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1972-03-09 第68回国会 参議院 大蔵委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月九日(木曜日)    午前十時十八分開会     —————————————    委員異動  三月三日     辞任         補欠選任      野末 和彦君     喜屋武眞榮君  三月四日     辞任         補欠選任      藤田 正明君     稲嶺 一郎君      鈴木 一弘君     原田  立君  三月九日     辞任         補欠選任      喜屋武眞榮君     野末 和彦君      稲嶺 一郎君     藤田 正明君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         前田佳都男君     理 事                 柴田  栄君                 嶋崎  均君                 戸田 菊雄君                 多田 省吾君                 栗林 卓司君     委 員                 青木 一男君                 伊藤 五郎君                 大竹平八郎君                 栗原 祐幸君                 津島 文治君                 西田 信一君                 竹田 四郎君                 成瀬 幡治君                 横川 正市君                 吉田忠三郎君                 原田  立君                 渡辺  武君                 野末 和彦君    政府委員        大蔵政務次官   船田  譲君        大蔵省証券局長  坂野 常和君        大蔵省銀行局長  近藤 道生君        大蔵省国際金融        局長       稲村 光一君    説明員        大蔵省銀行局金        融制度調査官   米里  恕君        大蔵省銀行局保        険部長      川口 嘉一君        大蔵省国際金融        局短期資金課長  淡野 勝己君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○準備預金制度に関する法律の一部を改正する法  律案内閣提出) ○沖繩派遣に関する報告     —————————————
  2. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  三月三日、野末和彦君が委員辞任され、その補欠として喜屋武眞榮君が、また三月四日、鈴木一弘君及び藤田正明君が委員辞任され、その補欠として原田立君及び稲嶺一郎君が選任されました。  また本日、喜屋武眞榮君及び稲嶺一郎君が委員辞任され、その補欠として野末和彦君及び藤田正明君が選任されました。     —————————————
  3. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  準備預金制度に関する法律の一部を改正する法律案の審査のため、参考人出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 御異議ないと認めます。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  6. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) それでは、前回に引き続き、準備預金制度に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑のある方は順次御発言を願います。
  7. 横川正市

    横川正市君 この準備預金制度拡充強化法律案提出に至るまでの期間、すでに法律が制定されて、事実上は今日の金融制度一環としては法的な処置が講ぜられておったわけでありますけれども、この現行制度が、わが国金融市場はむしろ過少流動性状態にあったために、金融政策手段としてその機能を十分に発揮することができないまま推移してきたと思うのですが、現状は、過少流動性ということで、準備預金制度の制定をされたわけではなしに、やはり有効なる適正処置一環として準備預金制度が設けられておったわけですけれども、今回法律改正したおもなるものとしてあげられるものは一体何か。ことに国際化に伴う金融面の諸問題が調査会論議をされて、その中で大体三つ項目で、準備預金制度の活用の理由、これをいま聞こうと思うわけですが、あるいは準備預金制度運用の環境の整備、現行準備預金制度改正必要性、こういった点がるる論議をされたようでありますけれども、この点について質問いたします。
  8. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) ただいまも御指摘がございましたように、従来準備預金制度が比較的活用されずにまいりましたゆえんのものは、わが国金融情勢過少流動性状態にあったということでございます。いままで若干流動性過剰ぎみになりました時期が、御承知のように過去二回ございまして、三十年から三十一年にかけて、それから四十年から四十一年にかけて、それから今回でございます。その最初の三十年から三十一年にかけての流動性がやや過剰に、ほんの短い期間でございましたが、なりました時期の経験から、準備預金制度というものが研究され、発足したわけでございます。そうして今回それをさらに拡充強化しようということになりましたゆえんのものは、これもまたただいま御指摘がございましたように、国際化情勢を控えまして、いわゆる伝統的な金融手段のうち、金利を主たるねらいといたします手段、それらのものにつきましては、国内国際との間にとかく矛盾を生ずるおそれがある。国内均衡を主として金利を上げ下げいたしますと、その結果短資流入を生ずるというようなことで、国際的には逆効果を生ずるという場合もあり得るということで、そういう観点から、ここ二、三年来各国とも金融政策の伝統的な三手段のうちで、特に準備預金制度強化拡充するという方向に向かってまいったわけでございます。わが国といたしましても、あたかも過少流動性から過剰流動性へという移行の時期にも当たりますので、それらの要請を満たすための準備預金制度強化拡充を行なうということが一つと、それからもう一つは、端的に短資流入に対するコントロールを行なうという意味、その両方意味で、準備預金制度改正強化拡充の御審議をお願い申し上げた次第でございます。
  9. 横川正市

    横川正市君 ちょっと関連してお聞きするわけですが、平価切り上げを前にして、いろいろな論議があったわけですね。その論議の第一点は、平価切り上げをすべきであるという論議、それから、これと意見を異にして出されたのが、平価現行どおりにしておいて、残存輸入制限とか、資本輸出であるとか、あるいは海外援助増大すべきであるとか、そういうような中で、輸入インフレーションが起こる場合には、その点について考えたらよかろうというような論議などあって、A案がとられて、今日引き続き円高状況が続いているわけなんですが、この要因をどういうふうに判断をされているかという問題ですね。  それからもう一つは、残存輸入制限以下の問題は、切り上げと関連されてどのような処置をとられようとしておるか。この点についてお聞きしたいと思います。
  10. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) ただいまの御質問、いま国際金融局長が役所を出ておりますので、すぐに参りますと思いますから、担当者からお答え申し上げることにいたしたいと思います。
  11. 横川正市

    横川正市君 いまの問題に引き続いてお聞きしますが、いまの金融情勢に対処して三つあるわけですね。公定歩合の操作とか、あるいは公開市場だとか、準備制度改正とか、こういうことで金融政策として大体コントロール方法三つしかないが、これで万全が期せられるかどうかという問題なんですけれども、その点はどう考えます  か。
  12. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 過剰流動性状態におきまして、伝統的な金融政策のいわゆる三手段、これがはたして万全に働くかどうかということは、各国でも論議の対象になっているところでございます。共通の傾向といたしましては、いまの三手段及びそのほか緊急的な、臨時的な手段といたしましてのいわゆる貸し出し増加額規制あるいは窓口規制的なもの、その四つを含めまして、そのうちで、最近の情勢におきましては、準備預金制度にできるだけウエートを置きながら、そのほかの手段を併用してまいるということになりまして、過剰流動性事態におきましても、金融政策の万全を期し得るのではないかという議論がただいま大勢を占めているように考えております。
  13. 横川正市

    横川正市君 この拡充強化改正を前提として、金融制度調査会参考人意見を聞きましたときに、大体四つ意見があったというふうに承知をいたしております。その一つに、今後も恒常的な日銀貸し出しの解消をはかり、窓口規制をすみやかに廃止するようにしてはどうかという意見があったということなんですが、これは事実に照らしながら、これで一体万全かという問題と関連させてこの処置についてはどうお考えでしょうか。
  14. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) これは、ただいま申し上げました伝統的な三手段以外のいわゆる貸し出し増加額規制窓口規制、そういうものが非常に効果がありました時代には、この日銀貸し出しというものを背景として効果があったわけでございます。ところが、そういう方法、もしくは日銀の恒常的な貸し出し、あるいは都市銀行のオーバーローンの状態、こういう一連状態は必ずしも健全なものではないという判断のもとに、昭和三十七年以来新金融調節方式ということで、日銀貸し出しにかえまして、成長通貨をオペレーションによって供給するという方向方向転換をいたしたわけでございます。それによってやってまいったわけでございますが、なお、今後の方向といたしましては、そういう日銀貸し出し存在というものが、たまたまいま一般貸し出しは非常に減ってきております。——二月は季節的にややふくらんではおりますが、ほとんどゼロに近い水準に近づきつつあるわけでございますので、そういうことを契機といたしまして、今後恒常的な日銀貸し出し存在という状態はやめて、金融政策手段といたしましては、ただいま御審議を願っております準備預金制度等を中心とした運営に切りかえていくということになろうかと存じます。
  15. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 国際金融局長来られましたからひとつ……。答弁漏れがございますから。
  16. 横川正市

    横川正市君 もう一回言いましょうか。  いまの問題と関連をしてですが、平価切り上げを前にして、切り上げ論と、それから切り上げを必要としない意見として、残存輸入制限とか、資本輸出とか、海外援助増大とか、そういうようなことを当面行なうべきであるという意見があったわけですね。しかしなお輸入インフレーションが起こるような場合には考慮すべきだという意見があったわけです。しかしその後の推移で、平価切り上げを行ない、とにかく三百八円の固定平価が決定をいたしたわけですが、そういう平価を決定するに至った要因を一体どう見ているのかという問題と、それからいま言ったように、残存輸入制限とか資本輸出海外援助増大あるいは場合によってインフレーションの措置、こういうような問題は現在どういう関係で行なわれているかという点をお聞きしたわけなんです。
  17. 稲村光一

    政府委員稲村光一君) おくれて参りまして申しわけございません。  ただいまの御質問でございますが、この平価切り上げがどういう趣旨で行なわれたかということでございますが、これは先日も御答弁申し上げたと存じますが、これは主として米ドルの、アメリカの基礎的不均衡と申しますか、これが一番大きい問題であろうと存じます。アメリカ米ドル切り下げをやる、それに対しましてほかの先進各国がそれぞれ応分の負担と申しますか、これに応じてあるものは若干の切り上げ、あるものは金に対しては据え置くということをやったわけで、いわば一つの多角的な国際的協調と申しますか、それの結果が、わが国に対して申しますれば、ドルに対しては一六・八八%の切り上げ、こういうことになったわけでございますが、この切り上げ——切り上げの前にいろいろと言われておりました援助増大であるとか、いわゆる八項目ということで、昨年の六月から政府といたしましていろいろやっておりました問題というのがどうなるのかという御質問であろうかと存じますが、この点につきましては、援助増大でございますとか、輸入の促進でございますとか、そういうような意味のいわゆる対外的な均衡をさらにはかっていくという、いろいろの政策あるいは考え方というものは、これは切り上げの後におきましても、当然やはり同じような趣旨で進めていくべきものであろうかと存じます。  これはいわゆる八項目といわれておりますものが、切り上げ回避のためのものであるというふうにお考えいただくのは、やや私は必ずしも正確ではないのではないかというふうに存じております。と申しますのは、元来八項目と申しますのは、日本のいろんな意味対外均衡、あるいは国際的に日本の力がだんだん上がってまいりました。それに関連いたしまして、従来の考え方を変えてどういうふうにして対外均衡を達していくかという方面の一連考え方、施策でございますので、これは現在におきましてもやはり同じような線に沿った考え方でいくべきではないかというふうに考えております。
  18. 横川正市

    横川正市君 そこで、円が切り上げられたら、ドルが流出し三外貨準備高は数十億ドルぐらいはたちまち減少するだろう。その結果、国内金融というのは相当引き締まるとまあいわれていたのに、大体いまの状況はどういうふうになっていますか。それとどういうような一つ判断に合致して動いておるわけですか。まあそうではないように思われるのですがね。
  19. 稲村光一

    政府委員稲村光一君) この切り上げ前におきまして、平価変更があった場合にどういうようになるであろうかという点につきましては、実はわれわれのほうといたしまして、経常収支の面と、それから資本収支の面と両方それぞれ別に考えなければいけないのじゃないかというように孝えておったわけでございますが、経常収支、つまり貿易収支等におきましては、切り上げ効果がそこにあらわれてまいりますためには、他方確かに経済の景気動向と申しますか、これがどうなるかということが一つの大きな問題でございますけれども、同時に、従来の例からいたしましても、切り上げ——これは切り上げに限らず、切り下げの場合も同様でございますけれども平価変更貿易収支経常収支影響を持ってまいりますためには、どうしても若干の時間がかかるというのが従来からの通説でございまして、したがいまして、この切り上げが最終的に決定いたします前におきましても、われわれといたしましては、貿易収支の面では、やはりことしは相変わらず相当黒字が続くのではなかろうかという感じでございました。他方、資本移動、このほうにつきましては、切り上げによりまして、従来リーズ・アンド・ラッグズその他で、いわば特殊な要因流入をしておりましたいろいろの短期資本の系統が、この切り上げがきまれば逆流を相当程度するのではないかという見方もあったわけでございます。ところが、ふたをあけてみましたところが、まあ切り上げ直後は大体むしろ逆流が起こりましたけれども、ことし一月半ば、あるいは二月になりましての状況、最近までの状況は、これは経常収支につきましては、まさにやはり相変わらず当面は黒字が続くという、この点はやはり思っていたとおりで、季節的な要因もございますから別にいたしますと、やはりこれは若干効果を持つのには時間がかかるという意味で、相変わらず黒字が強いという情勢が、これは景気動向のほうがなかなか見通しがよくないと申しますか、簡単にその景気回復のほうに向かわないということもございますけれども、いまのような切り上げの当然の効果と申しますか、その影響の出てくるのに時間がかかるということで、相変わらず黒字のプレッシャーというのが強い。  ところが資本移動のほうにつきましては、平価調整前には、あるいは大幅なドル還流と申しますか、それが起こる可能性がある。起こるのじゃないかという予想が一部にあったわけでございますけれども、それはむしろ起こりませんで、その点では資本移動関係につきましては、むしろなかなかドル還流が起こらない。これは日本だけの問題ではございませんで、ヨーロッパ諸国におきましても同様でございますが、それではなぜそういうことになっているかという点につきましては、いろいろ各国の間で先般のOECDの第三作業部会でも議論されたわけでございますが、これは大体二つ要因があるというようにみないわれております。  一つは、アメリカとほかの先進諸国ヨーロッパ及び日本との金利差でございまして、アメリカ短期金利が非常に低い。ヨーロッパ日本に比べまして低くなり過ぎているということ、これでアメリカ短資還流するうまみがないと申しますか、そのために返らない。  もう一つは、ドルに対する信認、コンフィデンスの問題でございます。金価格引き上げ法案、これは最近のところ非常にアメリカの議会におきまして審議が進んでおるようでございまして、近く成立をするであろうという見通しが濃くなっておるようでございますが、この点はいいほうのファクターでございますが、まだこの点につきましても若干の不安がございましたし、それからまたドル交換性回復というような問題についてなかなか見通しがつかないというようなこともございまして、ドルに対する信認がなかなか回復しない。この二つ要因で、通貨調整前に予想されておりましたような大幅なドル還流というのが起こってないというところ、これは二つ要因で現在のような情勢になっておるということであると存じます。
  20. 横川正市

    横川正市君 そこで、そうすると三百八円をきめた当時の状況と、それから、まあわずかしか期間が経過しておらないわけですけれども、今日とでは、いわゆる緩慢な情勢変化が中間に入るけれども切り上げられた当時の考え方へ近寄りつつあるんだと、こういうふうに判断するのか、それとも三百八円をきめた当時の状況と著しい変化が起こってきて、さらに円切り上げその他の問題へ発展せざるを得ないと、こういうふうに見るのか、その二つの流れとしてはどう判断をすればいいわけですか。
  21. 稲村光一

    政府委員稲村光一君) ただいま先生御指摘の前者のほうの判断をわれわれはいたしておるわけでございますが、つまり、先ほども申し上げましたように、一ドル三百八円というのがきまりましたときにおきましても、御承知のとおり、通貨レートの問題は、資本移動と申しますよりも、むしろこれは経常収支のほうから判断すべき問題であろうと存じます。そっちのほうは初めから相当程度効果が出て、レート変更によりまして経常収支均衡化に向かっていくというためには、一年ないし二年かかるということは、いわば国際的に常識になっているところでございます。その意味で、その当初の通貨調整後の初年度は、むしろ従来の傾向がそのまま続くと、あるいは逆にむしろ加速される、逆の方向にですね。まあそういうようなことも起こり得るということは、いわば一般的な認識になっておるわけでございますので、その意味で現在の経常収支の進み、今後の見通し、ことしの見通しということからいたしましても、これは予想どおりでございまして、特にいまどうということはございません。現在の問題はもっぱら資本収支資本移動のほうでございまして、これはいろいろな短期的な心理的な要因その他によって起こっておるわけでございまして、これによってこのレートそのものの問題が問題になるということはないというふうにわれわれは考えております。
  22. 横川正市

    横川正市君 まあ当初考えられていたものに非常に緩慢な速度で近づきつつあるというふうに言われているわけですけれども、しかしその後の外貨準備高というものは相当著しい増加を来たしているように思うわけですね。で、逆に金融関係がだんだん緩慢化しまして、そうしてそういう結果からか、中小金融機関では資金運用に非常に不足を来たすといいますか、そういう状況が出ていると、こういうふうに言われておるわけですが、これもそれではいわば緩慢な一つ動きの中の現象で、やがてこれは当初の判断のような正常化方向に向くと、こうお考えになっているわけでしょうか。
  23. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 国内的に金融緩和が進行いたしまして、中小金融機関といたしまして融資先に困るというような事態が出つつあることは御指摘のとおりでございます。こういう状態が今後急速に変わるかどうかという御質問かと存じますが、ただいまの状況ではこういう金融緩和事態は相当長続きするであろうというふうに私ども考えております。したがいまして、中小金融機関といたしましても、ここ三、四年間、体質の改善、強化につとめてきているわけでございますが、ますますそういう方向で努力をする必要があるというふうに感じております。
  24. 横川正市

    横川正市君 そこで、一つ傾向として、平価切り上げによって物価が低落して、銀行預金とか、借り入れ金とか、社債とか、公債等実質価格増大して、債権者保有者が有利になるとか、あるいは債務者負担増加するとか、反対に平価を維持していて、かつ現状のように物価上昇が続くと、金融資産実質価値が低下するとか、その場合には債務者が有利で債権者が不利だとか、こういうような一つ国内的な動きというものが判断されておったのですが、現状は一体どういうふうに動いているとお考えでしょうか。
  25. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) ただいまの御質問の御趣旨は、平価変更に伴いまして、国内的に債権者債務者等の間に従来に比べて実質的な損益が発生しているのではあるまいかという……。
  26. 横川正市

    横川正市君 いや、これは結局関心がそういうふうに向いて、一つ傾向は、たとえば株価の問題にも一つ傾向として、何といいますかね、あらわれてくるんだろうと思うし、それから換金とか、投下という問題にあらわれてくる。いわば国民の一つの関心事みたいになっている。しかし、それはもうしろうと考えで、事実上一つ金融政策として、政策の中にしろうと考えの入る余地があって、まあ損得するものはしろうとで、実際上そういう投下をしたり、運用をしたりするものが責任を負えばいいということになるかもわからないけれども、いまのような激しい流動の中では、もっと指導型の政策というものがあっていいんじゃないか。そうすると、いまのような、どっちに向いたら債務者が得で債権者が損だとか、あるいは債権者が得で債務者が損だとか、そういうようなことのしろうと判断余地を私どもはやはり指導型で除去するのがほんとうじゃないかと、こう思うわけなんですが、そのことでお聞きをいたしておるわけなんです。
  27. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) たとえば株価上昇にあらわれておりますように、現在金融緩和ということが基調にございまして、その結果、債券市場証券市場そのほかにいろいろと一種の異変が起こっていることは御指摘のとおりでございます。   〔委員長退席理事柴田栄君着席〕 そしてその根源をなしますものが、昨年一年間を通じまして四兆四千億円にのぼる外為会計散布超過があった。そのことが一番大きな理由になって金融緩和に向かっているということが背景をなしているかと存じます。  そこで、それをどういうふうに受けとめ、どういうふうに今後の方向を打ち出してまいるかということでございますが、ただいま大蔵省日本銀行、考えておりますことは、この金融緩和基調は持続すべきであるし、せざるを得ない、そして全般的な金利の低下をはかっていくという方向でこの事態を受けとめていくというふうに考えているわけでございます。  なぜそう考えるかと申しますと、国際的な情勢からまいりましても、現在各国とも金利の低下をはかっております。また、国内的な現象として考えましても、従来の産業金融中心という金融のパターンから、今回は社会投資、社会福祉、そういうものが重点になるパターンヘと移行しつつあるわけでございます。したがいまして、利子率としてもおのずから低下せざるを得ない。国内構造的にもそういうことが言える。さらには現下の景気の動向から見ましても、低金利が望ましいということで現在の金融緩和情勢をそのままに維持し、それによって金利の低下を全般的にはかってまいる。こういう方向で現在の事態を受けとめているわけでございます。
  28. 横川正市

    横川正市君 これはどうも判断のいろいろな要素は、自分に得になるような判断をすることが非常に大きくて、いわば指導型のいろいろな政策に対しては、あまり信用しないというような傾向が出てくる可能性が強いんじゃないかというふうに私どもは思うのは、一はいまの株価がどうしてあれだけ上がるのかわからないんですよ、私どもは。たとえば、ある企業にとって生産性が非常に低くて、そして配当率が下がっていても、株価だけ上がるわけです。これは常識ではどうしても判断できないわけですよ。だから、ここに金融あるいは財産維持のための財政上の指導型の的確なものがあるのかという点で、ちょっと私どもしろうとなりにわからないわけですよ。だから、実際上行政を担当されている皆さんのほうでは、いやこれは、たとえば短期の投資家、あるいは海外からの投資家、そういうことで一時的なものであるとか、あるいは操作されることに危険が伴うんではないかとか、私的な投資家は用心しなさいとか、いろいろなことが指導型の中に的確に出てきていいと思うんですけれども、あまりそれが見受けられないで、日に日に上がっていくんです。いまが頂点だ、頂点だといっても、まだ頂点になるかどうかわからない。  そういう点があるもんですから、一つ金融政策の中で、私ども予想される予定のコースといいますか形態、それではなしに、何か違った要因があって、行き着く先は方向転換をしているんじゃないだろうかというふうに思われる。まことにこれはしろうと考え方なんですが、おそらくそういうことが一つ判断の基準になって、投資をされている人も、これはひとつやってやろうという気持ちになる人もいるし、または用心しようという人もいるんじゃないかと思いますけれども、その点はどうでしょうか。
  29. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 株価の問題につきましては、あるいは証券局長から御答弁申し上げるのが筋かと存じますが、金融面から見ております感じを申し上げてたいへん恐縮でございますが、感じといたしましては、先ほども申し上げましたように、昨年の外為散超四兆四千億というものを主たる原因にいたしまして、金融の大幅な緩和が続いておる。さらに、これからもしばらくは続くであろうという見通しのもとに、投融資の対象は次第に狭められる、限られてきておるという、いわば株式といたしましては、需要超過という状態になっている。その点から先ほど御指摘のありましたような企業自体の業績というものを、ある程度無視したような形で買い進まれているということが言えるかと存じます。  そして、そういう金融緩和は全体をどう受け取め、どういうふうに今後持っていくべきかということにつきましては、先ほど申し上げたようなことを私ども考えております。  証券自体の問題、株式自体の問題については、証券局長からお答え申し上げます。
  30. 横川正市

    横川正市君 いまの株の問題、ちょっと証券局長から答弁をしてもらいたいと思います。来てませんか——そうですか。  それじゃ次に進みます。参考人意見の中に、要望として、金利の市場メカニズムを生かすように金利を弾力化しなさい、あるいは為替管理をこれまでの原則禁止から原則自由に改めなさい、公社債市場の正常化などについては、市場の機能が動くように環境整備をしなさいというような要望が出されておったわけですが、これらの点が具体的にはどう生かされておりますか。
  31. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 為替市場の問題は、国際金融局長から御答弁申し上げます。  そのほかの点につきましては、いずれも市場メカニズムを活用させるための基本的な環境をつくるという意味で、従来から推進が要望されてきたものでございます。しかし、どれ一つをとりましても、非常に基本的なむずかしい問題でもございますので、時日をかけてやってまいる必要がある問題かと思います。今後ともこれらの点につきましては政策の主たる目標として金融制度調査会などにおいてもこれらを中心とした論議を、さらに証券取引審議会におきましても、この論議が現在進められているわけでございますが、その結果によりまして行政面にもこれを取り入れてまいりたいと考えております。
  32. 稲村光一

    政府委員稲村光一君) 御質問の中の為替管理のあり方を原則自由にすべきではないかという御意見がありますことは事実でございます。先般も経団連等からそういう御要望をいただいておるわけでございますが、これに関しましては、われわれといたしましては、確かに理想的な状態と申しますか、ほうっておいてもすべてがうまくいく、対外均衡が達成されるというような状況におきましては、当然為替管理というのも、御意見にございますような原則は自由、有事規制、こういうことを考えてもいいことであろうと存じますし、また、将来の方向といたしましては、そういう方向考えていくべきであろうとは存じます。現状に即して考えますと、先ほどから申し上げておりますとおり、平価調整後も、必ずしも資本移動の面で、当初考えられていたような平静なあるいは均衡的な状況というのが起こっておりません。むしろ現在は再び資本移動の面におきましては、いろいろとむしろ流入圧力と申しますか、そういうものが強い情勢でございます。これは先ほども申し上げましたように、日本だけの問題ではございませんで、ヨーロッパ諸国におきましても同様でございます。そういうような状況にかんがみますと、むしろ現在のところは、この資本流入に対しては、むしろこれを抑制していくということの為替管理の維持、場合によっては強化ということも考えなくてはいけないということが、いわば欧州諸国におきましても、現在の段階におきましては、一般的にそういう意見が強くなっておる段階でございます。これはその状況に即して考えていかなくてはいけない問題であろうと存じます。  当面におきましては、やはり出るほう、つまり外への支払いのほうにつきましては、これはもうできる限り全部自由に持っていきたい、そういう方向ですでに相当進めておりますし、今後も進めたいと存じますが、入るほうにつきましては、これはやはり相当厳格にチェックをしていかないと、現在の状況は乗り切れない、こういうふうに考えております。したがいまして、為替管理の自由化、原則自由という問題につきましては、将来の方向としては、確かに一つの御意見であろうと存じますが、現状には必ずしも即さないことであろうというふうに存じております。
  33. 横川正市

