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1972-06-01 第68回国会 参議院 建設委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年六月一日(木曜日)    午前十時五分開会     —————————————   委員異動  五月三十一日    辞任          補欠選任     浅井  亨君      中尾 辰義君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         小林  武君     理 事                 中津井 真君                 丸茂 重貞君                 山内 一郎君                茜ケ久保重光君     委 員                 熊谷太三郎君                 小山邦太郎君                 古賀雷四郎君                 竹内 藤男君                 中村 禎二君                 米田 正文君                 沢田 政治君                 田中  一君                 西村 関一君                 村尾 重雄君                 春日 正一君    国務大臣        郵 政 大 臣  廣瀬 正雄君        建 設 大 臣  西村 英一君    政府委員        内閣法制局第二        部長       林  信一君        近畿圏整備本部        次長       朝日 邦夫君        経済企画庁総合        開発局長     岡部  保君        環境庁水質保全        局長       岡安  誠君        郵政政務次官   松山千恵子君        建設大臣官房長  大津留 温君        建設省都市局長  吉兼 三郎君        建設省河川局長  川崎 精一君        建設省河川局次        長        川田 陽吉君        建設省住宅局長        事務代理     沢田 光英君        自治大臣官房審        議官       立田 清士君    事務局側        常任委員会専門        員        中島  博君    説明員        農林省農地局参        事官       住吉 勇三君        林野庁指導部長  松形 祐堯君        水産庁漁政部漁        業振興課長    岩崎 京至君        通商産業省公害        保安局公害防止        指導課長     松村 克之君        通商産業省化学        工業局化学第二        課長       小幡 八郎君        郵政大臣官房建        築部長      山中  侠君        建設省都市局下        水道部長     久保  赳君    参考人        京都大学教授   岩井 重久君        奈良女子大学教        授        津田 松苗君        京都大学助教授  三村 浩史君        京都大学大津臨        湖実験所長    森  主一君        日本住宅公団理        事        青木 義雄君        日本道路公団総        裁        前田 光嘉君        首都高速道路公        団理事長     鈴木 俊一君        水資源開発公団        総裁       柴田 達夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○琵琶湖総合開発特別措置法案内閣提出、衆議  院送付) ○参考人出席要求に関する件 ○建設事業並びに建設計画に関する調査  (郵政省職員宿舎建設に伴う日照権問題に関  する件)  (建設省所管公団職員労働行為に関する  件)     —————————————
  2. 小林武

    委員長小林武君) ただいまから建設委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨五月三十一日、浅井亨君が委員を辞任され、その補欠として中尾辰義君が選任されました。     —————————————
  3. 小林武

    委員長小林武君) 琵琶湖総合開発特別措置法案議題といたします。  本日は、本法案審査のため皆さま方のお手元に名簿を配付してございます四名の方々参考人として御出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は遠路御多忙中のところ当委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。  当委員会におきましても、この機会に、本法案に深い関係をお持ちになっておられる参考人方々から忌憚のない御意見をお伺いして、審査参考にいたしたいと存じます。よろしくお願いを申し上げます。  これより御意見をお伺いいたしたいと存じますが、議事の都合上御意見をお述べ願う時間はお一人十五分程度お願いをいたします。  なお、参考人方々の御意見のあとで委員から質疑がございますので、お答えをいただきたいと存じます。  御意見をお述べいただきます順序は、岩井参考人津田参考人三村参考人及び森参考人の順でお願いいたします。  それではまず岩井参考人お願いいたします。
  4. 岩井重久

    参考人岩井重久君) それでは、琵琶湖総合開発による水位低下案を、以下水位低下と称させていただきます。水位低下案を実施した場合の琵琶湖及び下流河川水質汚濁へ及ぼす影響について私見を述べさせていただきます。  汚濁物質には、人間の健康に関する重金属その他のようなものと、それから生活環境影響を及ぼすBOD窒素、燐その他に大別できます。しかしこの二つは、またお互いに関係するものであります。しかし、これらを総称いたしましていま汚濁物質と呼ぶことにいたします。  まず、話の順序といたしまして、第一、汚濁物質濃度の巨視的に見た場合の変化、これについてお話しいたします。濃度単位は、PPM、あるいは一リットル中のミリグラム、あるいはキロリットル中のグラムというふうにあらわせるわけであります。単位体積の水の中に入っているその物質の重さをもって濃度と言うわけでございます。  それで、巨視的に見たということは、結局琵琶湖水位いかんかかわらず、これが琵琶湖であるとしますと、ここから、ここに雨が降って水がどんどん流れ出るわけです。長い期間流れて出た水を、淀川を通して大阪湾に出さずに非常に大きいタンクにためたといたします。そうしますと、この水位が、このまま、下げた状態であっても、とにかく降った量はこちらのほうに全部たまるわけであります。それからまたここへ、琵琶湖へ出てくる、湖岸から出てくる汚濁物質は、水位いかんにかかわらず重さは変わらない。そういう一年なら一年続いての重さは、全部合計した重さは変わらないといたしますと、こちらのほうにたまってきている水の量の中に入っている汚濁物質の重さは同じでございますから、巨視的に見た場合には、濃度は変わらないということが言えるわけであります。しかし、雨がうんと降ってオーバーフローするときは、それはもう汚濁には関係ないから除外しましょうと。むしろ水位が低くなったときが問題になるのじゃないか。論より証拠、水位が現在の水深の半分になったら、その容積は半分になるから濃度は倍になるんじゃないか、そういうお考えがあると思いますが、これは琵琶湖の水が全然流れ出ないというふうな前提のもとで言われている議論でございます。琵琶湖の水は外へ出ていくわけでございます。  ですから、第二の議題といたしまして、汚濁物質濃度水位低下をする期間の中における変化、これはどうなるか。で、濃度と申しますのは、汚濁負荷量、この単位グラム割る時間でございます。汚濁負荷量つまり一日に何グラムのあるいは何トンの汚濁物質が入るかと、汚濁物質負荷量割ることの流量であります。流量は一日に何立方メーター流れるかというその量であります。琵琶湖の中の水も、わずかではございますが、こう流れていって、下流から淀川に落とすわけでございますが、ところで、もしいまの比の分子はこれは変わらないという前提に立ちます。汚濁負荷量は変わらない。水位低下しても、水位低下しなくても、汚濁負荷量は変わりません。ところが、水位低下をすることによりまして、水位低下の所期の目的は流量をふやすということであります。雨の降らないときに、大水のときの水を琵琶湖にためておいて、そしてその水深を深く、一メーター五十の間でいろいろ動かすことによって渇水時の水量を、流量をふやすということでございますから、水位が低下したとき、そういう期間を通じての平均考えてみますと、流量はふえるわけでございます。事実毎秒四十トンというものをふやすというふうな計画になっておりますが、そうしますと、分子が同じであって分母がふえますから、それの比例としての濃度は減るわけであります。したがいまして、二番の議題汚濁物質濃度水位低下期間内における変化は、平均的に見た場合に、かえって減るものであります。  第三番目に、今度は藻類濃度変化について申し上げたいと思います。藻類と申しますのは、いわゆる珪藻とか、緑藻とか、藍藻とか、よく最近琵琶湖においがついております。それの原因の一つとなるようなそういう藻類でございます。それで、酸化池という施設がございまして、この施設はむしろ藻類を培養することによって汚水をきれいにしようという施設でございます。それの一種類高率池というのがございます。その高率池の設計に関するオズワルドとゴータスの一九五七年に発表した式によりますと、太陽日射熱量太陽エネルギー転換率藻類単位燃焼熱量、こういうものは気象条件とかあるいは地理条件、そういうことできまってくるわけでございますが、これが一定であれば、発生する藻類濃度流量に反比例し、池の水の表面積に正比例するということが示されております。これは、結局太陽光線が池の水の中へ透過する深さ、すなわちこの水深の間で水中の藻類太陽光線を受けて光合成を行なうわけでありますが、その深さは、池の水位水質いかんにかかわらずほぼ一定である——水質には関係いたしますけれども、水位低下前後で水質があまり変わらないとすれば一定である。水位がどう変わっても一定である。光が到達する、貫く水深はですね。ですから、そういう原理から、いまのように、池の水の表面積に正比例し、流量に反比例するということになるわけであります。この式によって水位低下期間考えてみますと、水位低下をいたしますと、湖の面積はわずかでも減ります。それから流量は、先ほど申し上げましたように、ふえます。ですから、この式を適用すれば、藻類濃度はやはり減るということになります。これについて、また後ほどいろいろ御議論があろうかと思いますが、しかし、それでは底にたまったどろが、つまり底のほうの酸素が濃くなりますから、酸化されることによって一時的であれ水質汚濁が起こらないという疑問もあるわけでございますが、しかし、現在北湖のほうは水深が非常に深い。問題となる南湖におきましては、現在はかってみましても、水深方向溶存酸素——水の中に溶けている酸素濃度はほとんど変わっていないということになります。ですから大した変化はないであろうと考えられるわけであります。  それから第四の議題といたしまして、水質を考慮した流量調節ということでございます。で、以上は、長期間をとる、あるいは水位低下期間をとる、いずれにいたしましても、平均的な考えをしたわけでございます。実際は、統計的な処理によって平均値を求めるわけでございます。ところが、非常に微視的に考えた場合に、水位が極端に低下して、しかも雨を待っていたのに降らない、そういうときはどんどん水位を下げなければならぬわけであります。これはしかし、そういうことが今後絶対に起こらないとはだれも保証し得ないわけであります。しかし、そういう事象は、琵琶湖総合開発案による水位低下を実現しなくても、やはり起こる問題であります。しかし、水位低下をやることによって、そういう頻度が多少は多くなるかもしらぬ。一方、生物は非常に微妙でございまして、四季を通じて種類が変わりますし、その数も変わります。ですから、そういうことが不利な場合に合致した場合に非常に困るのじゃないか、そういう疑義はあるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、藻類濃度にいたしましては平均的には減るわけでございますね。ですから、そういうプラスの面がある。ですから、微視的に見て、非常にあぶないと思われるような場合には、水質を考慮した流量調節を行なっていただきたい。また、そういうことによって、これは当然解決できる、さように考えるわけでございます。そういう水位低下の過去の記録とか、何とかいうものは全部参考資料にあると思いますが、きわめてまれでございますが、将来、そういう事象が全然起こらないとは限らないので、そういうことが起こった場合の対策——水質を考慮した流量調整というものを十分研究されていただきたいと考えるわけであります。  五番の話題は、有害物質蓄積対策でございます。結局水位低下を行なうことによって、水の滞留時間、つまり水琵琶湖の中にとどまっている時間、日数というものは減ります。ですから、BODのような自浄作用関係する項目については自浄作用がちょっと減るということになりますけれども、たとえば、BODにつきましては、水位低下をしなくても水位低下をしても、いずれも平均的に言って、滞留日数から見ますと、BOD曲線の第二段階に入っておりますので、この両方の場合の差は微小でございます。自浄作用が減るということはほとんど無視できる。むしろ、蓄積効果ですね、しかも、物質といたしまして、重金属のような、健康に障害のある物質蓄積効果のほうを重く見なければならない。それで、五番といたしまして、有害物質蓄積対策でございます。湖というものは非常に流量、流れはありますけれども、水の入れかわりが普通の川よりはうんと滞留日数が多いわけでございますから、その間に蓄積する。ですから、濃度よりもむしろ絶対量、すなわち負荷量というものを問題にする。それで負荷量を減らすためには発生源でそれを取ってしまう。それ以外に、一たん下水工場排水の中にまざってきたものは、処理をすることによって絶対量として、つまり重さとして外に持ち出してしまう、それをまたうまく処分する、こういうことが必要でございます。  それから今度は六番は、富栄養化対策でございますが、これは窒素や燐などの栄養塩類関係いたします。これは、先ほど申し上げました三番目の藻類濃度変化にも関係いたしますが、その原因窒素や燐などの栄養塩類関係するわけであります。こういうものは、下水とかし尿処理場排水あるいは家畜ふん尿あるいは化学肥料あるいは洗剤、そういうものから出てまいりますから、発生源対策を行なう。それからまた、下水廃水処理の三次処理あるいは高度処理を行なって、そういう窒素や燐、主として燐を取り去ればいいわけですが、そういうものを除去する。これは現在やり方といたしましては、そういう研究富栄養化進行速度よりも速い速度で、そういう技術開発を大至急進行させて、また一方では、滋賀県条例などにおきます排出基準におい窒素や燐に関する項目を組み入れる。こういうことによって対処しなければならないと考るわけであります。  それから七番が、地域環境計画樹立でございます。地域環境計画樹立、幾らいまのような水量水質に関するいろいろ対策を練りましても、琵琶湖周辺地域開発そのものが非常に汚濁にプラスするようなでたらめに進められては、これは発生源のほうでますますふえるということになって、対策が画餅に帰するおそれがございます。ですから、いろいろ調査研究する、ただ、現在、たとえばユネスコ分類なんかによりますと、環境四つに分けまして、自然環境地方環境都市環境汚濁環境、この四つに分けております。で、自然環境と申しますのは、たとえば尾瀬ヶ原とか、ああいう所だと思います。それから地方環境というのは森林や農地がおもになっている環境。それから都市環境というのは、都市汚濁環境といのは、すでに汚濁してしまった環境。そこで、滋賀県をどこに置くか、滋賀県全体を自然環境ということは、もうすでに人が住んでおります、それから農耕地もあるわけでございます。ですから、それをどこまでをもとに戻すか、これが問題になるわけでございますが、私といたしましては、これは滋賀県は、ユネスコ分類地方環境都市環境のまざったもの、汚濁環境はまだ生じてない。ですから、汚濁環境を生じさせないように、それから地方環境都市環境のバランス、この工業というのが都市の中に入ってくると思いますが、そういう妥当な計画を立てることによってただむやみに自然環境と称しまして、それじゃ琵琶湖をたとえば非常に南米なんかの大きな湖、ほとんど人跡未踏のようなものに返しなさいといっても、これはしょせん不可能であります。しかし、そういうことでやって、むちゃくちゃ開発してきたから現在のような事態になった、これはもうだれも認め、だれもいま後悔しているところでございますから、そういう念頭に立って開発計画をお立ていただきたいと思うわけであります。  八番、結論でございます。私は、以上のことから、琵琶湖水位低下案を実現させても、——本日御出席のような先生方をはじめとする学者研究者、これは社会学者経済学者も込めてでございます、そういう方々のいろいろな御研究成果も科学技術的な研究成果を基礎にされまして、細心の対策をこの開発事前事後にわたって実施していけば、この琵琶湖水位低下案を実現させても、琵琶湖及びその下流淀川における水質汚濁に関しまして、有意的な進行を生じさせないことが可能であるというふうに信ずるわけでございます。  以上でございます。
  5. 小林武

    委員長小林武君) どうもありがとうございました。  次に、津田参考人お願いいたします。
  6. 津田松苗

    参考人津田松苗君) 初めに少し現状を御紹介したいと思いますが、BODで見ますと、そんなに大きい値にならないわけでございます。これだけの問題じゃありませんので何ですけれども、たとえば北湖では〇・四から〇・九PPM程度、それから南湖では一PPMから一・五PPMというBODでございますから、それだけの値を見ますときれいなわけですね、わりあいに。川では、とてもそんな川でしたら、いい川だということになるわけです。ですけれども、それはどういうことで琵琶湖の水がそういうBODであるかといいますと、どんどん汚水が入ってくるわけですけれども、それが琵琶湖全体で二千日滞留する。平均二千日とどまっているわけです。五年半とどまって出ていくわけです。ですから、その五年半の間に希釈され、あるいは浮遊物は沈でんし、あるいは有機物は酸化され、分解されて無機物になるわけです。したがって、BODは減るわけです。それだけの自浄作用の力を琵琶湖は持っておるわけですけれども、しかしBODが低いということで安心しておられぬ。それはなぜかと言いますと、有機物が入ってきましたのが分解して、そうして燐と窒素を出すわけでございます。有機物の中には燐、窒素を含んでおるわけでございます。大体言いますと、乾燥しましたものの中に一〇%の窒素を含んでおる、それから一%の燐を含んでいるわけでございますから、それが分解しましたらそれだけ出てくる。そうすると、それが出ますと、それは植物にとっては肥料に当たるわけです。たんぼに施肥をする、燐、窒素を入れるわけですから、それと同じ効果があるわけでございまして、そこで湖の中の植物が大増殖する。その場合には、湖の場合には、植物プランクトンが非常にたくさんわくわけです。植物プランクトンが非常にたくさんわいた、そうして色がそのために非常に緑になる。緑色スープのような状態に見えるわけですけれども、そういう状態になったのを水の華と申しますが、水の華が発生しますといろいろな困る点が、利水上困る点があるわけです。現在、もういま琵琶湖でその状態になっておるわけでして、現在わいております植物プランクトンは、ミカズキモという、こういう三日月形のモですけれども、モと言ったって顕微鏡的なモ、それが非常にたくさんわいておるわけです。そういうものがたくさんわきますと、浄水で処理するのに非常に手間がかかる、あるいはにおい、味がついてくる、それから池自体水自体は非常にさわやかさが失われる、それから泳ぐ気にもならないというふうに、湖自体の価値が低下するわけですし、利水にも非常に不便になるということになるわけでして、水の華はいやがられるわけであります。アメリカではニューサンスとされておるわけでございますが、いま、それの原因は、結局窒素、燐の量が一体どの程度かといいますと、北湖では窒素が〇・二から〇・四PPM南湖窒素も大体その程度です。ところが、燐は北湖では〇・〇〇五から〇・〇〇八の程度でございます。それから南湖の燐は〇・〇一五から〇・〇二の程度でございまして、それで貧栄養湖、富栄養湖という区別を陸水学者はやるわけでございます。われわれもやるわけでございますけれども、栄養が少ない湖、十和田湖だとか中禅寺湖だとか摩周湖だとかですね、そういう非常にきれいな水のいい湖、それから燐、窒素が多くて植物プランクトンが非常に発生するという湖、それの境目をきめますのに、窒素では〇・二PPM、それから燐が〇・〇二PPM、ちょっといろいろ人によって違いますけれども、覚えやすいですから、こちらが〇・二、こちらが〇・〇二というのを境目にいたしますと、琵琶湖窒素のほうでは富栄養湖にもうすでに北湖もなっておるわけです、北湖富栄養湖の範疇に入るわけです。燐ではまだ両方ともなっておらない。南湖はすでになっております。〇・〇一五から〇・〇二ですからなっておるわけです。北湖はまだなっておりません。そういう状態でございます。で、南湖はほんとうはもっともっと悪くなっていいわけです、北湖とつながっておらなければ。諏訪湖を御存じだと思いますけれども、諏訪湖はもう非常に富栄養化、超栄養化してしまいまして非常にきたなくなっておるわけです。水面七メートルのうち、この辺まで無酸素になってしまっている、まっ黒になってしまって、上は非常な水の華、緑色スープになってしまっているわけですけれども、あそこまでならない、琵琶湖南湖は。ところが、湖としては非常によく似ているわけです。大体容積琵琶湖南湖諏訪湖の三倍あります。それからその回り人口が、大体諏訪湖回りが十七万ぐらいのようでございますから、その大体二倍ぐらいじゃないかと思います。そうしますと、容積で三倍足らずです。そして人口で二倍程度。最大の深度が七メーター、非常によく似た湖でございます。ですから諏訪湖があんなになっておることを見ますと、南湖だけであれば、ああいう状態にならなければいけないわけですけれども、ずっとずっと手前でとどまっておるということは、毎秒百六十トンの北湖の水が南湖へ入ってくるからでございます。汚染源はかなり諏訪湖と同じように多いわけですけれども、それにもかかわらずずっと手前でいまとどまっておるというのは、北湖からそういう水が毎秒入ってくるわけでして、そしてその水が南湖では十四日、二週間ほど、あるいは十二日ぐらいのときもいろいろありますけれども、大体二週間かかって琵琶湖大橋から瀬田まで出ていくわけです。ということは、一四分の一ずつ毎日新しい水が補給されているわけでございます。ですから、あれは単独の池ではないという観点でものを考えなければいけないと思います。それが南湖の救いだと、南湖がそれで救われていると言えるわけでございます。そして南湖北湖と比べますと、南湖北湖の面積では十一分の一なんですけれども、十一対一なんですけれども、深さがうんと違いますから、容積でいいますと百六十六分の一にすぎないわけであります。百六十六対一にすぎない、非常に小さいコップでございます。こちらは非常に大きいタンクでございます。そのタンクから百六十トン毎秒でわりあいきれいな水で還流するという状態琵琶湖状態でございます。ですから、諏訪湖だとか何とかいう単独の小さい湖でそしてまわりに人家、工場の多い湖と比べますとずっと救われておるわけでございますけれども、それにもかかわらず、富栄養化はやはり進みつつあるわけでございまして、先ほどのような状態でございますからその対策はもちろん立てなければいけないわけですけれども、それの一番大きい対策としてはやはり流域下水道だと思います。それでこれは一次処理——下水道で集めましてそして一次処理、二次処理と、つまり沈でん、それから生物的処理——活性汚泥法処理とかいうのを済ました処理後水を琵琶湖へ出してはいけないわけであります。なぜならば、そこまでの処理では燐、窒素は水の中にたくさん出ておるわけです。ですから、それを琵琶湖へほうり出しますと、それを使って琵琶湖でまた植物プランクトンがものすごくわくということになりますから、これは琵琶湖へ出さないで、琵琶湖より下に出すか、そうでなければ、栄養塩を取る三次処理でございますけれども、それをしてから琵琶湖に出すということにしなければいけないわけでございます。  いろいろ考えられておられると思いますけれども、しかし、そういうことをしても、一体湖というのは若返りをするだろうかという問題があるわけでして、一たん湖が富栄養化すればもとへ戻らないという説もあるわけです。説といいますか、まあ、これはしかしそう言うて一般に気をつけてもらうというのには非常にいいわけですけれども、実際は若返ることができないことではないわけでございます。たとえば汚染源を湖へ入らないようにしましたら、十年前、二十年前に戻ることもむずかしいことではありますけれども、不可能ではないわけでございまして、たとえばシアトルのそばにありますワシントン湖というのがございます。そこへシアトルの町の下水処理後水を放出しておりまして、そしてワシントン湖がどんどん富栄養化したわけでございますけれども、その放出をやめて、その処理後水をビューゼット・サウンド湾に直接出すようにいたしましたら、それから年々ここのワシントンレイクはどんどんよくなってきた、もとへ戻ってきた、ということもありますし、それからウィスコンシン州のマジソンという町がありますけれども、そのそばにありますワウベサ、ケゴンサという並んだ湖がありますけれども、マジソン市の処理後水をここへ入れておったわけです。川でここへ入りまして、そしてまたここへ、そうするとワウベサ、ケゴンサはどんどん富栄養化いたしました。しかしこれをやめましてさらに下の川まで持っていって放流するようにいたしましたらここがどんどんよくなってきた。それから日本の例では北浦がそうでございますけれども、北浦は戦後どんどんでん粉工場ができたわけです。北浦の周辺にものすごくたくさんの中小のでん粉工場ができて、そしてそれが冬操業しますから、冬どんどん排水して汚濁した。そのために北浦はものすごく悪い湖になった。諏訪湖よりもっと悪い湖になったわけでございます。ですけれども、それがでん粉工場も操業をやめましたから、経済的な理由だと思いますけれども、つい十日ほど前に行きましたら、もうきれいな湖、昔よりはもうずっときれいな湖になっておる。ですから、汚染源を絶てば湖が回復するということは言えると思います。ただし、琵琶湖の場合、下水道だけが唯一の解決策とは考えません。それが一番重要な、そして最低限の流域下水道というものは最低限の必要のあるものではございますけれども、それだけでもう完了だと、琵琶湖汚染対策完了だというわけにはいかないと思います。利用の問題もありますし、その他いろいろあると思いますから、その後いろいろ知恵をしぼっていかなければいけないんじゃないか。それからまた近畿の水利用のためには琵琶湖のその問題だけじゃなくて、淀川から取るわけでございますから京都市下水の問題もありますし、その他今度は使うほうの側の、どう水を使うかという問題もあると思いますから、なかなか複雑ではあると思います。  いずれにしましても、現在の技術というのがそれこそ現代の技術でありまして、こういう方面はどんどん何か変わっていく、あるいは加わっていくわけでございますから、そういうものをどんどん推し進めて、解決——琵琶湖かほんとうにきれいになるという方向に持っていっていただきたいと思います。
  7. 小林武

