○小林進君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま
議題となりました
昭和四十七
年度一般会計予算、同
特別会計予算及び
政府関係機関予算につき、
日本社会党、
公明党、
民社党、三党共同
提案になる組み替え要求
動議に
賛成し、
政府原案に対し反対の討論を行なわんとするものであります。(拍手)
そもそも本
予算は、二月四日に本院
予算委員会に上程されたのでありますが、本日その
審議を終了するまで、実に六十日を要したのであります。この日数は
予算審議における日本国会最長の新記録であり、そのためには全く必要でない暫定
予算を組むなど二重の手続を要したのでありますが、その原因はあげて
政府の憲法無視、国会軽視の不当行為に基づくところであります。(拍手)全く
政府の一方的
責任によって六十日の
審議日数を要し、しかもその半分近くが空白のまま投げ出されていたというがごときは、空前絶後の不祥事件といわなければならぬのであります。
すなわち、四次
防予算の違法
提出による空白が十九日間、
台湾帰属の不
統一見解による停滞が数日、今度はまた、
沖繩返還に伴う秘密交渉問題で五日間のストップを続けたのであります。特に、
沖繩返還に関し、米国は
沖繩軍用地復元補償を自発的に支払うと規定した
沖繩返還協定第四条第三項に基づく
アメリカの
政府の支払い
責任を、実際は日本
国民の税金でまかない、さも
アメリカ政府の金で支払ったような、こんな次元の低いサル芝居をして国会と
国民をだまし、私企業の極東放送を国家間の取引の材料にするなど、このペテン師的手口こそが、日米交渉には必ず秘密があるとなす両国
国民の疑惑をますます深めておるのであります。なぜ
国民の知る
権利にこたえて堂々たる外交交渉ができぬのか、まことに残念にたえぬ次第であります。(拍手)
いずれにいたしましても、この長い間の空白は、これことごとく
国民の血税の浪費であり、一億
国民に及ぼした被害は想像に余りあるものがある。
政府は、この
責任をとって、すべからくその罪を天下に謝し、そして、かくもけがれ切った本
予算案は即刻撤回をして、新総裁による新鮮な
予算につくりかえるべきではないか、これが
政府の
予算案に反対する第一の理由であります。
第二の反対理由は、
政府は、四十七
年度の本
予算の特質を、
景気浮揚の
予算である、
国民福祉向上の
予算であると称しているが、その
内容をつぶさに見て、どこに一体
景気回復、
福祉向上の特質ありやを伺いたいのであります。
客観的に判断して、これはまさしくインフレ
浮揚の
予算であり、危険きわまる軍事優先の
予算であるといわなければならぬのであります。(拍手)この
予算によって笑いのとまらないものは、軍事産業を営む死の商人と、土建や鉄やセメントやにつながる一連の大企業でございましょう。一方、
国民大衆は、情け容赦もなく引き上げられる
物価高と、重税のために涙のかわくひまのない苦難の日常を繰り返すことになりましょう。(拍手)何ゆえに十一兆四千六百七十六億円という大型の
予算を組んで大資本に奉仕をしなければならぬのか。
しかも、この
予算の中身は、実に一七%も国債に依存をしており、実に一兆九千五百億円という巨額の国債発行にたよっているところにこそ問題があるといわなければならぬのであります。
しかも、組み替え要求
動議の中に強く指摘しているように、この国債については、返済
計画も、減債の制度も、
市中消化の見通しもない、すなわち、国債発行に最も大切な国債管理の方策が何も示されておらぬのであります。これは
建設国債であって
赤字国債ではないなどと、
財政法上の官僚的技術論に終始して、無
原則の借金政策に突入していることは断じて黙視できぬのであります。
一方では、八千余億円にのぼる軍事
予算を組み、五兆八千億円からなる四次防の先取りをもくろんでおるなど、この点、四十
年度の国債発行とは全くその質的
内容を異にしており、今回の国債発行はきわめて危険なものであることに留意しなければならぬのであります。
なお、その消化の面についていえば、
市中消化を
原則とするというが、必ずや一年後には買いオペという形で日本銀行に回り、信用膨張となって、
国民の生活を二重、三重に圧迫することになりましょう。国債発行の危険は、そのストックと償還の面からもこれを知らなければならぬのであります。すなわち、
昭和三十九年末には、日本の国債、
政府保証債、地方債などの残高は、合わせてわずか四兆八千九百億円であったのであります。しかるに、
昭和四十六年十一月末には、これが実に十五兆三千億円、
国民一人当たり十五万三千円の借金になっているのであります。この
