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1972-04-26 第68回国会 参議院 公害対策及び環境保全特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年四月二十六日(水曜日)    午前十時十八分開会     —————————————    委員異動  四月二十五日     辞任         補欠選任      加瀬  完君     鶴園 哲夫君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         加藤シヅエ君     理 事                 金井 元彦君                 矢野  登君                 伊部  真君                 内田 善利君     委 員                 田口長治郎君                 高橋雄之助君                 寺本 広作君                 原 文兵衛君                 渡辺一太郎君                 鶴園 哲夫君                 小平 芳平君                 加藤  進君    国務大臣        国 務 大 臣  大石 武一君    政府委員        経済企画庁総合        開発局長     岡部  保君        環境政務次官   小澤 太郎君        環境庁長官官房        長        城戸 謙次君        環境庁企画調整        局長       船後 正道君        環境庁自然保護        局長       首尾木 一君        環境庁大気保全        局長       山形 操六君        環境庁水質保全        局長       岡安  誠君        厚生省環境衛生        局長       浦田 純一君        林野庁長官    福田 省一君        通商産業省公害        保安局長     久良知章悟君        通商産業省化学        工業局長     山形 栄治君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        文化庁文化財保        護部記念物課長  古村 澄一君        厚生省薬務局薬        事課長      山高 章夫君        通商産業省重工        業局電子機器電        機課長      関山 吉彦君        通商産業省化学        工業局化学第一        課長       高橋  清君        通商産業省化学        工業局化学第二        課長       小幡 八郎君        通商産業省鉱山        石炭局鉱政課長  江口 裕通君        工業技術院標準        課長       福田 敏南君        海上保安庁警備        救難監      貞広  豊君        労働省労働基準        局補償課長    松尾 弘一君        労働省労働基準        局安全衛生部労        働衛生課長    山本 秀夫君        自治省財政局財        政課長      近藤 隆之君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○特殊鳥類譲渡等規制に関する法律案(内閣  提出、衆議院送付) ○公害及び環境保全対策樹立に関する調査公害  及び環境保全対策樹立に関する件)     —————————————
  2. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨二十五日、加瀬完君が委員を辞任され、鶴園哲夫君がその補欠として選任されました。     —————————————
  3. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 特殊鳥類譲渡等規制に関する法律案議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。小澤環境政務次官
  4. 小澤太郎

    政府委員小澤太郎君) ただいま議題となりました特殊鳥類譲渡等規制に関する法律案について、その提案の理由を御説明申し上げます。  野生鳥類につきましては、近年における生息環境悪化等により、タンチョウ、トキ、コウノトリ等に見られるように絶滅の危険にさらされているものも少なくありません。  御案内のように、鳥類自然環境の重要な要素であることはもちろん、レクリェーション等生活をより豊かにする上からも大きな価値を有するものであり、絶滅のおそれのある特殊鳥類についてその保護繁殖をはかることはきわめて重要かつ緊急を要することであると考えられます。  最近、幸いに鳥類保護については、国内はもちろん国際的にも著しい関心の高まりをみており、さきに日米間において絶滅のおそれのある鳥類等保護をはかるための条約が調印されたところであります。  わが国における絶滅のおそれのある鳥類については、すでに鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律により非狩猟鳥として捕獲を禁止するほか、鳥獣保護区を設定する等の保護措置が講ぜられているところでありますが、絶滅のおそれのある鳥類保護を一そう推進するため、日米鳥類保護条約の調印を機会に以上のような措置に加え、今回、特殊鳥類譲渡等規制に関する法律案を提案し、アメリカ合衆国などわが国以外の地域における絶滅のおそれのある鳥類を含めて、その譲渡等環境庁長官許可に係らしめるとともに、輸出入を規制する措置を講じ、特殊鳥類保護の徹底をはかろうとするものであります。  以下、この法律案の内容について概略を御説明申し上げます。  第一に、この法律案におきましては、絶滅のおそれのある鳥類の種の保存をはかることの重要性にかんがみ、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律に定めるもののほか、絶滅のおそれのある鳥類譲渡等規制する措置について定めることをその趣旨といたしております。  第二に、この法律案において「特殊鳥類」とは、本邦またはアメリカ合衆国など本邦以外の地域において絶滅のおそれのある鳥類総理府令で定めるものをいうことといたしております。  第三に、特殊鳥類は、環境庁長官学術研究養殖その他の事由により特に必要であり、かつ、適切であると認めて許可した場合を除き、譲渡し、譲り受け等をしてはならないことといたしております。  第四に、特殊鳥類は、国際協力として学術研究養殖を行なう場合その他輸出することが特にやむを得ない場合であって政令で定める要件に該当する場合を除き、輸出してはならないことといたしております。  第五に、特殊鳥類は、輸出国輸出許可書または適法捕獲証明書を添付したものでなければ、原則として輸入してはならないことといたしております。  以上が、この法律案を提出する理由でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  5. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 以上で説明の聴取は終わりました。本法案に対する質疑は後日に譲ります。     —————————————
  6. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 公害及び環境保全対策樹立に関する調査議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言をお願いいたします。
  7. 伊部真

    伊部真君 琵琶湖汚染問題について質問をしたいと思いますが、これは琵琶湖総合開発計画案がいま政府のほうで御討議をされているようでありますから、したがって、その部分を除きまして質問を行ないたいと思います。  まず、琵琶湖汚染状況についてですね、琵琶湖の水というのは、これはもう理解ができておりますように、一千万人目のやはり生活にかかっていると思います。したがって、これの汚染問題というのは、国の見地からも重要な関心事でなければならぬと思うのでありますが、したがって、琵琶湖水質汚濁について総合調査を常にしておかなければならぬというふうに思います。そういう意味で、汚染調査について、委員会などを設けてそれを監視するというふうなことについてお考えがあるかどうか、まずお聞きをしたいと思います。
  8. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 琵琶湖につきましては、お話のとおり、現状としまして富栄養化のおそれがある湖だというふうに私ども考えておるわけでございます。  そこで、琵琶湖につきましては、まず環境基準設定というものを急ぎたいという考えでおりまして、昨年度の末でございますけれども、この環境基準設定をいたしたわけでございます。もちろん環境基準設定の前提といたしまして、環境庁滋賀県と共同いたしまして、琵琶湖水質調査をいたしております。  その状況につきまして概略申し上げますと、北湖、北のほうでございますけれども北湖につきましてはCODが大体一PPM以下の状況でございまして、私どもは、北湖につきましては、この良好な状況をこのまま維持いたしたいというふうに考えて、環境基準類型指定AAという、湖につきましての最高の類型指定をいたしました。それから南湖につきましては、これはやはりよごれておりまして、CODも大体一・五PPM程度というふうになっております。これは現状といたしましては、環境基準はAという範疇に入るわけでございます。私どもは、このAよりも悪くしないという意味合いから、暫定的にはAを維持しろというふうにいたしておりますけれども、正式には、今後AA類型指定の湖にするようにというようにいたしております。これは、将来そういうようにするという目標設定をいたしたわけでございます。  問題は、水質につきましては、ほぼ琵琶湖全体につきましては、現在直ちにAAであるか、また将来AAになし得るという目標を持っておりますけれども富栄養化の点につきましてはやはり問題があるわけでございまして、四十七年度予算におきましては、琵琶湖も対象にいたしまして富栄養化メカニズム調査というものをいたしたいというふうに考えております。なお、この点につきましても、北湖のほうはまだ富栄養化のような状態にまで至っておりませんけれども南湖につきましては、リン窒素含有量から見まして、すでに富栄養化段階にもうほとんど入ってきたというような状態だと私ども理解をいたしております。  そこで私どもは、今後琵琶湖につきましては、申し上げましたように富栄養化の対処のための精密な調査を続行といいますか、四十七年度に調査をいたしますほか、環境基準維持達成のために諸般の事業、たとえば流域下水道整備排出規制強化等の監視、促進は続けてまいりたい、かように考えております。
  9. 伊部真

    伊部真君 いま北湖南湖とのお話がありましたけれども南湖汚染状態というのは北湖に比べてかなりひどいということを言われたわけですが、私もそのとおりだと思うのでありますが、南湖の水と北湖の水とが循環をするということが言われておるわけです。これは私が滋賀大の教授の話を聞いたときでも、やはり風の関係だとか、あるいは全体的な条件が、いわゆる夏冬とか気候の変わり目だとかということで循環をするというふうなことから考えても、汚染状態が広がるのではないかということを心配するようですが、その点についてはどうですか。
  10. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 循環をするか、しないかというのはなかなかむずかしい問題で、もちろん、北湖南湖の間には相当狭い地域がございますから、普通の湖のような循環はないと思いますけれども、しかし、つながっておるところでございますので、絶対循環をしないとは言い切れないかと思います。ただ、水質状態その他を見ますと、明らかに北湖南湖とは水質状態が違うようでございます。私どもといたしましては、やはりこれは、北湖のほうから南湖のほうへ大部分の水は移動をするというふうに見なければならない。その結果、南湖のほうが非常によごされているということではなかろうかというふうに、実は考えております。
  11. 伊部真

    伊部真君 これは、密度流とか内部静振というようなことで相互に循環があるというふうなことも言われておるわけでありまして、その点については今後もひとつ研究をしてもらいたいと、こう思います。  それから琵琶湖でいま問題になっておりますのは、悪臭がかなり出てきたということですね。特に京都、その下流になります宇治の関係では、水道の水にも相当に臭気が出てきておるということなんであります。これは大阪やあるいは神戸にも関係が出てくると思うのでありますけれども、この臭気原因について、悪臭原因について調査されたことはありますか。
  12. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) お話のとおり、昭和四十四年ごろから京阪神の上水道に、カビ臭気といいますか、それを主体とします異臭が発生するということが伝えられております。初めは夏だけに出たということであったのでございますけれども、四十六年ごろから冬にも悪臭が出るということでございまして、いろいろ調査をいたしておるのでございますけれども、現在、完全にその原因が明らかにされたという状況ではございません。  しかし、考えられるといいますか、いろいろ説によりますと、琵琶湖にモが発生をする、モが非常に大発生をしたときに臭気発生をするということが、まず可能性一つでございます。それから琵琶湖の湖底のどろから、カビ臭発生します放線菌が分散をしまして、この放線菌を培養してみますと、カビ臭を発する物質であるジオスミンといいますか、それができるということも確認をされております。ただ、この放線菌が大体カビ臭原因であろうといわれておりますけれども、この放線菌とモとの関係その他が必ずしもはっきりいたしておらないので、カビ臭発生をするメカニズムというものは、必ずしも現在まで確定をしたという状況ではないわけでございます。
  13. 伊部真

    伊部真君 この点は京都水道部のほうも、どうも結論的には不十分な結果なようです。というのは、いま言われたような、プランクトンだとか、あるいはシネドラ、ホルミィデュムというふうないわゆるモの発生状況臭気状況とは、必ずしも比例していないわけですね。プランクトン異常発生があったから臭気が多くなったかというと、そうではないということで、まだ不十分なようでありますけれども、これはやはり水道当局等とも協力をしていただいて、早期に臭気原因を突きとめてもらわないと、常に原因不明のままに臭気発生をして、そしてそれが追跡ができないということになりますと、これはたいへん多くの人たち影響することですから、ぜひこの悪臭原因についてひとつ研究を願いたいと、こう思います。  それから、続いてプランクトン異常発生でありますが、これも瀬戸内海の赤潮と同じように、かなり大きな規模になりつつあるようであります。これは聞きますと、植物性プランクトン動物性プランクトン、それが、いわゆる動物性プランクトン植物性のものを食べていくというような形で、ある程度の。プランクトンはいいようでありますが、先ほどあげましたような富栄養化というふうな現象になりますと、これは動物性プランクトンがむしろ窒息をするというようなことで、したがってプランクトンの死滅、あるいはそれが原因になって小魚あるいは魚の生息状態にまで非常に大きな影響を与えるというふうに言われているわけです。このプランクトン異常発生原因と、それに対する何か対策でもありましたら聞かしていただきたい。
  14. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) なかなか、赤潮原因も必ずしも現状で明らかでないということもございますので、この琵琶湖につきましての藻類の異常発生等原因等につきましても、現在必ずしも明かでない点がございます。先ほどちょっと申し上げましたように、私ども原因一つとして考えられますのは、やはり富栄養化が進行中であるということであろうと思いますし、その指標一つとしましての窒素とかリン状況を調べましても、たとえば北湖につきましては、窒素平均では大体〇・一四PPMリンにつきましては〇・〇〇六PPMということで、北湖は、いわゆる富栄養化と言われておる窒素リン指標から見ましても、まだ厚く富栄養化状態にはなっていないと思いますけれども南湖につきましては、窒素平均で〇・三五PPMリンにつきまして〇・〇一八PPMということで、大体湖の富栄養化の場合には、窒素は、〇・三PPM以上になるとどうも富栄養化状態と言わざるを得ないし、リンにつきましても、〇・〇一五PPMをこえた場合には富栄養化状態と、こういうふうに言わざるを得ないと思いますので、南湖富栄養化といいますか、そういう状態にすでに入っているというふうに考えるわけでございます。  そういうような状態になりますと、すでに霞が浦等におきましてもいろいろ富栄養化現象があらわれておりますし、諏訪湖につきましてはさらにもっとひどい状態にあるということから、琵琶湖につきましても富栄養化対策というものをこの際強力に推進しなければ、いろいろなくさい水等含めまして水質汚濁がさらに進行する状態になるのではあるまいかというふうに、実は考えております。そこで、先ほど申し上げましたように、四十七年度におきましては、諏訪湖、霞が浦、琵琶湖につきましては、富栄養湖の実態を明らかにするための調査費用をお願いしておりまして、このメカニズムを明らかにし、その対策にまで及ぼしたいというふうに実は考えておるのでございます。
  15. 伊部真

    伊部真君 これはやはり最終的な結論というのはいま言われたようなことになるだろうと思いますけれども、しかし、その大きな原因というのは、一般的に言われることはやはり家庭下水、洗剤なんかの流入とか、あるいはし尿処理が不十分であるというようなことが言われているわけですね。当然、流域下水道整備というものを早急にやらないと、これの原因を除くことができない。  ただ、一番私現地に行って気になりましたことは、滋賀県もし尿処理が非常におくれているということですね。聞きますと、大津住民のうち二万人の処理については処理施設があるけれども、それ以外はほとんど、いわゆる何らかの形で琵琶湖へのたれ流しになっている。処理施設がなくて、処理したということにはかっこうはなっているけれども、ほとんどは野ざらしで、ため池やそっちのほうでやっている。雨が降れば、あるいは時期が来れば何かの機会琵琶湖へ流れていく。これは私はやはり滋賀県の問題というのじゃなしに、大阪神戸京都、全部の住民に対するたいへんな問題だと思うので、し尿処理とこの流域下水道の問題は、これは早急にやっていかなければいかぬのじゃないか。そうでないと、琵琶湖富栄養化の問題で死ぬと同時に、非常に下流の水がよごれていくという重要な時期に、危険な状態になっているのじゃないかというふうに思うわけですが、その点はどうですか。
  16. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 琵琶湖汚染原因でございますが、私ども大体のCOD汚濁負荷量から推定いたしますと、琵琶湖汚濁原因となりますウエートは、工場排水が大体七六%、それから家庭下水が二〇%、その他が四%というふうに実は推定をいたしております。  そこで、工場排水につきましては、上乗せの排水規制滋賀県でつくっていただきまして、厳重な排水規制をするということを考えておりますし、家庭下水につきましては、お話のとおり下水道整備をしなければならないと実は考えております。  琵琶湖周辺下水道につきましては、お話のとおり現在は大津市にあるだけでございまして、その処理人口も三万六千人程度でございます。やはり汚濁に占める家庭下水のウェートが二〇%程度ということでございますので、早急に流域下水道整備しなければならないというふうに考えておりまして、すでに流域下水道の第一期工事につきましては、四十六年度に着工いたしております。これは湖南の中部、彦根、長浜、湖西及び高島の四地区を中心とした流域下水道計画でございまして、大体五十年度には二十万人処理というような計画で着工しているわけでございます。  し尿につきましては、ちょっといま資料ございませんが、大部分はやはりし尿を集めまして処理をいたしておると思いますけれども、私のほうのし尿計画につきましても、先般、昭和五十年までには全国の九五%までは衛生的な処理をする、これは海へ捨てるとか山の中に捨てるとかいうことをやめまして、全部処理施設によって処理をするという計画をすでに厚生省で立てております。これも五十年度までには完全な処理ができるというふうに私ども考えております。
  17. 伊部真

    伊部真君 いまのし尿処理の問題については、一般的にはそうかもわかりませんが、琵琶湖、いわゆる滋賀県の場合には、これは海へ捨てるとか山へ捨てるというふうな問題とは違って、直ちに琵琶湖の水の汚濁影響するわけですね。したがって、これは琵琶湖の、あるいは淀川の水を汚濁をしないという意味で、やはり別にし尿処理については計画を持つべきではないかというように思いますが、その点はどうですか。
  18. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 琵琶湖周辺し尿処理でございますけれどもし尿処理影響琵琶湖水質影響を及ぼすとするならば、これは、考えられますのは処理の過程におきまして廃水が出ます。その廃水中に、窒素とかリンとかいうものがさらに含まれているという問題があるかと思いますけれども、これにつきましては窒素リンを取る技術というのは、現在、下水道処理も含めまして、いろいろ超高級処理方法につきまして検討している段階でございますので、その結論といいますか、技術的な方法が確定しませんと、その問題は解決できないという現状でございます。  それ以外につきましては、直接し尿等水質に及ぼす影響というものは、おそらく滋賀県におきましては、琵琶湖考えて、そう非衛生的な処理をしているとは実は考えてないわけでございまして、私どもとしましては、もちろんほかの地域よりもより進度を早めまして、し尿処理施設整備をしてもらうように、これは厚生省滋賀県とも相談をして計画はさせてまいりたいと考えております。
  19. 伊部真

    伊部真君 ただ、私はしろうとでよくわからんですけれども、いま言われた処理施設が、いま三万そこそこだ。それ以外は野ざらしになっておる、池にほうり込んでおるというようなことがいわれておるので、問題は、処理をされているのはそういうことで納得ができるのですけれども、どうも二万、三万以外のやつは、池の中にためておいて、いまのところは川か何か、自然な状態でまかすというふうなことになっておるようですが、これはやっぱり回答をしてもらわなければいかんと思います。その問題についてはどうするのか。そうでないと、やはり、しろうと考えでありますが、池のほうにほうり込まれて、ためられて、それが雨が降ったときに流れてきたのでは琵琶湖の水がよごれるじゃないかということになりますから。これはどうですか。
  20. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) ちょっと、し尿処理現状につきましては資料がございませんので、またいずれ調べましてお答え申し上げたいと思っておりますが、先ほどちょっと申し上げました、大津市で三万六千人分の処理しかしていないと申しましたのは下水道でございまして、一般の家庭下水処理状況につきましては、現在大津市におきまして三万六千人分程度下水処理施設しかないと申しあげたわけでございます。  し尿につきましては、お話のように非常にたれ流しをしておるとは実は考えられないわけでございまして、おそらくは、あの琵琶湖周辺におきましては、市町村によりまして収集され、処理をされておる。その収集されたものが、現在、すべてが陸上処分をされておらないで一部は海その他に捨てられているかもしれませんけれども、湖に捨てられているということは考えられないのでございます。
  21. 伊部真

    伊部真君 私が現地で聞いたのでは、それは責任者から聞いたわけではありませんが、二万人の処理しかなくて、あとは結局ほったらかしにしてあるというふうなことを言っておるので、この点はぜひひとつ確かめていただいて、そして下流の者としては気になることですから、ぜひ明らかにしていただきたい。  それから先ほど工場排水の問題が出ましたけれども、そこで琵琶湖汚染の七〇%をこえるものが工場排水に基づくと言いますが、それが原因でどれだけ琵琶湖がよごれているのかということをやはり確かめれば、今後の対策というものに大きな指針になろうかと思うのです。そこで、工場排水状態を一番よく把握できるのは、やはり湖底、いわゆる底質の検査というものではなかろうかと思います。これは地域ごとに、滋賀大なんかではかなり調査が進んでおるようでありますけれども環境庁としては、その問題についてどのように把握しておられますか。
  22. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 琵琶湖の底質につきましては、お話のとおり滋賀大学ですか、滋賀県等におきましてやった例を聞いておりますけれども、その調査の内容が、PH、COD等の調査の内容と伺っております。ただ私どもは、CODとかそういうようなものにつきまして、底質を対象とした場合どういう方法がいいのかというのは、必ずしも実は確立をされておらないわけでございます。私ども従来、底質等の調査につきましては、重金属類を主といたしまして調査をいたしておりまして、それ以外のものにつきましては、主君実は方法が確立しておらないということから、調査はいたしておりません。  そこで琵琶湖の底質でございますけれども、実は重金属類につきましても、現在まだ私どもといたしましては調査をしておらないのが現状でございまして、今後さらに底質の状況等につきましては調査を進めてみたいというふうに考えておる次第でございます。
  23. 伊部真

    伊部真君 これは北湖南湖、私は資料をきょう持ってきてはおりますけれども、十数カ所を底質検査をして、そうしてその結果、鉛だとかあるいは銅だとか亜鉛だとか、あるいは一部のところではカドミウムが出ているというふうに聞いておるわけです。で、その底質を見ると、この近くに工場があって、それが原因でこういうものが出ているということが明らかになってくると思うのです。したがって、底質検査というのは非常に重要だと私は思うのです。  どろの表面層の十センチ以内のところと、それから十センチ以上四十センチ以内のところというのは、先ほど話があったような含まれている内容というのが、かなり違いがあるのです。たとえば十センチ以上四十センチ以内、これは大体七百年前であるという、その場合には非常にきれいですね。百年といわれる十センチ以内のところは、銅だとか亜鉛だとかでよごされているということだそうです。私ら、しろうとでもそういうことじゃなかろうかと思うのですが。そうすると、結局この最近百年、五十年の間に琵琶湖の湖底はよごされた、その原因というのは明らかに工場排水によるものだ。あるいは土蔵の廃山によるカドミウム、これもかなり論議はあるようです、土蔵の問題については、かなり道のりが遠いのでどうかということはあるようでありますけれども、しかし、いずれにしても、もともとよごされていなかった、そうして工場排水原因だと明らかにわかるような問題でよごされておるということになると、これは追及をして、それをとめなければいかぬのじゃないかというふうに思うわけです。  したがって、この底質検査というのは決定的な基礎になるかどうかということも、私しろうとでよくわかりませんが、しかし、常識的に言っても、この底質の変化というものは琵琶湖汚濁というものに直接影響があるというふうに思うので、これは当然、本格的に底質検査を行なうべきだというふうに思いますが、どうですか。
  24. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) おっしゃるとおり、現在水質汚濁法によりまして、水質のいろいろ調査その他をやっておりますし、また水質規制をやっております。ただ、非分解性の物質とか非常に蓄積性の物質等につきましては、微量に水質に含まれておりましても、それが底質その他にたまってくるというようなことでございますので、私どもやはり底質を問題としまして、底質の対策というものをやらなければならないと実は考えております。  ただ問題は、どの程度のものがどのようなメカニズムで底質に蓄積をされるかという問題と、それから底質に蓄積されたものがさらに周囲の水等に再汚染といいますか第二次汚染、どういうようなメカニズム汚染をするのかという点が、必ずしも実は明らかになっておりません。一説によりますと、相当部分の重金属等につきましては、硫化物化するので二次汚染のおそれはあまりないという説もございますし、また、それが別の化学変化を起こしましてさらに再汚染のルートをたどるという説もございます。  そこで私どもは、そういうようなメカニズムを明らかにしたいと考えておりまして、これも四十七年度の予算におきまして、底質汚濁改善対策のための調査費をお願いをしております。これが、予算が成立いたしますれば、私どもはさっそくその間のメカニズムを明らかにするための調査に取りかかりまして、でき得れば、やはりこういうような汚染された底質のものにつきましては何らかの対策をとるべきであるというような、そういう許容の基準といいますか、まあ環境基準というわけにはいかないと思いますけれども、行政を実施するための指針というようなものはつくりたいというふうに実は考えております。
  25. 伊部真

