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1972-05-17 第68回国会 参議院 決算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年五月十七日(水曜日)    午後一時九分開会     —————————————    委員異動  五月十三日     辞任         補欠選任      渡辺  武君     塚田 大願君  五月十七日     辞任         補欠選任      吉武 恵市君     中村 登美君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         足鹿  覺君     理 事                 温水 三郎君                 渡辺一太郎君                 小谷  守君                 中尾 辰義君                 塚田 大願君     委 員                 石本  茂君                 片山 正英君                 河口 陽一君                 河本嘉久蔵君                 小林 国司君                 中村 登美君                 二木 謙吾君                 黒柳  明君                 藤井 恒男君                 野末 和彦君    国務大臣        文 部 大 臣  高見 三郎君        通商産業大臣   田中 角榮君        運 輸 大 臣  丹羽喬四郎君        自 治 大 臣  渡海元三郎君        国 務 大 臣  江崎 真澄君        国 務 大 臣  竹下  登君        国 務 大 臣  中村 寅太君    政府委員        内閣参事官兼内        閣総理大臣官房        会計課長     國塚 武平君        警察庁刑事局長  高松 敬治君        行政管理庁行政        監察局長     小林  寧君        防衛庁防衛局長  久保 卓也君        法務政務次官   村山 達雄君        法務省民事局長  川島 一郎君        大蔵政務次官   船田  譲君        大蔵省理財局次        長        小幡 琢也君        文部大臣官房会        計課長      三角 哲生君        文部省大学学術        局長       木田  宏君        通商産業政務次        官        林田悠紀夫君        通商産業省公害        保安局長     久良知章悟君        通商産業省重工        業局長      矢島 嗣郎君        通商産業省繊維        雑貨局長     佐々木 敏君        運輸大臣官房会        計課長      高橋 全吉君        運輸省鉄道監督        局長       山口 真弘君        運輸省自動車局        長        野村 一彦君        自治大臣官房審        議官       森岡  敞君        自治大臣官房会        計課長      山本 成美君        自治省行政局長  宮澤  弘君        自治省財政局長  鎌田 要人君    事務局側        常任委員会専門        員        佐藤 忠雄君    説明員        会計検査院事務        総局第二局長   柴崎 敏郎君        会計検査院事務        総局第四局長   田中  稔君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○昭和四十四年度一般会計歳入歳出決算昭和四  十四年度特別会計歳入歳出決算昭和四十四年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和四十四  年度政府関係機関決算書(第六十五回国会内閣  提出) ○昭和四十四年度国有財産増減及び現在額総計算  書(第六十五回国会内閣提出) ○昭和四十四年度国有財産無償貸付状況計算書  (第六十五回国会内閣提出)     —————————————
  2. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  委員異動につきまして御報告いたします。  去る五月十三日、渡辺武君が委員辞任され、その補欠として塚田大願君が、また、本日、吉武恵市君が委員辞任され、その補欠として中村登美君が、それぞれ選任されました。     —————————————
  3. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) 委員異動に伴い、理事が一名欠けておりますので、この際理事補欠選任を行ないたいと存じます。  選任につきましては、先例により委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) 御異議ないものと認めます。  それでは、理事塚田大願君を指名いたします。     —————————————   〔委員長退席理事小谷守君着席〕
  5. 小谷守

    理事小谷守君) 昭和四十四年度決算外二件を議題とし、前回に引き続き締めくくり総括質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 足鹿覺

    足鹿覺君 たいへん恐縮ですが、足腰がちょっとまだ十分なおり切っておりませんので、すわったまま失礼をいたしますが、大臣並びに政府委員の皆さんもそのままでけっこうでございますので、よろしくお願いいたします。  本日は、財団法人衣笠会の問題を中心に御質疑をいたしたいのでありますが、これは後段に具体的に触れることといたしまして、まず最初に、文部大臣主管に関する民法法人設立及び監督についてお尋ねを申し上げます。  文部大臣主管に属する民法法人の数は、社団法人三百五十二、財団法人千二十五、計千三百七十七といわれております。この文部省関係法人は、必ずしも適正な運営が行なわれておらないものも相当あるようでございます。最近の国会においては、昨年の九月二十八日の当委員会で、わが党の和田委員が、日本体育協会——これは財団法人でありますが——及び全日本スキー連盟札幌オリンピックに備えてのスキー強化合宿費横領事件を取り上げ、当協会が多額の補助金を国から受け取っていながら、その経理がずさんをきわめている実態指摘し、日本体育協会並びにこれを監督する文部省の責任をただしております。このほか、当委員会はもとより、参議院予算委員会並び衆議院文教委員会等において、民法法人のほか幾つかの学校法人の不正が指摘されており、教育の府として模範たるべき文部省監督行政が問題となっております。これらの問題について、文部省は具体的にいかなる措置をとられてまいりましたか。少なくとも、いままで私が指摘した点、あるいは先ほどあげた各委員会において取り上げられた点の問題等について、対処されたことがありますならば、まず承っておきたいと思います。
  7. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) ただいま足鹿先生が御指摘になりました体協の問題につきましては、それぞれ所要の手続をとりまして補助金返還を命じました。  それから、先ごろ当委員会で御指摘になりました神野学園につきましても、私学振興財団からの補助金返還を命じました。  さようにいたしまして、文部省といたしましては、これらの公益法人運営が適正かつ円滑であるように努力をいたしておるところであります。
  8. 足鹿覺

    足鹿覺君 昨年の十二月、行政管理庁は、公益法人指導監督に関する行政監察結果に基づき、九項目に及ぶ具体的な勧告を行なっておりますが、その勧告においては、文部省関係法人がすべての勧告項目において問題とされております。  まず、行政管理庁から、勧告項目及びその内容並びに項目別文部省関係法人のおもなる事例について、簡潔でけっこうでありますから承りたい。  また、同勧告は、「関係省庁においては、公益の解釈を明確にするとともに、勧告事項について十分検討し、適切な措置を講ずる必要がある。」と指摘しておりますが、これが勧告に対し、文部省は総括的にかつ具体的にどのような措置を行なってきたか、さらに今後具体的にどのように対処されるのか、あらためて文部大臣の御所信を承っておきたいと思います。
  9. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 監察局長から答えさせていただきたいと思います。
  10. 小林寧

    政府委員小林寧君) 昨年十二月に勧告いたしました公益法人監督行政監察結果に基づく勧告内容は九項目でございますが、大きく柱を分けてみますと、第一は、事業活動が行なわれていない法人等整理を極力行なうべきだということ。第二は、公益法人指導監督を強化する。事業活動法人設立目的に必ずしも沿っていないような法人については、その実情を確認し、解散、あるいは整理、あるいは実情に合うように定款等変更を行なうということ。第三は、統一的基準の作成でございます。これは、各省の徴すべき書類の範囲とか、あるいはその他許可定款変更基準等について、足並みをそろえて監督をすべきだということであります。第四点は、官庁在職職員役職員兼務の抑制でございます。監督すべき官庁現職職員が、監督されるべき法人役職員を兼ねるということは、厳に抑制する必要があるということであります。  以上の勧告に基づきまして、各省庁においてはそれぞれ改善対策を立てております。文部省につきましては、御指摘のように、非常に公益法人の数が多うございますが、これは戦前設立されたものが多いということによるものであり、また事業活動状況が不明なものがたくさんございます。  行政管理庁としては、こうしたような法人実態を早急に確認し、事業開始の見通しの確かでないものは解散を勧奨し整理を促進するように、これは各省についても同じでございますが、特に文部省についてもお願いしておるところでございます。  具体的には、四十六年一月現在において事業活動を停止しているものは百八十法人ございます。現在それについて逐一検討を重ねております。しかし、まだ進捗状況は、それほど進んでおりません。また、役職員等については、兼務状況について、極力こうしたようなものを排除するような措置をすでにとっております。  簡単でございますが、以上。
  11. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) ただいま行政管理庁から御答弁がございましたが、昨年六月現在における文部省所管法人のうちに、百八十法人がいわゆる睡眠法人となっております。これは、御承知のように、文部省公益法人というものは、戦前にできた法人が非常に多いんでございます。たとえば育英会などという公益法人が非常に多い。ところが、戦前貨幣価値と戦後の貨幣価値というものに非常な大きな変動が起こりまして、したがって、現実には法人活動をする能力がなくなっておるという事態が発生をいたしておるのでございます。  文部省といたしましては、これらの法人態容について、より詳細な実態把握につとめるとともに、今日までこれらの法人に対しまして文書等をもって指導を進めてまいりました結果、まだ不十分でありまするけれども、これを機会に、事業を再開いたしましたのが六法人、それから解散をすることにいたしましたのが十三法人ということになります。このほか、事業再開予定のものが七法人解散予定のものが三十二法人事業再開解散かを目下検討中のものが十九法人となっております。そのほか、法人の事務所や役員が不明で連絡がとれないものが百三法人ございます。これは生存人であります場合には失踪宣告方法もありますけれども、法人であります関係上、解散を命じても解散を命ずる対象が、相手がないという状態でありまして、何とか睡眠法人再建整理を強力にするように、各府県の教育委員会等に協力を求めておりますが、近く全国会議を開きまして実態調査を行なう計画を進めております。これらの措置を講じましてもなお法人自体による解散先ほど申し上げましたような事情によって不可能であると思われるものにつきましては、行政管理庁勧告において指摘されておる法的な特別措置をとらざるを得ないだろう、かように考えておるところであります。
  12. 足鹿覺

    足鹿覺君 先ほど行管庁官から九つの勧告状況内容を御説明になりましたが、その後の整理状況はきわめてスローモーであるといわれております。いわゆる休眠法人指摘した三百四十八法人のうち、三月末に解散済み解散手続中の法人はたった十七だと伝えられております。このように勧告が思うように実行に移されていないことが明らかとなっておる以上は、もっとしっかりした指導が必要ではないかと思うのであります。いろいろむずかしい問題はあろうと思いますが、監督官庁職員公益法人役員兼務することは極力避けるという点については、昨年の六月の報告で兼務官が五百六十二名だったものが、今回の調査で、三月末に約七〇%三百八十九人が法人役員辞任しておるという実績が出て、かなり生かされております。いずれにせよ、このような総理大臣が特別の指示を行なうことに基づいたこの勧告が思うように進まない大きな原因は、あと官房長官にも伺いますが、中村長官、この勧告趣旨を徹底して実現するためには、やはり定員問題が私はかかってくると思う。いわゆる五%の定員削減基本方針として進んでおられますが、少なくともこのような前時代的な、いま高見文相のいわれるように、戦前からのこういうものを含めて大体全国で一万六千ある。こういうものを書類審査だけやっておるから問題が発生をする。これらを徹底して実行するためには、勢い定員が私は必要になってくると思うんです。ただ、これから具体的に申し上げますが、予算もない、人もないということでは、私は、行管長官としてどんな御勧告をなさってもその実績があがらない、いわゆる勧告に終わるというきらいがなしとしないと思うのであります。その点について長官の、これは大所高所から見たひとつ政治家としてのき然たる方針を示していただきたい、かように思います。
  13. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) この公益法人の問題は、かねてからいろいろ具体的にこれを足鹿委員指摘なさるような方向に持っていくために鋭意努力をいたしておるのであります。  まず、先ほど監察局長の申しましたように、本来の目的に沿った活動ができておらぬというものは、これはすみやかに解散さすべきであるというたてまえによっていろいろ処置を進めておるのでありますが、先ほど高見文部大臣も言われましたように、影のないような法人になってしまいましてからは手がつけられない。いまの民法で七十一条に該当するものは、これは処置できますが、そうでないものは方法はないという、きわめて妙な状態であります。  そこで、この問題につきましては、法務省と相談をいたしまして、何か一方的に解散せしむる特殊立法をやらなければ、これはどうにもならぬということのようでございます。この点については、法務省といろいろ目下検討中でございます。  それから、その他の九項目の中でいろいろ問題になりました、監督官庁職員監督を受ける立場にある公益法人の中に籍を置いておるということは、これはもう原則として私はすべて兼務をさせないようにするというたてまえによりまして、それぞれ関係省庁にもお願いいたしましてこれをやらしておるのでありますが、最近は非常に兼職の数というものは減ってまいっておると思います。  ただ、科学技術庁関係とか、あるいは通産省関係建設省関係等のやむを得ない特殊の場合は多少あるようであります。これは、私はやはり、無報酬で指導をしておるというような場合は、特殊のものとして、これは微々たる数になると思いますが、やむを得ないものはやはり認めることのほうがいいのではないかと考えておりますが、原則としては兼務をさせないというたてまえで各省庁努力を願っておる段階であります。  なお、その他の詳細なことにつきましては、監察局長から具体的にお答えしたいと思います。
  14. 足鹿覺

    足鹿覺君 ちょっと待ってください。大臣定員問題を伺っておきたいのです。それだけでいいのです。どうもなしに仕事をしておったらできないじゃないですか。
  15. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 定員の問題との関係は、公益法人それぞれが各省庁関係を持っておりますので、各省庁でそれぞれ独自の立場でこの問題については処理をしてもらうことにいたしておりまして、各省庁ともその方向で今日やってもらっておるわけでございます。
  16. 足鹿覺

    足鹿覺君 官房長官おいでになったようでありますし、御多忙でしょうから、中村長官もあわせてお聞き取り願いたいのです。高見文部大臣もあわせてひとつお聞き取り願いたいのですが、官房長官、いま文部省一つ例にとって申し上げますと、文部大臣主管に属する法人先ほども述べましたように千三百七十七ある。全国では約一万六千ある。そこで、文部大臣主管にかかる民法法人の千三百七十七という多数に及んでおるものに対して、これを監督する文部省の現体制に私は欠陥があるのではないか。これは各省庁にも共通すると思いますので、この際官房長官意見を承りたいのでありますが、つまり各局がばらばらでいわゆる監督指導しておる。文部省にとりますと、大臣官房一つある、初等中等局関係が四十四、大学学術局が六百八十七——これが一番大きい、社会教育局が二百一、体育局が五十七、管理局が四十八、文化庁が三百三十三、合計千三百七十七、こういうことになっておるわけであります。こういう状態で、たとえばこれから私が問題にしようとしております財団法人衣笠会の問題につきましても、いわゆる厳正な監督戒告等文部省はやっておいでになる。やっておいでになるが、あとを引き続き現地へ出張っていって実行を迫られるんじゃなしに、書面でやりとりなさっておる。旅費がない、人手もない、こういう状態なので、文部省がとられた措置を読んでみると、まことに的を得た指導をしておられるけれども、それが馬耳東風で受け流されておる。そういうことでありまして、いわんやこれを各局がばかばらでやっておったのでは、私は監督指導が十分に行なわれないと思うのです。そこで、民法の改正もあとで出ますが、民法法人についての新しい何か機構、たとえば局というようなものを置いて、法人を統一的に管理監督するような機構整備充実を各省庁にわたって行なう必要がありはしないか、こういうふうに思うのであります。官房長官いかがでありますか。
  17. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ただいまの足鹿委員の御質問、私にも理解できる点はたくさんございます。率直に申し上げまして、本委員会で御指摘を受けて、それから内閣官房行政管理庁協議をいたして、そして行政管理庁のそれが昨年十二月の勧告となって出たわけであります。しかし、行政管理庁といえ、そしてまた私どもの内閣官房といえ、いわばそういう直接勧告なりそれから基準整理なりというものをするだけの能力はございますものの、完全に休眠法人そのものに対して直接的な行政指導、あるいは解散等々の行為も含めてやるだけの能力は持ち合わせておりませんので、これは当然各省庁において行なわれる、こういうことになっておるわけであります。が、少なくともそれを何らかの形で一元化すべきであるという考え方が、いわゆる各省庁公益法人監督事務連絡者を集めました事務連絡協議会というのをこれは総理府に置きまして、設立許可審査基準等に関する申し合わせまでは行なったわけであります。  そこで、それからが足鹿先生質問の本論に入るわけでありますが、これらのものをいわゆる法務省諮問機関たる法制審議会にかけて民法上の検討を急いでいただいておる、その法律問題は別といたしまして、直接指導監督をする組織体系が十分ではないではないか、こういう御指摘には、設立の際これを基準に照らし審査する等の体制はできているものの、それを追跡——ことばは適当でございませんが、絶えず追跡調査をしているというだけの体制は必ずしも私もないというふうに思います。さりとて、これが直ちにされば、いわゆる新しい機構なり、そうしてそこへ定員を割り振るという問題になりますと、従来とってきております、なかんずく文部省に数が非常に多いわけでありますが、総定員法の中で一つ大学学部設置に関しても絶えず窮屈なワク内で呻吟をいたしております状態から見ると、にわかにその省にそうした定員を張りつけするだけの私は余裕はないではなかろうというふうに思います。しかし、御指摘のとおり、設立の際に当たる審査能力はあるが、追跡調査するだけの監督能力というものについては十分でないということは、率直に私も認めざるを得ないので、どういう形でこれをくふうしていくかということについては、文部省のみならず、他の省をも含めて、さらに公益法人監督事務連絡協議会の中で検討をさせてみたいということを、すなおに足鹿先生意見を聞いて、いま私が感じたままの、不勉強でございますが、意見としてお答えさしていただきます。
  18. 足鹿覺

    足鹿覺君 その、いま長官のおっしゃった公益法人設立許可審査基準等に関する申し合わせ昭和四十七年三月二十三日、公益法人監督事務連絡協議会というものの印刷物も資料として取り寄せているわけでありますが、これはけっこうですよ、けっこうでありますが、もう一歩踏み込んだ対策をいつごろまでに具体化していただけますか。たとえば問題の、文部省をいつも引き合いに出して申しわけありませんが、法人監督専門官というものは文部省におらぬそうですね。旅費等がない。千七百余の法人をかかえているものが、各局縦割りで、そうしてまあ適当に書面審査をしている。これでは、休眠睡眠法人はもちろん、不法不当事項が起きても、どうにもならない。最近、このつくられた協議会目的において、同窓会、同好会等の構成、相互の親睦、連絡意見交換を主たる目的とするもの等は、これは認可しないというように、これからのものについてのその対策は一応講ぜられようとしている。しかし、現在までのものに対して、これだけ行政が多岐にわたり、政府がそれに依存している度合が非常にウエートが大きい以上は、長官行政管理庁がいかように勧告をなさっても、内閣自体取り組み体制が私は弱いと思う。たとえば大蔵省旅費をつけない、予算要求をやっても。そういうことでは、各省庁がやる意欲を持っておってもできないから、私はそこに問題が出てくるのじゃないかと思うのですね。これ以上あえて官房長官に申し上げることも差し控えますが、特に、私が先ほど申しましたその機構とそれに必要な定員の配置と予算措置を十分にひとつ講ずるように、御検討願いたい。これに対する御所信だけは、この際明らかにしていただきたいと思いますが、重ねてひとつその点。
  19. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私も、足鹿先生のきょうお取り上げになるであろう問題等について、事前レクチュアを全くしていないわけでもございませんが、ただいまの御指摘については、私は考え方としては十分理解のできるところであります。  直ちに、定員といえば、最終的な予算折衝段階におきまして、行政管理庁長官中心として、最終的な調整をいたします。予算はもとより大蔵省でありますが、それらに対する内閣全体の姿勢としての対応のしかたというものは、私は、足鹿委員の御意見に沿って対応してみたいと、このように思っております。ただ、その基本的な考え方をどこで検討さしてみるかということになりますと、いわゆる総理府につくりました公益法人監督事務連絡協議会で議論をさしてみるべきものであるか、あるいはそれ以前に、勧告をした行政管理庁自体検討を行なって、政府姿勢の中に反映すべきかということについては、いま整理ができておりません。が、予算概算要求等、いずれ、八月末日までとか、まあ慣例によった閣議決定も、もとよりしなければならない時期にも到達しておるというふうに思いますだけに、それに間に合う中で御趣旨の点を生かした姿勢を打ち出していきたい、このように考えております。
  20. 足鹿覺

    足鹿覺君 竹下長官の誠意のある御答弁で、一応了承いたしましたが、あわせて、この際、法務省官房長官にお聞きしておきたいんですが、ただいまの続きであり、その内容にもなると思うのですが、先ほど中村長官は、民法改正の問題を検討しておるという意味のことを言われました。私どもも聞いております。先ほども述べましたように、公益法人実態について、国会でやり玉にあがった、そのずさんな運営、経理が明るみに出た、総理もたまりかねて監察を指示した、そこで許可基準等を設けて連絡協議会が発足をした。しかし、どうしても——たとえば財団法人は、定款と称するものが寄付行為となっていますね。これはずいぶん前近代的なことばで、そのこと一つをとらえてみましても、規約、定款といえばわかるけれども、寄付行為というと、はなはだこれ、専門家以外の者はちょっとこれが定款とは受けとめがたい。事ほどさように、前近代的な民法のいまのあり方というものは、批判を受けてもいたし方がないと思う。そこで、公益法人民法に基づいておる以上は、公益法人の性格を明確にし、解散させるためには民法改正が必要であるとして、法務省に対して検討を要望したということでありますが、検討しておいでになるのですか、法務省、いかがですか。
  21. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) お答え申し上げます。  行政管理庁から、昨年の十二月だと思いますけれども、公益法人実態調査の結果、民法公益法人に関する規定そのものが不備ではなかろうか、そういう点から、二つの点を特に検討してほしいというお話があったわけでございます。  その一つは、現在、公益法人につきましては、民法第七十一条におきまして、たとえば設立の条件に違反した、あるいは本来の事業目的の範囲外の活動をした、その他積極的に公益を害する行為があった場合には、主務大臣設立許可を取り消すことができるのでありますけれども、何もそういう積極的に公益を害する行為はしないが、さればといって事業活動そのものを何にもやっていないいわゆる休眠法人につきましては、設立許可を取り消す規定を持っていないわけでございます。これが今日一つ公益法人の名にふさわしくない法人がたくさんできている原因ではなかろうか、だからその点について法制的の整備を検討してほしいというのが一つの御注文でございます。  それからもう一つは、現在の民法公益法人は積極的に公益目的にする法人だけを対象にしておる規定である、営利法人につきましては、御承知のように、株式会社、あるいは有限会社法、こういうもので、あるいは民法の民事法人、こういったもので規定されておりますけれども、公益目的にするのでもない、さればといって営利を目的にするわけでもない、言ってみますと、仲間相互の利益増進、ちょうど公益と私益の中間をいくような法人について、民法公益法人は直接には規定していない、いわばそこは法制の一つの抜け穴になっておるから、だから積極的にむしろそういうものを民法の中に取り入れることによって、実際には公益というものを看板の一つに掲げながら実際には中間法人的なものがたくさんある、それが今日の公益法人のもろもろのやはり弊害を生んでいるのではなかろうか、だからそういう点についての検討をひとつ頼みます——この二つの御注文を受けているわけでございます。  法務省におきましては、法制審議会がございまして、民法部会がございます。いまの問題は、きわめてまた専門的な問題でございますので、行政管理庁からの御委嘱が十二月にありましたが、実は事前に大体方向を知っておりましたので、法制審議会民法部会の小委員会におきまして、いままで数回にわたりましてこれからの問題を検討してまいったわけでございます。  で、いままでの審議の経過を申し上げますと、前段の問題、すなわち休眠法人に対する解散の規定、これに関しましては、およそ三つぐらいの問題が法則的に問題であろうか。一つは、まず第一に、そういう休眠法人について設立許可を取り消すという規定が必要である。それから、多くの場合、そういう場合には法人の代表者の所在は不明なんでございます。これに解散設立許可の取り消しということをいかなる方法によって知らして、そうして法律的の効力を持たせるか、それから、解散したあとにおきましてはもちろん解散の登記をしなければならぬわけでございますから、登記の嘱託という問題、おおよそこういったことが大事な問題じゃなかろうかということで、いままで三、四回やりましたところで、おおよそ大筋についてはいま案が固まりつつございます。  次の中間法人の問題につきましては、これはなかなかむずかしい問題で、民法の中に中間法人を取り込むことがどうなのか。御承知のように、いろんな同業組合、あるいは親睦会とか、いろいろなものがあるわけでございますが、これはそれぞれ特別の法律によって規定されておるところでございますけれども、それと別の法制分野として、民法の中に取り入れる場合には一体どういう問題があるだろうか、また諸外国の立法例はどんなことになっておるだろうか、こういったことをいま検討しておるわけでございます。したがいまして、ずばり申しますと、行政管理庁の第一の御注文に対しましては、やや成案を得ていると言っても差しつかえないものでございますが、いま主として第二の問題を詰めつつある。一緒にやるということになりますと、この第二の問題をもう少し詰めていかなければならぬ、このようにいま考えている段階でございます。
  22. 足鹿覺

