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1972-03-09 第68回国会 衆議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月九日(木曜日)     午前十時八分開議  出席委員    委員長 瀬戸山三男君    理事 大坪 保雄君 理事 佐々木義武君    理事 田中 龍夫君 理事 二階堂 進君    理事 細田 吉藏君 理事 阪上安太郎君    理事 辻原 弘市君 理事 鈴切 康雄君    理事 小平  忠君       足立 篤郎君    相川 勝六君       愛知 揆一君    赤澤 正道君       荒木萬壽夫君    植木庚子郎君       小川 半次君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    仮谷 忠男君       川崎 秀二君    笹山茂太郎君       正示啓次郎君    田中 正巳君       中野 四郎君    灘尾 弘吉君       根本龍太郎君    橋本龍太郎君       福田  一君    松浦周太郎君       松野 頼三君    森田重次郎君       阿部 助哉君    安宅 常彦君       小林  進君    島本 虎三君       楢崎弥之助君    原   茂君       細谷 治嘉君    林  孝矩君       古川 雅司君    吉田 之久君       和田 春生君    谷口善太郎君       東中 光雄君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         通商産業大臣  田中 角榮君         郵 政 大 臣 廣瀬 正雄君         労 働 大 臣 塚原 俊郎君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣         北海道開発庁長         官       渡海元三郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      木内 四郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 江崎 真澄君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      木村 俊夫君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大石 武一君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      新田 庚一君         経済企画庁国民         生活局長    宮崎  仁君         科学技術庁原子         力局長     成田 壽治君         環境庁企画調整         局長      船後 正道君         環境庁自然保護         局長      首尾木 一君         環境庁大気保全         局長      山形 操六君         環境庁水質保全         局長      岡安  誠君         外務省アジア局         長       吉田 健三君         大蔵省主計局長 相澤 英之君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省理財局長 橋口  收君         大蔵省証券局長 坂野 常和君         大蔵省国際金融         局次長     林  大造君         国税庁長官   吉國 二郎君         厚生省公衆衛生         局長      滝沢  正君         厚生省環境衛生         局長      浦田 純一君         厚生省薬務局長 武藤き一郎君         厚生省社会局長 加藤 威二君         厚生省保険局長 戸澤 政方君         厚生省年金局長 北川 力夫君         通商産業省公害         保安局長    久良知章悟君         通商産業省化学         工業局長    山形 栄治君         通商産業省繊維         雑貨局長    佐々木 敏君         通商産業省公益         事業局長    三宅 幸夫君         郵政大臣官房長 森田 行正君         郵政省人事局長 北 雄一郎君         労働省労政局長 石黒 拓爾君         労働省労働基準         局長      渡邊 健二君         労働省職業安定         局長      道正 邦彦君         建設大臣官房長 大津留 温君         建設省計画局長 高橋 弘篤君         建設省都市局長 吉兼 三郎君         建設省河川局長 川崎 精一君         建設省道路局長 高橋国一郎君         自治省行政局長 宮澤  弘君         自治省財政局長 鎌田 要人君        自治省税務局長 佐々木喜久治君  委員外出席者         郵政大臣官房資         材部長     斎藤 義郎君         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 三月九日  辞任         補欠選任   原   茂君     島本 虎三君   安井 吉典君     阿部 助哉君   鬼木 勝利君     古川 雅司君 同日  辞任         補欠選任   阿部 助哉君     安井 吉典君   島本 虎三君     原   茂君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十七年度一般会計予算  昭和四十七年度特別会計予算  昭和四十七年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これより会議を開きます。  昭和四十七年度一般会計予算昭和四十七年度特別会計予算昭和四十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を行ないます。和田春生君。
  3. 和田春生

    和田(春)委員 きょうは論点を二つにしぼりまして、まず第一には土地政策、第二には選挙制度に関しまして、具体的に質問をいたしたいと思います。  と申しますのは、本年度予算案において公共事業を積極的に進めるという方針政府のほうから打ち出されております。また、従来の生産第一、輸出第一から、国民福祉優先財政運用をするということがうたわれているわけでございますけれども、今日の状況、なかんずく人口が集中しつつある都市状況を見ますと、その成否を決する土台はまさに土地政策にあると思います。土地政策の不在が政治を非常にゆがめている。この点につきましては、総括質問において社会党の阪上委員からもかなり広範な問題が追及をされました。それと重複を避けながら、具体的な問題を問いただしたいと考えるわけでございます。  まず最初にお伺いをいたしたいわけでございますが、今年度から市街化区域農地に対しまして宅地並み課税をするという方針並びに法的措置がすでに決定をしているにもかかわらず、これを後退をさせて緩和をさせる、あるいは繰り延べるということが盛んに新聞紙上等においても報ぜられているわけでございます。市街化区域農地宅地並み課税につきましては、賛否の議論がいろいろあることは承知をいたしておりますし、また私は具体的な問題を一つ一つ取り上げて御質問申し上げたいと考えるわけでございますけれども、昨年きめてことしから実施することになっているものを、何かどこかから圧力が加わるとぐらぐらっと方針を変えて、そしてそれが後退をするという、まさに朝令暮改の印象を与えるわけでございますけれども、既定方針どおり貫くのか、この点について何らか改めようということを考えているのか、本件につきまして、まず所管の自治大臣にお伺いしたいと思います。
  4. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 いわゆる市街化農地につきましては、いま御指摘のごとく、市街化区域内にあるような土地が付近の宅地との税の非常に不均衡があるという点を是正すべき必要があるんじゃないか、また土地対策上からこれを是正すべきであるという意見によりまして、昨年度税制改正によりましてすでに法制化されたことは御指摘のとおりでございます。この点につきましては、私たち実施方針をもちまして、各市町村におきましてもすでに公示の手続を行なっておるというのがもう大部分でございまして、ごく少数の市町村を除いてはすべて実施の態勢に入っておるような状態になっております。いま御指摘のごとく、農業経営者あるいは農業団体等から強い反対のあるということも、直接要望も私たち承っております。その大きな理由といたしましては、現に農耕を行なっておる者は農業所得以上の税負担になるというふうな点でございますが、昨年税制改正を行なわれましたときにも、これらのことも考慮いたしまして、十分漸進的に、都市化の進行につれまして漸進的に行なうような法措置もされておるところでございます。しかしながら、各地の事情等によりまして各団体の申されるのが真にやむを得ないというふうな点があるときには、行政措置等によりまして個別にきめこまかく運用することによって、私たちはぜひとも四十七年度からこれを発足させるという方針で目下鋭意納税者の御理解と御協力を求めておるような状態でございますので、御支援のことばをいただきましてまことにありがとうございましたが、今後ともその方針でまいりたい、かように考えております。
  5. 和田春生

    和田(春)委員 都市計画法による線引きによって市街化区域の中に入った。しかし、そういう中で現実に営農しているところに宅地並み課税をされれば農業経営が非常に困った状態に置かれる。それはいま新たに起きた問題ではなくて、これをきめるときからわかっておったはずであります。それを前提にしながらこの方針をきめたわけです。そして法律もきめてからいよいよ実施をするという段取りになって、さらにいろいろな事情があるかどうか知りませんけれども、政府並びに与党の方針がぐらぐらしている。あまりにも朝令暮改ではないか。そういう点についてまず基本的な姿勢を私はただしているわけであります。その課税の方法とか問題についてはあとから一つ一つ伺いをいたします。  そこで多くの説明は要りませんが、端的にお伺いいたします。既定方針どおり行なうわけですか、行なわないのですか。
  6. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 既定方針どおり行なう方針でございます。
  7. 和田春生

    和田(春)委員 いま自治大臣が責任をもって既定方針どおり行なうという決意を表明されました。内閣全体の御意思と思います。したがいまして、新聞紙上等にいろいろ伝えられていることについては、風聞にすぎぬというふうに理解してよろしゅうございますね。——そういう理解のもとに質問を先に進めさせていただきます。  ところで同じ市街化農地とこういうふうにいわれましても、地方でこの線引きが行なわれた結果、農業地市街化区域に入ったというところと、現に市街化が非常に進んでいる大都市周辺では事情が違うと思うのです。そこで、いま自治大臣があくまで既定方針どおり行なうとおっしゃっておりますので、それに関連いたしまして、どの程度の実情認識があるかということについて具体的な数字をお伺いしたいと思うのです。  最近東京都下の各市町村で一番頭を悩ましている問題は、学校用地取得であります。人口が急増する、学校をつくらなくてはならない、用地が非常に取得難でございます。そこで代表的な二、三の例でよろしいと思いますけれども、東京都下において最近小学校ないしは中学校学校用地購入する。一体坪当たり単価幾らくらいで購入をしているか、実情を御存じならばお伺いしたいと思います。
  8. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 あらかじめ予定質問としまして、事務当局をして調査させておりますので、事務当局から答弁させます。
  9. 佐々木喜久治

    佐々木(喜)政府委員 東京都下の小中学校実例を申し上げますと、一平米当たりの単価で一番安いところで、四十六年度実例でございますが、一万円、高いところで六万円、大体は四万円から五万円というのが最も実例が多いかと思います。
  10. 和田春生

    和田(春)委員 それならそこのところで高いところが約六万円とおっしゃいました。その六万円で購入した土地が、地目が畑または田になっているというところの評価額幾らになっておりますか。
  11. 佐々木喜久治

    佐々木(喜)政府委員 これは四十六年度売買実例でございますので、四十六年度評価額は大体坪当たり百五十円ないし二百円ということでございます。これは四十七年度になってまいりますと違うと思いますが、現在の例は四十六年度売買実例でございますので、四十六年度評価額でございます。
  12. 和田春生

    和田(春)委員 大体、大体ということばを使っておっしゃっておるわけでありますが、おおむねそういうことだと思います。  ところでそういう問題について私はここで実例を二つ三つあげてみたいと思うのですけれども、これは国分寺における例でございますが、昭和四十三年に第八小学校土地購入をいたしております。これはこまかい数字は省略をいたしますけれども、昭和四十三年の一月に購入した。坪当たり五万四千円であります。その評価額坪当たりわずかの百七十四円であります。ところがそれから三年たって昭和四十六年の三月に第九小学校土地を買っております。これは坪当たり実に十七万四千九百円に上がっておるわけであります。その評価額は二百一円であります。三年の間に学校用地を買うために、これはいずれも地目が畑でありますけれども、三倍以上に値段が上がっている。ところが固定資産税評価額はわずかに百七十四円、二百一円、こういうような状況であります。さらにまたもっと値上がりの激しい例をあげてみますと、これはやはり都下の調布市でございます。昭和四十四年に小学校の敷地を買っておるわけであります。ところがたくさんの土地をまとめて買っておりますから、その中の典型的な例、ほとんど値段は一緒でございますけれども、一つ二つとってみますと、ある地主から買った土地地目は田であります。八百三十九・六六平米約二百五十四坪であります。これが買い上げ価格約百七十八万円であります。ところがそれの帳簿上の評価額はわずかに五万八千九百四十八円、結局評価額の三十倍でこれは市が買い入れているのです。ところがそれからわずか四年たちまして昭和四十七年の三月になりますと、似たようなところの土地地目が田、これの約百六十坪が二百六十万円、その評価額はわずかの三万六千四百二十四円、実に七十倍以上の値段で買い取っているわけでございます。学校用地坪当たりが十五万円とすると、四千坪買うだけで六億の金が飛んでしまうわけです。そしてこれらの市町村財政規模が年間せいぜい十数億、これでは地方自治体はつぶれてしまうわけです。そしてそれを買うのは全部国民税金で買っているわけです。市民の税金で買うわけです。起債をしても、国から補助を受けても、全部もとは国民税金です。そして、それは田である、畑であるという理由だけでわずかに一坪当たり百七十円とか二百円という安い評価で、そして税金はほとんどただ同然。実際にまじめに耕作をしているのか、ほとんどやっておらない。こういう状態社会正義に合致するとお考えですか、断じて改めなくてはいけないとお考えですか、どちらですか。
  13. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 いまのおことばの中に、しかも適正な農業経営が行なわれていないというふうなおことばもありましたが、そのような部面も考慮いたしましたら、断じて改めなければならないものでございますし、このような趣旨に従いまして昨年度税制改正も行なわれたものであると考えております。
  14. 和田春生

    和田(春)委員 次に、建設大臣にお伺いいたします。  私たちがしばしば見聞をするのでありますけれども、確かに見た目では畑のようなかっこうをしているわけです。一応種をずっとまくわけです。作物ができます。全然手入れをしないのでそのまま腐らせてしまう、そういうことを一年やる、二年やる、繰り返している。これは農地ですか。
  15. 西村英一

    西村国務大臣 税法上は農地ということになっておるのですが、事実は農地でない、こういうことに判断するほかしようがありません。
  16. 和田春生

    和田(春)委員 そうすると、課税農地並みとして課税するわけですか。
  17. 西村英一

    西村国務大臣 いまの課税税法上の目的課税しておるのでございまして、固定資産税とか相続税とかいろいろ税があるでしょうが、その評価税法上の目的でやっておるのでありまして、必ずしもその地価そのものの時価ではない。これはなるべく統一することが望ましいのでございまするが、そこまでいかない。そういうためにも、これは先回りになりますけれども、地価公示制度等もやって、いろいろとこれを接近させよう、こう政府はつとめておる次第でございます。
  18. 和田春生

    和田(春)委員 自治大臣にお伺いいたしますけれども、いまの例でありますが、まわりがずっと住宅地化している。そこへ何百坪の土地がある。そしていま言ったように一応種をまいて作物をつくるようなかっこうをしているけれども、立ち腐れで収穫をしない。一年、二年たっている。しばらくたつとその一画が売られた。幾らで買ったか、坪十五万円だ、十六万円だ。そしてそこに家が建っている。これは農地と見ているのですか、それとも宅地と見ているのですか。
  19. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 いわゆる土地台帳によりまして、農地から宅地化されていないものは一応農地としての扱いを行なうのが通例になっておりますが、いまあげられましたようなものは、個々につきまして現状に即して農地でない評価をするのが過半であろう、かように考えております。現実にそれがどう行なわれておりますかにつきましては、設例でございますので申しかねますが、そのような扱い個々に行なうのが適当であろう、かように考えております。
  20. 和田春生

    和田(春)委員 私はその実情を調べてきましたけれども、全部農地で、田あるいは畑という形で土地台帳に記載をされているわけであります。そしてその固定資産税も先ほど言ったとおりでございます。私が市街化区域農地に対する宅地並み課税をやらなくてはいけないと言うのは、市街化が進んでいる地域の中でそういう売り惜しみ、地価高騰を待っておってつり上げていくという土地の存在が社会正義に合致しない、だからそれを改めなくてはいけないというところからきていると思うのです。それを問題をすりかえて、実際にどこか地方のほうで線引きの結果市街化区域に入ってしまった、実際にいまそこで農業をやっている。そういうところに宅地並み課税をされたのでは、これからも農業を続けていこうと考えている人については、じょうだんじゃない、困るという意見が出てくると思う。それに便乗をして、けしからぬ状態にあるところが突き上げているというのが現状だと思うのです。市街化区域農地宅地並み課税をやめろ、こういって突き上げている。こういう点について私は政府考え方が粗雑であり、あまりにも無定見であるというところに混乱を起こしている理由があると思う。私はいま申し上げたような実例に関しては容赦なく、そういうのはぼろもうけをしているのですから、収益があるわけですから、税金をかけるべきだ。しかしまじめにやろうというところについては、きめのこまかい対策があらかじめ必要であったと思うのです。それをごちゃまぜにして市街化区域農地宅地並み課税後退をさせようとか、全体の実施を延期しようとか、そういう朝令暮改政治姿勢としてはまことにけしからぬと考えるわけであります。  そこで、この問題を整理する一つ考え方として、生産緑地ということがあるのですけれども、むしろそういう市街化区域の中でも環境上いろいろな面において緑地として保存をする。それは公園であるとかそういう形ではなくて、生産をしながら緑地として保存をする。こういうものは好ましいというところについては、むしろ積極的に地方自治体のほうからそれを生産緑地として認める、思い切って免税ぐらいする、そして都市の中に緑を残していくという考え方まで積極的な態度を私は示すべきだと思うのですけれども、そういうお考えはありますか。
  21. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 いま和田委員指摘のような姿で、できるだけきめこまかく昨年度税制改正でもA、B、Cのランクに分け、きめさしていただき、しかも本年度より発足するものは、いま御指摘になりましたような、ほんとうに市街化されたような土地に対してAランクとしてきめさしていただく。それも一度に引き上げずに、二割という姿で発足していただくというふうに相当きめこまかく規定さしていただいておるのが昨年度税制改正であろうと思います。しかしながら全国区々まちまちでございますので、御指摘のような農地に対する農業団体等の陳情の中にも、われわれの傾聴すべき御意見もございますので、既定方針どおりこれを実施いたしますが、慎重にそれらに誤りがなきよう実施をしてまいりたい、こう考えておるような次第でございます。  ただいま申されました生産緑地関係につきましては、御指摘のような姿でこれを実施いたすために、法の中にもそのことを予定いたしまして、いま申しましたような姿で各市町村生産緑地の姿で残るように指導していくという姿で今後とも運用していきたい、かように考えております。
  22. 和田春生

    和田(春)委員 A、B、Cというふうに分けるのがその地価評価額を基礎にしていますから、あれ自体が大体大ざっぱなんです。しかし、それは一つ基準でしょう。だから、この法律後退させることなく、これはこれで実施していく。しかし、そういう市街化区域の中において生産緑地として残したほうが望ましいというものは、むしろ市町村が積極的に認めていくという形をとらないのかということを聞いているのです。これは農業をやる気もないのに値上がりを待っておって、農地でございますと言って、土地台帳農地になっているからそれは農地と認めるということでなくて、市街化区域は全部そういうふうに、農地ではなくても、生産緑地として認めるものは積極的に認めていく、そういう方向に持っていくべきではないか、これからの時代についてそういう考え方はないかということを聞いているわけであります。建設大臣
  23. 西村英一

    西村国務大臣 都市計画法にも、あるいは地方自治法にも、公園緑地、こういうことは出ております。それが都市計画として認められれば、現在でも農地として特例を認められております。いま和田さんがおっしゃるのは、それ以外に、都市計画ではなくても、都市のいろいろな点、防災の点だとか、あるいはいろいろな点のためにどうしてもここはやはり生産緑地として残したいというような、これは生産緑地ということばはどの法律にもございませんが、残したいところは都市によってはあるでしょう。しかし、そういうところは、計画決定をします都道府県知事が認めれば、私は、これはやはり特例として農地並みの取り扱いをするということ、これもあまりばらばらではいけませんが、常識的にそういうことが必要だとすれば、それは認めていいと思います。これは運用上の問題ですが、解釈によっては、むしろこれはやはり公園あるいは緑地予定地だというような解釈も私はできるわけですから、そういう解釈をとって、それは特例を開いて農地並み課税をして保存をする、こういうことを積極的にやるべきじゃないか、私はかように思っております。運用の点で十分対処し得る、かように思っております。
  24. 和田春生

    和田(春)委員 はっきりした明確な御答弁はないようですが、先ほどこの問題については自治大臣からのしかとした御答弁もございますし、前向きに検討しよう、こういうお考えのようでございますから、土地政策に今度は観点を変えまして御質問をいたしたい、質問を続けたいと思うのですが、結局、いろんな問題で政府がぐらぐらしている、そして一つも問題が改善をされないということも、大きな原因は、土地政策というものが確立されていないということにあると思うのです。この点については、阪上さんがすでにかなり詳しく質問をしておりますけれども、土地というものは本来生産によってつくられたものではない、これは当然だと思います。祖先から伝来のものであります。たまたま何らかの都合でそこに所有権を持ったというのにすぎない。そういう土地の所有権、財産権、こういう問題について、このように過密化してきた地域について、あるいは開発をしなければならない地域については、根本的に考え方を変える必要があると思うわけです。これを徹底していけば、天然古来、日本の国の土地は日本の国についたものでありますから、これを徹底して国有化に進めるというところまでいかなければならないと思いますけれども、土地を国有化するというようなドラスチックな手段をとりますと、憲法上の解釈との間の触れ合いも出てまいります。そこで、この問題は、きょうは時間もありませんので、一応横に置いておいて、そこまでいかなくても、土地の公共管理を徹底するということはできるのではないか、ここに団地をつくるからといって、その部分だけを先買いをするとか、将来のことも考えて若干のところをつけておいて先買いをするというのではなくて、必要な相当広範囲な地域についてあらためてその地域を指定する、その中においては、所有権そのものは侵さないけれども、私的売買は禁止をする、売る相手、つまり買い手は、国または地方自治体、あるいはそういう公共団体によってつくられたところの公社等に限られる、そして、土地を買う場合にはそういうところから買う、つまり、私的におけるかってな売買は禁止するということによって全体を調整していく。虫食い状が起こるのを防ぐ。開発をしようと思うと、投機ブローカーがどんどん出てきて、札束で地主の横つらを張るようにしてぽこぽこ買っていく。いざ事業を進めようとすれば、べらぼうもない金をつぎ込まなくてはできない。そういうことを防ぐために、一定の広範な地域については土地の公共管理を徹底するという考え方はおありですか。これは建設大臣にまずお伺いしたい。
  25. 西村英一

    西村国務大臣 土地問題は、もう公共施設をやるのには欠くことのできないものでございますが、なかなか一手できめ手がないので、非常にむずかしい問題でございます。そこで、いろいろ御提案がございましたが、もちろん、国有にするというようなことは、これは憲法上の問題があってできないこともお述べになりました。そこで、一定の土地を限って私的に売買を禁止したらいいじゃないか、これもなかなかいろいろな問題が私はあろうかと思います。そういうことを強制的にやる反面の問題としては、相当な私権の制限になりますが、これは公共のためにやむを得ないとしても、それに対応するやはり資金上の面も相当にあると思うのです。これはそういう強制力を持てば、こちらもまた義務を負わなければなりません。買ってくれというところは、一定の土地は、一方のほうが買ってくれと言えば、それに応じなければ、これは権利義務の関係になりますから、そういう点もこれはばく大な金が要ると思うのです。そういう案もないわけではございません。建設省でも、根本さんもここにおいでになりますが、根本構想というのは、そういう一定の土地については買い上げてしまう、強制してしまう、こういう案もあったのでございますが、その反面の問題がなかなか容易な問題ではありませんが、私は、将来に向かってはやはり検討すべきだ、十分検討しなければ土地問題は解決しない。土地はやはり私有は許しておるけれども、これは国民全体のものだという考え方もこれは十分理解ができるわけでございまするから、検討に値する、かように思っております。  また、公的の土地をふやしたらいいじゃないか、あるいは公的の管理をしたらいいじゃないかということがございますので、このたびは建設省と自治省とで公有地の拡大の推進に関する法律案を提案になったのでございます。一歩前進と、こういうことに私たち考えておりますが、この法律の施行によって、さらに、場合によってはいまあなたが御提案になりましたようないろいろなことも踏まえてさらに検討をしていきたい、かように考えておる次第でございます。
  26. 和田春生

    和田(春)委員 建設大臣にちょっとお伺いいたしますけれども、土地関係、並びに土地に関する税制も含めて、法律特例、特別措置、幾つくらいあるか、全部御記憶でございますか。
  27. 西村英一

    西村国務大臣 幾つあるか、数えたことはございませんが、まあそれは相当な数です。建設省の法律でも相当たくさんあります。土地問題を広くすれば、たとえば新産都市の問題にしても、これは広くいえば土地問題、やはり土地利用を広く全国的にやろうという意味ですから、そういうことも考えれば、もう建設省の法律土地問題に関して数十も、非常にたくさんあると思います。
  28. 和田春生

    和田(春)委員 実は私もよく知らないくらいたくさんあるのです。見ましたけれども、覚え切れないのです。質問する前に覚えてこようと思ったけれども、だめですね。しかし、それをずっと通読していくと、従来の古い観念にとらわれて、何とかつじつまを合わせようとしていって、やろうと思ったらうまくいかないから特別措置と、そういう形で複雑に、複雑になってきて、責任の大臣でさえも、たくさんあると思いますというくらい、なかなか見当がつかないくらいあるわけですよ。そうして、それらが実効をあげているかというと、一つも実効をあげていない。さっき言ったように、どんどんどんどん地価というものは天井なしに上がっていっているというのが現実じゃないでしょうか。そういうような状況の中で、やはり土地に対する所有権、こういうものに対する考え方を根本的に改めていく、そうしていま言ったような措置をとらなくてはいけないと思うのです。さらに、ばく大な資金量が要ると言いましたけれども、全部土地を国有化するという形になれば、個人の持っているところまで全部買い上げるわけですから、おっしゃるようにそうでしょう。現在自分で使用しているというところについてはそのまま使用を認めていくわけです。ただ、いま土地売買が行なわれている、そういう面について公共管理をする、資金量が要るときには公債発行してもいいでしょう。そしてそれは必要なところにまた売り渡すわけでありますから、そういう点を考えていけば、もちろん、そういう指定地域の範囲や、必要とする公共事業取得土地の面積、見通しというものについて資金量というものも大きく動いてきますけれども、にっちもさっちもいかぬようなことではないと思う。したがって、これをこれから解決をしていくためには、そういう土地の公共管理というものを思い切って強化する、そういう大前提に立って、それと結びついた税制、こういう形に持っていかなければならぬと思うわけです。そのほうが抜きになって、税制だけで問題を処理しようとしても、うまくいかない。しかも、その税制というものがいろいろな面で非常にゆがんできているわけであります。  そこで、これは大蔵大臣にお伺いをいたしたいと思いますが、現在土地税制に対する基根になるものは課税評価だと思います。ところが、この課税評価についてもいろいろな違いがあるのですが、地方税として固定資産税評価の基礎になっている路線価と、それから相続税は国税でありますが、その評価の基礎になっている路線価と、これは同じでありますか。
  29. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは違っております。
  30. 和田春生

    和田(春)委員 なぜ違っておるのでしょうか。
  31. 佐々木喜久治

    佐々木(喜)政府委員 御承知のとおり、固定資産税におきましては、土地評価は三年ごとに基準年度を設けまして評価がえをいたすという制度になっております。したがいまして、基準年度における評価の際におきましては、その相続税なりあるいは固定資産税なりの基準地の評価額につきましては、それぞれ地方団体と税務署間におきましてその調整を行なっておるわけでありますが、そうした次の基準年度に至ります間に、国税は毎年評価がえをやっておりますので、その間において相違が出てまいるということが実態でございます。
  32. 和田春生

    和田(春)委員 現在市町村税になっている固定資産税も、もとを発すれば地租で、国税から出発をしているのが、だんだんそのウエートが少なくなってきて市町村に移譲されたという事情については、大蔵大臣御承知のことだと思います。同じ税金から出発をしているわけです。そして税金をかけるということが国と市町村に分かれておりましても、同一の物件にかけられる税金です。その同じ物件の評価額というものが、市町村税であるところの固定資産税の路線価と国税たる相続税の路線価と食い違っておっていいとお思いですか。
  33. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 両方とも実際の売買価格、時価に合わせるようにこれは訂正されていくべきものであるというふうに考えます。
  34. 和田春生

    和田(春)委員 これは法律を変えなくても、やる気になればすぐできることじゃないでしょうか。
  35. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま相続税の対象になっておる評価は、大体普通の売買価格の七〇%ぐらいの水準になっているのじゃないかと思います。やはりこれをできるだけ差をなくしていくというために、ことしから三年間で徐々に訂正をしていくという作業を現在始めているところでございます。
  36. 和田春生

    和田(春)委員 一番大きいのはどれぐらい開いているとお思いですか。事務当局でもよろしゅうございます。
  37. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 急速に地価が上がったという地域は、この開きは、もう七〇%どころじゃなくて、相当大きいものだろうと思っております。
  38. 和田春生

    和田(春)委員 いま大蔵大臣がお認めになったように、倍ぐらい開いているものもたくさんあります。一致しているのもあります。非常にまちまちであります。税金をかけるという問題について、同じ物件ですよ、同じところにある同じ土地、それに国の評価地方自治体評価が違う、こういうところから問題の乱れが出発をしていると思うのです。  そこで、地価地価という。固定資産税に関する用語の意義によれば、地価とは「適正な時価をいう。」と書いてある。時の値段です。一体時価とは何だ。これは必ずしも、売買取引をされているその実態的な値段そのものが時価というのは、それは少し行き過ぎかもわかりません。しかし、一体時価とは何だ。時価の概念というものは定まっているとお思いでしょうか。
  39. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 時価といっても、結局はやはり売買価格、その付近で現に行なわれているいろいろな譲渡価格というようなところから大体時価というようなものが出てくることでございまして、時価には相当幅があるということでございますが、一応はやはり売買価格が基準になって時価というものが出てくるものだろうと思います。
  40. 和田春生

    和田(春)委員 したがって、いまおっしゃいましたけれども、土地の価格、価格というけれども、いわゆる固定資産税評価額一つある。それから相続税評価額一つある。それから地価公示法による公示価格が一つある。公示価格では実際売買取引はほとんど行なわれておりません。それに、実際に取引されている実勢価格というものがある。その間には非常に大きな開きがあるわけであります。  たとえば、東京都内において杉並というのは、わりあいいい住宅地といわれているわけなんであります。住居地域の住宅について、これは実際にある一つの例ですけれども、昭和三十六年の都税の固定資産税評価額が、坪当たり五千六百十円であった。三十九年、御承知のように評価がえがされまして、三万三千三百円になった。四十三年は同額。そして四十五年になると、都税の評価額が十一万円になっております。そして公示価格は二十四万七千五百円。公示価格も、これはやはり公共団体がきめているわけなんですね。政府地方自治体がきめる。都税の固定資産税評価額が十一万円で、公示価格が二十四万七千五百円である。ここの土地は実際どれだけで買えるのか。私は行って調べてきた。三十五万円以下で買えません。こういうような非常にでたらめな評価をやっているということが、土地政策を間違っている根本になると思うのです。少なくとも固定資産税相続税との評価額は一致させる、その評価額公示価格に一致させていく、そういう努力を早急にする必要があると思いますけれども、いかがでしょうか。
  41. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この公示価格制度がもっと整備されなければできない仕事でございまして、もっとこの土地公示価格制度というものを整備させることによって、これを中心に一致させるということは望ましいことだと思います。
  42. 和田春生

    和田(春)委員 望ましいことであるというよりも、私は、土地政策の一環としての税制というものは、複雑でなく、わかりやすく、しかも筋を通していくということのためには、そういうことが必要だと考えているわけです。  それは次の議論に発展をしていくわけでございますけれども、営々と個人が商売に励む、あるいは生産をやる、そして収入をあげるのは、その人ないしは企業の努力だと思うのです。しかし、たまたまそこに土地を持っておったところに道路がついた、あるいは近くに大きな団地ができた、都市開発が進められたという形は、これは公共投資、いわば国民税金で開発が行なわれてそしてその土地が上がったという場合に、それは開発利益ですから、個人の所得に帰させたらいけないと思うのです。それはやはり公共に全部一ぺん還元をさせるということが必要である。そうなれば、当然土地の増価税、そういうような開発によって価格が上がった場合には、価格のふえた分について課税をするという観念がなければ、公共に還元することはできない。そういう土地増価税ということはいまや積極的に考えるべき時期に来ていると思いますけれども、いかがですか。
  43. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 その開発利益を国民に還元するというための税制は、税制調査会で一ぺん諮問して研究してもらいましたが、なかなかむずかしくて結論が出ない。現在そのままになっております。と申しますのは、一定の事業を指定して、そしてその公共事業ができたあとで、それによって開発利益を得たものに特別税を課するということでございますが、その範囲をきめる問題、そういう問題が結局は施行者と土地所有者、関係者の協議によって円満にきまるのでなかったらむずかしいということになるわけですが、円満に協議によってきまるということになりますと、税というものの性質とはだいぶ違ってまいりますし、それが円満に合意されるようなことであったら、むしろ受益者負担金というような形でこれを公共に還元する方法を考えたほうがいいんじゃないかというようなところにまで税制調査会の結論がきましたので、そのままにその問題はしておいて、そして、御承知のように、そういう問題の完全な解決にはなりませんが、とりあえず、四十四年以後新たに土地取得する者と、それから保有五年以内で土地を譲渡した者というものについては、五二%の高率の課税をするというようなことによって、この値上がりに対しては特別課税的なものをするといういまの現行法で一応落ちついたものでございますが、これはいいやり方が研究されるのでしたら、その開発利益に対する特別税というものはまだまだ検討していい問題だと思っております。
  44. 和田春生

