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1972-04-03 第68回国会 衆議院 予算委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年四月三日(月曜日)     午前十時八分開議  出席委員    委員長 瀬戸山三男君    理事 大坪 保雄君 理事 佐々木義武君    理事 田中 龍夫君 理事 二階堂 進君    理事 細田 吉藏君 理事 阪上安太郎君    理事 辻原 弘市君 理事 鈴切 康雄君    理事 和田 春生君       足立 篤郎君    相川 勝六君       愛知 揆一君    赤澤 正道君       荒木萬壽夫君    植木庚子郎君       小川 半次君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    仮谷 忠男君       川崎 秀二君    笹山茂太郎君       正示啓次郎君    田中 正巳君       中野 四郎君    灘尾 弘吉君       丹羽 久章君    西村 直己君       根本龍太郎君    羽田  孜君       橋本龍太郎君    福田  一君       松野 頼三君   三ツ林弥太郎君       森田重次郎君    渡部 恒三君       渡辺  肇君    大出  俊君       小林  進君    楢崎弥之助君       成田 知巳君    西宮  弘君       原   茂君    細谷 治嘉君       安井 吉典君    横路 孝弘君       相沢 武彦君    大久保直彦君       貝沼 次郎君    竹入 義勝君       林  孝矩君    樋上 新一君       渡部 一郎君    河村  勝君       小宮 武喜君    佐々木良作君       東中 光雄君    松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 前尾繁三郎君         外 務 大 臣 福田 赳夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 高見 三郎君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  田中 角榮君         運 輸 大 臣 丹羽喬四郎君         郵 政 大 臣 廣瀬 正雄君         労 働 大 臣 塚原 俊郎君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣         北海道開発庁長         官       渡海元三郎君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      竹下  登君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      中村 寅太君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      木内 四郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 江崎 真澄君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      木村 俊夫君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大石 武一君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛施設庁長官 島田  豊君         防衛施設庁総務         部調停官    銅崎 富司君         防衛施設庁労務         部長      安斉 正邦君         法務省刑事局長 辻 辰三郎君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省条約局長 高島 益郎君         大蔵省主計局長 相澤 英之君         大蔵省理財局次         長       小幡 琢也君         文部省大学学術         局長      木田  宏君         文部省管理局長 安嶋  彌君         通商産業省企業         局長      本田 早苗君         郵政省電波監理         局長      藤木  栄君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 四月三日  辞任         補欠選任   川崎 秀二君     丹羽 久章君   野田 卯一君     羽田  孜君   松浦周太郎君     赤澤 正道君  三ツ林弥太郎君     渡部 恒三君   渡辺  肇君     草野一郎平君   安宅 常彦君     横路 孝弘君   小林  進君     成田 知巳君   西宮  弘君     大出  俊君   大久保直彦君     貝沼 次郎君   正木 良明君     渡部 一郎君   矢野 絢也君     竹入 義勝君   小平  忠君     佐々木良作君   塚本 三郎君     河村  勝君   谷口善太郎君     松本 善明君 同日  辞任         補欠選任   丹羽 久章君     川崎 秀二君   羽田  孜君     野田 卯一君   渡部 恒三君     松浦周太郎君   大出  俊君     西宮  弘君   成田 知巳君     小林  進君   横路 孝弘君     安宅 常彦君   貝沼 次郎君     大久保直彦君   竹入 義勝君     樋上 新一君   渡部 一郎君     相沢 武彦君   河村  勝君     塚本 三郎君   佐々木良作君     小宮 武喜君   松本 善明君     谷口善太郎君 同日  辞任         補欠選任   相沢 武彦君     正木 良明君   樋上 新一君     矢野 絢也君   小宮 武喜君     小平  忠君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十七年度一般会計予算  昭和四十七年度特別会計予算  昭和四十七年度政府関係機関予算  国政調査承認要求に関する件  小委員会設置に関する件      ————◇—————
  2. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これより会議を開きます。  昭和四十七年度一般会計予算昭和四十七年度特別会計予算昭和四十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  本予算委員会審議期間を通じまして、各般の問題について内閣総理大臣責任を問われてきましたが、この問題に関連して野党各党に不満を生じ、委員会審議停滞していることはまことに遺憾であります。  この際、審議最終段階においてあらためて責任問題についての総理のお考えを述べられるよう望みます。内閣総理大臣
  3. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 内外の時局はきわめて重大であります。このときにあたり、四十七年度総予算審議中に種々の批判を受ける事態を招いたことにつきましては、まことに遺憾であります。政府責任者として深く責任を感じております。各党の本件に対する御意向はよく承知しております。国民生活に重大なる影響を持つ予算案成立に対し、この上とも御協力を切にお願いいたす次第であります。   〔「さっぱりわからぬよ」と呼び、その他発言する者あり〕
  4. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 この際、成田知巳君、竹入義勝君、佐々木良作君より発言を求められております。順次これを許します。成田知巳君。
  5. 成田知巳

    成田委員 総理のただいまの所信表明に対しまして、日本社会党立場から党の見解を申し上げたいと存じます。  国民はすべて、きょう総理所信表明の形で、事実上いままでの施政責任をとって退陣の意思を表明されるものと考えております。これは当然のことであり、国民の期待と理解は当然のことだと私は考えます。それだけに総理も、いまの所信表明をお聞きしてもわかるのでありますが、その表現にたいへん苦労され、種々配慮を加えられたことは理解できないわけではありません。しかし、いま述べられた所信表明は、まことに抽象的であり、総理心境が端的に表明されたとは理解できません。抽象的なことばを好んで使う人は、その人が心にもない絵そらごとを言う場合か、心の中にあるほんとうのものを隠すときだ、こういわれております。私は、総理がそのような意図でことさらに抽象的なことばをお使いになったとは考えたくありません。したがって、私は、ただいま総理発言の文脈、その行間にあるものを客観化し、合理的に常識的に理解、解釈しながら、現在の政局に処する総理態度はどうあるべきか、これについての私たち見解を明らかにしたいと思います。  ただいまの所信表明を通しまして、万が一にもそのようなことはないと思いますが、政府自民党内部で往々見られるように、もし総理が、今日の政治停滞混迷、これが沖繩返還に関する極秘文書、この問題から起因するのだ、このようにお考えになっておるとすれば、これほどはなはだしい民主主義の欠如、判断の誤りはないと思います。ましてや、この秘密文書が暴露されましたその究明と処罰に問題をすりかえて、問題の核心、その本質を国民の目から隠蔽しようとするようなことは絶対に許されないと思います。これは総理も同感だと思います。もちろん外交交渉にある程度秘密が伴うことは当然でありますが、その秘密は、国益を守るための秘密、また相手方に対する正しい意味での信義を守るための秘密だと思います。  今回の秘密取りきめの問題については党の見解を後ほど申し上げますが、一言にして申し上げますと、今回の秘密取りきめは、民主主義の大原則である国民の知る権利を侵したことはもちろんでありますが、日本国益をそこない、沖繩県民を含めて日米両国国民ペテンにかけた反民族的な、反国家的な取りきめであって、これを外交秘密の名において国民の目から隠蔽することは絶対に許されないことだ、これをまずお考え願いたいと思います。  佐藤総理、きょうあなたが所信表明をなさるにあたって、政権の座にあなたが最初つかれてから今日までのあなたの施政あとを静かに振り返って見られたことがあるでしょうか。佐藤内閣七年有半の間に、世界は、ドル問題、中国問題、ベトナム問題等で大きくゆれ動きました。このことは、戦後のある一つ時代がまさに終わろうとしておるとき、新しい時代幕あけが始まろうとしておるとき、こう考えていいと思います。その間、この時代の大きな変化に正しく対処できないばかりか、この歴史の流れに逆行した政策をとり続けてきたのが佐藤内閣であります。現に日本アジアの平和に欠くことのできない日中国交回復をあなたは阻害し続けてきました。いまや佐藤内閣のもとで日中国交回復実現は決定的に不可能になっております。日韓条約を締結することによって、朝鮮民族の悲願である南北朝鮮の統一を阻害しております。また、あのきたないアメリカベトナム侵略戦争に直接、間接手をかして、内外の平和を願う人々から強い指弾を受けておるのも佐藤内閣であります。国民福祉を無視した大企業中心高度経済成長、それと輸出第一主義、そのために都会の過密、農村の過疎を生んでおります。この日本列島を人も動物も住めないような公害列島にしようとしております。物価のとめどもない上昇、過剰生産円切り上げから来る深刻な不況、いわゆる不況物価高の同時存在という最悪の経済状態をもたらしております。  その間、あなたは、数々の公約違反少数意見を無視した強行採決に次ぐ強行採決、これによって議会制民主主義を危機的な状況におとしいれております。この平和と民主主義を否定し、国民福祉を犠牲にしたあなたの政治路線が生んだ多くの矛盾、多くの悪が集中的にあらわれたのが、いまあなたの言われた今国会における国会のこの状況の具体的なあらわれであります。  好んで法治国家を口にし、国民に法を守れと説くあなたが、日本軍国主義復活を目ざして、法律を犯してまで第四次防予算先取りをやろうとしたではありませんか。平和と民主主義を願う地域住民の願いをじゅうりんしまして、立川基地への自衛隊抜き打ち派遣を強行しました。また、歴史的体験から自衛隊派遣に強く反対している沖繩県民の心情を無視して、自衛隊物資沖繩へのやみ輸送をやりました。論言汗のごとしといわれておりますが、台湾帰属問題で昨日発言したことをきょう取り消すという、一国の総理としてはとうてい考えることのできないような無定見ぶりを発揮しております。国会の混乱、政治停滞国民政治不信の進行は、すべて佐藤総理、あなたの責任であります。  特に、今回、わが党横路君の手によって明るみに出されました沖繩返還交渉での密約存在は、わが党が早くから指摘してまいりましたように、アメリカの圧力のもとで、あの危険な屈辱的な沖繩返還協定が締結されたという驚くべき事実を示したものであります。この一事をもってしても、もはや佐藤内閣は一日も政権の座にとどまることは許されないと思います。もし総理政治家としての一片の良心があるならば、直ちに辞意を国民の前に明らかにすべきであります。  総理は、今日まで重大な失態があるたびに、責任を感じておる——いまもそう言われた——こう釈明されてきたのでありますが、実際に責任をとる行動は一度もしていないではありませんか。行政府与党自民党最高責任者である佐藤総理が、このように国会国民に約束したことを弊履のごとく投げ捨てて、てん然としていて、どうして国民政治に対する信頼をつなぎとめることができるでしょうか。総理が一日長く政権の座にいることは、政治混迷をそれだけ深め、政治不信をそれだけ強めることであります。反対に、総理が一日早く退陣することは、混迷した政治に明るさと活力を与え、政治への信頼を取り戻す道だと思います。  総理は、責任ある総理立場として、いつやめるかなどとは言えないといままで言い張ってこられましたが、このことばは、普通の政治状況のもとでの総理ことばとしては通用するかもわかりませんが、現在の、いまのあなたの口にすべきことばでは絶対ございません。今日の総理としては、むしろ一日も早く退陣決意とその時期を国民に明らかにすることが、総理としての責任ある態度だと思います。(拍手)  総理は、やるべき仕事が残っておるとも言われました。しかし、いまの佐藤内閣でやるべき仕事とは一体何ですか。一体何がやれるとあなたはお考えになっているのでしょうか。国民が、総理にやれる仕事、やってもらいたいと期待しておるただ一つ仕事は、総理が一日も早く職を辞するということであります。(拍手)  現に、多くの世論調査にもありますように、佐藤内閣に対する国民支持率は戦後最低ではありませんか。野党はもちろんのこと、自民党内部においてすら、某有力者は、その時期の当否は別として、予算成立後直ちに辞職すべしと公然と総理退陣を求めているではありませんか。また某有力者は、佐藤内閣政治生命は衰退したと、こう指摘しております。総理みずから退陣決意をなすべきときが来たと言っているではありませんか。  いまや佐藤内閣退陣を求める声は、全国民的な声、国民的なコンセンサスとなっております。もし総理が、この国民の声さえ無視して政権の座に居すわることがいまもって正しいとお考えになっておるとするならば、それは童話に出るあの裸の王さまであります。童話の裸の王さまは風刺であり、喜劇でありますが、佐藤総理が裸の王さまになることは、日本にとってこの上もない大きな悲劇だということをお考え願いたいと思います。(拍手)  総理は、政治に小休止なしと好んで口にされますが、総理がその職にあることこそ、政治の大休止につながることを冷静に反省していただきたいと存じます。  所信表明の直接の契機をなした沖繩返還交渉秘密取りきめについては、引き続き同僚議員より質疑が行なわれることになっておりまするので、私は簡単に見解を明らかにしたいと思います。  今回の秘密文書は、沖繩返還協定でわが党議員が指摘したように、VOA、極東放送財政措置、軍用地復元補償問題、久保カーチス協定などに多くの密約存在することを、一点の疑いの余地もないほど明らかに示しております。沖繩国会同僚議員の質問に対し、この事実をそらぞらしく否定してきた総理関係閣僚は、国会を欺き、国民を欺いたものであって、その責任はまことに重大だと言わなければなりません。(拍手政府は、秘密電文の示す事実は、これは認められました。認めながらも、それは交渉の過程にあった事実であって、結論とは無関係だと強弁されておりますが、現に電文に示されたようなこの交渉の事実が、そっくりそのまま結論になっているではありませんか。このことは、秘密交渉の事実と結論の間に動かすことのできない因果関係があることを示すものであります。(拍手)もし政府結論とは無関係と言われるならば、その理由、その根拠を、事実に基づいて国民の前に明らかにする義務があると思います。挙証責任は、まさに佐藤総理、あなたにあるのです。問題は重大であります。特に、国会をだまし、国民をだました秘密交渉ででっち上げられた沖繩返還協定に基づいて、予算案には一億ドルの対米支払いが計上されております。第四次防先取り予算は、政府みずから修正されましたが、この一億ドル、少なくとも問題の肩がわり費用四百万ドルは、当然減額修正されるべきものであります。(拍手)  立つ鳥あとを濁さずとのたとえのとおり、総理は、予算案衆議院通過までに、本問題にまつわる一切の国民の疑惑を一掃するために全力を尽くすべきであります。  予算の一日も早い成立をこいねがう総理心境はよくわかりますが、本問題は、それ以上に日本政治外交根本にかかわる問題であります。総理の善処を強く要望いたします。  以上、私は、総理所信表明に関連し、私の率直な見解を明らかにしましたが、冒頭申し上げましたように、私は今回の所信表明を合理的に、常識的に解釈して、それは総理退陣決意表明だと理解することが正しいと考えております。そして総理が、きょうの所信表明に基づいて一日も早く退陣され、総理の言う発想の大転換を文字どおり行動に移されんことを心から願って、私の発言を終わります。(拍手)  なお、委員長にこの際、一言申し上げます。  きょうの予算委員会の私の発言は異例なことですが、各党打ち合わせのもとに総理所信表明、私たち意見開陳、こういうことになっておりますので、それにとどめましたが、もし総理が私の言ったことに対してどうしても承服できない、こうお考えになるならば、総理反論を私は喜んでお聞きしたいと思います。と同時に、その反論に対して私の反論を許していただくことを委員長に心からお願いして、私の発言を終わります。(拍手
  6. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 次に、竹入義勝君。
  7. 竹入義勝

    竹入委員 私は、ただいまの総理所信表明につきまして、一言私の見解を申し上げたいと思う次第であります。  私は、政治家として最も大切なことは、国民に対して責任を持つということ、そしてまた政治家としてのモラルとまた将来を洞察する能力、これが政治家にとって一番大切な要素ではないか、このように考える次第であります。特に、責任をとるということ、そしてまた将来を洞察するという洞察力、これは内閣総理大臣としての不可欠の要素ではないか、このように私は考えるわけであります。  本日、異例といわれる予算委員会におきまして佐藤総理を目の前にいたしまして佐藤総理政治責任を指摘しなければならない、このようなこと自体、今日の政治があまりにもマンネリとそして無責任の極に達しておる、私はこのように思うわけでありまして、まさに政治が来るべきところへ来てしまった、このような感慨を深くするものであります。  佐藤総理、もしあなたが内閣を代表する総理大臣として国民に対してすべての責任を負う、こういう自己に対してきびしい政治姿勢を貫かれていたとするならば、今日のような悲しむべき不幸な事態には立ち至らなかったであろう、こう私は思う次第であります。総理の進退につきましても、われわれの要求によるものではなくして、みずからの良心に基づいてすでに決断されていただろうと私は思うのであります。  ところが、佐藤総理、あなたは、国民がトカゲのしっぽ切りと言うように死屍累々たる閣僚の首切りが示すように、自分の政治責任をひたすら回避することに終始してきた。まさに一将功成って万骨枯る、このようにいわれておりますけれども、佐藤内閣万骨も枯れ、また一将も決して功をおさめたとわれわれは考えられません。最長不倒記録内閣の陰に、国民の苦しむ声が聞こえてくるような気がするのであります。  あなたが総理になられた昭和三十九年十一月、第四十七国会で行なったあなたの所信表明の基調は、高度経済成長至上主義を反省して福祉優先を唱え、人間としての生活向上発展をはかることが社会開発であり、経済成長発展社会開発を伴うことによって国民福祉と結びつくというあなたの発言でありました。このことばは、まことにりっぱなことばであったと思うのであります。  しかし、七年余の間に、このあなたの決意は一体どのような形で実行されたでありましょうか。消費者物価の安定、住宅難の解消、生活環境施設等社会資本の整備あるいは地域開発の促進、社会保障の拡充、教育の振興等、あなたが掲げた国民への約束は何一つ解決されていないと言っても言い過ぎではないと思うのであります。いまや事態は一そう悪化し、深刻化して、国民生活の上に重くのしかかっているのであります。  この公約違反だけでも、すでに内閣の二つや三つはとっくに交代してよいはずだと私は思うのであります。また、平和に徹するという外交の基本も、日米安保体制に基づく日米軍事複合路線の中で軍事増強政策を強化し、アジア諸国のみならず欧米からも、日本軍国主義の芽ばえを憂えられているのが現状ではなかろうかと思うのであります。  七年余にわたる佐藤内閣の失政は、最近一年の国際社会政治経済両面にわたる激動の中でさらに顕在化したと思われます。佐藤総理能力限界が鮮明になってきたのではないかと思われるのであります。中国の国連代表権問題あるいは国際通貨問題は、まさにあなたの将来を予測、洞察する能力が欠如していたことを示すものではないかと思われるのであります。  また、第四次防衛予算先取り問題は、シビリアンコントロール最高責任者である総理が、みずからそのシビリアンコントロールをじゅうりんし、しかも未曽有予算削減という失態に追い込まれたのであります。しかもその政治責任総理は回避し、また台湾帰属に関しては閣内不一致の醜態をさらけ出したのであります。一国の指導者発言は、万釣の重みを持たなければならないと私は考えております。本予算委員会における発言を、党内事情にせよ、みずからの手によって修正するという愚をおかしたのであります。  外務省秘密電報によって判明した沖繩返還交渉の実態に至っては、もはや言語道断というべきでありましょう。沖繩国会における政府答弁が、その場ごまかし国民を愚弄するものであったことは、すでに明かになったと思うのであります。このような状態をはたして国民は許すでありましょうか。佐藤総理国民不在政治姿勢国会軽視、対米追随外交方針が余すところなく示されたものとわれわれは受け取らざるを得ません。この問題の責任は、外交には一部の秘密と妥協があることもわれわれはよく承知をしておるつもりであります。しかしながら、この事の性質から見まして、アメリカ側要求云々よりも外交限界を越えた姿勢をおおい隠すため、国会国民を欺瞞した政府姿勢というものは決して許されるものではないと思うのであります。  これら個々の事例は、これ自体きわめて重大であると思います。どれ一つをとってみても、佐藤総理がすみやかに退陣しなければならないものばかりであろうと思うのであります。これらの失態はまことに重大でありますが、それよりも重大なことは、それを収拾するにあたっての政府姿勢が、国民に対し責任を痛感し、責任をとるというのではなくして、ただ国会対策、そして現状を糊塗し、その易しのぎの小手先に終始してきたということであろうと思うのであります。端的に言うならば、責任回避こそ最大の問題であるということであります。この態度は、極端な言い方をいたしますと、政府は何をしても国民に対して責任をとらなくて済むのだという前代未聞の悪例をつくったことにほかならないのであります。  このような態度と、そして今日のこの事態は、議会政治の根源的な破壊に通ずると私は思うのであります。国民政治不信はますます激化し、そしてまた今後ともこのような状態が続くならば、全く政治信頼されないという最悪の事態をつくり出すことは、佐藤総理も御承知のとおりであります。またさらに、このような状態でいけば、日本の将来をまことに危うくする、まことにおそるべきものであろうと私は思うのであります。  佐藤総理、あなたに必要なものは、ただいまの所信表明にもございましたけれども、責任を痛感するというこの空虚なことばではなくして、責任をとるための決断と具体的な行動ではないかと思うのであります。その決断と行動、それのみが、あなたにとって国政を本来のあるべき姿に戻し、国政のバックボーンを立て直すためのただ一つの道であると私は信ずるのであります。  伝え聞くところよにりますと、総理は、沖繩返還こそ総理政治生命である、返還期日までは石にしがみついてもやめないのだ、それを花道にするのだという話が伝えられておりますけれども、それは佐藤総理個人がみずからの花道をつくるため、政治を私していることであろうと思うのであります。国民は、このような総理のお考えについて、これは絶対に許さないと思うのであります。  総理がいま総理としてなし得る、またなさねばならない最大の政治的決断は、何よりも、みずからが責任をとって辞任する、この事実により、政治の厳粛さを身をもって国民に示されること、それが唯一の、しかも最大のあなたに残された仕事であると私は強く申し上げたいのであります。  私は、佐藤総理大臣が、政治は何たるかの原点に立ち返って、すみやかに退陣されんことを心から願い、要求をいたしまして、私の見解の表明を終わりたいと思います。(拍手
  8. 瀬戸山三男

  9. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 総理政治責任に関します御所見を承りました。私は、総理政治家として発言されましたこの内容をきわめて重大に、率直に承っております。しかし、それはそれといたしまして、この際、民社党を代表して、私は若干の意見を申し述べさせていただきたいと思います。  成田竹入委員長からも御指摘のとおり、国民政治に対する不信感はいま日増しに高まりつつあるように考えます。これはきわめて重大でございます。国民政治不信は、言うまでもなく、政治国民の願望にこたえないところから起こるものであります。私ども野党もまた、国会を通じまして政治に参画いたしておるのでありますから、この問題に対して、野党としても責任を十分感じておるものであります。しかしながら、国民の要望にこたえる政治は、だれよりもまず、三百名の大きな議席、絶対多数を擁しておられる自民党並びにその政府が、その責務を果たされなければならぬことは言うまでもございません。  佐藤総理、先ほど来お二人からも御指摘がありますように、私は、この際まず、政権担当の初心に返られまして、当時総理みずから国民に約束せられ、またみずから実施せられようとした政治目標が、この八年間の実績を通じてどれほど実現をし、そして何が大きく残ったか、約束が違ったのは何であったかということを、率直に反省なさることが必要かと思います。  重複を避けるために、内容は省略させていただきます。しかしながら、少なくとも当時、総理国民の期待にこたえる形で経済成長のひずみを云々されて、人間尊重の政治を公約されました。そして、総理の最も有名なことばに、台所の主婦に不安を与えるようでは政治存在しないのだ、こういう姿勢物価問題への取り組みの姿勢を公言されたことは、私もなおいま耳に、はっきりと残っておるところであります。また、いずれの国とも仲よくする外交方針をたびたび繰り返されまして、決して向米一辺倒の姿勢をとらないということも言明されました。けれども、いまや物価の高騰は国民最大の怨嗟の的であります。中国との国交正常化は、へたをすると世界の中でも一番おくれた国になりそうな状態になっておることは事実であります。  私は、これらの問題解決のために、総理が努力されなかったと言うのではございません。あらゆる努力を傾注されたでありましょうこと、それから、やろうと思われたでありましょうそれらの意図を、私は決して評価しないものではございません。しかしながら政治は、その施政者の主観的な意図や努力に対してではなく、その結果に対して明らかに責任を負わねばならないものであります。政治に携わる者が、国民に対して言うことと行なうこととが異なるところに国民政治不信の根源があることを、総理はこの際あらためて反省さるべきであると存じます。そして、政治国民信頼を回復させるための第一着手として、まずみずからその責任を明らかにする意味において、繰り返されるとおり、私は進退を明確にされんことを望むものであります。  政治不信の第二の問題として、国の最高機関としての国会の権威について触れたいと思います。  率直に国民感情を見ることが必要だと思いますが、いま国民の目に国会はどのように映っておるでありましょうか。国会もたよりにならぬという実感の中で、国会の機能低下と権威の失墜が次第に濃厚に国民の目に焼きつきつつあるのではありますまいか。もしそうであればまことに重大であります。そしてその原因は、言うまでもなく、国会国民の期待する活動をしないからであります。国会で真実が語られ、対策が真剣に協議されないからだと思います。国会で真実を披瀝するのが政府のつとめであることは言うまでもございません。しかしまた、真実が語られなかったところに今回の密約説問題が起こったことも事実であります。  失礼でありますけれども、小林前法相の暴言に見られる佐藤内閣国会軽視態度が、国会の機能を低下させ、権威を失墜せしめる結果に結びついておることも多言を要しないと思います。相次ぐ大臣の放言問題が、佐藤内閣の議会政治に対する姿勢を明らかに物語っております。佐藤内閣のこの問題についての責任は、あまりにも明確だと思います。議会制民主主義は、みずからの権威保持のために、適切なる政権交代の原理を内蔵していることに思いをいたされまして、政治家としての御善処を総理に対して切望するものであります。  さらに第三に、最近の綱紀、官紀弛緩問題、行政の責任回避の風潮は目に余るものがあることを指摘せざるを得ません。それは、国鉄や郵政の事業現場に集団の行き過ぎや暴力行為を生み、経済官庁に堕落や腐敗を助長し、議会政治べっ視の官僚姿勢さえ芽ばえさせながら、国民に対し政治への不信感を植えつける大きな役割りを果たしつつあります。私は、これに大きなる責任佐藤内閣は持っておられることを指摘せざるを得ません。  総理は、たびたび行政改革に対する熱意を公約されました。しかしながら、いまやそれどころか、佐藤内閣は行政官僚に対する指導力さえ喪失しつつある観を呈しております。今回の極秘電報漏洩事件は言うに及ばず、四次防問題をめぐる数々の事柄、沖繩への物資輸送問題の動機や責任のとり方、さらに、御両氏からも御指摘がありましたように、中国問題についての、特に台湾の法的地位に関する国会答弁に対する圧力らしきものなどから、このような行政部内の傾向を感じ取るものは私だけではないと存じます。みずからの行政官庁に対する指導力を疑問視されるに至れば、もはやその内閣は末期症状そのものだと存じます。この辺に敏感な佐藤総理が、このような現状に目をつぶられるがごときは、まさに自己否定そのものであります。総理は、御自身の決断に時期を失しられてはならないと存じます。  沖繩返還の行事も、後継者問題も、他の重要な案件の処理も、佐藤総理の決断をおくらせる正当な理由にはなり得ないと存じます。総理という役職は果てしのない重要案件の処理が連続しておるものでありますから、私は区切りというものがないと思うからでありまするし、また、現在の日本政治が直面している基本的な政治姿勢を改めるために、総理の決断はすべてに優先されて行なわれなければならないものであるからだと存じます。  すでに昨年の夏以来の世界情勢の激変は、佐藤内閣が惰性的継続をしてはならない情勢を明確に示しておると存じます。政治に対する人心一新のためにも、新情勢に対応する新しい施策実施のためにも、この際政治責任を明らかにされる形で、総理が御善処されることこそ最も必要なことだと信じます。総理の早急なる決断を心から切望いたしまして、発言を終わります。(拍手
  10. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これより沖繩返還に伴う諸問題に関し、質疑を行ないます。  質疑の申し出がありますから、順次これを許します。安井吉典君。
  11. 安井吉典

    ○安井委員 この予算委員会は、二月の初め、札幌オリンピックのときに始まり、無慮六十日間、もういまは桜が咲いて散ろうとしております。散りそうで散らないのが佐藤内閣、こういうことではないかと思います。私は、きょう佐藤総理所信表明があるといわれるから、日本人らしく桜の花のいさぎよさで、はっきりとした御決断を伺えるものと期待をしておったが、まことに残念です。ただ、成田委員長が意見があったら論争しようという、そういう提案には応ぜられなかったから、あの表明に対して、こちら側の表明に対して善処をされるお気持ちであると思い、そのことだけを期待をしておきたいわけであります。  この間の沖繩国会をはじめ、今日までの国会沖繩問題の質疑応答の中で、私どもは、今度の横路君が提示したあの電報によって、いかにもうそばかりを言われてあの協定の審議をし、それを強行採決されたのだと、こういうことを知るに及んで、怒りに燃えております。私どもはこの際、そういう問題点をはっきりさせていただかなければならぬと思うわけであります。  時間が十分ありませんから、具体的な点についてまずお尋ねをしてまいりたいと思いますが、FEBC、いわゆる極東放送の問題につきまして、沖繩国会の、ここの国会における論議の中で、私情や情実にからんだ交渉ではないかということを、繰り返し質問を展開したわけでありますが、そういうことはないとの御答弁、ところが今度の電報の中では、ニクソン大統領の一族にかかわることでもありと、明瞭にその辺の事情を示しているわけであります。ぬけぬけとこの国会の場を通して政府はうそを言ったのではないかと私どもは思うわけであります。このような状況のもとで、極東放送はいま白紙に返すべきではないか、かように思うわけでありますが、この点は総理並びに外務大臣からも御答弁をいただきたいと思います。
  12. 福田一

    福田国務大臣 沖繩には米系企業というのがたくさんあるわけであります。その米系企業は、原則としてこれを存続させる、こういう方針をとった。これは、米系企業は沖繩においてそれなりの社会的な活動をしておる、また貢献もしておる、こういうふうに考えたからであります。ところが、その中に御指摘の極東放送というのが一つあるわけなんであります。これはわが国の放送行政から見ますと問題がありますので、特に、この放送につきましては制限を加えてしばらくこれを行なわしめる、そういうことにした。つまり、この極東放送というものは、英語の部分につきまして五年間許します、そういうふうにしたわけであります。日本語放送につきましては、これと直接の関連はありませんけれども、財団法人極東放送というものを設置いたしまして、これは日本の法令によってこれを管理する、こういうふうにした。で、アメリカ側では、これはマイヤー大使がわが国に対しまして、わが国が途中の段階で、もう一切これは日本の放送行政の関係上許すことができないのだ、そういうような主張をしたことに対しまして、これは極東放送の主宰者はニクソン大統領のおじさんでしたか、に当たるものでありますので、それを他の米系企業が存続するのに、この企業だけまあここで廃止させられるということは遺憾であるというような態度をとりました。それが電報に出ている。しかし、そういう私情でこれを解決したわけじゃないんです。他の企業が全部存続させられますと、そういう際に、極東放送だけはそういう非常にきつい制限を加えて時限的に五年間の英語放送を許しますと、こういうふうにいたしましたので、私情は一片も差しはさまれた解決ではない、かように御理解願います。
  13. 安井吉典

    ○安井委員 外務大臣、それではまたうその上塗りみたいなことにならぬですかね。私はその点をたいへん心配します。この問題は協定特別委員会大出君がやりとりをして、だいぶ時間をかけて総理や外務大臣と話し合っておりますので、後ほど大出委員からの関連質問をお許しいただいて、その際にもっと話し合っていただきたいわけであります。私どもは、いまの御答弁では納得できません。  対米支払い三億二千万ドルの問題であります。この問題につきまして、沖繩国会予算委員会で私が一番初め取り上げて質問をいたしたわけでありますが、これにつきましては、例の三公社等の資産承継分、それから労務費の分、それは積み上げ計算で、七千万ドルは高度の政治判断による核抜き費用等だ、こういうふうなことで三億二千万ドルが計上されたのだと、かような御答弁をいただいていたわけであります。  しかし、今度のあの電文から類推する限りにおきましては、三億二千万ドルというのがまずでき上がって、それをいかに割り振るかは日米間でよく打ち合わせ、議会説明の食い違いがないように、よけいなことはお互いに言わないようにしよう、こういう念の入った両国の裏約束までが明白になりました。つまり、三億二千万ドルを先に大づかみできめておいて、その割り振りはあとで適当にということが明確になって、私どもはこの間の国会では全くうそを言われていた、かように断ぜざるを得ません。  とりわけ、高度の政治判断ということばを、この間の沖繩国会じゃ七千万ドルの核抜き費用についてお使いになっていたが、この間の横路君の外務大臣に対する質問の中では、三億二千万ドルそのものが高度の政治判断と、高度の政治判断がもっと上のほうについた御答弁がこの間あったわけであります。私はそれは全く話が違う、かように思うわけであります。ここで、積算根拠のあるものは何と何なのか、国会にいつでも報告をしてもらえるような積算根拠のあるものは何と何なのか、それをまずお答えいただきたいと思います。外務大臣。
  14. 福田一

