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1972-03-28 第68回国会 衆議院 予算委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月二十八日(火曜日)     午後零時四十三分開議  出席委員    委員長 瀬戸山三男君    理事 大坪 保雄君 理事 佐々木義武君    理事 田中 龍夫君 理事 二階堂 進君    理事 細田 吉藏君 理事 阪上安太郎君    理事 辻原 弘市君 理事 鈴切 康雄君    理事 小平  忠君       足立 篤郎君    相川 勝六君       荒木萬壽夫君    植木庚子郎君       小川 半次君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    仮谷 忠男君       川崎 秀二君    笹山茂太郎君       正示啓次郎君    田中 正巳君       中野 四郎君    灘尾 弘吉君       西村 直己君    根本龍太郎君       野田 卯一君    橋本龍太郎君       福田  一君    松浦周太郎君       松野 頼三君   三ツ林弥太郎君       森田重次郎君    渡辺  肇君       安宅 常彦君    小林  進君       楢崎弥之助君    西宮  弘君       原   茂君    細谷 治嘉君       安井 吉典君    横路 孝弘君       中川 嘉美君    中野  明君       林  孝矩君    正木 良明君       塚本 三郎君    和田 春生君       谷口善太郎君    松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 前尾繁三郎君         外 務 大 臣 福田 赳夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 高見 三郎君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  田中 角榮君         運 輸 大 臣 丹羽喬四郎君         郵 政 大 臣 廣瀬 正雄君         労 働 大 臣 塚原 俊郎君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣         北海道開発庁長         官       渡海元三郎君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      竹下  登君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      中村 寅太君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      木内 四郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 江崎 真澄君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      木村 俊夫君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大石 武一君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         警察庁警備局長 富田 朝彦君         経済企画庁調整         局長      新田 庚一君         法務省刑事局長 辻 辰三郎君         外務省アジア局         長       吉田 健三君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省欧亜局長 有田 圭輔君         外務省条約局長 高島 益郎君         大蔵省主計局長 相澤 英之君         大蔵省理財局次         長       小幡 琢也君         大蔵省証券局長 坂野 常和君         大蔵省銀行局長 近藤 道生君         文部省大学学術         局長      木田  宏君         文部省社会教育         局長      今村 武俊君         通商産業省通商         局長      山下 英明君         運輸省航空局長 内村 信行君         建設省計画局長 高橋 弘篤君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 三月二十八日  辞任         補欠選任   安宅 常彦君     横路 孝弘君   近江巳記夫君     正木 良明君   沖本 泰幸君     大久保直彦君   中野  明君     中川 嘉美君   東中 光雄君     松本 善明君 同日  辞任         補欠選任   横路 孝弘君     安宅 常彦君     ————————————— 三月二十八日  昭和四十七年度一般会計暫定予算  昭和四十七年度特別会計暫定予算  昭和四十七年度政府関係機関暫定予算 は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十七年度一般会計予算  昭和四十七年度特別会計予算  昭和四十七年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これより会議を開きます。  昭和四十七年度一般会計予算昭和四十七年度特別会計予算昭和四十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、締めくくり総括質疑を行ないます。塚本三郎君。
  3. 塚本三郎

    塚本委員 まず最初に、私は佐藤総理にお尋ねをいたします。外交問題から進めてまいりたいと思います。  最近、激動世紀と言われますごとく、世界は目まぐるしく動いております。特に脱イデオロギー時代と君ばれるにふさわしいような動き方でございます。とりわけ共産圏、同じイデオロギーと思われておりました中ソ両共産主義国がきわめて険悪な間柄になっております。反面、両極端と思われておりましたアメリカ中国とが、両首脳が一挙に握手をするというような目まぐるしい動き方でございます、これは主義主張やかつてのイデオロギーの論議に花を咲かせていた時代には想像もできなかったことだと受け取っております。その動きわが国にも例外ではないと思っております。国益のためには主義主張を乗り越えて外交交渉を展開していくべきだ、こんな風潮が世界的に、そして国内的にも高まっております。そういう事態を踏んまえまして、わが党におきましても昨年春日委員長訪米をいたしまして、ロジャーズ国務長官あるいはキッシンジャー大統領補佐官等と話し合いまして、日米間にかかっておりまする経済問題、あるいは沖繩返還交渉に対する国民希望に沿うがごとく、政府の足らざるところを補うという意思も踏んまえて参ったと私たちは受け取っております。そしてまた明日は、日中問題打開につとめるべく、春日団長を中心といたしまして訪中をいたすことになっております。なお、公明党さんでもかつて竹入委員長北京を訪れられ、いままたアメリカおいでになっておられます。かくて激動世紀における外交は、政府だけではなくしていまや野党国益のために努力をしなければいけない、国民外交時代だと私たちは受け取っております。こういう中におきまして政府は、いままでとは違ったパターンが最近展開してきておりますので、これをどのように受けとめておいでになるか。これはアメリカのごときは、かつては野党政派家には国務長官というような責任ある人たちはお会いにならなかったようでございます。しかし、先年暮れの春日委員長にもお会いいただいておりまするし、竹人委員長にお会いなさったと、あるいはなさると聞いております。アメリカ自身国民外交必要性を認めて、積極的にそのような受け入れ体制を終えておると判断をいたします。この際佐藤総理は、このような野党外交国民外交をどのように評価しておいでになるか、最初にお伺いしたいと思います。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま塚本君が述べられるように国際事情いろいろ変わりつつあります。激動時代だ、かように言うべきかと思います。私は、外国がどういうようにあろうともそのことにはあまり触れないで、日本の場合、日本立場、この立場から考えますのに、とにかく隣国との間の問題、これを調整しなくて独立あるいは安全を口にするわけにいかないとすら実は考えております。ただいまお話のありました中国の問題にいたしましても、中国隣同士である私ども政府間の交渉を持ち得ないこと、この意味においてはまことに残念に思っております。もともとことばとしては国民外交ということばがある。こういう場合に国民外交政府外交にかわって実をあげる、こういう古い方もあろうかと思いますけれども、やはり政府当局責任のあるものが外交は進めていかないと、これは本来の本筋ではない、かように私は考えております。しかし、ただいまのように本来なすべき責任の地位にある者が近づくことのできない、そういう状況のもとにある、その際、国民外交として民間の、またことに各党それぞれが中国交渉を持たれるということ、これは高く評価してしかるべきだ、かように思っております。ことに私は、ただいまも御指摘になりましたようにイデオロギー時代、そういう対立はありますけれども、それを乗り越えてやはりお互いに話し合い、そして友好親善関係を結びつける、友好関係を樹立する、こういうことが望ましいことではないだろうかと思います。まあ幸いにしてわが国の場合は、政府はただいまのように門戸を閉ざされておりますけれども民間においては政党といわず、また経済人といわず、文化交流といわず、それらの交流は行なわれておりますので、そういう意味において政府の足らざるところを補っておる、かように理解してしかるべきではないか、かように思っております。もちろんその間に処しての政府政府なりに努力をいたしますし、また皆さん方がそれぞれ交渉を持たれる場合に、これはときには政府を鞭撻されることにもなるし、また政府もその接触される、あるいは交渉を持たれる、そういう点から蒙を開いていただく、蒙を開くことにもなる、そういう意味で大いに役立つことだ、かように考えておりますので、私は積極的な外交を進めていただくように、またそういう意味政府自身が教えていただく、こういうことも望ましいのではないだろうか、かように思っております。  今回春日委員長がみずからお出かけになる、明日に御出発も迫っている、かように言われておる。いままでに公明党あるいは社会党がお出かけになった際でありますし、私は春日委員長お出かけになる、ことにアメリカ訪問後でありますだけに、この成果について大いに期待するものがございます。国際的な事情は一国にとらわれることなしに、やはり活眼を開いて国際的な視野でものごとを見ていくことが望ましいのではないか。この意味におきまして私はたいへん高く評価してしかるべきではないだろうか、私は御成功を祈っておるような次第でございます。
  5. 塚本三郎

    塚本委員 外務大臣にお尋ねいたしますが、わが党の外交は、その基本的姿勢として、政争は水ぎわまで、国益のために外交をすべきなんだ、したがいまして、いま総理が御発言なさったように、政府がやろうとしてできる問題あるいはまたほんとう政府がこういうことを言いたいのだけれども、それを言えば国の責任者として当面とって国益にならない問題がある、その場合野党がいわゆる国民代表して悪者となって、政府の言わんとして言う得ざるところを堂々と主張をする、これは中国だけではなく、アメリカに対しても共通する私たち認識だと思っております。こういう立場から春日委員長アメリカおいでになったとき、核の問題あるいはまた基地縮小問題等につきまして、サンクレメンテ会談おいでになる前にある程度、国民希望はこうであるということを強く主張してまいったつもりでございます。おそらくそういう立場で今回もまたわが国国益のために北京に出かけるという腹を固めておられます。しかし、聞くところによりますると、これは邪推かもしれませんけれども、あまり野党外交がはなばなしく出しゃばった動きをすることに対して外務省では快く思っておらないというふうな声が実は耳に入ること、たいへん残念に思っております。もちろん大臣は、そのことは総理の御発言でありましたように断じてないとおっしゃるでしょうが、私たちの耳に若干そういうことが、曲がってかもしれませんけれども伝わってまいります。それは私たち政治家としては残念なことだと思います。この点はいかがでしょうか。
  6. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま塚本さんのお話を聞いて実はびっくりします。私は今回の民社党の中国訪問、しかも委員長が先頭に立って行かれる。私は非常に敬意を表し、御期待をしているのです。中国ではございませんけれども、先般アメリカに行かれた。その際もそのアメリカに行かれた結果を詳細に承りまして、ただいま御指摘のように核の問題あるいは基地の問題とか、わが国アメリカとの間に横たわる重要な、しかして困難な問題、これについてわが国実情をるる話されておる。そしてこれはかなり影響を与えておる、こういうふうに見てとり、私は敬意を表しておるわけでありまして、私ども外務省野党訪中でありますとか訪米でありますとか、これをやっかい視しておる、さようなことは全然ありませんから、その辺は誤解なきようにひとつ切にお願い申し上げます。
  7. 塚本三郎

    塚本委員 私もそうなければならぬと信じております。  そこで田中通産大臣にお伺いいたしますが、新聞の伝えるところによりますと、来月南米で開かれます国連貿易委員会、ここにご出席になるようなことが伝えられております。このとき中国代表者と話し合い、接触を持ちたいというような記事をたしか私は記憶をいたしております。偶然の機会とは存じますが、そんな機会ができたときにはお持ちになるかどうか、お答えいただきたいと思います。
  8. 田中角榮

    田中国務大臣 UNCTADへは名前を通報してございますが、国会予算審議中でございますので、まだ国会意思によらなければ出張できるかどうかさだかではないわけでございます。  私がUNCTAD会議中国側代表接触希望しておるというようなお話でございましたが、これは第四分科会で、会うことがあるかということでありましたから、会うことを予定はいたしておりません、おりませんが、先方側が副議長候補等にも擬せられておるようでございますから、そのような事態が起きれば表敬をするというようなときもあると思います、こう述べておるわけでございます。このような国連下部機構で未承認国といえども接触機会があるわけでございますから、そういう——私が出席するかしないかもまださだかではないわけでございますが、ご質問でございますからお答えをするとすれば、国連下部機構お互い接触をするということは両国の利益にもなることだとは思います。しかし、私はいまそういう予定もございませんし、それは行ってみなければわからないということでございます。
  9. 塚本三郎

    塚本委員 再度お尋ねしますが、そういう機会——おいでになったならお会いなさるように、こちらからそういうアプローチはなさるわけですか。
  10. 田中角榮

    田中国務大臣 まだ全然きめてはおりません。これはもし行けるとすれば、出張することになれば、いろいろ閣内でも意見調整もしたり、またそういう問題に対しても私の意見を述べたりして、その後きめられるべきものでございます。いまの段階ほんとうに行けるのか、行けないのか。この会議、なかなかたいへんな会議なんで、日本集中攻撃をするというような面もあります。言うなれば、十カ国の蔵相会議開発途上国代表が加わるというような性質のものでございまして、開発途上国に対する援助問題等ほんとうに問題になるわけでございまして、量より質へということでありますが、質の問題はアメリカ軍事援助をしておる、その軍事援助に付帯する政府ベース援助と、またかつて大きな植民地を持っておった拡大ECの諸国がこれから債権を確保するために政府間ベース援助をしているものと日本との立場は違うわけでありますから、領土的な問題もない、そうすれば必然的に貿易に付随するものが拡大されていくという特殊な事情もあります。そういう意味ではたいへんな会議だと思いますが、しかし、国会審議というものもございますし、十八も法律を御審議いただいておるわけでございますので、これは国会の御意思ということ、政府内の問題でもありますので、慎重に態度をきめたい、こういう考えでございます。いま私のほうからアプローチをしてどうしようという考えは全く未定でございます。
  11. 塚本三郎

    塚本委員 国交正常化は、日本におきましてはまだ行なわれておりません。しかし、きのうの本委員会にわける外務大臣の御答弁の中にも、アヒル外交というような表現でなされておるというようなことが新聞で報道されております。いずれにいたしましても、これはたいへん幾つかの経過がありまするし、台湾をかかえた日本国益というものも、いろいろな御判断があろうということも承知いたしております。したがいまして、この問題につきましては、もう繰り返し繰り返し本委員会でも議論をなされたようでございますから、私はその点はしろうとでございまするから避けてまいりまするが、いずれにいたしましても政府レベルで非公式な折衝というものは、これからさらに重ねていかなければいけないのではなかろうか。ニクソン訪中は唐突に発表せられたので、キッシンジャーのあの工作によってなされたということか一般的常識ではありますが、さりながら、静かに振り返ってまいりますとき、すでに七年有半という間ワルシャワにおきまする米中の大使級会談が、それこそ三けたの回数でもって重ねられたと伝えられております。であるといたしまするならば、日中間におきましても、やはり体面やあるいはまた感情的なものを抜きにして、しんぼう強い非公式な折衝がなされてしかるべきだ。非公式な折衝に関する限りは、私はそんなに秘密にしなくても行なわれてしかるべきではなかろうか。ベトナムにおきまして米中があれほど対立をしておりましても、堂々とワルシャワにおきましては、大使級会談が決裂したことも報道になっておりますし、同じテーブルについたときも一々世界的に報道されております。それがイデオロギーを越えておる最近の外交の姿だと私は受け取っております。ならば政府もこの際、あるようなないような御答弁ではなくして、なければこれから常々とおやりになってしかるべきだと思いますが、いわゆるそういう政府レベルの非公式な折衝をこれからお進めになるかどうか、あるいはいままででもこういう点については進めてきたということがありまするならば、ここでお答えいただきたいと思います。
  12. 福田赳夫

    福田国務大臣 日中交渉は二つの段階に分けられると思うのです。一つは、私が申し上げておりまする政府間の折衝、これは昨日も申し上げたわけでありますが、あるいは首脳会談という形をとるかもしらぬ、あるいは外相会談という形をとるかもしらぬ、あるいは両国政府が指名する両国の他の代表者というような形をとるかもしれませんが、正式な政府間の接触であります。まだこの段階日中間は至っておらない。そこで、どういうふうにしてこの政府間の接触を始めるかという方途を模索する、これが今日の段階、つまり政府間接触以前の段階であります。その段階におきまして何をするか、こう言いますれば、やはり満州事変からこの方四十年になる、国交正常化されておらない、不正常な形である、その間にいろんな不信が中国側にもできてきております。また相互の間に誤解も出てきておる。そういうものを解きほぐすことが一つ。それからわが日本中国に対しまして、中華人民共和国は中国代表する政府であるとの認識の上に立って国交正常化のための正式な話し合いをしたい、こういう熱意を持っておる、こういうことを正確に北京政府に伝える、こういうこと、そういうことだろうと思う。いまそういうことにつきましては、あらゆる機会、あらゆるお方を通じましてその努力をいたしておる、こういうのが実情でございます。
  13. 塚本三郎

