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1972-03-22 第68回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月二十二日(水曜日)    午前十時開議  出席分科員   主査 田中 正巳君       大坪 保雄君    橋本龍太郎君       中村 重光君    西宮  弘君       細谷 治嘉君    山口 鶴男君       近江巳記夫君    谷口善太郎君    兼務 井上 普方君 兼務 楢崎弥之助君    兼務 原   茂君 兼務 安井 吉典君    兼務 岡本 富夫君 兼務 斎藤  実君    兼務 坂井 弘一君 兼務 中野  明君    兼務 樋上 新一君 兼務 山田 太郎君    兼務 和田 春生君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 斎藤  昇君  出席政府委員         法務省刑事局長 辻 辰三郎君         法務省矯正局長 羽山 忠弘君         文部省大学学術         局長      木田  宏君         厚生大臣官房会         計課長     福田  勉君         厚生省公衆衛生         局長      滝沢  正君         厚生省公衆衛生         局長      浦田 純一君         厚生省医務局長 松尾 正雄君         厚生省薬務局長 武藤き一郎君         厚生省社会局長 加藤 威二君         厚生省児童家庭         局長      松下 廉蔵君         厚生省保険局長 戸澤 政方君         厚生省年金局長 北川 力夫君         厚生省援護局長 中村 一成君         社会保険庁医療         保険部長    穴山 徳夫君  分科員外出席者         大蔵省主計局主         計官      渡部 周治君         労働省労働基準         局賃金部企画課         長       橋爪  達君         建設省河川局河         川計画課長   宮崎  明君         自治省財政局財         政課長     近藤 隆之君         自治省財政局公         営企業第二課長 神崎治一郎君     ————————————— 分科員の異動 三月二十二日  辞任         補欠選任   西宮  弘君     山口 鶴男君   細谷 治嘉君     斉藤 正男君   近江巳記夫君     鬼木 勝利君 同日  辞任         補欠選任   斉藤 正男君     堀  昌雄君   山口 鶴男君     中村 重光君   鬼木 勝利君     北側 義一君 同日  辞任         補欠選任   中村 重光君     西宮  弘君   堀  昌雄君     細谷 治嘉君   北側 義一君     近江巳記夫君 同日  第一分科員安井吉典君、斎藤実君、山田太郎  君、和田春生君、第二分科員楢崎弥之助君、樋  上新一君、第四分科員井上普方君、原茂君、岡  本富夫君、第五分科員坂井弘一君及び中野明君  が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十七年度一般会計予算厚生省所管  昭和四十七年度特別会計予算厚生省所管      ————◇—————
  2. 田中正巳

    田中主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。  昭和四十七年度一般会計予算及び昭和四十七年度特別会計予算中、厚生省所管を議題とし、前回に引き続き質疑を続行いたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山口鶴男君。
  3. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 私、毎年の予算分科会ハンセン病対策のことをお伺いするのを例にしておるわけでありますが、ことしも超党派で組織をいたしておりますハンセン病議員懇談会厚生大臣あるいは医務局長あるいは関係課長方々にも、また大蔵省にも要請をいたしまして、ある程度年度予算におきましてハンセン病対策前進を見ましたことを、非常に喜んでいるものであります。国立らい療養所予算伸び率を拝見いたしますと、二五・二%の伸びでありまして、一般会計予算の二一・八%を若干ではありますが上回っております。ただ、問題は、本年度は、沖繩愛楽園並びに南静園二園が本土復帰によりましてこの予算に含まれるということになったものですから、沖繩の分を除きます従来の本土分の比較をいたしますと、必ずしも二一・五%の伸びということにはならない、これより下回るわけでありまして、この点まだまだ努力不足でありますことを私自身も反省をいたしている次第であります。  さて、そこでお尋ねしたい第一点は、今度沖繩が祖国に復帰するわけでありますが、現在の沖繩ハンセン病関係施設——私も一度現地に参りましておじやましたこともあるわけでありますが、医師職員不足が非常に目立っているわけであります。特に、寝具畳等が十数年古いものを使っておるということで、この点はいかにもひど過ぎるじゃないかということを山中総務長官にも申し上げましたところ、寝具、ふとんにつきましては復帰前に全部更新をいただきまして、この点は私も非常に喜んだわけでありますが、いかんせん医師職員不足は目に余るものがあると思うのです。特に、宮古にあります南静園につきましては、これは専任院長もいない、専任医師もいないという状態であります。五月十五日以降本土復帰するわけでありますが、この沖繩二園医師充足並びに職員充足につきましては、どういう御構想でございますか。その点、まずお伺いをいたしたいと思います。
  4. 松尾正雄

    松尾政府委員 御指摘のように、沖繩らい療養所実態というものは、本土の水準に比べましてもかなり低い状態にございます。したがいまして、まず、その職員の問題につきましては、いわゆる本土定員並みというふうに増員措置をとるということを要求いたしまして、来年度ほぼその線に沿って増員を認められるようになっております。したがいまして、定員につきましては一応そういう措置をとっておるわけでございます。  問題はもう一つ先生指摘のように、定員措置にいたしましても、実際にそういう職員が得られるかどうかというところに一番問題があろうかと思います。特に私どもが一番頭を痛めておりますのは、医師充足でございまして、ただいま御指摘南静園につきましては、ただいま本土から馬場先生を派遣いたしておるわけでございます。こういう個人的なお話を申し上げてはどうかと思いますけれども、非常に南静園に対する愛着と申しますか、熱情を御本人は抱いておられるわけでございます。ぜひ自分の終生をかけてこの沖繩らい問題に献身したい、こういう御決意でただいまは行っておられます。復帰になりましても、おそらくそのまま継続して院長としてさいはいを振るわれることを期待をいたしております。また同時に、本土自体も、御承知のように、必ずしもらいの医者が十分ではございませんけれども、何といたしましても、やはり私ども本土にございますらい療養所その他国立機関をあげまして応援体制をとりたい、かように考えておりますので、ぜひひとつ復帰の際に従来にも増してこの医療の内容が向上できますような配慮を全本土施設をあげまして協力したい、こういう方針で臨んでおる次第でございます。
  5. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 南静園につきましては、御奇特な医師の方もおられまして、非常に感謝を申し上げておるわけでありますが、いかんせんお一人の医師がおられただけではどうにもならぬわけでありまして、ぜひとも沖繩が早期復帰いたしました場合に、医師の面におきましても、また職員の面におきましても、本土に劣らない体制確立をいただくように強く要請をいたしておきたいと思います。  それから本年の予算を拝見いたしますと、国立らい療養所施設費が、二一〇・八%でありまして、従来の倍額以上予算がつきましたことは、非常にうれしいと思っております。ただ、これも沖繩二園を含むわけでありまして、本土だけということになりますと、せいぜい六〇%程度伸び率ではないか、こう伺っておるわけでありますが、さらに医薬品購入費医療機械整備費、それぞれ相当な伸び率を示しております。医療機械整備につきましては、これまた二三二%、倍額以上に伸びておりますことは、非常にうれしいと思っております。しかし、私も幾つかのハンセン氏病の国立療養所におじやまする機会があるわけでありますが、いずれも建物が老朽化している。特に患者の諸君に会って聞きますと、ハンセン氏病ばかりでなしに、最近は、国民全体の傾向だと思いますが、成人病患者の方が非常に多くなっているわけであります。ところが、まだまだわが国においてはハンセン氏病に対して偏見がございまして、それでは成人病の方を他の厚生省所管国立病院に移しましてそこで治療するということになりますと、なかなか抵抗が多いといいますか、障害が多いようであります。少なくとも、国立病院厚生省所管施設であり、まずそういうところからハンセン氏病に対する偏見を取り除いていかなければいけないのじゃないかと思います。そういう意味で、成人病患者方々ハンセン氏病の方が、十分国立病院等成人病治療が受けられる、こういう体制をぜひとも確立をいただきたい。同時にまた、国立療養所自体施設設備を充実をいたしまして、国立療養所内におきまして成人病治療を十分できる体制をつくることが必要ではないかと思うのでありますが、この点に対するお考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  6. 松尾正雄

    松尾政府委員 らい患者さん方も、いま御指摘のように、たいへん老齢化してこられまして、その結果といたしまして、当然成人病との合併症というものがふえてまいります。私どもがただいま掌握をいたしております成人病併発率と申しますのは、大体全患者の六五%程度方々が、らい疾患以外に何らかのそういう病気を併発しておられるわけであります。今後次第に老齢化いたしますにつれて、この率も高くなるということは、当然予想されることでございます。したがって、まず療養所というものが、何よりも医療機関でございますから、いま御指摘のように、私どもも、治療の面あるいは機械設備の面ということで、まず療養所自体でこういったような問題の解決ができますように努力をしたい、こういうことで、ただいま御指摘のような医薬品の問題あるいは医療機械整備につきましても、従来に比べますとかなり増額をしていただいておる、こういうわけでございます。したがいまして、そういうものを有効に使いまして、ぜひこういう患者さん方の併発症につきましても手当てができますような配慮をしたいたいと思います。  しかし同時に、こういう各部門にわたります併発症でございまして、必ずしもらい医師だけで十分にこなせるわけではございません。私どもも、いま御指摘のように、従来からも国立の他の機関から応援体制をとりまして、それぞれ専門家を派遣するということをとってまいりました。またさらに、私どもは、いま国立一体論とでも申しますか、各施設自分のワク内にはまることなく、もっと広い立場お互い協力すべきものだということを強く提案をして、具体的にそういう措置をとりつつあるところでございますので、そういう一環といたしましても、私どもはやはりこういう実態に対しまして、各機関が十分協力いたしますよう、強く指示をいたすというつもりでございます。  なお、将来にわたりましては、おそらく中心になりますようなところに特定の治療設備整備する、こういうことも、早晩手をつけなければならないのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
  7. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 次は患者処遇の問題でありますが、これにつきましては、昨年、白用賀という形で、障害二級月額八千円の患者給与金を支給する措置をとっていただきました。本年はそれを障害一級一万円に増額をいただいたわけであります。さらに七月から、障害一級の障害年金が一万一千円に増額されます場合は、それに右へならえいたしまして、一万一千円に増額をするという措置もおとりいただいておるようであります。したがいまして、この患者処遇につきましては、たとえば、従来の既得権をどうするとか、いろいろ問題はあるわけでありますけれども、それはさておきまして、ともかく障害一級の障害年金が将来にわたって増額されます場合は、患者の自用費と申しますか、患者給与金もすべてこれに右へならえして措置するというふうに了解してよろしゅうございますか。あわせてお聞かせいただきたいと思います。
  8. 松尾正雄

    松尾政府委員 この問題、先生承知のように、らい療養所内における拠出制年金、それから無拠出年金福祉年金というもののアンバランスがあり、同時に、拠出制といいながら実際は無拠出であるということから、いわば内部における公平論ということが非常に強くあがってきたということは、御承知のとおりでございます。したがいまして、従来からいろいろと患者不自由者加算でございますとか、非常にやっかいな制度をとって、何とかということを考えてまいりましたけれども、昨年から、いま御指摘のようにこれを一本化いたしまして、いわば院内におけるでこぼこというものをこれによって地ならしをするというふうにはかってまいったわけでございます。今年度は、御指摘のように、七月からさらに一万一千円ということになりまして、この点につきましては、患者さん方もほぼ御満足いただいたと思っております。ただ問題がそういうことにスタートしてきた問題でございますので、私どもとしましては、やはり年金拠出制のものがあがれば当然それに向かって足をそろえるということが、従来の経過から見ても当然ではないかというふうに考えております。
  9. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 大臣、いままで医務局長との間に、ハンセン氏病の問題につきまして、いろいろお尋ねをし、こちらの考え方を申し上げたわけでありますが、従来から見ればハンセン病対策が大きく前進したことは、お互いに喜び合いたいと思っておりますが、まだまだ、たとえば国立療養所成人病治療に行くということになりますと、障害があるというようなことも事実であります。まだまだ本土偏見が残っていることも事実でありますし、また沖繩にもずいぶんと偏見がこれまたあるやに聞いております。こういったハンセン氏病に対する偏見を排除していく、そしてまた同時に、本土沖繩を含めまして、ハンセン氏病の国立療養所が、真に医療機関たるにふさわしい施設にしていくということが、私は緊急の課題だと思います。将来、東南アジアにもハンセン氏病の患者が非常に多いわけでありまして、わが国こそがやはりそういう面で東南アジアの国々に対して、ハンセン氏病の治療という面で、現在も非常に御苦労をいただいておる方があるわけでありますが、より積極的にやはり援助の手を差し伸べる。そのためには、何といいましても、本土ハンセン氏病の施設医療機関たるにふさわしいようでなければ、これは、そういうこともできないわけでございまして、こういう点に対する大臣としての御所見を承っておきたいと思います。
  10. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 山口委員にはかねがねハンセン氏病のことについて非常な御心配をいただき、御鞭撻を賜わり、感謝をいたしている次第であります。先ほどからの御意見、またただいまの御意見も、私も一々ごもっともに存じます。だいぶ改善をされてまいりましたが、まだまだ余地がたくさん残っていると思いますので、ただいまおっしゃいますような御趣旨に従いまして、ことに当面の問題としては、まず老朽した建物の問題も一番大きな問題でもありますし、そのほか成人病あるいはガンにかかられた人の治療といったような問題もございまして、御趣旨の方向に一そう力を注いでまいりたい、かように思います。
  11. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 それでは次の問題に移りたいと思いますが、プラスチック公害の問題についてお尋ねをいたします。  昭和四十七年のプラスチック生産量の見込みを拝見をいたしますと、六百九十万トンの生産、このうち廃棄物となって廃棄されるものの量が三百二十万トン近くに達する見通しであります。現在のプラスチック生産量伸びをそのまま延長いたしまして昭和五十年を見通しますと、生産量がおよそ一千万トン、廃棄せられます量が五百十万トン、このような多量に達する見通しであります。こういう状況の中で、いま都市ごみの中に含まれるプラスチック混入率を見ますと、東京二十三区におきまして、昭和四十年が四・三%であったものが、昭和四十四年には九・七%にも達している。現在はすでに一〇%をこえているのではないかと思います。そういう中で、東京都をはじめ各都市がこのごみ処理について非常な苦労をしていることは、大臣も、環境衛生局長も、よく御存じだろうと思います。  そこで、これらのプラスチック回収し、処理するということが必要だと思います。単にこれは牛乳乳酸菌飲料容器ばかりではなくて、おもちゃでありますとか、あるいは化粧品容器でありますとか、あるいは梱包材料等の、プラスチックをいかに回収し、処理をするか、こういう体制確立することが基本だと思いますが、これらプラスチック廃棄物処理体制というものに対して、厚生省としては一体今日までどのような努力をしてこられましたか、まずお伺いいしたいと思います。
  12. 浦田純一

    浦田政府委員 激増します廃棄物の中でも、先生指摘のようにプラスチックが占めるウエートというものは、非常に高いものでございます。これに対しまして厚生省として具体的に手を打ちましたのは、一昨年の夏来のまず牛乳等プラスチック容器の切りかえに対する強力な行政指導でございます。従来は、牛乳等容器につきましては、単に食品衛生法上の見地から、衛生的に合格すれば、透明な容器でありますれば厚生大臣はこれを承認をいたしておったのでございますけれども、特別にプラスチック容器廃棄物に占める意義を考えまして、これに対し業者回収命令、いわゆる回収義務を前提といたしまして、それでプラスチック容器の切りかえをいたすというふうに行政指導をいたしたのでございます。  それから、これは根本的には、やはりまず生産過程で出てまいりますいわゆる産業廃棄物と申しますか、これに対して生産者義務においてこれを処分してもらうという一つの柱、それから、どういたしましても、流通過程におきまして、結局は家庭において使用され、家庭廃棄物として、これは都市ごみとして出てまいるのは防げないわけでございますので、これにつきましては、都市プラスチック処理能力を高めるということで、これは新しく来年度から、現在審議をお願いしております予算案の中に盛られている考えでございますけれども、少々プラスチック混入率がふえましても、これに対して十分対応できる高能力の炉を設置する、これに対する財政援助を十分に行なうという柱。それからもう一つは、先生指摘のいわゆる過剰包装等のことでございますが、これらにつきましては、これは通産省その他関係省庁にもこちらのほうから強力に申し入れまして、また直接厚生省立場といたしましても百貨店協会その他に申し入れまして、過剰包装の自粛ということについて行政指導を行なっているところでございます。  一番先に申し上げました産業界から出ます廃棄物につきましては、すでにこれも通産省との協力のもとに石油化学工業界等に強力に呼びかけまして、現在それぞれの立場において自主的に処理できる体制を二、三の都市においてもう実施に踏み切っておる段階でございます。  以上、簡単でございますが、いままでとったおもなる規制あるいは指導のあり方でございます。
  13. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 これは食品衛生法上ある程度規制のできます牛乳乳酸菌飲料容器ばかりを責めてもだめでありまして、いま局長お話のありますように、基本的には石油工業界が、産業廃棄物として出しますものについて、この処理体制確立する。それから梱包材料あるいはおもちゃ等食品衛生法とは関係のない面でのプラスチック廃棄物につきましても、これは通産省等を通じまして十分な規制をやっていくということが必要であることは、言うまでもないと思います。その方面は、また通産省その他と議論をいたしたいと思っております。  そこで、牛乳並びに乳酸菌飲料ポリ容器の問題についてしぼってお尋ねしたいと思うのですが、これにつきましては、四十五年の公害国会で、私当時の内田厚生大臣議論をいたしまして、内田厚生大臣は任期中は許可せぬということを申されたのでありますが、残念ながら、昭和四十六年の四月二十九日であったと思いますが、牛乳関係七社、八件、乳酸菌飲料関係十三社、十七件に承認を与えました。この場合に、当然再生利用焼却炉改善のめどがついたということで、しかもこの回収条件として承認をされたと思うのです。それから以前に承認されたものにつきましても、行政指導回収を完全にやれということを厚生省としては十分措置しておられるだろうと思うのでありますが、一体この回収条件というのは、これは当然一〇〇%回収せよということだったろうと思うのですが、どのような条件承認するにあたっておつけになりましたか。また以前承認されたものについては、どのような行政指導をされたわけですか。
  14. 浦田純一

    浦田政府委員 昭和四十六年の五月二十九日でございましたが、二十社についてポリエチレン容器承認いたしたのでございます。これは当時の内田厚生大臣の許可しないという旨に反するではないかといったような御指摘もございましたが、食品衛生法上からそこまで規制するということは非常に無理があることは、先生先ほどからお話しになっておられますとおりでございまして、私どもはこれに対して、むしろプラスチック対策全般一環として、新しく業者回収義務を負わせるということは一つ前進ではないかというふうに考えまして、踏み切ったわけでございます。  そのときの条件といたしましては、必ず容器回収する、それからその当該市町村当局協議をして同意を得る、つまり万一の場合にやはり都市ごみといたしまして都市清掃当局のサービスを受けなければならない、やっかいにならなければならないという事態も懸念されますので、市当局との御協議ということを条件にして、それによって申請書が申達され、私どもは一〇〇%の回収が可能か、あるいは自主処理が可能か、それから市当局との協議が相ととのっておるか、その点について審査いたしまして許可を与えたわけでございます。  さて、その後の回収状況でございますが、これら新たに承認いたしました二十社、二十二件につきましては、全部が一〇〇%回収しているというところまでは実はいっておりませんが、一〇〇%確実に回収しておるというところも含めまして九〇%以上が四社、この四社も含めまして八〇%以上が十二社、七〇%台がそのほか二社、あとちょっと落ちますが、総体といたしまして平均七十数%、八〇%を少し切れておるという状況でございます。もちろん一〇〇%ということが理想でございますけれども、これはやはりある程度利用者側の御協力ということもございまして、なかなか一〇〇%という数字どおりにいってないのが実情かと思いますが、八〇%以上が十数社もあるというところから、さらに努力すれば、実質上全面回収というところまでいけるのではないかと見て、さらに指導を強めていっておる段階でございます。
  15. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 東京都あるいはその他の資料を拝見いたしますと、従来許可いたしましたものの回収率は、非常に悪いようですね。昨年の五月二十九日に許可いたしましたのが二十社、そのうち、いま局長お話を聞きますと、七〇%以下でありますのが二社ある、こういう状況ですね。しかも、従来許可いたしまして行政指導をやっております乳酸菌飲料を見ますと、東京都内を拝見いたしますと、たとえば江東区、江戸川区のごときは、回収率わずか一九%、それから葛飾区が二三%、足立区、荒川区等は二二%、東京都全体といたしまして三一%という状況のようであります。これではいかにも低過ぎると私は思うのですね。新たに許可いたしました場合、回収率等が非常に悪くて、この承認条件に反すれば取り消すということも、浦田局長さんははっきり言っておられるわけですね。以前承認したものについても、行政指導をやっております以上、私はもっと回収率を上げるべきだと思うのです。また昨年許可いたしましたうちで、特に回収率が悪い七〇%以下というものについては、この際取り消すぐらいの強い態度で対処しなければ、私はこの問題は解決しないと思うのです。  時間もありませんので、これで質問のほうは終わっておきたいと思うのですが、あわせて、浦田さん、そのことと、それからカドミウムの公害について、かねがね麦の基準をきめるべきだと私は申しました。すでに群馬県では安中の公害地域に対しましては、土壌汚染防止法に基づいて汚染対策地域の策定を進めておりまして、公害対策審議会に一度諮問し、今月末二度目の諮問をするところまでいっているわけです。麦の基準がきまらぬために、非常に不利になる地域が現に生じつつあるわけであります。この汚染防止法に基づく対策事業に間に合うように麦の基準をきめる、こう局長さんおっしゃったわけでありまして、この点もあわせてお答えをいただきたいと思います。  特に大臣に対しましては、回収条件が非常に悪い、昨年許可したものの悪いものに対しては、この際取り消すぐらいの強い態度でやはり臨むべきだ。それから以前に許可いたしましたものについて、一九%、二〇%だというようなことではいかぬともしがたいと私は思うのです。こういうものに対しても、やはり断固たる指導をやるという御熱意をお示しいただきたいと私は思うのです。
  16. 浦田純一

    浦田政府委員 先に、麦のカドミウムの安全基準に対してのお尋ねにお答えいたします。  これは昨年末、専門家にお集まりいただきまして、麦のカドミウムの安全基準をどう考えるべきかということについて御相談申し上げたわけでございます。その結果、それまで集まりましたいろいろな資料を御検討いただきました結果、もう少し資料をそろえる必要があるということで、現在、御意見に従いまして、農林省その他各関係都道府県にその資料の提出方を求めている最中でございます。また調査を続行している最中でございます。これはほぼ三月じゅうに出そろうのではないかということで、その出そろった時点におきまして、至急また専門家方々にお集まりをいただきまして、できるだけ早い時期に安全基準を設定してまいりたいという状況でございます。
  17. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 プラスチック容器回収につきましては、いまおっしゃいますとおり、私のほうも回収率の悪いところは強力な指導をやりまして、それが効果がないということであれば、取り消すこともあるべしということで強く指導してまいりたい、かように思います。
  18. 田中正巳

  19. 坂井弘一

    坂井分科員 限られた時間でございますので、御答弁は簡明、的確にひとつお願いしたいと思います。     〔主査退席、橋本(龍)主査代理着席〕  院内感染の問題でありますが、入院中に細菌やビールスによりまして他の病気をうつされるいわゆる院内感染、言うなれば、一種の病院病とでもいいましょうか、こういうまことに奇怪な、また患者にとってはたまったものではないような院内感染という事態が、あちこちの病院にかなりあるようでございます。最近におきましても、そうした院内感染の被害につきましていろいろ聞くわけでございますけれども、一体日本における院内感染の実態はどうなっておるのか、まず実情についてお伺いしたいと思います。
  20. 松尾正雄

    松尾政府委員 院内感染の実態をことごとく私どもも掌握することは不可能でございまして、そういうことについて正確に個々の事例までは承知いたしておりません。ただ、過去におきましても、たとえば日赤の病院内における子供の結核感染の問題でございますとか、あるいは、比較的新しい問題を提起したものとして考えられるものとしては、ある都立病院の中で空調設備を系統といたしまして、ビールス性の子供の伝染病がほかの病室にはやった。これなどは、空調系統による伝染病の顕著なものと考えられます。また、管理上の不注意とでも申しますか、そういったような点で和歌山の県立医大の手術場の問題が、内部でいろいろと御検討の結果、表面に出されました。これはいわば院内感染といいますか、手術場の管理上の問題というようなことで、さような顕著なものにつきましてはわれわれも十分に承知いたしておりますが、その他こまかい個々の一々の事例につきましては、はたして院内感染であったかどうかということにつきまして判断することは困難かと存じますし、そういう点については十分承知いたしておりません。
  21. 坂井弘一

    坂井分科員 幾つかの事例をあげられましたけれども、それはいわゆる数例でございまして、院内感染の実態というものは、きわめてひどいものがある。米国のハーバード大学のC・W・ワルター教授は、アメリカにおきましては、直接的に化膿感染のために死亡した例は年間十万人、この死亡順位は十四位である、こういう警告を出しておる。それに伴って、最近、院内感染ということについては、きわめて熱心にその実態の把握につとめ、また防除につとめておるという現状でございます。またわが国におきましても、たとえば大阪大学の藤野恒三郎教授が、病院内感染の問題といたしまして、病院内の感染の全貌を知っている人はいない、ただ確実に言えることは、他の病気で入院して、新しく求めもしない感染を受ける人数は、今日のどんな統計よりも多い、ほとんどすべての病院で一ないし二%の患者は院内感染を受けていると推定される、ある人は三%から三〇%院内感染による、こういう説を引かれまして、各病院に院内感染対策委員会の設置をするのが急務ではないかということを強調されているわけでございますけれども、そのような、まことにおそるべき、またショッキングなことが、専門学者の間できわめて憂慮すべき問題として取り上げられておる。そういう中において、なぜ一体この実態の調査ができないのか、把握ができないのか、あるいはしないのか、どうなんでしょうか。
  22. 松尾正雄

    松尾政府委員 そういう方々がどういうような御研究によってなされたものか、私ども明らかにいたしておりませんが、正しくその院内感染であったということを確証するということは、非常に私はむずかしい問題であろうと存じます。明らかに指摘できるような事例はあり得ると存じますけれども、病院だけに特定の細菌がいるというものでもございません。たくさんのほかにも問題もございますので、それを直ちに全部院内感染だとして定義づけ、分類すること自体、非常にむずかしい問題じゃないかというふうに考えます。ただ、特定の調査でどのくらいの数があるかということを押えることは、いま申しましたような事情にあろうかと存じますが、しかし、私どもは、基本的にやはり病院内というものは注意をしなければならない非常に危険な場所であるということは、私も常々主張している人間でございます。病院というのは、一般に清潔な場所、清潔であらねばならぬ場所でございます。逆に申しますと、きわめて危険の多い場所であるということは、十分これは医療に従事しておるという人であれば承知しているというふうに考えております。私も、方向としては先生と同感でございます。
  23. 坂井弘一

    坂井分科員 それでは順次お尋ねしますけれども、たとえば新生児ですね、病院で出生する子供、そうした新生児の感染症に対する抵抗というのはきわめて弱いということでございますけれども、死亡原因が感染によって死亡した新生児というのは、一体どれぐらいございますかパーセントでけっこうです。
  24. 松尾正雄

    松尾政府委員 ちょっと新生児の感染による死亡例は、いま用意いたしておりませんので直ちにお答えできませんが、ただ新生児自体については、その感染が非常にこわい。もちろん未熟児その他の本来体力の弱い赤ちゃんも多いわけでございますけれども、感染は非常に致命的なものである。したがいまして、御承知のように、新生児室に対する管理は、病院内でも最もうるさい構造であり、かつ管理になっておる、こういうことでございます。おっしゃるとおりの裏返しの実態であろうと思います。
  25. 坂井弘一

    坂井分科員 いま新生児が病院において死亡する、これは死亡率の第二位であるということもいわれておる。またそれが一八%以上の高率を占めておるというようなことも、いわれておるようであります。ある札幌の病院でございますけれども、空調設備をした、それまでやってなかった、そうすると、歴然と感染症によって死亡する子供が減った。病院外から収容された未熟児の死亡率が、空調の設備をする以前が二七・一%。それが空調しましてから一四・六%、半分ですね。それから病院の中で出生した子供、これは空調の設備をやる以前は二八%あった。これがゼロになった。これは歴然と空調の効果があらわれております。そうしたことが、一、二の病院においてあらわれた。これは事実の問題です。また、従来院内感染というものが非常におそるべき状態であるということから、そうした設備をすることによってその効果がきわめてはっきりとあらわれてきたというような例もあるようでございます。私もいろいろ聞くのですけれども、たとえば交通事故で患者が入院して手術を受けた。手術を受けまして、それが破傷風にかかって病院で死亡する。そのあとである婦人が入院して、痔の手術をします。ところが痔はなおった。今度は破傷風です。それでやっぱりその病院で死んだ。これは問題になったのです。それに似たような例がしばしば、日常茶飯事といいますと少し大げさかもしれませんけれども、ずいぶん聞くわけですね。病気をなおすために入院して、ほかの病気をもらって死んだ。これはたまったものじゃないですね。しかも、いま言いましたように、たとえば乳幼児、未熟児等の場合は、そうした効果がはっきりあらわれておる。先ほど医務局長は、これははたして院内感染であるかどうかきわめて判断、判別がむずかしい。それはそうでしょうけれども、病院において少なくとも他の病気、化膿したり他の病気に感染をしたという、そのようなまず実態の調査、私はそれはできないことはないと思う。原因はどこにあるかというのは、第二段の問題であります。いずれにしても、病院に入院をしてそうして思わぬ他の病気をもらった、感染した、化膿した、そのような実数が一体どれくらいあるのかということは、これはやっぱりつかむ必要がある。またそういう実態から考えても、つかまなければならぬ。それは厚生省がやるべき行政の分野だと思うのですけれども、行政分野以外のことであって、厚生省は手をつけられないというのでしょうか。
  26. 松尾正雄

    松尾政府委員 決してさようなことではございませんで、先ほど申しましたように、全国一斉というようなことであれば、これは非常に問題になる可能性がございます。しかし、私も申し上げましたように、病院内というものの実態は、決して清潔であるとは考えられない問題もございます。したがいまして、私どももこの問題についてはかなり関心を抱いておりますので、特定のたとえば国立病院等の一部で精密にそういうものを追及していくということにつきましては、ぜひ実態をつかむように努力してみたいと思います。
  27. 坂井弘一

    坂井分科員 国立のとおっしゃいますけれども、これはもっと全国的に実態の調査をしなければいかぬ、すべきだと私は思うのです。むしろ設備の整った国立病院等においては、院内感染等の事例というものは最近においてきわめて少なくなってきておる。むしろ一部のまず設備のいいと思われるような公立病院等において、そういう例が見られる。たとえば和歌山県立医大の付属病院、これはずいぶん問題になりました。まだその後もあとを引いております。これはあとで申し上げます。  ですから、この辺でやっぱり実態調査というもの、実数の把握ということをまずする必要があるのじゃございませんか。少なくも死亡順位の第何位というようなことが、きわめて権威のある学者の間で言われておる。また、医務局長もこのことについてはきわめて関心を持つ、この問題についてはゆるがぜにできないとおっしゃる限りは、実態の把握にまずつとめるべきじゃございませんか。いかがですか。
  28. 松尾正雄

    松尾政府委員 私は専門的な立場から申しましても、いまおあげになりましたような学者の方々の論文につきましても、十分ひとつ目を通してみたいと思います。どのような方法論でおやりになったかということは、非常に問題だと私は率直に思います。したがって、そういう意味でほんとうにできることならやりたい。しかし、その判定というものはおそらく非常にむずかしい問題になるだろうというように考えますので、むしろ私どもがいろいろ方法についてもチェックできるような特定のところで十分洗ってみるということが、まず第一ではないか。そこがいわゆるパイロットサーベイのようなかっこうになるかもしれませんけれども、全国的にこれならやれるという確証があれば、それは私どもは次第に広げることにやぶさかでございませんが、私の申し上げたことは、これは手をつけてみたところが、口で言うほど簡単にこれは院内感染であるということを言い切ることは非常に困難である、かような観点で申し上げておるわけです。
  29. 坂井弘一

    坂井分科員 医務局長のおっしゃることよくわかる、しろうとなりに。しかし、その原因の究明をいま直ちにやれということは、私は言っていない。まず、実態の把握をしなさい、しかる上においてその感染の原因は何であるかということを研究すればよろしいのではないかということを申し上げておるのであって、これが院内感染であるかどうかの最終的判断は非常にむずかしいから手をつけられないというような考え方は、これはきわめてうしろ向きである、そう言わざるを私は得ないわけでありまして、そこのところをまずひとつ踏まえてもらいたいと思いますし、一、二のそういう——いままで何もやってないわけですから、これから少なくとも一つ二つ取り上げて実験的にやってみようとおっしゃるなら、これは一歩前進だろうと思いますけれども、そういう形の中でやはりゆるがせにできないのは、院内感染の実態をつかむと同時に、その原因の究明に積極的に取り組んでもらいたい。そのための研究機関等も設置する必要があるのではないかと思うのですけれども、いかがでございましょうか。
  30. 松尾正雄

    松尾政府委員 院内感染自体についての特別の研究所というものは、なくても私は済むのじゃないかと思います。もともと医療機関全体が衛生的に管理されなければならないということが要望されておるわけでございますし、また医療法等の中でも、そういったことについて具体的な指示をしているところもあるわけでございます。ただ、そうは申しましても、その防止するための対策大綱と申しますか、それぞれの病院内でどのような対策、どの程度の考慮がされているのか。こういったことは、むしろ監督いたします上からもいろいろな機会にチェックをするということは、私ども必要だと思います。すでに病院管理の、経営改善のための指導要綱の中にも、実は院内感染の防止という一項をうたってございまして、職員の健康管理も全部それに含めましてひとつ見るという指導もいたしておるわけでございますが、私は、少なくとも今日、院内感染という問題について、通例の問題であれば、医学的な常識でもってある程度は判断のできる事例が多いかと存じます。むしろ実態としましては、そういう監視の場合、そういったことにどういうふうな体制をとられるべきかということに重点を置いてチェックすることが至当ではないかと考えております。
  31. 坂井弘一

    坂井分科員 厚生大臣御記憶ないかもわかりませんので、私ちょっと和歌山県立医大附属病院における問題をあらまし申し上げますから、ひとつお聞きいただきたい。  昭和四十一年五月十三日以降の約半月で、この和歌山県立医大附属病院に入院しまして手術を受けた約三十名の患者のうち八例が化膿した。そこであまりにも多過ぎるというわけで、医大で整形外科の公衆衛生担当の白川教授を中心といたしまして、この実態の究明に乗り出した。すなわち手術室の環境の検査をやったわけです。そういたしますと、この検査をやったのが四十一年の六月から四十二年の五月にかけまして三回、その検査の結果、手術室内、手術台上に、ほこりが最低三百七十九個、これは一立方センチメートルですね。一立方センチメートル中に最低三百七十九個から最高千六百十六個検出をされた。同じく細菌の検査をいたしますと、これはあとで申しますが、やはり相当数の細菌が検出をされた。そこでやはり手術室内の環境に問題があるのではないか、言うならば、ほこりと細菌を束にして手術室に送り込んでおる、そういうきわめて不完全な手術室であった。これが原因ではないか、こういうことを指摘したわけです。そこでこの改善に乗り出したわけでございますけれども、考えてみますと、最近公害がやかましくいわれております。そういう中で、ビル管理法等もできた。ビル管理法によりますと、一立方メートル当たり浮遊粉じんの量は、〇・一五ミリグラム以下、こう規定されておる。これは健康人が働く職場です。また労働基準法におきましても、工場内のほこりの許容限度、これが一立方センチメートル当たり千個以下、これは昭和二十三年すでに労働省労働基準局長通達で通達まで出しておる。千個以上あれば改善命令が出るわけです。しかるに一番清潔でなければならぬ病院の手術室、弱った病気の患者は一番抵抗力がない。しかも切開手術を受ける。そこへ付着するほこりが実に千六百十六個あったということです。基準法でいったって、千個以上なら改善命令ですよ。手術室が千六百十六個あった、これがまさに原因ではないかということを指摘したわけですね。そこで一点お尋ねしますけれども、一体病院内の環境基準というのは、あるんですかないんですか。
  32. 松尾正雄

    松尾政府委員 ただいまのところはございません。
  33. 坂井弘一

    坂井分科員 なぜつくらないんでしょうか。
  34. 松尾正雄

    松尾政府委員 ビル管理法のときにも、それを適用するかどうかの議論はあったと記憶いたしておりますが、御承知のとおり、まず衛生という問題について一番責任を持つべき医者が管理者であり、かつそういう人方がすべて医学的な判断、衛生学的な常識に基づいてそれぞれの衛生的な処理をするということを、もうとにかく前提としてきめられておるわけでございます。そういう意味で、あえて病院内にそういうビル管法の適用をしなくてもいいじゃないか、こういう議論の末はずされたものでございます。したがいまして、それに伴います基準というものも設けられていない。ただあくまで期待は、そういうものを適用しなくてもきれいであるべきだという期待があったということでございます。
  35. 坂井弘一

    坂井分科員 きれいであるべきだと思います。また当然そうなければならぬと思います。しかるに、現状はそうではないという事例が、事実数多くある。この和歌山医大の附属病院の場合は、その一例にすぎない。たまたま問題になったから、こういうことで、これは良識のある病院の中の先生方が自発的に原因の究明に乗り出して、初めてこういう実態が明らかになったということでございまして、しかもそれをよく考えてみますと、手術室の構造たるや、これもあとで申しますけれども、きわめてお粗末である。しろうと目に見ても、こんなところで手術を受けたらたいへんなことになりますよというような状況下に置かれておる。そういうような現状が放置されてきた。だから、ここで何とかしなければならぬという考え方が出てこなければならぬと思うんですね。たとえば国立大阪病院の神木細菌室長、これは細菌のほうではずいぶん熱心にやられている方でございまして御存じのとおりだと思いますが、こう言っております。手術室の細菌数は、最低零というものから多くても三十分間で十個以下、これが常識だ。ところが、県立和歌山医大附属病院におきましては、ほこりに付着いたしまして五分間に六個から二十二個検出されておったわけであります。大体細菌というものは、単独に浮遊するということはまずあり得ない、ほこりに何らかの形で付着するということだそうでございますけれども、ほこりが多いということは細菌が多い、細菌が多いということはやはりほこりも多い、こういう因果関係がございますが、専門的に私は詳しくわかりません。そういう事実が示すごとく、細菌も、そのように数多くの細菌が検出をされた。  では医大にしぼって申し上げますけれども、この医大の附属病院に対して、その手術室の設備改善の勧告はされましたですか。
  36. 松尾正雄

    松尾政府委員 当時、私どももその事件をすぐ承知いたしまして、これは県立でございますので、和歌山県を通しまして早急に改善するよう私どもから県に対しては指示をいたしております。
  37. 坂井弘一

    坂井分科員 県から報告がございましたでしょうか。
  38. 松尾正雄

    松尾政府委員 それぞれ予算措置等をとりまして、たとえばダクトの改善をするとか、あるいは構造上たしかいわば隣の準備室のその先に会議室があったとか、普通常識で考えますと、手術場の入口というものは、ここから先は立ち入り禁止というような一つのコーナーをちゃんと設置して、二重、三重のドアをあけて行くのが通例の常識でございますけれども、いかんながら大学ともあろうものがそういう形でやっておったということで、われわれも残念だと思いましたが、そういったことも含めて、とりあえずとり得る措置はすべてとったという報告をいただいております。
  39. 坂井弘一

    坂井分科員 そうした改善の結果、再度検査はされたでしょうか。
  40. 松尾正雄

    松尾政府委員 たしか四十五年に、その後また病院内で検査をされたように聞いております。
  41. 坂井弘一

    坂井分科員 結果はよくなっておるでしょうか。
  42. 松尾正雄

    松尾政府委員 たしか細菌数につきましては、前よりもはるかに減っているというデータだと思います。
  43. 坂井弘一

    坂井分科員 どうやら的確につかんでいらっしゃらないようだと思います。和歌山県に要請されまして、その後の検査結果の報告を再度求められてはいかがでしょうか。
  44. 松尾正雄

    松尾政府委員 私どもが正確につかんでいないとすれば、求めて報告をいたします。
  45. 坂井弘一

    坂井分科員 この検査結果には、ずいぶん問題があると私は見ております。また心ある公衆衛生学関係の識者、専門家等、実にこの医大のその改善後における検査の結果を見て憂慮いたしております。そういう事実、一つの問題点が浮き彫りにされたわけですから、これをたんねんに厚生省はその結果を追及、追跡いたしまして、はたして改善の結果、院内感染がどのような推移をたどったか、現実に減ったかどうか、その結果を見て、確かに空調の効果があがったかあがらないかということを私はつかむべきだと思うんですね。それが行政の上に反映されなければ、何にもならぬと思います。だから、そういう点においては、これはひとつ積極的にいまのような方向で取り組んでいただきたい。たとえて申しますと、いまここで白川教授が、私が検査したときよりも細菌数は七倍だ、そうも言っておりますし、患者がこんな病院で手術なんか受けられるかと言って不安がっておりますよ。たいへんです。また、裁判も起こっておりますよ。それが公立病院、大学病院ですよ。これはまさに一事例です。私は他の事例を幾つも申し上げたい。しかし、この一事例をもってどうか推察をしていただきたい。そのように、全国的な公立病院あるいは私立病院におきまして、かなり信用のあるような病院において、この院内感染というもの、同時にその原因というもの、また手術室の環境を良好に保つという、そういうことにおいてはきわめて無関心、野放しにされておる。私は、そういう事態を非常に憂慮するわけです。  一例としてあげますと、同じ和歌山でも、労災病院、がございます。ここは約十二億かけております。そのうち、手術室並びに院内の環境をよくするために二億ばかりかけておる。塩化リチウムによる方式、言いかえますとカサバール方式と申しますが、ほとんど無菌、無じんに近い、そういう完全な管理がなされておる。しかも定期検査までやっておる。院内感染というのは、ほとんどその事例が見られない。優秀なものです。同じ病院ですよ。一方においては、そのようなまさに野放しのきわめて不完全な、そして現実に事故が起こっておる。一方にそういうような病院がある。しかも、これはただ和歌山における一事例ではなくて、全国的にある。その問題を私はここで指摘し、ゆるがせにしてはならぬということを申し上げているわけでございます。  いろいろその後の検査の結果を資料としてもらっておりますけれども、ずいぶん問題ですよ。こういうことを言っております。前日に検査をしたものとそのあくる日に検査したものが、全然違うのですよ。細菌の数字が約二倍ある。その原因について和歌山医大の加藤教授が報告書を出しておりますが、こう言っております。手術室の歯数が前日の二倍になった。これは南風が吹いたからだ。南風が吹いて手術室の中に院内の汚染された空気が入ったのだろう。非常に強い風だった。風が吹いたら手術室が汚染される。どうでしょうか。そのことをさして、今度は大阪国立病院の神木細菌室長が、風が吹いたら菌がふえる手術室の構造が問題である、根本的な問題は少しも改善されていないではないかと痛烈に言っております。これはそのままでしょう。このような形で野放しにされたのでは、患者としてはたまったものではない。だから、私は、少なくとも無菌空気による換気というものが、権威のある国公立の病院においては、あるいはまた私立病院においてもそうでしょうが、まず手術室の第一条件である、そう考えるべきであると思うのですけれども局長はいかがお考えでしょうか。
  46. 松尾正雄

