○瀬野栄次郎君 私は、公明党を代表して、ただいま
説明のありました
昭和四十六年度
農業の
動向に関する
年次報告並びに
昭和四十七年度において講じようとする
農業施策について、佐藤総理並びに関係各大臣に対し質問をいたします。
農業を取り巻く
経済環境は、景気後退の長期化が予想される中で、国際収支、大幅黒字基調に基づく外貨準備高の累積、円の大幅
切り上げ等により、農畜産物の輸入増大と自由化の要請がますます強くなり、内外ともに、かつてないほど困難な局面に直面いたしておるのでございます。
この中で、全国五百二十六万戸の
農家は、どこに行っても、日本の
農業はどうなるのか、また、何をどのくらいつくればよいのかという不安と疑問を持って、ただ生きるために営々と働き、希望を求め続けているのでございます。
そこで、質問の第一点は、日本
農業の憲法といわれる
農業基本法の目的と、これに対する
政府の
農業政策の矛盾についてであります。
農基法が施行されて以来すでに十年を
経過しておりますが、この間、
わが国農業は、本法が指向した
農業と他
産業との
生産性格差及び所得格差の是正は一向に進まず、かつまた、
農業生産の推進母体となることが予定された自立経営
農家等の育成は
減少の
傾向をたどり、一方兼業
農家、特に二種兼業
農家が増大しております。すなわち、農基法の示した方向がから念仏となっております。加うるに、米価の据え置き、減反政策等により、
農業生産指数は四十四年、四十五年と連続して低下し、四十六年度の
農業総産出額は、十五年ぶりに前年度を下回る見込みとなっているのであります。
いまや、農基法農政の目ざす
農業の建設は挫折を来たし、高度成長の陰の
部分としてそのひずみをますます
拡大しつつありますが、このような現状に対し、総理はいかに反省されているか。また、
農業基本法を抜本的に再検討すべきではないか。さらに、
わが国農業の位置づけをいかに考え、その長期的ビジョンと中期的な展望に立った
施策をどのように考えておられるかを、まず明確に示していただきたいのであります。
第二点として、農畜産物の自給率について承りたいのであります。
農業白書は、「食糧の安定的供給を図ることは、直面する
わが国農政の課題であり、そのために需要の
動向と地域の特性に応じた
農業生産の実現を図るため、再編成を強力に推進する。」と
報告しておりますが、
昭和三十五年に九〇%であった食用農産物の自給率は、四十五年についに七六%にまで低下をしております。
政府は、「農産物の長期需給見通し」の中で、
昭和五十二年における
わが国農産物の自給の見通しを立て、自給率を算出しておりますが、この見通しは、農産物の自由化やその他各種条件等については何ら明らかにしていないのであります。また、この自給率の見通しは、需要と
生産見通しからどう算出したか明らかでなく、主体性のない見通しであります。
そこで、今後の
農業生産を考えた場合、ここ数年来急速に増加してきた農産物の輸入、施設
農業の
拡大傾向に比べ、土地利用型
農業の著しい後退、米の減反政策による
生産意欲の減退等から、
農業生産の
向上はきわめてむずかしく、このままでは
わが国の自給率は低下の一途をたどることは明らかであります。
自給率を明らかにすることは、農政の推進にあたり、政策の
基本的前提とすべきものであります。したがって、農産物の自給率については、地域的に、品目別にはっきり目標を定め、地域分担を明確にし、その目標達成のために
構造、
価格、
生産の諸
施策を強力に推進すべきであると考えますが、これについて佐藤総理並びに
農林大臣の所信を承りたいのであります。
第三点は、農畜産物の自由化問題であります。
現在、農畜産物の残存
輸入制限品目は二十四品目で、
先進諸国と変わらない程度にまで
減少し、この結果、
わが国の農畜産物の輸入は年々増大し、四十五年に前年を二〇・五%も上回る三十二億ドルに達しております。
農畜産物の貿易
拡大に対する
