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1972-03-21 第68回国会 衆議院 予算委員会第四分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月二十一日(火曜日)    午後四時十二分開議  出席分科員   主査 植木庚子郎君       渡辺  肇君    上原 康助君       金丸 徳重君    小林  進君       原   茂君    林  孝矩君       栗山 礼行君    兼務 大橋 敏雄君 兼務 沖本 泰幸君  出席国務大臣         農 林 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         農林大臣官房長 中野 和仁君         農林大臣官房予         算課長     松本 作衞君         農林省農林経済         局長      小暮 光美君         農林省農政局長 内村 良英君         農林省農地局長 三善 信二君         農林省畜産局長 増田  久君         農林省蚕糸園芸         局長      荒勝  巖君         農林水産技術会         議事務局長   加賀山國雄君         食糧庁長官   亀長 友義君         林野庁長官   福田 省一君         水産庁長官   太田 康二君  分科員外出席者         建設省河川局砂         防部砂防課長  谷   勲君     ————————————— 分科員の異動 三月二十一日  辞任         補欠選任   小林  進君     上原 康助君   原   茂君     金丸 徳重君   塚本 三郎君     栗山 礼行君 同日  辞任         補欠選任   上原 康助君     小林  進君   金丸 徳重君     原   茂君   栗山 礼行君     塚本 三郎君 同日  第一分科員沖本泰幸君及び第三分科員大橋敏雄  君が本分科会兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十七年度一般会計予算農林省所管  昭和四十七年度特別会計予算農林省所管      ————◇—————
  2. 植木庚子郎

    ○植木主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。  昭和四十七年度一般会計予算及び昭和四十七年度特別会計予算中、農林省所管を議題とし、引き続き質疑を行ないます。  質疑の申し出がありますので順次これを許します。金丸徳重君。
  3. 金丸徳重

    金丸(徳)分科員 たいへん制約された時間でありまするので、もう問題ずばりと率直に一、二の点についてお伺いをさしていただきます。  新しい日本経済時代を迎えまして、その根底をなすべき農業政策におきましても、まさにいままでとは違った画期的な発想及び実行力内容をもって進めてまいらなければならぬことと存じます。さような意味におきまして、私は国民の輿望をになって、昨年の夏以来農林大臣の重職につかれておりますその道のベテラン赤城先生に深き期待を持ちながら、その御構想、御所見などを承ってまいりたいと存じます。  そういう意味におきまして、実は先般農林委員会において、御表明になられました大臣所信表明及び農林関係予算説明などを、つぶさに拝見いたしました。新しい時代に処すべき決意の中で、各般にわたって施策を進められておるようであります。この点私はまだたいへん複雑多岐にわたっておりまして、ときどき行ったりきたりいたします予算説明内容ではありまするが、十分理解して進めてまいりたいと思っているのであります。こうしていろいろ施策を進めてまいりましたのでありますが、さて、私が若干不満を申さしていただきますと、このような大事な施策を進められた結果が、ことしというわけにはもちろんまいりますまい。三年後五年後において、わが国農業は、わが国農村は、はたしてどういう姿になっていくであろう、この点についてのお見通しがあまりはっきり出てまいりません。これは、いま新しい時代を迎えまして、とほうにくれておる。申し上げるまでもありませんけれども、米作転換というようなことからいたしまして、米作農家はもとよりでありまするけれども、その他また転作地におきましても、どういうものにどう方向づけをしていくかについて、非常に混迷におちいっておるようであります。政府のほうがどういう方途をお示しになられるのか、三年後、五年後においてはどうなるかについて、この辺でやっぱり一応のめどをつけてはっきりお示しになっていただきませんというと、わが国農業者は、農村は、依然として混迷あるいは希望を失った中においてこれからやっていかなければならないのではないか、こう思います。大臣からその大綱を承り、係のほうから若干数字的な御説明をちょうだいできれば、質問の糸口ができてまいると思います。お願いいたします。
  4. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 数年後の農村はどうなるか、またどう導くかということは、私も苦しんでおるといいますか、なかなか説明つかぬような状況でございますが、まあ一言で言えば、いまもお話がありましたように、農業あるいは農村というものをなくすというような方向へ持っていったら、これは日本民族といいますか、日本経済民族も滅びるということでございまするから、最小限度とは言わないが、いまの農業というものを育成していくというか、していかなければならぬと思います。幸いに自然を保護するといいますか、こういう機運が高まっていますから、都市自然都市といいますか、都市の中に自然というものを残していくような形でなければいけませんが、幸いに農業というものは自然に依存しているというか、自然というものを育ててきておった農村でございますから、自然農村といいますか、自然農村の姿というものを維持して発展さしていかなければならぬ。抽象的でございますが、こういうふうに考えておるわけでございます。でございますが、そういう面におきまして、生産に携わっており、そうして国民食料を提供しているものでございまするから、この生産消費者といいますか、国民需要等にマッチするような生産、ですから米の生産におきましても、需要に対応していく、こういうようなことで生産調整などもしていますが、そういうような形で、その地域あるいは作目、そういうものに従ったといいますか、それに適応したような生産を続けて、需要にマッチするような形でもっていくというようなことでなければならぬ。それからもう一つは、専業農家というものが非常に少なくなってきております。どうしても兼業農家ということで進んできておりまするし、これをなくするわけにはまいりません。でありますので、こういう専業農家兼業農家を含めた一つ農業協同体というものに組織化していく、そうして農業というものをやっていかなければ、農業というもの、農村というものは、あるいは山村もそうですが、もっていけない、こういうふうに考えております。そうして純然たる協同体の形を存続していく、育成していく、こういうことが必要だというふうに考えるわけであります。
  5. 中野和仁

    中野政府委員 ただいまの農林大臣の御構想に従いまして、若干数字的に触れさせていただきますと、まず農林省といたしましては、昭和五十二年にどういうふうに国内で食料自給していくかということも含めまして見通しを持っておりますが、それによりますと、米は生産調整をやりながら一〇〇%の自給蔬菜は当然生鮮食料品でございますから大体一〇〇%の自給、それから畜産、果樹につきましては、八割ないしは九割というものは自給をするという目標を立てました。そして一昨年の暮れ、全国を十四地域に分けまして、農業地域分担をつくりまして、そしてこれに従って、適地適産の方向でやっていこうということにいたしておりまして、現在はそれをこまかく各県におろしまして、県内適地適産を目標にしました農業地域区分をつくっております。これに基づきまして農家生産を誘導していく、需給のバランスのとれた、各作目バランスのとれる方向に誘導していくということをやっておるわけでございます。  そこで先生お触れになりました米の生産調整に伴う転作でございますが、これにつきましては、昭和四十五年には、全体の米の生産調整のうちで七万四千ヘクタールでございましたが、四十六年度の転作の見込みは二十三万八千ヘクタールということになってきております。四十七年度はこれを三十一万三千ヘクタール、約四五%くらいまで生産調整のうちの転作をふやしたいということで、予算的な措置といたしましても、昨年が四百二十二億の予算稲作転換推進のためにつけたわけでございます。四十七年度は、いろいろな事業を含めまして五百四十八億の予算をつけまして、転作を進めたい、その中には当然畑作その他につきましての価格安定対策も加えておる、こういうことでこの推進をいたしたいと考えておるわけでございます。  それからどういう農村になっていくかというお話でございますが、これにつきましても、農林大臣のお示しになりました農業団地構想推進していくわけでございます。これにつきましても、第二次構造改善事業を含めまして約五百億円以上の予算を組んでおるわけでございますが、その中で特に農業を、生産の面と同時に、生活面も含めまして、総合的な基盤整備の必要があるということで、新しく四地区につきまして、農村の総合的な建設という意味での事業化も始めるということで着手いたしたいということも考えておるわけでございます。
  6. 金丸徳重

    金丸(徳)分科員 抽象的でありまして、私のお尋ねするところにはまだ触れてまいりません。いまの転作の対象がどの方面にどう向けていかれるのかということについて、実際の農業者は心配をいたしておるのであります。そしてその構想がことしのこの所信表明の中であらわれてくるべきだったと私は思うのであります。そうしないと、それは県のほうにお尋ねになっておられるそうでありますけれども、それがまとまって、あらためて現地農業者に、おれはこのたんぼをこのほうでやったほうがいいかという具体的な判断をする種にはまだならないと思います。願わくは、それを現地からあがって来る前に、農林省のいままであるところの資料に基づいて、いままでの経験に基づいて、この地方にはあるいはこの地況に対しては、この種の地味のところに対してはこういうことを望むという構想を、もうそろそろお示しにならないといけないのではないかと思うのです。なぜ私がこのようなことを申し上げるかといいますと、先般の農林大臣所信表明の中にも、常々農業の健全な発展なくしては日本経済の調和ある発展はない、こう言っておられる、私はそのとおりだと思います。そしていま新全総であるとかあるいは新経済発展計画であるとか、あるいは総合交通体系であるとか、いまも本会議のほうで問題になっておった、そういうことが進められておりますけれども、そういう国の経済の基本の方針をきめるのにつけましても、今度農地使用計画なり何なりが相当具体的な見示しが立たないと、そうしたものにもできないことになりはしないかと思う。これがおくれておるようじゃいけません。そこで私は非常に興味を持って、興味といってはいけませんが、大きな期待感を持って大臣説明というものを読ましてもらった、出てこないものですから、それは積極的にこの説明で言えなくとも、聞かれたら答えるであろうというものはお持ちになっておられる、こう思うものですから、お尋ねしておきます。いかがですか。
  7. 中野和仁

    中野政府委員 先ほど御答弁申し上げましたときに触れましたように、農林省といたしましては、一昨年の暮れに「農業生産地域指標の試案」というのをつくりまして、それを各県に全部お示しいたしました。これは先ほども触れましたが、五十二年を目標にしまして、どういう地帯にはどういう農業を中心にやるかということを非常に大ざっぱでございますが、十四地域示したわけであります。これに基づきまして、現在はそれでは非常に大ざっぱ過ぎますから、各県に県内をまた——県内もいろいろな事情がありまして、水田地帯あるいは畑作、あるいは山村等ございます。それぞれの地域区分をやりまして、その県でそれぞれの地域をどういう目標農業を進めたらいいかという目標を作成しているわけであります、すでに過半数の県がそれをつくっております。まだできていないところについては、農林省も県と相談をして、できるだけ早くそれをつくらせるということで適地適産の目標をつくらしておるところでございます。決して大臣所信表明にないということではございません。これを前提にして四十七年度予算はいろいろ組んでおるわけでございます。
  8. 金丸徳重

    金丸(徳)分科員 いまのような何がありますれば、これにつけ加えてさらにお出しになったらいかがか、これは農林省が大きな施策を進める上の親切心でもあります、あるいはその義務でもあろうかと私は思います。そこでそういうような計画は、五十二年までにこの程度予算実行方針をもってして実現されるお見通しですか。
  9. 中野和仁

    中野政府委員 この目標を達するために、各般施策を講じておるわけでありますが、特に四十七年度からは「農業生産地域指標」に基づきまして、各地域農業を振興するために、農業団地育成対策というものを新しく打ち出したわけでございます。もちろんこれだけではこの目標に達しない面もありますが、すでに過去から構造改善事業それから価格安定対策その他の生産対策等十分準備をしておりますが、あるいはなお不十分かとも思います。これは今後、四十七年度をスタートにいたしました農業団地対策をもっと拡充をいたしまして、先ほど申し上げました五十二年にはできるだけそれに到達するようにいたしたいというふうに考えております。
  10. 金丸徳重

    金丸(徳)分科員 これはあまり押し問答していると時間が過ぎてしまいますから、そういうことばを一応信用いたしまして、これにつけ加えるべきものが早く世間に示されることを大臣にもお願いいたしておきます。  そこで、この計画は、率直に申しまして、いまの国際競争力を強めるとか、あるいは生産性をあげるとか、合理化するとかというようなことがねらいに強く出ておりまして、大型化する、集団化する、機械化するということを進められておるようであります。しかし日本農村の中にはそういうものに不適当なところがある。集団化しようとしても地域的にそれには向かない、大型化しようとしても物理的に、地況的に不可能であるというようなところもあります。しかしながらそれをほっておくわけにもいきません。むしろそのほうに相当の力を入れておかなければ、ほんとうの意味国土の均衡ある発展というものはできませんでしょうし、またこれはあとで触れてまいるのですけれども、農業が受け持つところの他の一面、国土保全なりというものについての責任を果たすわけにもいくまいのではないかと思うのでありますが、大型化なり合理化なりに適当しないような山間の農地あるいは急傾斜地の農業というものについてはどの程度に力を入れておられましょうか。私も、それについてはずいぶんたんねんに読んでみましたけれども、あまり出てきません。はたしてこれでいいのか。これはあと大臣にお伺いするのですけれども、もしそういうことについての具体的な案がありましたら、この際お示しを願いたい。
  11. 内村良英

