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1972-03-23 第68回国会 参議院 大蔵委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月二十三日(木曜日)    午前十時十七分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         前田佳都男君     理 事                 柴田  栄君                 嶋崎  均君                 戸田 菊雄君     委 員                 青木 一男君                 大竹平八郎君                 河本嘉久蔵君                 棚辺 四郎君                 津島 文治君                 西田 信一君                 桧垣徳太郎君                 竹田 四郎君                 成瀬 幡治君                 松井  誠君                 松永 忠二君                 鈴木 一弘君                 渡辺  武君                 野末 和彦君    国務大臣        大 蔵 大 臣  水田三喜男君    政府委員        大蔵政務次官   船田  譲君        大蔵大臣官房審        議官       中橋敬次郎君        大蔵省主計局次        長        長岡  實君        大蔵省主税局長  高木 文雄君        大蔵省関税局長  赤羽  桂君        大蔵省国際金融        局長       稲村 光一君        運輸省航空局監        理部長      住田 正二君    説明員        大蔵省国際金融        局投資第一課長  瀬川 治久君        国税庁直税部長  江口 健司君        通商産業省通商        局国際経済部長  林 信太郎君     —————————————   本日の会議に付した案件参考人出席要求に関する件 ○関税定率法等の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○航空機燃料税法案内閣提出衆議院送付) ○租税及び金融等に関する調査  (当面の財政及び金融等に関する件)     —————————————
  2. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  まず参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  航空機燃料税法案の審査のため、三月二十八日、参考人として日本航空株式会社社長朝田静夫君、横浜国立大学教授宇田川璋仁君及び東京大学名誉教授今野源八郎君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 次に、関税定率法等の一部を改正する法律案航空機燃料税法案並びに租税及び金融等に関する調査の、以上三案件を便宜一括して議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 大臣に、税制全般について質問してまいります。  第一点は、昨年の八月三日でありまするけれども税制調査会長期税制あり方答申いたしました。この答申は、私たち想定するに、今後三、四年間にわたる税制方向を示すのではないかというふうに理解しておるわけでありますが、そう理解してよろしゅうございますか。
  6. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 長期税制としての答申でございますので、そう理解してけっこうだと思います。
  7. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 この答申は、政府が昨年五月決定した新経済社会発展計画、これを大体下敷きにして作成をされておるのじゃないかというふうに理解をするわけなんですが、その理解でよろしゅうございますか。
  8. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 新経済社会発展計画が認識の前提になっていることは事実でございますが、ただこの答申が出ます当時、すでに国際経済社会における情勢がいろいろ動いておりましたので、答申の序説のところに書いてありますように、「最近の国際経済社会におけるわが国経済地位の急激な変化にもみられるように、この計画で予測されているものとかなり異なった面もあらわれてきている。今後、これらの情勢がさらに明確な展開を示し、わが国経済財政政策全体についてその見直しが行なわれ、新たな経済計画なり政策体系なりが樹立されることが予想されるが、その場合には、租税政策についてもこれらの情勢変化に即応しうるよう配意されなければならない。」というふうに書かれておりますが、そのように、近く変わることがあるだろうということもまた触れておるわけでございます。
  9. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 この答申中身を検討いたしますと、東畑会長は、いまの税制がかかえているいろんな問題を整理検討したもので、これからの税制改正のりっぱな教科書だと、こういうことを言われているんですね。また一方、大蔵省の幹部ですけれどもこの答申を見て、これはまさしく黎明だと、こういうようなことを言っているんですが、非常に答申内容はきわめて抽象的なんですね。慎重に検討するとか、今後十分検討するとか、こういった字が非常に字句として並列をされている。抽象的な気がするところがあるんですけれども、何か内容が、隠されたものがあるような気がするんですけれども、そういう理解については大臣はどういうふうにお考えになっていますか。
  10. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 長期税制あり方について方針をこれは答申したものでございますので、これは別にこの中には具体的なものはございませんし、また私どももこの方針に沿ってこれから具体的な検討をしなければならないと思っております。方針は、要するに、所得税はいまと同じ減税を行なっていって、課税の負担の累進を避けるようにというのが方針になっておりますし、法人税については、各国の法人税負担比較、その他から見て、いま程度水準を維持していくことがいいというのが方針として答申されておることでもございますし、それから間接税あり方については、地位の低下していることを回避して、充実につとめることがいいという方針を示していることでございますので、この線に沿ってこれから具体的の内容を私どもが検討すればいいんだろうと思います。その際、いま局長が言いましたように、新しい通貨調整後の経済計画というようなものを、経済見通しというようなものをいま企画庁の手でやっておりますので、これが、これに基づいたいろんな今後の社会発展計画というようなものが策定されますと、それと歩調を合わせて今後の財政あり方、したがって、それに対応する税のあり方というようなものもあわせて考える必要があろうと思いますので、今後策定されるいろんな経済計画とあわせて、税制調査会答申の線に沿った具体的な税制考えるということになろうと思いますが、一、二の問題は、いま私ども自身として検討しておりますが、別に税制調査会答申自身には特別隠されたというような問題は私はないというふうに思っております。
  11. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 主税局長回答されたんですが、情勢変化、確かに答申には新たな経済計画ないし政策体系なりが樹立された場合には、租税政策もこの変化に即応できるよう配慮すると、こういうような答申になっておるんであります。この点については実に配慮をなされておるんでありますが、したがって、新経済社会発展計画は本年から本格的に見直し作業をやるというようなことを大臣も言われておるようでありますが、それはそのように理解していいですか。新経済社会発展計画見直し作業をするということを言われておりますが、そのように理解してよろしゅうございますか。
  12. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いま見直し作業が始められておりますのでそのとおりに……。
  13. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 一番の税金関係で問題になるのは、今後の税負担率だろうと思うのですね。前の新経済社会発展計画によりますると、政府の言い方は高福祉、高負担、こういうことでいっておるわけでありますが、五十年度に二一%ないし二二%、こういう予想を立てておると思うのですね。四十六年度は一九・三%ですから、そうしますとおおむね二%程度上昇するという見通しを立てておる。税負担率がそれだけ増加をされるということだろうと思うのですが、そういう予想については見直し作業ではどういう状況になっているんですか。その辺の見解についてお伺いしたいと思います。
  14. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 新経済社会発展計画見直し作業はほんのごく最近に作業を始めたばかりでございますから、お尋ねのような点までは、現段階ではいっておらないわけでございます。いまのところ負担率については、作業ができますのは、最終的にまとまる直前になろうかと思いますので、現在の段階でお答えするのは困難でございます。
  15. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 これは租税負担割合は当然変動すると思うのですが、増加傾向、それが一つ。  もう一つは、四十七年度予算内容が出てきたわけですけれども政府が言う高福祉というのは、具体的にどういうものをさしているんですか。その中身についてひとつ説明してください。
  16. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 一般に言われておりますように、人間優先とか、社会福祉優先の時代というようなことが言われております。そこで、新経済社会発展計画においても、そういう角度での見直しが行なわれるということになろうかと思います。そこでいろいろな福祉政策が行なわれるという場合に、福祉政策の規模あるいはテンポをどういうふうに考えるか、そしてそれの所要財源をどのように求めるかということは、新しい見直し作業のときの一つの重要なポイントになろうかと思います。しかし、現在はまだほんの作業の入り口でございますので、負担率について具体的にどういうことになるかというところはお答えすることはむずかしいことでございます。
  17. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 もう一点、主税局長負担割合の今後の傾向です。それはどういうことなんですか、見直し作業では。
  18. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) それは現行税制のもとにおきまして、負担率がどのようになるかという点については、将来の税制改正なりと結びついて結果的に負担率が動いていくわけでございますから、いま負担率そのものがどのように動くかということは、明確に申し上げられないわけでございまして、いままでは、先ほどもおっしゃいますとおり一九%強という水準から若干漸次上がっていってもいいのではないか、急に上がってはいかぬが、漸次上がっていってもいいのではないか、こういう考え方であったわけでございますし、いまもその考え方は変わっておりませんが、新経済社会発展計画見直し作業が行なわれる場合に、その考え方をどのようにするか、特に負担率についてどう考えるかということは、これからの作業の問題であるということで、私としてもいまちょっとお答えしかねるわけでございます。
  19. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 その新経済社会発展計画を策定したときには二一%ないし二二%、いずれにしても増傾向を見ておったことは間違いないのですね。今後の経済情勢や、予算大型化と、いろんな各般の経済情勢を判断いたしますると、当然増傾向にいくことだけは間違いないと思うのですが、その幅は別問題ですが、大体そういうパターンをたどっていくのかどうか、その辺の見通しはどうですか。大まかでけっこうです。
  20. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 大筋の方向としてはそのようなものと考えております。
  21. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 大臣、大体いまの見解でよろしいんですか。
  22. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) この福祉政策へ転換するということになりますと、財政需要というものは非常に急増することが予想されますし、またいままでの国民負担あり方から見まして、私は福祉政策が推進されるという過程においては、国民負担がそれに伴って若干増大するという傾向はこれは避けられないことであり、そうでなければ福祉政策というものは実現できないものというふうに私は思っているわけです。いままでは私どもは、経済成長政策中心にきましたので、したがって、この税の自然増というのもありますし、したがって減税政策中心税制の運用をやってこれたのでございますが、今度はそうじゃなくて、成長政策から福祉政策への転換ということをいたしますというと、この歳入あり方ということもいままでとは違ってきますので、したがって、税制についてもいろんなそれに対応する変化が当然起こるものというふうに思っております。ただ、いま外国比較して日本負担が軽いと、一応数字の上では軽いことが出ておりますが、しかし、国民税負担が重いか軽いかということは、実質的な問題としては、やはり所得水準の問題があり、社会保障給付問題等もからんで判断しなければなりませんので、はたしてどれだけ西欧先進国に比べて日本が、特にいまの国民負担が低いかどうかということを断定することはむずかしいといたしましても、しかし、いずれにしても、国民負担先進国に比べて低いということははっきり言えようと思います。というのは、やはり福祉政策の推進が十分でなかったこととこれは対応することだと思っておりますので、今後そういう方針にいくなら、国民自身にこの問題は利益が直接享受される問題でありますから、こういう問題は、国民自身がやはり負担するという方向税制というものは確立しなければ、私は福祉国家建設なんと言っておっても、実際はできないことになると思いますので、そういう点で、将来の税制としては、そういう傾向は是認してかからなければ間違いであるというふうに思っております。
  23. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 ちょっと事務的な問題で若干質問したい。  現在四十七年度の所得税法人税、その他の直接税、間接税、この税収割合はどのようになっておりますか、四十七年度が未確定であれば四十六年度でけっこうです。
  24. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 四十六年度の予算補正後で申しまして、減税がありましたので若干動きました。また法人税は、減収を見込みました関係もありまして、その後若干動きまして、補正後で申し上げますと、四十六年度三九・二が所得税、三〇・九が法人税、三四・一が間接税その他でございます。現在御審議願っております四十七年度予算歳入見積もり額では、所得税が三六・〇%、法人税が二七・四%、間接税等が三三・九%でございます。
  25. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 四十六年度と四十七年度若干異同がありますけれども、そうたいした異同はないようであります。いずれにしても、いま発表になりましたように、おおむね直接税は二、間接税一と、こういう割合だと思いますが、この割合は間違いありませんか。
  26. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) そのとおりでございます。
  27. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 もう一点お伺いいたしますが、フランスの場合間接税はどのくらい、それから西ドイツ、それからイギリス
  28. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 諸外国の場合、あまり新しい数字がございませんが、フランスは四十五年で、直接税が三四・七、間接税等が六五・三。西ドイツが直接税が四七・九、間接税等が五二・一。イギリスが直接税が五五・三、間接税等が四四・七。いま申しましたのはいずれも四十五年度でございます。
  29. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 その負担割合から言っての比較対照、そう私は意味あるとは思いませんけれども、ただ一応の直間比率パターン、そういう比率については大体先進外国においては、大体間接税ウエートを置いている、こういう傾向は一応理解できると思うのですが、そこで、今後かりに、いま大臣主税局長が言われたように、どうしてもやはり今後のケースとしては増税傾向を踏まざるを得ない。いろいろな事情はあります、ありますけれども、どうしてもやっぱりどっちにそのウエートを置いてその増傾向を認めるのか、法人税にいくのか、所得税にいくのか、あるいは間接税でいくのか、考えられるところはそういうところであるわけですけれども、どの税金に向けて一体増傾向をとろうとしているのか、この辺の理解はどういうふうに考えますか。
  30. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) ただいまの御質問にお答えする前に一点だけ申し上げておきますが、いまのイギリス西ドイツフランスいずれも当のヨーロッパの国々は、間接税にかなりのウエートがあるわけですが、アメリカだけはタイプが違いまして、同じ四十五年度で直接税が八七・一、間接税等が一二・九になっていることを申し添えておきます。  そこで、ただいまの御質問の点でございますが、非常に日本の場合とヨーロッパの場合との特徴的な違いは、かりに十年ほど前をとりまして、三十六年をとってみましても、イギリスは直接税等が五四・六で、ただいま申しました四十五年度の五五・三とほとんど動きがございませんし、西ドイツが三十六年度が四九・一で、ただいま申しました四十五年度の四七・九と、これまたあまり動きがない。フランスも四十五年度は、三四・七と申しましたが、十年前は三七・一が直接税の割合で、これまたあまり顕著な動きがないわけでございます。それに比べて、日本の場合の非常に大きな特色は、先ほどの御質問にお答えいたしましたように、最近直接税と間接税が二対一の割合になっておりますが、十年前の三十六年には直接税が五五二で間接税が四四・九であったということで、十年間に日本の場合は直接税のウエートが一〇%ほど上がっておるという点が他の国と比べて非常に特徴的でございます。アメリカは非常に直接税型であり、ヨーロッパはいずれもどちらかといえば間接税型でございますが、直接税と間接税関係はこの十年間をとりましてもほとんど動いていないというのに対して、日本の場合は、直接税のウエートは十年間に一〇%ほど高まり、間接税のほうが下がっておるというところに一つの問題があるわけでございまして、そういう意味で問題がある。  そうしてなぜ間接税が下がったかといいますと、現在の間接税制内容が、いわば硬直的であるといいますか、経済変化にいわばついていけないような点がありまして、消費の態様が変わっていきますにもかかわらず、税制がそれに追いついていけないような点がありまして、間接税ウエートが下がってきたのだというふうに認識されております。  そこで、最近十年間で一〇%も下がったわけでありますが、少なくとも今後こういう傾向が続くというのはいかがなものであろうか、少なくとも間接税ウエート下げどまりが起こらねばならぬのではなかろうか、そういうふうな税制を組み立てなければならぬのではなかろうかということが、前回の税制調査会答申間接税に関する部分の一つの重要な骨子になっておるわけでありまして、その意味で、必ずしも直接税にウエートを置くか、間接税ウエートを置くかということを、そう明確に認識しているわけではありませんが、間接税がどんどん下がっていくのは非常に問題だということで、それがそうウエートが下がってきたということは、まあ間接的には、逆に申しますれば、先ほどの御質問に対して単刀直入にお答えをするとすれば、いままでよりも間接税によりウエートを置いてものを考えていくべきであるということにつながっていこうかと思います。
  31. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 過日大蔵省は、総理府広報室に依頼をして、いわゆる税金に関する世論調査をやりましたですね。この内容を見ますると——時間がかかりますから、私の資料で発表しますから、間違ったところがあれば指摘をしていただきたい。夫婦子供二人のサラリーマンは、年収百万円で二万二千円、二百万円で十九万八千円、五百万円が百二十八万三千円の所得税住民税がかかりますが、この税金は重いと思いますか、こういう世論調査なんです。それに対して、農林漁業者、こういった関係者は、いずれも適当である、こういう回答を出しておりますね。これが商工サービス業自由業者は、二百万円——税金は重い、五百万円——最も重い。サラリーマンは、三つとも税金が重い、こういう回答を出しております。したがって、サラリーマン重税感というものはこの中でもくみ取ることができるだろう、こういうふうに一つは感じた。   〔委員長退席理事柴田栄君着席〕  もう一つは、なぜ不公平だと思うのかという質問に対して、サラリーマン回答ですけれども、これは税金が重い——二六%、それから高額所得者の税が軽い——九%、大企業が優遇されている——九%、政治家が優遇されている——九%、医師が優遇されている——八%、脱税しやすい——八%、こういう結果をこの世論調査回答として実は出しておる。いずれにしても、あの世論調査を一貫して見ますると、非常にサラリマンは重税感をひしひしと感じておるということは、あの世論調査によってもわかるだろうと思いますが、こういうことになるとするならば、今後、主税局長が言ったように、どうしてもウエートは、所得税に置くわけにはいかないから、法人税もしくはその他の税金ということにならざるを得ないだろう、こういう見解を持つわけでありますけれども大蔵大臣はいかがお考えですか。
  32. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 先ほどの税制調査会答申にもありますように、所得税というようなものは、年々いま程度減税を常に行なっていくべきだということでございまして、これを将来増税に持っていくということはむずかしいし、またその余地は私はないものというふうに思います。そうしますというと、法人税にしましても、直接税というものを、今後これを増強するということはやはりむずかしいと、いま地位の低下になっておる間接税についてのくふうをこらすということが、まず一番最初取りかかっていい問題ではなかろうか、というふうに思います。
  33. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 大体その点では私の理解とほぼ一致すると思うのです。  そこで、法人税の問題ですが、もう一回質問したいのですけれども、四十四年に大蔵省自身がいまの法人税率を改正しようということでがんばったのだけれども、財界の猛烈な反撃でついに途中で挫折せざるを得なかったという苦い経験があるわけです。昨日、衆議院大蔵大臣は、同僚議員に答えて、物品税の総洗いをやる、こういうことを言われましたけれども、それはしかし、根底としては増税対策を踏まえながらということですから、ちょっと私はいただけないと思いますが、いずれにしてもそういう物品税の総洗い、あるいは間接税、こういうところが、残された増税傾向ウエートがそこにかかっているんじゃないか、こういうように考えるのですけれども、そういう理解になりましょうか。いかがですか。
  34. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 法人税は、御存じのように、四十五年度に、臨時の税制としてではございますが、一・七五%税率が上がったのでございまして、戦後一貫して法人税基本税率は下がる一方であったのに対して、一・七五%まあ十八年ぶりに上がったということでございます。で、その期限は二年で切りまして、この四月三十日に切れるわけでございますが、今年この国会で御審議を願っております租税特別措置法で、なおまた二年間延長をお願いするということになっているわけであります。  そこで、法人税負担水準の問題につきましては、先ほど大臣が答弁されました所得税の場合とはやや趣を異にいたしまして、今後ともどのような水準であるべきかということはいろいろ検討すべき点がまだ多いと思います。ただ問題は、法人税につきましては、本来法人税あり方と申しますか、まあきわめてわかりいいことばで、実在説でものを考えるか擬制説でものを考えるかという議論がありまして、法人税仕組みそのものについての議論が長年論議されながら、なかなか結論が出ないまま今日に至っておりますこととの関係もありまして、いつ、どの段階で、どういうような結論が導き出されるかということについて、いま直ちになかなか見通しを申し上げにくいのでございますが、そのような仕組みの問題との関連もございますけれども負担水準の問題はなお今後検討されてしかるべきことではないかと思うのでございまして、その意味で、所得税については確かに増税というようなことは、制度上の増税というようなことはとうてい考えられませんが、残る問題は、間接税だけだというふうな感じの御質問がございましたけれども、私は必ずしもそうではなくて、法人税にもなお問題があるということだけは申し添えておきたいと思います。
  35. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 まあ主税局長法人税を熱意を持って改正するという非常にありがたい、意欲めいた答弁ですが、それは賛成なんですが、結局私はいままでの大臣主税局長の話を聞いておりますと、結局欧米諸国との比較において非常に間接税ウエートが低い、そういうところに一つタイムフレームを置いて、どうしても間接税の引き上げという方向に走らざるを得ない、こういうふうに理解をするわけなんです。  それで一つは、大臣が政調会長のとき、EECに対して、付加価値税の導入について調査団長として行かれましたですね。そこで視察をして帰ってきて報告があるわけですけれども、この報告の中でこういうことを言われているのですね。国民生活充実のために所得税増税するのは適当でない、むしろ減税すべきである、このため国民の消費において応分の負担を求めるという付加価値税をわが国税制に取り入れるべきだという報告を出しているようですが、現在の心境もこの心境に変わりありませんか。
  36. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) やはり、どういう付加価値税ができようとも、そういう方向でいくことがやはりいいというあのときの報告については、いまも変わりございません。
  37. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 そうすると、まだ政府は導入するとも何とも決定しておらないようですけれども、しかし、税調でも一度検討しろという答申を出している。そこで、調査団長であって、現に大蔵大臣である水田大蔵大臣が、いまのような御回答なんですが、かりにこの付加価値導入をするとすれば、まあ仮説で申しわけないのですけれども、どういう一体方式を日本で採用すれば一番いいと思うのか。いまEEC段階でやられているのは三つの方式があると思うのですけれども、どの方式が日本としては大体いいだろうというふうに考えられますか。
  38. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは私だけの考えですが、いろんな方式がございましても、日本においてはまだ青色申告でさえなかなか中小企業にとっては記帳その他をやっかいがって、これらを全部税理士にみんな頼んでおるというような現状から見ますというと、欧州式の付加価値税というようなものを日本に導入しようとしても、これはもうなかなかむずかしい問題で、とても簡単にはできないことであると思いますので、欧州のいろんな方式よりも、日本において、日本のいまのこの現状から見て、最もやりやすいことを考えるより私はしかたがないだろうというふうに考えまして、そういう意味で、向こうも参考にはなりますが、やはり私ども独自のこのくふうをこらした消費税というような、一般消費税というようなものについて考えることが必要だということで、そういう点もいまあわせて検討中でございますし、なお、しかし、すでに先進国はそういういろんな困難な過程を通って今日のところまで、非常に完成された形の税になって今日にきておるんですから、この過程の勉強も、これは十分必要でございますし、そういう意味において、やはり専門家を日本に招聘して、われわれ事務当局が勉強する必要もあろうと考えまして、いまフランス大蔵大臣にそのこともお願いしてございますので、向こうからそういう専門家も来てくれることと思いますので、これについて本格的な取り組み方をこれからしようという段階でございますので、まだ具体的な方向というものは、全く現在のところまだ出ていないところでございます。
  39. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 まあ実態的なものについては、私も論理上の質問をしているわけですから、大臣、そのようなことで、ひとつ御回答いただきたいと思います。  結局いま大臣の話を要約いたしますると、日本的というような、実情に沿ったような案を検討して導入していきたい、こういう考え方。いましかし、EEC段階でやられておるのは、一つは前段階税額控除方式、これが大体EEC段階でやられているいまの付加価値税のあり方なんですが、まあそういう方式と、全段階取引高控除額方式、もう一つは加算方式と、こういう三つの段階があるんですが、これ以外に日本の場合、導入の場合に考えられるという御趣旨でしょうか。大臣のほうとしてその辺はどうですか。
  40. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 実は付加価値税の問題については、非常に長期的な問題といいますか、一つ方向の問題としてはいろいろ検討されておりますが、そのヨーロッパにありますいろいろの方式の中でどの方式が、まあいわば理想的なタイプとしてはよろしいだろうかということについては、税制調査会でもいろいろ議論をしていただきまして、税制調査会答申では、一応前段階控除方式というのがいいのではないだろうか、それは一つには、ヨーロッパの国にいろいろな形の付加価値税方式があったんだけれども、結局いろんなところでいろいろ議論した末で、EECで、そこで前段階控除方式で統一をしようということで議論が帰一したということ自体、その制度が一番いいということを意味するものでもあろうし、それから現に、いま見てみても、まあ幾つかの制度の中では一番合理的なように思われるということ交税制調査会では前段階控除方式ということが一つの目安ということになって、答申もそういう前提で仕組まれているわけでございます。ただ基本的に非常に問題は、ヨーロッパの場合にはいろいろな方式がございますにせよ、いずれにいたしましても、こういう取引に課税をするという方式が、どの国にも、いろいろ形は違いましたが、あったわけでありまして、まあいわばそれが育つ土壌があったわけでございます。ところが、わが国の場合にはそういう制度がいままでないわけでございますから、ヨーロッパのように長年の経験を経て、それをどうやって統一するかということを通じて到達した前段階控除方式のような方式というものは、ヨーロッパの場合には、それはなるほど幾つかの付加価値税方式の中で一番いいといった方式に達したといたしましても、日本のように素地がない場合に、はたしていきなりそういうものを考えることがいいかどうかというあたりは非常に問題でございまして、あくまで仮定のことという前置きで御質問でございますから、そういう前提でお答えをいたすわけでございますが、仮定の問題としてお答えいたすにいたしましても、いわば最後の行き着く先の税制というものと、入り口といいますか、どこから入っていくべきかという場合の税制とは違う場合があり得るわけでございまして、多段階方式がいいか単段階方式がいいのかというような点も含めて、もし付加価値税制度を導入するという場合には、どっちがよりとっつきやすいといいますか、なじみやすいといいますか、受け入れやすいといいますか、むしろでき上がった姿としてどっちが理想的かということよりか、どちらがなじみやすいかということを相当大きな要素として考えなければならぬわけでございまして、そういう意味での勉強はまだきわめて不十分でございますので、そこらを今後の検討課題の一つの重要な要素として勉強していかなければならないというのが現段階の状況でございます。
  41. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 大臣主税局長の答弁の内容には若干のニュアンスの違いがあると思うんですがね。具体的には、主税局長のほうでは、税調のほうでも検討の段階にある。でき得れば前段階控除方式でいきたい。フランスの方式ですね。フランスばかりじゃありませんが、その他六カ国でもやっておるわけでありますからそういう方式でいきたい。こういうことでありますが、もしかりにその前段階控除方式でいった場合、メーカーの売り値が一万円だと。それを中間マージン一カ所、卸売り業者と見て、そこでかりに二万円だということになれば、メーカーで千円の消費税を払うということになりますね。そうしてさらに卸売り業者でもって二万円で売れば、二千円の税金を上積みをして、上乗をして、そして二万二千円。そのうちメーカーが一千円を引いて、結局そこで一千円納めるということになる。それを小売り商におろしたときに、さらに小売り商では三万円でこの品物を売るということになりますると、三万三千円の価格ということになって、そして千円の税金をとる。この前段階方式でいくとそういうことになるかと思います。そういうことになるとするならば、結局メーカーや卸売り業者、あるいは小売り商に対しては、付加価値税が課せられても、何ら、一向に痛まないという状況になるのですね。全然痛まない。ですから勢い消費者というものにそれらの負担というものは全部を転嫁をされるという形になる。そういうことになりますと、勢い物価上昇を誘発する要因になってくるのじゃないか。現にオランダで導入した場合には、たいへんな物価上昇に見舞われた、そういう事態があるわけです。いまアメリカイギリスも付加価値税導入でもっていろいろ検討されているようでありますが、そういうところが一番各国で心配をされておる。その辺は、ことに日本の場合は、四十五年の統計でいっても七・三%の物価上昇率ですね。これほど上がっているわけです。ことにことしの見通しは五・三%で、とてもそれではおさまらないというのが一般人の見方です。こういう状況の中で、付加価値税を導入をしたということになると、私は相当物価にはね返ってくるのじゃないかというふうに考えるのですが、その辺は大臣一体どういうふうに理解をしていますか。また現地の実情は一体どのように把握をされておりますか。
  42. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) さっき私が青色申告云々という記帳の問題を出しましたことは、やはりそのことと関係がございまして、これは最終的に消費者が払う税金でございますので、中間のものは税を負担するのではない、いわば立てかえることになりますので、そうすると、よほど記帳がしっかりしないというと、この付加価値税制度というものはうまく運営ができないということになりますので、この記帳というものについての習慣がよほどよく積まれていないというと、なかなかむずかしい、いまの日本の現状から見て。そういう点でいろいろむずかしい問題があるだろう。それをもっと簡単にできる方法はないかということは、やはり日本の実情から見て、この日本の風土に合ったといいますか、そういうくふうをこらすべき問題の一つだろうというように考えております。  それといま言いましたように、これは最終的に消費者が負担する税でございますから、物価は当然たとえば三%、付加価値税が三%にきまるということになりますと、物価ははっきりと三%上がるというので、これは割り切らないとできない税制であるということで、欧州各国ともこれは割り切らなければいかぬ、途中の段階で吸収するとか、吸収させないということを考えたらできない。税金できれいに五%というときには、物価が五%上がるということを割り切って実施すべき制度である。これはどこの国でも見解は一致しておりまして、その場合、一番必要なのは、五%上がるというときに便乗の値上げが、はんぱをみな切り上げたり、いろいろな便乗値上げが行なわれるので、これは行政監督といいますか、指導といいますか、そこらに非常にむずかしい問題がある。ですから物価が一応落ち着いたときに実施することが一番いいので、物価上昇の速度の高いときに実施することは不適当だと、それでオランダが一つの例で、一時やめましたが、一応落ち着いたので、ごらんのとおり実施ということになったわけですが、物価が急速に上がっている間は、なかなか行政の手で押えきれない問題が起こるというので、やはり落ち着いたときに実施することがいいと、それはそのとおりであろうと思います。  で、そうしますというと、日本でも実施する、かりに将来実施するという場合ができたときには、やはり便乗の値上げということが、一番これは避くべき問題でございますので、そういう意味から私は、訓練の意味と言ってはおかしいのですが、関税の引き下げとか、円の切り上げということによって、日本の輸入品の物価が下がるというときに、これはやはりこの追跡調査を十分にやって、少しでも下がったものについては、やはりそれだけのものが国内物価にあらわれてくるような行政監督を強化して、この点についての訓練と言っては悪いですが、この慣習をいまつけることが将来のために私は必要だというふうにもいま考えているところでございます。
  43. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 大臣が明快な答弁をいたしましたように、確かに消費者負担なんですね。それはまあ割り切られた。  そこで問題なのは、やはり若干の所得税減税をやっても、片方からはこういうことで、消費者負担ということでがっぽり取られてしまうわけでありますから、ことに貧乏人と金持ちとの比較においては、これは消費財というものは、そう金持ちだから多く消費するということはないのでありますから、かりにたばこでも、ビールでも、酒でも、その消費というのは、おおむね一人分の消費というのは限度がきまっているわけでありますから、そういうことになりますと、どうしても貧乏人に対する課税というかっこうでいく。大衆重課というかっこうになる。もちろんその税率段階方式が設定されるでしょう。たとえばフランスあたりだって三二%標準税率です。生活用品の密度の高いものから、需要の高いものから、いわゆる税率をだんだん上げていくというようなことになるかもしれませんけれども、しかし、そういう税率の操作はやってみても、最終的に何%かは付加価値税が導入されることによって負担をしなければいけないわけですから、大衆重課というものは一貫しております。こういう状況にあるわけです。だからわれわれとしては、付加価値税導入はきわめて悪税であるということだし、かつて戦時中戦費調達の手段として各般の税金がやられたためしがあるわけですから、そういう歴史的経過からいっても、国民の感情としては容認できないというのが、私はいつわらざる心境だろうと思う。ですから、まああえていえば、産業構造上における、いわば税制の中立性というものも、これは阻害をすることになりますし、そういう意味合いにおいて、私は付加価値税導入等については十分な検討、われわれは反対でありますけれども、それをやって十分国会等で審議ができるような体制をこれから要望しておきたいと思うのです。  時間がだいぶかかりましたので、一応付加価値税に対する質問は終わりますけれども、四十八年度の所得税減税、これは減税方法をとりますか、減税方法をとるとすれば、一体課税最低限の引き上げでいくのか、税率の緩和でいくのか、あるいは課税単位の変更、こういうことでいくのか、その辺の内容について、第一点、ひとつ明らかにしていただきたい。  それからもう一つは、いまいわゆる雑損控除というのがありますね、所得税、給与者の。いわゆる確定申告を行なうもの、四項目ほどありますが、その三項目に、いわゆる雑損控除、医療控除、こういう適用を受けようとするものについては、次のような要領でこれだけ免除をいたしますということがあるわけですけれども、この雑損控除は一貫してそのまま据え置いて、大体十六万幾らですか、七千五百円ですから、控除額が。だからきわめて低い所得層であります。おそらくいまの生活保護対象以下のような人になるのじゃないかと思うんですけれども、こういった非常に不幸な人たちですね。こういった問題に対して、私は雑損控除の引き上げをやるべきじゃないか、あるいは医療費控除の引き上げをやるべきじゃないか。こういうふうに考えるんですけれども、これらの問題については、どう考えるか。以上の点についてひとつ大臣見解を聞きたい。
  44. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 先に、先ほどの問題について、もう一言お答えしておきたいと思いますが、逆進性の問題から悪税というようなお話でしたが、これも欧州で私どもが各国を歩いたときの話では、これも割り切る必要のあるものの一つ国民所得の水準が低いというときには、税のこういう問題の逆進性というものは言えるのですが、一定の国民所得の水準が確保されたという国においては、逆進性という問題と、この税の付加価値というものの比較において考えた場合、逆進性という問題は、これももう割り切らなければならぬ問題であるというのが一致した意見であるということと、それからもう一つは、重大な問題でございますが、いま、私どもは反対であるけれども政府はやるという場合には、十分慎重に国会でもみんなが理解できるような案をつくってくれということ、これはそうするよりほかしかたがないと思いますが、一番重要なのは、野党が反対する限りはこの税はむずかしいというのが、各国とも体験の上から、これほど反対しいい税制はない、逆進性だとかなんとか、増税だとかいって、選挙の前には、国民の前にもってこいの反対の題目になるのだが、それがある限りはそれはできないので、やるときには、この税がいかに必要だとかは、与野党が十分研究の上で踏み切ってできるものであって、そのための準備を各国とも二年や三年かかっているのだということまで言われておりましたので、私は反対だが、政府はやれというのでは、これはやれないと思いますので、私は政府の案がもう少し進んでさましたら、皆さんに十分理解を得てもらうことのほうが、先の仕事だと思っておりますから、その点もあらかじめひとつ御了解を得ておきたいと思います。  あとの問題は……。
  45. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 所得税につきましては、毎年減税が行なわれております。現在の所得税の構造から申しましても、また経済の最近におきます伸びが大きいということから、よって個人の所得の伸びが大きいということからも、毎年減税を行ないませんと、非常に負担が重くなるということがありますので、行なわれてきております。  そこで、四十八年度というお話でございましたが、四十八年度のことをいまから見通すことは非常にむずかしいといいますか、少し早過ぎるといいますか、私どもとしてはと申しますか、主税局といたしましては、所得税の本来のそういう構造にかんがみまして、どのような事情がありましても、ぜひとも所得税減税はお願いしなければならぬと思っておるわけでございます。ただ、その場合に、内容をどうするかということにつきましては、これはよほど慎重な検討を要しますし、それから控除を中心とするか、税率中心とするかというような問題につきましては、これはどの程度の規模の減税財政上、歳出歳入総体の上からいって許されるかということをにらみ合わした上でないと、なかなか結論が出ないわけでございますので、現段階ではちょっと何とも申し上げかねるわけでございます。  ただ、昨年の秋の国会のときに何度も御説明はいたしましたが、所得税仕組みは、控除と税率からなっているわけでございますので、全般としてあるバランスのとれた減税ということになれば、私はやや個人的になりますが、可能であれば税率と控除の組み合わせということが本来望ましいことであると思っておりますけれども、いま申しましたように、できるならば、これは財源といいますか、所要財源といいますか、どのくらいの規模の減税をするということの関連できまることと思っております。  それから、諸控除のことについてお触れになりましたのですが、質問の御趣旨がちょっとはっきりわかりませんのですが、雑損控除等につきましては、雑損控除のほうは、金額の頭打ち制度は現在ございませんで、ただ、いわば足切りといいますか、雑損の額が所得の十分の一をこえるときはと、つまり盗難とか災害とかいう雑損がありました場合に、控除が働きますが、その盗難なり災害なりという損失の額がきわめて微々たるものであるものまで一々引かないという趣旨で、所得の十分の一をこえる場合に限って控除するということになっておるわけでありまして、その額が非常に大きい場合に頭打ちにする規定は雑損控除のほうはないわけでございますので、この点は御指摘のように長年変わっておりませんが、いまのところあまり各方面から特にそういう強い非難は実は聞いていないわけでございます。もし足切りの十分の一というのを少し下げろという御指摘でありますならば、これはあるいは研究して見なければなりませんけれども、しかし、あまり少額の損失まで全部拾うということはいかがかという問題もありますし、後に申しますように、他の控除との関係もありますので、現在のところ私ども考え方は消極的といいますか、現行制度を変えるつもりはあまりないわけであります。  次に、医療費控除の問題につきましては、これはかなりやっかいな病気にかかって医療費が多額にかかった場合に、とても基礎控除、配偶者控除、扶養控除では引きされないから、そこで、医療費を特別に医療費控除ということで見ましょうということでありまして、簡単に言いますと、ちょっとかぜをひいてお薬を買ったとか、おなかをこわして薬を買ったとかいうこまかいものまで一々計算して引くというのでは、これはもう非常に煩瑣になるということで、やはり十万円または所得の百分の五をこえる場合に限って医療費控除を働かせる制度になっているわけでございます。もう一つは、ただ、またあまり入院費等がかかるのはお気の毒ではありますけれども、まあ社会保険制度等も発達していることでもありますから、ことばは悪いのですけれども、ぜいたくな入院治療というのも困るということで、総額を百万円で切っておる、こういう制度になっております。この制度はたしか四十五年度改正で金額を百万円まで上げた経緯であったと思っておりますが、御質問の御趣旨が、もし足切りのほうが低過ぎるということでありますとしますと、これまた一応研究してみますけれども、しかしあまり少ない額の負担、これを全部一々引くというようなことになりますと、ほかにもいろいろの諸控除の創設の御要求もあることでもありますし、そういう問題との関連上問題があるのではないかと思います。なおしかし、ずいぶん先の、十分時間的余裕のあることでございますから今後とも検討はいたします。
  46. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 ぼくは雑損控除については、火災、盗難、そういう被害をこうむった場合に、現行制度でいけば一〇%控除ということになっておる、率で。だが物価変動その他によってだいぶ経済情勢が変わってきて、過去そう引き上げになったということがないものですから、そのまま据え置きですね、制度上としては。だからそういうものについて、かりに百万円取る者が十五万円の被害にあったといえば、これは五万円しか実質的には控除にならないということですから、うちが焼けたり、盗難を受けたり、そういうことになれば相当な苦しい状況になるわけですから、その一〇%の控除率をもう少し上げるわけにはいかないか。医療控除については上限が三十万円となっておる。しかし控除率は五%ですね。最近公害とか交通事故とか、そういうものが非常に多くなってきている。医療費というものは御存じのように相当払っておるわけでしょう。そういう状態まで押し込まれておるから、こういう問題について上限をもう少し上げることができないのか。率は五%だから、これももう少し上げることはできないか。入院すればいろんな看護その他あるわけですからたいへんな経費がかかる。おそらく交通事故で入院したような場合たいへんな被害になる。もちろん一定の手当てを受ければそれは差っ引くことになっているわけですけれども、そういう意味合いで雑損控除というものがもう少し検討されないか。まあ主税局長回答では前向きで検討すると、こういうことですから、それはそれでけっこうですが、大蔵大臣の心境はどうですか。本問題。
  47. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) まあやはり検討事項であると思います。
  48. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 関税定率について、時間もありませんから具体的な問題で聞いていきたいと思うのですが、いまわが国の関税率の税目数、これから見た状況はどうなってましょうか。たとえば従価税、従量税、混合関税、大体これはどういう状況になっていましょうか。
  49. 赤羽桂

