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1972-04-05 第68回国会 衆議院 文教委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年四月五日(水曜日)     午前十一時二分開議  出席委員    委員長 丹羽 兵助君    理事 久保田円次君 理事 河野 洋平君    理事 西岡 武夫君 理事 小林 信一君    理事 山田 太郎君       小沢 一郎君    塩崎  潤君       中山 正暉君    松永  光君       渡部 恒三君    川村 継義君       木島喜兵衞君    有島 重武君       安里積千代君  出席国務大臣         文 部 大 臣 高見 三郎君  出席政府委員         文部政務次官  渡辺 栄一君         文部大臣官房長 井内慶次郎君         文部省初等中等         教育局長    岩間英太郎君         文部省大学学術         局長      木田  宏君         文部省体育局長 澁谷 敬三君         厚生省医務局長 松尾 正雄君         自治省財政局長 鎌田 要人君  委員外出席者         議     員 川村 継義君         行政管理庁行政         管理局管理官  梅沢 節男君         大蔵省主計局主         計官      青木 英世君         文教委員会調査         室長      石田 幸男君     ――――――――――――― 委員の異動 三月三十日  辞任         補欠選任   勝澤 芳雄君     安宅 常彦君 同日  辞任         補欠選任   安宅 常彦君     勝澤 芳雄君 四月三日  辞任         補欠選任   勝澤 芳雄君     西宮  弘君 同日  辞任         補欠選任   西宮  弘君     勝澤 芳雄君 同月四日  辞任         補欠選任   中山 正暉君     内田 常雄君   渡部 恒三君     椎名悦三郎君 同日  辞任         補欠選任   内田 常雄君     中山 正暉君   椎名悦三郎君     渡部 恒三君     ――――――――――――― 三月三十一日  四年制大学における養護教諭養成制度確立に関  する請願加藤清二紹介)(第一九九三号)  同(佐藤観樹紹介)(第一九九四号)  同外四件(中垣國男紹介)(第一九九五号)  同外一件(早稻田柳右エ門紹介)(第一九九六  号)  同(佐藤観樹紹介)(第二〇二四号)  同(佐藤観樹紹介)(第二〇五八号)  同(丹羽久章紹介)(第二〇五九号)  同(浅井美幸紹介)(第二〇八九号)  同(佐藤観樹紹介)(第二〇九〇号)  同(矢野絢也君紹介)(第二〇九一号)  同(鈴木一紹介)(第二一二八号)  同(矢野絢也君紹介)(第二一二九号)  同(佐藤観樹紹介)(第二一三〇号)  同外一件(佐々木秀世紹介)(第二一四六号)  同(佐藤観樹紹介)(第二一四七号)  同外二件(矢野絢也君紹介)(第二一七八号)  同(渡辺武三紹介)(第二一七九号)  私立学校に対する公費助成大幅増額等に関す  る請願中嶋英夫紹介)(第一九九七号)  同(三木喜夫紹介)(第一九九八号)  同(小林進紹介)(第二〇二一号)  同(佐野憲治紹介)(第二〇二二号)  同(山口鶴男紹介)(第二〇二三号)  同(小林進紹介)(第二〇五五号)  同(堂森芳夫紹介)(第二〇五六号)  同(山口鶴男紹介)(第二〇五七号)  同外一件(小林進紹介)(第二〇九二号)  同外一件(堂森芳夫紹介)(第二〇九三号)  同(矢野絢也君紹介)(第二〇九四号)  同(山口鶴男紹介)(第二〇九五号)  同外一件(山中吾郎紹介)(第二〇九六号)  同外一件(鈴木一紹介)(第二一三一号)  同外一件(堂森芳夫紹介)(第二一三二号)  同外一件(渡辺武三紹介)(第二一三三号)  同(山口鶴男紹介)(第二一四八号)  同(竹入義勝君紹介)(第二一四九号)  同(山口鶴男紹介)(第二一八〇号)  同(渡辺武三紹介)(第二一八一号)  女子教職員育児休暇法制定に関する請願(久  保田円次紹介)(第二一七七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月二十九日  私学振興に関する陳情書  (第一  五四号)  学校における児童生徒負傷事故に対する補  償制度確立に関する陳情書  (第一五五号)  公立医科大学に対する助成措置に関する陳情書  (第一五六号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  地方教育行政組織及び運営に関する法律の一  部を改正する法律案川村継義君外五名提出、  衆法第八号)  公立義務教育学校学級編制及び教職員定数  の標準に関する法律の一部を改正する法律案  (川村継義君外五名提出衆法第九号)  国立学校設置法の一部を改正する法律案(内閣  提出第八号)  文教行政基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 丹羽兵助

    丹羽委員長 これより会議を開きます。  川村継義君外五名提出地方教育行政組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案、及び公立義務教育学校学級編制及び教職員定数標準に関する法律の一部を改正する法律案、両案を議題といたします。
  3. 丹羽兵助

    丹羽委員長 提出者から順次提案理由説明を求めます。川村継義君。
  4. 川村継義

    川村議員 ただいま議題となりました地方教育行政組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案について、提案理由内容概要を御説明申し上げます。  教育基本法に、「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件整備確立を目標として行われなければならない。」と明示されておりますが、これこそ民主教育基本的な精神であると考えるものであります。この精神にのっとり昭和二十三年、教育委員会制度が制定されましたことは御承知のとおりであります。しかしながら、昭和三十一年、地方教育行政組織及び運営に関する法律が施行されまして以来、戦後つちかわれてきたこの民主的教育行政制度は根底からくつがえされ、わが国教育行政一路中央集権化の道をたどることとなりました。  その例をあげてみますと、都道府県教育長任命には、文部大臣承認を得ることとなり、また、市町村の教育長任命には都道府県教育委員会承認を必要とするなど、文部大臣の命令が実質的に末端教育長にまで及ぶことになりました。その上文部大臣措置要求といった非常手段まで設けられまして中央集権を強め、地方教育委員会自主性を弱めていることは国民周知の事実であります。  さらに最も注目すべきことは、教育委員会委員公選制任命制に改悪されて現在に至っていることであります。  任命制に切りかわることによって国民教育に直接参与する権利が奪われる結果となりました。また任命制においては、地方自治体の首長の政策に批判的な者ないし反対な者は委員として選ばれなくなり、首長の意に迎合したいわゆるお手盛り人事が行なわれてきた弊害があります。これでは、教育委員会自主性の喪失と弱体化は避けられないのであります。また教育財政についていえば、教育予算原案送付権がなくなりました。これによって、教育財政確立ということは名目のみに終わったきらいがあります。  かつて、国民に多大の犠牲を強要したあの悲惨な戦争の貴重な反省の上に積み上げられた民主教育精神は、またもとの封建的思想へ逆行しつつあるのであります。  ここに日本国憲法及び教育基本法精神にのっとりまして、教育行政を本来の国民の手に取り戻すべく本案提出した次第であります。  次に、本法律案内容概要について申し上げます。  第一は、本法の趣旨を、教育が不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行なわれるべきであるという自覚のもとに、地方公共団体における教育行政が公正な民意により地方実情に即して行なわれることを確保するため、公選制による教育委員会制度を設ける等地方公共団体における教育行政組織及び運営基本を定めるものとすることにしております。  第二は、教育委員会委員公選選挙及び解職請求についてであります。  すなわち、その一は、委員は、日本国民たる当該地方公共団体の住民が選挙することにしております。  その二は、地方公共団体議会議員選挙権または被選挙権を有する者は、それぞれ、当該地方公共団体教育委員会委員選挙権または被選挙権を有することにしております。  その三は、委員の任期は現行の四年とするが、二年ごとにその一定数を改選することとし、その他委員選挙については当該地方公共団体の長の選挙に準ずることにしております。  その四は、委員解職請求は、当該地方公共団体選挙管理委員会に対して行なうことができることにしております。  第三は、教育委員会及び地方公共団体の長の職務権限等について所要改正を行なうことであります。  すなわち、その一は、地方公共団体の長の権限に属する教育に関する事務のうち、教育財産の取得及び処分並びに教育委員会所掌事項に関する契約及び予算教育委員会権限に移すことにしております。  その二は、教育委員会は、毎会計年度、その所掌にかかる予算見積もり書類を作成し、これを当該地方公共団体の長に送付しなければならないこととし、また、地方公共団体の長は、教育委員会送付にかかる歳出見積もりを減額しようとするときは、当該教育委員会意見聴取を必要とし、減額した場合には、当該教育委員会送付にかかる歳出見積もりの詳細を予算に附記することにしております。  その三は、地方公共団体の長は、当該教育委員会所掌にかかる予算当該教育委員会に配当しなければならないこととし、教育委員会は、配当を受けた予算範囲内でこれを執行することにしております。  その四は、地方公共団体議会の議決を経るべき議案で教育委員会所掌にかかるものの原案送付等については、前に述べました教育委員会所掌にかかる予算の場合と同様の措置を講ずることにしております。  第四は、文部大臣教育委員会等に対する教育事務管理及び執行について違反の是正または改善のため必要な措置要求に関する規定を削除することにしております。  第五は、教育長については一定の資格を要することとし、その任命については、文部大臣等承認を要しないことにしております。  第六は、教育委員会会議公開等に関する規定を設けることとし、その他関係規定整備することにしております。  第七は、この法律は、昭和四十八年四月一日から施行することとし、教育委員会委員選挙等について必要な経過措置を講ずるほか、地方自治法その他関係法律について所要規定整備を行なうことにしております。  以上が本法律案提案いたしました理由及び内容概要であります。何とぞ十分に御審議の上、すみやかに御賛成くださるようお願いいたします。  次に、公立義務教育学校学級編制及び教職員定数標準に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  公立義務教育学校学級編制及び教職員定数標準につきましては、すでに御承知のとおり、昭和三十四年度より同四十三年度までの間、二回にわたり改善五カ年計画が実施され、いわゆるすし詰め学級解消をはじめ、学級規模適正化教職員配置率改善が行なわれたのであります。  さらに引き続いて、第三次改善五カ年計画が策定され、昭和四十四年度から複式学級編制改善並びに学級担任外教員養護教員及び事務職員配置率改善がはかられつつあるのであります。しかしながら、これらの改善措置も、へき地学校や人口の過疎地域及び産炭地域等に存する公立小学校及び中学校における教育実情に対応するものとしては、なお不十分な点が多々見受けられるのであります。  すなわち、現在、これらの地域においては、行財政の貧困もさることながら、いわゆるかぎっ子や非行少年等の問題児が激増しつつあり、かたがた多学年複式学級による教育は、児童及び生徒学習効果を著しく減退させ、かつ、教職員勤務量も増加の一途をたどり、過重な負担を余儀なくさせているのであります。したがいまして、これが、対策として教職員配置充実をはかるとともに、多学年複式学級編制解消につとめることは、目下の緊要事とされているのであります。よって、これらの点を緊急に改善する必要があります。  さらに、わが国学級編制基準を西ドイツ、イギリス、フランスのそれと比較すると、まだ二人ないし十一人を上回っているのが現状であります。  これら欧米先進国並み教育条件整備教育効果を一そう高める必要があります。そこで、現行の一学級当たり児童生徒数を改めようとするものであります。  以上の理由により、義務教育水準維持向上に資するため、本案提出した次第であります。  以下本案内容について御説明いたします。  第一は、公立小学校及び中学校学級編制改善であります。  すなわち、その一は、義務教育水準向上をはかるため、現行法における一学級四十五人の標準を四十人にするとともに、特殊学級の一学級十三人の標準を十人に改めることであり、その二は、へき地学校等教育充実させるため、小学校における三個学年複式学級解消するとともに、二個学年複式学級編制児童の数の標準現行の二十二人から十五人に改めることであり、その三は、へき地学校等の同学年児童または生徒で編制する場合における一学級児童または生徒の数の基準を三十人とすることであります。  第二は、公立小学校及び中学校教職員定数標準改善であります。  すなわち、その一は、小学校教育指導密度を高めるため、専科担当教員配置率を新たに定めること。  その二は、五学級以下の小規模学校及びへき地学校等について、それぞれの教育指導体制充実するため、教員の数の加算を行なうこと。  その第三は、特殊学級を置く小学校及び中学校について、特殊学級における教育効果を高めるため、教員の数を加算すること。  その四は、養護教育充実を期するため、養護教員配置基準改善し、六学級以上の学校、十八学級以上の学校及びへき地学校等について、養護教員の数を加算すること。  その五は、学校事務の円滑な運営をはかるため、小学校及び中学校事務職員配置基準改善し、さらに学校図書館重要性にかんがみ、小規模校においても学校図書館事務担当事務職員が配置できるよう定数改善を行なうとともに、学校給食完全給食実施校について、給食事務に従事する事務職員の数を加算できるよう新たに定めることであります。  第三は、その他関係規定整備を行なうことであります。  第四は、この法律は、昭和四十八年四月一日から施行することとしております。  第五は、経過措置についてであります。  まず、公立義務教育学校学級編制につきましては、昭和五十年三月三十一日までの間は、児童または生徒の数及び学校施設整備状況を考慮し、改正後の学級編制標準に漸次近づけることを旨として、都道府県教育委員会学級編制基準を定めることとしております。  次に、公立義務教育学校教職員定数標準につきましては、昭和五十年三月三十一日までの間は、児童または生徒の数及び教職員の総数の推移等を考慮し、改正後の教職員定数標準に漸次近づけることを旨として、毎年度、政令で定めることといたしております。  以上が本案提出した理由及び内容概要であります。何とぞ十分御審議の上、すみやかに御賛成くださるようお願い申し上げます。
  5. 丹羽兵助