政府の放漫政策が定着し、
財源難に名をかりて
公債発行を続けるならば、たちまち天文学的数字となり、
国民は知らずしてその返済の
責任と貨幣価値の下落のために塗炭の苦しみに泣かなければならぬのであります。
三党組み替え案がこの無
責任な国債発行に大きな歯どめを与えていることこそ、高く
評価をしなければならぬのであって、(拍手)われわれが
政府原案に反対する第二の理由は実にここにあるのであります。
第三の問題点は、
公共事業費であります。
政府は、
公共事業費を前
年度比二九%増にし、二兆四百八十四億円を計上しておるのでありますが、この
規模拡大の目的は、これをてこにして
景気刺激を行なうにあると
説明しておるのであります。しかし、この大型
公共事業費こそ全くもろ刃のやいばであり、むしろ
国民泣かせの悪質の要素が数々含まれていることを指摘しなければならぬのであります。
その一つは、依然として、高速道路、港湾整備など、産業基盤整備に
重点を置き、生活基盤を全く無視している点であります。したがって、この
計画がそのまま実行されるならば、必ずや公害はさらに激増し、交通事故はさらに一そう激しくなり、自然環境はさらに破壊されて、
国民の生活はまさに人間としての生存さえも脅かされることになりましょう。
高度
成長政策の最大の罪は、独占資本擁護のための生産第一主義に徹して、人間尊重のための
社会資本の
投資、環境保全の
投資を怠ったことにあることを、われわれはしばしば警告を発してきたところであります。
三党組み替え案は、この点を明確にし、
公共事業の
内容は、すべからく下水道の整備や公園の
建設促進など、環境保全と生活基盤の拡大に
転換すべきことを要求しておるのであります。
さらに、二つの点として、そのインチキ性を糾弾しなければならぬのは、
政府のいわゆる目玉商品として掲げておる
社会福祉の
向上の
内容についてであります。
七十歳以上の老齢者四百十四万人中、三百八十二万人に
医療の
無料化を実施しようとする政策は、一応善政であり、われわれもそれを認めるにやぶさかではありません。しかし、人生五十五歳にして定年を迎え、その後、身も心も疲れ果てた高齢者が、七十歳の坂までのぼり詰めていくことは、並みたいていの苦労ではない。その間をどうして生きていくかについては、
政府は一つも回答を与えていないのであります。せめて
年齢を六十五歳まで引き下げて無料の
医療を支給するというのが、真の善政というべきでありましょう。
しかるに、
政府は、六十代は最も死亡率が多いから、できるだけ死んでくれ、ようやく七十まで生き延びた者だけを無料にしようというのであります。(拍手、発言する者あり)、しかも、新
年度から実施するのかといえば、それもだめ、来年からというのでありますから、実にあきれ果てた、けちくさい善政といわなければならぬのであります。(拍手、発言する者あり)
それでは、他の
社会保障はどうかといえば、もっとはなはだしいのが老人
福祉年金であります。七十歳まで生き延びて初めて支給される
年金が、月額たった三千三百円、一日百円であります。これでどうして生きていくことができましょう。総理府、文部省、厚生省、労働省等が後援をしている「豊かな老後のための
国民会議」の
報告によれば、老人が人間らしく生きていくためには、一カ月最低三万円を要するというのであります。三千三百円の
年金は、その十分の一であります。
あとの十分の九はどうして補えばよろしいのか、
政府はこの点をいささかも明らかにしていないのであります。
今日、
わが国においては、明治三十八年以前に生まれた高齢者は、いずれの
年金からもはみ出しているのであって、六十九歳になっても一円の
年金も受けることができず、ようやく七十歳になってスズメの涙ほどの
年金にたどりつくという、世界に類例のない、高齢者ほど粗末に扱うという、姨捨山的老齢保障を実施しておるのであります。(拍手)一日も早く積み立て方式を
廃止して
賦課方式を採用し、年を追うて手厚い
年金を支給せよというわれわれの主張は、実にここにあるのでございます。
スウェーデンの
年金は、単身者で一カ月三万三千円、配偶者と二人の場合は五万一千五百円、西ドイツの
年金は、単身者三万三千七百二円、夫婦の場合五万七千九百円、
アメリカの
年金は、単身者三万九千三百七十五円、配偶者の場合は五万六千円でありまして、彼我比較して、いかに日本の
社会保障が貧弱であり、
経済大国の名に恥ずべきかは、自民党の諸君も先刻御承知のはずであります。(拍手)
社会福祉予算と銘打つその
社会保障費が、全
予算の中に占める比率がわずかに一四・三%、ほとんど前年と同比率であり、ヨーロッパ先進国においては
社会保障費が