    内村(良)政府委員 まず最初に、現在これらの地区に属する市町村はどのくらいあるかということでございますが、山村地帯は千三百六十三町村、それから急傾斜地帯は千二百八十七町村となっております。これは七百六十くらいはダブっております。ただいま先生から御指摘がありましたように、こういった地帯農家経営面積も内地では平場よりも少ないということでございますし、さらに経営合理化と申しますか集団化等もなかなかしにくいという状況にございます。さらに農家所得を見ましても、平場の大体八割五分くらいの所得しかないということになっております。そこで農林省として、それではそういうところの農業振興についてどういうことをやっておるかということでございますが、御承知のとおり昭和四十一年からいわゆる山村振興計画というものをつくりまして、そういった地帯農業基盤整備、それからいろいろな施設導入、さらに生活環境整備というようなことで、これは四十七年まで事業をやることになっておりますけれども、過去、四十六年まで合計千三百十二市町村につきましてそういったような計画を立て、事業規模は大体三千万円くらいでございますが、それに国から補助金を出しまして、そういった地帯基盤整備あるいは施設合理化というものについて取り組んできたわけでございます。ところが最近ますます山村経済というものは非常にむずかしい状況になってきておりますので、四十七年から、これは四十七年は計画だけでございますが、第二次山村対策を立てまして四十八年から事業規模約九千万というような、在来のものの三倍くらいの大きさで同じように基盤整備あるいは施設導入その他につとめたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  12. 金丸徳重

    金丸(徳)分科員 三倍にしたということでございますが、もとがほとんどスズメの涙みたいなものであります。これを三倍にしても十倍にしてもとうてい足りないのですね。いま農業問題の一番大きな点、あるいは農村問題、むしろ日本の社会問題の一番大きな問題は、例の過疎地帯がますます過疎化する、そしてその過疎化する原因は、いろいろな要件もあるでありましょうけれども、その地帯における所得がだんだん減ってきているということではなかろうかと思います。したがって、広い意味において私は山村対策というのですが、要するに大型農業に適しないようなところ、そういうところに対して農業人口を確保するという意味においても、あるいは国土過疎地帯を起こさないという意味においても、この際平地地帯に入れる力よりもより一そうの力が入っていかなければ、このなだれ現象をさえ来たさんとするところの農業の状態というものは救いがたいのではないか、そう思います。したがって、そのスズメの涙にも足りないようなものを三倍にしたからそれでいいだろうという考え方には、私は満足しない。この点がいかがか、これはあと大臣お答えをちょうだいしたい。
  13. 内村良英

    内村(良)政府委員 今後の山村振興につきましては、いわゆる山村の置かれている社会的、経済的事情も十年前に比べますと変わってきておるわけでございます。したがいまして、第二次の山村振興対策につきましては、もちろんメニュー方式で各市町村の要望する事業というものをやるわけでございますが、国といたしましては大体山村を近郊型、農業主体型、林業主体型、農林業混合型、国民休養地帯型、それから保全型というようなふうに分けまして、そういうものに応じていろいろと援助をしていきたい、こういうふうに考えております。
  14. 金丸徳重

    金丸(徳)分科員 たいへんこまかに分けて施策をつくっておられる。この点は私は一つ考え方だと思う。分けるのが目的じゃなくて、分けたところにいかに適切に、いかに多くの所要エネルギーをつぎ込むかということでなければならないと思います。いまのお答えの中で、国民休養村をおつくりになるために若干の金額を盛ってあるからということもこれで承りました。ただ一つ、いまの国土保全型とかいう地帯がだんだんふえてくるのではないかと私には思える。過疎地帯というのがふえてきますと、いままでつくっておったたんぼや畑も捨ててしまい、やがてそこは農業地帯でなくなる。ただ単なる国土、しかし国土ではあるので、何とかそれを保全しなければならぬという意味においてそういう地帯になってくると思う。それに対してはどういうふうな予算なり計画なりをお持ちになっているのか。
  15. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいま御説明申し上げました山村振興計画の中には過疎地帯もたくさん入っておるわけでございます。それから過疎地帯としていわゆる過疎法で指定されたところにつきましては、そういった地帯において農業林業または漁業を営むものに対しまして農林漁業経営改善計画というものを過疎法でつくることになっております。それを実施するために必要な資金として農林漁業金融公庫から四十七年は三十億、これは四十六年は二十億でございましたが、三十億の低利資金を融資することになっております。
  16. 金丸徳重

    金丸(徳)分科員 いまのようなおざなりの答弁ではとても満足できないのであります。私は実は時間が制限されておりますので、私のお尋ねせんとする気持ちをつぶさに申し上げてお答えをちょうだいいたしたいのでありますが、それができません。  ただ要約して申し上げますと、日本農業はいままでは食料という大きな使命をしょってきたんです。しかし食料はだんだんなにしてきた。かつては養蚕業食料以上に外貨獲得というために大きな使命をしょってがんばった。しかしそれがもう外貨獲得の必要もないということになって、別の立場から考えられることになった。ただ、そうした新しい時代を迎えて、農業はまた別の国民的、国家的使命をしょわされてきておるやに思われる。それはいままでとかく捨てられておった、あるいは力が入らなかったところの国土保全という使命、これは農業者にとってそれを直接意図したかどうかは別として、やった結果はやはり国土保全なんです。今度はそれに緑地保全というものも加わってまいりました。そして農業なるがゆえにあるいは大気浄化という仕事もやってきております。日本のいまの経済状況あるいはその他の状況からいいますと、この使命というものはこれまたたいへんだと思います。食料増産ほどではないにいたしましても、非常に大事なことだ。そういう意味において、新しい立場から農業というものを、特に山村における農林者、そういうものの生活というものを見てもらいませんと、全体としてうまくいかぬのじゃないか、そう思います。  そこでそういう意味の新しい使命をしょわされておるところの農業農村という立場に立って計画を立て直してもらいませんと、もうこれだけ増産したからそれでいい、あるいはこちらのほうが合理化され、こちらのほうが国際競争力が増すからとか、こちらのほうが所得が増すからというだけのことでやっていきますと、またいまの他産業における所得倍増なり高度成長なりのようなたいへんな結果を来たすであろう、こう思う。  そこで、私は大臣にお伺いいたして終わりたいのでありますが、そういう意味において、この所信表明の冒頭に触れられたように、日本経済の調和ある発展のために農業を見直す、あるいは健全な農村と農民を育てていくことは、わが国経済社会の土台を形成確保するために重要なことだと大臣はおっしゃっておられまするので、そういう意味において、これではあまりにも——せっかくこういういい大喝破といいますか、宣言をなさっておられるのですけれども、それに伴うところの施策が旧態依然たるいままでの惰性にすぎないように思われます。そういう発想におけるお考えをこれから急速に、また強力にお進め願いませんと、いままでの米作地帯が変わるにいたしましても、畜産にいくべきかあるいは蔬菜にいくべきかあるいはということと同時に、その山村地帯における安定感安心感を持ち、期待感を持って踏みとどまって、国土保全というような大事な仕事に携わっていくわけにまいらぬのではないかと思うのでありますが、いかがでありましょうか。
  17. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いまの御説のとおりに私も考えます。国土保全とかあるいは自然農村というか日本の姿を経済と均衡をもっていかせるというためには、いまのような山村地帯などがよく保全されて、山村民生活というものも安定していくということでなければ、初めに申し上げたような結果にはならぬと思います。でありますので、第二次山村対策事業も立てておりますから、一段とお話しのような趣旨に沿うて、練り直すというほどでもないが、前進するということでいかなければならぬ、こういうふうに考えます。具体的にはまたいろいろ検討いたします。
  18. 金丸徳重

    金丸(徳)分科員 いま私は実はその問題に関連いたしまして、林野庁長官にもおいでいただいておりますので、治山の立場からいって、この問題にどうこれから力になられるのか、また河川局のほうからも来てもらっておりまするので、あわせて治水事業なんかについて、それに関連して山村地帯安心感期待感を持ってそうしてそこの国土に生まれて、国土に育って、そこで死ぬという人々のために、やはり農林大臣はあたたかい気持ちが通るような施策を進めていただきたい、こう思っておるのであります。  私はちょうだいした時間を過ぎておりますので、これは林野庁長官ここで、詳しくはまた別の機会においてお伺いいたしますが、それじゃ一言だけ……。
  19. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 林野庁におきましては建設省と十分連絡をとりまして、最近集中豪雨等非常に大きな被害もございます。第四次治山五カ年計画、四十七年度から発足を予定しております。それが前の五カ年計画のちょうど倍というような数字でございますので、それによりまして地元の皆さま方の仕事の場もまた与えられることでございますので、国土保全に万全を期してまいりたい、かように考えます。
  20. 金丸徳重

    金丸(徳)分科員 どうもありがとうございました。
  21. 植木庚子郎

    ○植木主査 金丸君の質疑は終了いたしました。  次は、上原康助君。
  22. 上原康助

    上原分科員 私は、復帰後の沖繩の農林漁業を、いわゆる沖繩の振興開発計画にどのように位置づけられ、かつ本土との格差というものをなくしていくために、政府としてどのような考え方あるいは政策を持っておられるのか、まず基本的な面をお伺いをして、具体的な問題に入っていきたいと思います。
  23. 中野和仁

    中野政府委員 沖繩の振興計画におきましては、農林省といたしましては、沖繩の農林漁業が、沖繩の経済の中で非常に重要な地位を占めておる。しかし御承知のように、生産基盤の整備が非常におくれております。まずそこを立て直した上で、早く内地といいましょうか、本土に追いつこうというねらいを持って、農林省としましては沖繩の農林漁業の振興に取り組みたいと考えております。  詳しくはそれぞれ先生からこれから御質問があろうかと思いますが、若干触れますと、沖繩の農業の場合には経営規模が非常に零細である、基盤整備が立ちおくれております。これは一ヘクタール当たりにいたしましても、たしか本土の二二%程度しか投資がございません。しかし四十七年度の予算では大体本土並み以上の、一ヘクタール当たりの土地改良の投資額まで持っていくということをすでにいたしております。農林漁業者の一人当たりの国庫支出金にいたしましても、いままでは二七%程度であったものを、まだ一〇〇%になりませんが、八〇まで近づけるということでございます。その中でもやはり基盤整備をやりました上で、これから肉牛なり野菜等、沖繩の立地の有利性を生かせるような作物、それから先般の干ばつにも見られましたようなこともございますので、水資源の開発、かんがい施設整備ということ、それからやはりサトウキビを中心にしまして機械化、協業化等、経営の近代化をはかるという方向に持っていきたい。  それから林業につきましては、戦災と戦後の乱伐でかなり森林が荒れておりますので、森林の生産力の増強ということと、防風林の整備等をはかりたい。  漁業につきましては、その恵まれた立地条件にかかわりませず、漁港が非常に未整備でございます。これを急速に本土並みに持っていきたいということで漁港の整備と沿岸漁業経営の振興というところに重点を置きたいということで、この振興計画は十年ということになっていますが、農林省としましては十年と言わず、もっとなるべく早く格差を是正するように持っていきたいというふうに考えております。
  24. 上原康助

