が全体的に強いわけです、実際のところ。そういう点からいきますと、私はほんとうはこういうような問題も、地方事務官制度は廃止して全部沖繩のほうでやったほうがいいのじゃないか、そういうふうなことを思うわけですが、ここら辺のところは実際問題、たとえば内地でこういうようなのが問題になっている、沖繩ではどうするか、そういう点については、やはり具体的に話は出たのでしょうか、どうでしょうか。
  138. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) もちろんこまかくいろいろと検討はいたしております。たとえば自動車検査の行政等は、現在琉球では民間がやっております。しかしながら復帰いたしますと、今度は一応新車等についてはどうしてもこれを国の安全基準その他で検査をしなければならないたてまえになっておりますから、民間に委託してこの新車は安全であるというような、そういう判断を民間でしてよろしいというわけにはなかなかまいらない。しかし、一般のその他の検査業務というものは、これは民間のほうでおやりになってもいいのじゃないかということで、民間のほうで引き続き沖繩ではやれるような配慮等もいたしておるわけであります。
  139. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それじゃ、その点はそのくらいにしまして、先ほどちょっと出てまいりました、総合事務局の中へ組み入れた機関と組み入れていない機関がございますね。先ほど人数をおっしゃっていただきましたが、この中で総合事務局の中へ入っていないのをさっと順番に読み上げてくれませんか。
  140. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) だいぶたくさんあるのですが、総合事務局に入らない、それ以外の独立して置く機関でございますね、国家公安委員会は九州管区警察局と地方警務官、行政管理庁が沖繩行政監察事務所、防衛庁が那覇防衛施設局、沖繩地方連絡部、陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊、環境庁が沖繩国立公園管理事務所、それから法務省が沖繩刑務所、沖繩少年院、沖繩少年鑑別所、那覇地方法務局、那覇保護観察所、入国管理事務所、検察庁、沖繩地方公安調査事務所、九州地方更生保護委員会事務局、大蔵省が沖繩地区税関、国税不服審判所沖繩事務所、沖繩国税事務所、税務署、それから文部省が琉球大学、沖繩国立青年の家、厚生省が琉球検疫所、国立療養所——以下ありますが、別に資料を差し上げることにいたしましょうか、時間の関係がありますから……。
  141. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 けっこうです。そうしますと、これは私ちょっと聞き違いかもわかりませんが、この総合事務局の中に入る、この第九条のイからチまでありますね、いろいろありますけれども、これがこの中でまたいろいろ分かれているわけですね。これ、両方にまたがっているのがありますね、ずいぶんね。これはありませんか。そこら辺のところはどうですか。
  142. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) 両方にまたがっているというのはございません。
  143. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 なければけっこうです。  そこで、先ほどこの総合事務局の中へ入れるのと入れないのとの区分について答弁がございました。そこで、私は少なくともこの総合事務局の中に入れている、これは少なくとも開発庁設置法のこの第四条ですか、第四条の沖繩の開発計画の実施あるいは監督、推進、そういうことを進めるためにこれらの第九条の機関が入っているのだろうと私は思うのですが、ここら辺のところはどうですか。
  144. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) 御質問がちょっと受け取りかねますけれども……。
  145. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 じゃ、もうちょっとわかりやすく言います。要するに開発庁長官は、第四条でやるところの権限ですか、これ開発庁長官がやる権限というのは大体第四条に基づいた権限を行使するのだろうと私は思うんですがね。そうすると、そういうふうな意味で第九条のそれぞれの機関は監督を受けるということになりますね。そういうことですか。
  146. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) 出先に入りますもの大部分がこの第四条の振興開発計画の事業をやりますが、別にそうでない、許認可事務等の点のものも入っておるという状況で、全部が開発計画の問題ばかりの部局ではございません。
  147. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 その開発計画以外のというのは、どういうのがあるんです。
  148. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) 許認可事務等でございます。
  149. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 許認可事務、よくわかりました。そうしますと、たとえば通商産業局というのは通産大臣の直属の管轄と、それから少なくとも沖繩開発庁長官の、この第四条に基づく指揮監督と、両方受けるわけですね。そういう点からいきますと、公正取引委員会事務局というのは、これはどういうふうになっておりますか。
  150. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) これは公取の委員長の指揮を受けます。
  151. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 公取の委員長の指揮を受けるというのは、通商産業大臣が通商産業局を指揮するのとおんなじで、開発庁長官の、公正取引委員会事務局は四条のどういう点で監督を受けるわけですか。要するに第四条に基づいた事務の権限でしょう。要するに公取は、総合事務局の中には入っておるけれども、開発庁長官の指揮監督は一切受けない。ヤドカリみたいなもんだということになるんでしょうか、どうですか、これ。
  152. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) その事務そのものにつきましては、開発庁長官の指揮監督でなくて、公取委の委員長の指揮監督を受けるということになっております。それから身分につきましては、開発庁長官の指揮監督のもとにあるということになっております。
  153. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 開発庁長官の監督を受けるというのは、どこのどの条に基づいて受けるわけですか。
  154. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) 身分で開発庁長官の指揮監督を受けるということにつきましては、第八条の「沖繩開発庁に、地方支分部局として、沖繩総合事務局を置く。」ということになって、沖繩開発庁地方支分部局になりますから、沖繩開発庁長官の指揮監督を受けると、こういうことになります。  それから仕事につきましては、事務につきましては第九条の二項の「公正取引委員会が、」云々と、これこれの「事務については当該事務に関する主務大臣が総合事務局の長を指揮監督する。」と。で、事務のほうはそれぞれの主管省ということになりますから、公正取引委員会委員長の指揮監督を公正取引委員会関係の職員は受けるということになるわけでございます。
  155. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 よくまあわかってはいるんですけれどもね。要するに公正取引委員会以外のそれぞれの総合事務局の中に入っている局長さんというのは、全部が沖繩の開発あるいはそういうふうな面に関係があるわけですね。少なくとも全部何らかの形で関係があり、沖繩の振興開発に寄与しているわけですね。ですからそういう面からいきますと、確かにこの開発庁長官の指揮監督を受けるということは非常に重要になってくる。実際公正取引委員会というのは、これはちょっと私は違うと思うんですよね。ですから、先ほどもいろいろありましたけれども、こういうぐあいに、まあ何というか、御都合主義で取り込んだという形がどうしても出てくると私は思うのですよ。ここに入っていない機関でも、人数の面からいきまして少ないところもずいぶんあるわけですよ。現実の面は、行政監察局を例に再々あげていらっしゃいますけれども、端的にいえば行政監察局をここに入れたって、特別、理由は何ぼでもつくわけですね、あとで。そういうふうな感じのこういうふうなやり方というのは、やはりおかしいんじゃないかということを、私しみじみと思うんですがね。どうですか。
  156. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) こまかく申し上げますと、その境目のような問題がある点は、先生おっしゃるとおりでございます。しかし、私たちの根本的な考え方といたしましては、専門的な事務、研究的な事務、個々的行政に最も適しているものというものは、それぞれの個々的の機関ごとに置くということにいたしまして、それから特に重点の総合振興計画、及び現地の事務に直接県民の利害の深いものを、わざわざ九州ブロックに入れて、そして福岡や熊本まで行かないようにしていく、そういう観点で総合的にやっていくという点を主力にいたしまして、ここに入れたという点で振り分けをいたしました。ですからこまかい点になりますと、なるほど御指摘の点のあることは実際上私たちも心得ております。
  157. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いま長官おっしゃるとおりなら、あなたのおっしゃるとおりなら、これは公正取引委員会は完全に出すべきですね、あなたのいまの理論なら。
  158. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) これは公取の行政というのが向こうにございませんので、琉球政府のほうでも、これを入れまして公正な取引というものをやっていかないと、今後いろいろな混乱が起きるという要望でございまして、合意いたしましたものでございます。
  159. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ですから、そういう機関こそ独立してちゃんとしてつくったらどうなんですか。総合事務局の中へ入れなくて、ちゃんと独立してつくったらどうなんですか。
  160. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) こちらのほうの、公取委員会のほうも、そういうことをいたしまして沖繩のために公正取引の事務をやりたいと、こういう要望がございましたので入れました。
  161. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは公取のほうからの希望によって総合事務局の中へ入れたというのですか。
  162. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) さようでございます。
  163. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは行管のほうはどうなんですか。沖繩北方対策庁長官の答弁ですと、公正取引委員会の希望で、独立した機関ではなくて総合事務局の中へ入れるという希望でつくったというのですが、事実ですか、これは。
  164. 平井廸郎

    政府委員(平井廸郎君) 最初にちょっとおことわり申し上げたいと思いますが、第九条第一項第二号によりましてつくられております機関はすべて総合開発計画のみに関連したものではございませんで、たとえば財務局の例をとりますと、金融機関の監督検査というようなものもございます。その他の省庁につきましても、直接開発計画に関係のない仕事もございます。そういう意味におきまして、私どもといたしましてはこういう機構の審査に当たりました基本的な考え方といたしましては、いわゆる現地事務を実施するものにつきましては、基本的にはそれぞれの事務所としてつくらざるを得ないであろう。ただ許認可その他一般的な行政事務に関するものは、先般、先ほど御答弁申し上げましたが、できるだけ全体として簡素、効率的な行政機構をつくり上げていくという意味で、なるべく一本化された形でおつくりいただくのが望ましいという考え方を持っておりまして、そういう意味におきまして、公正取引委員会事務局の地方事務所を総合事務局にお入れになることも適当だろうと考えた次第でございます。
  165. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 あなた私の質問には答えていないですよ。だからあなたのおっしゃるように、第四条の各号全部ですね、及び八条ですか、これは要するに、少なくとも沖繩開発庁長官の指揮監督にあるわけでしょう、これは。それ以外の、あなたのおっしゃるそれぞれの仕事ももちろんあるでしょう。それぞれの許認可はそれぞれあるでしょう。それらはそれぞれの省庁なりその他が直接大臣なり何なりが管轄しているでしょう。それはわかるんですよ。それじゃなくて、これはいまこちらの長官の答弁ですと、公正取引委員会のほうの希望もあって、これは総合事務局の中へ入れた——これは独立すべきだと言っているわけです、するならね。沖繩にないんならこれから新しくきちっとつくればいいんじゃないか。何も人数が少ないとか、そんなことは問題じゃないわけですが、総合庁舎の中へ入っているから、入っているから管轄を受けるというそれだけなのか。それだけじゃないというのでしょう。そこら辺のところはどうかと聞いているんです。
  166. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) その点は、先生の御懸念は、庶務をやるという、そういうふうな機構が主になっているところへ、公取委員会というものをこの中に入れるのは不適当だ、そういう考え方が基調になっていると思うのでございます。その点で、この事務局でやりますところの機能は調査機能でございます。処分権は公取の委員会のほうでやるのでございまして、現地では調査機能という点でございますが、その点で先生の御懸念のような点は氷解できるのじゃなかろうかと思います。
  167. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それは私もよくわかっているのですよ、考え方としては行政監察ということと私は同じだと思うのですよ、実際問題。調査機能といいましても、監察のほうと同じですよ。やっぱり内容をいろいろ調査する。もちろん公正取引委員会委員の皆さんが実質はやるのですよ。実質はその事務局の皆さんがやるのです、調査とは。公正取引委員会委員の皆さんというのは、これは全然独立しているわけですからね。委員長及び委員というのは法律できちっときめられているわけですから、それでちゃんとやると思うのです。そういう点から言えば、あなた前段でおっしゃいましたけれども行政監察局の皆さんと同じだと思うのですよ。そういう点からいくと、この総合事務局の中に入れるのはやっぱりおかしいと思うのですが、どうですか。
  168. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) やはり調査機能という点におきましては、現地の調査をやるということ、あるいは総合機能をここではっきりさせるという点におきましては、入れるということについては、私はやはりよろしいのじゃないかと思うのです。
  169. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それじゃ、入れる入れないの論争は、もう入っちゃっているのですから、やめまして、あなたはさっき公正取引委員会のほうの希望によってとおっしゃいましたね、これは現実にどういうふうな形で希望があったのですか。文書ですか、口頭ですか。どこから要望があったのですか。
  170. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) お互いの協議でございます。
  171. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 お互いの協議というのは、これは何ですか。どういうふうな会合に向こうのほうから出てきて、これは公正取引委員会委員の皆さんからの話なのか、事務局のほうの話なのか、どういうところでのあれですか。もう少し詳しく。
  172. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) 仕事は事務局同士でやりましたけれども事務局がそういう意見を持ち出すにつきましては、もちろん委員会の意見を聞いていると思います。
  173. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 その点はもうやむを得ませんけれども、私たちの考えとしては、これはやはりどうもおかしいのじゃないか、間違ったものが入っているという感じがします。  それからもう一点、沖繩開発庁長官の権限規定ですが、これは環境庁とか科学技術庁長官に与えられた権限というのは、今回の沖繩開発庁長官の権限規定の中にないわけです。これはどういうわけですか。これは沖繩開発庁長官の権限という点から考えれば、内閣法の第六条に基づく権限というものは、やはり入れるべきじゃないかと思うのですが、これはどうですか。
  174. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) この点は、現在発足いたしました環境庁、実際上は科学技術庁はそういうパターンを前から持っておりますが、これは各省庁の利害にあまり関係がないので、そういう条項があってもよかったのですが、環境庁のときは相当議論いたしました。しかし、日本の破壊が進んでいる環境というものを守っていく環境庁ならば、どうしても他省庁との利害の調整の場合に、固有の事務との間に衝突が起こる、そのときに並列の対等の大臣ではやっていけないと思いましたので、総理の御意向も最終的に受けて、第六条が発動できるようなところまでいたしました。しかしながら沖繩開発庁の場合は、これは実際上すでに設定された補助率、あるいはまた振興開発がこれから計画ができていきますことについての予算の獲得、執行という面でありまして、各省庁と利害が対立をするというようなことはあまり考えられません。いわゆる開発の熱意とか何とかいうものについては若干の違いがあると思いますが、あり得ると思いますけれども、したがって、まず初めには第六条第二項で「沖繩開発庁の所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行在機関の長に対し、資料の提出、説明その他の必要な協力を求める」、この権限をまず与えまして、さらに、必要があると認めた場合には、関係行政機関の長に対し、計画の実施に関する重要事項について勧告をする、そしてその勧告に基づいてとった措置について報告を求めることができる、ここまでにとめたわけです。この場合は、北海道開発庁もそういう権限は持っておりませんし、ここまででとめておいても私はだいじょうぶだと思ったわけであります。すなわち、環境庁の場合は、さらにこのとった措置について報告を求めても、なお環境庁長官日本環境を守り、自然を保護するという立場からがまんできない、それではやっていけないという場合において、総理大臣の各省大臣を閣議決定によって指揮していく権限の発動を求める、この強力なバックがぜひとも必要だと思ったわけです。しかし今回の場合は、これは沖繩の開発のために本土全部がみんなそうしようと思っておりますし、そして各省庁で熱意の差はおそらく出てくるかもしれませんが、それらについては、今度は開発庁長官があなたのところはもう少しここの点をやってくれというようなことを言うことによって、わかりましたということで、話し合いは順調にいくだろうと思うのです。もしこれでやってみて、各省庁が、沖繩開発には自分は熱意を示すわけにはいかぬ、こういう大臣なり役所が出てきたらこれは事ですから、そのときに考えることにいたしますが、出発にあたってそこまでの、総理大臣の各省大臣への指揮権まで与えておくことは、これは沖繩開発庁長官には必要がないものだ、そう考えて判断をいたしました。
  175. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣、私は現在の時点での話としては非常によくわかるわけです。しかし、よく考えてみますと、これから沖繩の問題がだんだん熱がさめてきた場合——いまは非常に熱いです。みんな沖繩のほうを向いています。沖繩について云々する人はおりません、現実に。しかしながら、大臣も離島のことについては非常に詳しいわけですが、熱がさめてきたときに、実際問題として、北海道とはだいぶ実情が違うと思うんですよ、現実の問題として。そういうような面から考えれば、やはり科学技術庁にもこういう権限があるわけですが、一回も発動したことがないそうですけれども、こういうような権限というのは、やはりこういうふうな沖繩みたいなところにはばっちり入れておいたほうがいいんじゃないかという感じがするわけです。これは現在の時点では、大臣がおっしゃるように、そういう心配はないかもしれません。しかしながら、これから時がたつに従って、やはり沖繩という声がだんだん反作用を起こして、離島はそこだけじゃないぞという考えが出てくると思うんです。そうなったときに、やはり入れておけばよかったというようなことが出てくるんじゃないかということを案じて、きょうはこの点を言っているわけです。ここら辺のところはどうですか。
  176. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これが沖繩振興開発に対する国の姿勢、すなわち援助の条件というものが未確定な分野があるという場合においては、確かにそういう心配があると思います。しかし、予算上において補助率その他もきちんと設定が終わっておりますし、あとは金額の確保の点に対する年度ごとの熱意の度合いで、金額が、ある役所ではほかの重大な予算事項をかかえていてお留守になりがちであるというような場合には、開発庁長官が一括計上する条項がございますから、そういうことも実際上はやっていけるとか、また離島の問題については、あるいはそういうことが言われることもあるかもしれません。しかしながら、言われても、沖繩本島は本土の離島振興法よりもすぐれた条件にありますし、さらに現在の沖繩の離島振興法で除外されておる宮古、石垣島につきましても、今回はそれより手厚い離島振興の対象に入れることになっておりますから、そういう条件は全部整備してありますので、これはもうあと残るのは何かといえば、予算の金額、金融についても融資の条件はきちんと設定してありますから、その金融の融資額の確保という問題が残るのみである、そういうふうに考えます。
  177. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは次に、さらに行政改革の関連でもう一つ伺っておきたいんです。沖繩振興開発審議会のこと、これをちょっとお伺いしたいんですが、審議会の問題というのはこれはもう始終議論をされております。これは非常に私は大事な問題だと思うんです。この審議会の人数とか定員とか、いろいろな問題については、行政改革等でもこれは相当たびたび取り上げられた問題だと私は思います。そこで、ここら辺の問題を私はきょうこれからお伺いしたいのであります。  閣議決定というのがありますね。審議会の構成人員について、あるいは審議会の設置及び運営についていままでたびたび閣議決定等をやられております。何回も閣議決定はしておりますけれども、その閣議決定の趣旨というのは、これはすべて、昭和三十八年の九月二十日付ですか、の閣議口頭了承事項、これを基本にして、このことをずっと確認をされておるということだと私は思うのですが、この辺のところはどうですか。
  178. 平井廸郎

    政府委員(平井廸郎君) 先生の説のとおりでございます。
  179. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣もそのとおりだとお考えですか。
  180. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) そのとおりです。
  181. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうすると、大臣は、このことは閣議できまった、こういうふうに了解されたというのは、これは守らなくてもいいというお考えをお持ちなんですか、どうですか。
  182. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 閣議できめましたのは原則でございまして、特殊の事情がある場合は必ずしもその原則によらなくてもいいものだと考えております。
  183. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 どうもおかしいですね。閣議できまったというのは原則だけで、守らぬでもいいというのですか。原則だけ守れば、あと守らぬでもいいということですね、いまの御答弁だと。いろいろありますけれども、私はいま案外抽象的に申し上げているのです。行政改革の問題をいま先に言いましたけれども、閣議できまったことを、もう端的に言えば、守らなくてもいい、特殊な事情があれば守らなくてもいいというようなそんなものなんですか、閣議決定というものは。
  184. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 閣議できまったことは、これはもう原則として守らなければなりませんが、たとえて言えば、私が守らなくてもいいというような誤解を招くことばを使ったので、その点を指摘されていると思いますが、私はやっぱり審議会の委員なんかは、たとえて言いますと、原則として二十人、こうしておりますけれども、特殊の場合はそれがふえていくというようなこともあります。あるいは国会にかけなければならぬ委員会なんかの場合で、国会のほうでそういうふうに人員を変更されるというような場合には、やはりそれを守っていくというようなことがあり得る。こういうことを申し上げたわけであります。
  185. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣がおっしゃることはよくわかるのです。あなたは私がこれから質問していくことを先回りして全部言っているわけです。だからそういう答弁が出てくるわけだけれども国会で修正があったから——そこは除きましょう。沖繩開発審議会の人数については確かに国会で修正がありました。そこは除きましょう。  そうしますと、閣議決定の中に、関係行政機関の職員は含めないようにするというきまりがあるでしょう。そこのところを局長読んでください。
  186. 平井廸郎

