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1972-03-30 第68回国会 衆議院 予算委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月三十日(木曜日)     午前十時十五分開議  出席委員    委員長 瀬戸山三男君    理事 大坪 保雄君 理事 佐々木義武君    理事 田中 龍夫君 理事 二階堂 進君    理事 細田 吉藏君 理事 阪上安太郎君    理事 辻原 弘市君 理事 鈴切 康雄君    理事 和田 春生君       足立 篤郎君    相川 勝六君       荒木萬壽夫君    植木庚子郎君       小川 半次君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    仮谷 忠男君       川崎 秀二君    笹山茂太郎君       正示啓次郎君    田中 正巳君       中野 四郎君    灘尾 弘吉君       丹羽 久章君    西村 直己君       根本龍太郎君    野田 卯一君       橋本龍太郎君    福田  一君       松浦周太郎君    松野 頼三君      三ツ林弥太郎君    森田重次郎君       渡辺  肇君    大原  亨君       小林  進君    田中 武夫君       楢崎弥之助君    西宮  弘君       原   茂君    藤田 高敏君       細谷 治嘉君    安井 吉典君       貝沼 次郎君    林  孝矩君       樋上 新一君    二見 伸明君       塚本 三郎君    谷口善太郎君       東中 光雄君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 前尾繁三郎君         外 務 大 臣 福田 赳夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 高見 三郎君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  田中 角榮君         運 輸 大 臣 丹羽喬四郎君         郵 政 大 臣 廣瀬 正雄君         労 働 大 臣 塚原 俊郎君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣         北海道開発庁長         官       渡海元三郎君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      竹下  登君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      中村 寅太君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      木内 四郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 江崎 真澄君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      木村 俊夫君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大石 武一君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         総理府人事局長 宮崎 清文君         防衛庁参事官  鶴崎  敏君         防衛庁長官官房         長       宍戸 基男君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛庁人事教育         局長      江藤 淳雄君         防衛庁経理局長 田代 一正君         防衛庁装備局長 黒部  穰君         経済企画庁総合         計画局長    矢野 智雄君         経済企画庁総合         開発局長    岡部  保君         環境庁企画調整         局長      船後 正道君         環境庁水質保全         局長      岡安  誠君         法務省刑事局長 辻 辰三郎君         外務大臣官房長 佐藤 正二君         外務省アジア局         長       吉田 健三君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省欧亜局長 有田 圭輔君         外務省経済局長 平原  毅君         外務省条約局長 高島 益郎君         大蔵省主計局長 相澤 英之君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省関税局長 赤羽  桂君         大蔵省理財局長 橋口  收君         大蔵省国際金融         局長      稲村 光一君         文部省大学学術         局長      木田  宏君         文部省管理局長 安嶋  彌君         厚生省公衆衛生         局長      滝沢  正君         厚生省環境衛生         局長      浦田 純一君         厚生省医務局長 松尾 正雄君         厚生省薬務局長 武藤き一郎君         厚生省社会局長 加藤 威二君         厚生省児童家庭         局長      松下 廉蔵君         厚生省保険局長 戸澤 政方君         厚生省年金局長 北川 力夫君         農林大臣官房長 中野 和仁君         農林省農政局長 内村 良英君         通商産業省通商         局長      山下 英明君         通商産業省公害         保安局長    久良知章悟君         通商産業省化学         工業局長    山形 栄治君         通商産業省繊維         雑貨局長    佐々木 敏君         運輸大臣官房審         議官      見坊 力男君         運輸省海運局長 鈴木 珊吉君         運輸省鉄道監督         局長      山口 真弘君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 秋富 公正君         海上保安庁長官 手塚 良成君         労働省労政局長 石黒 拓爾君         労働省職業安定         局長      道正 邦彦君         建設大臣官房長 大津留 温君         建設省計画局長 高橋 弘篤君         自治大臣官房参         事官      立田 清士君         自治省行政局公         務員部長    林  忠雄君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       磯崎  叡君         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 三月三十日  辞任         補欠選任   愛知 揆一君     丹羽 久章君   安宅 常彦君     大原  亨君   西宮  弘君     藤田 高敏君   安井 吉典君     田中 武夫君   大久保直彦君     樋上 新一君   中川 嘉美君     二見 伸明君   正木 良明君     貝沼 次郎君   松本 善明君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   丹羽 久章君     愛知 揆一君   大原  亨君     安井 吉典君   田中 武夫君     安宅 常彦君   藤田 高敏君     西宮  弘君   貝沼 次郎君     正木 良明君   樋上 新一君     大久保直彦君   二見 伸明君     矢野 絢也君 同日  理事小平忠君同日理事辞任につき、その補欠と  して和田春生君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の解任及び補欠選任  昭和四十七年度一般会計暫定予算  昭和四十七年度特別会計暫定予算  昭和四十七年度政府関係機関暫定予算      ————◇—————
  2. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これより会議を開きます。  この際、おはかりいたします。  理事小平忠君から理事辞任申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、その補欠選任につきましては、先例により委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長は、和田春生君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  5. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 昭和四十七年度一般会計暫定予算昭和四十七年度特別会計暫定予算昭和四十七年度政府関係機関暫定予算、以上三案を一括して議題といたします。
  6. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 まず、三案について政府より趣旨説明を求めます。水田大蔵大臣
  7. 水田三喜男

    水田国務大臣 このたび、昭和四十七年四月の一カ月間について暫定予算を編成することといたしましたが、その概要について御説明いたします。  まず、一般会計について申し上げます。  今回の暫定予算におきましても、暫定予算が本予算成立までの応急的な措置であることにかんがみ、人件費事務費等の経常的な経費のほか、既定の施策にかかる経費について、暫定予算の期間中における行政運営上必要最小限度金額を計上することといたしております。新規の施策にかかる経費につきましては、教育及び社会政策上の配慮等から特に措置することが適当と認められるもの、たとえば、生活扶助基準単価引き上げ失業対策事業賃金日額引き上げ国立大学の学生の増募等を除き、原則として計上しないことといたしております。  一般公共事業につきましては、四十六年度予算額のおおむね八分の一を目途として計上し、そのワク内において、積雪寒冷地事業その他季節的な要因に留意しなければならない事業については、その円滑な実施をはかり得るよう特別の配慮を加えることといたしております。  災害復旧等事業につきましても、災害復旧緊急性にかんがみ、過年発生災害復旧等のため必要な四十七年度所要額のおおむね六分の一を目途として計上することといたしております。  歳入におきましては、税収及び税外収入につき、四月中に収入が見込まれる金額を計上いたしましたほか、公債につきまして、市中金融状況等を勘案し、四月中に発行を必要とすると認められる公債収入見込み額二千四百億円を計上し、また、前年度剰余金につきまして、その全額を計上することといたしております。  以上の結果、今回の一般会計暫定予算歳出総額は一兆一千十七億円、歳入総額は五千五百六十億円となり、五千四百五十七億円の歳出超過となりますが、国庫の資金繰りについては、必要に応じ五千五百億円を限度として大蔵省証券を発行することといたしております。  次に、特別会計政府関係機関につきましては、いずれも以上申し述べました一般会計の例に準じて編成いたしておりますが、法律改正により合併等を予定している特別会計につきましては、現行会計区分により計上することといたしております。  また、国立学校入学料及び前期分授業料並びに日本国有鉄道運賃等につきましては、現行水準で計上することといたしております。  なお、財政投融資につきましても、暫定予算趣旨に即応して運用することといたしております。  以上、昭和四十七年度暫定予算につきまして、その概要を御説明いたしました。  何とぞ、御審議の上、すみやかに御賛同いただきたいと存じます。
  8. 瀬戸山三男

  9. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。田中武夫君。
  10. 田中武夫

    田中(武)委員 暫定予算に関しまして質問をいたしたいと思っておりますが、まず最初に、去る二十八日午前七時二十分ごろ国鉄総武線船橋駅構内で起きました事故について、国鉄総裁にお伺いをいたします。  私は質問に先立ちまして、まず社会党を代表して、今回の事故で不幸にも負傷せられた方々に心からお見舞いを申し上げ、一日も早く御全快の上職場へ復帰せられるようお祈りをいたします。  さて、今回の事故での負傷者——幸いにして死者はなかったようでございます、まことにその点は幸いだったと思いますが、負傷者が七百十二人、新聞によって若干人数も二、三違っておる点もあるが、少なくとも七百人をこえた。戦後国鉄事故としては、死者はなかったとしても、一番か二番になるような大事故であるそうであります。  そこで、もう新聞に出て、一般が知っておるような事故の経過その他の説明はけっこうです。国鉄総裁、一体重傷軽傷を含めて何人が負傷したのか。  その原因は、新聞記事等を見ましても、見出しだけを一、二申し上げても、「ATS万能裏目に」「過信し振り回される」「超過密ダイヤ」あるいはダイヤ改正からわずか二週間ですでに十件おもだった事故が起きておる。「停電、消えた信号無視」「ATSに気をとられ」等々の二、三の新聞見出しを見ても、こういうように書いてあります。  そこで、その事故原因が那辺にあったのか。おおよそ機械にたより過ぎた結果ではないか。いや、それよりも三月十五日にダイヤを改正せられて、そのダイヤ改正の中に超過密あるいは綱渡りダイヤなどといわれるような無理があったのではないのか。そういう点についてまずお伺いをいたします。  さらにこの事故復旧が九時間もかかった、何とスローモーションであろうかとも思うのですが、これらを含めまして端的に御答弁をお願いいたします。
  11. 磯崎叡

    磯崎説明員 御答弁申し上げます前に、去る三月二十八日の総武線事故につきまして、多数の負傷者を出しましたことにつきまして、深く国民各位おわびを申し上げます。  ただいまのお尋ねの点でございますが、実は総武線につきましては、来たる七月十五日に複々線が完成いたしまして、そして東京駅の地下駅まで乗り入れることになっておりました。そのときに全般的なダイヤ改正をいたすことにいたしておりまして、今回の三月十五日にはダイヤ改正をいたしておりませんでございます。  それから、全般的なダイヤ改正後の事故につきまして、いろいろ昨日も部内的に検討いたしましたが、共通した問題はあまりございませんで、いずれも個別の問題でございましたので、本日の午後並びに来週をずっと通じまして、地方責任者を呼びまして、各系統ごとに徹底的に現在施設の再点検をいたしたいというふうに思っております。  それから、負傷者の数につきまして正確に申し上げますと、昨日までにお申し出のあった負傷者全部を含めまして、七百五十八名でございます。そのうち、いま現在入院しておられる方が三十五名でございます。うち一カ月以上のおけがをされた方が二十一名、これがきのう最終の数字でございます。  原因は、おおむねただいま先生のおっしゃったような、やはりATSに対する過信と申しますか、ATS停電のため鳴り続けておったのに気をとられまして、肝心の信号を確認を怠り、ブレーキの操作を怠ったという、新聞に書いてあるとおりの原因でございます。
  12. 田中武夫

    田中(武)委員 この電車運転者にいわゆる過労というようなこと、そういうことはなかったかどうか。  さらに、三月十五日から山陽新幹線が開通した。たいへん便利になりました。しかしながら一面、在来線の準急をなくするとか、あるいは急行を減らすとか、ことに通勤、通学の列車がなくなったとか、これは地方の問題でしょうが、等々で、一面サービスの向上といいながら、いい面にというか、そういう面にはどんどんやっておるが、ほんとう国鉄にたよっておる人たち、こういう人たちに対しては、むしろサービス低下ではなかろうか、こういうことがいわれておる。しかもこのような事故を起こし、あるいはほかにもいろいろな、普通では考えられないようなミスをおかしております。そういうことでありながら、一方において国鉄赤字解消、再建ということで国鉄運賃値上げ法案を今国会に提出をせられておりますけれども、いまのような国鉄の現状で、国民がはたしてこの運賃値上げを納得できると思っておられますか。  いまや総理、あなたを頂点として、いわゆる無責任時代無責任花ざかりであります。事が起きれば通り一ぺんの、今後このようなことは絶対にいたしません、しないようにいたします、こういうことだけでものごとが片づくと考えられておるのですか。予算委員会の推移等見ましても、何とかことばだけでその場をのがれたらいい、こういう考え方が総理をはじめ閣僚諸君政府委員にもたくさんあります。この総武線事故、こういうことを契機として、いわゆる無責任な問題、どう考えるのか、総理運輸大臣国鉄総裁から決意をお伺いいたします。  さらに、反省をするならば態度で示せ、どのような態度をとるのか明確にしていただきたい。
  13. 磯崎叡

    磯崎説明員 ただいまの御質問の第一の点でございますが、事故を起こしました関係電車運転士勤務は、当日は朝六時から午後三時まで、その前の日は朝八時から午後四時まで、その前の日は公休ということで、勤務過労はなかったというふうに考えます。  また、その次の御質問の、今回のダイヤ改正によりましてローカル線が非常に不便になったというふうなお話がございました。いろいろ私も各方面からそういうお話を承っておりまして、いま実績を見ながら手直しをいたしている最中でございまして、実際の実情に合ったダイヤに直していきたいというふうに思っております。  全般的な御質問といたしまして、こういう失態を起こした上で、はたしておまえは運賃値上げができると思うかという御質問につきましては、私はもう全く申しわけないというふうに思っておりますが、ぜひこの点はまたよろしくお願いいたしたい。まことにいかんともいたしがたい状態でございますので、よろしくお願いいたしたい。私といたしましては、今後の問題につきましては全力をあげて、私の全責任におきまして事故防止につとめてまいりたいというふうに思っております。
  14. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 まずもって今回の事故におきまして、多数の負傷者を出しました、非常に御迷惑をかけました、また国民各位にも御迷惑をかけましたことを深くおわびを申し上げる次第でございます。監督責任者といたしまして、その事故が起こりましたことにつきまして深く責任を痛感している次第でございますが、事故が起こりまして直ちに政務次官を現場派遣をいたしました。その国鉄事後処理につきまして十分指導をするように申しまして、船橋現場派遣をいたしますとともに、国鉄総裁に対しまして、私から、いま御指摘がございましたとおり、ダイヤ改正以来いろいろの異常運転その他の事故が続いております。ことに今回のような事故にかんがみまして、厳重に警告を発しまして、運転の取り扱いはもとより、車両、施設、電気、各般にわたって総点検をして、再びそういうような事故を繰り返さないように厳重にあれをしろということを命じている次第でございます。(田中(武)委員態度で示せよ」と呼ぶ)私、運輸大臣就任以来、交通の安全運転ということをまず第一にモットーとしまして、あらゆる機会に言っている次第でございます。(田中(武)委員ことばの意味はよろしい」と呼ぶ)ことばだけでなく、ほんとうにそういうことにしなければ申しわけないとやっておる次第でございますが、何とも申しわけない次第でございまして、さらに御激励をいただきまして、一そうその点に力を入れてまいりたい、こういうつもりでございますので、御了解を願いたいと思う次第でございます。
  15. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国鉄総裁、さらにまた、ただいまは丹羽君からいろいろ責任の所在も明らかにし、国民おわびを申し上げております。私は行政府最高責任者として、ただいまのような点をまことに遺憾に思っております。立法府からおしかりを受けることのないように、この上ともさらに引き締めていくつもりでございます。
  16. 田中武夫

    田中(武)委員 復旧工事がもたついたことについての答弁はなかったのですが、まあそれはいいです。私が望みたいのは、何か事が起こると、再びこういうことはいたしません、これを繰り返すだけであって、実際具体的な反省なり責任という問題についてはほおかぶりでいままできたというこの無責任、これはあに国鉄だけではございません。これに対して一体国民はどういうように感じておるのかということ。福田外務大臣にいたしましても、先日来当委員会で問題になりました、いわゆる外務省秘密外交の問題、これにいたしましても、ことばの上で国会を、そして国民をごまかす、そういうことに終始せられておる。そしていまや問題をすりかえようと考えられておるというような節すら見えるわけであります。この問題等につきましては他の機会にということであるようでありますから、その内容にまでは立ち至りません。しかしながら少なくとも——私は一国の外交秘密はあるということを否定はいたしません。しかしながら重要な問題、それを国民国会から隠そうという態度、これは許されないし、さらにまたこの問題につきましても、最近というか、きのうきょうの動きを見ますと、そういうことの反省秘密外交ということ、あるいは前国会臨時国会より今日まで国会をだまし続けてきたということに対する反省という色がなくて、むしろどうしてそのようなことが漏れたのか、国家公務員法等々によって、司直の手をかってその秘密が漏れた経路等について、これに頭を使っておられるようであります。しかし福田総理、あ、福田外務大臣——総理はちょっと早かったかもしれません。いいですか。先日来問題になっておりますことは、事は憲法に関する問題である、あるいは民主政治の根幹に関する問題である、さらにまた行政府立法府国会政府との関係についての大きな問題であります。国家公務員法というようなものは憲法のもとにある法律であります。その根本的な問題を反省あるいは解決、そういうことなくして、ただ単に司直の手をかりてその漏洩責任者を追及する、そういうことは問題をすりかえ、国民の目から重要な問題をかえようとしている、こうとも言えると思います。(「そんなことないよ」と呼ぶ者あり)いや、私は一国の外交秘密はあることを否定はいたしませんと前提を置いております。しかし、問題をすりかえるという態度は許されない。しかも、事の大小を明確に考えていただかなくてはならない、そういうことを申し上げております。そういうようなことを含めてひとつ外務大臣から、いまの御心境責任の取り方等々について御所見を承りたいと思います。
  17. 福田赳夫

    福田国務大臣 先日横路さんからお尋ねの問題に対する答えは、先日のとおりでございます。かたがた、しかし、この電報が漏洩をした、こういう問題があるわけです。これが反復されるようなことになりますと、これは日本外交は執行できませんです。この問題はただしておかなければいかぬ。これが反復するというような事態がないような措置、歯どめ、これはしなければならぬ、こういうふうに考えておりまして、今回の漏洩事件の決着、それから今後反復しないような措置、それらを総合的にひとつ考えてみたい、こういう心境でございます。
  18. 田中武夫

    田中(武)委員 前国会以来、臨時国会以来、国会国民をだまし続けてきたということに対して、少なくともわれわれはそうとっておりますが、そのことに対してどう考えておられるのか。さらにわれわれとしては、問題のすりかえは絶対許さない、こういう気持ちを持っておりますことを重ねて申し上げて、御所見を承ります。
  19. 福田赳夫

    福田国務大臣 事、相手のあります外交でありまするから、国会で申し上げかねることもいろいろあります。それからただいま申し上げましたように、事をすりかえる、そういうようなけちな考え方は持っておりませんです。これはこれ、あれはあれ、これはぜひとも機密の漏洩することのないような措置だけはとっておきたい、かように確信をいたしております。
  20. 田中武夫

    田中(武)委員 この種の問題については理事会等においても話し合いがあるようであります。したがいまして深追いはいたしません。だがしかし、問題をすりかえてごまかそうとするような態度についてはわれわれは決して寛大ではないということだけを宣言いたします。予算委員会はきょうで終わるわけではございません。そういう点をあわせて申し上げまして、次へ参ります。  そこで総理国会が正常に開会せられておる。途中で解散、総選挙等があれば別として、にもかかわらず、こうして暫定予算を出さねばならなくなったというこの事態、その原因等については一一あげません。しかし総括をして申し上げますならば、何とかその場限りで、ことばのあやでごまかして通ろう、こういう点、あるいはその決断の鈍さ等々が今日の状態を招いたと思います。本来ならば、国会が正常に開会をせられておりながら暫定予算を出さねばならないようなはめになったことの政治責任は、当然内閣総辞職か、あるいはそういうように追い込んできた野党が悪いとおっしゃるならば、衆議院を解散して信を国民に問う、これが憲政の常道であります。どうです、もうことばの遊戯はやめようじゃありませんか。そうして、ひとつ信念に基づいて憲政の常道に立ち戻ってやろうじゃございませんか。総理、いかがです。
  21. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 賛成です。憲政の常道に従ってやろうとおっしゃること、もっともです。私は今回暫定予算を出さざるを得ざるに至ったその経緯はここで重ねて申しません。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  22. 田中武夫

    田中(武)委員 この前に、暫定予算をあなたの内閣で組んだことは前にもございました。そのときもやや同じようなことを私、申しましたら、あなたはいまと同じような御答弁をなさいました。それはまあ二百九十九の議席の上にあぐらをかいている。それなら不信任案を出してこい、こういう開き直った態度だと思います。そのような考え方が今日の政治不信を招いておるのだと思うのです。しかも、政府だけではないということはおかしいですよ。その点はどうなんです。答弁いかんによりましては、本日はなるべく波立たずということであるようですが、私の態度も変えます。
  23. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、国会というところは審議をするところだと思っております。それは審議は政府だけであるいは与党だけでやるところでないと思う。野党の方々が出てこられなければ審議ができない。これが実情じゃないですか。だから、これは空白があったというその責任があげて政府だけの責任だ、かように言われることには私は納得がいきません。
  24. 田中武夫

    田中(武)委員 通常の状態で国会が開かれておるにかかわらず暫定予算を組まねばならないということに立ち至ったのは、何といっても内閣の責任です。ここにも責任の転嫁ということを考えておられるようにも私は考えます。何かいろいろ話し合いもあったようですが——ちょっと待ってください。——よろしい、それじゃ待ってください。そういう態度じゃ困ります。
  25. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来申しますように、暫定予算だけはぜひ通していただきたい、このことを申し上げております。これは皆さんに冒頭に大蔵大臣からお願いをしたはずであります。これは私は、その前提においてただいま論議がかわされておる。過去においてのいきさつ、それについてお触れになるからただいまのような議論になる。しかし、暫定予算は何とかして通してくださいと、これを申し上げておる。この点は私からも申し上げておきますから、どうかよろしくお願いします。
  26. 田中武夫

    田中(武)委員 国家の財政に一日たりとも空白をつくっちゃならない。これはわれわれもそう感じておりますからこそ、こうして暫定予算の審議に入ったわけなんです。ところが、政府に一片の反省なくして、ただ予算は国民のものだからといったようなことで言われたのでは、どうも納得がいきません。
  27. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 とにかく、いままで申し上げておりますように、暫定予算を出さなければならなくなったというそのことは、私どももたいへん残念に思っております。しかし、その点でこれをもう一度、なぜその原因ができたのか、こういうことでさかのぼってそれを御審議なさると、いまのような意見の交換もせざるを得なくなりますから、私はそういうことをいましばらく預っていただいて、そうして皆さんにお願いしておるように、どうかひとつ暫定予算だけは国民のためにも通していただきたい、これをお願いをいたします。どうかよろしくお願いいたします。
  28. 田中武夫

    田中(武)委員 だからこそ、こうして問題未解決のままでも暫定予算の審議に入っておるのですよ。私も常識をもって、ここで退場とかそんなことは考えておりません。しかし、(「えらい恩着せがましいことを言うな」と呼ぶ者あり)そうですか、じゃやめておきましょう。そんな態度ならやめておきましょう。
  29. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも不規則発言でいろいろ政府責任を云々されるけれども、そうじゃなくて政府責任——これは与党ももちろん政府の一部、かように考えますけれども、政府ではございませんから、まあ委員の方の不規則発言でおこられないで、ただいま私どもお願いしているように、暫定予算案をぜひ通していただきたい、これを心からお願いをいたします。
  30. 田中武夫

    田中(武)委員 政府、ことに総理といまやっておるわけです。しかし重要な理事ですよ。理事がそんな観念なら、一体きのうの理事会では何を話し合ったのかと言わざるを得ないのです。総理、もうこの問題については他の機会でということになっておるようであります。私も割り切りましょう。したがって、あなたのいま言われた野党にも責任があるということについては了承しかねる。御訂正をお願いします。御訂正を……。
  31. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 とにかくいまこの際に、次の段階と申しますか、暫定予算審議のこの段階において、ただいまのような過去のいきさつについてとやかく申しましたことは、私も行き過ぎだと思いますから、その点は訂正するにやぶさかでございません。したがって、どうか暫定予算の審議、これはぜひお願いをいたします。
  32. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほど私も総理の人格を尊重して、取り消せとは言わなかったけれども、取り消せという意味です。御訂正ということばを使いましたが、私は人格者ですから……。それでは、この責任の問題につきましては他の機会で行なわれるように聞いております。それに譲って、次へまいりたいと思います。しかし、ことばのあやで逃げ切ろうとかごまかそうとかいうことでありますならば、これからも佐藤総理がいつまで続くのかは知りませんが、その辺におられる方々も十分心得てください。でなければ、今後もうまくいきませんよ。
  33. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま田中委員からも、不適当なところがあればそれを直せということを言ったのだ、全面的取り消せとまで言わないんだ、こういうお話でございますし、私も御趣旨のあるところは十分わかっておりますから、ただいまのように過去の経緯についての問題は、その辺は取り消すことにやぶさかでないと、積極的に私のほうから申し上げたのです。とにかく問題は、ただいま大事な暫定予算を提案しておりますから、どうかよろしく御審議のほどをお願いをいたします。
  34. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 この際、委員長から申し上げておきます。  先ほどの総理の発言中、誤解を生じる不適当と思われる個所は、委員長において適当な措置をいたします。
  35. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは次へまいります。  大蔵大臣、この前、いや、もっと前からも私この問題はやってきたわけなんですが、それは財政投融資、これをもっとはっきりする必要があるということ、そして、昨年本委員会においてこの問題を提起いたしました。当時の福田大蔵大臣政府においてもこれを検討する、また中野委員長も、予算の根源にかかわる問題であるから、国会においてもということで、その後予算委員会の中に財政投融資計画についての検討をする小委員会といいますか、設けることで一応ケリがついたわけですが、残念ながら、その後各委員長に、瀬戸山委員長にも私は何回もそのことについての開会を申し入れましたが、今日まで一向に聞かれていないことは、まことに残念であります。政府においてはそのことについて、財政制度審議会へ諮問というのですか、やられたようであります。その結果、昨年十二月二十日でしたかに、財政制度審議会からこれは中間報告ということで出されております。それで問題を(a)、(b)、(c)の三つに分けて、これにはそれぞれの意見が出されております。  すなわち(a)、たとえば産業投資特別会計からの出資の問題等については二重議決になる。(a)については私もそういう理解をいたしております。  次に(b)ですが、これは予算総則との関係において答申が出されておりますが、この点については若干意見を異にいたします。  そして(c)なんです。(c)については、審議会は結局は引き続き検討するといっておるのですが、特殊法人の性格からいって云々とか、行政庁のいわゆる経済企画庁長官とか、そういった関係行政庁の長官の許可があるからいいのだとは言い切っていないが、そういったことをいっておる。そこが問題なんです、私が言っておるのは。この答申の分け方は私が従来主張してきたのと同じ分け方であります。そこで、当時は福田外務大臣大蔵大臣であったのですから御記憶があろうと思うのですが、この(c)項の問題について、具体的に輸出入銀行法と海外経済協力基金法、この二つの法律を対比して申し上げたのです。そこで、資金運用部資金あるいは簡易保険資金等で行なわれる財政計画、これが全然国会の外にある。もちろん参考書類として出てくるにしても、審議の外にある。これも国民の金だ。それでいいのかというのが私の質問だったのです。さらにまた、産投特別会計で出資または投資が行なわれる分についても、ここに私、特別会計法の規定の抜粋を持ってきておりますが、もうそういうことをくどく申しませんけれども、はっきり言ってどういうことにやるのかということが抽象的に一条で書いてあるだけなんですね。そこで福田さん、当時大蔵大臣だったのですが、交通整理ということばを使ったのですが、この財政投融資計画の一つの基準、どういうものについては産投特別会計で行なう、どういうものについては資金運用部資金で行なう、そういうこと。そしていま言っておるように、国会の審議の目からこぼれておるものについては国会の承認を必要とするのではないか、これが私の質問趣旨です。これを一々批判はいたしませんが、(a)項は私、同じ意見ですが、(b)、(c)については違った意見、ことに(c)項については全く違った意見を持っております。大蔵大臣、御所見いかがでしょう。
  36. 水田三喜男

    水田国務大臣 御承知のように、昨年数回の会議を開いて検討していただいたものでございますが、本年度も引き続き、実は昨日第一回の法制部会を開いて審議していただいておりますが、私も昨日、この問題はすでに国会でたびたび指摘されておる問題でございますし、問題の所在というものがきわめてはっきりしてきた問題でございますので、何らかの形でこれは次の予算編成のときまでに解決したいということで、きのうは事務当局の説明も聞きますし、私からの指示もいたしました。で、中間答申にいまおっしゃられたような出題がございますが、田中さんから指摘されたような問題、これをやはり何らかの形ではっきりとまず財政当局自身の見解もここでまとめる必要があるということで、審議会にだけお願いをするのではなくて、理財当局自身においても、急速にこれらのことについての意見のまとめをするということになりました。  その過程で、もう一つは、これはいままで資金運用審議会のほうにはほとんど相談してない問題でございましたが、向こうのほうは別にきまった意見は持っておるわけではございませんが、従来、資金の少ないときから全部この計画、条件というようなものを審議してきた機関でございますので、したがって、最近財政資金の配分というような性格が加わっておるということについての認識は、まだそう強いということは言えないと思われますので、そうしますと、財政審議会のほうとこの資金運用審議会のほうの意見があまり食い違うようではございませんので、私は至急ここらで、両審議会が一ぺん合同でこの問題を扱ってもらうというようなことをして、そうして一応の方向をきめてから役所自身においてもこの問題を掘り下げて、何としても、この答申は秋までに出るということになっていますが、大蔵省自身積極的にこの問題の検討に入って解決をしたい、こういうことでおりますので、おっしゃられたような問題も含めて、私は至急、今度はこの問題に一応の回答をいたしたいと思いますので、御了承を願いたいと思います。
  37. 田中武夫

    田中(武)委員 ここで総理、そして委員長にも申し上げますが、これはずっと私、何回か続けて論議をしてきたことで、いまそれを重ねて申し上げると時間もありません。そこでこの件だけ申し上げたので、御理解は無理かとも思いますが、この前は具体的な法律の条項まであげて私、申し上げたのです。しかも、財政投融資計画、財投計画は第二の予算といわれて、一般会計に対してもう半分以上になりつつあるわけなんです。これは全部国民の金なんです。だから、この問題をもっともっと真剣に政府国会も検討する必要があると思うのです。せっかく小委員会というのを持ったのですが、動いていないわけなんです。ここであらためて委員長国会においてもこれを引き続き検討する、政府も検討して、来年度予算が提案せられるころには少なくともちゃんとした基準を設ける、そういうようなことをやってもらいたいのですが、委員長及び大蔵大臣、いかがでしょうか。
  38. 水田三喜男

    水田国務大臣 いま申しましたように、来年度の予算編成には間に合わせるように何らかの知恵は出す。前に知恵は出すという答弁をいたしましたが、これは知恵を出す問題だと私は思っております。
  39. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 委員長から田中委員に申し上げます。  この問題は、従来しばしば、特に田中委員が取り上げられて問題にされたところでありまして、当予算委員会においても、これを研究するという方針をきめてあるわけであります。政府に対しても、その検討を申し入れて今日まで至っておりますが、当委員会は御承知のような状態でありまして、なかなかそこに深く突っ込んで研究するいとまがなかったことは申しわけありませんが、これは重要な問題でありますから、今後当委員会においても研究を続ける、こういうふうに申し上げておきます。
  40. 田中武夫

    田中(武)委員 総理の沖繩に対する怨念と言った人がありますが、この問題は私一つの信念を持って申し上げておるわけなんです。したがって、ひとつぜひとも国民が納得するような基準を国会政府との間にきめて運営していく、こういうことを望みます。  そこで、ついでと言ってはおかしいのですが、大蔵大臣にお伺いしますが、もうさかのぼりませんけれども、ともかく一般予算はいわば傷だらけというか、満身創痍、ともかく傷だらけになった。そこでもう次に、四十七年度の予算成立後、預貯金の金利の引き下げを実施して大型な補正予算を組まねばならぬというようなことが大蔵省筋で考えられておる。それは佐藤さん、まことに失礼な言い方ですが、新内閣の手でとこういうことなんですか。そういうことはどうなんです。そういうことを聞いておりますけれども、いかがですか。
  41. 水田三喜男

    水田国務大臣 いま、さらに大型の補正予算とかいうようなものを、大蔵当局では現在考えておりません。
  42. 田中武夫

    田中(武)委員 それ以上は言えないでしょう。  それでは次へ参ります。田中通産大臣にお伺いいたします。繊維の問題について、日米繊維協定の問題に関連しながらお伺いいたします。  とにもかくにも、われわれが反対だと言っておる中で、一月の三日に、基礎は昨年十月十五日、あなたとケネディ特使の間でかわされた覚書仮調印に基づいてでありますが、日米繊維協定が締結せられた。そして二カ月、早くもアメリカからはいわゆる引き金条項、これを持ち出して、先日繊維製品十品目、これの規制を申し入れてきて、現にワシントンで、通産省から西脇参事官ですかが出席してやっておられるようです。この中には、パイル織等三、四品目は、フランス、英国、西ドイツあるいはその他の国々からのアメリカ向け輸出が急増しておるそうでありますね。そこでこの会議の中で、協定の八項目、第三国との公平というこの項目、あるいは十三の項目の取りきめの修正ということをきめております。まさにこの十品目の中には、この八項の第三国との関係の問題が出てきております。したがって、これらの条項を適用し——念のために申し上げておきますか、私はこの協定は認めない、反対という立場なんですが、百歩譲って申し上げておるわけですが、この協定の条項を運用して、この際アメリカに対し繊維協定の修正あるいはまた廃棄と、申しますと言い過ぎかもしれませんが、私は廃棄の申し入れをしてもらいたい、このように思っておりますが、現に行なわれておるワシントン繊維会議と関連し、繊維協定の第八項目あるいは十三項目の発動についてはどう考えられますか。
  43. 田中角榮

    田中国務大臣 御指摘のように、現にワシントンにおきまして事務的なレベルで会談が行なわれております。これは一月の初めに協定をせられました日米繊維協定に基づきまして、品目の決定それから技術的な分類の問題等を含めて協議が行なわれておるわけでございます。この協議は、毎月でもやろうということになっておる技術者会談というものにひとしいものでございます。協定が行なわれて、去年度の対米繊維輸出が非常に減るといわれておったわけでありますが、実際は四十四年対四十五年は、対前年度比増加が五%台でございました。去年はドル・ショックがあったり協定が行なわれたりしましたが、対前年度比一九%くらい伸びておると思います。協定によりますと、七〇年の四月から七一年の三月を基準として総ワクについて五%、特定品目について一〇%ないし三%ということになっておるわけでございまして、これから分類その他に対して日米間でこまかい詰めを行なわなければならない状態であることは事実でございます。  しかし、この協定を破棄するとかいうような気持ちはありませんし、また、この協定には、米国に対する各国との状態を勘案しながら日本が不利益にならないようにということでありますから、アメリカ側が日本に協議の要請をすると同時に、日本からもいつでも協議の要請ができるわけでございます。そういう意味で、日米間においては、この協定が対米繊維輸出を制限するものではなく、日米間の通商の正常化をはかる目的をもってというまくらがございますから——まくらと言うよりも大前提があるわけでございますので、私は、日米間では、この協定のもとで信頼関係を回復しながらも、また持続しながら正常な輸出が可能である、こう考えておるわけでございます。
  44. 田中武夫

    田中(武)委員 したがって、協定の八項、十三項に基づくところの修正等の申し入れはやらないということですね。
  45. 田中角榮

    田中国務大臣 いままだことしの品目ごとの数量というものをこまかくきめておらないような状態でございますので、必要があればその事態にこちらから要請をいたしますし、日米間は繊維に関してはとにかく円満にやろうということです。これだけ国会でもって御論議のあるものを、私があえて、日米間の正常化を念願し、国益を守る立場において協定をするのであるから、この協定が制限を行なうというような目的に使われるということになれば、こちらから絶えず要請を行なう、こう言っておりますから、現時点において直ちに条文の発動を行なうというようなことではなく、話し合いを続けていくという態度でございます。
  46. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは、アメリカの出方いかんによっては、協定の条項に従って第八項あるいは十三項をこちらから積極的に持ち出すということをやることもある、やる、こう理解してよろしいですね。
  47. 田中角榮

    田中国務大臣 日米両国の観音友好を維持しながら国益を守っていかなければならない立場で、この条文の運用、適用に対しては十分配慮してまいりたい。
  48. 田中武夫

    田中(武)委員 今月の二十三日、二十四日、ガット工業品貿易委員会というのがあって、そこで日本は、今後は強制された形の輸出の自主規制は一切行なわないことを宣言する、こういうことが伝えられておりますが、いかがですか。そして、その強制せられたものの中に、例としてLTA及び日米繊維協定等をあげておられる。したがって、日米繊維協定も強制せられたものであると政府は理解しておられるのか、いかがです。
  49. 田中角榮

    田中国務大臣 ガットの規約があるのでございますから、日本としては、原則的に二国間とかそういうものを結ばないという基本的な姿勢というものを宣言したわけでございまして、国際推移また二国間の利益、利害というような状態があれば、いろいろな問題が出てくると思います。出てくるものに対しては、そこで考え、結論を出さなければならぬわけでありますが、一般的な問題に対して基本的な姿勢を明らかにする、こういうことでございます。
  50. 田中武夫

    田中(武)委員 強制せられたのかどうかという点ですが、これはここで強制せられましたとは言えないでしょう。ことに将来の野望というのか、大きな望みを持っておられるあなたが、ここで私との間において、いや、強制せられまして参りましたとか言えないだろうから、そこは了承いたしましょう。しかしながら、強制せられたものであるということは現にこれに出ておるのですよ。それで、日本がガットに加盟した場合、その議定書については、ここに私、当時の議事録等を持ってきておりますが、国会の承認を得てやっておるわけです。ところが、これはあとで論議になろうと思いますが、それはそれとして論議しますが、このガットの条項を修正するような協定、これはガット議定書加盟の場合に、条約としての手続をとり、国会の承認を得たものです。これを修正するような、あるいは例外的なものをつくった場合には、当然国会の承認を必要とする。言いかえるならば、国会の承認なくしては国民を拘束することはできない、こう私は思いますが、いかがでしょう。
  51. 福田赳夫

    福田国務大臣 申すまでもなく、ガットというものは、自由貿易を大いに推進しよう、そうして紛争がありますれば協議によって解決しよう、こういうたてまえでできておるわけです。今度の繊維協定、これは紛争があれば協議をする、こういうことです。つまり、ガットにおけるわが国の持っておる権利はこれをすべて留保しておる、こういうたてまえでありますので、ガット条項にはこれは違反をしない、こういうたてまえでございます。
  52. 田中武夫

    田中(武)委員 いや、そこがおかしいのですよ。あとで申し上げますが、じゃ、この繊維協定はガットとは全然関係なくやったのだ、こうおっしゃるのですね。ガットの場でやるべきであるということについては、何回もこの予算委員会等でわれわれも論議してきました。そのつど政府は肯定をした。にもかかわらず、いまの答弁では、そういうことになっておることは、私も協定の内容からそう思っておりますが、ガットの外でガットと関係なくやったのだ、そういうことですね。
  53. 福田赳夫

    福田国務大臣 ガットも、二国間における協定を排斥しておるわけじゃないのです。そこで、その二国間の協定がガットの精神に違反すれば、これは問題でしょう。しかしそうじゃない。わが国はガット上の権利を留保する、こういうたてまえにおいてこの協定を締結しておる、こういうようなことで、ガットと両立し得る、かように考えております。
  54. 田中武夫

    田中(武)委員 好みませんが、少し熱っぽい議論をいたしましょうか。ガットとは、一般的あるいは立法的なと言ってもいい条約であります。国際間の取りきめであります。それを二国間協定によってどうにでもなるということならば、一般的協定の意味はなしません。条約の意味はなしません。その点いかがでしょうか。一般的条約とそのことに関する二国間協定、そういう関係にあるものだと私は理解いたしますが、いかがでしょうか。
  55. 福田赳夫

    福田国務大臣 お話しのように、ガットは一般的条約です。立法的といってもいいかもしれません。しかし、これと矛盾するようなことをやったならば、これはガットの精神に違反する、こういうふうに私は思います。しかし、違反はしない、その権利を留保しておる、こういうたてまえにおいて締結する協定、これは私はあえてガットに抵触するものではない、こういう見解です。現にそういうことをやっている国もあります。
  56. 田中武夫

    田中(武)委員 そこが違うのです。これはガット十一条のはっきりした例外規定です。例外の協定です。もちろんガット自体も例外を認めております。ガット十一条は、第一項において禁止をし、第二項において若干の例外を認めておる。しかし、それはガットというものを通じて行なわれることについてなんです。ガットの外でやったから関係ない、そういうことはだめです。この一般的条約とそのことに関する二国間協定との効果といいますか、このことについては私は了承をいたしません。  さらに、なるほどガットとの関係については、協定第二項にうたってあります。一口に言うならば、ガットとは別だ、こういうことをいっておるわけです。いわばこれは、殺人の請負契約を結んだ当事者間で、この契約は刑法の殺人罪、刑法百九十九条には関係ございませんということを確認したというのと同じなんですよ。ナンセンスな問題ですよ。それは福田さん、ここでガットの問題及びそういう法律について論議をしようとおっしゃるならば、法制局長官の補助をかりて堂々とやろうじゃありませんか。
  57. 高島益郎