    上原分科員 いま大体御説明がありますように、確かに四十七年度予算においても十分とはいえないかと思うのですが、かなり従来よりは予算措置がなされている面を評価をいたします。  そこで、確かに沖繩の農漁業の問題を考えました場合に、基盤整備ということが当面の大きな緊急課題であるということは、現地に行かれた方なら何人も異存のないことではないかと思うのであります。ただ、基盤整備といいましても、なぜ沖繩の農林漁業が今日のようにおくれをとっているのか、やはりアメリカの長い間の軍事優先政策によって農漁業そのものを無視する、基地経済に依存をせしめるという、軍事優先政策の象徴的なものだと私は思うのです。基本的な姿勢という面で、基地の早期返還あるいは農業を大事にするという国の政策というものを沖繩に積極的に進めていかないと、そう簡単に基盤整備の問題や基幹産業の保護育成というものはできないのじゃないかと思うのです。私がお尋ねして、その点はお気づきになっているであろうと思って御回答を期待しておったわけですが、基地経済からの脱却ということを大前提としている沖繩の今後の経済開発、農業の技術革新あるいは改革ということを考えた場合に、軍事基地の問題とは切り離して考えられないという基本姿勢を政府としてぜひお持ちになって、その上でいろいろの御計画というものを立てていただきたいし、もちろんこのことは農林省だけのことじゃなくして、政府全般にわたる政策の根幹になるかと思いますので、その点強く強調いたしておきたいと思います。  そこで、今後の問題といたしまして、基盤整備なりかんがい施設あるいは農道等の整備を早急にやることもあたりまえのことですが、まず何といっても、沖繩の基幹産業であるサトウキビ及びパイナップルの振興策ということを考えなければいけない。まあサトウキビについては、本土の消費量の面から見ても、もっと技術革新をやり、あるいは合理化、いわゆる生産性を高めていく面で将来希望を持てる面もあるわけですが、パイナップルの場合には、本土の自由化措置等いろいろな面で、さらにまた消費者側からのいろいろな要望等もあって、なかなか困難な面もあると聞いております。しかし、この二つの基幹産業というものはどうしても国の農業政策として生かしていかなければならない重要な産業だと私たち見ているわけです。この点について今後どういう対策をとっていかれるのか、時間がありませんので、二つの面をあわせてぜひ明確なお考えを聞かしていただきたいと思うのです。
  25. 荒勝巖

    荒勝政府委員 沖繩のサトウキビにつきましては、沖繩におきます沖繩農業の基幹であるということにつきましては私たちも十分に考慮いたしまして、本土復帰後におきましては、甘味資源特別措置法に基づきまして、北海道のビートあるいは奄美大島のサトウキビと同様の、従来以上に生産の振興をはかってまいりたい、こういうふうに思っております。  さらに、そういった生産振興のための予算につきましても、今後生産振興のための努力を続けますとともに、本土復帰後におきましては沖繩産糖、沖繩から出てきます砂糖につきましては、従来と同様に糖価安定事業団によります全量買い入れの手続を行なうことによりまして、沖繩産糖の価格の安定に資していきたい、こういうふうに思っております。  また黒糖につきましては、従来琉球政府が単独でやっておられました黒糖対策につきましては、さらに今後沖繩に助成することによって従来と同様の振興を期してまいりたい、こういうふうに考えております。  またパイン農業につきましては、これも現在の段階におきまして沖繩のパインを直ちに自由化というわけにはまいりませんので、当分の間沖繩の合理化計画が進捗する間、われわれといたしましては、沖繩のパインかん詰めの自由化を見送りますとともに、沖繩パイン産業の育成を大いにやってまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。  さらに、このパインかん詰めの振興につきましては今後とも、生産の振興とともに、その価格が本土との間に十分な取引ができますようにいろいろと検討してまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  26. 上原康助

    上原分科員 そういたしますと、パイン産業の場合に当分の間自由化はやらないという立場で、パイン産業の生産性の向上あるいは企業の合理化等を考えながら、パイン産業にとってかわる何らかの産業というものができるまで自由化を見合わすというふうに理解してよろしいですか。
  27. 荒勝巖

    荒勝政府委員 現在、先ほど申し上げましたように、沖繩におきましてパイン産業合理化計画というものが立てられまして、それに基づきまして行政が推進しているわけでございますが、一方、海外のパインかん詰めとの競争力が現在の時点においてまだきわめて弱いということで、関税も五五%の関税を付しまして、なおまだ十分な競争力がないという認識の上に立っておりまして、本土復帰後は、パインにつきましての原種圃農場を現地に育成いたしますとともに、今後そういった生産段階からの育成と本格的に取り組んでいきたい。また加工部門につきましても、一日も早く加工合理化が行なわれるように努力いたしたいと思っておりますが、そういったことがまだいまの段階では見通しが十分でございませんので、現在の段階におきましては自由化を行なわないという前提に立っておるわけでございます。
  28. 上原康助

    上原分科員 もちろん、この点は単に沖繩のパイナップル産業の面あるいはそれを生産しておる農民の立場だけで議論のできない問題であるということも、私も理解をします。消費者立場というものも考えなければいけないという政府のお考えもあるかと思うのですが、最初に申し上げましたように、やはりサトウキビとパイン産業というものを基幹にして今日まで何とか沖繩の農業というものが発展をしてきたといいますか維持されてきたということをぜひ御理解をいただいて、技術面の改革あるいは反収を上げるとかいろいろな政府の積極的な指導、助言というものを農民や沖繩側にやることによって、私は必ず問題解決というものが生まれてくると思うのです。そういう意味で、特にパイン産業については特段の御配慮をいただきたいということを強く要望いたしておきたいと思います。  それとサトウキビ問題ですが、やはりいわゆる含みつ糖を生産している離島の糖業というものについての保護策というものをもっと積極的に進めていかなければいかないのじゃないかと思うのです。そういう意味で、今後の港湾設備の問題との関連もございますけれども、特に沖繩全体が離島であるという面、そしてまた離島に限ってキビ作というものが圧倒的に多い、そういう面でも離島各地の農民の保護策というものについてはもう少し積極的な施策というものが生まれてよいと思うのですが、その点についてはどうお考えなのか、従来のような方針というものをおとりになるのか、もし具体的なお考えがありましたら聞かしていただきたいと思います。
  29. 荒勝巖

    荒勝政府委員 御存じのように沖繩でできます分みつ糖につきましては、糖価安定事業団によりまして全量買い入れを行なうという既定方針でございますが、いわゆる含みつ糖、黒糖ともいわれておりますが、これにつきましては、従来奄美大島でできます含みつ糖につきましても、政府はこれにつきまして価格安定については何ら行政的な指導はいたしていないわけでございますが、今後沖繩復帰に伴いまして、特に強調されました離島の黒糖につきましてはわれわれとしてはこれを放置しておくわけにはいかないということで、今回の沖繩復帰に伴います四十七年度予算におきましては、沖繩で一種の組合と申しますかそういった共販のための団体を設けまして、黒糖だけ専門にそういった価格安定に資するような事業を行ないますとともに、沖繩に対しまして補助金を交付いたしまして、離島のキビ作農家経営の安定に寄与するように何らかの形で今後行政を進めてまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  30. 上原康助

    上原分科員 やはりこの含みつ糖につきましても、分みつ糖と同様にとまではいかないにしても、何らかの行政的な措置を加えて含みつ糖の買い上げあるいは価格の安定、生産者の労賃等を含めた形での買い上げ策というものを考えていただかないと、同じキビ作をやっておってもますます格差が出てくると思うのです。そういう面で、この面につきましてもぜひ行政的な措置ということ補助政策というものを積極的に進めていただくように要望をいたしておきたいと思うのです。  次に、これとの関連でもありますが、サトウキビの価格について、絶えず現地側から奄美大島並みの買い上げをやるべきだ、やってほしいということが今日まで関係者から出されているわけですが、今日まで同じ価格にならずに格差がついている。もちろんそれにはいろいろ事情もありまして、事業団に対しての補助金ですか、そういうのが沖繩側は出ているから奄美並みにならないのだというような言い分もあるわけですが、復帰後は同等の価格で買い上げるお考えがあるのか、あるいは今後も従前の買い上げ方式をとるのか、その点についてお考えを聞かしていただきたいと思います。
  31. 荒勝巖

    荒勝政府委員 沖繩の砂糖につきましては、例年、事業団による買い入れを継続しているわけでございますが、原価計算の算出根拠になりましたキビの値段につきましては、奄美大島のサトウキビの値段も沖繩におきますサトウキビの値段も、従来全く同一の価格で算定してまいりまして、生産農家には同一の条件でキビ代は支払われておるものと考えておる次第でございます。  買い入れいたします粗糖につきましては、これは奄美と沖繩とが、それぞれサトウキビの質が、歩どまり等が違いますとともに、一番大きいのは操業度が違っておりまして、奄美大島の工場よりも沖繩のサトウキビの工場のほうが経営規模が大きいということで、おのずから加工コストが安くなるということで、安い価格事業団が買うようなかっこうになっております。ただ、その間におきましても、沖繩におきましても経営規模の大きい工場とそれから多少小さな経営規模の工場とがございまして、この間の格差をどうするかということで、それが臨時糖業対策費という形で従来から日本政府におきまして琉球政府に対して別途助成がいって、その配分が、主として離島の方面に配分のウエートが高いような形で格差を補正してきた、こういうふうに御理解願いたいわけでございます。  本土復帰後もなお、こういった臨時糖業対策費めいたものがあるいは残ることになるのか、さらに今後、沖繩、奄美を含めました統一的な原価計算制度を検討してやる、買い入れ価格がグループ別になるのか、その辺につきましては、四十八年のサトウキビ生産を前提にいたしまして本年中にもう少し検討してまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  32. 上原康助

    上原分科員 この点あまり深入りはいたしませんが、操業度の違う面とかいま御説明の点というのは、やはり沖繩側にもそういう事情があるわけですね。したがって、復帰後はやはり同一価格で買い上げるという基本線をぜひとっていただきたいし、格差があるということでかえっていろいろ誤解を招いたり、また不満が出たりしている面もあると思いますので、再検討を要望いたしておきたいと思うのです。  次に農業災害補償の問題ですが、復帰の段階で農業災害補償法の対象になる、あるいはその適用を受ける面はどういうものなのか。さらにサトウキビやパイナップルについても農災の適用下になるのかどうか、どういう御検討をなされているか、お聞かせをいただきたいと思います。
  33. 小暮光美

    ○小暮政府委員 農業災害補償制度につきましては、復帰と同時に本土の法令を適用するという方針になっておりますので、事務的にはまず水稲共済が一番早く実施に移ると考えております。また家畜共済につきましても、離島が多いので、家畜診療の仕組みその他ある程度組織を確立する必要がございますので、水稲共済より若干時間がかかるかと思いますが、これも直ちに実施に移したいというふうに考えております。  なお、サトウキビ及びパインアップルにつきましては、現在本土にもその制度がございません。われわれといたしましては、沖繩復帰対策要綱の中にも方針が述べられておりますこの線に即しまして、その制度化の検討を進めるというふうに準備をすでに始めております。  ただその際に、サトウキビにつきましては琉球政府がこれまでにかなりの被害率の調査をやってまいっております。私どもといたしましては、その調査をさらに引き続きお願いすると同時に、私どものほうからも料率の算定あるいは基準収穫量の設定等、保険設計上のいろいろ技術的な面につきましてできるだけ御協力申し上げ、復帰のときまでに残された時間をフルに活用して調査をさらに深めたいというふうに考えております。  それからパインアップルにつきましては、実は琉球政府自身の基礎調査もまだその緒についたばかりでございます。私どものほうで保険設計上どのような調査をしたらいいか。というのは、本土でもいろいろな制度をこれまで仕組みます場合にさまざまな調査あるいは試験実施等をやった経験がございます。それらのものを、担当の方に研修という名目で私どもの課に来てもらいまして、一緒にパインアップルの調査の調査票を作成して、向こうに帰ってもらうというような状況でございます。  保険制度でございますので、それぞれかなりしっかりとした基礎調査をいたしまして、これに基づいて保険設計をしていく必要があろうかと考えております。
  34. 上原康助

    上原分科員 やはりいろいろ基礎調査をしなければいかない問題も残されているとは思うのですが、サトウキビやパインは、特に干ばつとか台風の多い地域でありますし、それだけにまた保険制度などはかえってむずかしいという逆な面もあると思うのですが、いずれにしても生産農家あるいは農民を保護していく、農業所得をコンスタントなものにしながら高めていくということではどうしても災害補償の対象にしなければいかない作物だと思うのです。そういう意味でも早急にサトウキビやパインアップルについてもその対象適用下にできるように御配慮をいただきたいと思います。  時間が来ましたので、あと一点だけお伺いをしておきたいと思うのです。  農地法の適用の問題との関連におきましていろいろ複雑な面があるようですが、特に不明地主——まあ、沖繩の特殊事情によって出てきた問題があると思うのです。たとえば一例を申し上げますと、現在黙認耕作地というのが相当分野においてありますが、この黙認耕作地等も農地法をそのまま適用していくのかどうか。いくべきでないと思うのです。適用すべきでないと思うのです。この件については、農林省としてはどういう立場で御検討なさっておるのか、御所見を承っておきたいと思います。
  35. 三善信二