わが国への要請はさらにきびしく、アメリカのみにとどまらず、イギリスのEC加盟により、オーストラリア、ニュージーランド等、また、中国からも一そう輸入の増加が予想されることは、白書も指摘をしておるとおりであります。
わが国農業に壊滅的打撃を与えるオレンジ、果汁、牛肉等の輸入自由化問題は、
日米通商交渉により一年間凍結されたと
政府は言っておりましたが、昨十八日以来、田中通産大臣とエバリー米大統領通商特例代表との会談が行なわれ、本日の新聞報道では、いわゆる一年休戦は早くも御破算になることが確実になったと伝えています。
生産者
農家の現状から見て、私は、これら農畜産物の自由化をすべきではないと考えておりますが、佐藤総理並びに
農林大臣は、今後の自由化に対していかなる決意で臨まれるか、その所信を承りたいのであります。
さらにこれに関連し、中華人民共和国との農産物貿易の
拡大は、
わが国との国交正常化に大きく寄与することは言をまちませんが、
政府は、現存の対米一辺倒というべき輸入形態を、中国貿易を含めて、広く再検討すべきであると思いますが、総理並びに
農林大臣の見解を明らかにしていただきたいのであります。
第四点として、食管問題、米価問題についてお尋ねします。
農林省米穀管理研究会は、食管問題について、その検討の
経過と中間的取りまとめを、去る三月三十日、
農林大臣に
提出いたしました。
その中で、米穀管理の制度、運営の
改善に関する考え方の諸類型の例示として、一つには、画一的
価格統制の廃止、自主流通の促進等により現行管理制度の運営を
改善する考え方、二つとして、現行管理制度を末端配給統制の廃止によって弾力化する考え方、三つには、
部分管理の考え方、さらに、間接統制の考え方等、四つの類型が出されていますが、
政府は、この中間
報告にある四つの方向に対し、いかなる方向をとられるのか、また、どのような検討を進められているのか、総理及び
農林大臣の見解と所信を承りたいのであります。
次に、
生産者米については、
昭和四十三年から三年連続して据え置かれ、四十六年産米の
引き上げも、わずか三%程度にとどまっております。しかも、これは四十五年における政治加算金分を
引き上げたものであり、実質的には据え置きと変わりないのであります。しかし、米の過剰化は、
政府の農政の失敗によるものであり、その責任を米価の据え置きという形で農民に転嫁することは、筋違いといわざるを得ないのであります。米価の決定にあたっては、
農業基本法及び食管法第三条の精神によるべきであり、物価、
農業経営費が上昇している今日、
生産者米価の
引き上げは当然であると考えるものであります。
赤城農林大臣も、六月下旬には米価
審議会に
生産者米価の
引き上げを諮問する意向のようでありますが、加算、補助の繰り入れも含めましてどのように考えておられるか、
農林大臣及び大蔵大臣から御答弁をいただきたいのであります。また、総理はどのように考えておられるか、あわせてお答えいただきたいのであります。
さらに、消費者米価問題でありますが、四月一日より消費者米価の物統令が
適用廃止されたことにより、小売り
価格は自由
価格となったわけであります。私たちは、従来から、この
適用廃止により事実上消費者米価が上昇するとして強く反対をしてきたのでありますが、最近の一部の新聞には、
政府の売り渡し
価格を
引き上げるような記事が報道されています。
政府売り渡し
価格の
引き上げは、必ず消費者米価の上昇をもたらし、同時に、諸物価の高騰につながることは必至であります。したがってこの際、
生産者米価に関係なく、
政府の売り渡し
価格は据え置く方針であるのかどうか、農林、大蔵大臣、
経済企画庁長官の明快なる答弁を求めるものであります。
第五点として、農林省の目玉商品とされている
農業団地構想についてでありますが、本
事業は、過去十カ年余にわたる農政の失敗を十分反省して行なう必要があり、いやしくも、本
事業が過去の農政の行き詰まりを糊塗するためのものであったり、また、農畜産物自由化促進の隠れみのに使われることは、絶対に看過できないのであります。
農林大臣は、今後の
