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1972-06-08 第68回国会 衆議院 農林水産委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年六月八日(木曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 藤田 義光君    理事 仮谷 忠男君 理事 熊谷 義雄君   理事 松野 幸泰君 理事 三ツ林弥太郎君    理事 渡辺美智雄君 理事 千葉 七郎君    理事 合沢  栄君       安倍晋太郎君    江藤 隆美君       鹿野 彦吉君    小山 長規君       佐々木秀世君    田中 正巳君       中尾 栄一君    中垣 國男君       野原 正勝君    藤本 孝雄君       別川悠紀夫君    森下 元晴君       安田 貴六君    山崎平八郎君       渡辺  肇君    安宅 常彦君       角屋堅次郎君    田中 恒利君       長谷部七郎君    松沢 俊昭君       美濃 政市君    相沢 武彦君       瀬野栄次郎君    鶴岡  洋君       津川 武一君  出席国務大臣         農 林 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         環境庁長官官房         審議官     鷲巣 英策君         厚生省児童家庭         局長      松下 廉蔵君         農林政務次官  伊藤宗一郎君         農林省農林経済         局長      小暮 光美君         農林省畜産局長 増田  久君         農林省蚕糸園芸         局長      荒勝  巖君         農林水産技術会         議事務局長   加賀山國雄君         食糧庁長官   亀長 友義君         林野庁長官   福田 省一君  委員外出席者         経済企画庁総合         計画局電源開発         官       高橋  宏君         環境庁大気保全         局企画課長   竹内 嘉巳君         農林省農政局参         事官      川田 則雄君         水産庁漁政部長 田中 慶二君         水産庁調査研究         部長      松下 友成君         通商産業省公益         事業局技術長  和田 文夫君         会計検査院事務         総局第四局長  田中  稔君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 委員の異動 六月八日  辞任         補欠選任   中澤 茂一君     安宅 常彦君 同日  辞任         補欠選任   安宅 常彦君     中澤 茂一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  農業災害補償法及び農業共済基金法の一部を改  正する法律案内閣提出第九六号)(参議院送  付)  農林水産業振興に関する件      ————◇—————
  2. 藤田義光

    藤田委員長 これより会議を開きます。  農業災害補償法及び農業共済基金法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  本案に対する質疑は、昨七日終了いたしております。  これより討論に入るのでありますが、別に討論申し出もございませんので、直ちに採決いたします。  農業災害補償法及び農業共済基金法の一部を改正する法律案賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  3. 藤田義光

    藤田委員長 起立総員。よって、本案原案のとおり可決されました。     —————————————
  4. 藤田義光

    藤田委員長 この際、本案に対し附帯決議を付したいと存じます。  案文を朗読いたします。     農業災害補償法及び農業共済基金法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、近年における果樹農業の著しい進展とその農業生産に占める地位の重要性にかんがみ、長期的な観点に立って、果樹農業振興の諸施策を一段と拡充強化するとともに、特に、本制度の運用にあたっては、左記各項実現に十分留意すべきである。          記  一 果樹共済対象果樹については、かき、くりその他の果樹農業振興特別措置法適用対象果樹についてもその実態に応じて所要調査等を行ない、可及的すみやかに対象に加えること。  二 基準収穫量掛金率及び共済金額の設定にあたっては、地域の実情を適正に反映させるよう努めるとともに、損害評価の方法については関係団体等の協力を得てその適正を期すること。  三 果樹共済における無事もどしについては、米麦蚕繭共済等に準じて措置する等無事故農家対策に十分配慮すること。  四 被害農家に対する補償内容を充実するため、収穫共済について共済金支払割合の中だるみの是正樹体共済について幼木をその対象に加えることを今後それぞれ検討するとともに、共済金等の削減が安易に行なわれることのないよう適切な指導を行なうこと。  五 果樹共済制度の円滑かつ適正な運営を期するため農業共済団体事務人件費等については、事務内容特殊性を十分考慮して国の助成に万全を期すること。  六 最近における施設園芸肉豚、鶏及び畑作等進展にかんがみ、これらを対象とした共済制度の確立について可及的すみやかに調査等を完了し、早期実現を図ること。  右決議する。 以上でありますが、本附帯決議案本案に付するに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  5. 藤田義光

    藤田委員長 起立総員。よって、本案附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議についての政府の所信を求めます。赤城農林大臣
  6. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その決議趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上善処いたしてまいりたいと存じます。     —————————————
  7. 藤田義光

    藤田委員長 なお、ただいま議決いたしました本案委員会報告書作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 藤田義光

    藤田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  9. 藤田義光

    藤田委員長 農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。角屋堅次郎君。
  10. 角屋堅次郎

    角屋委員 私はこの際、林業問題について若干重要な点を御質問申し上げたいと存じます。  これは先月の十九日に当委員会におきまして農林大臣の御出席を仰いで林業問題の議論をやりました際に、実は私も質問を予定しておったのでございますが、やはり大臣の時間の御都合等もございまして、質問を持ち越したわけでございます。きょうは、参議院法案審議関係等もございまして、大臣は当初本委員会におられて、参議院法案審議に移られるという経緯のように承知しておりますので、この際、大臣には重要な一、二点の質問を申し上げ、あと林野庁長官等に引き続き質問を展開いたしたい、こう考えております。  御承知のとおり、いまストックホルムでは、国連人間環境会議が開催をされております。オンリー・ワン・アース、かけがえのない地球ということで、自然環境保全ということが国際的な大きな問題になろうといたしております。こういう時期に、最近、新聞紙上を通じて、朝日であるとか毎日であるとか、あるいは読売等を通じて、林野庁というのは、林野庁ではなしに、林野荒廃庁ではないか、あるいは株式会社伐採庁ではないかというふうなことで、連日批判を受けておる経緯もございます。また同時に、秩父営林署不正事件をめぐる刑事事件の発展の問題であるとか、あるいはまた過般の五月十九日、本委員会でも芳賀さんが取り上げました熊本営林局日向営林署あるいはえびの営林署綾営林署、これは調査を持ち越しておるわけでありますけれども、そういう問題をはじめ、参議院の五月十二日の農林水産では、鹿児島川内営林署の問題について工藤君、中村君等がこれを取り上げたり、さらには決算委員会で西宮君が岐阜の坂下営林署現地調査に基づく問題として取り上げたり、こういうことで、いわゆる事件は、それぞれ内容的には若干の相違はございますけれども、長年にわたるところのいわゆる国有林野事業業者との癒着問題あるいは第一線の営林署、あるいは中央の林野庁の役所をやめたあとOBという諸君のそういう会社林野庁とのなれ合いといったような問題が、具体的にそれぞれの委員会でも取り上げられまして、世論の大きな批判を仰いでいる経緯にございます。これらの問題は一部は司直の手に渡り、あるいは農林省自身としても現地実態調査中のものもございますけれども、こういう問題について、林野庁としてまずどう対処をしておるのか、こういう点を林野庁長官から簡単に御答弁を願いたいと思います。
  11. 福田省一

    福田(省)政府委員 御指摘がございましたように、最近、新聞紙上等におきましても、林野庁の問題につきまして、各現場でいろいろな問題が出ている。たいへん国民の皆さんの疑惑を買っておる点につきましては、申しわけないと考えておるわけでございます。特に川内営林署につきましては、先般二度にわたりまして監査官を派遣し、現地を十分調査したのでございます。その結果に基づきまして、相手方の不正の事実等がありますれば、これを検察方面に引き渡す、あるいは監視の不十分な点につきましては、これを十分に行政処分措置をとるというふうな厳正な態度で臨みたい、かように考えておるところでございます。その他の問題につきましては、それぞれただいま調査中のものもございますけれども、全般的に本年度特別監査を実施しまして、綱紀粛正をはかってまいりたい、かように考えておるところでございます。
  12. 角屋堅次郎

    角屋委員 特に、先般の委員会で問題になりました鹿児島川内営林署問題というのは、明らかに林野庁でも調べられて不正の事実が現実に出てきておるということだ。私は、調査結果等がら承知しておるわけですが、これは率直にそういう点についてわびるべき問題じゃないのですか。
  13. 福田省一

    福田(省)政府委員 御指摘川内営林署の問題につきましては、一つは盗伐の疑いが十分ございます。これにつきましては、検察当局と打ち合わせをしまして、刑事問題として取り上げたい、かように思っております。  なお、損害を受けました分につきましては損害賠償を要求する、かように考えております。  なおまた、監督指導上の責任の問題もございますので、あわせてこの点につきましては、行政処分等措置をただいま考えておるところでございます。
  14. 角屋堅次郎

    角屋委員 私は、この委員会の本日の段階では、林野庁のいわばOB中心になって構成をしております林野弘済会、あるいは林業土木コンサルタンツ等々の問題については深く触れませんけれども、これらについても指弾をされるような問題の運営がなされておるというふうに私ども聞いておるわけであります。   〔委員長退席三ツ林委員長代理着席〕  いずれにいたしましても、この際大臣にお伺いをしたいのでありますけれども、これは積年の余弊ということになるのかどうかは別として、国有林野事業経営運営について、最近非常に各地で問題が出てきておる。業者との癒着問題、あるいは林野をやめたOBがつくっておる会社とのなれ合い問題等々が非常に出てきておる。あるいはまた保安林を伐採するとかなんとかで地域住民から非常な反撃を受けておる自然破壊の問題、こういう問題は、やはり国有林野事業経営基本姿勢ということにかかわる問題だと思うわけですから、今後の農林大臣としての指導基本について御答弁を願いたいと思うのであります。
  15. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私は、再々申し上げておるのでございますが、国有林国民の財産であり、それを農林省林野庁信託を受けてその運営をすべきものだ。でございますから、この国有林につきましては、善良なる管理者として、いまお話がありましたように、公益的な環境保全ということでなくて、環境保全をさらに強化する、こういうような考え方でいかなくちゃならぬ、また林野庁職員信託を受けておるのでございまするから、その責任を十分遂行するようにやっていかなくちゃならぬ、こう思っておるのでございます。  いま御指摘のように、そのあり方で進めておるのでございますが、一部においてそのあり方に反するようなことになっておるので、林野庁荒廃庁だというような批判があったり、あるいは職員の問題がいろいろ出たりするので、こういうふうに、最近新聞等林野庁関係疑惑を招くような事案が、御指摘のように、数多く報道されております。国会でも、いまも御批判をいただきましたような批判を受けておることは、まことに遺憾でございます。そこで、今後は、職員綱紀粛正とそれから業務の適正な執行を確保するために一そう指導の徹底をはかってまいりたい、こう考えております。
  16. 角屋堅次郎

    角屋委員 これはまあ今後とも関係委員会で具体的な問題については追及が行なわれることになると思いますが、きょうは時間の関係もございますので、次に進みます。  赤城農林大臣は、農林大臣に御就任が二度でありますが、大臣も御承知のように、昭和三十九年に林業基本法議論のときの責任大臣でございます。われわれのほうからは、森林基本法案というのを出しました。真剣な議論の末に、重要な項目について政府原案修正して、そうして処理をした。同時に、いま文部大臣をやっております高見さんが当時農林水産委員長でありまして、異例の、理事会等委員長質問内容赤城農林大臣答弁内容というものまでいろいろと、それでよかろうというふうに大臣にも御相談を申し上げたりして、委員長質問、それに対する農林大臣答弁ということで、本問題の修正処理をした経緯が、御承知のようにございます。その際に、いわゆる修正項目の中の重要な一つに、林業労働に関する施策という第十八条の関係で、「林業労働に従事する者の福祉の向上、養成及び確保を図るため、就業の促進、雇用の安定、労働条件改善社会保障の拡充、職業訓練事業の充実等必要な施策を講ずるものとする。」というふうに修正をいたしましたが、この修正の中で、特に「雇用の安定、労働条件改善」というものが、当時の自民党、社会党、民社党の三党の共同修正でなされた修正の重要な項目の中にございます。そしてこれを提案いたしました三党共同修正案提案者である同僚の芳賀委員のほうから、修正点の第七点としてこの問題の提案理由趣旨説明を申し上げております。時間の関係上この詳細については触れませんけれども、今後の国有林野事業運営について「直営生産の方式を一そう拡大いたしまして、これらを通じて、国有林野労働者定員化の問題あるいは定期作業員通年制度実現するための雇用安定制度実現等が必要になるわけでございます。」ということで、今後の質問にも関連しますような点について提案理由説明の際、三党の共同修正案として提案した経緯がございます。これはそれで認められたわけでございます。  同時に、この三党の共同修正趣旨を受けて昭和四十一年に、御承知のような坂田農林大臣が直・直の積極的な拡大を打ち出した御答弁経緯もございます。また、昨年のいわゆる国有林開放の、例の国有林活用化法案という問題のときに、本委員会単独決議として、林業振興に関する決議を行なった際にも、この雇用の問題については特に重点項目として触れてまいっておるわけでございます。そういうものを含め、さらに最近の相次ぐ不祥事件等経緯にかんがみて、やはり今後の国有林野事業運営という問題については、直・直を原則にしながら今後の国有林野事業運営に正しく対処すべきだろうというふうに考えておるわけでありますが、これらの問題について、農林大臣としての確固たる見解を承っておきたいと思います。
  17. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 林業基本法の制定とその後の経過につきましては、御指摘のような事情であることは十分承知しています。したがって、その後国有林労働者雇用の安定をはかるために直営直用による製品生産企業拡大各種事業組み合わせ等によりまして、四十一年以降約一万一千人の常用化をはかってきたところであります。  一方、最近のわが国森林資源状況自然環境保全、その他森林公益的機能に対する国民的要請高まり等国有林を取り巻く諸情勢を勘案し、目下林政全般について種々検討を行なっているところであります。  以上の経過の上で直営直用方向については、地域性等を考慮し、組合の意向も十分聞いて措置することとしており、労使間の信義を尊重して、現実を踏まえて実態に即して対処していく方針でございます。
  18. 角屋堅次郎

    角屋委員 大臣参議院法案審議関係もございますので、けっこうでございます。  それでは、ただいま農林大臣のほうから、今後の国有林野事業運営基本というものについての考え方について御答弁がございました。引き続きまして、林野庁長官中心に若干の点についてお尋ねをいたしたいと思います。  先ほど林業基本法十八条の修正問題で若干経過を触れましたけれども、いわゆる国有林労働者雇用安定問題、これは私も国会へ出てから十四年を経過しておりますけれども、従来からずっと長期にわたって問題になってきた点であります。  そこで、これらの問題について若干触れてお尋ねをいたしたいと思います。まず林野庁長官から、定員内職員定員外職員の区分がございますけれども、要するに、定員外関係における常用あるいは定期、こういうものの最近の人員の実態について簡単に御答弁を願いたいと思います。
  19. 福田省一

    福田(省)政府委員 お答えいたします。  定員内職員は約四万人でございますが、御指摘定員外職員につきましては、現在、常用作業員、それから定期作業員臨時作業員と、こう分かれているわけでございます。  四十六年の七月現在の数字を申し上げます。常用作業員は一万六千三百三十六人、定期作業員は一万九千六百十二人、臨時は四万二千三十一人、これは最盛期でございます。合計しまして七万七千九百七十九人、常用が約二一%、定期が二五%、臨時が五四%、かようになっております。なお、御参考までに、四十六年の一月、これは一番少ない時期でございますが、合計では三万五千五百一人、かようになっております。
  20. 角屋堅次郎

    角屋委員 そこで、常用作業員定期作業員、この二つの問題に共通する部面もありますし、同時に常用作業員プロパーの問題あるいは定期作業員プロパーの問題もございますが、最初に、定期作業員の約一万九千名の雇用安定の問題から入ってまいりたいと思いますが、これは雇用通年化ということが前々から強く要請をされておりまして、現実定期等から常用作業員に繰り上げるということがなされてきた経緯がございます。これはさっきの大臣の御答弁の中で、ここ数年の間に約一万一千名の常用化が行なわれてきた。これは昭和四十一年の数字によりますと百五十五人、四十二年二百三十七人、四十三年九百八人、四十四年、これは非常に数がふえまして多いときでありまして六千四百二十人、四十五年二千百九十人、四十六年千百三十九人、これが定期等からの常用化でありますが、そういうことで一万一千四十九人、約一万一千人の定期等からの常用化が行なわれた経緯になっております。なおかつ定期作業員は約一万九千名おるわけでありまして、これらの雇用安定化ということについては、組合としても非常に強く望んでおるわけでありますが、今後の雇用の安定の林野庁としての考え方はどうなのかという点について御答弁を願いたいと思います。
  21. 福田省一

    福田(省)政府委員 定期作業員雇用通年化実現は、短期間には非常にただいまのところ困難な状態でございます。ということは、事業間の組み合わせあるいは地域間の組み合わせ等を十分考慮いたしまして、先ほど申し上げましたような通年化が約一万一千人になったわけでございます。しかし、またこの定期作業員につきましては、林業労働の中核をなすものでございます。できるだけ今後は従来の考え方に基づきまして、事業組み合わせその他につきましても、なお積極的に考えてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。十分検討の上、関係方面とも連絡をとりまして努力してまいりたい、かように思っております。
  22. 角屋堅次郎

    角屋委員 現実国有林労働者処遇状況を見てまいりますと、いわゆる月給制職員、それといわゆる常用あるいは定期作業員等との関係を見ますと、賃金、期末手当等でもやはり相当な開きがございますが、同時に、たとえば冬営手当とか現場手当別居手当あるいは私傷病手当公務災害補償退職手当あるいは年次休暇、休日休暇、こういういろいろな問題について、やはり定員内と定員外では相当な処遇の差がございます。現実にいま長官答弁のように、最近の状況から見て、定期作業員通年化という問題は、一挙に問題を処理するということは短期的には困難な状況にある。しかしながら、今後とも引き続き努力をするということでありますが、結局、現実には定期作業員の姿で仕事をやっていかなければならぬということが相当部分の人については続いていくわけであります。  したがって、そういう条件下における雇用の安定というものについては、社会党は、御承知のとおり、国有林労働者雇用の安定に関する法律案を出しておるわけでありますが、これらの問題については、案の内容林野庁長官も十分御承知のところであります。また同時に、この問題については、かつて総評議長太田薫君がやっておる当時に、小平労働大臣との間で、国有林労働者雇用安定の問題についての申し入れに基づく労働大臣の回答という経緯もございますし、また本委員会でもここにおります長谷部君の質問に対する政府統一見解というふうなものが、定員外職員に対する今後の雇用安定問題に対する政府答弁として出てきた経緯等もございます。具体的に定期作業員常用作業員に一挙に大量の者をあげるという困難な時点の中で、処遇改善あるいは差別改善をどうするかという点について、さらに具体的にお答えを願いたいと思います。
  23. 福田省一

    福田(省)政府委員 常用作業員処遇改善につきましては、林業振興に関する決議内容並びに従来の労使間の交渉の経緯を踏まえまして、現行制度のもとで考え得る最大限の目標を先般労働組合に提示をしたところでございます。これ以外のものにつきましても目下検討いたしておるところでございます。これ以外のものと申しますのは、先ほど先生御指摘のございました休暇あるいは休日あるいは冬営手当以外の退職手当とか公務災害補償とかというふうなものでございます。これらにつきましても、今後は引き続き努力してまいりますけれども、休業補償等による常用化につきましては、多方面に影響を与える問題でもございますので、十分検討の上、関係方面連絡をとりながらその実現に努力してまいりたい、かように考えております。
  24. 角屋堅次郎

    角屋委員 これはいま共通しておりますが、常用作業員定期作業員を含めての問題として、本年度からいわゆる年次休暇それから休日休暇冬営手当、これは全面的に改善をするとすれば、所要経費約十二億円といわれておりますが、これは本年度から着手する、こういうふうに考えてよろしいわけですね。
  25. 福田省一

    福田(省)政府委員 四十七年度から着手してまいりたいと考えております。
  26. 角屋堅次郎

    角屋委員 そこで、結局、先ほども御指摘私傷病手当公務災害補償退職手当、これを定員内、内員外のバランスをとるということになりますと、定員外差別処遇是正のためには約三十億程度所要経費が必要になるだろう、こういうふうに思っておりますが、所要経費の問題を含めて、今後これはどういう手順で実現方向に進めていこうとするのか、さらに御答弁を願いたいと思います。
  27. 福田省一

    福田(省)政府委員 この実現につきましては、林野庁は、先ほど答弁しましたように、前向きに検討してまいりますけれども、予算措置等につきましては大蔵省に関係する問題でもございます。その他関係省庁と十分前向きに検討いたしまして、実現に努力してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  28. 角屋堅次郎

    角屋委員 これはぜひ、予算的な関係から見ましてもそう巨額の金でないというふうに思いますし、もちろん最近の国有林野事業の会計の問題でやれ赤字であるとか黒字であるとか、一部議論がございますけれども、これは国有林野事業の特別会計がございました昭和二十二、三年ごろから以降で赤字なんていったのは、過去の統計を調べてもせいぜい三、四回くらいでありまして、約一千億円以上の民有林に対する林政協力その他を実施していた経緯もございます。今日の国有林公益的機能の強い要請とかあるいは国有林野内におけるところの森林資源の現状とか、そういういろんなものを見ておると、ここは、経営的にいえば、国が財政的援助をして持ちこたえなければならぬ段階である。したがって、短期的な国有林野事業経営が苦しいとかあるいは楽であるとかいうこと以外に、基本的な問題としてそういうものは対処していかなければならぬと、私、思うわけです。  さらに、定員内と定員外の賃金についても、これは相当な開きがあるわけでありますが、これらを思い切って是正をするとすれば約百億くらいの金が必要であろうというふうなことも言われております。これらについても、私は農林関係に深い関係もありまして、林野現場とか第一線に行く機会も現地ではございますけれども、やはり非常に純真素朴な山林労働者の方々が、定期であれあるいは常用であれ、非常に条件の差、そういう苦しい環境に耐えて長年にわたって国有林野事業をささえておる。しかも最近の過疎問題その他の社会問題からしても、地域経済を確立をしていくという立場からも、社会的にも経済的にもこれらの問題は重要であるというふうに思うわけでありまして、そういう問題については積極的に取り組んでもらいたい、こう考えております。  そこで、常用作業員定員内への繰り入れ、こういう問題について若干お尋ねをいたしたいと思います。  これは林野庁からいただいた資料によりますと、四十一年以降四十六年まで定員内への繰り入れという常用作業員の該当者については、四十一年が二百九十八、四十二年三百六、四十三年五百十八、四十四年九百七、四十五年七百三十六、四十六年ががたっと落ちまして五、そういうことで、締めて四十一年以降四十六年まで二千七百七十人、こういうことに相なっておるわけでありますが、この常用作業員を常勤職員にするという問題は、最近の統計数字からいうと、数年来非常にむずかしくなっておるような感じがいたします。   〔三ツ林委員長代理退席、松野(幸)委員長代理着席〕 さかのぼりまして、定員内職員常用等からの繰り入れを、三十三年以降四十年までの状況を調べてみますと、三十三年には五千三百四十三名、三十四年には千三百五十四名、三十五年には七百五名、三十六年は非常に多くなりまして九千九百二十四名、三十七年には三千七百四十九名、こういうふうな定員内職員常用等からの繰り入れが行なわれた過去の経緯もございます。したがって、やはり定員外常用作業員からすれば、なるべく早い機会に定員内に入りたいという強い要請諸君もあろうと私は思うのでありまして、そういう常用作業員を常勤職員にするという問題については、先ほど触れた長谷部質問に対する政府統一見解というふうなものに基づいて、これからどう具体化をしていくのかという点について、さらに今後の考え方についてもう少しお伺いをしておきたいと思います。
  29. 福田省一

    福田(省)政府委員 御指摘の点につきましては、定員内繰り入れの問題は、三十六年の閣議決定に基づきまして、一応むずかしい問題になっているわけでございます。そこで、この常勤性を付与する問題つまり常用作業員を常勤職員として扱う問題につきましては、雇用制度全般にかかわる問題でございまして、ここ数年来各省の間といろいろと検討いたしましてその統一見解が出て、非常に似てはおるけれども、むずかしい問題であるというふうな結論をもらっておるわけでございます。私たちとしましては、常勤性付与の問題につきましては、先ほどお話もあった常用作業員定期作業員というものは林業労働の根幹でございますので、この実現について前向きに努力しておるところでございますが、今年に入りましても各省との打ち合わせを何回か持っております。こういうことで林野庁としましては、これらの問題につきましては前向きに検討してまいりたい、かように思っております。
  30. 角屋堅次郎

    角屋委員 前向きというのは国会でもよく使うことばでありますが、常用作業員から定員内に繰り入れるということは、林野庁長官として今後どの程度見込みとしてはお持ちなのか。
  31. 福田省一

    福田(省)政府委員 先ほど申し上げました閣議決定後におきまして定員内に繰り入れました大部分のものは、機械作業員でございます。この機械作業員の定員繰り入れば四十六年で一応完了したと考えておるところでございます。したがいまして、定員繰り入れの問題につきましては、常用作業員に常勤性を付与するという問題で考えてまいりたい、こういうことでございます。
  32. 角屋堅次郎