    塚本委員 それではまだ具体的にはなっておらないし、どのレベルでするかということについても模索をしておられるけれど、しかし、近いうちにどのレベルでかは非公式な折衝を持つというふうに判断してようございますか。
  14. 福田赳夫

    福田国務大臣 日中間はもう四十年の国交の不正常な状態である、そういうような関係でありまするから、この政府間接触というもの、これが正式に始まる、これまでにちょっと時間がかかるのじゃないか、私はそういうふうな感じがする。しかし、わが国は、ただいま対中国政策といたしまして、中国との間に国交正常化を切り開くという大きな旗を掲げておるわけです。ですから、この国交正常化のための政府間接触が始まれば、私はその先はそう時間を要しない。日中間に横たわるところの諸問題は政府間においてこれはかなり円滑に進捗するのではないか、そういうふうに思っておるのですが、そこまで到達するための今日の段階、つまり政府間接触事前段階というものに少し時間がかかる、そういうような見方をしておるのです。しかし、それにもかかわらず、政府間接触が一日も早く始まるようにということを念願しながら、最善の努力をいたしておるというのが現状でございます。
  15. 塚本三郎

    塚本委員 大臣、私がお聞きしておりますのは、その政府間接触が始まるときには、もう相当に進んでおるときだとおっしゃった、そのとおりだと思うのですね。ですから、そこに行く前に、非公式にいわゆる接触というものがなされてしかるべきではないか、その非公式の政府間接触というものをお考えになってはおられないのか、このことをお聞きしておるのです。
  16. 福田赳夫

    福田国務大臣 非公式の政府間接触は、正式の政府間接触と性格が違うのです。つまり政府間接触になりますと、日中間に横たわる諸問題を正式に討議する、その前の段階は、政府間にせよあるいは各野党にせよあるいは各個人にせよ、これは日本立場を理解してもらう、政府間接触を始めたいという熱意を持っておる、その熱意の背景としては中国を正式な交渉の相手方と認める、そして国交正常化をはかりたい、そこが大半なんです。国交正常化、つまり外交関係まで開きたいという大方針を掲げておる、それでもう日本の意のあるところは了解できるのではないか、その辺のことをよく理解してもらい、そして政府間接触を始められるようにされるような努力、これが政府間接触以前の段階努力だ、それはあるいは外交ルートでもけっこうである、あるいは民間でもけっこうである、あるいは野党でもけっこうである、あらゆる機会、あらゆるルートを通じましてそういうことをやっておる、こういうふうに御理解願います。
  17. 塚本三郎

    塚本委員 それは大臣政府がやっておるわけではなくて、民間がかってにやっており、野党がかってにやっておることであって、政府は、いわゆる政府間折衝に入るのに公式になってまいりますと、あと戻りするわけにまいらぬでしょう。それは国益にも直接に響くことでもございましょう。したがいまして、私のお聞きしたいことは、決裂するもよし、あるいはお互いに言い分を十分に言い合えばそれはけんかになることもあるでしょう、そういうことをするには、やはり政府間接触になる前に非公式の政府レベル折衝があってしかるべきではないか。いわゆる経済交流によってあるいは野党間におけるいわゆる折衝においては、やはり利害打算がまじるでしょう、あるいはイデオロギーが加えられるでしょう。政府は、そういう点は全く国益立場から、しかもあと戻りが許されるといういわゆる立場から、非公式に折衝することがあってしかるべきだ。おそらくワルシャワにおける米中のいわゆる会談ども、そういう意味では何度か決裂したこともあるし、中断の長い時間もあったと思います。そういうことをお互い政府間でもって言いたいことを言い合って、十分に行なって、そしてわが国の受け入れられる限界はこの程度ではなかろうかと、両国はある程度の見通しをつけたと思うのです。そこからキッシンジャー外交が始まってきたのではないか。ですから、そういう意味で、いま外務大臣のおっしゃたような御意見は、商売いわゆる通商の問題や野党外交は、いま申し上げたとおり、遺憾ながらやはりある程度は利害、打算やイデオロギーが入ると思うのです。その点政府外交というものは、純粋に国交回復を目標にしてあらゆる角度から意見の交換ができるという意味で、非公式な政府レベル交渉があってしかるべきだ。その点はいわゆる民間が行なっているそれをさして言っておいでになるようですが、そうではなくして、自発的に外務大臣立場でそういうような接触を行なうべきだと思いますが、いかがでしょう。
  18. 福田赳夫

    福田国務大臣 民間の方でありましても、全然私ども接触がないというわけでもないのです。接触を持ちながら、わが日本政府の態度を正しく理解し、その態度を正しく先方に伝える、こういうふうな考え方に基づいておるわけなんです。そういうことが民間だけでなくて別にけっこうなんでありまして、これが政府の役人を通じて行なう、こういうことであってもしかるべきでありますが、これにつきましても私はその考え方を進めておる、こういうふうに御理解を願います。
  19. 塚本三郎

    塚本委員 進めておるというお話ですが、そういたしますと、中国側もその非公式の、民間だけではなく、政府間における折衝を受け入れて、その非公式のいわゆる折衝を受け入れておるというふうに理解してよろしゅうございますか。
  20. 福田赳夫

    福田国務大臣 まだ中国側が、私どもと同じ考え方でこの話に乗ってきておるという段階までは至っておりません。私は、しかしやがてはそういう時期が来る、そういうふうに確信をいたしております。
  21. 塚本三郎

    塚本委員 そういたしますと、段階は違うし、こちらはより積極的である。まだ向こうは、おまえたちはこちらの思うようになっていないからという消極さは、おそらく伝えるところによりますとあると思いますが、段階の違いはありまするけれども、非公式には政府間におきましてもそのレベル折衝が続けられており、中国もまたそれを受け入れて、こちらの折衝に応じておるというふうに受け取ってようございますか。
  22. 福田赳夫

    福田国務大臣 まだ中国側ではさしたる反応は見ておりません。しかし私は、そういうことが可能になるであろうという見通しをつけておる、こういうことだけをお答え申し上げます。
  23. 塚本三郎

    塚本委員 さらに一歩進めまして、それではこちらからはどんどんと、明日は春日委員長も参ります。野党の各党だけではなくして、自民党さんのほうにおきましても藤山先生もすでにおいでになっておられます。こちらはそういうふうに訪問をいたしております。当然向こうからもおいでくださいというふうに、いわゆる参りました名指導者の皆さま方は、儀礼的な発言だけではなく、真実そのように、やはり向こうの受け入れの気持ちにこたえて、おいでくださいという私的発言はなさっておられる、これは礼儀でございますから。そういたしますると、やがては中国の要人を正式に日本にお迎えをするということ、これはおそらく野党からそういうふうな御案内を差し上げるというふうな声が具体的日程にのぼってくると私は判断をいたします。その場合は当然に日本国は受け入れることになると思いますが、政府はどうでしょうか。
  24. 福田赳夫

    福田国務大臣 仮定のお尋ねであり、また私どもの所管でなくてこれは法務省の所管になる問題でありますが、私の気持ちを申し上げますれば、そういう際にはあたたかくお迎えすべきである、こういうふうに考えます。
  25. 塚本三郎

    塚本委員 総理大臣、これは当然もう各議員さんだけじゃなくして、各党の委員長、書記長という方が野党におきましては参りまして、相当の歓待を受けておいでになります。そういたしますると、向こうの要人が参るということになれば、日本国としてもこれは丁重にお迎えをするということになろうかと思いますが、総理の御見解いかがでしょうか。
  26. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま外務大臣がお答えいたしたとおり、私は当然あたたかく迎えるべきだ、かように思っております。
  27. 塚本三郎

    塚本委員 その場合、いま北京を訪問する場合はおおむね香港を経由して参っておるように聞いております。向こうから参りますると、直接に羽田に入ってきたいという希望が出てくるのではなかろうか。こちらは日本航空などが北京乗り入れをたびたび要請しておるようでございまするが、なかなか意にまかせない、こういう事態のように私は見ております。向こうから乗り入れたいというならば、当然それはこちらも入ることになる、その道を開くことになろうと思いまするので、やはり羽田に中国機が入りたいということになれば、この航空機乗り入れの問題は、これは運輸大臣——総理からお答えいただいたらいかがかと思うのですが、いかがでしょうか。
  28. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 私の所管でございますから、私から答弁させていただきます。  ただいまの御質問でございますが、そういうような事態でございまして、わが国中国からの来訪客を迎えるという事態になりまして、その場合におそらくは不定期便になると思う次第でございますが、それを許可するかどうか、承諾するかどうか、こういう御質問だろうと思う次第でございます。これは先般の沖繩国会総理の所信表明におきましても、日中間国交正常化、その具体案の一つとして航空協定なんかも政府間折衝で早く結びたいということをはっきり申し上げておる次第でございます。また今日、日中間の不定期便の乗り入れにつきましては、私ども国交正常化、また航空協定が結ばれない場合におきましても、それの前提がございませんでも可能でございます。それゆえに、いまのご趣旨のとおり、そういうようなことがございましたらば前向きにぜひ善処してまいりたい、こういうふうに思っている次第でございます。
  29. 塚本三郎

    塚本委員 かつてニクソンが北京に参りましたときもアメリカ機が入っております。もう世界はそういうふうに変わってきておりまするので、やはり積極的に日本のほうから国交回復を希望しておる今日の事態、そうなりますると、相互乗り入れという条件が整わなくても、まずはこちらが招待をした立場からするならば、受け入れてあげるということが先に行なわれて、それから折衝して、やがては相互乗り入れという形になってもいいんじゃないか、これぐらいのやはり度量を示していくことが日中の国交回復にとって前向きになった姿勢だというふうに判断されますが、その点総理どうでしょう。
  30. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの場合は、運輸大臣答弁もはっきりしておると思いますが、いわゆる定期便、航空路の設定、それとは別に、乗用機の乗り入れ、かように申しますか、最近はメキシコ大統領がそのとおりやっておりますし、また近く来日するであろうボリビア大統領の場合もおそらく飛行機を専用して来るだろう、かように考えます。私は、中国の場合も同じようなことが考えられるだろう、かように思いますので、それらの点については同じような扱い方をすること、その間に差別、区別するようなことはいたしません。それはもうはっきりいたしております。
  31. 塚本三郎

    塚本委員 それでは次に進みまして、尖閣列島の領有について外務大臣にお尋ねをいたします。  「尖閣列島を最初に“探検”したのは、那覇で茶問屋を営んでいた福岡県人、古賀辰四郎氏であった。明治十七年のことである。彼の息子古賀善次氏によれば」、昭和十八年に「親父は国に尖閣列島開拓の申請を出したんです。ところが、その時は島の所属がわからなくて、県がいろいろ調査しました。結果、あの島は人が住んでいないし、どこの国からも支配されたことがないとわかったのが明治二十八年。やがて時の内閣の閣議で決って、明治二十九年に尖閣列島は日本領だと宣言し、沖繩県八重山郡に編入されました」と、ある書に書かれておりますが、沖繩県に編入された外務省の記録があったら、ここでお答えしていただきたいと思います。
  32. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま塚本さんが古賀さんの記録のことを申されましたが、昭和十八年というお話ですが、昭和十八年じゃなかろうと思うのです。明治十八年です。
  33. 塚本三郎

    塚本委員 御無礼しました。
  34. 福田赳夫

    福田国務大臣 明治十八年に、時の沖繩県令西村氏が部下の者をして尖閣列島を調査さしたのです。そこで、この調査の結果の報告によりますると、無人島である、また、清国において支配権を及ぼしておる事実はない、こういう報告をいたしております。その報告に基づきまして、西村県令は時の山縣内務卿、内務大臣ですね、にこれを報告する。また、山縣内務卿はこれを閣議に報告をしておる、こういうふうになり、次いで、明治二十八年一月十四日に閣議決定が行なわれまして、これは日本の領土である、したがってこれに標ぐいを立てるということをきめております。そういう事実が明らかになっておるのでありまして、このことは外務省においても十分資料をもって御説明できる、こういう状態になっております。
  35. 塚本三郎

    塚本委員 大臣、日にちまできちっと覚えておられるので、よほどこの問題は詳しく調べておいでになると思いますが、「戦後、沖繩が米施政権下におかれると、当然のことながら尖閣列島もその範囲に含められ、米軍に古賀氏所有の島の一部を年一万ドルで借り、これを射戦場とした。古賀氏は自分が持っている島の固定資産税四百五十ドルを琉球政府におさめている。要するに明治二十九年以前も以後も、尖閣列島は日本以外のどの国にも領有されたことがなく、古賀氏が長年この島で事業をおこなってきた歴史的実績からいっても、国際法上の先占所得が成立し、日本領であることに疑いの余地はない。」と、ある書物ではいっております。これは重大な問題だから相当調査してこのことも書かれておると思いますが、いずれにいたしましても、日本領であることには、歴史的からいってもあるいは事実関係からいっても、一点の疑いの余地がないというふうに思われますが、この点はいかがでしょうか。
  36. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいまのお話の中で、明治二十九年というのがありますが、それはおそらく二十八年一月十四日のことじゃないか、私どもの調査ではそういうふうになっておるわけでありますが、その他は大体いまお読み上げになられたように理解をいたしておるわけです。特に平和条約におきまして、わが国は台湾、澎湖島の領有権を放棄した。しかし、その放棄した中にはこの尖閣列島は入っておらない。その証拠には、アメリカが施政権を行使する地域というものがきまった、その施政権を行使する沖繩本島以外の中にこの尖閣列島というものが入っておるのです。そして今度沖繩返還協定というものができた。そしてそれらの島々における施政権がわが国に返ってくることになったわけです。そのわが国に返ってくる島々の中に、またこの尖閣列島が入っておる。しかもその島々における米軍の基地、施設、そういうものを、また再びそのうちの大部分を米軍に提供をする、こういうことになるのですが、提供するその施設の存在する尖閣列島、それもまたその中に入っておるわけなんです。アメリカ政府は尖閣列島の上に軍事施設を持っておる。それが今回締結されました沖繩協定、その付属文書であるA表の中に入っておる、こういう厳然たる事実もある。そこで、私どもは、この尖閣列島の日本帰属、これにつきましては一点の疑いも持たない、こういうふうに考えておる次第でございます。
  37. 塚本三郎

    塚本委員 しかるに、最近アメリカの発言は、中立的な発言をなしておるやに新聞は報道いたしております。総理、この点はどう受けとめておられますか。——いや、総理大臣——それでは先に外務大臣
  38. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういう歴然たる日本領有の事実であるにかかわらず、中国あるいは中華民国、これらの国々から、昨年ごろからもの言いがついてきておる。それはおそらく一昨年からこの尖閣列島の近傍に豊富な油田がある、こういう話が始まったからではあるまいか、そういうふうに見ておるわけでございますが、アメリカは、そういう沖繩返還協定等の法的地位、これから見れば、腹の中では、私は、あれは日本の領土であるに違いない、こういうふうに確信をしている、こういうふうに見ておるのです。しかし、そういうもの言いがある、こういう事実を見まして、そういう紛争に介入したくないという気持ちもまた働いておるのじゃないか、そういうふうに見るのです。そこで多少あいまいです。まだ正式な見解は発表しませんから、私どもは、これは外交上の問題としての抗議というようなことはいたしておりませんけれども、はなはだ不満としております。進んでこういう話が出たならばアメリカとしてはこう考えるという態度を表明してしかるべきじゃないか、そういうふうに思っておる、そういう段階でございます。
  39. 塚本三郎