    横川正市君 それで、準備預金制度拡充強化されたものの運用についてお伺いいたしたいのですが、これ自体は市中金融機関に対する直接的な統制力を強化することで効果をあげたいという、こういう趣旨ですが、この趣旨は、日本銀行の統制力を強化するということにとどまるのか。その場合大蔵省との関係は一体どういう関係なのか。私どもはやはり日銀の独自性というようなものが発揮されることが望ましい、こういう点が強いのではないかと思うのですけれども日銀大蔵省の指図で何か動くような、こういうことになりますと、実際上は金融政策の最後の責任は一体どちらが責任を担当するのかという問題に発展をいたしますし、場合によっては好ましくない結果等が予想される場合があります。それからもしこの金融政策の面で日銀大蔵省意見が不一致の場合ですね、これはどちらがその運用について責任をとるのか。この点はどうですか。
  34. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 準備預金制度は、対象金融機関に対しまして原則として無利息の預け金を日本銀行に積み立てますことを法律的に義務づけるという制度でございます。金融政策手段一つでございますから、当然運用日本銀行の権限にゆだねられることになります。準備率の設定、変更、廃止というようなことがございます場合にだけは、これは大蔵大臣の認可を要するというたてまえをとることは従来どおりでございます。したがいまして、事前に大蔵省日本銀行において十分協議を行ないまして、その上で発動がされるわけでございますが、議論が一致しない場合という仰せでございますが、従来から金融政策の発動につきまして、大蔵省日本銀行において客観情勢をながめながら議論を煮詰めてまいりまして、かえってある場合には煮詰まらないことに意味があるという場合もございますが、大体両者の議論が煮詰まったところで発動するということに準備預金の場合なっておりますので、まあ過去の場合等においては一度も両者の意見が食い違った事例はございません。将来かりに食い違ったらという御質問でございますが、それもまず考えられないことではないかというふうに考えております。
  35. 横川正市

    横川正市君 最高限度を二〇%としたというのは、これはどういうことですか。諸外国の例と比べてみまして二〇%というのは低いんですか、高いんですか。
  36. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 最高限度を、従来一〇%でございましたのを、今回一〇%引き上げまして二〇%にして御審議をお願いいたしておるわけでございますが、二〇%という数字は、諸外国の例に比べますとやや低目という感じでございます。大体諸外国の例でまいりますと、主要国におきまして二二%ないし四〇%ぐらいというところでございます。まあフランスの場合が、貸し出しと預金と別に分かれておりまして、預金が一五%、貸し出しが一〇%ということになっております。それ以外はすべて日本よりもやや高いということに相なっております。
  37. 横川正市

    横川正市君 やや低目というのは、これは日本の事情に合致させるためということですね。
  38. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 日本の事情と同時に、また、一つの試算といたしまして、たとえば昨年の四兆四千億円の外為散超、これを準備預金制度によって吸収するというような場合を仮定いたしまして試算をいたしますと、大体最高の率が一五、六%ぐらいのところで吸収し得るという試算が出ております。したがいまして、諸外国の例ももちろん参考にしながら、日本の場合におきましても大体二〇%を最高限にすれば十分これでやり得るという計算で、こういう二〇%という数字で御審議を願っておるわけでございます。
  39. 横川正市

    横川正市君 生命保険の取り扱いについてですけれども、引き締めをしり抜けにせぬために対象とすべきだという意見と、それから日銀との取引がなくて信用創造機能もほとんど欠けているのに対象に加えるのはおかしいではないかという論議というのが対立をしておったんじゃないかと思うのですが、この生命保険を対象とするのが適当だと、それから性格の特異性にかんがみて適用の時期、方法等は十分検討することが適当だと、こういう二つ意見考え方といいますか、それはどういうことですか。そしてこれから後どういうふうに取り扱いがきまっていくわけですか。
  40. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 過去におきまして、生命保険会社の貸し出しが、引き締め期に他の金融機関の貸し出しと代替性が強いということもございまして、額がたいへん増加した。その結果、いわゆる引き締めがしり抜けになったんではないかというような批判があったことは事実でございます。それからまた生命保険の貸し出しのウエートが、全体の約資産運用の七割くらいに達しておりますというようなこともございまして、生命保険会社を準備預金制度の対象に加えることによりまして、景気調整機能を拡充強化するということは、たてまえとしてはぜひ必要であるということになったわけでございますが、半面、ただいま御指摘がございましたような信用創造機能の問題であるとか、日本銀行との取引がないとか、そういったような面がございますので、実際の実施の時期、方法につきましてはあらためて慎重に検討するということが同時にきめられたわけでございます。そういう趣旨でございます。
  41. 横川正市

    横川正市君 いまの準備率の問題とも関係するわけなんですが、短期外資流入対策として、外資に特に高い準備率を適用するということであれば、中央銀行の準備預金制度の拡大ということだけにとどまらないで、西ドイツがとっているような対外経済法のようなものを別個な法律でつくって対処することが妥当ではないか、そのほうがすっきりするのではないかということが論議されたと思うのですが、それとの関係はどういうふうになっておりますか。
  42. 稲村光一

    政府委員稲村光一君) 西独におきまして採用されております対外経済法のようなものを日本でも制定すべきではないかということは、これは一つには、現在の外国為替貿易管理法との関係であろうと存じますが、これは先ほども御議論ございました原則自由、有事規制と申しますか、そういうアイデアと関連があるものであろうと存じます。現在の西独におきましては、まあ原則自由でございまして、有事におきましては対外経済法の条項によりましていろいろと規制をする、こういうたてまえになっておりますが、わが国の場合は、外国為替貿易管理法によりまして、政府といたしましていろいろな規制をそちらのほうの面ではとることができるようになっておるわけでございまして、それをはずしていくということで自由化を進めていく、こういうたてまえになっておるわけでございます。   〔理事柴田栄君退席、委員長着席〕  これは各国の例を見ましてもいろいろございまして、ヨーロッパ等でもフランス、イギリスなどは、やはり日本と同じようなタイプの法制になっております。それからドイツ、スイスなどは一応一つのグループで原則自由で有事規制、こういうたてまえになっておるようでございますが、これは先ほど申しましたように、日本といたしましても、将来の問題としては原則自由という線で考えていくべき問題であろうと存じますが、当面の問題といたしましては、先ほども申し上げましたように、現在の法制のもとで、実質的に外に対する支払いのほうにつきましては、極力自由化をしてまいる。まあすでにしておりますが、それをさらに進めてまいります。しかし、入ってくるほうに関しましては、やはりこれは相当現状においてはむしろこれを抑制しなくてはいけないという状況でございますので、これを抑制をしたい。まあそれについての法制上のたてまえといたしまして二つありまして、現状においては現行制度の活用によりましてこれを実施していくのがいいのではないかというふうに存じております。  今回御審議願っておりますこの準備預金の関係につきましても、いわばこれはまあ為替管理とは別の面のことでございますので、流入の規制という点につきまして、いわばマーケットメカニズムを通じてこの規制をはかっていくというほうの一つ手段でございます。これが有効に活用をしてまいりますれば、為替管理法との関係では、これを為替管理法の上では総合的に両方関連させて運用をしていけばよろしいのではないかというふうに存じております。
  43. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) ただいま証券局長がお見えになりましたので、ひとつ御答弁を願います。
  44. 横川正市

    横川正市君 先ほどちょっと関連してお聞きしましたが、もう一回説明いたしますが、最近の株価の動向を見ておりますとね、これは業績の必ずしもよくない企業の株価も上がっていくという変則な上がり方をしているわけなんで、ことにいまのような状況は、たとえば個人の投資家の利益が、単に個人の思惑等だけでかけごとをするような投資になって、健全化がそこなわれるんじゃないか。だから、結局まあ行政指導型の一つの手当てというものがあってしかるべきじゃないか。こういう質問をしましてね、それで、その問題だけがちょっといま保留になっておるわけです。
  45. 坂野常和

    政府委員(坂野常和君) 最近の株価につきましては、いまお説のとおり非常にお金がたくさん余っておる状況のもとで、株の新規供給と申しますか、増資も少ない、それから既発行の株式も機関投資家に入ったまま市場にあまり出てこない、浮動株が非常に少なくなっているという現状でございますので、いままでにあまり例のなかった、非常に需給相場と申しますか、いまお説のとおり理屈のない株価形成も一部に見られるというような現状でございます。  そこで、私どもとしましては、これについて二つ三つ指導なり、あるいは手段をとっておるわけでございます。  まず第一に、信用取引でございますが、これにつきましては、担保掛け目をだんだん上げてまいりまして、一月の二十九日の取引所において六割に上げました。それを三月三日の省令で、六割を省令に置きかえております。  また、株式の担保掛け目につきましては、平常七割でありますが、それを三月三日の省令改正で六割に引き下げております。  また、一般投資家にこの際大いに信用取引をすすめることのないよう、営業態度について十分注意するようにというようなことをやっております。  さらに、今度は信用取引以外の一般取引でございますが、これにつきましては、一般投資家に対しまして、いまの市況がたまたまこういう市況になっておるということを十分説明し、理解を求めることが重要であるし、これをよく説明しないで投資を誘うことのないようにということを私どもも注意しておりますし、また証券業協会連合会長からも、本年に入りまして二回にわたって通達を全協会員に出しておるということでございます。  また、さらに、最近の株価は、一部大証券会社の法人活動によって、かなり高められておる点がございますので、大証券の法人営業活動について、慎重を期するよう、この法人営業活動の結果、株価を不当に上げてしまうようなことのないようにという指導もいたしております。  そういうことでいろいろやっておりますが、ただいまのところ、株価はなお、上がりつつあるという現状でございます。
  46. 横川正市

    横川正市君 その指導は、株価の値上がりと関連して、適切な指導なのか。しかし、いま言ったように、どうも、私どもしろうと考えをしてみても、危険な上昇率じゃないかと思われるのですが、もし、行政当局で危険性が察知できるのかできないのか、この点と、もう一つは凍結された株の取り扱いはどういうふうにするわけですか。
  47. 坂野常和

    政府委員(坂野常和君) この危険性につきましては、これはなかなかむずかしい問題でございまして、私どもがこれは危険であるとかないとか十分判定できない、非常にむずかしい面がございますが、従来の経験にかんがみて、今度の市況を見ますと、ひとつまあやや安心な点は、従来は、株がこの程度高くなってまいりますと、必ず信用取引が急激にふくらみまして、信用取引の過熱状況から、市況の危険な状態というものが、いつも出ておったわけであります。今回は、信用取引はさほど過熱しておりません。と申しますのは、全体の取引の中に占めるウエートが四〇%あるいは三九%というような数字を行き来しておる状況でございまして、さほど過熱状況はございません。回転率もふだんよりも低いくらいでありますし、また、今回の特色といたしまして、かなりから売りがございまして、売り買い比率というものが、かつてないくらい小さい。つまり平生でございますと、から売りに対しまして、から買いが七倍から八倍になるのが普通のかっこうなんでございますが、ただいまのところは、それが四倍程度になっておる。そういう状況から、信用取引を通じての過熱、危険性というものは、いまのところ見受けられないというふうに判断しております。  もう一点は、外人の売り買いであります。これは御承知のとおり、いままでの外人買いというものは、総計いたしますと、もう、かなりの金額になっておると思われますので、これがこのうち、大量のものが売りに出てまいりますと、大きな影響が出ると思われますけれども、ただいまのところ、これも先はわかりませんけれども、目下のところは、その危険性もあまりないんではないかというふうに見られます。と申しますのは、十月から一月まで四ヵ月間、ずっと売り越しになっておりました。それが二月に入りまして、二月の中旬を過ぎて、いま買い越しに転じております。したがって、株価が高いので、普通の感じですと、これだけ株が高いので外人投資家が売ってくるんではないかというふうに考えられておったんですが、逆にいまは買い越しになったという現状でございます。その二点から判断いたしまするに、すぐにこれが非常に大きな暴落にあうというような危険性というものが、いまのところは、さほど感じられない。しかし、もう御承知のとおり、株式市場はどういう変化が起きるか、全く予測のつかないところでございますので、そういうこともあり得るということで、十分業界には注意をしておるという現状でございます。
  48. 横川正市

    横川正市君 凍結株は……。
  49. 坂野常和

    政府委員(坂野常和君) 前にございました保有組合、共同証券のお話でございますが、これは全部解消いたしまして、ただいまのところ、凍結株というものはもうございません。そのほうの御心配はないものと思います。
  50. 横川正市

    横川正市君 そこで、今度のこの制度なんですが、新聞にも出ておりますから、大蔵省のほう、十分お考えだろうと思うのですが、これは国際化の進展に即応して金融政策の有効性を高めるべきだとか言っているけれども実質的にはこれは金融の再編成になるんじゃないかという意見があり、それが促進されるという懸念があるわけなんですが、そこで、この制度が拡充強化されることによって、諸外国と比べれば保有限度が必ずしも高くないと言いながら、預金コストの問題にどんな影響力を見ておられるのか。で、この影響力は結局経営悪化のそういう事態が伴わないか。こういう点でですね、相互銀行とか信用金庫とか商工中金、信用金庫連合会、こういったところへの影響力についてはどう判断をされているかをひとつお聞きしたい。
  51. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 預金コストにどういう影響を及ぼすかというお尋ねでございますが、かりに現行の一〇%を二〇%ぎりぎりにまで上げました場合、これは二〇%ぎりぎりまで上げるということがそれほどたびたびあるとは思われませんが、かりに上げました場合、その場合に中小金融機関の率がどのぐらいになるかということを、これもかりに現行の都市銀行、現行の大銀行と中小金融機関との格差を前提といたしまして、同じような格差で比率をきめるということにいたしますと、中小金融機関の要求払い預金が、大銀行の要求払い預金二〇%に対しまして一〇%という比率になり、定期性預金は同じく中小金融機関の場合三・三%という比率になります。その比率で現在の預金構成の状況から換算いたしまして、平均実効率を計算いたしますと、相互銀行、信用金庫の場合大体五%程度ということになるわけでございます。そういうことになりますと、それから計算いたしまして預金コストの引き下げをやるとすれば、どのくらいの引き下げが必要かということになりますと、相互銀行、信用金庫で大体〇・四%弱ということになるわけでございます。もちろんこれは無利息ということを前提として計算をいたしておるわけでございますが、この制度には利息をつけることも可能でございますし、またただいまのような二〇%ぎりぎり一ぱいというようなことになるということもあまりございませんし、さらにはまた預金残高が二百億円以下の中小金融機関は対象外になりますので、それらの点を考慮いたしますと、この制度が直ちに中小金融機関の再編成を促進するということはとうてい言えないのではないかと感じております。
  52. 横川正市

    横川正市君 このいままで論議質問いたしましたそれぞれの関係で、金融機関の持つ特殊性を、これを何か阻害をするような結果にはならないと判断をされているようでありますけれども、しかし実際にはあのコストが現行よりかはいささかやはり高くなり、その負担が産業界へしわ寄せされるというような懸念があるのではないかという、こういう危惧があるわけですが、その点は考慮する余地はありませんか。
  53. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) この制度が発動されます必要があります場合には、一般に国内経済が過熱をいたしまして、引き締め政策が必要であると考えられる場合だけでございます。したがって、準備率の引き上げの効果といたしましては、第一次的には市中の通貨量の調整でございますが、同時に日銀への無利子の預け金が増大することによりまして、コスト効果を通じて企業に対する貸し出し金利上昇がもたらされる、そうしてそれによって貸し出しの抑制効果がもたらされるということでございますので、それがそういう時期における準備預金制度のねらいとしておるところでございます。もちろん産業界にあまり急激な負担を与えるということのないようには十分配慮して運用がなされなければならないと存じますが、そのような時期における引き締めの有効性の確保ということもまた十分考えてやらなければならないと考えております。
  54. 横川正市

    横川正市君 そこで、この日銀の預け金について中小金融機関の分だけでも利子をつけるというような方法処置もありますじゃなくて、つけるということでいくわけにはいかぬですか。
  55. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) その辺の具体的な実施のしかたにつきましては、本制度がすべり出しました場合に、状況を見ながら研究をいたしてまいりたいと考えております。
  56. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 坂野さんね、あなたが大証券の法人営業活動がどうも好ましくないということで指導しておるとおっしゃいましたが、どういうことを具体的にやっているのか。
  57. 坂野常和

    政府委員(坂野常和君) 最近はやりといいますか、テーク・オーバー・ビッドのようなこともございまして、安定株主工作というものが行なわれております。このこと自体は、それも一つ考え方と思われますが、そういうことで金融機関、あるいは商社、その他大法人は系列関係の株式をたくさん集めるという要望があるわけでございまして、それに対しまして大証券がそれの仲介の役割りをする、その際に大量の株式を動かすと、それがひいてはその株式の価格を押し上げるという結果になっておる事例がございます。そういうことで、そういう安定株主工作自体は別に悪いことでございませんけれども、それをあまり激しくやりますと、株価を押し上げてしまうということになりますので、そのやり方についてあまり一ぺんに株価を押し上げないような、そういうやり方をすべきだということを言っておるわけでございます。
  58. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 いや、私はそういうこともあり得るし、名前を言ってはいかぬが、系列になってしまうわけですが、そのこと自体が悪いからとはなかなか言えない問題。そこで具体的に、それをひとつ慎みなさいよといって、四大証券なら四大証券にあなたのほうがおっしゃっている、それに対して四大証券はどういうふうなことで自粛しておりますか。
  59. 坂野常和

    政府委員(坂野常和君) 具体的な営業のやり方は、大きな証券会社全部が一律にやっているわけでもございません。いろいろ社によってやり方も違いますので、その具体的なやり方をどういうふうにいま変えているかというところまで、御報告するだけの資料を持っておりませんけれども、いま私どもとしては、申し上げましたようなことで、大きな証券会社の法人活動についてのやや慎重なあり方というものを何回か話をしておりまして、それについて証券会社側も十分そういったわれわれの言い方に対して協力したいという気持ちで動いておるようであります。しかしそれが、具体的にどういう影響で、どういう程度の効果があらわれたかということについていま御報告する資料は持っておりません。
  60. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 証券局長、お尋ねしておる趣旨は、あなたが信用取引と一般取引と、それからもう一つは大証券のこの三本の柱と、こうおっしゃるから、とするなら、どれが効果をあげてくるものなのか、まあちょっと、危険はないといえばないかもしれませんし、あるといえばあるわけです、これは株のことですからお互いにわかりませんが。しかし、どういうふうに判断するかというと、またあとでみんなしてしりぬぐいを、証券の人たちがやりっぱなしといいますか、一般の人もそれは入りますから、やりっぱなしだと、そのしりぬぐいをまた何か特別に国会で考えなくちゃならぬということはやるべきことじゃないと思うのです。そこで、何をしたらいまの走り過ぎたものを押えることができるかという、その対策というものがいまあげられたこの三つしかないよということでそれでいいのかどうか。もうほかに、私も知恵はありませんけれども、何かいい方途というものはないものであろうかということで、横川委員もお尋ねしたと思うんです。私もそういう趣旨で申し上げておるわけですよ。
  61. 坂野常和

    政府委員(坂野常和君) 理想論を申せば、この株価の高いエネルギーを、から回転させることなく、それが将来の増資につながるような形の市場にどうやって持っていくかということだろうと思います。その話も私どもは証券界にしております。そのためにはやはり株価形成が十分理屈に合った形成をしていくことが大事である。実体とかけ離れた株価形成が行なわれてしまいますと、それが将来の増資につながらないということになってまいります。そういう配慮のもとに、需給相場ではありますけれども株価形成はやはり企業の実体を反映しているものだというところを、十分あらわしていくのがほんとうのあり方じゃないだろうかということを私どもは業界に対して話をしておると、こういうことでございます。ただ、もう御承知のとおり、ただいまのところ必ずしもそういう株価形成になっていない銘柄もありますので、今後業界の努力によって、それがある程度是正できるかどうかということは、私どもとしては非常に期待しておる点でございます。なお、そういうことを通じましてやはり取引所の株価形成の権威が落ちることのないように、こういうことを私どもとしては配慮しておるわけでございます。
  62. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私もここで特別にどうこうというのはなかなか容易なものじゃないと思うんですね。ないと思うんですが、この推移というものを見定めておっていただいて、資金がだぶついておると、株が不足しておると、この二つ理由があがっておる理由ですよと、こうおっしゃればそうだろうとは思います。そうだと思うんですが、それならそれに対して何らかのことが、対策というものが、いまおあげになった対策以上にもう少しきめのこまい対策というものが考えられてもいいように思います。それなぜそういうことを言うかというと、元来ならばあまりいろんなことで口ばしを入れたり手出しをすることはよくないことだろうと思います。しかし、事がこの前のようなああいうことになってくると、いろんな意味で国がめんどうを見るということはおかしな話だと思う。ですから、そういうことが二度と繰り返されない、たとえば今度でも、利益があったらばく大な賞与を出すとか、いろんなことをやってたいへんなことになったわけですね。やりたいときにはやりっぱなし、いかなくなったときには国民一般がたいへんなことになるからめんどうを見なきゃならぬという、そういうやり方というものはいかがなものであろうかと思いますから、十分ひとつ御留意をお願いしておきたいというよりほかに、現時点では私も対策はございませんですから、ひとつその衝に当たられる坂野さんはたいへんお気の毒といいますか、御苦労さんと思いますが、いろいろとお知恵をしぼってやってもらいたいと思います。
  63. 坂野常和