    委員長小林武君) どうもありがとうございました。  次に、三村参考人お願いいたします。
  8. 三村浩史

    参考人三村浩史君) 私は、琵琶湖の水の問題ではなくって、主として土地利用の問題について、若干意見を述べさせていただきたいというふうに思います。  琵琶湖は、十年前まで、主として農業地域でございましたですが、現在では、非常に激しい都市化地域に入っております。したがいまして、問題点の第一は、この琵琶湖におきますところの都市化というものをどう考えるかということでございます。現在、滋賀県のほうの地域計画の新しいものが策定中というふうに聞いておりますが、四十二年の計画数値でございますと、たとえば人口は現在九十万人のものが——現在といいますのは、これは若干もとの計画より、四十二年度の数値をエクステンションして使っている数値でございますが、九十万人のものが百十五万人になると。しかし、現在の趨勢からいきますと、おそらくこれを上回ることは確実であろうと思われます。それに必要な市街地の面積は、現存する市街地の面積の約一・五倍程度になるんではないか。また、工業におきましては、工業出荷額が以前の計画でございますと、二千五百億、年間ですね、出荷額が約一兆八千億、六倍ないし七倍にこれが伸びるというような計画が行なわれている。また、観光客——琵琶湖はそういう都市化地域でございますと同時に 琵琶湖国定公園のレクリエーション地域である。特に大阪湾の海水浴場がほとんど失われてしまった現在では、近畿の住民にとりまして、非常に重要な郊外レクリエーションのスペースでありますが、この観光客が現在では約二千五百万人、年間の来訪者に対しまして、将来——と申しますのは、先ほど申しましたのは昭和六十年——一九八五年でございますが、この時点におきましては、滋賀県の推定では六千七百万人、約二・五倍になると。水源地帯におきましては、このような都市開発ないしは観光開発がまだまだ進行していくということが現状でございます。このこと自体は、直接琵琶湖水質あるいは環境というものに影響を及ぼすものと及ぼさないものとがありますが、土地利用の面から見ますと、これらがどういう形で開発されていくかということが第二番目の問題になります。  その点で見ますと、まず、こういった工業、市街地、そして観光施設というものがいずれも、私どもの言い方によりますと、スプロール状に広がっていく。スプロールというのは、蚕が桑の葉っぱを食べていきますように、自然とか農耕地帯を市街地その他の都市的な施設が食い尽くされていく。そしてそれが計画的でないために、さまざまな都市施設の不足あるいは土地利用の混乱が生じるような現象をスプロールといっておるわけでございますが、これが進んでいくわけであります。これが先ほどからお話しのありましたように、下水計画が先行するのではなくって、下水計画よりも先にスプロールが激しい勢いで進んでいくということがたいへん重要な問題ではないかと思います。また、スプロールにつきまして、現在、宅造とか、開発行為の規制というものを行なう必要があるわけですし、さらに、その開発規制の中には排水規制、特に濃度規制を含めたものを行なっていく必要があると思うんですが、そういったことが現在の制度のもとではなかなかできない。新しい都市計画法ができましたが、これが現在適用されておりますのは大津、湖南、それから彦根、長浜地区でございまして、そのほかの地域は旧都市計画法でございます。ですから、調整区域といった形での開発規制というものが現在行なわれていない。そうして、これが新しい都市計画法に切りかわるのは四十八年から九年というような時点ではなかろうかといわれております。この間に開発スプロールがさらに進行することが予想されるわけであります。  それから、観光施設につきましては、特に湖岸というものが非常に重要であります。湖の岸でございますが、これが琵琶湖淀川の河川敷でございますが、ほとんど湖岸に公有地が少ない。平均すると、十メートル以下ではないかというふうに考えられております。したがいまして、その湖岸ぎりぎりにこういった施設が立地いたしますと、国定公園としても湖岸の利用価値というものが著しく低下するということが予想されるわけであります。  で、こういったスプロールを防ぐ必要があるわけですが、今回の総合開発という内容を私十分点検したわけではございませんが、ざっと点検いたしましたところ、次のような点が指摘されると思います。  それは、まず第一に、水質の汚染及び土地利用の、あるいはその環境に非常に大きな影響を及ぼすところの開発規制、それは土地の開発規制と、それから排水規制ということを含むと思いますが、特に土地利用の規制が非常に弱いということが現実であります。  また、先ほど申しましたように、下水道の先行的な整備が行なわれていないという点が第二点かと思います。  それから、三番目には、今後の計画では湖周道路というものがございますが、これが湖周道路をそういった土地の開発規制ないしは公有化というものを行なわないままに進めますと、この道路が沿道のスプロールをさらに促進するということにならざるを得ないわけであります。現在、大体考えられている湖周道路は平均しますと、三十メートルから五十メートル湖岸から内側にとるというようなお話がございますが、私ども一応琵琶湖に最も普遍的な湖岸の利用形態であります水泳場というもの、白砂青松の水泳場を確保するという面から申しますと、やはり百メートルは、最低限、湖岸の幅として要るのではないかというふうに思います。三十メートルから五十メートルでは著しく不足しまして、湖岸のレクリエーション、水泳の利用価値というものは非常に下がるということを考えておかなければいけない。現在の湖周道路では、そういった三十メートル、五十メートルといったところで非常に幅が狭いわけでありますが、さらに一部は湖岸の上に出てくる。そうなってきますと、琵琶湖の自然植生とか生態にとって非常に重要なヨシ浜というものが失われていく、こういった影響もあるんではないかと思います。そういった意味で、私はこの道路というものがはたして必要かどうかということがありますが、かりに道路をつくるにいたしましても、この道路は湖岸を私どもの考えでは少なくとも百メートルを残して、そうしてその外側につくるべきである。湖岸と湖岸の河川敷と新しい道路との間はできるだけ公有化する、あるいは公園的な扱いにするということがなければ、水質の問題だけでなくて、国定公園の景観あるいはレクリエーションの利用価値というものが失われてしまうのではないかということをおそれるわけであります。  さらに、四番目の問題といたしまして、水位低下の問題がありますが、これがどれくらいの頻度で水位低下が起こるかということが問題ですが、十五年から二十年に一回そういった一・五メートル水位低下が起こる。そうしてそれが復元に半年とか、あるいはそれ以上の期間がかかるというようなことがいわれておりますが、こういったことになってまいりますと、先ほど申しましたレクリエーションの利用価値の低下、それから景観の変化、それから生態的なものに及ぼす変化といったものが非常に大きくなるわけであります。たとえば、こういった一・五メートルでは、琵琶湖のあやめ浜では約九十メートル、それから浮御堂では百十メートル、志賀町の湖岸では二十メートル、近江白浜では六十メートルといった湖岸が、湖底が水位低下によって露出するというふうにいわれております。  私は、こういったことで、現在の開発をそのまま進めるならば、湖岸の土地利用、それはレクリエーションの利用価値といった面が大きいわけですが、それが非常に失われるであろうということをおそれております。したがいまして、水質の問題を含めて考えますと、この開発におきましてはまず琵琶湖というものの水質及び湖岸の環境というものの何といいますか、一つの容量といいますか、開発限界というものをまず定めまして、それから土地の開発、水の利用といったものを逆算していって可能な開発にとどめていくといった、いわゆる環境容量といったような考え方が必要でありまして、従来のようなトレンド型の開発、いままでこう伸びてきたからさらにこれだけ伸ばすのだ、これだけ土地が要る、これだけの水が要るからそれだけ供給するのだ、開発するのだという考え方を改めて、トレンド型ではなくて、いわばゴール・オリエンテッドと申しますか、目標を定めまして、それに合わせて開発量を規定していくといったふうに切りかえる必要があるのではないかと思います。  また、こまかい話では、この湖周道路につきましては、先ほど申しましたように、これを言ってみますと、単独の道路としてじゃなくてパークウェーとして考える、そして、それには現在よりもより広い緑地を湖周道路と湖岸の間にとるということ、その間を道路建設あるいはそのほかの予算でできるだけ公有化していく、その途中の経過におきましては強い規制をかけていくということがどうしても必要かと思います。そういった点では、現在道路予算が八百数十億というような予算がついておりますが、土地の公有化といいますか、そういった湖岸の保全のために土地を公園化していくという予算がわずか三十億円しかないということですね、この点につきましては私非常に残念だと思っている次第でございます。  以上でございます。
  9. 小林武

    委員長小林武君) どうもありがとうございました。  次に、森参考人お願いいたします。
  10. 森主一

    参考人(森主一君) 私がこの場で御意見を申し上げますのは、おそらく御期待は私の専門的な立場からの意見であるというように思いますので、この場の私の専門といいますのは、湖沼——湖の生物を研究しておるということだと思います。ですかから、そういう点から御説明したいと思います。  それで、この総合開発の問題点が二つあろうかと思います。マイナス一・五メーター水位低下がときどき起こる、その問題と、それから琵琶湖水質の汚染の問題ということになると思います。  それで、マイナス一・五メーター水位変動がときに起こるということに関しましては、私ども昭和三十六年から昭和四十一年まで足かけ六年間建設省の委託を受けまして琵琶湖生物資源調査団というものをつくりまして、琵琶湖の生物をこういった見地から研究してまいりました。それで、その後も現在に至るまでそういった方面の研究を続けております。ですが、きょうは非常に時間が限られておりますので、その問題はわりあい短時間で終わらしていただきたいと思います。と言いますのは、ここにこういう、これは建設省がお出しになっております「琵琶湖生物資源調査団の報告」というのが一般に出ておりますので、これをごらんになれば大体わかります。まあなかなかわからぬかもしれませんが、わかるはずでございます。ですが、まあかいつまんで申しますと、影響は下等な生きものほど少なくて、高等な生きものほど多いということが言えます。それで、かつ漁獲の対象になっておりますのは、高等な生きものですね、魚とか貝とか申します高等な生きものでございますので、したがって、そちらのほうの影響というのは相当考えなければいけない。  それで、魚に関しましては産卵場の問題、大体岸近くに来て産卵するのが多いです。それから、子供がそこで育つわけです、モがたくさんはえております、その下で育つ、その問題。それからアユですね、特に琵琶湖で非常に重要なのはアユでございますが、これは全国の放流アユの八〇%は琵琶湖のアユを使っておるわけですから、単に琵琶湖だけの問題ではなしに、全国の問題であります。そのアユの遡上、川へさかのぼってくる。これは年に二回のぼります、春と秋です。春のときにのぼってくるのは成長のために川へ入ろうとする。それをつかまえて全国へ放魚のために出すわけですが、秋ののぼってきますのは川の口を入って、そこで産卵するためにのぼってまいります。この水位低下によりましてその時期によりまして、もし 上の時期に当たったら、これは重大な影響があるということが言えます。そういう魚の影響のほかに今度は貝ですね、琵琶湖は御承知のように養殖真珠をやっておりますが、その母貝が「イケチョウガイ」という貝ですね、そのほか「セタシジミ」という有名なシジミがありますけれども、特にこの「イケチョウガイ」は深さが二十メーターぐらいのところまでおります。おりますけれども、親の住む場所と子供の住む場所が違う。それで、子供は深さ五十センチから三メーターぐらいの間に最も多く住んでおります。したがって、水位の変動というのはその部分で最も起こるわけであります。そうすると、この真珠母貝の生産というものに非常に大きい影響がある。あるいは養殖真珠のいかだの問題もございますけれども、そういう点はちょっと省略いたしまして、そういった問題が水位低下に関してございますので、あるいは漁具とか漁法とかのいろいろな問題がございます。  しかし、そういう問題は一応その程度にいたしまして、こういう影響があるだろうというようなそういうことを考える前に琵琶湖の現状がどうであるのかということをまず認識する必要があると思います。この点でいままでお述べになった方の中の御意見と多少違う点があるかもしれませんが、私どもは琵琶湖の岸に研究所がございまして琵琶湖の定期観測というものをずっとやっているわけでございます。その結果の一、二を御紹介したいと思います。  私どものやっております、プランクトンの調査、こういうものをやっておりますが、この植物プランクトンあるいはバクテリア、そういうものが最近異常に繁殖しております。それで、御承知のように、京阪神にくさい水騒ぎというのがございました。これは一九六九年ですから昭和四十四年ですか、そのころから非常に激しくなりまして、それであれは光化学スモッグみたいに急激に広がって、そしてことしなどはもうすでに始まっておる、初めのうちは夏だけということだったのがだんだんと広がりつつあります。それで、これは全く植物プランクトンの異常増殖あるいは放線菌といいますバクテリアがございます、そういうものの異常増殖、そういうものから何かにおいが出るということらしいですが、そういうことが、昭和四十四年以来急激に起こってきたということ。それからもう一つ、これは南湖の話ですが、水道を取り入れているのは。それじゃ一体、琵琶湖の大橋ですね、あれから北の非常にきれいな水があると考えられる、あの部分はどうか、あれはやっぱりきれいじゃないかということがございますが、どっこいそうじゃない。それは私どもはあそこの北の七十メーターの深いところで調査を毎月一回やっておりますけれども、そこの生きものを見ますと、われわれ見ますのに、一平方メートルに何ぼ生きものがおるかという、面積一平方メーターを見るわけです。そこにもっぱらおりますのは、「イトミミズ」といってミミズの類です。これは金魚屋などで売っている赤子というやつですね。あの「イトミミズ」が湖底べた一面におるわけです。それが昔は非常に少なかったんですね。ところが一九六六年、六七年ごろから、いまから五年ぐらい前から大増殖を始めまして、それでその当時一平方メーターの面積の中に重さにして五グラムくらい「イトミミズ」がおったんですが、逐年増加いたしまして、去年は二十四グラムになっております。つまり五倍ですね、五年間に五倍といったら、毎年こうふえていっておるわけです。きれいな水をたたえているように見えますけれども、汚濁は着実に進行しておるということでございます。  それからその付近に、底の酸素酸素の量は非常に重要でございます。この琵琶湖の底の酸素がどうなっているか。それで、生きものは酸素を呼吸しております、水の中に溶けている酸素を呼吸するわけでございます。もしも腐敗したものがございますと、その腐敗したところへバクテリアなどが繁殖しますし、あるいは腐敗したものが物理化学的に酸化させられるということで、やはり水の中に溶けている酸素をとる。したがって、きたないところでありましたら、酸素が減るわけです。ところが、琵琶湖の七十メートルの北のきれいだと考えられているところのそこの水の中の酸素は、これまた着実に減っているわけです。いまから五年ぐらい前でございますと——溶け得る最大量がございます、水の中に溶け得るかりに最大量を一〇〇といたしますと、数年前までは一年の中では一番少ない時期で六〇%以上の酸素が溶けておりました。ところが、それが逐次減りまして、一九七〇年というと昭和四十五年ですか、そのときには三二%になっておる、溶けておる酸素が。つまり、それだけ有機物がたまってきたということです。ですから、着実に汚濁化が進んでおるということこういう現状に立ちまして、これはせっかく水をとろうとしましても、あるいはまたさっきのお話の観光とか、レクリエーション、そういうものを考えるにしましても、水がよごれてくればこれは全部御破算ということになります。ですから私としましては、何よりも申し上げたいのは、まず何よりも水質がよごれていくことを防止する。これは今度の措置法にちゃんと修正としておつけになりました。「自然環境の保全と汚濁した水質の回復を図りつつ、」とこれがぽんと一番に出ておる。これを非常に私重要視していただきたいというように思うのでございます。  それで、その措置で琵琶湖の場合は、まあこれは川よりはその措置がむずかしい、たまりますから。先ほどのお話のように、入った水が五年半もたまっておる。五年半たまっておる間に、きたない入ってきたものを全部琵琶湖がこしておって中へためる。そうして上澄みを瀬田川へ捨てる。そういうかっこうになるわけでございます。ですから湖の場合は、汚濁防止は川よりはむずかしい。しかも、湖でも深い大きい湖は小さい湖より一そうむずかしい。だから諏訪湖の汚染防止を考えるよりは琵琶湖の防止を考えるほうがもう格段にむずかしい。それからさらにむずかしいことは農耕地があるということです。いま津田さんがちょっとおっしゃいましたけれども、この農耕地からの農業肥料ですか、そういうものの汚染に対する貢献度というものは、都市排水あるいは工業排水、そういうものに比べて非常に大きいパーセントを占めております。これは数字などは一応略しますけれども、ですから一体何をとめていいのか、農業の排水路から出てくるもの、これをどうしてとめるかというと現在ほとんどお手あげの状態だと思う。ですからたとえ都市排水をうまく処理しても、工場排水処理しましても、この農業排水から出てくるものがお手あげであれば、これは汚濁進行するにきまっておる。ですから、それに対していろんなことを考えなきゃなりません。そういうことでございますので、少なくもまずいまやるべきは、下水道の完備、これはこちらの皆さんお触れになりましたので説明いたしませんが、下水道の完備あるいはし尿処理施設の完備ですね、そういうものは何をおいてもやらなきゃならぬ。  それから滋賀県というより、まあ琵琶湖はおそらくいろいろな関係だと思いますが、内湖をどんどんつぶして、この内湖をつぶすということは水産上の影響ということも大きいのでございますが、しかしあそこは、排水が入ってきてあそこで沈でんしておって、排水を浄化しておったわけです。その浄化池をなくしたということですね。ですからきたない水が、そのまま琵琶湖へ入るようになった。これは非常に大きい。ですから内湖的環境というのは大いに造成する必要がある。それからいま三村さんもお触れになりました湖周自動車道、これは昨年の十月ですか、朝日新聞が全国で調査なさっておりますけれども、まあ全国の国定公園、国立公園で、その破壊の元凶というのは自動車道であるということになっておるわけです。ですから、これは三村さんの御意見よりは私はもっと強く、こういう湖畔を自動車でばっと走るというようなことはもういけない。それで遊歩道とかあるいはせめてサイクリング道路ですか、そういうふうなものにすべきであるというような考えを持っております。もう少なくも、この環境整備の手段が十分にできるまではそういうふうにすべきである、あるいはまあ日本人のモラルの問題もございましょうが、そういったものが十分でない段階でどんどん仕事を進めるべきでないというように思うんです。  時間、もうちょっといただきたいと思うんですが、それで私は、一体それでは琵琶湖琵琶湖といって、琵琶湖の価値というのは何か、これは私かねてからこれには四本の柱があるということを考えております。その一本は、水そのものの価値でございます。つまり下流で水がほしい、工業用水、水道水がほしいという、この無機物であります水ですね。この水そのものの価値、水資源といいますか、それから二本目が、これは水産上の価値でございます。三本目は観光上の価値、これはこちらがお触れになりました。観光上の価値ですね。それから四本目、この四本目が十分に認識がないように思いますが、それは文化教育上の価値と私称しております。琵琶湖は、これは数百万年あるいは一千万年以上古い歴史を持っておる。あの湖は世界でシベリアのバイカル湖、それからアフリカのタンガニーカ湖、それに次いで琵琶湖というくらいに古いということになっております。その他の世界の湖はたいてい数千年あるいは数万年の歴史なんです。これが数百万年あるいは一千万年、こういう歴史を持っておるという湖は世界で非常に珍らしいわけです。そういうものでありますがゆえに、日本列島の歴史とかあるいは地球の歴史とか、そういうものを調べることによってわかってくる、あるいはそこに住んでおる生きものを調べることによって生きものの進化の歴史がわかる。現に日本に住んでおります淡水産の貝が六十種おります。その中で琵琶湖に四十種類おります。そして、琵琶湖だけにしかいない貝が二十種類おります。つまり、日本に住む貝の三分の一は琵琶湖だけにしかいない。ですからそういった点を考えますとこれはいま貝だけ申しました。その他生きものよく似ております。ですからまさに国宝的な価値があるというように私考えます。この文化教育上の価値というものをあまり大きく言っておりませんので、これを特に強調しておきたいと思います。  それで、四本の価値をそれぞれ点数を与えなければならぬわけですね。それで、今回の措置法案では、地域住民の御意見を聞いてやらなければならぬというようになっております。これはまことに私けっこうなことだと思うのです。それは最終的に地域住民がそれぞれに点数を与えて、どういうふうにしていく、琵琶湖の運命をきめていくということだろうと思うのでございますけれども、いまの文化教育上の価値というものがどの程度に点数が与えられるか、これはひとつ特に参議院などでよくお考えいただきたいというように思うのでございます。  ですから、終局的に工事をおやりになるならば、この手順というものを考えて、水質保全、こういう関係の工事をまずやる、それがちゃんとなった段階で、次に進むというようにしていただきたいというように私は思います。それだけです。
  11. 小林武

    委員長小林武君) どうもありがとうございました。  以上をもちまして参考人方々の御意見の御開陳は終了いたしました。  それでは、質疑のある方は御発言を願います。
  12. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 ただいまもそれぞれのことについての研究成果をお聞きして、この法案の審議にあたりましてたいへん参考になったというよりも私自身は非常に勉強になりました。いろいろ聞きたいこともございますけれども、たくさんの委員の皆さん方の発言があると思いますので、私は幼稚な質問でありますが、一点だけ津田先生にお尋ねしたいのでありますが、と申しますのは、これは何というのですか、私どもこういうことに非常にうといのですが、琵琶湖の水が五年間に一回回転するとおっしゃったし、南湖の水は十四日くらいの程度で交代するとおっしゃった。これは私ども、こうなると、七十メートルもあります北湖の水の底のほうも全部やはり転換するのか、見てますと表の水が流れていくものだから、私しろうとから考えると底の水は、これはやはり何だかんだ残って、ほとんど永久的に下の水は残りっぱなしじゃないかと、上積みの何メートルぐらいが流れていって、いまこれはしろうと考えで思うのです。いま先生の御説を承って五年に一回は転換するというお話しですし、南湖に至っては十四日に一回ということなんですが、これはそのまま聞いてそういうものでありますかどうか、これをもう一回一つ具体的にお伺いしたいと思います。
  13. 津田松苗

    参考人津田松苗君) それでは説明させていただまます。  夏は、おっしゃるように上の水が南湖へ、北湖の上の水が南湖へ流れてきます、そして瀬田川に出ていく。というのは、夏は、北湖は非常に深いため、百二メーターあるいは五メーターと言われておりますけれども、そのうちの上十メーターが表水層といいまして、わりあいに同じ温度なんです。そうして高いのです、あたたかいわけですね。そして十メーターから二十メーターにかけて温度が減りまして、それからあとまた大体減ったままの低い温度でずっと深水層まで——表水層、変水層、深水層と申しますが、そしてこの南湖には表水層の水だけ流れていくわけです。そしてこちらはじっとしているわけです。ところが冬になりますと全部冷たくなります、だんだん夜冷えまして、冷えた水は下にいく、下にもしあたたかい水があれば上がってくるという、循環期と申しまして、冬、全循環をやるわけです、北湖の水が。ですからここの水も冬ここに上がってくるという、上がってくるというか、一緒になるわけですね、全部混合してしまうわけです。それが今度春から夏にかけて、また冬も出ていきますし、ですから、そういう時期が一ぺんございますのでここの水はもう永久にこのままというわけではないわけでございます。
  14. 沢田政治

    沢田政治君 しろうとでございますので、とんちんかんな質問になると思いますが、岩井先生、津田先生は、大体、楽観論、悲観論という合け方は適当でないと思いますが、発生源の、汚濁発生源対策さえよろしきを得れば、水位低下によって現在以上汚染濃度が高くなるとは考えられない、こういうような要約になると思います。それぞれ御研究の結果だと思いますので、これを否定する何ものもないわけですが、しかし、その前提ですね、たとえばいまのままの湖周周辺の人口分布なりの状態で、水を測定されておると思いますね、いまの状態のまま。ところが開発が進むにつれ、やはり湖畔の生存状況、地域のですね、大きな変化があると思います。たとえば、三村先生も言われましたように、湖周道路をつくった場合、多くの私有地がありますから、私有地でありますから、これを規制することは何ものもできないわけですね。したがって、これはスプロールというか、家が、どんどん施設ができていく。従来も人が住んでおったわけですが、その地域に住んでおったわけですね。たとえば汚物を流しても、ある程度自浄作用があるわけだ、遠距離になれば。ところが、五十メートル、六十メートルの湖岸に人口がどんどんふえてくるというと、自浄作用もこれは低下してくるわけです。ストレートで流れるわけですね。そうなって、今度は水位低下した場合はどういう変化が起こるものか。いまの、あなた方が言われたように、発生源対策さえよろしきを得ればという、そういうことがはたして防ぎ得るものかどうかですね。それはあなた方の科学的ないろいろな成果はこれはそのまま受けましょう。だけれども、大きな変化がこれはもう現実問題として起こってくる可能性ありはしないかどうかと、それと同時に皆さんも単なる、何というか、水質がどうなるかという変化じゃない、どういう予算でどういう金でどういう——無制限に金をかければたいがいのものはこれは解消されるわけだ。ところが国で事業をやる、公共団体でやるということになると、これは百点満点にいかぬと思うのだ、そういう対策も。そういう現実に対し、何というか、これだけの経費がかかるというものを、予算を、想定したものを考えてこれは防ぎ得るというふうな可能性というものをこれは考えてのことかどうか。この付近を、私しろうとでございますので、お考えになっておること、両先生からお伺いしたいと思うわけです。
  15. 岩井重久

    参考人岩井重久君) それでは、私先にお答えさしていただきます。  昔はし尿を田畑に使っておりまして、それで特に水田なんかは絶好の浄化処理施設であったわけでございます。不衛生でございますけれども、結果的に見れば、そういうことでくみ取りし尿なんかを使うということは最終的に先ほど申しました酸化池のような役目を水田がいたします。ところが化学肥料になってきたので、くみ取りし尿のし尿処理場というものを設けてやる。いまの自浄作用の話でございますが、まさにお説のとおりでございまして、湖岸にいろんな近代的な家ができて、水洗便所化されて、その水をそのまま湖に出されてはたまったものではない。しかし、例の廃棄物処理及び清掃に関する法律、これが四十五年の公害国会、年末に制定された。それに旧清掃法が変わりまして、浄化槽の放流水の水質の基準も一段ときびしくなった。ところが、浄化槽そのものは、いままで非常に効率が悪くて、それこそもう非常にでたらめな排水を出していたわけでございますが、最近は、これが非常にきびしく規制をされる、一方技術的にもいろいろ研究されまして、五年前、十年前よりは比較にならない程度のいい水を出しているわけです。ですから、そういうふうな技術開発、それ以外にいろんな基準による規制というものを強化する、こういうことによらざるを得ない。しかし、理想的には、下水道を完備いたしますと、そこで集中的に全部収容して、一ヵ所において厳重な管理下のもとにおいてきれいにして出すということになります。しかし、それまでのもし期間が非常に長くかかるということであれば、そういう方法もある。先ほど農地からの窒素なんかの流出について森先生がお話しになりましたが、これも先ほどのし尿の、くみ取りし尿の、し尿の場合と同じで、そういう時代があって現在は化学肥料を使っている。化学肥料の場合はあるいは自浄作用を受けにくくて、あるいは吸着作用を受けにくく、湖のほうに多く出るかもしれませんけれども、しかし、使った肥料が全部出るというわけではなくて、ある程度は作物に使われる、また土なんかに吸着される、また自浄作用を受ける。ですから、今後われわれが農学会の委員会においてやらさしていただいた研究では、現在そういうふうな水田の目標をつくりまして、そこに肥料を与えたときたに最終的にどのくらい出てくるか。つまり逆に申します、歩どまりと申しますか、水田でどのくらいとまってしまうかと、そういう研究をいたしております。ですから、そういういろんな点における研究をうんと進めて、それが実現可能であるという見通しであれば踏み切ってやればいい。しかし、よく実現可能でないのに、研究した結果、これはこういう施設をつければだいじょうぶである、これは二重の罪を犯すことになります。つまり一般の人をだまして、これで公害は生じないんだと、そういう施設であると言いながら、実際は効率があがっていない。ですから、そういうことが今後厳重に規制されるようにならなければならないと思います。しかし、いまのお話のように、できるだけやはり研究いたしまして、どんどんと先生方のそのために研究費も必要でございますが、そういうことによってある限度までは解決できる。しかし、解決できないものを解決するというふうにだまして計画するということは、これはもう非常な害悪である、そういうふうに考えます。しかし、いまのお説のように、湖岸に建った家の排水については、最終的には下水道、しかし、暫定的には小規模の汚水処理場、コミュニティープラントと申しますか、あるいはそれが不可能なれば、高能率な浄化槽で対処できるというふうに考えます。
  16. 津田松苗

