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政府委員(中原晁君) ただいま先生御質問の労働力の流動化、これに基づく各
産業の雇用の実態等の問題でございますが、労働省におきましては、先般来労働力の流動化というのを、政策の一つの柱としまして各種の
施策を推進しているわけでありますが、このねらいといたしましては、過去におきまして
失業者が非常に多かったわけでございますが、最近におきましては、だんだんこのバランスが、
昭和四十年を過ぎるころから逆になってまいりまして、ドル・ショックの前までは労働力不足ということが言われておるわけでございますが、その実態を見ますると、必ずしも単純な労働力不足ではございません。たとえば各地域の状況を見ますると、中部におきましては三・二倍の求人がある。要するに人が少なくて仕事が多い。それから関東では二・一倍、近畿では一・九倍、こういうふうなところで見ますると、非常に求人難といいますか、労働力不足ということでございますが、一方九州は〇・五倍、北海道は〇・七倍、東北におきましては〇・九倍というように、ドル・ショックが始まる前の時期におきましても、地域的に見ますると非常なアンバランスがあるわけでございます。
それからさらに年齢的に見ましても、たとえば若い人は、今度ドル・ショックといわれておりますが、五倍くらいの求人がございまして、引っぱりだこでございますが、中高年齢層におきましては、かなりいろいろな問題がある。こういうふうな問題、さらには職種的に見ますと、やはり技能労働力、特に
建設関係の労働力が足りないというような問題がございまして、一方、比較的にホワイトカラー等はそうでもないということでございまして、労働省におきましては、特殊法人であります
雇用促進事業団と連携をとりまして、特にその中でも、地域間の問題につきましては、雇用
促進住宅を毎年一万戸つくる、あるいは各種の移転その他の職業転換
給付というものを出しまして、労働力不足と表向きにはいわれておりますが、そういう地域的なアンバランスがあるということを解消するために、労働力流動化の政策を続けてきたわけでございます。
それで、先ほど先生御指摘の化学工業、それから
金融・
保険業等においてはどうかというようなことでございますが、特に化学工業におきましては、たとえば安定所の新規求人数を見ますると、月間平均で四十三年度には七千八百三十一名、それから四十四年度には九千九百四十五名、四十五年度には八千九百名というふうに、比較的四十四年度をピークにしまして若干下がってきておりますが、ことしに入りましてからは、去年あたりからのドル・ショックの影響等もございまして、化学工業におきましては求人数はかなり対前年下がってきております。前年に比べまして三割ないし四割ぐらいずっと求人が下がってきておる。その反面、
失業保険をもらいにくる人等はふえております。生産指数の伸びも鈍化しておりますので、こういう観点からいいまして、化学工業につきましてはかなりそういう景気の影響というようなものがあらわれておるわけでございます。しかしながら、もう一つの、先生御指摘の
金融・
保険につきましては、これはもう雇用でいいますると四十三年度九二・三、四十四年度が九五・八、四十五年度には一〇〇、四十六年度は一〇三・六というふうに雇用も伸びております。安定所の求人のほうにつきましても、ドル・ショックの以降もこの方面は比較的順調に伸びておりまして、化学のほうでは最近、前の年の同じ月に比べまして三、四割落ちておると言いましたが、この
金融・
保険の
関係では、新規求人数が、このような時期でございますが、逆に二割ないし三割前の年よりも安定所に対する求人がふえているというような状況でございまして、
失業保険をもらいにくる人の数も、
金融・
保険の
関係ではおおむね前年と変わらないという状況でございます。
さらには零細、
下請企業等の中小企業の状況はどうかと、こういうことでございますが、このようないまのような景気の影響というものは、やはり常識的に見ますると、中小企業あるいは零細企業に影響が多いということは従来の例で当然でございますので、私どもとしましては、これに対処するために、たとえば特恵
関係の
法律でありますとか、あるいは国際
経済上の調整措置に関するための
法律というような措置で、特に中小企業を保護するとか、あるいはそれから出る離職者に対しては手厚い保護を加えるというような
法律をつくりまして対処しておるわけでございます。
〔
委員長退席、
理事嶋崎均君着席〕
しかしながら、いま数字に出ておりますところでは、このたびの不況におきましては、われわれの常識と若干違うのでございますが、むしろ大企業が、たとえば学卒の求人を取り消したり、人員整理等が多いというようなことでございまして、たとえば求人の状況等を規模別に見ますると、むしろ中小企業のほうは減っていない、場合によっては前の年よりふえている。これはいままで人が足りないであきらめていたのが、大企業がこのごろ採らないから、今度採ろうというちょっと変わった傾向も若干あるのであります。そういう傾向も出ております。したがいまして、もちろん中小企業が一番しわ寄せされるわけで、今後とも楽観を許さないわけでございますが、いままでの状況に関する限りは、今回は大企業が比較的整理等をやって、有名企業等で希望退職を募ったり、一時金をやったりしておるというような状況が多いわけでございます。
それから次に、農家の離職
関係でございますが、これにつきましては、先生先ほど御指摘のとおり、最近の農業の実態を見ますると、農家は減っておるわけでございますが、兼業農家、なかんずく農業以外の
収入が半分以上といわれるいわゆる第二種兼業、これがふえておるわけでございます。一昔前に比べますと、その比率が非常に逆転して、第二種兼業が非常に多くなっておるというようなことでございますが、私どもとしましては、農業から工業に移動する人に対しましては、特にいままでの就業経験等が、まあ畑あるいはたんぼを相手にして仕事をしていた方でございますので、工場等に入る場合には、職業
訓練でありますとか、それから各種の職業相談等もきめこまかく相談をいたしまして、これを都会のほうにお世話するというような
施策も中心にしてやっていたわけでありますが、やはりこういうような方は、やはり若干でも土地があれば地元に愛着があるというようなことでございますので、昨年の
国会で農村地域工業導入法というのを御
成立をお願いしまして、今後はむしろそういう中高年の方のおられる農村地区に工場を導入いたしまして、たとえば一年のうち若干の期日は畑、たんぼ等をいじりながら就業できるというようなこと、それからさらにいまの
国会で御
審議いただいております工業再配置法というようなことと相まちまして、これにつきましては、むしろ過密、過疎の問題もございますが、そういう土地あるいは人間と結びつけた形で、就業の機会をつくっていくというようなこともあわせまして今後は進める必要があろうかと存ずる次第でございます。