    ○三善政府委員 御承知のとおり、沖繩が復帰しますれば農地法の適用というのは原則的にこれは行ないます。ただ、農地法を適用いたします場合に、沖繩の特殊事情がございますので、たとえば米軍の基地に使用されたために住所を移転したとか、あるいは戦時中の強制疎開で余儀なく住所の移転をさせられたとか、そういった方々に対する——農地法で小作地の所有制限というのがございまして、御承知のように在村地主は約一町歩持てますけれども、不在地主は持てない。そういうふうに余儀なく住所を移転されたような方には一応在村地主並みにみなして農地の保有を認めるようなそういう特例を設けたいと思っております。  お尋ねの黙認耕作地でございますが、大体私どもの調査ではこの黙認耕作地が約千五百ヘクタールぐらいあると思っております。この耕作地の中で耕作を営んでおられる方が約一万人いると思います。そのうち八〇%は地主の方が直接自分の土地で耕作をやっているようなケースが多い。ただ御承知のように、黙認耕作地というのは、米軍の基地の一部で、使用していないところを一時農家に耕作を許可している、許可すると申しますか、必要があればいつでも引き揚げるというような特殊な土地であります。したがいまして、結論的に申しますれば、農地法で適用します際に、先ほど申し上げました小作地の所有制限の特例というのはこの黙認耕作地内には適用しないようにしていきたいと思います。ただ黙認耕作地でも、現在賃借権等に基づいて耕作をしておられる方がございます。そういう方に対しては、すぐ地主の人が取り上げるとか、そういうことがないようにしたいと思って、そういう点は一部農地法の適用を行なうというようなことで、実態に即した弾力的な運用をやってまいりたいと思っております。
  36. 上原康助

    上原分科員 時間が来ましたので以上で質問を終えたいのですが、特に大臣に最後に強く要望申し上げておきたいことは、いまいろいろ議論をお聞きになったと思いますが、沖繩の農林漁業の立ちおくれというものを、ぜひ本土復帰にあたって積極的に予算措置の伴う施策というものを打ち出していただいて、農漁民の生活安定、所得の向上というもの——その中からしか私は沖繩の経済開発、社会開発の基盤というものは生まれてこないと思うのです。そういう面で積極的な御配慮を強く要求いたしまして、終えたいと思います。
  37. 植木庚子郎

    ○植木主査 次に、大橋敏雄君。
  38. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 私は、ため池の井樋の問題と、もう一つはいま話題になっております、政府が持っております古古米とそれからお百姓さんが持っていらっしゃる新米との交換問題、この二つをお尋ねしたいと思うのです。  まず最初に、ため池の問題を取り上げたいと思いますけれども、実は私の選挙区は筑豊炭田をかかえているわけでございますが、筑豊地方といえば、だれでも御承知のとおり非常に疲弊し切ったところでございます。これは石炭が終わりまして、ほんとうに見るからにみじめな地域になっているわけでございますが、そうしたいわゆる石炭産業の後退に伴いまして、あと、産炭地域の振興ということでいろいろと議論されている中で、特に農業の振興対策が非常に重要視されてきているわけでございます。私は、こうした筑豊地方等の特殊地帯といいましょうか、そういうところに対する大臣農業政策に対する基本的なお考えがあるのではないかと思いますので、これをまず最初にお尋ねしてみたいと思うのであります。
  39. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 産炭地域は、先ほど話が出ました山村地域と同じように、農業に転換するのに非常に条件が悪いところでございます。でございますので、条件の悪いところを、これは私の抽象的な考えになりますが、構革させるように具体的にいろいろとやっていかなければならぬ、こういうふうに私は思っております。
  40. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 やはり産炭地域のようなところには大臣としても特別な配慮を持っていきたい、このような御答弁であったかのように思います。  そこで、きょうは、ある意味ではそんなことかというようなこまかいことかもしれませんけれども、地方自治体の当事者といいますかあるいは農業従事者の立場からいえばきわめて重要な事柄でございますので、問題を取り上げるわけでございますけれども、御承知のとおり、農業のもとは水であるわけでございます。その貯水した水を適当な時期に適当な水を排水するということはきわめて重大なことであり、また排水計画、排水装置、そういうものが、いわゆるため池というわけでございますが、これが各市町村にかなりあると思うわけであります。私がいま言いたいことは、ため池の中に、ちょうどおふろで言えばせんの役をやっているものがあるのです。井樋といいますけれども、この井樋の改良のことがいま非常に叫ばれているわけです。と申しますのは、ほとんどの井樋は立て樋といいまして、ちょうど池の水中にあるわけです。それはあとで御説明申し上げますが、非常に危険を伴いますし、操作にも困難であるということでその改良ないしは新設、こういうことが急がれているわけでございますが、どういうわけか知りませんが、国庫補助の対象からこの一番大事な井樋の問題が実ははずされているわけですね。そのことについて、ぜがひでもこの際それを取り上げてもらいたいということでいまからお尋ねするわけでございますが、たとえば一例を申し上げますと、福岡県の直方市というものは、その全面積のうち農耕地は、山林、宅地を除きまして千六百八十ヘクタールあるわけでございますが、その中にため池というのが現在百九カ所ございます。その百九カ所のうちで、ただいま言いました危険をはらんでいる、あるいは操作困難な立て樋というものが七十九カ所あるわけですね。あと三十カ所は最近斜樋に改良済みになりました。このように問題であると思われる井樋がたくさんあるわけでございまして、これについて改良は当然であるという地元の農業従事者の意見、それから改良、新設にあたっては当然国庫の補助対象にすべきであるという意見が出ているわけでございますが、これについてまず意見をお伺いしてみたいと思います。
  41. 三善信二

    ○三善政府委員 ため池の新設、改良につきましては、現在制度としまして大きく分けて二つございます。一つは、土地改良事業の中で団体かん排事業ということで、これは非常に小規模の事業でございますが、この団体かん排事業の中でも、やはり受益面積が二十ヘクタール以上というところに一応限定をいたしております。ため池の場合で申しますと、ため池を新設したりあるいは改良をしたりする場合に、その受益の面積、ため池のかんがい用水を使って受益する面積が二十ヘクタール以上であるというのが、一つの前提になっております。  それからもう一つは、これに該当するかとも思いますけれども、老朽ため池の整備事業というものを、非常に小規模なのをやっております。それで、この老朽ため池は、大体その受益面積が五ヘクタールというふうに基準を下げております。それからまた堤の高さと申しますか、ああいうものも五メートル以上とかあるいは貯水量が三万トン、そういった一つの制限をつけまして、小規模のため池の改修につきましてはこの老朽ため池事業でやっているわけでございます。  御指摘の福岡県の直方市の場合、私どもちょっと調査をしてみたのでございますけれども、非常に小規模なため池が百九ございまして、この場合に、ただいま申し上げました老朽ため池の整備事業に該当しないもっと小規模なのが相当数ございます。それにつきましては、福岡県で県費で助成しまして改良の仕事をやっている、またそういうことで現在事業をやっているようなわけでございます。
  42. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 いま局長説明したことは、私も全部承知しているのです。確かに老朽ため池等の整備事業、あるいは公害復旧による整備事業、あるいは災害復旧事業等々、いまおっしゃったようなことは全部あるわけです。私がいま言いたいことは、そうじゃなくて、何と言いますか、ため池それ自体の底を掃除したり、あるいは外郭を直したりというのじゃなくて、もともと、先ほど言いましたように、ふろで言えばそのせんに当たる井樋ですよ。これは非常に肝心かなめのものであり、大事な問題なんですが、これがいま言うように非常に危険な内容を含んでいる。実は直方で実際に起こった事故があるわけです。これはあとで御説明申し上げますが、そういうことで、これはどうしてもまわりのワクを直したり、あるいは底を洗ったりというのじゃなくて、まだしっかりしているため池であろうとも、これは一日も早く立て樋を斜樋に直さなければならぬ、こういうことであるわけです。それがいまおっしゃった中身の中には、どこにも斜樋、井樋に対する国庫補助の事柄については何ら明示がないわけです。どこを読んでもないです。私はこの質問をするにあたりまして、事前に通告いたしまして、実は御親切に農地局からこうして資料をいただきました。このように、小規模のため池の樋管の新設あるいは改修を行ない得る事業とその内容についてはこうこうですと、持ってきてくれました。しかし、どこを見ても、私がいま申し上げておるような中身はないわけです。  そこで私がいま言うように、これは人命救助の立場の上からも、あるいは現在の農政の不合理を是正する立場からも、これは先ほど言った老朽であろうとなかろうと関係なく、これを改良する場合には国庫補助をつけてあげる、そういう基本的な姿に改めてもらいたい、こう言っているわけです。
  43. 三善信二

    ○三善政府委員 先ほど御説明いたしました制度の中では、立て樋、横樋、そういった新設、改良、それも含まっているわけでございます。
  44. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 大臣、いま局長は立て樋、横樋の改良について、それだけでもこれは国庫補助の対象になるんだ、こう答えましたが、間違いありませんね。それでよろしいですね。
  45. 三善信二

    ○三善政府委員 申し上げましたのは、制度のたてまえとしまして、受益面積が老朽ため池の場合には五ヘクタール、あるいは先ほども申し上げましたけれども、貯水量が三万トン、堤防の標高が五メートル、それから事業費が二百万円、そういう条件がみなつくわけでございまして、その範囲内において改良ができるということで、それより非常に小さな金額あるいは受益面積が五ヘクタール以下の問題については適用にならないというわけでございます。
  46. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 いま私が言わんとするのは、そういう条件とは別に、全然関係なく、立て樋を横樋にするその井樋の問題だけを聞いているわけですよ。これは条件云々じゃないんですよ、いま私が言わんとするのは。実はこれは正直なところ盲点なんです。それはいま言ったように、それを改良したいということがたくさん農家にはありますね。事件も起こりましたし、一日も早く立て樋から横樋に改良したい、こう思っても、やはり地方自治体の財源というのは非常に乏しいもので、こたえるわけです。一カ所の場合にはわずか五十万かあるいは七、八十万ぐらいで済むかもしれませんが、それでもたくさんになりますと相当の財源が必要になってくるわけで、そういうことで真剣にこの問題と取り組んでいるわけですよ。だからこういう事業名、それから採択基準というのをいまいただきましたけれども、このほかに、事業名の中にはっきり項目を設けていただいて、その井樋の改良ないしは新設についても国庫補助の対象とみなす、このようにはっきり明示していただければけっこうなんですよ。あなたの気持ちを私は素直に受けられるわけですけれども、いまじゃなりません。ほんとうにこれは盲点です。そういうわけです。
  47. 三善信二