    参考人津田松苗君) いまの状態で、そうして理屈の上でということで、そのとおりでございますから、これから湖岸にどんどん家が建ったらということはもうたいへんなことだと思います。やり方としては、湖岸に建った家のまた排水を集めてさらに浄化するというふうにしなければいけないかと思いますけれども、ほんとうは湖岸に建ってほしくないわけですね。それで一九六五年ですけれども、アメリカのウィスコンシン州でウィスコンシン・ウォーター・リソーシス・ローという法律が——州ですから条例かもしれませんが、それをきめました中に、湖畔のすべての小屋、建物を後退しろ、これからこしらえないのはもちろんのこと、湖岸から千フィートの線まで、ですから三百メートルほどですね、後退することを、それから川の場合は三百フィートですから百メートル、それを要求しておる。ですから、そういうゾーニング・レジストレーション・フォア・ウィスコンシンというもので、非常にきびしいものでございますけれども、そういうことが日本でもできればいいのですけれども、このウィスコンシン州の湖なんかを見ますと、もうすでに何といいますか尾瀬ヶ原か、あるいは北海道の摩周湖か屈斜路湖か、そういうような感じのところに湖があるわけですから、そういうことができるわけでして、家が何軒か立ちのくという程度でこういうことが行ない得るのじゃないかと思いますけれども、とても琵琶湖の場合は八十五万人の人口があの回りにおるわけですし、それぞれが仕事をいろいろする、それぞれの経済活動があるわけですから、私はそれは森さんと同じようにこういうことを言いたいわけですけれども、まあそこまで言えない。ですから、せめて湖岸これだけとか何とかいうようなことを考えて、もう水ぎわぎりぎりまで旅館だとか何とかが建つというのは、建築されるというようなことを防ぐ。それをどの辺までということは、またきめていただいたらいいのじゃないかと思いますけれども、どこまでというところが日本じゃなかなか言えないのじゃないか。
  17. 沢田政治

    沢田政治君 他の議員の質問もあると思いますので、簡潔にまとめて質問をいたします。  おとといの委員会でも、湖周道路をつくることがどうかと、こういう疑問が提示され、大臣も、私も疑問に思うという発言をなされたわけですが、私もいま皆さんも、直接間接にやはり湖周にさらに人家等が、人口が密集した場合は、やはり汚染のこの機会というものが多くなるという懸念をされておるので、その点については非常に私も同感を感じるわけです。  そこで、三村先生も憂慮されておりましたように、やはり湖周道路をつくる場合、メリットとデメリットがあるわけですけれども、やはり人口が集中してくる可能性があるわけですね。それをどう考えるかということと、最後に森先生にお伺いしたいわけですけれども、一つのものを開発するという場合には、現存する価値と変化されてつくり出される価値、この比重になると思いますね。したがって、開発効果というのはその比重の関係に、私はしろうとでありますけれども、あるのじゃないかと思うのです。そこで、森先生が四つの価値をあげられたわけですが、この歴史、教育文化上の価値というのは、どれだけに金に換算して価値を出すかということはこれはむずかしいわけですが、最も現実的な問題は水産の問題もあると思います。それはいま琵琶湖は、これはあの周辺の琵琶湖ばかりじゃなく、おっしゃられましたようにアユの稚魚等の八〇%はあそこから出ておるわけですね。僻地地帯で、水がいいところはあそこの稚魚ですよ、ほとんど。そこで、あそこの稚魚がとれなくなるということは、やはり内水面漁業をやっておる過疎地帯の内水面漁業に壊滅的な影響を与えるわけだ。これは輸入してくるわけにもいかぬし、微妙な生物ですからね。そういうことになると、やはり一メートル五十、しかも遡上期にやはり水位が低下するということになると、絶無になるだろうと思いますね、私も専門家じゃありませんけれども。これは現にそういうことがあるわけですね。だからそうなった場合には、やはり絶無になる可能性があるかどうか。全体的にどういう——金額的に計算しておらぬと思いますが、及ぼす影響、稚魚をもって成魚にして販売したという場合のやっぱり及ぼす影響というものも、常識的でけっこうですから、考えられておられるならば、一応御見解をお伺いしたいと思います。
  18. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 いまの質問に関連してちょっとお尋ねします。  私が心配したのは、森先生が遡上時期とおっしゃった。それと関連して、じゃ河口のいわゆる渇水時における一メーター五十から二メーター下がった時期というものがいわゆるアユの二回にわたる年間の遡上時期と合致すれば、いま沢田先生もおっしゃったように、たいへんなことになる。かりにまあ河口の長い歴史的な渇水時期がちょうどそのアユの二回にわたる遡上時期と合致しなかったとするならばやや救いがある。私は先ほどお聞きしていて感じたのですが、先生の御研究の結果が、そのアユの遡上時期と、いわゆる一メーターないし一メーター以上の渇水時期との合致点があったかどうかについて先生の御研究があれば御発表願いたい。
  19. 森主一

    参考人(森主一君) まず、前のほうの御質問からお答えいたしますが、もしも現在の河口の状態を何にもさわらないでおいておきますと、おっしゃったような可能性があると思います。ですから、アユが遡上できるように河口を変えてやるということができましたら、それはよろしいわけですね。ところが、それが一〇〇%自信があるかと申すと、現在これは建設省の琵琶湖工事事務所というものがございます。それから滋賀県に水産課がございます。そこらのほうと私どもとは目下研究中と申しますか、そういう状況だと思います、公平に申しまして。で、まあ岸のしゅんせつといいますか、河口のしゅんせつですね。そういうふうなものでいけるんじゃないかという感じもいたしますが、しかしたとえ、しゅんせつしますと、今度は水位が平常のときにそこはたまるわけですね。たまったところへ一体上がってくるかどうかという問題がまた出てくるわけです。それで掘ったり埋めたりいつもできるものじゃなかろうと思いますので、そこらのところを詰めなければならぬというように私は考えます。また建設省のほうで、あるいは滋賀県のほうで何かお考えがあれば、あるかもしれませんけれども、私はそう思います。  それから、あとの御質問でございますが、最近の水位はどうなっていますか。そのグラフがございますね。問題は時期だと思います。何月ころにそうなるかという、どっかに図があったのですが。  まあマイナス一・五メーターにコントロールなさった場合の建設省のお考えでございますと、九月が産卵のために遡上する一番重要な時期ですが、それがマイナス一・五メーター極限になっておりますですね。ですからその時期は、まさにその時期であるということであります。
  20. 三村浩史

    参考人三村浩史君) 湖周道路という名前の道路がはたして必要かどうかという点、まず第一。それから湖周道路ができる場合に、先ほどから湖岸がどうなるかというお話、それが第二点。お答いたしたいと思います。  第一点につきましては、私、湖周道路というような琵琶湖をぐるぐると一周しなければいけないというような必要性はほとんど考えられないわけであります。二百三十五キロの周長がございますが、これを全部回らなければいけないというような交通量はほとんど発生しない。必要なことは、各湖岸におきまして、農業、漁業集落あるいは観光施設等に、幹線道路から湖岸に到達する道路が必要なことであろうかと思います。したがってそれは局地的な、いわばアクセス道路といいますか、こういう機能が果たされればいいのであって、湖周という名前の道路は私必要ないというふうに考えております。  それから二番目には、私今回湖周道路が新設される安曇川河口の地域において、現在民間の不動産業者、大はないのですが、中小のディベロッパーが一体どのように土地を購入しているか。昨年八月に私どもで調べました図面を持参いたしました。ちょっとこれは一万分の一の図面でございますが、これを見ながら説明いたしますと、これが湖岸でございます。そしてこれが安曇川の河口でございまして、ここに赤くぬってありますのは、これは県がここに琵琶湖総合開発と関連しましてレクリエーション基地をつくろうと予定しているあたりがこの一帯でございます。そしてこのオレンジ色で着色いたしている部分が昨年八月においてすでに民間の中小不動産業者、中には大手も入っておりますが、湖岸を買収して一部はすでに造成をしておる。そうしてこの砂浜の一部を、よし浜も切りまして水泳場にしているというのがこのような状態であります。したがいまして、ここに湖周道路をつけるということになりますと、一体どこにつたらいいのか。この外側につけますとほとんど湖岸は数十メーターも残らないわけでありますし、内側に、先ほど私が申しましたように、湖岸を保全するためにつけるということになりますと、このように買収されている土地をどう扱うかという問題があります。したがいまして、もしも湖岸が十分に保全されて、スプロールが起こらないならば、湖周道路はつけてもよいということは、理論上はそうでありましても、実際問題それが可能であるかということをこの図面は示しているのではないかと私思います。そういった意味で、すでにこういうふうに買収されているという現実に立ってその問題を考えていただきたい、こういうふうに思います。
  21. 春日正一

    ○春日正一君 幾つかあるのですけれども、最初に岩井先生に、私が聞いておったのでは、一メーター半下げれば、南湖の深さは大体平均メーター半くらいなものだから、こうなっている性質のものだから、一メーター半下げれば水の量はほぼ半分くらいになるだろう、そうすれば、汚水は濃縮される、そうしてすでに先ほど話しのあったように、「イトミミズ」の住むような状態になっているものが死んでしまうだろう、これも私は学者の、これは滋賀大のあそこに、地について研究している学者研究を聞いてきたんで、やっぱり私は道理があると思う。ところが、先生の説明では、水をよけい取れば、流れるから、薄くなるだろうと。川なら私はそれでいいと思うんですよ。ところが、琶琶湖というものは入る水はきまっているわけでしょう。毎年、入っただけのものは出ていっているわけですね。それを前より四十トンよけい取ってよけい流したということになると、ただ、薄められるからよごれないというような論にはならぬのじゃないか、これはしろうとの考えです。その論争は、私は、実際言えば、その論争を徹底的にやってもらって、結論がきちっと出てからこの法律はつくってほしいと、私はそう思っているんです。そういうよごれる、危険だと、死んでしまうという意見があるのに、一方では、よけい流れるからきれいになるかもしらんというような論もある、そんなときに軽々にきめるべきもんじゃない。徹底的に論争して、それで確かに、決定版としてはこういうことなんだということになってからやってもおそくはないはずだと。むしろ、それを急いでほしいと思っているんです。  それで、ひとつお願いしておきたいことは、先生のそれについての研究ですね、一メートル半下がったという状態で、琵琶湖のこの状況が一体どうなるのか。また、その状況の中で水質がきれいになるのか、よごれるのかというような点についての研究ですね。私も、ここでも大ざっぱに聞かしていただきたいし、できれば、そういう研究資料あれば見せていただいて、両方対比して私なりに研究もしてみたいと思うんですけれども、まず、その一メートル半低下の場合に、どうなるかという点ですね。  それから、もう一つの問題は、これは津田先生にも関係するんですけれども、五年半という話、水かさですね、この間、滋賀大へ行って聞いてみましたら、まあ湖流といますか、あれが北湖のほうは非常に複雑で、だから実際言うと、十三年半ぐらいかかるんじゃないかというような説も聞かされて、これはもっと研究してみる必要があると言われましたけれども、その可能性、そういうものについて伺いたい。  それから、森先生のほうには、一メートル半下げたという状態のもとで、水質がどうなるのか。その関係で生物がどうなるのかという問題ですね。その点を聞かしていただきたいと思うんですが、ひとつよろしくお願いします。
  22. 岩井重久

    参考人岩井重久君) お答えいたします。  たとえば、ここに水をためておいて、角砂糖を溶かして入れるとします。そしてなめてみますと、それからもう一つ、同じ入れものに水を半分ためて、そこに角砂糖を一個入れてなめてみます。そうすると、こちらのほうが甘い。そして角砂糖がもし汚濁物質であれば、こちらのほうが汚染されているということです。ですから、そういう意味では、全然水の出入りがなければ、そういうことになります。ところが、この水は絶えず入っていっては、こう出ているわけですね。それで、いま一年間に取り入れる量は、もちろん総量としては同じでございますが、どうして水量を渇水のとき——つまり下流で水のないときに、琵琶湖からの水量を多くして流すことができるかと。それは現在の深さよりも深い水面を調節することによって、雨がうんと降ったときにはためると、つまり下へ流れていくのをちょっととめるわけですね。そして雨の降らない渇水のとき、下流水量を増そうというときにはまた下げてやる。そういう操作でやっているわけでございます。ですから、さっきのように、角砂糖の話しのように、全然水が流れないんであれば、おっしゃるとおり、水量が半分になれば倍だけ甘くなります。ところが、いまのように、これを流すわけですね。流すということは、さっき薄まるという非常にいい表現をお使いになりましたけれども、実際はそういうことでございます。ですから、一メートル五十下がったときの状態——私、研究成果というか、計算したのは、いまのように計算では出てきますが、状態を想像いたしますと、相当に早い流れで、特に南湖の瀬田川のほうにずっと流れていく。というのは、水位が下がって、しかも水量を多く出すんですから、当然、流速といいますか、流れる速度が速いですね。そうしますと、一定期間で、同じ汚濁物がそこへ流れていったとしますと、早く薄められて、どんどん持っていかれる。そういうことに、これは先ほど申し上げましたように、低水位——そういう半分くらいになったときには、平均的にいえば、必ず下のほうへ流量をふやして流していますから、そういうことになるわけでございます。ですから、全然ストップしている、金だらいのように水が入りもしないし出てもいかないという状態ではないということ、これをひとつ念頭に置いていただきたい。  しかし、非常に微視的に操作を誤れば、私が一等最初のときに御説明申し上げましたように、いままでよりも少ない流量でこの水門を操作しますと、しかも、それが水位が下がっているとき、そういう場合は危険であります。しかし、平均的にいえば水量は多いという。ですから、そういうことを避けるような、水質まで考えた水門の、洗いぜきの操作をやってくださいと。これはまあ私予報とかいろんな——雨から始まる水量の予報だけじゃなしに、生物まで込めた水質の予報というのがある程度可能になってくるのじゃないかと、そういう先生方おられますから、そういうことも念頭に置いて今後操作していけば、水質汚濁の非常に有意的な進行は起こらないというふうに考えております。
  23. 津田松苗

    参考人津田松苗君) 琵琶湖北湖容積ですね、容積が二十六・六立方キロメートルでございます。そこへ流入河川が毎秒大体百五十トンあるいは百六十トンの割合で入ってくる。それで割りますと、一ぺんからにしておいて、そうして入ってきたのをためるとしますと、それを割ればいいわけです。割りますと、五年半になるわけです。で、五年半で、入ってくる水は一ぱいになる。そうすると、六年目にはどれかが出ていかなければならない。そうして次にだんだん入ってきた分量だけ出ていかないと勘定が合わないわけですね。そうしますと、平均五年半ここに水がいるということになって……。
  24. 春日正一

    ○春日正一君 機械的計算ということですね。
  25. 津田松苗

    参考人津田松苗君) それで先生おっしゃられるように、十何年と回流する水もあり得るわけです。
  26. 春日正一

    ○春日正一君 十三年半、推算した数字を聞いてきたんですよ。湖流のこの関係があるから、だから全部が入って全部が出ていくという形にはならぬと。
  27. 津田松苗

    参考人津田松苗君) そのとおりです、おっしゃるとおりです。ですから、十三年かかって出ていく水もあれば、もっと早く、今度は五年じゃなく、二、三年で出ていく水もあるわけです。そうでないと勘定が合わないわけです。平均するとそうです。
  28. 森主一

    参考人(森主一君) 先ほど申し上げましたように、水質というのは、私どもの専門でございませんので、生物のほうですと、いろいろな知識を動員して私なりに責任を持って申し上げられるんでございますけれども、水質のほうはちょっと責任を持てないんですが、そういう条件でですと、まあ、いままでおっしゃった中で一つ抜けている点は、琵琶湖の湖底の巻き上がりであるというように思います。  それで、私どもの経験でございますと、琵琶湖の北のほうは、大体、深さ七メートルぐらいのところに湖周ずっとごみ帯がある。なぜ、そこにごみ帯があるかと申しますと、波が立ちます、そうして琵琶湖の水が動揺するわけですね。ところが、七メートルぐらいまでその動揺が及んで、だから、そこへごみがたまって、それから下はわりあい静かである。そういうことを示していると思います。で、私どもの実験場の横で実験をやっておるんですが、そうしますと、湖底二メートルぐらいの深さのところです。二メートルぐらいの深さのところで、湖底のどろが十センチぐらいはこれはしょっちゅう巻き返っております。つまり、波のために巻き返っておるわけです。つまり、そんだけ湖底が引っ込んだりふえたりしておる。ですから、水位が下がりますと、いままで静かであったところが巻き返えるという可能性があります。したがって、そういう方向が富栄養化をする、つまりそこは沈でんしておるわけです、いわば眠った子なんです。眠った子をさますということになると思うのです。そういう点はあると思うのです。  それから、南湖の問題は私もよくわからないのです。水量が二分の一に減った、そうすると、入ってくる汚水は同じだから濃度が濃くなるじゃないか、ところがまたどんどんと流すから流れが早くなるわけです、水量が減りますから。そうなると川のほうへ出てくる。そうすると滞留しておる間に、二十日間かりに滞留するとしますと、南湖は、そうすると、その間に沈でんしていくべきものが十日間の滞留ということになりますとずっと瀬田川に流れてしまうという可能性もあります。ですから、どっちがどうなのか、私ちょっとそこ専門が違いますのでよくわかりません。
  29. 田中一

    ○田中一君 これは三村さんに伺うのですが、一メーター五十低下した場合に周辺のどの辺に干潟ができるかちょっと伺いたいのです。それを伺ってから、次の質問をしたいと思うのです。ちょうどこの資料を見ますと、大体終戦後千二百五十五ヘクタール農地として埋め立てやっているのです。これは農地というと高いものじゃなく、低いそのままのもので堤防築いたぐらいのものでしょう、それはどうなるのか。それはおそらく壊滅するのじゃないかと思う、農地としての役目は。あるいはそこに生まれている、あなたさっき公有地とか私有地とか言っておりましたけれども、それがおそらく埋め立てというと、農民のものになっているのではないかと思うのです、埋め立てて新しく造成したものは。そうしたら底地の所有権というものが歴史的にどう動いているか。いろいろなものができていますよ、そのうちの一・五メーター水位が低下するとどうしても干潟ができるわけです。その面積の所有者、これはもうその後は農地には埋め立て許していなのです。それが千二百五十五ヘクタールあるわけです。それから、あなたいま図面お持ちになっているが、その図面がどの辺までが干潟になって、ですから湖岸というものが狭められるわけですね、湖そのものが小さくなるわけです。したがって、いまお示しになった買収している私有地というものは、あなたの御見解からいうと、湖岸から百メーターぐらい後退しなければだめだと、こう言っておられますが、そういう現象にならないのであろうかということ、それをひとつお調べになったことがあれば、お漏らし願いたいと思います。
  30. 三村浩史

    参考人三村浩史君) 一・五メーター下がった場合に湖岸がどれくらい露呈するかということは、これは滋賀県のほうから出されておりまして、ここのいま示しました南舟木——安曇川の河口でございますが、ここの場合ですと比較的少なくて、三十メーターということになってございます。多いところでは湖東のほうは比較的遠浅でございますので、湖の東のほうは二百メーター程度のところもございますが、湖西のほうは比較的短いのですが、三十メーター、五十メーターといったところでございます。しかしながら、これは実際問題、水泳場等の利用からいたしますと湖底の底質が変わると思いますので、利用上はかなりの支障が出るのではないかというふうに思います。  それから、これは私のほうで湖岸のどこまでが公有地といいますか、国有地であって、河川敷であって、どこまでが民有地であるかということは、私どものほうでとても調べることができませんので、滋賀県のほうで聞いたところではいまそういう官民境界を明確にするという作業を進めているところである、そういうところでは部分的には湖まで民有地になる、計算していくとなるようなところもあれば相当幅の河川敷が残るところもあるということでかなりその間の、何といいますか線引きといいますか、官民境界というものがこれまで不明確であったように聞いております。そういった点で、いま調査が進んでいるというふうに私聞いておりますが、詳しいことは存じません。
  31. 田中一

    ○田中一君 ちょっともう一つ。そうすると、湖面が狭まるということは間違いないですね。
  32. 三村浩史

    参考人三村浩史君) はい、湖面は狭くなるわけです。
  33. 田中一

    ○田中一君 湖岸が中央に出てきて相当そこに余裕ある地域が十メーターでも三十メーターでも残るのだ、生まれるのだということは間違いないですね。
  34. 三村浩史

    参考人三村浩史君) いまの、湖底が露出しますのですが、それがはたして余裕というか、あるいは利用可能なスペースとして使い得るかどうかということはこれは必ずしも言えないと思います。といいますのは、それはピークにおいてそれだけ水位が下がって湖岸が後退するということでございますから、常時的なものではないと思います。
  35. 中尾辰義

    中尾辰義君 岩井先生にお伺いしますけれども、さっきの例の角砂糖論を拝聴したわけですけれども、角砂糖は水に溶けるのですけれども、それで例の重金属類ですね、まあ相当なカドミウムだ、PCBだ、水銀だ、鉛だ、こういうものが琵琶湖に相当排出されておる、それが森先生のお話ではいろいろな魚介類等に濃縮されておるわけですが、その先生の議論で、角砂糖、これは一つの例ですけれども、角砂糖みたいに水に溶けるものはいいですが、ああいう重金属類との関係はどうなるのですか。一応はまあ沈でんはするでしょうけれども、しかし全然琵琶湖の水とは関係がないのか、私は多少あると思うのですが、その辺の関係というのはどうなりますか。これはひとつ岩井先生と森先生にお伺いしたいと思います。
  36. 岩井重久

    参考人岩井重久君) 申し上げます。  さっき角砂糖のお話をしましたが、角砂糖がもしかりに重金属であるとすれば甘いほうが重金属が濃いという、つまり濃度が濃い。それから甘くないほうが重金属濃度が薄いということであります。濃度が濃ければやっぱり非常に濃い濃度では魚が死にます。これは森先生の御専門です。ですから、濃度そのものも関係はございますけれども、蓄積ということからすれば、濃度よりも角砂糖一個なら一個という絶対量が問題になる。と申しますのは、その溶けてしまったものでもさっきのプランクトンなんかがそれを取る、そのプランクトンがま 植物性、動物性とずっと移っていきますが、こん虫の幼虫が食べる、それをまたコイが食べる、そのたびにどんどん魚なんかでは濃縮、つまり今度は濃くしていってためていくわけであります。ですから濃度も重要であるけれども、その角砂糖、さっきの二つの入れもので甘いのと甘くないのと言いましたけれども、これをもし最後に煮詰めますとやっぱり角砂糖一個ずつが出てくるわけです。片っ方は甘い、片っ方は甘くない。しかし最後に煮詰めてみると残ってくるのは、角砂糖一個である。ということは、角砂糖一個に相当するものがたとえば琵琶湖の中にどんどんたまっていく、これがこわいわけであります。ですから、角砂糖を湖の中に入れないように、初めから角砂糖を九〇%か九九%——一%はやむを得ないとして入っても、できれば一〇〇%陸上で取ってしまう。そして水の中に変なところ埋め立ててまた溶けて琵琶湖の水に入ると、これは何をしているかわかりませんから、これでいわゆる産業廃棄物処理の問題がここで起こるわけですが、そういうことをやらないと、蓄積という面からいえば非常に危険である。現在これは森先生のお話があると思いますが、調査しております調査の結果ではいろいろ琵琶湖産の魚介類の中に、そういう有害物質がどんどん蓄積しているという、そういうデータが出ております。それから、それの一因になっておりますのは、やはり底にたまっておりますどろであります。どろの中にまず蓄積して、そしてそれがまた生物に移っていく。ですからそういうことで、今後そういうものを絶対に入れない、それからまたどろになんかなって沈でんさせないというふうな、さっき流れが速くなると沈でんしないという話がありましたけれども、それから沈でんしているそういうどろでも、非常に危険と思われるものはやっぱり除去したほうがいいと思います。これは非常に費用がかかりますけれども、危険を防止するためには、そういうことも考えなきゃならない。で、付加的に森先生にもう少しそういう点を伺います。
  37. 森主一

    参考人(森主一君) ちょっと私、御質問の趣旨十分理解できなかったんですが、どういうことをお答えすればいいんですか。
  38. 中尾辰義

    中尾辰義君 ですから、要するに水位が一メートル五十低下することによって、まあ岩井先生の御議論は、それはたまっておるんじゃなくして流れておるんだからそれほど濃くはならない。先生のほうは琵琶湖の水はやはり五、六年——さっきの津田先生のお話でも、古いのは十年間かかるんで、まあそれに対して批判的な御議論でしたが、その辺に対しての重金属の場合を考えた場合に、さらに濃くなるということが考えられれば、その点伺っておるわけですよ。要するに流れておる場合ととまっておる場合、その二つの面から重金属の及ぼす影響濃度に対する影響、それをお伺いしたいんです。
  39. 森主一

    参考人(森主一君) これはなかなかむずかしい御質問だと思います。つまり流れのスピードが大体問題ですから、流れが速ければそれは流れてしまうし、流れがゆっくりしておれば沈でんするということだと思います。これは物理化学的にそうでありますし、それからかりに生きものをさらにそれに加えて考えますと、生きものというのは、入ってきたものをこし取る作用があるわけです。これは重金属に限りません。窒素でも燐でも琵琶湖へ入ってきたものをこして、そして水とともにその生きものは流れないで、水だけ流れてその生きものは残る、こういうフィルターの役目をしている。ですから、そういう生きものがどれだけあるかということ、それから流れのスピードがどれだけあるかということ、そういうことによってちょっと変わってくるんじゃないかと思うのです。
  40. 岩井重久

    参考人岩井重久君) 先ほど誤解いたしました。水位が低下したときと低下しない現状のままとで重金属の濃縮の程度がどう変わるかという御質問だと思いますが、魚介類がどんどんとっていく、それは先ほど私の一番最初の説明で、汚濁物質については水位低下をしたほうが水位低下期間中で考えてみると濃度的にも薄くなる。それから流速が速くなりますから、沈でんしてどろにたまるというものはどんどん下に流されていく。ですから見かけの上では水位低下したほうが、ある部分についてはそういう現象がかえって防げるということになりますけれども、そこでいま森先生の言われたように、非常にこれはデリケートでございまして、たとえば水の流れの速さが変わりますと、多少生物の種類が変わるかもしれません。ですからそういうことを全部調べてやらないと即断できません。しかし大体の傾向として平均的に考えれば、私がさっき申し上げましたように、プラスになってもマイナスになるというふうなことは出てこないわけであります。
  41. 西村関一

    西村関一君 岩井先生にお伺いいたしますけれども、琵琶湖の総合開発計画を進めていくためには事前事後対策が必要だと思います。まずそのことをはっきりしないと問題があるという御趣旨の御意見がございました。それは水質汚濁を防いでいくということもありますが、現状どういうふうに、すでによごれているところの水をきれいな水に回復していくか、そういうことは今度の法案の中にも出ておるわけなんですが、そういう点を含めて、事前事後対策はどういうふうにお考えになっておいでになりますか。先ほど何かちょっと聞き漏らしましたが、そういうものが策定されておるというふうにおっしゃったように思いますが、その点はいかがでございますか。
  42. 岩井重久

