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国務大臣(
廣瀬正雄君) 今回、創設をお認めをいただかんといたしております郵便貯金の預金者貸し付け、軽便に、簡便に庶民金融と申しておりますわけでございますが、これにつきましては、たいへんな御賛辞を賜わりまして、まことに感謝にたえないところでございます。ところが、
国会で四回も御決議をいただきながら、今日のこうした
法律案を作成するにつきまして、たいへんな難渋、紆余曲折があったわけでございまして、第一に反対をいたしましたのは民間の銀行業者、こういう
方々がこういうような庶民金融制度を創設するということは、民業を圧迫するんだというようなことをおっしゃったのでございまして、私
どもは、さようには全く
考えていないわけでございまして、というのは、銀行業者は、庶民の五方、十万、二十万、三十万というような
生活資金の道は、従来ほとんど閉ざしておったわけでございまして、なかなか貸してくれない。借りにまいりますと、産業資金であれば貸すけれ
ども、
生活資金は貸さないとか、あるいは何か確実な担保を持ってこいとか、しからずんば有力な保証人を立てよというようなことで、全く貸してくれないということは、
先生方御承知の事実でありますわけでございます。
でございますから、私
どもといたしましては、そういうような民間の金融業者が貸すべくして貸さなかった、そのブランクを補う、充足させるという
意味でございますから、民間の銀行業者の圧迫には全然ならない。むしろ足らないところを郵便局のほうで、庶民金融という制度で補って差し上げるという
意味でございますので、民業圧迫なんということは、毛頭ないということを主張してまいったのでございますが、まあこういうことに覚せいいたしましたせいか、その後銀行業者も庶民金融ということに着眼いたしまして、そういうような新規の方途を講ずることになったようでございますが、私はそれだけでも非常に大きな効果があったということを喜んでおりますわけでございますが、しかしまあ、銀行業者がそういう制度を創設いたしましても、銀行は銀行でおやりになり、郵便局は郵便局でやりまして、そうして相ともに携えて補完し合って、そうして
国民の福祉を増進させるというようなことでいけばいいというように
考えておりますわけでございます。
それから大蔵省サイドで特に主張いたしましたのは、従来郵便貯金の制度は預かるだけが専門である、そういう
機関であり、そういう制度である。それに今度新規貸し付けという制度を創設するということは、これは郵便貯金制度の非常な変革であるということで、非常に強く抵抗してまいったわけでございますけれ
ども、私
どもといたしましては、なるほど従来は、そういうことであったわけでございますけれ
ども、いまや
国民福祉の増進というおりがらでございまして、そうして
国民が郵便貯金通帳
一つでそれだけの担保で、これを郵便局に持って行けば、即座に金を貸してくれるというような制度を開くということは、
国民のしあわせにきわめて有効であり、マッチしておるのじゃないかと、従来預入だけが専門であって、こういう時節に、その制度の変革を実施いたしまして、新しく貸し付けの方法を講じて、そういう制度をつくるということは、こういう際にこそ、きわめて必要じゃございませんかということを主張いたしてまいったわけでございます。
さらに、ただいま提案理由の説明にも申しましたように、郵便貯金は、そのままそっくり国の財投資金になりますわけでございまして、財投資金総額の三八%を郵便貯金で担当いたしておりますわけでございますが、この財投資金、非常に有力な財投資金のお金から貸し出しをやる、資金貸し付けをやるということになれば、財投資金に非常に大きな欠陥を生ずることになるのじゃないかというように申したわけでございますが、しかし、御承知のように、また、ただいま御説明申し上げましたように、庶民が
生活上不時の入費に、あるいは結婚でありますとか、あるいは病気の治療費でありますとか、あるいはお子さんの入学費でありますとかというような、思わざる入費が必要になってまいりまして、しからば郵便貯金にお金を預けているので、これを引き出そうといろことをいたしますわけでございますが、ところが、郵便貯金は定額貯金がその大宗でございますけれ