    政府委員(赤羽桂君) 税目数についてお尋ねでございますが、関税定率法上の税目数は非常に観念がいろいろございまして、その場合場合によりましていろいろ数字、品目数幾らというぐあいに簡単に申し上げられないわけでございまして、そのベースがいろいろ違うわけでございます。そのところをまず御説明申し上げたいと存じます。  まず、われわれが普通関税定率表に載っておりますところの品目数幾らあるか、かように申し上げますと、一番下の数の低い観念から申し上げますと、いわゆるBTN条約に基づきますところの品目分類数、けた数四けた、こう言っておりますところの分類に従いまして数えてまいりますと、これが千九十六あるわけでございます。これが一応普通にいわれておりますところの基本的な税目数かと存じます。   〔理事柴田栄君退席、委員長着席〕  その次に、四けたの下にさらにこまかい番号が打ってございますが、これが二千三百十四、これはいわゆる税番ベースと申しますか、それによって数えますと二千三百十四、それからさらに細分がございまして番号が振ってございますが、中に番号を振らないで、いわゆる背番号がございませんで、違った物品が並んでおって税率が違う、これのベースで申し上げますと、これが約二千九百十九という数字に相なっておるわけでございます。  そこでいろいろと申し上げております中で、たとえば、ことしの関税定率法等の改正について申し上げますと、今回自由化をいたす六品目、この六品目はいま申し上げました品目数とはまた別の、いわゆるきわめて常識的な観念でございまして、まあいわば法律的な根拠のないもの、PR用の常識的なものでございます。さようなことに相なっておるわけでございますが、従価、従量の数は幾らと、かような御質疑がただいまございましたけれども、従価、従量の数を、ただいま二番目に申し上げました税番の二千三百十四、このベースで従価、従量の数を申し上げますと、従価が千八百八十三品目、それから従量が八十七品目と、かような数字に相なります。
  50. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 私は時間ですから、あと竹田君のほうに譲りますが、関税定率についてはあしたまた質問を続行してまいりたいと思います。  以上で私の質問を終わります。
  51. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 先にちょっと、この問お願いをした資料、関税の引き下げによって想定される物価面への影響の試算という資料をきょう出していただいたわけですが、先ほども大蔵大臣は、円の切り上げによる輸入物品の消費者物価への影響、あるいは関税を下げてそれで消費者物価が下がっていく、そういうようなことがなければ、大蔵大臣お目当ての付加価値税もなかなかできない、こういうさっきお話がありまして、まことにそういう考え方は、私消費者物価を引き下げていくということについてはたいへんりっぱだというふうな発言をしたわけでありますが、出していただいたこの資料について若干説明していただきたいと思うのですが、何といいますか、あまり加工をしない、たとえばウイスキーとか大型乗用車とか、あるいは時計だとか、こういうほとんど加工のないものについては小売り物価がどのくらい下がるかということが書いてあるわけですが、バルクもの、あるいは加工するもの、こういうものについては一体小売り価格というものは全然あげられていないわけです。これはどういうことなのか。要するに、大蔵大臣の心配している途中で吸収されてしまうということをこれは示しているのか、一体どうなのか。その辺は、前書きのところに幾らか述べておりますけれども、その辺がよくわからない。結局、七十三品目の生活関連物資の引き下げということが述べられているわけでありますが、どうもそういうものが消費者にとってあまり理解できない。ここへ出されましたおもなる品目でも、輸入時計とか、大型乗用車なんというのはあまり大衆に縁のないものなわけですが、大豆だとか、あるいはタマネギだとか、紅茶とか——紅茶はティーバッグのものについては書いてありますが、そのほかのものについては書いてない。これは一体どういうことなんですか。その辺は吸収されちゃうという意味なんですか、それとも、どういう意味ですか、少し御説明いただきたいと思います。
  52. 赤羽桂

