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政府委員(
谷村裕君) 簡単に申し上げます。
昭和四十五年九月上旬に、東京都内で市販されております十一社、三十銘柄の牛乳、加工乳を
公正取引委員会としては試みに買いました。試買いたしました。そして、これを
公正取引委員会事務局長名の文書をもって国立衛生試験所の慶田氏に分析を依頼いたしました。その結果が
昭和四十六年三月末、約半年かかっておりますが、
公正取引委員会事務局のほうにまいりましたが、その報告書によりますと、うち六社、十一銘柄の牛乳、加工乳に異種脂肪混入、あるいは混入の疑いのある旨の報告書が出たわけでございます。このため、私
どもといたしましては四十六年六月、去年の六月、東京都内に供給する牛乳工場九工場に対して立ち入り検査を行ないました。そしてその
調査は、牛乳工場が集乳をしている地域からいろいろなまの牛乳を受け入れます、その受け入れの検査の
体制がはたしてしっかりしておるかどうか。あるいは製造工程の内容は一体どうであるか。また集乳や出荷の数量的な数字はどうなっているか。あるいはさらには、他の
製品等との
関係において異種脂肪を使っておるとすれば、その異種脂肪の使用の
状況はどうであるかというふうなことを行なったわけでございます。それと同時に私
どものほうは、もう一ぺんこれは念を入れて調べなければならないと思いまして、さらに東京都内で売っております牛乳、加工乳を買いまして、これをやはり分析検査をしてもらうということにしたわけでございます。いまの二つのことにつきまして、まず立ち入り検査の結果からは、私
どもはどうも工場内部において異種脂肪を混入している、そういう姿というものをつかむことができなかったのでございますが、異種脂肪が誤って入るかもしれない管理
体制、工場の建物のつくり方や何かに問題がありはしないかという懸念を抱くことはあったのでございますが、しかし、いずれも私
どもとして異種脂肪が混入されるということがその工場において故意に行なわれていたということ、あるいは過失によって行なわれていたということを証拠立てるものの十分なものは得られなかったのでございます。
それから、第二番目の試買検査につきましては、やはり同じように国立衛生試験所にお願いしたいと思って、極力その旨を
厚生省のほうにもお願いしたわけでございますが、
厚生省のほうとしてはいろいろ何と申しますか、
食品検査その他のものが立て込んでおられて、いまはちょっと引き受けられないというお話でございましたので、農林省
所管の公益法人であります日本
食品分析センター及び日本乳業
技術協会というのに分析検査を依頼いたしました。その結果は九月に出てまいりましたが、私
どもの試買いたしました牛乳及び加工乳には異種脂肪の存在は認められないということでございました。そこで、私
どもとしましては、第一回の国立衛生試験所の慶田氏にお願いした検査結果、これは検査方法が実は違うのでごさいますが、その結果と、そのあとで検査をお願いしたほうの検査結果とが違っていること、及び私
どもが立ち入り検査をいたしました時点において十分な、私
どもがそれが黒であるというだけの確証を得られなかったこと、その二つ及び今後そういうことについてしっかり何と申しますか、管理
体制など確立してもらわなければあぶないというふうに思いましたこと、そういうようなところからこのことを直ちに表には出さずに、それぞれの六社の者を呼びまして、そうして厳重な注意を与えたわけでございます。と同時に、それを直接の
所管担当の官庁であります
厚生省のほうには御
連絡を申し上げておったわけでございます。そういうわけで、私
どもがどういう点を注意したかということは、もし御必要があれば詳しく申し上げますが、八項目ばかり詳しくやっております。そうしてその間、実は私
どもとしましては
業界、あるいは
消費者に無用の混乱が起こるということを懸念いたしまして、そういうことを慎重に
調査しておる時点においては表には出すことを控えておったわけでございます。
ところが、八月でございましたか、新聞に四社の
名前が出たわけでございます。これがたまたま中小の、中小と申しちゃ失礼でございますが、大手ではなかった業者の
名前が四つ漏れたわけでございます。これは私
どものほうが正式に発表したわけではございませんし、どうしてそういう
名前が出たかは私
どももわからないのでございますが、新聞に報道されました。一部には、私
どもが小さいところだけを表に出して、大手をかばったんではないかというふうなことを言われる向きもございますが、私
どものほうといたしましては一切そのことについては公式発表をしない。しかし、いずれときを見て、やはりもっと牛乳なり何なりについての
体制が混乱を起こさないという時点を見きわめましたところでこういう問題についての発表をいたしたいと、かように考えておったわけでございます。
ところが最近に至りまして、四月の初めに衆議院の物価特別
委員会におきまして、さらに具体的に一社の
名前、具体的には明治乳業の
名前をあげられまして、それがあったかというふうな御
質問があり、それに対する私の答弁があり、最近におきまして、もう六社のうちの五社の
名前が出てしまったような結果になっておりますし、私
どものいままでの調べでは、いまの段階において牛乳の管理
体制その他は十分に確立され、また、異種脂肪混入の事実は現時点においてはないであろうという私
どもの考えのもとに、
公正取引委員会としては国会の御
質問に答えて、どういう検体に、どういう疑いがあったか、どういう検査結果であったかということを先般御答弁申し上げたわけでございます。現実には、私
どもはいまのところの段階では、業者のほうもいろいろ取り調べましたけれ
ども、業者のほうではどうして異種脂肪が入ったか自分らとしてはわからない、検査結果で疑いがある、あるいは混入していると認められるというふうにいわれておっても、自分らのほうとしては、それを故意にやり、または過失によってもそういうものが入ったとは考えられないということを言い続けてきておりますが、さような段階におきまして
公正取引委員会といたしましては、今後ともこの牛乳の問題については十分
関係の官庁とも御
連絡しまして、
消費者の疑点のないように、しっかりとしたいい牛乳を
消費者に供給していただくようにわれわれの
行政を進めてまいりたい、こう思っておるところでございます。