    松尾政府委員 手術場は、御承知のとおり、全く手の消毒、衣服の消毒に至りますまで、無菌ということをねらいにいたしましてすべて操作をするというのが理想でございまして、当然なことでございます。したがいまして、空気に関しても、やはり細菌、じんあいの防止のために最大の措置をとるべきものだと存じます。
  47. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)主査代理 坂井君に申し上げます。時間が経過しましたので、結論をお急ぎください。
  48. 坂井弘一

    坂井分科員 手術室の窓が一重の構造である。そういうような手術室を持った病院が、まだまだありますね。そういう病院の手術室というものは、手術室に当たらない。だから、そういう実態の調査をしてもらいたい。手術室の構造について、厚生省自体がまだつかんでいらっしゃらないのではないですか。ただ医療監視員にまかせっぱなしである。目で見てもわかるような横聞きの一重窓、そんな手術室が全国的にたくさんある。そういうところに院内感染が現実に起こっておる。だから、院内感染にはいろいろあるでしょうが、しかし、避けられる院内感染は避けるべきである。手術室が不備であれば、その整備をすべきである。それすらやらないで院内感染が起こったというならば、これはまさに人災です。したがって、そういう点については、全国的に一応調査をして、まず構造の実態等をつかむ、それから実際に感染がどのように起こっておるか、その実数をつかむという努力はすべきだと思いますが、大臣、このことについてはいかがお考えでしょうか、お答え願いたい。
  49. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 病院内の衛生管理は、おっしゃるまでもなく一番肝心なことだと思います。ビル管理法の適用を受けないというのは、病院は当然しかあるべきだ、そんなことはもう病院としては法律に規定されなくてもやるべきだということで、適用を除外しておるというわけでありますが、それだけに、一そう管理、監督を厳重にしなければならぬ、かように思いますので、おっしゃいますように、今後さらにもっと管理の監視を厳重にいたしまして、御期待に沿えるようにいたしたいと思います。
  50. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)主査代理 坂井君に申し上げますが、すでに次の質問者が見えておりますから、時間を過ぎておりますから、簡単に願います。
  51. 坂井弘一

    坂井分科員 時間が参りましたので、これでやめまして、他の機会に譲りたいと思います。  ただ一点、環境基準をつくるようなお考えでもって検討いただけるかどうか、その点はいかがでしょう。
  52. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 環境基準というのがきめられるかどうか。きめなくても、たとえば手術室はこうとかああとか、もうきまっておるものだと私は思います。ある基準をきめると、その基準以下ならいいのかということになる。私は、それでいいというものではないのではないか、かように思います。
  53. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)主査代理 原茂君。
  54. 原茂

    ○原(茂)分科員 きょうは大きく三つの項目でお伺いしたいと思ったのですが、一つは、総理府をお呼びするのを実は忘れまして、的確な御返事をいただけないかと思います。  軍人恩給の関連で、これは基本的な問題だけ大臣のお考えをお伺いしたいのですが、まず、軍人恩給が年々増額をされているわけであります。私ども立場では、この軍人恩給を含めて、本来、社会保障なり生活養護といった立場で、全体に不公平のない援護を行なうべきだという立場をとっているわけでありますが、現に軍人恩給が進んでいるわけであります。  この軍人恩給の内容を見ますと、たとえば三年から七年の間従軍した。その間一年間は下士官についていた、そういう者が対象になっているのが、最低の資格になっているようですね。下士官にもならないが、赤紙一枚で召集されて、相当長い年月従軍したり、いわゆる戦時について苦労していま生存している人間が、八百五十万人恩給の恩典に浴さない、一時恩給ももらっていないという者が実はあるわけですね。こういう人たちに、少し具体的に御質問をしたいと思ったのですが、やはり何らかの手を差し伸べてあげることが正しいのではないかと思うのですが、現在、最低の線というのが一応きまっているわけです。一時恩給を出す条件もきまっているために、八百五十万になんなんとする人が全然その恩典を受けていないということに対して、何らかの配慮をすべきだと思うのですが、この点いかがでしょう。
  55. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)主査代理 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  56. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)主査代理 速記を始めて。
  57. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいまの軍人恩給の支給にあずかっていないという旧軍人、ことに兵の階級の者が非常に多い、この問題につきましては、軍人恩給のいわゆる恩給審議会でいろいろと議論を進められておったところ、また、進められているところだ、かように考えます。軍人恩給は、社会保障という面もありますが、一面他に違った面もあるわけでありまして、そういう意味で、審議会で結論を出された事柄を尊重して政府としてはやっていくべきじゃなかろうか、かように考えております。
  58. 原茂

    ○原(茂)分科員 これはちょっと私のほうの手違いで、総理府を呼んでいないものですから、大臣のそういった程度の所見だけでこれは終わっておきたいと思います。また後に譲ります。  次に、今度の健康保険の問題に関しましてお伺いしたいのですが、医療費の値上げ、いわゆる緊急是正、引き上げがいよいよ本格的になるわけです。われわれの立場では、基本的な考えは断固反対であることをさきの予算委員会において申し上げておりますので、それをダブっては申し上げようと思いません。ただ、内容の一、二をとらえてみましても、何かこういった内容に矛盾があるのじゃないか、是正すべきものがあるのじゃないかということを考えますので、そういう点を五、六点に分けて、これからお伺いいたしたいと思います。  第一は、今回一三・七%の医療費の引き上げということになるのですが、実際には薬価基準が三・九%引き下げられるから、実質的にこれが  一・七作用しますから、それを引きますと、大体一二%の実質的な値上げだ、こう見ていいのだろうと思う。私は医者ではありませんが、実際に患者立場で考えまして、まる二年ぶりに一二%の値上げになると、これはもう基本的には反対であっても、まわりの状況から見まして、どうもそう高い引き上げ率ではないというふうに一面考えざるを得ないと思うのです。ただ、大きな病院と小さな病院と、同じ引き上げがありましても、そこに格差が出てきている。従来でも甲乙の表によって格差はずっとあったわけですが、今回もう決定的にだんだんその差が開いていく。大きな病院と診療所といいますか、私的病院といいますか、そういうところとの差が今度の値上げを通じて決定的になっていくおそれがあるのじゃないかという感じがするのですが、この点どうですか。
  59. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 今度の医療費の改定によりましては、格差がどちらについているかということでございますが、病院のほうにアップ率が高くなっております。大きな病院ほどアップ率が高いであろう、かように考えます。もし、具体的のその内容の理由が御必要でありましたら、政府委員からお答えいたさせます。
  60. 原茂

    ○原(茂)分科員 いま大臣もお認めになったのですが、そういうふうに格差がだんだん開いていきますと、しまいにやはり——現在中小企業はそうでなくても冷遇されているのですが、同じように、医療機関も大きなところはだんだんに伸びていくけれども、小さいところがだんだんやっていけなくなるような、だんだん圧迫されていくという傾向が出てきて、どうもこの点では、実際に、特に辺境地なんかでは小さな医者を非常にたよりにしているわけですが、大病院偏重で、私的な診療所その他の小さい診療機関というものが非常に経営がしにくくなる、やりにくくなるということで、だんだん成り立っていかなくしてしまうおそれがあるように思うのですが、そういう点の何か配慮を特に加えているでしょうか。現在のままでは、私は、だんだんその差が拡大していくだろうと思うのです。そうすると、私的な小さい診療所その他の機関というのは、ますますやりにくくなって、しまいには立ちいかなくなるという危険が出てきやしないかということを心配するのですが、どうでしょう。
  61. 戸澤政方

    ○戸澤政府委員 医療費につきまして、病院と診療所、あるいは同じ医療機関でも、大きいところと小さいところ、そういう規模との関係ですけれども、いま病院と開業医と比べて、病院のほうが経営が圧倒的に苦しいという現状であります。というのは、医療費の中身は一番大きいのはほとんど人件費でございまして、病院は医療法でもって一定基準の職員を必ず置かなければならぬ、患者何人について何人の医者なり看護婦なり職員を置かなければならないという必置義務がございますので、その人件費が非常に大きいわけでございます。大体病院は人件費が四〇%くらいになっておりまして、それが開業医、小さい診療所になりますと、人件費の比率が非常に小さい、そういうのが現状でございますから、大きい病院ほど経営が苦しいということでございます。それで、今回の医療費改定も、病院と診療所ではある程度格差をおきまして、病院についての入院料を重点的に見ることによってそういう病院の経営をよくするというところに重点を置いてやっておりますので、個個の医療機関についてのいろいろ事情はあると思いますけれども、全体的に見ますと、そういうようなことでございます。
  62. 原茂

    ○原(茂)分科員 大病院の人件費が多くて小さいところは人件費が少ない——これはお互いに経営をよく考えてみるとわかるのですけれども、大きなところの人件費の総体に依拠する率あるいは根拠、それと小さなところがわずかな人員だが使っている依拠率、経済的な根拠を考えますと、その総体的なものを考えると、人件費を中心に大病院が非常に困難だからというだけで考えることは、非常に間違いじゃないか、それが第一。もう一つの理由は、小さいところほど人件費がやはりもう少し正当なものが支払われて、そして診療内容が充実するようにしなければいけないのが、国の立場だろうと思うのです。ですから、人件費なんか一つとって、病院と私営の医者とのこういう格差があってもしかたがないということになる思想は間違いだ、そういう考えは間違いだ。私の質問しているのは、いまおっしゃることも一理あるでしょうけれども、とにかく現在の引き上げを中心にしてこれからずっと進んでいきますと、間違いなく小さな診療所その他はだんだん圧迫されて、経営が立ちいかない状態になりそうだという感じはもうぬぐい切れないと思う。したがって、この点に関しては何らかの配慮を、私がいま申し上げていることを契機に将来のために考えていかないと、いまおっしゃった人件費中心の考え方で、それが正しいとしてやっていくと、私は、ほんとうの日本の医療行政の末端における充実がおくれていって、国民の最も多くのものはそういう小さな診療機関をたよらざるを得ないし、たよっていることを考えると、非常な危険があると思いますから、どこかでそういう点を一度検討してもらうようにお願いしたいと思います。
  63. 戸澤政方

    ○戸澤政府委員 お話しの点はたいへんごもっともなことでございまして、個人開業医等において家族労働力を医療に参加させておるというような点も、これはそれなりにやはり見なければならないものでございまして、そういう点もございますし、それから、小さいところでもって必要な医療従事者の整備を欠いておる。たとえば、大病院では正規の正看がたくさんおりまするけれども、個人開業医、診療所等においては、若い准看のような人が多いというようなところから、医療の質の低下というようなことがあってはならないことでございますので、今後そういう点も十分注意して医療については考えてまいらなければならぬと考えております。
  64. 原茂

    ○原(茂)分科員 次に、今度の引き上げを全体的に見まして、外科に厚くて内科に薄いという感じがするのです。厚生省立場では、そんなことはないと言うかもしれませんがね。外科だってまだ満足じゃありません。手術料だって、この程度の引き上げで、これでいいとはいえない。欧米と比べてたいへん低いのですけれども、それでも今度の内容を見ると、どうも外科に厚くて内科に薄いということが、全体的に言えるのじゃないかなという感じがするのです。日本全体の開業医の数からいうと、内科が六〇%くらいでしょうか。外科が四〇くらい。したがって、医療費全体を何とかして上げまい、上げまいという立場らいうならば、内科のほうをやはり安く押えれば、全体的には値上げを縮小できる、こういったような政治的な配慮もあるのじゃないかと勘ぐりたいほど、どうしても内科に薄くて、不満足ではあるが、外科のほうがちょっと厚いのじゃないかというような感じがするわけです。外科の問題でも、手術料は確かに今度倍額になりましたが、ですが、処置料が一・五倍くらいですよ。第一、なぜ一体手術料を二倍にしておいて、処置料を一・五倍にしたのか。二倍にすべきじゃないか。処置料を一・五倍にする根拠は、一体何だということが一つ。  それから、内科に関連しまして、初診料、今度五百円になりました。再診料は据え置きでしたね。そのかわり内科加算が八点ですかになったわけですね。これで一体内科がいままでのより増収になるかというのを調べてみると、御存じの、何というのですか、あの簡易検査といいますか、血圧ですとか、それから耳の聴音ですとか、いろいろ調べますね。ああいった調べること幾つかやっていたのを、いままでは二点だ、三点だと点数が独立してあったものを、これを初診料の中にまとめて入れてしまった、含めてしまったわけですね。ということになりますと、実質的に内科の場合、値上げになった部分というのがないのじゃないかという感じがするのですよ。ただ、慢性疾患の指導料が二十六点というのが、新たに出ましたね。この慢性疾患の指導料二十六点というのも、指導せんという物的証拠がないと、これは払えない。しかも、二週間に一回だけ、再診料ですね。ということで、全体的に考えてみると、何か内科にちょっと薄くて外科に厚いという感じはぬぐいされないのじゃないかと思うのですが、こういう点どうですか、二つ。
  65. 戸澤政方

    ○戸澤政府委員 大体今回の診療報酬改定の内容を先生、よく御存じのようでございますので、簡単に御説明申し上げます。各診療科のバランスをとるということは、毎回の医療費改定のときに非常に大きな問題になり、むずかしいわけですが、今度は結果的に見まして、内科にやや薄く、外科や産婦人科に多いという結果になっていることも事実でございます。しかし、これは今回の改定の診療側の要求のほうも、手術料とかあるいは技術の評価、これを重点的に要求しておる。それから入院料の充実ですね。そういったところにポイントがありましたので、まず手術料に重点を置いて、これを二倍にするというふうなこと、それから初診料を高めることによって技術の評価というものをしていくというところに、重点を置いて行なったわけであります。それで全体のワクの問題とか、それから賃金、物価の上昇等から見て、マクロ的にこの程度の値上げが妥当であるというふうなところで中身を積み上げていくために、全部を総花式に上げるということは、非常にむずかしいのは当然でございます。その結果、処置料とかあるいは再診料、そういったものも問題のあったことは承知の上で、次回以降に見送るということにいたしたわけでございます。それで、内科をある程度充実するために慢性疾患指導料といったような新しい項目も設けておるわけでございますけれども、いろいろ初診料の中に簡易な検査等まるめたというふうなこともありまして、内科のアップ率がほかの科に比べて若干低いのは事実でありますが、これはそのときの診療報酬の改定のつど、診療科によってある程度のアンバラができるのはやむを得ないことでありまして、またそれは次のときに、そういうところを今度は重点的に見ていくというふうなことでもって、だんだんとカバーしていくようにいたしたいと思います。
  66. 原茂

    ○原(茂)分科員 技術料中心に今度の検討がされたこと、わかるのですがね。いまの外科の手術が技術料だという考え方でなしに、同じように内科の診断というのも高度な技術だと思うのですよね。初診料五百円、いままでより上がったというのですが、われわれいろいろな病気になったときに、どんな患者も、何だかわからないのにみな一度は内科にいくわけですよ。内科が初診をしまして、もしその初診が間違えると命取りになる場合が多いのですよね。あらゆる外科的な疾患であろうと何であろうと、内科の最初の初診において的確にできる限り判断をして、そうして専門医のところに送る。それが送りそこなったり、方向づけが間違ったら、それこそ命取りになるという、一番最初の内科の初診というもの、この技術は、外科のいわゆるオペレーションをやると同じ技術、同等にみなしていいほどの技術だと私は思うのですよ。また、そういうふうに医者も考えなければいけないと思う。ですから、初診料の五百円というのだけ、しかも簡易検査も含めてしまったのですから、値上げになっていないというか、あまり薄いということをお認めになったわけですが、今回は改正ができないのはやむを得ないのですが、これは厚生省全体としても、大臣ももう少しお考えになって——技術という点を考えたときには、単に外科的な技術というのと同時に、内科における初診の技術というものは、外科の技術と同じように重要視してウエートを置かないと、これからはますますその内科の医者が最初に見たときの診断、その診療の方向づけというところに重点が置かれないと、ここであやまちがあると、国民の完全な医療の第一歩は踏み出せない。しかも誤診だとかあるいは何であるとかいって、内科の医者はたった五百円のために、うっかりすると、一生立ち上がれないほどにあとで損害賠償を取られたり、慰謝料を要求されたりということすらある。だんだん国民がりこうになってきますから、医者の言いなりになって、間違ったのだからしょうがないなんて言っていませんからね。必ずこれからは誤診があれば、医者に対して慰謝料を請求する。だんだんそういうふうにいわゆる日本の国民の思想も高まってきていいと思う。そうなりつつあります。であればあるほど、内科の初診に対する技術というものはもっと十分に評価しませんと、ほんとうの意味の国民の医療の第一歩は踏み出せないというふうに考えますが、この点はもう少し重要視して改定をする御意思があるかどうか、ひとつ……。
  67. 戸澤政方

    ○戸澤政府委員 お話のとおり、内科におきます技術料というのは、診察料、つまり初診料とか再診料、そういったものに評価されるわけでございます。内料は、そういう診察料と薬剤料、これがおもな医療費、診療報酬の中身になるわけでございますので、そういう点の問題意識は中医協におきましても承知した上で、次回以降に見送るということになった事情もございますので、今後薬価の適正化とあわせまして、そういう再診料等の技術料の評価というところに重点を置いて検討されるであろうというふうに考えます。
  68. 原茂

    ○原(茂)分科員 それから蛇足ですが、先ほどの簡易検査ですね、あれが独立点数を与えていたものを、既得権のようにあったものを今度なくして、初診料でまるめて入れましたね。横着な医者が、いないとは思いますけれども、これはやってもやらなくてもいいんだという感じを持ったら、ほんとうの診察はできないのです。やはり手を省くなら、そこらを省きますよ、とにかくやってもやらなくても入っちゃっているのですから。いままでは、独立点数だったから、きちんとまじめにやってもらえた。それが今度は、われわれ不安ですから、医者にかかっても、簡易検査の三つなり四つをやらなければ、なぜやってくれないかと私なら言いますけれども、一般のクランケは、そういうことは知りませんからね、ですから、おそらくやらなければやらないで普通だと思っていますよ。そのために誤診もあり得ますから、この独立点数を与えていたものを初診料に入れるということは、もう一ぺん検討する必要があると思う。とにかく横着な医者が、いないと思うが、あれば、やってもやらなくても金は同じだという感じにさせたことは間違いない。そんな良心的でない医者はいないという前提でしょうけれども、私は、やはり人間だから、そういう人もあり得る。したがって、そういう点はもう一度次の機会に検討を要するというふうに考えますのが一つ。  それから、審議会の建議書か何かの第一項ですか何かに、物価、賃金というものにスライド制を採用してこれから医療費の引き上げをやっていくんだという項目がありましたね。これはそのとおりに実行するのでしょうか、どうでしょうか。スライド制を実施するのかどうか。
  69. 戸澤政方

    ○戸澤政府委員 初めの問題でありますけれども、今度初診料の中に簡易な検査を含めましたのは、血圧測定とか尿検査とか、そういういまどこの医者に行っても診察の際にほとんど常識的に行なわれるような簡易なものを含めたわけでございまして、それ以上の大きな検査は別個のことになっておりますので、そう弊害はないと思いますけれども、今後推移を見てまたじっくり検討したいと思います。  それからあとの点は、この医療費、診料報酬なるものが、賃金とか物価の変化に即応して検討されるべきである、いわゆるスライド的な考え方、これはもう当然なことであろうと思います。ただ、スライドと申しましても、やり方、中身、いろいろございますし、また、年金とかいろいろな問題への影響も多い問題でございますので、この問題は慎重に検討する必要があるということでもって、中医協でも特別の小委員会、専門の委員会をつくって、この問題を検討していくというふうなことになっております。
  70. 原茂

    ○原(茂)分科員 第一の問題も、いまあなたが言ったようなことじゃないんで、やはり人間ですから、やってもやらなくてもいいという感じが出てきます。これは私の親戚に医者が一ぱいいるのですが、そう言っていますよ。ですから、それを検討してもらう。  それから、中医協の問題は、スライド制を完全実施したら、中医協は要らなくなっちゃうんじゃないでしょうか、どうでしょうか。
  71. 戸澤政方

    ○戸澤政府委員 そういうスライドと申しましても、いわゆる完全スライド、オートマチックなスライド、これはなかなかむずかしいと思います、医療の中身は複雑なものでございますから。まず、技術料と物件費というふうなものを完全に分けて、それを賃金、物価にスライドできる面はどういう面であるかということを区別するだけでも、なかなか容易ならぬ問題でございますので、そういう完全スライドというのは、これはむずかしいと思います。
  72. 原茂

    ○原(茂)分科員 あと、じゃ、次の問題に入ります。  これは私の選挙区の事例をあげるわけですが、下伊那郡の松旭町あるいは飯田市というところの病院でいま問題になっていますのは、たとえば結核なんかはだんだんもう患者が減ってきまして、結核病床が減るわけですね、ベッドが要らなくなる。そういうものが、公的病院において転換が自由にできない。これはなぜ規制するんでしょうか。現実に結核なら結核患者が少なくなってベッドがあいてきたら、これは転換を自由にさしてやったらいいじゃないですか。公的な病院に限って何か規制をしているようであります。七条の二ですか、こんなものは廃止していいんじゃないかという気がするんですが、どうでしょうか。
  73. 松尾正雄

    松尾政府委員 私ども、激結核病床があいております場合に、これをたとえば最近非常にふえております老人の慢性疾患でございますとかに転換いたしますとか、あるいは子供のいろいろなものに転用いたしますとか、そういう貴重な社会資源でございますから、そういう地域の実情に応じて転換していくという基本方針は賛成なんでございます。  後段のほうの問題といたしましては、ただいま医療法の中に、公的病院の病床規制というものがございまして、基本的にその方針をとろうといたしましたとき、実は結核から一般ベッドに切りかわるという場合に、その一般ベッドが、その一定の地域におきまして人口割りにいたしました必要な病床数というものの算定ができるようになっておりますから、それをオーバーしているような場合でございますと、原則的にはその規制の対象になる。そこで、実際はそういう制度上からの一つの制約がある。ただし、これとても絶対に不可能だというものじゃございませんで、医療法の中でも、たとえば救急病院になるとか、あるいは老人用の特別の病床になるとか、あるいはリハビリテーションでございますとか、そういったものは、かりに病床が満タンでございましても、さらにその上にオーバーしてつくっていい、こういうことは出してあるわけでございます。でございますので、基本的にはその転換することは、私どもは決して不賛成ではございません。ただ、みだりにやることは問題があると思いますけれども、必要であれば、そういう転換は差しつかえない。ただ、そのときの転換が、いま申しました特殊なものであれば、これはいまでも可能だということでございます。
  74. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)主査代理 原君、時間がまいっておりますので、結論をお急ぎください。
  75. 原茂

    ○原(茂)分科員 いまのお話で、原則として何も反対じゃないと言うんですけれども、実際に手続上の問題が非常にやっかいなんですよ。ですから、これはもっと思い切って自由裁量にまかせるような緩和規定を設ける必要があると思うのです。これをやらないと、非常にむだがありますね。なかなかいまおっしゃっているようにきれいごとにいっていないのが現状なんです。もったいないわけですから、これはもう少し緩和することを大胆に検討されて、指示をおろしていただくということをひとつお願いしておきたい。  それから最後に一つ、たとえば松川町なんかで厚生連総合病院をつくりたい。これが飯田とか駒ヶ根とちょうど十五キロほど離れておりまして、公的な総合病院をつくろうといってやってきたわけです。ほとんどそれができそうになっているわけですが、土地の医師会の意見なんかを聞いたりすると、それが原因で停滞をする。ずっと今日に至っても、まだできない。こういうのは、行政指導ができないのでしょうか。皆さんのほうの立場から見て、ただ停滞をさせておかないで、やはりはっきりした理由があるなら、住民にその理由がわかるように、端的に厚生省が中に入って知らせるべきは知らせる。医師会が悪いなら医師会が悪いということが、大衆に判断できるようにする。医師会の言うことはもっともだ、医師会がかくかくのことを言っているのはもっともだから、これは許可しないんだということをはっきりすべきだと思いますね。ずいぶん長い間、松川で調べてもらえばわかりますが、いまだにこれは決着を見ないでおりますが、こういう点に対する指導を的確にやっていただきたいという、この二点をもう一度お答え願いたい。
  76. 松尾正雄

    松尾政府委員 第一点のほうの病床規制の問題は、いま出されました一つの例だけじゃなくて、基本的にはいろいろ問題なんでございます。これは基準自体の値を変えるということが一つの方向でございましょうけれども、もう一つは、大かたの御議論の中に、こういう制度自体——これは実は議員立法で出されたものでございますけれども、しかし、それはそれとしても、今日の段階ではむしろ廃止したらどうだ、こういう御意見が強いわけでございまして、今後の医療制度の中で十分われわれも検討したいと考えております。  それから第二点のほうの問題は、方々にある問題でございまして、ただいまの医療法自体が妨げになっている問題もございます。また、それがかりに許される範囲であっても、なおそれ以前の問題としてトラブルが起こるという問題もあります。御承知のとおり、私どもも具体的にはまだ相談は受けておりませんけれども、原則的には病院の開設許可は都道府県知事が行なうようになっておりますので、県との間にわれわれとの意思疎通をいたしまして、その事情等も聞いて、もし間に入れるものであれば入ってまいりたいと思います。
  77. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)主査代理 中村君。
  78. 中村重光

    中村(重)分科員 簡潔にひとつお答え願いたいと思います。  七十歳以上の老人に対して医療の無料化、これは社会福祉の前進という立場から、私はそれなりに評価をしたいと思います。ただ残念なことは、所得制限をつけたということ、それから寝たきり老人等はやはり年齢を引き下げるべきじゃなかったのか、こう思うのですが、この点はどうしてこういうふうな措置がとられなかったのか、いかがですか。
  79. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 まず、第一点は所得制限の点でございますが、非常に高い所得のある者にまでなぜ公費で見なければならないのかという議論がございまして、したがって、制限をどこでつけるかというのが問題であろうと存じますが、今回のあれは二百五十万ということにいたしました。これは今後の情勢を見まして、さらにその引き上げ等も考えていかなければならないと考えております。  それから寝たきり老人に対して、年齢を引き下げたらどうかというお話がございますが、これは将来の検討問題として検討いたしてまいりたいと思います。
  80. 中村重光

    中村(重)分科員 将来の検討問題ということよりも、大臣、これはもう当然おやりになるべきだったと思うのですよ。それから非常に高額な——それなりにわかるような気がするのだけれども、今日の核家族化、意識の変化というのも、非常にあるわけです。老人は、年金にしましても、やはり老人の一つの権利としての意識がある。それから、これを非常に楽しみにしているということです。だから、扶養家族等の収入によってそれがもらえない、その心情は大臣もお考えにならなければいけないと思うのですね。医療費だってそうです。金をくれということは、その世帯が相当所得が多くても、なかなか言いづらいものなんですよ。そういった点は、心情を十分体してやっていくということが、やはりあたたかい政治のあり方だろうと私は思います。そういう点は、十分配慮していただきたい。議論する時間は、三十分で、ありませんから。  次に、重度心身障害者の医療費の無料化の問題、私は老人の問題と比較はいたしませんけれども、これはほんとうに最優先に無料化というものをはかっていく必要があったと思うのですけれども、これが何らの恩恵にも浴してないということについては、大臣はどうお考えになりますか。
  81. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 重度心身障害児等に対する医療の問題は、それなりに考えておりますが、しかし、これも現在のままで十分とは考えておりません。これもまた今後の問題として考えてまいらなければならない懸案問題だ、かように思います。
  82. 中村重光

    中村(重)分科員 一生働く能力のない人たちですね、この人たちは保険とか厚生年金の制度に浴することができないのですね。同時に、これは厚生省のほうで統計をおとりになっておられるかどうかわかりませんが、健康の子供を養育するのと、この重度の障害児の養育の費用が、どの程度違うとお思いになりますか。
  83. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 養育児全体につきましての心身障害児と健全児との差は、申しわけございませんが、ただいま手元に資料を持っておりませんので、後ほど資料を調べまして、ございましたら御報告申し上げたいと思います。
  84. 中村重光

    中村(重)分科員 私どもは、直接そういった父兄の人たちと会ってよく話をするのです。経済的だけで、五倍といわれています。もう精神的な負担というのは、たいへんなんです。そのことを考えてみると、重度心身障害児に対しては、せめてこの医療の無料化をはかっていくということが、私はもう当然のことだと思うのです。その点を、ただ前向きにこれを検討していきたいということだけでなくて、大臣、もっと積極性のある態度の表明があってしかるべしだと私は思いますが、いかがでしょう。
  85. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私は基本的にはお考えに賛成でございますが、現在、心身障害児者に対して行なわれております諸施策、それらと勘案をいたしまして検討をいたしたいと申し上げるだけで、今日ここで、どの程度こうしなければならないという結論を、私はいま申し上げるだけの検討を済ましておりませんので、まことに申しわけございませんが、御了承いただきたいと思います。
  86. 中村重光

    中村(重)分科員 責任のある態度のようでもあるし、きわめて消極的な答えだというようにもなるんですね。従来、省内で検討した結果でもあったのだとは思うのですけれども、いつからこうしますというような——たとえば七十歳以上の人の無料化なんというものは、その前の予算委員会では、議事録を調べてみても、明確にそういう答弁だって行なわれたという経過もあるんですよ。そういう点は、もっと重点を置いた検討を早急におやりになる必要があるということです。考えてみられたらおわかりだと思うんですよ。たとえば重度心身障害というのは、労働もできなければ運動もできないですね。片足の人を考えてみませんか。片足の人は重心が片一方にかかっちゃうのです。これは関節炎を起こしちゃう。そうすると、もう両足ともだめになっちゃうのです。これは片眼もそうなんです。片眼だけを使うから、これに非常に無理がいく。ついに両眼ともだめになってしまうんですね。このことを考えてみると、恵まれない方々に対して、せめてもそういう症状というものが進行しないような対策というものが講じられてこなければならないじゃないか。その点は、医療費の無料化は典型的な重要な施策である、私はそのように考えます。十分配慮してもらいたい。  それから、地方自治体でもって無料化を実施しているところは、どこどこございましょう。
  87. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 現在まで調べました限りでは、一部補助しておるものを含めまして二十六府県から回答が来ておりますが、県または指定都市が一部実施しておりますものが三つ、それから県が一部補助しておりますものが一カ所、それから市町村が実施しておるものが五十六カ所、そういう数でございます。ただ、これは全県について詳しい調査をまだ行なっておりませんし、その後の動向といたしまして、もう少し多くなっておるかと考えておりますが、いままで調べました限りではこういう数字でございます。
  88. 中村重光

    中村(重)分科員 老人の医療無料化にいたしましても、財政的に非常に窮屈な東京都の美濃部都政の中でこれが実施された、国がそのあと追いをやっているというような形です。その心身障害児の医療無料化にいたしましても、鹿児島県に枕崎市というのがありますね。ここでは医療の無料化を実施しているのですが、重度障害者の一級、二級の該当者が百六十名いる。そのうちの八十名が医療の給付を受けたらしいのですが、市の負担はなんと八百数十万円、これはたいへんなことなんですね。地方自治体ではとうていできそうもありません。この点は大臣も、その必要性ということよりも、重要性というものを認識しておられるようですから、これは期待をいたしたいと思います。  それから、精薄児・者に対して、福祉手帳が実は交付されていない。これは私もいろいろ指摘し、事務当局から説明を伺っているのですが、それなりの理由というのがあったんだと思うんだけれども、いまはその手帳を交付されていないためめ不利益な面もたいへんに多いということから、手帳を早急に交付すべきだという主張が、たいへん強くなってきております。これに対する手帳の交付は、いつごろから実施されるお考えなのか。
  89. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 精神薄弱児・者に対する福祉手帳の交付につきましては、父兄、関係団体からの強い御要望がありますことは、私ども承知しておりますし、いろいろ検討しておるところでございますが、ただ現在手帳が交付されております身体障害者福祉の法律のたてまえ自体が、手帳の交付によりまして一定限度以上の身体障害者であるということを証明いたしまして、自後その手帳に基づいて指導援助が行なわれるという法律構成になっておりますのに対しまして、精神薄弱者福祉法及び児童福祉法は、精薄というものがそういうふうに限定的にとらえにくいという医学的な理由もございまして、現在個々の診断によりましてその後の福祉の措置を行なうという、別の構成をとっておるわけでございます。したがって、精神薄弱者福祉法等におきましては、身体障害者手帳とは多少別の意味におきまして指導の一貫性を持たせる、療育の記録にするというような意味での指導記録のような形での福祉手帳というものは、今後必要であろうと考えておりますので、そのような形で、今後なるべくそういう制度が実現できるような方向で検討さしていただきたい、そのように考えております。
  90. 中村重光

    中村(重)分科員 後段の答弁で理解はできますが、法律構成という、それはいろいろ違いもある、たてまえもあると思います。しかし、要はその手帳の交付の必要があるのかないのか。交付をされることにおいていろいろな制度の恩恵に浴するものが、されていないために浴しないということだってあるのだという受け取り方を実はやっている。事実そういう面も私はあるのだろうと思います。ですから、後段の点に重点を置いて検討して、すみやかに期待にこたえてもらうということを私は強く求めておきたいと思います。  次に、保育所の件なんですが、公私立の格差是正ということをいつも言われながら、これがなかなか実行されない。私の調査が厚生省の統計と違っているかどうか知りませんが、いま公私立で一カ園でもって年間二百万円の格差があるといわれている。これは私は問題だと思います。     〔橋本(龍)主査代理退席、主査着席〕 したがって、この公立、私立の格差をなくするという、これは最も重要な問題点ではなかろうかと思いますが、具体的にはどうするのかということですね。いわゆる定員定額という形になってまいりますと、格差は大体解消するということになっていくだろうと思いますが、それらの点に対して、どのようにお考えになっていらっしゃいましょうか。
  91. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 保育所を含めまして、児童福祉施設あるいは社会福祉施設で、公私の施設につきまして、特に職員の給与について相当の格差があることは、私ども実態調査をいたしましてよく承知をいたしております。現在、場所によりましては二十数%の格差があるようでございます。  その解決の方策といたしましては、現在措置費の中に組み込まれております職員の給与に関する積算、国の補助金の内容を改定するということが  一つの方策でございまして、そのために四十七年度におきましては、一般的に保母等の直接処遇職員の給与の引き上げをはかっておりますのと並行いたしまして、特に私立の施設職員につきましては、その給与の格差を解消いたしますための財源を特別な補助金といたしまして計上いたしまして、漸次公私の格差の解消をはかっていく、そういう方策をとっている次第でございます。
  92. 中村重光

    中村(重)分科員 なるほど、そういう芽は出しているのです。ところが、それもきわめて僅少なんですね。だから、格差是正というものにはなかなかならない、ほど遠いということです。  それからいまの措置費の問題、これも議論の分かれるところでしょうが、これは私は措置費と給与は別にしなければならぬということを主張しているのですよ。ということは、措置費でありますと、勤続年数がどんなに長い保母でありましても、短い保母でありましても、同じような措置費が支給されている。ところが、大臣、ここのところが非常に大事な点なんです。この勤続年限が長くなってまいりますと、給与は当然上がるわけなんですよ。ところが措置費でもってやりますから、その点は同じだということなんです。そうすると、どうしても給料が押えられるという形になってくる。これは古い者は出ていけという、やっかい視されるような面も出てくるわけだ。ですから、この措置費と給料というものは、これは別に切り離して、措置費の中に入れないでやる必要がある。ところが、そうしなければならぬという、また反対意見も実はあるわけですね。なかなか結論が出ないでいるところですが、しかし、実際問題として考えてみなければならぬ点であります。  それから定員定額でなければならないということの問題、私は、重要な問題として一つ指摘したいのは、何人あなたのところの保育所では預かり保育をしなさいということは、月の初めにきめられることですね。大体前月の二十五日ぐらいにそういう通知が来る。そうして月の初めにきまるわけです。そうなってまいりますと、途中では入れないのですよ。途中で入れましても金はもらえないのですよ。だからこれも私は不合理だと思っているのです。身障児はそうじゃないですよ。身障児は、一カ月のうちに一日預かっても一カ月分もらえるのです。ところが、精薄とこの保育所はそうじゃない。途中ではもらえないから預からない。それはわかっているから、したがって市のほうも、途中で預かれというようなことを言わない。このことは、すでにいまの定員定額ではないところの矛盾といいますか、問題点の一つとして出てきているということです。もっと私が調査をしていることで申し上げると、たくさん問題点があると私は思うのです。たとえば乳児保育所にいたしますか。乳児保育所は、六対一でしょう。三歳以上になると、今度は二十対一になるわけですね。そうすると、乳児保育所で六対一ですから、保母がそれだけたくさん要ります。そうすると、乳児がそれだけいなかったという場合は、幼児を預かることになる。幼児は二十対一ですから、それだけ保母が必要がなくなりますから、それじゃおまえさんやめなさいということは言えないでしょう。そうすると、その保母に対する給料はだれが払いますか。それは理事長が払うかどうか、あるいは寄付金を求めてやるかということになってくる。いろいろな実は大臣、問題があるのですよ。だから、どうも鋳型にはまったようないまの保育所等の運営のあり方、むずかしい問題もありましょうけれども、私はやはりこの保育行政の重要性、それから先ほど指摘をいたしました心身障害児、あるいはその他福祉行政の重要度ということから考えて、困難を克服して不合理を直していくということでなければならぬ。私が指摘をいたしました点、矛盾がございましょうか。いかがでしょうか。
  93. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 ただいま先生から御指摘のありました点、私どもといたしましても、保育所の運営についていろいろと現場からの意見も聞いておりまして、確かにそういう問題点があろうかと存じます。ただ、現在の保育所は、全国で約一万五千の保育所がございまして、それに対しまして措置費を支給いたします場合に、実際の職員の給与等を勘案いたしまして保母をきめるということになりますと、今後はそのための調査なりそれを調整いたしますための事務費が、相当市町村の負担にかかってまいるおそれがございます。やはり規模の小さい保育所というような個々の世帯を対象にいたします場合には、ある程度収容児の年齢差によります定型化した保育単価というものを設けまして、かついま御指摘のように、月の初めにおける現員を対象といたしまして措置費を支給する方式をとっておりますのは、そういう事務の簡素化と、やはりこの措置費は公費でございますので、できるだけ子供の処遇あるいは職員処遇のために使いたいという前提もございまして、そういう形をとっているわけでございます。したがって、御指摘のように、月の半ばに入った者に対する措置費は出ないという問題がございますが、同時に月の半ばで退所いたしましても、そのままその数が継続するわけでございます。事務の簡素化の意味である程度平均化した措置費の支給が行なわれるということになるわけでございまして、定員定額化も一つの方法であることは私どもも十分わかるところでございますけれども、ただ、いま先生も御指摘のように、年齢差によりまして保母の数あるいは処遇の内容等も変わってまいります。それを固定した定員によりまして固定した単価で考えるということになりますと、それはそれでまた流動性を欠くような欠点も起こってまいるおそれもございまして、私どもも現在のやり方がそのままで万全だとは思っておりませんし、いろいろな御意見があることは承知しておりますので、できるだけ実情に合うような形で、しかもあまり事務的な負担が現場にかかりませんで、市町村段階でもできるだけ実情に合い、しかも簡素な形で措置費の支給が行なえますように、現在なお検討しておる段階でございます。十分に考えさしていただきたいと思います。
  94. 中村重光

    中村(重)分科員 わかるんですよ、あなたがおっしゃることは。きわめて事務的なものの考え方だと思うのですよ。実情にと、こうおっしゃいました。いずれが実情に合うのか。保育所が足りない。いままで子供を預かってもらってない母親がいる。いわゆる保育浪人という婦人が相当いるわけですけれども、それほど不足している。にもかかわらず、いま私が申し上げましたように、月の初めにきめる定員定額制でないために、途中でもっと入れられるのにもかかわらずこれが入れられないでおるというこの実態、それらのこと等を考えてみると、いまあなたがお答えしましたようないろんな点はあるでしょう。ありましょうけれども、やはり何といいましょうか、保母に関してどうしても数が足りません、保育する人が足りないということになってまいります。収入がそんなにありませんから、どうしても保母に対して経営者は無理をしいる形が出てくるであろう。そうなってまいりますと、保母は社会福祉法人の保育所というものをできるだけ避けるという形になっていくのではなかろうか。それから公、私立の格差、そういうことのための、公立は親方日の丸じゃないか、私立社会福祉法人に対してはそういう処遇とやり方をしているということはけしからぬじゃないかという不満のあらわれだとか、いろいろと問題点というものが出てきて、この預かっている大事な児童に対して、幼児に対しても悪影響を及ぼすという結果になりかねないと私そう思うわけです。私は、実情というものがいま指摘をいたしましたような点にこそ置かれなければならない。これが正しい行き方ではなかろうかと思います。こうなってまいりますと、これは政治家である大臣が判断をされる必要があるだろうと私は思いますが、事務当局のおっしゃることは、それなりに事務的には私もわかるような気がするのです。しかし、いずれに重点を置くべきであるか、いずれが実情であろうか、こうなってまいりますと、やはり大臣はどういう方向でこれから先進めていこうと考えられておるのか、お尋ねいたしたいと思います。
  95. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 やはりそういうことはまあ実情に即し、実情と申しますのは社会のニードといいますか、必要性というものに即してやるのが本来であろう、かように考えます。したがって、そういうことを踏まえまして、いまおっしゃいましたいろいろな点を検討をいたさせます。
  96. 中村重光