    丹羽委員長 以上で提案理由説明は終わりました。      ————◇—————
  6. 丹羽兵助

    丹羽委員長 文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。小林信一君。
  7. 小林信一

    小林(信)委員 文部大臣所信表明について、なるべくその気分のうせないうちに御質問をいたしたいと考えておったのですが、なかなか大臣に会う機会がなくて残念でございます。またきょうもその機会を得られませんが、私の問題とするところは、大臣がいなくても十分御意見を承ればいいと思われることが多いのでございまして、その点をお尋ねしてまいりたいと思います。個々ばらばらに御質問を申し上げます。  まず第一番に、児童生徒健康管理の問題についてお尋ねしたいと思います。この所信表明の中に「大気汚染地域児童生徒の健康の保持増進をはかるため、特別健康診断を実施し、」と特に摘出して書かれてありますが、私は大気汚染地域だけに限らず、児童の置かれております環境というものは、あらゆるところで公害から守っていかなければならない計画的な、しかも緻密な策が立てられなければならぬと思うのでありますが、特に大気汚染だけを取り上げた理由と、そして特別健康診断をなさるといいますが、どういうことをなさるのか、まずお尋ねをしておきます。
  8. 澁谷敬三

    澁谷政府委員 御承知のように、学校におきます児童生徒保健管理につきましては、学校保健法というものがございます。それでいろいろ健康診断その他の措置をいたしておるわけでございます。  大気汚染地域の場合に、耳鼻あるいは咽喉あるいは結膜炎、それから心臓その他いろいろ異常を訴える児童が多いというようなことで、実態調査をいたしましたところ、確かに普通の地域よりもそういう異常がある程度多いことが判明いたしましたので、本年度から補助金を計上いたしまして特別健康診断を実施することにいたしておるわけでございます。  まず、その大気汚染酌域学校童児生徒からアンケート調査をとります。つまり目とかあるいはのどあるいは心臓などにいろいろ異常があるかどうかについて児童生徒及び保護者からアンケート調査をとりまして、それで訴えがあった者につきまして健康診断を、普通の健康診断以上に内科医耳鼻咽喉科医眼科医にお願いいたしまして、かなり精密な健康診断をいたしました。そこで異常が発見された者につきましては、さらに専門的なもっと精度の健康診断をやるということを本年度から始めたわけでございます。
  9. 小林信一

    小林(信)委員 最初の、なぜ大気汚染だけを文部省は取り上げたかという問題についてのお答えがないようです。それから、特別健康診断内容はちょっとわかりましたが、しかし常時行なわれております健康診断ですね、身体検査と称するもの、これはいままでどの程度にお考えになっておったのですか、その点も……。
  10. 澁谷敬三

    澁谷政府委員 常時行なわれる健康診断は、定期の春行ないます健康診断と、たとえば流感がはやるとかその他特別の場合の臨時健康診断がございますが、通常の健康診断につきましても、学校保健法制定以後十数年を経過いたしておりまして、いろいろその後の事情の変化がございます。たとえば、最近は特に児童生徒疾病状況が、寄生虫とかトラホームとか、そういうものは著しく減少いたしましたが、虫歯とか近視とか、それから特に最近は心臓系疾患あるいはじん臓系疾患、それから情緒障害あるいは肥満児、そういったような新しい問題がいろいろ起きてまいっておる。そこで、学校保健法におきます常時の健康診断におきましては、じん臓系あるいは心臓系、そういったものにつきましては、現在臨床医学的検査その他の方法で発見につとめるというような扱いになっておりまして、ほかの疾病のように健康診断技術的基準を詳細にきめてやっておらないというようなこともございまして、現在保健体育審議会学校保健分科審議会でいろいろ今後のあり方につきまして御検討をいただいております。かなりまとまりつつございます。そういうことで、常時の健康診断保健法に基づいて技術的基準検査方法などもきめてやっておるわけでございます。ただ、いま申し上げましたようないろいろ新しい問題が出ておりますので、今後の方向につきまして保健体育審議会で鋭意御審議を願っておるところでございます。  ところで、一方大気汚染地域につきましては、先ほどのようなことで、これは保健体育審議会審議でも、そういう大気汚染地域については特別健康診断などを早く実施する必要があるという御意見がございまして、まだ中間報告なり答申をいただいておらないわけでございますが、御審議の段階で、そういうのはなるべく早く取り上げてやる必要があるということもございまして、そこだけ早く取り上げて実施いたしたわけでございますが、先生の御趣旨のようなことは、いま保健体育審議会でかなりまとまりつつある、審議を願っておる次第でございます。
  11. 小林信一

    小林(信)委員 なぜ大気汚染だけを取り上げたかということについて、もっと現実をごらん願って対策を講じていただきたい。私は、現実考えたらもっといろんなことが考えられるのじゃないかと思っておったのですが、たいへんに保健体育審議会の御意向を御意向をというふうなおことばが多いのですが、そんなことでやっておったら、ほんとうに実際の児童生徒保健管理というようなことは私はできないんじゃないかと思うのです。ほかの県はどうか知りませんが、私の県は、もうすでに県内の川で水泳をすることはいけませんよというふうに教育委員会から禁止をされております。つまり水質汚濁ということが、ただきたないということでたく、相当農薬なんかの影響もあり、あるいは工場排水なんかがあって、もう水泳には適しませんという禁止令が出て相当な期間になっているわけです。そういうものがあなたのことばから出ないで、いずれ保健体育審議会から何か出るでしょうというようなことでは、大臣のせっかくの所信表明なんですが、私はこれは全く空文にひとしいと思うのです。水質汚濁の問題なんかはどうですか、お考えになっておりますか。
  12. 澁谷敬三

    澁谷政府委員 水質汚濁のいろいろ問題があるかと思いますが、いま先生指摘の問題は、確かに最近海とか川とかそういうところが水泳に適さなくなったというようなことで、やはり学校プールあるいは市民プールをもっとふやす必要があるということで、本年度千カ所、来年度予算では千五十カ所分をお願いいたしておるわけでございます。そういうことで、いま先生の御指摘範囲では、プールをうんとふやしていきたいということで、毎年いままで千カ所くらい予算を計上しまして、来年も少しふやしてやっておるところでございます。
  13. 小林信一

    小林(信)委員 私の考え範囲のことをやっておいでになるというのですが、それは私不満です。というのは、まずそれじゃ、いま小学校中学校プールが設置されておりますのはどれくらいのパーセンテージになっておるか、言っていただきたいと思うのです。
  14. 澁谷敬三

    澁谷政府委員 いまちょっと資料を持ち合わせておりませんが、全国的には相当のパーセントになっておると思います。ただ県によりましてちょっと格差はございます。たとえば、たしか長野県だと思いましたが、長野県あたりは非常にできてまいりましたが、県によってやはり力の入れるところの順序その他がございまして格差はございましたが、全国的にはかなりの数になっておると思います。
  15. 小林信一

    小林(信)委員 これは大臣がつくったので、あるいはあなたがつくったのじゃないかもしれませんが、「恵まれた自然環境の中で」、こういうふうなことばを入れるからには、プールをある程度つくってまいりますからそれでいいですというふうなことでは、きょうのいろんな諸情勢から考えて私はまことに不適当だと思うのです。とにかく公害対策という面からもプールというものはつくらるべきものだと私は思うのです。単に水泳ができないから、その水泳プールでもってやるのだということでなく、もう頭を切りかえて、これは公害対策として何よりも優先して、いま地域の差がある、その地域の差を解消するような努力をしながら、全国にこれだけは必置しなければいけないのだというようにしなければいけないと思うのです。それについては、まずプールを設置する場合の補助金は幾ら出していますか。
  16. 澁谷敬三

    澁谷政府委員 長年プールの補助単価がわずか百二十万ということでございまして、実際には全国平均九百万はかかるのが実態でございますが、十数年間百二十万に据え置かれているわけでございますが……(小林(信)委員「据え置かれておるのはだれが据え置いておるのですか、国民がしておるのではないのです」と呼ぶ)そこで来年度予算では、わずかでございますが、単価五割アップの予算をいま国会にお願いして百八十万の、これは少なくとも九百万かかりますので、一応たてまえは三分の一補助ということになっておりますが、ただ百二十万でございましたので、とりあえず来年は百八十万に上げる予算をいまお願いいたしておるわけでございますが、少なくとも三百万にはいたしたい、そう思っておるところでございます。
  17. 小林信一