    ○高島政府委員 法律的な問題に限りましてお答えいたします。  ただいま先生がおっしゃったとおり、ガットは立法的条約というカテゴリーの条約に入ります。したがいまして、立法的条約の中で定めます法律関係に基づきまして当事国がその権利義務の関係で縛られる、当然でございます。したがいまして、そういうような立法的条約の当事国たる二国間で、これに違反するような協定を結ぶことは絶対にできません。これも当然のことでございます。  ところで、この日米繊維取りきめでございまするが、これにつきましては従来から政府のほうでいろいろ答弁していると思いますけれども、私、繰り返して申し上げますけれども、この日米繊維取りきめ第二項におきまして、これはガットの権利義務を害するものではない、ガットの権利義務はこれによって影響されるものではないということをはっきり申しておりますし、またガットの第十一条では、一般的に輸出制限はしてはならないという規定はございますけれども、この規定に関しまして、私どものほうといたしましては、従来から条理解釈といたしまして、輸出先に対する不利益な輸出制限はできないということに解釈しております。
  58. 田中武夫

    田中(武)委員 だから、殺人請負契約を結ぶにあたって、刑法の殺人罪とはこれは関係のないということをお互いに確認したと解するのと一緒だと言っているのですよ。一般的条約とそれに関する二国間協定との関係については、福田さん、いいですか、条約局長は私の議論を肯定したのです。ただ残るのは、この協定はガットとの関係がないということを協定に入れているので、ガットの適用を受けないという点だけです。それなら私の言っておるのと同じじゃありませんか。どうなんです。殺人請負契約に、刑法とは関係ないとお互いが確認したから、殺人罪とは関係ございませんと言うのと一緒なんですよ。違いますか。法制局長官、あなたを相手にしておったら時間がかかるからせぬけれども、何か言うことがあったら言うてごらん。これで三十分くれたら、ぼくはもっともっと皆さんが理解して、なるほどなというところまで詰めますが、いかがですか。
  59. 福田赳夫

    福田国務大臣 いずれにいたしましても、わが国はガットの権利は留保しておる。しかしてこのことは国際間においても承認されておるのです。ほかの国でもやっておるのです。ひとり日米間でやっておるということではない。その一事をもちましても、その妥当性については御理解願いたい、かように存じます。
  60. 田中武夫

    田中(武)委員 この論議はもうこの程度にしておきましょう。しかし、どちらが言っておることが正しいか、条理にかなっておるかということは、もうおわかりと思うのです。ではないと言う人がおられるなら受けて立とう、じゃありませんか。いかがです。——それでは次に参ります。  総理、この問題でもう一つ私はどうしても納得のいかないのは、法による行政という原則なんです。一体、二国間協定、しかも国会の承認を得ないものについて国民の権利義務を制限できるかということ、これが法による行政の関係です。これも過去にいろいろやられた方もあります。それは、通産大臣は貿管令を持っておると思うのです。ところが総理、この貿管令の政令を十月十二日に通産省は改正をしておるのです。そうして別表の三六の二ですか、これを入れて、そうして人絹糸、スフ糸、合繊糸をアメリカ向けの制限ということを追加したわけです。十月十二日です。そうして十月十五日にケネディ特使と田中さんが仮調印した。そうして貿管令によって云々と、こう来るわけです。その源、いわゆる法源、権利の源はどこにあるのかというと貿管令。ところがこれもおかしい。というのは、この貿管令は外為法を受けておりますね。その外為法は、第二条に再検討条項というのがあるのです。ちょっと読んでみましょうか。「その必要の減少に伴い逐次緩和又は廃止する目的をもつて再検討するものとする。」ということで、これはこの法律が制定せられたときの日本の貿易の実情からいってこうだった、しかしこれはあくまでも例外的なものである、したがって、逐次縮小を検討するんだということが第二条にあがっておるのですよ。ところが追加をして、しかもそれは十二日に追加して十五日に仮調印ということになる。もうレールが引かれて、強制せられたものじゃないとかなんとかいいながらも、もうはっきりしておるじゃありませんか。田中さんらしくもないですよ、あなた。同じ田中として、私はあなたの将来について残念に思うのです。本来の田中さんの意気を出しなさいよ、ここで。いかがです。もう法律のことを言うたってかないっこないから、あなたの腹をひとつぶっちりあけてごらんなさいよ。それとも法律でやろうと言うならまたやりますよ。どうです。
  61. 田中角榮

    田中国務大臣 いろいろな御議論はございますが、あの協定は大問題として衆参両院において御審議をいただいたわけでございますし、日米間の友好の増進、また輸出の中に占める三〇%余という高いウエートを持つ日米貿易を守っていかなければならない、こういう国益の面から考えまして、あの協定を行なったわけでございます。  いま外務大臣も述べましたとおり、ガットの権利は留保されておりますし、このときには、私は実際はやりたくなかったのです。やりたくなくて、ロング・ガットの事務局長が来ましたときに、こういうときにこそ事務局長は職権を発動すべきである、そしてガットの場において多国間協定として行なうべく、少なくとも事務局長はその労をとるべきである、こう言ったときに、ロング事務局長も、これは日米間の問題でございますし、この影響は日本が一番大きく影響を受けるものでございます、これは私が取り上げるものではなく、日米間で協定を行なわれることが望ましい、こう明確に答えておるわけでございます。  まず、そういうことでいろいろ手を尽くしましたが、やはり日米間の友好を保持しながら、三〇%余という大きな輸出シェアを持つアメリカとの正常な貿易を拡大していくための一つの手段であるということでございまして、これは立場が違う田中さんにも、相当御意見を拝聴したわけでございますが、結論的には、衆参両院において不信任決議案、問責決議案というのをちょうだいいたしたわけでございまして、そこで一応の結論が出ておるわけでございますので、どうぞひとつそういうことで御理解をいただければしあわせでございます。
  62. 田中武夫

    田中(武)委員 結局そこへ来ると思ったのですがね。そういうことを言っては、将来ある田中さん、だめですよ。やはり三百議席、二百九十九議席の陰に逃げ込もうというのは、それは男らしくない。あなたの将来のために惜しみます。  もう一つ、私が疑問に思っているのは、十月十五日に覚え書き書に仮調印をした。正式な調印、いわゆる協定の成立は一月三日である。それがなぜ昨年の十月一日に遡及して行なわれるのか。この遡及の効果、その源、これについて大きな疑問を持っております。法の不遡及の原則あるいは国民の権利の制限に対する不遡及の原則、こういうことからも大きな疑問を持っておる。何かメモをもらったようですが、ろくなことは書いてないです。だからこれはもうやめておきましょう。総理、いいですか。この問題についてはガットとの関係、さらに法による行政の原則についての問題、そして国民の不利益に対する不遡及の原則、この点から大きな疑問が残り、誤りを犯しておる、このことだけははっきり申します。そうではないとおっしゃるならば、またもとへ戻るのです。  そこで、ロングの話が出ましたが、通産大臣、もうこのことはやったって勝負はわかっておるのだ。そこで、このロング事務局長日本に、国際的なというのか、ともかく繊維作業部会に入りませんか、こういうことを言ってきたようですが、それに対して通産省は一応断わった。ところが、ロングのそういうことについての意図は一体どこにあったのだろうか、もし入ったならば一体何をやるのか等々も、これははっきりしておく必要があると思うのです。ともかく、このガットの繊維作業部会へ入りませんか、つくりましょうかという提案に対して、通産大臣及び政府はどう考えておるのか、まずそれをお伺いいたします。
  63. 田中角榮

    田中国務大臣 断わったのは省として断わったようでございますが、それはあなたも御指摘のとおり、もうおわかりになっていると思いますが、例の綿製品協定の延長があるわけであります。綿製品協定の延長には反対でございますから、そういう発言ができないような作業部会には、なるべく入りたくないということがほんとうの腹です。ですから、私のほうで今度日米繊維協定をなるべく二国間でやりたくないから、そのときにはロング事務局長に、君のほうでやってくれないか、こう言ったのは少し虫がよかったかもわかりません。ロング事務局長に断わられて、私のほうでもしっぺ返ししたわけではありませんが、お断わりをした。ちょうどもとになった、こういうことであります。
  64. 田中武夫

    田中(武)委員 いつまでも断わり続ける決意ですね。これはSTAからLTAに変わっていったという実情、しかも、最近何か知らぬが田中さんらしくない姿勢のあらわれから見て、実は信用できないのだ。あなたも将来があるでしょう。私もこれでやめるわけではないですからね。また相まみえるときがあると思いますので、いまは一応あなたの言うことを信用しておきましょう。しかし、ここの約束をたがえたときにはどうなるか、よう考えておいてください。  そこで、いいですか田中さん、アメリカは今度は多国間協定ということを用意しているようなんですね。これはすでに韓国とか台湾とか香港とかとは別に結んでおる。それに日本を引っぱり込もう、そうなると例の歯どめの問題。三年というのが五年になるとか、この三年の問題についても大きな疑問が残るのです。これはほんとうにいろいろあるのです。どうなんです、この多国間協定についての申し入れがもしあれば、もうすでにあったと思うのですが、どうするのです。
  65. 田中角榮

    田中国務大臣 綿製品の延長に対しては、断わるということは従前申し上げておるとおりでございます。いまガットでもって提案をしておりますものは、そういう具体的な問題を解決するということではだれも入らないということでありまして、そうではなく、これから合繊とか毛とか、そんないろいろなものに対してひとつ白紙の状態で——世界のいろいろな問題が起こっております。繊維なんかの問題は、これは昔戦争のもとになったくらいの重大な問題でありますから、そういう問題、二国間だけでもって片づけておるというような変則的なものではなく、洗いざらい白紙からひとつ検討し、勉強しようじゃないか、これはそういう限りにおいては非常にいいことであります。しかし、それが土台になって綿製品協定の延長にすぐ引きずり込まれるというのでは困るということで、いまのところでは入りません、こう言っているわけでございます。  アメリカが言っておる多国間協定の問題、前からございます。前からございますが、二国間の協定が行なわれており、しかもそれを延長しないという立場にいま立っておるわけでございますので、これは台湾とか韓国ときめましたものは五年できまっておるわけです。日本にも五年という強い要請がありましたが、それはだめです、だめならこっちが言ったことだけ記録してくださいと言うから、テークノートするというだけの話でございまして、いまこれからまた拡大EC、いろいろなところと協定問題が起これば別でありますが、いまの段階においては、すでに協定をした日米間繊維協定で足る、こういう見解をいまとっておるわけであります。
  66. 田中武夫

    田中(武)委員 現在、アメリカの考えておる多国間協定に乗るべきではない、多国間協定ならばガットの場において、ガット適用の中においてやるべきである、これだけははっきり約束できますね。
  67. 田中角榮

    田中国務大臣 私もそういうものがどうしても必要であるということであれば、ガットの場において行なうべきものであって、それ以外ではいま簡単には応じかねる。これはいますぐそれに——アメリカがそういう意思を持っていることは、多国間協定というような形にしないと、なかなか拡大ECを引きずり込めないからという一つの現実があるわけでございまして、それに入ったほうが日本が得なのか損なのかといえば、あまり得な面はございませんし、原則的な姿勢を貴くということでございます。
  68. 田中武夫

    田中(武)委員 日米繊維協定については、これだけ国会でも論議せられた。業界もあげて訴訟まで起こしておる、こういう問題であります。したがって、このことは、総理いいですか、政治に対する大きな不信感につながってくるのです。しかも、法の権威を侵しておるという点で見逃すことはできないのです。そのことは、政府に対し、ひいては国会及び法の権威にまで国民が疑問を持つゆゆしき問題です。したがって、政府——何か首振っておられますが、意見があるのですか。では、伺いましょう。
  69. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 あえて私も答弁するつもりはございませんでしたが、たいへん結論を急いでいらっしゃるようで、論理的な田中さんとしては珍しい結論を出していらっしゃる、かように考えたのです。
  70. 田中武夫

    田中(武)委員 だから三つの疑問を申し上げて、それを徹底的にやるのには時間が要る。しかしこれは、何とおっしゃろうともそれは政府あるいは法、こういうものに対する、政治に対する不信感を国民に持たしたことは間違いないんです。それでなかったら訴訟なんか起こりませんよ。これはそっとしておきましょう、たいへん残念なことですが。  そこで、通産大臣、最近ことに、この協定以来と申しますか、脱繊維化という傾向が起こっております。これはあえて繊維だけではないといえばそうかもしれませんが、大手の繊維メーカがボウリング場をつくるとかいったような脱繊維の傾向が起こっておる。これは繊維といえば、わが国の基幹産業の一つでしょう。重要な一つです。そこへそういうようなことが起こってきたということは、産業構造の中で繊維をどう位置づけるのか、こういうことをひとつ、あまりしゃべられても困るが、あなたの構想をお伺いいたします。
  71. 田中角榮

    田中国務大臣 繊維は明治から百年間、ほんとうに輸出の基本的な地位を占め、力であったことは歴史上明らかでございます。それから戦後も、輸出の先がけとなったものも繊維でございますから、繊維が非常に功績があったということは事実でございます。そういう意味で、石炭と繊維という非常に大きな産業に対して、相当大幅な政府資金も投下をしておるわけでございまして、繊維に対しては積極的な救済の道を講じなければならないということを考えております。  しかし、御承知のとおり、昭和四十六年度において一〇%余の成長を予想しておったものが半分にもならないということでありますから、いろいろな面もありますが、大体一億三千万トンも二千万トンもできる鉄鋼が九千万トン以下であるというように、鉄鋼も化学肥料もそれからパルプも繊維も全部減産を必要とするというような状態でございます。そういう意味で、先国会で転廃業するような繊維企業に対しても、法律を御審議いただいたりいろいろな措置をとっておりますが、繊維企業は一体いま何に転向するのか。毛が化合繊に転換したようないいものはそこにはありません。そういう意味で、これから業界の知識を集約しながら政府も一体となって、また皆さんの意見も聞きながら、日本繊維業界の将来というものを描かなければならないということで、いま鋭意検討を進めておる段階でございまして、一まとめに申し上げられるような段階でないことは、遺憾でありますが事実であります。
  72. 田中武夫

    田中(武)委員 ここで、次に用意しておるのは海外経済協力の問題です。時間の関係もあるのではしょってお伺いしますが、繊維がアメリカの輸出制限というか、そういうことで滞貨ができておる、輸出が減少しておることは事実なんです。そこで、これをひとつ海外経済協力に利用したらどうか。これは私は繊維協定を認める立場じゃないのですが、現実の問題として申し上げておる。たとえば国連の報告によると、東ベンガルのダッカ地区では、援助を必要とする難民が三千万人もおるそうですね。そういったところへ、余ったから送るといってはちょっと悪いのですが、滞貨を利用する、そういう考え方についてはどうですか。
  73. 田中角榮

    田中国務大臣 繊維協定を行なう過程において、あなたがいま御指摘になったことを考えました。三千万人とも二千万人ともいわれておるわけでございますから、二千万人の難民にパンツを一枚ずつでも二千万着ということであって、これをひとつやろうと真剣に考えて、私は事務当局だけではなく繊維企業全体にも呼びかけてみましたら、これは質が違うようであります。アメリカ向けのもの、主要工業国向けのものはみな厚いものであるし、また北側にあります。ところが南の国に対してそういうものをやるには、全然別な品物を織らなければだめだ。風通しのいいものでなければだめだ。そういうことで積極的なもの——私はたいへん努力をしたのです。そういうことも考えて、商品輸出という面でひとつ考えなければならないじゃないかということと、もう一つは、どこにでも向くようなものを——どうしてもある時期、人員整理もできないので営業を続けなければならないとしたならば、どこへでも向かないものを織ってもらっては困る、どこへでも向くようなものを織ってもらって、二カ月とか三カ月協会で品物をためておくというようなことも可能じゃないかというようなことで、繊維企業の業界としては、あの当時は相当の生産量をストックしなければならない、その場合に政府はどうするのかという問題も検討したわけでございまして、いろいろ検討をしますが、いま生産過剰でありながら五、六年後広幅織機等の近代設備、機械に全部かえなければならない。これが全面的稼働したらいまの倍ぐらいできるという状態にございますので、いろいろなことを多角的に検討を進めておるわけであります。
  74. 田中武夫

    田中(武)委員 時間がないので、そういうことについても活用すべきである、ことに政府の方針に従っての犠牲を受けておるという点で、強く要望します。  ここで実はUNCTADの問題等に入りたいのですが、時間もあまりないので理論的なことはちょっとのけまして申し上げたいのですが、去る三月二十三日の分科会で、わが党の楢崎委員の兵器輸出三原則に関する質問に対して、通産大臣はいわゆる兵器というものに対する統一見解を二十八日までに明らかにする、こういう約束をしておられます。議事録が出ていないのであるいは若干発言に違いがあるかもわかりませんが、そういう発言をしておられます。そしてその兵器輸出の三原則というのは、地域に対して触れておるだけで、何が兵器なのかということについては触れていない。したがってここをびっしり、ことに海外協力というような考え方の上に立っても、しておく必要があると思うのです。この約束、もう二十八日は来たのですが、政府の統一見解はできていますか。
  75. 田中角榮

    田中国務大臣 その後通産省それから防衛庁その他、それから法制局等と十分検討いたしました。検討いたしましたら、武器というもの、兵器というよりも武器であります。武器というものは、法律では武器等製造法に一つございますし、自衛隊法に武器を持つことができるということが一条ございますし、それからもう一つは、武器の輸出三原則、この三つがあるわけでございます。残るのは、自衛隊が武器を持つというのは当然のことでありますから、これを除けば武器等製造法と輸出三原則ということでございます。輸出三原則には武器の輸出に対して定義が明確にしてございます。これは相手国が軍隊としてこれを使用し、人命の殺傷その他破壊等、面接戦闘の用に使うものを武器というふうに定義をしてございます。これは相当拡大的にやっておりまして、一つの例を言えば、鉄かぶとはかぶっても武器ではないと思うし、これは装飾品というけれども、しかし、これは軍隊が使えば武器の中に数えるというように非常に厳密なきめ方をしておりますので、いまの輸出三原則ということと武器等製造法で、武器というものは大体いまの定義でいいということに結論的にはなっておるわけでございます。
  76. 田中武夫

    田中(武)委員 武器の製造メーカー、産業界から、いろいろと輸出の問題等に関連して、通産省等々へ働きかけがあろうと思うのです。ここではっきりした政府の統一見解をきめておかないと、兵器輸出ということについて、あるいは武器輸出ということばが当たりますか、について、これはしり抜けになってしまう。だから私はこれははっきりとしてもらう。いまのような答弁では不満足です。こまかいことをきめるときにはこまかいことをきめておりながら、大まかにするときは大まかということは、これはどうもおかしいのです。  それと、ついでですが、これも当日楢崎委員が提起したようですが、富士重工から韓国の士官学校の訓練用としてFA200ですか、これは何か小型機のようですが、これを海外協力の民間ベースのワク内で五機出しておるという問題、これを否定せられたようです。しかし、こちらはそれはもうすでに輸出済みだという確証を持っております。そこで、あなたはもう一ぺん調査する、こうおっしゃったのですが、それも含めてひとつもう一度答弁してください。
  77. 田中角榮

    田中国務大臣 武器等製造法に基づきましては、御承知のとおり、自衛隊が武器を持つことができるということでありますから、自衛隊が保有する武器の製造ということを法律できめるために、武器等製造法ができたということはそのとおりでございますし、また自衛隊でもってつくられても、コンベア式につくればできるのだから、できたものを自衛隊が要らなければこれを輸出するというのでは困るので、輸出三原則ということをきめたわけでございます。これには軍隊が人命の殺傷及び破壊等、直接戦闘の用に使うものを武器ということで、艦船とか機関銃を持っておる、銃座を据えておるトラックもそうでありますし、掃海艇から偵察機まで全部武器ということになっております。  この間、楢崎さんから指摘をされてから私もいろいろ勉強をしました。武器というけれども、竹やりも武器だぞ、こういうことで、それは低開発国へ行けば竹やりは有力な武器であります。そういうことで、武器という定義をどこまでやるのか、こういうことでありましたが、とにかくいまの武器輸出三原則で十分できる、こういうことでございまして、法制局も、これはいままでのことで間違いが起こるようなことはないので、いまのままでいいということでございました。  それから、もう一つの御指摘のありました韓国の空軍学校だと思いますが、小型機を二機か三機、その後私はよく調べましたら、それは正確に申し上げますが、とにかく二人乗りか八人乗りですか、とにかくそれを政府の援助として教材用としてもらいたいということで、これは戦闘の用に供する目的を持っているものでもありませんし、そういう意味で、通産省は楢崎さんの質問のない前に輸出許可を与えておる、こういうことでございました。私は、そういうことは国会で問題になるようなケースだから、事前に教えておかなければだめじゃないか、こう言ってみたのですが、これは適法に処理されておるという報告でありましたので、自後はそういうものの判を押すときには大臣に連絡をしなさい、こう言っておきました。  もう一つは、ないと思っておりましたが、よく調べてみたら、どこかスウェーデンの海軍か何かから軽飛行機か何かがありまして、それはまだ輸出許可を与えておりません。輸出許可を与えておりませんし、三菱重工との間に、日本から買ったヘリコプターが何か非常に性能がいいので、救難用か何かでもってということがあるようでありますが、これはまだ通産省に持ち込まれるような状態にないということでございまして、この間の事情は調べましたら、輸出をしたことはありません。(「田中(武)委員「スウェーデンは関係ない」と呼ぶ)同じことでございますから、ついでと言っては申しわけありませんが、申し上げておいたほうがいい。楢崎さん隣におりますし、楢崎さんに申し上げます、こう言ったのですから、御答弁申し上げたわけでございます。
  78. 田中武夫

    田中(武)委員 まあ何とかかんとか言われたが、指摘したことを肯定せられたと一緒ですね。気の強い田中さんがああいう言い方をしたのでは、これはもう勝負あった。  そこで、楢崎委員質問に関連して申し上げた、これはついでと言ってはおかしいのですが、ちょっと問題が変わるのですが、お伺いしたいのです。これも楢崎委員が、これは一般質問だったかにおいて提起いたしました、旧軍刑法によって敵前逃亡罪としての汚名を着せられた、この問題が当委員会で取り上げられ、そして瀬戸山委員長からも総理にいろいろと御相談もあったようです。そこで、そのことについて敵前逃亡罪の汚名を除くというか、そそぐような措置をひとつ考えろということであったようですが、総理はどのようにこれについて考えておられるか。また、法務大臣入っておりますな。——法務省は法的に処置のしようがない、こういうことを言ったようですが、そんなことはないでしょう。総理、法務大臣にお伺いいたします。
  79. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 ブーゲンビルの場合に限りまして、あれは電報がいかなかったわけです。でありますから、それは判決はありましたが、すべて大赦にかかっておるものだ、こういうことにこれを扱っておるわけであります。
  80. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへんお気の毒な状態だと思っております。いま法務大臣が答えたとおりこれは処理さるべき筋のものだと思います。
  81. 田中武夫

    田中(武)委員 ここで楢崎委員に関連質問をお許し願いたいと思います。
  82. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 時間があまりありませんから、お許しいたしますが、簡単に願います。
  83. 田中角榮

    田中国務大臣 ちょっとその前に。不確かな発言でございましたので申し上げます。  韓国向けのものは、国立航空大学が仕向け先のようでございます。FA200、軽飛行機、小型練習機、これは四機でございまして、教材用のようでございます。対韓経済協力の中に入っております。正式な輸出申請はこれからでございますが、適法なものでありますので、内諾を与えてあるそうでございます。  以上。
  84. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 楢崎君の関連質疑を時間の範囲で許します。楢崎君。
  85. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ただいま総理からお話をいただいたわけであります。法務大臣の御見解によりまして、大赦令の適用は受けておるが、しかし、その敵前逃亡罪という罪名は消えていないのであります。その罪名を消すには法的にはむずかしい、もうこれを消すには高度の政治判断以外にないというような見解が表明されております。それで、つまりその軍刑法の判決というものは、戦後二十七年たった今日でも残念ながら生き続けておる。そして、この敵前逃亡罪などの汚名のために、精神的にも、経済的にもたくさんの人が今日までずっと苦しみ続けられてきたのであります。今日の状態を見ましても、巨大な戦力集団として成長した自衛隊に対して、国の内外から軍国主義の復活ではないかという危惧が叫ばれておるような状態であります。したがいまして、戦後二十七年間生き続けてまいりましたこの軍国主義の亡霊が、また息を吹きかえして手足を出すというようなことになったらたいへんであります。したがって、私は、この際総理は、かつて沖繩復帰なくして戦後は終わらないという名言を吐かれました。しかし、このような問題が解決されずに残っておって、はたして我後が終わったと言えるであろうか、これを私は思うわけです。  したがって、法的には何ともならない、高度の政治判断による解決以外にはないという、こういう状態の中であって、どうかひとつ総理にお願いしたいのは、総理の在任中に必ずこの問題を解決するという決意を、全国でその吉報を待っておられる方々の前にぜひ明らかにしていただきたい。それと同町に、あるいは佐藤総理責任ではないかもしれないけれども、軍刑法の汚名のもとで苦しんでこられたこれらの人たちに対して、いままで国の責任で長い問題苦労をおかけしたというおわびとねぎらいのことばをかけていただければまことに幸いである、このように期待をいたします。総理の御見解を承りたいと思います。
  86. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、敗戦の結果、また混乱の当時でございますから、ただいまのように終戦の電報が全部行き渡らなかったとか等々、手違いもあったと思います。しかし、事柄としては敗戦の処理は大赦で全部消された、かように解釈すべきものだと思っております。したがって、ただいまのような敵前逃亡罪に問われて長崎の刑務所に入っていた、こういう方に対してはほんとうおわびのしようがないような気持ちでございます。私は、そういうような方々がまだまだいろいろ大戦のあと始末としても残っておるのじゃないだろうか、かように思いますが、そういうような事柄がないように、やはりこの際、気のついたところからただいまのようなものを是正していくべきだ。楢崎君が御指摘になりましたように、私は、この問題はただ過去の問題だからというだけでは済まないように思っております。  ただ、楢崎君に一つ心配なのは、自衛隊と結びつけられたことにどうも私はたいへん心配なのでございまして、私は、いまの自衛隊で軍国主義化はございませんし、敵前逃亡罪という従前の刑法、軍刑法、それについてのあと始末の問題はあと始末の問題、新しい自衛隊は自衛隊と、こういうように区別していただきたいと思いますし、この機会国民の誤解のないように、その点ははっきりさせたいと思っております。したがいまして、ただいま御指摘がありましたように、この終戦当時において処理、あるいは手当てのできなかったものについて、私どもまことに申しわけなく思いますが、何か適切なる処置ができるなら、この方法は具体的に考えたい、かように思いますし、またそういう点では政府自身も考えますが、ただいま大赦があったからそれで済んだのだというだけでは、なかなか汚名を着せられた方々は済まないと思います。これでは各党、超党派で具体的な案について私ども考える、そういう態度でございますから、どうか御了承いただきたいと思います。
  87. 田中武夫

    田中(武)委員 もう時間もないようですから、この問題につきましては、いわゆる敵前逃亡罪という汚名、この罪名を消すということ、これを特にひとつ総理からその決意を聞きたいのですが、もうおわかりと思います。法的に私はあると思うのです。もしなければ、特別立法したっていいじゃないですか。そういうことも含めて申し上げておきます。  時間が参りましたので、もう二点だけはしょってお伺いして終わりたいと思います。  その一つは、四月十三日から南米のチリですか、サンチアゴで第三回国連貿易開発会議、UNCTADが開かれる。それに田中通産大臣が行かれるのかどうか。行ったとするならば、中国との間に接触を持ちたい、だれとの間に接触を持ちたいというようなことをかつて答弁せられたようです。そこで、これはだれが行くのか、田中さん、ほんとうに行く気があるのか、もしおれが行った場合はこうだと言って、あなた一流のPRじゃないかとかというようなこともある。しかし、この会議は今回から中国代表が入る。したがって、開発途上国からの要求も強いものがあろうと思います。日本はいまいわゆるGNPが世界二とか三とか、あるいは国際的黒字国であるというようなことで、安易なことではのがれられないというか、はっきりした考え方を持っていかねばならぬと思います。そういうようなことについていろいろ聞きたかったのですが、基本的な点だけをお伺いしておきます。  それから、水田大蔵大臣には台湾に対する円借款の問題ですが、これも先日の分科会、これは平林委員質問したのに対して、台湾借款は日中友好、日中国交回復とは別問題である、これからのやつはともかくとして、現に約束しておるもので残っておるのは、これからも貸すのだといったような意味のことを言っておられます。しかし、この前の十月二十八日、ちょうど当委員会におきまして、アルバニア決議案が国連を通った食後ですが、もう時間ないので、私、議事録を持っておりますが、そのときに総理に、台湾との関係はいわゆる清算事務が残るだけだ、こういうように申し上げて、総理もそれを肯定せられた、こういうように理解いたしております。この清算専務と私はことばを使ったのですが、それはもうこれから貸すのじゃなしに、貸したのをどう取り立てるかという問題のつもりなんです。しかし、約束したものはまだ貸すのだということ、この点についてはちょっと私、食い違いあると思いますから、その点を明らかにしてもらいたい。同時に、この問題は日中国交回復とは別個の問題だという認識も誤りじゃなかろうかと思うのです。それもあわせて総理及び大蔵大臣にお伺いいたします。
  88. 田中角榮

    田中国務大臣 UNCTADには一応私が、国際会議でございますので、事前に名簿を提出しなければならないということで、私の名前は外務省から通知はしてございます。しかし、予算の審議の状況もございますし、まだ通産省、十二法も審議をお願いしておりまして、現にまだ一法も成立を見ておらないという事態でございますので、出席できるかできないかは国会の審議状況、両院の御意向等を聞かなければならないと思いますし、外務大臣の意向も聞きながら相談をして、私が行けない場合には、別な人を立ててもらうというようなことをお願いしようというふうに考えておるわけでございます。  もう一つは、中国の問題でございますが、田中一流のというような御発言でございました。新聞にもそのような雰囲気で書いてございました。私は非常に不愉快な気持ちを持ちましたので、明確に申し上げておきます。私は大体において中国の問題に対しては、田中は黙して語らずということであって、私は大体語らないできたわけであります。ところが、国会質問でございますから、質問で突然中国も出張をするということであって、君は会うのかということでありましたから、会う意志はいまはありませんというニュアンスのことばを申し述べたわけでございますが、しかし、向こうがいま総会の副議長に推されておるようなことも聞き及んでおりますので、そうすれば、表敬等で伺わなければならないことも起こります。日中間は事をかまえて会おうというようなチャンスをとらえるというようなことではなく、水の流るるがごとくして会えるならば会うということで参るのであって、目標は中国代表に会うことではなく、UNCTADの総会に出ることである、こういうことを述べておりますので、ちょうどあなたからの御質問がございましたので、この際明らかにいたしておきます。
  89. 水田三喜男

    水田国務大臣 新規の問題につきましては、これは慎重に考慮いたしますが、すでに交換公文で約束しておる案件につきましては、これは、実行したいというのがいまの私どもの立場でございます。
  90. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま大蔵大臣が答えたとおりであります。
  91. 田中武夫

    田中(武)委員 時間が参りましたので残念ながら終わりますが、田中通産大臣にいたしましても、これは議事録ができていないので明確にできませんが、新聞と、ここにその当時の質問者の小林さんがおられます。しかし、あと下がりというか、うしろ向きというか、どうもそういう感じがする。それから大蔵大臣にしても、台湾の借款の問題は、日中間の国交回復の問題とは別問題という認識はどうかと思います。とにもかくにも一番問題は、あの十月の二十八日に、私がアルバニア決議案が通ったその直後にこの委員会総理に伺ったときの答弁、どうも姿勢がだんだんとまたうしろへ寄ってきた、こういう感じをあらゆる場所で受けます。もうこれ以上言えないからあとの機会に譲りますけれども、こういうことでは、政治に対する、あるいは内閣に対する、あるいは国会に対する国民の不信感は増すばかりだと思います。言うならば民主主義の危機です。これは国会を含めて、ことに内閣の最高責任者として総理は十分に反省し、考えていただかねばならない問題であろうと思います。  これだけを申し上げまして、御答弁があるなら伺いますが、私の発言はこれで終わります。ありがとうございました。
  92. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 田中君、いま結論めいたことを言われましたが、民主主義の破壊あるいは議会政治の無視だ、これは言い過ぎじゃないでしょうか。私どもはさような考え方はございませんから、それだけははっきりしておく。やはりひざつき合わせて話し合うという民主主義に徹することが何よりも大事なことでございますから、ただいまのような認識でこの予算審議、これが今回終わるということは、私まことに残念に思いますし、別に答えなくてもいいことかと思いましたが、そのことだけは申し上げて、国民に正しい認識を与えたい。政府もどこまでも皆さん方と胸襟を開いて話し合う、こういう態度であること、これをひとつ御理解いただきたいと思います。
  93. 田中武夫

    田中(武)委員 私いま予算委員ではない。それで、あなたとこうしてやるのはあるいはこれがおしまい——まああまり言わぬほうがいいと思いますが——かもわかりませんので、それは時間の関係で飛躍したことを言ったかもわかりませんけれども、そういうことにつながるということです。現にそうですよ。もしそうだったらあなたの認識不足です。そのことを申し上げて、終わります。
  94. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これにて田中君の質疑は終了いたしました。  午後一時再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時十五分休憩      ————◇—————    午後一時七分開議
  95. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。二見伸明君。
  96. 二見伸明

    二見委員 今回、私たちが暫定予算の審議に応じたのは、予算の年度内成立が不可能であり、暫定予算を編成しなければ四月からの執行に差しつかえがある、こう判断したために暫定予算の審議に応じたわけであります。  しかし私は、暫定予算を今回組まなければならなかったその理由ですが、暫定予算の編成について、私は二つの要因があると思います。一つは、たとえば総選挙のようなことがあって、政府にとってはやむを得ない事由でもって暫定予算を組まなければならなかったというケースが一つは考えられます。もう一つは、政府自体の本予算編成そのものに重大な問題があったために年度内成立が不可能となり、暫定予算を組まなければならかったという、そういうケースもあると思います。今回の暫定予算編成に際しましては、まさにこの後者の例に当たるものだとわれわれは考えております。四次防の先取り問題をはじめとする一連の事態というものが、むしろ私は予算編成に際しての政府の基本的な態度に誤りがあったのだ、それをわれわれ野党が指摘したがために、そしてそういう問題があったがゆえに、今回暫定予算を組まなければならなかった。暫定予算を組まなければならない、その責任というものは、私は全面的に政府にあると考えております。  暫定予算の審議で、これからいろいろな問題を総理大臣にお尋ねするわけでありますけれども、今回のこの暫定予算を組まなければならなかったその背景にあるものについて、私は政府として、総理大臣として、その責任というものを痛感しなければならないし、反省をしなければならないと思います。午前中の審議でもって、総理大臣は憲政の常道ということを言われましたけれども、私は憲政の常道ということは、責任の所在が明らかであり、それに対する対処のしかたが明確であり、またそうしたものごとに対するきびしい自己反省というものがあってこそ、憲政の常道が確立されるものだと考えているわけでございますけれども、総理大臣の御見解、反省、そうした事柄についての総理大臣の気持ちを伺いたいと思います。
  97. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 二見君にお答えいたしますが、とにかく暫定予算、それも一カ月にわたる、普通の状態においてならこういう事態は考えられないことは、ただいま御指摘のとおりであります。そういうことを考えると、暫定予算を提出して御審議を願うことは、私はまことに遺憾に思っております。  そういう意味から、政府責任は重大だ、かように仰せられることは、これも私にわからないではございません。しかし、とにかくただいまの状態は、その責任追及もさることながら、とにかく提案しております議案の御審議を願って、そうして一日も早く空白を生じないように御協力願う、これを心からお願いする次第でございます。  私はまことに、重ねて申しますが、一カ月の長期にわたる暫定予算を組まざるを得ないような状態になったということ、普通の状態においてそういう事態が起きたという、そういうことについて深く反省もし、また遺憾の意を表する次第でございます。
  98. 二見伸明

    二見委員 ところで、私はこの暫定予算に関連して、きょう総理大臣あるいは関係大臣に、日本の国の安全保障というもの、安全というものがいかにあるべきかということで御意見も承りたいし、われわれの考えも申し述べたいと思います。  今回の本予算の編成がおくれたのは、私は一つの大きな理由は、政府が国政の大原則である文民統制という問題を無視したからだと考えております。これは別のことばで言えば、日本の安全保障に対する政府の考え方に間違いがあったのじゃないだろうか。私たちは自衛権そのものを否定しているわけではございません。しかし、わが国の安全保障という問題を考えた場合に一番大事なことは、やはり平和外交の推進であろうと思います。と同時に、国内においては国民生活を優先する福祉政策の充実、確立、これが何よりもわが国の安全保障にとって最も重要なのじゃないだろうか。  ところが、過去数年あるいは十数年にわたるいままでのわが国の安全保障に対する考え方というものは、外交をまっ正面から立てたものではない、むしろ軍事力増強という形でわが国の安全を守ろうとしてきたのではないだろうか、そこに基本的な発想に問題があるのじゃないだろうか、こうわれわれは認識をし、評価をしているわけでありますけれども、総理大臣はこの点についてはいかがお考えになっていらっしゃいますか。
  99. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま国の安全、独立、そういう点から自衛力、これをどういうふうに考えるか、その取り組み方、こういうようなお話。これは私はまじめに各党とも相談し、協議を遂げなければならないことだと思っております。  ただ、この際に明確にしておきたいのは、今回の暫定予算を組まざるを得ないやむを得ない状態になったことが四次防との関係だ、こういう御指摘でありますが、私は、その議論をかもし出した四次防の先取りということについては、政府政府なりにそういう問題だと説明せざるを得ない。しかし、まあこの四次防の問題は問題として別に他の機会で十分その御審議をいただくことにして、ただいまの国の安全確保、これは御指摘になりましたように、平和憲法のもとにおいて私どもが平和に徹する、いわゆる平和外交、これを推進する、そこに基本かある、かように私、考えますので、その点は二見君と全然考えが同一でございます。しかし、さようには申しましても、やはり自衛力、これはみずからの国はみずからの手で守るという、そういう愛国的発露が自衛力整備につながっておる、かように私ども考えますので、その事柄も御理解をいただき、ただいま重点は、やはりわれわれは新しい憲法のもとにおいて平和国家としてスタートしているのだ、過去のような間違いは二度と繰り返さないのだ、これにやはり徹する、こういうことでありたい、かように思っております。また、そうい意味でもいろいろ政府自身も考え、また国民からもその意味の御批判をいただき、国会においても同様の考え方をしておられます。それは具体的には文民統制、こういう形においてただいまの問題が処理されている、かように御理解をいただきたいと思います。
  100. 二見伸明

    二見委員 私は、防衛という問題は外交と非常に連動する問題だろうと思います。総理大臣が平和外交の推進が基本であると、こう仰せになりました。私もそのとおりだと思います。平和外交が、平和外交の推進が順調に行なわれていれば、防衛力整備というものは、たとえば必要だという立場からいっても、それほどの増強は必要ではなくなる。平和外交というものが順調に進展していないということになると、逆に何とかしなければならぬというので軍事力増強という思想が非常に頭をもたげてくる。私は、外交と防衛というのはこうした関係にあるのじゃなかろうかと考えております。  いま、総理大臣は平和外交の推進ということをおっしゃいましたけれども、平和外交の推進の中で当面われわれが一番重要視している平和外交推進の目標、目的というものは、中国の問題であります。二十五日の衆議院の予算委員会福田外務大臣が、周総理が提案された日中不可侵条約には賛成であるという、こういう意見をお述べになられたそうであります。私も日本の国の安全という立場、安全保障という立場からも、日中不可侵条約は一日も早く締結されるべきであると考えております。この日中不可侵条約に対する総理大臣の基本的なお考えはいかがでしょうか。
  101. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 外務大臣からお答えしたほうがいいのかと思いますが、いまの、外務大臣がどういうような話をしたか、私自身ただいま記憶にございません。しかし、私自身から申せば、私どもはいままでも機会あるごとに申しておりますのは、あらゆる国と仲よくするのだ、平和、そういう意味で、とにかく敵視政策はとらないし仮想敵国は持たないという、そういう形で平和外交を推進しておるわけであります。  そこで、ただいまの日本と中国との間の不可侵条約という問題をどういうふうに考えるか、こういうお話でございますが、私はどうも、ただいまも隣同士でありながら中国との間にまだ国交の正常化がない。もちろん、先に進んで不可侵条約云云、それを言うまでの資格が実はないように思っております。まず大事なことは両国の政府間交渉、それが始まるべきことが第一ではないだろうか、かように思っております。もちろんその前提として、私どもは隣の国と仲よくするのだ、こういうことはもともと考えておりますから、いままで三原則だといわれるような敵視政策だとか、あるいは二つの中国論だとか、そういうものに加担するというようなことはない。どこまでも国交の正常化をはかる、こういう立場にあること、これは理解していただいて、そうしてその上で、国交の正常化をはかった際に、ただいまのような問題が提案されるかどうか。両国の間でお互いの平和五原則などを考えれば、当然その中に含まれる筋のものではないか、かように思っております。私は、いわゆる平和五原則というものは、これは国連の基本的な精神でもあるし、またバンドン会議でも話し合われたことでありますし、それらについて私ども異を唱える筋のものではございません。  ただ、具体的に不可侵条約はどうかと、こういうようにお尋ねになると、まだそこまで直ちに発表するのは、少し早過ぎるような感がいたしますので、私は、正直にいまある日本の姿を申し上げておきます。
  102. 二見伸明