    ○三善政府委員 国が国庫補助の対象といたします場合には、ある程度一つの広がり、ある程度事業の大きさとかそういうことがやはり前提となりまして、あまり小規模なのを取り上げていくということには、全国的な問題もありますし、非常に困難でございます。  それで、いまの福岡の直方の小規模のため池の立て樋、横樋の問題、これにつきましては現に私ども県を指導しまして、県でできるだけのやり方をやるというようなことをしております。現に県は、そういう小規模なのを取り上げてやっております。またほかの県で申し上げますと、御承知のように香川県なんかも相当ため池は多うございますが、香川県でも県単で取り上げて、こういった小規模の事業をやるようにしております。  また、もう一つ、これも御承知かもしれませんが、非補助の融資というのがございまして、融資事業で、三分五厘の非常に低金利の融資でいま申し上げましたような事業をやるということも、これは道は開けておるようなわけでございますから、そういったことで私どもも県をよく指導いたしまして、できるだけ十分な指導、あるいは非常に小さなものについては県でひとつめんどうを見るように十分指導してまいりたいと思っております。
  48. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 大臣、聞いておっていただきたいのですが、私の説明が悪いので、局長さんなかなかのみ込みが悪いと思うのです。ある一定の条件がないと、やはり国庫補助ということにはならないとおっしゃいますけれども、私はこれは最大の条件だと言わんとしているわけですよ。先ほどから何べんも言うようですけれども、おふろのまわりが幾らがんじょうであろうと、あるいはおかまがりっぱなものがついておろうとも、せんをしっかりしておかなければ何にも役に立たないように、その井樋というのは、おふろで言えばせんの役目をしている重要な内容なんですよ。そういうことで、これはまっ先に国庫補助の対象の中身として取り上げるべきだ、こう言っているのです。  実は直方で四十二年七月十七日に事故が起こっております。市立中学生の土佐大三郎という者がちょうどその池で遊泳しておったわけですが、排水口への流水と水圧によって人体が吸い寄せられて、排水口に右足首を吸い込まれて危うく死に直面しようとしていた。そのときに地元消防団を動員して救出作業に当たったけれども、水中の作業のため救出ができないので、市消防団を総動員して堤防を掘り割って捨水して、水を捨ててかろうじて救出したという事件があるわけですね。そのときの写真とかなんとか、こういうふうに私持ってきておるんですけれども、こういうことが現実起こったわけです。それからこの問題がクローズアップされて、これはとんでもない、これはすぐ取りかえようじゃないか、改良しようじゃないか。しかし考えてみたら、これだけ改良するとなれば国庫補助の対象になってないしなあという、そういう不安と心配が出てきて、何としても今度国会が開かれたら、この問題を大臣にお願いして国庫補助の対象にしてもらうようにというようなことで、実はきょうここに立っているわけですよ。大臣の所見を承りたいと思います。
  49. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いま御指摘のことは、人命その他の問題があるから、ため池の設備と離してそれだけを国庫の補助の対象にせい、こういうことだと思います。しかし、やはり国としては、いま局長が言うように国庫補助には基準というものがあるものですから、その基準を取り離してはなかなかむずかしいと思います。でございまするから、融資の面やあるいは県等と一体になって——こちらはため池と一体となってという見方ですから、県のほうを督励してやらせるようにするという以外に、いまのところちょっとないんじゃないでしょうか。まあそんな感じがします。
  50. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 大臣、おそらく大臣も詳しい事情はまだ御承知でないように私は思うわけです。私がここまで一生懸命いま叫んでいるわけでございますので、もう一回この実情を調べてもらって——これは直方市の問題だけではないのです。全国に影響する問題ですから、そんなすげなく、いままでの基準どおりで、単に県単事業で何とかやっていけるんじゃないかというような冷たい措置ではなくて、一ぺん真剣にこの問題を取り上げてもらって、その上で決定していただきたい、こう希望をいたします。どうでしょうか。
  51. 三善信二

    ○三善政府委員 現在その実情につきまして、私ども県等から一応は聞いておるわけでございます。なお御要望もございますので、県にもう少しそういう実態を調べるようにひとつ指導してみたいと思っております。
  52. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 じゃ大臣も、いまの件は県を通してこの指導を強化していくということ、御了解もらえますね。
  53. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 はい。
  54. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 じゃ、もう時間がないので次の問題に移ります。  新米と古古米の交換問題でございますけれども、これは、四十七年度予算編成と並行して自民党の総合農政調査会から農林省に持ち込まれたものだと聞いておるわけでございますが、一体いかなる目的あるいは理由でこのような措置を講じようとなさったのか。まずこれが一点です。  それから、今度のその措置によって、新米の確保はどの程度の量を見込まれたのか。話によれば、三月三日で申し込みを締め切られたということでございますけれども、どの程度の申し込みがあったのかですね。そして目標どおりにいったのかどうかということ、まずその点お伺いしたいと思います。
  55. 亀長友義

    亀長政府委員 四十四年産米と四十六年産米を、農家の保有米について交換をするという制度は、本年の二月から採用いたしまして実施をいたしておりますが、この趣旨は、十一月から四十四年産米を消費者には値引き売却をいたしております。これは徳用上米の形で大幅に値引きをして売却をいたしております。そのような関係から、農家の中で、四十六年産米、つまり新米と同じ、これを消費者と同じ値段で売ってくれるならば交換に応じてもよいというような話がありまして、それに対する道を開く意味でそういう制度を設けたのであります。したがいまして、私どもとして、この数量を特に需給計画期待をして、配給計画上その数量を予定して配給計画を立てておるということはございません。さらに、希望主義でございますから、三月になりまして数字を現在まだ最終的には締めておりませんけれども、希望は思ったより非常に少なかったというのが実情でございます。もちろん国が交換差金を払いますので、この交換差金は、国が新米を買うに必要な米価と、それから四十四年産を消費者に売るために政府が渡しておる価格との差額を国がつけて交換をするわけでございますが、希望はきわめて少ないものであるというふうに報告を受けております。しかし、需給計画上は当初からそう数量的に予想するということは考えておりませんので、配給計画には何の支障もございません。ただ私どもとしては、もし農家が応じてくれるならば、それは政府の手持ちの四十四年産米と四十六年産米が、いわゆる在庫が新鮮化する、こういうことになるわけでございますから、もちろん応じてくれればまことにけっこうなことであると考えておりましたが、先ほどのとおり、非常に少ない数量でございます。
  56. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 いま長官の話は、私はきわめておもしろい答弁だと思うて聞いておりました。政府がある仕事をなさるとき、需給計画も何も立てないで、あるいは確固たる計画もなくそういうものを打ち出すなんということは不見識じゃないか。というのは、この出されました交換問題、これを地元の農業従事者たちは何と言っておるかというと、またまた場当たりな政策でかかってきたぞ、大体農林省何を考えているのだろうかという批判の声が実際に強いですよ。いまあまり応じなかったと言いますけれども、そのとおりだろうと思います。大体このような計画を立てるその政策的な発想はどこにあったのか。ただ倉庫の古古米を新米にかえる、単なるそれだけですか。
  57. 亀長友義

    亀長政府委員 先ほど申しましたように、消費者には、昨年十一月から四十四年産を割引売却をいたしております。そこで東北地方の県農協あたりで、農家にも交換をしてくれるならば、自分たちは、差金というものはもちろんほしいけれども、新米を出してもいいということでしたので、そういう要望を取り入れて、私どもとしてはそういう農家にもひとつ道を開こうじゃないか、そういう意味で道を開いたわけでございます。何か非常に大政策のように考えられた方があるいはおありになったのかと思いますけれども、私どもの気持ちとしてはそういう気持でございます。
  58. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 これはたいへんなことですね。私たちはこういうふうにとりましたよ。お百姓さんは古い米でしんぼうしろ、いわゆる新米は政府に持ってこい、そのかわり差額金一俵当たり、大体六十キロ当たり、二千七百何ぼの差額金をつけるなんというようなことのように私は見たわけですよ。お百姓さんは古い米でしんぼうしろ、極端な言い方になるかもしれませんけれども、そういうふうにとれてなりません。  それから、私はそのこと自体が一つの問題点だと思っているわけでございますけれども、政府としては大体一万トンぐらいのあれはあるのではないかということで始められたように聞いたわけですけれども、実際にどのくらいの交換の内容になっておりますか、どのくらいの申し込みがあったか、数字の上で説明してください。
  59. 亀長友義

    亀長政府委員 数量の見込みは、先ほど申しましたように、私ども農家の希望に応じてということでございますから——現在消費者の方にも十一月から割引売却をしておる、別に生産者だけに古米を食べなさいといっているわけでもございませんので、消費者につきましてもこれは希望主義でございます。希望があれば四十三年米を安く売りますということを実施しておる。農家の方にもそれの道を開いたということでございます。数量ははっきりしないので、実際農業団体等も、数量の見当はつきませんと、最初からそういうことでございましたから、私どもあまりはっきりした目標は立てておりません。したがいまして、もちろん各県に、おまえのところは何ぼ出す、そんなことは一切いたしておりません。三月初め、三月三日に第一次の受付をしたときには、大体二千俵の希望が東北地方であったというふうに聞いております。しかし、たしか三月十五日まで、年度末ぎりぎりまで締めは延ばしたほうがいいではないかというので、十五日まで延ばしておるはずですが、最終的な締めは現在まだ出ておりません。そう大きな数量にはなるまいと思います。
  60. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 時間もたってきましたが、一俵当たり平均二千七百円の差金を出すわけでしょう。その金は第一どこから出すのですか。
  61. 亀長友義

    亀長政府委員 食管特別会計の米の買い入れ費から出すわけでございます。これは新米取得に要する経費でございますから、買い入れ費の予算を使用するわけでございます。
  62. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 私は、これは食管会計のむだづかいのような気がしてならぬですね。  大臣、もう時間がございませんので、もっと中身を詳しく御説明申し上げれば大臣の理解も深まると思ったのですけれども、時間の関係ではしょって話して、わかりにくいと思います。この問題は、農家の方々は非常に疑問視しております。私の地元でも、この話が不徹底のために、ほんとうに戸惑っておりました。一体どこから、だれがこれをきめて、どうしようというのだろうかと、PR不足といいますか、これだけの政策が大きな政策でないなんておっしゃっていますけれども、一俵当たり二千七百何ぼ現金を出そうということですから、これは決してこまかい問題ではないと私は思っております。いまの長官の認識は改めてもらわなくてはならぬと思うのです。大臣そのものがどのような見解をお持ちなのか、承りたいと思います。
  63. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 まあそうたくさんのあれでもないようでございます、なんと言ってはおこられるかもしらぬが、少ない数で、希望に応じてやっておるということですから、あまりこれ希望もないのじゃないかと私も見ておったものですから、やるままにまかしておったのですが……。
  64. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 これはあんまり変な政策を打ち出されますと、農民はほんとうに戸惑います。というのは、いままで生産調整に協力してきたけれども、こんな政策をまた打ち出すのだったら、もう生産調整なんということは協力する必要ない、われわれは思ったとおりやるぞ、こういう声も出ておりますからね。へたな政策を思い当たりで打ち出されたのでは迷惑でございます。  最後に、もう時間が来ましたので、一言申し上げますと、要するに私は、農政の抜本対策といいますか、これをまずがっちり打ち立てて——これがないからこういう問題になると思うのです。これを打ち立てて、そしてその基準がきまりましたら、農家の方々とよく対話をして、その上で確固たる政策を打ち出していく、こういう基本的な考えに立ち戻ってもらいたい。  最後に要望申し上げまして、大臣の所見を伺って、終わりたいと思います。
  65. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 御所見のとおりと私も考えております。
  66. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 終わります。
  67. 植木庚子郎

    ○植木主査 次は、栗山礼行君。
  68. 栗山礼行

    栗山分科員 御承知のとおり、最近の都市化現象、それに伴います過密現象、それから日本農業の自由化の中において、一体日本農業方向づけをどうするかというような重要な転機の一面に差しかかっておる、こういう理解をいたしておるわけです。こういうような時点と、将来の日本の上に農政の方向づけを考えまするときに、法制上定めております農業委員会——単なる法律解釈は私は承知をいたしておりますが、農業委員会の役割り、農業委員の評価、こういうことについて所管の局長がどのようにひとつ評価と認識をされておるか、重要な問題は大臣に御足労をわずらわしてお伺いいたしたいと思いますが、所管の局長の御意見を伺いたい。
  69. 内村良英

    内村(良)政府委員 農業委員会の農業の世界における役割り、私はこれは非常に重要な役割りを果たしていると思います。御承知のとおり、農業委員会は、農地法あるいは土地改良法等によりまして、権限に属した事項を行政委員会としてやっております。それ以外に最近の雇用の問題、すなわち農家の人が農業から離れて産業に就職したい、あるいはどこかに一時的に働きに行きたいというようなことが最近非常にふえておりまして、そういうようなことにつきましても農業委員会を使いまして、いわゆる雇用近代化促進事業というものを農業委員会にやらしておるわけであります。その他今後の日本農業の将来ということを考えてまいります場合に、私は農業委員会は大きな、重要な委員会であるというふうに考えております。
  70. 栗山礼行

    栗山分科員 適切な御説明をいただきまして、その評価と任務について同感の意を表するにやぶさかではございません。そこで問題になってくるのですが、今後の——私間違いましたらお許しをいただきたいと思うのでありますが、そういう御説明のような重要な役割りを持っております農業委員会の農業委員の手当の問題についてであります。四十六年度までは、私は九百円だと記憶いたしておりますが、今回わずかに百円のベースアップをいたしまして、そして審議の対象に進めておる、こういう一つの事実を見ます場合に、一体農業委員会の委員の役割りと使命、こういう評価についてどういう評価をされておるかということを私が伺いたい。ひとつ本心またそこにあったわけでありまして、この点についてあなたの前言の問題と、ただいろいろ経済上の問題のみが重要な任務づけの裏づけだというようには私は考えておりませんが、しかしまた一面からいきますと、どのような諸待遇で重要な役割りを推進せしめるか、こういうことが経済の裏づけの重要な客観的な条件の一つになっておる。こういうことを考えますと、あまりにどうも委員会の委員の手当が矛盾撞着におちいらざるを得ない、こういう感を深めておりますので、この点についてひとつ御答弁いただきたい。
  71. 内村良英