    角屋委員 最近のいろいろな諸情勢から見て、困難な条件等ももちろん林野当局としては持っておられるかもしれませんけれども、これは長年にわたる雇用安定問題の中心的な課題でありまして、今後の積極的な努力について強く要請をしておきたいと思います。  そこで、常用作業員あるいは定期作業員の具体的な内容の問題については、さらにいろいろお尋ねをしたい点もございますが、最近の常用定期作業員の年齢構成というふうなものを見てまいりますと、二十四歳以下、あるいは二十五歳から二十九歳まで、三十歳から三十四歳までというふうな年齢構成のところが、資料によりますと、三十九年七月と四十五年十月とを比較してまいりますと、たとえば二十四歳以下では七千五百二十五名、全体の比率の中で一六%を占めておったのが、昭和四十五年十月では千八百七十七名、全体比率の中では五%というふうに、二十四歳以下が大幅に減少しておりますし、また二十五歳から二十九歳というところを見ましても、三十九年七月の七千五百十五名から四十五年十月には二千四百八十七名、比率といたしましても一六%から七%に大幅に減少、さらには三十歳から三十四歳までのところでも八千二百十四名が四千八百六十五名、比率としても一七%から一三%というふうな減少傾向であり、要は、三十四歳以下のいわゆる血気盛りというところ、若手の労働力のところでは、三十九年七月と四十五年十月を比較すると、全体構成の人員も大幅に減少してきておる。反面、三十五歳から三十九歳、あるいは四十歳から四十四歳、四十五歳から四十九歳、五十歳から五十四歳、五十五歳から五十九歳、六十歳以上、こういう区分けで数字が出ておりますが、時間の関係上これは読みませんけれども、これらのところにおいては三十九年の七月時点の全体の比率人数よりも四十五年十月の全体の比率人数のほうが総体的にふえておる。こういう傾向にございます。これは国有林野事業を今後長期にわって安定的にささえる若い労働力を、積極的にみずからの職場であるといって入れていくためにも、雇用安定の問題であるとか労働条件の問題であるとかが非常に重要な長期展望に立った基本問題だというふうに私は思うわけでありますが、これらの点についてはどうお考えでございましょうか。
  33. 福田省一

    福田(省)政府委員 御指摘のように、若い者が脱落をして年寄りだけが残るという現実はございます。また一方、男性が減って女性がふえてくるという傾向もあるわけであります。これはやはり若い者にとっては山村における労働に対する魅力がないからだというふうに私は考えるわけでございますが、都市に行ったほうが賃金も多くもらえる、山で働いたのでは危険であるし、給与も少ないということであると思います。したがいまして、これらの若い層に山に対して魅力を持たせるという施策としましては、いろいろと処遇改善なりあるいは社会福祉の保障なりを強化してまいらなければならぬ、かように考えておるところでございます。
  34. 角屋堅次郎

    角屋委員 林政審議会に対する討議資料というふうなことでいろいろな資料を出しておるわけですが、私はきょうは林政審議会の議論経過や中身についてお聞きしょうとは思いませんが、ただ、先ほど私が触れました昭和三十九年六月の林業基本法制定当時の附帯決議の中でも、たとえば林政審議会についてはその六項目のところで、「林政審議会の委員に、林業経営者、林業労働者等広く各界より権威者の参加を求め、法の適正、円滑な運用がより一層可能となるよう配慮すること。」というふうなことで、特にここで「林業労働者等」ということを書いておいた経緯がございます。林政審議会のメンバーを見ますと、私の尊敬する同僚のメンバーが一人入っておりますけれども、全体はこの当時われわれが注文つけたような構成に必ずしもなっていないという感じがするわけであります。これはここで御答弁を聞こうと思いませんけれども、重要なこれからの林業全般の問題を議論する際に、やはり第一線で血と汗の苦労をしておるような諸君のなまの意見が、こういう舞台の中で反映される配慮をする必要がある、私はこう考えております。きょうはそれらの問題について深く触れず、今後の善処を期待しておきたいと思います。  そこで、去年の国有林活用化法案処理いたします場合の林業振興に関する決議に関連する問題であります。これは大臣もしばしば本委員会等を通じて、この決議趣旨は尊重して今後積極的にこれらの内容実現について努力をする、こういうふうなことを答えておられるわけでありまして、先ほど質問をしております雇用安定等の問題についても、林業振興決議の中で触れておる内容の問題がございます。それ以外の若干の問題について、私はこの際お聞きをしておきたいと思います。  造林の拡大とか充実の問題、あるいは林道網の整備の問題、こういうふうなことが林業振興に関する決議項目一つとして書かれておるわけでありますが、たとえば造林の問題については、「国が行なう民有林野の分収造林等に関する制度措置」というふうなものについて、これから積極的に検討してこれが実現をはかるように努力をするという形になっております。これらの検討と今後の方向についてはどうお考えかを簡潔にひとつ聞いておきたいと思います。
  35. 福田省一

    福田(省)政府委員 御指摘のありましたように、造林は日本としまして一番重点的に考えなければならぬところでございますが、最近非常に停滞しておるわけであります。林業振興に関する決議におきましても、この問題は一番最初にあげてございます。林業労働者は、地域とかあるいは季節によりまして、過疎化が著しく、地域間のあるいは事業間の流動化も特に国有林の場合にはむずかしい傾向にございます。また、民有林におきましても、森林組合労働班などの実行組織が育ちつつございますし、国有林の労働力による民有林造林の制度化につきましては、慎重に検討してまいりたいと思っているところでございます。  なお、民有林の造林推進につきましては、したがいまして、助成の拡充強化によりまして林業者の自主的な努力を助長する、それが基本とすべきものと思うのでございますが、奥地あるいはまた大規模な造林など、林業者の自主的な造林が困難な事情のある場合もございましょう。そういう場合につきましては、公的な造林推進につきましても十分検討をする必要があると考えているところでございます。
  36. 角屋堅次郎

    角屋委員 私は最近の現状は、われわれがこれを決議した当時のわれわれの強い要請というものから若干林野庁あるいは農林省としての姿勢が積極性を欠いておるというふうに率直に思っておるわけであります。最近の造林の停滞傾向等々から見まして、たとえば森林開発公団であるとかあるいは都道府県におけるところの造林公社であるとかあるいは森林組合の労務班であるとか、それぞれの分野でそれぞれ働きをしておる部面がございますけれども、今後の長期展望に立った林業生産ということを考える場合には、かつての官行造林という制度もございましたが、要するに、国の責任で造林が積極的に行なわれるという新しい構想が一つのバックボーンとして入らなければならぬというふうに強く考えておるわけでありまして、これらの問題については、当時の決議の情勢等からいたしましても、今後やはり積極的に取り組みをしてもらいたいというふうに考えております。  そこで、林道の問題について若干お伺いしておきたいのでありますが、農林関係におきましても、たとえば漁港整備の問題であるとかあるいは治山治水の問題であるとかいうふうな点は、五カ年計画とか十カ年計画とかということでオーソライズされておるわけでありますけれども、林業問題における林道の位置づけといいますか、これは大きな比重を占める問題でありまして、もちろん、自然を破壊するようなスーパー林道その他の問題がなされて世論の指弾を受けるようなことは、これは慎まなければなりませんけれども、やはり林業振興のために林道網の整備をするということは基本問題の一つでありまして、これは積極的に進めなければならぬ。そういう意味からいって、やはり道路建設五カ年計画であるとかあるいは港湾とか漁港であるとかあるいは治山治水というようなことでオーソライズされた形で計画をされ、そしてこれが実施に移されるという方向に林道等についても持っていくことが今後の問題として重要ではないか、こういうふうに考えておりますし、同時にまた、林道の補助金などを見ましても——この決議の中でもいっておるわけでありますが、大幹線林道、幹線林道あるいは一般林道、こういうものの開設あるいは幹線その他の改良、さらに農免道路が別にあるわけでありますが、これらの内地、北海道なり離島——沖繩が新しく入ってまいりまするけれども、こういう補助率を見てまいりましても、一般の林道に対する補助率が、開設の場合に内地が四〇%で北海道、離島が四五%というような問題や、その他の全体的な補助率から見ましても、もっと補助率を公共事業として積極的に引き上げる必要があるということも含めて、今後の林野庁としてのこれらの取り組みについてお伺いをしておきたい、こう思っております。
  37. 福田省一

    福田(省)政府委員 造林事業につきまして、林道はやはりこれは生産基盤の問題として一番大事な問題でございます。御指摘のように、治山事業と同じように五カ年計画ということができまして、予算の裏づけができることでありますれば、私たちも非常に望ましいと考えているところでございます。しかし、林道の整備に関する施策の充実につきましては、林業を取り巻くいろいろな情勢に適切に対処できるように、これは総合的な林政の検討の一環として一番大事な問題でございますので、法的な整備の必要性を含めて慎重に検討を進めてまいりたい、かように思っているわけであります。なお、林業基盤の整備を促進するために、全国森林計画に基づきまして、林道網の整備計画については計画的に林道の開設を進めてまいりたい、かように思っております。  御指摘のありました補助率の問題につきましては、今後、林道は従来よりは公的な性格を多分に持ってまいるという点も勘案しまして、補助率のアップにつきましては十分努力してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  38. 角屋堅次郎

    角屋委員 最近の林業をめぐる諸情勢、あるいは今後の日本経済の発展の見通し、それが森林資源に対する需要の増高というふうなことで、森林資源に関するところの基本計画あるいは今後の需給見通しというものについては速急に改定をしなければならぬ段階にきておるということは、林野庁自身も認めておられるわけでありますが、これは林業基本法に基づいてこういうものの改定をやる場合には、当然林政審議会にもかけなければならぬ。そうして従来からの林野庁長官の御答弁としては、本年度内にこれらの問題については改定をいたしたい、こういうふうにお答えしてきたと思うのでありますが、最近の情勢は、この問題についてどういう段取りで進めようと考えておられるか、御答弁を願っておきたいと思います。
  39. 福田省一

    福田(省)政府委員 基本法に基づきますところの森林資源に関する基本計画及び林産物の長期見通しにつきましては、四十一年制定いたしましたときと、御指摘のように、だいぶ情勢が変わってまいっております。ただいまこの二点につきましては、林政審議会に部会を設けていただきまして、そこで検討を願っておるところでございます。大体の試案はできておるのでございますけれども、長期の見通しにつきましては、経済企画庁が決定いたしますところのGNPの伸び率、こういったようなものが影響いたしますので、それがきまりますれば、直ちに閣議決定に持ち込んで早急にこの二つの案を確定いたしたい、かように予定しておるところでございます。
  40. 角屋堅次郎

    角屋委員 林産物の需給の推移表、これは林政審議会の担当部会に対する、いわばまだ討議の素材としてまとめられた資料かもしれませんけれども、その資料によりますると、最近の外材の輸入あるいは外材依存度の比率ということが大きく問題になっておりますが、林産物の需給の推移表といういわば検討の素材の資料によりましても、輸入の期待量、これは国内供給量に対して需要との関係での供給の比率になるわけですけれども、これは御承知昭和四十五年がもうすでに五五%という数字になって見通しをはるかに上回っておるわけですが、この検討資料によりますと、輸入量の比率というものは昭和五十一年度で六〇・四%、五十六年度で五九・五%、六十一年度で五七・七%、六十六年度で五六・六%、昭和九十六年度で四七・三%——これはわれわれの生きておる年代よりちょっとあとになりますけれども、いずれにしても昭和六十六年度で五六・六%ということは、まだあと二十年間、外材依存度が半数をこえる状態が続くという、そういう判断の数字だと思うのですが、こまかい数字は別として、大体こういうことであろうということは間違いないわけですか。
  41. 福田省一

    福田(省)政府委員 御指摘のとおりでございまして、国内の森林資源の状況は、先生御承知かと思いますけれども、造林しましたもののうち伐期に到達しました四十年生以上のものは一割しかございません。あとの大部分が二十年生、これが国有林の場合は約七割ございます。民有林の場合は八割になっております。こういう状態でございますので、あと二十年くらいしませんと、国内の造林しました木が利用できないということでございますので、その間外材の輸入でこれを補っていかなければならぬという現実の問題があるわけでございます。
  42. 角屋堅次郎

    角屋委員 いずれにしても、最近の林業問題あるいは今後の林業政策を打ち立てるにあたって、国土の約七割を占めておる日本の森林資源、これが残念ながら国内需要を十分にまかない得ない。これから二十年近くにわたって外材依存度は五六、七%というもの、あるいはそれ以上のものが続いていくという状態を想定せざるを得ないということになりますと、それであるだけに、最近いろんな問題がございますけれども、国有林たると民有林たるとを問わず、林業政策というものについて政府は本腰を入れてやらなければならぬ情勢に逆にきておるというふうにもいえようかと私は思うのでありまして、冒頭に、私、林野庁に起こっておるいろんな問題を取り上げ、また新聞がそういう問題で林野荒廃庁あるいは株式会社伐採庁とかいうふうなことをいっておりますけれども、そういう批判には逆に世論に対して真正面からまじめにこたえるという態度が必要であろうかと思います。  最近、林野庁国有林野事業の赤字、黒字問題というのが出ておりますけれども、この点で、前に林野庁長官をやりました田中重五さんの意見というのを、これは昭和四十六年三月二日に日刊木材新聞に出た意見の抜粋でありますけれども、見せてもらって、山に生きました元幹部のいわば述懐として非常に傾聴に値する意見を述べておるというふうに考えております。  抜粋の中でも、詳細に触れるわけにはいきませんけれども、たとえば、国有林が黒字当時に、利益剰余金と称された特別会計の積み立て金を民有林振興のために一千億近く使ってきたわけでありますけれども、こういう問題に対しても田中さんは、現職をやめられたという立場にありますけれども、そういうものに使って、みずからの投資内容充実のための造林、林道、治山その他必要経費については必ずしも必要にして十分な投下を行なってきたとはいえない。この赤字、黒字の問題についても、毎年の収支のどんぶり勘定にも似た赤字、黒字という概念で国有林の価値測定をしようという意見に矛盾を抱くものである、こういうふうに述べながら——これは頂門の一針として林野庁長官聞いておかなければならぬ先輩の意見だと思いますけれども、つまり企業性を自己貫徹できないような国有林にとって、赤字とか黒字とか議論をすることば議論の土俵が違うように思われる。職員数の適正化、組織の簡素化そのほかの合理化対策もけっこうである、しかしその前に国有林に対する扱い方をあらためて問い直すことが先決である、さもないと国有林は黒字になったが資産内容の荒廃を来たし、真に国民の経済的、文化的発展に寄与し得る財産としての役割りを後世の日本国民に対して失うことになるかもしれないことをおそれる、というふうなことを書いておられる。  また同時に、毎日新聞の五月十八日の投書欄の中で、水田という大学の教授が、最近の自然環境の問題とも関連して「独立採算で山を食いつぶす」という見出しで書いておりますが、この中でも、「林野庁の業務を現場で担当するのは営林署である。ところが、この営林署の業務は、独立採算制でおこなわれていて、赤字をださないためには木をきらなければならない。つまり、林野庁は山林くいつぶしのうえに、林業資本と共存している。しかし自然保護=環境保全は、それ自体で採算ベースにのるものでないこと、教育とおなじであるから、営林署林業営業署であるかぎり、林野庁林野荒廃庁にならざるをえない。いっそ廃庁してしまったらどうだろう。」というふうにも書いております。まさに最近の国有林野事業経営運営の問題について警世の言として聞かなければならぬ内容を私は含んでおると思うのであります。国有林野事業運営にあたって、数字的な赤字、黒字というふうな議論だけで今後の運営林野庁長官はやろうとは考えていないと私は思いますけれども、林業振興に関する決議の中でも、財政措置の問題について積極的に一般会計からの導入ということも要請をしておるわけでありますが、これらの問題についてのお考えについても聞いておきたいと思います。
  43. 福田省一

    福田(省)政府委員 お話しございましたように、私は国有林経営におきましては赤字を消して黒字にするということは目的であるとは考えておりません。やはり最近の国民一般からの要請でございますところの自然保護に重点を置きまして経営方針を立てておるわけでございまして、先ほどお話ししました森林資源に関する基本計画の中には、従来の考え方を改めまして皆伐面積を大きく減らす、あるいはまた、それに従って択伐なり禁伐林をふやす。当然伐採量は減る、あるいは造林量も減るわけであります。収支の面だけ考えますならば、苦しい状態に入るわけでありますけれども、しかし、これは国有林としてはやらなければならぬことだと考えるわけであります。こういう財務の問題は結果として処理しなければならぬことであって、やはり大前提としましては自然保護に重点を置いた、しかも木材の生産をさらにふやすということであろうと思います。  そこで、従来やっております仕事を国民の皆さんの批判にこたえるようなきちんとした姿にすることがまず大事でございます。そういう前提に立ちまして、いわゆる合理化をしました上で、なお公益的な面における、たとえば治山事業が代表的な例でございますけれども、そういったものについての一般会計からの導入ということをお願いしてまいりたい、こう考えているわけでございます。四十七年度におきましては六十六億一般会計から初めて導入をされたわけでございます。そういう考え方で、基本的にはやはりいい森林を後世に残すという国民要請にこたえた経営の立場に立ちまして、合理化をし、なお公益的な面で足らぬところを一般会計からも導入をお願いするというふうに持っていきたいと考えております。
  44. 角屋堅次郎

    角屋委員 いろいろ質問したい点も多々ございますけれども、同僚委員が次の質問を待っておられますので、本日はこの程度でやめさせていただきたいと思います。
  45. 松野幸泰

    ○松野(幸)委員長代理 瀬野栄次郎君。
  46. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 昭和四十七年産の生産者米価及び消費者米価問題、二番目に畜産関係、三番目に熊本及び長崎県の漁業紛争問題について農林省関係当局に質問いたします。農林大臣参議院のほうへおいでになりましたので、ひとつ関係当局においては責任ある答弁をお願いしたいと思います。  第六十八国会あと八日間を余すのみとなりまして、本日と来たる十五日の米価問題審議をもって日程が一応本国会では終わるということになるわけですが、本日は特に、去る五月三十一日から六月二日まで三日間当委員会現地を視察いたしました熊本県、大分県等からの要請等もたくさんございましたので、その中の若干を質問申し上げたい、かように思うわけでございます。  まず最初に、米価審議会の問題でございます。これは先ほど申し上げましたように、十五日に当委員会でまたいろいろ審議をしていただくということになろうと思いますので、その節あらためてまた質問いたすことにしておきますが、米価審議会のことについて本日二、三点基本的な方向を最初にお尋ねをしておきたい、かように思うわけです。米価審議会の開催時期は、現在の政局の動きもからみまして、なお流動的であることは十分承知しておりますけれども、去る五月二十四日に農業団体あるいは農民団体等の要求米価をきめたことから、早くも激しい米価論争がすでに火をふいているというのが実情でございます。  そこで、まず現内閣のときに開くかまたは新しい内閣で開くかということもいろいろ論議されておるわけですけれども、いままでの報道その他によりますと、米審は六月下旬、こういうことが大勢を占めているやに思っているのですが、まず米審はいつ開く予定で準備を進めておられるか。当然、六月下旬となれば時間もないわけでありますので、すでに準備体制に入っていなければならぬ、こういうふうに思うのですが、まだ全然準備に入っていないのか。その点、期日もないわけでございますので、現段階でわかっている範囲でけっこうでありますので、ひとつ御答弁をいただきたい、かように思うわけです。
  47. 亀長友義

    亀長政府委員 米審の開催時期につきましては、まだいつとも決定をいたしておりません。例年の例でございますれば、早いときには四月の終わりもございましたし、大部分の年からいえば六月の終わりあるいは七月いっぱい、年によっては八月に入ったこともございます。本年度いつやるかということにつきましては、まだ何ら決定をいたしておりません。  それから、作業の進捗状況はどうかということでございますが、御承知のように、生産費の調査の結果を見た上でいろいろ判断をするというのが例年の例でございます。また、パリティ指数等もいろいろ調査をしなければならぬ、そういう作業は目下進めております。そういうデータがそろうのを待ちましてから米価を算定するという段階になるわけでございまして、現段階ではむしろ基礎資料の整備を急いでおる、こういう段階でございます。
  48. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 赤城農林大臣は、国会などで再三にわたりまして、新聞等でも報道されておりますように、生産者米価引き上げの意向を表明しておられるわけであります。生産者米価は過去三カ年間据え置かれておるわけで、物価、労賃の上昇等が続く中で値上げは当然という空気が大勢を占めておる。また、農業団体もすでに要求米価を打ち出しておるわけでありますが、消費者米価も含めて、今回は両米価値上げの方向でいろいろ準備をして考えておられるのか、この点もひとつその基本的な見解を承りたいと思います。
  49. 亀長友義

    亀長政府委員 両米価ともに現在の段階では、政府全体としてどのように扱うかということはまだきまっておりません。生産者米価を上げるとすれば、当然財政上の問題も具体的に出てまいることでございますし、消費者米価あるいは政府売り渡し価格ということになれば、同時にこれまた消費者の家計という問題の検討も進めなければなりませんが、いずれにいたしましても、両米価ともに現在まだ私からどうこうというお答えをする段階には進捗をいたしておりません。
  50. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 基礎的な問題はいま資料を整備しているということで、食糧庁長官としてはそういう段階ではないかと思っておるのですけれども、大臣がきょうちょうど中座されましたが、もう一点だけ基本的な方向でお伺いしておきたいと思います。  財政を預かるところの大蔵省当局においても、また物価問題関係の経企庁当局におきましても、米作農業を転換して総合農政を推進しているさなかに生産者米価を値上げすることは農政を混乱させるものだとして、これは従来からたびたび論議されてきた問題でありますが、値上慎重論も強いということはわれわれもいろいろ聞いておるわけです。一方、生産者米価の引き上げ論が強まるに従って、これ以上食管会計の赤字を増大させるということは政府も検討せざるを得ないということで、売り渡し価格等の引き上げが必要だとする議論も活発になっていることも新聞等で報道されているとおりでありますが、こういった両米価の論争は農政問題とか物価問題を軸に今後ますます論議を呼ぶところだと思うわけです。  そこで、こういった大蔵省あるいは経企庁当局が考えているといわれますところの、米作農業を転換し総合農政を推進しているさなかに生産者米価の値上げは農政を混乱させる、値上げは慎重論で行きたいという意見があるように聞いておりますが、その点は当局はどういうふうに受けとめておられるか、基本的な問題としてこの機会に承っておきたい、こう思います。
  51. 亀長友義

    亀長政府委員 生産調整をやっているさなかに米価を上げれば、生産調整の阻害になるのではないかという御意見はございます。それは別に大蔵省、企画庁とかいうことでなくて、いろいろ有識者の中にもそういう意見のあることは事実であります。また、一般的に経済論と申しますか、理論的なたてまえから申しますれば、やはりものの価格というのは生産のバロメーターだということもいわれておりますから、米価と生産調整が関係がないというふうには私ども考えておりません。  ただ、一体それではどの程度ならばどういう影響があり、どの程度ならばたいした影響はないかということになりますと、きわめて微妙でございます。また、そういうことが総合農政全体にどういう影響を及ぼすかということも、これは米価のきまり方いかんによって現実的に判断をすべきものであって、抽象的に関係があるとかないとかいうことで判断をすべきじゃない。米価のきまり方いかんが農家の収入なりあるいは農家の作付動向にどういう刺激を与えるかということは、むしろ具体的に係数を見た上で判断すべきであろうと思います。現段階では米価の係数が何らまだきまっておらない段階でございますので、その点につきましても、いろいろな御意見はございますけれども、私どもとしてまだ具体的に結論を出す段階には至っておりません。
  52. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 生産費・所得補償方式の問題をどうするかというような問題もいろいろあるわけですが、いずれにしても、先ほど申しましたように、十五日にこの件についてまた時間をいただいて本格的に論議をするということになろうかと思いますが、きょうはごく基本的な方向を一応三点お尋ねして、米価問題、米審に関する問題はこれで打ち切りたいと思います。どうもありがとうございました。  そこで、第二番目の問題であります畜産問題について、いまから逐次質問させていただきます。  まず、今回五月三十一日から六月二日まで当委員会現地調査等をいたしまして、いろいろ現地からの要望もあり、また、昨年、私、質問もしてまいりました中で残っておりました問題等をあわせまして質問してまいりたい、かように思うわけです。  まず、わが国の獣医師の問題に焦点を合わせてお伺いします。順序といたしまして、わが国の獣医学教育は、私の承知しておるところでは十六大学あるというふうに聞いておりますが、国立、公立、私立の内訳はどういうふうになっておるか、その点からまず述べていただきたい、こういうように思います。
  53. 増田久

    ○増田(久)政府委員 先生御指摘のとおり、現在獣医関係の大学は十六ございます。そのうちの国公私立の内訳についてはいま手元に資料を持っておりませんので、後ほど資料でお答え申し上げたいと思います。
  54. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 四十四年から三カ年間において、獣医師の免許をとるために試験を受けた数、また合格者、それから合格率、こういったことについて簡潔にひとつお示しいただきたいと思います。
  55. 増田久

    ○増田(久)政府委員 四十四年は、受験者が一千七十一名、そのうち合格者は八百二十二名で、合格率は七六・八%。四十五年は、千二百二十七名受験いたしまして、合格者数が九百二十八名、合格率は七五・六%。四十六年は、千二百四人受けまして、合格者数が九百五十六人、七九・四%の合格率でございます。
  56. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 昭和四十五年の十二月三十一日現在で、農林省調査した資料によりますと、獣医師の届け出者というのが全国で二万七百七十六名というふうになっておるのでありますが、実際に獣医業に就業している者、すなわち二十一条届け出というものを出している者については何名おるか、この点も明らかにしていただきたいと思います。
  57. 増田久