    二見委員 外務大臣お尋ねしますけれども、日中不可侵条約に、二十五日の分科会で賛意を表された。いま総理大臣は、その前に国交正常化が前提であるというお話でありましたけれども、当然、日中不可侵条約を締結したいというお気持ちがあるならば、その前提となってくるのは日中国交正常化、日中国交回復の問題であります。この問題については、二月の予算委員会でもかなり論議がありまして、政府からも統一見解というものが示されたわけでありますけれども、日中国交回復するためにはその前提条件がある。こういう条件が整えば日中国交正常化は可能である、日中国交回復はできる、この前提条件があるわけでありますけれども、外務大臣は国交正常化する、国交回復するためには、どういう条件が整えばできるというふうに認識をされておりますか。
  103. 福田赳夫

    福田国務大臣 わが国は対中政治姿勢といたしまして、中華人民共和国は中国を代表する政府である、こういう見解です。これが相当広範な内容を包含する考え方じゃあるまいか、そういうふうに見ておりますが、そういう認識のもとに日中間に政府間の接触を始める、こういうことを考えておるわけです。いろいろ中国側で言っておるようでありまするが、それらの諸問題は、この日中国交正常化交渉、政府間接触の過程でそれぞれ解決される、そういうふうに見ております。
  104. 二見伸明

    二見委員 重ねてお尋ねいたしますけれども、私たちは国交回復の前提条件として、これはもう外務大臣もさんざん耳にたこができるくらい聞かされたことでありましょうけれども、一、中国はただ一つであり、中華人民共和国政府は中国人民を代表する唯一の合法政府である。二つの中国、一つの中国と一つの台湾をつくる陰謀には断固反対する。二、台湾は中国の一つの省であり、中国領土の不可欠の一部であって、台湾問題は中国の内政問題である。台湾帰属未定論に断固反対する。三、日台条約は不法であり、破棄されなければならない、等々のこういう見解に対して、中国は、もし日本政府がこれらの主張を受け入れて、しかもそのために実際の処置をとるならば、中日両国の戦争状態を終結し、中日国交を回復し、平和条約を結ぶことができる。さらにその後において、状況の発展に応じ、平和共存の五原則の基礎に立って相互不可侵条約を結ぶ可能性がある、昨年わが党の竹入委員長が訪中したときに、中国側とこういうことになっているわけであります。外務大臣が日中不可侵条約に賛意を表されたということは、これらの原則条件というものを十二分に御承知になった上で日中不可侵条約に賛成を表されたのか、そこら辺はあいまいにしておいて、ともかく日中不可侵条約締結ということを言えば世論受けがいいだろうということで賛成をされたのか、その点はいかがでしょうか。
  105. 福田赳夫

    福田国務大臣 不可侵条約の問題は、ただいま総理からも申し上げましたが、日中国交正常化、これが何よりも先立つ問題であります。これがない前に不可侵条約ということは考えられない。でありまするから、日中国交正常化ができる、その前提として政府間の接触が行なわれる、そういうような仮定においてそういう不可侵条約というような話が出てくる、そういうケースもあり得ましょう。しかし、結論が出るのは、やはり日中国交正常化、それが先であって、あるいは同時というようなことがあるかもしれませんけれども、とにかく私どもは日中お互いに侵略し合わないということをおごそかに誓い合うということについては、これはもう大賛成です。  ただ、二見さんのおっしゃるように、公明党五原則というのがありますが、ああいうものを一々承認した上国交交渉に臨むのだ、こういう考え方はとっておりません。中華人民共和国は中国を代表する政府である、そういう認識のもとに国交正常化交渉を始めたい、これが政府の基本的な態度であります。
  106. 二見伸明

    二見委員 すでにこの論議はかなり尽くされたわけでありますけれども、たとえば台湾の問題をどうするか、結局台湾問題が日中国交回復の大きな問題になるわけであります。外務大臣は二月二十九日だと思いましたけれども、わが党の大久保委員質問に対して、またただいまもそういう御答弁をされましたけれども、台湾問題は日中国交交渉の過程で解決するものであるというふうにお述べになっておりますね。私は、この表現というものは非常にあいまいだと思うのです。台湾問題は日中国交回復の交渉の過程で、どういう方向で解決する、こういう方向で解決するという、こういう方向が入らなければ、これは正式な日本の文書にはならない。どういう方向で解決されるのか、解決されると言われた中身をきょうはお示しいただきたいと思うのです。
  107. 福田赳夫

    福田国務大臣 対中政府間接触の交渉の中身、こういう話でございますが、相手のある交渉ごとでございまするから、ここで一々その条件というか、われわれの主張の具体的の個々のものを御開示しておく、これではたして交渉ができるかと思うのです。やはり交渉に臨むにあたりましては、われわれは幾枚かのカードを持っていなければならない。そのカードをここで全部さらけ出せ、これは少し御無理な注文じゃないか、そういうような感じがいたします。  とにかく、私どもの基本的な態度は、中華人民共和国は中国を代表する政府である、こういうかたい認識を持っておるのです。そういう認識のもとに国交正常化の交渉を始めましょう。国交というところに私は少しアクセントを置いて発言をしておるわけでありますが、アメリカは米中関係の正常化ということを言っておりますが、私どもは国交の正常化ということをいたしましょう。この私どもの中国に対する二つの内容の基本的認識、これを踏んまえますると、大体のわれわれの交渉に臨むスケールというものは想像できるのではないか。それを具体的に一つ一つ示せ、それでは交渉になりません。そういう私どもの立場、これにつきましても深い御理解を得たい、かように考えます。
  108. 二見伸明

    二見委員 外交交渉でこちらのカードを見せる必要はないと、外務大臣のいまのお話でありますけれども、中国側はカードを出しております。一九四九年十月一日に中華人民共和国が成立をした。それ以後、蒋介石政権と結ばれた条約は認めないと、すでに一九四九年の段階で中国はカードを示しております。日台条約は認めないというカードを向こうは示しておる。その後中華人民共和国政府は、台湾問題に対するカードというのはわが国に示し続けております。そうなれば、じゃ、われわれはこういうカードでいきましょう。台湾問題は交渉の過程で解決するというのですから、解決するということは、台湾は中国の領土の一部である、中国の一つの省であり中国の不可分の領土である、そしてそれを代表するのが中華人民共和国である、日台条約は破棄する、こういう解決のカードをもって臨むのか、あるいはいまのままですんなりと何とかいきたいというカードでもってお臨みになるのか。カードは二枚きりないじゃありませんか。どちらのカードでいくのか、これを示していただきたいのです。  いま、われわれはどういうふうに受けているかというと、むしろいまのままでいきたいというカードを、福田外務大臣は持ち続けているとしかわれわれは考えられない。そのカードではだめですよというのがわれわれの意見なんです。ですから、カードを示してくださいと言うのです。
  109. 福田赳夫

    福田国務大臣 どうも二見さんと意見が食い違うのですが、二見さんのほうは、中国側の言う全部のカードを認めなければ話が始まらぬじゃないか、こういうふうな御見解のようでありますが、私どもはそうは考えない。私どもが主張しておるのは、つまり中華人民共和国は中国を代表する政府である、また国交正常化を目ざしての政府間接触をやりましょう、こういうことです。これで非常に広範なインプリケーションといいますか、意味合いを表示しておる、こういうふうに考えるのです。それで私は国交正常化のための政府間接触は始め得る、そういうふうに確信をいたしております。
  110. 二見伸明

    二見委員 もう一点、ただいまの外務大臣の御答弁の中で、私、確認をさせていただきますけれども、中華人民共和国政府が中国を代表する政府であるということを、いま非常に強調をされました。その点において私は異存ございません。その次が少し問題になるのです。それなら、台湾にある国府の地位というものは、あなたはどういうふうにお考えになっていますか。蒋介石政権の地位というものは、あなたはどういうふうに認識されるのですか。
  111. 福田赳夫

    福田国務大臣 現実に国民政府が存在する、それを率直に私どもは認識をするということ、これはまた現実の政治として自然のことじゃあるまいか、そういうふうに考えます。
  112. 二見伸明

    二見委員 この論議は平行線になりそうなので、あまりやりたくないのですけれども、それは二つの中国論に通ずる考え方ですね。
  113. 福田赳夫

    福田国務大臣 二つの中国論はとりません。一つの中国一つの政府、こういうことを希望しております。しかし、その過程におきまして、今日不正常な現象があるという事実もまたこれは事実でありますから、事実として率直に認識しておる、こういうことであります。
  114. 二見伸明

    二見委員 もう一点お尋ねいたしますけれども、あなたはどうしても交渉の過程で、解決するという中身をお示しになりたがらない。それでは、交渉に入る段階で、政府は台湾問題に関して重大な決意をすることもあり得るわけですか。またなさいますか。
  115. 福田赳夫

    福田国務大臣 政府間接触が始まりますれば、その重大な課題は台湾問題だ、こういうふうに認識しております。論議の過程においてこれらの問題を一つ一つ煮詰めて、そうして両国の妥結し得る結論を求める、こういうふうに考えております。
  116. 二見伸明

    二見委員 私が外務大臣の基本的な認識は間違っていると思うのは、台湾に対する問題をあいまいにしておいて交渉に入れる、あなたはその自信があると仰せになった。私は、どういうところからその自信が出るのかふしぎでしようがないのです。いま藤山さんが中国へ行っている。きのうの北京からの報道によると、福田さんのアヒルの水かきはだめだ、こういうコメントが出されております。そういう報道が流されている。台湾に対する態度をはっきりしなければ交渉には入れないんだ、こういうコメントが流されておりますし、新聞記事でもって大臣もお読みになっただろうと思います。その点をあいまいにしておいて交渉に入れるという認識が、外務大臣の認識としては非常におかしいのじゃないか。それが入れると言うならば、こういう理由で入れるんだということを私は明らかにしてもらいたいのです。その点いかがでしょうか。
  117. 福田赳夫

    福田国務大臣 私も外務大臣ですから、これはまあ相当幅広い情報を持っておりますよ。そういう情報を基礎にして私は判断をしておるし、また私ども日本国は、日本国の主張というものがあってしかるべきである。その両面から見まして、私が立っておる立場、認識、これは妥当である、こういうふうに考えております。
  118. 二見伸明

    二見委員 では、くどいですけれどももう一点伺いますが、日台条約をどうしても政府は破棄したがらない。現在は、破棄したくない意思が強いわけですね。どうして破棄したくないのか、そのほんとうの理由というのをちょっとしゃべってくれませんですか。
  119. 福田赳夫

    福田国務大臣 大陸にある中国政府、この間とはまだ政府間の接触も始まらぬ。日中国交正常化を目ざしてはおりますけれども、まだそのための政府間接触も始まっておらぬという状態です。一方において、国民政府との間に長い間平和条約を締結し、友好な関係が続けられておる。そういう際に、まだ日中間で正式な関係も樹立されないという際に、一方に厳然として存在しておるところの日華平和条約を云々する、これは私は順序が違うのじゃないか、そういうふうに思います。  そういうようなことで、結論を申し上げると、日中国交正常化の過程において結論を出す、こういう基本的な考えであります。
  120. 二見伸明

    二見委員 ですから私はさっきから、日中国交正常化の交渉の過程で結論を出す、その結論というのは、わが国としてはこういう結論を出したいんだというものがあるだろう、その中身をなぜ言えないのかということ。  それからもう一点、繰り返しますけれども、中華人民共和国が中国を代表する合法的な政府である。これはいい。では台湾はどうか。あそこに現在政権が存在している、こう答弁されましたね。では、この点についてもう一度聞きますよ。外務大臣は二つの中国ではない、一つの中国論であって、中国を代表する政府は中華人民共和国政府であるとここで強調された。それでここに台湾政権がある、この現実は認めていらっしゃる。しかも、二つの中国ではなく一つの中国であるという認識に立っている。では、この台湾の蒋政権というものは、その考え方の中からいくと、地方政権という考え方をおとりになっているわけですか。台湾一省だけに権限を持っているあそこの地方政権なんだ、こういう御認識を現在持っているわけですか。
  121. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、中国は一つである、中国には一つの政府でなければならない、これは理想像を言っているのです。私どもは、そういうところに中国問題というものが流れていく、これを切に期待しております。しかし、不幸にして現実はそうじゃない、二つの政府がある、これは厳然たる事実だと思うのです。しかし、その一方の中華人民共和国に対しましては、これから国交正常化交渉を始めよう、交渉の正当な相手方として中華人民共和国ということを認識しておるわけなんです。またその交渉の内容も、国交の正常化、これをやろう。これは承認問題までつながっていく問題です。それでもう大体、私どもが交渉の過程においてどういう足取りをするかということはおわかりだろうと思うのです。私は、それを一々ああでもない、こうでもない、この場合はどうだ、こういうふうに聞かれて、何か実益があるのだろうかというような感じさえする。私は、日中国交正常化に臨むわが国の態度、これは妥当な態度である、またこれで日中国交正常化交渉は始め得る、こういうふうに確信をいたしておるのです。  どうも、見通しなりそういうものについての見解が、私とたいへん違うようで残念でございますが、私は私なりに、日本外務大臣として確信をもって日中国交交渉には当たる、こういう考えでございます。
  122. 二見伸明

    二見委員 この問題は、外務大臣は見解の相違ということで、平行線になりますけれども、国交正常化を始めたいという気持ちがある、そして現在の政府態度でも国交正常化ができるのだ、外務大臣はこういう強い確信を持っておられるようであります。私たちはそれは絶対できないという認識であります。  その点はさておきまして、それでは国交正常化の交渉を始めるのにどういうルートで始めるか。いまは北京との間にパイプはないわけです。政府間交渉をしようといったって、どこかに何とかしなければならぬわけですね。何か第三者に頼んでやるとか、またいつごろから始めるかとか、こういう点についてはいかがでしょうか。原則論についての見解の相違はとりあえずおくことにいたしましょう。どういう形で始めるのか。
  123. 福田赳夫

    福田国務大臣 日中国交正常化交渉は二つの段階があります。一つは、国交正常化のための政府間交渉であります。これが最後になるわけですが、その前の段階といたしまして、この政府間接触を始めるためのいろいろな活動、こういうことでございます。ただいまは、政府間接触を始めるその前の事前の活動段階である、こういうふうに考えております。  その活動状況はどうか、こう言えば、これはあらゆる機会、あらゆるルートを通じまして鋭意努力をしておる。かなりいろいろな影響というか、成果というか、そういうものも出つつある、かように御認識願います。
  124. 二見伸明

    二見委員 総理大臣、わが国の安全ということから考えて、平和外交の推進が非常に大事である、総理大臣はそういう認識をされている。私もそう思います。では、中国問題一つをとってみても、論議が平行線だということじゃなくて、むしろ政府の現在の態度では、日中国交正常化、日中国交回復という問題はなかなか解決しないのじゃないのだろうか。いまの立場を固執していたのでは、私は日中国交正常化、回復ということは、これは進展し得ないのじゃないかと考えております。平和外交を推進したい、推進しなければならないという、総理大臣の基本的な認識と現実とのこれはギャップであります。もし平和外交を推進するのだ、それがわが国の安全にとって非常に大事なんだと思うならば、日中国交正常化、日中国交回復、これはもうここで議論の段階ではなくて、総理の決断できまる問題だろうと私は思います。台湾との過去のいきさつもあるかもしれないけれども、日中国交正常化への道を開くのか、あるいはいままでどおり出口のないトンネルを歩んでいくのか、私は総理大臣の決断一つだろうと思います。本気になっておやりになるならば、私はいままでの見解は白紙に戻してもいいのじゃないかと思うのです。政府としては白紙に戻してもいいのじゃないかと思う。その点いかがでしょうか。
  125. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、公明党のいろいろのお考え方、これももちろん政府は無視するという、こういうつもりはございませんけれども、先ほど来外務大臣からいろいろ、るる説明いたしておりますような、そういう立場をとっておる、かように御理解をいただきたいと思います。私は公明党の方々がいろいろ努力されたこと、敬意を表しますけれども、政府政府として、やはり外務大臣が申したようなその線で友好関係を樹立しようと、ただいま努力している最中でございます。
  126. 二見伸明

    二見委員 私は、日本の安全保障という立場から日中不可侵条約の問題を取り上げたわけであります。そして総理大臣、外務大臣が日中不可侵条約に賛成を表された。であるならば、日中国交正常化に一歩踏み出そう、政策の転換も考えているという前向きの姿勢があるのではなかろうかと、私は心の片すみでは期待をしていたわけであります。ところがこの論議は、結局一カ月前の論議を、またその域を脱したものではない。私は非常に残念に思います。これは総理大臣が、安全保障という問題に対して、外交面での平和外交の推進ということについては、ことばの上では確かに平和外交の推進を言っているかもしれないけれども、実体面では平和外交の推進はしていない、こうわれわれは認識をし、評価をせざるを得ないわけであります。なぜ台湾の問題についていつまでも固執をしなければならないのか、この点を私は総理大臣にもう一度伺いたいと思います。
  127. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来外務大臣お話をしておるように、私、日中間の問題を考えます場合に、やはりこつ然として中華人民共和国が出てきたわけではございません。また、こつ然として中国が生まれたわけでもない。過去の戦争後、その後の経過というものがある。その間にわれわれは隣の国といろいろ話し合って、そうして台湾にある中華民国と講和条約を締結して、そうしてやってきた、こういう状況でございます。したがって、新しい事態ではございませんから、これをこつ然として一夜にして全部を変える、こういうわけにはいかない。  でありますから、片一方で戦争状態は継続しておるとかなんとか、かように申しましても、皆さん方が北京にお出かけになる、中華人民共和国も皆さん方をお迎えしておる、ここに戦争状態などあろうわけはないのですね。そしてまた平和愛好国家である中華人民共和国も、皆さん方をあたたかく迎えておる。そしてまた皆さん方もそれと話し合いができる、こういう状態でございます。そういう状態を先ほど来外務大臣もるる説明をしておる。したがって、これは新しい事態といえば昨年の国連の決定、これが新しい事態だと思っております。それまではそういう事態はなかった。そのことを考えて新しくスタートしようという、こういう状態でございますから、その場合に、いままでの経過を無視して新しい状態でというわけにはいかない。やはり平和外交を持続するにしても、また推進していくにしても、過去の経過をやはり考えていかなければならない、かように私は思うのでございまして、ずいぶん話が食い違っておるようでございますけれども、案外そうではなくてお互いに一致はしているのだ。  ただ問題は、時間的の経過を全然ないものとして問題を見るか、時間的な経過があるのだ、その経過に基づいてこれからいかにその経過を見直していくか、そういう問題にいま来ているのじゃないか、かように私は思います。したがって、基本的にものごとが変わっているわけではない。政府の行き方も、そういう意味で話がつくのではないだろうか。私は、さような意味で、外務大臣の先ほど来るる説明したこと、御了承いただきたいと思います。
  128. 二見伸明

    二見委員 別の問題に移りますけれども、経済企画庁長官にお尋ねいたします。  経済企画庁では新経済社会発展計画の改定作業を進めておりますね。これは去年総理大臣が、いままでの生産至上主義から国民優先へと軌道修正しなければならない、こういう発電をいたしました。当然新経済社会発展計画の見直しもこの線でもって行なわれているだろう、改定は行なわれているだろうと思います。  したがって、その中身の中には、生活環境の整備、住宅、下水あるいは公園緑地、こういった問題も盛り込まれるだろうと思いますし、社会保障の水準をどこまで上げていくか、物価をどうするか、こういう問題も入ってくるでしょうし、産業構造の転換、この問題も入ってくるでしょう。資源をどうする、労働力をどうする、農業をどういうふうに位置づける、こういった問題もおそらく入ってくるだろうと思います。もう一つは国際協力、要するに日本の輸出入はどうあるべきか、こういった問題も当然中身として盛り込まれるんではなかろうかと思います。これは大体いつごろまでにでき上がるのか。一番早くて大体いつごろになるのか、順調にいったとして。私が事務当局に聞きましたならば、予備的な研究が現在進められていて、四月の中下句にならなければそれがまとまらない、本格的な作業はそれからだ、こういう話を聞いておりますので、これはかなりおくれるんではなかろうかと思いますけれども、早くいってもいつごろになるのでしょうか。いかがでしょうか。
  129. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 ただいま作業を進めております新しい長期経済計画は、もちろんいま御指摘のとおり、その二つの基本的な考え方は、国民福祉の向上と国際協調の推進、こういう二つが柱でございます。その作業は四月より本格的に進めますが、おそらく年内はかかると思います。しかしながら、そのおおよそのアウトラインと申しますか、大筋は、この夏過ぎには中間的に取りまとめたい、こういう考えでいま作業を進めておるところでございます。
  130. 二見伸明

    二見委員 大蔵大臣、この新経済社会発展計画の改定版はどういうものになるかわかりませんけれども、それに基づいての施策、当然財源対策ということが考えられなければなりません。青写真はできた、ではそれに対する財源はどうするのかという問題が当然起こってまいります。この計画とあわせて、大蔵省としても財源に対する財源対策あるいは財政計画、こういった腹案というものは当然お持ちになるだろうと思いますし、場合によっては、こういう計画の中に盛り込まれる意思もございますか。
  131. 水田三喜男

    水田国務大臣 この企画庁の計画によって、これに即応した財政計画というものが立てられなければならぬ。そうなりますと、一番中心はやはり財源計画ということになろうと思いますので、こういう点については、いまから非常に大蔵省自身としても、いろいろな角度からの研究をしておるところでございます。
  132. 二見伸明

    二見委員 防衛庁長官お尋ねをいたしますけれども、去年四月に発表されたいわゆる防衛庁原案、あれは全面白紙に戻りましたですね。そしてこれから新しく防衛計画を策定しなければなりません、つくり上げなければなりませんね。これはいつごろまでにできるのですか。
  133. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 二月七日の防衛大綱の策定によって、御指摘のように昨年四月に発表しましたものは消えました。これは御指摘のとおりです。夏過ぎにつくろう、こういう目途があります。このことは、やはりいま議論されておりまする経済の見通しが大体立つという、その時点を目途に策定をしていこう、こういう予定でおります。
  134. 二見伸明

    二見委員 防衛庁長官伺いますけれども、新経済社会発展計画の改定版、これはかなりおくれるというのが先ほど経済企画庁長官の答弁です。この新経済社会発展計画の改定版、これができる以前に防衛計画ができることはありませんね。
  135. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 およその見通しが立てば、その見通しのもとに策定するわけでありますから、いま御指摘の経済計画以前に四次防計画というものが策定される可能性はあります。
  136. 二見伸明

    二見委員 私は、それが問題だと思っているのです。私は、これは大蔵大臣にも文句を言いたいのですけれども、予算の分科会で楢崎委員質問に対して、新経済社会発展計画の改定版はできなくても防衛計画を策定することはできる、こういう答弁をされましたね。私は、この考えをまず捨てなければいかぬと思うのです。四次防が策定できなかったのは、結局経済に対する見通し、そうしたものがなかったから四次防は策定できなかった、これがいままでの答弁だったでしょう。  ところが、いまの段階でいくと、新経済社会発展計画の改定版ができなくてもおおよそのめどでつくると言う。私はそこにまず一つ問題がある。シビリアンコントロールという面から考えて問題があるのです。おおよそのめどというのはどの程度かわかりません。まずおおよそのめどだといってつくった防備力整備計画が、本来ならば今後の経済見通し、経済計画、財源対策、財政計画、そういったものが全部でき上がって、そしてその中に防衛計画がどう位置づけられるかというのが私は防衛としてのあり方だろうと思います。ところが、それがまだでき上っていない段階で防衛力整備計画というものをつくるならば、結局はこれからの経済運営、財政政策というものは、この防衛力整備計画、四次防でもって全部リードされてしまうじゃないか。だから、私はその考え方をまず捨てなければいかぬと思うのです。総理大臣いかがですか、これは。
  137. 水田三喜男

    水田国務大臣 昨年、防衛計画のむずかしかったことは、御承知のとおり、昨年の夏にああいうニクソン政策というものが発表されて経済に大きい変動がありまして、通貨の解決にしましても年末まで持ち越されたというようなことから、長期の見通しというものが立たなかったという事情がございますが、今年度は事情が違いまして、いま企画庁長官が言われますように、ほんとうの見通しは夏以後に組み立てられることになりましても、私は、夏以前において一応この経済の見通しの大筋は予想されるというふうに考えております。  そうしますと、御承知のように、八月が各省庁が概算要求を大蔵省にするときでございますので、この概算要求を何に基づいてするかということでございますが、このときまでに再び、いわゆる国防会議を経た計画というものができていなかったら、また先般のような問題を繰り返さないとも限らぬ。これはもう今回の経験によって絶対に避くべきことであると私は思いますので、そうしますと、全く完全だというこの計画がおくれましても、私は一応のデータがそろって大筋の見通しができるという時期において、国防計画は早目につくる必要がことしはあるというふうに考えますので、私自身は、企画庁のほんとうの計画が少しおくれたにしましても、夏以前にはやはり防衛計画は一応策定したいというふうに考えています。
  138. 二見伸明

    二見委員 大蔵大臣、一応のデータと言いますけれども、一応のデータというのはどこまでですか。一応のデータというのは、何と何と何がそろえばいいですか。
  139. 水田三喜男

    水田国務大臣 いま企画庁が作業しております経済見通しについてのいろいろな経済の各要素、こういうものの資料の出そろいというものは、わりあいに早く出てくるのではないかと思います。その組み立てが若干おくれるにしましても、一応の資料は、私は夏までには出そろうのではないかと思っております。
  140. 二見伸明

    二見委員 経済企画庁長官、一応のデータというものはどんなものを出す予定ですか。
  141. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 御承知のとおり、長期経済計画はマクロの国民経済的視点から立てた見通しでございますから、その中でわれわれが取り扱いますのは、まず政府経常支出をどの程度押えるかということです。防衛費は当然その政府経常支出の一部でございます。したがって、私どもが策定いたしますマクロの経済見通しの中で、大体私が考えております時期は夏ごろあるいは夏過ぎになるかもしれませんが、そのころには、わが国の今後あるべき経済のおおよその姿、たとえば、経済成長率はどうあるべきか、GNPはどの程度かというようなことは、およその見当がつくだろうと思います。もともとこれは、何%コンマ何というような、そういう具体的なものでなしに、たとえばかりに言えば、八・五%とか八%程度というものはおよその見当がつくし、またそのころにおおよその見当がつきませんと、昭和四十八年度の経済見通し、またそれに基づく予算の編成、あるいは経済界、産業界のこれに対する長期的な指針が出せませんので、そういう意味で、そういうおおよその見通しはなるべく急いで、夏ごろにはこれを出したい、こういう考えで作業を進めております。
  142. 二見伸明

    二見委員 いいですか、新経済社会発展計画というものは、いま進めておる改訂版というのは、いままでの経済計画とは趣を異にしているわけです。その中にはもう国民優先ということはまっ先にうたわれてくる、企画庁長官そういうふうに言いました。社会保障のウエートをどこまで上げていくか、どこまで社会保障の水準を上げていくか、生活環境のどこをどういうふうにやっていくか、そうした国民にとって最も大事なことが盛り込まれてくるのです。ところが、早くても夏ごろに出せるというのは、せいぜいGNPのたとえば八%とか八・五%程度、こうした程度の材料でもって防衛計画を組むということがはたして妥当なのかどうかという政治的な判断なんです。それは概算要求をしなきゃならない、新しくできる四次防を何とかして四十八年度予算に盛り込みたいという、それは政府のほうの気持ちはわかるけれども、それをすべきではないというのがシビリアンコントロールのときに論議されたことじゃないのですか。しかも、これからの財政計画はどうなるか、国債をどこまで発行しなきゃならないのか、税としてどういう形で徴収してくるのか、税体系もいまのままでいくのか、付加価値税を導入するのか、国債にどこまで財政の中で依存するのか、そうしたことだって考えなきゃならないんじゃないですか。そうしたことが何ら明らかにされていない段階で、防衛力整備計画だということで、防衛力だけに中心を置くという考え方を私は捨てるべきだと思うのです。  総理大臣、そういう四十八年度から発足させなきゃならないという防衛力整備計画というものにウエートを置いた考え方というものは、もうこれは転換すべきじゃないんだろうか。新経済社会発展計画がきちんと確定した、社会保障の水準から生活環境の問題から青写真がはっきりと示されて、それに対する財源の裏づけも、こういうふうにやっていきますというきちんとしたものが出てきた、その中で防衛力整備というものについて考えましょうというのならば、これはまだ話がわかるのです。これがないうちに、予算に間に合わせなきゃならないからということで四次防をやるということ自体、私は大きな問題だと思うのです。  二月七日につくられた四次防の大綱というのがありますね。あれ自体だって私は非常に不十分だと思っておるのです。というのは、防衛力の大綱をつくる以上は、そのバックには外交政策や国際情勢の分析や何かがなきゃいけないわけなんです。あのときはちょうど中国問題でもって国会ががたがたしておりまして、政府のほうの中国に対する見解も明らかじゃなかった。国際情勢に対する見方もまだ不十分だった。あの段階で大綱をつくったということ自体に私は問題があると思っているのです。これは小手先というよりも、外交、国際情勢というものをまるっきり無視した大綱だと私は思っているのです。ところが、いままた新防衛計画、四次防をつくろうとしている。その背後にあるべき国の力、経済の見通し、国民生活に対する考え方、そうしたものをまるっきり抜きにしておる、あるいはあいまいのままにしておいて、防衛力整備計画というものを確定すること自体が私は問題だと思うのです。これは総理大臣どういうふうにお考えになりますか。
  143. 水田三喜男

    水田国務大臣 お答えしますが、何か感違いをされているんじゃないかと思いますが、今回、この予算で四次防と四十七年予算の関係でいろいろ疑義を生じた原因の一つは、計画がなかったということ。ですから、四次防というものは実際に計画はなかった。なかったにかかわらず、八月の概算要求をするときには、何らの根拠がございませんので、防衛庁は、実際になかった、いわゆる世にいわれておる四次防というものに一応基づいた概算要求しているというところにいろいろ混乱があって、この四次防はなかったと言っても、皆さんのところでいろいろ疑義を生じた問題があったのではないかと私は思っておりますが、これは二度も繰り返すべきことじゃないと思います。  したがって、さっき防衛庁長官が言われましたように、当時いわれた四次防というものは、もう内容も変わって、事実上はなくなってしまっておる。したがって、今度は、予算編成のもとになる防衛計画というものは、当然新しい防衛計画を持たなければならぬ。この防衛計画は、あなたの考えられておるように、あの四次防を何が何でもここで来年は復活といいますか、それをつくらなければならないと政府が考えて急いでいるというのではなくて、あのときの四次防の内容はもう変わってしまっておりますので、したがって、新しいこれからの経済の計画に合わせた妥当な防衛計画というものをここでつくりたい、それに基づいた予算の編成をしたいという意味でございまして、防衛の不当な増強を考えるというようなものではございません。ことしの混乱にかんがみて、今後、そういう点でもう疑義のないようにしたいということから私は申しておるわけでございまして、その必要がやはり私はあると思います。
  144. 二見伸明

    二見委員 私は手続さえ踏めばいいという問題じゃないと思っておるのですよ。防衛力整備計画の新しくつくっているものが確定すれば概算要求してもいいんだ、私はそういう手続論をしているのではないのです。防衛力整備計画をつくるには、その背景となる新経済社会発展計画がきちんとでき上がっていなければだめだ、こう私は言っておるわけなんです。ところが、予算をつける大蔵大臣のほうは、確定していなくてもいいのだと言う。財政当局がそういう安易な考え方を持ってはいけない。シビリアンコントロールというのは、ただ単に、国防会議があるからとか、国防会議の議を経たからという単純なものでなくて、予算の査定の段階においてもシビリアンコントロールしなければならない。私はその原則を大蔵大臣に聞いておるわけなんです。あなたはどうも手続を踏めばいいんだというようなお考えですけれども、私はそうでないことを申し上げておるのです。総理大臣、どうですか、これは。私は無理なことを言っているとは思いません。
  145. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも論争、やりとりを聞いておりまして、実際にこう議論がかち合わないような気がいたしております。というのは、たとえば防御計画、四次防、これはいまからつくると言っておりますが、その四次防計画をつくるためには長期経済見通しが立たなければだめだ、こう言われている。ところがその四次防自身が、過去においても三次防もありましたが、上限下限があったとか、相当融通のきく予算、長期計画を立てておる。大体長期計画というものはそういう筋のものであります。これだけはどうしてもやらなければならない、しかし、そのときの状態ではこういうように動かすこともできるとか、あるいは物価の動向がそのときにどうなっているかでまたこれもある程度変更せざるを得ないとか、こういうような事柄があると思います。したがって、ただいまの長期経済見通し、ここにもずいぶん狂いが多いのですが、長期防衛計画もその中で一つの大きな部分を占めるとしたら、これはたいへんなものだと思います。私は、長期防衛計画ばかりじゃない、道路五カ年計画、あるいは港湾整備計画、あるいは住宅整備計画、その他等々の幾多の長期計画がございますが、そういうものをまとめ上げていわゆる経済の長期見通しを立てるのでございますから、そういう場合のその一部がいわゆる四次防計画になるのだ、かように御理解をいただくと、ただいまの事柄もおおよそ見当がつくのではないだろうか。したがって、ただいまこの段階で固まった数字をきちんときめる、そういうものではないので、ある程度それは増減するという、まあ減のほうに力を置いた意味のものですが、ふやすばかりが能でもありませんし、そういう意味で経済の見通しと合わしていく、こういう部分がなければ長期計画など立つわけはございません。それらのことをお考えいただくと、ただいまの議論は、ここでいまやっておることが具体的に出てきたときでないと、どうも四次防計画は大き過ぎるとか、あるいはそれでは小さいじゃないかというような御批判ができかねるのじゃないだろうかと思いますので、私は、ただいま論争しているその段階ではちょっと扱いかねる問題じゃないか、かように思います。  ただ、二見君が御指摘になりますように、政治が優先する、文民統制というその実があがるように、予算編成の場合に、あるいは四次防計画、これを樹立する場合に十分それらのものを考えていけ、こういう御注意なら、これはありがたくちょうだいしておきます。先ほど私は平和外交に徹するということを申しましたが、同時に内政の面で、内政のバランスがとれなくて防衛計画など立てたってそれは意味がない、かように思いますから、そういう意味の御注意なら、これはもうありがたくちょうだいしておきます。
  146. 二見伸明

    二見委員 ただいまの総理大臣の御答弁の、新しい経済見通し、経済計画ができる、防衛力整備計画というのはその中の一部である、こういうふうな御答弁は、私は逆の面から見れば、そういう計画というものがきちんとでき上がらなければ、単年度のものはともかくといたしまして、五年とか十年にわたる防衛力整備計画というものはできないものなんだ、そういうふうに私は総理大臣の答弁を理解したいと思いますが、それはそのとおりでよろしいでしょうか。
  147. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が特に二見君の御意見で賛成ができるのは、やはり外交外交だが、内治の問題で十分にバランスのとれた防衛計画を樹立しない限り、これは国民のしあわせにならないのだ、こういうことを御指摘になった、かように理解しておりますので、長期防衛計画を立てるに際しては、長期内治計画、それらと均衡がとれた、バランスのとれたものでなければならぬ、かように私も考えております、かように申したつもりでございます。
  148. 二見伸明

    二見委員 私がもう一点、総理大臣にお願いをしたいのは、先ほど申しましたように、防衛というものは外交と連動してくるということでありますから、作業を進めております防衛計画、これは防衛庁で原案をつくり、国防会議にかけ、最終的には閣議決定、こういう運びになるわけでありますけれども、私はそこでどうしても必要なのは、国民が、またわれわれが、はたして政府のこの防衛力整備計画が妥当であるかどうかという判断をしなければならない、国会として判断をしなければならない、その場合にどうしても必要なのは、その背景になってくる国際情勢の的確な見通しだと思います。もし防衛力整備計画で五年間の計画をおつくりになるとすれば、五年間の国際情勢に対する明確な分析というものをあわせて出していただきたい。と同時に、それに対応するわが国の外交方針、外交政策というものも、私は明らかにそのときに示していただきたい。いままでのたとえば防衛白書を見たり、あるいは四次防の原案といわれているものに載っかっているような国際情勢、こういうちゃちなものでは困るのです。防衛力とのからみ合いでわれわれは国際情勢をこう見る、国際外交はこう進めていく、こういう方針がある、そうしたものをセットとして出していただきたい。そうしなければ、私は防衛力整備計画についての正確な論議というものはできないだろうと思うし、国民も理解はできないのではなかろうかと思います。その点を私は総理大臣に要求をしたいのですけれども、いかがでしょうか。
  149. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 二見君の御要望、これはちょっと私も的確にはつかみかねております。どういう程度のものを要望されるのか、それによっては無理な注文のような気もいたします。と申しますのは、激動する、また変化が絶えず起こっておる国際情勢、これを予測しろ、こういうことですから、これはなかなかむずかしいことだと思います。しかし、その前提である、国際情勢を正確に把握してはじめて防衛力というものは整備できるのだ、こういうお話については、これは私も理解ができます。正確に事態を認識するように、そのことは大事なことだと思っております。  ところで、日本の自衛力、これは何度も申し上げますように、その基本方針で申しておりますように、一面において、不測の事態が起こらないような、そういう抑止力の持つ性格と、もう一つは、現実にいわゆる侵略がある、侵害が起きた場合にこれを排除する力、この二つの目的がございます。前者の場合になってくると、ただいま言われるように、いわゆる仮装敵国は持たない、かようには申しておりますものの、やはり世の中どんどん変わっておりますから、防衛力の整備ということはなかなか大事なことでございます。どの相愛まで一体許されるのか、これがいわゆる基本方針で申しておるような「国力国情に応じ」、こういうことで一応のワクに入っておると思っております。しかしながら、最近のごとく経済的に発展すると、国力は非常に整備されたじゃないか、そうすると膨大な力を持っても差しつかえないのじゃないかというような暴論がもし出るようなことがあったら、これはたいへんだと思いますから、私は、いまのような状態になってくると、「国力国情」、かように申しますものの、いわゆる国力相応の自衛力を持つということにはやはり限度がなければならない、かように考えますので、絶えずその辺に注意を払っていく、これがいわゆる政治優先の原則、文民統制の実ではないだろうかと思います。いままで国防の基本方針で「国力国情に応じ」と言われておる。国力がこれだけ伸びたらもっと膨大な力を持ったって差しつかえないんだというような暴論が出てこないように、われわれ政治的な優先でやらなければならないと思います。しかし、やはりわれわれが自衛力を整備するのは、直接の侵害を排除するばかりではなく、われわれが侵害をこうむることのないような、そういう抑止的性格もあるのだ、こういうことをお忘れなく御理解をいただきたいと思います。その二つの目的を果たしてはじめて国の安全、独立が確保される、かように私ども考えておりますので、行き過ぎはどこまでも防ぐつもりでございますけれども、ただいま申し上げたような立場にあることを御理解いただきたいと思います。
  150. 二見伸明

    二見委員 もう一点確認させていただきますけれども、先ほど、防衛力整備計画というものは幅があっていいのだというお話でございました。これもまたちょっと仮定の論議になって申しわけないのですけれども、経済見通しができますね。そうしてそれに基づいて防衛計画ができた。ところが経済も動く。見通しどおり行くかどうかわかりません。経済は生きものですから。たとえば円の再切り上げというような事態があって、経済の階調がまたさらに変動したという場合には、防衛力整備計画は勇断をもって削減をする、それが政治優先で、政治優先というのはそういうことだ、こういうふうに理解してよろしいですか。
  151. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのように、情勢が変化すれば、これは防衛計画をやり直す、こういうことは当然でございます。
  152. 二見伸明

