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1972-06-06 第68回国会 衆議院 農林水産委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年六月六日(火曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 藤田 義光君    理事 仮谷 忠男君 理事 熊谷 義雄君   理事 松野 幸泰君 理事 三ツ林弥太郎君    理事 渡辺美智雄君 理事 千葉 七郎君    理事 斎藤  実君 理事 合沢  栄君       江藤 隆美君    小沢 辰男君       鹿野 彦吉君    小山 長規君       中尾 栄一君    藤本 孝雄君       別川悠紀夫君    安田 貴六君       山崎平八郎君    角屋堅次郎君       田中 恒利君    芳賀  貢君       長谷部七郎君    松沢 俊昭君       美濃 政市君    相沢 武彦君       瀬野栄次郎君    小宮 武喜君       津川 武一君  出席国務大臣         農 林 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         農林政務次官  伊藤宗一郎君         農林省農林経済         局長      小暮 光美君         農林省蚕糸園芸         局長      荒勝  巖君  委員外出席者         国税庁直税部所         得税課長    早田  肇君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 委員の異動 六月一日  辞任         補欠選任   津川 武一君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   東中 光雄君     津川 武一君 同月二日  辞任         補欠選任   中尾 栄一君     宮澤 喜一君   別川悠紀夫君     國場 幸昌君 同日  辞任         補欠選任   宮澤 喜一君     中尾 栄一君   國場 幸昌君     別川悠紀夫君 同月六日  辞任         補欠選任   中澤 茂一君     芳賀  貢君 同日  辞任         補欠選任   芳賀  貢君     中澤 茂一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  農業災害補償法及び農業共済基金法の一部を改  正する法律案内閣提出第九六号)(参議院送付)  派遣委員からの報告聴取      ————◇—————
  2. 藤田義光

    藤田委員長 これより会議を開きます。  まず、先般、農業災害補償法及び農業共済基金法の一部を改正する法律案審査のため、九州地方及び東北地方の各地に委員を派遣いたしたのでありますが、この際、派遣委員より、それぞれその報告聴取いたします。第一班、松野幸泰君。
  3. 松野幸泰

    松野(幸)委員 第一班は、去る五月三十一日から六月二日までの三日間、熊本大分の両県に派遣され、現在、当委員会において審査中の農業災害補償法及び農業共済基金法の一部を改正する法律案に関連して、現地の実情を調査してまいりましたので、この際、調査内容を簡単に御報告申し上げます。第一班の派遣委員は、江藤隆美君、山崎平八郎君、千葉七郎君、美濃政市君、それに私を加えた五名でありますが、藤田委員長瀬野栄次郎君、合沢栄君が現地参加委員として調査に参加されました。  最初に、調査日程について申し上げます。われわれは、五月三十一日、空路熊本市に入り、まず空港の近くにある熊本果実連果汁かん詰め工場を見学し、引き続き熊本県庁において、知事はじめ県当局者並びに農林漁業団体代表者等から説明陳情聴取し、さらに河内町におもむき、ミカン生産団地について現地調査を行ないました。翌六月一日には、阿蘇谷の土地改良事業調査を行なった後、大分県に入り、久住町の大分草地畜産開発センター農事組合法人塚原牧場等を視察しながら別府市に到着、宿舎において知事はじめ大分県当局者並びに農林漁業団体代表者等から説明陳情聴取いたしました。そして翌六月二日には、ミカン新興産地である国東地方の杵築市と安岐町において現地調査を行ない、すべての日程を終了いたしました。  今回の調査の主目的は、農業災害補償法及び農業共済基金法の一部改正案審査のための現地調査ということでありますが、先述の日程でもおわかりのように、われわれといたしましては、せっかくの機会でもありましたので、主目的以外のことについても現地調査を行なってまいりました。  また、われわれ農林水産委員現地調査におもむいたということで、両県当局並びに農林漁業団体代表者等から、当面する農林水産問題について広範にわたる要望陳情を受けたのであります。  そこで、第一班といたしましては、それら全般の詳細にわたって御報告申し上げるのが筋道かと存じますが、時間の関係もございますので、その詳細については割愛させていただき、第一班の報告内容といたしましては、農業災害補償法及び農業共済基金法の一部改正案に関する調査内容、特に現地要望事項中心に御報告申し上げ、その他の問題については、両県から共通して要望されました問題と、特記すべきと思われる事項のみに限定して御報告申し上げることといたします。  以上御了承いただきまして、まず、農災法改正案についての現地調査概要を申し上げます。  熊本大分両県の県当局並びに関係団体は、果樹農業の健全な発展をはかるための制度を創設しようとする本改正案提出の意義を高く評価するとともに、改正案は、果樹農業者はもとより、関係者が多年にわたって願望してきたものでもあるので、早急にその成立を期してほしい旨の要望をしておりました。しかしながら、一面において、県当局関係団体あるいは試験実施地区関係者等から、法案成立後の制度運用面もしくは今後における制度改善の課題として、われわれに対していろいろの注文もございました。  以下、それらを集約して御参考に供しますと、果樹保険臨時措置法に基づく試験実施によって生じた事業不足金については、国庫補てん措置を講ずるよう配慮されたいこと、収穫共済金支払い割合をできるだけ引き上げ補償内容の充実をはかられたいこと、原案によると、農家掛け金負担が高いので、共済掛け金に対する国庫負担割合をさらに引き上げられたいこと、果樹共済事務費については、果樹特異性から引き受け並びに損害評価等に多大の労力を要するので、職員の設置費を含めて国庫補助を大幅に増額して交付されたいこと、第五に、無被害農家に対する無事戻し制度を確立されたいこと、等であり、また、熊本県の団体からは、特にクリを制度対象品目に加えられたい旨の要望がありました。  これらの要望事項につきましては、今後における法案審議を通じて政府考え方を十分明らかにしておくべきことは当然でありましょう。  以上で農災法改正案に関連した調査報告を終わりまして、以下、今回の調査中においてわれわれが聴取いたしました陳情要望等の中から特記すべきもののみに限定し、この際、御報告申し上げることといたします。  まず、熊本大分県当局から、久住飯田地区広域農業開発事業等について、特別立法措置を講ずる等してその推進をはかられたいこと、祖母、椎葉、五木山地規模林業圏開発について、すみやかに本事業に着手できるよう措置されたいこと、以上二点が両県の共通した要望事項としてわれわれに強く訴えられ、また、両県の農業団体からは、牛肉、オレンジ果汁等自由化を絶対に阻止するとともに、輸入ワク拡大も行なわないこと、第二、農業金融制度が複雑化し、金利体系も現状に合わないので、制度金融を再編整備して、融資条件を抜本的に改善されたいこと、第三、四十七年産生産者米価引き上げをはかられたいこと、等について強い要望があり、また、両県の林業団体から、外材の輸入について調整措置を講じられたいこと、第二、林業災害補償制度を確立されたい、等の要望があり、さらに、大分県当局関係住民代表者から国東用水事業早期実現についての陳情があり、そして、熊本漁連代表並びに天草地区漁協代表者等から、長崎県漁船の違法操業を厳重に取り締まってほしい旨の陳情が、それぞれなされました。これらの陳情要望等に対し、われわれとしては十分な検討を約束してまいった次第であります。  以上をもちまして、簡単でありますが、第一班の調査報告を終わりますが、終わりに、今回の調査に対して絶大なる御協力を払われました熊本大分の両県当局九州農政局その他関係者各位に対して、衷心より感謝の意を表明する次第であります。(拍手
  4. 藤田義光

    藤田委員長 ありがとうございました。  次に、第二班の報告仮谷忠男君にお願いいたします。
  5. 仮谷忠男

    仮谷委員 第二班は、五月三十一日から六月二日までの三日間、山形県及び福島県に派遣され、果樹保険臨時措置法に基づく保険実施実態並びに果樹農業振興現況等中心として調査をしてまいりましたので、その内容を簡単に御報告申し上げます。  派遣委員は、森下元晴君、長谷部七郎君、斎藤実君、小宮武喜君、それに私を加えた五名でありますが、山形県においては鹿野彦吉君が、また福島県においては地元選出の天野、亀岡、棚辺三君がそれぞれ現地参加されました。  初めに、山形県について申し上げます。  まず、山形市内本沢地区において、稲作転換特別対策事業の一環として、昨年四月より事業実施が行なわれ、すでにその八割以上の造成を終わっている総事業面積四十三ヘクタール、一団地平均四ヘクタールのブドウ団地について現地調査を行なった後、山形県庁において安孫子山形県知事はじめ関係係官から県農業事情概要及び要望事項につき説明を受け、県関係団体代表者からそれぞれ要望事項聴取を行ないました。  山形県における果樹生産は、カキ桜桃西洋ナシが全国一であるほか、リンゴブドウ桃等そのいずれにおいても全国生産の高位を占めているのでありますが、その粗生産額は、農家栽培面積が、比較的規模の大きいリンゴブドウを除き、その半数以上が十アール未満といった零細経営の結果、同県における農業生産額の約一割強を占めているにすぎません。このため、現行の果樹広域主産地形成事業等採択要件に満たないこれら果樹生産農家から採択基準緩和等要望が行なわれたのでありますが、その内容作業用農道設置あるいは省力化のための機械の導入等であることにかんがみ、別途の施策を考慮すべきではないかと思った次第であります。  また、最近の同県における農家の一般的な傾向として、農家経営の安定をはかるため、果樹農業等を受け入れる農家が増加していることに関連して、果樹価格補償制度早期に確立するとともに、果樹共済本格実施について、カキ桜桃等共済果樹に加えること、果樹災害発生態様にかんがみ、農作物共済と同様の二割てん補方式について検討を行なうこと及び果樹共済にかかる事務費国庫補助等々を内容とした要望がありました。  農政一般については、県当局説明の中で、特に国に対して、農業基盤整備事業促進をはかるため、関連予算の大幅な増額とともに、国庫補助率引き上げを行なうこと、土地改良事業通年施行にかかる水田に対する米生産調整奨励補助金交付期間を延長すること等について要望が行なわれました。  次に、福島県について御報告いたします。  福島県では、木村県知事はじめ関係係官より、主として、県下における果樹生産及び果樹保険試験実施概況等について説明を受けました。  福島県は、従来からその気象条件により各種落葉果樹の主産県として知られ、今日では、同県における農業全体の粗生産額の五割以上がこれらの果樹生産によって占められているのであります。しかし、同県におきましても、一戸当たりの栽培面積はその八割以上が五十アール未満となっているため、いわゆる複合経営が行なわれ、生産性の向上を阻害する大きな要因となっているのであります。このため、県当局地元農業団体等におきましては、国による農業構造改善事業による果樹園新規造成をはじめ、県単事業として果樹集団産地造成事業果樹基幹産地開発育成事業等を実施し、集団的な産地づくりに積極的に取り組むとともに、さらにその施設近代化をはかるため、国の助成により定置配管の敷設、スピードスプレヤーの導入選果場果実冷蔵施設等設置を行ない、将来における農家経営安定化を目ざしているのであります。  また、同時に、県当局並びに関係団体代表者より各種要望がなされたのでありますが、そのうち、果樹については、果樹農業増加傾向を背景として、果樹共済制度早期成立並びに価格補償制度の確立について、農政一般に関連しては、米の生産調整について協力特別交付金奨励補助金等増額をはかること、広域農業総合開発事業促進等々の要望が行なわれました。  以上の説明要望等聴取した後、福島市内笹木野地区において、主としてナシについて試験実施実態等調査いたしました。  また、現地では、特に地元代表者より、昨年のナシ被害に際して、果樹保険関係農家の経営安定に寄与することの大きかったことに対して感謝の意が述べられるとともに、その本格実施早期実現が強く要望されたのであります。  以上をもって、調査報告を終わりたいと思いますが、最後に、このたびの調査にあたり御協力を賜わりました山形県、福島県、その他関係者に対して、心からお礼を申し上げる次第であります。(拍手
  6. 藤田義光

    藤田委員長 以上で、報告は終了いたしました。  派遣委員各位の御労苦に対し、心より感謝申し上げます。      ————◇—————
  7. 藤田義光

    藤田委員長 農業災害補償法及び農業共済基金法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中恒利君。
  8. 田中恒利

    田中(恒)委員 昭和四十二年に果樹保険臨時措置法ができまして、試験実施を経まして、ようやく農災法の一部改正の形で果樹共済実現をされようとしておるわけであります。   〔委員長退席三ツ林委員長代理着席〕 本来、果樹問題は地域的に非常にアンバランスがありますし、市場価格との関係あるいはこれまでの統計資料の取り扱いの問題などでたいへんむずかしい条件がたくさんありますだけに、提示されております諸事項につきましてもいろいろ不明の点もたくさんございますので、それらの点について若干お尋ねをいたしますが、大臣がお見えになっておりませんので、二、三大臣に直接お尋ねをいたしたい事項を留保して、事務当局お尋ねをいたします。  まず最初に、果樹農業振興特別措置法に基づく基本方針改定がなされたわけでありますが、この基本方針改定にあたっての政府考えというか、この改定をめぐって特に問題になりましたような点を、簡単でけっこうですから、御報告をいただきたいと思うのです。
  9. 荒勝巖

    荒勝政府委員 先般、果樹農業基本方針改定をいたしまして、今後向こう十カ年間の果樹需要動向を定めまして、その動向に即しまして果樹植栽計画方針を定めた次第でございます。この基本方針に基づきまして、おおむね本年度中に各都道府県ごと果樹基本計画を立てまして、そして植栽を進めていくことになっておる次第でございます。  この基本方針改定作業が、過去二年間かかりまして作業をした次第ございますが、基本的には、ミカン等かんきつ類が前の計画に比しまして相当植栽が進んだということにつきまして、今後来たるべき十カ年間にどうこれを見るかということが改定の際の一つ問題点でございました。  それからさらに、ブドウとか桃とかいう落葉果樹の系統につきましては、前の計画に対比いたしまして、植栽の実績が非常に劣っておったということで、これをさらに今後十カ年間にどのようにして需要に即応したような形で植栽を進めていくかということが基本的に問題になった点でございます。  さらに、今回の改定で問題になりましたのは、今後果樹自由化の見通しをどう見るかということで、一応われわれといたしましては、農林省の姿勢といたしまして、これ以上オレンジ自由化はいたさないという方針にのっとりまして、今後自由化は認めないかわりに、グレープフルーツ等すでに自由化されたものにつきましては、なお今後若干輸入量増大があるものと見た次第でございます。  さらに問題点といたしましては、加工果実需要というものにつきまして、今後従来とは考え方を改めまして、さらにジュース等需要動向が非常に進むのではなかろうかということで、これらの加工果実需要を非常に多く見たという点が問題点でございました。
  10. 田中恒利

    田中(恒)委員 いま御報告をいただいたわけでありますが、御報告の中にもありましたように、私どもも前回の基本方針と今回改定された方針を見ますると、果樹については相当自給度というか、自給方向がさらに強化をされていく、こういう数字になってきておると思うのです。  そこで、問題は自由化の問題でありますが、自由化の問題については、いまの局長の御答弁をお聞きをいたしますと、この四、五年来の傾向に比べて、今後政策方向としても、需要に対応する生産体制というものは一そう強化をされるという計画なりあるいは判断を持っておられるわけでありますから、自由化についてはこれまでよりも果樹問題についてはきびしくなっていく、きびしくなるというのは、自由化というのをだんだんしなくなっていく、こういうふうに理解をすべきだと思うておりますが、そういうふうに理解してよろしいですか。
  11. 荒勝巖

    荒勝政府委員 ただいま御答弁申し上げましたように、いま非自由化品目として残っておりますのは、オレンジ並びにオレンジジュースが非自由化品目として果実の貿易問題としては残っておるわけでございますが、われわれといたしましては、これにつきましては、現在のところ、自由化する考えを持っていないということで作業をした次第でございます。
  12. 田中恒利

    田中(恒)委員 自由化をする考えはないということはしばしば聞いておるわけでありますが、しかし、傾向として自由化ワク拡大していくという流れが出ておることも現実だと思うのですね。そこで、いまお話しになったように、ミカン等についてはむしろ生産を抑制するといえばあれですけれども、第一次の基本計画の際に、従来以上に生産が伸びてきたので、そこで今回は多少そういうものはある意味で押えるというか、その伸び率はやっぱり低めていく、こういう計画になっております。落葉ブドウ桃等はむしろもう少し力を入れていく、こういうことになっておりますだけに、あるいは加工ジュースの問題にしても、いまお話しのように、特に需要増ということを見込んで対策を立てるということでありますから、私は自由化ワク拡大というものについても、今回の果樹基本方針を見てみますると、これまで以上に自由化ワク拡大というものをすべき余地がなくなっておる、なくするという政策意図のもとにこういう方針が組み立てられたと考えておるわけでありますが、この点はいかがでしょう。
  13. 荒勝巖

    荒勝政府委員 オレンジ自由化につきましては、先ほども答弁申し上げましたように、自由化ということは考えていない次第でございますが、ただ、オレンジ等自由ワク拡大ということにつきましては、われわれといたしましては、やはりオレンジに対する需要国民所得増大に伴いまして相当強いものもありますので、これにつきましては、需要動向に即しまして、これは弾力的に対処してまいりたい。その際、当然国内産ミカン類に対する悪影響を及ぼさないような形で輸入ワク拡大は弾力的に対処してまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  14. 田中恒利

    田中(恒)委員 局長、いま言われたように、ミカン等については、この改定の原因としては伸び過ぎた、予想以上に、政府考えておった以上に大きくなっていったという前提があるでしょう。これを今度の改定では多少、需要に対応する程度に押えるといったらあれですけれども考えていかなければいけない、こういう面が出ておるわけぐしょう。だから、私ども自由ワク拡大していく前提というものは全般的にない、こういうふりな認識をせざるを得ないわけですが、それにもかかわらず、なぜ自由ワク拡大というものが出てこなければいけないのか、この点がわからないのですよ。
  15. 荒勝巖

    荒勝政府委員 ただいま御指摘のように、ミカンにつきましては、過去五年の間にわれわれといたしましては三万ヘクタールの植栽計画を立てたのでありますが、結果的には三万七千ヘクタールということで、四十二年から四十六年の間に植栽か行なわれまして、実質的に七千ヘクタールほど計画オーバーというか、そういう形になっておる次第でございます。したがいまして、今回の新基本方針作業に際しましては、この改植面積が相当上回ったということを頭に置きながら、当然にこの新しい改定計画の際にはそういったことを念頭に置いて、向こう十カ年間に二万五千ヘクタールくらいの植栽計画という形で目標を定め、しかも、今後五年間といたしましては一万五千ヘクタール程度ということで、過去五年間の三万七千に対しますと、新植面積は相当低目に押えたつもりでございます。  さらに、そういうふうにミカン植栽がどちらかというと抑制型になっているにもかかわらず、なぜオレンジを入れるのかというお尋ねかとも思いますが、われわれといたしましては、温州ミカン需要は十分に今後とも伸びると思っておりますし、またそれに基づきまして生産のほうも伸ばしていきたいと思っておる次第でございますが、やはり温州ミカンオレンジとの間には多少嗜好の違いというものがございまして、オレンジにはオレンジなりの多少国民の間にも需要がございまして、何らかの形で一カ月に一つくらいはオレンジを食べたいというような方もおられますので、われわれといたしましては、そういったことを見はからいながら約四百万トンをこえる国内産かんきつに対しまして、現在一万二千トンのオレンジ、約〇・三%程度のものを入れておるわけでございますが、これにつきましては重大なる悪影響を及ぼさないという前提のもとに、先ほど申し上げましたように、国民嗜好動向に即しまして多少は入れることになると考えておる次第でございます。
  16. 田中恒利

    田中(恒)委員 それはたいへん苦しい御答弁でして、政治的な条件は別でありまして、これは政治上の判断は、アメリカ等の要請を受けてやるかやらないかということは別途な形で考えなければいけませんが、少なくとも日本農業の問題を克明に調査し、対策を立てられ、あるべき姿を描かれておる行政の立場では、今日の段階でむしろだぶついて、少し生産を抑制しなければいけないというような考え改定がなされた以上、これに最も競合していくものはオレンジでありますから、オレンジがいま問題になっておるわけでありますから、オレンジ輸入並びに輸入ワク拡大についてはすべて条件はないというのがたてまえだと思うのですよ。あとはいろいろ日米関係等をめぐっての問題の所在は、これは別途にまた考えなければいけないと思いますが、基本方針改定をめぐっては私どもはそういうふうに理解せざるを得ないわけです。この点について局長と意見が違うでしょうか。あまりこのことを議論しておっても前へ進まないわけですが、最後にちょっと……。
  17. 荒勝巖

    荒勝政府委員 国内産果実農業の保護ということにつきましては、農林省といたしましても十分今後とも念頭に置いて進めてまいりたい、こう思っておる次第でございますが、やはり国民所得増大に伴いまして各種各様嗜好の変化ということもございますし、また、たまには違った異質の外国産のオレンジも食べたいという国民需要もございまして、それもしかし無差別に多数に入れるということにつきましては、われわれとしましてはこれは十分に検討してまいりたい、こういうふうに考えておりますが、特に今後、ことしの一万二千トンのオレンジワクの設定に際しましても、日本産のかんきつの出回らない四月以降九月末までの間にその一万二千トンのうち九千トンを割り当てて、その間に市場に出回る国内産かんきつとほとんど競合のないような形で、これを調整してまいりたい。そうして下期の十月以降三月まで、日本産のかんきつ類が大量に出回る時期にはわずかな三千トンで押える、こういうふうな行政上のテクニックを用いることによりまして、国内産ミカンに対する悪影響は十分に問題がないように努力してまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  18. 田中恒利

    田中(恒)委員 いずれまた、自由化の問題や果樹の今後の問題については別な機会もあろうと思いますので、一応農災法果樹共済の問題の内容に入らしていただきたいと思います。  まず最初に、試験実施地域というものを全国で相当設定をされて、この何年間かやってこられたわけですね。この試験実施地域の設定の基準はどういう地域であったのか。基準にしたものは一体どういうものなのか。それから、この試験実施地域で整理された数値、いわゆる資料でありますが、この資料の中で本制度移行にあたってどういうものが引き継がれて本制度の中に生かされてくるのか、その点をお聞きをしたいと思うのです。
  19. 小暮光美