    ○増田(久)政府委員 昭和四十五年十二月末現在の届け出者数は二万七百七十六名で、御指摘のとおりでございますが、そのうち、獣医師の仕事に従事しております者は一万九千五百九十六名。そのうち、公務員、たとえば県庁でありますとかわが農林省とか、そういう公務員としております者が九千五百五十名。それから、民間の団体職員、これはたとえば共済等でございます、これが五千四百三十四名。それから、個人診療、これは開業医でございますが、これが四千二百八十五名。それから、その他三百二十七名。このその他と申しますのは、たとえば競馬の調教師をやっておりますとか、個人で農場をやっている、業としては開業医をやっておりませんけれども、自分の仕事の中で獣医師の仕事をやっている、こういう者でございます。それで、全然獣医師の仕事に従事していない者は一千百八十名でございます。合わせまして先ほど申しました二万七百七十六名でございます。
  58. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、この獣医師の数でございますが、世界で一番多いのはソ連、二番が米国、三番が日本で、四番がカナダと、こういうふうにいわれておるわけですが、そのうち日本を除いて、ソ連、米国、カナダの獣医師数と大学数、それから、一九七一年、昨年の大学卒業の資格を得た者の数等について、わかればひとつお示しいただきたいと思います。
  59. 増田久

    ○増田(久)政府委員 これはちょっと資料が古いのでまことに申しわけないのでございますが、一九六四年のWHOの統計でございますので、だいぶ古いということをお許し願いたいと思いますが、まずソ連が、獣医師の数が四万二千四十人、それから獣医学校数が三十六、それから教育年限は六年でございます。日本の四年と違いまして、六年制でございます。これはアメリカもカナダも全部六年ないし七年制でございます。それからソビエトの卒業者数は、これは統計に載っておりませんのでわかりません。次に米国は、獣医師の数が二万二千八百五十三、獣医学校の数が十八、それから卒業生が九百十三名。カナダが、非常にぐっと落ちまして、千九百六十六名しか獣医師はおりません。学校は三校、それで卒業者数は八十一名でございます。
  60. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 日本は獣医教育の大学も多く、獣医師の数も、いまいろいろと御説明ありました数字から見まして、ソ連、アメリカ、カナダに比してかなり多いわけであります。また、そのためにいわゆる獣医師の質の問題が世間で批判を受けている状況になっておるわけです。そういった意味で、いまるる世界的な趨勢を日本の状況と比較して答弁いただいたわけでありますが、もちろん地方によっては、過疎地帯によって、一部ではありますが、獣医師の不足を来たして獲得に困難を来たすというような珍現象も起きている。また、全般に小動物のほうへ獣医師が流れるということで、都市集中化をしている。これは昨年、私、当委員会質問をして論議したところでございますが、こういった中で、大国に比して日本はずっと小さい国であるけれども、獣医師の数、また学校においても多い。だから学校の統廃合というような問題も起きてくるわけでありますし、獣医師の質のレベルアップということがたいへんな問題になって、今日社会的な要請が強いわけでありますが、この点について当局はどういうふうに見解をお持ちであるか、ひとつ明確に御答弁いただきたいと思うのです。
  61. 増田久

    ○増田(久)政府委員 先ほどもお答えいたしましたとおり、外国では全部六年制ないし七年制という制度になっております。そういう意味で、どんどん専門化していく過程の中で、この獣医師関係が四年制ということに私は基本的に問題があろうかと思います。幸いと申しますか、その中で現在博士課程に行っております者は学生のうちの一五%ということで、漸次そういう数がふえてまいっておりますし、だんだん専門化の方向をたどってきておりますけれども、問題はやはりその四年制というところを直さない限り、これは問題にならない。これはどうしても六年制にしてほしいということで、これは学会でも、獣医師会でもそういう希望もありますし、われわれも全く同意見でございます。そういう意味で、文部省に強くこの六年制の実施方をお願いしておるという段階でございます。
  62. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 獣医師の教育のための大学は、昨年、私、指摘をして、四年制から六年制へということでその後文部省にお願いをされたということでありますが、現在わが国においては国立、公立、私立を合わせて十六校ある。この中には、一々名前を言うのもどうかと思いますが、実に、実験その他についてもあばら屋みたいなところで、これで大学かというようなところがあるわけです。一々ここで指摘はしませんけれども、そういったところが獣医師の信頼をなくすという問題にもなる。やはり獣医師のレベルアップをするためには、また待遇改善をするためには、四年制から六年制にすべきだということは当然であると思うのです。ただいまの答弁で、文部省にも要請をしているということでありますが、この大学が現在十六ある、こういったものについては、六年制になる機会に、将来努力していただくことになりましょうが、そういう機会にやはり統廃合というか、整備するというふうに当局はお考えであるのか、その点ひとつ重ねて質問をいたしたいと思うのです。
  63. 増田久

    ○増田(久)政府委員 学校の所管は私のほうでございませんので、文部省でございますので、私の立場で統廃合しろというようなことはなかなかいえないのでございますけれども、やはり問題はレベルアップということで、御指摘のような学校も現にあるわけでございます。そういう意味で、質的な向上ということを、六年制とともにはかっていきたい。そういう点については文部省に強く要請してまいりたいと思っております。  なお、いま資料でわかりましたけれども、十六校のうち、私立が五、公立が一、それから国立が十、合わせて十六校でございます。
  64. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 きょうは文部省も呼ぶようにいたしたいと思いましたけれども、いろいろお差しつかえあるということで、畜産当局の御見解だけを承るということで通告をいたしておきましたので、局長から先ほど答弁がございまして、将来四年制を六年制にするという方向がきまる時点で、今後畜産当局としても十分考えていくというようなことでございましたが、そういうことでぜひひとつレベルアップということも含めて、重大な問題であるので、積極的にひとつ文部省にはかりて御検討いただきたい。そして早く実現するように強くお願いをする次第であります。  そこで、東京都の例を一つとって質問をしたいと思うのですが、東京都の場合は、私が承知している範囲では、現在都内に獣医師が開業しているところが六百軒ほどあります。助手を含めて七百人ぐらいに大体なるんじゃないかと思っております。そしてまた、この六百軒の獣医師が開業している中で、一カ月に消費している薬品というものか——粗収入で約一億二千万あると推定されております。一応六百人としてこれを割りますと、一人につき二十万円ということに粗収入がなるわけでございます。ゆえに獣医師のいわゆる生活というものは、実に哀れというか貧しい。外国に比して非常に貧弱であります。そういったところから待遇改善その他いろいろな問題が起きているわけでございますが、そういうふうに租税率も非常に少ないために国でもなかなかこれを守らないというかっこうになっておりまして、何かしら政治の谷間に落ちているといわれているわけです。したがって、一人で年間三千円くらいの税金、普通一万円、たまに十万円くらいの納税をしている人が若干あるという程度で、こういった状況から見まして、実に開業医そのものの生活ということが、あまりにも獣医師が多いために、こういった都市においては問題になっているのですが、この点はどういうふうに掌握されどういうふうに畜産当局はお考えになって対処される方針であるか、私が言っていることに対してどういうふうに御意見をお持ちであるか、そういったことをひとつお示しをいただきたいと思うのです。
  65. 増田久

    ○増田(久)政府委員 先生がおっしゃいましたとおり、現在東京に約六百軒くらいの開業獣医師がある。その収入につきましては、いま先生のおっしゃったような数字も私、耳にいたしておりますけれども、これははたしてどの程度の数字なのか、私も聞いた程度でよくわかりませんが、ただ一般的にいえますことは、当然競争が激しいからその中から落後者も出てくるということはあろうかと思いますけれども、その六百軒以外にどんどんいなかを捨てて都会に獣医師が集まってきて、そして何とかして開業したい、またこのごろ学校の卒業生、入学者の獣医師希望者にいろいろ面接をして聞いてまいりますと、みんな農村に行かずに都会で開業したいという希望の者が非常に多いことは事実でございます。そういうことから見ますと、数字はわからないけれども、そこに新規参入が非常にあるということは、それだけまだ現段階ではかなりの収入をあげているというふうに推定せざるを得ないというふうに思っておるわけでございますが、むしろ問題は、そういうふうにいなかの青年それから学校に入る青年が、産業動物のほうに行かずに、犬ネコのような——犬ネコと言っちゃ語弊がありますけれども、そういう愛玩のほうに走っていくということに非常に問題点をわれわれ感じておりまして、先ほどお話ございましたけれども、現在の獣医師の無医村が約二百六十町村だったと思いますけれどもあるというような、非常に全体としてちぐはぐな情勢が出ていますので、われわれは、やはりいなかに若い者が入ってもらって、産業動物のめんどうを見てもらう、そうしてそういう人たちの農村における待遇改善をどうしたらいいのか、すべきであるということで、その点に重点を置いてものを考えたい、かように考えている次第でございます。
  66. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いま局長から答弁ございましたけれども、昨年、家伝法の一部改正のときにも、私、問題にしていろいろ質問した記憶がありますけれども、確かにいまおっしゃるように、何か無医村が二百六十あると聞いたのです。これはまたたいへんな驚きでありますけれども、中国から入ってくる口蹄疫、いまはもう心配がないということでわれわれも安心しておりますが、ああいった口蹄疫あるいは今後沖繩復帰あるいは東南アジアの貿易、またいろいろな農産物の自由化等がひしひしと押し寄せてきておりますが、いろいろな病気が入ってくるということになってきますと、これはたいへんなことになる。かりに口蹄疫が入れば、一週間にして日本全国の家畜は全滅するというようなこともいわれるくらいたいへんなことになる。他国から応援したって間に合わない。こういうことも起きてくるということで、これは重大な問題ですね。国民の動物性たん白を給している一番かなめを握っている獣医師が、こういったことで偏在しているということになるわけでございます。また、確かにいま局長も言われるように、私も先般指摘したとおりに、産業動物の獣医師が少なくなって、どうしても犬、ネコというような愛玩動物、すなわち小動物の獣医にだんだん転向する、また都会に出た学生は都会に住みつくというようなことで、生産調整によって農業はますます転換をしていく、農業の三本の柱である米に次いで、畜産、果樹という大きなウエートを占めているものの促進に力を入れていかなければならぬときに、大事な獣医師がだんだん地方から都市へ集中していくということはたいへんな問題である。一方では、先ほど指摘しましたように、学校数もまた卒業生も大国並みまた大国以上に多い、こういうことで、いわば質が低下しているというようなことで、ある人に言わせると、低開発国よりももっと低いレベルの獣医師がたくさん出ておるというようなことで、ゆゆしい問題になってくる。ある学校なんかにおいては、卒業生が二百名平均ですから、馬の解剖をすると、一頭の馬に二百人寄ってたかって解剖する。だからほんとうの勉強はできない。実務につくことができないというようなゆゆしい問題が起きてきておるということで、総合農政推進の面からも、こういった獣医師の問題は等閑視されておるような感じがして、ゆゆしい問題である、こういうように私は思うわけです。そういったことで、獣医師の待遇改善それからまたそういった過疎の問題、小動物に対する獣医師が多くなっていく動き、産業動物に対してはなかなか定着しないというようないろいろなことがある。このままでいくと、あと二十年、三十年したらたいへんなことになる。卒業生はどんどんふえるけれども、必要なところにはあまりいないということになりかねない。そういったことで、いまにして整備をしていかなければたいへんだと思いますが、その点、どういうように畜産当局は真剣に検討され、御見解をお持ちか、さらに答弁をいただきたいと思います。
  67. 増田久

    ○増田(久)政府委員 御指摘のとおり、この問題は非常にゆゆしき問題だと思っております。そういう意味で、どうやって獣医師を農村に在住せしめるか、こういうことで一部市町村等と相談をいたしまして、市町村のほうで補助金を出して負担していただくというようなことも、現に、ちょうど人間の医者と同じようなことでやっておられる地帯もございますけれども、そういうことはなかなか全般的にはいかないわけでございます。そういうことで、われわれは共済を含めまして、獣医師手当というものを今度の予算で大幅に増額をいたしたわけであります。国と県と合わせて約六億ということで計上をしております。そのほかに、われわれは自衛防疫という体制を固めまして、その中で獣医師というものが組織的に広く活動できる分野をつくっていく、あるいは家畜共済の単価を大幅に引き上げていく、こういうようなことで、組織と申しますか、獣医師さんを個々の医師ということより、そういう大きな組織の中にとらまえていって、そこの中で待遇を高めていくというやり方が一番組織的なやり方になりはしないかということで、その方策を進めているわけでございます。
  68. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いまのに関連しまして、大学出の初任給というのが私の調査では四万か五万円、実に低賃金で働いているというようなかっこうである。これらもほかのものに比べまして、やはり卒業生が多いというか、結局大学の質の問題ではないか、こういうふうにも思うのですが、こういったことで、国民のいわゆる食料、動物性たん白質を与えている、そういう基本的な仕事をしている獣医師の待遇としては、実にこれは気の毒だと私は思うのですね。これでは世界に肩を並べるなんということはとても言えやしません。そういったことから、こういったこともほんとうにあたたかい検討をしてあげなければいかぬ、こういうふうに思うのですが、こういったことについては局長はどういうふうにお考えか、これもひとつあわせて御見解をこの機会に承っておきたいと思うのです。
  69. 増田久

    ○増田(久)政府委員 確かにおっしゃるとおりでございますけれども、これはやはり大学制度と非常に関連があろうかと思っております。人間の医者のほうでございますと六年制ということでございますから、そういうことを前提としての給与体系というものは考えられている。それに対して獣医師のほうは、一般大学並みの四年制である、こういうことで、特別の待遇というものを現実問題としてなかなかしにくい、そういう問題でございますので、やはりこの問題は大学の六年制問題と含めて解決し、そこに獣医師としての給与体系というものを別途つくるようなことを検討すべきであるというふうに考えておるわけでございます。
  70. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 十分ひとつ方策を立てていただきたいと思うのです。  そこで、私、一、二の例をあげて、そういう獣医師がたくさんおるという中で、今度は無資格でやっている人もまたおるということを指摘せざるを得ません。私はあえて名前をあげますが、一つの例としては、横浜市中区閘門町二丁目百九十六、ハード・フリードマンという、これは米国人ですけれども、たしかミシガン大学を出られて、米国の資格は持っておられるというように承っております。この人が無資格で動物病院を堂々と開いて看板を出している。しかも開設届けも出てない、免許も有してない。日本で開業するならば、当然日本の免許が必要であるわけですね。それが免許がなくて開業しているということは違反だと思うのですが、これについては当局も十分承知だと思うのですが、どういうふうにこれは対処しておられますか。
  71. 増田久

    ○増田(久)政府委員 私のほうにフリードマン氏を呼び出しまして、厳重に、これは獣医師法違反である、したがって直ちに業務をやめるようにという強い警告をいたしまして、私の聞いておりますところでは、獣医行為はやめたというふうに聞いておる次第でございます。
  72. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 私、最近聞いたのですけれども、まだ看板を出して営業をやっているということでございますので、ここでやめたとかやっているとか論議したってどうしようもないのですが、再度徹底的にひとつ確認をしてもらいたいと思うのです。その点はどうでしょうか。
  73. 増田久

    ○増田(久)政府委員 早急に確認いたしたいと思います。
  74. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、いまの問題で、日本で開業するからには、日本語がわからなければならぬというのは当然ですね。日本語がわからぬ、にもかかわらず、実は四十七年の三月七日に獣医師の国家試験を麻布のほうで受けたわけです。その受験中に、問題の内容がわからぬということだったと思うのですが、東大の某教授が立ち会って、翻訳していろいろとわからぬところを教えたということで、これにもいろいろ、当時受験をした人たちが批判をしているわけですけれども、それはさておき、結果的には合格しなかったということで一応おさまったわけですけれども、いずれにしても、こういった無免許で、違反をおかして開業している獣医師が受けるということ自体も問題だが、これ自体が違法である。そしてこういったものを取り締まらないでほっておくという農林省当局の姿勢が問題である。善良な獣医師から批判が出ておるわけですね。そういう人に試験を受けさせた。もちろん獣医師を開業したいということで受けさせたというふうに言われるかもしれませんが、もともともう二年前から開業していて、そして違反の者が受けたということになっているわけですが、その点はどういうふうに当局は、もう過去のことでありますけれども、今後もあることでございますので、見解を持っておられるか、ひとつ局長から御答弁いただきたいと思うのです。
  75. 増田久

    ○増田(久)政府委員 獣医師法違反の者を、免許試験を受けさせるあるいは免許を与えるということについては、これは厳重に、行なうべきではないということは、私は当然であろうと思っております。ただ、フリードマン氏の場合の例で、若干私の知っておりますことを申し上げますと、先生のおっしゃいましたとおり、フリードマン氏はミンガンの州大学を卒業され、すでにドクターのあれを持っておられるわけでございますし、現にアメリカで獣医師の登録を受けた方でございます。ただ、米軍に入っておって、日本が気に入って、ぜひ日本で開業したい、こういうことであるわけでございますが、獣医師法の第十二条で、外国の大学を出た者でも、日本と同等の資格のある者は免許試験を受けることができるという規定がございます。その規定によって、彼は開業してはならないけれども、日本で開業したければ、すみやかに日本で開業試験を受けるべきだという、私のほうで指導をいたしたわけでございます。その結果、試験を受けたわけでございます。  ただ、日本人もずいぶんこのごろ海外に出ておりますが、その際に、国際的にどうしてもことばの問題がある。そういったときに、たとえば問題の意味がよくわからないというときには日本の方も向こうでよく教えてもらう。今度の場合も、試験に立ち会った方が問題の意味を教えたという程度の話で、特に便宜を与えたものではないというふうに私は聞いておるわけでございまして、それは国際的に、獣医の世界でお互いにその程度の便宜は認め合うというのが、一つの国際的なしきたりと申しますか、そういうふうになっているわけでございます。
  76. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 局長はそういうふうにおっしゃるけれども、この問題はこれ以上いろいろ論議したってどうしようもないことで、これにはいろいろな背景その他ここで一々申し上げることもどうかと思うこともございますので、この程度にとどめますけれども、いずれにしても、善良な獣医師は、不明朗であるということで、獣医師としては相当批判をしているわけですから、こういったことを、ひとつ不信を買わないように十分注意してもらいたい。  もう一点あるのです。これはたくさんの中のもう一点ですけれども、四十七年の一月に、これもまた当局も御存じだと思いますが、田無市の佐藤清という方でありますけれども、無資格で、獣医師法違反容疑で警視庁に告発されたわけですね。警視庁の保安二課は、獣医師法第十七条によりまして、農林省が定めてある獣医師でなければ家畜の診療を業としてはならぬという趣旨の条項があるものですから、畜産局に対して問い合わせがあった。そこで、当時の畜産当局は、あえてもう名前を言いませんけれども、犬の断耳、断尾、これらは高度の技術でないのでしろうとでもやってよい、こういうような意味の回答を例を引いて言われたということで、これもいろいろニュアンスがあるわけですが、結局、警視庁の保安二課は、農林省の意見を中心に、この問題が、結局、告発されたけれども、まだはっきりしないまま、何かしらぬあいまいもことしているというような状況になりつつあるということで、これまた獣医師仲間でいろいろと論議されておるところであります。もちろん法の定めによってこれはやるべきでありまして、法によれば観血治療はしろうとがやってはいかぬ、こういうふうにはっきりなっているわけですね。そういったことがあるにもかかわらず、こういったことがどうもすっきりしないということで、これまたさっきの例と同じように、不明朗な問題になって不信を買っているわけですが、これも当局は十分承知だと思うのですけれども、農林省指導がもっと明確でなくてはいけないということがいわれています。これに対してはどういうふうに見解をお持ちであるか、これまたひとつ局長から、この事件経緯と、それからまた、考え方について明らかにしてもらいたい、かように思います。
  77. 増田久

    ○増田(久)政府委員 断耳、断尾ということは、これは明らかに外科手術でございますから、無資格の者がやれば、これは獣医師法違反でございます。決して農林省の態度は不明朗ではないわけでございまして、この際、それは明らかに獣医師法違反であるという態度を明らかにいたしたいと思います。
  78. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いま局長から確信ある御答弁があったが、当然だと思うのです。ところが、そのときのいわゆる回答のしかた、また状況等については、これは証人もたくさんおるわけですが、これはこれ以上追及してどうというわけではありませんけれども、獣医師がいま都内にも六百軒ある、しかも、獣医師の生活がたいへんきびしいという中に、こういったいわゆる許可を持たずやる、無資格で開業しているというのがある、こういったことについては、厳重に取り締まって調査しなければならぬと思いますけれども、これはもう私がよく承知している事件について言ったのですが、こういったものに対して当局は、他にもいろいろと調査の結果、全国的にはかなりあると思うのですが、どういうふうに掌握しておられるか、この事件一件だけで、あとは全然ないというように掌握しておられるか、この点あわせてお伺いしておきます。
  79. 増田久

    ○増田(久)政府委員 たとえばおととしでしたか、さきおととしでしたか、問題になりました東京畜犬という犬屋さんが注射をしたというようなことで、非常に社会面をわかした問題がございましたけれども、そういう問題は最近起きておりませんので、若干まだ私こまかい点まで承知しておりませんのでよくわかりませんけれども、そう獣医師法違反という大きな問題は起きていないというように承知いたしております。
  80. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、提案を兼ねて、当局の御見解を承りたいと思うのですが、以上、いろいろと例を取って質問し、獣医師の問題についてやってまいりましたが、これらを総合的に考えてまいりますと、これは獣医師関係からも、また各団体からもいろいろと意見が出ておるのですけれども、今後の獣医師のあり方としては、一つの案として、小動物専門医、それから動物専門医、もう一つは公衆衛生専門医、こういった三つに分けて国家試験をもう一度やり直す、そして、いわゆるきちっとした資格を与えろというような意見があるわけでございますが、私も、昨年五月二十一日、当委員会で、獣医師大学の四年制を六年制にすることについて強力に取り組んで、提案したときも申し上げたわけですけれども、いわゆる大学の六年制延長とからんで、こういったやり方はどうか、そうしてもう一回国家試験によってやり直す、こういうようなことは当局としてはお考えであるか、また、これに対してはどういうような考えをお持ちであるか、こういったことをまじめな獣医師からいろいろ意見を聞くわけでありますけれども、御意解を承りたい、かように思います。
  81. 増田久

    ○増田(久)政府委員 現に、開業しておられる方につきまして、ここでそういうふうに専門別に再度試験をすることにつきましては、いささか問題があるというふうに、私、率直に思うわけでございますが、少なくともこれだけのいろいろ学問、獣医師学のほうも進んでまいり、専門化が当然進まなければならない段階に来ておるわけでございますので、今後の問題として、特に六年制の問題と関連いたしまして、専門化を積極的に進めるということはぜひやらなければならないことである、かように考えておるわけでございます。
  82. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 開業試験をやるべきであるという意見もまたあるわけですが、先ほども例をあげましたような問題もありますし、全国的にまたいろいろ類似の問題もあろうかと思いますので、開業試験をもう一回やったらどうか。米国では開業試験をやって、実際に開業さしているという制度をとっているわけです。これについては、当局はどういうふうにお考えであるか。先ほどのいろいろな例等もございますし、やはり厳格にやるという意味から、一つの方法であると思うのですけれども、御見解をお聞きしておきたい。
  83. 増田久

    ○増田(久)政府委員 現在の獣医師法のたてまえでは、診療の免許と申しましすか、そういうことで、特に開業のための許可制度になっていないわけでございます。したがって、先生の御指摘のとおり、開業医についてもう一度考え直してみてはどうかという、こういう御指摘であろうかと思うわけでございますが、こういう問題のあり方につきましては、獣医師の審査委員がございますので、そういう方の意見を十分お聞きして、今後のあり方の問題として前向きに検討いたしたいと思います。
  84. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ぜひ前向きで検討していただきたいと思います。  次に、犬、ネコ等に使うところのワクチンの問題でありますけれども、生きているところのウィルスを使うので、鶏痘その他のワクチンは、全部本年の七月一日から要指示薬に指定されたわけでございます。したがって、獣医師等を使わないとワクチンの注射ができない。現在は自由にワクチンを手に入れることはできるけれども、七月一日以降はそういうように規制される。まず薬を買うにしても、七月一日からはこういった獣医師の指示書というものがなければ買えないことになるわけです。これも名古屋の一つの製薬会社の販売店の例でありますけれども、あえてここで名前を申しませんが、その会社ではワクチンを売るために、獣医師の免許を持った人を会社に雇う、そしてその名において実際に指示書を発行して薬を売るというようなことで、これもやりようによっては抜け道はどんなことでもできるわけです。従来から見れば一歩前進ということには変わりはございませんけれども、製薬販売会社が獣医師の免許を借りてやる。実際は、獣医師が診断をして、これはワクチンが必要である。そして指示書を出したものについて店が薬を売って、注射を打つ。注射を打つのは、個人でも経験があれば打っているということにもなると思いますが、その点が実に心配なんですよ。その点についてはどういうふうに取り締まり、また指導をされるのか、またどういうふうに業界にその見解を述べられるのか、ひとつこの機会に明らかにしていただきたい、かように思います。
  85. 増田久

    ○増田(久)政府委員 ワクチンにつきましては、指示薬になったわけでございますが、率直に申し上げますと、人間の薬につきましても、全く同じような問題が存在しているだろうと思うわけでございます。要は、扱う者、医者、薬屋のモラルの問題だというように考えざるを得ないわけでございますが、なかなかそう言ってもおられませんので、私のほうは薬屋さんに対しまして、そういう脱法行為はまかりならぬ、厳重に法に従ってやるようにということにつきまして、強く指導いたしたい、かように考えておるわけでございます。
  86. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 薬屋さんに対して脱法行為はまかりならぬというような指導をするということですが、ほかにもいろいろ例があるわけですけれども、局長、そんな程度でこの脱法行為を取り締まることができますか、確信がありますか。
  87. 増田久