    内村(良)政府委員 私どもといたしましても、農業委員会の委員手当というものは、できるだけふやしたいということを常々考えておるわけでございます。四十七年度予算要求におきましては、ただいま先生からお話がございましたように、四十六年度の九百円を千円にしかできなかったということでございますが、これは過去の経緯等もございまして、一挙に多額のものを出すということもなかなかむずかしい事情もございますので、私どもとしては一生懸命努力いたしまして、とにかく百円の引き上げをはかった、いまの物価事情からいったら、それは低過ぎるのではないかということもあるかと思いますが、私どもといたしましては、予算折衝の過程で一生懸命努力したつもりでございます。
  72. 栗山礼行

    栗山分科員 それなりの評価をされていろいろ予算づけされた、また大蔵省との折衝過程におけるなかなか難解の問題の諸点も私は存在したようにも了察できるのでありますけれども、やはり委員会の客観的な任務変更というものが起きてまいりますね。特にいまの農業委員会の役割りというものが、お説のような重大な転機に立つ農業委員会の一つの進路と方向、こういうふうな多面的な任務を持つときに、ひとつ百円の引き上げということで努力をいたしてまいった、これが現時点の最大の成果である、こういう事柄については、少し常識論的にながめましても農業委員会の役割りを軽視するものである。特に私もこの間物特の連合審査で申し上げたのでありますが、何よりも日本農業を愛される、そして農民を愛する、こういうような農林大臣をいただいておる農林省の農政の方向づけとしては、少しかっこうをつけにくいのではないか、こういう感が深いのです。これは大臣の御答弁けっこうでございますが、やはり思いを新たにして、ひとつ現状と将来の任務の誇りと内容を持って前進するという方向づけ、それがやはり政治と行政の役割りだということを局長十分踏まえて御検討いただいて、お運びをいただく用意があるかどうか、これをひとつ……。
  73. 内村良英

    内村(良)政府委員 今後農業委員会の役割りの重要性にかんがみて、私どもといたしましても一生懸命努力したいと思います。
  74. 栗山礼行

    栗山分科員 関連いたしまして、同様なことでまたお尋ね申し上げなくちゃならぬと思います。これはやはり農業委員会の事務職員の問題であります。国の職員給与の補助というのは、一委員会一職員、こういう一つの規定のもとに運用されておる、私はこういうような御答弁はけっこうなんであります。こういう一委員会一職員の制度をいたしておりますけれども、これは地方交付税によりまして増員の操作をいたしております。おそらくそういうようなお説も出るやに思うのでありますが、もしそういう御答弁をされますと、これは本末転倒もはなはだしい、こういうような議論にならざるを得ない、こういうふうに思うのでありますが、やはり一委員会複数制でそういう任務づけが行なわれる配置という方向づけをしていくのだ、同時に、現行の条件について、私は、必ずしも適正なものだと、農業委員の諸手当を見ましてもその感を持つことができないのでありまして、あわせて現状の待遇改善等を含めて、ひとつ現状から改善する意思ありやいなやということについて御明確にお答えいただきたい。
  75. 内村良英

    内村(良)政府委員 職員の待遇改善の問題でございますが、この点につきましても、私どもといたしましては過去五年間いろいろ努力してきたわけでございます。そこで農業委員会の職員のことでございますから、公務員の行政職の大体何等級何号俸というようなことでやるわけでございますが、四十三年にはこれが行政職の七等級の一号俸だったわけでございます。それを四十七年の予算では七等級の六号俸まで上げたわけであります。実際の手取り額を申しますと、本俸が五万百円、それに扶養手当その他が入りまして、大体七万円をオーバーする程度の額まで一応努力して引き上げてきた次第でございます。
  76. 栗山礼行

    栗山分科員 もう一つは、一委員会一職員という制度運用の問題について、私は複数制という委員会の実態に即する制度上の問題も検討すべき時期にあるのでないか。委員会の重要性ということを私も考えておりますし、局長自身もそういうふうなとらえ方をされておるのでございますから、この点はやはり将来の農業委員会の行政運用上のかなめの問題でございますので、それにおこたえいただいておらぬ、こういうことだと思います。
  77. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいまの一委員会一職員という点でございますが、これにつきましては、昭和四十三年に大蔵、自治、農林三省で農業委員会の実態調査を行なっております。その場合に大体二・〇五人の職員がおれば農業委員会の仕事ができるのじゃないかという結果が出たわけでございますが、その農業委員会の事務のうち約五八%がいわゆる必須的な事務であるというようなことから、その必須的な事務について国庫負担ということになりますと、大体一委員会一人が妥当なのではないか。その他の事務がございますので、先ほど先生からもお話がございましたけれども、こういった任意的な事務につきましては、地方交付税の算出基礎に入っておりまして、二人の職員が置かれる、こういうことに相なっているわけでございます。
  78. 栗山礼行

    栗山分科員 これは若干平行線がございます。私は地方交付税によります一つの問題等も若干承知をいたしておるわけでございますが、そのとらえ方と、それからいま私が申し上げております委員会自体の職員の任務づけというものとは、おのずから別にいたさなくてはならぬということで、私は、職員問題と給与の体系の問題ということをあわせて検討をなすべき問題じゃないか、こういうことを申し上げたのであります。御回答を時間の関係上いただかなくてけっこうでありますが、必ずしも皆さんのサイドでお考えになっているということが現状に適するものばかりではない、こういうことでございまして、もう少し深刻に実態の分析と把握をしていただいて、それに対応するという方向で前向きにやっていただきたいということを、これはひとつ御要望として申し上げてまいりたい、かように考えております。  次の問題は、農地保有合理化関係事務処理に要する費用の問題、こういうことで所管の局長さんおいでになりますか。——俗に言って、農地移動適正化あっせんとも一名通称いわれておるようであります。さらに都市近郊地域農村の合理的利用に関する経費ですね、これの助成はどのような基準と内容によって助成金を交付されておるのか、それをちょっとお伺いいたしたい。
  79. 三善信二

    ○三善政府委員 農地保有の合理化によりまして、特に最近の農業構造改善事業によりまして、農家経営規模の拡大、農用地を集団化する、そういった農地保有合理化事業というのは非常に重要でございまして、四十四年からこの点を加味しまして、農地の移動適正化あっせん事業というものを農業委員会に実はしていただいているわけでございます。  この事業予算としましては、四十六年度現在は約一億五千六百万でございます。もちろん国二分の一と町村二分の一の負担。それから四十七年度、来年度は現在要求いたしております予算としましては、相当大幅に増額いたしまして二億五千二百万、端数がございますが、相当この事業の重要性にもかんがみまして、大幅な増額をいたすように処置していきたいと思っております。
  80. 栗山礼行

    栗山分科員 昨年から対比いたしまして何%のアップになりますか、二億五千の予算は。
  81. 三善信二

    ○三善政府委員 一億五千六百万が二億五千二百万でございます。約七割の増加を要求いたしております。
  82. 栗山礼行

    栗山分科員 はい、わかりました。  過般私、物特の連合審査がございましたときに、農林大臣にあえてお尋ねせぬで、木村経企庁長官の所信表明の中にございました事柄を中心に質問を展開いたしました。それは以下のようなことでございます。  四月の一日から米の物統令が廃止になる。これに伴いまして木村長官は、ひとつ小売り業者の新規参入制度を採用して取りはからってまいりたい、こういう所信表明がなされました。このことについて私は、既存の小売り店から拡大されて、新規参入とは、たとえばデパートであるとかスーパーであるとか、あるいは生協であるとか、あるいは食料品店であるとか、そういうふうな関連性を持つ業者について新しい販売制度を認めてまいるという意味ですか、こういうことのお尋ねを申し上げたのでありますが、そのとおり考えております、こういう経企庁長官の御意見でございます。これはもうあらためて農林省の、これは経企の長官の所信表明でございまして、農林省の御見解をひとつ明確に伺ってまいりたい。特に物統令が四月一日でございますか、日が迫っておりますが、新規参入制度について、善否は別にいたしまして、いつから実施をいたしていこうというお考えの準備をされておるか、こういう点が承れればなおけっこうだ、こういうことでございます。
  83. 亀長友義

    亀長政府委員 御質問のとおり、また企画庁長官の御説明のとおりでございまして、すでに事務手続を進めております。物統令の撤廃は四月一日というように考えておりまして、すでにそれに伴いまして米の小売り販売業者の新規参入に関する事務の受け付けを三月の初めから、新規参入の対象になる地域、すなわち東京、大阪、その他七大都市でございますが、そういうところでは新規参入の登録を受け付けております。四月の二十日ごろまでに新規のほうの申請を受け付けまして、登録の要件に該当するものにつきましては逐次認可をしてまいりたいということで、第一次のものはおそらく今月中に打り切りまして四月一日までに開業ができるようにする、そのような準備を進めております。  この大都市以外の地域におきましては、都道府県知事が、人口増加その他の要件の模様によって認定をした上で実施をするということになっておりますが、現在の段階でも、大都市周辺の県等では新規参入を受け付ける告示をいたしておるところもございます。七大都市につきましてはすでに事務手続が始まっておる状況でございます。
  84. 栗山礼行

    栗山分科員 よく御説明を伺いまして、その範囲内において承知をいたしましたが、現在事務を始めておる、そうしてもうすでに四月の二十日を限度としてその受け付けの事務まで進行いたしておる。特定の地域については府県知事のもとにおける一つのそういう事務の作業をいたしてまいっておる、こういうふうなお話でございますが、そういたしますと、今度の第一次の新規参入というものの規模をどの程度に考えて具体的作業をされておるのか、これが一点でございます。  それから二点は、すでに既存業者は来たるべきものが来たというような感を深めておろうかと思うのでありますが、この既存小売り業者と新規業者との関連というものにつきましては、片一方は米一本で生きてまいったというようなものでございましょう、その他複合的なものがあるかもしれませんけれども。片一方は多面的な多角経営という、一つ事業的なサイドでものを見てまいる、こういう性格の相違等も起きてまいってくるやに承知をいたすのでありますが、これらの点から考えまして、将来、価格の問題についていろいろ複雑な様相が予想されるのでありますが、そういうような問題についての見通しや、あるいは新規参入後における米価の消費者に与える一つの影響というものはどういうふうな方向をたどるか、こういうふうな見通しについても当然お持ちいただいているのではないかと思いますので、ひとつお伺い申し上げたい。
  85. 亀長友義

    亀長政府委員 新規参入の規模でございますが、七大都市におきます現在の受け付け状況、これも途中でございます。また各方面あるいは新聞等に記載されておる数量から想像するほかないわけでございます。もちろんこの新規参入には一定の要件がございまして、事務経験者が必ずいることとか、店舗はこの程度あることというふうに各県知事が参入の基準をきめております。それに該当したものだけが登録を受理されるということになるわけでございますが、その数量を非常に大きく言われたり、少なく言われたり、また他店の進出模様を見て、自分がほんとうにやるのかどうかというような、模様待ちの気風もかなりあるようでございます。非常に大ざっぱな推定をいたしますれば、大体こういう都市ではいままでのものの一割から一割五分くらいは新規の進出があるのではないか。もちろんその中には、戦前米屋さんをやっておった方が再び開業をされる、あるいは店員だった人が、独立をされるスーパーが開くとか、生協が開くとか、いろいろな形があると思います。  それから専業、兼業の問題でございますが、現在の登録米屋でも事実上、米の販売の専業というものもございますけれども、かなり兼業化の傾向が強く相なってきております。ただ、比較的に申せば、先生がいま御指摘のように、新しく出る人は兼業の人が多かろうというようなことは私どもも承知いたしておりますし、また米の販売の形が、どちらかといえば、大型精米所でコストを安く生産したものを機械的に小売りの店頭に並べて売るという形が現在進みつつありますので、そういう点から従来の米屋さんと新規の人との間に、商品販売上に考え方、売り方等でいろいろ違ってまいると思います。私どもとしては、消費者米価の安定に貢献するというのが現在の登録制度の使命である。当然、営業を制限しておるわけでございますから、それなりに登録を受けた人にはその目的に沿ったような販売のしかたをしてもらいたいという意味合いから、標準価格米等の指導についても強力な指導をいたしまして、私どもとしては、米価の安定という点については万全を期してまいりたいと考えております。
  86. 栗山礼行