    ○小暮政府委員 試験実施目的が、将来の本格的な制度の確立のための資料の収集と、それから具体的な仕事の運び方についての練習と申しますか、そういうものと両方ございます。しかし、資料の収集という非常に大事な意味がございますから、試験実施の加入区を設定するにあたりましては、県内の果樹栽培地域を適切に代表する農家の、栽培規模も県平均の姿以上のところを選んでこれを選定いたしたわけでございます。試験実施の実績につきましては、その実績被害率を料率設定の基礎資料として利用することが一番大きな目的でございます。試験実施の場合に、しかし、申告されました被害率がそのまま実態を反映しているかどうかというような点につきましては、試験実施の過程で逐次補正をいたしまして、それらの資料を修正してまいっておるわけでございます。
  20. 田中恒利

    田中(恒)委員 県内の代表地区を設定されたということでありますが、県内の代表地区の基準がまた何かといったような問題が多少あるわけですが、私も私の県で実施地域が何カ所かありまして、そこの関係者とも一、二話をしてきたわけですが、これは話の印象というか感触、向こうの声でありますから、なかなか数字で押える資料がないものですから、きめ手にはならないわけですが、どうもやはり被害常襲地域というか、比較的被害が高いのではなかろうかというような感じをいたしておるわけであります。したがって、これがこのままの形で被害率等の設定の前提になると、いろいろなところに問題が起きてまいりますので、いま多少弾力的な修正をせられたということでありますけれども、今後の運営にあたってこの辺がいろんな面に関係いたしますけれども、私はたいへん影響を及ぼすところが多いと思いますので、特に被害率の設定にあたって十分配慮をしておかなければいけないのじゃないか、こういうふうに思っておるわけであります。  以下、具体的に若干お尋ねをいたしますが、まず最初に、掛け金率でありますが、掛け金率の算定の基礎をなすものは被害率であります。この被害率の算定の基礎になる期間ですね、この期間は一体何年間ほど予定をされておるのか、この点をお聞きをします。
  21. 小暮光美

    ○小暮政府委員 将来基礎資料が時系列で完備いたしました段階では、二十年ということを想定いたしておりますけれども、今国発足します際には、現実に九年間の資料を持って発足いたしたいというように考えております。これに逐次累積して、二十年になるまで累積して考えるわけでございます。
  22. 田中恒利

    田中(恒)委員 二十年というのが妥当かどうかという問題もあるわけですが、当面二十年の資料はないわけなので、とりあえず九年ということでありますが、この九年のうち、四十四年、四十五年、四十六年の三カ年については、試験期間中の被害率というものが非常に大きな影響を与えておると思うのです。ところが、それ以前の、いわゆるあと六年間分については、何を資料として被害率算定に使用されたのか、この資料の根拠ですね、この点を……。
  23. 小暮光美

    ○小暮政府委員 九年間と申し上げましたが、具体的には試験調査の期間、昭和三十八年から四十三年までの六年間を試験調査をいたしました。これは関係県に委託いたしまして、それぞれ具体的な調査をいたしたわけです。その際に、かんきつで申し上げますと、たとえば十県、六十七地区、六千二百四十七戸というものを調査対象といたしまして、県に委託して被害率を調査いたしてございます。  それから、先ほど申しましたように、これらの調査期間六カ年の数字をそのまま使って試験実施に移行したということではなくて、試験実施に移行します際に、これらのものにつきまして、農林統計その他入手可能な諸資料を利用いたしまして、実態に即応した若干の補正を行ないました。その上で試験実施に入り、その試験実施の三年間の数字をさらにとった、こういうことでございます。
  24. 田中恒利

    田中(恒)委員 いずれにせよ、試験実施三年間の分とそれ以前の六年間の分については、試験調査並びに統計調査事務所の資料、それから県の資料、そういったようなものを既存のデータを使って整えられたわけですね。そこで、試験期間、試験実施地域、三年間のものは当該地域における実態という形で出てくる。それ以前のものは統計数字で出てきた。それぞれの地域のものをやるわけですが、ここに性格的に多少実態で出たものと、いろいろ実験したものとそうでないものですから違うと思うのですね。特に四十四年、四十五年、四十六年というのは、被害が比較的高い年が四十四年、四十六年にありますね。  そこで、果樹保険の実施期間中も掛け金に比べて保険料の支払いが非常にたくさん出た、こういうことになっているはずでありますが、この特徴ですね。三年間の実際にやられた分は、これは実際値であって、しかも被害が比較的高い年であると私ども思っておるわけですが、六年間は単なる系列的に統計で整備せられたものである。この九年間を考える場合に、三年間と六年間の分についてどういう調整をせられてくるのか。中にはどこかにスライドをするというか、調子を合わすような形にしてはどうかという意見もあったと聞いておるのですが、この期間中の取り扱いについて被害率設定にあたってどうせられるのか。この点を明らかにしておいていただきたいと思うのです。
  25. 小暮光美

    ○小暮政府委員 先ほども申し上げましたように、六年間の試験調査の数字とそれから試験実施の三年間をあわせて共済掛け金率の算定の基礎といたしております。それに両者の間にたとえばウエートをつけるというようなことはいたしておりません。さらに、その前に申し上げましたように、今後逐次数字がまた累積してまいります。通常の姿になりますと、四年に一ぺんずつ改定してまいるつもりでございます。本格実施の当初は特に二年に一度ずつ小刻みに修正していくということで、新たな実績をこれにつけ加えるという形で、逐次補正をしてまいるつもりであります。
  26. 田中恒利

    田中(恒)委員 もう一つお聞きしなければいけないのは、四十四年−四十六年の三カ年の実際値をそのまま使われるのですか、これを修正をせられておるわけですか。
  27. 小暮光美

    ○小暮政府委員 試験の六年の分につきましては、統計その他による補正をいたしましたけれども試験実施の三年は原則としてその数値をそのまま使うという考え方でございます。
  28. 田中恒利

    田中(恒)委員 それは試験実施地域以外の、試験をしなかった地域が今度ほとんど入るわけですね。その地域にもその被害係数というものが適用されるわけですか。
  29. 小暮光美

    ○小暮政府委員 試験実施を行なわなかった地区につきましては、農林統計の年次別、市町村別統計等を利用いたしまして、試験実施をいたしました地域の基準掛け金率との比較をいたしながらこれを作成するということでございまして、試験実施のものをそのままということではございません。
  30. 田中恒利

    田中(恒)委員 どうもその辺が多少被害率を出す場合の一つの問題のような気がするわけであります。特にこの三年間の被害の状況というものが、長い期間の間で一体妥当なものなのかどうか、いわゆる中庸をなしておるのかどうか、私は高い年次ではなかっただろうかという気がするわけですが、こういう点をもう少し検討をしてもらわないと、できはしたけれども、あとで掛け金の算定をめぐって、国が二分の一補助をいたしますけれども、出されるものは一体どうなるかということで、掛け金、共済金、これが一番の問題でありますから、その根拠になる前提の中にいま二、三の問題を出したわけでありますけれども、私は実際の被害設定の作業が始まっていると思いますが、十分この辺の事情をより細部に分析をして、画一的にやられないように特に要望しておきたいと思いますし、特に被害率については個別料率というものが、個別に被害率というものの設定が最も好ましい姿でありますが、現実にはなかなか困難である、そこで一体どの程度に細分化を考えられておるのか、この点もお尋ねをしておかなきゃいけないと思うんです。
  31. 小暮光美

    ○小暮政府委員 ただいまの御要望の線につきましては、私どもも十分今後の実施面に御趣旨を生かしたいと思います。先ほど申しましたように、本格実施移行の当初は二カ年ずつ小刻みに改定をいたして、できるだけ実態を明らかにするようにつとめるつもりでございます。  なお、ただいま御指摘の点でございますが、共済掛け金率の個別化が望ましいというのは、私どももそのように思います。しかし、そのためには、結局、何と申しますか、加入の実績がかなり出てまいりまして、危険分散ということがこの制度の本旨でございますから、危険分散を可能にする程度にまで加入の密度等が広がってまいりますと、それに応じて具体的な係数等につきましてもいろいろくふうの余地が出てまいるわけでございます。そのほかに、先ほど来議論になっておりますように、発足当初はまだ二十カ年分という理想的な形でデータが集積していない、これから逐次データを集積していくという、資料の未整備の問題もございます。したがいまして、実態が育つことと資料が次第に集積されること、これを期待いたしまして、逐次掛け金率を細分化していく方向に持っていきたいというふうに考えますが、当初は県内を若干の危険等級で分けるというような形で、できるだけ地域の実態を反映させるようにいたしたいということを考えております。
  32. 田中恒利

    田中(恒)委員 危険等級というのは、何等級ぐらいに分けるのですか。
  33. 小暮光美

    ○小暮政府委員 ただいま申し上げましたような趣旨でございますので、初めからこれを非常にこまかくするわけにはまいりませんので、おおむね数等級というふうに考えております。
  34. 田中恒利

    田中(恒)委員 まだはっきりしてないのだと思いますが、これはいま言われたような面もあると思いますけれども事務費の問題とか手数の問題とか、いろいろほかに関係するところはあると思いますよ。しかし、やはりできるだけ実態に沿った——その他、あとで質問するいろいろな問題も全部共通の問題でありますけれども、ぜひしていただかなければならないので、できるだけ可能な数字の把握される状況に基づいて細分化をしていくという形で検討して、進めていただきたいと思います。  次に、共済金額の問題をめぐって特に中心になりますのは基準収穫量でありますが、その基準収穫量は一体何を基礎にして、どういう方法で出されてくるのか。この査定の方法、手段、この点をお尋ねをしておきたいと思います。
  35. 小暮光美

    ○小暮政府委員 果樹の場合には、実はほかの作物と違いまして、樹齢によって同一の樹園地が次第に収穫の姿を変えていくという要素がございます。そこで、基準収穫量を求めます場合にも、樹齢別の収穫量の推移を樹種ごとにある程度想定したものを別途つくっておきまして、それを頭に描きながら農家からの申告に基づいて具体的な基準収穫量を定めるということを予定いたしております。
  36. 田中恒利

    田中(恒)委員 樹齢別収量表というものは、県一本で作成されるわけですか。これも数地区に分けられるわけですか。
  37. 小暮光美

    ○小暮政府委員 おおむね各組合ごとにそういうものをつくらせる考えでございます。
  38. 田中恒利

    田中(恒)委員 組合ごとに樹齢別の収量表をつくるわけですね。それから、果樹の単位価格ですね、単位価格を樹齢別収量表にかけて出すわけですね。この単位価格は何を基準にして出されていくのか。その取り上げる期間は、どういう期間のどういう統計で出されていくのか。これも県一本で出していくのか、組合で出していくのか、この点もあわせて……。
  39. 小暮光美

    ○小暮政府委員 共済金額の基礎となります単位当たりの価格のほうは、これは実際の販売行為としては、出荷のじょうずへたと申しますか、時期の選び方というようなもので組合ごとにかなりの差が起こることは現実でございます。また、同一の組合でも出荷の初期と終わりということで違ってくる。そういうきわめて具体的な経済行為でございますが、ただ、共済制度の対象としてこれを考えます場合には、これはおおむね再生産を確保するような形で、ある一定の限度を補てんしようという考え方のものでございます。したがいまして、単価は県単位でこれを求める、県一本ということで求める考えでございます。その場合に、原則として過去四年間におけるキログラム当たりの価格のうち、最高と最低を除きまして、中庸二年の平均というもので考えたいというふうに思っております。
  40. 田中恒利

    田中(恒)委員 樹齢別の収量表は各組合ごとに出して、単価は県一本というのも、何かつじつまが合わないような気がするのですね。特に果樹の単価は地域別にたいへんな差があるわけです。最近はうまいミカンとかリンゴとかづくりということが非常に盛んにいわれ出しておるし、農林省のほうもそういう指導をしておるわけですが、市場価格というものは品物によっては倍程度になるものすらあるほど高低がひどいわけですね。その単位価格を県一本でというのは、私どもの県でもミカンにしてもカキにしてもナツカンにしても非常に地域ごとに価格差があって、極端にいえば、南側に面しておるところと北側に面した樹園地の相違で、同じ地域でも値段がものすごく違うわけですね。そういうものを全部全県一本でやるというのは、これは少し無理じゃないかと思うのですね。私は収量の差よりも価格の差のほうがひどいのではないかと思うのですが、樹齢別の収量表を組合ごとにやれば、価格も組合ごとにやるという方法はとれないものですか。
  41. 小暮光美

    ○小暮政府委員 ただいま御指摘の点は、果樹共済の中の収穫共済の基本的な性格論ともからんでくるように思います。先ほども申し上げましたように、これは売り方の問題が入ってまいりますと、やはり米のように一定の価格が国によって定められて、水分を基礎とした等級で価格がきちっときまっておるものと違いまして、物そのものの価値といいますよりは、やはり売り方——売る時期の選び方、出し方、そういうものと密接にからんでまいりまして、きわめて具体的な商行為の結果でございまして、おそらくはかの面からもまた御議論があるかと思いますけれども、価格変動の問題を一体どうするのだということが、実はこの制度を立案しました過程でしょっちゅう議論になっておった点でございます。それらの点をすべて一応議論いたしました上で、本制度を収穫保険、収量保険、こういう形に実は整理いたして御提案申し上げておるわけでございまして、試験実施の場合でも、もちろん具体的な価格のフレはそれぞれの試験地ごとにもかなりございます。非常にならされている地域もございますが、最高と最低の間に二割以上の差があったような地区もございます。しかし、これは収量保険であるということからまいりまして、価格についてはその価格の水準を明らかにするという意味で、県平均の一本の価格を求める、こういう考え方で、収穫量につきましては、樹齢別というものは果樹の場合にはぜひこれを求めないとならない、こういうことでございます。
  42. 田中恒利

    田中(恒)委員 そう言われましても、実際にはやはり再生産を補償するということですから、価格条件によってたいへん大きな影響を受けるものでありますから、その辺がうまく組み合わせができないと、加入する農家がこの制度に対して期待しておる願いにマッチするのかどうか。任意加入のたてまえをとっておりますけれども、あとで御質問しなければいけませんが、実質的には当然加入のようなことにならざるを得ないと思うのですね。その場合に、確かに価格条件の問題についての議論はいたしましたし、いろいろこれについてはあとで御質問しなければいけないわけですけれども、やはりもう少しこの要素を何かの形で取り入れる設計を考えないと、この果樹共済というものが、せっかくつくっても農家の皆さんに喜ばれるようなものになるのかどうか。掛けっばなしで、特に災害のないときは、いまの水稲でもそういう傾向が出ておるわけでありますが、きわめて不評判なものになって、せっかくの皆さんの意図やわれわれの要望とは結果的には違うようなことになりはせぬか、こういう気がいたすわけであります。この辺もやはり十分考えなければいけないのじゃないか、こういうように思うのですが、いかがでしょうか。
  43. 小暮光美

    ○小暮政府委員 御指摘の問題は、角度を変えますと、こういう問題も含んでおると思うのです。  一口にナシと申しましても、わせのナシとおくてのナシ、それも赤ナシの系統と二十世紀の系統というようなことで、非常に出荷の時期も違いますし、価格水準そのものが違うというようなものもございます。これをナシ一本ということで制度を組むのがいいのか。そういうナシの中で、出荷の時期なり価格の水準なりというものは、おのずからある程度のグルーピングができるわけでございます。これも微細にきめますとなかなかむずかしくなりまして、赤ナシ系と二十世紀系とを交配しまして新しいものをつくったりいたしますと、そういうものが大きな収量にまとまりますまでの間はどこに所属させたらいいかといったような、きわめて具体的な難問題も別途ございますけれども、やはり体制として、一つのくだものを幾つかのグループに分ける、そしてそれぞれのグループごとに補てんの金額がきまる、こういうことを別途くふうしておるわけです。この点は、実は蚕繭とか水稲あるいは麦等の共済とは考え方が違うわけでございまして、やはり先生御指摘のような点を配慮して考え一つ考え方であるというふうに思っております。
  44. 田中恒利

    田中(恒)委員 次に、共済金の三〇%の足切りの問題でありますが、これについては、はたして三〇%の果樹災害というのが特別の場合を除いてあるのかないのかという意見が最近出ておりまして、たいへんな大災害で当然激甚地等の指定を受けるような場合以外は三〇%の災害というのはないのじゃないか、こういう意見もあります。稲作に右へならえせよと言いますといろいろとまた理屈を言われますけれども、少なくとも稲作の場合は、農家単位二〇%の足切りというところに線を置かれているわけですね。果樹の場合三〇%の足切りにしたという根拠ですね、この三〇%というものが、災害の状況から見て、ある程度果樹農家要望にこたえるものであるのかどうか、この辺についての御意見はいかがですか。
  45. 小暮光美

    ○小暮政府委員 水稲の場合にも、一筆建てでは三割足切りということでやってまいっておるわけでございます。農家建てにいたします際に、二割足切りということを先般新たに設けたわけです。しかし、水稲の場合には、御承知のように、かなり長い制度の歴史の中で、きわめて詳細な収穫量についての基礎が把握されておりますし、被害発生態様につきましても、かなり微細な点まで把握できておるわけでございますが、くだものの場合には、それらの点は、今後制度の運営の中で逐次基礎的な資料なりあるいは地帯別の被害発生態様といったようなものが正確に把握され、そういうものの歴史が積み上がっていくわけでございます。  将来の方向としては、私どもも、できるだけ補てんの割合を充実する方向制度全体として持っていきたいという気持ちは持っておりますけれども、現在、果樹につきまして、収穫量を算定し、被害程度を把握いたしまして制度として仕組みますには、おおむね三〇%足切りというのが最も妥当ではないかというふうに判断いたしておるわけでございます。
  46. 田中恒利

    田中(恒)委員 一筆単位の、いわゆる樹園地ごとの共済をやられるなら、三〇%というものもある程度妥当性があると私は思うのですけれども農家単位ということになりますと、園地が各地に分散をしておりますから、災害のあるところ、ないところが非常にきわ立って出てまいりますだけに、この三〇%というものではあまり役に立たないのじゃないか、こういうふうに感ずるのですよ。だから、いまお話のあったように、この際、たとえば園地ごとの果樹共済の加入というものを水稲のように認めるという処置が並行されれば、三〇%の意味というものも部分的には出てくると思うのですけれども、園地ごとのものがこの制度にはないわけですね。加入は農家単位になっておるわけですね。園地ごとの加入という問題をお考えになる余地があるわけですか。
  47. 小暮光美

    ○小暮政府委員 今回提案申し上げております果樹共済は、園地ごとではございません。農家単位に近い形でございますが、その場合でも、先ほど申しましたように、温州ミカンとか桃とかいうものを一色に見ませんで、たとえばわせ温州とその他に分けるといっだような形で農家の経営としてとらえますけれども、その中をさらに分け得るような形でございます。水稲共済のような徹底した農家単位ではないわけです。その点は実体がやや違います。  それから三割足切りでございますが、とにかく三割ございましたらまず一割払うということで、その点もこれまでの共済制度とはやや違う手厚い仕組みを考えておるわけでございます。  それから、園地単位にできないかという問題につきましては、実は果樹の場合に、検見によって収穫量そのものを見るという形でなくて、実際に出荷した姿を把握いたしまして、共販が確立しておりますような場合には、品質低下の分まで織り込もうというような形の共済制度を仕組んでおるわけでございます。したがいまして、それぞれの農家果樹生産、販売の姿を樹園地ごとに確認するということは、技術としてもちょっと不可能に近いのじゃないかということで、園地ごとという案は実は初めから放棄いたしておるわけでございます。
  48. 田中恒利

    田中(恒)委員 いろいろな事情で園地ごとの加入を認めないということが、この保険設計上の問題、たとえば園地ごとの評価をやるといったって、たいへんな人間を動かして、データもなかなかたいへんでできないというようなこと、あるいは予算もそれに対応するだけの態勢がとれない、こういうことでむずかしいのであって、本来であれば、果樹の場合は、やはり農家単位よりも園地ごとにやったほうが加入者も多いと思うし、被害実態に沿う災害制度内容になる、こういうように私は思うのですよ。農家単位ということになっていくと、日本果樹園が団地化しておればいいですけれども、非常に分散しておるだけに、プラスマイナス相殺するとさほど効果が出てこないというように思うので、園地ごとの加入の問題というのは、いまの段階では全然問題にされていないようですけれども、私は今後の問題として十分考えるべきだと思うのです。水稲は園地ごとから始まって農家単位に変わってきたわけですね。果樹の場合は農家単位でとどまっておるわけですが、やはり園地ごとの加入も可能だという道を切り開くべきだと思うのです。  この点について、おたくのほうの研究会ですか、あのほうの答申の中にもそういう趣旨が織り込まれておるのじゃないですか。いかがですか。
  49. 小暮光美

    ○小暮政府委員 研究会では途中ではいろんな議論があったと思いますけれども、研究会から特に園地建てという御指摘をいただいておるという形はございません。  何と申しましても、果樹の場合には、今後むしろ次第に樹園地の団地化と申しますか、生産の段階の団地化と出荷の徹底した共選と申しますか、共選による出荷というような方向果樹園芸が進んでまいるべきものと考えます。したがいまして、私どもといたしましては、やはり果樹共済は樹園地ごとの共済という方向ではなくて、やはりある程度の自家保険の機能を含みながら、しかし一たん緩急の場合にはかなりまとまった金額が受け取れるという形での制度として育ててまいりたいというふうに基本的には考えております。
  50. 田中恒利

    田中(恒)委員 三〇%足切りの問題が妥当かどうかということは、試験研究の期間では、災害等も比較的に多い年で、全国的な統計では三〇%の線の意味があるようにお考えになっておるかもしれませんが、新しい今度の本制度移行に伴っていろいろな地域の全体を合わせてやっていきますと、これも結果を見なければわかりませんけれども、私は、三〇%足切りで果樹災害の対象になっていく農家というものは非常に少ないのじゃないか、こういう感じがいたします。数字がおたくのほうもないし、こちらのほうもないので、この問題について詰めばなかなかできませんけれども、ですから、ここでやはり三〇%足切りの問題を再検討すべきだ、こういう主張を強く申し上げておきたいと思うのです。  それから、いま調査報告の中にもありました無事戻しでありますが、これも研究会の議論の過程ではいろいろ出ておりますが、これをやれなかった理由、無事戻し制度をやるべきではないかというのが当委員会のこの制度についての決議事項の中にもあるわけですけれども、無事戻しをなぜやれないのか。これをこのままにしておけば、掛けっぱなしの農家というものが多くなって、結局、いま水稲の災害制度にも国はだいぶ金を出しておりますけれども、どこに欠陥があるのか、十分に喜ばれていない、こういう節もあるわけです。これは地域的かもしれませんけれども、農災制度については相当多いと思うのです。ですから、やはり無事戻し制度というものがその一つの回答として最近出始めてきているわけですね。これを果樹の場合になぜのけたのか、この点を……。
  51. 小暮光美