    中村(重)分科員 時間がございませんから、いまの問題、一つの非常に重要な問題ですから、十分時間をかけて御意見も伺い、また私が日ごろ思っていることも申し上げて議論もしてみたいと思いますが、あらためてまた別の機会を得たいと思います。  次は、公衆浴場の物統令の問題、それから物統令に基づいての距離制限といったような問題が、いまや大きな問題となってクローズアップされてきていると思うのです。御承知のとおり、物統令はお米の物統令が廃止されて、ふろ屋とそのほか軽微な、問題にならないようなものがもう一つ残っているのですが、ふろ屋の物統令を廃止せよというこの要求に対して、どのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  97. 浦田純一

    浦田政府委員 公衆浴場の利用者の層、ことに所得などの実態を考えてみますと、直ちに料金統制を廃止することには問題があろうかと思います。現在、いろいろの公衆浴場をめぐります問題を含めまして学識経験者からなります公衆浴場問題懇談会において御審議を願っておる段階でございますので、その答申を待ってさらに検討いたしたいと考えます。
  98. 中村重光

    中村(重)分科員 おっしゃることは、私もわかるのです。私もどうしたらよろしいのか、正直に申し上げてまだ党でもきちんとした判断を出し切らないでいます。東京都なんかのように、まあふろ賃が上がったから直ちに自分でふろ場をつくろうという余裕のないところなんというのは困るですね。公衆浴場は庶民がこれを使う。物統令を廃止することになってくると、どうしても料金が上がってくる。しかし、バランスという点では問題があるのですよ。理美容は、適正料金というので最低料金が保証されているのです。同じ環境衛生のサービス業で、ふろ屋だけが実は最高料金が押えられてきている。しかも物統令である。これはバランスの点においても問題である。まあふろは郊外ではほとんど自分設備をする。散髪は自分じゃできないでしょう。これは業者にしてみると、物価指数からいえば値上がりじゃない、もっと上げなければならぬ、こう言っています。しさいに検討してみませんとわかりませんから私もこの点何とも言えないのですが、よく厚生省では、これは事実かどうかわかりませんが、物統令をはずすと距離制限もはずさなければならない。業界は、物統令ははずす、距離制限は存続しろ、こう言っておると伺っておる。私は、サービス業は適正配置をすべきであるというような持論であるわけです。ですから、物統令をはずすということ即距離制限をはずさなければならないということには、私はならないと思っています。社会主義国家は、適正配置でこれはやっている。私は、過当競争ということは問題がありますから、やはり適正配置が好ましい。薬屋さんも、それらの理由がありますが、適正配置がなされてきている。また、事実上の適正配置的な運輸業その他、実は相当あるわけです。ですから、もし厚生省が物統令をはずすんだったら距離制限もはずさなければならないという主張であるとすれば、それは私も若干問題があるのではないかという感じがいたします。ですから、これはやはり切り離して考えていく必要があるのではないか。それから物統令を直ちに廃止できないとすれば、何か弾力的な方法はないのであろうか。多角経営というので、環境衛生金融公庫から、喫茶とかなんとかいうのは融資の道が開かれております。事実上はそれはなかなかでき得ないのです。若干のものがやっておるにすぎない、等々考えてみますと、何か方法を講じなければならない。共同化の方法はどんなものであろうか、あるいは公営浴場をつくることはできないものであろうか、それから物統令で最高をはずしてしまうということはしないが、何か弾力的ないわゆる適正料金ということをきめる方法はないものだろうか、いろいろ考えていかなければ、今日浴場というものは斜陽化していることは事実でありますから、この業者業者としてあとが立ち行くこともやはり考えてやらなければならない等々考えますから、それらの点に対して、一応大臣からお考え方を聞いてみたいと思います。
  99. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私も、中村委員のおっしゃいますように、これはいろいろな問題があると思います。事実、物統令なんかもういいじゃないかという感じは、一応いたすわけであります。そこでひるがえってみますと、またいままでのいろんな問題がございまして、まだ結論に達しかねておりますが、幸いいま公衆浴場問題懇談会というものを学識経験者でつくってもらっております。その結論も拝見をいたして、そしてこれはいまのまま放置はできない、かように思いますから、結果を出したい、かように思います。
  100. 中村重光

    中村(重)分科員 それでは時間が参りましたから、実は球丸の問題と民生委員の問題をお尋ねをしたかったのですが、球丸の問題は、援護局長に何回かお会いいたしまして、非常に前向きな取り組みの意思が表明されておるわけです。この点はきわめて困難な問題であるということの理解はできますが、しかし困難であるからといって放置できない問題である。しかもこの船に引き揚げ者の人たちが相当乗っておって、引き揚げ者に対してはいわゆる事実上の特別の報償制度がなされておる。これらのことを考えてみますと、なくなった人の遺族に対しては特別の措置が講じられなければならない、こう思います。ですから、防衛施設庁あるいは運輸省、関係各省とも積極的に話し合いをされて、一日も早くこれら気の毒な方々の救済ができるようにやっていただきたい。  民生委員の問題は、どうも都道府県でもってピンはねをしておるところが実は相当私の調査であるようであります。それからこの研修費が非常に不足しておる。それから老人調査であるとか身障者の調査等々いろいろやっておりますが、十日も一週間もかかるような調査に対して、わずか五百円の費用しか出していない事実等がございます。それらも実情をよく調査をされて、少なくともこれは交付税ですから、自治省の関係もあるわけですから、民生委員そのものは厚生省関係になるわけでありますから、民生委員の重要な業務という点から考えて、この手当の引き上げをやっていかれる必要がある。実は四十七年度から、民生委員と児童委員とで手当九千円になりますが、ところがこの人たちにはいろんな費用の負担がなされておりまして、共済金、民生協の費用等二千四百円くらい実は自分たちが負担をやらされておるということになりまして、手取りが非常に少ない。一日一時間ぐらいの民生委員としての業務があるから、手当は一日いままで十円でありました。それが今度引き上げになりましても二十円ぐらいしかならないということであるわけであります。これは名誉職であるという形で片づけられない。今日の非常に生活が苦しい状態の中で民生委員の果たしておる役割りというものを重視して、十分対処してもらいたい。このことを申し上げ、大臣のお答えだけ伺って終わります。
  101. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 民生委員の点は、確かに私もさように思います。非常に重要な仕事であり、いまの名誉職という形で、いまの手当とかそういったものではたして将来どうだという点がございますが、私も同様に考えまして、将来の問題を検討いたしたいと思います。
  102. 田中正巳

    田中主査 午後一時に再開することとし、これにて休憩いたします。     午後零時十五分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  103. 田中正巳

    田中主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  厚生省所管に関する質疑を続行いたします。樋上新一君。
  104. 樋上新一

    ○樋上分科員 京都のジフテリア予防接種禍事件についてお伺いいたしたいと思いますが、私は、昭和二十三年十一月京都市において実施されましたジフテリア予防接種についてお伺いいたします。  大臣も御承知だと思いますが、当時はわが国に予防接種法が施行されて間もないころでございまして、その当時の新聞を調べてみましても、京都、島根、栃木、香川、佐賀、三重の各地にジフテリアまた百日ぜき、BCGなどの予防注射による事故が続発しております。当時の総司令部、GHQのサムス公共衛生福祉局長は、こうした状況を見て、日本人に対する予防注射を全部無期限に停止し、注射用のワクチン及び血清などを全部回収して再試験をするよう発表した等の記事もございました。特に京都で起きたジフテリア予防注射事故は、六十八名の死亡者と六百六名の重軽症患者を出し、ドイツのリューベック事件以上の大不祥事件でありました。あれから二十数年ほど経過した今日、私がここにあらためてこの問題を提起した理由は、人間生命の尊厳こそがあらゆる思想、政治、とりわけ行政面においては最優先することを再確認していただきたいためであります。  まず昭和二十三年十一月に起きました京都ジフテリア予防接種禍問題の当時の状況を詳しくお伺いしたいと思います。
  105. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 昭和二十三年の十一月に京都市が予防接種法に基づきまして、第一期——第一期というのは、これは乳幼児の最初の種痘、予防接種でございますが、第二期、第三期、こういうような定期の予防接種を七千六百四十二名に対して実施いたしまして、その結果、ただいま先生からお話のございましたように六百六名、それから死亡者が六十八名、計六百七十四名の異常反応を示した者が出たわけでございます。原因につきましては、予防接種液のジフテリアトキソイドの不良によるものでございまして、ホルマリンを使いましてトキシン、いわゆる毒素を中和して使うべきものに一部その誤りがありまして、不良なトキソイドが使われたというのが原因でございます。
  106. 樋上新一

    ○樋上分科員 国がきめた予防接種法に基づいて行なわれた予防注射によって六百六名の重軽症患者を出し、六十八名の死亡者を出した。こうした事故がジフテリアワクチンの製造上のミスによって起こったことに対して国はどういう責任をとられたか、そのお考えをお伺いしたいと思います。
  107. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 本件の原因となりましたワクチンが、国が定めたワクチンの製造過程における製造基準によらずに製造されたということがわかりまして、一応検定というものを経ているわけでございますが、それがまた、検定をするためにとりました標本の採取のしかたにやはり見過しがございましたために発生した事件でございますので、国の責任を否定することはできないというふうに考えております。
  108. 樋上新一

    ○樋上分科員 それじゃ、当時国はどういう責任をとり、また、どういう事務的に補償問題などについてされましたか。その点詳しくひとつ聞かしていただきたいと思います。
  109. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 この点につきましては、事件発生以来、地元の京都市、京都府等によって、諸種の治療面その他物資の援助等の面から対策が行なわれましたが、その後この被害を受けました父兄の団体から訴訟の準備というような段階に至りましたわけでございますが、市、県、国等が話し合いました結果、被害者並びにその家族との折衝の結果において和解が成立したのでございます。  その内容につきましては、死亡者の遺族に対して十万円、患者に対しては見舞い金一万円、治療費の負担のほか生活援助物資等の給付を行なっている、こういうような措置が行なわれた。この見舞い金あるいは弔慰金というようなものの予算措置につきまして当時の記録を見ますと、国の支出が約三千万円程度になっております。
  110. 樋上新一

    ○樋上分科員 この責任者が、いわゆる業務上過失致死傷罪、こういうことになりました。これによって処罰されておるのでしょう。そうですね。その当時は処罰されておるのです。本来、こうした事件は国に明確な責任があり、国家が患者や遺族に対して国家賠償法によって責任をとらなければならないと私は思うのでございます。それがとられておらないように思うのです。その過失致死傷罪に至ったその当時の現実にどういう救済措置をとったかということをいまお伺いしたのですけれども、これは国家賠償法によらなければならないと思うのですが、どうですか。
  111. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先ほど説明の中で言い落としました点が先生から御指摘ございましたように、製造の責任者は刑事事件として処罰を受けております。  それから、民事上のたてまえから、先ほど申し上げましたように、訴訟準備というような空気の中でいろいろ話し合われた結果、和解という形で措置がなされたのでございますが、広い意味の国家賠償、いわゆる現在やっております予防接種法の事故の救済は、故意、過失等のものがない状態において予防接種が行なわれたときにそれを救済する道がいままでございませんでしたので、閣議了解に基づきまして、ただいま実施いたしております予防接種の事故救済をいたしておるわけでございます。国家賠償に該当するというのは、その責任なり事故の実態が明らかなものについてなすわけでございますが、この京都のジフテリア事件は、先ほど申し上げたように、国に責任があるということで、訴訟の準備段階でいろいろ和解の形をとりましたので、一応そういう面からは、現状実施しております予防接種のいわゆる無過失の状態における事故の救済というものと性格が違いまして、明らかに事故として国の責任を明らかにする。こういうことで、和解という形でこの事件の一応のあと始末が完了しておるというふうに私たちは理解しておるわけでございます。
  112. 樋上新一

    ○樋上分科員 和解が成立したということは、これは表面上そうであって、この当時の状態は、決して和解して患者もまた死亡者の家族も納得しておらないということが、あらゆる面においてあらわれているのです。これは無理やりに納得させられたというような状態であって、和解というのは名目であって、半ば強制的であり、こんなことはいまだに納得できるかどうか。補償の金額におきましても、すべての点におきましても、当時の物価指数からしても、その金額というものはほんとうにささいなものであると思いますが、あなたは、その当時の死亡者に対する金額並びに重症患者に対する金額はどのくらい払われておったか御承知でしょうか。それだったら発表してください。
  113. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 この事件としては死亡者に十万円、それから副反応のありました状態にある子供に対しては一万円の見舞い金という形でございまして、その他の事件との関連という御趣旨の質問でございますか、その辺のところが明確につかめないのでお教えいただきたいと思うわけです。
  114. 樋上新一

    ○樋上分科員 昭和二十三年当時は日本もまだいろいろな面で復興途上であり、非常にたいへんであったと思うのですが、それにしても、あまりにも補償が少ないと思うのです。  そこで、昭和二十四年一月、当時の首相であった吉田総理大臣が西下中に、患者代表及び市の衛生局関係者並びに京都府・市会議員、報道関係者と面談し、その節、首相は、遺族の方にはまことに申しわけない、相済まないことです、できる限りの償いはさせていただく考えです。また入院加療中の被害者の方々にもずいぶんの処置をいたさせます。今後このような惨事が二度と繰り返さないように善処します、という記録があるのです。また衆議院の厚生委員会も実情調査をいたしております。  私はその補償はどういうふうに行なわれたか、一つの実例をお聞かせしたいと思うのですが、私の調査した遺族の方が保存していた資料によりますと、事故発生の昭和二十三年十一月より翌二十四年の十一月の一カ年にわたり、現金あるいは見舞い、くだものかご、お線香、御仏前、弔慰料、府、市よりの見舞い金等々の形で、小刻みに十数回にわたって遺族の方々にお金や物等が手渡されているのです。     〔主査退席、橋本(龍)主査代理着席〕 一ぺんに十万円じゃないのですよ。ばたばたとあったたびに一万円、また何か問題があったときに物を持っていく、十数回にわたって小刻みに出した。それを全部加算すると十万円になるのであって、あなたのいまおっしゃっている十万円は弔慰金じゃないのです。記録が全部出ていますが、数回にわたって何年何月に何を持っていったという記録がおたくのほうにも出ていると思うのですよ。これはおたくからもらった資料です。  こういうことで納得してくれ、これ以上は何ともできないのだからというので、無理やりに解決されたような結果になっておる。たとえば入院費や治療費は全額負担してもらいましたが、その家族が看護のために生業を奪われ、交通費、雑費等にも事欠くような状態であったのでございます。決して納得できない問題であると訴えておるのでございます。国が行なう公的医療行政の中で、人間の最も大切な生命が奪われたことに対して、当然国がもっと手厚い補償をすべきであると私は思うのでございます。こういった文句を言わなかったからこれでおさまった。またそういうことをして苦情を言っていたら、当時警察官があとをつけて、文句をつけておるのはだれか、示談の前後を通じていろいろ調査したというのですよ。だから、極端に言えば、圧力をかけて、そして示談に持っていく、それで納得さしたような状態であるということは、当時の遺族の方々や、また団体をこしらえて交渉した代表者のなまなましい当時の訴えが出ております。そういうような中で、示談によって納得したというようなことは、私はそれなりでこの問題を片づけていくのでしたら問題だと思うのです。  それで、現在生存しておるところの後遺症の家族はどうなっているだろうかというようなことを調べてみました。最近京都において昭和二十三年のジフテリア予防接種禍の患者を調査してみますと、その結果はどういうことになっているか、御存じでございましょうか。
  115. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先生指摘の京都市のジフテリア予防接種禍による被害者の最近の状態の調査について、京都市のほうから資料の御送付がございました。その内容によりますと、調査票を送付した件数が五百三十八通でございました。回収いたしましたものが二百二十一件、四一%でございます。この二百二十一件のうち、傷あととともに他にも異常がある、あるいは傷あとはないが異常があるというものを合わせまして八十六件という数字が出ておりますが、この八十六件のうち、全く因果関係がない、あるいはきわめて薄いと思われるもの四件。これは結核であるとか大腿部の化膿という、途中で病気をした、こういうものを除きまして、八十二件というものが問題があるというふうに指摘しておられます。そのほかに、傷あと以外の異常の内訳としての資料をいただいておりまして、上肢、下肢の麻痺一、あるいは下肢の異常六。接種した腕の異常、腕が細くなっている、あるいは単に痛い、しびれる、こういうようなものが十七。その他内臓の障害。それから視力の障害が六。聴力一。言語障害一。そのほか疲れやすいとか貧血とかいうようなことで、八十二名の重複例を入れまして、百七例に異常があるというような資料の御送付をいただいております。
  116. 樋上新一

    ○樋上分科員 こちらの調査したのを申し上げます。多少相違があるところがあると思いますが、五百三十八名調査して二百二十一名から回答があったわけですね。いろいろ調査して四一・一%の回答でございます。傷あともなく完治したというのは二十五件、一一・三%。それから傷あとだけが残ってからだは異常がないというのが百二件で四六・一%。何らかの異常がある、これは八十六件ございます。異常があるが、内容はどういうことかといいますと、注射の傷あとがあり異常がある、それから傷あとがなくて異常がある。調査した時点で死亡したのが八件ございまして三・六%。合計二百二十一名でございます。こういう点がここに残されております。多少の相違はあるのですが、死亡したのが八件あるということが、そちらに載っておりませんけれども、こういう結果になる。  そこで、当時の関係当局に責任を追及すれば、国が責任をとるべきだという。国に交渉すれば、進駐軍がいてどうにもならぬ。かわいいわが子の生命を奪われた患者の遺族は不満の持って行き場がない。いまから振り返ってみると、お話にならないような、場当たり主義で事件が処理されているのであります。このような当局の処置によって、お気の毒な遺族ははたして、この記録にある補償一ぺんで納得し、また解決されてきたかという問題であります。人間の最も大切な生命が、国が行なう公的医療行政の中で命を奪われたことに対して、当然国家が補償すべきであると思います。当時の政治的、社会的背景のもとにおいて国としてもまた十分な補償ができなかったとしても、その後の政治的情勢の変遷、さらに今日の経済的繁栄の中において、行政当局として何らか打つべき手はなかったのか。またあの当時死亡者に対して十万円の補償で遺族方の納得が得られたと思って、済ましておられるのか、この辺のところに問題があるのです。この点大臣にお伺いしたいのですが、どうですか。
  117. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 確かにこれはいまなら国家賠償に該当する問題だと思います。国家賠償法はいつごろできたか、いま私、覚えておりませんが、もしそれができていなかったといたしましても、民事訴訟で国が責任を負うという形になるべきであったであろうと私は考えます。  そこで、そういった意味で、先ほど局長が述べました金額で和解ができたという報告を受けておりますが、その和解は、裁判所の和解であったのか、あるいはどうだったのか、この点も私は詳細に存じておりませんが、そういう点も見きわめまして、そしてその措置が裁判所の和解であった、こう解されるならば、一応事件はそれで終わっている、こう言わざるを得ないと思います。それが適当な額であったかどうかということは別にいたしまして、国の責任としてはそれで終わっている、こう見るべきであろう、かように考えます。
  118. 樋上新一

    ○樋上分科員 そういう終わっておるというようなことでこれが解決できる、裁判でそれが行なわれているということで解決できる、国はそれで責任がないと言われるところに、私は納得のいかないところがあるのですよ。  ですから、この訴えておる中には、どういうことをいっておるか、一つだけ聞いてください、切実な本人の声ですから。「思えば、昭和二十三年のわれわれが受けたジフテリア予防接種禍実情は、時の京都府衛生部長土屋忠良氏の編さんした接種禍記録を見れば、第三者でもいかに悲惨なできごとであったかは判然とするところであり、接種を受けた私たちの子供は病状が悪化するとともに半強制的に入院させられ、治療するにも薬のない時代に治療法すら発見できないまま、ただ集団的に集められ、わが子の死んでいくのをお互いに順番を待たされただけ、親の情としていかに悲惨な思いをさせられたか。その上最後は、林厚生大臣がとりあえず持参した一千万円の見舞金を補償金として、うやむやのうちに涙をのまされた。当時占領下において混乱の世相の中で進駐軍の指令によってなされた接種であり、製薬の設備も不完全で、技術検定も不十分の中で行なわれ、補償についても、当時中央と地方を問わず財政的に苦しい時代ではあったが、あまりにも予想外の金額であったが、結局は中央からも時の総理、吉田さんや要人も入洛されたが、財政的な困難を理由に泣き落とされ、かつ上からは進駐軍の指令によって、また裏を返せば、それをかさに弾圧されたことを痛感した。われわれもこれも戦争の犠牲と思い、泣き寝入りさせられた。当時のわれわれの考えた世相からは、軍人が今日のように多額の恩給が支給されるがごときことをだれが予想しましたか。直接戦争した軍人は命が助かっただけでありがたかった時代です。現在の繁栄した国家なら、当時の実情から考えてほんとうに犠牲者を救済する真心から出たものなら、われわれこそ予防接種法の悲しむべき大犠牲集団であると思います。かつ、当時の解決されたと見られるこの問題は、混乱時代の財政難を理由に時の権力により弾圧されたその悲しい心情は今日も決して変わるものではありません。なお、その金額の内容たるや、花代、線香代、見舞い品等あらゆるものが含まれる等は、とても現代では遠く考えも及ばないことと思います。政府は、昨年予防接種等が原因で死亡したり、後遺症患者に対し救済措置を発表したが、明らかに過失による死亡者をどう考えておられるか。     〔橋本(龍)主査代理退席、主査着席〕 厚生省は来年度から実施する本格的な救済制度へのつなぎ措置だと新聞は報じていたが、われわれのように過失による死亡が皆無とは今後も保証できないが、本格的な法制の中でいかに取り扱うか。またこの措置は来年度から制定する準備はできているか。もしいまだこれに手をつけていないとすれば、昨年六、七月ごろに発生した接種禍による世論の高まりをごまかすための一時的な措置であって、真に救済するという誠意ある政策とは思えない。記録にあるごとく、時の林厚生大臣が弔慰、見舞いのため入洛した際、府市合同委員会で決定した死者に二十万円の弔慰金、患者対策費など三千六百万円、大蔵省に対しそれを下らない額を要求しているが、いまだ決定せず、とりあえず厚生省予算から一千万円を見舞い金として持参したと弁明した。特に法的に規定がないため国家の責任と断ずることはちゅうちょすると記者会見で発表している。この意味からも、当時の規定がないために泣き寝入りさせられたわれわれには、本格的な救済制度の適用はもちろん、昨年発表されたつなぎとしての救済措置にも当然受理すべき国家責任があると確信する。」こういうぐあいに、こちらにもありますけれども、いろいろな面で訴えられておるのでございます。  私は最後に申し上げたいのは、こういう昭和四十五年七月三十一日に閣議決定事項として、政府においても、これら一連の国が行なった予防接種が原因で死亡したり、後遺症にかかったりした被害者に対して応急的な救済措置の実施要項がきまり、その旨それぞれの関係都道府県知事に通達され、その救済に乗り出したり、その適用範囲も明治四十二年以降までにさかのぼって適用さ湿るということです。しかしながら、昭和二十三年に起こった京都ジフテリア注射事件、これだけは今回の措置から除外するということはまことにふに落ちない、こういうぐあいに聞いておるのですが、この救済処置からこれは除外されるのですね。だから、こういう問題はもう示談で解決されたというぐあいにいまおっしゃっておるようですが、除外されておる。一体こんな片手落ちの処置があっていいのかどうか。一応当時の情勢として、遺族は言いたいことも言えず、泣く泣く承認せざるを得なかった事態で、死亡者一人当て分割払いの十万円なりの弔慰金で事件の解決を認めたと言い条、それは解決ではなくて解決を押しつけられた、これが実情であったわけであります。試みに当時の世相は、やみ米が一升二百二十円であったことも記録に残っております。したがって、人の生命がお金に直しますとお米五石で買われたということになるわけです。これで遺族が納得した、解決したとはどう見ても考えられないことであります。  しかし、被害者は一人や二人の特異体質者では決してなかった。六十八名の死亡者、六百六名の重症者を出した大事故であります。国並びに厚生省は、また大臣は、救済措置の適用除外をするとおっしゃることのないように、また犠牲者となられた六十八名の死亡者の霊に報いていかなければならない、こう私は思うのですが、最後に大臣の御所見を承りたい。  なぜこの当時のものは解決されたとおっしゃるか。なぜ納得もしておらないのに、そういうぐあいにされるのか。今度のこの措置の中に入れて、何とか死亡者の遺族またいま後遺症に悩んでいる方に対して何かの措置をとっていただきたいことを要望するんですが、最後に大臣の御所見をもう一度承りたい。
  119. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 そのためになくなられたあるいは、後遺症が残ったというお方に対しては、私もまことにお気の毒だと思っております。ただ、その事件の解決として今後もう一度考え直すかどうかという点につきましては、先ほども申し上げましたように、当時の事情をただいまるるお伺いをいたしましたが、私のほうでもよく調べてみまして、事件はあれで解決したと認めるべきであるかそうでないかということを、検討いたした上で決定いたしたいと思います。
  120. 田中正巳

  121. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 私は前回に引き続いて敵前逃亡という汚名のもとに今日まで未解決のまま葬られておる諸問題について質問をいたしたいと思います。  私が取り上げたようなケースの敵前逃亡というような罪に該当しておる人はどのくらいと見込まれておりますか。
  122. 中村一成

    中村(一)政府委員 先生の先般来御指摘になっております敵前逃亡、つまり大赦令が出ましたあとにおきましてある事実を原因として裁判が行なわれたというケースでございますが、先生の御指摘になりますものは、戦後に行なわれましたものにつきましては、概数でありますが、昭和二十年に一千名、それから昭和二十一年に五百名ぐらい方々につきまして有罪の判決がなされておるようでございます。
  123. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それらは厚生省で把握されておるんですか。
  124. 中村一成

    中村(一)政府委員 それは法務省に伺いまして、法務省の犯罪統計によりまして出ておる数がそういうことでございます。
  125. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 どう考えてもこの軍法会議は私は一種のリンチである、このように思わざるを得ないわけです。それで、いろいろ私のところにも手紙が参りまして、当時の模様を詳しく知らしてきておる。いわゆる将校連と兵との差別の状態もあるようであります。  それで非常に問題が多いわけですが、きょうは私は時間がございませんから……。実は私がこの問題を取り上げました理由は、何としてもこの軍国主義のつめあとを告発したいという一つの問題があるからであります。そして戦後二十七年、それでもなお軍刑法という亡霊が生き続けておる。ところが、今度の一連の予算委員会における状態を見られてわかりますとおり、この亡霊が亡霊でなくて、われわれ国会のチェックいかんにかかわる問題でしょうが、案外この亡霊が手足を出す可能性も今日見られるわけであります。そういう意味で、今日的な意味もあるというそういう観点から私は徹底的にこの問題は追及したい、このように思っておるわけです。  そこで、私は実はこの問題をいろいろ調べておる中で、厚生省の援護局の中に軍国主義が生きておるという感じがするんです。(「それはおかしい。援護局の中にあるはずがない」と呼ぶ者あり)なぜかといいますと、事実を知らない人があんなことを言いますから、私は具体的にあげたいと思うのです。  まず援護局の中で恩給あるいは遺族援護法関係に携わられておる方々で、職業軍人出身の方がどういうふうな地位を占めておられるか、御報告をいただきたい。
  126. 中村一成

    中村(一)政府委員 現在援護局は三百八十一名の職員が配置されておりますが、いわゆる職業軍人、その職業軍人というものの定義が、これはとり方でございますけれども、私どものほうといたしましては、十六名の方が現在おられます。それでその配置でございますが、課長クラスの方が五名、それから課長補佐、これは役所では班長という場合もございますが、そういうクラスの方が十一名、十六名の方がおられる、こういうことになっております。
  127. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 まず課長五名の方の現在の役職、氏名を明らかにしていただきたい。
  128. 中村一成

    中村(一)政府委員 現在審査課長とそれから調査課長、業務第一課長、業務第二課長、それから叙位叙勲調査室長、これだけでございます。
  129. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そこで、これはもうずっと戦後引き続いての話でございますが、すでに旧軍時代に皇道派あるいは統制派といういわゆる派閥があったことは記憶にあることと思います。また陸軍、海軍の間でも一つのかきねと申しますか、派閥的な感情がある、それが今日もこの援護局の中に現実に生きておる感じがするのであります。そしてそのようなことがやはり援護業務に一つの阻害を与えておるのではないかという感じがいたします。     〔主査退席、橋本(龍)主査代理着席〕 そこで、この中央のそういう状態が、私は、地方のいわゆる援護課なりあるいは厚生課なりそういうところに系列的に一つのつながりがあるのではないかという感じもするわけであります。つまり私が申し上げたいのは、この援護局の中に文民統制というものを及ぼさなければならない、変な言い方ですが。たとえば私が取り上げたこの敵前逃亡の問題について、いま出されたような課長さんたちは抵抗があるのじゃありませんか、あのような軍法会議はなかったものにしなさいというこの主張に対して。どうです。
  130. 中村一成

    中村(一)政府委員 先ほど先生の御意見でございますが、私、援護局長をいたしておりまして、局内で仕事をいたします場合に、旧軍のいわゆる職業軍人という方々の幹部の方々と一緒に仕事をいたしますけれども、そのような、何と申しますか、古い軍人としての意識でもって仕事をやっておるということはこれは毛頭ございませんで、もう皆さん定年でおやめになっていきますので、現在残っておられる先ほど方々は一番古い方で、戦傷を負った方でございますが、終戦の当時中佐の人が一番古いわけであります。そういうわけでみんな終戦当時におきましては中佐、少佐といった比較的若いクラスの方々でありますので、そういうことはございませんわけでございまして、今回の問題になっております敵前逃亡の問題の処置にいたしましても、援護局といたしましては、すでに四十二年以前におきまして、そういう特にブーゲンビルの方々については気の毒であるからこれは何とかしなければいかぬじゃないかということで、積極的にこの方々についての恩給あるいは年金措置をはかるべきであるということで、このことを担当いたしました者が現在課長でおられますけれども、そういう方々が中心になってむしろ努力をいたしておられた、こういうふうに伺っております。
  131. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 私はもちろんすべての方がそうであるとは言いません。しかし、現実に具体的な数数の事実を私はあげることができます。いわゆる旧軍思想と申しますか、そういうものが抜け切っていないと思われるような措置が現実に出てきておる。それでそういう人たちが、これは学校でも同窓会がありますから何でしょうが、いわゆる旧軍時代の偕行社なり水交社、今日では衣をかえて偕行会あるいは水交会となっておるのでしょう、そういうところとつながりがある。そしてその援護業務というものを牛耳っている、そういう姿が今日も生きておる。それが非常に阻害になっておる。あとでちょっと例をあげますけれども、そうして現実にやはりこの恩給関係には非常に力のある発言権を持っておる。そのさばき方が、その方方の個人的な意識と申しますか、そういうものが審査についてある程度影響してくるのではないか。それから現実に、たとえば靖国神社法案等に対しても非常に積極的な役割りを果たす、これは議論のあるところでしょう。そういう姿を見てみますと、私はさっき言ったように、やはり過去の亡霊がそういう援護局の内部に一部生きておるという感じがしてならないわけであります。  たとえば申請をやる、却下される、不服申し立てをやる。このときに不服申し立ての審査というのは、結局おたくで持たれておる死亡者連名簿ですか、それですべてやられるのでしょう。たとえ不服申し立てを行なっても、結局は死亡者連名簿に罪名が載っている限りはこれはだめなんですね。だから、この不服申し立て制度というものはあっても有名無実、ないにひとしい。すべてしゃくし定木でやられる。だから、問題はたとえば不服申し立てのとき、吉池事件にも見られるとおり、死因の調査というものを行なわなければ何にもなりませんよ。そうしてその連名簿に書いてある罪名を消さなくては何にもならない。幾ら申し立てをやっても却下されることはわかっているんだから。連名簿以外にないのでしょう、その判定のしょうは。
  132. 中村一成

    中村(一)政府委員 援護局におきますところの事務の処理の場合におきまして、不服申し立てにつきましては、援護審査会という審査会がございまして、大部分はこの審査会で処理されるわけでございます。したがって、審査会におきまして各方面から出ておられます委員の方々が慎重に審議をされるわけでございますが、その場合に、基本的な考え方といたしまして、この審査会といたしましては、なるべく遺族の方あるいは戦死なら戦死をされた方、なくなられた方々のお気持ちというものに沿うようなふうに結論を持っていきたいということが、この審査会の伝統的な考え方でございます。  御指摘の連名簿でございますが、この連名簿はもう軍人の死亡に関します重要な資料でございますが、連名簿にございましても、ほかの戦友の証言その他によりまして、それをくつがえすようなものを得られました場合におきましては、連名簿の記載にかかわらず、こういうふうに処理をするといったようなケースがございます。したがいまして、連名簿に載っておるからすぐそのとおりであるというふうには必ずしもならないわけでございますが、しかし、連名簿は、御指摘のとおり、非常に重要な、軍がつくりました資料でございますので、これにつきましては、もちろん私どもとしては重要な資料として取り扱っていることはもう事実でございます。
  133. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうすると、いまのお話を聞きますと、この連名簿は訂正できるのですか。訂正されているのですか。
  134. 中村一成

    中村(一)政府委員 連名簿を訂正するというわけではございませんで、連名簿の記載がありましても、それと違った事実が十分に推定せられるというような資料が別にありました場合には、この連名簿にこういう記載が奉りましても、それはこういうふうに判断する、こういうような結論が出る場合があり得るわけでございます。
  135. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 だから、訂正は絶対にしないのでしょう。
  136. 中村一成

    中村(一)政府委員 これは連名簿は私のほうで、厚生省のほうで手を加えるということはいかがなことであろうと思います。私どもとしては、それに手を加えて訂正するということはいたしません。それは資料といたしまして、これはやはり資料でございますから、それには手を触れることはいけない、こういうふうに考えております。
  137. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 いまの点は、大臣、どう思われますか。明確にそれが間違いであるとわかっておっても訂正はされませんか。
  138. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 いま局長が申し上げましたように、連名簿は一つの資料でございますから、その資料が間違いであるということがはっきりすれば、資料連名簿にはこうなっているけれども事実関係はこう認定するということで、認定をしていくわけであります。それで私は差しつかえがない、かように思っております。
  139. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 あなたは考え方が冷たいですね。それが資料として残ること自体がおかしいのですよ、私に言わせると。だから、生き続けるのです。それを消すということが目的なんです。  かつていわゆる未解放部落の問題で古い戸籍が問題になった。それが資料としてあるから、興信所などが調べて、そしてそれを一つの現実的な差別の資料にする、だからそれは消すということになった。これだって一緒じゃありませんか。明白に間違いということがわかったときに、どうして訂正しないのですか。どうして罪名の残ったものを資料としてとっておく必要があるのですか。それは趣旨に反するじゃありませんか。それでもどうしても消さないというのですか、訂正しないのですか。もう一ぺんお伺いします。
  140. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 いま罪名の点をおっしゃいましたが、私は罪名が連名簿に記載されておるのかどうか存じませんが、連名簿にはこうなっているが、資料から見れば連名簿の記載のここが事実と違っていたということが明瞭になれば、そこに付せんでも張っておくということがいいのじゃないか。連名簿は一つには歴史的な記録でありますから、その歴史的な記録というものはそのままにしておいて、しかし将来間違いのないようにそこに付せんをつけて、この点は何月幾日こういう事実によってこう認定したというように記載をしておけば私はいいんじゃないか、かように存じます。
  141. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そういう間違った歴史をなぜ資料として残すのですか、残す必要があるのですか。
  142. 中村一成

    中村(一)政府委員 その場合に、それが間違いであったかどうかということはわからない場合が……(楢崎分科員「わかった場合を言っているのですよ」と呼ぶ)わかったという場合は、私どもとしては現在はそういうような明白な間違いがあったということがはっきりわかったことはないわけでございますが、そういうような明白なものであれば、それは当然訂正されているはずでございますし、またその後訂正されたでありましょうが、こういうふうに連名簿にはあっても、しかしそれはなくなられた方のあれを考えたらこういうふうにここのところは認定するのがよろしいんじゃないかといって、有利に解釈するという場合でございますので、したがいまして、そこを私どものほうでかってにと申しますか、私どものほうでそういう決定——行政事務のたとえば遺族年金の裁定をいたすといった場合の資料としてはこの分はとらなかったということで、遺族年金裁定の資料としてはとっておけばよろしいので、そこでその資料をこちらの役所のほうで一方的に消すということはいかがであろうかと私どもは考えております。
  143. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そういう、これは間違いということが明白になった場合、あるいは政府の方針として、そういう間違った軍法会議は存在したかったものというような取り扱いになった場合は、これは当然訂正されるわけですか。
  144. 中村一成

    中村(一)政府委員 私どもといたしまして、その軍法会議はたとえば間違いであったという場合には、それはこういう間違ったなにが行なわれたということで、これはこういう点において間違いであった、あるいはこの裁判は効力のないものであるということを明確にしておけばそれでいいというふうに考えております。
  145. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それを私は訂正と言っているのです。それはなさるつもりですね。
  146. 中村一成

    中村(一)政府委員 そのとおりいたします。
  147. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 各県に保管されておると思われる兵籍簿の訂正はどうなりましょうか。
  148. 中村一成

    中村(一)政府委員 兵籍簿におきましてその間違いが発見されました場合におきましては、これはその具体的なケースによるわけでございますけれども、それはいまのように、兵籍簿のこの部分はこういうふうに間違いである、そういうふうに付せんをつけて整理をする、こういうふうに考えております。
  149. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 戸籍謄本の関係では、たとえば前科とか何らかの形で残っておりましょうかね。
  150. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 私どもの所管ではございませんが、戸籍謄本につきましては、前科関係というものの記載は一切ございません。
  151. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 平病死ということばがあるのですが、これは何か定義があるのですか、あるいは何か法規上明確な位置づけというものがあるのですか。
  152. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 平病死というのは、私、存じません。
  153. 中村一成

    中村(一)政府委員 平病死につきましては、これは戦死または戦病死以外で死亡いたしました場合に平病死という名前を、これは旧陸軍におきまして使っておったようでございます。
  154. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それは文章上も使っているのですか、昔旧軍当時。
  155. 中村一成

    中村(一)政府委員 これは軍の通常のことばとして使っておるようでございます。
  156. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 どういう死亡がそれに該当するのですか。
  157. 中村一成

    中村(一)政府委員 戦死、戦病死以外の病気でございます。戦病以外の病気、戦争、公務に関係のないような原因で死んだといったような場合、そういうことになると思います。たとえばお互いに軍人同士がけんかをして相手を殺したというような場合、そういうのが当たるのかと思います。
  158. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それ以外にありませんか。
  159. 中村一成

    中村(一)政府委員 私はただいま申し上げませんでしたが、自殺でございますとかあるいは刑死、たとえば軍事裁判によって死刑の判決を受けて刑死した場合、それから一般的な病気でそういう戦病に当たらない病気、全く個人的な原因で病気になったという場合はこれに当たろうかと思います。
  160. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうすると、平病死というのは、援護法との関係はどうなっていますか。
  161. 中村一成

    中村(一)政府委員 現在におきましては、軍人軍属が戦地または事変地におきまして死亡いたしました場合は、平病死も含めまして一応この方々につきましては、法律上のたてまえは、公務でなくなったというのと同じ扱いをする。現在におきましては、つまり、なくなられた場合には遺族年金の取り扱いについては、一般的に平病死は公務でなくなったと同様な扱いをする、こういうふうになっております。
  162. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 海軍の関係で、ブーゲンビルと同じようなケースで敵前逃亡罪の方は想定されますか。
  163. 中村一成

    中村(一)政府委員 海軍関係では、私、ただいま記憶いたしていないのでございますが。
  164. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 いずれにいたしましても、終戦後の行動で、終戦後軍法会議が開かれて、そしていわゆる判決を受けるというようなケースを一律これはないものにすべきである、私はこのように思うわけです。つまり一般刑法に該当するような事犯以外はですね。  私も学生時代に海軍に引っぱられて予備学生で行っておったのですが、その当時有名な事件がありました。一例をあげますと、厚木海軍航空隊の小園海軍大佐、司令であります。これが零式戦闘機を出しまして、降伏しないのです。私の記憶に間違いがなければ「皇海軍」というビラをまきました。それを私、現実に見たことがあります。たしか三日間くらいの抵抗であったと思います。軍法会議が開かれて、いわゆる党与抗命罪ということになったと思うわけです。そしていわゆる位官剥奪。現在なくなられております。遺族はもうおらぬ、こういうケースは一体どうなるのでしょうか。
  165. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 戦後の陸海軍の軍法会議の問題についてお答え申し上げます。  陸海軍の軍法会議は、終戦後におきましても、復員業務の円滑に資するために漸次縮小、廃止をされてまいりましたけれども、最終的には憲法の施行されました日の前の日の二十二年の五月二日まで存続しておったということなのでございます。これを具体的に申し上げますと、昭和二十年の十二月一日に勅令第六百五十八号というのが公布されまして、そして十二月一日からは内地の常設の軍法会議は廃止されました。そのかわりに復員裁判所というものが設置されておるのでございます。そういたしまして、翌昭和二十一年の五月十八日に勅令第二百七十八号をもちまして、この軍法会議も復員裁判所も廃止されたのでございますが、その勅令の附則で外地にあります軍法会議についてはなお従前の例によるということで、外地の軍法会議はなお存続しておったわけでございます。そういたしまして、憲法施行の前日である五月二日まで存続しておった、こういう経過になっておるわけでございます。  一方また、陸海軍の刑法でございますが、これは昭和二十一年の政令第五十二号をもちまして、憲法施行の前日である昭和二十二年五月二日までその効力を存続しておったということに、法制的にはなっておる次第でございます。
  166. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)主査代理 楢崎君に申し上げますが、約束の時間はすでに経過をいたしました。質問を終わっていただきたい、あとの委員がすでに見えておりますから。
  167. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 では、この問題はまた別の機会に取り上げたいと思います。ここにも私は一つの矛盾があると思うのですね。  最後に、これは指摘だけしておきますが、去年の五月二十日だったと思いますが、大牟田の爆発赤痢の問題を私は取り上げた。そのときに、厚生省はよく調査する、古い事件だが重大な問題だからよく調査する。私は今度の敵前逃亡罪の問題も、やはり国家の一つの犯罪だ、こういう観点から問題を見ておるのですが、この大牟田の爆発赤痢も国家犯罪の疑いが濃厚だと私は見るわけです。少なくとも水道汚染説はとり得ない。厚生省としては、昨年五月の御答弁では、厚生省自体が水道汚染説はとっていないという御答弁でした。ただ、学会等の論文でそういうものがある。当時の気象台による風向きの関係等も資料が整いました。そして発病の状態とこれを照らし合わせると、やはりガス汚染という可能性が非常に強い。もっとも、二十七日以降は赤痢の予防剤を飲んで、そのために発病したケースもあると思います。そこで、そういう厚生省の態度であれば……
  168. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)主査代理 楢崎君、時間をお守り願います。
  169. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 これは水道汚染説ということで教科書に使われておるのです。厚生省が認定もしてないのに、こういうふうに、水道汚染だというふうに大学あるいは高校で使われている教科書にきめつけて教えておるという点については、私は問題があろうと思うのです。お伺いしたい第一点は……
  170. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)主査代理 楢崎君、時間のお約束をお守り願います。各分科員に御協力を願っております。楢崎君、質問を終わってください。すでにあとの質問者が待っております。あなたのいまの発言は時間が切れてから始まったはずです。他の方にもみんな三十分で御協力を願っております。
  171. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 これでやめろというのですが、途中でそんなことを言うからかえって時間がかかる。もうやりとりはしません。  第一点は、調査をするということがいまどう処理されておるか。第二点目に、いま言った、そういう断定的に教科書で水道汚染説がとられておるという点はどう思われるか。それで、それを裏づけるのは、たとえばこの三井東圧化学、三月一日にもう事故が起こっておりますね。そしてホスゲンがばらまかれて、ガスの関係で被害者が出ておる。     〔橋本(龍)主査代理退席、主査着席〕 だから、あの工場は非常にガス汚染の可能性は強いのだ。最後にその点お伺いして、一応やめることにいたします。
  172. 浦田純一