    小林(信)委員 だから、話を聞いていけばこの大臣所信表明はもう一ぺん出直してもらわなければいけないのですよ。いま、ただ健康管理という問題だけからしても、百二十万で九百万も一千五百万もかかる仕事をするのはやはり父兄は痛いですわ。だからもう、水を浴びることができない、水泳することができない。もう子供は隠れて水泳をすることすら、水というものに対して認識が高まっておりますからやりませんよ。したがって、夏場どんなに暑くても、あるいはほかの町村の子供はプールでもって喜んで泳いでおりましても、じっとがまんしているというふうな子供がたくさんあるわけです。百二十万円しか補助金をやらない、そこが問題を遅延させておるわけなんで、これは決して国民あるいはほかのほうに責任があるわけではなく、文部省、しかも体育局長が一番責任を感じなければならぬところだと私は思うのです。  だから、大気汚染というふうなことが出て、公害対策をやりますというふうなことを命題にしておりますけれども、これはほんとうに死文にひとしい。第一番に、教育の面で公害問題を取り上げる場合には、子供がいかに被害を受けるかということに対してだけお考えになるのでなく、いかにして子供たちの自然環境というものを恵まれたものにするかということを考えるならば、教育的に公害を排除する運動もしなければ、いまの体育局の任務は全うされないと私は思うのです。ただ河川が汚濁するからプールをつくってその対策を講ずるんでなくて、もっと建設省なり厚生省なりほかの省に注文をして、下水道をつくってくださいというくらいの積極性がなければ、ほんとうに子供たちの健康管理ということはできないと私は思うのです。  それくらいに、大気汚染ということだけでなく、そのほか騒音の問題も悪臭の問題も、私のすぐそばには、私の市内ですが、斃獣処理場があるのです。そこでもってかまをあけるときにはちょうど弁当の時間が多いのです。子供たちは弁当も食べられない。何か思考を要する学習をしている場合には、その悪臭が出てくれば勉強することができない。そういうものがたくさんあるんです。だから、大気汚染というふうな小さいものでなく、いかに公害対策をやるか。しかもそれは、ただ子供たちを守るということでなく、世の中の公害排除の思想というものをいかに教育的に流していくかということも私は大きな仕事だと思うのです。  あなたは水に流すということばを知っていますね。これは日本の非常に美しいことばなんですが、しかし、いま公害の問題では一番これは罪悪的なことばになっているんです。急流でしかも河川が短いから水へ流してしまえばすぐ海に行ってしまいます。だから、人間的な関係の中で問題があった場合には、水に流してくれというふうなことばが日本には一つの社会的な習慣として残っている。それがやはりわれわれの生活の中にもいまだ生きておりまして、何でもきたないものは水に捨てろ、そういう思想まで社会的な慣習の中から取り上げて、おかあさんたちの教育あるいは青少年の教育、いわゆる社会教育、そういうふうな面からも公害排除の思想なり観念なりをつくっていく。それくらい文部省には責任があると私は思うのです。  それから、特別健康診断の問題でお聞きいたしましたが、いままでの学校医あるいは歯科医あるいは学校薬剤師というものにはどれくらいの注文をあなた方はしておったのですか。いまの社会情勢からすれば、あなたがいまおっしゃったくらいのものをいまの学校医あるいは歯科医あるいは学校薬剤師に要求するくらいでなければ私はうそだと思うのです。大気汚染のある地域があったから初めていまのような専門的な医者を置いて、そうしてそれに特別な診断をさせるんだというふうなことでは、何か手おくれのような気がいたします。汚染地域として指定されたから、そこの子供だけをいまのような健康診断をするのでなくて、もう全国的にそういうレベルにあの身体検査というものを私は上げてもらいたいと思うのです。従来の学校医あるいは学校薬剤師あるいは歯科医というものに対してどれくらいのあなた方は注文をしておったんですか。制度としてとにかくありますね、それをお尋ねいたします。
  18. 澁谷敬三

    澁谷政府委員 御承知のように、学校医は従来内科医を中心に普通の場合一人が多かったわけでございますが、先ほど申し上げたようなことで、最近は耳鼻咽喉科の問題あるいは眼科の問題がいろいろ出てまいりますので、昭和四十五年度から地方交付税の単位費用の積算に、いわゆる総括的な学校医のほかに眼科医耳鼻咽喉科医、そういう専門医の報酬の手当も積算してもらいまして学校医の充実をはかっておるわけでございますが、いかんせん全国的に必ずしもそういう眼科医あるいは耳鼻咽喉科医の専門医が地域社会におられない場合もあるわけでございまして、必ずしもまだこちらの期待したとおりの設置状況になっておらないわけでございます。現実には、多くの場合そういう一人の学校医の方でございますので、非常に一生懸命やっていただいておるわけでございますが、一応そういうことでさらに眼科医耳鼻咽喉科医のような専門医をふやしてお願いできますように財源措置をいたして充実をはかっていきたいというふうに考えてきたわけでございます。
  19. 小林信一

    小林(信)委員 的を突いたお答えでなくて何か医者の問題になってきたんですが、やはりねらうところは、できるだけ丁寧に、できるだけ専門医を網羅して健康診断をするということが私は大事だと思うのです。養護教諭や学校内部にもいろいろな施設がありますが、身体検査というてただ身長をはかり体重をはかるだけでなく、また、ちょっと目の裏ひっくり返してトラホームがあるかどうか、それからアアーとやれと言って虫歯があるとかないとか、へんとう腺があるとかないとか、あるいはちょっと背中たたいて——これももうやむを得ないことだと思うのですが、その程度しか文部省が要求してないからなんですね。もっと私は、こんなことを、公害があるとかないとかいうことに限らず、諸外国等の例を見ても、もっと十分高度な身体検査というものが要求されなければいけなかったのじゃないかと思います。  それにつけても学校医あるいは歯科医、そういう人たちの待遇というものは、まことに形だけで、ほんとうに重視するならば、そういう人たちの待遇というものも十分改善をし、改善をするためには国が何らかの配慮を地方財政に見るとか、あるいは教育財政の中から出すとかいう方法を講じなければならぬと思うのです。いま大体全国どれくらいが平均ですか。
  20. 澁谷敬三

    澁谷政府委員 御指摘のように、学校医あるいは学校歯科医の報酬が非常に低かったことは事実であります。それで学校保健法昭和三十三年にできたわけでございますが、それまでは地方交付税の単位費用の積算もわずか三千円ということでずっと来てまいりまして、学校保健法ができました当時にそれを七千円に上げていただきました。自今年々上げてもらいまして、昭和四十六年度学校医、学校歯科医四万円ということに、交付税のほうは年々、また来年もこれを引き上げるようにお願いいたしておるわけでございます。現実には学校医の勤務の実態もまちまちであるということもございますが、全国平均は、これは昭和四十五年のものでございますが、昭和四十五年の全国的平均が年間一万八千九百五十円ということになっております。
  21. 小林信一

    小林(信)委員 それを局長、どうお考えになりますか。年間の手当一万何千円、これはお医者さんの一日の収入にもならない費用だと私は思いますよ。だからお医者さんは、自分の住んでいるところの児童生徒であるから、十分その健康管理には協力しようと思っても、実際年間手当一万何千円では十分な仕事はできないわけですよ。それを年々ふやしていきますという程度でもって、あなたは児童健康管理ができるとお考えになりますかどうか。もし何だったら、これは次官にひとつお答え願いたいと思うのです。
  22. 澁谷敬三

    澁谷政府委員 いま全国平均を申し上げましたが、学校医の皆さま方の勤務の実態も非常にまちまちになっておりまして、年間学校においでいただくのが最低二日くらいというのから、一番多い場合が八十一日という状況になっております。全国平均で学校においでいただくのが七日というのが実態でございます。そういうように、学校医の場合は、いわゆる年額といいますより、勤務日数をある程度基礎にして報酬が考えられておりますので、そういうことで報酬のほうも最高は三十八万円も出しておるところもございますが、全国平均では先ほどのような数字になっておりますので、少なくとも私どもとしては、交付税の単位費用に積算された額くらいは最低計上していただきたいということを、これでも決して満足ではございませんけれども、少なくとも単位費用に積算された額くらいは最低ひとつ出すようにしていただきたいということは、再三お願いいたしておるわけでございます。もちろん、交付税の積算額でも必ずしも十分とはいえないと思いますが、これも年々上げてまいりましたし、来年も上げていただくということになっております。それが現実でございます。
  23. 小林信一

    小林(信)委員 私は現実を聞いているのじゃない。こんなことで論議をしたってしかたがないのですよ。ほんとうに児童生徒健康管理をするというなら、もっと画期的な考え方を持っておられなければならぬと思うのです。実際にはそれは不可能であっても、文部省はせめてどれくらいの構想を持っておいでになるか。たとえばある一人の医者がそこに勤務しておったら、その周辺の二百人ないし三百人の児童健康診断をして、カルテをつくって、この子供にはどういう疾患がある、この子供にはどういう要注意のところがあるというようなことを、医者がひとつ責任をもって健康管理をする。その子供に何か支障があった場合には、ああこの人間はここが問題なんだなということがすぐ医者の頭に入ってくるくらいの、少なくともそういう制度がつくれたら、私は児童生徒健康管理ということはかなりできるのじゃないかと思う。これは諸外国でやっていますわね。しかし日本では、いまあなたのおっしゃるように、勤務日数が年間七日だから、八日だからということで、それに該当する費用を自治省でもって心配をする。そんな消極的な考え方では私はほんとうの健康管理はできないと思う。だから公害の問題でも、大気汚染とかいうふうなものを一つ取り上げてそれで事足れりとしておるのじゃないかと思います。そういうようなことは無理ですかね、次官、どうですか。
  24. 渡辺栄一

    渡辺(栄)政府委員 お答え申し上げます。  小林先生には公害問題を非常に熱心に御研究をいただいておりまして、私も御一緒に公害の問題をいろいろやってまいりましたので、学校児童に対する公害の問題、あるいはまた公害に対する教育指導の問題、お説のごとく非常に大事な問題であると私は思います。体育局長の御説明申し上げましたことで必ずしも私も十分であるとは思いませんが、ことしは、プールの問題につきましても、長年据え置かれました補助金の額を一応五割り増しにして、極力充実に努力をしてきたという、こういう努力は御理解いただけると思いますが、お話しのように、少なくとも補助金としては三分の一というのが常識であると思うのでありますが、今後はひとつ前向きに努力をいたしまして、極力ひとつ児童にとり必要である地域についてはプール整備できるように、私どもといたしましても努力をいたしたいと思っております。   〔委員長退席、河野(洋)委員長代理着席〕  それから、ただいまの学校医の問題は、これは先生のおっしゃるようにすれば一番望ましいことでありますし、努力をしなければならぬと思いますが、御承知のように現在は全国的に医師が不足をしておりまして、医師の充足ということに努力をしておるわけでございますから、地域によりましてはそういうことが可能な地域もあるかもわかりませんけれども、全国的にながめた場合には、現実の問題として非常にむずかしい地域もあるのではないか、こういうことを私どもはおそれておるわけでございます。  一面では、医師の充足に努力をしながら、やはり、児童健康管理、指導ということは非常に重大なことでございますから、極力努力をしていきたいと思います。特に、医師の手当等が、いま御説明いたしましたようなことで、現在の医師の現状から考えましてもちろん十分でないと思っておるわけでありますから、できる限り医師に十分な御努力を願えるような体制を整えるように今後努力をいたしたいと思います。先生の御意見は、われわれといたしましても十分そのような気持ちは持っておりますので、今後さらに努力をいたしたい、かように考えます。
  25. 小林信一