    伊部真君 これから質問することは、これは後ほど大臣が来られてから大臣の御見解も聞きたいと思うのでありますが、湖底が汚濁をされていくということ、これは先ほど言われたように、琵琶湖のような場合は特に蓄積をされるわけです。したがって、どこかに流出していく状態ではありません。  ここで、琵琶湖の全体の水は二百七十五億トンといわれておるわけでありますけれども、毎年五十億トンぐらいがかわる。しかし、この問題についていろいろ通説があるそうでございますけれども、五年ぐらいで入れかわるのではないかというふうに言われる人と、琵琶湖研究所の人たちは、五年ではかわらぬ、これは十年ぐらいかかるのだ、というのは、水というのはそんなきれいに新しいものと古いものが押し出されていくわけじゃなしに、循環をして、まざり合いながらかわるわけですから、したがって十年ぐらいは残るというふうなことを言われているわけです。しかも、どろは一たんよごされたら永久にかわらぬというのですね。そうしますと、いまのようにPCBのような蓄積性のものが琵琶湖に入りますと、魚が汚染されるだけではなしに、どろが汚濁されて永久にこの琵琶湖の水は死んでしまう。しかも、これは二度と取り返しのつかない。もう一ぺんきれいにしようと思っても、どうにもならぬような状態になるというふうに思えるわけです。  そう考えると、先ほど言われたような規制は、濃度規制では琵琶湖や瀬戸内海の場合、これは意味がなさぬ。したがって、総量規制というものをやらないと、しかもこれは緊急にやらないと、琵琶湖の問題はたいへんなことになるのじゃないか。特に草津の日本コンデンサのような、大量にPCBを流しておった実績があるわけですから、それをいままだそのままの状態で置いておくということになりますと、琵琶湖は私は非常な危険な状態になると思う。したがって濃度規制というものよりも、これは総量規制というものに切りかえていかなければならぬと思うのですが、その点についての見解はいかがですか。
  26. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) お話のとおり、現在の水質汚濁防止法は濃度規制によっているわけでございます。これは現状からいたしまして濃度規制やむなしということであったわけでございまして、将来は容量規制ということに、なるべく早く向かわなければならないと考えております。  ただ現状でも、単純に濃度規制だけをやっているかというと、私どもはそうは考えておらないのでございまして、先ほど申し上げましたように、琵琶湖環境基準をつくる場合におきましては、現在の汚濁源を全部洗いまして、で、汚濁の負荷総量というものを原因別にいろいろ洗っております。それらにつきまして、やはり総量といたしましてのカットを予定をいたしまして環境基準をつくるという作業をいたしております。そこで環境基準維持達成するために、汚濁源に対しまして、その汚濁負荷量のカットを要請するわけでございますが、その際には、総量としましてどれだけカットしてもらうかという計画を立てまして、そういう計画のもとにおきまして、上乗せ排水基準をそれぞれ汚濁源別に設定をするという作業を、県のほうにお願いをし指示をしているわけでございます。  したがって、現状におきましても、できるだけ容量規制の方向に向かうように上乗せ排水基準の設定方法をくふういたしまして、そういう方向に前進をさしているわけでございますが、私どもといたしましては、全体的にはやはりおっしゃるとおり容量規制の方向に進みたいと思いまして、現在問題となっております技術的な難解その他の解明に努力をいたしておる次第でございます。
  27. 伊部真

    伊部真君 これは底質の汚濁のために、しかもその蓄積性のために、魚だとか貝類にかなりのPCBが入っているというふうなことで発表があるわけです。もう一つは、これは非常に一見小さなようでありますけれども、瀬田川のシジミなんかが、三十五年に比較をいたしますと、もう一割ぐらいしかとれなくなっている。シジミ自身がいなくなっている。これはやはり琵琶湖の水が汚染されて、シジミというのはかなりきれいなところに住まなければいけないというようなことで、そうしますと、これは一つの例でありますけれども、魚や貝類がいなくなるような状態、これは魚貝類だけではなしに、それを飲料水にしている人間、人体の健康にも非常に大きな影響を与える心配が出てまいりますね。  したがって、これは瀬戸内海の場合もやはり考えなければいかぬかもわかりませんが、琵琶湖の場合は緊急に汚濁について考えないと、取り返しのつかぬことになるのではないかというふうに思うのですが、したがって私は規制方法について、琵琶湖の場合は特別な配慮をすべきだと思うし、この今日の規制方法を、琵琶湖に限っては早急に検討し直すというようなことはできませんか。
  28. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) その検討し直すということでございますが、法律上の規制方法を直すというためには、まだ技術的に非常に問題があるわけでございます。そこで琵琶湖等の、瀬戸内海も同様でございますけれども、水の交換が非常にしにくいような水域等の規制につきましては、先ほど申し上げましたように、容量規制考え方を加味しました上乗せ排水基準の設定という方法で対処をいたしたいと実は考えておりまして、これによりましても相当程度目的は達成できるものと実は考えております。
  29. 伊部真

    伊部真君 私はいまの回答ではちょっと満足できません。大臣が来られてからもう一ぺん聞きたいと思いますが、次官からひとつ……。
  30. 小澤太郎

    政府委員小澤太郎君) いずれ大臣からの御答弁もあろうかと思いますが、ただいままで担当局長が申し上げましたことを要約いたしますと、瀬戸内海は別としましても、琵琶湖とかあるいは諏訪湖、摩周湖、霞ガ浦、こういうふうないわゆる湖につきましては、先生のおっしゃったとおりそこに流入されたものが停滞するということでございますから、特別にこれを対象といたしまして、四十七年度には、湖については、少なくとも富栄養化水質汚濁関係調査費を特別に約一千万円組みまして、これを実行しようというようなかまえをいたしておるような次第でございます。  なお、この問題は、先ほど御指摘のように流域下水道整備、これは実は琵琶湖周辺につきましてはきわめて不十分でございます。これを強力にやらせますと同時に、し尿処理につきましても、おそらく瀬戸内海等のごとく琵琶湖に持って行って直接捨てておるという事実はないと思いますけれども、これが処理が十分でない場合に、流れ流れて間接的によごすということでございますから、下水道処理との関連も十分につけるし、それから、し尿処理の陸上の施設等を十分にやるということによりましてこれも防げるでしょうし、それからまた環境容量の問題も考えなければなりません。  これは先ほどから説明しておりますように類型のあてはめをいたしまして、北湖が現在AAでありますが、南湖はAです。これをAAに持っていく。AAということになると、水としてはきわめて良好な状態になるわけです。そこに持っていくための総合的な施策をいたしまして、目標AAでありますから、それに到達するだけの排出規制というものを関係府県で上乗せをしてもらいましてやっていく。これは結局PPMでやっておりますけれども、濃度でやっておりますけれども、しかし、それが間接的に総量の規制につながる行き方でやる、こういうふうに考えているわけでございますから、この琵琶湖のごとき封鎖された湖沼については、特別の配慮をするということは当然でございまして、かような考えで進めてまいると、こういうことでございます。
  31. 伊部真

    伊部真君 これは、これからも御論議になると思いますけれども、もともと濃度規制というものでいいのかどうかということもありますね、これは琵琶湖に限らず、いまのようなPCBのように蓄積性のものが出てきて、そして人体に大きな影響を与えるということがありますと。この問題については、まあ大臣も何か新聞でも、検討をするという話もありましたから、これはまた後ほど聞かしていただきます。  それからもう一点、これはどうしても開発計画との関係が出てくるわけですけれどもね、琵琶湖汚染一つ原因としては、いわゆる琵琶湖の岸、湖岸の工事をすることによって、浄化作用の上で重要な役目をしておったいわゆる内湖といいますかね、姉川だとか琵琶湖の上流の川がありますが、それから湖へ入るまでの間に幾つかの沼のような状態があって、内湖があって、そしてヨシだとか、あるいは草があって、そこに滞溜をして水が浄化をされていくという、そういう自然の浄化作用があった。それが、だんだん開発されて工事で埋められたり、あるいは道路のためになくなっていくということがあると、この内湖の作用がなくなってストレートに入るというようなことになって、そういうことが結局、汚染一つ原因でもあると思うわけですね。  そうしますと、これからの開発については、やはり水を守るという意味ではその工事との関係をよくにらみ合わせなきゃいかぬと思いますが、その点は環境庁から見て、あの開発案の中の湖岸の工事というものに対してはどう考えられるか。
  32. 小澤太郎

    政府委員小澤太郎君) まず第一点でございますが、環境庁は濃度規制だけで事足りるとは考えておりません。いずれは総量規制という問題を取り上げなければならない。これはもう当然のことでございます。ただ、ただいままでの段階でそこまで到達しておりませんが、これはさらに進めてまいりますと環境容量の問題になるわけであります。  このことは、現在中央公害対策審議会に私どものほうから諮問をいたしておりまして、この環境容量、これを基準に、将来はどのようにこの日本列島全体を規制していくかということの構想でもって進めておるわけでございます。こういうようなことをずっと進めてまいりますと、現在の濃度規制だけではなしに、いわゆる容量規制、総量規制ということがその中から割り出してこられる。これを、いかにしてそういう方式を割り出すことができるかどうかということを、せっかくいま努力しておるわけでございますが、それに到達するまでの間におきましても、いわゆる濃度規制の中に、先ほどから申しましたように上積みのことをやりまして、そして、それが間接的に総量規制という目標に達し得るような目標をもって進めておるという段階でございます。大臣からもそういうお話があったと思いますが、そのように進めておるわけでございます。  それから、それと関連いたしまして琵琶湖周辺の環境の整備の問題でございます。これは総合開発計画にあたりましては、あの法案ができまして、総合開発計画を具体的に進めます場合には、当然環境庁とも協議があり、これに関与いたすわけでございますから、そういうようなものをいわゆる生態系的な観点も加えまして、これに対する十分な発言をいたしまして、琵琶湖を守っていくということの成果があがるようにやりたいと、こういうふうに考えておる次第でございます。
  33. 伊部真

    伊部真君 いま大臣が来られましたから、私、簡単にいまの議論について説明をして、そしてお答えをいただきたいと思いますが、それは琵琶湖の場合は、水の入れかわりというのが非常に長期になるわけですね。ある先生は五年と言い、ある先生は十年というふうに言われておるわけです。しかも、湖底がよごされた場合は、これは永久的に変わらぬというふうにいわれているわけです。そうなりますと、琵琶湖汚染というのは、ほかの河川の汚染と違って細心の注意を払わないと、一たんよごされたものは永久に取り返しがつかぬということになりますし、かつまた一千万の人口がそれを飲み水にしておるわけでありますからして、非常に神経を払わなければならないと思うわけです。  そういう意味考えますと、いまのような琵琶湖の、まずし尿処理、下水の状態、これを地方自治体の市で私が聞いたのでは、し尿処理でも、大津の二万人分の処理はできても、ほかは池のほうに、琵琶湖じゃありませんけれども、どこかにためてあるというような程度で、汚水、し尿処理が非常に不完全だというふうにも聞いておりますし、工場排水にしても、下水の問題が完備していないためにどうも不十分だというふうにいわれる。  こういうふうな問題を考えると、いまのような濃度規制というものでいったのでは、琵琶湖の場合は特に問題があるし、早急にこれは、やはり総量規制ということでいまの規制方法について検討を加えるべきではないか。大臣も何か新聞から拝見しますと、いまのこのPPM方式というのは必ずしも十分じゃないというふうに言われておるわけでありまして、それは私もそう思いますが、この琵琶湖問題というのは、開発の前に、いま開発法案がいろいろ問題になっておりますが、開発の前に緊急にやらなければいかぬことがたくさんあるのじゃないか。そういう点について環境庁としての見解をいただきたい、こう考えておるわけです。
  34. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) ただいまの伊部先生の御意見、私、同感であります。琵琶湖のような大きな湖沼というものは、おそらく一度よごれましたら、もとに戻らないと思います。ほとんど戻らないと思うのです。幸いに琵琶湖は、必ずしもそうまだ汚染されておりません。環境基準をきめましたけれども、これは最高のものに持っていける可能性がございます。そういうところで、まあわれわれも一応そう失望しなくてもいいわけでありますけれども、この上とも、絶対汚染しないようにすることがわれわれのつとめでございます。  それには、いろいろな規制をいたしておりますが、PPM方式だけではなくて、おっしゃるとおり、やはり量の問題を考えなきゃならぬと思います。ただ、いままでは量の問題をはかるというところにまだ方向は進んでおりませんし、またそのような十分な、量を規制し得るあるいははかり得るような、設備と申しますか、そういうものの開発が多少おくれている段階でございます。したがいまして、いま申しましたように、残念ながらまだ一応のPPM方式で、しかも全国一律の排出基準でありますので、それに、できるだけ各県におきましては上乗せをしてもらいまして、一応環境の整備をはかっておるわけでございますが、これだけでは不十分であります。おっしゃるとおり、やはり総量を規制するようなところに持っていかなければなりません。  それからし尿処理、これもいまはたれ流し状態でありますが、幸いに昭和五十年までには、ほとんど全部日本全国は水洗式になりますので、し尿たれ流しはなくなります。ただし、なくなりますけれども、その第三次処理と申しますか、さらにその処理されました廃水の中には、いわゆるリンとか窒素のような、富栄養化を湖水に与えるような物質が含まれております。これをなくすことが大事でございますが、その技術がまだ必ずしも、いわゆる第三次処理が完全にできておりませんので、今後早急にこれを開発して、そして琵琶湖に対しても、いろんなプランクトンや草藻を発生させるような富栄養化を、できるだけ避けなければならないと考えておる次第でございます。
  35. 伊部真

    伊部真君 だいぶ時間もなくなってきましたから前に進まざるを得ないのでありますが、そこで特にこのごろ議論がありますのは、琵琶湖の水が汚染されたということが原因か、淀川の中流の汚染原因か、どうもそこら辺がまだ不十分なようでありますけれども、母乳の中にPCBが非常に入っているというようなことで、淀川沿岸の住民が非常に心配をしているわけですね。したがって、これは結論的なものはまだ出ないかとは思いますけれども、そういうことを考えますと、あの草津の日本コンデンサを初めとする工場のPCBの汚染状態というのは、十分に配慮せなければ、しかもその処理についても考えなければいかぬのではないか。そうでないと、下流人たちはいつまでも心配をするというふうな状態が出てまいる。で、あの草津の問題は、日本コンデンサだけではなしに、甲賀コンデンサ、あるいは東レの滋賀工場、中央合成、東洋カーボン、市金工業というようなところがPCBを使っておる。こういうことで、かなり広範囲に湖の岸で使われておる。そこからPCBがかなり流入をしているというふうに見なければいかぬ。それで特にひどいのは、圧倒的に使用量が多いのは日本コンデンサで、五百十六トンということのようであります。  そこで、あの周辺汚染土壌、特にたんぼやら畑まで汚染をされて、水を入れますと油が浮くというふうな状態のようですね。排水路の近くのところは稲が黒くなっているというようなことで、現地では百姓の人たちがそういう状態のときにたんぼへ入ると、皮膚がひりひりするというふうな状態のようです。で、どうもPCBが皮膚からも、あるいは体内に口からもと、両方のことで心配なのでありますが、こういう処理について、対策について、十分であるのかどうかということをひとつ聞かしてもらいたいと思います。特に、一面ではたんぼや畑を干して、コンクリートで固めるとかいう話もあるそうですけれども、完全な方法というものがあるのかどうか。それからコンデンサだけではなくてへほかの工場なんかにもそういう問題については配慮すべきだと思うのですが、そういうことについて指導しておるかどうか、お聞かせをいただきたい。
  36. 関山吉彦

    説明員(関山吉彦君) コンデンサ等の、PCBを大量に使用しておりました工場につきましては、その周辺の排水経路、土壌を含めまして総点検を至急やることにしております。  御指摘の、日本コンデンサの工場の外にございますため池でございますけれども、これのヘドロの処理方法につきましては、御指摘のようにセメントで固めるというような方法もいろいろ検討したわけでございますけれども、ヘドロには非常に有機物が多く含まれておりますために、セメントが凝結しないのではないかというようなことが言われておりまして、現在滋賀県、草津市とも協力いたしまして、また専門家、学者などの意見も聞きつつ、カルシウムとかそういうようなものを使いまして、ヘドロを固化するような方法など、より効果的な処理方法がないかというようなことを検討しているところでございます。なお在来は、この沈でん池を通じまして、それで琵琶湖に至る排水経路というものがあったわけでございますので、その点につきましては、工場排水をバイパスいたしまして、現在、ため池の水は外に流れ出ないような方法を講じております。
  37. 伊部真

    伊部真君 そうすると、結局、いまのところは流れないようにはしておるけれども、たんぼ、畑の問題についてはそのままということですね。何ら手は打ってないということですね、そのあとの処理は。そうすると、これはやっぱり雨が降ったり流れたりすることになると、それはどこかへ通じていますから、何ぼ流れないようにといったって、下水もあるし何もあるのだから、やっぱり処置としては、流れるということになりはしないですか。
  38. 関山吉彦

    説明員(関山吉彦君) 汚染のひどいため池につきましては、そういう排水経路を分離するというような処置を講じておりますけれども周辺のたんぼ、畑などにつきましては、現在排水の分離というようなことはしておりません。その汚染の、特に汚染米の手当てにつきましては、県のほうとも連絡をとりまして、対策を進めておるところでございます。
  39. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) ちょっと、いまの答弁で少しもたもたしておるようなお感じをされたことと思いますが、実際のことを申し上げますと、まだ土壌のPCBを正確に測定する技術が、いまのところはっきりきまっておりません。そういうことで、しかし何とかして、汚水や土壌の中のPCBをできるだけ実態が把握できるように、正確にそのものの定量でなくても、ある程度の傾向がわかるようなということを願いまして、来月か再来月中には厚生省で、その測定の分析のしかた並びにその分析の結果の分析のしかたをいま確立することになっております。  これがきまりましたならば、その方法で全国的に、いまPCBで汚染されているであろうと思われるような地区を最初に調査いたします。当然、ため池のようなはっきりわかっているところは別ですけれども、その付近の土壌にいたしましても、五月、六月になりましたら、その一定した、きまった分析方法によりまして、これを至急調査いたします。その結果、どうしてもこれは土地改良、土壌改良を必要とする地域がありましたならば、それは土壌改良を直ちに行ないまして、PCBが琵琶湖へ流れ込んだり、あるいは植物の中に入り込むようなことのないようにいたしたい、こういう方針でおるわけでございます。
  40. 伊部真

    伊部真君 これは同じケースでありますから、ちょっと観点を変えて質問いたしますが、私はこの間、松下の豊中のコンデンサー工場へいってまいりました。あそこで新しくPCBの汚染状態が問題になりまして、そうして特にその状態は、昭和三十二年ぐらいから本格的にPCBを使用するようになりまして、従業員の中にも患者が出るというようなことが見のがされておった。これが問題になっているわけであります。  そこで四十二年の当時に、あそこに浄化槽をつくっているわけですね。そうして八つの浄化槽をつくりまして、そうしてヘドロをそこでとめて、水を流しているわけです。そうして三田池とという池へ流しているわけです。ところが、八つの浄化槽をつくったけれども、その浄化槽で完全に浄化されたかどうかということは検査がなくて、そのまま流れているために、三田池というところは住民からも、あの池は死の池だ、虫一匹いないというような状態になっている、魚がいないどころか、虫がいないというふうなことがいわれておる。しかも私が問題にすべきだと思うのは、なるほど健康診断をしたときに、従業員がどれだけの状態になるのかということは、その時点ではわからなかったかもわかりませんね、皮膚にニキビ状態が出たという程度で。しかし、少なくとも四十二年に浄化槽を八つつくって、その浄化槽にたまったヘドロをドラムかんに入れて保存をして、それも始末に困っておる。これはたいへん心配だということであります。  見方によれば松下電器は非常に良心的にこの問題の処理考えたとも言えますけれども、見方によっては、その時点から非常に危険な状態であるということがわかっていて、ドラムかんで直しておったのじゃないか。いまもドラムかんは置いてあるそうです。そういう状態を、ドラムかんで直していくという配慮があるなら、私はやはり本格的に、もっと人体に及ぼす影響というものについて検討を加えるべきではなかったかというような気がしてなりません。  特に問題は、三田池の水の検査、ヘドロの検査を三カ所か持っていって出しておるようですが、しかし、あの検査の発表された内容は、大阪府の衛生研究所で検査して発表したものでありませんね。あれは、松下電器が自発的に自分のほうで出した数字そのままを発表しておるということです。これは早急にあの三田池の状態なり汚染状態について、企業サイドではなしに、自治体なり別のところで検査をやらなければいかぬ。そうでないと、いま農民がたいへん問題にしているわけですけれども、そういうことについて、いわゆるヘドロの処理方法、それから検査の方法について、ひとつ見解をいただきたいと思います。
  41. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) お話のとおり、いろいろな不都合なことがありますが、まだ大阪府としては検査にいっていないそうでございます。近くいくということでございますから、われわれのほうでも十分に打ち合わせをいたしまして、妥当なりっぱな調査をするように、それをわれわれから指示してまいりたいと思います。
  42. 伊部真

    伊部真君 これはこの間、府の関係官が住民を集めまして、現状というものに対する説明をしたそうです。その説明というのは、いま私申し上げたように松下電器の調査によるものです。そこで、妥当かどうかというのはこれは後ほど十分な検査がないとわかりませんけれども、やっぱり住民の中にあるのは、三田池の中で、入り口と出口と考えると、PCBの場合は、入り口の場合とまん中の場合と出口の場合とで全然違うんですよね、中身が。ですから、どこのヘドロをとるかというのが争いになるわけですから、その点についても十分ひとつ住民が納得するような検査方法というものを考えてもらいたい。  それからもう一つは、いま申し上げておるようなヘドロの処理は、いま八つの水槽の中にも一ぱいたまっているんです。ドラムかんにもあるし、三田池の中にも万単位のPPMのヘドロがずっとあるわけです。あのままの状態で、先ほど答弁にあるように、十分な対策といいますか、凝固をさせる方法がないからということでそのまま置いたのでは、あの水は明らかに旧猪名川に流れ、神崎川のほうに流れているわけですね。ですから、これはいま対策がないということであの水をそのまま置いておくということは、将来第二次の公害を及ぼすということになります。したがって早急に処理をしていただきたい。処理方法について、私は、企業の側もあれはどう処理をしていいのかわからぬということで困っておるというふうなことも、ちらっと聞きましたけれども、やっぱり住民の気持ちから言えば、悪いというのがわかっておって、しかも相当の濃度のものがあそこにあるということを目の前にしておって、それで置いておくというのは私は耐えられぬと思います。で、かなり住民運動としては高まっているようでありますから、そういう点について、ひとつ十分な処置をしていただくことをお願いをしておきます。  それからもう一つ大事なことを落としていましたが、PCBの問題で一番私は気になりますことは、そういう問題を考えますと、松下の例を見ても、結局、事前にそのことがチェックされて、検査されるような施設があったら、これは変わったのではなかろうか。事前チェックというもの、新製品なりあるいはその他の化学製品に対して事前チェックのシステムというものができないものだろうか。  特に、私はこの間中小企業の人に聞いたのですが、大企業ですと、まだ自分で検査をしたりそれを調べるという機能を持つことができるけれども、中小企業の人たちはそれが、ここに流れている水がどうなのか、自分が流している水がどうなのかという心配があっても、それを持っていって検査をしてもらうというところが、いままでのところではない。それは自発的に向こうが、衛生試験所なりそういうところで自分の研究意思としてやる場合はあっても、中小企業が自分で持っていって、金を出してでもやってもらえるところがないということが非常に問題なんです。これはただ化学問題だけでなしに、工業試験所の場合でも、工業試験、性能試験の場合、どうも持っていっても、ボイラーの場合の危険度でも、このボイラーはどの程度危険なのかということについての性能計算も十分してもらえるような状態がない。これはたいへんな金のかかることだし、日本全国全般にそういうことをやることはたいへんな問題ではありましょうけれども、やはりそういう問題についてもひとつ検討すべきではなかろうかと、こう思いますが、この点について、ひとつぜひ見解をいただきたいと思います。
  43. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) いまのお話のとおりだと思います。いま日本には、こういういろいろな検査をしたりいろいろな調査に応じたりする施設もろくにありませんし、また技術者もまだ実はございません。そういうところ、非常に申しわけない行政になっておるわけでございますけれども、これは早急に是正いたしまして、幸いに環境庁の国立公害研修所も今年度じゅうには完成いたします。もちろん、そのできる前にも研修をして、できるだけ必要な人を養成はいたしておりますけれども、なおこのことに意を用いまして、できるだけの体制を早くつくるように努力いたしたいと考えております。
  44. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) 化学工業局長がおりませんので、かわりましていまの問題について若干お答えをさしていただきたいと思います。  現在のところ、化学製品の新しいものについての性質でございますとか、それから安全性の必要な検査というものは、企業で自主的にやる。その場合に、大学などの第三者機関を使ってなるべく中立的にやるということにしておるわけでございますが、先生御指摘の問題は確かに重大な問題がございますので、通産省といたしましては、今後問題となると思われる新規製品につきましては安全性確保のために事前にチェックをする、そのための制度等につきまして、法的規制も含めて早急に検討を進めておる最中でございます。
  45. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は志布志湾の工業開発の問題について伺いたいわけです。  これは御承知のように、閣議決定であります新全総に沿って、いろいろなうわさがあったのですけれども、またいろいろな話が現地でも起こっておったのですが、昨年の十二月の初めに県が突如としてと言っていいと思いますが、突如としまして石油産業を中心にいたしましたたいへん巨大な工業基地開発の、計画試案といっているんですが、計画みたいなものを発表いたしましたですね。そこで、あの大隅半島を中心にいたしまして、たいへんな反対運動になっているわけなんです。  これが大きな反対運動になっておりますのは、いままでに例のないような巨大な石油化学工業が来るという、公害問題が一つ。それから、あそこの十七キロくらいにわたりまして、国定公園がぽっくり埋まってしまって、なくなっちまうというんですね。それと、従来までの旧全総の結論からいって、過疎問題に対して役立つのかどうかという点に対する非常な不安感といいますか、そういうものがありまして、たいへんな大きな反対運動になっております。  一月の二十何日でしたですが、この大隅半島の二市十七町の首長並びに議長、そして県の出先の長、これに説明会を現地でやるということで知事が出向いたわけですけれども、約四千名の反対をする人たちが集まりまして、海上には七百隻の漁船が海上デモをやる、陸上では百台の自動車がパレードをやるというふうに、大隅の肝属等、そして隣の宮崎の串間を含めまして——賛成の動きもあるのでありますけれども——そういう非常に激しい運動が起こっております。詳しいことは申し上げませんですが、さらに今月の二十九、三十日に、九州各県から約千五百名から二千名の人たちが、公害問題から自然を守ろうという人たちが志布志に集まりまして、大会を開き、講演会を開き、分科会を開いて、二日間、沿岸の七カ町村にわたってやるということになっておるわけですね。  そこで、この問題について長官に伺いたいのですけれども、その前に通産省、農林省に若干伺いたいと思うのです。これはこの間の三月十一日でありますが、この委員会で公明党の内田議員のほうからこの問題の論議が行なわれております。政府の答弁が行われております。したがって、それらも参考にさしていただきながら若干伺いたいわけです。  経済企画庁の答弁を見ておりますと、経済企画庁の総合開発局長は、四十六年度も引き続いて自然条件の調査をしているのだ、まだ十分とはいえないので、四十七年度も引き続いて自然の基礎的な条件を調査するのだと御理解いただきたい、こういうような説明をしておるわけです。四十七年も、ここで答弁のように自然の基礎的な条件を引き続いて調査される、このとおりなのかどうか。このとおりだと思うんですけれども、どうかということをひとつ伺いたい。
  46. 岡部保