    ○増田(久)政府委員 先生御承知のとおりに、全国に約三千人の薬事監視員というものが配置されておるわけでございますので、この三千人の職員を動員いたしまして、そういうことのないように厳重に監視いたしたいと思っております。
  88. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 答弁ではそういうことでしょうが、なかなかほかの問題でも、農薬にしてもたいへんなことですから、せっかくこういう規制をしたからには、その目的が達せられて、獣医師の立場を守れるように、またこれによって悪用あるいは変な事件が起きないように十分ひとつ注意をしてもらうように強く要求をしておきます。  そこで、あと一、二点畜産問題でお尋ねしますが、五月三十一日から六月二日まで当委員会で熊本県、大分県の農業水産問題等の調査に行ってまいりまして、その折、阿蘇の牧野並びにいま政府でいろいろ調査が進められておるところの阿蘇・久住・飯田高原の高原開発の問題と、熊本、大分にまたがる地域調査をして、現地でもいろいろ陳情を受けてきました。一口に言って、当時一緒に同行しました北海道からおいでになった委員からも、これはひどい、北海道の草と全然伸びが違う、こんな針金みたいな草でよう農政局あるいは地元が説明するような牛が飼えるなというようなことを聞いて、私も、昨年冷害で北海道に行った経験がございますので、いろいろ思い起こし、なるほどこれは北海道から見ると、一番草でもずいぶん伸びが悪い。これも、去年の五月でしたか、暖地牧草といわゆる寒地牧草、それから牧草研究は現在どうなっているかということを追及し、また検討してきたということで回答をいただいたわけです。現在の日本の牧草はアメリカからほとんど来ていますし、同じ高冷地でも、第二の北海道といわれる阿蘇は北海道とはまた寒さがずいぶん違うわけで、寒地と暖地とあるような、実に北海道に見られないような高冷地ということになっております。したがって、北海道やアメリカの牧草そのままでもなかなか適さない。いまおそらく阿蘇地方、大分地方に適する牧草の研究をしているんじゃないかと思いますけれども、一番草はかなり伸びがあって収量があるけれども、二番、三番がものすごく落ちるということで、昨年も指摘して、研究をするということでございましたが、その結果はどうなっているか。  そこで、私の承知している範囲では、乳牛一頭で成牛の場合には年間草の量が二万キロすなわち二十トンあればまかなえる。そこで、反当収量が五千キロあればちょうど二万キロになりますには四反でまかなえる。これはいいほうですね。土地の肥えたところでは一反二万キロくらいとれるところもあるというふうにいわれている。しかし、私が今度見たところでは、北海道の三分の一ぐらいしか収量がないんじゃないか、かように見えます。特に夏枯れがあるし、秋に枯れるのがなかなか早い。そこで、阿蘇とか久住、飯田、こういった高冷地に対する牧草が問題になる。せっかく大規模草地改良をやりましても、地元の負担金をたくさん入れても、結局、草の伸びが悪いと、そのためになかなか返済ができない。負担金は返せない。そして、農政を推進する中でやっと畜産にウエートを置いていこうとする農家は、今度そういった草の悩みとの戦いになってくるということでたいへん心配されます。ちなみに赤牛とか肉牛等は、乳牛に比べると〇・七掛けであるから、十五ないし十六トンくらいも草があれば一年間養えるということになりますけれども、いずれにしても、阿蘇、久住、大分県関係の草地を見ますと、現在の草では北海道の約三分の一くらいの収量しかないというように見受けられる。これはたいへんな問題でありますけれども、これに対して当局は昨年来どういう手を打ってこられたか。またこれに対しては研究をどのようにしておられるか。またそれに対する見解、また阿蘇の草の収量は、いいところでなくて、平均どのくらいの収量として見ておられるか。それを簡潔にひとつ御答弁いただきたい、かように思います。
  89. 増田久

    ○増田(久)政府委員 阿蘇を平均的に見ますと、大体三トン程度が現状ではないかと思っております。いまいろいろ先生から言われたわけですが、私は阿蘇の収量の低いことには、三つ大きな理由があろうかと考えております。  一つは、火山灰土壌で、長い間収奪を続けておりますから、地力がきわめてやせているということでございます。  それから第二点は、阿蘇の草地につきましては、そう歴史が古いものでなく、最近ようやく始めたものであって、農民の方の技術がまだ低いということがいわれると私は思います。この裏返しではっきりいたしますことは、先生御存じのとおり、たとえば菊池郡の酒水、あそこあたりが平均二十トン前後あるいは二十トン以上とっているという実態を考えましても、地力の問題と技術の問題というものが非常に大きく作用していはしないか。  第三番目に、草種でございます。特に阿蘇は標高が高いところから低いところまである。それを全部北方系のものの牧草を入れていくというところに問題がございまして、当然夏枯れを起こすとかいう問題が出てくるわけでございまして、三百メートル以下のところはたとえばローズグラスとかあるいはバヒアグラスといった暖地型の牧草というものをつくってやっていくということが必要になるんではないか。そういうことで、私のほうはいわゆる適地適産ということでございますので、先生御存じのとおり、熊本に牧場を、暖地型の牧草の原種圃ということで積極的につくっていくということで、いま鋭意努力をいたしておるわけでございますし、それから、いかにしたらあそこの阿蘇地帯における草の生産力を高めることができるのかという点についても鋭意努力をしている段階でございます。平均的にいえば、いまのところまだ三トンという低い段階にとどまっておるというのが現状でございます。
  90. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 畜産局にもう一点お伺いして畜産関係を終わります。  いまいろいろと答弁をいただきましたけれども、あのままでは十年ぐらいしないと、ほんとうの草地改良の目的とする草の収量ができないのではないか。その間負担金の返還に農家はたいへん困るということになるので、十年間は償還を据え置きにするというふうに思い切ったことをしてやらないと、農家はとてもかわいそうであると思いますが、そういうことに対してひとつ真剣な配慮をしていただきたいと思うのです。その点が一点。  それから、火山灰土であるので、草も成長がおそいというようにも一見受けられますので、石灰をまくなりいろいろなことを研究して教えてやらなければいかぬと思うが、そういった点をひとつ考えてもらいたい。  それから、早急に阿蘇、大分に見分う草の開発ということに、真剣に取り組んでもらっていると思うが、今後取り組んでもらいたい。  もう一点は、これは今後の研究開発として私は最後に申し上げておきますけれども飼料の中で、カナダ等では試験段階とされておりますけれども、プラスチックを小さく切りまして、これを飼料として与える。そのプラスチックに養分を吹きつける。もちろん草の成分とかいろいろなものを吹きつけまして吸収させて与える。牛はもちろん反すう動物でありますから、反すう的にそれから養分だけとって、プラスチックが出てくる。それをまた、ふん尿とプラスチックを洗って何回も使う。公害対策上もこれはなかなか効率的であるということで、現にカナダではかなり試験的に成果を得ているということで、畜産界でもニュースとしていろいろ話題になっておるわけです。当局もこのことは十分いろいろ知っておられるかもしれませんが、実はこの点についてカナダの試験結果等を問い合わせて、日本においてもこういったことを今後開発することも必要じゃないかというようにも思うのですが、その点もあわせて御回答いただいて、畜産関係質問を終わりたい、かように思います。
  91. 増田久

    ○増田(久)政府委員 先生の御指摘もございますので、私はさっそく大分県あるいは熊本県と相談いたしまして、草生の実態経営実態というものにつきまして調査をいたしたいと思います。その結果としてそういう融資なり何かの助成の手段というものを新しく考えなければいけないならば、そういうものについては前向きで検討させていただきたいと思います。  それから第二に、そういう実態調査の中でどういう技術指導をすればよろしいのかということについても、あらためてこの際施肥のしかたなりその他の技術について指導するということをいたしたいと思っております。  それから、プラスチックの問題につきましては、これは非常におもしろいと言っては失礼でございますけれども、非常に参考になるお話でございますので、これは技術会議と相談して検討したいと思っております。
  92. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いま局長から答弁ありましたように、ぜひひとついまの四点についてはそのように取り計らっていただきたい。プラスチックの問題もひとつ技術会議と相談していただいて、ぜひ研究して畜産農家に朗報を与えていただきたいというふうにお願いしたい、かように思います。  いずれにしても、生産調整によって大きく総合農政が推進している中で畜産に大きなウエートをかけておりますが、ややもすると農政が米に偏重しておりまして、果樹はある程度自由化の問題でばっとクローズアップしておりますけれども、第二番目の柱である畜産が何か沈んでおる。聞くところによると、今度畜産局長も栄転するという話がちらほら新聞に出ておりまして腰が落ちつかぬのじゃないかと思いますが、しっかりひとつ指導をし、また手を打っていただいて、農林当局の大きな米推進に伴う畜産行政の推進にあたって、あたたかい政治の手、行政の手を伸べていただきたい、かように実は思っておるわけですが、その点、申し上げて畜産問題を終わります。  最後に、若干時間をいただきまして、通告しておりました漁業問題についてはしょって急いで質問をいたしますので、当局から御回答をいただきたいと思います。  これは五月三十一日から六月二日に至る当委員会調査で熊本県に参りました際に、県庁の会議室で大挙して陳情があったわけです。長崎県漁船の違法操業の取り締まりについてということで陳情を受けたわけであります。内容は要点だけちょっと申し上げますが、去る五月二十六日午前九時十五分ごろ、熊本県漁業取り締まり船はやて号、十五・四六トンは、天草郡大矢野町湯島灯台の西南西三マイルの熊本県内漁業区域で操業中の長崎県所属の五智網漁船を発見したので、同船に接近し、接舷の上、はやて船長橋口敏夫が同漁船幸利丸船長隈部弘に同海域においての操業上の注意を与えるべく幸利丸に乗り移り、はやては幸利丸から離舷させた。五智網漁業の操業を終えた幸利丸船長は、貴殿にとやかく言われるいわれはない等の暴言を吐き、はやての橋口船長を幸利丸に監禁状態のまま長崎県の根拠港布津港に拉致いたしまして、七時間も閉じ込めたという事件でございます。  こういったことで、熊本県の漁民は数年来長崎県のわずか十五隻の五智網漁船に生活の根拠を脅かされて、はえなわ、一本釣り、その他の漁場が日夜戦々恐々として操業しているのが実情であります。また一方、長崎県にいわせますと、熊本県側は五島列島に進出してきて云々ということをいわれておりますが、この問題はずいぶん長い間熊本県、長崎県の漁業紛争の論議となっておりまして、この問題を契機に爆発しそうな状態で、一触即発といいますか、血の雨の降るような状態になっております。もちろん県の漁業調整委員会等ありますが、その漁業調整委員会がどうしようもないときには国のほうで調整することになっております。国のほうで徹底的に御調整に取り組んでいただきたい。緊急を要しますので、この席をかりてこの点をお尋ねをし、見解を承りたいわけです。きょうは水産庁長官をおよびしたのですけれども、きょうは参議院のほうに行ってあちらの審議に出ておられる関係で、部長出席しておりますので、昨日とくと水産庁長官と打ち合わせの上で責任のある回答を部長からするようにお願いしておりますが、御答弁をいただきたい。
  93. 田中稔

    田中説明員 有明海域の長崎県知事の許可によります五智網漁業が熊本県の沖合いに入るということで、常に熊本県のほうから不満が出ておるということがございます。そうしてまた一方におきましては、ただいま先生からお話しがございましたように、この熊本県の取り締まり船の船長が接舷をして事情説明を聞きに入ったところが、これを連れてそのまま行ってしまった、そういう事件があったことは聞いております。この事件につきましては、熊本県知事から長崎県知事に対しまして厳重抗議を申し入れまして、これに対しまして長崎県は、六月六日に水産部長を熊本県に派遣をいたしまして、遺憾の意を表明するとともに、有明海、天草灘における調整問題をお互いが相談して早期に解決をしたい、そういう申し入れを行なっておるわけでございます。  水産庁におきましては、この問題につきましてかねてから調整をするということでとり進めておりましたが、これはまた先生があとの問題で御提議があるように聞いておりますが、いわゆる外海における小型漁船、底びき網漁業の調整問題ともからみまして、いささかこの調整が手間どっておるというのが実情でございますが、先ほど申し上げましたようなことで有明海漁業調整事務局が中心になりまして、この六月十四日に両県を呼びまして積極的に調整に入りたい、そういうふうな段取りで進めておるところでございます。
  94. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 それで、今後の対策なり、また地元では、海の県境をはっきりしたらどうかという意見も出ておるわけであります。これは県境をきめることは、どちらの県にしても、魚が県境を越えていった場合には、漁業を即座に中止というわけにもいきませんし、そういったやっかいな問題も起きてくるので一がいにいえませんけれども、いずれにしても、紛争の解決をしなければならない、また安全に操業できるような秩序を確立せなければならないと思うのですが、これらを含めまして、今後の対策としてどういうふうに水産庁はお考えであるか、ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  95. 田中稔

    田中説明員 海におきます漁業調整の問題につきましては、ただいまお話しがございましたように、まず県の地先海面と申しますか、そういうものの区分がはっきりしていないという問題がございます。地方自治法におきましても、都道府県の区域につきましては「従来の区域による」という程度の表現でございますが、ことに海の面につきましては、非常に湾が入り組んでおりますような場合におきまして、どういう線を見通して県境にするかという点は非常に問題のあるところでございます。事実、漁業におきましては、漁業の種類ごとにそれぞれ取り締まりなり管轄をする海面を両県同士で異にしておるような実例もございます。本件の問題が出ております有明につきましては、特に各県がそれぞれの線を引き伸ばしましても、すぐ相手の県のところにぶつかるというようなところでございますし、そうしてまた、必ずしもその両県の中央に線を引くというふうなことにつきましてもいろいろ問題のあるところでございます。したがいまして、私どもといたしましては、できるだけ両県の御意見を聞きながら調整を進めてまいらなければならぬわけでございますが、何といたしましても、漁業の問題につきましては、漁民の納得を得たようなところで取りまとめをいたしませんと、単に水産庁がきめたというふうな線でそれを強行いたしましても、結局のところは、漁民のほうで守っていただけないとまた紛争が発生をするというふうなことがございまして、やはり私どもといたしましては、こういう問題につきましてはしんぼう強く、漁民あるいは県の関係の方々、こういう人たちと話し合いを続けまして、双方の納得のいくようなところで取りまとめをしていきたいというように努力をいたしておるわけでございます。なかなかそう簡単にまいりませんところが私どもの悩みでございますけれども、できるだけ忍耐強く、そういうふうな形で調整をしていきたいというふうに考えているところでございます。
  96. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 両県の意見を聞きながら進める、しんぼう強く話し合って、簡単にまいらぬけれども、忍耐強くやっていくというような答弁がありましたが、県の段階ではそういう情勢でございますので、国のほうでこれの調整に本腰を入れて取り組む、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  97. 田中稔

    田中説明員 私どもといたしましては、現在、出先の有明海漁業調整事務局のほうで取りかかっているわけでございますが、本庁のほうにおきましても、随時これに参加をいたしまして、積極的にそういう話し合いが円滑に進みますように努力をいたしたいつもりでございます。
  98. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 有明海漁業調整事務局とも連絡をとって本庁としても随時積極的に進めていくということでございますが、ぜひそうしてもらいたいし、この問題は血の雨が降って犠牲者が出たのではもうおそいわけでございまして、相当緊迫した空気でありました。委員会の各委員も、これは早くしなければたいへんだなと言っておられましたし、いまの熊本県の沢田知事が、しばらく待ってくれ、国とも相談して何とか調整するということで、地元においてもはやる気持ちを押えておるという緊迫した空気が見られましたが、どうぞひとつ忍耐強くしんぼう強く、たいへん困難な道かと存じますけれども、事件が起きてからではたいへんなことになりますので、積極的な上にも積極的な努力をしていただいて、一日も早く解決をしていただきますように心からお願いする次第でございます。  最後に、この問題にかかわらず、こういった長崎県、熊本県、また佐賀県、福岡県のいわゆる筑後川水系の天領地区をめぐって漁業の問題がずっと紛争を続けておりますが、これは全国各地にありますけれども、こういった問題は秩序ある安全操業ができるよう法によって厳重に取り締まりをしていただきたいと思います。その点の御見解を承って質問を終わりたいと思います。
  99. 田中稔

    田中説明員 有明海につきましては、先般先生の御質問がありましたような天領、直轄海面等の問題もございまして、こういう点の取り締まりにあたりましては、単に地元の県の取り締まり船による取り締まりのみならず、水産庁においても積極的に努双をいたしたいというふうに考えております。
  100. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 では、以上で質問を終わります。
  101. 松野幸泰

    ○松野(幸)委員長代理 午後一時四十分より再開することとし、これにて休憩いたします。    午後一時四分休憩      ————◇—————    午後一時四十八分開議
  102. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。安宅常彦君。
  103. 安宅常彦

    安宅委員 私はきょう林野庁の高級官僚とそれからパルプ業界であるとか、こういうところがあまりに密着し過ぎておって、今度審議会の答申なんか出るようでありますが、そういういろんな要素が日本の林野行政というものをだめにしているのではないかと非常に心配をしている一人なのであります。林野庁に全般的に蔓延しているこういう雰囲気というものはおそろしいものだということは、国民の大多数は知っておるのですよ。不祥事件が連日新聞をにぎわしていることでも非常に国民は啓発されておりますし、特に参議院議員の選挙なんかでは、林野庁長官をした人は必ず高位で当選しますね。あの選挙なんか見ていますと、木材の業者であるとか、それからいろんな連中に対する票の割り当てなど半ば公然としてやっているというふうにいわれています。こういうことからいま新聞をにぎわしているようなことが起きているのだと思うのですが、そういうものは私どもは氷山の一角にすぎないのではないか、こういうことを非常に強く感じているわけです。  私がきょう主として申し上げたいのは、秋田営林局の管内に古口営林署というのがございまして、そこで立木の販売を行なって、これが地元の住民やそういう人々を中心にして非常に疑惑を持たれておったわけです。私はいろいろ資料を集めておりましたが、きのう実際現地に行ってみまして、いろいろ調査をしてまいりました。たいへんなことをやっておるということを印象づけられてきたわけです。  ちょっと長官にお伺いいたしますが、古口営林署で四十六年度において北越製紙株式会社新庄出張所長三浦良夫という人に対して立木の販売を三件に分けて行なっている事実、これは四千三百九十四立方メートルの広葉樹でありますが、この契約ですね。この問題について私が実際に現場に行っていろいろ署長から聞いたりしておるということを、報告は来ていると思いますが、どうですか。
  104. 福田省一

    福田(省)政府委員 御質問の古口営林署の立木処分のことでございますが、私のところに参りました報告によりますと、場所は西山国有林、四十八林班り小班でございまして、昭和四十六年九月十四日に一般競争契約で入札をしたものでございます。契約の年月日は四十六年九月十七日、数量はブナほか九種類、千四百八十七本、千八百一立方メートル、予定価格が二百二十八万円、売り払い価格が二百八十八万円、値開き率が一二六%、買い受け人は北越製紙株式会社林業部奥羽林業事務所新庄出張所長三浦良夫、引き渡し年月日昭和四十六年十月八日、搬出期限昭和四十七年十一月三十日、かような報告になっております。
  105. 安宅常彦

    安宅委員 それで、この一般競争入札でやったといわれておりますが、古口営林署の資格つき一般競争入札の参加者確認簿という帳簿によると、たくさんの——それは四十八林班だけじゃないですよ、もう一カ所あるわけですね。ですが、それはまあいいでしょう。入札に参加したことになっておるのですが、実際入札に参加したのは北越製紙だけじゃないですか。
  106. 福田省一

    福田(省)政府委員 報告によりますと、入札参加者は八名でございましたが、この会社一名のみ入札をしておるものでございます。
  107. 安宅常彦

    安宅委員 こういうところは、だからこれは業者が談合しているということははっきりするでしょう。私どもは、いろいろ調査した結果、パルプ業界なりそういうところの親分衆が、おまえさんはこっちの営林署、おまえさんはあっちの営林署というようなあんばいに、学校の先生を配置転換するみたいに、これはみな割り当てしているのではないですか。そういううわさがもっぱらです。それで、それが競争入札かということになるのですね、たった一人しか出て来ないのだから。あとおりてしまったというのですね。しかも、その予定価格——いま言った四十八林班の場合なんかはほとんど、予定価格との間に八万円足らずの入札価格です。こういうばかげたことをあなたのところの役所というものはやっている。いつか全林野の大会であったと思いますが、太田薫君が出席しまして、総評の議長当時、日本の役所の中で一番悪いことをしておるのは陸運局と林野庁だということを言ったのですよ。そうしたら、さすがにあなたの部下である労働組合員はくさい顔しておりました。みんな拍手をしなかった。やはり、同じ国有林を守るという役所の中におる労働者だって、そういうことを言われるとあまり気持ちのいいものではないのですね。何とかして日本の山を守ろうという意識に燃えてがんばっておるのですね、みんな。ところが、あなた方を含めた——長官はどういう人だか私はよくわかりませんけれども、私よりも顔形もいいし、背もすらっとして、りっぱな人格者だと思いますけれども、あとの連中が、あなたを含めてかよくわかりませんけれども、悪いことばかりしているのではないか、私はそう思うのです。  それでは一つ一つ聞いていきますけれども、そういう入札のしかたがいいか悪いか、ここからひとつ答弁してくださいよ。証拠がないというけれども、談合した形跡は十分だと思いませんか。
  108. 福田省一

    福田(省)政府委員 一般競争入札でございます。指名ではございません。だれでも入れるわけではございますけれども、ただ、実は一昨年ですか、木曽谷の公売の問題がございまして、ここでも談合の疑いがあるのではないかという指摘を受けたわけです。それは一般公開入札でございますから、おまえは入っちゃいかぬという前提はないわけでございます。だれでも一定の条件、つまり年間にある程度の材をこなしておるものとか、そういうものは……(安宅委員「時間が短い、四十分くらいしかないから」と呼ぶ)ただいま申し上げましたように八人でございます。その一名だけということにつきましては、私、率直に申しまして、公売のやり方については、あるいは何かはかから制限が入ったのなら別でございますけれども、どうも、もう少し調査してみたいと思っておりますが、(安宅委員「おかしいと思いませんか」と呼ぶ)やはり八人の中で一人しかいなかったということは、私もやはりおかしいと思います。
  109. 安宅常彦

    安宅委員 ところが、ここで奇怪な事実があるのですが、この入札の説明のときには——図面を、私、持っているのですが、四十八林班の付近のところは——四十八林班とあなたは言ったけれども、四十一林班のところもあるのですよ。その付近は約一千四百メートルの作業道をつくって、そこから架線で運ぶのだ、四十一林班のものは。それから同じく四十八林班のものも既設林道から千四百メートルの作業道をつくって——そこから二千六十メートルくらいの距離になりますが、そこから架線でやるのだ、こういう契約の内容ですね。そういう説明なんですよ。それで契約を結んだはずですよ。ところが急に今年の春になってから、この北越製紙という会社があなたのところの営林署長の許可を得て、約四千九百メートル、幅六メートルの作業道——これはあなたのところの林道を見てきましたけれども、あなたのところもりっぱな林道ですが、それよりりっぱな林道、作業道をつくって五千メートル——いま、これは林野庁では一つの基準があって、五千メートル、幅六メートルの作業道、林道をつくるということは、そういう販売のときに常識としてないそうですね。そういうものをつくっておるのですね。それで四十八林班に近いところまでつくっておるのです。ところが、その四十八林班のちょうど隣あたりに、四十七年度の販売計画に入っているところが二カ所あるのです。そこに林道をつくっちゃったのです。ですから、初め架線でやるというのが契約内容なのに、急遽変更して古口営林署長は、そのでたらめなものを許可してやっておるのですね。そんなやり方、あるでしょうかね。何か非常に災害があったとか、特別な理由があったとか何かだったら契約内容は変更していいと思いますけれども、何らないのに、そういうことを急にやるなんということは例としてあるのですか、許せるのですか。
  110. 福田省一

    福田(省)政府委員 初め売ります場合に、集材機の架線でやるということを契約した。ところが、いまおっしゃいますように、作業道に切りかえた。その点についてこちらのほうから問い合わせましたところ、口頭で了解した、こういう返事ではございますけれども、これは本来はやはり作業道にするならば作業道として評定をしまして——これは何か現地の言い分によりますと、作業道でやったほうが作業費がかかるから、むしろそのほうが向こうのほうに負担をかけるし、こっちには有利だという説明はしておりますけれども、本来の筋道としては集材機でやるべきものが作業道に変わったから、作業道として評定して販売すべきものと思います。
  111. 安宅常彦

    安宅委員 いまの答弁では、高く売れるから業者は損するはずだという説明現地からあったというのですね。私が商売人だったら、あなたも商売人だったら、四千九百メートルの林道、作業道だったら、あなたの役所でつくるとして大体どれくらいかかりますか。少なくとも三、四百万円かかるのじゃないですか。そうすると、契約内容を見ると、架線でやった場合、一千四百メートルの作業道をつくって架線でやるといった場合の差額は、私の計算によると二百万円以上、三百万円近く業者は不利なんですよ。そういうことまでして作業道をつくったということは、四十七年度の先取り、あの防衛庁の四次防の先取りみたいなものだ。先取りがあるからそういうことをやるぞという、何かあるからそういう道路をつくったんじゃないでしょうかね。四十七年度売り渡してもらえるということがあるから、それでなければ業者はつくらないと思うのです。営林署に奉仕するんだったら別です。そんな気のきいた業者がいま日本におるんでしょうか。いないはずです。それが常識じゃないですか。私の言うことは常識じゃないですか、どうですか。
  112. 福田省一

