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1972-03-15 第68回国会 衆議院 予算委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月十五日(水曜日)     午後一時八分開議  出席委員    委員長 瀬戸山三男君    理事 大坪 保雄君 理事 田中 龍夫君    理事 二階堂 進君 理事 細田 吉藏君    理事 阪上安太郎君 理事 辻原 弘市君    理事 鈴切 康雄君 理事 小平  忠君       足立 篤郎君    愛知 揆一君       赤澤 正道君    荒木萬壽夫君       植木庚子郎君    小川 半次君       大村 襄治君    奥野 誠亮君       仮谷 忠男君    川崎 秀二君       正示啓次郎君    田中 正巳君       中野 四郎君    灘尾 弘吉君       西村 直己君    根本龍太郎君       橋本龍太郎君    福田  一君       松浦周太郎君    森田重次郎君       渡辺  肇君    加藤 清二君       小林  進君    中村 重光君       楢崎弥之助君    西宮  弘君       細谷 治嘉君    安井 吉典君       林  孝矩君    川端 文夫君       東中 光雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 前尾繁三郎君         外 務 大 臣 福田 赳夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         通商産業大臣  田中 角榮君         運 輸 大 臣 丹羽喬四郎君         労 働 大 臣 塚原 俊郎君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣         北海道開発庁長         官       渡海元三郎君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      竹下  登君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大石 武一君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     谷村  裕君         首都圏整備委員         会事務局長   川島  博君         科学技術政務次         官       粟山 ひで君         科学技術庁研究         調整局長    千葉  博君         環境庁企画調整         局長      船後 正道君         環境庁大気保全         局長      山形 操六君         環境庁水質保全         局長      岡安  誠君         法務省民事局長 川島 一郎君         法務省刑事局長 辻 辰三郎君         法務省入国管理         局長      吉岡  章君         外務省アジア局         長       吉田 健三君         外務省経済局長 平原  毅君         外務省条約局長 高島 益郎君         大蔵省主計局長 相澤 英之君         大蔵省理財局長 橋口  收君         通商産業省貿易         振興局長    外山  弘君         中小企業庁長官 高橋 淑郎君         労働省職業安定         局長      道正 邦彦君         労働省職業訓練         局長      遠藤 政夫君         建設省都市局長 吉兼 三郎君         自治省財政局長 鎌田 要人君  委員外出席者         法務大臣官房訟         務部長     香川 保一君         大蔵大臣官房審         議官      松川 道哉君         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 三月十五日  辞任         補欠選任   安宅 常彦君     中村 重光君   原   茂君     加藤 清二君 同日  辞任         補欠選任   加藤 清二君     原   茂君   中村 重光君     安宅 常彦君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十七年度一般会計予算  昭和四十七年度特別会計予算  昭和四十七年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これより会議を開きます。  昭和四十七年度一般会計予算昭和四十七年度特別会計予算昭和四十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  一般質疑を行ないます。川端文夫君。
  3. 川端文夫

    川端委員 質問に入る前に一言、都民にかわって感謝を申し上げたいことがあります。  去る二月二十九日の八丈島付近の震源による強震が出たときに、いち早くラジオを通じて初期防火、いわゆるガスの元せんをとめろ、火を消せという報道をしていただきまして、大事に至らなかったことに対しての処置は、いいことはいいとして私は敬意を表しておきたいと存じます。  しかしながら、震災等経験を持ったり空襲等経験を持っている私どもから考えると、初期防火だけでは解決ができない幾多の問題がありますことをこれから御質問いたして進めていきたいと存じますが、特に最近ロサンゼルスのあの大震災以来、地震周期説というものが河角博士その他から伝わっておるわけでありますが、科学技術庁としては地震周期説というものに対してどういう見解をお持ちか、どうぞお答え願いたい。
  4. 粟山ひで

    粟山政府委員 地震予知ということにつきましては、現在まで種々学問的研究がされているところでございますけれども、まだ十分に解明されておりません。しかし、地震予知ということの重要性にかんがみまして、政府においても閣議了解に基づきまして、大学あるいは国立試験研究機関などによりまして構成された地震予知連絡会というのを設けまして、地震予知の究明に全力をあげているところでございます。また、科学技術庁におきましても、その一環といたしまして国立防災科学技術センターにおきまして、深層観測井による極微小地震観測等地震予知のための研究を鋭意つとめて推進しているところでございます。今後とも関係機関十分連携をとりまして、この研究の解明につとめたい、そのような所存でやっております。
  5. 川端文夫

    川端委員 研究されることはけっこうでありますが、いま都民の不安の対象になっているのは、いわゆる河角博士等地震周期説というものが来るのではないか。特にこのことが伝わって以来、東京各区にいたしましても、初期防火に対してはかなり熱意を込めて各戸に消火器を備えようと、そのための予算各区用意をしようというところまで準備しておるのですが、政府自体は、これから研究するということで、あるんだかないんだかわからぬという程度お話、ないならないでいいのです。あれは誤っているかもしれぬ、したがってわれわれは、ないと信じてこれから研究するんだとおっしゃるのなら、それはそれで私はまた一つの見方として理解できるのですが、あるんだかないんだかわからぬけれども、これから研究するというのじゃ少し手ぬるいのじゃないか。このことをお尋ねしているわけなんですが、もう一ぺんひとつ私どものわかりやすいことばで、ひとつじょうずにお答え願いたいと思います。
  6. 粟山ひで

    粟山政府委員 あるとは思わないとか、そういうことではございませんで、まだあるともないとも、何年間の間にあるとかなんとかいうことは解明されておりませんけれども、あった場合ということに対して、いまから、これから研究をするのじゃなくて、いま現にもういろいろと研究を進めております。そういうお答えを申し上げたわけでございます。
  7. 川端文夫

    川端委員 もう一点だけお答え願いたいのですが、科学技術庁として研究されていることはわかりました。しかし、それならば関係各省に対して、こう用意をしなさいということを言ったことがあるのかないのか、この点をひとつもう一ぺんお答え願いたいと存じます。
  8. 粟山ひで

    粟山政府委員 地震に対する研究は非常に多岐にわたっておりますので、関係省庁においてそれぞれの分野研究が推進されているところでございます。で、科学技術庁では関係各省庁と密接な連絡を保ちまして、そうして総合的な研究を推進するために、重要総合研究の一分野として防災科学技術を取り上げまして、関係機関研究に対しては予算の見積もり、方針調整を行なうとともに、多数の分野の協力を要するような総合的な研究を推進するための経費である特別研究促進調整費の活用をはかることにいたしております。また、国立防災科学技術センターにおきましても、地震予知に関する研究一環としての極微小地震観測、そういうものを、これは穴を三千五百メートルほど深く掘りまして、そこでもってこの微小な地震のゆれ、そういうものなぞをとらえて研究するというようなことをやっておりますし、それから筑波研究学園都市では、大型耐震実験装置によりまして建築物あるいは地震耐震構造等に関する研究を行なっております。そのほかに全国の強震観測データの集積、分析を行ないまして、そうして関係の各機関にそれを提供いたしまして、いろいろ各関係機関でやっておりますこととは十分に連絡をとりながら、ただいま申し上げましたように、予算の配分もその方針に従って十分に考慮の上でとるようにいたしまして、そうして地震があった場合に対する研究というものを早くやっておきたい、そういうことで鋭意研究を進めているところでございます。
  9. 川端文夫

    川端委員 科学技術庁の政務次官さんとこれ以上議論しても、研究しているという話しか聞こえないし、まあ地震があった場合の用意といって、起きてからの用意意味がないのです。この点はこれ以上あなたに質問は繰り返しませんけれども、私ども震災なり空襲経験を持っておる者から考えますと、あの当時、初期防火に対してかなり防空訓練などきびしい訓練を受けたのですが、大災害が起きればそういうものは一片のほごになってしまって、もう逃げ惑う以外は手がなかった経験を持っている者として、かなりこの地震の問題には深い関心を持っておるという、この気持ちを十分生かして学説が間違っているのなら間違っていると言って、そういう心配せぬでもいいよ、こう言ってもらいたかったし、あるのならばどうするべきかということを聞きたかったわけですが、どうぞそういう意味において今後単なる研究でなしに、そういうものを、やはり住民の不安をなくする意味においても一日も早くわれわれに安心のできるような方向をお示し願うことをお願いして、次に移りたいと存じます。どうぞお帰りください。  そこで、建設大臣いらっしゃいますか。——いま私このパンフレットを持っているのですが、美濃部さんが出しているシビルミニマムという中期計画、この中にも震災対策としてのいろいろな計画があります。そこで、昨年の四月の都知事選挙に、あなた方が応援なさった秦野候補が、東京開発五カ年計画の中にも、地震の心配があるという意味でいろいろな文書を書いて、これを天下に選挙に向かって公表しながら選挙を戦われたことは御存じでしょうか。この二冊の本が、一方は美濃部知事であり、一方は秦野候補であった、こういう意味においてどっちが正しかったか、どっちが信憑性があるかということに対して御見解があるならば、まずもってお聞きしておきたいと存じます。
  10. 西村英一

    西村国務大臣 東京都は地震についてはたいへん重要な地位でありますので、この前の都知事選挙につきまして、美濃部さんも秦野候補もそれぞれ自分のビジョンを掲げたことは当時拝見をいたしました。しかし、それを比較研究いたしまして、どっちが正しいというようなことまでは私も判断はつきませんでしたが、少なくとも両候補とも、東京における地震重大性ということは非常に意識して力をその方面に注いだことだけは私も承知をいたしております。
  11. 川端文夫

    川端委員 そういうお答えでは理解ができにくいのですが、それはそれとして、私の見ているこの二つの、選挙用かもしれませんけれども、これらの中を見ると、この震災計画に対する都市改造の問題に対しては、秦野さんのほうがより熱心に書かれておるように見受けるわけです。そういう意味において秦野候補のほうが、震災等に対する江東地域デルタ地帯改造なり避難場所なり、あるいは大田方面デルタ地帯の問題もかなり書いてあるのです、かなり日がたちましたからお忘れになったかもしれぬが。しかしながら、いずれも震災が周期的に来るおそれがあるとして用意をされて発表されたという意味においては、五十歩群歩違っても、その方針には、理解の上に立って都民に訴え、都民震災があるかもしれぬから用意をいたしますという約束の上に選挙を戦われたわけです。これらの問題に対して建設大臣はその後、選挙を終わった今日、東京大震災周期説等を、科学的には立証できるかできぬか知らぬけれども都民は不安に思っていることは間違いないのだが、これらに対してどういう準備対策をお持ちであるのかお聞かせ願いたいと思います。
  12. 西村英一

    西村国務大臣 実は、東京都知事選挙で両候補者がそれを唱えたということよりも前に、もうすでに東京におきましては地震に対して、ことに江東地区のゼロ地帯に対しては地震準備をしなければならぬということは、建設省といたしましては相当前からいろいろな準備をいたしておるのでございます。この選挙があってそれを初めて唱え出したとか、あるいは河角博士周期説の問題でどうしたかということではなしに、東京都についてはそういうこともあるから建設省としても相当準備を進めておったのでございます。  そこで、これは建設省のみならず、政府としても、やはりその周期説の唱えられたこともありましょう、十分注意しなければならぬ。これは東京都のみならず、全国的にそういうことに対する注意ということはありまして、昨年、四十六年の、私たちが閣僚になる前ですが、その前に防災会議をやりまして、そうして大都市における大地震に対する対策要綱というものをきめられました。これは建設省のみならず各省関係しない省はないぐらいたくさん関係いたしておるのでございます。それぞれその分野に応じまして、たとえば建設省はどういうことをやれ、運輸省はどういうことをやれという、各省でこの任務をきめまして事務局を中心にして何回かやったようで、要綱がきまっておる。私のほう、建設省といたしましては、昨年の九月にこの地震対策本部をつくりまして、建設省として責任分野についてどういう対策をやるかということを要綱できめました。そのおもな要綱をちょっと御参考のために申し上げます。  第一番には、建設省は、所管の施設耐震性に関して総点検をやって、その結果について補修しなければならぬものは補修しようという個所点検をやったのでございます。おもに橋梁とかあるいは堤防とか、そういうものに対して点検をやりました。これも全国的に、何カ所改修しなければならぬところがあるというような個所もわかっております。また、それに要する資金もわかっております。  第二番は、緊急啓開道路整備啓開道路というちょっと聞きなれないことばでございまするが、地震が起こりましたら普通の道路は使えません。沿線の火災で使えませんから、なるべく救援隊が自動車でもって早く応援に出られるような道路、それを啓開道路と申しておりますが、それをひとつきめようじゃないかということをやっております。  第三番には、そういう住民が避難する場合に河川敷道路をつくろう、これは多摩川の河川敷であるとか荒川の河川敷であるとかいうようなものを——日ごろは通行はできません。日ごろは使わせなく、一たん緩急のある場合にはその河川敷道路を使うように整備しよう。これも整備にかかっております。まだ完成はいたしておりませんが、整備にかかっております。  第四番には、都市地震対策促進でございます。これは耐震都市、いろいろな施設耐震耐火式にして、都市を防火的に強くするということでございます。  第五は、地震に対する研究開発をやろうというようなことをいまやっておる最中でございます。  そこで、あなたも御案内のとおり、東京でも前から最も気をつけておったのは江東地区でございます。江東地区市街地の再開発をやっております。これは相当遊離場所をつくり、いろいろな計画をしようということでいまやっておる最中でございまして、全国的にも耐震注意をするとともに、特に東京につきましては重大な関心を払って防災都市をつくりたい、かように建設省ではただいま一生懸命やっておる最中でございます。
  13. 川端文夫

    川端委員 いろいろ研究される姿に対して研究していないという立場を申し上げているわけじゃないが、今年度の予算措置等においてはどういうことをされようとしたのか、されたのか、これをひとつお聞かせ願えないでしょうか。
  14. 西村英一

    西村国務大臣 事務当局から……。
  15. 吉兼三郎

    ○吉兼政府委員 四十七年度の地震対策関係都市改造関連事業について御説明申し上げます。  いろいろな事業がございますが、主として江東地区に対する対策事業がほとんどでございますが、総額にいたしまして百二十六億というふうな金でございます。具体的には、避難地を確保いたしますための市街地開発事業、それから避難緑地整備事業、それから都市開発資金、これは工場あと地を買収いたしますための金、それから都市環境改善のための整備事業、それから避難路を確保いたしますための街路事業、それから耐震対策河川事業、それから関連といたしましての下水道関係事業等々でございます。
  16. 川端文夫

    川端委員 大臣、この問題は、いろいろな計画を立てられても、私が空襲のさなかに東京にいた者として御参考に申し上げれば、大体道路使いものにならないというのが実態です。火の海になって、火の川になって、実際上はアスファルトを敷いてある道路は、いよいよ大震災になり大災害が起きれば使いものにならないわけでありますから、そういう意味において、やはりこの災害対策というものは一日も早く、しかも今日、避難場所等都民のいこいの場所として使えるわけですから、この点はいまお話のあった程度では、周期説というものから見ればおよそ縁遠いではないか。しかも、私は皮肉を言うわけじゃないが、秦野さんに対しては一兆五千億の計画を立てることに対して了承を与えて、しかも二千億の財投をも認めるということを約束した、こう伝えられておるわけです。そのことから考えればあまりにも貧弱ではないのか、こういうことを言わざるを得ない。このことは一知事の問題ではないんだ、一千百万の都民の生命、財産を守るという立場に立てば、美濃部さんもあるいは皆さんに陳情等がないかもしれません。いろいろな意味においてなかなか気位の高い人のようでありますから、頼みに来ないからといってやらないということでは政治ではないのではないか。この点は十分心して、いま問題になっている周期説がなければ幸いだし、改造すればやはり都昂の福祉につながることでありますから、この点は十分心して促進をしてもらいたい。このことを申し上げて、時間の関係もあるから次に質問を移したいと思います。建設大臣震災問題はこの辺にして、また次の機会をいただきたいと存じます。  そこで、公害の問題に対して次に伺いたいと思うわけですけれども、今国会でようやく腰をあげて政府は、大気汚染防止及び水質汚濁防止法の一部改正として無過失損害賠償責任を明らかにする提案をされようとしているようでありますが、伝えられるところによれば、なかなか障害もあるということを聞いておるのですが、間違いなく提案されるかどうかを先に一ぺんお尋ねしておきたいと思います。
  17. 大石武一

    大石国務大臣 間違いなくということは言えるかどうかわかりませんが、何としても提案いたしたい、そういうふうに念願して努力いたす決心でございます。
  18. 川端文夫

    川端委員 私どもは、そういうこともあろうかと存じますので、あまりむずかしいことを言わないで、できるだけ政府がやりやすい方法と考えて、単独立法をつくっておやりなさいということをかねがね野党三党でいろいろ協議して提案してまいっておるわけでありますが、このことは、現在の気持ちとしては一歩前進として私は敬意を表するにやぶさかではありませんけれども、いままでやると言いながらどこかで障害が出るとやらないという、皮肉を言えば政治資金規正法のようなこともありますから、必ずやるという決意で当たってもらわなければならない重要な問題ではないか。今日、日本列島を渦巻くように広がっている公害の問題に対しては、私は、やはりあなた方がこれらに対してちゅうちょするならば、野党として単独立法を出してでもこの問題は十分明らかにしていくべき性格の法律であると考えているのですが、その決意をもう一ぺん聞かしていただきたいと思います。そういう立場理解できるかどうか。
  19. 大石武一

    大石国務大臣 いろいろと御激励を賜わりまして非常に感謝にたえません。私どもは現在の政治方向から考えましても、この法案はいつかは成立させなければならないものでございます。環境庁ができましたその根本的なことは、被害者を救済するということでございます。私どもは、そういう点から被害者ができるだけ早くりっぱに救済されますように、同時に公害の予防があわせて行ない得ますようにこの法案を考えておりますが、何としても国会に提案いたす決意はいたしております。ただ、いろいろな、まだ十分な御理解のない方面あるいはいろいろな反対の方もございますので、多少抵抗にぶつかっておりますが、何としても努力をいたす決意でございます。
  20. 川端文夫

    川端委員 何か事を起こせばどこかに障害なり抵抗は出てくるものです。しかし、いいことをやるのにわれわれはバックアップするのにやぶさかでございませんから、勇断をもってこの無過失損害賠償責任の問題に対しては出たっていただきたいことをまずもって申し上げたいのです。これらの問題は、特別委員会もあることですから内容につぶさに触れませんが、一、二点内容に触れてお尋ねしておきたいわけですが、全国的に資源の問題で従来ちやほやされておりましたけれども、今日の段階になると、やはりコストの問題で休廃業せざるを得ない鉱山がふえてきておるわけですね。これらの休廃業いたしました鉱山からいまなお公害、たれ流しの状態における、いろいろな施設整備しないまま休んでおる山がたくさんあるやに聞いておるわけです。これらに対してどういう態度で臨んでいくのか。しかも今日になって見れば、それらの休鉱にしたり廃鉱にした鉱山等所有主も変わってまいりましたし、公害面接責任者でない者になったりあるいはそれらの人々でない人々が、かりにわかっておっても公害処置ができないという力のない人も所有者になっておる場合もあると聞いておるわけですが、これらの問題に対しては具体的にはそのままやむを得ないとお考えになっているのか、どういうふうにすれば問題の解決に一歩前進できるという考え方があるのか、お尋ねしておきたいと思います。
  21. 大石武一

    大石国務大臣 現在わが国で休廃止鉱山といわれるのは五千近くあるそうでございます。このうち約一千二、三百の鉱山がいろいろな有害な物質を排出し得る可能性のあるものとして、いま見当つけましてその鉱山の一斉点検を通産省で行なっております。これは三年計画でございますから、すでに三分の一以上終わりまして、来年度、再年度には一千二百くらいでありますか、この鉱山の総点検を終わる予定になっております。そうしてもちろんそういう点検をいたしました結果、有害な物質を排出いたしますことがわかれば、これを全面的なさらに再調査を行ないまして、何とかしてこの物質の排出をとめるような、そのような処置に出なければならないということでお互いに相談をして、その努力をいたしておる最中でございます。
  22. 川端文夫

    川端委員 相談してということは、国の責任でやるともやらぬともまだきめていないということでございますか。
  23. 大石武一

    大石国務大臣 相談してと申しますのは、行政上の措置をどのような方法でやるか、どのような分担でやるかということを相談することでございます。そのとおりもちろん実行いたすことには間違いございません。
  24. 川端文夫

    川端委員 それでは、いつまで大石環境庁長官が長官に在任されるかどうかわからぬけれども、実行するというおことばを信用して、私はこの問題は期待をかけておるということを申し上げておきたいと存じます。  もう一つ、公害は企業の責任であるということは、昨年の公害国会といわれた当時からいろいろと論議されてきて明らかになっておるわけであるけれども、中小企業の公害に対しては特別な処置を考慮すべきだということは、この国会においても明らかに合意を得ておる問題だと私は考えておるわけです。それはそのとおりに考えてよろしいかどうか、大臣、いかがでしょうか。
  25. 大石武一

    大石国務大臣 公害に対するいろいろな処置をすることは、これは企業の責任でございます。これは中小企業といえども変わりございません。しかし、実際に現実にそのような対策公害を出さないようにあるいは公害処置するようなことをやらなければならない、それが一番大事なことでございます。そういう点から、その能力のない中小企業に対しましては、何とかそのことが可能であるような協力なり努力はいたさなければならぬ、こういう方針でおるわけでございます。
  26. 川端文夫

    川端委員 このことは当然なことで、いまお答えのとおりであるが、しかし、できるように世話をしてやろう、できることをしてやろうということであるけれども、過ぐる国会後でありますか、公害事業団というものを発足さして、いろいろと中小企業のめんどうを見ようとされておることもわれわれ承知しておりますけれども、これらの金融処置事業振興と同じ程度関係予算しか組んでいない、これからもうけようというものと、公害でいろいろ国民に迷惑をかけておるからこれらに対して公害処置するためにめんどうを見ていこうという考え方とが、企業振興と同じ程度のものでできるとお考えでありましょうか、どうでしょうか。
  27. 大石武一

    大石国務大臣 もちろん公害に要する費用というものは、必ずしも直接利益を生みません。したがいまして、直接の面では他の企業の振興なり営業に使う金とは別と思いますけれども、しかし、そのような公害防止の努力をしなければ、長い目で見ますと国際貿易なりその他の経済の発展にはつながり得ませんので、やはりこれを同じような意味においてその費用を使わなきゃならないと考えます。
  28. 川端文夫