    小林(信)委員 次官のいまの御説明は、要を得ておるようでございますが、大事な点が抜けておるような気がいたします。医者が不足しておるからかくかくであるということで済ましてしまってはいけないと思うのです。これくらい必要度が高いんだというものを一方で強く打ち出すところに、医者を充足する方途というものが講ぜられるのじゃないかと思うのです。いまの児童生徒健康管理というふうなものは全く形骸にすぎないと思うのですよ。どうすることがほんとうにこれからの国民を、次代の国民を育成する道かというふうな点から、理想はこうだよ、だからもう普通開業医がいまのような仕事をされるのじゃなくて、その一面、医者の任務として、その地域児童生徒健康管理責任を持つというふうな状態でなければならないんだ。いまのように、進学というふうな問題に父兄がうき身をやつしておりますが、そういう面にもっと配慮をさせるようなものを、文部省自体が打ち出さなければいけないと思うのですよ。  そこで、一つ具体的な事例を私はこの際取り上げてお聞きしたいと思うのですが、広島県の竹原市の竹原小学校というところで、運動場にただ一つ非常に古びた、小学校向きではない——昔付近に海軍兵学校か何かあったわけですね。そういうものでもまねをしたようなすべり台があるのですよ。それははん登棒もついております。そして非常に高いところまでぶら下がっていけるようにもなっているのですが、そこでつい先ごろ——私資料をきょう持ってまいっておりませんので、具体的に申し上げられませんが、子供たちが遊んでおって、中間に踊り場みたいなところがあるわけですよ。そこに小さい手すりがありまして、そこに子供が腰かけておって、鬼ごっこか何かしておって、鬼が来たというところでちょっとあわてたために、二メートルくらいの高いところですが、その手すりみたいなところから子供が落ちたのですね。下のほうは、そういうものですからがんこなものですが、はん登棒の鉄の棒が立っているのです。それにでも頭を打ちつけたのか、落ちたとたんに意識不明のような状態になったわけですね。一緒に遊んでおった子供たちがあわててその子供を養護室へかつぎ込んだのです。ところが、その学校で養護婦と称する名前の人がいるのですが、この人は資格がありません。本人も、私は資格がないからその名前をつけられるのは困ります。学校にもあるいは教育委員会にも断わったのですが、教育委員会のほうから去年差し向けられまして、無資格ではございますが、学校からそういうふうに見られておるために、子供の養護の問題を引き受けておったわけです。後頭部を打ったことはわかります。後頭部に小さな裂傷があったから。それをすぐ手当てをして教室へ帰したらしいのです。しかし、そこへたまたま学校医が入ってきたのです。もしその養護婦が医学的な知識があれば、後頭部というのは軽視してはならない、せっかく学校医が来たのだから、先生ちょっと見てくださいと言えば処置をしたかもしれないが、その養護婦と称する方も、簡単に考えて教室へ帰してしまったし、学校医も、何で来たのか知りませんが、その手当てをしておる状態を見ながら、何も手も触れなかった。だが子供は、教室へ帰って、そのときにはまだ歩くことができたらしいのですが、授業が終わって、掃除があったのですが、学校先生のほうから、あなたはきょうはけがをしているから、掃除はしなくてもいい、帰りなさいと言って帰したわけですよ。ところがそれが非常に問題になるわけです。帰ったらふとんに寝かされたけれども、嘔吐を催す、鼻血が出るというような状態になってきた。それでおかあさんが、これはたいへんだというので付近の外科医のところに連れていった。外科医は、ちょっと様子がわからぬからしばらくこのまま休ませておけといって、その翌日その子供が死んでしまったわけです。  これは竹原市では非常に問題になっております。文部省の先ほど来御説明を受けた学校医に対する考え方、あるいは児童生徒に対する健康管理、こういう問題は、私が簡単に指摘しただけでも、決して大臣所信表明に載っているような現状ではない。そういう状態が私はこのような事件を生んだと思うのです。大体、本人が拒否しておるのに——置かなくてもいいという条項がありますから養護教諭を置かなくてもいいわけですが、しかし、市のほうの配慮としては、何らかそれにかわるべきものを置かなければいけないということで、養護婦という名前をつけて派遣をし、それを本人はいやがるわけですが、学校のほうでもその職務につかせる。経験はあるようでありますが、十分な医学的な知識がない。そういうことがはからずも一人の子供を殺してしまったということになるわけであります。私はこれはただ一つの例じゃないと思うのです。多かれ少なかれ、そういうふうな事実というものが全国的にあるのではないかという点を考えますと、非常に寒心にたえないのですが、この問題について文部省もお知りですかどうか、まずそこからお尋ねいたします。
  26. 澁谷敬三

    澁谷政府委員 承知しております。
  27. 小林信一

    小林(信)委員 御存じだとするならば、私は私なりの見解を申し上げましたが、文部省はそれに対してどういう見解を下しておいでになりますか。
  28. 澁谷敬三

    澁谷政府委員 まず、簡単に私どもの承知いたしました事実関係を申し上げさせていただきたいと思います。  いま先生指摘のとおり、昼休みの時間に鬼ごっこをいたしたようであります。当該生徒は九歳の生徒でございまして、特殊学級に属しておる子供でございます。昼休みに特殊学級の子供二、三人と普通学級の子供二、三人で鬼ごっこをいたしまして、その生徒はいま御指摘のすべり台といいますか、両方にすべり台がこうなっておりまして、上が踊り場になっております。その踊り場のわきにいま御指摘のような棒が立っておる。この踊り場のところにその生徒がすわっておりまして、この棒につかまってすわっていたらしいのです。特殊学級の子供でございます。そこで、鬼ごっこでございますから、立ち上がって何かしよう、逃げようとしたわけでしょうか、その立ち上がったときに転落した。高さが二メートル六十センチくらいの高さから落ちたようであります。そこで一緒に遊んでいた子供が保健室に連れていきまして、養護婦の先生が、耳のうしろのところからちょっと血が出ていたようですが、それをすぐ応急手当ていたしたわけでございまして、すぐ血はとまったようでございます。そういう特殊学級の子供でございまして、非常に明るい子供でございますが、非常におとなしい子供なもので、ときどき何か聞いても返事をしないことがあるということでございますが、そのときの外見は、あまりそう痛さも訴えないし、まあたいしたことはないのではないかというふうに——担任の先生もすぐ来られたようでございます。それで、学校医の方はかねがねその日に肥満児の健康診断をやることになっておっておいでになったようでございます。その養護婦の先生が、子供のほうがそう痛がらないし、たいした様子でもないということで、肥満児の健康診断をその学校医の方が始めたので、あまり学校医に迷惑をかけては悪いと思って、せっかく来られた学校医の方にも診断をお願いしなかったのは事実のようでございます。これは先生指摘のとおりでございます。  そこで、その後元気になりまして教室へ自分で歩いて帰ったようでございますが、帰って間もなく授業が終わりまして掃除を始めたようでございますが、担任の先生が、もう一ぺん保健室で休むか、掃除をするか、うちへ帰るかと言ったら、うちへ帰りたいと言うのですぐ帰したようでございます。わりあいに近くのようでございますが、平素と変わりなく、先生さようなら、皆さんさようならとあいさつをして帰ったようでございます。両親にすべり台から落ちた旨を伝えたようでございます。顔色が悪いので、お医者へ行こうかと言いましたら、本人がどうしても行きたくないと言うので寝かせた。これが十四時でございますが、そういたしましたら、十四時四十分ごろになりまして、吐きまして鼻血が出たというので、おかあさんがさっそく病院に連れていったようでございますが、結局翌日なくなりました。それは、検視官の判定では脳挫傷、脳幹損傷の外傷死ということでございます。  そこで、この養護婦の方は、先生指摘のとおり、県立の高等学校を出た方で特別な資格は持っておらないで養護婦ということであったことは事実でございます。確かに頭を打ったわけですが、外傷もたいしたことがない、それから子供もすぐそのときは元気になったということで、そのときの見方がやはり専門の知識を持っておりませんから、そういう点があったことは先生指摘のとおりではなかろうかというふうに思うわけでございます。それで、養護教諭の充実につきましては、御指摘のとおり、先生十分御存じのとおり、初中局のほうで何回かの五カ年計画で全国的な充実をはかりつつあるわけでございます。事実としてはそういうことで、学校の休み時間でございますが、まことに遺憾な事故だと思っております。
  29. 小林信一

    小林(信)委員 見解と私お聞きしたのですが、私の考え方は、どこに問題点があったか、その子供をむざむざ死なせなくてもよかったんじゃないかという点をお聞きしたかったわけでありますが、そういう点にはあまりお触れにならない。私は、先ほどから申し上げております健康管理という命題で、たいへんに力を入れておるようでありますが、審議会の御意向を聞くというふうなことに重点を置いて、実際の現実というものはあまりお考えになっておらない。文部省児童生徒に対する健康管理の積極性がない。それがいまのような問題になったのじゃないかと思うのです。医者だって、せっかく——先ほど来話がありましたように、もっと責任を持つような条件というものがあれば、けがをしておったのですから、これは絶対安静にしなければいけない、一人でなんか帰しちゃいけませんよという配慮があれば一つの命が助かったわけであります。  まだ私は、そのほかに申し上げたい。そのすべり台でありますが、これは鉄板でできているのです。鉄板をコの字型にして上から下のほうにずっとおろしてあるのですが、その溶接してあるコの始の両わきのかどの部分はみんな破れております。鉄板ですよ。だから子供がすわっていってはだしですべつたような場合に、足がひっかかれば足が必ず裂けます。手も裂けます。だが、がんこなすべり台ですが、そういう状態でもって置かれてあります。私は広島市の養護教諭という資格を持っておいでになる方と一緒に参りまして、その人たちのいろいろな意見を聞いたのですが、養護婦という資格を持っておればこういうところに気をつけなければならない。いまの鉄板のすべり台の裂けておるものはもちろんであります。そのそばに枯れた植木があるのですが、枯れておりますから子供が行って折りますよ。そうするとその折ったところは非常にとがっています。子供が何かの拍子に飛んできて目を突っつくような場合もあるかもしれぬ。そういう場合には、これは養護婦の責任として完全に切り取ってしまわなければいけないのだという点も指摘されました。そういうふうに有資格者の配置というふうなことが欠けておったという点は、これはやはり問題があると思います。  それから、私が発見したのですが、その校舎から便所へ通ずるところに屋根がかけてあります。柱はないのです。便所と校舎をつないである屋根があるのです。その屋根にはシートがかけてあるのです。もうかわらは大部分落ちているのです。そしてその柱は、横の柱ですが、これはもう腐っているのです。あれもいつどさっと落ちるかわからない。校舎は危険校舎です。竹原市の中では最も風格のあるりっぱな校舎ですが、もう相当に腐朽して古びているのです。校長先生にそういう点を指摘して、なぜ危険校舎に指定して改築しないのですか。私の県あたりでは、腐朽度がまだ低いからといっても、地域の人たちは、もっと明るい近代的な校舎にしたいということで危険校舎に指定することを喜んでおるのですが、竹原市は、それどころか、危険校舎であってもこれを改築することができない。いまのような危険な屋根を持った廊下があってもそれをどうすることもできない。いま遊具としてはすべり台が一つです。しかもそのすべり台がいまのような状態です。校長先生は非常に残念でございますと言っております。これは体育局長責任じゃないかもしれませんが、文部省の大きい責任だと思いますよ。  それから私は市長に聞きました。庁舎は非常にりっぱであります。学校の校舎があの状態ではたいへんふつり合いですねと言いましたら、そのとおりでございます、しかし町村合併をしまして、どうせ永久に使おうとするのだから、これには思い切って金をかけましたが、だからといって教育を軽視しておるわけじゃありません、だが、私たちの町で一番財政的な問題は、海がもうすべて公害でもって漁師たちが働くことができない、この人たちに失業手当を自治省は出すなと言うけれども、私の市の状況からすれば、ときに埋め立てするために漁業権を剥奪したというふうなことから、ない財政でございますが、失業手当を出しておる。そういうわけで、いま危険校舎がありましてもそれを改築できないような状況にあるわけです。だから教育行政も、ただ文部省だけで考えている時期じゃないと思うのですよ。そうした公害の問題から生まれる失業手当の問題、そして地方財政は苦しくなってきておる。だから危険校舎であってもこれを改築することができない。養護教諭の配置ということは、これはそれに該当するかどうかわかりませんけれども、そういういろいろな事情をやはり総合的に検討していかなければ一つの命を大事にすることは私は不可能だと思います。命が大事だという中で、そういうふうに軽視されておる点を私は竹原市に行って強く感じてきたのですが、これは初中局長のほうから養護婦の問題についてはたびたび伺っておりますので、一日も早く充実をしなければ、大臣所信表明の中にこんなことはうたえない。できるならこんなものは撤回してほしいということを私は言いたいのです。  それにつけても、先ほど次官からお話がございましたが、いまの学校医のあり方、養護教諭の配置の問題、それからプールの問題ではどれくらいのパーセントが完備されたかまだお聞きすることができませんが、これらも、いまの状況からすれば何年間にこれを解消するかぐらいの計画が私は必要だと思うのですよ。それに対する補助が、次官は三分の一を希望しておられるようでありますが、ただ保健という面からでなく、公害の影響というものを考えれば、もっと私は額はふやさなければいけないと思うのですが、百二十万円から五割増しにしてもこれは百八十万円です。これではやはり地方財政の中では、年度計画で何年間に解消するという積極的なものは私は出てこないと思うのですが、この点もどういうふうにお考えになるか、責任の立場からお答え願いたいと思います。次官からお願いしたいと思います。
  30. 渡辺栄一