    政府委員(坂野常和君) 御趣旨に沿ってやっていきたいと思います。  それで、ただいまの証券業界の体質の点につきましては、その後私どもも免許制のもとでかなりきびしいことを申し上げ、現在のところ体質は非常に変わっておりまして、財務状況もよくなりましたし、収支の状況も非常によくなりました。また投資信託の状況が、かつてとは非常に違いまして、株の組み入れも比較的多くなく、そして余裕金を十分持って運用しているというような状態になっておりますし、解約率もずっと減りまして、やや長期の資金が集まり出しているというような現状でございますので、株が高いことと、証券業界あるいは投資信託の体質というものが、前はそれが逆比例的になっておったんでございますが、おかげさまをもちまして今日のところそこは直ちに心配だという状況にはなっておりません。しかし、お説のとおり今後いかなる変化があるかも存じません。そういうことに対処し得るよう、なお体質の強化を十分はかっていかなきゃならぬ、そのためには、やはり内部留保を厚くいたしまして、不況抵抗力というものを強めていくということを行政の方針にいたしておりますが、今後ともそれを強めてまいりたいというふうに考えております。
  64. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 証券局長さんせっかくおいでですからちょっとひとつ資料をお願いしたいと思いますが、この金融緩和基調に入って、まあ大体九月からの資料で、金融機関の株の取得の割合ですね。どのぐらい取得が伸びているか、その辺の資料が、できたら月ごとぐらいに最近までおわかりいただいたら資料をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  65. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) どの程度的確な数字が把握できますか、至急研究をいたしまして、後ほどまた御報告申し上げたいと思います。
  66. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 銀行局長のお考えをちょっと聞きたいんですが、いままで金融機関の一般事業、企業を、言うならば貸し出し金によっていろいろ支配をしていたということばが適当かどうか知りませんが、そういうことをやっていたと私は思いますが、金融が緩慢基調にこうなってまいりますと、貸し出し金によって企業を支配するということはあまりもう効果がなくなってきた、そこで最近の金融機関の株式投資というものが多くなってきている理由は、今後株式によって企業をひとつリードしていこうと、こういうふうな形に私はなってくるんではないだろうか、そうしますと、その日本の企業の株式、まあいままで日本の企業のあり方というのが非常に問題になったと思いますのは、要するに間接金融方式による問題が非常に問題になって、そうしたものが景気の過熱をより強くしたりしてきているというふうに私は思いますけれども、今後は一般国民によって、株式というものが、なくるべくそういう国民に金融資産が渡るということではなしに、それが銀行に渡って、銀行によって支配されていくという状況は、私はあまり望ましい状況ではないと思うんですけれども、その辺はどういうふうにお考えになっているのか、先ほどの資料を御提示いただければよりその関係というものは私は明らかになってくるんではなかろうかと内心思っているわけであります。そういう形というものが一体いいのか、悪いのか、私はあんまりそれは銀行の支配というものは感心したものじゃないと思いますけれども、その辺の考え方、そういう状態があらわれないというならばいいけれども、私はあらわれるんじゃないだろうかと、そういうふうに思いますが、その辺のお考えを方をお聞きしたい。
  67. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) まったく同感でございます。独禁法におきまして一〇%以上の保有が禁じられておりますのも、まさにその趣旨からでございます。今後とも、一〇%をこえるような実質保有というものが脱法的に行なわれるような場合におきましては、検査等におきまして十分これを指摘し、摘発すべきことであろうかと考えております。
  68. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 今度のこの準備預金制度で、先ほども横川委員のほうから質問がありまして、それに対する御回答があったんですけれども、特に今度の場合に、信託勘定とか、あるいは生命保険会社の勘定がこの中に入れられるということは、まあ結局は、この準備率というのも最高限度二〇%ということ、理論的にはその近くへいくということはあり得ると思うんですね。まあ金融調整との状況がいろいろあろうと思いますけれども、二〇%というのは、四兆四千億という数字を一応頭に置いて、この規模程度のことがあるときには、大体そのぐらいの限度が必要だということで、二〇%という数字を持ったわけでありますけれど一も、理論的には二〇%近くの準備率ということになるでしょうね。そのときには、信託勘定とか、あるいは生命保険会社の預金というようなものも、まあ二〇%にはいかないにしても、かなり高い率にいくということが一応考えられると思います。そうなってみますと、それがおそらくコストを高めていくことになる、こういうようになりますと、信託勘定とか、あるいは生命保険の保険料というような積み立て金というのは、かなり一般庶民の善意の預金といいますか、まあ汗水たらして集めた金なわけですね。こういうものが、そういうことによって予想配当率を下回るとか、あるいは保険会社でも還元配当がそれに下回ると、こういう事態というものが、私はあり得るんじゃないかと思うんですね。そういう点では、たいへんまあ銀行等の当座性預金とは私は質が違うものだと思うんです。これは今度こちらへ入れてしまわれたということになりますと、一般個人の立場からいきますと、金融、企業のかってなやり方によりまして——まあそういうときには、おそらく物価も上がってくるでしょうし、するということになりますと、せっかく汗水たらした、自分がためた金が、そういうふうなことによって、予想された配当率を下回るというようなことになりますと、これはたいへんだと思うんです。そういう心配はありませんか。
  69. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 金融制度調査会の答申におきましても、ただいま御指摘のとおりの心配がございまして、金融制度調査会の答申の中にもはっきり信託等長期の資金につきましては、コストもかかっておりますことですから、預金よりも低水準に適用率をすべきでないかということがうたわれております。したがいまして、実際の運用にあたりましては、預金に対する率よりもはるかに低水準になるということが予想されているわけでございます。
  70. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 低水準ということはよくわかるんですが、しかし、それによってそういう事態が起こるということは全然考えられませんか。その点、もし起きた場合にはどうしてくれるのかということが明確になればいいわけですがね。
  71. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) そういう事態が、もちろん全体として景気調整効果というものが期待されているわけでございますから、その景気調整効果というものは発揮しなければならないわけでございますが、ただいま御心配になりましたようなことが特に起こりませんように、運用にあたっては十分気をつけてまいりたいと考えております。
  72. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そういうことがないということであれば、まあ実損というものはないということになろうと思うんですが、それにしても、せっかくためた個人の金を、そういうものを景気調整のために一時的にも凍結するという趣旨そのものは、これはちょっと私考えてみるとおかしいんじゃないだろうか。大体、いま一番大きい金融調節の立場というものは、これは答申にもありますように、信用創造という面が一番重要視されていると思うんです。この信用創造ということが、ほんとうに金融情勢にマッチして行なわれるということであるならば、それは私、問題ないと思う。おそらく景気過熱になったときということでありますから、通貨が出ていくというのは、私、信用創造が一番多いんだろうと思う。そうしてみますと、信用創造によるところの預金が多くなってくる、通貨が多くなってくるということを、こういうことで一部凍結していくという趣旨は、これは私当然だろうと思うんですけれども、一般庶民の預金までその対象にしていくというのは、実損はないわけですけれども、論理的には私どうもあまり感、心した方向ではない。ですから、ある意味では、そういう方面は解除をして、むしろ信用創造によってやっていく部面をもっと強化して、そういうことによるところの金融調節のほうが筋が通っておりますし、それは当然であろうと、こういうふうに思うんですがどうでしょうか、それは。
  73. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) その点で、実は、ただいまおっしゃいました信託であるとか金融債であるとかという長期の資金につきましては、普通の預金の場合と異なりまして、増加額方式で規制をするということが考えられているわけでございます。通常の場合には残高方式で規制をしてまいりますが、それに対しまして、ただいままさに御指摘のありましたような問題点がございますので、そういうものについては増加額で規制をするということによって実際上の取り扱いを異にしてまいることが予想されているわけでございます。
  74. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 これは一つの筋論としてはその増加額であれ、若干その辺は私は問題があるのではないだろうか。しかしこれはこれ以上議論をいたしません。  それからもう一つ、今度のこの預金制度の趣旨は、短資流入というようなこと、これをひとつ防止するためにこういう制度をやるんだと、それをそのままにしておけば、これは通貨となって国内金融秩序を撹乱する、だからそれを一〇〇%預けてしまって不胎化してしまえば、外資も魅力がなくなってきて流入しないだろう、こういう趣旨も入っているだろうと思うんですがね。私はどうも、確かに一〇〇%不胎化して凍結しちゃうわけですから、国内通貨国内均衡という立場ではある程度効果があると思うんですが、短資流入を防止するということは全然関係がないと私は思うんですがね、どうなんですか。
  75. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 短資流入に対しましては、やはりこれを無利息で凍結するということを通じまして、海外からの流入の動機は著しく減殺されるというふうに考えられますので、短資流入に対する抑制策としては相当な効果を発揮するのではないかというふうに考えております。
  76. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それは結局金利差国内金利との金利差の問題で私はそういうことが起きると思うんです。しかし、その前に、いまのような円・ドル関係で、基準レートが三百一円七銭にはりついて、そしてまた日銀が介入をしてその価格を維持するということになってくれば、それは私は、幾ら凍結しても短資はどんどん入ってくると思うんです。ただそれが日本の円にかえられないということであって、基本的にはやはり円・ドル——いまのところは円・ドルですわな。将来はほかのマルクになるかあるいはポンドになるか、何になるかわかりませんけれども、一応そういう意味では基本的には円・ドル関係、これが大体その基準価格というものを維持されているということが前提だと思うんですよ。それがないということになれば、これは全然こんな少しばかりの金利を当てにするよりも、円・ドルの格差による利益を得るということで、私はこれはどんどん入ってくると思うんです。いままさにそういう状態だと思うんですよ。為替管理の問題にいたしましても、基準レートが決定されてからかなり規制をゆるめた。しかし二月になったらまた為替管理を強化する、こういうようなことでだいぶこれは評判悪いですわね。ゆるめたばかりで、また——せいぜい二ヵ月ですか、二ヵ月でまた強化したということで、たいへん一般的な評判は悪いようですが、そういう意味で、いまのような状況で、ただ国内金融状況を撹乱するということを幾らか防ぐということだけでありまして、短資流入をチェックする基本的な手段にはならぬ、こう思うんですが、国金局長に聞いたほうがいいと思うんですが、どうですか。
  77. 稲村光一

    政府委員稲村光一君) ただいまの問題でございますが、先ほど横川先生の御質問にお答えいたしました点ともう一ぺん繰り返しになるかと存じますが、若干御質問の点について直接申し上げますと、御指摘のとおり、短資流入要因と申しますか、これは大まかに分けまして二つあると存じます。  一つは先ほど申し上げました金利差、内外金利差の問題でございます。もう一つは、いま先生の御指摘のとおり、レートに対する不安と申しますか、そういうものがあると存じます。で、現在の状況はおそらく両方要因によって起こっているというふうに解すべきであろうと存ずるわけでございますが、確かにこの内外金利差、米国のほうの短期金利が非常に下がっておるということによりまして、短資の米国への還流が起こらず、逆にほかの国、日本を含めましたほかの国への流入という圧力が強くなっておるという状況でございますので、その点は準備預金制度、ことに非居住者の準備預金の高率の適用ということによりまして、この金利差関係は相当程度抑制をする効果があろうかと存じます。しかし、他方レートそのものに対する不安に対しましては、準備預金制度では十分ではございません。そこで先ほど申し上げましたとおり、現状のような状況におきましては、直接の為替管理と申しますか、そちらのほうの有効性も残っておるわけでございまして、これは二つ要因がございますので、今後、ただいま申しましたように、現状と申しますのは、経常収支のほうでレート調整の効果が出てまいります間、若干まだいろんな心理的な要因その他でディスターバンスと申しますか、不安要因があるということで、短資流入の圧力があるわけでございますので、そういうような状況におきましては、やはりこれは単なる金利差だけではないということで、この準備預金制度だけに短資流入の抑制を期待するということはむずかしいと存じますが、同時にこれは将来いまの心理的不安のほうが直ってまいりますれば、今度はその金利差ということが一つの大きな主たる要因になってまいると存じます。そのときにはこの準備預金制度ということの活用によりまして、相当程度その抑制効果を期待することができるのではないかと考えております。
  78. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 理論的な問題ですから、その点どっちが先に——外のほうの均衡が先になるのか、国内のほうが先になるのか、その辺によって違ってくるわけでありますから、そういう場合もあるというふうに私は思って、準備預金制度ができたから、それで安心だというものでは決してない。そんなにこの準備預金制度を当てにしていちゃしょうがないという感じがするわけです。  もう一つ、おそらくこの準備預金制度をやって、景気の過熱をしていくということになりますと、この準備預金制度の本旨というものは、なるべく金利を上げないで、通貨量を調節していくということになるのですがね、どうも私はそうはならないじゃないか。やはりこれは適用していけば、金利は当然上がっていく。先ほども若干そういう数字がありましたけれども、それ以上に上っていくのではないか。だから本来の目的というものは、やはり金利政策というものを中心にして問題を考えていかないと、どうもいけないのではないか、むしろこっちのほうが中心になり得るというふうに私は思うのですが、どうですか。
  79. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) これは伝統的三手段と称せられますもののうちで、いずれも金利に無関係のものはないことはただいま仰せのとおりでございます。ただそのうち準備預金制度が最も金利に対して間接的な働きを持っているということも、また事実であろうかと存じます。したがいまして、今後国際国内均衡を同時に達成いたします場合に、あまり金利に直接的な影響を及ぼす政策手段によりますと、非常に矛盾した事態がしばしば起こり得るということを前提といたしまして、金利に直接的な影響の一番少ない準備預金制度が活用されていくということが予想されるわけでございます。
  80. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 最後でございますけれども、あした大臣がお見えになるということですが、大臣に質問することが若干残っておりますけれども、先ほど若干私申し述べましたのですが、こういう準備預金制度ではたしてほんとうに——むしろ貸し出しというところに手をつけていかないと、ほんとうに通貨調整ということができるのかどうなのかという感じがするわけです。おそらくそういう景気が上がってくるということになりますと、これはもう銀行は信用創造でどんどん貸し出すということになってくるのではないかと思うのですがね。ですから貸し出しのほうを相当調整をしないと、準備率だけ引き上げるということによって、はたしてそうした調整ができるかどうかというと、やはり各銀行のやる信用創造をどうするか、この辺にかなりメスを入れないといけないじゃないかと思うのですが、その辺は何かやはり金利政策はもちろん考えられると思いますけれども、その辺との関連で貸し出しについてやはり何らかのチェックとか何かをするという形でないと、準備率だけの問題でそれがチェックできるかどうか、若干私は疑問を持っているのですが、どうですか。
  81. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 貸し出し自体を抑制するという、いわゆる貸し出し増加額規制方式あるいは窓口規制方式そういうものが従来行なわれておりまして、特に日本銀行の行なっておりましたそういう方式が世界的にもまねをされまして、六〇年代の半ばにはかなり世界的な共通の方法ということになっていたわけでございますが、それに対する反省が最近ここ一、二年急激に出てまいりまして、特に昨年の五月十四日のイングランド銀行のデータなどに非常にはっきり出ております思想は、貸し出し増加額の直接的な規制あるいは窓口規制、そういう方法というものは、やはり一部の金融機関に偏し過ぎるきらいがあるのではないか、まあ日本でもまさに二割五分行政とか三割行政とかいうことが言われましたのは、その辺のところでございますが、そういう一部の金融機関に限定をされ過ぎるきらいがあるのではないかというような不満、あるいはやり方があまり統制的、直接的で、資源配分の公平を害するのではないかというような非難、そういう非難がかなり出まして、そのために、たとえばイギリスにおきましては昨年の五月十四日にそういう方法を変えて、今後やはり準備預金制度を中心とする運営、さらには金利の自由化というようなことが打ち出されたわけでございます。その趣旨で七〇年代の金融調整の方向といたしましては、やはり貸し出しの直接的な規制というものから、次第にこの準備預金を中心とする金融、伝統的な金融手段の併用という方向に大きく切り変わってまいるのではないかというふうに考えております。
  82. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 その貸し出しの規制をやるという問題は、やはり私はそれは大きくは政治の問題に関連してきていると思うんです。たとえば日本でも預金のほうはかなり庶民から金を引き揚げておりますけれども貸し出しのほうになると、これは全然庶民のところには高ねの花で、ちっとも金貸してくれない。まあ最近おせじみたいに少しずつやり始めましたけれども、その辺の貸し出しに対する個人あるいは小さなものに対する貸し出しの割合というのが、私は西欧ではもっと大きいようだと思う。日本の場合にはまさにもう小さなところには貸さない、集まった金は全部大企業にやるんだと、こういう金融貸し出しの仕組みといいますか、そういうところに違いがあって、外国みたいに一般庶民にもどんどん貸していくんだという場合には、私はこの準備預金制度というのはかなり効率を上げると思う。その辺を変えていかないと、やはりそういういままでのような、とにかく生産上向きの企業にはどんどん貸していく、成長産業にはどんどん貸していくという形でいけば、そういう体質がある限りは、準備預金制度をやったって信用創造のほうでどんどん行ってしまうわけです。過熱したときはもうおそいわけですよ、実際は過熱直前にこれを防ぐということにこの趣旨がおそらくあると思うのです。そういう意味では、金融のそういういままでのひずみといいますか、それを徹底的に直していかなければ、私は効果というものは出てこないのではないか、それをぴしっとやって初めてこの効果が出てくるのじゃないかと思うのです。そういう気がいたしますが、その点どうでしょうか。
  83. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) その点は全く仰せのとおりだと思います。従来戦後の状況、先ほども申し上げましたように、たった二回だけ——三十年から三十一年にかけてと、四十年から四十一年にかけましてと二回だけやや緩和の状況があったわけでございます。そのほかの時期におきましては、いつの時期でも過少流動性、万年資金需要増加という形で推移してまいりました。しかもその集められた資金が産業金融中心で回されていたということはまさに仰せのとおりである。したがいまして、いわゆる庶民に対する消費者信用というものにつきましても、現在金融機関全部で約三兆円、構成比にいたしましても六%前後というようなことになっております。ただ、今回の金融緩和というものは、おそらくは構造的な変化を含む緩和であるというふうに私ども判断をいたしております。この緩和状態というものは相当続くでございましょうし、また次第にいわゆる先進国型の過剰流動性の形に向かって、収斂をしていくというような多少のあやはございましても、やがてはそういう方向に向けてまいるというその状況におきましては、当然この消費者信用というものの比重が大きくならざるを得ませんし、また大きくすることに大いに努力する、そういう時期に差しかかっているというふうに感ずるわけでございます。先ほども指摘がございましたように、確かに諸外国におきましては消費者信用の比率というものは非常に高いわけでございまして、アメリカの場合など四六%が消費者信用に向いているわけでございますが、今回の金融構造の基本的な変化を契機といたしまして、まさにそういう方向を向いて全体が動き出さざるを得ない情勢であり、そしてそういう情勢においては準備預金制度のようなものが次第に主役になってこざるを得ないというふうに考えておるわけでございます。
  84. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 午後一時から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時五分休憩      —————・—————    午後一時十二分開会
  85. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  この際、御報告いたします。  沖繩の現地の実情を調査するための内閣委員及び大蔵委員による議員派遣団の一行は、三日間の日程を無事終了し、その目的を果たして昨八日帰国いたしました。  なお、調査の報告につきましては、いずれ委員会に提出されることになっておりますし、また、委員の方々の御質問を通じて現地の調査内容が取り上げられると思います。  以上、御報告いたします。     —————————————
  86. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 休憩前に引き続き準備預金制度に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑のある方は順次御発言を願います。
  87. 多田省吾

    ○多田省吾君 この準備預金制度金融政策一つとして重要な位置を占めながら、政府の説明でも、過去は恒常的な過少流動性状態にあるために、どうしても発動できなかった、最高三%発動というような低い状態にあったわけでありますが、今回七〇年のときにあたって、流動性過剰流動性になりかかってきたということで、しかもほかの金利政策やオペレーションなんかとも併用してやっているということでございますけれども、まずお尋ねしたいのは、そういういままで大蔵省あるいは日銀でやってきたところの他の二つ金融政策である貸し出し政策、これは金利政策として公定歩合の操作とか、あるいは貸し出し限度額併用制度とかあると思いますが、そのほかもう一つ売りオペ、買いオペ、公開市場操作、そのほか窓口指導あるいはポジション指導というものがあると思いますが、そういうものが現在どのような効果をあげてきたのか、その辺をひとつお答え願いたいと思います。
  88. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) ただいまの御質問の三政策手段が現在までどのような効果をあげてきたかということでございますが、先ほどもちょっと申し上げましたように、昭和三十七年ごろまでは大体におきまして、いわゆる恒常的なオーバーローンの状態でございまして、公定歩合操作というものが最も大きな威力を発揮していたわけでございます。それから、三十七年に新金融調節方式というものが打ち出されまして、それ以後成長通貨は主としてオペレーションによって行なわれるということになり、したがいまして、従来の窓口規制あるいは貸し出し増加額規制というものにかわりまして、オペレーションがかなりのウエートを持つようになってきたわけでございます。そして、現在に至りますまで公定歩合操作と、オペレーション、この両者、そしてときどき貸し出し増加額規制もしくはポジション指導というような形での日本銀行当局による指導が行なわれまして、それらが相合わさって金融調整の効果をあげていった。ただ、その間におきまして、準備預金制度はそれほど主役という地位は与えられていなかったということが大体の状況でございます。
  89. 多田省吾

    ○多田省吾君 いまお話しのあった窓口規制でございますけれども、最近の金融緩和によって日銀貸し出しが非常に減少している、都市銀行預金残高に対する日銀一般貸し出しの比率が、昭和三十六年度末で一七・三%、四十六年十月末で〇・二%まで減少したということになっておりますけれども、四十七年の二月末くらいまでで大体ほとんどゼロだと思いますけれども、どのくらいになっておるのですか。
  90. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 季節的な要因がございまして、一月末から二月にかけて少しふくらみまして、三月にまたへこむという状況になろうかと思いますが、ただいまお尋ねの一月末でございますと、ただいまの比率、都銀預金残高に対しまする一般貸し出しの比率は〇・五%でございます。
  91. 多田省吾

    ○多田省吾君 この準備預金制度は、いままで金融緩和状況、あるいは景気回復あるいは過熱状態、いままで三回ほどあったということを先ほど答弁なさっておりましたけれども、特に私がお尋ねしたいのは、まあ、昭和四十年度におきまして初めて国債を発行いたしまして、景気回復につとめたわけでございますが、四十一年、四十二年、四十三年と景気が徐々に回復してきまして過熱状態になってきたわけです。そして、外貨準備高も少しずつふえてきた、貿易収支黒字になってきた、そういう状況において、非常に、何といいますか、前に大蔵大臣も言っておりましたけれども昭和四十二、三年ごろ特に引き締めるのがおそかったということを言っているわけです。ところが今回は、昭和四十六年度におきましては、今度はゆるめるのがちょっとおそかったような気がするわけです。昭和四十二、三年度ごろ、この準備預金制度を発動するにふさわしい状況がなかったのかどうかですね、それが一つですね。それで、三%のいわゆるいままでにおける最高の準備率を発動したのは結局昭和三十八年の十二月十六日ですか、その辺であるわけです。決して昭和四十二、三年ではないわけですね。だからその間、この準備預金制度効果的に運用する機会がなかったのかどうかですね。これが一つです。  それからもう一つは、今回の改正趣旨は、非居住者の短期外資をどうしても押える意味で、一〇〇%押えるというふうなことで、それは新たに改正しているわけでございますけれども、それを一年早く去年あたりこの法律をつくっておけば、去年の八月末におけるあの輸出前受け金なんかによるいわゆる投機的な金が相当入ってきましたあれを、押しとどめられたかどうかですね。この二点をまずお尋ねしたいと思います。
  92. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 第一点のことでございますが、四十三年ごろの日本経済の状況は、まだいわゆる本格的な過剰流動性に近い状態とは言いがたい状態でございましたために、準備預金制度をさらに実効率を高めることによって金融調節を行なうという余地に乏しかったということが一つ申し上げられるかと存じます。  それから第二点といたしまして、昨年の状況におきまして、もし準備預金制度拡充強化されていましたならば、それによって外資の短資流入が防げたのではないかというお話でございますが、これは先ほど国金局長が御答弁申し上げましたように、準備預金制度改正というものが、投資目的の短資流入の場合には非常な効果を発揮いたしますといたしましても、投機目的の短資流入の場合におきまする効果というのは、ある程度限定されてまいります。そのような意味から、昨年のような投機目的と申しますか、切り上げ見込みということでの外資短資流入に対しましては、かりに準備預金制度拡充強化されていたといたしましても、それほどの効果はなかったかもしれないというふうに考えております。
  93. 多田省吾

    ○多田省吾君 それじゃ、いわゆる拡充強化されましても、ことしの暮れとか、来年の初めごろ、また円の切り上げがあるのじゃないかという思惑で、輸出前受け金なんかの名目で大量の短資が入ってくるというようなことが当然考えられますけれども、そういった場合も、大きな効果は望めないと、このようにお考えでございますか。
  94. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 準備預金制度だけ切り離しましては、それほどたいした効果は発揮できませんが、為替管理と併用するということによりまして、相当大きな効果が発揮できるかと存じます。ことに投機動機というようなものにおきましても、ある程度の金利差というものは当然計算の中に入ってこざるを得ないわけでございますし、また、かりに外貨外貨のままで積ませるという方式をとりますならば、それによりまして投機目的に対しても効力を発揮し得るというようなことがございますので、それらの方策を通じまして、併用される場合には、相当な効果を発揮するというふうに考えております。
  95. 多田省吾

    ○多田省吾君 景気調整政策について、昭和三十年代の、いわゆる国内が過熱しまして国際収支は赤字であると、こういう状態のときには、金融引き締めということで済んだのでございますが、この景気停滞、それから国際収支は黒字である現在においては、財政の拡大とか、金融緩和とか、こういう姿でいるわけでございますが、今後、国内が過熱して、そうして国際収支も黒字であるという、そういう状況において、やはりこの準備預金制度というものが活用される、このように思いますけれども、大体政府見通しとして、そのように国内景気回復して過熱状態に進むと、しかもいわゆる公定歩合を引き上げますと、短資流入しますので、どうしてもこれは公定歩合は引き下げたままでおかなくちゃいけないと、こういう状況において効果があるということでございますが、大体いつごろからそういうこの準備預金制度運用し得る状態になり得ると、このようにお考えでございますか。
  96. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 国内金融緩和状況がいつごろ変化するか、国内におきまして設備投資その他が燃え上がってまいりますのがいつごろになりますか、その辺の見通しは、これはたいへんむずかしい問題でございまして、私どももはっきりいつごろになるであろうということを予言を申し上げるようなことはもちろんできないわけでございますが、現在の諸般の情勢から見まして、外国為替資金特別会計からの散布超過状態、それから民間の設備投資のアンケート調査の結果等を勘案いたしまして、今後かなり長い期間にわたりまして金融緩和基調は続くのではあるまいかというふうに考えております。したがいまして、国内の調整策としての準備預金制度が実際に強化される時期というのは、かなり先になるかもしれないというふうに考えております。
  97. 多田省吾

    ○多田省吾君 結局いまの局長のお話によりますと、いわゆる金融緩和傾向はこれからもずっと持続するだろうと。ですから問題は、国内景気が過熱したときに、この準備預金制度効果的に運用するということになるわけでございますけれども、そのようにお考えですか。すなわち、もう国内景気が過熱しそうになったら、その前に予防として準備預金制度を発動する、そういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  98. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) そのとおりでございます。
  99. 多田省吾

    ○多田省吾君 その運用がずっと先になるということになりますと、結局国内景気回復が数年後であると、なかなか回復しないと、国内景気過熱というまでにはなかなかいかないのだと、だから準備預金制度運用というものは遠い先になるんだと、こういうお考えですか。
  100. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 数年後というふうには考えておりません。ここ当面金融緩和基調は持続するとは感じておりますが、それがはたしていつ変化するか、その先の予測は、いろいろ世界経済全体の動きの中での現象でございますので、いまから予測するということはたいへんにむずかしいことかと存じております。
  101. 多田省吾