    和田(春)委員 いい考え方が生まれないのは、増価税といっても、一体何を基準にして値段が上がったかということがわからぬからですよ。課税評価額地価公示による公示価格というものを一致させていくという努力は、技術的にたいしてむずかしいことではないのです。一定の基準があれば、それからふえた分は増価だという判定ができるわけです。そこで引き続き商売をやっている人から税金を取る必要はありません。たまたまその開発地域の土地を売った。売ったときに幾らで売れたか。うその申告をすれば別ですよ、これは。インチキなんですから。それとふえた分については増価なんですから、増価税として公共に還元してもらう。それをさらに公共投資に回して住民の生活環境整備をやるということができる。私は先ほどそういう問題を出したわけでございます。したがって、そういう点について、時間があまりないので、端的に、取り上げて検討するということをお約束願えますか。
  45. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 検討はいたします。
  46. 和田春生

    和田(春)委員 それ以上のことは押し問答になりますからお伺いいたしませんけれども、検討した結果については、次の国会において——水田さんが引き続き大蔵大臣をやっていらっしゃるかどうかわかりませんが、引き継いでおいていただきたいと思います。次の大蔵大臣に、いかなる検討をして、どういう措置を講じたかということを確かめたいと思います。  それで、経企庁長官にお伺いいたしたいと思うのですが、最近は物価が非常に上がってきている。そこで物価上昇ということがいろいろ問題にされているわけですけれども、生産によって物がふえて、それに従って通貨量がふえるというならば、これはあまりインフレの原因にならない。御存じのとおりだと思います。しかし、いまの土地というのは、新たに造成をしたところ等は別にしまして、日本の国内の土地の総量というのはふえていない。そういう中で、地価だけがどんどんどんどん、二倍、三倍、五倍、十倍というように、とめどもなく上昇をしているわけであります。それに応じて、通貨量というものがふえているわけです。過去十カ年間、地価の上昇というものによって、そういう意味で、インフレに対して、寄与率といいますか、どの程度寄与してきたか。これは計算方法がむずかしいと思いますけれども、感触でもよろしゅうございますから、もし土地値上がりがなかったとすれば、いまの国内の物価についてどの程度上がらずに済んだかというような点について、お考えがあればお聞かせを願いたいと思います。
  47. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 土地売買されますときに、非常に単純な取引ではAからBに移るわけですから、そこに通貨の増大はないわけですが、ただし、土地を担保にして銀行が信用を与える、それによって取引される場合がございます。その場合も、現行の通貨管理制度、中央銀行が通貨全体をコントロールしまして、あるいは公定歩合操作、あるいはオペレーション操作、あるいは準備率操作、そういうような金融政策を中央銀行がしっかりやっておりますいまの通貨管理制度のもとにおいては、その土地の信用贈与が直ちに通貨量全体に増大を示すとは私ども考えておりません。そういう意味で、いろいろこれは学説また御意見もあろうかと思いますが、そういうような見解をとっておるわけでございますし、また、いままでの統計をとってみましても、経済成長、GNPと通貨総量との間には、わりあい平均した関係がずっと保たれておりますので、そういう意味では、むしろ私は、経済成長というものが地価をつり上げるというような因果関係ではないか、こう考えております。したがいまして、はなはだ申しわけないのですが、私どもの手もとで、まだ、地価の上昇が通貨量の増大にどう一体つながっておるかということを計量的に、統計的に出したものがございませんので、御了承願いたいと思います。
  48. 和田春生

    和田(春)委員 確かに長官のおっしゃるように、経済成長が土地に対する需要を強化していく、それが地価をつり上げるということになっていると思うんです。これはだいぶ前になくなられた笠信太郎さんが「花見酒の経済」という有名な本を書かれましたが、そういう現象が私ははっきり起きていると思うのです。私自身の経験でも、鎌倉に私は言うほどでないささやかな家を持っておりまして、武蔵野に引っ越しをするといって売るときに、三倍で売れましたですよ。三百万円ほどのものが一千万円近くで売れました。それは、家は古くなっているのです。土地値段が上がったからです、同じところで。そうして武蔵野で自分の住む家を買おうとしたら、それだけでは足りなくて、銀行から借金をしてきて買いました。そして家の坪数は、前の住んでおった家よりも小さくなったわけです。なぜそんなに高いか。土地が高いからなんです。もちろん、家屋の建築費というのも上がっておりますけれども、結局、私自身の経験でも、同じ一軒の家を売って、それに見合う家、しかも小さくなる家を買い取るというので私の手元を通じていったお金の量は、四倍近くにふえているわけです。当然そういうことが全体としての通貨量をふやしていく、私はインフレの根源になっていると思う。そういう意味で、計量的に計算するのはむずかしいかもわからぬけれども、これはフレームをつくってやれば計算できないことはないと思う。やはり現在の物価上昇を押えるためには、いろいろな政策手段というものも必要でありますけれども、根本においては、やはり地価の上昇を抑制する、こういう点に思い切った手を打つということがない限り、幾ら大蔵大臣以下が、物価の値上がりを極力押えます、極力押えますと言っても、それは私はから念仏に終わると思う。そういう意味で、やはりほんとうに国民生活の安定ということを考えれば、公共投資をふやせばふやすほど、いまの企画庁長官の論理でいけば、これもやはり成長の一要因なんですから、地価をつり上げるという作用をしていく。政府の政策というものも御破算になると思います。そういう点について、予算委員会ですから、財政の元締めである大蔵大臣に、蛮勇をふるって地価上昇を食いとめるという決意ありやいなやを、簡単でいいですから、お答え願いたいと思います。
  49. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は、前からこの委員会でも申していますように、ずいぶんこの土地問題を税の上からいろいろ研究しましたが、対策を立てれば立てるほど、あるいは税の負担、課税を重くすればするほど、土地の値を上げることにみな役立ってしまうということでございますので、やはりこの問題の根本的解決は、何といっても、土地の私権というものに対して、公共のためにどれだけの制限ができるかという政策を思い切ってやるかやらぬかというところでなければ、土地問題のほんとうの解決は私はできないんじゃないかというような気がいたします。
  50. 和田春生

    和田(春)委員 この点につきましては、さらに機会があるたびごとに追及を続けていきたいと思います。全体の時間の配分もありますので、機会があればまた分科会等で取り上げることにいたしまして、次に選挙制度の問題に移りたいと思うのです。  私はいま、国民福祉の問題についての土台を持つものは土地政策であるということを申し上げました。政治を正す根本はやはり選挙制度にあると考えるわけであります。  そこで、最初にちょっと水田大蔵大臣にお伺いをいたしたいわけでありますが、こういう文章があるのですけれども御記憶でございましょうか。「国民のための議会政治は、なお制度上の改革が必要である。まず、近代化されなければならぬ政党のあり方、選挙法、選挙区制、政治資金規正法の改正など、思い切った勇断がふるわれなければならない。特に、個々の利害が統合されず、政策の一貫性を欠く選挙区制については、政党本位の選挙区制度の確立が急務である。」と、これは何の文章でございましょうか。——だれか御記憶でございますか。——お答えがないようでございますが、水田大蔵大臣が政調会長をしているころにつくられました自民党の全国大会で決定した運動方針であります。たいへんいいことをおきめになっていらっしゃるわけですね。ところが、その後全然選挙制度の改正については手が染められておりません。  そこで、これは選挙担当の自治大臣にお伺いをいたしたいと考えるわけでございますけれども、いまの選挙制度にはいろんな大きな問題があるわけでございますが、その中でも特に定数の不均衡、こういうことが大きな問題になっているわけですけれども、その定数の不均衡は現状が放置できるものであるとお考えでしょうか、即刻改正を必要とするとお考えでしょうか。
  51. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 御指摘の定数の不均衡の問題でございますが、御承知のとおり、議員一人当たりの人口の一番多い大阪三区と兵庫五区とを比べましたら五倍近い開きがございまして、改正すべきものであると、このように考えております。
  52. 和田春生

    和田(春)委員 こういうのは機械的にいきませんから、多少のばらつきというものはやむを得ないと私は考えるわけです。私自身もこまかく選挙区ごとに調べてみました。たいへんなことでございまして、たとえば人口百万人をこえておる、にもかかわらず定数わずかに三人であるという選挙区が二つあります。百万人をこえて定数四人という選挙区が九つあります。そして一方人口が七十五万人未満、つまり定数一人当たり十五万人以下という五人区が四つある。逆転現象もいいところでございまして、こういうものはすぐやはり私は直さなくてはいけないと思うのです。よく選挙制度調査会ということが隠れみのにされますけれども、選挙制度調査会で幾ら答申しても政府が取り上げなきゃ何にもならぬわけです。与党の自民党さんが御賛成にならなければ何にもならぬわけですが、先ほど私が読み上げたようなたいへんりっぱな方針を満場一致で決定された与党があとに控えておるわけでありますから、政府さえ決意をすれば定数是正に取り組むということはわけがないと思うのですけれども、いかがですか。
  53. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 当然私たちもこの是正は行なわなければならぬと、かように考えております。ただ問題は、定数是正を行ないますためには総定数をどうするか、また区制の問題あるいは選挙区ごとの定数のあり方等、選挙の根本問題に直ちに触れるという問題が多いのが現状でございます。たとえましたなれば、いま和田委員指摘になりましたようにいろいろの実例をあげられましたが、現在一番少ない区が兵庫五区になっております。その区は定員三名でございます。この区を減らすことによってバランスをとりますと定員二名になってしまいます。現在中選挙区制ということになりますと五名から三名というのを中選挙区制といたしておりますが、これをどこかの選挙区へ合致させなければ、この定数の人口を上げることによってバランスを救うということはできません。そうなりますと結局定数がたくさんになるというふうな点がございまして、結局区制のあり方、根本の問題に触れなければならないという実情にぶつかっておるのが現在の姿でございます。幸いにいたしまして現在その選挙区制の根本の問題について御検討を審議会のほうでしていただいておりますので、この根本問題とあわせまして人口のアンバランスの是正も考慮していただいておる、御審議願っておるというのが現況になっておりまして、先般もこの問題だけを切り離して早くやらなければならないのではないかという議論も出ましたが、いまのところ急いで根本問題とあわせてやはり検討するという方向で御審議願うことが大多数になって、現在急ぎこれを審議を願っておるという姿でございますので、ぜひともできるだけ早く御答申、あるいは衆議院に対するだけの中間答申等でもいただきまして、この問題を解決するように持っていきたいと、こう考えておるのが現状でございます。
  54. 和田春生

    和田(春)委員 兵庫五区ということばがたびたび出てまいりまして、渡海自治大臣は兵庫県の御出身ですが、この兵庫五区にはわが党の佐々木書記長がおりますので、三名を二名に減らしたらたいへんだぞとはおっしゃらないけれども、その手はなかなか食いませんので、それはまあ別であります。  定数を、総ワクをどうするかということでございますが、たとえばイギリス下院の議員定数は六百二十人であります。一九六七年の人口は五千五百六万人であります。人口八万八千について下院議員は一人。西ドイツ連邦議会の議員定数は四百九十六人、わが国よりちょっと多いのです。やはり六七年人口は五千七百七十万人、人口十一万六千人に一人であります。イタリア下院は議員定数六百三十人、人口五千二百三十五万人でありますから、八万三千人について一人であります。わが国の四百九十一人という定数も、その後若干調整されましたけれども、選挙法が制定されたときの議事録を詳細に調べてみまして、これは特段の根拠があってやられたわけではなくて、戦前からの大体の惰性で概数をもとにいたしまして、おおむね人口十七万程度ですかに一人という形できめられたにすぎない。そうなれば総ワクにこだわることなく、今日では人口一億をこえているわけですから議員定数をふやしたってよろしいじゃないですか。むしろそれよりもこういう不均衡な定数を改めるということこそ、政治に対する国民参加というものを機会均等にする、また姿勢を正す非常に大事なことだと思うのです。  私の選挙区の東京七区は人口二百六十万ですよ、いまや。どんどんふえております。多摩ニュータウンが完成すれば三百万人だ。たった一つの選挙区、二十五市、五町、二村ある。国民と接触をしろといったって不可能であります。そういう点を考えれば、これは個人的な利害の問題ではございません。定数をふやして選挙区が割れて五人区が三人区や四人区になれば、むしろ選挙はやりにくくなるかもわからない。しかし私は、こういうゆがめられた状態というものは、議会政治の土台を直すという意味で多少の定数をふやしたって即刻改めるべきだと思うのです。何も少ないところを減らすことを考えなくても、イギリス下院並みの六百人にすれば相当の不均衡のところを直すことができるじゃありませんか。それはいかがでしょうか。
  55. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 傾聴すべき御意見であると私は承っておきたいと思います。結局そのような問題も、いま申されましたような定員総数の和田委員考え方、あるいはまたそれに異なるような御意見もございましょうし、私も単に選挙区にとらわれて兵庫五区を取り上げたのではございませんでして、ただ、そういうふうに総定数または選挙区制というものに根本的に触れる問題があるので、あわせて御審議を賜わっておるということでございます。いまお述べになりましたような御意見は、傾聴すべき御意見として十分検討の中でやっていただいておる、こういうふうに考えますので、できるだけ早く審議会の御答申を願えるようにせっかく御努力を賜わりたい、かように思っております。
  56. 和田春生

    和田(春)委員 これは本来なら総理にお伺いをするのが筋の問題でございましょうけれども、佐藤総理は今回限りで御引退ということでございますし、そうなればやはりあとを引き受けてやっていかれる現在の閣僚各位に特にお願いをいたしたいと思うのですけれども、定数是正をためらっていることについて、私は、調べているうちに非常に興味ある事実に突き当たったわけです。  大体、定数一人について人口が五十万だ、四十万だ、三十万だという非常に人口過大な選挙区がある反面、定数一人当たりが十五万人以下というような、戦前の人口が少なかったときに定数をきめたときの一人当たりの平均値よりもはるかに下だという選挙区があるわけですね。その選挙区を調べてみますと、たとえばまあ十五万よりちょっとふえるかもわかりませんが、山口二区、定数五人で人口七十七万、佐藤総理並びに岸前総理大臣がこの選挙区におります。島根県がやはり人口七十七万、人当たり十五万ちょっとです、竹下官房長官。千葉三区、これは七十四万九千、そこにすわっていらっしゃる水田大蔵大臣。茨城三区、七十四万八千——全部五人区ですよ、丹羽運輸大臣、赤城農林大臣。新潟三区、定数五人で七十四万三千、田中通産大臣。栃木二区、定数五人、七十一万四千、小平前労働大臣、筆頭副幹事長さんでいらっしゃいますか。今度は定数四人で人口六十万未満のところ、結局一人頭十五万以下であります。宮城二区には大石環境庁長官、岩手二区には前外務大臣等の実力者でいられる椎名さんが五十七万のところにおる。定数三人ですけれども、四十五万以下、そういう選挙区にいきますと、これは四十三万とか四十二万とか三十九万とかいう、一人頭平均十一万か十二万ですけれども、群、馬二区にいきますと長谷川衆議院副議長、長野二区の井出前郵政大臣、和歌山二区の早川前労働大臣、香川二区の大平先生、大分二区のそこにいらっしゃる——先ほどいなくなりましたか西村建設大臣、宮崎二区にいきますと委員長席にすわっていらっしゃる瀬戸山予算委員長、鹿児島三区、山中総務長官。これずらりと自民党の実力者といわれる方が、ほとんど平均以下の人口の少ない選挙区から出てきているわけですよ。  上のほうの人口の多いところを拾ってみますと、まことにりょうりょうたるものでございまして、人口百六十五万の神奈川三区では故人となられました河野さん、大阪三区で原田前運輸大臣、千葉一区で故人になられました川島先生といらっしゃるのですね。あとほとんどおられないのですが、どうもそういう人口の少ないところから自民党の実力者といわれておる方が出ておるために、運動方針ではえらいごりっぱりなことをきめていらっしゃいますけれども、さっぱり進まないのと違うのでしょうか。これはお答えにくいでしょうから、お答えは要りませんが、問題点として考えているわけですけれども、もしコメントがありましたら、大蔵大臣、自治大臣、塚原労働大臣、けっこうでございますが、コメントをいただいたらけっこうだと思います。
  57. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 担当でございますので、私からお答えさしていただきますが、ただいま御指摘になりましたようなことを私はお聞きしまして、実は初めて御指摘を受けたような姿でございますが、担当をいたしております私自身、いま申されましたようなものにとらわれての考え方は、自治大臣としていたしましたこともございませんし、事務当局もそのような考えはないと思います。実は定数是正の件につきましては、これは実情を申しますと、自由民主党の内部の中にも、関係をしておられるようなところから盛んに要望がございますことを申し添えさせていただきたい、かように考えております。
  58. 和田春生

    和田(春)委員 私は、自治大臣がそういうことをお考えになっているということではなくて、こういうような選挙制度のゆがみというものが——私が指摘したいのは、定数是正というだれが考えてもしごくもっともなことをなかなか進めないところの一つ理由、それは明確な理由でなくても、そういうものの情勢づくりか雰囲気づくりに作用しているのではないかというふうに感ぜられてならない。そうでなくて、もしそういう実力者の方が非常に不均衡な選挙区にたくさんおられたとするなら、こんなけしからぬものはすぐ改めろと、こういう声が出てくればそういう空気ができ上がるんではないか、こういう意味で参考までに申し上げたわけでございますが、いま自治大臣おっしゃったように、お一人できめるわけにはいきませんけれども、定数是正ということに積極的に取り組んでいただきたい、このことを希望いたしておきたいと思います。  次に、選挙制度につきましてお伺いをいたしたいことがあるわけですけれども、いまの中選挙区制度というのは、現職の議員についてはなじんだ制度であります。しかし、国民の意思と選挙の結果という面におきましては非常に問題があるように思うわけであります。  そこで、当選者を出さなくても、たとえば共産党さんがやっておられるように、全部の選挙区に候補者を立てればそれなりに得票はふえます。ある程度候補者をしぼれば、当選率は高いけれども得票数は伸びない、そういう条件がありますから、一回の選挙ごとに全部の得票数を合わして、これで国民の支持率がどうだというふうに計算するのは、そういう誤差がありますので、これは問題がある。そこで、自民党、社会党、公明党、民社党、共産党、この五党が全部そろって候補者を出した選挙区は、前回の総選挙において五十三選挙区あるわけであります。その状態について得票率と当選者というものを調べてみました。無所属から後に自民党に入党された方は全部自民党に入れてみますと、この五十三選挙区において自民党は百十六人の当選者を出しております。二百二十九人の定数に対して五〇・六五%であります。ところが無所属から後に自民党に入党された方の得票も含めまして百三十一人の候補者の総得票数は、九百六十三万五千三百六十一票で、全体の四〇・一五%であります。社会党は八十二人の候補者を立てまして、全体として四百九十七万二千六百八十四票とりまして、二〇・七二%の得票をとりましたが、当選者三十四であります。当選率は一四・八四%であります。以下一々数字は申し上げませんが、公明党が当選者四十で一七・四五%、得票率一六・五六%、民社党が一一・七九%、当選者二十七人、得票は一二・九三%、共産党は当選十二人、当選率五・二四%、得票率九・六二%、こういう形になります。これは全党が候補者を出しているわけであります。  そして、そこできわめて政党と政党の争い、もちろん複数の候補者の間には派閥的な争いもあったと思いますけれども、そういうすっきりした形でやられたという結果の得票率に応じて議席配分をやり直しますと、自民党は九十二でマイナス二十四であります。社会党は四十七でプラス十三人、公明党は三十八でマイナス二、民社党が三十でプラス三、共産党が二十二でプラス十、こういう形になってまいります。  そういたしますと、全体の得票率というのではいろいろな誤差率がありますけれども、五つの党が全部候補者を立てて戦かった、いわゆる政党選挙の形がかなり明瞭に出てきた選挙区によって調査をしてみても、これだけのアンバランスがある。そうすると、これは自民党にとってはいやなことを聞かれるかもわかりませんけれども、民意をできるだけ正確に反映をするというために小選挙区比例代表制ということがいわれておるわけでございます。小選挙区制だけにいたしますと死に票が多くなりますが、やはりこの際比例代表制というものを積極的に導入する、そういう考え方に立つほうが選挙の土台を直す上においてよろしい。その中で勝って初めて国民の信託にこたえた政権担当の党である、こういうことを私は言われると思うわけであります。こういうような意味において、その比例代表制を含む選挙区制の改革というものに積極的に取り組むという政府の御見解があるかどうかということを確かめたいと思います。
  59. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 ただいまこれらの問題は選挙制度審議会におきまして鋭意検討中でございますので、私、当局者として現在の段階において意見を申し述べることは差し控えさせていただきたい、かように考えております。  しかし、民社党から試案という形でございますが、提示されております半々の小選挙区制並びに半分の比例代表制、投票二票によるところの政党と個人とを選ぶというふうな案も出されておりますが、これらは、私個人といたしましては十分傾聴に値する案である、おそらく現在開かれております審議会におきましても十分御議論の対象となって検討していただいておる、かように考えております。
  60. 和田春生

    和田(春)委員 自治大臣たいへんまじめに御答弁をしていらっしゃるわけでございますけれども、選挙制度審議会を隠れみのに使ってはいけないと思う。やはり政府の意思がはっきり出ていて、こういう考え方でやりたいと思うがどうかという諮問をされれば、審議の方法はずいぶん違ってくると思うのですが、選挙制審議会でおやりなさいと言っておって、答申が返ってくると一つも実行しない。そのために、あの選挙制度審議会の委員の中にも、私がずいぶん古くからおつき合いをしている方々が何人かいらっしゃいます。もう全くやったってむだじゃないかという感じになるということを、はっきり言っておられる人がおるわけです。そういう空気をつくっちゃいけないと思うのです。結局それは選挙制度審議会を隠れみのに使って、答申をするけれども実行しないということの繰り返しじゃないでしょうか。そうじゃなくて、政府が意思を固める、そうしてそれを批判を仰ぐ、それに対して選挙制度審議会の答申が出てきたならば、それに基づいて修正すべき点は修正をして国会に提出するというふうに、基本的な態度を改めていただきたい、こういうふうに思うわけですが、いかがですか。一青だけお答えください。
  61. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 選挙の諮問のあり方につきまして、いま申されましたような御意見の方法による諮問のあり方、これが実行に移すためにいい案ではなかろうかということで、私もさように考えます。しかし、現在はそのような姿でなくして、金のかからない政党本位の選挙を根本的に御審議賜わりたいということで御審議を仰いでおります。いま申されましたような選挙制度審議会の委員の方々の政府に対する御批判、私も懇談さしていただきまして十分承知いたしました。しかしながら、私はそういった御批判を反省いたしまして、ぜひともこの間の連絡を密にいたしまして、答申をいただいたなればこれをできる限り尊重して、しかも実現に移せるように持っていくように事務的に取り計らいさせていただきたいと鋭意努力中でございますので、ひとつこの点は御了承賜わりたいと存じております。
  62. 和田春生

    和田(春)委員 やはり選挙制度がゆがんでおりますと政治もゆがみますので、その点について自治大臣の積極的な努力をお願いをいたしまして、なおこの問題、ほかにお伺いしたいことがありますけれども、時間がそろそろ来たようでございますから、この問題を打ち切りまして、塚原労働大臣せっかく先ほどからおすわりいただいておりますので、一問だけ質問いたしまして、あとの問題につきましては、総務長官にもお約束いたして、分科会で機会がありましたならば私自身、また他の同僚委員から質問をいたしたいと思います。  いま週休二日制ということが非常に問題になっておりまして、ヨーロッパにおきましては、GNP水準においては日本より低いといわれているイタリア、あるいはスペインのようなところにおきましても週休二日制というものがこのごろ盛んに普及をいたしまして、徹底をしつつあるわけでございます。これを実行するのに労働基準法を改正するということはたいへん問題であろうと思いますけれども、この点につきまして、よくいわれているのでございますけれども、政府、銀行の週休二日制であります。私は、日本の社会の構造と経過というものを考えますと、日曜を休むというものも、まず昔のことばでいえばお役人から始まりました。銀行がまっ先に全部整えました。一般の商売や製造工場というのはずっとあとになってきたわけです。土曜半ドンというのもお役人から出発をいたしております。したがって、もし国際環境並びに国民福祉の面から、余暇の増大から見て週休二日制を実現するという熱意があるならば、親方日の丸の役人から先にやるのはぐあいが悪いなどというような変なところに思惑を考えずに、まず公務員、地方公務員が週休二日制を実施する、そうして住民サービスを低下させないための、生産向上については職員と協力のもとに方法を講じていくということに積極的な姿勢をとる、さらに取引のもとになっている銀行の週休二日制というものをまず断行する、そういう面について積極的な行政指導をやるべきではないか。全部の、いわゆる国並びに地方自治体の公務員が週休二日になり、銀行が週休二日になれば、期せずして一般の製造業にもいくでありましょうし、中小企業においてもそれに合わせるような制度をつくっていかなければなりません。そういうような意味で、それについて政府がどんどん助成をしていくということをやるべきだ。(「予算委員会からまつ先にやろうじゃないか」と呼ぶ者あり)だいぶこちらにもございますけれども、そうなれば予算委員会も週休二日になりまして選挙区に帰りやすくなるのですが、これは余談といたしまして、塚原労働大臣のひとつ積極的な御答弁を最後にお伺いをいたして、質問を終わることにいたしたいと思います。
  63. 塚原俊郎

    ○塚原国務大臣 週休二日制は、だいぶ大きな政治問題となっておることは事実であります。また今日まで、主として大企業でありまするが、完全週休二日制をとっておるところの結果を見ますると、労働力の確保、温存あるいは能率の最高度の発揮、就職の状況、それから出勤率の向上、非常にいい面も多いが、まあ一部問題もあるようでありまするが、総じて非常によい結果が出ておるということは、これは間違いございません。また一方において、体質の面でとかく問題のある中小企業においては時期尚早論を唱える方もおりまするが、私としては、これはきのうも小林さんにお答えいたしましたように、まことに好ましい姿であって、ぜひそうあらねばならない。言うなれば労働者の福祉の向上に一番役に立つ問題でありまするし、また労働力を最高度に発揮させる意味においてもこれはやるべきであると考えております。  そこで、この一月でありまするが、私の就任前でありまするが、いまおっしゃった金融界においてどういう処置をとるか、まあすべての産業が金融との関係が非常にあるものですから、銀行協会を通じまして御調査を願っておったわけです。労働省から大蔵省にお願いし、そして銀行協会でいろいろお調べを願った。それが数日前銀行協会の中の人事専門委員会ですかから、まあ答申ではございませんが、報告があった。まだ私は正式には受け取っておりませんが、これを見ますると、かなり前向きの結論も報告されております。その場合、銀行法の改正という法的措置も要ると思いますが、それが金融先行型と申しまするか、いまの御質問にも金融先行型と官庁先行型というようなことがありましたけれども、金融面においてそういう答申のもとになお今後いろいろと御研究が願えると私は考えております。  また一方において、いま御指摘の官庁、親方日の丸、何でも官庁が先にやらなければだめだというお話も私はよくわかります。現在お仕事をなすっておる方の状況を見ましても、皆さん一生懸命やっておられまするが、やりようによっては働き過ぎるといわれている、しかし、それをあるところに集約すれば二日制をとっても差しつかえないのじゃないかという面も、私個人としては考えております。われわれがほんとうに仕事をしておるのにその内容もわからないで何だと言う人があるかもしれませんが、私の考えではそういうことも可能であると思っております。  しかしこれは、この際日本がそういうものでなければできないという問題では私はなかろうと思う。たとえば金融面と非常に関係のあるあらゆる産業、特に中小企業においては先ほど申したように批判的なことばもありまするが、われわれはその機運の醸成と資料の提供等によってそういった方向に持っていく努力はいたします。しかし、これを法律でもって規制して週休二日制を実施するということは、私はその内容から見てとるべき問題ではない、あくまでもコンセンサスを得る、そして当事者間の話し合いにおいてやるということが望ましい姿である。しかし、官庁が先に立って——これはまあひとり労働省だけの問題ではございませんので、人事局を持っておりまする総理府、それから自治省、そういうものとも連絡をしなければなりません。きのう小林さんにも検討すると申しましたけれども、好ましい姿であると私は考えておりまするから、関係省とよく連絡をとって、その方向に向かってこれが実現するよう努力いたす考えでございます。
  64. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これにて和田君の質疑は終了いたしました。  次に、阿部哉君
  65. 阿部助哉

    阿部(助)委員 きょうは、できれば総理にもお伺いしたいと思っておったのでありますが、総理がおいでにならぬので、主として大蔵大臣にお伺いをいたしたいと思うのであります。  まず第一に、国際通貨をめぐるさまざまな行動が行なわれておりました中で、国民一般にはなかなかわからない納得のできないことの一つは、わが国がなぜ金保有をこんなに怠ってきたのかということであります。外貨保有がいまや百六十億ドルをこした今日、まだ金の保有がわずかに六億七千万ドル、まことに少ないのであります。このことはまさに異常だ、国際的に見ても異常だ、こう言うほかはないのでありますが、政府は金保有をふやす努力をなぜ怠ってきたのかという点をまずお伺いしたいと思うのであります。
  66. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これはもうしばしば申し上げたことでございますが、日本が外貨の余裕に恵まれたことはこの四、五年の間でございまして、それまでは経済成長がすみやかであったために外貨準備の保有というものはきわめて少なくて、準備の保有の少なさに非常に困っておった時代でございまして、その時代に金を保有する余裕というものは実際問題としてございませんでした。   〔委員長退席、大坪委員長代理着席〕 むしろ金以外のものに運用するほうが、経済成長のためにも非常に有利であったというような事情があって、御承知のように、金は持っておっても利子はつきませんし、また日本経済が伸びるために外国から金を借りようとしても、これが担保の用をなすというためには、国の保有外貨が外国の銀行に預金されておるというようなことがまた非常に役に立っておるというようないろいろな事情があって、金を保有する意味というものも、またその余裕というものも実際において少なかったということは、御承知のとおりでございます。そうして、ようやく最近になって準備資産がふえて余裕が出てきておる、金を保有してもいいというときには、もう国際情勢の変化で、各国ともドルと金の交換をみんなお互いに自制するという相談ができておったときで、これは国際通貨の安定ということのために各国がドルと金を交換しないという一つの国際的な相談をいままでしておりましたが、そういう相談の段階に入ったときでございますので、各国ともお互いに交換しないという形で金を持ちませんでした。余裕のあるときには一そういう時期にもう入っておったのでございますからして、したがって、日本は今日まで金の保有をしなかったということでございますが、もう一つは、また、今後の国際通貨のあり方を見ましても、どうしてもそれだけ無理しても金を持つ必要があるかどうかというような問題もやはりからんでおる問題でございまして、私どもは、あくまでも金を無理しても保有しなければならぬという理由はそうないというような認識もあったために、そういうものがいろいろ重なって、今日まで日本は金の保有が率においてはきわめて少ないということになっていますが、これは一口に言えば、実際において持つ余裕がなかったというのが一番大きい原因だろうと私は考えます。
  67. 阿部助哉