    政府委員(赤羽桂君) お出しいたしました物価の資料でございますが、小売り価格のところに棒を引いてあるのが、おっしゃるとおりあるわけであります。これらにつきましては、実はこの小売り価格の点、これはいろいろな実は規格がございまして、それから大豆と申しましても、これはたまたま大豆油と大豆かすの卸売り価格について書いてありますが、御案内のとおり、大豆はいろいろ多目的に用いられているわけでありまして、それで一々小売り価格のところまで追求をして、この小売りはどのくらい下がるだろうという計算が、ちょっと短時間の間にできませんものですから、それでつかまえることができなかったものでございますから、とりあえず、これは卸売り価格の段階までわかったところで書いてございますが、一面、まさに御指摘がございましたとおり、はっきりと小売りまでストレートにわかるようなものがもちろんあるわけであります。わかる製品のようなものもあるわけでございます。かようなものは、つかまえられたものはここに書いてお出しをしたと、こういうことでございます。
  53. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 趣旨はわかるんですが、これはやっぱり出していただかないと、一体何のための関税の引き下げだったのかということが、せっかく大蔵省の資料には生活関連物資の引き下げということが書いてあるにもかかわらず、消費者にはその影響がない。途中で吸収される可能性が非常に強い。これは大蔵大臣のさっきの趣旨からいっても、私はたいへんよくないことだと思っております。これにプラス、今日では円の切り上げによるところの価格の低落というものが、これに輸入価格の低落ですね、この問題があるというふうに考えてみますと、ほんとうは小売り段階においてかなりの価格の低落というものがないと、私は消費者として、せっかく大蔵省考えた関税引き下げというものがあまり効果的に国民大衆にわからないのじゃないか、こういうふうに思うのですが、むしろ、もう少し下げるものは下げて、たとえば紅茶なんかのバラものについては無税にするとかというような形で、もっと大衆に関税を引き下げた効果が具体的にあらわれるというようなところまではっきりさせないといけないのじゃないかと思うのです。そうした面では、いま、関税率を引き下げた効果というものが一番あらわれやすい時期だというふうに私は思うのです。これは片方で円の切り上げがないという場合には、もうこれだけですけれども、円の切り上げという事態があったわけでありますから、関税率の引き下げプラス円の切り上げ率というものが加わるわけでありますから、実際上は二倍にも三倍にも大きく消費者物価の引き下げに関連してこなきゃいかぬと思うのですが、この辺はどうなんですか。
  54. 赤羽桂

    政府委員(赤羽桂君) 全く御指摘のとおりでございます。実は、関税引き下げと物価の関係、これはいろいろ商品によりまして——いま、その関税を引き下げても物価がなかなか下がらない、こういう面ばかりが非常に強調されております。また、事実、そういう印象を与えることは事実でございますし、下がらないどころか、中には上がるというようなお話も、前回の答弁で申し上げているわけでございますけれども、何と申しますか、関税について敏感なる商品につきましては、たとえば、今回の関税率の引き下げが、これこれこういうところでやるというようなことが発表されて、すぐにそれじゃ下げるように、たとえばフィルムなんかはそうでございますけれども、この法案が案としてでき上がりました段階、三月の初めごろでございましたけれども、フィルムの引き下げを行なうというあたりは直ちに発表をしておる。それから昨年、同じようにやはりフィルムなどは、その法案を出した段階でその引き下げを発表しておる。それから自動車なんかも若干それに似た傾向があるわけでございますが、そういった代表的な例はほかにもございますが、これを下げても、なかなか末端の消費者価格に影響がないというものも御指摘のとおりあるわけでございます。われわれといたしましては、かような点につきまして、もちろん、これは関税が物価構成のすべてではございませんのですけれども、それが少なくとも契機になって下がるという面も多大にあるということを期待をいたしておるわけで、現実にもそういう例があるわけでございますが、全般といたしまして、物価全般の問題は、やはりこういつたものが下げられるということを契機といたしまして、さらに、それがいかに小売り価格まで浸透するか、あるいは浸透させなければならないかということにつきまして、政府全体としてこれは強力に留意し、努力をしなきゃいかぬかと存じます。去る三月三日の物価関係閣僚会議のあれも、輸入品の物価を中心にして追跡調査をいたし、その結果を末端行政に反映をするというようなことがうたわれたわけでございます。その線に沿ってわれわれといたしましても応分の努力をいたしたいと存ずる次第でございます。
  55. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 大蔵大臣に伺いますけれども、世評でありますけれども、とにかく円の切り上げが一六%あった。それで今度は関税率も引き下げる、こういうことがあるにもかかわらず——幾らか、一つや二つはありますわな、しかし、全体的に生活関連物資が下がっていくという、下げさしていくということは、私は同時に政府の責任でもあると思うんですよ。それが途中で吸収をされてしまったのでは、これは一般大衆としちゃもうまことに迷惑なことで、片っ方では景気の不況で、片っ方ではそれによって幾らかでも影響があるかと思えば、それがないということじゃ、これは困るので、もう少し末端まで円の切り上げと、関税率の引き下げが影響されるように、何か施策をとってもらわなければ困ると思うのですが、その点、大蔵大臣政府の一員としてどんなふうにお考えですか。
  56. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 生活関連物資で、まず六十品目を選んで、これを徹底的に追跡調査をするということにして、それによって、この追跡調査をいたしませば、大体の物価の浸透のしかたがわかりますので、末端の行政指導のこれは資料になりますので、それによって政府の行政指導の徹底に強化しようというような、そのために、まず、品目を六十品目選んでいるわけでございますが、これをほんとうに追跡調査するというと、この円の切り上げの効果と、関税引き下げの効果が、流通過程でどういう形で変化していくかという実態がつかめると思います。それによって十分の対策を立てたいと思いますが、私はさっき申しましたように、たとえば、政府が食管で買う小麦が安くなる。これを安くなった分だけ払い下げ価格で安くする。これは政府が取り扱う物資ですから、かりにそうしますというと、これが末端にきてパンになる場合にどれだけの影響があるかといいますと、たとえば一斤六十五銭とかなんとかということになると、非常に中途はんぱなものであって、それだけのはんぱな値下げなんというものが、実際的にはこれはなかなか小売り業者としても扱いにくいだろうというようないろんな問題が出たという場合には、やはり場合によったら、キャラメルや何かの中にいろいろなクーポンとか何か入っておりますが、もうはんぱなものでもいいからそれらを入れて、これが幾つか集まったらほかのものとかえられるようにするとか、とにかく何かそこへやっぱり国民の目に見える措置というものをやっぱりするというところまで私はいってみたいという意欲だけ持っておるんですが、うやむやにそういうことは一番困ることだろうと私は考えております。
  57. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 いまの大蔵大臣のアイデアそのものが実際できるかどうか、これはいろいろ疑問がありますけれども、しかし私そういうような姿勢で臨んでいただくということはたいへんいいことだと、こういうふうに思います。その点はひとつ、いろいろなやり方があろうと思いますけれども、この前は、学童用の給食パンに、小麦の価格の引き下げをそこにひとつ集中しようということも私は一つのやり方だと思うんで、非常にけっこうな、そういう考え方で今後進んでいただきたい、このように思うわけです。  それから、関税の問題に入りたいと思うんですけれども、たしか来月の中旬からチリでUNCTADの第三回の総会が開かれるだろうと思うんですけれども、それに対して一体今度は中国が参加するかしないか、その辺はいかがでございますか。
  58. 赤羽桂

    政府委員(赤羽桂君) 中国は参加する予定でございます。
  59. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 この会議はかなりあちらこちらで注目されておりますし、特に南北の問題、あるいは日本と開発途上国の諸問題というものがかなり今度は出てくるのじゃないかというふうに予測をされているようでありますが、この会議に臨む日本政府の態度というようなものは一体どういう態度でございますか。
  60. 赤羽桂

    政府委員(赤羽桂君) UNCTADの総会が来月、四月の中旬から約四十日にわたりまして行なわれる予定になっております。今回のUNCTADの総会は、ただいま御指摘ございましたように、中国の初参加というような政治的にも非常に大きなことがございます。それからさらに昨年すべり出しましたいわゆる特恵問題のレビューというようなこともございまして、いままでのUNCTADの総会の中ではきわめて重大な会議かと存じます。  そこでこのUNCTADの総会に、いかなる議題が出されておりますかを一応御紹介を申し上げたいと存ずるわけでございます。  まず、ただいま申し上げました、現行特恵制度のレビュー。それから後進国援助問題。それから非関税障壁の問題。それからいわゆる通貸調整への後進国の参加の問題。それから最後に、UNCTADそれ自体の機構と申しますか——いまUNCTADというものの性格は、何と申しますか、これは勧告機関、会議機関と申しまして、強制権といったようなものがないわけでございます。そういった、何と申しますか、UNCTAD自体の機構をもう少し強化をするというような種々の問題が予定をされているわけでございます。  これ全般に対しまして日本政府としていかに臨むかという点につきましては、これは外務省を中心にいたしまして、ただいまいろいろと案を作成中でございますので、そちらのほうから御説明いただいたほうがよいかと思いますが、私らの窓口から申し上げまして特恵の問題があるわけでございますので、その点についての考え方をひとつ申し上げたいと思います。  特恵は、御存じのとおり昨年すべり出したばかりでございます。日本についてみましても、日本は特に昨年は早期に実施をいたすということで、昨年八月一日からすべり出しているわけでございますけれども、それが約半年くらいの期間を経過いたしまして、それの実施状況でございますとか、あるいはそれの国内産業に対する影響はまだはっきりとつかめない状態ではございますが、特恵を実施するに際しましていろいろと議論が行なわれました。たとえば、日本のスキームに対する批判、そういったものに対しまして私らといたしましては、特恵実施後の、完全ではございませんが、ある程度の結果に基づきまして、特恵制度の本質、つまりこれら先進国が何らの代償なく、いわゆる後進国に対しまして特恵という関税上の制度を通じて、後進国の工業化、経済成長をはかる、そういうことによって世界貿易全体の拡大をはかる。かような理念をよく踏まえまして、現在日本の行なっておりますところの特恵制度のスキームについてのレビューには、積極的前向きの姿勢で参加をいたす。それからさらにUNCTADの総会の前になるかと存じますけれども、現行の日本の特恵のスキームに関しましても若干の手直しをする。地域もしくは国の追加、あるいはこのスキームそれ自体にも管理方式の改善等をはかってまいりたいと存じております。
  61. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 大蔵大臣にお伺いをしたいと思いますけれども、開発途上国、九十五、六国になるという話でありますが、そういう国に対する援助、あるいは貿易、関税こういうものについては、現在のGNPが自由世界で第二位になっていて、しかもドルの外貨が百六十五億ドルもある、こういう現在の日本の立場から基本的にどういう態度で臨むべきか。ひとつ大蔵大臣からお伺いをいたしたいと思います。
  62. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 基本的には、いま局長が言いましたように、積極的に前向きの態度でこの会議に臨むというお話でございますが、問題は、今度のUNCTADにおきましては、海外援助の問題につきましても、量質両面の問題、いろいろの問題で、相当低開発国側からの要望にきついものがあろうと思いますし、その場合に、やはり特恵供与国同士の負担の公平ということも考え、また国内産業との関係ということも考えて善処しなければならぬことでございますので、まだ会議に臨むについては、外務、通産、大蔵、これは相当緊密な打ち合わせをし、十分方針を検討して臨まなければならぬと考えておりますが、国会その他でなかなか時間がございませんので、少しおくれておりますが、四月十日にはこちらで代表を出しますので、それまでにそういう問題に対する方針だけははっきりと私どもはきめたいと思います。その方針は、むろん後進国援助というようなものについて、やはり国際貿易拡大ということと、南北問題の解決ということを中心として、これはわれわれは積極的に考えて臨むつもりでおりますが、なかなか具体的な政府方針をきめるということには相当むずかしい問題があるだろうと私は考えております。
  63. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 いろいろな新聞報道から見まして、今度の場合かなり日本が後進国からやり玉に上がるのじゃないかということが言われておりますし、特に中国の参加ということが、今度のUNCTADの会合で、中国がどういう態度を一体日本に示すか、これはかなり注目されることであろうと思います。で、中国のほうといたしましても、とにかく去年あたりの生産というものは、文革以前の生産にほぼ戻っていると、こういう状態の中では、おそらく中国と日本との今後の貿易の問題、こうした問題もかなり問題が出てくるでありましょうし、特に中国が、われわれは大国主義の立場には立たないということを再三再四繰り返しているということを見ますと、特に日本に対する風当たりが強くなってくるという可能性というものは非常にあるんじゃないか。そういう立場を考えてみますと、今日の日本が、まあここは大蔵委員会でありますから、外務の関係は別といたしましても、やはりUNCTADに対する日本の態度というものは、かなりはっきりしたものを持っていかないといけないんじゃないか、こういうふうに思うわけですけれども、関税局長にお伺いしますけれども、さっきかなり特恵のスキームを改正をして臨んでいこうというようなお考えのようでありますが、具体的にはどういう——管理のしかたを変えるのだというようなお話もありましたけれども、具体的にはどういうところを、どういうふうに変えていくおつもりですか。
  64. 赤羽桂

    政府委員(赤羽桂君) しかたを変えると、根本的に変えるという意味ではございませんのですが、たとえば、いま特恵品目について鉱工業製品につきましてシーリングという方式、スキームをとっておるわけでありまして、一定のワク以上輸入が行なわれますと、特恵関税率の適用は停止される仕組みに相なっておるわけであります。  ところで、はなはだ技術的、事務的なことにわたるわけですが、この管理方式は、いまいわゆる日別管理方式と月別管理方式というものをとっております。センシチブの商品については、日別——毎日毎日にらんでみて、ワクがいっぱいになったという場合には、いっぱいになったということがわかった日の次の次の日から特恵を停止する。月の場合では、その日の属する月にわかった場合には、その月の次の次の月から特恵を停止する、かような管理方式をとっておるわけでございます。これはどこが違うかと申しますと、いわゆる日別の場合と月別の場合と比較しますと、日別の場合は、その間に一日だけ猶予期間と申しますか、問があくわけであります。その間に入ってきた品物につきましては、これは当然ワクを突破をする。これはこの方式を設定いたしますときから、これは十分意識して、何と申しますか、もちろんワクは厳密に守らなければいかぬわけですが、その点はある程度クッションと申しますか、猶予と申しますか、そういった意識で一日の猶予期間がある。月別の場合は、それが一カ月となる。一日と一カ月の問ではかなりこれは、つまりワク以上に入る量が違うわけでございまして、日別を月別の管理に移すということは、つまりそのワクの関係から申し上げますと、ややそこがゆるまる、こういうようなかっこうになるわけです。私の申しましたスキームの改正と申しますのは、根本的なスキームの改正は、これは特恵が実施をいたされます前のUNCTADの会議におきまして、これは三年ごとにレビューするということに相なっておりまして、それを受けまして、政府経済関係閣僚協議会の決定といたしましても、三年ごとにレビューいたす、こういうようなことになっておるわけでございます。私どもの申しましたのは、そういった根本的な改革というものは、まだ半年に満たないわけでございまして、それには触れませんが、何といいますか、さような微調整と申しますか、さようなことをやってまいりたいと、かように考えているわけです。
  65. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そういうことはすぐにでもできることだろうと思うのですけれども、大体特恵関税にいたしましても、その他の関税にしましても、原材料はもうほとんど無税だ、手を加えられた工業製品に限って関税がかかっていく、こういうシステムが大体日本——あるいは先進国でも大体同じだろうと思うのですけれども、そういう仕組みになっていると思うのです。これ、こういう形でいきますと、せっかく特恵という制度をつくり、そしてそれが開発途上国の援助になるんだということに対しても、どうもその辺は、形はあっても実効がない、こういう形が出てくるんじゃないだろうか。たとえば農産物等の一次産品にいたしましても、まあ非常に特恵対象になる品目は少ない。そういうことであったり、あるいはワクの計算にいたしましても、これは日米繊維交渉のときでもたいへん問題になったわけです。日本のほうは、ワクは大きくして、その中で融通がつけられるようにしろ、こういうことでありましたけれどもアメリカのほうは、品目別のワクにするということで、あのときには非常に問題になった事項でありますけれども日本アメリカに対してそういうように要求しておることを、開発途上国にはやはりそういう品目別な形でのワクをつくるということになりますれば、一つのワクがだめになれば、それをほかに移すわけにいきませんから、そうすれば幾ら輸入をしたいということでも、そこで特恵は押えられてしまう、一般の関税並みになってしまう。あるいは原産地証明等についても、これは非常にきびしい形というものがおそらくあるんではないだろうか。こうしたものももう少し緩和して、開発途上国の産品を輸入をしていく、そうすることによって開発途上国の産業あるいは工業を盛んにしてやっていくというようなことのほうが、むしろいま、九十五カ国のリマ憲章等にも見られるように、むしろそういう方向というものを強く望んでいるんじゃないかと思うのです。そういうような全般的な形、あるいは割り当て額にいたしましても、さらにそのワクを拡大をしていく、こういうようなことをしていかなければ、少くとも世界のトップクラスにある日本経済として、やはり世界に信用されない、こういうようなことになるんじゃないだろうか、こういうふうに思うのですけれども、そうした全体的な見直しというようなものをやりまして、これだけ日本経済というものは強くなったんですから、もう少しそうした開発途上国、特に中南米とか、あるいはアフリカというような、そういうところに今後市場も開拓していかなければならぬと思うのですけれども、そういうような観点をもう少し見直して直していくというような態度を、今度のUNCTADの会合においても日本としては積極的に出していく。そうでなければ、外交的にも日本が、後進の開発国からも孤立してしまう、相変わらずエコノミックアニマルという名前だけが残っていく、こういうふうになってしまうのじゃないかと思うのですけれども、この辺は、今度の第三回の大会というのは、日本の態度いかんというものがかなり私は会議全体を大きく左右するものになるんじゃないか、こう思うので、三年ごとのレビューをやって直していくということもいいですけれども、現在の日本の状況では、三年ごとでなくて、いままでの経験の中で、すでに悪いものはどんどん直していくという、こういう態度にならなくちゃいかぬと思いますが、こういう点はどうでしょう。
  66. 赤羽桂

    政府委員(赤羽桂君) 全く御指摘のとおりでございまして、先ほどの特恵スキームにつきまして微調整をやると申しましたが、そのときに、実は御説明が足りませんでしたが、まず第一の御指摘の品目分類をもう少しゆるくしろというお話でございますが、日米の繊維に関連しても、そういう問題がはっきりと出ておるではないかというお話でございますが、これは先ほど申しました管理方式の改善とともに実行いたすということで、ただいま検討を急いでいるのでございます。  それから、原産地証明の問題につきましては、実はこれは特恵のすべり出しのときにはかなり厳格なものでございまして、受益国よりの原産地証明は、官の機関のはっきりしたものでなければいかぬということでございましたのですが、その後受益国からの要望に従いまして、たとえば、商工会議所とかいったようなものもこれに含ましめるということで、これはもう昨年の秋に緩和をいたしておるわけでございます。それで、ただいま申し上げました品目分類の緩和にいたしますにしろ、それから管理方式の緩和にいたしますにしろ、UNCTADの総会の前までを一応の目標といたしまして、ただいま検討を急いでいる次第でございます。
  67. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それから、輸入のワクですね、このワクは四十三年のそうした国々からの輸入額プラス前年度ですか、前々年度の先進国に対する輸入額の一〇%ですか、そういうものを加えるというんですが、これあたりも検討をし直す必要はないのですか。特に四十三年というのは、まだ日本の輸入の自由化というものもかなり少なかった時代です。そういう点で、こうしたものも広げていかなければ、おそらく後進諸国に対する日本の意思というものが通じていかないんじゃないかと思うのですが、この辺はどういうふうにされますか。
  68. 赤羽桂

    政府委員(赤羽桂君) ただいま全体のシーリングのお尋ねがございました。これは御指摘のとおり基準年は一九六八年であるわけでございますが、これと受益国以外からの輸入額の一割、二つ合わせたものだと、かようなことに相なっておるわけでございますが、いわゆるこの基準年、一九六八年を基準にするという点につきましては、これは何と申しますか、わが国の特恵のスキームの根本に触れる問題でもございます。それからまた、これを直すということになりますと、法律改正はもちろん当然要るわけでございますけれども、そういった点から、なおこの特恵が実施されてからまだ日が残いことでもございますし、もう少し若干時日をかしていただきまして、国内産業への影響等も勘案しながら検討していくということでございます。  なお、それにプラス一割のほうは、これは毎年毎年最近年の輸入額と、かようなことに相なっておるものでございますから、これは当然毎年毎年ある程度ふえてくるわけでございますけれども、全体のシーリングそれ自体につきまして、一九六八年というのはまず時点としてもう古いではないか、全体のワクが、非常に小さ過ぎるワクを設定いたしましても、先ほども申し上げましたけれども、適用が停止になるやつが、こういう小さなものだと非常にひんぱんに起きてくるんじゃないかというような御指摘は、これはよくわかっているわけでございますけれども、ただいま申しましたさような事情から、基準年の変更それ自体につきましては、もう少し若干の時日をおかしいただきたいと存じます。
  69. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それだけが輸入ワクをきめる尺度に私はなってないと思いますね。そのほかにもおそらく緊急関税の問題がある、あるいはエスケープクローズの問題もあるだろうと思いますから、そういうものというものは、もう少し私はゆるめても、国内産業に対して非常に影響があり得るときには緊急関税の方法等も使えるのですから、その辺は、私は今度の会議に行く際に、やはりその辺を広げるというようなことが必要だろうと思うのですけれども、これは法律改正が必要だということになれば、早急に法律改正の道に、少なくとも来年度あたりの通常国会にはそういう法案を提出するというようなかまえでなくちゃいかぬと思うのです。この点はどうですか。
  70. 赤羽桂

    政府委員(赤羽桂君) 来年度ということに相なりますと、大体特恵実施一年というようなことに相なるわけでございますが、UNCTADの総会もあることでもございますし、そこら辺の基準年を変えるか変えないかというような点につきまして、なお検討を続けたいと存じております。
  71. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 せっかく大蔵大臣お見えになっておりますから、あんまりこまかい問題を進めていってもいかがかと思いますが、何か大蔵大臣いまのことで御意見ございましたら、ひとつお述べいただきたいと思います。
  72. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いまのお尋ねの点は、私はやはり今度の会議で要望として出てくる問題じゃないかというふうに思われますので、したがって、さっき申しましたように、この会議に臨むにつきましては、関係省とそういう問題についても方針をきめて出る必要があろうと思いますので、これから関係省との検討をしたいと思っております。これはこういう問題は、今度出てくるような気がいたします。
  73. 赤羽桂