    浦田政府委員 昨年楢崎委員から御指摘がございました大牟田のいわゆる爆発赤痢事件の調査でございますが、その後関係の資料を約八十数点、また関係者の意見ども直接徴しまして、いま現存すると考えられております資料はほとんど集めだものと考えております。この中には、昨年の十月に新たに発見されました患者台帳七冊中の三冊、患者届け出帳七冊中四冊が発見されております。残念ながら、これは患者さんの数からいきますと一万二千名余でございましたが、約半数の六千名の記録にとどまっておりますけれども、これらの資料をしさいに繰り返し点検、検討いたしました結果、結論から申しますと、これも水道を介しての水系感染、赤痢菌による水系感染であるということを否定するということはできないわけでございます。御指摘のように、これがガス爆発によったということにつきましては、いろいろと検討も加えましたけれども、たとえば大牟田の患者の発生した時刻、これは爆発時刻よりも以前でございまして、これのみをもっていたしましても爆発事故との関連というものは非常に弱い。それから、このような流行の形態というものは、明らかに水系の伝染病であるという以外に考えられないといったようなことからも、これは水系による水道を介しての赤痢の集団発生であるというふうに考えておるものでございます。したがいまして、ではどのような原因でもってこの水系が汚染されたかということにつきましては、これは第三源井が汚染されておる、あるいは汚染されていないと両論ございまして、この当時すでに第三源井の修理が完了しておる、あるいは完了してないという事実についても両論ございまして、したがいまして第三源井のみが汚染されておったか、あるいはどのようなところから汚染を受けたかという事実については、これは残念ながら確認するという手段は当時もなかったようでございますが、現在でもその点についてはまだ確認するというわけにはいかないのでございます。
  173. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 大臣、いまのは厚生省として初めて認定を出すわけですね、水道汚染説というのは。そう受け取っていいですか。それだけ最後に聞いておきます。
  174. 浦田純一

    浦田政府委員 手元にあります資料をしさいに検討いたしまして、やはり水系赤痢の大流行であるというふうに信ずるのが一番妥当であると考えております。
  175. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 その点はいずれ別の機会に討論したいと思います。私はそれに断固として反対をしたいと思う、いまのような結論に対して。それだけ申し上げておきます。
  176. 田中正巳

  177. 和田春生

    和田(春)分科員 私が質問をいたしたいのは、ただ一点だけであります。  いま非常に問題になっているサリドマイド事件に関してでございますが、これは現在御承知のように裁判として争われているわけでございますが、まず最初にサリドマイド裁判の現状と、これに対処する政府の姿勢について簡単にお答えを願いたいと思います。政府委員でよろしゅうございます。
  178. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 現状について申し上げます。  サリドマイド裁判につきましては、昨年二月から東京地裁におきまして証人尋問に入りまして、これまでレンツ博士を含めまして十人の証人が証言しております。現在までの審理状況は、主としてサリドマイド服用と奇形との因果関係に重点が置かれております。証人尋問は四月までは行なわれませんけれども、今後はなお過失の問題について論点が残されておりますので、今後そういう問題につきまして訴訟が続行されると思います。  なお、昨年の二月に国としましては、会社も同様でございますが、児童の福祉の見地から、外国でもすでにこの問題はほとんど和解で処理がされております。この方向で和解をしたいということを裁判所のほうに申し入れまして、この点につきましてはまだ原告との話が進行しておりませんけれども、現在国としては、そういう方向で早く問題の解決に当たりたい、かように考えております。
  179. 和田春生

    和田(春)分科員 和解をするかどうかは裁判所の問題ですから、いきなりそんな和解の方向とかなんとか言われたって困るわけで、よけいなことなんです。あとで聞きます。  現状を伺っているのですけれども、実はこの質問は昨年の二月十七日、第一回の公判が開かれる前日、私は予算委員会で取り上げて、政府について、裁判の問題は裁判として、その政治的責任をかなりきびしく追及をしたわけでございます。そのうち厚生大臣はかわられたわけでございますが、政府としては一貫して続いているわけですけれども、私の承知しているところによると、いまも説明がありましたが、一応因果関係に対する最初の原告側の立証というものが終わって、四月からは被告側の反証が行なわれる、こういう裁判の日程になっておるというふうに聞いておりますが、間違いございませんか。
  180. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 大体そういうふうな方向でございます。
  181. 和田春生

    和田(春)分科員 その裁判では、国と製薬会社がともに被告になっておるわけでありますけれども、これからの反証については、いわれておりますフォコメリー児とサリドマイドとの因果関係は立証できない。その因果関係を反証をするとともに、過失はなかった点を政府としては強調するやに聞いているわけでありますけれども、そういう方針ですか。
  182. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 過失の問題につきましては、法律上の責任としては私どもはないと考えておりますが、現在のところ慎重に検討しております。
  183. 和田春生

    和田(春)分科員 裁判所の日程では、いま確認しまして、大体そのとおりだと言っていますけれども、四月から始まるわけでしょう。それについて、政府としては過失はなかった。つまり不可抗力であった。そしてサリドマイドとフォコメリー児との因果関係はないと、そういう立場で臨むのですかどうですかと聞いているのです。臨むなら臨む、臨まないなら臨まない、ぼくの聞いたことと違った態度なら、こういう態度で臨みますということを要約的に簡潔に答えてください。
  184. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 過失はなかったというふうに考えております。
  185. 和田春生

    和田(春)分科員 それじゃ、それを確認して、今度は厚生大臣にお伺いいたします。  昨年の質問のときに、私は議事録を引用したわけですが、昭和四十三年の五月七日第五十八国会の参議院の社労委で当時の園田厚生大臣は、「両親並びに本人に対する謝罪の意味においても、早急に確実に予算措置をしてこれの解決に尽くすことを申し上げておきます。」ということをはっきり明言をしております。議事録に残っております。佐藤内閣の厚生大臣であります。その佐藤内閣は、昨年私が取り上げたときにも続いておりまして、当時は内田厚生大臣でございました。この園田厚生大臣意見表明というものは、そのまま厚生大臣考え方として確認をしていいか、こういうことを質問いたしましたのに対して、内田国務大臣は、これも議事録でありますけれども、「そうでありたいと思います。」そうでありたいと思うという意味について私が重ねて確かめたことについてこう言っております。「ありたいと申し述べましたのは、他の、前任者の厚生大臣が言われたことでありますが、それは私が言ったことと同じようにありたい、こういう意味で私は園田さんの言われたことをぜひ重き継いでまいりたいと思います。」こういうふうに内田厚生大臣は答えているわけであります。斎藤厚生大臣になってから方針が変わったわけでありますか。
  186. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 変わっておりません。
  187. 和田春生

    和田(春)分科員 そういたしますと、いま薬務局長が答えたことはおかしいじゃないですか。厚生大臣は変わっていないと言っているのに、因果関係はないのだ、責任はないのだ。責任がないのだったら、なぜ大臣が両親に対する謝罪の意味を込めなくちゃいけないのか、薬務局長、答えてください。
  188. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 責任と申しましたのは、過失がなかったと、こう当局は言っております。園田厚生大臣も、過失があったかなかったかということは別にして、こういうことはやはり政治的責任として、そういったお子さんに対し、また家庭に対して尽くすべきことは尽くしたい、そういう意見であろうと私は思っておりますので、事務当局が申しましたのも、それを否定しているわけではございません。
  189. 和田春生

    和田(春)分科員 しかし、過失があったかなかったかということは、いま不幸にして裁判で争われているわけです。しかし、国が積極的に過失はないのだ、かりにそういう立場でサリドマイドとの因果関係について反証を続けていくという形になれば、謝罪をするとか措置をするということは、まことに妙なことになるわけで、そうではなくて、裁判上の問題は別として、いま厚生大臣のおっしゃったことは、やはりこういう事件が起きているということに対しての政府の政治的責任、こういうものは十分感じて対処すると、こういうお気持ちを表明されたというふうに受け取りたいと思うのですが、よろしゅうございますか。
  190. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 さようでございます。
  191. 和田春生

    和田(春)分科員 さて、そういう形になりますと、いまの裁判に臨んでいる政府の立場について私は確認をしたいのでありますけれども、この裁判原告と被告で争われているわけであります。したがって、政府がいままでやってこられたこと、これからおやりになろうとしていることは、製薬会社と相被告になっている、そういう裁判の形の訴訟技術上やむを得ずそういう態度をとっておられるのか、あるいは本質的にサリドマイドとその結果生まれたお子さんとの間には因果関係はない、したがって、政府としては責任もない、不可抗力である、こういうふうに考えて、積極的に製薬当事会社と手を組んで反証をし、裁判で戦っていこう、こう考えておられるのか。その点はいずれでしょう。つまり、技術的な問題でやむを得ずそういう形をとっているのか、それとも、あくまで戦って原告団を押えつけて勝訴に導こうという立場でおやりになっているのか、その点をお聞きしたい。
  192. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ちょっとむずかしい点でございますが、政治的責任は感じる、したがって十分なことはやる必要がある、こう思う。  そこで、裁判上、一つは因果関係が問題になると思うのでありますが、これには学問的な意味で因果関係をあるいは推定をするということになるかもしれないと思いますが、いまのところ、技術的には因果関係があるとははっきり断定しがたいという態度で臨んでいる、かように思います。
  193. 和田春生

    和田(春)分科員 この当時は非常に騒がれたわけですけれども、すでに事件が起きてから十何年たっております。その後キノホルムに原因するスモン病等の問題も起きているわけでございまして、一応サリドマイドというこの非常に深刻な問題が現在はマスコミその他の上におきましてもときどき顔を出す程度であるわけでございます。しかし、いままで続けられた、昨年の第一回公判以来原告側というものはいろいろな立場から立証いたしております。これは涙ぐましいような努力をやっているわけです。幸いレンツ博士というようなすぐれた人がおり、たいへん協力的にやってくれた。若干の裁判所の手助けというものもあったからこそここまでやってこられたわけでございますが、国のバックも何にもない。そして、問題の児童をかかえて非常に生活に苦しんでいる、あるいはいろいろと苦しい立場にある、仕事は別に持っている、そういう原告団が、今日までこの問題についていろいろな点を立証してきたということについては、これは全く尋常ならざる努力であったと私は思うわけです。それに、国家の予算を使って、膨大な国家権力を持っている政府が、資本を持って強い立場にある製薬会社と一緒になって、もし本気であなた方がこれに反証をしていくというような態度をとるとするならば、因果関係のありなしとは別にして、政治的責任は感じると言っても、その政治的責任を無にすると同じではないか。そういう点に対する道義的な立場をどうお考えですか。
  194. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 そこで昨年、前厚生大臣も、国としては和解のお話を出している。製薬会社もそれに同調しているというのが今日の段階でございます。
  195. 和田春生

    和田(春)分科員 それは昨年二月の質問のときにも同じお答えでありました。しかし、実はそれまでに十年以上かかっているわけです。諸外国では、厚生大臣も御存じのように、このサリドマイドというものをあぶないという形で社会問題になって、発売を禁止している。アメリカに至っては、発売を許可せずに問題が起こることを未然に防いでいる。そういう中で販売が続けられてきた。おそ過ぎた。そのためにフォコメリー児が出生して、たいへん気の毒な状態になっている。それまでに和解のチャンスというのはあった。何度もあったけれども、政府がのらりくらりとして全然誠意を示そうとしない。そこでやむを得ず訴訟に踏み切ったわけです。訴訟に踏み切って、さらに世論が一段とわいて、この問題の所在というものがわかってきた。そういう中においては、裁判を起こされて原告から被告の立場に置かれているという政府から見れば、訴訟技術上から見れば、原告と被告という立場かもしらないけれども厚生大臣のおっしゃるように政治的責任があるというならば、この問題について、だから、和解なんというようなことではなくて、政府として積極的な措置をとるなり、あるいは製薬会社に対してさらにもっと特段の手をとるなり、いろいろな措置をしていいと思うのです。ところが、裁判は裁判でえらいエネルギーをかけて政府は反証をしようと試みているんですけれども、具体的に、それでは昨年の、四十六年の新年度から今日までにどんなことをやってきて、それに対してどれだけの国の費用をおかけになったか。これは政府委員からでけっこうでございますが、お答え願いたい。
  196. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 サリドマイド児を含みますいわゆるフォコメリーといわれております上膜欠損等の四肢欠損症児の福祉対策についてどういうことをやったかということについて申し上げたいと思います。  いま大臣から申し上げましたように、こういう状態にありますお子さんは非常に、原因のいかんは別といたしまして、児童の福祉という立場から申しますと、ぜひ手厚い援護の手を差し伸べなければならない。特にフォコメリーといわれております上肢欠損の人たちにつきましては、いままで非常に例が少ないわけでございます。そういう人たちを中心といたしまして……。
  197. 和田春生

    和田(春)分科員 時間がないんですから、どういうことをやってきて幾ら使ったかと端的に答えてください。こういうことをやった、これに幾ら金を出したと。
  198. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 一つは電動義手の開発を行なってきております。電動義手の研究開発及び公費によります電動義手の支給を行なっております。それにつきましては特別研究費といたしまして総額千百万円、それからさらに特別研究調整費の補助金といたしまして二千万円の経費をかけております。それから電動義手の支給につきましては八十人分の電動義手を予定しておったわけでありますが、希望者が予定より少のうございまして、二十五人分の電動義手を支給いたしております。それから四十七年度におきましては、特例研究費の中で、特に上肢欠損児等に対します特別な療育方法の研究を進めるということを予定いたしております。それからもう一つは、四肢欠損症児等の実態調査を現在続行いたしております段階でございます。それ以外に、先生承知の育成医療あるいは補装具の給付あるいは日常家庭用品の支給等の施策によりましてこういった人たちの福祉をはかっておる、そういう段階でございます。
  199. 和田春生

    和田(春)分科員 いま電動義手の問題が出ましたけれども、両手欠損のお子さんは非常にたいへんでありますから、そういう点に義手の問題はたいへん重要な関係を持っている。この前も取り上げたんですけれども、なぜ希望者が少ないとお思いですか。ほんとは希望者が多くてもいいはずなんです。
  200. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 いろいろな原因があるようでございますが、私どもが考えておりますのは、一つは、これを着装する適応の子供さんたちの数が、考えておったよりも少ない。つまり、上肢欠損全部ではなくて、ある症状のフォコメリー児に限られておるという医学的な要件があるということが一つ。それから、ずいぶん改善を加えておりますが、一番大きな原因として、子供にとって重さが重過ぎるわけでございます。両方の手を装着いたしますと三キロぐらいになりますので、ちょっと子供には持ち扱いにくいという要素がございます。それからもう一つは、成長いたします子供でありますために、すぐ義手が小さくなっていく。そういうようないろいろな要素がありまして、これはもう少し軽量化等の改良を加えませんと、なお実用性に乏しいのではないかという反省をいたしております。
  201. 和田春生

    和田(春)分科員 その点は、この前にも私が指摘しているんです。子供はだんだん成長していくんだと、そういう場合にはもっとそういう面にふさわしい義手の供給を約束することが必要だということに対して、そういうふうに努力するということを前厚生大臣は約束をされているわけです。しかし、わずか二千万、三千万程度の金でこういう新しい分野についてそう積極的な開発ができるはずがないと思いますが、希望者が少ないということの大きな理由はそれだけでしょうか。私はそうじゃないと思うのですよ。支給された義手がいま全部満足に動いていますか、実態についてお伺いしたいと思うのです。動いているなら動いている、動いていないなら動いていない、何台のうちどれだけ動いているか、答えてください。
  202. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 申しわけございませんが、全部の電動義手についての状況は把握しておりません。ただ、行政措置といたしまして、こういう補装具は、給付いたしますと同時に、それが故障いたしましたときは、いつでも申し出れば公費で修理をするたてまえをとっておりますので、もし故障がありましたならば申し出があるものと考えております。
  203. 和田春生

    和田(春)分科員 そういうでたらめな官僚的な答弁をしたらだめですよ。ほとんど全部満足に動いていない。動いていない理由は何かといえば、あなた方がアフターケアをやっていないからじゃないですか。故障した部品の支給をやっていないからじゃないですか。自動車だって、部品がなかったら故障したときには動きやしませんよ。やはりそういうものは故障することがあるというならば、それに必要な部品を全部そろえておいて、こわれたらすぐそれが直せる。そうでなければ、使っておったものが何日も何日もほっておかれては困るわけです。そのアフターケアを全然やっていないじゃないですか。できたものを渡しただけで、部品は全然手配をしていない。だから、使おうと思っても、こわれてぐあいが悪いので使えないということもあるじゃないですか、たまに一台か二台動いていても。その実情を知らないのですか。
  204. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 その点につきましては、いま申し上げましたように、修理につきましても手配をしておるつもりでございますが、もし御指摘のような点がございましたら、それは申しわけございませんので、直ちに手配いたしまして手当をいたしたいと思います。
  205. 和田春生

    和田(春)分科員 それだからいかぬというのですよ。こういう不幸な立場に置かれたというものについては、国の体制にも責任があるわけです。やはり積極的にそういう点をやっていかなければいけないけれども、部品の手当てさえ不十分でアフターケアをやっていない。故障があったらやりたいと思います——言ってきたらすぐあしたからでも動かせますか。部品はそろっておりますか。あなた方の言うように、言ってこないからやれないというのなら、じゃ言わせますから、言ってきたらすぐ故障の部品を支給して、あすからでもあさってからでも動かすようにできる自信がありますか。それだけの部品を備蓄しておりますか。
  206. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 実態を調査いたしまして、できるだけすみやかに動かせるようにいたします。
  207. 和田春生

    和田(春)分科員 実態調査じゃなくて、あなたが、言ってくればやるようにするつもりだと言うのは、いつ言ってきてもそれだけの部品とアフターケアの準備はやっております——あなたのいま言ったのは、言ってこないのが悪いというふうに責任転嫁したわけです。それなら、言ってきたうすぐやれるという体制がなければならぬはずだ。十分調査してお答えしますというのは、誠意のない証拠じゃないですか。そういう政府当局の態度が、関係の親たちの憤激を買い、こうなればとことん裁判ででも争って、あやまったと言って国が両手をついて、内閣総理大臣が平伏して謝罪しない限り許さないという気持ちを育てているのですよ。  そういうことをしながら、一方では和解和解と言っていたってうまくいきますか。問題は誠意の問題です。やれることはすべてやりなさい。これはまさに親の責任ではないのです。いいと思って市販されている薬を飲んだ、その結果これが生まれた。フォコメリー児はサリドマイドの販売が禁止になってからがくっと減っているじゃないですか。はっきりしているのですよ。そういう裏から見たって問題があるということについて、ぼくがあえてこの分科会でこの問題をもう一ぺん取り上げたいという気持ちになったのは、口先ばかりで実際にやることをやっていない、そして争いをますますこじらせる、そういうことをやっておいて、政治的責任を感じますということを幾ら大臣がおっしゃってもだめなんです。そういう点について、斎藤大臣いかがですか。
  208. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 確かに思いやりが足りなかった、御指摘のとおりだ、かように考えます。今後一そうこまかく思いやりを込めて対処してまいりたいと思います。
  209. 和田春生

    和田(春)分科員 これはこの場限りのことばではなくて、もう長年続いておって再々厚生大臣がお答えになっていることですから、その厚生大臣のお答えを疑うわけではありませんけれども、やはり事務当局に徹底をして、きちんとやるべきことは万全の措置を尽くす、そういう誠意があって初めてその問題のお子さんたち並びにその親たちの間においても、やはり政府にひとつたよろうかとか、政府にいろいろやってもらいたいという気持ちが起きるわけですから、これはひとつ着実に実行をしていただきたい、こういうように強く要望をしておきたいと思います。  それからもう一点は、先ほど何をやっているかということに対して、調査をやっているというお話でございましたけれども、これは一方では、裁判においてサリドマイドとフォコメリー児の因果関係を拒否して反証をしながら、一方の調査においてサリドマイド児の実態というものが明らかになるはずがない。これは私は大きな論理的矛盾だと思う。政府がおやりになっているのは、単に一般的な先天性の四肢欠損症児の調査という形で、サリドマイドの問題はそこですりかえられるという危険性を感じてしかたがないのですけれども、政治責任が明らかである、親たちにも謝罪をしたいという形になれば、裁判は裁判として、サリドマイドとの関係というものについて、政府は十分な疑いを持ってそれを明らかにするようにしなければならぬと思うのです。そういう点、いまの政府の態度は矛盾をしていると思うわけでありますけれども厚生大臣、この点はいかがですか。厚生省で国費を使って調査をやっていらっしゃる。一方では、裁判において因果関係はないといって反証している。これは、責任はもちろんないし不可抗力である、サリドマイドとの因果関係なしということを、いろいろと国費を使って立証準備をしている。一方においてはサリドマイド児の実態調査をする。そういう矛盾した態度がとれるでしょうか。
  210. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 厚生省が先般調査をいたしましたのは、そういった四肢欠損児というような人たちの保護、保育、厚生という面で必要があるということで調べているわけでございます。したがいまして、因果関係があるとかないとかいうことの立証に使う考えは毛頭ございません。
  211. 和田春生

    和田(春)分科員 しかし、私はそれはたいへんおかしいと思うのですね。調査をするというのは、疑いがあるから調査をするわけであって、調査をした結果、その疑いが疑いのとおり事実であったのか、あるいはそうではなかったのか、別の結果が出るかということでなければならないわけです。しかし、同じ政府が、裁判所においては因果関係なしということを積極的に反証しようとしている。原告団の立証に対してはいろんな点で反発している。世上伝えられるところによると、いろいろ圧力をかけたのではないかという風評がある。これは風評で私は確かめたわけではないが、同じ政府が、一方ではそんなものは因果関係ないのだ、四肢欠損児はサリドマイドの結果生まれたものではない、そういう反証を積極的にしながら、片方において調査するというのは自己矛盾じゃないですか。もしそういう形でほんとうに疑いを持って調査をされるなら、裁判における積極的反証はおやめになるべきです。製薬会社は、民事の当事者としてそうなっておらぬけれども、さっきも言ったように、これは政府があまりにも無責任に十年間もやりっぱなしにしてきた公害のはしりですよ。キノホルムのスモン病が問題になっておりますけれども、これは一番悲惨な公害のはしりだ。古いだけにいまあまり世間の関心は引いていないけれども、子とその親は、これから長い間この業苦をしょい続けていかなければならない立場に置かれている。そういう立場を思えば、被告になったところで、政府としてはやはり疑問を持って積極的にこれを調査するという姿勢がなければならぬ。そして裁判については、政府が製薬会社と一緒になって積極的な反証をやる、因果関係なしということでやるのは矛盾だとぼくは思う。政治的責任というのはそこをいうのだ。そういう点について政府は、口では言いながら事実行為としてはそれをできるだけないがしろにして、原則的な問題をやりっぱなしにしておるというところに問題があるのじゃないか。結局あなた方は反省していないということになる。法律的な責任を負うことばかりおそれておって、ほんとうの意味の政治的責任と、問題の関係者に対してほんとうの愛情を持ってやっていくという根性がないということなんですよ。その点ひとつ厚生大臣、これまでのことはいまお聞きのとおりなんですけれども、いまの時点並びにこれから私は誠意を持ってやっていただきたいと思うのですけれども、ひとつ所見を伺いたいと思います。
  212. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 これは園田厚生大臣以来内田厚生大臣、私も追って申し上げましたように、政府の政治的な責任として、先ほども申しましたように、もっと、何といいますか、それを相手の方も感じていただけるように心を込めてやってまいりたい、それには変わりはございません。和解と申しますのも、そういう意味で申し上げておるわけでございます。
  213. 和田春生

    和田(春)分科員 そこで、そういう具体的な裏づけとしてお伺いをしたいのですけれども、四十七年度予算における関係予算はどれだけのものを組み、いまの電動義手の開発、それからその整備、今後のいろいろな養育ないしは療養その他について、どれだけ予算がつけられておりますか。おもな費目とそれに伴う金額、トータルをお示し願いたいと思います。
  214. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 ただいま申し上げました電動義手の研究開発につきましては、引き続き二千万円の予算を予定いたしております。それから、電動義手の支給修理等につきましては、一般の補装具の給付等の予算の中で処理いたすべく相当の増額をはかっております。それから、新たな措置といたしましては、日常生活用具といたしまして、特殊な浴槽、便器等を、そういった子供さんたちのある家庭に支給できるような予算措置を講じております。(和田(春)分科員「幾らですか」と呼ぶ)これは電動義手だけではございませんが、総額一千百万でございます。生活用具、それから三億の研究費の中の療育研究、そういったことを予定いたしております。
  215. 和田春生

    和田(春)分科員 去年言われたのが、電動義手の開発に三千万を要請しているということをお答えになっていますね、議事録に残っているわけです。ことしは二千万円ですね。そうすると、だんだん研究開発費が減ってきているわけです。それだけすぐれたものが開発され、十分になったという御判断ですか。
  216. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 御説明が不十分であったかと思いますが、電動義手につきましては二千万を予定いたしておりますが、同時に、いま申し上げました研究費三億の中で、療育の研究といたしまして、こういった子供さんたちについてはいろんな用途に使います電動義手ももちろん必要でございますが、同時に日常生活に使いますそれぞれの用途に適したもう少し簡単な補助用具というものが必要であるということが学者によって言われておりまして、そういったものの開発も別の研究費をもちまして同時に行ないたいというふうに考えております。
  217. 和田春生

    和田(春)分科員 それらを全部含めて幾らですか。
  218. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 いまの研究費につきましては三億のワクの中で現在実施計画を進めておる段階でございますので、まだ確定額を申し上げるところまでまいっておりません。できるだけ十分な額を計上いたしたいと思っております。
  219. 和田春生

    和田(春)分科員 これは厚生大臣に対してのお願いと最後の質問でございますが、いまお聞きのとおりでございます。三億のワクの中ということを言っておるわけですが、去年は電動義手だけで三千万、そのほかにいろいろな補助用具が要ることは当然わかってきております。いろいろなものがまた要求をされ必要とされているわけです。そういう点について、少なくとも昨年よりも相当大幅な増額がなければ、物価も上がっている、人件費も上がっている、研究によっていろいろな新しい問題点も出てきている、新しいものもつくらなくてはならぬという需要に応ずるわけにはいかないわけであります。そういう点について、厚生省予算の中でワクを広げ、具体的に積極的な措置をとるということ、この面についてお約束願えるでしょうか。それが一つ。  もう一つは、現在行なわれている裁判に対しましても、問題は訴訟技術ではなく、やはり政府の誠意と問題解決の熱意ということが特に要求されているわけでございますが、その点について重ねてお伺いをしたいと思うわけです。
  220. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 予算につきましては、できるだけワクの中でこちらのほうに回せるものは回すようにいたしまして、御趣旨に沿いたいと思っております。  裁判の中におきましては、先ほど、フォコメリー児の調査をいたしましたのも、何もサリドマイドのあれという意味でしたわけではないと申しましたが、私は、結果が明瞭になってくれば、反証がない限り薬禍であったという前提に立って処置をしていきたい、そういう考え方で和解にも早く臨みたい、和解は誠意をもってやりたい、かように考えております。
  221. 和田春生

    和田(春)分科員 終わります。
  222. 田中正巳

    田中主査 井上普方君。
  223. 井上普方

    井上分科員 先般各新聞社におきまして、日本の医学水準が非常に低いということが指摘されました。御承知のとおりであります。アメリカにおけるECFMG、外国人がアメリカで教育を受け、インターンをする、あるいはレジデントを受けるという際に、アメリカの一定の医学試験を通らなければならない。それに世界各国が受けておるけれども、合格率は世界の四十九番目という低い水準にわが国医学生があるということが、各新聞に報道せられました。中川米造君が発表したのでありますけれども、一大ショックを全国民は受けただろうと思うのです。その問題につきまして厚生大臣も新聞でごらんになったと思います。  問題は、何といいますか非常に深刻な問題でありますが、あれだけ日本の医科大学の卒業者が実力がないということになりましたならば、厚生省とされましては、日本の医療水準を向上させるという面から当然対策が考えられなければならないと思うのであります。したがって、あの新聞、中川米造君の発表以来、厚生大臣としてはいかなる感想をお持ちになり、これに対する対策をお練りになったことだろうと思います。その点ひとつお伺いいたしたい。
  224. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 不幸にして私その新聞記事は見ておりません。したがいまして、医務局長からお答えをさせます。
  225. 松尾正雄

    松尾政府委員 四十九番目の成績であるという記事を私どもは拝見いたしまして、率直なところ非常にがっかりした感じでございます。そこで、試験自体どういう意味でそういうふうに悪いのかなということで、試験の内容等につきましてもいろいろ調べてみました。まあ、そのせいであるとだけ断定できるかどうか存じませんが、やはり英語の試験という問題がございまして、その点がわが国の学生が非常に弱いという点が一つあるのではなかろうか。それからい一つは、先生承知だと思いますが、問題の中身までは承知しておりませんけれども、アメリカにおける医学教育が非常に臨床系統に重きを置いた教育、したがってそういった問題が非常に多く出されているという傾向もある。いわば教育の中身自体のあり方が多少違う、こういうこともあるのじゃなかろうか、そういうふうな大体の見解を私たちも抱き、またほかからもそういうことをお聞きしたわけでございます。  しかしながら、それはさておくといたしましても、日本の医学教育の中でより水準を高めなければならないという問題については、しばしば指摘をされてきつつあるところでございます。私どももまた率直に考えまして、いわば講義とデモンストレーションといったようなことに重点を置かれておった医学教育というものが、やはりより臨床教育というものに重点を置かれるべきではないか。そういったようなことの一環といたしまして、たとえば大学病院以外に、これに協力して臨床教育に当たっていただくという意味でのいわゆる教育病院群というものについて、これをひとつ具体的な形で検討したい、こういうふうなことを文部省ともども年度において実施する、こういう予定にしておるところでございます。
  226. 井上普方

    井上分科員 大臣が新聞をごらんにならなかったということに私は一驚いたしたのであります。朝日新聞でもあるいはまた毎日でも読売でも、全部紙面に大きく出ておったのでございます。ここにも持っております。これくらい新聞に出ました。  そこで、いまお知りにならぬという大臣に御感想をお伺いしてもしようがないので、医務局長にお伺いいたしますが、英語であったというのは私は理由にならないと思います。と申しますのは、これに載っておりますデンマークであるとか、フランスであるとか、全く英語と違うラテン語系統のところでも、日本よりもはるかに高い。これは私は英語教育であるということは理由にならないのじゃないか、このように思うのです。  そこで、あなたが第二番目にあげられた教育内容が違うのだ、臨床に重きを外国は置いておるというお話ですが、しかし臨床に重きを置いた、実地に重きを置いた教育が、日本においてなされていないところに私は問題があると思う。そこで、厚生省といたしましては、当然卒後教育というものを、今度は厚生省が持つ分野でございますので、それであなたに私はあえて聞いているのです。大学卒業後の教育を一体どうすればいいのか。それでなかったならば、おそらく国民は、日本の医療水準というのは世界の一流国だ、こういわれておるといままで思っておったと思うのです。これは砂上の楼閣であったことを関係者はよく知っておるけれども、実際問題として世界の四十九番目の医学実力しか持っていないということが発表された以上、これは深刻に受け取って、これの対応策を考えなければならない、こう思うのであります。  そこで、あなたが第二番目にあげられた理由というものをいかにして解消し、そして世界の水準以上にまで日本の医療水準を持っていくかということが対策として立てられなければならない、こう思うのであります。ところが、いまのお話でございますと、協力病院群を具体的に来年度から文部省と御相談になってやると仰せられておりますが、しかしどういうふうに具体的にやられるのでございますか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  227. 松尾正雄

    松尾政府委員 これは先生十分御承知の問題だ思いますが、大学病院に関します文部省内に設けられました委員会におきましても、いろいろと試算等もございまして、現在の大学の規模、病院の規模ではたしてその臨床教育として十分であろうかというような御検討があったと存じます。そのときの数字は、最低千二百をこすという、大体百人定員にしてそんな程度であります。またさらに、ほんとうに充実するにはそれよりも大きい規模になる、こういうお話があったと私は記憶いたしております。しかしながら、一方で、それだけ大きな病院を持つということ自体が言うべくしてなかなか容易でない、こういう御意見もございます。また、現実にいまの実態から考えますれば、方々にかなりの病院もできてきておる。私は決して現在の病院が、わが国の歴史から見まして、そのままこういう教育的な機能を十分持った病院に育っておるとは思いません。それはむしろ大学だけに医学教育というものを期待してきた長い間の伝統の結果だとも存じます。率直に私はそう考えております。  しかしながら、いま大学病院ですらも十分な症例が足りないのじゃないか、こういうことを解決して差し上げるためには、やはりまわりの病院が十分これに協力して、しかもそれが十分内容を充実させた上でお互いにタイアップするしかないであろう。しかし、この道をつけましても、文部省の医科大学設置調査会におきましても、すでに御案内のとおり、そういうものが必要だということについては一応意見が固まりまして、文部大臣にも答申が出されたわけでございます。しかし私どもは、それを実現しますにはいろいろ具体的に隘路があるというふうに考えております。たとえば、人の問題一つとりましても、どういうふうな交流のしかたをするかという問題等もございますので、そういったものもひとつ今度は具体的に詰めていきたいのだ、そういう気持ちで申し上げた次第でございます。
  228. 井上普方

    井上分科員 いままだ具体的な話として実際に実現の端緒にも達していないわけですね。そういうような構想で進まれるというのは私はけっこうだと思います。しかし、あなたのお話の中で私はいろいろと矛盾点を実は考えるのでございます。これは単にあなたを責めるのではない。いままでの日本医学界の中に残ってきた因襲といいますか、悪習というものがある。それを突破しなければ新しい教育あるいは卒後教育はできないという立場に立って私はものごとを考える。ここ四、五年来——斎藤大臣がこの前厚生大臣をやられておるときにも私は問題を提起いたしまして申し上げたのですが、医師法の改正で例の研修病院というものができたけれども、研修病院の内容というものが、卒後教育を全うするだけの実力を備えていないことは御承知のとおりです。病院の中にはそれは優秀な病院もありますよ。百七か八の病院の中にも、りっぱな医者を教育するに十分な病院であると認められる病院もございます。しかし、大半がはっきりいえば医師法に違反した病院であるということは、四、五年来私は斎藤大臣、内田大臣、園田大臣にもずっと申し続けてきた事柄なのですが、依然として直っておりません。これは厳密に言いますならば、大体あのうちの半数程度がともかく医師法違反の病院であると言っても過言ではないのであります。  それはともかくといたしまして、これは大臣もうなずいておられるから、それの改善に対する努力は今後もなされることを期待いたします。  それよりも問題は、いまごらんになったこの水準ですね。この水準をいかにしてレベルアップするかということを考えなければならない時期ではないかと思うのであります。それには研修病院を指定するにしましても、たとえていいますと、病院は指定したけれども、その中における眼科とか耳鼻科とかいうのには教育病院としてふさわしくない医者がおる、内科にはいいのがおるという病院まで指定になっておるわけです。病院は研修病院に指定になりますと格が上がるというので猛運動をやる。そして、厚生省のほうにお願いして、実はあの委員にお願いして研修病院にしてほしいといってきているのです。それでやっておる。実際問題として、これはほんとうの考え方から言いますと、何々病院の内科なら内科、精神科なら精神科というような指定をなさるほうがむしろ現実に即したやり方じゃございませんでしょうか、どうでございますか。
  229. 松尾正雄

    松尾政府委員 私は前にも、先生のそういう御意見がございましたときに、私自身としては十分その点を考えるべきであるというふうにお答え申し上げた記憶がございます。  おっしゃるとおり、一つの病院の中の各科がすべて同じレベルの高い指導力を持つということ、これはいま御指摘のような科につきましては日本全体で非常に人が少ないという関係もございまして悩みの種でございます。そういう意味では、私はある意味でその特定の指導力のすぐれた科だけを抜き出して指定をするということも一つの道だと私も考えております。ただ御承知のとおり、そういう場合の卒後研修という形の場合、やはり一つの科だけで専門家としてなっていくという以外に、ほかの科の協力を得ながら勉強していくという面があるという点もやはり完全に否定はできないのじゃなかろうか。そういった点から、たとえば内科の研究をしておる方が眼科の協力を得ていくという問題があるということからこういうことが発想として出てきたと思います。  しかし、いま申し上げましたような実態から申し上げますと、私どもがいま詰めております点では、場合によってはそういう科にはちゃんと常勤の人がおるといたしましても、より高いレベルの指導力というものはやはりほかから求めて、そして御指導いただくという、そういう交流のしかた、そういうことも一つのファクターとして考えられるのではないかということで、研修審議会にも私自身もそういう提案をした上で、さらに御検討願っておるという段階でございます。
  230. 井上普方

    井上分科員 私はことばじりをとらえて言うつもりはないのでございますけれども、外から優秀な人を入れて教育さすと言っておりますが、実際問題として、日本の医学界においてはそれができていないでしょう。学閥というのが厳然としてあるのです。たとえて言いますならば、どこそこの病院は東大系統、どこそこの病院は京都系統、どこそこの病院は岡山系統といいましたり、院長を岡山がとるとするならばずっと末端に至るまで岡山が占めようとするのがこれが現状じゃございませんか。     〔主査退席、橋本(龍)主査代理着席〕 それをあなた方は打破できておりますか。国立病院においてそれが打破できておりますかというのです。私も、もちろん国立病院の中でも東京第一、第二のごときいい病院におきましては、これはよそから入ってくるでしょう。しかし、地方末端の国立病院におきましては、依然としてどこそこの病院は何それ系統であるというがために、病院長、内科、外科という大きい領域のところは全部その学校で押える。でございますので、その近くに地方大学がございましても、その病院に行っても内科医長にはなれない。いつまでたっても下っぱの医員であるというので、どんどん飛び出していく。もちろんその病院に対しては、ほかの大学からの臨時の講師、人を入れるというようなことがなされていない。これが実態じゃございませんか。これは、あなたがそこまでおっしゃるならば、国立病院のこの学閥意識をなくした人事交流ができますか。やったためしがございますか、東京の第一、第二は別にいたしまして。どうでございますか。
  231. 松尾正雄

    松尾政府委員 私も全くそういう形のものが日本ではなくなっているとは申し上げません。むしろそういうことを打破したい、こう考えております。わが国で一番そういう例として有名になっておりましたのは、おそらく築地にございます国立がんセンターであろうと思います。これは創設のときからそういうことを打破するという方針のもとに、多くの方々にお集まりいただいたという伝統がございます。そのほかに小児病院等も同じ形でございますが、まだ完全にできておりません。おりませんが、ぜひ私どもは打破をしたいという努力をしたいと思います。
  232. 井上普方