    塚本委員 いま外務大臣のお説のように、地下資源が発見せられたということによって、中華民国あるいは中華人民共和国からもの言いがついてきた。そうなると、アメリカは、自分で日本から借りるような形式を一面沖繩返還協定でとりながら、にもかかわらず、ずうずうしく、中立をきめ込むだけではなくして、アメリカ国籍の会社が実は中華民国政府と話し合って、そうして共同開発のような話を進めておるというような事実も伝えられております。こういうようなやり方というものは、黙っておきまするとかえって誤解を招くということになりまするので、この点はやはり、アメリカさんそれは筋が違いますよ、返していただいた御恩義は御恩義、だからこそ基地の問題はまた基地の問題として、こちらはいわゆる安保条約に基づいて措置はいたしております、しかし地下資源の問題は筋が違いますと、きちっとおっしゃるのが筋ではないかと思いますが、総理、いかがでしょう。——いやいや、総理にお伺いしている。
  40. 福田赳夫

    福田国務大臣 尖閣列島の領有問題につきましてはただいま申し上げたとおりでございますが、この尖閣列島近辺のオフショアといいますか大陸だな資源の問題、これはまた別問題なんです。大陸だな資源問題につきましては、利害関係国の協議によってその処置をきめる、こういうことになっておる。実際問題としますと、アメリカのある会社がこの大陸だな資源開発の調査をしたい、その調査のための了解を国民政府から取りつけたという情報があります。そしてわが国のほうに対しましても、非公式に、そのわが国の了承も得たい、こういうような接触がありましたが、わが国といたしましては、これは関係国で協議してきめるべき問題であって、わが国ひとりが特定の会社に対して了解を与うべき性格のものじゃない、こういうふうな返答、まあ非公式な意見の開陳をいたしておるという事実はあります。ありますが、いずれにいたしましても、この海底だな資源問題は利害関係が非常にふくそうするのです。この利害関係国の間で協議をしてその最終的処置をきめるべきものである、そういう見解でございます。
  41. 塚本三郎

    塚本委員 しかしわが国は大陸だな条約に批准はいたしておりませんし、そのいわゆる大陸だなにおける海底資源というものとそれから島の領有というものとは別個の問題ではあります。しかしながらその限界はきわめてあいまいでありまするから、これさえも黙っておるならばやはり知らず知らず既成の事実として進められてしまう、こちらは五月十五日までは手が出せないというふうなじれったい立場に置かれておると思うのです。だからここまでは領有の領海でございます、これから先は大陸だなの公海でございます、あるいはその領有は大陸だな条約におまかせいたしますというふうにきちっとなっておれば、いま外務大臣のおっしゃたとおりの御答弁でいいと思うのです。しかしその限界を、さらにまた公海でさえもいまだに三マイルから十二マイルあるいはまたとんでもない距離まで主張している国もたくさんあります。こういうように国際法的にも分かれております今日の状態の中で、やはりアメリカがそんないわば二律背反のようなことをしておる事態だけは、はっきりとこの点は筋が違いますよということを、せっかく沖繩を返していただくこの際、お礼とともにご注意を申し上げておくのがたてまえではないかと思いますが、いかがでしょう。総理——外務大臣、私はその考え方だけ聞けばいいのです。こまかいことについては……。
  42. 福田赳夫

    福田国務大臣 考え方は、私、総理大臣と一緒ですから私からお答え申し上げますが、大陸だな資源に対するわが国の方針、ただいま申し上げたようなことで非常に明快になっておりますから、大陸だな資源をないがしろにするというようなことは絶対にありませんから、御安心のほどをお願い申し上げます。
  43. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 尖閣列島の所属問題、帰属問題、これは外務大臣から詳細に報告いたしましたように、いまだかつて文句をつけられたことはなかったのです。最近になりまして初めて中国の領土だ、国民政府もそういう言い方をしている、こういうことでございます。これが大東亜戦争前にあるいは問題があるとかあるいはまた米国が施政権を持っておる間にそういう問題があるとかいうのだとわかりますが、ただいまのように突然こういう問題が出てきた、これは中国の領土の一部だ、かように言っている、これは何か理由があるだろう、こういうといまここで取り上げられたように海底油田と多分の関係を持っておる、かように解釈せざるを得ないのであります。  そこで実はマイヤー大使が私のところへあいさつに見えて——これは離任のあいさつですが、その際に、どうもアメリカ側の態度は不明確じゃないか、沖繩返還に際しての緯度、経度で返還さるべき区域をはっきり明確に示してくれた、これはもうわれわれ非常に感謝しているんだ、当時から尖閣列島の無人島であるだけに、これが問題にならないようにと思って緯度、経度で返さるべき地域を示したはずなんだ。ところが何だかアメリカはこれについて、返すだけは返した、それから先は日本あるいは中国の問題だ、両国で話し合いすればいいじゃないかというような態度をとっている、これはいかにも解せないことだ、こういう話を実はいたしました。そのとおりが新聞に報道された、これが事実であります。  したがってただいま外務大臣が申しますように、私どもはいまだかつてどこからも文句をつけられた地域でないだけに、日本の固有の領土である、これを主張する。またアメリカはここを沖繩に施政権を持っておる際に、沖繩と一緒に射爆場と申しますか演習地地帯にしてこれを利用している、こういうこともございますから、そうして今度沖繩が祖国復帰に際しては、その施政権のあった範囲は全部日本に返しました、こういう表現をしておるのでありますから、もちろんアメリカ自身日本に返したものだ、日本に返す以上、これは日本の領土であるということを積極的に示すべきだと私は思います。塚本君がいま指摘されるのもそういう点だと思います。私はこういうことこそ望ましいことである。両国関係を、別にこれを言わないことが両国親善関係を続けるゆえんであろうとは思いません。はっきりすることこそ、そのことが両国の親善友好関係を一そう深めるゆえんだ、かように私は思っておりますから、アメリカがそういう態度をとってほしいと思います。  しかし、ただ問題はただいまの海底油田の問題に多分に関係がある、かように考えると、海底油田の問題をめぐってこの開発権の権利付与、そういう事柄とつながりがあるとなかなか複雑な問題になってきます。そこでいま大臣がもうしまたように、われわれは大陸だな条約に調印しておりません。もちろん批准しておらない。関係国が、これは多数ありますが、中国もまた国府にいたしましても、いわゆる大陸だな条約というものは批准はしていない、かように思いますから、ただいまの問題は結局関係国間で話し合いをせざるを得ない、そういう問題じゃないかと思っております。私は尖閣列島の領有というよりも地下資源の開発、海底資源の開発、そのほうがただいまは論点になっている、かように解釈すべきじゃないか、そしてそれはやはり関係国間で話し合いをつけるべき筋のものだ、かように思っておる次第でございます。
  44. 塚本三郎

    塚本委員 これはおっしゃったとおりだと思いますが、いずれにしてもそれが話し合いをつけることと尖閣列島の領土権とは全く別のものと切り離してきちっと、いま総理が申されたように、日米関係のためにも黙っておるほうがいいというものではないと思います。  この点総理、一月おいでになったサンクレメンテの会談におきましては話し合われなかったのですか。
  45. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 当時はさような話はしておりません。ただアメリカの施政権を日本に返してもらう、かような話し合いで、それが五月十五日というその範囲でございます。そうして返すべき範囲はどこだ、こういうものははっきりしておりますが、いわゆる海底の問題までは話してはおりません。
  46. 塚本三郎

    塚本委員 そういたしますと、そのサンクレメンテでお話し合いをせられたときには返すべき範囲はここだというその図面までは話し合われた。そのところには、アメリカも尖閣列島は日本の領有として返すべき範囲だということをきちっとそのことは明確に話し合われて五月十五日の日にちを設定された、こういうふうに受け取ってようございますか。
  47. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは尖閣列島を待つ必要はないんです。沖繩返還協定で緯度、経度を示しまして、そして返還せらるべき施政権の区域は、どうだ、こうきまっておる。その中に尖閣列島は入っておるんです。しかもその尖閣列島には米軍の射爆施設がある。それは今回の沖繩協定の付属文書によりましてわが国から引き続いてアメリカに提供するということになっておる。そしてその付属文書のA表に尖閣列島のその施設ということが記載されておる。この条約上アメリカがこの尖閣列島はわが国の領土であるということを認めたということはもう議論の余地はないのです。そういう状態です。ですから、サンクレメンテ会談であらためて話が出るというような性質のものじゃなかった、こういうことでございます。
  48. 塚本三郎

    塚本委員 事態はきわめて明確になっておると受け取っております。にもかかわらず、アメリカがいわゆる中立の態度に発言しておられることは、日米両国のためにも好ましいことではないと思いますので、総理あるいは外務大臣のほうで、きわめて近い機会にそのことだけは日米間の今後のためにもはっきりと、この際は責任ある態度をとっていただくように申し上げるほうが友情ではないかというふうに思いますが、外務大臣どうでしょう。
  49. 福田赳夫

    福田国務大臣 この問題は、私はアメリカにお願いをしまして領土権の確認をするという性格のものじゃないと思うのです。もう条理上当然わが国のものである。ですから、もしこれに違った見解の表明がアメリカにおいてなされるというならば抗議をする、こういう性質のものであって、お願いをして見解を求める、そういう性格のものじゃない、こういう理解であります。
  50. 塚本三郎

    塚本委員 それでは今度は別の問題で、日ソの平和条約の問題をお尋ねしてみたいと思っております。  北方領土の返還が沖繩の次の国民的課題であるというふうに国民は期待をいたしております。このとき、わが国の領土と信じております国後、択捉の問題をお尋ねしてみたいと思います。  国後、択捉は歴史上いまだかつて日本人以外のいかなる民族も定住した事実はないこと。さらに、両島は歴史上いまだかつて日本以外のいかなる国の主権下にもあった事実のないこと。さらに両島が古来から日本固有の民族的領土であることに、昔のロシア政府も公式にかつて条約で二度にわたって確認していること。さらに日本もソ連もともに履行の義務を負っているカイロ宣言によって、連合国は日本から国後、択捉両島を奪うことが許されないこと等々、あらゆる面から見ても国後、択捉の両島は日本に帰属することが国際法上正統だと私たち判断いたしておりまするが、いかがでしょうか。
  51. 福田赳夫

    福田国務大臣 全くそのとおりに考えております。
  52. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 実はきのう、百五万国民の署名を得た、こういって根室支庁はじめ旧国後、択捉の方々が国会請願にもお見えになりました。私どもその機会にも会いました。そうして外務大臣、同時に山中総理府総務長官と三人で実は引見いたしました。ただいまのような主張、これはもうそのまま私どももそのとおりだ、かように思いますので、感謝しながらただいまのような請願を受けた、そのことだけつけ加えさしていただきます。
  53. 塚本三郎

    塚本委員 返還交渉をいま直ちにこの問題でせよというわけではありませんけれども、樺太と千島全島とはかつて日本は交換した歴史がございます。したがいまして国後、択捉だけではなく、ほんとうの法律的な立場からいいまするならば——返還交渉するかしないかは別の問題といたしまして、領土権の問題だけを取り上げてみるならば、千島全島を日本が領有することが法的には正当だとの意見があります。わが党もこの主張に加担をいたしております。この点は外務大臣いかがお考えですか。
  54. 福田赳夫

    福田国務大臣 この問題はいささか見解が違うのですが、平和条約によって千島列島はこれを放棄した、こういうことになりますので——千島また樺太もそうです。そういうようなことでありますので、これら地域がわが国の領土であるという主張をするのはどうもなかなかむずかしいことではあるまいか、そういうふうに存じます。
  55. 塚本三郎

    塚本委員 サンフランシスコ平和条約は、ソビエトはこれには参加をしておらないことは事実でございます。したがいまして、交渉するにあたってこのことを主張するかしないかは別にして、法的には、このことを主張することが日本国の領土を確保するところ責任者としての当然の主張ではないかというふうに判断をいたしますが、どうでしょう。
  56. 福田赳夫

    福田国務大臣 南樺太、千島列島は、わが国が平和条約でだれに放棄した、こういうことじゃございませんけれども、とにかく放棄した、こういう立場にありますので、わが国としてこれが領有を主張するということは非常にむずかしい問題じゃあるまいか、さように考えます。
  57. 塚本三郎

    塚本委員 むずかしいということだけ承っておきます。  そこで、さきにグロムイコ外務大臣日本おいでになりました。かつて私は予算分科会におきまして、愛知外務大臣にも、ともかく外務大臣の相互訪問が定期的に——三木外務大臣のときにモスクワにおいでになって話し合われたのにかかわらず、二度もその後ソビエトから参っておりません。おらなければ、外務大臣、あなたが沖繩を返してくださいとおっしゃる前に、ワシントンに参る前に、先にモスクワに北方領土を返してくださいといっておいでになるのが筋ではないかというふうに私は強く希望しておきました。しかし先に沖繩が返りました。このことはけっこうなことでございます。しかしやっと国際情報の急激な変化によってグロムイコ外務大臣おいでになりました。このとき平和条約や領土問題につきましてどのような話し合いがなされたか、お聞かせいただきたいと思います。
  58. 福田赳夫

    福田国務大臣 グロムイコ外務大臣と私、また総理大臣とグロムイコ外務大臣との間、そういうことで日ソ間の諸懸案の話し合いが行なわれたわけです。それらの会談の結果といたしまして、日ソ両国首脳の相互訪問、交歓を行なう、それから定期協議は、これを規則正しく毎年一回以上とり行なう、その他経済の問題、つまり貿易の拡大、また資源の開発の問題、さらには漁業権の問題、さらに文化の交流、科学技術の協力の問題、各般にわたって話し合いが行なわれたわけでありまするが、まあそれらの友好的な話し合いを象徴するがごとく、平和条約をとにかく結びましょう、こういう話が双方から期せずして持ち上がったわけです。まあどちらかといえばわが国のほうから積極的に呼びかけたと申し上げても差しつかえなかろうかと思います。  この平和条約の交渉というのは一体何だといいますると、これはもう領土確定とういことであります。平和条約交渉すなわち領土確定交渉であると申し上げても差しつかえない。それくらい領土問題が平和条約交渉の重要課題であります。その条約交渉に年内に応じましょうというふうにソビエト側は対応を示したわけであります。いままではこの領土問題につきましては、これはもう解決済みでありますといって相手にしなかったソビエトロシアが、領土問題が主体をなすところの平和条約交渉に応じましょう、しかも年内にその交渉を始めましょうという態度に出ましたことは、私はこの領土問題につきましても微妙な変化がこの会談を通じて出てきた、こういうふうに理解をいたしております。
  59. 塚本三郎

    塚本委員 その際に歯舞、色丹を返すということを条件にして平和条約締結をしたらという話が相手方から出されたと漏れ承っておりますが、そんな事実はありませんか。
  60. 福田赳夫

    福田国務大臣 こういうことばが出ておるのです。つまり、グロムイコ外務大臣のほうから、わが国にはわが国立場があります、領土問題は非常に困難な問題であります、しかし平和条約交渉は年内に始めましょう、こういうことです。いま塚本さんの御指摘のような直接的な話はございませんけれども、しかしわが国にはわが国立場がある、こういうことを言っておる。その中には、あるいはあなたのおっしゃるような歯舞、色丹を引き渡すという従来の立場のことを言っているのかもしらぬ、その辺はよくわかりません。わかりませんが、いずれにいたしましてもわが国が国後、択捉を含めた北方領土の返還を主張しておる、これは先方はよく承知しているのですから、そのことを承知しておる上で平和条約の交渉を始めましょう、こういうこと、これは何がしかの意義を認めざるを得ない、私はそう考えております。
  61. 塚本三郎