    政府委員(平井廸郎君) 何回かにわたって閣議了解なり決定がされておりますが、最も最近のものといたしまして、昭和四十四年の閣議決定の「別紙3」の「7」に御指摘の問題がございますので、読み上げます。「国会議員および行政機関の職員は、原則として審議会等の構成員にしないものとする」とございます。
  187. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 あなた、「原則として」という前提が入っておりますが、これはもう初めから関係行政機関の職員というのは十三人加えているでしょう。十三人ですよ。多過ぎませんか。多過ぎるというよりも、まず関係行政機関の職員の十三人の内訳、だれとだれですか、これは一体。
  188. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) 大蔵省、文部省、建設省、運輸省、それから厚生省、農林省、通産省、経済企画庁……ちょっと待ってくださいませ。
  189. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 あとで調べてこれは報告していただくとしましても、行管庁長官、これは少なくとも、いま局長から読んでいただいた「国会議員および行政機関の職員は、原則として審議会等の構成員にしない」という原則は、何もいま読んでいただいた昭和四十四年だけじゃないんですよ。その前の四十二年、三十八年当時も、前々からたびたび問題になって、これは除こうというのが政府の方針なんですよね。閣議できまったことなんだ。それを先ほどから、地方自治を重要視するとは言いながら、現実にこういう大事な審議会、その審議会の中に——いままで二十五人だったんでしょう、二十五人のときすでに十三人入っている。二十五人のときに十三人入れるのは、十三人入っているとね、半分以上が行政機関の長になっちゃうんじゃないですか。だから、大臣がおっしゃったように、人数の面については、学識経験のある者をふやして、五人ふやしたでしょう。ふやして三十人にしたでしょう。ふやしたほうがいいでしょう、大臣、よく考えてみると。私は人数の面も問題にしたいんですよ。したいけれども、よく考えてみると、実際こういうふうに、この各省庁のこういう責任者というのは、私は、その審議会に違う面で参加できると思うんです、幾らでも。総合事務局もあることですし、何ぼでもできると私は思う。そういうふうな別の参加のしかたがあるにもかかわらずわざわざこういう大蔵省、文部省、それぞれの人たちを審議会の中に加える必要はどこにあったのか——大臣どうですか、こういうことをきめるときに、あなたはこういうような閣議決定とか、こういうことがあるということを御存じだったんですか。これはどうなんですか、この辺のところ。
  190. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 審議会等の委員の原則を閣議できめておるということは承知しております。ただ、沖繩開発審議会の場合は、やはり、沖繩といろいろ打ち合わせながらやった過程において、やはり沖繩地方事情等をできるだけ反映させてもらいたいと、そういう強い要望等もありまして、人数もふやしたということになりました。それから、各省庁の者が入っておるというものも、開発審議会の機能を有効に生かしていくためには入っておったほうがいいのではないかということで、沖繩当局等とも話し合いながらこれはきめたと思います。
  191. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それは大臣、違いますよ。そんな——ぼくは、沖繩の開発という面から考えて、現地の人たち、学識経験者、そういう人たちは当然私は加えるべきだと思うんですよ。それを実施する面というのは、違う面で責任を持ってやるということは、先ほどいろいろな総合事務局の実施の問題のところで、ずいぶんありました。それは私は言いませんけれども、要するに、審議会できまったことを実施するという面では、確かに国としては責任を持ってやるという話もありました。私は当然だと思うんですよ。ところが、審議会の中にこういうような人たちが入ってごちゃごちゃやったら、実際沖繩でほんとうにやりたいということがゆがめられてしまう可能性もあるわけですよ。そういう可能性があるから、この閣議決定等で、審議会の委員というのはあくまでも厳正中立で、ほんとうに現地の人たちの意見というものが反映されていないといけないというので、あの人数をふやしたときに入れたわけでしょう。しかしながら、こういうような人たちが十三人も入っているというのは、政府の方針にも反するし、実際に現地の人たちの面から考えてもおかしいじゃないですか。これは全然私納得できませんよ、大臣。
  192. 平井廸郎

    政府委員(平井廸郎君) 先ほどの閣議決定を行ないます場合におきまして、例外的に、行政機関等の職員が入ることのやむを得ない場合もあるんではないかという議論もされておりまして、たとえば審議会等の場において学識経験者の御意見ももちろん必要でございますが、それと関係行政機関の意見とを総合的に調整、判断をしていただく必要がある場合なども考えられておったようでございます。この審議会の付議事項については、沖繩振興開発計画をはじめ、振興開発法の実施に関して重要な事項が付議されるわけでありますが、振興開発計画の中身一つとりましても、現地からの御要望に基づいて出されたものを基礎として議論されるにいたしましても、関係各省の仕事に関連するところはきわめて大きいわけでございまして、そういう意味におきまして、審議の過程において、やはり関係行政機関の職員が参画して実態的な調整をはかっていくことが望ましいという考え方のもとにつくられたものと伺っております。
  193. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私は局長がおっしゃるのも全然わからないわけじゃないんです。あなた、これは審議会は初め何人だったんですか。国会で修正するまで何人だったんですか、人数は。どうですか。
  194. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) その点は、私の手落ちでありますから、私から答弁します。  当初、審議会の委員を二十五名にきめますときに、関係行政機関が非常に多いということで二十五名にきめたわけでありますが、その後国会の、衆議院の段階の議論は、沖繩県意思の反映の最終的な確認という意味における審議会、その構成が、過半数の十三人が関係行政機関の職員であれば、これは意思はじゅうりんされるのではないかという質問を受けまして、この点は、私も確かに配慮の足らなかった点であります。これは政治家としての私の誤りであります。したがって、国会の与野党全員一致の御修正で五名ふやしていただきました。学識経験者をふやしていただいたわけでありますが、それを踏まえて、過半数を沖繩県を代表する人たちに占めていただくということを私の口から明言いたしまして、私の誤りを国会で修正していただいた、こういうことであります。最初の出発のときの数の過半数の問題の配慮の足りなかったことは私の誤りであります。
  195. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私は、総務長官ね、そういうふうにおっしゃっていただくとなかなか質問がやりにくくなってくるわけですが、実際問題、これは基本的にやっぱり行管庁としてもこの問題については非常に重要な問題ですよ。やっぱりこういう点については、私は人数をふやすというより、これは関係行政機関の職員を十三人もというのを減らせばいいんですよ、大臣。要するに減らして、そしてやっぱりかわるべき人は一ぱいいると思うんです、私は。内閣の方針に反してまでわざわざ入れる必要があるかどうか。私は入れる必要はないと思うんですよ。そういう点についてはいま答弁ございましたので、これは誤りだったと言うんですから、それをさらに重ねて追及するつもりはありませんけれども、この点については、われわれが危惧する点については今後とも十分配慮をお願いしたいと思います。  それから、さらに中村大臣ね、要するにあなたは沖繩の特殊事情、そういうことで審議会はこうだとおっしゃいますが、私は沖繩に関連をしていろいろ申し上げたいことがたくさんある。あなたが大臣になって行政改革ということについてほんとうに真剣に考えていらっしゃるのかどうか。私はどうも、閣議決定の問題にしたって、あなたのところからなしくずしにしておる。あなたの行政管理庁からなしくずしにしておるんです。私は具体的に何々新聞にこういうのが載っていると言いました。あなたのほうの皆さんが必死になってかけずり回ってさがしていましたが、あなたの目の前にはちゃんと答弁も出ているんでしょうが、それにしてもあなたのところからなしくずしにしてきているということを私は二、三申し上げたいと思うんですが、あなたは具体的にわかっていますか。どれとどれとがなしくずしにしているかわかっておりますか。具体的に申し上げましょう。これはあなたのところで行政監理委員というのを任命なさるでしょう。行政監理委員というのは、これは非常に重要な役目を持った人たちだと思うんです。あなたもそう考えているでしょう。ところがあなたいまおっしゃったそういう人たちが、現実にあなた方が、自分たちできめた約束をあなた方が任命した職員が破っている。気がついていますか。あなたどうですか。
  196. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 何かちょっと思い当たりませんが、御指摘を願えればと思います。
  197. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そういうことを思い当たらないというのは、自分たちできめていて、それを思い当たらないというのは私は非常にけしからぬと思うんですよ、局長。これはいつも問題になることでありますが、審議会の人選のときの閣議決定があるでしょう。その中で、審議会の兼任の問題についてどうなっているか、一ぺん読んでみなさい、そこを。
  198. 平井廸郎

    政府委員(平井廸郎君) ただいま御指摘の点は、三十八年の閣議口頭了解における内容によりますと、「会議によく出席して、十分にその職責をはたし得るよう、本人の健康状態、出席状況に留意しこれに該当しないような高令者又は兼職の多い者を極力避ける。兼職の数は最高四とする。」ということでございます。
  199. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いまのことを大臣はわかっていましたか。この間任命になった行政監理委員会人たち、幾つずつ兼任しているかわかっていますか。この間行政監理委員に任命になったのは六人だったですね。その六人のうちの半分は四つ以上なんです、半分は。そういうことについても、やはり行政管理庁自身がそういうことを配慮して、どうしてもその人にお願いしたいならば、自分たち行政改革を進めていく中心の省庁なんですから、そういうことについては少なくともどれかをやめていただくか何とかして、やっぱり閣議できめた、あるいはこれはいま三十八年九月二十日とおっしゃいましたが、このことはたびたび確認をされたことなんです、閣議で。たびたび確認されているんですよ、大臣。ですからそれに沿うようにすべきじゃないですか。大臣、どうですか。
  200. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) できるだけその線に沿うようにして人選をすることが最も好ましいことと考えております。
  201. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣、この新聞、もうすでに読んだと思いますが、これはほんとうに本気になって取り組んでもらわないと、閣議できめたことというのは、ほんとうにこれは事実かどうか知りませんが、確認したわけじゃありませんが、これはやはり委員を全部で十幾つ兼任している人が言っているのです。どんなことを言っているかといいますと、四つ以上兼任してはいけないということは政府部内のことで私の知ったことじゃないとか、現実に書いてある。または、四つ以上はいかぬという法律があるが、われわれはそのほかの委員会については政府におつき合いしているだけだとか、それからあなた方のきめた審議会なんてどうしようもないですね、こう言っている。このことを言っている人は、全部で五つぐらい兼任している人です。自分が担当している審議会の山村、開拓、農業機械の審議会、ありますね。その審議会などには一度も出たことはない。まだやっているのですか、その審議会、こういうふうな調子なんです。そうして、こういうふうな状況では幾ら行政改革とか何とかかんとか言っても、大臣、やはりこういうこまかいところにもきめこまかく配慮していかないと、私は行政改革なんというものは全然進まないと思うのですよ、大臣。こういうようなところにも配慮しながら、少なくとも沖繩開発庁というものが私はでき上がったものであろうと、こう考えておりましたけれども、いま聞いておりますと、大臣のいろいろな答弁やいろいろなものを聞いておりましても、とてもじゃないけれども、そこまで配慮の上で行なわれたものじゃないと私は思うのです。そこで、少なくとも、大臣、重ねて私は申し上げますが、これらの閣議決定が、これが一回や二回じゃない。行政改革の第一次、第二次、あるいはほんのこの間までもたびたびと確認されたことです。非常にこれは、そういうような意味では重要なことだと思うのです。そういうような意味で、こんな一つ一つの問題については少なくとももう一回総点検するなり何なりして、身近な問題から片づけていく。そうして少なくとも行政管理庁としては、本格的に、こういうような問題に自分たちのところの省庁からそういうようなことをやることはやれるようにする、これが私は大臣の任務であり、そういう考え方でいかなくちゃいけないと思うんですが、大臣どうですか。
  202. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 御指摘のような方針でいくべきであるということは私も全く同感でございます。今後はやはりそういう方向でいきたいと思いますが、ただ特殊の場合に、きわめて、人選等の場合に、適任者であるような人がいつも欠けておられるというような人がありまして、その人の兼任しているものが非常に繁雑であって行政監理委員会に出席できぬというような場合には選任はしておりませんけれども、少なくともその人の状態が、委員会等には常時出られるという状態の人によってきめたということがありまして、御指摘のような点があったことは私満点とは思いませんけれども、そういう特殊の事情の場合はやむを得ない措置をとったと思います。
  203. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これはもうこれ以上審議会の問題等は言いませんけれども、またあらためて、この次の許認可の問題とか、いろいろありますが、そのときには具体的にもう一回やりたいと思います。これは私は特殊な場合のことも全部いかぬというわけじゃない。大臣おっしゃるように、それはどうしてもやむを得ないこともあると私も思うんですよ。それはそれでいいけれども、特殊な事情じゃない。よく聞いてみると、もうほんとうにたくさん兼任している人は、私はこれとこれは一生懸命やるけれども、そのほかは政府におつき合いしているとか、現実にそう言っているわけです、本人が。だから、そういう点ではやはりきちっとすべきだと思うんですよ。私はそういう点は今後の問題として措置をしていただきたいと思うんです。
  204. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) いま御指摘になりました点も含むと思いますけれども、大体審議会のあり方というものにつきまして、行政管理庁としては根本的にいろいろ検討をしようということで、いろいろ各審議会等の状態等を調査をしておると考えております。
  205. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 もう少しで終わりたいと思うのですけれども、先ほど琉政の職員の引き継ぎの問題をお伺いしましたがね。もうすでに質問があったかもわかりませんけれども、もうちょっと確認したいのですが、引き継ぎによって、新聞報道等によりますと、相当もたもたが出ているような感じの新聞が載っているのもあります。たとえば配置転換の問題ですね。要するに自分は県のほうに残りたかったけれども国のほうになったとか、国のほうに行ってしまったら今度は本土のほうへ行ってしまうのではないかとか、そういう、極端な言い方をすれば琉球処分だと言っている人もいますけれども、こういうことについての対応策というものは具体的にどういうふうになっているのですか。
  206. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) 琉球政府のほうで各職員に当たって、そうしていろいろときめておりますので、あるいはこまかい点におきましては、自分の思うところへ行かれない、そういう問題は人事には当然つきものだと思いますので、ありますけれども、先ほど申し上げましたような点で、員数の点は十分に本人も承知の上で、そうして各省も琉球政府も承知の上であの人数がまとまっているという状況です。それから御指摘の、確かに最初国の機関のほうへ行くのを非常にいやがっておった一つ理由といたしまして、国のほうへ行くと、沖繩にいないで本土の他の県に、他の地方のブロックの出先機関に飛ばされたりするかもしれぬ、そういう懸念を持っておった点が確かにございました。その点におきまして、大臣のほうから、これはひとつ大臣の書簡を出そうということまで言われたのでございますが、その後琉球政府といろいろ話しておりまして、各省のほうも人事課長、人事担当者が向こうに出ていきまして、そういうことをいたさないということをはっきりいたしましたし、また新聞にも山中大臣の談話が出たりいたしましたので、その点は懸念がないということで、琉球政府の職員もそういう懸念をなくしているという状況でございます。
  207. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 まあ表面はそういうふうになっていると私は思うんですが、実際個々にいろんな問題があると思うんですがね。そういうような問題を解決する機関というのは、あとまで残っているんですか、現在でも。そこら辺のところはどうなんですかね。
  208. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) その点で、前もってそういうことがないように十分留意するということが必要だと思いますけれども、どうしても片づかない問題があるいはまた出てくるかもしれませんけれども、それは人事院の出先機関にできますところの苦情処理の機関で処理をしていくということになろうかと思います。
  209. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それから、本土から沖繩に派遣される職員がございますね。これはどのくらいあって、それでこういう人たちが派遣された場合、この人たちの宿舎なんかができるのだろうと私は思うんですがね。そこら辺の処遇の問題、また現地にいる人は、本土から来た人の宿舎が相当上等であるというふうになってくると、相当もめると私は思うのです。いわゆるそこら辺の、私ども県民の感情ということもあると思うんですがね。そういうところはどういうぐあいに配慮していらっしゃるか。
  210. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) 本土のほうから参ります職員は、大体千五百名の職員が現地の総合事務局等に参ることになっております。宿舎の問題等につきましては、大蔵省関係のほうからも行きまして、宿舎の問題等につきまして盛んに物色、あっせんをいたしておりますような状況ですし、出先の沖繩事務局におきましては、ほとんど全職員がその問題にかかり合いになっておりまして、物色をいたしておる状況でございます。
  211. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 よくわかりますけれどもね。そういう点についても配慮していただきたいと思います。  それから、先ほどの問題の総合事務局の庁舎ですね。この準備等はどうなってるんですか。
  212. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) 将来総合的に、各省の機関が幾つも出ますので、理想的に申し上げますと、一つの庁舎にまとまって入るという庁舎をつくるということになるだろうと思いますけれども、当座においては分散せざるを得ない状況ですが、現在の庁舎等その他を借りましてやっていくという状況でございます。
  213. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 確かにそうでしょうけれどもね。実際問題として、その建設のための用地の取得とか、建設の費用とか、先ほども合同庁舎なんてずいぶん名前が出てきましたけれども、そういう点については、国としてちゃんと予算を計上しているのかどうか。また地元へ迷惑かけることになっても……。そこら辺のところはどうですか。
  214. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) 総合ビルを借りることに現在なっておりまして、五月の末に大体それが完成するだろうということになっております。
  215. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 まあいずれにしましても、いろいろ質問いたしましたけれども、いずれにしても基本的には沖繩人たちの将来の豊かな沖繩づくり、それに十分配慮をしながら、沖繩開発庁の機能が十分機能できるように配慮していただきたいと考えます。  そこで、最後に私は大臣に一つ質問して、もう終わりたいと思うんですけれどもね。実は沖繩開発庁設置法をずっと読んでおりましたら、最後のほうに、北方問題の対策本部というのが附則の中で出てくるのですね。それで、このことに対して、どうもあんまり具体的なあれもありませんでしたので、一ぺんお伺いしておきたいと思っておったことでありますが、いままで沖繩北方対策庁という一つの庁がありまして、今回これがなくなるわけでありますが、これがまあ今回の法律によりますと北方対策本部というようになっておりますが、それも総理府の機関として対策本部をつくるということでございますが、これはまあ、機関というのは、きっと組織法の八条の機関だと私は思うのですがね。実際問題、定員とか組織とか、そういうような問題、どういうようになっているのか、そこら辺のところ、ちょっと今後の北方対策本部のあり方等について、一ぺんお伺いしておきたいと思います。
  216. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 沖繩対策庁をつくりますときに、北海道選出国会議員与野党の御要望もございまして、いまだ帰らざる領土ということで、ぜひ沖繩北方対策庁としてほしいという要請を受けて今日までまいりましたが、いよいよ沖繩が待望の復帰をいたしますと、これを沖繩開発庁にぶらさげるのは、どうもいまだ帰らざる地域という概念からは無理でございますので、そこで、やはり外交上に数多くのウエートのかかる問題であり、あるいはまた漁業等についても漁業外交によって解決さるべき問題でありますけれども、やはり国民全体の啓蒙宣伝や北対協を通じての援護業務、そういうようなもの等が数多くありますので、これはやはり充実させる必要があるということで、責任者を総理府総務長官といたしまして、その下に総理大臣の指名する副長官を配して、機構を新しく北方領土に対する責任ある機関として設けたわけであります。これは御質問のとおり、御意見のとおり八条機関でございます。内容の参事官、審議官、定員等については長官から説明させます。
  217. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) 本部長国務大臣である総務長官、それから副本部長は総務副長官、それに審議官、これは新しく内容充実いたしまして審議官を一名置くことにしました。それから調査官でございまして、参事官、併任の参事官を一名置きまして、あと課長補佐、係長、係員、全部、兼任を合わせまして八名になります。
  218. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私はこれで終わりますけれども、やっぱり大臣、この北方問題というのは、いま大臣おっしゃったように非常に重要な問題であると思うんですが、そういう点から考えましても、総務長官、副長官、兼任の人も含めて八名というのは、非常にどうしようもないと思うんです、実際問題。そういう点から考えると、やはりこれから沖繩が返ってきた場合に、これはもう北方問題というのは重要問題になってくると思うんです。こういう点についても相当真剣に取り組んでいただきたいということを私は希望しまして、私の質問は終わりたいと思います。
  219. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 他に御発言もないようですから、本案に対する質疑は終了したものと認め、これより討論に入ります。——別に御発言もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決を行ないます。  沖繩開発庁設置法案全部を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  220. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
  221. 鈴木力