    ○小暮政府委員 あるいは私どものほうの担当者が御説明に上がりましたときに説明が適切でなかったのではないかと思いますけれども、今回の制度で無事戻しはやることになっておるのです。具体的には百二条の共済掛け金の一部払い戻しという規定が今回の果樹共済にも適用になりますので、その点の御懸念はひとつ解消していただきたいと思います。
  52. 田中恒利

    田中(恒)委員 それは私の理解の不足でありました。  それではその次に、共済金の支払い割合の問題でありますが、いわゆる表をいただいたわけでありますけれども、当初試験実施の際に三〇%の足切りの段階と五〇%の場合と二つの方法で共済の支払い金額の計算がはじき出されておったわけですね。これを三〇%に下げて一本化をしたということでありますが、支払い共済金については依然として三〇%と五〇%の割合のままに共済金が支払われる、こういう割合になっておりますね。この曲線の問題でありますが、この曲線を三〇%を基点として一〇〇%まで一直線に結びつける、こういう形が当然たてまえとしてはとられなければいけないと思うのですね。それがとられなかった理由は掛け金が上がるから、こういうふうに聞いておるわけですが、一体どれだけ掛け金が上がるのか。私はこの場合に掛け金の増高というのはさほど大きなものではないと思うのです。これはやはり政令事項だと思いますけれども、これは三〇%の線を基点として直線にやはり直していく、こういう処置をとるべきだと思いますが、いかがですか。
  53. 小暮光美

    ○小暮政府委員 この点につきましては、試験実施を三割足切りと五割足切りということでやりましたために、これに即した共済掛け金率の算定をすべて一貫して三年間やってまいったわけでございます。したがいまして、本制度移行の際にこれらの点を全部調査し直すというわけにまいりませんので、試験実施の際に生産者に完全に浸透いたしております、三割被害がございましたら一割をまず払う、それから五割被害がございましたら三割払うというこの点を、今度の制度の発足の当初には持続いたす。それに見合った掛け金率に現在はなっているわけでございます。ただ、この点につきましては、今後制度の発展の過程でさらに調査を続行いたしまして十分検討してまいる考えでございます。
  54. 田中恒利

    田中(恒)委員 これは発足の際に——これ、三割から一直線にやるのはむずかしくないでしょう。これはあとで皆さんがおきめになるのですから、三割と五割のままやるなどと言わなくて、本制度に入る際に当初三割で出発することときまったわけですから、五割の必要性はなくなったわけですから、三割の線を基点にしてやるべきだと思うのですね。そこのところ、ひとつかちんとしてくださいよ。あとで検討して——もうこの問題については検討する余地はないと思うのです。それは数字だけ変えればいいわけですから、さほどむずかしい数字ではないはずであります。ですから、三割出発を基点にして本制度は移行するんで、試験実施の期間は三割と五割の二つですから二つとったので、今度は三割だけですから、三割から始めてもらうというのがたてまえなんで、そのたてまえは貫いてもらわなければ筋が通らないと思いますが、いかがですか。
  55. 小暮光美

    ○小暮政府委員 それぞれの段階ごとの被害率をやはりしさいに積み上げてまいったわけでございます。御指摘のように、そう簡単にというわけにまいらぬわけでございますが、そういう掛け金率とその支払いということは相互にかみ合っている問題でございますので、この点につきましては、今回はこれで発足させていただきたいというふうに考えております。
  56. 田中恒利

    田中(恒)委員 掛け金率は一体幾らに上がりますか。掛け金率三割から五割、四割、六割、七割——この辺の掛け金率はどのくらい上がるのか計算されてないですか。
  57. 小暮光美

    ○小暮政府委員 その点につきましては、今後詳細に調査いたしませんと、正確には申し上げられないというふうに考えております。
  58. 田中恒利

    田中(恒)委員 私どもは、この掛け金率が上がるからこの線をこういうふうにせられたというのだが、実際は掛け金率はそう上がらなくて、支払いの共済金のほうがふくらむからこういうふうにせられておる、こういうふうに思うのですよ。だから、そこのところは全くおたくのほうのいろいろな事情であって、これは筋としてやはり成り立たないと思うのですね。せっかく本制度へ移行するのですから、その際にやはり間違っておるものは直しておかなければいかぬ。あとでいろいろ検討して考えるということでなくて、この際直していく。これは来年からの発足ですから、予算の問題にしても来年の予算もあるわけですから、やる気になればやれぬことはないと思うのです。ですから、この点はだれが考えても十分この委員会で問題になる点だと思うのです。ですから、その辺は十分私どものほうでも委員会の審議の中で要望しなければいけないと思いますが、皆さんのほうは変えないというのでありますけれども、さほど大きな問題ではないと思うんで、あえてこれに固執せられる必要はないと思うのです。ぜひこれは一本の線にまとめてもらうように特に要求いたしておきますし、また皆さんのほうからもいろいろ問題の指摘があろうかと思います。  なお、この際、この共済金の問題で、国税庁お見えになっておると思いますが、この共済金の受領をめぐっての課税問題でありますが、これは特に本制度で引き受け期間というものはたいへん長くなって、おそらく花の芽が出たときからということになるわけですから、一年以上先に共済の引き受けが始まるわけですね。そういたしますと、たとえばミカンリンゴもそうでないかと思いますが、四十七年の共済金というものは、四十七年産でなくて、四十八年産に受領をしていく、こういう場合があるのですね。そういう場合に、私どもの地域ではどうも四十八年の所得にこの共済金が加わって課税の対象になっておる。共済金というのは災害があったときにもらうのだが、災害があった年の所得じゃなくて、翌年になる、こういう例が今日まであったというふうに聞いておるわけですが、これはそういうことはないのか。  それから、本来この共済金に対する課税というものについて国税庁は考えるべきではないか。いろいろ事情もありましょうけれども農業災害でたいへん減収をして、そして共済金が支払われる、その共済金に税金がかかってくる、しかも、私が聞いた範囲では、当年度、災害年度にかかってくるならまだしも、その翌年の、果樹の場合は、表作、裏作が隔年でありますから、表作のときにかかってくる、こういう事態が今後起きますね。この共済が始まったら完全に起きるわけですね、期間が長いから。そういう場合の取り扱いは一体どういうふうにせられていくのか、それをまずお尋ねしておきたいと思うのです。
  59. 早田肇

    ○早田説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生が課税の時期について異なる税務署があるのではないかというお話でございますが、私どもまだ必ずしもそこを十分把握しておりませんので、よく調査してみたいと存じますが、基本的に申しまして、収入金額と申しますのは、収入を受けるべき時期、簿記で申しますと、発生主義というものを税法もとっておりまして、収入を受けるべき時期でございます。したがいまして、この共済金につきましては、農家が共済金の支払いを受けるべき損害があると認めて、その旨を組合に通知した時期、この時期だと思います。したがいまして、災害の翌年に課税になるということではございませんで、災害の年分の収入金額になるということであると思っております。  それから、第二点の減収があった場合に課税をするのは、災害ということを考えてどうであるかという御指摘でございますが、ただいま問題になっております共済には、樹体共済と収穫共済とございます。この樹体共済につきましては、資産そのものの損失に見合います共済金でございますので、これについては、結論的に申しますと、課税関係は生じません。それから、収穫共済につきましては、これはまさに収入にかわるべき金額でございますので、これはただいまの税法上は収入金額として計上しなければならない。ただ、その場合も、災害のあった年分の収入金額、具体的に申しますと、先ほど申し上げましたように、組合に通知した年分の収入金額になるということになっております。
  60. 田中恒利

    田中(恒)委員 農林省にそれではお尋ねしますが、今度の果樹共済で、たとえばミカンならミカンというものが災害があったというふうに農家が通知をする時期というものは、当該年度に入りますか。入らない場合が出てきませんか。
  61. 小暮光美

    ○小暮政府委員 収穫の直前というふうに考えておりますので、十二月末までには申し出があるというふうに一応考えております。
  62. 田中恒利

    田中(恒)委員 それはなかなかそういうふうにいかないのですよ。十二月の、たとえば私はミカンの地帯ですけれどもミカンは十月から十一月、十二月、一月と当該年度のミカンが出荷をされるわけです。出荷が全部終わるのは一月にもなるし、ナツミカン等は翌年——ナツミカンの場合はかまいませんが、そういう場合が起きて、現に四十六年度の災害の共済金が四十七年度の所得に織りまぜられて課税をせられたということを私どもは聞いておるわけです。ですから、当該年度にかからない場合がしばしば起きるわけです。そういう場合の取り扱いをどうしていくのか。  それから、共済金については、言われる面も、税の根本を考えた場合、ありますけれども、これは何か別途に特別な方途を考えてしかるべきではないか、こういう要望を従来から持っておるわけでありますが、特に共済金と課税対象時期の問題について国税庁のほうは、もう一度明確に、全部当年度の所得にする、こういうふうに私はいまの御答弁を聞いて理解しますけれども、現実に農家の申告ということになっていきますと、そうでない年があるのですよ。そういう場合の処置を考えていただかないと、末端の税務署では、あなたの言われたとおりの時期でいけば、翌年にかかる場台があるのですから、隔年ですから、翌年になったら豊作で、収入はふえていく、この果樹の共済金というのは、これは相当大きいですからね。それは入ってくる税金はがっぽり取られるということで、これは逆に果樹共済をくずしていくことになるわけですね。この点は実質的に当該年度である、手続申請の時期にかかわらず、こういうふうに理解してよろしいですか。
  63. 早田肇

    ○早田説明員 先ほど申し上げましたように、共済金の収入とすべき時期というのは、共済金の支払いを受けるべき事実が生じた、つまり災害があった年分でございますから、当該年度とお考えいただいて十分だと思います。  むしろ、先生の御心配になっておられますのは、それはその分の収入に計上すべきものであるとしても、幾ら共済金が支給になるか、そこがわからない、わからない段階で当該年分の収入としての申告をする、その際にどういう取り扱いになるかというお話であろうかと思います。この問題につきましては、今後共済の支払いが具体的にどうなっていくのかというようなものを含みまして、農林省とも十分御協議申し上げたいと思います。  それから、第二点の、共済金には課税すべきではないのではないかということでございますが、元来収入にかわるべき共済金でございまして、言うならば、税法上は共済に売ったと同じような感じになりますので、これにつきまして直ちに課税関係を生じさせないということについては、一つの立法問題であろうかと思います。現在の所得税法のたてまえ上、収入にかわるべき金額というものを課税しないということにはちょっとならないのではないかと思っております。
  64. 田中恒利

    田中(恒)委員 あなたのところでよくひとつ調べてみてください、実態がどうなっておるか。私どもここに和歌山、島根、宮崎、愛媛の農業共済組合連合会のいろいろな資料をいただいておるのですけれども、その中に温州ミカンについては支払いの対象年次の対象とせず、保険支払い年次の所得として累進課税されておる、こういう項も入っておるのですよ。私も現に四十六年度の共済金が四十七年度所得で課税された。これは全然意味なかった、こういうことがあるので、末端の税務署ではそういう取り扱いをやっているところが部分的にありますよ。ありますから、特にいま申し上げた温州ミカン等の収穫時期の問題が手続上されておるところは、いま御答弁になったように、明確に取り扱いしてもらうように処置していただきたいと思います。  それから、この共済事故に、品質の低下というものを損害評価の中に見る、こういうことになっておりますね。この品質低下を見る見方ですね。これは農林大臣が、出荷体制等が整っておるところの地域を指定するということになっておるわけですが、こういう指定地域の基準、それから、その出荷団体と称するものは一体どういうものを称するのか、この点を少し明らかにしておいていただきたいと思うのです。
  65. 小暮光美

    ○小暮政府委員 共同出荷を行なっております農業協同組合等で、農家ごとに出荷果実の品質の評価を常日ごろ行なっておりまして、その評価結果が、農家ごとの出荷量に見合って農家に対する販売代金の支払いの基礎として使われておる、こういうような場合は収量保険でありますけれども、その収穫量が品質の低下分だけ量的に減ったものというふうに擬制してこの制度の中に組み込むことができるのではないか、かように考えておるわけでございます。したがいまして、そのような取り扱いのできる組合は、組合員の全員についてただいま申しましたような出荷果実の品質の評価を行なっておることが必要だと思います。したがいまして、共販率が、個々の生産者ごとには多少の率の差はございましょうが、少なくとも全員が共販に参加しているということが基本的な要件になろうかと考えております。
  66. 田中恒利

    田中(恒)委員 全員が共販に参加しておるということで、全体の生産量の何%とかいったようなものもきめるわけですか。
  67. 小暮光美

    ○小暮政府委員 現在個々の農家ごとには共販に乗せる数量が半分以上ということでいかがだろうかと思っております。ただ、全員がとにかく共販に乗ってないと、さっき申しました農家ごとの基準とすべき品質区分が出てまいりませんので、全員が参加しておって、個々の農家ごとに半分以上というようなことを基準にいたしたいというふうに考えております。
  68. 田中恒利

    田中(恒)委員 この品質低下の損害評価というのはなかなかむずかしいと思うのですが、そうすると、出荷の、たとえば優品とか良品とか、こういうふうに選別しますね、そういうものが品質の基準になっていくわけですか。そういうものを出荷の場合に出していく格づけというか、あれを中心にして品質が昨年に比べてどうであったというような認定をするわけですか。
  69. 小暮光美

    ○小暮政府委員 これは現実の表をお目にかけると一番わかりいいのですが、後ほどお届けいたしますけれども、秀、優、良という区分のほかに、大きさによってLとかSとかいうのがあるのは御存じのとおりであります。それに即しましてそれぞれ評点指数がきまっておりまして、それを各農家ごとで総合平均して、たとえば七六・四といったようなものがきまるような仕組みになっております。ですから、いまの階級区分とそれから等級区分、その両者を総合勘案して総合評点というものがきまるようになっております。その点数を具体的な収穫量の判定に使おうということでございます。
  70. 田中恒利

    田中(恒)委員 あとまだたくさんあるのですが、重要な点だけにしぼって御質問します。  果樹共済の責任分担関係で、超過損害歩合再保険方式というか、たいへん私どもわかりかねる方式でありますが、そういうもので、単位組合、連合会それから政府、この三者で、単位組合と農家共済保険、再保険関係、これを三つの段階に分けられるわけでありますが、このうち通常標準被害率というものですね、これをこえる五%、あるいは五%以下の部分を県段階で見るということになっておりますね。この連合会が持つ五%というのは、これは従来の共済制度にはなかった新しい負担部分になるわけですが、一体どういう意味でこういうのを出されたのか、その辺をちょっとお尋ねをしてみたいと思うのです。
  71. 小暮光美

    ○小暮政府委員 通常被害率をこえる部分については、たてまえとして国がこれを再保険するという考え方でございますが、果樹共済農家の任意による加入という仕組みで考えておりまして、したがいまして、共済事業が全体として健全に運用されますためには、連合会といたしましても全力をあげてその加入の充実と申しますか、そういうことについて組合活動としてこれを推進する必要があるだろう。それは相互に危険を分散するために、適切な規模の方にはできるだけたくさん加入してもらうということが必要なわけでございます。  それから損害評価の運営指導をまた連合会がやるわけでございますが、果樹はこれまでの水稲等とまたかわりまして、隔年結果の問題その他きわめて具体的な果樹特有の問題を含んでいるわけでございます。全体としてきわめて適切な損害評価が行なわれることが期待されるわけでございます。  したがいまして、加入の促進につきましても、あるいは年々の事業の運営につきましても、連合会が非常に高度の責任感を持って組合を指導する、こういう形が期待されるわけでございまして、これらの点を勘案いたしまして、通常被害率をこえます部分についても五%だけ連合会がみずからこれを負担するという仕組みを考えたわけでございます。
  72. 田中恒利

    田中(恒)委員 これはあまり特別な意味がなくて、連合会のしりをたたくために五%をちょっと上積みした、こういう意味に理解してよろしいのですか。
  73. 小暮光美

    ○小暮政府委員 共済制度農業実態から見まして、国ができるだけ手厚く助成することを考えしおりますけれども、基本的には、どこまでも生生者が相集まってともに助け合う仕組みでございまして、決して国からしりをたたくなんという失仇なことを私ども考えておりませんで、制度の仕組みとして、できるだけ健全に動くようにということを関係者の間で相談いたした結果が、このよりな案になったわけでございます。
  74. 田中恒利

    田中(恒)委員 どうもむずかしいですね。超過損害歩合再保険方式という、何か科学的な意味がめるのかと思ったのですけれども、それはいま局長が言われたことは、本来単共だって連合会だっ、みな同じことでありまして、特別に五%の分を連合会に持たせなければいけない意味があるのか。果樹保険の場合、あるのかないのか。米、養蚕、家畜、それぞれこういう仕組みがつくられておる中で、ちょっと特異な形ですから、われわれとうもはかり知れない意味をお教えいただきたいと思ったのですけれども、いまの御質問では、みんな一生懸命やれ、こういうことを促進するためたという程度でありますので、どうも五%の意味かよくわからないのですがね。こういう複雑な形か次から次へ農災制度全体に新しく組み上げられてくるところに、実は私は全体の農災制度の骨組みというものに支障をもたらすのではないか、こういう心配も感じるわけです。特に今度の場合、組合に一〇%の責任というのを持たせておるわけですね。これも組合の単位の農業共済の関係者に聞きますと、これはなかなかたいへんだ、特に果樹共済は金額が非常に大きいですから、そういう心配がありますし、共済金の支払いが不足をする、こういう事態が起きた場合にはどうするのだ、こういう質問も受けておるわけですが、この点は何かいい方法をお考えになっておりますか。
  75. 小暮光美

    ○小暮政府委員 元受け機関として単位組合が一割の責任を保有する例は、蚕繭共済にもあるわけでございます。制度全体の運営に支障はないというふうに思っておりますけれども、個々の組合の状況によりまして、かりに一時的に資金の需要があるということがございますれば、共済基金からの資金の融通という制度が別途ございます。それから、状況が削減を認めることを適当とするような場合には、別途削減という緊急避難の道も制度上はございますが、しかし、削減はなるべく乱用しないほうがいいわけでございまして、基本的には、一割の責任は十分組合で負担できると思いますが、必要に応じ基金から資金を融通するということでございます。  なお、冒頭おっしゃられました点につきましては、先ほど申しました趣旨の一つの任意加入の制度を、できるだけ単位組合を指導して連合会が加入の促進につとめるという要素は、実は強制加入のものについてはないわけでございますから、このような形をたとえば水稲のほうに将来及ぼしていくというような考え方はございません。
  76. 田中恒利

    田中(恒)委員 この削減の問題もいろいろお尋ねしたいわけですが、時間がありませんので、要点だけお尋ねしますが、共済の責任期間は花の芽が出てからということで、翌年の収穫期まで相当長い責任期間になるわけですが、この場合に、たとえば新興地ですね。新しく果樹として伸びておる地帯が多いわけですね。そこで、この新興地というのは、大体年率一五%から二〇%、もっと高く生産量がぐんぐんふえていくわけですね、成木につきましても。そういう特徴があるわけです。そういうところはだいぶ前に、一年半ほど前に引き受けをしておった基準収量と、実際に出てくる基準収量というのは、だいぶ上がってくるわけです。だから、引き受け反収というものの変更を考えなければいけないのじゃないかという意見もあるのですが、この辺はどういうふうにお考えになりますか。
  77. 小暮光美

    ○小暮政府委員 引き受けの期間が長いと申しましても、要するに、一年数カ月ということでございます。  それから、いまの問題は、実は樹齢別の数量の見方というものを、先ほど申しましたように、組合ごとにつくってございまして、共済にかけられます年の樹齢というものを頭に置いて判断するわけでございますから、御指摘のような点は、よほど基本的な技術の変化でもあれば別でございますけれども、一年数カ月の間に御心配のような点が出ることはないというふうに考えております。
  78. 田中恒利

    田中(恒)委員 共済にかけられる年というのは、花の芽が出たときでしょう、そういう年でしょう。それから一年半くらいの間に、生産地における収量というのは相当伸びますよ。新興産地は一五%、二〇%伸びるのですから。だから、そういう場合に、引き受け反収というものの変更をすべきではないかという現地要望は非常に強いですが、これは検討してみる必要があると思うのです。
  79. 小暮光美

    ○小暮政府委員 若干誤解がおありではないかと思いますので、もし私の説明で不十分でしたら、業務課長から補足して説明いたさせますが、樹齢別の収穫量の見方というものを組合ごとにきめておくわけでございますから、したがって、何年生ということを頭に置いて、その年のものをきめるわけですから、その点は御心配のようなことはないというふうに私は考えております。
  80. 田中恒利

    田中(恒)委員 そのときに樹齢別の年数を見て、実際に出るときは一年か二年前のを見て引き受け反収にせよ、こういう指導をやるというわけですか。そういうことでしょう。
  81. 小暮光美

    ○小暮政府委員 一年か二年前ということでなしに、その年に該当するであろう樹齢というものを見てやるということでございます。先ほど申しましたように、樹齢別の早見表と申しますか、それ自身が技術の基本的な変化によって変わってくれば、そのものを直すということでございまして、そういう基礎的な変化のない限り、その樹齢別のものを見て、その該当する樹齢を選ぶということでございますから、御心配の点はないというふうに申し上げたわけでございます。
  82. 田中恒利

    田中(恒)委員 そこのところは、そういうふうにちゃんと指導していただきたいと思います。  それから、農業共済に対する補助問題でございますが、果樹共済の事務というのはなかなかたいへんだと私も思う。農林省のほうでも何か事務調査をやっておられるようですが、その結果はわかったでしょうか。水稲等と比べて園地も分散しておりますし、事務的には複雑だと思うのですが、こういう実情の中で、事務費等に対する要望関係団体非常に強いわけです。一方、事務費にとられてさっぱり内容そのものが不十分だという面も出てくるので、この辺の調整をどういうふうにとられるつもりか。現実には相当仕事の分量がふえていくということは事実だと思うのです。これらについての調査事務費配分の根拠というものは一体どういうところに置かれるのか、この点をお尋ねしておきたいと思います。
  83. 小暮光美