    政府委員(赤羽桂君) ちょっとつけ加えさしていただきたいと存じます。ただいま、いわゆる一割の部分を一年シフトする分がふえると申し上げましたが、その部分などで約三割近く輸入がふえるということに相なりますので、ちょっとつけ加えさしていただきます。
  74. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 大蔵大臣せっかくお見えですからお聞きしたいと思うんですが、日本の関税は一般的に先進国の中でも非常に高いと、こう言われている。特に貿易の自由化が叫ばれた当時、まあ自由化をするかわりに関税を高くする、こういうものが今日に大きく影響をしていると思うんですけれども、こうした日本の高い関税というようなものを、一体今後どういうふうにしていくべきであるというふうに考えていらっしゃるんですか。その辺をお聞きしたいんですが、いまも述べましたように、特に工業製品というようなものに対して関税が、特に問題が起きてくるのではないか、もちろん農産物について、先ほどの特恵に関連して開発途上国のほうから問題が起きてくるわけでありますが、いずれにしても日本の関税を将来どの方向に持っていこうとしているのか。これ、特に日本の関税政策との関連でございますので、大蔵大臣にお聞きしたいと思います。
  75. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) この国際経済変化と申しますか、日本経済の国際的地位変化と申しますか、非常に最近変わってきまして、かつて自由貿易主義というようなものについてはきわめて消極的であった日本でございますが、最近はむしろ保護貿易主義とか、あるいはブロック主義というようなものが他の先進国にも台頭しておるというような状況に反して、逆に日本経済自身が自由貿易による世界貿易の拡大ということを望む立場に、いま変わってきているというのが、最近の私は、私たち自身の立場の変化であるというふうに考えております。したがって、国際ラウンドの問題にいたしましても、御承知のとおり、むしろこれから日本先進国中心となっていろいろな役割りを果たさなければならぬということから見ましても、こういう変化ははっきり私どもは意識しておるわけでございますが、そういたしますというと、その線に沿った将来の関税政策ということを、やはり日本自身が率先してやらなきゃならぬということだろうと思われますので、したがって、関税というものも、これをできるだけ低くしていくという方向に将来私ども考えなければならぬというように考えております。
  76. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 この前佐藤総理が、これからは日本も、諸外国の貿易ブロック化、こういうようなものはまずいものであるから、こうしたものを直していくためにジャパンラウンドをやる、こういう御発言があったというふうに私記憶しております。雑誌なんかでも、ジャパンラウンドをこれからやっていくのだというようなお話だったんですが、このジャパンラウンドの構想というのは一体どんなふうになっているのですか。
  77. 赤羽桂

    政府委員(赤羽桂君) 国内におきまして、ジャパンラウンド、国際的にいいまして次期国際ラウンド、あるいは次期KRといわれておりますこのジャパンラウンドないしは次期国際ラウンドの必要性並びにそれをやろうではないかというような話が国際的に出ましたのは、昨年の実は四月でございます。ガットの非公式総会ですでにそれは取り上げられているわけでございます。当時、日本はちょうど国際収支の黒字が定着をいたしまして、いわゆる八項目の政策が出る前、ちょうど一カ月か二カ月前のときであったのでございますが、日本はこれに対して積極的に賛成をするというような態度で、実はこの非公式総会に出たわけでございますけれども、当時まだ実は国内におきまして若干の調整を要する部面がございまして、日本が積極的に一番バッターといたしましてこれを提唱するということに至らず、スウェーデンないしはカナダが同一趣旨のことを言ったわけでございますけれども、それに対して賛成をするということにとどまったわけでございます。  その後、昨年の十一月のガットの総会におきまして、このときはいわゆる閣僚レベルの会議でございました。そのときに日本の代表として木村企画庁長官が出られておるわけでございますが、このときは、いわゆる第一番目に国際ラウンドの必要性を提唱をいたし、なおかつ反対国に対してもいろいろと説得につとめたわけでございますが、昨年の秋のガットの総会におきますところの結末といたしましては、途中段階でECとアメリカが時期尚早ということでこれに反対をいたしておったわけでございますが、アメリカは最後に賛成側に回ったわけでございますが、ECのほうは最後まで反対をし続けたわけでございまして、ガットの総会の決議といたしましては、賛成論、反対論、両論併記する、かような結末に相なったわけでございます。  その後、十二月末の通貨調整を経まして、ことしの二月の十日にいわゆる日米共同声明並びにアメリカとECの共同声明が相次いで出されておるわけでございます。この両声明は、アメリカも昨年の四月以来あっちへ行ったりこっちへ行ったり、やや態度が不確定なところがあったわけでございますが、はっきりと一九七二年中に次期国際ラウンドの準備をし、一九七三年より関税障壁、非関税障壁、工業品、農業品、すべてにわたって、世界貿易の拡大を阻害するものについて、その調整討議を行なおうではないかということで、ガット加盟国全部に呼びかけておるわけでございます。この声明の意義と申しますのは、私からあらためて申すまでもなく、非常に重大なことでございます。次期国際ラウンド、ケネディラウンド以降の世界通商関税問題の基本的なルールを示したということで、しかも非常に三大実力と申しますか、米、EC、日本の三大実力国が一致してそういう方向を打ち出したわけでございまして、その意味において非常に意義が深いものと思います。  それでこの声明は直ちにガットに通知をされまして、このガットの事務局よりも各加盟国に対して通知をされているわけでございますが、三月七日にガットの理事会を開きまして、約三十カ国が集まっておりますが、この扱いをどうするかということで協議を開いております。大体基本線といたしましては、これに賛成であるということでございますが、後進国の一部にまだ何をやるか具体的な内容がはっきりしないので、それにいま直ちに参加する、参加しないの意思表示は留保するというようなことで現在に至っているわけでございます。わが国といたしましては、かような背景のもとに、次期国際ラウンドに対処する心がまえと申しますか、あり方を申しますと、第一次のいわゆるケネディラウンドのときとはるかに飛躍的にわが国の国際的、経済地位というものは変わってきているわけでございます。また逆にアメリカの、第一次ケネディラウンドにおけるアメリカ地位というものは少し低下してきている。こういうような状態でございまして、わが国の立場といたしましては、自由貿易、世界貿易の拡大の方向というのは常に国益に合致する、こういうことを念頭に置きまして、率先して関税・非関税障壁等、貿易を阻害する要因について、相互にこれを排しておる、かような方向に向かって進んでいると考えております。
  78. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それが合意が遂げられないと、日本の長期的な関税政策の展望というものは出てこないわけですか。それなしでも日本としては、かなり長期的な展望を立てられるというようなことなんですか、どうなんですか。
  79. 赤羽桂

    政府委員(赤羽桂君) それはそれ、これはこれといたしまして、わが国の関税政策の長期になりますか、あるいは中期になりますか、さような点につきましては、そっちがやらないから、こっちは何にもやらないということではもちろんございません。私らは私らといたしまして、すでに昨年より関税率審議会を中心といたしまして、中期もしくは長期の関税政策の方向について勉強を始めておる次第でございます。まだ勉強の段階でございまして、関税率審議会自体といたしまして、方向を打ち出すということにはまだ至っておりませんが、そういう作業を、そういう政策の検討をすでに始めております。
  80. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 通産省にお聞きしたほうがいいかと思うのですが、いずれにしても日本が関税率を低くしていくというようなことは必要だろうと思うのです。しかし、そうは言っても、いままでの日本の貿易政策といいますか、関税政策の中で低生産性部門というものが、その関税によってかなり保護されてきた、こういう事態があるわけです。特に農産物等においては、まだネガティブリストがかなりあるわけですね。それから中小企業なんかにおいても、おそらく相当なものがあるだろうと思うのですが、そうした長期計画、あるいは中期に関税を低下していく政策というものと、やはり日本の産業構造との関係というものを考えていかないと、関税をどんどん下げていったけれども、それによって摩擦を受ける分野というものも相当あるわけでありますから、そういう意味で、関税の長期計画というものと日本の産業構造というものが並立をしていかなければならぬと思うのですが、その辺の関係はいまどういうように議論をされているわけですか。
  81. 林信太郎

    説明員(林信太郎君) ただいま竹田先生から御指摘のございました問題は、単に関税政策あるいは貿易政策、あるいは産業政策といったような個々のセクター単位で考えるべき問題ではなくて、もっと総合的に日本の国の経済全体の仕組み、あるいは世界経済の中で、日本経済をどう位置づけるかということに関する長期的な展望が大前提になろうかと思っております。そういった前提は、私どもの所管を越える問題でございますけれども、そういうものが与えられるという前提で、いまの三つの大問題、産業構造問題中小企業問題を含めました産業構造問題と、それから貿易政策上の要請、あるいはこの二つの要請を調整いたしまする手段としての関税の長期的なあり方、こういう問題として、私どもの課題にも常時なっております。たとえば特恵を、先ほど竹田先生から御指摘のように、世界経済全体の見地から、かつ日本地位変化と、ただいま大蔵大臣からお話のございましたような観点も入れてやるといたしますと、特恵は受けざるを得ないような情勢、しかし大勢がそうだからといって、中小企業問題は軽視されてしかるべきだということには断じてなりませんので、そういう要請と中小企業の順調な対応策が私どもの課題でございます。したがいまして、特恵の例で申し上げますと、先ほど竹田先生から御指摘がございましたように、基準年次あるいはシーリング、あるいはシーリングの管理、あるいは供与国のあり方、あるいは関税を除去する高さ等々につきまして、十分な中小企業サイドの配慮を入れながら、かつそうやりましても、なおかつどんな事態になるかもしれませんので、緊急関税等々の弾力的な援用等並びに中小企業特恵臨時対策措置法を持ちましてこれに対応したわけでございます。  で、したがいまして、産業構造それ自体としては、高度化しかつ貿易政策上の要請、したがいまして、関税を、ただいま長期的には大蔵大臣御指摘のように、引き下げの方向にもっていくという方向におくれをとらないような形で、産業構造の高度化を考えてまいりたい。なかんずく中小企業の対応策につきましては、意欲的に先取りするような形でやってまいりたい。もしそれが順調にまいりませんと、結局外の要請と内の姿とのギャップ、非常な不一致が起きるということになりますので、十分意をいたしておりますが、通産省といたしましては、中小企業基本問題審議会、それから産業構造審議会等々を場にいたしまして、こういった問題の要請あるいはあり方について検討しておる状況でございます。
  82. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 大蔵大臣にお願いしておきたいと思うんですが、一方ではそういう開発途上国からの追い上げ、こうしたものが現にあるわけです。たとえば香港あたりの製品が日本にどしどし輸出してきている。あるいは台湾の製品が、特にこれは労働集約的なものが多かろうと思います、そういう製品がどんどん片一方には入ってくる。また一方には、外交的に中国と日本との問題というのは、今度のこの改正法の中にありますように、中国産品との格差解消という問題もやらざるを得ない。こういう問題が出てくると思うんですけれども、こういうものに対して、いま通産省のほうからも、中小企業を中心として産業構造の改善というようなことを、かなり強力に進めていかなければならない。これはなかなかいままで実際には口では言われていたけれども、なかなかそれは進まない。しかし外を見れば、いま申し上げましたような、かなりの力で日本に関税を引き下げていけというような圧力が政治的にも、それから経済計算のほうでもこれは出てくるわけであります。そういうことを考えますと、かなり日本経済構造というものをこれに対応していくような、かなり急速な、しかも適正でないと困りますから、片一方をけ散らして、そういうことに進むというのも、それは困るわけでありますから、適正な産業政策というものが打ち立てられないと、やはりうまくいかないことになるんではないだろうかと思う。この辺が私としてはたいへん心配しているわけであります。政府としてその辺を一体どのようにやっていこうとしておるのか、非常に抽象的な質問でありますから、具体的にお答えにくいだろうと思うのですけれども、この辺を政府としてほんとうに考えてもらわないと、外圧と内部におけるフリクションというような問題で国内の経済秩序というようなものもかなり混乱をしていくのじゃないか、こういうふうに私感ずるわけであります。これは政府としてそういう対策を何か段階的に計画的に進めていっていただかなければ困ると思うのですけれども、そういう点について政府考え方というのは現在どういうふうにお考えになっておりますか。
  83. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 政府は、いま通産省から言われましたような問題、国内産業との調整の問題、これは当然考えるべきことでございまして、これに対する見通しとか、あるいは対策というようなものが一応描かれない限りは、この関税問題の決定もなかなかできないということは、すでに去年の八月以来行なったこの関税改正の問題が、本年の二月までかかったということの理由は、この問題のためにこれだけの日にちがかかったといっても差しつかえないことでございますので、今後もこの問題については慎重な対策のもとに関税政策もきめるというふうなことでいきたいと思っております。
  84. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 またこまかい点もたくさんありますので、きょうはこの辺にしておきたいと思いますけれども、いまひとつもっと積極的にやはり産業構造を変えていく、変えていかないと、おそらく私は対応できないだろうと思うのです、これからの世界経済に対して。私のほうでも率直に言ってこれをああせよ、こうせよという具体案を持ってお聞きしているわけではございませんけれども、そういうものをひとつプログラム化していただいて、やはり国民に提示してもらわなければならないのじゃないか。一つの業界が非常にセクト的に、自分の産業だけを考えておられてもこれは実は困る。しかし、産業自体としては、それだけで、ほかの手当てがなければ、これまた自分の仕事にすがりつくという気持ちもわからないわけではないわけであります。その辺を総合的にやっていっていただかないと、今日の世界経済における日本経済あり方というものは、ただ単に非難だけで、そして何らなすすべがなく、内部においてはフリクションが高まる、こういうことであってはならないので、これはそう簡単に出る問題ではなかろうと思いますけれども、早急にひとつ国民にわかるようなプログラムというものをつくっていただきたい、そのことお願いしてきょうの質問は私終わりたいと思います。
  85. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 資料をひとつ大臣にお願いしたいのです。  国債をどういうふうに売り出していくのか、販売計画といっちゃおかしいのですが、割り当てとかいろんなことがあると思いますが、もし許されるなら、月別にどういうふうに出していこうとか、それから発行条件等をもし変えるというような場合があるとするならば、これはどんなふうにするかというところだけ資料をお願いしたい。  もう一つお願いしたい点は、先ほど戸田委員の質問直間比率の問題が議論されました。それに対して新しい税をつくるとかなんとかいうことになって、付加価値税の問題が非常にたいへんなことで、ちょっくらちょっとではできませんよ。大臣は何か野党が全部賛成してくれると、こういうようなお話ですが、たいへんな問題だということはわかります。そこで、たとえばスウェーデン等で老後をずっとやるために、酒税全体がああいうところに回っているという、目的税的なこと等を今度の税調等にはかられる気持ちがあるのかどうか。大臣はただ単に、直間比率の問題も直さなくちゃならぬということは常識上お考えだと思うんです。しかし、やろうとすればなかなかたいへんだ。そうすると、国民が納得し賛成すると——これは老後のためにひとつやるんだからやってくれというような、そういうようなお考えのもとに税調等にはかられようとするのか。今度の物品税洗い直すとおっしゃいました。大きな私は一つ税制改正の第一歩だと思っているんですが、そういう総合的なことをはかろうとされておるのか、単に物品税だけの問題について洗い直していく意向かというその辺のところ、これはもっと、たとえば法人税の問題とかいろんな問題がございますけれども、そういうものも含めてそういうことをおやりになるつもりがあるのか。
  86. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 最初の資料の問題は承知いたしました。  それからその次の問題は、私自身の考えでは、目的税たくさんございますが、もうこれ以上目的税の創設ということは、財政の弾力性を欠いていくことであって、非常に問題であるというふうに考えますので、そういう方向の諮問は税制調査会にいまのところするつもりはございません。
  87. 松井誠

    ○松井誠君 さっき竹田委員からUNCTADの話が出ましたので、それに関連してちょっとお尋ねをしたいと思います。  それは、日本のいわゆる経済協力のあり方、UNCTADに臨む態度、これからきめるということでありますので、むしろお願いという意味でお尋ねをしたい。  で、この間ある学者の書いたものによると、先ほどから開発途上国ということばが使われておりますけれども、開発途上国ということばそのものも悪いんだという意見、つまり開発途上国という使い方は、いずれもわれわれ先進国の道を歩いてくるだろう、そういうそのことが開発途上国にとって幸福なんだ、そういう発想が前提としてある。しかし、開発途上国の人たちはそうは考えてないかもしれない。やはり第三世界として独自の道を歩くんだという誇りを持っておるんじゃないか。これは、私が実は去年の夏キューバに行ってカストロ首相に会ったときに、カストロ首相の使う第三世界ということば、確かにそういうある種の誇りを持ったことばとして使っておった。ですから、開発途上国との関係ということで、南北問題を考えるという考え方が、やっぱり基本的に考えてみるとあるんじゃないかという、そういう前提で日本のいわゆる経済援助という、経済協力といういままでのあり方、それこそ発想を転換する、基本的に考え直すべきじゃないかと思うんですが、そこで、いままでよく言われたように、いろいろこの条件が日本の場合きびしいとか、あるいは政府援助というのは非常に少ない。全体の総額は世界の第二位になったと言われるけれども、しかし、政府援助の規模はまだまだ少ない。したがって、いままでの日本経済協力というのは、言ってみれば、輸銀の使用による延べ払いというのが大部分であった。だからこれは、対外援助でなくて対内援助という感さえある。どだい初めからそういう姿勢が薄くなる。だから、ここでほんとうに南北問題とは一体何なのか、だれのための南北問題なのかということを考え直してみると、少なくとも政府援助を飛躍的に伸ばすということがまず前提にならなければならないことは当然だと思うのです。しかし私は、それだけではなくて、いま日本経済協力というのは、やっぱり東南アジアに非常に重点的に、地域的にも片寄っておる。特定の国と非常に深い関係を結ぶというのはどうしてもやっぱり従属支配の関係というものをつくりやすいとすれば、地域的にやっぱり分散しなければならぬ。あるいは一対一の援助ということじゃなしに、できればその国際機関を通した援助というものに重点をもっと置くべきであります。今度何かひもつき援助の廃止ということを日本は主張するそうですけれども、これはむしろ当然だと思うのですね。ですから、そういう経済協力についての基本的な理念なり、そういう問題について、まだきまっていないということでありますからなおさらでありますが、大体どういうふうな基本的な理念でやろうとするのか、そのことを何かお考えがありましたら、まずお聞きをしたいと思います。
  88. 赤羽桂

    政府委員(赤羽桂君) ただいまの御指摘は、開発途上国と経済協力の御質問でございまして、関税局から申し上げるとちょっとぐあい悪いとは存ずるのでございますが、ただ開発途上国に対しまして、関税上のいわゆる特恵といったようなもの、あるいはまた経済援助、かようなものも通じまして……。ちょうど国金局参りましたので……。
  89. 瀬川治久

    説明員(瀬川治久君) ただいまの御質問は、援助の基本理念をどういうふうに考えていくかということでございますが、従来からわが国にとりまして、世界の繁栄と平和がもっとも日本自身にとっても非常に役立つことである。もちろん世界の平和と繁栄でございますから、世界全体にとっても役立つわけでございますが、そういう観点から、私たちの援助というものを進めるべきだというふうに考えております。したがいまして、政府開発援助につきましても、現在の国際的な開発途上国のあり方というものから考えますと、どうしても民間の商業ベース、これは非常に、民間の商業ベース自体の非常に特長もあるわけでございますけれども、ただ、やはり政府としてどういう形の援助を進めるべきか、政府開発援助自体も、民間の援助と違う一つの大きな特色がございますので、政府開発援助の重要性というものは深く認識いたしておるわけでございます。したがいまして、先般決定いたしました八項目におきましても、日本政府開発援助が、各国に比較いたしまして少ないと、やはりもっと伸ばすべきだという考え方から、政府開発援助につきましては、少なくとも先進諸国であるDAC諸国が援助しています量の対GNP、その程度のものは日本もまず当面努力すべきではないかということで、八項目にもその趣旨がうたわれております。  それから、もちろん政治的に非常に中立でありまして、しかも経済援助につきまして熟練しました、非常に経験を積んでおります国際金融機関、そういうものを通じまして援助を行なうという。国際金融機関につきましては、援助の重要性につきましてはわれわれも非常にこれを重視する立場をとっております。  で、今年度におきましても、たとえば、アジア開発銀行につきまして投資がございますが、これについて法案を提出いたしまして、御審議を願うように考えております。  以上でございます。
  90. 松井誠

    ○松井誠君 大臣、いまの新円対策、新八項目ですかのお話がありましたけれども経済協力というのは、何か外貨減らしの対策の一つとして考えて、特に財界がそうですけれども、そういう発想そのものは、私は初めからうそだと思うのですよ。で、何か開発途上国というのは、資源の提供国であるとか、あるいは農産物の輸出国であって、農産国と工業国との垂直的な分業、それが南北の国と関係あるかのような、そういう先入観そのものをやっぱりぶち破らなければだめじゃないか。そういう垂直的な分業じゃなしに、南の国がやはり自分の選ぶ道を歩いていけるような、そういうものに対する協力という形にならなければ私はうそだと思うんです。そういうことを含めて、大臣さっき答弁にお立ちにならなかったようですが、基本的な理念として一体どういうことをお考えか、あらためてお伺いをしたいと思います。
  91. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私は、これから各国で、援助するほうの国で問題になろうとしている投資保険というような問題を考えますと、やはりその点から考えましても、私は国際機関を通ずる援助というものが、これからやはり筋として一番いいものではないか、これを各国とも協力して大きく拡大していくということが、この開発途上国に対する援助方式としていいことではないかというふうに考えて、この方向へはいまよりももっと積極性を示したいと思っております。あるいはいま答弁がありました政府援助ですが、いま日本は〇・二三くらいですか、それを、平均というと〇・三四という、せめてそこまで日本も率を持っていこうという努力目標を持っておりますが、まずそれに努力するということと、あわせて民間というものもやはり加わらなければ低開発国のために寄与する道でございませんので、この三つが援助の方式になると思いますが、私はやはり今後は国際機関を活用するということを、もっと各国協力の上に拡大したいというふうに考えております。
  92. 松井誠