    塚本委員 ソビエトはシベリア開発に対しましてたいへん熱意を示して日本に協力方を求めてきておるように伝えられております。この際は国後、択捉を領有する、しかし経済協力にはわが国の自発的立場に立って協力をするというような、いわゆる組みで平和条約を締結するという見通しはありますか。
  62. 福田赳夫

    福田国務大臣 平和条約交渉は平和条約交渉でありますから、あるいは経済の問題も科学技術の問題もあるいは技術交流の問題もいろいろな問題が総合的に議論をされると思います。しかしその中で一番大事な問題は何か、主体をなすものは何かというと領土問題であります。  その領土問題につきましては、ソビエトロシアはかなりかたい考え方を持ち続けるのじゃあるまいか、私は先ほど微妙な変化を示したとは申し上げましたものの、なお私どもが国後、択捉を含めたこの北方領土の島々全部を返せという要求に対して、そう簡単に応ずるかどうか、これが経済開発との見合いで決着がつく性格のものであるかどうか、その辺につきましての見通しは、私は必ずしもそう楽観を許さない問題である、そういうふうなとらえ方をいたしております。
  63. 塚本三郎

    塚本委員 外務大臣は、外交交渉につきましては手持ちの札が大切だということを常に口癖のようにおっしゃっておられる。私はこれ以上のことをお聞きしようとは思いませんが、しかし一つだけ、あくまでも歯舞、色丹を含めた国後、択捉、この領有についてだけはやはりかたい決意で臨んでいただくということだけはここで確認をしておきたいと思いますが、いかがでしょう。
  64. 福田赳夫

    福田国務大臣 平和条約交渉ですからもろもろの問題に触れますが、事領土問題になりますと国後、択捉、歯舞群島、色丹島、これらの島々全部が解決をされる、返還をされるということでなければ平和条約は締結をしない、こういうかたい考えを持っております。
  65. 塚本三郎

    塚本委員 そこで、その決意に基づいてことし中にということでありますが、おおよそいつ、どこで、どの程度のレベル交渉をまず進められますか。
  66. 福田赳夫

    福田国務大臣 第一回の日ソ平和条約交渉はことしの秋から暮れにかけての時期になろう、こういうふうに思います。まだ煮詰まっておるわけではありません。  それから場所はどこになるか、これもまだ煮詰まってはおりませんけれども、おそらくモスクワになるであろうと思います。  それから、その交渉に当たる人はだれかというと、当方は特定な人がこれに出向くかあるいは新関駐ソ大使をしてこれに当たらしめるか、この辺はなおこれからの推移を見て検討したい、かように考えております。
  67. 塚本三郎

    塚本委員 総理にお尋ねいたしますが、沖繩返還にあたりましては、総理は話が煮詰まるまでに二回にわたっておいでになりました。そうして最終的には三回アメリカおいでになってやっと念願の沖繩返還の日程が決定をいたしました。本来ならば、性質上からいいますならば、北方領土は実はもっと日本は堂々と主張し得べき性質の領土であると私たちは受けとめて今日に至りました。にもかかわらずなかなか問題が進展しないことは、相手方がきわめてかたいからであることは当然でございます。そうであるとするならば、沖繩でさえも三たびにわたってアメリカおいでになった総理の決意からするならば、やはり北方領土問題、そしてまた鳩山先生がお開きになった日本とソビエトとの間を平和条約までこぎつけるには、どうしても総理みずからも近い機会おいでにならなければならない、そしてまた、おいでにならなければ問題は解決をしないという声がありますが、いかがでしょう。
  68. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ソ連とアメリカ、いずれも大国であり、交渉はなかなか容易ではないと思います。だれがやりましても簡単なものではないと思います、しかし、アメリカの場合は日米安保条約がある、そういうところお互いに信頼し合っている、こういうことですから比較的にまだ話がしいい、かように私は思いますが、事ソビエトに関する限りこれは並みたいていではない、かように思います。だれが総理になりましても、ほんとにこの問題と真剣に取り組なければ、一度で問題が簡単に片づく、さようなものではないだろう、かように私は思います。なかなかむずかしい問題だ。先ほど来外務大臣からグロムイコ外相が来た際の話をるる説明をいたしましたので、それなりにおわかりだと思います。  ただ、私、非常に心配なのは、アメリカアメリカなりに安全保障条約、いわゆる国内には反安保の努力がなかなか強い、そういうものがアメリカとの交渉の場合に非常に問題になりました。またソ連の場合は、これとは事違い、アメリカに安保条約を結んでおる、そういう意味でソ連は当然対抗する勢力として日本の一部を領有する権利があるかのような一部の言動すら実は国内にあります。そういうこともございますから、前提になる条件がそれぞれ違っておってむずかしいだろうというだけでなしに、この事柄は非常にむずかしいことだと思います。私は、政治家一人だけの問題ではなく、ほんとに国論が統一されてそしてこの問題と取り組まない限りこの問題は解決するものではない、かように思います。  ソ連にはソ連の事情があるでしょう。ずいぶん欧州において領土を拡張しておりますから、これがやはりアジアをもとに返すことによって影響をこうむるとかいうような心配もあるかもわかりません。日本に対する南千島の問題一つとりましても、アジアにもいろいろ影響を与えるだろうと思いますが、これが欧州に与える影響など非常に大きいと思います。その際に、一番冒頭に塚本君から中国との国交正常化についても国論、国民外交、その必要を強く説かれましたが、私は、ソ連が相手の場合にはなおさらいまのようないろいろの問題がございますから、国内の問題もあるし国外の問題もある、そういう意味で国論が統一してバックアップすることが何よりも大事だ、かように思います。  先ほど一言差しはさんだ百五万の復帰についての請願書ができ上がった、こういうことを根室支庁はじめその他の方から報告を受けましたが、その運動はさらにまだ続けてやる、かように申しております。さらに私はこれはもっと大きな力になるだろう、かように思いますが、私は何よりも大事なことはバックアップする国民、その形成に何よりも努力しなければこのことはできることではない、だれが総理になりましても、そう容易に一度出かける、それで片づくというようなものではないだろう、かように思います。
  69. 塚本三郎

    塚本委員 私は強く愛知さんのときにも、外務大臣お出かけなさい、アメリカにだけは再三気軽くおいでになって——しかしほんとうならば私は、アメリカにも御無礼だという感じがするのです。それは、アメリカに沖繩返せと言うんだったら、先にモスクワに行って北方領土返しなさい、そうしておいてついでにアメリカに行って返しなさい、そして、どちらが日本に対する友情が厚いか、こういう態度をとるのが、歴史的にも、あの領土を放棄した経緯からしても当然ではないか。だから中川君がいま向こうで交渉しているからというように愛知さんは言っておいでになりましたけれど、外務大臣がみずからおいでなさいと私はそのことを進言申し上げておきましたが、実はアメリカへ行かれてから立ち寄られたようでございますが、そういう意味総理みずからも、国会事情が許されればおいでになるというふうな腹でございますか。
  70. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、私ということに限るわけじゃございません。だれが総理になりましてもみずから出かけて解決する、このくらいの意気込みがなければ解決するものではございません。もちろんそれをつくるまでには、いろいろそれぞれに役割りはあるだろうと思います。しかしグロムイコ外相が来て今回話をしただけの、これでは私も非常に心配でございます。どうも考えられるものは、私はアメリカに対してもまず小笠原諸島が返ってきた、そして今度は初めて百万の沖繩が祖国復帰する、こういうように二回に分けてやられております。したがってソ連も北方の領土、これと取り組む姿勢もただいまのようなアメリカとの最終段階のその態度でないと、話は日本国民を満足はささないですよ、失望さすだけですよと、これだけの注意ははっきりしたつもりでございます。
  71. 塚本三郎

    塚本委員 いみじくも見通しを言われましたけれど、四つの岳を二段階に分けて考えてみるということも一つの方法だというふうに受け取られまするが、これはそういうふうに受け取っていいんですか。
  72. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまアメリカとの交渉の経過を話をして、沖繩が祖国復帰をする、その段階ですから、そういう立場においてソ連も考えないとだめですよと、こういう話をしたということでおわかりだと思うのです。これを二回に分けたのでは日本国民は必ず失望します。アメリカは百万の人口のいる沖繩、これを祖国復帰を認めてくれた、ソ連はそれに賛成しない、こういうようなことですから、これはソ連もよほど決意してほしい、こういうことを言ったわけです。
  73. 塚本三郎

    塚本委員 とにかく先ほど外務大臣の言われた決意というもの、いま総理大臣の決意というもの、しっかりと進めていただきたい。少なくともわが党もそのことに向かっては、野党外交として力一ぱい努力をしてみたいと思っております。  話は、経済問題に移してみたいと思います。通産大臣、もう時間もだんだん少なくなってまいりますから簡単に私のほうからお聞きいたしますので、簡潔にお答えいただきたいと思います。  通貨調整がなされましても、なお依然として日本の外貨はたまっておるようでございます。輸出も二〇%ほど伸びてきておる。それに引きかえ、輸入は景気の停滞を反映いたしまして、わずか七%しか伸びておらない。このことは、実は日本にとっては外貨減らしということが国際的に迫られておるのにかかわらず、なかなかはかどっておらない。しかし考えてみると、ほんとうは野本の責任じゃないような感じがいたすわけで、アメリカ自身責任がある、こいうふうに考えられるわけでございますが、しかしそうはいっても、結果的に日本がまた円の切り上げ等をいわゆる強要されるような環境をつくってはつまらぬことだと思います。したがいまして日本経済を鎮静させずに——いや、鎮静という表現は悪いかもしれませんけれども、停滞させずに、なおかついわゆる外貨を有効に使いながら国際調整の実があがるような具体的な方法はどんなことを考えおいでになるか、お聞きしたいと思います。
  74. 田中角榮

    田中国務大臣 日本は輸出立国でございますから、輸出を押えるというわけにはまいりません。しかし、一つの国に向かって集中的に輸出が行なわれることになると、その国と日本との間の貿易収支がアンバランスになる、すなわち日本アメリカのようになるわけであります。去年度はドル防衛その他いろいろな問題がございましたけれども、約二〇%対米貿易はふえておるわけでございます。そういう意味で、オーダリーマーケティングという問題、すなわち輸出の秩序を確立しなければならないということは当然だと思います。もう一つは、輸出は一つの国に集中しないように、輸出の多様化というものをはかってまいらなければならないということでございます。もう一つは、国内の景気が浮揚しないために輸出ドライブというふうになるわけでありますので、やはり国内の景気を浮揚することによりまして、輸入をふやしバランスをとっていくということ以外にはないと思うわけでございます。  それで、現在は少しずつ景気が浮揚しつつございますので、輸入もふえておるわけでございますが、しかし輸出力はやはり旺盛であるということでございます。一年間を通じてみますと、輸出はいまのようには伸びないということでございまして、輸出、輸入のバランスはいまよりもよくなるということでございます。しかしもうすでに三月の末でございますから、急激にアメリカその他が納得をするような数字にはなかなかならないわけでございます。そういう意味で輸入するために開発輸入等やっておるもので、現地に堆積をしておるような鉱石その他もたくさんありますので、やはりそういう開発輸入その他というようなものに金を使って、長期的な日本経済の安定、輸入の安定化をはかるというようなものも当面する問題だと思うわけでございます。まあ石油その他いろいろな問題がございますが、御質問によりお答え申し上げたいと思います。
  75. 塚本三郎

    塚本委員 もうこれは、問題は日本の問題よりもアメリカの問題だ。アメリカは懸命にベトナム戦争によるところのいわゆるドルの流出を防ごうと努力いたしておりますけれども、しかし何としてもそれと同じようなウエートで多国籍企業、もう世界じゅうに七百億ドルあるいはもっとと推定されておって、世界の国々を荒し回っておって、そうして自分の国だけが苦しいからという、いわば別荘づくりのようなもので、自分の大事な本屋の工場がすさんでしまっておるのにかかわらず、人件費の安いそうして生産力の旺盛なところへばかり血道を上げておる、こんな姿では日本が幾ら協力してやってもだめな状態になるという今日の状態ですから、やはり通産大臣なかなか大胆にアメリカにはおっしゃるようでございますけれども、この点はっきりと、もはや、たとえば日本やあるいはドイツやイタリアのように、とにかく外貨の余っておるところ、そこでまたいわゆる合弁会社をつくって独占的に行なっている事業、こういうものなんかは大胆にその国にいわゆる企業を明け渡して、そしてドルを持って国にお帰りください、そうしなければアメリカは立ち直りませんぞというぐらいのことを通産大臣ならば言えると思うのですが、どうでしょう。
  76. 田中角榮

    田中国務大臣 昨年の九月の日米経済閣僚会議またサンクレメンテ会談では、あなたの言ったような表現ではございません、か、それに近い話、もっと数字をあげて述べておるわけでございます。アメリカの金保有高が百億ドルを割るような状態でありながら、世界じゅうではアメリカの投資企業を国有にしなければならないといって、現に国有にされておるところもあるじゃありませんか、そういう七百億ドルに及ぶような大きな投資が国内に戻ってくるような国内体制というものを整えるということが、ドル防衛の、また金・ドルの交換性を回復するための、またアメリカ貿易収支を好転させるための最大の問題だと思いますということは述べておるわけでございます。アメリカは、しかしこの間から初めて多国籍企業の調査を始めたようでございますが、中には年間六十億ドルないし八十億ドルの海外投資の果実というものはアメリカの外貨収入の有力な道だなどという考え方、これは誤りだと私は思います。そういう意味で、平価調整の効果も一年ないし一年半たたなければ出てこないわけでありますので、平価調整のメリットが出てくる、アメリカのニクソン政策の効果も出てくる、また日本の景気も浮揚して対米貿易のバランスがとれるようになる、いい方向に向かっておる、アメリカの景気も多少浮揚ぎみであるということは御承知のとおりでございます。
  77. 塚本三郎

    塚本委員 自由経済のもとにおいては、政治の介入する余地というものがきわめて少ないことは私も承知しております。しかし早目早目に手を打って、きちっと言うべきことは言ってやらないといかぬと思う。  私は一昨年の夏と記憶いたしておりますが、ちょうどアメリカへ、デトロイトへ行ったときに、商工会議所の諸君から、日本は自動車に対する進出をずいぶん食いとめておる、合弁会社等についてもなかなか門戸がかたいということを盛んに非難されました。私はそのとき率直に申し上げておいたのですけれども日本はもはやそういうことに対してはあまりやかましくいっていない。しかしアメリカのためによくありませんぞ。たとえば日本に、三菱とクライスラーと合弁会社をすること、これはもはや政府も承認しておるはずだ。しかし日本でそういうことが進むとするならば、あくまでもその材料は日本の材料を使うことになる。鉄もそうだし、ガラスもそうですし、あるいは繊維もそうなんだ。しかも人件費、労賃は日本の労働者に払われるんだ。そして利益を得たものの、その半分ぐらいはやはり税金として日本政府が取り上げるんだ。だから配当金みたいなものはわずかなものなんです。だからますます多国籍企業によってアメリカみずからか——会社はよくなったとしても、アメリカの国家はよくなりませんよ。そのいい実例がイギリスではございませんか。日本でもかつてそういうふうな事態がありました。これを称して日本では没落地主というんです。働き手がなくなってしまって、そしてあちらこちらの財産から配当収入やあるいは金利で生きておる人、こういう姿です。だからアメリカも近い将来そういうふうになるでありましょう。だからこういうことは無理しなさんな。それよりもアメリカ自身の労働者が富んで働くことのできるような、みずからの工場に力を入れなさい。私は一昨年の夏このことを半日力説したことを覚えております。  ちょうどそれから一年後にあのようなドルと金との交換停止のような刺激的な幕をあけたわけでございますけれども、私は、やはりもはやアメリカには遠慮しておるという体制をやめて、日本も苦しい二十数年の経験の中からそういうことを体験してきたんだというところから、アメリカにこのことをはっきりと改めていただかなければ日本も困るんですということを、日本の利益にもつながることでありアメリカの利益にもつながることでございますから、この際は同じパートナーとしてこれは堂々と言ってあげる必要があると思いますが、いかがでしょう。
  78. 田中角榮