    ○多田省吾君 結局まあそういう景気見通しというものは、いま即断はできないかもしれませんけれども国内景気回復して、そして景気が過熱するような状況に向かったら、そのときは当然金融緩和傾向というものは続いているでしょうから、結局景気回復し過熱に向かうその段階において、諸般の事情を考えて、もうこの準備預金制度を相当効果的に運用すると、こういうお考えでございますね。
  102. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) そのとおりでございます。
  103. 多田省吾

    ○多田省吾君 その準備預金制度を、いままでは三%が最高でございましたけれども、今度は最高限度が二〇%に今度の改正でなり得るわけでございますが、その相当高い準備率になったときに、もし政府がまた貸し出しをゆるめるというようなことがありますと、これは両建てになりまして効果がなくなる。だから、準備預金制度効果的に運用されている段階においては、絶対にこの貸し出しは行なわない、もし貸し出しをその段階でやるとすれば、日銀からお金をたくさん借り得る大手の都市銀行のみが利益を得ると、こういうような事態になって、中小金融機関は非常な打撃をこうむるわけでございますが、大蔵省当局としてそのようなことは絶対しないと、このように確認できますか。
  104. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 従来恒常的な貸し出し都市銀行に対して行なわれており、そしてまたそれを背景とした金融調整手段というものが行なわれていたということにつきまして、いろいろと批判が強く出てきたことはただいまも御指摘のとおりでございます。今後の情勢といたしましては、恒常的な日本銀行貸し出しというものは解消してまいりまして、それによりまして金融調整手段のほうも、いままでのような手段よりは、この準備預金制度というようなことによりまして、全金融機関にできるだけ広く網をかぶせるという方法に切りかわってまいる、そのための制度でございますから、ただいま御指摘のような方向で運営がなされると思っております。
  105. 多田省吾

    ○多田省吾君 結局そのような方向でということは、準備預金制度が活用されている期間中においては、その大手銀行に対する貸し出しはやらないということを、はっきりこれはお約束できますね。
  106. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) もちろん中央銀行が短期金融調整手段としての貸し出しということは、当然すべての市中金融機関に対して行なわれるかと存じますが、いままでの恒常的、累積的な貸し出しというものは、当然解消する方向考えるべきだろうというふうに考えております。
  107. 多田省吾

    ○多田省吾君 午前中の質疑にもございましたが、いままで一〇%だった最高準備率を、今度は二〇%に改正したいという法案でございますが、この二〇%にした理由といたしまして、まあ現在の外為会計の払い超額が大体四兆四千億だということで、それが現在預金の三十兆に比べると大体  一五、六%だから、結局二〇%を最高限度にしておけばよろしいだろうというような、理由一つとしてそのように述べられましたけれども、それだけの理由であるならば、私はまあことしじゅうに、いまの傾向が続きますと、いわゆる外為会計の払い超額も——二百億ドルをもし突破すれば六兆二千億円というような状態になるわけです。そうだとすれば、預金三十兆に対して二〇%をこえて二一%というような状態にもなりかねませんし、外国の例を見ましても、大体フランスを除いて——これは両建てですから、まあ合わせれば二五%ぐらいになっておりますので——その他二二%以上になっているということを考えれば、むしろ二五%ぐらいのほうが適当じゃなかったかと、このように思うわけですね。そして、いわゆる金融制度調査会の答申というものが昨年の十二月の十六日に出ております。当然去年の十月、十一月ごろの金融環境を考えて、この二〇%ということにしたんじゃないかと思います。去年の十一月ころの、いわゆる外為会計の払い超額は三兆七千億ぐらいでしたから、だから二〇%であれば数年はこれはだいじょうぶじゃないかと考えたかもしれませんけれども一、もうことしは一月、二月とこの外貨準備高も急増しておりますから、もしも二百億ドルをこえるような姿になれば、預金に対してこれは二一%になるというようなことを考えますと、むしろ二〇%よりも二五%ぐらいのほうが適当じゃなかったかと、このように思うわけですが、いまどう考えておられますか。
  108. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) この最高限度のきめ方につきましては、二つの角度からの検討が必要でございまして、一つは、金融調整の有効性を確保するという観点からまいりますと、確かに御説のようになるべく高いほうが望ましいわけでございます。しかし、他面広くこの制度は中小金融機関等をも対象といたしますために、中小金融機関などに対する影響が、かりに最高限度の率を適用いたしました場合にも、それほど強くないということも、また一方において考慮の対象とせざるを得ない。その両者から考えまして、また諸外国の例等をも勘案いたしまして、かつまたただいまの散布超過の数字につきましても、増加分を対象といたしますわけでございますし、それからまたほかの吸収手段、たとえばオペレーションというような手段もあるわけでございます。そのようなことを勘案いたしますと、二〇%であれば十分対処できるし、またそれであれば中小金融機関等に対する影響もそれほど激しくなくて済むというふうに考えた次第でございます。
  109. 多田省吾

    ○多田省吾君 まあ二番目の理由の、中小金融機関に対する配慮ということは、何も二五%にしておいてもそれを発動しなければいいわけですから、これはあまりはっきりした理由にはならないと思います。  まあ私が心配するのは、二〇%にしておいて、これで足らなかったからまた改正して二五%にするんだ、こういうようなことが起こるんじゃ、この法案の意味がありませんから申し上げたわけでございます。  次に一番心配なのは、やはり新たに生命保険会社なんかのもの、すなわち対象機関、対象勘定の拡大ということでございますが、先ほども答弁がございましたけれども、外国ではほとんど生命保険に関して適用するという例がないわけでございますが、確かに引き締め策のときの貸し出しのウエートが若干高くなるということは考えられますけれども、信用創造というものが全然ございませんし、先ほども生命保険の場合は相当配慮して、発動する場合も低水準に押えるということをおっしゃいましたけれども、現在の段階では四つの段階があると思うんです。一番高いのが一・五%、それから〇・七五%、〇・五%、〇・二五%と。ですからこの生命保険の場合は半分以下というお話ですが、四分の一とか、またそれ以下とか、そういう低水準に押えるということは、十分これは配慮しなければならないと思いますが、その辺のお考えはいかがですか。
  110. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) そのとおりの配慮をいたしてまいりたいと思っております。
  111. 多田省吾

    ○多田省吾君 それからもう一つの心配は、やはり中小金融機関、特に相銀、信金等、これも低い水準に押えるというような御答弁でございましたけれども、まあ預金コストの問題で相当これは苦しい状態に追い込まれるんじゃないかと思います。そしてここ三、四年間その指導をしてきた、あるいは構造改革につとめてきたというような御答弁もありますけれども、これは相当預金コストが高くなるということが考えられます。それに対してどういう配慮をこれから考えておられるのか、その点をもう一回ひとつはっきりと承っておきたいと思います。
  112. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 中小金融機関の体質強化ということにつきましては、ここ三、四年来かなり進んでまいっておりまして、現在中小金融機関の体質はかなり改善されております。一方におきまして準備預金制度の率は、先ほどもちょっと申し上げましたように、現在の格差で最高二〇%で計算をいたしました場合には、要求払い預金が一〇%、定期性預金が三・三%、実効率にいたしまして、かりに現在の預金構成をもって試算をいたしますと、相互銀行、信用金庫で五%程度というようなことになるわけでございます。この程度のことでございますれば、現在の改善された体質における相互銀行、信用金庫は十分に耐え得る水準であろうと考えております。
  113. 多田省吾

    ○多田省吾君 外国の例を見ますと、フランスなんかではオペレーションとの併用措置をとっている。まあそのために準備率は相当高くなっているようでございますが、わが国準備預金制度効果的に運用する場合、準備率を高くする場合、こういったオペレーションとかその他のいわゆる金融政策とどういう形で併用していくかですね。それをひとつ具体的にお答え願いたいと思います。
  114. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) オペレーションと準備預金制度との併用のしかたでございますが、準備預金制度を率を高くするという場合は、先ほどもお話がございましたように、景気過熱のおそれがあるといったような場合でございますが、その場合に、たとえば金利操作、あるいはオペレーションそういったような金利に直接響く方法を採用して差しつかえない場合と、それからそれらの手段を併用いたしますと、外国との関係におきまして、たまたまその時期に外国が低金利政策を採用しているというような場合におきましては、直接金利影響するような手段をとりますと、直ちに海外からの資本流入が起こる、その結果引き締めようとした効果が逆に資金余剰、資金がだぶつくという状態を起こしてしまうというようなことがございますので、それら海外金利国内金利との関係短資流入状況等を勘案いたしまして、ある場合には準備預金にかなりのウエートを置いたやり方、実施のしかたをやる、あるいはまたそうでない場合におきましては、準備預金はうしろに下がって、直接金利影響するような手段を正面に立てて金融調整を行なう。いずれもそのときにおきまする国内と海外との情勢をよく勘案しながら、金融政策の諸手段のうちのどれにウエートを置くかを考えて実施すべきであろうかと考えております。
  115. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、準備預金の利子は原則的には無利息でございますけれども日銀運用上の問題として、政策当局の判断で利子もつけることがあり得ると、どのような場合に利子をつけるのか、そしてその付利はどの程度にするのか。
  116. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) これは今後の問題といたしまして、そのつど考えていく、清勢に応じて考えていくことでございますが、現在諸外国における実際の例などからまいりまして、たとえばイギリス、イタリアあたりでは、政府短期証券並みの金利ということでやっております。まあわが国におきましても制度発足後、大体そんなようなことが考えられるのではあるまいか、いまからあまり先のことを申し上げるのもいかがかと存じますが、そういうことが予想されるわけでございます。
  117. 多田省吾

    ○多田省吾君 この答申をした金融制度調査会における参考人意見も、利息をつけてほしいという要望が圧倒的に多かったということを聞いておりますけれども、いまおっしゃったように、場合によってはイギリス、イタリア並みのいわゆる短期証券並みの金利を付してもいいと、こういうお考え方であると、このように考えてよろしいわけですね。
  118. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) そのとおりでございます。
  119. 多田省吾

    ○多田省吾君 諸外国においては、特にアメリカなんかでは、この準備資産として借用証書とか、金融債とか、あるいはコマーシャルペーパー等、西ドイツでは短期、中期の借り入れ金、フランスでは貸し出し、リース取引等預金以外のものにも対象を拡大していると、このように言われているわけでございますが、今度の改正でそのような外国並みに拡大しなかった理由はこれはどういうことなんですか。
  120. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 諸外国の場合とその点でわが国の違います点は、期間におきまして諸外国ほど長いものが実際にないというようなこと、そういう点から運用上若干の相違は生じているわけでございます。
  121. 多田省吾

    ○多田省吾君 この前もお尋ねしたのですが、今度西ドイツあたりが公定歩合の引き下げ、その他の国々も続々とそれにならったわけでございますが、わが国においてはそのいまの公定歩合をさらに引き下げる必要はないと、こういう御答弁もこの前あったわけでございます。このいわゆる前には考えられなかったような低金利政策というものが、いまはもう恒常的にこれから長く続こうとしているようでございますが、それを恒常的なものと見るのか、それとも一時的なものと見るのか、どのように見ていらっしゃいますか。
  122. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) ある程度恒常的なものと見ております。  なお公定歩合につきましては、この前も御答弁申し上げましたように、本来日本銀行できめられるべき筋合いのものでございますので、私どものほうでまだ下げるべきではないとか、下げるべきだとかいうことを御答弁申し上げたのではないのでございますが、基本的な認識といたしましては、今後恒常的に低金利時代に入っていくというふうに考えております。
  123. 多田省吾

    ○多田省吾君 そうしますと、いま円の再切り上げというような思惑、あるいは外貨準備高の二百億ドル突破というような思惑、こういった懸念が非常に強いわけでございますが、そういったことに対処する意味においても、この金利の再引き下げというものがあってもいいのじゃないかと、このように思いますけれども、それをやらない理由ですね。はっきりした理由はどこにありますか。
  124. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) たとえば長期金利につきましては、目下引き下げが具体的に検討されている段階でございますし、金利全般につきましてさらにその水準を引き下げるという努力は目下進められているわけでございます。
  125. 多田省吾

    ○多田省吾君 前に、去年の八月以前におきまして、前福田大蔵大臣等がわが国の為替管理はもう鉄壁だ、西ドイツなんかはまるはだか同然ではないかというようなことで、だいぶ胸を張って答弁しておられたようでございますが、昨年八月末のあの輸出前受け金等によるいわゆるドル流入、こういった姿からどうもわが国の為替管理は鉄壁じゃないと、こういうふうになったのでございますけれども、この為替管理と相呼応して、あるいは準備預金制度の活用ということをこれから考えていけば、昨年八月のようなことは今後起こらないと、そのように当局は確信を持っておられるのか。その辺はいかがですか。
  126. 稲村光一

    政府委員稲村光一君) 今後の短資流入資本流入圧力にどういうふうに対処するか確信があるかという御質問でございますが、先ほど午前中に御答弁申し上げましたように、この準備預金制度と、それからこの為替管理というのは、いわば両々相まって有効な手段として作用をさせていくべきものであろうと存じます。今後、したがいまして、通常の場合におきましては、金利差等によります部分は、この準備預金制度の活用によって流入を抑制できると存ぜられますし、それからまた、非常に心理的なレート変更等の思惑によって起こります投機的な面につきましては、これは相変わらず為替管理によりまして抑制せざるを得ない点もあろうと存じますが、ただいま御指摘の昨年八月の状況、これは当委員会におきましてもしばしば御説明申し上げましたように、輸出前受けという形で短資が入ってきたわけでございまして、それにつきましては、情勢によって、その輸出前受けをとめるという措置をとってきたわけでございます。最近におきましても、同様、やはり新しい措置をとるべき状態でございましたので、二月二十五日にとったわけでございますが、このようにいたしまして、情勢を見ながら、この御指摘のような投機的な短資流入が起こらないように適切に処置してまいりたいというふうに存じています。
  127. 多田省吾

    ○多田省吾君 それに関連して国際金融局長質問したいんですが、非居住者債務について一〇〇%まで準備率を課すという制度ですね、これは海外短資流入対策として、大体わが国においてはどういう状態になったときにそれを発動するのか、そういうまた懸念があるのか。ことしの後半とか来年初めごろそういう発動しなければならない懸念があるかどうか。その辺の見通し一つ伺わせていただきたい。
  128. 稲村光一

    政府委員稲村光一君) 具体的な非居住者の預金その他非居住者に対する債務につきましてのこの準備預金制度の発動につきましては、具体的には銀行局長と相談をして実施していくわけでございますけれども、一般論を申し上げれば、先ほど申し上げましたように、内外の金利差に基づきまして、その金利差一つ短資流入要因になっておりますので、それがあります場合におきましては、これは早急に発動をしていただきたい。その意味では、現在の状況におきまして、やはりすでに発動をしていただく要因存在すると言ってもいいのではないかと存じますが、またこれは先ほど申し上げましたとおり、これだけで現在の状況におきまする短資流入を阻止するというには、心理的な別途の第二の要因がございますので、不十分であろうかと存じますが、これは直接的な規制と両方をあわせまして適切に処置してまいりたい、こういうふうに存じています。
  129. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 二、三お尋ねしたいと思います。これまでの質問の中でも出ていた点、若干重複するかもしれませんが、重ねてお伺いしたいと思います。  今回の改正案、提案理由説明にもありますように、国際化の進展に対してどうやって対応するかという問題意識から、内外均衡達成のための金融政策手段の整備として御提案をされております手段を整備するということ自身は、反対する何ものもないと思います。ただ問題は、どういう手段の効用があり、限界が一体何なのかということではないかと思います。  そこで、金融政策としていろいろな目的が幾つかあると思いますけれども、最近、とりわけ各国を含めて痛切な課題になっておりますものが、内外均衡の同時達成という問題だと思います。  そこで、今回の改正案の中を大まかに分けますと、三つくらいになると思います。  一つは、適用対象の拡大の問題、もう一つは準備率の最高限度を百分の十から百分の二十に引き上げる問題、さらにもう一つが、海外短資流入対策、このうちで短資流入対策はまたあとでお伺いしますけれども、適用対象の拡大あるいは最高限度を百分の十から百分の二十に引き上げるこの仕組みというものが、内外均衡の同時達成という問題にどう効果を出しているものか。また、かりに効果があるとすれば、どういう状況でこの制度を発動されるか。この二つをまず伺いたいと思います。
  130. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) ただいまの御質問の点は、まず二〇%にすること、あるいは対象範囲を拡大すること、このことが内外均衡の同時達成にいかなる効果を発揮するかということであろうかと存じますが、今後、国際的な経済交流がますます緊密になる状況のもとにおきましては、いわゆる金融政策手段のうちで、金利を中心として調整を行なう手段、すなわち、公定歩合操作でございますとか、あるいはオペレーション操作でございますとか、そういう方法によりましては、内外均衡の同時達成に支障があるという場合がたびたび出てまいろうかと存じます。先ほども申し上げましたように、国内は過熱であって引き締めを行なう、そのために金利を上げるということになりますと、海外がたまたまその時期に低金利政策でございますと、海外の資金流入をしてまいるというようなことによりまして、国内的な均衡もまた乱されるという結果になりますので、そういう時期におきましては、どうしても金利を主たるねらいとしない金融政策手段を活用する、その活用する場合には、一つは、率を引き上げる、一つは、対象範囲を広げるという形によりまして、活用の幅を広げてまいる必要があろうかと存じます。それが準備預金制度の一〇%を二〇%に引き上げ、対象範囲を拡大いたしまして、金融債、信託、保険というようなものを対象に加えることとして考えております理由でございます。
  131. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いま、金利影響を与えない金融政策手段としてというお答えがあったのですけれども、実際には資金コストを高めるわけですから、その意味で、金利政策のようにパラレルであるかどうかは別として、金利にも当然影響がある。したがって、一時的には量的規制を対象にした政策手段かもしれませんが、結果としては付随的に金利の問題がついてくる。それはそう見なければいけないのではないかと思います。そこで、内外均衡の達成ということが健全な国際通貨制度の中において論じられておるなら別ですけれども、今日のようにドルと金の交換性がはたして回復されるかどうかわからないそういう中で、ドル不安というものが底流にある今日の状態がまさにそうですけれども、そういう中でこの制度が、おっしゃったように内外均衡の同時達成手段としてきいていくのか。これは先日も伺ってお答えがありましたように、確かに金融引き締め手段金融を引き締めることは、従来の日本経済の経験が教えているように、輸入を減らし輸出ドライブをかける、結局外貨がふえてしまうということになってしまうので、したがって、内外均衡の同時達成手段としてはきわめて不向きであると私は思うのですが、御意見はいかがでしょう。
  132. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) いま、すべての状況を想定いたしますと、確かにお説のような面があろうかと存じます。ただ、将来におきまして、国内的に金融引き締めの必要が生じて、しかも海外金利が低下傾向をたどっていくというような時期におきましては、やはり金融調整の諸手段のうちでは、最も準備預金制度が適しているという事態が今後しばしば起こるのではあるまいか。また、そういう事態が一番多いのではないかというふうに考えられるわけでございます。各国におきましても、ここ一、二年来、準備預金制度金融調整の花形と申しますか、一九七〇年代を通じての花形になるであろうという方向で、この制度の拡充強化が一斉にはかられてまいっておりますのも、まさにその国際化時代に対処しまして、やはり諸手段のうちでこの制度が一番活用されざるを得ないような機会が一番たくさん来るのではないかという想定に基づくものだと考えております。
  133. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 海外の例でお話なんでございますけれども、昨年来の国際通貨不安の中で、海外諸国が準備率の引き上げを行なって、内外均衡の達成に努力したという事例はあるでしょうか。
  134. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) その事例の一々につきましては、米里調査官から御説明申し上げます。
  135. 米里恕

    説明員(米里恕君) 最近の諸外国の準備率の適用状況でございますが、一番これを活発に最近使っておりますのはフランスでございます。フランスにおきましては、昨年の四月に準備預金制度拡充強化いたしまして、対象金融機関を全金融機関に拡大するとともに、預金だけでなしに貸し出しに対しても準備率を適用できるような制度を採用いたしております。昨年四月に改正いたしましてから数回にわたりまして準備率の引き上げを行ないまして、もっぱら国内均衡準備預金制度の活用によってはかっておる、こういう状態になっております。  イギリスにおきましても、昨年の九月にやはり同様に制度改正をいたしまして、対象範囲をほとんど全金融機関に拡大したということをいたしております。  西ドイツにおきましては、従来から非常に活発に準備率の操作を行なっておりましたが、最近に至るまでしばしば準備率の変更を行なっております。このように対外均衡、対内均衡という両方の観点から、対外均衡は主として金利政策、対内均衡は主として準備預金制度という活用のしかたが、昨年あたり欧州諸外国で活発に用いられている事例でございます。
  136. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 実はいまのお答えの中にもあったのですが、対外均衡金利政策、対内均衡準備預金制度、で、いまここに提案されているのは主として対内均衡に向けた準備預金制度でございます。じゃ対外均衡に向かって金利政策はテーブルに乗っていないのではないか、これが私は一番の問題だと思います。この点はあとでまた御意見を伺いたいのですけれども、ただいま海外の例で一番感じたことを申し上げますと、たとえばフランスのフランがどういう管理をしたかということは、昨年通貨調整の中でフランがどういう立場に立っているのか、内的均衡を進めることが外的均衡だと言わんばかりの態度をとってきたのがフランスだと思うのです。  イギリスはどうかと言いますと、御存じのようにポンドというのはいわばポンド圏内で準基軸通貨のような性格を持っておりますから、内的均衡をはかるというのが当然必要な政策手段になります。それと日本と一緒になるのかというと、私は一緒にならないような気がいたします。ただいまのお答えの中でも、内外均衡の同時達成という面で、むしろ内的均衡は働いても、外的均衡金利政策が併用されないと効果は発揮されないというお答えがありましたので先に進みたいと思います。  一応こまかい点お伺い申し上げますと、まあ百分の二十に引き上げました。ただ、ここで準備預金制度を発動するときに問題になるのは、その準備率の絶対値なんでしょうか、それとも何%上げたという幅なんでしょうか、この辺はどうお考えになっておりますか。
  137. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 絶対値が問題になると存じます。
  138. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 一応念のためですけれども、海外の事例では、国債の強制消化というような制度が前にあって、振りかわるというようなことで準備預金の引き上げということをやった事例はあります。そういう意味では最高限度を引き上げても大きな影響というのは出ないのかもしれませんけれども、今日では、御案内のように一〇%という最高限度をさえ使い切っていない。それを二〇%に上げる。これは金融政策手段の幅を広げるのだと言われてしまえばそれだけなんですけれども、ただ実際にはその絶対値の何%じゃなくて、何%から何%に引き上げるのだというところにほんとうの金融政策効果が出てくるのじゃないか。それがあるから、内的均衡という面では預金準備率、これは制度がいまあるのですけれども、これを発動したくてもできない。一・五%を二%に上げても大きな問題が出てしまう。その意味でワクの拡大というのは制度としてふくらむという面はわかりますけれども、単純に、だからこれから運用の幅がすぐに大幅になってくるのだということには直結しないような気がいたしますが、その点はそういう理解でよろしいですか。
  139. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 実際問題といたしましては、非常に激しい変化を実施面で行なうということが行なわれますかどうかは疑問でございますが、ただ先ほど来たびたび申し上げておりますように、金融情勢全般がたいへん大きな転換点に参っております。いままでのいわば過少流動性状態から過剰流動性に近い状態にただいま移りつつある急転換の時代だと思いますので、実施面におきましてはかなり大きな変化は行なうことになるのではないかというふうに考えております。
  140. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 その点は深くお伺いいたしません。  そこで立場をかえてちょっと伺ってみたいのですけれども、二〇%に引き上げるときに、外為散超の四兆四千億ということが頭にあった、これはわかる気がいたします。ただ総体としての資金量がふえていくということを気にされてのことだと思うのです。その意味で従来から進めてきた貯蓄増強運動については今後も同じように貯蓄増強ということで運動を進めておいでになるのか、あるいは見直しをされるのか。ちなみに四十六年度の目標額は大体十三兆七千億円、これはもう四兆四千億円よりもはるかに膨大な資金が実際には預金として諸金融機関に入っている。しかし貯蓄ということが持っている道徳的な面を考えれば、一概にもう要らないよとは言えませんけれども、貯蓄増強運動ということを今後やはり継続してやる金融情勢にあるのであろうかという点についてはいかがでしょうか。
  141. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 貯蓄自体はやはり増強をしてまいる必要があろうかと存じます。むしろただいま転換点に立っておりますのは、貯蓄されて集まりました資金が、産業を中心に回っておりました従来の状態から、今後は社会投資、社会資本、社会福祉、そういう方面に貯蓄が回されていく割合がふえるであろう。そういうための原資の蓄積といたしましても、貯蓄増強ということは相変わらず進められてしかるべきものであるというふうに考えております。
  142. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いまのお答えに付け加えて伺うのですけれども、いま金融がたいへん超緩和状態であると言われておりますし、そういう実感を金融機関も持っていると思うのですけれども、かりにたとえば十三兆何がしの貯蓄が新たにされる。そのうちでどのくらいが消費者信用に回ったかと申しますと、信用残高を見ると、わずかに四十六年九月末で三兆四千百億ということですから、おっしゃったように本来はもっと預金に見合って消費者信用に還元すべきものがされていない。だから見かけだけ金融緩和だ。いまほんとうに金融緩和なんだろうかというと、たいへん疑問な点があるのじゃないかと思うのです。この点御意見いかがでしょうか。
  143. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 全くおっしゃるとおりと存じます。いわゆる過剰流動性状態がまだいまほんとうの意味での先進国型ではないというのもそこにあろうかと存じます。
  144. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そこでこれは消費者信用をふやし、一般の消費者購買力を高めていく。これは実は内外均衡の同時達成という意味では今日的な課題だと思うのです。そこで準備預金制度改正することとあわせて、場合によってはそれ以上の課題として、どうやってそういう資金の流れを変えていくのかということになると思うのですがその点についてはどういう御計画を現在大蔵当局とし  てはお持ちなんですか。
  145. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) まず現在行政指導としてやっておりますことは、金融機関の頭の切りかえと申しますか、要するに産業金融中心といういままでの惰性で、たとえば貸してある金が返ってくることに対してしぶしぶこれを受け取るというような態度がもしありとすれば、これはまだ頭の切りかえが全く進んでいない証拠でございます。そういうところから頭を切りかえまして、消費者信用、そういう方向を新たにどんどん開拓をしていく。そうして産業金融に対しては、返されるお金はどんどん返してもらうのだというような形での進め方、そういうことが必要であろうかと存じます。金融制度調査会におきましても、そのような金の流れの転換と申しますか、資金の大きな流れの転換につきまして、今後検討課題として御審議が行なわれるように承っております。
  146. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 おっしゃったようなことでやっていただくしかないんですけれども、そうは言っても、小田原評定で過ごすにしては差し迫った課題であろうかと思いますが、めどとしては、まあこれが従来と全く裏返した窓口規制になるかどうかわかりませんけれども、そういったものも含めていつごろまでにそういう形で、文書面の指導になるかどうかはわかりませんが、大蔵当局として希望し、予定されているのですか。
  147. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) いつごろまでにどのぐらいの額の消費者信用がふえ、構成割合がどのくらいに高まるかということは、これは諸般の情勢が複雑にからみ合った問題でございますので、ここでどういうふうになるということをお約束申し上げることができないのはまことに残念でございますが、少なくとも現在の構成比でございます五、六%、まあ六%前後の消費者信用が、相当、割合としては高まるという方向で、ここ半年か一年の間に金融制度調査会でもそれに関連しての結論が出されると考えております。
  148. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 それでは短資流入のことで伺って、またただいまの問題に戻りたいと思うのですけれども、これは国際金融局長にお伺いすることかもしれません。  現在、輸出の先物契約を見ますと、一ドル三百円をすでに割っているという話がよく聞かれますが、これは事実なんでしょうか。
  149. 稲村光一