    ○小暮政府委員 果樹共済の事務量は、検見等の形でやってまいりました従来の農作物の共済とかわりまして、出荷段階もあわせて押えないといけないというような要素もございますので、従来以上にさまざまなくふうが要るだろうというふうに考えております。したがいまして、本年度において事務量調査につきましても予算をいただいておりますので、本格実施までの間に、各種共済の事務量を、これまでの水稲あるいは家畜の事務量との間にどの程度の比率で原単位を求めるかというようなことについて、年度内にこれを調査してきめるつもりでございます。  ただ、事務量全体の問題につきましては、実は共済全体としては麦の作付の減少あるいは水稲の転作というような要素もございまして、全体として今後新種共済のほうに逐次精力を傾斜させていくといったような問題が基礎的にはございます。経過時期にはその両者が重複するということで事務的にかなり難渋することがあるのじゃないかと思いますが、長期的には、事務量は逐次いま申しましたような形での交代が、選択的拡大という形で起こるはずだと思っております。  その問題のほかに、出荷段階を理解しなければいけないという意味で、共済組合だけでこなそうとしないで、出荷団体調査その他について協力を求めるということが、果樹の場合には特に必要ではないかというふうに考えております。これらの点につきましては、協力をお願いする根拠も法律の中に特に規定するというような配慮をしております。
  84. 田中恒利

    田中(恒)委員 これはいろいろ相反することができまして、相当綿密に実態を把握して手続を踏まないと、実態に沿う共済金の支払い、災害評価等ができないという面もあるし、それに真剣に取り組めば取り組むほど事務費に対して十分な配慮がなされないといけないという面もあるし、いま出荷団体等を利用して出荷の調査資料を持ってきて、それで一発でさっと書類上やれば簡単かもしれませんけれども、そうすると、関係者に対して非常に不公平な問題を残すということになると思うのです。この辺は十分相互に見詰めながら検討して、基本的には、農業共済の労務費なり人件費なりというものを法律に基づいて国が責任を持っていく、こういう方向で取り上げるべきだと思うのです。特にいろいろ骨を折られたといいますけれども、何も米の共済に右へならえするということを基準に私ども言っておりませんが、米あり、養蚕あり、家畜あり、それぞれ先例もあるわけでありますから、二分の一の掛け金の負担ということだけでなくて、全体の果樹共済国庫投入というものをどうしていくかということについては、相当しっかりした姿勢で取り組んでいただきたい、こういうふうに思います。  あと一、二問ございますが、時間が参りましたので、農林大臣にあと一、二問御質問を留保して、私の質問を終わりたいと思います。
  85. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 瀬野栄次郎君。
  86. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農業災害補償法及び農業共済基金法の一部を改正する法律案について当局に質問をいたします。  去る五月三十一日から六月二日まで、熊本大分方面の第一班として国政調査に参ったわけでございますが、その節、現地からもたくさんの要望または将来の本法に対する要請等がなされてまいったわけであります。先ほど報告がございましたとおりでございますが、本日の審議にあたりまして、以下、将来のためにも本法に対する質問を申し上げておきたい、かように思うわけです。  御承知のように、昭和四十三年度以降、果樹保険臨時措置法に基づいて果樹共済制度化のための試験が行なわれて、いよいよ昭和四十七年度をもって終了するわけでございまして、来年度から恒久的な果樹共済制度が創設されるということで、私たちも本法の施行を鶴首して待っておったわけでございまして、たくさんの問題点がありますけれども、将来逐次改善をするという方向で今回は新しくこれを設けられ、大いなる前進であるという意味で、われわれも賛意を表しておるのであります。しかし、先ほども申し上げますように、たくさんの問題点を残しておるわけでありまして、発足当初でございますので、今後こういった問題については逐次ひとつ検討を進めていただいて、果樹農家要望する線が一日も早く達成できますように、冒頭お願いをする次第でございます。  そこで、いろいろ本法の内容に入る前に、若干前もってお尋ねをいたしておきますが、本案の目的は第一条に明記されておりますが、農業経営並びに農業生活者の生活安定ということは言うまでもありません。また、果樹の再生産を最小限に確保するということも当然のことでありますが、本法施行にあたりまして、これらの問題は当然相関関係にあるわけでございますので、これらを含めまして、具体的に本法のいわゆる真のねらいとするところ、こういったことについて、大臣がおいででございませんが、農林経済局長から立法の精神について冒頭承っておきたい、かように思います。
  87. 小暮光美

    ○小暮政府委員 果樹農家は、拡大してまいります果実需要に対応するために、現在、日本農業が大きく転換しております主要な目標の一つでございます。しかしながら、気象条件等によりまして、不慮の被害を受けることもまたきわめて多い農家の分野でございますので、これにつきまして、果樹農家の経営の安定と再生産の確保という観点から、従来ございました災害補償制度に加えまして、共済制度を確立することによって果樹農業の振興に資したいというふうに考えておる次第でございます。
  88. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、本法施行にあたりまして、加入方式の問題でありますけれども、これにもいろいろ疑問があるわけです。こういった加入方式の問題と、初期においては本法によって果樹農家の何十%ぐらいが吸収できるというふうに見ておられるのか、また総面積についてはどのぐらいになるのか、この機会にひとつ明確に御説明いただきたいと思います。
  89. 小暮光美

    ○小暮政府委員 果樹共済はいわば商業的な農業活動でございまして、その点、水稲のように、自給を含む農業分野と異なりますので、制度といたしましては、これを任意加入という形にいたしておりまして、これに加入し得る規模というようなものを別途想定するという形で考えております。したがいまして、全員がこれに加入するという姿は想定いたしておりませんが、主要な樹種につきましておおむね栽培面積の五割程度、十二万ヘクタール程度が実施の場合の加入のめどというふうに考えております。
  90. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 おおむね五割、面積にして十二万ヘクタールということでありますが、初年度としては一応そういうことを想定しておられると思いますが、今後五年、十年とやっていく場合に、将来はおおむねどのようなことを想定しておられるのか、その辺も検討してあるのか、もし検討してあれば、その点もひとつ御説明いただきたいと思います。
  91. 小暮光美

    ○小暮政府委員 ただいま申し上げましたような趣旨で、きわめて零細な形で、経営に付随する程度の意味しか持たない樹園地等につきましては、この制度に入れることを予定いたしておりませんが、それぞれの樹種ごとに想定されますある作付規模以上のものは、できるだけこれをまとめてこの制度に加入するような方向に持っていきたいというように考えております。この点は、むしろ今後の樹園地の集団化の傾向と見合って、何年程度で達成できるかということはまだいまの段階では申し上げられませんけれども、将来まとまった樹園地は全部これに入るような形に果樹農業の姿が発展していくことを期待しておるわけでございます。
  92. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 蚕糸園芸局長にちょっとお尋ねいたしたいのですが、先ほど、オレンジ自由化の問題にからんで、蚕糸園芸局長から、一万二千トンの輸入、すなわち〇・三%に当たる、月に一個ぐらいはみな食べたい、だから、各人の各種各様嗜好があるので、国民嗜好に応じて輸入考えていきたい、この程度であれば重大な悪影響は及ぼさないというオレンジ輸入についての答弁があったのでございます。また、この設定については、四月から九月、いわゆる競合しない期間に入れる、十月ないし三月には三千トンぐらいで考える、こういうことでございますが、これは沖繩の分も含んでおりますか、その点、念のためにお聞きしておきたいと思います。
  93. 荒勝巖

    荒勝政府委員 沖繩の復帰に際しまして、沖繩が、当時琉球でございましたが、琉球政府が入れておりました多くの商品につきましては、別ワクといたしまして、輸入ワクを別途復帰後設定しておる次第でございます。
  94. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 復帰後も別ワクとして入れるということでありますが、どのぐらい入れるのですか。従来はどのぐらい入れておった、復帰後はどのぐらい沖繩は別ワクとして入れるのか、その点も明らかにしていただきたいと思います。
  95. 荒勝巖

    荒勝政府委員 沖繩にはほとんどかんきつ類はございませんで、多少はございますけれども、これはほとんど自家消費に近いような形でございます。したがいまして、琉球政府時代におきましては約四千五百トンのオレンジあるいは台湾産のポンカン類が輸入されておったようでございます。
  96. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 それは復帰前のことだと思うのですが、新生沖繩県として日本へ帰ってきたわけですが、今後はどういうような見通しであるのか、その点もさっきお尋ねしたのですが、答弁が漏れておりますので、その点ひとつ……。
  97. 荒勝巖

    荒勝政府委員 どうも失礼いたしました。復帰後も、さしあたり復帰以前に行なわれておりました程度輸入数量を基礎にいたしまして、今後の伸び率等も勘案して、さしあたり四千五百トン程度を割り当てることにいたしますが、復帰後時間のかかるに従いまして日本産の温州ミカンなりナツミカンなりの沖繩への進出も相当考えられますので、それらの事情を勘案して今後弾力的に対処してまいりたい、こういうふうに考えております。
  98. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そうしますと、おおむね現時点においては、本土並びに沖繩の分を合せましてオレンジは——台湾産のポンカンも若干入っているという答弁でありますが、いずれにしても一万六千五百トンというものが輸入される、こういうふうに理解していいわけですね。
  99. 荒勝巖

    荒勝政府委員 沖繩の分を入れますと、計算上は一応一万六千五百トンというふうな数字になるわけでございますが、その沖繩の分といたしまして認めることになります四千五百トンにつきましては、それをこちらの本土のほうへ移入といいますか持ち込むことは禁止いたしておりますので、それはあくまで沖繩だけの消費分というふうに御理解願いたいと思います。
  100. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 私、去る五月十九日、本会議オレンジ果汁等輸入の問題について佐藤総理に質問をいたしたのですが、その前日農林大臣にもお伺いしたいと思っておりましたが、つい時間がなくて質問ができませんでしたけれども、たしか五月の十八日、十九日、田中通産相とエバリーの会談、またたしか翌日にはエバリーと赤城農林大臣の会談等があったわけでございますが、その結果については大臣が本会議でいろいろと答弁しておられました。また、その詳しい内容については、われわれそばにいたわけじゃございませんので、知るよしもなかったわけでありますが、われわれが仄聞し、いろいろ推測するところによりますと——過般三月に質問しましたときに、今回の一月六日のいわゆる日米会談並びにその後の牛場・エバリー会談等を通じまして、日本自由化については一方的に一年凍結ということを言っている。アメリカ側はそんなことを言っていないということで、ニクソンの大統領選挙等々からんで、いずれまた強力な自由化の要請がなされてくるであろう。現時点では、先般、当委員会から自由化問題でアメリカに派遣された皆さん方の意見を聞きますと、自由化はしないというふうなことでいろいろ話を承っておりますが、その裏には、あくまでも一年凍結というのは日本側だけの主張であって、アメリカ側の主張ではない、いつどのように向こうから強い要請があるかわからない、自由化はされなくてもワク拡大を強く要請してくる。そういうふうになりますと、結局は、自由化と同じ結果になるということで、果樹地帯ではたいへんな心配をいたしております。まあ今回の当委員会調査においても、先ほど報告がありましたように、自由化の問題の促進について、さらにはワク拡大について特に検討また配慮していただきたいという要請が強くなされてまいったわけでありますが、そういったことを踏まえまして、先ほど蚕糸園芸局長から、無差別には入れない、こういうふうな答弁がございまして私、何かしらん少し不安を感じ、また考えが変わったような印象を受けたわけでございます。一万二千トン並びに沖繩が四千五百トン、こういったことでありますけれども、今後ワク拡大が国会が終わったあとでなされていくんじゃないかというようにも懸念される。その点ひとつ明確にお尋ねをしておきたい。午後農林大臣もおいでになるようですから、後ほどまた大臣にもよくお聞きしたいと思っているのですが、局長の立場での答弁をひとつ伺っておきたいと思うのです。
  101. 小暮光美

    ○小暮政府委員 個々の物資の話に入ります前に、エバリー云々という御指摘もございますので、農林経済局から一言お答え申し上げておきたいと思いますが、通貨の改定がございましても依然として日米の貿易の収支が好転しないということを理由にして、アメリカ側が貿易上の問題について事務レベルでいろいろと話し合いたいというようなことを言っておることは事実でございます。これに対してどのように受け答えするかということは、政府部内でまだ態度を決定いたしておりませんけれども、私ども農林省としてそういった相談にかりにあずかります場合に、たとえばオレンジの一万二千トンのように、正式の通商代表と私どもののほうの駐米大使との間でかなりの時間をかけて一九七二年において幾らというふうにきめましたものを、簡単に議論の爼上に乗せるべき筋合いのものではないという姿勢で臨むつもりでございます。
  102. 荒勝巖

    荒勝政府委員 ただいまの小暮局長からの御答弁のとおりでございまして、私が先ほど申し上げましたのは、今後四十八年度以降のことについて、輸入ワクを設定しながらオレンジ輸入について弾力的に数量を調整してまいりたいというふうな趣旨で、無差別には輸入は行なわないというふうに表現したつもりでございますが、本年度四十七年度に関します限り、ただいまお話がありましたように一万二千トンということで、上期九千トン、下期三千トンということで、輸入数量につきまして日米両国政府間で協定いたしました数字につきましては、ただいまその数字を変えるような作業は全然いたしていないということを申し上げたいと思います。
  103. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いまの両局長からの答弁で一応了といたしますが、いずれにしても、いま果樹農家生産調整の中で、農業の三本の柱の中の一つとして果樹に取り組んでおりまして、先行き不安をかかえながら営々と経営にいそしんでおります。まあそういったことで今後農家の意欲が減退しないためにも、輸入ワク拡大等についてはひとつ慎重な態度で臨んでいただいて、ワク拡大をしないように、また国内かんきつ生産に対して十分な保護をしていただきたい、かように思うわけでございます。  午後、また農林大臣に伺うことにしまして、次に共済法の内容に入っていきたい、こう思います。  共済目的の中の類区分の問題でありますけれども、現行の類区分では、価格、被害実態及び収穫期等の異なるものが同一類とされておるために、適正な被害の補償というものが受けられないといううらみがあるわけでございます。そこで、本格実施の場合、実情に即するように改善してもらいたいという強い要望が出ておるわけでございまして、当局も十分御承知のことだと思っております。本格実施にあたっては、同一類に属する各品種については一体として基準収穫量及び共済金額の設定がなされて損害の評価が行なわれるようにする方針とされておるようでありますが、そのためには、被害の危険度の異なるもの、また収穫期の異なるものごとに類区分を設定することが実情に即した措置ではないか、こういうふうに思われるわけでございます。この点については、現在、農林省でもいろいろと検討しておられるような御答弁のようでありましたが、政府の具体的な方針をさらに一そう明らかにしておいていただきたい、かように思います。
  104. 小暮光美

    ○小暮政府委員 果実につきましては、同一種類のものでございまして、品種または栽培方法が異なりますと、収穫の時期が違ってまいります。また、被害発生態様も品種、栽培方法等によって異なってまいるわけでございますので、これらのものを適切なグループに分けまして、指定果樹の種類ごとに保険目的の種類を定めたいと考えております。具体的には、たとえば温州ミカンにつきましては、わせ温州と普通温州に分けるというようなことを考えておるわけでございます。ただ、その際に、果樹の種類によりましては、これはあまり微細に分けますと、そのものにつきまして危険分散の可能性がなくなるというところまで細分化するわけにはまいらぬわけでございま了。それから、果樹農業一つの特色といたしまして、全く異なる品種をかけ合わせて新しい品種をつくり出すというようなことが常時行なわれるために、これらのものをある定まった種類として、相当の数量、相互に危険分散できるような数量までふえてまいります過程において、これを過切なクループに属させることができない、あるいはその属させ方に非常な困難を感ずるというようなものがあると想定されます。これらのものにつきましては、実態を十分精査いたしまして、適切にこれを措置するような方向考えてまいりたいと思いますが、経過的な時期があるということは、御了承いただきたいと思います。
  105. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 今回、対象が予定されておるのは六種類の果樹でございますけれども、この六種類のほかに、当然現在検討の対象となっているものがあるわけでありますが、果振法の第二条に基づく果樹農業振興基本方針等の対象となっている、すなわちカキ、クリ、梅、桜桃といった果樹等があるわけですけれども、この地域の特産果樹に対して今後どういうふうな取り扱いをされる考えであるか、今回この点もひとつお伺いしておきたいのです。南九州ではポンカンがあるし、さらには沖繩のパイン等もあるわけですが、こういったもの等についての対象果樹拡大についての今後の方針はどういうふうに考えておられるか、この点、ひとつ御説明いただきたいと思います。
  106. 小暮光美

    ○小暮政府委員 基本的には、果樹農業の振興のためにこの制度を設けたいというように考えておりますので、果振法の対象となっております果樹の中から可能なものを逐次指定してまいりたいというように考えております。ただ、指定するにあたりまして、やはり全国的な危険分散がどの程度期待できるか、それから料率の設定が可能な程度被害発生態様等が把握できるかどうか、あるいは具体的な共済需要が相当のまとまりであるかどうか、これらの三点について検討する必要があるだろうというふうに考えております。
  107. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 さらに、特殊果樹の除外が規定されておりますけれども、法案の第百二十条の二の一項によりますと、特定の果樹については共済の引き受けができないことになっておりますが、いかなるものが特定果樹として除外されるのか、この点もひとつ明らかにしておいていただきたいと思います。
  108. 小暮光美

    ○小暮政府委員 先ほど御説明したことと関連するのですが、種類を分けました場合でも、全く新しい枝変わりとか、新しい交配品種というようなものが出てまいりまして、そのものについて被害発生態様を明らかにするには相当の時間がかかるというような場合に、これを農林省令で指定いたしまして、共済の対象から除外するというようなことを予定いたしておるわけでございます。これは実は、ある種類について共済にかけるというような場合には、そのものについての全面積を共済にかけてほしいという仕組みが別途ございますから、そこを共済にかけなくていいのだということを逆にはっきりさせませんと、まぎれが生じますので、そういう規定を特に設けておるわけでございます。
  109. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この樹体共済で、どうも基礎データが整わないため、幼木は対象外に置かれるということになっておりますけれども、この幼木の取り扱いについて、生産地の果樹保険関係等は、今回もいろいろ調査の結果、現地陳情がございましたが、生産農家等も幼木をぜひ制度の対象とするようにしていただきたいということでございます。これに対する見通しはどういうふうに立てておられますか、また、いかなる検討をしておられるか、この機会に明らかにしておいていただきたいと思います。
  110. 小暮光美

    ○小暮政府委員 樹体被害を見ます際に、果樹として定着してから実際に果実を生み出すようになるまでの間に若干の年数があるわけでございます。定着前の問題は、むしろ植栽の問題として処理すべきだと思います。活着したあとは、やはり将来共済の対象としてこれを考えてまいりたいというふうに方針としては考えております。  ただ、幼木段階の被害発生態様等につきまして、実は調査の段階でもそこまでの調査をいたしておりません。試験実施の際にも、成木についての樹体被害調査をやってまいりました経緯がございまして、制度発足当初から幼木の樹体共済を仕組むことができなかったわけでございますが、これについては若干の年数をいただきまして、基礎調査を行ないまして、制度の中に入れる方向検討させていただきたいと考えております。
  111. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 幼木については、ぜひひとつ早い機会に制度の中に入れるということで検討していただきたい、かように思います。  次に、品質低下によるところの損害という問題があるわけですけれども、今日のように価格が激しく変動しておる場合におきまして、品質低下の実態を適正に評価するということが大事であります。その減収を補てんすることは技術的には非常にむずかしいということでございますけれども生産者はこの方式がはたしてどのように運用されるかということが心配であるということで、この点は大分県の国東半島でも話が出ましたことなんですが、品質低下を共済金支払いの対象に含める地域は農林大臣が指定をするということになっておりますけれども、この指定基準、出荷系統団体等をどのように想定しておられるか、その点についても明らかにしておいていただきたいと思うのです。
  112. 小暮光美

    ○小暮政府委員 品質低下を共済事故とすることができる組合は、農協等の果実の出荷団体中心といたしまして、共選、共販が行なわれており、これらの資料によって十分品質を加味した基準収穫量の設定、あるいは実際の収穫量の把握が適正に行なわれるというふうに認められる地域を指定する考えでございます。具体的には、組合等の会員の全員が共販に参加しており、その個々の農家ごとにおおむね五〇%以上共販に乗せておるというようなことを指定の基準にいたしたいというように考えております。
  113. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ただいま説明ございました地域数は、どのくらい想定しておられますか。
  114. 小暮光美

    ○小暮政府委員 これまで関係県の担当者と事務的な打ち合わせをいたしております段階での中間の観測でございますが、樹種によって若干異なりますが、おおむね果樹共済に参加いたす予定の組合の二割ないし四割というようなものがこの制度に乗ることを希望いたしております。
  115. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この地域指定に対する具体的な運用ですね、これはこの法案を検討される段階でいろいろ詰めてこられたと思いますが、それについての内容をひとつ具体的に御説明いただきたいと思うのです。
  116. 小暮光美

    ○小暮政府委員 ただいま申しましたような基準で考えるわけでございますが、出荷団体等が次第に統合して大型化の過程を歩んでおるわけでございますので、ある法人格としての組合の全地域がいま申しましたような基準に達しておりませんが、その組合のたとえば半分がまとまった形で大型の共選場のもとでいま申しました基準を十分満たしておるというような場合には、必ずしも組合の地域にこだわらずに指定し得るようなことも考えております。しかし、基本的にはどこまでも組合単位に、さっき申しました共販率、その度合いを判定してこれを指定したいというふうに考えております。
  117. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、共済事故の場合でお尋ねをいたしたいと思いますが、最近の防除用の薬品による薬害の発生、または公害の蔓延等と関連しまして、薬害や公害も共済事故とすべきじゃないかという意見が一部にあるわけでございますけれども農林省で認定されておりますところの防除用薬品の使用による被害の発生等もございまして、これらの事情を背景に、公害や薬害についても共済事故の対象に加えるべきじゃないか、こういうようなことがいわれておるわけです。すでに農林省で認可をしておるこういったものについても薬害があるということで、いろいろとあちこち問題が出ておるわけでございます。  そこで、公害や薬害は、いわば人為的な災害であるということで、これを事故の対象としない、いわゆる災害補償制度のたてまえ上しないというようなことがいわれておりますけれども、現実には被害の発生が見られますし、また今後発生を予想されることでもございますので、この対策を含めまして、この点についてはどのように検討しておられるか、御説明をいただきたいと思うのです。
  118. 小暮光美