    福田(省)政府委員 御指摘のとおりでございます。
  113. 安宅常彦

    安宅委員 そういうことをやるためにどういうことが行なわれたかということを、私はちょっと説明してみたいと思うのです。長官なんというのはそういう現地のことをあまり知らないかもしれないから。つまり、ことしの四月八日、それをわざわざ訂正して四月十日に、あなたの古口営林署では、その作業道をつくるために土地はただで貸すぞという承認をしているのです。そういう帳薄になっています。北越製紙がその作業道をつくるために許可をする帳薄ですね。いいですか。これは無料承認、言うなれば、作業道をつくるために土地を無料で貸すということ。無料承認薄というものがあって、それには四月八日と一たん書いたのを、四月十日というふうに直してあります。四月十日にそれを承認して、四十七年十一月三十日までその道路をつくっていいんだ、こういうことになっておるのですよ。ところが、実際に道路をつくり始めたのは四月七日であります。七日から道路をつくり始めているのですよ。そして五月十八日に道路工事を終わっている。いいですか。ところが、営林署長は十一日に現地調査というのですか、踏査に行っていますよ。営業課長と二人だけで、担当区のだれも知らない。そして担当区の人に対しては、今後おまえ調査しろ、実査命令を出していますね。それを出したのが、これまた道路工事が終わってから出しています。復命も十八日に、道路を終わった日に復命していますね。なぜ実査をするのかというと、あなたのほうでは支障木もあるし、それから土砂がくずれて国有林の造林地が被害をこうむる。これの補償なり、それから木が何本被害をこうむったかというので、それを計算して業者から取らなければならないでしょう。国庫に納入させなければならない。そういう手続は道路ができてからやっているのですよ。道路ができて何で調査ができますか。そしてその金はまだ国庫に納まっていないのですよ。納まってないうちに工事を始めることは違法じゃないのですか、どうですか。
  114. 福田省一

    福田(省)政府委員 この作業道の御指摘でございますけれども、署長が口頭で許可を与えたのは四十七年四月十日で、署長と営業課長が現地に行ったのは四月十一日、すでに六十メートルくらいできておった。四月七日から始めたと思われるわけでございます。これはまことに遺憾なことでございまして、御指摘のとおりでございます。
  115. 安宅常彦

    安宅委員 国庫にそういう被害の金が納入になってない。まあ担当区は困ったと思うんですが、とにかくこの問題については、道路をつくってから、しようがないからある程度の調査をしていますよ。これだけ損害をこうむったということを報告していますね。それはあなたのほうで数字ははっきりしていると思いますから、時間の関係で言いません。ところが、初めから道路がないところに道路をつくるときは、この路線でつくりなさい、そこには木が何本ありますから、この分はあなたのほうで払ってもらいますよという契約があって、初めて道路の工事にかかるんですから、道路ができてしまってから担当区が行って調べたって、道路に木はないんだから、どういうふうにして調べたんですか。そこらにもあなたのおっしゃったように疑義があるわけですね。わからなくなった部分、担当区の人が調べただけにすぎない被害の分だって、まだ皆さんのほうに納まってない。納まってないのに道路をつくることがいいのか悪いのかと私は聞いておるんです。これは手続上はそうなってないでしょう。復命があって、向こうから金が入って、それで承認して、引き渡しをして、それから道路工事にかかるのが正しいんじゃないですか。どうですか、それは。
  116. 福田省一

    福田(省)政府委員 御指摘のように、道路をつくります場合は、支障木を調査してそれを伐採し、それを販売し、それを片づけてから道路をつくるのが順序でございます。
  117. 安宅常彦

    安宅委員 順序はまるっきり逆だということはお認めになりますか。
  118. 福田省一

    福田(省)政府委員 これは電話等の報告だけでございますけれども、順序は逆でございます。
  119. 安宅常彦

    安宅委員 こういう場合に営林署長というものは気をつけてもらいたいと思うんですよ。その業者に当初計画どおり作業線をちゃんとつくるように説得しなければならない責任を持っておると思うんです。説得するどころか、自分ではまっちゃって、向こうに何もしないで道路をつくらせているでしょう。こういう特定業者林野庁営林署長というものがぴしゃっとくっついていなければ、こういうことはできませんよ。しかも保残帯をまつ二つに通過していますよ。そういう作業道を平気でつくらせているわけですね。こういうことは国有林野の経営基本を忘れた立場じゃないでしょうか。これは明らかに私は国家公務員法違反だと思う。九十六条、百一条に違反していると思う。どう思いますか。
  120. 福田省一

    福田(省)政府委員 御指摘の点につきましては、林野庁としましても、緊急に厳重に調査いたしまして、その事実を確かめたいと思っております。先生ごらんになりましたので、お話を伺ってまことに遺憾な点はございますが、よく検討いたしたいと思っております。
  121. 安宅常彦

    安宅委員 私が営林署長に、保残帯を通っているそうじゃないかと言ったら、通っていませんと言っていましたよ。実際に見てみたら通っているじゃないかと言ったら、それは風倒木でしようがないから通した。うそばっかり言っているんだ、あの署長。そういうものは国家公務員法違反じゃないか。調査なんかしなくたってわかるじゃないか。どうなんです。実際にもう販売のしかたから手続、逆だというたった一つだけで国家公務員法違反になりませんか。どうですか。だれかその係の人はいないんですか。長官ばっかりでは容易じゃないから、詳しい人。そういうことだったら国家公務員法違反じゃないですか。普通は業務上何とかという刑法の分野まで達するんじゃないですか。
  122. 福田省一

    福田(省)政府委員 御指摘の点、十分調査いたしまして、厳正な処置をしてまいりたいと思います。
  123. 安宅常彦

    安宅委員 その調査の結果はいつごろまでに私のところに報告できますか。
  124. 福田省一

    福田(省)政府委員 速急にいたします。
  125. 安宅常彦

    安宅委員 それで、こういうことだと思うんです。営林署だっていろいろ考えてみますとおかしなことを言うもんで、署長さんという人は、私は会ってきたんですが、こういう作業道ができたら今度山の開発がうまくできるし、それで高く立木が売れるから、わが営林署は今後も黒字経営になるでしょうし、これまでも万遺憾なきを期したために黒字経営です。——つまり木を売ったり買ったり、黒字か赤字かということしかあの署長は頭にないのです。山を緑にするとかそういう指導方針ではなくて、赤字を出してもきちっとしてなくても何もかまわない、業者にまかせてもいいのだよ、こういう指導でもしておるのですか。そういう頭の人です。  だから、もう一つ聞きたいのは、調査してみますと、売り払い価格は立方メートル当たり二千円ですよ、計算してみたら。それで二百一立方メートルですから四十万二千円。かりにこういうように計算していきますと、道路のはたを切ったのだから、諸経費はかからないから、ほんとうはもっと高く売れるのじゃないか、こういうように私は考えるのです。そうしたならば、一立方メートル当たり三千円というふうに仮定してみてもここで二十万の違いがあります。もっと高く売れた、私らそういう計算ができると思う。そのほかに被害は大体どのぐらいだと思いますか。あなた、現地に聞かなかったらわからないというかもしれませんけれども、私どもは、これは数十万円の被害をこうむっていると思いますよ。担当区の人の調査したものだけはあなたのほうへ数字が届いていると思うのですが、これはその被害、国庫に納めなければならないものだけで幾らになるか。そうして実際、道路を切ってからですからわからないけれども、道路を切らない前から考えると、数十万の損害をあなた方は受ける。高く売れるものを非常に安く売って、そのほかに被害をこうむって、泣きつらにハチじゃないですか、私はそう思いますが、どう思いますか。
  126. 福田省一

    福田(省)政府委員 支障木の数量は先ほどお話ししました二百七十八本、二百三立方メートル、これはまだ処分しておりません。  それから、造林地を切ってそこに道をつくったということになりますと、御指摘のように、それは補償しなければならぬ問題が出てまいります。その問題につきましても、先ほどお話ししました厳重調査をいたしまして、補償すべきものは補償させなければならぬ、かように思っております。
  127. 安宅常彦

    安宅委員 だから、つまりそういう商売があるでしょうかね、損するか得するかわからないで売っ払っておいて、わが営林署は黒字になるはずでありますなんて。これを何ぼだか計算しないで——私がしゃべったために少しこのマイクが古くなったかもしれない、そういうこともみんな計算して、何でも原価償却計算をきちっとして売るのがあなたのほうの立場じゃないですか。査定もしてないのです。何ぼになるかわからないから、営林局と協議中だそうですよ。それから支障木のほうは何かいま手続中だそうですね。ブナが二百立方メートル、それから杉が十八年ものが相当あります。カラマツは十五年ものが相当あります。こういうものは手続中だというのです。とにかくこういうものがまだはっきりもしないうちに道路をつくったのは悪い。それさえもおかしいのに、黒字になるか赤字になるかわけがわからないそういう売り方をしておるのですよ、あなたのほうの下部組織は。それで国有林が赤字になったから労働者を首切るなんて、そこに働いている労働者はどういう気持ちになりますか、考えたことがあるでしょうか。大臣がいないから政務次官の伊藤さん、こういうことを言われたら、そこに働いている労働者は、とんでもない、林野庁というのは運営のしかたで幾らでも黒字になる、こういうばかがいるから赤字になるのは当然じゃないかという気持ちを持つのはあたりまえだと思いますが、あなたはどう思いますか。
  128. 伊藤宗一郎

    ○伊藤(宗)政府委員 今後国有林経営にあたって、いまばく大に赤字をかかえておりますけれども、そればかりに目を向けないで、先ほど安宅先生からも御指摘のとおり、またいま世界的な世論でもございます自然を守るという方向国有林野の経営の姿勢を変えようと目下努力中でもございます。したがいまして、そのことによって国有林野に働いておられる職員の方々を端的に首を切るなどということは毛頭考えておりません。ただ、赤字をかかえておりますし、これを合理化しなくちゃいけないということは国民に対してのわれわれの義務でもあろうかと思いますので、そういう面での合理化への努力は続けますけれども、それがストレートに職員の方々の首を切るということにはつながらないわけでございまして、御指摘の点を十分に勘案をいたしまして、国有林の健全な経営をはかってまいりたいと思っております。
  129. 安宅常彦

    安宅委員 長官に伺いますが、あなたのところにこういう報告が来てませんか。道路をつくったあと調査したのですから、ここに、私、写真を持ってきているのです。長官、ぜひ見てもらいたいと思うのですが、道路をつくる過程で支障木がたくさん切り倒されているのですよ。いまどこにもない。ブナ材がごろごろしています。太いやつ、これを見てくださいよ。全部これです。支障木だって切ったやつが来ているからごらんなさい。新しく作業道がつくられた地点から一・一キロの地点にあったのです。いまはないのです。どこかに売っているのですよ。北越という会社、彼らがすでに売っ払っているところもぼくは知っているのです。きょうは言えません。それで林野庁と昔仲よく縁故のあった地元の業者が、おれのところに売らないであそこの業者に売ったようだというので、こういう情報が入ってきたのです。いいですか。処分しているのですよ。どこの業者に処分したかまで知っているのですが、そういう報告は来ていませんか。
  130. 福田省一

    福田(省)政府委員 まだ搬出していないと言っておりますけれども、写真を見ますと、現に切ったものがありますし、先ほどお話ししましたように、早急に厳重調査いたしまして、適正な処置をとってまいりたいと思います。
  131. 安宅常彦

    安宅委員 それで、私らこういうことを考えるのです。ブナ材、ブナ材とあっさり言うけれども、このようなブナ材を製品として売ったほうがかえってもうかる。あなたのほうからいえば、赤字だ、赤字だとわあわあ大騒ぎしているくせに、そういうものをきちっと分類して地元の業者なんかに売ったほうがほんとうはもうかるのに、なぜそれをこの北越製紙というパルプ業者にあなたのほうがはいつくばって十ぱ一からげに売らなければならないのか、私は非常に疑問を持っているのですよ。そうして現場の労働者は、われわれにこういうことをさせたらもっと林野庁のためになる、直営直用でやればもっとうまくいくのに、あっちのカラマツは倒され、こっちの杉は倒され、せっかくいいところはぶん投げられて、損害も賠償しないで、支障木はごまかして売っ払って、そうして今度は、あとで言いますけれども、どんどん運搬していますね。今度販売を受けたところは切って運搬すると言っていますよ。そういう木の中だって、パルプ業者に一山、山を見て、ほい見たみたいにして、十ぱ一からげで売る、そういうようなやり方よりも高く売れるやり方があるはずだということを、現地の労働者は言っています。そういうことについて留意すべきではないかと私は思いますが、どう思いますか。
  132. 福田省一

    福田(省)政府委員 私、現地の山を見ておりませんので正確にはわかりませんけれども、写真を拝見しますと、一般用材がとれるものが相当入っております。しかし、評定はパルプに向くものはパルプ材として評定し、用材に向くものは用材として評定しているはずでございます。しかもこれは公売ですから、だれでも買えるわけですから、ただ、先ほど指摘のように、一、二しか札がなかったというまことにふしぎな点、この点も厳重に追及してみたいと思っておりますけれども、御指摘のように、これは公売ですから、だれでも買えるという前提に立っております。評定も確かに用材は用材、パルプ材はパルプ材としているはずだと思うのでございます。
  133. 安宅常彦

    安宅委員 ここの山は天然生のブナ林で、昔の言い方で一本大体三石くらいですかの材積を有するそういう優良材が多いのですよ。だから、北越製紙なんて資金力の多いやつが一人ぽこんと乗り込んで——全部パルプ材なんというのではなくて一般材として活用すべきものがあるのだから、そういうふうにやるのが正しいのじゃないかと私は言っているのです。ところが、私らがいろいろ聞いてみますと、王子製紙だってどこだって大きな製紙工場なんかは、あなたのほうから買っていって、そうしてパルプ材の分はパルプ材として使うけれども、一般用材としているのは転売をしているのですよ。そうしている事実を皆さん知っているのじゃないですか。うわさによれば、王子製紙なんというものは数十億に当たる金額の分を他に一般用材として転売しているそうですよ、自分のほうで使わないで。そういうことをやっているのに、武士の商法だかなんだか知らないけれども、赤字だ赤字だと大騒ぎして労働者の首を切るなんていいながら、そういうやり方をしているのは間違いじゃないかと私は言っているのです。どうですか。
  134. 福田省一

    福田(省)政府委員 一つの林からいろいろな木が出まして、パルプに向くものがあり、あるいは用材なり合板用材とか、いろいろ御指摘のように出るわけでございます。したがいまして、最近では一般競争の場合は、先ほどお話ししましたように、それぞれ評定は適正にしているはずでございますけれども、最近は共同買い受けという制度にしまして、パルプ材はパルプ材、一般用材は一般用材、合板適材は合板適材というふうに振り分けて販売する方法も最近では指導しております。ただ、それでもなお足らぬところにつきましては、地元の事情その他を考慮して、できるならば素材販売ということも考慮していかなければならぬ、こう思っているわけでございます。
  135. 安宅常彦

    安宅委員 私がいま非常にこまいことを言っているようにあなたは思っているかもしらぬけれども、これは林野行政の根本の問題で、赤字か黒字かという問題だけで頭が一ぱいになって、人員整理しなければならない、あるいは今度は、パルプ業者の協会や弘済会に木材をやったりなど、すべったのころんだのということをいう前に、ほんとうに自分の中心部隊である、中核部隊である、軍隊でいえば近衛師団であるあなた方の職員が、英知をしぼって、創造力で事業ができるような方向に持っていくことが正しい。そうでなければ、このように業者と密着したり何かするために非常にひどいやり方をやっているところが全国各地に出ているのではないかということを私は憂えているのでありますが、そういうことについてどっちが正しいかということは、あなた、ここではっきり言えるでしょうが。どんなものでしょう。事情事情によりますなんてことしか言えませんか。どうですか、長官
  136. 福田省一

    福田(省)政府委員 現在は、特別会計は確かに赤字でございます。しかし、今回、山の経営につきましては、従来の方針を変えまして、近く基本計画を基本法に基づきまして閣議決定していただく予定にしております。やはり赤字、黒字ということは結果の問題でございまして、どこまでも国民要請にこたえて公益的な面に山の経営の重点を置いていくという方針にしているわけでございます。こまかいことは省略をいたします。  そこで、御指摘の販売の形態とかにつきましても、ただいま合理化の重点は販売の形態その他いろいろございますが、特に御指摘のように販売のほうでございます。林野庁としても十分に今後どうするかということにつきましては検討しておりますし、なおまた林政審議会に国有林部会を置きまして、こちらのほうでも昨年来検討いただいておるところでございますが、四十八年度から実施に移せるように、早急にこの結論をいただいて事務局でも改善案をつくりたい、かように思っているわけでございます。
  137. 安宅常彦

    安宅委員 さっき言ったように、自分たちが植林をしたものを、今度業者が土砂をがちゃがちゃとくずしてきて、その損害が何ぼだかわからなやままに道路をつくらせて、それで販売したものを車で運ぶなんてことを見せつけられたら、四十一年でしたか、あなたのほうで全林野労働組合と——直営直用基本にしていくということを信じて一生懸命働いてきた労働者というのは一体どういう気持ちになるのか。これははっきり言って、赤字、黒字ということは結果論であるから、経営の方針を変えるつもりだと言ったけれども、直営直用基本にしたそういう経営方針でいくのが正しいのじゃないか、私はそういう質問をしているのですけれども、その点はどうなんですか。
  138. 福田省一

    福田(省)政府委員 直営直用におきましても、しばしば会計検査なりあるいは内部検査でいろいろ指摘される点もございます。ただいま請負の問題ではございますけれども、請負につきましては特に最近いろいろ指摘を受けております。そこで、これは買い受け人の事実を調査いたしまして、そういう事実があるならばこれは厳正な処分にしていかなければならぬし、損害を受けたものは賠償してもらわなければならぬと思っております。  なお、指導監督で確かに欠ける面があると思いますので、この点につきましても、調査をした結果について厳正な処置をしていきたいと思っております。
  139. 安宅常彦

    安宅委員 なかなかはっきり言わないから、時間もありませんので、二つ三つこういうことをあなたに言っておきましょう。  この業者は、六メートル道路を十トン車で運ぶと言っております、十も車がついているそうですが、十トン車というのか十輪車というのか、よくわからないけれども。そういうことはあなたのほうの林野庁の中で基準というものはないのだそうじゃないですか、私はしろうとでよくわかりませんが。どうですか、十トン車で運ぶなんということはないという話ですが。
  140. 福田省一

    福田(省)政府委員 御指摘になりましたそこの作業道というのは、林道でなく作業道……
  141. 安宅常彦

    安宅委員 あなたのところの林道を使うのですよ。その林道を使って下まで運ぶのですよ。
  142. 福田省一

    福田(省)政府委員 GMCとかいうのをごらんになったと思いますけれども、報告によりますと、GMCという大きなトラックと聞いております。そこで、普通の林道と違って、簡単な作業道でございまして、本来ならば、作業道をつくらせますと、国の所属に帰すべきものであります。その点につきましても十分調査をいたしまして、御指摘の点につきましては、速急にまた結果をもって先生に御連絡申し上げたいと思います。
  143. 安宅常彦

    安宅委員 そういうもので運んではいかぬということになっているということですが、どうなんですか。
  144. 福田省一

    福田(省)政府委員 そういう大きな、GMCと聞きましたのですけれども、もしそれが動いたために現地の切ったあとの造林その他に支障を来たす、つまり今後の森林の造成に支障を来たすようなものであれば、これは好ましくないものでございます。この点につきましても十分調査してみたいと思います。
  145. 安宅常彦

    安宅委員 だんだんと終わりに近いのですが、こういうやり方をしたということは、国有林野の産物売払規程というものがありますね、それからその上に会計法というのか、その根拠法律はよくわかりませんが、そういう法律にも反し、皆さんの部内のそういう規内にも反し、たいへん悪いやり方だということについてはお認めになっていただけますか、いままでの結果だけで。
  146. 福田省一

    福田(省)政府委員 御指摘のとおりでございます。十分に調査しまして、相手方が不当な場合にはこれは損害賠償その他の処置をいたしますし、指導監督上の問題についても十分厳正に処置して、行政処分その他、必要があれば検討してまいりたい、こう思っております。
  147. 安宅常彦

    安宅委員 いや、長官、そういうのは型どおりの答弁というのですよ。調査をしなくても、私が質問した中で、順序が逆になった手続でやってしまったということに対しては、あなたは認めているでしょう。国庫にもまだ入っていない。それでもう道路はできておる。契約の説明のときとはまるきり違う。そういうやり方をやったことは違反じゃないかと聞いているのですよ。それをあなたは認めているのですからね。
  148. 福田省一

    福田(省)政府委員 順序は逆なことは違反でございます。
  149. 安宅常彦

    安宅委員 それで、私がもう一つ聞きたいのは、営林署長が、その北越製紙なるものが作業道を切ってくれるから、えたりかしこし、これは将来わがほうのものになるのだし、そこら辺から出る材木は高く売れるであろうと思ってそれを承認したのだ、こう言っているそうです。しかも、その同じような路線にはわれわれも三年ほど前から作業道をつくるつもりだったということを調査団に言っているのですね。つもりだったら、予算にちゃんと組めばいいのであって、われわれ調査に行った者にそういうごまかしを言う。そういうことは私は詭弁だと思うのですね。  それから業者は、あの道路は三百五十万かかったということを経営課長に前に言っているのです。専門的な人から聞いても、そのとおりだ。もっとかかっているかもしれません。ところが、署長は、われわれ調査団に対する説明では、そうだな、あれはブルー時間当たり三千二百円くらいで、延べ三百時間ぐらいだったかな、二百時間ぐらいだったかな、そうすると百万ぐらいしかかかっていませんなんと、しろうとだと思って、なめたみたいな回答をするのですね。業者は三百五十万かかったというから、そういうことを言うことは、一つ一つその業者とのものすごい結託があると思うのですよ。それで私は署長に聞きましたよ。四十七年度の売り渡しの予定地、ちょうどそこまでに五千メートルの作業道を切っているんですから、そうしますと、また競争入札するんですね。そうすると、北越製紙の道路を通らなければそこを運べないじゃないの、今度入札した業者は。常識としてそんなことできっこないじゃないですか。それはどうですか。だれだってそう思いますよ。
  150. 福田省一

    福田(省)政府委員 道路は国営の場合は原則としてこちらでつけるべきものでございます。ただ、制度としてはそういう方法も開いてございますけれども、やはり御指摘のように、これは非常な疑いを持たれますし、道路は確かに御指摘のような点があると遺憾でございますが、本来やはり国でつけるべきものと考えております。指導もそのようにいたしておりますけれども、その点につきましても十分調査をいたします。いずれにいたしましても、御指摘の点があるということでございますので、はなはだ遺憾な点でございます。来年はまた公売でやるんだという説明でございますけれども、その点につきましても、先生のおっしゃるとおりでございます。
  151. 安宅常彦

    安宅委員 結局、また北越製紙がとることになるんですよ。そういうことだろうと署長に言っても、そんなことはありません、厳重、厳正にやります。——厳正にやると言ったって、土俵かちゃんとつくられておって、道路ができておるのですから、その道路を通らなければ運べない。そういうところにだれが入札に参加しますか。いまになって、たった一社である北越製紙しかできなかった——野上木材なんという地元の業者もみんな入っていますね。三井物産とか相当でかいところの会社もみんな入っているんですけれども、この業者になって新しい道路ができてしまったら、だれも入札に参加するばかな者はいないでしょう。かっこうだけの入札になる。これは常識じゃないでしょうかね。こういうことをあなた方は言っている。逆に言うならば、随意契約にして、パルプ材はパルプ材でいいが、こっちは一般材にしなさい、そして、地元の業者で家具や何かつくっているところが山形県にはあるんですから、そういうところはそういうところでやりなさい。随意契約でやったほうが、かえって地元からも喜ばれ、あなたのほうも高く売れる、こういうことだってあるんですよ。こんなインチキな一般競争入札というのは、談合よりもまだ悪質です。談合するのは業者だけだ。それにプラスアルファのあなたのほうが加わって談合しているのと同じじゃないですか。これほど悪質な契約のしかたは世の中にないと断言せざるを得ませんですね。このことについては、あなたのほうで、もし私が言うとおりの事実があったならば、責任をとってもらいたいと思うのです。そして、もしそのことによって、それでも反省もしないで、そういう風潮を改めるという気もないで、全国的にたくさん問題が起きておるのですが、赤字だの黒字だの、何か独占企業から指図を受けて、パルプ業者にはいつくばっているような政策ばかりとっておって、山が裸になろうと、私の頭のようにはげになろうとかまわないということをやって、労働者は半分に減らそうという政策をとったら、これは私は労働者階級の一員として黙っていられないという正義感を持っていま質問しているんです。あなたは、こういうことについて、一般的な問題でも道義的な責任を感ぜざるを得ない立場にあると思うんですが、どうですか。
  152. 福田省一