    田中国務大臣 アメリカ経済がよくならなければ日本自体も困るのでございますよ。よきパートナーとしてアメリカの金・ドルの交換性が早急に回復するように、その背景はアメリカ経済自体がよくなり、総合収支が、買切収支がよくならなければできがたいことでございますので、その有力な手段として国内産業の振興というものに対して努力をせられるよう、これはいつでも述べております。またアメリカからいろいろな方々が参りますが、そのつどそういうことを言っております。日本自体もこれから合弁会社等がどんどん海外につくられていくわけでありますが、無制限にいい気になっておると、いまのアメリカ、かつてのイギリス、オラングというような状態と同じくならないという保障がありません。これは結局一つの例を申し上げますと、日本から鉄鋼が洪水のようにといわれて、鉄鋼に対しては自主規制を求めながら、その状態において鉄鋼が六%も賃金を上げるということで、実際アメリカ経済の中で国防競争力にたえないような部面が露呈をしておるということは、これは一つの現象であって、事実だと思います。そういう意味で、ドルの切り下げさえも行なったアメリカでございますから、やはり自国のためだけではなく、有力な世界のリーダーとしてのアメリカであります。ドルはキーカレンシーとしての性格を失ったとはいいながら、だれでもやはり基軸通貨だと思っておるわけでありますから、そういう意味アメリカの公な立場、みずからの国だけではなく、世界の縮小均衡をもたらさないためにも、アメリカ経済が拡大をし安定をするようなためには、努力をしていただかなければならない。われわれも可能な限り最大の協力を惜しまない、こういう態度をとっておるわけであります。
  79. 塚本三郎

    塚本委員 きょうは締めくくり質問でございますので、いろいろな問題を申し上げて聞いていただかなければならぬと思いますが、その際、先ほども通産大臣ちょっと触れられましたように、日本の国は製品を買ってやらないと他国にいわれても困るが、もっと大切なことは、いわゆる原材料を売ってやらないといわれたらもっと困る国であることは御承知のとおりであり、大臣も資源問題に対しては相当意を用いておいでになるようでございます。かつての太平洋戦争も対日経済封鎖、その中には資源を日本に供給しない、このことが日本の悲劇的になる実は大きな原因の一つであったやに私たちも察知いたしております。二つの問題、一つ日本に大量にそういう——先ほども、現地にそういう資源というものが貯蔵されておって、引き取らない、不景気であるから。こういうことに対してはやはり積極的に、外貨減らしのためにも引き取っていくべきだ。あるいは油のごときは、率直に申し上げて、大型タンクをどんどんと——これは業者ばかりにまかせずに、日本がどんどんやはり貯蔵していくことが日本経済にとっても必要ではなかろうかという、ともかく資源というものを日本にある程度の期間だけはだいじょうぶだというだけに、この際外貨も余っておるときであり、そしてまた相手国もやはり資源は引き取ってほしいというような気持ちもあるということから見て、業界だけにまかせずに、大幅に、油だけではなく、鉱物資源等を日本に引き取って貯蔵する方策を具体的にお考えいただく必要があるのではないかということと、相手の輸入に対しては、開発輸入でうんと——ただお金で買い取ってくる。高い安いという交渉だけではなくして、やはりその後発国の資源があとからどんどんと採掘でき得るように、開発に対しても特段の手を打っておかなかったら、日本は前とうしろとはさみ打ちで経済体制に大きな影響を与えるのではないかというふうに心配されます。それに対するお考えを承りたいと思います。   〔委員長退席、細田委員長代理港席〕
  80. 田中角榮

    田中国務大臣 御指摘のとおりでございまして、日本は輸出をしなければ、われわれの生活レベルも国力も増大をしないわけでございます。その輸出製品の原材料の大半は外国に仰いでおるのでございます。ですから、日本の景気が上昇をし、生産力が増せば、在庫が減れば当然輸入量がふえる、こういうことを申し上げておるわけでございます。いま輸出はふえておりますが、景気が沈滞をし、生産も下降ぎみでございますし、在庫も多くなっておりますので、原材料の輸入はとまっておるということでございます。鉄鉱石とか銅とかニッケルとかいうものの非鉄金属の原材料などは、引き取らないために現地との間に紛争を起こしておるものもございます。そういう意味でいますぐ景気を浮揚することができないとしたならば、当然必要である原材料は現地に貯蔵するとか、こちらへ持ってきて貯蔵とかとということを考えなければなりません、先般三億数千万ドルに及ぶ外貨の使用をこの非鉄金属に限って行なうようにいたしたのも、その理由に基づくものでございます。  輸入には一般輸入、金を貸して輸入する融資輸入、それから開発輸入の三つに分かれるわけでありますが、これからはやはり資源関係に対しては開発輸入とということがどうしても長期安定的なものであり、現地の協力を得られるものであるということでございます。まあニッケルとかそういうもの、石油などはほとんど一〇〇%輸入でございますし、鉄鉱石でも六五%以上ということで——六五%、七〇%、そういうように輸入にその大宗を仰いでいるという日本の特殊性から考えてみても長期的な問題として投資を必要とするというのは、これは当然でございます。  それからもう一つは、備蓄をしなければいけない。石油の備蓄、鉄鉱石の備蓄、それから非鉄金属鉱の備蓄ということがございます。これはまあ現地備蓄、日本に持ってくる備蓄。備蓄のやり方も業者で持たせるのか、それから政府が事業団等をつくってくれというものもありますが、それまでしなくても制度はできると思います。融資条件をどうするかということもありますし、いろいろな制度は現に考究しております。いずれ御相談を申し上げる、御審議をいただくということになると思いますが、これを早急にやらないとほんとうに九月、十月ごろ——私がどこかで述べたということで問題になりましたが、今年末日本の外貨準備高、これは百億ドルに届くかもしれないと申し上げたのでありますが、そんなにならぬという議論、それはもうはるかにそれをこすという議論、このごろでは、このままに推移せんか、六、七月ごろには二百億ドルをこすという議論も散見されるわけでありますから、そういうことを焦眉の問題として、しかも現在の対応策としてではなく、長期的な見通しのものにいろいろな施策を実行してまいるということであります。
  81. 塚本三郎

    塚本委員 ただ、一つ希望を申し上げておきますが、これを行なうには、特に開発などの場合、私は一つ、ある企業にこういうことを勧め、——勧めるったって、企業が積極的にその開発に乗り出すということで、これは農業開発だったんですけれども、協力をしましてやっとできるようになったのです。この私の経験からいいますると、全く困ったものだという一語に尽きるのです。通産省や大蔵省、経済企画庁にお話をいたしますと、すっすっと話が進んでいくのです。ところが金融機関へ行きますと全くこれがだめなんでございますね。私も相当に、いわゆる理解した政治家のつもりで何度足を運んだか知りません。向こうさまのお答えは、先生、これがいままでで一番早いんですよと、こう自慢しておっしゃる。ある有力な政治家がおいでになって四年間かかったんですよと自慢するのを私おこってやりました。これが政府の力持ちになる金融機関の姿なんですね。だから私は、そのお人柄を問題にするよりも、機構の中で、やはり大蔵省も通産省も経済企画庁も——ほんとう民間がどれだけ困らされておるか。私は、自分がもう身近であったために逐一すぐ電話をかけて飛んでいきまして、すぐ理事さんを集めてがなり散らして、もう先生来てもらわぬでもいいというようにやって一年間かかるんですよ、これが。これではいまの通産大臣お話のように二百億、二百五十億たまって、また円の切り上げをしなければならね状態になってやっといまの計画が乗っていくというような形になってしまって、進みません。だから、お役所仕事といって非能率だという意見がありますけれども、お役所は私たちが積極的に申し上げると、最近は局長さんたちも全くよく協力しておっていただける。それを受けて金融機関も協力的なんだけれども、どこかでパイプが詰まってしまうというようなことになってしまっておるのが現状でございます。ですからこの点は、私はお調べいただけばわかりますし、その人の、いわゆる責任者責任を問うよりも、やはりせっかく国でそれがための金融の立法がなされて、そうしていわゆる政府がそのような態勢でありながら窓口ではそんな始末であることを、私は貴重な経験をいたしました。したがって、この点だけはぜひもう一度いわゆる皆さま方の関係の金融機関に目を通し直して、申請の出されたり打ち合わせがあったりあるいはまた問い合わせがあってからいわゆるどれぐらいの経過をもっていまの書類をつかんでおるかということを私は通産大臣や大蔵大臣経済企画庁長官に希望として私の経験から申し上げておきます。  それから大蔵大臣にお尋ねいたしますが、最近中小企業者の間では付加価値税に対する非常に反発の気持が強いわけでございます。これはすでに大臣もそのことについての意見はお聞きになっておいでになると思いまするが、わが国の税制の中でこういう間接税というものはきわめてなじみにくい性格のものであることは御承知だと思いますが、いかがでしょう。   〔細田委員長代理退席、委員長着席〕
  82. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 付加価値税の問題は、わが国の税体系に大きい関連を持つものでございますから、したがって、当面の税制ということではなくて、中長期の課題としていま税制調査会に勉強を願っておりますし、また大蔵省自身でも広い角度から慎重に検討を行なっているという段階でございます。  そこでいま中小企業からいろいろ反対があるというようなお話でございましたが、私は、いまの状態ではこれは無理がないと思っております。と申しますのは、以前取引高税という税金を実施いたしました。これが非常に先入観となって頭に残っておりますので、また証紙を張ったこういう税金が復活するんじゃないかというふうに思っている人が非常に多いということがまず一つでございます。まだいままで日本で実施したことのないことでございますので全貌というものがちっとも示されておりませんので、したがって何だか知らないが、めんどうくさい税金がかかって税が強化されるということなら反対というような先ばしった反対の声が出てきておることも聞いてはおりますし、ある程度またこれは無理からぬことというふうに思われますが、そういうような欠点を全部除去して、日本の国土に合ったやり方で、国民がそうめんどうくさがらずに協力できる税制というようなものを、これは時間をかけても考えなければならない問題だと思います。  で、よく税の逆進性というようなことがいわれていますが、欧州で私どもが行っても勉強した範囲におきましては、これは所得水準の非常に低い国ではやはり逆進性というような問題が当然論議されるでしょうが、一定の所得水準の国になったらこの逆進性という問題はこれはもうそう支障を来たす問題ではなかろう、問題は何のためにこういう税制がとられなければならぬかということの意義との比較においてこれはもう克服されていい問題であるということが一つと、それからこの一つの欠点といいますか何といいますか、付加価値税というものは、もう何%と付加価値税率がきまればきまっただけ、物価はそれだけ上がるということを踏み切らなければできない税制である。これも欧州各国から私どもは十分勉強してまいりました。これは最終的には消費者に負担してもらう税金でございますから、中間の製造段階、流通段階人たちがこれを背負うべきものじゃない、これは立てかえるということがあっても自分が負担すべきものじゃない、したがってこの付加価値税をその段階において吸収してもらおうとかなんとかというようなことを考えたら、これは税制はできないから、そのまま機械的にそれだけ物価が上がってもいいんだ、こういう仕組みで考えなければこれは実施できないんだということになりますと、記帳というような問題のむずかしい問題がありますが、これがまた青色申告でもなかなか中小企業に対しては負担になるので、こういう煩瑣な手続が、はたしてこの付加価値税、いまの欧州が実施しているような付加価値税、進歩した形のああいう消費税が実施できるかというと、これはそう簡単にいくとは思いません。したがって、向こうのようなものをそのままこちらに導入してくるということはできませんので、もっとくふうをこらさなければならぬ。  そういうような問題と、それからもう一つは、これは各国でくれぐれもそれだけはと言って忠告された問題は、この税制というものは、もう国会が与野党全部が一致して理解して実施する腹になならなければ実施できない税制である。これほど、たとえば選挙のときに反対しいい税制はない。逆進性とか、やれ税金が上がるぞとかなんとか、理屈をつければ幾らでもつんくで、一方でこれを反対するというような気分がある間は、この負担をするのは国民でございますから、これはできない。与野党が、たとえば高福祉高負担のためにこういう間接税をもってこの需要に応じようというようなこと、十分目的から見て、こういう形ならいいというような理解ができてでないとこの税制は実施できない。そのためには、おそらく三年間はそういう問題のためにもかかるだろう。ですからあせらないでゆっくりやって、中小企業者に対しても、ああそういう税制ならばといって納得させるまでの準備がなければできないんだということも私どもは聞いてまいりましたので、私は、そうだと思います。  そこで、欧州のいまの付加価値税は非常に進んだ形でございますが、日本においては、欧州があそこまでいく過税をもっと勉強する必要があると思いまして、私はフランスのジスカールデスタン氏に、ひとつ日本にも勉強するにいい人を派遣してもらいたいとこの前お願いしましたら、四、五日前に返事が参りまして、向こうの主税局次長を日本によこす、そうして私に協力してくれるということになりましたので、向こうから専門家が来ましたら、私どもも時間をかけて、合理的な税制ができるように、これは取り組んで勉強したいと思っているところでございまして、決して軽率にこれに取り組んでいるわけではございませんし、また、これが簡単なものであるというふうに考えているわけではございません。
  83. 塚本三郎

    塚本委員 これは先年でしたか、中小企業政治連盟のお招きで、自民党さん、社会党さん、私、各党一人ずつ参りましてこの付加価値税を論じたとき、自民党さんも、絶対に反対でございますということをぴちっと言い切られたわけでございます。ところがどうも大臣の口から、直接税と間接税のバランスの問題等考えたいという声が出てくるものですから、中小企業者はたいへん不安に思っております。しかし、自民党としては絶対反対でございますと、おたくの党の代表もおっしゃられたんで、いまお話しのように三年間はまずは無理でしょうし、さらにまた各党、与野党が一致しなければという話をお聞きしまして、研究課題として研究なさることはけっこうでございますけれども、特に私どもが心配しますることは、いま大臣が触れられましたように、業者の中に組み込まれてしまう。このことは、今日の徴税の実態からするとそうなってしまうのです。  たとえば、今日物品税がかけられております。これもよく似たような形で入っておる税金でございまするが、たいへん中小企業者は迷惑をいたしております。といいまするのは、一品ごとに単価がきめられておりましても、買うときには、婚礼などの場合はセットで、四点セットとかいうような形で買っていくわけです。そうすると税、たとえばたんすの場合は六万円と記憶しておりまするけれども、これが六万五千円なり七万円するところを安くする。そのかわり四万円のものを四万五千円とか、三万円のものを三万五千円とか、こういう形で、どうせ一緒に買っていただくんだからということで、こいつを税に入らぬように下げておくと、こちらを適当にやっていく。しかしこれは、単品として一品ごとに買いたいと言えば売るし、一品ごとにみんな別々に値段がついておるんです。ところが税務官吏が参りますと、いや、これはインチキしているんだから、だからセットにして、そして四等分するとこれは税から出るんです。全部一緒ですとこうやってかけて、何年分か、もはやお客さまがどこに行ったかわからないのにかかわらず、業者がそれを払わなきゃならない。その金額が何千万と取られてつぶれかけている業者さえも、私は実は相談を受けたことがあります。だからこういうようにどうしても、いわゆる業者に組み込まれないといいましても、あとから、しかも三年さかのぼって業者にかかってくる、お客さまから取ってない、そうするほうが安く売れると思って。現に一品ごとに、デパートでは全部値段が別々になっておるにかかわらず、かってに標準を出してかってにかけてきて、三年さかのぼってかける、これが大蔵大臣、あなたのいわゆる部下の方々の御熱心な徴税の姿でございます。  だから、こんなときにいわゆる付加価値税なんかやられたら、まるっきり官憲が商売に介入するんだというような極端な意見まで出てきてしまうわけです。だから、このことは大臣もきわめて不本意でありましょうし、そうなることを避けて、いわゆる慎重とおっしゃいましたから、この点私は安心しておりまするが、ぜひひとついまのお話、与野党が一致をして実は踏み切るという意思が出るまでは、十分に検討なさることはけっこうでございまするが、やはり慎重の上にも慎重であっていただきたいというふうに思います。いかがでしょう。
  84. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 最初に私が申しましたように、取引高税というときに、証紙を張ってあるかないかで税務署が踏み込んで中に介入し過ぎたというようなことから、非常に中小企業の御批判がございました。したがって、また付加価値税というと、あのときのように、いまおっしゃられる大きい介入があったらたいへんだというようなことを心配されておるようで、私はそのことが、あるいはもっともだというふうに申したわけで、そういうことのないように、これはやはり気をつけて実施すべきものだろうと考えております。
  85. 塚本三郎