    渡辺(栄)政府委員 先生のお説につきましては、私どもも同じような熱意を持っておるつもりであります。ただ、地方財政の場合は、三分の一というのは一応のめどでございまして、それで事足りると思っておるわけじゃございませんが、当面そういうことを申し上げたのでありますし、一面には、御承知のように起債による充当という問題もあるわけでございますから、極力ひとつ地方負担を軽減しながら、どの自治体においてもプールの充足ができるように私どもとしては今後とも努力いたしたいと思います。具体的な数字の問題につきましては局長から御説明いたしたいと思います。  なお、学校医と養護教諭との問題につきましては、これまた具体的には御説明申し上げようと思いますが、今度の第三次教育改革におきましても私どもが大事であると思うのは、これは人間尊重ということだと思います。そういう意味におきまして、学校の施設、運営等によって生徒の人命あるいは健康が阻害されるというようなことが起きるような事象が具体的に起こっておるというようなことは、まことに私どもといたしまして残念なことだと思いますので、今後とも十分そういう点につきましては配慮をしてまいりたい、かように考えております。
  31. 小林信一

    小林(信)委員 大臣がおいでて大事な時間をお使いになるわけでありますから、この件につきましては私は大臣にお尋ねしたいのですが、またいずれ機会のあるときに御質問をすることにして、私の質問はここでもってやめるのでなくて、一応とめます。  ただ、大臣にちょっと一言申し上げれば、あなたの所信表明で子供の健康管理ということをここにりっぱにうたってあるようでありますが、私がいま指摘した点を一つか二つ取り上げただけでも、あなたの所信表明の中から健康管理の問題を撤回しなさいと私はいま言っているのです。しかし、きょうは時間がありませんから、いずれまた
  32. 河野洋平

    ○河野(洋)委員長代理 政府より提案理由説明を聴取いたします。高見文部大臣
  33. 高見三郎

    ○高見国務大臣 このたび政府から提出いたしました国立学校設置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  この法律は、昭和四十七年度における国立大学の学部及び国立短期大学、大学附置研究所並びに国文学研究資料館の新設等について規定しているものであります。  まず第一は、国立大学の学部の設置についてでありまして、東北大学に医学部の薬学関係の学科を基礎にして薬学部を設置し、また、かねてから新しい構想による学部の設置について調査研究を重ねてまいりました大阪大学にその検討の結果を踏まえ、既設文学部の一部の転換を含め、人間に関する諸科学について総合的に教育研究する学部として人間科学部を設置するとともに、地域産業の振興等の観点から大分大学に工学部を設置し工学系の教育研究体制を整備するとともに技術者の養成をはかろうとするものであります。  また、昨年来、国立移管に関し調査検討を行なってまいりました三重県立大学の医学部及び水産学部について、これを国に移管し、三重大学の学部としてそれぞれ設置するものであります。  第二は、金沢大学医療技術短期大学部の新設についてであります。従来、看護婦、衛生検査技師、診療放射線技師等の養成は、その大部分が各種学校において行なわれてきておりますが、近年における医学の進歩と医療技術の高度の専門化に伴い、これら技術者の資質の向上が関係各方面から強く要望されており、すでに大阪大学並びに九州大学に医療技術短期大学部を併設いたしておりますが、今回、金沢大学にもこれを併設するものであります。  第三は、大阪大学に付置する溶接工学研究所の新設についてであります。  溶接技術は、近代工業の基幹工作技術の一つとして科学技術の振興にきわめて重要な役割をになっておりますが、今日のわが国においては、それらの基礎的技術に関する研究開発はいまだ十分でなく、他方、溶接技術は関連産業の発達に即応してますます重要性を増していく状況にあります。そこで、その応用技術の基礎となる学理的研究を総合的に推進するため、既設の工学部付属の溶接工学研究施設を転換して、新たに大学付置の溶接工学研究所を設置するものであります。  第四は、国文学研究資料館の設置についてであります。  国文学の古典は、わが日本民族の精神文化の世界に誇るべき一大所産であり、国文学の研究は日本文化の継承と発展のために必要不可欠のものであります。このたび、このような観点から、国文学に関する文献その他の資料の調査研究、収集、整理及び保存を行なうため国立大学の共同利用の施設として、国文学研究資料館を設置するものであります。  なお、この研究資料館は、広く国立大学以外の大学等の研究者の利用にも供することといたしております。  このほか、昭和四十七年度予算との関連からこの法律案の附則に所要の経過規定を追加しましたことを申し添えます。  以上がこの法律案提案理由及び内容概要でございます。  何とぞ、十分御審議の上、すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。 —————————————————————
  34. 河野洋平

    ○河野(洋)委員長代理 これにて提案理由説明は終わりました。
  35. 河野洋平

    ○河野(洋)委員長代理 質疑の申し出がありますので、これを許します。塩崎潤君。
  36. 塩崎潤

    ○塩崎委員 ただいま大臣提案理由をお読みになられました国立学校設置法の一部を改正する法律案につきまして、若干の質問をさせていただきたいと思います。  ただいま大臣がいろいろと改正法律案内容についてお述べになったのでございますが、その項目は確かにそのとおりでございます。しかし、それは現象形態と申しますか、個別的な事象のあらわれでございまして、私は文教問題にこれまで精魂を込められた高見大臣でございますし、これからもたいへん精魂を込められるという大臣でございますので、こういった表面は非常に技術的に見える改正の中に、いろいろ深い意味がおありになるんじゃないかと思うのであります。私は、いまたくさんの文教問題の中で、大学の改革は非常に大きな問題だと思うわけでございます。しかし、重要な意味を持つ問題でございますが、この大学の改革と国立学校設置法の一部を改正する法律案との関係をどういうふうに考えていったらよいのか、ひとつ大臣の御意見を承りたいわけでございます。  このようにとりとめのないことを申し上げるのは、いま申し上げた趣旨に尽きるわけでございますけれども、私どもの愛媛大学では、たとえば法文学部の中で経済学部とか法学部の独立というようなことが叫ばれておる。今後の大学のあり方といたしまして格差の是正、このようなことがいわれておりますが、そのような精神がこの中にあらわれておるかどうか。この改正内容に私はたいへん賛成でございます。しかし、そういった一つのビジョンというのがあるかどうか。ひとつ高見文部大臣に御意見を承りたいのでございます。
  37. 高見三郎

    ○高見国務大臣 お答え申し上げます。  大学改革の問題は非常に大事な問題でありまするので、ただいま高等教育改革推進会議審議を進めております。と同時に、各大学が自主的に改革の方向を打ち出していただきますよう私どもは希望したいと思います。格差是正の問題にいたしましても、何らかの格差がいまもって残っておるというところに問題があると思いますが、単位交換制の制度をとりましたのもそういう趣意からとったわけでありまして、大学改革の問題は、私は大学当局の自的主な改革構想というものと、文部省の高等教育改革推進会議の結論が、できるだけお互いに話し合いのつくものにいたしたい、かように考えて取り組んでおる次第であります。
  38. 塩崎潤

    ○塩崎委員 確かに、大臣のおっしゃるように、大学の自主的な努力、自主的な要望、これが大事であることは申すまでもないところでございます。しかし、文教行政のたいへんな大家である大臣でございますから、さらにまた国民的な視野において大学制度、大学教育がどういうふうに向かうべきかという点については御意見がおありかと思うのでございます。さらにまた、自主的努力が主張されるにいたしましても、やはりそこには予算という問題が伴う。私どもの乏しきふところのうちから出る税金をどういうふうに回したらいいかというようなことが問題になるわけでございますが、そういった観点から見ると、自主的努力だけにまっておったのでは、私は国民的視野から見た文教制度にならないと思うのでございますが、そういった観点から見ると、今後の学部の増設にいたしましても、何がしかの方法があるに違いない、こういうふうに考えるのでございますが、いかがでございますか。
  39. 高見三郎

    ○高見国務大臣 お話のとおりであります。これからの仕事を進めていきます場合に、私にとって一番やっかいな問題は総定員法の問題が一つありますが、いま大学審議会で御審議願っております検討の事項で、いわゆる今日の大学教育というものを高度の職業教育という意味における大学、ほんとうの研究者と学問の真理の探究者を求める大学ないしは大学院というものとを考えまする場合に、大学院の持つ使命というものは非常に大切なものになってくると私は思うのであります。このことは、現在あります大学院制度を含めまして新たなる大学院というものを考えなければなりませんし、同時にまた、日本の学位制度というものそのものについても検討し直す必要があるであろう、こういうような考え方をいたしておるのであります。  第二は、奨学資金の問題でございます。私は育英ということをあまり好きではございません。実は、教育を受けたいという気持ちを持っております子供に均等に教育を受けさせる機会を与えるためには、むしろ育英ということばは大学院には通じるかもしれぬけれども、普通の大学の学部なんかでは奨学でいいじゃないか。この問題を本格的に検討し直さなければならない、こういうふうに考えております。あるいは民間資金の導入というような問題もあわせてこの場で考えなければならないだろうと思うのであります。  教員養成制度改善ということも大学改革の非常に大きな要素をなしておるのであります。たとえば大学の人文学部におきまして一番大きなウエートを占めておるのは教育学部であります。教員養成機関を新しくつくるということも非常に大事な問題であるかもしれませんが、教員養成機関が現在果たしておる既設大学の教育学部というもののあり方をどう考えるかという問題も同時に考えていかなければならない。と同時に、教員というものの再教育ないしは教員教育というものをどう考えるかという問題を、これまた真剣に取り上げていかなければならないだろうと思いまするし、同時にまた、思い切って民間からしかるべき人を登用する道を講ずる検定の制度というようなものもこの辺で考え直してみる必要があるのではないかというようなことも考えておるわけであります。  学術研究体制を確立するということは、これはもう言うまでもない問題であります。これは私は、先ほどの大学院の問題を申し上げましたときに、特にその問題を強く主張いたしました。医学教育改善という点から、私は実は設置基準にかなっておればどうにも許可せざるを得ないというふうな設置審議会であってはならぬと思うのであります。できることならばやみ入学金を取るような私立医科大学というものはなくしたい。国・公立でやる状態をつくりたい。ことに地域の医療水準を上げるということになりますと、未設置県にできるだけ多くの国立の医科大学をあるいは公立の医科大学をつくる方向へ進めていきたい、こういう考え方を持っておるわけであります。  それから、何と申しましても今日、教育をゆがめておる最大のガンは何かというと、やはり入学選抜制度があるという現実の事実であります。この選抜制度を抜本的に改めて、希望する者が希望するところへ入れる状態をつくるということが何より大切なんでありますが、しかしこれは、なかなか容易なことではありませんけれども、少なくとも入学の選抜制度というものを真剣に考え直してみなければならぬ時期が来ておる、かように考えておるわけであります。  それから、新しい構想の大学といたしまして、御承知のように筑波新大学の問題がございます。それに放送大学の問題がございます。これらの問題は、筑波大学につきましてはすでに今年から相当本格的に進んでおります。放送大学につきましては、私は大体昭和四十九年度が開校の目途となるかと思いますが、これも一番大事な問題は、教科を担当してくれる教授に人を得なければならぬのでありまして、各地区の大学の教官あるいは専門家の皆さん方の御意見を聞くために、すでに協議会をつくりまして検討を進めておるところであります。  それから、どうも高専の袋小路といわれております現実から考えまして、将来日本の高等教育機関の中に工業技術大学院というようなものを、修士課程のものを設置してはいかがであろうかという問題で、この問題も実は真剣に取り組んでみたい、こういうようなことを考えておるのでありますが、今年度予算案に個別の大学の改革推進の調査を依頼しておりますのは、東京工業大学の改革総合調査と、それから広島大学の改革総合調査、この二つの大学は真剣にこの問題と取り組んでみよう、それで大学側との意見の調整をはかりながら、いま申し上げましたような問題とひとつ真剣に取り組んでみたい、かように考えております。
  40. 塩崎潤