    福田(省)政府委員 御指摘のように、まことに責任問題でございまして、営林署長の申し立て等につきましても、なおよく厳重に調査いたしまして、御指摘の点に沿うて早く結論を出しまして、また御連絡申し上げたいと思います。
  153. 安宅常彦

    安宅委員 まあ時間も時間ですから、やめてもいいんですけれども、この北越製紙という会社は、四十四年まではゼロだったんですね。あすこに新庄出張所なんかも持ってきて、その持ってくることについては、あなた方のほうでまた相当の便宜を供与しているということも、私どもは証拠をつかんでいます。それで、四十五年度になって約二百二十六万円の売り渡しがあり、四十六年度には七百六十万にこれが倍増し、四十七年度の予定まで組まれておるというふうにわれわれは見ています。疑いではない、これは見ています。パルプ業者との山の割り当てまであなた方は上のほうで何か話し合いがついていなければ、こういうことはあり得ないと私は思っています。あなたはそれはありますと言うたら、あなたの首があぶないものだから言わないでしょうが、そういうふうに私どもは見ています。これは、一番最初に言ったように、最近、国有林野における不正事件、不祥事件というものが、たくさん出て、新聞紙上をにぎわしている。こういうふうなことが、請負業者とあるいは立木の販売業者林野庁官僚との結びつきというものが、如実に一端としてこの古口営林署の場合にあらわれている、こういうふうにしか私どもは見ることができません。もし、そういうことに見られるということについて不可解だというんだったら、あなたは反論してくださいよ。
  154. 福田省一

    福田(省)政府委員 パルプ材の販売についてはいろいろと先生御指摘ございますように、パルプ材以外の問題につきましては、またいろいろと最近は販売の方法について指摘を受けておるところでございます。この販売制度につきましては、それぞれ原則は、先生御指摘のように、会計法に基づいて一般競争が原則でございますけれども、随意契約をする場合についても、やはり法定された中で考えているわけでございますが、非常に古い慣習もありますので、販売方法につきましては、ただいまお話ししましたように、この改善策につきまして林政審議会の国有林部会に検討をお願いし、なお、当局としてもただいまいろいろと検討しておりますので、抜本的に販売方法を洗ってまいりたいと考えております。
  155. 安宅常彦

    安宅委員 それで、立木処分のことですけれども、これは売り払う方式を何か考えて転換するようなことをあなたはおっしゃるけれども、私はこう思います。こういうものは、さっき言ったように、直営でやれば——あなたの中核部隊だというんです。その人たちは、自分たちが首になったらたいへんだから、そういう気もあるでしょう。そして山を守らなければならない、過疎地帯のところで。実際国家公務員だなんて、調子のいいときばかり国家公務員で、そして一年ごとに首を切られて、失業保険に見合うような、退職手当ともつかないわけのわからないような金を払われて、何年たっても——あの人は営林署に三十余年もつとめているんだから恩給でもつくんだろう——そういうものとは全然違った、非常に古い、封建的な材木屋のおやじさんだってやらないようなやり方で、身分をめちゃめちゃにしておいて、その上にあなた方があぐらをかいているという政策は、根本的にやめなければならない。ほんとうにりっぱな資格を与えて、ほんとうの直営部隊ですから、きちっとした待遇を与えて、冬だって、どうせ失業保険と同様の金をくれてやれば、雪払いだってできると私は思うのです。直営にすれば、冬だってこういうことはやれるのです。幾らでも近代的に機械は進歩していますから、そういうこともやれる。そして業者がめちゃくちゃやるような、そういうものと結託する、そういうことをして、冬分は経費が増加するなんて理屈は言いますけれども、これはほんとうに科学的に計算してみたら、失業保険みたいな膨大な国費を遊ばせておくことと同じですよ。そういうばかな政策はやめて、そして立木処分なんか職員が、全然身分は違うと思いますが、この分だけに限っていうならば、職員がやったほうが一番早わかり、もうかるかもうからないかも早わかり。そして自分たちがつくった山を遊ばすことをしないという意味でも、きちっとできる。ガラス張りの立木処分ができると思いますが、そういう方向で行きたいという気持ちは、あなたありませんか。
  156. 福田省一

    福田(省)政府委員 国有林経営形態には、御指摘のように、立木処分の形態、それから直営生産の形態の中でも、直営直用と請負でやる三つございます。この経営形態につきましては、先生御指摘のように、国有林の中にいま入っておりますところの定員内の職員四万人、それから定員外常用作業員、あるいは定期作業員、特に常用定期が中核をなしております。今後は自然保護を重点にしますと、収穫量も減少するし、事業量も減少するということになって、この中でいかに雇用の安定をはかり、また労働条件をよくしていくかということについては苦心しておるところでございますが、国有林が非常に多い地帯と少ない地帯、またはその地域地域によりまして立木処分の形態、これは民有林を含めてでございますけれども、そういう事業体があり、それに付属した労働者がたくさんおる地帯、いろいろでございます。私は、そういう現地現地実態を踏まえて、そこに最も適した方法で、国有林と民有林を通じまして雇用の安定と労働条件改善をはかっていくという立場から考えてまいりたいと思うわけでございます。これは私の考えでございまして、そういったような方向をどう持っていくかにつきましては、ただいま林政審議会の国有林部会で、たびたび申し上げますように、検討いたしておりますし、その答申をいただきまして、私たちは誠意を持って対処してまいりたい、かように考えております。
  157. 安宅常彦

    安宅委員 会計検査院の人、どなたか来ておると思いますが、実はこういう問題については、地元の業者なり、そういう人から、私、初めて聞いたのでございまして、知っておるのですよ。地元ではおかしいぞということを——私はあそこの近くの郵便局にちょっと行ったら、私どもの政党並びに私に対する批判みたいなことを言う人が郵便局長のところに遊びに来ておりまして、少し議論したのですよ。そうしたら、じゃ、何だ、りっぱなことを言うけれども、あなたたちは、営林署でこんなことをやっておる、さっぱりわからないじゃないか、そういうことをやってくれないじゃないかということで議論を吹っかけてきたのですね。そしてよく聞いてみると、その人は昔から営林署にお世話になっておる業者の一人なんです。だから、さっきの、支障木をどこかに売り払ったじゃないか、業者は知っている、くやしくてしようがないと大きいことを言っていた。ところが、最近会計検査院が、あの辺の林野庁の部門を会計検査をやるということで、どこそこ、どこそこということを言った。ところが、その古口は入っておったけれども、そこを抜いて別のところへ行った。行くと言って行かなかったり、行かないと言って、安心しておったら行ったということはあります。会計検査院だから、私はゆめ疑っておりませんけれども、地元の人たちは言うのです。これは林野庁のほうで、だんな、うまくやって、会計検査院は別なところへ行くように細工したんだんべというようなうわさが立っておるのですよ。ここに来なかったから、来るという話になっておったのが来なかったから。それは会計検査院としてもあらぬうわさを立てられてけしからぬと思っておられると思いますが、それは、こういう場合には特別に検査をする——ここで私は申し上げましたが、そこはなるほどこのたびの検査はやらなかったけれども、特別に検査をやらなければならない、そういうやり方も会計検査院が検査のやり方として、あり方としてあると思いますが、そういう御意思はありませんか、ちょっとお伺いします。
  158. 田中稔

    田中会計検査院説明員 実は来週から秋田営林局の検査をたまたまやる予定にしておりまして、いま問題の営林署に行くことになっておったのにやまったというふうなうわさということでございますが、この営林署は、実は非常に規模が小そうございまして、当初は、相当長い期間行っておりませんので、行こうかというふうに考えておったわけでございますが、日程の都合上取りやめにいたしたというのが実情でございますが、ただいま先生のお話を聞きますと、いろいろ問題があるように思いますので、どうせ近くの営林署に参りますので、古口の営林署も今回の検査におきまして十分に検査していきたいというふうに思っております。
  159. 安宅常彦

    安宅委員 もう時間が過ぎたようですから、終わりますが、長官は私の質問に対して、今後の経営の方式なりそういうことについての抱負を述べられました。しかし、私は、社会党の幹部か何かがあなたのほうに申し入れたときの回答というのですか、覚え書きというのですか、そういうものも見ました。その後、五月の末か六月あたりに他党の同僚議員は質問されたときのあなた方の大臣答弁なんかも調べております。しかし、労使というものは対等でなければならぬと思うのですね。四十一年のときにそういう直用の方式というものを確認したならば、それを守るということ、守れなかったらどうするかということ、いろいろあると思いますが、すぐ役人の皆さんは審議会にかけまして答申をいただくことになっておりますと言う。審議会というのは、大体あれは責任のがれの隠れみのになる場合がほとんどなんですね。こういうふうに私どもは見ています。学識経験者なるものをかってに任命して、気に合うか合わないか——私なんか絶対任命してくれないでしょう、おそらく。だから、そういうやり方をする場合は多うございますから、あなたのほうはどうなっておるかわかりませんが、おそらく同類に近い、私はそう判断しています。そういう審議会なんかということを頭に置かないで、もう自分の方針というものを正しくひとつやって、日本の山を守っていかなければならない。これは時代の趨勢である。こういう場合は全林野労働組合ときちっと相談してやるのだということを、ぜひひとつこの場で答弁してもらいたいと思うのですよ。
  160. 福田省一

    福田(省)政府委員 御指摘ございました問題につきましてお答えいたします。  国有林というものは七百六十万町歩ございます。これは四万人の職員常用作業員一万六千人、それから定期作業員一万九千人おりますが、臨時を入れまして約八万人近い国家公務員がおるわけでございますが、国有林というのは、八万人の山でなくて、やはり一億の国民の山であるという基本的な姿勢に立ちましてこの山を守っていきたい、こう思うわけでございます。  経営のほうにつきましては、先ほど話したとおりでございますけれども、労働条件に関する事項等につきまして、よく労使話し合っていきたいと思いますし、将来の方向についても、私は、労使の間で基本的にはそういう一つ方向を踏まえて、いろいろ条件等については、闘争もございましょうが、基本的な方向は、つまり山をよく育てていくのだという目的には変わりはないと思っております。私は、つとめて労使の間でその点につきましても話し合いを持っていきたい、かように思っております。
  161. 安宅常彦

    安宅委員 そこで、会計検査院の方にもこの際お願いしておきますが、私が調査に入ったというので——私はずっと調べてあるのですよ、すでにいろいろなルートを通じまして。ところが、地方は懸命にいま直しております。検査担当官が復命書をやったのが五月の十八日であったはずです。それが五月の三十一日に実際の復命書を出しております。復命書を三十一日に出して、十八日に帳簿が直ってみたり、いま懸命な工作をしています。刑法上で言うならば、証拠隠滅をはかっています。そういう情報がひんぴんとして出てきました。私どもは、一刻も猶予はならない、こういうことで、正は正、悪は悪としてはっきりした立場を林野庁はとってもらうとともに、先ほど会計検査院の方が言ったように、もしそういうことがあったならば、やはりやってみたらどうかと思う。経営が小さい規模だと言いましたけれども、あそこは村一つです、率直に言って。だけれども、これは全地域山なんです。平野部があるなんというところとは違います。ほとんど営林署の山と言っていいくらいの特異な営林署であります。こういう独占的なそういう立場というのは、どうしても何か営林署のだんなというものは、村議会も何も、薬をまかないでくれと言ったって、もう営林署がなければおまえらめしを食えないぞというような立場をとり得る営林署です。そういうことも相当考えて、林野庁もきちっとした方針をこの場合とってもらうとともに、会計検査院も直ちにひとつ公正な検査をしてもらいたいということを要望して、私の質問を終わる次第であります。  ありがとうございました。
  162. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 相沢武彦君。
  163. 相沢武彦

    ○相沢委員 私は、農林水産業振興に関しまして、現在全国各地で問題になっております火力発電所建設と農林水産資源の保護に関して質問を行ないたいと思います。  四十六年度の漁業白書の中に、漁場環境低下の諸要因というものがいろいろあげられておりますけれども、その中で「工業化の進展は、電力需要の増大を伴うため、臨海地域に大規模な火力発電所あるいは原子力発電所の建設があいつぎ、これらから放流される大量の温排水は、地先漁場の水温を上昇させ、これに起因する生物相の変化、のり養殖に対する影響等が問題になっている。なお、温排水の一部は、魚介類養殖などに利用する可能性も考えられるので、これらについての総合的な調査研究が必要となろう。」、こう述べておりますが、水産庁として、具体的にどういう調査研究をしていこうとするのか、また温排水に対する科学的な調査研究の結果というものは、いつごろまでに明らかになるのか。この点を最初にお尋ねしたいと思います。  なお、本日、水産庁長官答弁に立たれる予定でありましたが、急にぐあいが悪いということで、出席されませんが、十分打ち合わせて来られていると思いますので、長官と同等の答弁、このように私ども受けとめますから、ひとつ明確な御答弁をいただきたいと思います。
  164. 松下廉蔵

    松下説明員 お答え申し上げます。  温排水の水産生物への影響につきましては、東海区水産研究所が、原子力発電所の排水の影響調査の一環といたしまして、基礎研究を行なっております。このほか、水温が恒常的に上昇してまいります場合には、その海域の生物相が局地的に変化をいたします。特にノリにつきましては、高水温の影響を受けやすく、病害が発生しやすいということがわかっております。今後発電所の増設に伴いまして、温排水の生物相への影響の範囲も局地的なものにとどまらないおそれがございます。本年度からは、関係各省庁と共同いたしまして、温排水の漁場環境への影響等につきまして、その調査研究をさらに拡充強化することにいたしておる次第でございます。
  165. 相沢武彦

    ○相沢委員 研究段階はわかりましたけれども、大体研究の見通しが明らかになるのはいつごろなんですか。
  166. 松下廉蔵

    松下説明員 その結果につきましては、これは対象漁業魚種によりまして異なりますし、その調査の実験が、水槽の中におきます場合と実際に現地の海域で行ないます場合とでかなり違ってまいるわけでございます。水槽の中の実験でございますと、温排水の影響というものが比較的短期間でわかるわけでございますけれども、現場におきます実際の調査ということになりますと、これはかなりの期間が必要であろうというふうに考えております。
  167. 相沢武彦

    ○相沢委員 沿岸地域の海流、いろいろな自然の条件がありますから、水槽の中でやる実験と当然違った結果が出てくる。これについては相当長期間の時間をかけて、しかも慎重にやっていかなければならない問題だと思います。今後、特に水産資源が沿岸等で枯渇して、増殖等をはからなければならないという実情に現在あるわけでありますから、水産庁として、この温排水の影響について明確な結論が出るまで、特に沿岸漁場近辺における火力発電あるいは原子力発電等の建設を見合わせるべきだという態度をおとりになっていないのですか。この点に対する基本的な態度はどうなっておりますか。
  168. 松下廉蔵

    松下説明員 御質問の点でございますが、確かに温排水の漁業に与えます影響というものが、今後、局地的にとどまりませず、増大する傾向にもございますので、水産庁といたしましては、漁業に対しまして悪影響を与えないように、慎重に対処してまいりたいというふうに思っておるわけでございます。特に関係いたします漁業者を含みます地域住民の意向というものを十分尊重してまいるよう、関係各省庁とも常に今後協力して進めてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  169. 相沢武彦

    ○相沢委員 これから私が取り上げます北海道の伊達の噴火湾一帯の問題でございますが、この場合は、公害の未然防止に取り組む一つの試金石になるだろうということで、火力発電をめぐる問題として非常に注目を浴びているわけですが、住民の反対運動等も非常に幅広くいま行なわれております。ここは北海道電力が将来七十万キロワットという大規模な重油専焼火力発電の建設を計画しておるわけでありますが、この計画案というものは、当初具体的に詳細な面が市民に知らされてなかったために、一応議会でこの発電所の誘致を行なったところまではスムーズに進んできた。しかし、全国的にこの公害という問題がクローズアップされ、またその発電の影響というものがどうなるかということが次第に明らかになってくるにつれて、市民の中から非常に反対運動も起きているわけです。最初に直接影響を将来受けるだろうと予想される漁業者、それから農業者、さらに現在一般市民や地域の医師会、あらゆる階層にわたっていま反対が起きているわけでありまして、これは北海道以外の各地における海水汚濁やあるいは大気汚染等で、公害の影響のおそろしさということを十分に最近は知らされておりますので、そういった公害の心配から、火力発電に対する反対の声というものは起こるべくして起きた現象だろうと私は思います。  それで、伊達火力発電建設計画というのは昭和四十五年からスタートしておりますが、その間実に三回にわたって電調審が見送りになっております。これを見ても、いかに地元住民の公害に対する心配が大きいか、あるいは反対の根が深いかということをよく物語っていると思うわけでありますが、最初申しましたように、現在日本の水産界は、外からは海洋の専管区域等の問題で国際的な制圧を受けておりますし、また一方、内にあっては公害による海水汚濁で漁業の立地条件というものが毎年きびしくなっているというのは御承知のとおりであります。  こうした環境の中で、火力発電建設予定地の伊達市は、噴火湾という北海道にとっては重大な位置づけを持った栽培漁業基地でありますし、現在北海道における沿岸漁業生産高の約五〇%を占める生産高を示しておる。近くは増養殖の開発指定地域として指定されて、一段と力を入れなければならない、こういう大事な海域でありますが、このような漁業基地に火力発電所を建設して、温排水の影響の調査研究がまだはっきりしないうちに進められて、それに対応する手段が手おくれになって、せっかくこれまで築き上げてきた現在の海流、海温、その噴火湾の持つ特性に応じたいわゆる栽培漁場というものが軌道に乗って、相当数の生産高をあげている、それによって漁業者の生活も現在安定しつつある。その建設を急ぐために、調査研究がまだはっきりしないうちに建設されて、その影響が出るということ、それに対する対応がおくれてしまうということによって、根本から漁業者の生活がこわされていく、またその栽培漁場の特性というもの、使命というものが失なわれていく、こういうことになりますことは、水産庁としても沿岸漁業の振興プランニングに支障が当然出てくるのではないかと思いますが、この点に対する所見を伺っておきたい。
  170. 田中稔

    田中説明員 御質問の伊達市は第二次沿岸構造改善地域の噴火湾地域の中に含まれているものでございます。同地域におきましては、計画樹立調査を終了し、四十六年度からコンブとかホタテ等の増養殖の振興中心にして事業を現在実施中でございます。  この趣旨から私どもといたしましても、噴火湾地先海面については、道においても水産資源開発促進法に基づく開発区域として指定し、今後さらに増養殖の計画的推進をはかるように指導してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  お話の伊達市におきます火力発電所の設置につきましては、まだ結論を得ていないというふうに聞いているわけでございますが、そういう設置等によりまして、増養殖の水産に悪影響を与えないように慎重を期しますとともに、関係業者の意向を十分尊重されるように、道を通じて指導してまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  171. 相沢武彦

    ○相沢委員 いまもずっと話しましたように、この噴火湾の栽培漁場の基礎を築き上げるために漁民の人たちはそれ相当の資金や資材を投入しておりますし、まあ私どもの想像を絶する努力が今日まで続けられたと思うわけです。それだけに、この条件の整った噴火湾に火力発電が建設されるということになれば、非常に影響が大きくて、漁業者の不安をぬぐえませんし、また、一部、この建設所在地の近くの、直接影響をこうむると思われる伊達漁協以外に、隣の有珠漁協のほうにも相当影響が起きるのではないかというような心配があって、非常にその建設に対する反対の輪というものは広がっているという現状です。五月三十一日に、直接被害が予想される伊達漁協と北電との間に漁業補償交渉というものが成立したようでありますけれども、現在なお伊達漁協の組合員の中には三分の一の人たちが反対しておりますし、また隣の有珠漁協の場合も、特に海面利用のはえなわ垂下式によるホタテ養殖をやっておりますので、温排水が海上に拡散するという性質を考えると、温排水の影響は、有珠の漁民にとっては非常に大きいんじゃないか。私も現場へ行ってきましたけれども、すでにノリ等は現在でも昨年に比べるとだんだん減収しておりまして、これ以上海温等に状況変化が起きると、さらに減産するのではないか。また、あそこは外海との境目が非常に浅瀬になっていて、外海との海流の交差というものは非常ににぶいということで、もうこれ以上とにかく、海の性質を変えてほしくない、少しも条件変化させたくないというのが漁民の人たちの心情でありまして、有珠漁協の場合は、最初からこの北電の伊達火力発電建設には反対をしているわけであります。  ここで問題なのは、昨年十二月に町のほうの依頼で日本水産資源保護協会が調査を行なったその中間報告が出されたわけでありますが、これについては、水産庁としてはどういった内容の中間報告が出されているかということについては御存じでございますか。
  172. 松下廉蔵

    松下説明員 中間報告の内容につきましては存じております。
  173. 相沢武彦

    ○相沢委員 この中間報告に対して、つい先日ですが、日本科学者会議道支部から、この報告書の中に一部誤りがあるということを発見しまして、地元では非常な大きな問題になっておりますけれども、その内容については御存じでしょうか。
  174. 松下廉蔵

    松下説明員 その内容につきましては、北海道庁のほうから連絡をいただいております。
  175. 相沢武彦

    ○相沢委員 この中間報告は、水産庁の東海区水産研究所の指導のもとにまとめられたというものでありますが、この一部ミスの個所については、本省ではどのように事情を掌握され、どういう指導をされようとしますか。
  176. 松下廉蔵

    松下説明員 詳細につきましては、最終報告が近々に取りまとめられるということを伺っておりますので、その内容につきまして今後さらに検討する必要があろうと思います。  なお、御指摘のとおり、調査委員長は元東海区水産研究所の部長をしておられた方でございますが、生物関係につきましては北海道大学の先生がおやりになっているというふうに聞いておりますので、詳細は存じておりません。
  177. 相沢武彦

    ○相沢委員 ここに調査の中間報告の要約が出ておるのですが、水産庁のほうとしては、この調査には直接タッチはしておらないのだ、個人の資格で東海区水産研究所の人たちが入ってやった仕事であるし、本調査が出てきてからそれについて検討したいんだ、こういう御意向のようでありますが、この中間報告書にあります調査委員の肩書きには、水産庁東海区水産研究所漁具漁法部長何のたれがし、こういうふうに肩書きも入れて出されている以上は、やはりそれだけの責任を持った調査報告書であるし、その結果についてはやはり本省のほうとしてもしかるべく掌握しなければならないし、その結果についての責任もとらなければならないのじゃないかと思いますが、この点についての関連はどうなっておりますか。
  178. 松下廉蔵

    松下説明員 先生御指摘のとおり、これらの水産研究所の研究者の方々は個人の資格として参画しているわけでございますけれども、内容につきましては、当然水産庁としても非常に大きな関心を持っておりますし、詳細な報告書が出てまいりました段階において、十分検討してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  179. 相沢武彦

    ○相沢委員 今回科学者会議指摘した部分でありますけれども、ここに新聞記事があるのですが、日本水産資源保護協会の中間報告によりますと、火電の三十五日間の取水量が六百六十五万トン、そのうち、一立方メートル中に含まれるホタテ稚貝が九個と見て、これが全部取水時に死滅すれば、死滅する稚貝は六十万個で、稚貝全体から見ればわずか四・六%だ、こういう報告を出しておるわけでありますが、実際の取水量というのは三十五日間で六千六百五十万トンが正しいということがわかりまして、この計算でいくと、死滅する稚貝というものは六百万個と、一けた多くなる、こういうわけで、影響は四六%、つまり半分近く死んでしまう。これは報告書の誤りにしても、地元にとってはこれは非常に大きなショックだと思うわけであります。これは、二十二日の日に北大の渡辺助教授らが伊達市あるいは道の水産部に誤りを指摘しましたら、初めてその誤りを認めたわけですけれども、報告書が出された数日後訂正が来ていることもそのとき初めてわかった。ですから、結局、この日本科学者会議道支部からの指摘がされるまでは、伊達市をはじめ、この伊達の漁業者には知らされなかったわけであります。ですから、もし指摘がなければ、知らぬふりをしていたのではないか、こういうことも現地では取りざたされておるのですが、本省として、本報告書を出されるまで云々とおっしゃいますけれども、やはりこのように肩書きをかけて中間報告書に東海区水産研究所の方たちが名を連ねている以上は、やはり中間報告に対してもそれ相応なりの責任を持つのが当然ではないか、このように思いますけれども、いかがでございますか。
  180. 松下廉蔵

    松下説明員 御指摘の点でございますけれども、この中間報告、私どもが北海道庁からいただいております中間報告に関します限り、先生ただいま御指摘のように、約四・六%の被害というようなことが書かれておるわけでございます。これを担当されましたのは東京大学の山本先生というふうに伺っておりますので、なお先生にもその間の事情をいろいろお伺いして、検討してまいりたいというふうに思っております。
  181. 相沢武彦

    ○相沢委員 六月中にこの火電建設に伴う漁業の本調査報告がされるわけでありますが、この本調査にもやはり水産庁の東海区の方たちが関連すると思うのですが、共同責任という立場ですか、それとも個人の資格でやることであって、本調査が出されてから、本調査が正当なものであるかどうかということを本省として初めて調査に当たるというふうにとられるのですか。
  182. 松下廉蔵

    松下説明員 今回の調査は、もともと日本水産資源保護協会が伊達市の委嘱を受けまして調査をしているわけでございまして、参画しておる諸先生方はいずれも個人の資格で参加しておられるわけでございます。しかし、その最終報告の内容につきましては、当然水産庁としても十分検討してまいる必要があるというふうに考えております。
  183. 相沢武彦