    川端委員 私は、信頼申し上げている大臣からそういうお答えを受けるとは思わなかったんです。今日の中小企業の置かれている立場を考えれば、やりたくてもできないという事情がたくさんあることは、御存じないでものをおっしゃっているのか、存じながらも単にきまったものを言いわけするためにおっしゃっているのか、どうも理解に苦しむんです。今日の中小企業は、それでなくても非常な苦悩——後ほどこの問題に対してはお尋ねする問題点を持っておりますけれども、中小企業が公害まで手が回りかねておる実態をどのように考え、どのようにしていくかということもやはり政治の力が必要じゃないか、こういうことを考えているんですが、たとえば東京都が出している公害に対するいろんな資金の援助、貸し付け等を見ますと、東京都は年四分であって、公害事業団は年六分二厘なんですね。東京都が年四分であって、これから補完関係、信用保険等の問題を利用する場合においては四分の利子補給までして、一日も早く都民の要望している公害処置したいという熱意をあらわしているんです。この点には大蔵大臣どうですか。この点は、せっかく見えたんですから大蔵大臣東京都は都民のためには少なくとも公害に対しては別ワクに利子補給までして、年四分の資金が足らないで借りる分に対しては、利子補給してでも公害を一日も早くやろうという考え方で取り組んでいるように、私は東京都から資料をもらってきているんですが、国が法律をつくり、国がものをやろうというときに、これでいいのかどうかということをお尋ねしておきたいと思うのです。
  29. 大石武一

    大石国務大臣 先ほどの私の答弁が足りなかったと思いますが、基本的には前のような考えでございますが、もちろん中小企業に対しては、できるだけ政府の融資なり援助はしなきゃならないということは当然でございます。それは基本的なわれわれの考えでございます。  ただいまの、たとえば中小企業に対する公害防止のための融資の件でございますが、これは東京都に比べますといろいろと条件が悪いんではないか、もっと国でしっかりやらなきゃだめじゃないかという御意見でございますが、そのような面もございますけれども、必ずしも一がいにわれわれの中小企業に対する公害防止の融資——たとえば公害防止事業団であるとか中小企業金融公庫であるとか、あるいは国民金融公庫あるいは中小企業振興事業団ですか、あるいは近代化の中小企業の事業団、そういうものに対しましてはできるだけの資金を渡しまして、この中小企業の公害の防止の施設をしてもらっているわけでございます。その中でやはり政府からも、いま御承知のように、公害防止事業団の融資は、金利は五%か六%の範囲内でございます。しかし、これは明らかに国の一般会計からの助成をもらいまして、その程度の金利に下げておる現状でございます。しかし、もう少し下げたいのはわれわれも同じでございます、できるならば。ことしの予算でももう少し下げる方針でございましたが、それも達成できませんでした。来年度はさらに低金利に向かって努力を続けてまいりたいと思います。ただ、東京都は、なるほど多少金利は安いのでございますが、たとえば貸し出しの年限にしますと、非常に東京都は短いのでございます。これに比べますと事業団のほうはその倍ぐらい、長いのは二十年ぐらいの期限がございます。あるいは貸し付けの限度も、東京都では非常に限度がございます。一千五百万とか二千万とかの限度に限られておりますが、われわれのほうでは何億円でも、これはその必要なものに対してば貸し付ける方法がございます。そのように全体的に比べますと、必ずしも東京都より劣っているとは申されません。しかし、さらにいまよりももっと軽い負担の、もっと有利な条件にしたいことはおっしゃるとおりでございますから、今後もその努力は続けてまいりたいと思います。
  30. 川端文夫

    川端委員 私の持っているこれも東京都の資料によりますれば、公害防止事業団の貸し付け償還方法は、個別防止に対しては一年据え置き十年以内。事業団のやつはそうなっております。しかもその上に保証人二人、担保を要すと書いてあります。東京都の場合は年四分で貸して、これらに対してはそこまで言わないということで、いま都議会にかかっているやに聞いているんです。そういう意味からいうならば、国の公害に対する——中小企業にやらさなければ、中小企業といえども企業責任であることは間違いないというところまではだれもが否定していないんだけれども、やれるようにしてやるというにはあまりにも政府の手厚い手当てが少ないではないか、このことを言っているんだが、今年も言ったけれどもと言うんだけれども、大蔵大臣公害は中小企業の場合はしばらくおくれてもいいとお考えになって、こういう予算処置になったのかどうか、一ぺんお聞かせおきを願いたいと思います。
  31. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 公害対策予算は、御承知のとおり本年度は相当強化しているつもりでございます。また税制における措置もとっております。ただいま御質問の金融措置におきましても、たとえば中小公庫で申しますと昨年の倍、昨年は四十億でございますが、特に公害金融のワクを八十億にしますし、一般が八・二%の金利に対して公害関係は特に六・五%の金利にするというような金利政策も行なっておりますので、予算それから税制、金融、三つの面で公害防止の推進というものは、私はけっこう力を入れてはかっているつもりでございます。
  32. 川端文夫

    川端委員 まあけっこう入れているというこの問題に対しては、後ほどまた中小企業の立場に対しては商工委員会等でいろいろ通産大臣に御活動願う道を残したいと思いますけれども、とにもかくにも私は、この公害の問題に対しては、政府は中小企業に対して手厚い保護をしようとしていない、そのことは逆に言えば公害がおくれてもいいという結果になるおそれがあるのではないか、このことをどう考えてどう処置すべきかという立場でものを考えてもらいたい、そうなっていないじゃないかということを申し上げるのです。あれもやっている、これもやっているとおっしゃっても、地方自治体があせって何とかしなければならぬといって努力している努力よりは、国の努力のほうが少ないということはおかしいではないかということをまずもって申し上げておるわけなんですが、十分この点は今後の問題として、今国会において、これらの問題に対してのそれぞれの関係大臣の御活躍を期待しながら今後に残しておきたいと存じます。大臣、どうぞもう一つ考え直してもらわなければならぬ。中小企業はそれでなくてさえ生きていけない。後ほど問題を提起いたしますけれども、中小企業は今日、塗炭の苦しみの中に不景気と公害の中に悩み抜いておることをひとつ御理解おきを願いたい、こう思うわけです。  そこで、忙しいでしょうから、環境庁長官、けっこうです。  大蔵大臣、昨年の十二月に、いい悪いは別にいたしまして、とにもかくにも通貨調整を行なわれて、一六・八八と申しますか、二・五の幅を残してこの通貨調整が行なわれたことは間違いない事実として今日へ来ているわけですが、わずか三月たたない今日に至って、再び通貨不安が出てきていることをどのようにごらんになり、お考えになっているか、お聞かせ願いたいと思うのです。
  33. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ただいま出てきております通貨不安は、ドルが非常に弱くなっておるということから起こっておることだろうと思いますが、これは御承知のように、この前の多国間調整というものの効果がすぐ出てくるものではないということは各国共通の認識になっておりますので、したがってそういう意味から、米国になおしばらく国際収支の赤字が続くであろうとか、日本がいましばらくまだいままでのような黒字基調が続くであろうというようなことは各国ともこれを見通しておることでございまして、その点から、いま依然としてまだ黒字基調が日本に続いておるというようなものについて円の再切り上げを要望する国もございませんし、この点は別にいま日本が再切り上げを迫られているという事実はないだろうと思います。  ただ、あの調整が行なわれたあとで、ある程度ドルが還流するであろうと思われたものが、御承知のようにアメリカの金利が非常に安いために還流しなかったというようなこと、今年度のアメリカの予算編成においてまだ赤字解消の見込みが立たないというようなこと、いろいろなことが加わって為替相場に若干の変動が起こりましたが、しかし各国ともこの調整を維持する、そうしてこれをできるだけ守るという方向をきめて、いまそれぞれの国がそれぞれの国の国内政策において、また為替管理政策においてみなこの多角調整を守る方向へ力を合わせておりますので、私は、この為替不安というようなものは早晩鎮静する、そしていま心配されているような円の切り上げ問題というものは起こらなくて済むと思いますが、それとは別問題に日本独自として対外均衡を確保する、この政策はあくまで遂行しなければなりませんので、そういう意味ではなくて、従来の既定方針をここでさらに一歩進めて、そうして経済政策をやっていく必要は十分あろうと思います。特に不況が回復しさえすれば国際収支の姿は直るのですから、この直すことへいま全力をあげるべきである、せっかくその方向への努力中でございますが、不安から円のそういう問題が起こってくるということは、私、全然この点については考えておりません。
  34. 川端文夫

    川端委員 私は、そういう答弁を承っても納得できないのです。私は、通貨の調整の問題、今後の問題に対しては、大臣としても軽率にものを言えないであろうということはある程度承知の上でものを言っているのですが、現実に日本の国内ではそれによって大きな影響が出てきておる、これに対してどうするかということも含めてお尋ねしたかったわけです。  言うならば、現に日本の国内の大企業の分野においては二百七十円まで、まあ上げたというか下げたというか、ドルを下げて、二百七十円という先物の契約もいたしておる。その影響がやはり国内に大きく出てきておるという事実を踏んまえての話をお尋ねしておるわけなんですが、現に二百八十円、九十円というのを通り越して二百七十円で先物成約したという大企業もあると承っておるのです。そういう中で影響を受ける分野がかなり——日本のような中小企業の多い産業構造の中においては、影響が大きいという見方を私はとらざるを得ないのですが、大蔵大臣はそうお思いになりませんでしょうか。
  35. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 中小企業には相当影響を与えることであろうと私どもも心配しています。したがって、これはやはり各国が協調してこの通貨不安解消の実を見せることが大切でありますから、わが国におきましても内外均衡の回復という政策を、早くこれを実現していくということがやはり大切だろうと思います。そうすればそういう不安も解消するでございましょうし、この多国間調整というものは簡単に動かせるものではございませんで、私は、これは実際問題として円の再切り上げなんというものはここ早晩起こることではないと思っておりますので、もし不安から行き過ぎたそういうことをやる一部企業があるとしましても、私は、これはすぐに誤りは是正される方向へ必ず向いていくものだろうというふうに思っております。
  36. 川端文夫

    川端委員 それは大臣、甘いんじゃないでしょうか。まあ、言うならば日本の企業のように、下請関係やら関連企業を利用してのこの制度の中においては、結局それらのしわ寄せは全部中小企業に受けざるを得ないというのが現実の日本の経済機構になっておるわけでして、私は、そういうマクロ的な通貨の問題の見方よりは、現実に起きている問題等考えた場合に、さきにあなた方が緊急処置としておとりになったものもかなり効果が薄れてきているという事実から、いま御質問申し上げているわけです。  たとえば昨年の八月十五日に、あの変動相場制に踏み切られた当時、まだ固定相場制をきめない当時に、今日中小企業が緊急融資を受けるときの相場は幾らを標準にして金融を期待したかといえば、三百二十円を大体目標として、それに見合う返済計画を立てた借金というか借り入れを政府のお力で政策金融を使わしてもらった。しかしながら、固定相場制になりまして三百八円、自来少なくともこれは量で吸収できるのではあるまいかと期待しておったやさきに、それよりまた三百一円台という今日の状態になってまいりまして、これらの企業があの当時お金をお借りした実態からは大きな狂いが出てきて、非常に苦しんでおるという事実があるわけです。これらの通貨の問題は軽率にここで御答弁できないぐらいのことは、私、しろうとといえどもわからぬわけではございません。しかしながら、現実起きているこの事実に対して、当時、変動制相場をとる当時はドル・ショックと皆さんもおっしゃって、これにあたたかい緊急処置をされた時代からわずか三カ月か半年の間で、もうすでにそれもまた変わってきている。この中でどうして生きていったらいいのかという嘆きがかなり出ていることをどう御理解し、これに対する対処をしてやろうというお気持ちがあるのかないのかということをお尋ねしようとしているわけです。
  37. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 要するに多角調整は、これはあくまで守っていくという態度を政府ははっきりとることが必要であろうと思います。これがやはり不安を除くゆえんであろうと思いますので、私どもは、今後なすべき政策はたくさんございますが、要するに、せっかくの多国間調整はあくまで守り通していくという立場で、今後の政策遂行に当たるつもりでございます。
  38. 川端文夫

    川端委員 いままで通貨調整しても、今日の日本の輸出が減っていないじゃないかということをかなり各方面で言われています。このことは、いろいろなことがあっても、やはり国も政策の転換をしようとすれば容易でないと同じように、中小企業も、きのうまで自転車操業をしておったものが、このような状態の中に生きていくためには、多少無理をしてでも前のとおりに量産をしていく以外に、仕事を続ける以外にやむなしとすれば、出血輸出している面がかなり多いのです。これを、輸出がふえたから、ふえたからといって悪人扱いするようないろいろな表現は、私はまことに残酷な表現ではないかと思うのですが、とにもかくにも現在、いま申し上げているような立場で、今日出血輸出の中にかろうじて輸出をしているものがかなり多いというこの事実を通産大臣はどうお考えになっているか、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  39. 田中角榮

    田中国務大臣 御指摘のとおり、通貨調整後も輸出は依然として伸びてはおりますが、毎々申し上げておりますように、去年の日本の経済成長が非常に低いという、いわゆる不況の中の輸出増進ということが実態だと考えておるわけでございます。で、四十七年度を見ますと、四十六年度のようにはとても輸出がふえてはいかないだろうということでございます。去年は大体正味四%を切る程度の低い成長でございましたから、内需に向け切れないということになれば、当然輸出に回るわけでございます。また国際収支、なかんずく貿易収支が非常に大幅な黒字になっておりますのも、不況のために輸出が伸び輸入が相当低い水準で押えられておるというところに貿易収支の黒字が続いてきたわけでございます。今年度は七・二%という成長率を見通しておりますので、このような実績があがるようになれば、輸出が押えられ輸入が伸びて、この貿易収支の黒字幅も相当縮まるということでございます。  そういう本格的な情勢になってきたときに、中小企業というものは輸出が今度伸びにくくなり、しかも開発途上国からの輸入圧力もございますので、中小企業の実態というものに対しては相当こまかな配慮を必要とする実態である。大体あなたがいま御指摘になられたような、中小企業の状態は、倒産は少ないが、いろいろな問題がありますので、実態は安心できるような状態ではないので、いろいろな施策を行なわなければならない、こう考えております。
  40. 川端文夫

    川端委員 時間がないから、これに対する私の意見等は、後日また商工委員会等で通産大臣と話し合うことにして、これらの問題として、いま通産大臣もお認めになったように、不景気であるがためにかなり出血輸出もせざるを得ない日本の業界が多いという実態をお認めになるならば、私は、昨年の三百二十円なり、それらの時代に金融措置として緊急措置されたものの返済期間の延長なり、利子の低減等なり利子補給に対して、もう一ぺんめんどうを見る気があるかどうか、大蔵大臣に承っておきたいと思う。
  41. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 さっきお尋ねの出血輸出は、いま通産大臣お答えになりましたように、何が出血輸出をさせるかといいますと、国内の不況ということでございます。したがって、この不況が解決すれば内需がふえて、こう無理した輸出をしなくても済むという事態になりますので、何としても、私どもは早くこの不況から脱することを急がなければならないと思っておりますが、これがなかなか順調にいかないような様子で、私どもはいま心配しております。  幸いに、昨年の暮れに行なった予算の補正措置がいま働いておりますので、したがって、景気の下向きをささえておるということが言えると思いますが、予算の断絶がありますということは、非常にこういう問題でむずかしい問題でございますので、これは一日も早く私は新年度の予算を成立させていただきたいといま思っておるところでございますが、これが長引いてまだ不況が依然として解決されないというような事態になるとしますれば、いまおっしゃられたような問題は、やはりその事情に応じて、そのときしかるべくそれに即応した対策を考えなければならぬというふうには考えております。
  42. 川端文夫

    川端委員 私は、それらの問題に対しての討論をする時間がないことを残念に思います。ただ、そういう実態にあるという中小企業が多くなってきている。特に雑貨、クリスマス電球等の中小企業が深刻な状態におちいる日はそう遠くないであろうという心配をしていることだけは申し上げて、御考慮おきを願いたいと思うわけです。  そこでもう一つの点、端的にお尋ねしたいわけですが、私ども中小企業を扱う者の立場から言うならば、小規模企業の問題に大きなウエートを置いてこれから考えていかなければならぬと思うのですが、今日の金融制度そのものは、どうも前々から言われているように、大企業金融の隠れみのになっているのではないか。調査会というものはあるけれども、それは大企業の金融機関を擁護する機関になっているのではないか。たとえば中小企業小規模金融を今日ほどまじめにやっている信用組合等の員外利用を、いまだにこれに対しては制限を加えてやらせないという制度を堅持されておるわけですが、もういいのではないかと思うのだが、大蔵大臣、いかがですか。
  43. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 要するに、これはたてまえの問題でありまして、もしこういう協同組合に員外貸し出しを認めるということになりましたら、協同組合組織を特に認めている制度の性格の問題に触れることでございますので、その点で、いままでこの問題だけは消極的でございましたが、いろいろな事情もありまして、貸し出しにおいてはそうですが、預金というような点については、調査会の意見も聞いて、まず信用金庫のほうは一部認めることになりましたし、信用組合についても、今後これは検討していくべき問題ではないかというふうには考えております。
  44. 川端文夫

    川端委員 これも、時間がなくなったので端的に触れておきますが、郵政省が小口金融を始めざるを得ないという、庶民が大銀行に縁遠い人々であるという立場も含まれてそうなっておることから考えて、どうも金融制度調査会というものも大金融機関の隠れみのになっていると感じられてならないことも、ひとつお考えおきを願って、後日の問題にしたいと思います。いまの答弁を十分生かしていただいて御考慮願いたいことを要望申し上げて、この問題を避けます。  そこで、外務大臣が見えれば、少し外務大臣質問をしたいと思っていたのですが、まだ見えないから、これは商工委員会で幾らでもできる立場でございますけれども田中通産大臣に御質問申し上げたいわけです。  産業構造の転換の時期に来ているという意味において、私どもはこれらに対していろいろ施策を考えておるわけですが、その前に田中さんが、今回の国会には提案されておりませんけれども、国際産業調整法という構想を打ち出されたことがあります。これらに対しての構想はいまだにお捨てになっていないのか、あるいはそれはもう違ってきたという判断に立たれておるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  45. 田中角榮

    田中国務大臣 これは私だけの考えではなく、外務省も大蔵省も同じような、何か必要であるということを考えておったわけでございます。昨年緊急八項目の実施を行なったわけでございますし、いままた大蔵省では新八項目の策定等考えておると新聞は報道しておりますが、国際情勢の流動が非常に激しい状態でございますので、いまのような情勢に対処するには、何らかの調整措置が必要であるという考えは依然として持ち続け、研究を続けておるわけでございます。いまの外為法をそのままにして外貨の直接貸しをしよう、こういうことを考えておりましたが、なかなかむずかしい問題がございます。円の収縮を伴わない外貨の放出ということが可能なのかというような問題で、いま端的に、どうしても必要だといわれる非鉄金属鉱山等に対する原材料の引き取り等に対しては、一応の制限をつけながらも何らかの道をひとつ開こうということで、大蔵省御検討いただいております。  そういうことから考えてみても、まだまだ国際的な経済情勢がおさまったなどということではございませんし、日本に対する風当たりは、先ほど御指摘になったように、内容はよくないにもかかわらず、外から見ると非常に日本が高度成長を続けているような錯覚を持たれておりますし、風当たりも強くなることでありますので、やはり対外経済調整法のごときものが必要であるいう考えは、依然として持ち続けておるわけでございます。
  46. 川端文夫

    川端委員 ちょっと委員長に相談があるのですが、外務大臣が二時までに見えるということで質問を続けておったのだが、外務大臣が見えないというならば時間が来てしまうのです。私は、これから産業政策に入る場合においては、田中通産大臣等に対して、あるいは労働大臣等に対しては商工委員会でできる問題でもあるので……。
  47. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 いま入りました。
  48. 川端文夫

    川端委員 入りましたか。それじゃ一息つかれるまで一つだけ。やはり民社党は、先般来産業高度化転換五カ年計画案というものをつくって、事業転換を伴う企業に対しては、従来の産業政策だけではだめだ、やはり労働対策も含めなければ、同時に行なう形でなければ、仏つくって魂を入れないと同じようになりはしないかということで案をつくっているわけです。言うならば民主的な方法としては、やはり労働対策と産業政策が一体のものとならなければ本物にならないという立場で、労働者の転換等に対する影響に対しても十分配慮して、言うならば通産行政と労働行政が一体化する姿でやっていかなければならないと考えているのだが、そんなことはもう必要ないというふうにお考えかどうか、まずもってひとつ通産大臣いかがですか。
  49. 田中角榮

    田中国務大臣 労働なくして産業の伸長なしということでございまして、労働は産業の大宗でございます。これは労働省とは緊密な連絡をとって、労働イコール通産、このぐらいな考えでおりますので、これは、私と労働大臣との間に見解の相違はごうもないということで御理解を賜わりたいと思います。
  50. 川端文夫

    川端委員 いま外務大臣が来たから、外務大臣質問に入る前に、せっかくお待ちいただいたので、労働大臣からも一言。
  51. 塚原俊郎

    ○塚原国務大臣 何か通産省との間に意見の調整で欠いているようなこともいわれて、実は私、驚いているのですが、たとえば今度の工業再配置促進法という法律についても、労働省との間の詰めが甘いのではないかといわれておりますが、いま通産大臣がおっしゃったように非常に緊密な連絡をとって、労働省の主張は全部いれておるような状況でございます。  なお、今日停滞ぎみの経済情勢に対処して雇用の問題、失業の問題等、たいへん心配な点もありまするが、現在の段階ではそれほどのこともございませんが、今後あることを予想した万全の対策は、あらゆる面で講じていかなければならない。そのための関係各省との連携も、より一そう緊密にしてまいる考えでございます。
  52. 川端文夫