    福田国務大臣 これは相手のある交渉でございますから、なかなか御希望のようなお答えができませんが、米側は非常に多額な要求をしたわけです。私は当時大蔵大臣でありましたけれども、なるべく少ないほうがいい。私は国費をこの問題でなるべく少なく済ませるほうがいい、こういうふうに考えて、当時の愛知外務大臣にその旨をお願いしておったわけなんです。  そこで、忘れましたが五月のある日だったと思います、総理からお招きがあった。そうすると愛知外務大臣もおられる。その席で、きょうは予算というか、アメリカに支払う額をきめたい、まあ愛知外相の交渉によって大体煮詰まってきた総額は三億三千万ドル、大蔵大臣として了承願いたい、こういう話なんです。  そこで私は、大体中身はどういうふうに説明できるんですかと言うと、全体としてはこれははっきりした中身というものはない。ないが、一応の理解としては、一億七千五百万ドルが資産の承継であります。それから七千五百万ドルが労務費に相当する。一応です。あと七千万ドル、これを積み上げなければならぬという状態になりました。そこでまあ三億二千万ドルと、こういうふうになります。それじゃ七千万ドルはどういうんですかと言いますと、これは中身は実はないんだけれども、まあ核の問題がある。また、この七千万ドルの計上によりましてアメリカは、一九六九年、総理が大統領との間に約束をいたしました沖繩の核抜きの問題、これを条文に書くことを認める、こう言っておる。それからさらに、米軍は今後続々と引き揚げていくことになりましょう。その引き揚げに際しまして、多額の軍事投資がある、投資財産がある、それも無償で置いていくんです。そういうようなことを考えておるわけでありまするが、はっきりしたこの積算の中身というものはありませんと、こう言う。  そこで私は念を押したんです。この七千万ドルというものが、まあいろんな中身が入りましょう。入りましょうが、しかしこの七千万ドルというものが承認されるならば、ほんとうに協定の中に沖繩の核撤去というものが入るんですか。核抜きということはこの交渉の最大の眼目である。ほんとうに協定の中に一九六九年のあの核抜きの問題が挿入をされる、つまり核抜きが協定化されるということになれば、これはわが国としては重大な問題である。そこで私は、大蔵大臣としてけちんぼうな立場に立たなきゃなりませんけれども、七千万ドル上積みに対しましてこれを了承します、そういう経過で三億二千万ドルというものがきまった。  いま、アメリカとの間に、その内訳についてどうのこうのというお話がありますが、これは、きまりますと両方の国会に協定を付議しなきゃならぬ。その際に食い違いがあっちゃいけませんから、その点がないようにという配意をいたした。これは私は当然のことじゃないか、そういうふうに考えます。
  15. 安井吉典

    ○安井委員 いまの御答弁でいろいろ言われますけれども、私の疑念を全く晴らすような御答弁になっていないと思います。その積算の根拠があると称せられる資産買い取りや、あるいはまた労務費等のきちっとした資料を、あらかじめこれはぜひお願いをしておきたいわけであります。  それからもう一つは、高度の政治判断ということばです。これは政治家政治判断ということばを使うときには、何か問題をこうごまかそうとするときに使うわけであります。何かどろどろしたものが、この七千万ドルの高度の政治判断という中で一緒くたになってきめられたのではないか。そのどろどろしたものの中に、例の四条三項の請求権の四百万ドルも入っていて、だからこそ高度の政治判断と、そういうようなことばが使われたのではないかと私は思うのでありますが、どうですか。
  16. 福田一

    福田国務大臣 高度の政治判断と申しますのは、まあ沖繩の返還というものはこれは国民的の願望である。特に沖繩県民百万の方々は、もう一刻も早く返還することを期待しておる。そういう際にまあ金銭上の問題が起こった。これが多少のことで違いの点が論議される。そういう際に、どういう選択をするかという際におきまして、まあそのささいの違いのためにこの返還交渉がおくれる、そして百万県民の、また一億国民の期待を裏切るようなことがあってはならない。まあなるべく少ないがいいが、同時に沖繩返還というものが早くきまることがいい。それには、初めはアメリカ側は多額の要求をした。それがとにかく三億二千万ドルまで下がってきた。この辺で妥結をするということが、大局的な政治判断といたしましてまずまず妥当じゃないか。それをさしまして高度の政治判断である。まあ大きな額からだんだんだんとおりてきたのですから、したがって、中身がどうのこうのということは、これはなかなかむずかしい問題でございまするけれども、しかし、この辺で総額として手を打つということが政治上妥当な処置ではあるまいか。このことをさしまして、私は高度の政治判断として三億二千万ドルを決定した、こういうふうに申し上げておる。
  17. 安井吉典

    ○安井委員 総理は、三億二千万ドルの説明を受けた際に、いま私と外務大臣とのやりとりの問題について、どういうふうに考えておられましたか。
  18. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま、当時の模様を外務大臣から詳しく申しまして、私からつけ加えることございませんが、最初の出が出でございますから、三億二千万ドルまでよく下がった、その辺で話をきめる、それは適当だろう、かように私は政治的に判断をいたしました。
  19. 安井吉典

    ○安井委員 問題点がはっきり浮き彫りにされるようなお答えではないのが、私、残念です。  そこでこの請求権の問題につきまして、アメリカ側が、財源の心配までしていただいてまことに感謝にたえない、こういうふうな意味のことを言ったということがあの電報の中に書かれているわけであります。あの協定の四条三項の中に、アメリカの「自発的支払」ということばが使われているのは、一体どちらのほうがそういうふうな表現を言い出したのですか。そしてこの支払いにつきましては、一体だれがどのようにしてだれに払うのですか。ここで正確なお答えがなければ、あとで資料でもけっこうですが、それをお答えいただきたいと思います。
  20. 福田一

    福田国務大臣 ただいま申し上げましたようないきさつで、三億二千万ドルというものが大体日米間で合意された、内合意されたわけです。かたがたわが国といたしましては、請求権問題、この処置をアメリカとしてとってもらいたい、こういう要求をいたしておったわけでありますが、なかなかアメリカとしてはこれに応じない。非常な抵抗を示しておったわけでありますが、三億二千万ドルというものがとにかく一応きまった、そういう時点とあるいは並行しておったかもしれませんが、日本側の立場も考慮する、そういうようなことで復元補償、また法令に基づく補償、そういうものに応じましょう、こういうことになったわけであります。特に最終的段階に至りまして復元補償の問題に応ずるという態度を示した、こういうふうに御理解願います。
  21. 安井吉典

    ○安井委員 いろいろ御説明はありますけれども、この三億二千万ドルの積算の問題につきましては私ども納得できません。とりわけこの請求権の四百万ドルは、高度の政治判断ということばと、それからいまのこの電文とを照らし合わせてみますと、これがわからないのですよ。だから私は三億二千万ドルを向こうに払ううち、昭和四十七年度予算ではとりあえず一億ドル、つまり三百八億円の予算計上を、いま私どもが審議しているこの予算案の中にあるわけであります。三百八億円、少なくもその中において四百万ドル相当分は、もう少し問題が明確になるまで保留するか一応削るか、そういうふうな措置が必要ではないかと私は思うわけであります。どうですか。
  22. 福田一

    福田国務大臣 安井さんのお話を伺っていますと、三億二千万ドルというものが最終的に積み上げ積み上げてきまったのだ、こういうことで、その中でわが国が四百万ドルの財源提供をしてアメリカに復元補償のお願いをしたのだ、こういう前提のようであります。しかしそうじゃないのです。三億二千万ドルというものがきまりまして、そしてその三億二千万ドルの両国の説明をどういうふうにするか、こういう過程のいろいろな議論があったわけであります。三億二千万ドルというのは、高度の政治判断といたしまして、もう早く沖繩問題を決着をつけるためには三億二千万ドル、総額だ、こういうことでなければならぬ、こういうことで三億二千万ドルがまずきまっておるのです。その中に四百万ドルというものがあって、その四百万ドルが財源提供になっておって、アメリカに復元補償をお願いした、こういうことじゃない。これは、うしろに愛知当時の外務大臣もおられますが、非常によく承知されており、私もそう承っておる、そういうことであります。
  23. 安井吉典

    ○安井委員 四百万ドルに当たるアメリカの補償の支払い、これはアメリカが補償対象者に直接払うわけでしょう。それは、いつ、どういうふうにして支払われますか。
  24. 吉野文六

    ○吉野政府委員 お答えいたします。  これは四条の議定書に書いてありますとおり、特別の委員会をつくりまして、それが申請を受け付けまして、それを判断して、四条三項に従いまして、すなわち、その前に払いました、これと同等の性格を有する復元補償、それと均衡を失わないように支払う、こういうことになっております。
  25. 安井吉典

    ○安井委員 私が伺っているのは、いつ、だれが、どこで払うのか。その点の御説明がありませんよ。
  26. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これは、その委員会ができまして、そして申請がありまして、その場で、その委員会を通じて裁定していくわけでございます。したがって、その裁定が下りましたらそれによって支払う、こういうことになるわけでございます。
  27. 安井吉典

    ○安井委員 だから、それはいつかと聞いている。
  28. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これは、いまわれわれとしては、その委員会が早くできるように先方に催促しておりますが、何せ先方もいろいろの準備の都合上、まだその日は言えないと言っております。しかしながら、いずれにせよこれは、先方が行政裁判的な委員会をつくるわけでございますから、そしてそれに申請してそこで判定する、こういうことになるわけでございますから、したがって、その判定が下らないと支払うわけにはいかないわけでございます。
  29. 安井吉典

    ○安井委員 アメリカ予算の中から払われるわけですね。
  30. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これは、いまだどういう形の予算で、あるいは先方の会計法上の手続で支払われるかわかりませんですし、また、われわれとしても特に関心がない次第でございます。御存じのとおり、四条三項によりまして先方が支払うことはこれは確実でございます。したがって、それがいかなる手続によって支払われるか、これはわれわれとしてはいまだ確認することはできませんです。  御存じのとおり、四条三項にも書いてありますように、講和前の復元補償の一部はすでに支払われているわけでございます。これとの均衡をとって支払う、こういうことになるわけでございますが、このすでに支払われた一部の復元補償につきましては、これは軍の一般の経費から支払われた、こういうふうにわれわれ理解いたしております。
  31. 安井吉典

    ○安井委員 日本政府に関係がないとは一体何です。これは総理、それでいいのですか。県民のたった一つの補償らしきものとしてあらわれているこれですよ。それが、いまの答弁は何です、これは。日本政府に関係がない、アメリカと県民との間で何とかやるだろう。しかし、その財源はめんどう見ていただいてありがとうとアメリカは言っているのですよ。一体何です、これは。
  32. 福田一

    福田国務大臣 いま吉野局長が、わがほうで関係がない、こう申し上げましたのは、まあいろいろのことを申し上げておりますが、要するにアメリカ政府がこれは支払うのです。その支払いの方法、これは従来は軍の予算の中から払っておる。あるいはそういうふうにするかもしらぬし、あるいは別な方法になるかもしらぬ。その支払いの方法ですね、予算のどこにこの科目が組み入れられるのかということについては、これはアメリカの問題であってわがほうの関知するところではない。わがほうの関知するところは何であるかというと、この支払いが、協定に従って着実、適正に行なわれることである、こういう趣旨のことを申し上げたので、御理解願います。
  33. 安井吉典

    ○安井委員 それなら、アメリカが支払うまで、アメリカ予算措置がどうなっていて、それが現実に被害に適合するものであるかどうかということ、それを確認するのがほんとうの親切な日本政府のやり方ではないですか。木枯し紋次郎じゃあるまいし、私に関係がありませんなんというようなことで済まされる問題じゃありませんよ。そんな態度だから、沖繩の県民がとりわけこの請求権の問題で不満を持っているのですよ。私はそう思う。これはそんないいかげんな態度でやってもらったら困る。それから四百万ドルの財源の問題もある。これは後ほど、いろいろ検討している楢崎君や横路君も関連して質問があると思いますから、私はこれらについてのはっきりした見通し、そういうようなものを、やりとりの時間がきょうあまりないのですよ。ないものですから、資料として御提出をいただきたい。特に労務費の問題についても同様に、その点をひとつお願いをしておきます。  久保・カーチス取りきめの問題でありますが、この問題につきましては、昨年の六月三十日の沖繩・北方特別委員会で、これは単純な政府間の協定であり行政協定に準じたものだ、こういうふうな御答弁があった。これは楢崎議員に対する答弁です。そのほかいままでもしばしば、これは全く事務的、技術的な問題だ、こういうふうな御答弁であったのでありますけれども、この電報を見る限りにおきましては、アメリカのほうでは、両政府間の確認を必要とするということを繰り返し繰り返し言っている。つまり、政府間協定という高いレベルのものであるという、そういうようなものが明らかにされている。その点も、裏の話し合いと国会の表の答弁とがだいぶ違うのですよ。その点も、私どもは非常に不満な点だと思って指摘しておきたいのであります。  私は、いまの電報その他の中から類推できることは、この取りきめは、日本ではなしにアメリカ側の強い要求によって結ばれた協定であるということが一つ。それから、単なる事務的、技術的な協定ではなしに、両国の政府間協定という性格を持っているのだということ。それから三番目には、これは全く両国が議会対策として、アメリカはこの協定を非常に重いものとして見ようとし、日本政府日本国会対策としてできるだけ軽いものだという扱いをしようと、同じ協定について、両方に食い違ったそういう解釈をしてこれを結んだのだというふうなこと。私はこの三点を、今度明らかにされた電報の内容から類推することができるわけであります。  ですから私は、アメリカの発意で結んだなんというのは、こんなおかしな話はありませんよ。やはり日本の国防会議で明確にして——今度の国会は、四次防で国防会議問題がずいぶん取り上げられたじゃないですか。国防会議に討議した上で明確にすべきだということが一つと、それからもう一つは、国会の議決を経べきものだということです。まだ時間があるわけです。とりわけ新聞によりますと、三月二十七日カーチスあてに修正に関する覚書を久保局長から送っておりますね。修正の問題もあるわけですよ。ですから、いまここでやはり国会に付議するということを政府は言明していただきたい。国防会議に付議するということと、国会にかけるということと、これををひとつお約束願いたいわけであります。総理、どうですか。
  34. 福田一

    福田国務大臣 いわゆる久保・カーチス取りきめといわれるものの性格でありますが、これは沖繩が今度本土に返ってくるということになりますと、沖繩に対しましてわが国政府としては防衛の責任を持つわけであります。その責任に基づきまして自衛隊を駐留せしめる、こういうことになる。そうすると、あそこには米軍もなお駐留をいたしておるわけです。その間の調整をどういうふうに、日米安全保障条約、保障体制、そういうものがありますから、そういう調整をどうするかという問題があるわけである。そこで、この自衛隊の派遣等につきまして米軍当局と話し合いを行なう、これはもう当然なことだろう、こういうふうに思います。その話し合いの結果を個条書きにしてある、こういう性格のものであります。  しかし、この本質論を申し上げますと、そういうものであって、書いてある文言が、両国政府のいずれに対しましても権利義務の関係を発生するという性格のものではないのです。これは正式の政府間協定とか条約だとかそういうものと非常に違っておる点でありまして、したがいまして、私どもはこれは行政上の措置であり、これを国会の御承認を要するものとは考えておらぬ、こういうことであります。  国防会議の点につきましては、防衛庁のほうからお答え申し上げます。
  35. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 ただいま外務大臣から答弁があったとおりであります。交渉の経緯においてアメリカ側のいろいろな見解があったとしましても、私ども、まさに前任者から引き継ぎをし、沖繩国会等において御答弁申し上げてきたあのことばには誤りはございません、私どもは、いま外務大臣が申し上げたとおりに受け取っておるわけであります。  国防会議につきましては、総理の言明によりまして、沖繩に配備する実人員、それをどういう形で行なうか、この具体的な原案を現在設備中でありまして、すでに国防会議の事務局の参事官会議等においてはいろいろ議論をされておるところであります。順に従いまして、最も早い機会に国防会議の正式の議題に供して決定をいただきたい、かように考えております。
  36. 安井吉典

    ○安井委員 国防会議のほうはわかりましたけれども、国会議決の問題については、私はもう少し明確にしていただきたいことを要求しておきます。  なお、大出君から関連質問があるそうですから、ちょっとお許しください。
  37. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 大出君、横路君及び楢崎君より関連質疑の申し出がありますが、安井君の持ち時間の範囲内において順次これを許します。大出俊君。
  38. 大出俊

    大出委員 どうも沖繩国会は、質問した野党の議員諸君がほとんど総理以下各大臣にみごとにだまされた。ところが、最もみごとにだまされたのは、大出君、おまえだというわけですから、まず私から総理に質問を申したいわけであります。  まず、昨年の五月二十八日に、総理大臣、あなたは愛知外務大臣並びに郵政大臣が同席の上で、極東放送についての交渉の進展ぶりについて報告をお受けになった。受けておりますな。——時間がございませんから、なるべくイエスかノーかでお答え願いたいのでありますが、この外務省がお認めになっている公電によりますと、これは五月二十八日であります。本大臣より今朝総理に対し、郵政大臣同席の上交渉進行ぶりにつき報告するとともに、というところから始まりまして、この中で郵政大臣はFEBC、つまり極東放送について米側の譲歩をきわめて強く求めた。これは総理のおいでになる席上であります。あなたがおいでになったんだから報告をお聞きになったんでしょう。いかがですか。
  39. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりだと思っております。
  40. 大出俊

    大出委員 総理がお認めになったわけでありますが、この米側に譲歩をきわめて強く求める、これはこの席における政府の方針であります。同じ日に愛知外務大臣とマイヤー大使の間における交渉が行なわれました。この席上で、この公電にございます、先ほど安井さんから指摘をいたしたとおりでありますが、極東放送、FEBCはニクソン大統領の一族にかかわることでもあり、郵政大臣が同意されないことはまことに残念であると述べた、こうなっておりますな。いま福田外務大臣が安井質問に対しまして、極東放送はニクソン大統領のおじさんでございますか、この方が主宰者であるから、認めないというのはまことに遺憾であるというお話がマイヤー氏からあった、こういまお認めになった。総理、これは公電に載っておるのでございますから、あなたは御存じでございましょう。
  41. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも具体的に記憶が非常にはっきりいたしませんけれども、とにかく先ほど外務大臣が答えたように、日本語放送と外国語放送、その二つに分けてのいろいろ議論をしたことは、もうそのとおりでございます。
  42. 大出俊

    大出委員 ほかのことを言っているのじゃない。ここで明確になっておりますように、米系企業が幾らたくさんあったって、ニクソン大統領のおじさんが主宰しておるなんという企業は幾つもあるわけじゃない。どうも明確になんてことをあなたはおっしゃるけれども、議事録がとられて、公電にちゃんと組まれて、牛場大使あてに打たれていて、あなた同席をして報告を聞いておられて、特殊な例じゃないですか。知らぬとは何ですか、あなた。
  43. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 知らぬと言っておるわけじゃないのです。記憶がはっきりしない、こう言っておるのです。
  44. 大出俊

    大出委員 記憶がはっきりしないが、知らぬと言っておるのじゃない。じゃ、知らぬと言っておるのじゃなければ知っておることになるじゃないですか。知っているんだということになると、これは事重大な問題です。あなた昨年の国会で、しゃあしゃあとしてここに立っておった。しゃあしゃあとして、そうでしょう。  その前に福田さん、あなたに聞いておきましょう。あなたも昨年は全く知らぬとおっしゃった。いまあなたは安井さんの質問に、マイヤー氏がこう言った、あっさりお答えになった。そうすると、あなたは昨年は知っておったが言わなかった。つまり、結果的にはほんとうのことを言わなかった、こうなりますな。
  45. 福田一

    福田国務大臣 昨年お尋ねを受けたときには、全然そういうことは承知しておりませんでした。
  46. 大出俊

    大出委員 それじゃ、あなたにもう一ぺん念を押しましょう。時間がありませんから簡単にお答えください。あなたの私に対する答弁は、いいですか、外国の権益を扱うという問題の一環として、極東放送については非常にデリケートな問題があった、こういうことを聞いております。極東放送について非常にデリケートな問題。そうなると、非常にデリケートなんという問題は、口からそう出るもんじゃない、私とやりとりしておったって。あなたは詳細には知らぬにしても、ニクソンさんの親戚、これは私が指摘している。あなたは非常にデリケートな問題だと私にお答えになっている。議事録に明確です。あなたが概略聞いていないはずはないじゃないですか。大臣ですから詳細は別だ。答弁し直してください。
  47. 福田一

    福田国務大臣 私は就任直後、これは昨年の七月ですが、外務当局から沖繩交渉の概要の説明を受けました。そのとき、この極東放送というのはニクソン大統領の縁辺の者が関係しておるのですよ、こういう話は聞いた。しかしマイヤー大使、つまりアメリカ側から、極東放送、これをカットする、これはけしからぬと言っておるという話は聞いておらなかった。そういう状態大出さんの質問にお答えをした、こういうふうに御理解を願います。
  48. 大出俊

    大出委員 そうなると、これはまるっきりあなたはうそを答えたことになる。私は事こまかに、ニクソン大統領のC・マーシュバーンというおじさんがおる。しかも、極東放送の副社長のブロンソンなる人に具体的に聞いてもらった電文まであなたにお見せした。いまあなたの答弁によれば親戚がいる、そこまで聞いておった。マイヤー氏が言ったことは知らなかった。あなたが親戚があるのを知っておったら、私がその点を質問したのに、親戚がおる点だけはあなた答えたらいいじゃないですか。何で答えなかったのですか。それならば知っておってうそを言ったことになるじゃないですか、あなたは。
  49. 福田一

    福田国務大臣 私はたいがい正直に答えるのですよ。ですから、いまさだかにその当時の質疑応答を覚えておりませんけれども、私はその質疑応答にとにかく率直にお答えしておる、こういうふうに私は考えております。
  50. 大出俊

    大出委員 外務大臣、いまあなたはたいがい率直に正直に申し上げる。そうなると、たいがい率直に正直に申し上げる、ちょいちょいそうするとうそを言う、そうでしょう。これはあなたはここまで言っている。非常にデリケートな問題が極東放送についてはあった。そこであなた先ほどあっさりこれをお答えになったから、いまになればお認めになったわけですな。いまあなたは私に答えて、ニクソンさんの親戚があることはあなたは知っておったと言う。知っておって知らぬと言ったんだからうそでしょう。うそを答えた、その点お認めになりませんか、もう一ぺん。
  51. 福田一

    福田国務大臣 私は、いまも申し上げましたように、相当率直に答えるほうなんですよ。ですから、そのお尋ねがどういうことであったんだろうか、それをいまさだかに覚えておりませんものですから、私のその答えが、私の心にないことを答えたのかどうか、その辺私も返答できませんけれども、そういうことはよもやあり得ないと、心ひそかにいま思っておるわけでございます。
  52. 大出俊

    大出委員 どうもあなたはだいぶつらい答弁をされておりまして、たいがいはほんとうのことを言うんだけれども、ちょいちょいうそを言う。そのちょいちょいのほうはつけなかったけれども、結果的にそうなる。きょうは十五分しかないですから、あなたがうそを言ったということがはっきりすれば、それで私も気が済むけれども、国民諸君もだまされたんだから、国民諸君もあなた方がうそを言ったんだということがはっきりすれば、それでいいと私は思うが、あとのことがあるから申し上げておく。  私が、現地沖繩でマスコミ三社の中心の方々に会った。民政府から言われた。あなたが幾ら政府に陳情してもだめですよ、極東放送はニクソンさんのおじさんが主宰者なんだ、頭越してっぺんですでに話が進んでいる、だめだ、こう言われたという事実をあげて私はあなたに聞いた。そうしたら、さすがに全くのうそも言い切れなかったのかもしれない、極東放送はきわめてデリケートな問題があった、こう前置きをされて、読みますが、ここでいいですか、財団法人極東放送、非常にきわめてデリケートな問題があった、こういうことを聞いております。そのいきさつがこういう形となって残っておる、こうあなたはお答えになった。  そこで総理に承りたいのですが、この公電にあるマイヤー大使が公の席上、二国間の交渉の席上で、極東放送はニクソン大統領の一族にかかわることでもあり、郵政大臣が同意されないことはまことに残念であると述べた。このマイヤー氏の発言は私情にからむ、そう私は理解をするんだが、そうお思いになりませんか。
  53. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 マイヤー大使、私にそういう話をしたようには私、記憶しておりません。ただいまその記憶をたどりながら、マイヤー大使が言ったかなどうかなと思っていま考えていたのですが、その公電には、マイヤー大使は私にそう言ったと書いてありますか。
  54. 大出俊

    大出委員 愛知外務大臣にこういうふうに言ったと書いてある。しかも、この日は朝あなたに報告に行っている。あなたのいる席上で報告をしている、極東放送についての、それから交渉に入った。そうなると、こんな大きな問題を、私情にからんでいるのですから、愛知さんがあなたに報告しないなんというようなことは考えられぬじゃないですか。
  55. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 おそらく愛知外務大臣は私に、極東放送にはニクソン大統領の縁辺の方が関係している、こういう話はしていると思います。しかし、それより以上にただいまのような話まではしておらない、かように思っております。
  56. 大出俊

    大出委員 総理も、たぶん愛知外務大臣は、極東放送はニクソン大統領縁辺の方が主宰をしている、こう言ったはずだ。そうなると、総理も報告は聞いていることになる。しかも、これは明らかにだれが聞いたって私情にからんでマイヤー大使がものを言っている。ニクソンさんの親戚の方にかかわることだ、一族にかかわることだ。これは私情ですよ。そうでしょう。外務大臣、いかがですか、これは私の情じゃないですか。
  57. 福田一

    福田国務大臣 マイヤー大使のその発言は、私は、まあ私情というか、私のことを述べた、こういうふうに理解します。しかし、わがほうのこれに対応する態度というものは、そういうものにはかかわりがない。これは厳正に考えましてああいうふうな処置をとった、こういうふうに御理解願います。
  58. 大出俊

    大出委員 そこから先は私はまだ聞いていない。マイヤー大使の言ったことは確かに私の情、私情である。そこまであなたはお認めになった。そうなると、あなたの答弁は、さっきの続きでありますが、非常にデリケートな問題、つまりニクソンさんの縁辺の方が極東放送の主宰者である、きわめてデリケートな問題が出てきた、あなたはそのときにここでお答えになっている。その結果、財団法人極東放送、こういう形にいたしました。これが妥協点です。あなたは妥協点だとお答えになった。  私は、ここでそのあと念を押している。非常にデリケートな問題があったとあなたはおっしゃる。そこで、デリケートな問題の結果として、財団法人極東放送という形に変えて妥協点を見出した、こう理解していいですなと言ったら、あなたは、さような趣旨でありますとお答えになった。いいですか、相手から私情にからんだものの言い方がされて、電波法五条で認められないものを、あなたがここで答えているように、それが妥協点だという形で財団法人極東放送となったとすれば、私情にからむじゃないですか。外務省が、初めは一片の交渉の余地もない、法律違反、こう考え交渉に当たった。井出郵政大臣が明確にしている。私情を持ち出されて、あなた、それが、ここで答えているように、これが妥協点だ。その形が残っている。それが財団法人極東放送だ。その点を指摘したら、さような趣旨であります。私情にからんで妥協しているじゃないですか、あなたは。しかもあなたは別なところで、わが外務省は断じて私情にからんで結論は出しておりませんと答えている、前のほうで。  総理、あなたは内閣責任の一貫性、この点からすると、あなたに責任が明確にある。縁辺の方がというところまであなたはいまおっしゃた。外務大臣が私に言っているはずだと言う。知っておられた。しからば、何で先般の国会で、私がしゃあしゃあとしてここに立っている、私がしゃあしゃあとして立っているということは、一枚かんでいないということだ。あなたは報告を受けて、ちゃんと縁辺の方がと知っておつて、福田大臣の答弁で、妥協点、妥協の形がこうなったんだと認めたじゃないですか。一枚かんでいると私が言ったことが、何が言い過ぎですか、そうならば。私情にからんだ結果、法律では許されぬものを妥協して、極東放送会社を財団法人極東放送という形に変えて、外資企業の項に入れて、妥協の形が残っている。認めている。あなたはそのことをお認めになったからそういう結果になった。総理が認めなければできないでしょう。明確に私情にからんでいるじゃないですか。あなたはしかも、しゃあしゃあとしてここに立っているんだから、私はかんでいない。あのときあなたは、珍しくにこにこにこにこ笑顔を浮かべておっしゃる。だから私は、あなたがそうにこにこしてしゃあしゃあとしているときは一番うそを言うときだと申し上げておいた。あなたはおこればほんとうのことを言うけれども、しゃあしゃあとしているとき、にこにこしているときなんというのはうそばかり言う。信用しない、私は。みんな笑っておったでしょう。典型的なうそを言うときの総理の顔だ、あれは。ついにいまあなたは、縁辺の方がつまり主宰されている、そう報告をたしか受けたはずだと自分であなたおっしゃる。そういうふざけた話がありますか。  あなたは何て言ったかというと、事もあろうに、もし私が知っておって、そういうので一枚かんでいると言うなら、これはどうも私にぴんとこないんだけれども、もしほんとうにそうだとすれば、私は、それはもう引っ込む、そういう筋のものです。ほんとうならやめるとあなたはおっしゃった、ここで。あなた、いまお認めになったんだからおやめください。いかがですか。——総理ですよ。
  59. 福田一

    福田国務大臣 あのときの情景を私ちょっと思い起こします。大出さんからただいまお話のありましたような御指摘があったのです。それで、あれは何だと、こう総理が隣におっておっしゃる。そこで、実はこの極東放送というのはニクソン大統領のおじさんが何か関係があるらしいのです、そこでああいうふうにまあ粘り強くお聞きになられるのでしょうと、こういう解説をしたことを、いま思い起こすわけであります。ですからおそらく、ああそうかと言って驚いたような顔をされておったことを思い浮かべますと、その時点まで総理はそういう事実については御承知なかった、こういうふうに存じます。
  60. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうもいまのそのことばが適当でないというか、一枚かんでいると言われると、私、何だか一緒になって計画でもしているようにとれるのですよ。しかし、私が総理であることに間違いございませんから、その最終的決定は総理責任においてやる、そういう意味でかんでいるとおっしゃるのなら、それは私の責任だ、このことははっきり申し上げます。
  61. 大出俊

    大出委員 私情にからんで妥協してこういう結論を出したということは間違いない。きわめてデリケートな問題、それはデリケートですよ。これはあなた、ニクソン大統領のおじさんが主宰者なんだから。そうでしょう、これ以上デリケートなことはない。それをデリケートと言うのでしょう。その結果として妥協した妥協点、形になって残っている。それが財団法人極東放送、あなた、前国会でそう言っている。そうなると、そのことを認めたのは総理責任でしょう。(「かんでいる」と呼ぶ者あり)それは前国会でかんでいる——やじに応酬するのはうまくないけれども、前国会で、言い方はどぎついけれども、そう言わざるを得ぬと私は申し上げている。そうしたら、あなたは、もしほんとうにそうならば——あのときは、ニクソンの身辺の方がいるとも何ともみんな認めない。全く知らぬ顔だ。しらばくれるのもいいかげんにしなさい。しかもしゃあしゃあと。知っているという顔でしたよ、あれは。しかも、ほんとうにそうならおりると言った。ここで私はおりていただきたい。  時間がないのでまことに残念だけれども、事のいきさつは明らかになった。あなた方はついにお認めになった。もう少し時間があるともっとはっきり認める。おりてもらわなければならぬことになってしまう。その最後のところは、時間がありませんから、安井さんに譲ります。
  62. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 次に、横路孝弘君。
  63. 横路孝弘