    ○相沢委員 十分調査する必要を感じられておるという御答弁ですが、調査が出されてからどれくらいの期間かけて本調査報告に対する水産庁としての結論を出されるという予定ですか。
  184. 松下廉蔵

    松下説明員 私の御説明が若干不十分だったとおわび申し上げますが、それはこの報告に基づきまして水産庁が別途新しく調査を開始し、その結論を出すということではございませんで、その調査報告書内容につきまして、はたして妥当かどうかということを、水産庁の専門家あるいは必要に応じまして外部の専門家の方の御意見もお聞きしながら検討してまいりたい、この結論を得たいというわけでございます。
  185. 相沢武彦

    ○相沢委員 これは一つの重要な今後の資料にもなりますし、また事例にもなるわけでありますから、本調査報告書の中のいわゆる実験的な、水槽の中でやるような実験、そのデータをもとにしての結論なんかの場合は、これはきわめて不備であると思います。ですから、あくまでも全面調査をさらに繰り返すということは必要ないと思いますけれども、部分によってはやはり現場に乗り込んでの調査、不備な点は再調査するあるいはその机上のデータでなくて実際のデータをとるという、そういうことはしなければならないと思いますけれども、そういう用意はございますか。
  186. 松下廉蔵

    松下説明員 その点につきましては、最終報告書十分検討させていただいた上で、さらに必要とあれば、北海道庁その他とも十分協議の上決定してまいりたいというふうに考えております。
  187. 相沢武彦

    ○相沢委員 伊達漁協の今後の問題なんですが、五月の三十一日に行なわれた伊達漁協の総会では、北電との漁業補償の案件で賛成百三名、反対四十三名で一応は妥結されました。現在地元では、漁業権放棄の伊達漁協総会には疑義がある、こういうことで法廷闘争の動きもある、このようなニュースも伝わっている。たとえ漁協の総会として法的に問題がないとしても、一つ私たちは気になることがあるのです。それは反対された側の漁協の組合員の人たち四十三名の漁業生産高か、伊達漁協生産高の総額の約七〇%を占めている。またその四十三名の人たちは今後も栽培漁業によって生計を営む意欲を持った若い層が多いということであります。現在、漁業に従事する若い後継者不足ということがいまの日本の水産業の重要な課題とされているとき、こういう漁業に意欲を持つ若い後継者に不安と失望を与えるという影響の大きさを心配せざるを得ないのであります。水産庁はこの漁業権放棄に伴うこうした影響をどういうふうに受けとめていますか、その所見を伺いたい。
  188. 田中稔

    田中説明員 今回の伊達漁協につきましては、補償問題につきまして、ただいまお話しのように、特別議決事項の要件を満たした議決がなされたというふうに聞いておるわけでございます。  いま先生御指摘の実質的な問題でございますが、水産協同組合におきましてはいわゆる一人一票制ということでこういう特別議決事項の要件をきめておるわけでございます。しかし、その一票一票の重みがどういうことであるかということになりますと、これは非常に問題がございまして、かえっていろいろ問題の解決にふさわしくないということでこういうふうな規定がなされていると思いますが、その実質にそういうことで影響を受けるあるいはまたそのことによって不利を受けるという人たちのことにつきましては、地元の漁協あるいはまたそれを指導する道庁ともよく相談をいたしまして、今後どういうふうな漁業をやっていったらいいのか、そういうことについて指導をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  189. 相沢武彦

    ○相沢委員 今後各地で漁場の近くあるいは最も漁業に影響を与えるような地域に発電所等が建設される、そのときは、その組合員の人たちの賛成多数で漁業補償さえまとまればそれでしかたがないという行き方をした場合、重要な漁業基地や開発指定地区が失なわれていくということは考えられるわけですね、伊達の場合と同じように。水産庁としては、そういったことを漁業補償で、漁業に従事する人たちが自分の意思で多数決できめるのだからそれはそれでしかたがないのだということで、今後もそのままこういった問題のときに見過ごしていくのか、あるいは積極的に、日本近海の沿岸地帯のそういった漁業基地、開発指定地域というものを守っていくという何らかの歯どめを講じなければならないという考え方なのか、その辺を伺っておきたいと思います。
  190. 田中稔

    田中説明員 最近、こういう公害と申しますか、埋め立てあるいはまたこういう産業が沿岸地域に進出をしてくるというような問題につきまして、やはり沿岸の漁場が失われていくということにつきましては、水産庁としてははなはだ残念に存じておるわけでございますが、産業の発達につれてやはりそういうものの必要性と、それとまた漁業の発達ということとどういうふうに調整していくかということは、漁業サイドのみでなしに、広く社会的な立場で総合的に判断をしなければならないというふうに思うわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、できるだけいい漁場は早く積極的に開発をいたしまして、そこが漁場として大事であるし、また地元の漁民にとってもそういう漁場を維持し、そしてそこで生産の場を得るということが望ましいかっこうに早くしていくということを私どもとしては念願をしているわけでございます。しかしながら、そういうようないろいろ調整の面で地元の漁協等の意向、それの基礎をなします漁民の皆さんの意向等によってそこの漁場を放棄するということになれば、やはり私どもとしては地元のそういう御意向に沿って対策を講じていかなければならないというふうに思うわけでありますが、そういう対策といたしまして、そこで漁場が失なわれれば、それにかわるべき漁場、こう申してはなんでありますが、できるだけ沿岸のほかの漁場をもっと集約的に利用して生産を上げていくといったふうなことをやらなければならぬわけでございます。そういう意味におきまして、最近の第二次構造改善事業におけるいろいろな増養殖事業あるいは今後予定をいたしております栽培漁業の進展というふうなことによりまして、やはりわれわれはわれわれなりに、失われれば残ったところをさらに集約的に開発して利用していくというふうに心がけていきたいと考えている次第でございます。
  191. 相沢武彦

    ○相沢委員 これまで長年つちかってきた漁業基地というのは、失われたらそう簡単にそれをまた別なところを育てるあるいは適地をさがすということは至難なわざであります。産業の発達も当然ですが、まだまだ発電の予定地というのは別にさがせばあるわけでありますから、どちらのほうが比重が大きいかというと、やはり残されたわずかな漁業基地、適正な栽培漁場、すでに指定してあるところ、こういうところは、水産庁の立場としては、絶対そういったところへ持ち込んでは因るという強い姿勢をもっとおとりにならなければならない、こう私は思うのですよ。  次に、温排水による漁業への影響の問題についてお尋ねしておきたいのですが、この件につきましては、北海道の議会でも不審な点として取り上げられて論議をされておりました。温排水の拡散を知るためには、中間報告で採用された平野の方式のほかに、おもなものがまだ三通りあるということでありますが、今回の中間報告の調査では平野の方式を使って、他の調査方法は実施されなかった。それについてなぜ比較検討がされなかったのかという不審が抱かれて論議をされているわけでありますが、今後の問題として、水産庁が温排水による影響調査を行なう場合に平野の方式しか使わないのか、あるいは併用してやるのか、調査実施にあたってどういう調査方法をとられるのか、その具体案を聞いておきたいと思います。
  192. 松下廉蔵

    松下説明員 温排水の拡散分布につきましては、いろいろ複雑な問題がございまして、これを推定いたします。理論式にしましても、その仮定の置き方によりまして、ただいま先生御指摘のとおり、平野方式のほかに、和田の方式、新田の方式、その他がございます。これらの方式、それぞれの仮定の置き方によりまして結論も少しずつ違ってくるわけでございますけれども、現在程度の、いろいろ得られている情報からの推定精度、そういったものを判断いたしますと、そう甲論乙駁といいますか、大きな違いはないというふうに一応考えるわけでございます。  平野式につきましては、これは一応東京湾におきます姉崎の拡散の分布範囲の調査結果でございますとか、あるいは淡水域におきます淡水の拡散、そういった幾つかの調査結果に基づきまして推定された方式でございまして、私どもとしては、この四つの方式の中ではやはり一応妥当なものというふうに判断しているわけでございまして、今後ともこの方式を用いてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  193. 相沢武彦

    ○相沢委員 もつ一つお尋ねしておきますが、通常、温排水が拡散されるのを計算する場合には、安全率を考慮することが常識と聞いておりますが、伊達の場合の中間報告では、安全率はどのように考えて発表になったのかということがさだかではありませんので、その点が論議されております。今後の問題として、温排水の拡散に伴う安全率をどの程度に見込むのが妥当と考えられておるのか、この点、お尋ねしておきたい。
  194. 松下廉蔵

    松下説明員 温排水の影響範囲につきましては、理論式につきましてはただいま御説明申し上げたとおりでございますが、実際に現場におきます拡散範囲といいますと、これは潮流の影響あるいは夏と冬との温度の差あるいはその海底地形、そういったものによって非常に千差万別でございまして、これはやはりケース・バイ・ケースで、その実地調査の結果に基づきまして、最大限の拡散範囲というものを一応目安として検討してまいるのが妥当ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  195. 相沢武彦

    ○相沢委員 環境庁が来ていると思うのですが、温排水に含まれるようなさまざまな物質の件についてお尋ねをしておきたいのですが、温排水の中には、海水ですから砂がまじって入ってくるということが予想されますし、そのほか除じん設備の洗浄廃水も含まれますので、海底が荒されるし、それに伴って重金属が海に捨てられる。そういった点から、漁業資源に対する不測の影響が出てくる二とが心配されるわけでありますが、この点を水質汚濁防止の観点から、環境庁の水質汚濁防止の係としてはどういうふうに考えておられるか、お尋ねします。
  196. 鷲巣英策

    ○鷲巣政府委員 私、直接担当ではございませんので、こまかい点についてはお答えできないかと思いますが、温排水の問題につきましては、本年度は環境庁それから通産省それから科学技術庁、さらに御出席の水産庁、四者で共同いたしまして、まず温排水がどのように海の中に拡散されるかとか、あるいはどのように魚類に影響を与えるかとか、その他いろいろなこまかい点につきまして、共同して調査をするという体制をいま進めている状況でございます。  なお、温排水の中に重金属が入るかどうかという点につきましては、通常の火力発電所運転の場合にはあまり多くはないと私は考えておるわけでございますが、その点につきましては、なお詳細は後ほど検討いたしたいと考えております。
  197. 相沢武彦

    ○相沢委員 温排水の問題でいろいろお伺いしましたけれども、結局、調査研究はこれからもっともっと時間をかけてやらなければならないということだろうと思います。そこで、海水汚染を処理して、将来予想される危険性のあるものを取り除いて具体的な施策をこれからとり続けなければならないと思いますし、そうしない限りは、自然の海の宝庫を守れないと思うわけであります。先ほどから申しますように、伊達の漁協及び有珠の漁協は絶対反対、それから虻田の漁協もその影響等を非常に心配して、水産資源を守る立場から、火力発電建設にはもっともっと時間をかけて、この調査結果が出るまでは建設を急ぐべきでない、こういうのが常識的な声だろうと思いますが、水産庁としては、やはり北海道の中の有数の栽培漁場に指定して、しかも今度は新しく開発地域に申請しようという場所にこの火力発電がきまっているという、まことに矛盾したことなのですが、水産庁としてはこういうところに持ってくることは、不適当である、伊達としては、不適地であると思う、こういう態度で通産省等に対する建設の予定地変更というような意向は申し述べたことはないのですか。
  198. 田中稔

    田中説明員 現在、伊達市の火力発電につきましては、電源開発促進法に基づきまして電源開発調整審議会に諮問をするというふうなお話で、昨年末から経済企画庁などが主体になって、幹事会の場等におきましてはいろいろ議論を重ねているように承っているわけでございます。私どもといたしましては、いまお話しのように、この伊達市地先と申しますか、噴火湾一帯が漁業の面におきまして栽培漁業地帯の形成等、重要な海域であるということでございますので、伊達市に火力発電所を設置することにつきまして、できるならば、それはそういうことがないのが望ましいわけでございますけれども、そのほかの関連上、どうしてもそういうことになるというような場合におきましても、漁業に対して悪影響を与えないようにひとつ慎重を期してやってもらいたい。それからまた、関係業者を含む地域住民の意思を十分尊重するようにやってもらいたいということで、各省会議の場において常に繰り返し申し上げているところでございます。
  199. 相沢武彦

    ○相沢委員 水産関係に対する不審な点を幾つか御質問しましたが、次に、火力発電所によって排出される亜硫酸ガスによる農産物の影響について疑問点をただしておきたいと思います。  最初に、亜硫酸ガスの量の点で環境庁の大気保全局にお尋ねしたいのですが、伊達火力が操業したと仮定して、硫黄分一・七%の重油を三千八百キロリットル使用した場合、大気汚染はどのようになるか、お尋ねしたい。
  200. 竹内嘉巳

    ○竹内説明員 お答えいたします。  伊達火力発電所の計画は、出力三十五万キロワットの二基の建設計画を当面持っていると聞いております。現在のところ、使用燃料として硫黄分一・七%という重油を予定されておると聞いております。この場合は、硫黄酸化物の一時間の最大着地濃度がおおむね〇・〇二ないし〇・〇一九PPM程度になるのではなかろうか。また年平均値でまいりますと、〇・〇〇一三PPMということになりますので、おそらく現在の環境基準そのものから申しますと、年平均値〇・〇五PPMでございますので、それの約四十分の一程度になる。  もう一つは、伊達の周辺は大気汚染防止法に基づきますK値ではナショナルミニマムの二十二・二でございまして、この場合の最大着地濃度は〇・〇三八を一応計算値として持っている。その限りでは現在の計画が進行いたした場合でも一応〇・〇一五ないし〇・〇二くらいまでということであれば、大気汚染防止法上の措置としては問題はないのではなかろうかというふうに計算上は判断されるわけでございます。
  201. 相沢武彦

    ○相沢委員 その場合、他都市と比較するとどうなるのか、もしおわかりだったら御答弁いただきたいのです。この伊達のすぐそばに北海道では有数の大気汚染地帯である室蘭市があります。室蘭市と比べた場合に、どういう結果になっておりますか。
  202. 竹内嘉巳

    ○竹内説明員 お答えいたします。  室蘭市の最近におけるデータでございますが、最近の手持ちの資料でございますが、大体〇・〇三八ないし〇・〇二六PPMというのが年平均値の数値でございます。
  203. 相沢武彦

    ○相沢委員 この伊達の場合ば、北海道の中では有数の野菜の生産地であることは御承知だと思います。そこで、西胆振の農業センター等も設置してすぐれた農業地として、現在野菜生産に相当農家の人たちが励んでいるわけでありますが、火力発電が設置されると、亜硫酸ガスや粉じんで生産減産に悩む本州各地の農業地帯を実際にこの人たちも見てきているわけですね。そういったことで、非常に農業関係者は心配しているわけであります。確かに計算上は国の基準より下回るかもしれない。しかし、実際、現在あそこの志村化工等の工場排煙によりまして、農産物も被害を受けているわけです。ですから、相当薄めたとしても現在以上によごれることは、これはもう当然なことでして、たとえば愛知県の知多火力ですか、この場合は硫黄分が〇・九%で、伊達の火力発電の予定の一・七%より約半分の硫黄分の予定なのですけれども、それでも被害が出ているということですね。この知多火力でも亜硫酸ガスによる被害というものについて市の公害課長も認めておるわけでありまして、ミカンの葉に被害がある、あるいはばいじん、粉じんによるビニールハウスの被害によって光線の通りが悪くなり、換気すると野菜の葉が亜硫酸ガスのために焼ける。それから亜硫酸ガスの影響で耕地が酸性化して、露地裁培からハウス園芸に転換しつつある。それから梅や桜に被害が出て木が枯れるので、ハウスでのフキの裁培へ転換している。また松やケヤキの大樹の枯死がひどい。あるいはトタン屋根の赤さびがひどくて耐用年数が半減している。硫黄分〇・九でもこういった被害が出ているわけでありまして、こういう実情を実際に視察してきた地元の農業者の人たちは、今度一・七%の重油がたかれた場合に、自分たちのところではそれ以上にひどい被害が起きるのではないか、こういうように心配しているわけでありますけれども、農林省として、現在まで北海道以外の火力発電で建設されて操業している個所で、その近隣の野菜生産等に全然被害がないというモデル地区があったら明示してほしいし、またそれがあった場合に、一体どの程度の硫黄分の重油を使って、どういった公害防除のやり方をやっているのか、その点をお知らせいただきたい。
  204. 荒勝巖

    荒勝政府委員 お答えいたします。  農林省といたしまして、この火力発電所の排煙によりまして農作物が被害を受けたということにつきまして、断定的な御返事はなかなかむずかしいのじゃなかろうか、こう思っております。と申しますのは、被害を受けたということになっておりますたとえば千葉の一部あるいは茨城県の臨海工業地帯というふうなあたりでも、非常にいろいろとトラブルが起こっておりますが、そのほかの工場のばい煙等も含まれて被害を受けたものなのか、亜硫酸ガスいわゆる火力発電所から発生する亜硫酸ガスのみによって被害を受けたものかにつきまして、長い間、過去三、四年来紛争があるようでありますが、これについて結局関係の周辺地区の工場群と当該農家との間の話し合いということで、県なり市が中へ入って調整している、こういうふうにいま聞いておる次第でございます。
  205. 相沢武彦

    ○相沢委員 もう一つは、日本では大気汚染による動植物の被害データが少ないようであります。一九六七年七月号の「大気汚染ニュース」では亜硫酸ガス〇・〇一PPMに一年間さらされると、野菜の三六%が被害を受けるということが記録されているのを御存じだと思います。伊達の場合は〇・〇二ないし〇・〇三PPMということになると思いますが、そうなりますと、大体八九%くらい被害を受けるのではないか。そうなってくると、野菜畑はもう使いものにならない。北海道内では有数の野菜生産地、冬期間雪がほとんど積もらないし、そういった点で農民に対する野菜の供給地として非常に大きな役割りを果たしているこの地域の特性的な農業というものが、壊滅的な被害を受けるということが心配されているわけですけれども、園芸局としてもこういった地域への火力発電の進出というものを歓迎されますか、それともお断わりをしたい気持ちですか、率直に御答弁いただきたい。
  206. 荒勝巖

    荒勝政府委員 明らかにこの火力発電所の設立によって大きな被害をもたらすということでありますれば、私たちのほうとしましても相当な意見を出すことになると思いますが、先日来北海道庁とも打ち合わせし、また先ほど環境庁のお話でも、今回設立されるであろう火力発電所のいわゆる亜硫酸ガス防止対策並びにその許容限度というものが、一応国で許容しておりますよりもその半分以下の許容限度といいますか、汚染率が少ないということでありますので、われわれといたしましては、今後の亜硫酸ガスの防止対策を十分に判断しながら、それについてなお意見は申し出たい、こういうふうに思っておる次第でございます。  なお、御存じのように、伊達市周辺は、私たちの所管といたしまして、キャベツの指定産地に指定いたしておりまして、北海道におきます有力な野菜の供給基地であるということは事実でございます。
  207. 相沢武彦

    ○相沢委員 そういった農産物に与える亜硫酸ガスの因果関係というものはこれは非常にむずかしいと思うのです。ですから、実際に被害があらわれてから、ではその被害の原因はどこにあるのだということは、調査してもなおかつその因果関係ははっきりしないというのがこの問題のむずかしさでありまして、ですから、被害が起きてから調査してさえもむずかしい問題なんだから、よけい、建設前にこういった心配のないような調査研究等を進めて、万全の対策をとらなければならないと思うのです。特に農業者を守らなければならない立場、また農業の振興をはからなければならない立場の局長としては、もう少しそういった点に対するきびしい公害に対する姿勢というものを持っていただきたいと思うのです。  伊達市の上空の気象条件というものは非常に複雑だと聞いておりますが、特に隣町の壮瞥町に至る地溝帯には風の収束が起きて、濃度の高い汚染が生ずる危険性が十分にあるということがいわれております。壮瞥町には現在果樹園がありますし、リンゴ、ブドウ、桃その他の各種の果樹栽培が行なわれておりますけれども、特に五月から六月にかけての開花期に亜硫酸ガスに触れると結実しない、こういったような壊滅的な打撃を受けることになりまして、先ほどもお話いたしました志村化工の排煙の影響であろうと農業者の人たちは言っておるのですけれども、やはり果樹に影響が出ている。今回さらに伊達火力が操業を始めたときに、幾ら薄めたからといいながら、どうしても風の廊下みたいなところを伝わってきて、ちょうど壮瞥の果樹園あたりに着地するわけでありまして、これ以上被害が大きくなってはかなわないということが当然の声としてあがっているわけであります。北海道におきましても減反政策が進んでおりまして、壮瞥町では稲作から果樹園経営に転業して国の政策に協力しようという方たちも現実におるわけでございまして、こういった方たちが将来被害を受けた場合には非常に気の毒な立場になる。  こういったことで、気象調査の面で北海道庁と通産省の指導によって北電が調査したといういきさつがあるそうでありますが、どの点を注意しながら調査をされたのか、通産省のほうから御答弁いただきたい。
  208. 和田文夫

    ○和田説明員 お答えいたします。  この公害の事前調査につきましては、われわれのほうといたしましても火力、原子力の立地等にあたりまして、電気事業者に対し、公害防止対策の完全を期するために、事前に十分気象、海象等の調査を実施するよう指導しておるわけでございますが、伊達火力につきましては、昭和四十四年以降北海道電力が気象調査あるいは風洞実験、拡散実験等を実施しておりますが、事前に道庁あるいは通産局等に調査計画を知らせておりまして、調査内容あるいは方法、たとえば測定地点でございますとか、そういう点についていろいろ指導をして、北海道電力が実施してまいったわけでございます。
  209. 相沢武彦

    ○相沢委員 何を御答弁されているのかよく聞こえないのですが、火力発電の場合、多かれ少なかれ大気が汚染されることは必定ですし近隣の壮瞥町にしてもあるいは虻田町、豊浦町、大滝村、こういったところが決議をいたしまして、火力発電に対する反対あるいは北電との公害防止協定の必要性を認めておるわけでありますが、個々にこういった町の当時者が北電との協定の当事者となることよりも、道が責任を持ってその協定の当事者となるということが非常に重要だということもいわれておりますが、この点に対してどういうような指導体制をとられておるのか、この点をお伺いしておきたい、これは経企庁ですか。
  210. 高橋宏

    ○高橋説明員 お答えいたします。  あの電源開発基本計画を電源開発調整審議会に付議するにあたりましては、関係各省それぞれ所掌する事務につきまして検討いたすとともに、地元の意向を確認する窓口といたしまして、都道府県当局の意見を聞いております。この場合、都道府県知事独自の御意見ということではございませんで、関係市町村等、地元の情勢、意向を踏まえた上での都道府県当局の集約的な御意見というものをお伺いして、その了承、同意のもとに基本計画の立案を進めておるわけでございまして、そういう意味で、都道府県が地元の御意見の代表という意味で、私どもは都道府県の御意向を尊重する、そういう立場に立ってやっております。
  211. 相沢武彦

    ○相沢委員 北電との公害防止協定の締結にあたって、燃料の硫黄分を一・〇%前後にするように伊達の場合は要請したわけでありますが、北電は煙突の高さを二百メートルに上げるかわりに、燃料の硫黄分は一・七%という条件を示しておるわけでありまして、これでいくと、伊達市内の亜硫酸ガスの環境汚染は国が定めた環境基準を下回ることは下回ります。しかし、環境基準というものは病理学的に人の健康に対する影響を中心としてきめられているわけで、動植物を保護するための基準にはならない。そこに農民の人たちの不安があるということがいえると思います。  さらに、煙突が二百メートルになった結果、亜硫酸ガスの最大濃度の着地点が標準風速六メートルで二十キロ先になるという計算になりますが、その地点が室蘭市の輪西地区、それから洞爺村に及びまして、現在、伊達市内は当然のこと、周辺地域での不安が広がって、いわゆる広域汚染の問題が非常に浮かび上がっております。そういうわけで、伊達火力発電に対する公害追放の会というのが室蘭市等周辺六カ町村で発足しているようでありますし、特に室蘭市への複合汚染という点か非常に心配でありますので、ここで伺っておきたいのです。  最高基準の亜硫酸ガス〇・〇五PPMの規定から考えますと、伊達火力の場合は一日百三十トンSO2量として、これが〇・〇五PPMに薄められるためには、大気の高さが五百メートル、縦二十キロ、横幅が百キロメートル必要だ、こういうように聞いております。また冬季の北西の風によって亜硫酸ガスが運ばれて、室蘭市の場合は複合汚染地帯となる、こういう予想が出ておりますけれども、現在の北電の規格でいきまして、室蘭市輪西地区の複合汚染が絶対にあり得ない、この断言できるかどうか、環境庁にお尋ねしたい。
  212. 竹内嘉巳

    ○竹内説明員 お答えいたします。  室蘭の輪西町のあたりで、伊達火力が操業いたしましたときの最大着地濃度〇・〇一九という数字を示すというのは先生御指摘のとおりでございます。かつ、先ほど質問にお答えしましたように、室蘭市におきまする環境濃度を見てまいりますると、一般的に年平均値〇・〇二六ないし〇・〇三八というようなS分の数値を示しております。かつ室蘭における産業構造等から考えまして、かなりの浮遊粉じん、いわゆるばいじんの影響もあるわけでございます。  したがいまして、御指摘のように、室蘭周辺において複合汚染のおそれはないか、こういう御質問に対しまして、私とも明確に断言するわけにはまいりませんけれども、決してそのおそれがないとは言い得ないだろうということだけは申し上げられると思います。
  213. 相沢武彦