    川端委員 この問題の締めくくりとして、一つだけ申し上げておきますと、日本の産業の構造的な転換時期に来ている、このことは私ども理解した上に立って政策を考えておるわけでありまするけれども、言うならば外的なといいますか、貿易立国であったという日本の過去の実績から考えて、外的な条件によるものに対してはかなり優遇措置をとられていることは、先般の繊維産業の問題に徴しても明らかです。しかしながら、国内における政策転換なり事業転換をはからざるを得ない事業がたくさん出てきておる。たとえば、農業の減反等によって、今日農業機械等はたいへんな倒産が出てきておるし、専業農機械機具工場もえらい目にあっているのです。これらの中から出ている声は、繊維にあれだけのことをやったなら、われわれにも労働者に対してこれらのめんどうを見てくれるのは、あたりまえではないかという声がかなり強く出ておることを考えた場合に、これからの産業政策の中には、やはり外も内もなしに日本の産業構造を改革していくという立場に立てば、同様な扱いをするのが当然ではないかという考え方から、いま御質問を申し上げておるわけでありまして、この点にはお答え要りませんから、ひとつ労働大臣も単に御答弁だけでなく、その決意をさらに十分に固めていただきたいことをお願いして、この質問を一応終わらしておきたいと存じます。  そこで、せっかく外務大臣に来ていただいたわけですから、ココムの委員会の問題に対して、最近の情勢から——これも通産大臣お答え要りません。あなたが答えるとおかしくなるから当分黙っておってください。そこで外務大臣はどうお考えになっているのか、この点をひとつお尋ねしておきたいと思います。
  53. 福田赳夫

    福田国務大臣 私はかねがね申し上げておりますが、これからの世界は多極化の世界である。同時にその多極化の中で緊張緩和の勢いが進められるであろう、こういう展望を持っております。そういう展望からいたしますると、わが国の外交の基本的な方向、これは一つは脱イデオロギーというところにこれを置くという考え方、これを取り入れる必要がある、こういうふうにいま考えておるのです。  そういう中におきまして、いわゆる冷戦構造というか、多極化時代以前の世界情勢の中から生まれましたココム、これは私は廃止というか、そういう方向で対処していってしかるべきである、そういうふうに考えております。ただ、すぐ突如として全廃できるかというと、そういう情勢でもない。つまり、これは多国間の相談の問題であるということがあります。  それから、もう一つは兵器という問題があるのです。これなんかについてどういうふうに扱うかということになりますと、これはなかなかそう簡単にいかぬ問題がある。しかし、考え方の方向といたしましては、私はこれを廃止するという方向、そういう方向がしかるべきかというふうに考えまして、過般のパリの会議でも、そういう姿勢をもって臨んでおるわけでありまして、また実績といたしましても、かなり日本の考え方に近い結論が得られつつある、これが現況でございます。
  54. 川端文夫

    川端委員 国際社会の中において、いまおっしゃるような立場で基本は考えておるけれども方向としてはこう考えているという、このような逃ぐ口上では済まない時代になってきておるのじゃないか。もうココムはすでに形骸化されていると言ってもいいのではないでしょうか。この点では、アメリカの先般のニクソン訪中等の中から生まれている、インテルサットという衛星の地上機器等に対して、当然ココムの審査を受けなければならぬものを置いてくるということを、もうすでにきめているのじゃないですか。日本がそれらの問題を、国際協調を強調するのあまり、常に時期おくれになったりなんかしているように感じられてしかたがないのですが、これらの問題に対して、しかも国際社会に復帰した中国に対しては、今後前向きに処置してまいりますということは、総理大臣もたびたび発言されているけれども、どうも私の感じでは、外務大臣がそうではないように思えてならないのですが、いかがでしょう。
  55. 福田赳夫

    福田国務大臣 それは川端さんの少し思い過ぎかもしれません。わが日本はココム廃止の方向ということで、先頭を切っていると言ってもいい立場にあるわけでありまして、しかもこのわが国の姿勢はココムの整理縮小、これにはかなりの実績をあげている。私も、いまお話がありましたが、決して逃げ口上とかそんなような考え方は持っておりません。かたい考え方を持ってそういう態度をとっておる、またそれを進めておるということを、はっきり申し上げます。
  56. 川端文夫

    川端委員 どうもおかしいのです。そうであるとするならば、最近国際連合の中における、いわゆる中国の問題に対するいろんな専門機関がありますね。これらの問題に対しては、日本がいつも棄権をしていると伝えられているわけですが、どういうわけでしょうか。これらの問題に対してお答え願いたい。
  57. 福田赳夫

    福田国務大臣 ココムの問題とはこれは別です。ココムの問題はココムの問題、また国連の専門機関の扱いの問題は専門機関の扱い、そういうふうに分けて考えなければならない問題です。専門機関に対しましては、わが国は、率直に申し上げますと国民政府という存在があるのです。この国民政府との間に正式に国交関係を持っておる。その立場、これは非常に苦しいのです。苦しい立場にありますが、しかし中国が国連に参加した、こういうこともまた現実の問題であり、これを踏んまえなければならぬ。その苦しい立場のわが日本国の、新しい中国国連加盟という情勢下においてとる道はどうだ、こう言うと棄権という形、これがまあまあというところじゃあるまいか、そういうふうに考えまして、たしか六機関につきましてそういう立場をとったわけでありますが、今後はどうしますか、まだ七機関くらい残されておりますが、そういう方向の考え方くらいしかないのじゃないかとも考えますが、今後のことはなお考えますにいたしましても、ただいま申し上げましたような、非常に日本とすると苦しい、デリケートな立場にある、これも御理解願いたい、かように考えております。
  58. 川端文夫

    川端委員 私は、いま外交問題を論じているのではなしに、外交に関連して、ココムと違うじゃないかといまおっしゃるけれども、考え方としてはどうしてもそういうところにこだわり過ぎて、日本と中国とがこれから前向きに行くのだということをたびたび発表しておきながら、ちっとも前向きになっていかない姿に対しては、どうお考えかという立場でものを聞いているのです。この点は、いまココムと違うではないかとおっしゃるけれども、その考え方が、台湾問題に対する態度不明の姿のままでは、中国との関係の改善はでき得ないという、この考え方はどうお考えでしょうか。
  59. 福田赳夫

    福田国務大臣 私どもは、中国に対しましては、中華人民共和国が中国を代表する正統政府である、こういうふうな考え方、つまり交渉の相手である、こういうしっかりした認識を持っておるわけなんです。それで、その中国との間に横たわる諸問題は、この交渉の過程——交渉といえばこれは政府間接触になります。その過程において解決しましょう、こういう考え方をとっておる。私は、この考え方はかなり前向き、積極的な考え方じゃないか、そういうふうに考えておるわけでありますが、どういう点がそういうことで悪いのか、中国の言うことを全部聞かなければこの交渉は始まらないというところにあるのかどうか、その辺よくわかりませんけれども、わが国といたしましては、かなり積極的なかまえでこの中国問題とは取り組みたい。私は常に言っているのです。歴史の流れとしてこれを解決したい、こういうふうにまで言っているわけですから、どうか微意のあるところをおくみ取りくださいまして、御理解願いたい、かように存じます。
  60. 川端文夫

    川端委員 それは大臣見解の相違だと言えばそれまでですが、私は、昭和三十年に北京で見本市の開催時、村田省藏先生の代理として、副会長という立場で、しかも地方議連の団長という立場で中国を訪問した経験を持ち、中国問題に対しては深い関心を持ってきているわけです。そこで、問題の考え方の一つとして、どうもそういう甘い考え方では、原則をやかましく言う中国は、それでは国交回復はできませんよ、あるいは前向きと言ったってうしろ向きではないかという議論が出てくるのは当然ではございませんかという立場を申し上げたいのです。したがって、あなたのいまおっしゃる姿で、どこかが踏み切らざるを得ない時期があるとするならば、いまじゃないのか。  したがってココム等に対しては、もうそういう形骸化されておる、しかもココム委員会をつくろうと言い出したのがアメリカでしょう。そのアメリカがもうすでに破っておる今日において、なお日本がそれにこだわらざるを得ないというところに、どこか一つ私どもと食い違いがあるように思えてならぬのですが、そうお思いになりませんか。
  61. 福田赳夫

    福田国務大臣 アメリカがココムを破っておる、こういう前提でお話しのようでありますが、これはそうじゃないのです。アメリカは上海に宇宙中継施設を置いていく、これは永久に置いていく、つまり中国に譲り渡す、そういうことになるとココム違反になります。しかし、ココムの制度には特認制度というのがあるのです。つまり、例外的に申請があればこれを容認しましょう、こういう制度があるわけでありますが、アメリカはちゃんとその特認の手続をとっているのです。違反をしているのでも何でもない、そういう状態にあるわけなのですが、私どもは、このアメリカの特認の申請に対しましては賛成をいたしたわけです。しかし、ココム自体につきましては、先ほどから申し上げておりますとおり、私どもはこれを、これも歴史の流れの一つ、廃止の方向だ、こういうことで対処しておるわけですから、この点は、あなたの考えとそう違った考えじゃありません。  ただ、中国政策につきましては、われわれは現実の問題を掲げておるのです。話をいたしましょうや、話の過程でいろいろ問題は解決されるじゃありませんか、私は、交渉のやり方とすれば、この行き方というものは当然そういうことになるのじゃないかと思う。初めから何が何でも、一から十まで先方の言うことを聞かなければ話は始まりません、私はそれは交渉じゃないと思うのですよ。交渉の必要も何もない。そうじゃなくて、ほんとうに善意をもって、真意をもって、誠意をもって交渉に当たりましょう、話せばわかる、こういう確信を持っておるわけなんでありまして、決して、中国問題についてこれをないがしろにしておる、あるいはこれをうしろ向きだ、そういうふうな御批判をいただくような筋合いにはない、こういうふうに考えております。
  62. 川端文夫

    川端委員 関連をしておりますから、時間もないし、一括して申し上げますけれども、いわゆる世にいう輸銀使用の問題に関する吉田書簡ですね。私は、あのたてまえを重んずる中国としては、今日中国は、必ずしも輸銀使用に向こうから必要だと言った覚えはないはずです。しかしながら、いつも中国貿易の障害になっているのは何かと言えば、私は、やはり吉田書簡があるからこそいろいろな問題が複雑になっていくのだ、こういう見方をとっておるのですが、これはいかがでしょうか。
  63. 福田赳夫

    福田国務大臣 吉田書簡、これは私どもの頭の中には全然ありません。これは皆さんがおっしゃるものだから吉田書簡ということばを出さなければならぬわけですが、私の頭のどこにも、もう吉田書簡という考え方はありません。吉田書簡は何だといえば、吉田故首相のこれは私の手紙です。吉田さんはおなくなりになっておる。これを廃棄せい、廃棄せいと言いますけれども、おなくなりになりました吉田さんに廃棄さすべきよすがも何もありはしない。しかし、私どものとらえ方といたしましては、歴史的事実としてはそういう手紙が出ておる。一個人の手紙であります。しかし、この手紙は吉田さんとともに死滅しておる、そういうふうな認識を持っているわけです。それで私は十分じゃないかと思う。それを何か廃棄せい、廃棄せい、こういう手続上のことを言われましても、その私の書簡の当の差し出し人が今日いない、お願いするすべもない、こういう状態でありますので、この点も御理解を願いたいと思います。
  64. 川端文夫

    川端委員 私は、その見解に対しては詭弁だと思うのです。それは、佐藤総理が国会の答弁の中においても、かつては、これは私信であるけれども、やはり政治的な意義を持っているということをお答えになった事実があるのです。したがって、今日そういうことをおっしゃるなら、吉田書簡は、われわれはもうそれはないものだという断言をされても悪くはないじゃないか。あれはないんだ、ないんだと言いながら、何かこだわっているように見えることを残しておくということに問題があるというふうに私は申し上げたいのです。そういう意味で、いまの御答弁どおりなら、あれは関係ない、あれは無効だ、こう言われてもいいはずだと思うのですが、いかがですか。
  65. 福田赳夫

    福田国務大臣 あれが無効だとかなんとか言われるものですから、そこで問題がややこしくなるわけなんで、吉田さんは差し出し人でありますが、おなくなりになっておられる。吉田さん、あれを無効にしてください、廃棄してくださいとお願いをするよすががもうないのです。ですから、そういうことを言われても無理じゃないか。しかし、私どもはあれに何のこだわりも持っておりません。あれはもう死滅したものであるという認識でおるということを御理解願いますれば十分ではなかろうか、かように考えております。
  66. 川端文夫

    川端委員 時間が来ましたからあまりしつこく申しませんけれども、佐藤総理がこの書簡に対しては、政治的な意義があるということをおっしゃったことも事実なんだということはひとつ踏んまえて、相手方だけ悪いという考え方はおかしいんじゃないか。向こうがそう思うならば——思ったりしたりはお互い自由ですよ。そういう意味から言うならば、向こうがそう思うならば、これはないものとしてわれわれは廃棄する、無効と考えておるのだということを天下に声明されればいいので、言うならば、昨年来、田中通産大臣になられてから、輸銀使用に対してはわれわれはそういう態度でいくのだと言われるけれども、中国側との貿易に関係している業者はまだ一件も申し出がないはずでしょう。そのことは何を意味するかといえば、そのことがあるために中国側は受け入れにくい事情もあるのであろうという配慮から、いまだにそれらの問題に対しては、だれも輸銀使用に対しての申請が出てこない。  しかし、中国は今日日本との貿易をしたいという立場であるけれども、日本の敵視政策というものがじゃましているからやりにくい、佐藤ではできないということを言っているのも事実であるし、そういう中に何を意味するかと言えば、必要なものは現金で買うのだということで中国から使節団も来ている事実の中から考えて、私どもは、やはり戦争で迷惑をかけた中国であるというこの認識に立つならば、中国の気に入らぬことに対しては排除していくという雅量があっていいのではないかという意味で御質問申し上げているのです。そういうことが当然だと言うなら、何か戦勝国的な、中国はおれより低い立場のものにあるような考え方でおっしゃっておるように聞こえてならないのです。それでは中国との関係改善はでき得ないのではないかという心配をしているがゆえに私どもは申し上げている。せっかくそこまであなたが踏み切ると言うならば、あの輸銀の問題は、無効なりもう時効になっているのだということをおっしゃっても差しつかえないことではないか、こういうふうに申し上げて、善意に立って申し上げていることを御理解願いたいと思います。その点いかがでしょうか。
  67. 福田赳夫

    福田国務大臣 あなたのおっしゃられることわからぬでもありませんけれども、私の申し上げておることも理のあるところであるということを御理解願えるのじゃあるまいか、そういうふうに私は思えてなりません。とにかく一個人の手紙ですから、政府がこれを廃棄する、これはそういう手段も方法もないのですよ。しかし、おっしゃられることは、これはもう私どもよくわかるわけですから、そのとおりのことをやっているわけです。あの手紙はもう私どもの頭の中にありません、もうあれに対して何のこだわりも持っておりませんと、これだけ申し上げているのですから、私どもの考え方、これは率直に考えますればよくおわかりになられるのじゃあるまいか、こういうふうに思います。  輸銀につきましては、これはもうそのとおりの考え方で、中国から要請があれば、これは他の国と同様な立場におきましてこれを使用するのに対処する、こういうことでありますから、それでもう私は、輸銀問題というものは、大体考え方としては整理され尽くされておる、こういうふうに思います。
  68. 川端文夫

    川端委員 これで質問を終わりますが、ただ一言御意見申し上げておけば、おそらく中国は輸銀問題に対してまだ釈然としない立場に立って、この輸銀問題は後日に尾を引くものではあるまいか、こういう心配をしているという立場で、国民の皆さんがそういう心配をしているという立場でひとつ十分御配慮を願いたいことを申し上げて、私の質問を終わりたいと存じます。
  69. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これにて川端君の質疑は終了いたしました。  次に、中村重光君。
  70. 中村重光

    中村(重)委員 大臣のいろいろ時間的な都合があるようでございますので、   〔委員長退席、大坪委員長代理着席〕 私がきょうお尋ねしたいと思っておりますのは、自動車損害賠償保障法の運用の問題、それから通産大臣と経済企画庁長官の所信表明がございましたので、そのことについてお尋ねをしたいということと、さらに中小企業に対する財政金融上の問題、さらに経済の見通しの問題等々についてお尋ねをしたいわけですが、先に自動車損害賠償保障法の運用の問題でお尋ねをいたします。  運輸大臣は、自動車損害賠償保障法の目的は、これは第一条にあるわけですからおわかりでございましょうが、この法の運用が目的に沿って行なわれておるという理解、認識といいますか、そういうことであるのかどうか伺ってみたいと思います。
  71. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 大体におきまして賠償保障法の目的に沿って運用されている、こういうふうに思っている次第でございます。幾ぶんまあ遺憾の点もある次第でございますが、大体においては行なわれている、こういうふうに思っている次第でございます。
  72. 中村重光

    中村(重)委員 この自動車損害賠償保障法の目的は、「自動車の運行によって人の生命又は身体が害された場合における損害賠償を保障する制度を確立することにより、被害者の保護を図り、あわせて自動車運送の健全な発達に資することを目的とする。」こう書いてあるのですね。私はこの目的そのものに再検討を加えなければならないのではないかとすら思っているわけです。むしろ被害者の損害を補償する、人命尊重に資することをもって目的とするというぐらいに変えていかなければならない。実際は、自動車運送の健全な発展に資することをもって目的とするというようなところに、どうもこの法の運用に問題があるような感じがしてなりません。第一条の目的からいきますならば、優先的に保護されなければならないのは被害者であるということです。  ところが、現実にいま査定事務所で査定をしておるのは、被害者優先で査定をされておるのかどうか。これはまあ時間の関係もありますから私から申し上げますが、私はそう思っていないです。第一に、査定の優先権を持っておるのは加害者であるということ。それから、第二に優先権を持っているのは医者であるということです。健康保険によって医療がなされる場合においては健康保険団体である。そして被害者であるということなんです。これは大臣御承知のとおりに、法十五条において加害者の請求権が認められておる。十六条において被害者の請求権というのが認められることになったわけですね。前は、加害者が請求をして加害者から被害者は、何といいますか、その損害金を受けるということになっておる。いまは、直接被害者が請求することが十六条において認められたのだけれども、この場合でも加害者の承認が要るわけですよ。加害者がノーと言ったらだめなんですね。ここにやはり問題があるのじゃないでしょうか。私はこの査定事務所におけるところの査定のあり方、すなわちこの法の運用そのものに問題があるというような感じがしてなりません。大臣はその点に対しての矛盾はお感じになりませんか。
  73. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 ただいまの御質問の御趣旨のとおり、被害者を救済するということが大きな目的であるということにはもう間違いないと思う次第でございますが、御承知のとおり、これを制定いたしました由来というものは、そういったような不幸、自動車事故を加害者が起こしまして、その場合に被害者に対しまして金銭的な賠償の負担ができぬというようなことがありましては、これは非常にいけない。また企業の点からいたしましても、そういったような点におきまして企業の健全化の点につきましても、やはり保険によりましてそれを救済するというふうな目的からやった次第でございまして、いまお話がございました十六条の追加、これは当然のことでございます。  大体におきまして、一般の健康保険におきましては医療給付が直接でございます。ところが、この自賠責のほうは損害に対しましてこれを負担するのは、被保険者が、加害者と申しますか、自動車を運転する者になっている次第でございまして、そういう点が違う次第でございますので、やはりその保険をかけた被保険者に一応の権利を留保している、こういうことでございますので、御了承願いたいと思います。
  74. 中村重光

    中村(重)委員 そのたてまえといいますか、請求の道筋はわかっているのです。これは保険契約者が自動車の保有者なんですから、この人が保険に入っているんですね。ところが、法の目的は第一条で、私いま読み上げましたとおりなんです。どのような道筋になっておろうとも、被害者を保護するのだというこの精神を失ってはならないということであります。その精神のもとに法の運用はなされなければならないということです。  申し上げましたように、ここで事故が起こった。そして加害者が車か何かでもって病院に運んでいく、そしていろんな諸費用がかかった、そういうものを含めて、加害者は保険会社に保険金の請求をするわけです。いま傷害保険が五十万円ですね。死亡保険が五百万円、後遺症障害というものが、これは五百万円。この前三百万円から五百万円に上げました際に、この傷害保険を五十万円に据え置いたというところに大体問題があると私は思う。そのときに、今日の医療費が非常に高くなってきている。これはやはり手をつけるべきだったと思うのですよ。交通事故が起こった。五十万円で足るのかどうか。加害者がまず、私がいま申し上げましたようにいろんなものを立てかえている。それから医療は自由診療になるんですね、交通事故は。ほとんど自由診療。もちろんそれは、被害者の健康保険によってやってもらいたいという意思を表明をいたしますと、医師はこれを拒否することはできないのだけれども、医者は強いんですよ。強いものだから、交通事故によってそのままぱっと病院にかつぎ込まれる。一枚しかないところの医療の証書、健康保険手帳、これを何枚も一人ずつ家庭で持っているわけじゃないんですよ。厚生大臣もよくひとつこの点を聞いておっていただきたい。持っていないんですね。それがかつぎ込まれると、そのままこれは自由診療になるのです。自由診療になりますと、十倍ぐらいの医療費が請求される。  そうすると、五十万円の範囲内において事が済みますれば、いわゆる治療が行なわれます場合は、被害者の負担ということにはなりません。しかしながら、それ以上の治療費がかかったという場合は加害者が請求をする、そして自由診療によって医者が請求するわけですから、足りなければ、もう加害者に誠意がなければ、さらに力がなければ、被害者はみずから医療費を負担しなければならないという結果が起こってまいりましょう。そうすると、裁判をいたしましても何年かかるかこれはわかりはしません。力のない者は裁判もできない。ここに大臣、問題があるのですよ。だから、これはやはり法の欠陥である。  私は運用上も、査定事務所におけるところの運用のあり方も実は問題であろうと思うのでありますが、ともかく保険契約というものは自動車の保有者がやっているのだから、この保険金というものは加害者に払うのが当然であるという考え方の上に立たないで、やはり第一条の精神を生かして法を運用していくというようなことで、査定の方向も、何らかの形において被害者の同意ということを優先的に考えていくということでなければならぬと私は思う。ましてや治療費だけではなくて、諸費用までも加害者が立てかえたという形においてこれを請求する権利があるという、こういう問題があるんじゃないでしょうか。第一条の目的、ともかく自動車による損害を保障することにおいて自動車運送の発展をはかることを目的とするというこの目的自体も、人間尊重という方向に私は改める必要があるということ、五十万円の治療費というもの、傷害の保険金というもの、これを引き上げていく必要があるということ、それから第一条の目的に沿って運用そのものはあくまで被害者を保護するという、そういうことで運用されなければならないということ、まだいろいろと問題点があろうと思うのでありますが、これに対して運輸大臣、厚生大臣はどういう考え方で対処していこうとされるのか、お答えをいただきたいと思う。
  75. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 ただいまの御質問でございますが、保険料の限度五十万円は少な過ぎるんじゃないか、これをもう少し上げるように研究してみてはどうか、こういう第一点のお話でございます。この点につきましては私どもも前々から、今日医療費も相当上がってきておる、いろいろ物価も上がってきているというような点で検討をさしている次第でございますが、御承知のように強制保険でございますので、これはやはり損害賠償の最小限度をきめるということが、ほかの社会保険制度その他から勘案をいたしまして、当然考えなくちゃならない点であるという気もいたしますし、また保険料が非常に上がってくるというような問題もございますので、いま検討を命じているところでございます。先般はそれで一応据え置いた次第でございますが、いまの御質問の御趣旨を体しまして、さらに検討を続けさしてまいる、こういうふうに思っている次第でございます。  それから、御指摘がございましたように自由診療が多い。そのとおりでございます。御承知のとおり、緊急突発の際が多い次第でございまして、病院を指定するとかその他のことがやはり非常に困難な場合が多くて、やはりもよりの病院にすぐ飛び込むというようなことが多い、夜間の場合も多いというようなことで夜間の割り増しをとられるとかいろいろな問題がございまして、実は運輸省といたしましても、その点を医者の良心的の措置にまつということもありまして、政令を出しあるいはまた規則をつくりまして、医師がそれを請求する場合には明細書を添付させるというような方法を講じているところでございます。また厚生省とも連絡をいたしまして、そういったような診療費の高騰をいかにして防ぐかという点もいま考えているところでございます。またその一面といたしましては、国立、公立の病院を、そういった交通事故の指定病院に数をふやしてもらいたいということも、ただいま厚生省と協議をしているところでございますが、いま御指摘がございましたような、やはり被害者立場を保護するという観点は、あくまでも運用上も貫いていかなければならぬという精神で検討してまいりたい、こう思っている次第でございます。
  76. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 ただいまお話を伺っておりまして、問題は医療費が、たとえば五十万円以上かかった場合に加害者に支払い能力がない、また被害者のほうにも支払い能力がないというような場合に、一体どうするかという問題が私は残されていると思うわけでございます。これは何らかの方法で、やはりけがをした、完全に治療をするということがまず第一でなければならない、かように思います。  その治療費の負担を、保険の限度の五十万円よりもよけいかかった場合にどうするかというのは未解決であって、これは治療した医者が泣き寝入りをせいというわけにもなかなかまいらぬでございましょうが、実情は、そのためにとれないという医者もありましょうし、また被害者が、五十万以上のやつは、これはやはり保険以外の損害賠償の請求ができますけれども、加害者にその能力がないという場合には、被害者が、能力があれば自分の金で支払うということになりましょうけれども、しかし、他人から受けたけがに対して自分で負担しなければならぬというのも不合理なようであって、この間におきましては、おっしゃいますように五十万円という限度をもう少し考え、いま申しましたような事柄をどこで解決をするかという問題が残されておるように考えます。
  77. 中村重光