    ○松井誠君 時間がありませんからもう一つのことをお尋ねしたいんですが、いまのUNCTADで、いま竹田委員からも話がありましたけれども、あの何とかという事務総長が、先進国に対する一次産品の一定程度割合の輸入というものを要求するというようなことを言っておりますね。そういうことで、この開発途上国の要求にどうこたえるかという問題もあって、特に一次産品の輸入をどうするかという問題が大きな問題になってくるわけですけれども、今度出ておる法律案で、たとえば四月から自由化されるもの、農産物で三つ四つありますね。しかし、この四月から自由化されるというのは、そういう形、そういう要求を先取りしての輸入自由化では別になくて、たぶん日米共同声明、佐藤さんがアメリカへ行って約束をして、そのときに自由化を推進しますという約束をして、そのあと発表されたのがこの四月の自由化ではなかったかと私は思うんですが、この自由化という問題について、いろいろな、何といいますか、政策目標みたいなものがあると思うんです。日本自体の立場からいって、国際収支黒字の幅を減らすためにもつと輸入を自由化しようという、そういう発想もあるでしょう。あるいは物価政策として輸入政策を利用しようという、そういう考えもある。あるいはアメリカ中心としたそういう先進国の貿易自由化の圧力という形もある。あるいはその開発途上国からの輸入の要求という、そういったものもある。そういうものは政策目標はみんな違うわけですね。違うんですけれども日本の輸入自由化の政策というものは、そのときそのときの波にゆられて、そのときそのときに、何かその日暮らしの政策のような気がしてしかたがない。今度の農産物の関税の問題にしても、物価ファクターにどれだけの影響を及ぼすかという問題、きのうから竹田委員に追及されて、しどろもどろなのは、やはりそれが日本の主体的な立場からの物価政策だという、そういうきちっとした姿勢が何にもない。言ってみれば、日米共同声明に基づく輸入の自由化を何とか少し実質的に伸ばしたいというような関税政策、いわば、その場限りの関税政策みたいなものですから、何か、物価との関係がはっきりしない形になってくる。  先ほど、関税の長期プログラムの話がありましたけれども、私もやっぱり同じことを言いたいのです。産業調整、産業構造を一体どうするかということについて積極的に取り組むべきじゃないか。そうしなければ、輸入自由化のたびごとに、国内産業がゆれ動く。今度の電子計算機などというようなものについては、ずいぶん手厚い保護をするようですけれども、しかし、たとえば酪農にしても、畜産にしても、奨励をしていながら、それと矛盾をするような関税政策なり輸入政策なりをとる。そういうものよりも前に、もっと、産業政策というものがなければならない。産業調整政策というものが前になければならないじゃないか。そういうものがいつも後手後手になって、あるいは多少手当てをするにしても、一つの産業である電子計算機に出す金よりも、もっと少ない金しか出さないということでは、産業構造の改善には何にもならない。そのときそのときの、その日暮らしで輸入の自由化をやるから、先ほどの話じゃないけれども、摩擦が絶えない。ですから、もっと長期計画を立てて、輸入の自由化というプランを立てて、——われわれは必ずしも輸入の自由化を絶対反対とは言いません。しかし、それが特定の業者のリスクの結果だけになるとか、あるいは特定の人たちに特に犠牲をしいると、そういう形になることは避けるべきだと、そういう意味です。ですから、そういう摩擦を少なくして、スムーズにやるという、そういう長期的なプランというものがぜひ必要だと。先ほどの竹田委員の質問に必ずしもはっきりした御答弁じゃなかったと思います。そういう意味で、あらためてその点をお伺いして、あるいはお願いをして終わりたいと思います。
  93. 赤羽桂

    政府委員(赤羽桂君) ただいま、自由化、関税引き下げ等につきまして、それが非常にアトランダムにいままで行なわれてきておる。長期的な視点がちっともなかったではないかと。今回の定率法の改正につきましても、まあ、一口に言いますれば、アメリカ等の、何と申しますか圧力に屈したと、こういうように拝聴いたしたわけでございます。自由化につきましては、これは、もちろん、御指摘のとおり、いろいろ国内あるいは国際面からの要請に基づいてこれを行なっておるわけでありますが、基本理念は、これは申すまでもなく、いわゆる自由化というのは、輸入制限という国内的な措置がガット規約に根本的に反すると。関税のほうは、これは漸次引き下げていくということでございますけれども、輸入割り当て、輸入制限ということは、これは物理的、直接的に世界貿易の拡大を阻害をするという観点から、ガットでもこれは全廃をすべきであるということをはっきりうたっているわけでございまして、そういった観点から、日本の現在の国際的地位、世界貿易の拡大の方向に資するという面から、これは行なってきているわけでございます。  それで、自由化につきましては、もうすでに古く昭和三十六年ごろから随時行なってきているわけでございまして、ことしの今回の関税定率法改正に伴いまして自由化をいたすのも含めまして、いわゆる残存輸入制限品目というものは三十四ぐらいになるわけでございまして、これは、国際的に申しましても遜色のない水準まできておるわけでございます。  それから関税引き下げのほうでございますが、選択がアトランダムではないかというようなお話でございますが、また特にアメリカのほうばかり向いておるのではないかというお話でございます。対アメリカの貿易というのは、これは御存じのとおり、日本の貿易の約三割を占めておるわけでございまして、そういった意味におきまして、アメリカのほうも配意をしておることはもちろん事実でございます。半年にわたりまして、通貨調整と並行をしてこの貿易調整が行なわれたということも、これもまた事実でございますけれども、ここに御審議をいただいておりますところの何百品目につきましては、これは何も全部アメリカということではございません。それぞれの国の関心品目につきまして、十分これはお互いの均衡をとりまして配意をいたしておるわけでございます。  それで、関税引き下げの選択のしかたでございますが、これは物価対策といたしまして、七十三品目ということをあげておりますが、そういう選択の基準は、輸入量が一定以上に大きい、それを、関税を引き下げることによって物価対策に資するところが大きいというものを中心に選んでおるわけでございまして、決して、その場その場の事情に応じまして、アトランダムに選んだということではないわけでございます。  しこうして、今後こういう引き下げ、もしくは自由化がどうなるかと、こういうお話でございますが、引き続き引き下げ並びに自由化をさらに推進をしていく、こういう方向には間違いないわけでございます。そういった点につきまして、先ほど来からお話の出ておりますところの、国内産業構造あるいは貿易構造の変化にも即応しながら、関税率、関税体系の是正をはかっていくということを申し上げたわけでございます。その作業の一環は、もうすでに一部手をつけておるわけでございまして、今後御指摘のような点を十分踏まえまして、中期もしくは長期の関税率体系の改正の方向を検討してまいりたいと存じます。
  94. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 大臣あしたおりませんから、具体的な問題で一点お伺いしておきますが、いまの日本の砂糖税、この関税は世界最高ですね。いまの諸外国を調べてみますと、一番高くて、イタリアの一〇五%、それからフランスの九九%、日本は一四〇%くらいになっておるでしょう。今回の改正で、輸入自由化に対応するための関税措置の中に、粗製糖あるいは角砂糖、それから氷砂糖、こういうふうになってますけれども、結局上がっているわけでしょう。いまの関税形態からいけばこれは従量税に入っているわけですけれども、前の二十六年以降改正になったときは従価税に入っておったんですね。三十六年か三十七年で従量課税に入ってきている。ところが従量課税の短所ですかね、これはインフレに対処するのは大体無意味でしょう、制度上は。だから、そういう意味では、立法措置と含めて非常に高い関税を砂糖にやっておる。そして今回は輸入自由化に対応するための関税措置ですから、おそらく産業保護政策、もちろん関税制度全体からいけば、財政関税というものはほとんど姿を消しておりますから、保護関税でもって徹底していっているわけですね。これは、いずれにしてもこれを守っていくということになると、いまの日本国内における精糖関係の産業は、たとえばアメリカのビートなんかは全部御破算にされちゃって、ほとんど国内は縮小される。砂糖の輸入依存度というものは拡大している方向でしょう。だからどうしてもこのままで行ったら、いつまでたっても日本は世界最高の砂糖関税を引っかけて、国内においてもそういう砂糖税が非常に高い。これはもう電気・ガス税なんかと大体並行しているんですね。だから、こういうものについて、なぜ今回具体的な措置を打たなかったのか。もっと私は下げるべきじゃないか。それが産業保護政策、どうしてもこれとこれがあるから、これをやれば具体的にこれはつぶれてしまうというような摩擦現象があるのかどうか、その辺一体大臣どう考えますかね。私はもっと関税下げて、砂糖消費税そのものを下げて、もっとやはり安い砂糖を、いまや砂糖というものはほとんど生活必需品になっておるわけでしょう。ですから、そういう制度上の欠陥からくる関税の高額課税をやらなくちゃいけないなら、制度上検討する。あるいは物価抑制上どうしてもあれなら制度上置きかえる、従来の従価税に置きかえる。いずれかの方法をとって、私はやっぱり何らかの砂糖関税の低額化、そういうことに置きかえていくべきじゃないかと思うんですが、これは大臣どうですか。
  95. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) この問題は、もう理屈はそのとおりでございまして、もっぱら農林政策の問題でありまして、いつでもこれは問題になることでございますが、なかなか農林政策との折り合いがつかないという事情は十分おわかりだろうと思います。
  96. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  97. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 速記を起こして。  午後一時四十分から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時五十五分休憩      ————◇—————    午後一時五十三分開会
  98. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、関税定率法等の一部を改正する法律案航空機燃料税法案並びに租税及び金融等に関する調査の、以上三案件を便宜一括して議題といたします。質疑のある方は順次御発言を願います。
  99. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 最初に大臣、先ほどUNCTADのことしの総会のことでちょっと質疑がございましたので、関連して伺いたいんですが、おそらく先ほど出た、議題の中にありましたように、ひもつき援助の問題がありますね。そのひもつき援助を撤廃ということが出てくるんではないか。西ドイツがすでに撤廃を七〇年度からし、アメリカが七一年度からひもつき援助の撤廃を実施している。イギリスもオランダも原則的には賛成というふうな方向だというんですが、日本だけがまだそういうひもつき援助撤廃を実施していないという点で、いろいろ抗議が出てくるだろうと予想されているわけですが、それに臨む基本的政府の態度というのは、どういうふうになるんでしょうか。
  100. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) ひもつき援助の問題に関しましては、実は政府といたしまして、一昨年でございましたか、DACの上級会議が東京で開催されましたときに、原則的にそういうかっこうで各国とも協調してやっていこうという方針に、日本といたしましても賛成をいたしたわけでございます。その後各国のひもつき援助の廃止に関しまする具体的な問題につきまして、DACでいろいろと議論が行なわれておったわけでございますが、その最近の動きを申し上げますと、アメリカが例の昨年の国際収支の困難というような状況から、ひもつき援助について当面はなかなかアメリカとしても前向きで取り組めないというふうに態度が若干の変更と申しますか、あれがございまして、そのために実はDACでの議論というものが若干停滞をいたしておるわけでございます。ただいま御指摘のとおり、来月のUNCTADにおきましては、ひもつき援助のひもつきを廃止すべしという要望が後進国側から強く出てくるであろうということは予想されるわけでございますが、これにつきましては、従来から方向といたしましては、ひもつき援助の廃止という方向でわれわれのほうといたしましても考えたいという方針をとっておるわけでございますが、ただいまのような情勢でございますので、先進国間におきまして、必ずしも大きく前進をするというような状況にはないわけでございます。それが一般的な情勢でございますが、方向といたしましては、日本といたしましては国際収支もいいわけでございますから、ひもつき援助の廃止という方向については、今後ともそういう方向考えてまいりたいと、こういうに存じております。
  101. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いま一つは、先ほど大臣からも答弁があった政府開発援助増額の件ですけれども、先ほど全世界のがGNPの〇・三四ということで、日本の場合は〇・二三だろう、せめて〇.三四%にしたいという意向だったのですが、通産とか外務とかこういうところの省のほうからは、いわゆる援助というものはGNPの〇・七%そういうような声が出ておる。それに対して大蔵省は、とてもそこまでいかぬ、先ほどの大臣の答弁から、その半分以下の〇・三四ということになるそうですけれども、その辺のところはどういう理由でそのようになってくるのか、それを伺いたい。
  102. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 予算編成のときもそうでございますが、この重点をどこどこに置くといって、経費についての重点をいままでとは変えるということを言っておっても、また現にそれだけ予算の強化をやっても、率から見ますというと、そう大きい変化を一度にするということはなかなかできないということは、われわれがしばしば経験しているところでございますが、それと同じように、日本のGNPというのは、もう非常に大きいことでございますので、これにそういまとかけ離れた大きい率を目標に設定して、これを約束するということになりますと、当然そこまでの目標達成を迫られることになりますし、そのときのいろいろな実際問題を勘案してみますというと、これは少しくらい国際収支がよくなったから、あるいはこういう黒字基調が続いておるからといって、急に大きい率の変更を約束するということはなかなか実際問題としてむずかしい問題を私ども見通しまして、したがって、まず各国がやっている平均のところまで近づくというのを当面の目標にして、それから日本経済力に応じた次の目標を立てることが現実的であるという考えから、私どもは国際会議で勇ましいことを言いたいんですが、そこは非常に慎重を期しているということでございます。
  103. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 当面のところの目標は〇・三四%と言われたわけです。当面というのは一体千九百何年ということになるんですか。
  104. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) ただいま大臣から御答弁がございましたように、一九七〇年で〇・二三%の実績に達したわけでございますけれども、まあDACの平均と申しますと〇・三四、大体五割増ぐらいにしないといけないわけでございまして、しかも、他方非常に日本のGNPは従来特に大きくのびておったわけでございます。今後どうなりますか問題ではございますけれども、いずれにいたしましても、ほかの国に比べればやはり伸びは相当高い、比較的には高いということは当然予想されるわけでございます。したがいまして、大体率で従来の五割増ということになりますと、これはやはり毎年の財政負担が相当の額になるわけでございまして、したがいまして、特に当面というのが、たとえばいつまでということにつきまして、はっきりとした約束を国際的にちょっとできかねる状況でございます。
  105. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 先日の質疑のあとでいただいた資料で、特恵の受益国とガットの三十五条援用の問題でありますけれども、現在特恵関税実施後、撤回した国が二カ国あって、現在では十五カ国が適用されている。特恵受益国でありながら、対日ガット三十五条の援用をしているということで、前回昨年度の質問のときにもこれの撤回ということを努力するということがあったわけでありますけれども、これから先約一年間でわずか二カ国ということでは非常に時間もかかるだろうと思うんですが、大臣、この辺についてはどういうふうにお考えですか。
  106. 赤羽桂

    政府委員(赤羽桂君) 特恵受益国のうちガット三十五条援用国は十五カ国でございまして、御指摘のとおり、昨年特恵実施の際は十七カ国でございましたが、その間二カ国が撤回をいたした、こういうことになっております。それで、あと残っておる国につきまして、政府といたしましては引き続きこの撤回方を強く要請をするという態度でおりまして、来月の四月には、この撤廃方要請のために特に政府から代表団、視察団を出しまして、残った国に対して強力に三十五条援用を撤回するよう働きかける予定に相なっております。
  107. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 それから、これは同じ逆特恵の問題ですが、先日の答弁では、逆に特恵という内容自体明らかでないけれども、できる限りそれは考えたいという話があったわけですが、その逆特恵をやっているEECのヤウンデ諸国十六カ国と、東アフリカの三国、そのほかの国々がございます。また英連邦で十一カ国の逆特恵をやっている。その内容をこちらでは詳しくわかっていないようなんですけれども、これについての基本的な態度というものが、逆特恵はないようにしたいと言っていて、実際問題としての行動はどういうふうにとらえているのかぼくはよくわからない。この点については基本的にどういうふうに持っていくおつもりなのか、これは大臣お願いします。
  108. 赤羽桂

    政府委員(赤羽桂君) 逆特恵の問題につきましては、前回必ずしも御説明が十分でなかったかもしれないわけでございますが、いわゆるガット上は、いわゆる一般特恵前から、ずっと昔から宗主国と植民地との関係ということで、いわゆる既存特恵としてあるわけでございまして、ガット成立時にもうすでにそういうものがあり、ガットといたしましては、そういう既存特恵を必ずしもすべてその時点以降はいかぬというような態度が、はっきりとその当時とれなかったというような事情もございます。その当時ありましたやつで、したがいまして、逆特恵の中でありました部分、たとえば英連邦特恵あるいはフランスの一部につきまして、ガット上は黙認というか一応認めているかっこうに相なっているわけですが、その逆特恵なるものが、この前御答弁申し上げましたとおり、一般特恵の理念とは隔たること非常に多いもので、むしろ逆のものでございます。非常に閉鎖的、差別的なるものでございまして、かようなものは、今後世界貿易拡大、自由無差別の理念から申し上げますと逆行することは明らかであります。かようなものにつきまして、第二次の国際ラウンドもこれから開かれるということでございますので、そういった際に、これは日本だけ、一国だけ特に強力にやりましてもなかなか効果があがらないものでございますから、ガット参加国全体を通じまして、こういったものの撤廃方を強く要請してまいると、かように考えております。
  109. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 最初、関税関係全部お聞きしておきたいと思います。  すなわち、先日中国産の生糸をイタリヤ産と偽って輸入して関税差益をもうけようとしたいわゆる伊藤忠の問題であります。関税法百十条違反、これについて現在までの調査の結果はどういうふうになっていますか。
  110. 赤羽桂

    政府委員(赤羽桂君) 御指摘のとおり、このわが国の輸入業者がイタリアから輸入をいたしておりますところの生糸のうち、中共原産であるという疑いのあるものが昨年十月末発見をいたされております。現在これにつきまして横浜税関等において調査を行なっております。現在調査中でございますので、詳細を申し上げるのは控えさせていただきたいと存じますけれども、たまたま発見された以外のものにつきまして、あるいはまた同種の事例があるおそれがありますので、そういったものにつきましても調査を進めている段階でございます。
  111. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 詳しいことはよくわからないのですが、いまの御答弁では。いまほかにも類似の商品がある、他の輸入商品というようなものがある、そういうケースが考えられるということですが、それについて他の輸入商品というのはどういうものがあるのかということ、それが一つ。  もう一つは、今後こういうケースというのがこれから先もいろいろな面で起きかねないわけでございますけれども、そういう点で将来の対策、この二つを伺っておきたい。
  112. 赤羽桂