    参考人岩井重久君) 私、実は滋賀県の依頼によりまして、いろいろ基準をきめるときに御相談にあずかっております。で、そういうことから先ほどの、未来における汚濁負荷の増加、つまり人口もふえれば、いわゆる県でお立てになった将来計画によって各種の産業も盛んになるでしょう。そういう場合に原単位というのがございまして、そういうものをいろいろ掛けていきますと、昭和何年度でBOD負荷量、先ほど申し上げましたこれがどのくらいになるかという推定がつくわけです。そういうことから逆に、現在滋賀県の公害防止条例で、この間少し上のせといいますか、改正されましたけれども、そういうものが一応数年前の時点での将来を見て策定されたものであります。そのときの私の記憶によりますと、十年ぐらいたちまして、もしその基準を厳守するというならば、——当然厳守されるべきものでございますが、そうしますと、少し水質は数年前の時点よりもよくなって、それからまた人口増とか産業が盛んになりますからまた悪くなってきて、十何年後にはBODという項目についてはその時点と同じくらいになる。しかし、これは人口とかあるいは産業構造その他がどんどん変わっていきますから、私は特に意見を申し上げまして、これは十年後を予想したからといって十年後までほおっておくものではない。たとえば二年ぐらいあとでもう一回チェックする、そうして軌道修正して、もっと基準をきびしくしていく、そういうことを申したわけでございますが、ちょうど幸いに水質汚濁防止法が一昨年末できたものですから、それによってまた県条例のほうも修正してきびしく一部されましたし、今後もされていく予定でございます。ですから、いままでそういうことが全然検討されていないのではない。そういう資料もさがせばずいぶんあるわけです。ここの建設関係でも、下水道協会関係でもずいぶんそういうことがやられておりますので、そういう資料を参考にいたしまして、たとえば本日御出席先生方、それ以外にも実際にそういう政治あるいは行政に関係のある先生方、みんなで寄ってディスカッションしていけば、これはそれではこのくらい、こういうことでいけるという、そういう前向きの開発ができるんじゃないか、それだけの基礎的な研究は、まあ私たち非常に狭い学問領域でございますけれども、ある程度はなされているんじゃないか。ただあまり、ごく一部の人が狭い視野で暴走するということは、これは困りますけれども、現代の日本ではそういうことは当然なされ得ないわけですから、そういう前提において私は事前——事前というのはこれから研究を開始するというんではなしに、いままで研究した成果を利用してスタートしていい、そういうことでございます。事後ということは、先ほど私が申し上げましたように水質規制、水質基準の規制なんかも、人間だれも、やはりある程度性格的にルーズなところがありますから、やっぱりそういう基準は必要でございます。それからそれを監視して厳重に守らすということも必要でございます。そういうことを両面相まっていけば逆に、これは非常に言い過ぎかもしれませんけれども、琵琶湖周辺開発というものを水質基準、そういう産業排水なんかの規制によってある程度は軌道修正をしていいほうに持っていけるとも考えるわけでございます。これがいわゆるできてからあとの、水量のいろいろな調節の方法なんかも込めた事後の対策と申しますか、これに関係いたすわけでございます。結論的に申し上げますと、私は、まだ事前事後対策を十分に研究しなければやってはいけないとは決して申しませんでして、スタートしてみて、前向きでこれを大いに研究を進めるべきであると、さように考えるわけでございます。
  43. 西村関一

    西村関一君 岩井先生の話をいま伺いまして、一応マイナス一・五メーターの、毎秒トン四十トンの水を送っても、そう水の汚濁の点からいっても、沿岸住民の福祉の面からいっても困らない、そういう前提に立って学者としてのお立場から御意見を開陳しておられたと思うのでございますが、その点につきましてはいろいろ他の御意見があるということは、きょうの参考人先生方の御意見の中からでも、また、他の学者先生方の御意見の中からもうかがえるのでございます。  私が、問題としてお伺いいたしたいと思いますことは、事前事後ということばを抜きにいたしまして、現在すでに琵琶湖の水が汚染されておるという前提に立ちまして、これをきれいな水に、少なくとも昭和四十五年くらいのときの琵琶湖の水に、私どもの子供のときのきれいな水というわけにはいきませんけれども、四十二年くらいの琵琶湖の水に回復するということが前提にならなければならないと思うのでございます。そういう点につきまして各先生方にも同じ問題についてお伺いしたいと思いますけれども、津田先生は先ほど外国の例をお述べいただきまして、外国におきましては水質汚濁を防止する、また、水をきれいにするということでいろいろな規制をやっているし、またすでに処置を講じておるという事例を交えられましてのお話でございましたが、まず琵琶湖の水の汚濁を防止する以前に、回復をどうするかということにつきまして、これは両先生にお伺いしますとともに、三村先生にもこの点についてお伺いをいたしたいと思います。  それから森先生につきましては、先ほど琵琶湖の生物の変化がすでに起こっておるということでございますが、これはそういうお立場から、このままにほっとくならば琵琶湖、特に南湖の生物は、貝や魚はどうなるかというふうにお考えになっておいでになりますか。南湖の生物は住めなくなってくるんじゃないかというふうに漁師たちは心配をしておるということも御承知のとおりで、科学者のお立場から、この案が通りまして水がさらに秒トン四十トン流れていくという上におい琵琶湖の生物はどうなるというふうにお考えになっておりますか。それらの点について各先生方からお伺いしたいと思います。
  44. 津田松苗

    参考人津田松苗君) 回復の問題であります。また外国の例を出して恐縮ですけれども、スイスとドイツの境界にあるボーデン湖、コンスタンス湖とも言います、ちょうど琵琶湖と同じくらいの大きさで、そうしてあれがまた琵琶湖と同じように大きいのと小さいのと、そして大きい湖から小さい湖に入って出ていくわけですけれども、それが琵琶湖より先に汚染しているわけでございます。そうしてそれに対する処置がまだされておらないわけであります。ですからあれくらいの大きい湖になりますと、ドイツやスイスあたりでもなかなかちゃんとしたやり方をやりにくいということだそうですから、ですから琵琶湖は非常にたいへんなことじゃないかと思います。で今度のこの法案があろうとなかろうと、琵琶湖の水はもうどんどん汚染していくわけでございますから、あろうとなかろうと、回復の処置あるいは進まないようにする処置をしなければならないのじゃないかと思います。それにはやはり一番大事なのは流域下水道を湖に入れないということだと思います。  それでよろしいでしょうか。
  45. 三村浩史

    参考人三村浩史君) 水質の問題と土地利用の関係は直接には関係がなくて、もしその排水の浄化が完全にできれば、土地利用がかりに開発されても水はよごれないということになるわけでございますが、実際問題は、非常に散発的にこれらの地域に行なわれますので、そういった個別の浄化槽というものの限界が明らかにあると思います。したがいまして、やはり土地利用の開発規制をやっていくということはかなり実際的には大切なことだと思います。その点でいきますと、この地域におきましては大部分のところがまだ旧都市計画法のままであるということですね、早く調査区域ということにして開発規制をかけて強化していくということが必要だと思います。  それから、開発調整区域になってまいりますと当然ながら開発許可ということになってきますのですが、その場合に、これは法律的にできるかどうかわかりませんが、やはりそこにおける排出の総量規制の問統でありますとか、あるいは公共下水道ができるまでは少なくとも開発を認めないというような強い態度が必要かと思います。これは琵琶湖のような水源地帯ではございませんが、英国の都市開発の中には、すべての地域について行なっているとは言えませんけれども、公共下水道が整備されるまでは、そこがたとえ開発の候補地であっても、最終の末端が公共下水道に接続されるまでは開発許可を与えない、こういったことが行なわれているわけであります。したがいまして、琵琶湖のような水源地帯におきましては一般都市地域よりもっとそのことの重要性は大きいのじゃないかと、こういうふうに考えております。
  46. 森主一

    参考人(森主一君) 一般的に申しますと汚濁が進めば生物の種類はどんどん変わっていく、さきに「イトミミズ」がふえているということを申し上げましたが、その次の段階は「イトミミズ」もいなくなってバクテリアが非常に多い、状態になる。これらは一般的に申し上げられることですね。  それではマイナス一・五メーターの処置が、そういう操作があった場合にはどうなるかということでございますが、この場合は、生物の種類が変わる、いま申しましたような生物の構成の種類が変わるということまではいかないだろうというように思います。ただ、たとえば有用生物の量が変わってくるということは当然考えられます。それで若干御説明しますと、「セタシジミ」は、あれは琵琶湖一円におります。それで四十メートルぐらいの深さまでかなりおるわけです。その子供がまたさきの「イケチョウガイ」と同じように、子供のおる場所は非常に限定せられております。それでたとえば南湖で申しますと、あすこに烏丸内湖というのがあるのですけれども、そういう付近とか、ごくわずかな限られた場所に子供がおるのですね。そして、だから親と子供のおる場所が違う。もちろん親もおりますけれども、子供だけおる場所がある。そしてそれじゃ、どういう条件のところにその子供がおるのかということですね。マイナス一・五メートルになったときにどういう条件になるのか、それと関係があるわけです。それで、その「セタシジミ」の子供がどういう条件のところにおり得るのであるかということを、今日的確にこれこれの条件であると言う人は残念ながらいないわけです。しかし、いろいろ推測しますと、ある水の流れが少なくも必要である、微流、微速ですね。そして底は砂の質で、それである程度の流れが必要である。ヘドロみたいなのがあってはだめだ、そういう条件が少なくもございます。そうしますと、マイナス一・五メートルになった場合、そういう条件のところがどこにできるのであるか、どの程度の面積にできるのであるか、これがわからない。これはもう全く私の専門外でございまして、むしろ土木の、何というかな、そちらの御専門家に伺いたいんですが、実は、そのそちらの御専門の方も、おそらくこれは御返事はむずかしかろうというように思うのです。つまり川がございまして、川口のところが一体どうなるのか、それから湖流がどうなるのか、そういうふうなことがわかりませんとこれはわからないだろう。しかも非常に微妙な条件である。ですから、お答えとしては、そういう点、的確にお答えできないというように申し上げなきゃしかたがない。あるいは非常にいいところが、広い面積ができるかもしれません、あるいは面積が全くなくなるかもしれぬ、そういう問題であります。  私に対する御質問はそれだけですから、それだけにしておきます。
  47. 村尾重雄

    ○村尾重雄君 昼もだいぶ回りましたので、ごく簡単に一点だけ森参考人にお伺いしたい。  先ほど御意見の開陳の中で、琵琶湖に関して四つの柱をお聞かせいただきました。そのうち三に観光、四に文化、教育の面で、この法案審議については十分に御留意あるようにという御意見のように拝聴します。  なお、御意見の中で、それに五として、衆議院でも修正されましたようにということだったのですが、衆議院で修正されようがされなかろうが、われわれこの法案審議に対しては、このあなたの留意あれかしとの御意見のように、琵琶湖の歴史、文化、観光、こうした面については深い留意をしているものであります。しかも、これは決して政府を弁護するわけじゃありませんが、政府が提案した法案の目的、第一に、琵琶湖のすぐれた自然環境の保全をはかりつつ、その水質の水資源の利用と、その観光資源について云々ということばがあるように、第一の目的においても、やはりこうしたあなたの御留意するようにという御意見をわれわれも体して、この法案の審議に今日まで当たったということです。なお今後、そういう心がまえで進めていきたいと思っておりますので、御安堵いただきたいと思うのです。  なお、御意見の中で、われわれが一番関心を持ちますのは、やはり湖水の汚濁であります。よごれた琵琶湖をなおこれをきれいにし、これ以上よごれないようにわれわれはしたいということがこの法案のねらいなんですが、その汚濁原因について、またこれからもこういう点についてということで、内湖の問題、湖周道路の問題、これはたびたび議論ございました下水道の問題、最後に農業排水の問題について御意見がありました。私はこの四つともが琵琶湖汚濁の、また今後水質悪化の原因になるということは、われわれも承知いたしております。その中で、ただ農業の排水なんですが、これは農薬の琵琶湖内への流れ込みを防がなければならぬことだと、こう思います。とりわけ参考人の御意見では、この農薬の影響が相当汚濁の強い部分であるというように私は述べられたと、こう聞いております。  そこで、われわれは、まずこの法案を通じて家庭排水処理の問題とりわけし尿の処理の問題、非常な関心を持たされております。また政府もこれに対する対策を、十分予算も要求し、立てておるわけなんでして、いま一つ大きな問題としては、最近琵琶湖南岸でふえてまいりました、いな全体でふえてまいりました工場排水のやはり対策だと、こう思っているのです。ところがこれに対しても、相当制約する強固な処置を行なって工場排水の防止につとめようと思っているし、またつとめなければならないのですが、この農業排水ですね、農業の、農薬の影響があなたの御意見のようにこの三つ以上にきつい、甚大だということになりますと、この農業排水に対する処置というものを、処理というものを今後重点を相当置かなければならぬと、こう思うのですが、先ほど二回目の御意見の中に、水質については自分は専門外の者だから云々ということばがございましたが、私は農業排水汚濁、その被害の問題について、もし時間の関係上、また燐だとか窒素だとか、非常に化学的なむずかしい話になるからしてという前提もあろうと思いますが、ごく簡単な御意見だったと思いますので、この点について少しその影響をひとつお話いただきたいと思う。というのは、この農業排水については、私の知る範囲内においては、どうも政府においても野ばなしとは言いませんが、何かお手あげのようなことをいままで伺っているものですから特にお伺いしたいと、こう思うのです。簡潔でけっこうです。
  48. 森主一

    参考人(森主一君) 農業肥料の、私は実は農薬と申し上げないで、農業肥料と申し上げたのでございますが、いまおっしゃいますように、農薬の問題も非常に大きいと思います。BHCとか、ああいうふうなものが相当害があったということは、過去においてもございます。しかし、いま滋賀県のほうで相当御努力になりまして、過去ほどはなくなっておるように思います。ただ、その場合は、薬をかえればいいわけなんでございますね。あるいは薬を施す時期を考えるとか、そういう方法を考えればかなりいける。ところが、農業肥料のほうは、実は大問題なんです。これは世界的にも処置がない。しかもその作用はすごく大きい。この土木学会がおつくりになりました資料によりましても、琵琶湖窒素が入ります。窒素というものが、琵琶湖汚濁する非常に大きい原因になっております。生物もかなり死滅します。その窒素の量が、琵琶湖へ入る全体の量の実に四〇%あるのです。農業からくるものが。そういうようになっております。しかもこれは世界的に、その湖に入るそういう窒素の量の三〇%ないし五〇%は農業からくるということはどうも世界的にもそういうことらしいです。で、それじゃこの処置はどうか。そうすると、かりに琵琶湖で、この農業用水というのは川と直結しております。だから川から出たり入ったりする。だからこれをとめるということはできない、おそらくいまの段階では。とめれば、琵琶湖水自体が減ってきます。そういうふうなものなんです。もう琵琶湖のふちの土地そのものと密着している。ですから、この処理というのがお手あげである、いまの段階では。そういうことを申し上げたかったのでございます。  それで、こういうものは、実は世界でできないから日本でもできないんだとおっしゃるかもしれない。それであったら、外国ができれば、日本でまたそのまねをする。それは実につまらぬと思うのですね。やっぱり日本で先進的なそれに対する処置を考えなければいかぬというように思うのです。それをどうしたらいいかということは私にもわかりません。しかし、非常に重大なものであるということは申し上げられるのであります。  それで、ちょっとそれに関係しまして、一番初めに御質問になったように、私は努力の集中というのがやはりいいと、お金も限られているし、技術者の数も、頭の回転能力も限られている、そういうときに一体われわれはいままず何をなすべきかということに集中しなければいけない。あれもこれもそのうちできるだろうというようなことじゃ私はいかぬだろう、そういうふうに思います。
  49. 小林武

    委員長小林武君) 以上で参考人方々に対する質疑は終わります。  参考人方々に一言お礼を申し上げます。  本日は、御多忙の中を長時間にわたって貴重な御意見をお述べいただきましてほんとうにありがとうございました。あつくお礼申し上げます。  午前中の審査はこの程度にとどめ、午後二時まで休憩いたします。    午後零時三十分休憩      —————・—————    午後二時八分開会
  50. 小林武

    委員長小林武君) ただいまから建設委員会を再開いたします。  この際、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  建設事業並びに建設計画に関する調査のため、本日の委員会に日本住宅公団、日本道路公団首都高速道路公団及び水資源開発公団の役職員を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 小林武

    委員長小林武君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  52. 小林武

    委員長小林武君) 休憩前に引き続き、琵琶湖総合開発特別措置法案議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  53. 西村関一

    西村関一君 まず、今回の特別措置法案におきまして、第一条は「琵琶湖自然環境の保全と汚濁した水質の回復を図りつつ、その水資源の利用と関係住民の福祉とをあわせ増進するため、」云々という文言がございます。また、第二条の「(琵琶湖総合開発計画の内容)」のところのロのところを見ますると、「琵琶湖水質の保全上重要な下水道及びし尿処理施設の整備に関する事業」を行なうということとともに、第二条の2のところには「琵琶湖総合開発計画は、琵琶湖水質の保全及び汚濁した水質の回復について適切な考慮が払われたものでなければならない。」こういうことになっております。  そこで、政府はこの法案を提出せられるにあたりまして、水質汚濁の回復、琵琶湖水質の保全及び回復について適切な考慮を払わなければならないということにつきまして、防止だけじゃなくて、さらに水質をよくしていくということでありますが、これに対して、この法案前提となっております水質の回復をはかっていくということにつきましては、どのようにお考えでございますか。
  54. 西村英一

    ○国務大臣(西村英一君) あなたがおっしゃいますように、やはりこの琵琶湖のこの法案の主目的は、とにかく自然環境の保全を保つ、ことに琵琶湖水質については、ひとついろいろな手段を使ってこれを回復したいということがこの法律の主眼でございます。しこうして、その結果によって良質な水ができましたら、利用者も、これは下流の利用者のみならず、水源地それ自身の方々の利用者も、おのおのそのりっぱな水が使えるということでございます。その方法としましては、先般も私が申し上げましたように、基本的にはやはり一番よごしておるものは、下水道がよくできていないということ、また最近は非常に周辺に工場ができたために、工場の排水の規制を強化するということ、もう一つ、長らくの間ああいう湖でございまするから、その他重金属等も相当に蓄積されるやに聞いておりますから、それはまたその方面として、方法をもってよくするということでございます。したがいまして、現在のままで放置しておきますると取り返しのつかないことになりまするから、私は琵琶湖は、全体の日本の湖としては、たとえば諏訪湖等に比べればそう悪くはないのでございますが、ああいうふうに、諏訪湖のようになってくると、もう収拾がつかないようになっておるのが現状でございます。したがいまして、いまのうちに、早目に手を打つということがどうしても必要でございますので、この法律案を提案をいたしたような次第でございます。しかし、そうは言いましても、水源県でありまする滋賀県も相当なこれは金がかかることでございますので、やはり関係の県はひとつそれに協力してやる。それであるからには、政府もその地方公共団体の力のみにたよらずに、政府もそれに見合うような金を出してやらなきゃならぬというようなかまえで、今回の法律を提案いたしたような次第でございます。  もっと具体的な問題になりますれば、政府委員も参っておりますから、ひとまず私はその姿勢だけを申し上げた次第でございます。
  55. 西村関一

    西村関一君 大臣のお考えはよくわかります。ただ、この法案前提になっておりますのは、いままで琵琶湖の水が諏訪湖ほどではないけれどもよごれておる、汚濁しておる。このままほうっておきましたならば、使いものにならないものになってしまう。そのために、水質の回復ということが二ヵ所も強くうたわれておる。大臣のおっしゃいます下水道、し尿処理、そういうものを急がなければならないということはもちろんでございますが、それとともに衆議院の附帯決議の中にもございましたように、なすべきことが、優先的にしなければならないことが多々あると思うのであります。これは南湖はひどくても北湖はだいじょうぶだというようなことで、これを怠りますと、いま大臣がおっしゃいましたように取り返しのつかないことになりますので、衆議院において行なわれました附帯決議の、第一項から第六項までございますが、それを逐一政府はこれを実行する、また実行させるという御決意がおありなことと思いますが、まず第一の点からお伺いいたしますが、附帯決議の第一は、「下水道事業等水質保全上有効な事業については、これを早期かつ優先的に実施すること。」十ヵ年計画を五年に短縮、前期でやってしまう。なお、さらにそれ以上に速度を早めて優先的にやるということのお考えがございました。  それから第二点につきましては、水質回復のための廃鉱の処理。これは湖北の地帯に銅山がございます、廃鉱になっておる。それが川に流れ込んで琵琶湖に注ぎ込まれる、こういうものが処理されてない。さらに午前中の参考人の御意見の中にもございましたように、農業用排水、こういうものの高度処理技術の開発もしなければならない。これはやはり技術者に対する処遇の問題もあるし、人員が少ないという問題もありますし、こういうことも政府はやってもらわなければならぬ。内湖の復元の問題、内湖が自浄作用をやっておったということは、言われておるところでございます。内湖があのように埋め立てされましたために、水の自然浄化作用というものができなくなった。そのために、汚染の度が進んでおるということが言われておりますが、その内湖の復元、内湖を全部復元するということはできませんけれども、内湖の湖岸寄りの所をやはり前のようにかえて、そこに水生植物、アシその他もはえるようにするとか、いろいろ専門家の意見もありますから、それらを取り入れて、内湖の復元ということもこの中にうたわれております。  それから琵琶湖の周辺の公有地は、きょうの午前中の参考人意見陳述にもございましたように、全体の十分の一ぐらいしか公有地はない。積極的な土地の先行取得を行なう、公有地の拡大を行なうということに対して、予算的な措置を講じておられるかどうか。  逐条、それぞれ問題がございますが、まずその三つの点、附帯決議にこれがうたわれておりますところの一から三までの点について、まずお伺いをしておきたいと思います。
  56. 久保赳

    説明員久保赳君) 琵琶湖水質保全対策として下水道整理を早期に実施することは、その地域の問題といたしまして琵琶湖水質保全の上からきわめて当然のことと考えるわけでございます。て滋賀県知事さんが琵琶湖の総合開発計画の案を策定することになりますが、その際には、衆議院の建設委員会における大臣のこの問題に対する所信の答弁に従いましてそれがなされるように十分指導をしてまいりたい、そういうふうに考えております。
  57. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 附帯決議の三項につきましてお答え申し上げますが、この廃鉱の処理でございますが、北湖の北のほうに土倉鉱山、旧廃止鉱山でございますけれども、がございます。私どもはこの土倉鉱山を含めまして近く全国的な旧廃止鉱山の一斉点検をいたしたいというふうに考えておりますので、この土倉鉱山につきましても実情を調査するとともに、還境汚染につきましては今後汚染することのないような適切な措置を講じたいというふうに考えております。  それから工場排水の規制につきましては、すでに滋賀県におきまして政府がきめております一律基準よりもより強い上乗せ基準を一部項目につきまして設定されております。で、私どもはさらに滋賀県とも相談をいたしましてこの基準の強化並びに規制項目の増加等につきまして今後指導してまいりたいというふうに考えております。  それから農業排水をも含めた各種排水高度処理の技術の開発でございますが、午前中の参考人の御意見の中にも、農業に使いました肥料が流出いたしまして琵琶湖富栄養化を促進しているんではないかという御意見があったようでございます。この点につきましては、私ども必ずしも農地に投下されました肥料のうち、どの程度これは流出するかというようなメカニズムが明らかになっておりません点もございますので、今年度すでに農地におきます諸物質の収支の状況を明らかにするそういう調査費を計上いたしまして、近くこの検討にかかろうと思っておりますし、また琵琶湖につきましては、富栄養湖対策の一環といたしまして富栄養をもたらす原因であります窒素並びに燐等の琵琶湖への流入のメカニズムを明らかにいたしまして、それらの調査と相まって私どもも富栄養化を防止し、さらに水質を改善をするための必要な対策を講じたいかように考えております。
  58. 朝日邦夫

    政府委員(朝日邦夫君) 第三項の琵琶湖の自然景観並びに水質の保全のためにまず公有地の拡大をはかるという点でございますが、この点につきましては、この事業計画の中におきましても、たとえて申しますれば、湖周辺におきまして緑地帯をあるいは都市公園事業としてあるいは自然公園事業といたしまして整備をしてまいるという計画をいたしております。さらに土地の保有につきましては、やはり琵琶湖の景観の事情あるいは自然環境の保持上必要と思われる土地につきまして公的保有をいたすことによってこの維持をはかってまいるという土地の公有化の事業も計画をいたしております。これらの点につきましては、さらにこの御趣旨を体して計画の策定に当たるという所存でございます。
  59. 西村関一

    西村関一君 大臣、いま政府委員からお答えがございましたが、下水道、し尿処理を含めて下水道の整備につきましては、もう一度大臣としては早期にこれをやるというお考えがあるかどうかということをはっきり伺っておきたいと思います。  それから「公有地の拡大」積極的な「土地の先行取得」ということがうたわれておりますが、これもいま次長からお話がございましたけれども、相当な金が要ると思うのです、民有地からこれを買い上げるわけでありますから。そしてまた相当な法的規制をしないというと、これはなかなかできないことでございます。諸外国におきましてもいわゆる法的規制をもって湖畔から何十メーターまでは民有地の所有を許さない、あるいは建物を建ててはいけないというような規制をしているやに伺っております。相当な政府の決意がないとこれはできないと思うのです。単にこれは附帯決議という、文句だけのものに終わってしまう、その点もひとつ大臣の決意を伺っておきたい。
  60. 西村英一

    ○国務大臣(西村英一君) やはり十ヵ年計画でありまして事業が相当にたくさんありますが、そのうちでやはりセレクションボールで、早くやるものと何でもかんでも一緒にはできませんから、もちろん下水道等はもういますでに流域下水道もやっておるような次第でございます。おそくなればなるほどまた工事もむずかしくなります。私は、相当にスピードを出せばまだ何といっても東京の下水道をやるようなものとはやはりだいぶん違うと思います。早くできると思います。したがいまして、重点的にやるつもりです。またいまの計画にいたしましても、流域下水道三ヵ所ということになっていますが、私は、三ヵ所では足らないと、県のほうももう一ヵ所くらいの要望があるようでございます。高度処理をやれと、高度処理というのは一体どういうことか知りませんが、第三次処理をやれということじゃないか。私はやはり第三次処理の用地は買っておけと言っております。したがって、これはもう最も力を入れ、最もスピードを出してやる仕事で、おおむね五年くらいでやってしまいたいという気持ちでございます。  公有地の問題ですが、これも予算には見てあります。どの辺をどういうふうに買うかということは、これは具体的な問題になってきますが、とにかく公有地も買う、この予算は見ております。ばく大な金が要るわけでございましょうが、実際問題としてどういうところをどう買うかということは今後の問題でございます。最も重要な点であろうと私は思っておりますから、一生懸命その点は重点的にやりたいと、かように考えております。
  61. 西村関一