    足鹿覺君 法務省においては、公益法人活動状況を報告をさせる、そしてその実態を握っておられるということも聞いておりますが、ことに行政庁の設立許可監督等に問題があれば、何かお気づきの点があれば、率直にひとつお聞かせ願えませんか。これは官房長官にも、それから行管長官にも同様でありますが、いまお聞きのように、休眠法人等に対するものは三項目等に分けて検討しておる、しかし何か別な特別立法が要るのではないかというような、御発言の裏にはそういう意味があったやに私は開き取ったんですが、それもけっこうでしょう。いずれにせよ、目的を達成していくために、民法の改正オンリイでいくか、あるいは他の特別立法でいくかということは、今後の検討課題であろうと思うんです。ただ問題は、法務次官がおっしゃったように、休眠法人等の整理だけでは問題の本質的に解決はつかぬのでありますから、したがって、法人全般の適正なあり方を追及するために、全般的な法の改正か、あるいは特別立法の制定か、こういった点を踏まえて、法務省の民事局、総理府大臣官房の管理室その他関係省庁が、早急に連絡を密にして、官房長官なりを中心として、基本対策を急いでもらいたい、このことを申し上げ、御所見もそれぞれ、官房長官行管長官法務省から承りまして、次へ移りたいと思います。
  23. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは、いま法務政務次官から、私も承っておって勉強さしていただいたようなものでありますが、かなり具体的な御説明を伺って、それなりの問題点が私自身にも理解ができたような気がいたします。と同時に、足鹿委員からの御指摘でありますが、いま直ちに私はその問題をどこで取り上げるべきかということについては、およそ総理府でやるべきか、行政管理庁でやるべきか、いわゆる主務省をいかがすべきかということについては、にわかに判断を下すだけの準備、心の準備がなされておりませんが、まず、どういうところでいまのような問題自体を整理していくべきかということについては、これはたいへんに時間のかかる問題でもなかろうと思いますので、私にも若干の——内閣官房というのは手足のない役所でございまして、若干の手足、内閣審議室等ございますので、少しく意見を徴した上で、適当な機会に整理してお答えを申し上げたほうが適切ではなかろうか、このように思います。
  24. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) 足鹿委員の御指摘になりました点でございますが、私は公益法人の処置を二つに分ける必要があると思います。既設のものを整理していくということ、これはいま、休眠法人につきましては、法務省検討していただいておりますような方向で、これが処理されていけると思います。私は特殊立法と申しましたのは、民法の一部改正をやるか、あるいは別に何か廃止することもできるような法律をつくるかという意味でございまして、特別に別に法律をつくるという、それほどきちっとした意見じゃなかったことを御理解いただきたいと思います。  それからさらに、私は、今後これを許可、認可していきます場合に、やはり各省庁は、自分の関係したものに対しては、これはことばが少し適当でないかもしれませんけれども、甘いということは言えると思います。それぞれの関係業者、あるいは関係の団体等でございますから、どうしても甘くなる。そこでやはり今日のようないわゆるだらしない姿になっておるということも言えないことはないと思います。そりで、やはりどこかで許可、認可の場合に十分検討をして、そうして手がたくいくという一つの機関といいますか、何かそういう場所がなければならぬじゃないかということが一つ。  それから、今後の許可、認可したとおりの目的に沿うような活動ができておるかということを、これは常時監察していくということは、いま行管の監察局ではやっておりますが、ただ監察をして勧告をする、そうすると各省庁でそれにこたえるような処置をするという行き方になっていますけれども、やっぱり許可、認可のときにも甘いように、なかなか自分の関係省庁公益法人を手きびしく、こう廃止したり、あるいは規制していくということは、やはり困難性があろうと思います。やはりそういう点についても、今後の一つの課題として、検討する必要がある。それはどこに置くか、総理府のどこかに置くか、あるいは行政管理庁の中の監察局の中にそういう役割りまで兼ねたものを置くか、何か私はその方法は今後検討せなければなりませんが、やはりきびしい姿勢許可、認可に臨む。さらに、でき上がったものに対しては、やはりきびしい姿勢でその業績を追及していくというかまえが必要である、かように考えまして、今後の処置をいまそういう方向検討している、かような次第でございます。
  25. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 純粋の公益法人につきましては、先ほど申し上げたように、休眠法人整理についても、民法の規定の改正ということ、それから並びにその運営につきましては、ことしの三月三十日の内閣から出されております統一的基準、こういったことでおおむねいけるのじゃなかろうかというのが私見でございますが、中間法人を認めるかどうかという問題は、全く新しい法制問題だと思うのでございます。  先ほど申しましたように、中間法人は、その他の同業組合とか、いろいろな組合法その他の法律がございまして、ほとんど大部分はそれによっているわけでございますが、しかし、まあことばは適当でないかもしれませんが、公益法人の形をかりて相互親睦をはかることを主体にする法人というものが現にある以上、やはり民法においても、そういう中間的な法人そのものとして、それに即した制度を設けることも一つ考え方であろうと思うわけでございます。  ただ、もとよりその場合には、今後の監督の理念というものがどういうことになるのか、主としてその財産とか会計の監督、あるいはその社団法人としての意思が公正に形成されるというようなことを担保する法制だけでいいのかどうか、この辺のことが非常にむずかしい問題でございますので、なお法務省に設けられております法制審議会の小委員会でこの点をとくと検討していただいた上で結論を出してまいりたい、かように考えている段階でございます。
  26. 足鹿覺

    足鹿覺君 二長官並びに法務次官から御答弁がございましたので、一応一般論としましてはこの程度にとどめますが、いずれにせよ、この膨大な法人対策に対しましては、抜本的に対策を早急に樹立し、必要な法的措置、あるいは予算措置、人的配分等に遺憾なきを期していただきたい、かように強く御要請を申し上げたいと思います。  両長官並びに法務省は、御多忙でございましたら、お引き取りいただいてけっこうです。  以上の一般的観点並びに法人実情を踏まえまして、私はこれから具体的な一例として財団法人衣笠会について文部大臣並びに警察庁、大蔵省関係方面にお尋ねをいたします。  この財団法人衣笠会は、京都工芸繊維大学内に事務所を置く財団法人でありまして、その設立の経過等は時間がありませんから省略いたしますが、財産目録、資産内容等によりますと、これは私の資料でありますが、衣笠会の資産総額は大体次のとおりであるように思いますが、間違いございませんか。  資産総額、記帳価格約一千万円以上、時価に見て三億五千万円以上。その内訳として、衣笠会館——あとでごらんにいれますが、ここに写真のあるもの、外人教師がもと住んでおった広大な邸宅と建物を持ったものであります。これが、記帳価格百五十万、時価二億一千万円。土地家屋等は、内訳は省略いたします。  なお、次に、衣笠会館別館と称して、元西村五雲氏の邸宅を財団法人衣笠会が購入したものであり、現在財団法人衣笠会の会長梅原という人が自分のうちとしてここへ門札もちゃんと掲げてお住まいになっておる。これが、記帳価格が百八十万円で購入したことになっており、時価が大体八千万円は土地、家屋であろうといわれるものであります。  いま一つ、これは財団法人衣笠会が国に寄付をして、その際、敷地の上に株式会社島津という運送店が倉庫を建てておったので、他人の建造物なるものの寄付の採納はできないというので、そのまま衣笠会の財産に残っておるものであります。これらは幾らに見積ってよろしいか、相当なものでありますが、省略いたすこととして、運用財産が備品、有価証券、預金等で五百七十五万千七百十六円と聞いておりますが、大体この数字に間違いありませんか。
  27. 木田宏

    政府委員(木田宏君) いま御指摘になりました資産総額におきまして、衣笠会館の土地、建物等の記帳価格は、御指摘になったとおりだと思います。時価の評価額はどのくらいであるかにつきましては、ちょっといまつまびらかにしておりません。
  28. 足鹿覺

    足鹿覺君 それはまあいいです。
  29. 木田宏

    政府委員(木田宏君) それから、会長が住んでおります住宅につきましては、所有につきまして争いがあるようでございますが、土地台帳の上では衣笠会の法人に仮登記をされておるようでございまして、その記帳価格は、購入時点におきます価格として、御指摘のように百八十万でございます。最後に御指摘になりました、国への寄付の申し出がありまして、その寄付の受付を断わりましたために宙ぶらりんになっております土地は百九十二坪でございまして、この帰属につきましては、一応財団のものというふうに考えておりますけれども、御指摘のとおりに大体私どもも考えております。
  30. 足鹿覺

    足鹿覺君 いま局長が述べられましたように、梅原さんが居住しておられる衣笠会館別館なるものは、西村晋外二名、有名な西村五雲先生の御邸宅を財団法人が買ったものでありまして、その登記面でもちゃんと載っておりますから、このように自分の私邸のごとく、もうちゃんとこう表札もかけ、別館なるものを自分の私邸としてかってに利用しておると、使用料も払っておらないと、こういう状態は、ひとつよく御承知おき願いたい。あとでこれごらんに入れますが、そこでこの際、古いことですからこまかいことはわかりませんので省略しておきますが、衣笠会の前身といいますか、衣笠同窓会、つまり元京都高等蚕糸学校であります。後の京都繊維専門学校であり、現在の工芸繊維大学と続くわけでありますが、この学校が大学昇格の期成同盟会ができて、これは即同窓会のような性格だったようでありますが、私もわかりません。日本蚕糸統制株式会社から一千万円、同窓会から二百余万円、計千二百余万円の寄付金を受けて昭和二十二年五月十一日に結成されておるんですね、大学昇格期成同盟が。この太平洋戦争突入直前に設立をされたところの日本蚕糸統制株式会社は、政府出資でありまして、国策会社であったわけです。つまり、戦争遂行の機関として設けられたものです。資本金八千万円で、うち政府出資が四千万円、他は蚕糸関係団体が四千万円出資をして、八千万円で設立されたと記録に出ております。この中で、日本が敗戦を喫し、マッカーサー命令によってこの会社が解散を命ぜられ、積み立て金、残余財産の中から、東京高等蚕糸学校と上田高等蚕糸学校、京都高等蚕糸学校に対して、京都の場合は期成同盟会あてに一千万円、上田と東京にも各一千万円の金が支給されておる。その具体的な法規の根拠とかそういうことは、その当時のことでありますから、大蔵省もどのように理解しておられますか、記録がなければいたしかたありませんが、とにかくそういうもので約一千二百万円、一説には一千二百六十万円、当時の金としては、貨幣価値千倍と見れば百二十六億円という大きな金であります。いま私が申し上げた三つのこれにしましても、三億五千というのは、これは貨幣価値の換算によってだいぶ変わってくると思うんです。これ相当内輪に見ております。この一千二百万円というもののうち一千万円が、大学昇格の際これが寄付された、これは事実のようですね。解散の残余財産をもって財団法人衣笠会昭和二十五年十一月に結成されておるわけでありますが、それに間違いありませんか。
  31. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 私どももにわか勉強でございますが、いま御指摘がございましたように、京都繊維専門学校の大学昇格を期するための会からこの衣笠会は二百万円の寄付を受けまして、それを母体にして衣笠会という法人の申請がなされ、許可をされたのでございます。学校に対します寄付につきましても、一応一千万円の寄付がこの期成会のほうから行なわれた由聞いております。
  32. 足鹿覺

    足鹿覺君 この会は、繊維教育の振興と繊維産業の総合化学的研究及びその実用化の研究等を目的設立をされ、寄付行為に載っておりますが、その目的に沿って各事業を当初行なっておったようでありますが、それが、昭和四十二年以後、衣笠会の管理運営をめぐる役員間の対立とでもいいますか、つまり、発足当時は衣笠同窓会の会長が財団法人衣笠会の会長になってスムーズにいっておったものが、現会長が就任をされた——それは同窓会長でなかったにもかかわらず就任をされた。同窓会長と財団法人衣笠会の会長が一体であったものが、昭和四十二年以降分離した。そこで問題が発生をし、自来全くこの寄付行為に定められた事業も行なわないし、この貴重な資産が、人にも使わせない、自分も使わない、ただし自分が私用には使っておると、この別館と称するものは。そして、その後蚕糸統制株式会社から譲渡を受けた工芸繊維大学設立中の大学本部に当てた建物は文部省へ寄付しておる。こういうことで、それはそれなりに役目を果たしておりますが、この同窓会の本部と衣笠財団法人とその別館は私物化されて今日に至っておる。運営も全くなされておらぬ不正な状態のまま今日に至っておるわけであります。俗に工芸繊維大学の伏魔殿だと言われておるような状態が今日まで続いておるんであります。聞くところによりますと、財団法人衣笠会の会長梅原さんは、昭和三十一年九月、衣笠会の育英施設とするためと称して、衣笠会の資産、定期預金を担保として銀行より融資を受け、京都市北区小松原北町の土地二百四十六・五坪及び建物二十二坪を百八十万円で購入し、昭和三十七年七月梅原氏が大学事務局長退職後自分が入居した上、この土地、建物は自己の所有物なりとして現在まで居住しておるのであります。  この間の事情は、梅原さんが大学事務局長在任中、前記の邸宅を——いわゆる別館と称するものに当てた邸宅は旧西村五雲画伯の邸宅であったというわけでありますが、これは登記によっても明らかでありますが、衣笠会の分館と称して、昭和三十一年十月当時の大学事務職員を借入官舎という名目で無料入居せしめておる。その代償としてか、その邸宅の必要な設備——これは西村画伯のアトリエであった、したがってがらんとしておった建物であったらしく、その修繕工事、居住用に必要な修理、改築、設備を当時建設中の大学の施設、営繕費目で相当額をまかなっておる。いわゆる国費で修理、改築をしておるんです。つまり、これが事実とするならば、国費の不当支出として非常に大きな問題だと私は思うんであります。このことについて文部当局はいかように調査し対処されましたか、承っておきたい。
  33. 木田宏

    政府委員(木田宏君) いま御指摘のございました、梅原会長が現に居住しております邸宅、土地二百四十七坪、建物の坪数が二十二坪というものの所有権の帰属につきまして関係者の間に争いがございまするけれども、私どものところでまあ一応その争いの過程の事実といたしまして聞いておりますところは、次のようなことでございます。いま御説明の中にもございまするけれども、この邸宅を当時の購入代金百八十万円、そのうち百三十万円は法人の運用財産を担保に入れて銀行から借り入れまして、残りの五十万円を当時の常務理事でありました梅原氏が個人で負担をいたしまして、そしてこの法人の所有として購入したようでございます。したがいまして、購入後直ちにその邸宅を法人名義で所有権の仮移転登記を行なってございます。その後、梅原氏が昭和三十七年九月、これは事務局長を退職した直後でございまするけれども、その邸宅に居住しておるということも事実でございます。また、購入いたしましたその邸宅を法人から無償で大学職員の宿舎に提供しておったということも事実というふうに確認をいたしております。まあ一つだけ争いになっておりますことは、購入いたしました時点のときから、実はその取り扱いその他につきまして、正式に理事会できめた購入手続ではない等の疑義が起こっておりまするが、その手続の中に、当時購入いたしました法人役員とそれから梅原氏自身との間に、他の理事、監事立ち会いのもとで、当時の会長の吉村さんという人でございますが、この了解事項を交換してございまして、購入した代金について、梅原氏がその購入代金を全部自分で支払った場合に、梅原氏名義の所有のものに移転していいという了解があったと、それで邸宅の所有権の授受があったのだというようなことが実は論争点になっております。そのことでまた訴訟が起こっておりまして、仮登記の移転は、理事者の間でその購入時点以来の対立関係がございますから、登記の移転はその後移しかえも何もできない状態になっておりまするけれども、その所有権そのことにつきまして争いがあるということだけつけ加えまして、その他いま御指摘になったとおりと考えます。  なお、大学職員に貸しておりましたときの修繕その他の措置につきましては、会計課長からお答え申し上げたほうがいいかと思います。
  34. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) お答え申し上げます。  御指摘の建物につきましては、昭和三十一年当時、教職員の宿舎事情もありまして、工芸繊維大学の学長と衣笠会長理事吉村氏との間に貸借契約を取りかわしまして、臨時の応急の宿舎として無償で借り上げを行ない、庶務課長宿舎として使用していたという経緯がございます。この契約書によりますと、当該建物の修繕及び保管に要する経費は大学が負担するという条項が設けられておりまして、この条件に従いまして、アトリエを居住施設として改修を行ないますために、ベニヤ板による間仕切り工事でございますとか、戸障子の修理等を大学の経費で行なったもののようでございます。先生の御指摘のこの改修のための国費支弁は、一応正式の貸借契約による約定に従って行なわれたものでもあり、かつ無償使用ということにもなっておりますので、事柄自体としては必ずしも国費の不当使用とはならないものではないかと考えられますが、しかしながら、それも改修の程度が妥当かどうかというようなこともあるかと存じますが、かなり以前のことでございますために、その辺のところを正確にいまから調査をさかのぼって行なうことができないような状況でございます。
  35. 足鹿覺

    足鹿覺君 私は明らかに不当支出の疑義があると思うのです。と申しますのは、まだほかに一ぱい資料ありますが、個人の名誉等もありますので、固有氏名は申し上げませんが、大学職員が三十一年から梅原さんが三十七年入居するまで六年間無家賃で入居しておったことは事実なんですね、そうですね。そういう事実も明らかになっております。また、だれが借りておったか、現在その人が何をしておるかということもわかっております。これはあえて申し上げません。いずれにせよ、この文部省昭和四十一年後今日までの行政指導の状況を見ておりますと、文部省大学学術局学術課大門事務官外一名が衣笠会の業務監査を行ない、その場で次の戒告指示を与えた、こう言っております。その指示の第一点は、昭和三十一年の、つまり梅原さんが現在入居しておる西村邸を買ったときのことです。「住宅買い入れについては理事会を開かず」——いいですか会計課長、「開かず四人の理事できめたことは無効である」と言っているのですよ。文部省の大門事務官がその場で言っているのです。「無効である」とする五項目の戒告、指示を与えたといわれておる。だとするならば、いま会計課長の言われたようなことは、かりに国費の不当支出であったとかなかったとかいうことを論ずる以前に、そういう文部省が戒告しているようなことをやったこと自体が違法な措置である、これはお認めになりますね。
  36. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 会計課長から答弁があろうかと思いますが、一応私から申し上げます。  三十一年九月の時点でその邸宅を購入したことにつきまして、常務理事会という関係者だけの決議で手続が進められておるということは、法人の寄付行為に照らしまして、理事会の運営上瑕疵があるということは、当時の私どもの関係者が指摘したとおりであります。瑕疵があるということは指摘をいたしましたが、いずれにいたしましても、そのときに代金の授受が行なわれ、所有権についての仮登記も行なわれておりますので、その邸宅の所有権の移転につきましては、一応あったと考えざるを得ないのではないかと私は思いますけれども、それを前提にいたしませんと、あとのことの大学に貸すとかいろいろなこともまた問題がこじれてまいりますが、違法な手続によって進められたことではございまするから、あとあとその所有権を今後明確にし、従来の瑕疵ある手続を是正する措置を今後の運営改善のためには行なわなきゃなりませんけれども、現在の時点におきまして、それを大学に貸したこと自体もこれまた事実とこう考え、その事実の上に立って何らかの処置が行なわれたというふうに考えていかざるを得ないかと思っております。
  37. 足鹿覺

    足鹿覺君 そういう議論をここで私はあなたとしようとは思いませんが、この戒告を行なったという事実は厳然として文部省の態度として残っておる。そのあなた方の前任官である大門事務官が戒告を与えた昭和四十一年九月五日の戒告をひとつ文章で読み上げてください。
  38. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 当時の担当者でありました大門が現地に参りまして、実は口頭でおおむね次のような指示を与えたというふうに聞いております。第一は、この法人運営にあたりまして、重要な事項が正式の理事会の決議を経ずに執行されておるようである、このことは寄付行為にもとる執行手続であるから是正を要する。第二に、昭和四十一年九月に現地に参りました際に、その梅原会長が居住しております邸宅をこの法人が購入いたしました際に、この決議も常務理事会という便宜の処置で進められておりまして、正規の理事会の決議を経たものでないから、手続上瑕疵があるということを第二に指摘しております。第三に、昭和四十一年三月の時点におきまして評議員五名の選任が行なわれたといわれておりますが、これも正式の理事会の決議を経ていないので、その評議員の選任について問題がある、無効ではないかと考えられる、こういう指摘をいたしております。で、以上いろいろと法人の寄付行為に抵触していると考えられる措置があるから、今後このようなことのないように厳重に是正をはかられたいという注意を与えまして、その際なお、この行き詰まりのような状態になっております対立関係打開のために、関係者で何か話し合いのテーブルについて法人の適正な運営をはかるようにしてほしいということを、それぞれの関係者に申し伝えたように承知をいたしております。
  39. 足鹿覺

    足鹿覺君 大体私の資料とそう大きくは変わっておりませんが、(二)の「昭和三十一年の住宅買い入れについては理事会を開かず四人の理事できめたことは無効である。(梅原氏を含め四人の理事理事会決議録を作製している)」、こうなっておるのですが、いずれにいたしましても、瑕疵があるということには間違いないようであります。そこで、大門事務官はこの指示、戒告を与えていったのでありますが、文部省のこの指導事項はついに守られずに今日に至っておるわけですね。きわめて遺憾千万だと思います。いやしくもこれだけの明確な指示、戒告を与えたものが、馬耳東風で聞き流されて今日に及び、しかも双方から訴訟がしたがって提起をされることによって最悪の事態に突入してしまったということについては、私は文部省が、いわゆる書面書面のやりとりによることなく、先ほど一般論で述べましたように、もっと現地へ乗り込んで、そうして事前にこの処置をなさっておったならば、このようなもつれには至らずして、日本の蚕糸関係の中核を占めておるこの教育機関に大きく寄与できたのではないかと思うのです、この財団は。非常に遺憾に思います。  そこで、警察庁にこの際承っておきたいのですが、梅原さんが、役員問題において、昭和四十六年二月二十一日、理事会及び評議員会が有効に成立したとの仮定の事実のもとに、この財団法人の合掌義雄という人を法人寄付行為十九条の義務違反により役員を解任された旨の虚偽の議事録をつくり、さらに、同四十六年六月三日、京都地方法務局に理事変更の不実記載をなさしめたといわれております。ここにその不実記載の写しがありますが、これをごらんになるとわかりますが、合掌義雄君は全くここで抹殺されておるのですね。大臣、これが財団法人の衣笠会の約二億円の財産、これが西村五雲さんの家、ここに梅原さんの門札が入っておる。これが別館と称するものですね。それからこれが大学本部に財団法人が寄付したもの。これがこの裏にある土地です。  これを見ますとね、ちゃんと合掌という人は、知らぬ間に自分の名前が削られておる、抹消登記されておる、こういうていたらくなんです。そこで、これにつきまして合掌氏は、昭和四十七年四月一日、京都府西陣警察署長に対し、梅原氏外二名を公正証書原本不実記載罪並びに名誉毀損罪の事実ありとして告訴を行なっておるが、これら告訴状の取り扱い並びに捜査、取り調べ等の状況を聞きたい。なお、理事西田峯吉という人も、同じく梅原氏らに対し、理事会の成立を擬装した上、虚構の議事録の作成及び登記申請を行なったことについて、公正証書原本不実記載罪の被疑事実をもって告訴をしております。この二人の告訴に対して、警察庁の捜査状況並びにかかる悪質な事案に対する断固たる追及を私は要望いたしますが、現段階における情勢並びに本件に対する御所見を承りたいと思います。
  40. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) いま御指摘の件につきましては、合掌義雄氏並びに西田峯吉氏から四月一日付で告訴状が出ております。それで、京都府警察本部では、事件を検討いたしまして受理をいたしましたのが四月の二十日になっております。その後、目下関係者からその事情聴取、それから関係資料の収集というふうなことで、捜査をただいま進めている段階でございます。  それで、確かに合掌義雄氏は理事から削除されている。それから西田峯吉氏のほうは、自分は欠席しておったのに、出席という形をとって、半数ですか、定足数を合わせて、それで解任の手続をとったことは違法だ、こういうことで告訴が出ているわけでございます。ただこれは、先ほど来いろいろ御指摘がございますように、現在までに民事事件が四件提起されております。そのうち二件はいずれも請求棄却になっておりまして、現在なお二件が民事事件として訴訟係属中である。これは両方からやっておるわけですが、そういうことで、なかなか事案が複雑しておりますので、警察のほうといたしましては、役員会の招集方法、あるいは議事の進行状況、議事録の内容等について、それぞれの役員その他の方に現在事情を聴取をして、犯罪の成否について検討をしている、こういう状態でございます。
  41. 足鹿覺