    政府委員(岡部保君) 確かに内田先生の御質問に対してそのようにお答え申し上げまして、また事実、私ども考え方といたしまして、四十七年度も基礎的な調査をまだまだ続ける段階であるという考え方でございます。したがいまして、現実の予算措置といたしましては、四十七年度の予算が確定いたしますれば、当方にて所管いたしております国土総合開発事業調整費という予算がございます。この予算の中から、これの調査に充てるということで、関係各省に移しがえをするという具体的な措置をとることになるかと存じます。
  47. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 四十六年度の国土総合開発事業調整費、これは約七十八億円、それぞれ運輸省、建設省、農林省、通産省というふうに配分してありますが、四十七年の配分は、きまっておれば伺いたいのですけれども
  48. 岡部保

    政府委員(岡部保君) この調整費と申します予算の性格でございますが、これは当初の予算の編成におきましては、何と申しますか、つかみというとどうも語弊がございますが、一括の金額でございます。したがいまして、事業部分調査部分とございますが、合わせて四十七年度予算案には八十二億の予算を計上いたしております。  したがいまして、これを、本来の考えでございますと、たとえば事業にいたしますと、道路が非常に先行しておる。それに伴ってその周辺の農地の改良事業というものがどうしてもそれにつり合っていかなければならないというような場合に、そのアンバランスを、それぞれの各省がおきめになった予算のアンバランスをその年度内に調整をするという意味で、私どものほうでその事業の性格を各省の御要求によって拝見いたしまして、大蔵と相談してこれを各省に配分していくというような性格でございます。したがいまして、予算がきまりまして、それから各省がすでに自省の予算をおきめになって、その上でどういう問題にさらにプラスの調整費をもらいたいんだというような御要望によってきめるものでございますから、現在まだ全然配分はいたしておりません。
  49. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 そうすると、四十六年は自然の基礎的な条件というものを調査してきた、引き続いて、十分でないので四十七年も基礎的な条件について調査をするというお話でありますが、そうしますと、いよいよ工場が建つということを想定した場合に、どういうような人間に対して影響があるかとか、あるいは地元の産業に対してどういうふうな影響があるかとかいうような、対人調査といいますか、そういう対人調査の問題についてはまだまだこれからだというお考えですか。
  50. 岡部保

    政府委員(岡部保君) 私どもで持っております調整費という性格が、公共事業費の一部でございます。したがいまして、いわゆる公共事業費的な調査をするというような考え方でございますので、ただ、もちろんいま先生おっしゃいましたような対人的な、公害に対するあるいは環境の問題に対する問題、全然触れていないわけではございませんけれども、むしろ自然条件であるとか、そういうような比較的自然科学的なほうの調査が主体でございます。したがって、いまおっしゃいましたような問題で事前調査、これは私どもの所管で十分おつき合いができるかどうかという点については、むしろ環境庁のほうが主管でございますから、その点については、そういう問題になれば環境庁が主としてお考えになる、あるいはわがほうとも御相談申し上げるというような姿になるかと存じます。
  51. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それでは環境庁のほうにお尋ねをしたいんですけれども、そういう環境保全の問題だとかあるいは公害の問題だとか、そういうことについては調査をなさっていらっしゃるのかどうか、あるいはこれから進めていかれるのかどうか、そこの点をひとつお尋ねをいたします。
  52. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) もちろん環境庁におきましては、国全体の環境の保全ということにつきましては一番の責任を負っているわけでございますから、そういうことに対しまして、できるだけの調査なり対策を立てておるわけでございますが、調査と申しましても、具体的なことになりますとどういうことかよくわからないんですけれども、ただわれわれとしては一応相当の予算、三億五千万のいろいろなことに対する調査費というものは一まとめにしてございますので、その中から、たとえば赤潮の問題であるとか、これは特に予算がありますから、足りなければそこから出すとか、いろいろなことにしてできるだけ環境の調査をいたしておるわけでございます。
  53. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私はあとあと通産省の方にもお伺いしたいと思っておったのですけれども、何か公害について事前調査を総合的にやっておられるとか、あるいは風洞調査ですね、大隅半島の小さな模型をつくりまして煙突を立ててやるんでしょうが、そういう風洞調査をやられる予定であるとか、あるいは排水した汚水あるいは水、そういうものがどういうふうに海流に沿って動いていくとかというようなことも、これは水理調査として模型を使ってやるんだというような話もあるわけなんですよ。しかし環境庁のほうが……。まあそれは、そういう話がありますので、これはいずれ通産省に伺いたいと思いますけれども、しかし、そういうのがあるのに、どうも環境庁のほう御存じないとすればと思ったものですからむ  それじゃあ、そこで私がちょっと疑問に思いますのは、開発局長の前回の内田議員に対する答弁の中にも、これは開発の可能性調査しているんだ、だから場合によればとりやめることもあるんだというようなお話しなんですね、そしてまた四十七年も続いて自然条件というものを調査していくというお話ですけれどもね、しかしもう昨年の十二月には、県のほうは新大隅開発計画というものを、はっきり開発の計画というものが具体的にまあ公表されておるわけなんですね。そうしますと、政府のいまの進め方と県の動き方の間には相当開きがあるように思うんですけれどもね。その点はどういうふうに考えていらっしゃるのか。
  54. 岡部保

    政府委員(岡部保君) 前回の委員会でも私御答弁申し上げたわけでございますが、鹿児島県の企画部の地域開発調査室でございますかで、一つの新大隅開発計画というものを発表されたというのは存じておりますし、また、その計画自体も私ここにも持っておりますが、拝見しているわけでございます。  それで、この計画につきまして、私ども、県知事あるいは県の当局の方々と打ち合わせしている段階を御説明申し上げますと、私どもとして確かにいわゆる新全総の、遠隔地に大規模工業基地をつくるべきであるという考え方は、現在も全く持っておるわけであります。その遠隔地に大規模の工業基地をつくるという、この大規模開発プロジェクトのいわゆる工業基地の問題といたしまして、一つには北のほう、北海道、青森あるいは秋田などを含めて北東地域の問題、それから西のほう、西南地域と呼んでおりますが、いわゆる周防灘から豊後水道、志布志湾、宿毛湾まで含めた地域、この、何と申しますか、地域と申しましても相当広いゾーンでございますが、そういう二つのゾーンの中で何かそういう適地が考えられないかということ、これは私どもも事務的にもいろいろ検討をいたしておりますし、また国土総合開発審議会の御答申でも、そういう地域をひとつこれからのあれとして考えるべきだというような御答申もいただいておりますので、そういう意味での現在いろいろと計画あるいは調査というようなところに、重点を置いて指向しているわけでございます。  ただその場合に、いまお話のございました県当局の考え方と国あるいは経済企画庁としての考え方がどうであるかという点が問題であるわけでございますが、私どもこの西南地域で一体どういうことをどういうふうにこれから考えていったらいいかという、これの過程といたしましては、たとえば、先生も御承知と存じますが、周防灘に膨大な埋め立て計画を、一つの大規模工業基地の案として、いわゆる試案として出たという事例もございます。ただ、この問題につきましては、周防灘自体が瀬戸内海の西端である、非常に環境問題では問題のあるところでございます。しかも、あのように膨大な埋め立て地をつくるという考え方、それをそのままとっていいかどうかという点については、私ども自身非常に疑問を持っております。そこで、どういうふうに持っていくべきかというようなことを考えなければならぬということでいろいろ調査もしているわけでございますが、それと同様に、志布志湾の問題につきましても、これは環境問題一つとりましてもいろいろな問題点を含んでおります。  したがって、ここで県の一室の一つの試案としてお出しになったもの、これは私ども理解では、県当局あるいは県知事さんがこれにもうおきめになったんだというふうには全くとっておりません。県の一部局の一つの試案であるということで、こういうものがひとつどうであろうかという、逆に言えば地域住民の御意見もひとつ聞かなきゃならぬということでこういう段取りをおとりになったのじゃないかと想像いたします。このような試案である。しかし、私どもとしてはもう少し調査をしなければならない。したがって調査をした上で、どういう計画にまとめていくかという点についてもう少し慎重であっていただきたいという考え方を持っておりますし、また知事さんに対しても、われわれとしてはそういうことを申し上げているのが事実でございます。
  55. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) 先ほどは、私ちょっと勘違いしまして、とんちんかんな答弁を申し上げましたが、大隅半島についての御質問のようでございますから……。失礼いたしました。  いま局長から非常に妥当な考えが述べられまして、私もけっこうなことだと考えておる次第でございます。  ただ、新全総というものは、一つの日本の国をバランスのある開発をしようということでは、私も意義があると考えております。ただ残念ながら、その集まったいろいろな資料というものが、いわゆる経済優先のさなかの材料でございますので、どうしても経済優先的な思想が入っていることはいなめないと思うのです。ですから、木村経済企画庁長官がしょっちゅう答弁しておりますように、年度内にはこれを見直しをするんだ。つまり私は、中のものの考え方の中心を、人間の尊重の立場から環境保全ということを中心に見直されるのだろうと私は考えておるわけでございまして、非常なけっこうなことだと私は思うのでございます。  ただ、いままで再々述べられた、新全総を、各地域ではいわゆる開発がおくれておると自分で考えまして、何としてもどのようなことをしてもいいから——前のおそらく経済優先的なものの考え方のなごりだと思いますが、そういう考え方から、地域を開発して少しでも豊かな県にしなければならないという県が、まだ残っていると思うのです。そういう県が、形の上だけの新全総を利用いたしまして、私はあえて悪用と言いたいのでありますが、利用いたしましていろいろな計画を立てるのが、問題になっているいろいろな問題じゃないかと思う。たとえば、先ほど開発局長の話がありましたように、周防灘だって半分ぐらい埋め立て——これが新全総の使命であるということを銘打って、名目にして、そうして半分ぐらい埋め立てするような計画を立てているのですが、こんなことをしたら瀬戸内海がどうなるか、いまから想像つくのでありますけれども、そのようなことがあえてやられているのが現状だと思うのです。  この鹿児島県の大隅半島の開発計画にいたしましても、おそらく企画庁ではまだまだ調査段階であると私は思うのでありますけれども、県としては早く開発をして、少しでもいわゆる金の面だけ豊かにしたいというのが、一部の県首脳部の考えではなかろうかと思います。そういうことで、これが新全総の使命である、命令であると称しまして、いろいろな計画をお立てになっているのだろうと思うのです。  しかし私は、これは環境庁としましては、幸いにあの志布志湾というのは国定公園になっております。これはどうしても国定公園を解除する、あるいは公園計画を変えることでなければいろいろなことはできませんから、これは私は簡単にこれを解除する意思はございません。ほんとうに大多数の地域住民のしあわせをつくる、幸福をつくるということが明確にされない限りは、私はこれを簡単には解除しない考えをいたしておるわけでございます。そういうことで、今後とも十分に県当局が、われわれなり経済企画庁と十分の打ち合わせをいたしまして、ほんとうにその地域住民を中心とした、何のために一体工場をつくるのか、生産をあげるのか、そういうことを考えまして、大多数の地域住民に非常なしあわせを与えるという保証がない限りは、私は、これは志布志湾の国定公園としての解除は認めないという考えをとっておるわけでございます。
  56. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 その新全総の問題、つまり志布志の開発と関連した新全総の問題についての論議は、ぜひひとつ商工委員会なら商工委員会でやらしてもらいたいと、そう思っております。そこで、いまの大臣の答弁についてはあとほどもう少し詳しくお尋ねをいたしたいと思っております。  それで、先ほど開発局長の答弁のありましたように、これは常識で考えまして、だれが考えましても、それは国の自然条件の基礎的な調査というものは続行中である、これからも続けていくんだ、さらに通産省あたりでも、今度は公害についてのいろんな問題、環境についていろんな調査もやっていくんだ、そういう上に立ってものを言ってくれないというと、こんなものをもう前へ出してしまって、公害がないものをつくるんだとか、公害がない開発をやるんだというような話が先へ出てしまったのじゃ、これはどうにも話にならないという私は感じがしておるわけですよ。  ですから、いま局長答弁もございましたので、この問題はこれぐらいにいたしまして、長管に今度はお尋ねをしたいんですけれども、この志布志の開発というのは、あの十七キロか十八キロございますところの志布志湾をぽっこり埋めるやつなんですね。十七キロの海岸線に沿って、そして沖へ二キロ埋めるというわけですから、ですからあそこはもう、鹿児島側の国定公園というものは全部ほっこり埋まっちゃうということになるわけです。  それで日南海岸国定公園というのは、これは宮崎側が半分、こう言っていいですね。そして続いて鹿児島側が半分、こういうふうに言えると思うんです。鹿児島側のほうは十七、八キロ、非常にゆるやかな湾曲をいたしましたきれいな海岸です。そして大体五百メートルから千メートルくらいのきれいな砂浜、それに深いところは七百メートルくらいの松林がずっとおい茂っているんですね。非常に優雅な、女性的な海岸になっております。それに対して宮崎側のほうは、これはまた対照的に非常に切り立ったような、低いけれども切り立ったような、非常にでこぼこのある湾の入り組みがありまして、松ははえておりますが砂浜はない。その意味では非常に男性的、その男性的な宮崎側の十七、八キロと鹿児島側の非常に女性的な十七、八キロ、この海岸を二つ合わせて、一本にしまして日南海岸国定公園ということになっているわけですね。  その国定公園の中の鹿児島側が、いま申し上げたようにぽっこりみな入っちゃう。松林を残すといいましても、こんなものは残してみたって、住宅地帯で人家が集落していますから、これは単にその地帯と工業地帯との間の松林にすぎない。すぐこんなものは枯れちまう。枯れちまったら、松林なんというのは意味がなくなっちゃう。そういう意味で、この国定公園について、何とかしてこれを守りたいという考え方が非常に強いわけなんです。公害も反対だ、非常に反対だ、しかしながらこの国定公園をどうしても守りたいという考え方なんですよ。だから、いま一生懸命やるというスローガンになっているのは、美しい海とそして松林ですね、空とそしてこのきれいは砂浜、これは子孫末代までわれわれは伝えていかなければならない責任があるんだということが、合いことばになっている。反対運動の一つの大きな力になっているんですね。そこにこの解除の願いが出ているんだそうですね、解除の願いが。理由は、これはおそらく工業開発のために解除してもらいたいということだろうと思うんです。  そこで、旧全総から今日まで、海岸端、砂浜地帯というのは、どんどん埋められたところが非常に多くなっていますね。いまや国定公園、国立公園の中まで埋め立てが入ってきているわけですよ。ですから、ここ数年の間に、こういうような工業開発のために国立公園なり国定公園で、解除したところを説明をしていただきたいんです。簡単でいいです。
  57. 首尾木一

    政府委員首尾木一君) 工業開発のために従前、自然公園地域の区画を削除しました例としましては、水郷筑波国定公園神之池地区、これが昭和四十年に一部が解除になっております。それから鳥海国定公園酒田地区、これが昭和四十六年の、昨年でございますが、六月に解除になっております。それから越前加賀海岸国定公園、福井の三里浜地区というのが、この鳥海国定公園の酒田地区と同じ時期に解除になっております。  いずれもこれは国土の総合開発の一環として行なわれました、工業地域造成のための公園区域の一部削除の例でございまして、これらにつきましては、従前この自然公園法の所管が厚生省時代に行なわれたものになっておるわけでございますが、当時厚生省の中で十分検討され、自然公園審議会でも慎重審議を行ないました結果、やむを得ないという事例として削除されたものでございます。
  58. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 もう一カ所、鹿島灘にあったのじゃないですか。鹿島灘にありませんか。
  59. 首尾木一

    政府委員首尾木一君) それが、水郷筑波の国定公園の神之池地区というものでございます。
  60. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私はね、これ、ちょっと環境庁に伺ったのですよ。いま局長お話のように国定公園が三カ所ほど、工業開発のために一部ですけれども解除になった。一部といっても非常に大きいのですけれども解除された。それが、いずれもちょうど厚生省から環境庁が生まれます前日つまり四十六年の六月三十日、七月一日から環境庁が生まれたわけですけれども、その生まれかわるそこのところの前日にぱさっぱさっと解除になったのですね。これは火事どろぼうというのか何というのか、とにかくたまっておったのでしょうね、だから、ここで環境庁が発足するのだから身軽にして発足させてやろう、それで厚生省の側で前日にぱさっと解除した。これはどうもいただけないという感じがするのですが、しかし、これからは環境庁が、そういう意味で従来たまっておったものはひとつここで片づけて、新しい気持ちで環境庁が発足して、これから国定公園なり国立公園については変わった態度で臨むのですよというような考え方を示しておられる面もあるのじゃないか、ということで私は考えておるわけですけれども、そこでいま、環境庁ができてから、国定公園なり国立公園をこういう工業開発のためにつぶすから解除してくれというふうに申し込んでいるのは、これは志布志だけですか。
  61. 首尾木一

    政府委員首尾木一君) 具体的なものといたしましては志布志地区だけでございます。
  62. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) 志布志も正式に申し込んでいるのではない、志布志湾も正式に解除願いがきているわけではないのですから。  ただ、私のところに去年知事が参りまして、何か開発の話をもじゃもじゃとなすっておった。何かと思って聞いておったのですが、そうしたら、一カ月ばかりたったら今度は副知事が参りまして、もじゃもじゃということで話をしたのですけれども、何だか、知事がお話したから志布志湾をひとつ解除していただきたいということなんですね。おやおやと思って、何のことかわからない、まあその程度の申し込みじゃなかったか。そのような、その続きの話がおそらく自然保護局にいったのじゃないかと思うのですが、正式な解除をしてくれという書類、そういうものはまだきておりません。だから、正式に申し込んでおるのは一つもないと私は考えております。
  63. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それは役所の話というのは、正式に文書がくる前に、知事が見えたり副知事が見えたりする中で話が進んでいくというのが役所の、何といいますか、ものの進め方のように私は考えるのですがね。ですからその意味では、これはもうやはり解除をするかどうかという検討の対象に、志布志湾はのせるのだというふうに考えているわけですけれども。  そこで、先ほど長官のほうから答弁もあったのですが、重ねまして、先ほど以来申し上げておりますように、この国定公園の志布志の約十七キロにわたります、奥行きは大体二キロぐらいですよ、海岸、砂浜、そして海は大体一キロぐらいですね、ですから海岸線に沿って陸が一キロぐらい、海が一キロぐらいですね。砂浜が約十七キロ。これが完全になくなるということになるわけです。こういうことに対する長官としての基本的な考え方、これを伺いたいのです。
  64. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) その前に、ちょっとやっぱり私勘違いをしておりまして、取り消しさせていただきますが、いま自然保護局長に聞いてみますと、正式の申し込みの書類は要らないのだそうでございます。何だかもじゃもじゃ申してきたようですが、そのうちに自然公園審議会、そういうものにかけて解除になるのが例であるということでございますから、これは取り消させていただきますが、まあ、そういえば申し込みがあったかもしれませんから、そういうことで……。  それから、その前にいろいろと国定公園の一部が解除されたりしております。これはいま考えると非常に残念な惜しいことであります。その他、解除しなくてもいろいろな観光道路がつくられたり、いろいろな施設がつくられまして、自然が非常に国立公園や国定公園でこわされたところが多数ございます。これは非常に残念なことでありますが、そういうものが許可された時代は、御承知のように環境庁がございませんで、厚生省の一隅に国立公園部というものがささやかにあったわけでございます。これが懸命に日本の自然の保護にわずかな力で努力したのでございますが、それに対するいわゆる経済開発の大きな圧力がかかってまいりまして、その圧力に押し切られまして、国立公園や国定公園を守るには、国立公園部と協議をするという項がございまして、それで押え得るわけでございますが、その協議も大きな法的な、国立公園部がだめだと言えばできないというのではないらしいのです。片一方から強い力で押しつけられれば、いわゆる大きな役所から押しつけられれば、どうにもならないような程度のものであったらしい。ですから、いまから考えると非常に残念なことなんですけれども、当時の日本の行政のあり方を考えますと、よくまあこれまで守ってきてくれたという気が私はしないでもないのでございます。  まあ、それはそれだけにいたしまして、この志布志湾でありますが、私はこれを絶対に解除しないとかなんとかということは、あえて申しません。ただこれを、国定公園を解除する心は、そのすばらしい、まあ日本でただ一つぐらいのすばらしいあの松原ですね、そういうものを犠牲にしてまでも、あるいはあそこには何千という漁民がおりますが、その漁民の家族を合わせれば私は何万という人になると思います。これらの者が、あそこが大きな工業地帯になりますとこれは全部生業を奪われます。漁師が漁をやめたら、どうして暮らすか。一千万や二千万の補償をもらっても、そんなもので一生暮らせるはずはないんです。ですから、このような漁師の、はたして漁業をどのように確保できるのか。あるいは何万人という、すばらしい自然環境の中に穏やかに生活をしておる人がおります。そういう人が、必ずしも濁った空気、きたない水、緑のない環境を好まない人はたくさんいると思うのです。そういう人々をどうして納得させるか、そういう人々のしあわせをどのようにして確保するかというように、いろいろな問題が解決されない、はっきりとそれが間違いない、こうであるという、しあわせを確保する手段なり具体的な策が見出せない限りは、環境庁としてはこれは解除しない方針でおります。それが根本的われわれの考え方でございます。
  65. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 旧全総もそうですけれども、新全総はもっと、国立公園があろうが国定公園があろうが、そんなものはおかまいなしという考え方のようですね、どうも。たとえば越前のあの三里浜ですか、あの砂丘地帯ですね、これだって四十三年に国定公園にしてくれといってさんざん陳情しましたですね。陳情したとたんに、もうあれは、その年といってもいいでしょう、解除をやってくれとか、工場建設だとか。とにかく開発というのは、新全総でも旧全総でも、国定公園であろうが国立公園であろうが、そんなものおかまいなしという感じが私はしてしようがないのですけれどもね。それは、そういう考え方はどうなんですか。局長に聞くのはちょっと恐縮なんだけれども、どうもそんなものおかまいなしという感じがするのですよ、何であろうがかんであろうが。とにかく、これはもう歴然とした産業立地論ですよ。これは産業立地論だと思うのです。産業立地至上主義ですな。そのためには何があろうとそんなものはかまわない、国定公園であろうが国立公園であろうが、そんなものはかまわぬという私は考え方じゃないかと思う。まるで押しまくっているという感じを受けるのだけれども、そこの点はどうでしょう。
  66. 岡部保

