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国務大臣(
大石武一君) この
人間環境会議に出てまいりまして、私は代表演説をするわけでございますが、その演説の草稿の中に、いろいろと直接私が取り上げまして訴えるところが五点ほどございます。その中の
一つに、
渡り鳥の
条約の締結のことをつけ加えております。
先ほど申し上げましたように、
アメリカとは国を隔てて初めて
条約が結ばれましたが、それをその後いろいろな国ともやるということで
努力を進めてまいりますが、この
条約が、できるだけほかの国でも、大陸間でも、
お互いにこの
条約が結ばれまして、地球がその
渡り鳥条約でおおわれるような、
渡り鳥がどこでも自由に楽しく飛んでいけるように、そのような楽しい世の中をつくりたいということを、私は提案と申しますか、演説の草稿の中に加えてまいりたいと思いますが、それを強調してまいりたいと考えております。
それから鯨の問題でございますが、これは、鯨を現在いわゆる商業、企業としてとっておりますのは、
ソ連と
日本だけでございます。その他は、
あとわずかに局部的に、エスキモーであるとか
アメリカの小さな島の住民であるとか、そういうようなのがとっておりますし、また別にペルーとチリとエクアドルでしたか、三つの国が集まりまして、これが、あまり大規模ではありませんが、そこで原始的な捕鯨をやっておるというのが大体
世界の
現状でございます。
それで、御承知のように鯨はいま非常に減りまして、
絶滅に瀕しているものもあるのでございますので、
世界各国で鯨をとる場合に、いろいろ制限をいたしまして、捕獲禁止なり頭数の制限ということをいたしておるわけでございます。それをするのにいろいろな段階を経ておりまして、現在では国際捕鯨
委員会という、大体十四カ国くらいでございますが、
世界の、
アメリカも入っております、イギリスも入っております、
日本とかノルウェーとか
ソ連とか、そういうのも入っておりまして、そういうところでいろいろな
規制を申し合わせましてそれを守っているわけでございますが、その国際捕鯨
委員会の内定に反対して脱退をしたのが、先ほど申しました南米三国でございます。これは、捕鯨
委員会の
規制は自分らに不当であるということで脱退しまして、独自で別に三国で共同して捕鯨しておりますが、これはあまり大きな企業ではありませんので、それほど鯨の保存には大きな影響はございません。ただ問題は、
ソ連と
日本のとり方でございます。
御承知のように鯨というものは、
日本や
ソ連なんというのは、
あとからとり始めたのです。以前は、ノルウェーとかあるいはドイツとか、イギリスとか
アメリカとか、そういう国がさんざんとりまくりまして、めちゃくちゃにとりまして、大部分のものが非常に危殆に瀕した。その後
ソ連と
日本とが加わりましてやっておりまして、残ったのが二国でございまして、まるで鯨を
絶滅させているのが
日本と
ソ連のような印象を与えておるのであります。これは非常に残念でございます。
それで、いろいろ種類がございますが、鯨のうちでも五種類、五つの大きな鯨が捕獲禁止になっております。グリーンランドクジラ、これは数百頭しかおりません。セミクジラ、これもわずかしかおりません。それからコククジラというのは、これは
アメリカの沿岸にいるのですが、その後
保護しまして、非常にふえて大体一万頭ぐらいいるそうでございます。それからシロナガスクジラ、これも数千頭しか
世界にはおりません。一番大きな鯨です。それからもう
一つザトウクジラ、これも数千頭か、二、三千頭しかいないと言われております。これらは非常に少なくなりましたので捕獲禁止ということになっておる。各国が大体守っているわけでございます。
残る鯨の
資源としては、いまとっておりますのはナガスクジラ、さらには、イワシクジラとかニタリクジラとかいろいろなものがありますが、その種類のイワシクジラ、歯のあるマッコウクジラ、これが大体いわゆる商業捕鯨の対象になっております。もっと小さなツチクジラとかミンク、そういうものはとられておりますが、これはあまり
資源もありませんが、捕獲頭数も非常に少ないので、あまり問題になっておりません。その三つのクジラがいま一番問題になっております。このうちでも、ナガスクジラが一番その中で大きい。一番利用
価値がございます。そういうことでナガスクジラが一番ねらわれますが、それがだんだん、いま非常にあぶない方向に進んでおるわけでございます。
そこで、