    ○鈴木力君 私は、ただいま可決されました法律案に対し、自民、社会、公明、民社の四党共同提案にかかる附帯決議案を提出いたします。  まず、案文を朗読いたします。    沖繩開発庁設置法案に対する附帯決議(案)   政府は、次の諸点について配慮すべきであ  る。  一、沖繩振興開発計画の策定及び実施その他国   の事務の処理に当つては、自治権の尊重、県   民福祉の向上、平和で豊かな沖繩県づくりの   理念に徹し、企業先行型の開発にならざるよ   う留意すること。  一、沖繩振興開発審議会の委員の人選及び運営   については、沖繩県の民意が十分反映される   よう配意すること。  一、沖繩の振興開発を円滑に推進するため、土   地所有権の確定等土地問題解決のための措置   を早急に検討すること。  一、沖繩における特殊事情にかんがみ、物価対   策について万全を期すること。  一、各種請求権に対する補償については、その   実情を早急に調査し、適切な補償措置を講ず   ること。  右決議する。  本決議案の趣旨は、本法案の審査の過程においてすでに明らかなところでありますので、説明は省略させていただきます。  以上でございます。
  222. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 別に御発言もなければ、鈴木君提出の附帯決議案の採決を行ないます。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  223. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 全会一致と認めます。よって、鈴木君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、山中総理府総務長官から発言を求められております。これを許します。
  224. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) ただいま可決されました附帯決議については、質疑等で十分お答えしたつもりでありますけれども、ここで五項目にわたる具体的な項目をあげての附帯決議についての配慮は、委員会の御決議の趣旨どおり実行いたす覚悟でございます。
  225. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 審査報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  226. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  午後四時まで休憩いたします。    午後二時五十八分休憩      —————・—————    午後四時三十八分開会
  227. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) ただいまから内閣委員会を再会いたします。  公害等調整委員会設置法案を議題といたします。  御質疑のある方は順次御発言を願います。
  228. 水口宏三

    水口宏三君 どうも、きょうは午前中ずっと総務長官にいろいろお尋ねしたのに、また今度問題を変えて長官にお伺いしなければならない。私自身ちょっと頭の切りかえがうまくついてないので、多少質問が行ったり来たりするかもしれませんが、その点ごかんべん願いたいと思います。  それでまず、今度中央公害審査委員会が調整委員会という形で、行政組織法第三条に基づく委員会がつくられるわけでございますけれども、大体この公害問題の取り組み方の基本の姿勢として、私はやはり二つの観点を確認していただきたいと思うのですけれども一つ憲法十三条の「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」これは、私公害に対処する憲法上の基本的な一つの根拠であるというふうに認識いたしておりますことと、それからもう一つは、言うまでもなく二十五条の「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」この十三条と二十五条の規定こそ、これは私は、公害問題に取り組むべき国の基本的な姿勢であり、また主権者たる国民がよってたかって公害に対する補償なりあるいは防止なりそういうものを要求する法的根拠である。またわれわれはこれを最大限に尊重しなければならない、こういうふうに考えておりますが、その点につきましての長官のお考えをまずお伺いいたしたいと思います。
  229. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) すべり出しは奇妙なことにいつも意見が合うのですが、公害等調整委員会、これはあくまでも仲裁、調停、そして今回新たに三条機関に移行して、行政における最終的な処理ともいえる裁定権を与えるというものでありますから、その精神を踏まえたものでなければならぬ。運用の面においてもまたしかりである。同感でございます。
  230. 水口宏三

    水口宏三君 それでは、そういう立場が全く長官と一致いたしましたことは、これは非常に私としても質問をやりやすいと思います。事、公害の問題に関しては、長官自身も積極的にこれをひとつ解決をするという姿勢にお立ちになって御答弁いただけるものと思いますが、初めに、今回のこの調整委員会の設置というのは、具体的には現在ある土地調整委員会とそれから中央公害審査委員会ですか、この二つを統合してつくるということになっておりますけれども、この二つの統合に対する理由について少し伺いたいと思うんです。大体われわれ考えてみますと、どうも必ずしも土地調整委員会と従来の中央公害審査会の任務なりあるいは業務なりというものは、内容的にはあまりそう同じだというふうには考えられないのでございますけれども、それぞれのこれまでの土地調整委員会あるいは中央公害審査委員会のこれまでの業務内容、それからこれまでの業務量、こういうものの実績を少しお示し願いたいと思います。
  231. 川村皓章

    政府委員(川村皓章君) ただいまの先生の御質問に対しまして、まず中央公害審査委員会のほうからお答えを申し上げます。  中央公害審査委員会は、御承知のように、公害紛争処理法が四十五年の十一月から施行されまして、これに基づきまして、国におきましては中央公害審査委員会、地方の各都道府県におきましてはそれぞれの都道府県公害審査会という組織を持ちまして、それぞれ公害紛争の和解の仲介、調停、仲裁という仕事をやってまいっております。中央地方はそれぞれ別個の組織でございまして、中央のほうは概して重大事件あるいは広域処理事件あるいは広域事件というようなものの管轄をし、それ以外のものは地方で管轄をいたしております。現在までの件数でございますが、まず中央公害審査委員会のほうにかかっておりますのはすべて調停でございます。現在まで事件の数といたしましては八件かかっておりまして、いずれも結論はいまだついておりません。なお地方のほうにつきましては、現在まで二十三件ございまして、そのうち十二件が解決をいたしまして、解決の期間はおおむね一番早いものは三カ月、平均的には約六カ月ぐらいのテンポで解決をいたしておりますので、一応公害紛争の迅速、適正な解決というためには資しておろうかと考えております。
  232. 水口宏三

    水口宏三君 土地のほうはいかがですか。
  233. 上原達郎

    政府委員(上原達郎君) 土地調整委員会の業務についてお答えいたします。  土地調整委員会は、国家行政組織法によるいわゆる三条機関としまして、昭和二十六年一月末に発足いたしました。その権限の主なるものは、まず鉱区禁止地域の指定並びに解除、それから次は、土地の利用調整に関する諸般の行政法規、たとえば鉱業法、採石法、砂利採取法あるいは森林法、河川法、海岸法、都市計画法等十二ばかりの行政法規がございますが、この行制法規に基ずく各省庁の行政処分のうち特定の処分に限りまして、その処分に対する不服の申し立てに対しましては一般の行政不服審査法の適用によらないで、当委員会が直接これを裁定する。そういう不服申し立てに対する裁決的な処分を準司法的手続によりまして処理いたしております。  それからその次は、森林法もしくは土地収用法に基づきまして、端的に申し上げますと、農林大臣なり厚生大臣が行ないます裁決、その裁決を行なう際に土地調整委員会の意見を事前に聴取しておかなければならない。それはこちらがそういう主管大臣の裁決処分に対して事前にチェックするという機能を持っておるわけでございます。  その他核原料物質開発促進臨時措置法によりまして、一般の土地使用なり収用は、すでに御承知のごとく、これは都道府県の収用委員会にまかされておるわけでございますが、いまの核原料のほうは各収用委員会の権限からはずされておりまして、これは土地調整委員会が各都道府県の土地収用委員会にかわりまして、土地の収用ないしは使用の裁決を直接に出すわけでございます。  その他文化財保護法とか諸般の法律の規定によりましていろいろ権限をまかされておりますが、わがほうに直接の処理案件としてのってまいりますのは、まず先ほど申し上げました鉱区禁止地域指定の件でございまして、これは過去二十一年間に鉱区禁止地域の案件は百五十六件で、そのうち未処理で残っておりますのが八件ございます。それから先ほど申し上げました異議の裁定に関しましては、同じく二十一年間に三十八件にのぼっておりまして、そのうち取り下げが十六件、それから不適用却下となりましたいわゆる門前払い、裁判所で申しますと訴訟判決的な処理で比較的簡単に済ますことができましたものは九件、実質的に内容の審査を遂げましていわゆる本格的な裁定というものを下したのが十件でございます。合計三十五件でございますから、現在こちらに係属しておりますものが三件となっております。  それからその次にはいま申し上げました土地収用法に基づく意見照会に関する案件でございますが、これも同じく二十一年間に百二十八件上がってまいりましたが、これはただ単に処分庁に対しまして当方の意見を述べるということだけでございますから、たとえば建設大臣から照会を受けましても直ちに片づくわけでございますから、いずれも短時日の間に処理いたしまして、現在のところは全部終了済みでございます。その他特に申し上げることはございません。いまの三本がわがほうの業務の態様でございます。
  234. 水口宏三

    水口宏三君 いま伺いますと、審査会のほうはできてから日も浅いことでございますし、二十三件のうち十二件が六カ月間で解決をされた。それから土地調整委員会のほうは、これは二十一年間という長い期間にもかかわらず、比較的件数は少のうございますね。それからなおかつ、いま伺いますと、大体公害の問題は、私から申し上げるまでもなく、多くの場合企業によってつくられる公害、その公害に対する住民のさまざまな賠償要求なりあるいは公害の防止施設の設置の要求というような形のものが多いと思うのです。ところが、土地調整委員会のほうの仕事は、主として、いまの鉱区禁止の指定とかあるいは土地利用に関しての行政処分に対する問題とか、主としてむしろ国の仕事に属する部分が多うございますね。そういう意味で、どうもいま伺っておりますと、この二つの委員会の所掌事務というものはかなり異質なものである。つまり最初に山中長官のおっしゃった憲法十三条、二十五条というものを基礎にして公害の問題をとらえた場合、土地調整委員会の仕事と公害中央審査委員会の仕事というものはかなり異質のものであるというふうに実は考えるわけでございますが、その点についての御意見と、もしそれが多分に異質のものであるとするならば、なぜ今回これをあえて統合するという措置をとらなければならなかったのか、この点について御説明いただきたいと思います。
  235. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは異質のものであることは、これはもともといきさつが違うわけでありますから当然であります。ただしかし、それによって鉱区禁止地域にしても、やはり周辺の農業その他国民が受ける被害、あるいは国民のそれに対する不服というようなものに対して裁定をやるわけでありますから、その意味において国民無視ではなくて、やはり国の行なう行政処理についての苦情というものをさばくわけであります。それはまあ理屈と言えば理屈でありますが、問題は昭和二十六年から相当長期間にわたる——二十六年といえばまだ占領下でございますが、このような独得の三条機関が国に設置された、それからずっと歩いてまいりました実績が、はたして裁定権まで与えられて、各行政機関がこの土地調整委員会の存在というものをきわめて高く評価するといいますか、反面は煙たがるといいますか、そういうような功績をあげてきたのかということは、私は就任早々おととしこの問題について疑問をいだいて点検を始めたわけです。しかしながら、やはりその後土地収用法その他の法律でも、全部土地調整委員会を引っぱってきておる法律がだいぶ出ておりまして、当初の目的とずいぶん違ったいろいろなものが入り込んできております。しかしながら、一方において、今回の公害等調整委員会にいたしますための中央公害審査委員会に裁定権を与えるべきである。これは四十五年の暮れにこの法律をつくりましたときに、附帯決議等において、国会意思として私ども検討を命ぜられた課題である。また、今後の公害の裁定にあたっては、これは厳正中立な立場でさばいていくにあたって、裁定権を付与するとしても、八条機関ではやはり無理であろう。そこでこれを三条機関に昇格せしめて裁定権を与える。国会意思国民の期待に沿う機関とする必要がある。この両者を判断をいたしまして、やはり土地調整委員会の仕事もこれを活用しながら、やはり申請件数等あるわけでありますから、これも国民のための行政に国が一方的な権利を行使しないというたてまえから、その仕事の分野も引き続き残す必要がある。しかしながら、新しくそのほかに三条機関をもう一つつくるということは、これはまた熱意のいかんによってやれぬこともないわけでありますが、なかなか三条機関を新設することは困難であります。しかしながら、中央公害審査委員会の裁定権を与えた三条機関への移行という、国会の附帯決議に見られる意向と、国民の公害に対する現状から考えたときに、どうしても三条機関に移行して裁定権を与えたい。そのための一案として、スクラップ・アンド・ビルドでもありませんが、公害等調整委員会とすることによって、今日までの土地調整委員会が果たしてまいりましたいい意味の仕事は、なお引き続きこの三条機関の中でやっていけるように、そしてそれらの仕事をしながらも中央公害審査委員会から公害等調整委員会に移行した三条機関は、やはり今日の時点における問題点としての公害紛争処理に強力な力が発揮できるようにしたいという苦心の策と申しますか、その意味においては異質なものを一緒にした点についての御指摘は、そのとおり私も思います。しかし、やはりどうしても中央公害審査委員会を八条機関から三条機関に移して裁定権を与えたい。これの実現のために土地調整委員会を廃止するわけにもいかないということで、二年間の検討の結果、今日の原案を提出した次第でございます。
  236. 水口宏三

    水口宏三君 総務長官の御苦心のほどは重々よくわかりますし、また国会のそういう意思に従って裁定権を持つ公害等調整委員会をおつくりになること、これまことにけっこうなことだと思いますが、ただ問題は、異質なものを一緒にするということの中で、長官が二つ理由をおあげになったのですが、一つは同じ裁定という行為を行なうという点でこれは共通するだろう。それからもう一つは、行政簡素化と申しますか、スクラップ・アンド・ビルドというもう一つの観点で考えて、これを三条機関に移行するためにそうやったのだと、しかし、考えてみますと、裁定という政府行為は同じかもわからぬけれども、こういう行政委員会というものは、そもそも一般の裁判所とは違って、裁判所の場合は、どんな争いであろうが、それが起訴されれば、それに応じてさまざまな専門家の証言もあり、証人を呼び、そうして判断を下すわけですが、元来行政委員会の性格というものは、私はかなり専門化されたものであると思うのです。そうすると、裁定という行為については同じかもわからぬけれども、むしろ裁定を下すまでが問題なのであって、その内容というものは、かなり異質なものであることは、これは長官もお認めになっている。とすると、私はどうも裁定という一つの同じ行為があるからという理由は、これはどうも納得できない。むしろスクラップ・アンド・ビルドという観点から、どうせ三条に基づく行政委員会をつくるならば、なるべくふやさずに合同させたいということ、この点は私はむしろ公害という問題の比重から考えますと、これはいま全国民が公害に悩んでおる。これは私あとで……。実はたまたまこれは政府の調査ですが、最近社団法人中央調査社ですか、公害に対するかなり詳しい国民世論調査をやっておりますですね。新聞なんかでも国民の三人に一人は公害にかかっている。日本だけでなしに世界的に公害問題というものは重要な問題として取り上げられているわけですね。そういう際に、私は、あとでそれは具体的に数字もあげますけれども、何千人という別に新しい公務員による官庁をつくるわけではないのであって、むしろあえて異質なものを一緒にすることによって、さまざまな意味で私は不便が出てくるだろう、行政委員会という特質からいってもおかしいし、むしろ公害の問題について政府がこれを裁定というような、国民が要望している機能を持つ委員会を設置するということについて、新たにつくったからといって国民はあえて反対しないと思うのでございますね。それをただ、いままでのスクラップ・アンド・ビルドとか、簡素化ということにあまりにこだわり過ぎて、事の軽重をむしろ逆にしているのじゃないだろうか、あとで申し上げますけれども、むしろなくしていい委員会は他にたくさんあるわけなんですね。むしろそんなものはなくして、堂々と、私はむしろ公害に関する委員会独立したものとしておつくりになることのほうが、本来の趣旨に沿うのではないか、そういう気がするのでございますけれども、その点いかがでございますか。
  237. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) もちろん、私もそういう考え方が基礎になって検討は重ねてきたわけです。はっきり申し上げて、土地調整委員会の二十年あまりの長い歴史というものを全部詳しく調べて、そしてこれが今後も三条機関の権能を持って、国家行政の中で、どうしても必要な機関としての必然性が今後もあるのかということについて、当初は、これは率直に申し上げると申しましたが、三条機関としての土地調整委員会を廃止しようと思ったわけであります。しかしながら、なお詳しく現在の土地調整委員会の持っている権能について、その法律その他についての各関係法を調べてみますと、単に廃止しただけでは、それぞれ土地調整委員会を引っぱってきている法律等がその後生まれておりますので、やはり今後この仕事は続けていかなくてはならない。したがって、三条機関廃止というのは乱暴過ぎる。その仕事の分野は残して置かなければならないだろう。そこで今度は、一方において必要となってきた公害の裁定権を付与された三条機関というものをどうするかという問題でありますが、もちろんこれを、公害は公害として独立の三条機関ができれば、私はそれのほうが理想だと思います。しかし、そのときでも、はたして土地調整委員会というものは引き続き三条機関でなければならないのかという疑問はなお残る状態にあります。そこで、少し私のやり方は乱暴であったと思います。しかし、だれかが乱暴をしなければ、蛮勇をふるわなければ、こういうことはいつまでもそのまま続くものだと思います。委員の皆さんも憤激をされて、総理大臣まで直訴されたり、行政管理庁長官に訴えられたりして、この三条機関か中央公害審査委員会に移行する——裁定権を持った公害等調整委員会にお株を奪われると申しますか、それに風鈴のような存在になってしまうことについての抵抗もありました。しかし、私としては、それらの、異質であり、あるいはまた、ときにそのような委員がやることについて、同一の委員がやる場合に違った分野であり過ぎるという問題等については、やはり専門の人たちの応援を願うということがあればいいんではないか、そこで三十名以内の専門委員というものを、それぞれの必要な分野の場合には、必要な案件がかかりました場合には、その分野の権威者というものをお願いをする。これは衆目の見るところ、何の問題ならばどの先生とかいろいろありますから、そういうことを縦横に駆使することによって、いわゆる裁定という行為については、そう問題なく処理できるのではなかろうかと思っているわけであります。しかし、私のやったことがあるいは結果的に見て裏目に出るかもしれませんが、もし裏目に出ることが万々一あるとすれば、それは改むるにまたはばかることがあってはならないということであります。さしあたりは、いまのような率直な裏の話まで申し上げた次第でございます。
  238. 水口宏三

    水口宏三君 総務長官の蛮勇、非常に私、高く買いますけれども、どうせそこまで蛮勇をおふるいになったなら、もっとすっきりさせる意味で、私は現在の土地調整委員会を思い切って八条機関に移す、そうしてむしろ鉱区の禁止区域を指定する場合の諮問に応ずるという形にして、むしろそのかわりに公害の委員会を三条委員会として、むしろ拡充したものとして専門的につくっていくということのほうが、いまの社会情勢、いまの国民の生活の感覚からいったら、長官の蛮勇というものがそのまま国民の生活の向上あるいは福祉の向上に大きくアッピールもするし、また実際の効果もあがるのじゃないか。したがって、せっかくここまで蛮勇をおふるいになった長官がなぜもう一歩進まなかったのか、残念ですが、その辺何か理由がおありですか。
  239. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) やはり土地調整委員会も二十年余りの間裁定権を付与された、これが大体アメリカ考え方だと思うのですけれども、こういうものが実際上の三条機関の権能として、各省庁が許認可行政をやります場合に、ふるい上がっているような機関として行動をしてきた実績があれば、場合によってはもう一つ別に三条機関を公害のためにつくってもよかったわけでしょうし、今度は逆に、そういう状態でない、中途半端な状態になってしまっておることを率直にそのまま認めてやるとすれば、八条機関移行ということもあるかもしれません。しかし、八条機関に移行いたしますと、裁定権等の問題もまた、いまおっしゃったように、なかなかむずかしい問題になりますし、いまあります法律というもので権能がありますものを、それを弱くするというほどの、土地調整委員会も国の行政に対してあるいは国民に対する国家行政というものの上でマイナスの役目を果たしているわけではないわけです。そこで、八条機関に移行するということは忍びないということから、二年余りの検討を経て、断行することにしたということであります。
  240. 水口宏三

    水口宏三君 その点ではむしろ総務長官の蛮勇の一面だけ私、高く評価いたしまして、できるなら次の状況を見て、そういう点もすっきりさせていただけることを期待いたしておきます。  その次に、いまたまたま三条機関の問題と八条機関の問題が出たわけでございますが、この三条の合議制の機関というものの定義と申しますか、どういうものを三条機関にするのかということですね、たとえばこの前の衆議院の中で、川村中央公害審査委員会の事務局長のお話によれば、所掌事務の質、量が非常にたくさんある、あるいは固有の事務局と相当数の専門委員を置いて処理するのが適当だ、こういうふうなことが大体三条機関の一般的な定義と言えるというふうな御答弁があったと思うのでございますけれども、三条機関というものに対する定義というものがあれば、これを伺いたい。
  241. 川村皓章