    阿部(助)委員 大臣は、いままで行なわれました国会の審議記録というのを読んだことがあるのですか。四、五年前までは余裕がなかった、こうおっしゃっておる。私は国会へ出てからまだ五年ばかりであります。その間に何べん金の問題を持ち出しましたか。私だけではないのであります。いまのようにしていったら、日本の金保有は少な過ぎるじゃないかという論議、質疑はたびたび行なわれておるのであります。ただ、大臣がここで、金はこれからも必要ないのだ、いま落ちていく、紙くずのようになりつつあるドルでいいのだ、こういうお考えならば、それはそれなりに筋が通るのであります。以前は余裕がなかった。わずか四、五年来余裕が出てきたのだ。だけれども、何だかんだおっしゃるのはさっぱり筋が通っていない。いまでも金は要らないのだ、皆さんSDRのときのいろいろな発言を聞いておっても、そういう考えでおられるのかどうかという点、国民はわからないのであります。そこを簡単でいいからはっきりとお答え願いたいのであります。
  68. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 おそらくこれから国際通貨の問題が各国によって協議されると思いますが、私は、方向としては特定国の通貨を国際通貨にするという方向、それから自然の産物である金を国際基軸通貨にするというような方向は、今後是正されるだろうというふうに考えています。そういう形で各国が合意するべく新しい国際通貨というものがこれからつくられるという方向でございますので、したがって、そういう方向から見ましても、ここで金を無理しても持たなければならぬという必要は、私は今後はそんなにないというふうに思っています。
  69. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そうすると、大臣は一貫して、金はそれほど必要はないのだ、こうおっしゃる。しかし、いまのようにドルを持っておっても、ドルはどんどん減価をしていっておるじゃないですか。そうすれば、結局それは国民に損を与えるということになってくる。その問題はあとでまたお伺いしますけれども、いままでの政府はいろいろな反省というものがほとんどない。そうして何かかにか理屈をつけておるけれども、私たち国民にはさっぱりわからない。そういう点で、ニクソン声明が出まして、これに直面して通貨当局が実施をいたしました為替政策は、だれが見ても大企業、為替銀行が日本銀行の損失で利益をはかった、こう言って間違いがないと思うのであります。輸出前受け金の制度をつくってみたりしながら投機的な利益をあげたわけであります。  まず第一に、日本銀行の損失はどのようにして埋め合わせをされるつもりなんですか。
  70. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 大体の方針はきまっておりますから、事務当局から、林次長からお話しいたします。
  71. 林大造

    ○林(大)政府委員 ただいま日本銀行に生じました為替差損をどういうふうに処理するかという件でございますが、これは本来日本銀行及びその所管の銀行局長からお答えすべきことかと存じますが、為替差損は公共部門では外国為替資金特別会計と日本銀行と両方に生じましたので、便宜私からお答えさせていただきます。  それで、日本銀行に生じました為替差損は、日本銀行におきます今日までの各種の積み立て金、準備金のたぐいがございまして、いずれ三月期の決算が締め切られるわけでございますけれども、そのときに準備金、積み立て金のたぐいを取りくずしまして処理するということになっているというふうに聞いております。
  72. 阿部助哉

    阿部(助)委員 積み立て金、準備金を取りくずすというのでありますが、それはまあ一応内部処理の問題でありますが、日本銀行というのは、これは国民の銀行でありますわね。そうすると、ごくわずかな大企業、為替銀行、そういう連中がもうけて、そうして国民のほうにこれを損をさせた、こういうことになると思うのですが、違いますか。
  73. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 もうけたというお話でございましたが、今回の問題は、御承知のように、もしああいう形でなかったら損をしたであろうものが、損をある程度免れたということにはなるのでありましょうが、これによってもうけたという批判はないというふうに私は思っております。
  74. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そんな話はないですよね。商人は、商売は商売で見込みを立ててやっておられるのですよ。損をすべきところを損をしなかったんだなんて言ったって、本来ならば国民全部がそれなりの平等の、ある程度お互いに損をするとかもうかるというならわかるけれども、その人たちは明らかにもうかっておるのですよ。それをもうけじゃないんだ。そうしたら日銀は何で損をしておるのです。国民は何で損をするのです。国民にはわからないでしょうよ、そんな答弁されたって。もう一ぺんはっきりと言ってください。
  75. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 為替銀行が、たとえば債権債務で債務が非常に多くて、そうしてこれを売ってもうけたというようなことがあるとすれば、これはもうけたことになりましょうが、そうではなくて、債権を、資産のほうが多かった以上は、これは持っておったら損になったろうが、ああいう形で途中で売ったということで、すべき損を一部免れているという結果になっておりますが、全体として為替銀行がドルを売ったことによってもうけているという事実は、今回の場合はないものだろうと私は思っております。  そうすれば、じゃ、なぜ日本銀行が損をしたかというのですが、これは現在の為替市場において為替相場の特に急激な変動を防いで、そうして経済の安定をはかるという意味から介入というようなものは当然必要でございますし、それをすればこれはドルを買わざるを得ないということで、制度上買うことが一つの義務になっておるものでございますから、それによって、先に行って価値が下がるものも買わざるを得ないということから、そういう意味の現実の損は発生しているということでございます。
  76. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いまここに出席しておられる方も大臣の答弁はさっぱりわからないだろうと思うのです。  それならばもう一つ伺いしますけれども、これは昨年の九月十四日付の新聞でありますけれども、これを読みますと、大蔵省は為替銀行に対して一種の逆粉飾決算を指導した、こう伝えておるのであります。すなわち、為替銀行はドル売りによって大幅な利益をあげたが、この不況下で銀行だけがあまりにももうけたような決算をしたのでは国民の反感があるだろう、それをおそれて内面指導をした、こう報道しておるのであります。私もそのとおりだろうと思うのであります。大商社、大企業の長期債権については差損の計上を認めて、これは実質上の減税をしておるじゃないですか。これによってたとえば三井物産は一ドル三百三十四円四十銭で計算をして外貨建て債権債務の処理をいたしております。そうして大量のドル売りによる利益を隠して、五十一億円の差損を計上をしておるのであります。これははっきり書いてある。そうして今度は債務の多い新日鉄は、一ドル三百六十円のレートでこれを計算をしておるのであります。変動相場制に名をかりてかってな会計処理の基準をつくって、債権の多い企業の差損は出ないようにし、債務の多い企業の差益も出ないようにして課税を免れておる、こういう事実、これは大臣は十分御承知のとおりだと思うのですが、いかがですか。
  77. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それは企業会計の処理についての審議会の答申に基づいた措置ではないかと思いますが、詳しいことは次長から説明します。
  78. 林大造

    ○林(大)政府委員 ただいまの御指摘の点でございますが、私どもにわかっております為替銀行のポジションを申し上げますと、為替銀行が外貨を持っておりますと債権と債務と両方持っているわけでございますが、その債権と債務のうち債権のほうが多いとネットで外貨のリスクを負担していることになるわけでございますが、それが八月末の現況でどうなっていたかということを、これは昨年の十二月三日に提出いたしました資料でございますが、それによりますと八月の末、これは円のレートがいわゆるフロートをした直後でございますが、そのときの銀行の総合のポジションは四億六千九百万ドルだけいわゆる買い持ち、すなわち為替リスクをこうむる姿になっております。で、この四億六千九百万ドルにつきまして為替差損が生じたわけでございまして、したがいまして銀行はそれだけの損をこうむっていたというわけでございます。  それから商社の系統につきましては、これは通産省で出ております資料では、御指摘のとおり、三井物産は五十一億九百万円の為替差損を計上いたしております。
  79. 阿部助哉

    阿部(助)委員 まあいろいろおっしゃるけれども、少なくとも八月十六日の時点から二十七日の時点まで、皆さんはしぶしぶいやいやながらもどこの商社、どこの為替銀行がどれだけドルを売り込んだかという点を国会に報告をされたわけであります。皆さんは為替差益については、税金を取ることはいろいろむずかしいからこれはできないのだ、こうおっしゃるけれども、少なくとも八月十六日の時点から二十七日までにドルを売り込んだ、これくらいについてははっきりと差益が出ておるのでありますから、これこそ特別措置をつくってでも課税するのが当然だ、こう思うのでありますが、大臣いかがですか。
  80. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 差益にだけ特別課税するというのはむずかしいということを私は申しておりますが、そうでなくて、差益が出ているという企業は結局全体としてこれは利益に計上されてきますから、そういう意味においてはこれは課税の対象になって、税金は終局的に納めるということになっておるだろうと思います。
  81. 阿部助哉

    阿部(助)委員 だからそれはいろいろな法人税で課税するとあなたはおっしゃるのでしょうけれども、私は、それならば実際言うと大蔵大臣、また日銀総裁、これだけ大きな損害を国民に与えて、責任問題一つ出てこないなんという話はなかろうと思うのであります。それすらも反省なく、これがあたりまえだと言われたら、いま低所得に悩む人たち、また所得減税もやらないなんという今日、しかも物価高の中でこれもやらないで、重税をかげながら、そうしてこっちのほうは、やれむずかしいとかやれどうだとかおっしゃる。私はほんとう言うと、まず大胆の責任、日銀総裁の責任というものをもっと追及しなければいかぬと思うのであります。それならば、私は時間がありませんから先へ急ぎますけれども、大企業のめんどうを一体どこまで見たら気が済むのですか。  私は次にお伺いしたいのは、今度それでも皆さんは海外取引があった場合の輸出割り増し償却を廃止をされましたね。これはどうして廃止をされたのか、その理由をお聞かせ願いたいのであります。
  82. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは政策税制でございましたが、御承知のように、国際均衡を確保しなければならないという政策から見ますというと、この際輸出奨励のための政策税制というようなものは、これは当然見直されてしかるべきものでございますので、そういう意味で今度こういう種類の特別措置法の整備をしたということでございます。
  83. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私もその点は同感なんです。それならば輸出割り増し償却をやめられたが、海外市場開拓準備金というのもまた同じように輸出振興のための、輸出奨励のための特別措置でございますが、なぜこの特別措置ははずさなかったのですか。私は通産省のほうから資料をいただいたりいろいろ調べたけれども、この性格は全く同じだといっても間違いないのじゃないか。特に政策上は輸出振興策としてこれをおやりになってきたわけであります。当然これははずすべきがほんとうだったじゃないか、こう思うのですが、いかがですか。
  84. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 同じようなものでございますが、ただ円の切り上げということによって輸出の減退がどの程度になるか、輸出についてどれだけの効果を今度の通貨調整は及ぼすかということも、まだなかなか見通しのつかない問題でございますので、したがって輸出を伸ばすためにとられた一連の措置は全廃するか、まだ様子を見て、事態の推移を見てから二段、三段に行なってもいいかというようなことで、これは検討をこの次に延ばしているという、大体、ことでございます。
  85. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これは皆さんが円対策八項目——もちろんこの円対策八項目は、できることならばあまり大幅の切り上げをしたくない、こういうことから出たことだろうとは思いますけれども、この円対策八項目の中にも、輸出振興税制については全廃または停止の方向で大蔵、通産両省が折衝して検討する、こうなっておるのですね。しかもこのことは、経団連でありますかのほうでももう大体輸出振興税制はあきらめまして、あの部会でも、もうこの税制はなくなるというふうに——推進会議決定をしておるのですね。それをあえて今回引き続いて存続をさせた。いまおっしゃるように、切り上げたらどうなるだろうという心配を一応されたのだそうでありますが、今日の事態はどうです。また再切り上げが云々されなければならないような状態の中で、なぜこの国会でこれを残されたのか、私は理解に苦しむのであります。当然この国会で修正してもいいからこの廃止をいま直ちにすべきだ、こう思うのですが、いかがですか。
  86. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま申しましたように、この問題の検討、まだ道連れが一つ、二つございますが、輸出振興税制もこれだけではございませんが、二段にしようといって、この次の検討分として残したということでございますので、この次の税制改正のときまでには、この実際の動きを見てこの問題の処理をしたい、こう思っております。
  87. 阿部助哉

    阿部(助)委員 まあ大臣そうおっしゃるけれども、この海外市場開拓準備金は異常なほど急速に伸びてきたんですよ。昭和三十九年に五十七億円、それが四十五年度には一千七百七十五億円、まさに高度成長であります。しかもこれを利用しております法人数は、四十五年には二十六万六千四百九十八社であります。しかし、ほんのわずかの大企業、たとえば百億以上の企業は七十六社で、会社の数からいくとほんとうにコンマ以下の少数の七十六社が、この千七百七十五億円の五  一・四%、半分以上は資本金百億以上の大企業がこれを活用をしておる、利用しておるのであります。一例をあげれば、日産自動車は六十九億五千二百万円積み立てておった。それを今度は、この不況期にかかわらず、また前期は五億円の積み増しをしておるのであります。国際競争力があり余っておる。こういう大企業にさらに特別措置で皆さんは援助をされておる。国際的に見ればまさに財政ダンピングだ、こういう非難を受けてもこれはしかたがないじゃないですか。そうして国内では、財源不足だ、やれ大量の公債発行だ、所得減税もしない。そして大企業には恩恵を与えているということは、租税政策の上からも、公平の原則からも、これはどこから見ても恥ずべき政策だと思うのであります。大臣、勇気を出して、これはここで直ちに廃止を提案するというぐらいの勇気を出すべきだと思うのですが、もう一度決意をお伺いしたいのであります。
  88. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 さっき申しましたように、やはり輸出振興税制のうちで最も比重の高いものを今回は二つ中心に整備をして、あとは次の検討に残す、こういう措置をとったということでございまして、これはさっき申しましたように円の切り上げ後の問題ももう少し見届ける必要がございますし、効果というものは一、二年たたなければ実際には出てこない問題でございまして、これが相当影響を及ぼすようなときになって再びまた輸出についての何らかの措置をとらなければならないというような事態はおそらく来ないとは思いますが、そういうことも考えられますので、私どもは一応二段にしているということで、ほかには他意はございません。
  89. 阿部助哉

    阿部(助)委員 しかしこれは三十九年に五十七億、四十五年に千七百七十五億、計四千八百六十九億です。これは大臣、少なくとも利息分だけはこれは税金をまけてやったということになりますね。そうするとこれは一種の利子補給したようなことになると思うのですが、どうですか。
  90. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 そうなろうと思いますが、今後の貿易事情や通貨の情勢の変化を見てから検討したいと思います。
  91. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は、やめることは来年はぜひやめていただきたいのでありますが、性格を聞いておるのであります。利子補給だということになると、これは一種の補助費ですよ。しかもこれは補助費となれば、もっと予算にぴっしゃりと記載をして国会に提出しなければならない。しかしこういう特別措置でおやりになる場合には、これは隠れて見えないわけであります。私はある意味でいうと、たちの悪い国会軽視の補助費だといっても間違いないと思うのです。そして、大臣認められるように、これが利子補給であり、補助費だということになれば、これはガット違反になりはせぬですか。ガット違反じゃないですか。これだけ日本の輸出が伸びておる、ドルがたまり過ぎておる、そしていろいろな国際的な批判もある、そういう中でガット違反までおかすような特別措置をなぜ残さなければならぬのですか。大臣は、輸出関係が円の大幅な切り上げで弱るだろうという心配をされたということでありますけれども、今日現在の段階、もうまた円の再切り上げをせねばいかぬなんという話がぼつぼつ出始めているような段階にこれを残したなんということは、私はまさにガット違反をおかしてまでこの輸出振興税を残すその意図がわからぬのであります。これぐらい大企業のめんどうを見ねばいかぬのか、私たち理解できないのであります。大臣、ガット違反じゃないですか、これは。
  92. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 あまり好もしい措置ではないというふうに思っております。
  93. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それでは端的にお伺いしますが、少なくともことし——皆さん出されるとなかなか変えないんだけれども、来年はこれを廃止するというぐらいのことははっきりと御答弁願いたいと思うのです。
  94. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 廃止するということをはっきりは申しませんが、今年度これも私どもの検討の議題になった問題でございますから、引き続き検討することにいたします。
  95. 阿部助哉

    阿部(助)委員 ぜひ廃止をしてもらいたい。ことにいま総理大臣もジャパンラウンドなんということをおっしゃっておるけれども、こんなものを残しておいてジャパンラウンドなんということは国際的に大きな顔をして言えない、これはみっともない税制でございます。それだけに検討ももう廃止するという決意をもって検討されるということだろうと思いまして、次に移りたいと思うのであります。  これは私ほんとうは総理にひとつ聞きたいと思ったのですが、交際費についていろいろと国会のたびごとに、また新聞も問題にされるわけであります。ことに、身寄りのないお年寄りの社会保障の問題であるとか、また出かせぎ農民に対する課税の調査などまでされておる今日、平均をすれば今晩もまた三十億円という大きな金が交際費に使われるのであります。四十五年度で一兆円をこす交際費、一日当たり三十億をこす交際費がまたきょうも使われるのであります。そういう交際費。(「一日三十億か」と呼ぶ者あり)そうです。それを国会で論議をされるのでありますけれども、これほどの問題、いままでいろいろ手直しをしたとか言うけれども、私はこの性格を一体どうお考えになるのかという——いままで多少手直しをしたなんということで済まされる問題ではなかろうと思うのでありますが、まず大蔵大臣の御見解を聞きたいのであります。
  96. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この問題は四十六年度、本年度税制改正のときに問題になりまして、私どもはこの否認割合を六〇%から七〇%に引き上げるという措置をとったばかりでございますが、現行法の適用期限が来年の三月には参りますので、今年度実施状況を見て、期限の来るときまでに次の対策考えたいということで、いまいろいろ検討しておるところでございます。この八十何万という法人の数で一兆円ということで、これは一社当たりの平均を見ますと、交際費が百二十六万円ということでございますが、問題はやはり大企業の交際費の問題になるだろうと思います。この否認割合をふやすことによって、いま損金に算入していない部面もまだ相当ございますが、しかしこれが全部いわゆる本来の交際費の機能を果たしていないものであるという断定はできませんので、この点は今度の実施状況を見た上で、実際の支出状況を見た上で判断して、そうして今後控除率をもっと減らす必要があるとかあるいはこの否認割合をもっと増す必要があるとかということは、ことしやったばかりでございますので、少しこの実績を見てからやってもいいのじゃないかと私は考えています。毎年これをさわるということもどうかと思いますので、まあ来年期限が来るのですからそれまでに考えればいいのじゃないかと思います。
  97. 阿部助哉

    阿部(助)委員 大臣、大体交際費に対する認識が違っておるのじゃないですか。狂っておるのじゃないですか。ちょろっとやったからまた様子を見てなんというが、大蔵省当局は、事務当局は、もう十分検討しておるのじゃないですか。もう交際費の問題、全額課税しろという要求が出てから久しいのですよ。それを何か去年ちょろっと直したからまあ様子を見てからなんという、皆さんしぶしぶこれをやっておられるけれども、交際費の性格というものをひとつごらんになれば、こんなことはすぐわかることなんですよ。大臣、大蔵省は外国の例を引用されるのがたいへんお好きなようでありまして、この前の本会議のときも、アメリカの課税対象がどうだこうだというけれども、私は質の違うピントのはずれた御答弁をなすったように思うのであります。まあ外国の例、皆さんの税調に出されておるこの資料を見ましても、これを抜粋をいたしますと、外国では交際費については非常にきびしくこれを規制いたしております。イギリスでは海外のお−客さん以外はこれは損金算入を認めていない、こうこれは書いております。西ドイツでは高級料亭での接待は認めていないのであります。アメリカでは一人当たり九千円以上の贈りものは認めていないとこういっておる。フランスではたいへん詳細な明細書をつけなければならない、こういうふうに、それぞれ外国はきびしい規制をしておるのであります。ところが日本ではどうですか。日本では、これは国税庁長官の通達でありますが、ちょっと読んでみます。「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先、従業員その他事業に関係のある者等に対する接待、きょう応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」こういうのです。これだと、何でもとにかく交際費のワクに入ってしまうのです。こんなルーズな交際費の規定をつくっておる国はほかにはないのじゃないですか。  私はまず大臣に、交際費に外国がなぜこのようにきびしい規制をしておるのかという点、なぜなのか、大臣はどう考えるのか、お伺いしたいと思うのであります。
  98. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 交際費の各国の制度は、ただいまおっしゃいましたように、日本の場合よりもきつい制度になっている国が多いようでございます。問題は、その実際の税の問題の前に社会的な慣行といいますか、そこらがいろいろ日本とはだいぶ事情が違うようでございまして、御存じのように、日本での交際費の課税というのは戦後のことに属するわけでございます。そうして漸次課税の水準が制度上上がってきたわけでございます。そこで、現在のわが国におきます慣行の状況とにらみ合わせながら制度がだんだん整備されてきたという経過であると思っております。
  99. 阿部助哉

    阿部(助)委員 外国の慣行とどう違うのですか、外国の慣行とどう違うのか、もう少し詳しく言ってもらいたいのです。   〔発言する者あり〕
  100. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 静粛に願います。
  101. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 法人が日本の場合のようにいわゆる交際費、機密費というものを支出する慣行というものが一般的であるかどうかという点において、日本の場合と外国の場合が違うのではないかということを申し上げたわけでございます。
  102. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これはさっぱりわからないのであります。これは、違うのは皆さんいまの答弁ではわからない。違うのは、日本の官僚制度がぎっちりしておって、官僚の経済に与える影響が強くて、そうして交際費がよけい要る、こういうことなんですか。慣行のどこがどう違うのです。   〔大坪委員長代理退席、佐々木(義)委員長代理着席〕
  103. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 いま申し上げました趣旨は、一般的に取引慣行その他企業間の取引におきまして、いろいろそういう交際そのものの実態というものが違うのではないかということを申し上げたわけでございます。
  104. 阿部助哉

    阿部(助)委員 大きな企業であればあるほど飲んだり食べたりで商談が左右されるものでは私はなかろうと思うのであります。ところが大きく供応を受けて契約に同意をするというようなことになれば、これは背任じゃないですか。もしこれが対象が官僚ならば贈収賄が成立する、こういうことになるのじゃないですか。そこを考えて私は外国では贈答品の金額を制限する、高級料亭での接待は課税する、チェックするということになっておると思うのであります。ことに日本のように、先ほど申し上げましたように、ほんとうに大企業が大半この大きな交際費を使っておる。そして先ほど申し上げたように日本の経済に及ぼす役所の影響がたいへん大きい国、こういう国であればあるほど交際費というものはきびしく規制するのが当然のことだと思うのでありますけれども、日本が一番交際費がルーズだ。しかも新聞で見れば、皆さんの大蔵省もこのルーズさには、ある意味で第二の給与であるというような見解すらも出てきておるような今日、交際費に、先ほどの大臣のような御答弁をなすっておるのでは、これは百年河清を待つということになろうと思うのであります。そういう点、私は大臣のもっとしっかりした御答弁をお願いしたいのであります。
  105. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 もう否認割合を七〇%ということになりますと、ほとんど交際費には課税するということで、これによって否認される金額も三千億近いというようなことでございますので、もう一歩厳格にこれをするかどうかということは、さっき申しましたように、ことしとにかくこの改正をしたばかりでございますので、その結果を見てからやっていいんじゃないかというので、今年度はこの問題に手をつけませんでしたが、もう来年度期限がくることでございますので、それまでに合理的な検討をしたいといま考えております。けっこうもう七〇%の否認割合ということは、このワクを越えたものについてはほとんど全部課税するという、実際そこまでいっているのですから、この次に考える方法とすれば、今度はただ否認割合をどうするというような問題ではなくて、もっとほかに触れた対策を立てなければならぬかもしれませんし、これは十分検討したいと思っております。
  106. 阿部助哉

    阿部(助)委員 まあきょうは大臣中小企業をたてにはとりませんでしたが、いままでこういう問題が出ますと総理はいつも中小企業がどうだこうだ、こう恩恵があるようにおっしゃるのです。またいま大臣はもう七〇%までやったのだからあとはいいじゃないかというお話のようでありますけれども、もう一ぺんこの交際費の中身を検討してごらんになれば、これはたいへん大きな問題があろうと思うのであります。全法人、その九〇%を占める中小法人、まあ零細法人と言ったほうがいいかもわかりません。この七十万社の使っておる交際費が三千四百億であります。一社当たり、資本金百万円以下の企業は月わずかに二万五千円平均であります。百万円から五百万円まで、これが月五万円であります。私は、商習慣あるいはいろいろな古い、昔からの長い歴史の中での慣習というものからいけば、この程度のものはある意味ではいい意味の交際、ほんとうに交際費だと言ってもこれは間違いがないのじゃないか、こういう感じがするわけであります。ところが皆さんは交際費課税を強化するというと、すぐ中小企業一社当たり四百万円を二百万円にするとか、あるいは百万円にするとかいう形で中小企業のほうを締めつけることに大体重点が入ってくるようでありますけれども、これを今度は資本金百億以上、この法人ほんのわずかの百五十九社であります。全部で八十万からある法人のうち百五十九なんというものはコンマ以下であります。ほんのわずかのこの企業で使っておる金が八百九十八億円であります。一社当たり五億六千万円、月平均四千六百万円の交際費が使われておるのであります。一社当たり月四千六百万円であります。この四千六百万一という量は、中小企業の月二万五千円の交際費と月四千六百万円という交際費との間には、私はもう質の相違があると思うのであります。ほんとうに親しい人たちとのお互いの交際のために使う交際費というものと四千六百万というこの金はまさに買収費だと言っても、これはその多くが買収費だ、こう言われてもしかたがないような金じゃないですか。こんなことを商習慣の違いだとか、日本の商習慣だと言うならば、日本の悪い商習慣を直すためにも、大企業の交際費は勇断をふるってこれは課税対象にすべきであると思うのでありますが、私はもう一度これは大臣からお答え願いたいのであります。   〔佐々木(義)委員長代理退席、委員長着席〕
  107. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 支出の実情は、もう十分この一年間で見たいと思っております。(「何と言ったか」と呼ぶ者あり)  支出の、本年度初頭の、ことしの初めにつくった税制の実施ぐあい、この交際費の支出の実情というものを十分ことし一年の間に把握して、次の対策に資したいと思っております。
  108. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 早くやってください。阿部君、次をやってください。——いま督促しておりますから、阿部君続けてください。——阿部君、やってください。
  109. 阿部助哉

    阿部(助)委員 何とか五分以内で定数をそろえていただくということにして……。  大臣、いまの検討してとか、何かおっしゃいますけれども、これは皆さんのほうからいただいた、大蔵省からいただいた交際費の資料なんですよ。私はこの数字をただ少し分析しただけなんでして、大臣、それは少し不勉強じゃないですか。これはいま傾向を検討してとか——もう交際費問題は国会のたびごとにこれは論議をされてきたの  です。一昨日の本会議でもあった、もう大蔵委員会で交際費の論議のなかった委員会は、これはないのです、国会はないのです。それくらい論議をされておる。そうしてこれが非生産的な、あるいは汚職の根源であるこの交際費にいまのような御答弁をなさることは、私は基本的な姿勢に問題があるのじゃないか、こう思うのです。私は、不勉強であるか、不勉強とは思わないのであります。基本的な姿勢に、これにほんとうにメスを入れて、日本の企業の体質も、そうしてまた政界、官界も自粛して、ここでりっぱな姿勢をとっていこうという姿勢が欠けておるのではないかという点に私は問題があると思うのでありまして、大臣のいまの御答弁、まだ検討を要する段階だとは私は思わないのですが、もう一ぺん御答弁願いたい。
  110. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 おっしゃられるとおり、もう交際費の問題は毎年の議論になる問題でございますので、したがって、今年度税制改正でまずこの交際費に対する改正案において、一つはいま言った否認対象を一〇%上げるということと、もう一つは交際費をできるだけ自粛する方向で、それを奨励する意味において基準交際費額の一〇五%をこえて増加している部分については一〇〇%、その他の部分については七〇%を損金に算入しないというふうに、使わなかった者に対しては恩恵があるし、多く使った者に対しては、使った分の一〇〇%をこえた部分の、一〇〇%増加した部分の一〇〇%課税というようなこともやって、できるだけこの交際費についての民間の態度の自粛を迫るという措置もことしの初めに講じたばかりでございますので、その結果がどういうふうに支出の上であらわれてくるか、これを私どもは見たいと思っております。で、非常に、私はある程度の自粛変化というものが出てくるのじゃないかと思っておりますので、それを見た結果、次の改正案をつくりたい、こういうことを言っているわけでございまして、ことしやったばかりでございますから、来年度の改正案にはこれを出さなかったということを言っているわけであります。四十七年度のいま出している改正案の中にはこの交際費の問題を含んでいない。来年はもう現行税法の適用期限がきますから、来年度は当然改正案を出すということになろうと思います。
  111. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 ただいまの大臣の御答弁のうちで、一カ所だけ直さしていただきますが、増加交際費については一〇〇%否認、それから交際費が減少しました部分については、それを奨励する趣旨で否附しないという制度は、ただいまの大臣の答弁では、四十六年度の改正と申されましたが、これは四十二年度の改正でございます。四十六年度の改正点は否認割合を六〇から七〇に上げたという点でございます。
  112. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私が先ほどから申し上げておりますのは、大臣、私はむしろ基本的な姿勢をお伺いしたかったわけであります。そういう点で、私は、最終的には総理、いつまでやっておるかわかりませんけれども、やはり総理大臣にこの姿勢をお伺いしたかったわけであります。いま、これから一〇%上げた結果を見てとか見ないとか、こうおっしゃるけれども、先ほど申し上げましたように、資本金百億円以上の会社が平均して月四千六百万も使っておるなんということは問題があります。少なくとも外国がとっておるぐらいに、高級料亭の交際費は廃止をするとか、一件当たりの金額は制限するとかいうぐらいのことは外国ですらやっておるのですよ。しかも、日本のように政府、官僚の経済に与える影響の強い日本の場合には、さらにこれをきびしくやるということがなければ、いろいろな点で問題が起きるのじゃないですか。ただ、これが検察庁の問題になるかならぬかだけの話であって、いろいろなところで問題がある。こういう問題にもっときちんとした姿勢をとるかとらぬかというところに問題があると私は思うのです。私は一〇%上げたから様子を見るとか見ないとかなんという枝葉末節の御答弁をいただこうとは思っていなかったわけであります。私は交際費とは一体どういうものなんだという点での基本的なお考えを大臣あるいは総理大臣からお伺いをしたい、こう思ったのであります。そういう点で、私は、大臣のほんとうに基本的な、一〇%上げるとか、来年また一〇%上げるとかいうことじゃなしに、交際費に対する課税の主体である大蔵大臣の御意見をお伺いしたいのです。
  113. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 やはり否認割合を上げるということは政府の交際費に対する一つの態度を示すものでございますが、根本的にはやはりこれは企業自身の問題でございますので、経済の国際化に応じて企業経営の合理化ということはもう一段進めなければなりませんし、いままで日本にあったいろいろな社会的慣行、習慣というようなものも逐次改善されなければ、この国際競争の中で日本経済をさらに生かしていくことはむずかしくなる、情勢はだんだんにむずかしくなりますので、それと呼応して、まず民間にやはり企業の態度をはっきりして合理化へ前進してもらうということを企業にも望まなければなりませんし、それに対する政府の態度として、やはり六〇%を七〇%に上げると単なる比率の変更のように見えますが、そうじゃなくて、実際には相当大きい響きを持つものでございますので、政府の態度を示したことにもなりますので、政府と民間が呼応して、この経営の中にあるいろいろな不合理性というものを取り除くということにもう一歩——ひとり政府だけじゃなくて、まず主体である民間に一歩自覚してもらわなければならないだろうと私は考えております。
  114. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それならば、そういう考えでいくならば、一件当たりの金額を制限するとか高級料亭の交際費は認めないというぐらいなことは、これはここで決断ができるのじゃないですか。少なくともそれぐらいのことはこれからこの交際費についてはやるというぐらいの決意を持つべきだと私は思うのですが、いかがですか。
  115. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ですから、さっき申しましたように、この一年の変化、いままでとどう変化してくるかを見まして、それによっては単なる率をいじるとか、あるいはどうかという従来のやり方以外のものをやはり考える必要があるかもしれないということを申したのでございまして、そういう方向への検討をしたいと思います
  116. 阿部助哉