農業団地事業を進めるにあたっての
基本的な考え方、特に本
事業と
農業生産の地域分担との関係、及び
農業団地における
生産のにない手等につき、いかに考えておられるか、明確なる御答弁を伺いたいのであります。
第六点は、
農業と他
産業との所得格差の
拡大問題と、これに対応した
価格政策についてであります。
昭和四十六年度の
農家所得は百四十一万円と、前年比一一・五%先の伸びを示しているものの、その増加のすべてを
農外所得に依存し、
農業所得は逆に四%の減となって、かつてない現象を示すに至っております。この最大の原因は、米価据え置きをはじめ、農畜産物
価格の低迷、
農業購入資材の
価格の上昇などにあります。このため、
農家は所得を必然的に
農外所得に求める
傾向が強まり、四十一年度の兼業
農家率は実に八四・八%にまで高まっており、自立経営
農家の育成については、四十五年度の
農家戸数の割合で六・六%にまで落ち込み、四十二年度に比して半減しているのが現状であります。このことは、
農業と他
産業との所得格差の是正をはかろうとした
基本法農政の失敗を如実に示しているものであります。
かかる
実情に立って、
農業と他
産業の所得格差を是正するためには、物価の上昇等に対応した農畜産物
生産価格の安定をはかり、さらに、今後需要
拡大が予定されている畜産、果樹、野菜等の成長作目の積極的
拡大をはかるため、現行
価格制度を抜本的に改革した新しい
価格政策を行なうべきであると主張するものでありますが、これに対する
農林大臣の御見解を承りたいのであります。
第七点として、出かせぎ対策並びに
農業経営の後継者確保の問題についてお伺いいたします。一 現在、
わが国の
農家は、好むと好まざるとにかかわらず、兼業化に追いやられている中で、出かせぎ
農家は年々増大の
傾向にあるのであります。この
農村の悲劇に対し、何ら見るべき対策を講じていないというべきでありますが、これに対して一どう対処されるか、
農林大臣にお伺いするものであります。
次に、
農業経営の後継者の確保についての
基本問題でありますが、高度
経済成長は、
農業から労働力と農地の収奪を行ない、その結果、
農業労働力の老齢化と、都市近郊地域における農地のスプロール化、山村地域における過疎現象を一そう促進させております。このままの状況が将来とも続くとすれば、
わが国農業の衰退は火を見るより明らかであります。
そのため、
農村における生活
環境整備、衛生施設、交通通信、文化施設の
整備など、
農村地域の総合的な
開発による新しい
農村建設が重要な課題となっていますが、これに対する佐藤総理並びに
農林大臣の所見を承りたいのであります。
第八点は、農林金融問題についてであります。
農林中央金庫が、
法律上、来年をもって失効することになります。これが存続については、当然存続する方向にあると思いますが、その際、公庫
資金や系統
資金の交通整理をすべきではないかと考えます。
また、国際競争力をつける必要のあるもの、自由化を受けやすいものについての特別金融、さらに、現在の
生産サイドから、流通、消費者対策のためにも、金融の道をはかるべきであると思いますが、これらについて、
農林大臣並びに大蔵大臣の見解を承っておきたいのであります。
最後に、沖繩
農業の振興についてお尋ねをいたします。
戦後二十七年間、異民族の支配下にあった沖繩が、去る五月十五日、新生沖繩県として日本に復帰しました。沖繩における
農業の著しい立ちおくれを取り戻すためには、
生産基盤の
整備と経営の
近代化に重点を置いて、手厚い
農業の振興策を急速かつ広範に推進するとともに、本土の関係諸制度の円滑なる
適用をはかることが最も緊要でありますが、沖繩
開発庁長官のその具体的な対処方針について御答弁を承りたいのであります。
以上、当面の重要な農政問題についてお尋ねいたしましたが、佐藤総理をはじめ関係閣僚の熱意ある答弁を願い、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣佐藤榮作君
登壇〕