    ○塩崎委員 いま広範なお考えの一端を承らしていただいたわけでありますが、私がもう一点お尋ねしたいのは、この国立学校設置法の一部を改正する法律案にあらわれておる思想でございます。たとえばここに東北大学に薬学部を設ける、大阪大学に人間科学部を設ける、非常にいいことだと思うのですが、少なくとももうすでに成熟しておる東北大学あるいは大阪大学のようなところに新しい学部、学科を設けるよりも、たとえば愛媛大学に新しい学部を設けて、過密と過疎との間の解消をするというような考え方、教育も少しローカルなところで、ほんとうに静かな雰囲気でやるというような考え方、私は、やろうと思えばどこの地域でも——大臣は静岡でございますが、静岡大学に人間科学部をつくってもできないことはないと思うのでありますが、このような考え方が将来取り入れられるかどうか。ただ漫然と大阪大学もふやすが、愛媛大学もふやすというようなことでいいのかどうか、このあたりについて大臣のお考え方を承りたい。つまり、格差是正という問題は、国・公・私立だけの問題ではないと思うから御質問しているわけであります。
  41. 木田宏

    ○木田政府委員 大臣がいまいろいろと当面の懸案の課題を御説明されたわけでございますが、いま御指摘になりましたように、一体、日本の大学全体を通してどういうふうな将来のビジョンを持つかということが、中央教育審議会の答申以来課題として残っております。国・公・私立にわたりまして、また都市、地方にわたって日本の大学の配置、その大きさ、高等教育のシェアをどうするかというような問題を、いま予算で御審議をいただいております高等教育の推進会議でひとつできるだけ早い機会にまとめるようにしていきたいという所存でございまして、いままで、いわゆる戦前からの帝国大学を中心にした大学の整備と、それから戦後新学制で発足をしてまいりました新大学の整備格差是正という方向でいろいろと進めてまいりましたが、これを今後さらにどのような地域配置等を考えながら整備していくかということは、今後の基本になることでございますから、ただいま大臣が答弁されました推進会議によりまして関係者の意見というものを結集をするようにしたいと考えておるところでございます。
  42. 塩崎潤

    ○塩崎委員 格差是正の問題は、大事な問題ですからもう一つ大臣にお聞きしたいのですが、先般連合赤軍の学生の問題で大臣も横浜国立大学の学長でございましたか、御批判のことばがあったかと思います。先般この文教委員会で横浜国立大学の学長さん、それから宮城音弥先生をお招きいたしまして懇談会を開いたときに、格差の問題が爼上にのぼったわけであります。御承知のように一期校と二期校という例の入学試験にからむ問題でございますが、二期校にはたいへんなコンプレックスがある。不満がある。これがいろいろと学校紛争につながり、さらにまた、不満分子が連合赤軍のような問題を起こしたのではないかというふうにいわれる節が多分にあるわけでありますが、大臣が学長を非難されるのも私は十分わかるのでございますけれども、文部行政として一期校とか二期校とかいうような問題がある、この事実を解決してやることも、文部行政の円滑な推進、大学自治の上からいっても、私は当然必要なことではないかと思うわけであります。こういった外的な条件をなくすることによって大学紛争を少なくし、連合赤軍が起こるような言いがかりが起こらないようなことができないか。これはひとつ格差是正の問題として思い切ったことがやれるかどうか、文部大臣の御意見を承りたい。
  43. 高見三郎

    ○高見国務大臣 この格差の問題につきましては、国立大学協会自体が悩んでおる問題なのであります。私どもも、できれば一期校、二期校といわずに、同時に統一試験をやったらいいじゃないかというところまでいま考えておるのでありますが、これはまだちょっと、いま私が申し上げて来年すぐできるという状態にまではなっておりません。なっておりませんが、塩崎さん御指摘のように、これは非常にむずかしい問題がありますのは、たとえば医科大学一つに例をとりましても、単科の医科大学というものが医学教育だけで済むかと申しますと、やはり総合大学であるほうがいいという場合があるのですね。農学、工学、心理学、それらのものも医学教育の中に加えなければならぬということから考えてみますと、今度の大阪の大学の人間科学部というものは、そういう意味での一つの新しい試みだと私は評価をいたしておりますけれども、格差是正のたてまえから申しますと、試験はなるべく統一してやりたいものであるという文部省の気持ちは、いま国立大学協会で真剣に検討をいたしております。いまここで結論を、こうしますということは申し上げられません。かすにしばらくの時日を与えていただきたいと思います。
  44. 木田宏

    ○木田政府委員 ちょっと補足をさせていただきます。
  45. 河野洋平

    ○河野(洋)委員長代理 簡潔に願います。
  46. 木田宏

    ○木田政府委員 国立大学の受験を一回でやっていいかどうかという問題がこのことについては伴います。また、数回に分けるということの是非も伴いますので、国立大学協会の第二常置委員会におきまして、大臣がいま御説明申し上げましたように、個々の大学の事情もあり、全体として国立大学に対する入学の機会をどうするかということを含めて慎重に検討されておるところでございます。  なお、最近文部省で四十八年度の入学試験のやり方につきましても、試験問題の検討委員会で御検討いただいて発表いたしましたが、その際に、一期校、二期校合わせた共通テストのようなことができるならば、それもまた一つの方向ではなかろうかという示唆がございまして、四十八年度ただちにそういう学校が出てくるかどうかというのは、いまの段階ではわからない課題でございますけれども、今後やはり入試の改善の方向として共通のテスト等考えます場合に、いまのようなことも含めて検討を進めたいというふうに思っております。
  47. 塩崎潤

    ○塩崎委員 二期校の学生のコンプレックス問題は、私の親戚の者からも聞いて、ほんとうに真剣な問題でございます。私は、たとえば東西地区に分けて一ぺんとか二回とか、いろいろなやり方があろうかと思いますが、予算は少々かかっても、ひとつこの問題は来年から思い切って解決していただきたいということをお願いして、時間がありませんので次の問題に移りたいと思います。  大臣、その次は三重県の県立医科大学をなぜ国立に移管したのか、その理由でございます。いま大臣は、私立医科大学の、不当な入学金を取るような医師養成方法は押えていくのだ、そして国・公立でやっていくのだと言われた。ところが、今年度予算で入学定員でふえますのは八百八十人、そのうちの百二十人しか国立はふえてない。公立の医科大学を入れて二百二十人、四分の一しか国・公立のシェアはないわけです。大臣の言われることは看板と実際が違うような気がする。愛媛大学はやっと準備費がつけられただけですから、定員はもちろん認められておらないわけでありますが、どういうふうにこれを考えていりたらいいのか。地方財政救済のために三重県の県立医科大学を国立に移管したのであるが、あるいは国立に移管すればもう少し施設の充実ができて、いいお医者さんができるから移したのであるか、ほんとうの意図が私はよくわかりませんので、一ぺん御意見を承りたい。
  48. 木田宏

    ○木田政府委員 三重県の国立移管のことにつきましては、昭和四十六年度予算におきまして学部増設の調査経費をおきめいただいておるのでございますが、三重には国立の三重大学といたしまして教育、工学、農学の三学部がございまして、また片や県立の大学といたしまして医学、水産学部の二学部を擁した大学がございます。つとに、せっかく同じ三重県の津にこうした三学部の三重大学、それから県立の医、水産という学部があることでありますので、地元の関係者といたしましては、相当前からこの両大学を一体的な運営という方向で整備その他について考えてこられまして、国立の三重大学の新しいキャンパスの整備の、際に、地元当局は将来を見越されたと思いますが、医学部、水産学部等の整備をそれに合わせて進められるというような事情等がございまして、四十六年度に、国立に移管して一体的な運営をはかるほうがその大学のあり方として適当であろうか、一ぺん検討してみろという調査費を計上されたことでございます。調査の結果、三学部に合わせて二学部を含めた五学部の総合的な大学にすることが、地元のいろいろな社会事情、あるいは地域の発展のために適切であるという判断に立ったものでございます。
  49. 塩崎潤

    ○塩崎委員 一体的運営ということがわかっただけで、あとはよくわからなかったのですが、ともかくも公立医科大学公立医科大学として推進するのかしないのか。福島にもあれば鳥取にもある。去年は坂田文部大臣は、公立大学を助成すると言いながら、こういうふうに三重大学を移管したのは、ほかの公立医科大学もこういうことになるのかならぬのか、ひとつ意見を承りたい。
  50. 高見三郎

    ○高見国務大臣 端的に申し上げますと、自治省の交付税の配分基準の中に、地方自治団体が医科大学まで持つなんてぜいたく過ぎる、そんなものまでめんどう見きれるかという思想が、正直なことを申し上げますと昭和四十六年度まであったのです。坂田前大臣が、むしろ医科大学は地方公立大学にするほうがいいという主張をせられるようになりまして、私もそう思うのです。と申しますのは、どうも国立の医科大学を見てみますと、愛媛にかりに医科大学が——これは定員をつけます。三人ばかりつけますが、いよいよ開校するという段になりますと、愛媛県の出身者が何人入るかといいますと、大体秋田の例で見ますと、秋田では定員八十人のところで八人しか入っていないのです。公立大学の場合はどれくらいその県の出身者が入っておるかと申しますと、約半数入っております。それで、医師の適正配分をはかるというたてまえから申しますと、私は公立大学のほうがいい。思い切って国が金を出せばいい。自治省も大体その方向に変わりつつあるとするならば、何も国立で全部まかなう必要はない。公立大学というものもいいじゃないか。公立大学でやる場合には、思い切って国が財政援助をしてやるという道を開かなければできません。できませんけれども、その道さえ保障できるならばむしろ公立の場合もいいじゃないか。ただ、どうも困ることは、医学部一つに例をとりましても、すぐ学閥の問題が出てくる。あの大学の系統だからわしらは協力しないとか、この大学ならば協力するがこの大学なら協力しないというように、実はお医者さん仲間の派閥争いというものは実に激しいものがあるということは、おそらく塩崎先生承知だろうと思う。そういう事情があるということもお考え合わせていただいて、ただ私非常に残念に思いますのは、何千万円という寄付金を出さなければならないような大学を認可しなければならぬということは、これくらいくだらぬことはないと思う。ぜひこれはやめたいと思いますので、審査基準は思い切り厳重なものに変えようと考えておりますが、それの見返りとしてやらなければならぬのは、国・公立の大学をふやすということを考えなければならぬ。三重の場合には特殊の事情があった。いま木田局長が御答弁申し上げましたように、どうも国立大学と公立大学がありますと、国立では小さ過ぎる、公立ではまかない切れないという問題が実は昭和四十六年までよくあったわけです。地方交付税の算定の基準を四十六年度でうんと変えましたから、その問題は急に議論の対象にはならなくなりましたけれども、確かにいままではあったのです。あったところへもってきて、国立と公立というコンプレックスがやはり働く。一方の県立は二学部であるし、国立は三学部だ。それなら五学部の総合大学として、堂々たる大学にしてもらいたいという地元住民の要望が出てくるのは私はあたりまえだと思う。こういうような考え方で今回はこれを移管するということに踏み切ったのであります。
  51. 河野洋平