    政府委員(岡部保君) どうも、ただいまの先生のおことばにおことばを返すようでございますが、少なくとも新全総計画、これは私、直接これの策定の際にこういうポストにおりませんでしたので、むしろ言いやすい面でございますけれども、新全総計画自体で自然の保護と申しますか、自然環境の保全と申しますか、これを非常に重要視いたしております。  たとえば一つの例として、一体新全総計画の基本的な考え方はどういうところにあるかというような点を、若干御説明させていただきたいわけでございますが、冒頭に、いわゆる地域開発の理念あるいは目標というものについてはっきり書いておるくだりがございます。そこでは四点ほどのことを指摘いたしておりますが、まず第一点は、長期にわたって自然と人間との調和をはかるということでございます。第二点は、開発の可能性を全国土に拡大するということでございます。それから第三点は、各地域の特性と主体性を基本とした開発整備による国土利用の再編成をはかるということが第三点でございます。それから第四点に、都市、農村を通じて、安全、快適で文化的な環境条件を整備する。こういう四つの目標と申しますか、考え方を調和させまして、人間のための豊かな環境を創造するのだというのがこの新全総計画考え方の基本でございます。  したがって、この具体的なるいろいろな計画という際に、いまお話のございました国立公園あるいは国定公園等、こういう自然公園の自然というものを尊重するというのは非常に強調してございます。しかもこれは、御承知のように四十四年の五月に閣議決定を見た計画でございますが、現実に策定作業と申しますと、四十二年、四十三年、この二カ年間にわたって、いろいろな学識経験の方の御意見あるいはそれぞれ関係地方公共団体の方の御意見等を伺ってまとめた計画でございますが、この四十二、三年時代に策定いたしました計画としては、これほど環境問題を大きく取り上げた計画というものは、非常にまあ価値があると大みえを切りたいところでございます。そこで、いま先生のおっしゃいました点で私あえて反論させていただいたのは、計画としてはそういうものである。ただ、問題は実施だと思います。  そこで、こういう計画をしていながら、現実の姿、開発の実施面においては確かに問題点があるわけでございます。そこが先ほども商工委員会で御質問になるとおっしゃいました、いわゆる新全総の総点検というものにわれわれが踏み切らざるを得なかった理由でございます。そこで、総点検といっておりますけれども、やはり何と申しましても一番大きな問題は環境問題でございます。そこで現在、こういう計画に基づいていろいろ開発事業というものを実施していながら、現実にはいろいろな反省すべき点がある、そういう点を一体どうしたらいいのかという点が、一番われわれのこの点検の中心眼目であるというわけでございます。
  67. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 その総点検の中心眼目については、ひとつ大いにやってもらいたいと思うのです。  ただ、いま局長のおっしゃるように、新全総の掲げている目標、あるいは旧全総の掲げている目標、それはけっこうなんですけれども、しかし旧全総は、もう結論が出ていると思うのですよ。それは、旧全総の掲げた目標というのはけっこうですよ、しかし、これは失敗している。新全総も、そのとおりいい目標は掲げておりますけれども、しかしこれはまだ結論が出ていない。これも、いまのところ私はたいへんな問題をかかえているというふうに思うのですね。ですから、目標がどうと言っているのではなくて、現実の問題としまして考えているわけです。  そこで、もう一つ長官に。いままで、工場をつくるというようなことで、開発するというようなことで国定公園なり国立公園の解除を申し込んできて、それをぴったり断わったことがありますか。
  68. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) 環境庁ができてから一年足らずでありますが、またそういうことはございません。あまり申し込みもありませんので。ただ、がんとして初めから断わるというのも、少し行政としては足りないかと思うのです。やはり、十分にそれは検討しなければなりません。はたして解除に値するだけの申し込みかどうか、そういうことを考え、私個人としてはできるだけ日本の寸土といえども、国立公園とか国定公園に指定してあるところは、できるだけそのままりっぱに残したいという感じはいたします。しかし、やはり国全体のバランスのある開発とか国民のしあわせということがあるならば、それをやるなら考えなければなりません。ですから、むげに初めからただだめだと、ただ守る一方、だめだということは言いかねると思います。しかし、やはり十分に検討いたしまして、先ほど志布志湾においても申し上げましたように、これは解除するに値するというりっぱな思想、具体的な保証、内容、そういうものがあれば私はあえて固執はしないと思いますが、現実には、そのようなことはまずほとんどあり得ないだろうということでございます。  したがいまして、たとえば志布志湾につきまして、私は別に絶対にこれは拒否しますとは申し上げませんが、実質的には九九・九%までは拒否していることは、私ははっきりそのことばの中に言っていると自分で考えておる次第でございます。
  69. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は、いままで旧全総なり何なりによって開発をされる、その場合に、国定公園、国立公園もものの数じゃないと押しまくってきた。いままで断わられたことはないのじゃないか、これは国定公園だから困るとか、あるいは国立公園だから困るということで解除を断わった、あるいは拒否したというようなことは、ないのじゃないかというふうに私は考えておるわけです。
  70. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) いまのところ、はっきり行政で、これはだめです、いけませんと断わらなくとも、向こうから取り下げてくるような形になれば、私は一番いいと思うのです、結局。たとえばあの尾瀬の道路の問題ですけれども、あれは前に許可した道路でありますけれども、私は、あれ以上通させないと決意をしました。行政上の権限でできると判断したからです。しかしその前に、私はあの場合にあえて蛮勇ということばを使いましたが、その前に、各県知事に集まってもらっていろいろお話し合いをいたしましたから、時間はかかりましたけれども、県のほうから、全部あれはやめますという自発的な返事がありました。そういうことになったものですから、ですからわれわれはこれを拒否しなかったという形、形ではそうなるわけですが、ですから、はっきり拒否するとかしないとかいう問題ではなくて、そのような計画を実現させなかったというところに意味があるのじゃないかと私は考える次第でございます。
  71. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 重ねてこの問題について。たいへん貴重な存在になっていると思うのですね、あの志布志湾というものは。これは、いろんな意味で利用の価値がたくさんあると思いますね。日本に、もうああいうところはないのじゃないでしょうか。いまここに写真を持ってきておりますけれども、非常にきれいなところですね。これを石油の巨大な基地にするため、ぽっくりみんな埋めてしまうというのは、はなはだ残虐なやり方だというふうに考えるわけですね。  しかし、いま長官のおっしゃいますように、こういうやはり貴重なものについてはどうしても残していかなきゃならないのだという、そういうお考えをいま伺ったわけですけれども、私は先ほど来申し上げているのは、いままでの経緯からいいますと、これは旧全総の場合においても、開発だけが最優先であって、環境とかあるいは自然とかいうものについては、これは二の次ということにもなっていないぐらいのことじゃなかったんでしょうかね。まあ、いろいろな努力は払われておるけれども結論的に言えば、そういう形になったのではないかというふうに思うのです。  しかしながら、先ほども開発局長からお話のございましたように、新全総について総点検をするということになっている。総点検の中身についてはこれはいろいろ伺いたいと思いますけれども、総点検することになっている。その重点は環境との関係だというお話なんですね。これは、いまの国民全体の気持ちに合っているのじゃないかというふうに思います。経済至上主義とか、あるいは立地至上主義というようなやり方で踏みにじられていったのじゃ、これは日本国土はたいへんなことになるのじゃないかという感じを持っているのじゃないでしょうか。ですから、経済企画庁のほうでも環境との関係で新全総というものを総点検するのだというお話しですし、それから、環境庁としましては、いま、発足してからは志布志湾が解除を申請した第一号だというわけですね。長官のお気持ちはわかりました。  こういう中で、私は長官としては、志布志の国定公園についてはこれは守るのだ、これをやってもらわぬことにはこれはあとでかなえの軽重を問われますよ。いろいろかなえの軽重を問われていますけれども、これは新設の役所ですから、いろいろな意味で文句を言われる、これはあたりまえのことだと思うのですよ。あってしかるべきだと思う。それだけ注目を集めているということになると思います。しかし、こういう国定公園というようなものを、第一号なんですから、いまこんな事態になっておるわけです。ここでこの国定公園を守るのだということでやれぬようじゃ、これはあとは知れておると私は思うのですけれども、もう一ぺんお聞きしたい。
  72. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) 私は、もちろん志布志湾をまだ自分の眼で確かめておりませんが、いろいろな調査をさせましたし、報告を受けております。いろいろな話を聞いておりまして、これはぜひ守らなければならぬ日本の大事な資源だと考えております。そういう方針で臨んでおります。ですから、私は守りたいという信念は持っております。  ただしかし、やはりいろいろな広い面から考えますと、国務大臣としても、日本の正しい秩序ある開発、発展というものを考えなければなりません。そういう立場もあるわけでございます。ですから、たとえば志布志湾にしましても、環境庁長官としては、これは絶対に守るという決意は持っております。そういう考えでおりますけれども、別な面からいうと、やはり国務大臣という立場から、秩序ある開発が行なわれる場合にどうすると言われれば、初めからだめだとは言いにくいでありましょう。ただし、秩序あるりっぱな開発、その住民をしあわせにする開発になるかどうか、それを具体的に確かめないうちは、だめだともいいとも言いにくいのです。環境庁長官としてはこれは守る決意ですけれども。  そういうことで、ですから、たとえば漁民何万という、何万か知りません、三万か五万か知りませんが、漁民とその家族を、どのようにして漁業を完全に守ってあげられるかどうか。あそこに大きな石油コンビナートや鉄鋼コンビナートができて、漁業がやられないはずはないんです、どんなことをしたって。私はそう思うのです。どんなことをしたってやられます。その場合には、漁民は生活を奪われます。これは殺されるのと同じことなんです。一千万、二千万、おまえ補償金をやるからといって、だれが生きていけますか、こんなもので。漁民は漁業があってはじめて生きているのですから、それ以外、事務屋になれるわけでもありませんし、何にもなれません、技術がありませんから。やっぱり漁民には漁場を守ってやらなければならない。われわれ、それは国の責任だと思うんです。しかもそれは、昔からそういうことで生業に従事しているのですからね。われわれは何の権限があって一体その生業を奪わなければならないのか、そう思うのですから、これは守らなければなりません。  そうすると、これを守るという見通しがついたら私は許可するといま言うているのです、解除をですね。守る見通しは、おそらくできますまい、これは絶対に、将来。あるいはそこに何万人かの、海を楽しみ、松を楽しみ、すばらしい自然を楽しんでいる人がいる。何の権限があってこうしたすばらしい環境を奪わなければならないのでしょうか。私はそう思うんです。何のために解除して、だれのために解除するかということを考えなければならぬと思うのです。そういうことですから、私の決意はおわかりだと思います。ですから、それは解除することはないと思います。環境庁長官はそういう信念でおりますから、そういうことですからおわかりだと思います。  私は、よけいなことかもしれませんが、日本の開発ということに非常な疑問を持っておるのです。  一例をあげますと、四国に愛媛県を流れて徳島県に入る銅山川という、吉野川の大きな支流があります。前年、この銅山川にダムをつくりまして、その水を下に大部分を流さないで、そこから曲げまして農業用水にするということで——何年か米が不足の時代だったでしょう——愛媛県のところだけ流すようにしたんです。ところが、実際にはそれは農業用水にほとんど使われないで、全部が川之江、それから伊予三島という地域のいわゆる工業用水、ことにパルプ工場ですなパルプ会社の用水にほとんど使われてしまった。そのために伊予三島のあの辺が、海がすっかり汚染されている現状です。  ところが、今度さらにまた第二段のダムをつくりまして、その下に流れる川を全部根こそぎ持っていくというんです、工場の拡張のために。しかも、その下には新宮村という小さな村がある。人口三千五百の村があります。その村では、その水が流れることによってすべて生活環境が成り立っているんです。その水がだいぶ奪われました。それでも、かすかに流れておった。ところが、根こそぎ持っていくというんです。その新宮村に別な馬立川という小さな川がある。その川をせめて流してくれるならまだいいのですが、その川の水もせきとめて、トンネルを十キロほど掘ってダムへ持っていって、みな工業用水に持っていくと、こう言うんです。  その新宮村の人間はどう生活しますか、生活環境を全く変えられて。自分は生活環境を変えられるほどの悪いことを何にもしてないんです。それを全部持っていくというんです。だから、私はそれに文句をつけまして、これは経済企画庁の仕事ではありません、県の仕事が中心ですが、文句をつけまして、じゃあ〇・四トンだけは一日に流しましょうということでいままできているんです。そこまで妥協して話が進んでいるんです。〇・四トンというのはどのくらいの水か知りませんが、そういうことなんです。何のために一体何千万の、たった何百人でもいいですが、人の生活を犠牲にして、なぜ工場の拡張に水を使わなければならないんですか。そうすることが何の意味があるかと、非常に私は疑問に思っているのです、こういうことを。  こういうことがいままでの日本の開発行政というものの考え方じゃなかったかと思うと、非常にさびしい感じがします。ですから、開発というものは必要でしょう、それは。日本の国がこれまでよくなった、表向きの数字はよくなりましたが、今後も世界の国とやっぱり肩を並べていくには、世界の国の経済開発に劣らない程度の開発はしなければならないでしょうけれども、やはり、もう少し国民の生活とか国民の生きる権利というもの、そういうものをもっともっと考えて行政をやらなければならぬということを、私は痛感しているわけでございます。そういうことですから、そういう考えを基本として、あそこの志布志の国定公園も守ってまいる考えであります。
  73. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 一月でしたか、環境庁のほうから計画課長が志布志の国定公園の視察に見えまして、付近の漁民もたいへん期待をし喜んだわけですね。期待をしたわけですよ。それで喜んだんですね。何か新聞によりますと、あそこの漁業者の主婦の人たちが、土下座して拝んだという話ですね。そういう話が新聞に報道されておりましたがね。まあいま土下座ということばあるかどうか知らぬけれども、とにかく地面にすわって手を合わせて拝んだという話なんですが、これはやはりあそこの国定公園の美しさというもの、これをこれから守っていきたいという気持ちからいえば当然のことだと思うんですね。ですから、私も長官にそういう意味では特に期待をしたいと考えております。  なお、ここの志布志湾にあります六つの漁協が反対をしているわけなんです。それでこの漁協あるいは漁民に対しまして、いろいろな埋め立てた場合の漁業振興の案が出ておりますけれども、これはもう漁業者は一顧だにしないんですね。これはできないと、こう言っているわけですね。それは沖合い二キロを埋められてしまうと、海流がみんな変わってしまう、水の流れが。魚の住む場所もなくなってしまう。そこにもってきて汚水が流される。何が漁業ができる、と。沖合い漁業の話も出ておるようですけれども、かつて沖合い漁業を何年かやった経験も持っているわけです。それですらできなかった、失敗したんだ。いま、この豊かな——ある程度豊かなんです、この漁場というのは。ですから、これをつぶされちゃどうにもならないという考えなんですね。  それからうしろの農業地帯なんですけれども、この農業地帯も、私は、きょうは農林省の方にも来ていただいておりますから、ここの農業をどうしたらいいのかという点についてはっきりさしたいと思っておったのですけれども、ここはもう北海道の畑作地帯と並んで有名な畑作地帯なんです。国会でもたびたび制度的にも論議いたしました。非常に背後は広大な畑作地帯です。ですから、それを振興させるには水なんですよ。畑作地帯に水がないんです。水がない。その水をこの工業と争うことになるんです。で、五、六年前からここに工場誘致の話があったりしまして、工業に対して水を取らなければいけないから、農業にかんがいする水はないという考え方が今日までは支配をしてきまして、あそこは水がない。そうして畑地かんがいは行なわれていないという状況なんですね。ですから、これは背後の農業が振興するということにはならないと私は断言したいと思います。  現在まで旧全総でやったところは、ほとんどみなそうなんです。過疎の問題、解決していないですよ、旧全総では。土地は上がってしまうんですね。当然上がってしまう。そんな土地の上がったところで農業をやれるわけはない。水はない。そこへもってきていろいろな公害が出てくるということになりますと、農業は成り立つわけがない。そういう意味で私は、長官のおっしゃるように漁民も、これは漁業が成り立つというふうには考えていけない、ざらに農業者もそういう形になってきつつあると考えれば、そうならざるを得ないのじゃないかというふうに思いますですがね。ですから、ここにある、日本にもうほとんどないといわれるくらいなこのりっぱな海岸地帯、国定公園をつぶすことのないように、重ねてひとつ長官に御努力を期待しておきたいと思います。  なお、この問題は、新全総の総点検の問題をもう少し論議しないといけない面があるのです。簡単にひとつ開発局長に伺っておきますが、環境との面を重点にして総点検する、それからもう一つ出ておりますのは、こういう公害を分散するような開発、これは明らかに公害分散開発だと言ってもいいのですが、つまり公害型産業というものをこういう遠隔地にどかっと持っていく、しかもいままでに例のないような大きな規模のものをどかっと持っていくというやり方、これは全国的にこれからやろうとなさっていらっしゃるわけだけれども、そういう公害型の産業ではなくて、産業構造を変えた考え方を持たれたらどうだろう、そういう報告が行なわれておりますね、産業構造を変えると。  私は、このことがいまの日本の産業政策としても必要なのじゃないか。公害との関係、自然を保護するという関係だけじゃなくて、日本の経済政策としても、この構造政策、産業構造というものを変える必要があるのではないかと、こう考えておるのですけれども、いずれ、これは商工委員会でやりたいと思いますが、簡単に局長のひとつ考えを伺っておきたいと思います。
  74. 岡部保

    政府委員(岡部保君) ただいま先生のおっしゃいました、まず第一点の大規模工業基地を遠隔地に立地させるという問題が、むしろ公害分散立地ではないかという点について、私ども考え方を申し上げたいと思いますけれども、いままでのような、たとえば、先生のおことばをかりて言えば、旧全総的な考え方でいわゆる新しい工業地帯をつくるというようなことをやるのであれば、全くお説のとおりだと存じます。  そこで私ども考えておりますのは、これは第二点のほうの産業構造の問題にも関連してまいりますが、現段階で、まずこれからの十年なり十数年の見通しというものを考えますと、これは当然産業構造が、いわゆる知識集約型のものが非常にウエートが増してくるということで、こういうものでのまた新しい公害があるのかもしれませんけれども、まずいまの考え方で申しますと、いわゆる基幹資源型の工業よりは公害型ではないであろう、そういうほうにウエートが移っていくということはまず想像できます。ただ、そう申しましても、それの基礎的な素材と申しますか、そういうものを得る、あるいはエネルギー源を得るというような感覚で考えますと、どうもまだ、産業構造が非公害型にスパッと切りかわれるという感じは持てない。  したがって、これから経済のやはり伸びというものは考えなければならぬと思いますが、そういう場合に、そういういわゆる基幹資源型の工業というものの、何と申しますか、能力増というものはやはり考えなければならぬ。そういう場合にどういうふうに考えたらいいかというときに、いままでのようないわゆる公害をまき散らすような工業基地ではなくて、ほんとうに環境を制御できるような、一つの面として考えて環境が制御できるようなシステムというものを前提にして、新しい工業立地というものが考えられないか。それが、そういうことを考えるためには、逆に大規模工業基地でなければならぬのではなかろうか。個々の、たとえば相当な規模の工場にしましても、そういう工場が方々に立地するということのほうが、むしろ環境制御という意味では危険ではなかろうかという考え方が、この大規模工業基地の立地論の考え方でございます。  ただそのためには、一つの面としてそういうゾーンの環境をどういうふうに制御できるかという問題が明らかにならなければ、ほんとうに危険でございます。いままでのようなことで、ただ大規模な工場がどこに集まるということであれば、むしろほんとうに公害の分散型という先生の御説のとおりになるかと存じます。そこで、そういうものでないものをつくり、それをつくるために大規模なものでなければいかぬと思いますが、その環境を制御できるという考え方をどういうふうに織り込んでいくかというのが、これからの問題点でございます。  そこで私ども考えておりますのに、非常にこれは時間的な制約、時間的な要素が問題になると思います。いわゆる新全総でいっております大規模工業基地というのは、必ずしもすぐにそこに工場が立地して、すぐに活動するというような問題ではなくて、もう少し先のことを考えておりましたので、もちろん技術革新もございましょうし、そういうことは十分でき得るという考え方に立っております。ただ現実の問題としては、どうしてもそういうことを考える以上は早くやりたいという、一つの何と申しますか、あせりのようなものが出てくる。そこに非常に危険が伴うということで、たとえば事前の調査というものを十分やらなければいかぬ、そういうような考え方で私どもはおるわけでございます。
  75. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) 私は、この新全総の総点検、改定されることは非常にけっこうだと思いますが、私は一番これに対して希望したいことがあるのです。  それは、やっぱり日本の産業をどのように変えていくか。ただ立地をどうするかとか、どこに工業を、産業型の公害のない工場を集めるかなんとかいう問題よりも、もっと基本的な問題を考えなければ、日本の根本的な産業の、国土の計画というのは立たないと思う。それは、いま日本の計画は、昭和六十年、あと十二、三年しかありませんが、昭和六十年になったら石油の需要量はいまの四倍とか四・五倍とか、鉄鋼の生産がいまの何倍だとか、こういうことになっているわけですね。  いまでさえ、あの大きな三十万トン以上のタンカーで運んできて大騒ぎしているのに、その石油の需要がいまの四倍になり五倍になったら、一体どれだけの船でこれは日本の国に運ぶんです。その石油コンビナートは、一体、日本のどの地域に何ぼできましょうか。いまでさえ大騒ぎしているのに、公害がない大規模の基地ができるかどうか、これは考えなければならぬ。鉄鋼もそうです。鉄鋼も、あのオアキャリアでわざわざ鉄鉱石を運び、石炭を運び、日本に持ってきて、そして煙突から煙を出し、いろんな公害をまき散らしながら、そしてあらゆる廃棄物を出しながら鉄をつくる。その鉄は、国内でも一般に使いますが、いい鉄は、みなこれは輸出です。日本の中で公害のかすをまき散らして、いいものを外国へ輸出する。これはある時期にはしようがないでしょうけれども、そういうことがあったら、今後、その三倍になり四倍になりましたら、一体、鉄鋼コンビナートは日本でどのように分布されるでしょうか。その船が、一体どうなるでしょうか。  こういうことを考えると、船もそんな大きな、たとえばタンカーは入る余地はありませんです、日本には。これを考えると、やはり当然現地において原料をとるとか、現地においてある程度の中間の製品にするとか、そこである程度の仕事をするということ、こういうことを考えなければ、私は日本の正しい環境というものはこれは絶対に保全できないと思うんです。それが一番大事だろうと思うんです。ただし、現地において公害をまき散らさないようにやはりいろいろな条件を考えなければなりませんが、こういうことを思うと、いまのようにただ鉄鋼が今度は生産が四倍になるんだ、石油精製が四倍になるんだと言っておったら、日本の国は公害だらけになります、間違いなく。このことを十分に考えて、そういうことを基本として日本の国土の利用を考えなければどうにもならないと思う。  ただし、非常にむずかしいことです。いまの設備過魚の鉄鍋業界に対して、あるいはオアキャリアが行って運んでおる状況、あるいは電力などを考えますと、そういうことを異見を立てることは非常に圧力を受けるでしょうし、非常に私は行政はたいへんなことだと思うのですけれども、やはり勇気を持ってそういうことに取り組んでいかなければ、私は決して日本の国はよくならないと思う。そういうことですよ。私は、局長にはなはだ失礼ですけれども、そのような考え方をやっぱり基本にした新全総の見直しでなければ、ただどこに公害のないものをつくるとか、なんとかだけではだめですよ。机上のプランだけですから、これは。やっぱり、そういう大きな基本的なことをつくってもらいたいと思いますね。
  76. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 時間がまいりましたので、最後に一問だけお尋ねをいたしたいのですが、これは環境庁が、環境破壊や汚染の予測をして、正確なデータを住民に示して、そして住民が納得をして開発するような、そういう指導方針をお立てになったというようなことが言われているのですけれども、そういうような方針を立てられたことがあるのか。つまり、環境庁として汚染の予測をする、あるいは公害の予測、そういうものの詳しいデータをつくって、そして住民が納得をしてそして開発をする、そういう指導の方針を立てられたと。つまり、いまの工業開発というものが環境との関係で壁にぶつかっている、それを行政指導としては、いま言ったような形でやろうというような方針をきめられたということが言われているのだけれども、事実あるのかどうかですね、それをお尋ねしたい。
  77. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) いま、そのようなことは必要でございます。そのような長期的な計画を作成中でございます。そのいろんな中の仕組みとして、たとえば先ほど政務次官から申し上げました環境容量ということがございます。各地域地域の環境容量を、われわれが健康で明るい豊かな生活をするためにはどの程度の環境が必要であるか  ということ、そういうことを全国に調査していけば、そうすれば全国の国土の正しい守り方、開発のしかた、そこにいま申しました一つの行き方がきまってまいりましょうし、それによりましていろいろないま申しましたような開発のしかた、あり方に対しても、十分な協力と申しますか、そういうものをすることができると考えられるわけでございますが、そういうことにつきまして、もう少し船後企画調整局長からお答えさしたいと思います。
  78. 船後正道

    政府委員(船後正道君) 一般論といたしまして、最近、いろんな開発行為によって環境破壊、環境汚染があるわけでございますが、こういうことに対しましては、先ほど来長官もるる申し上げておりますように、環境庁といたしましては、開発それ自体が悪であると、このような考え方はないわけでございますけれども、その開発を進めるにあたりましては、そのような環境に及ぼす影響というものを十分に見きわめる必要がある、かように考えております。  志布志の問題につきましても、現在、鹿児島県でかなり具体的な構想が出ておるわけでございますが、私どもは、同じような問題意識をもってこれに対処しておるわけでございます。同地域は非常に自然環境のよろしいところでございますので、開発にあたりましては自然景観に与える影響はもとより、その周囲の大気、水質等に与える影響、さらには広く生態系、進んでは人の健康というものに対する影響まで十分見きわめなければならない、こういう点から、いままでの計画ではこの点の検討が不十分であるとわれわれは考えておりますので、そのような方向で、このような問題点についての詳細なるデータを備えていただきたいと、こういうことは申し上げておるわけでございますが、それでもって住民の納得を得る云々という問題は、そういった検討があった後におきまして、この開発行為の是非を論じた後の問題であると考えております。
  79. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 午前の会議はこの程度にとどめ、午後は二時に再開いたします。    午後零時五十一分休憩      —————・—————    午後零時五十一分休憩    午後二時八分開会
  80. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を再開いたします。  午前に引き続き質疑に入ります。
  81. 小平芳平

    ○小平芳平君 通産省にお尋ねする問題かどうか、このPCBにつきまして、一月二十六日に、私が国会法第七十四条によって質問主意書を出したわけです。それに対して、二月一日に内閣総理大臣からの返事がきているんです、「(PCB)による環境汚染対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。」ということで。  そしてこの第一に、現在までのPCBの国内における総生産量、総輸入量ということで、私のほうへきた返事によりますと、昭和二十九年に初めてわが国では二百トンのPCBが生産された、そしてずっと年々わが国の生産量は上がってきておりますが、昭和四十二年になって初めて六十トンが輸入された、こういうふうな答弁書が、内閣総理大臣から参議院議長に提出されて私のほうへきたものですから、私はこれが最も信頼すべき、わが国のPCBの生産並びに輸入、その総体の量を知る最も信頼すべき資料と思っていたために、この方なども京都市衛研の藤原先生ですが、「PCBによる環境汚染とその毒性研究」、こうした著書にも「国会答弁より」として、この二月一日の政府の答弁書を引用して、著書を発表していらっしゃる。  けれども、どうも最近は、昭和二十九年に初めて生産、そうして昭和四十二年に初めて輸入六十トンということが、うそのようだ、政府の答弁は事実をごまかしているということが言われてきておりますが、これは通産省で答弁できますか、この点について。
  82. 小幡八郎

    説明員(小幡八郎君) お答えいたします。  先生の御質問に対しまして、いま御指摘のあったような御答弁を差し上げたわけでございますけれども、輸入の点につきましては、これは私どもこの生産、輸入の実績を調査いたします段階で、メーカーサイドから数字を調査せざるを得なかったということで、メーカーから徴した数字が、ただいま御指摘のありました四十二年以降の輸入実績であるということでこざいました。で、それ以前につきましてはメーカーは輸入していないという話でございましたけれども、御指摘の二十八年以前につきましては、これはメーカー以外の者が若干輸入していたという話は聞いておりましたけれども、その数量あるいは輸入者等につきまして不明であったということで、この答弁書には、その数字が載せられなかったというのが実情でございます。
  83. 小平芳平

    ○小平芳平君 経過はそういうことでしょうけれども、これだけ全国がPCB汚染で大問題になっているときに、こうした政府から国会に対する正式な答弁書には輸入は昭和四十二年といいながら、実際はずっとそれ以前に輸入し、そうして作業をし、そうしてすでに昭和二十八年ごろ、作業による作業員の健康被害が発生し、それを県の衛研に依頼して調べてもらった、その衛研の報告資料があるでしょう、どうですか。
  84. 小幡八郎