    政府委員(赤羽桂君) 他の類似の例と申し上げましたのは、商品は生糸でございますが、その生糸につきまして類似の例があるのではないか、そのような意味でございます。ほかの商品ではございません。それが一点でございます。  それから今後の問題についてのお尋ねでございますが、これは犯則事件として当然いま調査をしているわけでございますが、関税政策全般から申し上げまして、いろいろ技術的にこまかな問題がからんでおります。たとえば原産地の認定をいかにするかという問題もからんでいるわけでございますが、原産地をA国ならA国のものだと認定をするにつきましては、世界的にいろいろな問題があるわけでございまして、ガット上もまだ世界的に統一的な基準もない。日本につきましては、いわゆる品物が変わった場合と、変わった場合とは何かと申し上げますと、先ほど申し上げましたような分類表の背番号が変わった場合と、こういうようなことにしておるわけでございます。したがいまして、この中共からイタリアを経由して日本に入るといった場合に、イタリアにおきまして何らかの加工が行なわれております場合には、これは適法な行為になるわけでございますけれども、その何らかの加工というのが、いかなるものか、何らかの加工であって、その結果番号が変わるか変わらないかというようなところがまた一つのポイントになるのではないかというようなことで、いろいろと技術的にむずかしい問題がございます。さような点を十分踏まえまして、何ぶんにもいまこれ調査中でございますので、その全貌が明らかになりまして決着がついてから、こういうことがあったから、今後こういう関税行政上あるいは政策上考えなきゃならぬということでございますれば、それに即応いたしまして一また考えるというようなことに相なるかもしれません。現在この犯則事件として調査中でございますので、いま直ちにこれが当然その決着がついたという前提で御答弁申し上げるのは一切控えさしていただきたいと思います。
  113. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いわゆるどの程度の加工かということは、一つのむずかしい問題だと思いますけれどもね。こういうことがたびたび行なわれるというと、これは非常に問題だと思いますから。  その次に、これは先日のこの委員会であったんですが、円の切り上げの問題であります。再切り上げの問題です。先日も今後二年間程度はないであろう。そういうことが答弁で出てまいりました。しかし先ほどからの質疑でも明らかなように、準備高は百六十五億ドルですか、当然今年中は二百億ドルになるだろうと、こういうふうに言われておりますと、これはどうしても、現在ドルの先物を見ても、一ドルがすでに三百円を割っているということになってきてますと、どうしてもこれは再切り上げという時期が二年間はないだろうなんというような状態ではいかないんじゃないかという気がするんですけれども大臣その辺の見通しはいかがでしょうか。
  114. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私は二年間はないだろうというようなことは言ったことはございませんが、通貨調整というものの効果が、ほんとうに国際収支にあらわれてくるというようなためには、一、二年の期間を要するというのが、これはみな共通の認識になっておりますので、したがって、通貨調整に参加した各国におきましても、昨年の暮れに通貨調整が行なわれたからといって、すぐに日本の国際収支が変化する、そうしていままでの黒字基調が変わっていくというようなことは、これは当分ないだろうということは、各国もみんな承知しておりますし、同時に米国の経済がよし上向くような方向にいったにしても、アメリカの国際収支の赤字はまだ今後相当期間続くだろうというようなことは、各国とももう見通しておることでございまして、したがって、いま通貨調整以後の最近の情勢というものに対して、すぐに日本に円の再切り上げを迫るというような空気はどこにもございませんし、したがって私は、日本側からするんでない限り、またがってに一国でできる仕事じゃございませんから、したがって、この多国間通貨調整をすぐに変更する事態というものは当分来ない。また短期的な情勢変化によってどうこうすべきじゃないということを各国も皆承知して、この通貨調整の成果をひとつお互いに維持、守ろうということで、各国とも金利政策あるいは為替管理政策をそれぞれとっているときでございますので、したがって私は、円の再切り上げというようなものは、当分ないと考えて差しつかえないというふうに思います。これはいろいろそういう意見が出て不安がっているような傾向が見られますが、これは不安があるという、いたずらに不安がる必要はないというふうに私は考えております。
  115. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 それでいわゆる八項目に代表されるという方策でありますけれども、その中でいろいろ外貨対策を打たれているわけですけれども、それが実際はどうかというと、昨年の七月に行なった海外不動産や証券の購入の自由化、これについては、購入した不動産の転売は禁止をするというような歯どめがある。それからことしの二月に行なった貿易を除く海外送金は原則として自由化となった、貿易外の取引に限られて。物を買ってはいけないという購入制限という、一種の購入制限というのがついている、輸入のですね。  さらにこの四月から行なおうとしているというんですか、外貨集中制の廃止の問題も、大蔵省の認可が必要である。こういうふうになっている、いわゆる一面で円のいま大臣が言われた見通し見通しとしても、やはり国内としては、いわゆる再切り上げというものを防止する上からも、もう外貨減らしの対策を考えなければならないわけです。そういうふうにいま一つ一つ見てみても、ほんとうの外貨対策になっているんだろうかということをちょっと考えられるわけです。これはただのゼスチュアに終わっているのではないかというように考えられるのですが、そういう点もちょっと突っ込んでいく必要がないかどうか、その点伺いたいんですが。
  116. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) ただいま御指摘の点で、若干一般的に誤解をされているといけませんので、その点をちょっと申し上げたいと思いますが、ただいまあげられました三つの点、不動産の自由化はしたけれども、転売が禁止されているということでございますが、これは実は若干事実と違っておりまして、現在不動産の自由化をいたしましたときに、若干の留保と申しますか、これをやる必要があるということで考えましたのは、要するに投機を目的で直ちに転売する。そういう目的で不動産を取得するというのは、これはやはりそれぞれ土地を買われます国から見ますと、非常にやはり問題になる点でございますので、こういうことについては、ひとつすべて自由ということにはすべきではないのではないかということで、投機目的のものはやはり自由にはできない。こういう趣旨でございまして、転売がいかぬということではございません。その点をちょっと訂正させていただきたいと存じます。  それから第二の、千ドルまで貿易外送金を自由化、自由化と申しますか、手続の簡素化をして、自由に送れるようにいたしたわけでございますが、これに物が入ってないという点は確かに御指摘のとおりでございまして、この点は実は輸入の自由化、物の面との関連がございまして、この点はとりあえずともかく貿易外のところで自由に送れるようにしようと、こういう趣旨で急ぎました関係で、まず簡単にやれるところからやったわけでございます。  それから第三番目の、集中義務の撤廃に関連いたしまして許可が要るという点でございますが、この点は実は集中義務の廃止につきましては、現在関係の政令、省令その他鋭意検討中でございまして、近いうちに実施に移したいと作業いたしておりますが、おそらく集中義務の廃止をいたしますと、ドルなり外貨で国内で持っている方が、それをそのまま銀行に預金できる。そのときに預金するのに一々許可が要る、あるいは払い出しをするのに許可が要るのではないか。こういうことであろうと思いますが、われわれのほうといたしましては、そういう面について一々許可を要するというようにはいたしたくないわけでございまして、そういう点につきましては、これは非常に煩瑣でございます。せっかく自由化したという点のもうメリットはございませんから、そういう点はそういうことにならないようにいま検討しております。
  117. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 これから先、いままでの外貨減らし策が、私どもから見ると十分でないという感じがするわけですけれども、そういう点で先ほども質問があった特恵等を見てもすぐにシーリングに達してしまって、翌々日には特恵が停止をされるというようなことが行なわれていて、だいぶ海外の国々から不評を買っているという指摘があったわけですけれども、そういう点現在特恵をやっている中で、ストップされているのはどのくらいあるんですかね。
  118. 赤羽桂

    政府委員(赤羽桂君) 特恵の品目のうちストップされているのは幾つあるかと、こういうような御質疑でございますが、シーリングワクに達しまして、ただいま特恵を停止をいたしておりますもの、これが一月三十一日現在でございますが、三十二品目でございます。それから一国からの輸入が二分の一以上をこえたというやつ、特定の国からの輸入をストップしているのがございますが、これが二十九品目と、一月三十一日でさようなことになっております。
  119. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 これはいわゆるシーリングが非常にきついという指摘ですが、これはさっきの答弁でも、若干翌々日のものを翌々月に持っていくというふうに、チェックをしていきたいという話があったのですけれども、これは全面的にそれでいく気なんでしょうか。
  120. 赤羽桂

    政府委員(赤羽桂君) ただいまの段階におきましては、全面的に持っていくということは考えておりません。半年の実績によりまして、先ほども申し上げましたように、日別、月別の間に微調整を行なう、かようなたてまえでございます。
  121. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 その微調整というのでは、もうはっきり申し上げてLDC諸国では納得できないじゃないですか。その辺の感覚はどういうふうにとらえられておりますか。
  122. 赤羽桂

    政府委員(赤羽桂君) この特恵ワクのシーリング全体の問題につきましては、先ほども御答弁申し上げましたところでございますが、あえて微調整と私申し上げましたが、そのほか先ほど申し上げましたとおり、いわゆる先進国輸入分の一割というやつを一年シフトすることによっても、全体約三割近くのワクがふくれる。かように申し上げているわけでございまして、そこのところはやはり実施状況を見ながら漸進的に緩和をしてまいる、こういうことでございます。根本的に、たとえば、一九六八年の基準年を変えるというようなことは法律の改正を要することでもございますし、一応昨年発足をいたしましたときには三年ごとのレビューということになっているわけでございますけれども、今回のUNCTADの会議におきましても、そこら辺のところが大きな議論になるかと存じます。そういった議論の過程並びに特恵の今後の実施状況並びに国内に対しますところの影響をも十分に見ながら、特恵関係の改善については考えてまいりたいと存じます。
  123. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いわゆる外貨減らしの一番大きな問題は、日本の片貿易の是正ということが第一に必要だと思うのですね。たとえば、アメリカとか、そういうほうからと、開発途上国と、そういう両面の片貿易に日本がなっているという感じがある。そういう点を是正していかないといけない。一方で貿易と資本の自由化の問題関税の引き下げ、特恵関税の供与、輸出の優遇措置の廃止、非関税障壁の撤廃、対外援助の推進こういうような外貨減らしの問題が出てきているわけですけれども、これがそんなに効果をあげていないから、まだこうやって議論にもなるし、問題になるのだろうと思う。そうすると、これからのわが国の貿易のあり方を、これは相当考えていかなければならないんじゃないかということがある。それが根本を変えなければ、はっきり申し上げて小手先の外貨減らしをやっていたのでは間に合わないんじゃないかという感じがするのですが、その点は大臣はどういうふうな考えですか。
  124. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 何といっても、一番外貨対策として効果のあるものは不況の克服でありまして、これが解決すれば対外均衡は今後も大きく直ることでございますので、これが一番政府が力を入れなければならない問題だと思います。そのほかについては、いま言われましたような輸入をふやす政策、それからもうあらゆることを、たとえば八項目に沿ったすべてのことを、もう一歩促進するという立場で、総合的にこの政策の実施をやらなければならないと思っております。同時に、それでもなおかつ不況の回復がおくれているというために、依然として黒字基調が続いている。それが外貨の異常な蓄積になってきておるのでありますから、蓄積された外貨の有効な活用ということが同時に必要になってきますので、この活用策についていろいろ考えておりますが、活用のしかたの一つとしては、やはりそれが輸入をふやすということに役立つ活用のしかたということもいろいろ考えられますので、その点についてのいろいろ考え方を各省問でやっておりますが、一部意見が一致して実施に移し得る問題もございますが、もう一歩堀り下げて対策を立てなければならないという問題も残されておりますので、これらの問題を解決しますということ、一応たまった外貨の活用策ということも四月中にはほとんど全部この対策ができるというところまでこぎつけられるというふうに思っております。
  125. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 四月中には対策ができるというので、それを見ながらまた質問したいと思いますが、一つだけ伺っておきたいのですが、いわゆる貿易自由化の中で、わが国がガット違反をしていると言えば言えるわけですけれども、残存輸入制限、これの脱却をもはからなければならない。この点のところがはっきりしないと、やはり輸入といってもなかなか骨ではないかという感じがするのですけれども、その点についてはこれは政府全体の問題かもしれませんけれども大臣はどうお考えになりますか。残存輸入制限の品目撤廃の問題です。
  126. 赤羽桂

    政府委員(赤羽桂君) 残存輸入制限につきましては、このただいまの関税定率法改正法案が成立した暁におきまして約三十四品目ということになります。このあれは、各国先進国と比べまして決して遜色のないものであるということを御説明申し上げたわけでございます。ところで、この残りましたいわゆる三十四品目でございますが、こういったものにつきましても、さらに引き続き自由化を進めてまいるという基本的姿勢でございます。ただ、だんだんやはり残ってまいりますものは、それだけにハードな商品が多うございます。特に農産物関係につきましてそういった傾向が強いわけでございますけれども、そういった点につきましても、国内産業の動向、競争力の充実、体質の合理化に即応いたしまして、進んでこの自由化をはかってまいりたいというぐあいに考えておる次第でございます。
  127. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 大臣、例の日中貿易の問題ですが、日中貿易の決済の方法として、具体的な問題として円元決済方式という、その問題が大きくいま浮かび上がってきているわけですけれども、ことしの春の交易会から実施されるんではないかというような、そういうような観測もされているわけであります。この円元決済ということになると、これは政府の承認ということが必要になると思うのですけれども、これは大臣としては認める方向で御検討中なんでしょうか。それはまだ検討なさっていらっしやらないのか、どういう考えでしょう。
  128. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは両国関係者でこの問題の検討をしているようでございますが、この話がきまるようでございましたら、私は日中貿易がこの決済手段の問題でこれが阻害されるというようなことは好ましくありませんので、両国関係者の意見が一致するというようなことだったら、これは認めていいんじゃないかというふうに思います。
  129. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 それから最後に一つだけ。  いわゆる完成品の輸入を促進しよう、こういうことから関税体系の洗い直しということを検討しているということなんで、先ほどもちょっとその話に触れておられましたけれども、その基本的な方向ですね、それはどういうようにお考えか、お聞きしたい。
  130. 赤羽桂

    政府委員(赤羽桂君) 現在の関税率、関税法の体系が、原料品が非常に安い、あるいは無税である、それから半製品になりますとちょっと上がる、それから製品になりますと高くなる、こういうようなことになっておるわけでございます。かような関税率体系ができ上がりました理由というのは、申し上げるまでもなく、これは日本がやはり貿易立国、加工貿易によって立国をいたすということで、もう明治の初めからかような思想が出ておったわけでございまして、現在の関税法の体系の中に、現在の関税法の体系は昭和三十六年に大改正をやっておるわけでございます。このときに、もうはっきりとそういう思想が定着をしておるわけでございます。この三十六年の関税率の大改正と申しますのは、戦後初めて腰のすわった大改正でございまして、当時いわゆる国際化と申しますか、当時は開放経済、こう言っておったのですが、それに対処をするために自由化に初めて手をつけ始めたわけでございます。それに対処しまして、とにかく国内産業保護のためそれを上げると、こういうようなことが直接の動機に相なっているわけでございまして、それと同時に、当時の大改正のいろんな眼目を見てまいりますと、将来発展する日本の産業、それからまだ幼稚産業と申しますか、発展産業、幼稚産業、それからまた停滞産業、斜陽産業と、これすべて保護をするという思想に立っておる、すべての産業について保護をすると、こういうふうな思想に立っておるわけでございますが、その後十年間に、御案内のとおり非常に日本の産業力、経済力というものは飛躍的に増大をいたしました。輸出立国を国是といたしておりましたけれども、いまは全然逆に相なっておる。それから日本の産業も非常な国際競争力を持っていると、こういうようなことでございまして、その点から、当時そういった古い思想に基づきました体系を今後見直そうではないかというのがわれわれの気持ちでございます。もちろんこの十年間においてさような努力を全然いたさなかったということではございません。  その次に一番大きな改正といたしましては、いわゆるKRの一括引き下げというようなこともございまして、順次その手直しは行なっているわけでございますけれども、ひとつそういった立場から、大きな目でこの体系をどう考えていくかという問題意識は、ここ最近一、二年の間でございます。そういった観点から、競争力のついたもの、あるいはいま外貨減らしの立場から輸入を促進をしていこうといった観点から、いままでのただ単に国内産業保護という観点を離れまして、新しい政策の立場に立って、足下もしくは中期の関税政策として、ただいま関税率審議会で御議論を願っている、かようなわけでございます。
  131. 渡辺武

    ○渡辺武君 提出されております関税定率法改正案での関税引き下げ品目の中で、おもなものを見てみますと、大豆、乗用車、七面鳥などのアメリカの関心品目がおもなものになっております。で、これは昨年五月以来の円切り上げ回避八項目の中で抽象的に述べられており、さらに八月の日米貿易経済合同委員会の共同メッセージの中でアメリカに約束されたものであります。別のことばで言えば、これはアメリカの要求に従って、アメリカのドル防衛政策に協力する対米追随的なものだというふうに思われますけれども、その点どうお考えでしょうか。大臣ひとつ、あまりおいでにならぬので。
  132. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これはもう御承知のように、今回の関税引き下げは、対外経済政策の推進という見地と、国内で生活関連物資の関税引き下げという見地から行なわれたものでございますが、当然各国の関心を持った品目についての検討は加えてございます。で、ひとりアメリカだけではございませんで、他の国に対しても関心品目についての考慮は加えてございますし、また本年でございますか、今年度の改正のとき、この委員会でも附帯決議がつけられましたが、中国に対する関税の格差の解消というような問題も、この機会にやはり考えるべきであるということで、今度の改正の中にはこの問題が盛られておりますし、そういう意味で、ひとりアメリカに対するための関税改正というわけではございませんで、もちろん去年の八月から特に対米の貿易交渉が行なわれておりました関係で、当然こういう問題が議題になりました以上、アメリカの関心に対する考慮は十分いたしておりますが、アメリカのための関税改正という性質のものでは今度ないということは、三百何種類かの問題にわたっていることでも十分御理解いただけると思います。
  133. 渡辺武

    ○渡辺武君 対米追随的なものでないという御趣旨の答弁であったようでありますけれども、関税政策は、一国の主権に属することでありまして、私どもそうあってほしいとは思っております。しかし、この問題の起こった根源を考えてみると、そうはなってないんじゃないかというふうに思います。申し上げるまでもなく、この円問題を含む国際通貨危機の一番大きな根源は、世界基軸通貨のアメリカのドルの危機によって、またドル危機の一番大きな原因は、ベトナム侵略を中心とするアメリカの戦争と侵略の政策にあるということは、これは大臣御自身も私は認めておるところだと思います。ですから、国際通貨問題を解決する根本の政策は、いま申し上げたようなところを解決することが最大の条件だ、これも大臣御自身も認めておるところだと思います。  ところが、昨年八月十五日のニクソンのドル防衛策、あれを見てみますと、アメリカの責任は全部たな上げにして、そうしてもっぱら他国の犠牲によってドル危機を解決するというのが根本の政策になっておるようです。特にニクソンは、問題が、対外軍事援助あるいは経済援助、その他の海外軍事支出に最大の根源があるということをすっかり隠して、そうして貿易問題を前面に出して、国際収支の黒字国を貿易上で追い込んでいこう、そこで解決をしていこうという政策をとってきたわけです。輸入課徴金制度をつくって、あるいはまたドルと金との交換性を禁止するというような攻め道具を使ってまでそういうことをやってきました。ところで日本政府はそれにどういう態度をとったのか、ベトナム侵略やめろということは公式にはたったの一回もアメリカには申し入れていない、こういうような状況で、ニクソンの方針に従って、そうして日米貿易経済合同委員会で関税の大幅引き下げ、その他を約束してきたということが実情じゃないでしょうか。これは対米追随的な政策だという以外にないと思いますけれども、どうでしょうか。
  134. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 通貨問題は、御承知のとおり、ドルから起こった問題でございますので、したがって、国際通貨の安定をはかろうとするためには、やはりまずドルの安定をはかるということがどうしても必要だということから、国際会議が持たれて、各国ともその面に協力するということから始まったことと思います。その場合に、結局ドルを安定させ、国際通貨の安定をはかるというためには、単なる通貨調整だけではできない。やはり貿易問題もある、いろいろな解決も必要であるということを認めて、日本は日米間の交渉に入るし、またEC諸国はEC諸国の通商交渉を同時に持ったということは事実でございますので、その過程において、いろいろ提起された問題については、両方とも解決できる問題は解決するという態度をとりました。それが関税改正の中に一部あらわれてきているということは、これは事実でございますが、しかし、今度の関税改正の問題が、いま言ったように、米国云々という性質のものというふうには見る必要はないだろうと私は思います。
  135. 渡辺武

    ○渡辺武君 問題は、最大の根源であるベトナム侵略戦争を、これを国際通貨安定のためにもおやめなさいと、アメリカに公式に要求するかどうかというところに重大な問題があると思う。そのことを公式に一言もおっしゃらないで、そうしてアメリカのドル防衛策に協力するということになれば、客観的にはベトナム侵略に協力するということにならざるを得ないと思う。この点は私いままで何回も大臣に申し上げておりますけれども、重ねてこの場で申し上げておきます。  時間がないので質問を先に移しますが、いま政府は新しい国際的な関税引き下げ交渉を提唱しているそうであります。新聞などによりますと、ジャパンラウンドというようなことばで呼んでいるそうでありますが、この政府の提唱の内容ですね。方針、この辺はどういうことなんでしょう、お聞かせいただきたいと思います。
  136. 赤羽桂

    政府委員(赤羽桂君) ジャパンラウンド、第二次ケネディラウンドにつきましては、午前中の答弁でも申し上げたわけでございますが、去る二月十日並びに十一日の日米、アメリカ・EC共同声明によってその一歩を踏み出したとわれわれは考えているわけであります。ただしこの内容がいかなるものであるか、具体的な品目がどうなるかということにつきましては、まさにこれからガットの場において、まずそういった等二次国際ラウンドの場にガット加入国を全部入れる、加入してもらわなければ国際的にできないわけでございます。その緒についているという段階でございまして、内容をどうするかということは——概括的には申し上げられます。これは共同声明等にもはっきりと書いてあるわけでございますけれども、関税障壁並びに非関税障壁というものにつきまして農産品、工業品の全般にわたってその検討、引き下げ並びに非関税障壁の撤廃をはかる、かようなことで方向づけはなされておりますが、いよいよこれを具体的にそれではどこの国のどういう制度、どういう関税をいかに下げるか、どういった制度をどう撤廃するかということにつきましては、これからいよいよ幕が開く、こういう段階でございます。
  137. 渡辺武

    ○渡辺武君 関税障壁及び非関税障壁ともに問題にするというこのおことばでありますが、いま日本にとって非常に重大な問題は、アメリカが非関税障壁をますます強めているということだと思います。この問の繊維問題でもこの点ははっきりあらわれていると思うのです。ところが一方でイギリスのEC加盟で拡大ECがいよいよ発足する。したがって、拡大ECのいわば相対的に高い関税制度、このことがアメリカにとっては非常に重大な問題になってくる。これは日本にとっても大きな問題でしょうが、それ以上にアメリカにとって重大問題だと思う。日本政府は、アメリカの非関税障壁の撤廃を問題にするよりも、むしろアメリカと一体となって、さらに言えば、アメリカのいわば先兵の役割りを果たして、むしろ関税障壁のほうを大きな問題にしていくのじゃないかというふうに考えられますけれども、その点どうでしょうか。
  138. 赤羽桂

    政府委員(赤羽桂君) アメリカの関税、非関税障壁のほう、あるいは日本もある。またECもあるわけでございますが、どの国の関税障壁に、どの国からどういうふうに問題にされるだろうかということは、まさにこれからの国際ラウンドを見なければわからないわけでありますけれども、はっきりと申し上げられますのは、御指摘のとおり第一次のいわゆるケネディラウンドと比較いたしまして、これからの第二次国際ラウンドの特徴と申しますか、事情の変化と申しますか、そういったものを申し上げますと、第一次のケネディラウンドのときには、これは関税障壁が中心でございました。非関税障壁につきましては一、二の協定ができ上がっているわけでございますけれども中心が量的に、質的に、どちらかというと、これは関税障壁、関税率の一括引き下げというのが中心であったわけでございます。第二次の国際ラウンドにつきまして、さような点から申し上げますと、関税水準の引き下げということも引き続き議題になると、これはもちろん問題がございませんが、非関税障壁の問題も第一次ケネディラウンドに比較してより大きく、より深く取り上げられるということは想像するにかたくないところであろうかと存じます。
  139. 渡辺武

    ○渡辺武君 私はいままでの日本政府の対外経済政策が非常にアメリカ追随的であるということからいま申し上げたような疑問を持っているわけです。したがって、重ねてそのことははっきり申し上げておきます。おそらく国際舞台でアメリカと一体となってECの問題は問題にするけれどもアメリカの非関税障壁のことはあまり出そうとしないというような態度をとらないように、はっきりひとつ申し上げておきたいと思うんです。
  140. 赤羽桂

    政府委員(赤羽桂君) アメリカの非関税障壁につきましては、今回日米の通商交渉の過程におきまして、当方から種々申し入れを行なっております。それで最終的な通商交渉の結果、これは相互の往復書簡ということになっておりますが、その中にアメリカ側が今度の通商交渉の結果としまして約束したのが、非関税障壁の関係だけに限って申し上げますと、たとえば、アメリカ関税法の四百二条のa項の問題でございますとか、いわゆる有名なASPの評価の問題、それから反ダンピングの問題でございます。そういった点につきまして、あるいは国会、議会に直ちにそのための法案を出すとか、あるいは引き続き両方の専門家で協議をやる、たとえばダンピングの問題はすでにワシントンで始まっておるようでございますが、そういった点につきまして日本側も非常に強力に申し入れて、その一部分、あるいはかなりの部分だと申し上げてよろしいかと思いますが、その両方で協議し、もしくは向こうが約束したものはすでにあるということを申し上げておきます。
  141. 渡辺武