    塚本委員 時間がありませんから、私、聞きたいことがだめになってしまいましたが、四十三分までということでございますから、二点だけ質問をまとめて、これは建設大臣と郵政大臣にお尋ねをしてみたいと思います。  建設大臣には、土地の買い占めの問題でございますが、実はもう最近たいへんな、これは東洋経済ですけれども、「巨大企業が進めるニッポン列島買い占め!」という記事が出ております。そうでなくても、もう私たちの身辺には何々会社、何々不動産、たいへんなものでございまして、この一覧表を見てみますると、一カ所で一千万平米、こんな企業も幾つかあるわけでございますね。実は一社で億をこえる土地を、特に観光地などを買い占めておるというような事態でございます。現在では、「日本の内陸には、もう大きな土地はなくなりつつある。残るは島だけ」という状況に追い込まれていると三菱商事の某重役さんが語って、名前も書いてありますが、そんなたいへんな事態なんでございますね。これはほんとうに、政府は福祉政策を進められるにあたりましても、もう何といっても土地が土台でございます。  特に最近、私はこれは話を進めたかったわけでございますけれども、株価がどんどんと高いというようなことから、普通穏健な中産階級でさえも、利殖には株ではだめだから土地を買えというふうな形、これはもう十数年昔からそういうことがいわれ、進められまして、株券のかわりに土地が買い占めされて、利殖の対象で、株は実は投機であって投資ではないというふうな形に変わってきております。それに輪をかけて大企業が何百万単位、一口百万平米、こういうふうにいわれて買い占められておるという状態でございます。これは福祉政策を進める上において重大な問題だと思います。  したがいまして、これに対してこれからどう対処しようとするのか。もうおそいという声が決定的ではありますけれども、税その他の方面で何らかしておかないと、これは土地自身を個人のものだけに、あるいは利益の対象にしてしまう。それならば、御光地ならば直ちに福祉施設をつくってくれればよろしいのに、値上がりを待っておるだけ、あるいはとりあえず買っておこう主義の大企業の買い占めでございます。これに対する御見解、それからこれに対する処置はどうなさるのかということ。  それから郵政大臣には、先日来問題になっております郵便貯金の庶民金融としての貸し出しについて、実は各党の中でも非常に賛成者が多いと私は判断をいたしております。あるいは一説には、農協や漁協等が信用金庫を持っております、あるいはまた国民金融公庫の利用ということもありますが、いずれにしても、そういう問題は事業資金が中心になっておりまして、庶民の生活金融ではございません。だから、どうしても庶民の生活金融としては——団地の奥さまなどには、サラリーマン金融というものがたいへんふくれ上がって、そのことのために事故さえもたくさん起きて、週刊誌の種にさえもなりかねない事態になっております。したがって、やはり手軽なサラリーマン金融として郵便貯金を貸し付けの対象として扱われるということは、一般の世論としては非常に歓迎せられておると私たちは受け取っております。ぜひ実施していただきたいというのがわが党の希望でございます。この点を大臣のほうから御見解を承りたい。  以上、お二人の方に御質問申し上げまして、私の質問を終わります。
  86. 西村英一

    西村国務大臣 最近、金融緩和でございまするから、特にそういう土地を買うという現象が顕著になっておることは、私も新聞でも知っておりますし、また事実も知っております。これが、土地を買う場合に、主としてやはり観光施設、レジャーを相手にして買うようでございます。それがほんとうに善良な観光施設のためもありますし、中には、やはりあなたがおっしゃったような投機の対象で買うようなことも全然ないとは言えません。私の郷里でもそういうことがあります。公共事業の場合は、これは価格にいたしましても、ちゃんとある程度の、公共事業でございまするから限度をもって買いますけれども、レジャーとなりますと、その価格の限度がもう調子がはずれて、とにかく土地を買っておこうということでございます。  そこで、この問題は、市街化区域内とかあるいは市街化調整区域内、いわゆる都市計画が定められたところでございますと、建設主はいろいろ開発に対して許可権を持っておりますから、いろいろこれはシビアにやることができますけれども、一般的な土地については、いま建設大臣としてはきめ手がないわけでございます。しかし私は、この現象を見まして、どうしてもこういう現象が相変わらず行なわれまするから、地方公共団体がやはりある程度の規制の条例をつくってやる、そうして、一定以上の土地を買う場合にはやはり許可、届け出をするというような制度が必要だと思います。今度公有地の拡大の法案を出しましたが、これは市街化区域内のことでございまして、その場合には公共のため土地を売ろうという方は届け出をしなければなりませんけれども、いまあなたがおっしゃるのは、一般的のあちらこちらのレジャーの問題ですから、これでは防げないわけでございまするから、公共団体がやはり条例をつくって許可制をとる、あるいは公共団体が公的な公社をつくって、それでもって先行収得するというふうな方法を進めていくべきではなかろうかと私は思っておる次第でございます。  しかし、土地についてやはり投機的な方がないとは限りませんから、法人の土地収得による問題は、やはりこれは税制でひとつ対処して、投機的にやる方には、不当なもうけについて税で対処する。したがって私は、いま法人がどれだけ遊休の土地を持っておるかということ、これを建設省としても十分調べたい、かように思っておる次第でございまして、あなたにいま的確なお答えができませんが、要は、この問題は非常に大事でございますから、建設省としても真剣に——東洋経済も私は拝見いたしました。私の県もそれに出ておるわけですが、十分気をつけて対処したい。また建設大臣一人じゃできません。これは政府の各閣僚の協力を得てやらなければならぬことだ、かように思っておる次第でございます。
  87. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 先生お尋ねの、郵便局の預金者への個人貸し付けの問題でございますが、私どもといたしましては、郵便貯金の預金者が生活上の不時の入費があった場合に、貯金を引き出すということになりますれば、郵便貯金の性質上利率の上においてたいへん不利でございますから、これを救済いたしたい、預金者のために安定した貯金たらしめたいというような気持ちで、いわば郵便貯金の立てかえというような気持ちでやりたいと思っておるわけでございます。  ところが、私どもといたしましては、関係の向きの御了解を十分いただきまして、政府提案でいたしたいということで努力しておるわけでございますけれども、まだそういうところまで至っていないのであります。しかし、ぜひ今度の通常国会に出したいという熱意は捨てておりませんので、今後とも最後までそういうことで努力してまいりたい。(「がんばれ、がんばれ」と呼ぶ者あり)各党から非常に御激励も賜わっておるわけでございますから、最善を尽くして皆さま方の御期待に沿いたい、こういり決意で進みたいと思っております。  どうも御賛成ありがとうございます。
  88. 塚本三郎

    塚本委員 終わります。
  89. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これにて塚本君の質疑は終了いたしました。  昨日の上原君の質疑に関連した横路君の保留分の質疑を許します。
  90. 横路孝弘

    横路委員 昨日、私のほうで指摘をいたしました外務省の電信案について、調査の結果を報告されるということでございましたので、初めに外務省のほうから、私のほうで提示をした二つの外務省の電信案というものが、存在をしていたのかいなかったのか、この点についてまずご確認をいただきたいと思います。
  91. 福田赳夫

    福田国務大臣 政府委員から御説明申し上げます。
  92. 吉野文六

    ○吉野政府委員 お答えいたします。  先生御指摘の二つの電報につきまして、突き合わせた結果は、決裁の点につきまして、われわれのファイルにある原議と多少違うところがございますが、内容は全部同じである。決裁の点につきましては……(横路委員「よけいなことは言わないでいい」と呼ぶ)たとえば、大臣、次官、審議官その他の重要な決裁がございません。これはあとでとった、こういうことになるだろうと思います。
  93. 横路孝弘

    横路委員 外務大臣、こういう問題について外務大臣自身がお答えできないというのは、姿勢としてほんとうにまじめに私たちの提起した問題を受けとめておられるのかどうか、私は非常に疑問に思うわけであります。  いま、内容については事実であるということをお認めいただきました。この内容について、実は私は昨年の十二月七日の沖特の委員会、十二月十三日の沖特の委員会において質問をしたわけでありますが、そのときには、全くかような交渉文書というものはない、記録はしていないということだった。これからあとで、一つ一つの具体例について、政府が全く偽りの答弁をしたということが、実はいまの事実を確認いただいたことで明らかになったわけであります。  問題はそればかりではありません。つまり、あの沖繩協定の四条三項の請求権の経過ばかりではなくて、あの沖繩協定全般にかかわる問題について、あの強行採決をされた返還協定やあるいは関連の国内法の審議の中で政府答弁をされてきたことが、しかも、非常に重要な基本的な問題について答弁をされてきたことが、私たち野党ばかりじゃなくて、国民に対しても全くの偽りを含んだ答弁であったということが明らかにされたことこそ、実は大きな問題だろうというように私は思うわけであります。  そこで、私がひとつお尋ねしたいのは、三億二千万ドル、アメリカが払うことになっています協定の四条三項、この問題について、きのう指摘をいたしました昨年五月二十八日の愛知・マイヤー会談の概要によりますと、請求権のところはこのようになっています。愛知大臣より日本案、これは四条三項、これを受諾されたしと述べたところ、大使より、アメリカ側としては日本側の立場はよくわかり、かつ財源の心配までしてもらったことは多としているが、つまり財源の心配まで日本側にしてもらっているということは、非常に感謝するという意味です。議会に対して、見舞い金については予算要求をしないとの言質をとられている。つまり、沖繩返還に際してアメリカ側は一銭もお金を出さない、このことは議会において約束をしているから、非常に困難な問題に直面していると述べて、スナイダー公使より、四条三項日本案の文言では、必ず議会に対し財源に関する公開の説明を要求される。つまり金を払うことになっているけれども、おかしいじゃないかと要求される。そうすると、いや実は日本からこれをもらうのです、こういう説明をしたのでは、かえって日本側が困るじゃないか。問題は実質ではなくてアピラアンス、外観が問題なんだ、こういう形が問題なんだというように補足をした。このように、返還協定が締結をされる大詰めの段階の重要な会談の中で、四条三項について、私たちがこの間のあの十二月の議会で指摘をした点が、明確にこれらの文書に明らかになってきている。  もう一つの文書では、アメリカ側の四条三項の国内法的な法的根拠は何か。それは一八九六年二月に制定された、信託基金というものを設けてそれに基づいて払うという、こういう提案がアメリカ側から現実になされている。そして四条三項については、さらに追加をしてほしいと言って、四百万ドル以上には支払いがならないというような案までアメリカ側から提起されているわけです。  こういういま外務省が認められた二つの文書を見ても、私は完全にこの問題についてはアメリカ側との間に、四百万ドル、これは日本側か財源をめんどうを見るんだ、こういうことになっているのですから、皆さん方のいままでの答弁と全く違う。総理大臣、あなたが答弁されたこととこれは違うのです。これはどうですか。
  94. 福田赳夫

    福田国務大臣 いろいろいきさつがあったことは事実です。それは電報にもそういうことが書いてある。しかし、結論におきまして三億二千万ドルというものがきまった、そしてその三億二千万ドルというものは高度の政治的判断できまった、こういうことでありまして、その内訳として四百万ドルの補償費が入っておるという結果にはなっておらない、これははっきり私から申し上げることができると思います。いろいろいきさつのあったことは事実でございます。
  95. 横路孝弘

    横路委員 そのいきさつのあったという答弁だって、この前の国会答弁と違うのですよ。そんな話は全然出なかった、こういうように明確に答弁されているのです。これはあとで具体的にやります。  しかし、そうおっしゃるけれども、たとえばこの五月二十八日の愛知・マイヤー会談の概要のところの五ページを見ると、愛知外務大臣より重ねて、何とか政治的に解決する方法がないものだろうかと言って次の点を指摘した、とあるのですね。せっかくの三億二千万ドルがうまくいかずに三億一千六百万ドルという端数となっては、対外説明がむずかしくなる旨話しておいた。そして協定の七条では一体どうなっていますか。三億二千万ドルになっているじゃありませんか。だめですよ、そういうごまかしの答弁をおっしゃっては。
  96. 福田赳夫

    福田国務大臣 最終的というか、三億二千万ドルというものが最終段階でまずきまったのです。しかし一方におきまして、補償費の支払いをわがほうは要求した、それに対しまして米側がこれを拒否した、そういういきさつがあります。そして、特別のファンドを設けるかどうかというような議論があり、わがほうはそれは応諾しない、こういうふうになりまして、その電報に、いわゆる愛知書簡ついに発出に至らなかった、こういう経過があるわけであります。
  97. 横路孝弘

    横路委員 そうしたらこれは何ですか。せっかくの三億二千万ドルがうまくいかず三億一千六百万ドルという端数となっては、対外説明がむずかしくなる旨話しておいた、これは、ではどういう意味ですか。
  98. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これは当時のこまかい交渉の経緯がございまして、御存じのとおり、先方はわがほうに対して三億二千万ドルを払え、そしてさらに補償費は持たぬ、こういうことを言ったわけですね。わがほうは、三億二千万ドルも払っている以上、ともかく金がないとかいって補償費を払わぬというのはおかしいじゃないか、こういうように先方を責めたたわけです。そうしますと先方は、いろいろ交渉の経緯から申しまして、それでは先方が議会に対しても説明のつくように、たとえばおよその補償費に当たる四百万ドルくらいを、三億二千万ドルから別のワクにしてそれを協定に入れたらどうか、こういうようなことを先方は言い出したわけです。それに対して、いまの電報によりますと愛知大臣は、その三億二千万ドルを二つに割って四百万ドルを別口にすると片方は三億一千六百万ドルになる、これではわがほうが、高度の政治的配慮からようやく妥結した三億二千万ドルにつきまして、何といっても説明がつかないじゃないか、こういうようなやりとりをやった経緯がございます。  いずれにせよ、これらは交渉の途中でございまして、先ほど大臣が申し上げたとおり、最終的にはこの協定に書いたような形で妥結がついたわけでございます。
  99. 横路孝弘