    説明員(小幡八郎君) 衛研の報告資料はまだ入手しておりません。
  85. 小平芳平

    ○小平芳平君 昭和四十四年九月に発行しているものが、どうしてまだ入手してないのですか。
  86. 小幡八郎

    説明員(小幡八郎君) PCBに関するいろいろな報告書をすべて私どもで集めて、十分研究することが必要だということは確かに仰せのとおりでございますけれども、たいへん申しわけございませんけれども、ただいまの資料は入手してございません。
  87. 小平芳平

    ○小平芳平君 きのうから、私はこの委員会質問をするので、どういうメーカーがどれほどの数量を輸入したのか、使ったのか——第一、この国会に対する答弁が間違っているって、けしからぬじゃないですか、それは。答弁した人は内閣総理大臣佐藤榮作です。それ以外何も書いていないですがね。ちゃんと閣議できめて、閣議の了解か何かを得てこれは答弁したわけでしょう、内閣総理大臣で出ているんですから。それが真実でないというのは、おかしいじゃないですか。ですから、そういうことでは、これだけ国民がそれこそ全国にわたってPCB汚染でおそれているときに、そんな、政府のやることが国会に対してもうそをついているなんということで通りますか。ですからそういう点を、どういうメーカーがどういう程度輸入をして使ったのか、健康被害はどうなのかということを質問するからと言っておいたのですが、どうなんですか、それは。
  88. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) 通産省で準備をいたしましたPCBの生産並びに輸入についての資料に、一部先生御指摘のような誤りがあったことでございましてまことに申しわけないわけでございますが、この点につきましては、後刻調査をいたしまして御回答申し上げさせていただきたいと思います。
  89. 小平芳平

    ○小平芳平君 後刻というのは、いつですか。
  90. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) 松下のこのPCBによります汚染がありまして、私どもいろいろ調べておりますときに、二十八年以前に若干量の輸入をし、そのころから研究的な生産を始めておったということがわかっておりますので、松下を含めまして、商社それからその当時のメーカー等でどの程度輸入をしたのかということを調べますには、若干の時間がかかろうかと思います。いま手持ちの資料には二十八年以前のものがございませんので「一部推定を含む。」という「注」にしたわけでございますが、この点につきましては、この「注」の入れ方に、もう少し実情に合ったものにしておかなければいけなかったと反省いたしております。
  91. 小平芳平

    ○小平芳平君 環境庁長官には後ほど別な問題でお尋ねいたしますが、いま申し述べましたように、政府が答弁しているものが間違っているということでは、非常に私は問題だと思うんです。しかも通産省何々局長、何々課長の答弁じゃないのです。内閣総理大臣の答弁です。しかも、それが間違っておりましたというんでは済まされない問題があると思います。それはいかがですか、長官として。まあ長官がやっているわけじゃないですけれどもね。
  92. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) これは内閣の責任になるわけでございまして、ほんとうに申しわけなく思います。言いわけするわけでありませんが、われわれも閣議で、そういうものは確かにこれは承認をするわけでございますけれども、やはり実態はわかりませんので、やはりそれをつくってきた役所の責任になるわけでございます。で、どのような事情がありましたか、よくわかりませんけれども、もしそれが誤ったとすれば非常に申しわけなかったと、こう感ずるわけでございます。
  93. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは労働省から、こうしたPCBによる労働災害、職業病について、労働省はどの程度把握しておられるか、PCBによるもので現在把握しているものを御報告いただきたい。
  94. 山本秀夫

    説明員(山本秀夫君) それではお答え申し上げます。  労働省ではカネミ油症が発生いたしましたあと、四十三年十二月、労働衛生の常道といたしまして、まずメーカーサイドに問題がないかということで立ち入り調査というものをいたしました。その結果、事業場のPCB製造関係装置は整備されております。それから当時は油症患者といいますか、PCBによると思われる患者は見当たりません。それから、それ以後になりまして、コンデンサーというようなものを取り扱っている工場を中心に調査をいたしてまいりました。そこで数名の皮膚炎の方が見つかった……。
  95. 小平芳平

    ○小平芳平君 どこで。
  96. 山本秀夫

    説明員(山本秀夫君) 日本コンデンサというところでございます。
  97. 小平芳平

    ○小平芳平君 ちょっと答弁の途中ですが、私は具体的な問題を一つ一つあげていただきたいんです。したがいまして、いつの時期に、どこの工場で何名というふうにお願いします。
  98. 山本秀夫

    説明員(山本秀夫君) それでは続いて申し上げますが、四十六年の三月に、日本コンデンサの工場で数名が発生していた。これは人数は正確ではございません。そのほかの事業場につきましては、罹病者がないというようなことでございました。  それから、そのような事態を踏んまえまして、特定化学物質等傷害予防規則を四十六年四月に制定をいたしまして、この中にPCBを第二類物質として含めまして、各種の予防措置を講じさせたところでございます。で、その後この問題が起こりましたので、さらに調査を進めておりましたところ、昨年の九月に、全国の常時PCBを取り扱っておる事業場を、約六十カ所ですが立ち入り調査をいたしました。その際、この規則に基づきます健康診断規定はなお公布されておりませんでしたけれども、健康診断をやっている事業場が長野県に一カ所ございまして、そこで一人PCBによるのではなかろうかというような患者があったというふうに聞いております。  それとは別に、四十六年の七月ごろ、三菱モンサントという会社で、二人の方がPCBによるのではなかろうかと思われる皮膚炎を起こしておったということを聞いております。その方々はいずれも治癒をいたしております。それぐらいでございます。
  99. 小平芳平

    ○小平芳平君 そのほかにも新聞にはずいぶん出ておりますが、先ほど出ました松下電器とか、あるいは北陸電気とか、そういうものは入っておりませんか。
  100. 山本秀夫

    説明員(山本秀夫君) 松下電器につきましても、これは本年三月でございますが、実地調査をいたしました。その結果、その際には労働者に全く異状が認められなかったというふうに聞いております。  なお、私先ほど申し忘れましたが、北陸電気という会社で、PCBによるのではなかろうかと疑われている皮膚炎患者がおるということでありますが、これは目下精密検診をしているところでございます。
  101. 小平芳平

    ○小平芳平君 どうも、労働省のほうでは的確な職業病としての判断がつかないでいるんでしょう。実際問題、この有機塩素が蓄積をしているということがどういう障害が起きて、どういう場合に職業病、労災の適用を認定するか、つきますか、それは。
  102. 松尾弘一

    説明員(松尾弘一君) 先生御指摘のように、PCBの毒性、それから人体に及ぼすいろいろな影響というものが、今日まで具体的に、率直に申し上げまして、把握されておりません。先ほど申しましたように、三菱モンサントの皮膚炎、これにつきましても、PCBによるものであるかどうか、いま目下検討いたしておりますが、結局のところ、認定基準の整備を早急にはかるべきであるということで現在検討を進めておるところでございます。
  103. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういうように認定基準さえはっきりしないで、それで、この研究をしている学者によりますと、労働職業病が発生しているに違いない、職業病が必ず発生していると断言している人がいるのですが、それをなるべくはずそう、はずそうといってやっていたのじゃだめなんですね。それを早く認定基準をつくって認定するようにすることと、それから環境庁としては、この労働災害のほうは企業がわりあい気をつかうけれども、環境破壊はほってあるというような、それがもう現在の姿なんですね。ですから、労働災害のほうとしては非常に安全衛生に注意するように工場はしたのだが、実際問題、その除去装置がない。わけのわからないため池へ、ただ水を流し込んでおくというようなのが現状でしょう。しかも、それを規制する法的根拠もないのが現状でしょう。これじゃいけないと思うんですね、環境庁
  104. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 環境汚染につきましては、お説のとおりPCBにつきましての、急性毒性は別でございますが、慢性毒性等が明らかになっておらない現状もございまして、従来から健康有害物質というような指定もしておりませんし、したがいまして排水基準その他の、排出その他の規制につきましても、まあ手を打っておらないという状況でございます。また、すでに汚染されました水質並びに土壌等の調査につきましても、従来必ずしも分析方法が確立しておらないということもございまして、調査のほうも手おくれであったということも、これはまあ事実でございます。そこで私ども、おくればせながら至急調査等を進める一方、規制等につきましても、暫定的な基準でもつくりたいということで現在準備中ということでございます。
  105. 小平芳平

    ○小平芳平君 長官、その環境規制は早くやりましょうね。調査調査と、それも研究者のお話によりますと、もう実態調査とか資料収集の段階じゃないというんですね。これだけ実態調査が発表され、資料が発表されていて、環境規制一つできないはずはないというんです。ですから、そのうちにそのうちにと言っていないで、早くもう、きちっとやるべきじゃないですか。
  106. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) それは小平委員のおっしゃるとおり、もう何か的確な手をとうに打たなければならぬ時期が来ておると私も考えております。ただ残念ながら、やはりいまいろいろな準備不足のために、このような事態でありますことは恥ずかしく思う次第でありますが、何とかいたします。とにかく一応の基準をきめなければなりません。ですから厚生省に急いでもらいまして、少なくとも来月か再来月にははっきりときめまして、それで一応のよりどころをつくりましてからこれに対処してまいりたいと考えます。
  107. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうです。来月か再来月に、もう環境規制排出規制をやって、そうしなければいつまでたっても不安が除かれないわけですよね。  それからちょっと話が違いますが、労働省のほうで、これも私が予算委員会で指摘した点なんですが、島根県の笹ケ谷鉱山。この島根県笹ケ谷鉱山の砒素鉱山の労働者の労災適用について、これはもう岡山大学医学部の青山先生が、ほとんど間違いないという、こういう健康診査をやっておられるわけてすがね。特に、昭和二十二年以前に退職された方はともかく、それ以後なお働いておられたという方には、そうちゅうちょすることなく、砒素中毒の専門家の青山先生がこういうふうに現地で検診をしておられるわけですから、適用をしてあげるべきですね。この点どうなっておりますか。
  108. 松尾弘一

    説明員(松尾弘一君) 笹ケ谷につきましては、すでに係官を派遣いたしまして、具体的な、御指摘になった二名の労働者の事情を聴取を始めておりますが、何せ廃止鉱山でございますので、労働者の把握に現在鋭意つとめているところでございまして、把握を終わります段階は、県の段階で健康診断をさらに進めますので、そういう過程で前歴調査あるいは会社等の労働者名簿、あるいは健保、社会保険等を確認いたしまして把握を進めまして、そうして具体的にやってまいりたいと思います。ただ、砒素によるものであるかどうであるか、これをさらにいまおっしゃった先生等の御意見も伺いまして、確認の上、万全を期していきたいと考えております。
  109. 小平芳平

    ○小平芳平君 私も現地の労働基準監督署へ行ってみましたがね、のん気なことを言っているんですよ、実際には。労働者名簿をさがしに行くといったって、どこへさがしに行くんですか。  どの時代の名簿をさがしに行くんですか。何らそういう焦点がないんですよ。ですから、私のほうでわかっているこの何人かの人は間違いないんだから、たずねて行ってごらんなさいと言ったら、そういうわけにはいかないんだ、役所がそんな労災請求の代行はできないんだと、こういうようなことを言っていますがね。そういうような姿勢じゃなくて、もう七十歳、八十歳のお年寄りですからね、役所のほうから現地へ行くならば、どういう請求書を書けばいいか、場合によったら、かわって書いてあげたってかまわないじゃないですか。どうですか。
  110. 松尾弘一

    説明員(松尾弘一君) 先生がいろいろと御指摘いただきましたことも報告を受けておりまして、すでに、きょうだと思いますが係官が参って、その方面のことも含めて指導あるいは事情聴取をやっております。
  111. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから、これは環境庁ですが、この笹ケ谷の住民の健康調査はどのように進めようとしておられますか。
  112. 船後正道

    政府委員(船後正道君) 笹ケ谷地区の住民の健康調査につきましては、島根県で四十五年の十二月に一度やったわけでございます。これは前回も御報告申し上げましたように、この結果発見されました十六名の要精密検査者につきまして鳥取大学で精密検査を行ないました結果が、当時では砒素による影響は認められないという結論になったわけでございますが、砒素による慢性異常につきましては医学的にも未知の点もございますし、また、当時の調査地域がそのままでいいかどうかという点につきましても、なお私ども問題があると思います。  したがいまして、現在島根県におきましては、住民の健康調査をあらためて実施するということにいたしまして、鳥取大学が中心になると思いまが、専門家に依頼いたしまして前回の調査の再検討、これをやっております。さらに、今回やる調査につきまして、対象地域をどうするか、検診方法をどうするかということにつきまして、現在具体的な検討をしておるところでございますが、環境庁といたしましても、島根県と連絡をとって必要な指導等は積極的に進めてまいる考えでございます。
  113. 小平芳平

    ○小平芳平君 この現地検診をおやりになった青山先生からは、県のほうへ診断報告が出ておるでしょう。それは、元従業員とそれから地域住民に分けて報告が出ているでしょう。それはごらんになっていませんか。
  114. 船後正道

    政府委員(船後正道君) 岡山大学の青山先生が調査されました方々、二十数人であったと思いますが、県のほうへは報告が行っておるようでございます。ただ私どものほうでは、個々人の方につきましての詳細なる検診の結果は存じておりません。
  115. 小平芳平

    ○小平芳平君 これは大石長官、ちょっとけたが大きいわけです。予算委員会でるる説明しましたからここで説明は繰り返しませんが、また被害地域も広いわけです。したがって、長官みずからというわけにはいかないかもしれませんが、要すれば係官を派遣しまして、早くこの健康調査——先ほどの労災適用も、結局労働省は県を待っている、あるいは環境庁の判断を待っているような向きもあるわけです。はたして砒素中毒かどうかということをすぐ言いますから。ですから、派遣しまして専門家による検診を早く進めていただきたいと思います。いかがでしょう。
  116. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) さっそくそのように手配させまして調査させるように、もう少し合理的な、納得のできる調査をさせるように、さっそく指示いたします。
  117. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから自治省来ておられますか。  これも同じく予算委員会で、私が簡易水道とそれから水源供給事業ですか、この点について、こうした公害地における簡易水道あるいは水を供給する事業施設をつくる場合には地元負担がないようにすべきではないかと、いままでは井戸水を飲んで何ら疑いなかったわけです、それが、いつの間にか井戸がだめだからあわてて水道を引けということになるわけですから、地元負担がないというふうにしてほしいと言うのに対して、自治大臣は、四万円あるいは九万円という町負担がつくだけなんだと、あとは国と県と起債でまかなえるんだと、こういうように、四万円、九万円という答弁をしているのですが、実際問題、赤字団体になっちゃうわけなんです。起債を町負担でないというふうに見られないわけですね、実際問題は。したがって起債と町の負担、現金負担、水源調査とかそういうものを合計すると、五二%くらいが町負担になっているわけです。  こういう点を、自治大臣は地元負担はないですよと言われたのですが、実際は五二%にも負担がなっているので、これをひとつ、私が述べるような公害地に対する特別の考え方を持って施設をつくるべきだということに対して、どう考えられますか。
  118. 近藤隆之

    説明員(近藤隆之君) 先生のおっしゃる地元負担という意味が市町村の負担という意味でございますれば、御説のように負担はあるわけでございます。ただ、それは地方債と一般財源とによりまして建設に支障がないように措置しておるわけでございまして、住民の方々には御迷惑をかけない形になっております。地方財政計画上におきましても、毎年度のその地方負担額につきましては、全額財政計画上財源措置をいたしております。
  119. 小平芳平

    ○小平芳平君 それは工事に支障はないけれども、町の負担がずっと残るでしよう、起債で。それを特公とか、めんどうを見るような方向を打ち出すべきだと私は言っているんです。
  120. 近藤隆之

    説明員(近藤隆之君) 個々の地方債の元利償還金について、それをどのように見ていくかという問題かと思いますが、簡易水道事業は、御承知のようにこれは準公営企業ということで、一般会計ではございません。したがいまして、一般会計からの繰り出しという形で財源措置をするわけでございます。
  121. 小平芳平

    ○小平芳平君 そんなこと聞いているんじゃないけれども、もういいです、時間がないから。  今度はちょっと話が違いますが、通産省。沼津で採石事業をやっている業者がある。これは環境破壊なんというものじゃないんですね。とにかく山を大々的に切りくずして、そのために四世帯が、もうとにかく避難命令が出て、がけがくずれるからあぶないからといって避難をさせられているとか、七十数世帯がこの危険区域にあって補償を要求するとか、あるいは、すでに四十三年から四十七年にかけて山くずれが九回も起きているとか、こういうことが、採石業者が仕事をやった結果、静岡県の沼津市の一角で起きているわけですが、これは通産省、どんなふうに調べてこられたですか。
  122. 江口裕通

    説明員(江口裕通君) ただいま御指摘の点は、沼津市の江の浦の、大久保山の松倉採石株式会社の採石場の件の御指摘かと存じます。  確かに御指摘のように四十六年の九月七日、それから四十六年の十月十四日、同じく本年の一月十二日に、採石場のたまたま反対側にございます山の斜面がくずれまして、土砂が崩壊しております。それで、これも御指摘のように九月七日の際には、民家一軒に土砂が押し寄せております。それからさらに十月、同じく本年の一月には、崩壊してまいりました北側のところにまた二カ所ばかり斜面がくずれまして、この際四軒ほどの家屋の避難が行なわれるという事態があったように聞いております。したがいまして、私どもといたしましては、地元の静岡県及び松倉採石株式会社のほうに連絡をいたしまして、至急現場を見、対策を検討するようにお話しておったわけでございます。
  123. 小平芳平

    ○小平芳平君 業者は、通産省の許可を受けているんだから山の石をとって何が悪いと、こういうことを言っているわけですよ。しかも、通産省の許可を受けているということだけで、環境破壊どころじゃない、生命の危険が迫っているわけです。ですから、通産省はどういう場合に許可するんですか。どういう場合に許可しないんですか。
  124. 江口裕通

    説明員(江口裕通君) 御存じのように、採石法は昨年の六月に改正されておりまして、その際の改正の趣旨は、従来届け出制度で行なわれておりました採石事業というものは、登録制度になりました。それから、事業に着手いたします場合には、採取計画というものを出してもらいまして、それに対して、災害防止の観点から許認可をするということで運用することに相なるようになりました。簡単に申しますと、事前防御主義といいますか、そういうように運用を改めつつあるわけでございます。施行になりましたのは、四十六年九月一日から施行になりました。
  125. 小平芳平

    ○小平芳平君 通産省にも写真を持って陳情に行っているでしょう。こうした崩壊にさらされておる民家があるというところを、写真を持って陳情を受けて、通産省は現地に係官を行かせたわけでしょう。何と報告をしたのですか。
  126. 江口裕通

    説明員(江口裕通君) 実は、現地調査をいたしましたのはごく最近の時点でございまして、その段階におきましては、先生御存じのことと存じますけれども、現在土砂くずれのありました部分は、すでに昭和四十三年に二メートルのコンクリート擁壁が築かれております。その後さらに防災の観点から、四十六年になりまして防災擁壁を三十センチかさ上げいたしまして、その上にもう一つ一・五メートルの金網のフェンスを設けておるという状態でございます。現在のところでは、係官が参りまして見たところにおきましては、その次の土砂くずれというようなものは万々あるまいというような報告を聞いておる次第でございます。
  127. 小平芳平

    ○小平芳平君 万々あるまいといっても、これからが雨期ですよ。だいじょうぶですね。  ところで、いまの防災工事は単独林業振興事業復旧ということでやったというんですね。これは農林省ですか。それで業者が石をとった。そのために崩壊が相次いで起きているわけです。九回というと、尋常の崩壊ではないんでしょう。そういう、業者が石を掘ったために崩壊が始まった。それを、業者が崩壊防止をやったのじゃないですね、県か市でやっておるわけでしょう。その点はどうなんですか。
  128. 福田省一

    政府委員福田省一君) 昨日、静岡県のほうと連絡をとってみたのでございますが、そうしましたら、これは石をとった場所の山の反対側のほうが、昭和四十六年九月の台風二十三号と二十九号でございますが、その際に崩壊した。この原因が、こちらの石をとったための、ハッパをかけたためであるのか、あるいは台風のために崩壊したのか、その辺の原因ははっきりはしないけれども、いずれにしても非常に危険に瀕したので、県としましては補助を出しまして、三分の二補助でございますけれども、ここの砂防工事を実施した、こういうふうな連絡があったわけでございます。  で、これは静岡県の知事が、この問題を含めまして今後採石するかどうか、なお治山工事をいかにするかということについては、ただいま検討して計画中だそうでございます。その結果を林野庁としても聞きました上で適切な処置を指導してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  129. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから、そういうふうに、説明されるように、これは採石が原因じゃないんだと。わずか二、三年の間に九回にわたって大崩壊があった。四軒の人は実際上住めなくて、消防署や警察の命令で、避難命令を受けて避難しちゃっているんだ。それが採石が原因でないというなら、それならば、避難した人たちも補償を要求する筋もないわけですね。ところが、その点は業者も、自分が関係ないとは言ってないわけですよ。ですから、避難した人にはわずかな補償でもしようかというような話も出るのですが、全然まとまろうという気配はないわけです。ですから、どうも農林省といい、通産省といい、もう地元へ行くと通産大臣の許可があるんだからということで強行されてしまうというところから、やむを得ず通産省まで陳情に来ているわけですから、そういう点、自然崩壊なのか、業者の採石によるものなのか、  それからまた、業者も補償の話に応ずるという協定書までつくっているのですから、協定書までつくっておきおきながら、実際の金額の話し合いがつかないでいるわけだ。もうそこには住めないから、ほかへ移りたいといっているんですがねと言う人もあるのに、とてもその話し合いが進もうともしないのが現状なんですから、その点、もう一度ひとつ通産省と農林省からお答えください。
  130. 江口裕通

    説明員(江口裕通君) 先ほども申し上げましたように、ちょうどたまたま、いま新法に移ります経過期間中でございまして、一応、新法によりまして採取計画の認可申請が出されています。それによりますと、関係の県あるいは市、あるいは通産省の係官などが一応それを拝見いたしましたところ、採取計画の主体となります工法が、俗にリッパー法と申しまして、火薬を使わない段階掘りの採掘法ということになっておるようでございます。したがいまして、少なくとも今後は、火薬等によって震動を受けまして、地はだがゆるむというようなことにはまずなるまいというふうに考えておる次第でございますけれども、確かにこういった土砂くずれがあったことは事実でございます。それが、先ほど林野庁からもお答えがございましたように、確かに非常にデリケートな点もあろうかと思われますので、なお原地にもう一度人を出しまして、地元ともよくお打ち合わせいたしまして、今後そういうことのないように十分注意をいたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  131. 福田省一

    政府委員福田省一君) 先ほど申しましたように、実情をよくこちらのほうでも調査いたしまして、県のほうと十分連絡をとった上で、非常に危険な状態であるということはこれはたいへんなことでございますので、対処してまいりたいと、かように考えております。
  132. 小平芳平

    ○小平芳平君 実情を御存じなければ、これ以上やむを得ないのですけれども、これは大石長官、午前中の、工業開発について住民生活をということでお話がありましたが、私も全く同感なんですが、こうした採石業者、あるいはその崩壊を受ける地域住民、それは全体としての何十万の市民から見ればわずかかもしれないです。数十世帯かもしれないです。また採石業者ですから、そう大企業じゃないかもしれないです。しかし、ちょっとこの例はひど過ぎるわけなんです、やり方が。しかも、すでにもうここ二、三年に何回も崩壊がきているわけです。はたしてこんな崩壊が年に何回も続いて、さて、やがてこれから五月、六月の雨季に入って、ほんとうに安心して生活できないような現状なんですが、こういう点、直接の環境庁のお仕事じゃないかもしれませんですけれども、政治の基本姿勢をひとつ大いに閣議でも発言していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  133. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) 私は、御趣旨はごもっともと思います。できるだけの努力をいたします。  実は私も、いろいろこの山の破壊、こういうのを見て、どうしたらいいか、非常にいま困っているのです。なるほど採石も必要であるかもしれませんけれども、これも国民の財産なんです。どのような権利があって、許可を得たとか、あるいは採掘権を得たからと言うのでしょうが、わずかの金を払うか払わないぐらいで、このような国民の財産を、かってにむちゃくちゃに無秩序に破壊していいものか悪いものか。もう少し何らかの秩序と規制があっていいのじゃないかと私は考えるのです。これはほかの省の所管ですから、いますぐ云々はできませんが、しかし、われわれにも勧告権という行政上の権利がありますので、あまりこれが目に余るものであれば、やはりそういうことは勧告して何らかの規制をしなければならぬと考える次第でございます。
  134. 内田善利

    ○内田善利君 私は最初、予算委員会質問いたしましたことについて、もう少しお聞きしたいと思う点をこの委員会でお聞きしたいと思いますが、まず瀬戸内海沿岸の日東化学のアクリロニトリルの廃棄物の問題ですが、この問題をお聞きしたときに、海上保安庁長官が、三月の十一、十二、十三の三日間、操業停止したということなんですが、これについて万全の処置がなされたかどうかということについてお聞きしたいと思いますが、この操業停止をした理由は何でしょうか、まずお聞きしたいと思います。
  135. 高橋清

    説明員高橋清君) お答え申し上げます。  化学工業は、装置産業のきめといたしまして、年に定期的に定期修理をいたしますが、今回の事件は、その定期修理の際に伴いまして休業いたしまして、その際に起きたものでございます。
  136. 内田善利