    阿部(助)委員 ことしやったのの変化変化とおっしゃるけれども、どういう点が変化すると思っておるのですか。もういままで五〇%から六〇%へ、六〇%から七〇%へ、こうやってきたいままでの経緯もあることなのでありまして、この経緯を見る、経緯を見ると言うけれども、この交際費の問題はほかの問題とは違って、それほど大臣がこの経過を見なければ判断できないなんという問題じゃなかろうと私は思うのですがね。それは大臣のここでの言いのがれをするだけであって、やる気がないからの答弁じゃないですか。この経過なんというものは、もう長年にわたっていろいろやってきた、それで少しずつ否認割合を増加させてきたのです。それでも高級料亭は繁盛しておるじゃないですか。そういうことを見れば、いま私が言う、少なくとも高級料亭の問題、一件当たり規制する問題、こんなものは経過を見なくたってこれはわかり切っておることなのじゃないですか。ただ、あなたはこの経過を見て、経過を見てなんというのは、これは全くその場のがれの言いのがれだけじゃないですか。主税局や税の事務当局は、経過を見なければ答えが出ないのですか。どうなんです。そんなに不勉強じゃないだろう。
  117. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 損金不算入の割合が変わってまいりますと、やはりそれに応じて企業の姿勢はだんだん変わってきておると思われます。その経過はその率によって、応じて変わってくるというだけでなくて、そのときの企業自体の所得の状況とか、そういうことにもよるかもしれませんので、やや長期的に見なければならないと思うわけでございます。四十六年度から制度が変わって六〇から七〇になったわけでございますが、その結果は、残念ながら、まだ現在年度進行中でございますので、私どもの手元で把握ができないという状況でございます。  なお、一言つけ加えさせていただきますが、諸外国の制度でいろいろ制度がございます。ございますが、私どもの仄聞しますところでは、諸外国でもその規制が、制度土はそうなっておりますけれども、なかなかどうも執行の面では抜け道が多くてうまくいかないということで困っておるという話も聞いておるわけでございまして、先ほど来お話の、何かくふうを要するのではないかという点は私どももいろいろ考えてはおりますが、現実に諸外国のほうでも制度どおり一〇〇%うまくいっているということでもないようでございますので、その辺私どもとしても苦慮しているところでございます。
  118. 阿部助哉

    阿部(助)委員 事務当局になるとだんだん問題後退するみたいですね。外国もうまくいってないようだから日本もしかたがないということなんですか。もう一つは、七〇%に上げた経過がわからない。まだそれはわからぬかもわからぬ。しかし七〇%に上げる前もパーセンテージは上げてきたわけでしょう。そのときはそれじゃどのような結果が出たのですか、御答弁願いたい。
  119. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 たとえば支出交際費は先ほどからお話しございますようにやはり年々ふえております。四十年度五千七百億、四十一年度五千九百億、四十二年度六千九百億というふうにふえてきております。ただ、支出交際費、これはこの間経済も全体として大きくなっておりますので、交際費の支出割合がどうかというふうに見ますと、たとえば営業収入千円当たりの交際費の額というようなものを見ますと、四十年度で千円当たり六円二十二銭というのが、四十五年度では漸減いたしまして五円十一銭というふうに下がってきております。そればやはり、交際費全体として先ほど来お話しがございますが、交際費を支出すべきでないという一般的な反省といいますか、そういうことから減ってきておるものかあるいは税制の効果によるものか、それははっきりいたしませんが、いずれにいたしましても年々総支出額はふえておりますが、支出割合というものは減ってきておるということは言えると思います。
  120. 阿部助哉

    阿部(助)委員 割合がだんだん減ってきておる、こうおっしゃるけれども、それならば一番代表的だといわれる土建関係の一件当たりの割合は幾らになっていますか。
  121. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 建設業の四十五年度におきます千円当たり交際費は九円四十八銭ということになっております。
  122. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そうすると、おおむね倍近いものを建設業関係は使っておるわけですね。まあ先ほど来たいへん言いにくいことを言っておるわけですけれども、やはり建設業というのが一番役人さんとの関係の深い業種だ、こういわれておるのですね。しかもこれだけ大企業になればなるほど大きな金を使っておる。これはまさに買収、供応に使っておる、こう見なければならないんじゃないか。その多くはそういう形に使われておるんじゃないかということを考えていくと、この交際費、特に大企業の交際費は思い切って減らすべきだと思う。大臣、なかなかここですぐやりますとおっしゃらないようでありますけれども、これはいままでも国会のたびごとに問題になっており要請されてきたところでありますから、もうこの辺でこの一件当たりの問題、高級料亭の問題、そして大企業の交際費の割合等は思い切って削減の方向で検討すべきだ、こう思うのですが、いかがですか。
  123. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 さっきから私の申しておるのはそのことで、支出の内容をここで……(「建設に限って言っているのだよ」と呼ぶ者あり)私は、建設だけでなくて、交際費全般がどういうところに支出されているか、今度の税制改正以後のほんとうの支出の実情を把握してから、これは各業界代表的なものを選び出すかどうか調査のしかたはあると思いますが、ほんとうに実情を把握してからこの問題の対策を立てたいというふうに考えております。
  124. 阿部助哉

    阿部(助)委員 次に、大蔵大臣、皆さんのところから毎年租税特例措置による減収試算というのが出るのですよ。それで私は委員会でいつでも要求するのだけれども、決算というものは出てきたことはないのですね。決算というものは出てこない。決算がなしに新しい年の見込み額がちゃんと出てくるのですが、これは一体どういうことなんですか。これは何といいますか、何か当てずっぽうで出すわけじゃなかろうと私は思う。なぜ決算を出さないのです。これはもう私は毎年のように要求しておる。福田大臣は一ぺん出すような話をした。ところが依然として出してこない。決算なしに予測は立つのですか。どうも私は不可解でならないのですが、なぜこの決算を出さないのです。四十五年度なら四十五年度の決算を出して、その決算を見ながら初めて次の新しい年の予測が出るのであって、決算なしに予測が出てくるはずがないじゃないですか。これはどうです。
  125. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 予測はいろいろ推定の計算でできるそうでございますが、この決算は実際上できない。技術的に、これは報告をとらなければなりませんので、実際にはできないということを私は説明を受けておりますので、もし必要なら事務当局から説明いたしますが、この問題私はなかなか決算がむずかしい問題と聞いたばかりで、調べたばかりでございますが、なかなかこれはむずかしいようでございます。
  126. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 毎年国会のほうに提出申し上げております租税特別措置法によります減収見込み額というものも、実はいろいろ前提を置きました一極の試算でございます。幾つかの前提を置きましてかりに計算してみているものでございます。一方決算ということになりますと、ある結果に基づいて一つ数字しかないということになるわけでございますが、たとえば準備金という制度がございますが、準備金という場合に、準備金を毎年毎年積んでまいりますが、また一方において取りくずしということも行なわれるわけでありまして、その取りくずしと積み増しとの関係を、その部分だけある準備金につきまして抜き出しまして、それを計算するということは困難でございます。可能なものは、先ほど御指摘の交際費のように、それだけ抜き出し得ますものは計算をしてできる範囲内でお出しをしているということでございます。
  127. 阿部助哉

    阿部(助)委員 むずかしいからできない、こういうことでは済まされないんじゃないですか。皆さんのこの資料のつくり方にも問題があるのでありますが、交際費をマイナスして、そうして四千三百九十四億、交際費というのはどっちかといえば特別措置で、ほんとうならばこれは本法で直すべきなんですが、特別措置でやっておるから、千百九十六億というものをマイナスしておるのですよ。これをもし別にすれば、五千億、六千億ということになってくる。これだけ大きな減税の恩典を与えておるのですね。これだけ大きな減税の恩典を与えておれば、税金の申告のときに、どの特別措置によって幾らの減税をした、そこで総体私のところは幾ら税金でございますという申告をさせる義務づけぐらいは法人に当然与えるべきじゃないですか。しかも、一億円以上の会社には公認会計士がつかなければならないということになっておる。それくらいのことをやってきちんとした数字を出すことでなければ、一般の勤労者の税金、あの重い税金のことを考えれば、これだけの減税をやって決算が出ませんなどということは私は許されないと思うのですがね。いかがですか。
  128. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 たとえば一例で申しますと、特別償却というものがございますが、特別償却が、三年間なら三年間で何割増しの特別償却ができる、所得があるときにできる、こういうことになります。そうしますと、その特別償却をその企業はやるわけでございますが、たとえば昨年からの新しく買いました分についての特別償却、それをことし行なう分と、ことし新たに取得しました機械についての特別償却という分を全部それぞれ区分経理をして、たとえば申告の段階に出すというふうにそれぞれを明確に分ける。その特別償却はどの法律の何条による特別償却であるというふうに明確に出すということになりますと、かなり繁雑なものになるのではないかと思われます。したがって、現在の申告書で計算されてきます法人の所得計算の中で、租税特例措置法によりますところの減税と申しますか、所得が減りましたり、税額が減りましたりする分につきまして、交際費のように明確にそこだけが抜き出される部分と抜き出されない部分があるわけでございまして、抜き出される部分だけは、決算といいますか結果を、各企業の申告書を全部集計するということを行なわれますが、抜き出し得ない部分は申告書の中のどの部分ということが抜き出しがたいということでございます。
  129. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それが抜き出し得ないで、何で税額が決定するのですか。その辺はでたらめでいいということなんですか。   〔「そうだよ」「何でかけられるんだよ」と呼ぶ者あり〕
  130. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 不規則発言は御遠慮願います。
  131. 阿部助哉

    阿部(助)委員 大臣、それはおかしいじゃないですか。あなた聞いておっておかしいと思いませんか。計算ができないで最終的な税額がきまるなんということは、これはおかしいじゃないですか。しかもこれだけの大きな金を、税金をまける恩典を与えておる。しかもそれが計算ができない、どうして結論の税額が出てくるのですか。大臣、おかしくないですか、いまの説明は。できるんですよ。できないような特別措置ならやめなさい。そんならやめなさい。大臣、おかしいと思わないですか。
  132. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま、できるものと分けられないものがあるということを言っておるようでございますが……。   〔「分けられないで課税できるかと聞いているんだ」と呼ぶ者あり〕
  133. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 お静かに願います。
  134. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 見込みをつけるほうは、たとえば中小企業が五十万円以上の機械を買った場合には特別措置をもって優遇する……(阿部(助)委員「何ですか、もう一ぺん」と呼ぶ)特別措置、今度の措置、いままで機械を特定したんですが、そうじゃなくて、一定金額以上の機械については割り増し償却の特別措置をするということが今度の税制では出ていますが、こういう問題については、中小企業が一年どれくらいの、五十万以上の機械を購入するであろうかというようなことをいろいろな資料によって推定するということは、これはできると思います。したがって、それでどれくらいの減税が出るだろうということの推定はできると思いますが、それが一年の終わりになって現実にどれだけいったかということは、これはそう簡単に調査が私はできないというふうにこの間は説明受けましたが、できるものとできないものと、これはむろんあると思いますが、できないものが非常に多いだろうと思います。
  135. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それができないで最終的な税額はどうやって決定するんです。
  136. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 最終的な税額は、これは個々の税務署が全部申請によってきめるということになろうと思います。
  137. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それなら結論の課税額がきまるためには、どういう経費がかかる、法律でどういうふうにまけるということが出るはずなんですよ。特にあなたは中小企業を言うけれども、それならば、一億円以上なら一億円以上だけでもいいから、記帳義務でちゃんとつけさせればいいじゃないですか。それができないような特別措置ならやめたほうがいいですよ。国民の血税、これだけ大きな負担をしておる、勤労者がやっておるときに、大企業がこれだけ大きな税金をまけてもらう。それが報告のできないようなあいまいな税制をつくっておるところに問題がある。そんな税制ならやめられたらどうです。
  138. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 課税は各税務署で厳格にやっておる問題ですから、問題はないと思います。それを、全部まとめて報告書を出せということになりますと、これは全部報告をとらなければいけない問題になりますから、なかなか技術的にはやっかいだということを言っているんで、課税現実にはこれは税務署が、個々の問題は税務署が決定しておりますので、これは間違いございません。
  139. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いや、局長の話は、なかなか分けられないとかこれを書かせることがむずかしいと、こう言う。あなたは、税務署はそれをちゃんとやっておるんだけれども全国の税務署からの集計をするのがむずかしいと、こういうことのいまお話です。局長の話と違うじゃないですか。局長、違うだろう。
  140. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 高木主税局長に申し上げます。もう少し明確に答えてください。
  141. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 特別償却の例で申します。  特別償却の例で申しますと……(「さっきの答弁を言うんだよ、おまえ何を言っておるんだ」と呼ぶ者あり)先ほど特別償却で御説明いたしましたから、特別償却の例で申します。  特別償却には各種の特別償却がございますので、特別償却を全部寄せて、特別償却全体としてどれだけ特別償却が行なわれておるか。それによって所得がある期間内に幾ら申告の所得金額上減っておるかという総額は出ております。それは毎年の国税庁の統計でも出ておるわけでございます。これは全企業、全法人についての全集計は出ております。ただし、その特別償却が、何々特別償却という、いろいろな目的のための特別償却がいろいろございますが、その特別償却の何特別償却によるものであるかという区分をするということになりますと、集計上も、また申告の申告書様式の問題等からいいましても非常に複雑になりますので、そこまでは求めていないということでございます。  それから税額控除等の場合には申告書の各欄にそういう欄がございますから、その申告書の各欄に出ておりますものにつきましては集計しておりますし、それは御報告をいたしておるわけでございます。したがって各種特別措置のうちで、その特別措置の税額控除であるとか、特別償却であるとか、あるいは非課税であるとか、いろいろ制度がございますので、それぞれの特別措置のための技術といいますか、手法といいますか、それぞれに応じて集計可能なものと不可能なものとに分かれるということでございます。
  142. 阿部助哉

    阿部(助)委員 その不可能なものがあって、何で税額がきまるんですか。
  143. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 それから、大臣が申されました税務署でわかるという分は、個々の企業につきまして個々の企業が特別償却なり準備金なりを申告書の上にあらわす、あるいはその内訳書の上にあらわしておりますから、それが正しく法律が適用されているかどうかということは、税務署の調査の段階でわかるということを申されたわけであります。
  144. 阿部助哉

    阿部(助)委員 だから税務署で、大臣のおっしゃるようにどの特別措置で、どの償却で、どれだけ落としたというのはわかるわけでしょう。ただ、それならば全国の法人を集計するのにいままで集計をしてなかった、こういうことなんでしょう。違うんですか。どうなんですか。
  145. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 個々の税務署でわかるんですが、その集計ですが、その報告がいまの主税局長の話を聞きますというと、一本で償却というようなものが出ているんだから、これが分けられて報告されていないから、統計の上でこれを分けていくことができないということを言っているようでございます。
  146. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それならば大臣、この申告の様式を変えてでも、これだけの税金をまけてやっておるんですから、恩恵を与えておるんだから、それをきちんと集計のできるように、区分けのできるように書類を作成させるということは約束できますね。
  147. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私はあんまり実務に詳しいほうではありませんから、ちょっと……。
  148. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 減価償却の例で申しますと、別表十六に特別償却限度額は四つに区分しておりまして、中小企業の割り増し償却と海外取引等の割り増し償却と合併の割り増し償却、あとはその他の特別償却というふうに四欄に分けておるわけでございます。でございますから、この申告書の欄を数をふやしますれば出るわけでございますが、問題はこの欄を数多くふやしますと、それだけ申告書様式が全法人が同じ申告書様式を使っておりますものですから、非常に数少ない企業だけに適用される特例償却の制度のために、全法人のために申告書の欄をそれだけつくることになりますので、そこであまり多くの企業には適用にならないような特別償却制度のために一欄一欄ずっとこう並べますことは、いたずらに煩瑣になるのではないかということで、現在はその他の特別償却という欄に一つにくくっておけば、各種の特別償却をみなこの欄に記載すればよろしいということで簡素化になるのではないかということで、こういう様式にしておるわけでございます。ただいまのお話のようにこの欄を区分すれば可能かということになれば、それは可能であるということになると思いますが、私どもといたしましてはやはりこの欄、現在でも実は法人税の申告書に添付いたしております別表の数というものが非常に多くなっておりまして、一方においてはやはり簡素化の要請もありますので、いまここで直ちにこれを分けることがいいということはなかなか申し上げにくいわけでございます。
  149. 阿部助哉

    阿部(助)委員 大体特別償却という問題が、私は日本の大企業の資本蓄積にとって最も大きな役割りを果たしてきたと思うのであります。したがって今日、何かあれば通産省、何の特別措置をつくれ、こういう要求が出てくる。しかもその私たち一番知りたいところが不明確であります。大企業だけ、特殊な企業だけの特別措置、大体こんなものはなくすべきであります。原子力であるとかガスであるとか電力であるとかいう特殊なものは、むしろこれは白紙にしてそこに書き加えさしたところで、こんなものはできるのであります。そんなものを、枝葉末節と根本を取りかえた答弁をされても困るのでありまして、私は先ほどから申し上げますように、この税金をこれだけまける、それならばそれに対してそれぐらいの義務を課することは、当然過ぎる当然なんです。複雑になる、わずかの企業しかない特別措置、こういうものはむしろ白紙にしてでも、原子力関係幾らあります、また電子計算機の買い戻しの特殊償却なんというものは六社か七社しかないじゃないですか。こんなものはこんなもので特別に書かせればいいことであって、欄をつくりたくなければつくらぬでいいんですよ。やり方は幾らでもあるんです。ただ皆さんは、国民の目をごまかすためにこれをぼかしてあると言われてもしかたがないじゃないですか。しかも大蔵省は、見込みは出すけれども、来年度のまだ実行もしない見込みは出るけれども、過去の決算なしにこの見込みを出すなんということは、大体これは理屈に合わないでしょう。数字に関しては大蔵省なかなか自信を持っておる。その大蔵省が決算なしに見込みを出すなんというのは、これは何とも理解ができないのであります。やれと言えばやれるならば、やるとはっきり大臣お答えになればいい。どうです。
  150. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 国民をごまかすためにと言うんですか、ごまかして私のほうに得があるわけでもございませんで、ごまかすためにやっているものはございませんが、問題はそれだけの価値と申しますか、これはどうしても必要だということなら、国民から報告義務を求めることは意味がございますので、これが全般の問題でなければ、特殊な対象とするなら特殊な対象に対する方法ばございましょうし、そうでなくて、いままでいろいろなことがありまして、報告義務を求めたり何かむずかしいことをするたびごとに人を多く要することになって複雑にしてきておりますので、できるだけ簡素にしようという方向でいまやっているときでございますので、特別これは必要であるというようなことでございましたら、特別の調査方法をとるということならよろしゅうございますが、一般的に事務を繁雑にするという方向の行政はできるだけ私はやりたくないと思っております。(「繁雑でも何でもないじゃないか」と呼ぶ者あり)だからいまのところでは、こういう特別措置をやることによって、一体どれくらいの減税というものが行なわれているかというようなものが一応間違いなく見込まれる。(「見込みじゃないか、それは」と呼ぶ者あり)大体いままでの、これは見込んだ資料をどういう推定をしたかということでしたら、これは推定の基礎を持っておりますが、一応見込んでおって、そのあとがそのとおりいっているかどうかということについて、どれだけの労力やそのほかのものを費やしてやらなければならぬかというような問題は、これはまた別の問題でございますので、必要があることについては、その必要を満たすための措置をそのとき考えるということにすることは、私は一向差しつかえないと思いますが、これによっていままでの仕組みを、申告やそのほかの仕組みを変えるということについて、すぐ賛成するかどうかということはここで——実務の問題がございますので、検討いたします。
  151. 阿部助哉

    阿部(助)委員 大臣のおっしゃることは本末転倒でして、それだけ複雑な仕事を各企業に与えることがまずいというならば、こんな複雑な特別償却ははずしてしまえばいいじゃないですか。一番簡単なんですよ。法人税なら法人税一本にしていくならば、それで一番明瞭なんですよ。それをいろいろな財界の要求だとか、そういうもので特別償却——あるいはこの特別償却という形で次から次へとつくられるから、相手のほうがむずかしくなる。そんなにむずかしい仕事を与えたくないというならば、これはずばりとこの特別措置なんというものはなくしてしまえばいいじゃないですか。それでも財界は要求して、通産省やなんかは次から次へと特別償却を要求してきているでしょう。それならば、少なくとも資本金一億以上なら一億以上の会社には、それの記帳義務ぐらいは与えて何にも差しつかえないじゃないですか。第一、会社の手数がかかるからなんと言う。会社のことをあまりそう心配されるなら、記帳のほうで心配されるならば、思い切って特別償却をおはずしになればいいのですよ。そうすればまことに簡単明瞭にこれは計算ができるということになるのです。どうなんですか。だからあなたのおっしゃることは本末転倒ですよ。私はこんな問題で時間をとりたくないのです。大体もう時間が来ているようでありますけれども、どうもすっきりしない。  それならば私はもう一ぺん要求しますけれども、決算の上で見込みを出しなさい。決算なしに見込みを立てるというのは、これはいいかげんだ、こういわれてもしかたがないでしょう。できるだけ少なく減税額をここに出した、こういわれてもしかたがないでしょう。しかもここで交際費の一千百九十六億を差っ引くなんというやり方は、こういう小細工までやっておることを見れば、ここに出ておる見込み額は過小評価だ、こういわれてもしかたがないじゃないですか。そこをはっきりしなさい。当然これは記帳させるのがまず第一。それがいやならば、特別償却を廃止するというのがほんとうだと思うのです。それを抜きにして企業の手数がかかるなんというのは本末転倒です。どうです。
  152. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 結果についての試算なら、見込みのときの試算ができる以上、結果についての試算はわりあいに正確なものができるだろうということでございます。ですから、どうしてもこの問題は結果が見たい、政策上必要だというようなものについては、そのやり方を私どもは考えていいと思いますが、さっき申しましたのは、民間の手間をかけるということを言っているのじゃございませんで、一つの報告義務を課するということは、これを集計する事務というものは非常に多いものになります。私も昔経験がございますが、あるところにおって、全く必要のない報告義務をかけることによって、そのためには……(「必要のないとは何だ」と呼ぶ者あり)いや、私の経験です。私の経験で……(「この問題でそう言うのはおかしいじゃないか」と呼ぶ者あり)いや、だから私の経験でございますが、一つの報告義務をかけたことによって、この集計係、それを今度はまとめて印刷にして高覧に供すというところまでの人件費から経費、たいへんなものを要した経験がございますので、したがって、これは単に民間に手数をかけるというものではございませんで、できるだけ事務は緊急どうしてもこれは必要だという事務に限定したいということをさっき申しただけで、それ以上のことを言っているわけじゃございません。したがって、この問題だけは特に結果の集計が見たいというようなことでございましたら、それについてのわりあいに正しい結果を報告するという措置は、これはいろいろ研究すればできるだろうと思いますが、全般としてたくさんある租税特別措置について、そういう形の全部がわかるようなことの申告のしかたとかいうようなものを研究しろということになると、そう簡単にやれますということは言えないということを私は言っているだけでございます。
  153. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いろいろとおっしゃるけれども、これを区分けをする、そして報告をさせる方向で検討するということでございますね。
  154. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは十分検討いたします。
  155. 阿部助哉

    阿部(助)委員 もう時間のようでありますから、最後に自治大臣に減税額——国税は出ておりますが、見込みですか、これの地方税へのはね返り分は何ぼになるか。  もう一つは、時間がありませんから続けて聞きますが、地方税独自の特別措置による減税額、これ二つをお述べを願いたい。
  156. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 事務当局をして答弁させます。
  157. 佐々木喜久治

    佐々木(喜)政府委員 ここ一両日中に資料を差し上げたいと思いますが、大体国税によるはね返り分四十七年度の見込みは大体千五百億程度と思っております。  それから地方税の非課税、特別措置等による減収分が約千八百億前後の数字であろう。これは四十七年度分でございます。大体そういう数字になると思っております。
  158. 阿部助哉

    阿部(助)委員 大体と言うけれども、もう予算審議がここまできておる段階で二、三日うちというのは、これは少し仕事が手ぬるいんじゃないですか。ほんとうはもうこれを出して、予算審議にこれをからめて予算審議をするというのが、これは当然のことなんじゃないですか。どうなんですか。
  159. 佐々木喜久治

    佐々木(喜)政府委員 国税の影響分の数字が先日私どものほうに資料として参りましたので、それをもとにして地方税計算をやっておりますので、国税が出てまいりましてから一週間ぐらい計算がかかりますので、御了承願いたいと思います。
  160. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いまいろいろと交際費、特別措置のほんの一部を私お伺いしただけであります。大企業にはあのドル・ショックといわれる変動制のときから、また今日は差損はいろいろのめんどうを見る。大企業の差益のほうはむずかしいからこれは課税をしない。そうして資本蓄積ははかっていく。そうしながら、いまお話しのように特別措置でこれだけ減税措置をとっておる中で、来年度なぜ所得減税をされないのですか。いままでいろいろと大臣の御答弁を聞いてまいりました。昨年やったので今年分までやったなどと言うけれども、いまの物価上昇のおりから貨幣価値の低落の今日、所得減税をしないということは、即これは増税ということになりませんか。実質的な増税であります。法人税は、不況だ、こういわれて、これは二千七百九十億からの減税になります。しかし所得税のほうは、これは五千六百億円もの増収になるじゃないですか。そうして一昨日の本会議では、納税人口が多くなった、八〇%にもなったと言うと、アメリカでは九〇%だと、こうおっしゃる。しかしアメリカの課税最低限と日本の課税最低限はけたが違うんですよ。日本は低所得者に対して税金がかかっていく。それだから大衆課税というんです。アメリカは給料が高いんですよ。課税最低限をまず見ないで、そうして人口割合だけを比較されても困るのでありまして、その辺大臣のほうはいろいろとあれして逃げ道だけを抜けられるけれども、これはおかしいのであります。皆さんのこの資料を見ましても、日本の課税最低限、そうして納税人口の急増という点からいけばまさに大衆課税と言って間違いがなかろうと思うのであります。そういう点で私は、これはくどいようでありますし、幾たびか幾たびかわが党から話が出るわけでありますけれども、ことし四十七年度、もう一ぺん所得減税をやるという方向、検討するということはこれは当然のことだと思うのですが、これをお伺いして、私の質問を終わりたいと思うのですが、いかがです。
  161. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今年度の歳出歳入のいろんな事情を見まして、また来年度分と予定する所得税の減税を年内に行なうことになるかならぬかということは、これからの経済情勢を見た上でないと何とも返答できませんが、これは十分検討いたします。
  162. 阿部助哉

    阿部(助)委員 じゃ、終わります。
  163. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これにて阿部君の質疑は終了いたしました。  午後は二時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時二十一分休憩      ————◇—————    午後二時三十八分開議
  164. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  一般質疑を続行いたします。古川雅司君。
  165. 古川雅司

    古川(雅)委員 私は、本日は成人病対策についてお伺いをしてまいりたいと思います。  最初に、成人病の現状でありますが、成人病は、国民の総死亡の大体五〇%をこえていると思います  まず、胃ガン、肺ガン、子宮ガン等のいわゆる悪性新生物、これは昭和四十四年の数字でありますが、年間十一万八千五百五十九人の方がなくなっております。これは総死亡の一七・一%に当たります。また脳卒中等の脳血管の疾患がこの一年間で十七万七千八百九十四人、これは二五・六%、これに心臓病等のいわゆる心疾患を合わせますと二十六万一千二百五十一人で、この脳血管疾患と心疾患両方合わせますと三七・六%、これで総死亡に対して、いわゆるこの成人病が、先ほど申し上げたとおり何と五四・二%を占めるわけでありますが、こうした現状に対して、厚生大臣はまずどうお感じになっていらっしゃるか、所見をお伺いしてまいりたいと思います
  166. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 古川委員のおっしゃいますように、最近、一つは、日本の人口構造の変化から成人病が非常に多くなってまいった、これは事実でございます。ことにいまおっしゃいましたガン、脳卒中といったような成人病に対しましては、これから大いに力を入れていかなければならない、かように考えまして、ガン対策も相当進めているわけでございますが、さらに成人病全般に通じまして、これから大いに努力をしてまいらなければならないという現状は十分認識して、そのために努力をいたしたい、かように思っているわけでございます。
  167. 古川雅司

    古川(雅)委員 今後相当力を入れていかなくてはならないという、そういう御答弁でございますが、何か実感としてもう一本ぴんと筋の通ったものがないような感じがいたします。  ちなみに、このガン等につきましても、たとえばガンというふうに診断をされて治療にかかる、不幸にしておなくなりになるまで、あるいはなおるまで、これはもう相当の治療費がかかります。これは大臣もどのくらいの費用がかかるか大体お考えがつくと思いますが、さらに、実際退院をいたしましても再発の不安がつきまといますし、これは重要な問題になると思います。特に注目しなければなりませんのは、働き盛りの三十五歳から五十九歳の間に発症が集中しているということ、この点はゆるがせにできないと思いますし、厚生大臣おっしゃいましたとおり、胃ガン等は年々いま増加の傾向をたどっておりますし、さらに肺ガン、子宮ガン等も漸増の傾向をとっております。  脳卒中等につきましては、これはさらに非常に深刻な問題になってきておりまして、四十歳以上の高血圧者が、大体これは推定でありますが、正確に大臣が掌握していらっしゃったら教えていただきたいぐらいでありますけれども、大体八百万人以上と推計されております。昭和四十二年の古い数字でございますが、高血圧症として受診した者が二十七万五千人。この脳卒中につきましては、すでに、いわゆる結核で死亡した方々が最も多かったとき、このときの数を上回っているといわれております。さらに注目すべきことは、この脳卒中につきましては、死亡率が欧米諸国の大体二倍以上であるということ。これは非常に国家的な問題であるし、特にこの病気の悲惨な点は、発症いたしますと必ず死に至るということ。しかも、幸いにして死に至らなくても、半身不随やあるいは言語障害などを伴いまして、非常に悲惨な姿で後遺症が残っていく。こういう点も取り上げなくてはならないと思います。  こういうふうに、ただ単にその数がふえてきた、対策をしてきたけれども、これからさらに力を入れていきたいということだけでは済まないような、非常に深刻なものがあると思うのでございますが、大蔵大臣はこうした実態につきましてどういうお感じをお持ちでございますか。
  168. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 厚生当局の要請によりまして、ことしの予算査定におきましては、昨年度に比べて約五〇%増、予算措置としては六十億前後の予算の計上をしたということでございます。
  169. 古川雅司

    古川(雅)委員 さっそく大蔵大臣から予算のお話が出たわけでございますが、いま御答弁の中にありましたどおり、厚生省関係のいわゆるガン、脳卒中等の成人病対策費、これは昭和四十六年度は四十億六千八百万円でございます。四十七年の予算案におきましては、これはもう目の玉が飛び出るほど増額をしていただきまして、六十億七千五百万円でございます。さきに申し上げましたような実態からして、こうした予算措置がまさか十分とはお考えになっていないと思いますが、総死亡の五〇%をこえるというこうした重大な事態に対して、この予算措置についてどうお感じでございますか。
  170. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 たとえばガン問題で言いますと、国立がんセンターが二カ所でございますか、都道府県のガン診療所がせいぜい十二カ所しかことしはやれないというようなことで、これから相当強化していかなければならぬので、一年にはなかなか予算が計上しきれなかったということで、十分とは思っていません。
  171. 古川雅司

    古川(雅)委員 これは比較の対象にあるいはならないかもしれませんが、結核対策費におきましてもこれは四百五十九億、精神衛生対策費におきましては四百八億、これは非常に不十分でありますが、こういった結核や精神衛生費と対比いたしましてもあまりにも低いのではないかという、この点は政府としても決して否定はなさらないと思います。  特に、この成人病対策費の中身でございますが、ここで最初にガン対策費を取り上げてまいりますけれども、この予算の大部分が国立がんセンターの経費に充てられております。これは大部分と言っても過言ではないと思うのでございますが、このがんセンターも次第に充実はされてきておりますけれども、冒頭に申し上げた実態に比べれば非常なおくれをとっているということは、これは否定できないと思います。私が聞きましたところでは、外国では千ベッド以下のガン専門病院はないというふうに聞いておりますが、厚生大臣、この点は御承知でございますでしょうか
  172. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ガンの専門ベッドがまだ十分でないということは承知をいたしております。御承知のように、がんセンターのみならず、都道府県にも四府県ガン専門のセンターを設けてもらっておりますが、これもまだ増していかなければならないと思っておるのでありますが、まずそのためには、第一にガンの専門医の養成が必要である、医者並びに医療従事者の。この養成にもつとめておりまして、両々相まってやってまいりたい。  同時にガンの、おそらくあとで御意見があろうと思いますが、早期発見ということが大事でございまするので、したがってガンの早期発見のための検診というものを、来年度も前に比べまして充実をさしてまいりたいと思うて予算を編成いたしたような次第でございます。
  173. 古川雅司

