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西村関一君 いま御承知のとおり、京都大学の臨湖実験所、大津市にありますね。それから
滋賀大学の湖沼研究所、これはあげてその問題を心配している、現在この
法案に関連して。これはもうあげてこの学者たちは心配している。そういう心配はないということを言う人はそれは一人や二人いるかもしれませんけれども、大学の責任ある機関が資料をどんどん出しておるわけなんです。私の手元にも大学の資料が幾つか来ておるわけなんであります。「びわ湖・瀬田川・大津市の河川ならびに
観光施設の
水質と湖底泥の重金属について」あるいは「
琵琶湖の堆積物の研究
琵琶湖底表層堆積物中における微量重金属成分の分布について」「セタシジミの生息に及ぼす瀬田川底質の影響について」「びわ湖塩津湾の流況−湾口の流況とその経時変化」私の手元にありますものだけでもこのような
滋賀大学の研究発表が出ておるわけなんでありまして、非常に心配しているわけなんです。ちょっとこの際、簡単でありますから申し上げて、政府の参考にしたいと思うのでありますが、「びわ湖の湖沼科学的現状と水位の低下が及ぼす影響について」これは四十七年の四月、
滋賀大学の湖沼研究所から出した一般向きの簡単なものでありますけれども、「びわ湖の水の循環」「水位低下が及ぼす
水質への影響」「水を入れる容器の面から見た
琵琶湖の現状」「水位低下が及ぼすびわ湖の魚類への影響」「びわ湖と生物」「びわ湖への夢」というような通俗的な題目にわたってるる述べられておるのであります。これによりまして私が心配しておりますることが学者たちの科学的な研究の結果にもあらわれておるということを承知したのであります。
ですから、水位が低下しても、毎秒四十トンの水を送っても、そうたいした心配はないと言われても、私は、科学的な心配がないという資料を提供されない限りは、それをすなおに受け取ることができないわけなんであります。特に、ここにこういうことが書いてございます。「鉛、亜鉛、カドミウムは、自然状態で堆積した泥に比べて非常に高い価を示している。この事実は湖の水中にもこれらの元素が標準より多く含有することを
意味する。」「マンガン以外の下記のすべての元素が、地球化学的にみて、
琵琶湖底に異常に分布している。この事実は、それらの元素が、
琵琶湖流入水域中の
特定の地域から多量に供給されたこととみるべきである。」「コバルト、亜鉛、鉛、ストロンチウム、銅、カドミウム」と、「数種の金属元素についての結果からも、すでに湖底は相当に汚れてしまっている。これらの金属が洗剤の混入した湖水により幾らか溶出して、水をさらに汚すものと考えるから直ちに、湖底を現在以上に汚さぬ様あらゆる手段を講じなければならぬ。」という警告をしております。これは阿賀野川の状態と同じ状態である。
琵琶湖のフナはもう食べられなくなったというようなことも言われておるんであります。非常に奇形の魚も出てきておるという状態であります。
琵琶湖の湖魚は五十一種類からおりますが、これらの魚がもはやだんだん少なくなってきておる。やがては生息することのできないような状態になる。これらの漁獲量は、魚の全漁獲量の四分の一を占めております。その特殊な湖魚——魚類、そういうものが人間
生活にとっても大事なものであり、沿岸の
住民にとっても大事なものでございますが、そういうものが減っていっておるということ、そういうことから考えますと、「水銀、カドミウム、PCBなどの蓄積が相当進んでおる。」、ここに書いてありますが、阿賀野川のフナの水銀蓄積量とほぼ同じくらいのものが検出されるということでありまして、これは「水銀は〇・五PPM、カドミウムは〇・四PPM、PCBなどは一〇PPM」そういうものが魚の体内に入っておるということが検出されております。
こういうことになってまいりますと、特に南湖におきましては、魚をとってもその魚を買って食う者がいない。現に堅田の浦の漁師たちは、漁業を専門にやっておりますところの漁師たちは、もう、ちょっと南湖を出たくらいのところでは魚がとれない。とっても、だれも買ってくれないから、ずっと北湖の、一番北の大浦寄りまで出かけていって、そこまで自動車で漁師たちは出ていっています。そこまで行こうと思いますと、それだから一時間半は優にかかります。そこまで自家用の自動車でガソリンを使って出かけていって、そこにつないであるところの漁船に乗って漁労をやり、魚をとる、こういうことをやっているのであります。そうでないと、魚をとっても、だれも買ってくれない。これはわれわれもこういう状態では湖水の魚を食うことができません。これは重大な影響を与えます。これは水位が低下すれば、そういう状態がますます激化していくということは学者が警告しているところであります。
こういう問題を、ただ下水道、し尿
処理、工場排水の規制ということだけで解決するとお考えになることは、私は甘いと思う。もっと根本的なこれに対する、
水質を
保全するということに対する対策を政府はお立てにならないといけないんじゃないか。下流といえども、汚染された水を取って、それを
生活用水に使うというようになるならば、健康にたちまち差しさわる。京都の水道は、御承知のとおり、カビくさくて飲めない。カビくさいということがよく言われました。そういうものがだんだんひどくなってまいりますと、京都府、京都市の府民、市民の
生活になくてならぬところの水も安心して飲めないということになるわけであります。大阪、兵庫にいたしましても、私は同様だと思うんであります。
まず、
水質を
保全する、水をきれいにする。私どもの子供のときのようなきれいな水、そういう水に還元するということをまっ先に政府はやらなければいけないと思う。私は子供のときには、大津ですが、大津の湖畔で、朝起きて、湖水の水で口をすすいだものです。そういうことはもうとうていできません。おそらく
琵琶湖のうちの一部分、北湖の一部分しか、そういうことはできないと思うんです。そういう情勢に返さなければ、私は
利水の問題など考えることはできない。
生活用水であるところの、水道水源になるところの——水道は、京都は
琵琶湖の水で古くから水道源をまかなっておる、府の
生活用水をまかなっておる。大阪も兵庫もこのことは無視できない。まず、
琵琶湖の水をきれいにする。少なくとも
昭和四十一
年度ぐらいの状態にまで引き戻す、復元するということを政府は考えなければ、私はこの
法律の持つ意義は出てこないと思う。ただ単に、工場用水のために
琵琶湖の水を使うというんじゃありません。一千万下流国民の
生活用水、それがよごれた水であるならば、これは
意味をなさぬのであります。
その点、建設
大臣として、この
法案の担当責任者、最高の責任者であられる
西村大臣としては、もう一度その御見解をお述べいただきたいと思います。