    政府委員(川村皓章君) ただいまの御質問に対しまして、この所管は行政管理庁でございますが、一応私からお答えをさせていただきます。  先生御存じのように、三条機関と申しますのは、国家行政組織法第三条に書いてある機関でございます。いわばこれは行政委員会という形で、きわめて独立性の高いものというのが一応一般的な定義でございまして、行政組織法自体には、この定義は、かくかくであるということは書いてございません。それで、通常は、それだけに独立性の強い行政機関でございますから、結果的にその所掌する事務の質及び量が相当ありまして、そのために固有の事務局を持っているものというのが、一応結果的にそういう形になっておりました。例といたしましては、たとえば他の例でございますが、公正取引委員会などはこの具体的な例になります。
  242. 水口宏三

    水口宏三君 行政管理庁のほうでやはり同じことを何か御答弁いただけるといいのですが……。これは総務長官にお聞きしていいかどうかわかりませんけれども、たとえばいまあります司法試験管理委員会でございますか、あるいは公安審査委員会——御存じない。これはやはり行管が来ないとだめですか。
  243. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 説明できないです。
  244. 水口宏三

    水口宏三君 そうですか。  これは三条機関になっているのですよ、実を言うと。——じゃ、その点はひとつおきます。飛ばしましょう。  それでは、これは私が伺いたいのは、今度新しく合同して委員会ができるわけでございますね。当然両委員会の所掌事務が一緒になってこの中央委員会にかかってくるわけですね。本来、公害問題というのは、今後非常にいろんな意味で問題が多くなるし、裁定というような新しい非常に重要な仕事を行なうということになってくれば、事務処理体制というものはいままでの審査会よりより強化されたものでなければいけないんじゃないか、ところが、実際にはただ二つを合わせただけで、異質なものを合わせたことによってむしろ事務処理上はかえってやりにくいものすら出てくるんだろうと思う。せっかく重要な裁定というような権限も持ち、また総務長官のさっきの勇断によって三条機関にしたにもかかわらず、むしろ現状のままで、ただ形の上で合わせたということは、むしろ事務処理の面でかえって支障を来たすのではないかという懸念を持つのでございますけれども、その点についてはどうお考えになりますか。
  245. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 少なくとも土地調整委員会は三条機関としての形あるいは事務局、これはりっぱにそろっております。そろっておりますが、ふだんそれだけの委員あるいは事務当局がフルに精一ぱいやらなければならないほど仕事があるかといいますと、これがまだ率直に言ってそこまでの分量はないと私は判断いたします。したがって、今回、事務局は全員一緒になってやるわけでありますが、その仕事の大部分は公害のほうに、むしろいままでの土地調整委員会の諸君も公害の分野のほうの仕事に従事してくれるほうが多くなるだろう、そして実際上、分野の業務にふさわしい程度の者が土地調整の仕事に従事することになるだろうと思います、今後の運用にあたっては。したがって、事務局の能力についても相当大きく、公害に対しては大きく前進するものだと私は確信いたしております。
  246. 水口宏三

    水口宏三君 それでは、じゃ一緒にすることによって、従来数字的には土地の調整委員会十七人でございますね、従来の公害審査会のほうは十九人、合わせて三十六人でございますか。それを合わせることによってむしろ三十人ぐらいは公害のほうに専従できる、それだけむしろ事務体制は強化されるのだと理解してよろしゅうございますね。
  247. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) そのとおりのつもりで処理する予定になっております。
  248. 水口宏三

    水口宏三君 事務体制はわかりました。ぜひそれはそうしていただいて、もしそれでもなおかつ不足なら、事公害に関する限り、われわれは事務体制をより強化することに何ら反対でございません。  ただ、ここでもう一つ、今度、じゃそういう事務局を実際に使っていく委員関係なんでございますけれども、これは、本委員会は、今度できる委員会委員長及び委員が六人で組織されることになっているわけですね。ところが、土地調整委員会のほうは委員長及び委員合わせて四人、これまでの審査会のほうは委員長及び委員合わせて五人、全部で九人いるわけでございますね、委員長委員合わせますと、従来の土地と審査会のほうを合わせますと。それが今度の中央調整委員会になることによって、委員長並びに委員六人ということで、七人になるわけですね。言いかえれば、従来の委員の数が土地のほうでいえば五人、審査会のほうでいえば六人、合わせて十一人であったものがむしろ七人に減るわけでございますね。そういう意味では事務局体制は、いまのお話のように、むしろいままでどちらかというとひまであった土地の調整委員会のほうの事務員を回すことによって事務体制は強化される。しかし、委員というのは私はどうもこういうふうに非常に減少するということは、ただでも公害問題が今度多発するであろう状況の中でちょっと理解できないんですけれども、何で合併をすると同時に委員の面だけはこういうふうに減少をさしたのか、その点をちょっと聞かしていただきたい。
  249. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは、土地調整委員会がいまのような委員長以下の委員を常勤、非常勤合わせて常時出勤してもらってやるほどの仕事の量があるかという点についても私は疑問を持っているわけです、実情から見ても。したがって、今回、公害等調整委員会になって主として公害の仕事が行なわれると思いますが、現実の問題からもそういうふうになると思いますけれども、その際は、現在の中央公害審査委員会よりか結果的には一名増になるわけであります、現在の中央公害審査委員会の委員よりですね。その人数でもって適当に三人編成のチームでもって事に処していただきますので、大体事務処理は委員の数としては一名増でいいのではないか。両方の委員会におった数を全部数をそろえなければならぬということは、土地調整委員会の仕事の現実の量から見てあまり必要でないと私は判断をいたしたわけであります。
  250. 水口宏三

    水口宏三君 私ども事務局のほうは総務長官の発想を非常に高く評価するのでございますけれども委員に関しては、裁定というような非常に重要な仕事をするわけでございますね。したがって、これはかなりやはり専門的な知識がある人でないとなかなかやりにくい仕事だと思うんです。そういう意味で、いままでの土地調整委員会にいた委員というのは極端に言えば一人でいいんだ。残りの人の六人——まあ委員長はもちろん公害関係でしょう、六人のうち五人まではむしろ公害関係の人にするというようなこともそれは考えられないこともございませんけれども、実際問題として、裁定というような重要な仕事を行なう公害の調整委員の方々というのは、大体、元来われわれが公害とこれまで概念しておったものがどんどん拡大しているわけでございます。初めは公害といえばかなり限定されたものでしかなかったのでありますけれども、いまは一般にいわれているだけでも大気汚染、水質汚染、土壌汚染、騒音、振動、地盤沈下、悪臭、その上に最近は食品公害からあらゆる問題が出てきておるわけですね。だから、これはもちろんその一つ一つに、おそらくあと出てくる専門委員という方がおやりになるんだと思いますけれども、裁定というような重要な機能を果たす上で、せっかくこれまでの両委員会委員長委員含めて十一人の人たちがいたわけですから、むしろ中央のいわゆる公害調整委員会委員もそのまま十一名にして、土地関係の人は二人なら二人、それこそ一人でよければ一人、そしてあとの方をむしろ公害関係ということにすれば、より充実したものになるであろう。またそうしなければ、こういうように専門的に多岐にわたってきた公害問題の処理、特に裁定というような重要な仕事はやりにくくなるんじゃないだろうか。せっかく事務局についてそういう発想をお持ちになったなら、なぜ委員にそれを拡大なさらなかったのか。この点をもう一回くどいようでございますけれども、できればむしろもっとふやすべきじゃないかというふうに考えるんですが、いかがですか。
  251. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) この委員会は典型公害のすべての紛争を受け付けますので、確かにそういう意味では今後、喜ばしいことではありませんが、裁定権まで与えられると相当に申請件数がふえるだろうと思います。ただ、一方、これは相当高給をはんで——という言い方は悪いかもしれません、委員長、せっかく頼んできてもらってですね。やっぱり効率的に働いてもらいませんとね、もとおった数が十一名だからそのまま一緒でどうだという、私は、やっぱりそこらのところは、委員の方々に御苦労願うにあたっても、やや数が多いとだらだらする感じもするのじゃないか。やっぱり委員の数は常識上まあ六名か七名というところが私はよろしいように思います。まあ今後運営してみて、委員をお願いしている皆さんでございますから、もうとてもたまらぬ、こんなところではもう死んじゃうというほど忙しくなるということであれば、これはまた考え直さなければなりませんが、いまの中央公害審査委員会と、これから三条機関として衣装を正し、そして裁定権を与えられて出発をする、そういう姿勢と、それから土地調整委員会も、なお引き続きその職務は三条機関の中で行なわせたほうがいいという判断によって行なう残りの事務というものが一緒に行なわれて、これは委員さんにたいへん迷惑をかけるほど——結果的に好ましいことではありませんけれども、そういう仕事が多いのだということであれば、これは委員さんも、人格高潔にして識見豊かな人であっても人間ですから、限界があると思います。そういう場合には、これはいまの御意見等に従って、当然必要な数はふやしていく配慮はしなければならぬと考えますが、私の感触では、この程度の数で出発はだいじょうぶであると思っております。
  252. 水口宏三

    水口宏三君 総務長官の感触、しばしば当たることもあるし当たらないこともありますので、これは私の老婆心かもわかりませんけれども、裁判所がいまやっぱり裁判官が不足で非常に渋滞をしておりますね。これで非常に国民が迷惑をしている。それで、むしろこの公害に関して、この中央委員会をつくって、裁定権を持たせるということによって処理を迅速にしようというのが主たるねらいだと思うのです。そういう意味で、大体任命をするにあたって、法律等では型どおり人格高潔、識見の高い人ということをいっておりますね。おそらく任命なさる過程で、ぼくは、それぞれお当たりになった場合に、いま言ったような、これだけひどい公害の問題をどうもおれにやれといってもこれは無理だと、もう少しふやせというような意見も出るでしょうし、したがって、この点ではなるべく柔軟性を持って、今後の状況に十分対応し得るように、ひとつ御配慮をいただきたい。むしろ、これは老婆心でございますが、ぜひお願いしたいと思います。
  253. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 幸いにして、中央公害審査委員会の委員の皆さまは、どなたがごらんになってもりっぱな人たち委員になっていただいております。たいへんありがたいことだと思いますが、人選にあたってその初歩を誤りますと、あるいは私情とか、陳情とか、第三者の依頼とかいうようなことで、うっかり人選をしがちなことも間々行なわれますが、そういうことが絶対にあってはならない。私もその点は、中央公害審査委員会を発足させますときに、厳重に心に期して人事をやったつもりでありますし、したがって、今回の新しい公害等調整委員会の人事にあたっても、人事を一歩誤ったら、どのようなりっぱな権利法律的な権能を与えても、これはむしろおかしな運用をされたら国民こそ迷惑でありますから、そのおっしゃる点は十分戒心をしてやりたいと思います。もちろん国会承認人事でございますし、おかしなことはできないわけであります。
  254. 水口宏三

    水口宏三君 長官、何かよその委員会においでになるそうですので、二、三まとめて御質問しておきたいと思うのですが、もう一つはいまのように……。
  255. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 帰ってくるのです。何か決算の採決に出るということでございますから、そこに並ばないと採決しないので、ちょっと行ってきます。
  256. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) ここで十分間休憩いたします。    午後五時二十四分休憩      —————・—————    午後六時五分開会
  257. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  公害等調整委員会設置法案を議題といたします。  御質疑のある方は順次御発言を願います。
  258. 水口宏三

    水口宏三君 三条機関のほうは、これは行管長官がお見えになってから伺うことにして、先ほど伺いかけた、要するに今度の調整委員会の機能の問題なんでございますけれども、先ほどの事務局の問題、それから委員の問題と、一応長官から御答弁いただいたのですけれども、もう一つ委員の問題につきまして、人数は非常に弾力性を持って今後お考えになるということなんですけれども、今度の委員会委員が、委員長以外の委員、三人非常勤の委員がおりますね。常勤の委員が三人です。そういう意味で全員を常勤にしないで、どうして三人だけ非常勤の委員を置いたのか、それはどういう理由か、伺いたいと思うのです。
  259. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) この常勤六名というのは、絶えず皆さんが常勤していただかなければならないかどうか、そしてまた常勤委員六名というのは、ことに公害に重点を置いてまいりますと、なかなか現実の問題としてもむずかしゅうございます。したがって、やはり常勤三名の非常勤三名の方々がおられて、非常勤三名の方々も今日の中央公害審査委員会等でもきわめてよく仕事をしていただいておりますし、やはりそれを有機的に組み合わせていくことによって、常勤三名、非常勤三名の線で支障はないのではなかろうかと、私としては判断をいたしたわけでございます。   〔委員長退席、理事町村金五君着席〕
  260. 水口宏三

    水口宏三君 ただ、この法律を見ますと、ことに調停、裁定の場合には、それぞれ三人または五人の委員会というのを構成するわけですね。これはおそらく国民に周知徹底された場合に、この中央の公害等調整委員会にさまざまなたくさんな案件が持ち込まれる可能性もある、というよりはむしろ持ち込まれるように政府としてもひとつ誘導していただきたいと思うのです。そうした場合にでございますね.調停委員会あるいは裁定委員会というものがそれぞれ三人、五人で構成していく。せっかく紛争処理を迅速に行なうというたてまえからいって、どうも何か矛盾するような気がするのです。というのは、国民が知らなくてたいして案件を持ってこないだろうという前提なら別でございますけれども、これは長官自身もむしろ逆に案件を持ってくることを希望なさっていることと思いますし、なおかつ、従来の裁判による判決が非常に時間がかかり、金がかかる。そういう意味で裁定権を持つようになるわけです。そうしますと、どう考えてみても、何か常勤三人、非常勤三人ということは手不足のような気がするのでございますけれども、これは長官の御答弁と同時に、現在の審査会の委員長もお見えになっておりますので、現在裁定権を持っていない審査会が裁定権を持つという段階で、しかも今後たくさんの案件が持ち込まれるであろうということを前提にして、経験上これでいいのかどうかということもあわせてお伺いをしておきたいと思います。
  261. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 先ほど来の質疑でありました、委員の総数も六人でいいのかという問題もありましょうし、またせっかく六人置くならばこれを全部常勤にしてもらって、常時出勤してもらって、そして有機的にチームを組んでやってもらうという御意見もまたあろうかと思います。しかし、現在の大体の国のそういう委員会というものは、常勤と非常勤とそれぞれあわせ持ちながら機能いたしております。これは、この中央の公害等調整委員会がきわめて多忙であることはある意味においては不幸なできごとでもあるのですけれども、しかし、典型公害のすべてを対象にして受け付けますから、おそらく多忙になってくるであろうと私も思います。これですべり出してみまして、非常勤三名では、非常勤の待遇ではお気の毒なほど仕事があったり、あるいはまた六名では足らないというような場合等については、これは当然国民の要望にこたえる体制の整備ということでありますから、おそらく国民にも理解される行政機構の増加ということで、そのときはまたちゅうちょすることなく対応する措置をとるべきである、さように考えます。
  262. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) いまの中央公害審査委員会で実際に調停をやっている模様から見て、仕事は、もし裁定が入った場合にはたしてやれるかどうかというお尋ねだったように思いますが、現在の実情をちょっと申し上げますが、現在、中央公害審査委員会には常勤、非常勤を含めて六人の委員がございまして、そして事件ごとにそのうちの三人が調停委員になりましてその事件を処理するということになっております。そして、その六人の、常勤、非常勤を含めた六人が二組に分かれるという意味ではございませんで、その事件ごとに常勤のうちの二人とそれから非常勤の一人と、いまのところはそういう形でやっておりますが、したがって、それぞれの人の手持ちの件数も考え、また事件の性質も考えて機動的にやっておりますので、もちろん現在の程度の事件の数ならばまだまだ十分の余力がございます。それから、現在の調停の手続の進め方でございますけれども、これが実際問題として、ただ双方の言い分を聞いて、そしてすぐその場でまあまあといったような、そういうやり方はしておりませんので、双方の言い分を聞きまして、そしてそれぞれこちらのほうで納得のできるだけの事実をつかみませんというと妥当な結論が出ませんので、そういうことも聞きまして、そして場合によりましては、さらに事務職員にいろいろ調査を命ずる、そういうような方法をいたしまして、   〔理事町村金五君退席、委員長着席〕  十分に必要な事情の調査をした上で、その調停の方法をきめるというようなやり方をしておりますので、今度は裁定というと調停とは非常に性質が違うように思いますけれども、実際違うのでございますけれども、その審査のやり方は実質的にはそう違うことはなかろうと思います。そういう関係でございますから、もしこの制度が実施されまして、何百件という膨大な事件、あるいは何十件というような膨大な事件が一時に殺倒するようなことになりましたら、これはまた別の問題かと思いますけれども、現在の状況から考えまして、また、地方の審査会に出ている事件の状況などから考えまして、さしあたりはだいじょうぶじゃないかというふうに考えております。   〔委員長退席、理事町村金五君着席〕
  263. 水口宏三

    水口宏三君 総務長官、先ほどの御発言で、委員には非常に高給を払う、したがって、十分に働いていただかなければ困るのだというようなお話ございましたけれども、かといって、委員が手不足であるがゆえに、せっかくのこれが有効に機能しなければ意味がないのであって、それについても柔軟に対応するというお話でございますので、われわれ大いに、これについてはむしろ支持もし、これを強化することについて賛成なわけでございますから、余分なぜい肉はぜひ切り落としていただきたいと思いますけれども、特に事公害の問題に関して積極的な取り組みをしていただくことについては心から支持をするわけでございますので、柔軟に対応していただくということで一応納得いたしますが、いま審査委員長のお話ですと、委員の任務の以前に専門委員によって十分な調査、資料の収集等が行なわれるというお話でございましたですね。当然、今度のこの調査委員会も専門委員が三十人ですか置かれるわけですね。そうすると、この専門委員というものの任務というものがある意味では非常に重要だと思うのですね。委員の判断というものが、ある意味では専門委員の調査、資料の収集、そういうものにむしろ乗って判断をするという場合が非常に多いのじゃないかと思います。そうなりますと、せっかく委員には人格高潔な方が選ばれてみても、専門委員がいいかげんな方が選ばれる。あるいはせっかく専門委員として選んでおきながら、専門的な知識が十分でないということになると、これはまさに画龍点睛を欠くというよりは、むしろ土台がくずれるわけでございますね。そういう意味でどうも今度の法案の中には、この専門委員の任命に関してはあまり明確な規定がないわけでございますけれども、これはおそらく総務長官としては委員を任命する場合にそういう心組みで任命をするという御答弁があろうかと思いますけれども、できるならこの専門委員のむしろ資格といいますか、そういうものについてもある程度の規定は織り込まれてしかるべきじゃないだろうか。その上に立って人格高潔な委員が調停あるいは裁定をする、そうして初めて結果が、公平な結果が出るというふうに考えるわけでございますけれども、この専門委員の問題についてひとつお答え願いたいと思います。
  264. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これもまさにおっしゃるとおりで、限られた委員の皆さんがすべての資料収集から専門的な分析までをなさることはこれは不可能なわけであります。そこで専門委員を三十人以内で適時ケースごとに任命をしてやっていただくわけでありますが、これはやはり三条機関に移りますことの意義はそこにもあるわけですけれども政府が一方的に専門委員などを任命するわけじゃありませんで、この国会の承認まで経て選ばれた委員委員会の皆さんが、委員会から専門委員をこのケースについてだれを任命したいという、最も権威のある客観的に見て正しい見解の持ち主と国民が見ているような方々を選んで、そうして総理大臣の承認を求められるわけでありますから、逆に政府のほうから任命を押しつけたりするものでありませんので、ここに三条機関の中立性、独立性のよさがあるのではないかと考えます。
  265. 水口宏三

    水口宏三君 それでは一応、この委員会の構成の問題については以上で質問を終わりますが、行政管理庁長官お見えになっておりますので、この三条機関と八条による合議制機関の問題について少し伺いたいと思います。それでまあ中村行政管理庁長官は、三条機関にするということに非常なウエートを置いていらっしゃるわけでございますけれども、はたして行政組織法上の三条の行政委員会と八条の行政機関というものが、どういう点で性格が違うのかということについて、これを概括的に最初にお伺いしたいんです。
  266. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 管理局長から答弁させたいと思います。
  267. 平井廸郎