    西村関一君 さっき、内湖の復元についてはまだ答弁がありませんでしたが、これは農地局ですか。
  62. 住吉勇三

    説明員(住吉勇三君) 琵琶湖の内湖を干拓したためにここに生えておりましたヨシ、アシのような水草がなくなりまして、自然の浄化作用が失われたというような説も伺っております。しかしながら、戦後、農林省のほうで干拓事業をやりました面積は二千二百ヘクタールくらいでございまして、これは琵琶湖全体の総水面積から見ますと約三%くらいでございます。また、この干拓によりまして失なわれたと考えられます水量琵琶湖全体の総水量から見まして〇・一%くらいのわずかなものではないかというに思っております。また、この琵琶湖周辺では最近いろいろな宅地、工場用地の造成等も行なわれておるようでございますし、いろいろな汚濁排水等もあるようでございまして、このような見地からこの干拓地を復元いたしましても、その浄化作用の効果というものには限度があるんじゃないかと思っております。また一面、先生御存じのとおり、この干拓地に入植されました農家の方にはすでに農地の売り払い、売り渡しを行なっておりまして、しかも滋賀県の県の平均の中では非常に優良な農家でございまして、優秀な農業経営を営んでおられる、そういうような事情もございますので、農民感情とか、汚濁の直接的ないろいろな原因等にかんがみまして、農林省といたしましては、国の費用でこの干拓地を復元するということは適当じゃないと農林省としては考えております。
  63. 西村関一

    西村関一君 その点についてでありますが、内湖の復元には問題があることは私も承知しています。学者の間においても、復元することは自然の再破壊につながるんじゃないかというような意見もあることも承知しております。しかし、内湖の干拓地のために自然浄化作用が非常に衰えた、琵琶湖の水の自然浄化作用が。あれが一つの浄化槽のような形になっておったということもこれは定説のようであります。でありますから、干拓地に入植しているところの農民の人たちの感情ということも言われました。また、琵琶湖全体の水の面積から比べるならば、また水の量から申すならば、これはたいしたことじゃない、そういう問題じゃないんです。どのようにして、従来行なわれておりました自然浄化作用——内湖か行なっておりました自然浄化作用を取り戻すかという話なんでありまして、そのためには入植者の農家の皆さんの了解も得て、それこそ一部——干拓地の全部じゃない、一部湖畔寄りのところに水辺植物といいますか、アシ、ヨシその他そういうものが繁茂できるような環境をつくってやるということが、これはあなたのお立場の問題ではないかもしれませんけれども、そういうことが必要じゃないかというのが問題点だと思うので、それゆえにこういう附帯決議がついたんです。その点はよく御理解にならないと、いまのような御答弁があると思います。もう時間がありませんから、簡単にその点どなたからでもけっこうです。
  64. 住吉勇三

    説明員(住吉勇三君) 先ほど御答弁申し上げましたように、農林省といたしましては、土地改良事業をやっていくというたてまえから、現在、既設の干拓地を復元するということは、農林省の手でやることは非常に適当でないと申し上げたわけでございます。
  65. 西村関一

    西村関一君 近畿圏整備本部次長のお考えはどうですか、あるいは河川局長でもどっちでもけっこうです。
  66. 川崎精一

    政府委員(川崎精一君) いろいろ所管がございましたり、経過がございますので、おそらく農林省の話はすでに干拓化した内湖をこれから復元するのはむずかしいと、こういうようなお話じゃないかと思いますが、私どもといたしますれば、今後河川の河口部等につきまして、これは水産上もいろいろ、きょう参考人先生方から御意見もございましたように、手を加えるやはり必要もございます。また湖岸堤等につきましても、これを整備する必要がございますが、そういった際に、できればいまおっしゃるような、内湖の復元というようなものが可能なところがあれば、できるだけ御趣旨に沿うように、そしてまた自然環境を守るような努力をいたすつもりでございます。
  67. 西村関一

    西村関一君 内湖の復元につきましては、十分に検討して、可能なところはやっていこうということでありますが、私は干拓地の大部をそうしろと言っているのじゃない。湖岸に沿うておる何メートルかの帯状地帯をそういうふうに復元したらどうかということで、それがやはりこの附帯決議の精神だと私は思うのであります。その点をなおよく検討しておいていただきたい、また実行してもらいたいと思います。  それから次は、時間がありませんから、附帯決議につきましてはあまりお伺いする余裕がございませんが、水産庁に伺いますけれども、午前中も論議のございました琵琶湖の貝類、魚類、そういうものが現在非常に種類も漁獲高も減っておる。この法案が通って水位が低下するということになりますと、なおその被害がひどくなる。特に琵琶湖の特産でありますところのアユの種苗にも重大な影響を与えることになりかねないと思うのでありますが、その点をごく簡単に、水産庁としては一応の計画を立てているということの内容について伺う時間がございませんけれども、心配ないんだということであれば、それでけっこうでありますが、伺いたい。
  68. 岩崎京至

    説明員(岩崎京至君) このたびの琵琶湖の水資源開発に伴います水位の低下、変動といったものは、当然水産資源なり、あるいは漁業関係の業務なり、操業上いろいろ影響は万般にわたって想定されるわけでございますが、それに対処しまして、その対策としましては、水産資源を極力減らさない、ものによっては積極的にふやす、こういったような施策を十分とっていきたい。さらに、琵琶湖はあれだけの水面でございますから、水産利用という立場からさらにあらゆる形での水産業の振興をはかっていくという意味での積極的な施策も講じていくというふうなことを考えております。
  69. 西村関一

    西村関一君 もう時間がありませんから終わりたいと思いますけれども、水資源を涵養するための保安林がつくられております。それが琵琶湖を包むところの周囲の山々の保安林が解除されようとしておる、そういう傾向にあります。これは、一方において水資源が非常に重要視されておりますときに、この涵養保安林が解除されようというような動きがあるということは、これはゆゆしい問題だと思いますけれども、林野庁としても、そういうことは絶対にしないという、どのような理由があってもそういうことはしない、水資源の涵養林を解除する、工場を建てるために、解除してくれという要請があってもそれはしないと、そういうことをお考えになっているかどうか。あるいは資料をいま一々詳しく伺う時間がございませんから、後ほど、過去五年ほどの間にどういうように解除されたか、また、いまどういう解除の申請が出ているか、これに対する林野庁の考えはどうかというような点もこの機会にはっきり伺っておき いと思います。  それからもう私は立つことができませんから、最後に、大臣にお伺いをしたいんであります。この間から、この前から本委員会において問題になっておりまするのは、あるいは衆議院段階からもそうでありましたが、終始きれいな水を活用していこう、まず水をきれいにする、汚染の進行をストップするのみならず、少なくとも昭和四十二年ぐらいのときのきれいな水にまで回復してという、それをすることが前提になっておる。その前提に立って基幹事業計画を立てていこう、そして調和のある開発をやっていこう、というところにねらいがあると思うんでございます。私は、汚染の進行がストップされるまで諸般の、いま大臣がお述べになりましたような下水道の問題、し尿処理の問題農薬の問題、その他いろいろございますが、附帯決議に述べられました条項が始められまして、そうして汚染の進行がストップされる。さらに、水質が回復されていくということが見届けられるまで、つまり、科学的にそういうことが立証されるまで、そしてまた、琵琶湖で生活しておりますところの農漁民が安心して生業に携わることができる状態に至るまで、つまり、そういう希望が持てる時点まで毎秒四十トンの水をさらに下流に送るということはその時点まで待つという配慮があっていいんじゃないかと思う、下流といえども、きたない水をもらってもそれは生活用水にはならぬのであります。現在のままでも一応用が足りておる。将来の計画の中で秒トン四十トンというものがほしいと言っておるんですけれども、これがいますぐというわけじゃないんであります。そういう汚染の進行がストップされる。さらに、四十二年度くらいの水質に還元、回復するまで水を送る、現在以上の水を送るということは少し下流にも考えてもらって協力を得て、私は科学者でありませんから、それがいつ、どういう方法でということまでは申しません。そういうくらいの配慮は政府としておとりになっていいんじゃないか、そういう指導をなすっていいんじゃないかと思うんですが、まず政府委員のほうから御答弁を願って、最後に大臣の御答弁をいただいて、私の質問を終わります。
  70. 松形祐堯

    説明員松形祐堯君) お答え申し上げます。  保安林が水資源を涵養し、あるいは流水を調節するという機能がございますので、したがって、最も重要なものといたしまして、保安林を指定しているわけでございます。滋賀県の森林面積約二十一万ヘクタールでございますが、そのうち約五万ヘクタールが保安林として指定されております。その主たるものは、水源涵養保安林、あるいは土砂流出防備保安林と、こういう種類のものが大部分でございます。毎年解除されております過去の三ヵ年間の実績を申し上げますと、昭和四十四年度は、この約五万ヘクタールの保安林のうち、件数といたしまして二十件で百三十三ヘクタールでございます。四十五年度が二十三件で約十九ヘクタール、四十六年度が十五件で五十ヘクタール、こういうような解除件数になっているわけでございます。私ども解除いたします場合には、この保安林というものを重要度によりまして、一級、二級、三級というような区分をいたしておりまして、非常に重要度の高い保安林につきましては原則として解除いたしておりません。また、これ以外の保安林でございましても、保安林の解除申請等がございますと別の普通林で何とかならぬかとか、あるいはもっと保安機能のグレードの低いほうで代替できないのかということを指導いたします。しかしながら、どうしてもそこの場所でないといかぬというような場合は、やむを得ず水源涵養保安林の場合は、かわりの保安林をそこで別に指定するということと、同時に、その保安林の持っておりました機能にかわるような堰堤をつくるとか、貯水池をつくるとか、土どめをするとか、そういう保安機能を全く完全にとってかわれるような施設がある場合に、これを認めるというような処置をとっておるわけでございます。その場合にいたしましても、この保安林解除申請というものは知事を通じてまいりますので、知事の意見書とか、あるいは異議がある場合には、公聴会を開く、そういうことの処置をとっておるわけでございます。  以上でございます。
  71. 西村英一

    ○国務大臣(西村英一君) とにかく法律が通りましても、四十トンをパー・セコンドで送れるものではございません。これは施設もよくしなければならぬ、水もよくしなければならぬ、そういうことをやる機会は相当に、大方この辺でというようなことは、またこれは関係知事に相談してからやることでございますから、とにかく目的をある程度達しなければすぐやれるものではございません。十分慎重な態度でやるつもりでございます。
  72. 中尾辰義

    中尾辰義君 最初に、建設大臣にお伺いします。  今度の琵琶湖総合開発特別法案が、滋賀県並びに建設省はじめ関係地方団体が長年の間調整の努力をされまして、その結果ようやく今日このようにして、国会審議の段階になった。この点につきましては、私も一応の敬意を表するものでありますけれども、この法案につきましては、非常にこれは上流、下流淀川にまたがっていろいろの問題が多く含まれているように私は思うのであります。特にあげなければならないことは、この法案琵琶湖から水を取ることばかりに重点を置いて、そうして、淀川水系全体の問題が軽く扱かわれていやしないか、こういうふうに思うのであります。琵琶湖水位は御承知のとおり一センチ下げるというと、七百万トンの水が生み出される、このようにも言われておりますけれども、このように琵琶湖を利用するのは、手軽な簡単なということも言えないことはないのですが、一たびこういうふうに水位低下等によって自然を破壊した、こういった場合には大きな被害を受ける、取り返しのつかないようなことが起きるかもしれない。ですから、琵琶湖はあくまで淀川水系の中の一水源地にすぎないのであって、下流地域の水需要を解決するのに琵琶湖の水資源開発がすべてではない、これはもう建設大臣が百も御承知のことでございますけれども、今日まで水需要に対して、淀川水系全体の問題として打つべきいろいろの手があったと私は思います。いまもお話がありましたような、保安林の問題、樹木の体積の一・二倍は水の体積があるのだ、このようにも聞いておりますが、こういった植林保安林の問題、あるいはまた排水の再利用の問題だとか、あるいはさらに大きくいえば、近畿圏全般にわたるところの広域利水計画、そういったような打つべき手を全然打ってないとは私は申し上げませんが、そういう点が実行されていなかった、このように私は思うのです。ですから、そういう点から見て、建設大臣の所見を最初に私はお伺いしたい。つまり淀川水系全般の問題として取り上げられるべき問題というものがあったはずではないか、また、打ったとすれば、どういう手を打ったのか、その辺のところをまず最初にお伺いします。
  73. 西村英一

    ○国務大臣(西村英一君) 仰せのように、淀川水系は、琵琶湖のみならず、ほかのところも相当に、ダムをつくるとか、いろいろやってまいったのでございます。しかし、何と申しましても、やはり琵琶湖はそのうちの大宗でございます。しかし、今日まで淀川水系の水資源の基本計画がきまらないのは、やはり淀川からどれだけ水が落ちるかということが主眼であったんです。  建設省といたしましても、琵琶湖のみならず、ほかのところも全然等閑に付したわけじゃございません。ダムも相当な個所やっております。またやりつつあります。また、今後も計画をいたしております。そういうことでございますから、具体的にはひとつ河川局長からその状況を説明させます。
  74. 川崎精一

    政府委員(川崎精一君) 近畿地方の水資源の展望と申しますか、昭和六十年ぐらいを見越した水の需給状態、こういったものが非常に心配になりますので、私のほうで全国的な立場から調査をいたしました。その結果、一応広域利水の調査ということで、先般中間報告をしたわけでございますが、これによりますと、近畿の六十年の水需給から申し上げますと、大体約二十億トン、これは年間でございますが、不足をするというようなことで、今後やはり水の利用の合理化あるいは循環回収利用、こういったものを進めましても、相当不足することは顕著でございます。したがって、その一番の近畿の中心は、何と申しましても、やはり淀川水系でございますので、淀川水系の開発を第一にいたしまして、さらにそれ以外に、関連の水系といたしまして、紀ノ川水系だとか、あるいは西のほう、あるいは裏日本、こういった水系につきましても、現在手広く予備調査を行なっておるわけでございます。当面、昭和五十五年を見通した水需給の計画につきましては、これは近く経済企画庁を中心にいたしまして、淀川水系の水資源開発基本計画、こういったものがおそらくまとまると存じておりますが、これを見ましても、大体約六十七トンばかり五十五年には毎秒で不足する。その中で、供給の見通しは必ずしも全部ついていないわけでございますが、何といっても、琵琶湖による開発というのがその大きな部分を占めておるわけでございまして、そういった意味では、単に琵琶湖に依存するということではなくて、できるだけ近畿全般の水需要ということでわれわれも対処をいたしておるわけでございますが、やはり単にダムをつくるというだけではなくて、今後の地域の開発のあり方だとか、あるいは水の利用の合理化、こういったものとあわせてやはり検討をしていく必要があろうかと思います。ようやく琵琶湖の問題につきましては解決のきざしができたわけでございますので、これの開発を中心にいたしまして、余力のある間に今後の対策を十分検討をして、支障のないように進めていきたいと考えておる次第でございます。
  75. 中尾辰義

    中尾辰義君 あなた方のほうで御検討なさっていらっしゃる——過去において私は、全然そういったような利水計画等につきましても、やってないとは言わないですが、やっていらっしゃるんだけれども、さて、この法案が提出されて、いよいよ琵琶湖の水が、プラス毎秒四十トン、水位低下が一・五メートルないし場合によっては二メートルというようなこともあり得ると、こういうふうになりますと、これは琵琶湖の水というのは、滋賀県の命の水である、滋賀県側にとっては非常に愛着があるわけですが、そういう点から、どうしてもこういうような議論は地元のほうから出てくる。ですから、私は、当初に聞いておるのでありまして、それで、いまもちょっとお話がありましたが、淀川水系の利水計画、これは水資源開発促進法の基本計画で定められると承っておりますけれども、現時点においては、現時点にマッチしたところの計画ができておるのか、これからもう少し煮詰めていかなければならないとおっしゃるのか、それから将来の治水、利水計画というものはどういうふうになっているのか、この点、ひとつお伺いします。
  76. 岡部保

    政府委員(岡部保君) ただいまの淀川水系のいわゆる水資源開発促進法に基づきます基本計画を中心にして御説明をさせていただきます。  先日、当委員会でも御説明申し上げたわけでございますが、淀川水系の水資源開発基本計画と申しますものは、当初昭和三十七年に基本計画をつくりまして、それから数次にわたって部分的な補正は行ないましたのでございますが、現段階に至るまで、いわゆるトータルプランと申しますか、全般的なこの淀川水系に関します水の需要供給の対照表と申しますか、そういう数字的な裏づけができなかったわけでございます。と申しますのは、非常に大きなファクターが琵琶湖であるということで、現段階までそれができなかったということでございます。そこで、この琵琶湖問題も解決のめどを得てまいりつつございますので、私どもといたしましては、関係各府県、それから関係各省と相談をいたしまして、この淀川水系に関する水資源開発の基本計画というものの草案をただいまつくり終わったところでございます。そこで、この草案を現段階で正式に関係各省それから関係府県に対して御協議申し上げているただいま段階でございます。  で、それの内容につきましてごく概要を御説明申し上げますと、昭和五十五年を目標年次といたしておりますが、昭和五十五年までに、現段階から新たに発生するであろうと思われる新規の水の需要量、それからそれに対応して新規の水の供給計画、これを対応いたしておるわけでございますが、その新たに発生する水需要量は毎秒約六十八トンでございます。これに対しまして水資源の開発水量、これは琵琶湖開発事業による毎秒約四十トンのほか、室生ダム、一庫ダム、日吉ダム、比奈知ダムを合わせまして、毎秒約五十トンが予定されております。したがって、この水系の水需給計画の策定にあたりまして、毎秒約十八トンというこの基本計画の上では水不足というかっこうになっております。そこで、このギャップをどうやって解決していくのかという問題につきまして、さらにこの五十五年までに現段階ではまだ確定いたしておりませんが、もう少しダム等の施設開発することもなるべく早い機会に考えなきゃいかぬ。さらにとてもそれだけでは間に合いませんので、いわゆる水利用の合理化、高度化と申しますか、こういうことを積極的に進めるという考え方で、たとえば既存の水利施設の改修、いわゆる漏水防止でございますとか、あるいは水の再使用の問題であるとか、いわゆる何と申しますか、下水処理等の再利用でありますとか、あるいは工業用水の循環使用でありますとか、そういうようにわずかな水を十分に高度的に利用するということも考える。また、当然経済社会情勢がこれから変わってくるであろうと思われます。たとえば、これはまだはっきりした数字にはなっておりませんが、たとえば農業水利面で若干の余裕が出る、そういうような問題があるとすれば、そういうものを上水道に回すことも考えなきゃなりませんし、そういうような情勢の変化というものも考えて、このギャップを埋めていく考え方でございます。さらに先ほど河川局長が申しましたように、この五十五年という段階でさえもこういうギャップのある計画である、これから先の計画をどう考えるのかということになりますと、当然域外のいわゆる淀川水系の、いままで考えておりましたもの以外の、域外の水系からの導入というようなことも考えておかなければならないのではないかというような考え方で、現在基本計画を一応まとめておる次第でございます。
  77. 中尾辰義

    中尾辰義君 いまちょっとお話がありましたね。淀川水系以外から導水を考えるというようなことですが、これは私は新聞で見たんですが、建設省の調査で「昭和六十年になっても新宮川で年間十五億二千九百万トン、由良川で三億八千四百万トン、紀ノ川で五千四百万トンなどの供給余力をもつ河川がある。この水を阪神地区に導水すれば、水不足の心配はなくなる。」とこういうふうに私は見たんですけれども、これはまだ調査の段階というのは、これは将来どういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。これはどっちのほうですか。
  78. 川崎精一

    政府委員(川崎精一君) 私どものほうで、現在近畿全般の水系につきまして、いろいろ予備的な調査をいたしておるわけでございます。で、どこではたして水が余っておるのか、あるいは足りないのかということにつきましては、やはり今後の地域開発等を十分見きわめませんと、なかなかやはり断定のしがたい問題があるわけでございますし、それぞれの地域にはやはり地域なりのまた今後の開発に伴う水需要、こういったものもやはり強い要望があるわけでございますので、いまこれを直ちに特に阪神地区が足りないから、全部阪神に集中するんだということでも、やはり適正な水配分の趣旨からいきますと、必ずしも妥当でない面もございますが、しかし一応どういった地区にはどの程度の水資源が現在保存されておるといったような点については、現在私ども各水系ごとに調査をしておるわけでございます。こういったものを、今後地域の発展に合わせて具体的な供給計画として具体化するのには、やはり今後のいろいろな諸条件を見ながら、計画を具体化していく必要があるのじゃないかと思います。しかし、それにしましても必ずしも楽観を許さないというようなことでございますので、先ほど来申し上げておりますような合理化の問題とか回収水の利用とか、こういったことについてはやはりいまから十分手当てをしていく必要があるのじゃないかと考えておる次第でございます。
  79. 中尾辰義

    中尾辰義君 それでは、まあそれはわかりました。  この前、琵琶湖の視察に参りまして大阪府庁に行きましたらいろいろな資料をいただいたわけですが、この大阪の淀川の水利権の問題と維持用水の関係が表に出ておりますけれども、これを見ますというと、大阪府の淀川水利権の中で上工農水利権が毎秒百五十トン、それからその維持用水が八十八・五トン、こういうふうに出ているのです。そしてこの用水の中ですでに十トンが上水、工業用水として暫定使用されているのが現在の状態である、そうするならば維持用水の中には都市用水として利用する水が多分にあるわけですね。まあそのように思うわけですが、またこのように六〇%も維持用水を必要としなければならない、その理由はどこにあるのか、これを一つお伺いします。  それから、昔は船で、いわゆる舟運時代というのがあったわけですね。最近は都市機能も変わってきているし、したがって、河川の希釈水ということになれば当然これは下水道の問題が出てくる。下水道の不備不足ということが出てくるわけですけれども、そういうところがやはり都市計画行政の欠陥じゃないかと、このように思うのですがね。まず、この点からひとつ見解を述べてください。
  80. 川崎精一

    政府委員(川崎精一君) ちょっと先に数字的なことから申し上げますと、淀川にはお話しのように毎秒にいたしまして八十八・五トンの維持用水が確保されることになっております。これはいろいろ古い歴史的ないきさつがございまして、第一期河水統制の昭和二十七年に完成をみたわけでございますが、その時点でもやはりこの数字を踏襲いたしまして維持用水の必要量として八十八・五トン毎秒を設定したわけでございます。維持用水がはたして多過ぎるか少ないかというようなことは、これはまあなかなか維持用水自身の定義もこれを定めることがなかなか困難でございまして、やはり維持用水というのは現状を保持するために一つの大きな役割りをしておるということでございます。特に淀川では、舟運の便からこの水量が特に要請されたやに聞いておりますが、そのほかにやはり市内河川の希釈あるいは掃流の問題、それからまあ海からの高潮による——まあ何といいますか、希釈の問題それから漁業の問題、こういったものが一応何らかの形でその時点でバランスがとれておったのだろうと思います。しかしいまの時点から見ますと、なるほどまあ維持用水、水をどんどん海に流しているじゃないかということでございますが、私どものほうで、その後いろいろ実態を踏まえまして八十八・五トンの中で第一次的には大川に入ります七十トンの中から十トンを長柄の可動ぜきをつくることによりましてこれを水資源に転用いたしております。  それから最近正蓮寺川を埋めることによりまして、在来必要であった八・五トンをまたこれもやはり都市用水に転換をいたしまして、現在は約七十トンが維持用水ということになっております。それでその中で十トンばかりはこれは神崎川の方面のやはり浄化用水に使われておるわけでございます。したがって、いわゆる旧淀川には毎秒六十立方メートルが流れておることになります。現在、第一期河水統制事業で設定されました水利権の量ではたして大阪なりあるいは阪神間が十分供給されておるかということになりますと、御承知のように、相当需要が上回ってきておりますので、琵琶湖開発ができまして、そういった権利関係を整理しますと軌道に乗るわけでございますが、やはり渇水時にはこの維持用水というものがそういった点の大きな安全弁になっているわけです。必ずしも利水計画というのは一〇〇%安全な計画というものはございませんので、やはり特定の渇水等を対象にして計画を立てておるわけでございますから、異常な渇水時、こういったものに対しては、あれだけのたくさんの人口が非常なピンチに見舞われるわけです。そういった場合に、この維持用水というものが過去にも重要な役割りをしてまいりました。それから、今回の琵琶湖開発計画におきまして、毎秒新規に四十立方メートルの水が確保されるということでございますけれども、これもやはり維持用水がございませんと、異常な渇水時にはかなりの問題があるわけでございます。もちろん滋賀県のほうでも異常な低下という問題がございますし、下流におきましても環境の劣悪化、水質の悪化と、こういったような問題を起こすわけでございますので、私どもが予想しますところでは、大体現在残されております六十立方メートル・毎秒の中で、半分ぐらいはそういったピンチのときには維持用水にたよらざるを得ないようなことも可能性としてはあるんじゃないかということも想定するわけでございます。したがって、必ずしも現在の維持用水が多いとか少ないとかいう議論は、これはなかなかむずかしい問題でございますけれども、やはりそういったものが確保されておることによって、今後ともできるだけ安定した水資源なりあるいは河川の多目的な利用というものがなされるんだと私どもは考えておる次第でございます。
  81. 中尾辰義