    横路委員 協定四条三項の四百万ドルの問題にしぼってお尋ねをしたいと思います。  実は問題は二つありまして、一つは、日本側が財源を見たかどうかという問題であります。その点について、文書の交換なり書簡があるかどうかということが第二点の問題であります。  第一点の問題ですけれども、五月二十八日の愛知・マイヤー会談の中の、先ほど安井さんのほうからも御指摘がありました、財源の心配をしてくれているということを多とするというマイヤー大使からの発言があるわけですね。これを見ると、ともかく日本側でこの四条三項の財源のめんどうを見たということだけは間違いがないと思うのですが、いかがですか。
  64. 福田一

    福田国務大臣 私も、あなたから御指摘がありましてから電報をよく見てみましたが、財源の御心配をしていただいてありがたいと、こういう前置きがあります。しかし、それがどういう意味を言っているのか、それは私には理解はなかなかできないのです。愛知さんにお伺いをいたしてみましたが、愛知さんのほうも、そういうようなことはない。おそらく三億二千万ドルという妥結ができた、それを全体としてそういうふうに理解をしておるのじゃあるまいか、そういうふうに私は考えております。
  65. 横路孝弘

    横路委員 その点は、この電文によりますと、いまの三億二千万ドルのところはその前の第二項に書かれていて、第三項は、請求権として日本案を受諾されたというようにこちら側から述べたところ、アメリカ側としては、財源の心配までしてもらったことは多としている、このように述べられているわけですから、あとで文書があったかどうかは別にしても、ともかく四条三項について、アメリカ側沖繩返還に関して金は一銭も出さぬというのが基本的な姿勢で、そこが皆さん方が一番苦労された、交渉の最終の段階で苦労されたところでしょう。したがって、少なくともこれから見ると、財源の心配を四条三項について行なったということだけは間違いないのじゃないですか、大臣。
  66. 福田一

    福田国務大臣 その電報を見ると、いろいろいきさつはあったようです。あったようですが、いろいろまたその後の折衝もある。結局におきまして、日本側は、補償費の財源を提供するというような考え方は全然採用しておらない、こういうことは非常にはっきりしております。したがいまして、それに関する何らの文書の交換、そういうものはございません。
  67. 横路孝弘

    横路委員 交渉してから一年ぐらいですね。私たちが明らかにしたこの二つの文書というのは、交渉のもう最終段階、五月二十八日と六月九日、それからパリにおける愛知・ロジャーズ会談、こういう経過の中でこれは明らかにされていま議論している議論なのです。一年も二年も前の話じゃないんですよ。交渉の大詰めの段階で、もうこういう話が出てきているわけですね。  ですから、たとえば六月九日の井川・スナイダー会談を見ると、こういう言い方をしておりますね。アメリカ側から二つ要求があるわけです。  一つは、四条三項の次に、支払い額は四百万ドルをこえないという条文を入れてくれという要求がある。もう一つは、その四百万ドルの支払いについて、トラストファンドの設立のための文書を日本のほうからアメリカ側に出してほしいという、二つの要求が出されているわけですね。それに対する日本側の反論として、こういうことがこの電文の中に明らかになっているのですよ。そのトラストファンド設立のための書簡について、いかに秘密な書簡であろうとも、資金源について書くことは、全く受け入れがたいという話になっている。  だから、もうこの最終段階では、もっぱら問題は、文書にするかしないかというところだけが問題になっていて、財源を持つということについては、何にも議論の対象になっていない。アメリカ側は当然のこととして受けとめ、日本側もまた支払うのは当然のこととして、このやりとりというのが明らかになっているわけですね。これは違いますか。この二つは、だれが見ても常識的にそのように解釈できる筋合いのものだろうと思うのです。
  68. 福田一

    福田国務大臣 第一点の四条三項に財源提供というか、それに見合うところの復元補償ということを書き入れよというアメリカの主張、これはアメリカ側とすると、国会対策上の要請からそういうことがあっただろうと私は思います。つまりアメリカ国会は、補償なんかに応ずべきものじゃないのだという考え方を強くとっておったわけです。ですから、そういう何かはっきりした明示でもなければ、なかなか国会がこの復元補償費の支出に応じないのじゃないか、そういうおそれを持ったことは予想されるところであります。  それから、その関連において、トラストファンドという論議が起きてきたと思うのです。つまり財源として何か一つ特定をしておく。三億二千万ドル、こうきまったのだが、そのうち何がしかを、こう特定したファンドにしておけば、これはアメリカ国会の関係上説明がしいいのじゃないかというような話があったのだろうと思います。しかし、それは、愛知外務大臣はこれを拒否しておる、また井川条約局長もこれを拒否しておる、こういうことで、最終的には三億二千万ドル、そういうものは復元補償費四百万ドルなんというものを含まない、そういう形においてきめられた、こういうことなのです。途中で、アメリカ側日本側は国会対策上立場がそれぞれ違うものですから、いろいろなやりとりはある。あるが、結論的にはわがほうの主張どおり、三億二千万ドルは復元補償費は含まない、そういうことできまった、こういうふうに御理解願いたいのであります。
  69. 横路孝弘

    横路委員 その文書化するかしないかということだけなのですよ、交渉の最後の段階で問題になったのは。ですから、パリにおける愛知・ロジャーズ会談の中身というのは、財源はもう日本側が持つということを当然にして、文書をくれというロジャーズ国務長官からの要求がある。これに対して愛知大臣のほうから、それは公表を絶対されないのかと念を押したところ、いや、絶対に公表されないという約束はできないという回答が返ってきて、それでは、東京で大体話が煮詰まっているようだけれども、表現そのほかについてもう少し考え直しましょうということになっているわけですね。ですから、もう財源のめんどうを見る見ないという議論じゃなくて、それを文書化するかしないかというところだけが、実は最終の詰めの段階の議論になっているわけです。  ですからアメリカ側は、結局、沖繩の返還に関して一銭たりとも金は払わないという態度を貫きながら、四条三項が入ってきた理由というのは、これは説明できぬですよ。財源を見ているから初めて説明のできることなんです。だから、この電文からいってもそうですし、それからまたこの間の三月二十八日の衆議院予算委員会、ここにおける吉野局長の答弁を私は速記録で見ましたが、これを見ると、やはり補償費四百万ドルということをここで公式的に初めて認められたわけでありますけれども、これに対して、三億二千万ドルを二つに割ってしまったんじゃ説明できなくなる。そこからあの愛知外務大臣の、三億二千万ドルが三億一千六百万ドルという端数となっては、対外説明が困るじゃないかという発言になってあらわれている、こういう経過の説明がこの間ここの委員会の席上でありました。  それを見ても、結論は何かというと、三億二千万ドルになっているわけですね。結論は三億二万千ドルになり、なおかつ、協定四条三項というものが現実に存在している限り、いろいろやりとりがあった結果、ともかく財源だけはこちらが持つということになったことは間違いないんじゃないですか。まだこれでもお認めになりませんか。
  70. 福田一

    福田国務大臣 三億一千六百万ドルというものがまずきまって、そうして、まあおっしゃるようないきさつから三億二千万ドルになったんだというと、お話しのようなことになっちゃう。そうじゃないんです。これは高度の政治的判断といたしまして三億二千万ドルというものがきまった。しかし、この三億二千万ドルをどういうふうに両国がそれぞれの国会に対して説明するか、国民に対して説明するかという問題があって、アメリカのほうは、国会が補償費の支出に非常に消極的であったわけであります。そこで、何か国会に対する説明ぶりを考えないと、この協定自体の成立がむずかしいような状態にある、そういうようなことで、一たんきまった三億二千万ドル、その中で四百万ドルというものを別除いたしまして、これを特別の基金にするようなことは考えられないかと、いろいろ苦心をしたようです。その苦心のいきさつというものが電報に出てきておる。  そういうことでありますから、とにかく私どもといたしましては、そういう別除するという考え方をとりますと、これは三億一千六百万ドルがきまり、その上に四百万ドルを上積みした、こういうことに理解されがちなようなことを考えまして、そういうことじゃないんだ、三億二千万ドルにきまったんだ、その中に財源提供というような問題は入っておらぬ、こういうことで決着をいたしたわけであります。
  71. 横路孝弘

    横路委員 私は、その文書化の問題について、井川・スナイダー会談のときにアメリカ側から提示されたあの文案、いわゆるトラストファンドの関係の文案ですね。あの書簡は、この間御答弁なさったように、アメリカ側には出なかったというように思うのです。それはまあそうだろうと思うのです。しかし、それ以外に何にもおたくのほうでこの了解事項がないかというと、私はそれについても大きな疑問を持っている。それは、外務大臣よく聞いてください。この四条三項じゃなくて、協定七条について、こういう了解事項があるのじゃないですか。政府は、財政問題の一括決済として七条に同意する。政府は、アメリカが四条三項に従って復元補償費、これを支払うために、この一括決済の中から四百万ドルを留保することを了解する。三億二千万ドルのうち四百万ドルは四条三項の支払いに充てるということを了解するという了解事項が、日米の間にあるのじゃないですか。
  72. 福田一

    福田国務大臣 私はさようなことは全然聞いておりませんけれども、なお、当時交渉に当たりましたアメリカ局長がおりますから、確かめてみます。
  73. 吉野文六

    ○吉野政府委員 まず結論から先に申させていただきますと、そのような申し入れは先方からありましたが、これはわがほうはきっぱり断わりまして、このような文書はいわゆる形式的にはございません。つまり交渉の経過においては、そのような文書が先方から提出されたことはございます。  なお、この点につきましていろいろ誤解がありますから、多少事務的に御説明させていただきますと、そもそもアメリカ側は、沖繩返還全般につきましては、いわゆるこの復帰のために特別にアメリカとしては費用は払わない、こういうような一般的な発言はございましたが、四条関係の請求権につきましては、アメリカ側は、そもそも先方が払うべきものであるから、支払うという一般的な意思は表明していたわけでございます。ことに、四条三項の請求権につきましては、これは堂堂とわがほうが、その前に支払われた復元補償との均衡上、支払いを要求すべきものであり、先方も支払わなければならぬ、こう考えていたわけでございます。したがって、そのために先方としても予算措置を講ずることは、十分いまでもあり得ましょうし、当時もそのつもりでいたわけでございます。ただし、先方も、最終段階になりまして、いろいろ議会の感触その他を打診した結果、この費用が出るのはなかなかむずかしい、こういうようなことも出てきたわけでございます。したがって、先方としましては、たとえば、わがほうが支払いの中から、その一部を別ワクにして、それで払いたいという気持ちもあったかと思います。ことに、そのように協定上手当てをしないと、アメリカ国会に対して、一体その金はどこから出すのだ、こういうように質問をされるから困る、こういう関係で当時の交渉が行なわれたとわれわれは覚えております。  したがって、第七条の三億二千万ドルの内訳の中にそのようなことも入れてほしいという気持ちは先方に十分あって、そういうようなことも、ときには言ってきた経緯があると思います。しかしながら、これらはわれわれは、最終的には全部拒否したわけでございます。したがって、いまわれわれの目の前にある協定文、すなわち四条三項の協定以外には何ら密約もなければ約束もない、こういうことでございます。したがって、先方がいかなる方法でこの復元補償費を支払ってくるかということは、先方の問題でありまして、われわれとしては、ともかく、先に対して協定を順守して、ほしい、また、これを先方は順守するだろうということを信じておる次第でございますが、それしかわれわれとしてはこの段階ではないわけでございます。
  74. 横路孝弘

    横路委員 アメリカ側から提起された文案というのは、いま私が述べたのではないですよ。それは四条三項に関する問題でしょう。いま私が言ったのは、七条に関して四条三項を含めた了解事項があるということを指摘をしたわけであります。  国民の前には、事の内容がどうなっているかということはすでに明白になっていると思いますので、もう時間がございませんので、最後に一点だけお尋ねをしたいと思いますが、去年の十二月七日、十二月十三日、私と大出先生と楢崎先生と三人でこの問題を取り上げて質問したわけであります。この議事録をお読み返しいただければ、皆さんのほうでおわかりになると思いますが、非常に慎重に問題を処理したわけであります。しかし、徹底的に初めから最後までうそをつかれたわけですね。全部否定をされたわけであります。交渉の中でそんな話なんか出ていない、そんなことは全然知らないと、交渉の当事者がそういううそを言う。私はここで外務省のお役人を責めようとは思いません。これはやはり政治家責任をもって行なった協定であり、それについての国会の質疑であったからだろうと私は思うわけであります。したがって、私が七日に質問をして、そして十三日まで一週間あったわけです。そして福田大臣はどう御答弁されているかというと、いろいろ詳細に調べてみたけれども、あなたの指摘のようなことはなかった、このように答弁をされているわけであります。したがって、少なくとも国会をだまし、あるいは国会を通して国民をだましたということの責任は、外務大臣どのようにお考えになっているのでしょうか。
  75. 福田一

    福田国務大臣 外交交渉のいきさつ、これはお互いにこれを開示しない、特別の約束のできたものにつきましては開示をする、一般的には開示しない、これが通例であります。開示しないことが通例になっておる諸問題につきまして、具体的に、横路さんから、またその他の方々からいろいろ御質問があった。そこで、正確にこれにお答えするとすると、お答えできません、こういうふうに言ったらよかったのかとも思います。それを、承知しておりません、こういうふうに言った。それはことばの表現上、私はまずかった点があるような気がしますが、事は経過の問題なんです。どうしてもこれを開示するわけにいかぬ。しかも横路さんが非常な勢いで追及される。そういう追及に対しまして、お答えできませんというような答弁をしたら、一体また国会はどういうふうになるのか、そういうような配慮も働かないわけじゃないのであります。今後の問題といたしましては、答弁ぶりにつきましては十分検討いたしてみたい、かように存じております。
  76. 横路孝弘

    横路委員 この委員会秘密理事会が行なわれているという事実だけ指摘をしておきます。私はその理事会に出席をしていませんから、何ともお話しすることできませんし、もちろん内容等については話をすべき筋合いではないだろう。ただ、秘密理事会が行なわれているということ、そしてまた現在ここで問題になっているという事実だけ指摘をしておきます。
  77. 瀬戸山三男

  78. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ただいま横路委員が指摘しましたとおり、昨年十二月十三日、まさにこの問題が委員会で問題になった。そこで、外交には秘密もあり妥協もあるであろう、公開の場では言えないこともあるであろう、そういうことで秘密理事会になったのであります。いま横路君も言ったとおり、その秘密理事会には私が出ました。そこでは、当然公開の場では言えないことでも、外務大臣、どうしてほんとうのことを言ってくださらなかったのですか。そこでもあなたは、公開の場で言われたとおり、だまし続けられました。  どのようにだまし続けられましたか。この問題を当委員会横路氏が出したときに、外務大臣は、それは交渉の途中の一段階のメモです、そうおっしゃったじゃありませんか。ところがどうですか、このときにはあなたはどうおっしゃいましたか。いいですか、これは私の質問に対して、メモは一切ありません。「それから、横路さんの御質問の趣旨ですと、途中で三億一千六百万ドルという数字が出まして、それに四百万ドルを上乗せした、こういうことになるべきはずでございますが、」交渉の途中の「いかなる段階でも、三億一千六百万ドルという数字が出た、そういう記録も、また両局長の」——これは井川さんと古野さんですが、「両局長の記憶もない、こういうことでございます。非常に私はよく聞いてみたのですが、その点は私間違いない、こういう心証を得ております」と、はっきり外務大臣はコメントされたのです。そこで、これから先、秘密理事会になったのです。吉野さんは何とおっしゃいましたか。あなたは横路委員の質問に対して、そういうメモは一切ないと言うが、「当時の記憶をたどりますと、あらゆる重要なことは全部電話をもって本省と連絡いたしました。」何ですか、これは。あるじゃありませんか。  そうしてさらに横路君は、まさにここでこう指摘しておるのですよ、十三日のときにすでに。「一九七一年の五月二十八日の愛知・マイヤー会談の中で」と言って、まさに今度明らかにした問題を全部ここで言っておるのですよ。そうして、それに対して吉野さんは、「いま先生がおっしゃったようなことは全然ございません。」と言っておる。われわれは、途中の交渉経過でもいいから、それを明らかにしたのです。ところが、そういうことは全然ない、どのような段階でもないと福田大臣はおっしゃった。  秘密理事会においても、私はそれを繰り返したのであります。当時、外務大臣と吉野局長、井川条約局長、それに、いま国対委員長をされております金丸さんは、自民党の理事でありました。二階堂さんもそのとき理事でありました。秘密理事会に出ておられます。もし秘密理事会ですから明らかにできないならば、私は、当時の床次沖特委員長、これに証言法に基づいて証言をしてもらいたいくらいの気持ちであります。さらに、問題の当事者でありました愛知前外務大臣も、いまうしろにおられて、いろいろと不規則発言をされております。もし自信があるならば、愛知前外務大臣も、当委員会に証言法に基づいて証人として、ここで一対一のやりとりをしていただきたい、私はそういう気持ちがあります。これは委員長においてお取り計らいを願いたい。  さらに私は、この七千五百万ドルの軍労務費ですが、昭和二十六年五月二十六日付の総司令部の特別調達資金の設置に関する覚書、これとこの七千五百万ドルはどういう関係になるのか。これでいくと、労務費は一切全額アメリカが支払うようになっておるのです。何で日本側が支払うのですか。この覚書とこの七千五百万ドルの関係はどうなるのですか。  さらに、特別調達資金設置令三条の資金七十五億円と七千五百万ドル、日本円に直せば二百三十一億円でありますが、この特別調達資金設置令第三条にいう資金の七十五億円とこの七千五百万ドル、二百三十一億円との関係は一体どうなるか。そうして、先ほども安井委員指摘のとおり、七千五百万ドルはどういう形で日本側に支払われるのか、これも問題点であります。いわゆる特別調達資金設置令第三条二項の米国政府からの受け入れ金として資金に受け入れられるのか。もしそうならば、二百三十一億円は七十五億円をはみ出るわけであります。一体これはどういうことになるのですか。はみ出る場合は、これは一般会計に繰り入れられるのですか。それともこれは補正予算に出てくるのでありますか。この点も問題点であります。  さらに、四百万ドルの軍用地復元補償、これもいま安井委員説明のとおりでありますが、これは一体どうなるのか。日本政府の手を経て関係者に支払われるのか。それとも、米国は、さっきおっしゃったとおり、委員会をつくるそうでありますが、直接その関係者に支払われるのでありますか。問題点として二点あります。もし日本政府の手を経てということであれば、四十七年度のこの予算との関係は一体どうなるのか。さらに、もし直接支払うということであれば——さっき吉野さんは関心がないとおっしゃった。これは重大な発言ですよ。だから、もし直接支払われるときには、それは米国政府日本国民の個人との直接の関係になる。四条三項は日米両政府の約束となっておる。それを約束した日本政府は、どのような形でその直接交渉の中に介入するのですか。どういう責任をここで発揮するのですか。  これはすべて問題点であります。時間がありませんから、これらの問題点に対する解明をひとつお願いしたい。そして、うそを公然とおっしゃった福田外務大臣は、外務省を代表してどのような責任をこの食言に対して負われるのか、明白にしていただきたいと思います。
  79. 福田一

    福田国務大臣 まず私が、メモはない、こういうことを言ったこと、これについてのお尋ねでございますが、これはメモはとっておらぬようです。今日なお、いろいろ調査いたしましたが、まあメモがわりにいろいろ電報なんかはありますけれども、交渉の経過について記録はとっておらない、これが実情でございます。  それから、秘密理事会におきまして政府委員がいろいろの具体的事例についてお尋ねを受けまして、それに対して、そういう事実はありませんと、こういうふうに答えた。これは実は正確に言いますと事実に反する。そのときの答弁は、私は、これはお答えできません、こう言うことが妥当であったと思うのです。しかし、事外交交渉、いろいろ複雑な問題もあり、また相手の立場考えなければならぬ問題もある。そういうようなことで、申し上げにくいことが多々あるわけであります。その申し上げにくいことを、存じませんと、こういう言い回しでお答え申し上げたことはまことに遺憾であった、私はこういうふうに存じます。今後は、この言い回しをどういうふうにその際するか十分検討して、的確を期してまいりたい、かように存じます。
  80. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あと一言でいいです。いまメモはありませんとおっしゃいましたが、私どもは、交渉メモがあるか、それから議事録メモがあるか、さらに電報があるかと言ったのですよ。それを一言に、私はメモと言っているから、メモはありませんと、そんなことをおっしゃいますけれども、この段階でそういう形式的なことはおっしゃらないほうがいいのじゃないですか。全部私どもは言っておるのですよ。それが一つであります。  それから、もうすでにいま外務大臣も、その食言の問題を肯定されました。これは責任がつきまとうと思います。さらに、このような虚偽の政府側の答弁によってあの沖繩協定は審議されたのです。したがって、この沖繩協定の審議の有効性について重大な疑義がある。引き続いて、その採決についても重要な疑義がある。もしできれば、こういう点についての瀬戸山委員長の御見解が承れれば幸いです。  これでやめます。
  81. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 私は見解ありません。  次に、安井君の質疑をお願いいたしますが、時間が非常に少なくなっておりますから、簡潔にお願いいたします。
  82. 安井吉典

    ○安井委員 短い時間で、あと総理に集中的に締めくくり的な質問をして終わりたいと思います。  いまもいろいろ指摘があり、そちらとのやりとりの中で明らかになりましたように、今度の沖繩協定は、国会国民に背を向けた、やみ取引外交の結果だったということが明らかになったと私は思います。さらにもう一つは、国会に虚偽の報告と答弁をした、そういう結果の協定であったということであります。私はこの二つが、沖繩協定の性格づけの上に、政府が言われているように栄光の協定ではなしに、瑕疵ある、きずだらけの協定である、こういうことを明確にしておかなければならぬと思います。協定そのものの効果が根本から問われているのではないかと思うのです。  そこで私は、国民主権下の外交のあり方について伺いたいのでありますが、明治憲法のもとの外交、その外交国会との関係と、国民主権下の外交、それと国会との関係、これは大きな違いがある。それを政府はいまだに、天皇主権下の外交やそういう感覚で事を処しておられる。そこに私はこの問題があるのではないかと思います。ないというのでなしに、言えないと言えばよかったと、この間総理も言われました。いま外務大臣も言われましたよ。これはまさに国会の中ではっきり、あのときはうそを言ったのですと、こういうことをいま白状したことになるわけです。ですから私は、いまの国民主権下における外交のあり方は、国会に対して正確な資料を提出をする、われわれはそれを国民にかわって聞いて、その結果を国民に知らせる、そういう義務があると思います。もちろん外交秘密性あるいはまた妥協というものは、いかなる場合でもやむを得ない場合もあるかもしれない。しかし昔の天皇主権下の外交ではないのです。国民主権下の外交というものはずっと幅の広いものになってこなければならぬと思います。閣僚がうそばかりついて、そういうようなことでほんとうの外交の問題の論議ができますか、どうですか。
  83. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 旧憲法のもとだろうが、新憲法のもとだろうが、閣僚がうそを言っていいということは絶対にございません。憲法が変わったから、そういうことでただいまのようなことを理論づけられたつて、それは私は納得いたしません。うそを言っていいというような、どんなときもございません。
  84. 安井吉典

    ○安井委員 さっき言ったでしょう、はっきり。この間も総理も言われたでしょう。私がいま申し上げたように、あのときに言えないということを言えばよかったのだという。それはつまり国会でうそをついたということを明白にしているわけであります。だから、そういう姿の中で国会外交論議ができないということを、私は申し上げているわけです。これは国会には外交権を論議する権利はあります。国民にかわってそういうことができるし、天皇主権のもとに何もかもベールに隠されたものであってはならぬわけですよ。その点を私ははっきり総理に御理解願いたいし、これからの姿勢について伺っているわけです。どうですか。
  85. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国会を通じて政府考え方を国民理解を求める、そのことが何といっても大事なことだと思っております。安井君の御意見は、ただいまのような点で十分国会を通じて国民理解を求める、こういうことを政府が欠いている、こういう御批判ならば、これは私どももそのとおりお受けしなければならないと思っております。  ただ一言申せば、ただいまも安井君御自身からおっしゃるように、外交秘密がある、外交に妥協性がある、そういうことはちゃんと理解しておる、こういうことですから、やはり限度はある。だから、われわれが言えることと言えないこと、これはもうそのとおり申し上げるほうがよかったんだ、それをただ知らないとかいうことでその場をのがれるということでは、ただいまのような御批判を受けること、これは私どもも深く反省すべき点だと思っております。だから私は、冒頭に申し上げましたように、今回のこの時点で私が政府を代表して皆さん方に御了解を求めたのもそういう点でございます。遺憾の意を心から表明したのもそれらの点でございます。
  86. 安井吉典

    ○安井委員 はっきりその態度を今後においてもお示しを願いたいし、私はまだどうも不満なんですけれども、そのことをひとつ申し上げておきます。  それから、もう時間になりましたので、最後に、今日まで総理は、責任を感ずるということばをもう実に何回も何回も言われました。もう私ども、責任ということば総理が言われるのは聞きあきているわけであります。三月の二十九日に自民党の大平氏は、暗に総理の早期退陣の決断を求める発言をしております。三月の三十一日には三木武夫氏は、予算通過とともに諸般の政治責任をとり進退を決すべきだと思うと、こういう発言をしております。自民党の中でも、あるいは政党を越えて国民の中にも、この声は私は高まっていると思うのです。総理のかわりはもういるじゃないですか。もう予算もめどが大体ついたのじゃないですか。私はそういう中で、先ほどの各委員長発言のとおり、この際すみやかにいまの段階においてもうほんとうの責任行動で示すと、このことを明確にこの際おっしゃっていただきたい。
  87. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 この問題については、先ほど済んでおりますから、これにて安井君の質疑は終了いたしました。(「答弁、答弁」「委員長はそういう独断専行をやっちゃいかぬ」と呼び、その他発言する者あり)それでは、いまの私の発言は取り消します。
  88. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 冒頭に私の所信を表明いたしましたから、ただいまのお尋ねはその点に関することだ、かように思いますので、御了解願います。
  89. 安井吉典

    ○安井委員 きわめて不満です。それだけ言って終わります。
  90. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これにて安井君の質疑は終了いたしました。  午後は一時より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時二十七分休憩      ————◇—————     午後一時九分開議
  91. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前の質疑を続行いたします。渡部一郎君。
  92. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は、沖繩返還協定特別委員会におきまして、沖繩返還協定審議に当たった一人といたしまして、今回の事態に対して深い不満の意を持っておる一人であります。  この問題は、先ほどすでに言われましたように、国民があるいは国会が議論をする場合に、何よりもお互いの間にある程度の信頼関係がなければ成立しない関係を打ちこわしたということであります。先ほどからの御答弁の趣を拝見しておりますと、私情ということばが先ほどから使われておりますので、そのことばをもってすれば、これほど悲惨な痛ましい応答はない。内閣総理大臣や外務大臣がまさに食言、陳弁、その痛ましき姿というものは、日本国にとっても決してプラスになるものではないと私は思いました。先ほど廊下に出ておりましたら、ある自民党の秘書官が、見るにたえないと言ってかけ出していかれました。その人の心の中もまっ暗だったろうと思います。しかし、それよりもつらかったのは国民の心であります。そして沖繩返還協定全部の審議がまるっきりほごになってしまったという感を私は深くしているわけであります。返還協定で審議された議事録を私はわざわざ持ってまいりました。この分厚い返還協定特別委員会及び沖繩・北方問題特別委員会における審議の議事録は、今度公表された三つの電報によりまして、この大半が吹き飛んでしまいました。したがいまして、私は沖繩返還協定審議というものを、もう一回やり直さなければならないというのがほんとうだろうと思います。そしてそのためには、いま、どうしてもあの返還協定で明らかにされなかった、また返還協定では明らかに国民国会をごまかしてしまったポイントにつきまして、再答弁を求める意味で、再確認を求める意味であえて伺うわけであります。  まず、先ほど外務大臣が言われたおことばから再開するわけでありますが、外務大臣は、外交問題では言いにくいこともある、そういうときには、承知しておりませんというふうに言ってしまったことは、ほんとうは言えませんと言ったらよかった。しかし、そういう言い回しについては、今後気をつけたいという表現でお話をなさいました。私は、その問題のおことばの言い回しの中に、これからの課題がたくさんあると思いますから、少し筋道を立てて議論してみたいと思います。  外交秘密があるのは当然であります。今後外務大臣になられる方にもよくわかっておいていただきたいと思うのですが、外交秘密があるということと、秘密外交ということは全く別のものであります。少なくとも民主主義国家においては秘密外交というようなものは存在しないのだし、存在してはならないものだと思います。少なくとも外交交渉の前提と結果は、明白にこれは公開されるのが当然であると思うわけであります。  この間、テレビの討論会におきまして、官房長官はおもしろいことを言われたわけでありますが、ハロルド・ニコルソンのおそらく「外交」という本から引用されたのでしょうが、民主主議外交の基本は、一は、政策の討議は公開、二は、交渉秘密、三、その結果は公開の三原則にあると思う、こういうことを言われたわけであります。私は、このようなことばを使って、交渉の過程にある電報を公開されたことは遺憾であると官房長官が述べられたことは、非常に遺憾であったわけであります。なぜかといえば、この原則を認めたといたしましても、沖繩返還交渉の最後に出てきた協定文の内容というものについては、少なくとも明確に公開をし、そうしてその内容の成り立ちについて、国民に対して説明をするのがほんとうであったはずであります。しかし、その結果についてまで非公開の真相を含んでおるということはこの電報で明らかでありますが、こういうようなことはもう不明瞭を通り越し、国民信頼をことごとく奪うものであります。私は、交渉のまっ最中にすべてを公表しろなどという暴論を吐いているわけではありません。しかし、交渉が終わったときに国会に対して、支持を求めようというときには、少なくともその結論について明らかに大筋というものを明確にした上で国会、そして国民の信任を求めるというのが、民主主義外交の基本であろうかと思うわけであります。  その意味で、福田外務大臣が先ほど言われました、承知しておりませんと言っちゃったということ、いま反省を総理がなさったわけでありますから、私はあえてがあがあその点について言うつもりはありませんけれども、その承知しておりませんと言っちゃったことについては、これはもう民主主義外交の基礎的な要件に欠けておったのではないか、私は十分の御反省が必要だろう、こう思っておるわけであります。それを、言えませんと言えばいいのか、言えませんと言ったら、あとがまたたたってたいへんなことになってしまう、だから国会対策上やむを得なかったのだ、こういう言いのがれもまたものすごい言い方であって、これはまたあとで申し上げますけれども、まず、民主主義外交の基本的な課題をいかに考えるか、もう総理としては明鏡止水の御心境にもあろうと思いますから、この問題について御答弁をいただきたいと思います。
  93. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 直接外務大臣がお答えすればいいですが、特にお名ざしのようですから、私が申し上げます。  ただいま言われるように、外交にはやはり秘密がある。またそういう意味では理解できる。しかし、いわゆる秘密外交、これは違う。秘密外交はどこまでもこれは排撃しなければならない。しかし、どの点がどの程度までは秘密を守るべきなのか。これが、言われておるような外交秘密として保持される、これは国際信用を維持するという、そういう観点でおのずから限度があるのではないかと私は思っております。国民の皆さんからも外交のあり方、ただ最初と最後だけ知らされたというだけではなかなか納得がいかぬ場合もあるでしょう。だけれども、それによって、それを明らかにすることによって国際的な信用をなくすれば、それこそたいへんな重大なる結果を生ずる。それは外交であろうが内政であろうが、そういう問題についてはわれわれも気をつけていかなければならない。しかし、とにかくお話しになりましたように、お互いに信頼関係を持つ限りにおいて、そういう事柄はいかような方法でもあるではないか。秘密会議というような方法もあるのだ。そこらで、お互いに信頼し合ってほんとうに打ち割って相談する、そういうことがやはり国会ではないか、かように御指摘になれば、そのとおりだと言わざるを得ないと思っております。  私は、今回の問題にいたしましても、先ほど来外務大臣が答えておる、また私の所信も、そこらにおいて渡部君御指摘の点とこれは同じではないだろうか。結論においては同じだろう。ただ、どうもいままでジグザグして来た、そのために御批判をいただいた、こういうことでまことに残念に思っております。これから先の進むべき道は、いま言われるとおりだろうと思います。
  94. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それから、いまのお話しになった秘密会でありますけれども、私は昨年の十二月十三日、沖繩・北方特別委員会において秘密理事会が行なわれたことを了承しております。その秘密理事会においてどういう内容があったかということをここで述べることは、理事会の規定上ぐあいが悪かろうと私は思いますから、それは述べません。しかし、その秘密理事会において先ほど述べられたような議論が明示されておったとしたら、先ほどの同僚議員もあそこまで追い込むことは私はなかったと思います。これについては、外務大臣はどうしてもお考えにならなければいけないことだろうと思います。  そしてもう一つ秘密理事会だけでなく、国会には秘密委員会の規定もあり、秘密会の規定もあり、また議運あり国対あり、また党首会談もあり、これらの会議を巧みに駆使するならば、外交におけるある程度のコンセンサスというのは得られたと思います。また、党首会談は現に行なわれましたし、国対も議運も当時は開いておったわけであります。このような会合というものが、どうしてこれほどごまかすための機関に全部成り下がってしまったのか。これに全体的な反省を加えるのなければ、私はまた同じような秘密外交、あるいは官廷外交、悪く言えば軍人外交、もっといけば王様外交、冷戦外交の極端なスパイ外交みたいなものにまで日本外交は堕落しなければならない、こう思っているわけであります。国民に知らせる必要はない、知らしむべからずよらしむべしという封建時代外交とまさに同じことをおやりになっちゃったんだ、そういう原理的な深い反省がなければ、私はまた同じことが次の代、その次の代に続くだろうと思います。そして私が心配しているのは、そういう外交であったとしたらもう話のほかであって、日本外交はそれこそ世界に向かって何を言っても信用されず、そして外交などというものは日本の国にはなくなってしまうだろうと思います。ですから私はわざわざ、まるで学校でものを教えるようなことで恐縮でありますけれども、この原則というものに対して、国民に、まず知らしむべからずよらしむべしじゃなくて、知らしむべしそしてよらしむべし、こういう政治姿勢でなければいけないと思うのであります。これからは寄りかかってもらう、肝心なこと、言いにくいことについてもくふうしながらわかっていただく、そうした上で審議にも、あるいは国民の批判も受ける、そうして大きなコンセンサスの上に堂々たる日本外交を展開していく、こうでなければいけないと私は思うわけであります。  私は、この沖繩返還協定特別委員会において、一番最終段階にここで長々とお話をしたことがあります。そのときに二十三時間四十四分という、それこそばかげた早さでこの沖繩返還協定特別委員会のほうは審議打ち切りになったわけであります。私たちとしてはこういう妙な電報が出てくると、そのときに最初に思ったことは、こういう怪しげな密約が山ほどあったからこそ、二十三時間四十四分というようなあわて方をしなければならなかったのだな、こう思うのが私は当然の結末だろうと思います。ぼろ隠しのために、まずいことを国民に知られないために、結局はそういうふうに考えるのが国民として当然のことだと思います。先ほどからの応答を聞いておっても、私はその感をぬぐいがたいのであります。ですからこそ私が言うのは、今後においては国民の前にすべてを明らかにした上で、できる限り話して、そうして信頼関係を回復したを上で議論するというふうにしていただかなければいけないと私は申し上げておる。  こう申し上げておるのは、福田外務大臣にもその他閣僚に対しても、私はまだ信ずる点があるからであります。まるっきり信じないのなら、私はもうこんなところでしゃべらない。まだ何とかなるのではなかろうかという一るの希望を捨てないでいるからこそ私は申し上げているのであります。ほんとうを言ったらあまりにもひどかった。福田外務大臣の言っていることばは、先ほどのように、稲田外務大臣がそれこそ承知しておりませんということは、承知しているという単語であるとしたら、私は今後福田さんとお話をすることは無意味だと感じる。承知しておりますということは承知しておらないということだとしたらどういうことになるのですか。これは日本語ではない。日本語でない言語を駆使する動物と話すことは不可能だ。そうしたら私たちは何語でしゃべったらいいのか。いま回復しなければならないのは、同じ日本語をしゃべっているのだということをここでもう一回国民の前に、私たちはちゃんとしゃべっております、これからはもうだましませんという政治根本原則をやらなければ、この沖繩返還協定を通すために活躍なされた諸閣僚は、ことごとくみなうそを言うためにぐるになって国民をだまし、国会をだますために奮闘したという汚名を着て生涯を全うしなければならないだろうと私は思います。だから私は申し上げておる。このことばのこのようなうそ、でたらめ、もうそれこそ言語道断である。この事実に対していまどう考えられておるか。総理の所信を伺いましたから、今度は外務大臣に諸閣僚を代表してお答えをいただきたい。
  95. 福田一