    二見委員 ところで、さらにこの防衛計画についてお尋ねしたいと思いますけれども、どこの国でも軍事力をきめる場合には、外交方針、戦略構想、これがあるわけです。これが明らかでないと、他国というのは脅威を感ずるわけです。私は、いま防衛庁が考えている四次防、ということばが適切かどうかわかりません、四次防と言うとまぎらわしいですから、かりに新四次防ということばにさしていただきたいと思いますが、新四次防にあらわれてくる戦略構想というのはどういうのかということを私お尋ねをしたいのです。  というのは、たとえば、これはいままでの去年四月に発表されたものを四次防原案ということばにいたしましょう。この四次防原案、これを白紙にされたわけでありますけれども、その四次防原案のもとになったいわゆる防衛白書、これではどういうふうに書いてあるのかというと、原文どおり言いますけれども、「米国、ソ連、中共の間の複雑な関係を背景に、東南アジア、朝鮮半島等の情勢をめぐって、不安定な状態が続いており、国際緊張の焦点と目されている。特に中共および北朝鮮は引き続き硬直した対外姿勢を堅持している」、こう防衛白書に書いてありますね。この認識に基づいてつくられた、いわゆる防衛庁原案では、「アジアにおいては、米、ソ、中をめぐる関係が複雑であるとともに、政治的不安定や経済的、社会的後進性あるいは分裂国家問題等多くの国際緊張の要因が存在している。とくに、中華人民共和国の核装備の進展、ニクソン・ドクトリンの実施による米軍のアジアからの撤退、さらにソ連海軍の拡充等は、今後のアジア情勢に微妙な影響を及ぼすものと考えられる。」こう言っています。そして、当時の防衛庁長官であった中曽根長官は、昨年五月三十一日、経団連との懇談会でどういうふうに言ったかというと、「五年後には中共はおそらく東京やハワイを撃つぐらいのIRBMはもう実戦展開に一部なるかもしれない。そういうときもあり縛るのであって、そういうことも頭のすみに置いておかなければいかぬ時代であるということをわれわれは認識しつつ、この次の防衛力整備計画をつくったわけであります」、こう言っているわけでありますけれども、あなたが現在防衛庁でお考えになっている新四次防の戦略構想は、この防衛白書にあった考え方、四次防原案にあった考え方、当時の中曽根長官の発表、これは前面的に否定したものになるわけですね。いかがでしょうか。
  153. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 ただいまお読みになりました国際情勢の分析は、当たっておるところもありますし、その後大きく変化したところもあるわけである。国際情勢というのは、さっき総理答弁にもありましたように、流動的である。これはもう必然なことだと思います。  そこで、当時、防衛庁原案ということばを使われましたが、中曽根原案なるものが発表されましたときには、向こう十年を視点として日本の防衛力を整備充実する、特に制海、制空、この面に重点を置くということを言っておるわけです。そこで、先ほど申し上げたように、今度のいわゆる四次防大綱なるものができました時点でそれは白紙に返ったわけでありまするが、しからばどう変わったのか、問題はその点だろうと思います。  そこで、十年を視点にして次の五カ年計画ではその七、八割を達成する。これは、内容においても、いわゆる兵器の充実度においてもということを意味しておったと思います。ところが今度は、特に国際情勢の流動がめまぐるしい、わけても緊張緩和の方向が見られるというときに、十年を視点にして防衛計画を策定するということは、いささか長期に過ぎる。したがって、三次防の延長としての第四次防、五カ年計画として三次防の延長線に、国防の基本方針も、昭和三十二年に政府として策定されたそのものにのっとって、従来の兵器を更新し、充実していく、こういう見解に立つわけであります。具体的な構想等につきましては、今後鋭意検討いたしまして整備してまいりたい、こう考えております。
  154. 二見伸明

    二見委員 要するに四次防というのは、四次防原案とは違って三次防の延長であるということであります。それで、もう一度ちょっと確認させていただきますけれども、四次防原案に盛られていた、たとえば「わが国周辺において必要な限度における航空優勢、制海を確保しつつ」と、いわゆる制海権の確保、制空権の確保、この戦略思想というものは、いまの防衛庁で考えている新四次防構想ではお捨てになるわけですね。
  155. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 日本の地理的位置から申しまして、海、空、これに防衛の重点を置くということにおいては変わりはありません。その当時は、制海に重点を置くと称して、周辺海域を約一千海里くらいのところに目標を置いて防衛線を確保しよう、こういう具体的な説明を中曽根長官やっておりました。それを大体私どもは、五、六百海里、六有海里程度でいいのではないか。もともと貿易立国でありまするから、この周辺海域の安全運航ということをなおざりにしていいものではありません。もちろん十分貿易立国にたえる安全性確保ということは重要でありまするが、いささか一千海里というのは多いのではないかという、具体的に一例をあげれば、そういう検討をしておるのが現在の段階でございます。
  156. 二見伸明

    二見委員 一千海里から五、六百海里に変わったわけですね。しかも制海権、制空権という思想はもうとらない、こういうことになりますと、ちょっと具体的になりまして申しわけないのですけれども、四次防原案では、そうしたいまの考え方に基づいて、「艦艇については、新たにヘリコプターとう載艦二隻を含む」と、こうありますね。ヘリコプター搭載艦は、そういう考え方からいくと必要なくなりますね、この建造は。いかがでしょうか。
  157. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 それらについては目下具体的に検討中でありまするので、もう少し時間をおかし願いたいと思います。
  158. 二見伸明

    二見委員 私は、制海権の確保という思想は捨てますと、ことばの上で捨てても……。
  159. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 先ほど捨てるとは決して申しておりません。やはり貿易立国として大事です、そういう考え方に変わりはないが、その範囲、規模、これについて再検討を加え、縮小の方向にありますと、こういうことを申し上げたわけで、やはり日本の地理的位置から見まして、空、海、これに重点を置くことは当然でありますと、こう冒頭申し上げたわけです。しかし、中曽根構想当時の表現というものは少し大き過ぎる、これは縮小しかるべしである、こういうふうに申し上げたつもりです。
  160. 二見伸明

    二見委員 そうすると、中曽根構想の制海権というのは千海里までの制海権の確保であった。江崎さんは五、六百海里における制海権の確保ということですか。ただ干海里が五、六百海里になったというだけで、制海権の確保についてはまるっきり同じだということですか。
  161. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 制海権ということばの解釈のしかたでありまするが、際限なく広く周辺海域というものの安全性確保のために手を広げるということは、やはり他国に対しても誤解を生ずる。無益の刺激をする必要はないと思います。したがって、日本は必要最小限度の武装、こう言っておるわけですから、そういう解釈においても、そういう見地で今後策定をしていきたい、こういう考え方です。
  162. 二見伸明

    二見委員 日本語というのは、的確に表現いたしませんと誤解を生じますので、要するにあなたのは、制海ということばを使うとまずいから、表現は別に変えますということですね。表現を変えることだけであって中曽根構想とは、千海里と五、六百海里という距離の差があるだけで、発想の原点においては同じだということですね。
  163. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 どうも、そういうふうにきめつけられると話がむずかしくなるのですが、私どもとしては、当然、沿岸海域、それから日本の三海峡、こういったものは、安全運航ができるように責任をもって対処しなければならぬと思います。周辺海域においては、御指摘のように、まあ五、六百海里、このあたりの安全運航ということを考えていくべきではないか。重点は、沿岸海域、三海峡、こういうところに置いていきたいと思っております。その点ではだいぶ表現は変わったかと思います。
  164. 二見伸明

    二見委員 いずれにいたしましても、一応は江崎さんの答弁に基づいて質問を続けることにいたしましょう。意見が違うということで平行線で終わったのではしようがありませんので……。  中曽根構想では千海里であった。その千海里構想に基づいてヘリコプター搭載艦二隻。ヘリ空母と俗称しております。防衛庁ではヘリ空母と言うといやがりますけれども。この二隻は当然検討材料になる。まず、この検討材料になることは、これは間違いありませんね。そこからいきましょう。
  165. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 今後具体的に検討してまいります。
  166. 二見伸明

    二見委員 あなたは具体的には数字は言いにくいだろうと思うけれども、私たちは要らないだろうという考えです。しかしあなた方は、なかなかそうも言い切れないでしょう。しかし、検討するという以上はふやすことはあり得ないので、当然これは減らす方向で検討はされるわけですね。
  167. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 御指摘のように、ふやすことはありません。だから、この整備の時点をどうするか、スローダウンをするのか、そのままで行くのか、やはりそのあたりを十分にしさいに検討をしなければならぬというふうに思います。
  168. 二見伸明

    二見委員 これは理屈から言っても、減らさざるを得ないのですよ。というのは、ヘリコプター搭載艦二隻、DLH、これはいま江崎さん御説明されたように、干海里という発想で二隻出てきたのです。これは千海里じゃなくなるのですから、二隻を維持するということは、これも理屈から言ってあり得ないはずなんです。もし二隻持つということになれば、これはことばが中曽根さんと江崎さんで表現が違うだけであって、中身は同じだということになりますよ。その点はいかがでしょうか。
  169. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これはそう私、間違ったことを言っているつもりはないので、したがって、その時期をどうするのか、スローダウンするのか、あるいはそのままで行くのか、その辺をしさいに検討します、こう言っておるわけですから、そう答弁としておかしくないと思います。
  170. 二見伸明

    二見委員 じゃもう一つ聞きますよ。やはりこれもあなたは、しさいに検討されるというふうに御答弁されると思いますけれども、艦艇は「約十万三千トンを建造して」と、こうなっていますね。これも当然検討されているわけです。検討された結果十万三千トンになりましたということは、これは万々あり得ないのでしょうね。
  171. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは規模として多少減る見通しでおります。しさいに検討と言っておりますが、ほんとうにこれは時間をかしてくださいよ。とにかく朝から毎日これ国会でしょう。そして防衛庁に帰っていけばあくる日の想定質問で次の問題を検討する。それはスタッフはやっております。スタッフはやっているが、究極的には、これはやはりもうちょっと時間がありませんと、具体的にお答えを申し上げるところへはいかないわけです。
  172. 二見伸明

    二見委員 長官のいまの言い分というのは、あたかも国会に呼び出すことが悪いような、だから検討ができないのだというふうに、悪意にとればそうとれます。長官は時間がないということをおっしゃりたかったのだろうと思って、私も善意にその点は解釈をしたい。同時に、この数字についてはあまり言ってもらっては困る、いまほんとうに検討中なんだ、あまり詰められると困るという御心境があるのじゃなかろうかと思います。しかし、これはある程度の構想、考え方というものを、たとえばDLHを一隻にするとかゼロにするとかということは言いにくいとしても——まだ検討しているのですから結論は出せないでしょう。しかし、方向というものは、いまわれわれがこういう方向で考えておりますということだけは、私はこれは国民の前に明らかにする防衛庁長官としての当然の責務があると思うわけです。だから、やはり同じように繰り返してお尋ねをいたします。  航空自衛隊については、F4EJ八十機、RF4E二十機、T2改百二十六機、C1三十機、T2八十機、こういう調達の契約がございましたね。これも当然検討材料になっているわけでありますけれども、これも減らすわけですね。
  173. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 減らすものもありまするし、そのままでいくものもありましょう。しかし、もともとこれは四次防というものはもう白紙に戻っているのですから、いま新たな見地に立ってそういうことを策定していく検討の段階です、こういう意味です。あまり減るとかふえるとか言いますと、それじゃ四次防はいわゆる防衛庁四次防原案がまだ残っているじゃないか、こういう誤解がまた出ますから、減るふえるということではなしに、新たに五カ年計画ということで、防衛力の三次防延長の整備充実、こういう方向で検討をして策定をしてまいります。
  174. 二見伸明

    二見委員 あなたは、減るとかふえるとかと言うと、四次防原案が残っているのかと食いつかれるので困るということですが、私は別にそんなことで食いつくわけじゃないのです。あなたの考えている新四次防というものを考える場合に、一応の目安として、白紙に戻された防衛庁原案がある、これを一応私は参考の材料として、これが前にあったのだから、これを基準として防衛庁長官の構想を聞いているわけなんです。いいですか。白紙に戻しました、そうして検討いたしました、その結果が同じものが出てきましたと言ったらば、三次防の延長ですという答弁とこれは大いに食い違ってくるのです。したがってこれは、この方向で減らすとかなんとかというある程度の構想というものは明らかにすべきだろう。それは最終的な数字の詰めはできないのは私はわかりますよ。それはわかりますけれども、ある程度の、こういう方向で行くのだ、これも検討材料にします、その点は私は明らかにすべきだと思うのです。
  175. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 私も相当はっきりお答えをしておるつもりですが、要するに、十年を視点にしてその七、八〇%を充実するという五カ年計画と、三次防の延長線で五カ年を計画するのと、これはやはり当然減るという方向は御了解いただいてけっこうです。また、国際情勢はどうか、これは当然加味しなければなりません。しかし、一度の米中会談によってにわかに緊張がほぐれ平和になったというわけにはまいりませんので、ただ五カ年間の視点というならば、どういう想像、推測に立つか、ここらあたりの分析は当然加味していきたいと思っております。
  176. 二見伸明

    二見委員 たとえばT2であるとかC1であるとか、こういうものを持ったほうがいいか悪いかということについては、原則論的な立場においては政府とわれわれの間に違いはあります。しかし、一歩あなた方の原則にのっとって考えた場合でも——われわれの原則はとりあえずおきましょう。長官の原則の上で、長官の土俵の中でもって話を進めた場合であっても、たとえばF4EJであるとか、RF4Eであるとか、T2改、C1、あるいはT2、こういったものは減るべきであるというのが、あなたの論理から言っても当然であろうと私は思うのです。減らすべきであろうとも思います。白紙に戻して出てきたものがまた同じだったということはあり得てはならないと思います。と同時に同じことは、いまについての御答弁もお願いしますけれども、もう一つついでに伺います。  陸上自衛隊についても四次防原案では増員計画があった。このことも当然検討材料になる。増員をまるきりやめるのか、あるいは減らすのか、そこら辺はきまらないとしても、増員ゼロなのか、あるいは増員を中曽根構想よりは減らすというのか、そこら辺もはっきりさしていただきたいのと、予備自衛官六万人体制、これも当然検討されますね。六万人体制がいいのか悪いのか、あくまでも六万人体制を維持しようという方針でいるのか、減らそうという方針でいるのか、そこら辺も、数字はわからないとしても、防衛庁長官としてこの構想をお持ちになっているはずです。事務的なことは詰めさせるとしても。結局、どういう原案が出てくるか、それはひとえに江崎長官の構想にかかわるのでしょう。向こうから出てきたものを、ああそうか、こう言うわけじゃないでしょう。あなたの構想を言って、それで数字をまとめさせるものなんでしょう。だからそれも明らかにしていただきたいのです。
  177. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 ファントム等は、これはもう三次防できめられたものでありますから、当然これは採用もしてまいりますし、先ほど御指摘のT2とかC1、これもT2は練習上、訓練上必要なものですから、これは当然充実をしたいと思っております。その機数においては、これはおのずから数字に変動はあります。これは御指摘のようにふえることはありません。  それから陸上自衛隊においては、もうすでに十八万人体制、これを当分堅持する、こういうことでわれわれの方針はきまっておるわけでありまして、中外根君策定のいわゆる四次防試案なるものにおいても、その増員は考えておりませんね。いま御指摘の予備自衛官についての数字でありますが、この数字についても具体的に検討したいと思っております。
  178. 二見伸明

    二見委員 防衛構想に関連して、いま装備の点  でこまかい点を質疑いたしましたけれども、今度は脅威という点からやはり考えてみたいと思います。  これは昨年五月三十一日、防御局長がやはり経団連との懇談会で、中曽根さんがこのとき同席しておりましたけれども、そこでどういうふうに言ったかというと、「単純に周辺諸国の軍事的能力の存在それ自身が一つの脅威になっている。そこで、そういったものに対応するものを長期的な見通しのもとに整備しておかなければならないという考えに立つわけです」、こう言っているわけです。これは四次防の背景説明なんですね。脅威については、顕在的な脅威、潜在的な脅威と防衛庁のほうでいろいろ説明されますけれども、脅威があるからそれに対応するだけの防衛力を整備しなければいけないんだ、百の脅威があるからそれに対応するだけの防衛力を整備しなければいけないんだという、この脅威対応型の防衛力整備計画ということはどういうことでしょうか。それは防衛庁の立場からいけば、あるいは政府の立場からいけば、脅威があるのだからそれに見合うだけの防衛力ということになりますけれども、たとえばその立場から見たとしても、脅威対応型の防衛力整備計画というその考え方はお捨てになるわけですか。
  179. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 総理からの答弁がありますように、日本は仮想敵国は持っておりません。したがって、直接的な脅威を何国のどういう脅威、こういうことに仮定はいたしません。しかし、あくまで日本の自衛隊というものは戦争の抑止力であり、さっき総理答弁にもありましたように、万一不測の事態によって侵略をする国ができたときには、これは当然排除する力になる。それで及ばないところは、日米安全保障条約と相まって侵略者を排除する、こういうことであります。したがって、想像される侵略の可能性といいますか、そのとき日本としてどう対応するか、これについての最小限の武装、配慮、これは当然あってしかるべしだと思います。
  180. 二見伸明

    二見委員 総理大臣は、政府の防衛政策としては仮想敵国をつくらないんだ、これが基本的な考え方である、こう申されましたけれども、この防衛白書を読みますと、そういうふうには出てこないんですね。たとえば防衛局長の話は、日本の周辺にある軍事力そのものが脅威だ、こういうふうに言っているわけです。じゃ日本の周辺にどういう軍事力があるかというと、防衛白書には、極東ソ連軍、中共軍、北朝鮮軍、韓国軍、国府軍、極東米軍、こう列記されているわけです。そうすると仮想敵国は設けないんだと言っていながら、日本周辺にこういう軍事力の脅威があるんだ、日本周辺にこういう兵力が配備されているんだという表を載せますと、仮想敵国をつくらないんだと言っても、わが国の防御力、防衛計画というのは、何かここら辺を仮想敵国にしているんじゃないか。総理大臣に言わせれば、おまえそれは錯覚だとおっしゃりたいかもしれないけれども、そういうふうにしかとれなくなるのです。
  181. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 私どもの担当ですから、私が先にお答えさしてもらいます。  脅威ということですが、いまお述べになった、それでまあはっきりしたわけですが、そこにそういう武装があるというわけですね。この武装に侵略の意志が伴ったときには、これが一つの脅威になるわけですね。したがって、仮想敵国を持たない日本としては、現在のその武装だけでは脅威と思わないわけです。しかし、もし意思がそれにプラスした場合、この脅威をどう受けとめるか、これはやはり自衛隊の性格上、分析をしていくことは必要だと思います。これは、仮想敵国を持つということとそれとは、全然区別していただきたいのであります。
  182. 二見伸明

    二見委員 そういう意思が働けば脅威になる、これが潜在的な脅威、こういうことですね。それから現実にもう意思が働いているものが顕在的脅威である。そうすると、どこが脅威であるかはまだばく然としているといたしましても、政府もある程度脅威というものを考えて、防衛力整備計画というものを立てるんだろうと思います。当然その場合は、いま現在はわが国のまわりには顕在的な脅威はないわけですね。潜在的な脅威。しかしこれは、予測することは非常にむずかしいし、この論議をするとまた平行線になりそうなので、あまりやりたくありませんけれども、ただ脅威に対応するんだというそういう発想からでは、防衛力、軍事力がエスカレートしていくだけではないか、こう私は思います。その点については、総理大臣はどういうお考えですか。
  183. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの二見君の御疑問、これはエスカレートしていく多分の危険があると思います。私どもはそういう意味においても、自衛力の限界というものを、先ほどは「国力国情に応じ」、こういう表現をいたしました。国力はついてきたけれど、しかしその国力に相応するだけの自衛力を持つというわけでもない、こういうことを申しましたが、そこらに、ただいまの文民統制の必要、政治優先、そういうものが必要でございます。やはり外交と内事とあわせて、他国からわが国が侵略を受けることのおそれのないような状態をつくること、これが必要だと思います。ただいまの脅威、脅威というそのことばだけに踊らされてはならぬ、かように思っております。
  184. 二見伸明

    二見委員 総理大臣にお尋ねしますけれども、わが国の防衛力、防衛については、憲法上の限界として、他国に脅威を与えないものという一つの制約がありますね。「国力国情に応じ」という政策上の限界がありますね。私はこれは非常にバランスの問題が大事になってくると思いますので、総理大臣に基本的なお考えを伺いたいのですけれども、国力、国情に応じて自衛力を整備した結果、他国に脅威を与えるようなものになった、これはいけないわけですね。そうすると、防衛力の整備については、国力、国情に応じてはここまでできるとします。しかし、あくまでも他国に脅威は与えないんだという前提、これで大きな網がかぶせられてくるわけですね。国力が、たとえばGNPの一%まではいいんだといっても、それでは他国に脅威を与えるということになれば、政策的には問題ないとしても、これは憲法上の問題がからんでまいりますね。そうすると、これからも他国に脅威を与えないということがあくまでも大前提である、こういうふうに理解していいですか。
  185. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 他国に脅威を与えてはならない、与えるようなものであってはならない、これはもうお説のとおりです。御指摘になりましたとおりです。だからこそ国会においてすら非核三原則の決議をいたしました。また私どもは、外国に派兵をしない、自衛隊にしろ、外国に行くわけにはまいりません。また同時に、徴兵制も採用しない、こういうことをかたく誓っておるはずであります。こういう事柄が、ただいまの限度に非常にはっきりした具体的な問題ではないか、かように思います。
  186. 二見伸明

    二見委員 海外派兵はしないということでありますけれども、もう一つ憲法上の限界として、B52であるとか、ICBMであるとか、原爆であるとか、そういうものは憲法上持てない。これは他国に脅威を与えるから持てないということになっています。それ以下のものであるならば、何を持っても他国に脅威を与えないと、こういうふうな解釈はなさいますか。
  187. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうもそこになると、たとえば刀だって相手方を切り殺すこともできるのですから、それは私、そう簡単には武器、兵器そのもので限界を設けるということは非常にむずかしいことだと思います。しかし、われわれの行動として、行為として国が許しておるもの、そういうものを考えると、他国に脅威を与えるような自衛隊であってはならない、かように私は思っております。
  188. 二見伸明

    二見委員 総理大臣にお尋ねしますけれども、総理大臣は四十四年六月十九日の衆議院の内閣委員会でこういう趣旨の御答弁をされたそうであります。「他国に脅威を与えない、防衛的なもの、いま航空機等についても、爆撃機は足の長いものは持たないと、こういっている。あるいは非常に速度の高いもの、これも持たないという。」ここからが大事なんですが、「けれども、やはり防衛という観点からいくと、そうばかりもいっておれない場合があるだろうと思います。だから、これは具体的に個々のものについて、これが脅威を与えるか与えないかという、そういう具体的なものとして相談しないと、自分のほうの大事なのは防衛なんですからね、国の防衛まで犠牲にして、脅威を与えない、脅威を与えないという、そんな都合のいいものがあるかどうか、そこらをよく考えてもらいたい」、こういう趣旨の御答弁をされているそうです。これはとりようによっては、わが国にとっては防衛が大事なんだから、他国に脅威を与えるか与えないかということは、それは二義的なものだ。場合によっては他国に脅威を与えるものでも、わが国の防衛のためには持たなけれbばならないんだ、こういう非常に強硬な態度を示したものだと、私はこれを読みながら理解したのですけれども、この考え方は私は非常に危険な考え方だと思います。その点について佐藤総理大臣はいかがお考えですか。
  189. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま刀の例で私申しました。ただいま日本の防衛、安全を確保する、独立を守る、そういう意味において近代的な性能の高いものを持たなければならない、こういうこともあり得るだろうと思います。しかし、そういうものが日本の領域を出て、そうして侵略もないのに前もってそこを攻撃する、こういうことは私どもはやらないということを申し上げておる。しかし、やらないが、そういうものは持てないのか。持つからやるようになるんだ、こういうことも、やや論理的な飛躍があるのではないだろうかと私は思います。わが国土を守るための、防衛のための万全を尽くすこと、これは当然の責務だと私は思っております。しかし、それが外国に打撃を与える、こういうことに使用されてはならない、かように思いますから、おのずからそこに制限を受けるんだ、かように思っております。
  190. 二見伸明

    二見委員 私は総理大臣に、一国の最高の責任者として、防衛については絶えず慎重であってもらいたいと思います。防衛については各党それぞれ意見の違いがあることは、総理大臣も十分承知であろうと思います。私はここで総理大臣に要請したいことは、一つはわが国には憲法第九条というものがある。第九条というものが厳然として存在している。そうしてその精神から絶えずわが国の防御力の実情というものが、たとえば核を持っていないから憲法上問題はないんだという形式論理的な立場じゃなくて、防衛力の実体から照らして——おそらくわが国の防御力というのは、通常兵器では世界でも一流の、表現が軍事力ということばを使っていいかどうかわかりませんが、軍事力だろうと思います。核兵器を除いては世界では一流になるだろう、こう私は判断しております。そうした通常兵器に関しては世界でも一流の軍事国家、防衛力を整備したということが、憲法九条の精神から照らして、核を持っていないから憲法違反ではないという形式論理ではなくて、実体面から絶えず見直していくということは必要だろうと思います。これを政治家がやらなければ、結局は、シビリアンコントロールというものは、ことばのみあって形骸化してしまうのではないだろうか。その点についても、私は総理大臣にきちんとした見解をまずひとつお願いをしたい。  同時に、防衛力整備計画を防衛庁が策定しておりますけれども、それをはたして憲法第九条とのからみで政府はどういう解釈をするのか。策定した時点で、これは政府の解釈は、おそらく合憲という解釈が出ると思いますけれども、これこれしかじかで合憲である、それに対してわれわれが、これは行き過ぎである、こういう論議を当然戦わしてしかるべきだと思いますので、防衛力整備計画を作成したときには、憲法の上からどういうふうに実体論として見るのか、そのことも明らかにしていただきたいと思います。  それからもう一点。総理大臣は、他国に脅威を与えてはいけないのだということを繰り返し言われております。それがただ単に、海外派兵をしないとか、われわれは相手を攻めないのだとかという、こちらの主観的なものだけではなくて、事実わが国の軍事力に対しては脅威を感じている国があるわけです。これから策定される防衛計画に対して、脅威を与えないというならば、これこれしかじかの理由で脅威を与えてはいないんだということを明らかにしていただきたい。脅威を感ずるのは向こうなんです。われわれはこの程度では脅威を感じませんよと言ったって、それはこちらの言い分であって、向こうはそうはとれない。そうはとれないということが私は大事だと思う。そうはとれない、脅威と感じている国があるということが大事だと思う。むしろ向こうの脅威を感じている国の立場になってこの問題は考えていっていただきたい。この点についての総理大臣の見解をお願いしたいと思います。
  191. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん憲法第九条の立場からこういう問題は当然取り上げられるべきものだと思っております。ことに第二問としてお尋ねのありました、いわゆる他国の立場で脅威を受けるか受けないか、そういう問題を皆さんからもいろいろ御意見を拝聴する、これは当然のことだと思います。文民統制の最高のものは何といっても政治優先、そういう立場で国の最高機関がそういうものを決定するものだ、かように私は思っておりますから、皆さん方の御意見を無視して政府がかってな防衛計画を立てる、さような乱暴な考え方をするものでないことだけ申し上げておきます。
  192. 二見伸明

    二見委員 時間が残り少なくなりました。これは環境庁の関係でございますので、まとめて御質問申し上げて、総理大臣と環境庁長官と、さらにこれは公害問題でありますけれども、いろいろ財源の問題がからんでまいりますので、大蔵大臣の見解と、これをまとめて伺いたいと思います。  その前に、防衛について一言私の考えを申し上げておきたい。あくまでも、わが国の防衛のためには他国に脅威を与えてもいいんだ、やむを得ないんだという立場だけは、どうかとってもらいたくない。このことを私はその前に念を押して総理大臣に申し上げたいと思います。  では、公害の問題でございますけれども、まとめて伺いますので答弁のほうもまとめてお願いしたいと思います。御存じのように公害発生者負担の原則というのがあります。PPP、ポリューター・ペイズ・プリンシプルという汚染者負担の原則がOECDの閣僚会議で採択される見通しが非常に強くなってまいりました。きのうの報道によりますと、ECでもこれに対応する措置を検討しているとのことでございますけれども、まず総理大臣にお尋ねしたいのは、汚染者負担の原則というのは公害対策から見れば——いままでのわが国の考えてきた公害対策というのはまず規制が主であった。ところが汚染者負担の原則というのは、さらに一歩立ち至った公害対策としての原則だろうと思います。汚染源を発生した者が費用を負担するのが当然だというこの原則、これは実施段階においては数々の問題を含んでくる、いろいろ調整しなければならない問題が数多くあることは私も承知しておりますけれども、そうした原則というものを総理大臣は公害対策のきめ手として受け入れようという御決意があるのかどうか、これをまず総理大臣にお尋ねをしたい。
  193. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私、最終的に決定はしておらないが、いまそういう方向で汚染者負担原則というものが立ちつつある、かように思いますけれども、複合汚染の場合は一体どういうようになるか、そこらの問題はこれからの問題だろうと思います。
  194. 二見伸明

    二見委員 私は総理大臣に、そうしたいろいろな問題もある、これから詰め検討しなければならない問題があるけれども、そうした考え方、原則というものを受け入れるという御決意はあるのか、受け入れた上でいろいろな問題については検討していこうというのか、その点について私は伺いたいわけです。
  195. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 簡単に申し上げますが、現状において受け入れるかどうか、まだ少し結論を出すのは早いように思っております。
  196. 二見伸明

    二見委員 私は、総理大臣がこの原則を受け入れることに対して非常に消極的な態度をとられたことはまことに遺憾であります。これは私は受け入れるべきだと考えます。いまの御答弁をもし御訂正なさるのでしたら御訂正していただきたいと思います。
  197. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ただいま取り消すような考えはございません。二見君は二見君の意見、これは私は伺っておきます。
  198. 二見伸明

    二見委員 それでは、総理大臣の気持ちは私はわかりました。  別の角度で、別の点についてまとめて質問したいと思います。  公害税という問題について、この間の分科会で環境庁長官は、税というよりもこれは課徴金というものである、こういうふうに御答弁なさいました。これはまとめて質問しますので端的にお答えいただきたいのですけれども、この性格は課徴金的なものである。税ということに対しては大蔵省では非常に反発を感じたようでありますけれども、課徴金という性格であるならば大蔵省としては受け入れる意思があるのかどうかということを私は大蔵大臣伺いたい。と同時に、この公害税構想というものを環境庁長官は今後どういうふうな方向でおやりになろうとしているのか、その方向をお示しいただきたい。と同時に、総理大臣、この公害税構想はまだ固まったものではございません。大石長官の一つのアイデアかもしれない。しかしアイデアだからといってほうり出すわけにいかないだろう。われわれもこの問題についてはこれから研究もしていきたいと思いますけれども、総理大臣としては、政府としてこういうことを考えてみたいというお気持ちがあるのかどうか、その点についてはいかがでしょう。  以上、まとめてお尋ねをいたします。
  199. 大石武一

    ○大石国務大臣 汚染者負担の原則というものは、五月のOECDの閣僚理事会においてはおそらく採択されると思います。そうなりますと、わが国にも勧告が及んでまいりまして、それをしいられることになると思います。しかし、ただいま総理大臣からお答えになりましたように、わが国の現状はあまりにも公害が山積いたしております。したがいまして、これを何としても予防し、できるだけ環境の改善をはからなければなりません。そういう意味ではもちろん遠い将来においてはこのPPPは十分に考えなければならないと思いますけれども、当面の問題としては何としても政府がどのような努力をしても、援助してもけっこうでございます。あらゆる努力をして、この公害の防止とそれから環境の悪化から守るということ、あるいは復旧するということに全力をあげなければならぬ段階だろう、そういうことを総理は申し上げたものと私は考えます。このように将来汚染者がやっぱり負担をするということは、大体いままでの日本の公害の原則でございます。そういうわけで、そのように進めてまいりました。今後とも単独に各企業がいろいろな設備の改善、あるいは設置をする場合にいたしましても、単独よりもむしろ共同の処理をすることがはるかに合理的であり、これは非常にけっこうなことでございます。あるいはまだ十分に因果関係のはっきりしない被害者、こういうものにつきましてもいろいろな財源を用意することが必要でございます。そういう意味から、このような財源を確保する上におきまして、やはり一つの課徴金というようなものを汚染者に負担をしてもらいまして、それを財源として環境の改善をはかってまいるのが非常にけっこうではないかということを考えておるわけでございます。  もう一つは、これはまだ私の考えておる段階でございますが、やはり環境保善のために努力してそれだけの効果が認められたものは、たとえば課徴金の制度の負担が軽くなるような、あるいは完全な施設をしたものはそれを払わなくてもいいようなこともしてまいりたい、こういうことを考えておるわけでございますが、このような制度はやはり十分に研究してみなければならないと思いますので、明年度、新年度早々に中央公害対策審議会の部会をつくりまして、ここに諮問をしていろいろなことを検討してみてもらいたいと考えておる次第でございます。
  200. 水田三喜男

    水田国務大臣 いわゆる公害税というものについての考え方は幾つかあると思います。たとえば公害対策のための費用を調達するために何らかの税を起こすべきだという考え方と、公害の発生源そのものに税をかけて公害の発生を最小限に食いとめようという考え方と、一般的に公害発生を予防するために何らか税制を利用したい。つまり税の持つ誘引的な、抑止的な機能に期待して特別措置でいい考えがないかというような幾つかの考え方があるようでございますが、まだ日本はいわゆる公害税というものをあまり掘り下げて考えておりませんでしたので、それらの三つの考え方をいろいろ総合調節して適当なことを考えるのがいいと思いますが、しかし、その間にも、この問題は一国だけの問題じゃなくて非常に国際的な問題でございます。したがって、国際的にいろいろこれについての税制的なもの、課徴金的なものでありましても一つのものが研究されておるということになりますと、やはり国際間の方向に沿った税制の考慮が必要であるというふうにも考えますので、そういう点を勘案してこれからこの問題に取り組むべきだと思います。いま環境庁では中央公害対策審議会にこの問題をかけて検討するといっておりますので、大蔵省も歩調を合わせてこれに協力して研究するつもりでございます。
  201. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま二人からお答えいたしましたが、この問題はまだまだこれから大いに積極的に検討を要する問題だ。私ども、汚染がだんだん激しくなっておりますから、これを防止することについても積極的でなければならない。どういうことにするのか。財源の問題よりもその基本的な問題のほうが基本的にわれわれが取り組むべき問題だ、かように思っております。
  202. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これにて二見君の質疑は終了いたしました。  次に、大原亨君。
  203. 大原亨

    大原委員 総理大臣に質問するのにちょっとセーがないのですけどね、セーがないというのは値打ちがないということですね。  そこで、私どもは佐藤内閣が成立いたしましてから八年間にわたっていろいろと論議をしてきたわけですが、しかしいまや内政、外交にわたって一大転換をするときである、国民はひとしくそういうことを期待しているわけです。   〔委員長退席、細田委員長代理着席〕 佐藤内閣がそのような国民の負託に沿うような、内政、外交にわたって国民が合意をし、共感をするような、ふるい立つような方針を示し得るかどうか。こういうことについて、私は多くの期待は持っていないのが率直な現状であると思うのです。最近の情勢を見ればわかるわけであります。しかし、佐藤総理は、職務をやっておられる間はやはり総理大臣ですから、最高の責任者ですから、やはりあとに自分の方針を残すという意味からも、私は思想性の高い、政治決断のある、そういう姿勢を内政、外交については国会の論争を通じて示してもらいたい、こういうことがせめてもの国民の願いである、国会に対する期待であると思うわけです。内政、外交にわたって一大転換をする、こういう問題について佐藤総理はどういうふうにお考えであるか、もう一回あらためてお聞きいたします。
  204. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大原君にお答えいたしますが、たいへん複雑なる気持ちでお尋ねになるようですが……(大原委員「そんなことはない、単純ですよ」と呼ぶ)私の考え方、内政、外交についての基本的な方針はたびたび申し上げておりますので、これはもうおわかりだろうと思います。
  205. 大原亨

    大原委員 私は外交問題で時間はたくさん使わないつもりですが、これは単に基本姿勢の問題ですが、昨年来二つの大きなショックがあったわけだということ、それを契機に日本の内政、外交について国民は発想の転換を期待をし、要求をし、議論をしたりしております。  第四次防から最近の沖繩の原状回復についての補償支払い問題等を通じて言い得ることは、私はこういうことだと思うのです。長い間のアメリカ一辺倒のこの秘密外交というか、そういうものがずっと蓄積されて、その矛盾が出てきたんだと私は思っているんです。ですから、あなたはどういうふうに外交を切りかえていくんだということについて、自分で簡単にいま言えないとおっしゃいましたけれども、やはりいろいろな評価の議論はあっても、冷戦構造が崩壊をしているのは事実ですから、外交は安保だけにたよるんだということは、米中会談やその他を通じてはっきりいたしておるのですから、自主的な外交に切りかえていく。むしろわれわれが議論をしているように、あなたも憲法を守るということを繰り返して言われているわけですが、憲法では戦争を放棄して軍隊を持たぬという憲法があるわけですが、むしろ日本は核の全廃や全面軍縮というふうな、そういうものについて、安全保障の観点からも、外交からもイニシアチブを発揮していく、こういう発想を転換しながらかじを取りかえていくということが必要なのではないか、こう思うわけです。  内政の面においてはいままで、若干具体的な議論をいたしますが、あなたが内閣をつくられてから中期経済計画あるいは経済社会発展計画、最近は新経済社会発展計画、大体全部一年でだめになったわけです。任期七年余りの間に、二十一年に及ぶような長い期間の長期計画を立てたけれども、物価でも、あるいはあなたが主張いたしました社会開発の面においても、裏目裏目に出た。つまり、高度成長政策、輸出第一主義という大企業一辺倒、外交はアメリカ一辺倒だが、大企業一辺倒、そういう政治のあり方をやはり切りかえていくんだ、内政においては。そういう点について私は、昨今の議論を通じて、はっきりした反省のもとに新しい方針が議論される、こういうことが国民の期待であると思う。国会で議論するのがコンセンサスであると私は思う。いかがですか。
  206. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の施政方針演説、いまこの機会に議論されるとは思わなかったのですが、いま言われる点は、外交、内政ともにすでに施政方針演説で明らかにしたところでございます。  私は、外交の面で何と言われようと、アメリカ一辺倒と誉われようが、私は自主的にこの道をいま選んでおる、日米間の関係はどこの国よりも大事だということを、ちゃんと施政方針演説でもお話をしたばかりでございます。そうして、ただいまお話がございましたが、どうも社会党と基本的な考え方が相違いたしておりますから、私どもは日米安全保障条約は大事だと思っておりますし、また自衛力も持ちたいと思っております。そこらの点が基本的にはどうも違っておるようであります。  また経済の問題についても、ただいま大企業中心と、こういうことばを使われましたが、私ども、大企業中心な経済政策をただいまやっておるわけではございません。これは、それなりに御理解いただきたいと思います。  なお、第四次防計画云々言われておりますが、先ほど来申しておるように、四次防計画はまだないんですよ。それをあるかのような御議論では、よほど食い違ってくるのは、これはどうもしかたがないように思います。
  207. 大原亨

    大原委員 私は、そういう答弁聞きまして、国民とともに失望いたしました。  経済企画庁長官、いま佐藤総理は、大企業一辺倒の政策ではなかった、こういうことを言われたわけです。しかし、いま申し上げたように、佐藤内閣ができまして閣議決定いたしました計画の中には、中期経済計画、経済社会発展計画、いまは宙づりになっておりますが、空中分解の状況でありますが、新経済社会発展計画で今度は新しい計画をつくろうといたしておるわけです。その中で、佐藤総理は指摘をされましたけれども、一番の問題は、当初の約束どおりの物価の安定が二・五%程度というのが実現できなかったということは議論になったとおりですが、その指標の中で民間設備投資が中期経済計画では九・九%の計画であったが、実績では一二・五%の実績、経済社会発展計画では九・七%の民間設備投資であったが、この経済社会発展計画の実績では、驚くなかれ九・七%の計画が二四・七%の実績になったわけです。新経済社会発展計画を、安定成長を目ざして軌道修正をしようと思ってやったわけですが、これも空中分解したわけです。これは民間設備投資が、佐藤総理、こんなに実績を上回って、そうして資源配分がそこへ集中するという、そういう計画の立て方、ずさんな計画の立て方、閣議決定しながらそれをコントロ−ルできないような政治姿勢、政治決断、そういうものが公害のたれ流しとか、物価の問題とか、社会保障のおくれとかいう問題を出しておるのじゃないですか。まさにこれは大企業と癒着した、日本国株式会社というけれども、大企業一辺倒の日本のいままでの政治、そういうものが経済計画の計画と実績の中に出ておるのではないか。この反省なしに、佐藤総理総理の座を去っていかれるということは、国民といたしましては最後の望みを断たれたようなものだと私は思う。あなたの答弁には失望いたしました。しかし、改むるにはばからずということがあるから、経済企画庁長官、私が指摘をいたしました点についての反省はどうですか。
  208. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 たびたび作成いたしました経済計画、これは、単に国内経済情勢の変化だけではなしに、国際環境の激動ということも大きな原因になっております。しかしながら、わが国の経済が非常に予想以上の急激かつ両度の成長を遂げた。これは確かに明るい面ではある。わが国の経済力がここまで大きくなってきた、国民所得また生活水準もここまで上がってきたという明るい面はございます。しかしながら、その反面において、いま御指摘のような暗い面と申しますか、環境あるいは公害問題、自然破壊また福祉面の立ちおくれという点が露出しておることは、これは事実でございます。  そこで、総理も先ほど申し上げましたとおり、そういうような時点に立ちまして、これからの経済運営はどうあるべきか、これはまさに経済政策を大きく切りかえまして、軌道修正をした上で、福祉中心の政治行政に向かわなければならぬというような、もちろんこれは政策的反省も含めて、いま新経済社会発展計画の見直しをやろうという立場でごぜいます。
  209. 大原亨