    ○渡辺武君 それでは質問を次に移しますが、国際通貨制度の問題について一、二これは大蔵大臣から御答弁いただきたいと思うんです。  昨年十二月のスミソニアン会談できまった国際通貨問題についての国際会議が三月末から始まるというふうにいわれております。これについての日本政府の基本方針は一体何なのか、またどのような日程になっているのか、その辺もあわせて伺いたいと思います。
  142. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) まだそういう日程も何も全然関係国できまっておるわけでも何でもございません。
  143. 渡辺武

    ○渡辺武君 ちょっとおかしいですな。この問題について、これは新聞報道で私読んだだけでありますが、十五日にアメリカのコナリー財務長官が演説をしております。また二十日にはボルカー財務次官が記者会見をやっておりますし、コナリーも単独記者会見をやっていろいろ述べております。この内容を見てみますと、非常にこれはきわめて重大です。おそらく日本政府にも公式、非公式に情報が入っていると思いますが、その内容はどういう内容なのか。またそれに対する大蔵大臣の意見はどうなのか、この辺を伺いたいと思います。
  144. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 事実の問題でございますので、事務当局から答えさしていただきます。  ただいま御指摘の三月十五日のコナリー長官の演説、この中で御指摘のような問題に関係する部分と申しますと、おそらくこの国際通貨制度改革の交渉の場の問題であろうかと存じます。よくフォーラムの問題というふうにいわれておりますが、これにつきましてコナリー長官は、十カ国蔵相会議では必ずしも適当でない、またIMFは大き過ぎる、この点で何らかの新しい組織が考えられなければならないが、米国はまだはっきりした考えはきめていない。そしてボルカー次官にこの問題について——と申しますのは、どういうフォーラムで議論を今後進めていくかという議論の場のことでございますが、この問題について各国政府と話し合いに入るよう命じたと、こういうことを言っておるわけでございまして、それが何か早急に国際通貨に関する会議を三月末から始めるというように伝えられているとすれば、その点かと存じますが、内容はただいま申しましたとおり、特にどういうふうな場で、新しい通貨制度の問題の議論を進めるべきかについて、各国と相談を始めるようにボルカー次官に命じたということでございます。具体的にわがほうに対しましてこういうことをすぐ始めたいというようなアプローチは全くございません。
  145. 渡辺武

    ○渡辺武君 それはきわめて問題のつかまえ方が甘いと言っていいのか、鈍感と言っていいのか、いまの御答弁聞いてびっくりしましたよ。なぜかといいますと、あの新聞報道ではっきりわかりますように、アメリカは自分の責任はたな上げして、そうして国際収支黒字国の犠牲で今後の国際通貨問題を解決しようとしているということは非常にはっきりしている。これは昨年八月十五日のニクソンのあの政策、その点の延長線で考えてみれば、おそらくこれは真実をうがっているだろうというふうに見られます。特にコナリーが二十日記者会見した中で、黒字国に外貨準備の一部をIMFに強制的に拠出させるというような案を語っているといわれております。これはIMF協定に徴罰制度を盛り込もうとするものだともいわれておるし、さらにアメリカの財務省は、黒字国の為替を強制的に切り上げるようにする案を検討中だといわれております。とんでもない案だと思うんです。先ほど申しましたように、何よりもアメリカがベトナム侵略戦争をはじめとする戦争と侵略の政策をやめること、そうしてまたドルと金との交換性の停止、これをやめること、これがいまの国際通貨危機を解決する最も重要な条件だと思うんです。政府としてこういう問題をアメリカの責任で解決せよというふうに申し入れるお考えがあるのかどうなのか、その点をひとつ大蔵大臣に伺いたいのです。
  146. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 別にまだこの問題で申し入れがあったわけではございませんし、私はいまおっしゃられるようなことをかりにアメリカ考えておるといたしましても、多国間の協議においてそういうものが合意されるということは、実際においては先般の経験に基づいて簡単にできることではございませんし、そういう御心配は私はなくて済むというふうに考えています。
  147. 渡辺武

    ○渡辺武君 時間がないので簡単にしますけれども、もう一つコナリーが言っていることで重要な問題がある。それは、ドルと金との交換性回復については、早まった約束をするつもりはないとはっきりと十五日の演説の中では言っているそうであります。特に二十日のボルカーの記者会見では、ドル交換性回復よりも先に、米国の国際収支を黒字に転換できるような制度をつくる必要があるということもはっきり言明しておるそうであります。つまりこのことは、ドルと金との交換性停止というのをこれを責め道具にして、そうして先ほど申しましたような、黒字国の犠牲で解決するという方向にもっていこうという政策であるということは私ははっきりしていると思うのです。したがって、いまの国際通貨不安の一つの大きな原因であるドルと金との交換性の停止、これをやめるべきだということを積極的に御主張なさるのかどうか、これを一つ伺いたい。  それからもう一つは、コナリーもボルカーもともに通貨交渉に貿易問題をからめてやろう、そうしていわば通貨問題を責め手にして、貿易問題を有利に解決していこうという方針を示しております。おそらく先ほど私問題にしましたガットでの関税引き下げ交渉もこの一環としてからめてくることは、これは明らかだというふうに見なきゃならないと思う。またコナリーは、IMF理事会提唱の二十カ国蔵相会議を支持するとして、この会議に発展途上国の赤字国、国際収支赤字国、これを含めて交渉を有利に導こうという案も、先ほど国際金融局長も言われましたけれども、そういうことを提唱しているそうであります。私は、国際通貨問題に貿易問題をからめたら、これは日本に不利になることは明らかだ。そうしてまた、いまの国際通貨問題を解決する正しい道でもこれはないだろうというふうに思われます。貿易問題をからめるということは、私は拒否すべきだと思う。そうして先ほども言いましたように、アメリカ自身の責任でドル危機を解決するということを正当に主張すべきだと思います。  以上二点について、大蔵大臣の御意見を伺いたいと思います。
  148. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 通貨問題の解決に貿易問題をからめて解決の道をはかったということは、もう先般の調整においてもはっきりしている問題でありまして、この問題は一応結論がついて、この通貨調整ができたということでございます。したがって、今後さらにこれをどうするかという問題につきましては、あるいは各国ともそれぞれいろいろ国益に基づいたことを考えることであるかもしれませんが、しかし、国際会議の場というものは、そう簡単なものではございませんで、それぞれ各国とも、これは自分の国益に基づいた意見を主張する場でございますから、そう簡単に一国の、今後意図どおりに動くというようなこともございませんので、その点はそう心配されるような方向には私はならぬだろうと思っております。
  149. 渡辺武

    ○渡辺武君 ドルと金の交換性回復について即時要求されるかどうか。
  150. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは今度の通貨調整のときに、この問題はあとの問題にするということで、あの問題が片づいたいきさつから見ましても、これは今後の問題としてどうすべきかというのが、これからの通貨会議の大きい議題になるものでございますが、したがって、この問題を中心にいろんな相談がこれから行なわれることと思います。その場合に、この交換を回復させることは、これは各国の主張でございますので、この交換を可能にするためには、またいろんな前提的なものが考えられるかもしれませんし、そういう問題をからめて、終局的において、これを可能とする方向への各国の努力がなされるものと私は考えております。
  151. 野末和彦

    ○野末和彦君 脱税についての疑問と、それから時間がありましたら交際費の課税を強化するという問題をお聞きしたいと思います。  国税庁からもらいました資料で見まして、いわゆる申告所得税調査実績というのがありまして、これは本格的に脱税というんじゃなしに、課税所得の課税漏れとかそういうのを全部含めてという話でしたけれども、こういうのを毎年発表される分を見ておりますと、いつも同じような業種が悪いほうに出ているんですね。たとえば医者とか、あるいは不動産、建設関係とか、あるいは水商売なんかですか、何かいつも似たようなのが脱税をやっている。しかも、年々これは大型化して、どうも悪質化しているような報告も出ているわけです。   〔委員長退席理事柴田栄君着席〕  そこで、そういうのを見ますと、一般の正直な納税者から見ると、実におもしろくないわけですね。しかも脱税なんというのはやり得だというようなことを考えている人もいるくらいで、そういう点、いわゆる脱税を防止するための何か対策というのはいまどういうことをやっていらっしゃるんですか。これは短くしてひとつお願いします。
  152. 江口健司

    説明員(江口健司君) いろいろ対策がございますが、一番積極的な行政と申しましうか、きつい面では査察という制度がございます。これにつきましても連年事務量の増加がございますが、体制もそれに対応して整えまして、件数等につきましてはここ数年来若干の伸びを見ております。そのほかに、一般の調査の中では、特別調査という方式を取り入れまして、これはもうすでにかなりの年数になりますのが、一般の調査の三倍程度の日数をかけて、この脱税と思われる事案の摘発を行なうというやり方をしております。  それから、一般の調査につきましては、御案内のとおり納税者の数が、法人、個人ともに非常に伸びております。しかしながら一方、申告の状況もここ二十数年来の傾向を見てまいりますと、われわれは、一応申告納税制度が定着したという時期に差しかかっているように受け取っておりますが、その中でも、特に問題があるような業種あるいは問題があるような法人、個人等につきましては、資料その他によりまして、一般調査の中で非違を確かめていくというやり方をしております。ただ私どもには、人数あるいは時間に制限がございますので、納税者の数がふえたり、あるいは経済の状況が複雑になり、広範囲の取引が行なわれるということになりますと、勢い事務が複雑になってまいります。しかし一方では、先ほど申しますように、申告の状況が経済の成長率をかなり上回る程度の申告の姿が出ているといったようなことから、特に重点的な調査を行なう必要があるという半面、一般的には税法の改正その他でなかなか理解しにくい面が制度面でございますので、できるだけこの面につきましても、広報ないしは指導という形で、業界の団体あるいは地方公共団体あるいは法人会、青申会といったような関係の団体を通じまして、指導ないしはPRということにつとめて、適正な申告が行なわれるようにつとめているわけでございます。
  153. 野末和彦

    ○野末和彦君 それくらいはやっていると当然思いますし、それでよく査察とか、あるいはいろんな点で成果をあげているということもわかんですよ。ですから、国税庁が努力していることはよくわかりますが、いずれにしても人数がたくさん要ると、人件費もかかる、日数もかかったり、それから指導とかPRといったってかなり甘いわけで、脱税する人はその程度のことでやめるとも思えないわけですね。ぼくは、もっと大臣としては、いわゆる根本的な対策についてお考えかどうかということがお聞きしたいわけです。たとえば、脱税したというのがわかったとき、何か罰金だけ払えば、それで終わればけっこう得をするとかいろんな例があると思うんですよ。罰則を強化するということについては何かお考えありますか。現在よりももっとこれを強化して、いわゆる選挙違反と同じで、結局やったってたいして罪悪感がないわけですね。そういう人間に対して社会的な制裁を加えようとか、そういう意味でこの罰則の強化について何かお考えですか。それとも、それについては全く考えていらっしゃいませんか。どっちですか、大臣
  154. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私の感じが少し違うかもしれませんが、私は非常に脱税の査察その他についてときどき陳情を受けるのですが、陳情を受ける限りにおいては、もう脱税を押えてもたいしたことはない。みんな平気でまたやるというようなことでございましたが、そうではなくて、なかなか、一ぺん脱税を押えられたら、これは簡単なことじゃなくて、その張簿は何カ月かにわたって押えられたり、それは実際において、けっこう商売ができなくて、とことんもう追い詰められるというようなことで、いまの制度では、国税庁から脱税を押えられたら、一ぺん押えられた人は、相当もう懲罰という意味では、きき過ぎているくらいきいているんじゃないかと思いますので、私はそれに対する罰則というのを、これ以上強化するというような感じは持ちません。できるだけこの脱税をなくするというために私は考えておって、ときどき国税当局と話すんですが、何か私は特殊な脱税者を保護するような印象を与えてはいけないと思って、しまいには私のほうが主張を弱めるんですが、私はいまの査察も、業界別にモデル調査をやって、その業界においては、どこに納税についての欠陥があるかというその点を見たら、その点を業界にも十分注意して徹底させて、その点についての脱漏のないような指導をするというようなことで、やはり脱税については私は指導という意味からの強化をやるほうがいいんじゃないかと考えていますが、いまのやり方を見ますと、ねらわれた人は——一定の業界で少数が査察の対象になるというときには、同じようなことを各業界がみんなやっておるのにかかわらず、たまたま対象になったそこだけがとことんまでやられるというようなことで、そういう点についてのひとしからざる不平というものが非常に多いと。ですから、やる場合には、もうサンプル調査一つのあれがわかったら、全般についてそういう点についての指導を強化するということであって、たまたまぶつかった人について、そこだけ徹底的に追及するというやり方が、何か少し税制の行政上私にはぴんとこないものがありまして、始終私は注意しているんでありますが、そういうような方向で、もう少し私は脱税を防ぐ行政をやっていきたいというふうに考えております。
  155. 野末和彦

    ○野末和彦君 それは当然でいいと思うんですね。罰則を強化したって何にもならないかもしれない。むしろ指導強化のほうとか、あるいは防止するための対策、そのほうが重大だと思いますけれども、しかし、大臣がおっしゃることが、きき過ぎてもうたいへんだというのが実情かどうかはちょっと疑問なんで、まあいずれ具体的な事実を持ってきたときに、これはあらためて聞きますけれども、その一つとして、指導強化といろいろおっしゃいますけれども、国税庁の実例を見てみますと、みんな例の隠し預金みたいなものがあるわけですね。そうすると、銀行にたいてい架空名義の預金とか、無記名とか、そういうものを持っていて、必ずそれが脱税につながっていると。中にはこの例の中にもありますけれども、銀行が脱税に協力しているというような例があるんですね、ここに。そういうのを見ますと、いわゆる銀行の裏預金といいますかね、隠し金が銀行にあると、これをほっといて、そして脱税をいけないというのも、これは筋が通らない。それで、やはり脱税につながるような銀行の架空名義の預金なり、無記名なり、こういうものはちょっと再検討すべきときじゃないか。むしろこういうのはやめるべきで、何のために架空名義や無記名の預金がいまだに認められているのか、実にわからないんですがね、これについてはどう考えるんですか。
  156. 江口健司

    説明員(江口健司君) 確かに査察事案並びにその他の一般の事案につきましても、すべてを銀行調査するわけではございませんが、たまたま重い事案について調査をいたしますと、御指摘のように、架空名義または無記名というものが、脱税のかわりのものとして置きかえられておるということが、かなり多うございます。したがって、われわれ税の執行する立場からいきますと、無記名ないしは特に仮装預金といったようなものにつきましては、この制度を廃止することが望ましいということを、関係方面には希望意見としてこう述べてきておったわけでございますが、なお一方では、これは銀行局のほうのお立場もあろうかと思いますが、預金者の秘密保護といったような関係から、制度論についてはまた税とは違った観点での政策を考える必要があるといったようなことで、その両者の行政目的といいましょうか、政策の目標といいましょうか、その辺の問題は、調和、調整の問題について具体的な事案等を通しまして、各その必要な時期時期に、関係の方面とは打ち合わせをしつつ、われわれの目的を達成する努力をしておるわけでございます。
  157. 野末和彦

    ○野末和彦君 大臣としては、いまの銀行の架空名義なり、無記名なり、そういう隠し金を便利に預ってくれる裏預金、これは大臣としては別に脱税という弊害があっても、それ以上のメリットがあってそのままにしておくようなおつもりですか。
  158. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私はあまりこの問題のメリットというのはないのじゃないかと思っているわけです。
  159. 野末和彦

    ○野末和彦君 ないのじゃないかというのはどういう意味ですか。これはいま廃止しても別にかまわないという意味ですか。
  160. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) やはりなくする方向で、将来考えて私はいいんじゃないかと思います。
  161. 野末和彦

    ○野末和彦君 そうしますと、いま国税庁のほうの答弁では、申し入れてもなかなかいろんな問題があってという話がありましたけれども、現在無記名のほうはいいことになっているのですか、たとえば、架空名義はだめだというのですか、この辺あいまいなんで私はよくわからないのですが、これはどっちなんでしょう。
  162. 江口健司

    説明員(江口健司君) 無記名のほうは、銀行局から御説明したほうが適当かと思うのですが、私の知っている限りで申し上げますと、無記名のほうは一応制度がございます。仮装名義のほうは、これは明らかに制度といわれるものがないはずでございますので、架空名義というものについて、当然やめるべきであるということは、銀行局当局はもちろんのこと、業界の銀行協会等にも再三、申し入れをしまして、あるいは御案内かと思いますが、各金融機関の店頭では、架空名義を使用されないようにという注意のビラ等も張っておられるわけでありますが、なかなか預金をされる方と、銀行のほうのそれを確かめる手段というものが、制度的にない面もございまして、必ずしも、銀行のほうは努力をしておると思いますけれども、結果的に見ると、まだ仮装の名義のものがかなりあるという実態かと思います。
  163. 野末和彦

    ○野末和彦君 これについてお聞きしたのは、要するに、脱税がいけないとか、そういうのはわかっておるんですか、脱税の道を開くような、いまいった架空名義なり、無記名なり、そういう預金をそのままにほっといて、それで、今度は一般の納税者には税金をきちんきちんと納めるというようなことばかり言っても、非常にその辺に感情的な不公平感というものはものすごく強いわけですね。ですから、ぼくは隠し預金みたいなこんなのは、ぜひ廃止すべきであるというふうに考えるわけで、大臣も、もし、その方向で進むということであれば、早急に、そういうことはなくしていただいて、そういうことが結局、一般納税者の感情的な不満とか、あるいは税が重いとか、税制が不公平だということにつながると思うのですよ。ですから、その点は廃止するように努力をしていただきたいと思います。  それから、納税番号というのをつけておるわけですね、最近。ぼくのところなんかにも、納税番号入ってきていますけれども、あの納税番号はどういう意図から始まったのですか。まだ、全国的には普及されてないという話ですが。
  164. 江口健司

    説明員(江口健司君) 納税番号といいますのは、いま東京と大阪が、いわゆる電算機のシステムにのせるということをやって、まだ完成しておる段階に至っておりません。昭和四十九年ないし五十年くらいまでには、大体都会地の納税者につきましては、電算機にのせると、   〔理事柴田栄君退席、委員長着席〕 こういうシステムをいま開発中でございますが、電算機にのせます場合には、機械の取りまとめ、その他の性質上、当然番号を付さなくちゃいかぬということになりますので、そういう意味で、電算機関係のものにつきまして、納税番号を付して、機械にかけやすいシステムにしてあると、こういうことでございます。
  165. 野末和彦

    ○野末和彦君 そうしますと、これは聞いた話ではっきりしないのですが、納税番号をつけてコンピューターを導入してくると、これも脱税防止に役に立つという話を聞いたんですけれども、実際そうなんですか、あるいはそういう意図も少しはあるわけですか。
  166. 江口健司

    説明員(江口健司君) 必ずしも電算機にのせるということは、脱税を防止する、あるいはそれを指摘する、摘発するという目的ではないわけですか、結果的なメリットとしては、そういうものも予想されるだろうと思います。ただ、電算機につきましては、まだ世界各国必ずしも十分進歩されたシステムができていないというような状況で、最も進んでおるといわれておるアメリカですらも、まだ、いま御指摘のような面につきましては試行錯誤の段階であるというようなことでございますが、日本の場合には、それよりもかなりおくれてこのシステムを取り入れる段階でございますので、現在それらも含めて検討をしなければならないということでございますが、現在のところは、主として集計その他のいわゆる事務のあと始末の便宜ということで、その面での省力化をはかろうという目的から、電算機の開発を進めているわけでございます。
  167. 野末和彦

    ○野末和彦君 まあ省力化のほうが大事だと思いますか、もしかりに、それが脱税に役に立つからといって、人権の問題もありますから、その辺の使い方は今後検討していただきたいと思いますけれども、いずれにしても、脱税に対しては、脱税者をやたらにいじめるということよりも、現に脱税をしている人がいる、そういう例をまた見ると、一般の人に、正直な納税者に対する影響、精神的影響のほうが大きいので、ですからこれは、今後とも力を入れて防止してほしいと思いますが、いずれにしても、脱税の根本的原因がどこにあるかということを考えますと、やはり税制上の問題もあるでしょうし、さっき私が言いました銀行の隠し金を、そういうところで銀行が保護しているという点もあると思うんです。その辺の原因についても十分に検討していただきたいと、そういうふうに思います。  それから、交際費なんですが、これは、聞くところによりますと、大臣は交際費の課税を強化するとこの間おっしゃいましたけれども、もちろんこれは大いにけっこうで、いまのような、企業が優遇されているというのもおかしいと思いますが、強化する一番の目的は、大臣はどこに置いていられるんですか。何のために強化なさるんですか。たとえば、税金がほしいから強化するとか、いろいろあると思うんですが。
  168. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは、なぜ交際費に課税するかという問題かと思いますが、これはやはり冗費を抑制して企業体質を強化する、企業の合理化をはかるという、この政策を税によってある程度実現しようということでございまして、かたがたこれを、無制限に交際費を許すということによりますというと、これは同時に脱税ということにもなりますので、そういう意味で、この交際費課税というものを置いて実施するという必要があるというのが、この交際費課税の目的だろうと思います。
  169. 野末和彦