    中村(重)委員 金額の問題もそうなんです。しかし、申し上げたように法の運用の問題です。それと医者の心がまえの問題ですよ。ともかく到着のときに保険診療であるか自由診療であるかというのがきまってしまうのです。そうすると、医者は自由診療が手数もかからないし、実際は歩もいいから、自由診療ということになるのですね。だからして、ここにもやはり一つ問題があるのです。後日、被害者との間に話し合って、そうして保険でいくか自由診療でいくのか、そこらあたりを十分合意するというようなことでなければならぬのですね。医者に対するところの委任は、これは自賠償法によってやっているのじゃないのです。民法でやっているのです。これは特別法というものはいわゆる一般法に優先する。しかし、この限りにおいては特別法は優先していないのです。ですから、いまの五十万円に足りなかった場合にどうするかという問題だと、それだけの問題じゃないということです。やはりこれは基本的な問題があります。そういう点は十分ひとつ両省話し合いをされていただきたい。今日交通事故は増加の一途をたどってきている。凶器によって被害者はやられているのです。そういう者が泣くようないまの制度、運用ではいかないのじゃありませんか。  ともかく、加害者は笑い、保険会社は——この保険会社というのは健康保険団体、これは、自由診療でいきます場合は保険会計に響かないから苦笑いをするのですよ。自分の腹が痛まないから、これは苦笑いをする、そして被害者のみが泣くという、こういうことであってはならないということです。あくまで人間尊重の精神の上に立って、ひとつ法を改めるところは改める、運用を改善するところは改善をしていくということで実情に即していただきたい、そのことを強く要請をいたしておきたいと思います。  田中通産大臣が、昨日商工委員会で、輸出はふえ輸入はふえない、外貨はふえていく一方であるから輸入をもっとふやすようにしなければならない、そのことを強調されたわけです。先ほどの川端委員質問に対しましても、いまの実態をお話しになっておられたのですが、その原因は何かということをやはり究明をしていかなければならないのじゃないでしょうか。それと同時に、中身がどうなのかということです。輸出にいたしましても、円切り上げということを見越して、商魂たくましい日本の商社が売り込みをやったということが、いまの輸出増加という形にあらわれてきているのじゃないか。新規契約がどうなるのだろうか、これは船積みは数カ月おくれてまいりますから、そこらあたりの内容も検討してみなければならないと私は思うのでありますが、その原因の究明から政策を立てていくということでなければならないと私は思います。その点に対して、ひとつ大臣の考え方をお聞かせいただきたい。
  78. 田中角榮

    田中国務大臣 いままでの状態を見ましても、経済成長率が高いときには輸出が押えられ、輸入が増大をする傾向にあったことは、過去長い例に徴しても明らかでございます。昨年度は年率一〇・一%の成長を予定したものが四%にも満たなかったということで、これは数字は非常に明確になっておるわけでございます。輸出は、ドルベースで一七・七%も対前年度比伸びたにもかかわらず、輸入ベースにおきましては、ドル・ベースで二・九%しかふえておらないわけでございます。これを円ベースにいたしますと三・六%減っております。これは、過去の景気が非常に悪かった不況の時代も、大体このような数字でございます。今年度は四%の経済成長率を七・二%までしたい、こういうことでございますので、それで輸出見通しを立てますと、対前年度比、ドル・ベースで八・四%、円ベースにすると二二%減るわけであります。八兆八百億円のものが七兆九千七百億円ということでありますので、一二%減であります。輸入は、二百二十九億ドルで一五%増、円ベースで五%の増であります。こういう問題は平価調整の状態を織り込んで計算をしておるわけでございます。しかし、業種別、品目別、地域別ということをこまかく出しまして計算をするようにということを指導しておりますけれども、いまの状態ではとてもそこまでの数字は出せないわけでございます。しかし、中小企業その他影響があると思われるものに対しては、企業別に業者の見込みやそういうものも聞きながら、通関をしたからその伝票だけを送ってということじゃなく、見通しを立てなければならないという立場に立っておるわけであります。
  79. 中村重光

    中村(重)委員 いまお答えがありましたように、輸出は減少の方向にある。輸入は増加の傾向にある。しかし、貿易収支は黒字基調であるということは事実である。外貨も百六十億ドルくらいにいまふえているわけですから、この現実はどうすることもできない。したがって、もっと輸入をふやさなければならぬということになるであろう。しかし、輸入をふやす場合において、その影響をこうむる中小企業であるとか農業をどうするのか。いわゆる低生産性部門、競争力の弱いもの、これに対する対策は強力に推進をしていかなければならぬということになってまいりますが、輸入をふやさなければならないということだけは、国際情勢から言いましても、また、外貨がこうしてふえてきているという実態からいたしましても、円の再切り上げなんということを回避するためにも必要になってくるであろう。  それならば輸入をふやすためにどうするのか。アメリカが要求しているところの目玉商品に対してどういう態度をとるのか。輸入をふやすためには、個人消費というものをもっとふやしていかなければならない。現在四十七年度の見通しでいきますと個人消費は一三・八%。四十六年が一三・五%です。これは横ばいになっているのですね。これでは個人消費をふやしていこうという考え方の上に立っていない。個人消費をふやすということにおいて国内需要を刺激する、そして輸出ドライブというものを弱めていく、そういうような対策等も講じられてこなければいけないのではなかろうか、そのように私は考えますから、輸入をふやしていくということになってまいりますと、具体的にどういう政策をとるのかということがこの際明らかにされなければいけないのではなかろうか。いつもお尋ねをいたしまして、考え方はお示しになるわけですけれども、具体的な政策をお示しにならない。そこに関係団体の不安もありましょうし、私どももその点を問題にするわけでありますから、この際ひとつそれらの点に対してお答えをいただいておきたいと思います。
  80. 田中角榮

    田中国務大臣 いままでの輸出、輸入の状態を考えますと、景気が停滞ぎみのときには輸入が減るということを申し上げましたのは、これは原材料のほとんどを海外に仰いでおる日本でございますので、生産が停滞をし在庫がふえるような場合には、原材料の輸入量が減ってくるということになるわけでございます。ですから、景気が七・二%ないし七・五%台に押し上げられるとすれば、当然自動的に原材料がふえるということでございます。これはアメリカの例を見ますと非常に明確なのでございますが、去年のアメリカからの輸入はすごく減っておるのであります。対前年度の八九%ぐらいですか、数字は申し上げますが、そういう意味で輸入は非常に減っておるということでございます。ですから、原材料がふえるようになれば中小企業の経済活動も活発になるということでありますので、この問題に対してはそれほど大きな問題はないと考えられるわけでございます。  消費財につきまして申し上げますと、これは四十五年度ベースで見まして、個人の消費支出のうち財貨の購入に充てられたものが、前にも申し上げましたが、七百九億ドルであるが、直接消費財の輸入が三十三億ドルであり、この国内消費に占める輸入のウエートは四・七%。肉もまだ値上がりをしておるような状態でありますし、だんだんとそういうものは消費がふえているにもかかわらず供給が足らない。そのために、四十一年対比四十六年で四五%も上がっておるというようなものもありますので、やはりそういうものに対しては供給量をふやさなければならないということでございます。  そういうこまかい品目別のものの動向を考え、中小企業や特に零細企業が転換を必要としなければならないような状態にどう影響するのかという問題は、いましさいに検討いたしております。おりますが、輸入がふえるということで日本の中小企業、日本の零細企業に直接影響があるということよりも、経済が拡大をする基調にあれば、いままでのように量的拡大ということではなく、質的な問題が中心でございますので、いままでのような状態ではないと思いますけれども、しかし、経済が拡大していくことによって輸入原材料がふえるということでございまして、その限りにおいては中小零細企業の経済活動は活発化する、こういうことをこいねがっておる、こういうことでございます。
  81. 中村重光

    中村(重)委員 私の質問に的確にお答えいただいていないわけですが、競争力の弱い中小企業に対しての対策をどうするのかということについての一応の考え方をお示しいただいたわけですが、いま言う輸入をふやすということですね。それに対しては具体的な考え方がお示しいただかなければならないのではないか。  それから委員長、私はきょう、経済見通しの関係があるので、経済企画庁長官の出席を要求してあった。企画庁長官が来ていないですね。
  82. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 調べます。
  83. 中村重光

    中村(重)委員 時間の関係があるから申し上げるのですけれども、四十七年度の予算の編成に当たる基本的な方針というものですね。いままでの経済成長中心主義、輸出中心主義、これを大転換をして社会投資、福祉優先にこれを切りかえていくのだということで、政府はそういう説明をする。その考え方の上に立って予算を編成したということが説明されているのです。しかし、その中身を見ると、私は実際はそのように感じ取ることができない。先ほど申し上げました個人消費の問題にいたしましてもそうなんです。四十六年度が一三・五%、四十七年度が一三・八%ということになってくると、横ばいにすぎないのではないか。個人消費をふやして国内需要を刺激していくということでなければならないのではないか。そうしなければ輸入というものはふえないのだということですよ。あとで金融の利子の問題等について大蔵大臣関連をしてお尋ねをするわけですが、そこらに非常に無理があるような、基本的に間違いがあるような気がしてならないのです。  たとえば国際収支が黒字基調で終始しておる。それから外貨はふえる一方である。ところが外貨をふやすというような考え方の上に立ってやっているのではない。外貨はふえて、ふえた外貨というものが、社会投資であるとか、いわゆる福祉優先あるいは海外経済協力——これは通産大臣も昨日商工委員会でそういった趣旨のお答えがあったわけです、外貨の使い方が問題なんだと。私もその点は実は認めるわけなんです。しかしながら、予算の中身からいたしますと、大臣が昨日お答えになったような方向予算編成がなされていないということが一つ問題点であるということは指摘しなければならないと思います。それから経済成長にいたしましても、四十六年が四・三%でしょう。これは見通しと実質は違うわけなんです。それから四十七年度は七・七%です。輸出は、四十六年が一七・八%に対して、四十七年は八・五%見込んでいる。輸入が、四十六年度二・九%であったのが、四十七年度は一五・一%なんです。五倍輸入がふえるように実は見通しが立てられているわけです。貿易収支にいたしましても、四十六年は七十五億五千万ドル、四十七年度は七十一億五千万ドルと、ほとんどこれも横ばいということです。初めから外貨をできるだけ減らしていくというようなことでなければならぬという考え方の上に立たないで、外貨はやはりふやしていくのだという考え方の上に立っておる。ここにもやはり一つの問題点があったのだと私は思うのです。そして、先ほど私が触れましたように、外貨はふえても、この外貨の使い方によって、これは実際は需要をふやしていくということにつながっていくのだというような、ほんとうの意味の社会投資、福祉優先の予算編成の内容でありますれば、これは一応うなずけるところもあるのでありますけれども、実態はそういうことになっていない。やはりここにも問題があるのだということを私は指摘をしなければならぬと思うのです。  私ばかりおしゃべりをいたしましても、時間の関係がありますから、先ほど私が疑問点として申し上げております、輸入をふやすための具体的な方針いかん。それと、アメリカが主張しておるところの目玉商品に対して、政府はどういう考え方をとっていくのか。それから、個人消費をふやしていく、そういうことにおいて国内の需要を刺激をする、そして輸出をふやさないためには輸出ドライブをゆるめていく、そして輸入をふやしていくという政策がとられなければならないのであるから、これらの点に対する具体的な考え方をひとつお示しいただきたい、このことを伺いたい。
  84. 田中角榮

    田中国務大臣 輸入がふえるというのは、原材料輸入国でございますので、これは経済が上向けば相当量原材料はふえるわけでございます。石油は二億二千万トン消費しておりますものが、大体年間一〇%ふえるわけでありますが、これが経済成長率が七・二%というようなところにいけば、この量は一五%、もっとふえるわけでございますし、なお、備蓄を三十日を六十日にしようということが具体化すれば、これが相当量ふえるわけでございます。いま非鉄金属等につきましては、もうすでに外地で船積みができる直前まで来ておりながら山になっておるわけでございまして、現地とのトラブルも起こっておるわけでございます。そういう問題に対していま大蔵省とも話し合いをして、少なくとも一〇%という高い成長率が維持できないにしても、今年度の見通し七・二%程度のものは将来もやはり考えなければならないと思います。そういうことから考えると、原材料のストックというのは当然なさなければならないわけでありまして、原材料の輸入ということで輸入が大幅に拡大をすることは、これは政策を行なう、また外貨の使用ということに踏み切れば直ちにできる問題でございますから、これは、二・九%しかふえないものが一五%ふえるということは、あながちむずかしい問題ではないと思います。  アメリカが買えと言っているものは、牛とか、アメリカは主要工業国でありながら、農産品を買えというのがおかしいのです。私は、一七・四%もの一次産業比率の高い日本に、四・四%しか一次産業比率を持たないアメリカが、何で一体おれに買えというのだ、これは拡大ECとのけんかもそうじゃないか、こう言ったら、では飛行機を買うか、電算機を自由化するかというので、まあそこらはお互いにやはり現実に即応するものでなければならないということで妥協してまいったわけでございますが、アメリカが日本に要求しておる主要なものが洪水のように入ってくるということはありません。こんなことをやったら、もう日本の産業自体がこれに受けこたえできないということでありますので、日本の産業の構造改善が行なわれ、これに対抗できるような措置が講ぜられるということと見合わせながら輸入を拡大してまいるということであります。  ただ一つ言い得るのは、きょう農林大臣がおられませんから、私が答えるのはどうかと思いますが、先ほど申し上げたとおり、財貨購入に要したものが四十五年で七百九億ドルであります。これに対して輸入の消費財はわずかに三十三億ドル、四・七%だというのは、これはいかにも低いという感じでございます。戦前の例を見ればこれは問題にならない。そのかわりに深刻な不況があったということでございますので、これを八%に上げ、一〇%に上げられるとすれば——これはもうバナナなどはそのとおりになっておるわけです。そのためにはやはり農業政策を行なわなければいかぬということでございますが、消費財、それから生鮮食料品とか、そういうものに対しては備蓄をしなければいかぬ。肉の事業団が、なくなったら買う。なくなったときには高くても買わなければならぬわけでありますから、備蓄をするなら安いときに買っておけばいいじゃないかということで、いまいろいろ知恵をめぐらしておるわけでございますので、そういう意味では、輸入をふやして調整を行なうということはできると思います。  外貨は、いつも申し上げておりますように、これはいま質の問題として各国に要求されておるのでございますし、政府間ベースやいろいろな投資が行なわれておりますので、これは大蔵省がしかるべく考えてくれるし、またわれわれもよきプロジェクトに対してはタイムリーにひとつ投資を考えてまいろうということでございます。  それから、先ほど御質問のございました中小企業対策や零細企業対策に対しては、この前の国会で国際経済調整に関する法律その他いろいろなものを御審議いただいて、制度をつくっていただきましたし、それなりの資金も計上しております。これをもって万全だと思っておりません。私はそういう意味で、国際経済の情勢によって、物価問題その他でもって相当な物を入れなければならないというようなものがもし起こるとしたならば、ちょうど繊維の問題のように大型のものでなくても、その部面、その部面に影響があるものが起こるときには適当に財源対策を考えてもらいたいということは、予算編成のときも大蔵省にも述べておりますので、大蔵省はそういう意味では非常に弾力的にやってくれると考えておりますし、これは実効があがるように、隣に大蔵大臣おりますので、これはもうそのように全力を尽くすつもりでございます。
  85. 中村重光

    中村(重)委員 私が指摘したいのは、政府はいろんなアイデアといいますか、スローガンを発表なさるのだけれども、その中身が明らかにされないということです。  それで、目玉商品の問題にいたしましても、私はアメリカの言いなりになりなさいと言っているのじゃないのです。しかし、関係団体が非常に不安を持っておることは事実なんだから、これに対してはやはりきちっとした考え方をここで出していく。そうして輸入の対策対策として、こうしていくということは明らかにされる必要があるということを、あとで商工委員会で通産大臣と十分ひとつ議論をしていきたいと思います。  大蔵大臣にお尋ねをいたしますが、外貨の有効利用という問題は、大蔵大臣が一番頭を痛めておられるところであろうと思うのですが、これは確かに重要な課題であると実は考えているわけです。外貨貸しの問題等々いろいろあるわけですが、これに対しても、まだ態度を必ずしも明確にしておられるようではございません。この蓄積されつつある外貨の有効利用ということに対して、大蔵大臣はどのようにお考えになっていらっしゃるか。
  86. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま、金とか、あるいはSDRとか、あるいは長期に運用されている準備資産を除いて、外貨の保有高は大体百十億ドルでございますが、このうち、やはり準備資産でありますので、この流動性の保持はしなければなりませんので、そういう点から考えましても、その約半分、六十億ドルくらいは流動性の保持ということを考えておけば、その他は安全性とか収益性というようなことを考えた活用をすることがいいのじゃないか。また、今後まだ外貨はふえる傾向にございますので、今後増加する分も入れて活用を考えるということにしますと、大体ここで六十億ドルくらいの外貨活用策を考えることが適当であろうという結論で、いまこのやり方について関係省とも相談をしてやっております。大蔵委員会でもこれは言明いたしましたが、、日銀、政府、それから通産省をはじめとする経済官庁、全部の政府内の意思統一をやりまして、外貨の活用策については四月一ばいを期して成案を得るということでただいまやっておりますので、あと一カ月くらいの間にはっきりした対策ができると思います。非常に急いでおりますが、御承知のようなことで、なかなかみんな関係省が手があきませんで、少しおくれておりますが、なるたけ急いで四月中には成案を得るつもりでございます。
  87. 中村重光

    中村(重)委員 第六次公定歩合の引き下げという問題も議論されつつあるようでありますが、昨日でしたか、大蔵委員会で日銀総裁は、公定歩合の引き下げの必要はないということを表明されているようです。御承知のとおり、ドイツは三%に公定歩合を引き下げた。日本が現在四・七五%。そうなってまいりますと、やはり金利差を求めて短資が動いていくという形になってまいります。なるほど短資の流入を防止するために、インパクトローンであるとか、あるいは輸出の前受け金を押えるといったような措置を、大蔵省はいまおとりになっていらっしゃるわけです。しかしそれとても、この金利というものを国際均衡の水準に合わせていくということも一つの考え方であろうと実は思うわけですが、それらの点に対して大蔵大臣はどのようにお考えになっていらっしゃいますか。その第六次公定歩合の引き下げの問題等を含めて、ひとつ考え方をお聞かせいただきたい。
  88. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これからの国際金融政策ということになりますと、どうしても低金利政策が方向でございます。したがって、金利はもう一歩下がらなければならぬということは考えておりますが、いろいろな問題がございます。とりあえず、御承知のように、短資流入を防ぐ措置、これは為替管理を強化した問題でございますが、こういう措置にとられたために、投機資金の流入というよなことはいま防がれておりますので、その点はそう急がなくても済む問題でございます。  一方、今後の金融調整のしかたは、金利の調整だけではむずかしい問題が出ておりますので、ただいま国会に御審議を願っております準備預金制度ということも必要でございますので、こういう措置をただいまとっておるところでございますし、そういうものができて一応見込みのついたときに、国際情勢との関係でその必要があれば、金利の引き下げ、金利水準をもう一段下げるということもやらなければならないと思いますが、いま差し迫って迫られている問題とは現在なっておりません。
  89. 中村重光