    ○内田善利君 このアクリロニトリルは、御承知のとおり劇物であり、毒劇物取締法の対象になっているわけですが、そういう操業停止をするときが私は一番大事なのじゃないか。そういったことについて、緊急配慮あるいは緊急処置、そういうものがなされたかどうか。また、毒劇物法の取り締まりをやっている厚生省では、これに対してどのような配慮がなされたか。その点をお聞きしたいと思います。
  137. 高橋清

    説明員高橋清君) お答え申し上げます。  まことに先生のおっしゃるとおり、化学工業におきましては、通常の場合には非常に高い温度あるいは高い圧力のもとで作業をしておりまして、これが、たとえば定期修理というような場合に操業をとめますと、いわば作業条件が変わりますのでいろいろ問題が起こりやすいことは、全く先生の御指摘のとおりでございます。したがいまして、どこの工場におきましても、そういった場合に備えまして十分の保安設備を通常保有しております。  今回問題になりました日東化学工業の場合にも、実は通常の場合には、生産に伴いまして出てまいりますシアンの処理のためには高温アルカリ分解のための装置を備えておりますが、定期修理等の休業の場合には、その高い温度が得られませんので、実はこれに備えまして別途、薬品処理をいたします装置をこういったいわば緊急の場合に備えまして実は保有しておりまして、今回問題になりました際に、実はそういう装置を稼働させたわけでございますが、私どもが会社側から聞いておりますのは、実はたまたま、この保安のための緊急設備の中の配管が詰まっておったために、言ってみればこの緊急装置が十分に動かずに、高い濃度のシアンがそのまま排水として出された、そして今回のような問題になったというふうに言っておりますが、なおこれらの事情につきましては、現在海上保安庁等が捜査中でございますので、そこら辺の事情の解明をただいまいたしております。
  138. 山高章夫

    説明員(山高章夫君) 毒物及び劇物取締法によりますと、毒劇物の製造業者は登錫をすることになってございます。登録中は、たとえ一時操業を停止いたしましても、操業中でも、全く同様の監督をいたすことになってございます。
  139. 内田善利

    ○内田善利君 この辺に私は行政上の問題があると思いますけれども、医薬品工場の場合は厚生省が所管しておりますが、こういった化学工業部門であれば通産省が所管をしている。そういったところに、毒物劇物取り締まり法でやらなければならない、そういうところに、何といいますか、亜砒酸鉱山の場合もこの委員会でお聞きしたわけですけれども、これも、劇物としての取り締まりは厚生省がやらなければならないのですが、鉱山のほうがどうしてもやらなければならない。あるいはまた従業員の労働衛生関係は労働省と、こういうようなことで、その接点といいますか、盲点といいますか、こういう点を考えなければいけないのじゃないかと思うのですが、環境庁長官、どうでしょうか。こういう劇物を取り扱う場合においては、やはり何とかして、通産大臣は工場法をということでしたけれども、私はこういう劇物はやはり何らかの方法でそういう盲点がないように——いまから質問いたしますけれども、廃棄物を海に捨てるところまで、厚生省は、廃棄物の処理法によって今度は産業廃棄物としての取り締まりをしなければならない。そういったことで、盲点といいますか、行政上の接点が非常に複雑になっているので、こういった突発時に化学分析がなされたかどうか、おそらくなされてないと思うんですが、こういった盲点を直す方法環境庁としては考えるべきじゃないかと、このように思いますが、いかがでしょうか。
  140. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) これは他の官庁の所管でありますので、私からとやかく申し上げるわけにはまいりませんし、よく内容も具体的にわかっておりません。しかし一般的には、このようなことが起こりまして、お互いの行政の間に盲点があるということがわかりますならば、直ちに盲点を直すのが私はその所管官庁の義務だと思います。それを怠っている役所では困るのですから、当然直していることと思いますから、ひとつそういうことは、もう少し私のほうでも所管の大臣に話してみたいと思います。
  141. 内田善利

    ○内田善利君 通産省は、こういう停止が三日間なされたときに、その廃液あるいは薬品処理が完全に行なわれたかどうか、またその廃液を廃棄船に積み込むときにチェックしたかどうか。その点の監督はどうでしょうか。
  142. 高橋清

    説明員高橋清君) お答え申し上げます。  こういったアクリロニトリルの製造に伴います廃液の処理に関しましては、先生が仰せのとおり、毒劇法でございますとか、あるいは廃棄物の処理及び清掃に関する法律とか、海洋汚染防止法とか、いろいろ関係の法律がございますが、現在のところ、これらの法律につきましては通産省としては所管しておりませんので、直接には、いわば指導監督をすることにはなっておりませんが、業種としては当然通産省も所管しておりますので、関係の業界に対しまして、これらの関連の法規を十分に実施するように、通常行政指導している次第でございます。
  143. 内田善利

    ○内田善利君 厚生省が所管してチェックするわけですか。
  144. 山高章夫

    説明員(山高章夫君) 一般的に申し上げまして、アクリロニトリルは劇物でございまして、劇物として監督しているわけでございます。今回の場合には、この劇物の中に、毒物である無機シアン化合物が入っていたという点が非常に問題があると思います。そういう点から、劇物としては必要な措置は十分行なわれていたと思いますが、いま申し上げましたように、無機シアン化合物が入っているという点で問題でございますので、この点、あらためて十分調査をいたしたいと思います。
  145. 内田善利

    ○内田善利君 その廃液が、いままで足摺岬沖に何トンその廃液が廃棄されたわけですか。これは海上保安庁ですか。私の調査では、四十五年八月から八千七百トン不法投棄されておるように調査しておるわけですが、この八千七百トンの廃棄物と同じような廃棄物が、アクリロニトリルをつくっている工場から海洋投棄がされているわけですが、こういったものは、これは何といいますか、安全なわけですね、その点はどうなんですか。
  146. 貞広豊

    説明員(貞広豊君) 投棄量につきましては、四十六年二月から四十六年六月までの間、五万五千百五十九トンを投棄したということになっております。
  147. 内田善利

    ○内田善利君 これは安全なわけですね。
  148. 貞広豊

    説明員(貞広豊君) いままでは、私どものほうの取り締まりの面では特に事故は起こっておりません。
  149. 内田善利

    ○内田善利君 三井石油化学の岩国の大竹工場、それから三菱化成の水島から、同じように海洋投棄がされておりますし、それから旭化成の川崎の水島から海洋投棄されているわけですが、いままで事故がなかったということですが、今回に限ってこういう事故が起こっておりますが、しかもこれは三日間のそういう操業停止をした関係であろうと、そのように考えられるわけですが、大体無機シアンが、この間もお話しましたように工場側の分析データでは、残液を分析をした結果、トータルシアンがナンバー1ハッチから五二二PPM、ナンバー3ハッチから六一二PPM、いま問題の無機シアンが、ナンバー1のハッチから八一PPM、ナンバー3から一八六PPMと、そのような相当多量の無機シアンが出ているわけです。これではこういう被害が起こるのは当然だと、このように思うわけですけれども、この点についてどのように考えられるか、はっきりした答弁をお聞きしたいと思います。
  150. 貞広豊

    説明員(貞広豊君) いま先生が言われた数値は、県が独自に検査した数値で新聞に出たものであろうかと思われますが、私どものほうは、なぜこういう中毒死が起きたんだということから、業務上過失致死容疑でいま捜査をいたしております。いまお話しの廃液につきましては、工場とそれからこの豊隆丸に積んでおりました廃液を兵庫県警のほうに鑑定を依頼中でございまして、その結果はこの月末までに正式にいただける見通しになっておりまするが、中間報告では無機シアンが検出されたということを聞いております。
  151. 内田善利

    ○内田善利君 私も高知衛研、広島公害研究所等のデータを持っているわけです。たった一つ工場側の分析データだけをいま申し上げたわけです。工場側の発表した分析データだけを申し上げたわけです。これが一番確かな証拠だろうということで、ほかのデータを申し上げないで、工場が出したデータだけを申し上げたわけですが、こういうことから明らかにこの廃液は劇物であったと、このように私は思うわけですね。そういった中で三日間の操業停止をしている、それに対して何らチェックもなされないまま廃棄処理船に乗っけられたと、このように私は思うのです。そしてこの廃棄処理船は廃棄物処理法によって、昨年の九月施行になったわけですが、廃棄物処理法によって県に登録してあったかどうか、この点、厚生省いかがでしょう。
  152. 浦田純一

    政府委員(浦田純一君) それは海洋汚染防止法の関係で運輸省のほうに、たしか登録されるというふうな手続になっていると思います。
  153. 内田善利

    ○内田善利君 廃棄物処理法とは関係はございませんね。
  154. 浦田純一

    政府委員(浦田純一君) 関係はございません。
  155. 内田善利

    ○内田善利君 私は、工場から出る廃棄物については、海に捨てるとも、陸上で処理するとも、廃棄物処理法で監督すべきじゃないかと、このように思うわけですね。というのは、廃棄物処理法に運般船のことについても出ているようですが、私の解釈は間違いかもしれませんけれども、廃棄物については海洋投棄も、陸上投棄も、それを処理する業者が当然当該県知事に申請すべきじゃないかと、このように思うのですが、間違いでしょうか。
  156. 貞広豊

    説明員(貞広豊君) 海洋投棄の面から申し上げますと、廃棄物処理法でもって海洋に投棄してもいいんだというものがきまりましたならば、海洋汚染防止法によって、その政令の定める基準によって投棄することとなります。その場合の投棄船の登録につきましては、来たる五月二十五日から海上保安庁長官に届け出をするようにきめられております。
  157. 浦田純一

    政府委員(浦田純一君) 先ほどの御説明に多少ことばの足りない点がありますので、補足さしていただきます。産業廃棄物を運搬する船につきましても、海洋汚染防止法が全面的に施行されるようになりますと、当然こちらのほうとして、業者としての許可といったようなことをすることになります。現在その海洋投棄する海域は、まだ政令がきめられておりませんので、この辺のこまかい、まあいわばこちらの審査基準と申しますか、そういったようなところの具体的なきめができませんので、やっておりません。したがいまして、将来の問題としては当然やらなくちゃならない。それから運搬及び保管の基準というものにつきましては、これはこの規定にかかってくると、こういうふうになるわけでございます。
  158. 内田善利

    ○内田善利君 取り扱い業者はもうすでに登録していいんじゃないですか。
  159. 浦田純一

    政府委員(浦田純一君) ただいまは、いわば事業者からの委託という形でやっておるということで、正式にはまだ許可されているものはないと承知しております。
  160. 内田善利

    ○内田善利君 おっしゃるとおり、この廃棄物処理法による処理計画も各県でできていないし、この間も申し上げましたように、取り扱い業者も取り締まり法によって登録しなければならないのに、登録も届け出も全然行なわれていない実情ですね。この点はひとつ厚生省としても早く手を打っていただきたいと、このように思うのです。というのは、海洋汚染防止法はことしの六月から、廃棄物処理法は昨年の九月からで、そこにギャップがあるわけですね。だから、こういうギャップがあるために、海洋汚染防止法が施行になるまでというようなことで、非常にぐあいの悪いことが起こっているわけですね。だから、こういう公害十四法案のときもそういう施行の日はやはりはっきり同一期目にすべきじゃなかったかと、このように思うのですね。海洋汚染防止法がまだきまらないからと——この廃棄物もシアンを含むわけですが、一体このシアンを含む廃棄物はいま考えられておるA海域、B海域、C海域のうち一体どこに入るのだろうと、このように思うのですが、この点はどうなんですか。どこの海域に入るようになるわけですか。
  161. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) いま検討されております海洋汚染防止法の政令の海域の中では、おそらくこれはA海域、距岸五十海里以遠ということになろうかと思います。
  162. 内田善利

    ○内田善利君 このアクリロニトリルの廃棄物は、そのようにシアンを——非常に劇物を含んでおるわけですから、A海域ではなくて一番限定されるC海域ですか、そちらに捨てるべきじゃないかと思うのですけれども……。
  163. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) まあ現在の海洋汚染防止法の政令で考えておりますのは、先ほど海上保安庁のほうから御答弁があったわけでございますが、廃棄物処理法の政令によりまして、海へ捨てることができるもの——廃棄物処理法の政令ではなるべく陸上処理を原則とするが、やむを得ざるものだけに限って海に捨ててよろしい。——その場合にも制約があるわけでございますけれども、海に捨てることができるものに限りまして海域を指定し、排出方法を定めるということになっております。いまお話しの無機のシアンを大量に含むような廃液につきましては、これは現在では廃棄物処理法のほうでは規制はございませんけれども、毒物及び劇物取締法のほうで、一PPM以上無機シアンを含んでいるような廃液につきましては、そのままこれを海洋のみならず、どこにも捨ててはならないということになっているわけでございます。これは毒劇法の規定によりまして、希釈その他の方法による以外は海に捨てられないということになりまして、私どものほうはそういうような無機シアンを大量に含む廃液につきましては、毒劇法の規定によって処理していただく、そういうような法制を考えているわけでございます。
  164. 内田善利

    ○内田善利君 私は、この廃棄物、これは工場と委託業者との輸送契約、廃棄物の処理契約なんですが、これによりますと、この協定書は、非常にこの廃棄物が危険な品物であるということを裏書きしておると思うのですが、そういったことが守られていなかった面もあるように思いますけれども、この協定書を見ますと、「保守事項」として、一番目は「作業時は必ずゴム手袋及び保護眼鏡を着用のこと。」、二番目は「液を口に入れないこと。」、三番目は「液にふれないようにし万一皮膚にふれた場合は直ちに水洗すること」、四番目は「船槽は原則として息抜き以外は開放しないこと。液面確認等のためゲージハッチ等から内部をのぞき込む場合等は必ず防毒マスクを着用すること。」、五番目は「船槽に入って作業等を行う場合は充分水洗滌及び空気置換を行ない検知紙或いは検知管を使用してシアンガスのないことを確認した上で作業を行うこと。」、六番目は「臭抜き配管からのベントガスは風向きに充分留意し、ガスの雰囲気に入らないよう留意すること。」、七番目は「ポンプグラウンド配管接手等から漏洩の場合は直ちに送液を停止し、充分水洗滌を実施してから修理を実施すること。」、八番目は「作業は単独作業を極力避け万一に備えること。」、その他、防毒対策備品等を備えて、緊急時の処置等も契約の中に入っておりますが、こういった内容を見ますと、この廃液は十分注意しなきゃならない廃液だと、このようにこの文面からも拝察されるわけです。  こういった廃液を何らかの方法で取り締まる方法といいますか、がなければいけないじゃないかと、このように思うわけですね。海洋汚染防止法でもまだ取り締まれないし、あるいはまた廃棄物処理法でも取り締まれてない、そういうことであれば、そういった危険な化学薬品の廃水、廃液がまだまだ出ているんじゃないかと、そのように心配するわけですね。そういったことから、どうも、この化学工場というのは、何がつくられておるかという非常にいま危険性が多いわけですが、このPCBの問題もそうですけれども、そういったことに対して農薬取締法と同じように、化学薬品の取り締まり法というようなものをつくって——それができなければわれわれ国民の密接な関係のある家庭用化学薬品、そういったものについて何らかの規制をするような方法を講じなければいけないじゃないかと、このように思いますが、この点どうでしょうか。
  165. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) 私は、いまの内田委員の御説、非常にごもっともだと思います。当然、いろいろな化学製品、ことに化学製品をつくります場合には、やはりその安全性、ことに環境、あるいは健康に対する安全性というものを確保することが非常に大事ではなかろうかと思います。そうして、おそらく——私は知りませんが、そのような取り締まり法と申しますか、取り締まり行政は、当然あるんじゃないかと思います。で、ただ、いつかも、新潟のタンカーの沈没事件にあたりまして、あの油を吸着する、あれは何と申しましたか——油処理剤、あの問題につきましても、第二次公害があるということでいろいろな問題になりまして、内閣の中におきましてもこの問題に関しまして非常な関心が高まりまして、各省庁が集まりまして、十分こういうものに対しては厳重な取り締まり、監視をしなきゃならぬ、そうして、これが新しい公害発生しないような、害毒のないようなものをつくらせるように、みんなでお互いに行政面において努力しようということを申し合わせまして、そのような方向に進んでおるわけでございます。したがいまして、当然、いま内田委員の仰せられましたようなことをさらに強化してまいることが、将来の公害発生を予防する大きな一つのやり方だと考える次第でございます。
  166. 内田善利

    ○内田善利君 通産省はどうですか。
  167. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) 先生御指摘になりましたように、化学薬品と申しますか、化学品にはいろいろな性格のものがあるわけでございます。毒物・劇物に相当するものもありますし、農薬というように異常な効力を——強い力を持っておるものもあるわけでございます。それから中にはPCBのように毒性は低いが非常に分解しにくい、それからまた人体に蓄積するというふうな異常なものもあるわけでございまして、やはり今後新しい化学製品で、毒劇法の対象にならないけれども、こういうような問題が起こる可能性考えられるというふうなものもかなりあるわけでございます。やはりそういう製品につきましては、実用化いたします前に、安全性について厳重なチェックをすることが必要であるというふうに考えられるわけでございまして、通産省といたしましては、現在軽工業生産技術審議会の場におきまして、広く関係者の意見を聞きまして、適正なチェックの基準だとか、体制というふうなものを法規制を含めて早急に検討を行なうということで、懸命に準備をしておるわけでございます。
  168. 内田善利

    ○内田善利君 じゃ次にPCBの問題について、前回予算委員会質問しましたが、さらにお聞きしたいと思います。まず最初に——このPCBについては、昭和二十三年から熊本大学の野村先生が研究なさって、発表しておられる。それにもかかわらず、こうして二十数年後やっとPCBの問題がクローズアップされてきたわけですが、その間いろんなことが起こっておるわけですね、PCBについて。カネミ・ライスオイル事件も起こっている。いろいろなことが起こっておりながら、やっと最近になって問題になり、排出基準あるいは環境基準も来月か再来月というような状況でありますが、私はもっともっと政治姿勢としてこういったことについては早く手を打つべきじゃなかったかと、このように思うわけですね。その一つとしてJIS、日本工業規格にも、この不燃性絶縁油としてのPCBが問題になって、JIS規格の中に入っているわけですね。このJIS規格の中にPCBが入っておるわけですが、ここでどうして問題にならなかったのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  169. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) 工業技術院の標準課長からお答えいたさせます。
  170. 福田敏南

    説明員福田敏南君) お答えいたします。私どもがJIS規格をつくります場合には、すでに御存じかと思いますが、日本工業標準調査会という調査会の場を通じまして、——その下に幾つかの部会及び専門委員会がありますが、そこにそれぞれの専門の方及び学識経験者を委員として集まっていただきまして、厳密に審査をしまして制定いたしてきております。したがいまして、そのできました製品については、これは一般に認められた品質のものとして通っておるわけでございますが、この場合に現在問題になっておりますPCBの規格につきましては、そういった意味から厳重な品質の規格は制定いたしておりましたけれども、それが長時間にわたって使用されました場合にどういう影響を及ぼすかということにつきましては、当時この規格が十政年前にできましたときには、まだしかるべきデータもございませんし、想定されなかったという状況でございます。
  171. 内田善利

    ○内田善利君 標準委員のメンバーはどういう方々なのか、その氏名と所属をお聞かせ願いたいと思います。
  172. 福田敏南

    説明員福田敏南君) 委員長は青山学院の理工学部の斎藤幸男先生にお願いしまして、二十三名の委員の方からなっております。これを全部申し上げるわけでございますか——。  斎藤青山学院大理工学部教授、それから中川工業技術院技官、金指電気試験所材料部の技官、丸田通産省化学工業局技官、沼倉武蔵工大工学部教授、上田名古屋大学工学部教授、それから河村とおっしゃる電力中研の方、鈴木とおっしゃる日本鉱業の方、木村とおっしゃる日本石油の中央研究所の方、松岡とおっしゃる鐘淵化学の方、高とおっしゃる松村石油の技術課の方、若菜とおっしゃる昭和石油の製品技術部の方、山片とおっしゃる三菱モンサントの方、安田とおっしゃる東京電力の技術研究所の方、山崎とおっしゃる中部電力の方、涌島とおっしゃる関西電力の方、神田とおっしゃる日本コンデンサの方、山内とおっしゃる松下電器産業の方、吉田とおっしゃる日新電機の方、小南とおっしゃる大阪変圧器の方、山岡とおっしゃる富士電機の方、宮内とおっしゃる日本電機工業の方、常田とおっしゃる国有鉄道の方、それだけでございます。
  173. 内田善利

    ○内田善利君 いま専門委員を読み上げていただきましたが、その当時PCBの毒性がわからなかったということですけれども、やはり生物関係、生物化学関係、そういったメンバーが入っていないことがこういう結果を生じたのじゃないか。メンバーを聞きますと、日本コンデンサとか、松下電器とか、現在使用している工場の関係者が多いように思うんですけれども、これではPCBの規格をきめても、ほんとうに国民のための、健康を守るための規制にはならないと思いますね。  JIS規格というのは日本工業規格ですから、いろいろなパーセンテージとか、その他をきめることだと思いますけれども、やはりそのJISをきめる場合には、制定方針は、産業の発展と合理化を促進するもの、それから消費者の利益を保護し、産業公害の防止、産業保安、労働安全、国民生活の安全、衛生に役立つということが制定の方針なんですね、それは間違いありませんね。
  174. 福田敏南

    説明員福田敏南君) いま先生の御指摘のとおりでございます。  ただ、いま私が委員の方を申し上げましたけれども、この不燃性絶縁油がつくられましたのが昭和三十二年でございます。いま私が御報告した委員の方は現在の委員の方で、当時とは若干入れかわっておりますが、当時の名簿については、ちょっといま手元にございませんので、あらためて……。
  175. 内田善利

    ○内田善利君 現在の委員ならなおさら問題だと思うんですね。当時の委員なら考えられないこともありませんけれども、現在の委員の中に生物化学関係者がいないということは問題だと思うんですね。一体、三十二年の九月から委員会を何回持ったのですか。
  176. 福田敏南

    説明員福田敏南君) 三十二年に制定されまして、私どもの規格は、三年に一回見直せという法律上の規定がございます。したがいまして、その規定に従って三年に一回ずつ規格の見直しをやっておりますが、途中、三十八年と四十五年に若干の手直しをしております。その間、見直しは全文見直しをしておりますけれど、二回ほど内容の改正をしておるという状況でございます。
  177. 内田善利

    ○内田善利君 三年に一回はこれを問題にしているわけですね。三年に一回この問題を討議しながら、まだ改正も二回しか行なわれていない。こういうことでは、PCBの問題は、カネミ・ライスオイルの事件も大きな問題として世界中にその問題が広がったわけです、そういった段階で、こういう、専門家が会議を三年に一回やっておりながら改正もしていないということは、問題じゃないかと思うのですね。先ほども申しましたように、二十三年には熊本大学の野村先生がこの問題については所見を発表なすっていらっしゃるのだし、このPCBについては、もう少しその規格面についても話し合いをし、改正すべき点は早く改正すべきじゃないか。このように思うのですが、今後このJISを改正される予定があるのかどうか、この点をお聞きしたいと思います。
  178. 福田敏南

    説明員福田敏南君) このJISにつきましては、四十五年に一回見直しをやっております。ただ、今回のような重大な社会問題になりましたので、ちょうどこのPCBの生産をやっております各工場は生産を中止しまして、もう国内では生産することがなくなってきますので、私どもこの規格を廃止することにいたしまして、すでに内部的な手続を終わりまして、五月早々には公示になるという段階になっています。
  179. 内田善利

    ○内田善利君 三菱モンサント、それから鐘淵化学等の委員もおられるようですが、こういった生産工場は、メーカーはPCBの毒性ということを知っていたわけですから、PCBを使用してコンデンサーをつくるとかノーカーボン紙をつくるというメーカーは知らなくても、三菱モンサント、鐘淵化学はその毒性については知っていたはずなんです。そのメンバーがこうしてJIS規格の制定委員になっているわけですから、もう少し二の辺で何とかできなかったものか。まあ変な疑ぐり方をすれば、この委員会はそういった行政との癒着というようなことも、疑えば疑えないことはない、そういうようなメンバーと私は思うのですね。もう少し生体化学関係も入れて、そういう毒性などにも配慮していけば、今日のようなことは起こらなかったのじゃないかというように思うわけですね。いまJIS規格もこの不燃性絶縁油については廃止するということですけれども、私はもっともっと規制をしていくべきじゃないか。  先ほど環境庁長官も、五月、六月には排出基準また環境基準をきめられるというわけですが、私は、こんなに問題になっているPCBですから、もう使用の禁止あるいは製造の禁止、そういった強い手段を講じない限り、環境規制をしても、これはもう環境に流れ込んでおるわけですから、むしろ私はその根源を絶つ以外にないのじゃないか、そのように思うわけです。環境基準、排出基準の設定、これはけっこうでございますけれども、そういった根本的な問題を解決しない限り、このPCB問題はまだまだ出てくるのじゃないか。私の聞くところによりますと、各県の衛生研究所等でそれぞれ採水しては分析をいまやっておられるように思うんですが、そうすると、各県からまたいろいろな食料品からのPCBの汚染状況が刻々発表になるんじゃないかと、このように思うんです。したがいまして、環境のPCBの汚染については、その根源をもう断ってしまう方法を講じなければ、いつまでもこの状態は続くのじゃないかと、このように思うんですが、この点は環境庁長官、いかがでしょう。
  180. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) それはお話のとおり、当面の問題として一番大事なことは、やはりわれわれの環境からこのPCBを断つことだと思います。そのためには、通産省でも努力をいたしまして、すでに開放型のものは去年からもう生産あるいは使用を中止しておりますし、閉鎖型のものも、あまりいい性能を持っているために代替品がないということもありましようが、一部の使用だけはどうしてもやめるわけにまいりませんで、いまのところ厳重な監視のもとに、完全に外界と接触を断つという条件のもとに一部の使用だけ認めることになっておるのでございまして、これを確実に行ないますならば、確かに外界との接触、環境との間の接触が断てると思います。それから、母乳の中に入った云々の問題もありますが、これは必ずしもそう数は多くありませんけれども、こういうものも、やはりこのような観点からすれば一応は注意して、飲むか飲まないかをきめたらいいと、これはわずかなことでございますが、そう思う次第でございます。  そういうことで断ちますが、しかし何と申しましても、いままでどこにどう散らばって、おそらく何万トンというものが使用されているわけですから、どこかに非常に汚染が広がっているに違いないのです。それをどの程度、どのように広がっているのかということ、並びにPCBがどのようなプロセスで、どのようなメカニズムでわれわれのからだの中に、いろんなものを通して入ってきて、どのように蓄積されて、どのような病理的変化を起こしてわれわれの健康を傷つけるのかというような、基本的なことをやはり確かめることがどうしても必要だと思うんです。  そういうことをいま各省庁で急いで努力いたしておりますが、そういう結果を待つだけではとても手おくれでありますので、おっしゃるとおり至急、環境基準と申しません、これはほんとの指針でございます、暫定基準でございますが、一応のこれを早く全国的に統一してきめまして、これを中心として、各県庁なり各省で重点的に総点検をすることも必要である。ただ、このような分析方法が確立しませんと、みんなめちゃくちゃな数字になりまして、非常な混乱を起こします。そういうことで、これをいま急いでもらっているわけですが、幸い厚生省では五月、おそくとも六月末にはできるということでございますから、それをわれわれは心待ちにしておるわけでございます。そういうことで、できるだけ早くよりどころをつくりまして、いろいろな総点検の結果、われわれ今後いろいろな食物にそれぞれ接触しますけれども、それについての基準、指針、こういうものを早くきめてまいりたいと考えております。
  181. 内田善利