    ○小暮政府委員 病害の問題につきましては、今回御提案申し上げております制度では、これを全部共済の対象にすることにいたしておりますが、公害、薬害につきましては共済事故とすべきではないというふうに考えております。公害は、一般に工場、事業場等が人為的な原因によって害を及ぼしておるものでございます。具体的に責任者の把握がなかなか困難であったり、補償の追求等に現実の困難があることは私も率直に認めますけれども、しかし、農業災害補償制度のたてまえとしては、このいずれかに加害者が明らかにあるというものにつきましては、そのほうに追求すべき性格のものであって、農業者の組織する共済制度の中でこなすべき問題ではないだろうというふうに考えております。薬害の問題も、これは共同防除による場合、あるいは個人防除による場合、若干態様を異にするでありましょうが、いずれにしても、薬剤の使用法を誤るといった人為的な原因によって被害が生じました場合には、これを共済制度の対象と考えるべきではないというふうに見ております。
  119. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、農林省等によって認定されている防除用薬品の使用によって、明らかに薬害が出た、こういったことが認定された場合といえども対象にならない、こういうふうに理解するのですか、それとも将来はそういったことは検討していくという方向であるのか、その点、もう少しく説明を願いたいと思います。
  120. 小暮光美

    ○小暮政府委員 農林省が農薬として使用することを認めておるということは、その農薬としてはある使い方がおのずから定まっておるわけでございます。その使い方に即して使ってなおかつ被害が発生したという場合と、使い方を誤ったという場合があるわけでございまして、使い方を誤った場合は、先ほど申しましたように、これを共済の対象にするわけにはまいりません。しかし、たとえば、具体的な例になりますが、ジベレリン処理をいたしましたあとは、ある程度の湿度があることが望ましいわけでございまして、ジベレリン処理をした直後に異常な干ばつが続くというようなことになりますと、そこに、ジベレリン処理をしたことと干ばつということから、ある種の被害が出てくるということが確認されております。こうした場合に、ジベレリン処理をするための使い方として一般に認められた使い方をいたしましたけれども、不幸にしてその直後に干ばつが続いたということで、薬害のような形で被害があらわれるという場合がございます。こういったものは、連合会等において十分実情を審査の上、被害として認めることがあり得るだろう、まあ一つの具体例でございますけれども、そういうふうに見ております。
  121. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、本法の施行にあたりましてたいへん問題になる点は、基準収穫量の定め方でございます。前段でもいろいろ御質問が出ておりましたが、果樹保険のいわば重要な背骨となるというふうに私たちは思っておるわけですが、基準収穫量の設定方式の具体的な内容とか、果樹の特性である隔年結果の現象を基準収穫量にどのように反映するかということですね。もちろん、肥培管理あるいは経営のあり方によっては、隔年結果もある程度防げるわけでございますが、事実はこういった傾向にあるわけでございますので、その点も含めまして、どのように考えておられるのか、またいかなる決定をされるのか、その点、ひとつ御説明いただきたいと思います。
  122. 小暮光美

    ○小暮政府委員 基準収穫量の設定にあたりましては、あらかじめ組合ごとに樹齢別の標準収量表を定めておきまして、具体的には、加入農家から申告をしてもらいまして、加入農家の申告を基礎として、農林統計調査資料その他を参考といたしまして、これを決定するわけでございます。  隔年結果の問題につきましては、栽培上そういう姿がどうも現実にあるということが、かんきつ類等では認められておりますが、これを技術的に、来年は必ず裏年である、あるいは表年であるというふうに事前に言い切ることはどうもできないようでございます。ただ、結果として、長年の統計を見てまいりますと、明らかに隔年結果とおぼしき姿が現実にございます。今後技術の進歩によってこういうものが次第にならされることを期待いたしますけれども、当分こういうことが続くのではないかと見ております。そういう樹種につきましては、たとえば過去の平均をとりまして一つ判断の基準をつくりますような場合に、奇数年をとりまして、その中から最高、最低を落とすというようなことをいたしますと、たとえば、過去の統計上来年が裏年に当たりそうであるというときに、奇数年から上下一つを落とせば、そういう年が色濃く反映するといったような平均のしかたがあり得るのではないかということを検討いたしております。しかし、そういうことが特に必要となるのは、かんきつ等常緑樹であって、落葉果樹には、隔年結果ということは、統計的には確認できないようでございます。
  123. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、品質低下を共済事故とする場合、基準収穫量の調整というものは、具体的にはどんなふうに考えておられますか。
  124. 小暮光美

    ○小暮政府委員 農家の申告に基づいてきめますわけでございますから、御指摘のような点を十分織り込んだものとして決定されるわけでございます。
  125. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 果樹は、御承知のように、永年作物でありますから、災害を受けた場合にその被害が数年にわたって収穫に影響する、こういうように思われるわけです。また、九州においても四十二年でしたか、ひどい干ばつがございまして、過去十年の間に大なり小なり九回くらいの災害にあっております。一回ああいったひどい干ばつにあいますと、樹勢が三年ないし五年くらいいたむという打撃を受けるわけでございます。そういった影響を受けるということによりまして、収穫量が相当減少するということが起きてくるわけでございますが、このような場合に、基準収穫量というものは、そういう長期にわたって樹勢が回復しない場合はどういうように検討されるのか、この点についても伺いたいのであります。
  126. 小暮光美

    ○小暮政府委員 樹体共済の対象となるに至らないという程度で樹体、樹勢が弱まるといいますか、そういう形が数年間継続するような場合が御指摘のように想定されます場合には、やはり基準収穫量が下がってくるという形で処理をされるわけでございます。
  127. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、料率の問題についてお伺いしますが、果樹生産農家等においては、試験実施期間中における災害発生が多かったことにかんがみまして、この点は昨年もいろいろございましたが、ちょうど実施期間中に災害等が多かったわけでございますけれども、この料率算定の具体的方法をどういうふうに考えておるのかということが、今回の調査でもいろいろと問題になってまいったわけでございます。試験実施を行なわなかった地域の料率はどういうふうにして設定するのか、もちろんこれは、日本列島はリンゴの地帯とミカンの地帯と縦に長い国でございますので、地域的にたいへんむずかしい問題があるわけでございますけれども試験実施地域が比較的被害率の高い地域であった場合には、その被害率を他の地域にそのまま適用するということには問題があるということと、また、果樹の土地条件、栽培技術、こういったものによって被害の発生状況は相当に違うわけでございまして、個別料率を設定すべきではないか、こういうようにいわれておりまして、本格実施の料率はどのくらいになるのかということがいろいろと現地でもお話が出たわけですけれども、こういった点について明快に、検討されました結果をひとつお知らせいただきたいと思うわけでございます。
  128. 小暮光美

    ○小暮政府委員 水稲と異なりまして、きわめて局地的にさまざまな姿のあるのが果樹栽培の実態でございますので、そのことはやはり任意加入という形と基本的には連なる面があるわけでございますが、それにしても、できるだけ関係者が理解しやすく納得のしやすい形のものにして加入率を高めることがこの制度のために必要でございますので、御指摘のような点につきましては、私どもも基本的には、加入の実態が次第に成熟し、しかも統計資料等が逐次実行の段階で累積されてまいりますれば、できるだけ御指摘のような御要望にきめこまかく対応するような形に運用を持ってまいりたいと基本的には考えおります。  ただ、別の委員からも御指摘がございましたように、そのことは逆に、事務のあり方とのバランスもございまして、あまりにもこまかいことをいたしますと、かりにいまの統計資料等が将来整備してまいりましても、制度が全体として経費倒れになるという危険も含むわけでございますので、グループ分けをし、適切な形でバランスをとることが必要であろうというように考えております。  そこで、発足当初は、かなり大づかみでございますけれども、それでも、先ほど来申し上げておりますように、果樹の種類ごとに、一本にいたさずに、わせあるいは普通あるいはその他の種類というふうに実態に即して分けます。その上にさらに、県内を危険等級に応じ若干の地域に分けるというような配慮も、発足当初にはいたしたいというふうに考えております。
  129. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 先ほども論議されましたが、足切りの問題ですけれども、現行の試験制度に引き続き、本格実施においても三割足切り方式が採用されることになっておりますけれども、これが被害の発生の多発状況等からしまして、保険設計上やむを得ないものであるとすればいたし方ないということもいえるのですけれども生産者等の間には、今回の方式について、いろいろな懇談の席においても、こういったことに対してはなお不満を抱くということで、強い意見と要望が出たわけですけれども、三割足切り方式を採用された根拠についてひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  130. 小暮光美

    ○小暮政府委員 試験実施の際には五割足切りと三割足切りの二つを実施いたしたわけでございますが、研究協議会からは両者の選択方式でもよろしいのではないかというお答えをいただきましたけれども試験実施の経過から見まして、五割足切り方式というのは、生産者がこれに対してあまり賛意を表さないというふうに判断いたしましたので、三割足切り方式一本にいたしたわけでございます。  なお、これをさらに二割にしたらどうかというような御指摘につきましては、果樹については被害発生態様につきましてきわめて実態が区々でございまして、先ほど御指摘の隔年結果というような果樹に特有の問題もございますし、制度全体として、共済制度の健全な運営といったことから考えますと、当面三割が最も適切ではないかというふうに私ども考えておるわけでございます。
  131. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、加入方式の問題で、たとえば品質低下が補償の対象とされる場合は、損害評価について困難な問題もあるわけですけれども、単に果実の減収のみを対象とする場合については、園地方式の採用を認めることができるのではないかとも思われるので、この点について加入方式の単位の問題で、農家単位としておられますけれども果樹生産者の多くは、樹園地が散在しておるために被害補償の機会が多くなること等を根拠としまして、いわゆる園地単位の採用の要望が強いわけでございますが、これに対しては本法施行にあたっては大体どういう方向考えておられますか、この点もひとつ明らかにしておいていただきたいと思います。
  132. 小暮光美

    ○小暮政府委員 果樹農業の今後の発展の方向といたしましては、これをできるだけ樹園地の集団化をはかり、集団的な生産の組織と出荷の組織という方向に持ってまいるべきであるというふうに考えておりまして、したがいまして、新たに発足する果樹共済におきましては、散在する樹園地を対象とした樹園地立てというのは、制度としてこれをとらなかったわけでございます。今後の方向といたしましてもそれを採用する考えはございません。
  133. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、果樹共済にかかる国庫補助の助成等についてでございますけれども、掛け金の二分の一を国庫負担することとしておりますが、米麦、家畜、蚕繭等々の共済に比べて低過ぎはしないかということがいろいろ論議されておるわけです。他の共済における掛け金国庫負担割合は全国平均で水稲が約五九%、蚕繭約五七%、家畜約四九%でありますが、十アール当たりの掛け金の国庫負担及び農家負担額はどのくらいになるのか。果樹農家の負担能力等から見まして、この点についてはどういうふうに見ておられますか。その点、ひとつ検討の結果を御説明いただきたいと思います。
  134. 小暮光美

    ○小暮政府委員 十アール当たりの掛け金の試算は温州ミカン、ナツミカン等で二千円から二千三、四百円、リンゴで千三百円から千六百円というようなことに相なっております。
  135. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 今回の九州方面の熊本大分県の調査におきましても、果樹共済事業費の負担金については職員設置費を含めまして全額国庫負担とせよ、こういった要望が強かったわけです。これは全国的にそうであろうと思いますが、これに対して政府は、国庫負担をどのように考えておられるか、この点もひとつ明らかにしていただきたい。
  136. 小暮光美

    ○小暮政府委員 水稲共済、蚕繭共済は、御承知のように、強制加入ということでございまして、水稲につきましては、先般、最近の米穀の需給事情等を勘案いたしまして、国庫負担のあり方を一部手直しいたしましたけれども、しかし、基本的には強制加入というたてまえのもとに、被害の高いものにつきましてはきわめて高率の国庫負担をするという考え方がございます。そのことが水稲共済の平均の国庫負担率を五割以上にしておるわけでございます。果樹の場合には、家畜共済と同様に、任意共済という考え方でございます。家畜が平均四九%でございます。果樹が五〇%ということは、任意共済としてはおおむね妥当な線ではないかというふうに考えております。  なお、事務費を含めて全額国庫負担にせよという御指摘でございますが、事務費につきましても、強制加入の水稲を含めまして、全額国庫負担という形は従来もとっておりません。ただ、果樹共済実態を本年一年さらに事務費の面から調査いたしまして、本格実施の際に、適切な補助のあり方を確立いたしたいというふうに考えております。
  137. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 最後に一、二点お伺いして、一応午前の部を終わりたいと思いますが、この試験実施の終了に伴いまして、連合会の収支過不足の取り扱いが一応問題となると思うのですが、これに対して連合会によっては赤字を出しているところと、またかなり黒字になっているところと、いろいろあるわけです。農家も赤字を出したものについては加入についていろいろと不安を感ずるという問題があるし、また余剰金を出した連合会については、今後これを払い戻しせよというふうな意見も出ているわけですけれども、こういった問題についての見解はどういうふうに政府はお持ちであるのか、その点、お尋ねしたいのであります。
  138. 小暮光美

    ○小暮政府委員 共済制度は、これはもう申し上げるまでもないことでございますが、全国的に横に危険分散するという問題のほかに、年次的に、いわば縦に危険分散するという両方の要素を含んでおるわけでございます。したがいまして、数年間の試験実施の場合に、これをある年度で区切りますれば、剰余を生ずる連合会と、不足金を生ずる連合会がございますことは、当初から想定されるところでございまして、それは普通言います赤字運営の不始末と申しますか、管理者の不適切な行動によって何か不良赤字が累積したというような性格のものではございません。その点はひとつ御了承いただきたいと思います。  したがいまして、試験実施から円満に本格実施に移行いたします連合会にありましては、かりに移行の時点で不足金がございましたら、これを別勘定に計上いたしまして、新たに発足する本格実施の勘定が今後逐次剰余を生み出しました場合に、これを補てんするというようなことを考えておるわけでございます。  ただ、切りかえのときに、不足金でなくて剰余金を生ずる連合会が当然あるわけでございます。これにつきましては、試験実施をやりました際のいわば沿革と申しますか、経過的な事情が当然ございます。当初試験実施の設計では、たぶんあまり共済金を支払われることがないのではないかという理解を一般の生産者の方がいたしまして、なかなか試験実施に参加しようという機運が出てまいらないということがございまして、かりに余ったら返すからということを言うことによって試験実施に参加してもらったという経緯が一部の地域にあるようでございます。それらの事態を踏まえまして、当委員会におきまして、当時、試験実施してかりに剰余を生じたらどうするかというようなことについての意見の交換が行なわれ、関係者がそれを希望するならば払い戻すという趣旨め答弁政府側からなされたという経緯がございます。これらの経緯は十分尊重しなければならないというふうに考えております。
  139. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 果樹資金の問題についてお尋ねいたしますが、このことについては午後農林大臣が見えた席でお尋ねをしたい、こういうふうに思っておるのですけれども、農林経済局長の御意見もこの機会にお伺いしておきたい、かように思います。  今回、態本、大分調査にあたりまして、現地でも至るところで要望なりまたお話がございましたが、現在果樹農家はたいへんな借金を持っておるわけです。熊本の場合でも大分の場合でも平均して二百万から三百万はまず借り入れ金をかかえておる。多い人で二千万から三千万、それもかなりの数の人がおるわけでございます。しかも、その借り入れ金の内容が、果樹振興法による資金または近代化資金、農協プロパーというように、いろいろな種類の資金を借りておりまして、償還がいつ終わるものやら、どの部分の利子がいつ終わって、据え置き期間が終わって償還に入るものやらさっぱりわからないというようなことで、経営上不安を持っておりますし、さらには、将来の果樹自由化の問題とからんで意欲が減退しつつあるというような状況で、経営上困難が感じられるわけでございます。  そこで、農家といたしましては、実際に植栽をいたしましてから十年以上たちまして成木となって、いよいよ収穫をするという段階になるまでに償還がどんどんやってきて、実際には収穫ができないうちに償還が来るというようなことで、至るところでもっと長期、低利の金融の道をぜひ開いていただきたい。政府のほうは、いわゆる農業の三本の柱の一つであるこの果樹に対して、もっと思いやりを持ってやるべきじゃないか、ぜひこういうことを国会でも詰めていただきたいというようなことで強い要請があるわけでございます。農家の言い分としては、そういった各種資金をこの際一本化して、総合的な資金として長期、低利、十年据え置き、二十年ないし二十五年償還というような、しかも利子は三分以下ということにしないとなかなか成り立たない。そういったものについて全部資金を一本化して償還に当たる、こういうふうに考えてほしいという要請があるわけです。われわれもかねがねそういったことをしみじみ感じておったわけでございますが、熊本大分両県においてもそうでありますし、また山形福島県に調査に行かれました各委員のお話を聞いてもそういった要請が強かったし、北海道等の畜産関係においてもそういった要請が強いわけでございますが、これらの問題について経済局長は十分実態を掌握しておられると思いますけれども、どういうふうに考えておられるか。この問題が解決しない限り、今後果樹はたいへんな悩みをかかえていくということになります。こういった問題が一番たいへんな問題になっておるわけでございますけれども、このことをどういうふうに当局検討しておられるか、局長の御見解を承りたい、かように思います。
  140. 小暮光美

    ○小暮政府委員 御指摘の点を私どもなりに二通りに分けて実は理解いたしておるわけでございます。  一つは、果樹農業のように確かにかなりの長期を要する営農形態のものにつきまして、制度資金のあり方をどう考えたらよいかという問題でございます。この点につきましては、御指摘のとおり、かなり長期の据え置き期間を必要とする。また、償還期限もかなり長いものが適当であるというふうに私ども考えておりまして、現に果樹園経営改善資金は据え置きが十年、償還期限が二十五年ということでございます。また、総合施設資金という形で土地取得資金を含めて総合的な資金の借り入れができます仕組みでも、据え置きが十年、償還二十五年というようなことでございまして、十分通常の果樹園経営の姿に対応し得る制度であるというように考えております。  それからもう一つの点は、過去においてさまざまな形で資金を取得いたしまして、すでに樹園地を造成しておるものの償還の問題でございます。これは果樹園経営のための資金の貸し出しの仕組みは、いま申しましたように、据え置き十年、償還二十五年というような形になっておりますが、たとえば未墾地取得資金あるいは農地等取得資金といったような据え置き期間が三年というようなもの、これも果樹については十年という制度が別途あるわけでございますけれども、こういったものとの関連、あるいはその部分を一般のプロパー資金に依存したというような事情が過去においてございますと、いま申しましたような形での制度に初めから乗った場合と違いまして、償還面にさまざまな問題があり得るだろうと思います。しかし、これはどこまでも経営の実態に即してそれぞれの融資の機関がこれを指導し、判断すべきものでございまして、経営としてこれを設計し、一定の償還計画を立てて借入金を起こしたわけでございますから、これを途中で一括して新しい資金に借りかえてしまうというような安易な形はやはり許されないわけでございまして、それぞれの経営の実態に即し、たとえば農林漁業金融公庫が貸しております資金でございますれば、公庫総裁の権限の中で償還を円滑ならしめるように償還計画を繰り延べるといったような制度がございますし、あるいは農業近代化資金でございますれば、それぞれの計画に即して通常貸しておりますそれらの法定の期間の範囲内でさらに償還計画を組み直すというようなことも、具体的な経営の実態に即して指導することは可能でございますけれども、過去において借りましたものを一括して新しい制度に乗りかえるということは適当でないというふうに考えております。
  141. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 金融問題で、経済局長、もう一点お伺いしておきますが、いま新しく制度に乗りかえるという考えはないと、こういうことでございますけれども、まあそれはそれとしてまた午後いろいろと論議することにしまして、来年はいよいよ農林中金も五十年を迎えて、法的には期限が来るということで、むろん存続していくことになりますが、この農林中央金庫の五十年を迎えて、系統資金のいわゆる交通整理をすべきだということが各種団体からもいわれておるわけでございますし、われわれもそういうふうに思うのですが、来年を一つの契機としていろいろ金融面で考えなければならぬと思うのです。農林中金のそういった五十年目を迎え、また今後存続されるという段階になるわけですけれども、そういった機会に、こういった果樹を含めて長期資金、こういったものについてもいろいろ検討すべきではないかと思うのですが、果樹のみならず、そういった全般の資金について局長はどいうふうに考えて対処しておられますか、この機会にひとつ御見解を承りたいと思います。
  142. 小暮光美

    ○小暮政府委員 農林中央金庫は制度金融を分担しておるわけでございませんので、農林中央金庫法の改正の問題と御指摘の点は直接はつながらないわけでございますが、ただ、そういうことでなしに、最近の農業生産実態あるいは政策方向といったものとの関連で、制度融資と系統融資の職務の分担関係あるいは各種制度資金の相互の関係、こういったものにつきましては十分実態に即した交通整理をすべきであるというふうに考えますので、これらの問題につきましては、十分これを検討してまいりたいというふうに考えております。
  143. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 おっしゃるように、農林中央金庫と本法による先ほど申し上げましたような総合的な資金の問題は直接つながらないことは承知しておりますが、いずれにしても、果樹農家の要請というのが、先ほど申し上げましたように、長期しかも据え置き期間の長い資金を一本化して借りかえる、また乗りかえるというような制度にぜひ持っていってもらいたいということで、当委員会でも、各委員といまおりおり話を進めておりますが、ぜひこういった小委員会をつくって今後進めるべきであるというふうに意見が出ておるわけですけれども、これは今後の問題とすることとしましても、いずれにしても、来年は農林中央金庫も五十年目を迎えるということになりますし、またいろいろなこういった制度金融が畜産、果樹またあらゆる面においても問題にされております。交通整理をする必要があるというふうにいわれております。そういったことで、また別な機会にいろいろお尋ねをし、論議をすることといたしますが、先ほど申し上げましたように、この果樹農家に対して、一番いまどこへ行っても根本的な問題として悩んでおられる問題は、多種多様な資金を借りて、その償還にたいへん困っているという状況があるわけですので、局長も十分その点は御存じだと思いますが、ひとつなお一そうの果樹農家に対する金融制度について検討していただいて、今後農家が安心して経営できますように御配慮いただきたい、かように思うわけです。  冒頭申し上げましたように、いよいよ本年度で試験期間が終わりまして、来年度から果樹共済の実施ということになりまして、初期でありますのでかなり問題点もたくさんあるわけですけれども、時間の制約もございますので、一通り政府の見解を承ったという程度に終わりましたが、今後に残された問題がたくさんございますので、どうかひとつ困難な問題を克服して、おそかったわけですけれども、その中でもようやく実現の運びに至ったということは、当局の御苦労のほどはよく承知いたしておりますので、本日各委員からの質問または問題となっている点については十分ひとつ検討を進められて、毎年毎年改善をされましてりっぱな共済になりますように、また新種共済が次々とできていくようにひとつ今後推進をはかっていただきたい。  このことを申し上げ、ちょうど約束の時間が参りましたので、あとの問題は午後農林大臣に若干お尋ねすることとしまして、午前の質問をこれで終わることにいたします。どうもありがとうございました。
  144. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 この際、暫時休憩いたします。    午後一時二十九分休憩      ————◇—————    午後二時四十五分開議
  145. 松野幸泰