    横路委員 だから、その四条三項というのは限度額はないのだというような答弁なのに、四百万ドルというそういうワクがあるのでしょう、話し合いの中で。——いや、まだいいです。答弁を求めていない。  そこで、私は佐藤総理大臣にお尋ねしたいのですが、国会における質疑というのは、私たち、だてや酔狂でやっているわけじゃない。そうすると、あの十二月七日における私の質問は、この経過について詳しくお尋ねをしていったのですが、そのときの答弁は一体何ですか。十九世紀末の法律に基づいて、アメリカ側には海外から金を引き出してそれを基金にして払うという法律があるだろう、その話が出ただろう。それに対して政府側の答弁は、そんな御指摘の事実は全然存じておりません。いいですか、全然存じておりません。五月二十八日のマイヤー大使の発言として、財源のめんどうを見てもらったというような発言がアメリカからあるじゃないかと、いま私が読み上げた経過を質問をしたわけであります。そんなことは全然ございません、こういうでたらめな答弁皆さん方はあの協定というものを強行採決されてきたんです。その責任というのは、総理大臣、あなたが行政の最高の責任者にあるのです。その責任、どのようにお考えになっていますか。
  100. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまわざわざ吉野君を呼んで、どういういきさつでいま横路君が読み上げたような返事をしたか、その記憶をちょっとたどってみたわけです。私自身そんな交渉の経過の詳細について知らないことは、これは横路君も納得がしていただけるだろう、かように思いますが、私どもアメリカとの交渉の結果として、三億二千万ドル、この金額はちゃんと記憶に残ってありますけれども、そのいきさつ、やりとりのその詳細については、やはりもっと詳細に全体についてお話し願わないと、どうも思い出せないものがございます。その辺まことに申しわけなく思います。  しかし、とにかくただいま御指摘のように、結果としてはこの三億二千万ドル、そういう事柄を含めて最終的な返還協定、これを調印したこと、これはもちろん私の責任でございます。その意味におきまして、批准交換もやれ、またいよいよ五月十五日には沖繩祖国復帰、これが実現しようとしておるのであります。そういう意味におきまして、この事柄はそれなりにお考えをいただきたい、かように私は思います。
  101. 横路孝弘

    横路委員 私が言っているのは、質問されて答えづらいこともあるでしょうが、しかし、この答弁はそういうことは全然ないというその発言なんですよ。うその答弁なんですよ。いいですか、会談についても口頭で行なったから、会談経過のメモなんか全くない、これで、福田外務大臣以下このときの国会答弁を、私たちの要求に対して無理やり押し切ったわけですよ。だから、そのときの責任総理大臣みずからあなたにある。その責任はやはりこの際明らかにしていただきたいと思うのです。
  102. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま事務当局から、当時の経過を私に詳細に報告してくれました。この速記がございますが、この中に私がお答えしておる。「私の名前が出ましたから、私に関することを申し上げます。」これから始まっております。「もちろん私も、総理をやっておると何もかも知っておるわけじゃございません。したがって、外務省から、その国との間にはこういう懸案事項がございますとか、ただいまこういう状態にございますとかいう、大体の私自身が勉強する材料をまず出してくれるのです。それをまず……「それはあたりまえだ」と呼ぶ者あり)」これは速記もそのとおりでございますから……(「まじめに答えろ」と呼ぶ者あり)まじめに答えている。速記録をはっきり読まなければ答えにならないじゃないですか。(「それはあたりまえだ」と呼ぶ者あり)それはあたりまえだと言われるいま不規則発言がありましたが、そのとおりあたりまえであります。私は、そういうことを一応目を通して、それに基づいて会談を持つのが普通であります。その場合に、外務省の役人のおる場合もありますし、外務省からだれも出てきておらない場合もあります。したがって、その外務省から出てきた者がおれば、これは私が命ずるわけではありませんが、どういうような話があったと、こういうようなことをやはり書きとめる場合もあります。云々等でございまして、私はこれは全部読む必要はないと思います。以上のような経過でございます。
  103. 横路孝弘

    横路委員 私が言っているのは、総理の発言について言っているのじゃないのです。政府側の答弁についてと言って、具体的に二カ所あげて、そしてその点について政府のほうは全く——この電信によると、会談の概要によると話が出ているのに、そんなことは全然知らぬと言って全くしらを切っている。行政の責任者、最高責任者として、あなたはそのことにどういう責任をお感じになっていますか、こういう質問なんです。
  104. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのは、私の答弁だというように私、聞いたものですから、ただいまお話をしたのです。  しかし、いま言われるように、最高の責任者総理大臣だ、総理大臣が逃げるわけにはいかぬ、こういうお話でございます。そのとおりです。私の部下がお答えしたこと、これはやはり総理としての責任はございます。さような意味合いにおいて、私も間違いは間違いを正す、その責任がある、かように思っております。ただいま外務省の事務当局からも、先ほどの文献についてはそのとおりこれを認めております。全然知らないというような答えをしたことはまことに不都合だ、私もかように思っております。これは言えないなら言えない、かように申すべき事柄ではなかったろうか、かように思います。
  105. 横路孝弘

    横路委員 この五月二十八日の愛知・マイヤー会談を見ると、請求権の問題ばかりじゃない。いいですか、一つはVOA、国民から大きな批判があがっているVOAの存続は、P3の那覇空港よりの移転と取引されている。それから、いいですか、極東放送、これについては現実に総理との間でやりとりもあった。アメリカ大使はこういうぐあいに言ってますよ、極東放送はニクソン大統領の一族にかかわることでもあり、郵政大臣が同意されないことはまことに残念である。郵政大臣は最後まで反対していたのに、協定の中にはこれは出てきて残ることになった。アメリカ側の意向そのままでしょう。このやりとりのときにわが党の大出委員が賛同をした。総理、何とおっしっいましたか。黒い霧とおっしゃられるけれども、私がしゃあしゃあとしてここに立っているのは、そんなことがないからだ。こうおっしゃった。覚えていますね。それに対して大出委員は、総理がしゃあしゃあと答弁をするときこそあぶないのだという追求をここで現実にされたのですよ。そして現実に出ているじゃありませんか。この問題ですね。  それからさらに、協定七条の財政条項についてどういう話になっているか。財政条項の三億二千万ドルについては、大蔵大臣も同席の上、総理の了承を得たが、ただし三公社、労務費、共同声明の第八項、つまり核抜きですね。それぞれにいかに割り振るかは日米間でよく打ち合わせ、対談会説明の食い違いなく、必要以外の発言はせざるようアメリカ側と完全に一致する必要がある旨全員一致で確認された。公社の資産の引き継ぎは一億七千五百万ドル、労務費は七千五百万ドル、第八項は七千万ドル。第八項については、これは政治的な配慮が働いたというようなことで、三つのうちあとの二つについては、外務大臣、積算根拠のあるような御答弁をなさっていた。ところがこれは何ですか。それぞれにいかに割り振るか、議会対策を考えて適当に割り振った、こういうことであります。請求権についても同じ、あるいは防衛に関する取りきめ、久保・カーチス協定、これについても出てきている。これは皆さん方は、あくまでも事務的なレベルでの話し合いだ。ところが、これを見るとそうじゃないですね。沖繩返還の前提になっている。アメリカ側の要求は、両国政府間の協定ないしは確認、そういう強い態度です。しかし、それでは国会にかけなければならぬから、議会対策上そういう形でなく、事務レベルのものと称しているあの久保・カーチス協定になっているのです。皆さん方答弁されてきたことと、極東放送にしても、七条の問題にいたしましても、あるいはいまの久保・カーチス協定のこの自衛隊の沖繩配備の問題にしても、あの沖繩国会の中で政府答弁されたことと全く違うわけですよ、この会談の内容が。これは経過じゃないですよ。総理どうですか。違うじゃありませんか、この中に発言されていることと。
  106. 福田赳夫

    福田国務大臣 経過はいろいろあったようです。あったようですが、大事なことは、最終的な日米間の合意がどうなったか、こういうことなんです。合意につきましては、これは日米間に食い違いもなければ、私どもが皆さんに御説明しているところにも食い違いもなければ、私は、この協定の内容というものは、これは最終段階の決着、それによって御理解を願うほかはない、かように考えております。
  107. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 横路君に申し上げます。——ちょっと待ってください。約束の時間がだいぶ経過しておりますから、簡単に願います。
  108. 横路孝弘

    横路委員 その最終結果は——いいですか、最終結果は、やりとりの中ですべてここに出てきているとおりになっているのです。だから私たちは問題だと言っているのです。だから問題だと言っているのです。このとおりになっているのです。  私の質問に関連して、楢崎委員から一言、それから公明、民社各党から関連の質問がありますので、それをお許しいただきたいと思います。
  109. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 楢崎君に申し上げますが、予定の時間を経過しておりますから、そのつもりでお願いいたします。楢崎君。
  110. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、いままでの一連の横路委員政府側のやりとりを聞いておりまして、また横路委員が出しました資料の信憑性からして、政府側もその資料を認めておるわけでありますから、これはまさに日米両国の秘密外交による典型的な密約であるといわざるを得ません。それから協定四条三項、つまり軍用地の復元補償をアメリカが自発的に支払う、これは全く虚偽の偽作である。事実は違う。三番目に、いまも横路委員指摘しましたとおり、われわれは各党含めて、いままで沖繩国会を通じて今日まで、完全に政府側から虚偽の回答を受け取った。虚偽の答弁をされてきた。これは国会国民に対する重大なる背信行為であるを私は思います。また国会に対する侮辱の行為であると思います。  かつて十一月の十六日に、私は岩国の問題を取り上げる前に総理にお伺いをしました。沖繩返還協定の基礎は日米両国の信頼関係にある、もしこれが裏切られるようなことがあったら、この沖繩返還協定の基礎はくずれるのだ、もしそういう事実があったら、総理責任を負いますかと言ったら、総理は何と答えられましたか。もしそういう事実があったら、自分はこの総理の席におらぬだろうと、そのときお答えになりました。さらに、昨日も申し上げたとおり、この事実が明白になったら、そのとき外務大臣がだれであるか知りません、総理大臣がだれであるか知りませんが、重大な責任が生じますよと十二月十三日にも私は指摘いたしております。まさにこれは、佐藤内閣の決定的に重大な責任問題がここに生じておる、このように私は思わざるを得ません。つまり、沖繩県民を含めまして国民を完全にだまし続けてきておったという事実、沖繩返還協定の基礎が根底から崩壊したという事実、こういう点について佐藤内閣の決定的な責任を私は追及したいと思います。総理の御見解を承りたい。
  111. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも楢崎君のお話聞いていると、岩国の問題と沖繩の問題とごっちゃにしていらっしゃるのじゃないですか。岩国にもし核があったら、私はないと、こういうことをはっきり申し上げました。しかし、どうもただいまの話では、すりかえのようです。(楢崎委員「いや、違います」と呼ぶ)岩国の話じゃないじゃないですか。いま横路君の言っているのは沖繩の問題じゃないですか。(楢崎委員「違います、違います」と呼ぶ)重大なる問題ですよ。国民の皆さんがみんな聞いていらっしゃいます。私がいかにもぬけぬけとでたらめを言っているように思われるとまことに残念です。私がその職にいないということは、これは岩国の問題です。
  112. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、そこまでおっしゃいますならば、議事録を取り寄せてください。私は岩国の問題を出す前に、一番冒頭に、総理はどこか出られて、モーニングを着て腰かけられて、すぐ私は言ったのですよ。これは、沖繩返還協定の基礎は何か、両国国民の信頼関係だ、それを言っておるのです。もしこの信頼関係がこわれたときには、これは返還協定の基礎が根底からくずれますね、それを私は最初指摘したのですよ。岩国の問題はそのずっとあとに出したのですよ。だからいまの総理の御答弁は私は解しかねますよ。議事録をそれではここで明確にしようではありませんか、そこまでおっしゃいますならば。
  113. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのお話で、岩国の問題じゃない、基本的な日米間の問題だ、こういうことですから、これはもう日米間の問題として話をいたしましょう。また、そういう意味で私どもも、基本的に日米間に大きな疑惑がある、大きな不信がある、そういう状態であったら、これはいままでのような状態は続けていけない、こういうことをはっきり申し上げます。それはそのとおりでございます。
  114. 横路孝弘

    横路委員 いままでのやりとりは、ともかく私たちは納得できませんし、了解できません。詳細に議事録と点検をしていくと、私はあの文書を見ながら、あの国会の議論を振り返ってみて読んでいくだに腹が立ってきた。これだけよくまあ私たちもだまされたものだ。ほんとうに腹立たしくなったわけでありしまして、了解できない。  時間が参りましたので、公明党のほうに譲りたいというふうに思います。
  115. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 次に、中川嘉美君の関連質疑を許しますが、十分間でありますから、そのつもりでお願いします。中川君。
  116. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 沖繩返還協定における対米交渉の際に、政府は密約は一切ない、このように答弁をしてきたわけでありますが、どうも今回の外務省の秘密文書によって、密約を結んだということがはっきりとなってきた。明確になってきたわけであります。これは国民を欺瞞するもはなはだしい。私はもうこの際、政府のこの政治責任は重大といわなければならぬ、こういう気持ちできょうここに立っておるわけでありますが、たとえばVOAとP3とは、これはもう全く無関係なものである。そして性格の異なるものであると私は考えます。こういったものが、この中でワン・パッケージと書いてあるけれども、なぜワン・パッケージになったのか。アメリカの要求によって、それ何の判断もなく言いなりになって、しかも国会においては、この重大な事実、これを隠して、国内法を変えてまで強引にこのVOAの存続を行なおうとしておる。これは全く交渉ではなくて、アメリカの要求を全面的に受け入れるにあたって、国民の目をどうごまかすかというこの方策を講じたとしか考えられない。なぜワン・パッケージとなったのか、これを説明してもらいたい。
  117. 福田赳夫

    福田国務大臣 冒頭に申し上げますが、沖繩返還協定には何らの密約も何もございません。裏取引もありません。また、特に具体的に御指摘のP3とVOA、これもひっかかりは別にございません。ただ、沖繩返還協定は沖繩返還協定としてワン・パッケージのものです。ワン・パッケージのものであるということは、これはそのとおりでございます。しかし、その間に批判を受けるようなやりとりでありますとか、あるいは批判を受けるような組み合わせでありますとか、あるいは批判を受けるような取引でありますとか、さようなものは一切ございませんから、さよう誤解ないようにお願い申し上げます。
  118. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 ここにも明らかにこういうふうに表現されているという事実、私はこの事実に対して、いま外務大臣答弁を求めておるわけなのです。この文書によれば、財政条項、この三億二千万ドルの内訳については、必要以外の発言はしないよう米側と完全に一致する必要があるということが全員で一致している。これで「確認された」とあるけれども、とんでもない話だ。これは本来なら、詳細に国会に報告、そして理解を求めるのが議会主義のあり方だ、そして政府責任ではないかということを私は強調したい。しかるに、これと全く正反対の、発言をしない云々、この合意は、沖繩返還交渉そのものが、日米政府の秘密交渉である、いかに議会や国民の目をごまかそうと苦心したかを如実に物語っているといわざるを得ないわけであります。  また、この文書によると、米軍の復元補償問題で、先ほど来出ておりますけれども日本側が財源の心配までしている。こういうことになっておりますけれども、これははたして事実かどうなのか、もう少しはっきり答えてもらいたい。復元補償費は、アメリカ議会の承認を得るなど、正式な手続に基づいて支出されることになっているのかどうか、この点もひとつ明確にしてもらいたいと思います。  三億二千万ドルが三億二千六百万ドル、こういう端数になると対外説明がむずかしくなると日本側で言っているけれども、このほんとうの金額は幾らなのか。ほんとうは三億一千六百万ドルじゃないのですか。その算定基準はあったはずじゃないですか。交渉で話し合われていたことが私は明らかだといわざるを得ない。日本側がみずからの希望で四百万ドルをアメリカ側に支払っているのではないか、協定の四条三項の「自発的支払い」などというのは全くのうそではないか、こういわざるを得ないのでありますが、一回ここで答弁を願いたいと思います。
  119. 福田赳夫