    栗山分科員 なかなか事実上むずかしい問題でございまして、これは議論の存するところでございますけれども、残念ながら当分科会で議論をいたす時間がございませんから、承りまして、この問題はひとつ後日取り組んでまいりたい。御了承いただきたいと思います。  あまり時間がございませんから、この問題は大臣からひとつ短いことばでけっこうでございますが、米の自由販売に伴いまして、私のいま耳に入っております点で、再び米が戦前のような商品市場の対象上の問題になるのではないか。それは、米の取引所がございまして、しかもこれは実売りとから売りというような、言うならば不健全なばくち行為の一面の要素を持った相場的条件のものでございます。こういうふうなことをすでに大手商社、業者のほうで真摯に検討いたしておる。御承知のとおり大豆とかいろいろ特殊なものが、商品市場ということで取り組んでおりますが、米もあわせて有力な商品市場の対象物だということで、某商社のごときにおきましてはそれを専門的に真剣に検討いたしておる、こういうふうな傾向がございます。いいとか悪いとかいう議論を展開いたしませんが、そういうことが大臣の耳に入っておるかどうか。もしそういうことが起きれば、日本の米騒動という、あの大正七年の事態の要素ともなりかねない。私の子供時代でございました。銃剣をつけた兵隊に私のささやかな倉も守られまして、そうして米が、五銭が十五銭なり三十銭なり五十銭なりになりまして、ついに五銭で売る、こういうふうな私の童心を一つ思い浮かべましても、非常に大きな問題がございました。こういうような一つの要素のことにもなりかねないというような状況を考えますときに、大臣はこの問題についてどうこれをとらえておいでになるかということも重要な問題であろうか、かように考えておりますので、ひとつ最後に大臣から御答弁をいただきたい。
  87. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 そういううわさらしいものは聞いていないわけでもございませんが、私も大正七年の米騒動のときには子供のころで、よく承知しています。あれが動機になって米に対する統制といいますか、米穀統制法なんかだんだん出てきたものだと思います。でございますから、ああいう事態におちいるようなことは絶対に避けたらいいと思います。でありますから、正米市場等はいま考えておりません。
  88. 栗山礼行

    栗山分科員 もう三分お許しをいただいておるわけでございますが、ただいま私、日経の夕刊を見ますと、きょうは定例の閣議があったようでございます。直接は地方税法の一部改正の法律案が、すでに御案内のとおりいわゆる宅地並み課税、こういうことで四十七年の四月一日から実施をするということで、大半の線引きを終わってまいりました。いろいろ政党間のサイドにおいて、あるいは農民団体において、あるいは農民において論議をかもしまして、この問題が一つの大きな政治問題になってまいりました。これは主として地方税法の問題でありまして、特に固定資産税の問題でございますけれども、直接は日本農業政策に大きく関係する問題でございます。きょうの夕刊を見ますと、自民党の一つの案を提示されまして、そうして閣議で赤城農林大臣は、この問題のとらえ方としては慎重審議に欠ける面があったが、今度の党の一つの改正の決定の線はやむを得ないだろうと思う、こういうふうに宅地並み課税の問題は新しい議員立法の方式で進んでまいる、こういうことであろうかと思うのでありますけれども、かように新聞に載っておりますことを、そのままひとつ赤城農林大臣の御意見として御理解をさせていただくということでいいかということをお伺いをいたしたい、かように考えます。  それからもう一点であります。どうしてもあなた方専門家に伺ってまいりたいのは、これは選択的拡大農政、こういうふうなことを、あなたの時代でございませんけれども、いろいろいわれてまいりました。最近また総合農政というような一つの表現に変わってまいったのでありますが、取り巻く日本農業というものにつきましては、まことに前言申し上げましたように、日本の農政の行く手というものについて、農業のあり方というものについて、農民が大きな不安と疑惑と不信とを抱いておるというような混迷下にあることは事実であろうか、こう思うのでありますが、こういう観点からいろいろな説もございますけれども、ずばり申し上げて日本の農政の方向とはかく行くべきだ——私は非常に農政について赤城先生を尊敬いたしておりますので、一言でけっこうでございますから、そういう指針の方向をひとつお示しを願いたい、この二点を大臣にお願いしたい。
  89. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 前段の市街地の課税の問題は新聞に出ているとおりでございまして、去年の法律をつくるときに非常に慎重を欠いておるのでないか。市街地の農地転換の問題ならわかるのですが、それを税金の問題と一緒にしてやっていった。これは別の問題で、宅地造成とかあるいは課税というのは別の観点からやるべきなのに、それを一緒にしてやっていったから、こういう混乱が出てきたのではないか、慎重を欠いておったのではないか。しかし、法律が一たんできたので、今度改正するならば、いま検討しているところはやむを得ないじゃないか、こういう見解をきょう閣議で申したのは新聞のとおりでございます。  第二の点でございますが、選択的拡大とか総合農政とかいろいろ言ってきていますが、私は、農業というものを存続してしっかりしたものにしていくということは、農業農業でやっていける、ほんとうは兼業じゃなくて農業だけで生計がやっていけるということと、それからもう一つは、農業者国民に食糧を提供していく、こういう使命があると思います。そういう意味におきまして、やはり農業者生産性を上げてやっていけるようにやっていく。これは国際競争力にも役立つだろうと思うのであります。もう一つはやはり需給のバランスをとって、食糧生産者でない者にまで安くといいますか、生産費が下がるような政策をやって、そして提供する、こういう二つの道で農業というものを進めていかなくちゃならぬ、こう考えております。
  90. 栗山礼行

    栗山分科員 たいへんどうも時間が経過いたしましたが、最後に私、いろいろ御高説を拝しまして力強く感ずるわけでございます。これもまた三分や五分で日本農政の指針をお伺いするというようなことも暴論か、こういうふうに考えるわけでございますが、ただ一言、残念ながら日本の農民の日本農業のとらえ方というものにつきましては、大きな不信と疑惑と不安を抱いておるという現実を否定することのできない一つ状況を考え合わせていただきまして、新しい農民の勇気と希望とそして生産者としての大きな誇りを持って前進するというような赤城先生の農政の推進を強くお願い申し上げて、私の質問を終わります。
  91. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 御意見ありがたく拝聴いたしました。
  92. 植木庚子郎

    ○植木主査 次は沖本泰幸君。
  93. 沖本泰幸

    沖本分科員 私は主として同和対策につきましてお伺いしたいと思います。  いま栗山先生が、農民が将来に対して非常な疑惑を持つというお話をなさっておりましたが、より以上に農漁業に携わる同和対策地域の人たちがもう一つひどい疑惑に立っているという点をお考えいただきたいわけです。  それでいま日本の国は沖繩の返還を迎えようとしております。ところが沖繩が悪いというわけではないのですが、沖繩百万県民といわれております。同和対策の人口は約三百万から四百万、こういわれておるわけです。同じように片や沖繩は異国の支配を受けて現在まで戦後二十数年間われわれの手元を離れて苦しんできた。何とかあたたかく、明るく迎えてあげたい、こういうことでいろいろなことが行なわれているわけです。ところが同和地域の方々は解放令が出てから約百年、その中で江戸時代からの差別は、形を変えながらまた差別が起こってきたわけです。そういうことですから、もっと問題は深刻なんだという点をとらえていただかなければならないと思います。四十四年の七月に同和対策特別措置法ができましたけれども、法律を生んだだけであって、中身が伴って  こないために、いまは非常な混乱が各地で起こっておるわけです。そしてその地方自治体では、政府でつくったところの法律のためといってもいいぐらいにしわ寄せをこうむって、非常な苦しみを感じていなければならない。法律ができたわけですから、当然その法律を実施してもらわなければならないという要求が起きてくるわけです。それに予算は伴ってこない、こういう関係から、持っている手持ちの金の中から資金繰りをしていかなければならない、こういう現実の問題がいま起きて、全国のこの同和問題を解決しなければならない地方自治体ではたいへんな混乱を来たしておるわけです。そういう問題をとらえて考えてもいただかなければなりませんし、また同和問題ということになれば、しいたげられた農漁村民の悲劇でもあったということも言えるわけです。これは農地の改革があってもらったけれども、どうにもならない土地をもらってみたり、日の当たらないところの土地をもらってみたり、漁港や漁船、漁具の伴わない漁業権を得てみたり、全く悲惨な暮らし方をしなければならないわけです。そういう点をとらえて考えていかなければなりませんし、また今度は何かのことで同和対策の事業が行なわれると、あまりにもいい目をしているじゃないか、こういうふうな考え方も出てきているわけです。そういう問題を考えていきますときに、はたしてよくなるためにこの法律ができたのに、混乱が起きておる。それがちっともいい方向に向かっていかない。こういう点をどうしたら解決できるのかということになってくるわけです。そういう点をとらえてことしの、あるいはこれから十年間の時限立法の中で、ある程度の年数を経てしまったあと農林省としては農業漁業に携わるこれらの差別を受ける人たちの問題を今後どういうふうに解決をしておいきになるか、まずその辺から農林大臣に伺っておきたいと思います。
  94. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 担当のほうから申し上げたいと思いますが、いまのお話しのとおりに、これは経済問題であるとともに、経済問題外にも非常な差別を受けて長い間苦しんできたのでございまするから、経済外、経済面両面において——経済面がなかなか重要な要素でございますから、経済面においてこういういままで差別というか、悲惨な立場に置かれた者を国家として回復するような政策、対策もありますが、法律もありますが、その趣旨を十二分に生かしながら進めていきたい、こういうふうに私は考えております。
  95. 沖本泰幸

    沖本分科員 大臣もおからだがお弱いし、お都合もあるということなんで、こまかい問題について大臣にお伺いしてもお答えを得られるわけでもありませんので、いまお答えがあったとおりなんですが、差別とは何だということの基本的な問題をまず握っていただきたいわけです。それから発想していかないとこの問題は解決できないわけです。その辺を大臣が心の中にとめていただいて、それで同和問題を解決するための施策というものを基本的におつくりいただきたいわけです。これは去年も申し上げたわけなんですが、総理府のこの特別措置法に伴う実態調査を経てから各省も具体的な問題をつくっていく、こういうお答えが去年あったわけです。しかし、実際にどの程度のものができているかできていないかというものはまだはっきりしていないわけです。そういうものができないと幾らわいわい言ったって、これはことばの上で終わってしまうわけですから、そういう点もとらえていただいて、大臣がことしならことし具体的な施策を講じるような方向方針をつくろう、そういうようなお考えでいらっしゃるかどうか。これは十年なら十年で、何年か経たわけですから、あと何年でこの問題を解決するにはこうしなければいけない、ああしなければいけないという問題があるはずなんです。そういうものをやらせよう、こういうふうな前向きなお考えでいらっしゃるかどうか、その点だけお伺いして、あとは御担当の方にお伺いしたいと思います。
  96. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 心がまえというか方針は、いま御指摘のとおりでございます。
  97. 沖本泰幸