    福田国務大臣 渡部さんが外交につきまして、外交の機密と秘密外交ということを分けられましてお話をされた。私はそのお考えに対しましては非常に敬意を表します。秘密外交とは何ぞや、私の理解するところによりますれば、これは裏取引、相手国との間に国民に知らせない取引があって、これが両国を義務づけておる、こういうことではあるまいか、そういうふうに思いますが、そういうようなことがあったらこれはたいへんなことです。これは今日の民主国家社会において、さようなことが許されるはずのものじゃない。渡部さんはまた一面におきまして、何かそういう色彩がこの協定につきまとっているのじゃないかというような前提でのお話でもありましたが、さようなことがないのだということはるる申し上げておるとおりであります。他面、外交の機密、これにつきましては、これは守らなければならぬ、こういうこともありますが、同時にこの経過につきまして、相手国との話し合いによりましてこれを開示し得るというようなものがありますればこれを開示して、そうして御理解を得るというふうにつとめる、これも私は当然のことであろうか、こういうふうに思います。  過ぐる沖繩協定審議国会におきまして、いろいろ具体的な問題の御指摘がありまして、こういう電報を出したような事実があったのかというようなことがありました。それに対して、政府委員からそういう事実はありません、こういうようなお答えをしたところが何カ所かある。これは私は、外交の経過について話せない問題である、そのときもこれはお答え願えないんです、こういうふうに言いますれば、それでおしかりも受けないで済むことだったかと思いますが、当時の状況からありません、こういうような答弁をした、その点につきましては、先ほども私から遺憾の意を表明しておるわけであります。今後もその表現につきましては慎まなければならぬ、こういうふうに考えます。  いずれにいたしましても、外交の過程につきましても、これは相手方との了解のつくものにつきましては、できる限りこれを開示いたしまして、交渉の結果についての御理解につとめる、これは私は今後とも努力してみたい、かように考えます。
  96. 渡部一郎

    渡部(一)委員 外務大臣は、表現についての問題とさっきから言っておられるわけです。私がさっきから述べているのは精神の問題であり、原点の問題を言っているわけです。つまり、外交交渉だから途中の経過についてはごまかしてもいいとか、あるいはやむを得ない事情があったとか、そういう精神から脱却しなければ、今後においても同じことが何回も続くぞと私は警告をし、今後の御注意を促しているわけであります。それはおわかりいただけますね。——そんなくだらないことで時間を使いたくありませんから、私は次に申し上げます。  それでは請求権の問題について申し上げたいと思います。沖繩・北方対策特別委員会の連合審査会、昭和四十六年十二月七日、福田外務大臣は先ほど、吉野局長がメモも記録もないと言ったことに対して遺憾の意を表されました。それは、局長が言った部分について遺憾の意を表されたわけであります。しかし、福田外務大臣はそのときに、「いま三億一千六百万ドルという数字が交渉の過程であったという話でありますが、それは大蔵大臣としての私は承知しておりませんです。まして、総理大臣がそういう数字を御存じであるはずがあろうとは思いませんでございます。」と述べられました。明確な記録でありますし、おそらく外務大臣はここへおいでになります前にもう目を通してこられたと思います、御自分が何と言われたか。これはちょっと言い過ぎであろうと私は思う。なぜかと言えば、交渉の途中で三一六という数字について、アメリカ側との先ほどの電報を拝見いたしますと、その電報の内容の中には三一六という数字がもう明瞭に載っているわけであります。じゃ、その三一六という数字は交渉の過程で出てきた覚えはないとかかんとか、それはちょっとひど過ぎる言い方ではなかろうか。たとえば先ほどの問題になっております外務省の電報の中に、本大臣より——本大臣よりといいますのは当時の愛知外務大臣でありますが、重ねて何とか政治的に解決する方法を探究されたく、なおせっかくの三二〇、三億二千万ドルの意味だそうでありますが、三二〇がうまくいかず三一六という端数となっては、対外説明がむずかしくなる旨言いおいた。こうになっておりますが、そうすると、三一六という数字が交渉の過程で問題になったことがないという言い方は間違いでございますね、これは。
  97. 福田一

    福田国務大臣 この三二〇という数字がきめられた過程につきましては、先ほど総理大臣のところへ私が大蔵大臣として、また愛知君が外務大臣として参加いたしましてきめた、あのとおりであります。三二〇がまずきまったのです。そしてこの三二〇をどういうふうに両国会に対して、また両国民に対して説明するか、こういう問題があった。それでその際、これは私が関知しないことです。私は三二〇しかもう知らないことでありまするが、あとで聞いてみますると、この三二〇という問題の他方において請求権交渉が行なわれておった。請求権を終局的にはアメリカはこれは支払いを認める、こういうことになった。その額はどうだというと大体四百万ドルである。しかし三二〇を日本が増額するということはない。そこでアメリカ側国会に対する説明上、この三二〇というものをイヤマークするというような考え方を起こしたんじゃないか、そういうふうに電報なんかの経過を見てうかがわれるわけであります。私は先国会において決して間違ったことを申し上げておるわけじゃない。大蔵大臣当時におきましては三二〇は知っておる、しかし三一六というような数字は承知しておらぬ、こういうふうに申し上げておるわけですが、そのとおりであります。
  98. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうすると、外務大臣としての福田さんは知っておって、大蔵大臣としてのあなたは知っていなかった、こういう意味でございますね。
  99. 福田一

    福田国務大臣 今度この電報漏洩問題がありまして、そして電報の中に三一六という数字が出てくる、これは承知しております。しかし、あくまでも三二〇というものがきまりましてからの、三  一六という数字がちょこっとある過程で浮かんだ、これだけの話であります。これは私、外務大臣といたしましても、三一六がきまって、そして四を上積みしたんだ、こういうふうな理解は全然持っておりませんです。
  100. 渡部一郎

    渡部(一)委員 もうその辺でそういういいかげんな話はやめにしませんか。そしてあっさり、交渉の途中で三一六があったんですから、大蔵大臣の当時としてはわからなかったけれども、外務大臣になって電報を見たら三一六という数字も途中で出てきておった、ぐあいの悪いことだとは思ったけれども、答弁のときには、私は大蔵大臣当時は知らなかったと言って逃げちゃったのだ、要するにそういうことでしょう。だから外務大臣としてとは言っていないのだから、大蔵大臣としては知らぬと言ったので、外務大臣としてはかすかに知っておったのだ。もし外務大臣として知らないと言うんだったら、あなたは、前外務大臣ここにいますけれども、引き継ぎを全然していないことになりますよ。電報も知らぬ、交渉の中身も知らぬ、そして外務大臣の席にすわってゆうゆうと答弁した、こんな不心得な、不見識な外務大臣はないということになるでしょう。あなたは勉強家でそんなこと知らないわけはないじゃないですか。それを知らないとか知っているとかいう問題で、そこまで逃げ回るのはみっともないじゃないでしょうか。違いますか。
  101. 福田一

    福田国務大臣 私は、三一六という数字が電報に書かれておることは承知しているのですよ。しかし、問題はそこじゃないのです。三一六という数字がきまって、さらに四という財源提供をして三二〇になったのか、こういうとそうじゃない。三二〇がきまってそしてあとの説明文についていろいろいきさつがあった、こういうことは私は承知しておる。しかし、最終的にはやっぱり三二〇である、こういうことでございます。
  102. 渡部一郎

    渡部(一)委員 時間がないのだから、聞いていることだけ返事してもらえばいいです。要するに三一六という数字の電報はあった、そしてあなたはそれを認めた。しかし、答弁としては大蔵大臣中は知らなかったと言って逃げた、外務大臣としては知っておる、こういうことなのです。そしてあなたは、それをいまいろいろな表現でごまかそうとされているだけにすぎません。  次にいきます。もう問題点がたくさんあるにもかかわらず、沖繩返還協定審議はでたらめになってしまっている。したがって、今度はもっと大事なことは、その三二〇の中に四百万ドルの四というのが入っているのか入っていないのか。さっきからお話を聞いていて私は、審議が続いているけれども、その三億二千万ドルの中にその復元補償費、アメリカが本来払うべき復元補償費の四百万ドルは入っているのか入っていないのか、それはどういう約束になっているのかさっぱり不明確であります。もし三億二千万ドルに入っていたんだとしたら、密約はまさに存在していたことになります。これはもう間違いない。今度は逆に、三億二千万ドルの中に四百万ドルが入っていなかったとしたら、今度は入っていないなら、なぜ三億二千万ドルを三億一千六百万ドル、つまり三一六に減らさなかったのか。逆に言うと、三一六という数字が特別何かきらいで、そうした逆にその三一六を四だけふくらました勘定になるけれども、どうしてそうやって特別にふくらましたのか。これこそまさにひそかなる内約とでも言うべきものである、私はこう思うのです。
  103. 福田一

    福田国務大臣 三億二千万ドルは、これは多額の要求アメリカ側からありまして、わがほうは私、大蔵大臣ですが、なるべく少なくということでありましたが、結局交渉交渉を重ねた妥結点が三億二千万ドルであった、これはまさにしばしば申し上げておるとおり、高度の政治判断によってきめたものだ、こういうことであります。その中に、このアメリカの自発的に行なうところの復元補償、この四百万ドルを含めておるという考え方はとっておりませんです。
  104. 渡部一郎

    渡部(一)委員 この三億二千万ドルの大ワクが、高度の政治判断からきまったと福田さんはさっきから何回も言っておられるわけです。その高度なる政治の大ワクがきまっておる。そういう大ワクがきまっていて、今度は中身の問題について妙なことが出ないようにしなければいかぬということについて、ここに話し合いが行なわれております。そうするとこの電報の中からわかってくることは、三億二千万ドルの中身というものについて、日米両方ともあんまり差のある説明をしないようにがんばろうじゃないかといっていること自体が一つの約束ですよ。これは国民に知られざる国会対策上の約束です。これも一つの大きな意味の密約ですね。だから私は密約ということばの内容についていろいろなことがあると思う。三億二千万ドルというものの中に関するいろいろな考え方があると思う。しかしそうなると、この三億二千万ドルが高度な政治的な判断という言い方をして逃げておられるものの中には、あなたが四百万ドルは入っていないという理由にはならない。入っているという理由にもならなければ入っていないという理由にもならないはずです。三億二千万ドルは高度なる政治的な課題なのですから、高度な政治的な課題の中には、どこまで範囲が広がっていくかわからないじゃないですか。ニクソン大統領おいたみ料としてこの分ぐらいが入っていると考えられることだってあり得る。ですから四百万ドルについては、これはただわれわれがそう言っているだけではない。当時の人々がすでにもう相当の範囲において、このような話があることについては述べられておった。三億二千万ドルというような巨額な支払いというものが「法律時報」というのにも載っておりますけれども、この三億二千万ドルの中に復元補償費というものは密約として存在しているのだという話すら、当時刊行された雑誌の中にすら載っております。ところが、それを否定する材料というのは何にもないじゃありませんか。ただ福田さんがここで、入っていないと言明していられるだけだ。われわれとしては、入っているとも言えないし、入っていないとも言いがたい。そうじゃありませんか。これはあなたの立場に立って私は言っているのです。
  105. 福田一

    福田国務大臣 はっきり申し上げますが、三億二千万ドルの中に復元補償の財源を提供した、その財源たる四百万ドルを含めておるということはございません。これは、何か裏取引があるかどうかというようなお話もありますが、さようなことは一切ありませんから、この点につきましては、御信頼のほどを切にお願い申し上げます。
  106. 渡部一郎

    渡部(一)委員 御信頼はできません。全くできない。そのできない理由のもう一つとして、当時、この電報の中にありますけれども、アメリカ側としては、議会において、追加の支払いをするということについては、もういけないと歯どめがかかっておるんだということがこの中に明らかになっております。そうすると、そういう歯どめが議会側からかかっているにもかかわらず、アメリカの国務省はそれを承認した。そうしたら、その国務省はどういう弁解を議会に対してしたのですか。議事録をさがしてもそんなことは出てきません。それならアメリカの議会では、それを秘密理事会か何かでしゃべったとでもあなたは言われるのですか。
  107. 福田一

    福田国務大臣 アメリカ秘密理事会でどういうことをしゃべったかは承知しておりませんけれども、とにかく日米間で、日本側から四百万ドルを提供して、そしてそれを引き当てといたしまして補償を行なうんだという、仰せの密約というものは一切ありませんから、この点だけはほんとうに御信頼のほどをお願いしたい、こう申し上げておるわけなんです。
  108. 渡部一郎

    渡部(一)委員 要するに福田外務大臣は、そう言っているから信頼しろとおっしゃっているだけの話であって、これは論理的にも実際的にも何らの傍証はありません。そして肝心かなめの福田外務大臣のことばは、先ほどから信頼性を欠いているわけです。われわれとしては、この問題について深い疑いを持っただけの話であります。  次に申し上げましょうか。今度は極東放送の件であります。極東放送の件についてこの電報の中では、マイヤー大使が、FEBCはニクソン大統領の一族にかかわることでもあり、郵政大臣が同意されないことはまことに残念である、こういうふうに言っておられます。外務大臣はいろいろなことを言われますから、時間もたいしてありませんから、もう議事録でひとつびしびし話を進めますと、福田外務大臣はこう言っておられます。「裏に何かいろいろありそうなようなお話でございますが、これは私は、私情でという話がありますが、わが外務省、私情で事を処理するというようなことは絶対いたしませんから、この点はひとつ御信頼いただきたい。」四十六年十一月十二日、沖繩返還協定特別委員会議事録一一ページであります。また、これは総理大臣が言われているのでありますが、「そういう意味で、私がここでしゃあしゃあとして立っておるのも、ただいま言われるように、一枚かんでいるということ、これはどうも私にぴんとこないからです。ほんとうにさようなことがあるなら、私はそれはもう引っ込む、」こう言われているわけであります。これはこの前後のやりとりでいろいろないきさつがあったわけでありますけれども、私情でものをやらぬと言われました。先ほどからの御答弁を聞ておると、まず話を二つに分けなければならない。アメリカ側のニクソン大統領のおじ、一族であるということで、それがこういう電報にさえ載っているほど向こう側から要求が出てきた。それはアメリカの大統領の私情であると私は思いますけれども、その点はどうですか。
  109. 福田一

    福田国務大臣 ニクソン大統領がどう考えたか、私は知る由もございませんけれども、その電報にあるとおり、愛知・マイヤー会談において、いわゆる極東放送はニクソン大統領の縁辺の者が関係しておるという話をしたことは事実のようです。ただ、先ほどお読みくださったように、わが外務省はそれを一体どういうふうに受けとめるかということが問題なんです。私は、交渉がきまってから外務大臣に就任し、そのいきさつをずっと聞いてみました。しかし、ニクソン大統領の近親者がこの放送会社に関係しておるというような配慮、そういうものは全然しておらぬ。私はそれはほんとうにかたい心証を得たわけでありますから、その心証に基づいてさように答弁をいたしておる、かように御了承願います。
  110. 渡部一郎

    渡部(一)委員 福田外務大臣、それはこういうことですね。福田外務大臣がいま回りくどく言われたのは、ニクソン大統領の一族が極東放送にかかわっていることを、外交交渉の際にマイヤー大使が言ったということは、アメリカ外交官がニクソン大統領の私情をまず考慮したことであるということでしょう。  それが一つ。それから日本の外務省としては、ニクソン大統領のそのような問題を取り上げるような私情的な発言については、考慮する余地がなかったということでしょう。あなたの御説明はこういうことですね。——うなずいておられますから、よろしゅうございます。  そうしたら今度はその次、三番目に、それであるにもかかわらずあなたは、外務省は、このニクソン大統領の一族が極東放送にかかわっているということによって、極東放送に対して特別寛大なる、というよりも、日本の法律をひん曲げてまでこのような極東放送存在沖繩に許したという事実があることはお認めですね。——これまたうなずいておられる。だから要するに、結果としてはニクソン大統領一族の私情を認めたといわれてもやむを得ないじゃありませんか。どうですか。
  111. 福田一

    福田国務大臣 ニクソン大統領の近親者の関係の米系企業であるから寛大にした、こういう解釈ですね。これは私は少し違うんじゃないか、こういうふうに思います。つまり、米系企業というのは、愛知書簡によりましてこれは認めていこう、こういうことになったんです。その中で放送企業だけは厳重なる制限をしたわけです。つまり中国語放送、これはもうやめちゃう、日本語放送もやめちゃう、それで英語放送だけを五年間に限って認めましょう、こういうことにしたんであって、これは非常にきびしい措置ですよ。それに関連をいたしまして、財団法人極東放送というものをわが国の法令によって設立するという計画が進められておりますが、それらを加えてみますと、米系企業全体とすると非常にこれは寛大というか、その存続を認めたんだが、その中でそれだけの制限を付したということをごらんになられますれば、これは必ずしも寛大な措置をとったんだ、こういうふうに言い切るわけにはいかないのじゃないか、さように思います。
  112. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それはどろぼうにも三分の理のほうですよ、外務大臣。そんなことを専門家ぞろいの当委員会で言うとおかしくなるばかりであります。  あまりいやになっちゃうような発言が続いていますから、御苦衷のほども察して、私、次に進もうと思いますが、その前に、この極東放送日本の電波法まで変え、当時の郵政大臣が猛烈に抵抗し、その中で財団法人極東放送という不存在の財団法人をつくり上げ、そうして日本国内では異例な、放送法を曲げて英語放送を五年間も継続を認め、しかもその放送の内容については、共産圏諸国に対するきわめて挑発的な放送が行なわれておることまで当時の議事録には明示されておる。したがって私は、このような私情を認めざるを得なかったということに対して、正直に、ニクソン大統領あるいはその縁辺の人々を考慮せざるを得なかったぐらいのことを、この当委員会あるいは沖繩返還協定特別委員会沖繩・北方領土特別委員会等において表示されることは、一向に不可能ではなかったと思うのであります。  そして、私、もう一つ言っておきたいのですけれども、さっきの同僚議員とのやりとりの中で、あなたはまたうそを言われた。私、一つ注意しておきますけれども、社会党の某議員が一生懸命、この極東放送について何回も何回もあなたに質問されておった。そのときあなたは、先ほどの答弁のときにこう言われた。あのときはまだ私たちは知りませんでした。あのとき私は、佐藤総理に対して、FEBCの問題についてなぜ社会党の議員が何回も言うかということについて解説をしておったのだ。きっとニクソンさんの一族がいるからでしょうと解説をしたのだと、あなたはそのとき言われた。その時点で、私もわかり総理もわかったのですとあなたは答弁をされた。ほんの一時間もたたない間ですから、覚えておられますでしょう。ところが、この電報を見ましたら五月の二十八日ですよね。あなたが佐藤総理とごちょごちょここでお話しになったのは十一月の十二日ですね。六カ月たっておる。六カ月間全然そんなこと知らなかったと、あなたはしらを切られるおつもりですか。そういうように場当たりでものを言うから、そういうぼろが続々出てくる。そういういいかげんなことはやめて、実を言うと極東放送についてはずっと前から知っておった、だけど遺憾ながら、ニクソンさんのことをとやかく言うことは、このかよわい日本政府の力をもってしては言うわけにはいかなかった。それぐらい骨っぽいところを見せられたらどうなんですか。
  113. 福田一

    福田国務大臣 渡部さんは、私の先ほどの答弁お聞き違いになっておられるのじゃないか。私は、極東放送のことは、外務大臣になってからブリーフィングがありまして聞いておる。その極東放送にニクソン大統領の近親者が含まれておる、関連しておる、こういうことも聞いておる、こういうふうに答えておるのです。  ただ、昨年の沖繩国会総理大臣に対して質問があって、そして根掘り葉掘り総理大臣に、極東放送は何か裏があるのじゃないかというような趣のことでございましたので、その席で私は総理大臣に耳打ちをして、これはニクソン大統領の近親者が関係があるから根掘り葉掘りということになるのじゃありませんか、こういうことを申し上げた。そのとき初めて総理はそうかと、こういうふうに言われておったということを率直に申し上げておるわけなんです。
  114. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それは外務大臣はブリーフィングを受けて、外務大臣になったときは知っておったと言われた。しかし福田外務大臣は、十一月十二日の議事録の中で、極東放送の内容、陣容、そういうものにつきましては、私は残念ながら承知しておりませんですと、しゃあしゃあと述べておられますよ、ブリーフィングを受けたら知っているはずじゃないですか。十一月十二日の議事録にちゃんと載ってますよ。だから、先ほど総理大臣は、姿勢を改めて申しわけないという意味合いのことを冒頭に言われた。だから私は、それまでの分についてはある程度わかったつもりです。しかし福田外務大臣はまたうそを言うじゃないですか、この審議において、この予算委員会のどまん中で。なぜそんなことを言われるのですか。ここに書いてあるじゃないですか。極東放送の内容、陣容、そういうものにつきましては、私は残念ながら承知しておりませんと、ニクソンの一族がいるじゃないかという質問に対して、そう答えていらっしゃるじゃありませんか。何でまたそうやってうそを言われますか。
  115. 福田一

    福田国務大臣 ニクソン大統領の近親者がおるというようなことにつきまして、そもそもが外務事務当局はそう深い関心を持っていないのです。ですから、私に対するブリーフィングのときも、これはニクソン大統領の近親者がおるという話がありますよという、その程度の付言があったという状態です。そういう状態を背景として私の十一月における答弁、これを御理解願いたい、かように存じます。
  116. 渡部一郎

    渡部(一)委員 じゃ吉野局長、あなたは極東放送に対して、ニクソン一族がいるということについてきわめて薄い関心しか持っていなかったので、ブリーフィングの際にはろくろく説明しなかったのですか。言ってください。
  117. 吉野文六

    ○吉野政府委員 お答えいたします。  まず第一に、そのニクソン大統領との関係でございますが、御存じのとおり、極東放送には十人の理事がおりまして、そのうちの一人のクリフォード・マーシュバーンという人が、この人の弟かにいさんに当たる人がニクソンの母親の妹のミルハウスという人と結婚しておる。したがって、極東放送とニクソン大統領との関係というものは、実際問題としても非常に薄いわけでございます。  そこで、その電報にありますとおり、米側はこの点をある程度指摘しておりましたけれども、われわれはその点はほとんど考慮をしておりませんです。御存じのとおり、これはあくまでも日本の国内法との関係でわれわれは大いに最初は抵抗した。しかしながら、沖繩にある米企業一般をやはり存続さして認めていかないと、米側の圧力が非常に強い。これは御存じのとおり、米側の上院が相当アメリカの現地権益というものに対して関心を持っておるわけですから、したがって、その一環として日本の法令に従ってともかくできる限り見ましょう、こういう形でわれわれはこの問題を扱っていたわけでございます。したがって、関係大臣に対しまして、このニクソン大統領との関係を特に強くいろいろ指摘したようなことは、われわれとしても記憶しておりません。
  118. 渡部一郎

    渡部(一)委員 じゃ、その件はそのくらいにしておきませんと、外務大臣はさらにひどいことになってきますので、これはこの辺にしておきましょう。ただ、これから先そういういいかげんな御答弁はなさいませんように。御自分のお話しになったことを必ずしも覚えておるわけではないのですから、こういうふうにかっちりと議事録があるのに、いいかげんなことを述べられるとあとがたいへんだと思います。将来をおもんぱかりまして私は申し上げます。  次、VOAとP3の移駐問題について申し上げておきます。このVOAとP3の移駐については、この電報で見る限りは、ワンパッケージであるという認識で交渉せよと総理は言われたとなっております。VOAとP3を取引したということは、これまたすごい認識であって、話のほかであるとは思いますけれども、その問題はさておきまして、このP3の移駐がほんとうにできるかどうかについて、四十六年十一月十三日に、沖繩・北方問題に関する特別委員会において、わが党の中川嘉美議員が二時間にわたって丁寧にこの問題を詰めております。そのときお答えになったのは福田外務大臣であります。この中川議員の質問は何だったかといいますと、要するに、P3を移転さして那覇空港全部返還する、政府はもう目玉商品だとまでそのとき言われておる、福田外務大臣は言われておる、大みえを切っておられるわけでありますが、ほんとうにできるのかと聞いておるわけであります。できるのかと言っている理由は、一つは、その移転した先が二千万ドルも移転費がかかる。早い話が、飛行場だとか電子設備だとか直さなければならない。二千万ドル、七十二億円かかるのだという巨大な工事であります。一部は賠償も入っているでしょうけれども、そういうものがある。それを日本政府が担当することになっておる。そして、行き先はきまっていないが、きまったら返還日には必ず間に合わせると、もう何回も何回も念を押されて福田外務大臣は答えておられるわけであります。そのときは十一月の十三日であります。ところが、この十一月の十三日でありますが、返還交渉のときに、そのとき日本政府は何と言っていたかというと、四月一日返還をアメリカ要求しています。アメリカ側は七月一日と言っていました。今度きまった五月十五日はちょうどそのまん中でありますが、四月一日になったとしても間に合うんだと言うばかりのお話でありました。ところが政府は、今期予算案審議におきまして、重大な不手ぎわがたくさんございました。自衛隊を、ときならないときにときならないところに急に移してみたり、いろいろなことをなさいましたし、四次防を先にさっさと持ち出してみたり、いろいろなことをなさいました。こんなにおくれました。ところが閣議の統一見解では、暫定予算の中に新規政策費を含めないから沖繩返還日にP3は残留するという、まさに暫定予算にかぶせた言い方をなさいました。もし四月一日に返還ができたとして、十一月のこの議論をしているときに間に合うものだったら、予算が三月三十一日でも四月一日に間に合うものだったら、一日で間に合うものだったら、五月の三日とか四日とかにこの本予算が上がったとして、どうして五月十五日に間に合わないのか、私は重大な問題があると思います。これについてどうお考えですか。
  119. 福田一

    福田国務大臣 返還日におきましてP3がいなくなる、これにつきましては昨年の国会でしばしば申し上げた。それから本国会におきましても、何回かそういうふうに申し上げてきたわけなんです。ところが返還日が五月十五日と決定をした。その後におきましても私は、五月十五日にはP3はいなくなる、こういうふうな答弁もいたしておるわけなんです。ところがその後総予算成立がおくれてきておる。御承知のとおりであります。その他いろいろな事情ができまして、移転先の準備が整わないということになりまして、P3は、まことに残念でありまするけれども、五月十五日の時点ではなお那覇飛行場に滞留せざるを得ない、こういう事態になったんです。このことにつきましては、私は先般この席において、遺憾の意を表明しおわびをいたしておる、こういう次第でございます。
  120. 渡部一郎

    渡部(一)委員 福田外務大臣はこの議事録の中で、確信を持って取り組んでおりますとか、返還日までにP3が撤去されます、これに間違いはございませんですとか、P3用の施設、そういったものは完全になくなるんですとか、P3の施設が返還日までに撤去し得なかったというようなことはもう絶対にありませんですとか、もう何回も何回もおっしゃっておるわけであります。もうこれはまずかったというようにおっしゃっているんだから、けっこうだと言えばそれで済むわけでありますが、私は閣議の統一見解もインチキだと思うのです。それは閣議の統一見解は暫定予算の問題だけにしぼって述べられておる。こういういいかげんなことは許されないと私は思います。要するに、暫定予算のおくれたのは野党責任があるからだと言わんばかりの話です。しかし、この応答を見ておればおわかりのとおり、一日の余裕でこのP3の移転ができるという見通しがあったからこそこれほど強く言われたあなたが、十五日の余裕のあるP3の移転ができないということは、もう私が、さっきからの質疑応答を見ていると明らかになるんですけれども、要するにアメリカとまた別の暗号電報があったのではなかろうかとさえ感ずるのであります。つまりP3というのは、野党対策のために、返還日には必ず移すというふうに言うけれども、返還日にすぐ移すなどということはしないから、そのときには何なりかんなりいろいろな理由をつけてあやまるから、ともかくいまP3がなくなる、那覇空港は返還される、そういう目玉商品だけはこさえてくれとアメリカに頼んだのではなかろうか。この三つの電報以外の変な電報があるんじゃないかとさえ私は考えるわけであります。どうですか、それは。
  121. 福田一