ども、これは利率の関係から申しまして、長く預けておけばおくほど有利でございます。途中で引き出しますと、長期預入いたしておるという、その利率の継続性というものが中断されるわけでございますから、これではいかにも郵便貯金の預入者に気の毒であるという見地から、郵便貯金を引き出すことをやめなさい、そのかわりに、別途立てかえをいたしましょう、貸し付けをいたしましょうというのが、庶民金融の本旨でありますわけでございまして、したがって、財投の立場から申しましても、こういう庶民金融の立てかえの貸し付けという制度がなければ、郵便貯金を引き出すべきところを、別にお貸し付けをするというわけでございますから、プラス・マイナス・ゼロということになりまして、財投にはいささかも関係しないということを主張してまったのでございます。これまた、大蔵省がただいまでは了承してくれておりますようでございます。
さらにまた、農協方面からも強い反対がございまして、これは農協で御承知のように、やっております信用
業務、お金の預入と貸し付け、この信用
業務に非常に大きな支障があるということで反対をされたのでございますけれ
ども、当時から私
どもよくわかっておりましたことは、農協のそうした役員の方が反対されておるけれ
ども、農民自体は、農協からも金が借りられ、また、他面、新しく郵便局からも金が借りられるということになれば、双方から金が借りられるということで、非常に便利が増進するということで、農民自体は、農協の信用
業務をやっておられる
方々とは違いまして、当初から非常に喜んでおったわけでございます。
しかし、今度、党のほうで農協との間を調整されまして、庶民金融の
法律案を作成することを、農林省あるいは農協方面で認めたにつきましては、この農協の貯金
業務に対しまして、保険制度を創設するという新しい道を開いてあげることになっておりますし、また、さらに、農協が従来取り扱わなかった国庫金の取り扱いでありますとか、あるいは為替
業務を始めるというようなことを約束をいたしておりますわけでございますが、むしろ、こういう点は、農協としては非常に
意味合いの大きなものであったかと
考えておるわけでありまして、私は農協のために喜んでおるわけでありますけれ
ども、しかし、こういう点は、実は、
特定局長方面にはかなり強い反発がございまして、そういうことまで譲ったかというようなおしかりを受けておるようなわけでございますけれ
ども、しかし、大きな庶民金融を成立させるについては、そうした譲歩もやむを得なかったかと私は思っておりますわけでございます。
こういうわけで、農協方面もかなり強い抵抗をいたしましたけれ
ども、現在では、十分
話し合いができまして、今日に至っておりますわけでございますが、実は、この問題につきましては、ただいま
先生おっしゃったように、各党党派を越えて、庶民金融の制度の創設は大賛成であるというような、たいへん強い御支持、御推進をいただいたことを非常に感謝いたしておるのでございまして、むしろ、私
どもから申しますと、野党の
方々が結束して、これを御支持くださったということが、事を今日に取り運ぶことができた、その大きな原動力になったということを私はよく存じあげておりますわけでございます。
まあそういう
意味から申しますと、今度の庶民金融の
法律案の推進につきましては、政府でなくて、
国会議員の与野党共同の提案というようなことがいいじゃないかということを私は与党の場におきまして、大いに主張してまいったのでございますけれ
ども、党としては、野党のそうした御共鳴、御賛同はよくわかっておるけれ
ども、庶民金融という従来百年の歴史を持っております郵便貯金制度の大変革である新しい貸し付けの制度を創設することで、内容がきわめて重大であるので、政府提案の形をとったほうがよかろうというようなことになったわけでございまして、この点はひとつ御了承を賜わりたいと思っておりますわけでございます。が、非常に長年の懸案、この懸案が事ここにまいりましたことは、全く皆さん方の御支援、御賛同のたまものでありますことを感謝申し上げておるわけでございまして、ぜひ今度の
国会中に成立させていただきたいという心からなる悲願を込めてお願いを申し上げる次第でございます。
ほんとうに、いまから
考えますと、二月の初めに、この構想を打ち出しまして以来、やっと今日になって、こういう状況にこぎつけ得たわけでございまして、その間、いろいろな経緯がありましたわけでございますけれ
ども、絶えず皆さま方の御協力に一るの
希望をつないで今日にまいりましたことが、ついに結実したということになったわけでございまして、ぜひとも参議院の段階におかれましても御賛同を賜わりますように、そうし成立さしていただきますように、切にお願いを申し上げまして
お答えといたしたいと思うわけでございます。