国民総所得の中で一五%以上を占めているのに比較して、
わが国はわずかに五%にすぎないというがごときその貧しい実態は、数えるにいとまがないのであります。
政府は、これに対しいささかの反省もせざるのみか、
老人医療の
無料化をおとりにして大幅の
医療費の
値上げをもくろみ、
審議会の
答申をも無視して、これを
予算の中に計上しているのでありまして、この乱暴な行為は、
国防会議無視の四次
防予算と軌を一にするものであり、われわれの断じて了承できぬところであります。
社会保険の引き上げは
国民の名において断々固として粉砕するであろうことを、おごそかに宣言するものであります。(拍手)
第四の問題として、われわれが絶対に承服できぬのは、
防衛費の増額であります。
すなわち、
防衛費八千億円と
国庫債務負担行為二千四百四十億円、
継続費二百二十七億円など、合わせて一兆二千億円の
防衛費は、絶対額も
伸び率も、ともに戦後最高のものであります。
国防会議の議を経ずして四次防の
計画を盛り込んできた
防衛庁の要求をそのまま
予算に組み入れて国会に
提出してきたその態度は、まさにシビリアンコントロールを排除し、堂々国会と
国民に向かって挑戦をしてきた軍事優先のデモンストレーションと見なければならぬのであります。(拍手)
その何よりの証拠が、国会において、軍事優先を規制する政治の
あり方と制服軍人の反省を求めている最中に、これ見よがしに立川移駐を強行し、
沖繩進軍の
装備を移送するなどに照らしても明らかであります。
政府は、野党のきびしい
追及にあって、四次防の新規
予算二十七億円余を削減し、
国庫債務負担行為の凍結という醜態ぶりを示したのでありますが、
自衛隊自体に対しては政治優先の具体的指導をいまだ示しておらぬのであります。
ニクソン大統領自身は、日本の頭越しに北京に飛んで
中華人民共和国と共存対話の新政策を打ち出しながら、日本に対しては
台湾防衛の
責任を押しつけており、佐藤
内閣はその指示に従って依然として
中国敵視政策を続け、強大な軍事力の増強に狂奔している現状と、
自衛隊がいよいよ本性をむき出しにして、真珠湾攻撃そのままの奇襲戦法を方々に再現して、地域住民をどうかつしている実態こそ、今日、
国民が最も憤激している最重要な政治問題であり、(拍手)この二つは、
国民の名において徹底的に糾弾するとともに、シビリアンコントロールの
原則の確立と日
中国交回復の中期実現は、絶対に成立させなければならぬのであります。われわれが四次防の
予算に反対する原因は実にここに占めることを了承されたいのであります。
四十七
年度予算編成に際し、
国民大衆が
政府と国会に対し最も強く要望し期待しているものは何かといえば、それは
物価の抑制と
減税でありましょう。しかるに、
政府は、この
国民の祈るような二つの願いを弊履のごとく捨て去って、これにこたえようとはしないのであります。
減税について見まするならば、
政府は
自然増収五千九百億円を見込んでいるにもかかわらず、所得
減税はゼロであります。四十七
年度は全くゼロであります。五千九百億円の
自然増収は、勤労
所得税の伸びがその大半でありまするから、その実質的増税分は当然勤労者に還元すべきであるにもかかわらず、これをあえて行なわぬのは、依然として労働搾取の本質に立った苛斂誅求の近代版といわなければならぬのであります。(拍手)
減税こそは勤労者に対するただ一つの救いであり、また、この
減税によって大衆の購買力が増大し、短期の間に
景気を刺激することができるという、実に二重、三重の
経済効果をあげることができるのであります。しかるに、この明白なる道理をもあえて行なおうとしないところに、労働者を軽視し、庶民を貧困に定着せしめておこうとする保守反動政治の本質がくまなく露呈されていることを知らなければならぬのであります。(拍手)
三党組み替え案が、三千億円の所得
減税を行なってこれにこたえているのは、しごく当然の
措置といわなければならぬのであります。
これら
減税問題に関連し、今日最も強く叫ばれているのは、
法人所有の
土地に対する税制
措置の問題であります。投機の意図をもって
法人の所有している
土地面積は七千平方キロにも及ぶといわれ、または、全日本の市街地の面積にも匹敵するといわれておるのであります。これがすべての
物価騰貴の悪の根源となっているのでありまして、これを洗い出して再
評価し、思い切った税制
措置を打ち出すことこそ、最も
効果ある重要な緊急
施策といわなければならぬのであります。
その他、
交際費課税、広告費
課税などを打ち出して
国民的要求にこたえ、税の公正を期さなければならぬのでありますが、この点については何一つ見るべきものがないのであります。