    大原委員 木村長官の御答弁佐藤総理答弁は違うのですよ。木村長官の答弁は、満足なものではないけれども、私が指摘した点を大部分肯定しているのです。それをあなたは大企業一辺倒ではないと——つまり私はこうだと思うのですね。縦割り行政ということで、大成省は金融資本と癒着をしている。通産省は、いつかも本会議で言ったように重化学工業やいわゆる電気、ガスの公益事業、独占企業と癒着をしている。あるいは連諭省は交通、運輸、航空その他の産業と癒着をしている。あるいは防衛庁は軍需産業と癒着をしている。四次防の背後の問題があるでしょう。そういうように、農林省はと、ずっといってみればずっとわかる。そういう縦割り行政といわれておるものが保護行政、助長行政という一面を持っている。しかしこれは、必要なものは必要なんです。ですけれども、これが大企業と癒着をして、民間設備投資の増大のほうへ資源配分をずっと持っていったのです。金も物もずっと持っていったのです。そこで農村は崩壊状況になってきて、農業については見通しなしということなんです。いまたくさんの社会問題が起きているわけです。そういう反省なしに、福祉優先をいまや実行するときであるといって、佐藤総理が本会議の議場において施政方針演説をやられても、私が指摘をいたしましたように、八年前とどこがどれだけ変わるのだ、こういう議論になるでしょう。池田君の考えとは違うのだ、安定成長なんだ、物価の安定なんだ、私の呼び方が違いましたが、中期経済計画、あなたが最初に約束をいたしましたのは、たしか藤山長官のときだったと思うが、物価は二・三%なんです、安定目標はそうなんです。できていないじゃないですか。その反省なしに新しい政治をこうやるのだ、あるいは政権を続けていくのだと言っても、これは外交の問題と同じですよ。いま外交問題がはでに議論になっているが、これは端的にアメリカ一辺倒秘密外交が出たのだ。自主的に判断するという能力が、そういう外務官僚体制を含めて、全部がないということを示しておる。だから内政、外交を切りかえるのだということについての決意がない者——それがまた政治献金とかいうものと直接つながるのだ、力関係につながるのだ。ですから、こういう問題には思想とか哲学とか政治決断が要るのです。私が議論するような問題をやろうと思えば、一定の目標を立ててこれを強力に実行する、そういうふうな意志と能力のない者が政権を担当するということは、これからの日本をどんなに誤った方向にやるだろう、こういう点について国民が一片の不安と疑惑を持つことは私は必然だと思われる。  そこで経済企画庁長官、今日までのこの反省の上に立って、先般の本会議以来議論されておりますけれども、つまりいままでの考えは、池田さんのときの考えも最初そうだった、所得倍増という考えもそうだったが、経済が大きくなればだんだんと国民の福祉は自然によくなる、経済が大きくなれば、このササの葉へしずくをつけてぱらぱらとやって、これが頭に降りかかってくると、民衆はそのうちにおれのところへもこの雨が降ってくるだろうとこう思う。そこで、ずっとやったけれどもこういう結果になったということです。で、所得は、この資料を見てもわかるように、所得の面においてはある程度の成長はあるわけだ、これは福祉の面と一致しておるのです。しかし、経済の成長が国民の福祉や国民の生活と一致しない、こういう面がいまの議論のようにはっきり出てきておるから、この軌道修正をしなければならぬというのが今日の議論であります。そういう観点で新しい計画を立てるのかどうか、そういう観点で新々経済社会発展計画ですか、名前はどういうのですか、新長期経済計画ですか、それはいままで議論になったけれども、いつごろを目標に立てて、もちろん立てる過程においてその方向に誘導するわけだけれども、物価安定の目標は指標はどうするのだ、経済の成長率はどうするのだ、個人の消費支出についてはどのような成案を考えておるのか、そういう総括的な問題と具体的に私が申し上げた三点について、いまのあなたの考え方を、あなたのところで作業をしておる考え方を明らかにしてもらいたい。
  210. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 お答えする前に、先ほど総理が大企業一辺倒でないと申し上げたこと、これは事実そのとおりでございます。敗戦から立ち上がって、いままでに経済力をこれだけたくわえ、また国際収支の大きさもここまでゆとりが参りましたのも、やはり戦後の敗戦から立ち上がるまでの、生産にウエートを置かなければならぬ日本経済そのものの宿命があったと思います。そういう意味で私は、総理が申し上げたことは決して間違いじゃない、こう考えます。  ただいま私どもで考えております長期経済計画、これはいままだ作業の段階でございますが、先ほど二見委員にお答えしましたとおり、およそ夏ごろには大まかな見通しと申しますかアウトラインを作成いたしたいと思っておりますが、その中で何と申しましても当然考えられるのは、いままでの民間設備投資中心あるいは輸出第一主義を大きく切りかえまして、やはり、これは国民生活に直結した社会資本の充実、また社会福祉施設の充実、そういうものに非常に重点的に配慮した資源配分、こういうような観点から考えておりますが、まだいま御指摘のような三項目についてその大体の見通しを申し上げる段階には至っておりません。御了承願いたいと思います。
  211. 大原亨

    大原委員 あなたは、本会議答弁であったと思うのですが、NNW、国民福祉の指標についてはその作業に着手をした、こういうことなんです。いろいろ議論をなすっていることについては私も承知をいたしております。承知をいたしておりますが、それらは具体的にどのような構想で、いつごろまでをめどにやるのだ——この暫定予算の審議ですが、これは予算は内閣の連帯責任ですし、十二分の一なんですが、四十七年度の予算を審議するにあたっては、作業はでき上がっていなくとも、そういう目標が定まっていなければ、いままで総理その他が本会議易で演説をいたしましたり、いま答弁いたしましたことが裏づけがないではないか。具体的に私が指摘したような問題はかなり議論になっておる問題ですから、これは資源配分の問題ですから。ですから、いままでの長期計画の策定の欠陥を反省しておる問題ですから、ですから、そういう問題についてはもう少し具体的な答弁があってしかるべきだ。いつごろまでにつくるのですか、この新々長期計画は。
  212. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 先ほどお答えいたしましたとおり、大体のアウトラインは夏ごろまでにつくりたいと思います。しかしながら、全体の計画といたしましては、いろいろ計量モデル作業その他がございますので、本年中に、まあおそくとも本年中にはこれを全体計画として作成したい、こういう予定でございます。
  213. 大原亨

    大原委員 そこで、計画の策定のしかたについて、NNWを具体化するしかたについて、もう少し経済企画庁がこうあるべきだという考え方を示すことが予算を審議する前提じゃないですか。第三次防、四次防の問題では空白がどうのこうのと言っているが、こういう問題こそ空白があってはならぬのです。もう少し具体的な構想を示してもらいたい。経済成長率、実質成長率どのくらいにするのだ、物価の安定はどのくらいにするのだ、個人消費支出についてはどう考えるのだ、こういうこと……。
  214. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 長期経済計画、まあ新々と申しますか、これはやはりマクロの計画で長期でございますから、したがって、今回御審議を願っている来年度の予算のためには、私どもはすでに閣議決定をいたしまして、来年度の経済見通しというものを作成しております。これに基づいて予算を編成し、また予算委員会でも、経済見通しに立ったいろいろ御審議を願っておる。また、そのような立場から私どももこうしてお答えしておるということでございますので、さしあたりの昭和四十七年度の予算に必要な経済見通しは、すでに閣議決定した上でお示しをいたしております。しかしながら、当面四十八年度から始まる長期計画、これはどうしてもある程度期間を必要といたしますので、先ほど申し上げましたとおり、全体計画の完成は本年中、しかしながらおおよその見通しはこの夏ごろに作成したい、こういう考えで進んでおります。
  215. 大原亨

    大原委員 質問に対しては、時期的な目安だけでありまして、内容的な問題については触れていないわけです。いままでの経済計画の作成のしかたに欠陥があるのではないか。その欠陥を克服するような、国民生活を中心にした長期計画をつくるのには、私が申し上げたような問題を含めて、どういう構想を持っているんだ、こういうことを俎上にのせて議論するのでなければ、半初予算で経済見通しをつくりました云々だけでは済まぬと私は思っているんですよ。そういう議論なしで予算の審議や政策の議論をしても、あるいは福祉優先を議論しても、平和外交を議論してもだめだ、こういうわけですよ。  佐藤総理は初めてこの社会開発、人間尊重を言われたときには、一番大切なのはだれかというと、大臣は、経済企画庁と厚生省、物価庁といわれる経済企画庁と厚生大臣だ。——環境庁長官、そのころいませんでしたから。そういうことを言われた。木村さん、あなたは経済企画庁長官きのう、きょうじゃありませんけれども、経済企画庁長官が立てた計画、安定成長の目安とか、それからそのコントロール、そういうものができなかったのは、人間の問題ですか、それとも機構上の問題ですか、それともこのプランを作成する自体に欠陥があるのですか。
  216. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 これは総体的責任、だと思います。したがいまして、その計画を作成する段階にあたりまして、やはり私どもの手落ちもあったと思いますし、また国際環境が非常に大きく動くということ、これは一体どこに責任を持っていくかということもございます。そういうような総体的責任で計画が狂うことは、これは私、決して弁解するわけではございません、これはこういう長期計画にはありがちなものでございますが、その長期計面に最もアプローチしてこれを計画どおりに持っていくのが、これはもう政策努力、そういう面で、私はこれは総体的な責任でございます。
  217. 大原亨

    大原委員 これは大成大臣以下、逐次——あまり内容がない議論になっているから、まあワクは一応八月をめどということがありましたけれども、考え方の基本はありましたけれども、どういう考え方でさらに突っ込んで具体化するかということについては、何ら信頼に足る答弁がない。  そこで、具体的な問題をひとつ私は質問いたします。  低金利時代に入ったと、こういわれている。通産大臣もこれは関係ありますが、低金利時代に入ったといわれている。公定歩合は、西ドイツは三%で、日本は四・七五%だと思います。これは、いずれは利子を下げるんでしょう。そういたしますと、預金の利子はどうなりますか。
  218. 水田三喜男

    水田国務大臣 低笠利政策をとる以上は、いずれは預金利子の問題を問題にしなければならないと思います。しかし、ただいまのところは、先月あたりから急に金利水準が下がってきておりますので、きょう日銀総裁が新聞でも言っているようでございますので、当面公定歩合の引き下げはしなくてもいいだろう、実勢金利がどんどん下がっておるということを言っていますが、そういうときでございますので、したがって問題は、国際的な関係から急がれるかどうかということでございますが、一応米国の金利の引き下げもここで落ちついて、上がる方向へきましたし、欧州各国もここで落ちついてまいりましたので、ドルの還流というようなこともこれからやられる、行なわれていくだろうというふうなことで、一応の国際的な落ちつきがあるということになりますと、日本は短期の流入を防ぐ措置だけがうまくいっていればということでございますが、この辺はうまくいっていますので、そうすると、私はもう一方の金利引き下げという情勢、方向は将来やらなければならぬと思いますが、いま差し迫ってはいない。したがって、そういうときでございますから、損金金利については、私はもっと慎重に考えたいということで、前回〇・五%の公定歩合を下げるときも、預金金利とは無関係に金利政策がとられたと同じように、引き続きまだ預金金利の問題については、私は慎重に考えていきたいと思っております。
  219. 大原亨

    大原委員 消費者物価の上昇率、昨年は七・一%ですが、その上昇率よりも定期預金の利子——当座はもちろんですが、利子のほうが低いということがいつも議論になるわけでありますね。私どもはこういう問題についてどういう判断をするかということが一つと、もう一つは、貯金をできるだけして、高貯蓄、世界一の貯蓄率ですが、高貯蓄、高度成長、これを日本はやってきたわけであります。なぜ貯蓄率が高いのか。経済企画庁長官、なぜ貯蓄率が高いのか。貯蓄率は世界一高いけれども、いまのメカニズムをずうっと続けていく必要があるのかどうか。貯蓄をどんどん集中していく、そういう形のことが必要があるのかどうか。原因とそういう問題について、これからの長期経済計画を立てる上においては非常に重要な問題でありますから、この点について経済企画庁長官、いまの作業の過程における見解をひとつ聞かしてもらいたい。
  220. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 消費者物価の上昇、これはきわめて私どもも残念でございますが、それと貯金利子の比較、これも私は、貯金金利が消費者物価の指数を上回るべきであると思いますが、残念ながらそうはなっておりません。しかし、国民所得と消費者物価というものの比較もやはり必要であろうと思います。またいまお話しの貯金の傾向、これはやはり一つの国民性の問題もございましょうが、いまだわが国の国民所得がストックにまで回らない、あるいは持ち家を持ったりそういうようなところまでどうも国民所得が回らないという傾向から、貯金傾向が、各国に比べて非常に高いという傾向もあらわれておるのだ、こういうふうに解しております。
  221. 大原亨

    大原委員 高度成長で所得がある程度ふえたことは認めるんですが、しかしながら、それを切り詰めて切り詰めて貯蓄へ回すわけです。個人消炎比率は非常に少ないわけですよ。国民経済の中で占める資源配分の分野が少ない。これが現実なんです。データに出ているわけです。私はそれの原因は、年をとったらどうするか、病気になったらどうするか、社会保障の問題、教育費についてどうするか、住宅を建てるのにどうするかといって貯金をするけれども、土地のほうが値上がりしちゃって全然土地にも手が届かぬというのがいまの住宅政策でしょう。ですからそういう政策を、資源配分の問題で長期計画を立てるときに、その考え方を根本的に変えることを中心として資源配分を考えるような長期計画を考えなければならないのではないか、私はそういう考えを持つが、いかがですか。
  222. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 そのお考えには全く同感でございます。
  223. 大原亨

    大原委員 大蔵大臣財政投融資の問題、私も議論いたしてまいりましたが、五兆六千億円の第二の予算といわれている、本予算の半分に匹敵するものがありますが、これは郵便貯金とかあるいは強制貯蓄である年金の積み立て金等でありますが、この財政投融資をいまの議論に従って洗い直すとするならば、たとえば開発銀行や輸出入銀行に対しまして、裸の金で低利の金をずっとやってきて、ある一定の段階までは戦後の荒廃期において、私は長官が言ったようなことはある程度認めるけれども、しかしいまや民間資金はだぶついておるのですから、開発銀行やあるいは輸出入銀行に、一つの銀行に、この資料によりますと一千億円近い金を融資いたしておるわけであります、一つの企業に対しまして。そういう形は、資金の流れのあり方というものを変える、洗い直すということを、財政投融資国会論議、国会審議、議決の問題で議論いたしておりましたが、そういう議論と一緒に私は考えるべきではないかと思いますが、いままでは、いまのこの前の質問に対しましては木村長官と一致いたしましたけれども、その点につきましては、資金配分、資源配分の問題として、長官はどう考えられますか。
  224. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 その点も私同感でございます。
  225. 大原亨

    大原委員 大成大臣……。
  226. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは使途別分数表でもうおわかりと思いますが、いまでは基幹産業を中心にしていわゆる大企業への融資分というものは、全体の投融資計画の中でもう四%台になっているというくらいで、そういう意味ではもう毎年洗い直しと言うと大げさでございますが、毎年この配分の検討がなされて、姿は変わってきておりまして、いまではやはり国民生活に直結した部面への配分が、比重としては一番大きいというところまできましたので、この配分の姿はもう直っておると思います。これを一目わかるようにするために、使途別分類表ができておりますが、これによって最近の、どこに使われているかということはきわめてはっきりしていると思います。
  227. 大原亨

    大原委員 あなた、もごもご何言っているかわかりゃせぬです。その点は経済企画庁長官りっぱですよ。あなたの答弁はわからぬですよ、何を言っておられるのか。意見不一致ですよ。現状どうあるべきかという現状について意見不一致だ。  そこで、長期計画がないのは社会保障の長期計画なんですね。社会保障はいつも議論するわけですが、国民所得を分母といたしまして社会保障給付費を分子といたしますね。そういたしますと、日本はだんだん少なくなっているんです、最近。いま五・八%。十年前ぐらいには六・三%ぐらいが五・八%になっているのです。西独は大体二〇%をこえているんです。これにはいろんな議論がありますけれども、二〇%をこえている西独と日本を比較してみるのは私はこれから非常に大切な問題だと思うんです。ですからその中で、たとえば年金の問題、あとで議論いたしますが、年金が非常におくれておるということが、年金の仕組みで賦課方式で議論いたしまして、この点は水田大蔵大臣と一致いたしまして、私は非常に愉快なんでありますが、その次はわかりませんよ。わかりませんが愉快なんであります。  とにかくそういう社会保障を長期的な観点に立って引き上げていくんだ。まあ官庁エコノミストのことばで言えば社会制度資本、こう言っておる。住宅や道路その他については社会資本と言って分けておるけれども、特に問題は、そういう社会保障の長期計画をつくっていきなさい。そしてヨーロッパに追いつき、追い越しながら、中身については日本独自のものを考えようではないか、これをやはり政治の中心に据えようじゃないか、これが一つの福祉優先ではないか、こういう議論をいたしてきたわけであります。  この問題の中には、財政投融資の洗い直しをいたしまして、国民年金と厚生年金の積み立て金は、本年度、昭和四十七年は約七兆円をこえますが、これも一ぺんに取りくずすというのではないけれども、逐次これは取りくずしていけるような、財政投融資の流れを変えていくような、そういう発想で政策の切りかえをやるべきではないか、こういうことでありますが、木村長官、私の見解に対していかがですか。
  228. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 わが国の社会保障制度、確かに体系的、制度的にはもうほとんど西欧の水準に達しておりますが、ただ内容的に見ますと、まだ不十分な点が多い、十分整備すべき点がございます。そういう意味で私ども今回長期経済計画を策定する際に、この面を非常にウエートを置きまして、将来あるべき日本国民福祉制度というものを、何とかひとつ資源配分的に、優先的に考えようというような考え方に立って、いま作業を進めておるところでございます。
  229. 大原亨

    大原委員 総理大臣、それから労働大臣、総務長官、いまこれから春闘が始まるわけであります。春闘で民間単産、官公庁、公共企業体を問わず、総評、同盟、中立を問わず、いま議論になっているのは、日本の賃金はどうあるべきかということです。政治的な問題をあまり触れないような経済中心のことを主張いたしました組合でも、高度成長にあれだけ協力してきたのに、いまの日本の実情で、労働者の賃金は、ショックがあったからといって引き締めるということはおかしいじゃないか。労働分配率も低いじゃないか。一時間当たりの労働賃金にいたしましても、西ドイツその他に比較をして低いじゃないか。一週五日制の問題、労働条件の問題にしても悪いじゃないか。質金を中心として社会保障も悪いじゃないか、問題になるんじゃないか。これは分配においては賃金の一部の延長です。そういう労働条件や賃金や社会保障の問題についてどうあるべきかということが、これから国民的な非常な論争になるわけです。  それで、私は経済企画庁長官に最初お答えいただきましょうか。私は、いまの資源配分からいっても、そういう賃金についても長期的な観点から考えて、いま消極的な方針をとることは、政府雇用の労働者、公務員等含めてそうですけれども、とるべきではない。これをやはり引き上げていって個人消費比率を上げていくという、そういう政治的な方向や決断をやることが、福祉優先と経済成長を一致させるのだ、こういう基本的な考え方をもって政府としては対処すべきであると思うけれども、企画庁長官はそういう問題については、私が指摘いたしました問題についてどういうお考えであるかお聞きをしたい。
  230. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 御承知のとおり、政府は民間の賃金問題には関与しないというたてまえでございます。しかしながら、民間のそういう賃金の水準というものは適正であるということがあらゆる経済政策の一つの基調にもなる点から見まして、これは重大関心を持っております。ただ、長期経済計画の中でそういう国民所得の中の雇用所得、賃金所得というものをどう一体考えるかということは、これは政策的に考えるべきでなしに、全体の斉合性の中でこれをとらえるというような考え方で作業を進めなければならぬ、こう私は考えておりますが、いずれにいたしましても、そういう賃金水準が国民の消費支出に影響し、それがまた経済成長にも大きな要素になるのでございますから、そういう面については十分ウエートを置いてこれから検討していきたい、こう考えておるところでございます。
  231. 大原亨

    大原委員 塚原労働大臣、あなたは労働問題については十分ないままで専門家というふうなことではないわけですが、しかし、かえって大所高所から労働運動がわかるかもしれない、そういう立場。日本は、外国へ行ってみましてもそうですけれども、日本の商社の生活態度、商社の職員、外交官あるいはわれわれの生活態度について、とにかく人間らしくない、こういうのですね。休憩もとらなければ、食事の時間も短縮するし、年間通じて上から下まで全部とっておる休暇なんかもとらぬ、こういうわけですよ。もう少し人間を大切にする人間らしい者とでなければつき合いできぬ、こう言っておる。それは環境問題もそうです。そういう議論なんです。そこでやはり一時間当たりの労働賃金とか労働条件のあり方について、私は労働大臣はいまこそはっきりと方針を示しながら、日本国民生活優先、福祉優先の政策の軌道修正については大きな発言をすべきである。春闘におけるそういう論争はいまだかつてない広がりと深刻さをもってこれからわれわれの中に、局面に出てくると思うわけですが、労働大臣はどのような考え方を持っておられるか、ひとつお聞かせいただきたい。
  232. 塚原俊郎

    ○塚原国務大臣 ただいま賃金について西ドイツとの比較を申されたようでありまするが、先進諸国と比べて最近ではそう劣っているとは私は考えておりません。しかし決して満足なものとも考えておりません。  それはともかくとして、今度の春闘におきましても、やはり国民福祉を中心とした政策転換ということを労働組合側は非常に強く迫っておる。したがって、かなり高額の要求をいたしておることは御承知のとおりであります。しかし、いまの経済情勢、はなはだきびしいということは労使ともに考えておりまするので、経営者のほうもかなりきつい態度で臨んでおる。したがって今度の春闘はかなり憂慮される面があるのではないか。場合によっては争議が長期化するようなこともあるのではないかということも憂慮されるわけでありまするが、いずれにいたしましても、現在日本の置かれているいまの立場というものを十分認識されて、労使双方の話し合いによってこの春闘というものが解決をすることを、労働省としては今日の段階では望んでおるわけであります。  なお、国民生活の中でいまの賃金の問題のお話は、私もまことに同感であります。したがって、こういう面から、それぞれの協約もありまするし、労使間の話し合いもありまするし、かなりよい線で進んでおると私は考えておりまするが、今後ともあなたと同じような考えで行政指導にもつとめてまいりたいと思っております。
  233. 大原亨

    大原委員 労働行政は、保守党内閣、自民党内閣のもとではどうも片すみに追いやられておる。これであってはいかぬという考え方は与党の諸君の中にも多いと私は思うのです。やはりいまやそういう人間尊重ということは、産業構造変わり、雇用構造変わるんですから、被用者が多くなってくるんですから、人間として労働者がどんなに尊重されるかということを生活の中身と生活環境で如実に示すということが政治の大きな方針ですから、労働大臣は積極的に私は発言すべきであると思う。  その一つの問題は、あなたは労使双方で話し合いをすべきであるというふうな話でありまして、私は原則的に賛成です。労使対等の原則に立ってこの問題は大いに議論すべきである。そこで問題は、だんだんと四月の半ばにかけまして、いつもの情勢の中から判断するならば、たとえば公労協という政府が直接、間接に雇用責任を持っている公共企業体の労働者の問題、公務員の労働者の問題がある。さしあたりは公共企業体の労働者の問題でありますが、これは政労協関係の問題で、百三十ほど政労協、政府関係の外郭団体があるけれども、いつも問題になるのでありますけれども、政府が労働者の賃金とか労働条件について日本においてはどうあるべきかということをコンセンサスをしていない、合憲をしていないためにきわめて混乱する。これは仲裁とか裁定とかというふうな、そういういつも繰り返すようなことではなしに、やはりそういう問題については自主交渉をもって解決をする。政府も自主交渉に応ぜられるような体制でもってこの問題に対処していく、こういうことが日本の経済について、はだ身を通じて理解をする道でもあるし、これからどうあるべきかということを探求する道でもあると思うわけであります。これは自主交渉で問題を処理すべきである、それに対応できるような政府の体制をとるべきである。公共企業体の労使関係を中心として、労働大臣はどのようにお考えか、私はまずもってお聞きをしたいと思います。
  234. 塚原俊郎

    ○塚原国務大臣 これは人事局をあずかっている山中長官のところだと思いまするが、私にももちろん関係あります。ついせんだっても官房長官と一緒にいろいろ御要求も承りました。自主交渉にまかせて、自主交渉によって解決することが一番望ましいのでありまするが、問題はいわゆる当事者能力の問題だと思う。今日やや前進したとはいいながら、はたして当事者能力があるかどうかということについては私も疑問に思っております。したがって関係各省と相談いたしまして、自主交渉ができるような空気をつくるよう、そういう情勢をはかるよう私も努力いたしまするが、これは直接の担当はやはり総務長官ではなかろうかと思っております。しかし私としても重大関心を持っております。
  235. 大原亨

    大原委員 総務長官の話が出ましたから……。  ことしの予算を編成するにあたりまして、いつもいままでは慣例積み上げがあるわけでありまするけれども、当然民間貸金を反映して人事院勧告その他が出てくるわけですが、この問題でもいままでの発想を転換することは、そういうシステムについて手続について必要であると私は思うが、予算上の措置をする際に大蔵省との折衝——これは大蔵大臣にやってもらいましょう。大蔵省はそういう公務員の本年の賃金についてはどういうふうに考えてやるべきか——これは大蔵大臣じゃない、むしろ山中長官だ。どうあるべきかというふうな考え方の基本はいかがでありますか。私が質問する人は山中長官です。
  236. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私は、国家公務員の諸君の問題については話し合いをいたしておりますが、三公社五現業の問題についてはやはりそれぞれの所管大臣、そして財源としては大蔵省というものが当事者能力と裏表の問題として、総合的に話を詰めてもらわなければならぬと思っております。公務員のほうは、これはかみしも着て団体交渉であるとかないとかいう議論は別にして、たびたび会って、先般も四十時間あるいは週休二日等の問題あるいは基本的に平均一人幾ら上げろというような要求等について十分話を聞いております。これはたびたび打ち合わせをしているわけでありますが、しかしやはり内容そのものは人事院がこれについて詳しい民間との比較その他を調査した後に勧告が行なわれますから、私の立場としては、その人事院の中立性を尊重しつつ、その勧告を完全に実施するという政府の公約を政府の部内で果たしていくということは私の責任であると考えます。
  237. 大原亨

    大原委員 この議論はまたあらためて別の場所ですることにいたしまして、話を進めてまいりたいと思います。  木村長官、総理大臣、問題は計画を策定するにあたっては、個人消費支出と投資のバランスをどうするか。投資の場合に、社会資本のおくれを克服するのだけれども、産業基盤を中心にするのか生活基盤を中心にするのか。たとえば道路でいうならば市町村道についてはどういうような配慮をするのだ、こういう問題が出てくるわけですから、そういたしますと国民生活水準の内容と環境についての指標が出てくるわけですから、ですからそういう問題を頭に置きながら長期計画をつくっていく。一兆九千五百億円の公債を発行して、まだこれは、いま暫定予算で十二分の一をやっているけれども、この公債発行は借金ですから、この借金を政策軌道修正のためにどういうふうに使うのかということを明確にしながら、やるべきであると思う。その点について、もう一度いままでの議論を総括をいたしまして、あなたの御所見、これからの作業の態度、これについてお伺いいたします。
  238. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 しょせん、私どもがつくります長期経済計画、資源配分の問題に帰着いたします。したがいまして、資源配分の中で何を一体、どうウエートを置くかということが、一番重要なポイントになってまいります。政策の転換に伴いまして、社会資本であれば、従来の産業基盤中心より、国民生活関連の社会資本に当然重点が移行されることと思いますし、また先ほど御指摘になりました社会保障、国民所得に対する振りかえ所得の比率というものも当然上げなければなりませんでしょうし、そういうような観点から、私ども、長期計画をつくる場合の非常に重大な要素として、先ほどちょっとお触れになりましたNNWと申しますか、国民福祉指標というものをいま作業中でございます。これは新しい、まだ成熟しない構想ではございますが、国民福祉というものに重点を置いて、いままでのように、ただ単なる経済活動の大きさだけではかるようなGNPでなしに、それを補完するような立場における指標を開発する。これをソシアルインディケーターとかあるいは国民選好度の調査等とともに、今度の長期経済計画の中に織り込んでいこうというような方向で作業を進めております。
  239. 大原亨

    大原委員 いままでのいろいろな機会における議論で、この次の質問を進めてまいりますが、社会保障の中で日本はどこが問題かといいますと、医療保険が停滞しておることです、混乱しておることです。この区画整理ができてないことです。それから、もう一つは何かといいますと、年金が非常におくれているということです。先ほども申し上げましたけれども、老齢人口に対する年金受給者の比率は、日本は七%です。これは福祉年金を入れておりません。西独は五二%で、イギリスは八四%で、スウェーデンは一〇〇%ですが、日本は非常に低いわけです。老齢人口に対しまして、年金の給付を受けている比率は低いわけです。これは、制度上にも欠陥がある。そこで、制度を改正するにあたっては、まず福祉年金をよくしなければならぬ、国民年令、厚生年金のシステムを変えなければいかぬ。  いま国民年金、厚生年金の再計算期は、昭和四十九年、五十年です。しかし、これは法律の最大限なのです、大蔵大臣。これは年限を短縮して、来年、昭和四十八年には両年金の、国民年金、厚生年金の改善、再計算をして、そしていままでの発想転換について、一部を実行に移すべきである、こういう議論が各方面から圧倒的にあるわけであります。昭和四十八年に、そういう方向で議論をし、作業を進めていくということについて、かなりこの問題については積極的な御意見を——私が論争をいたしてまいりました大蔵大臣、あなたが問題でありますから、あなたの率直なお考えをひとつお聞かせいただきたい。
  240. 水田三喜男

    水田国務大臣 切り上げて、四十八年度に再検討して計画を立てるという予定にただいまのところなっております。
  241. 大原亨

    大原委員 昭和四十八年に切り上げて、年金の再計算をするようになっていると言われました。これは非常にけっこうな答弁であります。満足はいたしておりませんけれども、前向きの答弁であると思います。  問題は、政府は、年金の目玉といたしまして、福祉政策の目玉といたしまして、福祉年金がことしの十月から月三千三百円になるということであります。私は本会議では、いままでの——最初三十四年に発足したときには月千円であった、遅々として上がらぬじゃないか、しかも七十歳以上である、そういうことを議論いたしました。当時はあめ玉年金であったから、三千三百円になっても一日百十円ですから、これはたばこ年金ではないかという議論をいたしました。たばこ一つしか買えないじゃないか。これでは原さんが言ったように、老人ホームに入ったって——原前労働大臣の発言で問題になりましたが、これは老人の人間尊重にならぬではないかという議論をいたしました。私どもは、これはいまの状況においては、少なくとも、満足ではないが、一万円にすべきである、こういう意見を持っておるわけであります。いろいろ調査いたしてみますと、野党各党ともそういう意見であります。政府のほうは——これは厚生大臣にお聞きいたしましょう。来年、これは、三千三百円をまず少なくとも五千円にはしたいということを一部でいっておるわけでありますが、厚生大臣はどのようにお考えでありますか。
  242. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 老齢福祉年金は、来年度は五千円を目途にして実現をはかりたい、かように考えているということをこの委員会でも前に申し上げました。現在のところ、さように考えております。   〔細田委員長代理退席、田中(龍)委員長代理   着席〕
  243. 大原亨

    大原委員 いまの五千円云々の問題の対処は別にいたしまして、総理大臣は、福祉年金についてはどうお考えでありますか。
  244. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 金額は幾らが適当か、私にはちょっと、いま財政を担当しているほうでないのでわかりませんが、しかしもっと充実すべきである、こういうことについては、各大臣からお答えしておるとおり、私も賛成でございます。
  245. 大原亨

    大原委員 これから国民年金と福祉年金を改善していかなければならぬわけであります。そのときに、私もこの席で昨年も申し上げたのでありますが、私どもは、少なくとも三つの原則でやるべきだ。  その第一の原則は何かというと、いまの、自分が積み立てて、自分がもらって、国が助成をするという、財政方式としての修正積み立て方式を変えまして賦課方式にしていく。一年間にするか、二、三年の、いや長期の期間にするかは別にいたしまして、その中で生産年齢人口が老人人口や身体障害者や母子家庭や子供を見ていくというふうなシステムにしていく、こういう賦課方式に切りかえていくべきである。これはヨーロッパがインフレ時代にそのことをやったわけでありまして、今日、ヨーロッパ、OECDの国々はほとんどそれをやっておるわけであります。日本のは後進国型であるということを指摘いたしました。  第二の問題は、いままでのスライド制年金ベースの改革は、政策スライドといわれたのであります。この政策スライドを自動スライドに切りかえるべきではないか。自動スライドというのは何かといえば、平均賃金とか物価が上がるにつれてベースを変えていくという考え方であります。そうしないと、公務員にいたしましても、だれにいたしましてもそうですが、公務員はいいように見えても、五、六年たちましたならば、いまのようなインフレでは生活保護費よりもうんと低いという状況になってまいります。賦課方式と裏表の関係でありますが、スライド方式の議論はいたしましたけれども、総合的に議論をしたことがないのであります。財政方式を賦課方式にすると一緒に、スライド方式を自動スライド制にする。いまの厚生年令は二万円年令と銘打っておりますが、一万四、五千円平均しかないわけであります。しかも既裁定者は非常に安いわけであります。これでは、五十五歳とか六十歳とか六十五歳とかいうことの定年の議論をいたしましても問題にならぬわけであります。外国では、年金で食えるようになったところが定年であります。日本では、定年で、月払いをしておいて、慢性インフレのもとにおいて、年金では食えないようにしておくのであります。ですから、厚生省が先般調査いたしました、五十歳以上の将来に対する不安はどうかというのに対して、半分以上が非常に不安を持っておるわけであります。ですから、一生懸命貯蓄をする。その貯蓄を巻き上げて高度成長に持っていくという仕組みであります。年金の積み立て金もそのほうへ使っていく、そういう財政方式であります。これではいかぬというのであります。賦課方式にしていくことと自動スライド制にすること。  もう一つは、最低保障額を設定する。私どもは、厚生年金は三万円の最低保障、国民年金は二万円にしたい。そうして、最低保障をやるということは、福祉年金を上げるのと同じ思想であって、底を上げておいて全体の水準を維持していくというふうな仕組みにする。これに対する反論があるでしょう。昭和八十年ごろ老齢人口が成熟期に達しまして、昭和八十年が老齢人口のピークになるから、そのときに困るではないかという議論がありますが、それはさか立ちをしておる。いまのうちに、生産年齢、現在働いておる者が税金その他、保険料その他をもって、食える年金を負担をしていくという思想を政策の上から浸透させておかないと、将来老人問題に対処できない、私はこういう議論であります。  そういう考え方について、まず来年の再計算期になりますが、厚生大臣はどのような所見を持っておられるかをお聞きをしたいと思います。
  246. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 この点も前にお答えいたしましたが、この積み立て方式を賦課方式に変えるかどうか。おっしゃるような理由も十分ございます。しかしながら、これは賦課されるほうの労働者の数と年金をもらう者の数と、今後急激に変わってまいるわけでございます。その段階において完全な賦課方式がはたして後代の負担にどういう影響を及ぼすかということを考えますると、これは相当考えなければならない問題だ、かように考えます。現在の修正積み立て方式、この修正部分をどの程度増していくか、これに賦課方式的な考え方を若干でも加味できないか。今日年金が非常に急激に重要性を増してきたということは、いまおっしゃいますとおり、日本の人口構造の急激な変化によるものだ、かように考えます。   〔田中(雄)委員長代理退席、委員長着席〕 その間は、あるいは財政的にある程度年金額引き上げるについて、賦課方式だけでない方法で、積み立て方式だけでない方法で財政的な資金を入れるということも考えるべきでもないであろうか。これらの点は各学者その他の間にも非常に議論のあるところでありまするし、ただいま私のほうの年金問題の調査委員会のほうでもいろいろと議論をしてもらっておるところであります。いずれにいたしましても、年金額をもう少し上げなきゃならないということは、これはもう一致した意見だと思います。それを実現するのにどの方法でやるかということだ、かように考えます。  それからスライド制は、これはスライド制の考え方を算入して政治的スライドだ、かようにおっしゃいますが、自動的に物価、人件費あるいは生活水準、これをどういうようにスライドさせるかという点もあわせて学者、経験者等の御意見を伺っているところでありますが、文字どおりの自動的スライド制ということにはまだ相当の研究の余地があるのじゃないだろうかというのが、現段階でございます。しかし、それの考え方に近いように年金を上げていくということが必要であろう、この意見は定着をいたしておりますので、そういった考え方で、今度年金を上げます場合にも、ただそれのみならず、いま低過ぎるという点も加味してやらなければなるまい、かように考えております。  年金の最低額を設けるかどうかという点につきましては、今後とくと検討させていただきたい、かように思います。
  247. 大原亨

    大原委員 大蔵大臣、簡潔に御答弁いただきたいのですが、いまのこの賦課方式というのは、現在修正積み立て方式で国の費用も入っておる。これを賦課方式にいたしましても、完全な賦課方式ではない。賦課方式、税金方式ではない。これも修正賦課方式である。しかし、財政方式を変えていって、たとえば年金の掛け金を積み立てする場合に、利子を考えて、経済効率、財政効率ということを考えてやるという考え方でなしに、いま約七兆円ありますが、かなりの金であります。しかし、これはこれからずっとインフレが進んでいくならばたいした金ではないわけです。国民所得がどんどん増大するということを前提にして計算いたしますと、たいした金ではないわけです。ですから、そうではなしに、漸次これは賦課方式に切りかえていって先進国型のそういう財政方式を確立していくことが、財政局主主幾の上から考えても、あるいは国民が税金で負担するか、掛け金で負担するか、保険料で負担するか、いろいろあるけれども、いま働いておる清算年齢人口が老齢者、身体障害者の分を負担するということが、社会保障本来の精神から考えてみても進歩的であるし、改革の方向でもある、これは議論としては余地のないところだと思いますが、あなたの簡潔な御意見を聞かせていただきたい。
  248. 水田三喜男

    水田国務大臣 ぼくは前回から大体考え方は賛成でございまして、検討をお約束しているところでございます。ことにスライド制というようなものを考えますときには、積み立て方式だけでは行き詰まりがくることははっきりしておりますので、この方式の切りかえというようなことも断然考えないと、いわゆる財政方式の変更ということも考えないと、この問題には対処できないのではないかと思います。  それともう一つは、これだけではなくて、全般として福祉政策への転換ということを言いますと、これは私は年金は幾らにしてもけっこうだと思います。日本のいまの経済成長から見て、国民経済の実力からいって、私はもっと相当のことをやり方によればできると思うのですが、それについてはそれこそ発想の転換で、この財源についての新しい考え方を私どもが持たなければならない。やはり国民経済の実力に応じた高福祉を目ざすならば、国民が負担感を相当持たないような形で負担の増、経済計画がいっておりますように、やはり二%の国民負担増というくらいの方向は、押えた新しいくふうもするというようなことを一緒に考えないと、こういう問題の解決ができなくなるのじゃないかと私は考えますので、そういう点もあわせてここらで総合的に考える時期にきておると思います。
  249. 大原亨

    大原委員 この議論は時間をかけていたしませんが、そういう政策をやる前に、その前提といたしましては、たとえば物価調整減税をやるとか、景気対策としてもやるとか、あるいは法人税は公平に取るとか、やはりそういう議論をしながら、あなたが言われたような総合的な議論をすべきだと私は思うのです。総理大臣いかがですか。
  250. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ものごとはすべて斉合性がなければいかぬ、かように思います。片一方で一つだけ取り上げて、そしてその議論はできないだろう、かように思います。
  251. 大原亨