    中尾辰義君 いまあなたのおっしゃることもよくわかりますけれども、御承知のとおりに、淀川は木津川、宇治川あるいは桂川と途中で流れ込んでおるわけですがね。ですから、やはり水がきれいになれば、それほど維持用水というものを自浄作用が少なくなるわけですから、やはり水をきれいにするということも相当効果がある。そういう点から言うと、京都の桂川の水質が非常に汚れていると、それは京都の下水整備が非常におくれている、こういうふうになるわけですね。京都の事情御存じでしょうけれども、ちょっと数字的に、京都はお金の面で非常に苦労もしておりますんで、ちょっと建設大臣も聞いておいていただけばありがたいと思う。京都市下水道普及率は四十五年度で四一・五%にすぎない。一日九十四万トンの都市排水のうち四十二万トンは処理されずに淀川に放流されてしまう、大体半分が処理されないでそのままストレートで流されている。ところが、大阪市の下水道普及率は七二%、五十年には一〇〇%にする予定で、処理水をBOD一〇PPM以下に浄化する酸素処理計画も進んでいる。これに比べまして、京都は非常に下水道整備がお粗末である、そういうことになる。そこで京都市は四十一年度から四十五年度までの五ヵ年で二百十七億円を下水建設費に充て、普及率を三一・四%から四一・五%までに上げたと、その財源の国庫補助金は四十一億円、国の実質補助率は一九%という低率で、八一%が京都市が負担をしておる、こういうことになっておるのですがね。私が申し上げたいことは、琵琶湖の水を幾らきれいにしても、途中で京都からよごれたやつをどんどん流していくと、こうしますというと、下流の大阪、兵庫の方も、そういうようなきたない水を浄化して飲んでいるということになる。維持用水もやはりよけい要る。そういうことで、京都の下水道整備をやろうと思っても、やはり財源に突き当たって、どうしても延び延びになるんですがね。私は、当初申し上げましたように、淀川水系全般につきましての水利用という考えならば、当然京都の下水道の整備ということにつきましても、もう少し国が力を入れていいんじゃないか、私はこう思うのですがね、建設大臣いかがですか。いま私が即答せいと言いましても何でしょうけれども、その辺やはり京都は京都だと、京都を琵琶湖並みとか、そういうわけにはいかないと、よその県から苦情が出るとかね、そういうことばかり言っていたんじゃ、ほんとうに淀川の水を画期的に使うということがこれはもう中心点からはずれていくんじゃないか。そういうことで、そういうような月並み的なお考えじゃなくして、この辺でほんとうに淀川をきれいにしようと思うならば、少しは前向きの答弁が私はあってもいいんじゃないか、こういうふうに思うて質問をしておるわけです。
  82. 西村英一

    ○国務大臣(西村英一君) とにかくいままでにいろいろなことがあったんでしょう。が、いよいよ桂川をことしからやるようになりました。前のことを言ってもしょうがないんですが、地方公共団体も金がなかったこともありましょうし、ある意味では府でやるとか市でやるとか、なかなか議論がきまらなかったということもあるし、いろいろありますが、とにかく桂川をほったらかしておったら、琵琶湖をよくしても、やはり淀川全体としてはあまりよくありませんから、ことしから強力にやりたいと、地方公共団体の京都市長あたりも相当に熱意を込めているわけです。政府としても相当に力を入れてやるつもりでございます。いままでのことはさることながら、たいへんおくれたことは申しわけないと思っておる。地方公共団体も相当に力を入れるようなかまえでございます。
  83. 中尾辰義

    中尾辰義君 それは、力を入れてくださるのはありがたいのですが、どこへ力を入れてくださるのか、その辺もうちょっと何とか答弁のしようはありませんか。
  84. 吉兼三郎

    政府委員(吉兼三郎君) 下水道整備五ヵ年計画の中の投資配分の問題になろうかと思いますが、私どもは現在の五ヵ年計画の中では環境対策に最重点を置いて下水道投資をやってまいっております。京都市の地域も、まさに淀川の水系の環境対策で一番大事な位置を占めておるわけでございますので、今後とも京都市下水道投資に対しましては、国全体の立場からも重点的に予算の配分という点において配慮してまいりたい、かように考えております。なお、御質問ございました国庫負担率等の問題でございますが、これにつきましては、もうすでに先刻御承知のとおり、公害防止関係の国庫負担についての特例がございます。現在この京都市下水道につきましては、第二次の公害防止計画の策定地域に入っておりまして、現在公害防止計画の策定中でございます。近く成案を得ると思いますが、そうなりますと、当該地域の下水道に対しましては公共下水道の処理場に対しましての補助率が十分の四から十分の五というふうに引き上げられるというふうなことにもなるわけであります。なおまた、昨年の下水道法の御審議の際にも御議論ございましたし、附帯決議もございましたが、大都市に対しまして一般都市に比較して国の負担割合が低いというのが現状でございます。長年にわたりまして私ども努力してまいったのでございますが、まだ必ずしも十分でございませんので、この点につきましては、今後とも一そう大都市関係の国庫負担率の引き上げ等につきましては、前向きに積極的に取り組んでまいりたいと、かように考えております。
  85. 中尾辰義

    中尾辰義君 私が申し上げるまでもないことですけれども、日本は経済成長が非常に急ピッチでまいりました。世界じゅうの資源を集めましていろんなものをつくって日本はこういうふうに公害でよごれましたと、世界にサンプル示しているようなもんですよ。その公害予防に対しまして国が出している費用、これはあなた膨大なもんですよ。そういう点から考えるならば、下水道の処理というものを一生懸命やっていらっしゃるけれども、もう少しほんとうに財源的に力を入れていただきたい、そのほうが国民の立場からならばプラスなんですよ。それは大蔵省は予算編成の場にいろいろと交渉持たれて、いや削った、足したといろいろと交渉されるわけですけれども、国全体、国の予算の範囲で見た場合、国民の税金負担という面から見た場合、やはりあなた、佐藤総理もおっしゃっているように、下水道を完備するということが公害予防のこれは根本要件ですから、そういうところにやはり積極的に金は使うときには使うと、こういう方針で建設大臣まあ次おやりになるかどうか知りませんけれども、ひとつがんばってくださいよ、それだけこれはお願いしておきます。  それから、これ総合開発の財源問題につきまして次にお伺いしますけれども、これは質問があったと思いますけれども、これ事業計画並びに事業費の負担区分、これ新聞等で見ておりますけれども、聞くたんびにちょこちょこ変わっておるんで、いまの時点で最終的にはこういうふうになっておるという点をひとつ示してください。
  86. 朝日邦夫

    政府委員(朝日邦夫君) ただいまの時点で総合開発事業に関しまして算定をいたしております事業費は、総額で約四千二百七十億円でございます。その負担の区分でございますが、そのうち国費が、いわゆるこの法案の八条の規定によりますかさ上げ分約百五十億円を含めまして千八百五十億円、それから滋賀県の負担が約千百億円、それから、滋賀県内の市町村の負担約二百五十億円、その他、これはたとえば水資源公団の事業費でございますとか、道路公団の事業費等がございますが、そういったものを含めまして残りの千七十億円余り、こういった財源の区分に相なっております。
  87. 中尾辰義

    中尾辰義君 あまり時間がありませんで、こまかいことはもう聞きませんけれども、これはかさ上げ分が百五十億で、それから下流負担が百五十億と。そのほかに例の五十億というものを下流のほうに負担をしていただくということは、これはもう建設大臣、きまったんですね。  そうしますと、滋賀県のほうは下流地域のほうからこれは融資で借りると、こういうことに私聞いております。そして、それに対するところの金利等がどうなるのか、それが一点。まとめて聞きます、もう時間がありませんので。  それから、いまの四千二百七十億の総事業費ですね、これはまあ現時点において積算をされたと思うのですが、この計画はまあ十年もかかるということですね。これは一体どうですか、十年間で一体この四千二百七十億の総事業費が何倍くらいになるようにお考えなのか。現在のいろいろな経済成長率等を考えてですね、年率七、八%の経済成長率、その辺見通して、これは大まかなところでしょうけれども、参考に聞いておきます。
  88. 西村英一

    ○国務大臣(西村英一君) 中尾さん、たいへん京都の下水道を御心配ですが、これはいま数字がわかりましたからちょっとお知らせします。ことしからですか。
  89. 中尾辰義

    中尾辰義君 はい。
  90. 西村英一

    ○国務大臣(西村英一君) まあ、とにかく一生懸命政府も力を入れておるのですけれども少しおそいんですよ、力の入れ方がね、全体として。それだからなかなか容易に直らぬということ。いま、全体の予算が二兆六千億円で五ヵ年間ですけれども、前は九千三百億円であったんですからね。そのときからたいへんおそくなっておる。京都の場合も少しおくれていますね。ことしは事業費にいたしまして、公共流域でもって七十七億つけております。これは事業費でございます。  それで、非常に桂川も心配いたしておりますからなるべく早目にやりたいと思っております。数字だけは参考のためにお知らせします。  それから、この法律による総事業費四千二百七十億でしたか、それが将来どうなるかということですが これは 試算をすれば試算ができまするけれども、試算はしておりません。とにかく四千二百七十億のワクでひとつ出発するわけでございます。その内容も概略はきまっておりますけれども、詳細はまだ結めておりません。どの事業にはどれだけ要すると、こういうようにきまっておりません。大きいものはずっときめております。下水道は五百九十億、治水は幾らこうきめておりますが、これもやりつつ、これは滋賀県知事が今度は計画の基本を立てますから、そのときにまた少し変わると思います。  将来これはどうなるかといえば、それはちょっとわかりません。この物価高を想定して計算をすれば幾らもできますけれども、それはいまやってみたってあまり効果はないと思います。  それから水源県に対する補助ですが、基本的にはやはり滋賀県に相当に負担がかかるから、あまり富裕県でもございませんから、下流の、水を使うほうも出してもらいたい。それだけ政府も援助しましょうということでスタートしたわけです。滋賀県は、いろいろなたいへんな滋賀県としては要望もございましたが、そんなにはとにかくということで、三百五十億円だけは補助いたしましょう、そうして、政府のほうはこの補助に対するかさ上げをして一般よりは負担を少なくしようということでやったんですが、三百億くらいしかなりません。そこで五十億円の問題はこれはやっていく上についてまただんだん変わっていくと思いますが、滋賀県については三百五十億を約束しなきゃならぬ。いまの計算からいくと、五十億は足らないから水源県においてそれだけを滋賀県にこれは貸してあげよう、こういうことです。金利はどうなるかとか、こうなるかとかいうような詳細の点はこれからの問題でございまして、そういうふうになっておる次第でございます。
  91. 中尾辰義

    中尾辰義君 わかりました。  それでは次に、水質保全の問題につきまして、けさほどから参考人等の説明も聞いたわけですけれども、何といいましても琵琶湖の水はいま飲料に使うんですから、水質保全ということはこれは最大の問題である、こういうことで、これは環境庁見えていらっしゃるですな。   〔委員長退席、理事茜ケ久保重光君着席〕  今日の汚染の状態、あなたのほうからきょうデータも出ておりますけれども、これを一応説明してください。
  92. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) お手元に資料をお配りしてあると思いますが、この一ページにございますとおり、現在の琵琶湖水質状態南湖北湖、それぞれ別々に出ておりますけれども、CODにいたしまして南湖のほうが一・四九という、平均でございますけれども、北湖は〇・七二PPM、これは北湖のほうが一PPM割っておりますので、私ども大体基準といたしましてはAAクラスという、湖といたしましては最上クラスに該当するというふうに考えております。ただ、南湖のほうは一PPMをこえておりますので、現状ではAという一段下がった段階に位置づけられるというふうに考えております。それから富栄養状態のNとP——窒素と燐でございますけれども、南湖窒素が〇・三八PPM、燐が〇・〇二一PPMということで、いずれもこれは富栄養化の段階に入っていると言わざるを得ないような状態でございます。ただ、北湖のほうは幸いにいたしまして、窒素が〇・一九、燐が〇・〇〇九ということで、富栄養の段階というふうには言えないというふうに考えております。  それから重金属類でございますけれども、水質におきましてはカドミウム、鉛等ほぼ検出せずというような、分析の限界以下でございますが、PCBにつきましてはここにございますとおり、南湖のほうで〇・一から〇・五PPBでございますけれども、そのぐらいは検出をされておりますし、北湖におきましても同程度のPCBが検出されております。私どもは現状はこうでございますので、先般、環境基準の設定をいたしまして、北湖はAA状態でございますので、これは維持しさらに改善をする、南湖につきましては現状Aの段階でございますけれども、これをできるだけ早い時期におきましてAAクラスに持っていくというようなことで、ことしの三月に環境基準の設定をいたしたのでございます。
  93. 中尾辰義

    中尾辰義君 このPCBの環境基準、きまっておりますか。
  94. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) PCBにつきましては、現在まだ分析方法につきましても、上水道用水なり食肉につきましての分析方法が確立いたしたという状態でございまして、こういう工業用水または工場の排水等におきますPCBの分析方法はまだ確立いたしておりません。また人体影響等につきましても、必ずしも現状においては明らかでないということでございますので、まだ環境基準は設定してございません。
  95. 中尾辰義

    中尾辰義君 それで、これは、いまあなたがお読みになったデータというのは、どうも検査する何といいますか、検査量によって違っておりますね。あなたのこのデータ、これは、どこが調査なさったのか。
  96. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) このデータは、先般、環境基準を設定するに際しまして、そのための調査を滋賀県がいたしました。その滋賀県のデータを整理いたしたものでございます。
  97. 中尾辰義

    中尾辰義君 滋賀県の衛生研究所がやって、それをあなたのところで聞いて出したわけですね。こういうことを言うのは私はあまり言いたくないんですけれども、どうも県の衛研というのはあまりガラス張りでこういうデータを発表しないような傾向があるんですよ。それはいろいろと配慮してのことでしょうけれども、そこで琵琶湖には御承知のとおりに、滋賀大なり京大の臨湖研究所とか、湖沼研究所とか、いろいろなものがありますが、そういう研究所のデータを見ると、また違うんです、あなた御存じでしょうけれどもね。ですから、ここにも資料がありますけれども。ですから、必ずしもこれは全面的に私は信頼しにくい点もあるわけです。また、学者意見によっても汚染度が非常に違う。きょうの参考人の方の御意見等もいろいろな点から違った例が出てきております。  それで、これと関連してお伺いしますが、いま問題になっているのはPCBですね。それから、琵琶湖周辺のいわゆる重金属、カドミウム、水銀だとか、それからPCB、そういうようなものを使っている工場、これはどのくらいあるのか、これは通産省ですか、もし掌握していらっしゃれば発表していただきたいと思います。
  98. 松村克之

    説明員(松村克之君) お答えさせていただきます。  琵琶湖流域で、PCBあるいはカドミといったようなものを使っている工場につきまして、通産省で所管しております企業の数を申し上げますと、PCBにつきましては、電気機械メーカーでございますコンデンサー工場が二工場でございます。それから、これは使用しているといいますか、御承知のように、熱媒体としてパイプの中で使っている、これは原則として外には出ない、熱媒体として使っている工場が三工場でございます。それから重金属でございますが、主として重金属が外に出るおそれのあるものはメッキ工場でありますが、電気メッキの工場が琵琶湖の周辺に五工場でございます。  以上でございます。
  99. 中尾辰義

    中尾辰義君 ついでにお伺いしますが、PCBは連日のごとく新聞にもいろいろと出ておるわけですが、いまPCBを使う機器あるいはPCBそのものの輸入あるいは生産、こういうものについて、これは通産省に伺いたい。
  100. 小幡八郎

    説明員(小幡八郎君) お答えいたします。  PCBの用途につきましては、これは大きく分けますと、開放系と閉鎖系とございます。開放系と申しますのは、かつて感圧紙に使っておりましたけれども、そのようなものとか、あるいは塗料に加えるもの、そういった使用段階で外部にさらされるといいますか、そういうものを開放系と申しております。それから、閉鎖系と申しますのは、使用している段階では密閉された容器の中に入っていて、外には出ない、こういう二つの用途があるわけでございますが、開放系につきましては、そのうち感圧紙用のものは昨年の二月で出荷並びに使用の停止をさしております。それから、それ以外の開放系につきましては、昨年十二月一ぱいをもって出荷及び使用の停止をさしております。それから、閉鎖系のものにつきましては、これはことしの三月、トランス及びコンデンサー類につきましては、その使用されたPCBが、トランス、コンデンサーの廃棄された時点において確実に回収し得るものを除きましては九月一日以降生産をしないこと、それから熱媒体を用います熱交換器、あるいは加熱器につきましても、それが廃棄された場合に確実に回収し得ないものは、これは七月一日以降、生産をさせない、こういう指導をしてまいったわけでございます。それから、そういうPCBを含んだ輸入機器類の輸入につきましても、これも国内の生産に準じた措置をとらせております。それから、PCBそのものの生産及び輸入でございますけれども、生産につきましては国内で二社生産していたわけでございますが、そのうちの一社はことしの三月で生産を停止いたしました。残る一社は六月末をもって生産を停止するということになっております。それから、輸入でございますけれども、これは最近の時点においては昨年少量の輸入がございましたが、これは開放系に向けられていた輸入でございましたので、昨年十二月をもって輸入の停止をさせた次第でございます。
  101. 中尾辰義

    中尾辰義君 生産中止ということはそれはどうなんですか。行政指導でおやりになったわけですね、その点。
  102. 小幡八郎

    説明員(小幡八郎君) 正確に申し上げますと、PCBの使用並びに出荷に関する規制措置につきましては、これは行政指導でやったわけでございます。それから、PCBそのものの生産につきましては、そういった使用面、あるいは機器の生産面の規制によりまして、企業が自発的にそれぞれ三月、六月をもって生産を停止するということを決定したわけでございます。
  103. 中尾辰義

    中尾辰義君 そうしますというと、そのメーカーが自発的に三月六月で生産をやめると、そういうふうに御答弁なさったのですが、こういうような害のあるものは、通産省としては思い切って法的に規制するとか、そういうことはできないものか、これだけやかましくされて、どうしても通産省業者側に立ったようなゆるやかな態度で出ますと、またまたいろいろの問題が出てくるでしょうね。だから、それくらいに法的規制すると、生産は中止すると、かように人間に害を及ぼすものは法的に生産中止というようなことは考えてないのかどうか、あなたは御答弁できるかどうか知れませんが。
  104. 小幡八郎

    説明員(小幡八郎君) PCBにつきましては、自発的に生産を中止するということが決定しておりますので、これにつきまして現段階で規制する措置を講ずるということは考えておりませんけれども、今後PCBのような化学品が生産あるいは使用されるということも当然考えなければならないことが多いと思うわけでございます。したがいまして、そういった危険な化学品が生産使用されるのを自由に放置しておくということは、これは防がなければならないかと思います。今回の機器の生産とか、あるいはPCBの使用につきましては、行政指導で行なったわけでございますけれども、今後多方面の化学品につきまして同様の問題が起こったあとで、行政指導をするということではなくて、事前にこれをチェックしていく体制というものを考えなければなるまいというように通産省としては考えているわけでございます。そのために近く、当省におきまして、審議会の中で、そういった問題を検討して、法的措置を含めて、この問題の検討をしてまいりたいというふうに考えております。
  105. 中尾辰義

    中尾辰義君 それで私がお伺いしたいのは、御承知のとおり、いろいろの公害の物質が出ておるわけです。ですから、環境基準をきめた下水道もこれからなるべく早期に完成をしたい、そういうことですけれども、問題は下水道によって浄化装置をすれば何もかもきれいになる、そうはいかないわけでして、ですから、いま言ったような、工場は琵琶湖の周辺にはあるわけです、重金属発生源が。ですから、工場排水の規制、これは法律に基づいてやっていらっしゃるでしょうけれども、滋賀県の実情はどうなのか、この辺参考にお伺いしておきたいと思います。
  106. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) これもお手元に資料をお配りしてあると思いますが、滋賀県におきましては、政府がきめております水質汚濁防止法によります全国一律の排水規制の基準というものよりも、さらによりきびしい上のせ排水基準というものをすでにきめております。お手元の資料の三ページにあるわけでございますが、この項目はPH、COD、BOD、SS、油肥類、フェノール類含有量という項目でございますけれども、相当きびしい上のせ排水基準をきめておるわけでございます。私どもはこの程度の基準では、将来やはりまだ琵琶湖水質を維持し、改善するためには不十分であるというふうに実は考えております。そこで、さらに滋賀県とも相談をいたしまして、これらの項目につきましての規制をさらに厳格にするということと、それから必要に応じまして規制項目をふやすということも、滋賀県と相談して指導してまいりたいというふうに考えております。そうすることによりまして、私どもはほぼ琵琶湖水質を現在以上に改善することも可能であろうというふうに考えておる次第でございます。
  107. 中尾辰義

    中尾辰義君 その点は環境庁のほうからもひとつ強力に指導していただきたいと思います。ただ、琵琶湖水質というものが、そういうような法的規制、下水道等による浄化装置、そういうものができましても、なかなかこれは完全にはとまるもんじゃない、御存じでしょう、あえて言うまでもないことですけれども。ですから、私ども心配して言うわけです。皆さん方の答弁は、こういう法律によって規制をする、下水道をこういうふうに完備する、こういうことですけれども、実態というものはそういうもんじゃないですね。これは、これから始まる道路工事の最中に、濁った水の中に工場廃液をほうり込んだり、悪く言えばですよ、あるいはまたけさほど問題になりました農業排水、農薬の水銀だの、あるいはDDT、いろいろなものが出てくるわけですからね。ですから、実際これはなかなか琵琶湖水質の浄化というものも、いろいろなことを想定すれば、非常にこれはむずかしい。そう簡単に、総合開発ができますからきれいになりますと、そうは私どもは受け取っておらないわけです。ですから、くどくど先ほどから質問をするわけですけれども、どうかその点は、ほんとうに今後、近畿一千四百万の水質源として強力にひとつ指導をお願いしたいと思います。  それからもう一点、これはついでに聞きますけれども、例の琵琶湖の水が年に四、五回かなりくさいのですが、これは原因等もよく聞いておりますけれども、このくさいのはいまの技術ではどうにもならないのか、またくさみがとれるように何とか処置ができるのか、この点ひとつお伺いしておきます。
  108. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 現在くさい水の原因につきましては、大学、研究機関等でいろいろ研究を進めていただいておるわけでございますが、現在までわかりましたのは、御承知のとおり、琵琶湖のモ類が相当繁茂をするということに影響されるのではあるまいかということ、これも必ずしもはっきりはいたしておりませんけれども、そういう有力な意見が一つと、それからくさい原因が、放線菌という菌に由来するのではあるまいかというようなことも言われております。それから放線菌と琵琶湖のモ類の繁茂の状況との間に必ずしも因果関係が明らかでないという点もございまして、必ずしも的確に原因を究明ができているというわけではございませんが、しかし、総じましてやはり富栄養化進行状態関係があるというふうに私ども考えておるわけでございます。したがいまして、原因としましての富栄養化進行をとめるということであろうと思っておりますけれども、これも御承知のとおり、窒素並びに燐につきましては、これを除去する手段というものの実用化の問題でまだ問題がございます。そこで私どもは、その技術開発を急ぐということに努力をいたしたいと思っております。もう一つは、取りました上水道用水のくさみをとるわけでございますけれども、現在活性炭を用いまして相当これの効果をあげているわけでございますけれども、しかし、そのくさみの度合いによりましては、非常に大量の活性炭を必要としたり、また完全に脱臭ができないというような問題もございまして、この処理方法につきましても、さらに、なお研究を進める要があるというふうに私ども考えております。いずれにいたしましても、原因の除去の面と、それから処理の面、両面におきましてさらに研究を進めたいというふうに考えております。
  109. 中尾辰義

    中尾辰義君 それから、これは滋賀県側になるわけですけれども、滋賀県の造林公社というのがありますね。この事業内容ですね、それから事業の現状といいますか、私がこれをお伺いしているのは、どうも造林公社が、一応は仕事しておりますけれども。   〔理事茜ケ久保重光君退席、委員長着席〕 将来造林地帯にしたい、そういうところが最近非常に不動産業者等から先買いされちゃって、仕事に非常に支障を来たしているとか、そういうような話も聞いているものですが、実情はどうなっているのか。この公社のいわゆる目標といいますか、一応何年をめどにして、どのくらいの規模でどういうふうにしたいとか、いろいろあろうかと思いますが、その点ひとつお伺いします。
  110. 朝日邦夫

    政府委員(朝日邦夫君) ただいまお尋ねの滋賀県造林公社でございますが、これは昭和四十年の三月に農林大臣の許可を得まして、四月十日に設立登記をいたしました社団法人でございます。  この設立の目的でございますが、琵琶湖周辺の低開発地域に大規模造林を実施し、水資源の確保、森林資源の造成及び農山村の経済基盤を確立をし、民生の安定、社会福祉の向上に寄与するということを目的とするものでございまして、事業の内容といたしましては、いわゆる分収造林事業でございます。  これの社員でございますが、滋賀県及び滋賀県内の二十七の市町村と、それから滋賀県の森林組合連合会、さらに淀川下流関係地方公共団体八団体、合計三十七の団体で構成をいたしております。  出資金は、滋賀県内の団体の出資が千九十万円、それから下流団体が八百万円で、合わせて千八百九十万円でございますが、事業の運営は、金融公庫の借り入れ金のほか、社員からの借り入れ金で運営をいたしております。  事業の目標といたしましては、昭和四十年度から四十九年度までの十ヵ年間に約一万ヘクタールの植栽をするという計画のもとに発足をいたしておりまして、四十六年度末まで七年の間に約六千ヘクタールの植栽を終了しておる模様でございます。したがいまして約六〇%の進捗率ということに相なりますが、これにつきましては、今回の総合開発事業の中におきましても、さらにこの水源涵養等の意味合いも強化をいたすわけでございまして、他の造林事業とあわせて、この公社の造林事業をも拡充をする計画滋賀県当局がいたしております。これはまだ全体的な規模の確定にまで至っておりませんけれども、この十ヵ年の計画期間中におきましては、約一万四千ヘクタール程度の植栽をしたい、こういうことで、この総合開発計画の中に繰り入れることを検討いたしておるわけでございます。
  111. 中尾辰義

    中尾辰義君 第二番目の現状、いろいろな支障を来たしておるようなところはないかということはいかがですか。
  112. 朝日邦夫

    政府委員(朝日邦夫君) この造林事業は、琵琶湖流域全面にわたりまして計画いたしておりますが、私どもといたしましては、特に不都合があるとか、支障があるという話はいまのところ聞いておりません。
  113. 中尾辰義

    中尾辰義君 じゃ、その点、いろいろなことを耳にしておりますから私は聞いたので、予定どおりそれが進んでいけばけっこうでありますけれども、現実はいろいろと買い占め等もあるものですから聞いておるわけです。時間がありませんので、次に行きます。  次に、水位の問題につきまして、これは建設大臣にお伺いしますけれども、現在の琵琶湖水位、これは鳥居川の利用低水位をゼロメートルと押えて、これは明治七年に定めたOP基準八十五・六一四メートルとしているけれども、最近の琵琶湖水位の記録等から見て、この基準を妥当な基準と見ておるのか。これが一つ。  それから、この基準は将来ずうっとこの基準でいくのか、あるいは変えることも考えておるのか、その点お伺いします。
  114. 川崎精一