    政府委員稲村光一君) 先物市場の最近の情勢を見ておりますと、先物にも御承知のとおり、何月渡しと、非常に先のものにつきましては、あるいはそういう相場が出ておるものもあるようでございますけれども、一番大きな、たとえば三ヵ月とか、そういうところでは、いままでのところ、昨日のようなところでも大体三百円ちょっと上というところでございます。
  150. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 三百円ちょっと上、まあ一円割ったかどうかその辺は別な話として、先々どうなっていくか、見通すことはたいへん困難だと思うのですが、先物についてドル傾向傾向として出ているということは、ドル不安がちっとも消えていないということだと思うのですが、そこでその原因は特に問いません。ただドル不安がある、しかもこれはドルの交換性が回復されない限りは、あるいは別にSDRが中心になるかどうかは別にして、新しい国際通貨管理制度が整備されるまではどうも続いてしまうのではないかという危惧の念がございます。この点について、別な御意見があったら伺いたい。  どっちにしても、そういう環境の中でドル建て契約がたいへん日本は多い。しかも商社あるいは産業、企業の立場からすると、リーズ・アンド・ラッグズをやるなと言ったってやらざるを得ない。そうなると、日本の場合、国際通貨調整に追い込まれるというのは、短資流入よりは通常の貿易活動からのリーズ・アンド・ラッグズのほうが大きいのじゃないかと思うのですが、その辺の御判断はどうでしょうか。
  151. 稲村光一

    政府委員稲村光一君) 先ほどから私は短資流入と、こういうふうに申しておりますものの中には、実はリーズに基づくものも含めましてお話を申し上げていたわけでございまして、御案内のとおり、日本の為替管理の現在の状況におきましては、いわゆる単純な意味短期資金流入、ことに非居住者の円投機と申しますか、そういう面の点ではこれは非常に有効に働いておったわけで、現在でも働いておるわけでございますが、この点は、八月の先般のニクソン声明の直後の状況におきましても同様でございます。あのとき及び最近におきましていわゆる短資流入と申し上げておりますのは、これは輸出前受けが主たるあれでございまして、一種のリーズというふうに申し上げていいかと存じますが、これであったわけでございます。
  152. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 それが、ドル建て契約がほとんどであって、円建て契約というのは見る陰もないという日本の貿易の姿から言って、今後とも避けられないとしますと、今回の準備預金制度で、短資流入対策として百分の百まで最高限度を引き上げて、非居住者を中心にしてやるのだということですけれども、これはリーズ・アンド・ラッグズとは関係ないと思いますので、結局はきかいのじゃないか。しかも今回こういう制度に踏み切るからには、円転規制の問題ということも含めて身ぎれいになっていくということが前提になるのは当然でしょう。しかもこれでは、輸出前受けを中心としたドル流入を防げないということになるのでしょうか。
  153. 稲村光一

    政府委員稲村光一君) そのリーズの中には、これは先ほど全般的な非常にばく然とした意味短資流入と、こう申し上げておったわけでございますが、たとえば先物相場は、御案内のとおり、内外金利差というところからも生じてくるわけでございます。それから確かに現在、日本対外取引のほとんど大部分が外貨建て、しかもドル建てであるというところに、非常に大きな問題のあることはこれまた御指摘のとおりでございまして、この点につきましては、極力円建て契約のほうに変わっていってほしいという意味でいろいろと考えておりますが、ただ具体的には、そういたしますと、いろいろな輸出競争力の問題で、すべての取引が日本側の関係者の希望どおりに円建てになかなか変わってまいらないという点もございます。それからまた、円建て契約を促進いたしますと、今度は相手方のリスクが移るわけで、そのリスクをどうするか。その内と外、両面におきまするリスクヘッジの問題というのが御案内のとおり非常に問題でございますが、それを、リスクヘッジを自由に認めろという意見も非常に経済界等に多いわけでございますが、そういたしますと、これは一時に多額のまた短資流入が起こるという問題もございまして、この点は、両方を勘案しながら適切にどういう方法をもって処理していくかという点を、実は鋭意検討いたしておる段階でございます。まだ結論に達しておりませんけれども、これはなるべく早急にそういう点で具体的なことを考えてまいりたいと、こういうふうに存じております。  確かにこの準備預金制度との関係で、したがいまして、いまのようにリーズという中には、内外金利差に基づく先物相場との関係のものもございますので、その点におきましては、もう一つは非居住者関係債務の場合にどこまでそれの対象として入れるかという問題も、事実上の問題、これからの審議を経まして法律が成立いたしましたならば、具体的にどういうふうにやっていくかということの一つの問題がそこにあろうかと存じますが、一般論として申し上げますれば、先ほどから申し上げておりますように、この内外金利差に基づく分につきましては、非居住者債務の準備率を導入していただくことによりまして、相当程度現在のプレッシャーは緩和できるという要素もあるんではないか。ただし他方レートに関する不安から生じております部分は、たとえ一〇〇%の準備預金というのを義務づけたといたしましても、これはそれだけではきかないという面も当然ございます。したがいまして、円転規制その他の為替管理関係の措置は、これはやはり現在のような情勢におきましては、これを準備預金制度をもって代替して片方はやめていくとか、あるいは緩和していくということには簡単にはなし得ないのではないかというふうに存じております。
  154. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 結局従来の為替管理についてそう簡単にはやめられませんとおっしゃる反面で、今回の非居住者自由円勘定について百分の百まで持ってくる。これも海外の例を見ると大体そうなっているからここまで制度としてやはりふくらませておきたいんだということではあっても、これだけでは今日のリーズを含めた短資流入にはとても対抗ができない、そう考えてよろしいわけですか。
  155. 稲村光一

    政府委員稲村光一君) 一〇〇%は効果は期しがたいということは御指摘のとおりだと思います。
  156. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 それで、あとちょっとこまかい点で伺いたいんですけれども、政令案の概要きょういただきまして拝見した中で、2の(5)だと思います。「大蔵大臣の指定する外貨債務」というのが書いてありますけれども、これは具体的にどういう内容を想定されているんでしょうか。
  157. 稲村光一

    政府委員稲村光一君) ただいま御答弁申し上げましたとおり、具体的にどういう債務をそのときどきの状況に応じて考えていくかということにつきましては、今後の情勢に応じて考えてまいりたいと存じますが、非居住者を、まず第一に考えられますのは非居住者自由円預金勘定でございますが、そのほかにも外国為替公認銀行の預金以外の外貨債務という点につきましても、情勢に応じましてこれを考えていく必要が起こるのではないか。ただしその場合には、一体外貨債務というのをグロスで考えるべきなのか、あるいはネットで考えるべきなのかいろいろと問題があろうかと存じます。また長期の債務も入れるべきなのか、短期債務をどうするかというような点もあろうかと存じます。具体的にはいまのような内外の情勢考えまして、短資流入の規制の関係、それから中の国内流動性に対する影響、また国内金融政策面からいたしました見地と、両方考えまして処理してまいりたいというふうに存じます。
  158. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 海外に本店があって日本に支店があるものについては、居住者扱いだと思いますが、それで間違いないですか。海外に主たる事業所があり、日本に支店がある場合には居住者扱い……。
  159. 稲村光一

    政府委員稲村光一君) その支店は為替管理法上は居住者扱いでございます。
  160. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そうしますと、外国銀行を想定して考えますと、本支店間の振替で外貨が入ってくる、それをどうやって押えるかということが、いわゆる典型的なユーロダラー、エイシアンダラーの流入路になる、そういったことを予定されてこの2の(5)があるのかと思ったんですが、そうでもないんですか。
  161. 稲村光一

    政府委員稲村光一君) ただいまの御指摘も、先ほど申し上げました問題点の中でその点を実はちょっと落として申し上げましたが、いまのような居住者に対する債務も入れられるように考えております。ただ具体的にどうするかという点につきましては、これは今後の情勢の推移に待ちたいと考えておりますが、原則としては、対居住者の部分につきましても、やはり考える要素というふうには考えておるわけでございます。
  162. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 国際化の進展ということから、考えると、当然想定されるのは、外国銀行の国内における活動の活発化ということだと思うのです。その意味で内的均衡といっても一つ穴があいてしまう。これが国際化時代の金融政策のむずかしさだと思いますし、しかもその穴から典型的なユーロダラー、エイシアンダラーが入ってくる、その流入路であるということはすでに大蔵省の刊行物に書いてあるわけですから、そういったものを日本政府としてどうやっていくか、これは今後の検討課題じゃなくて、むしろ公に明らかにしながら自制を求める、自粛を求めるということにすべきだと思いますし、その辺また御検討をよろしくお願いしたいと思います。  で、次のことをまた伺ってまいりますけれども、生命保険についてちょっとお伺いします。  今回、生命保険を対象に入れるについて提案理由を拝見しますと、引き締め期に引き締め政策の対象外の金融機関の貸し出しが急増するという現象が見られるので、したがって、ということなんですが、そこで疑問なのは、生命保険の場合には、所得税控除が御案内のようにあります。したがって、資金集めには特典があります。そういう特典があるものが、貸し出しについて自由かってでいいのだろうか、しかも提案理由のように、「引き締め期に引き締め政策の対象外」とありますけれども、引き締め政策というのは、そのときの国としての政策であった資金集めで、所得税控除という恩典がある。言いかえれば、一そう公共性が要求されている生命保険会社が、引き締め政策にもかかわらず資金がどんどん出ていく。これは理解ができないのですが、この点どう御判断になっているのか、あるいはまたどういう指導をされてこられたのか伺いたいと思います。
  163. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) ただいまの御質問につきまして、保険部長から御答弁申し上げます。
  164. 川口嘉一

    説明員(川口嘉一君) 御指摘のとおり、生命保険料控除もございますし、生命保険というものの性格が、普通の金融機関と違い、一種の私的な社会保障と申しますか、死亡時その他の不幸時に備えるというような性格もございまして、したがいまして、そういう契約者から集めました生命保険料、保険金の支払いが起こるまでは、主として責任準備金というような形で積み立ててまいります。その積み立てております資金に対応する資産の運用につきましては、保険業法ないしはその施行規則によりまして厳重な制限を付してございます。  で、その考え方の基本は、申すまでもなくその契約者からお預かりしておる資産を、安全で有利に運用するということが根本でございます。  私ども保険行政という観点から、保険監督という観点からは、金融政策的な要請というものはその面から、行政のその部分から見ますと、必ずしも中心にはなっておりません。安全、有利という契約者の負託にこたえるという点が中心になっております。その点から、たとえば確実な有価証券とか、その他財産抵当等も含めまして確実な担保のある貸し付けとかいうふうなものに主として運用をいたしております。しかし、現在の金融市場資本市場の状況からいたしまして、契約者の負託にこたえて資産を安全有利に運用するためには、単なる証券投資、不動産投資といったものに限りませんで、主として長期の貸し付けというものにも相当需要がございますし、しかも安全有利に運用できるという意味から言いますと、運用することが自然でございますし、私どものほうでもそれを認めております。その結果、午前中銀行局長からも答弁ございましたように、現在においては財務貸し付けとしては六二%程度でございましたでしょうか、いわゆる約款貸し付け等も含めますと七〇%程度のものがいわゆる貸し付けの形で出ております。しかし、これも先ほどからいろいろ御議論がございましたように、金融機関としての特殊性等から、日本銀行との取引等もございませんし、オペレーションの対象にもなっていないというような、ある意味では金融政策的な立場からのコントロールというものに若干弱いものがあったということも事実であろうかと思います。しかも生命保険の資産が相当ウェートも増してきておる、そういうときに、ほかの金融機関と結果においてはその資産運用、貸し付けを通じまして、かなり金融情勢に大きな影響を与えておるという状況におきまして、その金融機関としての特殊性があったからでもありましょうけれども、直接のコントロールには服していかなかったということの反省もございまして、今回の準備預金制度改正にあたりましては、原則として同じような網の中に入るべきではないかというふうな観点で取り上げられた、こういうふうに考えております。
  165. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 私、お伺いしたのは、一そう公共性が要求されている生命保険、なぜ要求されているかといえば、資金集めに所得税控除が認められている。そういったものが、国が引き締め政策をするんだよと言っているのに、それに従わないで貸し出しがふえていくというのはどういうことなんだと聞いているのです。それに対して大蔵省はどういう指導をされてきたのか。それが実際守られてこないから、今度はこういう提案になってきたのですけれども、ちゃんと守られていれば、こういうしり抜けばなかったわけです。その点どうなのか。
  166. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 過去におきまして、引き締め期にやや全体の調整を乱すような動きがございまして、それに対しましては、大蔵省の銀行局といたしましても、十分にその点を改善するように指導をいたしたわけでございます。その結果、そうしておりますうちに、景気情勢全般も変わってきたということでございますが、今後の状況におきましては、再びそういうことが繰り返されるかどうか、私どもとしましては繰り返されないことを望みますし、また繰り返されずに済むかもしれません。もし繰り返されずに済むようでございましたら、答申にもございますように、準備預金制度の発動の時期、方法等について十分に検討すると書いてございますのはそこの点でございます。もし今後の指導でこのようなおそれがないということでございますれば、あるいは準備預金制度の発動も実際には要らないかもしれませんし、それからまたそうではない場合におきましては、やはり準備預金制度の発動を必要とするというふうに考えておる次第でございます。
  167. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そういう指導をされてきたとは思えないから質問をしていたのです。  で、安全有利ということで重ねて申し上げますと、保険業法施行規則の十八条に財産利用の制限がございます。制限が書いてあるくらいですから、制限的に運用しろということで、ただし十一項に、「其ノ他大蔵大臣ノ認可ヲ受ケタル方法」。実はここのところで貸し出しがふえてきている。どういう指導をされてきたかと言いますと、四十四年に通達が御案内のように出ております。その通達では、今回、従来の財産利用における制限を、生命保険会社の自主的運営の範囲を拡大する方向で整理をするという趣旨で、きめられたことはどういうことかと言いますと、コールローンは認める、さらに銀行、信託銀行または相互銀行の保証した貸し付けについては総資産の十分の二以内について認める一これは昭和四十四年一月二十二日。一年たったあとで、もう一度通達が出ています。四十五年の三月には、どういうことかというと、「その総額は総資産の十分の二以内」とすることを削除した。青天井にした。したがって大蔵省がやってきた指導というのはむしろ野放しにしてきたんじゃないかとしか思えないのですが、この点はいかがですか。
  168. 川口嘉一