    大原委員 物価とか、公害とか、社会保障とか、いわゆる横割り行政、権衡というふうな問題等について議論いたしましたが、さらに時間があるだけやりますけれども、問題は、日本の行政の大きな欠陥は縦割り行政であって、官庁セクトがあるということです。これは致命的な欠陥です。政策を転換する際に、軌道修正する際に致命的な欠陥は、各省のセクト、独善ということです。官僚のなわ張りということです。官僚政治ということです。これが強いものに癒着しているということであります。その姿勢を変えなければ軌道修正できない。  そこで私は、若干各省にまたがる問題について総合的にプロジェクト等をつくって、そのセクトを打破すべきではないかという議論をいたします。  その一つの例は、いまの年金と関係がありますが、たとえば定年制と雇用の問題、年金の問題です。雇用の問題は労働省がやっている。年金の問題は厚生省がやっている。年金と雇用の問題は関係ない。公務員の定年制の問題は、地方公務員は自治省が盛んに公務員定年制を、ことしは出さぬらしいけれども、そのことを言っている。つまらぬうしろ向きの議論をしている。総理府が定年制の問題について、国家公務員について考えるわけですが、つまり六十歳とか六十五歳とかこの間になりましたならば、年金で食えるように全体の政治の中で仕組むわけです。そして定年で職場を去っていくときには、あなたは御苦労さん、これからゆとりのある人生が送れますねというふうに祝福を受けるようにする。いまは公務員諸君は五十五歳でやめていくわけです。そういたしましたら、次のやつをさがすわけです。そうすると、防衛庁は軍事産業へ天下るわけだ。大成省は金融界へ天下るわけだ。通産完了は大きな企業へ天下るわけだ。ところが、総務長官、総理大臣、外国では公務員は六十五歳が定年ですよ。六十五歳です。私は資料を持っておる。民間でも働く能力があれば六十五歳までですよ。日本は五十五歳か七歳で大きな企業や公務員は定年になって、今度は中小企業へいって、さらに下がっていって、しかも年金の掛け金を払っておるんですよ。死ぬまぎわになって職を去っていく、非常に不安である、こういうことでしょう。ですから雇用と年金、定年制等の問題を含めて、官民全体どうするかという問題を議論するように、労働省と厚生省が中心となって、経済企画庁等も入って、プロジェクトをつくって、総合計画を立てて、発想の転換を政策修正のほうへ持っていかなければならぬと私は思うわけです。公務員の規律だけを議論したって、これはしようがないわけだ。この問題に対しまして、労働大臣、その次は総理府総務長官。
  252. 塚原俊郎

    ○塚原国務大臣 厚生省とはきわめて緊密な連絡をとっております。受給年齢が六十歳でしたか、ところがいま一般事業所の定年制を見ますると、日本では五十五歳が多いですね。数字に誤りがあったらばあとで訂正いたしまするが、大体五十五歳が五八%、それから六十歳が二三%というふうに私は聞いておりまするけれども、いずれにしろ定年制が延びつつあるという現状は、これは事実であります。これはあくまでも両方の話し合いでやっておることでありまするが、ただ今日の寿命の関係、それから労働力不足、それから貴重な得がたい体験を得た方々の、しかもいま大原委員が申された明るい老後の楽しい職場というような点も重点を置きまして考えますると、いま厚生省が年齢の引き下げを考えるとは思いませんが、それにマッチしたような形で民間は進んでおる。したがって厚生省と労働省との間の断絶はございませんし、緊密な連携をとりながら、老後の安定と、その貴重なる体験を職場に生かす、楽しい職場をつくるための努力はわれわれも十分いたしております。
  253. 大原亨

    大原委員 労働大臣、あなたは公務員の六十五歳定年——いや、定年ではない。六十五歳までは働く権利を保障するという考え方、総務長官、それは賛成ですね。あなた、総務長官、いかがですか。
  254. 山中貞則

    ○山中国務大臣 公務員のほうは、いま国家公務員については定年制を直ちに施行することは考えておりません。現在、大体勧奨ということで、労使ということばは公務員の場合どうですか、一応慣行ができておりますから、勧奨退職等の特例等を配慮しながら、大体順調に新陳代謝が行なわれていると考えております。
  255. 大原亨

    大原委員 一生一番働き盛りのところで、働いた人を五十五歳でやめさせるのが悪いんだ。あと悪いことしなければいかぬようになるじゃないか。五十五歳ですから、あと七十四、五歳まで生きるんです。あれは平均余命率ですから、五十五歳の人は七十五歳とか八十まで生きるんです。総理大臣だってもう七、八年はあるわけだ、余命率なんですから。それを、長い期間を、一生働いたところを離れていって、そしてあちらこちらをあさったりだんだんとすぼっていくというふうなこと。高級公務員はいいよ。一般公務員はどうするんだ。公務員は外国では全部六十五歳ですよ。定年とはいわない。六十五歳までは働く権利を保障するのですよ。それ以上も意思と能力があれば働かせるんです、場所を与えて。そういう発想の転換をしなければいかぬ。五十五歳で年金もらえるようにする。そしてまた厚生年金の掛け金をかける。警察なんかは十年ぐらいでもらえるようになっておるから、三つぐらい年金もらっておるが、みな中途はんぱだ、こういうことになっておる。だからこれも一元化しなければならぬ。そういう年金と雇用の問題について公務員等をまずモデルとしながら、民間全体のそういう雇用問題と年金問題についての発想の転換をしなければならぬ。だからこれは年金の改革とも関係ある問題であります。そういう発想の転換とか決断とかいうものが今日政治の上において必要なわけでありますよ。そういう総理大臣が必要なわけだ。  総理大臣は次に指名しておるけれども、これは水田候補がいまいないけれども、逐次指名して、あちらだ、こう言っておる。総理大臣は答弁しないというようなことを言っておるが、それはあなたが指名するのですか、総理を。ここでやるのですか。総理、あなたが指名するのですか。あなたこうやっておるが、だれですか、それは。
  256. 山中貞則

    ○山中国務大臣 かといって、公務員であるならばもう幾つになっても働きなさいというわけには、やはり公務員全体から見ていきませんから、やはり適当な……(大原委員「権利ですよ」と呼ぶ)権利であるといったって、つえついてよぼよぼになってきても、権利だといっても、それはやはり公務員として国民のために働くのですから、それ相当の働きの限度において自分も承知しておられるわけですから、そこらのところそうかどが立ったことをしておるわけではありません。  なお、公的年金制度調査会をつくって各年金の間のバランスの問題あるいはスライドの問題等、公務員から農林漁業職員共済あるいは私学共済に至るまで四つの分野に分けていま検討中でありますから、ただいまのような御意見等も重々承知いたしておりますので、やはりバランスのとれた、そして政策目標のはっきりした、そして財源的にもやめていく人たちにとってはっきりした老後の身分保障のできるような制度を確立したいということで、いま努力中であります。
  257. 大原亨

    大原委員 あなたは次は総理大臣候補になれぬね。全然発想に新鮮さがない。つまり六十五歳までは職場で働く意思と能力があれば権利を保障するわけです。ここまではよろしいですよと。それから六十歳からは年金で食えますよと。これは個人の健康条件は差があるんですから。老人ホームをつくったって何したって、年金がなかったら人間らしい生活保障できぬですよ。これはわれわれ働いている者の責任なんです。  もう一つは、労働大臣、あなた厚生省と連絡がよくとれていると言ったが、たとえば身体障害者の問題、たとえば交通事故、スモン病とかその他ずっとあるわけです。下半身がしびれるとか——あとで時間があったら議論するけれども、問題があるわけですが、日本法律は身体障害者雇用促進法といって、官公庁や民間企業は一定の水準まで倫理的に、道義的に身体障害者を雇用する責任がある、こういっているわけですが、私どもはこれも発想の転換をいたしまして、身体障害者であっても、盲人の人であっても訓練いたしましたら電子計算機が使えるんです。この職場については身体障害者を使うんだ、優先的に使うんだ、つまり身体障害者を強制雇用する、優先雇用する、そのあとを一般の募集をする、こういう考え方、身体障害者の優先雇用の法律に切りかえるべきだ。そうしたら年金との関係、厚生省との関係についても、これは中途はんぱな金が出ないで済むことになるわけです。どんどんどんどんふえている身体障害者に対する対策になるわけです。そうして今度は文部省でやっておる教育とか、あるいは労働省でやっておる訓練とか、訓練と教育というものをくっつけていく。その目標のために訓練、教育をする。マッサージをやるだけじゃない。こういうふうにだんだんとふえておる身体障害者に対する雇用政策を確立する、雇用の問題について身体障害者をあらゆる職場において優先的に雇用するんだ、こういう企業や官公庁の責任を負わせる、こういう総合政策を立てる必要がある。労働大臣いかがですか。
  258. 塚原俊郎

    ○塚原国務大臣 これまた厚生省との関係でありまするが、緊密な連携をとっております。  それから法律に基づきまして雇用率がきめられておりまするが、官公庁並びにそれに準ずるいわゆる政府関係の機関でありまするか、これは完全な充足した雇用率どおりの就職状況を示しております。ただ民間産業においては数字がやや低下しておりまするので、雇用主に対しまして啓蒙運動、さらに指導、それから職業訓練、職業指導、あっせん、こういう努力を労働省としてはいたしております。率にこだわるわけではございませんが、いま大原委員の指摘された法律に規定された率、これだけは官公庁はそのとおりいっております。(大原委員「優先雇用の問題は」と呼ぶ)法改正の問題ですか。——これは身体障害者雇用審議会でありまするか、これでいま御検討願っておりますから、前向きに検討いたしたいと思っております。
  259. 大原亨

    大原委員 文部大臣、公立の高等学校とか国立の大学等に、たとえば小児麻痺であるとかスモン病で下半身が悪いとかそういう者は入れない、最近もちょっと問題になっていたけれども。そういう考え方は私は間違いだと思うのですね。ここに実例がずっとあるのです。たとえば永井柳太郎だって社会党の飛鳥田一雄横浜市長だって、おそらくいろいろな機会に恵まれなかった人が多いと思うのです。しかし、身体障害者だからといってハンディキャップ、差をつける必要はないと私は思うのです。国公立の学校では率先して教育機会を与えるということが大切だと思うのです。その点、私は上から下まで徹底してもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。
  260. 高見三郎

    ○高見国務大臣 教育機会を均等に与えるという趣意におきましては、大原先生と全く同じ意見を持っております。身体に障害がある者につきましては、それぞれの養護施設、それぞれの特殊学校等において教育をいたすということにいたしておりまするし、また、上級の学校に入りまする場合に、身体障害のゆえをもって拒否するという事由にはならないということにいたしております。
  261. 大原亨

    大原委員 いま事実上はあるわけであります。体育は五点満点で四点は実技だから、一点しか学科のほうがないから、ずっと一点しかないということでハンディキャップがついて回って、切られる。こういうことがあるわけです。しかし、そういうことは間違いです。そういうことを修正しなければいかぬ。そしてその能力は幾らでも発揮できるのですから、そういう能力のある人は機会を与えなければいかぬ。
  262. 高見三郎

    ○高見国務大臣 能力を開発するという意味におきまして、身体的なハンディキャップというもの、これはいまの入学試験制度、選抜試験制度自体を根本的に考え直していかなければならないと考えておりますが、そのために上級学校の進学が不可能になるということはないようになっております。
  263. 大原亨

    大原委員 実際にはそういうことが行なわれているわけです。この間実例が出ているし、私らも知っていますから、それはひとつよく調べて、あなたの趣旨に反することですからやってもらいたい。  それで縦割り行政というか、官庁セクトを克服する問題で私はついでにこの機会に、前も議論いたしましたが、日本の人口の三分の一、生産の三分の一が集中している工場がある瀬戸内海沿岸の総合的な汚染対策の問題です。これはいまのままにしておきますと、赤潮が異常発生いたしまして、これが普遍化してまいりまして、瀬戸内海は死の海になってくる。いまでもPCBとか有機水銀とかあるいはシアンとかカドミウムとかで、魚は、骨の曲がった養殖ハマチが出る、あるいは不具の魚が出る、こういうことであって、味も落ちて生産も落ちている。魚が集まらないような死の環境になりつつあるということが急速度に進んでいる。日本全体がそうであります。医療問題もその中にあるわけであります。そこで、たとえばこういう問題がある。こういう問題はどう処理するのですか。これは経済企画庁長官ですか、自治大臣ですか。  新全総によりますと、昭和四十七年の国民所得は七十兆円でありますが、これが昭和六十年、新全総の目標のときには百二十兆円になるといわれておるのでありますが、その間に新全総の昭和六十年を目標にいたしますと、鉄鉱は四倍、石油は五倍、石油化学は十三倍、工業出荷量は、昭和四十三年を十八兆円にいたしますと、昭和六十年は五十八兆円になるのです。通産大臣も関係あります。四十三年の十八兆円が六十年には五十八兆円になる。汚染の負荷量、これはBODで計算いたしますが、それは昭和四十四年が一日二千五百トンでありますが、昭和六十年には一日二万二千トンになるのです。新全総のこのワクの中でどんどん工場が建ってまいりますると、瀬戸内海沿岸は——瀬戸内海は水が一巡するのに大体六十年間ほどかかるといわれているくらいですから、新全総がこのままいきますならば、BODの負荷量、汚染量をここで計算いたしますが、その計算だけでもこれはものすごいことになってきて、計算できないわけです。新全総は、たとえば瀬戸内海、琵琶湖、東京湾、ずっとあるけれども、そういうことから考えてみてすみやかにこれは再検討すべきである。いかがですか。
  264. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 御承知のとおり、新全総はただいまその総点検に取りかかっております。と申しますのも、いまお話しのある環境面での——もちろん基本的方向では環境問題を取り上げておりますが、最近の環境問題の急進展等からしまして、これをいま御指摘のような面も含めて再点検する作業をいま行ないつつあるところでございます。
  265. 大原亨

    大原委員 作業を続けては終わるわけでありますが、昭和五十年になりましても、下水道整備で三八・四%の目標しかない。終末処理にいたしましても、屎尿処理にいたしましても、第二次処理といって燐酸や窒素をいまの制度では除去できないのです。海洋投棄をするといいましても、高知県の沖のほうに持っていくわけですが、これは向こうのほうでまた問題が起きてまいります。船が三千隻ぐらい航行いたしておりますが、廃油の問題等にいたしましてもそうです。これはものすごい廃油が未処理のままで流されておって、少々法律をつくったってどうにもならぬ。港湾のヘドロがありますし、さらにタンカーは一万トンのタンカーが瀬戸内海で事故を起こしましたら、理論的には全部の海面が汚染されるということになります。二十万トン、三十万トン、五十万トンのタンカーがもし事故を起こしたならば、瀬戸内海は完全に死滅するわけであります。  そういう問題について総合対策を立てるのはどうするのか、環境庁長官、具体的に実効ある対策を立てられるか、率直に私は聞きたい。たとえば新全総にいたしましても、環境保全という観点で大気汚染とか水の汚染だけを考えてみましてもそうですが、工場立地の規制ができなければならない、土地問題があります。そういう問題等含めて、環境庁長官は、かなり予算委員会等で議論し、総理等も指示いたしまして現地へ行かれたと思います。たとえば宮島の松のほうは、岩国、大竹から来る亜硫酸ガスによってどんどん枯れているわけです。これはマツクイムシだと表面はいっておるが、松が弱ったということについては、これは間違いないことであります。これはあのほうばかりやられているわけです。日本三景の一つも台なしになっておるわけであります。佐藤総理が郷里に帰りましても、あのほうは、佐藤総理が生まれているほうから見ると、枯れ松の島になっているということになりますね。  ですから、そういう問題等を考えた場合に、いまのままの縦割り行政ではいけない。それを環境保全とか生活安定とか物価とか福祉とかいう観点でコントロールするようにしなければいけない。いままでプロジェクトチームをつくってやったけれども、単に企画調整だけの環境庁の機関ではいけない。全体的にできないとするならば、部分的にでもこういう問題はチェックするようなことが必要ではないか、私は環境庁長官からこの問題について率直な御見解を聞きたい。
  266. 大石武一

    ○大石国務大臣 瀬戸内海を何とか死の海から救いたい、日本の中心的な一つの大きな景観として残したいという信念から、昨年の十月に瀬戸内海環境保全推進会議ができたことは御承知のとおりでございます。これは各十二省庁から全部幹部に出てきてもらいまして、環境庁に本部を置きまして、みんなの知恵と協力によってこの瀬戸内海をもとのような姿に近いものに復旧いたしたいと願っておるのでございます。しかし、これは御承知のように簡単にできるものではございません。たとえば、いかに役所が努力いたしましても、これは関係府県が十一ございますが、この府県がかってに、ばらばらに埋め立てをしたり、あるいは工場を建てたり、あるいは汚水を流したりするのではどうにもなりません。したがって、これを完全なものにするにはやはり新しい構想の行政が必要だと思います。いわゆる広域行政と申しますか、その一つとして、特にこの瀬戸内海だけに全部ゆだねるというわけにはまいりますまいから、私は、少なくとも環境保全という立場から新しい総合的な行政を行ない得るような一つの機構を今度まじめに考えなければならないと考えております。現在のこの推進会議は、御承知のように各省庁から幹部が出てまいりまして、いろいろな、このいままでの現状のあり方というものを点検しているわけでございます。これを土台として、御承知のように、赤潮部会とそれから水質汚濁部会と自然保護部会とマスタープランの部会と四つの部会に分けまして、それぞれいままでのあり方、実態というものをいま調べてまいりました。新年度からさらに新しい方向に向かって、この部会が中心となりまして、いま申しましたような新しい対策委を樹立することに進んでまいるわけでございます。それには、とうてい役人だけの時間と能力だけでは無理でございますから、当然、各部会におきましてそれぞれの日本の英知を集めまして、そうしてその根本的な対策を立ててまいりたいと、こう念願いたします。その結果、どうしてもそのような新しい行政が必要ならば、やはりそれを打ち立てることに努力しなければならないと、こう考えて決意をいたしているわけでございます。
  267. 大原亨

    大原委員 予算委員長も現地へ行かれてよく御承知のとおりなんですが、実際にそういう環境庁長官がいま言われたようなことを実施するのには、総理もせっかく指示されたわけでありますが、指示のしっぱなしということにならぬようにしてもらいたいと思うわけですけれども、やはりこれを、瀬戸内海の海をどうする、環境をどうする、大気の汚染と亜硫酸ガスの、海が汚染するのは一緒なんですから、ですからそういう問題を含め、たとえば通産省では、例の広島県の呉に瀬戸内海の大型模型をこの間つくってやっているわけです。しかし、これは通産省だけがやったのじゃだめだ。しかも企業のにらみの中でやったのじゃこれはだめだ。農林省には水産資源の保護のためにやはり水産研究所がありますけれども、これは魚を守るという観点だから公害防止に役立つだろう。あるいは大学に研究所がある。あるいは都道府県に工業試験場その他がある、衛生研究所がある、そういうものが相互に、この研究機関においても一元的に組織ができなかったならば、環境庁のもとにできないということになれば、中央公害研究所のもとにするほうがいいけれども、それができないというならば、機能的に一元化するようなことを考えて、相互に施設を利用しながら、研究の結果については大胆に発表していって住民の自覚を待つ。住民パワーもその中から起きてきてもこれは当然のことである。そうでなければできない。そういうことをやる必要がある。そのためには、瀬戸内海の総合的な汚染防止対策だけを考えてみても特別法をつくる、暗に環境庁長官ほのめかされました。それでもできないということになれば、特別法的なものをつくりながら、一定の官庁機関にはそれだけの権限を与えて、そして的確な縦割り行政に対する発言ができるようにすべきである。  佐藤総理が、この問題についてはかなり積極的に関心を持ってこられたわけでありますが、この問題についてそういう観点で環境庁長官も言われたけれども、私は一歩前進させるべきではないか。そういう一つの具体的な例が解決できれば、他のほうがこれにならうということになるからできるのであって、一般的に十四法と公害法をつくったからこれで終わりということではいけない。もちろん無過失賠償責任その他の問題ありますけれども、私は、特別法をつくりながら一つの行政機関をも設けて、それできちっと縦割り行政がコントロールできるような体制を早急にとるべきではないかと思います。佐藤総理から御所見を聞かしてもらいたい。
  268. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大原君御指摘のとおりのような瀬戸内海、また先ほど大石環境庁長官からお答えしたように、ただいまのところ非常に急いではおりますが実態を把握するその段階だと、かように私は思っております。したがいまして、さらに御鞭撻をいただいて、ただいま御指摘になりましたように必要ならば単独立法もやる、また規制措置等も環境庁長官に権限を付与する、その他等等のやり方があるだろうと、かように思います。  一応、いままでのところで琵琶湖の汚水、これについては、やはり沿岸の汚水処理の問題が下水溝その他を設置する、こういうようなことで計画ができておるようでございますが、やはり瀬戸内海におきましても同様の計画を立てないと、片一方で工業がどんどん発達はしておりますが、しかしその反面、御指摘になったようなあの美しい瀬戸内海が公害で荒らされる、かようになっては困りますから、これはやはりおそくなればなるほど困難になります、できるだけ早く結論を得て対策を立てるべきだ、かように思います。
  269. 大原亨

    大原委員 公害問題は、やはり責任ある者が現地へ行って、現地を見るということは大切だ。その点では大石長官がやっておられることは、いままでに関する限りはよい。しかし大石長官は、長官だけじゃ絶対にこれはできないと私は思う。必ず舞い上がってしまう。だれが総理大臣になりましてもそれがイニシアチブをとって、そしてそれを中心に舞うようにならなければだめです。そういう点では、この問題は非常に高度な思想性を持った問題です。最初申し上げたように政治決断を要する問題であります。ですから、この問題については、たとえば宮島では、宮島の大竹、岩国の側面の天然林で伐採をさせないようにしておるのだけれども、松がだあっと枯れておるわけだ。私はつまらぬ議論だと思うけれどもね。これは亜硫酸ガスだ。これは否定する者はおらぬ。しかしこれはマツクイムシだと、こういうことを言っておるのがある。しかし、あれはマツクイムシじゃないのだ、こういう議論がある。あれは日本三景の一つで、瀬戸内海の一つの象徴ですが、私はぜひ、責任あって判断できる人が見に行って、そういう議論についてはどうすべきかということを現地にやるべきだと思うのだ。大石長官、私はぜひ行ってそこを見てもらいたい。いかがです。
  270. 大石武一

    ○大石国務大臣 いままでも一部は見ておりますが、なお近いうちにぜひ調査に参りたいと思います。
  271. 大原亨

    大原委員 そこで、いよいよこの国会でも議論になって、前にもずっと議論になりましたが、医療保険の問題健康保険の問題であります。  その前に、全部大臣がおられるわけでありますが、所管はそれぞれ別々でありますけれども、最近学者が矢つぎばやに指摘をしておるのですが、たとえば有機水銀の問題は、水俣病、阿賀野川と水俣湾だけの問題ではない。有機水銀の問題は、残留農薬その他、世界でも日本は大体百倍くらいのたくさんのそういう有機水銀を使っておる。農薬その他で、高度成長の中で百倍くらい使っておる。この問題は、たとえば有機水銀は植物その他から出たならば無機水銀になると害はないと言っておったけれども、そうじゃない。水の中に入っていくと沈でんいたしまして、下のバクテリアと一緒になりましたならばこれは有機化するのだ。そうするとカドミウムというものが全部の地域にわたっていく。これが蒸発すれば汚染をして、これが全地球をおおう。日本はその汚染源になるのだという議論がある。  たとえばPCBは、私も現地に参りましたが、カネミ・ライスオイルの中毒事件でありますが、PCBは塩化ビフェニールが中に、食用油に入り込んで、娘さんもだれもみな黒ずんでふき出物が出て、目が見えなくなったりあるいはひどいのになると死んだ人がある。そういうふうに、しかしこれはカネミライスの中毒事件だけではなくて、PCBというのは電機にもあるし、新幹線も使っておるし、あるいはちり紙の中にもあるし、電気器具の中にもたくさんあって、日本が高度成長の中で非常にたくさん使っておる。  これをどう処理するのかとこういう問題、そういうふうに環境が破壊されるならば健康が破壊されるのだ。だから一億の国民は全部が患者だという議論がある。一億の国民は患者なんだ。環境破壊と健康破壊は同じなんだ、こういう議論がある。薬の飲み過ぎ、食品添加物の乱用、石油産業化学物質が高度成長した。結局昭和七十年、八十年には老人の年齢がピークに来て、平均余命率は上がるだろうというのはうそだ。もう二十年、三十年後には、日本国民の健康はどうなるかわからぬ。一人前に活動できるような人が何人おるかわからぬ。そういうのがいまの高度成長の中身だということを議論をしなければならぬ事態に、私は来ていると思うのです。だからその中で医療問題を考えなければならぬ。PCBとかあるいは有機水銀とか例をとって——シアンとかカドミウムもあるけれども、その二つの問題を私は例示したけれども、主管省の厚生省はこの認識についてどう思っているのだ。対策をどうしようとしておるのか、簡単にひとつお答えをください。
  272. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 まず、ただいまおっしゃいました、これからほっておけばいろいろ増加するであろう公害、これが人体にどういう影響を及ぼすか、これを早く検討いたし、そして最低の許容基準をきめ、それよりも高まらないように、これは環境庁で規制をしてもらうというのはまず第一の肝心でございます。  それからやはり環境汚染によって健康がむしばまれる。これに対してはいまの環境基準を正確に守ってまいればいいわけでありますけれども、ともすればそれを超過するものがある。こういう場合にどうするか。まず健康の管理体制を十分やっていく。そしてそういった公害に侵されたもの、そういった人の医療保険をどうやっていくか、医療費をどう見るかという問題であります。私は、総括的にいえば、大体そういった原因によって起こった疾病は、これはまず第一義的に国の責任、そしてまたその責任が企業者に追及できるならば企業者にというぐあいにして、これは保険から切り離した方向で将来はいかなければなるまい、かように考えております。
  273. 大原亨

    大原委員 難病奇病の問題等もなんですが、いまそういう議論で、議論はたくさんありますけれども、たとえば厚生大臣、いまのPCBや有機水銀の問題は通産省にも環境庁にもみな関係があるわけでありますが、厚生大臣、最近キノホルムがスモン病の原因であるということがはっきりいたしました。これは自主的に製造、使用の中止をいたしておると思います。この手の打ち方は、昨年九月にやって、サリドマイドのときはぐずぐずしておったけれども、この問題はわりあい手を早く打ったというふうにいわれておる。しかし外国では、先進国では、キノホルムは下痢どめ、整腸剤としては非常によくきくのだから、これはとめるべきではないし、とめていないのがあるわけであります。日本では禁止したわけであります。大体薬というのは毒なんですから、毒を制するような医療体制がなければならぬわけであります。キノホルムによるいわゆるスモン病は大体何人おるのか、難病奇病の対策を五億円かけてやられるというけれども、スモン病の患者の何名を対象にして救済政策をいま立てておるのか、これからはどうするのか、この三つの点をお答えいただきたい。
  274. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 キノホルムは、スモンの発生を促進をしたということはほとんど否定できない問題であります。そこでキノホルムの使用をしないようにいたしました。これは、下痢どめには他の薬をもってかえることもできるという点もありましたので、これは使用を禁止のような行き方をいたしました。じん臓にきく何とかいう薬ですが、これも視野の狭窄のためにこれを乱用すれば目が見えなくなる。しかし、これは他にかわる薬がありませんから、いまのところ禁止をしないで、そして使用方法を厳重に守らせていきたい。  キノホルムの患者の医療費の問題については、これはとにかく一応公害に準じた考え方で国で見るようにというので、いま事務的に検討をいたしております。いまおっしゃいましたのは、これは研究費でいままで患者の治療の費用の一部を負担しておった。これは人数は全体から比べればきわめて少ないのでありますが、私が先ほど申します考え方によりまして、スモン病患者であるという認定基準をつくり、その認定患者と認めたならばこれをすべて救済をするという方向に進みたいというので、いま事務的にそういった手段、方法等を検討いたしておるわけでございます。(大原委員責任はどこにある」と呼ぶ)責任は、国が金を出すということでただいまやっております。これは法律上の責任ということになりまするとなかなかむずかしい、一々せんさくしてまいりますると。本人の体質に従ってその投与量を間違えたか間違えなかったかという医者の責任ということにもなってまいりますので、いまおっしゃいますように、これは用法を誤らなければそういう心配がないということでもありますが、体質にもよることでもありまするし、責任の追及はこれはいま訴訟になっている問題もありまするし、一応それらにゆだねまして、まず救済の手を先に差し伸べたい、かように考えております。
  275. 大原亨

    大原委員 それでは時間がまいりましたから……。  ただ、大切な問題ですから、厚生大臣、総理大臣、皆さん、つまり日本薬局方という、これは薬については公文書ですが、それには一日〇・五グラムとなっているのですが、実際にはその十倍ぐらいの五グラム、七グラムを、十倍ぐらいをずっと連投しておったわけです。過剰投与、連投ということがスモン病を起こしているんです。これをきびしく適正にやった場合には、これは非常にいい薬なんです。だから外国ではそれを許しているわけです、こんなものを禁止してはいかぬ、こういうことで。ですから私は、これには医療のあり方の問題があると思います。  結論ですが、いずれにいたしましても、政府は今回医療保険の赤字対策の法律案を出しております。健康保険の改正案を出しております。健康保険の抜本改正案を出そうといたしておりますが、きょうの新聞では四月の十日ぐらいでなければ出ぬといっております。医療基本法はなお出ておりません。申し上げたように有機水銀やカドミウムや、あるいはPCBもそうですが、環境破壊、健康破壊が全面的に進んでおる中では、治療中心のいまの医療制度ではだめなんです。薬についても規制をしなければいかぬわけです。供給面も全体考えなければいかぬという議論がある中で、政府は赤字対策だけをいま出しておるわけです。しかも与党の議員提案と政府提案がまるで一字一句も違わぬやつがここに二つ出ておるわけです。ですから、そういう全体の構想については少なくともどうするのだという問題を明らかにしながら赤字対策を議論せよというのが、昭和四十二年以来、四十四年、四十五年とずっと今日までやってきたわけです。その繰り返しにすぎぬじゃないか、いまの姿勢は。赤字で、赤字財政対策をやっておいて、保険料や患者負担をふやしておいて、そしてやるんですと、こういうようなことを言ってもいままでの繰り返しじゃないか。国庫負担だってそうじゃないか。確かにこれからの国会では大問題であることに間違いない。私は否定しない。大問題である。だけれども、福祉優先というふうなことを政府は言っている。あるいは医療改革の問題、今日まで議論し尽くした。問題はわかっておる。その問題について正しい方向づけができないのに、赤字対策だけをしゃにむに独走させるというふうなことは、これは絶対にできませんよ。これからの国会では絶対できませんよ。そのために、いままでずっと私は議論してきた。政府ほんとうに福祉優先の政策転換をするのか。社会保障をどうするんだ、公害をどうするんだ、問題点を議論してきた。一ぺんにできない問題がたくさんあることは私は承知をいたしておるけれども、こういう問題についてこういう国会においての議論を踏まえて、そして正しい方向づけをするような、そういう中でなければこういう問題は解決できない。保険料を上げて患者負担をふやしただけでは、そんなことで解決できると考えてこの国会に臨んでおるということは、これは国会国民を愚弄するものである。第四次防や先般の原状回復の問題と同じだ。そのことだけを私は申し上げておきまして、私の時間が参りましたから、質問を終わります。
  276. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これにて大原君の質疑は終了いたしました。  次に、和田春生君。
  277. 和田春生

    和田(春)委員 けさほど来同僚委員各位がいろいろ質問をいたしておりまして、重複を避けたいと思いますが、一昨日の総武線事故に続きまして、昨日は九州行きの特急列車が一時間以上おくれるというようなトラブルが起きておるわけであります。同時にまた、国鉄運賃値上げという問題がたいへん世論の批判を浴びているときでありますから、この際まず予定した質問に新しくつけ加えまして、国鉄の問題から質問を進めていきたいと思います。  まず最初に、大蔵大臣にお伺いをいたしたいと思いますが、政府の全く政治的な責任によりまして一カ月の暫定予算を余儀なくされたわけであります。したがってこのことは、当然国鉄の再建計画にもかなり大きな影響を与えるわけでありますけれども、一カ月の暫定予算を余儀なくされたという事実に立って、どれだけの国鉄の財政に影響が出るとお見込みであるか、その脈をまずお伺いしたいと思います。
  278. 水田三喜男

    水田国務大臣 暫定予算におきましては、けさほど説明いたしましたように、国鉄料金の値上げされた新しい料金というようなものは計上しない、旧料金での収入計上をいたしておりますので、これによって国鉄当局において予定が狂ったと申しましたら、大体百五十億前後ではないかと思います。
  279. 和田春生

    和田(春)委員 国鉄財政の再建計策や運賃値上げの問題については多くの問題があるわけですけれども、政府の予定をしているところから考えても、百五十億円ほど影響が出たというお話であります。現在春の賃上げが進められておるわけでありますが、やがてことしも公労委の仲裁裁定が行なわれると思いますけれども、国鉄の職員については、法律のたてまえし、民間産業の一般の労働者の賃金の水準、アップ率、それから公務員の賃金等とかね合いをとって出るわけでありますから、上がるものとしなければならない。こういう点について、もし昨年と同程度の賃上げが行なわれる、こういうふうに仮定した場合に、国鉄がそれによって支出増となる金額は、本年度においてどれだけ見込まれますか。これは大蔵大臣むずかしければ、国鉄総裁でもよろしゅうございます。
  280. 磯崎叡

    磯崎説明員 先ほど大蔵大臣おっしゃいましたとおり、四月の減収が大体再五十億というふうに考えております。それから仲裁裁定につきましては、かりに去年の額で申し上げますと大体七百四十億ぐらい、はね返りを入れませんで約七百四十億ぐらいというふうに考えております。
  281. 和田春生

    和田(春)委員 率で……。
  282. 磯崎叡

    磯崎説明員 率でまいりますと、もう少しふえると思います。約八百六十億ぐらいになると思います。
  283. 和田春生

    和田(春)委員 いずれにいたしましても、この賃上げ原資は、私たちの承知しているところによると、予算案には組み入れていないわけでありまして、例年仲裁裁定が出たあとで、工事費のやりくりとかいろんな数字のつじつま合わせをやりまして支払っているわけでございますが、暫定予算によって百五十億円ほどマイナスが出た。加えて七百四十億、合計約九百億の、ここのところで不足が生ずるわけでございますけれども、これは労働大臣にお伺いいたしたいと思いますが、ことしも仲裁裁定が出れば完全実施をするという政府の御方針には間違いございませんね。
  284. 塚原俊郎

    ○塚原国務大臣 情勢をよく見まして判断いたしたいと思います。
  285. 和田春生

    和田(春)委員 じゃあ、ことしは仲裁裁定を完全実施しないことあるべしというふうにいまのお答えを受け取ってよろしゅうございますか。
  286. 塚原俊郎

    ○塚原国務大臣 そういう意味ではございません。今度の春闘につきましては、先ほども大原議員にお答えいたしましたように、従来と違った非常にきびしい経済情勢の中で行なわれまするので、国民の福祉を中心とした政策転換を迫る組合側と、それからきびしい経済情勢の中で筒姿勢にというか、かなりきびしい態度で出る経営者側との間に相当のものが考えられると私としては予想いたしております。したがって、争議も長期化いたすかもしれませんし、従来にないきびしさを感じておりまするので、いまどういうものが出たらという仮定の問題——いまのは、しかし、やらないという意味じゃございません。今日の段階ではお答えできないということであります。出れば、もちろんそれを尊重することはやぶさかでございません。
  287. 和田春生

    和田(春)委員 仮定の問題には答えられないというふうに善意に受け取りまして、尊重するということでありますから、ことしも実施をする。そういう形になりますと、ここにたいへん国鉄の経理というものは苦境に追い込まれているわけでありまして、一つは暫定予算を組むようになった政府の失態も影響しているわけでありますけれども、この国鉄を再建するということは、非常に重要な問題だと思うわけです。しかも運賃の値上げということについては、国民からの非常に強い批判があるわけでございます。しかし、何とかして値上げをしてもらいたい、こういう形になりますと、国鉄の経営姿勢というもの、それに対する政府の指導、また対策というものについても、われわれはきびしい目を向けていかなければならぬわけてあります。ところが一昨日、ああいうたいへん不祥事件が起きました。この点については、すでに午前中、他の同僚委員質問をいたしましたので、重ねて質問することは省略をいたしたいと考えますが、これに引き続きまして、きのう、新聞の報道によりますと、「乗客なめた順法闘争」とかいうような見出しもありまして、「晩めしだ、作業中止」というような形で、特急「あさかぜ一号」が一時間以上おくれたという報道がされているわけでございます。国鉄総裁にお伺いしたいと思いますけれども、こういう事実があったのかどうか、まずその点を確認いたしたいと思います。
  288. 磯崎叡

    磯崎説明員 残念ながらそういう事実がございました。
  289. 和田春生

    和田(春)委員 ところで、この事実があった。そして伝えられるところによりますと、順法闘争の一環といたしまして、作業中の国鉄職員が、めしどきであるから作業をするわけにはいかぬ、こういう形で作業をやめた。その理由につきまして、これも新聞の伝えるところによるわけでございますけれども、組合並びに組合側が言っているところによると、「操車掛は勤務の都合上、全員が一度に食事をとるわけにはいかないので、一人一人の夕食時間が各人の勤務ダイヤに厳密に組み込まれている。従って、操車掛は必ずその時間内に食事をしなければいけない原則となっており、」そしてこのときには、その食事をとるべき時間内に仕事をしろと言ったので拒否したので、あたりまえのことだ、こういうふうに言っているということでありますが、そういう必ず一人一人の操車掛が規定の時間内に食事をしなければならないという原則があるのかどうか、その点を確めたいと思います。
  290. 磯崎叡

    磯崎説明員 もちろん普通の状態でございますれば、夕食は大体何時ということはきめてございます。これは就業規則のもう一つ下の駅の中の内規のようなものでございますが、もちろん国鉄の中でございますから、いろいろ事故その他の関係ダイヤが相当乱れることがございます。その場合には、当然これはもう食事時間が変更されるのはあたりまえでございますが、一応原則として、担当の助役から、きょうは列車がおくれたから、おまえは食事時間を少し延ばして何時までやってくれ、あるいは作業がある、少し早目に食べてくれというふうなことを申すのは、これは一つの社会常識であるというふうに私は思っております。
  291. 和田春生

    和田(春)委員 いま、社会常識だというお話がございましたけれども、就業規則とか職場の規律ということは、きちんと、たてまえとそれに伴う応用というものは、しておかなくてはいけないわけなんです。  私は、この報道を見て奇異に感じたのは、一人一人に食事時間がきめられておって、必ずその時間内に食事をしなければならないというたてまえだといいますけれども、こういうような運輸サービス事業におきましてはいろいろな問題が起こるわけでありまして、はたしてそうなっているかどうかということを調べてみたところ、それについては標準作業ダイヤ、こういうものがきまっておるわけで、必ずその時間内に食事をしなければならぬということではなくて、いろいろとサービス関係において動いた場合にはそれをずらすこともある、あるいは休憩時間を振りかえるというようなことにおいて処理することもあるわけであって、常にいかなるときもその時間内に食事をしているということではないということを現場で聞いてきたわけでございますが、そういうような運用になっているわけですか。
  292. 磯崎叡

    磯崎説明員 ただいま申しましたとおり、やはり非常に流動的な仕事でございますので、一応の基準でございまして、三十分、一時間変わることは、これはやむを得ないというふうに思っております。
  293. 和田春生

    和田(春)委員 そこで、国鉄総裁にお伺いしたいのですけれども、これについては順法闘争ということばが使われているわけでありまして、なお伝えるところによると、組合員は規則どおり仕事をすればこれだけ列車がおくれるのだ、どれだけ毎日の仕事がきつく無理をしているかがわかるだろうと言っているというふうに伝えられているわけであります。  順法、つまり法律どおりにやればダイヤが乱れるのがあたりまえである、あるいは就業規則ないしは国鉄の内部の規定どおりにやればダイヤがおくれるのがあたりまえである、ということは、裏返せば、ごく通常やっているように普通の作業をやれば違法行為になる、あるいは規則違反になる、こういうふうに理解せざるを得ないのですけれども、そういうふうに理解をして間違いがないのですか。
  294. 磯崎叡

    磯崎説明員 たとえば品川でもって着いた列車を掃除するという場合に、大体一つの車両を何分かかって掃除するというような一つの基準があると思います。その基準の中で洗うとか掃くとかということをするわけでございますが、それを非常にゆっくり丁寧にやるというふうなことのその限界の問題だと思います。大体品川ならば一個列車は何分という基準がございますので、その基準以内で仕事をするというのがたてまえでございまして、それ以上に非常にゆっくりやるとか、あるいは入れかえをするときにゆっくり歩くとかということは順法ではないという、ふうに私は考えます。
  295. 和田春生

    和田(春)委員 そうすると、きめていることは大体標準ですから、ごく普通にやれば普通にダイヤが運行するということはあたりまえであって、定めのとおり、規則のとおりやればダイヤがおくれるということは決して順法とは考えない、総裁のお考えはそういうふうに確認してよろしゅうございますか。
  296. 磯崎叡