    ○内田善利君 厚生省にお聞きしますが、分析方法は食料品関係は決定したと思うんですけれども、また土壌関係もそうだと思いますが、そのほかどういう分析方法を確立されるわけですか、どういうものについて。
  182. 浦田純一

    政府委員(浦田純一君) 厚生省が科学技術庁の特別研究調整費の研究の一部を引き受けて、分析法の標準化と申しますか、をやっておるわけですが、御指摘のように、食品、ことに乳肉製品、これはすでに分析法が定まりまして、いま盛んに実態調査をやっております。それからもう一つは水でございます。水につきましても分析方法を標準化いたしまして、これも現在盛んに実態調査をやっております。これらはいずれも近々その結果がまとまるという段階でございます。  このほかにつきましても、御指摘の大気とかあるいは土壌とかいう関係もございましょうが、これはまたやはり研究班でそれぞれの所管の官庁のほうでもっておやりになる、あるいはそういったような計画を持っておられるということだと思います。
  183. 内田善利

    ○内田善利君 ヘドロについてはどうですか。
  184. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 実は、先ほど申し上げましたように、現在標準化されておりますのは上水道用水、それから食品中のPCBの分析方法でございまして、それ以外の工場排水等の汚水なり土壌、特にヘドロ等の問題につきましては非常にむずかしい問題がございます。特にヘドロにつきましては、現在私どものほうから静岡県のほうに委託をいたしまして、同県の田子の浦のヘドロ中のPCBの分析等につきまして、従来確立いたしました方法によってどれだけ正確なPCBが検出できるかということを現在試験をいたしております。土壌、ヘドロ等につきましては最もむずかしい部類ではなかろうかというふうに実は考えております。  そこで、先ほど長官からもお答えいたしましたとおり、はっきりした方法が決定いたします前におきましても、従来からわかっております方法なり、また多少それに改善を加えまして、できるだけ早い機会に、必ずしも完全ではなくてもそういう方法を用いまして、全国の主要汚染地帯につきましての水質、土壌、ヘドロ等につきましての分析調査をいたしたいというふうに考えております。
  185. 内田善利

    ○内田善利君 次に、きのうの発表では、大阪府の衛研が、国産のPCBに不純物か共存物質か知りませんが、ダイオキシンという猛毒物質が入っておるということですが、この点についてはどう把握しておられますか。
  186. 小幡八郎

    説明員(小幡八郎君) 大阪府の衛研で発表いたしました試験結果につきましては、まだその不純物がどういうものかというところまでの断定は行なわれていないのではないかというように受け取っておりますが、かりに、その中にクロロジベンゾフランという毒性の高いものが入っているとすれば、これはPCBよりもさらに毒性が高いわけでございますので問題であると思うわけでございます。その点につきましては、わが国で製造されたPCBの中には、生産者の分析結果ではクロロジベンゾフランというものは検出されていないという報告を受けております。
  187. 内田善利

    ○内田善利君 酸素が二つくっついたポリ塩化ジベンゾオキシンはどうですか。ダイオキシンですね。
  188. 小幡八郎

    説明員(小幡八郎君) ただいま私クロロジベンゾフランというように申し上げましたけれども、ただいま先生御指摘のクロロジベンゾオキシンというものを意味して申し上げたつもりでございますが、それについては検出されてないという報告を受けております。
  189. 内田善利

    ○内田善利君 この国産PCBに猛毒物質があった、これはダイオキシンということですが、このダイオキシンというのはいま言ったポリ塩化ジベンゾオキシンと、こういうことですね。
  190. 小幡八郎

    説明員(小幡八郎君) はい。
  191. 内田善利

    ○内田善利君 いまあなたがおっしゃったのはポリ塩化ジベンゾフランということですね。これはPCBに酸素が一個くっついたやつ、私がいま言ったダイオキシンは二個酸素がくっついたやつということらしいんですね。だからそれが含まれてなかったと言われるわけですね。
  192. 小幡八郎

    説明員(小幡八郎君) PCBの酸化物が製造工程中で副生されるといたしますと、PCBには御承知のように幾つかの塩化物がございます。したがって、それぞれの塩化物に応じた酸化物というものができるであろうということは想像されるわけでございますが、これらの物質が分析結果では検出されていないというように聞いております。
  193. 内田善利

    ○内田善利君 そうすると、大阪府立衛生研究所が明らかにしたこれは、うそだということですね。
  194. 小幡八郎

    説明員(小幡八郎君) 大阪府の衛研の試験は、PCBと不純物を分離いたしまして、それぞれの毒性試験をやった結果、不純物のほうが毒性が高いというように発表されていると思いますが、その不純物がどういうものであるか、どういう物質であるかというところまではまだわかっていないのではないかと思います。  そこで、その不純物の中にPCBのいま御指摘のあったような酸化物がはたして入っているのかどうか、どういうものであるかという点についての知見がございませんので、大阪府の発表がうそだというようなことではなくて、もう少しそのよってきたるところを調べる必要があろうかというように考えております。
  195. 内田善利

    ○内田善利君 PCBを使ったコンデンサー、あるいは感圧紙もそうですが、焼却炉で焼却するというお話を聞きましたが、このPCBに酸素が燃焼のときにくっついて、この猛毒の、いまおっしゃったような物質が出る可能性はあるかないか。
  196. 小幡八郎

    説明員(小幡八郎君) 現在、メーカーにおきましてPCBを焼却しております温度は千三百度以上でございまして、PCBを焼却する際に酸化物が出るか、あるいは出ないかという点については、まだその燃焼過程まで研究されておりませんけれども、かりにその過程で一時的に発生することがあるといたしましても、PCBに比べまして、PCBの酸化物はその安定性の点におきまして同等あるいはそれ以下ではないかというように推定されますので、最終的には煙道ガス中にそれらの酸化物が残ることはなかろう。やはりPCBと同様に塩酸ガスあるいは炭酸ガス、水蒸気というものに変わってしまうというように考えております。
  197. 内田善利

    ○内田善利君 それじゃ、こういった毒物が出る心配はないと。ただ、塩素ガスの心配はありますね。
  198. 小幡八郎

    説明員(小幡八郎君) 塩酸ガスが出てくるのは、これは当然でございます。この点につきましては、苛性ソーダによって中和処理をしております。
  199. 内田善利

    ○内田善利君 PCBが自然界で紫外線等の影響を受けて、酸素がくっついて、いま言った猛毒物質が発生することは考えられますか。
  200. 小幡八郎

    説明員(小幡八郎君) たいへんむずかしい問題でございまして、まだ私どもそこまでの知見は持っておりません。
  201. 内田善利

    ○内田善利君 こういうことが発表になったわけですが、御答弁はそういうことはないという答弁ですけれども、一応そういう毒物が、この実験ではマウスの実験にしてありますけれども、そういう不純物のほうが、純粋のPCBよりも不純物をとって与えたほうが早く死んだわけですから、それはやっぱり猛毒を含んでいることは間違いないと、このように思うのですが、この実験に対してもそのようなことはないと考えられるわけですか。
  202. 小幡八郎

    説明員(小幡八郎君) PCB中にそういうものが絶対に入っていないとは、私どもも言い切れないのではないかと思います。ただ先ほど申し上げましたのは、現在の分析方法ではそれらの物質が検知されなかったということを申し上げたわけでございますけれども、たとえば分離濃縮するというようなことをいたしますれば、あるいはそういうものがある程度濃縮されまして、PCBに比べまして、そういうものが入った留分というものが、毒性が高くなるということはあり得ることかと思います。
  203. 内田善利

    ○内田善利君 時間がきましたので結論だけお聞きしますけれども、いま国内で感圧紙あるいはコンデンサーの販売についていろいろお聞きしたわけですが、企業が大学の教授にお願いして、非常に簡単な結論で市販されているように思うんですけれども、この内容を見ましても、急性あるいは亜急性の問題は三十日間ぐらいの間にテストしてあるようですけれども、慢性中毒についてはテストはなされていないわけですね。そのまま市販されていることに対して環境庁長官から、やむを得なかったというふうな答弁があっておるわけですけれども、この代替品を市販するについても私は政府の姿勢が非常に甘い、そのように思うわけですね。やはり通産省、アメリカあたりでは新製品の場合は二年間ぐらい使用して、そして安全性を確かめてから市販しておる。これほど問題になっている日本で、そのPCBの代替品としてもうすでに市販されておる。しかも、この証明があったのは昨年の十二月、日本石油化学の場合は昨年の十二月二十五日、呉羽の場合は昨年の十一月二十日ですが、もうすでに三月から市販されておる。こういうことが行なわれていいものかどうか。感情的にも私は非常に憤慨にたえないわけですけれども、この点について環境庁長官に、やむを得なかったという御答弁でしたから、もう一度この実情をお聞きしたいと思うんですけれども、こういった姿勢が今後の公害行政については大きな悪影響を及ぼしていくんじゃないかと、このように思うわけですね。その点についてどのようにお考えですか、環境庁
  204. 船後正道

    政府委員(船後正道君) 御指摘のとおり、PCBの代替品などにつきましては、その急性毒性、慢性毒性といったものを十分に検討いたしまして、それのないことを確認し、また自然界の生態系に及ぼす影響等も十分解明した上で、生産、販売に踏み切るというような姿になるのが最も望ましいと考えております。先般PCBの代替品であるアルキルナフタリン等につきまして、長官が発言いたしましたことを私正確には覚えておりませんが、やはり過去の問題として、この点やむを得ない事情があったのではなかろうかという意味だろうと私推定いたしておるのでございますが、今後この種の問題につきましては、現在通産省におきましても具体的に検討いたしておるわけでございまして、環境庁といたしましても、各省と十分連絡をとりながら、その安全性の事前の確認ということにつきましては万全の措置を講じてまいりたいと、かように考えております。
  205. 内田善利

    ○内田善利君 私は、こういった大きな問題ですから、やはり安全性が解明するまでは発売を禁止すべきじゃないかと、このように思いますが、通産省どうでしょう。
  206. 小幡八郎

    説明員(小幡八郎君) 現在の法体系のもとでは事前チェックという制度がございませんで、この点につきまして先ほども通産省におきまして早急に検討するということをお答えしたわけでございますけれども、現在の段階では販売された場合に事後にチェックして、それがもし危険なものであれば生産、使用をやめさせる、こういう方針でいるわけでございます。  そこで、現在開発されているPCBの代替品、特に感圧紙用の製品について、はたしてこれが危険なものであるかどうかということの判定にかかわるのではないかと思うのでございますけれども、急性毒性等の点につきましては、先ほど御説明のありましたように、PCBよりは毒性は低いという大学の試験結果が出ておるわけでございます。しかしながら、PCBより毒性が低ければ問題はないかどうかというと、そういうわけにはまいらないわけでございます。PCBですら、毒性の点におきましては毒物劇物取締法の対象にはならない程度の毒性を持っているわけでございます。それが問題になっているのは、やはりこれがきわめて自然界で分解しにくくて、そのため魚類等を通じて人体の中へ入ってくるというところに問題があろうかと思います。したがいまして、新しい製品につきましても、そのような作用をするものであるとすれば、これはやはりPCBと同様に取り扱わなければならないものだろうと思います。ただ、新製品は化学構造から見ますと塩素を含まない炭化水素でございまして、従来の石油類と同様な構造を持つものというように考えられますので、これは定性的には、自然界で分解するものというように判断しております。ただ念のため、当省におきましては付属研究所で、これらの新製品の分解速度等についてチェックを現在行なっております。
  207. 内田善利

    ○内田善利君 長官、いままでPCBのことについていろいろお聞きしてきたわけですが、最近、不純物かPCBの共存物の中に、PCB以上の猛毒が入っているという大阪府衛研の発表があったわけですが、そういった中で、この問委員会で御質問したわけですが、代替品が昨年の三月から販売されている。当時やむを得なかったという答弁をいただいたわけですが、いまでもそのお気持ちか。こういったものは、やっぱりアメリカ同様二年間ぐらいは、安全であるかという点をテストしたあと販売すべきじゃないか、このように思うんですが、いまでもあの答弁と同じような考えでおられるのかどうか、最後にお聞きして終わりたいと思います。
  208. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) ちょっと私が留守しました間に、局長がうまい答弁をしてくれたようでございますので、あまり私から申し上げないほうが助かるかと思うのでございますが、私も確かにそういう御返事は申し上げたかと思いますが、ことばというのは、長い関連で聞かないとちょっとわからないものですから、どういう前提でそういうことを言ったのか、実は速記を見たいと思いましたが、まだ速記ができていないというので的確な御返事を申し上げられるかどうかわかりませんが、これは去年の春ごろから、かわって使っているものですね。ですから、いまさらとがめられても、使っておるものはしかたがないと、もう使ったもの、それはやむを得ないんだということを言ったのじゃないかと思うんですけれども、その前のことはわかりませんが、私の気持ちは、おっしゃるとおり、安易に代替品に飛びつくのはやっぱり危険だと思います。やはり十分な、それよりはるかに代替品としての意味のあるものでなきやならぬ。たとえば毒性が少ないとかでなければ、簡単に飛びついてはいけないという考えに私は変わりございません。  まずとにかく代替品ばかりでなく、これからつくるすべてのものも、どんな便利なものであっても有毒でないという証明がない限りは、またそれをつくる場合に、つくられて出てくる廃棄物が有害でないという証明がなされない限りはやっぱり使わすべきじゃない、そのような行政でなければならないと、私はそう考えておるわけでございます。ですから、いまのあの発言につきましては速記を見ないとわかりませんけれども、気持ちはいま申し上げましたように、やむを得ないというような安易な考えではない、やはり十分に慎重に考慮しなきゃならぬという考えであるということをひとつ御了解願いたいと思うわけでございます。
  209. 内田善利

    ○内田善利君 よく、お気持ちはわかりましたが、そういう気持ちを通産省なり企業なりに伝えていただいて、販売を中止させるような方法はもうできませんか。
  210. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) これは、私も毒性の程度のことはよくわかりません。ですから販売を中止させるということは、もっともこれは私の権限でありませんし、田中角栄通産大臣のこれは権限でありますから——そう言うこともありませんが、通産省でも十分に内田委員の御意見も参考にいたしまして、正しい判断をすることと私考えます。
  211. 加藤進

    加藤進君 初めに大石長官に伺います。  報道によりますと、四月の二十二日に、民間の自然保護関係諸団体の努力によりまして自然保護憲章の最終案をまとめた。この自然保護憲章は直ちに決議とともに環境庁の長官の手に渡されたと、こういうふうにありますけれども、これはそのまま事実でありましょうか。
  212. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) そのとおりでございます。
  213. 加藤進

    加藤進君 私は、新聞を通じて、この最終案の内容を拝見いたしました。   〔委員長退席、理事伊部真君着席〕 これは民間諸団体の発議ではありますけれども、おそらく今日まで続けられている自然破壊に対する率直な国民の反対の意志表明だと、こういうふうに私は受け取ったわけでございますけれども、この自然保護憲章は、環境庁において、また政府においてどのようにこれを受けとめられ、また、この自然保護憲原案について、今後これをどう立法ないし行政の上で生かされるのかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  214. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) これは、私は非常にりっぱな内容だと思います。これは自然保護団体がたびたび会合いたしまして、お互いの英知を出し合って、そして最後にまとめた案でございます。私は、まことにけっこうな憲章である、これをぜひ全国民に周知してもらいまして、そして自然を守るような心がまえを十分につちかってもらいたいということを心から願っておるわけでございます。  せっかく憲章案と決議案といただきましたので、これをどのようにして国民の前に出して、国民にそれを受け入れてもらうかということの手段については、いまいろいろ検討いたしております。政府が主宰して、これをいろんな団体、多くの方を集めまして、これを、何といいますか、認めるような話し合いをしたらいいのか、あるいは民間の団体を中心にしてやったらいいのか、あるいはまた、これをどういう形か——まあ閣議へ持ち込みまして、あるいは閣議の了解とか、了解でなくともみんなに話をしたらいいとか、いろんなことを考えておりますので、何か一番適切な、みんなに受け入れられやすい方法考えて、そのうちにこれを周知させたいと考えている次第でございます。  なお、その内容につきましては、それを逐次やはり行政に反映しなければなりません。このような思想について、われわれは前から同じような思想を持っておりましたので、その思想の実現の一つとして、いま世間で言われております自然環境保全法案というものをつくりまして、これを早く御審議を願いたいと思っておるわけでございますが、なかなか各行政庁間の了解がつきにくい状態でございまして、いまだに難航している状態でございます。何としても、これを早く理解してもらいまして提案いたしたいと考えている次第でございます。
  215. 加藤進

    加藤進君 ともかくこの趣旨、精神については全面的に賛成だと、こういうふうに理解してもよろしゅうございましょうか。
  216. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) そう御了解いただいてけっこうでございます。
  217. 加藤進

    加藤進君 原案の第三項を見ますと、こう書いてあります。「開発は、いかなる理由による場合でも、自然の保護生活環境の保全に優先するものではない。」、ことばをかえますと、自然保護生活環境を破壊するような開発は許しがたい、こういうふうに私はとり得ると思いますけれども、この理念と精神について、環境庁は一貫してこの方向を今後とも推進していく、こういう御決意でしょうか、その点をお伺いいたします。
  218. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) 実は、開発につきましての環境庁考え方を、午前中のこの委員会で一部申し上げたのでございますが、加藤委員はおられなかったのでお聞き取り願えませんでしたが、そのとおりの精神を今後とも持ってまいる考えでございます。
  219. 加藤進

    加藤進君 四月の二十九日と申しますと、もうすぐでございますが、四月の二十九日、三十日の両日に、九州の南端の鹿児島県志布志で、九州の自然を守る会、こういうような諸団体が集まりまして、九州の自然を守る志布志集会を開催しようとしています。これは環境庁長官にも案内がいっておると思いますけれども、この催しは御存じでしようか。
  220. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) そういう催しがあることは聞いておりますが、案内状はまいっておらないように考えております。
  221. 加藤進

    加藤進君 私も案内状はいただいておりますが、九州の全土から自然を愛するという心ある人人が結集する、しかもこの志布志に、二千名以上の方たちが結集されるというわけで、これはもう史上かつてないことだと私は考えております。それだけに、ここに集まられる皆さんの自然保護の熱意が私たちにひしひしと読み取れると思うわけでございます。そこで、経済企画庁に続いてお尋ねいたします。経済企画庁では、いま志布志湾を中心として進められている工業開発、新大隈開発計画、あるいはカッコして試案といっておりますけれども、こういう鹿児島県の開発計画については十分御存じのはずだと思いますけれども一つ伺います。
  222. 岡部保

    政府委員(岡部保君) ただいま先生のおっしゃいました、鹿児島県の持っております大隈開発計画の試案でございますか、その計画については、その本文を私どもちょうだいをいたしております。
  223. 加藤進

    加藤進君 もちろん企画庁には文書がいっていることを私も存じています。聞きたいのは、このような開発計画について経済企画庁はどのようにお考えになるでしょうか。
  224. 岡部保

    政府委員(岡部保君) 本日午前中に、鶴園先生の御質問にもお答えいたしたわけでございますけれども、ただいまのおっしゃいました計画、これは鹿児島県が昨年の十二月に、県内の地域開発調査室の試案として発表されたものでございます。この計画については、地元でも非常にいろいろな議論を巻き起こしているということも承知をいたしております。  そこで、私ども経済企画庁の立場といたしまして、この問題をどういうふうに扱っておるかという点について申し上げますと、私ども、この計画が県の最終的な意思表示ではないという認識でございます。したがいまして、これに対して正式にどうこうするというようなことは、一切いたしておりません。  そこで一体、経済企画庁としてどう考えておるのかという点でございますが、現段階で、御承知のように新全総計画におきまして、いわゆる遠隔地に大規模工業基地をつくることが、大規模開発プロジェクトの一つのテーマとして示されておるわけでございます。そこで、これは一昨年、たしか四十五年の暮れに開かれました国土総合開発審議会の場でいろいろ御意見がございまして、そのときに一つの具体的な指示と申しますか、意向が出たわけでございますが、その際にはっきり出たと申しますことは、この大規模工業基地の適地として一応考えるべきだということに、日本におきますいわゆる北東地域と西南地域と、この二地域があるのではなかろうか。この北東地域と申しますのは北海道、青森県、秋田県あたりを指しております、わりに広いゾーンでございます。それから西南地域につきましては周防灘、豊後水道を経まして志布志湾あるいは宿毛湾に至る地域、この両方の地域をひとつ具体的に検討してみたらどうかというような御意見であったようでございます。  そこでこの大規模工業基地の建設につきまして、これは午前中にもるる申しましたわけでございますが、やはり何と申しましても、ただいま先生のお話にもございました自然の問題、広く見ましていわゆる環境破壊という問題が一番こわい問題でございます。したがって環境問題という意味から、当然こういうものに十分意を用いて調査をいたしまして、しかも、ある程度のめどがつくということが前提で実施に移らなければならぬというような考え方でございます。したがいまして現段階では、私どもこの西南地域のうちの一つでございます志布志湾の地域の問題にいたしましても、自然条件等基礎的な調査を進めておる段階でございます。したがいまして、このような調査がどういう結果が出るかということによりまして、これから先、これが計画に移るのかどうかというあたりの判断ができてくるというふうな認識でございます。
  225. 加藤進

    加藤進君 そうしますと、経済企画庁としましては、志布志湾を含めて西南開発の拠点であるということについては、一定の見解は持っている、こう言ってもいいでしょうか。
  226. 岡部保

    政府委員(岡部保君) いまおっしゃいました拠点という意味がちょっとよくわからないのですが、一応私どもこういう問題で非常に広いゾーンを考えまして、その中で具体的にどういう適地があるかというのを、まあむしろさがしていくといってよろしいかと思います。そういうものの考え方でございますが、たとえばいま申しました西南地域でも、日南海岸であるとか、明らかにそういう考え方をとれない地域がございます。  そういう意味で、なぜ志布志湾地域一つの対象になったかと申しますと、これは御承知のように、志布志湾というのが非常に湾形がよいと申しますか、たとえば連合艦隊が入れたような自然的ないわゆる港湾と申しますか、そういうような考え方から見て一つの利点を持っております。これは事実でございます。したがって、そういうようなことから、一つの拠点といえば拠点でございましょうが、一つの問題地域としてあげられておるということは事実かと存じます。
  227. 加藤進

    加藤進君 わかりました。  それで、前に戻りますけれども、試案として発表されたものは、これは県の一部局の案であって、決して今日鹿児島県当局自体の案ではない、こう言えますね。  それから、もう一つ開きたいのは、経済企画庁は、この試案について何ら、協力というような、援助はしておられないのかどうか、ちょっとお尋ねしたいんです。
  228. 岡部保

    政府委員(岡部保君) 第一点の問題は、先ほども申しましたように、この試案につきましては、一つの統一された県当局としての最終的な見解であるという認識は全く持っておりません。  それから第二点の、この試案に対して経済企画庁がどういう協力と申しますか、そのようなことをしたかどうかという点におきましては、 これは、その試案の作成の過程におきまして、全然私ども考え方が県との間で交流されたことがないということは、うそになります。実際に県当局としては、当然、企画部門の方々が私どものほうに企画専門家がおりますので、そういう連中と接触を持っていろいろ聞いてきております。ただ、こういう形にまとめあげ、この内容を、何と申しますか、いまの段階での案にするというようなしとについては一切私ども関知いたしておりません。
  229. 加藤進

    加藤進君 わかりました。  それでは、新大隈開発計画の中身にちょっと立ち至りますけれども、三七ページに入ります。ここにはこう書いてあります。「志布志湾が大型タンカーが入港できる」という利点がある。第二は、「原油の主な輸入先である中近東、東南アジアからの輸送上最短地点にあること。」、第三、「今後石油の需要が大きく伸び、将来も石油産業の高成長が見込まれること等の理由から」、現段階では企業から積極的な進出意欲を示しているものは「石油産業のみである」、こう書いてあります。こういう、いわば見方というのは、これは県当局だけではなくて、あるいは県の一部局だけではなくて、経済企画庁もまた同様の所見を持っておられるんでしょうか。
  230. 岡部保