    政府委員(平井廸郎君) 国家行政組織法第三条、第八条は、必ずしも定義は明らかにしているわけでございませんので、解釈の問題になる点もございますが、国家行政組織法第三条では、直接第三条機関を定義せずに、「国の行政機関の組織は、この法律でこれを定めるものとする」という第一項に引き続きまして、「行政組織のため置かれる国の行政機関は、府、省、委員会及び庁とし、その設置及び廃止は、別に法律の定めるところによる。」と規定いたしております。この基本的な考え方といたしまして、内閣法第三条の規定によりまして、各国務大臣は主任の大臣として行政事務を分担管理するわけでございますが、その分担管理の基本的な範囲といたしまして、府、省がまず設けられる。さらにその中で特に質的にも高度のものであり、かつ量的にもかなりの相当量の業務を要するようなものにつきまして、外局といたしまして委員会及び庁が設けられる。これらが第三条機関になるわけでございます。  そこで、第八条機関と第三条機関との関係でございますが、この第三条の行政機関の基本的なものにつきまして、これらの機関にさらに国家行政組織法によりまして、内部部局、地方支分部局及び附属機関が設けられることが認められているわけでございます。  第八条の機関は、私がただいま申し上げましたいわゆる附属機関をさすわけでございまして、その現実に置かれている八条機関は多種多様にわたっているわけでございますが、一応類別いたしますと、審議会等のグループ並びに試験研究機関等のグループ、あるいは他の分類に従いますと、施設等の機関と申しますか、たとえば医療とか、あるいは刑務所等の作業所とか、そういう施設等に着目したものとかというようなものに分かれようかと思っているわけでございますが、こういったものはいわば三条機関の附属機関として設けられている点が第一点の違いでございます。  それから第二点といたしまして、国家行政組織法は、第三条の行政機関につきまして、機関の長に府省令あるいは委員会規則の制定権、告示、訓令及び通達を発する権限を与えているわけでございますし、また、当該機関に属する職員の任命権を国家公務員法で与えられているわけでございます。これに対しまして八条機関の場合には、こういった点は認められていないわけでございまして、この点が三条機関と八条機関との違いの第二点になっているわけでございます。
  268. 水口宏三

    水口宏三君 いまのそういう中で私非常に重要だと思いますのは、三条機関の場合の地方支分部局が置けるということ、それからまた地方支分部局を置かなければならないような行政機関について三条機関とするということは、これはもう非常に重要なことだと思うのですね。ただ私は、むしろ三条機関と八条機関との差というのはかなり形式的な面がわりあいに多いのじゃないだろうか、そういう気がいたしますので、その点について少し伺ってみたいと思うのでございます。  その前に、たとえばいまおっしゃった中のそういう重要性を認めて置かれている三条機関の中に、これは先ほど総務最官にお聞きしたら、これは行管庁のほうにというお話だったのですけれども、司法試験管理委員会とか公安審査委員会というようなものも、これはもう職員も非常に少のうございますし、実際上三条機関として置く理由、根拠というものは非常に少ないと思うのでございますけれども、こういうものをなぜ三条機関としていままで置いてあるんですか。
  269. 平井廸郎

    政府委員(平井廸郎君) 確かに委員会そのものの事務機構等に着目いたしますと、先生のおっしゃるとおり、きわめてまあ事務機構としては貧弱でございますとか、あるいは形式的に持っていないものもあるわけでございますが、実質的には司法試験の場合等におきましては、法務省の事務当局がその仕事をやっているわけでございまして、かなり広い範囲事務当局がその仕事に参画しているという点もございます。また一方、単に量的に相当規模の事務があるということだけではなくて、行政事務の内容が質的に高度であり、たとえば今回の公害等調整委員会の場合のごとく、準司法的な仕事をするというような場合におきましては、そういった点にも着目して、第三条機関にすることも可能であると考えているわけでございます。
  270. 水口宏三

    水口宏三君 それは要するにあれですか。いま私の申し上げた司法試験管理委員会とか公安審査委員会というものは、これは八条機関に移してもいいということですか。
  271. 平井廸郎

    政府委員(平井廸郎君) 先ほども申しましたように、仕事の質的な高度性とかそういう点に着目いたしまして、三条機関として置いておくのが適当であると考えているわけでございます。
  272. 水口宏三

    水口宏三君 それでは、まあどうもいまの行政管理庁としてはこれを八条機関に移す御意思はないわけですね。  それじゃもうちょっといま三条機関と八条機関でわからぬことを伺いたいのでございますけれども、いま御承知のように、土地調整委員会は、これは総理府の外局になって置かれている三条機関ですね。それから中央公害審査委員会のほうは内閣総理大臣の所管のもとに置かれている八条機関である。それで委員長及び委員はそれぞれまあ独立して職権を行なわれるようになっている。独立性という点においてはこれは両委員会とも同じだ。それから委員長及び委員は両院の同意を得て内閣総理大臣が任命する。いずれも常勤の委員を置いているという点でもこれも同じでございますね。それから国民に対して意思を決定する権限があるという点でも同じである。しかもいずれも事務局を置く。むしろ現在では八条機関である公害審査会のほうが事務局員は多いし、膨大である、大きいというのが現実なんですね。そうすると、一体三条機関と八条機関との差というものが、先ほどのお話しの規則の制定権とか、告示権とか、人事権というものについては差があるということはわかるんでございますけれども、その他はどうもあまり差がないような気がするのですね。むしろ、いまお話しの三条機関とすることは、何が非常に重要なものは三条機関とするんだ、そうでないものは八条機関でいいんだという。そうすると、何が重要であり、何が高度であるかということの基準がどうもわれわれにははっきりしないのです。事実上の中身では、いま申し上げた決定的な差というのは、規則の制定権、告示権、人事権ですね。これは組織法上は、さっきお話のあった重要度とか、あるいは高度な政治性とかいう御説明もありましたが、何の基準でそうおきめになっていますか。
  273. 平井廸郎

    政府委員(平井廸郎君) 中央公害審査委員会の設置にあたりまして、これを三条機関とするか、八条機関とするのかという議論があったことも事実でございますが、当時におきましては、新たに発足する問題としてどの程度の事務量を所管し、どの程度の問題が出てくるかということは必ずしもつまびらかでなかったという事情もございます。また、今日提案されておりますように、裁定権というような準司法的な権能の与えられない調停、仲裁制度の段階にとどまっているというようなこともございまして、八条機関として設置するのが適当であるとしたものと伺っております。
  274. 水口宏三

    水口宏三君 私はむしろ伺いたいのはいままで申し上げたのは逆なんであって、大体この審査会が、いままでの審査会が置かれるときのおそらくわれわれの主張としてはこれを三条機関として置くことを要求したはずなんですね。それが八条機関として置かれている。だから今度は裁定権を持つからという理由はあるかもわかりません。しかし、先ほどから伺っていると、これは現在ある土地の調整委員会との合併という、そういうむしろ行政の簡素化というような何となく便宜的なものが一つ理由になっているような気がするのです。われわれがむしろ当初から非常に重要であるこの公害の審査会は三条機関として置くことを要求したときにはこれは八条機関になり、今度は裁定ということがあるかもわかりませんけれども、三条機関に移行するにあたっては、そういうむしろ行政の簡素化ということがむしろ唯一理由になっておる、そういう、ことさらにどうも何か三条機関、八条機関についてこれを設置する場合の一貫した方針なり基準がないところに、むしろ適当にそのときの都合でもって、これを三条機関にしてみたり、あるいは八条機関にしてみたりということが出てくるおそれがあるのじゃないか。しかもその異質なものについて、どれがより高度なものであり、どれがより重要であるかということの判断も非常にむずかしいと思うのですね。したがって、それらについて何かかなり明確に基準を設けておかないと、行政組織法に基づく行政委員会というものあるいは行政組織そのものの全体の整序というものがくずれてくるおそれがあるのじゃないだろうか、せっかく行政組織法があるのでございますから、これを実際適用する場合に、それそれのやはりそういう国民が納得するような基準を設けていただきたい。そのときの都合によっては八条機関にしておく、ところが今度は合併するので三条機関に引き上げるというような御都合主義では困ると思うのですね。その点についてはあるいはそうではないのだという反論もあるかもわかりませんけれども、ずっとたどってみるといま申し上げたように、それほどの差はないのです。ところが、今度三条機関になることをわれわれは反対しているわけじゃないのでございますよ。あれは当初三条機関にすることを拒否なさった政府当局が、今度三条機関として置くということについて、いままで申し上げたことが矛盾をするのではないかということを申し上げているのです。それらの点については別に御答弁も要りませんけれども、何か御所見があれば伺いたいと思います。
  275. 平井廸郎

    政府委員(平井廸郎君) 確かに先生御指摘のような点もございまして、今後の機構審査等の面にあたりまして一般的な基準ができることが望ましいことは言うまでもないことでございますが、何ぶんにも行政全般にわたって適応できるような明確な基準をつくることは困難な面もございますので、十分そういう点、御意思の点もしんしゃくいたしまして勉強を続けたいと思います。
  276. 水口宏三

    水口宏三君 それでは次に、非常に今度の公害等調整委員会の一番重要なめどであるこの裁定制度の問題につきまして、これを少し具体的に伺いたいと思います。  一つの問題は、その裁定申請があった場合に、委員会としては、被害の態様なり規模その他一切の事情を考慮して申請を受理するかどうかを決定することになる。その場合、被害の程度が軽微でありその範囲が限定されているものは受理しないということになっておるわけですけれども、これは先ほど申し上げました世論調査を見ても、三人に一人は公害の被害者である。それが何が軽微であり何が範囲の限定かということは、これは非常に恣意的に決定されるおそれがあると思うのです。ある人にとってはそれは非常に大きな被害であるという場合もあり得るし、これはその人のおそらく肉体的なあるいは生理的な条件もございましょうし、あるいは心理的な問題もありましょう。だからそれが軽微であるかどうかということの判断がこれは問題であるし、また、範囲の問題にしても現在はあるいは限定されているかもわからない。しかし、それがどんどん拡大してきたというのは、これはこれまでの公害の実例からいっても、水俣病であってもイタイイタイ病であっても、みなむしろ一回判決が出てから新しい患者がどんどんあるということが発見されていくわけですね。これがぼくは公害のおそろしさだと思うのです。そういう場合に、裁定制度をせっかくつくりながら、申請があった場合に軽微なもの、あるいは範囲の限られたものは受理しないということができるということをつくる以上、何らか明確な基準というものがなければ、非常に恣意的に流れるおそれがあるし、また、たとえ恣意的でないにしても誤りをおかすおそれがある。その点について総務長官の御所見を伺いたいのですけれども、もしできるなら、本来これは基準を設けるべきではないかというように私は考えます。
  277. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) 私から申し上げます。  この裁定制度につきましては、申請を全部受理するというのが原則でございます。それで例外としていま仰せがありましたような場合に、受理しないこともできるということにしてあるのでございますが、その受理しない事件のふるい分けといったようなものは、これは基準をつくるということが非常にむずかしいのだろうと思います。実際は全部たくさんの申請事件の中にはいろいろなのがございまして、ここでは条文の上では軽微ということになっておりますけれども、とにかく中央委員会でそれを裁定として取り上げるのにふさわしくないような事案が申請されるということは、これは当然予想されるのでございまして、まあ具体的な例というものをちょっと思いつきませんけれども、まあ仮定的に申しますれば、たとえば隣のピアノの音がやかましくてノイローゼになっている。そのために被害を受けたから損害を賠償してくれというような事案がかりに地方で起こったといたしまして、そういうような事案は、やはりよく見てほんとうにそれが全くお隣同士の一対一の相隣関係にすぎないといったような場合には、これは——しかも同様なことが全国的に地方的に相当広範にあるということなら別でございますけれども、全く偶発的な相隣関係に近いようなものということになりますれば、これは申請を受理して裁定するというのには適しないのじゃないかと思います。あるいはまたもうすでに事案が一方では裁判所の上級審に係属しているといったような場合に、重ねて同じものを委員会のほうに申請してくる。そしてその内容が、やはり委員会として取り上げなければならないような重要性、地方的な大きな問題とか、何かそういうことにも必ずしも当たらないというような場合がございますので、そういうときに全部申請を受理するということでは、結局せっかくの委員会の機能にどうしてもロスができてくるというふうにも考えられますので、そういう制度をつくったわけでございますが、決して受理する受理しないを恣意的に定めるという、そういう趣旨ではございませんので、御了承願います。
  278. 水口宏三

    水口宏三君 いまの委員長のお考え方委員長立場としては私わからないこともないのですけれども国民は今度できたこの法律を読みまして、そうして公害に悩んでいる人は何とかこれに訴えたいということを考えるわけですね。これは国民理解をしてもらって、国民に使ってもらって初めて意味のあるものですね。国民の受ける印象は、軽微なものは受け付けません、範囲の少ないものは受け付けません、そういうことが一応ここに書かれておる。表面上そうだけれども実際はそうじゃないんだといま委員長おっしゃいますけれども、そう書かれておれば国民はそう感ずるわけですね。しかも世論調査を見ましても、軽微といえば軽微ではあるが、その人の生活にとっては非常にやはり大きな障害を来たすような公害が最近非常に多いわけでございますね。そうしますと、こういう表現を使って、軽微なもの、あるいは被害が一部に限られているものは受理しないというような、こういう書き方を、——せっかく公害に対して国民立場に立ってこれを解決しようという法律をつくるにあたって、むしろこういう表現を使うことは、マイナスではあってもプラスではないわけですね。むしろそういう表現は削る、原則的には受理いたしますというほうがもっとすっきりしていると思うのですね。これはむしろいま委員長にお伺いすることではなくて、総務長官にお答えいただいたほうが的確ではないかと思いますけれども
  279. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) 軽微というといかにも、たとえばその金額が少ないものは軽微とか、あるいは当該個人についての被害の程度が少ないものは軽微であるというふうな印象を受けるかもしれませんけれども、それはこの法律の趣旨ではございませんので、たとえば金額にしてみましても、どんなにわずかな金額にしても、それが国民生活に同様な問題が方々に起こっていて大きな影響を与えるというようなことが当然考えられますことでございまして、そういうものは当然ここでいう軽微には入らない、そういうふうに考えております。ただ、この条文の字句が一般に被害額の小さいものは、もうほかに影響が幾らあってもなくても取り上げないのじゃないかというような誤解を受けるようなことがあれば非常に困りますけれども、その点は、これからもこの法案の趣旨が国民の間に正しく理解できるだけのことは周知させるような心がまえで進みたいと思います。
  280. 水口宏三

    水口宏三君 これは、しつっこいようですけれども、非常に重要な問題なんで、もうちょっと御質問したいのですけれどもね。  委員長は、この法律の趣旨が国民に徹底すればと言いますけれども国民一人一人に法律を配るわけじゃございませんので、なおかつ、これを周知徹底するといっても非常に困難です。この世論調査を見ても、被害を受けているという者の中で七九%の人は結局対応できないわけですよ。どうしていいかわからない。何もしていないわけですね。ですからむしろその上に持ってきて、今度せっかく調整委員会というようなものがさらに強化されてできた、その中にこういう規定が入っておれば、ただでさえなかなか国民法律を読んでそれをやろうという人が少ない上に持ってきて、法律を読んでみたらこの中にこういうことがあったとなったら、これはどうもぼくはつくる趣旨と非常に相反すると思いますね。なおかつ、受理されなかった人たち、軽微であったがゆえに受理されなかった人たち、しかし公害は受けているわけですね。たとえば範囲は少ないにしても、たとえそれが十人あっても、重要な公害を受けている、そうした人たちの救済はどうするんだと、だからひとつ、これはむしろぼくは委員長にお伺いするよりは、総務長官のお考え方を聞きたいのです。これは思い切ってぼくはむしろ受理をしなくてもいいなんという規定は抜かしていただきたいと思うのですよ、これは。もしこれを入れる以上、別途救済措置というものを明確にしていただきたいとぼくは思います。
  281. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは小澤委員長から答弁いたしましたように、原則はあくまでもすべての案件を受理するという姿勢を貫いているわけであります。しかし、やはり法律ですべてを受理しなければならないということになっておりますと、先ほど小澤委員長が一、二の例を妥当かどうかと言いながらもあげられたわけですけれども、やっぱり世の中にはいろいろな人がおられますから、持ち込まれたら全部受理しなければならないという、しかも裁定までしてくれと言われた場合に、やはりそういうケースとしてふさわしくないものもあり得ると私は思います。ことに、悪臭、振動、騒音、こういうもの等まで全部今回は対象にいたしておりますから、公害等の苦情で一番多いのは騒音のようでありますけれども、この騒音などでも、取り上げるべきケースと、やはりどうもアパートの隣の部屋がどうだから騒音だという、それも騒音の一つかもしれませんけれども、そういうものまで全部持ち込まれたら受け付けてやらなければならぬのだということだけにしておきますと、これはやはり原則の姿勢というものはそうでありますけれども、やはりある意味一つ一つケースで、これはどうもと思われるものは排除できる規定を一応つくっておきませんといけないということで、これはもう委員長からも申しましたように、この法律はだれのために、何のために必要とし、つくるんだということにこたえなきゃならぬわけですから、こういう適用除外例というような形で置いておいて、そしてめんどくさいものは排除してしまうのだというようなことは全くありませんので、そういう姿勢だったら、もう公害等調整委員会そのものが、国民から初めから非難と、そして失望という目で見詰められて、何の価値も持たない三条機関になるおそれがある。したがって、そこらのところは、まあ実務家の法律専門家である小澤委員長の御答弁をお願いしたわけですけれども、そういう姿勢でやっておるわけでありますので、できれば御了解賜わりたいと思います。
  282. 水口宏三

    水口宏三君 申請されたものに対して、先ほど私が申し上げた、まあ恣意的にと言ったのは多少私は言い過ぎであろうかと思いますので、取り消しておかなければならぬ。ただ問題は、申請されたものについて、軽微なものあるいは小範囲なものは受理しなくてもよろしいという規定があることが、これが先ほど申し上げましたように、現在公害を受けている人たちは、受けていることは自分で知っていても、これをどこへどう持っていったらいいのかわからない人がいるわけですね。それがむしろ七九%なんでございますよ。しかも、せっかくつくられたこの規定の中にその文章があれば、どうも法律読んだ人でもそれにひっかかってなかなか持っていけなくなるだろう。だから、どうも法律のつくり方が、それは疑わしきは罰しないという罰則については私はむしろそうすべきだと思いますね。しかし、こういうむしろ公害の問題なんかについて、疑わしきもこれを取り上げるということがなければ、これはぼくは誤りだろうと思うのですよ。したがって、当然国民の側からすれば、こういう規定があれば、持ち込みたくてもしり込みをすると、これじゃ何にもならないと思うのでございますね。だから、むしろ犠牲者の立場に立ってお考えになる考え方、これはむしろ人を罰するのではなく、救済をするわけですから、なるべく困っている人がたくさん来られるようにするということのためには、私はどうもこの規定は何としてでも納得できないので、何とかこれを変えていただきたい。なおかつ変えられないならば、受理できなかった人たちに対する別途救済措置をどうするかということを明確にしていただきたいと思う。
  283. 川村皓章

    政府委員(川村皓章君) ただいまの先生の質問に対しまして、現実にいま先生がおっしゃられたような問題は、どういう経路で現実はこなされておるかという問題を先にお話を申し上げたほうがよろしいのじゃなかろうかということで御説明を申し上げますが、現行の公害紛争処理法の四十九条に苦情の処理というのがまずございます。それでこれは、紛争になる前には通常非常に多い苦情があるわけでございまして、先ほどの先生のおっしゃられた七九%の問題もこの問題をあわせておるわけでございます。実際は四十九条におきまして「地方公共団体は、関係行政機関と協力して公害に関する苦情の適切な処理に努めるものとする。」ということに相なっておりまして、都道府県と政令で定める市には、公害苦情相談員というのが必置されており、それからさらに、それ以外の市町村は相談員を置くことができるということになっておりまして、これは一昨年の、四十五年の十一月から、すでにこの法律に基づきまして現在では約千九百名の苦情相談員が各市町村、県におります。  それでまず実際は、ここに公害苦情の問題として最初に出てくるのが実態でございまして、昨年度のデータでは約六万四千件ばかりの苦情が全国的に出ているわけでございます。現実は、これを聞きました苦情相談員がそれぞれの専門部局と相談をしたり、あるいは行政規定として処理できたり、あるいはそれぞれの専門部課の処理によって処理できるものはそこでまずこなされて、それがどうしても紛争としてある意味でエスカレートしたような問題が、いわば地方の審査会、さらに問題の重大事件あるいは広域処理事件というようなものが中央公害審査委員会に上がってくるというような仕組みになっております。  その意味で、先生の御指摘のございました七九%のものがむしろ各都道府県なり市町村にいる苦情相談員のところにまず問題を持っていくということが、現在としては体制上必要なことであろうかと思っております。それで、現実に最近までのこなされた苦情は、六万四千件のうち約七割ぐらいが処理をされまして、それが紛争というかっこうになったものは一応七十五、六件ばかりございますが、これが地方の審査会に申請という形で出てくるわけでございまして、ある意味でそういう基礎があって、こう上に積み上げられた形になっているということでございます。  そこで、この不受理の規定の問題でございますけれども、現実に私どもが、苦情その他から扱っておりますと、これは例としてはたして適切かどうか問題はございますが、現実に音楽関係の作曲家あたりでも、通常の人が実は聞きましても騒音じゃない問題を騒音であるというふうなかっこうで持ち込んでくる場合がございまして、現実にある都道府県の問題でございましたが、真夜中に行って、普通の職員が聞いてもどうしてもその音が聞こえてこない、それでもそのときに同時にその方は聞こえるというような、こういうような問題になるようなケースがございます。  それから、さらに一番今度の裁定の問題で考えておりますのは、訴訟及び司法救済との関係で、それぞれ裁判にかかった場合との調整規定は置いてございますけれども、先ほど委員長が上級審と申し上げましたが、一番極端な例は、かりに最高裁まで問題が裁判として上がっていった——最高裁におきましては事実審はいたしません。そのときにまず裁定を申請された場合には、これはいわば意味のないことになります。そういう場合のことを考えてこの規定が置いてございますということでございます。
  284. 水口宏三