    ○河野(洋)委員長代理 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  52. 河野洋平

    ○河野(洋)委員長代理 速記を始めて。
  53. 塩崎潤

    ○塩崎委員 もう一問だけ大臣お願いします。  いまの三重県、私は県立医科大学よりも国立医科大学のほうがいいと思うので、この移管は賛成でございます。ところで問題は、大臣、一言だけお聞きしたいのですが、いま申し上げましたように、去年十万人に百十三人の医師を百五十人にする、そうしてこれからは千五百人ばかりふやさなければならぬ。大部分はどうも、大臣の御言動から推測すれば、国立でいこうというようなお気持ちがうかがえたわけでございます。ところが、いま御指摘申し上げましたように、八百八十人、そのうち国立は百二十人にしかならない。これは大臣、どういうことなんでしょうか。来年は愛媛大学の医学部を含めて三つできるようでございますが、それで三百。毎年毎年三百から五百ぐらいふやしていかないと、なかなか予定のとおりにいかないようでございますが、ことしは例外ですが、来年はどうなるのですか。ひとつ大臣の御意見を承りたい。
  54. 高見三郎

    ○高見国務大臣 来年も同じように創立準備費をつける場所を設定いたしたいと思います。塩崎君御指摘のとおり、私自身の気持ちから申しますと、国立大学をできるだけふやしていきたい、私立大学をできるだけ抑制いたしたいという気持ちに終始いたしておりますので、その辺はひとつ御協力をお願いいたします。
  55. 塩崎潤

    ○塩崎委員 大臣はけっこうです。  それではあと十分間ばかり、政務次官を中心といたしまして、せっかくでございますので、国立学校設置法の一部改正法律案について御質問をさしていただきたいと思います。  いま三重県立医科大学をなぜ国立医科大学に移したかという問題に移ったわけでございます。医師養成の問題は、先ほど政務次官も医師不足というようなことばを言われましたように、いまの当面の問題でございます。きょうの新聞あたりは機密漏洩事件がたいへんでございますが、この間までは浪速医科大学の事件、あるいは愛知医科大学の事件、それにまた斎藤病院をはじめとして出てまいりましたにせ医者の事件、それから去年の二月には阪大入試の不正事件、このような事件が起こってたいへんなことになり、文部省は、去年の三月二十六日に、坂田文部大臣は三つの施策と八つの問題点という形でいろいろとここで御約束を賜わったわけです。私は、坂田文部大臣がいわゆる国会答弁でその場しのぎだというふうには考えたくないわけでございます。したがって、これから御質問したいことは、文部省が医師養成の問題をどういうふうにこれまで進められてきたか、これから進めようとするのか、この点でございます。  まず第一に、坂田文部大臣は八つの問題点を指摘されましたが、そのうちの第一は、総定員法の問題でございます。ただいま高見文部大臣も、医師養成の最大のネック、国立大学の強化の最大のネックは総定員法の問題である、こういうお話があったわけでございますが、坂田文部大臣は、第一の問題点の中で、早急にこの問題の解決をはかりたい、そうして医学部の充実をやっていきたい、こういうふうに言っておりましたが、その後文部当局が行政管理庁あるいは大蔵省とどういう形でこれを詰められたか、そして、どういう結論を得ておるか、ひとつお伺いしたいと思います。
  56. 木田宏

    ○木田政府委員 国立大学で医学部をつくりますと、一校約一千名の定員が必要になると考えておりますが、そういう関係もございまして、今後国立を中心にしてかなりの医科大学をつくるということになりますと、定数のワクがむずかしくなるという点は坂田大臣指摘のとおりのことでございまして、私どもも、この問題につきましては、十分な定員措置が、現在準備調査費のついております三医科大学につきましても、今後のことにつきましても行なわれるように、関係省庁に相談を何回か事務レベルでいたしておるところでございます。  行管の関係者等も見えておるようでございますから、御説明もあろうかと思いますけれども、行政管理庁としては、総定員法の趣旨とそれから現在の総定員法の総ワクとの関係で相当程度に操作ができるというような余地もあるから、現実にどういうふうなものをどういう順序で進めていくかという具体の話として、ワクからいまはずすはずさぬというよりも、中身の問題をどうするかというふうな詰め方をしたいというふうな御意見をちょうだいしております。今後私ども、国立を中心にいたしました医科大学の設置の進め方との関連もございますので、なおこの点はよく関係省庁と相談をいたしまして解決につとめたいと思います。
  57. 塩崎潤

    ○塩崎委員 私は、いまの大学局長の御答弁は、まだ付属病院ができていないから、おそらくわずかな定員増加で済んでおるから、いまのようなごゆうちょうな答弁だと思う。ほんとうに付属病院ができ、看護婦が六百ベッドに三百人くらい要るということになってくれば、この問題がほんとうに真剣に取り上げられると思うのですが、まだそれができていないからいまのようなごゆうちょうな御答弁だと思う。  そこで私は、きょういろいろと大学付属病院の方々とも議論してみたのですけれども、定員法のワク内に付属病院が入っておるためにたいへんな弊害がある。いろいろありますけれども、その一つとして、たとえばいま大学付属病院は全部赤字でございます。去年も大学病院の赤字について私は指摘いたしましたが、百三十億円、ことしをとってみますと大体百六十億円くらい、来年度は二百億円をこすという。原因は、差額徴収が国立にはないというようなこともあります。それからまた、かつて無給医局員であった者が有給になったこともありますが、定員法に縛られるために看護婦さんの定員が不十分である。したがって、東大病院などは千四十ベッドのうち六百ベッドばかりは遊んでおる。東京医科歯科大学は七百ベッドのうち四百ベッド遊んでおる。こんなようなことがほんとうに資源のむだを来たして赤字になっておると聞くのですが、こういった点をどういうふうに考えられるか。東大の看護婦の定員は五百七十一名だといわれる。しかし、これは二ベッドに一人のように見えまするけれども、たとえば採血部とかいろいろなところにまだ看護婦を回さなければならぬので、ほんとうはこれでは足らぬといわれる。しかし、それにもかかわらず、総定員法の規制のもとに二人の定員減が看護婦については行なわれて、ますます赤字に拍車をかけるようなことが行なわれておるというじゃありませんか。こんなような点を大学局長はどう考えられるか、まずお答えを願いたいと思います。
  58. 木田宏

    ○木田政府委員 看護婦につきましては、いま御指摘がありましたが、現在の看護婦、約八千九百ほどの数になりますか、それにつきまして定員の上では一%の減という政府の方針による減が確かにございますけれども、しかし、国立の付属病院の看護婦につきましては、四十七年度におきまして定員の上で三百三十二名の増員をはかっております。これは所定の規定の人員を確保いたしますために、昭和四十四年から総数で千九百名ばかりの定員増ということで計画を立てまして、四十四年、四十五年、四十六年、四十七年と人員の増につとめてまいりました。ことしは定員で三百三十二、賃金支弁の数でほぼ同数の看護婦の増ということを行なっておるわけでございまして、いま御指摘になりました特定の病院をとりますと、看護婦は相当の増員になって運営されることになります。  なお、そうでありましても、現実に看護婦が得がたい。途中で抜かれていく、年度の途中で入れましても途中でかなり減っていくといったような運営上の問題等もございまして、病院が十分に充足されていないという一面の事情もございますけれども、病院のベッドが十分にふさがってない点につきましては、これまた申しわけないのですが、個々の大学の紛争以来のいろんな事情等が若干残っておりまして、そうした赤字の落ちこぼれということにつきまして、十分な回復をいま見てないということは遺憾でございます。  しかし、医療制度全般にわたる問題もございますが、その点は何とか看護婦の整備その他進めていく所存であり、現に行なっております。これも総定員法のワクと申しますと、文部省全体でもかなりの定数増を来年度見ておりますので、一ぺんに医科大学をつくりました場合に一千人ふえるというわけのものでもございません。年次計画整備をしていくことにもなりますから、そうした運用上の問題については、なお相談の余地もあろうかと考えております。
  59. 塩崎潤

    ○塩崎委員 赤字に非常にやかましい大蔵省の青木主計官が来ておられますから私はお聞きしたいのです。  いま申し上げましたように、定員法のワク、これはいろいろいい点もありまするけれども、付属病院のように、税金でまかなわれないで収入があるようなところに、税金でまかなわれる職員と同じような定員法のワクをはめる、かぶせるのがいいのかどうか。しかも、そのために赤字を生ずる、ベッドのむだが生ずるというようなことがいいのかどうか。大蔵省から見てどういうふうにお考えになるか、一ぺん青木主計官の御意見を承りたい。
  60. 青木英世

    ○青木説明員 お答え申し上げます。  四十七年度予算におきましても、塩崎先生指摘のとおり、国立学校の付属病院におきましては、支出が七百四億程度、これに対しまして収入が四百七十億程度しか見込んでおりませんので、差し引き約二百三十億くらいが持ち出し、一般会計からの繰り入れというような状況になっております。先ほど先生が御指摘になりました東京大学付属病院あるいは東京医科歯科大学の付属病院、これにつきましては、先ほど大学学術局長からお話がございましたように、全国の大学の付属病院の中でも最もベッドの稼動率の低い部類に属している一つでございます。他方、看護婦の配置状況を見ますと、いろいろベッド数の比例等から申しますと、必ずしも東京大学の付属病院あるいは東京医科歯科大学の付属病院が特にほかの病院と比べて低いというようには私どもは判断しておりませんので、そこには先ほど木田局長のおっしゃられましたような紛争以来のいろいろな問題もあろうか、このように考えております。  なお、付属病院の定員につきましては、四十三年度から四十五年度ぐらいまでは大体定数増は三百人台でございましたが、ことしは七百九十名程度定員をふやしているというようなことで、できるだけ先生おっしゃいましたような看護婦も適正な人員を確保しながらそういう収支を確保していくということに努力いたしたい、このように考えております。
  61. 塩崎潤