    井上分科員 厚生大臣、私は医務局長は正直におっしゃっていると思うのです。しかし、そういうのが厳然としてある。ある上へもってまいりまして、教育病院群を具体的につくるんだと言いましても、私はなかなかむずかしい問題だろうと思うのです。そこで、研修制度というのが大臣も御存じのとおりできておりますが、実際問題として指定病院の大学付属病院以外に臨床研修病院で研修しておる数というのは、四十六年四月一日現在で百五人になっております。これは二年間でございますから、一年間五十五名ということになるのです。一方、大学の付属病院のほうはどれだけかといいますと、四千二百九十名おるわけでございますね。指定病院のほうは百七つのうちの七百七十九名です。これは何といいますか、大学に残ろうという医学部の卒業生が少なくなっております。けれども、ほんとうに研修ができる病院へ行きたいという気持ちはあると思うのです。これはそれが少ないという証拠だろうと思うのです。  こういうような数字を見ますと、いままで一たん大学紛争以来外に出ておりました若年医師が、また大学へ集中していく傾向にあって、地方の病院に出ていかない傾向がまた出てきておる。それには一つの原因として、研修病院の施設が悪いからにほかならないと私は思うのであります。でございますので、研修病院に対する国庫の補助というもの、これは非常に少ない。でございますので、これは力を入れなければならないと思うのでございます。これはことしの予算にどれだけ出ておるか私存じませんけれども、ほんとうに力を入れなければならぬ。大学にも、先ほど医務局長が言いましたように、卒業者全員を研修させるだけのなにがございません。とするならば、やはり日本の医療レベルをアップさすためにも、研修病院に対しまして強力なる補助をやる必要があると思うのでございますが、どうでございますか。それが一点。  もう一つは、研修病院というのは、先ほど申しましたように名前だけほしいという病院が数多くあります。でありますがゆえに、これの厳選をもう一度やり直す必要があると思うのです。  もう一つの問題といたしましては、医学部の学生の資質を向上さすために私はあえて申すのです。民間におきまして研修病院にすら指定にならないような病院を母体とする医科大学が、今度も新設が文部省によって許可になっておる事実なんです。先ほど医務局長は、病院と学部とは違うんだというような考え方はありますけれども、実際問題としては、基礎になる問題は、私立の設立書なんか見てみましても、やはりその病院が中心になっておりまして、研修病院にすら指定にならない病院が母体となって医科大学の新設が行なわ訳ようとしておるのです。これらに対して、厚生省としては文部省と御協議になっておられますかどうか、この点ひとつお伺いいたしたいのです。
  233. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 研修病院の指定につきましては、先ほど局長がお答えいたしましたように、文部省その他を含めた委員会でいろいろ内容を検討いたしておるわけでございます。したがいまして、文部省も入っておると思います。具体的に研修病院に指定されない私立大学等の付属病院があるというなら、そういう病院はまだ十分ではない。研修病院に指定をされるだけの十分資格を持った病院にされるようにさらに文部省にも呼びかけて努力をいたしたい、かように思います。  また、民間の研修病院に指定をいたしました病院の厳選という点は大事なことだと存じます。また指定した病院に対する施設あるいは設備費等の助成が不足であるという点も私は率直に認めますが、その必要性、程度というものも、先ほどの研修病院指定の関係委員会に持ち出して十分協議をした上で、御趣旨に沿うようにいたしたいと存じます。  それから、先ほどの新聞記事につきましては、いま私は拝見をいたしました。私もそのとおりであればというので非常にショッキングに感じました。この点は、その記事をもとにいたしまして、文部当局ともよく協議をして、どこにそういう原因があるかということも見きわめ、またどんな形の試験制度をやったのか、これをもって日本の医学水準が四十九番目である、こう断定されてもやむを得ないのかどうか、もしそうだとすればどうしたらよいかという点を、十分私のほうの局長はじめ医学関係の者も交えてひとつ討議をいたしたい、かように思います。
  234. 井上普方

    井上分科員 大臣の最初のお話が官僚答弁にならぬようにひとつお願いいたしたいと思います。  それから最後の、この新聞の問題でございますが、これはほんとうに深刻に受け取っていただきたいと思います。私はこの原本を持っております。何ならお貸ししてもいいのでありますが、役所でおとりになっていただきまして、十分ひとつ御研究になっていただきたいと思います。  特に、この際申し上げておきたいのは、いまの医学教育というものが、一部門につきまして非常に進んだところを持っておるのであります。わかりやすく申しますと、一般医という点において劣るのではないか。これは前々から私も指摘しておったわけでございます。この問題は、おそらくそういう面を如実に示したものであろうと思います。今度、乱立といいますか、私立大学がたくさんでき始めました。しかし、ここで日本の資格試験である医師国家試験が九八%、九七%の合格率を誇っております。私もその国家試験を受けた一人ではございます。しかし、もう少し厳格な試験をやってしかるべきじゃなかろうか、このように考えるのであります。昭和二十六年までは五〇%だったなんということは、歯科医専から変わってきた、外国から入ってきた、満州とかあるいは朝鮮から入ってきたというようなんで、資格はある程度厳重にやられましたけれども、その後は非常にルーズになっておるような気がしてならないのでございます。この点につきましてももう一度、これを契機といたしまして、さらに国家試験のあり方それ自体につきましても御検討願えれば幸いに存ずるのですが、どうでございますか。
  235. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 十分その御意見を踏まえまして検討いたしたいと存じます。この次にはその内容も少し変えたいと医務局長も言っておりますし、御意見のほどは十分徹底をいたして検討いたしたいと思います。
  236. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)主査代理 岡本富夫君。
  237. 岡本富夫

    ○岡本分科員 国民の皆さんの待望久しかった児童手当について厚生大臣お尋ねいたします。  児童の福祉を増進して、次代の社会をになう児童の心身ともに健全な成長を期することは、もちろん両親の責任であるけれども、また社会の重大な責任である。すなわち、児童の扶養義務はまず両親にあるということは永久に変わりませんが、ますます複雑化する現代社会において、ただ両親にまかせておいただけでは、児童福祉を完全に守っていくことは困難である。ゆえに一九五九年の国連総会においては、児童権利宣言というものが出ております。その中に「児童は、特別の保護を受け、また、健全、かつ、正常な方法及び自由と尊厳の状態の下で身体的、知能的、道徳的、精神的及び社会的に成長することができるための機会及び便益を、法律その他の手段によって与えられなければならない。この目的のために法律を制定するに当っては、児童の最善の利益について、最高の考慮が払われなければならない。」というようにありますが、わが国においても一九五一年に児童憲章が制定され、その第一に「すべての児童は、心身ともに、健やかにうまれ、育てられ、その生活を保障される。」こういうようにございまして、わが党は五十八あるいは六十一国会までずっと児童手当法案を提出して、政府にその対策を迫ってきたわけでありますけれども厚生大臣は、いよいよ児童手当をやるようになりました、こういうことをおっしゃったのですけれども、はたして現在の児童手当の、第三子あるいはまた諸条件がありますが、これでいいと思っておるのかどうか、まずこれについて、また現在のぐあいが悪いのをどういうように改革しようとしておるのが、これについてお聞きしておきたい。
  238. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 児童手当法は、おっしゃいますように、多年の懸案でありました要望でございます。それがやっと昨年法律として制定を見、本年の一月から施行、しかもそれはまだ部分的な施行ということになっておりまして、今日の児童手当法がそれで万全とは私は思っておりませんが、今後の経緯を見まして、改めるべき点があれば改めてまいりたい、かように思っております。ただいままだ発足したばかりでございますので、いま直ちにさらにこう改める必要があるという点は考えておりません。
  239. 岡本富夫

    ○岡本分科員 局長さんにもうちょっと詳しく、現在実施しょうとしておる、また実施しつつある、これについてもう少し詳しく説明をし、また今後どういうスケジュールを持ってこれを拡大しようとしておるか、そのスケジュールをひとつお聞かせ願いたい。
  240. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 現在の児童手当制度は、先生御案内のように、ことしの一月から支給が開始されておりまして、原則的には、対象となりますのは、十八歳未満を頭にいたしまして三人以上の子供を養育しております場合、その義務教育終了前の第三子以降の子供一人に対して月額三千円を支給するというのがたてまえでございます。財源的には、被用者分とそれから被用者以外の分と公務員分とが区別されておりますが、支給の条件は全部統一されております。  ただ、制度が全く新しい制度でございますために、段階的な実施を予定いたしておりまして、ことしの一月から来年の三月までは十八歳未満を頭といたします三人以上の第三子がことしの一月一日現在において五歳未満のものに限られております。四十八年度におきましては、四十八年四月一日現在において十歳未満のもの、四十九年度において当初の予定どおり義務教育終了前というところまで広げられる予定でございます。  なお、法律の精神といたしましては、この額につきましては、その時点におきます給与水準あるいは生活水準等を考慮いたしまして今後考えられるということもうたわれておりまして、満年度の実施を見ました段階におきましては、当然そのような問題につきましても検討しなければならない、かように考えております。
  241. 岡本富夫

    ○岡本分科員 そこで、この非常に微々たるもので——わが国の制度というのはたくさんできるのですけれども、中身は非常にお寒い。初めてできたんだから、初めてできたんだからと、こうおっしゃいますけれども、四十七度は五歳未満、四十八年度十歳未満、四十九年度義務教育終了前、これも第三子ですわね。こうしますと、この児童憲章の「すべての児童は」、すべての児童ですから、義務教育を受けている者以下のすべての児童、こういう児童に対して全部支給できるという目標といいますか、それは大体何年ごろに置いているわけですか。それでなければ、予算要求にしましても、そういう目標をきちっと立てて、そしてことしはここまで、来年はここまで、こういうふうにやっていくのなら話はわかりますけれども、いまの局長さんの御答弁では、第三子までの目標しかいま立っていないのですね。第一子までの目標はどれくらいのところに置いていらっしゃるのか、これをひとつお聞きしたい。
  242. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 児童手当は第三子からということになっておりますが、私、三年前、在任中に、ぜひ児童手当をまず出発をさせたい、そのときの構想が第三子から、そうして三千円という構想でございました。そのときからもう三年たっておりますが、三千円の額が、その当時から比べて、物価あるいは生活水準等に比べて、今後ある程度これは改定していかなければなるまい、かように考えております。しかし、児童憲章なりあるいは児童福祉法のすべての児童がという点は、これはそのとおりに私は思いますが、しかし児童手当制度は、児童の健全な育成をはかるために、児童の養育に必要な経費を公費である程度見ようというところにあるわけでございますので、したがって私、ただいまの段階では、やはり二人までは健全に育てることのできるような、そういう所得保障のできるような産業機構とか経済機構が望ましい。三人以上になれば、やはり国が、あるいは公共団体も一緒になって手をかしてあげるというのが望ましいんじゃないだろうか、私は現在さように考えております。  もちろん、児童手当法通過の際に、付帯条件として、二子あるいは一子からということも将来考慮するようにという付帯御意見がついておったように考えておりますが、その御意見のあったことは私は銘記をいたしております。今日の段階では、とにかく三子からという現在の法律の完全実施を早くするということがまず第一条件だ、かように考えております。
  243. 岡本富夫

    ○岡本分科員 大臣のことばじりをつかまえては悪いのですけれども、二人ぐらいだったら育てられる、そういう所得保障があったらいいんだ、もちろんそれも考えられますけれども、児童憲章の中には、第一に「すべての児童は」と、その生活を保障される。したがって、やはりこの児童手当というものは、すべての人たちに——あなたも最初は予算が一ぺんにできませんから第三子ということをお考えになっているのであって、すべての児童に差し上げていこうというあったかい親心によって出発したんではないでしょうか。私は、この前あなたが厚生大臣のときにお聞きしたことがあって、まず第三子から出発するんだ、こういうふうにお聞きしたことを記憶しておるのですけれども、ちょっと後退をなさったんではないか、こういうように思います。
  244. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私の発想は後退をいたしておりません。当時から進歩していないじゃないかと言われればそのとおりでございますが……。私は、現在の給与水準なり賃金水準がこれでよろしいとは思っておりませんが、二人の児童を育てられるくらいの所得のあるような、そういう経済体制、社会体制というものをつくることが必要であって、三子以上になれば、その養育費については、養育をしている者に対して国が補助をするというのが適当ではなかろうか、現在の段階ではさように考えております。
  245. 岡本富夫

    ○岡本分科員 このことばかり押し合いしてもあれですが、大臣、ちょっとあなた責任を転嫁なさっているのじゃないか。ということは、あなたは最初、児童手当はすべての児童に——そのうちの第三子からやって、第二子、第一子、こういうところは社会の発展によって何とかカバーしようという考えではなかったのではないですか。  発想としては、やはり先ほど局長から話があったように、十八歳未満のすべての児童にまず三千円を、まあ物価の上昇によってスライドもあろうと思いますけれども、あなたもおっしゃるように、一ぺんにできませんから、まず第三子から三千円を支給していこうというようなことではないのか。局長はそういうようなお答えであったのですが、ちょっと違いますね。
  246. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 この法律ができましたときには、私は所管大臣をいたしておりませんでした。ただ、こういう法律をつくりたいと思うて一生懸命やっておりました前のときの発想は、私が申し上げたとおり、その当時こういう考え方でやりたいと思うということを、公の委員会等でも私は述べておった、かように思います。
  247. 岡本富夫

    ○岡本分科員 まあ、この問題ばかりあれしてもいけませんけれども、やはり何と申しましても、すべての児童にこの給付をして差し上げるというのが一番大切であろうと思うのです。  そこで局長に、もう一ぺんお聞きしたいのですが、その当時の厚生大臣がかわりまして、あなたが今度は事務当局として第三子で打ち切ろうという考えなのか、あるいは第一子までやっていこうという考えでこの発想になっているのかを、もう一度あなたからお聞きしたい。
  248. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 現在の児童手当法は、その目的に掲げられておりますように、国民の家庭生活の安定と次代をになう児童の健全育成ということが目的になっておりまして、いままでの厚生省実態調査によりましても、平均的な世帯におきまして子供を三人以上養育をしております場合に、急激に子供の養育費にしわ寄せがくる、あるいは母親の栄養が片寄るというような事実もございまして、先生指摘のように、子供の養育ということは、やはり保護者の責任がいまの社会体制のもとにおいては重点的なものであるが、ただすべての子供に対して、国家があるいは社会がその責任を分担する姿勢を示すということが児童手当の一つ趣旨であろうと考えております。そういう意味におきまして、現在の段階におきましては、三子以上の子供がある家庭に対しまして、その家庭の全体の状態に着目をいたしまして児童手当を支給するといういまの制度が妥当である、そういう立法趣旨であるというふうに了解いたしております。
  249. 岡本富夫

    ○岡本分科員 そんな弱腰では困るのです、それは。しかも第三子で四十九年になって完全になる、そんな弱腰でおるから、いつまでたっても日本の国の社会保障が進まないのですよ。だから、わが党が発表しておるように、第一子からやっていくというようにここで姿勢を改めてもらいたい。これで押し合いしておっても時間がたちますから……。  そこで、ちょっと話をかえまして、最近大幅に子供といいますか赤ちゃんがふえてきた、そして保育所が非常に必要になってきた、こういう時代に入ってきておるのですが、この保育所の新設についてどういう考えを持ち、また今後どうしていこうとしているのか、これをひとつ明らかにしておいていただきたい。
  250. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 ただいま御指摘のように、現在の婦人労働者、特に既婚婦人の労働というのは急速に増加しております。婦人労働者の半数以上が既婚者であるというデータもございまして、その婦人が養育いたしております子供を保育にかける状態になった場合、これを保育しなければならない保育所の増設ということは不可欠の事態でございます。私どもといたしましても、従来の実態調査及びその後の婦人労働者の増加等を推計いたしまして、大体昭和五十年までに百六十二万程度定員を持つ保育所を整備いたしたいという計画のもとに、四十六年度を初年度といたします五カ年計画を省として策定いたしまして、それに基づいて整備を進めております段階でございます。
  251. 岡本富夫

    ○岡本分科員 そこで、忘れておったのでちょっとまた戻りますけれども、児童手当について……。この財源につきまして厚生大臣は、あのときにたしか所得制限は五百万くらいにしたいという御意見だった。ところが、所得制限が非常に下がっておる、こういう制限がついておる。それからもう一つは事業者負担、要するに事業者が財源を、十分の七を負担しておる、こういうことによりまして家族手当を省かれておるのですね。したがって家族手当を会社からもらうときに家族手当から引かれたら児童手当をもらっても何にもならない、こういうことを訴えておる人もあるわけです。この点についてどういうようにお考えになっているのか。したがって私は、事業者負担というのはやめて——なぜかならば、事業者も県税、国税あるいは市町村税を出しておるわけですから、一般と同じように税金を出してまた事業者が出すということは、二重取りということになるわけですから、あなたのほうでは、事業者も、子供たちが大きくなればまたそれでいい労働力になる、使えるんだという考えだとおっしゃるかもわかりませんけれども、やはりこの財源の問題については一考していただきたいに思うのですが、いかがですか。
  252. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 所得制限の点は、確かに私はいまの所得制限をもう少し上げたい、この努力を払いたい、かように思います。  それから、事業主がその財源を負担しておりますのは、私当時申し上げておりましたように、日本の企業全体がある程度負担をする、ということは、将来の日本の企業をになう労働力でありますから、そういう意味で企業負担というものを取り入れたわけでございまして、私のときの考え方がそのまま立法になっております。そして、それは賃金体系とは関係がない。賃金体系の中に家族手当あるいは児童手当というものを持つのがいいのか悪いのか、能率給でやるのがいいのか、これは賃金体系として検討してもらっていくということであって、家族手当を、今度児童手当ができたからいまの賃金体系の中を改められるのが当然であるようにも思いませんし、これは賃金体系として給与体系として別の問題として考えてもらいたい、当初から私はかように思っておりましたし、いまもさように思っております。
  253. 岡本富夫

    ○岡本分科員 これを、あなたの当初の考え方のいいほうはやめて、所得制限を下げて、悪いほうの事業者負担にさせたために、事業主は家族手当を差し引いている。これをまた差し引いてはいかぬという法律もない。これではあまりよくないと私は思うのです。ですから事業主は、言い分があるけれども、やはり家族手当を省かないように何とかいい方法がないものか。法的にはどうしようもない、こういうことなんですか。あなたは最初から賃金体系には何も関係ないんだ、こう思っておった、こういう話でありますけれども、実際にはこれはあらわれてきておる。これをどういうようにする考えか、ひとつお聞きしたいと思います。
  254. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 賃金体系の点は、私は、賃金体系は賃金体系としてあるいは給与体系としていまの体系がいいかどうかということは、一般の私的企業ならば労使の協議できまるというのが習慣になっておりますが、そういう意味で日本の賃金体系をいまのまま守っていくのがいいのか、あるいはもっと能率給とかいうようなものに転換をしていったほうがいいのか、これは私のほうの所管でもございませんし、したがってそのほうのおきめになるようにやられたらけっこうであろう、私のほうはこういった家族給付というものがあるということを前提にしてきめた児童手当ではございません。児童手当は児童手当として独立して考えております。かように申し上げております。
  255. 岡本富夫

    ○岡本分科員 どうもおっしゃっていることが、あとは野となれ山となれ、ではないでしょうけれども、賃金体系の中で家族手当を省くのはかってだ、私はそこまで考えてなかった、それはそれで別にやるんだというようなことは、私はどうも納得できない。しかし時間がありませんから……。  そこで、児童手当の事務費につきまして、これは国の事業なんですが、事務費が、まだ半年しかやっておりませんけれども、たとえばこれは兵庫県の西宮の資料をとってきたわけですけれども、二千五百人の児童を半年間見まして、要った人件費、いろいろなものを見ますと三百五十万かかっている。ところが厚生省から入ってくるのは百五十一万五千円。時間がありませんから、あとで私またこの資料を渡しますけれども。したがって、この事務費につきましても、やはり国の事業として地方自治体がやれるようにしてもらいたい、これをまず要望しておきます。  次に、先ほど若いほうでしたから今度はお年寄りのほうですが、四十五年の統計を見ますと、六十歳以上のお年寄りで四千九百四十二人、約五千人の自殺者が出ておる。非常に暗い話でありますが、全国の自殺者の三分の一が六十歳以上のお年寄りである。このお年寄りの自殺の原因を見ると、病苦、孤独、貧困、これが老後の三大恐怖といわれておりますが、この老人の自殺、男子が世界一、女子は世界第六位、非常に自殺率は大きいわけであります。  そこで、有病率を見ますと若い人の四倍、それから受診率、医者に診断を受けた、あるいはまたお医者さんにがかった、こういうのは若い人の二分の一、こういうことになりますと——これは総理府の統計でありますが、お年寄りは病気になってもなかなか医者にかからない。私、去年でしたか、この問題について内田厚生大臣に、何とかお年寄りに対して医療の無料化をやってもらいたいということで要求したわけでありますが、やっと四十八年の一月一日から七十歳以上ということで実施されるそうでありますけれども、これも所得制限が非常についておる。この所得制限と、それから少なくとも六十五歳にしてもらいたいと私は思うのですが、これについてひとつ答弁をいただきたいと思います。
  256. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 この所得制限も、私はもう少し高くてもいいのじゃないだろうか、かように考えております。私どもの調査では、この所得制限によって除外される方が約七・六%、数からいうと非常に少ないものであります。したがって、所得制限を上げましても費用としてはそう変わらない。同時に、わずかな人だから上げてもいいじゃないかということも言えまするし、そう急がぬでもいいじゃないかとも言えるわけですけれども、しかし、これは毎年所得水準が上がっていく、生活水準が上がっていくわけでありますから上がっていくべきである。私はそれよりも、先ほどの児童手当の所得制限のほうはもっと早く上げるべきだ、さように考えます。  それから六十五歳の点は、今後前向きに検討いたしたいと思います。
  257. 岡本富夫

    ○岡本分科員 非常に時間がありませんので、そうすると所得制限も、これはやはり大臣が最初おっしゃったように、児童手当は五百万、老人医療も大体五百万くらいというように踏んでよろしいのか。それから、将来六十五歳までやっていきますと、こういう前向きの姿勢でお答えになりましたので、そう受け取っておきます。  最後に、現在のお年寄りの姿を見ますと、要するに健康なお年寄り、こういうのは単身で住まいをしたい。老人ホームのような一括して介護するようなことも必要でありますけれども、それよりも何か内職でもしながら低所得でも単身で住まいをしたいという方がだいぶ出てきておるわけですが、そうしたほうがかえって、いま老人ホームをたくさんつくるというわけにもいきませんので、経費が安くなるのではないか。これは公営住宅法を少し改善しなければならぬと思うのですが、このことについてもひとつ研究していただきまして、これは建設大臣の所管でありますけれども、あなたのほうからいままで苦労して、きたお年寄りに対して今後一つでも願いをかなえてあげて、そして楽しい日々を暮らさせてあげるようなあたたかい配慮をお願いしたい。これについてひとつ御答弁をいただいて終わりにいたします。
  258. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ごもっともに存じます。健康な老人で介護を要しないというお方は、単身あるいは夫婦で低額のアパートというようなものを考えたい、かように思って事務当局でもその方向で推進をいたしております。
  259. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)主査代理 安井吉典君。
  260. 安井吉典

    安井分科員 いま厚生大臣戻ってくるだろうと思いますから、その前に保育所の拡充充実の問題について、いまもちょっとお尋ねがございましたけれども、現在どれぐらいの希望個所があって、希望個所なり収容人員をどれぐらいふやしたいという国民的な要求があるのか、それに対していまの五カ年計画はどの程度こたえることになるのか、それをひとつお伺いいたします。
  261. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 先ほどもちょっと申し上げましたが、現在の保育所の数は約一万五千、定員は百二十七万人でございます。過去の実態調査及びその後の婦人勤労者の増加等の動向から推計いたしまして、大体昭和五十年度末までに整備しなければならない保育所の定員は、百六十二万五千程度と考えております。したがって、五カ年計画として考えますと、大体毎年七万五千前後の整備を要するという形でございまして、四十六年度からそういう五カ年計画を立てまして整備を進めております。  整備の財源といたしましては、社会福祉施設整備費の中の保育所に対する国庫補助によりますもののほかに、民間のものに対しましては社会福祉事業振興会の融資、あるいは地方に対しましては年金福祉事業団の融資、あるいは公営事業からの配分にもそういったものを含めまして、四十六年度におきましては大体目標の数字に近い整備が行なわれておるわけでございまして、この計画がこのまま順調に推移いたしますと大体目的を達し得るのではないか、そのように考えております。
  262. 安井吉典

    安井分科員 毎年七万五千とおっしゃったですね、五カ年。そうすると七万五千で四十七年度はどれぐらいの見込みですか。
  263. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 これは、いま申し上げましたように、民間で国の経費あるいは寄付金等でつくるものもございますのではっきりはいたしませんが、大体その数前後の整備が見込まれるものと考えております。
  264. 安井吉典

    安井分科員 私は、きょうはむしろ厚生省予算獲得をもっと有利にするための一つの論拠を提供しよう、こういう立場であります。政治の原点はヒューマニズムだと思うから、実はちょっと厚生省のシンパのつもりで伺うのです。ほんとうはこの間の予算の総括で大蔵大臣にもっと言いたかったのですが、ほかの質問との配分の関係で、この問題がとうとう抜けてしまったものですからきょう伺うので、ほんとうは大蔵大臣も一緒においでいただいてやりたいのですが、残念ながらそれはきょうはできません。  そこで、私が提起したいのは、人間を大切にする政治の厚生省予算のほうは——どうも企業やあるいは社会資本の充実というと聞こえはいいわけですけれども、いろいろな土木事業を喜ばせるような予算のほうはどんどん有利な扱いになりながら、厚生省のほうはどうもあと回しになっている。そういう実態を財政的に見ますと、実は全国知事会の自治体の超過負担の調べがあるわけですね。それによりますと、一定の基準額があって国庫補助額がきめられている。その基準が低過ぎたり単価が低過ぎたりすることによって、地方は負担しなくてもいい負担をしいられているという問題が、超過負担という言い方でされているわけですが、農林省や建設省等あるいは文部省もそうでありますけれども、やはり超過負担があって、その解消に幾らかずつ努力はされて減っていくわけですが、厚生省のやつは、改善ゼロとは申し上げません、あとでごみ処理の問題なんかも取り上げたいと思いますが、だいぶことしはよくなっているようでありまして、そういうふうな改善措置もないわけではないけれども、ほかの省のものに比べるとまだ非常に不利な扱いになっているのではないか、そういうふうな気がするわけです。  その一つの例として保育所の問題をひとつ取り上げようというわけですが、昨年度は事業費単価百二十人以下が五百万円、百二十一人以上が六百万ということになって、それがことしは踏襲されているというふうに伺ったわけであります。それ以前もっと安かったのを改善されたのがその額で、それがことしもそのまま踏襲されておると聞いておりますが、そのとおりですね。
  265. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 保育所の建設単価につきましては、御指摘のように市町村等から非常に御要望が多い関係もございまして、多少基準単価を低く押えましてそれに対する補助金を出しておる、そういうことがかなり長い間続きましたために、実勢に合わない実情にありますことは残念ながら御指摘のとおりでございます。昭和四十年度ごろからだんだん改善をはかってまいりまして、昭和四十四年度には、九十人以下が百万円、九十一人以上が百五十万円、四十五年度におきましては、いま御指摘の百二十人で切りまして百五十万円と二百万円、四十六年度はさらに百万円ずつ引き上げまして百二十人以下が二百五十万、それから百二十一人以上が三百万という基準単価を設定したわけでございます。これでも確かに御指摘のように実勢にはかなり遠い額でございまして、四十七年度につきましてはこの額を踏襲いたすということは考えておりません。これは社会福祉施設費百二十億の中の配分でございまして、現在実施計画がきまっておりませんが、実施計画の段階におきましてできるだけ実情に近い額に順次上げていくように努力いたしたい、そういう考え方で現在作業を進めておる段階でございます。
  266. 安井吉典

    安井分科員 いまのお答えで、社会福祉施設全体の整備費の総額予算という形で配分が行なわれていて、その中で処理しよう、ことしはそういうふうな運びになっているそうですね。そこにも一つの問題があるのですが、これはあと回しにしまして、いま単価の問題を取り上げているわけですから、その点で伺いたいのでありますが、百二十人以下、まあ百人なら百人としましょうか、百人くらいを収容する保育所を東京都で建てれば実際はどれくらいかかるのですか。その点は一応の計算がおありだと思いますが、実績でもけっこうです。
  267. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 なお来年度の建設単価がきまっておりませんので、少し古い資料で申しわけございませんが、大体におきまして平均的なブロックの建築を行ないました場合に、いまの基準で考えますと、いま御指摘の百人の保育所で総額で約一千五百万というふうに考えております。
  268. 安井吉典

    安井分科員 一千五百万で実際できますか。とてもそんな額ではできない、おそらくそれの倍ぐらいかかるのじゃないかと私は思うのです。その上に、それは用地費は入っていますか。
  269. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 これは社会福祉施設の補助金全体を含めましてやはり施設整備を急ぐという要素はあろうかと思いますが、用地費に対する補助は行なっておりません。
  270. 安井吉典

    安井分科員 いや、私が申し上げているのは、実際建てるのに千五百万円かかるというふうにおっしゃったから——実際建てるには用地を買わなければ建たぬわけですね。ですから、用地を買収して百人入りの保育所を一つ建てると、用地費を含めて大体どれくらいかかるものだというふうに厚生省は押えておられますか。
  271. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 申しわけございませんが、用地費につきましては現在補助の対象にいたしていないわけでございます。それと、地域によりまして、同じ東京と申しましても地価がまちまちでございますので、そういう試算をした資料は持っておりませんです。
  272. 安井吉典

    安井分科員 試算じゃなしに、実際に五百万なり、まあ二百五十万という数字でもけっこうでありますけれども、その二百五十万円で保育所を実際全国につくらせているわけでしょう。だから、その保育所が一体幾らでできているのかということを厚生省がつかんでいないということが大体おかしいと思うのですよ。用地は補助の対象にならぬし、二百五十万円出せば建つのだという安易な考え方のもとにいままで予算編成をずっとされてきている。実際東京のどこそこにこういう保育所ができた、あるいは仙台なら仙台でもいいですよ、あるいは山形でもいいですけれども、そこにできた保育所を見に行ったことはありませんか。それとも、そこから、私のところはこれだけかかりましたという資料の提出を得たことはありませんか。
  273. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 御趣旨を取り違えておったものですから申しわけございませんが、私どもが実際に調べました資料によりますと、定員九十人の保育所で、たとえば秋田の例では事業費約二千万、それから東京の例で二千五百万、そういう報告を受けております。これは用地費を含まない価格であります。
  274. 安井吉典

    安井分科員 ですからそれを私さっきから伺っているわけですよ。基準の問題の前に——基準というのは、実際どれくらいかかるからそれじゃこれくらいの基準にして、あまりぜいたくなものでもなしに貧弱なものでもなしに、中ぐらいなものをつくるにはこれくらい必要なんだ、それから逆算して補助金の仕組みをつくり上げていくというのが普通の役所の仕事なんですよ。建設省も農林省も文部省もみなそれをやっているわけですね。だから、その実態調査を十分におやりになっていないものだから、まるっきり空に浮いたような計画を今日までお進めになってきているのではないか、私はそう思うものですから、いま詰めた話を伺ったわけです。しかも、いま秋田の二千万、東京の二千五百万とおっしゃっても、これは用地費がないですからね。用地費を含めればこれはもうたいへんな額になるわけですね。それが現状であるわけです。幾らかかろうと二百五十万なんですよというのがいまの仕組みでもあるわけです。そこに重大な問題点が含まれているのではないかと私は思うわけです。  大臣、あとでひとつまとめてお答えをいただきたいと思いますが、局長にもう一つ伺っておきたいのは、地方財政法第十八条の規定を御存じですか。
  275. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 いま条文を見せてもらっています。
  276. 安井吉典

    安井分科員 では、自治省のほうから答弁してください。
  277. 近藤隆之

    ○近藤説明員 地方財政法の十八条は(国の支出金の算定の基礎)ということでございまして「国の負担金、補助金等の地方公共団体に対する支出金の額は、地方公共団体が当該国の支出金に係る事務を行うために必要で且つ充分な金額を基礎として、これを算定しなければならない。」という規定になっております。
  278. 安井吉典

    安井分科員 ついでに自治省として、その規定をうそにならないように実行するために、どういうふうな御努力をなさっておられるか、それをひとつ伺います。
  279. 近藤隆之

    ○近藤説明員 ただいまの保育所の問題は、同じく地方財政法の十条の二の第五号に該当いたしますので、この十八条の適用があるわけでございます。この問題のみならず、国の補助金、負担金を伴う事業におきます超過負担の問題は、地方財政のほうでは非常に大きな問題として常に取り上げられているところでございまして、昭和四十二年及び四十三年には関係各省で合同調査いたしまして、その実態をつかみまして、四十三年から四十六年に至ります間に年次計画でその解消に努力してきたところでございますけれども、その後における物価の高騰その他の事情等がございまして、現実問題といたしましては、現在なおまだ超過負担があとを絶たないような状況でございます。そこで、自治省といたしましては、昭和四十七年度にはあらためてまた関係当局と合同調査をいたしましてその実態を調べたい、その結果に基づきまして適切な措置を講じたい、かように考えております。
  280. 安井吉典

    安井分科員 いまのような状況は、厚生省以外にもほかの省もあるわけですね。たとえば、文部省でも、小学校の補助単価は四十二年度は平米当たり二万六千百円、実際価格が二万九千五百円。ですから、物価が上がるわけですから単価も上げなければいかぬというので、四十三年度は補助単価は二万八千五百円、しかし、実際の単価は三万六千六百円という数字になっております。四十四年度は補助単価は二万九千五百円、しかし実勢のほうはまたさらに上がって三万七千六百円。四十五年度には補助単価は三万二千円に引き上げられた、しかし実際単価は四万七百円と、これも追い抜いていっている。四十六年度は補助単価は三万四千五百円になった、しかし実際単価は四万四千二百五十円、こういうふうになってきているわけであります。ですから、一応不十分ながらものぼってきている、こういう実態があるわけであります。しかし、厚生省の単価のほうは相変わらず据え置きか、あるいは上がってもほんのわずか、しかも地方財政法の十八条に違反をして算定基礎きわめて不十分、こういうふうな事態で、これはまさに地方財政法違反なんですよ、はっきり申し上げれば。第二十条の二の規定によれば、これに不満のある市町村長は意見書を内閣総理大臣に出すことができるという一種の保障規定もあるのです。現にこの保障規定で内閣総理大臣までいって閣議で決定されて、内閣総理大臣からは、今後はこういうことがないようにいたしますと、そういう一札が出ているという経過も実はあるのですよ。それにもかかわらず、相変わらず単価なしのまるたで、どんなやつでも補助金は二百五十万円、これしかありませんよ、こういう仕組みであるというところが私は最大の問題点で——大蔵省の主計官もおられますね。ですから、主計官にも大蔵大臣にかわって、ひとつ、なぜこうなっておるのかという、そういういきさつをこの機会にお聞かせをいただきたいと思います。
  281. 渡部周治

    ○渡部説明員 保育園建築補助単価の問題でございますが、これにつきましては、先ほど児童家庭局長より御答弁がございましたように、非常に数が多い設置要望にこたえますために、一応定員規模によりまして幾つかの型に分け、定型化した形で国庫補助をきめていくというような事情もございまして、実際の建築費とマッチしていない事例があるということはわれわれも承知しておるところでございます。この点につきましては、かねてから毎年度補助単価の引き上げというのを行なってきておるわけでございまして、四十六年度におきましてもかなりの改善をやったわけでございます。四十七年度につきましては、先ほどお話がございましたように、これは今後の実施計画の段階できまるわけでございますが、この点につきましては、御指摘の点もございますので、実施計画策定の段階で検討するようにいたしたいというふうに考えております。
  282. 安井吉典

    安井分科員 これは地方財政法第十八条の違反措置だということはお認めになりますね。
  283. 渡部周治

    ○渡部説明員 いわゆる超過負担問題という点につきましては、ただいま私が申し上げましたように、いわゆる実勢単価等から見ましてやや問題があるという点につきましてはわれわれも認識いたしております。
  284. 安井吉典

    安井分科員 その問題があるやつを何年来やっているのですよ。しかも、自治大臣と大蔵大臣の間では、その超過負担の解消措置をやりますという約束までして、その約束の期限はことしで終わりなんです。終わりの段階で、しかもこういうふうな実態になっておる。全国知事会が調べたところによると、超過負担率、単価差において、それから金額において、あわせて対象の差ですね、対象になるものとならぬものとがあって、その対象の差からも問題が起きている。それから単価の差からも問題が起きている。合わせまして六〇五・三%という数字が出ていますね。これは、ほかのやつは七〇%とか六〇%の超過負担率。これは大きいでしょうね。これは、ごみのやつにはまだいかないうちに時間が来てしまいそうでありますが、ごみ処理の超過負担率は一六七・六%、しかしこれはことしだいぶ改善されましたね。相当上がりましたから、まあ五〇%くらいの超過負担率じゃないでしょうか。局長、頭をかしげていますね。だいぶ近づいたということだけは認めますが、保育所のやつは六〇〇%というのはちょっと比類がないのですね、ほかのやつに比べても。ですから、これをひとつほんとうの正しい方向に直してもらわなければならぬと思いますし、そこで、先ほどお話のありました、希望が多いものだから単価が上げられませんというのは実は答えにならないのですよね。希望が多いなら個所数をふやせばいいじゃないですか。全体のワクをまず押えておいて、希望がたくさんありますから単価は上げられませんというのは、全く答えになりません。そういう答弁をいままでやってきてそれで渡ってきたものだから、こんな事態が起きているのだと思う。希望が多いなら多いだけ、それを予算の上に反映するというのが政治じゃないですか。どうですか、いままでお話をお聞きになっていて、厚生大臣、ひとつその点について……。
  285. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ごもっともに存じます。私の希望といたしましては、希望は全部かなえられるだけやはり補助金は見るべきである、そうして法律違反のないように補助金を見るべきである、そういう姿勢で臨まなければならない、かように思っております。ただ、保育所は、このわずかの補助金でも、補助金がなくてもやるというぐあいになっておって、これは超過負担として地方財政を圧迫しております。したがって、自治省とも相談をし、一緒になり、地方財政を圧迫しないでそして希望を満たすことができるように、まあこれは理想の形でございます。できるだけ理想のほうに持ってまいりたい、かように考えます。
  286. 安井吉典

    安井分科員 そこで、先ほどの御答弁の中でもう一つ私問題だというふうに感じております点は、社会福祉施設の全体的な予算のワクが四十七年度は百二十億円ですか、このとおりでしたね。その百二十億円の中で、まだ単価がきまっていないからこれでやりますというふうな御答弁でありますけれども、ここにも私問題があるんじゃないかと思うのですよ。つまりここで保育所の単価を相当大幅に、実勢単価でやるということになるとものすごく上がりますね。上がれば今度は老人のための施設や身体障害者のための施設のほうが縮んでしまう、こういうことになるわけですよ。ですからおととしは五十三億円、去年は八十三億円、明年度は百二十億円と大体まるたできめて、その中でこちらをうんととればこちらはへこんでしまう、そういうあり方自体に私は問題があるのではないかと思います。やはり基本的なかまえとしては、保育所の問題をどうするか、それへの国民的な要求、そういう需要を見込んで保育所の問題については予算化をしていく。老人福祉はおくれているわけですから、それへの対策というものが要る、精薄の問題はこうだというふうに、そういう国民のいろいろな期待を積み上げた中で予算というものはきめられるべきで、厚生省大蔵省の取引で去年は幾らだ、ことしはこれぐらいにしてやるよというふうな形でワクがきめられて、それからあと、希望が多いから保育所のほうは幾らで、単価はことしも泣いてくれというふうな形で問題が処理されてきたのではないか。私はそこが一番大きな問題ではないかと思います。やはり国民的な要求を積み上げて、そういう中で厚生省予算を組んでいく、社会福祉の予算を組んでいく。そういうかまえでなければならぬと思うのであります。ひとつ大臣のお考えをお伺いいたします。
  287. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 原則としてはおっしゃるとおりだと思います。だた社会福祉施設につきましては、五カ年間にたとえば身障者の施設はここまで、老人福祉施設はここまで、保育所はここまで、その総計をもって、それで五カ年間にやるのにはことしは総計何ぼ要るか。これは潜在需要を見ているわけなんです。ところで、現にそれに応じてやってくれるというものをにらみ合わせてやる必要もありますので、現在一括要求、そして地方の実際の要求を見て割り当てをきめていくというやり方をやっておるわけであります。     〔橋本(龍)主査代理退席、主査着席〕  そこで、補助金がなければ施設ができないかどうか。補助金がそうなくても地方の熱心なあれでやっていくか。これは地方財政の超過負担になりますけれども、そういうこともあんばいして現実の要求というものにマッチするようにやっていきたいというのが総括のとり方だ、かように御理解をいただきたいと思います。実際は現実にできるだけ合うようにやってまいりたい、かように考えます。
  288. 安井吉典

    安井分科員 もう時間がほんのわずかしかないので、ごみの問題はまた機会をあらためてということにしたいと思います。いま、ごみ戦争のまつ盛りの時期ですからね。少し問題点を掘り下げようと思って準備もしてきましたけれども、これはあと回しにしたいと思います。  きょうの保育所の例で、人間を大切にする厚生省予算の組み方における問題点を一つだけ私指摘をしたわけでありますが、国民のいろいろな期待や要望、それを積み上げたものが予算なんです。こういうものにするのがほんとうの政治ではないかと私は思うのです。今度の十一兆四千億をこえる膨大な予算も、ここにはこういう問題がある、こちらにはこういう問題がある、それを積み上げていって——しかし、これはまた膨大な要求になりますから幾らか削らなければいかぬでしょうけれども、そういう形で予算をつくれば、私は厚生省予算のウエートというものがぐうっと上がってこなければいかぬのじゃないか、社会保障や社会福祉の予算というものは相当ふえてこなければいかぬだろうと思う。だからそういうかまえでもって政府も臨んでいただきたいし、厚生省自体がそういう際に——これもやはり各省の間の生存競争ですからね。みずからそういう資料を十分そろえて、それにうちかつような姿勢というものをぜひお持ちをいただきたい。そのことだけ希望をして終わります。
  289. 田中正巳

    田中主査 西宮弘君。
  290. 西宮弘

    西宮分科員 私は厚生行政について若干お尋ねをいたしますが、他の省からもおいでを願っておりますので、その関係者のおられる水道の問題を先にお尋ねしたいと思います。ですから、その問題が終わりましたならば他省の関係の方は引き取っていただいてけっこうでございます。  私もここでずっと大体の皆さんの発言を聞いておりましたけれども、水道の問題についてあまり議論をする人もないようでありました。これは一般的に認識がまだ乏しいのではないかと思うのですが、一般の人に認識が乏しいのはやむを得ないとして、もし政府の中でもこの問題について認識に欠ける点があるというようなことであれば、これはまさに大問題だということになるわけでございます。厚生大臣、この水道の問題、いわゆる水資源の開発というふうな問題についてどういう認識を持っておられるか、まず承りたいと思います。
  291. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 水道に対する認識は国民の中にも非常に高まってまいった、かように私は考えております。また水道の水資源の問題これは非常に重要な問題でございまして、工業用水もさることながら、飲料用に供しまする水道用水の水源の確保はますます重大な問題になってきているという認識を持っております。
  292. 西宮弘

    西宮分科員 それでは、厚生大臣がそういう認識をお持ちだといたしますると、この前厚生省で取り上げられた水道開発整備五カ年計画ですか、あれはどうなってしまったのですか。
  293. 浦田純一