    水口宏三君 私は、いまの御説明を伺っても、ぜひ表現を変えていただきたいというのが私のむしろ要望でもあり、意見でございますので、それは何とかひとつ考えていただきたいと思いますが、それはそれで一応保留します。  その次に、私はむしろ全然考えなしに言っていたわけではないのであって、せっかくこういう裁定という制度をつくられたわけですが、都道府県の審査会にも裁定権を持たしたらこれはずいぶん救済の範囲が拡大できると思うのでございますけれども、都道府県の審査会に裁定権を持たせることはできないでしょうか。これはひとつ総務長官にお伺いいたします。   〔理事町村金五君退席、委員長着席〕
  285. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 行政は裁判にかわっての最終審ができないことは当然でありますが、その範囲においても裁定という行為はきわめて重大な、ある意味行政的な国家権力をもっての決断でございますから、したがって、それは結果的に民事裁判に意図して逃げ込まない限りは従うということが前提になると私は思います。そうすると、やはりそれは斉合性というものがどうしても保たれなければなりません。いま同時に地方の都道府県の公害審査会に裁定権を与えるといたしますと、おそらくこれは各地域で同じたとえば水銀中毒であってもあるいはカドミウムの中毒であっても、都道府県ごとにそれぞれの裁定を下します場合に斉合性の保持ということはきわめて困難ではなかろうかと思います。裁判ではまた二審、三審がありますからけっこうなんですが、その意味においてまずこれらの制度が習熟した後においてはあるいは地方においてもそのような中央の裁定の、判決ではありませんが、先例等を見ながらいけるような時代がくるかと思いますが、差しあたりは中央においてこれを処理していくことが妥当ではなかろうかと、そういうつもりでございまして、地方にやらせないとかというつもりはございません。
  286. 水口宏三

    水口宏三君 私が申し上げたのは、この法律に、さっきからくどいように申し上げるように、軽微なもの、範囲の少ないものは受理しないという規定があるので、救済の一つの方法としては、地方の審査会が裁定権を持てばそれは一つの重要な救済手段になるであろうと思ったので申し上げたのであって、総務長官はそれを全く否定はしない、将来の状況に応じてはそういうこともあり得るであろうということでございますので、ぜひひとつ、軽微であるから、範囲が少ないからといって何らの救済手段を提供しないというようなことのないように、これはぜひひとつ御配慮願いたいと思います。  それからもう締めますけれども、原因裁定の問題についてでございますけれども、まあ原因裁定というのは、元来は非常に複合公害のような場合には、特定の公害発生源が複数であるとかあるいは非常にあいまい、あいまいと申しますか、明確でない場合に出てくることだと思うのですね。その場合に、まず裁定受理は、特定者でなくても申請をして原因裁定を受理するという制度があるわけですね。その場合に、その申請をする側は、本来私は公害というものは、まさに被害を受ける者がそれを救済してもらうために審査会に申請をするというのがこれは原則だと思うのですね。すると、それが原因裁定であれ何であれ、むしろ当事者というのは被害者であるべきだと思うのでありますけれども、どうもこの法案を読みますと、当事者というものは必ずしも被害者でなくてもいいというふうに受け取れるのでございますけれども、これはどうなんですか。
  287. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 原因裁定においては、そのウエートはきわめて公害紛争の大部分を占めるだろうと思うのです。原因裁定が、ほぼ原因の因果関係が明らかになればあとは金額の問題になるわけです。ですから、それだけウエートは大きいわけですが、逆に責任裁定の場合には私は金額を幾ら払いたいと思いますという申請などをするのは、これは被害者・加害者という立場でいえば、加害者のほうから申し入れることは不遜なことでございますし、それはやはり裁定を受けなければならぬと思います。しかし、原因のどちらが被害者であるかは一がいに言えない場合があります。自分のほうは絶対に公害防止施設その他を整えていてそして被害を出していないのに、それが加害者のように言われているとすれば、その企業も場合によっては別途犯人がおって、その企業も被害者の立場にいわゆる加害者としての推定みたいなことでやられておれば、自分の冤罪を晴らす、自分はこういう証拠をもって絶対に加害者の立場になっておりませんということを申し出る機会は、私は原因裁定の場合はあっていいと思うのです。もしそれが申し出たことの勇気によって、実際の加害者であったにもかかわらず、それが隠蔽されるかというとそうではないのです。申し出た結果、それは調べて原因裁定でやはりおまえだということになれば、それは逃げられないわけです。したがって、責任裁定の場合は、そういうことは不遜なことであるし、またそういうことを受け付ける必要はありませんが、被害者の立場だけですけれども、原因裁定の場合は、当事者から私は加害者でありませんと、堂々として所信を披瀝して、資料を整えて出る場合は、これは受け付けていいんではないかという判断を持ったわけであります。
  288. 水口宏三

    水口宏三君 しかし、まあ公害というものを一般的に取り上げた場合には、公害を受けるのは非常に弱い市民ですね。特にまあ都市の場合などは、みな職を持って、一日じゅうそれこそ交通公害にあいながら通勤をしている人たち、時間的にも余裕はない、財政的にも余裕がない、そういう人たちが、われわれは公害の被害者であるという形でもって原因裁定を申請すること、そのこともいま非常に困難だと思うのでございますよ。ところが、公害を受けていることは明らかであるにもかかわらず、これを実際上原因裁定に持ち込むということには時間的にも、労力的にも、財政的にも非常に困難な面があるわけですね。ところが一方、企業の側は、これはもう公害がこれだけうるさくなれば、企業によっては公害課ぐらいつくって、いつでも対応できるようにしている。これは、交通は大体そうですわね。大きなタクシー会社はみな何か調停員みたいなものをたくさんつくっておいて、まず先に行って適当に話をつけて、それでまとめてしまうということをよくやっている。これは現実でございますね。そこで私はむしろ、その企業が原因裁定の過程において審査をして原因者でないということが明らかになればいいんであって、何も初めから私は原因者でありませんというようなことを言った場合に、それを受理するということは、これは大体公害というものの性格からいい、最初私の申し上げた憲法立場からいってもおかしいのじゃないか。たとえば熊本の水俣病にしたって、最後まであれは、原因はうちじゃないとがんばっていましたがね。イタイイタイ病も現在でもそうなんです。それからまた、この間新聞を見ますと、例の足尾の銅山、古河企業だって、いやもうあんなものはとっくにないはずだということを言っているわけですね。これはむしろ複合公害ではありませんよ。こういう明確なものですらそういうことを言うわけなんですから、まして、こういう複合公害の場合、原因者がはっきりしないものについて、私は原因者じゃありませんということを申請したら、それをまず受理してやろうというような形はおかしいのであって、むしろ被害を受けた人たちというのはなかなか申請すらするのが困難なんですから、時間的な面、財政的な面から見て、まず被害者からの申請を受理するということは、これはもう前提だと思うのですね。企業はいつでもやりますよ、そういうことをやったら。まずのがれてしまう。あるいは先に実績をつくってしまう。これは専門員だって神さまではございませんし、委員の人格を疑うわけではございませんが、ただそういう順序からいって、こういう裁定を行なう場合、ことに複合公害の場合に原因裁定を行なう、これは非常に、何回もくどいようですが、被害者がこれを申請することは非常に困難であるにもかかわらず、そういう道をせっかく開いたのですから、これを有効にするには、私はやはり申請者はこれはやはり被害者に限定することでなければ、その効果は逆に、企業のいろいろな策動をする余地を残すおそれがある。そう感じますので、当事者というものは被害者に限定するほうが妥当ではないかというふうに考えますが、その点いかがですか。
  289. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) いままでの中央公害審査委員会の調停仲裁等は、当事者間の合意というものが前提になっておりますので、これはやはり問題はこのままでは今日の公害紛争処理には対処できない。これは率直に私も四十五年の法律を作成した後に実態に照合しながら反省もいたして、今回被害者救済という立場を貫いて、典型公害すべてを対象にしてここに裁定制度をつくろうと、こういうわけでありますから、その考え方の大前提に立って被害者の立場からやるわけです。しかし、この原因裁定ということも、ただ自分のほうは犯人ではありませんと、こういうことを条件を整えて持ってくればそれで免罪になるかというとそうではありませんで、裁定を受けるということを覚悟の上で出てくるわけでありますから、いわばお白州に出てくるわけです。したがって、自分たちが内心じくじたるものがあって、それを隠して、被害者にはたいして事実はわからぬだろう、おれたちは学者も集めてこういうふうにちゃんと資料を整えているからというようなつもりで持ってきますと、やはり裁定を受けることを覚悟しなければできないわけですから、裁定というものはやはり相当私としては覚悟をきめて受けなければならぬ問題だと思いますので、これを責任裁定までそのような態度をとることは、金額を幾らでどうでしょうというのは、これは話し合いなら別として、当事者の合意を前提とするなら別として、裁定を受ける立場ならば、これは被害者に限るべきだと。しかし、これは、原因がどちらにあるかという問題の場合に、いまのお話しのような、加害者と当然思われる者がいけずうずうしく、自分は加害者じゃありませんと名のり出てきたら、そのことによって済むかというと、そうじゃなくて、当然裁定をされるということの覚悟の上で出てくるわけでありますから、この立場において、私は被害者救済がないがしろにされることはないと思います。  しかし、それを、あくまでも疑問が残る、被害者の申請にのみ限るべきであるという議論があるとすれば、私は、その議論も正しい議論だと思います。そして、そういう議論で貫いたほうが場合によってはいいのかもしれない。しかし、原因裁定の場合に、当事者のどちらもが持って出ることが、著しく被害者をそのために不利にするものではない。それは裁定が行なわれるからだというつもりでおります。
  290. 水口宏三

    水口宏三君 長官は、非常にときどき勇断をふるったり、考え方は非常に筋の通ったことをおっしゃるんですけれども、結論はどうも何かはっきりしないんですね。これはむしろ、はっきりと貫いていただいて何ら障害がないんじゃないんでござんすか。つまり、当事者を被害者に限ることによってどういう問題が生じ、どういう一体支障を来たすのか。私はむしろ、被害者に限ることによって、非常に弱い被害者というものが、時間をかけて、そうしてみんなが同じような被害を受けている、これはぜひひとつ仲裁裁定に持ち込もうではないかという余地を与えるわけであって、それを、なまじ当事者にそういう企業の側を入れておくということは、事前にいろんな——まあ人間ですから、さっき申し上げたように、決してその人を疑うわけではございませんけれども、先入観を与える、あるいはよけいな既成事実がつくられる、さまざまな余地を残すわけなのですね。だから、私はやはり、長官が言っているように、それを貫いたほうが自分もいいと思うと、ただしまあこれはというふうな、何かどうも、せっかくの長官のそういう、われわれもこれは当然だと思うという考え方をお持ちになっていながら、しかもときによると勇断をふるうというそういう長官が、事こういうことになると、勇断をふるわずに、まあ残しておいてもいいじゃないですかということでは、これは私ども納得できない。この点は非常に今後問題になると思います。これはもう、たとえば責任裁定ですら、いままでの公害の中で何回かそういうことがあるわけでござんすね。明らかにこれは原因の企業であるということがわかっていても、何とかしてそれをすり抜けようとしている。これはもう、これまでの公害事件の常に裁判が長引く原因となっている。そういうまことに原因のあいまいなものについて、原因裁定を行なう場合、当事者というものの中に、何で企業、つまり加害者の側と思われる企業を入れなければならないのか。一応、長官自身も、理論的にはどうもそれはすっきりしないとおっしゃっている。それならば、私は、当事者は被害者に限ればいいわけです。また、被害者がなければこういうものを申請するはずはないわけでございますからね。被害があれば申請をする、それで審査の中で事実その人が原因者でなければ、それは何にも問題ないわけでございますから。長官の言うことは逆なんであって、自分は加害者ではないと思うというそういう形で当事者になれば、これは裁定を受けるのだから、まあその人はそういう覚悟で出てくるんだろうと言うけれども、われわれに言わせれば逆なんですね。その人がほんとうに加害者でないなら、それは、そういう審査の過程でもって、明確に、加害者でないことが明らかになれば、それで済むことでござんすよね。だから、私はむしろ、こういう公害の問題については、あくまで申請当事者というものは被害者であることが原則であり、それを貫くことが、むしろせっかくつくられるこの委員会というものの機能というものが、ほんとうに弱い公害被害者の側に立っての法律としての効力を発生するんだと、そう考えますので、くどいようですが、もう一回長官の勇断をひとつお聞きしたいんです。
  291. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは、公害を大気汚染、水質汚濁等にかりに限っておりますれば、これはやはり、家庭用排水、汚水等のごくわずかな部分以外は、ほとんどが、まあ概念的に、企業といえるものと、力のない一般の地域住民との関係に象徴されるだろうと思うのです。しかし、今回は典型公害全部を対象にしておりますから、地盤沈下から騒音、振動、そういう悪臭まで入っておりますし、まだ取り締まり法規そのものもない公害も、典型公害に入っておれば私たちとしてはそれを受け付けるつもりでおりますから、そうすると、あながちこれは企業対力のない地域住民と、いうだけで律せられない範囲のものも当然振動、騒音、悪臭、こういうものには出てくると思います。その場合に、悪意を持って私たちは何か抜け穴をつくっておこうというようなつもりなら、初めからこんな裁定の三条機関なんというものはつくりません。ここに切って出るには、国民のために、そうして公害先進国だといわれて汚名返上に努力する国家として、これは被害者救済のためにという立場を貫かなければならぬ、これはわかり切っております。しかしながら、公害のすべてを受理する対象にいたしておりますから、そういう場合において企業と地域住民だけの関係にほとんどが律せられるものならば、私だってそのほうがいいかもしれませんと言ったのですが、原因原則を貫いただろうと思うのです。しかし、やはり数多くの分類に分かれる、しかも各種態様の異なる典型公害すべてを受け付けるといたしますと、やはり加害者といっても、それが力のあるものだけには限らないのじゃないか、そういうケースも私としては予測せざるを得ない、そういう気持ちもあったわけであります。
  292. 水口宏三

    水口宏三君 じゃ、これで一応私の質問を終わりたいと思いますが、最後に、最初私と長官で合意をいたしました公害処理の憲法上の原則、この十二条、十三条と二十五条の問題ですね。おそらく複合公害の場合には、これは原因者もさることながら、行政的な怠慢というものがそういうものをしばしば引き起こしていると思うんですね。二十五条には、御承知のように「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」という規定があるわけです。だから国自体がこれは加害者である場合もしばしばあるわけですね。特にいまの都会の複合公害の場合などは、むしろ行政機関の怠慢のゆえに起こる場合が非常にあり得るわけでございます。そういう意味からいっても、私はどうも長官のいまの御説明では納得できません。加害者がごく零細なものもあるかもわからぬというお話ですけれども、まあ、それはたとえば、隣の人がニンニクが好きでもって年中ニンニク食べていると、するともう隣の人はニンニクのにおいが朝晩鼻についてしかたがないから、こいつはどうも公害だと、そんなことまで例に出したら、これはもうお話にならないわけですね。むしろこういうものが社会的に問題になる場合は、私は主たる原因は企業である。また、それは複合公害になる場合の一つの大きな原因というものは、しばしば行政機関の怠慢から起こるものであるとするなら、これは何回も申し上げるように、長官自身も納得してらっしゃる公害処理の原則、また憲法の規定に基づいて、当事者を被害者に限定することによって被害者保護ということが完全に全うされるものだと私は考えますので、再度私の意見を申し上げて、長官の勇断を促して、私は質問を終わりたいと思います。
  293. 鈴木力

    ○鈴木力君 関連して一つだけ伺いますがね。いま水口委員のほうから国の機関が加害者になっている場合という話が出ました。現状で国の機関が加害者になっている場合に、一体いまの公害担当の総理府総務長官として、どういうルートでどういうことをやっていらっしゃるのかということなんですけれども、ちょっと長官の都合もあるようですから、いまお答えいただかなくてもいいのですが、一つの例として、港区ですね。田町の芝浦一の七の十一という番地のところで、国鉄がいま新幹線を通すための工事をやっている。この工事のために、まあ全部言えば「おかやす」という旅館がそこにある。この旅館はもう営業ができないような状態になっている。もう振動と騒音のために、店は傾くやらドアがだめになるやら床が落ちるやら、それを盛んに繰り返している。これを東京都に幾ら訴えても全然らちがあかない。国鉄に直接陳情にいくと、国鉄のほうの答弁はきわめて冷たい。高姿勢な答弁でどうにもならない。こういう例が一つ具体的にあります。私は、まだそういう例はたくさんあるけれども、そんなたくさん言うつもりはありません。そういう例を、これはいきなり出したんですから、いまここで答弁してくださいとは言いませんけれども、ひとつ調査をなさってみて——私はやっぱり機関が加害者である場合の、そして国の機関が被害者に対してあまりにも高姿勢な実例だと思って、そこを現状を見てまいりました。こういう実例がありながら、国の機関が加害者になっているというものに対しては、どんないい制度をつくっても私はやっぱり公害問題というのは解決しないだろうと思います。もう時間がありませんから、そしてこれはいきなり言っても御答弁をいただくわけにはまいりません。いま申し上げたことを御調査の上——まだまだ私はたくさんそういう問題知っておりますけれども、一例でけっこうです。国の機関の加害者である場合に政府が何をしているか、今日までどういうことをしているかということを次の機会に御答弁をいただきたい、こう思います。関連で質問だけしておきます。
  294. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) そういうことをやるためにわざわざ大臣を一名増員をいたしまして、環境庁長官をつくったわけでございます。したがって、環境庁が公害のそういう日常の行政の取り締まり、監督、規制、そういうものに当たるわけであります。私はいま公害担当ではございませんで、これはたまたま純粋の第三者機関として環境庁にすら付属しない国の、総理府の三条機関ということで、独立性を持った客観的な立場でさばいていけるような機構をつくりたいということの提出者になっておるわけであります。そこで私としては、姿勢は、たとえば都道府県知事に権限を委譲いたします際も、通産省のアルコール工場とかあるいは大蔵省の印刷工場とか、造幣工場とかいうところはなかなか移すのをいやがりまして、しかしながらやはりこれは国の機関であろうと何であろうと、都道府県知事が日常地域住民の代表者として監視、監督していくのが一番いいということで、各省庁を説得して全部都道府県知事に渡したこともあります。その姿勢はいまでも私は貫いておるつもりでありますので、それらの事件がもしこの法案が成立をして公害等調整委員会が発足いたしまするならば、これは当然紛争事件として持ち込まれるならば喜んで、それは国鉄が相手であろうとどこが相手であろうと、公害等調整委員会は喜んで受け付けるということであることだけ申し上げておきます。
  295. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 長官どうぞ——。
  296. 鈴木力