    磯崎説明員 さようでございます。
  297. 和田春生

    和田(春)委員 ところで、一昨日の総武線事故について、これまた伝えられるところによりますと、非常に過密ダイヤである、そのためにATSの操作等を規定どおりやっておったのではダイヤが守れない、したがってATSも切って見込み運転をしているというのが普通の状態である、これは定めたとおりにやらないために何とかダイヤが守られているのであるという報道があるわけでありますけれども、また、そういうふうにわれわれもずいぶんあちらこちらで聞きましたけれども、まさにそのとおりでありますか。
  298. 磯崎叡

    磯崎説明員 その点につきましては、非常に誤解が多いので、この席を拝借しまして一言申し上げさせていただきます。  ATSと申しますのは二つの性格を持っておりまして、一つは、ブザーが鳴り出しましてから五秒以内に、逆転士がたとえば失心してしまうとか、あるいは悪い例ですが寝てしまうというふうなことがあった場合には、これを五秒たてば必ず急激にとまるようにいたしております。これが本来の自動停止装置でございます。これは五秒間かかります。五秒間に何もしなければとまります。これはもう最高の安全を確保しているつもりでございますが、その五秒以内に、この手前にボタンがございます。それを確認ボタンと申しておりますか、確認ボタンを押しますと——ATSのブザーと申しますのは、次の信号は赤ですよという一種の目ざまし時計的な性格を持っております。次の信号は赤だから注意して運転しなさい。ですから、ふだんそれがない時分は全部目で見ていったわけでございますけれども、ATSをつけましてから、次の信号は赤ですよというアラームでございます。したがって、アラームが鳴れば確認ボタンを押すということは、承知した、自分が運転するぞ、前途が赤だということを自分で確認して運転するのがATSの第二の性格でございまして、その点がしょっちゅうこんがらがって議論されます。ですから、ATSは、その確認もできないというふうな非常事態になったときには、ばさっととまってしまうという二つの性格があるわけでございまして、おとといの事故は、その確認ボタンを押す前に必ずブレーキを一ぺん締めるということを、これは非常に厳格なマニュアルになっておりますが、非常に残念なことには、そのブレーキを締めることを失念し、また確認ボタンを押してしまったあとでATSのほうの操作に気をとられて、そして前途の信号を自分で見るのを失念したということに大体推測されておるわけでございます。
  299. 和田春生

    和田(春)委員 この点について、いま総裁からお話を聞きましたけれども、実はATSのそういう内容については私も知っているわけなんです。私が問題にしているのは、そういう技術的なことではなくて、ああいう事故が起こると必ず国鉄の労働組合員の中からとか、あるいは批判は、見込み運転をやっている、きまったとおり運行していない、超過密ダイヤである、無理をしてそういうことをやっているから事故が起こるんだ、こういう話が出てくる。あるいは昨日の急行列車の遅延にしても、順法で定めのとおりやればそのダイヤはおくれるのがあたりまえだという声が出てくる。当局のほうはそうじゃない、こう言う。しょっちゅうそういう話が出てくる。そこに実は私は、国鉄の管理体制の問題があるのではないかと思う。この事故を起こした逆転士の人につきましても、私はいろいろ聞いてみました。聞くところによると、なかなかまじめな運転士だそうであります。さらに、午前中の質問に対する総裁のお答えによると、勤務状況から見ても特別に疲労を与えるというような状況にはないと言われている。  さてそうなってくると、私はここに二つの問題があるように思う。一つは、そういうATSに対する操作とか運転の動作とか、いわゆる基本的な操作ないしは運行に対する動作というものについて、十分な現場教育というものが徹底をしていないのではないか。そういう点について、当局側が十分な末端に至るまでの指導ということを欠いている。言うなれば、管理体制にルーズなところがある。ここに一つの問題があるように思う。もう一つの問題は、大体事故にしても列車の遅延においても一つしか事実が発生していない。その発生した一つの事実について労使が全く正反対のことを言って、事故が起きたことがまた新たな労使の紛争の条件になっているという点について、やはり労務関係の管理、労使関係管理というものについて大いに、組合側にも問題があるかもわからぬが、当局側の姿勢にもたいへん大きな問題があるように考えられる。そういう点について総裁はどういうふうにお考えですか。
  300. 磯崎叡

    磯崎説明員 ただいまの第一点の、基本動作の問題でございます。この場合にも、停電中にATSが鳴ったといういわば異例な事態でございますが、そういうわりあいに異常事態に対する実際上の訓練が足りなかったことは、私は率直に認めざるを得ません。それはやはり机上だけではだめなんで、そういういざというときの実設的な訓練が欠けておったということは、率直に私は認めます。この運転士は、実は一年間電車運転士見習いとしてあの線を乗っております。したがって、その間にでもそういうことを教えれば幾らでも教えるチャンスがあったのに、その点に欠ける点があったということは認めざるを得ません。  第二の、事故そのものが起こるたびに労使間で話が違う、逆な話だというお話、現象的には確かにそうなっていまして、私どもは私どもなりのことを言っているつもりでございますが、ただ私自身の考え方といたしましては、事故というものは労使問題以前の問題だ。労使問題以前であり、経営問題以前の問題であって、事故そのものについての、何とかして事故を防がなければならないということについては、もう使用者も労働者もないのだ、国鉄職員として事故を防ぐということに変わりないのだという信念でございますけれども、私の気持ちがあるいは組合の諸君に徹底しない、あるいは同じ気持ちになってもらえないというか、その点が結果的にああいうふうになって、何か事故そのものについて非常に見方が違っているというふうな印象を世間に与えているのは非常に残念だと思います。
  301. 和田春生

    和田(春)委員 それは一つの言い抜けであって私たちは非常に問題があるわけですけれども、いま、労使ともに絶対に事故を起こしてはいけないということについては真剣に取り組んでいるかのごとき発言があったわけですが、私がいま指摘した二つのほかに、また一つ大きな問題がある。私は、そういうようなことが、いろんな形で遠因、誘因となって事故につながっているんではないかという危険性を感ずる面があるわけです。幾つも事例があるわけですけれども、昨年の六月三日に新鶴見の機関区において、動力車労働組合から脱退をした指導機関士、これは対立されている、いろいろ問題になっている鉄道労働組合に加入したわけではございません、組合から脱退しただけでございます。その指導機関士が暴力的に脅迫を受けてノイローゼになる。職場におるわけにはいかないので隔離をしている。今日に至るもまだ職場戻ることができない。安全を守るためには公安官を増員して職場に入れなければ、そういう指導機関士というような重要な職務にある者の身の安全が守れない。そういうような事件が起きたわけであります。総裁、この事件の内容をよく御存じですか。
  302. 磯崎叡

    磯崎説明員 その事件の内容は十分存じております。
  303. 和田春生

    和田(春)委員 指導機関士といえば、やはり現場における第一線の機関士あるいは助士に対しまして、そういう実際の連行やいろいろな作業等について、それまでの経験ないしは知識を生かして指導する立場にある。それがいま言ったような形で——もちろん組合から脱退をしたという形になれば、脱退をされたほうの組合ではおもしろくないだろう。しかし、その脅迫を受けて職場におることができない。職場から隔離をしてよそへ連れていかなくちゃいけない。ノイローゼになって入院する人、休む人が出てくる。一体そういうことをなぜきちんとしないのか。そして、この事件については刑事事件にもなっている。しかるに、昨年の六月の三日にその事件が起きているにかかわらず、私たちの聞くところによると、今日の時点においてもまだ何らの処分が具体的に行なわれていない、こういうふうに聞いているのですけれども、そうでありますか。
  304. 磯崎叡

    磯崎説明員 いろいろ事情もございまして、まだ行なっておりませんが、不日必ず実行いたします。
  305. 和田春生

    和田(春)委員 いろいろ事情があるというふうにおっしゃいますけれども、私はこの問題について、現場に行って現場の管理者にもいろいろ聞いてまいりました。この十名に対して、実は四十六年の八月十六日に免職の通知が行なわれているわけであります。ところが、国鉄関係の規定によると弁明、弁護を行なう必要がある、昨年の段階では、免職の通知をしたけれどもまだ弁明、弁護が済んでいないので正式に免職の発令はしていない、したがっていまだ国鉄の職員であります、こういう現場説明でありました。そこで、この事故を起こした諸君が自由自在に職場に出入りをしている。そして、その後も暴行や脅迫を続けている。しかし、それに対して国鉄は何ら措置をとっていない。こういうことが明らかになってきたわけでございますが、すでに三月も終わりで、年度末はあしたであります。いまだに発令が行なわれていない。去年の八月十六日から半年以上もたっている。いろいろの事情とはどういう事情ですか。
  306. 磯崎叡

    磯崎説明員 私のほうでは、いま、先生がおっしゃいましたように、処分する場合には、処罰の場合には、懲戒規定の協約がございまして、その協約にのっとっております。その通知をいたしましてから、弁明、弁護が済みましたのが二月の末だったかと存じます。したがいましてここで手続が完了いたしました。したがいまして、不日必ず実行いたします。
  307. 和田春生

    和田(春)委員 二月の末からいままで一カ月でございますけれども、こういうような事件というのは、これはもう労働連動とか労使関係以前の犯罪行為ですよ。それについて、弁明、弁護の手続が終わっていないので発令ができないといって釈明をしておった。ところが、二月の末に弁明、弁護が終わっている。あしたはもう三月の終わりである。いまだに発令をしていない。私はそういう当局の姿勢が問題があると思うんです。もし民間会社でこんなことが起きたら、それは即時首ですよ。それはもちろん首にされたほうは、憤慨をして裁判所に持ち込んだり、あるいは労働組合があればいろいろ闘争するかもわからぬけれども、こういう刑事事件になる犯罪的な行為で、しかも職場にまともに勤務ができない状態をつくり出している、鉄道公安員を増員をしなければやっていけないという状況を起こして、いままでルーズにこれがほうり出されている。そういうようなところが、私は当局が、先ほど親方日の丸という不規則発言がございましたけれども、真剣に職場規律を確立して安全を確保し、よい質のサービスを利用者に提供するという姿勢に欠けるところがあるんではないか。事件が起こると全部組合員やその事故を起こした個人の責任にしている。しかし私は、個人の責任があるかもわからぬけれども、多くの事例にかんがみて、こういうものがどんどん出てくるということは、管理の姿勢に根本的な問題があると考えるわけです。私のところでもそういう暴力事件が相次いで起きておりますけれども、実は現場から報告が上がってきているだけで、去年の十一月からことしの三月の中旬までのわずか四カ月の間に、実に八十件近くの暴力事件というものが起きているわけです。しかもそのうち、現場でいわゆる現行犯として逮捕されている、勾留をされている、あるいは書類送検になっている、そういうような事件で、組合と組合じゃありませんよ、組合員と当局の間の事件で四十四件ある。それから組合同士の間の暴力事件で、やはりいまのような現行犯逮捕とか勾留をされるとか、中はは不起訴になるあるいは暴行者が確実に証拠の裏づけができないために釈放になっているというものもありますけれども、実に四十三件ある。一体こんな会社というものは、民間であるでしょうか。それは昔は、いまでも組合連動においてトラブルはありますよ。私も、長い組合連動をやってきた。国鉄労働組合とはいろいろな面で組織的に対立をしてきた。その方針に批判は持っております。また争議等でわあっとなったときに、暴力的に見えるようなつるし上げということも、勢い余ってやることもあるかもわからぬ。デモをやったついでに事故が起きるということもあるかもしれない。それはえてして労使関係や労働運動でありがちなことだ。しかし、何でもない状況のもとで、ある組合員を、脱退したとか指導の態度が気に入らぬとか、当局側でけしからぬとか、そういうような、日常茶飯事のように私の手元に来ただけでも、ここに全部ありますけれども、四カ月間に八十件も暴力事件が起きて、現行犯で逮捕されたり勾留されたりしている。一体国鉄は何をやっているんですか。そういう国鉄の姿勢というものが、私は、これからいろいろな問題に響いていくと思うのです。おとといの事件というものも、それは確かにその本人の人は、聞くところによれば、まじめな国鉄の職員だというふうに私は伺っております。しかしながら、急行の問題といい、いろいろな問題が次から次へ起きていくというのは、結局管理者として、経営者としての国鉄の当局の姿勢というものはなってない。赤字を出せば国民の税金でしりぬぐいができる、無事無難に自分のポストさえある程度過ごしていけば、高級職員は天下って老後の生活には別に心配がない。結局事なかれ主義でいいかげんなことをやっている。そういうことが問題じゃないんですか。その点について総裁の所見をお伺いしたい。同時に、総裁の次に運輸大臣から、監督官庁としての姿勢をお伺いしたいと思います。
  308. 磯崎叡

    磯崎説明員 昨年の秋から、平常状態でありながら暴力事件が起きていることも私存じております。一件一件につきまして、いまいろいろ刑事事件になっておりますが、それにつきましては私は厳重な処分をしてまいりたいと思っておりますが、ただいろいろ手続が、非常に私のほうだけがむずかしい手続がございまして若干の時間のかかるのはやむを得ないと存じますが、私も、これだけの仕事をお引き受けし、これだけの大きな輸送最をこなす以上、絶対的に、まず職場規律の確立ということだけは最小限のこととしてやっていかなきゃならないということを自分で考えております。
  309. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 国鉄の労務管理のにつきまして種々御指導がございまして、まことにごもっともな御意見と思う次第でございます。国鉄が真に国民の陸上の大動脈として、足としてやってまいります場合に、先ほども私、遺憾の意を表した次第でございますが、いやしくも事故を起こし、そうして国民に非常に御迷惑をかけるということは、絶対に避けるように運行しなければならないことはもとよりでございますが、内部におきましてそういったような奉行行為まで行なわれておるということになりましては、これはゆゆしきことでございます。  申すまでもなく、四十六万の大組織を持っている国鉄でございますが、それがゆえにあらゆる問題におきましても、法律違反の行為をしてそれを放置しておくというようなことは、今後国鉄の運営が国民の期待に非常に反するものであると思っている次第でございまして、私のほうも監督を一そう厳重にいたしまして、国鉄が真に国民の負託にこたえ、使命にこたえまして、そうして連行が正常にいくように十分監督をする所存でございます。
  310. 和田春生

    和田(春)委員 運輸大臣に重ねてお伺いいたしますけれども、あなたは監督官庁の運輸省の責任者であります。そして今回の国鉄運賃値上げあるいは再建計画、こういうものにつきましても、政府としての所管の責任者であります。こういうような問題が起きているということを十分御承知だったのですか。総裁から報告はお聞きになっておりましたか。その点をお伺いしたいと思うのです。
  311. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 この点につきましては、大体公共企業体として私の監督下にございますが、経営、ことに労使の問題につきましては、できるだけ企業体にまかせるのが筋でございまして、それゆえに私は、その点は国鉄に、将来におきましてもそうでございますが、労使間につきまして円満に運行できるようにまかせていくつもりでございまして、したがいまして、申しわけない次第でございますが、そういったような具体的の事実につきまして、一々私、承知しておりません。ただいまそういうことを伺いまして、これを機会に、十分にそれらの点につきましても、円満なる運行ができるように督励してまいるつもりでございます。
  312. 和田春生

    和田(春)委員 国鉄総裁が、一々そういうこまかいことは報告をしていないので承知をしないと言いますけれども、私は、この国鉄の状況というのは実に問題だと思うのです。これは非常に大きな問題ですよ。  といいますのは、これは部分的に起きて——国鉄の職員四十万が全部暴力集団だなどという暴言を吐く気持ちは私は毛頭ないわけです。たいへん技術革新の面で進んだこともやっている。大かたの国鉄職員は非常にまじめに一生懸命輸送に従事しておる。そこで世界でも最高水準をいくというダイヤが守られている。その事実を私は認めているものなんです。先ほど言っているように、労働争議が発生をしてエキサイトをしているとかいうときに、たまたま事件が起きるということを責めるのは酷でしょう。しかし、日常のように、わずか四カ月のうちに、私の知り得ただけでも八十何件も起きている。これは全部持っているのです。読み上げてもいいですが、八十何件も事件が起きている。しかも、それも内々で済ますのじゃなくて、現場で逮捕をされたり、勾留をされたり、書類送検になったり、そういうことが起きているのですよ。それを放置しておけば、だんだん悪貨が良貨を駆逐するという形になって、まじめにやろうとする者が、けがをしちゃつまらぬからほどほどにしておけ、積極的に指導しなくてはならぬと思っても、うっかりそういう点で指導したときに、さか恨みを買っておどかざれたり、監禁をされたりしたらかなわぬ、こういう形でだんだん現場が萎縮していく。  さらにまた私が重大だと思うのは、現場の管理職は、処分しようと思うけれども全部上のほうで待ったがかかってきて、いつまでたっても処分が発令されない。免職や停職になっている者が泳がされておって、八カ月も十カ月も一年もその職場におって、むしろそのことによって、前よりも胸を張って暴行をやっているということがいわれているわけです。そういうような状況をほうっておいて運賃を値上げしろといったって承知できますか。国鉄のそういう状況について、重ねて運輸大臣の御所見を伺いたいと思うのです。
  313. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 ただいま御指摘がございましたが、国鉄の運営、体質というような点につきましても、いままでもいろいろ御批判があったことは事実でございます。今日、国鉄の経営体制、また労務体制をほんとうに近代化いたしまして、真に国民の負託にこたえるような国鉄に再建させることが、一番緊急の次第でございます。責任者といたしまして、私も極力その点につきまして、今後一そう十分に指導してまいりまして遺憾なきを期してまいりたい、こう思っておる次第でございます。
  314. 和田春生

    和田(春)委員 国鉄総裁に重ねてお伺いいたしますが、そういう点について運輸大臣は十分適当な措置をとりたい。先ほど総裁は、いろいろ手続がめんどうなので迅速にできないというお話だった。しかし、さらにもっと驚くべき事実があるわけです。ここに一つの例をあげますけれども、新潟鉄道局で起こった事件であります。去年の七月十一日である。これは鉄道労働組合の役員でございますけれども、動力車労働組合員が取り囲んで集団暴行を受けて、肋骨を折る重傷を負っております。そして事件の関係者は逮捕されて起訴されている。これに対して国鉄は何か処分をされましたか。
  315. 磯崎叡

    磯崎説明員 ただいまのお話は、たしか坂町のお話でなかったかと思いますが、それも、先ほどの新鶴見と同じようにいたします。
  316. 和田春生

    和田(春)委員 停職とかあるいは解雇とか、あるいはその他の処分でもやっておるのですか。これはまだ何にもやっていないでしょう。弁護、弁明どころではなくて、何もやらずにそのままではないですか。
  317. 磯崎叡

    磯崎説明員 ただいまのお話は、たしか坂町機関区のお話だったと存じますが、それならば、先ほど申しました新鶴見と同じように、不日必ずきちっと処分いたします。
  318. 和田春生

    和田(春)委員 後日じゃないです。去年の七月に起きた事件で、国鉄は何か処置をとっておりますか。処分をやっているかと聞いているのです。やったけれども、弁護、弁明とかいろいろな手続があるのでなかなか正式発令ができません、こういうことならいままでの答弁でいいのです。これは、おっしゃるように坂町機関区の暴力事件です。やったほうは逮捕されて起訴されております。片方は肋骨を折っておる。国鉄は何か処分されたのですか。後日ではなくていままでにやりましたか。
  319. 磯崎叡

    磯崎説明員 その点は、処分の通知をいたしまして、そしていま弁明、弁護が終わる段階だというふうに私は聞いております。
  320. 和田春生

    和田(春)委員 何月何日にどういう処分を通知しましたか。
  321. 磯崎叡

    磯崎説明員 刑事事件の進捗を見ながらやっておりまして、四月三日にいたします。
  322. 和田春生

    和田(春)委員 ごらんなさい、やっている、弁護、弁明の扱いをしていると聞いていると言うけれども、うそじゃないですか。何にもやっていないんです。事件は去年の七月に起きている。いいですか、八カ月も過ぎておる。四月三日にやります。私は処分を急げということを言っているのではない。それは労使の問題であればよろしい。刑事事件については司直の手によって裁かれるでしょう。問題は、現実に逮捕されて起訴されている、加害者がはっきりわかっている、被害者もはっきりわかっているというのに、いままで何にもしていない。加害者は国鉄の職員としてのし歩いている。それに刺激されて、ああいうふうにうまくいくなら、おれも一丁やったろかという無責任なやつがだんだんふえてくる。そういう杉で、いわゆる労働争議なんかに関連したものではなくて、日常のいやがらせ、脅迫というものがだんだん、だんだん広がっている。そこを問題にしている。管理能力ゼロじゃないですか。そんな民間の社長ならとうの昔に首ですよ。労働組合だってそんな社長を置いておきませんよ。結局、それが親方日の丸ではないか。つまり、そういうルーズなやり方が国鉄の大きな赤字を出す原因になっている。大かたの職員はたいへんまじめにやっておるのだけれども、しかし、国民一般からは国鉄というものに対して強い批判が出てくる、こういう問題になると思う。  ですから、こういう点についてははっきりけじめをつける、職場の規律を確立する、それが大切なことです。労使関係は堂々と団体的労働関係として処理をやりなさい。またストライキは禁止されておりますけれども、労働組合の基本的な権利として、国鉄労働者といえどもストライキが全面的に禁止されているわけではない。先ほどの塚原労働大臣に対する質問と関連いたしますけれども、仲裁裁定を実施する、これを担保にして公労法でスト権が禁止されておるというだけでありまして、ストライキをすることは別に犯罪行為ではない。堂々と、労使関係において理非曲直が明らかになる中で国鉄のストライキが行なわれるならば、国民といえどもそれは理解するでしょう。  しかし、一体これは何ですか。労使関係以前の問題じゃないですか。まるで犯罪人を月給を払って雇っているというようなことをやって、どういう顔を下げて運賃を上げてくださいと言えるのですか。総裁、そのことをはっきり答弁していただきたい。
  323. 磯崎叡

    磯崎説明員 そういう、いまおっしゃったような職員管理について十分でなかったことは、私は率直に認めます。しかし、今後現場の管理者、あるいは現場長、あるいは現地の管理局長等に、最小限の職場規律の確立ということだけはぜひやらなければいかぬということで……「最大限だ」と呼ぶ者あり)最大限です。間違えました。実はきょうも全国から管理局長を集めまして、やはり一昨日の事故もそれに関連があるのだというふうに私は思うということで、職場規律の確立は絶対要件だということをるる説明し、また来週も関係者を呼んでやるつもりでおります。
  324. 和田春生

    和田(春)委員 これは私は、最近に起きた事件で、あまりにもルーズだと思われるような事件の中の特徴的なものを、一つ二つあげただけなんです。  総理にお伺いいたしたいと思いますけれども、沈み上げろと言ったら、次から次と全部これは出てくるわけですね。私の手元の資料を沈むだけでも、一時間半の質問時間がなくなってしまうくらいあるわけです。一事が万事であります。そういうことをやっておる。運輸大臣は、今後そういう点については厳重にやりたいと思うと言われたが、こういうことを知らないということがおかしいのです。暫定予算という問題から事は発展してきたわけでありますけれども、本予算の中では国鉄の再建計画という形で、そうして国民の協力を求めたいということを大蔵大臣はおっしゃっております。総理もそういうような所見を述べておられるのですが、こういう状態をほうっておいて国民の協力が求められるとお思いでしょうか。ひとつ総理としての責任ある御答弁をお伺いしたいと思うのです。
  325. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの話を聞いて、私たいへん意外に思っております。ことに私組合が国鉄の出身者ですから、過去においてのいろいろな組合と管理者との関係を知っておりますだけに、最近そこまで行っているのか、たいへん驚くべき事実だと、まことに私は意外に思っております。こういうことは直ちに直さなければならない。労使双方もちろん正常な労使関係、これを樹立することにやぶさかでございませんけれども、最近の世相の乱れと申しますか、いまのお話を聞くと、ついせんだっての連合赤軍の浅間山荘事件を聞くような気がして、まことに私は残念でございます。そういう意味で、国民からの十分な御同情を得ることも困難だろうと思いますし、そのためにも姿勢を正すこと、これは何よりも大事なことだと、かように思います。
  326. 和田春生

    和田(春)委員 総理、そこでどうですか、こういうような問題が現に起こっているのです。三月になってから報告が上がってきているだけでも、四件私のところに来ているわけです。まだこれはやみそうにない。そこで、国鉄総裁もまことに遺憾である、運輸大臣も一生懸命やる。しかし、事は人命につながっている国有鉄道の職場の問題であります。労使間の問題は労使の自主的な交渉におまかせになってよろしいと思う。あるいは公労委等があると思う。しかし、少なくともこういうような暴行とか脅迫とか、同僚の職員が、たとえ組織が違う、あるいは片方が職制であるといっても、いやがらせをやったり暴行をやったり負傷をさしたり、そういう事件を絶滅をするそのはっきりしたあかしが出るまでは、運賃値上げはやらぬという態度をおとりになれませんか。
  327. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも、運賃問題とこれと一緒にするというわけにはいかない。国鉄再建をする、そのためにも、こういう問題がおそらく労使間の関係で、従業員の処分等についても何かの申し合わせがあるのじゃないか、そういうために管理者が、知っておりながらその処分ができないというようなことではないだろうかと、まあ私なりに実は想像しておるのですが、もしそういう事態であるなら、ただいまのような刑事事件はこれは処断すべきである。どんな労働協約があるにいたしましてもそれは直すべきだ、かように私は思います。そうしてやはり本来の労使関係を樹立する、正しいものをつくり上げる、そこに初めて国民の支持もあるだろう、かように思います。  私は、こういうことができておるから運賃は上げるな、こういうように何もかも一緒にして判断するところに私どもあやまちをおかしてはならない、かように思うわけです。和田君どうでしょう、とにかく悪いことは悪い、また国鉄の財政的な問題は問題として、再建は再建として別々にやはり対処すべきじゃないでしょうか。私はさように思います。
  328. 和田春生

    和田(春)委員 ところが、きのうのあの急行列車の事件がけさほど報道されました。ずいぶんいろいろ聞いておる。私も、実は最近は自動車もこみますし、いろいろわかったほうかいいと思って国電、地下鉄を利用して朝国会へ出てきておるわけです。中でいろいろ話が出ている。こんなでたらめをやる国鉄に運賃なんか上げてやれるかという声が非常に強いのですよ。これはこれ、あれはあれと言いますけれども、ちゃんと良質のサービスが保証されている、しかも信頼のできる国鉄である、こういう前提があって、やむを得ないものならば国民も協力をしよう、こういう気持ちになると思うのです。しかし、いま言ったような暴力事件が起きつつある。私は、これはほうっておくと、いまは四十万国鉄の職員という数を見れば部分的なように見えますけれども、だんだん波及をしていきますとたいへんな問題につながっていって、それこそ国鉄の長年築いてきた信用を一ぺんに失墜するようなものに発展しかねないかもわからない。そうすると、これはこれ、あれはあれではないと思う。もちろんそれまでは、国鉄運賃値上げをストップするということはお約束になれないでしょう。また逆に、暴力がなければ通貨を上げてもいいのか、そういう論理にも発展をいたしますから、これは私は一つの例として申し上げたわけです。  では、運賃の問題はこれはこれ、あれはあれと言うのなら、どういう方法と責任においてこの暴力行為を絶滅するということを担保されますか。これは総理の所信をお伺いしたいと思うのです。
  329. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん、国民の足、生命を託しておる、あるいは財産を託しておる国鉄、その輸送の完ぺきを、やはりわれわれが信頼できるような形によって国鉄がそれを遂行してもらいたいと思います。先ほど来の総裁の話を聞きましても、また運輸大臣の話を聞いても、これでは国民は納得はしないと思います。私は、かような状態がどういうところから来ているか、おそらく私の想像が当たっておれば、これはもう部内の問題ですから、さっそく処理されてしかるべきだと思います。学校等におきましても、刑事事件になったそういうような者はこれはやはり退校させております。そういうことを考えると、職場においてただいまのような事柄がまだ、それも、処分がはっきり最終的な結論が出ないからといって、昨年七月起きた事件が今日なお断が下されていない、こういうことなら、それは国民が安心できる輸送機関としての役割り、これを信頼することはできないだろう、かように思いますので、その意味においての国鉄の管理者の責任また重い。また政府もそういう意味において、国鉄でありますだけにこれはたいへんな責任を感ずる。こういう意味で、国民の信頼をかちとるように、ひとつこの上とも最善を尽くしてまいりたいと、かように思います。
  330. 和田春生

    和田(春)委員 運輸大臣、面接の監督責任者として所信を伺いたいと思います。
  331. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 ただいま総理からお答えがございましたように、私も先ほどお答えをいたしましたけれども、そういった直接暴力行為がそう行なわれているということは、私ほんとうにこれは申しわけない次第でございます。まさかと思った次第でございます。いやしくもこれだけの組織を動員し、しかも国民の足としてこれからの大使命を達成するために、そういうことが断然あってはならぬ。厳重にその点は国鉄当局にも申しまして、早急に処分する者は処分させて、そして秩序の維持をはかりまして、そうしてりっぱな、全職員が一丸となりまして輸送サービスに邁進することができるように指導するつもりでございますので、よろしくまたいろいろの点につきまして御鞭撻を願いたいと思う次第でございます。
  332. 和田春生

    和田(春)委員 国鉄総裁にお伺いいたしたいと思いますけれども、理由がいずこにあれ、特に人命を預かるようなところにおいて、暴行とか脅迫を行なうことはいけません。私は報告だけじゃなくて、私自身品川の機関区に実情調査に行って、大ぜいの組合員に夜取り囲まれて脅迫をされまして、鉄道公安官がやっと排除して出てきたという経験を持っておる。そういうようなことをほうっておいてはいけないと思うんです。  そこで総裁、あなたは、国鉄再建の重要な時期に来ているこのときに、誓って暴力を絶滅する、理由が何であれ、暴力行為は職場から一帰する、そういう具体的な事実については信賞必罰の、質じゃない、必罰のほうを必ずやるということをお約束いたしますか。
  333. 磯崎叡

    磯崎説明員 職場における暴力につきましては、全力をあげて排除いたします。
  334. 和田春生

    和田(春)委員 排除するだけではなくて、もしそういうことが起きたときには、必ず処分を明らかにいたしますか。
  335. 磯崎叡

    磯崎説明員 必ず必罰いたします。
  336. 和田春生

    和田(春)委員 必罰の上に必ずがついたんで、これは必ず必ずということになったわけでありますから、いまの国鉄総裁の言明を、この場所におきましては承っておきますけれども、今後の実績を見守りたいと思います。また引き続きそういうことがさらに発生するようであるならば、これを追及をするし、総理並びに運輸大臣についても同様に責任があると考えますので、その点を特にしかとお願いをいたしておきたいと思います。  これで国鉄関係質問は終わりまして、次の質問に移りたいと思いますが、だいぶん時間が過ぎましたので、予定質問をある程度はしょりまして、一つは農地の宅地並み課税について、少し違った情勢が出ておりますので、これを実施する所管の大臣といたしまして、自治大臣にお伺いをしてみたいと思うわけであります。  これは予算の分科会において、伝えられる自民党、社会党共同による地方税法の修正案が用意をされたという段階において、その伝えられる内容に政府が承認を与えた、承認をするという閣議の決定をしたという前提に立って、どういうふうに行なうのかということを質問いたしました。ところが、本件については、その後自民党、社会党の合意による地方税法修正案が御破算になりまして、新しい修正案が各党一致で地行の委員会で本日採決をされたと伺っているわけであります。この新しい案についても、政府は出前に承認を与えるという措置をおとりになったわけでしょうね。承認というと語弊がありますけれども……。
  337. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 この種の議員立法に対しましては、政府として見解を明らかにするようになっておりますので、議員立法が採決されます前に、事情やむを得ないものと考えるという政府の見解を述べさせていただいた次第でございます。
  338. 和田春生

    和田(春)委員 この前の自民党、社会党案と今度の各党一致の提案とは、内容においてかなり重要なポイントで違った点があるのです。前の案にも事情やむを得ないものという見解を出した。これを認めるということだと思う。今度についても事情やむを得ないものと認める。政府態度というのが、あっちへふらふらこっちへふらふらしておって、こういう重要な土地政策ないしは地方税制の課税というものは、非常にしっかりしなくちゃならぬものですけれども、一体どっちを向いているかよくわからぬのです。政府の本心としては、現行法どおりそのまま実施されるのが一番望ましいと考えておられるのか、今度地行で通った内容が望ましいと考えておられるのか、あるいはこの前やむを得ないものと考えたことが、現状においてはそれも可なりとお考えになっておるのか、その点、所管大臣としての感触をいささかお伺いしたいと思うのです。
  339. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 御承知のとおり この法律は昨年の税制改正で行なわれたものでございまして、各地方自治体はその法律に基づきまして、すでに条例その他を制定いたしておりますので、政府といたしましては、現行法どおり実施をいたしたい、ただ、その条例制定の間におきまして、八余りの団体におきまして、いまだ継続審議あるいは秘訣されたという姿もございました。税法というものは納税者の了解を得まして、納得の姿で課税をせたけれはならない。これらが継続審議あるいは否決されたということも、私たちは現行法について反省をせなければならない。  その意味におきまして、現行法の中に含まれておる、的確に実情と合わないという点は行政指導をもってやりたい、かように考えておったような次第でございますが、この点、行政指導ではだめである、一年延ばせというふうな議論もあったとは、和田委員も御承知のとおりであろうと思います。私たちは、行政指導でこれらの混乱を解決して、ぜひとも進めたいというのが本心でございましたが、四十七年度一年延ばしてもう一ぺん検討しろということは、これらの問題に対して根本的に一年延ばすことになり、各自治体にそれ以上の混乱を起こすと思いましたので、四十七年から実施という点につきましてはぜひとも守りたい。そのために議員立法によりまして法改正が行なわれたのでございますが、その意味におきまして、事情やむを得ない、こういうことで申し上げたのでございます。  この意味におきまして、今回の案と自社両党の案との間の相違点というものは、根本的な意味におきましては、一致しておると申しますか、細部の点につきまして変わった点もございますが、大綱といたしましては大差ないものと認めまして、私は、事情やむを得ないということで答弁さしていただいたような次第でございます。
  340. 和田春生

    和田(春)委員 細部においては違ったけれども、根本的には大差ないという自治大臣の御所見ですと、私は、今回でき上がった改正法の実施について、はなはだ心もとないものを感ずるわけなんです。今回の改正された内容についても、いろいろな批判はあると思います。しかし、国会委員会を通過した法律でありますから、この段階においてそういうことはいま避けたいと思うのですが、これが施行されますと、実際に実行していかなくてはならない。  そこで、一、二の点をお伺いしたいと思うのですが、市街地に点在する農地にあっては、将来緑地として残すことがと認められるものには宅地並み課税はしない、こういうことがきまったと思う。将来緑地として残すことが適当と認められるもの、これは都市計画の中に入ってくると思うのですけれども、その適当と認める主体はどこが適当と認めるのでしょうか。これは農業政策なら農業関係ですけれども、市街化区域の中に緑地として残すことが適当と認めるということは、将来の都市計画の中において、緑地として残すことが適当だと認めることになると思うのですが、どこが責任を持ってそれをきめるのかということが一つであります。  それから、そういうふうに認めて宅地並み課税をしないところは、将来にわたっても地目の変更は認めない、つまり宅地とかそういう形に転売をして地価の上昇によってぼろもうけをするということは許さない、そういうことについてはっきりした担保はあるのかどうか、その点をお伺いしたいと思うのです。
  341. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 各町村の町村長が最終的決定を行なうということになっておりますが、その間、条例で定められますところの審議会にはかりましてきめるというふうに議員立法されております。その審議会の中には、議員立法の中に書いてありますごとく、農業関係者、都市計画関係者、評価員、その他学識経験の方々によって構成される、こういう姿でございますので、この議員立法の趣旨に沿うように条例制定を行なうように町村に対する指導をやっていきたい、かように考えております。
  342. 和田春生

    和田(春)委員 なおもう一つ質問した点についていかがですか。緑地として認められたものについては、将来、都市計画の中で緑地として残すことが適当と認めたのですから、地目の変更を認めない、宅地なんかに転売をして利ざやをかせぐということは許さない、そういうことに対して担保はありますかと聞いているわけです。
  343. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 御承知のとおり、今回つくられます議員立法は、四十七年度単年度限りの特別措置ということになっておりまして、同議員立法の附則では、四十八年度の改正においてこれらの点を改めて、土地政策並びに都市計画等も勘案しながら検討して必ず制度化するという姿でございますので、いま御疑問のような点につきましてはその際検討される、私たちはそう考えております。
  344. 和田春生

    和田(春)委員 実はその点が問題があると思うのでお伺いしたわけであります。四十八年度の次のときまで佐藤内閣がお続きになるかどうかよくわかりませんけれども、そういうときに、こういう規定をしておいて御破産にしてしまってもとへ戻したのでは、何もならないと思うのですね。一年間だけのごまかしになると思うのです。かりにも政治の姿勢が問われて、一年だけのごまかしであるというようなことがいわれることのないように、私はくぎをさしておきたいと思う。(「議員立法だ」と呼ぶ者あり)議員立法だという声がありますけれども、議員立法ということと、それからこれを実施していくということについては、やはり重大な関連があるわけですから、その点については、政府側に言っているのですけれども、同時に議員の皆さんにも、私の意見は意見としてお聞き願っておきたいと思うわけであります。  特に、なぜ私がこういうことを問題にするかというと、現在のいわゆる都市政策というものが行き詰まっている一番大きな原因は、この土地政策にあると考えているからであります。この土地政策が全く朝令暮改である。そういうところから、結局、横着に立ち回った者、要領よくやった者が巨利を博する。まじめにやった者が損をする。そういう、正直者が損をして、そうでない者が得をするような状況が続いてきておる。これが地価の投機を刺激する。さらに土地インフレ、公共事業費をどんどん食っていって、当初の予定どおりなかなかできない大きな原因になっているわけであります。そういう点で私は、いま国会で議員立法で通った法律そのものを問題にしておるというのではなくて、その法律に関連する土地政策に対する政府の姿勢というものを問題にしたいわけなんです。この点について、少なくとも当面は最高の責任者である佐藤総理でございますけれども、こういうような、あちらへ行ったり来たりした経験にもかんがみて、ほんとうに抜本的な土地政策を立てなくてはいけないと考えますけれども、その点について総理の所信をお伺いしておきたいと思うのです。
  345. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 なかなか一口に土地対策と申しますが、実効のあがらないもの、これが物価問題、その中の土地対策、地価対策、こう言ってもいいかと思います。ことに投機の対象にほんとうになりやすいと申しますか、そういう意味でいろいろの制限をしておりながらも、なかなか思うようにならない。しかも公共事業の土地を確保することにすらこと欠くようになってきている。そういうことでたいへん頭を悩ましている問題でございます。  いまの土地の値上がり、これを安定さす方法、ときにあるいは課税をしてみて、そうして不労所得についてはその課税でみんな取り上げる、こういうことも一つの方法かと考えないわけでもありませんが、なかなか巧妙に税金分がまた一般土地利用者に転嫁される、こういう問題もありまして、なかなか効果がない。私はそういう意味からも、ただいまの公共団体の先行取得、この制度などはもっと適当に活用すべきではないだろうかと実は思っておるようなことでございまして、とにかく土地自身も、国有あるいは公有のものを払い下げるというようなことは、これはほとんどできないような、非常に慎重にやらなければならないが、その上にやはり国有、公有の土地の先行取得、そういうことから一般の利益を守る、こういう方向に行かざるを得ないだろう。そうしていわゆる土地の地価がいろいろ投機の対象になるが、それをあるいは金融の面からというわけにもまいりませんので、いまの税制とのかみ合わせによってどの程度効果をあげ得るか、そこはさらに積極的に考うべきではないだろうか。実はほんとうにこの問題は頭を悩ましている問題であります。ただいま簡単にお尋ねでございましたけれども、どうも地価を安定さす、これはなかなか困難なことでありまして、私どももほとほと困り抜いている、こういうような実情でございます。
  346. 和田春生