    古川(雅)委員 大蔵大臣にお伺いいたしますが、ただいま厚生大臣からガン専門病院については、ベッド数においても十分ではない、非常に不足をしているという意味の御答弁がございましたが、たとえば東京にございます国立がんセンターの現状等について御理解がございますでしょうか。御承知でございましたらひとつ御答弁をいただきたいのでございますが……。
  174. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 あまり実情詳しくございません。
  175. 古川雅司

    古川(雅)委員 ひとつ厚生大臣教えてあげていただきたいのでございますが、いかがでございましょうか。
  176. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私も確実に何ベッドあってという数字は把握をいたしておりません。必要によりまして局長から答弁いたさせます。
  177. 古川雅司

    古川(雅)委員 私が聞きましたところでは、国立がんセンターは四百七十ベッドあるそうでございますが、このがんセンターに入院して治療を受けられる人は非常にしあわせでありまして、現在現に、年じゅう通してだそうでございますが、ほとんど年じゅう待機患者が大体四百人いる。緊急に入院を要する、そういう患者でさえ大体五十日待たなければならない。その他の方はもうほとんど三カ月から五カ月、半年以上待機しなければならぬ。この入院することが恵まれているといわれている東京のがんセンターでさえ非常に詰まっている、こういう現状だということなんでございます。大蔵大臣、その点に対する御理解がない、実感がないということは、私はこの先の質問をずっと進めるのに非常に不安なんでございますが、このガン専門病院等の整備につきまして、人的な養成の問題も、いま厚生大臣から御答弁がございましたけれども、まずこうした設備がない。国立がんセンターでさえこういう現状だという点は、私がいま申し上げた点でお認めいただけますでしょうか。
  178. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 必要だと思います。
  179. 古川雅司

    古川(雅)委員 ガン診療設備の整備費といたしまして、国立がんセンター及び国立病院がん診療センターの運営費に五十億二千六百万円、それから都道府県のがんセンターの整備費が二億五百万円という現状でございます。これは、この点で私、非常に心配になってくるわけでございますが、いわゆるここで公的病院のあり方ということが非常に議論をされると思います。厚生省が昭和四十四年に国立及び公的病院についての実態調査を行なわれました。私はそれを通しまして、公的病院の再編成あるいは整備拡充に直ちに着手すべきであるという実感を持ったわけでありますが、特に成人病に対処するために、これは地域的なニードがいろいろ異なると思います、実態が異なると思いますので、そうした機能、形態等の検討も含めながら、早急に公的病院の整備のあり方をまとめるべきではないか、こう思うのでございますが、特にがんセンターが、中央には比較的力が最近加えられているというか、非常に充実を進めてきておりますけれども、地方においては非常におくれているわけでございます。自治大臣においでをいただいておりますので、こうした地方、県立病院あるいは市立病院、町立もございますが、そうした公的病院等におきまして、いわゆるガン対策に果たす機能、そういった点が順調に進められているかどうか、その辺の現状について御報告いただければ幸いでございます。
  180. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 地方の自治体病院におきまして、がんセンターに対する施設その他が十分にできていないじゃないかという御指摘は、私も、残念ながらまだ認めざるを得ないというふうな状態であろうと思います。しかし、この点につきましては各県ともに、成人病全体といたしましての予防ということに力を入れてまいっておりますので、府県に対する財政需要額等にもそれらを見積もらせていただいておりますのと同時に、また公的病院におきましても、成人病に対する療養機能を充実さすための費用のために、逐年起債ワク等を増額いたしまして、四十七年度におきましても、病院費としまして三百五十億を計上するという姿でしております。現実的にガン対策専門という姿で出ております数字は少ないようでございますけれども、公的病院の充実が、成人病対策全般を含めましてその方向に向いておりますので、できるだけ今後ともに努力してまいりたい、かように考えております。
  181. 古川雅司

    古川(雅)委員 こうした成人病のガンあるいは脳卒中等の対策を除いて考えても、地方における公的病院がかなり財政的に逼迫をしている。しかもそれが地方財政を圧迫しているということを私は聞いております。そういった中において非常におくれている成人病対策に、今後さらに充実が期待できるかどうか、その点をもう一度繰り返してお伺いしたいと思います。  さらに私は、さっき都道府県のがんセンターの経費が少ないと申し上げました。私は少ないと思っております。起債やそうした点はともかくとして、全国都道府県のがんセンターを充実するのに、二億五百万円なんていうのはふざけていると思います。これは、自治省としてはもうその必要はないということでこの程度しか大蔵省に要求しなかったのか、だから少ないのか、あるいは必要を感じて要求したけれども、これだけに削られたのか、自治省としてのお考えはいかがでございますか。
  182. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 公立病院の経営が非常に困難になっておる、御指摘のとおりでございます。昭和四十五年度の決算でながめましても、純収益が、自治体病院全部で二千八百十九億に対しまして、総費用が二千九百三十一億、九六・二%、赤字が出ておりまして、一般会計からの繰り入れも二百九十一億で、四十四年度と比べまして約百億近い増加をしておるという姿でございまして、四十五年度における決算をながめますと、累積赤字も、事業体は全国で七百十六でございますが、欠損を持っております赤字事業体が四百七十事業体、その累計額は三百六十二億という数字にのぼっております。  このような経営の根本は、社会保険診療報酬の問題がございます。また病院の配置その他の問題もあります。その上に医師に来ていただくことが困難であるということも原因であろうと思いますが、もう一つは、経営の合理化に伴いますところの一般会計からの繰り入れの道を明らかにするということもございますので、この点、四十七年度地方財政計画におきましては、三百五十億ほどを一般会計から、特に必要とする事業に対しまして繰り入れさせていただき、また、先ほど申しましたように、病院建設のために三百五十億ほどを起債として予定させていただいてその充実を期していきたい、かように考えております。  いま御指摘になりましたガンに対する二億幾ら、これは厚生省関係の補助に基づきますところの地方負担分として計上いたしましたものでございまして、そのとおりをいただいたものでございます。
  183. 古川雅司

    古川(雅)委員 私がお伺いしたいのは、こうした非常に死亡率の高い疾病に対するものについては、これはむしろ採算を度外視して、それぞれの地域のニードに応じたすぐれた診療を与えられなければいけない。そういった意味で、いま各地方自治体がかかえているこうした公的な病院が地方財政を圧迫しながら経営をしているわけでありますから、これに、いま申し上げた治療の困難な、非常に死亡率の高いこうした病気をさらに扱って要望にこたえていけるのか。何かいまの自治大臣の御答弁を伺っておりますと、もう十分でございます、これ以上地方自治体としては心配ございませんというような、そういう感じに私とれるのでございますが、それでよろしいのですか。
  184. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 決して十分であるとは申しません。いま累積赤字の状態を率直に数字をあげて述べまして、御批判を仰いだような次第でございます。しかしながら、いま申しましたように、自治体といたしましてもこの姿ではいけませんので、こういう努力をさせていただいておりますという答弁をさせていただいたので、御理解を賜わりたい。
  185. 古川雅司

    古川(雅)委員 厚生大臣、このがんセンターでございますが、中央、地方を含めまして、この整備費が非常に少ないのは、要求が非常に少なかったわけですか。それともこれは大幅に削られたわけですか。
  186. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 今回は大幅に削られたというわけではございません。七十億程度を要求いたしまして六十億の予算をつけてもらったというわけでありますが、なおガン専門病院等の整備計画につきまして、局長からその状況を御説明いたさせます。——よろしゅうございますか。
  187. 古川雅司

    古川(雅)委員 理解いたしております。  そうしますと、そうごっそり削られたというんじゃないということは、必要最小限度の要求しかしなかったということでございますね。これで将来に向かってがん診療センター等の整備費については、現状はこの程度で十分とはおっしゃらないでしょうけれども、何とかやっていけるということでございますか。
  188. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 いろいろ医師、また関係医療従事者の能力その他を考えまして、来年度の整備はこの程度がせいぜいであろう、かように判断をいたしたわけでございます。
  189. 古川雅司

    古川(雅)委員 従事者あるいは専門医、技術者等の養成確保、これが非常に大事なことは私は否定をいたしません。しかし、そういう人たちがいないから整備はこの程度でやむを得ないのだ、それでは私は納得できないわけであります。診療施設一つにとりましても、先ほどの東京にある国立センターでさえこういう現状である。地方においてはましておいてをやである。そういう現状であるからこそ、そうした専門医あるいは技術者も集まってこないのだ、養成も十分に期せないのだ、私はそう思うのでございます。  あなたがそういうように、専門医なり技術者の養成確保ということをおっしゃるならばお伺いをいたしますけれども、この点についての年次計画はお持ちでございますか。
  190. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 毎年三百数十名養成をする計画を立てておるわけでございます。
  191. 古川雅司

    古川(雅)委員 私が聞いておりますところでは、国立がんセンターでいま常時いわゆるガンの専門医として講習を受けている人は二十名前後である。そのほか三百名前後と大臣はおっしゃいましたけれども、他はほとんど開業医になる一歩手前の研修を受けている、そういう程度にすぎない。たいへん失礼な言い方になるかもしれませんが、かじる程度にすぎない。こういったことではいわゆる本腰を入れた専門医の養成ということにはならないと思うのでございます。こういった現状でよろしいのでしょうか。  さらに、もう一つつけ加えてお伺いいたしますけれども、ガンにいたしましても、脳卒中にいたしましても、あるいは心臓病にいたしましても、これは予防対策ということが非常に強く求められるわけでありまして、その第一線にある保健所、その保健所の中で働いていらっしゃる方々の成人病専門の保健婦なりあるいは保健所の医師の補強という点についてはいかがなんでございましょう。
  192. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 政府委員から答弁させます。
  193. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 予防対策につきましては、先ほどのお話の病院等に勤務する医師の研修のほかに、脳卒中の予防技術員講習会、研修会を開催をいたしております。これには保健婦並びに医師、レントゲン技師等に参加していただいておりますが、四十二年以来いままでに医師が百五十八名実施いたしております。エックス線技師につきましては四十四年以来百三十六名でございます。新たに四十二年から保健婦の脳卒中予防技術職員研修を実施いたしまして、この実績はただいままでに二百六十三名でございます。
  194. 古川雅司

    古川(雅)委員 もう一度局長伺いますが、この専門医、保健所のほうの医師あるいは保健婦の充足率はどのくらいになっていますか。
  195. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 保健所の医師の充足はきわめて困難でございまして、ただいまの実績といたしましては定員数の四〇%程度でございます。保健婦につきましては、退職その他の出入りがございますので、かなり高いものではございますけれども、実際に統計的につかみますと八〇%程度でございます。
  196. 古川雅司

    古川(雅)委員 成人病対策につきましては、こうした保健所が十分な機能を達しているとお考えでございますか。非常に御満足げな御答弁でございますが……。非常に微妙な問題もあると思います。たとえば食生活あるいは生活環境にかかわる個人の生活と非常に密着している予防対策でございますから、数をもってだけで十分であるとかないとか私は申し上げませんけれども、あえてこうした保健婦さん一人一人の実態にしても、あるいは保健所に奉仕する医者の実情にしても、何とかうまくいっているというようなお感じの御答弁と受け取りましたが、いかがなんでございますか。
  197. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 実態を申し上げましたが、実はこの成人病というものにつきまして、血圧を測定すればそれで予防指導ができる、尿のたん白を調べればそれだけで予防指導が終わるというものではございませんで、私は、現状の保健所の機能、能力では、成人病対策に入り口的な指導はできますけれども、実際に本人が満足する指導というものは、やはり医療機関を活用する必要があると思っております。したがって、保健所のあり方につきましてはただいま懇談会等で検討いたしておりますけれども、成人病についての保健所の手のつけ方という問題が一番重要な問題でございますので、今後やはり地域医療全体の立場で考える、先ほど来御論議の医療機関の充実ということのほうにやはり向けていかなければならないというふうに考えております。
  198. 古川雅司

    古川(雅)委員 各大臣お聞きのとおりでございますが、医療機関の充実、そしてまた、こうした予防対策の第一線にある保健所の充実、そうしてまた、そうした施設、診療センター等に働く、そこで活躍をする専門医や技術者の養成の問題、これはいずれも自然発生的な充実をはかっていたのでは非常におそきに失するという感じがいたしますし、さらにまた、診療施設あるいは病院等において採算ベースの中での成人病予防対策ということになりますと、これはまた非常に不十分であると考えられます。こういった点について、これまでのガン対策あるいは脳卒中対策の予算の組み方について、これは革新的にここで考え方を変えなければならないのじゃないか、そういう感じがいたしますけれども、まず厚生大臣から、財政的にいかがでございますか。
  199. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 革新的にとおっしゃいますが、やはり先ほどから申しますように、この診療に当たる医師にパラメディカルの要員がマッチしてまいらなければなりませんので、したがって、その計画に従いまして、たとえば国立病院、療養所にいたしましても、今日の成人病に対する需要という面を考えまして、その整備計画を年次的に進めているわけでございますので、これによって、完ぺきとは申しませんが、計画的に実施ができる、かように考えておるわけでございます。その年次計画、整備状況等、必要があれば医務局長から答弁をいたさせたいと思います。
  200. 古川雅司

    古川(雅)委員 要は、この成人病に対する政府の取り組み方に私はまだまだ疑問が残るわけでありまして、ここに一例としてガン研究の助成金の応募状況の資料がございますので、この点についてお考え伺いたいのでございますが、鈴木元厚生大臣が、特にこの成人病対策について最重点政策にすべきであると言明をされたのが昭和四十一年でございます。それ以来いわゆるガン研究に対して助成金が組まれて、そして国の予算から助成がなされているわけでございますが、これをずうっと見てまいりますと、読み上げてもいいのですが、時間の都合で省略しますけれども、これだけ研究をしたい、助成をしてほしいと応募してきた、そのほとんど半分以下しか——これは件数においても金額においても大体そういう傾向でございますが、半分しか認められていない。これほどいま原因の究明あるいは研究の必要が叫ばれているときに、これはどういうわけなのか。近い例では、昭和四十五年を例にとりますと、六十五件、六億二千八百六十四万七千円の応募があるのに対して三十三件、件数はちょうど半分で二億八千六百七十四万三千円。それから四十六年におきましては、七十七件の応募で六億六千六百二十二万一千円。これに対して決定を見たのが、これはやはり半分以下の三十五件で三億四千四百九万二千円。これが最近だけじゃなくて、もう昭和四十一年からずっとそういう傾向が続いているわけです。この一つをもっても政府のガン研究に対する取り組みに対して、非常に助成も弱い、また成人病対策についての認識が甘過ぎるのじゃないかという、そういう実感を私受けるわけでございます。この点いかがでございましょう。厚生大臣からまずいかがですか。
  201. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 研究費もなるほど多ければ多いにこしたことはない、かように思いますが、諸般の他の研究費の関係もございますし、また、ほんとうに研究費の助成をして効果があるというものに対する助成が必要でございますので、いま助成の申請に対して半分というのは少な過ぎるとおっしゃいますのも理由のないことではないと考えますが、私のほうといたしましては、まず三億程度の研究費というのであれば、今日の状態に応じてまずまず満足すべきではなかろうか、かように考えておる次第でございますが、なお御指摘の点もございますから、今後よく留意をいたしてまいりたい、かように思います。
  202. 古川雅司

    古川(雅)委員 ことばじりをとらえるようでございますが、まずまずというのはどういうことでございますか。
  203. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 今日のいろいろないわゆる難病、奇病の研究もございます。それらもあわせまして考えてみますのに、三億程度の研究費でとにかく来年度は満足せざるを得なかろうか、こう思ったわけでございますが、お説の次第もございますから、今後さらに検討をいたして研究費を増加をいたすようにいたしたい、かように思います。
  204. 古川雅司

    古川(雅)委員 大蔵大臣、この点いかがでございますか。
  205. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私のほうは主管官庁の要請に応じて適正な資金の配分をしようということでございます。
  206. 古川雅司

    古川(雅)委員 厚生大臣に伺いますが、この成人病につきましては、私はこれは社会的な疾病であるというふうに認識をいたしております。冒頭に申し上げたとおり、特に働き盛りの人に非常に発病が多いわけでありますし死亡率が高い。非常に高度な技術と多額の費用を要してこの対策に当たらなければならない。そういった点では、この成人病による社会的なまた経済的な損失というのは非常に重大である、したがって、成人病対策というのは社会防衛上の見地から考えていかなければならない、こういうふうに私は思うのでございますが、この点の認識はいかがでございますか。よろしゅうございますか。
  207. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 社会防衛的と申すのが適当であるかどうか存じませんが、先ほど申しますように、これからはやはり、日本の疾病構造を考えますと成人病対策に重点を置かなければならないということは、私も全く同感でございます。来年度は大阪に国立循環器センターをつくるべく調査費もつけてもらったという状況でもございますし、今後取り組んでまいるのは、何といたしましてもいまおっしゃいますような成人病である、かように考えております。
  208. 古川雅司

    古川(雅)委員 大蔵大臣もお聞き及びのとおりでございますが、これはもうやっと対策が緒についたという感じでございます。これまでのようなスピードで対策を進めていったのでは、これは重大な禍根を残すことになると思うのでございますが、財政的に成人病予防について今後、いま総理がよくお使いの発想の転換という意味で、ここで重大な決意をする御所存はございませんか。
  209. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 成人病対策は非常に必要でございますので、おそらく来年度の要求におきましても、これは厚生省からずっと比重をつけた要請があると思いますので、これは十分その趣旨に沿うような予算の配賦をしたいと思っております。
  210. 古川雅司

    古川(雅)委員 自治大臣にお伺いいたしますけれども、この成人病対策について、国と地方自治体、その間にそれぞれ責任分野を明確にする必要があるとはお考えでございますか。現状のままでよろしゅうございますか。
  211. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 一義的には所管の厚生省におきまして成人病対策の抜本対策を立てていただき、これに基づいて計画していただき、国がこれについて財源措置もしていただく、そのときにおけるところの地方負担分を滞りなく負担することができるという財政計画を立てるのが私たちの役目でなかろうか、かように存じております。
  212. 古川雅司

    古川(雅)委員 早期発見あるいは治療に関しまして、これは厚生大臣にお伺いいたしますが、いわゆる検診の義務をはっきり法的に規定する、あるいはいま自治大臣に伺った点を厚生大臣にもお伺いしたいのでございますが、国と県との責任分野を明確にしていく、こういうことが現在必要じゃないかと思うのでございますが、いかがでございますか。
  213. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 検診の義務制にするかどうかという問題もあるわけでございますが、今日の段階では、できるだけ検診を無料でやるということで勧奨してやっていくというのがまず順序ではなかろうか、かように考えます。  なお、国費、地方費等の支弁の問題につきましては、御承知のように、病院あるいは診療機関全体の問題といたしまして、あるいは成人病、あるいはまた救急病院、あるいは小児病院その他、最近の特殊な疾病の需要に対応いたしまする診療機関の系統づけをしなければなるまい、そしてこれは、国立あるいは都道府県立、公立、また私的病院というような役割りを定めまして、系統的な整備が必要ではなかろうか、かように考えて、これに今後ひとつ取り組んでまいりたい、その段階におきまして、国費、地方費の負担の関係等も考えてまいりたい、かように考えまするので、ひとつ今後ともお知恵を拝借させていただければありがたいと思います。
  214. 古川雅司

    古川(雅)委員 ただいまの御答弁に加えまして、さらに治療費の公費負担制度の導入あるいは成人病対策に対する長期計画、そういったことを含めまして、私はいまの段階においては、どうしても成人病予防法の制定が必要であるというふうに考えているものでございます。特に世界的にも、こうした成人病、ガン、脳卒中、心臓病等については、治療はもとより、むしろ予防に重点を置く予防主義の傾向に入ってきております。すでに御理解かと思いますが、フランス、東ドイツ、イギリス、アメリカ等においても、いわゆる予防法として立法措置をいたしているかに伺っておりますが、日本におきましてはこの点どうお考えでございましょう。
  215. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 おっしゃいますように、まず予防が一番肝心だ、かように考えます。そこで立法の必要もあろうかとも思っておるわけでありますが、いまおっしゃいます各国の事例等も見まして、できるだけ現状に即したような予防対策を確立してまいりたい、かように思います。
  216. 古川雅司

    古川(雅)委員 予防対策という御答弁でございましたが、私は、予防法の制定を現在準備なさっているのか、あるいは今後準備に着手するお考えがおありなのか、そういった意味でお伺いしたわけでございますが、いわゆる法制化についてはいかがでございますか。現在準備がございますか。
  217. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいま予防法というものにつきましてはまだ準備はいたしておりません。それにつきまして、先ほど申しますように、各国の事例等も考え、また構想もまとめてみたいと思いますが、ただいまの段階では、予防法をつくるという段階にはまいっておりません。
  218. 古川雅司

    古川(雅)委員 アメリカではガン制圧局を組織いたしまして、いわゆるタスクフォースがスタートをしているわけでございますが、いわゆる行政的にもこうした非常に積極的な取り組み方をいたしております。大臣も世界的には予防の方向に向かっているということはお認めになりましたし、先進諸国における立法措置もお認めになったわけでございますが、日本ではまだ立法の必要の段階ではないという、そういう御認識は一体どこからくるんでございますか。  時間がございませんのであわせてもう一つ伺いしておきますが、日本にはいわゆる結核予防法もございますし、それに伴って結核予防課という機構も厚生省の中にございます。私の理解するところでは、成人病に対しては課もない。公衆衛生局の中の一係のような担当の現状であると思いますけれども、この辺いろいろ考えあわせますと、その成人病予防法の制定の段階ではない、まだ準備に着手していないということは、そういう段階にまだ政府としての認識が至ってないというふうにお答えになったほうが正しいんじゃないでしょうか。その辺いかがでございますか。
  219. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私の申し上げますのは、結核その他の伝染病とは違いまして、強制的に診療をする、強制的に病院に収容するというようなものではないのではないであろうか。ただ、これは各人の自覚に訴え、また一般のPRにつとめて、そして自発的に検診を受け、また入院が必要ならば入院のできる施設を整えるということがまず第一ではなかろうか。検診については無料制度をできるだけ充実をさせていくというようにやっていくのが今日のわが国の段階ではないであろうか、かように考えておりまして、したがってその点では、結核予防法とかあるいは精神衛生法とかいうものとは性格が若干違うのではなかろうか、かように認識を現在の段階ではいたしているわけでございます。
  220. 古川雅司

    古川(雅)委員 機構的、組織的にはいかがですか。
  221. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 機構といたしましては、この老人対策を中心にいたしまする一課を設ける必要がある、かように考えております。来年度からはそういった一課を新設をいたしたい、かように考えております。
  222. 古川雅司

    古川(雅)委員 どうも私は理解できないのでございますが、冒頭にこの成人病の現状、実態を私申し上げました。両大臣ともに、非常にたいへんなことだとお認めになったわけでございまして、これまでの対策がまだ非常におくれをとっているということもすでにお認めになったとおりであります。これをただ、今後、たいへんだたいへんだということでそのとき、そのときに対策を講じていく、あるいは予算措置をしていくということではすでに間に合わないんではないか。やはりこうした成人病予防法をここで制定して、アメリカやイギリス、あるいはそのほかの欧米諸国におくれをとらないだけのまず法制化、そして機構の整備、そして予算措置という、そういう順序があるんじゃないかと思うのでございますが、まだ成人病予防法の制定の段階でないという、そこに固執なさるのはどうも私は納得がいきません。さらに、結核等につきましては、これは伝染病であるけれども、成人病は伝染病でないからというその御認識も私は納得いかないわけであります。  もし厚生大臣のような認識でこの成人病対策をお考えになっているとすると、何回もくどいようでありますけれども、こうした諸外国における成人病予防に対する立法措置は矛盾を含んだものである——誤りとまではおっしゃらないでしょうけれども、矛盾を含んで、その必要がないのに諸外国では立法措置をしているのかという御認識かともとれるわけでございます。これでいつまでもやりとりしていてもしかたがありませんけれども、もう一度その点を確認させていただきたいと思います。御検討の余地はあるのですか。
  223. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 御意見の点を十分踏まえまして、前向きに検討をさせていただきたいと思います。
  224. 古川雅司

    古川(雅)委員 ガン、脳卒中等の成人病対策で、いわゆる治療費の公費負担については私いまあまり触れなかったわけでございますが、今度老人医療費の無料化対策がスタートすることになったわけであります。これは私高く評価をさせていただきたいと思います。わが党の年来の主張でもありましたし、非常に喜ばしいことである、そのように一応受けとめさせていただきたいと思います。ただ、こうした成人病、ガン、脳卒中等についても、この老人医療費の公費負担の対象に入っておりますね。脳卒中だ、あるいはガンだから、その病気については負担しないということはございませんね。当然入っておりますね。
  225. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 当然入っております。
  226. 古川雅司

    古川(雅)委員 ただ、そこで私は非常に心配になってくるわけでございますが、この無料化対策のスタートが七十歳以上という年齢の制限をつけております。ことにガン、脳卒中、心臓病対策につきましては、六十四歳から七十四歳に非常にその死亡率また発病率が多いとされております。こういった点では、七十歳以上というこの制限が非常にこたえてくるわけでございますけれども、この点はどのようにお考えでございましょうか。特にガン、脳卒中の成人病だけでも他に先んじて年齢制限を緩和する、引き下げる、こういうお考えについてはいかがでございますか。
  227. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 その点につきましては、御承知のいまのガン、成人病は特に高額医療費を必要とするわけでございますが、その他、全般的に高額医療費につきましては、今日保険で自己負担が健康保険なら家族五割、国保なら三割の負担がありますが、その負担がまことに重いものに相なるわけでございます。さような次第でございまするので、ただいま提案をいたしたいと思っておりまする保険の抜本改正におきまして、そういう高額医療は全額保険で支弁のできるように改正をいたしたい、かように考えております。
  228. 古川雅司

    古川(雅)委員 この年齢制限一つ取り上げましても、厚生省は非常に御苦心をなさったというふうに承っております。その点は認めたいと思いますが、年齢制限の問題につきましては、これはいわゆる財政的な理由が一番大きいと私たち理解をしてもよろしいのか。いわゆる老人医療の無料化に踏み切った以上、この年齢制限についてもお考えは持っていると思います。わが党としては、たとえばせめて六十五歳以上にという当面の主張を持っているわけでございますが、厚生当局としては何歳以上にというお考えを持っているのでございますか。さらに大蔵省とも当然話は詰めていると思いますけれども、そうした目標に対して、年次的に何年までには何歳までにするのだというお考えを持っているか、その辺明らかにしていただきたいと思います。
  229. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいまのところ、老人医療の無料化の問題は七十歳が適当であろう、かように考えておりますので、これをいま引き下げる考えは持っておりません。そのかわりに、高額医療につきましては年齢に関係なしに保険の給付でやれるようにいたしたい、かように考えております。
  230. 古川雅司

    古川(雅)委員 もう一度確認いたしますが、現段階においては七十歳以上とおきめになったわけです。それはわかります。将来ともに七十歳以上を妥当として今後動かさないわけでございますか。将来の目標として、何年先には何歳までに下げようというお考えは全然含まれてないわけでございますか。
  231. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 まず七十歳で出発をいたしてみまして、そしていろいろ諸般の状況考えてみたい。したがって、いまから何年以内に六十五歳に下げるとかいう計画は持っておりません。七十歳で出発をし、そうしてその状況を見た上で判断をいたしたい、かように考えております。
  232. 古川雅司

    古川(雅)委員 その点で議論をするとまた時間がなくなってしまいますけれども、七十歳が妥当だということにはどうも私は承服しかねます。これは大蔵省からのいわゆる財源的な理由によってあなたがそうあえて強弁しているんじゃないか、そういう感じもするわけでございますが、ほんとうにそうはっきりおっしゃってよろしいわけでございますか。
  233. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 各府県、市町村等で任意に始まっておりますものも、大部分は七十歳あるいは七十五歳というわけでございますので、今日の状況ではまずここらが妥当なところではなかろうか、かように判断をいたしております。
  234. 古川雅司

    古川(雅)委員 七十歳以上にして、あと高額医療については年齢を問わず考慮したいというそういうお答えでございましたが、大蔵大臣としてはその点でよろしゅうございますか。あなたは財政的な見地から、やはり老人医療の無料化についてはいまの厚生大臣の御答弁のとおり、七十歳以上を妥当と、そういう線でお考えでございますか。
  235. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 御承知のように、財政事情から見まして七十歳以上ということにしましても、平年度一千億円以上の経費を必要とする問題でございますので、いまの財政事情から申しまして、いま厚生大臣が答弁されましたように、この際七十歳から出発するということを踏み切って、今後どうするということは、まだ厚生省と大蔵省との話はこの問題については出ておりませんが、しかしこれは、将来財政事情によってこの年齢をできるだけ繰り上げていくという方向へ進むべきものだとは考えておりますが、今度はとにかく一千億の施策でございますので、それはいまのところ七十歳以下に下げるということは、事実上財政的に困難だというもっぱらこの理由から七十歳ということにした次第でございます。
  236. 古川雅司

    古川(雅)委員 大蔵大臣の御答弁は、やはりもっぱら財政的な理由をあげていらっしゃいます。そうなりますと私非常に不安になってまいりますのは、先ほど厚生大臣が、年齢は七十歳以上が妥当だといまの段階でお考えになっている。あえて私はいまの段階でというふうに受けとめておきますが、七十歳以上だけれども高額医療については年齢を問わず見ていくようにしたいとおっしゃいますが、その年齢の制限一つ下げられないような財政事情においては、いま厚生大臣がお答えになった高額医療について見ていくなんということは非常に期待薄になっていくのじゃないでしょうか。この点大蔵大臣、いかがでしょうか。
  237. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいま高額医療のお話を申し上げましたが、これは保険の抜本改正でさようにいたしたいということでございます。その点御了承をいただきたいと思います。
  238. 古川雅司

    古川(雅)委員 あえてそれは治療費の公費負担という意味ではないわけですね。
  239. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 公費負担というのではなくて、保険の給付で見たい。これがふえてまいりますればあるいは国庫の補助金もふえるということになるわけでありますが、形は保険の給付という形にいたしたいと思います。
  240. 古川雅司

    古川(雅)委員 そのほかたくさん制限があるわけでございますね。たとえば本人の前年の所得課税程度という制限もございますし、扶養義務者の所得の制限もございます。それからもう一つ、付添料については今回は措置していない、こういった点を含めて御答弁をいただきたいのでございますが、本人の所得制限についてはこれは全廃、扶養義務者の所得制限についてはこれはせめても緩和していく、そういう方向でお進めになるのでしょうか。その辺の話し合いは大蔵省との間でどうついているのでしょうか。付添料と含めて御答弁いただきたい。
  241. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 老人医療無料化の場合の所得制限は、いわゆる扶養義務者の所得につきましては二百五十万円、本人につきましては所得税を納める能力のある者というのが制限でございまして、やはり医療費の自己負担にたえがたいという方に対する問題でございますので、したがって、そういう所得制限をつけざるを得なく相なりました。  先ほど申します年齢に制限なしに高額医療を全部保険で見るという点につきましては、これは所得制限も年齢制限も何もないわけであります。これができますと、いまおっしゃいますいわゆるガンだとか成人病の高額医療に悩まれる方は非常に助かる、かように思っております。
  242. 古川雅司