    説明員(川口嘉一君) お話の点でございますが、一歩お考えいただきたいと思いますのは、金融機関の経営の効率化と申しますか、そういうふうな観点からの要請もあるわけでございます。  で、生命保険会社といたしましても、資産を安全有利に運用して、結果的には契約者の負託に十分こたえるという点から考えますと、あまりぎくしゃく縛りに縛っておるよりも、経営に自主性を持って、効率的な資産運用をはかるということも必要かというふうに考えます。  いま御指摘のありました省通達の基本に、やはりそういう一つ金融機関としての生命保険会社の経営の効率化、弾力化といったようなことが基調をなしておったということを御了解いただきたいと思います。
  169. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 社会的な責任が大きいということは、もうかりさえすればいいというわけにはいかないんだということだろうと思います。それはいろいろ制限がついているわけですから、それは生命保険各社にすれば、一番利回りがいい方法で、安全有利に回したい、これは当然でしょうけれども、ならば、所得税控除なんという恩典がなくなったっていいわけだし、なぜつけておるかといえば、片っ方では日本の社会保障の不足というものがあり、実際に保障効果を果たしているからやっている。集まったお金をどうやって使うかということは、おのずからいわゆる民間金融機関とは違うのだ、自主的運営の範囲が狭められてくるはずだし、そう言われても私はいたし方ないはずだと思います。  そこで、安全有利ということで重ねてお伺いしますけれども、問題は銀行あるいは、まあ相互銀行も含めてですけれども、銀行保証貸し出しがふえる、それが安全有利だとかりに言えるなら、なぜこの間の国会で預金保険法をつくったのですか。銀行といえども不安があるから預金保険法をつくった。そして総体として十分の二十というワクははずしても、一銀行に対しては、十分の一という限度をいまでも残しているのは、そういう配慮があるからでしょう。だからとにかく生命保険の自主的運営で、資産が総体として高率に回っていけばいいということでは決してないと思います。そうなれば、これまでの通達の経緯は別として、いまの金融情勢を踏まえて、もう一ぺんもとに戻してという行政指導があっていいのだし、しかも保険業法の施行規則十一項、大蔵大臣の認可する方法とあるわけですから、行政権が介入して何らのふしぎがないというやり方のほうが、生命保険に対しては一番筋が通ったやり方ではないでしょうか。にもかかわらず、従来しいたげられたから、今度はここに入れるというのは、何か本末転倒というか、本来の解決の筋道から違ったところで話をおさめているように思えるのですが、この点いかがですか。
  170. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 確かにお説のように、筋道といたしまして、まず保険会社のしぶり自体についていろいろと指導をするということが必要であり、その方向は今後とも仰せのとおりの方向で進みたいと存じますが、ただ大部分の生保の会社が総合会社でございまして、契約者の利益をそのまま直ちに反映をしてまいるというたてまえをとっております関係で、やや一般の金融機関と違う点がある。その点でいまの指導が必ずしも十二分に行ない得るかどうか、その辺につきまして、もしその指導の足らざる点がございますれば、準備預金制度をもってこれをカバーする、いわば両建ての態勢をととのえてまいりたいというのが私ども趣旨でございます。
  171. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 この準備預金の法律を発動する場合には、先ほど御説明のように、多くの人たちの意見を聞きながらきめていく。ただこの生命保険については、施行規則に大蔵大臣の認めるものということですから、大蔵省だけのいわばフリーハンドで取り組んでいける。それをわざわざやりにくくするわけです。しかも、その理由はどういうことかというと、やっぱり言っても聞かないかもしれぬというのは、どう聞いても理屈に合わない。ですから、金融の一元化ということから、入れる入れないという議論は別にありましょう。だから御提案のように、引き締め政策の対象以外のものがしり抜けになってしまったということが入れる理由だとすれば、理由にならないと私は思うのです。なぜなら、大蔵省でできるわけですから。それが実際におっしゃるように、配当との関係でどうだこうだという話になってくれば、それも含めて生命保険のあり方というのを管理する責任にまた大蔵省もあるわけですから、その意味で、何もわざわざここに入れなくてもいいんだし、入れるということは責任の分散化でしかないと言われてもしかたがないんじゃないでしょうか。そこで、金融の施策の一元化ということは、理屈としてはあるとしても、今回ここに入れるということは、これまでの御説明では合点がいかないんですが、いかがでしょう。
  172. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 生保会社に対する指導のあり方につきまして、御説のように、そこを十二分に、一〇〇%にやりさえすればそれで万事がいけるではないかということでございますが、実際問題といたしましては、これらの生保会社につきまして、それほど一〇〇%の確実な指導ということが実際にはなかなか行なわれ得ない。まあその方法等につきまして、現在保険審議会で別途いろいろ御議論を願っております。したがいまして、その結果、仰せのように、一〇〇%完全に保険会社のコントロールができるというような方式でもできますれば、準備預金制度はあるいは実際に運用するということがなしに済むような事態があるかもしれませんが、またその保険審議会の検討の結果によりましては、あるいはまたやはりそういうことが必要だということになるかもしれませんので、その辺の御審議の結果を待ちまして、研究いたしてまいりたいと考えております。
  173. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そこで、審議会が出てしまうと、たいへん議論がやりにくいのですけれども、まあそういう場で御議論されるとしても、それじゃ重ねて二つだけお伺いしておきます。  先ほど来申し上げるように、資金集めについて税法上の特典がある、これは社会保障という観点からおそらく考えられるものだと思うのです。集めた資金が配当で戻っていく、ただしこの配当というのは控除率に響きますから、その面で不公平ということではないにしても、配当に戻っていくというやり方が保険の性格になじむんだ、じゃ一体何のために保険をかけるかということになると、困ったときのいわば担保——昨今みたいに物価が上がってくるとどういう問題が出るかというと、物価スライドの保険給付ができない、これは変額保険ということで、数年来御検討されてきた点だと思います。本来、生命保険のあり方を考えると、お金を集めて回して配当すると、これだけとっていえば、一般の相互銀行と幾らも違わないやり方じゃなくて、こうやってふくらんだものは累積的にやはり準備資産として高めならが、やはりむしろ物価スライドの保険給付を実現させていく、本来保険加入者というものはそれを期待しているわけで、何も四%の配当を当てに入っているわけではない。そうすると、本来のあり方、姿は、そうやって運用して得た利益というものを、累積的に準備資産に加算しながら、保険給付額について、そのときの物価水準に合わせる配慮をさせていくべきなんではなかろうか。それならなおのこと、おっしゃった民間の金融機関とのよく似た姿というのは抜けてしまうはずだと思うのです。  もう一つは、社会保障の性格を持ち、税法上の特典を設けて、集めてきたお金を金利ゼロで凍結するということは社会政策として正しいのか、そのときに、いや付利することもあるかもしらんとお答えかもしれませんけれども、実際付利するというと、この利息というのは予算計上しなくちゃいけません。と、年度会計に入るのか、補正予算に入るのか、どっちにしても制度の機動性というものは失われてしまいます。したがって、付利することがあり得るとは言いながら、実際問題なかなかむずかしい。金利がつかないから機動的に運用ができるんであって、そう考えますと、そういったものを金利ゼロで大部分を凍結してしまうということは、社会政策として合っているんです。どちら側から見てもやはりなじまないんじゃないか。この辺、御意見を伺いたいと思いますし、それもまた審議会だというお話なら、ぜひそこで詰めた議論をしていただかないと、みな銀行ばかりになっちゃって、そうでなくても数がふえてばかりいるということになりかねない。やはり生命保険は生命保険としてのあり方というものを求めていくべきではないかと思います。
  174. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) ただいま非常に示唆に富む御意見いろいろ承らせていただきましたので、それも実は審議会で十分その辺のところが議論の中心の一つになろうかと思います。ただいまのような御意見を十分参考としながら審議会の御審議も詰めていただくということを考えてまいりたいと思います。
  175. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 それでは最初に戻りまして、内外均衡の同時達成の問題で重ねてお伺いしたいと思うんですけれども、これまでの議論を要約しますと、内的均衡手段としては準備預金制度は有効に働くけれども、外的均衡手段としては金利政策がないと完結しない。全く同感な気がいたします。で、一方、海外短資流入問題について、これは金融行政の、自由競争を中心にしたいわゆる投機的な短資流入について、これは一応考えているわけですから、それだけではやはり十分ではなくて、日本ドル建て輸出が多い構造を考えていくと、そのリーズだけで大体円はがたがたにゆすぶられてしまう。そうすると、これだけでもだめだ。しかし、今日、内外均衡の同時達成ということはきわめて緊急的な政策課題になっている。それに対して、今回御提案の準備預金制度というのは帯にもたすきにも短い。では何で達成するのか、その辺を少し御意見を伺いたいと思います。
  176. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 確かに帯にもたすきにも短いという面はございますが、ただ、たとえば外貨のままで積ませるというような方法によりますれば、単なる投資動機のもの以外のものにつきましても、ある程度有効性を発揮し得ると存じますし、また為替管理と併用するということによりまして、十分効果を発揮できるのではないかというふうに考えております。
  177. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そのその他の手段の併用というお話ですけれども、もう少し問題をはっきりさせる意味で端的に伺いますと、準備預金制度がないんではないのです。それを一部変えようというわけで、現在の制度がそのまま一〇〇%動いているわけではない。で、かりに変えたにしても、あるいは現状のままの制度でいくにしても、想定される今後一年間に発動する可能性があるとごらんになるのか。ほんとうは何でこんなものがこの国会に出てきたんだろうとさえ思うんです。そうすると、近い将来にこれが動かない、動くのは、おっしゃったように、ほかの政策要因が入ってこないと、このブレーキが必要だということにはならない。現状のところは、ほかの政策要因が入ってこないわけですから、いまのままの準備預金制度で最高百分の十、対象機関云々という議論はあるにしても、それだけである程度、あと一年は渡っていけないわけでもない。なぜなら、いまの外的均衡達成の困難性を考えますと、国内景気引き締めどころか、いかにしてこれを立て直して浮揚させていくか、それだけにかかるわけですから、引き締め政策である準備預金が出る幕がない。で、問題は、こちら側の景気浮揚のために何があるかというと、いまないのですね。そこで、ほかの政策手段もということでお伺いしたいんですけれども、御提案の中を見ますと、金利政策手段としてはどうも調子が悪いということが書いてございまして、理由として、国際金利水準を勘案しなければならないという制約が出てきたという表現をお使いになっております。しかし、これは制約なんだろうか、むしろ政策決定の重要な前提条件ではないのか。その意味でいまや金利政策準備預金制度以上に喫緊の課題ではないだろうかと思いますが、御見解いかがでしょうか。
  178. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 今回御審議を願っております準備預金制度の中で一番急ぎます点は、現在の制度では一〇〇%積ませるということができません点。それからもう一つは、増加額に対しまして積ませるという方法が現在の制度ではとり得ません。それらにつきまして現在の状況から見まして、為替管理と併用することによって万全の効果を発揮するとはいいながら、やはりそれらの措置を一日も早く実施に移すということが現在の情勢から見てぜひ必要であろうかというふうに考えられます点、それらがただいま非常に急を要する点であろうかと存じます。  それから金利によります点、金利の問題でございますが、これは御説のとおりであるかと存じます。
  179. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そこで金利のことで少しつけ加えて伺いたいのですけれども、先般公定歩合が〇・五%引き下げになり、四・七五になりました。この四・七五の水準をどう御判断になっているのか、これは銀行局か国際金融局かわかりませんけれども、どちらかにこれ一応伺いたいと思いますけれども、たまたま国会図書館が発行している「レファレンス」という雑誌を拝見しますと、大体これで四%台になったのでまことに時宜を得た、妥当な公定歩合になったという評価があります。しかし主要国の水準と比べて現在の四・七五というのが適正な水準なんだろうか。私の伺いたいのは、金利国際水準と比較をしますといろんな国の名前が並びます。ところが日本の場合に気にしなければならない国というのは、そんなに幾つもあるわけではないと思います。まずもってアメリカであり、つけ加えて西ドイツぐらいである。その二つの国とも比べても日本の公定歩合は高い。そうすると、現在日本金利は外的均衡が叫ばれているにもかかわらず、依然として割り高についておるということになるような気がするんですが、御見解いかがですか。
  180. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 公定歩合の決定は、たびたび申し上げますように日本銀行でございますが、これに対する感じを述べろということでございますので、私の感じを申し上げさしていただきますと、公定歩合の立て方というのは、国によりましてたいへん、御承知のように違っております。と申しますのは、公定歩合と市中金利との開きというものは国によりましてきわめて違っております。したがいまして、これを比較いたします場合に、実質的なプライムレートで比較をするというような方法、あるいはコールレートで比較をするというような方法、いろいろあろうかと存じますが、たとえばいまお示しのアメリカにつきましては、かなり各種金利とも下がっております。  それから西独の場合につきましては、まだ現在におきましては実際の市中の貸し出し金利、プライムレート日本の場合に比べまして、日本の五%に比べまして六・何%かという水準にございます。日本のほうがむしろ安くなっております。コールレートで比較いたしますとほぼ同じ、ドイツのほうがやや低いというような感じになっております。そのようないろいろな金利水準の見方は、それぞれの国の公定歩合と関連諸金利との関係、立て方が違っておりますので、なかなかこれを一律に外形的な基準で比較することはむずかしいかと感じております。
  181. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 現在を含めて基礎的不均衡があるかないかというのは、基礎的不均衡のとらえ方でどうにでもとれるのだと、この間国際金融局長から御回答がありましたくらいですから、実際にこれから円の再切り上げという問題にもし直面するとすれば、基礎的不均衡があるかないかじゃなくて、どういう政策を一体日本政府がとってきたのかということがおそらく議論になってくる。そこで公定歩合というのは、政府政策を示す一番わかりやすい指標の一つになってくる。それがアメリカよりも高い、西ドイツよりも高い、この辺をどう見るかということなんですけれども、これはきょうはこれ以上深入りすることはやめにいたします。  ただ、重ねて金利の問題で銀行局長の御見解を伺って終わりたいと思うのですけれども、現在の金融の超金融緩和というのは実は見かけであって、本来流れるべきところに資金が流れていない。しかし、貸し出しのほうは従来の古い頭でもって追っかけておるから、一点だけにだぶついてしまっておる。これをこの資金の流れを変えて消費者金融に向けていきたい、これが景気浮揚策にもなれば、広い意味では社会福祉にもなっていく、これが今後の方向なんだと思いますけれども、そのときの貸し出し金利というものを考えますと、これは一般国民が借りるわけですから、なるべく安くしてくれなければならない。また今後の金融機関のあり方を考えてみると、しばらく前に、「一般民間金融機関のあり方等について」という金融制度調査会の答申が出ておりまして、そこの中でも、たとえば長銀の今後のあり方ということを考えてみたときに、多少おくれた社会資本の部分に政策的に運用していくべきだということがございます。そのとおりだと思うのですが、従来と違って非生産的な投資に向けていくということになると、これは金利は低くせざるを得ません。その他拾い上げていけば切りがない。どちらの条件をとっても日本は一そうの低金利政策をとらざるを得ない。しかも外的均衡をとってもそうだ、私は思うのです。  そこで、預金金利という問題がいつも問題になるのですが、これは今回は触れないとしても、とにかく一そうの低金利政策を進めていくことが内外均衡の同時達成の重要な手段、そのときにそんなに下げてしまっていいのかということになって初めて今回の準備預金制度が生きてくる、これが両建てではないかと思うのです。この点の御意見だけ伺って終わりたいと思います。
  182. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) ただいま仰せになりましたこと全部そのとおりだと考えております。
  183. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  184. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 速記を起こして。
  185. 渡辺武

    ○渡辺武君 まず最初に、今回の法改正の目的といいますか、本筋といいますか、この点について伺いたいと思います。  提案理由の補足説明の中でも述べられております。またこの委員会のいままでの審議の中でもたびたび御答弁があったのですけれども、今回の準備預金制度に対する措置ですね、これは金融情勢過少流動性の時代から外貨流入などをおもな原因とする過剰流動性の時代、あるいは先ほど銀行局長さんは過剰流動性に近いという表現を使われましたが、そういうような状態に入ったことが改正一つ理由、しかもこのような状態のもとで、従来の金融調整の手段であった公定歩合操作、公開市場操作だけでは十分な効果を発揮することは困難になってきたので、新たに金融調整の手段として準備預金制度改正が必要になったというふうな御説明があったと思いますが、そのように理解してよろしゅうございますか。
  186. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) そういう趣旨での改正でございます。過剰流動性に近い状態になったことによりまして改正しやすくなった、また改正をする意味が出てきたというふうに考えております。
  187. 渡辺武

    ○渡辺武君 重ねて伺いますけれども、そうしますと、今回の法改正趣旨ですね、これは新たな金融情勢のもとで景気調整の手段金融引き締めなどの手段として新たに考えていくというふうに理解してよろしゅうございますか。
  188. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) そのことが一つの大きな目的でございまして、もう一つ短資対策という意味がございます。その二つのことを目的とした改正案でございます。
  189. 渡辺武

    ○渡辺武君 そこで伺いたいのですが、従来の政府及び日本銀行の金融調整の根本の目標がどこに置かれてきたのか、それから今度の法改正の根本の目標ですね、これはどこに置かれておるのか、その点を伺いたいと思うのです。
  190. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) いままでの金融政策の主たる目標は、経済活動が戦後の荒廃から次第に成長してまいりましたその状況の各段階に応じまして、金融面からの順便な資金の流れを確保するということを目的にして進められてまいったわけでございますが、今回の改正案の趣旨は、国際化が今日のように進んでまいりまして、必ずしも金利を主とする成長策だけでは十分ではないという情勢のもとに、準備預金制度を従来よりも強化、拡充することによりまして、金融成長策の有効性を期してまいりたいということが改正案のねらいでございます。
  191. 渡辺武

    ○渡辺武君 問題をもう少し明確にして伺いたいと思うのですけれども、かつて日銀法の改正がいろいろ論議された当時、日本銀行の通貨政策の基本はどこに置いたらいいのかということが論議されたと思うんですね。そのうち一方の議論は、安定通貨の供給に日本銀行の通貨政策の基本を置くべきだ。それからもう一方は、いや、成長通貨の供給、ここに通貨政策の基本を置くべきだという議論があったと思うんです。私ども国民の立場から考えますと、やはり日本銀行の通貨政策だけではなく、政府通貨金融政策の全体の根本的な目標といいますか、これはまさしく安定通貨の供給というところに置かれなければならぬじゃないかという感じがするのです。なぜかと申しますと、これはあとからもう少し詳しく申し上げたいと思いますけれども、御承知のように、消費者物価がずっと急騰しております。まさにインフレーションが、そういうことばを使おうと使わないとにかかわらず、実質的に高進しているというのは偽ることのできない現状だと思うんですね。そうしてまた、そういう事態の背後には、大企業を中心とする経済の高度成長、こういうのがいままで引き続いて行なわれてきたということだったと思います。ですから、国民の立場からすれば、まさにインフレの抑制、物価の安定ということを中心とした、いわゆる安定通貨の供給ということこそが政府日本銀行の政策の重点でなければならぬじゃないかということは、当然、議論としては出てくると思うんですね。  ところがこれに対して一方では、いや、企業の経済成長こそが重要なんで、成長通貨を供給するということ、ここに通貨政策の重点を置かなければならぬという議論があったわけでありまして、私はこれは根本的に相対立する議論だというふうに思うんです。いまの御答弁を伺っておりますと、従来、戦後の経済成長を各段階ごとに支障なく行なうために、通貨の供給を行なうというところに根本の趣旨が置かれておったというような御答弁がありましたけれども、私は、こういう政策こそ、いま根本的に転換させなければならぬじゃないか。国民が望んでいるような安定通貨の供給という政策に根本的に転換してもらわなければならぬというふうに思います。この通常国会の劈頭の総理大臣の演説、大蔵大臣の演説の中に、発想の転換ということばが盛んに言われておりますね。まさに、いままでの通貨金融政策についての批判をおそらく含まれているのじゃないかという気がして伺っておったのですけれども、今度の法改正の根本的な趣旨がそういうところにないとすれば、私はこれは非常に遺憾だと思うんです。どうしてもいまこの時点に立って、過去の事態を振り返ってみて、ここで通貨金融政策の根本的な転換をやるべきじゃないか。  繰り返し申しますけれども、安定通貨の供給、したがってまたインフレの抑制、物価の抑制、そうしてまた経済は安定成長という方向に、通貨金融政策の重点を置くべきだというふうに思いますけれども、その点いかがですか。
  192. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 確かに従来の進み方に対しまして、現在が一つの転換点に立っているということは、お示しのとおりでございます。そこで中央銀行としての日本銀行並びに大蔵省といたしましても、従来から経済の安定的な成長ということで、すべての施策をその点に集中をしてまいりましたわけでございまして、今後とも安定的な行き方というものには、ますます重点が置かれてくるのではないかというふうに考えております。
  193. 渡辺武

    ○渡辺武君 その言はまことによしと言いたいのですがね。実際そうなっていないのじゃないですか。一番最初に伺ったように、やはり景気調整の手段という程度にしか今度の措置も考えられてはいないということになりますと、いまおっしゃったこととは食い違っているというふうに思わざるを得ないと思うのですね。抽象論を言うよりも、私は過去の具体的な事実を明らかにする必要があるのじゃないかと思うのですね。  そこで、まず手始めに資料としてお願いしてございます過去十年ばかりの間の実質GNPの中における日本銀行券及び預金通貨の発行高及びその合計ですね。これが実質GNPの中でどのくらいの割合を占めているかという点を御報告いただきたいと思うのです。もっとも十年間一々全部おっしゃるのもたいへんでしょうから、四年か五年おきくらいにおっしゃっていただけば大体の傾向はわかると思います。
  194. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 実質GNPを、日銀券平均発行残高で割りました数字で申し上げます。   〔委員長退席理事柴田栄君着席〕 昭和三十五年が四・四でございます。四十年が五・九でございます。四十五年が七・二、四十六年が七・八となっております。
  195. 渡辺武

    ○渡辺武君 預金通貨とそれから両方合わせたもの……。
  196. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 預金通貨日銀券平均発行残高と合わせたものを実質GNPで割りました数字を申し上げます。昭和三十五年が一九・八でございます。四十年が三一・〇でございます。四十五年が三六・〇でございます。四十六年が四四・二でございます。
  197. 渡辺武

    ○渡辺武君 いま伺った数字がまさに日本インフレーションの高進の状況を、実にありありとあらわしているのじゃないかという気がいたします。同時にいままで唱えてきた通貨金融政策が、まさにインフレ促進の政策であったということを実証しているのではないかというふうに思うのですね。昭和三十五年に日本銀行券と預金通貨の合計額が、実質GNPの中で一九・八%しか占めてなかった。ところが昭和四十年には、それが三一%にまではね上がり、そして四十五年には三六%、四十六年には四四・二%、こういうことになる。つまり実質GNPが、というのは、私とりましたのは、つまりこれは生産及び流通を含めて一定規模の国民総生産ですね、これが流通する場合にどのくらいの日本銀行券及び預金通貨が必要であったのかということを、この数字は示していると思うのですけれどもね。同一規模のGNPが流通するにあたって、昭和三十五年には二〇%程度しか必要でなかった、それが昭和四十六年にはすでにその二倍以上、四四・二%も現金及び預金通貨が必要だということは、これは通貨及び預金通貨の流通速度がかりに一定とすれば、これは非常にたくさんの通貨及び預金通貨が同一商品の流通にかけられておったということを示していると思います。逆に言えばインフレーションが高進したということじゃないでしょうか。この点どう思われましょうか。
  198. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) ただいまの御質問は、過去のただいま申し上げました実質GNPに対する現金通貨の比率、その変化が、これがインフレの状況を物語っており、その根本原因としては、通貨の増発がインフレをもたらしたのではないかという御趣旨だと存じます。通貨の膨張、通貨の数量と——これは現金通貨、預金通貨を含めまして通貨の数量と、それから国民総生産——GNPの動きの間にはかなり密接な関係があることは事実でございますが、その両者の間に数量的にどのような因果関係があるかということについては実はいまだに定説がないことはもう御高承のとおりであります。かりにいわゆるマーシャルのk、名目でとりますと、過去——ただいまの昭和三十五年から四十六年に至りますまでの間、いわゆるマーシャルのkはほとんど動いておりません。大体六%弱というところで一定をいたしております。そこで、通貨量とGNP、もしくは通貨量と物価との関係、これについて、もし通貨量を押えておれば、GNPも、あるいは物価も押え得たのではないかということにつきましては、その間の計量的な分析が世界各国いずれもまだできておりません。のみならず、その間の影響し合う過程がどういう過程を経て影響をするかということにつきましても、これももう釈迦に説法で恐縮でございますが、いわゆるブラックボックスと称せられる最も不可解な部分でございます。したがいまして、もしも通貨量を押えていたならば、インフレは起きなかったであろうというような観点で、かりに通貨量をある一定限でストップしてしまうというような荒療治をしておりましたならば、むしろ現実の円滑な経済の運営をそこなうというようなことになったおそれがあるのではないかというふうに感じているわけでございます。
  199. 渡辺武

    ○渡辺武君 念のために。  いまおっしゃったマーシャルのkですね。あれは先ほど読んでいただきました三十五年、四十年、四十五年、四十六年と、どのくらいになっておりますか。
  200. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 日銀券平均発行……。
  201. 渡辺武

    ○渡辺武君 両方合わせてでいいです。
  202. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 預金通貨両方合わせましたマーシャルのk——広義のマーシャルのkでまいりますと、三十五年は二五・二、四十年が三一・〇、四十五年が二八・六、四十六年が三三・六ということに相なっております。
  203. 渡辺武

    ○渡辺武君 ですから、決して安定的に経過しているなんという事態じゃないですよ。日本銀行券は、これは先ほどもあなたに言っていただきましたように、実質GNPの中に占める比重もそう急激にふえるという事態じゃない。問題は、これは預金通貨動きが非常に大きい。ですから、いまおっしゃった広義のマーシャルのkでいっても決して安定的なものじゃない。マーシャル自身も言っているでしょう。こういうような状態は決して安定的な通貨金融政策がやられているとは思われないのだという趣旨のことを言っておりますが、私どもは、マーシャルのような近代経済学の立場に立っておりません。ですから、実質GNPでこそこの問題は検討すべきだというふうに思っておりますけれども、いずれにしましても、これは経済学の立場いかんにかかわらず、同一の生産及び再生産を行なうにあたって以前よりも一そう多量の日本銀行券及び預金通貨が必要になっておるということは、これは歴然たる事実だと思うんですね。それを私は、あなた方がいまおっしゃったような御答弁で、まことにあいまいもこたるものだ。しかもそういう立場に立っていままでは過少流動性だった、こういうふうにおっしゃっておられる。そこにこそ私は問題があると思うんです。しかし国民の立場からしてみれば、あなた方がまさに過少流動性の時代であったという、そのときこそ消費者物価は急速に上昇してインフレーションが進んでいるんですよ。その点の認識から出発していただかなければならぬと思うんですね。少なくともあなた方が過少流動性の時代だと言っているときに、あなた方の通貨信用性というものはこれは実にルーズなもので、成長通貨をまかなうということで、大量の日本銀行券及び預金通貨が出されて、そうしてインフレーションの根源をつくってきた。だから、これから先はまさに、先ほども申しましたが、安定通貨の供給、つまりインフレと物価の抑制、そうしてまた経済の安定成長ということを目標とした通貨金融政策に重点を置いてやるべきだと思うんですね。そのおつもりがあるかどうか。そうして今度の法改正もその見地からおやりになる必要があると思うんですけれども、その点どうでしょうか。
  204. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) ただいま預金通貨につきましてのマーシャルのkは、確かに各国によりましていろいろと趨勢が違っております。たとえば成長の速度の速い国におきましては、大体において預金通貨のマーシャルのkはふくらんでおりますし、成長のスピードが落ちた国々におきましてはむしろ下がっている。これはもう十分御高承のことで、あえて私が申し上げるほどのことはございませんが、そういうことでまいっております。  そこで今後、たとえば準備預金制度の活用にあたりましてどういう点を主眼にして運営を行なっていくかという御質疑でございますが、準備預金制度の運営にあたりましては、もちろんこれは金融調整効果をねらいとするものでございますので、安定ということがその場合の大きな目標になることは申すまでもないことでございます。
  205. 渡辺武

    ○渡辺武君 それでは、もう少し伺いますけれども、企業の自己資本比率、これの経過ですね、これをおっしゃっていただきたいと思います。これも五年おきくらいでけっこうです。
  206. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 全産業につきまして申し上げますと、昭和三十五年度が二〇・七%、四十年が一九%、四十五年が一六・一%ということでございます。
  207. 渡辺武

    ○渡辺武君 製造業についてもついでに……。
  208. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 製造業について申し上げますと、三十五年度が二五%、四十年度が二三・一%、四十五年度が一九・九%となっております。
  209. 渡辺武

    ○渡辺武君 この自己資本比率というのは、私いまさら申し上げるまでもなく、企業が使っている総資本の中で自己資本の占める比率はどのくらいかということがここに出ているものだと思います。これを見ますと、いまお読みいただきましたように、傾向的にずうっと自己資本比率が低下している、その中でも製造業の低下で非常に著しいということは歴然としていると思うんですね。つまり逆のことで言えば、企業はいわば借りることのできるだけ借りまくって高度成長を続けていく、それが資本構成の中にこういう形であらわれているということだと思いますね。私、先ほど実質GNPの中で日本銀行券及び預金通貨の比重がますますふえてきているということを申しました。それがインフレの明確なあらわれだということを申しましたけれども、まさにその根源の一つがここにはっきりあらわれている企業が高度成長を続けるために銀行その他から借りまくって、そうして投資に次ぐ投資をやってきている。これがいまのインフレの一つの重要な根源になっていると思うのですね。ですから、銀行局長さんが今後安定ということを重視してやっていくとするならば、まさにこの点にメスを入れなければ、私はいまおっしゃったことは、これはもう空言になると思うのですね。その点はどんなふうにお考えですか。
  210. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) その点につきましては、先ほど御答弁申し上げましたように、産業金融中心から、次第に消費者金融、消費者信用、社会資本、社会福祉、そういった方面への大きな転換が必要な時期にただいま差しかかっていると思われますので、その点につきましては、今後いわゆる企業金融の比重はむしろ下がってまいるというように考えております。
  211. 渡辺武

    ○渡辺武君 企業金融の比重が今後下がってまいるとおっしゃいますけれども政策的にどうなさいますか、これは主として通産省の分野だと思いますけれども、きょう通産省おいでいただいてないので、大蔵省の立場からしてどういう政策手段を講じられるのか。いままで私、通産省にも質問してみたんです。これは好ましくない傾向だということはおっしゃるんだけれども、さてどういう政策手段をとって、こういう企業のめちゃくちゃな金融政策、これを是正するのかということについてはほとんど何ら実効あるものを伺ったことがない。その点どうでしょうか。
  212. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) たとえば消費者金融につきましては、ただいま都市銀行などにおきましては、古いところでは昭和三十五年あたりから、新しいところでも四十二、三年ごろからいろいろと型をきめまして貸し出しを行なってきておるわけでございますが、ただいままでのところ全金融機関で三兆円余りという状況でございます。都市銀行で一兆円ぐらいでございますが、今後この消費者金融の比率が急速に拡大するでございましょうし、またそういう指導をも行なってまいるということが必要だと考えております。
  213. 渡辺武

    ○渡辺武君 どうもそういうことでは私は非常に心もとないし、おそらく企業のこの状態は今後も野放し同然になるのじゃないかという心配はとうていぬぐい去ることができない。先ほど申しましたが、過剰流動性に近いような事態になったという現在でさえ企業の資金需要というのは非常に旺盛じゃないですか。現状どうでしょうか。
  214. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 資金需要といたしましては、かなり落ちてきつつあるように考えております。
  215. 渡辺武

    ○渡辺武君 日本銀行の経済月報に、企業の自己資本比率の数字が出ております。これはいまお読みいただいたものとは基準が違いますので、若干数字に変化がありますけれども、それでも四十五年の上期、下期に比べれば、四十六年の上期はやはり自己資本の比率は低下しているというのが実情ですよ。ですから、なかなかあなたのおっしゃるようなぐあいにはいかぬと思いますね。その点はいずれもう少し時間をとって検討したいと思いますけれども、そういう事態、それに加えてこういう企業のめちゃくちゃな借り入れ政策、これをささえたものがあるのですね。これは先ほども御答弁の中でも言われておりましたけれども、銀行のオーバーローン、特に都市銀行ですね、旧財閥糸の大銀行を中心とした都市銀行でオーバーローン、これがこういう大企業の自己資本比率の低下、他人資本の急増、これをまかなってきた重要な機構だったと思うのですね。ですから、その銀行のオーバーローンの状況、これは銀行の預貸率であらわされると思いますが、その状況はどうなのか、これをおっしゃっていただきたいと思います。
  216. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 全国銀行で申しますか、都市銀行で申しますか。
  217. 渡辺武