    浦田政府委員 現在、厚生省部内におきまして最終的な詰めを行なっておる段階でございまして、すでに一部では各省との折衝を開始いたしております。
  294. 西宮弘

    西宮分科員 じゃ、いままでは厚生省部内の意見が統一していなかった、現在では厚生省意見は統一をしたので他省と折衝中である、こういうことですか。
  295. 浦田純一

    浦田政府委員 そういうことでございます。
  296. 西宮弘

    西宮分科員 この五カ年計画を実施をするということになると、予算はどの程度に算定しておるわけですか。
  297. 浦田純一

    浦田政府委員 現在まだ試算の段階で、これは関係の省とも十分に打ち合わせをしなくてはならない問題でございますが、予算をどの程度にするかということは、まず最初には事業量としてどのぐらい見込むかということをもくろみまして、最終的にはその財源措置をどのように講じていくかということについての結論を得たいと思っておりますが、現在、やはり昭和五十年までにほぼ二兆円をこえる投資を——四十六年からでございますが、二兆円をこえる投資が必要ではなかろうかというふうに推算いたしております。
  298. 西宮弘

    西宮分科員 四十六年からというお話ですが、四十六年はすでに過ぎちゃったわけですね。そうすると、いま折衝中、計画中のものはどういう計画ですか。
  299. 浦田純一

    浦田政府委員 四十六年にスタートして五十年という数字を一応私どもは試算いたしまして、それで四十六年を初年度とする五カ年計画という構想を当初持っておったのでございますけれども、その後いろいろとさらに詰めなくてはならない問題等もございまして、四十六年度をスタートとすることは事実上不可能になったわけでございまして、四十七年からのスタートにするのが適当ではないか。その場合の事業費は幾らかということは、四十六年からの試算の例で考えてみますと、やはりこれは二兆円を上回るという見通しを持っております。
  300. 西宮弘

    西宮分科員 四十七年度からはスタートしたいというのだけれども、四十七年度はすでに目の前に来ているわけですね。いま計画ができてなければ、その四十七年度のスタートということも不可能なんではないですか。
  301. 浦田純一

    浦田政府委員 もともと将来の増大します水需要に対処して水道の必要な施設を建設していく、整備を進めていくということは、単に来年度あるいは再来年度といったように短い年月の先を見通してやることは適当でないわけでございまして、従来とて、十年あるいは二十年の先を想定しながら、まず具体化されます計画としては、今後四年、五年といったようなことでもって計画を進めてきたわけでございます。必ずしも何年度にスタートしなくてはならないということではなくて、むしろ将来、十年先、二十年先の水需要を見通しながら、それに対して具体的に計画をどう立てていくかということで対処しておるわけでございまして、私どもは、いままでは事務部内でそういった考えでおりましたけれども、これをひとつ、できれば政府部内の統一した考えとして公にいたしたいということで作業を進めておるわけでございます。決して形式でもって年度を動かしておるわけではございません。
  302. 西宮弘

    西宮分科員 大臣お尋ねをいたしますが、厚生省の中に、現在の環境衛生局の率の水道課というのを格上げといいますか、そういう構想があったというふうに聞いておるのですが、その点はどうなりましたか。
  303. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 四十七年度予算におきましても、これは実現をいたしたいと思って努力をいたしたわけでございますが、いろいろな関係から本年は見送らざるを得ないという残念なことになっておるわけでございます。
  304. 西宮弘

    西宮分科員 私は、その辺に基本的な問題があるんじゃないかと思うのですよ。ですから、冒頭に、大臣は水道問題についてどういう認識を持つかということをお尋ねをして、非常に重大だと考えておるという答弁をいただいたのでありまするけれども、いま大臣お聞きのとおり、いわゆる五カ年計画なるものも四十六年からやるのが今度は四十七年にやりたいというのだけれども、もういまできていなければ四十七年には実施できないわけですよ。そういうことで、一体いつから具体的に手がつけられるのか、そういう見通しもほとんど全く立っていない。その機構の問題にしても、いま大臣御答弁のとおり。私は、あえて局長の怠慢というような意味でそういうことを責めようとは少しも考えてないのです。なぜならば、環境衛生局なるものは元来が読んで字のような、いわゆる環境衛生が本来の任務なんでありますから、たとえば公衆浴場、理容所、美容所等多数人の集合する場所の衛生に関すること、旅館業法を施行すること、環境衛生金融公庫の監督、環境衛生関係営業の運営の適正化に関すること、建築物における衛生的環境の確保に関すること、墓地、埋葬、火葬等に関する問題、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止すること、販売の用に供する食品、添加物、器具または容器包装の取り締まりを行なうこと、その他等々、いわゆる環境衛生局の本来の任務はこういう点にあるわけですよ。  ですから私は、水道についても水質の調査といったようなこと、水質の検査とか取り締まりとか、こういうことには環境衛生局はきわめて適当だと思うのです。おそらく水道の仕事が始まった当初は、それで間に合っておったと思うのですよ。しかし、今日水道の普及率も国民の八〇%をこえて、八千万をこえる人間がこの水を飲んでおるわけです。まさに八千万の生命をささえている重大問題だ、こういうことになるわけですね。そういうときに、いま申し上げたような本来の任務とはかなり質の違った——いま私が読み上げた中に「水道に関すること」というのが一項目入っておるだけです。いわば間借りをしたようなかっこうで「水道に関すること」というのが一項目入っておる。こういうことでは、今日のように水道問題が大きな問題になったときには、なかなか担当できないんじゃないか。ですから、決していまの担当者を私は責めているわけでは毛頭ありません。ただ、国としてのその基本的な認識が足りないんではないかということを痛感せざるを得ない。  ついでに伺いますけれども、それじゃ環境衛生局の中の水道課というのは、どのくらいの規模でやっておられるのです。何人くらい……。
  305. 浦田純一

    浦田政府委員 定員といたしましては、四十六年度現在で十三名でございますが、四十七年度からはさらに二名増員される予定でございます。
  306. 西宮弘

    西宮分科員 別にいま、お答えからどうということでもありませんけれども、二名ふえても十五名というわけですね。いま申し上げたように、八千万の生命をささえている厚生省の水道行政が、わずか十五名の人でやられているというのでは、環境衛生局本来の任務である水質の検査とか、せいぜいそういうことで手いっぱいじゃないか、あるいはそれでも足りないんじゃないかと私は思う、今日このように普及してくると。もう東京、大阪などはほとんど一〇〇%に近いわけですよ。そういう際に、わずかその程度の規模でこういう問題をかかえているということは、少し荷が重過ぎるんじゃないかということを痛感するわけです。もう一ぺんだけ、これに取り組む大臣の姿勢を伺って次に進みたいと思います。
  307. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 環衛局の水道課の陣容のみならず、都道府県等の水道の陣容もきわめて貧弱でございます。これをどうしても強化をする必要がある、かように考えておりますので、これは政府全体の方針とも関係するわけでございますが、来年度は例外としてでもぜひ実現をいたしたい、かように考えておる次第であります。
  308. 西宮弘

    西宮分科員 来年実現をしたいと言われたのは、何をですか。
  309. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 機構の問題、水道部の設置の問題でございます。
  310. 西宮弘

    西宮分科員 機構の問題と、もう一つ私がお尋ねした五カ年計画、それはどうですか。
  311. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 五カ年計画は他の、ことに水源に関係いたしますから、建設、農林等とも重大な関係がございます。なるべく早くやってまいりたい。しかし、五カ年計画は、これは……(西宮分科員「来年からやりますか。」と呼ぶ)できてもできなくても、本年の予算も相当ふんばってもらったわけでございますので、初年度を本年度にするか来年度にするかということは別にいたしまして、いわゆる五カ年計画の先取りになるかどうかという問題みたいなことでございますけれども、五カ年の範囲内で完成をする目標を達成するように努力をしてまいりたい、かように考えます。
  312. 西宮弘

    西宮分科員 来年の予算はだいぶふんばったというお話だけれども、私はとうていそういう評価はできないと思う。その点はあとでまたお尋ねをいたします。  それから厚生省のみならず、都道府県の水道行政の人員も非常に弱いというお話だったけれども、自治体ではその市町村、つまり水道事業者になるわけですが、ここなどはもちろん、みんなたいへんな膨大な機構を持ってやっているわけですよ。そういうのに比べて、十三名が十五名になったという程度では、あまりにも私は水道をおざなりに扱っているのじゃないかということを言わざるを得ません。予算の問題等、あとでお尋ねをいたします。  広域化ということ、これが最近たいへんな重大な問題になりつつあるわけでありますが、自治体をまたがって大きく整備されなければならぬ、こういう点について、厚生省のこれに取り組む態度はいかがですか。
  313. 浦田純一

    浦田政府委員 広域化の問題につきましては、これはかねて先生のほうから御意見がございまして、厚生省としては今後ますます水源の開発の問題あるいは経営の合理化の問題等から、いままでの自治体ごとの水道の規模で建設あるいは経営していくという考えを進めまして、水道事業の広域化ということを促進させるために、広域水道の建設費に対しまして国庫補助を行なっているところでございます。  さらに現在、将来の水道のあり方といたしまして、生活環境審議会に諮問いたしまして、これらの具体的な未来へのアプローチにつきましても、その改善策等についてもおはかりしているところでございます。
  314. 西宮弘

    西宮分科員 具体的に、たとえば広域化の問題については各自治体に指導するとか勧告するとか、特に何か法的な基礎を設けて勧告をするというようなことになれば一番いいと思うのですが、そういう点はどうですか。
  315. 浦田純一

    浦田政府委員 現在、すでに事務当局の段階といたしましては、全国的ないわば青写真というものの素案は持っております。これらの実現化につきまして審議会に御意見をおはかりしておるわけでございますが、法制化ということも含めまして、現行の法律全般の見直しを含めまして、御審議願っておるところでございます。
  316. 西宮弘

    西宮分科員 さっきの五カ年計画が実施をされると、いま局長言われたような、そういう全国に何カ所かの広域水道区を設けていく、こういうことも実行されるであろうと思うのでありますが、私は、法制化を含めてというお話だったが、ぜひそういう根拠を設けてやってもらいたい。同時に、これはどうしても相当高率な補助を出してもらわないと、なかなか自治体はやれないと思うのですよ。非常に地方自治体における水道の負担というものは大きな負担になっていますから、相当思い切った助成策を講ずるということでなければできないと思うのです。たとえば四分の三の補助あるいは五分の四の補助といったような、相当思い切った高率の補助を必要とするというふうにわれわれは考えるのですが、その点はどうでしょう。
  317. 浦田純一

    浦田政府委員 本来水道はその経営体でもって公共性を確保しつつも独立採算制によって経営すべきものであるという、かなり有力な意見もございます。しかしながら、現実を踏まえまして、広域水道につきましての補助、あるいは水源開発につきましての補助制度というものをすでに確立いたしまして、補助率その他については、御指摘の点で問題があろうかと思いますけれども、すでにスタートしたわけでございます。さらに全般的に将来の水需要の増大も考慮しながら、経営が健全化していくように所要の財政措置を講ずるよう、関係各省とも十分協議してまいりたいと考えております。
  318. 西宮弘

    西宮分科員 広域的にその経営をするということになると、当然その中に含まれた各自治体によって水道の料金が違うというような問題も起こるだろうと思うのですね、できるだけこれを均一にするということが望ましいと思うのです。  自治省からおいでを願っておるので、財政局長の代理の立場で、そういう際における特別交付税というような問題についてどういうふうに自治省として考えるか、お答えいただきたい。
  319. 神崎治一郎

    ○神崎説明員 御指摘のように、水道料金につきましては、地域格差が非常に多い状況にあるわけでございます。したがいまして、水源を遠隔地に求めなければならないというような、いろいろな自然的な条件に基づきまして、高料金になるというような水道がありますので、このような料金格差の是正、かたがた料金の上昇を抑制するというような考え方に立ちまして、一般会計から水道会計に対する繰り入れを、高料金対策として地方財政計画に計上いたしておるわけでございます。その繰り入れをいたします場合には、一定の条件があるわけでございますが、一立米当たりの資本費が十二円以上、給水原価が四十五円以上、家庭用の料金が三十円以上、こういうような段階につきましては、資本費の十二円をこえる部分について繰り入れをいたしました。その一部について特別交付税による財源措置をいたしておる、こういうことでありますが、将来とも引き続き進めてまいりたい、かように考えております。
  320. 西宮弘

    西宮分科員 実際問題として非常に交付税が少なくて、現在行なわれておる水道料金については、自治体によってはたいへんなアンバランスがあるわけです。一と十くらいの違いがあるというのは珍しくないという状況です。ですから、交付税でカバーするというのであれば、思い切った改善をしなければ、とうてい問題は解決をしないと思います。  しかし時間がありませんからこの程度にして、建設省からおいでを願っておるので、今後の水資源の開発という問題は、私は、国家的な仕事だ、一自治体にまかしておってはとうてい解決できない問題だというふうに考えておるのですが、それに対する基本的な態度をできるだけ簡単にひとつお答え願います。
  321. 宮崎明

    ○宮崎説明員 水資源の開発につきましては、河川管理者という立場から、従来ともかなり強力に力を入れてきております。現在、特に一級水系につきましては、そのうちの重要地域に対する水資源の開発、供給ということにつきまして、水源開発、大体多目的ダムあるいは河口せき、いろいろやっておるわけでございますが、国の直轄事業あるいは水公団事業で手当てをいたしているわけであります。  それから地域的な水需要といいますか、あるいは二級河川の開発につきましては、補助事業ということで、各地方自治体にそういう水源開発をお願いしているというのが実情であります。  なお、特に水需給の逼迫しております重要地域ですね、京浜とか阪神あるいは中京、こういうような地域の重要水系につきましては、水資源開発促進法による水系指定をいたしまして、広域的な水の供給ということを考えておるわけでございます。今後ともそういうことで必要に応じて水系指定を拡大しまして、対処していきたいというふうに考えております。
  322. 西宮弘

    西宮分科員 この問題、たいへん重大な問題でありますから、いわゆる水資源開発の担当官庁は経済企画庁ですから、私は明日企画庁の場合にあらためてこの問題を御質問したいと思っておるので、その程度にとどめておきたいと思います。  次は、補助金の問題。さっき大臣はふんばったというお話でしたけれども、この水道事業者立場から見ると、実は四十七年度予算に三百四十六億組んでほしいという要望をしておったわけであります。それに対して厚生省大蔵省に要求したのは百三十九億だと、それを見て実は関係の団体はたいへんがっかりしてしまったわけです。それについて計上された予算は百億だ、こういうことでわれわれは非常にその点残念なんであります。これは今後の努力に期待するということで、一そうがんばってもらいたいと思います。  起債についてお尋ねをいたします。起債がたいへんに建設債が、建設利息が現在の経営の重圧になっているということは、大臣どもおそらく、数字は別にしても、そういう想像は十分につくと思うのでありますけれども、これは何しろ建設費がたいへんな金になるものですから、それに対する利息の重圧というのが、これは非常にひどいわけです。私もある団体の状況を詳しく見ておりますが、これなどは三割五分くらいになる、現在の事業費の三割五分くらいが利息になっているわけです。しかも、それは年々歳々ふえているという、こういう状況であるわけであります。  そこで、いろいろ要望したいことはあるのですけれども、やろうと思えばやれると思うので、建設利息を起債の対象にするという点については、どうですか、自治省簡単に答えてください。
  323. 神崎治一郎

    ○神崎説明員 建設利息の取り扱いにつきましては、できる限りこれを起債の対象になり得るようにいま努力をしておるわけであります。大規模な事業につきましては、一部これを取り上げておるというような状況にございます。
  324. 西宮弘

    西宮分科員 起債の問題は利率の問題と償還期間の問題とあることはだれも御承知のとおりであると思うのですが、せめて政府債並みの償還年限にするとか、政府債をふやしてもらえば一番いいのだけれども、これはいま答えを要求しても、にわかに答えも出ないかもしれません。もし答えが具体的に出るならお答え願いたい。  もう一つ、用地取得に使った金ですな、これは減価償却の対象にもならぬというふうなことで、非常に困るわけですよ。そこで、これに対しては特に償還期間の長い起債が必要だということがあり得るわけだけれども、その点はどうですか。
  325. 神崎治一郎

    ○神崎説明員 御指摘のように、最近水道施設整備拡充が急速に進んでおります。したがいまして、御指摘のような資本費が非常に増高をいたしておるわけでございます。特に水道事業の経営の健全化、こういうことをはかるためには起業債の条件の緩和をはかることがどうしても必要でございますので、今日までその努力をいたしてきたわけでございますが、御案内の公営企業金融公庫資金につきましては、四十一年度から政府出資なりあるいは利子補給金ということの導入によりまして、基準金利からこれを七%まで引き下げて、さらに四十五年度から公営競技納付金によります健全化基金を設けまして、今日六・七%にまで引き下げをしてまいったところでございますけれども、今後とも引き続いて水道事業の経営の健全化をはかるために起債条件の緩和につとめてまいりたいと考えております。  なお、用地の取得についての償還期限の延長の問題でございますが、これにつきましては、水道施設の中には導水施設なり、あるいは御指摘のような用地の問題なり、配水管の問題なり、いろいろ耐用年数を異にしておるものが相当あるわけでございますので、私どもといたしましては、でき得る限り全体を通じた耐用年数に見合うような償還期限にまで持っていきたい、これが一つ考え方でございますけれども、なかなか急速にできないような状況にはありますけれども、逐年その充実をはかってまいってきておるところでございます。御指摘の点をも踏まえ、今後も一そうつとめてまいりたい、かように考えております。
  326. 西宮弘

    西宮分科員 大蔵省お尋ねしますが、国有地を無償で譲渡する——下水道の場合にはそれがあるわけですね。上水道についてそれが行なえないのかという点なんですが、どうですか。
  327. 田中正巳

    田中主査 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  328. 田中正巳

    田中主査 速記をとって。
  329. 西宮弘

    西宮分科員 それじゃ、それはけっこうです。——大臣、ひとつ覚えていてください。下水道の場合には国有地を無償で譲渡する、自治体に渡すというか、そういうのがあるわけですから、水道についてもぜひ実行してもらいたいと思います。  それでは、料金格差の問題ですね。さっき特別交付税でできるだけ処置をするという話もあったのですが、もう一つ大臣に強く認識をしてもらって、いま時間がありませんから答弁を求めませんけれども、工業用水、私は実は数年前には全くこの問題専門に、工業用水と上水道とのアンバランス、アロケーションの問題ですね、つまり工業用水のほうは末端単価を押えているわけですね。そうしてそれから逆算していってアロケーション、工業用水の負担をきめるわけですね。そうすると、残った分は全部上水道でかぶらなくちゃならぬ。これは全く理屈にも何にも合わない。つまり産業振興という必要からそうしたのだという政府の説明であったわけですけれども、私ずいぶんその問題を詰めて、そのときは一応その問題の解決になったので、その時点ではまあ一応われわれの主張が通ったのでやめたのですけれども、やはりそういうシステムが変わっていないということで、これは非常に大問題です。時間がありませんから、答弁要りませんが、ぜひ認識をしておいてもらいたいと思います。この次はこの問題専門にやりたいと思います。  ついては、最後に、水道法という法律がずいぶん古くなったわけですが、改正する意図がありますか。
  330. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいま水道関係の審議会で検討をしてもらっておりますので、その結果を見て決定をしたいと思います。
  331. 西宮弘

    西宮分科員 それでは水道関係は問題がたくさんまだありますけれども、時間がありませんので、これで終わることにいたします。  次は一般福祉関係の問題でありますが、何からお尋ねをしていいか——ことしは福祉予算ということで、いろいろ予算面で前進をしたという点もたくさんあります。われわれもその点はそれとして十分評価をいたします。ILO条約百二号条約、あるいは百二十八号、百三十号、そういう条約は従来は日本がレベルが低いために批准できない、そういう状況にあったわけですが、現在の見通しはどうですか。
  332. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいまあげられましたILO条約の批准の問題は、私のほうでも非常に関心を持っておりますが、まだ部分的に若干批准しがたいというようなところもございます。部分的には非常に進んでいるところもございますので、したがって、そういう点をさらに充実をした上で批准をしたい、かように考えております。
  333. 西宮弘

    西宮分科員 ぜひそのレベルにまで到達をしてもらいたいと思います。  今度、たとえば厚生省の目玉商品といわれるのは老人対策、つまり老齢福祉年金であるとか、あるいは老人医療対策であるとか、あるいはまた施設職員の待遇改善とか、ないしは施設整備についての改善とか、そういう点だと思います。特に昨年は職員の待遇改善の問題について私はだいぶ質問をしたわけですが、そういう点が次第に改善の方向に向かいつつあることはけっこうだと思います。たとえば民間の施設との格差是正というねらいで四・四%の引き上げをしておりますね。これは局長でけっこうですが、あの中で三%は格差是正、それから一・四%は定期昇給分だ、こういうふうに解説をされておりますけれども、そうすると、この定昇部分はこれから毎年この程度に組んでいくわけですか。
  334. 加藤威二

    ○加藤政府委員 来年度施設職員処遇改善問題については、私ども、特に民間施設職員処遇が公立の施設よりも悪いという、その公私の格差是正というものに重点を置いて予算を組んだわけでございますが、先生指摘の四・四%というのは、その格差是正ということで予算が入っているわけでございます。これは予算の経過で、定期昇給の問題とか、そういう問題はいろいろ出ました。ことに施設職員の間では、定期昇給財源をぜひほしいという要望が非常に強かったわけでございますが、結果的には、大蔵省との最終的な合意としては、特に定期昇給ということで大蔵省はつけるわけではない、しかし、やろうと思えば定期昇給ができるという含みで、定期昇給という名目ではなしに、格差是正ということで一括して四・四%という予算がついたわけでございます。
  335. 西宮弘

    西宮分科員 それでは、経営者のほうでそれを勘案しながらやっていけばよろしい、こういうことになるんだろうと思いますから、それはそれとして、この職員の労働時間ですね。九時間を単位にして計算している、この点は非常に不合理だと思うのです。私は、労働基準法を完全に守るということにすると、いまの倍の職員が必要だというのを、ある具体例を一つあげて検討したわけですけれども、九時間の労働時間というのは依然として問題だと私は思うのだが、それはどうですか。その基準の改定はできませんか。
  336. 加藤威二

    ○加藤政府委員 確かに施設職員処遇改善の問題は、一つは給与の問題、もう一つは勤務条件だろうと思います。そういう意味で、あまり過重な勤務状態というものは、ひいては収容者に対するはね返りというものが出てくるわけでございますので、そういう意味で、私どもといたしましても、施設職員増員ということに努力をいたしております。それで、これは四十六年度、七年度二カ年計画ぐらい施設職員増員ということにつとめております。今後もそういった施設職員増員につとめることによって、勤務時間についてもなるべく合理的なものにしてまいりたいと考えております。
  337. 西宮弘

    西宮分科員 冒頭に申し上げましたように、私は職員の待遇改善あるいはまた老人対策等にことし一応の前進をしたということを非常に評価しているわけですが、問題がたくさん残っているので、ぜひさらにがんばってもらいたいと思います。  それから、ついでながら申し上げるのだが、老人の医療対策等にいたしましても、私は先年ソ連に参りまして、あそこに老人が非常に健康でおるという実例を見て、実は驚いたわけです。ちょうど私が参りましたときも、たとえば百歳以上という人が男子五千四百三十二人、女子一万六千二百六十九人、合計二万一千七百一人、こういう人が現に生存しているという統計を見て驚いたわけですが、私は決してソ連の医学が技術的に水準が高いということではないと思うのですよ。むしろそういう専門分野から言ったら日本のほうが高いのじゃないか。これは専門家意見どもいろいろ聞きましたけれども、私もそう思うのです。にもかかわらず、心配なしに医者にかかれる。日本だと、もう少し入院していたいと思っても、うちが心配で途中で帰ってきてしまうということを余儀なくされるわけですね。それに比べて、安心して医者にかかれるということで徹底して医療ができる。こういうことでいまのような結果があらわれているのだと思うのですね。ぜひ、さらにさらに前進をしてもらいたいと思います。  次に、老齢福祉年金にしても、あるいは児童扶養手当、児童手当などにいたしましても、所得制限があるわけですね。そして、これまた若干改善をされたわけです。ただ、児童手当は、他の手当、年金等に比べると、所得制限が若干きついわけですけれども、これはどういうわけですか。局長でもいいです。
  338. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 児童手当の所得制限は、四十六年度におきましては、扶養家族五人の場合、前年の収入が大体二百万でございまして、福祉年金あるいは児童扶養手当等の本人の所得制限よりは高くなっております。その格差は来年度におきましてもそのまま維持する予定でございます。
  339. 西宮弘

    西宮分科員 厚生省でもこの所得制限を撤廃しよう、こういう案を出されたようですけれども、結局大蔵省を通らなかったということでしょうが、これは何とか撤廃できないものかどうか。というのは、実際問題として、扶養義務者の所得を調査するというのが、地方の自治体としてはたいへんな仕事になるわけですね。たいへんな負担になるわけですよ。しかも、それだけならばまだやむを得ないとしても、虚偽をすすめるという結果になる懸念があるわけです。本人の所得ならばどっちにころんでもつかまえるのは簡単だと思うのですが、扶養義務者の所得を押えるということになると、なるべくこの特典にあずかりたいというので、いろいろ工作をする、こういう傾向があるのではないかというふうに憂慮をするわけです。いわばつくりごとをするという結果になるおそれがあるので、何とか所得制限は撤廃してもらいたいものだと思うのですが、大臣いかがでしょうか。
  340. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 おっしゃいますように、老人の無料医療、公費負担の問題、それから福祉年金の問題、これに対しての扶養義務者の所得制限は、私のほうはできるだけ撤廃するように、その方向でさらに努力をいたしてまいりたい、かように思います。本人の所得制限は、これは額の問題でありますが、これはやむを得ないと思います。
  341. 西宮弘

    西宮分科員 わかりました。ぜひその扶養義務者の撤廃を考えていただきたいと思います。  それから、さっき申し上げた厚生省の目玉商品というのがあって、これは厚生大臣ども大いに誇らかに宣伝しておられると思うのですけれども、それはそれでけっこうですが、ただ目玉商品というやつは、たとえばスーパーなんかでも目玉商品を置くと、その反面、今度は逆に高くするやつがあるわけですよ。厚生省もその目玉商品に力を入れた結果、その逆のものが出てきておる。開差是正というきのうもだいぶ議論をされた方がありますが、あの問題なんかも去年からやったのだ。開差是正。私はその一つではないかと思う。それで私はこれは非常に酷だと思うのですよ。この原因は、従来の基準があまりにも実情を無視して非常に過酷であったというところに原因があると思うのです。  私は、私の地元のある施設を例にとっていろいろ調べてみたのですけれども、養護施設の児童一人当たりの床面積は二・四七平方メートルということになっているのです。一坪よりもはるかに少ないわけです。それで一切がっさいまかなうわけですから非常に窮屈です。したがって、私の地元のある施設でありますが、これなどは専門家に諮問をしていろいろ検討してもらったわけです。そしてマスタープランをつくったのですが、それでつくってみるとちょうど倍になる、倍必要だということになったわけです。そうなると、つまり大臣、たとえば従来の基準だと百名が定員だということになっておったやつが、いま言うように基準をみずから改定すると五十人しか入らないということになるわけですね。したがって五十人収容する、こういうことになると今度は、それで定数を改定しろということを中央から言われるわけです。そうなると、その現在の職員も減らせとかいろいろな問題がもちろん出てくるわけです。だから私は、いまの開差是正という問題の根拠は、いままでの基準がそもそも非常に不合理であったのだという点にあると思うのです。  それからもう一つは、施設に児童を送ってくる児童相談所ですね。これなどが非常に数が少ない。全国で百四十九カ所でありますが、A級は二十二カ所、B級が三十八カ所、こういうことで児童相談所等が十分な機能を果たしていない、こういうところに原因があるのだろうと思う。にもかかわらず、それによって開差是正を命ずる、こういうことはたいへんな無理を生ずると思うのですよ。その点はどうですか。
  342. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 開差制度につきましては、午前中も他の議員から実情いろいろとお話を承りました。これはできるだけ実情を勘案をいたしまして改むべきは改めてまいりたい、かように思います。  さらに、それに関係のあるという意味で、施設の基準といいますか児童一人当たりの面積等にお触れになられましたが、これらも、私は、時代の要請に従っていままでの基準はもっと広めなければならないのじゃないか、かように考えております。前向きに検討いたしてまいりたいと思います。
  343. 西宮弘

    西宮分科員 児童福祉の問題で少しお尋ねをしたいと思いますが、さっきもわが党の委員から保育所の問題でだいぶお尋ねがありましたが、保育所の整備計画というようなのはお持ちなんですか。
  344. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 保育所の整備計画につきましては、大体現在の保育所が約一万五千カ所、定員が百二十七万人でございます。それで昭和五十年末を目途といたしまして、正規の認可保育所の定員を百六十二万五千程度にいたしたい、これは実態調査と、その後の婦人勤労者の増加を勘案いたしました数字でございます。そういう目標をもって、四十六年度、本年度から五カ年計画をもって整備を進めております。
  345. 西宮弘

    西宮分科員 たとえば事業内保育所とか無認可の保育所、これらにもいろいろ問題があると思いますが、両方一括して何かお考えがあったら聞かしてください。
  346. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 企業内の保育所、事業所集団保育施設などといっておりますが、これは企業の中で働いておられます勤労婦人の子供さんを保育するという目的をもって、主として事業主が——ほかの主体がつくっておる場合もございますが、主として事業主が設置しておるものと理解いたしてお珍ます。私ども承知しておりますのは、大体四百五十カ所ぐらいが全国で設置されておると考えております。  保育の本質から申しますと、やはり地域におきます保育所を市町村、その他の社会福祉法人等で設置いたしまして、そこで市町村長が真に保育が必要と認められる子供を措置するという形で、公費の助成もいたしまして、正規の資格を持っておる保母さんが保育するというのが理想でございますので、そういう前提でいま申し上げた整備計画を進めておるわけでございますが、やはりいろいろな就業の態様等から考えまして、現在におきましては、そういった事業内の保育所につきましても、その意義はあるものと考えております。したがって、そういった事業内保育所につきましては私ども、労働省とも緊密に連絡いたしまして、できるだけその中でいい保育が行なわれますように指導、助成をいたしたい、そういう態度で臨んでおります。  それから、もう一つの御質問の無認可保育所につきましては、これは先生指摘のように、各地域におきまして自然発生的と申しますか、残念ながら認可保育所がなお不足しておりますような事情もございまして、多少小規模の、認可する基準に至らない保育所ができておるわけでございます。この点は、子供の保育に欠ける点がございますし、非常に児童の福祉の上から憂慮すべきことでございますので、そういった無認可保育所につきましても、私どもの態度といたしましては、一つはできるだけ保育所の少ない地域を優先いたしまして、正規の保育所を整備するということと同時に、そういう無認可保育所につきましても、できるだけ融資等の助成をいたしまして、認可保育所になり得るような整備を進めていくということと並行いたしまして、その解消をはかっておりまして、すでに百カ所余りの無認可保育所が認可保育所に昇格いたしております。なおこの対策を進めていきたいと考えております。
  347. 西宮弘

    西宮分科員 夜間働く母親も相当あるわけです。これに対する夜間の保育所というのはどういう考えですか。
  348. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 いま御質問の夜間の保育も含めまして、婦人の就労が非常に多様化いたしました現在、保育につきましても多様化が望まれておる段階でございますが、私ども基本的な考え方といたしましては、やはり特に小さい子供はできるだけ母親の手元で保育されることが一番理想でございまして、そういう意味では、今度労働省から提案されております勤労婦人福祉法案の中に含まれておりますような、事業における育児休業制度というようなものも勘案いたしまして、そういう措置をとってまいりたいと考えております。  なお、就業の実態、特に看護婦さんなどの場合にはどうしても夜間が必要な場合があるわけでございまして、そういった意味では、医務局のほうで考えられておりますような、そういった特殊な業態を持ちます勤労婦人のための専用の夜間保育所というようなこともある程度は必要になってくる、そういうこともそれぞれの所管のところと相談いたしまして、保育に欠けることのないように指導してまいりたいと思います。
  349. 西宮弘

    西宮分科員 当然に関連して起こる問題は保母の確保という問題ですけれども、なかなかこれが容易ではないということですが、児童福祉法施行令の十三条ですか、これに資格が定められておりますね。その資格に該当する保母を養成するということはなかなかたいへんなことだと思うのだが、これまたさっきの保育所の年次計画のようなものが必要だというのと相並行して当然必要が起こるわけですが、その点はどうですか。
  350. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 現在保母資格を取得いたします方法といたしまして、厚生大臣の指定する保母養成施設、これは短大の場合もございますし正規の大学の場合もございますが、それを含めて養成施設を卒業いたします方法と、都道府県知事の行ないます試験に合格する方法と二つの道がございます。  現在働いております保母さんにつきましては、半数以上が試験合格者でございまして、一〇%あまりの無資格の保母がいるという状態になっております。私どもの希望といたしましては、同じ資格のある保母さんの中でも、できるだけ養成施設を卒業した教養のある保母さんに保育をやっていただくことが望ましいわけでございまして、四十七年度予算的な手当てといたしましては、一つは保母の就学資金に対する貸し付け額の増大、一つは公立の保母養成施設に対する補助金の増額、そういったような方法によりまして、そういった養成施設卒業の保母さんをできるだけ確保したい、またそれと並行いたしまして、試験制度につきましても、これは現在の実情から申しましてやはり必要なことはいなめないわけでございますが、その試験合格の保母さんの資質をできるだけ高めたいということで、児童福祉審議会の御意見をもいただきまして、その試験の内容あるいは試験合格後の研修等につきまして、今後漸進的に手当てを進めてまいりたい、そういうふうに考えております。
  351. 西宮弘

    西宮分科員 児童問題の最後に大臣に申し上げて御所見だけ聞いておきたいと思うのですけれども施設に収容された子供ですね、きのうも高等学校の就学の問題が出ておりましたけれども、高等学校がほとんど義務教育に準ずるようになった今日、当然この問題も考えてもらわなくちゃならぬ問題だと思うのです。高等学校教育が義務ではないということだけで簡単に割り切れる問題ではないと思う。実情は、高等学校に入る子供が非常に少ない、そしてまたせっかく入ってもわずか一年で退学をしてしまったというのが、これは去年の全養連の調査でありますが、一割以上あるわけです。おそらく経済的な理由だと思いますが、そういうのがある。それからさらに、高等学校を出ないで就職した子供の就職先が、一般の中学校の卒業者に比べるとたいへんに零細なところにつとめているわけです。約半数が二十九人未満という事業規模、そういう非常に零細なところにつとめているという現実。それからそれを一年後に見ると、さらにまた一般の人に比べてそういう零細なところに、せっかくいいところへ行った者がまた零細なところに落ちてくる、そういう状況が一般の人に比べてよけい多いわけです。こういう点を見ると、非常に問題があるんじゃないかと思う。その辺についての所見を聞きたいと思います。  最後に生活協同組合の問題をぜひお尋ねをしたいと思っておったのですが、時間がなくなりました。したがって、これはたいへん竹に木をついだような問題だけれども、生協問題について、つまり物価対策としての生協問題、これもひとつ大臣の決意を一緒にお答え願いたいと思います。
  352. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 施設の子供の高等学校への進学についての御意見、私はもっともに思います。最近の高等学校の進学率を見まして、施設におるために学資がないというようなことから行けないということのないようにいたしたい、これは前に申し上げたとおりであります。  また卒業生の就職につきましても、親のない子供の就職のことでございますから、これは労働省とも相談をいたしまして、また施設それ自身も親がわりになって将来もなにをしてやるという面もございます。それらと相まって進めてまいりたい、かように思います。  それから生協の問題でございますが、ただいま、いま限られた区域をもう少し広めたらどうであろうかということで前向きに関係方面と折衝をいたしております。折衝が済みましたら、提案をいたしたいと思います。
  353. 田中正巳

  354. 中野明

    中野(明)分科員 三点質問をしたいと思います。  第一点は、船員寮の問題でございます。四十五年の予算分科会で私指摘をいたしました遠洋漁船の乗り組み員並びにその家族のための宿泊施設、これが肝心の東京になかったわけであります。ぜひ東京に設置ということで強く要望しましたが、本年の予算でやっと認められたようでございますが、その予算額はどうなっておりましょうか。
  355. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 東京の宿泊施設につきましては、現在東京都でつくっておりますものが二カ所ございまして、さらに現在一カ所新築中で、ことしの七月ぐらいに開所できる見通しでございます。  東京港に最近出入いたします船舶が非常に多くなりまして、宿泊施設に対する要望が非常に強くなりましたので、私どもといたしましてもぜひ東京に、東京港のみならず一種の全国的なセンターになるような施設を考えたい、もちろん宿泊施設を含めてでございますけれども、そういうことで四十七年度予算に一応敷地を確保いたします予算を計上いたしたわけでございます。     〔主査退席、橋本(龍)主査代理着席〕 これからどこに適地を求めるか、あるいはどういうものをつくるかということは関係者と相談しながらきめてまいりたいと思うわけでございます。  予算につきましては、いろいろ調べまして大体必要な額は計上できたというふうに考えておりますけれども、これから所有者のほうと折衝をいたしますので、まだはっきり幾らになるということは確定をいたしておりませんけれども、福祉施設全体の費用が十九億でございまして、その中に必要な額は計上したというように私どもとしては考えております。
  356. 中野明

    中野(明)分科員 いまのお話ですと、十九億の福祉予算の中でそれに必要なだけとおっしゃっているのは、概略どの程度予定しておられるんでしょうか。
  357. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 これから折衝いたしますので、はっきりと申し上げる段階にまだ至っておりませんですけれども、いまちょうど、実は敷地は、東京都が東京港に現在港湾計画の一環として埋め立てているわけでございますが、その埋め立て地の適地を入手いたしまして建設をしたいというように考えておるわけです。いまの買い入れ価格その他は、現在東京都のほうと折衝いたしておるわけでございますけれども、そういうことでまだ現在折衝の過程でございますので、はっきりした額というのはまだ固まっておりませんけれども、大体六、七億くらいの財源は確保しているつもりでございます。
  358. 中野明

    中野(明)分科員 先ほどもちょっと申し述べましたように、海外でも何カ所かあるようでありますが、全国でこの種の施設が六十カ所近くございます。最近特に東京への入港が非常に多くなってまいりましたが、こういうところに施設がなくて、遠洋漁船員の家族の人たちが東京に来て非常に不自由しておる。そういうことについて東京都は、先ほどお話がありましたように、すでに二カ所ないし現在一カ所建設を進めている。当然私は国のほうでやるべきであるというふうにかねがね主張しておりましたのですが、いまのお話ですと、しかるべきところ、いま大体見通しを立てて、港湾の埋め立て地ですか、そこら辺に土地を確保してというところまで来たようであります。これは非常に喜ばしいことだと思うわけでありますけれども、ただいま申し述べましたように、そういうふうな実情でありますので、これは一日も早くそのもの自体を完成していただかないと、東京都がこんなにまで熱心にやっているのに、国のほうでもっともっと力を入れるべきだという私どもの考えです。いまのお話ですと、センター的なものと言われるんですから、非常にそれはけっこうな構想だろうと思いますが、大体いま考えておられる施設の内容ですか、構想程度でしょうから具体的なことは無理かもしれませんが、大体どのようなものを考えておられるのか。
  359. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 私どもは、福祉施設の問題につきましては大体船主側の方、それから船に乗るほうの船員の方、こういうような人たちとよく相談をいたしましてきめていくしきたりになっております。したがって、いわゆる東京地区につくりますセンターにつきましても、どういう内容にしていくかは、そういった懇談会を持っておりますので、関係者と詰めてまいりたいと思いますが、ただいま考えておりますのは、たとえば宿泊施設でございますとか、あるいは集会場でございますとか、あるいはプールその他体育施設でありますとか、そういった、いわゆる船に乗る人が陸上でできるだけ安心して泊まれると同時に、せっかくの上陸の機会を有効に使えるようにという、そういったような総合的な施設にしたいというように考えております。
  360. 中野明

    中野(明)分科員 そういたしまして、もう一点確認をしておきたいのですが、大体ここまでまいりますと、いろいろ相談をされることも必要でございましょうけれども、完成のめどをあと何年くらいに置いておられるのか、そこのところを……。
  361. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 その問題はこれからの予算関係になりますので、まだはっきり何年計画というものについてはさまっておりませんけれども、私どもの希望といたしましては二、三年くらいでつくりまして、オープンしたいというように考えております。
  362. 中野明

    中野(明)分科員 いまさら私が申し上げるまでもなく、日本の国の漁業というのが世界的にも非常に進出をしておりまして、いままで焼津とかそういう方面に入港もかなりひんぱんになってまいりましたが、何といっても東京が圧倒的に多いわけですので、そういう点を十分考慮されて、ただいま希望的な方向で二、三年とおっしゃいましたが、ぜひこの線で実現をするように努力をしていただきたい、このことを要望いたしましてこの問題は終わりたいと思います。  次に、児童手当のことでお尋ねいたします。  児童手当のことにつきましては、各委員の方からもたびたび御質問が出ているようでございますが、長年の懸案でありました児童手当が本年から実施されたということ、これは非常に私どももけっこうなことだと喜んでおります。しかしながら内容については、まだまだこれから改善をしていっていただかなければならないところが間々ありまして、先ほど大臣もそのような御答弁をなさっておりましたが、私、児童手当の実施にあたりまして、ぜひ今後の改善の中で強く検討していただきたいと思うことがあるわけであります。  これは御承知のとおり、国庫負担と地方自治体の負担と事業者の負担と、このように原資が、負担の割合が三つに分かれております。この点最初に、四十七年度予算で、国庫負担と自治体と事業者の負担の割合、数字がわかっておりましたら……。
  363. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 四十七年度予算におきましては、対象になります児童数が約九十四万人、支給総額が三百三十七億円、国庫負担が百五十三億円でございますから、事業主拠出金は八十一億円でございます。
  364. 中野明