    足鹿覺君 いま刑事局長からも御答弁がありましたわけですが、一方は合掌という理事を機関の議決も経ずしてかってに抹消登記をする。一方は本人が東京におって出席をしておらないのに出席したかのごとく擬装して議事録をつくって不実記載をした。私は、昨年三月勲三等瑞宝章を教育功労者として受けた梅原さんともあろう人が、会長の職権としてそのようなことをなさったということを非常に遺憾に思います。これがどのような犯罪を構成し、どのようにあなた方がお取り扱いになるかは、あなた方の公正な捜査の結果を私は待つといたしまして、少なくとも団体の運用に当たる者が、定款またはこの財団の場合は寄付行為にもとることをしたり、あるいは法律にもとることをしたり、団体運営の基本的道義を、ルールを無視するに至っては、私は法治国家が泣くと思うんです。そういう点において、刑事局長は公正にしてしかも厳正な捜査を今後行なってこの結末を明らかにしていただきたいと思いますが、御所見があれば承っておきたいと思います。
  42. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 告訴がございまして、告訴につきましては、警察としては当然にこれは捜査をする義務がございます。そういう点で、現在捜査を進めている状態でございます。ただ、いままでいろいろな報告を見ておりますと、問題の一つは、四十二、三年ごろからはもう正常なる理事会が開かれないような状態にある。そういう場合、今度の告訴の一つ内容も、理事の解任というふうな手続が違法な手続において行なわれている、その結果として登記簿の抹消、公正証書原本不実記載と、こういうものがあらわれてきている、こういう形になっております。それで、まあいわば民事事件と刑事事件の接点みたいなような形の事件でございまして、そういう意味では、私どもとしては、十分にその関係のことは慎重に捜査を進めてまいりたい、かように思う次第でございます。
  43. 足鹿覺

    足鹿覺君 よくわかりました。これから文部当局にもう少し質問をいたしますので、それもお聞き取りの上、よく御勘案願いたいと思います。  文部大臣に伺いますが、以上お聞き及びのとおり、財団法人衣笠会に対する文部省行政指導は、適正な行政指導昭和四十一年に行なわれておりますが、実効をあげておらぬ。受けたものが全く誠意をもってこれを受けとめておらない。この事実は何びとといえども否定できないと思うんです。はなはだ遺憾千万に思うわけでありますが、財団法人衣笠会設立及びその後の経過はすべてこれを省略をいたしまして、衣笠会館問題、邸宅問題、役員問題及び訴訟問題等、梅原氏が財団を私物化せんとする意図によるものではないか、こういう疑いを持たざるを得ない驚くべき内容が一応おわかりになったと思います。言うまでもなく、文部大臣主管に属する民法第三十四条の法人設立及び監督に関する規定に基づきこれらの法人指導監督を行なう文部省の責任はきわめて重大であると思います。私は、本問題を取り上げるにあたりましては、きわめて慎重な態度をもって対処いたしました。と申しますのは、いわゆる同窓会長が衣笠さんと別人の人がなっておる。白波瀬何がしという人がなっておる。この人は老齢のゆえをもって先般退任をされたそうです。そうして新しい人にかわられたそうであります。が、それはともかくとして、同じ目的を持った同窓会と財団法人が相抗争するというような形になったことは、経過はありましても、私は遺憾に思います。これを必ずしも文部省だけの責任だときめつけるわけではありません。が、いずれにしましても、何か両派の争いというようなものにわれわれが介入すべきものではなかろうと、一年間ばかり、この話は聞きましたが、私は慎重を期しました。しかし、最近に至って、ここに衣笠会を正常化する会というもので、全国の八千人にわたって、明治、大正、昭和にわたって日本の蚕糸業をささえたこの卒業生の人々が、全国から代表を集めて、この事態を憂えて、何とかしてこれを正常化しなきゃならぬということで、今春スタートをしました。京都の農協会館において発起人会が開かれ、続いて正常化する会の総会が持たれて、真剣な意見がかわされたと聞いております。  そこで、私はこの人々の意見を要約してみますと、きわめて公正な立場からものごとを考えておるようです。第一点は、衣笠会が今日の混迷状態を招来した根本原因は、衣笠会設立趣旨にのっとり歴代の同窓会長が衣笠会の会長を自動的に兼任するというルールを三代目の梅原会長によって破られ、彼が居すわったことによっている。したがって、梅原氏を説得して、この衣笠会設立以来のルールを確立すべきである。これが一点。二点は、衣笠会は、寄付行為という憲法をしばしば無視するという運営が行なわれてきた。これは梅原会長の寄付行為を無視した独断行為によるものであり、梅原氏の退陣が唯一の正常化の道であり、あわせて梅原氏の不法、不当行為を許した全役員の重大な責任でもあるので、全役員の総退陣が根本的解決策である。三、以上の数々の問題に対する今日までの文部省監督指導は実に不徹底なものであった。もし、昭和四十一年九月の、先ほどお読みになったあの戒告案です、大門事務官が行政監査し指摘した事項がそのまま実行されていたならば、今日の事態に至らず、早期に正常化せしめられたのである。したがって、今日の事態に至らしめた責任は、文部省行政指導の不徹底によるものである。おそきに失したが、この際監督官庁としての文部省の断固たる措置が要望される。これが最後のきめ手である。以上の意見が総会で集約をされたと聞いております。重ねて文部当局の断固たる措置を要望しておりますが、これに対する文部大臣の御所見を承りたい。
  44. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) この衣笠会の問題は、実は私はきょう初めて聞くのではございません。昨年の十月ごろでありますか、この話を聞きました。全く非公式なところから聞いたのであります。そこで、担当者に対しまして——ちょうど局長が入院中でありましたが、担当官に対しましてこの間の事情を詳しく聞きました。承知をいたしております。全く内輪げんか——きわめて悪質な内輪げんかだという感じがいたすのであります。是非の問題はともかくといたしまして、法人法人定款によって動くべきである。これが定款どおりに動かなければ法人の意味をなさないのでありますから、その意味において、文部省指導監督が不徹底であるというおしかりは、いかようにも受けなければならないと思います。ただ問題は、私は、兄弟互いに同じ学校で学びました者ですから、お互いに訴訟合戦をやるというようなことが望ましい姿であるとは思っておりません。できることならば、円満な話し合いのもとに、いま足鹿君の言われましたような形で、役員の総退陣、新役員によって新しい出発をするというような形ができるならば最も好ましいことだと考えておりますし、これができないということでありまするならば、文部省としては、定款違反の分については、場合によれば民法上適切な処置をとらなきゃならぬ場合も起こり得るということでありまするが、私は現状におきましては何とか話し合いでこの話を片づけてもらいたい。ことに、同窓生が立ち上がられたという話も聞いております。そこで、この話が円満に片づくことを心から念願をいたしております。文部大臣といたしましては、この問題をこのままにほうっておくつもりはございませんから、その辺は御了解をいただきたいと思います。
  45. 足鹿覺

    足鹿覺君 この昭和四十二年に財団法人衣笠会役員選任に関する訴訟が梅原哲雄さんから京都地方裁判所に提出されて争われておった。これがことしの三月二十九日に梅原氏の敗訴の判決が下った。これもまたすぐに上告していらっしゃるのですね。その他にも、先ほど刑事局長がおっしゃいますように、双方から一件ずついわゆる民事訴訟が提起された。そこで、やはり私は、この同窓会の解決策というものは一応大まかの線を述べてはおりますものの、文部省が今日まで相当期間書類のやりとりだけでおやりになっておったことを反省されまして、積極的に文部省の立ち会いの上で一つの解決策を見出していただきたいと思うのです。つまり、負ければ上告をする、お互いが。そうすれば十何年かかるかわかりません。そういうことでは役に立ちませんので、私は解決策としてはいろいろあろうと思いますが、今度、先ほど述べましたように、梅原さんの抗争の相手方であった同窓会長が辞任をされた。したがって、財団法人衣笠会の梅原会長も同様辞任をされることが好ましい。そして新しい立場で、文部省も立ち会いの上、会合を持たれ、またその過程において両者が双方に訴訟を取り下げて、そして具体的な解決策をとる以外には道はなかろうと思う。これを提訴によって、陳情者が文部省に行くと、いま係争中だからいたしかたがないというのが、昭和四十一年以来今日に至った一つの理由のようです。それでは私は、いまの大臣の御答弁の趣旨からいっても、片がつかぬと思う。したがって、双方の提訴はこれを取り下げる、双方の役員辞任をする、まず会長が率先をして辞任をする、そしてなお、片方はもうやめているわけですから、梅原さんが応じないときには、大臣に強固なる意志を持ってこの正常化のために御尽力を願いたい。これが解決されることによって、私は、千三百七十七の文部省所管の民法法人一つの新しい風を送り、その正常化のためにはきわめて有意義な結果をもたらすであろうと思います。問題を解決せずしていたずらに事態を遷延することは、文部省の文教の府としての弱体性と、その正義観に対して疑いを持たれることは、私は文教の府としてよろしくないと思います。すべからく勇断をもって、梅原さんを文部省も一緒になって説得をされ、そうして双方が原点に戻って再出発をしていく、そうしてこの財団法人が寄付行為の定めるところによって日本の繊維産業発展のために貢献をしていく本来の目的に帰ることが好ましいと思います。重ねて、梅原さんに文部省も立ち会いの上で今後説得をされ、双方の訴訟の撤回、双方の会長の辞任、そこから出発して、なお応じないときには断固たる措置をとっていただきたい、二段がまえで正常化をはかっていただきたい、かように思います。場合によっては名称を変更して新財団をつくるということも可能でありましょう。そういった点をこの際とくと御検討いただきまして、いずれにせよ、正常化のためにすみやかなる措置をとっていただきたいと思いますが、文部大臣、重ねてひとつ御所信を承りたいと思います。
  46. 木田宏

    政府委員(木田宏君) いま御指摘のございました点は、お気持ちはよくわかります。私ども、四十一年に担当事務官が指摘をしまして以来、梅原会長に対してその是正の実行を何回か迫ったわけでございますが、その以後、どうも逆に関係者のかたくなな対立が行なわれ、訴訟合戦等が行なわれまして、そこで翌年の四十二年にも、八月に担当官が出まして、再度、会長、副会長の間によります双方の話し合いということを求めたのでございますが、そのことがかえって成功いたしませんでしたために、自来、しばらく様子を見るという状況で今日に至っております。いま御指摘のように、これは基本的には同窓会の方々が本来そのあるべき同窓会の姿とそれに関連いたします衣笠会の運営の是正をはかっていただくのが本来のあり方だと思いますので、そうした同窓会の方々の動き等が出てまいりました機会に、私どもが役立つことがありますならば、そのような方向で事態の正常化に私どももできるだけの努力をするということはやぶさかではございません。情勢につきましてあらためて私ども検討いたしまして、御趣意の線に沿って努力をしてみたいと思っております。
  47. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) 足鹿先生からせっかくのお尋ねでありますから、私からも所信を申し上げておきます。  私はこの問題を昨年十月以来実は承知をいたしておるのです。何とかすみやかに措置をするように指示をいたしております。足鹿さんはこの問題について全く私心のない立場でものを言っておられることを私よく承知いたしております。したがいまして、私のほうも、いま御提示になりましたような方向によってこれからの行政指導を進めていきたいと、かように考えております。さよう御承知いただきたいと思います。
  48. 足鹿覺

    足鹿覺君 大臣のよく御認識になった御答弁なり、補助答弁としての大学学術局長の御答弁が、直ちに実行に移され、早急に本問題が解決をすることによって、全国八千名余にわたる伝統あるわが国蚕糸業の最高の指導者を養成したこの大学が、京都高等蚕糸学校時代以来の伝統を受け継いで、今後多難を予想されるわが国の農業の重要ポストを占めるであろう蚕糸業の発展に大きく貢献できるように、御善処を願いたいと思います。  最後に大蔵省に一問お尋ねをいたしまして質疑を終わりますが、先ほどそこへ写真をごらんに入れましたが、旧繊維大学の校舎のあと地、北区大将軍坂田町約二万坪を、今度木造建築物を全部取り除かれました。その理由は、無人であって火災になると困るというので取り除かれました。その写真をごらんいただきますと、最後に載っております。煙突一本見えない静かな環境で、実にいいところであります。私どもも昔から、京都の高等蚕糸学校といえば名門としてよく承知しておりますが、いいところであります。いまでも静かなところであります。ところが最近、聞くところによると、鉄筋の建物だけは片すみにありますが、これを残し木造建物は全部取りこわしを完了したので住宅公団に払い下げる、このことを大蔵省に申し入れをしたと、こう伝え聞いておる。文部省に聞いてみますと、これは文部省の特別財産であってまだそう簡単なわけにはまいらぬと思うと、こういうことであります。  そこで、これはいささか余分なことかもしれませんが、これだけ都市に緑をというときに、少しの空地があればすぐ何かを建てる、鉄とセメントで固めてしまう、そういうあり方、考え方というものに、私は疑問を持たざるを得ない。しかも、先ほど来お聞き及びのような経過を経て、真剣に前途を憂えておる同窓会の諸君が、ここに繊維研究所をつくっていきたいという意見もあります。あるいは、その周辺を緑化して市民やその他の人々のいこいの場にしたらどうかという意見もあります。約二万坪のこの環境のいいところを、むやみにいろいろな建物に——これを文部省の特別財産から行政財産に移し、これを他へ売却するというようなことは、慎重を要すると思うのです、いままでの経過が経過でありますから。したがって、衣笠会の財産も、新しく再出発するならば、いまのその写真でごらんになりますように、そのままでは使いものにならない。何らかの形で処分をしなければなりますまい。その後の、いわゆる繊維産業、寄付行為第五条に示す事業を行なうためには、そういうことも考えておるらしいのです。十分実情調査をされ、関係者とも−直接の関係はありませんが、もともと八千名の同窓会がいま新しく生まれかわってこの問題の解決のために乗り出した最中でもありますし、十分御検討の上、慎重に配慮を願いたいと思います。いかがですか。
  49. 船田譲

    政府委員(船田譲君) ただいま足鹿委員から御指摘になりました財産は、京都市の北区の大将軍にあります京都工芸繊維大学あと地だと思います。これは大学の統合によりまして左京区の松ケ崎御所海道町に移転をすることによって生じましたあと地でございますが、文部省行政財産から一応用途廃止をいたしまして普通財産にはなっておりますが、依然としてまだ文部省の所管の財産になっております。そして文部省のほうから大蔵省に処分の依頼を受けておりまして、先ほど足鹿委員が御指摘になられました日本住宅公団から引き合いが出ておるというのも事実でございます。しかし、それは、有力な候補としては考えておりますけれども、まだ決定をいたしたわけではございません。そこで、先生から御指摘のありましたように、この工芸繊維大学の同窓会のほうからそういうような御提案があるということも承っておりますので、もしも適正な価格でこれを買い取っていただくということであるならば、十分に検討いたしましょうし、またむしろ緑化地帯としての検討もせよということでありますならば、これも十分国有財産当局といたしまして研究をさせたい、こう考えておる次第でございます。
  50. 足鹿覺

    足鹿覺君 文部省どうですか。
  51. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) このあと地につきましては、ただいま大蔵政務次官からもお話がございましたように、昭和四十五年行政財産の用途を廃止いたしまして、工芸繊維大学長から同年三月五日付をもちまして近畿財務局長に対しまして処分を依頼しておりますので、大蔵省での御検討をお願いいたしまして、必要な場合には私どもとしても御相談をいただきまして、その処分をどうするかということをきめていくようにいたしたいと思っております。
  52. 足鹿覺

    足鹿覺君 もう予定の時間がたちましたが、いずれにいたしましても、日本蚕糸統制株式会社から引き継いだ財産、譲渡金、会員の浄財等によって大学にあるいは寄付をされ、あるいはその後大学が移転をして元の学校が不用になった、こういう経緯を持っておるわけであります。したがって、一連の関係から見まして、ただ行政財産として単純な処理をするのではなくして、先ほど来述べたような意味において、日本の蚕糸繊維に貢献するような角度も十分勘案をされまして、御善処を願いたい。重ねて御要望を申し上げて、御所見があれば文部大臣からの御答弁をいただきまして、私の質問をきょうはこれで終わります。
  53. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) ただいま御質問のあったあと地の問題につきましては、大蔵省のほうに私のほうから処分のお願いを申し上げておるところであります。足鹿委員の御質問趣旨はよく了解をいたしました。近畿財務局がどういう措置をとりまするか、いずれ御相談のあることだと思いますが、その際にはできるだけ御趣意に沿うように努力をいたしたいと思います。
  54. 小谷守

    理事小谷守君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕    〔理事小谷守君退席、委員長着席〕
  55. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) 速記を起こして。
  56. 黒柳明

    ○黒柳明君 大臣が四十分前にはいらっしゃるわけですね。それまでそれじゃあ、ちょっときょうの問題は若干複雑だと思いますもんですから、局長さんあるいは担当の課長さんに全貌をお伺いしながら、大臣の分はまとめてまた御質問いたしたいと、こう思いますけれども、また大臣が来たときには同じことを繰り返さなければならないかと思いますけれども、ギャンブルの問題がいろいろ一応問題になっております。競輪や競馬の廃止という世論も高まっておりますが、その功罪については当然論議をするところもあるでしょうし、あるいは愛好者も相当いるでしょうし、そのことはさておきまして、まず競輪からの拠出金、これについては、ギャンブルの功罪云々の問題はさておいたとしても、これは国庫支出金じゃありませんけれども、政策金ですから、絶対やはりやましいような使い方をされては決していけない、正当に使われなければいけないことは、言うまでもありません。  それで、私きょうここで問題にしたいことは、大阪に本社があります日本自転車輸出振興株式会社、この東京営業所の一所員武林善男さんという方が、実に四億数千万にのぼる横領、背任の罪で告訴されたと、かように聞いておりますが、不正流用した、しかもそれがキカク工業株式会社という一自転車のベルメーカーの社長富田さんという人に不正流用されていたと、こういう事実なんですけれども、いま申しましたように、決して悪質に流用されたり、あるいはこういう競輪のギャンブルの拠出金なんというものはやましいような使い方をされたのじゃさらにうまくない。土台そのものがいま世論でいま問題がある。そういう観点からも、こういう不祥事件が起きたことは非常にうまくない。さらに、なぜこういう不祥事件が起きるのか、非常にここに疑惑があると思う。その疑惑はこれから徐々に御質問していこうかと思いますけれども、こういう一営業所員がかつてないほどの四億数千万にのぼる不正流用をした。しかも、一つの会社に対してそれをどんどん先取り手形を切った。あるいは売り掛け金を不正流用した。あるいは銀行預金を不正流用した。しかも、それに対して告訴が半年もかかっている。あるいは、当然事後に対する借財の処理もしなければならぬ、にもかかわらず、それもあまり行なわれてないのではなかろうか。いわゆる通産省の指導監督姿勢というものにもさらに怠慢があったのではなかろうか。さらに、こういう一所員が多額の金を不正流用できたという、こういう体質にも問題があるのではなかろうか。こういうような点につきましていろいろお伺いをしてみたいと、こう思いますけれども、まず初めに、この日本自転車輸出振興株式会社の東京営業所の所員である武林某なる者が四億三千九百三十七万余の金を不正流用したという、この事件についての概略を御報告をいただきたいと思います。
  57. 矢島嗣郎

    政府委員(矢島嗣郎君) 日本自転車輸出振興株式会社というのは、先生もさっきおっしゃいましたように、大阪に本社がございまして、自転車メーカーである高木幸太郎という者が社長をしている会社でございまして、これは自転車の輸出部品の一手買い取り販売、それから自転車の完成車用の部品の一手供給というようなことをやりまして、要するに自転車の輸出の振興を中心にやっている会社でございますが、その東京営業所員の武林善男三十九歳が、その輸出振興会社の取引先であるベルメーカーのキカク工業株式会社の社長の富田新松五十二歳、これに対しましてこの輸出振興株式会社の東京営業所長名義の小切手を不正に発行する、あるいは、業務上売り掛け金を持っているわけですが、その売り掛け金を回収した金を不当に融通する、こういうようなことをやったわけでございまして、これは横領もしくは背任に当たるような非常に重大な犯罪であると私は思うわけでございますが、その金額は、一部自分でもって弁済したものもございますので、総額は三億九千五百七万三千円で、内訳として、売り掛け回収金の融通が二億三千九百六十五万六千円、それから小切手の不正発行、これが一億五千五百四十一万七千円に相なるわけでございます。そこで、なぜこんな巨額の背任横領が行なわれたかという点でございますが、この武林なる者は、年も若いし、一営業所の所員にすぎないわけでございますが、この東京営業所というのは、本社は大阪でございますが、東京営業所の営業の事務が非常に多いわけでございますが、この所長はおることはおるわけでございますが、これは東部自転車工業協同組合の理事長が従来から兼務するということで、全然別な組合の理事長が兼務することになるのが慣例でございますので、したがいまして、この実質的な業務はこの武林と女性の補助員と二人で行なっている。そこで、実際問題として、この営業所長兼務の者は全部これにまかせっきりということでございまして、そのために、自分でもって全部小切手を切れるし、小切手帳も預かっているし、判こも預かっているというようなだらしないことをやっておったわけでございまして、このような不正の使い込みになったわけでございます。まことに遺憾な点でございまして、基本的な問題、いろいろあとから申し上げなければならぬと思いますが、端的には、この自転車輸出振興会社の東京営業所長なるものが、責任者がおらず、そのような若い者にまかせっきりであったというところから、この事件の端が発したものであると考えられます。  以上が概要でございます。
  58. 黒柳明

    ○黒柳明君 非常に上司の監督が行き届かなかったと、直接にこの株式会社の営業所長がいなかったと、こういう点も確かにその一には当たるかと思います。しかし私は、これから指摘したいのは、単なるその東京営業所長が兼任であって、その下に武林某、そうして女子事務員しかいなかったと、そういう関係だけの仕組みでこういう巨額の不正流用がなされたのではないのではなかろうか。もっともっとその仕組みにはこういうものができるという体制があったんではなかろうか。いま局長さんがおっしゃったことも、その一ではあるかと思います。さらに基本的には、もっとおっしゃらなければならないとおっしゃいましたから、そのあとにそういうようなことが続くのかなとこう思いますけれども、ごくその一部がいま言ったような直接の上司の監督不行き届きにも当たるのではないかと、こういうようにも思います。さらに、先ほど申しましたように、競輪の売り上げ金、四十五年度は二百億ですか、いわゆる特殊法人である自転車振興会に、さらに自転車振興会からは自転車関係公益法人に二十二億ですか、なかんずくこのいま問題のありました振興株式会社の出資会社になっている公益法人の振興協会には十億ちょっといっておりますね。その公益法人の振興協会から出資金として二億五千三百万ですかこの株式会社にいっていると、こういうようなこと。ですから、資本金として、競輪のいわゆるテラ銭が二億五千三百万円、いま申したこの東京の営業所で不正事件を起こした振興株式会社へいっている。さらに貸し付け金も三千万円いっておりますね。こういうことで、これは、単なる民間会社で四億にのぼるその不正流用があったとか、そういう事件では決してない、こういうふうに私は思います。ここに、結果的には通産省の監督の面でさらに不行き届きが当然責められるべき事件でもあろうと、こう思うわけですけれども、ただいま申しました、上司が、所長が兼任していて、その監督不行き届きであった、私もこれは一つだと思いますけれども、さらに、大きな仕組みの中、それを言う前に、やっぱり通産省が、直接の監督ではないにしても、これに対して結果的には非常にやはり監督が怠慢であったと。こういう競輪の拠出金というものが支出金に出ているからには、当然それに対してやっぱり十分な監督体制というものもすでになければならない。結果的にはやっぱり当局の怠慢でもあったと、こういう観点からの御発言をいただきたいと思います。
  59. 矢島嗣郎

    政府委員(矢島嗣郎君) 先生のおっしゃるとおりに、基本的な責任は、一般的に競輪の収益金の使途について適切にいくように監督責任を負っている通産省の責任であろうと思います。私は先ほどまあ東京営業所の状況を事実として申し上げるために申し上げたのでございまして、このようなことができましたことは、通産省としても深く反省をしているわけでございます。今回の不祥事件については、通産省として強い衝撃を受けておりまして、今後は、日本自転車振興会、それからさらに自転車産業振興会に対する指導監督を一そう強化する方針でございまして、四十七年度からの自転車振興会の振興資金の補助が適切に行なわれているかどうかを監査する組織として、従来の監査機構に加えまして、新たに特別の組織である監査室を新設させるとともに、これに関連した補助規定の改善を強化させたところでございまして、このような点で、再びこのようなことが起こらないように、厳重に監督をやってまいる所存でございます。
  60. 黒柳明