    古川(雅)委員 大蔵大臣に伺いますが、老人医療費の無料化対策に踏み切ったわけでございますけれども、これはいま申し上げたような年齢あるいは所得制限等の制限を今後緩和してほしいという世論は当然高まっていくと思います。あわせて、これは医療費の無料化だけではなくて、これをよりよく運用していくためには、これとあわせて他の老人福祉行政をこれまでになく改善をしていかなければならない、充実をしていかなければならないという決意が当然伴うと思いますが、大蔵省当局としてはこの辺の決意はどのようにお持ちでございますか。
  243. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 他の施策とのやはり均衡ということと、そうして財政には一定の限度がありますから、実施するとすればどちらを優先的にするのか、どの施策のほうへ比重を多くつけべきかというこの認定が非常にむずかしい問題でございますが、こういうものは、もっぱらこれは主管官庁の意見に従うよりほかございませんので、その点は十分相談して、各施策間の均衡とその間の適切な比重の置き方ということを勘案して、いままで予算の経費の配分をしてきたものでございますので、こういう一つの社会保障制度というもの、たとえば老人対策にいたしましても、一つに医療の無料化というようなものを踏み切ったといたしますと、それに関連した他の施策も一応均衡をとったやり方をしないと、これは制度として欠陥のあるものになりますので、それに関連した一連の施策というものは全部そろえて実施するということに、これは心がくべきものであるというふうに思っております。
  244. 古川雅司

    古川(雅)委員 たとえばねたきり老人の問題があります。これはいろいろなデータがありまして数字は一定しておりませんけれども、厚生省のほうでは大体六十五歳以上三十四万人とつかんでいらっしゃるようですが、ねたきり老人の例一つとりましても、これはいわゆる軍国主義時代の犠牲者であります。そういった方々に対して、この老人医療の無料化というのは非常に前進的な積極的な施策であると私たち評価していることは先ほど申し上げたとおりでありまして、その点について、ただここでスタートをしただけでは私たちは非常に問題が残ると思うわけでございまして、何としてもこれは関連したあらゆる老人福祉政策を強力に進めていかなければならない、そういう意味合いから、私いまお伺いをしたわけでございます。  たとえば老人医療の無料化対策をスタートさせますと、ここでいわゆる老人専門病院というような構想が当然出てくると思います。これはくどくど申し上げるまでもありませんけれども、ねたきり老人の死亡率が非常に高いということ、しかも核家族化によって一人暮らし、そしてねたきりのお年寄りがおなくなりになって何日もだれにも知られないで放置されていたということや、火事で逃げられなくて焼け死んだとか、そういう悲惨なニュースが毎日、新聞を埋めているわけであります。そういった点を考えましても、いまの厚生省当局がおそらく考えていらっしゃる特別養護老人ホーム、いわゆるあの医療能力がきわめて少ない特養ホームで措置していこうという考えにはもう限界があるんじゃないか。慢性病老人患者のためにも、あるいはまたお年をとった、だれも引き取ってくれないお年寄りの精神障害者、そういった方々をお世話するためにも、ここでいわゆる老人専門病院の構想を積極的に進めるべきではないか。ある自治体ではすでに四月一日に開院するということは聞いておりますけれども、国がこれはまた一歩おくれをとったわけでございますが、国としてはこの点、まず厚生省当局のお考えはいかがでございましょうか。そうした厚生省の施策、要望を受けた場合、大蔵省当局としてはそれをどうお受けになりますか。両大臣にお伺いします。
  245. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 老人専門病院と申しまするよりも、まず特別養護老人ホームの充実が今日では先だと思っております。そしてこの特別養護老人ホームとそれから病院との何といいますか、近いところ、同じところに設けて、そして病気の治療に当たるという行き方が望ましいのではないか、かように考えて、さしあたってはその方向でまず特別養護老人ホームを充実し、そしてその近くに老人専門の病院も置きたい、かように考えております。
  246. 古川雅司

    古川(雅)委員 そうしますと、私の記憶するところでは、特養ホームについては、病人を入れるということはいわゆる措置基準には書いてないと思うのでございますが、その点は変更するわけでございますか。いまの御答弁は特養ホームに老人専門病院を併設して、そしてお世話をしていく、そういう考え方でございますか。いまの特養ホームを充実して、そこでこうしたお年寄りの寝たきり老人、中枢神経系あるいは高血圧症の疾患についても治療していく、めんどうを見ていく、そういう意味でございますか。どちらですか。
  247. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 特養ホームを病院の近くに設ける。そして病院と同一経営という形に持っていきたい。そのほうが望ましいのではないだろうか、かように考えております。
  248. 古川雅司

    古川(雅)委員 この点について、じゃ大蔵大臣いかがでございますか、財政的に。
  249. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いまさっき申しましたように、こういう問題の政策は、結局主管官庁がこれが一番いい方法だということであったらそれに従うということで、政策の比重の問題とかそういうものの認定は主管庁にまかせるよりほかないだろうと思います。
  250. 古川雅司

    古川(雅)委員 老人医療にちょっと関係がございますのでここでお伺いをしておきたいのでございますが、今回、いわゆる難病といわれております特定疾患対策が大幅に増額をして予算化されました。決してこれは満足できるものではないと私は思いますけれども、いずれにいたしましても各種のこうした原因不明の疾患、また非常に治療が困難な、治療方法の確立していないこうした病気の対策については一歩前進をしたと私は一応認めます。ただ、この点について中身に非常に疑問があるわけでございまして、特定疾患対策室をお設けになりました。いわゆる専門家を集めて、懇談会を開いてこれからどうするかという意見を聴取なさるという御説明を伺っておりますけれども、これに対しては、いつまでにその意見を求めてというふうな考えがまだまとまっていないような感じがいたしますけれども、その点、今年度一ぱいに方向をはっきりさせるという方針理解してもよろしいかどうか、それが一つ。  それから実態調査費を四百万円お組みになっております。私の理解するところでは四百万円だと思いますが、これは各県におろして各県の保健所に依頼をしてこの実態調査をするということでございますか。非常に単純な計算でございますが、全国に約八百カ所の保健所がございますので、一カ所大体五千円の調査費ということになりますが、一体これで難病、いわゆる特定疾患対策に取り組むこれが姿勢であると理解していいのかどうか。  それから三点目は、研究費補助という形で治療費を計上いたしております。五億三千万円のうち治療費に対して三億一千万円と伺っておりますが、これも国が月一万円、県が一万円、計二万円という治療費の補助をするわけでございますけれども、これに制限がいろいろありまして問題が残るのじゃないかという不安、たとえばスモンにおきまして奈良、和歌山がこの治療費補助を返還をしてきたということを私たちは聞いておりますけれども、大胆その点御理解かどうか。この理由も、いわゆる二十日以上入院治療していなければこの治療費補助を受けられないという、はっきり言えば貧乏で入院もできないという人にはこうした恩恵にあずかれないという一つの矛盾があるわけでございまして、その点は自治体としても非常に苦慮している。こうした制限があることが——全体の治療費の予算のワクが少ないからそういうことになるのですけれども、そういう制限のワクがあることによってかえって不安を残している。そういう意味では、私たちこの予算をつけていただいたことは非常にけっこうでございますけれども、なかなか本意とはできない。その辺の今後の私たちの不安に対してどうお考えになっているか。  以上三点をお願いしたいと思います。
  251. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 いろいろこまかい数字にわたっておりますので、まず局長から答弁をいたさせます。
  252. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 対策室につきましては省令定めで実施できますので、すでにいろいろの点では部屋の設置その他準備を進めておりますので、できるだけ早く専門家の懇談会の御意見を聞き、たとえばスモンのようにある程度の診断基準をきめませんと実態調査もできない、ある基準によって実態をつかむというのでないとできませんので、その点を早く進めまして夏ごろ、七月ごろに実態の実施をし、十二月までにはその実態を把握したい。ただ、どのような疾患が診断基準が設けられ、なおかつ実態調査が可能であるかという点を踏まえまして、専門家の御意見を聞き検討いたしたいというふうに考えております。  それから実態調査費の四百万の数字は、確かに予算的にはそうでございますが、従来スモンの調査研究費を使いまして実態調査等をいたしております関係もございますので、この点につきましては、治療研究費以外のいわゆる調査研究費の中身の中でこの点についての不足分を補い、事務的な面については四百万程度で可能ではなかろうか。あと医療機関の協力その他の問題について、調査研究費からの活用を考えたいというふうに思っております。  それから治療費につきましては、スモンの問題が例に引かれましたけれども、確かに研究費の性格と——このような診断基準あるいは治療方法の開発というのが研究の性格でございますので、やはり県内の特定な病院に御協力いただかないとできませんので、したがいまして、県あるいは東京都のような大きいところでは必ずしも医療機関全体の御協力が得られない、病院側の考え方もあって得られない面もございます。しかしながら、この点を今後も入院患者以外に広げるということにつきましては、実はいろいろ検討いたしましたけれども、研究費の性格上、生活全体というものを把握できる入院治療という形において当面この問題を処理していきたいということでございます。したがいまして、低所得者等の問題につきましては、実はスモンの例の場合でも生活保護による入院が予想以上に多い実態がございましたので、当初予測したよりももちろんスモンの患者が現在減少していることも踏まえまして、四十六年度の五千万の予算の現在の考え方による患者の研究、治療は十分不足なしに実施できたというのが実態でございます。しかし、ベーチェットその他に今後拡大することが、懇談会の御意見等を聞き、きまりますれば、これらの問題についてもスモンと同様の形をとりまして治療、研究を充実してまいりたい、こういう考え方でございます。
  253. 古川雅司

    古川(雅)委員 私はそのスモンの形においてすでに問題が多い、しかも非常に不均衡であるし、不満が多いということを申し上げたわけでございまして、そんな満足しきったような御答弁をされますと、私非常に心外であります。大臣に一つだけ確認をさせていただきたいのでございますが、こうした特定疾患につきましても、ある程度の治療費の公費負担の原則が導入されました。こうした難病に対し、あるいはこれまで行なわれております身障者、あるいは身障児、あるいは未熟児、あるいは公害認定患者、あるいはまた小児ガン、原爆、そういったさまざまのいわゆる患者治療費の公費負担の原則が各法によって出発をしてきたわけでございますが、そういった相互間のバランスあるいは全体についてのあるべき姿、その辺の検討はする必要があるんじゃないか。ばらばらに育ってきておりますが、ここで確立したものを持つべきであるというふうに考えるのでございますが、その点簡単に御答弁いただきたいと思います。
  254. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 大体公費負担の原則は、社会防衛といいますか、そういった面で必要な疾病、それから社会保障的な意味で公費負担という、この両様があろうと思います。  そこで、社会保障の面においてどこまでさらに進めていくかという問題があろう、かように存じますが、今後もできるだけこの幅を広めてまいりまして、先ほど申します一般の高額医療の面の給付とあわせまして国民の治療に遺憾のないようにいたしたい、かように考えます。
  255. 古川雅司

    古川(雅)委員 私は、きょうは成人病対策から老人医療、そしてただいま難病対策等についてお伺いをしてきたわけでございますけれども、ここで老人福祉法を引くまでもございませんが、その第二条の基本的理念、これは大臣もよく御理解のあるところだと思います。長年社会の進展に寄与してきたそうしたお年寄りというのは、敬愛され、かつ健全で安らかな生活を保障されるものであるというこの基本的理念は、さらに強力に貫いていただきたいと思います。しかし、現状については、これは東社協の下斗米さんとい方でございますが、その方の文章を引用させていただきますけれども、実際問題として、長生きば人間の最大の願いである、しかし貧乏は最もきらわれているものである。ところが現実は、その最大の幸福が最大の不幸を伴っているというジレンマが、現在のわが国の老人問題の特徴の一つだというふうに指摘しております。私は全く同感であります。  そういった意味におきまして、いわゆる老後生活の最低所得保障、そういう意味で年金制度が先年来議論を続けられてきているわけでございますけれども、ここで年金問題について若干お伺いをしておきたいと思います。  まず年金制度、わが国におきましては老齢福祉年金という一つ特徴的な制度がありますし、もう一つ、いわゆる厚生年金、国民年金等が拠出制の年金がございます。その両面について、まずこれは大蔵大臣にお伺いしたいと思いますが、こうした年金制度は福祉といえるかどうかお伺いしたいと思います。
  256. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 やはり福祉実現のための一つの制度であるというふうに考えます。
  257. 古川雅司

    古川(雅)委員 はっきり伺っておきます。  では厚生大臣にお伺いをいたしますが、生活保護を受けて生活をしていらっしゃるいわゆる生活保護世帯が非常に老齢化しているという点は御理解のとおりでありますが、この点は、一体いま大体どのくらいの人数に達しているか、具体的な数字をあげておっしゃっていただければ幸いでございます。私のほうでは大体三十五万人ぐらいと理解しておりますが、そのくらいでございますか。
  258. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 そのとおりでございます。
  259. 古川雅司

    古川(雅)委員 これは一般の大体三倍に当たる人数でありまして、生活保護世帯が老齢化しているということは、現在のいわゆる救貧的な、貧乏だから恵んでやるという生活保護制度で老後生活の所得を保障していこう、そういう形にいまなってきているわけですね。この点について、このままこれを放置しておいてもいいのか。先ほど大蔵大臣は、年金制度は福祉であるという意味の御答弁をなさっておりますけれども、その点どうもそぐわないような感じがするのでございますが、その辺の調整をどうお考えでございますか。
  260. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいまおっしゃいますように、日本の年金制度は、ことに拠出年金は制度が始まってまだ成熟をいたしておりませんので、非常に不十分でございます。また、福祉年金の額もきわめて不十分でございますので、老後保障という意味で年金制度をもう一度考え直してみなければなるまい、かように考えておるわけでございます。
  261. 古川雅司

    古川(雅)委員 厚生大臣の御答弁では、年金でもって老後の生活の保障をしていく、しかし、現状は非常にまだ充実していない、成熟していないという御答弁でございましたが、現実においては不十分でありますから結局これは生活保護で見ていくんだ、救貧的な生活保護制度で老後の生活を保障していくんだという意味にとれますが、そのとおりでございますか。
  262. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 お年寄りで生活の資が全然ないというお方は、まず生活保護ということを考えなければなりません。しかし、生活保護だけで十分ではございませんから、そこで年金制度というものももう少し充実をさしていく必要がある、かように申し上げているわけでございます。
  263. 古川雅司

    古川(雅)委員 老齢福祉年金はさておきまして、拠出制年金のほうは、大臣おっしゃるとおり、一定期間を経ないと一定水準の年金の受給権がないわけであります。これがいわゆる先般来議論をされてきております積み立て方式の年金の一つの大きな欠陥であります。もちろんだんだん修正が加えられてきている、修正積み立て方式だという御議論であろうかと思いますけれども、現実には一定の期間を経ないと一定水準の年金を受ける資格がないということになるわけでございまして、その点、諸外国では制度の発足当初から生活を保障するだけの年金を給付しているという点と大きな違いがあるわけでございます。  この辺は大蔵当局とも非常に関係の深い問題点になると思いますので、大蔵大臣にひとつお伺いしておきたいのでございますが、あなたは年金制度は福祉であるべきだ、福祉の一環としてお考えであるという御答弁でございましたけれども、現在の日本の年金制度を考えて、現在困っているお年寄りを救うのが先か、あるいは現在日本で行なわれておりますこの拠出制年金のように、足元はともかくとして計画的に将来に備えるのが本意であるか、そのどちらをおとりになりますか。
  264. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は両方が重要だと思います。御承知のように、日本の社会保障制度は、いままでは医療中心に発達してきましたので非常に医療保障に片寄っておるということでございますが、まだそれでもいままで議論されましたようにたくさんの片手落ちがある、これから充実すべき問題がたくさんあるということでございますが、次にこの問題で解決すべき問題は、老人を中心とした問題であるというふうに思っています。  そこでいまの御質問でございますが、拠出制年金の成熟を待つという余裕は現在なくなってまいりまして、当面どうするかという問題が出てまいりましたので、それは不拠出の年金制度を、ここで拠出制の年金が成熟するまでの間、これを充実していくという方向を考えなければいけないんじゃないかと思います。そういう意味で、いままで千円から出発した年金が二百円上げ、百円上げと毎年少しずつ給付を上げて、ちょうど十年かかってやっと千円上がったということでございますが、今回これを一挙に千円上げたということは、いままでのやり方から見ましたら相当思い切ったことだったろうと思いますが、これが財政の許す限り、今年度が皮切りでございますので、来年さらに財政との勘案によって、この拠出制の年金の成熟を待たないでどう年金を強化していくかということをやるのが、この次の、私はやはり政策上一番重点を置くべき仕事であるというふうに考えています。
  265. 古川雅司

    古川(雅)委員 厚生大臣に伺いますが、たとえば国民年金の老齢年金の額につきましては、現在御承知のとおり、三百二十円に保険料納付済み期間の月数を乗じて得た額、これがいわゆる一定期間を経ないと一定水準の年金を受けられないという根拠になっておるわけです。この老齢年金の額について、これは将来やはりこうした納付済み期間を乗じてなどということではなくて、いわゆる保険制度というよりも保障制度という立場で、老齢年金額については何か円にする、何十万円にするという、そういった書き方に改められていくべきではないかと思いますが、その考え方についてはいかがでございますか。
  266. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 やはり年金は拠出年金を主にして考えていくべきだ、かように考えます。いまおっしゃいますように、拠出年金の受給年齢に達しなくて老齢に達するという方は、まあ福祉年金の制度でいくより道がないのではないであろうか。そこで福祉年金の充実と、それから拠出年金にいたしましても、これは五カ年ごとに財政再計算期のときに支給金額もまた保険料も考え直すわけでございますが、しかし、来年はまだ再計算期には達しておりませんけれども、再計算期になったのと同じような考え方で、そして年金額とそれから保険料というものを考えまして、そして改正をいたしたいとただいまの段階では考えております。来年はこの年金と取り組んでまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  267. 古川雅司

    古川(雅)委員 老齢福祉年金の充実を御答弁なすっていらっしゃいますが、これはいまさら申し上げるまでもありませんけれども、発足した昭和三十四年、これは千円でスタートしたわけでございますね。それで三十八年に百円上げ、四十年に二百円上げ、四十一年に二百円上げ、四十二年に百円上げ、四十三年に百円、四十四年に百円、四十五年に二百円、四十六年に三百円と、こういう調子で上げてきたわけでございます。これは根拠があったわけですかね、その百円ずつ、あるいは二百円ずつというふうに小刻みに上げた理由。そしてまた今回思い切って千円上げましたね。これはまた根拠があったんでしょう。その点、いわゆる総理の言っている発想の転換というのがそこにあらわれたのか。であるならば、これは近い将来にまた相当高額に引き上げていくというお考えが当然そこにあるわけでございます。昭和四十八年度においては、この老齢福祉年金を幾らまで厚生省としては要求していくお心づもりでございますか。
  268. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 来年度の要求額を申し上げますことはまだちょっと早いと思うのでございますが、私はまあ福祉年金は五千円程度までぜひ早く上げたい、かように考えております。
  269. 古川雅司

    古川(雅)委員 大蔵大臣、お願いします。
  270. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 さっき申しましたように、ことしは十年分上げたことでございますから、そういう踏み切りをした以上は、来年も財政の許す限りこの増額をはかりたいというふうに考えております。
  271. 古川雅司

    古川(雅)委員 先ほど年金についての基本的な考えについて大蔵大臣は、現在困っているお年寄りを救うのが先か、それもそうだ、そしてまた、将来に備えるのも、それも必要だ、両方必要だという御答弁をなさいました。私ども公明党は、従来最低のお年寄りの生活保障額として月二万円の年金を主張いたしております。これで十分だとは私たち考えておりません。しかし、現在の厚生年金、国民年金のこの公的年金の実情を見ますと、数字をあげて恐縮でありますが、四十六年の予定額を見ましても、保険料収入とそれから利子収入、そして国庫負担分を入れますと一兆四千百九十三億円にのぼります。そこから厚生年金と国民年金の給付額二千百十三億円を引きますと、一兆二千八十億円が保険料積み立てに残っていくわけでございます。四十七年度の予算について、これも当局の資料をいただきました内容によりますと、保険料、利子、この両収入と国庫負担を入れまして一兆七千八百十五億円、これから厚年と国年の給付を差し引きますと一兆五千五十九億円と、これが積み立て金に回されていくわけでございますが、いろいろな試算によりますと、この年金制度が成熟していく昭和九十年代には、大体四十四兆円に積み立て金の額がのぼるというように私たち伺っております。政府はこの年金の積み立て金をいわゆる財投に運用しているわけでございますけれども、いわゆる年金の財投運用について、いよいよことしから福祉重点の政策に踏み切ったとおっしゃっているわけでありますから、この辺に当然再検討を加えられてもよろしいのじゃないか。先ほどの年金制度に対する再検討を考慮しているという大蔵大臣の御答弁とあわせて、この点の年金制度に対する財投運用についての根本的な考え方に再検討を加えるお考えはないかどうか、その点一言伺っておきたいと思います。
  272. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 積み立て方式と賦課方式の問題がございまして、賦課方式の問題も検討するということを私どもは申しております。いますぐにこの問題を解決するということはむずかしいと思いますが、長期的な課題として、いかなる時期にどういう形でこの切りかえをやったらいいか。欧米諸国は、やはり積み立て方式から出発して切りかえをしておるものでございますから、私どももこの検討はする必要があるという観点から、いま言われたような問題について検討はしておりますが、まだここで結論といいますか、検討の結果を御報告できるところまではいっておりませんが、検討中でございます。
  273. 古川雅司

    古川(雅)委員 御承知のとおり、厚生年金、国民年金の積み立て金の残高は、四十六年の見込みで六兆三千九百八十三億円、四十七年度の予算の推定では七兆八千六百十七億円に達するといわれております。現在ほんとうに困っているお年寄りに十分な年金を差し上げるために、この積み立て金を取りくずしてはどうかという議論も実はたくさんあるわけでございますけれども、私どもは、それはむしろ問題があるという点で、そこまで踏み切っておりません。しかし、先ほど申し上げましたとおり、年々この保険料収入と積み立て金から生ずる利子収入、それに国庫負担金を加えてまいりますと、もう一回繰り返しますが、四十六年度の予定で一兆四千百九十三億円、四十七年になりますと一兆七千八百十五億円という収入が見込まれるわけであります。私どもの試算では、これは厚生大臣にお伺いしたいのでありますが、たとえば六十五歳以上のお年寄りに月二万円の年金を差し上げるとすれば、私たちはこれを六百八十四万人と一応推定しておりますけれども、年額二十四万円で一兆六千四百十六億円で事足りる。もちろんこの中には、いま生活保護を受けて生活していらっしゃる方のお年寄りの数、それから老齢福祉年金を受けている方の数も入っておりますから、そういった財源は見込まなくても、積み立て金を取りくずさないで、しかも保険料収入、利子収入、国庫負担に十分余裕を生じながら、不十分であるけれども月二万円の年金は、やろうと思えばすぐできるじゃないか。ただ一点、このことによって、これまでのような調子でいわゆる積み立て金の増額は見込めない。昭和九十年代にこのままいけば四十四兆円になるというような、そういう事態は望めないけれども、現在の足元の苦しんでいらっしゃるお年寄りを救うためには、最低限の生活を保障する所得を得させるためには、こうした方式で十分できるのじゃないかと私たち考えるわけでございますが、大臣の御所見はいかがでございますか。
  274. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 おっしゃいますように、年金の積み立て金を取りくずすということについては問題があるとおっしゃいますのは、私のほうもやはりさように考えております。これを取りくずさないで、福祉年金二万円に増額をするということは、他のいろいろな社会保障、福祉政策と考え合わせまして、少し急激過ぎるのではないだろうかと率直に私は考えますので、ちょっと二万円を来年から実施をいたしたいということは留保をさしていただきたいと思います。
  275. 古川雅司

    古川(雅)委員 最後に一問。急激過ぎるという御答弁は非常に私意外でございますが、これはさっき御指摘申し上げたとおり、老齢福祉年金が千円で出発をして、年々百円か二百円そこそこ上げて三千三百円にやっと達した。その上げ方が非常におそかったから、今度この案が通っても三千三百円でありますが、いまだに低いわけでありまして、いわゆるいま困っているお年寄りを救うためには、ここまで思い切った前進を検討すべきではないか、するのが当然であるという私は認識でございます。  労働大臣においでをいただきました。時間になりましたので、最後に一問労働大臣に伺って質問を終わりたいと思います。  先ほど来の老人医療の無料化対策、あるいはまたこの年金の問題につきましても、絶えずいわゆる年齢が問題になりますけれども、現在定年制があるわけでございまして、これは強制退職ともいうべき、元気なうちに一生懸命働かしておいて、年をとってしまったらそれをぽいとほうり出してしまうという、こういう制度が現存するわけでありまして、これに対しては何ら法の保護はないわけであります。そういった点について結論だけ申し上げますけれども、定年制の延長について、当然これは企業、使用者と労働者との間の契約問題にはかかわると思いますけれども、いわゆる政府として勧告ないし要望ですね。大臣の決定において法制化できるかどうかという点を一点と、また定年の年齢の引き上げ、これが議論されておりますけれども、労働省当局としては何歳が妥当であるとお考えなのか。私どもは、さしあたってせめて六十五歳までというように考えている次第でございますけれども、当局としてのお考えを伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  276. 塚原俊郎

    ○塚原国務大臣 中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法は、この前御審議を願って昨年十月から実施されておる。その場合の年齢の問題でありまするが、おおむね四十五歳から六十五歳、高年齢者というといまのようなことになると私は考えております。そこで、いま定年制がどれくらいの年齢で行なわれているかといえば、大体五十五歳が過半数を占めておるのではなかろうか。五十五歳といえば、いまのこの医療の発達した今日においてはまだ働き盛りでございまするので、これは非常にもったいないことである。ことにいまの日本の人口構成から見ても、それからいろいろ労働力の需給関係から見ても、私は五十五歳ではお気の毒であると考えております。しかし、いま御指摘のように、労働省が法的措置によってこれをどうこうということはその問題の性質上、性格上、それはいまどうかと私は思う。あくまでも当事者同士、労使間の話し合いによってこの問題は話が進められるべきものであると思うし、またその方向への指導というものは十分いたさなければならない。いま多くの方は、一つの世論としてもまた常識としても、いまの私の考えのような方向にいっておる。それは労働力がそうさしておるんじゃなかろうか、需給関係がそうさしておるんじゃなかろうか、このようにも考えております。
  277. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これにて古川君の質疑は終了いたしました。  次に、島本虎三君。
  278. 島本虎三

    島本委員 きょうは、私は、公害立法に対しましての政府姿勢、それから現在起こっているいろいろな公害に対処する政府の所信、こういうふうなものについて逐一聞いてまいりたいと思います。  まず、公害立法に対する政府姿勢であります。  私が申し上げるまでもなく、委員の皆さんも十分いままで知っておられるとおりでありますが、昭和四十五年九月の宇都宮市の一日内閣、一高校生を通じての企業の無過失責任立法を国民に公約した、この件であります。四十五年の十二月、いわゆる公害国会でございまして、公害基本法を含めて十四の法律案が、あるいは改正あるいは立法化されたのであります。それにもついに無過失賠償責任立法は見送られた、こういうふうなことになったのでございました。また四十六年には、これは複合汚染の規定がないままに、いわば無過失法案が、水質保全法、大気汚染防止法、この一部改正法案の形式で出されましたが、これは結局は葬り去られてしまったのであります。また四十七年、いよいよ水質汚濁防止法、大気汚染防止法の改正案として、環境庁のもとで複合汚染の規制と推定規定を含んで、無過失賠償責任立法が成案されんとしておるのであります。  しかし、私ども新聞を通じて、あるいはそれぞれの立場で聞き及んでおるところによりますと、それでも健康被害にのみとどめておる。それと同時に、いま苦しんでいる人に対しての適用がない。同時にまた、有毒物質が限定されておる。他のものによる公害の被害者は救済できないのだ。それだけじゃなしに、賠償義務の履行のための財政上の裏づけ、これが芳しいものが見られない。あまねく公害被害者のための法典たり得ないような、またそれにはほど遠いような、こういうふうな感じさえしているのであります。  しかしながら、今回もまた再び、経団連をはじめとして企業側の圧力が相当強く、選挙含みのせいもあって、政府・与党のほうでも及び腰になっているということが巷間伝えられるのであります。私はまことにこれは残念であり、こういうふうなことがあってはならない、こう思っておるのであります。あえて商工部会の結論として、この公害立法のうちでも無過失賠償責任立法については、これは反対を申し合わせた、こういうふうなことさえきょう報道されておるのであります。言語道断といわなければなりません。まさに総理の公約であります。たびたびの公約、党の公約でもあり、選挙のスローガンでもあり、本年正月の記者会見でも断言した総理の態度、信念、こういうふうなことによってもはっきりしておるのでありますが、三年越しの公約がふらふらになり、これがまた消え去るようなことがあったならば、まさに三年越しで国民を裏切る結果になる。このことを私はほんとうに残念に思うのであります。はたしてこの無過失賠償立法が成案されるのかどうか、この点は国民が期待して待っておるところでありますが、これについて大石環境庁長官、どのように考えるか。その所信を国民の前に宣明してもらいたいと思います。
  279. 大石武一

    ○大石国務大臣 無過失賠償責任制度につきましては、すでにもう三年越しのこれは公約でございます。この国会には何としても提案をいたす決意をいたしまして、いま準備を進めておる段階でございます。すでにその要綱もきまりましたので、いまこれから法制局と十分に案を練りまして国会に提出いたすべく準備をしておる最中でございます。
  280. 島本虎三

    島本委員 いろいろと党内におきましては、商工部会ということで、けさの新聞ではこの申し合わせによって反対をきめた、こういうふうなことになっておりますが、こういうふうなことをきめても、長官としてはあくまでも生命をかけて提出するのだ、こういうふうなことでございましょうか。はっきり伺っておきたいと思います。
  281. 大石武一

    ○大石国務大臣 商工部会云々のことは一切聞いておりません。しかし、そんなことはあるはずはないと思います。それは何かの誤報ではなかろうかと思います。もちろん私は、この法案を出す決意をした以上は、自分の政治的生命をかけてこれを完遂いたす決意でございます。
  282. 島本虎三

    島本委員 山中総理府総務長官に伺います。  長官は初代の環境庁長官でもあります。ほんの一週間ほどでありましたが、その間においていろいろと訓辞をし、庁員に対しましての一つの気風を確立してございます。その中で、私はいまでもはっきり覚えておりますが、無過失賠償責任の法の制定でき得なかったことはまことに残念である、昭和四十六年六月三十日のイタイイタイ病判決を見てもわかるとおり、同法は被害者の救済に光明を投げかけたのである、環境庁が最初にやる大きな仕事は無過失賠償責任法の制定と被害者の救済法の拡充であると、はっきり言っているのであります。その後大石長官が二代目として任命され、総理府総務長官として、はっきりとここに公害等調整委設置法、これによって公害に対する紛争処理、これを三条機関にしようとするこの努力、それと同時に裁定権を入れた、こういうような法案を出したのであります。こういうような点においてまだ残っているのは無過失賠償責任の法律であり、その当時は確かにあなたもこの中に参与され、この制定を言明されたはずであります。いま大石長官もそのように言明されましたが、事裏表になる法律案、これだけはぜひあなたも責任の半分をになって、これの提出のために努力を願いたい、また願わなければならないのではないか、こう思いますが、ひとつ所信を伺います。   〔委員長退席、田中(龍)委員長代理着席〕
  283. 山中貞則