    中村(重)委員 私はやはり金利の国際的均衡をはかるということの必要性を感じるのですが、しかし、公定歩合をどんなに引き下げましても、実効金利というものが下がらなければ、これはもう銀行をもうけさせる、それから大企業を利するということだけであって、意味はないんだ、こういう形になってまいるわけですから、公定歩合の引き下げの問題と関連してむしろ重視しなければならないことは、実効金利をどうするか、これをいかに引き下げていくかということが重大な課題でなければならぬ。大蔵省の悪口を申し上げるわけではありませんが、どうもそこらあたりに大蔵省の指導性というものが不足をいたしておるような感じがしてなりません。ですから、あとで中小企業の金融問題と関連をしてお尋ねをしてまいりますので、ひとつお答えをいただきたい。  実は、商工委員会における通産大臣の所信表明と経済企画庁長官の所信表明に関連をいたしまして、中小企業の事業転換、これも非常な不安を持っておるわけですから、それらの点等々をただしていきたいと思うのですが、実は時間がございませんので、これはあらためて商工委員会でお尋ねをしたいと思います。  そこで、具体的な問題に入るわけになりますが、中小企業の基本政策の課題の一つとして、施策の対象となるものに中小企業の範囲の問題、これが実は政府部内でも検討されていると思うわけです。この中小企業の範囲について、通産大臣はどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  90. 田中角榮

    田中国務大臣 中小企業の範囲の問題に対しては、非常に長いこと検討をいたしておるわけでございますが、これはなかなかむずかしい問題でございまして、及ぼす影響が大きいということで、政府の中に審議会をつくり、また専門委員会もつくって検討を続けていただいておるわけでございます。ことしの六月くらいには中間答申というのを得られると思いますが、これは、各地方の経済団体、商工会議所等からもいろんな要望が出ております。こういうものも全部素材に提供いたしまして、審議会の結論を待ちたいということでございます。
  91. 中村重光

    中村(重)委員 大臣お答えのように、中小企業の範囲の拡大というものは、これは機械的にただ規模を大きくさえすればよろしいという問題ではないと思うのですね。中小企業政策全般に関連をしてくる問題であるということです。いま一つ大切なことは、小規模企業にどう影響してくるか、この小規模企業の機能を阻害するような規模の拡大というものは絶対にやるべきではないということです。このことを通産大臣は十分ひとつ念頭に置いて、これは大蔵大臣も、これは当然金融、税制上の問題とも関連してまいりますから、この点は慎重に対処していただきたいということを要請をしておきたいと思います。  それから政府関係金融機関の問題でありますが、政府関係金融機関に対して、大蔵省はこれを民間の補完機関であるというようにお考えになっていらっしゃるのかどうかという点なんです。今日、国民金融公庫に対するところの小、零細企業の期待というものは非常に大きいものがあるわけです。ですから、この政府関係金融機関に対する政府の考え方、さらにこれに対して今後どのような金融的な措置、たとえば貸し出し限度額の引き上げの問題であるとかいろいろ問題があろうと思いますので、それらの点に対しての考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  92. 田中角榮

    田中国務大臣 中小企業金融機関としては、国民金融公庫、商工中金、信用保険公庫、中小企業振興事業団、なお中小企業金融公庫等が存在するわけでございますが、これは補完的なというよりも非常に中心的なものになっておるということも事実でございます。これは金融機関の中では、都市銀行、相互銀行、信用金庫、信用組合、系統金融等ございますが、日銀の範疇にないもの、俗にいわれる雑金融機関という戦後の金融機関は、これは中小零細企業に貸し付けるように、言うなれば農協資金のように、相当制約をして中小企業、零細企業の育成を求めたわけでございますが、やはり中小零細企業というものの一番目的としておるものは、いま申し上げたような政府関係機関であるということでございまして、四十四年あたりからずっと貸し出し限度額を拡大したりしておりますが、非常に経済規模の大きくなった今日、この額でいいのかどうかという問題、いろいろな問題がございます。   〔大坪委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、その中で一番の問題は、中小金融機関に対しては、金利を引き下げてもすぐ一般会計からの繰り入れを必要とするという財政的な制約もあるわけでございますので、世銀や第二世銀が自由市場でもって資金を求めて、そして第一世銀と第二世銀を突き合わせて、二つ合わせると三分五厘になるというような、いろいろな知恵を出しておりますので、やはり中小金融機関というものは、そういう新しい問題で開拓をしなければならないのではないかということも考えております。先ほどあなたが述べられた中小企業の範囲というよりも、やはり税制とか金融とか、それから貸し出し限度ワクとか償還期限とかという問題のほうが、中小企業としては最も求めている問題でありますので、そういう問題に対しては相当な施策を積み重ねておるわけでありますが、これをもって足れりとするものではありません。
  93. 中村重光

    中村(重)委員 私もいま通産大臣お答えのように、政府関係機関というものは、むしろ補完的なものよりもいまや中心的な機関という役割りを果たしていると思うのです。ところが、政府出資あるいは財投の貸し出し規模といったようなもの等を見てみますと、ここ十年近く中小企業者があらゆる部面から借り入れをいたしておりますところの金額の一〇%を出ないということです。中小企業に対しては金融措置をやるのだ、これだけふやしたのだ、そういうことを盛んに強調されるのです。確かに絶対額はふえています。絶対額はふえていますが、貨幣価値が下がっているのでありますから、絶対額がふえたというそのことでもって、これはふえたということを強調することは問題がある。この政府機関は、いま田中通産大臣お答えのように、いまや中心的な役割りを果たしておるというならば、中小企業の借り入れ額に対する絶対の比率というものはもっとふえていかなければならないのではないか、この点が問題の一点であります。大蔵大臣はこれにどう対処されようとしておるのか。  それからいま一つ、具体的にいま通産大臣お答えの中にございましたように、償還期限をどうするのか、金利をどうするのかという問題が、これは中心的なものであること、これも事実であります。ところが、国民金融公庫に対しまして借り入れ申し込みをいたしましてから貸し出し決定まで、どれくらいの日数がかかっておるのかと言いますと、十日ないし十五日かかっておる。年度がわりにおきましては、何と一カ月以上要しておるのではないかということです。その総ワクを四半期に分けて貸し出しをいたしておるわけでありますから、その途中におきましては次の四半期の分を使うことができる。ところが最後の四半期になってまいりますと金がなくなる。そこで今度は、中小企業者は次のワクを決定をするまで待たさたれるということです。大臣、ここで考えていただかなければならないことは、事業者に小休止はないということです。絶えず事業は継続をしておるということです。したがって、そうした事業者は小休止はない、絶えず事業は継続をしておるのであるから、年度がわりにおいて次の年度の予算決定まで待ちなさいということを言われることは、中小企業をして倒産に追い込むようなことすら起こっておる。この現実の上に立ちますならば、もっと弾力的な運用がなされなければならないのではないか。これらに対してどのようにお考えになるのか、考え方をお聞かせいただきたい。
  94. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 単なる民間金融の補完機関というだけではなくて、政府の政策金融機関という点に最近は大きい意味を持っておることは御指摘のとおりでございますが、政府としましては、第一次的には、一般金融機関に対して中小企業への貸し出しをもっと強化するようにという指導を年々しておりますので、この貸し出し比率は年々少しずつ多くなってきておることも事実でございます。したがって、一般金融機関から借りられないもの、あるいは民間ではとても条件がそのとおりにできないものというようなものが政府機関の見るところでございますので、したがって、この比率がいままで大体民間の一〇%前後のところをずっと均衡をとってきておりますが、しかし、政府機関のほうも年々資金量を増すと同時に、一方民間の貸し出しの比率も多くなっておるということですが、そちらのほうが非常に量が多くなっておるということで、全体として中小企業の金融ワクは非常に拡大しているということでございますので、私はこの比率はそう心配しなくてもいいのではないか。現実的においては中小企業の金融というものは年とともに円滑にいっているということが言えるだろうと思います。
  95. 中村重光

    中村(重)委員 私は大臣のその認識というものは的確ではないと思うのです。中小企業者から、たとえば国民金融公庫の貸し付け限度額を現在の五百万円から一千万円にしてもらいたいという要請が実はある。ところが今日、国民金融公庫の貸し出しの一件当たり平均は幾らか。百万円前後にすぎないではないかということです。償還期限にいたしましても、プロパー融資で二年か三年にすぎないではないか。環衛金融公庫は一千万円まで、クリーニング五千万円まで、浴場二千万円まで、旅館一千三百万円までという、そうした貸し付け限度額があります。しかし一件当たり貸し付け平均額は幾らかというと、百万円を出ないということです。償還期限は七年から十年になっています。これとても二年から三年、最も長いので五年程度というものがありますが、それは一件か二件かは十年というものもある。ともかく先ほど田中通産大臣が、中小企業者が一番中心的に考えているものはいろいろな条件であるという御意見があったのですが、私は通産大臣として確かに問題の中心を押えておると思う。しかし現実にいまやっておりますことはそういうことになっていない。あまりきびしくワクを押えておるということです。一件当たりの貸し金平均額がこんなに低いということも、それから貸し付け償還年限が非常に短いということも、総ワクを押えておるから窓口ではこれができないということです。だから民間金融機関の融資が拡大をしているのだから、したがって政府関係金融機関の率が一〇%を出ないというようなこと、そのことを問題とするに当たらないといったような、私にそういうようにとられる大蔵大臣の答弁というものは、実態をほんとうに押えておられない、中小企業者のほんとうの期待にこたえることにならない、私はそう考える。政府関係金融機関というものに対して、もっと実態を踏まえて適切な措置を講じられる必要があるということを指摘をいたしたいと思う。もう一度お答えをいただきます。
  96. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 たとえば国民金融公庫で見ましても、確かに一件当たりの貸し出しは百二十万円前後でありますが、また期限がいま二年少しということでございましたが、それでは申し込みのほうはどうなっておるかといいますと、申し込みの平均を見ますと、大体一件当たり百五十万円くらいが平均でございますし、期限は五年ということになっておりますが、実際において借りるほうの平均が二年六カ月になっているというようなことで、私はそう中小企業の希望とかけ離れた金融が行なわれているというふうにも現状を把握しておりません。できるだけ一定の金額で、できるだけ多い人に利用していただくのがいいので、指導の点についても若干の問題はあるとは思いますが、しかし、統計から見まして、申し込み金額もそう多いんではないというのが実情でございますので、この点はいまのところうまく運用がいっているのじゃないかというふうに思っております。  それから、先ほど答弁で漏らしましたが、年度末の中小金融三機関に対する追加財投の問題でございますが、これはいまどれだけ追加したら年度末、いまおっしゃられたような、待たせられたり何かして不便をかけないように済むかということについては、いま通産当局から説明を全部聞いておるところだそうでございまして、できるだけ早くこの問題を解決したいと思っております。
  97. 中村重光

    中村(重)委員 大蔵大臣、いかに中小企業者に対するところの融資が現実を無視しておるかという事例をひとつ中小企業振興事業団の問題で、私は参考に申し上げてみたいと思う。  中小企業振興事業団は、高度化資金、これに六五%を県と国が融資をするわけです。そうして一五%が協調融資です。二〇%が自己資金ですよ。ところが製造業にいたしましても、あるいは商業卸団地にいたしましても、あるいはその他の高度化資金の対象となる設備をいたします際に、その設備機械等が半分以上——できていなければ完成をして、実は現金払いが五〇%、あとは手形でよろしいということだ、それだけ出していなければ振興事業団は金は貸さないということです。いいですか。自己資金は中小企業振興事業団は二〇%ですよ。六五%を県と国が出すのですよ。一五%が中小企業金融公庫あるいは商工中金等の協調融資なのです。にもかかわらず、二〇%しか自己資金を持つことのできない中小企業者に、半分の設備ができていなければ国や県の融資をしないということは、あまりに冷酷無情であるということになりませんか。こういう実態をどうお考えになるのか。私はほんとうに中小企業の実態をお考えになるならば、こういうところこそ改善をしていかなければならぬと思います。どうお考えになりますか。
  98. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 そういうやり方については十分研究いたします。
  99. 中村重光

    中村(重)委員 これは通産大臣も、あなたの所管でございますから、こうした実態に対して強く改善を要求してもらわなければならぬと思いますから、お答えをいただきます。
  100. 田中角榮

    田中国務大臣 大蔵大臣も非常に前向きの答弁がございましたので、この答弁を土台として交渉し、実現を期してまいりたいと存じます。  先ほどの問題、ちょっと補足して申し上げますと、中小三機関、非常に重要でございますが、四十六年度は、御承知のとおり、当初計画一兆一千八百二十五億に対して、一兆五千四百七十億になりましたので、三〇・八%伸びたわけでございますが、これがドル・ショックその他いろいろな問題があったわけでございます。しかし、前年当初費に見ますと、一五四・三でございますから、大蔵省も相当前向きであるということだけは事実でございます。一年間に五割ふえたということでございますし、また今年度も四十四年七月一日から三百万円を五百万円に貸し付け限度額を引き上げたわけでありまして、いますぐこれを引き上げるということは困難だといっておりますが、特利、特ワク等、ドル・ショックの対策もいたしましたし、またいま基準金利を四月から〇・二%引き下げようという交渉をやっておりますが、大蔵省もそのくらい聞こうということでありますから、大蔵省も中小企業問題に対しては非常に前向きである、こういうことをひとつ御理解いただきたいと思います。
  101. 中村重光

    中村(重)委員 その点についてそれではお尋ねすることにいたします。  〇・二%引き下げをしようという前向きの大蔵省は考え方を持っておる、こうおっしゃった。公定歩合は四・七五%。〇・二%下げましても、通産大臣八%ですよ、いいですか。大企業は今日融資を受けているのは幾らですか、大企業が融資を受けておるのは五・五%から六%程度でしょう。政府金融機関がそれをはるかに上回る八%の利率でもって、これが低金利といえるでございましょうか。大蔵省が前向きとおっしゃるならば、たとえば商工中金の例をお考えください。商工中金に対しましては、政府が出資をいたします、あるいは財投いたします。それに見合うだけの自己資金を商工中金は調達をしなければなりません。そのためにどうしますか。所属組合に割り当てをしておるではありませんか。それから、預金をとっておるでしょう。商工債を引き受けさせておるでしょう。金利は高い。特に歩積みみたいなものまでやられております。そしていま私が申し上げましたような割り当てによるところのそうした出資まで要求され、預金を要求されておるこの実態、高金利になっておるではありませんか。これに対して大蔵省は冷淡な態度をとっております。決して前向きではありません。ほんとうに前向きと言うならば、もっと出資をふやすことです。それから、大蔵省が商工債を引き受けておりますのは、七・三%の利付債を大蔵省は四分の一しか買っておりません。四分の一です。七・三%、もっとそれよりも低い割引債をなぜに大蔵省は引き受けないのでしょうか。そういうことをやってこそ、初めて大蔵省が前向きに政府関係金融機関に対して、中小企業の金融の緩和のために取り組んでおるということの裏づけとなるのではないでしょうか。この現実に対しては、私は通産大臣に対しまして、たいへん残念なんですけれども、実態がそうではないということを事実をもって指摘せざるを得ないのです。
  102. 田中角榮

    田中国務大臣 大蔵省にしては珍しく特利を認めたり特ワクをつくったり、また一年間に五〇%も資金量をふやしておるということを私も率直に評価をしただけでございまして、いまの状態がそのままでもって中小零細対策に万全なものではないということは、さきに申し述べたとおりでございます。もう西ドイツが三分七厘五毛になっておるということを考えれば、公定歩合は一%の差があります。これは議論の余地がなく、だんだん低金利時代になってきたということでありまして、日本だけが例外的な地位におられるはずはないわけでございまして、これは時間的な問題だ、私はそう理解をしております。その場合、いま七分五厘とか八分というものは確かに高いと思います。一般的な金利が一銭九厘とか二銭といっておるわけです。二銭といえば七分です。しかしこれはいまは各国でもいろいろな金利の凹凸があります。これは非常に安いといわれた世銀の金利が七・二五%である、こういうことで、いま第二世銀の無利息と合わせれば、三分五厘余になるということで、この抱き合わせの率でもって調整をしておるわけでございますので、やはり一般金融機関、中小金融機関、その他政府金融機関との抱き合わせということで、金利は実態的には下がっていると思います。思いますが、ほんとうならコマーシャルベースよりもうんと低くなければならない、特利を持たなければならない政府が、ある時期には民間金利よりも高いことがあり得るというようなこと、もうコマーシャルベースでも、二銭で貸しておれば七分でございますから、政府金融機関のほうが高いという現実はあります。こういうものはなるべく早く調整さるべき問題だ、私は調整できるということで大蔵省とも連絡をしますから、どうぞその間を御理解いただきたい。
  103. 中村重光

    中村(重)委員 大蔵大臣、商工中金にいたしましても、国金、中小企業金融公庫〇・二%下げる、そういう方向でいま作業をしておることば私も承知をしておるところです。国金と中小企業金融公庫は、これはまあ、まるがかえといえばまるがかえですから、これは方法があると思う。ところが、商工中金は半官半民、実態は先ほど私が申し上げたとおりですから、〇・二%下げる場合はその原資を何とか考えてやらなければならない。いろいろあるでしょう。その中の一つの方法として、こういうことは考えられないか。私が指摘をいたしましたいま七・三%の利付債を四分の一引き受けておるわけです。そして六・二一三七%の割引債というのは四分の三なんですよ。商い金利を政府に対して商工中金は払っているのです。だからそれを逆にする。むしろこれを全部を割引債にするということになってまいりますならば、〇・二%下げた原資も私はそれで調整できると思う。こういうところから改善をしていかなければならないのじゃないでしょうか。これを改善する御意思はありませんか。
  104. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま資金運用部の資金には年六分五厘の利子を付して、預託金利を付しておりますので、したがって、商中の割引債を引き受けるということになりますと、それ以下の六分二厘五毛ということになりますと、これは逆ざやで資金運用部が赤字を出すということになりますので、したがって、本来なら資金運用部はそういう運用はできないはずになっております。しかし、いま言ったような商工中金に対する問題から、二割五分だけは割引債を引き受けるということにしておりますが、資金運用部としては逆ざやの範囲でどの辺まで引き受けられるかというと、これをもっと多く拡大しろということは非常に無理だと思います。そうしますと、結局、政府関係機関の金利の問題も、最後は、もしこれをもう一段下げる必要があるというときには、たとえば一般会計の金利補給とか何らかの別個の措置を考えない限りは、なかなかむずかしい問題であって、これはもう一歩検討しなければならぬ問題であろうと思います。今度はとりあえず〇・二%の切り下げを踏み切ってやりますが、この次のもう一歩の利下げというときには、これは普通の手段ではなかなかできない、いろいろな困難な問題を持っておると思います。
  105. 中村重光

    中村(重)委員 私の割り当て時間は四時十分まで。まだ歩積み・両建ての問題、信用保険の問題、中小企業の税制の問題、最後に吉田書簡の問題等々お尋ねしたいわけですが、とうてい消化はできません。  そこで、歩積み・両建ての問題をはしょってお尋ねをいたしますが、公正取引委員長、拘束頭金に対する現状認識、これは時間の関係がありますから、簡潔に御説明いただきます。
  106. 谷村裕

    ○谷村政府委員 私どものほうは、不公正な取引方法の一つとしての立場から、金融機関等の歩積み・両建ての問題を見ているわけでございますが、私どもの年二回にわたる調査といたしましては、おおむね横ばい。状態としてはそれほど改善されているというふうには見ておりません。しかし、悪くはなっておりません。指標としては多少いいかという程度に把握いたしております。
  107. 中村重光

    中村(重)委員 この大蔵通達と独禁法との関係、これをあわせて。
  108. 谷村裕

    ○谷村政府委員 大蔵省では、二回にわたって、銀行局長通達をもって監督の立場として指導しておりますが、その中でいっております一番のポイントとしての両建て部分の自粛金利の問題につきましては、金利措置をとっている、またそのとっていることをちゃんと通知しているという点について、いささか十分ではないという点が認められます。
  109. 中村重光

    中村(重)委員 大蔵大臣、いまお聞きのとおりです。大蔵省は実は通達を出しています。三つの通達を出していますね。金利措置を講じろ、それから当該預金の貸し付けを相殺しろ、当該預金の拘束性を解け、こういうことを通達をしていますが、実はこれが改善されていない。公正取引委員会が今日まで十六回にわたって実は調査をやっています。やっていますが、新しい傾向として、これは巧妙な拘束性の預金というものが実は行なわれつつある。金利措置を請じろというけれども、金利措置を講ずることを拒否する。預金金利を多く取るためにこれを短期のものにする、あるいは貸し付けの場合に、必要もないのに手形を早く割れといって貸し付け金利を多く取るようにする。実にひどいやり方が今日行なわれてきている。だから、あなたのほうは本気でもって銀行の歩積み・両建てをなくしようというお考えを持っていらっしゃるのですか、どうなんですか。
  110. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この問題については、私のほうでは厳重な検査もいたしておりますので、最近の検査結果をひとつ事務当局から御報告いたしたいと思います。
  111. 松川道哉

    ○松川説明員 歩積み・両建ての点につきましては、特に定例検査の際に重点を置いて調査をいたしております。昨年四十六年の四月から十二月までの間に検査の対象といたしました銀行の数が、各種含めまして五十五行ございまして、その中を見ますと、全体の傾向としては改善がなされておると認められます。しかし、依然として未整理の預金であるとかそういったものがまだたくさん散見されております。私どもは、検査の公表を通じまして、こういうことがもっと減らなければいけない、そういう認識を持って強く当該銀行の反省を求めておる次第でございます。
  112. 中村重光

    中村(重)委員 この歩積み・両建ての問題は、これは私は通産大臣にも申し上げたことがあります。総理大臣にもこの問題を改善するように指摘をしています。そうすると答えています。しかしながら、改善されておりません。第一、本気で大蔵省がこれを改善させようという意思を持っておられない。金利措置の問題に対しましても、そうしろということを言っている。それから、拘束の預金の比率を通達でお示しになっておられない。ところが現実には拘束性がある。しかも、非常に拘束をしながらどうしておるのかといいますと、大蔵省の目をごまかすためにいろんな苦肉の策をとっておる。そうして自粛額以上の——一応銀行から自粛額をお互いの仲間で出していますから、その自粛額以上の拘束に対しては、金利措置を講じないで、普通の貸し出し金利を取っているのです。中小企業者はダブルパンチ。これは実にひどいやり方が行なわれてきております。  だから私は、公正取引委員長、あなたは十六回にわたって、少ない予算、少ない人員でもって真剣にこれと取り組んでこられました。しかしながら、事ここに至って、ただ調査だけをしておったのでは、調査のための調査をしておるという批判の起こらないという保証は私はないと思う。この際、すっきり踏み切って、基準を明らかにする必要がある。そのために特殊指定にされる御意思はありませんか。
  113. 谷村裕