    沖本分科員 大臣はけっこうでございます。あとは御担当の方にいろいろ伺います。時間がもったいないのですぐ御質問します。  これは全国水平社創立五十周年記念の中の「解放理論を部落大衆の手で」ということでいろいろ研究発表になった内容の中に書いてあるわけですけれども、「いま政府は、米の生産過剰を理由に、昨年から生産調整という名のもとに減反政策を押しつけ、さらに四六年度は二割五分の減反を強制しつつあります。その反面、米価は三年連続で据置き(実質的に米価の引き下げである)、すべての公共料金引き上げにともなう諸物価の値上がり等は、目にあまるものがあります。」これからが問題なんです。「一方、漁場においては、政治と資本が結託して大型漁船を中心とする漁場の独占が行なわれ、資本をもたない部落の漁民は漁場から閉め出されて丘に上がったカッパの如く、明日の生活より今日の食事に困るという最も緊急な事態まで発展してきています。このように、政府のとられるすべての政策が、農村と漁村をとわず、土地と漁場と船をもたない部落の解放のためにとられるのではなくて、ますます部落農民と漁民を閉め出し、生活貧困を極度に深めつつあります。昭和二二年の農地改革によって、わずかの小作地を解放された部落農民はさらに「新都市計画法」によって、市街化区域と調整区域に一方的に設定されることによって土地の固定化と重税が強制され、ただでさえ農業だけでやっていけない部落農民は、日雇いと出稼ぎによって生活を維持し、その日のかてを得ているのが現実であり、安定した近代企業や産業でないため、劣悪な労働条件と環境のもとで土方仕事に苦しんでおります。したがって、今日の部落農民は、農業が本業でなく、農業は副業化し、ほとんどの農作業は一部の婦人と老人まかせとなり、働きざかりの人と青年はすべて不安定な日雇いと出稼ぎ仕事をもとめて働かざるを得ないのが現状であります。とりわけ、近代産業の発展都市構造の改革等による公害は、直接周辺の部落に影響を与え、人命が危険にさらされ環境はますます劣悪となりつつあります。このような零細な農漁民に対する生産手段をあたえ、農漁民の希望と期待がもてる政策が「同和」対策特別措置法によって望まれながらも、その中身は骨抜きとなり、部落農民と漁民の救済どころか、激動する社会情勢の中でひとり部落の農漁民が取り残され、見放されることによってますます生活を破壊されつつあります。このことは、部落農民が土地所有の面から閉め出され、部落の漁民が漁業権から排除されているところにこそ、根本的な部落差別の本質があることを知らなければなりません。」こういうふうになっているわけです。これはよく御存じだと思いますし、いま申し上げた一連の内容は現在置かれている農漁村の方々の立場でもあるわけなんです。そういう面について本年度の予算を見てみましても、どの程度同和対策に見るべきものがあるのかという点を疑わざるを得ないわけですが、農林省としてこの面については現在どういう計画をお持ちでしょうか。
  98. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいま先生から御指摘がございましたように、同和地区におきましては農林漁業は他に比べて経営規模が零細でございます。統計を調べてみますと、同和地区経営規模は大体五十三アールということで、普通の他の農家の半分くらいの経営規模しかないわけでございます。これは非常に問題でございまして、さらにいままでの条件が悪かったということで生産性も低いわけでございまして、農林省といたしましては、昭和三十五年以降、国の同和対策の一環として特別な高率補助の農林漁業関係同和対策事業を実施してまいりました。そこで、四十七年度につきましては、四十六年度の本事業関係の予算は約十億三百万円であったわけでございますが、四十七年度はこれを十五億四百万円というふうにふやしております。その他公共事業の中から同和対策農業基盤整備事業というものを別ワクにいたしておりますし、さらに漁港の整備につきましても公共事業の中から特に同和対策の一環として予算をとるというようなことで、従来に比べましてかなり一生懸命私どもといたしましては予算の充実にはつとめておるところでございます。
  99. 沖本泰幸

    沖本分科員 お答えとしてはそういう形になるとは思うんですが、そこで一つ申し上げたいわけですが、「部落差別はない、ねてる子を起すようなことをするな、というひとびとは、今日かなりすくなくなったようだが、まだまだ根強く残っている。部落問題についてあるていどの認識と同情をもっている場合でも、そんなに深刻な問題であるとは考えていないひとびとが沢山いる。しかし、ここに特集した数々の差別の事実は、部落差別の深刻さと悲惨さをひとびとに問いかけその再認識を要求している。むかしむかし、こんな差別がありました、というのではない。人間衛生」人工衛星ですが、「人間衛星が飛び国の経済が世界第二位、外貨保有百五〇億ドル突破という現在のわれわれのまわりにおこって」いる、こういうことになるわけです。これは各省ともみな通ずる問題なんですけれども、そこでこの問題を解決するには、先ほどちょっと申し上げたとおりに、沖繩に対してこうしますということに政府は真剣に取っ組んでいるわけですね。わかりやすく言うと、沖繩の百万県民の中には農民もおれば漁民もおる。社会の中にあって一般勤労者の方もいらっしゃる。同じように部落の方々は約三百万、四百万ということになると、沖繩に対する施策と同じものが三倍、四倍の規模でここに向けられなければならない、こういうことになるわけです。そういう事実をからみ合わせていただかなければ特別法をつくったことにならないわけなんですね。そういうことですから、これを十年間で消化するには一体どれくらいの予算規模が必要なんだ、あるいは漁港についてはどういう改善をしなければならない、農民、漁民についてはどういうものをやっていかなければならないという基本的な長期計画というものがあって、それが年々こういうふうに消化していく——それは要求どおり予算が通らなくて残されていくものがあるにしても、ある程度のそういうめどが出てこなければ、批判をし、あるいはそれを推進したりする基本になっていかないわけです。そうすると、さっき言ったとおり、そういう考えはなくなりました、こういうふうなお茶濁しで終わってしまうことになるのです。そういう点について農林省ではどういう計画をお立てになっていらっしゃるか。総理府のほうでは特別措置法に基づいて実態調査をやっていらっしゃるわけです、それが出ているわけですから、その調査表に基づいてこうしなければならない、またさらにその前には同対審のはっきりした答申があるわけですから、その答申を完全実施するにはどういう問題を解決していかなければならぬ、それにはことしはこうしなければならない、ああしなければならないということがあるわけです。予算を見積もりまして、これはこうなりましたというんでは解決にならないと思うのですね。そういう点、今後どういうふうにおやりになりますか。
  100. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいま申し上げましたとおり、農林省といたしましては予算をだいぶふやしたわけでございますが、それ以外にも、四十七年度においては特に農林漁業金融公庫資金の融資の円滑化という点で特別な資金ワク約八億円でございますが、これを使いまして農業の近代化につとめていきたいということの施策をとっているわけでございます。  そこで、今後どうするのかということでございますが、私どもの聞いておりますところでは、現在の同和のいろいろな計画は、たしか四十二年だったと思いますが、の調査に基づいてつくられたものでございます。それで、四十六年総理府を中心といたしました同和地区調査結果について、目下これを鋭意検討中でございます。今後はこの調査結果をもとにしまして、さらに同和対策の充実に農林省としても真剣に取り組んでいきたい、こういうふうに考えます。
  101. 沖本泰幸

    沖本分科員 それも通り一ぺんのお答えなんですね。結局、去年伺ったときは、総理府の調査がまとまれば何とかしますというお答えだったわけです。まとまったいま、具体的にいまつくりつつありますからということになると、来年になってまたどうなったですかと言っている間にこの時限立法は終わってしまうことになるわけです。その辺を私たち一番心配しているわけなんです。  それと、この農漁村問題は、いわゆる現在という問題よりも江戸時代にまでさかのぼらしていかなければならないところにも問題があるわけです。おくれている山村の一番底にある問題をえぐり出してくるわけですから問題はもっともっと深いはずなんですね。そういう人たちにある種の施策を行なっていくと、今度はそれに対する批判が起きてくるわけです、あそこだけどうしてよくするのかという問題が出てくるのですね。そのためにはその周辺も同じ考えのもとに対策を立てていかなければならない、批判を起こさせないようにしていかなければならない、そうでなければ差別という問題は解決しないわけです。そういう問題をどうするかというのが一番重要な問題になってくると思うのです。これは私の一人合点みたいになってしまって、こちらからは通り一ぺんのお答えしか出ないと思うのですが、私の考えでは、早急に具体的な対策を立てていただいて、実態調査に従って当てはめてみると現在これだけのおくれがある、こういうことがまだできてない、こういうこともやろうと思っている、それをやっていって、この差別問題を解決するには今度これ、これ、これをしなければいけない、それにはこれくらい金が要るということを一年ずつ割って、具体的にどれぐらいで完全にできるかというような内容を早急に具体的にやっていただきませんと、地方自治体では目標の立てようがないわけです。それじゃおれたちは一体どれくらい自分の身銭を切ってこの法律の消化をしていったらいいんだろうかということにもなるし、そのためには政府にどういう要求をして改善をしてもらわなければならないかということもわからないわけです。そういう点で非常な混乱を起こしているという点を考えていただいて、この問題今後どういうふうになさいますか。
  102. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいま先生から御指摘のございましたこの同和対策、これは農漁村同和対策の面から見ましても非常に多岐にわたる面があるわけでございます。さらに、ただいま御指摘のように、最近いろいろ農業漁業を取り巻く情勢が非常にきびしくなっているというような、いわゆる経済の変転による流動的な面もあるわけでございます。そこで、現在農林省は、一応メニュー方式と申しまして、御承知のとおり生産基盤強化の問題と、それからいろいろな近代的な施設をこういった地域に入れていくというようなことを中心にしてやっているわけでございますが、なお足りない面もあるかと思いますので、今後総理府の調査の結果を待って、そうした面もできるだけ補完していくようにしたい、こういうふうに考えております。
  103. 沖本泰幸

    沖本分科員 さらにそういう問題を進めるについてお考えいただきたいことは、まずこれをいろいろ実施なさったり計画をなさったりする政府の御担当の方々から、差別とは何ぞや、いつごろから差別が始まったんだ、実際差別ということはどういうことから起きて、現在どういう問題が横たわっているんだという内容をちゃんと握ってからでないと、法律があるから、その法律は時限立法だから消化するのにこれこれ程度ということでは、これは解決にならないわけです。そこにもう差別の問題が出てくるわけです。部落の人々は決して同情してもらいたくない、こう言っているのです。おれたちは部落民だということを胸を張って言い切っていく、そういう中から差別をなくして要求をかちとっていく、こういうことなんですね。同情してもらいたくないというわけです。そこに大きな食い違いがあるわけです。ことばの上では差別はしておりませんという、さて事が起きてくると、因習の深い農村漁村で一番問題が起こっておるということになるわけですから、それが同じプールの中で、同じ国民とし、同じ人権を備えた人たちとしてものごとが考えられていき、対策が立てられていくということでなければならないわけです。そうすると当然同和対策に対する基本的な姿勢、基本的な考え方というものが農林省から発表されなければならないということになるわけです。そういう基本的なものに従って地方自治体がいろいろな問題を消化していく、それに対して予算が伴っていく、こういう形になるわけですから、まずそういう基本姿勢なり基本精神なりというものが農林省からきちっとしたものとして出てこなければ私はおかしいと思うのです。そういう点いかがですか。
  104. 内村良英

    内村(良)政府委員 まず最初に同和対策をどう理解しているかという問題でございますが、私どもの局におきましては、ときどき同和関係の方と懇談いたしまして、いろいろ同和関係の方々が直面しておられる問題について御意見を伺っております。  それから基本姿勢がどうかという点でございますが、われわれといたしましては、同和対策事業特別措置法の趣旨に基づきましてやっておるわけでございます。ただ、農林漁業の場合には、地域によりあるいは社会的な条件によって施策がいろいろ一律にこうというわけにはいきませんので、先ほど申しましたように基盤整備と近代的な施設導入というものをやって、そういった地域生産性を上げていく、経済を豊かにしていくということも一つの大きな大事なことじゃないかと思いますので、そういった面には力を入れてやっているわけでございます。
  105. 沖本泰幸

    沖本分科員 それで、老婆心みたいでありますが、古いことですけれども、この辺からひとつ勉強していただきたいと思うんですね。一応読みます。大正十一年三月三日の全国水平社創立大会の宣言文ですね。途中から読みます。「兄弟よ、吾々の祖先は自由、平等の渇仰者であり、実行者であった。陋劣なる階級政策の犠牲者であり男らしき産業的殉教者であったのだ。ケモノの皮剥ぐ報酬として、生々しき人間の皮を剥ぎ取られ、ケモノの心臓を裂く代価として、暖い人間の心臓を引裂かれ、そこへ下らない嘲笑の唾まで吐きかけられた呪はれの夜の悪夢のうちにも、なほ誇り得る人間の血は、涸れずにあった。そうだ、そして吾々は、この血を享けて人間が神にかわらうとする時代にあうたのだ。犠牲者がその烙印を投げ返す時が来たのだ。殉教者が、その荊冠を祝福される時が来たのだ。吾々がエタである事を誇り得る時が来たのだ。吾々は、かならず卑屈なる言葉と怯懦なる行為によって、祖先を辱しめ、人間を冒涜してはならぬ。そうして人の世の冷たさが、何んなに冷たいか、人間を勦る事が何んであるかをよく知ってゐる吾々は、心から人生の熱と光を願求礼讃するものである。」まだあとありますけれども、こういうような宣言文が出ているわけですね。こういう人たちの心の中に立って、そしてそこから政治が行なわれていかなければならない、こういうことになるわけです。しかしその法律を扱う方々の中に、あまりにもこういう問題を知らないままに法律を扱っていらっしゃる、そこにいろいろ弊害が出てくる、こういうことになるわけですから、この点を十分考えられて、今後農林省が同和対策事業をお進めになるについては、基本的な精神とそれから基本的な姿勢、そういうものもあわせてやりながら、具体的な方策を早急にお立てになっていただきたいことをお願いしまして、質問を終わります。
  106. 植木庚子郎

    ○植木主査 次回は、明二十二日午前十時より開会し、引き続き農林省所管について審査を行ないます。  本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十三分散会