    ○山中国務大臣 一昨年の公害国会の場合に十四の法律を提出、各党一致して成立をさせてもらいましたときに、私は、公害にかかる被害の無過失賠償法というものを成立せしめ得なかったことを、みずからの政治力の足りなさとして深く恥入りました。したがって、行きがかり上初代環境庁長官というわずかの期間でありましたが、就任をいたしましたことをまた非常な光栄に思ったのでありますけれども、その際、その反省のことばも入っているはずであります。したがって、環境庁という役所がわざわざ大臣を一人ふやしてまでつくられる時代の趨勢というものを自覚すること、そしてそれに伴って私自身の政治力不足であったにしても、残された課題の大きな問題は、無過失賠償法の成立であるということを私は確かに申しました。しかもそれは、政府・与党として一体となって国民に責任を負っているものであります。したがって、現在は担当の専任の環境庁長官がおられますから、私の協力というものは、行政の立場上は分野を越えて公的な立場ではできませんけれども、大石環境庁長官のそのような決心を受けての作業については理解と協力とをしていきたいと思います。ただ、私のつくりました原案と今回の環境庁が新しい決意をもって取り組みました案とは、一、二の点において若干前進したと私から見れば思われる点があります。それらの点について、十分法制上の議論あるいはまた司法との関係等において議論を詰めていかなければならない点は確かにあると思いますが、しかし、姿勢はそのようにあってほしいと念願をいたしておりますので、御要望のとおり、環境庁長官に対する直接、間接の支援をしてまいりたいと存じます。
  284. 島本虎三

    島本委員 よくわかりましたが、これはもうやはり三年越しの自民党の公約であり、内閣の一つ国民に対する約束であります。そういうようになりますと、今回だけは政党内閣の一つの行き方としても、これはもうはっきりこれを成立させなければ、これは国民から不信を招くことは当然であります。こういうような意味からしても、第二の政治資金規正法になるのじゃないか、こういうようにさえいわれるのでありますが、断じてそうなってはならないし、党内の実力者として国民が期待しております田中通産大臣に、はっきりとこれに対しましての所信を伺っておきたい、こう思うのであります。
  285. 田中角榮

    田中国務大臣 無過失賠償責任制度の創設につきましては、所管大臣でございます大石環境庁長官が述べられたように、一日も早く成案を得て本国会に提案、御審議の上成立をさせていただきたいという考え方でございます。
  286. 島本虎三

    島本委員 一日も早く出るように私は心からこれを期待して、じゃこの問題に対してはピリオドを打ちたい、こういうように思うわけであります。  次に、同じ環境庁であります自然環境保護法案、これもいろいろと関係官庁の間で詰めておられるようでありますが、調整も難航しているということを聞いておるのであります。おそらくはこういうような前向きの一歩前進、国民が待望しているようなこういうような法律が難航する、こういうようなことは、まことに私はもう不可解なのであります。いわば今日的な特徴ではなかろうか、こういうようにさえ思うのでありまするけれども、これも一種の目玉商品であり、国民はこれを期待していることは、これはもう間違いございません。こういうような点等からして、環境庁でもこの成案を急ぐべきであります。これに対しましても、何かいろいろ各省間の権限争いによってさっぱり進まない、あるいは見送られるかもしれないということを巷間うわさされるのでありますが、これもとんでもないことです。そんなことがあってはなりません。私は激励する立場ではございませんけれども、長官のこれに対するはっきりした信念をもう一回聞かしてください。
  287. 大石武一

    ○大石国務大臣 自然環境保全法、これは私どもがいままでは自然保護法と言ってまいりましたが、おそらくは自然環境保全法という名前で提案されるかと思いますけれども、その法案につきましても鋭意いまその成案を作成中でございます。これは各省間にいろいろな権限の問題があるようにうわさされておりますけれども、さほどむずかしい問題はございません。これは話をすれば十分に理解のつく程度でございまして、現にそのような方向に進んでおります。したがいまして、これも一日も早く成案を得まして国会に提出をして、御審議を賜わりたいものと考えておる次第でございます。
  288. 島本虎三

    島本委員 この問題は、やはりその一言で私はいいと思います。とにかく新しい官庁であり、やること一つ一つが壁にぶつかる率が高いようであります。しかし、やはりこの点は自信を持って大いに進めるべきである。このことをはっきり私から申し上げさしてもらいます。  それと同時に、いまそれをやりながらも残されているいろんな問題がある。この問題に対してもやはり環境庁なりに整備しなければならないと思います。たとえば冬季オリンピック大会が終わりました。国立公園内の恵庭岳をいわゆるジャイアントスラローム、アルペンコースに利用したのでありますが、それを原形復旧というのがたてまえであります。もうすでに終わりました。しかしながら、その部分だけはげ山のようにはっきり残っているのであります。これをどのようにして復旧させるのか、その費用はどうなのか、これはやはり心配な点であり、国民が早く緑を復元させるようにこれを願っているに相違ありません。これはどういうようになっておりますか。
  289. 大石武一

    ○大石国務大臣 恵庭岳の自然はきわめてすばらしいものでございます。これは何としても原形の姿で残したかったのでありますが、オリンピックという大義名分のもとに一部の樹木を切りまして、大滑降レースをつくったのでございますが、そのときの条件に、オリンピックが終わり次第もとのとおり復元するという条件でこれが許可になっております。で、御承知のように、あの滑降レースが終わった直後にもすぐいろいろな施設を取り払い始めたという新聞の記事がございましたが、それがオリンピック組織委員会の姿でございます。あれは冬季オリンピック組織委員会が中心として責任を持ってあの恵庭岳を復元することになっております。その予算も一部昭和四十七年度政府の予算の中に盛られておりますし、また十分にその覚悟を持って組織委員会でもその予算を用意しておると思います。そういうことで、十分にわれわれとしても復元のしかたにつきましてはいろいろとお互いに協力をして、もとのようなりっぱな自然の姿に返したいと考えております。  費用は、オリンピックの組織委員会ですでにそれは準備しているはずでございます。それから政府の予算の中にもこれは一部入っております。
  290. 島本虎三

    島本委員 木を植え、もとのようにするということは少なくとも五十年はかかると思います。それに対しまして、六千万円程度の予算では、これは施設を撤去するだけの費用にすぎない。この自然環境をそのまままた復元させるというところまではまだほど遠いんじゃないか。この点等においてもやはり環境庁は十分留意しなければならないはずだ、こう思うのであります。口ではよくても、やることがやはり五十年を待つような状態では困るので、これを三十年、二十年にして復元するような、こういうようなところまで考えるべきではないか、こう思うのでありまして、これに対しましては、時間の関係答弁は要りません。早くこれを緑に復元させるように最大の努力を払っておいてもらいたい。このことを強く、要請いたします。  それと同時に、おかしいことが一つあるのです。というと、国立公園内のやつはすぐこのままいく。都市公園であるならば二十年間もほっちゃらかされる。同じ公園であるならば、こういうようなことがあってはならないのであります。それは、かつてその下に旧海軍が防衛上防空ごうを掘って縦横無尽にそういうような穴をめぐらしておったという、飛行機で行く到着点である千歳、千歳の旧海軍用地内、その上が青葉公園なのでございます。ただ一つ公園であって、そして小鳥の村がその辺にできており、そして三十五年には、そこに建てられております体育施設、これがりっぱなものであるということで文部大臣の表彰さえ受けておる。こういうようなところ。ところが二十年間縦横無尽に掘ったこの防空ごうはそのまま。あるいは中に砲弾があるといわれ、あるいは中に何とかがあるんじゃないか、こうさえうわさされても、さっぱり資料もないままに放置されて、ここに二十七年であります。最近危険で、そこを通られないで、そのまま監視員を置いて、そしてさくさえ設けておる、そういうような個所が四、五カ所ある、こういうようなことであります。公園にして二十年間そういうような状態で放置して、そしてまだ散策もできないようなこういうような状態に放置している都市公園、これがあるとするならば、これも重大な行政上の手落ちではないかと思います。これは千歳市の青葉公園の実態でありますが、この責任は一体どちらなんですか。建設省ですか、自治省ですか、環境庁ですか、防衛庁ですか。すべてがこれは調査してあるのです。そのまま施設はしてないのです。どちらでしょう。
  291. 西村英一

    西村国務大臣 これは千歳市の青葉公園でございますから建設省の所管でございます。島本さん北海道の方ですからたいへんよく御存じで、私たちよりもずっとよく御存じだろうと思います。またいままでの国会でも御質問もあったようであります。確かに広い公園でございますが、ずいぶんこの旧軍の防空ごうは残っておりまして、したがいまして非常に危険であるということから、千歳市では昭和四十五年からこれをなるべく直すということでやっておる次第でございまして、端的に申し上げますれば、いままでやっておりましたが、ことし四十七年は、これはほとんどもう完成すると思います。したがって、いま一部立ち入り禁止になっておりますが、その立ち入り禁止も解除ができる、四十八年度から解除ができるということで、いまわれわれも一生懸命督促してつとめておるところでございます。
  292. 島本虎三

    島本委員 次に、私はPCBの汚染による被害、最近これが意外に多くなっており、これが日本国じゅう、それも大蔵大臣の関係する点にまで及んでおりますので、この点等におきまして、はっきり皆さんの認識を新たにしてもらいたい、こういうような意味で質問をさしてもらいたいと思うのであります。  まずPCB、これはもう日本では、私が言う必要もないほどはっきりした事実でございまして、鐘化と三菱モンサント化成がつくっているカネクロール。米ぬか油の油症患者が出てそれ以来有名になった物質であります。しかしこれが体内に入ると、体内で分解、排せつされないままにこれが残るのであります。それが中枢神経等の脂肪に蓄積されて、そして不治の病になってしまうというおそるべきものであります。これがもうすでにいろいろな方面から検出されておるのであります。けさの報道によりますと、もうすでに田子の浦の製紙工場からノーカーボン紙でつくった廃紙の再生によるヘドロ、これが海に流されることによってPCBを含んだ二百トンのヘドロが田子の浦に流れておるという報道がありました。そしてそこからとれる養殖しているハマチ、こういうようなものでさえも肉に一PPM、そういうような含有量を発見した。また脂肪には一一PPMが検出された、こういうようなことであります。しかし京都市の衛生研究所の調査によりますと、PCBに日常接しておらない人、これを対象にして十九名調べたそうであります。その結果、平均四・七PPM、最高は一三・三PPM検出された、このような報告がございます。カネミ油症でその後死亡した人から検出したPCBの最低値が一三PPMであります。危険の量にもうすでに達している人が多いのであります。これ、だけじゃございません。私どもの調べたところによりましても、四十四年と四十六年、油症の認定患者の一人から続けて三人の黒い赤ちゃんが生まれた。黒い赤ちゃんです。黒いから黒ちゃんかもしれないのですが、黒い赤ちゃんが生まれた。これもPCBが数年たっても体内に減らずにとどまっておる、そして母体から胎児に移っていく、したがって有機水銀の胎児性水俣病にあるように子供に濃縮されて蓄積されている、こういうようなことであります。こういうような物質が日本人の一番大切なたん白資源の魚その他の中にいまや蓄積されているのであります。それを知らないで食べておってこういうようなことになる。これまた重要であります。  こういうようなことからして、先般細谷委員から通産大臣に質問があり、生産に対しましては制限する、こういうような答弁を得たのでありますが、生産と使用を即刻禁止すべきじゃないか、こういうように思うのでありますが、通産大臣、これはいかがでしょう。
  293. 田中角榮

    田中国務大臣 PCBの生産工場は二つでございまして、その一つはもうすでに製造をいたしておりません。開放性と閉鎖性の二つに使われておりますが、問題は開放性のものでございます。田子の浦というようなところは製紙業者がノーカーボン紙の製造をやっておったわけでございますが、これに使われておったものが流出をしたということで、これはもう昨年から禁止をいたしておりますし、現にそのような公害が新しく加わるということにはなっておらないわけでございます。問題は閉鎖性のものでこれにかわるものが発見されないという状態においてどうするのかという問題がございます。これは閉鎖性のものでコンデンサーとかトランスとかに使われておるわけでございますが、こういうものに対しては回収のできるものでなければ使用しないようにということで、厳重な、公害を出さないということに対して、PCBの公害というものを絶滅するような方向で施策を行なっておるわけでございます。
  294. 島本虎三

    島本委員 通産大臣のその意気はまさに壮といたします。通産大臣がいま御答弁くださいましたが、しかし三菱モンサント、それから鐘化、この二社でさえも昨年一万五千トンの生産をあげているのであります。そして、そのうち需要量は六千トンでありますから、まだ在庫品が一万トン近く、昨年の分があるわけであります。さらに、三菱モンサントは五月まで生産を継続いたしますから、その量を合わせるとまだまだたいへんなものが残っておる、こういうようなことになります。そして、そのままにしておくと、これは国民の体内へ入ってそのまま蓄積され、また思わざる不治の病になる、こういうようなことになるのでありまして、これは在庫そのものがはたしてどれほどあるのか、これを知ることなしには、この解決にはならないと思います。  かつてBHC、この問題でさえも、二、三年間に大量にこれを使わせてしまった。その結果がまた農薬公害として、これが国民に被害を新たに及ぼした、こういう結果があるのであります。いま、大臣が、この製造を禁止する、またやめさせるようにする、もしやらしても、それが保存のきくようなものにして、回収便利なものにしていきたい、こういうようなことに私は理解いたしましたが、いまある在庫そのものを、また製造禁止しても、全部使わせるようなことがあったならば、その過程において発する公害、これはばかにできないのであります。在庫はどれほどございますか、この点についての処置はどうされますか、ひとつ御高見を賜わりたいと思います。
  295. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほど申し上げた三菱モンサントは、製造がことしの四月までで、五月からはもうやめるということでございますので、このように訂正をいたします。  在庫品の総量は、いま五百トンでございます。五百トンであっても、まだ製造を続けておる鐘化があるわけでございますから、こういうものはどういうものに使うのかということが問題になるわけでございます。これは、先ほども申し上げましたように開放性のもの、人の手に触れるようなもの、体内に入るようなものには絶対に使ってはならない、こういうことでございますし、これはもう使用しておらないということでございますので、開放性の問題としての公害は除去できるわけでございます。しかし、閉鎖性のものにつきましては、コンデンサーその他テレビの受像機等にも一部使われておりますし、またトランス等に使われております。ですから、こういうものを多量に使わなければならないというのは電電公社等でございますが、こういうところは、確実に回収する、回収できる、公害は国民には及ぼさないという保証のあるもの以外は使わないということで——この公害というものは、いままですでに使われてしまった古紙とか、いわゆるちり紙の類とか、古い紙を使ってつくられたもの等をどうするのかという問題が残っておるわけでございます。ですから、そういうものはできるだけ業者に回収をさせるようにという努力もいたしますが、これからの公害の発生ということは、絶無にするように万全の対策をとってまいりたい、このように考えております。
  296. 島本虎三

    島本委員 したがって、真に国民の健康を考えるならば、やはりいまおっしゃられましたようにして、メーカーにたくわえられている大量のPCB、この原液と使用した各種製品、こういうようなものに対して厳重に監視して、そして、あるいは没収あるいは業者によって処理をさせる、こういうようなところまでやらないと、かつて行なわれたBHCのような、こういうような結果を再び起こすことになるのじゃないか、こう思うのであります。  ことに、私どものほうでちょっと調べたところによりますと、これも大臣、こういうような結果が出ておるのであります。感圧紙によるところのものですが、政府はこの感圧紙等については、一月からすでに使用できない、禁止した、こういうように言っておるのであります。しかし、感圧紙を調べたところ、二十三品目中、二十六サンプルのうち十四サンプルから——これは半分以上PCBを使用しておるというところでですけれども、最高三・〇二五%含まれているPCBを使っておる。平均値としては〇・三五%のPCBを含んでおる。本来全然入っていないはずのこういうような紙からもこれが検出できた、こういうようなことであります。そして十社を調べたところが、十二サンプルの全部から、最高四PPM、平均一・〇七PPM含まれておる、こういうようなことがはっきりしたそうであります。全然これがないと思われるところからもこういうふうに出ておる、こういうようなことであります。まして、製造を禁止する、こういいましても、意外なところにこういうようなものがあらわれるというおそれがあるのでありまして、この系統等においては今後十分気をつけなければならないと思います。  この点については、特に厚生大臣にお伺いしておきたいのでありますが、これが体内に入る経路——開放性のものは禁止したと、いま通産大臣はおっしゃいました。禁止して、大いにいまほっとしたところなんでありまするけれども、体内に入る経路を見ると、禁止しても、そのままでよろしいという結果にはならないということであります。これはまず、間接には、感圧紙が再生紙に入っていくことになると、トイレットペーパーにつくりかえられる。そしてまた、これはもうヘドロとして海に流され、それがまた魚によって濃縮される、こういうようなことになるわけであります。トイレットペーパー等を通じて、また尿を通じて肥料として野菜に入る、こういうような経路も当然あるわけであります。当然それは人間の口にも入る、こういうような間接な行き方もあるのでありますけれども、しかしながら、それだけじゃございませんで、直接そのものを取り扱っておる人の体内に入る、こういうような経路もあるのであります。  しかし、それにいたしましても、最近の例としていろいろあげられておるのでありまするけれども、厚生省でも、それがはっきりわかった場合は追跡調査をして、使用職場、こういうようなところまで入って、直接に間接に、触れることがないようにこれは処置すべきじゃなかろうか。国民の健康を守る立場からしてもこれは当然じゃなかろうか、こういうふうに思うわけなんです。触れる場所によって、それは紙から直接体内に入ります。またそれが焼かれる。焼かれると空気になって大気中に散る。これが雨になってまた落ちてくる。そのものが間接的にまた人間のからだの中に入ってくる、こういうような経過さえ経るのであります。したがって、処理したということで安心しないで、その結果は十分これを追跡調査して監視しなければならない、こうなんであります。このPCBに対して厚生省はどのような態度をとっておられますか、この際はっきりさしておいていただきます。
  297. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 PCBの人体に及ぼす影響はまことに重大であるということは、先ほどお述べになったとおりでございます。したがいまして、これらは、結局一番の問題は、口から入る問題、したがって食物からだ、かように考えます。そこで、PCBに汚染された海底、そこらからとれる魚介類というようなものは特に注意をしなければならない、かように考えております。厚生省といたしましては、そういったPCBの分析方法、それから慢性毒性の研究並びに実態調査というものにいま取り組んでおるわけでございまして、いやしくもそういったおそれがあるという場合には、これの禁止のできるような措置をとりたいというかまえをいたしております。さように御承知をいただきたいと思います。
  298. 島本虎三

    島本委員 しかし、やはり何としても、直接間接あるいはどのような方法を講じても、これが人体に影響するというようなことになりますと、ただかまえだけをしておいても、人の健康を守る厚生省としては、また行政の手おくれが生ずる、こういうようなことになります。もっと積極的にこの解決方法を厚生大臣として指令して、そして対処しなければならぬはずであります。かまえだけでは不足であります。今後ひとつ重大な関心をもって対処してもらいたい。それと同時に、開放性のものは絶対に使用させないのだ、こういうような通産大臣の御意向がございました。  それで郵政大臣にちょっとお伺いしたいのでありまするけれども、やはりいろいろ使用職場を見ます場合には、郵政省では郵便貯金の預入申し込み書、預かり証、その他大量の複写紙を使っておられるようであります。これはそのまま使うと、禁止したものを使い、それが従業員に直接被害になってあらわれるのであります。これはまことに重要なのであります。これは黙って使わせておるのですか。この問題に対してどういうように対処いたしましたか。
  299. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 PCBについて取り調べをいたしたのでございますが、郵政省といたしましてはPCBを使ったノーカーボン紙をいままで十三種ばかり使用いたしておったようでございます。そこで、昨年の二月に九州大学のノーカーボン紙についての毒性の発表がございまして、あれから新しく調達するということは全然やめておりますわけでございますけれども、実はそのうちただ一種だけ人体に触れることの少ない窓口の会計機のテープに現在まで使っておったようでございます。きょうの先生のお話を承って、たいへん毒性が大きいということがわかりましたので、今後これは使わせないことにいたしたいと思っております。  それからいま御指摘の郵便貯金、ことに定額貯金の申し込み書にそういうものを過去において使った事例があるわけでございまして、かなりそういうような申し込み書が多いようでございます。それを扱うについてはただいま手のサックを使用して使わせております。そのあとで手を洗ったり何かさせておりますけれども、根本的に申し込み書の回収と申しますか、取りかえというようなことを考慮しなくてはならない、こういうようにただいまでは考えておりますわけでございます。
  300. 島本虎三

    島本委員 郵政大臣の人柄と申しますか、そういうふうに納々として真剣にやるのはわかるのであります。ただ、大臣、次から次とそうでない事態があらわれてくるのです。私は、きょうもしゃくにさわってしょうがないことが一つあるのです。われわれが調査に行ったら、大臣がいろいろ話をしなさい、親切に説明しなさいと言っても、下の官僚は言うことを聞かないで、われわれに対してどこから来たというような顔をして、われわれの質問にも答えない、こういうのがいまの中間官僚の一つの姿であります。  私はこれはまことに残念なのでありまするけれども、大臣のいまの答弁を聞いておりまして、この点をひとつ指摘させてもらいます。それはPCBの事務用品についでありまするけれども、九州大学の倉恒教授と増田助教授、この調査によりますと、PCBの複写紙百枚を扱った指先から十一マイクログラムから五十二マイクログラムのPCBを検出した。これは石けんで洗っても三分の二は残留する。手の脂肪についたものは洗っても落ちない。皮膚からも体内に入るのである、こういうようなことであります。いま大臣は石けんで洗えば落ちるのだ、サックをはめておればいいのだ、こういうような希望的観測を申されましたけれども、すべてがすべてサックをはめてない。現に窓口に来るお客さんはサックをはめてくる人はないのであります。したがって、そういうような場合にはほとんどサックをかけておらないというのが現状でございましょう。  香川県のある局では、私の調査では、石けんで洗えばこれはもう安全であるという公用私文書を出しております。こういうような不勉強なんです。全逓マル生なんかになったら熱中して要らない人員ばかりかかえておいて、肝心のこういうことになったらほとんど科学性もなく不勉強、これがいわゆる郵政の中間官僚の姿です。この点については大臣はもっとよく指導すべきである。こういうようなことは全く許されないことです。ことに残留性が高くて、蓄積性も高くて、慢性中毒の危険があるということははっきり倉恒教授が言明しておるところであります。石けんで洗っても三分の二は残るのだ。まして皮膚を通じて入るのだというのに、石けんで洗えばいいのだ、こういうような公用私文書を出しておるわけです。こういうような点ですから、まことに私としてはざんきにたえない、こういうように思うわけであります。今後こういうことのないように大臣自身十分注意すべきである、こういうように思うわけです。だいじょうぶですか。
  301. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 全くそのとおりに思いますので、必ず実行いたしたい、このように考えております。
  302. 島本虎三

    島本委員 これは四国の松山郵政局です。チ千百十六、定額郵便貯金預入の申し込み書、これは旧製品の使用を全部禁止いたしました。そして禁止すると同時に、それに対する昭和四十六年十一月二十七日付で局報を出して、その処理方法を厳命しておるのです。その局報によると、新製品に切りかえることに決定した。しかしここでは旧製品は何ぶんの通達あるまで厳重包装の上、貴局で保管した上、新製品不足を来たした場合には新製品到着までの間不足分として使用せい、これは一体どういうことなんですか。厳重に包装して保管せいまではいいのです。そして不足した場合はそれを取り出して使え、昭和四十六年十一月二十七日付のこれは松山郵政局報です。こういうばかげたことをやっておる。一体何ということですか。少し大臣も公害教育を中間幹部にしないとだめです。あなた、これは事実知っておりますか。
  303. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 そういう事実は全く知らなかったわけでございまして、申しわけございません。将来御期待に沿うように十分指導してまいりたい、こういうように考えております。
  304. 島本虎三

    島本委員 時間も迫ってまいりますので、これは端的にあと二、三質問を申し上げますけれども、取りかえられたのはチ千百十六号だけであります。そして預かり証チ三百五号、外国郵便為替振り出し請求書、それと監査テープ、これらは取りかえられていないのですが、現用のものを、同じものを使ってございます。これは危険じゃございませんか。おそらくは、これはもし指をなめてやったとしても、そのものは直接口を通じて体内に入る可能性と危険性があるのです。こういうようなものに対して、しょっちゅう手が触れるものだけをやって、そして預かり証であるとか外国郵便為替振り出し請求書であるとか監査用のテープであるとか、同じものをつくったものをそのまま現用させておる、こういうようなことはあってはならないことです。これはやはり使用回数が若干少なくても、いろいろな意味でそのものを捨てればそのまま再生される。再生された場合にはそのまままた直接体内に入り込むようなこういうような状態になるのでありますから、厳重に処分するなら処分する、保管するなら保管するように包装する、途中で抜き出して使えなんというこんな中途はんぱなことでなくてはっきりすべきであります。したがってチ千百十六号でさえ全国で取りかえられたのかどうか、全部取りかえられたのかどうか、まだ使用されているところもあるのかどうか、この点についてはどうでしょう。
  305. 田中龍夫

    田中(龍)委員長代理 ちょっと島本委員に申し上げますが、通産大臣が五時から所用がございまして退席したいという御要望が来ております。島本君の御質問でもし通産大臣にさらに御質問のあれがありましたら、この際ひとつ先に通産大臣にお願いしたいと思いますが……。
  306. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 ただいまの御質問につきましては、事務当局から答弁させます。
  307. 斎藤義郎

    斎藤説明員 ただいまのお話でございますが、監査テープ以外は全部取りかえられております。
  308. 島本虎三

    島本委員 通産大臣は万やむを得ない用事があるようでありまするけれども、私はこのあとで、関西電力が福井県に建設を計画している新しい原子力発電所、この問題について原子力発電所のいわゆる放射能公害に対しての基本的な立場を伺っておきたい、こう思うのですが、この問題は大臣と直接関係ないでしょうか。
  309. 田中龍夫

    田中(龍)委員長代理 もちろん予算委員会が主体ではございますから、しかし、島本委員のほうで大臣のほうの御要望にも調整していただきたいと思って申し上げたんですから、もしできればそれ以後の大臣以外の御質問はあとにして、通産大臣にその問題を先に御質問できませんか。
  310. 島本虎三

    島本委員 そういうような機敏なじょうずな質問は、私は不敏にしてできないのであります。したがって、あとこの発電関係のものはかわって大いにやる人がもしいるならば、無過失賠償責任法を責任を持って出す、この言明がございますから通産大臣はいい、こういうようなことにしてもよろしゅうございます。
  311. 田中龍夫

    田中(龍)委員長代理 それではひとつ大臣、御了承願います。
  312. 島本虎三

    島本委員 ただいま郵政省のほうから監査テープ、これだけを残してあと全部かえた、こういうようなことであります。そうすると、新しい用紙はこれはカーボンペーパーではなくてマイクロカプセルを使用しているもので、その中にPCBのかわりにどのような物質を使用しているのか、この点を明らかにしてもらいたいと思います。
  313. 斎藤義郎

    斎藤説明員 炭化水素系の薬品の塗ってありますPCBを含まない普通の紙を、式紙を使っております。
  314. 島本虎三

    島本委員 それはカーボンペーパーのことですか。
  315. 斎藤義郎

    斎藤説明員 薬品は、外観は同じようでございますけれども、PCBは含んでおりません。
  316. 島本虎三

    島本委員 これはPCBを含んでおらない同じような薬品とすると、どういう薬品ですか。
  317. 斎藤義郎

    斎藤説明員 正確な商品名はちょっといまわかりませんけれども、炭化水素系の薬品でございます。
  318. 島本虎三

    島本委員 PCBが含まれていないということは、はっきり断言する根拠は何ですか。
  319. 斎藤義郎

    斎藤説明員 業者からの規格を見まして、PCBを絶対含んでおらぬ、こういう判断をしておるわけでございます。
  320. 島本虎三

    島本委員 業者から言われたから中に入っていない、こういうようなことで、大臣、説明になりますか。業者の言うとおりで、それでいいんですか。大臣、これでいいんですか。
  321. 斎藤義郎

    斎藤説明員 ちょっとことばが足りませんでしたけれども、業者が第三の権威ある研究機関の証明を得て、それを添えたものを購入をしておる、こういうことでございます。
  322. 島本虎三

    島本委員 その権威あるものというのはどういうものですか、ちょっと見せてください。そういうようなものを私どもは不敏にして知っておりません。マル生ばかりやっているものだから、肝心のところで手抜かりしているじゃないか。
  323. 斎藤義郎

    斎藤説明員 ここに一例がございますけれども、三菱の関係の式紙でございますが、これが毒性試験ということでございまして、日本大学医学部薬理学教室というところの試験結果を添えて持ってきております。
  324. 島本虎三

    島本委員 それにはいわゆるマイクロカプセルを使用している、こうなっていますか、使用していないということになっていますか。それともまたカーボンペーパー、これを使用しているということになっていますか。どういうようなものでこれは構成されていますか。それがはっきりしているならば、それが言えるはずです。
  325. 斎藤義郎

    斎藤説明員 きわめて科学的な実験データでございますので、正確には私たちわかりませんけれども、これの内容を見ますと、絶対にPCBは含んでおらぬ、こういうことになっておるわけでございます。
  326. 島本虎三

    島本委員 まあ、そう言うから信じなさい、こう言うようなものでありまして、あとからまたこれは出てくるのでありますが、私どもは、このPCBを全く含まない、こう称するところの三菱のNCR紙、これからも高知県の衛生試験場の分析によるとPCBが検出された、こういうことさえあるのであります。したがって、はっきりしたものがわからないで、ただ業者がないと言うからよろしいのだ、いままで使っておったPCBの問題でもこれは業者は、人畜無害である、そしてこれによって成績の向上のためになかなかよろしい、こういうようなことで買ったに相違ない。私ども、こうしてみますと、郵政大臣、下部においてまだいろいろなこういうような技術的な、科学的な面はまことに不足しておる、こういうようなことについてはっきりいたしましたから、今後この点においてはひとつ十分に研修させて、こういうようなことがないように、またこういうようなことがないようにするためには、いまやっているくだらないマル生のような、ああいうようなことはやめさせるのが第一番です。大臣、この点だけはっきりやろうじゃありませんか。これはいま郵政管内だけの問題じゃないのです。ほかのほうの職場でもこういうようなものの使用は全面的に禁止させるべきである、こういうふうに思っているのです。この点につきましてはだれに聞いていいのかわかりませんが、これは厚生大臣でしょうか、労働大臣でしょうか。
  327. 大石武一

    ○大石国務大臣 お答えになるかどうかわかりませんが、昨年の十二月の二十四日の閣議におきまして、いろいろな新しくこれから使用する化学製品につきましては、十分に毒性その他を検討して、そしていやしくも間違いのないように、各省においていろいろの連絡努力をするということを申し合わせましてそのような方針をきめたわけでございますから、そういうことを中心としてできるだけ間違いのない、公害を及ぼさないような化学製品だけを世の中に出すという方向に持っていきたいと考えておる次第でございます。
  328. 島本虎三

    島本委員 いかがでしょうか、もう一回郵政大臣、厚生大臣、労働大臣に順次答弁願いたい。
  329. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 きょうの先生の御質問で、非常に教えられるところが多かったのでございまして、それをよく体しまして指導あるいは研修ということで、大いに鞭撻していきたいと思っております。
  330. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 先ほども申しますように、科学技術庁それから環境庁を中心といたしまして、人体に及ぼす影響を各方面からただいま検討をいたしておるわけでございますので、万全を期してまいりたいと思います。
  331. 塚原俊郎

    ○塚原国務大臣 労働省の所管事項との関係ということになりますると、どこで関係づけるか、ちょっと私も迷っているのですが、非常に重要な影響のあるものというふうに拝聴いたしておりまするので、いろいろ私の知っている限りのことを調べました。今度この国会で御審議を願うために、労働安全衛生法というものを提出いたしておりまするが、その中にいまおっしゃったような問題は入っておりませんで、発ガン性のおそれのあるベンジジンその他というようなことになっておりまするので、直接いま問題になっている点は、私のほうの関係からはややはずれているのではなかろうか。決して責任を回避する意味ではございませんので、事の重大さというものをよく認識いたしまして、さらに労働省としてとるべき処置があれば考えさしていただきたいと存じます。
  332. 島本虎三

