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参考人(前田義徳君) そういう御印象をお持ちになることは当然だと思います。この点につきましては予算を郵政
大臣に
提出する際にも私の
考え方は郵政
大臣に申し述べさしていただいておるわけですが、大体
放送法によれば、まあ先ほど
先生が御
指摘された約七百億の三倍まで借り入れ金があってもよろしいという
法律にはっきり条項があります。それから現在の
NHKの資産の
実績は一千二百億円に達していると思います。ですから、そういう
意味では
NHKの経営はおそらく企業の経営者が見たらこれほど堅実な経営はないんじゃないかと、私がそう自画自賛してはおかしいと思いますが、しかし聴視者との関係あるいは聴視料との関係、技術の進歩との関係でこれをどう仕切っていくかということが御
指摘のとおり将来の問題だと思います。それでたとえば、この減価償却費がふえてくる、あるいは建設費の使い方が一応変わったのは、簡単に言いますと、
昭和三十五年度の予算を
編成するにあたって当時の
政府の御要望及び郵政当局のお
考えをある
意味で採用したわけです。それは御
承知のとおり、所得倍増がスタートを切った時期ですから、それと同時に、
NHKは御
承知のように民放との関係で申しますと、
NHKは全部従来の機械を戦禍で失っております。したがって、民放は新しくできましたからほぼ基礎的機械というものは輸入品の一番新しいやつだったわけです。したがって、そういう
意味で、
NHKの施設を新しくするということは再建するということと同じことばになりますが、したがって、いろいろ関係当局にも御相談申し上げて、その年度の聴視料からも建設に使えというような
お話もあって、そして一挙に戦争でうちひしがれたいろいろな機極設備、局舎を簡単に言えば第一次五カ年計画と第二次五カ年計画等を通じて今日に引き上げてきた、で、このために建設費というものがかなりの額を持っているわけです。現在御
指摘のように、明年度予算で帳面づらで
考えられる借金の総額は五百億をこえるかもしれませんけれ
ども、しかし、その減価償却の基礎としてこの借金と相殺すべき分が実は内幸町というものがあるわけなんです。したがいまして、この見地から経営的に申し上げれば、まあやっぱり三百億台に減る可能性を持っているわけなんです。しかし、これは御
審議いただく四十七年度では処分いたしませんので、この
数字が出てくるのは四十八年度になるかと思っております。ただ、もう
一つ御
指摘の五カ年構想の最終年度、これは私の記憶を申し上げますので、多少の
数字の違いはあるかもしれませんが、その五カ年間の私
どもは聴視料
収入の総額を約六千四百億近いと
考えております。問題は、その中で、いわゆる従来方式による建設費がどれだけ事業を圧迫してくるかという問題であります。この点についても、私は予算
提出の際、郵政
大臣にも御説明申し上げましたが、聴視者と直結して、聴視者のために絶対必要な建設費は投ずべきであるという
考え方です。しかし、技術者は全部おそらく理想主義者だと思います。最高の進歩、それよりおくれた施設というものには非常な一種のコンプレックスを持っている。こういう点を是正しながら、その五カ年間の
収入に見合って、事業を圧迫しない建設費の実態はどうかということが、御
指摘のとおり今後の問題だと思います。しかし、これを処置することは、私としてはそうむずかしい問題ではない、と申しますのは、
昭和三十五年からスタートした局舎の建設あるいは機械の更新、あるいは同時にこれは準備期間が長くかかりましたが、近代化のための機械化、これが同時に進行してまいっておりますから、今後五カ年間の構想の中では、私は実は公約としては四十七年度、四十八年度は、値上げしないということを申しておりますが、現在の物価の騰勢であるとか、あるいはこれはことに健保と大きな関連を持ってまいりますが、そういうようなものが一定の歯どめがかりに可能であるとするならば、私としてはかなり長期にわたって、
NHKの経営が聴視者の負担を重くするおそれはないというような
考え方をひそかに持っております。しかし、少なくとも、今後経済
情勢がどうなるか、きのうのニュースで野村経済研究所の発表を見ますと、来年ぐらいからまた岩戸景気が出てくるだろう。しかし、その
前提は再び円を切り上げることだというようになっておりますが、この辺は政治問題で、私
どもには予想はつきません。しかし、私はこれは
日本ばかりでなく世界全体はプラス・マイナスという経済ないし財政でなくて、ボリューム全体が大きくなっていくという、そういう環境の中で、これは
NHKの前途に対してはまさに楽観しておるものであります。と申し上げますと、また御
批判をいただくかもしれませんが、少なくとも、第四次長期構想の中では耐え得るだけ耐えられる可能性があるということだけは申し上げたいと思います。しかし、それが何年までどうかということになりますと、私もいつもそれでおしかりを受けるのですが、神様でもありませんので、イエス・キリストのような宣言はできませんけれ
ども、
NHKの実態と、
日本経済のボリュームということを
考えますと、そして私
どもがいままでやってきたことを基礎として、今後切り捨てられるものは何かということを
考えますと、私はむしろ楽観主義者であるということを申し上げたいと思います。