    政府委員(川崎精一君) 先生、御承知のように、琵琶湖水位は瀬田の唐橋のところに明治七年にオランダ人の指導でつくったわけでございますが、その基準になっております高さは、これは大阪湾の中等潮位をとっておるわけでございます。非常に端数のある数字でございますので、これをそのままいろいろな資料に使いますときには、不便を生じますので、琵琶湖水位をどこかでひとつゼロ点をつくって、あとはそれをもとにして琵琶湖水位なりあるいはそれから計算します水量なり、こういったものをすべて資料を調製しておるわけでございます。まあ琵琶湖の代表水位というのは一体どのくらいかというようなことにつきましては、これは過去のいろいろな歴史がございまして、経年的には次第に低下はしておるわけでございますけれども、それじゃ、何が標準水位かということになりますと、これはいろいろ技術的な問題、それから、住んでおられる住民の方の認識の問題等、いろいろあるわけでございますけれども、やはり過去のいろいろな諸資料等を、約百年程度の資料がございますが、この基準点を変えますと、そういったものを全部変更しなくちゃいけないというような事情もございますし、県の一般の方々も一応ゼロ点というものを認識して、最近湖岸にいろいろ水位の表示等もされておりますが、かなり一般の住んでおられる方の生活にもああいった数字が密着しておるんじゃないかという気がいたします。したがって、当面私どもは変更することは考えていない次第でございます。
  115. 中尾辰義

    中尾辰義君 次に、この南湖洗いぜきの操作規則のことでお伺いしますけれども、現在琵琶湖は一級河川、そういうことでありますけれども、滋賀県の知事さんが管理をしておると、そういうことになっておるわけですが、瀬田川の洗いぜきの操作規程、これはまだ定めてないんじゃないかとこういうふうに聞いておるわけです。いまあるのは暫定規程と、こういうふうに私はお伺いをしておるわけですが、この法案が制定されまして、異常渇水の場合は最低二メートルまで水位を下げることもあり得ると、ただし、これは建設大臣や関係知事と協議してきめると、こういうことですから、この操作規則というのをこれは明確にしておく必要があるんじゃないか、きめるとすれば、どういうような内容とするのか、その辺ですね。
  116. 川崎精一

    政府委員(川崎精一君) 新しい河川法では、こういう瀬田の洗いぜきといったような重要な構造物につきましては、それぞれ河川法の十四条で操作規則をつくることになっております。事務的にもちろん、私どものほうも滋賀県の当局あるいはこれは大阪府等下流の府県にも関係はいたしますので、いろいろ話し合いを進めてはきたわけでございます。しかし、その間に今回のいわゆる琵琶湖総合開発というものが近く発足をするであろうという前提で、そのときにやはり一括してひとつすっきりとした形の操作規則をつくろうじゃないかというようなことで、現在まではむしろ明治以来の慣行的なルールを守って現在運営をいたしておるわけでございます。この洗いぜきにつきましてはやはり洪水のとき、それから渇水のとき、こういったところで上下流の利害といいますか、住民感情等が相反しますので、なかなかそういった合意に達しなかったというのが、その大きな原因の一つでございます。今回、利用低水位マイナス一メートル五十ということで一応利用の幅がきまりましたので、その範囲におきましては、所要の操作等につきまして私どもも一般のせきの操作規則に準じたような流量なり操作の方法なり洪水時の処置なり、こういったものについては規則を定めるように、これから検討いたしたいと思っております。  なお、異常の場合につきましてはこれは過去の琵琶湖水位の歴史からいきましても、それに匹敵するようなものは昭和十四、五年の一回きりでございますが、まあ確率の上からいきますと、非常に頻度の少ないケースでございますけれども、そういった場合には単に琵琶湖水位をまあ下げるということだけではなくて、やはり下流の水の使われ方の実態、あるいは淀川下流域の治水環境、こういったものも合わせて、その時点でやはり措置をするということでございまして、まあ大臣の御判断で、そういう形をとって今回妥結を見たわけでございますので、非常にいまからそういったケースは想定しにくいのじゃないかと思います。しかし、技術的にいろいろな形の問題を検討いたしまして、そういった場合の判断に供するような資料は現在検討を進めておるところでございます。いずれにしましても、新しいやはり事業がある程度進みませんと、新規の水需要に対応した操作をするという段階には至らないかと思いますので、その間に十分私どもも調査し、検討いたしたいと考えておる次第でございます。
  117. 中尾辰義

    中尾辰義君 それでは、将来はまあつくるけれども、いますぐというわけにはいかない、今後の水需要の状況等を勘案してやると、こういうことですか。  それでは、次にお伺いしますけれども、琵琶湖水位の問題ですが、あなたのほうから資料もらっておりますが、この資料で昭和十四年十二月、これはマイナス一・〇三メートル、こうなっておりますが、これが今後毎秒四十トン、これにプラスするということになりますと、この辺のところは一体どこまで下がるのか、まあ推定していらっしゃると思いますが、これは参考にひとつ答えてください。
  118. 川崎精一

    政府委員(川崎精一君) 私どものほうで琵琶湖だけではなくて、下流の木津川、桂川、こういった支川の流況と合わせて水量調節をいたしまして淀川下流の水補給をすることになるわけでございます。そういった関連の水系の資料の整っておりますのは大正七年からでございますので、それ以後の過去の水文資料等から推定をいたしまして、今回のさらに新しく四十トンの開発をした場合に琵琶湖水位がどのように低下するかということでございますが、そういった過去の気象が再現されたといたしまして推定をいたしますと、大体大正七年から毎年の最低——それは年の最低水位だけでございますが、これを全部平均をいたしますと、大体マイナス九十センチくらいになります。で、現状が大体約マイナス六十センチぐらいでございますから、平均的には三十センチないし五十センチ程度の低下になろうかと存じます。それから、昭和十四、五年、このときには非常に水位が低下することが考えられたわけでございますが、節水あるいは放流制限、こういった措置を講じないで操作をいたしますと、約マイナス三メートル十くらいまで下がることに相なります。これを一メートル五十をできるだけ割らないように、非常の場合でも二メートルを割るというようなことは絶対しないようにということで、かなりの下流にやはり制限が伴うわけでございます。そういったことで、人為的なそれに操作を加えまして、昭和十四、五年のような場合には——非常事態として、それに対応するような処置をとる必要ができてこようかと思います。その他の年につきましては、多少一メートル五十を割る年が二回ぐらいございますが、いずれもマイナス一メートル六十程度でございますので、これは十分操作によってたいした事態に至らないで食いとめられるんじゃないかと想像しておるわけでございます。
  119. 中尾辰義

    中尾辰義君 時間がありませんので、この水位低下に伴うところのいろんな農業、漁業等に対する影響、資料も出ておりますから、これは省略いたします。  補償の問題で、これは法案ですがね、本法の第七条によりますというと、損失を受けたため生活の基盤を失った者には、補償と相まって、事情の許す限り生活の再建のための措置のあっせんにつとめると、大要こういうようになっているわけですが、この「事情の許す限り」というこの意味ですね、これはどう見てもとれるような気がするので、私はお伺いしたいんです。これちょっと明快な答弁をしてくださいよ。
  120. 朝日邦夫

    政府委員(朝日邦夫君) この第七条の規定の趣旨でございますけれども、この総合開発事業の実施によりまして、権利に関しまして損失を受けた、受けられる方が出ます場合には、この条文の有無にかかわりませず、適正な補償が行なわれることは当然でございます。しかし、さらにこの場合、この法案の中ではいろんな補償以外の産業の振興と申しますか、漁業の振興事業等も考えておるわけでございますが、そういったことで、極力被補償者の方の生活等について、将来に向かってもなお振興をしてまいるというような事業の振興をはかってまいるというようなことを考えるわけでございますが、それでもなお被補償者の申し出がございまして、あるいは代替地の取得でございますとかいうような生活再建のための措置のあっせんにつとめてほしいという申し出があります場合には、事業を実施いたします者は、いわば補償がもう済んでおるからあとは知らないということでなくて、その申し出のような措置を実現をするべく努力をする、そういう努力の義務を課する規定の趣旨でございますけれども、その場合に、努力をするわけでございますから、必ずしも申し出のとおりこれが実現をし得るとは限りませんので、むしろ事業の実施者といたしましては、できる限り努力をいたすという趣旨で、事情の許す限り努力をいたすべきだということでございます。その意味におきましては、努力義務の限度と申しますか、そういったものを表現をするしかたとしては妥当なものではないかというふうに考えておりますが、なお、これと同様な規定は、現在の法律にも例が見られるわけでございます。たとえて申しますれば、都市計画法の第七十四条の第二項の規定でございますとか、あるいは公共用地の取得に関する特別措置法の第四十七条第五項の規定でございますとか、そういった例が実はあるわけでございます。
  121. 中尾辰義

    中尾辰義君 そうしますと、これは竹内さん書いたんですか、ここに出ておりますけれども、こう書いてあるでしょう。これは都市計画事業の中に、説明としてあるんですが、「公共用地の取得に関する特別措置法や国土縦貫自動車道建設法等における生活再建措置の規定が国又は地方公共団体に努力義務を課しているのに対し、本法は施行者に対する努力義務規定としている。」と、この辺が、これはちょっと違うところで、片方は努力義務を課している、片方のほうは努力義務規定としている、非常に微妙な説明をしてあるんですな。やはり法律用語として、こういうのははっきりしておく必要があるんじゃないかと思うのです。あなたがいま答弁なさったのを聞いておりましたら、努力義務を課すると、こうおっしゃったわけです。そういうふうに解してよろしいのか。場合によっては、ややこしいのは削っちゃったらどうか、こういうふうに思うのですが、その辺ひとつ見解を示してください。
  122. 朝日邦夫

    政府委員(朝日邦夫君) ただいまの努力義務を課しておる点においては同様かと思いますが、義務を課される者はだれであるかが問題でございますが、この法案の七条におきましては、総合開発事業を実施する者に義務を課しておるわけでございます。
  123. 中尾辰義

    中尾辰義君 それで、この補償の問題につきまして一点お伺いしたいと思いますけれども、この法律は十ヵ年の時限立法になっておると、したがって、事業費を見ましても、総合開発に伴う事業に対するところの補償、これはわかるんですが、十年経過をしてからいろんな被害が開発事業に関連して起こったと、そういうことに対してはどうなるのか。それが一つと、それから、これはもう質疑があったかもしれませんけれども、そういうときのために補償基金といったようなものを国なり県なり金を出し合ってつくったらどうかと、そういうような構想——山内さんからあったかもしれませんが、——に対する見解をお伺いしておきます。
  124. 西村英一

    ○国務大臣(西村英一君) この事業をやる場合に最も重大な問題は、やはり地域住民に多少にかかわらずいろいろ影響を与えることでございますので、ことに機能の回復ができる施設等につきましては、あらゆる努力を払って解決するつもりでございます。そこで、その点につきましては、もちろん直接の被害のものもありましょうし、間接の被害のものもありましょうし、またいろいろこの影響をこうむるのでございまするから、いまこれを全部十分調査を、この法案が成立するとともに、また現在でもやりつつありますが、調査をいたしまして、非常に地域住民に迷惑をかけないように、法律の目的も地域住民の福祉をはかることが主眼ですから、しかし十年後に、その影響があった場合にはどうするか、これも予測できないことでございます。したがって、地域等のことにつきましても、これはいま直ちにはこの基金を設けるというように決定はいたしておりませんが、なお、滋賀県等とも相談をいたしまして、ひとつ検討はしてみたい、かように思っておる次第でございます。
  125. 中尾辰義

    中尾辰義君 終わります。
  126. 小林武

    委員長小林武君) 本案の審査は、本日はこの程度にとどめます。   〔委員長退席、理事茜ケ久保重光君着席〕
  127. 茜ケ久保重光

    ○理事(茜ケ久保重光君) 次に、建設事業並びに建設計画に関する調査を議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  128. 小林武

    小林武君 郵政大臣おいでになりましたが、初めのほうは政府委員のほうに質問をいたしまして、大体経過を郵政大臣に知っていただくという、こういう考えですから、なお質問に対しましては、答えは、前の会議録に従っての質問ですから、簡単明瞭にひとつやってけっこうです。確認いたしますけれども、数年前に計画をしたというのは、正確にいえばいつですか。
  129. 山中侠

    説明員(山中侠君) 正確に何年の何月何日ということはいま明確に記憶しておりません、申しわけありません。——中野郵便局を改築したいということは、四十二年だと思います。ここに記録にございますのは。それで、中野の現在の敷地を取得したいということを中野区に申し入れたのは、四十二年の十二月でございます。
  130. 小林武

    小林武君 着工は四十六年の何月ですか。
  131. 山中侠

    説明員(山中侠君) 四十六年の三月でございます。
  132. 小林武

    小林武君 土地を取得してから着工に至るまでの間の年数というのは、これはどのぐらいあるのですか。
  133. 山中侠

    説明員(山中侠君) 土地を取得いたしました正確な日付が、ちょっとここにございません。
  134. 小林武

    小林武君 いや、大体でいいです。
  135. 山中侠

    説明員(山中侠君) 四十三年八月に、大体買収の条件がととのったと書いてございます。
  136. 小林武

    小林武君 四十三年に土地を取得した。その取得のときにどういう状況であったかということは、もうここで申し上げるまでもない、かなりいろいろな問題がありましたね。区議会なんかも、だいぶそのために騒いだようです。それから着工に至るまでの間というのは、かなりの年数があるわけです。その年数の間、あなたたちはここに局舎を建てるということの準備を整えておられた。その準備を整えておられたのであるからして、現場については十分御存じである、こう見られるわけですね。どこへ建てるのかということ、周囲には何があるのか、この点は間違いなくあなたたちも現地に出かけておってごらんになっている、そして確かめられてやられた、こう見てよろしいですか。
  137. 山中侠

    説明員(山中侠君) われわれが国の建築を建てます場合には、現場を十分調査いたしますし、周辺がどうなっておるかということも十分な調査をいたしまして計画をいたしますので、中野につきましてもいま申し上げたとおりでございます。
  138. 小林武

    小林武君 したがって、設計、施工に至るまでの間にそこらの状況については周知されておる、こういうことになりますからね。  そこで、お尋ねいたしたいのですけれども、そのぐらい周知されたことについて、一体、何べんかしろうとでもやらないような誤りを発言しておられるというところを見ると、これは意地の悪い言い方ですけれども、何かあなたのほうじゃ口先でだますというような気持ちがあったようにも見られるのです。そういうことはゆめゆめないでしょうな。
  139. 山中侠

    説明員(山中侠君) 具体的な内容がわかりませんけれども、地元の方をだますとか、どうするとかいうことの御指摘だと思いますが、そういうことは全くございません。
  140. 小林武

    小林武君 正確に言えば、正しく現場を知って寸分の誤りもなかったと、こういうことになる御返事だと私は理解します。意地の悪いようですけれども、これは確かめておかなければいかぬと思うのです、あなたたちのこれからのやったことを見ますと。そういうことを十分御存じのあなたが、付近住民に一応の了解を得たと、この間の沢田質問に対してお答えになった、答えている。付近住民の了解を得た。ところが、中野住宅はこれは範囲外だとあなたは認定された。建てる建物は単なる局舎ではない、上に相当数の階層を乗せる。これはあなたのほうでどうしてこの範囲外と認定したのか範囲外というのはどういうことなのか。中野住宅というのは、全然日照権の問題で問題が起きないような場所にあると、あなたが見たのか、あるいはそこに起こるぐらいのことはだまっておれというような気持ちでおやりになったのか、ここらあたりが私はわからない。あなたは先ほど来から言っているように、相当年数かけて十分の調査をしてやられた、こう言っている。私はだましたじゃないかというようなことを言うのは、意地悪く言ったのはそこです。これは範囲外だと認定した、この点はどういうあれですか、あなたの発言に従ってやっているんだからね。
  141. 山中侠

    説明員(山中侠君) この前もお答え申し上げたと思いますけれども、あの環境の立地条件の中で、つまり、商業地域というところで、日照が中野住宅の場合に最も悪い条件のところで、日陰になる部分が冬至の場合に二時間足らず、正確に言いますと一時間十五分でございますが、それが最悪のところで、だんだん階層が上に行くに従って一時間とか三十分、十五分というふうに減っていくような条件でございます。そういうところでは、この前も申し上げましたようにがまんしていただけるとわれわれが判断いたしましたので、ごあいさつ申し上げなかったということでございます。ごあいさつ申し上げなかったことがけしからぬというおことばに対しましては、この前申し上げましたように申しわけないと、これは私ども申します、
  142. 小林武

    小林武君 そこらあたりがちょっと、そこらあたりからおかしくなるんです、あなたの話がね。この速記録に書いてありますけれどもね、とにかく国の模範になる建築を郵政省は従来からもやっていると。模範になる建築をやられる方は模範になるような技術者でなければならぬ、そういうことはまたあとで出るかもしれませんけれども。それほどで、しかも、かなりの年月をかけて検討に検討を重ねたとおっしゃるなら、一体二時間——あなたのことばをそのままいま認めて考えも、二時間の日照権の問題が出てきたら、これは計算すればすぐわかることですから、四時間なり五時間なりの間に二時間減るということはこれは範囲外で、おまえたちはそういうことについてぐずぐず言うあれはないんだと、断わる必要もないんだとこう考えられるのはまともですか、あなたがいま言ったとおりのことを言うなら、そういう事情であったから私は範囲外にしましたというならば、はたしてそれじゃ日照権という問題をあなたはずいぶん読んだ読んだとおっしゃるけれども、日照権の問題というのは二時間は問題にならぬということはありますか。二時間なり四時間なりの間で争っているんでしょう、いろいろな事件見ても。これは公団なんかの場合でも、二時間ないし四時間というようなことを公団の職員で書いているものありますからね。だから私は問題のあるところだと思う。郵政省は、そういう日照権の問題についてまず範囲外で、こんなことはだまっていてもがまんしていなければならない時間だと判定したというならば、それだけでよろしいからここで言ってください。
  143. 山中侠

    説明員(山中侠君) この前の繰り返しになると思いますけれども、日照がどのくらいあればいいかということは、地区によって違うと思います。
  144. 小林武

    小林武君 そのことでないんだ、答えるのは。あなたは二時間と言ったんだから、二時間程度は範囲外であって、文句の言われる筋合いはないと判断したということでしょう、先ほどの話は範囲外に置いているんだから。がまんしてもらえるとか、もらえないとかいうことはこの間、沢田君がさんざん質問しているでしょう。話し合いをして、そうしてそこから一体妥協するかしないかの問題じゃないかということを言っているでしょう。あなたは範囲外としてここだけは問題からそらしたんだ。ほかのところは歩いた——まあ、ほかの歩いたところをあとで聞くけれども、そうでしょう。範囲外だと判定したのは、二時間程度は問題じゃないとあなたは考えたからでしょう。そうなら、そうだと言いなさいというのです。よけいなことは要らない。
  145. 山中侠

    説明員(山中侠君) あの地区におきましては、冬至のときに二時間足らずの日照を妨げるということはこれはやむを得ないことだと考えます。
  146. 小林武

    小林武君 二時間の場合は、それでは何のあいさつもしなくても住民どもはだまっていりゃいいと、こういうことですね。もう一ぺん念を押す。
  147. 山中侠

    説明員(山中侠君) 私どもが……。
  148. 小林武

    小林武君 いや、私どもでないんだ。あなたのほうの役所の考え方として、二時間なんというのはそんなこと文句言ったって歯牙にもかけることでない、相談も妥協もとにかくあいさつも要らぬ、それはまあまあの時間だということを考えているからだまって範囲外だと、こう言ったんでしょう。これは沢田質問に対して答えたあなたの速記録を読み上げているんだ。そうなら、そうと言いなさいよ。
  149. 山中侠

    説明員(山中侠君) 国として、だまっていろというような気持ちは毛頭ございません。がまんしていただけるというつもりで考えたわけでございます。
  150. 小林武

    小林武君 そんなていさいのいいこと言っちゃいかんよ。範囲外だと考えたのでしょう。二時間くらいのところは、これはあなたは二時間と断定してかかっているから二時間くらいだと考えて、二時間くらいのもんだろうから出ても入ってもたいしたことはないだろう、それは範囲外だと断定した。だから——読みますか、あなたのあれを、読まなくてもいいでしょう、これはあなたが言ったんだから。あの辺の地域であれば、あの程度の日当たりを妨げることはがまんしていただけるのじゃないかと、こう書いてある。言っているんですよ。がまんしていただけるということの中にいろいろな意味があるのですよ。これからいってやはりそれだけのことをやるんだからがまんしていただけるようにいろいろとにかく納得いけるように話し合いをしましょうというのが一つ、これはまああたりまえのやり方ですね。そうでしょう。そうでなくてあなたのやつは、ここへはあいさつに行かぬでもよろしいと、こういう範囲外だというのは。そうなんだ、そうでしょう。それはちゃんと言いなさい、大臣いるんだから。
  151. 山中侠

    説明員(山中侠君) がまんしていただけると判断いたしましたので、ごあいさつにも行かなくていいと考えました。
  152. 小林武

    小林武君 そこで、明石という人は当時着工の現場の所長さんであったことは間違いありませんか。
  153. 山中侠

    説明員(山中侠君) 監督主任ということでございます。平たくいえば所長でございます。
  154. 小林武

    小林武君 まあ、平たくてけっこうなんです。この明石という人を、郵政省の建築部の課長補佐が、今後は現場の所長であるから明石さんと話してもらいますということを言っている。そうすると、あなたは建築部長として明石さんに現場についてはいろいろの点で十分連絡し、国の模範になるような建物を建てるためにしているはずですね。十分承知しているということ、そのことは間違いないですか。そう解釈してよろしいか。
  155. 山中侠

    説明員(山中侠君) 現場の所長といたしまして、明石君の判断で行なうべき権限もございますし、それから明石君自体では決定できない権限もたくさんございます。それは、あらゆる現場について共通したものだと思います。
  156. 小林武

    小林武君 しかしあれでしょう。設計、施工等についてあなたのほうで、同じ東京都内ですからね、十分の連絡がないはずがないし、そんなあやふやなあれであるならば、その付近の人たちに明石と話してくださいという課長補佐の話もあるはずがない。その話が出たのは昭和四十七年の一月の末だと。そのとき鴨下さん外二名の方々が現場の所長——この鴨下さん外二名というのは中野住宅の住民ですね、に面会を求めて、ビルが建ってもだいじょうぶですかということを念を押した。そうしたら、その際、百メートル離れているからだいじょうぶだろう、こう言っているのだが、私は先ほど言うた、あなたのさっきの話で、何年間もかけてもう現場について徹底的に調査をして、設計、施工について手抜かりなくやったというような、ここらあたりは怪しいと思う。私が百メートルと七十メートル間違ったというなら、これはしろうとだからかんべんしてもらいたい。しかし私でも、これ何かグラウドかなんかに立ってやれば、学校の先生をやったことがあるから、大体これは百メートルか何メートルかわかる。百メートルと七十メートルと間違ったというのはどういうあれですか。もし、これはあなたたちが十分調査していれば、七十メーター——住民というのはもうとにかく生活ということについて敏感に反応するわけですから、真剣な問題なんですよ。あなたたちから見れば案外簡単なことのように思っているかもしれぬけれども、真剣な問題です。だからたいへんだと思う。それに対して三十メーターの間違いを起こしたというのは、それはあなたたちのほうで十分にできてなかったんじゃないですか。ここの場所に、どうやって——こことのあれは百メーター、これもやっぱり範囲外だからほうっておけというようなことになったわけですか、どうですか、そこらは。
  157. 山中侠

    説明員(山中侠君) 特殊な場合を除いて、われわれが建てます敷地の周辺につきましては、そう遠距離まで実際に測量するということは、普通はございません。したがってその場合に、明石君が百メーターと言ったといたしますと、おそらく彼の目分量でそのぐらいあるのじゃないかということで言ったと思います。
  158. 小林武

    小林武君 一体その目分量なんという話が出てくるのがおかしいと思いませんか。いまその日照権の問題だとか、あるいは建物を建てれば騒音の問題だとか、都市の中でさんざんとにかく苦労して、まごまごしていると知らないうちに倒れたり、あるいはけいれんを起こしたりするような、こういうやっぱり都市の生活なんですよ。そこに大きな建物ができるとなったら、住民の反応のしかたというものはなかなかきびしい、真剣なんですよ、そのときに、建てるほうの、国の模範的建物を建てるのがわが郵政省の伝統ですというたんかを切ったあなたが、百メートルと七十メートルを間違うなんというやり方は、これはどういうことだということになるのです。そうでしょう。そう思いませんか。これは、ひとつあなたまず言いわけのできないことだと思っておいてください、技術屋として。百メーターと七十メーター間違ってごらんなさい。私らのうちならたいへんですよ。三十坪か四十坪のうちがひしめき合っているところで百メーターと七十メーター、三十メーター間違ったらどういうことになるんです。  そこで、どうなんですか。四十七年の三月の三日に、初めて桃園出張所で郵政省側から明石所長、石川技官、業者二名を含めて、住民の要望でどうぞひとつ説明してもらいたい、こういう申し出でがあったことは事実でしょうね。そうでしょう。
  159. 山中侠

    説明員(山中侠君) 事実でございます。
  160. 小林武

    小林武君 そうしてその際、日照図が出されて、五号館全体に関する説明が行なわれた。その際、全戸四時間以上の日照が確保できる、次回までに戸別の日照図を提出するという約束をした。この約束をあなた聞いているんですか、聞いていないんですか。
  161. 山中侠

    説明員(山中侠君) そのとおりだと思います。
  162. 小林武

    小林武君 郵政大臣、お尋ねしますのは、これからまだあるのですけれども、ここはひとつ郵政大臣よく聞いていただきたいのです。私はこの間から郵政大臣に、なるべくまあひとつ郵政省という役所のでもあるし、話し合いはひとつおだやかにおさめてもらいたいという意味のことを込めてやったし、それからまたあなたも御存じのように、郵政省に関係の深い私の党の、同じ党の同僚議員にも頼んで、ああ何とかということを、まあ郵政大臣のところへ行ったか行かないかしりませんけれども、私は郵政大臣か事務次官か、その他の関係者の方と話してみてもらいたいと頼んだのです。そういうふうに努力をしたつもりです。それはとにかく、あなたのほうの都合もあるから、それはそうか、そうしようかというようなことを直ちに返事がなくても、私はおこるというようなことをするのはやっぱりいかぬと思いますけれども、ただ一つ私は腹にすえかねたのは、その際にこういう話が出たというようなことを漏れ聞いたわけです。反対、反対と言って騒いでいる人がいるかもしらぬけれども、なに賛成の人だってあそこにいる。今度行ったらその手紙をひとつ質問のときに読んでやろうかというようなことを言ったとか、言わぬとかいうことを聞いた。これはもう聞き捨てならぬ一言だと、事実があればですね。私も年ですから、何でもかんでも信じてかっかとおこるなんてのはこれはしません。しかしながら、もしあったとしたらけしからぬと。これはいまどうこうというあれはありませんけれども、そういう事実があったらここできょうは読んでもらわなければならぬ、あるならば、と思っているのです。そういう行き違いもあってはなはだぐあい悪いが、ここで大臣によく知ってもらいたいのは、四時間は確保しますと、こう言っているんです。そのことはひとつ心にとめておいてください。同じく三月の八日に郵政省側の要望で五号館の側面図を明石所長に渡して、そうして話し合いをしたと第一回の交渉で示してくれた、張ってくれた郵政省側の日照図をそのとき借りた、三条件をつけた、一つ、専門家に見せない、二つ、明日返却する、三つ、悪用しない、この事実はどうです。
  163. 山中侠