    ○塩崎委員 厚生省の医務局長も参っておられますので、医務局長に御質問したいのですが、付属病院のみならず国立病院も同じように定員法のかせがあるわけですね。そのためにいろいろな障害がありはしないか。国立病院も非常な赤字だと思うのです。しかし、付属病院のような教育効果がないかもしれませんが、看護婦問題こそほんとうに付属病院の大きなきめ手になる。国立病院でもそうだと思いますが、私は付属病院あるいは国立病院のように、収入のあるところ、税金でまかなわれていない、収入のあるようなところは、ひとつ定員法のワク外にしてもらって、弾力的に患者の需要のおもむくところに従って人間を配置するという自然の流れ、こういったことが望ましいと思うのですが、いかがですか。三公社五現業のようなものは定員法のワク外になっておる。こんなようなことで私は経済が自然に動いておると思うのです。したがって、定員法の大きな目的は、税金でまかなわれる、歯どめのないような、サービスと収入との関係が明瞭でないもの、これに限定さるべきだという意見を持っているのですが、医務局長、国立病院の運営状況から見ていかがですか。
  62. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 国立病院等におきましても、率直に申し上げれば、者患の需要というのは必ずしも常時一定ではございませんし、夏は非常に多くなりますし、ある病気があれば季節変動が激しい。いろいろな状態がございまして、やはりそういう状態に対応できるという弾力性が一番望ましい、私もそう思っております。特に、いろいろな医療技術の進歩というようなものがあり、また、その地域においてこういうことをすぐやらなければいかぬというような要請があるわけでございますが、率直に申し上げますと、いまの国の組織というものがそういう面ではやはり硬直化しておるという面があることは私も感じております。ただ、実態といたしましては、そうは申しながらも、国立病院というもののそういうような需要に応じなければならない、そういう情勢に対応いたしましては、先ほどの文部省と同じように、それぞれ定員措置等について十分な御配慮をいただいておりますけれども、基本的な点で言えば、いま先生がおっしゃいましたような点はやはり基本的にあろうかと私も考えております。
  63. 塩崎潤

    ○塩崎委員 そこで、行政管理庁にお尋ねしたいのですが、いまの質疑応答の中から皆さん方感じ取られるところだと思うのですけれども、ともかくも皆さん方、非常に善意で総定員法を運用されているに違いないと思うのです。各省から言ってくれば弾力的にやるんだからいいじゃないかというような御答弁があるに違いないと思うのですが、しかし、いま申しましたように、総定員法のねらいというものをはっきりきめる、したがって収入のあるところに定員法のワクというのははめない。一々文部省の方々を呼んで、あるいは文部省の方々が出入りして、皆さん方が説明してやっと許可を得るというようなことは、私はこの忙しい時期にもったいないと思うのです。それだけの時間があれば、皆さん方ボウリングでもやっているほうがいい、ゴルフでもやっているほうがいい。そうでないと、週休二日制もいつまでたっても行政当局にはできないような気がするわけでございますが、そういった角度から、何万何千人という数まで法律できめておるきわめて非弾力的な硬直化した総定員法を、少なくとも付属病院——あるいは私は大学全体としてでもほんとうははずしていただきたいと思うのですが、これについて御検討になる気持ちがあるかどうか、まあいろいろ御意見はありましょうが、簡単にひとつ御意見を承りたい。
  64. 梅沢節男

    ○梅沢説明員 いま先生の御指摘になった点でございますが、御承知のように昭和四十四年に現在の総定員法ができまして、それ以前には各省庁別に法律で定員をきめるという非常に窮屈な制度になっておったわけですけれども、私ども諸外国の制度なども勉強いたしまして、現在のように原則として行政機関を一本として定員をきめる、毎年度の各省庁別の定員はその範囲内で弾力的に機動的に定員の再配分をやるというたてまえになっているのが現在の総定員法でございます。  先ほどから先生提案の件でございますが、一つの考え方としてそういうお考えもあろうかと思いますけれども、ただ収入見合いと申しますと、現在特別会計約三十以上あると思いますが、そのほかに国の検査検定機関、これもやはり歳入をあげている省庁もあるわけでございまして、その収入のある省庁を総定員法からはずすということになりますと、その線の引き方が非常にむずかしいということがありますほかに、いまのように全体の公務員をプールいたしまして、不要不急のところからたとえば国立学校のようなところへつけるというような機動的な運用の妙味というものがなくなるわけでございますので、御提案の件は、私ども帰りまして勉強はさしていただきますけれども、行政管理庁として当面それではさっそく国立学校の付属病院の定員を総定員法からはずすというふうなことは考えられないということでございます。
  65. 塩崎潤

    ○塩崎委員 官僚統制はできる限り少なくするというのが自由民主党の精神でございますので、渡辺政務次官からも、こういった問題はひとつ掘り下げて御検討願って、付属病院の問題医学部の充実の問題はぜひとも実現していただきたいと思います。  そこで、鎌田財政局長が長らくお待ちでございますので、次は、やはり去年の三月二十六日に坂田文部大臣が残されました八つの問題点のうちの第二の医学部の設置と地方財政の問題でお尋ねしたいのです。  地方財政法の十二条は、もう御承知のとおり国の機関に対して地方団体は経費を負担してはいかぬ、ただし法律または政令で定める場合は別だと書いてあります。私たちこの政令に非常に望みを託して、弾力的な鎌田局長でございますから、おそらくこの政令は鎌田局長の手でつくられるに違いないと思うのです。私は、いま三重県立大学の移管の問題を取り上げましたが、長年かかってつくり上げた三重県立の施設をこれは国が買えというようなことは私は不可能だと思うのです。ところが、寄付しようとすると、地方財政法が待ったをかける。これはどうしたらいいのかと思うのです。この点は去年も若干の御質問をして十分なる議論が尽くせなかったのでございますが、ことしは皆さん方の一番かわいい地方自治団体の三重県がこの問題に悩んでおられるに違いない。寄付したら皆さん方のおしかりを受ける。地方財政法のおとがめを受ける。金は国が出しそうもない。それからまた、私どもの愛媛大学でもそうなんですけれども、医学部をつくっていただけることになったのですが、土地問題でやはり困っておる。しかし、いま医学部は各方面から誘致があり、善意で、土地ぐらいは、あるいは建物ぐらいは、地方団体が出してでもひとつ医学部をつくってもらいたい。それだけに受益の程度が非常に大きい付属病院の受益、それにまた県民の子弟が医学部に八人というわずか一割程度の入学者でございましたが、これが期待できる。それからまた、卒業生は多分に県にとどまることを考えると、ほんとうにこれは地方団体から見ればのどから手が出るような医学部なんですね。そういった点は、寄付をしてはならぬというふうに禁ずること自体が私は自然の摂理に反する、人道にもとるような気がするのですが、鎌田財政局長、いかがですか。
  66. 鎌田要人

    ○鎌田政府委員 お答え申し上げます。  まず、いま二つおあげになられましたが、三重県立大学の医学部の移管でございますが、これにつきましては、御指摘のとおり現在県が維持管理やっておりまして、それが国に移管になるわけでございますから、既存の施設につきましては、これは寄付を認めよう、それから新しく施設を整備して、平たく言えば、持参金を持ってくるというような話なんだろうと思いますけれども、この施設の整備につきましては、過去三年間、県の一般会計から学校会計に繰り出しましたが、これの平均額の五倍を限度として、大体五年分の繰り出しというものを一応限度としまして認めてまいったらどうだろうかということで、取り扱いの方針をきめたいと思っております。  ただ問題は、これは先ほど実は文部大臣の御発言をわきから伺っておったわけでございますが、大学教育あるいは大学も含めまして学校教育というものを、国と府県と市町村と、どういうふうに分担するかということになりますと、やはりこれは、基本的には大学が国、高等学校が県、それから義務教育が市町村、大体この基本的な考え方というものがもとになりまして、地方団体におきましてある程度住民の選択の問題になるわけでございますけれども、その地域の特性に応じ、あるいは地域住民の要望に応じて、議会の議決を経ながら公立大学というものを持っていく、こういうことが基本ではないだろうかというふうに考えます。  したがいまして、実はここから少し考え方が違うのでございますけれども、あくまでも国立の大学という以上は、国が全部その施設の建設のための経費というものをお持ちになるのが当然じゃないかという気がするわけでございまして、いま新設大学につきましての地元の協力ということについていろいろなお話があるようでございます。私どもまだ正式に県から相談を受けておる段階ではないわけでございますが、たとえば大学開設にあたりまして、地元の公立病院の施設整備を早急にやる、こういったものでございますれば、その病院がよくなっていくということは、これは当然地域住民の福祉にも関連するわけでございますから、そういうもの等の協力ということにつきましては、これはできるだけ財政的な面でめんどうを見てまいりたいと思っておるわけでございますが、問題はやはり土地であります。大体聞いておりますと、最低六万坪のものを整地をして国に寄付をしろ、こういうことを条件にしておられるということを漏れ承っておるわけでありますけれども、これはやはり地方財政法、地方財政再建特別措置法、これは塩崎先生地方財政にも深い御理解があるわけでございますが、ああいう規定というものが生まれてきた。また、今日これを採用しておる基本考え方というものからいたしますと、これはいかがなものであろうか。でありますから、かりに前に国立高専のときにその問題があったわけでございますが、他のしかるべき国有地の交換方式といったようなことで、土地のあっせん等はもちろん地元の自発的な協力として行なわれるといたしましても、あとの経済的な面での措置というものは慎重に考えてまいりたい、こういうふうに考えております。
  67. 塩崎潤

    ○塩崎委員 時間がありませんので、最後に一問だけお願いいたします。  いま鎌田局長から御答弁ございましたが、確かに、大学は国、義務教育関係は市町村、高等学校は県と、そういうすっきり割り切った財政配分ができ上がっておればいいんですけれども、日本は非常に国、府県、市町村の協力関係が昭和二十八年の義務教育半額国庫負担から強くなったような気がするんです。地方財政の問題、いろいろとお教えをいただいた私でございますから、鎌田先生に講義をするわけにいかないのですけれども、義務教育についても国が援助をする、しかし国立の大学についても、受益関係の密接な毛のについては地方団体がまた協力をするということが当然あってしかるべきだ、こういうように私は考える。しかし、そうでなくて、これは青木主計官にお伺いしたいんですが、大蔵省が土地も何もかも出してくださるならいいんですが、どうもなかなか出してくださらないところを見ると、若干の地方負担はあってもいいんじゃないかという、何か本能的なものが働いているような気がするんですが、土地とか建物は全部国が出していただけるかどうか、これはひとつ青木主計官の御意見を承りたい。
  68. 青木英世

    ○青木説明員 地方財政再建特別措置法の二十四条でございますか、あるいはこれに関する政令がございまして、いろいろ困難な問題があるわけでございます。そこで、医師養成という観点から、国立あるいは公立というような公的の医科大学をこれからかなりつくっていかなければいかぬということは、一般的に要請されておると思うわけでございますが、その際に、四十七年度におきましても、実は三つの大学医学部ないし医科大学をつくろうということで、文部省との間でそういうことになりまして、いま予算審議をお願いしておるわけですが、その際、実は水田大蔵大臣から高見文部大臣にお願いをしたわけです。それは医科大学をつくるに際しましては、最低百億ないし百五十億、あるいは定員も、先ほどお話がありましたような八百人とか千人とかということで、初度調弁費だけではなくて経常費あるいは運営費というものもかなりかかりますので、できるだけ地元の御協力がいただけるように、地方財政法の改正を含めましてひとつ御検討をいただきたいというようなことを文部大臣にお願いしておるわけですが、文部大臣は、個々のケースについてよく自治省と相談いたしましょうというようなお答えの結果、三つの大学の設立をいま予算にお願いしているわけです。したがいまして、大蔵省といたしましては、それらの医学部あるいは医科大学が地域の医療サービスということとかなり密接な関連を持っておるということに着眼いたしまして、できるだけ地元の御協力が得られれば幸甚か、このように考えておる次第でございます。
  69. 塩崎潤

    ○塩崎委員 時間がなくなりましたので、まだまだ質問いたしたいのですが、質問は留保いたしまして、これで終わります。
  70. 河野洋平

    ○河野(洋)委員長代理 次回は来たる七日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時十八分散会