    松野(幸)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。田中恒利君。
  146. 田中恒利

    田中(恒)委員 午前中、果樹共済につきまして事務当局からいろいろお話をお聞きをし、質疑の応答を繰り返してきたわけですが、二、三点この際農林大臣に御所見をお尋ねをしておきたいと思います。  一つは、農業共済制度のこれからのあり方ということでありますが、すでに御承知のように、米の作物共済から蚕繭、乳牛、肉牛、種豚、こういう家畜共済がこれまで実施されておるわけでありますが、今回新たに果樹共済ということでまた一つふえるわけですが、いろいろ聞くところによりますと、鶏の卵の共済あるいは野菜のビニールハウス等の共済等、新種共済部門の準備もすでにせられておるということでありまして、この共済制度というものがこういうふうに各部門ごとに、品目別に一方ではどんどんふえていく、しかし、実際にこの共済あるいは保険の仕組みの上からいくと、なかなか単品ではやれない矛盾も一方では出てくる心配もあると思うのです。しかも、現状の米の農業共済にいたしましても、必ずしも政府考えておるほど農家の間で評判がいいかというと、地域によってはたいへん不評判のところがたくさんあるわけです。そこで、私は、この農業共済制度の今後のあり方というものには幾つかの問題がありますが、これからの方向として、こういうふうに細分化した品目別の、経営部門ごとの共済制度というものを今後どんどん仕組んでいくのか、あるいは、農林省はことしの予算で経営共済といったようなものの調査研究もせられておるようですが、こういう総合的な形で農業所得全体の災害をカバーしていくという観点でもっていくのか、その他、ほかにいろいろいい案があるのか、こういう問題にいまぶつかっているような気がしてならないわけであります。したがって、この際、農業災害補償制度について果樹共済が新しく追加をされてくるわけで、これはまあけっこうなことなんでありますが、将来のあり方として、農林大臣はどういうふうにお考えになっておるのか、この機会にお尋ねをしてみたいと思うわけであります。
  147. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 農業経営全体というものが、農家から見れば、結局は対象になるわけですから、そういうようなのが望ましいことと思いますが、いまのところ、なかなかこの保険設計というか、これは非常に技術的にむずかしい面もございますので、品目別ということでいって、検討する時期に検討する。いまが時期だと田中さんおっしゃいますけれども、私のほうでは、もう少し品目別でやってみて、価格のいろいろの欠陥とか、総合的にやったほうが得だとか、いいとか、こういうことを検討してみませんと、いまどうという話を申し上げる段階ではない。私のほうではそういうことでございます。
  148. 田中恒利

    田中(恒)委員 私も、経営全体の共済制度がいいかどうか、これはいろいろ問題があると思うのです。農家の立場に立ってみても、稲作が悪いのに、豚や果樹をやっておるところと混合してやれる共済がはたして成り立つかどうか、これも疑問です。ですけれども、無方針にこの農災制度というものを——農業が非常に分化をしてきておりますから、分化をするに伴って災害がかぶさってくる。しかも、比較的土台が弱いから、おそらくここもここもという形の、農業共済に対する要求が私は強くなると思うのです。これを保険制度なりあるいは共済制度の仕組みの中に組み立てるにあたっては、幾つかの前提なり条件がなければなかなかできぬと思いますが、その辺の方針もあらかじめかちんとやはり立てられた上でなされる必要もあろうかと思いますし、経営的な観点の災害制度が好ましいかどうかということについても私なりの異論もあるし、問題もたくさんあると思うのですが、何かそういう点についての根本的な、この農災制度の基本になるべき方針をこの際明らかにしていないと、どうもこの農業災害補償制度というのは、名前はいいし、要望のあることも事実でありますけれども、もう数年前からこの農災制度改正の問題はいつも問題になって、中途はんぱに終わっておるわけでありますけれども、この際、果樹共済が新しく追加されるにあたって、この点についてやはり農林省当局として、よほどこれらの問題についての将来の展望も押えておかなければいけぬのじゃないか、こういう意味で御質問をしておるわけであります。  次に、大臣にさらにお尋ねをしておきたいのは、私はこの農災制度一つの問題は、組織上の問題があると思うのですよ。いわゆる農協もそうですけれども、単位の共済組合、県連合会、さらに国が再保険するというこの三つの段階がはたして必要なのかどうか。この問題は、やはり根本的に洗ってみなければいけないと思うのです。特に農業共済組合というものがこの数年来大きく合併をし始めてきております。一部には、市町村移管というものが法改正でできるようになって、市町村へ移管する分野も大きくなりましたが、最近は逆に、市町村移管分が合併共済組合へまた戻ってくる。大体郡市単位——農協や漁協等の場合は、合併といいましても、いろいろむずかしい問題がありますが、農業共済の場合は、比較的相当大規模の地域単位の合併が進むのではないか、こういうふうに思いますが、こういうことになっていきますと、はたしてこの三段階というものがいいのかどうか。正直言って、国もこの農業災害補償制度には相当の金をぶち込んでおりますね。その分が末端の農民に対してなかなか十分にそれなりに出てこないという不満が多いわけですね。これはやはりこの事務費なり系統上の組織上の問題も私は一つあるんじゃないかと思うのです。この際、私は一ぺんにやるとかやれとかいうことじゃありませんけれども、この三段階制の問題についても、重要な問題として農災制度のあり方の課題として検討すべきじゃないかと思うのですが、この点についても大臣のほうはどういうふうにお考えになっておるか、お聞きをしておきたいと思うのです。
  149. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 合併すること自体は私はよりいいことだと思いますが、合併することによって、この中間の連合会の団体というのをなくしてしまったほうがいいかどうかということについては、相当研究を要する問題じゃないかと思います。というのは、やはり県段階等におきましては、損害の評価などにつきまして統一的な評価をしなくちゃならぬ。団体が大きくなったからといって、各団体ごとに評価の基準などが違うというようなことでは、これは保険の性格からちょっとまずい場合もある。やはり均衡というか、標準が同じような損害評価が必要だということもあります。それから、危険分担というような、保険の根本的な制度から、その二つあってもいいというような見方もあります。その他、そういうような関係がございまするから、単位団体が大きくなれば、もう国が再保険だけすればいいということだけには私は踏み切れないと思います。でございまするから、単位団体が、共済団体が大きくなることはけっこうでございまするが、それの結果、中間の連合会というものが不必要かというと、そうとも私は考えられませんので、いまのような段階制度がいまではいいのじゃないか、そういうふうに私は見ております。
  150. 田中恒利

    田中(恒)委員 団体問題は農災だけじゃなくて、農協等含めて非常に大きな問題でありますが、これの取り扱いはなかなか複雑で簡単にいかないことは重々承知をいたしておりますけれども農業が非常に大きく変貌しておるだけに、私は二段階がいいというふうに早急に結論を出す段階でもないと思いますけれども、農災制度のあり方の問題として、やはり組織上の問題について相当的をしぼって、一ぺん洗い直しをする必要がある、こういうふうに思っておる一人でありますので、特にこの制度の発足の際に意見として申し上げて、大臣の御所信をお尋ねしたわけです。  次に、果樹共済の問題をめぐりまして非常に大きな問題になりましたのは、先ほどの質疑の中で一、二意見の交換をしたわけでありますが、価格面をどうするかということでありました。これは先ほど局長の御答弁もいただいたわけですが、基本的に収量共済——収穫、収量という形で押えてきたわけでありますので、価格の動向というものは、まあ別途な要因というものがたくさんあるわけですから、これは諸外国で仕組まれておるわけでありますが、そうはいっても、現実に、極端に言えば、たとえばことしのナツミカン、これはグレープフルーツの自由化でたいへん値段が下がるのじゃないかといっておったのですが、いろいろな需給事情で値段が昨年の約倍近くに上がって、農家全体の所得は、昨年より多少低いですけれども、収量が相当減っておりますから……。そういう状況がしばしばこの果樹には繰り返されてくるのでありまして、いわゆる減収になれば、値段は上がって所得は上がる、これが一般的に出てくるわけですね。この問題は、将来、今度の場合は除外しておるわけでありますが、将来価格保険という形なのか、あるいは思い切って農産物の価格支持政策という形で踏み込んでいくのか、こういう大きな道筋に関する問題が含まれておると思うのです。農林省のほうでもいろいろ問題点として残して、今後検討していくということのようですが、私どもは根本的には価格支持政策という観点で押えるべき種のものだ、こういうふうに思っておりますけれども、これから果樹の品目もあと幾つか年とともに加わってくると思いますが、やはり価格問題が焦点になってまいりますし、この運用にあたってもやはり価格動向というものが、この保険制度の、共済制度の死命を制する要素が非常に強いわけでありますので、この価格共済、価格の動向というものとこの制度農林省としてこれをどういうふうに位置づけてお考えになるのか、この点もこの機会にお聞きをしておかなければならないと思うのですが、大臣なり事務当局のほうでこの問題についてさらに突っ込んだ御意見がありましたら、お聞きをしておきたいと思うのです。
  151. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 価格の変動を保険の仕組みの中に入れるかどうかということは、私は問題であり、いま田中さんの御指摘のように、価格の変動というものは、これは価格支持政策と裏表になって、価格支持のほうからの観点から考えていかなくちゃならぬと思う。たとえば野菜なんかいまそうでございますが、野菜は暴騰、暴落というものが非常に多いものですから、これは価格支持制度のほうで——災害ではありませんが、不利な立場になった場合に、それを補てんしてやるとかそういう方法をとっていますが、その方面で行くべきじゃないか。だから、保険のほうで価格の問題、まあ実際には自然災害を対象としているわけですから、農業災害保険のほうは。そういう意味におきまして、価格のほうは支持制度のほうで扱っていくべきだ、こういうように私は考えております。
  152. 田中恒利

    田中(恒)委員 価格政策はたいへん重要な問題ですが、果樹については各果樹の価格制度を今度新しい発足をさせられたわけですが、将来この制度内容の充実はもとよりでありますけれども、できるだけ早急にこの果樹共済制度のささえになる果樹全体の価格支持政策の樹立に向かって農林省としては考えを持っておる、いまの大臣の御答弁はこういうように理解してよろしいですか。
  153. 荒勝巖

    荒勝政府委員 ただいま御指摘がありましたように、農林省といたしまして原料果実の価格安定対策ということで、四十七年度からミカンとそれからリンゴにつきまして、それぞれジュース用の原料につきまして何らかの形での価格安定対策を打ち出したいということで、そういう予算をお願いしたわけでございますが、われわれといたしまして、こういった果実の加工用の原料につきまして、さらに今後ともジュースのみならず、かん詰め等の種類につきましても価格安定制度を大いに拡大強化してまいりたい、こういうように考えておる次第でございます。  なお、生食用の果実につきましては、生産、出荷の安定という観点から植栽計画を立てますとともに、出荷の調整ということに重点を置きまして、倉庫等、さらに低温貯蔵庫等の設置等を行なうことによりまして、出荷の安定によりましてあわせて間接的な価格の安定に資するように努力してまいりたい、こういうように考えておる次第でございます。
  154. 田中恒利

    田中(恒)委員 経済局長お尋ねをいたしますが、果樹の価格保険ですか、こういうものについては今後検討を進めていく。今度組まれましたこの制度の研究会等の報告も受けておるわけですけれども、それはこの果樹共済制度の将来の方向として、価格というものを加味した保険設計というものも考えていく、これはできるかできぬかは別にしても、そういう意思は持っておられるわけですか。
  155. 小暮光美

    ○小暮政府委員 果樹共済制度の本格化のために研究会を行ないました際に、各委員からさまざまな御発言がございまして、価格の問題は今後の問題というふうにあの報告には書いてございます。したがいまして、その御報告の趣旨に従って私どもとしてなお研究を続けるべきであるというふうには思います。  ただ、農災制度の本質を、先ほど御指摘ございましたように、個々の作目についての収量保険という形でできるだけその制度を高め、適用対象を広げてまいります問題と、いまのような価格の問題とはやや次元を異にする問題だと思います。当面は需要がきわめて強い新種共済の開発に全力を注ぎたいと考えております。  価格の問題は、収穫保険に価格を加味するという問題ではなくて、先ほども御指摘がございましたように、農業経営そのもの、経営の不安定さに対してどのような制度があり得るかという検討課題の一環として研究を進めることはあり得ると思いますけれども、収量保険に価格を加味するということは保険の設計としては無理だというふうに考えておるわけでございます。
  156. 田中恒利

    田中(恒)委員 大臣最後に御要望申し上げて、御意見をお聞きをしておきたいと思いますが、午前中来私も各委員も質疑をいま続行中でありますけれども果樹共済等につきましては、これは果樹共済だけじゃありませんが、稲作、米の場合は資料も相当古いものからたくさん精密なものが整備されておりますけれども果樹等新しい部門についての統計資料は非常に不十分でございまして、さらに地域別に非常に様態が違うわけです。これを国全体で県単位で保険設計に仕組むということでありますから、非常に内容的には問題のある個所がたくさんあるわけであります。これは一つ一つ具体的に詰めていけば、矛盾だらけのものが出てくる可能性が非常に強いのです。しかし、私どもがその問題を指摘しても、現状の中では最大公約数ということになれば、政府のとられた処置についての一応の了解をしなければいけない面もあるわけです。しかし、やっていく上に、おそらくこの果樹共済については相当大きな行き違いがありますし、法律や政令で処理することよりも、運用の面で具体的にきめていかなければいけない問題がたくさん出てくると思うのです。したがって、この果樹共済は、今後品目の問題ももとよりでありますけれども、掛け金の問題にいたしましても、基準収量のとり方にいたしましても、いろんな重要な事項についてそのつど大胆に変えていく、こういう姿勢がとられないと、この制度内容充実は期せられない、こういうように思います。  そこで、非常に未熟な形で——正直言って農林省はあまり自信ないと思うのですよ。未熟な形でやらなければいけないことからこういう形が出たわけでありますので、これの運用等については、そのつどどしどしこの内容実態に沿うように変えていく。特に資料も十分整備をしていくし、それぞれの地域の実態というものを考慮した果樹共済内容にしていく、こういう必要があろうかと思うのです。この点について大臣からはっきりこの機会に所見を明らかにしていただいて、私の大臣に対する質問を終わります。
  157. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 御承知のように、果樹共済に踏み切るまでには試験もずいぶんやってきたわけでございます。ですから、果樹共済には御指摘のようなことが非常に多いわけです。ですから、データがそろったら地域的ないろいろな問題をいまから爼上に乗せて、改めるべきことあるいは運用でそれができれば運用のほうで、これは御指摘のような形で変えるべきものは変え、運用でまたやれるものはやるというように弾力的に進めていかなければ、万全とはいえないにしても、この目的に沿わないことだろうと思いますから、そういうふうにしていきたいと思います。
  158. 松野幸泰

    松野(幸)委員長代理 瀬野栄次郎君。
  159. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農業災害補償法及び農業共済基金法の一部を改正する法律案について、農林大臣お尋ねをいたします。  本法については、午前中一時間半にわたっていろいろ当局に質問をしてまいったところでありますが、午後大臣が出席されることを得ましたので、若干の点を大臣に質問をしたい、かように思います。  時間の制約等ございますので、はしょって質問を申し上げるわけですが、まず、本法施行にあたりまして、私たちも去る五月三十一日から六月二日に至る三日間現地調査をいたしてまいりました。私たちは一班で、熊本大分果樹地帯を主体として見てまいったわけでありますが、その節、各種団体からまた地元果樹園農家から特に要望がたくさんあったわけです。事務的な問題等については午前中質疑をしてまいりましたが、大臣に基本的な問題等についてあらためてお伺いをいたしたい、かように思います。  まず、本法の施行にあたりまして、この法案についてはかなり問題もあるわけですが、大臣自身本法についてはどのように評価をされ、また将来の果樹共済のあるべき姿というものはどういうふうに考えておられるか、その点、まず最初大臣に御見解を承りたい、かように思います。
  160. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 果樹共済につきましては、もうずいぶん前からこの制度をしくべきだという声が国会等におきまして、あるいは外の方面からも非常に強かったので、これはどうしてもやりたい。しかしこれはなかなか複雑ですから、試験研究をしながらやってきたような状態でございますので、これからも、先ほど田中さんにも申し上げましたが、いろいろデータや何かによって改めるべき点もあろうかと思います。また、運用の点で十分万全を期するというようなことも必要だと思います。  しかし、将来はどうかということでございますが、日本農業の上において果樹、畜産、こういう方面は非常に大切な部門として伸ばしていかなければならぬ問題でございますから、そういう問題に対する保険といいますか共済、これはぜひ続けていかなくちゃならぬ。まずいところがあれば、それをだんだんいいように直しながら、この果樹保険果樹共済制度というものはずっと続けていくべきものだ、こういうふうに私は考えております。
  161. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 果樹農家に対しては、本法によって生活の安定をもちろんはかる。と同時にまた目的にもありますように、果樹の再生産を最小限確保していくということはもう当然のことだと思います。また、この二つが相関関係にあることも当然だと思いますが、しいていえば、どちらかにウエートを置かれて検討しておられるのか。どちらにも同じようなウエートを置いておられるのか。その点大臣としてどういう御見解であるか、ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  162. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 経営のほうか生活のほうかと非常に割り切った質問で、どっちをとるんだと言われても、両方とる、こう言うほかないのですが、しかしその道筋というものはあると思います。やはり生産面というものを通じて果樹農家の生活をよくしていく、こういうことでなければ、果樹農業というものを進めていくこともできませんし、果樹農家も中途で果樹農業というものが挫折するような形になりますから、やはり生産、経営を通じて果樹農家の生活をよくするという方向へ持っていかざるを得ない、また持っていくべきである、こう思います。
  163. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣、今回の調査に限らず、いま果樹農家は、本法の施行については新しい共済制度として一歩も二歩も前進であるということで、各地域においては高く評価をして喜んでおるわけであります。もちろん、今後に残された問題点改善もさることながら、それにつけても、午前中もいろいろと論議したところでありますけれどもオレンジ果汁等自由化という問題が先行きたいへん心配されております。言うまでもなく、自由化にならずとも、ワク拡大等によりまして、果樹生産農家生産に意欲が何となくない、また減退しつつある。先行き不安で、それがどうしても頭から離れないというのが実情でございまして、農業の三本の柱である果樹政策に不信感を抱いているというのが、今回の調査でも直接そういったことを耳にしてまいったわけであります。先般、五月十九日の本会議で私も農林大臣にいろいろと質問をいたしました。その節、大臣は、エバリー通商代表と会われたわけです。また五月十八日には田中通産大臣とエバリー通商代表と会っておりますし、今後の自由化についていろいろと話があったわけであります。その節、大臣答弁によりますと、日本自由化を迫るような要素は私との話では全然なかったというような趣旨の答弁がございましたし、また日本農業とアメリカの農業、こういうものをよく検討してもらいたい、その上で、確かに国際収支の不均衡はあるけれども、全体的に見れば日本のほうは黒字でアメリカのほうは赤字になっておるかしらぬが、農産物においては日本のほうが赤字でアメリカのほうが黒字である、こういうようなことをおっしゃっておられます。事実、その後エバリー通商代表と何か話をされたものか、また、あくまでもオレンジ自由化に対しては断固これを阻止する、またワク拡大についても十分慎重にやる、こういうことに変わりないと私は思うのですけれども農家果樹共済ができても、自由化によって、または自由化によらずとも、ワク拡大によってかなりの不安を抱いております。その点についてあらためて大臣から、その後の経緯等も含めまして、果樹農家のためにひとつはっきりとした、安心できる御回答をいただきたい、かように思うわけです。
  164. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 エバリー氏と会ったときも、私が農林大臣であるということを頭に置いての話だろうと思いますが、そういう意味で、本会議でも御答弁申し上げたように、農産物の自由化という話は出ませんでした。それで、その後においても、残っておるものはもう農産物の中でも非常に重要なもので、ことに果汁などの自由化というものは私はすべきでない。これはどうも聞いたと思うころに、どこからかそういうような機運のようなものが出てくるので、私はあまり好ましくないのですが、出てきてもそれは自由化はしない。ワク拡大というようなことにつきましても、私は果樹農家が困るようなこと、果樹農家があとずさりするようなことでのワク拡大ということは差し控えていきたい。あくまで果樹農家と均衡のとれた——被害を及ぼさないようにやっていくという基本的な考え方のもとで、ワク拡大ということがあるとしても、それとにらみ合わせた上でやる、こういうふうに考えておるわけであります。
  165. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、さらに農林大臣は、その節、アメリカの農務長官を招待するという意味の話をなすったやに本会議答弁があっております。日本農業事情をぜひ見てもらいたい、こういうことである。アメリカの農務長官を招待することを約束した、こういうふうに私にはたしか聞こえたのですが、その点については事実か。また、農務長官を呼んでどういうことを農務長官に訴えるつもりであるのか、その点、この機会に明らかにしていただきたい、かように思います。
  166. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 その際に話が出、私も繰り返しておりますように、日本農業というものはアメリカの農業とだいぶ違う。アメリカの農業はもう輸出産業にまでなってどんどん輸出している。日本農業というものは自給農業の域を出ない、そういうことで輸出産業などというわけじゃない。これは日本農業事情を見れば一目してわかるはずだ。私はアメリカに行ってもそのことを話したので、アメリカの私と接触した人はそれを理解しておるようだ。しかし、わからないというか、理解できないものもあるだろうから、日本農業実態というものをちょっと見てもらうと私の説明がよくわかるはずだ、こういう話をしたものですから、エバリーさんも、農務長官が行ってみたいというようなことを言っているがどうだろうか、こう言うから、いや、それは私のほうから来てもらいたいと言いたいぐらいだ、よかったら私のほうで招待するから、日本農業の事情というものをよく目で見、調査してもらえば、私が自由化の問題などで主張していることがよくわかると思うから、ぜひ来てもらいたい、あらためて招待状を出しましょう、こういうことで別れたのでございます。その後、アメリカに行っておる日本の大使を通じて、御招待するから、適当な時期に来て日本農業の事情でも見てください、こういう連絡をしてあるわけであります。
  167. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農業に精通されている赤城大臣の確信ある話だからそれは了としますけれども、七月は政変があることだし、大臣がずっと農林大臣としておられると安心なんですが、いずれにしても、その点は大臣にアメリカに対して十分交渉していただきたいと思いますし、農家も見守っていると思いますので、将来は将来として、ぜひその決意で今後対処していただきたい、かように思います。  時間の関係がありますので、さらにはしょって大臣お尋ねいたしますが、果樹共済はあさってで一応審議を終わることになりまして、いよいよ来年から施行ということになる予定でありますが、新種共済の制度化につきまして、あとに残された畑作、肉豚、鶏、地域特産物等があるわけです。また施設園芸等もあるわけでございますが、これらについては今後いかなるスケジュールで検討を進めていく考えか、この機会にその点も明らかにしていただきたいと思います。
  168. 小暮光美