    ○黒柳明君 起きた事件についてその事後処理をするのは当然だと思います。ただ、いろいろな問題がある中に、特に問題なことは、当然その事後処置、特に債権確保の問題だと思いますけれども、その債権確保につきましては、先ほどおっしゃいましたように、実際的には四億三千九百三十七万不正流用した中で、いわゆる富田なる者が四千四百万決済した。それで、そのマイナスが三億九千数百万になる、こういうことでありますが、私たちの調べですと、いわゆるこの債権確保に対して、はたしていま局長がおっしゃいましたように、そういう監督機構を強化したと、こういうことであるならば、当面その監督機構の強化と同時に、あるいはそれ以前の問題として、事後処置、いわゆるこの巨大な四億にものぼる不正流用の債権確保ということにどう手を打つか、これこそ一番初めに取り組んでやらなければならない、実行しなければならない問題であったろうと、こう思うのです。ところが、いまおっしゃったように、四千四百三十万はいわゆる富田が決済した。あとの決済分は、私たちの調べによると、このキカク工業の社長の富田、これが武林と同じように共犯で告訴されたと聞いておりますけれども、この富田がめかけの所有地、土地を処分して、二千万円のうち一千万だけこの決済の債権のほうに充当した。これもちょっとおかしいのですよね。めかけの土地二千万で千万、まあこれはおめかけさんも非常にやっぱりショックだったと思いますよ。しかし、やっぱり二千万なら二千万全部充当するべきなんですけれども、聞くところによると、めかけの土地なんだから一千万は残しておいて一千万だけ充当しようと、こういうことらしゅうございます。これは小平にありますね、二百坪の宅地。さらに、この武林当人の所有の土地、家屋、これは大体七十坪、木造二階建一棟ですけれども、これも大体千二百万ぐらいで担保にして充当しようと、こういうようなこともあったと、こう聞いております。あるいはもうお調べいただいてこの事実も御存じかと思いますけれども、富田がすでに決済した四千四百三十万プラスこのいわゆる一千万の土地の処分、千二百万の土地、家屋の処分でも六千六百三十万にしかならないわけですよ。そうすると、四億三千九百万のうちさらにばく大な額が残るわけです。そういう額に対して、どういうふうにこれの債権確保をするのか、あるいはいままでしてきたのか。ということは、この富田というキカク工業の社長の土地、工場も五月四日には他人名義になっている。五月四日までに押えればまあ時価どれぐらいになったかわかりませんけれども、共犯で告訴されて、武林と富田とあるいはぐるでやったかもわからない。そういう富田の土地財産、家屋、それが五月四日、つい十日前に名義が変更になっているわけですね。これは昨年の十二月の下旬に起きた事件、通産省でも一月ごろには探知していた。早く債権確保という手段を講すれば、この土地、家屋もやっぱり押えることができた。しかも、ついせんだってにこれが他人名義になっちゃって、ほとんど富田もすっからかんになった。四億から見れば、これも数千万にしか当たらなかったかもわかりませんよ。しかしながら、これはやっぱり厳密に充当措置、債権確保はやっていかなきゃならない。その指導監督も、当然事後処置としては、通産省でやるべきであったんではなかろうか。これもやらなかった。私は、この点においても、非常にやっぱり指導監督、その不備どころか、事後の打つ手も非常におそかった、こういうふうに感じざるを得ない。それからさらに、お見せいただいた三億九千五百七万に対する債権確保の道、誓約書がある。そしてその誓約の当人は、事件起こした武林、共犯で告訴した富田、それからキカク工業の代表取締役としての富田、この三名——まあ二名でしょうね——が連名で三億九千五百七万三千四百十円の誓約、損害額を返します、こういう誓約があるんですけれども、武林や富田の当人は、これはすっからかん、キカク工業代表取締役としての富田はすでに何も財産がないわけです。ですから、こういう誓約によって債権確保も、これもできないのではなかろうか。こういうふうな観点、まだまだいろんなこまかい点ありますけれども、いろんなこまかい点をあげても、はたして一ときにどうかと思います。いわゆるいま言いました不祥事件起こした当局の怠慢、事後に債権確保に対して、これにもやっぱり手ぬるかったんではなかろうか。私に言わせれば、非常に怠慢が当局としても通産省でもあった。だからこそ、そういう名義の書きかえとか、あるいは現実にこういう土地が担保になったとか何なりということまでもはっきり把握されていたかどうか、あるいはこういう誓約で四億にものぼるそういう債権確保ができるのか、そんな点についていかがでしょうか。
  61. 矢島嗣郎

    政府委員(矢島嗣郎君) 先生のおっしゃいますように、債権確保に関しましては、非常に手ぬるかったという御批判をいただいても、やむを得ないと思う次第でございます。実は、先生がいま最後に御指摘になりましたキカク工業そのものの土地、建物、これがどれくらいの評価になるかわかりませんけれども、それがどういう状況にあるかということを十分把握もいたしませんでおりました。そのために、もっと早く手を打てばこれだけでも債権確保の方法一つに成り得たにもかかわらず、そういう実態を把握されてないためにチャンスを逸して、五月初めにはこれがよその会社のものになってしまった。どうすることもできないというふうなことになった点は、ほんとうに申しわけない次第でございまして、実は先生のほうから数日前にその点についての御指摘を受けまして、初めてこれもやればよかったということがわかったような、まことにおはずかしい始末でございまして、債権確保につきましてはほんとうに処置が十分でなかったということでございまして、この点はなはだ申しわけないと思う次第であります。
  62. 黒柳明

    ○黒柳明君 確かに不備があったんですけれども、それにしましても、常識的に考えて、一営業所員、三十九歳の人が四億にものぼるお金を不正流用できた、そこに大きな問題が私が先ほど冒頭に申しましたようにあった。それには、先ほど局長さんおっしゃったように、営業所長が兼任で目が届かなかった、こういうこともあるかと思うのですけれども、すでにこの事件が発覚してから半年もたっているのに、通産省としても、まだキカク工業、肝心の共犯者であるキカク工業、唯一の相当なこれ価格です、時価にすれば。それすらも差し押えできないで、しかもわずか十日前に人のものになっちゃってる。四億のうち五、六千万になるわけです。こういう近所の不動産の評価、私はしっかりした調査じゃないから、そこらあたりまではここではもう厳密には取り上げないつもりでいましたけれどもね、やはりそのうちの相当充当できる額なんです。これがしかも、私たちは本格的に調査を始めて、ついせんだってまではキカク工業のものだったわけです。いまは大勝工業、そのまま仕事をやっているのですね。だから、これも計画倒産じゃないかという疑いが非常に強いわけです。私はこれに対する確固たる裏ずけがありませんから、だという断定もいたしかねますけれども、何たってこれだけの大事件に対して半年間も手をこまねいていたなんということは考えられません。また、さらにもっと疑惑なのは、これは関係ありませんけれども、私たちが四月の中旬に大阪に行った。十七日に大阪府警に口頭で告訴されている。もしも——これは私の主観かもわかりません、聞いていただきたいと思います。もしも私たちがこの事件で動かなければ、告訴すらしなかったのではなかろうか。当然こういう債権の事後措置も何もしなかったのではなかろうか。武林さんも、あるいは自分でその四億という不正の金を流用したのではなくて、これから私が述べるように、ものすごい天下り、業界との結びつきが、そういう大きな仕組みの中でこういう四億という金がわずかの期間に簡単に不正流用させられたと、私はこう断定したいと思うのです。断定したいけれども、残念ながら、お見せしてお互いに合意を得る資料がありませんから、これは私のこういうあらゆる調査をした範囲で疑惑として残る点でもあり、またある意味では私の個人の調査の中では断定もしたいと思う点なんですけれども、決してこの武林さん一人でこんな巨額な金を流用できるなんということは考えられません。それから客観情勢、その後の、何回も繰り返して申しわけありません、いま大阪府警は何も動いていない。なぜ動いてないのか、まあこれは大阪府警の方いらっしゃらないからどうしようもありません。告訴してから一カ月たちますよ。なぜ動かないのか。この事件、動けば必ず、武林、富田のほかに横領、背任の者が出ることは間違いないと思います。決してこの武林さんや富田さんだけでの仕組みじゃない、三者、四者がいて、こういう四億にものぼる金がどこに使ったのだかわからない、そういうことになろう。私は、司直の手が一日も早くこれ全面的にメスを入れないとうまくない。しかし、もう半年たっちゃっています、事件が発覚してから。その発覚というのは、去年の十二月の二十一日ごろですよ。いわゆる武林が出した五十二枚の先取り小切手、これが銀行当局から、武林さんの小切手は現実に落としてくれるなくれるなと何回も、それが四十六年十二月二十三日初めて銀行から決済の日がさたわけですね、その時点において会社やなんかに警告がいったわけです、おかしいぞと。これはだから、十二月の時点において手を打てばもっともっと早期解決もできたのではなかろうか、この四億という巨額にもならなかったのではなかろうか、当然事後処理についてもすみやかに手を打ち、あるいは司直の手が入れば事件ももっと明瞭に明るみに出たのではなかろうか等と私はただいま申しました。いわゆる事件に対して、事後処理に対して不備があった。この不備が、通産省の責任、これはもう明確たるものであります。しかしながら、それだけではこの事件はないのじゃなかろうか。もっと大きい仕組み——ということはどういうことかといいますと、いわゆるいま申しました事件を起こした日本自転車輸出振興株式会社、その役員、さらに二億五千三百万の支出金を出した公益法人である自転車産業振興協会、この役員名簿を見ますと、自転車産業振興協会、会長も、常務理事も、常任監事も、全部これはいわゆる天下りといいましょうか、会長和田太郎さんという人は東京商工局長、金谷さんという常務理事の方は通産官房の審議官、あるいは浮田さんという常務理事の方も工業技術院の機械試験所長、久木元さんという常任監事の方が通産課長、こういうお役人さんの全面的にこの振興協会、いままで指摘された公益法人の天下り、この支配のもとに二億五千三百万という支出金がこの振興株式会社にいっているわけですね。さらに振興株式会社は、いま申しました振興協会の副会長が振興株式会社の取締役です。協会理事が株式会社の代表取締役社長です。それから協会理事五人が全部株式会社の取締役です。それから協会の常任監事も株式会社の取締役です。しかも、それが全部業界のそうそうたる方ばっかし、こういう関係ですね。ですから、二億五千三百万を支出した公益法人協会と、その支出金を受けて——どうも大臣、先にやっておりまして申しわけありません、もういまクライマックスに入っておりますから——完全に役職が同じなわけですね。体質がイコールだということですよ、天下りの体質、役員の体質。さらに、振興協会の上部にある振興会——特殊法人、これも会長から理事から監事に至るまで全部天下り。こういう振興会、振興協会、振興株式会社、いわゆる元官僚と業界とのこういう体質、その中にこういう一所員が入って不当事件が行なわれたのではなかろうか、こういうことなんですね。大臣ですね、かけ持ちで申しわけありませんけれども、一つ、二つ、三つと過ぎてまいりまして、今回のこういう、通産省直接に不祥事件を起こしたというわけではありませんけれども、監督下にあり、しかもギャンブルが云々されているときに、ギャンブルの功罪はともかく、そのテラ銭、いわゆる拠出金、競輪のですね、これは決して、疑惑があるような使い方されたのではうまくない。まだお読みになっている最中ですか——ゆっくりお読みください。こういう不祥事件を起こしたことについて、ひとつ大臣も、あるいは御報告すでに聞いているかと思うんですけれども、まず冒頭に御所感を述べていただいて、また前に戻っちゃいますけれども、話が。
  63. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 競輪資金の使途等については、特に厳重な監督が行なわれなければならないことは、申すまでもないことでございます。特にこの種の問題は、戦後長いこと国会でも議論をされておる問題でありますので、こういう問題に対しては完ぺきな監督体制ということが望まれるわけでございます。にもかかわらず、このたびの事件は、金額も非常に大きいものでございますし、これが回収その他に対しては可能な限り最大の努力を行なうべきでございます。しかし、このようなものが、事件が起こったということに対しては、通産省もこのままで過ごすわけにはまいりません。そういう意味で、再びかかることが起きないように、十分な監督体制を整えるということが必要でございます。私も、この問題、まだよく内容を承知いたしておりませんが、国会で御指摘を受けたわけでございますので、幾ら忙しいといっても、忙しさにまぎれて免責される問題ではございませんから、これからこの内容も十分調査をいたします。私自身が納得できるような体制を整えてまいりたい、こう思うわけでございます。
  64. 黒柳明

    ○黒柳明君 それで、大臣ですね、いま次の次のほうにいきまして、その一営業所員がこんな多額な金を不正流用できる体質があったんではなかろうか、それがいろんな問題に、告訴の時点の問題、さらには債権確保に対して、半年もたってキカク工業の共犯であげられた当事者の土地、家屋すらも五月四日に差し押え、他人名義になっているのです。これこそ大臣知らないと思うのです。十二月に発覚した。もう通産省当局は一月に知っているんでしょう。そのキカク工業の土地財産というものは、これはやっぱり債権確保の大きな道ですよ。いまも局長さんの答弁はいただいたわけですが、これに対して五月四日までは手が打てたのです。ところが、五月四日になってもう他人名義になっちゃった。私たちが現にやったときには、もうどうしようもない。もう十日、もう二週間早くこのことを通産省当局に知らせていたならば、あるいは動いたかもしれない云々ということなんです。これは明らかに、いま大臣がおっしゃったことは、非常にりっぱなことであり、そうやっていただきたいのですけれども、現実はこの半年間そんなことが行なわれていなかったわけですよ。しかも、さらに私は疑惑なのは、いま申しましたけれども、司直の手が全然伸びていないこと。これは決して一営業所員ができることじゃないのです。業界と元官僚との大きなこのワクの中でこういう操作が結果的に行なわれちゃったのじゃないか。キカク工業の他人名義についても、これは計画的なやっぱり倒産ではなかろうか、こういうことを私はこの調査段階で非常に強く感ずるのです。それを含めて、債権確保の実際的な実行が何にもなされていなくて怠慢だった、それには多くの疑惑が残るし、今後解明されなければならない点があるのではなかろうか、こういう点をいま局長さんに指摘して、またその概略を繰り返したわけでありますが、その債権確保は現実に行なわれていなかったということについてのひとつ大臣の所見もあわせてお聞かせいただきたいと思います。
  65. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) この日本自転車輸出振興株式会社というのは、これは私も、この事件を聞きましてから、実態に対して二、三質問をしたわけでありますが、これはトンネル会社なのかといったら、トンネル会社でもない。どういうのだということで調べてみましたら、窓口を一つにしておるということ——これが全部製品を買い上げて、これを窓口を統一して輸出しておる、いうなれば業界が必要としてつくっている窓口である、こう理解していいと思うのです。そのために、一体この会社をつくったメリットは何なのだ、こう考えたら、オーダリーマーケティングは非常にうまくいっているということで、それなりにはこれはうまくいっているんです。これはほかのように輸出競争をしないから窓口を一つにしているので、適正価格でもってきちっと各国別に調査をして売り出しておるので、これは非常にうまくいっているのです。これは、ほかの家電とか、電卓とか、そういうものと比べて、卓上会計機のようにけんかをしたり、自動車のようにいろんな問題を起こしていない。これは各国との間には一番メリットのある機関である。それだけに、うまい実効をあげておるものが、こういう事件さえ起こさなかったならば、これはたいへんに評価されたわけでありますが、そういうものを一朝にして消し去ってしまうような事故を起こしたということは、はなはだ遺憾である。これは非常にうまくいっているということと、自動的に決済をされるものであるということで、もう事件の起こる余地がないと、こう考えておったところに、事件が起こったというのが実態のようでございます。四月の十幾日かに社長が告訴されておるということでございますが、まだ捜査は始まっておらないようでございます。おらないようですが、これは正式に事件になっておりますから、経過は明らかになるわけであります。問題は、実損がどのくらい一体回収できるかという問題が残るわけでございまして、これまあ実損が幾ばくかでも起これば、これは処置当を得ないということになるわけでございます。通産省も、十分ひとつ業界とも話し合いをしながらこの実態解明を行なうとともに、実損が起こらないように——実損が起これば、競輪資金というものが間接的にも流れておるものでありまして、これは公的資金でありますから、この補助金を受けている会社が不正を行なったということにも至るケースでありますので、そういうものを、将来の問題もありますから、これはひとつ究明を十分してまいって、二度とこういうことが起こらないように、同時に、ほかにもこういうことが起こってはこれはたいへんでありますから、これをもって後者の戒めとなすような十分な態勢をとってまいりたいと、こう思います。  しかしまあ、いずれにしても、一月に知っておりながら四月までやらなかったのは怠慢である、それはそのとおりであります。どっか通産省に欠陥があれば、それは直します。これはもう結果でございますが、はなはだ遺憾でありますので、遺憾であることは明らかにいたします。
  66. 黒柳明

    ○黒柳明君 非常にある意味では前向きの答弁をいただきまして、私も、この業界、株式会社の業績自体については、確かに全業界が窓口にしましてここから輸出するということで別に問題はない。問題がないから、この事件を起こしたのと関係がないということではなくして、やっぱり会社自体の業績と会社の体質やなんか一緒に考えなければならない問題でありますから、業績だけいいからといって、やっぱりこういう事故を起こしたその裏にあるもの自体がまずければ、会社自体の名誉というものも非常に問題になってくるわけであります。  それで、ちょっと大臣がいらっしゃったときに、なぜこういう——先ほど大臣はちょっと首を横に振っていらっしゃったけれども、武林なる営業所員と富田というキカク工業の社長が四億という金をどこに使ったのだかわからないのです、いまもって。どこに使われたんだかね。しかしながら、どうして四億もの金が一営業所員によって自由に使われたかというこの体質、それにいま触れていたところなんです。これ、口で言いますより、大臣、ちょっと見ていただけばわかりますけれどもね、協会と株式会社と役員が全部イコールなんですよ。ですから、そういう中で、出資した協会が、穴をあけた株式会社にこれは出資金を出しておりますから、倒産さしちゃうまくないという面もあるのでしょうね。それとともに、こういうどこに四億が使われたかわからないのですから、その使い道までも、あるいはそれに対する債権確保までも、当然相談しながらやってきて今日に至ったのであろうことは、これは間違いなかろう、こういうふうに私感ずるわけです。ですから、いま大臣がおっしゃった事後の問題については、体質の改善までやりませんと、今後こういうことを起こしちゃならない、そうおっしゃった大臣のお話が、やはり現実には第二、第三のこういう事件が起こる可能性がある。いかがでしょう。
  67. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) この会社は、自転車輸出振興を目的としている業界共同の会社である。これは会社が一々輸出をしないで、窓口を一つにしてやっておる、言うなればトンネル会社のようなものであります。これは共同の窓口会社ということでありますから、毎年輸出はうまくいっておりまして、本年度は一億一千万ドルということですから、三百四、五十億にもなる、こういうところであります。ですから、それは一手買い受けをして、一手売りさばきをしておるんですから、代金は自動的に実際のメーカーに払い込まれるというシステムになっておるんでしょう。こういう会社でございますから、配当はしていないわけです。普通ならこういう問題が起こるはずがないんです。ないんですけれども、あまりにも順調にいっているところに、二人ぐらいしか人がいないんですから悪いことはしまい、こう思っているところに、こういうことになったようでございます。ここに書いてございますが、富田新松五十二歳、ベルメーカのキカク工業株式会社社長に対して小切手を貸した、こういうことのようでございますが、これは私もよく知らないんです、内容をまだ。よく知りませんが、これはいずれにしても、告訴しておりますので、司直の手によって事実は解明せられます。解明せられるだけではなく、できるだけ、このキカク工業の借金のカタに充てられたわけでありますから、キカク工業が持っておる債権とかキカク工業の個人の財産とかいうものが弁済に充てられればどれくらい回収できるのか、まださだかに私も承知をしておりませんが、こういう問題、通産省が中に入りまして、これは立件され、事件として結末がつくだけではなく、この事件そのものに対してひとつ合理的な結末をつけるようにいたしたいと思います。そうでないと、こういうものがあったにもかかわらず、また引き続いて競輪資金を流しているということになると、これは通産省の責任も当然のがれがたい責任が生じてまいりますから、これは将来的な問題を継続するにしても、通産省が納得できるような結末をつけざるを得ないわけであります。ですから、そういう意味で、いまもこの会社と自転車振興協会役員がみな同じなんだというようなことの御指摘がございました。私はそれはよく知らないんです。知りませんが、そういうこともよく勉強いたします。そして、先ほども申し上げたように、やはり競輪資金がこれからも流されると思いますから、これを契機に自転車振興会は一切競輪資金の対象にならないんだということになれば、これはまた一つ考え方になるでしょうが、私はその問題に対してもさだかにここで申し上げるような状態にありません。ありませんから、国会で御指摘を受けた問題でありますので、国会に御報告をいたしまして、とにかく手落ちはあったけれども、事後の対策は可能な限り最大の努力をしたと認めていただけるようにひとつやりますから、かすに時をもってしていただきたい、こういうことでひとつお願いいたします。
  68. 黒柳明

    ○黒柳明君 何かそういう話を聞くと、非常に調子がよくて、私なんか人がいいものですからなるほどと感心して聞いているんですが、内容は全然そうじゃないんですよ、大臣一つは、四億の金がキカク工業の借金のカタに使われていたとなれば、これでまた一つ使い道がはっきりするから、ある意味での事件の一つ内容がはっきりするんです。ところが、キカク工業の財産、土地なんか見ましても、そんな担保にも入ってなかったし、いままでにそういう借財もしていない、何にもやっていない。だから、キカク工業の借金に充てられたんじゃないんです。全面的にどこに使われたかわからない。だからそこらが先ほどから私言っていた非常に不明な点であるという一つなんですね。  それからもう一つ、事後処置。キカク工業の財産に何にもないんです。すってんてんです。ただ一つあった財産すら、五月四日には他人名義になっちゃっているんですよ。いままで半年間何をやってたのか、それを先ほど局長さんと問題にしてたわけです。ですから、大臣がおっしゃった、その四億の金の使い道が全然わからない。キカク工業の持っていた唯一の財産すらも、ついせんだってにもう他人名義になっちゃった。事後処置がとられていない。これは大臣いらっしゃらない前の、また話が若干反復しますけれどもね、大臣、知らない、知らないということを前提にしてお話しになっていますので、ちょっと意見局長さんともかみ合わないと思うのですけれどもね——局長さんとはかみ合っていました、よろしゅうございますか。
  69. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) はい。
  70. 黒柳明

    ○黒柳明君 ですから、いまの二点。
  71. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 横領した四億四千万円は、キカク工業株式会社の借金の返済に充てたということは、確認をされたようです。債権確保の方法が十分でなかったことは、率直に認めなければならないと思います。キカク工業の土地、建物の差し押えをしなかったのは、たいへん遺憾でございます。これも遺憾でございます。  それからなお、いまただしたわけでございますが、その後四億円は富田から返すということに一札取ったそうでございます。取ったけれども、実際に返せるのかどうか、これは自信はありません。ほんとに自信があるのかと言われれば、なかなかまだそこまではさだかに自信はない。いままでその衝に、調べてまいった面から見ますと、自信はないということでございます。  それから、その後幾らか——いいですか、それではまあその他のことは御存じないことでございますから申し上げませんが、いずれにしても、四億の損害を受けたものにしては、全く微々たるものしか差し押えられないということは、全く遺憾でございます。
  72. 黒柳明