    和田(春)委員 総理は、地価を安定することはなかなか困難な問題であると言われておりますけれども、諸外国におきましても成功している事例もあるわけであります。私は困難な一番大きな原因は、土地政策が確立されていないというところに問題があるわけであって、困難だから土地政策が確立しないんではない。土地政策にしっかりした態度がないからだんだん問題を困難にしてきた、こういうふうに理解をするのが、これまでの経緯の推移について正しい見方だと考えているわけであります。この問題については再三にわたって取り上げてまいりました。また場所を変えまして、土地政策のいろいろな問題について、政府態度、今後の方針をただしたいと思いますけれども、この問題は質問時間の関係もありまして、この程度でとどめておきたいと思います。  今度は陸から海のほうに変わりまして、少しばかり質問させていただきたいと思います。  海上交通安全法が長い間懸案になっておりました。やっと今回の国会におきまして審議の日の目を見るようになってきたと思うわけでございますが、依然相当激しい反対連動もあるようであります。また、政府がおきめになりましたけれども、政府・与党の中にも、この海上交通安全法については断固阻止すると称して、地方において演説をぶっている方々もおるやに伝え聞いているわけであります。真偽はよくわかりません。なかなかむずかしい段階に来ていると思うのです。  運輸大臣にお伺いしたいのですけれども、海上交通安全法今国会成立のために、政府としては全力を尽くして努力されますか。まずその点をお伺いしたいと思います。
  347. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 御承知のとおり、海上交通安全法を提案いたしますが、私ども交通の安全確保という最大使命を持っております。もう申し上げるまでもなく、最近の東京湾、伊勢湾また瀬戸内海の船舶のふくそうは非常なものでございまして、これがために、どうしてもこれを出さなければ海上の交通安全は期せられない。御承知のとおり五年間の懸案でございます。一方漁業方面におきましては、これにつきましてやはり相当いろいろの問題を起こします。でございますから、水産部会をはじめといたしまして、その方面で、海上安全の確保はいいけれども漁業に及ぼす影響も非常に大きい、これに対してどういうような措置をやってその間の調和をとるかという議論が出るのは当然でございますが、しかし幸いにいたしまして、政府部内におきましても、赤城農林大臣をはじめ水産庁長官その他非常な御尽力をいただきまして、完全に私のほうと農林省と意見一致いたしまして、水産部会も非常に協力をしていただきまして、私といたしましては、五年間の懸案を一応御審議をいただく過程まで乗せたということにつきまして、非常に喜んでいる次第でございます。いろいろまだ立場、立場がございますので、そういう方面につきまして御主張もあると思う次第でございますが、ぜひ今回は、いかなることがございましても、海上安全の確保の第一歩としてこれだけはやりたいというような決心をしている次第でございますので、ひとつ一そうの御指導と御鞭撻をお願いする次第でございます。
  348. 和田春生

    和田(春)委員 この問題については、いずれ交通安全対策特別委員会において具体的な審議が行なわれるわけでありますから、内容等についての質問等は私は差し控えたいと思います。ただし、ただいまの運輸大臣の決意の御表明がございましたので、真の海上の交通安全とは何か、こういうことを大局的な立場に立って十分踏んまえながら努力をされることを、総理にもあわせてお願いをいたしておきたいと思います。  次の質問に移りたいと思いますが、実はこれも分科会で質問いたしまして、時間不足のためと、外務大臣等が同席をしておられませんでしたために、はっきりした政府の所見を伺うことができなかった問題、それはマラッカ海峡の安全航行と外交姿勢に関する問題であります。この点につきまして、少しばかり所見をお伺いいたしたいと思います。  この前は、本件について、運輸大臣よりもむしろ外務大臣のほうの所管である、私は十分委細承知をしていないという運輸大臣のお答えもあったわけであります。そこで、まず最初に外務大臣にお伺いしたいのです。なお、この質問は、分科会における質問の際に、条約局長外務大臣の発言を訂正するというような不穏当な発言をされまして、一もめした、いわくのある問題でございまして、外務大臣の真意をお伺いいたしたいと思うのです。  これは三月二十三日付の新聞報道によるわけでございますが、マラッカ海峡の問題と海洋法会議関係について、「わが国は原則的には自由通行を確保したい立場であり、利害が食い違っている。このため、外務省はマラッカ海峡問題も海洋法会議の場で、国際的な解決をつけたいとしている」、こういうふうに外務省筋の意見として伝えられている、こういうふうになっているわけでございます。これは参議院の沖繩・北方問題特別委員会答弁をされているわけですが、この際、一体真意はどこにあるのかという点を、所管の責任者である福田外務大臣にお伺いをしたいと思うのです。
  349. 福田赳夫

    福田国務大臣 マラッカ海峡問題は、過日、インドネシア政府の高官の発言がありまして、それに関連していろいろ論議があったのですが、私どもは、マラッカ海峡はわが国にとっては非常に重大な海峡である、そういうところから、インドネシア政府に対しまして、その発言の真意を確かめたわけです。その結果は、インドネシア政府のほうは、ロンボク海峡というものがあるじゃないか、いまあの狭いマラッカ海峡を大きなタンカーが通る、それは非常に危険なことだ。そこで、二十万トン以上のタンカーにつきましては、ロンボク海峡を提供しますから、それを利用されたらどうですかということで、マラッカ海峡には実は触れておらないのです。  ところが、一方におきまして、領海問題というのがあるのです。わが国は三海里説をとっておる。これは海洋国家として当然のことだったと思うのです。ところが、最近になりまして、この領海につきまして、六海里、十二海里、もっと遠い距離を主張する国が出てきた。そこで、いずれ来年の国連海洋法会議の席でこの問題が討議されるだろう。そのときはわが国とすると、世界の大勢に従う、場合によれば十二海里という説をとるかもしらぬ。そうしますと、マラッカ海峡が、十二海里説をとりますと、公海部分がなくなっちゃうのです。そこでまた、このマラッカ海峡問題という問題も論議されるでありましょうが、私の先般お答えいたしましたのは、このマラッカ海峡を国際海峡にしたらどうだ、こういう主張をする国があります、この問題につきましては国連海洋法会議において討議さるべき問題である、こういうことでございます。
  350. 和田春生

    和田(春)委員 残り時間も少ないので、要点的に申し上げたいと思いますが、この前の質問のときにも、運輸大臣の御答弁を伺っておって私はいささか失望したわけです。いまの外務大臣の御答弁を伺って、ますますたよりなく感ずるわけです。  といいますのは、私はこの問題を非常に重要視しております。というのは、御承知のように、もしマラッカ海峡の自由航行というものが制限をされる、ロンボク海峡を通らなくてはならぬという形になりますと、いま問題になっている二十万トン以上のタンカーで四日ないし五日というものは運航期間がおくれるわけでありまして、それだけ回転がおそくなります。さらにそれを石油コストにはね返すという形になりますと、計算によっていろいろありますけれども、トン当たり二十円ないし四十円単価が上がる。当然これは原油のコストが上がるわけですから、電力のコストにもはね返ってまいりますし、あるいはそれは政府の財政運用にも影響してまいります。日本経済全体にたいへん大きな影響を与える問題であります。特にわが国のエネルギー源の大方は、マラッカ海峡を通りましてペルシャ湾方面から運ばれているわけです。  私が問題にしたいのは、いまインドネシアは、伝えられるところによると、別にマラッカ海峡の航行を禁止すると言っているのではない、そういうふうにいわれている。しかし、それならばなぜロンボク海峡を国際通路として開放するということを言わなくてはならないのか、その背景にある問題を重視しろ、そういうことを私は言っているわけであります。つまり、領海十二海里にする、特に開発途上国は領海に対する主権の及ぶ範囲というものをどんどん広げていこうという考え方が非常に強いわけです。そういうような意向というものを非常に持っている。しかもマラッカ海峡は、最近これは日本もいろいろ協力をした測量の結果でございますけれども、伝えられておったよりも大型タンカーの航行安全にとってはかなり危険な要素があるということがわかってきた。そういうところで万一事故を起こされて沿岸国が汚染をされるということになったら困る、こういう懸念もあると思います。さらにまた、インド洋に対するソ連海軍の進出、こういう軍事的背景もあると思われますけれども、ソ連はマラッカ海峡は国際水路として自由航行にしろということを主張している。いろんな点が重なっておって、ロンボク海峡の問題をわざわざ持ち出したのは、将来マラッカ海峡は、沿岸三国、つまりマレーシア、インドネシア、シンガポール、それが管理する内水である、公海として自由に航行すべきところではない、それぞれ関係沿岸国の領海の範囲内であって、ここが管理をする、そういう態度に出てくるかもわからない布石である、そこまで考えてみる必要があるのではないか。  私は、これは単なる推測ではなくて、こういう方面に関係をしているいろいろな人の意見を総合してみると、その危険性がある。そこで、ある日突然に、マラッカ海峡は自由に通しません、これは沿岸三国の領海内です、そこは通さないから、ロンボク海峡をあけておりますからどうぞお回りください、こういうふうになったときに、拝みます、頼みますと言っても手おくれである。外交交渉というものは、事が起きてからあと始末をするのではなくて、そういう国際的な動きの背景を読みながら的確な手を打っていくというのが日本外交姿勢として非常に大切なところではなかろうか、こういう考えを持っているわけであります。そういう点について外務大臣どういうふうにお考えか、承りたいと思います。
  351. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいまの和田さんの御所見、私も全く同感です。私どもも、あらゆる場合を想定し、わが国の船舶が自由に航行できる、こういうことが確保されるようにというふうに念願しまして、三カ国ありますけれども、これらの国々に対しましてそれぞれ具体的な手を打っておる、こういうことが現況でございます。
  352. 和田春生

    和田(春)委員 そのことに関連して、先ほど外務大臣は、マラッカ海峡を国際水路として自由航行の原則を保ちたい、そういう問題は国際海洋法会議の場で議論をしたいという趣旨のこともおっしゃられました。その点は三月二十三日の報道が間違っていないと思うのですけれども、私は、マラッカ海峡の問題を解決するのに国際海洋法会議に持ち出すという考え方自体が、かえって解決を困難にするのではないかというふうに思うわけです。  さらに、この前の私の質問に対して、外務大臣はいらっしゃいませんでしたが、条約局長説明するところによりますと、領海の範囲について、各国が十二海里説をとるならばわが国もそれにフォローしたい、こういう考え方であるということを説明されたわけであります。その点がそのとおりであるかどうか確認をしたいという点が一点であります。  同時に、今日では、領海三海里、そして海洋は公海自由の原則に立って自由に飛び回れるんだ、これは、世界の強大国が植民地をほとんど押えておった、海洋に近接をしている開発途上国も十分な力を備えていないというときにのし歩いておったわけですけれども、最近では開発途上国も、海洋に近接している国は、領海は一番狭いところで十二海里くらいですね。中には二百海里などというとんでもないことを言う国も出てきておりますけれども。ともかく領海、専管水域あるいは大陸だなというものに対して、できるだけ自分たちの主権を広げていきたい、そして海運先進国あるいは非常に強大な経済力を持った国にかってなことにはさせないぞ、そういう心情が非常に強まっておるというのが、国際的な傾向としてはっきり読み取れるわけであります。そういう場合に、マレーシアとインドネシアという沿岸国は、マラッカ海峡を国際水路として自由に航行させろというソ連の発言に対しても非常に反発を示しているわけなんです。そういうところへ日本が海洋法会議にマラッカ海峡の問題を持ち出したら、さては日本は、沿岸国の主権を尊重せずに、先進国が影響力を持っている国際海洋法会議の場において、マラッカ海峡を自由に押えようという魂胆があるのではないか、こういう形に巻き返しを受けますと、とんでもないことになる危険性があるのではないか。さあ通さぬぞと言ったときに、防衛庁長官おりますけれども、まさか海上自衛隊が日本のタンカーにくっついて行って、武力で押し通るなんというばかげたことはできるはずがない。そうなるなら、むしろそういう特に開発途上国の隣接海域の主権に対する考え方というものを十分含んで、わが国は、大国である先進海洋国、海運国の味方というよりも、そういう開発途上国への同情的な立場に立って、領海は十二海里なら十二海里、こういうことを海洋法会議できめましょう、そういう率先した態度をなぜとれないのか。そして、そういう領海を貸さないというところについては、お互いが支障のないように安全に平和に利用するということについて協力して助け合おうではないか。同時に、そういうところに対する水路の開発であるとか、航路標識であるとか、安全航行対策であるとか、そういう面については、いままでもある程度やっているけれども、日本はひもをつけずにもっと積極的に技術援助をやる、経済援助をやりましょう、そしてあなた方の国のそういう考え方には十分同情的な態度をとるが、それを前提にして協力をしていきましょう、そういう考え方で国際海洋法会議をリードするという、今日の世界の情勢を見た積極的な態度をとるべきではないかと私は実は考えているわけなんです。どうもその点についてたいへん受け身で消極的だ。この点について外務大臣の所見を重ねてお伺いをしたいと思うのです。
  353. 福田赳夫

    福田国務大臣 まず自由航行水域の問題でありますが、これは何もわが国が持ち出そうというのではないのです。そういうことをマラッカ海峡に適用しようという意見が国際社会の中にある。そういう問題にわが国としてはどういうふうに対処するかということにつきましては、そういう自由航行海峡制ということにつきましては、これは海洋法会議で論ぜられるべき問題である。私どもは何もマラッカ海峡を自由航行海峡、水域としようというような、そういう提唱をする考えは毛頭持っておりません。  それから三海里を十二海難にしようという領海問題、これはわが国は何といたしましても海洋国家である。それから漁業の立場があります。そういうことから言いますると、領海は狭いほうがよろしい、こういう見解のもとに従来から三海里説をとってきたのです。ところが、だんだん時勢が変わってきまして、六海里でありますとか、あるいは十二海里、またさらには、もっと広い水域を指定しようというような動きがある。そこで、この問題は来年の海洋法会議で論議をされるだろう、こういうふうに思うのでありますが、その際わが国が率先して十二海里と言うかどうか、これはちょっと考えさしていただきたいのですが、しかしもう大体大勢はそういうところへ来ておる、そういうふうに見ておりますので、十二海里が大勢だという際には快くこれに賛同しよう、こういう方針でございます。
  354. 和田春生

    和田(春)委員 福田外務大臣は次期首班の有力な候補といわれておるわけでございますけれども、この問題は来年のことなんですが、どうもいまのお考えを伺っておると、私の申し上げておることを御理解願っていないのではないかというふうに心えてならないわけです。時間がありませんから、一問一答の形をとらずにまとめて申し上げたために、ことばが足りない点もあったと思うのですけれども、私は、公海自由の原則で領海の範囲が狭ければ狭いほうがいいというのは、大国が七つの海を支配しておった砲艦外交時代の遺物だと思うのです。そういうことにかかわりなく、今日沿岸国は、先進国も開発途上国も、特に開発途上国はどんどん領海の範囲を設定して、これはおれの領海だ、ここへ来たらけしからぬと言われたら、手も足も出ないのが現状でしょう。海軍力を背景にして力で押し渡るというなら別ですよ。したがって、そういう領海の範囲は狭ければ狭いほどいいという時代は古い時代だ。これからは、ある程度の領海、専管水域というものを認める、そういう立場に立っての国際協調という、そういう新しい時代にはっきり転換してきているのではないか。  そこで、かりに領海を十二海里として認めるというわが国の積極的主張があれば、マラッカ海峡はもはや国際水路ではない。沿岸国の領海の中にすっぽり入ってしまう。そういうことを認める前提に立って、マラッカ海峡の安全航行というものを相談をするという態度をとらないのですか。そうすれば海洋法会議に持ち出す必要はない。海洋法会議できめることは領海の問題をきめればいい。十二海里にきまればマラッカ海峡をどうするかということは、国際海洋法会議というよりも関係沿岸国の二国間あるいは三国間の交渉の問題になってくる。そこを見抜いて、武力を持たざる平和国家としての日本は考えなくちゃいけないのじゃないか、そういうことを私は申し上げているのですよ。そういう点についての、外務大臣の新しい日本の海洋外交のあり方とでも申しますか、その所信を伺っておるわけでございます。これについて、ひとつ重ねて外務大臣と、いまお聞き取り願ったと思いますが、内閣の最高責任者として、海洋国家の総理として、佐藤首相の御見解を伺うことにいたしたいと思います。
  355. 福田赳夫

    福田国務大臣 最後の和田さんの御発言、私も考え方におきましては全く同感であります。そういうような態度をもちまして海洋法会議に臨みたい、かように考えます。
  356. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま外務大臣のお答えいたしましたので御了承願います。
  357. 和田春生

    和田(春)委員 そういう態度でもっと具体的な問題を積極的に検討して、日本が立ちおくれたり、あるいはいたずらに大国意識を振り回すことによって沿岸開発途上国の反発を買って要らざる不利を招かないように格別の御配慮をお願い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  358. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 和田君の質疑は終了いたしました。  次に、東中光雄君。
  359. 東中光雄

    東中委員 私は、先日横路議員が公表しました外務省の機密文書について、あれは非常に重要ですのでお聞きしたいと思っておったのですが、各党の申し合わせもありますので、きょうは別の問題についてお聞きしたいと思います。   〔委員長退席、細田委員長代理着席〕  先ほど防衛庁長官が、二月七日に決定されましたあの国防会議の決定、四次防の大綱について、この大綱によっていわゆる防衛庁試案は白紙に戻された、こう言われたのですが、同時に、この大綱の中にいわゆる制海制空権の問題が入っているのだというふうに言われたようにお聞きしたわけですが、四次防の決定された大綱の中に、整備方針の留意点の第一として「防衛力の向上については、とくに周辺海域防衛能力および重要地域防空能力の強化ならびに各種の機動力の増強を重視する。」こうなっているわけですが、この中に、わが国及びその周辺の海域や空域におけるいわゆる制海の確保あるいは制空権というか、あるいは最近は航空優勢といわれていますが、そういうものが含まれているのかいないのか、これをひとつはっきりしていただきない。
  360. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 御指摘の周辺海域の防衛能力、これは海上自衛隊の増強、護衛艦、潜水艦の充実といったような意味を含むわけです。これはさっきお答えをいたしましたように、かつて中曽根君が私案として発表しましたものは、大体周辺海域を一千海里くらいの距離に置いておったわけですが、これは私どもは、五、六百海里、数百海里ということにしていこう、で、その問の特に安全航行を重点的に考える、わけても沿岸海域、三海峡、こういった重点的なところに海の力を注いでいくというふうにお受け取りを願いとうございます。
  361. 東中光雄

    東中委員 私は問題が二つあると思っているのですが、それをごっちゃにして防衛庁長官どうもお答えになっているようなんです。一つの点についてまず申し上げますと、防衛の区域というか、そういう点でいわゆる中曽根構想は一昨年のこの予算委員会以後何回も言われておるわけですけれども、そこで一千海里という問題が出ているわけです。しかし、それは一般的に一千海里じゃなくて、具体的に東は南鳥島、南は沖鳥島、西は南西諸島、本土東京を中心にして一千海里、こう言っているわけです。それを五百ないし六百海里というふうにいま言われているわけですが、そうするとどういうことになるのですか。
  362. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 具体的に島の名前をさしたその表明を私どもは修正しよう、こういう考え方に立っておるというわけです。いたずらに諸外国を刺激する必要はない。また、いまの海上自衛隊の現勢力をもってすれば大体五、六百海里、これに重点を置きかえることのほうが妥当であるという見解に立っておる、こういうことです。
  363. 東中光雄

    東中委員 五、六百海里と言われているのですが、中曽根構想が言っているのはどこからどこまで約一千海里、こう言っているのです。五、六百海里と言われているのは、そうしたらどこからどこまでなんですか。全然わからないじゃないですか。
  364. 久保卓也

    ○久保政府委員 防衛庁原案の際には、お話しのように、南鳥島、沖鳥島、南西諸島といったような海域を区切りました。その場合には言われるように千マイルでありました。  そこでいま数百マイルと申しまする場合にはどの海域ということではありませんで、おおよそ日本列島の周辺について数百マイルあるいは五、六百マイルということであります。ただし、たとえば日本海でありますとかあるいは東シナ海でありますとか北のほうでありますとか、そういうところはおのずからまた幅が狭まってまいるわけでありまして、具体的な周辺海域というものは今度の四次防の検討の過程において検討してまいりたいと思います。
  365. 東中光雄

    東中委員 そうしますと、中曽根構想で言っていたのは、表現のしかたは、東京ないし本土こう言っていました。本州ということを言っていた。いまは日本列島、こう言われているのです。沖繩が復帰になれば、沖繩も日本列島の一部ですから、そこから五百ないし六百、具体的にどうするかというのは検討するけれども、今度は日本列島というものを基点にして五、六百海里ということであれば、中曽根構想と実質的には一つも変わらない、むしろ広くなっていくということになると思うのですが、長官いかがですか。
  366. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 そのあたりはいま御説明しておるように、もうちょっと時間をかしてください。具体的に検討してまいる予定でおります。具体的にきめたいと思っております。
  367. 東中光雄

    東中委員 そういうことであれば、一千海里を五、六百海里にしたと、えらい縮小したみたいに数字の魔術で言われておるけれども、基点が変わっているのですから、具体的には検討をするということになるだけで、日本列島という基点からいけばむしろ中曽根一千海里説を上回る場合だってあり得る。現に沖繩の八重山から五百海里、六百海里、広くなります。いま防衛庁長官が言われておるのは結局中曽根構想を縮小したというようなものではない。むしろ拡大することだってあり得るのだということになると思うのです。  もう一点の問題点は、今度は周辺地域の航空優勢、制空、制海、これはやはり今度の四次防大綱の中でももちろん確保していくという方向、それを否定するものではないというふうに先ほど答弁されたのですが そのとおりでございますか。
  368. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 日本の主権の及ぶところ、もちろんそのとおりでございます。
  369. 東中光雄

    東中委員 主権の及ぶところだけですか。主権の及ぶところ、領空、領海及びその周辺ということではないのですか。
  370. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 領空、領海、その周辺を含むわけです。この識別圏等につきましては、これも後刻四次防策定のときに具体的にお示しを申し上げたいと思います。
  371. 東中光雄

    東中委員 防空識別圏の話をしているのではなくて、制空あるいは航空優勢ないし制海確保という問題について、いま長官は領空、領海だけではなくて、公海、公空に当たる周辺も含むというふうにいまはっきり言われた。それならば中曽根私案の中に書いておる内容と全く変わらぬわけです。中曽根私案の中に書いておるのは、「わが国周辺において必要な限度における航空優勢、制海を確保」する、この内容はそのまま今度の四次防大綱の中には入っているんだということになります。しかも四次防大綱の、先ほど読み上げました留意点の第一点というのは、これは三次防そのままなんです。ことばだけ三次防になっておって、そして白紙になったといわれる中曽根私案といわれている防衛の基本構想の中の一番中心問題であった「わが国周辺において必要な限度における航空優勢、制海を確保」というのはそのまま入っているんだということになれば、これはことばだけが三次防とウリ二つになっているけれども、内容は中曽根私案は全部入っている、こういうことになるじゃないですか。
  372. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 そういうことはないので、これからまだ四次防を策定するんですから、その四次防を策定したそのものを見ていただくというとわかるわけで、ここでも周辺海域においては、私いま申し上げたように多少構想を変えていく方向で検討しておる。それから領空を守るために、その周辺に航空自衛隊の航空機が出るということは、これはもう航空上の常識でありまして、それはもう当然のことだと思うのです。しかし、どういう姿にしていくかということについては、これは中曽根構想とはおのずから違ったものを今後策定していきたい、こういうふうに考えております。
  373. 東中光雄

    東中委員 どうもことばを変えられるんで非常に明確でなくなってしまうわけですけれども、航空優勢、制海確保ということは防衛庁の新四次防大綱の方針の中では含まれているんですか、いないんですか。航空優勢、制海権確保というのはわが国周辺においてやるということはもうないんだ、そういうものはやらない、そういう方針ではないというんだったら、その点をはっきりされたいのです。そうじゃないとあなた言われたから、聞いている。
  374. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 それは、ことばの内容を言われるわけですが、日本がこういう海に四辺取り囲まれておるという地理的環境、これからいいましてもやはり海に重点を置くということは否定できません。空またしかりであります。しかし、中曽根構想とはおのずと違ったものを具体化してまいります、それが今後お示しする四次防の原案になりましょう、こう申し上げておるのですから、これは否定するわけにはまいりません。もちろん重点的にやっていかなければなりませんが、中曽根構想当時よりは縮小される方向で検討をいたしております、こう申し上げておるわけです。
  375. 東中光雄

    東中委員 私は、四次防大綱が国防会議できまって、そしていわゆる四次防計画はまだ装備計画の具体的な問題、あるいは量的なあるいは財政的なそういうものはきまっていないけれども、大綱はきまっているわけですから、そして航空優勢ないし制海確保という考え方が出てきたのは、三次防ができたときに出てきたのじゃないのですよ、四次防の問題として、そういうふうにやっていくんだということが出たのですから。しかもその内容が中曽根構想の中で出てきた。それがいまそのまま大綱の中に入っているんだということになれば、程度の問題は別として、範囲が越えるわけですね。三次防の内容とは違ったものになってくるはずなんです、内容が違うのですから。ところが表現は、四次防大綱の表現と三次防のときの表現とは全く一緒なんです、先ほど申し上げた留意すべき第一点という点では。  その点で、これは国防会議の議長としての総理にお聞きしておきたいのです。航空優勢あるいは制海確保、わが国領土、領海及びその周辺においてそれを確保するという方向は入っているのですか、入っていないのですか。
  376. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 誤解のないように申し上げておきますが、中曽根構想というものはいまないのですよ。かつて中曽根君が言ったことがある、しかしさようなものは政府がはっきり取り上げておらない、このことだけはっきりしておいていただきたいのです。どうも中曽根構想、中曽根構想、四次防はそれと関連がある、こういう言われ方をすると、非常に問題が混乱します。国民の皆さんはお聞き取りになる、中曽根構想はいまなお生きているのではないか、信用する東中君がああ言って質問しておるから、こういうことになったらそれはたいへんです。ですからただいまの中曽根構想は別だ、これはもうないのです。  それからもう一つ、いまの航空優勢あるいは制海権、こういうことを言われますが、わが国の自衛隊で一体制海権を確保できるとお考えですか。私はとんでもない妄想と、かように思いますよ、いまのような状態では。だから自衛隊自身が制海権を持つというそんなことはできっこありません。またスクランブルはいたしますけれども、いわゆる航空優勢、そういうふうな状態でもないこと、これまたおわかりだと思います。私どもは何とかしてわが国の領海、同時にまた領空、この安全は確保したい、これはさか立ちをしてでも確保したい、かように思っておりますが、それすら実はできない状態じゃございませんか。ただいまのように、たいへんな大それた力でも持っておるように園児に印象づけないようにひとつ実際を見きわめて、この状態で制空権あるいは制海権、それなど持てるものではございませんから、誤解のないようにお願いしておきます。
  377. 東中光雄

    東中委員 総理はそう言われますけれども、それはとんでもないことなんですよ。防衛庁がいわゆる防衛白書、「日本の防衛」を一昨年の十月に出された。これは昭和四十五年十月二十日の閣議で了承されています。その文書によりますと、はっきりと「わが国およびその周辺の海域や空域における航空優勢、制海の確保に努める」と書いてあります。しかもこれは閣議了承でしょう。国防会議よりも上でしょう。そういうことはできっこないんだと言うけれども、現につとめると書いているのですよ。だから国防会議の方針が閣議了承のこの方針を変更するというのは、国防会議でそんなことはできませんよ、閣議のほうが上なんですから。
  378. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 独立国である以上、当然そこに書いてあるようなことは努力しなければなりません。だからつとめると書いてあるわけですね。総理が言われたのは、現在の規模でそんな制海だ、航空優勢だと大きなことを言ったって、事実上なかなか思うにまかせないという運営面の話を言われたので、独立国として努力をし、当然いまの御指摘のような方向でいくということは、これは私はつとめなければならぬ自衛隊の任務だと思っております。
  379. 東中光雄

    東中委員 よくわかりました。現在の力ではできないから、しかしこれをつとめるんだ、だから制海確保、航空優勢になるように、現在の力じゃだめだから、うんと大きくするということをつとめると書いてある。そうじゃないですか。——いや、もういいです。水かけ論になるから、いいです。そう書いてあるのだから……。
  380. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 そういうふうに極端に、つとめるというとそれは無制限に大きくするんだ、そんなことじゃないので、やはり国力、国情に応じ必要最小限のという前提がいつもつくのが自衛隊のあり方ですから、無制限に大きくするということはありませんので、これはどうぞ御安心願います。
  381. 東中光雄

    東中委員 そうすると、航空優勢、制海確保につとめるというのは最小限のものとして出されておる方針なんでしょう。最小限度のものでもこれは要るんだ、だから、そこにつとめるのだ、こう書いてあるのだから、現在のものではちゃちなんだからだめなんだ、こういうことになれば、どんどん大きくしていくという方針にならざるを得ない。先ほど中曽根構想を否定されたけれども、中曽根構想の案は手続的には否定されています。なくなりました。しかし、その構想がこっそりいまの四次防大綱の中に入っているということを申し上げているのであるということを、はっきりさせておいていただきたいと思います。  次の問題に移りたいと思います。  総理にお聞きしたいのですけれども、いま日米間のいわゆる軍事協議を強化していくという方向を総理自身出されておるのではないか。日米安全保障協議委員会がございますが、この機構を構成を変えて、そして協議事項になる対象を広げていくという方向を出されておるのではないか、現にそれが進められておるのではないか、こう思うのですが、いかがでございましょうか。
  382. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは私の担当ですから、先に私がお答え申し上げます。  中曽根防衛庁長官が、当時、安保協議委員のメンバーというものは、わがほうは外務大臣防衛庁長官であり、アメリカ側は大使と太平洋軍司令官である、これはどうも好ましくないので、できれば政治家同士ということで先方も国務長官なりあるいは防衛担当長官が委員になることが望ましい、こういう一つの提案を、アメリカ諮問のときにレアード国防長官にしたことは、私、話として聞いております。しかしその後、政治的な話し合いというのは相互に、このごろは経済関係の定期協議もありますし、いろんな機会があるので、そういう機会に必要があれば政治家レベルの話はするということでどうであろうかということで、今日に至っておるのでありまして、いまにわかに私どもそういう形に変えていきたいという方向で総理に協議を申し上げたこともありませんし、大体現状維持でよかろう、政治的な問題は必要に応じて相互訪問の形で解決されるものだというふうに理解をいたしております。   〔細田委員長代理退席、委員長着席〕
  383. 東中光雄

    東中委員 いま防衛庁長官は、当時の中曽根防衛庁長官がレアード国防長官にそういうことを申し入れた、こういうふうに言われましたけれども、これはそうじゃなくて、七〇年九月に中曽根さんが防衛庁長官として訪米したときには、これは防衛庁長官として、そして当時の牛場大使も立ち会い、また防衛庁の人もついていって、しかもそれはレアードだけじゃなくて、ロジャーズ国務長官、ジョンソン国務次宴、キッシンジャー大統領特別補佐官、そしてレアード国防長官、関係あるアメリカ側の責任者に全部そのことについて申し入れをしています。そしてそこで言っているのは、安保協議委員会の構成を、アメリカ側が国防長官と国務長官になるというだけではなくて、太平洋軍司令官などが入っておるものなら日本の側は統幕議長も入れたらいい、こういうことまで具体的に言っている。だから、これは決して中曽根さんがちょっと政治的に何か言ってみたというふうなものじゃなくて、はっきりと岸・ハーター往復書簡による——あるいは交換公文とも言っておりますけれども、これ自体を変えなければいけないということまで言っているわけです。そうじゃございませんか。
  384. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 中曽根長官が当時そういう構想で話し合いをした。レアード国防長官だけでなしに、ロジャーズ国務長官とも話をした。なるほど御指摘のようにそういうことはあったように聞いておりますが、これはあくまで中曽根私見というふうにお聞き取りおきを願いたいと思います。私もそういうふうに防衛庁で報告を受けております。
  385. 東中光雄

    東中委員 中曽根私見じゃなくて、中曽根さんが米国各地を訪問視察したときの記録、昭和四十五年九月八日から九月二十日までの間、相当分厚い報告書で、これは秘密、角秘になっておりますね。防衛庁の中ではちゃんと各ページごとに、右上と左下に角の秘の印刷をしておる。こういう報告を出しているじゃないですか。  この中にはっきりとこう書いています。終局的には交換公文の変更を要することになろうが、それが実施されるまでの間は国務、国防、外務、防衛四閣僚レベルでの定期協議を持つことが望ましい、なお、この問題には佐藤首相も非常に関心を示し、かつ実現について希望を述べていた、これが実現されれば、アジアにおける抑止力として機能し、台湾、韓国も安心すると思う、こういうことを七〇年九月九日午前十時五分から十一時五十分までレアード国防長官に対して話をした、このときには牛場大使も宍戸当時の防衛局長も立ち会っている、そう書いていますね。佐藤総理は非常に関心を示して、実現について希望を述べていた、こう書いているのです。これは公文書ですから、中曽根さんが全くうそを書いているとは思えないのですが、どうでしょうか。
  386. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 そういうものを私は実は知らないのですが、よく防衛庁部内で調べてみましたところ、当時、中曽根長官は非常に発想の旺盛な人ですから、いろいろ自分の構想について隔意なく私見を述べられた、こういうふうに聞いております。したがって、これはここにおられるのですから総理にお聞きになればいいのですが、総理がそういう希望をされたというふうには聞いておりませんし、のみならず私が前任者から事務引き継ぎをしました当時、西村防衛庁長官も、これは相当重要な問題ですが、さようなことは引き継ぎ事項として言っておられませんので、あくまで当時の私見であるというふうにおくみ取りを願います。
  387. 東中光雄

    東中委員 私見で牛場大使が立ち会い、そして当時の防御局長が立ち会っている。個人的に言っていることじゃないのじゃないのですか。現にこの記録が角秘にして、防衛庁かどこか知りませんけれども保管されておることは間違いないのです。これだけ膨大なことが書いてある。しかもこの内容は、最後に中曽根氏自身がまとめています。それによると、まとめの中で、防衛庁、国防両長官の定期協議等という項目をつくって、先方の都合もありさしあたり定期協議よりも随時協議の形をとることとなろう、こう書いて、レアード長官の訪日は来年夏ごろに実現できると予期されるというまとめが書いてあって、現に七一年の夏にはレアード国防長官が来ているじゃないですか。佐藤総理も会われています。だから、外務省と防衛庁が日米安保協議委員会でやっておるだけではなくて、外務省及び国務省との話し合いは再再できるから、だから国防省と防衛庁長官の協議をやるようにしましょうという、そういう提案をアメリカ側から言っていますね。そのとおりに実現しているのです。だからまさに安保協議委員会の改組、そして防衛庁長官と国防省の国防長官と、ここでの軍事協議を定期的にやろう、少なくともいま随時にやっていこうという形で現に進められているわけです。単なる私見じゃなく、現にそれが実現しているじゃないですか。
  388. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 どうぞ御心配ありませんように。私、さっき申し上げたですね。そういうことで、なるほど私見という言い方がいけなければ、当時の防衛庁長官としての構想であったでしょう。それをアメリカ側に協議した事実は私も聞いて知っております。しかし、その結論は、これはさっき申し上げたように、改める必要はないでしょう。日米の経済閣僚懇談会その他いろいろ行き来が、友好国としてあるので、政治レベルで話す必要のあればそういう時期に話し合いをするということできまりました。その結論はそういうことに決着しておるわけです。だから、いまその曽根構想といいますか、中曽根私案というものは生きておりません。もうすでに結論は出ておる。安保協議委員会というものは現在のままでいこう。——で、これは中曽根君も私そう間違ったことを言っておられるわけではないと思うのです。なぜならば、こちらが外務大臣防衛庁長官委員であって、先方が大使と太平洋軍司令官である。だから、太平洋軍司令官であるというなら、わがほうの統幕議長ということにもなるのではないか、こういう提案もあったわけですが、しかし何も現在そこまで変える必要はないということでその後合意に達してそのままにいる、こういうことです。そして、現実には先ほど申し上げたとおりで充足できるではないか、足りないところはそれでカバーしてまいりましょうというわけですから、東中さんが御心配になるような事態は一つもない。むしろいまは落ちついておる、こう御安心を願いたいのでございます。
  389. 東中光雄

    東中委員 それはことばでごまかしたってだめだと思うのです。事実をやっぱり見詰めていかなければいかぬと思うのです。隠すのはいかぬですよ。現に先ほども言いましたように、この安保協議委員会を変えていく、交換公文を変更する、それをやるまでの間、実現できない間は、随時やろうということで、それが現に七一年に実現しているわけです。この次にいつやられるのかどうか、それはわからぬけれども、現に実現をしている。  それともう一つ申し上げたいのは、なぜこれをやらなければいけないのかということについて、中曽根さんはっきり言うてますね。それは単にいままでの安保条約のワクの中での、たとえば日本の安全と極東の安全、平和ということではなくて、日本のアジア太平洋地域の安全保障に関する関心が高まってきたから、アジア太平洋地域の安全保障についての関心が高まったからこういうレベルにするべきだ、こう言っているわけです。日米間の深い話し合いが太平洋の平和につながるという認識があるから、そこから出発するんだ。これは明らかに両国軍事首脳による軍事協議というのは、安保条約のワクではなくて、アジア太平洋地域の安全保障、アジア安保とよくいわれますけれども、ここではアジア太平洋安保ですよ。そういうものに安保協議委員会を変えていこう、そういう提案をしておるわけですから、そういうものとして、現にレアード国防長官は七一年の夏に来日しているわけです。質的に大きく変わっている。しかもそれは先ほど来何べんも言いますけれども、佐藤総理が非常に関心を示し、かつ実現について希望を述べていたと、こう書かれているわけですから、これは佐藤総理何とかはっきりした立場を示してもらわないといかぬじゃないかと思います。
  390. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が非常な熱意を示し関心を示した。実はそのいきさつが頭に残っておらないんです。でありますから、ただいま非常に私が熱意があったら、まだ私が健忘症にかかるはずはございませんから、必ず思い起こすだろうと思います。どうも熱意がなかった証拠じゃないかと、かように思いますので、どうもそれが思い出せません。
  391. 東中光雄

    東中委員 主管大臣がアメリカへ行って、アメリカの各担当大臣に言っておる。そうして文書にまで残っておることを佐藤総理は、記憶にない、これは非常に無責任だと思うのです。それと同時に、佐藤総理自身がそういう考えを持っていらっしゃるということは、サンクレメンテにおける日米首脳会談のときのあの共同声明を見ますと、ニクソン大統領と佐藤総理両者は、両国政府が、それぞれのアジア政策について今後とも緊密に協議することを確認した、こういうふうに言われています。この内容が、中曽根さんがアメリカへ行ったときの話し合いによるとたとえばこういうものとして出てきます。中曽根氏はこう言っています。「ニクソン・ドクトリン及び韓国からの米軍撤兵発表以来、韓国、台湾等の国会議員や上級軍人が多数自分を訪ねてくるようになったが、彼等の心配していることが自分にはよくわかる。率直に言って、米軍撤退発表以来彼等は米国を冷たい国と見るようになったと感じられる。自分としては、日本からは自衛隊の上級幹部を視察の目的で韓国に派遣し、また韓国等の上級軍人を日本に招待して、相互の理解と友好関係を助長するとともに、彼等の米国に対する疑念を解消するように努めている。」こう述べた。それに対してジョンソン国務次官が発言をされて、「在韓米軍兵力の撤退は、韓国の米軍兵力を削減しても日本の支援があれば韓国の防御に心配はないという見通しで行なうものであり、日本の支援が得られるということを前提としている。」こういうふうに答えたとこれにちゃんと書いてあるわけです。こういう協議を軍事協議の中でやっておるということになったら、これはもうたいへんなことだと思うのですが、現にやったということが報告されているわけですから、こういうアジア全域についての安全保障協議、こういう方向は私は絶対許されないと——現にしかし事実上進んでいる。時の防衛庁長官という責任ある人がそういうことをやっているんですから、その点を総理の所感をお聞きしておきたい。
  392. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 わが国は海外派兵をしない、自衛隊は外国へ出かけるようなことはございません。これはもうはっきり申し上げておきます。その文書はどうして手にお入れになったか知りませんが、私はさような文書が防衛庁にあろうとは思いません。その点をさらにどういうところから取ってきたと、こういうことをはっきりおっしゃってください。そんな秘密文書があろうわけはないんです。ことに、われわれがはっきり皆さん方と約束して海外派兵はないという、外国には自衛隊を派遣するようなことはないというこういうこともはっきり約束しているじゃないですか。それを裏切るような、さような文書があろうわけはございませんから、これははっきりさしておきます。
  393. 東中光雄

    東中委員 時間がありませんからもう質問終わりますけれども、この文書がないと言われても——先ほど江崎防衛庁長官はあるとまでは言われなかったけれども、江崎長官が経済閣僚会議もあるし云々ということを言われました。そういう話があったんだということを言われた。それはここにちゃんと書いてありますね。だからこれに基づいてやられておるということははっきりしてます。現にこういう報告は必然なされるべきだし、現になされておってこの書類があるわけですから、全く総理がそういう根本的な問題で方針の——知らなかったというのはこれはやむを得ませんけれども、現にそういうものがあるんですから、そういうかっこうで動いているんですから、この点を指摘しているんだということをはっきりさせて、時間がありませんから私、質問を終わります。
  394. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 当時の記録があるということは私聞いておりまするので、まあそれがそうなのかどうかは私存じませんが、もしそうだとすれば、記録はあるというふうに報告を受けております。
  395. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうあろうとも海外派兵、外国へ出かけるようなことはございませんから、どうか御安心なさるようにお願いします。
  396. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これにて東中君の質疑は終了いたしました。  以上をもって昭和四十七年度暫定予算三案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  397. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決をいたします。  昭和四十七年度一般会計暫定予算昭和四十七年度特別会計暫定予算昭和四十七年度政府関係機関暫定予算、以上三案を一括して採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  398. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 起立多数。よって、昭和四十七年度暫定予算三案は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)  なお、おはかりいたします。委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  399. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  400. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後七時十二分散会