    ○渡辺武君 全国銀行と都市銀行両方お願いします。
  218. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 全国銀行で申しますと、昭和三十五年度が九四・二%でございます。四十年度が九四・五%、四十五年度が九三%、四十六年度がこれはまだ確定数字ではございませんが九一・六%。それから都市銀行で申しますと、昭和三十五年度が九九・四%、四十年度が一〇一・九%、四十五年度が九八・一%、四十六年度が九五・八%となっております。
  219. 渡辺武

    ○渡辺武君 いまお読みいただいた数字がはっきり物語っておりますが、一九六〇年代の上半期に比べれば、下半期のほうは若干預貸率は低下しているという状況であることははっきりしているわけですが、それでもなおかつ昭和四十六年が九五・八%という非常に高い率を占めている。この点、あなたがたにもう少し深く伺いたいのですが、その前にきょうは準備預金の問題が中心ですから、そっちを少し伺って、またもとに戻りたいと思うのですけれども、   〔理事柴田栄君退席、委員長着席〕  私、こういう都市銀行を中心とした金融機関のオーバーローンの状況、これをいわばささえてきたもの、このうちの一つとして、日本銀行の貸し出し政策ですね、これがあると思いますけれども、同時に準備預金制度ですね、これの過去の運用があったのじゃないかというふうに思われます。その点、どんなふうにお考えになっていますか。
  220. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 準備預金制度を過去において、たとえば一〇%の天井ぎりぎりまで活用しておれば、もう少し事態はよかったではないかという趣旨の御質問かと存じますが、先ほど来申し上げておりますように、過去におきまして、いわゆる過少流動性の時代には、かりに準備預金を積ませるといたしましても、その部分はやはりどうしても経済活動の円滑な運営ということで、必ずしりは日本銀行の貸し出しになる、あるいはまた回り回ってそういう形の一種の両建て状態になるということでございましたので、そのような状態におきましては、準備預金制度というものは実質的に意味がないことになる、そういうことで従来は準備預金制度が実効を持ち得なかったし、またぎりぎりの一〇%までの活用ができなかったわけでございます。
  221. 渡辺武

    ○渡辺武君 そこに私は問題があると思う。いまの御答弁の中によく出ていると思うのですね。あなたがたは大企業の成長金融をどうまかなうかという立場にだけ立っておられるから、だからいまおっしゃったような御答弁が出ると思う。しかし国民の立場に立ってみれば、いま言ったように、大企業、これはもうどんどん借りまくっている。そしてまた銀行は、これはもう預金者保護という点からしても、まことに危険だと思われるほどにオーバーローンを続けている。その結果としてインフレが高進して、消費者物価は急騰しているという状態、決して過少流動性なんという状態じゃなかった。国民の立場からいえば、まさしく過剰流動性もいいところだという状況だったのじゃないでしょうか。そうして、そういう事態を大企業の立場に立って過少流動性というふうに考えて、成長金融をまかなうためにということで、せっかく最高限一〇%というこの準備率が法定されているのにもかかわらず、実際の準備率は非常に低い。大銀行の流動性、預金の場合で考えてみれば一・五%ですか、そういう状態ですね、そういうとんでもないギャップが私は生まれてきていると思う。その点お認めになりますか、どうでしょう。
  222. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 従来の状態過少流動性状態であったか、過剰流動性状態であったか、あるいは大企業だけを目的とした資金の循環であったか、あるいは大企業、中小企業、さらには国民経済全体についての資金の循環であったか、その辺につきましての御見解はあろうかと存じますが、私どもといたしましては、従来の資金需給の関係を現実の問題としてながめますときに、これはやはり過少流動性状態であったのではないかというふうに考えているわけでございます。
  223. 渡辺武

    ○渡辺武君 だからそこのところが根本的に、やっぱりいわゆる発想の転換なるものをやってもらわなければ、これは国民にとっては不安でしょうがない。そこのところが依然として同じような立場でおられるとするならば、今度の準備預金準備率を多少変えたって、これは国民にとって何のプラスにもならないということじゃないかと思うのです。何のプラスにもならぬと言っては若干語弊もありますけれども。  それで伺いたいのですが、日本の準備預金準備率の最高限と最低限——最低限というよりも、実際行なわれている準備率、これをほかの国、おもな国でけっこうなんですが、それと比較してどのくらいの開きがあるのか、これをおっしゃっていただきたいと思います。
  224. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 米里調査官から御答弁いたします。
  225. 米里恕

    説明員(米里恕君) ほかの国の適用率でございますが、おもな諸外国を申し上げますと、アメリカは、現在、種類によって違いますが、一番高い適用率が一七・五%、一番低い適用率が三・〇%でございます。それから西ドイツは、一番高い準備率が一二・九%、一番低いものが五・五%でございます。それからフランスは預金で一番高いのが一〇%、低いのが四%でございます。それから貸し出しにつきましては、四十六年三月三十一日の貸し出し残高を基準にいたしまして、その九〇%をこえる部分、いわゆる増加額につきまして二・〇%という率になります。
  226. 渡辺武

    ○渡辺武君 法定された最高準備率、これも従来の日本は半分とか三分の一近いとかいうような状況なんですけれども、しかしそれよりももっと差が大きいのは、実際行なわれているこの準備率だと思うのです。アメリカの場合は最高が一七・五%、日本の場合は最高が一・五〇というような状況でしょう、大体対応するものは。ですからそこに私は問題があると思う。今度この法定の最高準備率を一〇%から二〇%に上げるということをやりましても、実際の準備率をどうするのかということが私は一番大きな問題になるのじゃないかと思うのです。現にいま申しましたように、ほかの国に比べて実際の準備率が非常に少ないということが、銀行のオーバーローンを促進させる大きな原因にもなっているし、これはまた裏から言えば、大企業のオーバーボローイングの主要な原因にもなってる。この辺を直してもらわなければ、幾らあなた方が安定通貨の供給だとか、経済の安定成長だとか言っても、金融の面で高度成長の原因を依然として残しておいて、どうして経済の安定成長なんかできますか。私はできないと思う。その点今後どうなさるおつもりですか。
  227. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) そのような御趣旨も含めまして、準備預金制度拡充強化をお願いしたわけでございまして、準備預金制度をいずれ実施する段階におきまして、十分充実したものとして活用いたしたいというのが私ども趣旨でございます。
  228. 渡辺武

    ○渡辺武君 いままで実際に準備率が一・五%とか〇・七五%とかきめられますけれども、これはどういうことできめられますか。その決定の基準ですね。これをおっしゃっていただきたいと思う。  それから今後十分注意するとおっしゃったけれども、今後はどういう点を基準にして実際の準備率をおきめになるのか。これを伺いたいと思います。
  229. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) その具体的な基準につきましては、あらかじめこれこれしかじかの場合には何%と言う二とはもちろん不可能でございまして、そのときどきの海外の金利国内金利水準、あるいは流動性状況、それらすべてを勘案いたしまして、日本銀行と大蔵省と十分協議の上で決定をいたしてまいる筋のものであろうかと思います。
  230. 渡辺武

    ○渡辺武君 それではとうてい国民の期待には合わないと思いますね。先ほども申しましたように、国民はこのひどい物価の値上がり、インフレーション、これを何とか押えてほしいと言っておる。これはもう共通の要求だと思います。ところがいままでは、日本銀行の貸し出しというのに支えられ、さらにはまた準備預金準備率が最高限一〇%にきめられているが、実際は非常に低い。諸外国に比べても異常なほどに低いということで資金の供給が行なわれて、そして銀行のオーバーローン、大企業のオーバーボローイング、こういうことでインフレの最大の根源が涵養されてきている。ここのところを何とか直してもらわなければ困る。海外の金利状態とか、あるいはまた実際の金融状態とか、こういうことをただ見てきめるというのじゃなくて、インフレの進行の度合い、特に消費者物価の度合い、これを見て、そうしてこの準備預金準備率をどうするのか、これをきめていただかなければならぬ。さらに言えば、準備預金準備率だけではなくして、全体の通貨金融政策もその辺をめどにしてお考えいただかなければならぬと思う。大企業の成長金融をどうまかなっていくのかという立場じゃなしに、そうじゃなくて、国民生活の安定、物価の安定、インフレの抑制、こういう点を基準にして考えていただかなければならぬと思うが、その点どうですか。
  231. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) ただいま御指摘のありましたような点も、それらの決定の際には十分考えられるべき事項であろうかと思います。
  232. 渡辺武

    ○渡辺武君 実際それはやってくださいよ、どうもあぶなっかしいと思いますがね。  それでなお、これに関連して一、二点伺いますけれども、最高限がいままで一〇%と法定されていながら、実際の準備率は一・五%とか〇・七五%とかの低いところに据え置かれている。この実際の準備率をこれを高く引き上げれば済むのじゃないかというふうに思いますが、金融情勢の変わった現在、最高準備率だけを法定する。そうして実際の準備率は、これはそのときどきの金融政策にまかしておく。何でこんなことをおやりになるのですか、あらためて伺いたいと思います。
  233. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 先ほど来御答弁申し上げましたように、今後一〇%をこえる実際の準備率をきめなければならないような経済情勢国際的にも国内的にもそういう情勢というものは十分あり得ると考えております。その意味で一〇%の天井を二〇%に引き上げることを御審議願っておるわけでございます。
  234. 渡辺武

    ○渡辺武君 二〇%とした理由は何ですか。どういう計算で二〇%という数字が出てきましたか。
  235. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) この点もいま申しましたように、一つは、たとえば昨年の四兆四千億円の外為散超、これを準備預金制度をもって吸収するということで試算をいたしますと、一五、六%というものが考えられるわけでございます。  それからまた諸外国の例を見ましても、大体二二、三%から四〇%ぐらいまでの範囲できめられているわけでございます。まあフランスの場合は、御承知のように預金と貸し出し両方ございますので、預金一五%と貸し出し一〇%というふうにきめられているわけでございますが、それらの事例を勘案し、かつ外為散超の場合の試算などを含みまして、二〇%あたりのところが必要にして十分な率であろうかというふうに考えたわけでございます。
  236. 渡辺武

    ○渡辺武君 どうもお話が抽象的でね、はっきりしませんが、その計算の根拠ですね、これについての資料をいただきたいと思うんです。いただけますか。
  237. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) この天井を幾らにするかということにつきまして、この数字でなければならないという方程式的なものは、もちろんないわけでございますが、一応の考え方の根拠というようなことは御報告できると思います。
  238. 渡辺武

    ○渡辺武君 その資料いただいてから、あらためて検討さしていただきたいと思うんですけれども、私やはりね、それをきめる場合でも、先ほど申しましたように、企業に成長金融をまかなうという見地で計算されているのか。それともまたインフレーションの具体的な高進の状況を考慮に入れて、まさにそれを抑制するということを主要な点にして検討されているのかどうか。その点はあらかじめ私の疑問として投げかけておきます。いいですね。  そこでその実際のこの準備率ですね、これは今後どのくらいのところを考えておられますか。
  239. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) この点は、先ほども申し上げましたように、現実の国際国内情勢によって変わってまいりますので、いまから幾らということは申し上げにくいわけでございます。ただ短資流入対策としての準備率、最高一〇〇%まで課し得るというほうにつきましては、最高に近い数字が直ちに実施される公算が大きいと考えております。
  240. 渡辺武

    ○渡辺武君 やはり実際の準備率がどのくらいになるのかという点になると、そのようなあいまいな答弁があるということの中に、われわれは国民として非常に危惧の念を持つんですよ。なぜかといえば、さっきも言いましたように、国民生活、物価の安定ということが真剣に考えられて、そしてその上でこういう問題が提起されているのかどうかという点に、非常に大きな危惧の念を抱くんです。そこで私ね、具体的な提案として皆さんに御検討いただきたいと思うことがあるんです。それは何かと申しますと、この実際の準備率ですね、これをこそ法定したらどうか。そうしてその基本点は、さっきも申しましたようにインフレの抑制、消費者物価の安定ということに基本を置いて、この実際の準備率を法定する。ですから、これは従来のような企業の成長金融をまかなうためだということで一・五%だとか、〇・七五%とかいうひどいような状態で、ほかの国に比べても全くこれは例外的なような状態、こういうような状態でなくってです、インフレの抑制、それからまた預金者の保護ということをたてまえとした、この効果ある適切な準備率をきめたらどうだろうかというふうに思います。その点どう思われるか。ただしですよ、ただしね、この場合は私一つ条件がある。それは、そういうことをやると、いわゆるこの銀行の資金コストが高くなるということで、銀行の金融が自分の系列下にある企業にだけ回っていく、あるいはまた中小企業などに対する金融については、歩積み両建てなどの制限的な金融政策をとるというおそれがますます強まってくると思うのですね。ですから、その点に対する規制措置をあわせて、いま申しましたような実際の、いや最低準備率ですね、これを法定するということが必要だと思いますけれども、その点どうお思いですか。
  241. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 最低準備率という考え方も確かにあり得るわけでございますが、ただ準備率がゼロでいい経済情勢というものも想定されますので、やはり最高の準備率を法定していただいておきまして、その範囲内で機動的、弾力的にその状況に応じた実効準備率をきめていくということが、一番望ましい方法ではないかと考えております。
  242. 渡辺武

    ○渡辺武君 だからこそですね、われわれは懸念するんですよ。そのときそのときの状況をきめるということになればです、これでいまは経済の実態も非常によくない。その上に外貨流入を主要な原因として金融が非常に緩慢になっているという条件があるからですね、だから実際の準備率も割合に高くきめても、これはまあそう大きな影響にはならぬと思うのですけれども、しかし、もしこれでかりにこの景気回復して、そうして依然として同じ一〇%の成長率が必要だなんという大臣もいるわけですからね。いままでのような高度成長を続けようということで、大企業が必死になってまた投資活動を始めるということになれば、たちまちのうちにこの実際の準備率というのは引き下げられる可能性がある。どうしてもこれは制度として国民生活擁護、預金者擁護ということを重点として、制度として最低準備率を法定するということが私は必要だと思う。その点重ねてどうお思いでしょうか。
  243. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) その点はやはり準備率といたしましてはゼロでいいという場合も、経済情勢次第ではあり得ると思いますので、最低を法定するという考え方は、論理的には成り立ち得るわけでございますが、実際問題としてはいかがかと、そしてもちろんこの最高の準備率の範囲内で実効をあげるに足るような高さの準備率を具体的にきめていくということにつきましては、日本銀行と大蔵省と十分協議いたしまして、遺憾のないようにいたしてまいりたいと考えております。
  244. 渡辺武

    ○渡辺武君 この準備率がゼロでもいいというような情勢がきた場合は、また法律改正案を出して、国会の審議にかけて、そうしてきめるのが私はいいと思うのですね。  ところが、いまのやり方は、最高がきめてある、しかしそれとは全く無関係に実際の準備率はかってにやっている。これについては国会の統制下にない。こういう状況。これでは私は国民の生活を守ることはできないと思う。そういう意味で私は言っているのです。実際この点はひとつよく御検討いただきたいと思う。どうですか、検討していただけますか。
  245. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 実はそのような点について、私どもといたしましてもいろいろと検討いたしたわけでございますが、準備預金制度と、それからそのほかの諸制度、これらを併用することによりまして、御心配のような状態については十分に対処し得るというふうに考えているわけでございます。
  246. 渡辺武

    ○渡辺武君 それでは話をちょっと前に戻しますけれども、先ほど申しました銀行のこのオーバーローンの状況ですね、これについてあなた方もおそらく必ずしも好ましいことではないというふうに考えたろうと思いますけれども、この銀行の預貸率の改善ですね、これはどういうふうにして今後やっていかれるおつもりなのか。また従来どのような措置をとってこられたか、この点伺いたい。
  247. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) オーバーローンの解消の手段といたしましては、まず金融面から申しますと、金融緩和基調を継続いたしますことによりまして、預貸率は次第に下がってまいる。それから次には公社債市場の育成、これによりまして預貸率の低下、オーバーローンの解消がはかられるかと存じます。さらに金利機能の活用によりまして、過剰投資の抑制というようなことからオーバーローンの解消をはかり得ると考えているわけでございます。
  248. 渡辺武

    ○渡辺武君 従来大蔵省の通達などを見てみますと、大体月末平残で預貸率は八〇%程度が好ましいというような内容が示されておりますし、そういう点での行政指導もあったろうと思いますけれども、その点どうでしょうか。
  249. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) そのとおりでございます。
  250. 渡辺武

    ○渡辺武君 それが、あなた方のせっかくの指導にもかかわらず、依然として昭和四十六年に全国銀行で九一・六%、特に都市銀行では九五・八%、下がってはきたけれどもしかし依然としてものすごい状態ですね。なんでこんな状態が引き続いているんでしょうか。
  251. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) その点につきましては、まあ先ほど過少流動性か、過剰流動性か、従来の状況がどちらであったかという御議論はあったわけでございますが、恒常的に、資金需要という観点から見ますと、需要超過の状況が続いておりましたために、こういう事態が今日まで続いているわけでございますが、今日はまさに転換点に差しかかっているわけでございまして、むしろ供給過剰という状況に日に日に変わりつつございます。その面から、預貸率につきましてもかなり急速に下がっていくということが期待されるわけでございます。その点で先ほど申し上げました金融緩和基調の持続ということが金融政策面からも望まれるわけでございます。
  252. 渡辺武

    ○渡辺武君 伺っていますと、従来も資金需要が強くて、言ってみれば、いろいろ行政指導したけれどもまあ成り行きでオーバーローンが続いた、今後やはり成り行きで金融緩和基調が続くだろう、そうなれば何とか改善できるんじゃないかというようなお考えのように承れるんですね。私はそれじゃだめだと思うんです。いままでのような立場で、財政金融当局が金融政策をやっている、依然として成長金融については支障なくまかなっていこう、そして国民の生活については、全然考えないということもないんでしょうけれども、二の次、三の次にしか考えていないというような状況金融緩和基調が続いていけば、インフレーションは一そう高進するという状況にならざるを得ないと思うんですね。むしろ政策上の点で留意しなければならぬのは、成り行きまかせじゃなくて、インフレーションの高進をとめるために、この銀行のオーバーローンの状況をどういうふうにして是正するかという手段だと思うんですね。その点やはりこのインフレ抑制、それからまた預金者保護という見地に立って、一定の指導基準をきめて、この野放し状態、これを規制すべきだと思う。  特に今度の改正案によりますと、生命保険などを準備預金制度の規制の対象に含めているという状況でして——どもも生命保険を規制の基準からはずせなんてことを考えているのじゃないんだけれども、しかしこういう規制対象を拡大するということでごまかすわけにはいかぬ。いままでのオーバーローン、したがってまたインフレーションの主要なこの責任者の一人は都市銀行ですよ。まさにいまここで数字にもはっきり出ておりますけれども、旧財閥系の大銀行を中心とする都市銀行こそ預貸率最も悪い。つまりオーバーローンの犯人です、これは最大の。ですからね、生命保険を規制基準に入れるなんというところでごまかすのではなくて、やはり都市銀行に対する規制こそ強力にやらなければならぬと思う。その点おやりになるおつもりあるかどうか伺いたいと思います。
  253. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 日本銀行が昭和三十七年以来、新金融調節方式を打ち出しまして、都市銀行を中心とする貸し出し政策から、オペレーションを中心とする方策に切りかえてまいったということは、まさにいまおっしゃったような方向でのやり方の転換であったわけでございます。そしてそれ以後都市銀行につきましてのオーバーローンは、先ほども数字で申し上げましたように、たとえば三十七年、八年はいずれも一〇六・七というような水準でありましたのが、その後一〇〇を割るような状態になってまいったということは、そこの政策転換が一つあったかと存じます。さらに今後オペレーション政策から、準備預金制度の活用ということを通じまして、オーバーローンの解消に一歩を進めると同時に、かたわら、先ほども申し上げました公社債市場の育成、あるいは金利機能の活用というようなことを併用いたしますことによりまして、オーバーローンの解消につとめてまいる所存でございます。
  254. 渡辺武

    ○渡辺武君 都市銀行のような大銀行に対してまことにそれは何ですな、いわば優遇的な誘導政策をとると。これは国民に対する税金のかけ方などから考えてみますと驚くほどに何ですね、あったかい措置をとっておられるわけですがね。まあその点いずれまたあらためて議論したいと思いますが。  私もう一つ申し上げたいのは、いままでの銀行のオーバーローン、別のことばでいえばインフレーションですね。これのもう一つの犯人は私は日本銀行だと思う。日本銀行の貸し付け金制度ですね、これが大きなささえ柱になって、特に都市銀行のオーバーローンが激しくなってきたというのは、いまの御答弁裏返せばよく考えられることだと思うのですね。新金融政策をとってからは、つまり別のことばでいえば貸し付け金制度でなくて、公開市場操作始めてから預貸率が下がっているのだということだと思う。この日本銀行の貸し付け金制度ですね、これは今後どのようになさるおつもりですか。
  255. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 金融調整の事項は日本銀行が主として取り扱う範囲のことでございますが、私どもの相談いたしております範囲で申し上げますと、現在いわゆる一般貸し出しはほぼゼロに近い水準、これは季節的にいろいろふえたり減ったりということはございますが、累積的、恒常的のものはほぼゼロに近い水準まで下がってきております。今後こういう状態を基準といたしましてオペレーション政策を中心とする運用が行なわれる予定であろうかと存じます。
  256. 渡辺武

    ○渡辺武君 いまゼロに近い状況になったのを基準としていくという御答弁なんですが、この制度そのものはやはり今後も存続していくのでしょうか。もしそういうことであれば、やはりまた情勢が変われば昔のような日本銀行の貸し出しがどんどん行なわれて、そして都市銀行のオーバーローンが再び復活する。復活するというよりもひどくなるという状況がこないとも限らないのですね。私この点を特に申し上げるのは、この日本銀行の貸し出しが行なわれている限りは、準備預金制度を少しぐらいいじったってこれは全然効果ないですよ。いままでの都市銀行は、これはもう準備率二・五%とかりにしますね。それで日本銀行に準備預金をしても、片方で日本銀行から金を借りてくれば、それでもってプラス、マイナスゼロですね。そういうことではせっかく準備預金制度をこうやって改正しても、何の効果も出てこないということになるんじゃないかと思うのですね。ですから、少なくとも大銀行、これに対する日本銀行の貸し出し政策というのは、これはやめる必要がある。あるいは全然やめるか、中小企業などへの金融のためには特別に日本銀行が貸し出しをするというふうに、限定して貸し出しをやるということで、それ以外のものは、大企業に向かうようなものはできるだけ規制をしていくというふうにすべきだと思うんです。その点どうでしょうか。
  257. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 日本銀行の都市銀行に対しまする恒常的な、継続的な貸し出し、これはやめると、それによりましてオーバーローンも解消する。そして、中央銀行本来の季節的な資金の供給、これはまあ当然本来の職務としてあるわけでございますが、そういうものを中心として今後の運営が行なわれていくという形になろうかと思います。
  258. 渡辺武

    ○渡辺武君 日本銀行の貸し出しが、貸し付けが、これが銀行のオーバーローンの原因になっているということは、いま言外にお認めになっておられるようでございますね。そしてまた、この銀行のオーバーローンが企業のオーバーボローイングを可能にした金融上の条件であって、別のことばでいえばインフレ高進の大きな原因になっているわけですね。ですから、日本銀行にせよ、大蔵省にせよ、その点の反省の上に立って今後の金融政策をやってもらわなければ困ると思う。私は、その点で、銀行のオーバーローンに対する規制にしても、日本銀行の通貨信用政策にしても、やはり根本的に発想を転換して、国民生活擁護という立場に立ってやっていく必要がある。いろいろこまかい金融上の技術はあるでしょう。あるけれども、私は、問題は基本をどこに置くかというところにおいて考えなければならぬと思うのですね。その点、特にお断わりしておきます。  それから、先ほど、今後オペレーション政策を、公開市場操作をやっていくという御趣旨の答弁がありましたが、この俗にいうオペ種、これはおもなものは、今後どういうものを考えていらっしゃいますか。
  259. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) 現在オペに使用しております債券が、長期国債、短期国債、政府保証債、日本銀行振り出し手形などになっているわけでございます。大体いま申し上げたような順序で使われているわけでございますが、今後ともそのようなことが引き続き行なわれることになろうかと存じます。
  260. 渡辺武