    中野(明)分科員 この児童手当の制度ができて、この目的に児童手当の制度は「児童を養育している者に児童手当を支給することにより、家庭における生活の安定に寄与するとともに、次代の社会をになう児童の健全な育成及び資質の向上に資することを目的とする。」このようにうたわれております。ところが私申し上げたいことは、この児童手当に企業負担、これがある関係で一部の企業者がこの児童手当ができたことのために家族手当を支給することをやめた、こういうふうな事例が出てきているわけであります。きょうは労働省の方も来ていただいていると思いますが、この家族手当の目的と児童手当の目的は全然趣旨が違うように私どもも理解をしておるわけでありますが、その点最初に……。
  365. 橋爪達

    ○橋爪説明員 先生おっしゃいましたように、児童手当制度は、これは社会保障制度の一環として創設されたものでございます。企業におきます家族手当、これは賃金ということでございまして、これは性格はおのずから違っておるということでございます。
  366. 中野明

    中野(明)分科員 そのように性格の違うにもかかわらず、これは児童手当の支給とともに事業者負担があるからということで肩がわりをするためでしょう。家族手当は減らしていく事業者がある、そういうことを大臣も間接的にお聞きになっているのじゃないかと私も思いますが、こういうことについて労働省としては——このことについて民間の給与体系というのですか、給与というものは労使が対等の立場できめられる問題でありますが、この児童手当にからませるのは、私、非常におかしいように思いますが、労働省として、今後これについてはどういうふうに指導というのですか、勧告というのか——勧告ということばはどうかと思いますが、考えておられるか、見解を聞きたいのです。
  367. 橋爪達

    ○橋爪説明員 いま先生おっしゃいましたように、賃金の問題につきましては、労働省としましては、従来から賃金の最低基準あるいはその支払いの保護というような面につきまして、労働基準法あるいは最低賃金法で規制しておりますが、その賃金の中身あるいは賃金体系のような問題につきましては、これは労使の自主的な話し合いによりましてきめていただく、これが本来の筋であるということで、指導はいたしておりませんし、この児童手当の問題につきましても、同様な態度で労使の自主的な話し合いによりまして解決していただきたい、こういうふうに思っております。
  368. 中野明

    中野(明)分科員 厚生大臣、どうでしょう。せっかく児童手当の制度が実施されて、私どもも内容については、今後も——大臣も前向きでおっしゃっておりますので、その御努力にまつといたしまして、いま申し上げたように、せっかくこの児童手当の制度ができながら、家族手当を差っ引かれてしまったのでは、この児童手当の目的自体がそこなわれるような結果にもなるわけでありますが、この点、いま労働省もそこまでというようなことで、非常に消極的なお話でありますけれども、現実に児童手当の制度をおつくりになっておられる厚生大臣として、それではやはり目的をたがえることになりますので、大臣としてのお考えをこの際お聞きしておきたいのであります。
  369. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいま労働省からお答えがありましたように、またさっきの委員の先生にもお答えをいたしましたように、これは全然別個の問題でございますから、したがって、賃金体系がいかにあるべきかということ、これは労働省関係であり、労働省も、労使対等の立場で、こうおっしゃっておるわけなんです。日本の賃金体系がそれでいいと個人的には私は思っておりません。もう少し能率給というものを加味したほうがいいのじゃないか。したがって、家族手当を減らして能率給に回していくとか、どういう操作をやっておられますか、実はきわめておりませんが、児童手当ができたために非常に不利になってきたというような著しいことがあれば、私のほうも何かものを言わなければならぬかと思っておりますが、まだそういうことを聞いておりません。
  370. 中野明

    中野(明)分科員 大臣のところまでは上がってないかもしれませんが、現実にそういうところが出ておりますので、今後当然厚生省部内でも検討事項の一つにあげられなければならないことになるのじゃなかろうかと私、思います。  と申しますのも、何べんも言うようですが、せっかく児童手当をおつくりになっても、その目的とたがうような支給のされ方がありますと、国民の受ける側は、役所の指導範囲というのですか、監督範囲がどうあるかというところまではお互いになかなか認識ができません。ですから、結局は、政府のやっておること、せっかく児童手当をやってくれても、これじゃ何にもならぬじゃないかという不満が厚生省なりあるいはその他の方面、特に児童手当の実施に踏み切った厚生省に対するやはり不平というのですか、不満としてはね返ってくるのじゃなかろうか、このようにも私、心配するわけであります。  それで今後事業者負担、こういうことだってなるべくなくして、全額を国庫で支給していくようにすることが、これが問題の起こらない一番いい方法であるわけでございます。ですから、その事業者負担をなくすということと関連をして、今後検討事項の一つに入れて鋭意努力を願いたい、このように思うわけでありますが、もう一度厚生大臣のお答えを承りたい。
  371. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 御意見といたしましては、十分承っておきたいと存じますが、私は、当初から企業に一部負担をしてもらうというような構想で出発いたしておりますし、また出発の早々でございますので、今後の運営を見きわめた上でいたしたいと思います。
  372. 中野明

    中野(明)分科員 それも私よく承知をいたしておりますが、現実にこういうことが派生をしておりますので、将来必ずそういうことが問題になってくると思いますから、ひとつ前向きにこの点についても、一たん大臣の方針としてそうきめられたといえども、それが絶対的に永久不変のものであるというわけのものでもないでしょうから、そこら辺をよく御認識をいただいて、あわせて御検討を願いたい、このように重ねて要望をしておきます。  それでは最後にもう一点、老人福祉電話のことについてお伺いしておきます。  先ほど来だんだんお話がありまして、厚生省としましても、老人対策、これに非常に力を入れる方向になってきたということは、喜ばしい傾向でありますし、また当然そうあらねばならないと私どもも思っておりますが、その老人対策の一環として、昨年度から厚生省としては、老人福祉電話というものを、制度になりますかどうですか、そのところは私は詳しく存じませんが、老人福祉電話というものの実施をなさっておるということで、これは非常に私もいいことだと思って、いろいろその後の状態を見守っておる一人でありますが、この問題に関しまして、全国的にひとり暮らしの老人が何人ぐらい、数字の上であがっておるのでしょうか。
  373. 加藤威二

    ○加藤政府委員 ひとり暮らしの老人の数は、全国でいま、推計でございますが、六十一万人という数字になっております。
  374. 中野明

    中野(明)分科員 これはたびたび社会問題になっておりますので、御承知のとおり、生活が核家族化してまいりまして、お年寄りがひとりで暮らしておって、隣近所ともあまりおつき合いがないうちに不幸にしてなくなって、なくなったことがなかなかわからなかった、そういうような痛ましい事件が何件か私も新聞で見たことがあります。せっかくの人生の最後が、そのようにさびしく終わるというようなことは、まことに福祉国家の名前に恥ずかしいような状態であります。そういうことで、その辺から老人福祉電話という構想が浮かび上がってきたのじゃなかろうか。私は非常に、これは厚生省の担当といいながらも、まことにけっこうなことだ、このように思っております。それで、この制度——制度ということばが適切かどうか知りませんが、この制度をぜひ、厚生省のほうも音頭をとっていただいて、そして全国に、いまおっしゃったように六十一万人、しかしながらこの六十一万人が全部電話を持っていないということもありましょうし、また電話の必要もないということもありましょうけれども、いままで実施された福岡と豊橋ですか、この二カ所では非常に好評であるという状況もまたわれわれ承知をしておりますし、ぜひこの制度を拡大されて、全国のそういう人たちを何かの形で、ひとりで暮らしておっても他の人と連絡がとれる、そして安心した余生がおくれるというような方向に努力していただきたいんですが、今後のこの老人福祉電話に対する厚生省考え方をお聞きしたいわけでございます。
  375. 加藤威二

    ○加藤政府委員 この老人の福祉電話につきましては、先生指摘のとおり、四十六年度から、これはひとり暮らしの老人に対して、その安否を確認するとか、あるいは各種の相談に応ずるということで、四十六年度初めて予算がついたわけでございますが、これは豊橋と福岡それぞれ二つの市におきまして、大体現在豊橋で約百三十人、福岡では百二十人のひとり暮らしの老人の家に電話がついている、こういう実態になっています。  これは先生もおっしゃいましたとおり、非常に私ども予想以上にこのひとり暮らしの老人に好評でございまして、私もせんだってテレビでこの老人電話がついたために生がいが出てきたというような老人の喜びの声を聞いたわけでございますけれども、私どもといたしましても、予想以上にそういったひとり暮らしの老人の非常に力強いささえになっているという感じがするわけでございます。  四十七年度も二カ所という予算でございますが、これにつきましては、私どもできるだけ今後も補助金をつけてまいりたいと思いますけれども、国がやりますのは、やはりモデル的な形でやりまして、やはりこの程度の福祉電話なんというものは、市町村とかあるいは都道府県が老人福祉の対策としてやるのに一番いい対策だと思います。ですから、国が先べんをつけて一つのモデルみたいなものをつくりまして、これが非常に老人に喜ばれておりますから、予算もたいした額はかからないわけでございますので、むしろ国がモデル的に設置して、それを見習って都道府県や市町村が積極的にこういったもの、あるいは電話でなくともベルのようなものでもよろしゅうございますが、何かそういう、電話が一番いいと思いますけれども、私どもとしては、府県や市町村が率先してこういうものをやってくれるということを期待いたしておるわけでございます。そういった方向で、国と地方公共団体協力してこういった対策を進めてまいりたいというように考えております。
  376. 中野明

    中野(明)分科員 確かにいまおっしゃったとおり、地方の公共団体が力を入れるべきことが一番私は最終的には望ましいと思いますが、やはりこれがある程度浸透するというのですか、そういう制度も、これやってみればまだまだ少し隘路もあるんじゃないかというような気もします。電電公社としても、郵政省と相談をして電話の債券も免除したりして、非常に協力的な姿勢をとっているようでありますので、そういう点も考えますと、ぜひ補助金を出されて、そして地方公共団体が進んで老人対策の一環としてこういうことができるように、やはり地方の公共団体に、なるほど財政的にはあまり豊かでありませんので、そういう点今後も補助金を出すような考え方で、いまもお話しのように、あまりばく大な予算が要らないで、そして厚生省としては老人対策に真剣に思いをいたしているという、まあ予算が要らないわりに老人に喜ばれる。福祉の立場らいきましても、目玉商品とまではいかぬでしょうけれども厚生省の姿勢としてはけっこうなことだと思いますので、今後そういう点について、最後に大臣から答弁をいただいて終わりたいと思いますが、推進をお願いしたい、こういうことであります。
  377. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 たいへんみなにも喜ばれておりますし、また、ただいま中野委員からもおほめにあずかってありがたく思っておりますが、これを今後さらに進めてまいって、一そう老人福祉に役立てたいと考えております。
  378. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)主査代理 山田太郎君。
  379. 山田太郎

    山田(太)分科員 私は主として難病対策室、ことにベーチェット並びにスモンの問題についてお伺いしたいと思いますが、その前に、通告してなくて恐縮でございますが、大臣に、老齢福祉年金の問題ですが、予算委員会あるいは本会議等々でも質疑応答があったわけですが、今年度の、四十七年度予算編成について厚生省の要望あるいは要求ですか、月五千円と大臣は希望していらっしゃったようです。折衝の過程で三千三百円というふうに落ちついたようでございますが、来年度について、四十八年度予算においては、やはり老齢福祉年金のせめて五千円程度、これは実現したいというお気持ちであるというふうに伺っておりますが、その点について大臣のお答えをまず伺っておきたいと思います。
  380. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 四十八年度はぜひ五千円を達成いたしたい、かように思っております。
  381. 山田太郎

    山田(太)分科員 そこで、難病対策室の問題に移りますが、この難病対策室の設置については、私自身も非常に喜ばしいことだと存じております。かねて私もこの種のものを要望もしてきたわけでございますので、より一そう喜ばしいことだと存じておりますし、このことができることは非常にいいことだと、まず敬意を表しておきたいと思います。  そこで、この難病対策室の目的といいますか、それを簡単に、個条書き程度でけっこうですから、まずお答え願っておきたいと思います。
  382. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 簡単に申しますと、従来厚生省の難病対策が、窓口が各局にまたがっておったというような点を考慮いたしまして、一元的に対策を講ずるためのものとして設置する。それから、これによって、専門的にこれに室長以下取り組めるという体制の強化ということも一つ重要な問題でございます。
  383. 山田太郎

    山田(太)分科員 その難病という定義ですね、これはどのような定義でしょうか。
  384. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 難病の定義につきましては、われわれといたしましては、各方面の御意見もほぼ一致していると思いますけれども、原因がまず不明であるということと、治療方法が必ずしも確立しておらない、その上、病気の性格は急性で、そのままあとを残さずなおるという性格の急性伝染病あるいは急性疾患のような形でなく、慢性的あるいは亜急性の——スモンなども亜急性という形になっておりますが、そういうようなことで障害をあとに残すような疾患というような概念でとらえたいと思っております。
  385. 山田太郎

    山田(太)分科員 そこで、この難病対策室の設置は、こうあってほしいと要望もいたしたいわけでございますが、将来難病について研究からあるいは治療あるいはリハビリテーションあるいは社会復帰と、この一貫した、密接な連関した施策というものがやはり必要になるのじゃなかろうか。名称はともあれ、まあ難病救済基本法だとかいう名称を使われておる人もおります。しかし、その名称はともあれ、そういうふうな法的措置というものも将来講じていきたい、その布石にもなるものだともいわれておりますが、その点についてはいかがでしょう。
  386. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 その点につきましては、難病というのを、正確には役所としては特定疾患というふうに申し上げまして、そこで特定な疾患というものは何を——診断基準が設けられ、なおかつ把握できる、そして研究に着手する、こういうことで特定疾患という名前を使い、対策室もその名称を用いております。  いまの基本法、これは各方面の団体等からも御意見があり、あるいは野党の各党の皆さん方からもこの問題について具体的な法案の提示もございました。われわれも検討させていただいておりますが、その基本は、柱は、研究をするということと、それからやはり救済をする、公費負担等によって患者の救済をはかれ、これがいずれも大きな柱でございます。それから、共通した問題点としては、審議会的なものをつくってどういう問題を取り上げるかをきめていけ、こういうことでございます。  これらの具体的な事項は、立法措置というものを待たずにできる面としては研究、それから学界等の意見を聞くこと、これはまずできます。救済の内容によっては、これは立法等が必要ではなかろうか、こういうふうに考えますが、基本的にはまだ、先ほど申し上げましたような、いわゆる不明にして治療法が確立しておらないというようなことを踏まえまして、われわれとしては立法というものが今後の検討事項ではあろうかと思いますが、当面すぐ立法ということは考えておりません。
  387. 山田太郎

    山田(太)分科員 今後の検討事項ではあろうと思うという意味は、同時にやはり積極的な姿勢というものも要るんじゃないかと思いますので、その点について、大臣、どうでしょうか、大臣からお答えを願っておきたいと思います。
  388. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私は、難病といわれる病気にかかられた場合に費用が非常に高くかかる、そこで、いま提案をいたしたいと思っております医療保険の抜本改正におきまして、いわゆる長期あるいは高額の医療費というものは、現在であれば自己負担が家族が五割あるいは三割、それにたえられないということでございますので、そういった長期、高額医療は保険で見るというように変えてまいりたい。そういたしますると、その難病、奇病の高額医療もそれで相当カバーをされるんじゃないか、将来はさように持っていきたい、かように考えております。それで、幸いにしてその制度をこの国会でお認めいただければ、その上に立って、いまやっておりますいわゆる研究治療費というものをどう考えようかということになろうかと考えております。それでも不十分だから、さらに研究治療費も出さなければならないかどうかということも、その段階で考えたいと思います。
  389. 山田太郎

    山田(太)分科員 私がお伺いしましたのは、やはり法的措置というものも検討なさいますかという点をお伺いしたわけですが。
  390. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 さしあたっての法的措置は、その高額医療というものを保険の改正によって——これは法的措置であります、解決をいたしたい。そして治療研究費というものは、これはちょっと立法化するのにはふさわしくないんじゃなかろうか、かように考えます。
  391. 山田太郎

    山田(太)分科員 限られた時間ですから、この問題は強く要望することにとどめておきたいと思います。要するに、難病に対する基本法的な措置、これを強く要望しておきたいと思います。  そこで、この難病の中で現在ベーチェット、このベーチェットの厚生省においての掌握状況と、それから対策、簡単でけっこうですから、ポイントだけをお伺いしておきたいと思います。
  392. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 ベーチェットにつきましては、四十五年四百万円、それから四十六年、本年度一千万円の研究費を投入いたしまして、眼科の医師を中心に御研究願っております。実態の数字につきましては、まだ研究班からの正式な御報告がございませんけれども、一般的にはスモン患者の約二倍くらいいるのじゃないかという御意見もありますけれども、最近われわれが入手いたしました大阪地区におけるベーチェット関係の研究の皆さま方の御研究の数字では三百六十という数字が出ております。ところが、大阪地区のスモン患者は五百八十くらいという数字がございまして、その辺のところにベーチェット患者の把握は今後に待たなければならない。きわめて重要な問題だとは思っておりますが、現状ではかようになっております。
  393. 山田太郎

    山田(太)分科員 ベーチェットというこの病気も、これは非常に悲惨な病気でございますから、早くしかも的確にまず調査を進めてもらいたい、これはお願いをしておきます。  そこで、ベーチェットもスモンのように治療費負担の軽減措置ですね、これをはかってあげたほうがいいのじゃないかと私自身も思いますし、また患者あるいは家族の方々の要望も非常に強いわけですが、この点についての措置はいかが対策を考えていらっしゃいますか。
  394. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 この問題につきましては、最終的には対策室に専門家の懇談会を設けまして、御意見を拝聴した上で決定いたしますが、われわれの行政判断としては、ベーチェット病の診断基準もほぼでき上がっておりますし、いわゆる分類が可能でありますので、したがいまして、私の行政判断では、ベーチェット病はスモンに続く今回の予算措置の三億一千万の治療研究費の中で当然取り上げていくべき性格の、条件がそろっている病気である、非常に難病であるということ、それからいろいろな診断基準もできている、こういうことで対象にして検討するよう懇談会におはかりして、具体的にそのような取り計らいをされると思います。  ただ問題点は、病気の性格上、非常に再発したり、また、一たんなおってまた再発したりという経過が比較的長い病気であって、外来の患者が非常に多い。スモンは入院患者を対象とした治療研究をいたしましたが、この点についても種々検討いたしたいと思いますが、私もベーチェットにつきましては、やはり病気の特徴をとらえて、入院も外来も含めて治療研究の対象とするということで検討いたしたい、こういうふうに考えております。
  395. 山田太郎

    山田(太)分科員 いまの御答弁は、ベーチェット病も研究すべき問題はあるけれども、スモンと同じように、正式の治療費負担ということばはこれは適当じゃないと思いますが、治療研究費という名目のもとに個人負担の軽減をはかる、こういうお考えだというふうに解釈してよろしいですか。
  396. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 そのとおりでございます。
  397. 山田太郎

    山田(太)分科員 それは特に早く、強力に推めていただきたいと思います。  そこで次に、スモンの問題に移りますが、先日、三月十三日でしたか、昭和四十六年度スモン調査研究協議会の総会で、スモンと診断された患者の大多数はキノホルム剤の服用によって神経障害を起こしたものと判断される。ポイントの段でございますが、そこで、これは最終結論ではないわけですか。またこの次の段を見ますと、原因究明の点については一応判断が出たわけですが、そのほかの問題についてはまだ研究すべき余地がたくさんあるわけです。そういう点について、やはりスモン調査研究協議会は当然今後も必要な限り存続すべき機関ではないか、こう思うわけですが、その点についてのお考えはいかがでしょうか。
  398. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 この点につきましては、協議会の御意見も、また今回出ました結論からいきましても、研究班の内容その他、縮小する方向も考えられますが、部分によってはまた内容を充実しなければならぬ面もあると思います。たとえば生化学の面にもう少し突っ込んでいかなければならぬとか、あるいは治療面ではリハビリテーションの問題が残っておるとかという点がございますので、スモン研究協議会は継続して研究を実施していただくつもりでおります。
  399. 山田太郎

    山田(太)分科員 予算措置においてもやはり同額あるいは同額以上の継続を考えていらっしゃいますか。
  400. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 金額につきましては、いまの段階では申し上げられませんけれども、継続していくということだけは、研究協議会の御意見もあり、その方向で考えております。
  401. 山田太郎

    山田(太)分科員 この点については、いま局長の御答弁のように、幅を広げていかなければならない部面もある、あるいは保健社会医学的な問題でやはり幅を広げていかなければならない問題もあるわけですから、その点は強く予算縮小のないように要望しておきたいと思います。  そこで次の問題に移りたいと思いますが、先日、同僚の古寺委員から大臣並びに局長に質問があったときに、スモン患者に対しては公害に準じた措置をとりたいという大臣の答弁があったと聞いております。その点について、公害に準じた措置とは、具体的に申しますと、どのような措置がとられるのであろうか、この点がやはり一番患者の方たちの不明な点にもなっておりますし、心配な点にもなっておりますので、この点をもう少し明らかにしてもらいたいと思います。
  402. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私は考え方といたしましては、大体大気汚染のいわゆる認定患者ですか、ぜんそく患者ですかというような方に対する医療なり介護なり、そういった面を考えていくべきではないであろうか、かように考えております。まあそういったような考え方で事務的に少し検討を進めてもらいたいと、事務当局でいま検討をさせておるわけでございます。
  403. 山田太郎

    山田(太)分科員 局長にお伺いします。  どういう程度まで、いま考えられる範囲はこれとこれとこういう点が考えられる——純粋には大気汚染等とは、これはいわゆる公害の認定とはちょっと性質が違うと思うのですが、やはり指定地域とか、そういうものが公害認定患者とは変わってきますので、そういう点も含めて、公害に準ずるという点について。
  404. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 やはり認定基準はこれは設けなければならないと思っております。これは地域を指定してというわけにはまいらない。医者がスモン患者であるという認定基準に合致した者は認定する。その認定機関をどうするかという問題もあると思います。これはまあ全国的にありますから、どういうように認定機関を設けるかということも検討しなければなりません。地域は指定する考えはありません。  それから、その内容は治療にまずまずこと欠かないように、それからそのほか介護とかリハビリとかいうものをどの程度見ていくか。そこらになるとやはりいろいろ検討する問題もあるというふうに思います。まだ大蔵省とは話をいたしておりませんが、まず私のほうで大体考え方を固めてそうして大蔵省に折衝し、これはどうしても政府の政治的責任としてやらなければならないと、私はさように信じております。
  405. 山田太郎

    山田(太)分科員 政府の政治的責任として、治療費にはまずこと欠かないように、あるいはリハビリテーション、介護等々、十分措置をとってあげたい、この御答弁だったと思います。  そこで、ちょっと前に戻るようですけれども、いま特定疾患対策室に入れるべきものは原因不明というこの問題がありますね。そうすると、大体キノホルム大多数というところは、法的にはもうすでにキノホルムと、こう断定されてもいい数字だと思います。こうなりますと、やはり対策室で取り扱うという点が、原因不明でなくなったわけですから、その点についての特別の配慮あるいは特別のお考え、その点がおありと思うのですが、その点についてはどうですか。
  406. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 おっしゃるとおり対策室の性格は先ほど申し上げたとおりでございまして、今回のように大臣から御下命によってこの問題を検討するとなりますと、対策室ではこれを担当する問題でございません。この問題を、研究協議会をお世話してまいりました私の局で当面検討に入りたいと思いますが、省全体の分担、仕事をどういうふうに整理するかは必ずしもまだ確定いたしておりませんが、当面私の気持ちとしては、私の局が担当して検討に入りたい、こういう気持ちでおります。
  407. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 いま局長が申し述べましたのは、いわゆる治療研究費の問題だろうと思うのです。やはりスモンの治療自身については、これはまだ研究しなければならない面が私は残っているのじゃないかと思いますし、それからキノホルムはスモンを促進したということはまあまあまぎれがないであろうと思う、この間の研究結果の発表は。しかし、その前にスモンになるような前提的なものを持っていたのじゃないかという疑いもなきにしもあらず。そういう点をやはりもう少し医学的に、また治療的にきわめてまいる必要があると思いますから、そういう意味で難病対策の中にまだ当分とどめておく必要があるのじゃやないか、かように私は思います。
  408. 山田太郎

    山田(太)分科員 大臣局長のお考えが違っているようですが、まあ大臣の御答弁ですから……。しかし、やはりこの判断は、ほとんど大多数——たった十五例だけですね。
  409. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 一五%です。
  410. 山田太郎

    山田(太)分科員 その後キノホルムを停止して出てきたのが十五例ですね。そういうことは、いままでの分はこの原因がキノホルムだとわかった人と、もう一つはキノホルムを飲んだかどうかはわからない、不明という、その不明の中の分は全部キノホルムを飲んでいないとはいえないわけです、これは当然常識で判断しても。本人が忘れているという場合もあろうし、また同時にこの実数、調査自体が、やはり協議会の診断指針によって、配られてそれを集めただけのものですから、その数自体は。したがって、ここにやはり非常に不明確なものが、キノホルムを飲んでないと思われる中には不明確な分がたくさんあるわけですから、その点は、大臣承知のことだと思います。一応法的に言うても、大体去年の六月でしたか、やはり協議会で調査しましたね。これはほとんど八〇%少々だったと思います、私の記憶では。やはりキノホルム服用者が患者の八〇%、そういう数字が出たのを記憶しております。そういう点からいって、あんまりキノホルムではない可能性も多いということを強調しますと、これは将来もしこの断定がより一そう強く出たときにちょっと困った問題になるんじゃないかとも思いますので、その点はやはり原因が大体わかったという線を基準にして、医療災害というものを土台にして考えていかないと、政府の厚生行政の施策の一つの失態につながるおそれがあると思いますので、この点は大臣もことに御注意をお願いしておきたいと思うのです。  そこで、時間があとわずかになりましたので、また別な機会にお伺いしていきたいと思っておりますが、やはり政治的責任、もう一つは法的責任という点についていま一番論議されている問題です、訴訟があるわけですから。その点について、厚生省としては政治責任はないんだというふうな御答弁があったやに聞いておりますが、そうでしょうか。
  411. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私が申しておりますのは道義的な国としての責任からという意味でございまして、薬務当局に過失があったとかなんとかというような、そういう責任ではないという意味で責任はない、こう薬務当局は言っていると思いますし、薬事行政としての過失の責任というものではないと思いますが、しかし、とにかくキノホルムは薬として販売することを認めておったわけであり、そこからそういう病気が起こったということになれば、これはそういう意味で国が責任を負わなければならない、負うべきである、政治責任を感じて負うべきである、かように考えるわけです。
  412. 山田太郎

    山田(太)分科員 政治責任の意味はよくわかりました。  そこで、もう一歩進めて、法的にも厚生省が責任がある、こういう場合はどういう場合が想定されるわけでしょうか。
  413. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私はこういった考えが定着してまいれば、いわゆる薬からきた疾病というようなものはその中に包括して将来考えていくべきではないであろうか、かように考えます。そして、私の先ほど申しておりました、いわゆる公害に準じた措置というようなことになってそれが定着してまいれば、場合によったら立法措置も必要かもしれない。そして、いま申しましたように、薬のいままで予見せられなかった副作用から起こったんだというものは、それで見るのが私は至当ではなかろうかと、ただいま私はこれは個人の段階の所見でございます。政府としてそこまでまだ確定をしているわけではございませんけれども、さような意味で進めてまいりたいと私は考えます。
  414. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)主査代理 時間がきましたので、結論をお急ぎください。
  415. 山田太郎

    山田(太)分科員 大臣個人のお考えとして、薬によって起こった疾病というものについては、必要ならば特別の立法もしなければならないだろうし、政府として、平易なことばで言えば十分めんどうを見ていく、こういうお考えだと、非常に前向きでけっこうなことだと思います。  ただ、ここで認定する認定機関というものは、いままでの診断指針というものは、純粋の診断基準にはないわけですから、純粋の診断基準というものがあれば、これはカルテはなくてもスモン患者と認定することのできる機関にしていかないと、やはりいまの段階ではお医者さんが自分が責任を追及されるという心配がある。あるいは賠償責任を負わされるという心配があるから、神戸でしたか、先日十二日自殺患者が出ていらっしゃる。二十人をオーバーした自殺患者がスモンの場合は出ていらっしゃると思いますが、そういう場合はカルテがなくてもちゃんと診断ができる、そういうふうな認定機関でなければならないということが一つ。  それからもう一つは、やはりそれを中央で集めてやるか、あるいは各県にそういう認定機関を置いていくかという点によって、患者の何といいますか、自分が楽な安心した立場にもお細ると思います。その点が一つ。  それからもう一つは、鹿児島でしたか、これは東大で助手やっていらっしゃった井形教授が鹿児島大学に行かれて、いままでわずかの人数しかいなかったスモン患者が、四十六年の十月からことしの一月のわずか三カ月間で、数名だといわれておったのが何と四十六名発見されております。したがって、このスモンの認定については相当明確な医者でなければならないということがやはり二つ目に要ると思います。その点を勘案して、認定機関についてに早急にやってもらいたいという点を要望したいと思いますが、その点についてのお答え。  それからもう一つは、薬事行政の問題ですね。
  416. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)主査代理 山田君簡単に願います。次の質問者がすでに見えていますから、簡潔にしてください。
  417. 山田太郎

    山田(太)分科員 わかりました。  そこで、薬事行政の問題が、このキノホルムの場合は品質試験だけであった、こういう点にやはり大きな問題点があると思います。そこで、薬を新たに認める場合は、基礎実験、最低限、吸収あるいは排せつ試験あるいは急性、慢性中毒試験、そういうものをやって許可をすれば、この点はもっと防げたんじゃなかろうか、あるいはほかの薬の場合もこれは防げるんじゃなかろうか、この二つ質問して終わりたいと思います。
  418. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 認定問題につきましては、その機関なり方法なり、ただいまおっしゃったことも踏まえまして、できるだけ簡明にそして確実にできるように、これは技術的な問題でございますので、十分局長も伺っておったわけでありますから、検討をいたさせます。  また、薬の副作用につきましては、新しく許可をする場合、またすでに許可したものにつきましても、いま副作用を総洗いをしようというてすでにこれはかかっているわけでございます。いまおっしゃいました方向でただいまやっておるわけでございます。御了承をいただきたいと思います。
  419. 山田太郎

    山田(太)分科員 質問を終わります。
  420. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)主査代理 谷口君。
  421. 谷口善太郎

    ○谷口分科員 老人問題について若干お伺いしようと思うのであります。  老人問題が非常に重大な問題になってきていることは、その数が毎年ふえてきていること、また保護者、そういうものの関係でも、孤立したひとり暮らしの人が非常に多くなっていること、あるいは所得が決して豊かな人ばかりではないという状況、それから病気の関係でも非常に困難な事情があるようです。実は昨年厚生省がおやりになった実態調査を見て、いまさらながら私ども非常にこれを重視しなければならぬというふうに考えているわけでありますが、きょうはその中で幾つかの具体的なことで大臣に御質問申し上げよう、こう思っております。  最初の問題は、二月二日の参議院の本会議でわが党の野坂議長がお尋ねしました例の国民年金拠出老齢年金、それから福祉老齢年金、この受給の年齢の相違からくる、特に押し迫った現在数年間の人で、全く年金制度からはみ出しているという層がある。これを救済する問題でありますが、それを第一点にお伺いしたいのであります。  その前に、これはつまらぬことでありますけれども、野坂議長に対する総理の御答弁で、そのときに総理はこういうふうに言っておられるのは、これはお間違いなのであるか、そうでないのか、伺っておきたい。  こういう御答弁です。「六十五歳以上の老人に対する老齢福祉年金の額につきましても、今年度月額千円という大幅な引き上げを行なうことといたしました。」いつから六十五歳から老齢福祉年金を支給することになったのか。
  422. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 それはどこで総理がお答えになったんでしょうか。
  423. 谷口善太郎

    ○谷口分科員 これは二月二日の参議院本会議における総理の御答弁であります。会議録であります。
  424. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 何か総理は思い違いをされたのじゃないかと思いますが、福祉年金は七十歳以上のものでございます。六十五歳まで引き下げろという議論がございますが、今日では六十五歳まで——あるいは寝たきり老人についての福祉年金でお答えになったのかと思います。
  425. 谷口善太郎

    ○谷口分科員 寝たきり老人ではなくて福祉年金の問題について、これは内容はあとで申しますが、野坂議長の質問に対してこういうふうにお答えになっていらっしゃるのですが、それに対して私ども要請、要望という内容がありまして、それについての御答弁なんであります。その要望につきましては、ここに引き続いて「これにつきましても具体的な提案がありましたが、直ちにこれに賛成するわけにはまいりません。」というお答えなんです。したがって、お間違いじゃなくて間違っていらっしゃるとすれば、七十歳であるものを六十五歳と思い違いをされておったということではないかと思うのです。どうです。
  426. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ちょっと前後の速記録を拝見しないとわかりませんが、たぶんそうであろうと私は推察をいたします。これは何か総理の思い違いであられたか、言い違いであられたのではなかろうかと思います。  それから、具体的な提案というのはどういう御提案であったか存じませんが……。
  427. 谷口善太郎

    ○谷口分科員 その内容にはいま入りますから……。
  428. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 よろしゅうございますか。
  429. 谷口善太郎

    ○谷口分科員 あげ足を取るような質問になりまして私もちょっと恐縮しているわけなんですけれども、おそらく思い違いであろうと思う。しかし参議院の本会議での御答弁です。ちょうどあのときに、幸か不幸か厚生大臣は、羽田へグアムから帰られた横井さんを迎えにいらっしゃったあのときです。だから厚生大臣御自身の御答弁ではないわけです。だから総理が思い違いになったんだろうと思いますが、ただ問題は、こういうことをお間違いになるような社会福祉の問題についての総理の御理解という点は、これはかなり重要な問題だと私どもは思っております。これはいちゃもんをつけるような話でありますが、やはりしかるべきところで総理が——それは間違うことはありますから——あのときも総理はその点でなかなか厳重な方だと思ったのですが、野坂議長が自民党の政治献金が二兆円というようなことで言い間違えまして、壇をおりるとすぐに間違いを訂正しました。ところが総理は答弁の中でそれを取り上げていますね。それほど厳重な方でありますから、もし間違いであるとするとやはり重大なことになる。厚生大臣としても、しかるべく適当なところで総理がこれを訂正なさるように御進言なさることがいいのではないかと私は思うのであります。  私どもの野坂さんが言いましたのはこういう問題です。これはすでに社会労働委員会で私どもの寺前議員からも厚生大臣に一度お尋ねしていると思うのですが、つまり拠出年金は六十五歳からいただくことになっている。それから福祉年金はおっしゃるとおり七十歳、それで、あのときのあれで申しますと、四十四年四月一日から五年さかのぼった三十九年の四月二日、この間は七十五条規定で任意加入いたしましたが、したがってこれは減額されたものでありましても一応年金が六十五歳からもらえる。ところが、福祉年金は七十歳でありますから、昭和四十七年のことしへまいりますと、今日までかなりあったのですが、大体私の計算ですが、三十四年以前に生まれた者、すでに七十歳に達している者は福祉年金の受給者になっていますが、三十四年から三十八年までの間、つまり年齢で申しますと六十六歳から六十九歳までの者で国民年金の被保険者でない人、これは拠出のための拠出年金も、福祉年金ももらえない期間ができた。そういうものがいまあるということです。これを救済すべきではないだろうか。全然年金の対象になっていないという層があるのです。幾らぐらいになりますか私どもよくわからぬのでありますが、これを救済するべきじゃないかというのが野坂議長の提案だったのです。この点について、大臣、何か私どもの寺前君にお答えいただいているようでありますが、重ねて私のほうでお尋ねしたい、こう思うのです。
  430. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 前に寺前委員でしたか、お答えいたしました。六十六歳から七十歳未満のいわゆる年金に全然あずからない人の問題については、前向きに検討をいたしたいと、かように申し上げました。いまもさように考えております。どうやっていくかを前向きに検討いたしたいと思います。
  431. 谷口善太郎

    ○谷口分科員 たいへんけっこうなお答えなんですけれども、実はこれは四年ほどたつとこの層はなくなるのです。ですから緊急にやりませんと間に合わないのです。大臣には前にも私はいろいろなことを解決していただいたことを覚えておりますが、緊急に、少なくともことしはもうこういうふうに予算がすでに出ておりますから何ですけれども、補正予算でやっていただくとか、あるいは来年度予算でこの問題を解決するような、そういう点を——抽象的な前向きということばでなくて、ぜひ来年度でやろうとか、ことしの補正予算でやろうとかいうことを答えていただいておけば、この問題は非常に大事な問題だと思うのですが一応解決すると思うのです。
  432. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 これは補正予算とか追加予算というわけにはまいらないと思います。私は他の機会にも申しておりますように、来年度は、年金全体について相当検討しなければならない時期だ、その中におきまして、この点も入れて検討をいたしたい、来年度から、やるならば実施いたしたい、かように考えております。
  433. 谷口善太郎

    ○谷口分科員 つまり来年度、保険制度、年金制度についていろいろ改定していきたいという予定をしているから、その中でこの問題を解決していく、こう承ってよろしゅうございますね。  これは大臣のおことばと思うのですが、あるいはあなたじゃなかったかもしれませんが、こういうことを政府は言っているのですね。諸外国においては、わが国のように国民のすべてが年金の適用を受けているといういわゆる皆年金を達成している場合は少ないというほど、いわゆる皆年金制度というものが日本政府の世界的な看板になっている。この皆年金制度から一部分でも抜けているということは非常にまずいので、ひとつ来年度はぜひとも具体的にこの問題は解決するようにやっておいていただきたい。来年度でぜひやるということをおっしゃったと承って次に進みます。  実は私どもは、こういう問題は、福祉年金の適用年齢を六十五歳に引き下げるというそういう意味の改定をやるべきではなかろうか。     〔橋本(龍)主査代理退席、主査着席〕 もちろん、年金額の引き上げという問題も、当然これは福祉も拠出も全体にわたりますが、いまの状況ではとても話になりません。だから福祉年金の受給年齢を六十五歳に引き下げるという意味の改定をやってもらいたいというふうに考えておりますが、そういう点なんかもお含みいただいて来年度に処していただきたいと思います。  第二点は、これも実は大臣と私との間に問題になっておりまして、これは年金、老人問題とはちょっと離れますが、例のハンセン氏病の問題、この問題について、前に大臣のお答えをいただいておりますので、ひとつぜひともお答えをいただきたいと思うのです。  それは、ハンセン氏病の問題は、大臣よく御承知のとおり、これも拠出障害年金と福祉障害年金との間に格差があって、この格差が、一つの病院の中にみんな入っていて日常生活に仲間同士必ずしもいい感情でないものも流れるような状況であるから、ぜひともこれは解決してもらいたいということを申し上げたことがあるのです。大臣、選挙の前ですから、おやめになる直前であったと思うのですが、四十四年の九月十日です。そこで大臣はこの問題についてこういう御答弁を私にしていらっしゃる。今度はこの問題をぜひ解決いたしたい。そうして、そういう非常な不公平に感じていられることのないように制度を改めてこの問題を解決する、こういう御答弁をいただいておるのであります。成案を得て来国会にひとつぜひとも提案したい、こうおっしゃっていらっしゃる。ですから、これがどうなったかという問題です。実は、この問題を質問するということを事務当局の皆さんにお知らせしたら、きょうわざわざ、それはちゃんと解決できているという資料を届けてくださったのですが、この点の制度として解決すると大臣おっしゃった。これが、その点からいきますとどういうふうになっているかをお答えいただきたい。
  434. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 そういう不均衡のないようにという趣旨で申し上げたのでございますが、四十七年度からは障害年金の一級相当額ということで大蔵省と話がまとまりましたので、これで大体不公平がないであろう、かように考えます。これを別に法律とか規則できめなくても、一種の制度といえば実際上の制度、かようにお考えいただきたい、かように思います。
  435. 谷口善太郎

    ○谷口分科員 きょう資料をいただきまして、大臣いろいろと御苦労なすっていらっしゃるということは私ども知っております。四十七年度で、拠出制の場合も一万円、それから福祉年金のほうも一万円、七月から法改正されればまた一千円ずつ上がるということになっているようでありまして、そういう点では確かに格差といいますか不公平がなくなったと一応いえるのでありますが、大臣、私きょうこれをいただきましてちょっとひどいと思ったのですよ。確かに一万円と一万円になりますから、格差はなくなったように見えますけれども、しかしそのかわり、拠出制の人たちに対する、いままでなされておった患者慰安金とか不自由者慰安金というものは全部とってなくしちゃった。一方、いままで出していたものをとっちゃったのです。そして他方、福祉のほうを上げて、帳面づらだけ合わしているのですね。私がお願いしたのはこういうことじゃなかったのです。私が申しましたのは、確かに法改正がむずかしいなら、慰安金でもいいし、何の名目でもいい、とにかく格差を埋めてもらいたい。大臣は、それはそのとおりだというふうにおっしゃったのです。これは委員会で発言しただけじゃなくて、大臣とひざ突き合わしてやったことです。しかし、そのとき申しましたのは、法改正が非常に困難であれば、政府はいわば一種の善政として、法的根拠はないけれども、慰安金とかなんとかというもので出しているんだから、これをふやせば一応埋まるのじゃないかと私言ったことは事実あります。しかし、すでに出しているものをとれとは言わなかった。拠出の人たちのほうはとっちゃって——四十六年からやっておりますから、これは斎藤厚生大臣の責任はないかもしれませんが、しかし政府の責任としては同じだと思う。四十六年から、それまで出しておった千七百四十七円というのをとっちゃった。とって、そしてそれと同じように——こっちはとるがこっちは慰安金をふやすということで、帳面づらを合わしたということであります。だから福祉年金の額からいけば同じことでありまして、現在でも福祉年金は、年金としては三千四百円でしょう。それから拠出のほうは一万円でしょう。福祉のほうは、三千四百円の年金に対して慰安金と称するものが六千六百円なんです。それで一万円になる、こういうことです。一方の拠出のほうは、一万円の年金を出すかわりに、いままで出しておった患者慰安金や不自由者慰安金を全部とってなくしちゃった。これはぐあい悪いですよ。そうではなくて、出すべきものは出して——慰安金出すのには特にそういう必要があって出していらっしゃるんだから、その上に立って、やはり福祉のほうは低いんだから、それに対して特別の考えを持つべきじゃないだろうか。これをいろいろあなたとやっている間に、あなたは制度を変えてやると、こうおっしゃったのです。だからこれは違うのです。こんな残酷なことをやってはいかぬのです。どうでしょう。
  436. 松尾正雄