    ○谷村政府委員 特殊指定と申しますのは、具体的にどういうのが不公正な取引方法に該当するかということを示す一つの手続と、同時に、それの主管官庁としてそれが公正取引委員会になるということの意味があるわけでございますが、実態的に内容がどういう程度のものをどう見るかという話になってまいりますと、なかなかこれはむずかしい問題があるかと思います。さような意味で、いま踏み切ってすぐやってみろといわれましても、その実態の問題をどう把握するかについて、私はもう少し慎重にその扱い方を考えさしていただきたいと思っております。
  114. 中村重光

    中村(重)委員 公正取引委員長、十年一日のような答弁ばかり繰り返したって意味がない。同じようなことばかりあなたはそういう答弁をしている。十六回調査をやって改善されていないという事実をあなたは明らかにしておられる。大蔵省もいまのような弱腰の態度の指導しかしていない。事ここに至っては、特殊指定によってこうしたならば違反になるのだという基準を明らかにして、違反をした者に対してはびしびしとこれに対する処分の措置を講ずるということは当然ではありませんか。それがなぜやれないのです。
  115. 谷村裕

    ○谷村政府委員 非常に特殊指定の内容としての具体的な態様というものについて私どもだけで考えるということができるものではない。当然のことながら監督官庁であります大蔵省とも御相談してその線を出さなければならないのでありますが、そのびしっと基準をきめなさいとおっしゃることが簡単にできることであれば、大蔵省がむしろ監督官庁として堂々とそれをなさってしかるべきであろうと思います。それをいまだにできないと申しますことは、実態がなかなかむずかしい点があるというところに私はあるのではないかと思っております。
  116. 中村重光

    中村(重)委員 初めの答弁はよろしいのだけれども、あとのところは大蔵省の弁護をあなたはやっている。あなたは大蔵省の出身者だから大蔵省を弁護しようという気持ちになるような人情、そういう面からは理解できるけれども、それでは公正取引委員長としての任務はつとまらない。だから強く私は反省を求めておきたいと思う。  信用保険の問題について詳しく申し上げたいのですが、大蔵大臣、信用保証制度というものは、信用力のない、担保力のない中小企業者に対して最も大きな役割りを果たしているものである、私はそう考える。その担保力のない中小企業者に対しては、私は、無担保保険とそれから無担保、無保証の特別小口保険、これに重点を置かなければならないと考えているわけです。ところが政府は特別小口保険と無担保保険というものを、できるだけこれに対しての付保を押えていこうとする方向にあるということ、これは正しい方向でございましょうか。
  117. 松川道哉

    ○松川説明員 私ども原則としてただいま先生御指摘のようなことを考えておるわけではございません。ただ事実関係といたしまして四十六年度を四十五年度と比較いたしますと、小口はそのままであり、無担保は若干減っております。これはその途中におきまして種々の制度が実施されましたので、四十六年度についてはそのような結果になったと承知いたしております。四十七年度の内訳につきましてはまだ検討中でございます。
  118. 中村重光

    中村(重)委員 いかに答弁されようとも、私は推測で質問しているのではない。政府から出されている資料をもって実は質問しているのだが、明らかに無担保、無保証という付保を押えていこうとする考え方の裏づけとしては無担保保証推進特別長期貸し付けワクというものがあったんだ、総額は十八億円であった、この制度をなくしてしまったんだ、そうしてことしの二月までに前年度分まで全部引き上げてしまったんだ、このことは明らかに無担保保険というものを、これを付保しないようにしていこうとすることの裏づけ、これに対しては答弁の余地はないでしょう。  それからもう一つは、保証協会が保証をいたしますと、当然その中には焦げつきというものが出てくる。ところがその焦げつきに対しては代弁を保証協会はしなければならない。ところがこれに対して銀行局長が通達を出している。その通達によると、保証総額の二・〇七%以上をこえてはならないという通達を出している。これをこえたものに対しては、何と融資を押さえるのですよ、通産大臣。大蔵大臣もお聞きください。懲罰ですよ。信用力のないものに対して保証する。したがって代弁がふえる。その代弁が、大蔵省が示した基準以上、銀行局長が出した通達以上をこえたならば、これに対してもう代弁をしたのはけしからぬというので、その保証協会に対しては融資基金の貸し付けを押えておるではありませんか。こういうでたらめなことが行なわれておるということを私は指摘をしたい。  もう時間がありませんから、最後に、先ほど外務大臣も吉田書簡の問題に対してお答えがありました。通産大臣も、昨日商工委員会におきまして御答弁がございました。私はこの両大臣の考え方、しかもこれは閣議で決定をしたようでありますから、政府の考え方はもうきまっておると思います。ただ、ここで指摘をしておかなければならぬことは、吉田書簡が私信である、これに拘束をされない、こう言っても、石橋委員、わが党のいまの書記長の予算委員会におけるところの質問に対して佐藤総理大臣が、吉田警笛に拘束をされるということを明らかに言明をしてきた。その吉田書簡以降、この輸銀使用をとめてきたことも事実なんです。すでに認可をしておった日立その他に対するこれを取り消しをしたことも事実なんです。したがって、私はこの吉田個人であるところのいわゆる私信に対して拘束をされてきたそのものが間違いである、したがって廃棄をするとかしないとかということを議論することが私はばかばかしいことだと実は思っているのです。しかしながら過去の経過というものを無視することはできないということです。したがって、この輸銀使用の問題、吉田書簡に拘束をされてきた、これは宮澤元通産大臣、それから椎名元通産大臣が私の質問に対しても、台湾との関係というのはある、こういうことで答弁をしておるのです。議事録も明らかにあるのです。したがって、ここで明確にしていただきたいことは、これまでとってきた政府方針を変更したというように理解をしてよろしいかどうかということなんです。それさえお答えをいただけばよろしいのです。
  119. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は昔のいきさつをよく知りませんけれども、ただいまはっきり申し上げますが、ただいまこの時点におきまして、政府は吉田書簡に拘束をされておりませんです。そういう考え方を持っておりませんです。
  120. 中村重光

    中村(重)委員 外務大臣、あなたは自分だけが、何というか納得をするような答弁ということでこれを押し切ろうとするのは無理です。いままでの答弁というものは、それぞれの大臣がした答弁は議事録に残ってきている。佐藤内閣は続いてきている。それを無視して、いまここでいろいろとあなた方が言われても、それは無理というものです。だからして、従来とってきた態度の変更であるというようにお答えになれば、私は廃棄しろとか廃棄するなとか、そういうことを申しません。あるいは中国の言いなりになれとか言いません。ですから、方針の変更であると理解してよろしいかどうか、通産大臣
  121. 田中角榮

    田中国務大臣 吉田書簡はある時期に、私信ではございますが、精神的拘束を受けますと言ったか何か、それに近い答弁をしたことは事実でございます。それは私もそのように承知をいたしております。それはその当時の国際情勢の中においての問題でございますが、その後国際情勢の変化に対応して、吉田書簡に拘束をされないということでありますから、あなたが前の吉田書簡に対する答弁と今度の答弁には変更がある、こう理解されれば、そのとおりだと思います。
  122. 中村重光

    中村(重)委員 自治大臣、御答弁は要りませんから検討をひとつ私は求めておきたいと思う。個人事業税の撤廃の問題と電気ガス税の問題その他あったわけですが、電気ガス税は私は悪税である、これは当然撤廃をしろ、これは社会党あるいは公明、民社、野党だけでなくて、与党の中にも私はあると思う。ただ免税点だけを、これは地方財政の関係からでしょう、これを引き上げるということで撤廃をしない。特にこの電気ガス税の矛盾点は、不合理は、従価税であるというところに問題があります。いいですか。小規模のガス会社の料金は高いですよ。電力もそうなんです。九州電力が一番高い。高い上に従価税ですから税金が高くなるではありませんか。だからこれは不合理なんです。従量税に変えることです、撤廃をする前に改善策としては。私はまずすみやかに撤廃をしなさい、そしていま言う不合理な、ともかく当面従価税を従量税に変える必要がある。これを検討される御意思があるかどうか、それをお答えをいただいておきます。
  123. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 電気ガス税は所得に相関的な関係がありますので、担税力という意味に着目いたしましてこれを課税しておる消費税でございます。なお現在、電気ガス税は市町村民税の中で住民税並びに固定資産税に次いで重要なる財源になっておりますので、撤廃するということは非常に困難であると考えております。ただいま申されました課税の対象の面、よく検討さしていただきたいと存じます。
  124. 中村重光

    中村(重)委員 終わります。
  125. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これにて中村君の質疑は終了いたしました。  次に、加藤清二君。
  126. 加藤清二

    加藤(清)委員 私は委員長のお許しを得、委員諸公の御協力を得まして質問をさせていただきます。  環境庁の長官来ていらっしゃいますか。前々からのお約束でございますが、今国会公害の無過失賠償責任の関係法は御提案になりますか。
  127. 大石武一

    大石国務大臣 近いうちに提出の予定で一生懸命に努力いたしております。
  128. 加藤清二

    加藤(清)委員 それはいつごろでございますか。
  129. 大石武一

    大石国務大臣 いまいろいろと関係方面と折衝中でございますが、来週中には提案できるかと考えております。
  130. 加藤清二

    加藤(清)委員 来週中でございますか。必ず来週中でございますね。
  131. 大石武一

    大石国務大臣 私どもいまの予定では来週中出し得るものと考えております。
  132. 加藤清二

    加藤(清)委員 確かに来週中と受け取ります。なぜそんなに念を押さなければならぬかと申しますと、とかく佐藤内閣さんは忘れじょうがおよろしいようでございまして、大事な法案をお約束しておきながらすぐお忘れになるようでございます。たとえば政治資金規正法、大骨も小骨も絶対に抜きませんとかたいかたいお約束をしていらっしゃりながら、歴代内閣で一番長くやっているといわれながら、内閣組閣の最初にお約束なさったことがいまだにできない。まあ大石さんは佐藤内閣でも一番評判のおよろしいお方でございまするから、まさか九側の功を一簣に欠かれるようなことはないと思いまするけれども、提案はされるにしても中の骨はいかがでございましょうか。大骨小骨を党内で抜かれたり、法務省で抜かれたり、通産省で抜かれたり、出てきたものは全然骨がなかった、ないしは大どろぼうは逃がしてしまってこそどろだけひっかけたというようなことになるではないかと世間の人は心配しております。特に公害の被害で苦しんでいる方々がたいへん心配をしておられます。これについて大石長官の今日的な覚悟を承りたい。
  133. 大石武一

    大石国務大臣 われわれの環境庁の役目は被害者を救済することにございます。したがいまして、被害者の救済に役立ち得るような、そしてあわせて公害の予防に役立ち得るような内容のものにいたしたいと考えております。
  134. 加藤清二

    加藤(清)委員 このごろ電気会社、発電関係の会社が各地に折衝をして発電所をつくろうとしますと、必ずといっていいほど反対が起きております。どこもかしこも拒否をされている。九電力全部でございます。火力、原子力、もうほとんどそうでございます。この調子でいきますると、電気事業はどんどん需要が伸びているにもかかわらず増設ができないということになりますと、日本の産業にたいへんな影響が出るではないか。なぜそれじゃ拒否されなければならないだろうかというと、これが公害でございます。火力といえば公害と、こうイコールのように考えられている。そこに原因があると存じます。これについての対策はどう練られているか、まず環境庁から承りたい。
  135. 大石武一

    大石国務大臣 現在の段階におきましては火力発電所が設置されればある程度の大気汚染が起こることは確かでございます。しかしこれからの世の中は公害というものを次第になくしていかなければならない時代でございますから、その起こり得る大気汚染というものをどのように防ぐか、あるいは水質汚濁というものをどのように防ぐかということが一番重大な問題でございます。そういう点では十分に通産省とも連絡、協力をいたしまして、できるだけ公害の発生しないような新しい設備、そのような努力をしてもらうことに努力するということでまず根本的な対策があるかと考えております。
  136. 加藤清二

    加藤(清)委員 大気汚染防止法、水質汚濁防止法、ともに電気、ガスは入っておりません。これを立案いたしまするおりには野党案には全部入っておりました。しかし審議の途中でこれは抜かれました。その結果、新聞の評、ラジオの評、テレビの評は、大どろぼうをのがしてこそどろだけをつかまえる法律である、こういう評を受けました。そのときに時の通産省の関係の方と話し合いました。電気法、ガス法によって公害は除去し得るようにいたしまするという確約をいただいているわけでございます。はたして今日電気法、ガス法だけによってこの公害が追放できるとするならば、今日のように電気会社が各地でその増設に拒否を受けなければならぬ理由がないと思います。今日の電気法、ガス法だけでもってはたして公害追放できますかできませんか、環境庁の長官。
  137. 大石武一

    大石国務大臣 ただいまやはり煙の中のいろいろな有害な物質につきましては当然環境基準、排出基準によりましてこれを規制いたしておりますから、この程度でもある面は規制ができます。しかし、それだけでは決してわれわれも十分とは思いません。したがいまして、さらにより少ない物質を排出させるようにいろいろな脱硫装置を設備させるとか、あるいはいろいろな低硫黄の原油をできるだけ——これはむずかしい問題でございますけれども使わせるとか、そのような努力を講じなければならぬと、こう考える次第でございます。
  138. 加藤清二

    加藤(清)委員 通産大臣にお願いします。
  139. 田中角榮

    田中国務大臣 電気、ガスは、環境庁所管ではなく通産省所管がしかるべきだと考えております。
  140. 加藤清二

    加藤(清)委員 いや私の質問は、電気法、ガス法だけでもって公害追放ができますかとお尋ねしておる。
  141. 田中角榮

    田中国務大臣 電気事業法及びガス法等において十分やってまいります。特に環境庁の所管に移すことができないということを申し上げたのは、環境庁に移せばほかの省のものはみんな移さなければならないのです。もっとはっきりしているものは、厚生省の薬公害があります。薬を全部環境庁に移すことになるわけでございまして、しかもこれは火力発電所で亜硫酸ガスが非常にたくさん出るということになれば、ナフサをたかせる。ナフサをたくという場合には高いものになりますから、電力料金を上げないでナフサをたく場合には税制上の特例措置を御審議いただいておるということでございまして、これは当然液化ガスを使うとか、いろいろな問題は、これは通産省の本務でございます。そして公害の問題に対しては、今度出そうとしておる複合公害の問題とか粉じんの問題とか亜硫酸ガスの問題とかというものは、当然改正法律案の中で網羅されるものでありますので、そういうことで十分にしなければならない、こう考えております。
  142. 加藤清二

    加藤(清)委員 答弁者田中大臣は能弁でいらっしゃるし、演説がたいへんおじょうずであることは私は万々承知しておりまするので、まことにおそれ入りまするが、時間の制限を受けている私に御回構いただきまして、質問お答えいただきたいと存じます。  まことにおそれ入る次第でございますが、しからばお尋ねいたします。含有量〇・二とか〇・三とかいうような重油がどこにかございますか。
  143. 田中角榮

    田中国務大臣 ローサルファの重油をたくように努力をし、それができなければナフサをたくというようなことをやっております。
  144. 加藤清二

    加藤(清)委員 あなたは監督官庁の大臣でいらっしゃいまするから、よく御案内でございましょうが、発電会社と地域とで協定を結んでおります。その協定の内容を見まするというと、中に含有量一以下の契約が多いのでございます。ところがマクロの立場から考えまして、それこそまた通産省がよく御案内のとおりでございます。ミナス原油は二・七から三・七ぐらい含有いたしております。それを重油に歩どまらせれば倍に相なります。脱硫装置はほとんどございません。ミナス原油は一割以下でございます。市販の平均はどう考えても二・七前後に相なっているわけでございます。にもかかわりませず、全国で使われまする発電会社の重油は一以下、もっと徹底したのになりますと、〇・三をたきますとおっしゃるところがあります。これでは数字の上の約束はできても、実質行なわれまするときには数字にうそがある。したがって、火力発電の周辺には閉塞性呼吸器病がどんどんふえていくという結果に相なっておる。つまりうそが堂々と行なわれているということでございます。契約不履行でございます。不渡り手形でございます。もし、私の言うことが間違いである、いな、かくのごときいいものがこんなにたくさんあるということでありましたら、どこからでもいいから出していただきたい。
  145. 田中角榮

    田中国務大臣 あなたは名古屋でございますから、名古屋、大阪の例をお示しになっておるのだと思いますが、確かにローサルファの重油をたけということで地元と協定をいたしております。中にはわれわれが考えられないような協定さえも行なっておるようなところもあるようでございますが、これは相互間において行なわれる協定でございまして、政府やわれわれ国会議員がなさなければならぬのは、新しく法律できめた基準に立って、基準以内でおさめるように指導することがわれわれの役目でございまして、そういう電力会社と〇・三のローサルファの石油をたけという協定をしておる地元との問題に対しては、私たちが関与する問題ではありません。私たちは電源開発調整審議会の審議を行ない、しかも環境庁基準の裁定を求め、基準以内のものでなければ許可をしないということになっております。原子力発電所に対しては、国の機関が安全性を保障した後でなければ認可をしないということになっておるのでございますので、そういう問題と、できない相談をしておるという御指摘でございますが、理想的な、高い理想を求めて協定をしておる方々とわれわれの任務というものには、やはりおのずから限界の存在することを……。
  146. 加藤清二

    加藤(清)委員 高い理想を掲げることはけっこうでございます。しかしその理想が実現不可能な数字であるという、そういうものが存在しているということもお認めのようでございます。  さて、その次に問題になる点は基準でございまするけれども、基準は、これは国家がきめた基準に地方自治の関係の団体長は上のせすることができるということになっておるのでございます。  しかし次にその監督でございますが、やがて総理におなりあそばされるようなあなたに反撃を食らわしてまことに失礼と存じまするけれども、電気ガス法によれば——あなたは電気ガス法によってこれを監督するとおっしゃいましたが、電気ガス法によれば、当然通産大臣が監督をしなければならぬことに相なっておるのでございます。だから企業と地方自治団体との間に結ばれた公害協定が約束不履行になっている。それは一体どうするかとあなたにお尋ねするのは当然であって、それはわしゃ知らぬとおっしゃっては、ちょとこちゃ聞こえませんといわざるを得ない。
  147. 田中角榮

    田中国務大臣 地元と個別の電力会社が協定を結ぶ、私は、公益事業といえども理解を求めて行なわなければならないことは当然のことだと思います。また協定された約束は十分守られなければならない。守らせるようにしなければならない監督官庁の責務も、協定を行なった限りにおいては存在するとこう認めております。しかし私は原則的な議論から申し上げると、これは私の私的な感じでございますが、基準というものが法律でもしきまるとしたならば、私は、その法律の上下限というものはある程度常識的に裁量することは可能だと思いますが、騒ぎが大きくなると、だんだんだんだんいろいろなものになってきて、しまいに電源開発が行なった、電源開発を山の中でやるには学校からプールまでつくらなければならないといって決算委員会で問題になったことがありますが、ものにはおのずから限界があると思う。これは大気汚染とか健康に関係する問題でありますから、こういうものに対しては理想を求めて前進を続けるということは当然なことでございますが、やはり法律で明定をする基準というものの範囲内であるならば、電力の発電所の設置は認められるということが原則でなければならない。そしてそれ以上のものは、これは協定ということになるわけでありますが、私はいまの状態でいろいろな制度をつくらないと、しまいに節電をし、ほんとうに配電不能なような状態になってはたいへんだと考えておるのです。去年大阪は、関西電力は節電をしなければならない状態でございましたが、ちょうど景気が悪かったために節電をしないで済んだという状態でございまして、一〇%の予備電力を必要とするときに予備電力がゼロである、こういう状態であることもやはり——電気と水とガスは生命を維持するために不可欠なものである。だから公益事業なんだ、こういうこともひとつ考えていただいて、やはりおのずからなる調整をはかるべきだと思います。
  148. 加藤清二

    加藤(清)委員 厳重に監督する、そのことばを確かに受け取りまして私は次へ移りたいと思いまするが、大臣のお説のとおりで、電気はなくてならないものでございます。当然でございます。なくてならないものが節電をしなければならぬようなピンチにおちいりつつある。ところが増設は断わられる。どこに欠陥があるかといえば、問題は燃料でございます。燃料があまりにもハイサルであるということ。そのハイサルの輸入はだれがしているかといえば、これまた通産省でございます。したがって、将来の計画をしっかり立てていただきますと、六十年には七億キロリットルも必要だ。いまの三・二五倍にも相なるということ。ローサルがはたして求められるかといえば、これは困難な問題で、一割以下しか入らない。しからばハイサルを仕入れて、なお公害を追放するには脱硫装置、精製業者も脱硫をする。同時に、大量にこれを消費するところの電気会社もまた脱硫をする、排煙脱硫、それ以外に手はない。残る問題は、アスファルトをどう燃料にせずに済ませるかという問題なんです。これなどをあわせ検討しなければなりませんが、そこから先はこまかくなりまするので、当該委員会で詰めるといたしまするけれども、さしあたって今後大量消費の電気会社にはぜひ排煙脱硫の装置をさせる。そのためには面積がたくさん要りまするから、今後の火力発電の設備には必ず脱硫装置の面積をあわせ備える。あなた、総理を目ざしていらっしゃる実力大臣でいらっしゃるのですから、そのくらいのことはできると思いまするが、御所見いかがですか。
  149. 田中角榮

    田中国務大臣 火力発電所の大都市内人口過密の中の設置は非常にむずかしくなってくると思います。ですから、御承知のとおり、大阪の火力発電所を早くやめるために新舞鶴に火力発電所の建設申請をしておりましたが、なかなか……(加藤(清)委員「尼崎でしょう、大阪じゃなくて」と呼ぶ)尼崎の火力をやめるために新舞鶴に新設をしようとしておったのですが、まだ認可がおりないということで、非常に困っておるのでございます。原子力発電所をつくろうとすれば、発電所の用地は一年も二年もきまらない。節電をすれば責任を追及する、当然でございますが、そういうことで困り抜いた結果、ブルネイのガスなどを入れたり、またナフサをたいておる。非常に高いナフサをたいております。二十九年ないし三十五年から値上げをしておらない。二十九年からといえば長い間でございます。そういうような合理化の中でナフサをたかなければならないという発電会社、九電力の内容というものも、それは見たらほんとうにわれわれもよくぞ合理化をやっておるとさえ考えるような実態もございます。ですから、やはりまず脱硫装置を——ローサルファといっても〇・三%、〇・五%のものを売られるわけではありませんので、どうしてもまず脱硫装置をつけること。これは電力料金にはね返るという問題は当然起きます。起きますが、脱硫装置をやはりつけるということが一つございます。もう一つは自然の自浄作用というのがありますので、いま私が述べたように、大阪のまん中ではできないが新舞鶴なら自然の浄化作用でできるんだ。だから、人間を焼く焼き場も人家を離れること何百メートル以上ということになれば自浄作用が行なわれるわけでありますから、そういう意味で、やはり町から離れたところにつくらなければならない。原子力発電所をあわせなければならない。静岡県のように水力をもう少し抱き合わせることもできる地域もございます。もう一つ、それだけでは片づかないので、通産省が工業再配置というのをやったわけであります。そうすれば、今度は国の一%の地域ではなく、国の一〇%、一五%ということで自浄作用も行なわれる、こういうことでございます。
  150. 加藤清二