    ○小暮政府委員 果樹共済が御承認いただけまして実施に移されますと、私どもといたしましては、引き続き施設園芸それから地域特産物、肉豚、鶏といったような問題につきまして、保険設計上必要な資料の調査検討を続行いたしたいと考えております。保険需要がきわめて強い施設園芸等につきまして、できるだけ早い機会に制度化の成案を得たいというように考えております。
  169. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いま農林経済局長から答弁がありましたように、ぜひそういう方向でさらに進めてもらいたいと思います。  大臣にお伺いします。果樹資金の問題ですが、午前中も経済局長にいろいろと質問したところでありますけれども、今回私たち熊本大分県下の果樹地帯を回ってまいりまして、各地で特に強い要望がございましたのがこの資金問題です。もちろん、われわれもこういった問題についてはかねがね現地で再三聞かされておりますけれども、今回も、各委員からもいろいろと発言がありまして、小委員会をつくって、ぜひこれで進めたいというような意見もあったわけですが、大分県下にも参りまして果樹農家にいろいろ直接聞いてみましたら、最低平均二百万から三百万の借り入れ金をかかえております。多い方は二千万から三千万、五、六百万もざらにあるというようなことで、その資金の内容も、果樹振興法による資金または近代化資金だとか、農協のプロパーの資金だとか、いろいろたくさん分かれておりまして、いつ償還がくるものやら、いつ償還が終わるか、先々不安がっておる。そういったことで、利子の利率も違う、期間もまちまちであるということから、何とかこれを一本にして、長期の資金に切りかえてほしい、一本化してほしい。たとえば十年据え置きの十年ないし十五年償還、合計二十五年ぐらいにしてもらいたい。また、利子も三分五厘ではどうもしようがないので、二分五厘ないし三分というような低利にしていただきたい。そうしなければ、果樹は永年性で、十年以上でもってやっと成木となって収穫できるので、収穫がこないうちに償還期限がやってくるというようなことで、これが現在の果樹農家の共通した一番の悩みの種になっております。午前中も小暮経済局長にもいろいろと質問したのですが、これに対してはなかなかたいへんなようでありますけれども、何とかこういったものを一本化して、そういった長期低利の据え置き期間の長いものに借りかえ、そして果樹農家が安心して経営できるような方向に、たいへんであろうけれども、今後ひとつ努力を願いたい、またそうしてやるべきである、かように思って、各委員もいろいろ現地で発言し、意見等も出たわけでありますが、これに対して農林大臣は、農民に対してどういうふうに理解ある御見解を持っておられるか、ひとつ御見解を承りたいと思います。
  170. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 趣旨といたしましては、非常に同調する点が多いのでございますが、御承知のように、果樹農業の健全な発展をはかるために、金融面におきましても、樹園地の造成の金融があり、果樹植栽、育成、機械、施設の整備に必要な資金など、同じ果樹農業についてもいろいろな面があります。農林公庫の資金とか農業近代化資金など、相当長期低利に融通しておるのでございます。特に果樹経営については、いまのお話のように、果樹が永年性植物で、収益を得るまでには相当の長期間を必要とするものであることも十分考慮いたしまして、据え置き期間も十年、償還期限は二十五年と、より長く設定してあります。こういう融資内容の整備につとめてまいったところでございますので、現行の制度で大体妥当ではないか、こういうふうに考えています。果樹の永年性植物であるということを考慮しましてなお十分検討は加えますが、いまのところは、十分とはいえないが、まあ妥当なところではないか、こういうふうに考えているわけであります。
  171. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 最後に確認なり要望なりを大臣に申し上げて、質疑を終わりたいと思いますが、無事戻しの件について、各県の地元でもいろいろ強い要望がございました。午前中の小暮経済局長答弁によりますと、これは百二十億の共済金の一部払い戻しで当然行なえるようになっているというふうに答弁があったように聞いたのですが、そのように理解していいのか。そうであれば別に心配ないことでございますが、その点をぜひ確認しておきたいので、御答弁いただきたい。  同時に、今回の調査によりまして、これは大臣に特にお願いをしておきますが、午前中も当局にいろいろお願いしておきましたけれども果樹共済事務費負担につきまして、職員設置費を含めて全額国庫負担とするよう取り計らっていただきたいというのが各現地要望でございます。さらに、収穫共済金支払い割合引き上げてほしい、また、果樹保険臨時措置法に基づく試験実施によって生じた事業不足金については国庫で補てんをしていただきたい、こういったことが各地元からの要請でございました。これについても、午前中当局にいろいろと質疑を通じてお願いをしてあるわけですが、ぜひ大臣においても、これらの問題について今後十分検討して対処していただくよう心からお願いする次第です。
  172. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 無事戻しはやるつもりでございます。  また、事務費の全額補助というのは非常に困難でございますが、できるだけ多く補助するようなことには検討を進めたいと思います。  なお、そのこまかい点につきましてのお尋ねがございましたが、これは農林経済局長から御答弁申し上げさせます。
  173. 小暮光美

    ○小暮政府委員 試験実施の収支の問題についてだけ事務当局からお答えさせていただきます。  午前中の他の委員の御指摘にもお答えしましたが、農産物についての共済制度といたしましては、地域的にいわば横に危険を分散するという問題と、時間的に縦に危険分散するという要素と両方あるわけでございます。したがいまして、数年間の試験実施ということに相なりますと、その試験実施が終わった時点でものごとを切りますと、当然連合会によっては剰余金を持ってその時点に立つものがあります、それから不足金を持って立つものがあります。たまたま二年間の実績ですとその金額はほぼ半々でございまして、約四千万の剰余金と約四千万の不足金ということに相なっております。したがいまして、この不足金は決して経営の不始末による赤字とか不良資産というような赤字ではないわけです。赤、黒という表現から言えば、赤でございますけれども、そこで私どもといたしましては、円満に試験実施から新しい本格実施に移行いたします連合会におきましては、その切りかえ時点においてもし赤字がございましたら、これを別経理いたしまして当分たな上げしておきます。新しい勘定で新しい制度を運営いたしまして、当然、いまの時間的にこれを危険分散をするという意味で一定の剰余が生み出され、それがときどき取りくずされるという形になるわけでございますから、その剰余の姿に応じて一たんたな上げしておきました赤字を解消するという形に指導してまいる考えでございます。  なお、黒字の部分につきましては、これはやはりそのまま新制度に移行することがいまの赤字の処理とバランスさせれば適当かと思いますけれども、この点につきましては、過去において経緯がございまして、試験実施をいたしますときに、試験実施の設計ではたぶんあまり共済金がもらえないのではないか、試験実施の期間が結果的に全部掛け捨てになるのではないかというような理解がどうもかなりの地域に広まった事情がございます。そこで、試験実施になかなか参加したがらないという空気がございました。関係者は、もし万一この試験設計ではあまり共済金が支払われないというようなことで、余るようであれば返すからということを、加入をすすめます際に言ったという事実がございます。その事実を踏まえまして、当委員会でかつてそういう剰余金の処理について、生産者が希望すれば返すかという御指摘がございまして、当時の政府委員から返すように措置いたしますという答弁をしたという経緯の引き継ぎを私ども受けております。したがいまして、いまの赤、黒の処理からいけば、筋はいずれも新しい共済に移行させるのが時間的に時系列で危険分散している趣旨からいって適当かと思いますけれども、ものごとは経過がございますから、過去の経過は尊重すべきであると考えますので、移行時に黒の処理についてただいま申しましたような希望がございますれば、その希望に即して処理するように指導いたしたいというように考えております。
  174. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 その点はわかりました。  では、以上で質問を終わります。
  175. 松野幸泰

    松野(幸)委員長代理 美濃政市君。
  176. 美濃政市

    美濃委員 最初お尋ねしたいことは、この農業災害補償法目的であります。「農業者が不慮の事故に因って受けることのある損失を補填して農業経営の安定を図り、農業生産力の発展に資することを目的とする。」この「補填」ということですが、経過を調べてみると、資料によりますと、昭和十三年に農業保険法というのが施行されて昭和二十二年まで続いておりますが、この間の補てんの考え方は、反当共済金額は、生産費のうち現金支出部分を基礎として、全国一律に勅令で定める、こうなっておるわけですね。それが農災法に移行されて、農災法では反当共済金額は、主務大臣が米、麦価の二分の一を標準として定めた金額(最高補てん割合五〇%)に基づき組合が一律に定款で定める、こういうふうに改正されたわけですが、一体この損失補てんというものは、農業の経営安定から見れば、今日これをどういう割合で見ることが正しいというふうに考えておるか、まずお尋ねいたします。
  177. 小暮光美

    ○小暮政府委員 不慮の災害から起こります減収を補てんいたしまして再生産を確保するということでございますので、やはり現金支出部分等が一つ判断のめどになるということはあろうかと思いますけれども、しかし、保険の設計といたしましては、やはり被害発生態様並びに掛け金の率、これに対する補てんの割合というものが共済制度として相互にからむわけでございますので、最小限度生産費のうちの現金支出部分的なものをほぼカバーし得るようなもの、というものが一つのめどになりますが、それのみにとどまる必要はないというふうに考えております。
  178. 美濃政市

    美濃委員 そうすると、この昭和二十二年農災法になったとき制定した米、麦価の二分の一補てん、これは大体現金支出の範囲、はっきりと現金支出の完全範囲という意味ではないですが、大体それに準ずるという考えでこういう制度になったのかどうか。
  179. 小暮光美

    ○小暮政府委員 私も実は気をつけてほぼと先ほど申し上げたのですが、やはり実際きめますときに、たとえば過去の平均というようなものをもう一つの計算の基礎にしたりいろいろいたしまして、別に生産費をきちっと積み上げてやるわけではありませんけれども、思想的には、現金支出部分におおむね相当するものを補てんしたいというのが考え方の流れでございます。
  180. 美濃政市

    美濃委員 そうすると、これは条件が変わってきております。ということは、確かに昭和二十二年当時日本農業は手労働でありましたから、機械はほとんど使っておりませんし、手労働生産というものは大体労費五〇%、現金支出五〇%、したがって、農業保険法のときに、反当共済金額は生産費のうちの現金支出部分を基礎として全国一律に、いまでいえば政令ですね、当時ですから、勅令で定めるとなっているのですが、この考え方と、それが昭和二十二年に農業災害補償法改正されて、米、麦価の二分の一を反当共済金額として主務大臣が定めるというこの考え方は、その状態のときには大体ほぼ一致しておると私は思うのです。ところが、現在になりますと、今回も熊本県等でかなり果樹振興資金等を借り入れて大型化した果樹類——農業経営というのは、大型化して機械を入れますと、現金支出率というものは上がるわけです。たとえば、アメリカの四百ヘクタール、五百ヘクタールという大型個人経営農場になりますと、現金支出経費率が七五%ぐらいになっておるでしょう。収穫量が多いから、所得率二五%でも大きい所得になるわけです。経営というのは、規模拡大すると必ず現金支出率が上がっていくわけです。手労働の生産体系から比べると合致しないですね。少なくとも当初の出発、確かに現金支出を補てんするということはかなり農業経営の安定になります。しかし、あとから申し上げますが、この果樹共済の全部を見て、これは全然最近の状態には合ってこない条件になってきておる。現金支出の補てんにはだいぶん遠くなってきた、こう言えるわけです。ですから、この法律をつくった立法の趣旨、それからつくったときの条件と今日の農業動向の変化によってこれは改めていかなければならぬ、中身を変えていかなければならぬ、こう思うわけです。いかがですか。
  181. 小暮光美

    ○小暮政府委員 現在、果樹の粗収益と第二次生産費を対比して生産費率を見ますと、果樹の種類によって若干の差はございますが、たとえば温州ミカンについておおむね七〇%というように相なっております。今回試験実施の際には六割でございましたものを、七割ということで御提案申し上げておるわけでございますが、おおむね先ほど申しました思想に合致するものと考えております。  なお、私、先ほど、現金支出部分を一つのめどといたしますが、必ずしもそれだけにこだわる必要はないと申し上げたわけでございますが、やはり制度といたしましては、基準収量のつかみ方、あるいはモラルリスクの問題、その他保険にかかわるさまざまな角度からの検討を必要とするわけでございます。ただ、実際の果樹における収益の状況から見まして、試験実施の六割では生産者にとってあまり魅力がないんじゃないか、やはり七割程度引き上げるべきだというふうに考えて七割を御提案申し上げておるわけでございます。
  182. 美濃政市

    美濃委員 私は以下申し上げますが、この制度を見ますと、農災法を制定した二十二年ともう一つ要件が大きく違っておるところがあるわけです。それは、政府買い入れによって米麦というものの品質格差がきわめて接近しておる。たとえば政府全量買い入れの米は、東北、北海道の冷害凶作で青混入未熟米と一等との格差が八百二、三十円だったですね。ですから、量を主体にして把握した損害で損害の補てんはできたわけです。当該農家が、たとえば果樹振興資金を二千万、三千万と借り入れております。これらの約定を償還して、経営の安定をはかっていくというときには、収穫したものの質の低下損害もやはり損害ですよ。損害には変わりないわけです。予定収入が上がらぬわけですから。したがって、果樹等においてもこの経済の国際化、あるいは自由化、こういうものが伸展しないときは、たとえば三割の平均被害が起きれば、大体七割収穫したものの質低下は、供給不足による価格の値上がりで大体重要農産物はいけたわけです。  ところが、最近条件が変わってきました。いわゆる経済の国際化、自由化によって、供給量が少なければふんだんに入ってくるわけです。バナナが入る、グレープフルーツが入る、結局価格作用によって回復ということはできません、これからのあれを見ると。そうすると、どういう現象が起きるかというと、被害率三〇%出るというような条件になったときには、七〇%収穫したものの質低下による売り上げ損というものが二〇%起きる。大体五〇の被害に達します。それに足切り三〇%ですよ。どうなんですか。これではほんとうに、昭和二十二年この制度をつくって米麦にまず適用した、農家のいわゆる不慮の事故によって受ける損失を補てんする制度にはかなり遠いわけです、現在では。経営様式の変化、経済の国際化によって全然それは——いま局長は、必ずしも現金支出に固定しないと言うけれども、私に言わしたら、それは詭弁ですよ。私は、所得まで補償するということなら、これは一〇〇%になるが、一〇〇%ということはいまここでは主張しません。最低として現金支出はめどだというのですよ。あとのテクニックは方法、手段の問題です。そうして経営が拡大しておりますから、今回調査した中でも、ほんとうの専業農家で三千万も果樹振興資金やその他の金を借り入れてミカン畑を拡大しておる経営というものは、現金支出経費は五〇%ではないわけです。六〇%に達しております。六〇%は損害が起きるのですから、大体基準は六〇%補てんできる裏づけがなければ——農民が受ける損害は、質低下によって売れ行き不振になる、値下がりする、果樹が悪くて安くしか売れないという、これも明らかに損害です。当該農家のこうむる経営上の損失というものには変わりがないわけです。ただ、あなた方は、それが入るとか入らぬとかへ理屈を言うけれども、当該農家のこうむる損失というものははっきりしておるわけなんです。それが補てんできないところに問題があるわけです。ですから、今回の調査段階でも、熊本知事大分知事も損失の補てんをもう少し引き上げてくれと言うのです、これでは損失の補てんにならない。全然ないよりはいいけれども、少なくとも経営の安定に資するには、もっと損失の補てんを引き上げてもらわなければ役立つ共済にはならない、こういう趣旨を一貫しております。私は、そうだと思います。大体現金支出に該当する部分の補てんができないで、これが共済でありますということは、ちょっと恥ずかしいんじゃないですか、どうですか。
  183. 小暮光美

    ○小暮政府委員 先ほど来御指摘の点、たとえば水稲について申し上げますと、四九%の補てん率でございましたものを、先般の改定で六三%にいたしております。蚕繭も五〇%のものを六〇%にいたしたわけでございますが、今回果樹共済につきましては、特に商品生産にかかわる果樹について任意加入という形で制度をつくりますこととの関連も考慮いたしまして、特に七割という最高の率を御提案申し上げているわけでございます。で、この仕組みでかりに全損の場合には、基準収穫量の七割が支払われるということになるわけでございます。先ほど足切り三割との関連を申されましたけれども、足切り三割は別の問題でございまして、三割被害がございましたときに一割分についてその一割、七千円を支払うという考え方でございまして、この制度でおおむね不時の災害に対する補てんは十分できるというふうに考えておるわけでございます。
  184. 美濃政市

    美濃委員 私はこれはできないと思います。これはあくまで平行線になりますが、それはあなたは意識してできると言っておるのかどうか。そうしたら一つ聞きますが、確実に、先ほど申し上げたように、農家が予定販売収入に達しないのは、やはり不時の災害による事故でありますから、実のなりが悪く、質が悪くて安くしか売れないのを、これは繰り返しますが、経済の国際化が進む前は、自給量の不足から価格作用で大体いいものと同じくらいに売れたわけです。これからは売れませんよ。バナナはふんだんに入ってくるのだし、グレープフルーツは入ってくるのだし、結果は悪くなった値段にしか売れない。この損失は損害に見ますか見ませんか、どうですか。いままでは、それまで見なくても、米麦については等級格差というものはきわめて少ない経済格差であったわけですから、あの格差まで損害といって見なくても、大体少ない経済格差だったわけです。それから繰り返しますが、主要農産物は、供給量の不足から、大体質の悪い程度は、平年あるいは豊作の年の良質のものと同じくらいの値段に価格が上がって売れたわけですね。今後はそれを期待できないわけです。できなければ、それは損害じゃないわけですか。私は損害だと思う。その損害を評価の中で見るか見ないか、どうですか。
  185. 小暮光美

    ○小暮政府委員 収穫保険ということで果樹の共済制度を仕組んでおりますので、販売にかかわる価格の変動の要素は損害としては見ません。ただ、収穫保険でございますけれども果樹生産、出荷の実態から見まして、穀物類と異なる面がございます。生鮮食料品としてある品位、等級で売れるかどうかという問題がございますので、価格変動は事故として考えるのではございませんが、出荷いたします段階でこれをとられえまして、品質低下によるものは、これを収量の減に換算いたしまして保険の対象にするということを考えておるわけでございます。
  186. 美濃政市

    美濃委員 それは確実にやりますか。
  187. 小暮光美

    ○小暮政府委員 午前中に他の委員の御指摘に対してお答えしたわけでございますが、ただいまの措置は共販制度が確立しております地域でなければ実行ができないわけでございます。農林大臣がこれを指定いたすたてまえにいたしてございます。組合員の全員が共販に参加いたしておりまして、個々の組合員ごとに五割以上を共販にかけておるという実態がございます組合が希望いたしますれば、いまの品質格差を数量に換算して保険事故とするという仕組みを認める考え方でございます。
  188. 美濃政市

    美濃委員 次に、それにしても私は、米のほうは農家単位にしていわゆる共済金額は七〇でなくて八〇を見るわけですから、これはやはり少なくとも八〇以上見なければ、さっき申し上げたいわゆる経費が五〇%をこえておりますから、そこまで収穫被害を、質低下被害を量に換算して被害対象にするということになれば、これはかなりまた前進すると思います。  そこで、七〇の契約額で、それを見るにしても、それでもやはりせいぜい予定収入額の五〇%、これは米麦と違って政府買い入れ価格じゃございませんから、いわゆる予定収入額の二分の一あるいは若干切れるのじゃないですか。四七、八くらいになる、五〇%をちょっと切れる模様じゃないですか。それでは経営の規模拡大して、そして借り入れ金も多いわけですから、非常に経営の安定度をやはり欠くわけです。いわゆる米のほうも六三にしたのであれば、やはり果樹共済をせっかくつくって経営の安定に資するというのであれば、米地帯よりも果樹地帯は負債が大きいですから、米作地帯でも悪いのは何千万という負債はないとはいえないけれども、専業農家の米作地帯を歩いて見ても、この前一応調査した果樹地帯のような高額負債というのはさほどないわけですね。そういう条件がありますから、少なくとも共済を適用する以上、確実に六五%くらいの補てんができる内容にしなければならぬ。そうするには、やはり共済金額を百分の七十を最高として選択するのではなくて、最低もう十引き上げて——それぞれの地域条件もありますから選択制はいいと思うのです。最高八十をこえない範囲において選択する、そこまで上げていかなければならぬと思うわけです。  それからもう一つの問題は、基準収量そのものに私は問題があるのではないかと思うわけです。基準収量とは一体損害なかりせばの収量であるのか、それとも豊凶を差し引いてある程度被害が入った収量であるのか。いまの場合被害の入った収量ということです。被害の入っておる収量を基準として基準反収を設定いたしますから、実験共済やその他に出てくるこの基準収量に対する被害、共済金支払い対象になるならぬは別といたしまして、とにかく基準収量に対する被害の率というものは低いわけです。したがって、ここにも、たとえば果樹振興資金を三千万借りるときの、農林省の同じあなたのところの経済調査課がありますから、その統計表、たとえばどの地帯でもいいですよ、今回調査した地帯に限りませんから。果樹振興資金を借り入れ申請をした、借り入れ経営改善計画書に書いた反収と共済の引き受け反収とを比べてみなさい。そこに明らかに何ぼか差があるわけですから。借り入れ計画書につけた反収と共済の引き受け反収にはおおむね差があると私は思います。ただそれだけの収量を見込んでこの金はこういう計画で払いますという書類が上がって、そして貸しておるのでしょう。それは認めた以上は、その要件の適否を審査しなければならぬわけですね。それが架空な収入予想であるのか的確なものであるのか。的確なものであると認定して貸した以上は、それに誤差が生ずれば償還はできないということですよ。高額の金を借りた場合、延滞が発生する、償還はできないという羽目におらいっていくわけですね。そこらをどういうふうに見ておりますか、同じ経済局の中で。そこは一致しておらなければならぬのでしょう。
  189. 小暮光美