    ○鈴木力君 環境庁の長官はいませんけれども、では環境庁の方だれかおりますか。——いま、総理府の総務長官からお答えがあったように、そのために環境庁長官というものを置いて大臣を任命しているというのです。しかし、環境庁ができましてからもう相当の日数があるけれども、この種の国の機関の公害に対してあまり手が伸びていない。環境保全というような、緑とかいろんなことはやられておるけれども、みずからの国の機関の加害者になっている例については環境庁もあまり手を出していないのではないか、そういう感じがいたします。さっきから言いましたように、私は一つの実例をいまここで申し上げたわけです。これはひとつ環境庁として責任を持って調べてみていただきたい。そしてこの審議中に、あとの機会に御答弁いただきたいと、こう思います。
  297. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) ただいまの件につきましては、次回の本委員会におきまして説明ができるように、当局において御用意願います。
  298. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 たいへんおそくなりまして申しわけないのでありますが、公害等調整委員会設置法に関連をいたしまして、きょうは二、三質問をしたいと思います。しかし、総務長官並びに大臣がどなたも御都合が悪いそうでございますので、きょうは私は法案関係についての質問は後日に譲りまして、具体的な問題で二、三質問をしたいと思います。  初めに、きょうは委員長さん三人、公害委員会の方それからもう一人事務局の方お見えになっておりますが、一つは、初めにお伺いしておきたいことは、公害等調整委員会委員長ですが、これは現在の中央公害審査委員会ですか、現在の委員会委員長の小澤さんが委員長に内定をしたというようなことを私たちは聞いておるんですが、ここらのところはどうなっておるんですか。あなたはまだ聞いておりませんか。
  299. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) 全然聞いておりません。
  300. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 新聞に載ったのは見ましたか。
  301. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) 新聞にそういう記事がございましたので、非常に驚きました。
  302. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 このことについては、あなたに記者のほうから取材には行きましたですか。
  303. 小澤文雄

    政府委員(小澤文雄君) 参りませんでした。   〔委員長退席、理事町村金五君着席〕
  304. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 この問題はあなたにお伺いしてもしようがないことでございますので、とりあえず確認だけと思っておりましたんですが、いずれにしましても、まだ法律が全然審議もなにもされていない段階から、こういうふうな人事等が内定したなんということでマスコミ機関に報道されるというのは、これはおかしいと思うんですよ。衆議院が通過した段階で、参議院ではまだ何もやっていない段階で、こういうようになってしまうというのは、参議院なんというのはもう全く無視しているという感じになりますので、これは大臣がおりませんので、かみつくところがありませんので、あなたにとりあえずお伺いしておきたいと思ってお伺いしたわけです。これはあらためて大臣に問いたいと思っているんです。  それからもう一つですが、法案の——土地調整委員会委員長さんお見えになっておりますね。あなたにも一言だけお伺いして、私は次の質問に移りたいと思うのですね。  先ほどからいろいろ具体的に質問がございました。あなたのほうはもうすでに現在三条機関ですね。あなたのほうの委員会は、この公害等調整委員会と一緒になってあなたのほうの名前もなくなるわけですけれどもね。あなたのほうの委員会のメリットは何かあるんですか、どうなんですか。
  305. 上原達郎

    政府委員(上原達郎君) きょう委員長事故がありまして、私事務局長でございますが、代理してお答えいたします。  実は、いま御審議を願っております審議会設置法案政府部内で問題になりましたときに、ごたぶんに漏れず、私どものほうでは自分のところの委員会がつぶれるというので、委員会としては、先ほど山中長官も仰せになりましたが、総理その他に直訴をするというような非常手段をとったことは事実でございますが、当委員会のメリットと申しますのは、先ほどもちょっと所管業務に関しましていろいろ御説明しましたように、特にわが委員会で担当しております業務の中で、特定の行政処分に対する異議が国民側から出た場合に、不利益処分に対する異議が出た場合に、裁定という形をもってこれにこたえるという、そこに一つの特色があるわけでございます。この裁定の性格と申しますか、まあ行政不服審査法ないしは行政事件訴訟法の特例をなすというような、そういう性格を持っておりまして、その裁定の特色といたしましては、まず書面審理主義をとりません。当事者を双方を、ちょうど民事訴訟あるいは行政事件訴訟法においてやっております、要するに裁判所における審理のやり方そのままを移しまして、当事者をあたかも原告、被告のごとき立場においてそこに対決させ、口頭弁論なり何なり、お互いに攻撃、防御の方法をとらせ、また証拠の提出をさせる。そういう全く裁判所に準じた手続でもって審理を進めて裁定を下すわけでございます。  で、たとえば不許可処分というような国民に対する不利益処分がなされた場合、一般の処分取り消し訴訟等におきましては、その処分の取り消しの訴えを地方裁判所にまず提訴できることになっております。ところが、私どもの扱っています権限に属する事項の取り消し訴訟につきましては、当委員会の裁定を経た後でなければ、裁定に対してのみ訴えることができると。しかもその裁判所の管轄は東京高等裁判所の専属管轄と申しますか、東京高裁だけに提訴できるわけでございまして、いろいろな意味でいわば地裁にかわる前審的な役割りを果たしているわけでございます。  それからまた、その裁定におきまして、うちの委員会が実質的証拠をもって認定しました事実は裁判所を拘束すると。ですから、先ほど申し上げましたように、訴訟の段階においてはうちの委員会がやりました裁定固有の瑕疵といいますか、傷でございますが、要するに裁定の手続上の瑕疵、その他違法な点があればそれのみを追及して、それに対してのみ訴えを出すことができる、そういうような特殊なあれを持っておりまして、先ほどからいろいろお話もございましたが、そういう意味でいわゆる合議体、合議制をとった行政委員会という形で二十年以上存続してきたわけでございます。
  306. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私は、いまあなたが事務局長さんやっていらっしゃるこの土地調整委員会というものがなくなって、現在、いま審議中の公害等調整委員会になったことについてのメリットをお伺いしたわけです。いまあなたいろいろおっしゃいましたけれども、私はあなたのおっしゃっておることがよくわかりませんので、あなたのおっしゃったことはあとで議事録をちゃんと調べて、この次の法案の審議のときに、もっと詳細に、いまあなたがおっしゃったことは、ほんとにメリットなのかどうですかね。私の考えとしては、この土地調整委員会と公害の問題とはほんとは全然別々にあってもしかるべきものじゃないかと、こう思っておるわけだ、私は。だからわざとあなたのほうのメリットというのがほんとうにあるのかどうかということをお伺いしたわけです。したがって、この問題については、再度あらためてこの次の委員会で詳細にお伺いしたい、こういうぐあいに思っております。  それでは次に移りたいと思うのですが、公害という問題は非常に大きな問題でありまして、私がこんなことを言うまでもなく、この内閣委員会は公害そのものの所轄の委員会ではございませんけれども、私たちこの内閣委員会でも相当前から、公害の問題等は取り組んでまいりました。  そこで、きょう私は、二、三質問をしたいのでありますが、一つは、最近、特に大きな問題となっておりますPCBの問題についてきょうはお伺いしたいと思います。  そこで、初めに通産省にお伺いしたいんですが、PCBという問題について、通産省として現在までとってきた処置についてお伺いしたいと思うんです。それで、PCBが非常に危険なものであるということについて通産省はいつごろ気がついて、そして——大体いつごろ指示したということは私のほうでもわかっておりますけれども、どういう処置をしたのか。そういう点についてお伺いしたいと思います。
  307. 山形栄治

    政府委員(山形栄治君) PCBの関係につきまして通産省で現在まで行ないました対策を時系列で申し上げますと、まず昨年の三月に、感圧紙、いわゆるノーカーボン紙と言われているものでございますけれども、感圧紙向けの使用の全面中止を関係業者に対しまして通牒をいたしたわけでございます。で、引き続きまして、四十七年、本年の一月、感圧紙以外の、開放系と言いまして、これは塗料とか、そういうものに使われておるわけでございますけれども、その開放系向けの使用を全面中止いたしたわけでございます。で、問題でございますのは、いわゆる閉鎖系と言われておりますトランス、コンデンサー等の絶縁体に使われておりますPCBが問題でございますので、本年に入りまして三月二十一日に通牒を出しまして、トランス、コンデンサー、及び輸入業者、それから電炉用のコンデンサー等々、電力業者も含めまして、通産省の関係各局といたしまして、九月一日以降は回収が完全にできるもの以外はPCBの使用は禁止されたいということの通牒を出したわけでございます。なお、これに関連いたしまして、現在、PCBをつくっております国内のメーカーが二社ございまして、鐘淵化学株式会社と三菱モンサント株式会社でございますが、その二社につきましては、それぞれ、鐘淵化学につきましては六月末、三菱モンサントにつきましては、たしか三月二十七日だと思いますが、この生産を中止するということが現在きまっておるわけでございます。
  308. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは重ねてもう一点お伺いしますが、この点については、前々から公害あるいは予算委員会等で取り上げられた問題として私のほうの公害対策本部長の小平が質問しました。質問の、これですね、答弁書が出ているわけでありますが、これについてはいま種々問題になっておりますが、これについて、修正すべき点あるいは考え方について担当の局長の見解をお伺いしておきたいと思います。
  309. 山形栄治

    政府委員(山形栄治君) ただいま先生からお話ございましたのは、去る一月の二十六日に小平芳平議員から、国会法に基づきます答弁書の提出の要求がございまして、そのとき、時間が非常に限られておるので二十九日ごろまでに提出されたいという、非常に時間のない御要求であったわけでございますが、われわれといたしましては、その短い時間でございましたけれども、できる限りこれを調べまして、二月一日付の閣議でこの答弁書の決定をなし、同日、参議院のほうにこれを送付いたした次第でございます。この場合に一つ問題がございましたのは、現在までのPCBの国内の総生産量と総輸入量という御質問がございました。これに対しまして資料を提出したわけでございますが、輸入につきましては、四十二年以降われわれのつかめます範囲内におきます数字を記載して提出したわけでございますが、その後松下電器産業が二十八年ごろに国内生産でない輸入物を使ってコンデンサーをつくっておったという事実が判明いたしまして、当時国内生産はなかったわけでございますので、これは当然輸入品であったであろうということが推定されるわけでございます。しかしながら、何ぶんにも非常に、二十年近い過去のことでございますし、それから当時のPCBは輸入割り当て物資であったわけでございますけれども、品目は特掲されておりません。それから、輸入割り当て物資でありますものについての割り当て証——許可証につきましては、役所の内規で二年間の保存期間でこれを廃棄するということに相なっておりまして、それやこれやで現在といたしましても、これは非常に実態の把握が困難であろうかと思いますが、いま先生のお話にもありましたように、われわれのほうの出しました資料を見ますと、四十二年以降に数字が入っておりまして、それ以前は空欄になっております。   〔理事町村金五君退席、委員長着席〕 これは一番正確にするためには、この空欄のところは、確かに輸入はあったであろうかもしれぬけれども、それはなかなか実態がつかみがたいというような注釈でもありますれば一番よかったんではないかと、こう思う次第でございまして、その点非常にこの輸入数量の説明につきまして配慮が足りなかったことはわれわれ心から遺憾でございまして、おわびいたす次第でございます。今後こういうことがないように十分気をつけてまいりたいと思っておる次第でございます。
  310. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 局長、私は非常にこの通産省は遺憾であると思うのは、この松下の資料というのは、ちゃんと公文書であるわけですね。その二十八年以前に使っておったとわかったわけですね。これも私たちが指摘をしてわかったわけですね、実際問題としてね。ところがあなたは、もうそのことしか言わない。ほんとうはね、あなたのほうの課では、あなたの——あなたはわからないかもしれませんが、あなたのほうの化学工業局、あなたのほうの役所では、当時ちゃんと輸入されておったということは、担当の方や皆さん方は、私たち松下を指摘するまでもなく御存じだったわけでしょう、どうですか。
  311. 山形栄治

    政府委員(山形栄治君) おことばを返しますようでございますけれども、われわれといたしましては、松下電器が二十八年にコンデンサーをつくって、その生産工程の途中において発しん等のいわゆる職業——職場における一つの疾病が起こったということを新聞紙上で見ますまでは、松下でそういうものが過去につくられておったということを実は如らなかったわけでございます。
  312. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 局長はいつ局長になったか私知りませんがね、私はこう言うからにはちゃんと証拠があって言っておる。私はこの内閣委員会で昨年のこれは四月の十三日、この内閣委員会でPCBの問題については相当突っ込んで質問をいたしました。あなたのほうの担当者がどういう答弁をしたかといいますと、こういう答弁をしておる。「わが国ではかつて輸入されておりましたが、」PCBはかつて輸入されておりましたが、「昭和二十九年に一社生産を開始しまして、」よろしいか、そうして「その後さらにもう一社生産を開始」した云云とずっと説明がありますがね。要するに、この説明等をよく読んでみますと、この担当者は少なくともわが国で二十九年に生産を開始するまでは、わが国では輸入しておったということをちゃんと知っておるわけですね、これは。そうでしょう。われわれが、局長松下を指摘したから、松下だけだと思っていたら、大きな間違いで、そうじゃないわけです。あなたの部下には、知っている人がいるのです、現実に。あなたは、正式の答弁書にはゼロは書いてないとおっしゃっておりますが、私のほうに来た写しにはちゃんとゼロが入っておるのがあるんですよ。現実にここにあるんですよ。ぼくがつくったのとは違いますよ、これ。そういうぐあいにして、こういうふうな問題については、私たちが指摘をした時点で、あなたのほうの局自身が、もっと、あなたは急になんとおっしゃっていますが、急にじゃないのですよ。私のほうの小平が質問したときには、もうすでに一年以上も前に私たちが指摘をしているわけです。ですから、急にこの正式の答弁書が出てきて、そうして云々という話じゃなくて、私たち委員会で取り上げて、その生産量やいろんな問題について指摘をし、お伺いしたときには、やはり真剣にあなた方の局なり、部でも取り上げていただかないと、私たち委員会で云々していることが何の意味もない、そう思うのですよ。どうですか、局長
  313. 山形栄治

    政府委員(山形栄治君) 輸入の数量につきましては、いま先生のお話しのように、松下に私は限らないのではないかと思います。ただ、これがどこでどのぐらい輸入しておったかということは、先ほど申し述べましたようないろんな事情がございまして、現在判明いたしておりません。いずれにしましても、過去に、この空欄になっておるところがゼロではないだろうということは、私ははっきり申し上げられると思うわけでございます。  なお、本件につきましては、先般来の御指摘もございましたので、通産省といたしまして全局をあげまして、現在、昭和二十四年以前と、それから二十五年以降につきましては、各年別にそれぞれのトランス、コンデンサー・メーカー等を中心にいたしまして、輸入がどういうふうに行なわれたか、その実態調査を現在実施しておりまして、これは何ぶんにも資料が非常に古く、かつ相当数も多いわけでございますので、一カ月程度の時間はかかると思いますけれども、現在御指摘の線に沿いまして、早急に調査を開始いたした次第でございまして、私の言い方が非常にまずかったのかもしれませんけれども松下に限らず、ほかの会社においても、それは輸入量はあったんではないかと、こういうふうに推定いたしておるわけでございます。
  314. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それから局長、先ほどあなたのほうの、通産省のほうでとった処置について、種々、話がございましたが、PCBが非常に危険なものであるということは、もう最近、全国津々浦々からあがってきております。あなた方も生産中止とか、いろんなことをおっしゃっておりますが、処置のしかたがあまりにもなまぬるいんじゃないか。具体的に——私、時間的に問題もありますので、もう夜分おそいことであれですから、あんまり例をあげませんが、一つだけ例をあげますと、局長、ここに新聞の広告があるんですよ、ここにね。ここにこういう広告が書いてあるんですよ。「絶対イマです」というんだな。「おトクです!!」というんだよ。それで「ルームエアコン処分市」と書いてある。これはそごう百貨店の広告です。それでメーカーもずっと全部入っています。ルームエアコン、この夏を控えてどんどん売りたい。「処分市」なんてね、あなたわかるでしょう、こう言えば。これは知らない人が見ると、ああこれはルームエアコンの安いの、いままで十万円くらいしたのが、半額で売り出していると。一流の百貨店がこういうことをやり始めたのはなぜか。これはもうはっきりしているわけですよ。ことしの夏には、このルームエアコンに使っているいわゆるPCBが問題になってくる。PCBを使った機械は使用禁止になる。それを前にして、これはもういま必死になって売り出しをやっているわけですね。そうすると、あなた方は、これは禁止していくその猶予期間がしばらくある。そのしばらくの間に、いま、日本じゅうにあふれているPCBは、全部これはあふれ出してしまいますよ。こういう点についても、何らかの処置をしなくちゃいけないと思うんですが、局長、どうですか、これは。
  315. 山形栄治

    政府委員(山形栄治君) 先生のいまの御指摘の点は猶予期間の問題だと思いますが、先ほど申し上げました三月二十一日に通牒を出しましたときに、今後八月三十一日までの猶予を置きまして、自今回収ができないものについては生産しちゃいかぬと、こう申しましたのは、主としてPCBを使っておる大型のトランス、コンデンサー等で、これはPCBというのは物質的には非常に安定性のある引火性が全然ない物質でございますので、われわれのほうの当時の推定では、国鉄新幹線のトランスとかその他非常に精密な安全性を求められるトランス、コンデンサー等につきましては、若干この回収期間も含めて猶予期間を置かないとまずいじゃないかと思いましたのが一つと、もう一つは、現在PCBを使っておりまして、いろんな電気器具等がつくられておるわけでございますけれども、何ぶんにもPCBの代替品を使いますと設計変更をみんな行ないませんと製造の工程が組めないという事情もございましたので、したがいまして、三月二十一日から八月末までの一応の猶予期間、設計変更等の余裕の期間を置いてやったわけでございます。ただし、これは八月三十一日までは自動的にいいということではございませんで、できる限り早く切りかえを行なうべきであるということもその通牒の中で強く述べておりまして、この辺を受けたのかどうか知りませんが、大阪のほうの電気器具メーカーは四月中に全部製品を切りかえる、それから九電力につきましては、本来これは回収が絶対可能でございますので、われわれは安全性も含めて使っていいんじゃないかという感じもあるのでございますけれども、四十八年度以降の受注分については、PCBの入っているトランス、コンデンサーは発注しないという発表をいたしております。また、国鉄のほうにつきましても、新幹線につきましてスケジュールをつくりましてこれを新製品に切りかえていくということを発表しておりまして、全般的にそういう設計変更等の事情もありましたけれども、現実の動きというのはわりあいに切りかえが早く行なわれているんじゃないか、ただ、いま先生のお話しのように、その過程におきましてそういう安売り、バーゲンというようなことでそれがさばかれておるということは確かに考えられ得るわけでございまして、その辺につきましてもそういう百貨店協会等々と連絡をとりまして、実態の調査その他もいたしてみたいと思っております。
  316. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 まあいま局長おっしゃいましたように、確かに製品をPCBを使わないようにする、いつから使っちゃならないと、これは大事ですね、局長、いまおっしゃったとおりです。しかし、現在つくっている、そのPCBを使ってつくっている製品というのはメーカーにしてはもう在庫にしてずいぶんあるわけですよ。ですからそれに対するやっぱり手というものも打たないと、これはもう庶民はエアコンはほしいですよ、実際のところ。それがいままでの従来の半分なんてなってくると、これはもうみんなPCBなんて全然わかりませんよ。この機械はPCB使っていますなんて全然書いていませんし、また危険であるなんということもわかりませんし、現実にそういうこと、売るほうだけしかわかんないですね。非常に私はこれは遺憾なことだと思うんですよ。そういうふうな問題が出てきますので、特にこういうような問題にも、いま局長は百貨店協会等々とも連絡をとってという話がございましたけれども、そういう点もよく相談をして、これはあなた方どっちにしても企業を守る立場にあるかもわかりませんけれども、それだけじゃなくて、どうしてもやっぱり庶民の生活、国民の生活ということを考えて、国民の健康ということは非常に重大なことだと私は思うんですよ。そういう立場に立って一刻も早くこういう問題についても処理をしていただきたいと思うんですが、どうですか。
  317. 山形栄治