    松尾政府委員 先生指摘のように、西十四年、四十五年までは不自由者換算でございますとか、三種類、四種類程度のいろいろな加算をもってやっておったわけでございます。しかしながら、らい療養所の中におきます患者さん方の意識というものは、先生承知のように、拠出制あるいは無拠出制という制度があり、しかしながら実際は、拠出制といえども、免税といいますか、掛け金は免除である、実際は無拠出である。要するにそういうお互い同士のバランスがくずれているというところに一番問題が強い、こういうふうにわれわれも受け取りましたし、また、この問題発足にあたりまして、らい療養所方々も含めたらい問題の調査会におきましても、そういう点にむしろ着目をいたしまして、いわばフラットに、一律にやるべきじゃないか。当時は自用費というのが調査会の答申でございましたけれども、そういう観点に立ってこういったものを一本に整理すべきだ、こういう御意見であったわけでございます。したがいまして、そういう両者を含めまして、園内での公平をはかる、こういう意味で——その場合に、将来拠出制障害年金に合わせたい。四十六年度はとりあえず二級の八千円にベースを合わせまして、それをさらに四十七年度においては一級に合わせる、こういうふうな改善をしたわけでございます。私どもとしましては、おっしゃるように、既存のいろいろなものがあったではないかという御指摘は、そのとおりだと思いますが、絶対額におきましても、それを合わせたものよりも四十六年はさらにふえ、四十七年はもちろん一万円あるいは一万一千円という線で十分ふえてきた、こう考えておりますので、患者さん方の当時の希望というようなものにも沿い、かつ拠出、無拠出というものの実体上の差がないにもかかわらず、実体的に差があったということも解決するということで、こういうような制度に切りかえたというわけでございます。
  437. 谷口善太郎

    ○谷口分科員 おっしゃるとおり、全体の合計ではその格差はなくなっている。だけれども、これはまた別な意味の仲間の中の反目が起きていると思う。この年金の額は、福祉にしろ、あるいは拠出にしろ、これは法律できめるんでしょう。慰安金は法的根拠がないでしょう。これは法的根拠なしには——さっき善政ということばを使ったが、気の毒な人たちだから少しでもということで出している。私は、非常にいいと思うのです。これは前にもほめたことがある。だけれども、それをもらっていた人が、今度はなくなった、とられた、そういうのが同じ屋根の下に住んでいる。これは大臣、あなたらしくないと私は思うのですね。もらう金は同じだからいいじゃないかとおっしゃるけれども、いままでもらっておったものがなくなる。拠出のほうは年金額が一万円です。福祉のほうは三千四百円です。同じように慰安金その他を出しておればやはり格差がある。一方をとっちゃって、足りないところを継ぎ足したということになれば、これはそういう意味ではまずいですよ。だから、大臣がおっしゃったとおりに、制度の改正をやる必要がある。これは、国民年金に関連しますから、来年度の国民年金の改正をされるときに、この問題も大臣、ひとつ積極的に取り上げてもらいたいと思いますが、どうでしょう。
  438. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 ただいまお話がございましたのは、先ほど医務局長から申し上げましたように、ハンセン氏病の療養所内の療養者の処遇の総合的なバランスを保つことの観点からの問題というふうに、われわれは従来から記憶いたしております。そういうことで、一万円ということで——一万円というのは、すなわち拠出制障害年金の受給者のもらっております額でございますから、七月から一万一千円になりますけれども、その額は、特殊なものを除きまして収容者の中でのいわばマキシマムの額でございますから、そこに合わせまして、かりに無拠出障害福祉年金をもらっていらっしゃる方々でございましても、残りを、一万円に足りないところを、他の名目で補てんをするということで全体のバランスをとっておる。しかも、拠出制障害年金をもらっていらっしゃる方々につきましては、いまもお話がありましたように、全額保険料免除の方々でございます。したがいまして、これは制度と申しますか、療養所内のいろいろな秩序と申しますか、そういった面から見ましても、こういう形で全体のバランスがとられているものでございますならば、私どもはこれを国民年金の体系の中で取り上げて改正をするということはいかがなものであろうか、やはりこういうかっこうで療養所内のバランスがとれた処遇が行なわれていることがむしろ望ましいのじゃないか、このように考えております。
  439. 谷口善太郎

    ○谷口分科員 私は、大臣お尋ねしているんです。あなた方を無視するという意味じゃないですよ。いまあなたがおっしゃったことをほんとうに開き直って話をしたらたいへんなことになりますよ。この年金というのは、法律で額がきめられているんでしょう。慰安金というのは法的根拠のないものです。しかし、こういうものを出してあげたほうが患者さんに対してよかろうということで、政府としてはお出しになっていると私は思うのです。ところがそれは、全部ごちゃごちゃにして年金額をきめるという意味で——いまおっしゃるのはそうなります。しかし、実際は年金額じゃなくて、全体を合わして、取り分だけは一致するということになっているのですね。そうすると、法的にきめていかなければならぬものと法的根拠のないものとをごちゃごちゃにしている。いまあなたはたいへんなことばを言いましたね。私、言いませんけれども、とにかく、こういう人々に対しては、こんなふうに何かやってもいいんだというような意味のことを言っている。これはあとで速記録を調べます。そうでないと、たいへんなことになります。そういう考え方でこういう問題に対処してはまずかろう。法律できめてやるんだったら、年金額を何とかするという意味で——だから大臣は、制度を変えるということをおっしゃった。大臣、そこに着眼しませんと、こういうわずかな人たちが残って——一万人足らず、八千人くらいだそうでありますが、その中の一部ですから、そういう人に対処するんだから、何か操作したら済むというような考え方はまずいと思う。この点は、年金法の改正をおやりになるときにきちっとやってもらいたいというふうに私は思います。  これはこの前も申し上げたけれども、この人々は、そう言っちゃたいへん悪いですが、いわば科学の未発達時期における被害者であります。現在は、皆さんのほうがよく御承知のとおり、ハンセン氏病にかかりましても、科学の進歩で全く簡単になおる、完全になおるという状況でありますが、未発達時期における被害者は老齢の方が非常に多いのです。そういう人が残っておるのですから、いずれにしましても、これは社会全体の歴史からいったら、アフターケアみたいなものですから、そういう点で、やはりいまやるべきことはきちっとやっておく、これが非常に大事なことじゃないかと私は思うわけです。  私、幾つかあるので、こればかりやっておれませんから、先に進めます。  今度は老人問題に返りまして、老人医療の無料化の問題です。ことしから七十歳以上の方々に、一応の制限はありますけれども、老人医療を無料化するということで相当の予算をお組みになりました。あれは、来年の一月からと書いてありますが、二カ月分ですか、三カ月分ですか。
  440. 加藤威二

    ○加藤政府委員 実施は四十八年の一月でございます。ですから、一月、二月、三月とございますけれども、支払いの関係で、三月分の医療費は新年度になってから払うということでございますので、予算的には二カ月分を見てございます。
  441. 谷口善太郎

    ○谷口分科員 二カ月分としますと、私なんかのしろうとの概算ですから見当になるだけでありますが、政府の持ち分が年間、平年度五百八十八億ということになるようであります。私どもは、今度七十歳以上から無料化するということ、これ自体決して悪いことではない、たいへんいいと思います。しかし、これじゃ実情に合わないんじゃないか。私どもは、できるなら六十歳以上の人たちは全部無料化という政策をとるべきだという考えを持っております。少なくとも六十五歳ぐらいから無料化すべきだというふうに考えておりますが、この点について大臣のお考えを伺いたいと思うのです。
  442. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 その前に、先ほどハンセン氏病の患者さんに対する処遇の統一の問題でございますが、私はこれで、実際上の制度を変えて、でこぼこがないように、内部に不平がないというようになったもの、かように考えております。したがって、この点は御了承をいただきたいと思います。  それから、老人医療の公費負担の点は、いろいろな情勢を勘案をいたしまして、原則として七十歳が適当であるということでただいま予算、それから法律の提案をいたしておるわけでありまして、いまはこれを変えようという考えは持っておりません。ただ、寝たきり老人は少しひどいじゃないかというお話は他のお方からもございました。なるほどこの点は将来前向きに考えてみたらどうであろう。しかしこれは、寝たきり老人のことでありまして、全般的に六十五歳に変えようという考え方はただいまのところ持っておりませんので、御了承いただきたいと思います。
  443. 谷口善太郎

    ○谷口分科員 まさに考え方を持っておられるかおられないかというところに問題があるように私どもは思うのです。大臣承知のとおり、すでに相当地方自治体が六十五歳から実施しているのです。所得制限その他制限の問題ではそれぞれ違いますが、新潟県が六十五歳、これは対象は寝たきり老人と、それから福祉年金該当以下。京都府が六十歳からです。福祉年金該当者以下、これが対象であります。大阪府が六十五歳、これは国民年金の一、二級障害者、ただし七十歳以上は全然制限がない、こういう内容であります。その他島根県、宮崎県、大阪市、神戸市、横浜市、名古屋市、大どころでは実際はみんな六十五歳からなっている。問題は、大臣がおっしゃったとおりにやる気があるかないか、やればやれるということだと思うのです。ここが非常に大事なところでありまして、せっかく七十歳ということで踏み切って今度案を出していらっしゃるのですから、やはり早い時期に六十五歳——私どもは六十歳以上ということを考えておりますが、少なくとも六十五歳以上無料にするという方向にやる必要がある、そういうふうに私どもは主張したいのです。ことしはなるほどやる気はないにしても、ちょっと考えてないにしても、この点は寝たきり老人だけでなくて全お年寄りに対しておやりになることが——福祉国家というのはいまの政府の最大のスローガンじゃないですか。それにはこういう問題では断固とした決意が必要じゃないかというように思うのですが、この点はどうでしょう。
  444. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 政府といたしましてはただいま法案を提出いたしたばかりでございまして、したがって七十歳が適当、こう判断していま提出をいたしておりますので、その法案がまだ通過もしないうちにまた考えますなんてとても言えるものじゃございませんし、私は現在では七十歳が適当である、かように考えておりますので、その点は意見が違いますが、御意見として承っておきます。
  445. 谷口善太郎

    ○谷口分科員 どうもまずい御答弁ですな。御意見として伺っておくというのは、これは総理大臣のことばでありまして、あなたがそのまねをするのはまずいと思うのです。大臣昭和四十五年の人口総数が一億三百三十五万、六十歳以上ですと千百十三万、六十五歳以上七百三十三万、七十歳以上ですと四・二%しかないのです。ですから六十歳以上になりますと二〇%余りになりましてたいへんだと思いますが、六十五歳以上になりますと十二%くらいでありますから、それくらいのことはいまの政府としてやってもやれるのではないかと思うのです。  なるほどことし出したものがまだきまりもせぬ先に次のことを言うのはおかしいということは、一つの理屈はありますけれども、しかし政府の考え方として、その方向を目ざすのも大事ではないかと思うのです。そこらのところをひとつ大臣に特に申し上げてお願いしておきたいと思うのであります。  次に、もう時間がございませんので大急ぎになりますが、さっきおっしゃった寝たきり老人の問題であります。寝たきり老人の数はいまどのくらいおりますか。
  446. 加藤威二

    ○加藤政府委員 寝たきり老人の数は一応三十四万ということになっております。
  447. 谷口善太郎

    ○谷口分科員 特別養護老人ホームの数と収容人員は幾らくらいになりますか。
  448. 加藤威二

    ○加藤政府委員 特別養護老人ホーム数は四十六年度末で二百六十七施設、収容定員が一万八千八百人でございます。
  449. 谷口善太郎

    ○谷口分科員 実は一つ一つお尋ねしたいと思ったけれども、時間がありませんから私のほうで言います。  ホームヘルパーの数が現在六千三百人、ことし厚生省が要求された数が七千九百十八人ですか、決定が六千四百六十人でことし予算が通れば百六十人ふえるということになっておりますが、そうですが。
  450. 加藤威二

    ○加藤政府委員 そのとおりでございます。
  451. 谷口善太郎

    ○谷口分科員 そうしますと、これは聞いてみますと、一人で大体週に六人くらい見て回るという状況のようであります。一週に二回くらい回って六人くらい受け持つ。だから該当老人数の大体五%か六%くらいはホームヘルパーが必要ではないかというのが普通にいわれているあれでありますが、三十四万いるとすればこれは二万人以上いないと困るのですね。現在数がことしの予算が通りましても六千四百六十人ということになりますと、これはとうてい話にならぬ状況なんです。  寝たきり老人の問題は、さっき厚生大臣もおっしゃったように、医療を無料にするという特別な対策をしなければならぬような対象であることはだれでも認めておりますし、地方自治体でもこういう人たちに対して特に無料でやっている府県があることは先ほど申しましたとおりでありますが、そういう人々に対して見舞っていっていろいろと世話をするという人があまりにも少な過ぎるということを大臣は思われませんか、この点はいかがでありますか。
  452. 加藤威二

    ○加藤政府委員 先ほど寝たきり老人三十四万と申し上げましたけれども家庭奉仕員の派遣を考えます場合に寝たきり老人の家庭全部に派遣する必要は必ずしもないわけでございまして、たとえば寝たきり老人でも家族に介護をする者があるというような人たち、あるいはある程度経済的にゆとりがあるというような人たちにまで家庭奉仕員を派遣する必要はないということで、いまこの家庭奉仕員を派遣するのが必要な世帯といたしまして約六万三千世帯でございますが、私どもといたしましてそういう要派遣世帯の把握をいたしております。それに対しまして大体七人に一人ぐらいのホームヘルパーということで、ホームヘルパーの当面必要な数を八千三百四十一人というぐあいに算定いたしております。したがいまして、あと二千人ばかりとりあえず補充するということでございます。それですべて済むというわけではございませんけれども、一応そういう目標でやってみて、その後不足する場合にはまた考えるということで、ホームヘルパーの確保をはかってまいりたいというぐあいに考えております。
  453. 谷口善太郎

    ○谷口分科員 六万三千世帯ですか。そうですが。これは時間があればきちんと詰めていきますが、時間がないから、あなた方のおっしゃるとおりきょうは伺っておきます。三十四万人おるのですね。もちろんおっしゃるとおりに、家族がきちんとあって、裕福に暮らしている方もいらっしゃる。それはあるでしょう。しかし、他の資料を見ますと、そういう人は非常に少ないだろうということは別の資料で、これはあなた方が去年調査された実態調査の中に出ている。数字をあげてやればおもしろいのですけれども、時間がないからやめますが、こんなことではこれは実にぐあいが悪いですよ。だから、これはもっと積極的な対策をする必要があると私どもは思います。  私どもはこういう考えを持っております。いまのヘルパーの月給は非常に安い。これも今度の御要求とずいぶん違っている。要求されたのは私はなかなかいいと思います。今度の要求は見に六万四千七百二十円出せという要求をされた。それが三万七千円に削られた。これは事実ですか。
  454. 加藤威二

    ○加藤政府委員 そのとおりです。
  455. 谷口善太郎

    ○谷口分科員 だから六万四千七百二十円出しますと、これはいろんな方がホームヘルパーになる。特に私どもは、看護婦で実際は潜在して看護婦の仕事をしていない、家庭を持ったり子供をもったりしておるような人なんかでも、まるっきり六万四千七百二十円出さないにしても、パートタイムとしてそういう仕事もあるので、そういう人たちを社会的に掘り起こして、そうして有用に働いていただくという意味からいいましても、この給料をもっと上げれば、いろいろな点で要員が確保できるという条件があると思うのです。ですからこんなふうに、六万三千世帯というふうなそういうみみっちいことを言わないで、他の資料の数字では、こんなことはもうでたらめということがはっきりする。だから、そこのところをやはりもっと積極的に、全体の中で気の毒なひとり暮らしであり、しかも寝たきり老人に対して、国として手厚い保護を与えるという方向をとっていくようにしてもらいたいと思うのです。ただ私、非常に残念ですけれども、時間がございませんから次に入りますが、ひとり暮らしの老人の問題もやはり問題になります。それから介護人の問題なんかも非常に問題になると思いますが、前へ進みます。  老人ホームの個所数なんかをもっとふやしてもらいたいという問題があるわけなんです。大体のいまの状況はどんなふうになっておるのか、お知らせ願いたいと思います。
  456. 加藤威二

    ○加藤政府委員 老人ホームの個所数でございますが、一応四十六年末、先ほどもちょっと申しました特養が二百六十七、それからいわゆる低所得の養護老人ホームが四十六年度末で八百六十、それから軽費老人ホームあるいは世話ホームというのが百二十三、合計千二百五十で、収容人員が約九万人でございます。それで、厚生省といたしましては、一応こういう老人ホームをすべて含めまして社会福祉施設緊急整備五カ年計画というものを立てまして、これは厚生省段階の計画でございますが、一応老人ホームにつきましては、四十六年度を初年度といたしまして、昭和五十年度まで五カ年計画で二千五百カ所ですから、現在あります約倍の施設をつくる。収容人員も約倍の十八万というのを目標に五カ年計画を進めてまいりたいというぐあいに考えております。
  457. 谷口善太郎

    ○谷口分科員 その五カ年計画という問題に話が進みましたから、私はそのことで質問を続けますが、これは閣議決定しているのですか。
  458. 加藤威二

    ○加藤政府委員 閣議決定はいたしておりません。
  459. 谷口善太郎

    ○谷口分科員 つまり厚生省内の試案というものですか。
  460. 加藤威二

    ○加藤政府委員 これは厚生省の案でございますが、大蔵省にもよく話をしてございますし、大蔵省もこれを正式に承認しておるということではございませんけれども大蔵省厚生省趣旨を尊重しながら、こういう老人福祉施設整備というのは大事だということはよく認識されておりますので、好意的に協力してもらえるというぐあいに確信をいたしております。
  461. 谷口善太郎

    ○谷口分科員 何で閣議決定しないのです。これは大臣
  462. 加藤威二

    ○加藤政府委員 こういった社会福祉施設整備計画というものは、一応決定いたしましても、相当流動的な面もございますし、一応私どもは閣議決定をしていただかなくても、これは相当の程度施設整備ができるという気持ちを持っておりますので、いまのところは別に閣議決定をしていただかなくてもこの線で整備をはかっていけるというぐあいに考えております。
  463. 谷口善太郎

    ○谷口分科員 大臣、せっかくこの五カ年計画というものを厚生省は持っていらっしゃるのですから、けちをつけるようでありますけれども、いまの態度はうまくないですよ。なぜ閣議決定しないのです。厚生省がどんな計画を持とうと、大蔵省へ行って話をして、よかろうよかろうというような話になっておったところで——そうもなってないと私は思うのですけれども、いわばこれは試案でしょう、何の権威もないものですよ。これが皆さんがほんとうに確信を持っている計画であるならば、なぜ閣議に出して、国民に発表してこうだということを言わないのです。内部できめて、それでもって何かやれるようなことを言っているはまずいですよ。もっと堂々としたものをこしらえて——厚生省内部できめるのは何でもきめられますよ。しかし、それは何の権威もないものです。だから、やはり閣議で決定するようなことの方向にないとだめなんで、自分のところだけでものをこしらえて、自分のところだけで何か言って何かやろうというのは、そんなのは政治じゃないですよ。さっきのお話の中にもずいぶんそれが出ている。きちんと閣議できめるなり法律できめるなりしていく、そういう計画を出してそしてやらなければだめでしょうが。それはまずいと思う。大臣どうです、閣議決定にする気はないのですか。
  464. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいまのところ閣議決定にいたそうという考えは持っておりません。これから社会福祉全体につきまして、日本の経済全体計画とあわせて検討をしてまいるという段階でございますので、したがいまして、そういう計画とも見合って、社会福祉施設だけでなしに、社会保障全体の総合計画というものを本年中に立てるという約束もいたしております。その中においてさらに検討してまいりたい、かように思っております。
  465. 谷口善太郎

    ○谷口分科員 閣議決定されない、こういうあなた方の試案をごちゃごちゃここで言うたところでしかたがないけれども、しかし、大体のあなた方の考え方はわかるのですね。五カ年計画、昭和四十六年から五十年までです。緊急収容施設というやつは十九万一千人、これは整備費として千八百六十億、これは全体です、施設について。このうち寝たきりが十万一千人です。さっきおっしゃった、三十四万人おる。もちろんその中には、若干部分は家庭で裕福に家族に取り囲まれておる人があると思う。しかし、とにかく三十四万人、それに対して五カ年計画で十万人を海象にやっていこう、その経費が六百五十三億。重度身障者の施設は、対象人員、これが一万六千人です、百七十七億。それから重度心身障害児・者の施設、これが七万四千ですか、整備人員。四百八十三億。その他の施設が五百四十七億、保育所は、三十九万六千人を対象にして五百三十九億。その他三万六千対象等々になっておりまして、総額で三千十億、調整費が五百億ほどかかるから、大体五十年の整備費は三千五百十億ぐらいになるだろうというのが、あなた方のこの案の大綱であります。  それから、この四十七年度にどういうことをやるかということも、ここに書いてございます。これは、私は五カ年計画をお持ちになって、そしてこれが正式に閣議決定し、実際に国民に訴えてこれを実現するという態度をおとりになるならいいですが、それさえなされておりませんから、これを論ずること自体がまずいと思うのでありますが、こういう考え方で計画をお持ちになっておることは、それはいいと思うのです。この間私どものほうの野坂議長から申し上げましたように、社会保障全体で五カ年計画くらい持って、何回か繰り返して、早く欧米に追っつく必要があるということを申しました。そういうことからいいますと、これは去年あたりからやっていらっしゃることだと思うんですが、いずれにいたしましてもこういう計画をお持ちになることはいいと思うのですけれども、それにしてもこれはあまりにもひど過ぎるんですよ。そういう点については、大臣は諸外国と比べてどう考えていらっしゃるか、政治姿勢として私はここで伺ってみたいと思う。これは大臣、知っていらっしゃるでしょう。あなたになってからじゃないですか、この計画は。そうじゃないですか。世界的水準と比べて、この計画はどれぐらいのものだか、それについての大臣のお考えを聞きたいと思う。
  466. 加藤威二

    ○加藤政府委員 外国の例でございますが、いろいろ外国によって違いますが、先進西欧諸国では、六十五歳以上の人口に対して老人ホームのベッドの収容人員の数が、国によって違いますけれども、大体三%から五%くらいだと思います。わが国は家族構成その他が外国と違っておりますので、一応とりあえずこの計画といたしましては、老齢人口の二%程度は老人ホームに収容できるという計画でこの五カ年計画をつくっておるわけでございます。
  467. 谷口善太郎

    ○谷口分科員 ここに経済企画庁の調査局の出した昭和四十六年年間回顧という中で、欧米諸国の福祉水準に達するに必要な日本のほうの投資及び財政支出の試算が出ている。この中には、社会福祉施設の全体でありますから、下水道の問題もありますし、その他住宅の問題等々ありますが、その中で、直接の関係でありますが、社会福祉の関係を見てみますと、アメリカの水準に達するためには二十六兆七千億円、イギリスの場合、二十九兆八千億円、西ドイツの場合は二十六兆七千億円、フランスの場合が十三兆二千億円、スウェーデン——これが一番高いところでございますが、三十六兆四千億、それくらいのものを日本で投資しなければ、ここへ追いつかないというんですね。ですから、皆さんは五カ年計画で三千億円ほどお考えになっていらっしゃるけれども、とてもお話にならぬのです。それなら、これは根本論になりますけれども、いまの自民党内閣では、口を開けば常にもう世界第二の大きな生産国になっているとかなんとか言っておりますし、それから政府の姿勢にしましても、社会福祉国家を目ざすんだということをスローガンとして掲げていらっしゃる、そういう中でありますから、根本的に社会福祉事業の問題については、やはり欧米先進国に追いつくような目標を持って——一挙に五年で進むということは、私どもも考えません。しかし、少なくとも五年単位くらいの計画を持っていって、その水準に早く達するというような計画をつくる必要があると私ども思うのです。そうでないと、これくらいの大きな生産力を持ち、そうして生活状態が非常に近代化されてきて、りっぱな国になったと盛んに言っていらっしゃるのですから、そういう中で社会福祉の問題をこんな貧弱な状態に置いておいてはまずいので、早く先進国に追いつくための計画を持つべきだと私どもは思うのです。計画を持っても、厚生省内部のこっそりしたもので、閣議決定もやらぬというような、そういう態度では何にもなりません。とにかく政府として計画を持つために、厚生省は積極的に働くべきだと私は思うのですが、そういうことについての将来を見通し大臣の大きな抱負というのがおありだと思うのです。お聞かせ願えたらと思うのです。
  468. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 大きな意味におきましては、前からも述べておりますように、いよいよ社会保障という全般に政策を転換していかなければならないときを迎えてきた、かように総理はじめ政府としては考えておるのであります。  そこで、そういった意味において、これからのたとえば五カ年、十カ年の社会保障全体の計画をどういうようにやっていくかという、これを企画庁の全総計画の中において考えてまいりたい、これを考えますのに若干日時をかしてもらいたい、こういうことを本会議においても答弁をいたしておるわけであります。その中において、社会保障の一部分である社会福祉の点も考えていく必要があるであろう、かように考えますので、いま厚生省が持っております五カ年計画ではたして足りるかどうかという点も、ひとつ発想の転換という点にも触れて考え直していく必要があるのではないか、かようにいま思っておるわけでございます。  先ほどおあげになりました欧米の数字並みに日本の社会福祉施設をやるのにどれだけかかるかという、経済企画庁のあれだとおっしゃいました。私それはまだ見ておりませんです。したがって、その数字が的確であるかどうかという点は私疑問に思っておりますが、しかし、必ずしもまだ十全でないという点は十分踏まえておりますので、そういうつもりで前向きに考えてまいりたい、かように考えております。
  469. 谷口善太郎

    ○谷口分科員 もう時間がないそうですから、では、最後に結論を申しますが、実はいろいろ問題点を用意してきたのですが、全く一時間という時間はわずかでありますから、はしょったわけであります。  これは、大臣、私どもの数字じゃないのです。経済企画庁が試算したものです。これが正しいかどうか、私実際やったわけではないから——しかし、実情から申しますと、やはりこういう開きはあるというふうに考えます。これが実行できないような国であるかといいますと、日本は、経済の力から申しましても、必ずできるというように私どもは確信しておる。だから、たとえば長期計画で道路、港湾、空港、住宅、下水なんかも入りますが、ともかく約四十兆円ほどの公共事業を考えておられるようであります。これはだれでも言うことでありますけれども、四次防なんという、ああいうことにばく大な金を使う計画を持つ、そういう日本でありますので、実際に社会福祉を目ざすということになれば、それは一年、二年で直ちに飛躍するというわけにいかぬけれども、しかし、そういう実力があるし、そこにいきませんと、日本経済の将来の見通しにつきましても、ただ外国と貿易をやってどんどんドルをためるというやり方だったら、どういうことになるか。もう去年でよくわかっておる。やはり社会保障や社会福祉あるいは国民生活が基本になるような方向で経済のやり方をやっていくべきであります。その中で社会保障や社会福祉を優先させてやっていくことが、日本経済の将来の見通しから見ましても、発展の方向じゃないかというように私どもは考える。ですから、そういう点でぜひひとつあなたの任期中に、こういう問題は、実際問題として具体的に政府が一歩踏み出すような、そういう活動を始めてもらいたい。そういう点で踏んばってもらいたいと思います。  それじゃ、これで終わります。ありがとう。
  470. 田中正巳

  471. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 私は、水道事業の実態について、若干お尋ねをいたします。  水道事業の背景には、はなはだ緊急を要する問題が山積をしておるわけです。大臣も、厚生大臣は二度のつとめですから、この水道事業については十分御承知と思いますが、きょうは上水道の需給の見通しについて最初にお尋ねをしたい。  いまさら私が申し上げるまでもありませんけれども、全国的な都市化現象、これは農村を含めてでも同じでありますが、生活水準の向上あるいは核家族化、ピルの高層化、こういった社会的あるいは経済的な背景によって、水道用水の需要というものは非常に増大をしてきております。一方、水源開発については膨大な建設費がかかる。したがって、この水道施設もなかなか思うように進んでいない。このままで推移をしていけば、近い将来深刻な水不足を招くことは必至でありますし、もしそうなれば、国民生活に重大な脅威を与える結果ともなるのではないかと心配をしておるわけです。そこで、厚生省は、今後の上水道の需給関係についてどのような見通しを持っているのか、まず最初にお尋ねしたい。
  472. 浦田純一

    浦田政府委員 御指摘のように、全国的な都市化の現象を背景にしまして、水道需要というのは年々急速に増大しております。数字で申しますと、昭和四十四年度における年間総給水量は、九十三億トンでございます。これを将来の見通しを立てますと、昭和六十年には二十百億トンをこえるものというふうに推測されております。したがいまして、長期的な展望のもとに量、質、両面にわたる水道の長期供給体制確立、水道事業の基盤整備としての広域化を推進する必要がある。水源を確保するためには、広域的に多目的ダムあるいは河口せき、長距離導水路等の建設を推進するほか、河州水の総合調整、既存水の合理化をはかるというようなことを講じていかなければならないというふうに考えております。
  473. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 いま四十四年現在で九十三億トン、昭和六十年には二百億トンをこえるであろう、こういう答弁ですから、私は、厚生省としても水源開発、今後の長期計画については、何らかの計画をお持ちだろうと思うのです。おそらく二十五万以上の都市においては、相当ぎりぎりのところまで来ている、こういうふうにもいわれているわけです。この対応策は私は緊急を要するのではないかと思うのですが、具体的な規模あるいは投資内容について、どういう構想、想定を計画されておるのか、伺いたい。
  474. 浦田純一

    浦田政府委員 水道整備事業の性質上、従来から厚生省は十年あるいは二十年先の長期的な見通しのもとに、数次にわたりまして、具体的な計画といたしましては、とりあえず五カ年計画というふうなことで整備を進めてきたところでございます。現在は、昭和四十六年を初年度といたしまする五カ年計画を事務当局といたしまして一応試算いたしまして、その数字によりますと、その計画の中には、いわゆる水源開発、それから広域化といったような事業を含めまして、これらの総投資額といたしましては、約二兆円をこえる数字を試算として得ておるのでございます。
  475. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 現在、昭和四十六年度を初年度として五カ年計画を試算しておる、これはいつから具体的に実施されるのですか。
  476. 浦田純一

    浦田政府委員 従来厚生省限りでこのような長期計画を策定してまいったところでございますけれども、昨今のことに水需要の非常な増大、それから水源開発がますます困難度を加えるといったような諸情勢をも勘案いたしまして、さらにこれを強固な基礎において整備を促進したいということで、できれば長期計画を政府における意思決定として、いわば政府の公式の計画として進めたいということで、現在できるだけ早い機会にその長期計画を策定するということで、関係各省との間で協議を開始したところでございます。
  477. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 いまあなたから答弁がありましたように、水需要の増大については、厚生省としても数年前から長期計画をどうしようかということで検討をしておったことでしょう。先ほども答弁がありましたように、水の需要というものは、相当将来膨大なものになってくるわけでしょう。それでできるだけ早いうちにという答弁ですけれども、これだけ国民生活に重大な影響のある水資源の確保あるいは上水道を含めた水問題について、できるだけ早い機会という答弁では、私は納得できない。厚生大臣、いまの答弁は非常に消極的な答弁といいますか、私は納得できない。水については、政府は非常に関心が薄いと思う。厚生大臣は、この水の問題については非常に造詣も深いし、意欲を持っておられるということで、私も期待をしておったわけだ。それがいまだにこの長期計画は部内で立案をされて、できるだけ早い期間ということは、一体どういうことなんですか。こういうことでは、私は近代国家としての認識に欠けておると思うのです。それでなくても、この水問題はおくれているんじゃないですか。これは厚生大臣、ひとつはっきりと御答弁願いたい。
  478. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私は、関係省庁との調整を早くとりまして、本年度内にぜひ計画を樹立して、来国会にお目にかけるようにいたしたい、かように考えております。
  479. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 ぜひともいま御答弁がありましたように、ひとつ答弁どおりの計画が決定されて施行されるように、私は強く御要望申し上げます。  それから、上水道に対する現在の補助制度につきまして、若干お尋ねをしたい。  御承知のように、簡易水道については四分の一の法律補助ないし三分の一、十分の四、これは地方自治体の財政状態によってそう変わっておるわけですね。水道水源開発等の設備について、これはダムですが、三分の一、広域水道施設には四分の一の予算補助といいますか、任意補助になっておるわけですね。ですから、法律補助じゃありませんので、大臣も御承知のように、この予算の関連で、特にダムについては膨大な建設費がかかるし、その算定基準に基づいた金額を満度に充当するということは、これまたなかなか困難だ。この際、予算補助を一歩前進させて、今後法律補助制度にすべきでないか。これは、実際担当する地方自治体にとっては、財源難ということで非常に頭の痛い問題なんです。さりとて住民の要望が強いということで、これはぜひともそういった方向にするのが私は筋ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  480. 浦田純一

    浦田政府委員 水道の国庫補助に対する考え方でございますが、水道は、公共性を確保しながらも独立採算性によるべきであるという一部での強力な御意見もございます。しかしながら、現実に水源開発その他に困難度が加わってまいりますことからかんがえてみまして、特に高い料金というふうなことも考えられる事態が生じておりますので、これらの現実を踏まえまして、やはり建設費に対して事実上の予算上の措置として国庫補助をとってまいったところでございます。  これを法制化するかどうかという問題でございますが、いままでの補助金の伸びは、先生御案内だと思いますが、毎年七〇%台の高率の伸びでもって推移してきているところでもございます。私どもは、もちろんこれが制度として法律の根拠を持つということについては、ベターということでよしとするところでございますけれども、しかし、現実の問題といたしましては、やはり適正なる料金が維持されるように財政的な援助というものが実効あるようにしていくということが第一じゃないかということでもって現在までつとめてきたところでございます。  なお、料金の問題につきましても、また諸般の水道の将来の建設計画につきましても、現在関係の審議会でもって、いろいろとこちらのほうから御諮問をお願いいたしまして、御審議願っておるところでもございます。したがいまして、これらの結論も待ちながら、また関係省庁とも十分に協議しながら、この問題については考えてまいりたいと存じております。
  481. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 大臣、いまの局長の答弁では、私はちょっと納得できない。この水源の確保あるいは水道諸施設整備拡充については、非常におくれておるし、そのままほうっておけない問題です。非常に緊急性もある。ですから、いまの水道料金を上げればいいじゃないかということもありますけれども、やはり非常な高額な、ばく大な工事費がかかるということで、少なくともここに予算補助あるいは任意補助ということになっておるわけですから、どうせ補助しようという国の姿勢がある以上は、ここで前向きに法律的にきちっときめておくのが筋ではないか。ですから、予算補助もしない、あるいは任意補助もしないというのであればこれは別ですけれども、現在それはやっておるわけですね。ですから、いまの水の資源ということから、国民生活に非常な影響のあるダムの建設については、一歩進めて法律補助とすべきではないかというふうに私は考えるのですが、大臣いかがですか。
  482. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、水道の五カ年計画を決定いたします際に、いまおっしゃったことも踏まえて建設資金をどう調達をするか、国庫補助をどうするかというようなことも、できたらひとつ一緒に法律できめてもらうようにいたしたい。それについてただいま関係審議会に諮問もいたしておりますので、その答申を踏まえまして、できたらひとつ来国会には提案のできるような措置をとりたい、かように考えております。
  483. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 時間の関係ではしょって質問をしますけれども、いまの水源の問題、まあダムですけれども、これは大臣も御承知だと思いますけれども、多目的ダムについては、洪水調節は国のほうでやっておる。発電については電力会社、上水道については地方自治体。これは一例を申し上げますと、ある都市では八十五億の金がかかるわけですね。それでは地方自治体が幾ら負担しているかというと、約四三%、三十四億数千万円かかる。ですから、これも五カ年で支払わなければならぬということになりますと、実際問題として地方自治体にすれば、住民の要望が多いし、道路、下水とたくさんあるわけですね、せめてもダムについては国でやってもらいたい。これは率直な声だと思うのです。それは一挙にできないと私は思いますから、一挙にいかなければ、現行制度の補助率を、三分の一ですけれども、一歩進めてこれは四分の三に引き上げるのが妥当ではないかと思うのですが、大臣、いかがでしょうか。
  484. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 これは自治省の地方財政計画とも関連をいたしますので、補助率を上げるかあるいは起債についての援助の道を開くか、これらは自治省とも相談をしてまいらなければならぬと思いますので、一方的に補助率の引き上げだけにたよるというのもいかがであろうかという感じもいたします。そういう点も踏まえて検討させていただきたいと思います。
  485. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 自治省との関係もあろうかと思いますけれども、ひとつぜひとも前向きでこの問題に取り組んでいただきたい。これは強い要望を申し上げておきます。  それから、先ほど来私が申し上げましたように、簡易水道あるいは広域水道については、法律補助あるいは予算補助等もございます。しかし、これ以外の一般水道施設整備については、御存じのとおり、予算補助も法律の根拠もないわけですね。それで各都市の水道事業というものは、実際問題として拡張事業費の財源をどうするかということできゅうきゅうとしておるわけです。したがって、財源の問題は解決できない。したがって水道料の値上げということになる、こういったことで、生活用水確保のための水道施設の建設、改良事業等についても、独自で先行投資があるわけですね。たとえば取水さらにまた浄水施設、それからへんぴなところに水道も引かなければならぬ、不採算地域に対する配水管布設等を、相当先行投資として住民本位の立場からこれはやらなければいかぬ、こういうことから推して、国が都市政策の一環として、ここで国民の飲料水を確保するという立場からでも大幅に何らかの助成を考えるべきではないかと思うのですが、いかがですか。
  486. 浦田純一

    浦田政府委員 御指摘のように、現在に至りましては上水道ということがいわばナショナルミニマムとして最重点的に確保されなくてはならないという理念は、すでに生活環境審議会のほうからの中間報告としても明瞭に打ち出されているところでございます。したがいまして、将来の需給計画を十分に見通しながら、水道整備の最小限の確保ということについては、絶対に実現してまいらなければならない問題だと思っております。  御指摘の、一般水道に対する補助の件でございますが、確かにいまは補助対象にはなっておりません。しかしながら、これは一方では水道の事業の性格から見まして、いわゆる適正料金ということの考え方とも相関連する問題でございます。これらにつきましても、もう一つの例を申しますと、地域的な料金のかなりのアンバランスという問題もございまして、生活環境審議会のほうでも、この点も含めまして御検討願っているところでございます。私どもは、結論からいきまして、できるだけ料金の高騰を防ぎながら、水道財政の健全化、また料金格差の是正というところで対処していくように関係当局とも十分に協議してまいりたいと考えております。
  487. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 局長から非常に前向きな答弁があったのですが、厚生大臣から再度、この問題は非常に重要な問題でございますので、御答弁をいた、だきたい。
  488. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいま局長が述べましたとおり私も考えております。先ほどからも再三申しておりますように、そういう姿勢で臨みたいと思います。
  489. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 大臣、これは日本国内におきまして水道事業に対する関心といいますか、重要性といいますか、そういう世論が非常に盛り上がってまいりましたし、この水道事業に対する厚生省としての姿勢と申しますか、取り組み方と申しますか、そういったことでやはり強力な一つ体制というものをつくるべきではないかと私は思います。現在企画指導機関としての水道課というものがございます。しかし、水道事業の重要性という立場からも、また水道事業が発展をして、そしてまた万全を期するという意味におきましても、この際積極的な姿勢というものが必要ではないか。そういう意味で将来、現在の水道課を水道部にすべきではないか。これは大臣、われわれもバックアップしますから、ぜひともこの点についてそういう姿勢というものを示してもらいたいと思うのですが、いかがですか。
  490. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私も同様に考えまして、四十七年度から実施をいたしたい、かように思って提案をいたしたのでございましたが、諸般の関係から今年は見送りということになりました。来年はぜひ水道部への昇格といいますか、設置を実現いたしたい、かように考えております。
  491. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 いままでだんだんの御質問を申し上げてまいりましたけれども一つ問題がございます。と申しますのは、水道資源の水質汚濁が最近非常に進行してまいりました。したがって、この水源の質的な価値が非常に低下をしてきているわけです。そういう現象が起こってまいりましたので、ある地域では給水を停止する、さらにまた、取水の制限を行なっているというところも出てきておるわけです。ですから、この水道資源の安全確保という問題については、厚生省としても真剣になってやはり対策を講じ、しかるべく対処しなければならぬと思うのですが、現在どういう状況になって、どう対処するおつもりなのか、御答弁をお願いしたい。
  492. 浦田純一

    浦田政府委員 御承知のように、水道資源としての原水の水資汚濁が非常に進んでおりまして、これは、私は御指摘のとおり非常に重大な問題だというふうに受けとめております。これは利用する水道側から、先ほど申しましたいわゆるナショナルミニマムとしての水道水を確保するという側から、環境の汚染のこれ以上進むということについては厳にひとつ対策を講じてもらいたい、また積極的に水源の汚染を防除し、さらに昔の清流に戻すという努力をしてもらいたいということでもって、関係各省のほうに強く要望しているところでございます。  また、水道自体の立場からといたしましても、取水前の段階において何らかの規制をすべきではないかということを検討しておりますが、幸いにも、これにつきましては、昭和四十五年の四月二十一日の閣議決定でもって、これは公害対策基本法に基づくものでございますが、原水の環境基準というものがきめられておりまして、これに関しましては一応この環境基準を守っていただければよろしいのではないかと考えております。  また給水の水質、これにつきましては、ただいまさらに検査項目あるいは規制項目を検討すべきではないかということでもって、技術的な検討を進めておる段階でございます。
  493. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 先ほど来数々質問申し上げてまいりましたけれども、水道整備五カ年計画の早期の実施、それから水道事業に対する補助の問題等を質問申し上げましたが、水道事業の重要性については、今後ともひとつ積極的な厚生省の姿勢を期待をいたしまして、私の質問を終わります。
  494. 田中正巳

    田中主査 以上をもちまして、昭和四十七年度一般会計予算及び昭和四十七年度特別会計予算中、厚生省所管に対する質疑は一応終了いたしました。  次回は、明二十三日、木曜日、午前十時から開会し、経済企画庁所管について審査を行なうこととし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時四十九分散会