    福田国務大臣 どうも予想もせざるお話を承りました。いかなる電報が出ましても、そういうことは一切書いてありませんから、ひとつ御安心のほどをお願いします。  ただ、私が申し上げますのは、総予算成立がおくれてきた等の事情によりまして、P3はしばらく那覇飛行場に滞留せざるを得なくなった、このことははなはだ遺憾であります。特に沖繩県民は、あの飛行場にP3がいなくなるということにたいへんな期待を持っておった。そのことを思い起こしまして、たいへん申しわけないことである、こういうふうに私は存じております。
  122. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それから、ちょっと横道へ入りますが、先ほどの応答の中で吉野局長は、復元補償費に対しアメリカが住民に対して直接支払いをするという件に関して、関心がないと述べられました。こういうすごいことを言われたことについて、まだ釈明も何にもございません。局長に聞いてもしようがないので、外務大臣に聞くしかありませんのですが、アメリカ政府が、どの機関がいつどういう形でどれだけのものを払うのかについて、日本政府は関心を持つべきだと私は思うのですけれども、どうでしょうか。そうしてそれについて、先ほどの関心がないなどと放言する局長についてどうお考えか、言っていただきたい。
  123. 福田一

    福田国務大臣 先ほどもお答え申し上げたのですが、古野局長は、関心がない、こういうふうに言われた。それは、予算のどこの費目から支出されるのか、こういうことについてのお尋ね、それに対して、それがどこの費目から出されるかということについては当方としては関心がないのだ、こういう趣旨だと思います。私どもは、もうとにかくおごそかな協定を結んでおる、両国とも国会の承認まで得ておる、そういう条約上の権利義務の関係でありまするから、アメリカがこの支払いをおろそかにする、そんなようなことは夢想もしておりませんし、私どもといたしましては、一刻も早くこの支払いが行なわれるということについては、重大な関心を持っております。ただ、その予算の編成の仕組みがアメリカにもありましょうから、それがどういうところにどういうふうに組み込まれるのか、それについては関心はないのだ、こういう趣旨のことを吉野局長は申し述べておる。先ほども私からお答え申し上げたとおりでございます。
  124. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それなら吉野局長に聞きますけれども、そんなめんどうくさいことを言うなら。吉野局長、さっきの発言についてどうお考えなんですか。、取り消しなさいよ、あんないいかげんな話。
  125. 吉野文六

    ○吉野政府委員 先ほどの私の発言が、あるいは先生のおっしゃられたようにもしとられたといたしましたら、はなはだ私の表現が不十分でおわびいたします。  私の申し上げたかったのは、まさにいま福田大臣がおっしゃられたとおりのことでございまして、御存じのとおり、協定第四条二項にその手続が書かれておりまして、それに従って先方が払うことになっておりますから、したがって、先方が払うことに対しましては、われわれは一点の疑惑も持っておりません。しかしながら、この手続自身も日本アメリカが協議してきめることになりますから、したがってその手続の過程におきまして、われわれとしては一そうこの支払いが円滑に行なわれるように努力いたします。
  126. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは、あまり時間もないことでありますから、私は最後に政府姿勢について申し上げておきたいと思います。  沖繩返還協定のこれからのあと始末があるわけであります。その一番大事な問題の一つは、沖繩返還協定特別委員会あるいは沖繩・北方特別委員会等において行なわれた核撤去あるいは毒ガスの撤去の問題でありまして、これについて想起していただきたいことがある。  これは、あのときの審議において、日本政府はみずからの責任信頼をかけて、アメリカ政府信頼してもらいたいと述べられた。特に総理は何回もそれを述べられた。野党席からはしばしば、アメリカを信ずるしかないというような態度というものはきわめて疑わしいという意見の開陳があったわけであります。ところが、いまになってみると、日本政府アメリカ政府はぐるで、両国議会をだまかしたり、あるいは国会対策上の都合でさまざまな弁解をしたことが、もはやすでに明らかであります。しかもそういう国会対策上の配慮というのをさらに越えまして、一体こういう二つの政府信頼することができるのかという両国民の不安が残るわけであります。  私は、したがって一番大事なことは、核抜きなんて言ったって、実際には核抜きにならないのではないか。特に核抜きについては、重要な疑点がたくさんの傍証をあげて追及されました。この国会において追及されたそのさまざまな問題についてどう考えられておるのか。私は、政治の不信というものはそこまでいくものだと思います。また毒ガスについて、最近沖繩には、搬出された毒ガスがもう一回再持ち込みされたなどといううわさすらございます。目下確認中でありますけれども、そういう話すら出てくる。そうして沖繩協定の審議の一番重大な部分がこの三つの電報で粉砕されてくる。こういうことになりますと、一体ほんとうに沖繩に核なしで返ることができるのかどうなのか、これはまさに信頼の問題なのであります。したがって、政治信頼を失ったときにどういうことになるかという悲惨な結末を当委員会でわれわれは見たわけであります。そしてこの返還協定というのは、もう一回やり直して、審議をやり直すということが妥当だという先ほどの御指摘がありましたけれども、それまた私は十分の真実を含むものだと思います。また返還協定には、新しい意味の妙な軍事協定とも考えられる部分を含んでおります。そうして、そういうようなおそるべきものを含みながら、いま返還協定はこうして両国の関係をきめる実際的なものとなろうとしておるわけであります。私はしたがって、先ほどからの、ちょっとしたテクニックでごまかしたのだといわんばかりのお話というものが、両国の一番大事な約束まで踏みにじったことを指摘をしておきたいと思います。  それからもう一つ。こういうことが行なわれている日本外交は、今後新しい外交をやる上において信頼が保てるでしょうか。これもまた、この座席にすわって聞いていない世界の目というものを意識していただきたいと思います。  その両方を考えますとき、私は、日本政府はもう来るところまで来た、もうその使命としても、行動能力としても、いよいよ最終段階を迎えたといわざるを得ないのであります。このような、日本政府の力のない、そうして何ら処理能力のない、もう崩壊点に達した姿というものは、悲惨というしかない。要するにここにおいて望むべきことは、内閣を総辞職するだけでは足らず、国会を解散した上で国民に信を問うことが大事だと思うわけでありますが、総理の御所見を最後に伺っておきたいと存じます。
  127. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この国会における私の表明は、冒頭においてまとめていたしたばかりでございます。ただいま解散しろというようなお話でございます。冒頭の表明にはその点には触れておりませんけれども、これは私が、各党の意向はよく知っておる、承知しておる、かように申した事柄のその中の一つとして記憶しておくことにいたしましょう。  なお、私、一つ申し上げておきたいのですが、沖繩問題、これはずいぶんいろいろの疑惑を持っておるということで、やり直せということを言われますけれども、私はやり直す考えはもちろんございません。また一億国民並びに沖繩県民も、祖国に復帰することをほんとうに鶴首して待っておる、かように私は考えますので、五月十五日には必ず返ってくる。新しくやり直せと言われても、やり直すつもりはございませんから、その点だけははっきり申し上げておきます。
  128. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 渡部君の時間が経過しておりますから、簡単に願います。渡部君。
  129. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は、沖繩返還協定について、いま沖繩交渉をやり直せと言っているのではない。返還協定の審議というものをやり直す必要があるぐらい、この三つの電報によってひどい事態が出現したと述べているのであります。そしてまたいま、国民がほんとうにあげて受け取らなければならない沖繩返還協定について、残念なことに疑惑がこう生じてきたのでは、この議事録の半分はうそではありませんかと申し上げているのです。問題をすりかえないようにしていただきたい。  以上で私の質問を終わります。
  130. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これにて渡部君の質疑は終了いたしました。  次に、河村勝君。
  131. 河村勝

    河村委員 けさほどわが党の佐々木書記長から総理に対して、今日、日本国会の権威がだんだん失われつつある傾向がある、国民にもまた、国会はどうもたよりにならないという空気がびまんをしつつある。その一つの大きな原因の中に、国会において真実が語られない、ほんとうのことが語られないということが大きな原因になっているという所信表明がありました。   〔委員長退席、田中(龍)委員長代理着席〕 今日、応答を聞いておりましても、いみじくも福田外務大臣が、今回の交渉経過について、お答えできませんと言えばいいのに、承知しておりませんと言ったのは、国会がそれによってごたごたしてはたいへんだと思ったから、そういうことを配慮して、お答えできませんということを言わなかった、そういうことを言いましたが、大体そういう傾向が強くて、国会対策上の配慮というか、まあ大体野党というものはうるさいから、極力ほんとうのことは言わないで、ごまかせるものならごまかしていこうという風潮が一般的にある。そういうところに国会の権威が失墜する大きな原因があるのだと私どもは考えます。一体それについて、総理はどう考え、どう反省しておられるのか、まずそれを伺います。
  132. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 今回の問題についての私の所信表明は、先ほど申し上げたとおりでございますから、それで御了承いただきたいと思います。ただ、国会政府との関係においてこれをどういうように考えるか、こういうような趣旨のお尋ねかと思いますが、立法府として区に会は国家の最高機関である、これはもう政府も十分尊重しなければならない。しかし、三権分立の問題がございますから、その三権分立の間においてもそれぞれ調和、調整は十分とっていく、それはお互いに気をつけなければならない問題だろう、かように私は思います。したがいまして、いろいろ御議論されておる点、これらの点も、問題は、政府のやっておる事柄を政府自身も国民に訴えますが、国会審議を通じて国会の皆さん方が、この場を通じて政府のやっていることをいろいろ確かめられること、これは当然の責務だろう、かように私は思います。
  133. 河村勝

    河村委員 私が申しましたポイントは、そういう場合に真実が語られない、ほんとうのことが語られないというところに問題があるのではないか、そういう意味のことを申し上げたのです。ですから、一般に国会対策上どうだという話をしているわけではございません。まあそれはそれでよろしいのですが、きょうの応答を聞いておりましても、私はやっぱりまだほんとうのことを言っておられるとは思われないのです。  そこで逐次伺ってまいりますが、初めに問題の電報の中でひとつお伺いをいたします。  この請求権に関する電報の一番最初のところに、本大臣より日本案を受諾されたしと述べたところ、大使より、米側としては日本側の立場はよくわかり、かつ財源の心配までしてもらったことは多としているが云々、こういうのがございます。この、本大臣より日本案を受諾されたしと述べたところ、というこの日本案というのは何でありますか。
  134. 吉野文六

    ○吉野政府委員 日本案は、いままさにこの協定になっております四条第三項でございます。
  135. 河村勝

    河村委員 四条三項だけであるならば、そこには財源の問題は何も書いてない。ただアメリカが自発的にこの補償をやるということだけが書いてあるわけですね。ところがこの電文には、日本案を受諾されたしと言ったところが、米側としては、日本側の立場はよくわかり、かつ財源の心配までしてもらったことは多としているが、というのですから、日本案というからには、そこには財源の問題が何か触れてなければならない。この日本案そのものか、あるいはこの前の書簡か何かわかりませんが、とにかくそこに財源の問題が何かなければ、いきなり財源の心配までしてもらったという文句が出てくるはずはない、論理的に。その点は一体どういうわけでありますか。
  136. 吉野文六

    ○吉野政府委員 この四条三項を先方に認めさせるために双方でいろいろ議論をし合ったわけでございますが、この点につきましては、御存じのとおり、わがほうはすでに三億二千万ドルを支払うということをきめておりまして、これには合意しておりまして、したがって、先方が最終段階になって、しかしながらアメリカとしては、この軍用地の復元補償の一部の請求権に充てるための金をアメリカの議会に請求することができないと言い出してきたときに、われわれは、それは困る、ともかく何とかして支払ってもらいたい、ともかくおまえのほうが金がないというのはおかしいじゃないか、われわれが三億二千万ドルもあなた方に払うことになっておる、しかもそのうちの七千五百万ドルは労務費関係の費用として早晩日本に返ってくる、また七千万ドルは主として核抜きの費用である、したがって、これは実際に使う金かもわからぬ、しかしながら、一億七千五百万ドルの米資産の買い取り資金は、先方が軍事費で出した金であって、すでに先方のほうとしてはその回収を必ずしも問題にしていないじゃないか、したがって、そのような多額の金を払っているのだから、金がないというのはおかしいじゃないか、こういうような議論をした次第でございます。したがって、そのようなことを踏んまえて、財源までもわがほうで指摘していただいてありがたいと、こういうようなことを先方は言ったのであろうと思いますが、何ぶん電報というものは非常に簡潔に書いてありまして、そこら辺が誤解を招く結果となったであろうと考える次第であります。
  137. 河村勝

    河村委員 われわれが、沖繩協定特別委員会以来、審議の経過で聞いていたところでは、この一億七千五百万ドル、三公社等の資産の引き継ぎ、これについては少なくとも確実である積算があるというふうに聞いておったのですが、いま吉野局長の話だと、私は七千万ドルの核撤去費用その他のことを言うのかと思ったら、資産引き取りの一億七千五百万ドルがあまり確かなものでないからというような意味であったが、この資産引き取り自体がすでに積算が十分でないのですか。これは外務大臣はそのころ御関係になったはずですが、いかがですか。
  138. 福田一

    福田国務大臣 対米支払いは三億二千万ドルと決定したわけです。ですから、正式に言いますと、三億二千万ドルをわが国の政府アメリカ政府に払えばそれでいいわけです。ただ三億二千万ドルが、どういうふうな経過、いきさつで三億二千万ドルという数字になったかと言いますると、これは一応のめどとして、一億七千五百万ドルの資産の承継、それから七千五百万ドルの労務費、それから核の問題、あるいはこれから米軍が引き揚げていく場合に無償で日本に提供していく、そういう事情、そういうことを考慮いたしまして七千万ドル、三つの範疇に分けられるわけなんですが、しかしアメリカ日本との間では、資産の引き継ぎがその後精査して一億二千万ドルになっちゃった、だからそれは一億二千万ドルにとどめる、こういう性格のものじゃないのです。一応のめどとして一億七千五百万ドル、一応のめどとして七千五百万ドル、また大局的な判断から七千万ドル、こういうことでございます。
  139. 河村勝

    河村委員 いま吉野局長は、一億七千五百万ドルの中から四百万ドル払えばいいじゃないか、こう言ったと私は理解をしておる。これはあとでもう一ぺん問題にいたします。しかしそのことは別にして、どうも財源を心配してもらったというからには、この日本案というものには四百万ドルについての新しい財源措置があったと考えるのが常識なんですが、これは繰り返して何回も議論されておりますから、最終的に確認をいたしますが、これは新しい財源措置ではない、外務大臣はそうおっしゃるわけですか。
  140. 福田一

    福田国務大臣 対米支払いは三億二千万ドルと決定したわけであります。決定というと語弊があるかもしらぬが、内定をした。その段階において、並行して対米請求権問題の処理の問題がアメリカとの間で話し合われておったわけなんです。これは別途並行してでございます。日本側としては、どうしてもこの点は譲ることはできないという強い姿勢をとったのに対し、アメリカのほうはだんだん歩み寄ってきまして、復元補償、これに応じましょう。そうすると、復元補償というものは幾らになるかというと、現地当局では、四百三十万ドルくらいのものだ、こういうようなことです。そこでアメリカは、歩み寄りはしたものの、日本の請求には応じてはならないという空気のアメリカ国会に対しどういうふうにこれを説明するかという問題に逢着したわけであります。そこで、いろいろな提案をしてきたり、またわがほうとしての応答もある、そのいきさつがこの電報になっておる、こういうことなんです。  その中で御指摘の、財源の心配までしてもらってありがとうという向きですね。これは私も、この電報を最近見まして、そしていろいろ問いただしてみたのですが、とにかく三億二千万ドルという額の支払いが行なわれる、こういう事態の中において請求権問題が論ぜられる。そのことの評価というか、そういう態度アメリカが示した、それをこういう文言で担当課長が発電をした、どうもこういういきさつのようでございます。
  141. 河村勝

    河村委員 外務大臣、あなたは最近最後まで、この四百万ドルは三億二千万ドルのうちに含まれない、こうおっしゃっていましたね。いま吉野局長は、七千五百万ドルあるいは七千万ドルはそれぞれ使途があるだろうけれども、一億七千五百万ドルにはだいぶ余裕があるようだから、そこから払ったらどうだ、こう言っておるわけですね。そうすると、一億七千五百万ドルの中に四百万ドルが含まれておる、そう理解してよろしいわけですね。
  142. 福田一

    福田国務大臣 つまりこういうことなんです。もし皆さんがおっしゃるようなことであると、三億一千六百万ドルというものがまずきまって、そうしてさて別途交渉である復元補償費四百万ドルを上のせしなさい、こういうことになって三億二千万ドルになったということでありますれば、まさに河村さんやその他の方がおっしゃるとおりのことなんです。そうじゃないのです。三億二千万ドルというものがきまった、そうしてかたがた復元補償の交渉があった、こういうことなんですね。その復元補償に必要な四百万ドルをアメリカがどこの金から払おうが、これはアメリカの自由であります。この電報において財源の心配までと、こう言っておるのは、おそらく三億二千万ドル、アメリカとしては満足したのだろうと思う。そのことを意味しておるのじゃあるまいか、そういうことを申し上げておるわけであります。
  143. 河村勝

    河村委員 外務大臣、それではもうちょっと正直におっしゃったらいいと私は思うのですね。三億一千六百万ドルがもとにあってそれに四百万ドルプラスをしたのではない、そうおっしゃるのですから、これは押し問答ですから、それは一応そうだというふうに認めた上で議論しましょう。  そうしましても、いま吉野君は明らかに一億七千五百万ドルの中から払ったらいいじゃないか、こう言いました。おそらく私はこうだと思うのですね。きのうテレビの討論会を聞いておりましたが、愛知前外務大臣がしゃべっておられた。テレビの話をここでもって引用するのはおかしいかもしらぬけれども、とにかく前外務大臣であり、当時の外務大臣である上に、国民の前に真相を明らかにしたいということでしゃべっておられたから、一応それにも触れながらお聞きいたしてもよろしいかと思いますが、これは愛知さんの話であるけれども、この四百万ドルを払うことを当初アメリカが了承しておった。ところが、終わりのころになって、どうもアメリカ国会対策上の都合があるからどうしても払えないと言ってきた。そこで三億二千万ドルの金というものは、これはいずれアメリカの所有となるものだから、そのうちから支払うことにしたらどうだ、それが、財源の心配までしてもらったことを多とする、そういう表現となったのであると、そういう説明ですね。どうもきょうの外務大臣の答弁を聞いておりますと、愛知さんのきのうの話と大体似たようなことを言っておられるようであるから、いままでの話とだいぶしゃべり方が違っておる。大体そんなことをいまあなたは答弁されようとしておるのかどうか。その点をまず伺います。
  144. 福田一

    福田国務大臣 私もきのう愛知外務大臣の参加された国会討論を聞きました。愛知外務大臣は、まさに私が申し上げたいと思うところを十分に言っていただきまして、実は先ほども感謝の意を愛知さんに申し上げたような次第でございますが、私の言うことと愛知さんのおっしゃったこと、これは食い違いはないように私は受け取りました。
  145. 河村勝

    河村委員 その四百万ドルの財源を追加したか追加しないかは一応別として、少なくとも三億二千万ドルが前にきまっていたという前提に立ちましても、ほんとうは、そうであるにしても、アメリカが困ったのでしょう、それで何とかしてくれと言ってきた。そこで三億二千万ドルというのは——吉野君は一億七千五百万ドルが相当ゆとりがあるから、それを対象に言ったらしいが、とにかく三億二千万ドルというものは非常にあいまいなものであって、積算根拠も十分じゃない。大体つかみ金みたいな形できめたものだから、その中からアメリカ側は払う、そうアメリカ国内において言ったらよかろう。日本のほうは国会のこともあるから、わがほうでは四百万ドルは三億二千万ドルに含まれていない、こう言いますよ、そういうような了解は少なくともあったのだ、こう考えざるを得ないのですね。その点はいかがですか。
  146. 福田一

    福田国務大臣 そこまでの了解はなかったと思います。三億二千万ドルがまずきまっちゃった。それと並行いたしまして、復元補償費交渉があったわけなんです。最後の段階で、復元補償は、日本立場考えるとアメリカとしてもしかたがない、これはのまざるを得ない。得ないが、アメリカ国会に対する説明ぶりが非常にむずかしいのだ。そこで三億二千万ドルを二つに分けて、そして三億一千六百万ドルの口と四百万ドルの補償費の口と、こういうふうにして、四百万ドルをいわばイヤマークでもしておかぬと、これはアメリカ国会はなかなか四百万ドルの支出についてむずかしいですよと、こういういきさつはあったと思うのです。そのイヤマークの要請に対しまして愛知外務大臣は、これはわがほうとしてまずい、それは受け付けません、こういうので最後までがんばり通した、これが真相だ。私はこういうふうに見ております。
  147. 河村勝

    河村委員 よくわかりました。それじゃ、イヤマークをするのは困るけれども、その中から支払ったといわれることは差しつかえない、こう言ったわけですね。
  148. 福田一

    福田国務大臣 これは、アメリカのほうは三億二千万ドルの中から払おうが、あるいは他の財源で支払おうが、アメリカの自由なんです。問題はそういうことじゃなくて、アメリカ政府国会を説得する、説得してこの補償を行なわなければならない。その補償を行なうためには、日米間でこの四百万ドルというものが補償費として特定されておりますよということを言わぬとぐあいが悪いのだというような出方、そういういきさつ、そういうものがあった。それをわがほうとしては、一切そういうことは困ります、三億二千万ドルは三億二千万ドルです、それから復元補償費は復元補償費であります、その金はどこからお払いになろうが、これは御自由であります、こういう立場でございます。
  149. 河村勝

    河村委員 そうじゃないのです。これをすなおに読めば、電報だけでもわかるのですね。日本側としては、三億一千六百万ドルというものは先にきまっておって、それでこの補償のために四百万ドルプラスになったということでは、それはとうてい国内が説得できない。だからそういう意味でイヤマークをするのは困る。だけれども、アメリカ側としてはとにかく国会で国内の予算からは払えない、こう言っているのだから、三億二千万ドルの中からお払いになる。そう言うなら、それはそれでけっこうである。ただし自分のほうとしては国内的にはそういうわけにはいかないから、それは了承願いたい、こういうことでしょう。
  150. 福田一

    福田国務大臣 これは河村さんもよく御承知のことと思いますが、予算というものは、歳入がいろいろずっとあって、そして支払はそれと別に、特定財源ということでなくてずっと配分されるわけなんです。アメリカでもそういうわけなんです。そこでアメリカ側が、三億二千万ドルは受け取ります、これとは別に復元補償の責めに応じますと言った際に、その金をどこの財源から出そうが、これはアメリカの自由なんです。これはわがほうの関知したところではありません。私どもの立場は少なくとも、三億一千六百万ドルというものがまずきまって四百万ドルというものを上のせしたものではない、こういう立場なんです。これは非常にはっきりしておりますから、ひとつ誤解のないようにお願いしたいと存じます。
  151. 河村勝

    河村委員 それなら再確認しますが、さっき吉野局長が一億七千五百万ドルの中から払ったらどうだ、こう言ったのは、どういうわけですか。
  152. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これは会談の議論でございまして、われわれとしては、ともかく先方が金がないというのはおかしいじゃないか、まず第一に三億二千万ドルという金を払っておる。しかもそのうちの一億七千五百万ドルという金は、わがほうが承継した資産に対して支払う金である。ところが、この承継した資産というものはもはや軍事費として落とされておる。したがって、このような金は彼らとしては自由に使えるべき金だ。もっともあらゆる金が自由に使える金でありますし、それから核の撤去費につきましてもその他につきましても、それぞれわれわれの支払い方はそういうものを考慮して支払うわけでございますから、したがって、そういうぼくの言った議論も必ずしも正確な議論ではございませんが、交渉のやりとりといたしまして、相手に対してわがほうの主張を貫くためにいろいろな議論をしたわけでございます。その一端がそういうところにあらわれておる、こういうことでございますから、決して一億七千五百万ドルのうちから支払えということを申し、先方がそれを信じて引き下がったということではございません。
  153. 河村勝

    河村委員 外務大臣は一般予算の中の融通と、それから外国からもらった金と国内予算との関係とをすりかえて議論しておられるのですね。それは、四百万ドルを上のせしたかしないかは別として、とにかく日本からアメリカに払った金で四百万ドルを支払うというのでなければアメリカ国会がおさまっているわけはないのですね、いきさつ上。そうでしょう。ですからイヤマークの問題は抜きにしても、ともかく三億二千万ドルの中で処理することを了解したということぐらいは正直に言われるのがあたりまえでしょう。そこまでごまかして、アメリカが国内予算で払おうと三億二千万ドルから払おうと自由だなんて、そんなことを言っているのはあまりにもごまかしが過ぎるのじゃありませんか。どうなんですか、一体。
  154. 福田一

    福田国務大臣 三億一千六百万ドルがまずきまってそして四百万ドルが上積みされた、こういうことは私は言わぬと河村さんはおっしゃる。それならそれで万事この議論は解決じゃございませんでしょうか。あとは、三億二千万ドルわが国が払うのです、かたがたアメリカは、復元補償をやります、こう言っているのです。その復元補償費を、三億二千万ドルを引き当てとして払おうがあるいは他の財源を引き当てとして払おうが、これは全くアメリカ政府の財政技術というか財政運営の問題でありまして、わがほうとしては何ら関知するところはない。もし、三億一千万ドルがきまつて、四百万ドルを上積みするから復元補償をしてください、こういうことがあったら、これは議論の存するところでしょう。そうじゃないのですから、ひとつ御了承のほどを願いたいと思います。
  155. 河村勝

    河村委員 最後までそこのところはごまかしなんですね。要するにいま外務大臣の言われたように、三億二千万ドルからお支払いになろうとそれはけっこうでございます、こういうことですね。そこまでは言われたわけですね。
  156. 福田一

    福田国務大臣 三億二千万ドルのうち何がしかを引き当てとしてアメリカ政府が復元財源にする、こういうことをする、これはわがほうとしては何ら異議を差しはさむ理由はありません。
  157. 河村勝

    河村委員 これ以上幾ら押し問答してもしかたがないでしょうからやめますが、少なくともいまの答弁で、三億二千万ドルを引き当てとしてアメリカが払うことは日本政府としては異存はない、それについて別段異議はないのだということは意思表示をされた、そういうふうに理解してよろしいですね。
  158. 福田一

    福田国務大臣 アメリカ政府がどういう予算の組み方をするか、これはアメリカ政府の問題であって、当方の関与する問題ではない。要は、わがほうは財源まで提供して復元補償をきめたということはない、こういうことだけははっきり御了承願いたいと存じます。   〔田中(龍)委員長代理退席、委員長着席〕
  159. 河村勝

    河村委員 いいんですよ、それは。私は、いま、新たに四百万ドルを追加をしてそのために手当てをしたと言っているわけではありません。それを言っているわけじゃない。その問題は一応おいて、三億二千万ドルのワクの中の話をしたのです。しかし、それにしてもやはり日本から払った金の中で復元補償をすることになるのですから、そういうことは率直に言われるべきなんですよ。何も隠すことはないのです、いまこの段階になって。この段階になれば、もうアメリカ国会の問題もないのでしょうから、日本国会ではもちろん差しつかえないし、そのぐらいのところを、両方の国会対策のテクニックがあるならあったでよろしいから、そういうことをほんとうを語るということが一番大事なんで、それをいつまでもあいまいにして、それはアメリカ政府の自由だなんて、まだ若干言いわけの余地を残しておられるようだけれども、そういうことが一番いけないことだと私は思うのです。そこでこの問題は一応打ち切ります。  佐藤総理、いままでの問題は総理はあるいは御存じないことで、最終的な責任総理が負ったということかもしれません。だけれども、総理自身がどうもうそを言っておられるということが、ほんとうに本質的な問題で、あるのですね。  それは、この前沖繩協定特別委員会の最終の段階で総理にお聞きしましたけれども、どうしても総理はそうでないとおっしゃるから、そのときにはやめました。しかし、こういう問題が出てきましたので、もう一ぺん、今後の基地縮小、整理の問題に関連をしますから、再確認をいたします。  それは、この沖繩協定の基礎になっております佐藤・ニクソン共同声明、そのあとのナショナル・プレスクラブにおける総理の談話ですね、これが、この協定特別委員会の段階で、わが党の曽祢委員の質問に対して、総理が、いわゆる朝鮮条項に対して、「前向きかつすみやかに」という表現を、「前向き」ということばを修正をされました。私は、それに関連をいたしまして、この談話は単なる談話ではなしに、佐藤・ニクソン共同声明とワンセットの問題であって、これは密接不可分の関係にある、そういうものだと理解してよろしいかと伺ったところが、これは全然独自なものであらかじめ彼らに見せたこともないし、全然佐藤・ニクソン共同声明と不可分だというような性質のものではない、そういう答弁をされたのですが、いまでもやはりそうお答えになりますか。
  160. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまでもそのとおりです。
  161. 河村勝

    河村委員 こういう機会ですから、私は真相を明らかにするために、ジョンソン国務次官のブリーフィングを、ちょっとそこの部分を読んでみます。そのときに私は読むのを省略いたしました。このジョンソン国務次官のホワイトハウスにおけるブリーフィングというのは、総理がこの談話を発表される前、一九六九年十一月二十一日のお昼に総理が談話を発表されたその前に、こう言っているのです。「本日の共同声明の意味については二つの要素があり、第一は、お手許の共同声明、第二は、本日正午にナショナル・プレス・クラブで佐藤総理が行なう演説である。」「この二つは非常に密接な関係があるからである。」「演説は正午に発表される。総理が演説の中で述べられることのうちいくつかに私は言及するつもりであるが、演説が行なわれナショナル・プレス・クラブで公表されるまではそれを使用しないように、というか公表しないよう是非とも要望する。」こういうことがあるのですね。それで、この中で共同声明の第四項に触れまして、「次に共同声明第四項では初めて韓国に対する明示の言及がなされており、韓国の安全が日本自身の安全にとって緊要である旨のはっきりした言明が行なわれている。ナショナル・プレス・クラブにおける演説で総理は、もし韓国に対する武力攻撃が発生すれば日本の安全は重大な影響を受けるだろうと述べられるはずである。続いて総理は「従って、万一韓国に対し武力攻撃が発生し、これに対処するため米軍が日本国内の施設・区域を戦闘作戦行動の発進基地として使用しなければならないような事態が生じた場合には、日本政府としては、このような認識に立って、事前協議に対し前向きにかつすみやかに態度を決定する方針であります。」とも述べる。」こういうふうに言っている。このあとに台湾の問題も入っておりますけれども、とにかく、国務次官が、総理が談話を発表される前に——これは公開の場ですから、日本の外務省の方々もいたはずです。もちろん日本の記者クラブもおりますね。そこでもってこういうことを言っているわけですね。この共同声明には二つの要素がある、一つはお手元の共同声明、二つがナショナル・プレスクラブで佐藤総理が行なう演説である、ここまで言っておるわけです。もし総理の言われるようにこれがそういう関係にないというならば、日本政府は何らかそれに対して抗議をしなければならぬはずでありますが、そういうことはないように聞いております。そうであれば、これは片方は総理であり片方は国務次官であるけれども、これはそう考えるほうが常識であり、秘密電報みたいなことになることを避けますから、私は別段だれがどうだということは言いませんけれども、これはすでに外務当局の幹部でも常識のことですね。それをどうして佐藤総理が否定されるのか、私はわからない。それをひとつお伺いしたいと思います。
  162. 福田一

    福田国務大臣 これは昨年の沖繩国会河村さんから総理に対しましてそういうような趣旨の御質問がありました。そこで、この種の問題は、共同声明が出たあとプレスクラブで演説をする、そういうようなことがしばしばあるわけですが、そのプレスクラブの演説の原稿、これはわが日本政府責任を持ってつくるわけなんです。しかし儀礼上、もう確定したものをアメリカに前広に見せてやる、これが通例でございます。その通例のことが一九六九年の場合も行なわれた、こういうことでありまして、佐藤総理がその点を否定されるということについて、どうも河村さん何か御意見があるようでありますが、佐藤総理はそう言っていないのです。いま私が申し上げているとおりのことを言っている。あなたの質問に対し、「○佐藤内閣総理大臣 プレスクラブにおける演説の原稿は、私自身が責任を持ってつくり、私自身政府部内で出したものであります。アメリカ政府には相談はいたしておりません。」それから「私の演説が確定すれば、おそらく、それは広報官を通じてこういう演説をするというぐらいのことは」アメリカ側に「連絡はしておるだろうと思います。」こういうのです。そのとおりのことを言っておるわけなんです。
  163. 河村勝

    河村委員 それだけのことではないのですね。この場合には共同声明の意味については二つの要素があって、片方が共同声明で片方がプレスクラブの佐藤総理の行なう演説だ、ここまで言っているのですね。ここまで言われたら、もしその程度の儀礼的に示したという程度のものなら、そこまで言うのは言い過ぎだというふうな抗議ぐらいはしてしかるべきでしょう。それはいかがなんですか。
  164. 福田一