    ○黒柳明君 先ほど冒頭に、東京営業所の四十五年、六年の売り上げが、事業実績が六億ですよ。そのうち四億ですよ、不正流用が。これはもう考えられないわけですよ。全体的にだって二十九億ですよ、この振興株式会社というのは。全体的でも二十九億。東京営業所は六億。そのうち四億ですから、これはほんとに巨額というか、考えられないというか、ここでどうするにしましても、大臣ますます熱くなると思いますので、私はその次の問題です。監督指導体制を厳にやっていくと。そうなりますとね、これは完全に民間企業のきびしさを知らない。要するに、政府補助金をもらって、天下りのお役人さんが業界とお話をしながら、事業実績がいいから——わかりませんよ、そういう中において行なわれた一つの不備なんですね。  そういう同じ体質のところを調べました。自転車振興会の拠出、要するに競輪のテラ銭、二百億出ているわけです。相当あります。その中で、いわゆる親方日の丸式に、言っちゃ悪いですけれども、民間企業のきびしさというものを知らないで、政府補助金をもらい、それから元官僚のえらい人が事業をやっていくと。そうなると、その中で起きたのがこういう非常に——私きょうこの場じゃ疑惑を晴らそうと思っていません。晴れません、疑惑なんか。大臣おっしゃったように、司直が解決するんだから、私もある面ではそういう時期を待つよりほかないかと思いますよ。完ぺきに疑惑を晴らすなんていうわけにいきません。ですけれど、あまりにもおかしなことばかり残るので、何とも言いようがない。ただし、問題は、何回も言いますように、そういう業界と元役人とが同じこの役員を兼ねている会社同士が、資金を出したり、もらったり、不正事件を起こしている。解決は当然話し合ってやりますよね、お役人と業界と。その金というものは政府の金じゃないですけれども、似たような金ですよ。こういう体質の中から起こった事件と同じような体質が、補助金もらっているだけでも十七あるのです。これ全部ですね、体質的には同じです。あるいは同事件が起こっているかわかりませんよ、すでに。わからない、これは。あるいはこれから起こる可能性があるかわかりませんよ。なぜかならば、同じ体質です。同じ体質。監督もきびしくない。いわゆる通産省から振興会、振興会から振興協会、振興協会から振興株式会社、それごとに監督指導でしょう。政府の国庫、会計検査院のシステムは完全に下まで監督します、政府は。そういうふうになってない。そういうところにも、これはやっぱりこういう事件が起こる可能性もあるわけですよ。それと同体質が十七あるわけです。天下って、競輪のあがりを補助金としてもらって、当然これは業界との密接な関係があって、十七団体、十四億、二十五名、こういうやっぱり公益法人に対してももし監督指導をきびしくするならば、起こった事件の当事者だけじゃなくて、こういうものについても、当然現時点、あるいはこれからの不備な点も監督指導をして正さないと、これだけの事件で済んだというわけには私はいかないんではなかろうかと、こう思うのですが、この点いかがでしょう。
  73. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 同じようなものに金が出ておるということの御指摘でございますが、そういう同じようなものであれば、このようなことがないとは言えないわけであります。しかし、あるということではもちろんありません。起こしてはならないということでありますから、せっかく、こういう問題が起こったのでありますので、あなたのところではこういう問題ないと思いますが、起こさないように厳重に注意をしてもらいたいということは当然この機会には言うべきでございますし、これはやっぱり、これだけの問題が起こっていま指摘を受けておるわけでありますから、少なくとも競輪の資金が交付されておる団体、法人等に対しては、内容をつまびらかにして、そういう問題はございませんと言えるような体制でなければならないということを感じておりますので、これは何らかの方法で注意を喚起いたします。
  74. 黒柳明

    ○黒柳明君 すいません、最後になりますけれども、この事件が起こってから、特に振興協会は、テレビのスポット、それから週刊誌の表紙裏、これに漫画入りで、ことばは一言ですよ、「私たちは社会のため、明るい世づくりのためがんばっています」、一言。あとは漫画が出ていましてね、養老院とか、幼稚園とか、漫画が出ている、表紙一面に。テレビは、スポットですよ。私は、この事件があったからそういうふうにPRしているのか、そうは受け取りたくないと思いますけれどもね。こういう事件があったら、ああいう宣伝をしてもかえって、やっぱりみずからのすねの傷を隠すようなこともあるんではなかろうか。まあ大臣とは直接関係がありませんが、こういうこともあるということを現実に見ておる私は、こういう事件を調べておる過程において、非常にやはり矛盾を感ずるんです。これと関係があってのことかどうかということは、私そこまで悪意を持って考えたくはありませんけれども、こういうやっぱり宣伝をするならば——しなくったって、正式なきちっとした使い方をしていれば、これは宣伝なんかする心要ないものですよ。自転車振興協会が宣伝費なんかかけたってどうしようもないですよ。競輪そのものならともかく、それからまた補助金を受けて、また補助金を受ける。そこらあたりが、何もスポットを流したり高い週刊誌の表紙裏の一面使って宣伝をする必要が当然ないような性格の協会ですよ。それがそういうことをやっておるのは何か、私はこれの事件に結びつけたくなるような気もします。であるならば、そんなことをやらないで、順当にまともに、競輪そのものの云々はともかく、こういうお金くらいは世のためにきちっとやっぱり使うというまじめな姿勢をその以前の問題として示すのが当然であろうかと、私はこう思う次第であります。大臣が相当前向きに御答弁もされましたし、知らない、知らないということを大前提にしてのきょうの御答弁であります。私も全部これ解明しようというふうに思っておりません。当然司直の手が入りつつあるわけであります。これから急速にこういう事実関係が明瞭になってくるかと思いますが、またもっと大臣が知っていただいた時点に、もう一回この問題について私はさらに深く解明をしていきたいと、ひとつ大臣、それまで打つ手は打って、また全貌というものをつかんでいただきたい。以上希望だけを最後に申し上げまして、以上であります。
  75. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 大臣が次の衆議院の商工委員会で待っておるということでございますので、時間もございませんので、先に大臣にまとめて御質問申し上げたいと思います。  まず最初が無籍織機の問題でございますが、私の手元にある数字では、現在、綿スフ、絹人絹、毛の登録織機が約七十万台ぐらいあるだろうと思うんです。後ほどまたこれは局長大臣退席のあとこまかく聞きますけれども、これに対してやみ織機が——俗に言う無籍織機ですが、やみ織機が八万台、一割以上やみ織機が現存する。御承知のように、中小企業団体法に基づいて、要するに法律で登録制というものがきめられておよそ十年の余になるわけなんだけれども、やみ織機が減るどころかふえているというこの現象、これはやはり私は一つの通産省の繊維行政における怠慢と言っても過言じゃない。ことに、昭和四十六年の八月二十五日に無籍設備の取り締まり要領という、これはかなりきつい、シビアなものがつくられて、公布されておるわけなんです。やみ織機があった場合には、この十二条によって戒告、公表及び告発を行なうということになっておるわけなんだけれども、このようにやみ織機がふえてきたことに関して、責任大臣としてどのようにお考えかお聞きしたいと思います。   〔委員長退席理事小谷守君着席〕
  76. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) やみ織機はやみですからなかなかつかみにくいと、こういうことでございます。つかみにくいということは事実でございますし、団体法によって除外されているもうこれは全く無籍でございますから、これ違法なものというふうな認識に立っておりますが、しかし現存することは事実でございます。現存するということはまた事実である。七万台ないし八万台といわれておるわけでございます。今度の特に織機の買い上げをやってからやみ織機の問題がまた明らかになってきたわけでございます。まず、とにかくやみですから、やみの実態をつかまなきゃいかぬということで、五月十一日から一カ月間の予定をもってひとつ全国的に調査をしようということで、いま調査を始めたわけでございますから、これの実態把握をやって、そしてやみ織機の実態というものをつかんだら、それから後、このやみ織機をどうするのかと、凍結をするとか、やみ織機というものが明るみに出るわけでありますから、これは実態を明らかにする、それから考えないと、いまやみ織機をどうするかといっても、なかなかめんどうな問題が、あなたも御承知のとおり、めんどうな問題があるわけです。同時に、籍はあるが実体がないというものもまた逆にあります。そういうようなものがありますが、まず実情調査を行なう、そして適切なる処置をやっぱりとらなきゃいかぬ、こう思っております。
  77. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 一部報ぜられるところでは、今度の無籍織機の実態、これ明るみにまず出さなきゃしようがないわけなんだから、わからないわけなんだから、明るみに出したあとこれを認知するというようなうわさもあるし、あるいは中小企業団体法に基づく織機の第二登録区分へ移してしまう、そこで凍結するというような話も出ておるわけなんです。これは大臣もよく御存じだと思うんだけれども、やみ織機を所有している区分ですね、村によっていろいろこれ利害があると思う。毛は毛、絹・人繊は絹・人繊、綿工連、それぞれ保有台数によっていろんな問題が出てくるわけなんだけれども、しかし行政というものは公平でなきゃいかぬ。いま繊維がたいへんな苦境におちいっているわけだけれども、その一つの大きな根幹がやはり過剰設備にあることはもう事実なんです。だからこうやって登録制をしきいままで指導してきたんだけれども、先ほど行政の怠慢ということについては大臣は一言もお触れにならなかったわけなんだけれども、何といったってこれは手をこまねいておったじゃないかと言われたってしょうがないはずです。そういう面から見て、現在あるやみ織機をまず明るみに出さなきゃわからぬじゃないかと言われるだけじゃなく、どういうふうにするのか。私は、率直に申し上げて、かなり思い切ったペナルティを課すべきだと思うんですよ。でなければ、いままで日本の繊維全体の行く末を考えて歯をくいしばってがんばってきた正直者がばかをみることになるわけです。だから、これは利害もあることだから、何とはなしに明るみに掘り出すことに専念して、じっとこっちへ置いておこうということでは、私はこれからの繊維行政のためによくないと、そういう前提に立ってひとつお考えを聞かしてもらいたいと思います。
  78. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあやみ織機の実態をまず把握することが第一でございます。第二は、通産省がどうも怠慢であったということでございますが、これはまあやみ織機ができないようにということでいろいろやっておったんですが、なかなかむずかしい。むずかしい実態はもうあなたのほうがよく知っておられるんです。だからまあ、業界も私はやみ織機ぐらいつかまえたらどうだとこう言った。この間、通産大臣を告訴したりするようなひまがあったらやみ織機ぐらい実態つかまえろと、私はほんとうにおこったんです。そんなことができないで、しりは政府にばかり持ってくる、おかしいじゃないか、こういうことを言ってはみたんですが、向こうも、そうは言っても、なかなか業態が非常にむずかしいことであるし、零細は一人、二人というところもあるんだし、それから非常に親子何代というものがやっておる業界であって、それは組合でもってそれだけのものを全部措置するといってもなかなかむずかしいんです。ですから、まあ問題になってきたのは、今度の織機の買い上げというものは十四万台です。まあ十五万台近くもやっておるわけです。また、一体やみ織機というものを整理をしないと、買い上げないとまた同じ道をたどるというような問題があるので、ここではだれの責任とかということよりも、まずやっぱり実態をつかんで、再びそういうことにならないようなことにするにはどうするかということを考究すべきである。まあそういうことでありますから、私も、もう議論をしないで、まず実態を明らかにしようと、それから業界、それから織機の保有者、先ほども申し上げたとおり、逆に今度籍はあっても実体がないというものもあるわけです。そういうものも十分考えながら、今度は、政府はどう責任を負うか、組合はどういうふうに責任を負う、それからやみ織機を持っておる人は一体どう責任を負うというものを明確にひとつする必要がある。いま死んだ子の年を数えるようなことを言ってもどうしようもない話でございますし、実際いまの毛あたりの実態を聞いてみましても、織機業者がおりますから、業者がおると、やはりちょっと余裕があればまたつくるというような長い歴史があるのです。だから、私はもう、まず実態をつかまえて、実態を把握して、そこからやみ織機問題明確にスタートしようというふうにいま考えております。
  79. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 これは、いずれ商工委員会で法案が上がるから、いろいろまた御討論申し上げたいと思うわけだけれども、ペナルティのかけ方にもいろいろあるんで、ただ告発するという、そういうやり方じゃなくて、買い上げにおいてペナルティの課し方だってあるわけだから、その村々の現状をよく調べてもらって、それに適して、まあ公平にという原則に立って、正直者がばかをみないようなことをよく考えてもらいたいと思います。  その次の問題だけれども、四十六年予備費百三十億の設備買い上げがやっと終わったわけなんです。しかし、非常にこれは延びてきたために、現在まあ封印した形で破砕がまだ行なわれておらない、これが現状です。したがって、今度の四十七年度の買い上げ予算二百六億あるわけなんだけれども、これがずっとずれ込んできておるわけですね。大臣、これをいつやるかという問題なんです。と申しますのは、時間がないから私の希望を入れながらお聞きするわけだけれども、実は前回の国会のおりにも、大臣にたいへんお骨折りいただいて、転廃業に伴う人員整理が起きるときに、その離職者に対する措置として、離職一時金と手帳を交付するようになりました。予算もつけていただいたわけです。これはたいへんいい案であって、われわれも感謝したわけなんだけど、この離職者一時金の交付と手帳の交付について政省令が出ておるわけですね、政令、省令が。それによると、買い上げの契約が決定する前後一カ月間にこの事例が起きなければ、一時金も出なければ手帳も出ないということになるのですよ。ところが、四十七年度のが四十六年から押されてきて実施が先に延びておるために、業界においては四十七年度の事業計画が立たない。そして同時に、かりに突発的にどうしてももう背に腹はかえられぬということで転廃業した場合に出る離職者については、その原因がやはり日米繊維協定に伴うものであっても、四十七年度の買い上げができないために、手帳の交付も一時金も渡らないということにこれはなるのです。この辺を、どっちを先にするか。だから、四十七年度の予算を早く執行することは技術的にやや無理なような気もする。であれば、省令、政令を一ぺん変えて、そして原因がはっきりするものであれば、やはりその離職者には一時金を渡すなり手帳を交付するという方法をとらなければ、これはもう死んだ毛のになるのですよ。これは現実の問題なんです。これは事務当局ではなかなかできないと思うので、大臣一ぺんどうするかはっきり答えてもらいたいと思います。
  80. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは制度としてつくったものでございますし、労働省、大蔵省、通産省三省で十分討議をして計上したものでありますから、これが政省令の出し方によって恩恵を受けないということであれば、この制度は死に制度になってしまいます。これはどういう状態になっているか私もつまびらかにしておりませんが、いまの御発言の状態から、これは事務当局から事情を聴取いたします。で、このせっかくの制度が恩恵を受けられないようなことがないように、十分な配慮を考えます。
  81. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 では、それはひとつ、またあとでこまかい話しますから、よく聞いておいてくださいよ。  それからもう一つ、四十七年度の買い上げ二百六億あるわけなんだけど、私の仄聞するところでは、すでにこの振り割りが事務当局によって、紡機が五十万錘、ただし、これはもう三十六年度に予備費で十三万錘買い上げておるから、残りは三十六万錘しかない。それに対して、現在の業界の希望が四倍ほどあるわけですね、四倍ほどある。こうなった場合に、今度は四十八年度の予算というのが非常に少ない、四十一億ですね、現在。現実にこういう数字が表に出てきたときに、これはもう三十六万錘しかないのだから、三十六万でカットだという方法とるのか、あるいは他の業界が先ほど言ったペナルティならペナルティというようなものをつけたところからシフトするのか、あるいはさらに追加予算みたいなものを取っていくのか、四十八年度分を食い込んでいくか、その辺をもう考えなければならない時期に来ておるのです。その辺のところを一ぺんお聞かせいただきたいと思います。
  82. 佐々木敏

    政府委員(佐々木敏君) ただいま先生のお話のように、紡機につきましては、一応五十万錘程度という例の三百七十七億円を御決定いただきましたときの積算根拠というものがございます。しかしながら、それぞれの業種別設備の配分につきましては、申請を見まして、またそれぞれの業種の過剰状況を判断いたしまして、今後執行したいと思っております。したがいまして、現在五十万錘で紡機は打ち切りということではございません。したがいまして、今後、これから四十七年度、あるいは四十八年度に予定いたしております四十一億円等々と、それぞれの業種別の公平適正な配分をひとつ考えてまいりたいと思っております。もし将来におきましてなお過剰設備を買い上げる必要があるような事態の場合には、私ども慎重に検討してまいりたいと、かように考えております。
  83. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 時間が、大臣解放しなければいかぬので、全部聞き切れないので、最後に、LTAの再々延長の問題がたいへん取りざたされておるわけです。これに対する大臣のお考え。それから同時に、これから派生してガットの繊維作業部会も開かれるだろう。そうなってくると、これにまつわって毛、化合繊を含めた新しい国際繊維協定というものが結ばれていく可能性が強い。ことに、一両日の業界紙なんかを見ますと、ECとの統一通商協定交渉をめぐって、西ドイツあたりから政府間協定の締結ということが強くわが国に対してプッシュされてきておる。あれやこれや考えてみますと、LTAの問題、それからいまのWPの問題等あわせて、たいへんむずかしい、当初から大臣がおっしゃっている方向とは様相が変わってくるように見受けられる。それじゃ困るわけなんで、もう一月後に問題が逼迫しているわけなんだけれど、大臣の御決意と見通しについてお聞かせいただきたい。   〔理事小谷守君退席、委員長着席〕
  84. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) LTAの延長問題については、七三年五月以降の延長には反対であるという考え方を明らかにいたしております。これは、日本政府がそういう原則的な態度を明らかにしておりますし、どうもほかの会合でもそういうことに引きずり込まれるような状態なら出席しない、こう言っておるわけでありますが、何も話し合いをしないというわけにもまいりませんから、これはLTAの問題は別にして、いろいろな問題があればとにかく意見を交換をするという程度で、そういう申し合わせでの会合なら、これは出ざるを得ないわけであります。日本だけが出ない、日本が出ないで話がきまるわけでもありませんし、出ないで済むわけもないですから。といって、引きずり込まれるような、そういう前提とした会議には出ないということはやっぱり守らなければなりません。そういう意味で、けじめをつけながら意見交換という考え方、相手の考え方を尊重するという場合もまあございますし、そういう意味では、会議には出るということでいかなければならぬだろうと、こう思っております。
  85. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 大臣、向こうの商工委員会で待っておるようですから……。
  86. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) 御苦労さんでした。
  87. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 局長にお伺いしますが、先ほど大臣に結論だけをお聞きしておいたのですが、無籍織機の問題について、登録と、無籍織機の現在把握しておる台数と、それから綿スフと絹人絹、毛の登録織機の現在把握しておる台数をちょっとお知らせいただきたい。
  88. 佐々木敏

    政府委員(佐々木敏君) 登録織機につきましては、綿スフ織機が現在三十三万九千台、絹人絹織機が二十五万八千台、毛織機が四万八千台、以上が登録織機の台数であります。ただこの台数は、ただいま四十七年度におきまして買い上げ実施中のものが買い上げられたといった場合の数字であります。なお、やみ織機につきましては、先ほど大臣のお話ございましたように、私どもただいま実態の確認調査中でありまして、正確な数字はもちろんやみでありますからただいまのところは把握いたしておりません。ただ、産地組合等のこれまでの推計によりますと、綿スフ織機につきましては三万台以上、絹人絹織機につきましては三万台程度、毛の織機につきましては二万台程度というような推計になっております。
  89. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 ずっとこのやみ織機の実態を把握するために説明会に担当者がおもむいておられますね、現在まで。この場合に、説明してやみを明るみに出すわけだから、なるべくほじくるほうがいいわけですね、言ってみれば。それも大切なことだと思うんだけれども、ついついことばがすべつて、何もしないんだからはっきりさせなさいというような約束といいますか、説明のし方をなさっておるのですか。
  90. 佐々木敏

    政府委員(佐々木敏君) そういった説明はしておりません。
  91. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 そうすると、先ほどちょっと私の考えを含めて大臣に御質問申し上げたわけだけれども、正直者がばかをみないということにおけるペナルティ、そのペナルティはどういう形態になるかは別として、そういったものを今後課していくということについて、そごを来たすことはないですね。
  92. 佐々木敏

    政府委員(佐々木敏君) やみ織機は、中小企業団体法に基づく調整規程の違反であります。あくまで違法行為であります。したがいまして、私どもこのやみ織機を何とかして縮小、解消につとめるべく、現在無籍設備の取り締まりを実施中であるわけであります。ただ、取り締まりの方法といたしまして、いまなお発生しておるといわれます、今後発生するやみ織機、それと、過去十数年間にわたりまして現存いたしておりますやみ織機、この二つはやはり、無籍設備取り締まりの方法といたしまして、二つに分けて対策を講ずるのが実情に即しているのであろう、かように考えております。したがいまして、まず実態把握、台帳をつくることが先決でありますけれども、先生おっしゃいましたように、現在あるやみ織機を何かそのままにすくい上げるとかいうような若干印象を与えている向きがあろうかと思いますけれども、私どもはあくまで取り締まりの一つ方法を現在真剣に検討しておるという段階であります。
  93. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 なるほど、ずっとこの産業というものは連綿と続いていかなければならないわけです。しかも、発展していかなければならない。そういう展望に立てば、死んだ子の年を数えるな式のやり方で、とにかくあるものを一ぺん明らかにしようじゃないかというのも一つ方法です。そうしてそれを厳格に押えて、次から出てくるやみ織機を阻止する、そのような中で押えたやみ織機をどう誘導していくか、これが私は一番おとなしいやり方だと思うし、それも一つ方法でしょう。しかし、十数年間というもの、そういったやはり法を守って、同じ産業界の中にあって法を守って、そうして守るがゆえにつぶれていった企業だってあると思うのですよ。そういう中でやみを働く。やみを働くからつぶれるところが出てくるわけなんだから、極論すればですよ。それを、いま言うように、とにかくやみを明るみに出すがゆえに温存するということも、私はやはり厳格に行政指導なさる立場の方たちが考えなきゃいけない問題だろう。しかし、これは今後いろいろ論議さしてもらいたいと思います。  で、一つだけお聞きしておきたいのは、いままで、この戒告とか、あるいは公表、さらには告発というような行為をなさったことがあるかどうか、あったらその件数を聞かしてもらいたいと思います。
  94. 佐々木敏

    政府委員(佐々木敏君) 団体法施行以来、最終段階の告発までまいりました件数は五件でございます。綿スフ関係で三件、絹人絹関係で二件でございます。ただ、昨年自主規制対策をいたしますに際しまして、あらためて無籍の取り締まり実施要領をつくりまして、体制を現在整備中でございますけれども、その実施要領をつくりました昨年八月二十五日以降におきましては、現在実態調査をいたしましたそのあと抜本的な対策を行なうという趣旨からいたしております。
  95. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 大臣先ほど、やみというのが、いわゆるやみだからなかなかわかりにくいし、そういう意味で十数年間これだけふえてきたんだというような軽い言い方をなさっておったけれども、やはり私は、ある意味において、これは行政の責任でもあろうと思います。八万のやみ織機がありながら、告発の件数が五件。これでは、せっかくりっぱな取り締まり要綱というものを、あれだけのシジアなものをつくって、結局発動しなかった、動いていなかったと言われても、やむを得ぬことだと思う。しかし、それはそれとして、次に移らしてもらいます。  日米繊維協定に伴う業界の救済措置として、設備買い上げが順次行なわれておるわけですが、四十六年度分予備費の百三十億の買い上げ、これは全部決定したわけだけれども、この破砕はいつごろ完了するか。
  96. 佐々木敏

    政府委員(佐々木敏君) 百三十億円の四十六年度予備費にかかわります分につきましては、三月末に契約を結びまして、直ちに破砕に入ったわけであります。現在、六月末に破砕が完了することを目途に作業を進めておる次第であります。
  97. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 そうなりますと、四十七年度の二百六億についての発動はいつごろになるか、あるいはその概括の振り割りですね、それがあったら教えていただきたい。
  98. 佐々木敏

    政府委員(佐々木敏君) 二百六億のうちで、すでに四十六年度の予備費と同時に大臣承認をいたしました分が四十七億円ばかりございます。これにつきましては、来月早々——六月早々から買い上げ事業を実施できるように、ただいま準備を進めておる次第であります。したがいまして、残り百六十億円弱が本年度の残余でございますけれども、これにつきましては、九月中に買い上げ廃棄計画の通産大臣承認を実施いたしまして、引き続いて買い上げ契約の締結あるいはその買い上げたものの破砕等の作業をその後進めてまいりたいと、このような段取りで考えておる次第であります。
  99. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 そうなりますと、実際問題として、大多数のもの、百六十億になんなんとするものは九月以降と見なければならないわけですね。先ほど大臣も、よく検討しようということを言われたわけだけれども、局長はその衝に当たる責任者ですから、そういった意味で、先ほど申した一時金、それから手帳交付などについての問題点、そいつをどのように整理していったらいいのか、その構想があれば聞かしてもらいたい。
  100. 佐々木敏