    加藤(清)委員 能弁でいらっしゃって、各般にわたってよく御存じのことはよく私も存じ上げておりまするので、ひとつ質問お答え願いたい。  ぜひひとつ火力発電はおのれみずからも公害追放に向かって前向きであるという姿勢を国民に示すことが必要だ。それがやがて火力発電を快く地元が受け入れる一つの原因になると思う。したがって、おのれみずからが脱硫装置をする。それにはまずさしあたって面積をとるということが必要なんです。面積がなくちゃできないのですから、既設のものにつけることはできないのですから、せめてそのくらいはあなたならできるでしょうと言っているのです。
  151. 田中角榮

    田中国務大臣 新規の火力発電所の認可につきましては、排煙脱硫のための敷地を確保させています。
  152. 加藤清二

    加藤(清)委員 よろしい。それでけっこうです。  それでは次の問題に移ります。  お忙しいお方ですから、公害関係の担当大臣のお方はどうぞ御自由になさっていただいてけっこうでございます。  さて次に、ドル・ショック、協定ショックにいま日本の企業がたいへんに苦しんでおります。とりわけ繊維は、日本の基幹産業でございましたにもかかわりませず、なおこの基幹産業がたいへんな打撃を受けまして、将来の望みを失っているというところまで来ております。これについて、私はぜひ繊維産業を守り抜くことが国家のためである、そういう見地に立ちまして質問をしたいと思います。  第一に、構造改善の期限切れが来ております。六月でございます。これはいかがあそばしますか。
  153. 田中角榮

    田中国務大臣 二年間延長の予定でございます。
  154. 加藤清二

    加藤(清)委員 それはいつきめられますか。
  155. 田中角榮

    田中国務大臣 この国会に法律をお願いいたしておりますので、御審議をお願いいたします。
  156. 加藤清二

    加藤(清)委員 それはいつ提出をなさいますか。
  157. 田中角榮

    田中国務大臣 提出方を閣議では決定いたしておりますから、十七日までには提出をいたすべく努力をいたします。
  158. 加藤清二

    加藤(清)委員 十七日ですか。これは去年の沖繩国会のときに当該委員会で審議をし、お約束を申し上げたことでございます。私どもは二年では完了しないという見通しを持っておりまするし、その見通しのほうが具体に沿っていると思います。しかし、二年また二年ということはあり得ましょうから、それはさしあたって二年でもけっこうでございましょう。じゃ、その構造改善二年延長の法案を来週中でしたか、提出される、そう受け取ってよろしゅうございますね。
  159. 田中角榮

    田中国務大臣 今週提出しようと思っておるわけでございますから、おそくとも来週には提出はいたしたいと思います。
  160. 加藤清二

    加藤(清)委員 なおけっこうです。善は急げでございます。  そこで次に、繊維業界はもし構造改善が延長されたとしてもその構造改善にも沿い切れないというほど深刻な打撃を受けております。その原因は、日米繊維協定並びに円切り上げのショックによって輸出がとまったということでございます。このことは、去年の暮れは融資の手当てによって年の瀬は越せたけれども、借金がふえた。その借金はなかなか支払いができない。そこで七−九から十先あたりに倒産が続出する状況が見られるわけでございます。  したがって、お尋ねいたしまするが、日米の繊維協定によって一体だれが得したのでございましょうか。だれが損したのでございましょうか。それを外務大臣はどう踏んでいらっしゃるのでございましょうか。外務大臣に先にお尋ねいたします。
  161. 福田赳夫

    福田国務大臣 日米繊維協定は、日米の経済全体を円滑に拡大していこう、そういう趣旨で締結したものです。そのために繊維業界はかなりの打撃を受けた、こういうふうに思いますが、その打撃に対しましてはそれぞれ通産省で適切な措置をとっておる、こういうふうに理解をいたしております。
  162. 加藤清二

    加藤(清)委員 あなたも総理の候補者ですよ。質問に答えてください。  だれが得してだれが損したかとお尋ねしておる。適切に処置しておるなんということを聞いているのじゃない。適切でないから構革を二年もまた延ばさんならぬ。いまの手当てでは足りないから次々と手を打たなければならない。あなた一人が最初に適切であるなんというようなことを断定されては話が進まぬですよ。はいそうですかと言って引き下がるわけにはいきません。  それがうそだというなら、私が調査した実態をごらんいただきますから、まず見てください。  だれが得してだれが損したか、そのうちの一部がそこへ出ているのです。私どもは、事重大でございまするから、すでに長年にわたって繊維対策特別委員会をつくっておりまするが、成田委員長を筆頭に、この休会から国会の始まりにかけまして各地を回りました。そうしてつぶさに実態を調査すると同時に、百聞一見にしかずでございまして、いろいろ苦脳の様子を聞いてまいりました。たいへんな打撃でございます。その一部がそこへピックアップされているわけでございます。  さて、損した人はあとで聞くとして、だれが得したのでございましょうか。それを承りたい。
  163. 田中角榮

    田中国務大臣 日米繊維協定による得失という御発言によって、それに答えるということは非常にむずかしいことでございまして、にわかに判断しがたい、こう申し上げる以外にないと思います。
  164. 加藤清二

    加藤(清)委員 にわかに判断しがたいかもしれませんけれども、アメリカ側ではすでに判断して発表いたしておるのでございます。それを御参考に供したいと存じます。  ワシントン・ポスト十二月三日、もうこのときに出しておる。私はその関係の書類をたくさん持ってきております。手紙も、友人がございまするからたくさんいただいております。これは記者の名前までがついております。ジャック・アンダーソン、「われわれはいまやニクソン大統領に対する選挙資金の献金と大統領の繊維輸入規制への努力との間に直接的な結びつきがあることを確認した。大統領が日本から無理やりとりつけた繊維規制の結果は衣料品の高騰となり、消費者に数十億ドルの負担がかかることになろう。このことは、いかにして数十万ドルの選挙資金の提供で数十億ドルに達する特別の恩典が獲得されるかを示している。」こういう書き出しで、選挙資金の公約がどのように行なわれたかが詳細に論じられ、その結果、得したのはニクソンであって、損をしたのはますますインフレに苦しむ国民である。こう結んでいるのでございます。その選挙資金は六けたといわれ七けたといわれるということまで、はっきりと署名入りで書いております。それについての証人までが出されているわけでございます。ほかの新聞ではございません、ワシントン・ポストが記者の名前まであげて書いている論説でございます。信憑性があると私は思います。  引き続きまして、ワシントン・ポストだけではございません、ニューヨーク・タイムズも同じことをいっております。これはオクトーバー十六日、一九七一年付でございます。「日本とその他のアジアの化合繊・毛製品輸出諸国から昨日脅しとった協定は、ニクソン大統領と南部の繊維業界の側にとっては勝利を意味するものであるが、それは米国の長期的な国際政治・経済上の利益を犠牲にしたものであり、このことは今後十分に検討されなければならない。経済面の原子爆弾でもって」という書き出しから、アメリカの利益が犠牲になり、不吉な前兆を意味するものである。ずっといきまして、次には課徴金とクォータとの相違を述べておりますが、最後に「協定がニクソン大統領と繊維ロビーにとって勝利を意味するものであろうということは確かである。しかし、もしそれが世界貿易の分野においてますますきびしくなる制限的な政策の口火を切るものであるならば、それは多大の犠牲の上に築かれた勝利ということになろう。」これがニューヨーク・タイムズの論説でございます。  まだ、以下たくさんございまするけれども、これを要するに、得をしたのは米国ではニクソンである。と同時に、このニクソンにそれをやらせたところの繊維同業者である。このことは、アメリカの繊維製造協会のリーブ氏もはっきりと述べておるわけでございます。こんなによくなったと言っておる。これはことしに入ってからのデータでございまするが、これはワシントン・ポストもまた別な日に同じ裏づけをいたしておりまするけれども、要は、去年の中ごろから盛んに宣伝された日本繊維製品の制限、それによって売り上げ利益率が一五・八%も伸びておる。全産業の伸びは五%なのに繊維は一五%伸びている。資本利益率も一五・七%の伸びである。全製造業は五・四です。それから時間当たり賃金も四・五%伸びている。設備投資も五・四伸びている。こういう状況で、たいへんな好況ぶりでございます。全産業よりは繊維産業のほうがアメリカでははるかに好況でございます。しかし、それに反しまして日本では倒産が続出でございます。縮小、転廃業が続々行なわれる。通産省繊維局みずからもその対策に苦慮しているでしょう、いま現在。倒すの倒さぬの、やめるのやめないので、もう裁判になっている案件がたくさんございます。会社別の利益率もございまするけれども、その大きいところだけを拾ってみますると、アライドケミカル社は純利益二〇%増、アコゾナ会社は三七・九%増、それからキャラウェイ、これはほかの問題もありまして二・八でございまするが、紡績業のホネミルズ四五・三%の増でございます。このように各会社別に見ましてもたいしたものでございます。その証拠を、原本を私は持ってきておる。うそを言うてはいけぬから。うそだとお思いなさるならば、あとでこれをよく見ていただきたい。つまり繊維協定のおかげで得をしたのはニクソンとアメリカの同業者である。損をしたのは日本の業界である。おこったのはミルズである。激怒しておる。その原稿も私は持っておりまするけれども、あまりにも騒々しくなりまするからそこは避けまするけれども、ミルズは激怒しておる。ただ問題は、日本の繊維品を制限したおかげで、アメリカ側もまた困っているという例がここにあるわけでございます。  なぜ困るかと申しますると、日本から糸や布の原材料を購入している会社があるわけなんです。それも一括制限を受けたわけなんです。そうなると、自分のところの製造品の加工原料が制限され値上がりするのでございますから、円とドルの関係もこれあり、これは困ったことである。だから例外措置をとってもらいたいという要望が出ていることを御存じですか、外務大臣
  165. 福田赳夫

    福田国務大臣 承知しておりませんです。
  166. 加藤清二

    加藤(清)委員 どなたか御存じありませんか。
  167. 田中角榮

    田中国務大臣 米国の輸入業者、商社のみならずスーパーストア、チェーンストア等を含めてから、わが国の合繊大手メーカー等に対して、米国市場内の需要に応ずるため、米国あるいはその他の国に企業進出をしてくれというような要請があるようでございます。
  168. 加藤清二

    加藤(清)委員 そのとおりでございます。したがって私は、それができるかできないかということをお尋ねしたい。
  169. 田中角榮

    田中国務大臣 日米間の繊維協定は、日本からアメリカに送るものでございます。しかし一面、アメリカは合弁会社その他の設立に対しては要望しておりますし、アメリカ国内に対する投資というものに対しては求めておりますから、そういういま御指摘のようなことが起こる可能性は十分あると思います。しかし、向こう側としては、繊維はやっと持ち直すような状態であるんだから、繊維を除いてと言うかもしれませんが、しかし、米国内の動きが大きくなればそういう問題が起こってくる可能性はある、こう思います。
  170. 加藤清二

    加藤(清)委員 私は、この協定が結ばれる前後にアメリカへ三回渡っております。そうして、日本の繊維製品がほんとうに憎まれているのかどうかを調べてみました。飛行機だけではわかりませんので、デンバーにおり立ちまして、あれからソルトレークシティまで、えんえんバスの旅を続けました。そして、バスのお客やら、バスの停留所のいわゆるバスホテル、そこに泊まり、とまりとまりを重ねて、そのつど尋ねて回りました。答えはほとんど一つです。日本の繊維製品は安くて、じょうぶでよろしい、それが制限されるということになると、中産階級以下の者がたいへんに困る、ただ得をするのは繊維の同業者であろう。もう一つ、これは、ニクソンが南部繊維関係の業者と約束をしているので、その約束を実行に移したという効果はあるでしょう、という答えが一斉にはね返ってきたわけでございます。つまり、日本の繊維製品はアメリカの国民にとってはたいへん喜ばれているということでございます。それを制限をすれば、ますますアメリカはインフレに困らなければならぬと同時に、中産階級以下の方々は、入手困難といい、選択の自由を失うということになって、国民的な不利益がアメリカ国民に降りかかっていくのです。したがって、日本の糸や生地を材料にしてアメリカでこれを加工している方々は、何とかルートを変えてでもほしいというようになるのは、これは理の当然でして、すでにこのことはLTAの場合に実験済みのことなんです。日本が押えられた。香港、台湾は押え方がゆるやかであった。その結果日本の繊維、コットンは、どんどんとじり貧になった。ただし香港のワクはたくさん残っている。そこでどうなったか。はっきりいえば、メイドインジャパンがメイドインホンコンという名前になってアメリカに行っているのが、いま現実の姿です。したがって、どうなる。得するのはだれか。香港のワクを持っている業者は座してピンはねができるから、これは得するでしょう。しかし、メーカーであるところの日本側と、これを消費するところのアメリカの国民側は、その余分なピンはね分だけは香港に取られなければならぬということになっておる。これが事実なんです。その愚を再びここで繰り返してはいけないと思う。それは日米友好にとってもたいへんな不利なことだと私は思う。したがって、どうすべきや。しからばいかにすべきやという問題でございます。  そこでお尋ねしたいが、この協定、これをほんとうは私どもは廃棄すべきであると思っておる。しかし、その廃棄ができなければ、せめてその内容を極東三国並みにすべきであるということを提案したい。極東三国並みにすべきである。はたして極東三国のアメリカとの協定と、日米に結ばれました協定とは、平等ですか。
  171. 田中角榮

    田中国務大臣 アメリカと極東三国と結んだものと、アメリカと日本と結んだものには、幾らかの差がございます。これは日本とアメリカは三年でございますが、極東三国は五年であるということは、明らかな違いでございます。しかし、日本とアメリカとの協定の中にも得失がございますし、また極東三国とアメリカとの間に結んだものにも、日米間のものに比べて得失はございますので、私は、日本の状態から考えて、極東三国のいいところだけとるということは、これは望ましいことでございますが、日本に向かないようなところは、これは日本との協定のほうがよろしい、こういう判断でございます。
  172. 加藤清二

    加藤(清)委員 私は、この協定は破棄すべきである、また、されるべき筋合いのものであるということを簡単に申し上げます。  第一に、これはガット十一条数量制限の一般的廃止に対する違反でございます。ガット違反の取りきめを、輸出承認の基準とすることは許されないことでございます。憲法上これは許されません。第三番目に、木取りきめは国会の承認を経ない限り無効でございます。このことはアメリカの論説にも載っていることでございます。もちろんミルズ氏もそう言うておられます。無効な取りきめの内容を輸出の基準とすることは権限の乱用でございましょう。したがって四つ目に、本件の取りきめは貿易管理令の目的、範囲を逸脱するものでございます。それならばこそさきの国会で佐藤総理も本会議において、貿管令は適用しないと答弁していらっしゃるわけでございます。これは要するに佐藤政権の専制政治である。行政権の乱用である。ところが、もはやこれは行政訴訟、裁判に訴えられている案件でございまするから専門家の司法官にまかせるとしますけれども、この過酷な内容ゆえに受ける日本業界の甚大なる被害救済はしなければならない。したがって、それにしぼってお尋ねいたしますが、この行政裁判に対して圧力が加わっているように新聞にも出ておりまするけれども、圧力を加えられたことがありますか、ありませんか、法務省にお尋ねする。
  173. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 全然圧力を加えられたことはありません。
  174. 加藤清二

    加藤(清)委員 それではお尋ねいたしますが、「法務省はきょう四日、東京地方裁判所に日本繊維産業連盟が提訴した「繊維製品の対米輸出に関する数量ワク設定公表処分等禁止命令請求事件」に対し、この事件を却下するよう請求した。」こうありますが、これはうそでございますか。
  175. 香川保一

    ○香川説明員 訟務部長の香川でございますが、お答え申し上げます。  ただいまの御質問の御趣旨は、日本繊維産業連盟の訴えに対する私どもの答弁書のことだと思いますが、この訴訟につきまして、本来ワクの設定は行政処分でないという意味で行政訴訟の対象にならないのじゃないかという点と、連盟のほうはこの訴訟についての原告適格がないのじゃないか、かような意見を裁判所に提出した次第でございます。
  176. 加藤清二

    加藤(清)委員 法務大臣、お聞き及びのとおりでございますね。理由は二つある。  そこでお尋ねします。原告が不適格である、適、不適の問題でございまするが、連盟の構成メンバーはみな被害者でございますよ。被害者救済の目的で設立されたのが連盟なんですよ。それが原告として不適格であるというのならば、それでは個々で出せばいいんですか。  次に、時間がないから簡単に済ませますが、商的行為をしている被害者は適格であるか適格でないのか、これをまず……。
  177. 香川保一

    ○香川説明員 これは非常に技術的なことでございますが、行政訴訟法によりますと、当該行政処分によって直接法律上の権利ないし利益が侵害された者が訴えを提起できる、かようになっておるわけでございます。本件の場合に、具体的に申し上げますと、今回の規制によりまして輸出業者が輸出承認申請を通産大臣にいたしました場合に、その申請に対して不承認の処分がなされれば、これは行政処分でございますので訴えが提起できるわけでございますが、連盟はさような関係では法律的には利益を持っていない、かような見解を裁判所に申し上げたわけでございます。
  178. 加藤清二

    加藤(清)委員 私の質問に答えてください。  しからば被害者一人一人がやればいいのですか。たとえば会長は大屋晋三さんですね。さきに商工大臣をやられた方です。帝人という会社をやってみえる。今度の規制のおかげでここはばく大な損失をこうむっている。操業停止までしなければならぬ。株の配当は率を下げなければならぬ。たいへんな被害なんです。この人は会長で出しておる。それが連盟の会長でいけなければ、帝人の社長で出せばいいのですか。全国の業者が一斉にそれを起こしたらどういうことになるか、承りたい。そのものずばりずばりで聞きたい。
  179. 香川保一

    ○香川説明員 不承認処分に対して個々の業者がその不承認処分の取り消しを裁判所に求めるということなら、当然理論的には訴訟になると思います。
  180. 加藤清二

    加藤(清)委員 その件がたくさんにございます。なぜかならば、これは協定自体が法律違反をおかしているからです。実質結ばれたのはことしになってからです。ところが実行は既往にさかのぼって、十月一日からということになっている。繊維は御案内のとおり注文は一年から一年半先、短いものでも半年先の注文を受けるのですよ。それで注文を受けた、それによって政府から輸出承認を受ける。輸出承認を受けるからつくりかける。まだ輸出が完了していない。倉庫にあった。仕掛かり中のものがあった。そのときにストップときた。その数量は既往にさかのぼって行なわれているのですから、政府が一たび輸出承認をしたにもかかわらずそれが輸出できなくなって、一方的キャンセルをしなければならぬ。一方的キャンセルは、あなたが御存じのとおり、国内法は民法で倍額請求を受けてもやむを得ぬことになっている。アメリカの輸入業者は、約束をしたにもかかわらず協定のゆえに品物がもらえないということになったら、倍額請求してくるのはあたりまえのことでしょう、契約不履行のかどをもって。そういう損失も累加されているわけなんです。そういう案件を次から次へと出したらどういうことになりますか、受けて立ちますか、それとも脅迫しますか。
  181. 香川保一

    ○香川説明員 先ほど裁判所に却下を求めた答弁書を提出しましたのは、全繊同盟と日本繊維産業連盟の二つの行政事件についてでございまして、御質問のように具体的に繊維規制によりまして損害賠償の請求ができるということでありますれば、これはまた民法の損害賠償請求という訴訟になろうかと思います。もちろんさような訴訟が提起されますれば、私どもは受け身でございますから当然受けて立たざるを得ないわけでございます。
  182. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでも脅迫をするかもしれぬよ、指揮権を発動するかもしれぬよという声がある、つぶやきがある。さて貿管令を適用して輸出を制限するということは行政行為ですか商行為ですか、何という行為になりますか。いずれこのことは専門家の田中さんがやられるだろうと思いますけれども、貿易管理令によって輸出数量を制限するという行為は、これは行政行為なのかそれとも何の行為ですか。私は行政行為だと思っておる。
  183. 香川保一

    ○香川説明員 個々の輸出承認申請に対しまして不承認を通産大臣がされました場合には、これは当然行政処分でございます。
  184. 加藤清二

    加藤(清)委員 当然行政処分である、こう受け取ってよろしいですね。——当然行政処分であれば、その行政処分のあやまち、というよりは、行政処分によって被害を受けた者は、これはその被害に対する弁償を要求する権利はあるわけですね。留保するかせぬかは別として、権利は発生するわけですね。それはよろしゅうございますか。
  185. 香川保一

    ○香川説明員 もちろん違法な行政処分によって損害が発生いたしますれば、損害賠償請求権は発生いたします。
  186. 加藤清二

    加藤(清)委員 しかと承っておきます。  それではお尋ねいたします。特に法務大臣にお尋ねしますが、この件について権力の乱用、指揮権の発動等をなさる気があるかないか。審理、捜査の中止、審理並びに司法官に圧力を加えるとか、原告に対する圧力を加えられる気持ちがありますか、ありませんか、念を押しておきます。
  187. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 そういう考えは毛頭ありません。ただ、法務省としましては国の訴訟については代理をしなければならぬ、こういう職務上の仕事をやっているだけでありまして、圧力を加えるとか、あるいはもちろん指揮権の発動というようなことは絶対にありっこないのです。
  188. 加藤清二