    福田国務大臣 アメリカは共同声明を片手に持っておる、それから儀礼的に通報いたしましたプレスクラブの演説原稿を持っておる、この二つを見てください、こう言うのはこれはまた自然のことじゃないか、何も異を立てることじゃないじゃないか、そういうふうな感じがいたします。
  165. 河村勝

    河村委員 それは二つあるのを並べて見せるのはおかしくありませんよ。ですけれども、この場合はまだ総理が談話を発表しない前ですよ。前にもう組み合わせてこういう説明をしているのでしょう。私はこれは形式を議論しているのじゃないのです。こういうことが今後の沖繩の基地機能の維持ということに非常に強い影響があるから、だから私は特にその点をただしたいのです。  今度のサンクレメンテにおける声明の中で、一体沖繩基地の性格、今後の必要についてどういう声明の中身になっているか。これはもちろんおつくりになった御本人であるから御存じのはずである。この場合には「在沖繩米軍施設・区域、特に人口密集地域及び沖繩の産業開発と密接な関係にある地域にある米軍施設・区域が復帰後出来る限り整理縮小されることが必要と考える理由を説明した。」こういう前段で、あとにそれに対するアメリカ側の答えが書いてあるわけですね。これに書いてあるのは、人口密集地域とか産業開発と密接な関係にある地域にある米軍施設、これだけについて整理縮小の要望をして、それでそれに対するアメリカ側の配慮するという程度の返事があるというのがサンクレメンテの声明の中身ですよね。そうしますと、このニクソン共同声明以来のこうした強い基地機能維持に対する約束がサンクレメンテまで響いておって、こういう非常に限定的な声明になってしまう、こういうことだと思うのですね。一体こういうサンクレメンテ声明の中身でほんとうに国会で約束をされた基地の縮小整理ということが、大幅な基地の縮小整理ということがこれでアメリカとの間にできるとお考えでしょうか。
  166. 福田一

    福田国務大臣 サンクレメンテ会談で一番両当局で問題になったのは、この基地の整理縮小の問題です。これはアメリカ側とすると日本を守ってやるんだ、それなのに基地を整理縮小するという議論、これはなかなかわからないじゃないか、こういうような受けとめ方のように私は感じました。ですから基地整理縮小の必要性、これについてはずいぶん当方の説明にも時間がかかったわけであります。冒頭、私は、日本政府は安保条約を否定するものじゃない。米軍の日本における基地の存在、これを否定するものじゃない。しかし、基地のあり方というものについてはよほどアメリカ側としても考慮を払ってもらいたい。特に沖繩における状態、つまり地域住民に喜ばれるような形において米軍が駐留する。初めてこれで日米安保体制の実があがるんだ、そういう観点からすると、中部地域に基地が非常に濃密になっている。地図を示し一つ一つの村々について説明をし理解を求めたわけであります。そういうようなことでずいぶんアメリカ側から抵抗はあった問題ではありますけれども、最終的にはアメリカ側も納得いたしまして、事は返還後ですよ、返還前にこうこうこうしようということになるとこれは沖繩返還協定の再交渉だ、この態度には応じませんけれども、返還が実現したその後におきましてはひとつ日米双方においてこの問題の検討に入りましょう、こういうことを約しておるわけでありますから、私はこの約束はそれだけのいきさつを経てきたものでありますので必ず履行される、私どももその姿勢アメリカと十分に話し合っていきたい、かように考えております。
  167. 河村勝

    河村委員 時間が来ましたからやめますが、私が言っているのはそのことじゃないんですよ。ここで書いてあるのは、単なる密集地域であるとか産業開発上の調整、リアジャストメント、これしか要望すらしてないんですね。ほんとうに沖繩にあるアメリカの極東戦略のかなめになっている膨大な基地を本質的にどう縮小整理していくかという前向きのものは何にもないんですよ。ですからこんなことで——それは多少の調整、リアジャストメントぐらいできるでしょう。だけれども、これでは国会で約束したようなことができるはずがない、私はそう思うんです。ですけれども、きょうは時間がありませんからその問題には立ち入らないで、これでやめます。   いずれにしましても私は、いまの論議を通じて、やはり最後までほんとうのことをおっしゃらない、その感は遺憾ながら深くなるばかりであります。しかし、こういうことでは国会のほんとうの実のある最高機関としての機能は決して回復することは不可能だ。で、それをもっと政府にはよく反省をしていただきたい。それを最後に申し上げて、質問を終わります。
  168. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これにて河村君の質疑は終了いたしました。  次に、この問題に関する松本善明君の質疑を許します。
  169. 松本善明

    松本(善)委員 この沖繩の問題についての答弁、先ほど来福田外務大臣の答弁をお聞きしておりますと、外務大臣はじょうずに答弁をしておられるつもりであるかもしれませんけれども、あちら立てればこちら立たずで、いま外務大臣が言われておる基本の立場は、三億二千万ドルというのはこれは高度の政治判断で初めにきまったものである、こういうことで一貫して答弁をされています。ところが外務大臣が沖繩国会以来答弁されておることは、そうではないのであります。外務大臣は、こういうふうにそのときに二回にわたって答弁をしておられる。六十五国会のときから、この金については「政治的配慮のもとに総額をきめて中身を理由づけをするというものではない。払うべきものは払う、払うべからざるものは払わない、どこまでもそういう考え方で積み上げをして総額が出てくるという性格のものである。」こう言って六十五国会でも答えている。そうしてこれは変わらぬかと言って、今度は沖繩国会で十二月の九日に同じ言い方で答えているのです。「初めから支払うべき金額を幾ら、こうきめて、そしてあとで内訳をつける、そういうやり方はしない。議論をいたしまして、そして払うべきものは払う、こういう形できめていきたい、」こういうふうに答弁をしておられるのです。これはすべての答弁で外務大臣は一貫をしております。いまここへ来て全く変わっています。沖繩交渉政府は払うべきものは払う、積み上げをしていって金額を三億二千万ドルということにしたのではないのです。あの沖繩国会での答弁は取り消されるつもりでありますか。
  170. 福田一

    福田国務大臣 私は大蔵大臣として、いま松本さんがお話しのような答弁をし続けてきたんです。つまり、もう沖繩交渉は四年も続けられておる、その前の段階は私は大蔵大臣の職にあったわけでありますが、大蔵大臣としての私の立場からすると、これはどうしても積み上げ方式、そういうことでこの問題を処理してもらいたい、こういうふうに外務当局に主張し続けてきておったのです。その主張を率直に国会にも表明しておったわけなんです。ところが今度は日米交渉が進行する、そういうことになると、私が大蔵大臣としてそういうきれいさっぱりとした形の結末にもどうもならないような段階を迎えてきたわけなんです。ですから、沖繩交渉が愛知外務大臣の手によって決定をする、そういう段階になりますると、もう私が大蔵大臣として二、三年前からこいねがったような形とは少し違ってきた。それにしても形ばかりは一億七千五百万ドル、七千五百万ドル、七千万ドルと、こういうような三つの大きな区分けにされるようなことになったわけでありまするが、全体として向こうはたいへんな額を要求する、こっちはそう——私も粘りましたからそう多額なものは出さぬ、その歩み寄りなものですから、高度の政治判断によって三億二千万ドルときめた、こう言わざるを得なくなったわけでありますが、その辺の大蔵大臣、外務大臣としての移り変わりはそういうようなこと。それから沖繩交渉の非常にむずかしかったその推移、そういうものもひとつあわせお考えくださいまして御理解のほどを賜わりたい、かように存じます。
  171. 松本善明

    松本(善)委員 外務大臣、言えば言うほどぼろが出るということであります。いま私があとで読みましたのは、福田さんが外務大臣のときに沖繩・北方特別委員会で答えた答弁ですよ、初めに読んだのは決算委員会、大蔵大臣のとき、全く違うじゃないですか。国会というところは出まかせに答えるところですか。私は政治姿勢の問題として福田外務大臣にお聞きしたいのです。
  172. 福田一

    福田国務大臣 先ほど私がお答えいたしましたのは、私が大蔵大臣のときどこかの委員会でそういうふうに答えた、それを引用されておるのかと思いますが、その私の答弁を引用いたしまして松浦さんからこの考え方はいまも変わりはないかというようなお尋ねがありまして、私はいまもその考え方には違いがありません、こういうお答えを申し上げておる。それは速記録にそう書いてありまするから、そのとおりでございます。しかし、これはいわば私の気持ち表明なんです。気持ちからいいますると、とにかく一億七千五百万ドル、七千五百万ドル、七千万ドルと、こうあるわけです。その私の気持ちをそういう形で表明しておる、こういうふうに御理解願いたい。
  173. 松本善明

    松本(善)委員 外務大臣がその場限りの答弁をしておられるということは証明されたと私は思います。  総理大臣にお聞きしたいと思うのですが、先ほど総理大臣は、閣僚がうそを言っていいというわけはない、こう言われました。局長はどうでしょうか、政府委員はどうでしょうか。
  174. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 政府は同じ立場でございます。
  175. 松本善明

    松本(善)委員 外務大臣が、先ほども議論になりましたけれども、昨年の十二月十三日、いかなる段階でも三億一千六百万ドルという数字が出たそういう記録も、また両局長の記憶もない、こういうことでございますということをはっきり言っているんです。両局長もどんな段階でも三億一千六百万ドルという数字が出た、そういうことは記憶も記録もない、こう外務大臣も答えられた。総理大臣、これはうそではありませんか。いま一切ないと、これは事実言えないということではないです。否定して知らなかったということでもないのです。はっきり否定をしておる。そんなことは一度もない、これを条約局長それからアメリカ局長は答え、外務大臣がそれを言っておるのです。これは明白にうそを言っているということではありませんか。この点の総理大臣の御見解を伺いたいと思います。
  176. 福田一

    福田国務大臣 先ほどからるる申し上げておるわけですが、三億二千万ドルというものがまずきまって、そうしてかたがた復元交渉の話がある。復元補償に要する額は四百万ドルである。そうすると、それをアメリカはイヤマークしたいというような議論がありましたから、そういう関連で一応三億一千六百万ドルというものは引き算をすれば当然出てくるわけです。そういう性格の三億一千六百万ドルというものはありますが、三億一千六百万ドルというものがまずきまって、そうしてそれに四百万ドル積み上げたんだ、こういう意味の三億一千六百万ドルというものはいかなる段階においてもありません、こういうことでございます。
  177. 松本善明

    松本(善)委員 私は総理大臣にいまの答弁はうそではありませんか、三億一千六百万ドルという話はいかなる段階でも出たことはない、こう言い切っているわけです、それはうそではないか、こう言っているのです。
  178. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま外務大臣が答えたように、それで御理解をいただきたい。
  179. 松本善明

    松本(善)委員 そういうようなことで、これほどはっきり明白に国会国民に対して政府がうそを言っているという例はないです。ほかにもたくさんあります。一番顕著にわかりやすい例をあげて聞きました。にもかかわらず、外務大臣もそれから総理大臣もこの点についてはいささかもまともに答えようとしない、うそをついているということを認めようとしない。こういうような政治姿勢が一番問題になっておる。この秘密文書の問題で各党が問題にし、国民がすべて問題にしておるのは、このように政府国民国会にうそをついている。証拠を指摘されてもいまの答弁がそのとおりじゃないですか。うそと思わぬかどうかということについて何を答えていますか。そういう政治姿勢をとるというところが一番の根本問題です。国民を欺くという姿勢はけしからぬということを各党が言っているのじゃありませんか。総理大臣、それについても何もお答えになりませんか。これはうそをついているということにならないと強弁をされるかどうか、再びお聞きします。
  180. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はうそは申しません。また国民をだますようなこともいたしません。
  181. 松本善明

    松本(善)委員 それではもう一つ伺いましょう。  外務大臣が言われたり、それから総理大臣がそれを引用されたのは、三億二千万ドルの中に四百万ドルは入っていないということであります。ところがこの問題が、秘密文書が暴露をされてからアメリカでどういうことが言われているか。これは英文毎日その他の若干に共同電として入っております。「日本部の担当官として沖繩返還交渉に直接携わったマケルロイ氏(現在はフィリピン担当)は「協定第七条によって日本政府が支払う三億二千万ドルの経費は、沖繩返還に伴うすべての必要経費をカバーするものであって、協定第四条の米国が支払うべき復元補償費もその中に含まれている」」はっきりアメリカの担当官はそう言っているのです。そういう報道がされておるのです。そしてこのことは協定の中で解決をされた、明確になっておる。そして密約は必要がなくなったのだ。中に入れているから、三億二千万ドルの中に入っているから別の取りきめは必要なくなった、こうはっきり言っているのです。これはこのとおりですか、外務大臣。
  182. 福田一

    福田国務大臣 そのとおりじゃございませんです。エリクソンという人の下にマケルロイという人がいまして、それが何かそういうような話をしたという共同電報がありまして、そういうことがあり得るのかということを確かめたところ、そういう発言はいたしておりません、それは報道の誤りであります、こういうことを確認をいたしております。
  183. 松本善明

    松本(善)委員 そういう口裏合わせをするということがこの秘密電報にもはっきりと書いてあります。この秘密電報にも、議会の説明に食い違いのないように必要以外の発言はせざるよう、米側と完全に一致する必要がある、金の問題では。こういうことが秘密電報に出ている以上、口裏合わせをアメリカ日本政府がやっているということを疑うのは当然のことです。問題が起こってくるとそれを否定をするということを言わせて、そして国会で答弁をする。そういう形で国民を欺いていっている。私どもはそういうことはとうてい許すことはできないと思います。  事実関係をもう少しお聞きしたいと思います。  この秘密電文の請求権のほうの最後の、これはアメリカ局長に聞こうと思います。なお、せっかくの三二〇がうまくいかず、三一六という端数となっては対外説明がむずかしくなる旨言っておいた。これは具体的にはどういう意味ですか。
  184. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これは先ほども少し触れましたように、先方はともかく最終段階になって四百万ドルの——四百万ドルになるかどうかこれははっきりしておりませんですが、請求権の支払い分の金をアメリカの議会に対して請求することが困難である。したがって、アメリカ国会に対してそういうものの支出が楽になるように、たとえば三億二千万ドルから請求権支払い分だけを別にして、何らかのはっきりさせたような規定ができないか、こういうことを先方は要求してきたわけでございます。これに対してわがほうは、そのたとえば三一六プラス四というような形では、全然これは当初の了解と違う。われわれはあくまでも三億二千万ドルというものは、一億七千五百万ドルの資産の承継、それから七千五百万ドルの労務費、それから七千万ドルの核等の撤去、こういうものを考慮して支払うということになっておるのだ、したがって、その三一六プラス四というような説明のつかない形では困るのだ、こういうことを強く主張したわけでございます。その経緯がそういう電文に出ているのだろうと思います。  なお、ついでに申し上げますが、昨年の暮れ、三一六という数字を知らないかということで私も詰められました。そこで、実は私もこの三一六という数字は非常に印象が薄くて、実際問題として薄かったわけです。したがって記憶もさだかでなかったから知らないと申しましたが、一般にあの当時の私の発言ぶりは非常に十分でなくて、いろいろ御迷惑をかけたことをおわびいたします。
  185. 松本善明

    松本(善)委員 いまごろそう言われても、国民はたいへん迷惑をするわけです。  私はもう少し聞いておきますが、そうすると復元補償ということが、アメリカ側としては財源が出せないからもう払えない、そういうことにもしなれば、三億一千六百万ドル、こういうことになった。そうして端数とし三億一千六百万ドルというのが協定の表に出てきたのでは困る、こういう意味でしょう。答えてください。
  186. 吉野文六

    ○吉野政府委員 先ほど御説明いたしましたとおり、わがほうはあくまでも三億二千万ドルで先方と最終的な決定をしたわけでございます。その内訳は、第七条に書いてあるとおりでございます。したがって、わがほうがあたかも肩がわりするがごとき四百万ドルというような数字を別個に三億二千万ドルから引いて書く、これはわがほうとしては絶対困る、また、そういうものを要求される、そういうものに承服する立場でもない、こういうことを強く主張したわけでございます。
  187. 松本善明

    松本(善)委員 局長にもうちょっとお聞きしますが、そうすると結局三億一千六百万ドルということが協定の表に出そうな時期があったわけですね。
  188. 吉野文六

    ○吉野政府委員 それは先ほども申しましたように、そういうやりとりがその段階において出てきたわけでございまして、最初から向こうは四百万ドルに相当する請求権というものは、おそらく何としても払わざるを得ないと考えておったわけですから、したがって四条三項の規定ものんでおったわけですから、したがってその間の交渉というのは非常にごくわずかしかなかったわけです。おそらく、そこに、五月二十八日の電報にあらわれていたのは、その前後でしかないだろうと思います。しかしいずれにせよ、その意味で三一六というものと四というものを分けて規定しようというような考えについて、わがほうが考慮したというようなことは絶対ございません。
  189. 松本善明

    松本(善)委員 私が聞くのは、三一六ということが協定の表に出そうなことがあったんですね、ということです。
  190. 吉野文六

    ○吉野政府委員 それはございませんです。
  191. 松本善明

    松本(善)委員 そうすれば、どうしてここへ三一六という話が出ますか。
  192. 吉野文六

    ○吉野政府委員 それはいまも申し上げましたとおり、先方がその段階になりまして復元補償の請求権に対する支払いをアメリカの議会に請求することが困難になってきたのだ、したがって何とか日本側でそれに便宜をはかってくれないか、こういうような主張で先方が来たわけでございます。しかしながら、これは結果的には御存じのとおり全部はねつけて、現在のような形になったわけでございます。
  193. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 松本君、時間が経過いたしましたから、この問題については……。終わりますか。
  194. 松本善明

    松本(善)委員 この問題についての質疑を終わります。
  195. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これにて松本君のこの問題に関する質疑は終了いたしました。     —————————————
  196. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これより締めくくり総括質疑を続行いたします。松本善明君。
  197. 松本善明

    松本(善)委員 この予算委員会で、私の質疑が終わると、これから討論や採決ということになります。この国会で、私どもは論じられ方が非常に足らない問題が一つあると思う。その問題について総理大臣に伺いたいと思います。  それは、連合赤軍問題があれだけ世間の耳を騒がせ、そしてこれは学園が温床になっておる、そういうことがありますけれども、その対策、こういうことをなくすということの対策が論じられていませんし、それからこの問題についての責任、これも政府一つの大きな責任だというふうに思うわけですけれども、この問題についての議論が足りませんので、私はあえてこの問題を先にやりまして、沖繩問題も多少まだ論じたい点がありますけれども、あとからあるいはお聞きするかもしれません。まずこの問題をお聞きしたいと思います。  いま、大学でもこの暴力集団の根拠地になっておる大学、学園があります。その中で、たくさんの被害者が生まれております。非常にひどいのは、このテロの中で瀕死の重傷を受けて勉学の機会を奪われただけでなくて、二年たっても、いまも歩行が困難で、闘病生活を続けているという学生もあれば、そういう暴力行動に抗議をして焼身自殺をするという学生もある、こういう状態であります。私たちの党が調査をいたしましたところによりますと、この暴力学生集団を批判をし、暴力行為に反対をするまじめな一般学生が、長期にわたって構内に入れないとか、あるいは公然と自主的な活動ができないで、授業さえ受けられない状態のところが早稲田、法政、同志社などの三大学二十一学部あります。また、大学構内で、ビラ配りなどの公然とした自主的な活動が日常的に困難か、トロツキストの暴力行為に反対する活動的な中心メンバーがテロ、リンチの危険にさらされているところが十四大学三十七学部あります。状況によって学生大会や学生集会が、トロツキスト暴力学生集団に襲撃されるところが十五大学十七学部という状況であります。こういう状態、学生が登校をすることもできないというような状態のところがあるわけなんです。そういう状態について、どういうふうに政府は把握をしておるか、お聞きしたいと思います。
  198. 高見三郎

    ○高見国務大臣 私からお答え申し上げます。  御質問のように、相当数の大学が暴力学生によって占拠せられておるということは事実であります。ただ私は、民主主義社会におきましては、理由のいかんを問わず、暴力は絶対に容認せらるるべきものではない、ことに学問の府でありますところの大学においてこのことが強調されなければならないと存じておりますが、現在の大学において、一部学生等の違法行動によりまして正常な運営が妨げられておることはまことに遺憾に存じております。ただ問題は、学園内の紛争の様相を見ておりますと、政治的なスローガンを掲げまして、セクト間の対立をあおるような行動を関係者が繰り返しております限りは大学の静ひつを維持することはできないと思うのであります。御指摘になりました早稲田にいたしましても法政にいたしましても、自治会の指導権をめぐっての争いが学園紛争の種になっておるということは、少なくとも学問の府にある学生にあるまじき姿であると同時に、またこれをあおるがごとき教育者の存在は容認することができないことである、私はかように考えておるものであります。
  199. 松本善明

    松本(善)委員 私はここで、非常に重大な事例として、東京大学の医学部の附属病院の精神神経科病棟がトロッキスト暴力集団によって、二年有半の長期にわたって占拠をされて、正常な大学病院の病棟としての機能を失っているという事実を指摘をして、質問をしたいと思います。  東大病院の精神神経科病棟は、四十四年の九月八日以来、この暴力集団によって占拠をされて、神経科長ですね、正式の教授以下正式の職員が十数名、正規の教官、医師、看護婦などが入棟することができない、こういう状態になっておる。これは東大病院長自身に私も確かめているが、東大病院長も入っていない。この病棟に出入をできる正規の職員というのは医師が講師と助手で二名、看護婦は三名、これは病院長も確認をしております。夜はこの精神神経科の病棟に十六名の患者が入っていますけれども、正規の職員は一人もいない。これも病院長は確認をしています。こういう事態総理大臣はどういうふうにお考えになるか、この点をお聞きしたいと思います。
  200. 高見三郎

    ○高見国務大臣 私が主管大臣でございますので、私からお答え申し上げます。  実は、東大の精神神経科の病院の問題につきましては、御指摘のとおり、四十四年の九月から、昔、赤れんがと申しておりました旧別館に、何と申し上げますか、東大精神科医師連合という一グループが教授、学生ともに立てこもりまして、十三人であったかと思います、数字はちょっと違うかもしれません、十三人であったかと思いますが、患者を擁していわゆる自主管理に移っておるのであります。この春、二月でありますか、一人の入院患者をめぐりまして、入院患者一人をふやすということになりまして、看護婦は、われわれはそんなものは見きれないというので十三人、新館の別棟のほうに、外来のほうへ移りました。問題は、まことにけしからぬ話だと思いまするけれども、大事な患者を擁しておることでありまするのでどうにもなりません。だから、大学当局の自主的な解決というものをひたすらにこいねがっておったのであります。ところが学長の立場になりますると、これは医学部長の問題であるし、医学部長立場になりますると、これは病院長の問題だというような、まことに手ぬるい話であったのであります。(「そんな学長、首切っちゃえ」と呼ぶ者あり)問題は、御承知のように教育公務員特例法の関係がありまして、つぶしちまえという御意見も出ましたけれども、そう簡単にはまいりません。そこで私は、何とかしてこの両集団が同じテーブルに着いて話し合いの場を持つことをひたすらにこいねがっておったのであります。これがなかなかできないで、一方の外来病棟の学生、教授が病院長と折衝すれば、また団交を赤れんがのほうがやるというような状態で、同じテーブルへ着いての話し合いというものがなかなかできなかった。ようやく三月の十六日に至りまして、病院長を中心といたしまして両派が同じテーブルに着いて意見を交換することができる状態になりました。もうしばらく推移を見守ってみたいと思います。私は、大学の自主性を尊重する意味で、できるだけ手荒なことは避けたいと思っております。しかし、このことは実は東大の名誉に関することであるし、ことに東大の歴史の古い医学部の名誉に関することであります。せんだっても、あなたのほうの津川先生の御紹介で武蔵療養所長がお見えになりまして、この間何とかしてくれぬかというお話がありましたその翌日、実は両方で話し合いの場につくということになりました。もうしばらくの間、時間をかしていただきたいと思います。必ず解決をいたしたいと考えております。
  201. 松本善明

    松本(善)委員 私は、結論だけ総理にお聞きしたいのですが、正式の教授、科長、こういう人たちを含めた職員が大学の中に出入りできない、神経科の教授が。そういう事態は許せることだというふうにお考えかどうか、これ一言だけお聞きしたいと思うのです。
  202. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 職員自身が自分たちの職場に入れない、そういうことがあってはならないのです。ただ、どうもいろいろ先生方には先生方の主張があるようですから、ただいま文部大臣が話をしておるように、それぞれが十分話し合つて、そうして手荒なことをしないで解決する、こういうことのようですから、しばらく模様を見たいと思います。  私は、どうも共産党の方にしては御迷惑で、あるいは代々木派だとか反代々木派だとかいろいろいわれる、どうも代表的にそういう扱い方をされる、そういうことではずいぶん御迷惑だろうと思います。あるいはML派あるいはまた連合赤軍、それらのものが日本共産党からは政府が泳がして  いるのじゃないか、こういうようなお話がございますけれども、さようなことはございません。過日も本会議でいろいろお話がございましたが、むしろこういう事柄に関係がないということをはっきり認められている政党、その立場においてはっきりされることが望ましいのではないだろうか、かように私は思います。
  203. 松本善明

    松本(善)委員 まじめな質問をしておるので、先回りをしてお答えいただかないように、混乱するといけませんから。そういうふうにお願いしたいと思います。  この占拠以来二年半にわたって、精神神経科病棟での学生の実習とか研修医の実習とか研究室の研究活動が一切行なわれていないのです、この二年半に。このことによって、昭和四十五年から本年三月に至るまで、二百九十名の学生が病棟における臨床実習をしないまま学業を終えて、医師として社会に巣立たざるを得ない、こういう事態になっておるのです。さらに現在は、その在学生百名以上がこのために臨時カリキュラムを余儀なくされている。研修医の病棟実習ができませんとか、あるいは研究活動を正常にできない。これは、日本の精神神経学界に及ぼす否定的な影響もはかり知れないものがあると私は思います。この二年半にわたってそういう異常事態が起こっておるということについて、一体文部大臣や厚生大臣はどういうふうにお考えになるか、文部大臣は特に責任はどう感じておられるのか、これを伺いたいと思います。
  204. 高見三郎

    ○高見国務大臣 御指摘のとおり大学というところが暴力の府になっておるということ、これほど残念なことはございません。ただ、私は大学の学問の自由というものについては身をもって守ってやらなければならないと考えております。いま御指摘のように、実験、実習の機会がない学生につきましては、他の病院等に委託をいたしまして実は実験、実習の場を与えておるというのが実態でございまして、先生御指摘の学校ではできないじゃないかと言われますならば、そのとおりであると答えざるを得ないのでありますが、しかし、それに対応するだけの措置はとっておるつもりであります。
  205. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 私は、医学教育は文部省の所管であるからといって放置するわけにはまいらない、かように考えております。文部大臣とよく協議をいたしまして今後の卒業生の扱い等の処置を考えたい、かように考えます。
  206. 松本善明

    松本(善)委員 二年半にわたってこういう異常事態が続いておるということを、単にほかで実習をしておるとかあるいはいま話し合いをしそうだというようなことで一体済ましていいのかどうか。一体こういうような正規の職員を入れない、自分たちだけかってに占拠をしておる、こういう者は学内で処分の対象となるのではないか。場合によっては犯罪となるのではないかとさえ思いますけれども、その点については文部大臣はどうお考えですか。
  207. 高見三郎

    ○高見国務大臣 事柄はセクト間の争いなのであります。だから両方のセクトが同じテーブルに着いて話し合いができるという事態ができたという事実で、いましばらく、かすに時日をもってしていただきたい。いままでは三派系で占拠いたしておりましたその連中が、ようやく話し合いの場につくことになったのでありますから、これで問題の解決の糸口がついた、私はかように考え事態の推移を見守っておるわけであります。
  208. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、セクト間の争いであるということを簡単に言っておられますが、そういうことであるならばそういう暴力で占拠をしていてもよろしい。——二年半も占拠をしておる。そうして学生の実習も妨げる、こういうことが正当化されるのですか。それは、文部大臣は責任をとらなくていいのですか。あるいは病院長なり学校は、それは知らぬ顔をしていていいのですか。
  209. 高見三郎

    ○高見国務大臣 最善の努力を今日まで尽くしてまいりました。そうして、ようやく話し合いが共同でできるような状態をつくったのであります。私はこの機会に申し上げておきたいことは、大学の自治を最も強く主張せられておった松本先生でありますから、この間の事情は御理解をいただけると思います。
  210. 松本善明

    松本(善)委員 だからこそ、大学の自由を守り学問の自由を守る、研究活動の自由を守るために、暴力でそれを阻害をしておる者をどけることを主張しているわけです。一体大学の自治の理由のもとにそういうような——正規の教授ですよ、責任者ですよ。責任者、ここでいえば、予算委員会でいえば予算委員長ですよ。それの入ることを二年半にわたって阻止をする、そういう者と話し合いをしていくというのが基本的な態度ですか。それは学内の規律の保持という観点からしかるべく処分をしていくという態度、そういうことは許されないという態度を明確にするということがまず必要なのではないか、この点をお聞きしたいと思ます。
  211. 高見三郎

    ○高見国務大臣 御審議をいただいてすでに成立しておりまする大学の臨時措置法によりまして、たとえば東大の医学部に休校を命ずるということができないわけではないと思います。しかし問題は、旧病棟に立てこもっておりまする数はわずかに十数名であります。そのために全医学部に休校を命ずるというわけにはまいりません。その辺の事情もお察しをいただきたいと思いまするし、私は、大学の自治を尊重して、大学自体が問題を解決するのが当然の行く道であろう、かように考えておるわけであります。
  212. 松本善明

    松本(善)委員 人数が少ないからといって暴力をふるって入れないということになれば——入れないのです、現実に。あなた認めたでしょう。総理大臣、文部大臣はあの態度でいいのですか。私は、まず何よりもそういうような暴力で占拠をするというようなことは許せないという態度を断固として文部省も、それから学校側もまず声明することが必要だと思うのですよ。休校しろなんて言ってないですよ。その点はどう思いますか。
  213. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 松本君のお説に私、全面的に賛成でございます。右だろうが左だろうが、暴力によって大事な教室を占拠する、さようなことは許されません。
  214. 松本善明

    松本(善)委員 文部大臣、いまの総理大臣のお話では、私はこの点では明快だと思います。これは大学の自治と関係ないですよ。犯罪者なり処分の対象となるべき者、それに対して文部大臣、いまの総理発言あとを受けてどういうふうにされますか。
  215. 高見三郎

    ○高見国務大臣 私は、いかなる場合でも暴力を否定するということを最初に申し上げました。そこで、この状態を解決する道は、医学部、病院長のもとで両者がお互いに話し合いをし合うという場を持つまでが一番大事なことであると考えて、今日まで努力をいたしてまいりました。三月十六日に至りましてこの場を持つことができるようになりました。それで、もうしばらく様子を見守ろう、かように考えております。
  216. 松本善明

    松本(善)委員 この問題は、非常に大事な問題なのでもう少し論じておきたいと思いますが、意見が違っても——セクトということを言われた、両派が話し合うということを言われたが、意見が違っても、暴力を使わなければ同じ教室の中に入っていって意見を一致させることもできるし、あるいは意見を一致させないで、そのままでおってもかまわない場合もあるわけです。暴力を使うというところが問題なんです。その暴力的な占拠をまずやめさせるということから事が始まるのじゃありませんか。話し合いはもちろん必要でしょう。それは学術等の対立もあるかもしれないので、それは話し合いも必要でしょう。しかし、暴力をふるっている限りにおいては、これは学徒として扱うわけにいかない。そこのけじめをはっきりすることが必要ではないかということを言っておるのです。いかがですか。
  217. 高見三郎

    ○高見国務大臣 いまの意見について、暴力を使うということを私は肯定しているわけではありません。暴力を使うということは、いかなる場合でも許すべきことではないと思っております。ただ、ようやく話し合いの糸口がついた、しばらく時間をかしていただきたいと、かように申し上げておるのであります。
  218. 松本善明

    松本(善)委員 いまの私の意見について、総理大臣の御意見を伺いたいと思います。
  219. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま文部大臣も申しておりますが、気がついたのがおくれた、いままで二年たっている、こういうようなお話も出ておりますが、とにかく、いま話し合いで問題を解決しようと努力しているのですから、その意味でしばらく時間をかしてくれ、こういうことですから、これはそのくらいの民主的な余裕があってもしかるべきかと思います。
  220. 松本善明