    政府委員(佐々木敏君) 先生おっしゃいますように、四十七年度の相当部分が九月以降になるのでありますが、これは実は買い上げ主体の構造改善事業協会あるいは各産地組合の事務処理能力の限界でございまして、私どもできるだけ早く買い上げ実施のために今後とも努力をしたいと考える次第であります。ただいまおっしゃいました労働省の離職者との関係につきましては、今後労働省と十分相談いたしまして、これによって離職者が多大の影響をこうむることのないように措置してまいりたいと、かように考えております。
  101. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 これは一ぺん労働省と相談なさるということだから、労働省もあわせて今後考え方をお聞きしていきたいと思うんだけども、とにかくいまのままのスケジュールでいけば、せっかくの制度が立ち枯れになるわけですからね、現実問題として。そういう件数が、現にこの間も兵庫県で起きております。これは通産省に私申し上げたと思う。百人ほどのものが離職しておりながら、その時期の関連で、同じ繊維で離職しておりながら、手帳ももらえなければ、一時金ももらえない、こういうのが現に起きてきておるわけですから、その辺の措置は早く労働省と一ぺん折衝してもらいたいと思います。  それから、先ほど局長お答えいただいた、たとえば四十七年度の場合の紡機の買い上げなどで明らかなように、希望数が予算ワクの四倍に達しておる。その場合に、まあ善処しますというようなお答えがございましたが、現実にこれ金がついて回るわけですね。総ワクというものがこれはあるわけなんだから、善処すると言っても善処しようがないんで、やっぱりそれはカットしていくのか、あるいはワクをふやすのか、全部のにらみの上ということであってもそれはシフトするのか、あるいはずれ込ますのか、これもう少し聞かしてもらいたいと思います。
  102. 佐々木敏

    政府委員(佐々木敏君) 先ほど申し上げましたように、今回の買い上げ対象業種は、織布業をはじめ繊維産業の各般の業種の設備に関係しておるわけであります。私ども極力繊維産業全体の設備のバランスを考えまして、一部の業種に片寄って買い上げを多くするというようなことのないように、ただいま事務処理を進めておる次第であります。ただいまの先生の御指摘のように、紡機につきましては、当初の三百七十七億の予算の積算根拠といたしましては四、五十万錘でございます。しかしながら、ただいま出ております申請はほぼ百七、八十万錘というような数字でございます。具体的には、私どもまず、この百七、八十万錘の設備が、繊維産業全体の各段階のバランスから見て、どの程度の買い上げ台数が適当であるか、今後のまた繊維の需給見通しから見てどの程度の錘数の買い上げが妥当であるか、ただいま慎重に実態調査並びにその計算をしておるわけであります。  第二番目は、今後の業種別バランスの推移を見ながら、もしかりに他の業種の設備におきまして、買い上げ希望台数が当初の予算の積算台数よりも下回る、その業種につきまして予算が若干余るというような業種がございました場合には、業種間の調整でもって、不足いたします業種の設備に充当する、このように考えておる次第であります。さらに、全体的になお四十八年度以降非常に買い上げ台数の希望が多い、かつそれが繊維産業の体質改善のために妥当な数字であるといった場合には、その段階におきまして今後のことについて関係各省検討をしたいと、かように考えておる次第であります。
  103. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 これは私の記憶だから、間違っておれば訂正いたしますが、以前大臣に私質問したおりに、とりあえず四十六年、それから四十七年、そして四十八年という形での買い上げ予算を設定するが、これだけではおさまらぬだろう、したがって、先のことではあるけれども、四十八年度の予算、たとえばこれは現実にいまでは四十一億となっておるわけだけれども、当然これはふやさなければなるまいというようなお話を承ったように記憶しておるのです。間違いであるかどうか、あるいは、いまの見通しでいけば、明らかに四十七年度の予算も不足を来たすし、また次年度の予算も不足することはもう明瞭なんで、そういった点で、ひとつどうなのか聞かしていただきたい。
  104. 佐々木敏

    政府委員(佐々木敏君) 先生おっしゃいましたように、昨年暮れにおきまして、この特別対策を決定いたしますときに、大臣等から先生おっしゃいましたような御発言のあったことは事実であります。私ども、その線に沿いまして、今後の設備買い上げの推移、業界からの希望台数、あるいは今後の繊維産業の需給状況等を考えまして、適切なる時期におきまして十分な検討をしたいと、かように考えております。
  105. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 じゃ、次に移ります。日米繊維協定が締結されたあとの、そしてごく最近の対米輸出の概況をお知らせいただきたいと思います。
  106. 佐々木敏

    政府委員(佐々木敏君) 繊維の対米輸出につきましては、一九七一年——昨年一年間におきましては比較的順調でありまして、一九七〇年に比べまして一九・四%の上昇になっております。しかしながら、本年一月に入りまして、やはり一般的な景気不況、対米繊維協定、あるいは円切り等のいろんな影響が重なりまして、対米繊維の輸出は、本年一月——三月におきまして、前年同期の八六%、一四%ばかり金額表示で下がっておる次第であります。その内訳といたしましては、特に化合繊の糸が非常に大幅に低下いたしております。これはもちろん、昨年十月以降の日米繊維協定の影響であります。なお、毛の織物も非常に下がっておるわけでありますが、これはいわば世界的——特にアメリカ市場におきます需要構造の変化の影響であろうかと思います。しかしながら、合化繊の織物につきましては非常に順調でありまして、昨年同期の一〇%アップ、また綿の織物につきましては、これは米国市場の需要が非常に高くございまして、昨年同期の五〇%アップというような数字になっておる次第でございます。
  107. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 繊維全体ということになると、それぞれの業種によってかなりな跛行が見られるわけだけれども、化合繊が著しく悪い。これはもうすでに御存じかと思いますが、繊維産業全体の設備投資計画、本年度がこれは四十六年度に比して約三〇%ダウンしておる。ことに主力である合繊は五〇%ダウンした。化合繊の下期の決算概要を見てみても、増収率で六%のダウン、増益率においては実に三八%もダウンしておるということで、まあ化合繊は四期連続の減配の記録をつくっておるわけなんです。もちろんいろんな要素があるとはいうものの、この化合繊の立場から見れば、それは一にかかって日米繊維協定締結による被害であるという見方をしておるわけなんです。この点について、担当者としてどのようにお考えか。また一面、アメリカの繊維業界が非常に好況だというふうに伝えられておるわけなんだけれども、通産省としてはそれをどのように判断しておられるか、聞かしてもらいたいと思います。
  108. 佐々木敏

    政府委員(佐々木敏君) 化合繊、特に合繊につきましては、先生ただいまおっしゃいましたように、非常に需給のアンバランスが生じておりまして、不況の状態であります。これは一つには、言うまでもなく、政府間協定が昨年十月結ばれまして、いままで自由でありました、毎年数倍ずつ輸出がふえておりました合繊糸が対象になったのが一つの理由かと思うのであります。もう一つは、一昨年以来の合繊メーカーの設備過剰、増設の影響もあろうかと思うのであります。ただいま申し上げるまでもなく、各合繊メーカーはそれぞれ自主的に十数%から二十数%の操短を実施いたしております。ただ、最近ナイロン・フィラメントとかポリエステル・ステープルの市況が下げどまっております。特に短繊維につきましては、中国向けのポリエステル短繊維の輸出が相当ございまして、若干いま上向いておるような状況かと思うのであります。  次に、米国の繊維産業でありますけれども、これは昨年末のアメリカのATMIの会長の発表の数字でありますが、概括いたしますと、米国の一九七〇年以降の国内景気の回復が基調になりまして、最近繊維産業を含めて製造工業一般的に急速にその改善の方向に向かっておるようであります。繊維産業につきましては、生産については七一年は前年比一・一%の伸びであったようであります。売り上げの利益率も、七〇年における伸び率の一五%アップの二・二%というような伸び率のようであります。しかしながら、依然として米国の繊維品の輸入状況につきましては、七一年、年間でありますけれども、七〇年に比べまして三九%程度数量におきましてふえておりまして、輸入は依然としてまだ七一年におきましては多いというような数字が出ている次第でございます。
  109. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 アメリカで輸入が多いというものの、繊維が頭を上げてきていることは、これは事実なんです。一面、わが国の繊維がどんどん細っていっていることも、これも事実。で、日米繊維協定が、個別品目規制のほかに、総ワクの頭打ちがある。このために、非特恵品目——糸その他ですね、これらがきわめて不当に低く押えなければならない。この辺のところを、何か日米繊維協定を改善、改定をしていくというような方途を講ずる余地があるかどうかですね。これは日米の間で話し合いも今後持たれていこうとしているわけなんでいま言ったことは現実の問題ですから、その辺の打開の余地があるのかどうか、聞かせてもらいたいと思います。
  110. 佐々木敏

    政府委員(佐々木敏君) 日米繊維協定につきましては、まず運用面におきまして随時米側と折衝いたしまして、運用面においての不利な点を排除すべく交渉している次第であります。先般も、トリガー方式の協議にあたりまして、わがほうといたしまして、ただいま先生がおっしゃいましたような非特恵品目、いわゆる一般品目でありますけれども、これにつきましては、大幅な協議水準の要請をいたしまして、ほぼわがほうの要望どおりの水準になった次第であります。その他いろいろな運営面における改善につきましては、常時わがほうの要求を申し述べたい、かように考えております。それと、今後の運用の趨勢を見まして、また極東三国との協定の内容、程度等を勘案いたしまして、今後必要であれば協定それ自体の改定ということについても常時努力をしてまいりたいと、かように考えております。
  111. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 LTAの問題をめぐってガットで六月五日から綿製品委員会を開くということは、これは事実でございますか。
  112. 佐々木敏

    政府委員(佐々木敏君) LTAの機関であります綿製品委員会——CTCと称せられておりますが、そのCTCが六月上旬に開催する予定になっております。先生のおっしゃいましたガットの会議ではございません。
  113. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 このCTCが六月の上旬に開催される。当然そこで論議されるのは、一九七三年九月末日で期限切れになるであろうLTAについての取り扱いになるわけなんだけど、わが国のこれに臨む態度は反対だということで確認してよろしいかどうか。  それからもう一点は、まあ当然これが開かれていけば、先ほどもちょっと大臣に申し上げたのだけれども、もう一つ歯切れが悪いのでお聞きするのですが、WPですね、WPも開かれる。そうなってくると、その相互の関連によって毛・化合繊を含めた総括的な新しい国際的な繊維協定というものが当然話題にのぼるというのがまあ常識的なものの見方だろうと思うのだけれども、まあ大臣も問題を振り分けして、そういうことがなければ話し合いする、あったらどうこうということになるのだけれども、もう少しこまかい動きがあなたの手元には届いておると思うので、その辺の動きについて知らせていただきたいし、またお考えを聞かしてもらいたいと思います。
  114. 佐々木敏

    政府委員(佐々木敏君) まず第一のLTAの延長の問題でありますが、これは申し上げるまでもなく、昨年十月わが国が再延長の議定書に参加いたしました場合に、わが国からガット事務局を通じて、当方としては今後の再々延長、すなわち一九七三年九月以降の延長については絶対に反対であるということを文書の形でガット事務局から加盟国に対しまして通知をしてもらっている事情がございます。したがいまして、との再々延長については反対であるというわが国の基本的態度は現在変わっておりません。六月五日以降開かれますCTCの場所におきましても、その旨を表明することになっております。  第二番目のガットのWPにおきまして繊維の国際的ないろんな問題を議論したいというようなことにつきましては、一昨年来おりに触れて非公式な話、打診あるいは接触があったことは事実であります。ジュネーブにおきまして主要国の非公式な会合も一昨年九月ございましたし、あるいはガット事務局長ロングも一、二回来日いたしまして非公式な話はあったことは事実であります。しかし、私ども日本の立場といたしましては、当然にその繊維の貿易というものは、ガットの原則にのっとった正常な貿易拡大の保障が前提であるというその基本線は変わっていないのでありまして、もしかりにガットのWPというものが国際的な多角的な貿易制限というようなものにつながるおそれがあるならば、日本としては絶対に反対であるという態度でございます。ただ、大臣先ほど申し上げましたように、このWPの場で単に国際的に繊維貿易の実態把握の勉強をするというようなことであるならば、これは特にむげに断わるべきことでもないであろう、かように考えておるのでありますけれども、ただいま私申し上げましたような、そういった国際的な多角的な貿易制限につながるようなおそれがあるWPにつきましては、わがほうとしては絶対に反対であるという態度でございます。
  115. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 時間がまいりましたので最後の質問にしますが、その前に、いまのお話ですが、WPの場で国際的に国際繊維間の動きあるいは展望などについて勉強会を持とうというようなことは、これは常識として考えられないので、大臣がいみじくも漏らしておりましたが、やはり席に着けば引きずり込まれるというのがいままでのLTAのときの苦い経験なので、あまりお人よしにならずに、がめつく対抗し、また情報網をめぐらしていただきたいと思うわけです。  最後に政務次官にお聞きするわけですが、わずかな時間でいままで御質問したりしてまいったわけですが、申し上げたように、繊維産業十数年の間に、やみ織機が登録織機の一割以上にも及ぶ台数をかかえておる、これが現実の繊維産業の実態だと思うし、一面その繊維産業をおおっているのが日米繊維産業に見られるような状況のものであるし、転廃業が万をこすというようなものなんです。しかも、いま法案審議が進められておる構造改革の二年延長という問題もあるわけですが、二年というのはもう目の前のことなんで、二年延長を単に志向するだけじゃなくて、二年後のやっぱり繊維産業の長期ビジョン、プランというものを策定して、同時にこの二年延長というものを考えなきゃ、私はおかしいと思う。そういう意味で、政務次官も京都におられるわけだから繊維産業の状況をよく御存じだと思うので、ひとつ最後にそういった意味におけるお考えをお聞きして私の質問を終わりたいと思います。
  116. 林田悠紀夫

    政府委員林田悠紀夫君) ただいま先生からるるとしてお話があった次第でございまするが、わが国の繊維産業をめぐる内外の環境というものは、外におきましては対米繊維輸出規制というような先進国における輸入制限の傾向がございますし、また発展途上国は日本を追い上げる。そして、それがなお加速されまして、特恵の問題が大きく出てきておるわけでございます。また一方、日本の国内といたしましては、労働需給の逼迫、それに伴う労賃の上昇とか、またなかなか景気が回復をしないというような、いろいろ繊維業界を取り巻く情勢というものは最近とみにきびしさの度を加えておる次第でございます。それで、何といたしましても、こういう事態にありまして、わが国繊維産業の産業構造について見ますると、設備が老朽化しておるとか、あるいは過小規模の企業が乱立しておるとか、いろいろそういうような構造的な脆弱性を内蔵しておりまして、どうしてもこれからは労働集約的産業から生産性の高い資本集約的あるいは知識集約的産業というような方面に脱皮いたしまして、高い付加価値をもたらすというような方向に転換をしていかなければならない、かように存ずる次第でございます。   〔委員長退席理事小谷守君着席〕  それで、現在国会には特定繊維工業構造改善臨時措置法の改正を提案をさしていただいておりまして、それに基づきまして、設備の近代化とか、あるいは企業規模の適正化、過剰設備の処理というようなことを中心にいたしまして、構造改善事業をさらに継続実施いたしまして、これから総合的な見地に立ちまして繊維産業をなお一そう発展さしていきたい、かように存じておる次第でございまして、どうぞ今後とも先生のような繊維産業御出身の方に御協力を得まして、万全を期していきたい、かように存じておりまするので、よろしくお願いを申し上げます。
  117. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 以上で終わります。
  118. 小谷守

    理事小谷守君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  119. 小谷守

    理事小谷守君) 速記を起こして。
  120. 塚田大願

    塚田大願君 私は、戦時中に米軍が投下をいたしました不発爆弾の問題についてお伺いしたいと思います。  御承知のように、この問題は終戦処理の問題でございまして、戦後すでに二十七年たっておりますが、これがまだ解決しておらないという、これはやはり私は非常に重大な問題だと思うわけです。特に、最近、東京の都内の大半の特別区あるいは市町村におきまして、この問題がかなり大きな問題になってまいりました。大臣も御承知だろうと思うんでありますが、昨年あたりから、やはり関東大震災災害説なるものがありまして、これと関連をいたしまして、もしああいう大地震が起きたならば、この不発爆弾がそのショックで爆発するんではないかというような不安感もありまして、かなりこの問題が切実な問題になってまいっております。  そこで、私は最初に防衛庁にお聞きしたいと思うのでありますが、この戦時中米軍の投下いたしました不発弾を処理した件数、特に最近数年間の年間の平均の処理件数はどのぐらいあったのか、これをまず簡単に御説明願いたいと思います。
  121. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 大ざっぱに申しますると、大体年間二千件、重さで言いますと百トンぐらいでありますが、年別で申し上げますると、四十二年度が二千百十五件で八十六トン、四十三年度が千九百二十四件で九十トン、四十四年度が二千二十三件で九十七トン、四十五年度が二千二十五件で百十八トン、四十六年度が二千八十一件で八十九トンであります。
  122. 塚田大願

    塚田大願君 御説明がありましたように、件数がだんだんふえてきているということでございます。そして大体まあ二千件ぐらいこの数年間続いておる、こういうことでございますが、では未処理の——いまのは処理された件数でございますが、未処理の不発弾というものが全国的にどのくらいあるのか、どのように処理されようとしているのか。私がいろいろ耳にしただけでも、たとえば埼玉県の大宮にある、新座にある、東京の東久留米、あるいは練馬区、豊島区なんかにまだあるという、かなりはっきりした証拠といいますか、証明がされておる。あるいは九州の宮崎市などにもこういった問題がある。で、東京などでは、これは推定でございますが、昨年の十一月十八日の朝日新聞などに書いておりますけれども、都内で数千発から数万発あるのではないかと、これは推定でございますよ、あくまで。そのぐらい言われておることなんです。したがって、この未処理の不発弾がどのくらいあるのか、これについてお伺いしたいと思います。
  123. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 残念ながら、現在全国でどの程度のものが未処理として残っておるか、これはつかめておりません。防衛庁の場合には、関係官庁との協力でやるわけでありますが、実際に不発弾が発見された場合に、自衛隊側に通報及び処理の要請がありまして、それに従ってやっておるということでありますので、見つかったものから処理していくということで、あらかじめ全国的にどの程度があるかということを調査する力は防衛庁にはございません。
  124. 塚田大願

    塚田大願君 防衛庁に力がないとおっしゃるのですが、これはまあ重大な問題ですから、私はあとで聞きまするが、とにかく埋没している米軍の投下した不発弾の危険性というものはかなり今日あるのでございまして、たとえば昨年の九月二十五日に東久留米で二十六年ぶりにこの不発弾が自然爆発をしたという事件がございました。竹やぶの中で爆発をした。幸いにして人身に死傷はありませんでしたが、一説によると、これは竹やぶの竹が伸びて信管に触れたんじゃないかと言われておるような事件であります。あるいは、やはり昨年だったと思いますが、清瀬市でも信管を除去する作業中に爆発した。そういうふうに見ますると、やはり信管や火薬というものは二十七年間生きておるということの証明です。それだけに非常に危険性を持ったものだと、こういうふうに考えるわけですが、しかも、東久留米市では、ついこの間七発の不発弾を処理をいたしました。今度は市街地の密集住宅地でまだ六発あるという話が地元の方々からあるわけです。つまり、当時戦争中にここに住んでおられた古い方々から、あそこに確かに落ちたという証言をされておるわけです。したがって、東久留米などでは非常に切実な問題になっておりますし、大宮市の御蔵地域の二十三戸の建て売り住宅の下でも一トン爆弾があるということが言われております。この地域でも非常に戦々恐々としている。こういう実態でございますが、そこで、これは防衛庁長官にお聞きしたいと思うのですが、こういうふうに地域住民、関係住民が非常に切実に考えている問題について、私は、国の責任で、あるいは防衛庁の責任で一刻も早くこの不安を取り除いてやるべきじゃないかと考えるのでありますが、その点について長官の御見解をお聞きをしたい。
  125. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 御意見の点は、まさにそのとおりだと思います。ただ、いまどこがこれを責任を持って調査をするのかという点になりますると、政府諸機関において不明の点がなくもありません。われわれ防衛庁としては、地方自治体からの申請がありまして、そしてまあ私がこれの処理を命令すると、こういう形になっておるわけです。したがいまして、防衛庁がこの調査をするということは必ずしも適当でない。やはりまあ、事が爆弾でありまするから、それを処理することは、これはまあ防衛庁の技術的な関係者が行なうことが適当だと思いますが、調査は一体どこの仕事であろうか、むしろ地方自治体が、どこにどれだけのものがあるか、特にこれは戦争中の当時の記録とか、あるいは関係者のまあことばの上の意見等々を徴して調べていただくということがまあ一番早道ではなかろうか、こう考えるわけでありまするが、いずれにいたしましても、東久留米市におけるいま御指摘のような問題があったことは、私どもも承知をいたしております。なるほど、これはまだ原因不明と、どうして一体二十数年を経過してこれが爆発したか、いかにもわからないということになっておりますが、いま塚田委員が御指摘になるように、タケノコの根というのは石がきをくずすぐらいの非常にまあ強い、強靱な力を持っておりまするので、あるいはこれが信管を刺激して爆発したと、これは一つのやはり御意見といいますか、見解だというふうに私いま承っておったわけでありまするが、いずれにしましても、これは人道上ゆゆしい問題だと思います。もともと、爆弾にしましても、砲弾にしましてもそうでありまするが、これは多少でも戦地の経験のある者からいたしますと、あの爆弾を足でころがしたりけったりということはしばしばあったわけですね。で、比較的鈍感なものであることは事実ですが、肝心なところを刺激すれば、これはやはり爆発する。精密であればあるほど、二十数年を経ても危険度には変わりはない。御指摘のとおりだと思います。したがいまして、われわれは、自治体等々からの申し出があれば、果敢に責任を持ってこれを処理をする、こういう態度で事に当たっておるわけでありまするが、これは政府として、まあ従来も自治省、通産省その他関係省庁の間でいろいろ話し合いをしておるところでありまするが、もっと話を煮詰める必要がある、こう考えております。
  126. 塚田大願

    塚田大願君 まさにいま長官がおっしゃったように、この責任の問題がいま非常に大きな重要な比重を持ってきたと思うのです。で、防衛庁長官の御意見では、まあ処理——具体的に掘り出して信管を取るという、そういう作業はやるけれども、調査やその他全般の責任は防衛庁だけではとれない、こうおっしゃるのですが、実はここに昭和二十七年に出されました通産省、自治省、警察庁、それから当時の調達庁の通達がございます。それから次に、三十三年の通達がございます。で、二十七年におきましては、当時これは調達庁がそれまで処理をしておったのだが、今後はこれを通産省に移管するという通達でございます。それから今度三十三年の通達は、いままで通産省がやってきたけれども、今度はこれは防衛庁に移すのだということがはっきり出ておるわけであります。「従来通商産業省が実施してきた不発弾等の処理は、今後自衛隊が実施するものとする。」と明確に書いてあるのですね。「実施するものとする。」と、どういうふうに書いてあるわけですけれども、しかも、いままで防衛庁は、たとえば海上の機雷の処理は、これは防衛庁が責任を持っておやりになった。自衛隊法九十九条によってこれをやっていらっしゃる。それから、米軍基地における処理、つまり米軍提供地の返還の際、その提供地の復元責任はやはり防衛庁がやっていらっしゃる。こういうふうになっていると思うのですけれども、なぜでは陸上のこの不発弾の問題は防衛庁がおやりにならないのか。しかも、この通達を見ますと、確かに自衛隊法附則第十四項によりますと、自衛隊は「処理を行うことができる。」という程度にしか書いてない。まあそういうこともあるかもしれませんが、しかし、この通達をすなおに読んで、また国民の立場でどこが主管官庁なのかということになれば、この二十七年、三十三年の継続した通達によりまして、やはり防衛庁がやるんではないかというのがいわば常識的に出てくるのじゃないかと思いますけれど、その辺はどうでございましょうか。
  127. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) これは、いわゆるその責任のなすり合いとか、責任のがれとか、そういうふうに私申し上げているわけではないのでございまして、まさに通達においてはそういう方向が示されておるわけですが、それは私どものほうは地方自治体等の要請によってその特殊な技術を活用して不発弾そのものの処理をすると、こういうふうに理解をいたしているわけです。で、もともとその処置につきましては、地方の公共団体、それから特に警察、これがやはり、危険物処理でありまするから、人家稠密の地点等においては一時的避難とかそういうことも必要でありまするから、どうしてもこれは地方自治体や警察というものが第一義的にはその責任に当たっていただく、そういうことできておるわけです。そうして問題の不発弾処理そのものは、これは自衛隊が行なう。で、海上の場合は、これはどうも船を持っておりまするいわゆる海上自衛隊がこれに当たる。これはどうもそういうことだと思います。御指摘になりまするように、まさに自衛隊法九十九条には「海上自衛隊は、長官の命を受け、海上における機雷その他の爆発性の危険物の除去及びこれらの処理を行うものとする。」、これはもう、この条文からいいましても、一点の疑いなく防衛庁が全責任でこれをやる、海上自衛隊が直接その衝に当たる、はっきりしているわけであります。ところが、一方、爆弾のほうになりますというと、ここへいま条文を政府委員が出してくれましたが、附則に十四項というのがありまして、そこに「自衛隊は、当分の間、長官の命を受け、陸上において発見された不発弾その他の火薬類の除去及び処理を行うことができる。」、まあ「できる」なんというのは何となく煮え切らぬ条文になっておるわけです。こういうところにやはり協力体制の必要性が加味され、法文自体もそういう表現になっておるというわけであります。そうだからといって、それではどこに責任があるのだとおっしゃるならば、これは当然、いま次官通達をお読み上げになりましたように、防衛、警察、通産、自治省、この四省庁が協力をし、特に直接的には地方公共団体、警察、そうして現物処理は自衛隊、こういう形を緊密にやっていく。まあそれに非常な経費を要する、こういう場合もあるようでございます。そういうときには、自治大臣おられますが、自治省において特別な配慮で何か処理を——そういうものはないですか、ありませんかな。また、今後のこれは議論になるかと思いますが、地方自治体が非常な金額を要するというような場合には、今後自治省として考えていただくような問題も出てくるかというふうに思います。
  128. 塚田大願