    島本委員 大体この問題はこの辺でピリオドを打ちたいと思いますが、労働大臣、いまあなたが出しておるあの労働安全法ですが、この中ではいろいろと現にこれが被害を及ぼしたという過去のものだけを禁止する、及ぼしつつあるという現在進行形のものには目をつぶっているのです。私どもはそれを調べた結果、はっきりわかりました。労働省が職場のいわばほんとうの安全衛生を、今後は法をもって、両罰規定をもって厳重に監視するのだ、こういうようなことになるならば、いまのように現在進行形のPCBの問題でも、十分その法の中に盛り込まなければならないはずであります。労働省の新たに出される法律案の中にこれは入っていないのです。調べてあるのです。ですから、今後こういうものは入れるように努力して、いまからでもおそくないですから、十分その点善処するように、私は心からこれを期待しておきたいと思います。よろしゅうございますか。
  333. 塚原俊郎

    ○塚原国務大臣 いろいろ専門家の御意見等承りながら、かなり思い切った法律であるというふうに私は存じておりましたが、いまその道の専門家である島本君からそういう勉強をさしていただきましたので、今後労働民生の確保という見地から、しつつあるというのではなくて、今後そういうおそれのあるというものについて十分考えていきたいと考えております。
  334. 島本虎三

    島本委員 では科学技術庁長官、関西電力で福井県に建設を計画している原子力発電所、大飯発電所、これは原子炉二基、百十七万五千キロワット、美浜発電所、三号原子炉、八十二万六千キロワット、原子炉の安全専門審査会は、設置しても安全は確保されるという結論を出したそうであります。これは住民の意思と健康に対しては、私どもは、急にこういうようなものを出したことは無視した審査の結果じゃないか、こういうふうに思っておりますけれども、当然日本科学会議ですか、こういうような方面からも、建設現場の地質や温排水の問題等を含めて、これは安全といえないのではないかという公開質問を原子力委員会並びに科学技術庁に提出したということを承っております。安全性の点ではこの点ははっきりと確信があるのですか。もしそうでなければ、やはりこの周辺の大飯住民を実験のモルモット扱いにするという結果になって好ましくないのでありますが、この結果についてお知らせ願いたい。
  335. 木内四郎

    ○木内国務大臣 いまお話しの問題は非常に大事な問題だと思うのです。原子力の平和利用が非常に進んでまいりまして、そこでこれに伴って安全管理の問題というものは、私は、何としても最も優先してわれわれが考えなければならぬ問題だと思うのです。そこで原子力委員会におきましては、いまお話しの安全専門審査会に検討願って、そして諸先生方が、あるいはアメリカに行かれたり、いろいろな研究をされました結果、この三月六日に、今度の計画によるところの原子力発電の設備というものは十分に安全を確保し得るものである、こういう結論を出されまして、そして答申を提出いただきました。私どもはこれに基づきまして、今度は原子力委員会において、それだけでなく、そのほか諸般の事情をも考慮しまして慎重に処理いたしたい、かように思っておるわけです。
  336. 島本虎三

    島本委員 これほど大型な容器型の軽水炉、これはアメリカでさえもまだ運転の実績もないのです。そして数年後に稼働する、こういうようなものであります。しかもアメリカでは大型炉の安全性が問題になったのは一九七一年、建設認可を一時取りやめた、こういうような事例さえあるのであります。諸外国のほうでは、ソ連では安全な原子力発電の研究開発、これは三十年間続けた歴史があるそうであります。こういうような型の原子炉、これほどの大型化、こういうようなものを行なえないことにしてあるようであります。日本では、アメリカをそのまま受け入れたのが大型の容器型の軽水炉、それもアメリカでさえもいまだ運転実績もないものをそのまま入れて、ここに安全性は確保された、こういうようなことの報告をお認めになったようであります。何かこの辺においては不安ではございませんか。これをそのまま長官としてお認めになって、国民の前にはっきりこれは安全でありますということの断言ができましょうか。容器型の軽水炉では単機容量、これは、大きくすると原子炉の容器や大口径パイプに予測されない形で欠陥が形成されるものである、こういうようなことになっておりまして、百万キロワットの発電所をつくるには、単機容量二十五万キロワット四ループの集合体、これを設計するというのはソ連的な行き方であります。   〔田中(龍)委員長代理退席、委員長着席〕 ところが、ソ連ではこれでもなお安全性の高いチャネル型の黒鉛減速原子炉を開発したので、これを大型化の主流にしている、こういうふうにいっているのであります。それもやはり二十五万キロワットずつにして、大きいものにはしない、こういうようなものを集めて百万キロワットにする、こういうようなことであります。日本の場合は、一挙に百十七万五千キロワット、こういうようなものをつくるのであります。そういうようにしますと、日本の原子力産業会議の原子力の資料ナンバー四十五、このようなソ連の報告はやはり載っていると思うのであります。したがって、日本のような独自の研究を積んでおらない国、またそこの電力会社が容器型の軽水炉の単機容量百十七万五千キロワットの大型化を強行するところには、これはやはり相当無理もあり、利潤追求はよろしいが、安全性の点においては、コストダウンになっても、住民や労働者の安全性は保たれない、こういうように考えられないかどうかであります。私はこの点はまことに不可解であります。長官はこれは安全性を確認したというならば、いまの私が言ったのと合わせてどの点が安全性を確保したものであるか、これははっきり言明願いたいのであります。
  337. 木内四郎

    ○木内国務大臣 いまお話しになったような点はもちろんありまするけれども、諸先生方はそういう点も十分に考慮されて、今度は、この場合には十分に安全を確保することができるという答申をされたものと私は信じております。ことにいまお話がありましたけれども、アメリカにおきましてはすでにこの程度の大きさのもの二十基、近くこれを稼働するということにもなっておるというふうに私は聞いております。  なお、この詳細なことにつきましてもし御必要があれば、多少時間はかかりますけれども原子力局長も来ておりまするので、詳細な内容の説明は差し控えたいと思います。
  338. 島本虎三

    島本委員 原子力局長が来ておるならばなおさらであります。原子力局長も、まあ手元にございまするけれども、この昭和四十六年十一月十七日の参議院の科学技術振興対策特別委員会、ここではっきり言明しているのであります。これは「緊急冷却装置の実験は、原研でことしから始めたいと思っております。」本年から始めたいと思っておるのです。じゃそれはもうはっきりその成果を見定めないで、それをただ入れてここに安全性があるということは、どうも私どもとしては納得できないじゃありませんか。確かにコストは下がる。コストは下がるけれども、安全性はこれはもうほんとうに地べたまで下がってしまう。こういうようなことになるのではないか。これが一番心配なのであります。これに対してはっきりと安全性があるというならば、その点を解明してもらいたいのであります。
  339. 木内四郎

    ○木内国務大臣 いま御引用になった原子力局長の説明は、おそらくこういう趣旨だと思うのです。この原子力の平和利用につきましては、何としても安全性の確保ということが第一だ。それについては今日まで、あるいは原子力規制法あるいは放射能障害防止法、そういうものによりまして詳細な検討を加えて、まず認可をする前に原子炉の安全性について詳細に安全専門審査会で審査してもらう。また、いよいよ工場をつくる場合には設計をする。その設計の段階においても間違いがないかということを詳細にやってくる。あるいはこれを、工事に着手する場合に、さらにこれについて検討を加える。あるいは、これができてからあとにおいても詳細にその安全性についてやっておりますので、あるいはまた、さらに管理の場合において、いよいよ動かしていく場合の管理の場合においても安全性の確保に十分に意を用いておるが、なお今後においてもこの原子炉の安全性という問題についてひとつ大いに研究していこうというので、ことしの予算、ことしといいますか、いま提出されている予算で三十四億円の経費を計上しましてなお一そう安全性の確保につとめていこう、こういう趣旨の予算でございますから、その点はひとつ誤解のないようにしていただきたい。今日までも十分注意しておるが、なおこの上とも努力していこうというのがこの三十四億円の予算の趣旨であります。
  340. 島本虎三

    島本委員 こういう発電機を、これは原子炉二基、百十七万五千キロワット、こういうようなものについては大型化過ぎる。大きい。したがってこれに対しての安全性ははっきり見きわめた上でないと、日本のような場合にはことに密集しておりますから、これはなかなか不安なんであります。これは私だけ不安ではないのです。国民にもしものことがあった場合は、これはきわめてたいへんなことになるのです。成田原子力局長は、やはりはっきり答弁しているのです。「緊急冷却装置の実験は、原研でことしから始めたいと思っております。」というのです。ことしから始めたいと思っているのに、もうすでにそれを着工して、安全性を確かめながら、もうすでにでき上がってしまっている。運転してしまったらもう安全性はどこへ行ったかわからなくなった、こういうようなことになりかねないから心配しておるわけであります。ところがもうことしから始める。もう工事も始めてしまっている。安全性はあとからついていくのじゃありませんか。ちょうど炭鉱の山が、保安が優先だと通産省で言いながらも、いつでも爆発してしまってから保安が重点保安が重点、そう言っている間に全部つぶれてしまっているじゃありませんか。大体似たようなコースになるのではないかというような心配、ことにこの点ではもっと慎重を期さなければならないはずなんです。長官もこの点はよく知っておられるとおりなんでありまして、この点では緊急冷却装置やアイスコンデンサーが確実に機能する仮定のもとにですよ、長官、これはもう仮想事故において外部に放散される放射性物質の量を、きわめて少なく仮定しておるわけであります。そして、近くに多くの人が住んでいてもこれはよろしいということになっておるわけであります。そして成田原子力局長は、緊急冷却装置の実験は原研で本年から始める、こういうふうなことを言っておるわけであります。したがってアイスコンデンサーも、仮想事故において十分効果を確実に発揮されるかどうか、日本ではまだ少しも実験されておらないことを、もう取り入れたということになってしまうじゃありませんかということなんです。おわかりですか。私はそういうような点からして、このような状態人口三万三千七百名の小浜市、それからわずか九キロメーターの土地に二百三十五万キロワット、これをつくり上げるわけです。それと人口五万六千四百人の敦賀市、これからわずか十キロの地点に、これまた現在のものに加えて今度はなお八十二万六千キロワット、この原子力の発電所を建設することになるのであります。そうなると、ここに住む人にとってどんな深刻な問題になるかということをあらためて考えないとだめじゃございませんか。こういうようなことからして、原子炉から人口集密地帯の距離、こういうような距離のところに、短い距離でこれはつくっておるなんという例は、諸外国にもないのであります。もしかりにあるならば、大きさとその距離を示してもらいたいのであります。そんなところはないのです。したがって安全性の問題でも、これから実験するのだ、こういうようなことでこれを取り入れ、安全性はだいじょうぶだからという、そのまま信用してこれを国民の前に押しつける、これほどあぶないことはない、こう思うのであります。はたしてこれで環境の保全が守られるか、国民環境が守られるか、まことに奇々怪々だと思います。これは科学技術庁長官どうですか。
  341. 木内四郎

    ○木内国務大臣 いまお話の中に二点あると思います。  第一点の、原子力局長が今後緊急冷却装置についても研究を続けていくということは、さっき私が申し上げたとおりでありまして、今日までも、わが国ではかりにないにしてもアメリカなどで研究しまして、そしてさっき申し上げたように、すでに二十基というものが近く稼働するようになっておる。こういうことでもその点はおわかり願えると思うのですが、いまのこの距離の問題あるいは集中の問題、そういう問題につきましては、私がここで私の意見をいま言うのじゃありません。これはわが国の権威者の方々が欧米の事情などもつぶさに調査されて、安全専門審査会としての結論が出て、その報告が私の手元に参っておるというのがいまの段階でありますから、この点は御了承願いたいと思います。   〔「じゃ距離は」と呼び、その他発言する者あり〕
  342. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 不規則発言はやめてください。
  343. 島本虎三

    島本委員 現在までのような私の質問に対しての答えは十分でないからもう一回伺いますが、これははっきりと成田原子力局長は「緊急冷却装置の実験は、原研でことしから始めたいと思っております。」と言っておるのです。まだ始めないのです。始めても結論が出ていないのであります。そういうようなものをここに取り入れてこれが安全だという結論が出てきた。はたしてこれが安全なのはどういうふうにして立証されるのか。まだ日本では研究してないじゃありませんか。実験してないじゃありませんか。それなのに日本では安全だ。アメリカが安全だというからそのまま信ずればいいのか。これはなかなか問題のあろうところだと思うのでありますけれども、こういうような人口集密地帯、またこういうような景色のいい場所、そしてまた、こういうような近くの場所にこの大型の原子炉をもうつくっておるような場所があるならば、その大きさと距離をはっきり示してくださいと言うのです。世界じゅうないのです、こういうようなところは。日本だけなぜこういうふうにして、コストを下げるためにどんどんと無理してまでつくらなければならないのですか。安全性に対する確認はこれからだと言いながらも、なぜこれを受け入れなければならないのですか。放射能公害、これを一番おそれるからこれを言っているのです。科学技術庁長官がこういうようなことではっきり解明できないじゃ困るじゃありませんか。
  344. 木内四郎

    ○木内国務大臣 いま私からお答えしたことをお聞き願えば大体御了解願えると思うのですが、そういう諸般の事情を先生方が詳細に検討された結果、これは十分に安全性が確保される、こういうことで答申をして報告をされたもの、私はかように存じておるのです。
  345. 島本虎三

    島本委員 どの点が十分安全だったのか。ことにこれから実験いたしますと言っていながら、どの点安全だと、こういうように言えたのか、また近距離にこれからの大型のものをやってはたして安全だという世界じゅうの例証があるのか、これを聞いているのであります。
  346. 成田壽治

    ○成田政府委員 ECCS、緊急冷却装置につきましては、日本で、原研で四十七年度予算から初めて研究開始するという予算がつきましたが、これはむしろ、実際は高度の解析のための目的でありまして、この冷却装置につきましては今度の非常に重要な問題でありまして、特別の研究会も置き、いろいろアメリカ等の調査にも行き、そしてアメリカ政府なりアメリカの研究所の研究結果も十分取り入れまして、そして計算をしてだいじょうぶであるという実証を得ております。しかも安全には安全をとりまして二千三百度以上上がると内部の気圧の関係、問題あるというのでありますが、これを相当余裕をとった——余裕というのは安全をとった、それをかなり下回る運転をやるようなやり方になっておりまして、その点の計算は十分行なわれております。  それから大型化に伴いましてアイスコンデンサー方式というのを新しく日本では採用しておりますが、これはアメリカでは四年ごろ前からすでに採用しておりまして、いろいろなメーカーの実際の実験も行なわれ、これが十分機能するという実証を得ております。それで、普通の安全審査におきましては半年ぐらい、あるいはもっと短い期間であがっておりますが、この大飯の発電所におきましては、去年の一月の申請がありまして、それから一年以上の期間にわたりまして非常に慎重に——それは千百万キロワットをこえる日本で最初の大型であるということ、それからアイスコンデンサーを取り入れておるということ、それから緊急冷却装置の問題、そういう三つの点について非常に慎重に専門家が検討をやり、あるいはアメリカに行って実験の結果も取り入れてやった結果でございます。  それから若狭湾におきましては、いま審査中のものを入れまして六百万キロワットぐらいのキロワットになるのでありますが、英国にもかなり集中した地点はありますが、世界的にはこういう集中地域は、まあ地理的には初めてでございますが、この点も原子炉が四つも五つもある場合、その全部から出る放射能がどのくらいになるかという計算、これは非常に慎重に厳重にやっておりまして、たとえば多くの炉の中心にありますところの小浜市における一般住民の被曝線量がどのくらいになるかという計算を、まあ風の関係とかいろいろありますが、非常に安全をとって見ましても〇・二ミリレム年間ということになっておりまして、これはICRP、国際放射線防護委員会、国際的な学者の基準、年間五〇〇ミリレム、それからわれわれの自然の放射能は大体一〇〇ミリレムでありますので、それに比べても変動の幅の中に入る非常に微々たるものであるという、非常に慎重に検討した結果でございます。
  347. 島本虎三

    島本委員 したがって運転実績があるのか、ないのか。いま言っているのは、はっきり日本では、これはもうあなたが言ったように、緊急冷却装置の実験は原研で本年から始めたいと思っておると。日本で本年から始める。アメリカではこれはもう運転実績がまだない。しかしながらここに出されている。こういうようないろいろなデータは、アイスコンデンサーの確実に機能する仮定のもとに、仮想事故において外部に放散される放射性物質の量をきわめて少なく仮定してしまっておる。こういうようなことからして安全だと結論が出たというのです。それをまた長官も信じているのです。また原子力局長も、これだから安全だと言うのです。はたしてこれで安全ですか。どうなんですか。
  348. 木内四郎

    ○木内国務大臣 いま原子力局長から申し上げましたように、アメリカではすでに十分に研究をしておる、こういうことであります。その点を御了解願いたい。
  349. 島本虎三

    島本委員 これでもう、なんですけれども、アメリカが実験してアメリカが安全だからいいと言っても、地勢の状態、地理条件が違うでしょう。日本の場合はこういう狭い島国である。そしてほんのわずかな、十キロだとかあるいは九キロだとか、こういうようなそばに密集地帯がある。そういうようなところにこれをつくり上げておるのです。こういうようなところが他にありますかというのです。こういう大型なものをこういうような少ない距離に建設しておる、こういうような例が世界のどこにありますか。これを聞いているのです。これに対する一つだに答弁がないのであります。いままでの答弁は全部仮想であります。仮想の答弁をやって、それをきわめて少なく仮定してしまっておって、これは安全だと言う。仮定を少なくしてこれは安全だ、あたりまえです、これは。どうもこれで安全だと言うこと自身がまことに不安全である、こう思わざるを得ないわけであります。この問題に対しては一体どうなんですか。
  350. 成田壽治

    ○成田政府委員 若狭湾ほど集中した地域は日本が世界で初めてでございますが、ただこれはいろいろ地形とかその他自然条件によって違うのでありまして、日本の場合は集中しましても、そこから出てまいりますところの放射能の相乗効果を入れまして計算して、絶対安全であるという確証が得られたために安全審査を通ったわけでございます。したがいまして、これは集中している心理的な不安感はもちろん尊重して考えないといかぬ問題でありますが、科学的に見ました場合は、この程度のものはあっても、さっきの小浜市における被曝線量の例に見ましても非常に被曝量が少なくて、自然にある放射能の変動の幅の中に入る程度のものであるということが確信されて審査を通ったわけでございます。
  351. 島本虎三

    島本委員 いままでそれが出ない、出ないから安心だ、これだけじゃありませんか。具体的な日本における実験は一つもしてないじゃありませんか。アメリカがして安全だというから安全だ。日本ではまだ出ない、出ないからこれで安全だ、これほど不安全なものはないですよ。非科学的です。ことに若狭湾では三百五十二万八千名の観光客があそこへ毎年寄っているでしょう。そして同時に、美浜や大飯の近くの海岸では裸で遊んでいる子供さんたちも多いでしょう。こういうようなことからして、安全専門審査会はこの人たちのことをほとんど考えないで、そして安全だから私の言うことを信じなさい、これだけが国民を納得させる一つの手段だとすると、まことに非科学的な手段だと言わざるを得ないのであります。私はこれは答弁を納得するわけにまいりません。これは何といってもどうも私は納得できません。できないのは私の不敏のせいか、皆さんの説明が十分でないせいか、これはどうもわかりませんけれども、これは納得いたしません。私はもう納得しないままにこんなことを言ってもしようがありませんから、納得しないということを前提にしておいて次に進みます。  これはどうなんですか、廃棄物、使用後の燃料の増大する最終廃棄物をどのようにして処理する計画ですか。政府は鋭意検討中である、こういうふうに言っておりますけれども、まあ安全な処分方法を検討中の段階でこのような大型炉をつくる、こういうようなことがはたして許さるべきなんですか、どうですか。国際的にも海中投棄は危険だということで結論が出されております。また、この六月にストックホルムでいろいろな環境関係会議がまた開かれ、日本は加害者だ、こういうような立場にいつまでも立たされるのであります。そういうようなことからして、今回もまた国際的にも海中投棄は危険である、こういうようになっておるのに、また投棄をする場所もないままにこれを進めるということは、国としてはどういうようなことになりましょうか。無責任きわまるじゃありませんか。これはどういう見解でしょう。
  352. 木内四郎

    ○木内国務大臣 いまお話がありました観光客は、非常に多いらしいです。いろいろな問題が提起されておるけれども、観光客がますますふえておるそうです、最近の状態から見ると。それは安全専門審査会の方も説明しておられ、また原子力局長からも御説明申し上げましたように、産業の廃棄物としても、液体と固形のものがあるのですが、観光客が来ても、この人たちに対する影響というものは、自然放射能の状態よりも二百分の一ぐらいのもので非常に低いものだ、そういうことをやはり観光客の多くの方々が自然にはだをもって感じられて、私は、いろいろな問題があるにかかわらず、多数の方が来られるのだと思うのです。  それはそれとしまして、いまの産業廃棄物の問題ですが、これは規制を厳重にしまして、気体の場合はそれに含んでいる放射能というものを非常に低く押えるようにしまして、高い程度の放射能は出させないようにしています。液体の場合につきましても同様でありますが、固体の場合におきましては、放射能をよけいに含んでいるものは、これをタンクに入れましてみな外へ出さないようにしています。それからさらに低いほうのものは、これをドラムかんに入れましてこの発電所の構内にとめておく、こういう態度をとっております。  将来の問題につきましては、これをどう処理するかということは、あるいは海洋投棄あるいは地中に埋めるとか、そういう問題につきましてはいろいろ研究を重ねてまいりますが、これは世界的にいま各国ともに非常に力を入れて研究している問題であります。
  353. 島本虎三

    島本委員 私の言っているのは、使用済みの燃料の最終の処理、これはどうするのかというのですよ。いまはもう中間の、ためておくとかなんとかということじゃないのです。政府自身もこれは鋭意検討中であるというのです。検討中であるのは最終廃棄物の処理なんです。最終処理もきまらないうちに大型炉をつくることは、これは許されていいものか悪いものかはっきりしているじゃありませんか。なぜそういうような始末をきめてからこれに着工しないのですか。最終の処理方法はきまっておりますか。
  354. 木内四郎

    ○木内国務大臣 いま申し上げましたように、そういうものは発電所の構内にためておいて、外へは出さないということになっておるのです。(「最終にはどうするか」と呼ぶものあり)最終にはどうするかということは、それと並行しまして、あるいは海洋に投棄する、あるいは地中に埋める、そういうことについては日本でも今後研究していきますし、これは世界的にいろいろ研究されている問題です。
  355. 島本虎三

    島本委員 いま海洋投棄云々を御答弁ありましたけれども、これは国際的にも海洋投棄は許されておらないのです。今後、海洋投棄をするということを前提にしてやるとするならば、これはとんでもないことになる。おそらく海洋汚染防止法にもひっかかる。同時にこれは、環境庁長官、黙ってこれを聞いて、あなた、それでいいんですか。いま地球の汚染を守らなければならないという重大なときに、現在ためておく程度はよろしい、最終処理は海洋投棄だということによっては、これはとんでもないことになるのです。環境庁長官、これはあなた知っていなさるのかどうか。
  356. 木内四郎

    ○木内国務大臣 最終的に海洋に投棄するとは私は申しておらないのですよ。これはアメリカではまだみんな発電所の中にためておって処理しています。しかし、ヨーロッパの諸国によりましては、領土も狭い関係もあるでしょうが、試験的にときおり海洋に投棄しておる、こういう状態です。わが国におきましては、これをいかにすべきかということを世界の各国とも歩調を合わせて研究していこう、こういうことでありまして、いま私は、最終的に海洋投棄にするということは申しておらないのですから、その点は誤解のないようにお願いいたしたいと思います。
  357. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 関連質問を許します。辻原君。
  358. 辻原弘市

    ○辻原委員 私も非常に原子力発電の問題は関心を持っております。私はいま仮定の問題について議論をしようと思って関連質問を求めたわけではありませんが、実験段階においては、確かに現在は東海村に集められておると思うのです、コンクリート詰めにして。ところが、いま議論されているのは、発電所としていわゆる実験段階から実用段階に入る、そうなりますと、廃棄物というのはばく大なものになってくるということが予想されるわけなんです。そこで問題になるのは、その廃棄物を、中間処理ではなくて、最終的にどう処理するのかというのが、非常に国土の狭い日本での他国とは違った問題だと実は私は考える。  そこで、アメリカは発電所に貯蔵とおっしゃいましたが、中間的な処理ではそういうことはあると思うけれども、アメリカも苦心惨たん、あるいは砂漠の地下深く掘って、そうしてこれを、永久に人目に触れない、永久に人畜に被害を与えないということを見きわめて処理していると私は聞いております。それで少なくとも世界各国でこれらの最終処理を海上に求めておるというところは、私は寡聞にして知りません。しかし、いやしくもいま所管の責任ある大臣からそのようなおことばを承ったので、私は、もしそういうことが結論づけられるとするならば、これはたいへんなことである。年々歳々実用化されて、しかも先ほどから島本委員が議論をしておりますように、アメリカではまだまだいま日本がやろうとしているよりも小規模だ。しかもアメリカの原子力委員会が幾多問題を提起しておる。アメリカではすでにそういうことに対して安全性は結論を出したとおっしゃるが、私どもはそうは聞いておらぬ。そういう過程に、日本がすべてことごとく実験がアメリカで済んだのだからいいのだ、そうして日本はよその国に先がけて大型化していくのだ、こういうことを言っておられる。もしそのままそれが実行に移されたとなれば、廃棄物はばく大なものになる。その廃棄物の処理を一体どうするかという結論なしに、私は率直に申して、実用化という段階に踏み切れないはずだとすら思っているのです。しかし、それを海洋投棄するなどというのはもってのほかです。一体大臣がそういう結論を出されたのか、口がすべったのか、あなたは答弁を誤られたのか、これは明確にしていただきたい。この点がもしいまこの議場を通じて全国に出たならば、これはたいへんな騒ぎです。たいへんなことなんです。はっきりお答え願いたい。
  359. 木内四郎

    ○木内国務大臣 先ほどから私がお答えしておりますように、私は最終的に海洋投棄にするとは申しておりませんし、それからまた地中に埋めてどうということも、最終的にそうきめておるということを申しておるのじゃないのですよ。ただ、いまアメリカはこうしておる、ヨーロッパの諸国は狭い国だからこうしておるが、やはりこれは海洋投棄を試験的にやってその研究をしている。世界的にこの問題は研究されておるし、私どもも、その問題は今後研究していかなければならぬ問題だ。最も公害のないように、また、人類に影響のないように、どうしたらいいかということに私どもも心を砕いているし、世界の各国ともに心を砕き、そうしていま研究している、こういうわけです。
  360. 辻原弘市

    ○辻原委員 それでは、そうおっしゃったから、私はもう一つお尋ねいたしましょう。  いま私は実験のことを伺っているのじゃないのです。島本委員も実験のことを聞いているのじゃないのです。この灰をどう最終的に実用段階に入って処理をされますかということを提起しておる。私は、先ほど申し上げましたように、最終処理を諸外国が海上投棄でやっているという例は聞いたことがありません。あるならば教えていただきたい。実験は別ですよ。
  361. 木内四郎

    ○木内国務大臣 ですから、私は先ほどから繰り返し申し上げておるのですが、いまその問題を各国ともに非常に心を砕いておる。それで、欧州諸国におきましては試験的に海洋に投棄してみる、そういうことで試験的にやっている。それから日本におきましても、この問題について、もちろん太平洋海溝なんというものもありますし、そういう問題についても特にこれから慎重に研究していかなければならぬという段階である、そういうことを申し上げているので、されば終局的におまえどうする、そう言われたって、研究しておる段階であるということを申し上げているのですから、それはちょっと御無理な御要求じゃないかと思います。
  362. 辻原弘市

    ○辻原委員 一つ重要な問題ですから申し上げておきます。  日本は特に海洋国家なんです。御存じのとおり、いろいろな問題で漁業に対する影響ということが常に問題になって紛糾しているのです。そういうことを踏まえたときに、軽々に、実験といえども海上投棄をやりますなどということは、これは大臣物議をかもしますよ。そういう場合の御答弁は、日本の現状——国土が非常に狭い、また漁業という立場あるいは海運という立場、こういうものを踏まえた海洋国家であるという立場、あるいは自然保護を進めていかなければならぬ日本という立場、こういうものを踏まえて、まことにこれは慎重に考えなければならぬ問題であるというのが私は大臣としてのお答えであろうと思う。何ですか、それをあなた軽々に……。
  363. 木内四郎

    ○木内国務大臣 いまおっしゃった趣旨ですと私は十分理解します。そういう点を頭に置いて、今後の処理については慎重にやりたいということを申し上げておるのです。
  364. 島本虎三

    島本委員 これは、もう答弁よく承りましたが、それならば、長官、最後に承りますが、公聴会も開かないままに秘密裏に安全審査を済ましてしまうようなやり方は、原子力基本法できめられている自主、民主、公開の原則を破ったことになるじゃありませんか。それと同時に、安全審査の決定の取り消しと公聴会の開催、あらためてこれをわれわれは要求したいと思うのです。三十四年に衆議院で公聴会の開催を議決しています。同時に、安全であるならば、公聴会の開催をいやがる理由一つもございません。そういうようなことからして、もし公開の原則を認められるならば、電力会社が認可の申請をした時点に、もうそれを公表したらどうですか。そうして公聴会を開いたらどうですか。そしてそのあとで安全審査の決定を十分審議を尽くして行なったらどうですか。その手続を経ないで、そしてそれを決定した、こういうようなことに対しては、取り消し、あらためて公聴会でやり直し、これをやるべきである、こう思います。大臣の御高見を承ります。
  365. 木内四郎

    ○木内国務大臣 私の意見を求められれば私はもちろん申し上げますが、私は、さっきから申し上げておるように、原子力の平和利用が進んでくる、その際には安全が第一だ、科学的にまず第一にこれを検討しなければならぬ。そして科学的に検討しただけではいけないので、これを社会的にというか、ことばはちょっと熟さないかもしれませんけれども、地域の住民などにも十分理解し協力してもらうのでなければ、十分の効果をおさめることはできない、かように考えて、その点については慎重な態度をとっておるのですが、しかし、いまお話があったように、公聴会を開かなかったからこれを取り消して出直せとかそういうことを言われても、私はこれは直ちに承服するわけにいきません。私は、いま申しましたような大きな趣旨に従って、十分に地域住民の理解と納得を得てこれは実行するようにしたい。しからば、公聴会を開くかどうか。これは、私は、直ちに公聴会だけにたよるわけにいかない、いろいろな方法がありますので、その選択は十分に慎重に検討してまいりたい、こういう意見であります。
  366. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 島木君に申し上げますが、時間が経過しておりますから、簡単に願います。
  367. 島本虎三

    島本委員 簡単に申し上げますが、的確に答弁してもらいたい。  したがって、今後公開の原則によって、電力会社からそういうような要請があった場合にはそれを公表する、そうして公聴会を開いて、そして住民の意向も十分反映し、協力を求める、こういうような態度がいわば自主、民主、公開の原則に沿うものである。今後これを十分に検討し、十分取り入れて運用してもらいたいと思いますが、長官どう考えますか。
  368. 木内四郎

    ○木内国務大臣 原子力基本法の自主、民主、公開というものも解釈のしようですよ。すべてこういう場合に、建設の願いを出すときに、いきなりこれは公開する、何の場合には公開するという趣旨では私はないと思う。やはり研究、開発の成果はこれを公開するというのがあの趣旨であると思うのです。  そこで、いまお話しになりました公聴会を開いて云々ということは、私は、さっきも申しましたように、繰り返して申しませんが、いろいろな方法があるから、諸般の手続を経てやりたい、しかし、いま公聴会を開いてやるかどうかということを直ちにお約束することは、私はできないと思います。
  369. 島本虎三

    島本委員 まことに私は不満であり、これを認めるわけにはまいりません。それを言明して、私の質問を終わります。
  370. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これにて島本君の質疑は終了いたしました。  次回は明十日午前十時より公聴会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十六分散会