    加藤(清)委員 賢明な法務大臣でいらっしゃいますから、まさかそのようなことはない、またあってはならないと私も思っております。しかし、聞くところによりますと、その圧力がすでに加わっている。それは法務大臣ではないけれども、内閣の枢要な地位にいらっしゃる方が、片や裁判に訴え、片や損害補償を予算に要求するとはけしからぬ、二者択一である、いずれかを取り下げろ、こういうことを言っていらっしゃる向きがあるようでございます。だから私は、その人にぜひきょう出席していただきたいと要請をした。またそれを代理する人にも要請をした。しかし、二人ともいまだに姿が見えない。頭隠したってしりが出ておる。ただ末期的症状とのみ断定するわけにいかない。及ぼす影響があまりにも大きいからなんです。そういう正力が加わっておったとしたならば、法務大臣、その圧力は正当ですか、それとも不当ですか。
  189. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 これは裁判でありますから、もちろん裁判所を動かすわけにはいきません。したがって、いまおっしゃるのは、原告に対して圧力というようなお話だろうと思いますが、それは不当だと思います。
  190. 加藤清二

    加藤(清)委員 不当な行為が行なわれているということがはっきりしたら、あなたはどうなさいますか。
  191. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 別に圧力という、現実にどういう方法をとられておるのかわかりませんが、それのやり方によってはいろいろな問題があると思います。ただ、法務大臣としては、刑法上の問題とかそういうようなことであれば、これは当然考えなければなりませんが、事実上のいろいろな話し合いとか、そういうようなことで逸脱した行為でなければ、これはどうするわけにもいかぬと思います。
  192. 加藤清二

    加藤(清)委員 私はこの委員会の席でこの問題に決着をつけようとは思うておりません。したがって、法治国家において被害者が、相手が国であろうと自治体であろうと個人であろうと、その被害に対して賠償要求をした、それがけしからぬというので時の権力から圧力が加わったというのじゃ、もはや法治国家ではない。そういう暗黒政治は許すべきでない。そういうたてまえからお尋ねしたところ、きょうの法務大臣の御答弁で本日のところは満足いたしますが、本件は必ず継続されることと相なるでございましょう。  さて、この問題につきまして、この被害が先ほど日本の業者だけと言いましたけれども、日本の繊維産業は地場産業でございます。したがって固まっているのです。ちょうど鎖国時代に、米とお酒と繊維だけは全部国ごとに自給自足をさせるような政策がとられてきた。したがって繊維は地場産業で、全国にまたがってそれが行なわれているわけなんです。この全国にわたって行なわれている繊維産業が——また町が固まっている、生産地帯は。たいへんな打撃を受けたおかげで、地方財政収入にたいへんな穴があいてきております。一例を言いますと、緊急措置として福井県では、去年だけで九十六億の補助金を出しておられます。このことはやがて地方財政の収入減、危機を招くおそれがございますが、これに対して担当大臣はどう対処なさいますか。
  193. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 繊維産業が地場産業として数府県に特に集中的にあるということは、いま加藤議員御指摘のとおりでございます。私たちもこのことに着目いたしまして、たとえば昨年五月行なわれました自主規制に対する織機買い上げの際も、自己負担金の二分の一程度を各自治体で持たれたということも聞いております。これらに対しましては、その県ごとのケース・バイ・ケースによりまして県の財政状態をながめまして総体的に財政措置をいたしたいという姿でございまして、五月に行なわれました自主規制で約十四億円の金が使用されたということも聞いておりますが、これらは先般配付いたしました特別交付税等におきまして所要の措置を講じ、地方財政的にもこれを援助してまいりたい、かように考えておるような次第でございます。  なお、繊維産業の関連県に対しましては、今後ともに地方交付税あるいは起債等をもちまして財政上万遺漏なきを期してまいりたい、前向きに取り組みたい、かように考えております。
  194. 加藤清二

    加藤(清)委員 先ほど皆さんのお手元へ私ども調査をいたしました一部をピックアップして差し上げたのでございまするが、それをまたひとつピックアップいたしまして、被害の内訳を二、三申し上げたいと存じますが、北陸路では加工賃がたいへんな下がりようでございます。これは関係当該通産大臣は北陸の出でございますからお尋ねしますが、ナイロンタフタ、織機一台で十五時間から十三時間かかります。その工賃、ナイロンタフタ一匹は何ぼが適当でございますか。
  195. 田中角榮

    田中国務大臣 専門的なものでございますので、取り調べの上、早急に御答弁を申し上げます。
  196. 加藤清二

    加藤(清)委員 それじゃ、時間の関係上こっちが答えましょう。最低千二百円、これが相場、というよりも原価計算をした場合に必要なものでございます。しかしそれが六百円以下です。考えてごらんなさい。六百円という値はどういう値かと申しますと、同じ女性が東京へ出てまいりまして床屋を一時間やるといただける料金、同じ女性がマッサージをやりますると四十五分か五十分でいただける料金です。それが機械設備をしておりながら十五時間かかる。法務大臣の郷里の丹後ちりめん、またこの工賃も似たり寄ったりでございます。私はあちらへも行きました。このように工賃の切り下げが次から次へと行なわれておる。称して協定ショックだと言う、ドル・ショックだと言う。足利地区ではどうなっているか。外務大臣の郷里の秩父、足利、北関東の銘仙どころ、いまやニットに変わっております。せっかく構造改善で設備をしました。ところがアメリカストップのおかげで仕事がなくなってしまった。これじゃ減価償却どころか、政府から借りた金も、銀行から借りた金も返されません、どうしてくれますか、こういう言いようなんです。深刻です。  そこで、今度は、私は統計もたくさん持ってきておりまするが、出荷は減った、輸出は減った、在庫はふえた、ふえたのは在庫だけ、こういう統計が幾つか出ております。最もお気の毒なのは、北関東から福島にかけてのメリヤスニット。アンケートをとってみました。メリヤスの将来性について、将来性があるから続けたいというのは二〇%しかない。将来性がないからもうやめたいというのが五七・五%ある。あなた自身は継続するかしませんかという問いに対して、継続するというのが四三・七五%、継続できないというのが三三・七五%、回答なしが二二・五%。最もひどいのは、継続できない理由は何だと聞いたら、工賃が安くて採算が合わない、合理化のため設備はしたが資金がない、他の産業と比較してあまりにも低賃金のため労働者の補給ができない。そこで、後継者は、と尋ねてみますると、あると答えたのが一五%、ないと答えたのが三八・七五%、あるけれどもさせない、もうこんな仕事は自分の子供にはさせたくないというのが三〇%の余あるわけでございます。回答なし、問えど答えなしが一六・二五%、こういうことになっております。  もっと哀れをとどめるのが、福井から京都の丹後にかけてでございます。十一時になりますと——皆さん、夜の十一時ですよ。冬のまっ最中に夜店があるのですよ。何でそんな夜店をやっているのか、茶わんせりをやっている。何でそんなものをやっている、と言うたら、十一時の交代時期に売れる、こう言う。十一時にだれが交代するのだと言ったら、全部女性なんですよ。労働大臣に聞きたい。そういうことはよろしいですか。よろしいもよろしくないもない。背に腹はかえられぬから、泣く泣くもその手にすがっているという姿なんです。織機を六十台持っている中小企業のおじいちゃんに会いました。これも十時過ぎに行きました。そうしたら、そのおじいちゃん、こう言うのですよ。もう私は孫に頭が上がりませんと言う。何でだと言うたら、この間、小学校の先生が一家団らんというつづり方を書かせた、そうしたら、その六年生の孫がこう書いたと言うのですね。私のうちには一家団らんということがありません、一緒に御飯を食べたことも、一緒にテレビを見たこともありません、これだから、私はもうこんな仕事を孫にやらせとうはありません、こう言う。先生どうしてくれますかと言う。ドル・ショックの上、自主規制ショック、次にまた協定ショック、ダブルパンチもいいところなんです。だから私は言う。せめて極東三国並みにすべきではないかと言うのです。大臣、極東三国並みにすべきではないか。あなたは、よいところもあれば、悪いところもあるという御答弁でございましたが、私は、ここに、朝鮮、台湾、香港と比較してあまりにも日本に過酷であるという例をたくさんに持っております。時間があればそれをあとで申し上げますが、時間が迫ってまいりましたので、私は、そのゆえにというところで、しかるがゆえにということを申し上げたいと思います。  五つの提案をしたいと思う。第一、日本政府は多国間協定に絶対反対の立場を表明すべきであると思う。これはすでに多国間協定が結ばれようとしているから、ケネディの書簡に対して田中さんはテイク・ドウ・ノートと答えているじゃないですか。これをやったらどういうことになるか。  これは知多郡の某紡績の言い分なんです。たいへんな自民党びいきの人なんです。この人がこう言っている。コットンのときは、まだ合繊やウールに変わることができた。今度コットンもウールも合繊もやられたら何に変わったらいいですか、教えてもらいたい。ここは千人の余の工員をかかえているおうちさんなんです。先祖代々この仕事をやってきている人なんです。そんな大きなところでさえも、いまどうにもならぬということになってきた。だから、もし一、これが多国間協定になろうものならば、それこそLTAの二の舞いでございます。したがって、ぜひひとつ多国間協定には絶対反対の立場をわれわれは表明すべきであると思う。本委員会の名においてそれをすることも可能であると思うのです。なぜかならば、決議があるからです。これについて大臣の所見を……。
  197. 田中角榮

    田中国務大臣 日米間の協定のときは、いま御指摘がございましたように、テーク・ノートだけでございました。極東三国との間には、五年間ということと、もう一つは多国間協定に移行する旨が記録されておるようでございます。しかし、われわれは、綿製品協定のときのこともございますし、間々申し上げておりますように、現時点において多国間協定に移るという考えのないことは国会で明らかにしておるわけでございます。アメリカは農業法二百四条の規定によりまして多国間協定ということを強く推進をしておることもまた御指摘のとおりでございますが、いまの段階においては私が従来述べておる態度に変わりはありません。
  198. 加藤清二

    加藤(清)委員 二番目に申し上げたい。——二番目を申し上げる前にもう一度申し上げる。あなたは、これほど日本の業界が打撃を受けていても、なお多国間協定に移行されるとするならば、あなたはいまでもテーク・ドウ・ノートとお答えでございますか。
  199. 田中角榮

    田中国務大臣 アメリカ側がそのような意向があったことをテーク・ノートしたということでございまして、理解を示したというわけじゃないのです。言ったことを聞いた、こういうことでございますから、これは外交問題としてはいろいろ使われておるわけであります。アメリカと中国との間の一番大きな問題、台湾は中国の領土の一部である、これは十何カ月も交渉が行なわれたわけでございますが、最後は、ということをテーク・ノートした、こういうことでございまして、ドウがあるからということでゴーを意味するのじゃないかというようなお考えでございますが、そうではなく、間々申し上げておるとおりであります。
  200. 加藤清二

    加藤(清)委員 私は、そのことばの問題をここで論議しようとは思いません。しかし、事アメリカに関する限りは、ことばが問題でございます。そもそも本件の発端は、これは沖繩との交換という問題で、この交換問題は、日本ではさようなことはないと言ってみえまするけれども、アメリカでは常識化していることばなんです。ただ、そのおかげでいっとき佐藤総理もニクソンに不信を買ったことはあるようでございますが、その問題に遡及して私は質問しようとは思いません。が、あなたの考え方を聞きたい。アメリカがそういう意向であるということは承知した、確認した。しかし、それじゃしからば、あなた自身が多国間協定に移行する気持ちがあるのかないのか、そこを承りたい。
  201. 田中角榮

    田中国務大臣 多国間協定に移行することに対して、私は反対であるという意思は述べてございます。
  202. 加藤清二

    加藤(清)委員 多国間協定に移行することは反対である——やっぱりあなたも日本人だ。それは確かに日本人だ。それでこそお二方がおそろいで総理になられる資格があると言いたい。もしそれがそうでないとおっしゃるならば、失礼ですけれども、アメリカへ行って総理になっていただきたい、こう申し上げたかったところです。  さて二番目。最初に申し上げました補完材料ですね。アメリカが日本から材料を買ってこれを加工するという問題。そのアメリカの製造の材料は、これは取り除くということのほうが両国間妥当であると同時に、メキシコまで行って工場つくって遠回しして売らなくてもいいし、香港の二の舞いをせぬでもいいのですから、補完材料ぐらいは除く、こういうことが専門家会議でも、あるいはこの協定に改良したいところがあればいつでも申し出ることができるようになっておるのですから、これについてどうでしょう。
  203. 田中角榮

    田中国務大臣 制限をしたために合弁会社ができたような歴史は過去にもあります。これはアメリカが西ドイツの車を制限したときには、西ドイツは合弁会社をつくって、素材という名で組み立てるばかりのものを持っていって組み立てた歴史もございますから、先ほど御指摘があったわけでございます。それでいまの補完材料その他に対しましては、これは協定には九億五千万平方ヤードの中に入っておるわけでございますが、そういう問題は品目間のシフト率がきまっておりますし、また毛製品等からの問題もありますので、いま御指摘になったような問題に対しては業界の強い希望でもありますので、こういう問題は、アメリカと日本との間に行なわれる専門家会談等では、これはもう随時問題になる、発言さるべき問題だとは思いますが、これを除けということは新協定をつくろう、修正をしようということですから、そうではなく、こういうものに対しては話し合いをする。これは日米間の正常な貿易を確保するための協定である、こういうことになっておりますので、そういう精神を生かしてネゴシエーションをする価値はある問題だとは思います。
  204. 加藤清二

    加藤(清)委員 私はもう一度申し上げます。  アメリカが日本から買って加工してアメリカ国民に売るもの、すなわちアメリカの加工材料、それまで制限するということは、これはアメリカの加工業者もさることながら、国民に対してもたいへん迷惑の及ぶことである。なければならぬものである。ゆえにこそアメリカの業者は日本へ泣きついてきて、何とか売ってもらう方法はないかと言うてきている。合弁会社をつくってくれぬかと言うてきている。合弁会社をつくらなくても設備はこっちにあり余っているんだから、あなたの結ばれたこの協定を一部変えれば、これで事は足りることなんですから、またやれる道はこの協定の中に開かれておるのですから、ぜひそれをやるべきであると思う。ぜひその方向で進めてもらいたい。  次に、LTAの廃棄が来年の九月になっていますね。この廃棄を要求するには、一年前に通告することが必要だと思うのです。それに対してどういう態度をとられますか。
  205. 田中角榮

    田中国務大臣 一年以内に、これを継続しないような日本側の考え方を表明するつもりでございます。日本側の、継続をしないという意思を表明いたしたいということをいま考えております。
  206. 加藤清二

    加藤(清)委員 外務大臣、あなたにお尋ねいたします。  いま通産大臣は、事LTA、これは一年という約束で始めて十七年続いて、来年までいくと十八年ずるずるべったりで来ておる。そのおかげで日本の繊維産業がたいへん不利な状況にある。それに対して期限が来年九月である。通産大臣はこれに対して廃棄の通告をする用意があるとおっしゃられましたが、外務大臣のところで事を運びなさるのですから、今度の繊維協定も下田君と吉野君のところできめて始めたことですから、外務大臣はどう考えてみえるか。
  207. 福田赳夫

    福田国務大臣 LTAのような取りきめは、これは非常に異例なことなんです。ですから、すでに去年の秋のLTA交渉におきましても、わが国はこれの次の継続については非常に慎重である一こういう態度を示しております。LTA事務局におきましてもよくこのことを承知しております。通産大臣と相談をいたしましてあやまりなきを期していきたい、かように考えます。
  208. 加藤清二

    加藤(清)委員 通産大臣と相談してあやまちなきを期するということは、通産大臣は破棄を通告すると言うておられるけれども、あなたは賛成ですか、反対ですか。
  209. 福田赳夫

    福田国務大臣 私はこれは慎重論です。つまり継続することについて慎重なんです。ですから通産大臣と、一年前にこの態度をきめなければならない、よく相談をいたしましてあやまちなきを期していきたい、こういうふうに考えております。
  210. 加藤清二

    加藤(清)委員 慎重もほどほどにしておいてもらわぬと、これは一年の約束が十八年ですよ。十八年延びてきておるのですよ。十八年も検討して被害がこれだけ出ているというのに、なお慎重が必要ですか。それこそどこの国の総理になりたいのかというお尋ねをしたいくらいです。そんなやぼなことは言いませんよ。言いませんけれども、慎重審議、慎重はいいけれども、一年という約束が二年に延び、五年に延び、三年に延び、また五年に延び、また延びてきておる。被害はますますふえてきておる。慎重もほどほどで、そんなに慎重になっておったら、総理になるひまがなくなってしまいますよ。まあ通産大臣とよく相談してあやまりなきを期すということはおしゃられだから、私は反対の意思ありと受け取ります。いなとおっしゃるなら言ってください。
  211. 福田赳夫

    福田国務大臣 まだ日本政府の態度決定までには間があるのです。したがって、この問題につきましては相談もしておらない。そこで結論は申し上げませんが、ただ私が非常にこの問題は、継続について消極的であるということにつきましては印象を得られておる、こういうふうに思います。
  212. 加藤清二

    加藤(清)委員 継続について消極的である、わかりました。
  213. 田中角榮

    田中国務大臣 一つだけ訂正しておきますが、期限は一年前ではなく、六十日のようでございますから、慎重に十分話し合いをいたします。
  214. 加藤清二

    加藤(清)委員 ごもっともです。日米友好通商航海条約の改定は一年前です。しかし、これは六カ月前でも有効です。有効ですが、それはいまから意向をガットに知らしておくことのほうが抜き打ちでないのですから、スムーズにいくということなんです。ですから、ことしから始めたほうが丁重であって、それこそ外務大臣のおっしゃる慎重に事を運んだということになるわけです。  次に、滞貨買い上げ、滞貨が一体どのくらいあるか、三百二十億ほどございます。これを買い上げてどうするか、これをぜひひとつパキスタンの避難民に差し上げるということをしていただきたいのです。すでにそのことはやってみえまするが、ぜひひとつ、アメリカ向けにつくった、しかし、制限を受けたゆえに滞貨になった。三百二十億余ある。これを買い上げてパキスタンの関係の避難民、三千万といわれておりまするけれども、この人方に差し上げるということは国際的に見てもたいへんけっこうなことだと思います。なぜかならば、IPUの国際会議におきましてこのことは決議されているからでございます。田中大臣もまた、この協定を結ぶ直前にそういう意味のことを発表なさったことがございます。これについて、いかがでございますか。
  215. 田中角榮

    田中国務大臣 滞貨は現にあると思いますが、いますぐ買い上げなければならないような状態ではないようでございます。しかし私は、あの日米繊維交渉というものを妥結しなければならない前提に立って考えたときには、急激な輸出の制約というものにたえられるためには、やはり製品の買い上げ等も考えなければならないということを述べましたことは事実でございますし、また、業界にもそのような意向を示しながら、業界としてどういうような方向で買い上げるのかというようなこともお互いに勉強しようじゃないかと言ったことも事実でございます。まあやるとすれば、協会などか現にある機関に金融の道を開きながら買い上げておいて、商品援助等に使う以外ないのじゃないか。しかし、いろいろな使い道もありますが、時あたかも印パ戦争もございましたし、その前の非常に難民がありましたので、そういうものに出せないかということで事務的にも検討させました。これは出す方向が違うので出せないというような状態もございましたが、現時点において業界でもいろいろ検討したことでありますが、業界からは、滞貨の買い上げというものに対していま強い要請がないことは事実でございます。  もう一つ最後に申し上げておきますのは、この七一年日米の繊維交渉ができましたし、もう一つはドル・ショックもございましたけれども、日本の対米輸出は対前年度一九・四%伸びておるということでございます。これは四十四年対四十五年は五・四%だったと思いますので、それに比べれば協定は行なったが二〇%程度の伸びであり、全世界のアメリカに対する伸びよりもはるかに大きいものであったということと、二千億余の対米輸出の一年分以上の財政、金融、税制上の措置も行なっておるということもひとつ念のため申し上げておきます。
  216. 加藤清二

    加藤(清)委員 あなたがそうおっしゃると、もう与えられた時間がおしまいですからなんですけれども、あなたがそうおっしゃられると反論したくなる。そこで問題は、ほんとうは政府が買い上げてしかるべきところ、それじゃもし業界のほうで政府の任務を代行する、すでに、それはあなたは要請がないと言ってみえまするけれども、とんでもない話なんです。何度も要請されておる。日本合繊スフ輸出会社なるものができ上がっている。すでに買いが進んでおるのです。そのことをすることが中小企業の滞貨を少なくし、中小企業の倒産を救うことになるのですから、これは国内対策であり、同時に避難民の給与ということになれば、外交的にも一挙両得である。  あなたは資金のことをおっしゃられましたが、それじゃ私は申し上げますよ。資金は石炭の場合はどうなっておるか。金利六分五厘で千四百五十八億も貸されておる。それから合理化事業団のほうには八年間も無利子の金が六百七十三億も貸されている。私はそれが多いと言うのじゃございません。石炭にそれほどやれる余裕があり、外貨が余って困っておるというならば、いまあなたの手によって被害を受けておる日本の繊維産業並びに労働者に対して、救いの手を伸べるのは当然の義務じゃございませんか。その一部をぼくは言うておるわけです。
  217. 田中角榮

    田中国務大臣 業界から通産省に対しての要請はないようでございますが、合繊会社が自主的に輸出向け糸、織物等の滞貨を買い上げる会社を設立する構想がありまして、本件は輸出入取引法に基づいて設立をされる模様であります。近く通産大臣に認可申請をする予定とのことでありますので、念のために申し上げておきます。
  218. 加藤清二

    加藤(清)委員 認可申請したら許可しますかしませんか。
  219. 田中角榮

    田中国務大臣 出た申請を十分見まして、適切なる措置をいたします。
  220. 加藤清二

    加藤(清)委員 では結論です。  以上、あれこれ申し上げました。まだ申し足りないこともあれこれございまするが、それは当該委員会で詳細に詰めを行ないたいと存じます。要は、日本の基幹産業でございまする繊維産業がドル・ショックといい、協定ショックといい、これはおのれみずから出た、身から出たさびではない、政府の施策から悪影響を受けていま四苦八苦倒産続出という状況でございます。首を振りなさるけれども、じゃ名前あげましょうか。いいでしょう。——そこで倒産が続々出て、まだこれ以上に七−九から先には出る予想が立っておる。したがって政府としては、ぜひこの際、それに対するあれこれの施策をとられることが義務である、つとめである、ぜひそれをやってもらいたい、かように要望いたしまして、本日のところはこれで終わります。  どうも失礼いたしました。
  221. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これにて加藤君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十六日午前十時より委員会を開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時四十七分散会