    塚田大願君 いまの御説明で、地方自治体にも責任があるし、また自治省にも一定の責任があるというふうなお話でございますが、この点につきましては自治省はどういうふうな御見解でございますか、自治大臣にお伺いしたいと思います。
  129. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) 昭和三十三年七月、いま御指摘になりました防衛、警察、通産及び自治四省の事務次官共同通達によりまして、自衛隊に処理していただくことにされたのでございます。大体地方自治体というものは、関係住民の安全を守るという任務を持っておるのでございますから、この点について、国の関係各省と協力をいたしましてこれに当たることは当然のことでございますが、本来今次の大戦に基づきまして起こった不発弾でございますので、地方自治体が関係機関と協力してやることは当然でございますが、国の、何と申しますか、積極的な責任体制のもとに、防衛庁のほうに御協力を願い、地方自治体も本来の住民の安全を守るという立場から処理いたしておるのが現状でございます。しかし、ただいま御指摘になりましたように、その責任の関係が、防衛庁長官もいま御指摘になりましたが、必ずしも明らかでございませんので、経費の負担等につきましては、問題がある点はいま御指摘になったとおりでございます。しかしながら、昭和四十六年度におきましても非常に多額の経費を要したものでございますので、とりあえずとして、私たちは特別交付税の措置によりましてこれらの関係市町村の使いました経費をまかなうようにした、こういうことでございますが、今後経費が多額になるような場合は、関係各省連絡の上、ひとつぜひとも経費負担に至るまでの関係を明らかにして処理するようにいたしたい、かように考えておるような次第でございます。
  130. 塚田大願

    塚田大願君 まさにこの経費の負担の問題がやはり非常に重要な問題になるのでありまして、この問題につきましてはあとでまとめてお伺いしたいと思います。  その前にもう一つお聞きしたいのは、この通達、二十七年の通達におきまして「近く立法措置を講ずる予定であるが、」と、そしてとりあえず今度は通産省が引き受けるのだというふうに書いてある。はっきり「近く立法措置を講ずる予定である」ということが書いてあるのですが、それが二十年たちましてなおかつ立法措置もないというのは、これはどういうことでございますか、自治大臣でも防衛庁長官でもけっこうでございますが、お答え願いたいと思います。
  131. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) その立法措置につきましては、まあその後そのままになっておる、確かにそのとおりでございます。しかし、私どもも、先ごろ来、衆議院の予算委員会におきましても、この問題がやはり議論の対象になりまして、これは何とか措置をしなければならぬがということで、いろいろ閣内でも話し合いをいたしております。で、現在処理作業の協力体制、これをどこが締めくくっておるかといいまするというと、まあ総理府中心になって締めくくりをしておるわけであります。したがって、総理府等々とも今後意欲的に相談をして、できるだけ立法の措置をすみやかに講じたい、こう思います。全くこのまま放置されるということは、特に東京都などは人家が密集しておる地帯に相当な爆弾が残っておる。なるほど、御指摘のように、これは東京の人家密集地帯というものは竹やぶが幸いないからいいようなものですが、あの竹の根の力というのは、われわれいなかに住んだ経験のある者からいいますと、非常に偶然ならざる力が加わることはよく知っておりまするので、これはやはり注意しなければならぬと思います。よく閣内で意思統一をし、総理府側に働きかけまして善処をしたいと思います。
  132. 塚田大願

    塚田大願君 いまのお話で、幸いに閣内でもこの問題は討議の素材にのっておることを聞きまして、一歩前進したという感じを受けるわけですけれども、とにかくいまの通達のお話のほかに、いまから二年前のことでございますが、つまり昭和四十五年三月の衆議院の内閣委員会で、当時たまたま千葉県の海岸にイペリット爆弾が流れ着いて、これが被害を及ぼしました。このとき、衆議院の内閣委員会で討議されましたときに、山中国務大臣はこういうふうに言っておられたのですね。「それはどこが責任かといえば、やはりいくさに負けた日本の国家の責任でありますから、負けたことに伴ってそういうことをやったわけですから、国のほうで迅速かつ適確にそれに対処しなければならぬ」というふうに言われて、そして次いで「しかし防衛庁においてできるだけ、日本の敗戦に伴う危険な物体があちこちに、これは陸上もそうでありましょうが、なおあり得る可能性があるというものならば、そういうものは的確に把握しておくのが国の責任ではなかろうかと思います。」、こういうふうに当時山中長官は言っておられる。で、きょうは、そういう点で山中長官にも御出席を願いたいと要請しておきましたけれども、不幸にしてお見えにならないので、これを確認するわけにはいきませんけれども、とにかく国の責任だということははっきり明示されている。これは当然のことだと思うのですね。で、どこでやるかという問題になりますと、先ほどからのお話のように、どうもあまりはっきりしないということなんです。なるほど政府の側から見ればそれで片づくかもしれませんけれども、地域住民あるいは地方自治体にとりましては、まことにこれでは困ったものだということになります。そこで、私のところにも、この間も東久留米から陳情がございましたし、その他大田区や練馬区など尋ねてみましたが、やはり非常に区としてもこの問題は深刻に考えている。おそらくこれは政府の皆さん御存じだろうと思うのですが、とにかく各省庁が、どこに行っても、この問題は、特に予算の問題になりますと、経費の問題になると、おれのところではない、おれのところにはそんな予算はないと言って、結局、四つの省庁をたらい回しされるというのですね。それでたまらなくなって、ここに陳情書、要望書がきておりますが、たとえば東京都の特別区長会代表が港区の区長でありますが、ここから総理大臣に要請書がきておる。とにかくこの問題は国の責任なんだからはっきりしてもらいたい、それから所管官庁をはっきりさしてもらいたい、これは四十六年五月十日でございます。こういう要望書がきております。また、東京都の市長会会長である府中市長から、これはやはり昨年十一月八日付で要望書が出ている。同じ趣旨であります。とにかく国の責任をとってくれ、そうして所管官庁を明確にしてくれ。その他、今度は久留米市から、最近やはり同じ趣旨の、これは市議会の決議として出てきております。こういうように自治体にとりましては非常に重要な問題になっておりますし、それから私の聞いた範囲では、たとえば名古屋市のある一人の市民の方がこの間、東京都に来られまして、そうして、一体東京都の場合には不発弾の処理はどうやっているんだ、私のところの名古屋でも問題になっているけれども、どこで処理していいかわからない、東京都のやり方を教えてくれと言って、わざわざ東京まで来られたという話もあるわけです。つまり、そういうように、政府のほうは、まあこれからゆっくりきめるのだとおっしゃるのだけれども、いま、まさに住民にとりましては死活問題、生命の問題というような受け取り方をしている問題でございます。そういう意味で、やはりこの問題は、何といっても国の責任を明らかにしていただくということが私はまず第一の先決問題だと思うのでございますが、その点あらためて長官大臣の御意見を承らせていただきます。
  133. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 御指摘の点は、まさにそのとおりだと思います。ただ、政府は責任のなすり合いで、これを何にもやっていない、そういうことは絶対ないわけです。大いに意欲的に不発弾処理はしているわけでありまして、たとえば、ここに数字を持っておりますが、昭和三十三年以降四十六年度までに合計二万六千件、千九百トン、これは自衛隊が直接不発弾処理をした統計であります。そこで、先ほどお答えいたしましたように、地方公共団体が地元からの要請に基づいてこの処理を警察に言われる。警察はそのあたりの警備その他を考えながら自衛隊に対して処理を委嘱される。で、われわれのほうはこれを処理する。また、自衛隊だけでできない場合がある。そういう場合には、いままで米軍に協力を仰いだこともございます。そこで、塚田委員の御質問をだんだんと詰めてまいりますと、従来とても不発弾処理ということは意欲的旺盛に処理はしてまいったというものの、問題は経費の出場だと思うんです。われわれ防衛庁側は、これは特殊技術を持っておるということ、それからまた一つの訓練上これは役にも立ちというたてまえで、ほんの実費を受け取るだけにしておるわけであります。ところが、このごろだんだん不発弾埋没地と目せられるところに人家が立て込んできた、そういうときに思わぬ金が要るもののようですね。それから、遠くから掘っていくために、掘り上げるための人件費、これを地方自治体で出し得る場合はいいが、それが巨額にのぼったときには困るが、一体この金をどうしてくれる、こういうことだと思うんです。その金の出し場が実は現在はっきりしない。これは地方公共団体でお持ちをいただくというたてまえできておるわけであります。このほかに、いろいろまだ解決しなければならぬ問題もあるようです。これはまあ私よりも自治大臣のほうの領分でありまするが、返ってきた沖繩ということを考えますと、ここのやはり不発弾処理の問題はなかなかたいへんだと思います。何か記録によれば、一平米にTNT爆弾六トンたたき込んだというようなものを私見たことがありまするが、この一体不発弾処理ということになったら、どういうことになるだろうか。これも自治体だけに、その経費を持てということではたして済むであろうか、問題は多いと思います。ですから、そういう点を十分留意しながら、ひとつ今後この問題を総理府とも相談をしながらすみやかに解決をしてまいりたい、こう思います。
  134. 塚田大願

    塚田大願君 私は、まあ別に防衛庁全く何もやらなかったなどと申し上げていないので、数字もちゃんともらっておりますし、知っております。ただまあ、年間二千件、四十六年度までで合計二万三百四十一件という処理がされておりますが、それはそれとしていいんですが、しかし、なおかつ未処理のものがまだどのくらいあるかわからない、その予算も経費も一体どうするかという点が、まさにおっしゃるとおりに問題で、そこで私は今度自治大臣にお伺いしたいのですけれども、自治省といたしましては、この経費を一体いままでどんなふうにして出されておったのか、あるいは出しておらなかったのか、また出すとすればどういう根拠法に基づいてお出しになったのか、その辺をお聞きしたいと思います。
  135. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) この処理のために要しました経費の責任分担につきましては、いま防衛庁長官からお答えがございましたとおり、必ずしも負担関係が明確になってはいない、これは事実でございます。そのような関係から、地方自治体が非常に多額の経費を出すために困っておられる。私たちは、これは今次大戦における結果として起こったものでございますから、当然国の責任において行なうべきものであろうと、こういう考えを持っておりますが、自治体においては明確になっておらないという姿でございますので、地方自治体がそれでは困りますので、昭和四十六年度におきましては、とりあえずやむを得ない措置として、各自治体が要されました費用を特別交付税という形で、要求額を東京都を通じまして事情を聞きまして処理さしていただいた、これが実情でございます。なお、詳しい特別交付税の処理状況につきましては、担当官より答弁をさせます。
  136. 森岡敞

    政府委員(森岡敞君) ただいま大臣から申し上げたように、自治省といたしましては、地元市町村が多額な負担をせざるを得ない事態に立ち至っておりますので、いわばやむを得ず特別交付税の措置をいたしております。金額は、東久留米市で四十六年度千九百万円、国分寺市で五百万円、清瀬市で一千三百万円、おもなところは以上のようなところでございます。
  137. 塚田大願

    塚田大願君 そこで、一つやはり問題が出るのですが、いまおっしゃったように、東久留米市あるいは清瀬市などにこれこれの特交を出した、こうおっしゃるのですが、実際にこの不発弾の処理費として出たものなのかどうか、それはどうでございますか。
  138. 森岡敞

    政府委員(森岡敞君) 御承知のように、地方交付税でございますので、地方公共団体の財政需要、財政収入を総合的に勘案いたしまして、必要な金額を算定する、かような措置を講じているわけでございます。したがいまして、これは補助金と異なり、一定の算定基礎ということになっておるわけでございます。もちろんその使途は申し上げるまでもなく一般財源でございます。まあ繰り返して申し上げますと、交付税の算定基礎の一つの方式としてそのようなものを用いた、そういうことでございます。
  139. 塚田大願

    塚田大願君 そこで、事実は一体どうなのかということを私どもは調べました。自治省は特交で何とか処理しようということで出したとおっしゃるのですが、たとえば東久留米の場合、特別交付税は、四十五年度千七百二万円、四十六年度二千八十五万円、清瀬市は、四十五年度二千七百七十一万円、四十六年度二千八百八十六万円、こういうふうになっているわけですが、東久留米市と同じ規模の町で不発弾処理とは全く関係のない保谷市の場合、四十五年度二千六十九万円、四十六年度二千三百九十九万円というふうになっております。そうしますと、不発弾をかかえておる町と不発弾をかかえてない町は同じ金額だ。これでは、はたして不発弾にそういう費用が回ったかということには、これは出てこないわけです。特にこの特別交付税の減額条件というのは、財政状況を勘案して、競輪や競馬収入とされておりますけれども、東久留米などは競輪、競馬には関係がございません。財政状態だって、財政力指数を見ましても、平均よりは悪い町であります。これでは東久留米の不発弾処理費を見たということにはどうしてもならないのではないかというふうに私どもは感ずる。それで、実は東久留米にも直接行きました。いろいろ聞いてみました。東久留米市ではこう言っている。不発弾処理の要求額は千九百万円だ。しかし、実際かかったのは二千三百三十四万円だったわけです。ところが、四十六年度、先ほど読み上げました特別交付税額というものはこれより低いわけですね。約二百五十万円くらい低い。つまり、それだけ処理費がオーバーしておったわけですね。これでは私は、どう考えても処理費を特交で見たということにはならないのではないか。現実にじゃ東久留米ではどうやったか、どういうふうに処理したかといいますと、最初はこの処理費は当然特別交付税からもらえるものと思って四十六年度の補正予算をつくったのですね、特交で補正予算をつくった。ところが、実際にはこなかった。じゃどうやって処理したかといいますと、結局は東京都に泣きついて、東京都の財源、それから自分たちのふところから出してようやく処理した。そのために、最近——先月でありますが、臨時市議会を開きまして予算の組みかえをやったのです。ですから、明らかに特交からは何の恩恵も受けなかったということは、この処理のし方を見てもわかるわけです。ですから、市長も市議会もたいへん頭をかかえちゃったわけですね、この問題で。これが実態だと思うんです。そういう意味で、ほんとうに特別交付税で見てやる、また見たいというふうにお考えならば、私はもっと積極的な施策を行なって手を打っていかれなければいけないんじゃないかと思うんですが、大臣、どうですか。
  140. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) 私の聞いております範囲内では、いま申されましたように、千九百万円の特別交付税の要求でございましたが、その後いろいろな精算その他によって二千三百万円ほどの処理費が必要となったということは聞いております。その金額からいたしましたなれば、確かに特別交付税はその数にすら達しなかったという金額になっておることは事実でございますが、特別交付税を出します段階におきます東京都を通じての要望に対しましては、計算の基礎といたしまして千九百万円をいれて私たちは算定さしていただいた。これはほかにも減額措置その他の姿がございますので、事務的なことは後ほど審議官のほうから説明させますが、そのようなことはあったと、千九百万円と二千三百万円、これは後の精算額によって追加が起きたというふうに聞いております。千九百万円に対する措置というものは、特別交付税の段階において私たちは算定の基礎の中に入れて処理させていただいた、そのように承っております。
  141. 塚田大願

    塚田大願君 この問題につきましても、もっと深めてみたいと思っているわけです。たとえば、いま言ったように、大臣はそうおっしゃるんだけれども、約三百万円ぐらいの不足でしかないのだとおっしゃいますけれども、事実は、全部予算の組みかえをやって、二千三百万円は別のふところから出たというのが事実でございます。現に保谷市と同じぐらいの金額しかもらえないのですから、とてもそっちに回るようなそういう状態ではない、これはもう明らかだと思うんです。  ですから、そういう面でまだまだ問題はたくさんございますけれども、私の持ち時間がだいぶ迫ってまいりましたので、もう一つ、これは防衛庁長官にお聞きしたいわけでありますけれども、防衛庁は不発爆弾の処理について前向きにやると長官はおっしゃっておられるのですけれども、具体的にこの不発爆弾の処理をされます場合には、各市町村と協定書を作成されまして、そして処理をされておるわけです。この協定書を見ますと、これはもう全部どこの協定書も同じであります。これは大田区との協定書でありますが、第一師団長でありますか、相手は大田区でございます。この協定書を見ると、とにかく実際に防衛庁がおやりになる範囲というものは、発掘作業に関する技術的な助言、または区・市町村が実施する発掘作業としては技術的に困難な発掘作業をやる、あるいは信管除去等の安全処置、あるいは不発弾及び信管などの運搬ということに限定されておりまして、確かに技術的には防衛庁の持つ範囲だろうと思うんです。専門家ですから、守備範囲で当然のことだと思います。ところが、あとのほうに、経費の問題についてはこういうふうになるんですね。「乙は甲」——乙というのは市町村、自治体でございます。甲というのは、「(甲が作業の一部を米軍に依頼する場合、当該米軍を含む)」というカッコがついておりますが、自衛隊が実施する不発爆弾の処理作業に関連して生じた損害の賠償または補償については乙が負担するものとする、つまり市町村が負担しなければいけない、こういう協定文書なんですね。全部がそうです。ですから、こういう協定が結ばれておりましては、私は、これは全く責任の回避ではないか、もってのほかの協定書だというふうに感ずるわけです。つまり、処理作業で起きた損害というものは、みんなそれは地方自治体だということですね。これは私はやはり重大な間違いではないかと思うんです。これまで地方自治体に負担をかけるというんでは、これは全く防衛庁がどういう役割りを持っておられるのか疑問を感ぜざるを得ない。こういう協定書は、どこの法令でこういうものがきめられているのか。これはみんな同じですから、どっかで型ができているわけですが、この点について長官の御所見を聞きたいと思います。
  142. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) これは、先ほどからやはり議論になっておりまするように、経費負担について政府側においてもこれは必ずしも明確になっていない。たまたま便宜措置として交付税で、いま自治大臣が言われましたように、負担軽減をはかっておられるわけでありまするが、この辺に問題があると思います。ただ、いまお読み上げになったところに、「ただし明らかに自衛隊側の責により自衛隊側の被った損害に関してはこの限りではない。」、こういうことをいっておりますですね。それじゃ自衛隊以外にはどうするんだ、これなんですが、これは何も被害や損害を起こしたくて処理しておるわけではない、きわめて善意、一生懸命になって処置をしておっても、危険な爆発物の処理という性質上、もし万一のことがあった場合、これはやはり自衛隊が予算を持って出て補償に任ずることはできませんという意味になると思います。全くこれは自衛隊自身にそういう予算措置もありませんし、全くこの点、苦しい、むずかしい点だと思っております。したがいまして、先ほども申し上げましたように、この種の問題は、やはり金の出所をどうするか、まあ際限のない計算になるかもしれませんが、やはりこれは一つの終戦処理ですから、国家側においてしかるべき機関を通じてこれが補償される。また、そうかといって、自治体も無関心であっては困る。だから、今後やはりこれは、国家も責任を持つが、地方公共団体においても当然責任を持ってもらうという、相互扶助の形で処理をされていくというあたりに結論づけられるんじゃないかと思いますが、いずれにいたしましても、自治大臣も一緒に質疑を受けておられまするので、総理府がいま各省庁間の調整に当たっておられまするから、結論を急ぐようにいたしたいと思います。
  143. 塚田大願

    塚田大願君 もう時間がまいりましたから、最後の締めくくり質問をしたいと思いますが、とにかく戦後二十七年たちまして、そうしてなおかつこういう状態がある。これはやはり、率直に言って、もっと早く終戦直後にぱあっとやってしまえばこれは簡単だったかもしれません。しかし、いまどんどん住宅が建ち、それだけにまた困難になり、費用もかかってくる。東久留米で聞きましたら、一発五百万円かかるそうですね。たまたま今度は三百万円ぐらいで済んでいるんです。七発が二千三百万円ぐらいですか。これはたまたままとまってあったからわりあい安くあがったんだそうですけれども、そのくらいかかる。あるいはもっとかかるかもしれない。ですから、そういう意味で、これは早急に、いま長官もおっしゃったように、総理府なり何なりが中心になって、やはり国の責任というものを明確にする。もちろん地方自治体も、これは地域住民と直結しているんですから、自治体がさぼっていたら、市長も落選するでしょうし、議員も当選しませんから、みんな一生懸命なんですよ、やりたいと思っているんです。しかし、実際に費用はたいへんです。特に、いまの地方財政の状態というのは、御承知のとおり。さりとて、人間の命を、住民の命と財産を無視できないというところにジレンマに追い込まれている。そういう意味で、私は、自治体の、地方公共団体の問題もさることながら、国の責任をまず明確にしていただいて、そうして調査を徹底し、処理を徹底していただきたい。費用も相当かかるかもしれませんけれども、長官どうでしょう、四次防の費用を考えれば、そんなに驚くほどのものじゃないんじゃないかと私は考えるんですが、ぜひそういうことで、国の予算でこの問題を処理していただきたい。時によっては、私は特別立法ということをお考えになっていただいてもいいんじゃないかと思うんです。やはり何かそういう法的な裏づけがございませんと、結局四省庁の共同責任だなんていって、たらい回しにしてしまう。これが戦後二十何年間続いてきたわけでありますから、その辺の処理をひとつ政府としては思い切って前向きにやっていただくことをお願いしたいと思うのであります。その点、両大臣に、一言ずつでけっこうでございますから、決意のほどをお聞かせ願いたいと思います。
  144. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 御趣旨の点はよくわかりますし、私どもも事を早く処理しなければならぬことは痛感いたしまするので、結論を急いで、誠意をもって事に当たりたいと思います。
  145. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) 防衛庁長官からも非常に積極的な御発言を得、自治大臣といたしましては、自治体を守る立場におきまして当然のことでございますが、責任の統一をはかりまして、事の処理をいたしますように、今後努力いたしたいと存じます。
  146. 塚田大願

    塚田大願君 終わります。
  147. 小谷守

    理事小谷守君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  148. 小谷守

    理事小谷守君) 速記を起こして。
  149. 野末和彦

    ○野末和彦君 まず大臣にお伺いしますけれども、国鉄の新線計画を実行するにあたりまして、かりにこの路線はつくってもどうも赤字になりそうだ、そういうふうに思われるものがあるわけですね。しかし、これが赤字だから中止せよというわけには、これはいかないと思うんです。やはり、かりに赤字でも、鉄道の公共性ということから見て、これが必要だということになりましたら、これがかりに山間僻地に及んで工事がたいへんになろうとも、やはりこれは絶対につくるべきである、これが基本方針だと思う。大臣基本方針もこうであると思ってよろしいですね。  そこでお伺いしますけれども、沖繩が本土復帰しましたね。沖繩の経済開発のためにはどうしても交通網というものが非常に重要である、そう思うんです。そこで、大臣、沖繩復帰に際して、沖繩での新しい交通手段にどういう構想をお持ちですか、まずそれをお伺いしたい。
  150. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) ただいまの御質問でございますが、たとえ赤字でありましても、公共の目的のために建設が必要であるというものにつきましては、私ども建設をするのにやぶさかでございません。それは御質問のとおりでございますが、しかし、その路線におきまして、やはり経済効率というものを一応考えなければなりません。道路が十分にできておりましてバス輸送でも十分間に合う、あるいはまた利用客があまり大量ではございませんし、   〔理事小谷守君退席、委員長着席〕 バス輸送のほうが、国民経済から見ましても、そのほうがずっと効率的であるというようなものにつきましては、御承知のとおり、鉄道建設は相当ばく大な費用もかかりますし、また経営をする場合におきましても非常に人手もかかるわけでありますし、路線の補修・維持のためにも非常に金がかかりますので、できれば、そういったもので間に合えば、そのほうをやりたい、こういうことがやはり建設の目標になる、こういうように思っておる次第でございます。  また、沖繩の問題につきましては、沖繩は、御承知のとおり、戦前は、私鉄でございましたが、那覇を中心といたしまして約四十八キロぐらいの鉄道がございました。ただいまではございません。今回の建設にあたりまして、沖繩総合開発計画——十カ年計画におきまして、沖繩県民の足の確保をどういうふうにするかということを種々勘案をいたした次第でございます。ところが、ただいまのところはやはり道路輸送にたよっている。道路をまず第一に整備することが先ではないか。場合によりましては高速道路の建設もする。そうして道路輸送によりまして島民の足の確保をはかる。それと、御承知のとおり、沖繩の交通は、ただに本島だけではございません。離島が非常に多い地帯でございまして、島から島への交通の確保をしなくちゃならない。それがためには、やはり船舶の運送の確保をする。そのために港湾の整備をしなければならぬ。また、場合によりましては、離島間におきまして航空路の整備もしなければならない。ところによりましては、いわゆるランウエイ、滑走路が非常に狭いところがございます。そういうところは、YS11機でもこれは飛べないというところがございます。そういうものは、例の足の短い飛行機、あの飛行機を使いましてそれでやらせる。御承知のとおり、あの飛行機は非常に費用がかかるものでございますから、そういったような費用もある程度見なくちゃいかぬ。それから、本島のほうの陸路につきましては、御承知のとおり、バス輸送を主体としております。バス輸送は、御承知のとおり、非常に古くなったものが非常に多いのです。そういったものをやはり新しい車にかえていかなければならない。新しいものにかえていくためのやはり補助をしていかなくちゃならぬというようなことを勘案いたしまして、新車にかえるもの。そのうちで、本年度から予算を取っておりますが、相当数の代替をしていく。そのために助成をするということによりまして足の確保をはかる。  これが大体の概要でございます。詳しくはひとつまた、局長もおりますから、御質問願います。
  151. 野末和彦