    政府委員(岡部保君) ただいまの三点おあげになりました問題点でございますが、いわゆる何と申しますか、そこの自然的な条件等の問題と、それから一つの判断が加わったものと、両方あったと思います。  まず第一点の、大型タンカーが入港する、しやすいと申しますか、できるところであるというようなあたりは、これは自然条件の与えられておるところでございまして、こういうところに、どういうかっこうの計画をして、どういうふうに入れるかは別といたしまして、比較的湾入された地域に、しかも水深が相当あるという意味から申しまして、大型タンカーの、入港ではございませんで、入湾ですか、しやすい地形であるということは明らかに申せると思います。  それから第二点の、中近東から最短距離にある、この点につきましては、何せ中近東から日本の本土に参ります際に、鹿児島県であるから近くて、それよりも、たとえば四国になったら遠くなるというような差が、はたしていわゆる運賃の差にまで非常に強くあらわれるかどうかというあたりになりますと、これは疑問がございます。特に、非常に大型の、たとえば五十万トンのタンカーをもって原油を中近東から運んでくるということになりますと、マラッカ海峡を通過できませんし、そういうことでまた距離が伸びる、そういう大距離のうちでの地域差というものはそれほど大きな差があると判断するのは、いささか過大な評価ではないかという感じがいたします。  第三点の、石油産業が非常に意欲があるという点につきましては、これはいわゆる基幹資源型と申しますか、臨海性の装置型の工業——と申しますと、大きく分けまして石油系統か鉄鋼の系統という判断ができるかと存じます。そのうちで、鉄鋼につきましては、現在確かに新たなサイトを望むという熱意はいささか冷え切っておるという感じがいたします。それに対しまして、石油といたしましては、石油業界というところでは、すぐではございませんが、今後四、五年先のことを考えて、新たな立地サイトを要望しておるというのは私ども耳に入れております。  以上の判断でございます。
  231. 加藤進

    加藤進君 重ねて聞きますけれども、とにかく、ここへ積極的に進出したいという希望を出しておるのは石油産業のみである、こういうふうに県の試案にはありますけれども、その判断について経済企画庁はどうでしょうか。
  232. 岡部保

    政府委員(岡部保君) 私、そこまでは全くタッチをいたしておりませんし、業界がどういう反応を示しておるかということについては伺っておりません。
  233. 加藤進

    加藤進君 そうしますと、経済企画庁としては、ここの試案で出されておるような計画内容については十分実現の可能性のある案であるというふうには、まだ御判断しておられないわけですね。
  234. 岡部保

    政府委員(岡部保君) この試案が十分に実現の可能性があるかどうかという点になりますと、これは現実に、たとえば一つ地域開発を実施するということにほんとうに踏み切るかどうかという意味かと存じますが、そういう意味では、まず環境問題という非常に大きな壁がございます。したがいまして、現段階で、この計画で、もう十分着工できるのだというところの見解には全然達しておりません。
  235. 加藤進

    加藤進君 試案によりますと、石油産業をとにかくここに誘致する、そうして日産百万バーレルの石油精製を中心として、大隈半島の二市十七町にまたがる大規模な工業用開発計画を行なう、こうありますね。このためにはどのような工業用地の造成等々が行なわれるかと申しますと、海岸線は約十五キロ、沖合い二千メートルの志布志湾を埋め立てる、そうして二千七百三十ヘクタールの臨海工業地帯をつくり、ここに石油コンビナートほか、重機械、重電機、造船、食品工業などを誘致する計画だ、そして沖合いには、五十万トンクラスのタンカーによる原油を陸揚げするシーバースを建設する、こういうのが大まかな案になっております。もしこのような建設計画が静かな志布志湾を中心として行なわれるとしたら、いまあなたの懸念されておるような自然環境との間の調和というのは一体どうなるのか、この点についての経済企画庁の判断はいかがでしょう。
  236. 岡部保

    政府委員(岡部保君) 非常に仮定の入った御質問でございますので、お答えしにくいわけでございますけれども、現段階で従来の工場プラントということを前提にいたしまして、いまのような計画が実施されたらどうなるかということを考えますと、まず、あの周辺は非常に汚染されるであろうということを申し上げざるを得ないと存じます。ただ、これが県として、どういう時点で、どういうふうにするというような御計画も、もちろん腹案もお持ちなんでしょうが、この一つの石油工場というものをとりましても、これがどういう段階で、どのように、言うなれば公害防止でございますか、いわゆる廃棄物による汚染というものを排除できるかというような問題、それからさらに、現在実はそういう意味でいろいろな調査をいたしております。たとえば、あそこの海域で海流等から考えまして、工場廃棄物による直接の汚染があったならば、その周辺にどのくらいの汚染の範囲が広がっていくのか、あるいは、あの辺のいわゆる大気汚染がどういうふうに広がっていくのか、そういうような意味で、たとえば海流でありますとか、風でございますとか、そういうような自然の条件の調査は現在している最中でございますが、そういうようないろいろな条件を問題にしなければならぬと存じます。ただ、先ほども申しましたように、現段階で、現在あるような一つの石油精製の大規模な工場があそこに進出したならば——それ以外にいろいろ機械工業的なものか出ておりますが、部分的には、食品工業でも、たとえば粉じんによる公害があるとかなんとか、いろいろな問題があると思いますが、比較的公害の軽い系統の工業だと存じます。いまの石油系統の工場につきましては、現段階で、現在あるような工場があそこにぱっと移るということを考えましたならば、明らかに汚染が激しくなるということであろうかと存じます。
  237. 加藤進

    加藤進君 一言で言えば、現在のような状況のもとで、ここに工業開発が行なわれる、大規模な工業開発が行なわれるとなれば、自然環境は言うまでもなく、生活環境そのものにも重大な影響があるということはお認めいただくわけですね。
  238. 岡部保

    政府委員(岡部保君) そこのあたりが、いささかおことばを返すようなあれになりますが、非常に問題だと思っております。私自身いろいろこういう開発の問題を取り扱っておりますが、先ほども、自然保護憲章でございますか、の話がありましたが、開発というのは、自然の保護、保全と申しますか、それが一切優先するべきだ、人間の生活が優先するべきだ、これはまさにそのとおりだと思います。  そこで、私どもいま一番頭を痛めておりますのは、そういう自然保護であり、人間生活の乱れを生じさせないようにということを考えながら、しかも開発というものをしていくために一体どうしたらいいのかというあたりが、私は問題だと考えております。現段階では、私、全くこういうふうにしたらいいんだという自信あるお答えはできません。しかしながら、これだけ、ある意味での非常に技術革新、技術の進歩もございますし、決してこれから何年たっても、いまのような、たとえば石油工業の状態であり、鉄鋼工業の状態であるというふうには、私考えたくないわけでございます。したがって、そこの辺でこの技術の進歩あるいは等々のことを考えて、ほんとうに開発というものが先ほどの自然保護憲章の考え方の範囲内で一体できるのかできないのか、これを何とか持っていくように検討していかなきゃいかぬのじゃないかという感じを持っております。非常に率直なことを言わせていただいたわけですが……。
  239. 加藤進

    加藤進君 私は、開発一般を論じておるつもりはございません。ここで出されておるのは、石油精製産業をとにかくまず最初に誘致する、そのために広大な地域を見立てる、こういうことからこの開発計画が始まるわけでございますから、その点だけをとってみても、その地域における自然環境の重大な破壊があり、また生活環境そのものの大きな変化があるということは、私は率直に認めていいんじゃないかと思います。そうですね、その点は。
  240. 岡部保

    政府委員(岡部保君) どうも話を少し脱線させてしまいましたので、この志布志の問題につきましては、現況で、あそこに、いまの県の試案にありますような膨大な埋め立て地——これは一部が当然陸続きになると思いますし、しかも、比較的浅いところに相当な埋め立て地ができるということになりますれば、当然、あの周辺の海流なり、等々の自然条件が非常に変わってくる。これがまず、考えられるところでは、マイナスの方向に働くであろうということは確かかと存じます。したがって、もしもああいうものをあすこに何か考えるという場合に、一体どういう計画を立てたらいいかというものに、もう少し検討をしていただきたいというのが率直な意見でございます。
  241. 加藤進

    加藤進君 ありがとうございました。  そこで、文化庁の方にちょっとお尋ねしたいのですけれども、この地域は国定公園ですね。国定公園の地域に入っておりまして、この国定公園の価値の一つの中に、肝属平野に非常に多くの古墳群がある。いわば埋蔵文化財がここには非常に広範囲に存在するということが出ておるわけでございますけれども、文化庁から、その点について、どのような埋蔵文化財がここにあるのか、その歴史的あるいは学術的な価値はどんなものであるかということを、簡単でけっこうですけれども、御説明願いたい。
  242. 古村澄一

    説明員(古村澄一君) いま御議論の中心になっております志布志湾一帯におきましては、文化財が埋蔵文化財として約七十件ございます。それで、その中で史跡として指定しておりますものとして、横瀬古墳、あるいは唐仁古墳群、塚崎古墳群といったようなものがございまして、これはそれぞれ群体として、古墳の非常に数多い群体として価値がある、あるいは大きな古墳として価値があるというようなことで指定をしておるわけでございます。その七十件のうちのその他の埋蔵文化財につきましては、これは昭和三十六年に調査をいたしたものでございまして、これがどういう価値があるかということは、表面調査の結果しかつかんでおりませんので、現在のところ、それぞれについての価値の判断はいたしておりません。
  243. 加藤進

    加藤進君 私の聞きたいのは、いまや、そういう文化財を豊富に埋蔵しておる地域が工業開発の犠牲になりはしないかという点でお尋ねをしておるわけなんです。そうしますと、文化庁としては、この埋蔵されておる古墳群をはじめとする文化財について、まだ十分な研究あるいは調査は進めておらない、こういう状況にあると受け取っていいんでしょうか。
  244. 古村澄一

    説明員(古村澄一君) 史跡指定してある以外の文化財につきましては十分な調査が行き届いていないということでございます。したがいまして、こういった開発計画が試案として出されましたので、昭和四十七年度におきまして、ここにおきます埋蔵文化財のそれぞれの性格調査をやるということにいたしております。
  245. 加藤進

    加藤進君 私からあえて説明を申し上げるのは何ですけれども、この地域に埋蔵されておる文化財の価値という点につきまして、専門の学者諸君は一致して次のような点をあげています。  その一つは、大和朝文化と南方系の熊襲、隼人文化、南方系の文化との接触地点に当たる特異の文化を形成するものである、これが第一点。したがって、大和朝の文化から言うと、その文化の最南端に当たる、そうしてまた、熊襲あるいは隼人の生活や文化と接触する、こういう特異の地域がここにある、こう言われています。  それからもう一つは、志布志湾を通じて、南方、特に中国との間の文化交流がきわめて古い時代から行なわれてきたというような意味重要性がここにある。こういう点が第二点になっています。  それから第三点としましては、この志布志湾という湾はきわめて海の静かなところで、しかも砂丘がずっとこの湾を取り巻いている。砂丘の背後には、古い時代から水田が開発されている。こういう点では、南九州における唯一とも言っていいような農耕文化が初めてここに発生した。農耕文化の発祥がここで興ったと、こう見てもいい、こういうふうに言われております、大要。  したがって、今日においても十分な発掘調査が行なわれていないという状況を見るなら、もしここで十分な発掘や調査研究が行なわれたとすると、おそらく日本の古代史が書きかえられるであろうと、こういう重要性をここで指摘しています。これは私は決してオーバーでも何でもないと思うんですが、こういう重要な史跡の存在しておるところが、まさに開発の対象になっている。こういう点で、文化庁はもう少し責任ある立場で文化保存の努力を、ぜひこの地域においてもはかっていただかなくてはならぬと思いますけれども、その点の所見はいかがでしょうか。
  246. 古村澄一

    説明員(古村澄一君) この地域の埋蔵文化財につきます判断素材といいますか、判断のしかたにつきましては、いろんな学説等があろうかと思います。私たちも、ここの地域の文化財が重要でないということは申し上げておりません。しかしながら、その遺跡一件一件についての十分な調査というものをまだやっていないということから、これをまず調査をいたしたい。  それから、これは開発計画が具体化いたす段階で、どうしても処理をしなければならないわけでございますが、その埋蔵文化財の中でどれを残すべきものとするか、そして開発計画から除外していただく遺跡をどこにきめるかということをやり、あるいは数が非常に多いものでございますから、どうしても開発計画の中に入らざるを得ない、価値から見て入ってもかまわないというふうな遺跡につきましては、これは十分な記録を発掘調査の結果残していくというふうなことにいたしたいというふうに考えております。
  247. 加藤進

    加藤進君 お話を聞きますとね、とにかく開発をやっていただく場合に、何とか開発に差しさわりのないような意味で文化遺跡の保存をするのが私たちの仕事でございますと聞こえる。一体どうでしょうか。文部省設置法の第二十九条にどう書いてありますか。文化財を保存し、かつ活用をはかる、これが文化庁の目的でしょう。これは何も、その開発計画があるからといって遠慮する必要はないと思う。まずもって、古代文化をあなたたちが保存し、守って活用していく、国民の今後の発展のために役立てていく、これが文化庁の仕事でしょう。どうもあなたの答弁によると、そういうことをしっかりわきまえた上での文化保存でないという感がしてしかたがないんですが、その点については、今後、重要なこの史跡に対してあなたたちの態度を十分に変えていただかなきゃならぬと思うけれども、いいですか。
  248. 古村澄一

    説明員(古村澄一君) まあ、そういったふうにお聞き取りになったことにつきましては、ことばが足りなかったと思います。と言いますのは、全国の埋蔵文化財は、昭和三十六年から三十八年にかけまして調査した結果、十四万カ所というのが埋蔵文化財の包蔵地であるというふうに調査結果が出たわけでございます。しかしながら、その後の開発で、開発といいますか、いろんなことから、知られなかったものが非常にたくさん出てきたということから、これの再調査——一体この埋蔵文化財というのは地面の下にございますので、この調査は非常に困難でございますが、それをまず把握することが必要であるということから、全国的な埋蔵文化財の包蔵地の再調査を昨年度からやり始めております。そういったことで、とにかく埋蔵文化財がどこにあるかということを、まず把握し、その次に、その文化財の性格がどういうものであるかということを判断し、そしてそれによって、残すべきものについては早急に史跡の指定をしていくというのが、現在の文化庁のとっている態度でございます。
  249. 加藤進

    加藤進君 時間がありませんから、要望だけしておきます。  ともかく私が指摘したように、このいま開発のいわば犠牲になろうとしておる志布志湾の沿岸地域、肝属平野は、いま言ったような古代文化のいわば宝が眠っておるところだと思う。この宝をわわれわれがほんとうに開発し研究して、そうしてこれをわれわれのあとに受け継いでいく、これが私たちの仕事ではないかと思う。その意味で文化庁の存在意義もまたあるという点で、ひとつ、ぜひ十分な御努力を払っていただきたい。  そこで、環境庁の自然公園関係のどなたか、いらっしゃいましょうか。ではちょっとお尋ねします。この志布志湾沿岸一帯が国定公園に指定されたのはいつでしょうか。
  250. 首尾木一

    政府委員首尾木一君) 昭和三十年六月一日が指定年月日になっております。
  251. 加藤進

    加藤進君 これは国のほうから進んで指定したものでしょうか。それとも、鹿児島県のほうからの要請があって指定になったのでしょうな
  252. 首尾木一

    政府委員首尾木一君) 自然公園法によりますと、国定公園の指定は都道府県の申し出に基づきまして指定をすることになっておりまして、この例につきましても、この地区につきましては鹿児島県からの申し出に基づきまして指定を行なったものでございます。
  253. 加藤進

    加藤進君 私は、当時の文書も読ませていただきましたけれども、鹿児島県としては、ここは鹿児島の誇りだ、こうして指定の要請をしたと書いてある。そういうところがいまや開発の対象になりつつある、こういうわけでございますが、この国定公園の最も重要な特徴というのを簡単にあげていただきたいと思います。
  254. 首尾木一

    政府委員首尾木一君) 日南海岸国定公園の志布志地区につきましては、これは砂浜、砂丘、そしてそこにはえております大きな黒松の林がございますが、それが一つの特徴点であります。それからさらに、枇榔島等におきましてはビロウ樹等の亜熱帯植物群落があります。そういったような海浜景観というものが、この地区の特徴になっております。
  255. 加藤進

    加藤進君 あまり簡単に要約されたので、特徴が十分に浮かび上がってこないわけですけれども、私はこういうふうに、その当時の文書、皆さんのお持ちになる文書の中で読み取っているのです。  まず、日南海岸は複雑な海崖地形であるのに対して、長大な砂丘海岸であるという特徴がある。砂丘には、よく保護された先ほどの黒松の林が存在している。後背地の肝属平野には古墳群が転在する。そして枇榔島も、青島に対して男性的、全島ビロウ樹におおわれた原始状態がよく保たれている。これが私は指定の大きな要件になっていると思います。しかも、今日に至るまでこの状態がこの地域人たちの努力によって十分に保存されつつある。しかも、観光資本もまだ入ってきていない。荒らされていない。こういう自然と文化生活状況がここにある。こういう点が私は、はっきりできると思うのですけれども、その点の御意見はいかがでしょうか。
  256. 首尾木一

    政府委員首尾木一君) 先生の仰せのとおりと考えております。
  257. 加藤進

    加藤進君 そこで、環境庁長官、お尋ねいたしますが、先ほど他の委員からの質問に答えられておりますね、まあその点を私ちょっとお聞きしたいわけでありますが、最初に環境庁に対して、おそらく環境庁の前でございますけれども、鹿児島県がこの地域指定の解除を依頼してきた、こういう事実があるわけですね。
  258. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) これは、たぶんそうだろうと私は思うんですが、まだ明確でない。私のほうが聞き方もへたなせいですが、事の起こりは、去年の何月でありましたか、秋でありますが、十一月かなにか忘れましたけれども、鹿児島県知事が見えられまして、今度鹿児島県としては、このようなりっぱな観光地をつくるとか、このような穏やかな自然保護の環境をつくるぞというような、いろんなけっこうなお話がありました。一応けっこうなお話だと思って、うんうんと聞いておったのですが、それにどういう含みがあるか私はわかりませんでした。ところが、一月ばかりたってからでしょうか、副知事が見えまして、そして知事からいろいろとこの開発のことをお話し申し上げましたのでと言うので、まあそういうことを聞きましたと言ったら、それでひとつ、その前提として、この志布志湾の解除をしてもらいたいというようなお話がありましたから、ああそうか、私はそういう意味では聞かなかったけれども、まあ君の話だから聞いておくということにしたわけです。その後どのくらいたちましたか忘れましたが、知事が、たしかこれを私に持ってまいりまして、一応県としてはこのような案を考えてみました、これはまだ試案の段階でありますが、よくひとつ見てやってくださいと置いていったんです。ですから、これは単なる部長の案ではないと思う。知事が部長の案を、部長がかってにつくったものを、持ってくるわけはありませんし、また、部長にこれだけの膨大なものをつくるだけの金を使わせる、一個人にさせるはずはないと思う。ですから、当然これは、県知事が私のところに、県で一応つくってみましたと持ってきたんです。これは県の考えだと思うんです。私は間違いなくそう思います。持ってきましたので、一応預かっておいただけのことでございます。それだけで、別に何という話はございません。何か局長のほうからあるそうです。
  259. 首尾木一

    政府委員首尾木一君) 御案内のように、地域の解除の問題、これは、法律的に申し上げますと、特に解除についての申請云々といったようなことに応じて行政処分としてやる筋合いのものではございません。したがいまして、そういう意味におきましては、申請とかなんとかというようなものは、書類としてあがってまいらないのが普通でございます。主としまして陳情書といったような形で出てくるというような形になっておりますが、陳情書といったような形のものも、まだこれについては出ておらないわけでございます。先ほど長官からお話しになりましたことに対応いたしまして、自然保護局のほうにも副知事あるいは知事のほうからお話がございまして、そのときのお話は、やはりこの大隅開発計画を実施するためにこの地区の解除をお願いをしなければいけない、したがって、この解除について検討してほしい、こういったようなお話であったように受け取っておるわけでございまして、そのあたりのところが、私ども、実は、正式な県全体としての意見を取りまとめてこのような解除についての意思表示であるのかないのかといったような点について十分詰めてはおりませんけれども、私どもは、一応そういうことについて解除を検討してほしいという申し出があったものと理解をしておるわけでございます。
  260. 加藤進

    加藤進君 そこで、お聞きしたいのは、その解除の理由について、はっきり環境庁としてはどのような内容として受け取っておられるのか。
  261. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) 私のところに来ましたのは、これは私、あのとき話は聞きませんでしたが、それで海を埋めたり、いろんなことをするわけですから、やはりこれは環境庁長官許可がなければできないわけですから、そういうことで解除の許可を求めてきたんだと私は思うんです。
  262. 加藤進

    加藤進君 それでは、長官、やはり重ねてお尋ねしなくちゃならぬのですけれども、そのように、あまり公式的とは言えないかもしれぬけれども、意思表示はあった、指定解除方の意思表示はあった。なれば、これについて環境庁としてはどう対処するか、こういう環境庁としての意向が出てくるわけだと思いますけれども、その点について前々からある程度御答弁はいただいておりますけれども、私が以上申し上げましたような、さまざまなこの地域における美しいもの、よきもの、これが破壊されるという危険な事態が起こりかねない、こういう点から見て、環境庁長官の御判断と御決意をひとつ承りたい。
  263. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) とにかく、もやもやした話でありましたが、とにかく意思表示らしいものはありましたので、一応どういう状態であるか知りたいと思いました。で、できるだけ志布志湾についての認識を深めてまいるように努力してまいりました。私自身も志布志湾そのものを目で見たいと思いましたが、まだ機会がありませんで参りかねておりますが、職員もこっちへ出てまいりましたし、調査してまいりましたし、その他いろいろマスコミ関係の人々にも出張のたびにそれをお願いをして、いろいろな考え方、見方というものを聞いたりしておりました。また、地元の数多くの人から、ずいぶんと開発に対する反対の陳情を受けております。これにつきましても、いろいろとその実態というもの、あるいは住民のものの考え方というものを、できるだけ自分としては確かめておったわけであります。そういうことから、現在の段階としては、これは何としても日本のすばらしい自然として残してまいりたいという私の考えでございます。
  264. 加藤進

    加藤進君 私が一番最初に自然保護憲章のことを申し上げましたのは、以上のような環境庁としてのはっきりとした御決意をお聞きしたかったからにほかならないわけでありまして、その点から申しますと、環境庁長官のただいまの御発言は、現在のような、また、私ないしほかの委員からの質問にありましたような状況であるなら、この指定の解除ということについてはしないと、こういうふうに受け取ってもいいかと思いますけれども、その点はどうでしょうか。
  265. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) 私は、まだ、するとかしないとか、はっきり私から申し上げる段階でないと考えておりますが、私自身の気持ちは、いま申し上げたような考えであります。ただ、先ほども申し上げましたが、これを開発するだけの、それに値するだけの意義があると、そうして、そのことによって、企業がもうかるもうからないは別の問題ですが、地域住民に大きな幸福を与えるということが確実であり、すっかり証明されて、地域住民のほとんど全部がそういうことを希望するというならば、そういう段階ならば私は別に解除しても差しつかえないと思います。私個人の気持ちは、判断は別にしても、思いますけれども、たとえば、あそこに何千人かの漁民、したがいまして何万人かの家族がおります。こういう者は、漁業をやって初めて人間としての生存ができる、生活ができるわけです。漁業を離れたらほとんど全部だめになると思う。漁師がそれ以外のサラリーマンになったり、あるいはカフエをやったり、あるいはパチンコへ行って生活がいいはずがないのです、これは。ですから、この計画を見ますと、数百メートルこの海岸を埋め立てるのです。石油の十万トンのシーバースができる、港ができるとなりましたら、間違いなくここは漁場でなくなります、これは完全に。したがいまして、その漁民に、何万人の家族に、どのようにしてこれを納得させるのか、生活を確保させるのか。というのは、漁民というものは漁業をやって初めて生活が立つのですから、そういうことを考えただけでは問題にならないと思うのです。その他背後地のこととか、いろんなこともありますけれども、そういうことを考えて、いまはっきり自分としてはこれはだめでございますとか、あるいは何とかということは申し上げませんが、私の考えとしては、これはとうてい実現不可能であろうと判断しておりますし、私自身、環境庁長官という立場からも、これは何としてもりっぱな国定公園あるいは国立公園として守ってまいりたいという信念であります。
  266. 加藤進

    加藤進君 最後に、私自身も、どんな開発もだめだ、どんな開発だって自然が破壊され、人間生活影響があるからだめだなどというような、やぼったい議論を申し上げているわけではありません。しかし、ここで試案として出されておるような開発につきましては、いま長官がおっしゃいましたような意味で、これはもう自然破壊につながり、生活そのものを脅かす開発計画である、こういう点ははっきりできると思う。したがって、私たちが希望する開発というのは、たとえば、公害のない、あるいは災害の起こらないような平和な産業を誘致する、また、地元の雇用関係に非常にそのために役立つような意味の開発ならけっこうである。また、この地域の一番おもな産業である農業、漁業、林業、こういう産業の発展につながるような地域の開発計画なら、それもけっこうだと。それから最後に、ここに埋もれている祖先の文化財、あるいは自然をしっかりと守るような、そのような開発であるならわれわれも賛成だ。こういう意味で、私は、おそらく長官のお気持ちと、そう変わらないと思いますけれども、そのような開発であるならともかく、今日まで進められておるような試案の開発計画についてはどうしても反対しなくちゃならぬ、こういう決意でございますので、環境庁長官といたしましても、ひとつ政府に強くそのような方向での御努力を賜わるよう希望いたしまして、質問を終わります。
  267. 伊部真

    ○理事(伊部真君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時一分散会