    福田国務大臣 まず三億二千万ドルの問題でございまするが、その内訳は、これは両方の政府において国会に説明をする、それに行き違いがある、そういうことになったら、これはたいへんです。行き違いがないように十分打ち合わせをする、これは当然のことだと思います。  それから、三億二千六百万ドルという数字がどうだ、こういう話でございますが、三億二千万ドルをいうものが出まして、そうしてかたがた一方において、わがほうにおいては約四百三十万ドル、こういうふうにいわゆる復元補償の要求をしておった、こういう事実はあります。それを差し引くと三億二千六百万ドルになる、そういうことでございます。
  120. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 全くこのつじつまを合わせるためのような答弁、これではほんとうに、私どもはこういった事実に対してこのままでは黙っていられない。この文書によれば、国会でもって、久保・カーチス協定は公式文書ではない、このように答弁をしてきておりますけれども、これまたうそじゃないか。交渉の過程で正式の公式文書扱いがされていることは明らかである。公式文書扱いがされている、したがってこの久保・カーチス協定の内容を日本が履行する義務を負っていることが明らかであります。だから、本来国会の承認を必要とする文書であるのだということを、われわれは前から主張してきている。この点についてどうです。
  121. 福田赳夫

    福田国務大臣 沖繩が返還になりますと、わが国は沖繩における防衛責任をとる。その際に、米軍も駐留をしておるのですから、その間にいろいろ打ち合わせしておく必要があることは、これまた当然のことなのです。それで、そのための協議が行なわれる、その協議の結果を取りまとめる、これも私は当然のことだろうと思います。ただし、これは協定ではございませんものですから、したがいまして、これは両国の間に権利義務としての関係は生じない、したがって国会の御審議をわずらわすような事態ではない、かような見解をとっております。
  122. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 とにかく関連質問であり、十分しかない。ゆっくり聞けませんけれども、とにかく私は、いま最後の結論を言う前に、一つだけ外務大臣に伺いたい。これはいまのこの問題と関連もあるので伺いたいと思いますが、私は去年の沖繩国会において、那覇空港からP3対潜哨戒機の撤去の問題、これについて再三外務大臣に質問した結果、大臣は、復帰までには必ず移転する、数回にわたってこのような答弁をされているのですけれども、これは最近どうなんですか。どういうふうな事態になってきたか。約束をひとつ履行してもらいたい。
  123. 福田赳夫

    福田国務大臣 今日では五月十五日になりましたが、返還時におきまして、那覇飛行場はわが国に完全に返還される、その際にはP3もなくなる、こういうことは私は前国会でしばしば申し上げた。また今国会でも申し上げたのです。ところが、諸般の状況によりまして、これが暫時おくれざるを得ないようなことになってきてしまった。私は非常にこれは残念なことに思います。これは、わが国政府といたしましても、また同時に沖繩県民に対しましても、まことに申しわけないことである、かように考えておる次第でございます。これはまことに遺憾であるという意思を明白に皆さんに表明しておきます。
  124. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 諸般の事情ということをいま言われましたけれども、こういうことだから——私は、いまいろいろな質問に対して答えられたいろいろな問題、これはこんなところで追及するだけの時間がない。いま、その諸般の事情によりという、その姿勢ですよ、私がここで言おうとしているのは。何から何までそういうふうになってしまう。だから政府は、アメリカ側は返還時において核はないと言明したことに対して、アメリカを信用する以外にないと言ってこられた。こんなことでは一体何を信じろというのか。私はその姿勢をここで追及したいと思う。核兵器の撤去等は全くもって諸般の事情云々、こういうことであれば信用するわけにいかない。こういうことに対して、政府はこれらについて政治責任というものをはっきりすべきである、このように私は思いますけれども、どうですか。
  125. 福田赳夫

    福田国務大臣 P3の撤去のおくれておる事情、これは中川さんもおそらく御承知のことじゃないかと思う。そういうようなことも含めまして私は、諸般の事情により、こういうふうに申しておるのです。それにいたしましても、まことに遺憾なことである、ことに沖繩県民に対しましてまことに申しわけない、こういうことを申し上げておる次第でございます。
  126. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 中川君、時間が経過いたしましたから、簡単に願います。
  127. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 とにかく去年の沖繩国会における大臣答弁を一応信用してきたつもりでありますが、それがこのような事態になったではないか、これを言っておるのですよ。こんなことでは、何から何まで納得いかないじゃないですか。審議なんかできはしない。どうしてくれるのですか。何から何までこのような答弁の食い違いが出てくる。まだ出てきます、これからも。われわれはこんなことは納得いかないですよ。どうしてくれるのだ。これは納得いかない。
  128. 福田赳夫

    福田国務大臣 P3は、五月十五日には完全にこれがなくなるという状態にないことは、まことに遺憾です。しかし、われわれ最善を尽くしまして、P3がすみやかに撤去するように努力をいたします。
  129. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 終わりますが、とにかく私は核兵器の問題について最後に触れるつもりだが、しかしながら、どうもP3でひっかかっておられるようですので、これは大事な問題ですけれども、関連の時間でありますので、以上で終わりたいと思います。
  130. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 次に、和田春生君の関連質疑を十分間だけ許します。
  131. 和田春生

    ○和田(春)委員 いままでたいへん重要なやりとりが行なわれておるわけでありますが、政府側の答弁で、事実関係についてはっきりしない点が一、二ございますので、その点を確かめたいと思いますけれども、協定の第七条によるところの実体的な金額は、三億二千万ドルなのですか、三億一千六百万ドルなのですか、どちらか、まずその点を外務大臣にお伺いしたいと思います。
  132. 福田赳夫

    福田国務大臣 三億二千万ドルであります。
  133. 和田春生

    ○和田(春)委員 そうすると今度は、問題となっている用地復元の補償費としてアメリカ側が日本に支払うという四百万ドルは、三億二千万ドルと全く関係がない金ですか。関係がある金ですか。
  134. 福田赳夫

    福田国務大臣 アメリカ側は、この復元補償、これの支払いを非常に渋ったのです。渋ったのでありますが、一方において三億二千万ドルのわが国から米国政府への支払いが行なわれるということを考慮しながら、これは独自の立場において復元補償の支払いを行なう、こういう決定をしたわけであります。その四百万ドルになりますか、幾らになりますか、やってみなければわかりませんけれども、その金がアメリカ政府の膨大な予算のどこから出てくるのか、これは当方の関知せざるところである、かように御理願います。
  135. 和田春生

    ○和田(春)委員 口先だけでごまかしてもらっては困るわけなんです。先ほど来、電報の写し、また内容等について、横路委員からもいろいろと質問がございましたけれども、それに対する答弁について、福田外務大臣は、これは交渉のいきさつである、いろいろないきさつがあってああいう結論に達したけれども、これは交渉のいきさつである、そのいきさつはこういう事実が存在をしている、こういうことについてお認めになりますね。
  136. 福田赳夫

    福田国務大臣 認めます。
  137. 和田春生

    ○和田(春)委員 それを認めるとすると、沖特やあるいは協特の委員会でいままで外務大臣あるいは総理答弁をされてきたことは、全くうそをついておった、そういうことにならざるを得ないのですけれども、確認してよろしゅうございますか。
  138. 福田赳夫

    福田国務大臣 総理も私も、ただいま問題になっておるような細部の問題につきまして、電報の一々にわたってのお答えはいたしておりませんです。私どもがお答えしておりますのは、三億二千万ドルが最終的にきまりました、これが正式のものです。裏取引はありません、こういうことなんです。こまかい電報との照合、そういうことについてはお答えはいたしておりませんです。
  139. 和田春生

    ○和田(春)委員 福田外務大臣が御存じなかったとすると、愛知外務大臣からそのことについては何らの情報も得ていなかった。したがって関知しなかった。佐藤総理も、このことについては全然報告を受けていないから、こういういきさつの事実があったことを承知していなかった。全く知らないがために、かつての国会の質疑においてああいう答弁をしたということですか。
  140. 福田赳夫

    福田国務大臣 電報の点についてですれ、いろいろお問い合わせがあった。そこで、そういう細部の点については私どもは承知しておりませんからそういう点には触れません、結論として三億二千万ドルがきまりました、それには裏取引はありません、こういうことを申し上げているのです。
  141. 和田春生

    ○和田(春)委員 そういうことをあなたが言うだろうと思ったから、ここに示されたいきさつの事実についてお認めになりますかということを聞いたわけです。あなたは認めるとおりしゃった。そうすると、こういう事実があるのに、何ら関係がない、密約はないと繰り返し政府答弁してきたことは、うそであったか、全く知らなかったかという形になる。うそをついておったとすれば、食言に対しての責任をとらなければなりません。全く知らなかったとすれば、これほど重要な交渉の内容について、総理にも知らしていない。次の外務大臣にも引き継ぎをしていない。福田外務大臣にそれを十分知らしていない。前愛知外務大臣佐藤内閣の外務大臣でありました。外務省等の責任は一体どうなるのですか。これは佐藤総理からお答えいただきたいと思います。
  142. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は先ほども、私の速記の一部を読みました。あれで御了承いただけると思います。私は、結論は三億二千万ドル、これで了承されている。そしてその中にはずいぶん表現のむずかしい点もありました。これは最高の政治責任、政治的判断できめたのです、こういうような表現もありました。これらのことをも含めながら、その中身を聞かないというか、そういう状態で三億二千万ドルという金額を了承した、これが私の気持ちでございます。
  143. 和田春生

    ○和田(春)委員 そういうことを言われるのなら、この種の問題は日本国民をだます必要のないことですから、反対があったかどうかは別としまして、アメリカに払うのが三億二千六百万ドルである、そしてその復元補償については、アメリカ側との交渉の結果やむを得ず日本政府が払います、そのことをはっきりさして、なぜ国民の批判、議会における批判を受けようとなされたいのですか。そういうようなインチキをやって、一応日本が払ったような形にしておいて、そしてアメリカからとったような形をするけれども、その財源については実はこっちが持っている。協定文の中では、復元補償についてはアメリカ側が自発的に払うというような表現を使うというのは、全くごまかしじゃないですか。そういうようなごまかしが私は政治不信を招くのだと思うのです。その点について重ねてお答えを願いたいと思うのです。
  144. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いや、別に政治的不信を招くという、そういうような心配があって私は内密にしておるわけじゃございません。ただいま申し上げたとおり、われわれが、三億二千万ドルそのまま国民にも発表してよろしいし、またそのうちに七千五百万ドルという最高の政治判断によってきめた金もある、これらのことを含めて合計三億二千万ドル、かように申したと思っております。これは別にないしょにしておるわけじゃありません。
  145. 和田春生

    ○和田(春)委員 ないしょにしていないとおっしゃいますけれども、先ほど来の質疑のやりとりでも、具体的に議事録が引っぱり出されて言われておりますように、全く関係がない、あるいは秘密的な約束はない、そういうことを繰り返し言われてきた。なぜそういう答弁をされたのかという質問に対して、福田外務大臣は、私は知らなかったとおっしゃった。しかし、知らなかったということについてこういう事実が出てきた、その政治責任はどうするかということを伺っているわけであります。  ここで私は特に申し上げたいわけでありますけれども、決して政府のあげ足とりをするつもりはありませんが、この種の政府の大きな失態に関しまして、この席上で私が質問するのは四回であります。四次防の先取り、自衛隊の立川に対する抜き打ち進駐、そして沖繩への自衛隊の物資の密輸送、さらに今回の問題であります。わずか、回の短い予算委員会の会期中に、繰り返し繰り返しこのような失態を繰り返すというところは、まさに佐藤内閣の末期的症状であり、これは総理のあげて政治的責任であると考えるわけであります。  そこで、最後にお伺いしたいのですけれども、こういう問題を起こして佐藤総理は、具体的にどういう政治責任のとり方をされるのか、そのお考えを伺いたいと思うのです。
  146. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御意見は御意見としてよく承っておきます。
  147. 和田春生

    ○和田(春)委員 御意見は御意見ではないんですよ。こういうような政治不信を引き起こすようなことを繰り返しやっているというところから、やはり政治そのものに対しての国民の疑惑というものをますます広げていく。最高の権力の座にあるのは、佐藤さん、あなたではないですか。だからどういうふうに具体的におとりになるのか。いまここでお答えになれないというのならば、それはそうかもしれませんけれども意見意見として聞いておく、そういうことなら、こういう質問を続けることは意味がないじゃないですか。これ以上質問を続けてはいけません。その点について私はこれで質問をとめます。
  148. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 次に、この問題についての関連質疑を松本明君に許しますが、お約束の時間は二分ということになっております。
  149. 松本善明

    松本(善)委員 この横路委員が明らかにした資料の存在を政府が認めたということは、これは非常に重大な問題であります。沖繩国会のときに論議をされたこと、国会議員も国民も知っておりますけれども、思いもかけないことが起こったということであります。しかもこのいきさつがあったということも認められた。これは、密約があることについての疑いを決して晴らすことはできない。いかに口で言われようとも、晴らすことはできないと思います。  私は総理外務大臣にお開きしておきたいのでありますが、外務大臣は、経過はいろいろあるけれども結論はこうなったのだ、こういうふうに言われました。しかし、それでは国民は納得いたしません。この秘密文書にあったような経過があったならば、その交渉がどのように発展をしていって、そうして協定に進んだのか、その具体的な内容を明らかにさるべき義務があると思う。この点が一点であります。  それからさらに、いまの答弁の中で、議会対策上のものがあったということを、外務大臣アメリカ局長も認められました。沖繩交渉の中でアメリカ日本国会対策のことが話し合われたのか。アメリカ側から議会対策という話が出ているならば、日本側から議会対策ということが出ているのは当然だろうと思います。そういうことが行なわれるということが秘密外交であります。国民に対して事実を明らかにしないということ、こういうことがなされているのかどうか。  この二点について、総理外務大臣の御見解を伺いたいと思います。
  150. 福田赳夫

    福田国務大臣 当事者であるアメリカとの間の交渉でございまするから、これは交渉の結果について両方で誤解があってはならない。また、国会に対する説明もある。それについて打ち合わせをしておく、これは私は当然のことだろうと思うのです。私は何もそういうことをして悪いとは思いません。しなければそれはたいへんなことになる、そういうふうに思います。  それから、結論は私がさっきから申し上げておるとおりです。三億二千万ドル、こういうふうにきまり、裏約束は全然ありませんです。しかしそれにはそこに至る経過はある。経過の一部は、ただいまお手元でごらんのような電報の往復、それで御承知になられるようないきさつもあった、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  151. 松本善明

    松本(善)委員 私は驚き入った答弁だというふうに思います。この経過からそのような答弁が出て、しかも当然だというようなことを言われるということは、とうてい納得ができないということを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  152. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 辻原弘市君。
  153. 辻原弘市

    ○辻原委員 ただいまお聞きのとおりでありまして、本問題について、われわれは先ほど公電が事実であるかどうかについての突き合わせもいたしました。その上に立って政府に報告を求めて、野党名党それぞれ、短時間ではありましたが、この問題についてのわれわれの見解を申し上げて、事の重大性を政府にお尋ねをいたしたところであります。しかしながら、いずれもわれわれが納得するところには至りません。したがいまして、このまま委員会を継続し審議を続行するということは、きわめて困難な事態であろうと私は思います。特に私がいま申し上げておきたいのは、事実を認められておる。公電はまさしく横路指摘のとおり相違なかったということが明らかになったのであります。ところが、それは単に交渉経過の一こまであって、結論とは直接の関係はないというのが政府の強弁であります。あえて強弁と申し上げますが、そういう強弁をされる限り、とうてい私どもを納得せしめることは不可能でございます。したがいまして、委員長、この問題の今後の取り扱い、また今後の審議の進め方等の必要のために暫時休憩をされて、理事会を開催していただきたいと思います。   〔「反対」と呼ぶ者あり〕
  154. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 この際、暫時休憩いたします。    午後三時四十五分休憩     —————————————   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