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畑委員 それは、いきさつは私の若干
考え違いがあったかもしれぬ。私は、二人だと評決のときにむずかしいということがネックになったというふうに
考えておったんだが、あるいはそうじゃなくて、別の、あなたの言われるような
意味合いから見送られたんだと思いますが、しかし、そのときには、
法曹一元化ということとの
関係ということになると、やはり人員の問題だと思うのですね。そうでしょう。その
関係で、それとの見合いということで見送られたのだと思うのだが、それならそれでいいのですよ。その二人制があのときの二人制ならいいのですよ。問題ないのです。明らかにそれは
裁判所法を改正してやるはずだったのです。
〔
委員長退席、小島
委員長代理着席〕
ところが、あなた方がいま
考えていることは、
裁判所法を改正しないで、そして規則制定権に基づいて、司法事務処理だ、こういうふうなことを言われるのですね。これは明らかに違いますよ。そういうふうに
考えられては困る。ますますあなたのほうの権限を大きくしてしまうことになるのです。
憲法の七十七条の規則制定権、これとのかかわりがありますが、一体規則制定権というものはそんなに拡張してよいものか、非常に問題があります。規則制定権というのは、よく読んでもらえばわかると思うが、そういう問題じゃないと思うのですね。これは司法事務処理じゃないと思うのですよ。明らかに
裁判の審理の構成ですからね。
それでその
裁判官は、いま言ったとおり、
裁判官の許可を得て発問をすることができる、それから証人の尋問をすることができる、本人に供述を求めることができる、そういうことになっていますね。そういうことになってきますと、しかも最後には評決に加われない、だから
裁判体ではないんだ、こう言うけれ
ども、それは理解できないですね。回避の
制度もありますよ。それじゃそんなものも何も要らないわけじゃないですか、
裁判体じゃないとすれば。
裁判体であるかのごとくないかのごとく、片一方からこう言われるとそうじゃありません、片一方からこう言われるとそうじゃありません、こうなる、まことにこれはおかしな、奇妙きてれつな審理の形式ですよ。こういうことを便宜主議でやられては困る。しかも
判事補の訓練のためだという。同時に一審の単独制の強化のためだ、こういうことを言われている。
二つの目的がうまく調和できるはずはない。そういうことも
委員の中の学者先生なんかも言われているように私も聞いておりますが、両立できないと私は思うのですね。
判事補を訓練しなければならぬ、そのための試験台みたいな、それで公の
機関を利用するというようなことにもなると私は思うのです。これは明らかに立法事項であって、規則制定権に基づく、規則でやられるべきものじゃないと私は確信しておるのです。
いつまで論議してもなんですから、もう
一つ憲法三十一条にも私はかかわりが出てくると思うのです。「
法律の定める手續によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」というふうな
規定もあるわけです。これは刑事の問題ですが、
裁判所法に基づいて構成された
裁判所に、規則によって未特例
判事補を関与させたり、そして証人調べ等において、さっき言ったように尋問権を与えたり、
判決の形式にも一応判こを押させるというような、これは
判決にどういう
責任を持つのか知らぬけれ
ども、
判決書にも関与
判事補と書くのか立ち会い
判事補と書くのか知らぬけれ
ども、署名をするというようなことになっていますね。それで実際にいろいろなことをやる。これは明らかに心証を形成しますよ。それで最後的にはその単独
裁判官が、主たる
裁判官が自分の
考えでやるのであって、その立ち会いの、関与の
判事補にはただ意見を聞くだけだ、意見を述べたときは意見を聞くだけだというようなことを言われる。したがって、これはあくまで一人制の
裁判体であるのだ、こういうような理屈をあなた方は言いますけれ
ども、そうは見ませんな、外から見ますと。ちょうど二人の
裁判官、それが片一方のほうがおもに聞くでしょうが、
判事補のほうもいろいろなことを発問する。外から見ればりっぱな二人制の
裁判体ですよ。それがあなたのほうの理屈から言うと、あくまで一人なんだ、片一方は補助なんだ、意思決定はみなすべて主たる
裁判官がやるんだから、したがって、これは一人制の特例も特例、結局
法律できめるべき特例じゃないんだ、
最高裁の規則制定権に基づいての訴訟事務処理なんだ、こういうふうに簡単にやったら困りますよ。私は、これは絶対それでやられては困るというふうに思うのです。
その
手続関係につきましても、
刑事訴訟法だとか
民事訴訟法だとかいうものを使うでしょう。回避でも
忌避でもそうですね。そういうことになるのだが、それが実際は根拠がないということになると、その辺もおかしくなるのです。
憲法三十一条との
関係はどうか。
それから、もう
一つ重ねて聞きたいのだが、時間の
関係であわせて聞きます。
憲法七十六条の第三項、例の
裁判官の独立の問題ですね。この問題にも反しやしないか。
裁判官はとにかく独立して
裁判をする。合議体の場合にも、幾ら特例
判事補だって未特例
判事補だって、三人の合議体の一人を形成している。そして評決のときも、一人として評決の権利がある、発問もすることができる、そういうような形になっておりますね。それはあくまで独立しているわけです。
裁判官の独立をそこで保障しているわけですね。ところがこの場合には、あなた方の言うことを言えば独立はないことになる。その
判事補の独立はない。あくまで従属的
——従属的というよりもほんとうに何の力もないわけだ。一体そういうことを一人制の特例として、
法律できめないで、
裁判所法できめないで、
裁判所規則できめることができますか。私はあなた方の感覚を非常に疑うのです。あなた方は
憲法の番人ですよ。こうした
憲法の各条に非常に抵触する
疑い濃厚なものを、なぜ案として出すのですか。私はこれは問題だと思います。それをいいということは私はどうしてもちょっと
考えられないのだが、いかがですか。三十一条あるいは七十六条、それから
憲法七十七条の例の規則制定権、こういう問題についてはどう御
答弁になりますか。