    説明員(山中侠君) 申しわけありませんけれども、そのことにつきましては、私はいま初めて伺いました。
  164. 小林武

    小林武君 初めてと言って、そうして、そのときの図面だけは郵政省がどうしても出さない、あとの三つのものは、だんだん変えたものが出ているんですね。これはどういうことですか、これは一体。これはもう出た人たちが、いいかげんなことを言っているんじゃないですよ。専門家に見せないというのはどういうことだ。自信があったら専門家に見せて、あなたたちもひとつ十分検討しておいてくださいと言うのがあたりまえでしょう。明日返却するとは一体どういうことだ。そんなもの返さなくてもいい、よく見てひとつ枚数がよけいあったらやるから、皆さんよく検討してくださいと、私のほうではこういうふうに慎重にやっているんですと、こう言うべきだと思う。悪用しないというのはどういうことなんですか。こんなもの売ったって金になるわけでもないしね。悪用しないというのは、このことは郵政省に文句を言うなと、こういうことでしょう、結局。そういう運動なんかやられると困る、こういうことでしょう。日本国憲法にはそんなばかなことは書いてない。国民の基本的権利は守らなきゃならぬということになっている。国家公務員も地方公務員もそれに対して憲法に誓っているんだ、守るということを。だからこれはおかしいと思うでしょう。あなた知らないで、あれしちゃいかぬですよ。都合の悪いところにいったら知らないと言う。しかし、知らないで責任は通せないということはお互いにやはりあるでしょう。知らないで責任が通せるものなら幾らでも通せる、そのことだけあなた、あれしておいてください。  それから第二回に、今度は桃園出張所で会った。このときは竹内課長補佐も入った。明石、石川両氏も入り、業者二名も加わって、各戸別の日照図を掲示して、全戸四時間以上の日照は確保されている、もし四時間未満であれば設計変更もあり得ると、これはどうです。
  165. 山中侠

    説明員(山中侠君) そのとおりだと思います。
  166. 小林武

    小林武君 これから先は私はあまりやりたくないんですがね。これは建設省のほうも日照権の問題についてはこの間、沢田事官の答弁を熟読玩味いたしました。何だかとらまえどころがなくて、まことに優秀な官僚の答弁というものはすさまじいと思った。思ったんですけれども、それでもしかしあなたには非常に意欲的なところがあるんですよ、この点は私は認めます。ただ、あなただって、私だってはっきり言えることは、日照権という問題について、ここが基準だからこうだと言い切るあれはないんですよ。学説だって、ちゃんと見解だって二つあるわけですから。われわれはおとなしいほうのあれをとって、多少何とか両方が歩み寄ることができたら、というようなところに大体考えの基準を置いてこれをやっている。あなたもそうだと思う。しかし、日照権という問題だけは現時点にとどまって考える問題ではないんです。先ほど言ったように、基準がきまってないんですから、学説だってこれはさまざまなんですから。  そこで、ものを考えるとすれば、将来にわたって日照権というものは一体国民の権利としてどうあるべきかという、やはり見通しをもってやらにゃいかぬ。そうして都市化のいまの状況を判断した場合においては、これに対してやはり読みをもってやらなければこれは政治でないということになる。だから私は郵政大臣にこうこう言ってくれとは言わぬけれども、郵政大臣、この間、これは私的な集まりのときに話が出たけれども、この問題はやはりお互いがもっと話し合いをして解決するというか、国というものがよほど考えなければならないという意味のことが多少あったように、これは私的な発言ですから、私は取り上げて答弁しろとか、何とかということでありませんけれども、それは建築部長がよく聞いておったでしょうな。私は、それについては、それを聞いたから黙ってこっちに戻ってきた、あとのことは言わなかった、沢田質問なんだから。  そこで、郵政大臣に私はお尋ねしたいんですが、以上のことは認められたわけです。以上のことが認められたからあとは言うことない。実は認めなかったらきょうはひとつやろうかと思って、きょうは録音したものを持ってきたんですが、そんな手数のかかることをやらぬでもいい、その点はすっぱりしてなかなかいいです。それはりっぱです。  そこで、郵政大臣に申し上げたいのは、上のほうは郵政省のこれは住宅なんです。これには何ものもさえぎらない、おてんとうさんを丸がかえなんです。よほど頭の悪い設計者がつくればなるべく日が当たらないように、当たらないようにつくるかもしらぬけれども、これはそうでない限りにおいては、日照権の問題が起きるようなものをつくるわけはないんですよ。そうするならば、その北側にある、少なくとも、その影響を受けるものについては、おまえたちはがまんできますよというような発言を国がやるということは絶対許せない、言うべきではない。私は、建築部長のこの間の答弁を聞いていて、郵政省としてはもう建築に関しては模範的なものをやりたいと思っている、いままでも努力してきたし、そういう建物だと自慢したのか、そうでなくて、一生懸命やっておることを言ったんだと思う。それであるならば、郵便大臣、私はここでこれは何とかしなければいかぬと思うんですが、あなたはどうでしょうか。予算のことをおっしゃるけれども、これは予算の問題でない。自分の、郵政省の職員のあれは日を一ぱい当てておいて、片方のほうは二時間ぐらいだからがまんせい、こういうものの言い方をするということが許されていいはずはないと私は思うのですが、郵政大臣もこの間お会いした限りにおいてはそういう態度でなくて、私たちも、一緒に行った方々も好感を持って帰ってきた、郵政大臣がああおっしゃっていただいたと言って喜んで帰られたわけです。ここで一体この事実が明らかになったら、郵政大臣から一言、きょうここでこうします、こうしますということは言えなくても、何かお考えがあれば示していただきたい。
  167. 廣瀬正雄

    ○国務大臣(廣瀬正雄君) 中野郵便局の日照権の問題につきまして、たいへん御高配をわずらわしておりますことを恐縮いたしておりますわけでございますが、この問題につきましては、小林議員を先頭に、先般、関係方々がたくさん御陳情においでになりまして、私もお目にかかったわけでございます。日照権の問題は住民の生活にとりましてきわめて深刻な問題でございますから、たいへん御同情申し上げまして、さっそく事務当局に何とか設計の再検討はできないか、そうしてさらに十分関係者の方に接触を保って御了解いただくように努力すべきであるということを指示いたしたわけでございますけれども、先刻来、建築部長から御答弁申し上げておりますように、その後、いろいろやってみましたけれども、どうしてもいまとなって建築の変更もできないと。また日陰の問題から申しましても、一時間余りであると、冬至におきまして二時間足らずの御迷惑をおかけするという程度であると。また、その地域が商業地域でありますということもございますし、建築基準法に照らしましても、これに抵触するということはないというような事情にありますので、ぜひひとつ関係者に御納得いただきたい。こういう例は、郵政省におきましても、他の郵便局その他の建築についていろいろ例があるそうでございまして、十分御理解をいただくように説得の努力をいたしましたけれども、今日まで御納得いただけないということで、数日前にそのような報告を受けまして、私も全く関係方々に申しわけないと思っておりますけれども、どうかこのような事情に立ち至っておりますので、何とかひとつ先生はじめ関係方々、お許しを賜わりたいと、御協力をいただきたいと、こういうように考えておりますということをお答えするほかに、きょうは方便がないわけでございまして、あしからず御了承賜わりたいというように考えております。
  168. 小林武

    小林武君 かってなこと言いなさんなということだね、かってなことを。この一語に尽きます。初めは四時間必ず確保してやりますと、それがだめだったら、これは設計変更もいたしましょうと約束をしておきながら、そんな二枚舌を一体国民に使って、それでまかり通ろうとする、それはもう、あなた、郵政大臣ではなくて、これは内閣全体の問題だと思うんですよ、そういう姿勢が。こんなことで一体、あなた、世の中通ると思いますか。しかも、何ですか、いままで、内容がはっきりしないまではしらっぱくれて、そうしていいかげんなこと言って、四時間なんというのはおくびにも出さない。四時間を保証してあげますと言ってから、いまどきになってから二時間とか何だとか、建築基準法に違反しておりませんとか、どこから出たんですか、そんなこと。  私は、この間から申し上げているように、局舎の上に住宅を置くというようなことはたいへんよろしいとは思っておらぬのですよ。たいへんよろしいとは思っておらぬです。しかし、いまの日本の住宅事情を考えたり、大都市におけるところの自分の住む場所と働く場所との非常に隔たりがあるということを考えますときに、これはやむを得ない措置だと、まあいまのような状況では一緒に置くようにしたほうがいいだろうという意味で賛成しているんですよ。大体、どうですか、あの上に、郵政省、郵便局関係の人が全部あそこへ入ったとしたら——どういう入れ方をされるかわかりませんけれども、あの中に、一体、親子、女房みんな含めて、そうして入って、朝から晩まで、これが上司で、これが何だということをやられたら、これはたまらぬということは、これはもう役人ならずとも、みんな考えるんです。だから、私は、公務員住宅なんかでも、大蔵省も入っていれば、文部省も入っている、あれも入っているというのが一番気がやっぱり休まるというのは、お互いの経験からそうでしょう。そうあるべきなんです。あるべきだけれども、やっぱりやむを得ないという、これはいまの状況から言えば、住むところがないよりかも都合がいいと。その職場に来るまでにへとへとになっちまうようなことでも、これもまたたいへんだと。郵便局というものの仕事を考えた場合には、かなり重労働ですから、そういう人もあるわけですから、だから、私はできるだけやっぱりそれについてはみんなが賛成して、これからもあとあとつくっても、それはいいではないかということを考える。  郵政大臣としては、それじゃまかり通るということを決意をされて、宣戦布告ですか、私に対して。
  169. 山中侠

    説明員(山中侠君) いまのお話しの根拠にあります日照時間の問題でございますけれども、普通の場所では、冬至の場合に九時から四時までというふうに考えておるようでございます。中野住宅の場合には、多少方位が触れておるということで、われわれはこれは約十時前から当たるというふうに解釈しております。それで、私どもの建物の日陰になる部分が、その第五棟と申します右下の一階の部分が一番日陰になる率が多いのでございますが、そこが冬至の場合に、正確に申し上げますと、一時間十五分日陰になるということでございますので、総体は四時間の日照が確保できると申し上げて間違いないと思いますので、そう申し上げておきます。
  170. 廣瀬正雄

    ○国務大臣(廣瀬正雄君) 小林議員から宣戦布告かというおことばございましたけれども、さようなこと毛頭考えていないんでございまして、ぜひひとつ御理解と御協力を賜わりたいということを懇願申し上げておるわけで、さような大それた考えで申し上げておるわけでは決してございません。
  171. 小林武

    小林武君 そりゃそうですよ、まともなことを言っているのがすごまれたってね。いまの答弁なんかだって、一体、何です、未練たらしい。そういう答弁をするなんておかしいよ、建築部長。何のかんの言ったところで、四時間ということを主張する場合だってあるんでしょう。何かすると、あなたはあそこは商業地域だとか何とかいうことを言い出す。商業地域であろうが、何であろうが、あの建物というのは、いまの局よりずっと先に建っている。そこへ侵害していった。設計さえある程度考慮すれば当たるようになっているんだ、その考慮のあれは、設計書は出しているはずだ。こことここは何とか削ってもらえないでしょうか、これは居住者の願いだ。私は設計書を読み方がよくわからぬものだから、実は持ってこなかったけれども、それはこう削ったらどうでしょうと。それで完ぺきになるんじゃないんです、完ぺきになるんではないけれども、それまでにしてもらったらどうでしょうと。全部上を取っちまえという、そういうあれじゃない。そういう意見も聞かないでやるなんというようなやり方が、一体、協力というような話じゃありませんでしょう。権力を持てる者が権力のない者に協力という話がありますか。力の押しつけでしょう。断固戦うぞ、そうなったら。
  172. 茜ケ久保重光

    ○理事(茜ケ久保重光君) 何かありますか、いまの小林議員の質問に対して。
  173. 山中侠

    説明員(山中侠君) 委員長
  174. 小林武

    小林武君 いや、だめだ、あなたはだめだ、政府委員でもないし。
  175. 茜ケ久保重光

    ○理事(茜ケ久保重光君) 郵政大臣、答弁を願います。
  176. 小林武

    小林武君 私は建設省の親玉と郵政相が二人並んでおってだ、断固やりますなんて目むいてやっておるのも、ちょっと知恵がなさそうに思われるから、休憩をしてもらって、ちょっと大臣同士で、しかも有能な大臣が二人そろっていて。ものわかりのいい二人がそろっているんじゃないですか。私は、庶民金融なんか大拍手を送っているんです。その人がいまみたいなわけのわからないことを言い出すと帳消しになってしまいます。ちょっと休憩して話し合ってもらいましょう。
  177. 茜ケ久保重光

    ○理事(茜ケ久保重光君) 暫時休憩いたします。    午後五時十分休憩      —————・—————    午後五時十七分開会   〔理事茜ケ久保重光委員長席に着く〕
  178. 茜ケ久保重光

    ○理事(茜ケ久保重光君) ただいまより委員会を再開いたします。  小林君。
  179. 小林武

    小林武君 郵政大臣からいろいろ検討してみるというふうなあれもございましたし、前向きの姿勢で検討することについては、当然のことでもありますし、そういう意思表示があれば、私はこれできょうは打ち切ります。
  180. 廣瀬正雄

    ○国務大臣(廣瀬正雄君) 先刻来の熱意を込めての小林委員の御発言、まことにごもっともな点もございますので、この問題については、局員の住宅の部分もございますから、そういうところでひとつ十分検討してみたいと、かように考えております。
  181. 茜ケ久保重光

    ○理事(茜ケ久保重光君) この問題は、この程度にとどめます。     —————————————
  182. 茜ケ久保重光

    ○理事(茜ケ久保重光君) 次に、建設省所管公団職員労働行為に関する件を議題といたします。   〔理事茜ケ久保重光君退席、委員長着席〕
  183. 田中一

    ○田中一君 まず、建設大臣にお伺いしますが、しばしば年次的に春闘という一つの交渉を行なっておる現段階で、いま御出席の四公団が、九十六時間のストライキに突入しているのは御承知のとおりであります。そこで、こうして公団というものは、国家公務員の身分は持っておりません。したがって、争議行為というものは許されておるものでありますが、そういう段階に突入するということの善悪は別として、賃金問題あるいは労働条件等の自主性というものはどこが持っておるかということを伺いたいんです。そうした賃金あるいは労働条件等の自主的な権限ということはどこが持っておるのか伺いたい。むろん、それぞれの監理官がそれらの仕事の執行については助言または協議等を行なっておるものと思います。けれども、経営上の独立採算という形でもって行なっておるところの事業でありますから、それに対する権限の所在を最初に伺っておきたいと思います。
  184. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 公団の労働関係は、労働三法の適用がございますので、労使が対等の立場で話し合ってきめるというのが原則でございます。同時に、公団法によりまして公団の性格、事業の内容等からいたしまして、また、その給与の資金が政府資金からまかなわれるというような関係から、給与の基準につきましては建設大臣の承認を得るという制約を受けておるわけでございます。したがって、言い直しますならば、そういう建設大臣の監督を受けるという制限を受けながら労使交渉をしてきめるという、まあいわば一般の民間に対しては多少変則的なやり方をとっておるということでございます。
  185. 田中一

    ○田中一君 国家公務員との賃金あるいは条件の格差というものはございますか。
  186. 大津留温

    政府委員(大津留温君) まあ、原則的には公務員に準ずるというたてまえといいますか、考え方で従来やってまいっておりますけれども、実際のベースにおきましてはある程度の格差がございます。公団の職員のほうが十数%高くなっております。
  187. 田中一

    ○田中一君 むろん、これは四つの公団は現業部門でありますから、ただ、単にデスクワークの諸君とはおのずから違っておるはずです。労働条件が違うと思うんです。私どもいままで四公団ができ、この国会で可決をする際にもしばしば申し上げているのは、何といっても、公団の職員というものはきびしい条件の中で仕事をすることが一つ。したがって、一番古いのは住宅公団でありましょうが、住宅公団の制定当時も少なくとも一五%以上の賃金の格差はあるんだという答弁をして出発しているはずであります。むろん、その中にはいま官房長が言っておるように労働三法、これの適用を受けておりますから、当然そうした争議行為はあるべきであって、争議行為があるところに進歩もあるわけです。最近の傾向を見ますと大体におい出席の四公団が歩調を合わせてお互いに話し合いながら、悪い条件にだけ固執して、少しでもよい条件を——ケース・バイ・ケースで違うでありましょうが、よい条件を議題としてそれを四公団が話し合うなんということは皆無だと思う。したがって、この九十六時間の争議行為、ストライキを行なっておるところの現段階で、これに対する話し合い等は行なってきたのかどうか。私は仄聞するところによりますと、全然そうしたものに対する話し合いはしておらない、すべて無条件で拒否だという態度をとっているように聞いておりますが、その点はどういう経緯で今日まで至ったか伺っておきたい。この問題はしたがって四公団から実態についての報告を願いたい。
  188. 柴田達夫

    参考人(柴田達夫君) 先般来給与改定についての問題を、私どもに公団の組合のほうから申し入れがございまして、以来、いま先生お話ございましたが、非常に回を重ねまして組合側と私どもの公団は話し合いをいたしております。いわゆる団交の回数は相当の回数にのぼっております。ただ、話の内容といたしまして、いろいろ意見の食い違いということもあると思いますが、公団としましては、誠心誠意、誠意を持ちまして意見を組合側に話しまして円満に話が解決するように努力をいたしてきておる次第でございます。
  189. 前田光嘉

    参考人(前田光嘉君) 日本道路公団におきましても、労使間の円満な話し合いは進めてまいりましたが、今回の争議につきましては、本日先ほど五時十五分をもちましてストライキをやめるという通告がまいりまして、われわれもその線に従いまして今後とも両者協議を進めてまいりたいと思います。
  190. 鈴木俊一

    参考人(鈴木俊一君) 首都公団におきましても、鋭意ストを回避いたしますべく団体交渉を持ちまして、五月の十二日以降におきましても、七回団体交を続けてきておる。つい本日も団交がございまして、すわり込みを昨日来続けておったわけでございますが、これを解きまして団交したような次第でございまして、鋭意、ストをなるべく早く解消するように話し合いをしておる次第でございます。
  191. 青木義雄

    参考人(青木義雄君) 南部総議が出張いたしておりますので、かわって申し上げますが、住宅公団につきましても、終始誠意をもって団交につとめておるつもりでございます。先ほども団交してきたばかりでございます。いま最終的な詰めの段階に入っておる段階でございます。
  192. 田中一

    ○田中一君 私は、事前にこのことを承知しておりました。したがって、いまここにおられる柴田総裁、前田総裁、鈴木理事長、住宅公団はいまおらないから言いませんが、それぞれの方に電話をして、何といっても早期にこれを解決しなさいと、少なくともいま道路公団、両道路公団等は請負いの会社にゲートの金銭収受は行なわしておりますから、実害はないんだからといって、平気な顔をしているというこの姿は許されないのであります。争議行為に突入した、これは道路公団、首都高速道路公団、何にもおれのほうには損はございません、こういううそぶく心境かもしらぬけれども、やむを得ずストに突入するところの労働者のあり方というものは、損得よりも精神的なもの、並びに金銭的な出費というもの、賃金カットというものがのしかかってきておるわけなんです。自分の生活をかけた争議行為というものに対して安易な形で、安易な気持ちで見ているなんということは許されないのであります。よく大きな争議がありますと、あれはアベック闘争だなんてうそぶく職種もありますけれども、この四公団の国民に向かってしているあなた方の仕事が、あなた方の冷淡な愛情のない気持ちで対処するということ、これに対して建設大臣、あなたは監理官を送っておる立場からいってこれらの問題をも含めてどうあるべきかという一つの姿勢がなくちゃならぬと思うのです。私は二十年来しばしば皆さん方の既往の争議行為、労使の問題については余分なことながら常に助言もしております。そして、事が妥結をする、あるいはお互いの話し合いの済むのを待つための御協力をして今日まできております。九十六時間のストライキなんて異常であります。ここで個人個人の総裁が私に言ったことをここであえて申しませんけれども、ある公団の総裁は、この辺でそのくらいやったほうがいいのじゃありませんか、先生あまりそういうものに介入なさるなというようなことまでも私は言われておるのです。今回の九十六時間ストライキに対しましては、これはいけません。労働争議が合法であるならば、これにまっ正面から取っ組んでいかなきゃならぬと思うのです。いま道路公団は五時十五分にストライキを中止するという通告があったと言いますが、どういう条件でそれがなされたか。前田総裁から報告を願いたいと思います。
  193. 前田光嘉

    参考人(前田光嘉君) 特別に条件ございません。お互いに誠意をもって今後労使間の問題に当たるという、そういう誠意が通じ合ったという意味におきまして今回の争議は解決されたものと思います。
  194. 田中一

    ○田中一君 他の三公団はまだそういう通告はない。そうすると、前田総裁はこれを柴田、鈴木住宅公団等にも十五分に通告があったということをお伝えしてあるのですか。あなた方四機関は常に話し合いをしながら、労働組合と対決をする姿勢を持っておるように聞いておりますけれども、その点は連絡をしてあったかどうか伺います。
  195. 前田光嘉

    参考人(前田光嘉君) 私は、ただいまこの委員会の席に出る途中三人の方にお目にかかりましたので通告いたしました、通告と申しますか、お話をいたしました。
  196. 田中一

    ○田中一君 建設大臣に申し上げますが、私はほんとうに各機関が労働組合を結成、ある機関は私がわざわざ労働組合をつくりますよという通告にいったものです。これは道路公団、首都高速道路公団等が労働組合をつくったほうがあなた方の企業が健全化するのですよ、こういって通告をして、私が付き添って通告してつくったのもございます。これが当然あるべき姿なんです。ただ皆さん方は、何といっても国家公務員の経歴を持っておる方々、いわゆる相手が争議権のない人たちの中に育ち、それを管理してきたという経験が、争議権を持っている現在のこの四機関の労働者に対して同じような気持ちで臨んでいるのじゃなかろうかという思いがするわけなんです。したがって、きょう即刻、道路公団が持たれたと同じような、相手に争議行為をやめろというのじゃございません。ほんとうにその問題について真剣に取っ組むと、前向きで解決するために取っ組む、相手を屈服さすのでなくて、相互の間で理解と将来の展望を見ながら賃金あるいは労働条件を変えていくということです。国家公務員は幸いなことには人事院がありますから、そこで一応のデータが出るわけです。人事院は国家関係機関の労働者の賃金それらの問題には介入しておりません。したがって、また中労委に出すこともございましょうが、その以前に、はざまに入っているような立場の労働組合でありますから、それに対して即刻善処するという、その方向で善処するということ、これをひとつ建設大臣お約束をしていただきたいのです。
  197. 西村英一

    ○国務大臣(西村英一君) この政労協の問題につきましては私も実はたいへん心配をして、年々歳々同じようなことを繰り返されても困るからということで、お話をこの席でしたかもしれませんが、担当大臣の労働大臣、それに竹下官房長官にもお会いしましていろいろこれはやはり知恵を出してひとつ前進しようじゃないかと、その点につきましては両大臣も賛成でございます。しかし、具体的にどうするかということは話がなかなか詰められないのが今日までの状況でございます。  そこで、この問題の正式の政府の見解といたしましては、労働大臣もしばしば、本日もそうでしょうが、ストライキに入る前にもいろいろな委員会でそれぞれの見解を申し述べております。しかし、私はまたその間にありまして、この労働組合の幹部の方々も私に会いたいということで私はお会いをいたしました。お会いをいたしましていろいろ要望を聞きました。しかし、それとともに、また帰りましてから四公団の労働問題担当の理事を集めましてまた私の所見も申し上げておきました。政府は介入するわけじゃございませんが、やはりでき得ることは、でき得ることと、でき得ないこととあろうと思うが、でき得ることは進んでひとつやるべきだと、まあ労働者の方々に聞くと、組合の方と理事の方はなかなか会いたがらないというようなことも言っておるが、そんなことはあるまいと思うが、進んで会ってひとつ打開の道を前進して進めるべきだと、こういうふうに私も申しておったのでございます。本日の公団の理事長及び公団の総裁等もやはりその気持ちで私はやっておると思います。思いまするが、何と申しましても、やはりある一定の制限がございますので、思うようにはいきませんが、ひとつこのストライキ、なかなか大衆に影響を及ぼすことでございますので、ひとつ、私が指図をするわけじゃございませんが、公団のあるいは理事の方々にも善意を持ってひとつ解決に当たりたい、しかもまた前向きの姿勢でいろいろなことは今後も考えたい、かようにいま思っておるような次第でございます。
  198. 田中一

    ○田中一君 道路公団のほうはいいとしても、あと三公団のほうの要求その他は、即刻新しい段階の話し合いをするということについてのお考えを述べていただきたいと思います。
  199. 柴田達夫

    参考人(柴田達夫君) 先ほど申しましたように、私どものほうは続けましてお話し合いをしております。  なお現段階におきましては、さらに最終的にお話し合いを誠意をもちまして詰めておりますので、ただいま大臣から私どもの持つべき心がまえとしてのお話がございました。そのお気持ちをもちろん体しておるつもりでございますが、お話もございますので、一そう体しまして、さらにお話し合いを詰めて円満に解決するように、この上とも努力をいたしたいと思います。
  200. 鈴木俊一

    参考人(鈴木俊一君) 私どものほうも鋭意団交を続けまして、また、先ほど来いろいろお話しのございました大臣のお考え、あるいは先般労務担当理事に話をされましたこと、これらを踏まえまして、とくと団交に当たってまいりたい、かように考えております。
  201. 青木義雄

    参考人(青木義雄君) 先ほど、住宅公団といたしましては最終的な詰めの段階でございますということを申し上げました。ただいま大臣の意を体しまして詰めを急ぎたい、そのためには、できるだけの誠意をもって当たりたいというふうに考えております。
  202. 田中一

    ○田中一君 住宅公団は総裁おらない、総裁に電話で連絡して、その態度をしっかりきめていただきたいと思います。
  203. 青木義雄

    参考人(青木義雄君) わかりました。
  204. 小林武

    委員長小林武君) 本件につきましては、この程度にとどめ、本日は、これにて散会いたします。    午後五時四十三分散会