アメリカは、全部これをやめちまえ、十年間捕鯨を禁止したらよかろうということを主張しまして、国連の
会議の
一つの部会の中に、それを決議として提案しているわけでございます。これに対して
世界の国々はみな集まって決議しますが、そこに参りますのが、大体あまり鯨に
専門的でない国が多いのです。ほとんどとっていない国が多いのですから。そこでもしぼやぼやしておりますと、
アメリカの提案が直ちに決議されることになる可能性が強いわけであります。これは決議されても、必ずしも直接強い強制力がありませんけれ
ども、しかし、そのような
世界の国が決議した決議案に反しまして
日本だけが、しかも国連
環境会議には
ソ連が出ない公算が多いのでございますから、
日本だけが常にその決議を破って捕鯨をしたということになりますと、
世界的に非常に孤立をするおそれがございます。そういう
意味で、この決議を何とかして別な形に変えなければならぬと、みんなで考えておるわけでございます。
日本の
現状から申しますと、いまのところ、直ちに捕鯨を十年間禁止するということは、とうてい私は行政上できないと思います。私個人としてはしたい。私個人としてはしたいのですけれ
ども、行政の面から考えてこれは不可能でございます。いろいろな経済の実態、それによって何万という家族が生活をされている。いろんなことを考えますと、いまここで直ちには禁止できません。しかし、その趣旨には沿わなければなりませんから、いま申しましたように、この三つの鯨、特にナガスクジラはなを用心をしなければなりませんが、十分に
資源の
保護、繁殖をはかりながら、考えながら、その可能な
範囲内において商業的捕鯨を続けていく、当分の間。これは五年か八年かわかりませんが、そういうことで、ある機会にそれは全面的な禁止に入ってもけっこうでございますが、ある期間はそのような捕鯨を続けていかなければならないと考えまして、
日本の水産庁並びに捕鯨会社の中心の方々、それから学者の方々にお集まりを願いまして、いろいろ
対策を立てましたが、そのような、やはり当分は
資源を守りながらとっていかなければならないという結論に達しました。
その旨を、やはりそのような考え方に修正するように
努力しようということで、
アメリカのトイレン
委員長ですか、
公害関係の、この人にもぜひ
協力してほしいので、手紙が参りましたが、返事として、このような
日本の実態であるからこのような修正に
協力してほしいという返事を出しておりますが、そういうことでいまいるわけでございます。これからもいろいろ
努力いたしますが、そのような、ただその年限を付しながらということに問題があります。これには厳重なやっぱり条件が要りますが、それは御承知のように、三つの条件がいま一番大事になっております。
一つは、シロナガスクジラ換算ということをやめなければなりません。つまり、もとはシロナガスクジラが一番大きな鯨でありまして、それをとっておりました。それを禁止したのでありますから、ほかの鯨をとる場合には、シロナガス何頭分の許可をする、何頭とってよろしいということで、シロナガスクジラに換算してとっているわけです。たとえば、ナガスクジラは三頭でシロナガスクジラ一頭に換算いたします。それからイワシクジラは六頭でシロナガスクジラ一頭に換算している。ところが、実際は油とか肉とか、そういうものを考えると、大体ナガスクジラ一・六頭でシロナガスクジラ一頭に当たる。それからイワシクジラが三・五頭くらいで実際はシロナガス二頭に相当するのです。それを大きくしてあるんですね。ところが換算していきますから、どの種類をとってもかまわないのです、シロナガスクジラ一千頭なら一千頭という
範囲内では。そうすると、一番大型のとりやすいものがねらわれます。そういうことでナガスクジラが一番ねらわれて、
絶滅するおそれがある。
こういうようなシロナガスクジラ換算をやめまして、そうして鯨の種類、たとえばナガスクジラは何百頭、イワシクジラは何百頭ということで、鯨の種類をはっきりして捕獲の制限、
規制をするということが一番大事であるということと、それから、とる場合には勘違いをしでかさないように、故意といえ
どもあるいは過失といえ
ども、間違いをしでかさないように国際監視員を乗せるということ、それから三番目には厳重に
資源の再検討をするという、こういうことが一番大事でございます。そういうことを条件として修正案を出してまいりたい、こう考えておる次第でございます。
それから海洋汚染でございますが、——話が長くなってもよろしゅうございましょうか。