    松本(善)委員 基本的な考え方としてもう一度確かめておきますが、暴力をふるうことが問題なので、意見の一致をするために話し合うのはもちろん当然のことだ、しかし、その暴力的な占拠を解除させて、それをまずやめさせるということが前提だ、この点について総理の御所見を伺いたい。
  221. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大体私は、松本君と同じように思っております。
  222. 松本善明

    松本(善)委員 そのように実行を文部省が必ずするように要求をしたいと思います。  それから、文部大臣、先ほどそういう患者のことも考えなくちゃいけないというふうに言われて、手荒なこともできないというようなことを言われましたけれども、こういうそこの精神神経科の科医長、責任者がその病棟に入れないという状態の中で、入院を認めるというようなことが許されていいのですか。一体、責任をもって患者の治療ができますか。そういうことを文部省は認めるのですか。
  223. 高見三郎

    ○高見国務大臣 御承知のように、大学については文部大臣は意見、勧告はいたしますけれども、大学の運営につきましては、大学学長の判断にまかしておることは御承知のとおりであります。そこで、入院させるかさせないかというような問題は、当然精神神経科の医長が判断をすることになるわけであります。暴力排除のために、まだ大学から機動隊の出動を要請されておるわけでもございません。大学の自主的な力によって暴力が排除できるならば、それにこしたことはないのであります。
  224. 松本善明

    松本(善)委員 文部大臣、先回りをして機動隊がどうのこうのというようなところまで、いかなくていいのですよ。そういう状態で、大学が責任を持てない状態——私どもにはとうてい考えられないですよ、責任者がいないで入院を認めるなんて、患者を扱うなんて、とうてい考えられないことですよ。そういうことは許せないことだということを、文部省が一言言うだけでいいのですよ。そういうのはいけないということを、一体文部省はいままで言ったことがあるのかどうか。
  225. 高見三郎

    ○高見国務大臣 この問題につきましては、文部省としては大学学長、学部長、病院長、事務局長、あらゆる面を通じて、まことに遺憾なことである、すみやかに大学独自の力で解決をすべきであるということを何度も何度もやっております。その結果がそうなったということを御承知をいただきたい。
  226. 松本善明

    松本(善)委員 文部大臣に伺いますが、そういう状態で入院は認めることはできない、そういうような状態で患者を扱うのはよくないという立場を文部大臣はとっておられるのかどうか、ここで明確にしていただきたい。
  227. 高見三郎

    ○高見国務大臣 望ましいことではございません。まことに遺憾なことだと思っております。ただ、まあ外来のほうは、御承知のようにりっぱに診療をいたしておりますから、入院の場合を私はいかがと——必ずしも賛成ではございません。
  228. 松本善明

    松本(善)委員 外来はいいのですよ、外来のほうはちゃんとやられております。入院のほうなんです。そういうことはいけない、こういうことですね。もう一度ことばで言っていただきたい。
  229. 高見三郎

    ○高見国務大臣 原則として、大学の中で自主管理などという新しい行き方をすること自体が間違っておるのであります。そのこと自体がいかぬと思う。ただ、まあ救急の場合にこれを入院させるかさせぬかということは病院長が決定をする事柄でありまして、文部大臣が決定をする事柄ではございません。それが二月でありましたかに起こりました事件の一つであります。
  230. 松本善明

    松本(善)委員 これはさらにその基本的な見解に基づいて早急に解決をされるように要求をして、次の問題に移りたいと思います。  総理大臣にもう一つ、私は早稲田の例をあげて伺いたいと思います。  早稲田では、こういう暴力と登校できない人をなくす会というのが、早稲田大学第二文学部にできておるのです。で、これは早稲田の第二文学部では、暴力集団につけねらわれて登校できない学生がいま二十六名います。そして、こうして長期に登校できませんで、結局授業料を支払えない、授業を全く受けられませんから、そうすると末席にある、問題はどうしても解決をしない、何年もかかる、こういうことで退学になった学生が十三人もいます。これは革マルの暴力集団ですね、これが支配をしておる。暴力行為の件数は、もう連合赤軍のリンチ殺人事件に近い状態、裸にしてチェーンでなぐるとか、けるとか、そういうのが病院にかつぎ込まれるというようなことがもう再々あるわけです。こういう状態でありますと、学校はもう、憲法でいう教育を受ける権利は言うまでもなく、学問の自由もないし、思想、信条の自由もないし、言論の自由もない、生命、身体の自由さえないという状態です。こういうままの大学というのは、私は、教育基本法だとか学校教育法の趣旨からは全く考えられない事態、趣旨とは根本的に違った事態ではないかというふうに思いますが、総理大臣、いかがお考えですか。
  231. 高見三郎

    ○高見国務大臣 早稲田大学におきまして三派系と民青系とほぼ同じ数の学生集団があり、互いに主導権を争って、これは法政大学の場合も同じでありますが、確かにそういう暴力行為が行なわれておる。しかし、大学当局は、この問題につきましては非常に真剣に取り組んでおります。警察とも緊密な連絡をとっております。学生にして勇気があれば、必ず大学構内には入れるという状態を大学は保障をいたしております。
  232. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも、ただいまのようなお話が次々に出ている、東大あるいは早稲田、まだその他の学校にもそういう例があると思います。こういうのは、やはり民主主義時代ですから、みずから保護を求めるとか警察がきらいでも警察権を有効に使うということ、これは当然じゃないかと思うのですよ。私、そういう意味で積極的にみずからの権利を主張する、そういうことがあってほしい、そのために社会秩序を守るための協力、これにはいささかもやぶさかでない、こういうことを、迷惑を受けている学生諸君もやはり勇気を持ってそれだけのことをしていただきたいと、かように思います。
  233. 松本善明

    松本(善)委員 文部大臣は、そういうことがないというようなことを言っておるけれども、現にそういう学生がいるんです。そして総理大臣は、それは警察に言えばいいだろうというふうに言われるのですが、なかなかそんな簡単なものじゃないです。早稲田大学二文の学生で一九七〇年の十月六日に焼身自殺をした人がいます。これはその問題で焼身自殺しているのです。山村政明君という人、この人の遺書は、「死を目前にした私が最も切実に望むのは次のことである。革マルの暴力支配と、大学当局の冷淡な措置により、経済的困窮の中で留年、退学に追い込まれながらも苦闘を続けている学友たちに明るい光のさすことである。彼らが、暴力支配による身体、生命の危険、経済的な生活破産から免れ、学生としての正当な権利を回復することである。二文の学生、教職員の正当な戦いに理解と支援を与えてほしい。暴力を一掃し、よりよき学園を建設してほしい。」こう言っている。  それから、これは学生にとどまらず先生にまで及んでいる。教授が学校に入るについて、これは私、学生から直接聞いたんですけれども、教授がなぐられたり、教室に散らばっているビラを拾わせられたり、教授の中には、大学の中に入るのに決死の覚悟で入ることがある、神経のこまかい人だったらめしものどを通らないだろう、こういうことを言っている。しかし、こういう事態を教授として公にされるということはなかなか勇気の要ることです。これは公に出ているのは、私が知る範囲では、法政大学の湯川和夫氏がはっきり公にされております。しかし、なかなかこれを公にされない。あるいは文部大臣に対する報告はそういう表面的なもので、保障されているなんと言ったって文部大臣、自分で早稲田の第二文学部へ行って学生に聞いたらいい。そんなことを言ったら学生に何を言っているんですかと言われますよ。私は総理大臣の言ったことがちょっと問題なので、山村君の話を出しました理由は、この人は警察に届けているのですよ。届けたんだけれども、何にもどうにもならない。それで最後自殺しているのですよ。山村君は、大隈講堂のところで数名の革マルに襲われて、病院に運ばれました。戸塚署に届けたところが、数日後に戸塚署の高橋という警察官から見舞い金として五百円贈られた。内部のことを知らしてくれという電話があった。山村君はこれを拒否して金は返したということ。届け出をしても、警察の態度は犯人逮捕と処罰という方向にいかないのですよ。それで山村君はさらに屈することなく戦うわけです。戦うといっても、学校に入って授業を受けようとするわけです。また、学校へ入って授業を受けられない学生のためにやるわけです。いろいろ訴えていくわけですね。それでまた一九六九年に学生大会議長をやっているときになぐられた。十二月には二十数名の革マルに襲われてなぐる、けるの暴行を受ける。衣服を裂かれる。それからまたその同じ十二月に革共同の政治局員なりに襲われて鉄パイプで頭をなぐられて入院をする、そして七〇年の十月についに焼身自殺に追い込まれるのです。こういう事態があるのですよ。  総理大臣、この話を聞いてどう思いますか。
  234. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いわゆる三派のセクトの争い、これはなかなかわれわれが聞いている以上に激しいものだと、こういうことをただいまの説明でよくわかるのです。私はいま、保護を頼んだその際に、警察がただ情報を取るような形でその人と連絡をした、こういう話を聞いて、どうも警察としても態度が間違っている、かように思います。だがとにかくいまの若い諸君、ずいぶん苦しみがある、表面は何と申しましてもただいまの思想上の争い、それはなかなか激しいものがある、かように私は思います。われわれが想像した以上にそのセクトの争いはひどい、かように思います。
  235. 松本善明

    松本(善)委員 総理大臣も文部大臣もセクトの争いということを盛んに言われ、民青ということばも使われました。この早稲田の先生が言っているのは、暴力反対というのは民青のことばだ、そういうことばを使うなと革マルに言われるというのです。そして、暴力をとにかくなくさなくゃいかんじゃないかと言ったら、この先生は、革マルから暴力を取ったら学校から追放することになる、そんなことはできない。——それは常識で考えられないやりとりが教授と学生との間でもやられているのですよ。セクトの争いだったら間で暴力を使っていいか、暴力で学校を支配していいか、そういうことは私は絶対に認めることはできない。そういう態度政府がいままでとってこない。いまここの論議であっても、私がまともにこういう事態が起こっているんだということを論じているにもかかわらず、セクトの問題があるから——初めは文部大臣も、東大の問題でも簡単にいかないでしょう。セクトの問題があるから、早稲田の二文の問題でも解決しない。私ども、そういうような暴力をなくすということが問題になっているにもかかわらず、あるいはほかのセクトの問題だとかあるいは民青の問題だとか、そういうことが出てきて問題をこんがらかされて、そして暴力がなくなるという方向にいかないというところを問題にしているのですよ。そこはもう明確に区別をして、学園から一切の暴力はなくなるというふうにすべきじゃありませんか。
  236. 高見三郎

    ○高見国務大臣 ひとり学園だけの問題ではありませんが、学問の最高の府たる大学の構内が、暴力によって占拠せられるということを許すべきではないということだけは、はっきり申し上げておきます。これに対応する措置は講ずるつもりであります。
  237. 松本善明

    松本(善)委員 その講じ方の問題でありますが、この早稲田二文で言えば殺人未遂で起訴をされた、保釈中と、こういうような者もごろごろいるのですよ。これは私は、学園の自治とか大学の自由の名のもとに公然と犯罪が——犯罪集団ですよ、殺人未遂なんて凶悪な犯罪集団ですよ。それに対する断固たる考え方、これはもう学生、学問の対象ではないですよ、教育の対象ではない。教育の対象とそれから犯罪集団ということを明確に区別をすることがまず第一歩ではないかと思うのです。そう思いませんか。
  238. 高見三郎

    ○高見国務大臣 お話のとおりであります。ただ、御承知のように大学は、大学みずからの手でやることを待つ以外に方法がございません。もし文部大臣にそれをやれとおっしゃるのならば、厳重なる大学管理法をつくるということ以外に、ただいまの文部大臣はそれだけの権限を持っておらない。大学人の見識と勇気と英知を持ってこの問題に当たっていただきたいと念願をいたしておる次第であります。
  239. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 国家公安委員長の答弁を求めます。
  240. 中村寅太

    ○中村国務大臣 お答えいたします。  学園内の暴力行為の実態は、きわめてこれは容易ならぬことであって、許されることではございません。しかしながら、現在の状態では、大学当局が自治的にあらゆる暴力行為等の起こらないように処置をするということが前提になっておりまして、大学の要請があれば、警察当局といたしましてはいつでも要請に応じて暴力行為を排除する、さらに要請がなくてもそういうことが起こりはしないかというような不安があるときには、警察当局としてはあらゆる万全の措置を講じておるという実情でございます。
  241. 松本善明

    松本(善)委員 文部大臣に、私は先ほどの答弁をお聞きしまして、大学管理法とか文部大臣の権限をもっと強くしろというようなことをすぐ言われますけれども、私はそんなことを言っているのじゃないのです。いますぐできることをやったらいいんじゃないか、文部大臣としてそういうことは、犯罪の対象となるようなものは、これはもう学外に出すべきなんだ、教育の対象とすべきではないんだということをはっきり指導するだけでもたいへん変わるのですよ。そういう態度はとれませんか。
  242. 高見三郎

    ○高見国務大臣 終始一貫その態度で臨んでおります。たとえば横浜国立大学のごときも、放校すべき者は放校し、除籍すべき者はそれぞれに除籍するというだけの措置をとらしておるわけであります。ただ大学は、教授会、評議会の議を経なければ除籍ができないというところに問題があるのであります。今日の制度自体の欠陥であると私は思うのでありますが、もし大学が、ほんとうに学問の最高の府として大学人が大学人の誇りを持っておるならば、こういう連中をそのまま大学に置いておくはずはないはずだと思う。それをやらないところに、私は、日本の大学というもののまことに悲しむべき現象があるということを御理解をいただきたいと思うのであります。
  243. 松本善明

    松本(善)委員 文部大臣は、大学当局だけに責任を負わせるように言っておられるけれども、ここでの討議を見ましても、私は東大の病院長と話をしたときでも感ずるのですけれども、すぐにセクトという話が出たり、あるいは民青の話が出たりするのですね。そこが私どもは泳がす政策と言っています。それは単に、もちろん背反者の事件のときのように、警察官から金をもらってやったということもあります。ありますけれども、そういうことだけを言うのじゃなくて、いわゆる政治的に利用している、あるいは取り締まりを十分にやらない、これを取り締まれば民青を利するとか、あるいは共産党を利するとか、そういうような考え方で取り締まりをやらないというところが、これは一つ大きな問題なんですね。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)そんなことはないという不規則発言がありましたけれども、実ははっきりとそういう発言も、自民党の幹部の皆さんにもありました。指摘をしたこともありました。文部大臣をしておられた方も、そういう発言をして問題になったこともあります。必要ならば私ここで読み上げてもよろしい。そういうような考え方をこの際一切一掃して、学園から暴力を一掃するということを政府が本気にやれば、私は、もちろん協力がされるし、もちろんこれは当然にやらなければならないという、世論もそういう方向に向かってくるというふうに思いますが、その点についての総理の御決意を伺っておきたいと思います。
  244. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いずれの政党でも暴力追放、これに反対だ、こういう政党はないでしょう。私は、ただいま松本君から、学園は暴力追放してほんとうに自由な学園にしよう、こういうねらいを提案されたと思います。私は、おそらく社会党も民社党も公明党も、みんな同じようにただいまの学園の自由を守って、そうして真に勉強のできる、そういう学園をつくろうということについては各党とも賛成だと思います。そのためにも、とかく暴力集団であるかのように一部から誤解を受けやすい政党、その辺から態度を改めて、そうしていかれる、これは私たいへんけっこうなことだと思います。私どももとかく右翼とつながりがあるというような批判を受けやすいのですから、私どもも、さようなものでないという意味で、ただいまのような御提案があれば具体的に暴力追放、かような決意をすることに賛成でございますから、これは十分各党で話し合っていただきたい、かように思います。
  245. 松本善明

    松本(善)委員 この問題についての実際のこれからの施策というものを私は注目をすることにして、これはこの程度で終わりたいと思います。  私は、これからあとの時間で総理大臣政治責任について、総理はどういう政治的な考え方を持っておられるのかということをお聞きしたいというふうに思っております。  それは、今国会ほど総理大臣や各大臣の責任問題が論じられたことはありません。で私は、総理がどういうふうに政治責任という問題を考えておられるのかということは、これは総理の見識として非常に大事な問題であるし、国民も聞きたい点だろうと思うのです。その点で一つ一つ伺っておきたいと思うのでありますが、特にその点で伺おうと思いますのは、この佐藤内閣では、放言をしたことによって大臣をやめられた方がたくさんあります。その放言をしたことによって大臣をやめられた方の責任と、今国会で論ぜられたいろいろの大臣や総理大臣責任と比較検討して、一体どっちが重いんだろうか。私は、総理がどうお考えになっているかということを知りたいというふうに思っておるわけであります。  そのたびごとの問題を一つ一つお聞きしたいと思いますが、第一に、初めからいきますと、予算をみずから減額修正せざるを得なくなった、これは放言の問題と比べものにならないような、大蔵大臣や防衛庁長官も御自分で、そうなればやめなければならないということを言っておられます。私は、そのとおり実行されればまことに見識であるというふうに思っておりましたけれども、そういうふうになりませんでした。これは放言と比べてこの問題の政治責任というものは軽いものでありましょうか、伺いたいと思います。
  246. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 個人的な放言と、ただいまの予算政府責任で修正したということ、これは比較する筋合いのものだとは思いません。私は、今回の予算修正は議長あっせん、それを政府が了承した、こういうことでございますから、いわゆる個人的な放言の問題ではない、そういう意味において政治責任があると、それはもう今朝冒頭に私どもの所信を、これについてのお話はしたつもりでございます。なお、それらの点について不明な点があれば、もちろん私がお尋ねに答えるのも、そういうことも筋合いだと思っておりますけれども、各党の御意見に対しましては私は別に異を唱えないでそれは拝聴いたしておりますから、同じように共産党からも先ほどの冒頭においての質問、それはやはりそういう意味を持つものではないか、かように思います。
  247. 松本善明

    松本(善)委員 この際ですから、私は後世の歴史のためにも伺っておきたいのですけれども、大蔵大臣と防衛庁長官が、初めはやめなければならないというほどに考えておられた、なぜやめなくなったのか、その心境の変化を簡明に答えておいていただきたいと思います。
  248. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 御承知のとおり、四十七年度の防衛関係予算の編成にあたりましては、私どもは、従前の解釈運用から見てこの編成の手続に違法があったというふうに判断しておりませんでございましたが、しかし、当予算委員会審議の過程におきまして、四十七年度の予算と四次防との関係というようなものについて疑義を生じて、このために議事が混乱し、審議がおくれたということについては私ども非常に遺憾であったと考えております。これについてはいろいろ議論をしても、さらに混乱を長引かせるということでございますので、そこで議長のあっせんに従って政府はこの提案を受け入れて、そうして予算の修正をしたということでございますので、これによって一応予算審議をもとに戻すことができたというようなことで、これについてはいろいろ意見がございましても、もうこれによってこの問題の収束をはかられたということでございますので、私どもはそのままになっておるということでございます。
  249. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 大蔵大臣からお答えしたような経過によりまして、そのままになっておるわけであります。
  250. 松本善明

    松本(善)委員 江崎防衛庁長官にはもう一つお聞きしておきます。  沖繩の抜き打ち移駐については、防衛庁の幹部を処分されました。みずからも政治責任を感じているというふうに言われました。この点については、いまどう考えておられるか。
  251. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 この問題につきましては、直ちに防衛庁におきまして厳重な訓戒をしたり、厳重な注意をしたわけであります。人事の問題につきましては、慎重に検討いたしております。これは私におまかせ願いたいと思います。
  252. 松本善明

    松本(善)委員 総理に伺いますが、国会でもう  一つ問題になったのは、例の台湾が中華人民共和国の領土であるという総理見解、これは実際上、取り消されるような結果になったと思います。国会で、これはもうたいへん大事な、重要な総理としては間違うべからざるような、日本の隣国の領土がどこに帰属するというような問題について、いわば食言をされたわけです。これは放言などとももちろん当然違う重大な、それだけでも総理政治責任を感じなければならないような重大な問題だと思いますけれども、総理大臣としてはどの程度に責任を感じておられるのですか。
  253. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この問題は、敗戦国日本、ことにまた、その日本がサンフランシスコ条約で放棄したその地域、その帰属について明確な判断を下す権利はないんだ、そういう立場に置かれておるということについて、もっと私どもも注意していかなければならない、かように思っておる次第でございまして、私は私なりにこの問題については割り切った考え方をしておる、かように思っております。
  254. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 松本君に申し上げますが、時間がだいぶ経過しておりますから、簡潔に願います。
  255. 松本善明

    松本(善)委員 最後に、先ほど来問題になりました沖繩協定に関して、国民をだました、国会をだましたということが各党から指摘をされました。私どももそう思います。これは、こういう状況では、一切の秘密文書を全部公表すべきだと思いますし、それから三億二千万ドルの内容は国会審議にかけるべきだと思いますし、あるいは久保カーチス協定もこれは廃棄をすべきだ、こういうふうに私ども思いますけれども、これは私は、総理大臣、とうてい免れることのできない、そのまま地位にいることのできない重大な責任だと思います。  総理に伺いたいのは、よくいまの状況になると、自民党の中でもそれから国民の中でも、総理大臣はいつやめるのかというふうに思われています。私は、その中でいわれている沖繩協定の発効までは総理大臣の席にいなければならない、もしこういう発想があるとすれば、これはまさに政治を私物化するという以外の何ものでもないと思いますが、その点は、総理大臣はどうお考えになっておるか。
  256. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の責任は、冒頭においてはっきりさしたとおりでございます。これから御判断を願います。
  257. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、総理大臣の冒頭での意思表明というものは、これは退陣の意思というふうに受け取っていいのでありますか。
  258. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 表明したとおりでございます。よくおわかりにならなかったら、速記をよく読んでください。
  259. 松本善明

    松本(善)委員 それは速記を読まなくても十分にわかっております。しかし、それでは国民にはわからないのです。わかりません。あの文章を幾ら読んだって、それは国民にはわからないことですよ。あの文章を読んで、国民総理は何を考えているかわかるという人があったら、呼んできたらいい。私はわからないと思う。だれもわからないと思うのですよ。そういうような形で政治が続けられるということが遺憾なんです。私は、総理大臣がそういうような状態でそのまま政治が続いていくということは、一体総理はこれから何をやろうとしているのだろうかという疑問を国民に抱かせると思うのです。私が総理に聞きたいのは、一体、この段階で総理が一番やろうとしていることは何なのか、国民に対して、なお総理大臣の職にとどまるというのは一体何をやるために残っておるのかということを、明確に説明をしてくれませんか。
  260. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 午前中の冒頭に私の所信は表明いたしておりますから、これをよくお読みくだすって、そうして御理解をいただきます。
  261. 松本善明

    松本(善)委員 私は、そういうような答弁がこの国会でなされるということ自身が、政治に対するいわゆる不信、それは正確には佐藤内閣に対する不信だと思いますけれども、国民がそのような政府ではとても信頼できないということになることはほんとうに間違いないと思います。私どもは、佐藤内閣がこの段階に来てもそのような態度政権を担当しているということ自身、これは内閣としての責任はとらなければならない問題だ、直ちに総辞職をしなければならない、そういうような性格のものではないか、そのように思うわけであります。  このことを要求して、私の質問を終わります。
  262. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これにて締めくくり総括質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、昭和四十七年度総予算に対する質疑は全部終了いたしました。  先ほどの楢崎君の質疑に関連して資料の要求がありましたので、政府はその資料の提出について極力努力せられるよう望んでおきます。     —————————————
  263. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 本案に対し、細谷治嘉君外十六名より、日本社会党、公明党及び民社党三党共同提案にかかる、昭和四十七年度予算三案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議が提出されております。
  264. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 この際、その趣旨弁明を求めます。細谷治嘉君。
  265. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私は、日本社会党、公明党、民社党三党提出にかかわる、昭和四十七年度一般会計予算昭和四十七年度特別会計予算及び昭和四十七年度政府関係機関予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議について、その趣旨を弁明いたしたいと思います。  第一に、昭和四十七年度予算の編成替えを求める理由でありますが、第一は、高度成長政策の破綻と国民生活軽視の点であります。  第二は、不公平な増税政策であります。  第三は、大型公債発行の借金財政であるという点であります。  第四は、低福祉、高負担の社会保障だということであります。  第五は、危険な防衛費の増額であります。  第六は、国民生活圧迫の物価値上げ政策を織り込んだ予算だということであります。  第七は、産業基盤整備中心の公共事業を進めようとする点であります。  第八は、教育と文化軽視の予算だということであります。  第九は、農業政策の不在と中小企業の危機を招く予算だということであります。  第十は、地方財政の逼迫と住民負担の増大を招来する予算だということであります。  第十一は、非民主的な沖繩関係費の予算だということであります。  第十二は、財政民主化と財政投融資の一体的運営に反する予算であるという点であります。  以上のような国民生活軽視の予算を、われわれは容認することは絶対にできないのであります。  そこで、政府予算三案は、次のような予算編成の基本方針に基づいて編成替えを行なうべきであります。  第一は、昭和四十七年度予算根本的な編成替えを行ない、国民生活福祉の向上に振り向け、大企業、産業優先の予算から人間尊重、国民生活充実向上の予算に転換すべきであります。  第二は、平和推進の財政経済政策であります。  日中友好を促進し、国交正常化を推進し、アジアの緊張緩和と平和、友好を進めるため、防衛費を大幅に削減し、自主、独立、平和の原則に立って開発途上国の経済自立と発展を助ける海外経済協力を推進するとともに、経済、文化、人物の交流を活発化すべきであります。  第三は、国民生活緊急課題の解決であります。  勤労所得税の減税と税制の改廃による不公平の是正、社会福祉政策の拡充強化、公共料金の値上げ停止と諸物価の安定、住宅建設増と公的住宅の家賃抑制、公害対策の充実と生活環境の保全整備、教育、文化、科学技術の振興、農業、中小企業の立て直しと近代化促進、沖繩の平和、民主、自主的な産業開発、地方財政の健全化など、国民要求する緊急課題の解決をはかるべきであります。  以上のような基本方針に基づいて、政府予算三案は抜本的に組み替えらるべきでありますが、当面次のように、国民生活優先予算への重点組み替え要綱に基づいて編成替えすることを求める次第であります。  第一に、歳入予算の組み替えでありますが、税制改正によりまして、所得税減税、四人世帯で年収百三十万円までを無税とすることを目的とし、当面は百二十万円まで無税となるよう、給与所得控除の定額部分、基礎、配偶者及び扶養の各控除を引き上げることによりまして、三千二百五十億円の所得税減税を行なうべきであります。  第二に、後年度の財政負担を軽くし、財政硬直化を防ぐ意味におきまして、国債発行額の削減を四千百五十億円行なうべきであります。  以上による歳入予算の削減は七千四百億円となります。  第三に、税制改正による歳入増でありますが、交際費課税の適正化によりまして千三百億円、租税特別措置の整理合理化によりまして千四百億円、広告費課税の創設によりまして五百億円、法人税率及び配当軽課税率の引き上げによりまして千二百億円、土地税制の改革、法人所有の土地再評価等による土地課税の強化によりまして三千億円、以上によりまして、税制改正による歳入増は七千四百億円でありまして、減と増がバランスをいたしております。  第二は、歳出予算の組み替えであります。  その一は、歳出予算の削減であります。  第一に、防衛費は第四次防衛力整備計画を中止し、そのための新規装備費は一切取りやめ、同時に定員増はしない、欠員補充は認めない等によって、防衛費を二千十七億円削減すべきであります。  産業投資特別会計繰り入れは、政府予算の二分の一を削減することによりまして、三百四十八億円を減額いたします。  公共事業費のうち、道路関係経費を削減するとともに、経費の効率化、地価対策の強化等により経費を節減することによって、千三百三十一億円を減額いたします。  その他、既定経費の節減によって千百億円、予備費の削減五百億円、以上による歳出予算の削減は、五千二百九十六億円と相なります。  第二は、歳出予算の増額でございます。  第一に、社会保障費の増額として二千五百六十一億円を考えます。  その内訳は、老齢福祉年金の増額を、今年六月より一人月額五千円支給すること、老人医療費の増額も、同じく六月より無料化すること、児童手当の増額、保育所の五カ年計画による増設、さらに、政管健保に対する国庫補助の引き上げは、二〇%を目標といたしますが、当面四十七年度においては一二%まで引き上げることとして五百億円、その他加えまして社会保障費の増額二千五百六十一億円であります。  第二は、住宅対策費の増額として五百億円でありまして、公営住宅建設戸数を十七万戸とすると同時に、住宅公団への出資を増加いたしまして、新しく建設された家賃を約一万円引き下げることを目途としております。  第三は、物価対策費の増額として百五十億円。  第四は、自然環境、公害対策の増額として六百億円。  第五は、教育関係費の増額でありますが、教育改革に関する基本施策に関係する予算、おおよそ百億円弱を削減すると同時に、教育関係費として百億円増額をすることによって教育を推進するということであります。  第六は、交通安全対策の強化として八十億円。  第七は、中小企業、農村対策費の増額として百億円であります。  第八は、沖繩対策費でありますが、沖繩返還協定特別支出金三百八億円を含め、全面的に組み替えをすると同時に、沖繩の自主財源強化のために、沖繩臨時特例交付金を百八十億円増額することといたしております。  第九は、国鉄赤字対策費の増額であります。  長期債務に対する利子補給の増大、公共負担金の国庫負担等七百億円を増額することによって値上げを押え得ると考えております。  第十は、地方財政の強化でございます。  本予算とは直接関係ございませんが、国税である法人税の引き上げと同時に、地方税である法人税割りの引き上げを別途要求いたしたいと考えます。  以上、歳出予算の増額は五千二百九十六億円でございまして、減額分とバランスをいたしております。  第三は、財政投融資計画の改革でありまして、この財政投融資計画の原資が郵便貯金、厚生年金など国民の零細な資金であることにかんがみ、現在の大企業、産業中心の資金計画を抜本的に改め、住宅、生活環境施設、さらに国鉄への融資拡大など、大衆生活に密着した施策に大幅に投入して、国民に還元すべきであります。  その二は、財政投融資計画の運用の民主化をはかるため、国会の議決事項にするなど、現在の制度を改めるべきであります。  以上が、日本社会党、公明党、民社党三党共同提案にかかわる政府予算三条に対する組み替えの要旨でございます。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたしまして、私の趣旨弁別を終わります。(拍手
  266. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 以上をもちまして、動議の趣旨弁明は終わりました。     —————————————
  267. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これより討論に入ります。  昭和四十七年度予算三案及びこれに対する撤回のうえ編成替えを求めるの動議を一括して討論に付します。  討論の通告がありますので、順次これを許します。まず、細田吉藏君。
  268. 細田吉藏