    ○野末和彦君 時間が来ましたようですから、簡単にしまして、この次に回しますけれども、つまり、いまの強化する目的がどうもはっきりしないんですね。企業体質を強くする、あるいは合理化するためとか、浪費を省いてとか、いろいろおっしゃいましたけれども、むしろぼくは、企業を優先しているような税制を根本的に改めるのが一番の目的で、その線に沿って検討するのがほんとうじゃないかと思っているんです。大体、取りやすいところから取ろうというような姿勢はもうやめて、取りにくいところから、いままで取ってないところから、これから税金を取らなきゃ、絶対国民は納得しないと思うんですよね。そのために、交際費課税強化ということも考えてほしいとぼくは思っているのですけれども、この次にこの点についてはもっとお聞きします。
  170. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 私は本日、一般減税の問題を中心にして聞こうと思っておりましたんですが、時間的な問題がありますので、その先に二、三、租税特別措置法関係のことにつきまして御質問をします。本日は、そういう意味で、大臣がおられますから、ごく総括的なことを伺いたいと思います。  通貨調整後のわが国の場合におきまして、経済対策、経済政策あるいは財政金融政策につきまして、根本的な方向転換が必要であると思うのでございますけれども、特に高福祉社会の建設を目ざして、四十七年度予算の編成をされたと喧伝をされるわけですが、国民生活の向上を重点とした政策を今後大いに積極的に進めていく必要があると考えるわけです。税制あり方につきましても、こういう観点に立ちまして検討を続ける必要があると思うわけでございますが、特に政策目的を持って運営される租税特別措置につきましては、従来とかく産業に重点を置いた考え方がとられておると一般に言われておるわけでございますが、それを国民福祉中心とした考え方に切りかえていく必要があるのではないかというふうに思うのでございます。  ところで、税制調査会は、租税特別措置はともすれば既得権化しやすい、したがって、情勢変化に応じ、その流動的な改廃をはかっていくべきであるということを指摘しておるわけでございます。そういう意味では、常にその内容洗いがえをして、情勢変化に応じて対応していかなければならないというぐあいに思っておるわけですが、どうも最近の状況を見ましても、年々特別措置法によるところの減税額が増加をしていくような傾向にあるように見受けられるわけであります。税負担の公平という観点から見ましても、福祉対策あるいは公共資本の充実といったような面にも、おのずから限界が必要であるというふうに、限界があるのではないかというふうに考えるわけでございます。そういう意味合いから、何らか租税特別措置法の今後の改正について歯どめの措置を設けておくべきではないかというふうに考えるわけでございますが、その点について、大臣の御意見をお伺いしたいと思います。
  171. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 租税特別措置についての改廃の必要は、従来から税制調査会でもしばしば議論がございますし、私どももその方向で努力をしてまいったつもりでございますが、その重点としては、いずれかと言いますと、たとえば、税額控除であるとか、所得控除であるとかという形で、最終的にその措置によって、いわばその税が軽減されっぱなしになるものというような式の特別措置は、何とかやめる方向にしたい。同じ特別措置でありましても、たとえば、準備金制度であるとか、あるいは特別償却の制度につきましては、当該年度において税の軽減になる点では同じでありますけれども、特別償却であれば、後年度の償却を、前の年度でやるわけですから、結果的には後年度でいわば取り返しがきく。準備金についても同様のことがありますので、同じ特別措置であっても、先に税を払うか、あとから税を払うかという意味で、いわば金利メリットの差はありますけれども、税額控除や、所得控除のように、もういわゆる軽減しっぱなしになるということではないという点で、同じ特別措置でも、非常に一言のもとに言われるものであっても、だいぶ軽減の意味が違うということで、むしろ税額控除、所得控除をなるべくやめていきたいというような点に、ここ五、六年の重点が置かれてきたわけでございます。  ところで、最近に至りまして、まあこれは従来からもそうではありましたが、最近、いま御質問にございましたように、福祉の時代というような認識が非常に広がってまいりましたし、政府全体の姿勢としても、そういう方向に重点がいっておりますので、特別措置によるどういう施策により、それが向けられるべきかということについて、いままで以上に、今後そういう角度からの検討が行なわれるべきであろうかと思われるわけでございます。  で、歯どめという点につきましては、従来は、大体四十二年か三年から今日までここ数カ年は、特別措置によりますところの新しく特別措置をとります場合には、何か既往の特別措置を廃止をして、そうして廃止をした金額の範囲内でしか新しい特別措置はしないのだということを、一応の歯どめにしておるわけでございますが、しかし、経済の伸びに伴いまして、いわば廃止する、新しくつくるということでない、全然触れてない事項については、経済の伸びによって大きくなっていくということがありますために、ただいま御指摘のように、特別措置による減税額全体の姿としては、やはり税収の伸びと同じような割合、多少それを下回る程度にはなっておりますが、どうしても広がっていったと、こういうことでございます。ですから、今後は特別措置についてどういう政策目的により重点的に置かるべきかということが一点と、第二点としては、その改廃部分についてだけでなしに、全体としての特別措置の大きさの問題、これに注意をしながら、特別措置はあくまで例外規定でございますから、可能な限りにおいて圧縮につとめていくということを私どもの判断基準といいますか、心がけといたすべきものと考えております。
  172. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 ただいまのお話で、基本的な方向は、たぶんそういうところにあるだろうと私も考えるわけでございますけれども経済の大きさと、伸びから、それにつれていろんな制度が改廃をされていく。制度自体は据え置いても、減税額自体が大きくなっていく。どの辺のところをめどに置くのかどうかというような点については、もっと研究しなければならぬところがあるのじゃないかと思います。今後よく検討していただきたいというふうに思っております。  ところで、同じく租税特別措置法の中でございますが、わが国の産業構造から考えますと、中小企業の体質改善ということが非常に大事なことであると言われておりますし、現に私もそう考えているわけです。どうも中小企業の近代化を促進していく場合に、措置法でもいろいろな対策が講じられておるわけでございます。しかし従来の制度を見ますと、非常に複雑で、ともすれば現実に即しないうらみもあるのではないかというふうに思っておるわけでございます。もっと中小企業の役に立つ、あるいは利用しやすい制度が考えられてもいい、もっと実態に即応して何か措置をとるべきであるというふうに思っておりますが、何かその点について検討したことはないかどうか聞きたいと思います。
  173. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 四十七年度、今回御審議願います特別措置で、新しく中小企業の持ちますところの設備についての二割増しの特別償却制度というのを設けることにいたしたわけでございますが、これは従来ですと、一々、こういう機械は企業の合理化に役立つから、特別償却の対象になるというようなことで、機械を指定をして特別償却の対象を拾い上げていくというような形式になっておったわけでございますが、組織の大きい企業の場合には、その方面の経理、その他、その方面の専門家を企業の中に置くことができますから、そういう制度もわりあいうまく動くわけでございますが、中小企業の場合には、一人の方がいろいろな仕事をしなければならぬということでありますから、なかなか税法に精通するというようなこともできないことでありますので、そういうこまかい規定を置いてもうまく動かないということで、これからはもう少し大ざっぱにという感じで、一件取得価格五十万円以上の機械は、それを、新しい機械を新規取得する場合に二割の特別償却を認めましょう、対象は一定の業種に限定をしておりますが、そういう制度にしたらどうかということで御提案申し上げておりますが、これはごく一面にすぎません。それだけやっただけでは、いまの御質問のような御趣旨には、十分沿いかねるわけでありますが、今後の方向といたしましては、そういう方向で、若干従来の方向、やり方とは変えまして、中小企業については、だんだん簡素なやり方を取り入れていくということを考慮すべきでないか。まあごく一部にすぎませんが、今回の、ただいま例示としてあげました措置も、そのいわばはしりと申しますか、そういうつもりで御提案申し上げているわけでございます。御承知のように、貸倒引当金につきましても、中小企業につきましては、本法で定めておりますものの二割増しということになっておりますが、そういうふうに、いわば概括的に特別措置を設けるというようなことを通じまして、中小企業にふさわしいといいますか、あまりこまかいことを知らなくても活用ができるような制度を、だんだん導入していきたいというふうに考えております。
  174. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 措置法に関連する質問はいろいろあるわけでございますけれども、ぜひただいま答弁にありましたように、中小企業にわかりやすい、ある意味では、部分的には不公平になるといいますか、あるいは償却ということをとらえると、必ずしも中小企業一般——償却資産の多寡による不公平というのはあり得るわけでございますけれども、そういう意味でひとつわかり安い制度を取り入れてやっていただきたいというふうに思っているわけでございます。  そこで、大臣の時間がおありのようなので、あまりこまかい質問もどうかと思いますので、所得税の一般減税の問題につきまして、背景をなす問題、私が考えておるのは、必ずしも一般がそう考えているということであるかどうかよくわかりませんが、そういう点について質問をしていきたい。なお大臣が時間がぐあい悪いというようなことですから、ずれずれになっている委員会運営のことでございますから、中座されるのもけっこうでございます。  そこで、まず最初にお伺いいたしたいのは、四十七年度の減税でございますが、御承知のように、昨年の秋に年度内減税を含めての減税が行なわれたわけです。過去のいろんな例を調べてみますと、四十一年度には自然増収の全体以上の減税を行なうというようなことがありましたのですが、この四十七年度は、私のこれは試算するところによると、大体中央・地方合わせますと、三〇%近い自然増収に対する減税割合になっているのだろうというふうに思いますが、その数字をちょっと教えていただきたい。
  175. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 所得税減税割合でございますが、これは自然増収とは何を言うかという従来からの約束で、自然増収というのは、そのときにおきますところの税法を前提として、税法改正をしない場合には幾ら税収があるか、それが前年度の数字に対してどのくらいふえるかという額が、いわゆる自然増収という表現になっております。そういう意味から申しますと、本年度の所得税自然増収は五千九百億でございますけれども、しかしこれは、年内減税はことしのこの見積もりをしますときに、すでに法律が通ったあとでございますので、そういう数字になるのでありまして、政府が従来から説明しておりますように、先般の年内減税は、四十七年度の税制改正の繰り上げ実施であるという趣旨からいたしますと、この年内減税によりますところの減収額二千五百三十億は、通常の年であれば当然自然増収としてあがってくるべき額でございますので、これを足した額と、今度の減税とを比較しなければならないわけでありますが、そういう意味で見ますと、ちょうどいま御指摘になりましたように三〇%の減税をやったと、これは国税だけで三〇%の減税をやったということになるわけであります。地方税を合わせてみましても大体二八%ぐらいの減税に当たります。
  176. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 大臣、一問だけお聞きいたしますが、いまお聞きしましたように、相当の減税額にはなっておるのですが、最近の景気の状況から見ましても、年度内減税を含めて昨年の暮れにボーナスで減税できるようになった。非常にけっこうなことだと思うのですが、その前提は、四十七年度予算で、やはりこの公共事業その他の予算で景気刺激の対策を講ずる。予算及び財投を含めての話だと思いますが、そのつなぎとして、現に災害を含んでいるところで二九%程度の公共事業費の伸びというもの、そういうつなぎにおいて景気が浮揚するだろう、こういう見通しに立っておる。ところが最近の経済指標、明るい指標もありますけれども、読み方によっては必ずしも景気の底から浮かび上がってくるというような傾向にはない。政府経済見通しでは、ことしの秋ぐらいになると景気も上向きになるだろうというようなことが言われておるわけですが、非常にわれわれ心配をしておるわけです。かりにそういうことにならないとすると、もう一度年度内に所得税減税をしたらどうだというような意見が非常に多いわけでございますが、この点について大臣はどうお考えでございますか。
  177. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 最近、企画庁からのいろいろ報告がございますが、昨年度の補正予算と年内減税というものは、やはり非常にこの不況対策には効果があって、在庫調整の問題も一巡したような様子が見えてきたというので、この効果が現にあらわれてきているということでございますが、もしそうだとしますというと、私は今年度実行すべく予定しておった減税を、昨年の年末の、この消費活動の旺盛なときにこれをやったという効果は相当多かったと思っておりますが、もしその効果が現在出てきておって、これに新年度の、今度の予算が働いていくということになりましたら、やはり最初予期したような、秋以降の景気の上向きということは、最初の予想どおり私は期待できるものと思っております。したがって、もう一度今度は、昭和四十八年度に予定すべき減税を、また今年度中に繰り上げて実施する必要というものが出てくるかどうかということについては、もう少し情勢を見なければ私はわからないんじゃないかといま思っております。しかし経済が予期したとおりにいかなくて、もう一段さらに何らかの措置をとらなければいけないというような事態に追い込まれるというときには、ひとり減税だけでなくて、他の別個の措置もあわせてとらなければならないということになろうと思いますが、いまのところ私は、大体この最初の予想どおりのコースをたどることができるのじゃないかというふうに考えています。
  178. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 もう少し大臣議論をいたしたいと思いましたのですが、時間の関係上やむを得ないと思いますので、あと、この問題につきまして少しく質問を続けていきたいと思います。  私は、実はこの四十七年度予算の説明というのがあるわけでありますが、それの一一四ページに、一般会計予算の一般部門及び公債関連部門区分表というのが出ている。その中で、要するに公共事業費として、あるいは出資金として、公債の発行対象になる額、それの限度額と思われる数字と、実際の公共事業の額との差額が千六百三十億であるというふうな表示になっておりますけれども、私の前の経験からまいりますと、この中からさらに自動車重量税の関係が、たしか九百九十億程度あるはずですし、さらにまた中央競馬会の納付金によるところの公共事業というものが七十数億あるはずでございますので、それを差っ引きますと、実際財源というか、現状とのすき問というのは、これ以上公債発行のできる額というのは、それを差っ引きますと五百億程度しかないというふうに計算をしておるのですが、誤りがありませんか。
  179. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 大体五百億前後と思います。
  180. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 先ほど大臣のお話をお聞きしますと、景気の状況によっては公債発行、減税を行なうということもあり得べしというようなことも考えられそうな部面もあったわけですが、もしかりにそういうことになるとすると、少なくとも政府考えておる公債発行対象費というもの、これ拡大すれば別でございますが、これ以上拡大できないということになりますと、少なくとも五百億、ぎりぎりやっても五百億ちょっとの限度にしか公債財源の振りかえはできない。ことしの税収の見積もりがどこまで正しく当たるかということもありましょうけれども、そういうことになっていきますと、減税をやるということは、赤字公債の発行とトレードオフ、それからその二者択一というのか、そういう関係になって、容易なことじゃなさそうだなあというふうに判断しているのですが、いかがでございますか。
  181. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 実は四十七年度の税収見積もりにつきましては、昨年の通貨調整の直後に立てました見積もりでございますので、今後の経済見通しなり、それから御存じのように、税収は、特に法人税におきましては経済の変動よりもややおくれて税収に影響があらわれてまいります。その関係なりを十分に見通すことが非常に困難だという状態のもとに予算の編成期を迎え、税収の見積もりをいたしておるのでございまして、その後今日まで約三カ月を経過したわけでございますが、いままでのところそうびっくりするような大きな変化はないのでございますけれども、なかなかうまいぐあいに景気が浮揚するかどうかという見通しが立てられないわけでありますし、税収といたしましては、むしろ四十七年の下期の動向よりは、上期の動向のほうが影響するところが非常に大きいので、下期の動向は、来年の三月期の法人決算に影響してくるわけでありますから、来年度税収に響いてくる、こういう関係もいろいろありまして、率直なところ、四十七年度歳入見積もりについては、いまから申し上げても、まだ年度が始まっていない時期にそういうことを申し上げるのは不適当と思いますが、正直のところ非常に確信を持てない現状でございます。  そこで、それから先はどういう財政政策といいますか、公債などの発行方針についてどういうことでいくかということがありましょうけれども、いろいろ経済情勢によって、過去の考え方にこだわらない考え方を持たなければならない場合もありましょうかもしれませんが、いままでのような考え方からいきますというと、私どもとしては、やはり大蔵省の事務方といたしましては、やはり赤字公債については消極的にならざるを得ないということがあり、そして税収についての見込みが、少なくとも現段階では、とてもいまの税収見積もりと違って、非常に好調になるだろうとは見込みがたい状況からいたしますと、ただいま御指摘のように、なかなかこの暮れにいって減税を見込むというような状態ということを予想することはかなりむずかしい状態にあるといわざるを得ないのが現状ではないかと思っております。
  182. 嶋崎均

    ○嶋崎均君 時間がありませんので、最後に将来についての問題提起という形で御質問をいたしたいと思いますが、今後のこの財政運用の問題を考えていく場合、わが国の場合、過去の経済の成長は、民間設備投資中心の成長であるということが言われ、また所得税減税がこの成長をささえるために非常に重要な役割りを果たしてきておるということが言えるかと思います。反面、私が非常に心配するのは、所得税減税というのは、確かに日本の成長には大きく寄与してきたけれども、たとえば、最近いろいろ経済企画庁あたりで福祉指標というようなことがいろいろ問題になっておりますが、たとえば、財政支出の中におけるところの移転支出の割合がどういうことになるか。特にGNPの中における移転支出は、日本の場合に非常に少ないのではないか、あるいは社会福祉給付費がGNPに対して非常に少ないんじゃないか、こういう指摘が非常に多いわけでございます。ところが、反面ですね、租税負担率というものを考えてみますと、日本の場合には一九%前後ということで、同じレベルの立場と比べられる四十五年という年をとってずっと比べてみますと、諸外国から比べまして非常に日本租税負担が低い。また振替所得の非常に大きなもとになるところの保険料の負担というものを見ますと、これがまた諸外国から見て著しく低いということになっております。それからまた財政支出の中におけるところの、何というか消費的な支出と、それからまた資本的な支出の割合を見ましても、諸外国の場合には消費的な支出が非常に多いにかかわらず、社会的な支出の割合が非常に小さい。ところが、日本はどちらかというとフィフティー・フィフティーか、あるいはごく最近においては、社会的資本に対する支出がかえって大きいというような数字であったと私は思っておるわけです。そういうようなことをいろいろ考えてみますと、今後わが国経済の政策あるいは国民全体の、何というか社会の改造の方向というのですか、そういうことから考えますと、どこまでも福祉社会の建設というようなことになる。そうすると、社会資本の充実と、社会福祉政策あるいは社会保障政策の充実というものが柱にならなければならない。その場合に、社会資本の充実は、いまの財政法の規定からいきますと、どちらかというと、公共事業中心の公債発行財源というものをたよりにしたものを、社会福祉政策を遂行していくための必要な財源というものは、一般財源すなわち租税によらなければならない、こういうことになるわけです。ごく短期的な問題からいいまして、先ほど福祉だけ考えてみてもたいへんだ、長期にそういう方向考えていく場合には、もう一度日本経済がある程度高い成長を遂げない場合には、社会福祉にさかれる財源というのですか、それが非常に不足をしてくるという結果になって、社会保障の充実はやりたい、しかし、租税の収入はなかなか得られないというジレンマに陥る可能性が非常に大きいのではないか。そうすると、今後所得税の一般減税がどれだけできていくかということが非常に大きな問題点であろうと思います。  それからもう一つは、過去十年間たいへんな減税政策をやってきたわけです。たとえばドイツなんかの例を見ますと、四十年以来ほとんど課税最低限はフィックスされたままになっております。よその国と比べまして、四十年当時はわが国の課税最低限はフランスなんかに比べれば半分くらいであったと思うし、よその国の半分近い水準だったと思う。ところが、いま四十七年度の予算段階で並べてみますと、フランスを越えて、もうアメリカの百三十万程度の最低限を除けば、日本が最も高い状態にある。それからまた、税率の調整をやろうということになりますと、御承知のように、先般の国会でも野党のなかなかきびしい反対を受ける、こういうことになっている。そういうあれやこれやをいろいろ考えてみますと、今後の所得税の一般減税というものは、国の大きな政策の中から、また諸外国の国際比較の中から、どういうぐあいに考えていくかということが非常に大きな課題であり、またそういう国民的なコンセンサスなくして、これ以上減税をどうしてやるか。それから社会資本なり社会福祉なりに、どれだけの資源を財政の機能において分配をしていくかということが非常に大事な問題になり、それこそほんとうに国民の合意が得られなければ、なかなかむずかしいような段階に差しかかっている。そういう意味で、税制方向というものも、先般、税制調査会答申がございました。今後できるだけ早い機会をとらえて減税をやっていけという話がありますが、何らか別に財源を見つけるのでなければ、非常にむずかしいような段階にきていると思っております。そういう意味で私は、租税全般が見直されなければならない段階に来ているというふうに思っておりますけれども、午前中の同僚議員質問に対して、長期の答申の線というものを大臣は守っていかれるというような方向を言っておられますが、もう一度長期の税制問題についての検討が必要であるのではないかというふうに思うわけでございます。  非常に時間がないものですから、一方的にしゃべってしまいましたけれども、そういう長期税制あり方というものを、ここでもう一度検討していく気持ちがあるかどうかという一点だけお答えいただいて、あとこまかい問題の質問は、後日に譲りたいと思います。
  183. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) ごく簡単に。
  184. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) 長期税制考え方につきましては、結論的に申しまして、やはりもう一ぺん考えてみる必要があると思っております。ただし、それをいかなる時期に、どういう立場でやるかということについては、その前に新しい社会経済発展計画の練り直し作業をやるときに、福祉計画あるいは社会資本充実の計画について、関係の専門家の方々との問で非常に基本にさかのぼって議論が行なわれると思いますので、できる限り私どももその議論に参画といいますか、トレースさせていただいて、それを伺いながら税制としてはいかにあるべきかということで、まずそっちのほうの動向を見守りながら考えたいというのが現状でございます。
  185. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 資料要求をひとつお願いしておきますが、第二次空港整備五カ年計画が四十六年度から五十年度五千六百億円でやることになっております。これについての資料を一応お願いしたいのです。  一つは、いわゆる地方単独事業も入っておりますし、それの全体の年度別ですね、五十年度までの大体の。  それから財源としては一般財源もありましょうし、今回の航空機燃料税もあるし、地方負担分もあると思いますが、そういう点に分けて、これは長期計画でありますから、当然財源の裏づけ的なものもあると思います。その辺のリストをいただきたい。
  186. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) ただいまのは御提出いたしますが、つい先ごろ、五カ年計画を閣議決定をいたしておりますが、この閣議決定では、全体のスケールと、その財源別、あるいはどういうところに金を使うかというようなことは出ておりますが、ただいまの御指摘の中の、年度別だけは出ておりませんし、事務的にもそこは私、担当ではございません。まだ詰めていないようでございますので、その点だけは留保さしていただきたいと思います。
  187. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 三案件に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  次回の委員会は、三月二十四日午前十時二十分から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時二分散会