    ○相沢委員 厚生省来ていると思うのでお尋ねしておきたいのですが、伊達市は北海道の湘南地方といわれまして、道内各地から退職後の余世をここで過ごそうということで、温暖でしかも澄んだ空気を求めて移住してくる人が非常に多いということです。それから、現在虚弱児の施設として優健学園や精薄援護施設としての太陽の園や町立の養護老人ホームなど、各種の社会福祉施設がございます。保健、保養の立場から考えて、こうした地域へ将来亜硫酸ガスの影響が心配される火力発電の建設を、厚生省としてはどうお考えですか。
  214. 松下廉蔵

    松下政府委員 私どもの所管と社会局の所管と両方にまたがっておりますが、一連の問題でございますので、私から御答弁申し上げたいと思います。  ただいま先生御指摘のように、老人の住宅あるいは老人福祉施設、それから特に虚弱児施設等におきましては、現在の最低基準といたしましては、特に環境条件をうたっておりませんけれども、当然、前提といたしましてそういった立地条件には気を配らなければならない。また、現在の地点がそういう配慮をもって選ばれていることは、おそらく先生の御指摘のとおりであろうと思います。したがいまして、そういった地点におきまして、空気が著しく汚染されるというようなことになりますと、亜硫酸ガス等の汚染におきましては、虚弱児施設の中に多い気管支の弱い者等につきましては、悪影響の起こることも考えられるわけでございます。そういう意味におきましては、こういった施設のある地域における大気汚染の防止ということは、私どもといたしましても非常な関心事でございます。今後こういった施設につきまして、そういう大気汚染による被害というようなことのございませんように、私どもも道の担当部局とも十分連絡をいたしまして、何らかの形でそういう被害の起こらないような対策を講じてまいりたい、このように考えております。
  215. 相沢武彦

    ○相沢委員 これは地元のある医師の話なんですが、室蘭の大気汚染地域に住んでいる家庭の子供さんが気管支ぜんそくで非常に困っていらっしゃった。子供の健康のためにということで、空気のいい伊達へ移ってから、気管支ぜんそくの発作等も非常におさまってきた。今度火力発電が建設されて操業されると、どうしてもまた汚染するのではないか。実際にどう影響するかということよりも、心理的に汚染が進むというようなことで発作も起きるということを聞いておりまして、こういった点、医者の立場としても、特に気管支系統の療養目的で伊達に住んでいる人もかなり多いんだし、幾らSO分の薄い石油をたく、あるいは煙突を高くするといっても、現在以上地元の空気がよごれることは当然である。そういった立場からこの地域の胆振西部医師会としても、火力発電建設には反対の立場を表明していらっしゃるようであります。厚生省もこういった観点から、火力発電の立地再検討の意見を具申すべきじゃないかと思いますが、いかがですか。
  216. 松下廉蔵

    松下政府委員 先ほどお答えいたしましたように、社会福祉施設あるいは施設に入っておりませんでも虚弱児あるいはからだの弱い老人等につきましては、できるだけ空気が清浄であることが望ましいことは、御指摘のとおりに考えております。ただ、本問題につきましては、私どもといたしましては、そういった社会福祉施設等の立地条件につきまして、そういった地域における空気の汚染ができるだけ少なくなるようにということを主体にして、指導いたしておるところでございます。具体的な問題につきましては、道の意見あるいは先ほど先生から御質問のありました環境庁等によります、どの程度の汚染が考えられるかというようなものとも関連してくると存じますが、非常に大きな汚染が考えられます場合に、厚生省としての意見も必要になる場合があろうかと存じますけれども、実態につきまして、私どももなおよく調べなければならない点もあろうかと存じますので、今後そういった点は、施設の正常な運営ということを主体にいたしまして、よく検討さしていただきたいと思います。
  217. 相沢武彦

    ○相沢委員 時間が参りましたので、あともう一問で質問を終わりたいと思いますが、いままで述べましたように、一つには道内有数の栽培漁業基地であり、今後の漁場開発指定地域になるというところ、また北海道で温暖であり、有数な野菜生産の地域であるということ、また一つには保養、保健のために自分の余生を送りたいということで、そういった市民が非常に集まっているところ、また各種の福祉施設等があるということで、これ以上空気を汚染するのは最も好ましくない場所、いろいろな観点から考えまして、こういった地域を火力発電の建設予定地として企画をし、また現在地元の意見調整をして、何とか同意書を出したいという道側の態度もどうものみ込めないのです。不審でしょうがない。そういった道の姿勢に対して、やはり国のほうとしても指導助害をする必要があるんじゃないかというように考えます。  また、もう一方、今後の北海道の開発ということを考えた場合に、電力が必要だということはわかります。そこで、通産省の公益事業局のほうにお尋ねしたいのですが、現在道内の電力予備率は約二〇%であります。全国的に適正、必要な電力予備率は八%といわれておりますので、電力需要が予想を上回る上昇を見せたとしても、まだまだそんなに早急に建設を急がなければならないということはないと思います。特に、まず第一段階として、温排水の影響の明確な調査結果が出るまで、あるいは、市内の各反対団体の人、それから周辺の町村等の反対決議等もありますので、それに対する公害防止の協定がきちっと結ばれるまでは、絶対に強行して電調審にかけるべきでないし、また、いままで申しましたように、いろいろな観点から考えて、道内でもうここしか立地する場所はないんだということできめた場所ではない。電力が必要だからどこかへ建てなければならない、建てる場所は、別にさがそうと思えばまだ余地はあると思いますので、そういった態度で臨むように指導監督すべきじゃないか。  それから、これは田中通産大臣と北海道の今後の工業化に伴う電源開発はいかに進めるべきかということで論議をかわしたときに、北海道の場合は、一つは、私も提案したのですが、地熱開発によるところの無公害発電に力を入れるべきだ、北海道の美しい自然をこれ以上よごしてはならないということです。もう一つは、産炭地を守るための石炭専焼火力を鋭意検討中であるということを大臣はおっしゃっております。そういった点で、北海道の電力については、石炭専焼火力あるいは地熱発電の開発等総合的に検討したい、こうおっしゃっておるのですから、いまここでいろいろと不合理な条件を持った伊達地域に火力発電を無理押ししてあわてて建てることがないように、もっともっと十分に検討してやるべきではないかと思いますが、地熱開発に対して前向きに検討すると言われたその後の状況はどうなっておるのか、それから北海道の総合的な電力の開発についてどう具体的に進められておるのか、この点を重点的にお答えいただきたいと思います。
  218. 和田文夫

    ○和田説明員 北海道地区の電力需要も年々ふえてまいりまして、大体年に一〇%を少し上回るような増加の趨勢にあります。現在は、先生御指摘のとおり、予備率は約二〇%近くございますが、北海道は本州方面と違いまして、ほかの地区と連携がございませんので、電気を安定的に供給するためにはどうしても予備率が二〇%近く要る、そういうような状況でございます。それで、たとえば数字的に申し上げますと、四十九年に至って火力が入らない場合には予備率が五%くらいに落ち込むということで、非常に新しい火力電源が必要なわけでございます。それから四十九年から五十一年の三カ年に、いま着手しております水力のほかに火力の電源が約七十万キロぐらい必要になってまいりますが、この電源立地につきましては、道全体の電力需要の動向でございますとか電力系統の信頼度などを考慮いたしまして、電力の需要が最も集中しております道南地区に立地することが最適と考えられております。四十五年、当時の伊達町から誘致もありましたので、それを受けて計画地点として決定してまいったわけでございます。現段階におきましてはいろいろ御指摘いただいていたようなことがありますが、地元との調整もかなり進行しておりまして、一日も早く地元の了解が得られて計画の推進がはかられるということを、われわれとしては北海道の電力の安定供給という面から期待しているわけでございます。  それから先ほどお話がありました地熱開発、石炭火力等の問題につきましても、前向きでいろいろ検討しておりますが、もし計画を決定いたしましても、着手しましてから非常に年月がかかりますので、とりあえずのここ二、三年の電力需給には間に合わない、そういうのが現状でございます。
  219. 相沢武彦

    ○相沢委員 電源開発の問題につきましては、また商工委員会等で論議をかわしたいと思います。  本日は以上で終わります。
  220. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 津川武一君。
  221. 津川武一

    ○津川委員 政府は、米の需要は今後も減少の傾向をたどるが、昭和五十年代にはその減少の傾向も鈍化して日本型食生活のパターンができ、その状態において今後良質米の供給をふやして完全自給をやるというふうな方針をとっておるようでございます。私たちもこれは異議のないことでございます。  そこで、きょうは青森や北海道の状態を例にして、良質米の供給をふやして完全自給するという問題に対して少し質問してみます。  良質米ということを青森県などではうまい米というふうな形にとって、この間、食糧庁のグルーピングで五つの段階で北海道と青森の米が五等になりました。そういうこともきっかけになって、ここでは盛んにムツニシキなどという品種の奨励を強力にやっております。その減収がくるので、減収補償的な意味をも兼ねてやっておりますが、農民はこれにばちっともついていっておりません。県が支度をしてあげたムツニシキなどの種がうんと余ってしまったのであります。農民は、政府と県のいうことを聞くとまただまされるから、何でも逆にいくといままでよかったから、こういう気持ちも手伝っているようです。私が実際に青年米作篤農家に集まってもらって懇談して、ムツニシキなどに対してなぜそのように農民が反発するかと聞いたら、一つには、十アール当たり百キロ前後、一反歩一、二俵の減収が出てくる。二つ目には、冷害に弱い。昨年など北海道、東北でひどい目にあっているのもそのためだ。三つ目には、たけが長く、茎が弱く倒伏して、せっかく金をつぎ込んで買ったバインダーがきかない。その結果、せっかくお金を出した土地基盤整備の効果が出てこない。こういうことであります。四つ目には、非常に手数がかかる。たとえばうんといいムツニシキをつくろうと思えば、一年に十回くらいに分けて肥料をやらなきやならぬ。反対にレイメイ、フジミノリなどでいきますと、二回くらいの施肥でよろしい、こういうことになっているのです。  そこで、これが良質米なのかという問題なのです。政府もこのような米を農民に一生懸命すすめるのかどうかということが一つ。もしかりにすすめるとすれば、減収分の補償をするとか、ムツニシキなどの持っておる弱点が克服されたような新品種を改良してつくってからなら私はすすめてもよいと思うのですが、これが質問の二点でございます。  時間がきわめて制限されておりますし、全体を話したほうが答えやすいと思いますので、次に進みます。  そこで、青森県でも北海道でもそうですが、実際農民のつくっておるのはレイメイだとかフジミノリなどの品種でございます。なぜこういうふうになるかということをもう一回繰り返しますと、ムツニシキなどより反収で一、二俵多くあがる、倒伏しない、バインダーがきく、基盤整備をしたあとそのまま使える、手数が省ける、こういう点で実際にレイメイなどをつくっておるわけであります。一方、消費者の側から見れば、高くともうまい米を求める人もかなりありますが、一方、多少味は落ちても安い米というので、いまレイメイなどば仕分け米として東京で十キロ千七百円前後するお米として消費者からかなり歓迎されております。  そこで、日本の農業を考えたときに、ムツニシキなどの手数のかかる米をつくれる自家労働力が余っておる専業農家は非常に少なくなっておる。日本の農民の生活の根拠は、農業外収入にたよることが非常に多くなって、兼業農民になっております。こういう兼業の中では出かせぎ者がたくさん出ております。この人たちがつくれる米とすれば、ムツニシキなどの倒伏してバインダーがかからない、手数のかかる稲作ではなくて、レイメイやフジミノリのように手数のかからない、機械化のできる、そういう品種だと思うのでございますが、北海道や青森県の、特に青森県の東半分などにおいてはレイメイ、フジミノリなどが非常に重要な品種として尊重されなければならないのではないか。いま北海道や青森県の現状を見ますと、ムツニシキが花形、いい品種でいい人で、レイメイ、フジミノリなどは悪ものだ、こういうふうな評価を受けております。実際、試験研究に当たった人たち、これを開発した研究者たちに聞いてみますと、血と汗の結果できたもので、ここのところに非常に適切な米を、良質のものとしないで排除されるのは非常に心外だ、こんな米がどんどんできるかどうかということはかなり疑問がある、こう言っておりますので、レイメイなりフジミノリなどをやはり残して、あの北海道、東北におけるかなり重要な品種として考えていかなければならないのではないか。  この間、秋田の人たちの意見を聞きましたら、秋田もトヨニシキ、チヨニシキだけではあぶない、こういうふうな意見がかなり出ておりますので、こういう評価はどうするかということ。  それから、これと関連して研究者に聞いてみますと、耐寒性、耐冷性の茎の短い、かたい、バインダーのきく、作業のしやすいレイメイなどから味のいい米をつくることの試験研究を一生懸命やってみたいが、必ずしもこの体制で政府からの援助は十分でない、こういう話でございまして、こういう品種の改良をしていくことこそに農業の基本姿勢があると私は思いますので、この点を答えていただければと思います。
  222. 川田則雄

    ○川田説明員 稲作の品種といいますのは、気象条件、立地条件というものが大きく左右いたしまして、どこでもどの品種でもできるということでございません。やはり気象条件、立地条件のもとで適当な品種ということで推進をいたしております。そういうことで、たとえば新しい品種を採用いたすということになりますと、御承知のように、品種は交配いたしましてから奨励品種になるのに約十年かかります。それで、私たちといたしましては、十年目で奨励品種になる前に、六年目くらいからその品種を取り出しまして、奨励品種決定調査事業ということで試験場で二カ年間栽培して、その特性を把握する。と同時に、農家の圃場で二カ年間委託栽培をやって、農家の人につくってもらって、その反応を見た上で奨励品種決定の審議会にかけて奨励品種をつくる、そういうような手続をとってやっております。そういうことからいたしまして、奨励品種ということで栽培に移すにつきまして一番重要なことは、耐肥性、それからその次は耐病性、それともう一つは収量でございます。その三つの面で代替し得る品種ということで、これなら十分である、さらにそれよりもいい特性が備わっているということが最も重要なことで、そういうことを確かめた上で奨励品種としてある地帯を限って代替していく、そういうようなやり方をやっております。ですから、奨励品種としてかわったものは、先ほど申しました、まず基本的な性質は同じかそれ以上、それにさらにいい性質が備わったものというようなことでやっております。  いま先生から御指摘がございましたムツニシキでございます。これは青森県の藤坂の試験地で育成されたものでございます。四十六年度から奨励品種に決定いたしております。決定するにつきましては、先ほど申し上げました農家の委託までも含めた四カ年の結果やっておるわけでございますが、ムツニシキの特徴としまして、耐冷性がフジミノリ——これはねらいはフシミノリの代替でございます。そういうことでございますから、耐冷性がフジミノリと同等またはそれ以上、フジミノリよりは若干強いのではないかと私たちは思っております。それからもう一つは、草たけはフジミノリよりは短い。それから生産量はフジミノリと同等またはそれ以上。そういうことで、フジミノリ、また場所によってはレイメイに代替し得るものではないか、そういうことで推進をはかっておりますが、これは御承知のように、生育期間が三日ほどフジミノリ、レイメイより長いわけです。そうしますと、気象条件が、たとえば秋に早冷が来るようなところでは、三日間というのは非常に大きゅうございます。そういうととでございますから、レイメイ、フジミノリにどこでもかわるというようには私たちは考えておりません。そういうことで青森県といたしましては、黒石を中心とした地帯でムツニシキをレイメイ、フジミノリとかえたい。品質のほうはフジミノリよりはるかにいいというふうに理解いたしております。  ですから、青森県でも現在計画を立てておりますが、四十六年度は千七百ヘクタール、それから四十七年度は二千三百ないし二千四百ヘクタール。それから今後の普及の目標ということにつきましては、当初私たちはこの品種を採用するときに、黒石を中心とした地帯で約一万ヘクタールくらいに考えておりましたけれども、青森県は先ほど申し上げましたようなことを考慮して、三千ないし五千ヘクタールを目標にして、黒石を中心としてこの品種を普及していきたい、そういうぐあいにいっております。  いずれにせよ、ただ品種をかえるというときに一番注意しなければいけないことは、品種にはそれぞれの個性がございまして、特に肥料に対する反応が品種によって若干違うわけでございます。そういうことで、フジミノリにかわるムツニシキの場合も、先生先ほど十回というお話もございましたけれども、そのように回数が増加するというようには私たちは考えておりませんが、三日ほど熟期がおそいということを考慮いたしますと、窒素肥料を入れ過ぎますと、どうしてもまたおくれる可能性が出てきます。そういうことで、私たちは、追肥のほうを若干減らして、元肥をもう少しふやした施肥をして、農家の方にその施肥の特徴を理解してもらうということを普及事業その他で一生懸命やりたいと思っております。特にあそこはフジミノリが非常に一般的な品種でございましたから、大体フジミノリと同様につくってとれる品種だというように私たち理解し、普及指導もそのように進めております。
  223. 津川武一

    ○津川委員 あなたたちはそのようなことも報告を受けているでしょう。試験の結果です、試験研究の篤農家的な形ではそうなっておるが、いまあなたもはしなくも言われたとおり、二年間農民の実際の圃場に移す。移してみたのはだれか。これは専業的な篤農家です。ところが、いまあなたが話したように、兼業をやっておるような農民たちにはとてもできるものではないという実態を見ていただかなければならぬ。このことは、非常に大事な話を聞きましたので、私もほっておけなくなりました。いまあなたが言われた四十六年に千七百ヘクタール、四十七年に二千三百ヘクタールないし二千四百ヘクタール、この根拠については私はここでは言いません。これは思惑あってのことであって、いまここでこれを論議しません。昨年度、四十六年度にムツニシキをつけた人たちは、ことしやめています。なぜここのところに問題があるか。これはあなたが言うとおり、東半分の三沢や下北においてもムツニシキという声が政府のほう、県のほうでは出る。ここでは四〇〇%の減反をやっている。ムッニシキではとてもいけない。といって、政府にたてついてレイメイをつくるという気持ちもないので、減反をやっておるわけです。そこで、この点をもう一度見ていただかなければならぬ。そうしてこのような形でかなり強引に進めていることについてどう思うかということです。それから、あの地における適種はムツニシキよりもレイメイじゃないか。この点でレイメイをどう考えておるかということをもう一度答えていただかなければならぬ。  もう一つ、あなたもはしなくも言っておるように、十年ないと新品種ができない。この世代更新です。いま試験場に行ってみますと、一年に二世代しか更新できないでいる。技術者が言っているのは三交代、願わくば四交代できたらどんなに農民の要求に合うだろう。このままで十年また新しくフジミノリをつくるためにムツニシキをやるんだったら、これはとてもできるものでもない。いまならばレイメイはそういう形で消費者にもいいからやるが、これをまたうまい米にするについても十年という期間がかかるので、非常に大きく望んでいることは、せめて世代の三交代をいけるようなかっこうで国の援助、補助がないか、この点で非常にさびしいというわけです。この点もあなたは答えてくれない。レイメイに対しては、はしなくもさっき出ているように、自家労働力を持つ専業農業のできる人たちに対してはよろしい。あなたはその専業農家の立場から答えている。試験研究の立場から答えている。しかし、兼業農業になって兼業収入を得なければならぬ。その兼業農業の中には出かせぎもある。そこでお年寄りたちがやらなければならぬ農業となってくると、ムツニシキにこんな問題が出てきている。これをどう考えるかということです。もう一度答えていただきます。
  224. 川田則雄

    ○川田説明員 下北のほうのレイメイの問題でございますけれども、私たちは品種の導入につきましては、これも一番先に申し上げましたが、気象条件、立地条件によって品種というのはおのずから限界があるわけでございます。ですから、そういう立地条件で最も適した品種というのが奨励品種であり適品種である、そういうように私たちは考えております。  それからもう一つは、先生からお話しがございましたたとえば兼業農家の問題、兼業農家はつくりにくいじゃないかという問題はございます。ところが、これは御承知のように、稲作が非常に高い水準になってきておるわけです。日本の稲作というのは、御承知のように、非常に精緻な稲作技術でございますから、手抜きしても何しても収量が上がるというような稲作体制になっておりません。ですから、兼業農家の方がいままでの慣習でつくるということで高い水準を維持することは、なかなかむずかしいのではないかと思います。そういうことで、やはり農村の中では中核的な農家になる人あるいは普及指導、そういうようなところで、ある地域についての技術の平準化をはかるとか、そういう手当てを伴いながら高い稲作水準でつくるというような体制の面も同時に並行して考えながら、技術水準を維持することにつとめなければいけないというように私たちは考えております。
  225. 津川武一

    ○津川委員 ちゃんと答えてくださいよ。試験場における世代更新のためのその点も答えていただかなければならぬ。  それからもう一つの問題は、専業農家的な家内労働力をたくさん持っておるそういう篤農家はムツニシキをよくやります。それから試験研究に従事した人、ムツニシキとよく取り組んだ人たちは、ムツニシキは滅亡する品種なんだと、これは試験研究者も言っています。これをいま農林省や県があげて応援するのは一体何なのか。ことば悪く言うと、一粒でも減収になる品種ならば、農民が犠牲を受けても進めるのかという、そこまでの声が出ているのです。この点が認識されているかどうか。一粒でも減収になればというのは答えていただかなくてもいいですが、ムツニシキの試験研究の過程における滅びゆく形の状態なんだということを覚えて進めているのか。覚えてなかったら、後刻また私に報告してくれてもよろしい。  それからムツニシキに対する評価は、そのような篤農家の評価であるということ。篤農家の実施成績であるということで、普通の兼業農家が出かせぎするような、賃労働をするような人たちの認識ではないのだが、その点はどうなのか。両方に対しての認識なら私は引っ込みます。あなたたちの手にしている報告は何であるか、もしわかったら、この点は調べて後刻にでも答えてくれてよろしいが、試験研究における世代更新のための援助、もっというならば、北海道における米の耐冷性、増収性の研究は北海道の試験研究所に行ってみると、いまやる気がなくなっている、こういう状態に対する試験研究の援助のあり方というものを話していただきます。
  226. 加賀山國雄

    ○加賀山政府委員 試験研究のお話でございますので、私からお答え申し上げます。  先ほど農政局の川田参事官からいろいろお答えをいたしておるわけでございますが、品種の改良というのはたいへん時間がかかる話でございます。そのためにわれわれのほうといたしましても、一年間に二代、三代、できるだけ世代をたくさん得ることによりまして品種の育成の期間を短縮できますので、そのために必要な、たとえばファイトトロンみたいなものを寒冷地のほうの研究機関に援助いたしまして、つくるようなことも過去やってきております。これは品種育成のかなり基本的な問題でございますので、私たちといたしましては十分に考えてまいりたいと思っております。  それから、先ほどからムツニシキのお話がだいぶ出ておりますので、私、ちょっと技術的なポイントを御説明いたしておきますが、ムツニシキは、これまでつくられておりましたレイメイあるいはフジミノリに比較いたしますと、先生ただいま御指摘のような若干の問題がまだ残っていると私は思います。ただ、問題は、耐冷性であり、かつ良品種と申しますか、いい品質を入れるというのはブリーディングのほうでは非常にむずかしい技術になっておりまして、これまでは耐冷性と多収というのは、どうやら技術的に結んでまいりましたが、それに良質のものを入れることに成功いたしました一つの最近のいい例がムツニシキであったわけでございます。確かにレイメイ等に比べますと、耐肥性と申しまして、肥料等を多投いたしますと倒れるという問題がございまして、先ほど指摘のお話、たいへん参考になったわけでございますが、やはり農家の方は、これまでのレイメイと同じように、肥料をおやりになってたくさんとろうとなさっていると思います。そうすると、レイメイに比べましてどうしても倒伏しやすいという問題が残っておるわけでございます。  それで、ただいま私のほうといたしましては、そのムツニシキにかわる新しい品種の育成を続けております。PIのナンバー5というのにふ系の九十九号というのをかけまして、これがだんだん品種になりつつあるわけでございますが、これはレイメイの血を入れておりまして、またそのPIのナンバー5のほうには外国等の遺伝子を入れまして、ただいまムツニシキで問題になっておるような点もカバーできるような品種の育成をやりたいということで努力を続けておりまして、先ほどお話しの世代の交代を早めるということによって、これまでのように十年とか期間をかけないで、いい品種が出るような努力を特に藤坂の試験地でやっているわけでございます。そういう点で農家の方々の御要望にこたえるような品種をつくるように努力してまいりたい、かように考えております。
  227. 津川武一

    ○津川委員 ムツニシキはそういうかっこうで専業農家、篤農家にはいい品種だと私は思っているわけです。そこで、県当局のやり方は、これを非常に高くいうために、レイメイが悪者にされて、レイメイをつくっている人たちが何か国や県の方針に反しているみたいな感じを持っているわけなんです。そこで、レイメイをどう評価しているかということをもう一回答えていただきます。
  228. 川田則雄

    ○川田説明員 レイメイは、御承知のように、フジミノリをコバルト照射いたしましてできた品種で、フジミノリの持っている弱い点をカバーした品種であり、特に耐肥性が強い。そういうことではおそらく耐冷性品種としては最も進んだものだというふうに私は理解いたしております。  そういうことで、先ほども申し上げましたけれども、品種は限界を越えて裁培をすることはとうていできないことでございます。やはり現在その地帯で最も適したものを奨励品種にいたしております。奨励品種というのは、奨励すべき品種であって、これは何もつくっていけない品種ではない。そういう意味から、場所によってはレイメイというのは非常にいい品種だ、私はそういうふうに理解しております。
  229. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時二十八分散会