    政府委員(山形栄治君) 通産省といいますと何か企業側だけに立っているような印象がございますわけですけれども、いま先生御指摘もなさったわけでございますけれども、われわれはそういうことは全然ございませんで、先生のおっしゃるとおり、いま一番大事なのは人間の生命と環境の保全である、そのための成長率が適正に下がることはやむを得ない、当然の一つ国家目的といいますか、経済の新しい目標といいますか、そういう考え方でやっておりまして、そういう誤解が生じましたことは非常にまずいわけでございますけれども、われわれの決意を申し述べまして……。
  318. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私は、昨年の四月にこのPCBの問題を取り上げたときに、当時まだPCBはそんなに騒がれておりませんでした、いまみたいに。当時はカドミウムとかBHCとかDDTとか、そういうものが相当問題になっておりました。そのとき私たちは、少なくともPCBというのは第三の公害物質として必ず重要な問題になってくる、だから真剣に取り組むべきだということを大臣や皆さん——通産大臣も当時出席していただきまして相当私やりました。それにもかかわらずいまだにこういうことではほんとうにいかぬと思うんですよ。そこで、きょうはその当時の関係者にみんな出席していただきましたので、当時私が言ったことを再度確認してみたいと思うんですけれども、厚生省の方にきょうこれからお伺いしたいんですが、このPCBの慢性毒性の問題について、当時の答弁でも、この議事録にも残っておりますけれども、慢性毒性の試験については国立衛生試験所で実験なり試験をどんどんやるという約束をしておりますが、これはその後私はどうなったか聞いていないんですが、現実にやっておるんですかね、ここのところはどうですか。
  319. 浦田純一

    政府委員(浦田純一君) 慢性毒性につきましては、御指摘のように不明な点が多いということでございましたので、厚生省といたしましては、科学技術庁所管の昭和四十六年度の特別研究促進調整費の移しかえを受けまして、現在国立衛生試験所を中心として慢性毒性の研究班をつくりまして研究中でございます。
  320. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それから当時、私はいまの浦田局長さんに琵琶湖の問題も相当申し上げましたね。それで琵琶湖でもPCBが発見されて相当これは危険である、この問題についてはその後どういうふうな手を打たれましたんですか。
  321. 浦田純一

    政府委員(浦田純一君) 琵琶湖の問題が一つ具体的な例として御指摘になったわけでございますがPCBの環境汚染を通じての人体影響の問題ということは、峯山先生昨年御指摘のとおり、私どもといたしましても非常に重大な問題と考えまして、さっそくやはり実態調査にかかるべきであるということで、これも昨年の科学技術庁所管の特別研究促進調整費を受けまして、まず調査、分析方法の確立、これは御承知のように非常に分析する方法、測定する方法がむずかしいのでございますので、研究者によりましていろいろとばらつきがございます。そのためにこれをまず標準化するという作業にかかると同時に、実態調査に取りかかるようにいたしたのでございます。その結果、ことしの一月になりましてようやく水と食品関係につきましてのPCBの標準分析法が解明されまして、これに基づきまして全国統一した見方のもとに現在水あるいは食品などのPCBの汚染状況についての調査を続行しておるところでございます。それらの一部につきましては、すでに新聞紙上等にも報道されているところでございますが、あと一、二カ月の間にほぼ全体的な数字が報告されてくる、上がってくると、こういうような状況でございまして、御指摘の琵琶湖のことも含めまして、私どもとしては、現在、こういった汚染の状況の実態の究明ということにかかっておる段階でございます。
  322. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 局長の答弁はまあそういうことでよろしいと私は思うんですが、私は局長と同時に、当時経済企画庁の水質課長さんを呼びました。きょうは環境庁の水質保全局長さんですか、お見えになっていると思うんですが、当時私は、琵琶湖の汚染の問題について、やはり同じように質問をいたしました。これは、当時非常に琵琶湖に、京都の衛研の問題、いろいろ出ておりまして、これは非常に重要な問題である、とにかく琵琶湖の水を飲んで関西の人たちはみんな生活しておるわけなんです。そういう点から考えても、これは当然その原因を突き詰めてちゃんとすべきであるということを、ずいぶんいろいろな点から言いました。それで、それについて、環境庁の水質保全局長さんのほうでは一体どういうことをされたんですか、その原因は突きとめることができたんですか、ある程度。
  323. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 環境庁といたしましては、水質汚濁防止法の実施という責任があるわけでございまして、特に琵琶湖等の水の交換が非常にできない湖につきましての汚染につきましては、非常に関心を持ちましていろいろやっておるわけでございます。私どもは、現在PCBを除くほかの人体有害物質、それから生活環境汚染物質等につきまして、環境基準をつくり、排出規制をするという方法をとっておりますが、琵琶湖につきましては、すでに環境基準を昨年度末に確定するというようなこともやっております。PCBにつきましては、先ほどお話がございましたとおり、現在まで必ずしも統一標準化されました分析方法というものは確立されておらなかったのでございますので、体系的な調査は現在までいたしておりません。今後、私どもといたしましては、上水道用水並びに食品中のPCBを分析する方法が確立されましたので、それを利用いたしまして、完全ではございませんが、琵琶湖の水並びに底質、それから周辺土壌、その他琵琶湖以外の主要汚染地域につきましての環境汚染状況調査というものをやってまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  324. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私は、きょうは形式的な答弁をいただこうとは思いません。できるだけ具体的に、もっと積極的に答弁してもらいたいと思うんですがね。現実に、具体的に、私は例をあげて琵琶湖の問題も当時質問しました。当然私は、ことしになりましてから、琵琶湖の上流の日本コンデンサーの問題が出てまいりました。日本コンデンサーのため池から三万二千PPMなんというすごいPCBが出てきて、現実にあの池はたいへんなものです。結局最近のまた分析によりますと、琵琶湖の水全体が汚染されているという話もあるわけですね。そういう点からいきますと、もっと積極的に、本気になってこの問題に取り組まないといけないんじゃないか。要するに、厚生省にも私は申し上げたいんですがね、大阪府がいま真剣にこの問題に取り組んでいます、実際のところ、向こうの担当者というのは一生懸命ですよ。母乳から現実に、私はあとであらためて質問しようと思ったんですが、母乳からPCBが相当出てきた。九州や、いろいろなところと比較しても一けた違う。それは御存じのとおりだと思うんですよ。こういう点から考えても、もっともっとPCBの問題について本気に対策を講じ、具体的にその原因を究明して、そしてほんとうに地域住民が安心して水を飲めるような体制にすべきじゃないかと思うんですよ、私は。ただ単に一年たった現在でも、まだ同じように調査しますとか、そんなことを言うてるときじゃあらへんですよ。こういう点から考えますと、私はやはりもう少し真剣に、この問題について、厚生省並びに環境庁も、水質保全局長さんもほんとうに取り組んでもらいたいと思うんです。また通産省のほうも、こういうふうにして特にコンデンサー工場のこういうふうな問題というのは、もう松下をはじめいろんなところから出ているわけですね。だから、そういうおそれのある工場というのが幾つかあるわけです。それを現実にあの松下自身が自分のところで分析して出てきてあんなにすごいPCBが出てきているわけですね。だから、皆さん方が調査をしてぱしっと出てきたというのは一つもないじゃないですか。そういう点からいきますと、私はもっとこういうふうな問題についてそれぞれの関係局長さんは——ほんとうは私は大臣に一つずつ申し上げたかったんですけれども、取り組んでもらいたいと思うんですが、それぞれの局長さんどうですか。
  325. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) まあPCBの対策につきましては、いろいろ非常に対策が後手に回っているというおしかりを受けまして、私どももその点は反省をいたしておるわけでございます。そこで、私どもは、やはりPCB汚染対策につきましては、各省総力をあげまして総合的な対策を打ち出す必要があるということを考えまして、先般PCBの汚染防止の総合対策を推進するためにPCB汚染対策推進会議というものを環境庁を中心に各省庁寄り集まりまして設置いたしたわけでございます。その会議におきましては、PCBの汚染対策としましてまず環境汚染の未然防止対策、それから環境中のPCBの回収の処理の対策、それから三番目に人体の影響の対策、さらにはまたPCBにつきましてはなお調査研究を要することもございますので、PCBに関します調査研究をするというような四つの項目につきまして、これを早急に各省分担をきめまして足並みをそろえて対策に踏み出すということをきめまして、現在具体的な対策を具体的に持ち寄っておる。近くこの対策をきめまして、同時に歩調を合わせまして対策を進めるということをやっているわけでございます。何ぶん、PCBにつきましてはわからない点が非常に多かったのでございまして、後手に回りましたことをおわびいたしますが、せっかく分析の方法その他も一部確立してまいりましたので、私どもは早急に手を打ちたいというふうに考えておる次第であります。
  326. 浦田純一

    政府委員(浦田純一君) 厚生省関係といたしましては、食品あるいは水の問題につきまして、先ほどは具体的に数字はまだ申し上げませんでしたけれども、全国の、主として近畿地方の水の汚染の状況あるいは東京湾、伊勢湾あるいは大阪湾、瀬戸内海、全国の主要な海域におきまする魚介等の汚染の状況についてもある程度のデータを得ております。これは時間の関係もございまして、逐一ここで数字は申し上げませんが、ある程度は先生もすでに御案内のところだろうと思います。また、何と申しましても一度環境にばらまかれましたPCBが、どうしても最終的には食物連鎖を通じまして人体へ摂取されるということはある程度は避けられないことでございますので、これらにつきましては、食品衛生調査会のほうにPCBの特別部会を設けまして、いわゆる食物中のPCBの残留の許容度ということについて現在せっかく検討をお願いしているところでございます。できるだけ早い機会に、できれば六月一ぱいにもこれらについて、暫定的であるかもしれませんけれども、とりあえずの数値をきめていただくようにお願いしてございます。  それから母乳につきましては、これは児童家庭局長がおりますので、そちらのほうから答えさしていただきます。
  327. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) 先ほど先生御指摘のように、いままでに十に近い府県市におきまして母乳のPCB汚染に関する調査が行なわれまして、大阪府の公衆衛生研究所におきまして特に高い数値が検出され、京都の市の衛生研究所の数値がこれに続いておる。地域的にはかなり格差があるわけでございますが、特に御指摘のように、近畿地区におきまして汚染度が高いという実態が認められたわけでございます。私どもといたしましては、事が母乳でございますので、特に乳児の健康というのは重視しなければならないという立場で、直ちに児童福祉審議会の中の母子保健対策特別部会を中心といたしまして、これにPCBの専門家も加えた対策委員会をつくりまして、この対策について二回会議を開いて御審議をいただいたわけでございます。  なお、大阪府におきましても、先生いまお話がありましたように、府をあげての対策を進めておられまして、この十五例のおかあさんの母乳につきまして一カ月半の間隔を置きまして再調査を行なっております。その結果、一人の例につきましては、ほぼ横ばいの数値が出たわけでございますが一大体平均的に申しましてかなり数値が下がりまして、三分の一程度の汚染の程度にとどまっておるということと、それからその際に母子の精密な健康診断を行ないました結果、少なくとも現在までの段階におきましては、何ら健康上の異常が認められていない、そういうようなデータあるいは先ほど環境衛生局長からもちょっと触れましたように、カネミ油症のときと比べまして、微量の慢性中毒というような形の汚染でございますために、カネミのようなときに比べまして母乳による害というものが比較的考えられない。いろいろなデータを総合いたしまして、母乳というものの乳児に対する特殊な栄養効果、健康上の効果等も考えまして、現段階においては母乳栄養を中止する必要はないという一応の結論を得ております。ただこれは先ほどから先生何べんも御指摘がありましたように、今後の慢性毒性の問題はなお未解決の問題が多いわけでございます。また、乳児の健康ということは長い目で見ないと非常に心配な点もございます。で、私どもといたしましても、先日、地方の主管課長会議も招集いたしまして、今後の対策といたしましては、できるだけ広い範囲で母乳の追跡調査と申しますか、汚染調査を続行して行なうということと、それから乳児の健康診査の際、特にこのPCBの影響も考慮いたしましたチェックリストを作成いたしまして、これを各都道府県に配布いたしまして、そのチェックリストに基づいて一般検診を行ない、さらに多少とも異常の疑いがあるというような場合には、精密検査を行なうというような方法によりまして乳児の健康を守っていくというようなこと。それからこれには全省庁総合して行なうことですが、先ほどから申し上げておりますように、慢性毒性の機序であるとか、排せつ治療の方法、そういう点についても協力して調査研究を進めてまいりたい、そういうようないろいろな対策によりまして万全を期したいと考えております。
  328. 山形栄治

    政府委員(山形栄治君) PCBの大量消費工場の総点検の問題につきましては、これは早急にやらなきゃいかぬということで、現在通産省といたしましては、早ければ今月中、おそくも六月中にこの総点検に入りたい。各地方の通産局も全部動員いたしまして、六、七の二カ月くらいを使いまして徹底的な総点検をして、その調査結果の集計に入りたいと、こういう段階でございます。
  329. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 松下君ありますか。
  330. 松下友成

    説明員松下友成君) 水産庁といたしましては、厚生省関係機関によりまして検討されました統一分析方法によりまして、関係各省の組織的な調査研究の一環といたしまして、関係の府県水産試験所の協力を得まして、魚介藻類の汚染実態の把握、魚介藻類への蓄積事項等についての調査研究を実施中でございます。
  331. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私は、皆さんの話を聞いておりますと、特に母乳の話が出てまいりましたので、母乳の話をしますが、あなたは非常に一生懸命やっているように思いますけれども、実際はほんとうはだめなんですよ。あなたね、私は現実に大阪府の母乳——十五人、たった十五人ですけれども、十五人の人たちを検査したら、母乳から十五人ともPCBが出てきた。このことを新聞に公表するとき、地元の分析をした皆さん方や、またそういう担当の人たちがどれだけ悩んだか。母乳にPCBが入っているということをぱあっと発表すると、そうすると大阪じゅうのお母さん方は、自分の母乳を飲ましていいのやろうか、どうやろうかということで、相当問題になるわけですね。しかも、同時に、発表したデータには、母乳のかわりに飲ませるミルクにも入っているというのでしょう。こうなると、ほんとうに血の出るような思いをして、またそれが新聞に公表されると同時に、もう大阪じゅうのお母さん方から、飲ましていいのかという電話が相当かかってきた。これはたいへんなものだったと思うのですよ。きょうは厚生大臣おりません。次官お見えになっていただいておりますので、私は、きょう厚生大臣に相当言いたかったのですけれども、きょうは大臣のかわりに次官お見えになっていますから……。次官、これはほんとうに重要な問題だと思うのですよ。先ほどかち、厚生省としては関係課長会議を開いて全国で調査するようにしたとか、いろいろなことをおっしゃっておりますけれども、ところが実際には、私はこれから詰めますけれども、実際何もできないのですよ。なぜできないかといいますと、具体的に私いろいろ言います、これから。実際問題として、厚生省としてお金は全然出さないわけです。金は自分のところでもってみんなやれと言う。そういうようなことは地方自治体にしましてはたいへんですよ。しかも、先ほどから分析の方法が統一されたということを、一応標準分析表として確立されたというお話がございました。ところが、現実はどうですか。きょうは水産庁はあまり関係ありませんけれども、現実に各都道府県で、PCBを分析できる都道府県が幾つありますか。自分のところでPCBを完ぺきに分析できる装置を持った都道府県が幾つありますか。
  332. 浦田純一

    政府委員(浦田純一君) その分析に必要な機器につきましては、全国の衛生研究所にほぼ出そろっております。問題はそれを使う技術者のレベルの問題でございます。おっしゃるように、現在のところでは全国的に申しますと、この問題に実際に当たってデータを出しておりますのは、半分ちょっと上くらいでございますが、この統一分析方法は、すでに文書として、資料として各都道府県に配付されており、また、今後分析技術の向上について研修会と申しますか、そういったようなことでもって技術者の早急な水準の向上につとめてまいりたいと思っております。また、なお個々のデータにつきましては、必要に応じましていわゆるクロスチェックと申しますか、そのようなことでもって指導をしておるところでございます。
  333. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 あのね、そんなでたらめなことを言っちゃいけませんよ。私ちゃんと調べていますよ。児童家庭局長さんですか、先ほどPCBの母乳の調査を全国でやるように指示したわけでしょう。実際問題あなた、どことどこの都道府県で分析ができるのかわかっていますか。実際上いま約半分近く——機械は全部あるなんておっしゃいましたけれども、現実に回ってみなさいよ。分析できるところなんて勘定するくらいしかないじゃないですか。あとでね——まあいいや。あなた、手でやっているくらいでしょう、実際問題。ほんとうに現在日本にある都道府県の中で半分ないですよ。現実にたとえば大阪と福岡でさえ、福岡の衛研は、大阪の分析はおかしいと言っているんですよ。大阪の衛研は、福岡の衛研がおかしいと言っているんです。この母乳の問題について現実に言っているんですよ、担当者が。ということは、非常に進んでいる大阪と福岡でさえそういうような問題がある。そういうようなものをほんとうに、全国統一してほんとうに分析するような装置を設置し、そして技術者を養成するまで一体どのくらいかかるのか、どのくらいの費用がかかるのか、そういうことを何にもやらないで、ただPCBの調査をやりなさいとあなた言ったってどうしようもない、実際問題ね。私は、なぜこんなことを言うかというと、もう一年前に私が質問したときに、私は水産庁と厚生省にはさんざん言いましたよ。あなた聞いていたんでしょう。水産庁に向かって、立川助教授のボラやいろんな分析についてずいぶん言いました。分析装置の訓練にしたって何にしたって、もっと本格的に取り組んでもらわないといけないんですよ、これは。そうでないとどうしようもないです。大臣にもっと本格的に私は取り組んでもらいたいと思うんですが、どうですかな、これは。
  334. 登坂重次郎

    政府委員登坂重次郎君) 先生の貴重な御意見、昨年度来研究体制に入りまして、この実態把握に非常に苦慮していたのでありまするが、統一分析法なるものがせめてもできたという段階で、今後これをもっと正確に全国的にどういう状態にあるのかということは、ほんとうに早急にやらなければならぬわけでありまするから、もしそれが、全国の状態が早くわかるような、そういう予算措置は何らかの形で善処せねばならない、そういう方向で今後も善処いたします。
  335. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私は、どうもまだ、そのいま次官のおっしゃったことを全面的に信頼をしまして、ほんとにこの対策が進み、研究装置、分析装置等もちゃんとして進むのであろうと私は思いますけれども、まだ局長のほうは、どうも得心のいかぬような顔をしていますので、私は、あんた、それじゃ全国の都道府県に、PCBの分析装置はどういうような機械があって、全国の衛研にどういうふうな機械があって、それで技術者はどういうようになっているか、一ぺん調査して資料として私のところへ提出をしてください。よろしいですか。
  336. 浦田純一

    政府委員(浦田純一君) 調査いたしまして、後刻提出いたしたいと思います。
  337. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それから、きょう水産庁来ていただきましたので……。  この間のときは、私は、水産庁の次長さんに、たとえばこのPCBの問題等について質問いたしました。当時、研究部長さんもお見えになっておったかどうかわかりませんけれども、特に最近の魚ですね、こういうようなものについては非常に問題になっております。こういう問題について水産庁自身は——私は、当時、分析の問題について水産庁に対しては相当きびしく言いました。その点について水産庁としては、どういうぐあいに手を打って、どういうような分析のやり方、あるいは分析のその指導ですね、全国のいろんな水研でやるというような話、八つの水研ですか、やるというような話がありましたけれども、八つの水研についてはきちっとそういう点については行き届いているのかどうか、また、日本は海に囲まれて一ぱい魚がいるんですが、そこら辺の調査等についても真剣に取り組んでいるんですかどうですか伺いたい。
  338. 松下友成

    説明員松下友成君) 調査の体制でございますが、水産庁といたしましては、一般的な汚染水域といたしまして、東京湾、それから大阪湾、それから生産の工場周辺水域といたしまして、兵庫県の高砂市、それから三重県四日市の周辺水域、それから主要工場の周辺の、これはモデルの水域でございますが、といたしまして、山口県の徳山湾、それから琵琶湖の南部水域、またこれに加えまして、対象水域といたしまして霞ケ浦、それから一般の遠洋海域、こういった海域につきまして標本を採取いたしております。それにつきまして現在、鋭意分析中でございます。
  339. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 きょうの私の質問は、あと法案等について相当ありますけれども、大臣がおりませんので、この程度で終わりますけれども、いずれにしましても、こういうふうなPCBの問題が相当最近は重要な問題になってクローズ・アップしてまいりましたので、特に政務次官、大臣等とよく御相談して、ほんとうに本気になってこの問題に取り組んでいただきたいと思うんですが、決意のほどをお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  340. 登坂重次郎

    政府委員登坂重次郎君) PCBは人体に非常に有毒である、そういう重大な汚染物でありまするから、厚生省としては人命を守る、これが重大な使命でございますので、その使命を感じて、十分今後善処いたします。環境庁が所管庁でありまするけれども、私のほうはあくまで国民の衛生を、保健を守るという見地に立って善処することをお約束いたします。
  341. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 本案に対する本日の審査はこの程度にいたします。  暫時休憩いたします。    午後八時十六分休憩   〔休憩後開会に至らなかった〕