    ○細田委員 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました昭和四十七年度一般会計予算、同特別会計予算及び同政府関係機関予算の三案に賛成、日本社会党、公明党、民社党三党共同による予算の編成替えを求めるの動議に反対の討論を行ないます。  以下賛成の理由を簡単に述べます。  まず第一は、財政の規模とその弾力的運用についてであります。  一般会計の前年度当初予算に対する伸び率は二一・八%で、これは、昭和三十七年度以来の大型予算であります。  また、財政投融資計画も前年度当初計画に対し三一・六%増、これまた近年にない大幅の伸びを示しております。  さらに、予算総則により政府保証債を四千億円とし、政府関係機関等の債券、借り入れ金等に対し、経済情勢の変化ある場合は、五〇%までの拡大限度ワク内において、これが弾力的運用をはかれるようにいたしております。  これらの財政支出により、国、地方を合わせた国民経済計算上の政府財貨サービス購入は一七%となり、本年度の経済見通しによる名目経済成長率一二・九%を大きく上回ることとなっておりまして、本年後半には、個人消費支出、民間住宅投資の増大等を含め、国内の需給ギャップを均衡させ、安定した経済路線へ回復させようとする景気浮揚策を打ち出すものとして、まことに当を得た措置であると考えるものであります。  第二点は、公債発行とその運用についてであります。  本年度の公債発行額一兆九千五百億円は、四十一年の不況の際の公債発行以来の多額なもので、公債発行の依存度は一七%であり、前年度の依存度四・五%に対して大幅の発行増となっております。  これは、今日の景気回復と社会福祉の向上という施策遂行のための財源確保のためにとられた措置であり、また、インフレにつながらないための歯どめ策として、財政法第四条にいう建設公債のみの発行と、さらに、市中消化の原則を堅持し、財政の健全性に配慮したものであると考えます。  次に第三点として、租税の軽減と合理化についてでありますが、今回は、税制の点においても、景気浮揚の対策と福祉向上のための考え方が取り入れられていると思うのであります。  すなわち、所得税減税については、昨年、本年度補正予算により、昭和二十六年以来初めての年内減税を行ない、この結果、四十七年度は二千五百三十億円の減税効果が見込まれることとあわせて、このたび地方税において、住民税の基礎控除の引き上げ、老人、寡婦、障害者、勤労学生等の控除の引き上げ、あるいは非課税限度の引き上げを行ない、多くの所得階層にその減税効果を考慮したことであります。  さらに、所得税においても七十歳以上の老人扶養控除の制度を設け、相続税では、配偶者及び心身障害者に対する税負担の軽減をはかり、地方税における措置とともに、社会福祉的方向に減税の措置を講じていることは、今日の国民生活の実態から見て当を得たものであります。  また、租税特別措置では、住宅購入等に対する減免措置を講ずるとともに、国民の生活環境維持に必要な企業施設に対し公害準備金制度による助成措置を行なっており、一方、経済の成長に伴い従来の輸出振興税制の削減を行ない、通貨調整に伴う企業の為替差損について、支払い期間の猶予措置を講じたこと、中小企業対策、土地税制、企業体質の改善及び設備の近代化等についてそれぞれ税制上の軽減措置を行なったことは、時々の社会経済情勢を反映した政策税制である点からも時宜を得たものとして賛意を表するものであります。  なお、今回、新たに航空機燃料税を設け、空港整備等に対し、財源措置を講じたことは、きわめて適切なものと考える次第であります。  以下、歳出面のおもなる点について申し述べます。  まず第一に、国民福祉の向上のための諸施策についてであります。  わが国の経済の高度成長により民間部門と公共部門との間に大きなギャップを生じ、これがため、国民生活にアンバランスが起こる結果となっております。  経済の発展も人間生存のためのものであることを考えるとき、社会資本の充実による福祉優先政策こそ緊要であります。  そこでます、公共事業関係費について見ますと、対前年度出初予算に比し二九%増、四十七年度予算に占める構成比は一八・七%であり、主要経費中最も大きな割合を占めており、特に生活環境施設設備、住宅、上下水道等、国民生活に密接な部門への整備に重点を置いたことは、福祉優先への転換をはかったものとして賛意を表するものであります。  従来の道路、港湾、住宅等の五カ年計画に加え、新たに都市公園整備計画を策定したこと、廃棄物処理施設、治山治水の従前の計画を実情により適合するよう改定したこと、また、財政投融資計画においても、住宅、上下水道、厚生福祉施設等に財源配分の重点を置いていることなどは、国民の生活環境を計画的に前進させるものであります。  次に、社会保障の充実についてであります。  四十七年度の社会保障関係費は、対前年度二三%の伸びであり、特に今回は、七十歳以上の老人に対し、医療の無料化とともに、老齢福祉年金の月額三千三百円の支給、扶養義務者等の所得制限の緩和をはかったことは、老人対策への認識を一そう深めたものであります。  さらに生活扶助の引き上げ、障害福祉年金、母子福祉年金の額の引き上げと扶養義務者の所得制限の緩和をはかっております。  次は、公害対策の強化についてであります。  四十七年度予算は、上下水道、廃棄物処理施設、水質保全、大気汚染防止、騒音、悪臭等の防止について、対前年度四八・四%増と多額の予算を計上しております。  財政投融資計画においても、対前年度五四・六%増の計画をもって、公害防止事業団、開発銀行、地方公共団体等に対する融資を予定しており、また新たに、自然環境保全の見地から国立公園の民有地を交付公債により買い上げるための措置を講じておることは、人間尊重の立場からまことにけっこうなことと思います。  次に、物価対策でありますが、四十七年度の物価対策関係費は、対前年度当初予算に比べ二七・一%と大幅に増加しており、今回はその対策として、低生産性部門の生産性の向上、生活必需物資等の安定供給のため、野菜、牛肉、魚の価格、流通機構の近代化等の施策を進めるとともに、これら物資高騰の副次的要因をなす住宅、地価、労働力の流動化等についても幅広い配慮がなされております。  また、自由化対策として残存輸入制限品目の輸入割り当てワクの拡大、並びにその撤廃につとめ、関税面において税率の引き下げを講ずるとともに、特に輸入物資について、円切り上げに伴う効果を価格引き下げの方向へ持っていくために、追跡調査等を含めた多角的措置を講じていることは、まことに適切なものであります。  次に、沖繩の復帰対策についてであります。  四分の一世紀にわたり米国の施政権下にあった沖繩が、本年五月十五日、本土復帰をすることとなったことは、まことに御同慶にたえない次第であります。沖繩関係費の四十七年度予算は二千二百二億円であり、これにより、県民生活の安定福祉の向上、社会資本の充実等、本土との一体化のための施策を早急に講じようとするものであります。  予算のおもなものとしては、沖繩返還協定特別支出金、公共事業費、臨時沖繩特別交付金、通貨等切りかえ対策特別給付金等で、国庫補助率も高率なものとしており、金融面では、沖繩振興開発に資するため、沖繩振興開発金融公庫を新設し、一元的かつ総合的な融資を行なうことになっております。  一方、税制や関税の面でも、沖繩の民生、経済の安定のため、各種の措置を講ぜられ、これらの施策は沖繩県民要求を十分とり入れたものであり、今後の予算執行にあたっては、効率的な使用により豊かな沖繩県の建設につとめられることを願うものであります。  以上のほか、主要な施策について簡単に触れますと、まず地方財政対策としては、地方財政の財源不足に対し、国による助成とともに、財源調達をはかるための所要の措置を講じ、国、地方の協力により景気回復と社会資本等の充実をはかることとしております。  文教対策としては、国立、私立学校の授業料の均衡を考慮して国立学校の授業料を引き上げるとともに、私立学校経常費の補助金の増額、育英奨学資金の大幅増加を行ない、児童生徒急増市町村の義務教育施設の拡充等をはかることとしております。  このほか国際文化振興対策として、文化振興費の増額と国際文化交流基金を設けたこと、産業再配置対策として、工業団地の造成、工場あと地の買い上げ等の施策を行なうこと、その他輸入自由化対策、エネルギー資源確保のための対策等諸施策を講じようとしておるものであります。  これらの施策は、いずれも重要かつ緊要な措置であり、今後のわが国の経済社会発展のために果たすべき大きな役割りを持っているものでありまして、その推進に賛意と期待を寄せるものであります。  最後に、防衛関係費について一言いたします。  本予算と四次防計画との関係については、本委員会審議劈頭において論議の対象となり、これがため十数日問にわたる委員会の空転を見るに至り、ついに一部政府修正が行なわれましたことは、このことに対する判断はいろいろあるといたしましても、ともかく遺憾なことでありました。  防衛のことは、国の安危にかかるまことに重大な、基本的な事項であります。本委員会においてしばしば論議されたごとく、政府は、いわゆるシビリアンコントロールを堅持し、国民的コンセンサスに立って、防衛の任に当たられることを心から念願いたします。  以上、本予算案に対し賛成の意を表明いたしました。  なお今回野党三党から提出された編成替えを求めるの動議につきましては、その財源調達の方法等においてわれわれの絶対承認できない点があり、また歳出についても、そのほとんどがただいま述べました討論の趣旨に反するものでありますので、賛成するわけにはまいりません。ここに反対の意を表明いたします。  これをもって私の討輪を終わります。(拍手
  269. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 次に、西宮弘君。
  270. 西宮弘

    西宮委員 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となっております昭和四十七年度一般会計予算特別会計予算政府関係機関予算の三案に反対し、日本社会党、公明党及び民社党三党共同提案の編成替え動議に賛成し討論を行なうものであります。(拍手)  国民生活を犠牲にし、労働者には低賃金と重労働を押しつけ、農業、中小企業を踏み台にした大企業本位、輸出重点の高度成長政策は、円の大幅切り上げを余儀なくされ、不況は長期化し、公害と環境破壊は一そう激化して、内外ともに大きな矛盾に直面しております。  佐藤内閣は、その政策の失敗を反省し、産業優先の政策国民の生活と福祉優先政策に、抜本的転換をはかるべきであります。  しかるに、政府昭和四十七年度予算案は、依然として大資本救済の景気浮揚を重点とし、アジアの緊張緩和に逆行する防衛予算の増強を行ない、福祉優先は口先だけの、国民の期待を裏切るものとなっているのであります。  その特徴の第一は、財界の要望にこたえた資本のための景気対策であります。  このため二兆円近い大型国債発行を行なおうとしておりますが、これがインフレを促進して国民生活を圧迫するとともに、財政硬直化を一そう深刻化させることは明らかであります。  また、景気刺激のために、一般会計予算と財政投融質を合わせて五兆六千億円をこえる公共事業関係費を組んでおりまするが、このうち二〇%は用地費であり、いたずらに地価を暴騰させ、不動産業者と高額不労所得者層のふところを肥やすだけであります。さらにまた、公共事業費の中心は、依然として道路、港湾など産業基盤整備のための投資であり、生活環境整備費は道路整備費の六分の一にすぎず、生活優先への転換の姿勢は全く見られないのであります。  第二は、税負担の不公平であります。  政府昭和四十七年度経済見通しで、輸出の伸びを押え、輸入の伸びを大きくしょうとしておりまするが、輸入拡大のためには個人消費をふやすことが必要であり、そのためには大幅な勤労所得税の減税を行なうべきであります。ところが、昭和四十七年度の税制改正で、所得税の一般減税は見送られ、例年行なわれている物価調整減税さえ実施されません。これは物価上昇によって名目所得が増加するとき、実質的には増税というべきであります。  一方、悪名高い租税特別措置は、わずかに輸出振興税制の縮減などに手をつけただけで、新たに通貨調整に伴う特別措置を行なうなど、その温存と拡大をはかろうとしております。また、企業の交際費に対する課税強化を見送り、株の譲渡所得へ非課税はそのままにし、インフレによって労せずして値上がりした法人所有の土地の再評価税に手をつけないなど、大企業や大資産家に対する優遇はまことに手厚いものがあります。このような不公平な優遇をやめて、勤労大衆への減税と、赤字公債の削減に振り向けるべきであります。  第三は、社会保障政策であります。  福祉優先のためには、社会保障対策は飛躍的に拡充すべきであります。ところが、政府は、老人医療無料化を目玉商品として宣伝をしていますが、実施は来年一月からであり、しかも七十歳以上で所得制限つき、また、老齢福祉年金は一日当たりたった三十円の引き上げというまことにけちくさいもので、社会保障費全体の総予算に占める割合は一四・三%で、前年度と変わりありません。これでは、欧州諸国より大きく立ちおくれている日本社会保障水準の格差を縮めることはとうてい不可能であります。  第四は、物価対策であります。  消費者物価は、昭和四十五年度は七・三%、昭和四十六年度は六・一%も上昇し、常に政府の当初見通しを上回っております。昭和四十七年度も政府予算案は、まさに物価値上げ予算であって、政府見通しの五・三%以内におさまるとはとうてい考えられないのであります。すなわち、公共料金について、国鉄運賃、医療費をはじめ、電報、電話料金、タクシー料金、公営交通運賃、大学、高校の授業料など、これまで前例のないほど多くの料金を大幅に引き上げようとしております。これらの値上げが消費者物価に与える影響は、国鉄、医療、大学授業料だけで〇・七四%であり、消費者米価の物価統制令適用除外による値上がりまで含め、実に二十種類に及ぶ公共料金引き上げの影響は約三%になろうと予想されているのであります。  また、国債、政府保証債、非保証債、地方債を合わせて、約四兆八千億円という大量の公債発行が、インフレを促進することは必至であります。さらにまた、公共事業費の拡大が地価騰貴を促進することも明白でありますが、これに対する地価抑制対策あるいは管理価格対策などについて、何ら積極的な対策がとられていないのであります。  第五は、公害対策、生活環境対策であります。  わが国の公害は、すでに一地域の問題ではなく、全国土が公害におおわれ、大気汚染、水質汚濁、地盤沈下、騒音、有害食品、有害薬品、日照権制限など、生活環境の破壊、自然破壊は、ますます深刻化しております。その根本的原因は、企業の社会的責任の欠如と、それを放置したまま、大企業中心経済成長を急ぎ、自然環境を無視した開発を進めてきた政府政策にあります。したがって、このような政策を改めることが先決であるにもかかわらず、佐藤内閣は、たとえば、無過失損害賠償責任制度について、財界の圧力に押され、複合汚染を対象からはずし、因果関係についての推定規定を削るなど、重要な点を全く骨抜きにするという姿勢に明らかなように、依然として人間の健康と生命よりも、企業保護を優先させるという態度を改めておりません。公害対策は、まず原因を除去する姿勢を確立し、国の予算は、公害の予防と未然防止を重点に、有効に使われなければなりません。  また、公害の被害者救済対策は、認定基準がきびしく、水俣病では認定されない患者が一万人以上もいるといわれ、きわめて不十分だといわなければなりません。  住宅、下水道、都市公園、交通安全対策など、生活環境整備対策も、たとえば住宅の場合、三百六十万戸の住宅不足に対し、四十七年度は五十万戸の政府施策住宅を建設するといいますが、公共賃貸住宅はそのうち二八%にすぎず、七二%は多額の自己資金を必要とする分譲住宅、融資住宅であり、ほんとうに住宅難に悩んでいる勤労大衆のための施策はほとんど行なわれないのであります。  第六は、教育及び文化対策であります。  国立大学授業料の大幅値上げにならって、自治省は公立高校の授業料値上げを指示していますが、これに追随して、私立大学の値上げに拍車がかけられ、教育の機会均等は大きく後退しようとしております。また、人口急増地帯の公立学校施設の補助の増額や、社会教育、幼児教育、私立学校の充実に対する補助もきわめて不十分であり、中教審答申による教育改革の予算のみを強行しようとしていることはまことに問題であります。  第七は、農業、中小企業対策の軽視と、地方財政の逼迫化であります。  大企業本位の高度成長の犠牲とされて農村は荒廃し、不況の深刻化のもとで中小企業の経営は一そう困難の度を増しております。これに対し、農民には減反と米の買い入れ制限で食管制度をくずし、さらに農産物自由化政策を進めて農民切り捨てを強行するだけで、農業と農民の生活を守り、向上させようとする積極的施策は全く見られません。中小企業対策予算は、一般会計に占める割合はわずかに〇・七%で、まことに不十分きわまるのであります。  また、不況による税収の低下、公共事業費の拡大など国の歳出増に伴う地方負担の増大は、地方財政の硬直化を一段と強め、その結果、地方財政の自主性を弱めるとともに、税外負担など住民負担の増大を招くおそれを強めております。  特に沖繩関係費は、戦後二十六年間にわたり異民族支配のもとで苦しんできた沖繩と本土との格差をほんとうに解消し、豊かな県民生活を保障するには不十分であり、かつまた、その財政支出を県民自治の強化という要望を無視して、事実上の中央直轄方式で進めようとしていることは、非民主的であるといわなければなりません。  第八は、防衛関係費であります。  前年比一九・七%という大幅増の八千三十億円にのぼる防衛費は、五兆八千億円に及ぶ四次防の先取りを含み、予算審議の冒頭で、野党の追及により、若干の新規分の削減を行なったものの、攻撃型装備の強化、兵器国産化による産軍体制の強化、沖繩への自衛隊配備など、危険な軍事力強化を内容としております。中国をはじめアジア諸国から、日本の軍国主義化の危険性が批判をされているとき、アジアの緊張緩和に逆行する防衛力の増強は取りやめるべきであります。また、巨額な公債発行をする一方で、防衛費の拡充を行なうことは、かつてのインフレ軍事予算の再現につながる危険性をはらんでおります。  なお、沖繩返還協定締結に伴う対米支払い金三億二千万ドルの一部に相当する経費が計上されておりますが、先般来当委員会においてしばしば鋭く指摘されたとおり、われわれとしては断じて承認し得ない経費であります。したがって、その予算の削除を特に強く要求いたします。  以上のように、昭和四十七年度の政府予算案は、国民の生活福祉の向上に逆行し、平和を願う国民の期待にそむき、しかもきわめて不当な経費を含んでおることは、本委員会審議を通じても、その問題点は十分に明らかにされたところであります。  以上の理由により、政府は、政府提案の予算三案を撤回し、日本社会党、公明党、民社党の三党共同提案による組み替え動議を採択し、これに基づいてすみやかに昭和四十七年度の予算三案の編成替えを行なうことを強く要求して、私の討論を終わります。(拍手
  271. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 次に、鈴切康雄君。
  272. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま議題となりました政府提出の昭和四十七年度予算三案に反対し、日本社会党、公明党、民社党、三党共同提出の予算組み替え動議に賛成の討論を行ないます。  政府案に対する反対理由の第一は、米中首脳会談によるアジアの緊張緩和への重大な転機の到来の中で、政府日中国交回復の必要性を是認しながら、いまだ日台条約に縛られた虚構の対中政策に固執し、台湾帰属見解内閣の不統一を暴露したことはまことに遺憾であり、あまつさえ矢野発言に対する答弁を打ち消し、みずから食言をしたことを認めるに及んでは、まさに国民政府を信用することができないことは当然であります。このような姿勢こそ日中復交をおくらせる最大の原因があることを指摘するものであります。  同時に、四次防防衛庁原案に基づいた防衛予算の編成は、国政の重要な基本である文民統制を無視し、しかも防衛大綱のない防衛予算内閣の統一見解もないままに国会へ提出したことは、政府の重大な政治責任であり、加えて、立川基地への抜き打ち移駐、さらに沖繩への自衛隊物資の隠密輸送問題等、これら一連の問題は、軍事力増強に対する一顧の反省もない軍事優先の政治思想がいみじくも露呈したというべきであります。これらの問題の本質が、政府みずからが国政の基本問題に対する認識の欠如によるものであり、かつ予算審議の進行に重大な支障を及ぼしたことは、この問題一つをとっても、政府提案の予算案を容認することはできないのであります。あまつさえ、沖繩の問題で極秘外交電信案の内容が明らかにされました。私どもは、沖繩の一日も早く返還されることを心から望む気持ちには、いささかも変わるところはございません。しかし、それは沖繩県民が納得し、真に喜べる具体的な内容を伴っていなくてはならないのは当然であります。ところが政府は、先般沖繩国会においての審議の過程において国民を欺き、しばしば答弁に窮する場面が生じ、国民から不信を買うに至り、ついに政府強行採決という議会制民主主議を破壊する暴挙に出たことは、より明白にこれを裏づけるものであります。  反対理由の第二は、大型福祉予算の名に値しない社会保障関係予算にあります。  社会保障関係予算は、総額で一兆六千四百十四億円、前年度比二二・一%増になりますが、この二二・一%という伸び率は予算規模の伸び率と同程度でしかありません。また、予算全体の中に占める社会保障関係費の割合は、一四・三%で四十六年度の一四・二七%に比べわずか〇・〇三%増にすぎないのであります。福祉向上がなされたかいなかの基準が、社会保障関係費にどれだけ配慮されたかである以上、こうした点から見ても、四十七年度予算福祉優先へ転換されたとは断じていえないのであります。  しかも、福祉向上についての長期計画は何ら国民の前に示されておりません。政府が重点を置いたという老齢福祉年金を例に見ても、ようやく月額三千三百円になったにすぎません。制度内容の違いはあるにせよ、スウェーデンなどは、六十五歳から年額三十七万円の老齢福祉年金を支給していることから見れば、いつの日にこの水準に近づくことができるのか全く目途がついておらず、これでは国民は夢も希望も持つことはできないのであります。  もし政府が、真剣に福祉向上を目ざすならば、福祉向上のために長期計画を策定し、それに基づいた計画的予算措置をとるのは当然であって、この点を全く無視した政府案を認めることはできないのであります。  反対理由の第三は、福祉向上の大前提となるべきはずの物価安定に何ら積極的な配慮がなされていないばかりか、逆に公共料金の一斉値上げを組んでいることであります。  四十七年度経済運営の基本態度によれば、消費者物価の安定をはかることは重点政策一つであり、そのために公共料金については極力抑制的に取り扱うものとすることになっているのであります。にもかかわらず、政府案では、国鉄運賃、健康保険料、国立大学の授業料の引き上げが予定され、公立高校の授業料の引き上げも決定され、加えて四月から消費者米価を物統令の適用除外にする方針を打ち出しております。この結果が他の一般物価の上昇を誘発し、物価の騰勢が一段と激化することは必至であって、政府の四十七年度消費者物価見通しの五・三%に押えることは、とうてい不可能といわざるを得ないのであります。  政府は、物価上昇が終息するまでは、政府がその料金決定に関与する公共料金については値上げしないということを大前提に予算編成に当たるべきは当然であって、物価値上げ予算には断固反対せざるを得ないのであります。  反対理由の第四は、税制改正についてであります。  昭和四十七年度自然増収に占める所得税収入は、政府見通しでも六千億円近くもあります。所得税減税の意味は、物価上昇や所得増によるところの取り過ぎ分を戻すということであることからしても、所得税減税ゼロということはとうてい納得できません。しかも、累進構造を持つ所得税については、毎年度ある程度の減税が必要であることは、昨年七月の税制調査会の答申にもあるとおりであります。国民の不信や怒りをよそに、従来の体制を一部糊塗するような手直しを加えたのみで、矛盾だらけの税制をそのまま持ち続けようとする政府姿勢は、きわめて不満足であります。  反対理由の第五は、一兆九千五百億円もの大量の国債を発行していることであります。  われわれは、国債発行を頭から否定するものではありませんが、政府案のように、安易に国債発行を続けるならば、国債債務残高は急速に膨張し、国債の償還や利払いに支障を来たす状態が予想されること、さらには、不必要な通貨膨張をもたらし、インフレ促進要因になることは必至なのであります。  しかも、大量国債発行による公共事業の遂行が、地方財政の圧迫と地価高騰を招くことも必至なのであります。これらの点を全く配慮せず、安易に大量の国債発行をしたことに反対せざるを得ないのであります。  以上、政府案のおもな反対理由を申し述べましたが、日本社会党、公明党、民社党は三党共同で、政府予算案が持つ福祉向上、景気浮揚に対する欠陥と矛盾を是正するため、実現可能な必要最小限の予算組み替え案を提出いたしました。内容につきましては、先ほど社会党の細谷委員から提案理由の説明のあったとおりでありますが、政府に対し、政府はこの組み替え案を受け入れ、国民生活に最重点を置いた予算に組み替えることを強く要求し、討論を終わります。(拍手
  273. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 次に、小宮武喜君。
  274. 小宮武喜

    小宮委員 私は、民社党を代表して、政府提案の昭和四十七年度一般会計予算案、昭和四十七年度特別会計予算案並びに昭和四十七年度政府関係機関予算案に対し、一括反対し、社会党、公明党、民社党三党共同提案による予算編成組替えを求めるの動議に賛成の討論を行ないたいと思います。  私が政府予算案に反対する第一の理由は、政府が依然として来年度予算案の柱を景気回復に置き、国民生活福祉向上を従としていることであります。予算の伸び率だけは二一・八%と非常に大型化しているのでありますが、これはあくまで景気刺激がねらいの中心であり、財投計画に至っては戦後最高の伸びを示しており、これは明らかに財界迎合の景気刺激型予算といわざるを得ません。確かに公共事業関係費は大幅に伸びてはおりますけれども、その中心は依然として産業基盤整備投資であり、生活環境施設整備投資ははなはだ貧弱であります。さらに問題は、公共事業が景気回復だけのてことして使われ、景気が一たび上昇すると政府は引っ込めという財界の圧力に押され、公共事業費が低く押えられる懸念が強いことであります。この従来の悪いパターンを今後繰り返さないという保証は全くないのであります。  政府予算案に反対する第二の理由は、長期にわたる福祉国家建設への展望と、その実現をはかる具体的計画に欠けているということであります。  わが党は、いち早く新時代に対応する福祉社会建設五カ年計画を策定し、その基本構想のもとに大型福祉予算を組むことを主張してきたのであります。ところが政府は、福祉社会建設への長期的展望と具体的な計画を持たず、ただ景気回復を目的に予算を大型化し、いたずらに総花的な措置を講じているだけにすぎません。したがって今後予算の伸びが鈍化すれば、それに応じて福祉関係予算を抑制することは明らかであります。このような場当たり的、御都合主義予算は断じて認めることができないのであります。  さらにわが党が政府予算案に反対する理由を具体的にあげますと、その第一は、政府が所得税減税を全く無視しているということであります。これは勤労大衆の生活向上への期待を裏切るものであり、福祉社会建設への目標に逆行するものであります。  政府は所得税減税見送りの理由として、昨年秋の減税実施を今年度減税の繰り上げであるということ、また不況下において歳入の大幅増が見込まれず、財源難であるというこの二点をあげておられますが、これは全く理由にはなりません。特に財源不足を理由に減税を見送ったということは詭弁であります。利子配当優遇制度の廃止、交際費課税の強化、法人税率引き上げ、価格変動準備金の廃止等、現行税制の不公平を是正するならば大幅な増収をはかることは可能であります。それを怠り、財源不足を理由に減税を見送ったことは、国民福祉の向上とはほど遠いものであります。  次は、国民の関心が最も深い消費者物価の上昇についてでありますが、政府予算案は全く無力であり、むしろ物価上昇に拍車をかけようとしているのであります。  その理由の第一は、予算案自体が財投計画を含め大型化し、インフレ要因になっていることであります。  第二は、政府みずから、国鉄運賃をはじめ公共料金を次々に値上げしていることであります。  第三には、公共事業の推進を地価対策を無視して行なわれているということであります。  政府は今年度経済見通しにおいて、消費者物価の上昇を五・三%に見込んでおられるのでありますが、以上あげた三点の理由からしても五・三%におさまる可能性は全くないと断言せざるを得ません。  次に、私が政府予算案に反対する第三の理由は、社会保障、住宅等福祉祉会建設の柱になる福祉関連予算が依然として貧弱であり、国民の期待にこたえていない点であります。  確かに各項目ごとに若干の金額の引き上げ等の措置が講じられていますけれども、全体的に見て、今回の予算案からは福祉社会建設の積極的な意欲も新しいビジョンも浮かんでこないのであります。特に健康保険の抜本的改正を怠り、地価対策を放置していることは政府の怠慢であり、その責任はきびしく追及されなければなりません。  最後に、防衛予算について強く警告を発しておきたいのであります。  政府は当初予算において四次防の先取りを行ない、次々と新規予算を認めたのでありますが、本委員会において強く撤回を迫られ、新たに予算案を組み直したことはすでに御承知のとおりであります。しかし、これで問題が片づいたのではないことを銘記すべきであります。政府防衛予算に対する国民的合意の必要性を認識し、シビリアンコントロールの具体的措置を早急に講じ、四次防そのものの再検討を全国民的規模で行ない得るようあらゆる努力を傾注すべきであります。国民の合意なき安全保障体制は砂上の楼閣であるということをきびしく認識しなければなりません。  以上、私は、政府予算案に反対の討論を行なってまいりましたが、この際、政府予算案を撤回し、新しく予算を組み替えられることを強く要望して、私の討論を終わります。(拍手
  275. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 次に、東中光雄君。
  276. 東中光雄

    ○東中委員 私は、日本共産党を代表して、本予算三案に反対いたします。  反対の理由を述べるに先立ち、予算審議を通じて一そう明らかとなった佐藤総理政治責任について一言触れておく必要があると思うものであります。  四次防先取り問題、自衛隊沖繩配備や立川強行移駐の問題、台湾の帰属問題などをめぐる政府の答弁はネコの目のごとく変わり、相次ぐ食言問題を引き起こしたのでありますが、ついには、外務省極秘文書によって沖繩交渉をめぐる売国的、屈辱的な日米秘密外交の実態が明るみに出され、政府が、従来から一貫して国会国民を愚弄し、うそで固めた答弁を繰り返してきたことが明らかになったいまでも、本日のこの委員会冒頭の発言にも見られるように、佐藤総理にはみずからの犯した罪を国民の前にわびるという気配はみじんも感じられないのであります。かかる不誠実な佐藤内閣態度によって、本年度予算案の衆議院通過は一カ月以上もおくれるという異常な事態になったのであります。  わが党は、このような政治担当能力を失った佐藤内閣にとって、即時退陣こそ国民に対して果たすべき残された唯一の責務であることを指摘し、退陣を強く要求するものであります。  以下、本予算案について反対の理由を明らかにします。  第一に、政府は、この予算案において第四次防衛力整備計画を事実上発足させ、防衛関係費は、自衛隊創設以来最高の額に達し、いまや自衛隊は、アメリカの総合戦力構想の欠くことのできない戦力になったのであります。この戦力増強は、東南アジアの反共かいらい政権への直接援助をはじめ、日本独占資本の資源、労働力、市場の獲得のための、財投を含む総額七千億円を上回る海外進出費と相まって、日米共同声明とニクソン・ドクトリンに基づく日米共同作戦態勢の具体化であって、日本の平和と極東の安全にとってきわめて危険なものとなっているのであります。  第二に、政府は、公共料金の極力抑制を唱えながら、本予算案においては、国鉄運賃の大幅値上げ、政府管掌健康保険の保険料引き上げ、高校、大学授業料の値上げや、物価統制令の適用除外による消費者米価の値上げ等、政府主導の物価値上げを強行しております。  これは、地方債を含めて二兆円を上回る赤字公債の発行と、新全総計画に基づく独占本位の公共投資の拡大などと相まって、物価上昇、インフレを一そう大規模に促進し、国民生活を根底から破壊する結果となることは、火を見るよりも明らかであります。  高度福祉国家建設というお題目は全くそらぞらしく、社会保障関係費のウエートは昨年度並みの低さであり、公害、住宅対策、生活環境整備などの諸施策は、国民要求からはるかにかけ離れたものになっているのであります。  中小企業、農業・漁業対策費は、ほんの申しわけ程度にすぎず、しかも、これらの部門は、輸入自由化、ドル・ショック、海洋汚染などによって、ますます危機に瀕しているにもかかわらず、政府は、反対に選別融資の手段などを講じて、これを切り捨てる政策さえとっているのであります。  また、地方財政の面でも、赤字国債発行による公共事業の増大は、対応費の増加となって地方自治体の財政危機に一そう拍車をかけております。  さらに、沖繩関係費に至っては、侵略的、屈辱的日米沖繩協定の実行と、大資本本位の開発のための経費が中心となっており、県民の切実な要求である円切り上げによる差損補償の問題に対してすら、十分な財政措置をとっていないのであり、沖繩県民の無視、これに過ぐるものはないのであります。  要するに、本予算案は、主権者たる国民にとって冷酷無比な最悪の予算案であっても、わが党の断じて承認できないものであります。  以上が、わが党の本予算案に対する反対の理由であります。  なお、日本社会党、民社党、公明党三党共同提案の本予算案に対する編成替え動議につきましては、部分的には一定の評価すべき点はありますが、軍事費の問題、侵略的ないわゆる対外援助費の問題などについては、わが党と見解を異にいたしますので、遺憾ながら賛成するわけにはまいりません。したがって棄権といたします。  以上で討論を終わります。(拍手
  277. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  まず、細谷治嘉君外十六名提出の昭和四十七年度一般会計予算昭和四十七年度特別会計予算及び昭和四十七年度政府関係機関予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議につき採決をいたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  278. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 起立少数。よって、細谷治嘉君外十六名提出の動議は否決されました。  これより昭和四十七年度一般会計予算昭和四十七年度特別会計予算昭和四十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  279. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 起立多数。よって、昭和四十七年度予算三案は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)  おはかりいたします。委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  280. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  281. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これにて昭和四十七年度総予算に対する議事は全部終了いたしました。     —————◇—————
  282. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 この際、国政調査承認要求に関する件についておはかりいたします。  すなわち、予算の実施状況に関する事項並びに予算制度に関する事項につきまして、議長に対し、その承認を求めることとし、その手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  283. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 御異議なしと認め、よって、さよう決定いたしました。      ————◇—————
  284. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 次に、小委員会設置の件についておはかりいたします。  すなわち、予算制度等の調査のため、小委員十名よりなる予算制度等調査小委員会を設置いたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  285. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  なお、小委員及び小委員長の選任、また選任後における小委員補欠選任等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  286. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  なお、小委員及び小委員長は、公報をもって御通知することといたします。      ————◇—————
  287. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 この際、一言ごあいさつを申し上げます。  去る二月四日より審査を始めてまいりました昭和四十七年度総予算審議もしばしば中断し、また暫定予算の審査等、非常に長い期間にわたりましたが、本日ここに審査を終了するに至りましたことは、ひとえに委員各位の御理解ある御協力によるものでありまして、不敏な委員長でありますが、心から感謝の意を表する次第であります。  連日審査に精励されました各位の御労苦に対し、深く敬意を表しまして、ごあいさつといたします。(拍手)  本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十七分散会