    ○野末和彦君 それでは沖繩本島に限ります。というのは、沖繩の人口九十四万のうち約七十万が沖繩本島の中南部に集中しているわけですから、そこに焦点をしぼりますけれども、道路がまず第一である、当面道路の計画があるというお話ですが、この道路は、自動車の保有率が非常に増加していまして、急テンポで。ですから、遠からずこれはまた駐車場の問題も含めて飽和点にくると思うんですね。そこで、県民の願いとして、モノレールをつくってもらいたいということと、それからもう一つ、沖繩縦貫鉄道ですね、そういうものがあったらなおありがたいんだがという声があるわけであります。そこで、モノレールと二つありますけれども、とりあえずこの沖繩縦貫鉄道というものについて大臣がどういうふうにお考えになっているか、それをお聞かせいただきたい。
  152. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) ただいま御答弁申し上げましたとおり、ただいまのところでは、道路を改良してということによりまして、バス輸送によりまして大体のものは運べるだろう。ただし、需要の増加その他によりまして、大量輸送機関といたしましては、やはりバスでは足りない面もございます。そういうふうになってまいりましたら、当然、いま御質問のございましたような、こういうような鉄道輸送も考えなくちゃならぬ。そういう場合におきましては、鉄道の敷設ということも当然検討して、これはやはり前向きに検討すべきものであると、こういうふうに考える次第であります。
  153. 野末和彦

    ○野末和彦君 そのいまの、これから検討というんじゃ、かなりおそいと思うんですよ。というのは、バスではとても、このいわゆる佐藤総理のおっしゃるような豊かな県づくりなんということは無理だと思うんですね。それと、恒久的な社会資本というものを充実させるためには、やはり鉄道を敷くにこしたことはないと、そういうふうに思うんですけれども、いらっしゃればわかると思いますけれども、道路ができてバスが走ったからといって沖繩の経済が発展するほど役に立つとも思えないし、それから通勤通学だけでもさばき切れないと思うんです。そこで、これから検討するというのじゃなくて、一つの県に全然鉄道がないというのもこれはまあおかしな話で、談路島あたりにだって鉄道があったらという声もあるわけですから、大臣が、いろんな、赤字とか、建設にあたっては問題があるでしょうが、とりあえずそういうものを無視しても、沖繩にはやはり鉄道が一本ほしい、これは必要だなというふうにはお考えになりませんか。
  154. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) それは、ただいまも申しましたとおり、この十カ年計画を策定するにあたりまして、その点も十分一応検討はした次第でございます。しかし、現時点におきましては、一応バス輸送、道路改良による、それから新道建設によるところのそれでやっていこう、それで大体において目的は達する、これは現地の当時におきまする琉球政府とも十分相談をいたしまして、今日そういうふうになった次第でございます。いまいろいろ御指摘がございましたので、私はそのときにおきましてもお答えをした次第でございますが、将来の問題としては十分考えたいということでございます。ことに、今度は復帰になりました、わが本土に入った次第でございますので、そういう点で、私どもも行く機会も非常に多いと、またわれわれの機関も参りますので、そういう点で、十分さっそくに検討さしていただきたい、こういうふうに考えます。
  155. 野末和彦

    ○野末和彦君 それでは、沖繩の縦貫鉄道というものについて前向きに検討するという意思は大いにおありになるわけですね。  それから、いままでにもかなり検討なすったということですね、それでしたら、このモノレールについてはどうかということなんです。モノレールに対して地元からのいろんな要望書みたいなものが、大臣もごらんになったと思いますけれども、モノレールは、鉄道と違いまして、わりと費用の点でもそんなにかからないんじゃないか、モノレールの建設についてのお考えはどうですか。
  156. 山口真弘

    政府委員(山口真弘君) 現在モノレールが建設されておりますのは、先生御存じのとおり、羽田へのモノレール、それから大船から江の島へのモノレール、その他各地の比較的短いものがございますが、比較的長大なものとしては、先ほど申し上げました二つのモノレールでございます。それで、モノレールの使命、私どもいろいろ考えてみますと、鉄道と比べまして非常に、何といいますか、特に地下鉄等と比べまして建設費の点におきましてはかなり安いということが言えると思いますが、一般鉄道と比べますと必ずしもそうでもないということでございます。  それから、輸送力の点からいきますと、地下鉄その他の高速鉄道のものに比べますと、これは輸送力の点はまあ若干落ちるということが言えるというわけでございます。したがって、従来私どものモノレールの使い方といたしましては、一つはやはり都市交通の中におけるモノレールというものをひとつ考えておりまして、その場合に、都市交通の場合に、大都市の都心に向かって周辺部から入ってくるような非常に太いパイプの輸送というものは、ちょっとモノレールではやはり不可能だというように私ども考えております。したがいまして、大都市内におけるある程度の環状的な業務交通を担当するような性格の輸送、これは、先ほど申し上げましたような、都心部に向かって周辺部から入ってくるような非常に太いものを必ずしも必要といたしませんので、こういったものにはかなり手ごろではないか。それからさらに、都市の周辺部におきまして、この周辺地域の輸送を担当するというものにつきましては、その輸送量等からいきまして、モノレールもかなり使えるじゃないかというふうに考えております。  そこで、沖繩の問題につきまして、具体的には、現在の計画にはまだ載っておりません。今後の検討課題だろうと思います。まあ輸送量等とも想定をいたしますと、やはり鉄道を引くよりも、まずモノレールのほうが先の、輸送量の点からいきますとそういうことになるだろうと思いますが、これは今後の検討問題といたしまして、十分私ども道路の事情等も考え合わせて検討してまいりたい。
  157. 野末和彦

    ○野末和彦君 それでは、あれですね、両方とも一応前向きに検討する、事実また検討中であるが、モノレールのほうが先だということですね、大体まあかりに実現するとしたらば。  そこで、その場合、モノレールでも、鉄道の場合でもそうなんですが、基地はどういうぐあいにお考えになっておりますか。
  158. 山口真弘

    政府委員(山口真弘君) ただいまの御質問の意味は、基地の中においてモノレールを引くかどうか、こういう意味……。
  159. 野末和彦

    ○野末和彦君 いいえ、そうじゃなくて、基地があるんですが、モノレールを建設するにあたって、基地のないところを通すなり、いろいろ考え方あると思うんですよ。つまり、基地がそういうものの建設の障害になるからつくらないということもあるかもしれませんし、そういう意味で、広く基地をどうお考えになっているか。
  160. 山口真弘

    政府委員(山口真弘君) この点は、モノレールに限らず、鉄道の建設でも同様でございますが、当然、こういう施設を建設するに対応いたしまして、その土地に対する使用の権限というものがなければならぬわけでございまして、その土地に対する使用の権限というものは、具体的な土地所有者なり土地の管理者なりという向きと十分の協議の上でこれを決定していくということに相なるわけでございますから、結果は基地であろうとも同様でございまして、基地の管理者等におきまして十分の話し合いがつくということになれば、基地であろうとどこであろうと同じような性格で建設することができるものと、こういうふうに考えております。
  161. 野末和彦

    ○野末和彦君 いままでのお話で、要するに、縦貫鉄道、それからモノレールにしても、赤字であるということは問題にならない、むしろ公共性のほうが優先するということと、それから基地があっても、かなりその辺は、それが絶対的な障害にはならないで、建設が可能であるというようなふうにとってよろしいですか、いまの。
  162. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) いまお話ございます端的な御質問でございますが、赤字であることが問題にならぬとおっしゃったと思いますが、そうじゃございませんで、これは、ことに新しく新線を建設する場合におきましては、その敷設した当時におきましては赤字でございましても、将来発展をいたしまして輸送需要が非常にふえてくる、将来においてはやはり鉄道として採算が合う、鉄道を敷設しただけのことはあるということがやはり国民経済上必要である、こういうふうに思っておる次第でございます。現実時点の赤字ということは必ずしも問題にしていない、こういうことでございます。
  163. 野末和彦

    ○野末和彦君 それでしたら、今度の——今度のというか、今後、大臣、鉄道建設審議会に当然これをおはかりになる予定ですか、縦貫鉄道、あるいはモノレール——モノレールは鉄建審議会でやるかどうか私はわかりませんけれども。
  164. 山口真弘

    政府委員(山口真弘君) 新線の建設につきましては、現在の制度におきましては、鉄道敷設法という法律がございまして、そうして国鉄が運営すべき鉄道の新線を建設する場合には、この鉄道敷設法の別表に載せて、そうしてその別表に載せたものにつきまして、これを調査し、さらに工事線として工事を始めるということに相なるわけでございます。したがいまして、そういう意味では、かりに沖繩県におきまするところの鉄道あるいはモノレールにおきましても、それが国鉄が運営すべきものとしてこれを運営する場合には、鉄道敷設法の改正を必要といたします。改正をいたしまして、その改正をして別表に載せまして、それから建設に取りかかる、こういうことに相なります。ただし、この建設主体が国鉄でなくして私企業であるような場合には、これは鉄道敷設法と関係がございません。これに対しまする地方鉄道の免許の申請というものがございまして、そうしてそれを現実に処理をしてまいる、こういうことに相なるわけでございます。
  165. 野末和彦

    ○野末和彦君 それでは、沖繩のモノレールないしは鉄道について積極的に検討していただきたいと思うのです。バスだけでは、いわゆる道路事情は、必ず日本の本土の高速道路と同じで、すぐに限度がくると思うのです。  それから、時間がなくなりましたが、もう一つやりたいので、沖繩の鉄道はこれくらいにしておきまして、今度はタクシーのことでお聞きします。  タクシーの料金が値上げになりまして三カ月ぐらいですか。何かもうそろそろまた、前のような不当料金の請求とか乗車拒否などぼちぼち出てきたようですが、それを聞きますと、運転者が、要するに値上がりになっても、もうかっているのは会社と個人タクシーだけである、われわれはたいしてもうかってないのだということを言うわけですね。もしこれが事実とすると、いまお客が少ないですから、わりと乗りやすいタクシーになっていますが、やがてまたもとのように乗りにくいタクシーになってくると、こういうことが不安になるわけでです。そこで、タクシーの料金が値上がりしても結局サービス改善にはつながらないんじゃないかというように思え、私がいろいろこのタクシーの運転手の収入を調べてみたんです。そうしたら、実際にあまりふえていないような数字が出てきたんですが、まず政府のほうで、三カ月たちましたから、タクシーの運転手個人の収入が値上げ後にどれだけふえたか、それを具体的な数字で教えていただきにい。
  166. 野村一彦

    政府委員(野村一彦君) お答えいたします。六大都市でございますが、去る二月五日から新しい運賃の改定を行なったわけでございますが、それに伴いまして運転手の給与がどうなったかということでございます。それまで、この六大都市、特に東京を中心とする六大都市の運転者の給与というものは、大体いろいろの企業の大小によりまして差があるわけでございますが、私ども把握しておる一番新しい数字を申し上げますと、これは東京の大手の会社でございますが、改正前、四十六年十一月、十二月の平均で申し上げますと、労働省の調査でございますが、固定、歩合を含めまして九万四千六百七十三円というのが改定前の給与の月額でございました。改定後、本年の三月及び四月の平均を同じく東京の大手についてやりますと、十万六千百二十四円ということになっております。差額は一万一千四百五十一円ということで、これは企業の大小によりましていろ  いろな差があるわけでございますが、まあ最高と申しますか、東京の大手の企業ではそういうような改正が行なわれております。まだ本件につきましては、いわゆる春闘が全部終息をいたしておりません。したがいまして、所属の組合、企業によっていろいろ格差があるわけでございますが、東京の大手の四社につきましては、いま私が申し上げましたような数字でございます。
  167. 野末和彦

    ○野末和彦君 私のほうの調べでも、値上げでもって収入がふえた会社ももちろんあるわけなんです。それは、いまお答えいただいたように、五千円から一万円ぐらいふえている。大手が中心なんです。ただ、その中には春闘増額分も入っている会社もありまして、一がいには言えないようなところもあるのです。私のは二十二社しか対象にしませんから。そこで、あとでこの資料を御参考までに見ていただきたいと思いますが、二十二社を対象にしたところが、値上げでもって収入がふえている会社というのが十一社ですから、半分ですね。ところが、収入は全然ふえていないという会社がやはり九社ありまして、なぜ収入がふえないんだろうということを考えたわけですね。要するに、会社の一社あたりの収入というのは完全にふえているわけですね。これは東旅協の数字でもわかるわけです。ふえていて、運転手までそれが及んでいないというのは変だと思ってよく調べて聞いてみたら、給与体系がまた変わっちゃうんですね。タクシー会社というのは何かしょっちゅう給与体系が変わるようなんですが、この値上げと同時に、足切り額と、それから歩合率が変化しているわけですね。ですから、値上がりして水揚げのふえた分が、結局はまたもとのもくあみになるといいますか、結局収入は動かないという結果が出ているんです。そうなりますと、まあタクシーの給与体系というのは、基本給が、たとえば八千五百円くらいのところから、七万円とか、いろんなのがありますから、一がいに言えませんけれども、値上がりした結果が、大手のいまの数字でいくと、タクシーの運転手自身の生活改善にもなっているし、これが利用者に対するサービス改善にもなるんですが、しかし、そうじゃないところも現実に半分近くあるということになりますと、値上げというのが結局業界の赤字解消のために利用者に負担をしいたという結果にならないとも限らない。そうならないように、やはりこれは政府のほうで、運転手個人の収入がふえることが利用者サービス改善に結びつくわけですから、その点を厳重に監督指導するなり、その辺のことが一番われわれ利用者としては大事だと、こう思うわけなんですよ。それで、いまの段階では、もちろん、値上げをしたから、これは全く利用者の負担になって、しわ寄せが利用者にきたとは言えないかもしれませんが、しかし、今後また乗りにくいタクシーがくることも予想されます。だから、その点を、給与体系が値上げとともに変わったと、足切り額が上がったり、歩合が変わったり、これについてどう考えますか。
  168. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) 実は、御承知のとおり、今回のタクシーの値上げにつきましては、いろいろ御批判もございました。一つのねらいといたしましては、やはり需要供給の原理からいたしまして、適正な価格にするということによりまして実車率の引き下げをねらう、これによりまして乗車拒否をなくそうというのが大きな一つのねらいでございます。  もう一つは、みな御承知のとおり、経済社会発展計画にもございますとおり、年々ベースアップを普通の勤労者はしている次第でございます。それに伴うところのやはり給与の引き上げというものは当然でございまして、これはやはり、タクシー勤労者、個人タクシー業者、当然これは均てんをするということでございまして、今回の値上げに際しましては、特にその値上げ分におきまして十分に勤労者の俸給の改善に資するようにということは、値上げの条件と私いたしまして、このことを各局に命じまして、強くこれを指導してきた次第でございます。私が伺っておりますところ、ただいま局長から御答弁をいたしましたように、大体におきまして一二%いわゆる標準額が上がったと、こう聞いていた次第でございますが、いまの先生の御指摘のように、九社におきましてまだそういう点がない、給料のいろいろ支払い方式が変わったことはないというようなお話でございまして、私どものほうでこれをさっそく調査いたしまして、そしてそれらのことがないように、やはり値上げのあれがタクシーの運転者の給料の引き上げに十分役立つように、個々におきましても東旅協を通じて自主的に指導し、また私どものほうといたしましても指導をするなりいたしまして、それの改善に当たるとともに、いまの乗車拒否の問題につきましては、御承知のとおり、東京におきましては、近代化センター、あれが非常に不十分でございまして、今回の値上げの条件といたしましても、これの整備をはかった次第でございますので、それらを通じまして十分利用者の納得のいくような行政をやってまいりたい、こう思っておる次第でございます。
  169. 野末和彦

    ○野末和彦君 さっきのお話に戻りますけれども、個人タクシーだけはもうかっている、収入がふえたということなんですが、そこで、やはりいままで申請を出していない人たちも、個人タクシーの申請を出して、なりたいと、早く。利用者もまた個人タクシーがふえることは大いに望むのですが、この個人タクシーの免許基準が何かもう実情にそぐわなくなったような気がするわけですね。発足当時とは、もう道路事情も変わっていますし、それから利用者の考え方も変わっていますし、いろいろな面からタクシー行政そのものがもう再検討の時期だとぼくは思うわけで、そこで免許がとにかくきびし過ぎるんじゃないかと私は考えるわけですよ。たとえば、年齢が三十五歳−六十五歳といいますが、なぜ二十五歳、三十歳の人は個人タクシーの免許を取れないのか、これはどう考えてもわからない。あるいはキャリアの問題も十年、しかし十年やったから良質なタクシーと言えるかどうか、五年でも十分じゃないか。いろいろ考えまして、この免許基準がちょっときつ過ぎると、もう少しゆるやかにして、もっと個人タクシーになり手が——簡単に取れても困るんですが、もう少し取りやすいような基準にしたらどうかというふうに私考える。とりあえずこの免許基準をゆるめる、あるいは検討する意思がおありかどうか、それをお聞きしたいんです。
  170. 野村一彦

    政府委員(野村一彦君) ただいまの御質問のように、個人タクシー制度は昭和三十四年にできたわけでございますが、できた当時はきわめてきびしい個人タクシーの免許基準でございました。それは申し上げるまでもなく、個人タクシーは、単に車を運転するだけでなくて、一人の事業者として車を保有し、これを経営すると、そういう意味で、安全にして良質のサービスを提供し得るような人を確保をしたいということから、非常にシビアな条件にしたわけでございます。その後、いろいろと時勢の変化もありますし、また個人タクシー制度というものが大都市において定着いたしましたその実情を勘案して逐次改定を行なってきたわけでございまして、現在の基準は、東京につきましては昭和四十五年の十二月に、いままであいまいでありました基準を明確にいたしまして、ただいま御発言にございましたような、年齢を三十五歳から六十五歳までと、それから経験年数は十年間という、それから特に明確にいたしましたのは、過去五年ないし三年間の間におきまして、道路運送法あるいは道路交通法について無事故であり、無違反であるというようなことでやってきたわけでございます。私ども、現状からいたしまして、東京都に関してはこういうような基準で十分所期の目的を達しておると思います。また一方では、そういう免許の審査を早くする、スピードアップしてやると、従来六千件以上たまっておりましたものを逐次消化をして、いま東京で一万三千人ほどの個人タクシーがおるわけでございますが、そういうことで個人タクシーの需要にこたえていきたいと思っております。  現在の基準でございますが、これにつきまして私どもいろいろ部内でも議論をやっておりますし、外部からのいろいろの御意見、御批判ということもございます。したがいまして、これを検討をするということにつきましては、実は常時部内でも検討をしておるわけでございますが、現在の基準につきましては、昨年の十二月にこれをやりまして、おおむね私ども所期の効果をあげておると思いますので、これをいま直ちに変えるつもりはございませんが、検討につきましては、いろんな緩和と申しますか、実情に即した基準を取り入れていくということにつきましては、今後検討していきたいと思っております。
  171. 野末和彦

    ○野末和彦君 そうしますと、確かに、良質の個人タクシーをつくるために免許基準をきびしくしていると、それはけっこうです。そうなりますと、このきびしい免許基準に合わない運転手は一般のタクシーの会社に行くわけですね。そうなると、個人タクシーは質はいいが、一般のタクシーの運転手の質はあまりよくないんだという印象にもとれるわけですね。同じタクシーでもって全然条件が違うというのも、これは利用者から見て変な話なんです。  そこで、時間がありませんのであれですけれども、いまそんなに検討はしているが、特にゆるめるつもりはないとおっしゃいましたが、私としては、年齢を三十五歳というのを二十五歳くらいまで引き下げるのが当然であると、二十五過ぎれば一人前だし、自分の車を持って自分が事業者になれば責任も出るわけですから、三十を過ぎたから人間的に信頼が置けるということは全然ないわけですよ。ですから、まず第一に、二十五歳くらいまでに引き下げるということ。それから、申請にいろいろ金がかかりますけれども、これについてはいろいろ説もあると思います。ただし、いまの住宅事情からいきまして、都区内で営業する場合、住まいと営業所を一緒にしておけと、一年以上は住んでおけと言っても、これはだんだん無理になってきているんじゃないかと、まして都区内た車庫を確保しておいて許可を待つという、これも、かりにこれで許可がおりなかったら、金はまるで損になる。こういうことを考えて、やはり検討というよりも、もう絶対にゆるめなければいけないと、申請書もこれ以上ふえてこないし、個人タクシーが四十九年に一万九千台ぐらいにかりになったとしても、この基準自体がぼくは実情に合わない、タクシー行政全体から見て当然ゆるめるべきだと思うわけなんです。ですから、その中で、いま特に私が言いました、この年齢を引き下げるということですね。それから、さっき言ったキャリアを十年というのも、もう十年一昔ですよ。十年やったから信用が置けるかと、個人タクシーとして一人前ということ巻ぼくは言えないと思う。ですから、五年ぐらいでいいんじゃないか、そういうふうに思うのですが、この二点についてだけでもイエスかノーかでちょっと局長意見をお聞きしたい。
  172. 野村一彦

    政府委員(野村一彦君) 年齢の点でございますが、私どももちろん、現在の年齢がいいかということはいろいろ考えておるわけでございます。ただ先生の御質問に関連して申し上げたいことは、昨年の運輸政策審議会という大臣諮問機関で、大都市におけるバス、タクシー問題の答申をいただきました。その中で、大都市におけるタクシーのあり方というものについて、現在の法人、個人タクシーの事業の開始は免許、運賃は認可という制度について、これをこの際抜本的にバスとの関係において検討すべきではないかという提言がなされております。  そうなりますと、ただいま先生がおっしゃいましたような、たとえば個人タクシーには良質の老練な運転手ばかりがなって、法人には何といいますか若くてあまりサービスのよくない運転手がなるんじゃないかという御懸念もあるかと思いますが、そういう今後のタクシー企業のあり方自身の中で考えていきたいということで、単に現在の制度の中で個人タクシーの運転手の年齢制限を緩和するかどうかということについては、まあ私ども簡単にそういたしますということはこの席で申し上げかねると思います。しかし、全体的には、そういう規制のあり方、事業の規制のあり方を含めての前向きの検討はいたしたいということでございます。  それから、次の御質問でございますが、その車庫、住居の関係でございます。これにつきましては、先ほど私が抽象的に申し上げました中にございましたが、これについては、いろいろ外部の批評、批判もありますし、いろいろの希望もあります。部内におきましても、こういう点についてはもう少し検討してもいいのじゃないかという意見もございますので、まあいろいろ検討をいたしております。ただ、従来の経験にかんがみまして、個人タクシーといえども、車庫というものがどこにあるかわからない、あるいは非常に遠いところに名目だけの車庫を置いておきましても、実際は雨風にさらされて野ざらしにして車を置いているということでございますと、やはり自動車の整備上、ひいては安全上問題がございます。そういう意味で、車庫と住居との関係についてのある程度の規制条件を置いているわけでございますが、これは都内の交通事情あるいは住宅事情等を勘案しながらいろいろと弾力的に考えるということをいたしたいと思っております。
  173. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) 本日はこれにて散会いたします。    午後六時三十八分散会