    ○渡辺武君 ですから、私はいままでの通貨金融政策の反省の上に立って検討してほしいと言っているのですよ。それは何かと申しますと、日本銀行がオペレーションをやる場合に、売りオペというのはほとんど困難だと思う。どうしても買いオペが主になると思う。そこで、どうでしょうか。四十七年度の予算案で一兆九千五百億円の赤字公債が出る。これは赤字公債と名前はつかない、建設公債という名の赤字公債が出る。国民はこんなたくさんの公債が出されたら、いずれはインフレが非常に高進するだろう、こういうふうに非常に心配しているわけですね。ところが、まさに将来この赤字公債が日本銀行のオペレーションの対象になって、そしてどんどん買われていくということになるならば、これは当然インフレの高進ということにならざるを得ない。私、申し上げるまでもなく、財政法の第五条では日銀引き受けによる赤字公債の発行ということは禁止されていると思う。この財政法の根本趣旨にも反する行為だろうと思うのです、特に長期公債をオペレーションの対象にするということは。ですから、今後、長期国債や政府保証債、こういうものはインフレ抑制という立場に立ってオペレーションの対象にすべきじゃないというふうに思いますけれども、この点どうお思いですか。
  261. 近藤道生

    政府委員近藤道生君) この点は、必ずしも長期国債をオペ種として使いますことが直ちにインフレにつながるというふうには私ども考えておらないわけでございます。また、そういうおそれのあるような国債の発行は行なわない、インフレーションをもたらさない範囲での国債の発行にとどめるという前提のもとに、オペ種といたしましては、相変らず長期国債、短期国債、政府保証債というようなものを使っていくことになろうと存じます。
  262. 渡辺武

    ○渡辺武君 そういう立場では、やはりインフレ抑制ということについてはまことに望み薄だというふうに考えざるを得ませんですね。この国債の性格についてもう少し質問の中で明らかにしたいと思いますけれども、きょうは時間もあまりありませんので、次に移ります。  次に、外貨流入についての規制措置ですけれども、この問題について伺う前に、昨日の新聞に出ておりましたアメリカの外交白書の中で、国際通貨政策について触れた点があるそうですね。これについて伺いたいのですが、新聞記事によりますと、アメリカ政府当局は、「通貨危機の再発を防ぐには米国を国際収支の黒字や赤字の拡大から解放するような制度、つまりより弾力的な通貨制度の確立が必要である」ということを強調している。それからもう一つは、「国内経済政策効果を相殺するような短期資金の大量移動を阻止できる制度を開拓すべきである」ことを強調しているというふうに伝えております。この点、大蔵省のほうでこの内容をもう少し詳しく御説明いただけないかと思いますが、どうでしょう。
  263. 稲村光一

    政府委員稲村光一君) 昨日の新聞報道の件につきまして、特に原文について詳細にチェックした上でのあれではございませんけれども、いまおっしゃいましたような点、まあ二点御指摘になったわけでございますが、為替相場制度の弾力化、それからもう一つは、短資の移動について有効な何か手段考えるべきだという、この二点につきまして、まあ従来からアメリカ考え方と申しますか、これはアメリカの中でも、いろいろと政府の中でも省によって違うかと思いますし、また、政府アメリカの民間経済界と申しますか、それによっても違うかと存じますが、一応相場制度につきまして、八月十五日の前のような、非常にリジッドな、固定的なことではなかなか今後は全体の世界の経済の運営に、動きに対して不十分ではないか。これはまあ御承知のとおりIMF等におきましてもすでに二、三年前から検討されておるところでございます。その意味で、今度の十二月の、ワイダーバンドと申しますか、十二月のワシントン会議におきまして、従来の平価上下一%の変動幅を、二・二五%、合わせて四・五%と、いま暫定的でございますが、しておるわけでございますが、こういうものは一つ方法であろうと思います。さらにまた、平価変更につきまして、これはまあ理論的な問題といたしまして、小幅の変動をもっと情勢に応じてひんぱんにやるべきじゃないか、こういう意見がIMFのときの相場制度の検討の一つの議題となっていたことも御承知のとおりでございます。まあアメリカはどちらかと申しますと、そういう点につきましては弾力的にそういうことを考えるべきだというほうの考え方を従来からとっておりますので、そういう点があらわれているのではないかというふうに存じます。  それから短資の移動につきましては、これは実はアメリカは御承知のとおり為替管理というのをやっておりませんので、これを有効に規制すべき手段をもしアメリカ側として何か考究をするということであれば、これは私自身の感じから申しますと、非常に進歩したと申しますか、新しい考え方ではなかろうかと存じますが、具体的にどういうことを考えておりますのか、先ほど申しましたとおり、アメリカ側としても中にいろいろと意見もあろうと存じますので、印象として申し上げますれば、短資の移動についての、これはまあ直接規制ということはアメリカとしてはなかなかやりにくい体制になっておると存じますが、それを金利の問題、あるいはその他の銀行を通じまするコントロール等の措置がアメリカとして講ぜられるのであれば、これはわれわれとしても非常に望ましい方向ではなかろうかというふうに存じております。
  264. 渡辺武

    ○渡辺武君 いまお話を伺った範囲内だけでも、これはかなり重大なことじゃないかという感じがするんですね。私申し上げるまでもなく、八月十五日のあのニクソンの新ドル防衛政策ですね、あれを私読んで痛感しますのは、アメリカは自分の責任で国際通貨危機を解決する、ドル危機を解決するというんじゃなくて、むしろ他国の犠性と責任でこれを解決さしていこうというのが最大の眼目だったというふうに見られます。その立場に立っていまおっしゃった為替変動幅をさらに広げる、あるいはまた通貨調整も小幅にひんぱんにやらせるというようなことになると、円の再切り上げというような問題が当然すぐ目先にちらついてくるというような状況で、国際通貨不安というのは今後これは一そう激しくなるんじゃないかという感じがするわけです。そういう事態を踏んまえて今後日本の為替管理政策ですね、これは一体どういうふうにしていくおつもりなのか。経団連などでは為替の完全自由化というような要望も出ているようですけれども、その点もあわせて今後の為替管理政策をどうするおつもりなのか、それを伺いたい。
  265. 稲村光一

    政府委員稲村光一君) 今後の為替政策と申しますか、これをどういうふうに運営していくつもりであるかという御質問でございますけれども、この点に関しましては、御指摘のように経団連等もいろいろ御要望を出されておりまして、経団連等とわれわれとの話し合い、意見交換も行なってきておりますが、まあ非常にこれは、経団連等の御要望をよくお聞きいたしましても、必ずしもわれわれとそう違ってないところもございまして、まあ基本的なところで申し上げますと、経団連の御要望は、やはり全体の事態が自由にしておいても十分に均衡し得るというような状況を想定されまして、そういう状況においては為替管理を原則自由、有事規制というふうに持っていくべきではないかと、こういうのが御真意のようでございます。で、われわれといたしましてもその点は一致しておるわけでございまして、将来の方向として、もしも状況が平静と申しますか、対内均衡対外均衡が楽に達成し得るというような平静な状況で現在がございますならば、これは為替管理というようないわば一種の政府の行政力によりまして規制をしていくというやり方は、これはまあ理想論としては確かによくないことであろうと存じますので、情勢が許せば原則自由——これは先ほども申し上げましたが、ドイツとかあるいはスイスとかいうところはそういう制度をすでにとっておるわけでございますが、しかし、現状におきましてはそういうような方向を現実の問題として直ちにとり得るという情勢ではないということは、これはおそらくわれわれだけでなくて経団連のほうも同意をしておられるところであろうと存じます。
  266. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうしますと、そういう立場に立って考えた場合は、今度のアメリカの措置、これはどんなふうに思われますか。
  267. 稲村光一

    政府委員稲村光一君) 先ほど申し上げましたとおり、特にアメリカが何か措置をとったということではございませんので、私、先ほど申し上げましたのは、どういう政府の文書で、どういう表現で言われておるか、具体的にまだ詳細にチェックをいたしておりませんので、従来からのアメリカ政府部門のみならず、たとえば、アメリカの民間の学者でございますとか、その他が発表しておりますいろいろな意見とか、感触とか、そういうものを総合いたしまして先ほどの点を申し上げたわけでございまして、これがアメリカとしてそういう政府の方針なり政策をとったんだと、あるいはとるのであるということにつきましては、これは必ずしもそうではないのではないかというふうに私は考えております。
  268. 渡辺武

    ○渡辺武君 それはちょっと何ですね、やはりこうやって外交白書の中ではっきりとこういうことを言い出してきているということは、今後のアメリカ政策を案ずる上で相当示唆に富んでいるということだと思います。こういう方向で今後おそらく出てくるだろうというふうに見て差しつかえないと思いますけれども、従来のいきさつもありますし。ですから、変動幅を拡大する、あるいはまた為替調整を小幅で何回もやるというような方針を打ち出されている上で、日本がまさにこれから原則自由化という方向にいくということになれば、こういう国際通貨の不安定性のますます激しくなる中で、一そう深く引き込まれることになるのじゃないでしょうか、どうでしょうか。
  269. 稲村光一

    政府委員稲村光一君) その、アメリカがどういう政策をとるのかという点につきまして、私どもが直接アメリカ政府当局の代表者といろいろな国際会議等で接しております限り、この通貨調整後におきましても、先般申し上げましたように、OECDの第三作業部会等があったわけでございますが、そういうところの意見交換なり、ディスカッションのあれから受けております感じは、決してアメリカは自分は何にもしない、あとは黒字国が適当にレートを直せと、こういうような方向ではございませんので、やはり通貨調整——十二月十八日のワシントンの会議できまりましたこのレート、これはアメリカにとっても適正な調整であって、これの効果が出るまでには若干時間的な要素を考えないといけないわけでございますけれども、この通貨再調整の体制を安定的に維持していくべきだという点につきましては、アメリカ側の代表の感触も同じでございまして、この点におきましては、先ほど申し上げました点と、私どもの申し上げた点とは矛盾をしてないと存ずるわけでございますが、要するに制度として、八月十五日以前のような、二十年も三十年も平価を変えないでいくというようなそういう状況ではないと、こういうことであろうと存じます。  それからもう一つは、変動幅につきましても、すでに上下二・二五%、合わせて四・五%変動幅の拡大をしておりますが、これをさらに広げろという意味ではございませんで、これは暫定的な制度としてワシントン会議の結果いま採用されておりますので、これを長い——新しい国際通貨制度、これから各国間で議論をされていくわけでございますけれども、その点におきましても、またもとの一%に戻るというのではなくて、やはり現在暫定的に採用されておるようなところ、あるいはそれでもやや広過ぎるかもしれませんが、そういうときの一つ考え方ということではないかというふうに存じております。
  270. 渡辺武

    ○渡辺武君 あのね、そういうことじゃなくて、私どもはいままで、いまの国際通貨危機を解決する一つの重要な手段として、少なくともアメリカドルですね、これと金との交換性を回復すべきだ。これは日本政府もそういう同じ立場だということを前は伺っておったのだが、その点どうお思いになるのか。  それからもう一つドル危機の一番大きな原因は、何といってもベトナム侵略戦争を中心とするアメリカの戦争と、侵略の政策で、アメリカドルを海外へたくさんばらまいているというところにあるわけですから、だから日本を含めて国際通貨情勢の安定をはかるためにも、少なくともベトナム侵略戦争はやめるべきだということを申し入れるべきだというふうに私どもは主張しております。そういう点について、アメリカがこうやって外交白書の中であらためて言っているその時点に立って、あなたはどうなさるおつもりなのか、これを伺っておきます。
  271. 稲村光一

    政府委員稲村光一君) ドルの金との交換性の回復の問題は、実は午前中の御審議におきましても申し上げましたことでございますが、現在の世界、ヨーロッパを主としてドル信認が失なわれておりまして、なかなか回復しないということも一つの要素でございます。しかし、これは新しい国際通貨制度をこれからどういうふうに持っていくかという点の議論と実は密接に関連がございます。したがいまして、為替市場と申しますか、現在の通貨情勢の安定、これはドル信認が非常に問題だと存じますが、そのためにはやはり何らかの意味ドルの交換性の回復ということが非常に大きな要素であろうということはまさに御指摘のとおりだろうと存じます。ただ現実問題として考えますと、金との交換性がはたして回復できるかどうかという点は、アメリカ短期対外債務それから金の保有高等を勘案して考えますと、これは現実問題としてはきわめてむずかしい。現在においてはほとんど不可能ではないかというふうに思うのであります。ただこれは交換性の問題は、金との交換性の前に、部分的な交換性と申しますか、そういうことも考えられるわけでございます。こういうような問題も含めて今後も新しい国際通貨制度の議論において論議をされていくわけでございます。まあわが国といたしましても、この点には積極的に論議に参加をして、日本の国益の上から遺憾のない方向の点で対処してまいりたい、こういうふうに存じております。  それから、確かに現在の国際通貨情勢の不安定と申しますか、その理由アメリカ国際収支がなかなか回復しないという点にあることは事実でございます。まさにまたそれが、先ほど申しました交換性の問題とも関連をいたしておるわけでございます。これにつきましては、やはり先ほど申し上げましたように、十二月十八日の新しい通貨の再調整と申しますか、これがやはり具体的にアメリカ国際収支の回復効果を出してくる、それにはやはり時間がかかるわけでございまして、その間におきまして、これはわれわれとして対処すべきは、心理的ないろんな不安から生じます資本移動に対してどう対処するかということがやはり一番の問題であろうと思います。この前の十二月の再調整によって、それがアメリカ国際収支にいい効果をあらわしてくるということは、一年あるいは二年かかるということがまあ国際的な常識になっておりますので、そういう点でさらに今後の成り行きを注意していかなければならないというふうに存じております。
  272. 渡辺武

    ○渡辺武君 その問題もう少し論議したいのですが、時間がないので、あと一、二点はしょって伺います。  先ほどもほかの委員から質問がありましたので、大部分は省きますけれども、この法案、改正案ですね。これによりますと、「非居住者に係る預金その他の指定金融機関の債務で政令で定めるもの」、すなわち非居住者自由円預金等ということになっていますね、規制対象がですね。それで通達を見てみますと、非居住者自由円預金のほかは大蔵大臣が指定するということになっております。その点考えてみますと、昨年八月のあの為替投機の例を考えてみましても、問題は非居住者の側にあったのじゃなくして、まさに居住者、特に都市銀行を中心とする為替銀行がものすごい勢いで外銀から借り入れを取り入れてそしてドルを売りまくった、あるいはまた大商社が輸出前受け制度を最大限に利用して、そしてたくさんのドルを取り入れて売りまくったというところが一番大きな原因だったと思うのですね。まさに居住者にこそ問題がある。ところがその一番問題のある居住者の問題について明確に法案にも通達にも出ていないという状況です。この居住者の外貨、外資の取り入れですね、これについての規制をどの範囲までどういうふうに考えておられるか、これをひとつ伺いたいと思います。
  273. 稲村光一

    政府委員稲村光一君) 居住者の外資の取り入れと申しますか、この点は御承知のとおり銀行部門とそれ以外と、こういうふうに分けて考えますと、銀行部門以外につきましては、たとえばインパクトローンでございますとか、その他ございますが、これは今回御審議を願っております準備預金制度とは関係のない別の問題であろうと存じますが、その点につきましてはやはり為替管理の系統のコントロールで従来からもチェックいたしております。現在においても統制をいたしております。そういう面での抑制手段と申しますか、それをやはりこういうふうな情勢でございますと当分の間は続けていかざるを得ない。また続けていくべきであろうと存じております。  それから、銀行部門につきましては、先ほどから御議論になっておりますように、直接の為替管理法系統の統制——具体的には円転規制その他あるわけでございますが、そういうものと、今回の御審議を願っております準備預金制度と、この二つを併用していくということになろうと存じますが、これは単に内外の金利差に基づきます点につきましては、この準備預金制度の導入によりましてその金利差を利用しての投資と、そういう点の流入についてはプライス・メカニズムを通じての抑制ができるかと存じますが、しかし他方レートに対する不安等から由来いたします分につきましては、これは準備預金制度だけでは抑制し得ない要素でございますので、この点につきましては、やはり現状どおりに抑制手段をこういう情勢が続く限りは持していかなければならないというふうに存じております。
  274. 渡辺武

    ○渡辺武君 時間が来たので端的に一、二点だけ聞きます。  そのいまお話しのあった輸出前受け制度ですね、これは先ほどリーズの一種だと、つまり輸出代金の何といいますか、事前回収というふうな御説明がありましたけれども、私はこれは決定的に性格の違うものだと思うのですね。それはたとえば、一度商品を輸出して、そして代金が掛けになっておる、それを早く回収するという場合と、そしてこの前受け制度のように、まだ輸出も何にもやっていない。輸出契約がたかだか結ばれた段階で、まだ輸出認証も受けていない。そういう時期に外貨を送らせて、これが前受けだ、輸出代金だというふうにいっているのとは全然性格が違うと思うのですね。つまり、この輸出前受け金制度というのは、それ自体の中に本質的に投機的な要因を含んでいる。この間の八月の事例でも、よくいろいろ伺ってみるというと、どうも商社やメーカーの在外支店と国内の本店と、これとの間の取引が主なんですね。だからまた、輸出契約だといっても、ほんとうの輸出じゃない。本店と支店との間のいわば商品の国際的な移動も起こらない。これから先移動いたしましょうという、そういう契約があったということを前提として、どんどん金を送らせている。その在外支店も、これも輸出代金の回収じゃない。そうではなくして、現地の外銀や、その他から借り入れてドルを送っている。これはもう本質的に投機的な要因が内蔵しているものです。ですから、ああいうふうに為替不安が非常に大きいときに、円が切り上がるだろうというようなときには、一ぺんにこれは純粋な投機的な要因に転化する、そういうものですよ。ですからこれは、ただ単に場合場合に応じて規制するというような措置では、私はだめだと思うのです。これは標準決済方式の重要なものとして許可されているわけだけれども、これはやはりこういう危険なものは、これは標準決済方式ではなくして、例外的なものとして処置すべきじゃないか。そうでないと、十分な規制はできないというふうに思います。その点どう思われるか、これが第一点。  それから第二点ですね。この銀行サイドの為替銀行の外銀からの借り入れですね。いただいた資料を見ますというと、外銀借り入れも相当最近はふえている。同時に外銀からということではないが、主として外銀からでしょうが、預かり金というのが相当ふえていますね。ところがこれは円転換規制の中でそれが行なわれている。どうしてそういうことが行なわれているのかと思って一方を見ますと、日本銀行の外国為替資金貸し制度、これがゼロになっているのですね。全然日本銀行からの円資金の借り入れというのがない。だから円転換規制の中で外銀から預かり金、預金ですね、これを借り入れ、これをうんとふやしても円転規制に触れないという状態で、この外貨の取り入れが進んでいる。こういう状態では、これは投機のときの規制もできなければ、日常の外貨の取り入れということの規制も十分できないというふうに思われます。この点の規制をどうお考えなのか。これを第二点として伺いたい。  それから第三点として、銀行だけではなくして、企業ですね。新聞報道によりますと、西ドイツが三月一日の閣議で、企業の外資導入に対する準備預金制度ですか、こういう制度の採用に踏み切ったというふうにいわれておりますが、この内容ですね、これを御説明いただきたいのと、こういう制度を日本でも取り入れることが必要だと思いますが、その点どうお考えになりますか。合わせて三点伺いたいと思います。
  275. 稲村光一

    政府委員稲村光一君) 第一点は、前受け金の関係でございますが、この点につきましては、前受け金と申しますものが、元来は商慣習に基づきまして、通常の場合でもある程度の前受けということがあることは事実でございます。ただ御高承のように、現在の標準決済規則にありますような輸出認証前一年までということが一体どういうことであるのかということにつきましては、これは確かに一つの問題点であろうと存じますので、この点につきましては、この標準決済制度の問題として、全体の問題の一環といたしまして、いま関係のところで、関係の省ともいろいろと話し合いは従来からやっているわけでございまして、今後も続けたいと存じますが、さしあたっての問題といたしましては、現在のような情勢におきましては、いわゆる標準決済規則におきましては、御高承のとおり、標準決済ということでございますので、これがもしもある程度の前受けというのが標準的な取引の一つの形態であるならば、これを標準決済規則を直して全く認めないということにすることは、やはり若干の行き過ぎになるのではないか。むしろやはりその特別な状況に応じて、この前受けというところを利用して短資が入ってくるということであれば、それをとめるという方法をとるのが最も有効ではないか、こういう考え方から、先般、先月の二十五日でございましたか、その前受けをとめるという措置をとったわけでございまして、それ以降は、それまでだいぶ入っておりました前受けのあれはとまっておるわけでございまして、そのためにまあその後は、為替市場はわりに平静に現在まで推移しているということでございます。  それから第二の円転規制との関係につきましては、短資課長からあるいは御説明申し上げたほうがいいと存じますが、この外為資金貸しに関しましては、実はこれは円転規制の仕組みといたしまして外為資金貸しの部分は、いわば円投入を強制してというような面もございますので、これは特に御指摘のような点はないと思います。  それからドイツの企業の現金預託制度でございますが、これはまさに御指摘のように、銀行部門以外の企業部門におきましてこの外資の流入をチェックするための措置でございまして、まあわが国におきましては、それが直接の為替管理というほうの手段で従来から現在に至るまでこの統制をしている部分でございますが、ドイツはそういう為替管理の手段がございませんので、その現金預託、そういう制度をとることによりまして、これをまあ押えようと、こういうことであろうと存じますが、詳細につきましてはちょっと手元に資料を持っておりませんので、これは現在実は大体のことはわかっておりますが、こまかい点につきましてはいま調査中ではございますけれども、やはりこれは日本におきましても将来、先ほどから申し上げております直接統制を、為替規制のほうを将来の問題としてもしゆるめていくという状況が適当だというふうになりますれば、当然非銀行部門におきましても、こういうような現金預託制度ということも一つのアイデアとして検討に値するというふうに存じておりまして、いまいろいろとその詳細の情報を集め調査をしておる段階でございます。
  276. 渡辺武

    ○渡辺武君 ちょっといまの説明がよくわからなかったのは、日本銀行の外国為替資金貸し制度、為銀はもう全然ないのですよ、日本銀行から借りているものがずっと減ってしまって。そのことが一つの条件となって、外銀からの借り入れや預かり金がふえているのです。ふえても、つまり円転規制の中におさまっているのですが、ですから、そういうことでは外貨の取り入れということを規制できないのじゃないか。今後はどうするつもりかということなんです。その点ひとつお答えいただきたいと思います。
  277. 淡野勝己

    説明員(淡野勝己君) 御説明いたします。  日銀の外為資金貸しが、いま御指摘のとおり一月末で非常に少なくなっております。二月末にはゼロになっておりまして、この点と円転規制との関係でございますが、従来の外為資金貸しに見合う部分は、必ず外貨を保有しろというふうに規制が行なわれておりましたので、その部分につきまして、資金貸しがなくなった部分だけ外貨負債が持たれましても、円転規制は守られるということに仕組み上なるわけでございます。したがいまして、その点先生の御指摘が、日銀資金貸しがなくなって、そのかわりに外貨負債がふえても、円転規制は守られるではないかということでございますれば、その点に関する限り、先生御指摘のとおりというふうにお答えいたすことになると思います。
  278. 渡辺武

    ○渡辺武君 いや、だからね、そういう事態だから今後どういうふうに規制なさるのかと伺っている。
  279. 淡野勝己

    説明員(淡野勝己君) この点につきましては、規制を今後どういうふうにしていくかということでございますが、その点、特に、資金貸しがなくなり、そのかわりに外貨建ての負債がふえるということになりましても、外貨建ての負債に見合う限り、資産を持っていなくてはならない。逆に言いますと、資産をオーバーして外貨建ての負債を持つことは、円転規制が続く限り認められないわけでございますから、その限りにおいては、規制を行なってまいります上におきまして全く問題は生じないというふうに解しております。
  280. 渡辺武

    ○渡辺武君 よくぼくの申し上げている趣旨がわからないのですね。日本銀行から外為資金貸しで取り入れている場合、言ってみれば、単純化して言えば、その分だけは外銀借り入れだとか、預かり金だとかというのをふやすことができた。ところが、いまやそれは、一方日本銀行にはどんどん返しちゃって、ゼロになった。その分だけふやしているわけです、外銀借り入れその他を。これをどういうふうに規制するのかということなんですね。たとえば、今度の準備預金制度でこれについての規制を考えているのか、あるいは何か別の規制を考えているのかということなんですよ。
  281. 淡野勝己

    説明員(淡野勝己君) 先生の御質問は、今後どういうふうに規制するかというふうな内容であったと思いますが、資金貸しの見合いに外貨債務がふえるということはもうすでに生じたわけでございまして、その間円転規制は守られていたと、この点をまず申し上げたいと思います。  それから、今後新規に外貨建ての負債がふえる、これは、円転規制が続きます限り、その負債に見合う外貨を保有しなくてはならないという点は依然として変わらないわけでございます。したがいまして、外貨建ての資産をオーバーして、外貨建ての負債を今後新規にふやすということは、円転規制が続く限りできないということでございます。  先生の御質問正確に御理解申し上げたかどうかちょっとさだかでございませんが、今後外貨建ての負債がふえるのをどういうふうに規制するかということが御質問趣旨であるということでございますれば、いま申し上げたとおりのお答えになると思います。
  282. 渡辺武

    ○渡辺武君 あらためてまたこの次聞きますわ、時間がありませんから。
  283. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  次回の委員会は三月十日午前十時から開会いたすことにし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十三分散会      —————・—————