    ○小暮政府委員 まず前段の支払い割合の問題ですが、どうも若干誤解をなさっておるのではないかと思うのです。水稲の場合に、前回の改定で六三%にいたしたわけです。果樹は今回試験実施の六割を七割に引き上げて御提案申し上げておるわけでございまして、全損の場合に支払い割合が七割になるわけです。足切りの三割の話とは別でございまして、足切りの三割は、要するに、被害が一割、二割、三割の段階まではひとつ自家保険していただきたい。三割の被害になったときから支払いをいたしますということであって、全損の場合に七割という制度に相なっておるわけでございます。したがいまして、水稲共済よりも果樹共済のほうがその割合が低いという御指摘は、私はそのようには見てないわけでございます。  それから、後段の御指摘でございますが、制度資金を融資いたします場合に、予定いたします収穫量、これは当然通常期待し得べき収穫量ということでございまして、統計上の概念でいう、被害なかりせば収量というものを特に使うというような考え方はございません。
  190. 美濃政市

    美濃委員 この農林省から出た最高補てん割合というものは一体何をさしておるのですか。最高補てん割合というものは支払い補てん割合でしょう。支払い補てんという字が入っておる。
  191. 小暮光美

    ○小暮政府委員 最高という趣旨は、生産者がどの段階を選ぶか、最高七割まで選べますという意味で最高といっておるわけでございまして、全損の場合は七割というところまで選択できるという、こういう趣旨でございます。
  192. 美濃政市

    美濃委員 いや、それは加入でしょう。最高補てん割合というのを使っておりますね。  それから、借り入れ条件のその問題、ちょっとこれを見ておったので、すみませんが、もう一回。
  193. 小暮光美

    ○小暮政府委員 融資を受けます場合に、いろいろ経営計画生産者は出すわけでございますが、そこで収穫見込みとして掲げますものは、通常期待できる収穫量であるはずでございます。特に、統計上の概念でしばしば使います、被害なかりせは収量といったものを使うような考え方はございません。
  194. 美濃政市

    美濃委員 では、その表現はどちらでもいいのですね。そうすると、それは合致していますか。今回制定しようとする基準反収融資、その果樹振興資金を計画した農家ですね、あの辺はもうずっと借りておるわけですから。どうですか、合致しておりますか。それは被害なかりせば収量でも通常収穫見込み収量でもいいですよ。合致していないとたいへんなことが起きるのですね。
  195. 小暮光美

    ○小暮政府委員 融資を受けます際に、生産者が申請するために書きます収穫の見込み反収、これは生産者がそのように期待するということで出すわけでございます。金融機関はこれを必要があれは査定するはずでございます。これは何ら制度的にどのような収量を使えというふうに指示するようなたてまえのものではございません。融資をする者とされる者との間でどのような見積もりの計画であるかということを審査するための素材でございます。共済制度の場合は、これが制度の根幹をなすわけでございますから、一定の手続で基準収穫量というものをそれぞれ定めるということになるわけでございまして、両者は通常合致すべきものだと思いますけれども制度的な仕組みでございませんから、いまの申請段階は。それを査定する側の心証によってそこには若干の差異はあり得ると思います。
  196. 美濃政市

    美濃委員 それが日本農政の欠陥ではないですか、あなたのいま言ったような答弁は。何でもばらばらになっておっても、その時点その時点でばらばらのものが出てきても、これはこうなんだ、あれはああなんだ……。
  197. 小暮光美

    ○小暮政府委員 融資にあたっての経営の見積もりでございますから、これは金を貸す側と借りる側のいわば折衝になるわけでございまして、ただ、少なくとも農林漁業金融公庫あるいは近代化資金といったような制度金融の場合には、これを実行の段階でまたさらに精査いたしまして、もし見込みどおりにまいりません事情があれば、支払い計画、返済計画改定するというような形で具体的に処理しておるわけでございます。
  198. 美濃政市

    美濃委員 これは、あなた方に言わせれば、共済と融資の申請処理とは違うのだということですね。私は、農家の経営実態というものが違って、そこに被害なんか起きると、それに対する補てん措置もなければ——それはこういうことですか。私は極端にそういうものが違っておってよろしいとは考えられないわけですね。一貫していなければ経営の安定に結びつかぬのじゃないですか。  たとえば、そんな極端なものはないと思うが、一例でいうなら、融資の見込みに対するある収量は七百キロを計画して、これを売って、これだけの収益を出して、この年次で経費は何ぼかかって償還するという書類を書かすわけです。ところが、実際に災害をこうむったり何かして平均反収は五百キロになったとすると、それは一体償還できるのですか。そういうものと、それからまた、この共済による損失の補てんというものが全く無縁のものじゃないと私は思うのですね。局長はばらばで無縁のものだと言うのですか。私は無縁のものであってはならぬと思うのですね。それはかっちりと、ほんとうに建築をするときの設計図のように組み合わしてしまわなければならぬということを言っておるのではないですよ。しかし、極端でばらばらでいいのですか、全然合ってなくても、極端にこんなにはみ出ても。それはそれ、これはこれですか。私はそれは日本農政の最大の欠陥だと思う。そういうところはある程度合っていなければならぬと思うのです。どうですかな。
  199. 小暮光美

    ○小暮政府委員 農災制度の場合には毎年毎年単年度でこれを付保するわけでございますから、毎年その時点で保険に付すべき基準収穫量というものが観念されるわけでございます。融資を受けます際は、たとえば何年前から逐次収穫に入って何年から収穫最盛期に入っていくという将来の見通しを立てるわけでございまして、いよいよ結果期になり、その時点までまいりますと、もちろんそこで一致すべきものであるというふうに思いますけれども、借り入れを起こしますときに十年先の収量をこのように想定するということでございますから、それを現在毎年農災制度にかけます場合の基準収量と十年後のものとの間に論理的なつながりは、おっしゃるように、ぴったりと合わせるというような形にはならぬわけであります。ただ、全体が無理なく設定されます場合には、当然その時点においてはなはだしい乖離のないように指導さるべきものだと思います。
  200. 美濃政市

    美濃委員 そうすると、私はもう一回言いますが、そういうふうにして経営規模拡大すると、前段に言った現金支出率というものは五〇%じゃなくなるのですがね。そうすると、どうしてもこの制度と合わないのですよ、損失の補てんが。やはり最低経営を安定するという法律の第一条の目的に合わないのです。そうすると時代の進展によって最高補てん率というものが、今日この制度によって低下したことになるわけです。そうすると、規模拡大に逆行するわけですね。経営規模拡大を農民にやらして、この制度の不慮の損害の補てん率は逆比例して低下していくというのであります。こんな矛盾はないでしょう。時代が進歩するということであれば、多少でも補てん率を上げてこそ比率は下がるわけでありますから、その比率の下がった分だけは——災害が起きた場合、この経営の安定をはかるという法律の目的から見れば、経営の安定は阻害されていく、経営の安定は弱体化していくということなんです。現金支出率は上がっておるわけです。農家ですから、浪費部分であれば節約のしようもあるわけですね。凶作であれば、その年には思い切って節約の方法もあるわけです。全然なくてもいいというものじゃないけれども、かなりの節約の方法もある。しかし、現金支出は節約の方法がないわけですね。大体のものが災害発生前に投資しているわけですから、その年度の物財投資になるわけです。現金支出は、作況が悪いからといって、極端に圧縮されないわけですね。せめてそれは補てんするんだというたてまえになっておるでしょう。それもがっちり補てんするとはいっていないけれども、原則としては、それは補てんしなければならぬのだというのがこの制度であるというのならば、制度の後退ということはいえるのじゃないですか。ですから、その点を今回調査した各県の知事も強く要求しておるわけですね。そういう要求を聞いておりませんか。私どもは聞いているが、聞いていないと言うんだったらおかしいですよ。私どもが行ったときに、知事があれだけ要求したのに、果樹産県の知事はあなた方には要求しなかったのですか。私どもだけに話をして、あなた方にはこれでいいということを言うておるのですか。どうなんですか。知事がそう言ったのを、あなた方はいいと言って押えつけたのかどうか。どうなんですか。
  201. 小暮光美

    ○小暮政府委員 補てん率につきましては、先ほども申し上げましたように、水稲についても蚕繭についても、逐次充実してまいっているわけでございます。果樹共済につきましては、繰り返しになりますが、試験実施の六割を、今回特に七割に引き上げて御提案申し上げておるわけでございます。この問題は、共済制度といたしましては、補てんの率はやはり九〇にも一〇〇にも行き得るものでは必ずしもございません。やはりモラルリスクの問題もありますし、あるいは基準収量の把握についての精密度の問題もございましょう。現状でおおむね七割が妥当であるというふうに私ども考え関係団体も納得いたしておるわけでございます。  なお、制度融資との関連について申し上げますれば、何と申しましても、規模拡大のために借入金を起こすということは、これは償還計画をもってやるわけでございまして、当然、投資に見合う省力といったような問題を含んでおるわけでございます。その問題がいたらずに過剰投資に相なれば、御指摘のような問題になるかと思いますけれども、これは規模拡大計画そのものが妥当でございます限り、御指摘のような矛盾は発生いたさないというふうに考えておるわけでございます。
  202. 美濃政市

    美濃委員 起きたらどうしますか。あなたは発生しないと言うけれども、これを実施して起きた場合どうしますか。私も起きるとは断定しないつもりです。起きぬければ幸いだけれども、起きた場合どうしますか。矛盾が起きた場合ですね。ここでその場の答弁では矛盾が起きないと言って、二年後三年後矛盾が起きたときには、あなたはそのとき局長ではないかもしれぬけれども、それでは農民は困るのです。役所のあなた方はそれでいいかもしらぬ。三年後はやめておるかもしれない。やめた人が起きないと言ったから、国会であのときの旧局長を呼び出すというわけにもいかぬですから、起きた場合、これは一貫した責任はどうなるのですか。その場限りの答弁で済ましてしまう、そういう問題がしばしばあるわけですね。法案を審議するときにはだいじょうぶと言ったことが、やはりあとから問題が起きてくる場合がある。
  203. 小暮光美

    ○小暮政府委員 農災制度といたしましては、ただいま申し上げましたように、七割の補てん率というものが、現在の果樹経営の実態に合っておると確信いたしております。御指摘の融資のあり方について、個々の貸し出し等について万一指導上の誤りがございますれば、これは融資の問題としてこれを是正するということであろうかと思います。
  204. 美濃政市

    美濃委員 しかし、それは、共済制度はあやまちがない、融資の処理のほうにあやまちがあると断定して間違いないですか。私はそう一がいには考えませんがね。もちろん融資の申請書類にも過大見積もりがあるでしょう。しかし、この共済基準反収で農業生産を把握していっていいんですか。こっちにあやまちはないのですか。
  205. 小暮光美

    ○小暮政府委員 基準反収は四年に一度ずつこれを改正する考えでございますけれども制度の発足の当初は二カ年刻みで小刻みにこれを逐次修正してまいる考えでございます。これはどこまでもその年の共済にかけますものについての法律反収という考え方でございまして、これ自身次第に制度を高めてまいるべきものと考えております。
  206. 美濃政市

    美濃委員 私も現行制度上のあやまちを言っておるんじゃないですよ。法律第一条の目的の、農家の経営安定なんですから、規模拡大なり経営安定をしていく、そういう基準に即この基準反収を持っていくことには問題があるんじゃないかと言っておる。しかし、大きな台風なんか来て災害が起きた場合、結局、基準反収が実情よりも低いということは、すなわち補てんに通ずるわけですから、その補てんがいかぬければ経営の安定にならないわけです。私はそこを言っておるのですよ。せっかくこういうふうに仕組んで出したことを、計算上、計画上あやまちだと言っておるのじゃないんですよ。これはあなた方が、農災法の既定観念としてこういうふうに仕組んで出してきておるわけです。しかし、その仕組まれておるものとこの制度と、結局、法律第一条の目的は——農家経営というのはあなた方の小手先、小細工のとおりにはいかぬわけです。あなた方は、これはこれなんだと言っておるわけですけれども農家の経営形態というものはそういうものじゃないわけです。  繰り返しますが、何千万も大きな借金をして果樹園拡大をやっておるわけですから、それに対しては、やはりこの保険設計の基準反収の収量じゃ借金は払えぬですね。融資にも目標がある。そこの補てんが足りないということは、法律第一条の目的に合致していないんじゃないか。算定したことには誤りはないんです、計算してみると。だけれども、法律第一条の、損失を補てんして農家の経営を安定するという制度に、もう少し基準反収なりあるいは共済契約率の引き上げをやらぬければ、片や大きな借金を持って現金支出率が高まっておる経営の形態に合致しないということを私は言っておるわけです。それを合致させるように努力をしなければならぬ、こういうことを言うわけですよ。仕組んだ制度そのものにあやまちがあると言うんじゃないですよ。それは法律第一条に合わない。どうですか。あなたは合うと言うのだけれども、私は合わぬと言います。
  207. 小暮光美

    ○小暮政府委員 先ほどの基準収量二年に一ぺんというのは私の記憶違いで、基準収量は年々これを定めます。  それは別といたしまして、ただいま御指摘の点でございますが、共済の仕組みは間違いないというおことばをいただいて非常に安心したのでございますが、その基準収量に即して年々これを農災制度にかける。これはもちろん経営の安定のためにやるわけでございますから、第一条の目的に即してその水準を定めるということは当然であると思います。  借金をかかえておるからこれに合わないのだという御指摘ですが、たいへんおことばを返すようで恐縮なんですが、借金という考え方でございますけれども、これが投資として十分省力効果、その他の経済的な効果を織り込んで償還計画に乗るかどうかという融資面の問題ではなかろうかということを先ほど申し上げたのでございまして、それがおよそその計画に乗らないような借入金を起こす、あるいはそれを承知の上で貸すというようなことがございますれば、融資制度のほうの問題としてこれを処理しなければならない。これが規模拡大の利益を獲得するために、たとえば十年据え置き二十五年償還といったような形で果樹園経営の中に組み込まれますれば、これは当然回収されるべき投資でございますから、その年々の償還分が果樹の販売代金によって償われるという、その現金支出分にほぼ見合うものが農災制度でもって担保されるということでございますから、両者は当然かみ合うべきものだと考えております。
  208. 美濃政市

    美濃委員 いや、私の趣旨も、経営拡大の負債あるいは経営安定計画書の全部がこれだと言ってはいない。あなたの言ったそれでいいわけですね。やはり基準反収を実際反収に合うように制度として努力する、それならば私は話はわかるわけです。それはもちろん不幸にして災害が発生した場合に、この法律第一条の目的でできるだけ高い補てんをする、掛け金ももちろん高くなるでしょう。損害保険というものは掛け金が安いだけではだめです。掛け金が安いからそれでいいというものじゃないわけです。いわゆる実際反収よりも基準反収が低ければ被害率が出てこないわけですね。被害率が出ないわけですから、すると共済目的にならぬわけだ。掛け金の安いのはけっこうだけれども。ですから、こういう損害保険の設定になると、掛け金の安いことだけが能じゃないわけです。負担が高くても、それに見合うきちっと安心できる補てん措置があれば——高いのも程度がありますけれども、正当に高いのは私はやむを得ないと思うのですよ。国が掛け金の五割を補助してほんとうにきちっと——さっき言ったように、たとえばミカン山を二ヘクタール、三ヘクタール持って、六百万、七百万という収入を見込んで、そのかわり何千万という金を借りておるわけですから、現金支出も当然、そのくらいの農家になってくると、五〇%じゃないわけです。経営が七〇%近い現金支出になっておるわけですから、そういう農家被害にあった場合の補てん措置なわけですから、国で掛け金五〇%を見て、そういう損失が正当に補てんできる制度にきちっと——制度はそうなっておるのですから、あとは基準ですから、制度はこれでいいわけですから、法律の悪いところはないわけですね。制度はこれでいいのですから、あなた方が算定する基準反収だとかそういうものの行政あるいは政令によってきちっとする。制度の運用ですから、運用のよろしきを完全にするためには、やはり半分持つ。掛け金はある程度高くなっても、そのことは私はやむを得ないと思うのだ。高くなっても、制度としてはっきり農民が安心できて、いざというときの根拠になっておるものでなければならない。たとえば、過去において北海道の麦類の基準反収が低くて——道庁からもずっと四、五年の資料をもらってきました。きょうは果樹保険ですから、その問題を蒸し返してここで追及しようとも思いませんけれども、とにかく基準反収が問題にならないというその資料を持ってきました。ここに持っておりますけれども、それをいまここで五年前、六年前のものを農林大臣に追及してみても、早急に払えというわけにもいかぬですから……。しかし、そういうものだということを話しておきます。実際に農民の平年収量が三百キロに達しておる秋まき小麦が、基準反収は百二十キロ、百五十キロというのだ。基準反収が低いですから、それに麦の価格をかけて被害率をかけた共済掛け金は確かに安いです。保険金額も安いです。共済金がもらえないのですよ。かなりの凶作でも百二十キロくらいとれるのですから。私も麦作農家ですが、全然かけっ放しです。共済金が払われるということはないわけだ。実際反収の半分くらいの基準反収で共済の運用が行なわれた場合、よほどのことがなければ共済の支払い対象になってきません。そのかわり掛け金は安いのですね、収量が低いと。ですから、過去平年の災害が出てきませんから、無災害になっていきますから、災害率が出ない。掛け金は安いのです。掛け金は安いのだが、その安い掛け金と事務費が共済組合の運営経費にただ取られになってしまう。そういうものですよ。設計が悪いと、設計というよりも運用でしょう、運用が悪いとそうなるわけです。損害保険の掛け金というものは安いばかりがけっこうなことじゃないわけです。いざというときに役立つものであれば、ある程度の負担はしてよろしいわけですね、損害保険というものは。その安心できる見合いがあれば、高いことはないとわぬわけですね。それは法外に高いことはいけないですけれども、正当な負担というものはしなければならぬわけです。そういう点にまだまだ欠けておる面があると思います。しかし、それからかなりよくなってきております。今度の共済の保険設計にしても、これは昭和二十三、四年当時の、終戦直後ですから、統計資料も整ってなかったということもあったでしょう。しかし、そういう時代から見れば、もう皆さん方の保険設計技術も進んでおりますから、今度の果樹共済の保険設計がそれほどだとは思っておりませんけれども、いまでもそういう要素が中にあるわけですね。ずっとよくなってきてはおりますけれども、どうしてもありますから、それをひとつ解消するように努力をしてもらいたい、こういうことであります。  それから、これは今回の調査の中で見ましたが、米麦など穀物と果樹類、それから、例をあげますと北海道のてん菜ですか、こういう果樹、園芸作物になってきますと、どうしても穀物よりも個々の農家の技術差というものが収量に出てきます。これがいまのところ穀物よりも高いわけです。それから畜産ですね。畜産、果樹、園芸作物、これはいまのところ穀物よりも農家の個人差というものは高いです。しかし、これは共済組合が基準収量を設定するにあたって、それを綿密にした個別の基準収量、その差をきちっと掌握した個々の農家単位の基準収量というものは、これはなかなかめんどうだと思うのです。ある程度村の中で、共済組合の中で差をつける場合もあるでしょうけれども、ある程度は統一基準収量でいかないと、その実情を完全把握したものなどということは、ちょっと事務的には不可能じゃないかと思うわけです。  そこで、無事戻しの問題を念を押しておきますが、個別に無事戻しをしますか。そうすると、たとえば甲という農家は平均反収がある果樹で五百キロだ、乙という農家は、同じ条件であっても技術差から四百五十キロあるいは四百二十キロだ。そうして災害がないとそれは問題になりませんけれども、それに災害が加わると、同じ基準反収であった場合、乙の農家がぐっと被害率が高まるわけですね。災害が起きて評価に入ると、技術の低い農家被害率が高まるわけです。いい農家被害率は出てこないわけですね。これはもう必ずあります、去年の損害評価で。やはり米でも若干出てきます。ところが、申し上げておるように、穀物は少ないわけです。米なんかになりますと、同じ条件のところの技術差というものは少ないのだが、果樹、園芸作物、畜産にはまだまだ差がある。穀物のように技術の水準が平均化していない。こういうところがありますから、これを無事戻しというのは個別対象にやるのだということになれば、その損害は無事戻しで救済されるわけですね。無事戻しは個別対象にやるというたてまえで、きちっと共済組合にやるようになりますか、どうなりますか。
  209. 小暮光美

    ○小暮政府委員 御指摘の点は私ども全く同感でございまして、できるだけ個々の営農の実態に合うようにいたすことが農家にとっては満足なはずでございますが、制度全体としては、事務費その他が異常に増高しないように、一つ制度としてある統一のものさしを使わざるを得ないというのは、こういう制度の場合本質でございます。したがいまして、結果的にあとから掛け金等に差がつくという一つの知恵として無事戻しというものが考えられるわけでございます。したがいまして、無事戻しを行ないます場合には、個々の経営にこれが戻っていくという形の制度考えておるわけでございます。
  210. 美濃政市

    美濃委員 この樹齢別の基準収量、これもまた米や麦にないことなんですが、これはどういうふうに検討されておりますか。樹齢別はおよそ何段階に切って、基準反収の一応の標準はどういうふうに設計されておりますか。
  211. 小暮光美

    ○小暮政府委員 各組合にそれぞれの地域の実情に即した樹齢別の収穫量の早見表を持たせようと思ってくふういたしております。何年刻みにいたすかというところまでまだ確定いたしておりませんが、現在試作しております樹齢別の早見表は、おおむね五年刻みでそれぞれグループいたしまして、その地域としては、七年生ならばこれくらいだ、十五年生ならばこれくらいという一つのものさしを組合に示すつもりでございます。
  212. 美濃政市

    美濃委員 これは答弁は要りません。参考に申し上げておきますが、もう一つ、この基準収量の差が今回の調査果樹地帯を歩いてみて目につきましたが、それは後継者問題です。後継者のいる家と後継者が出かせぎに出て年寄りになった家との基準収量が違ってきますね。そういう問題が基準収量の上では農家の技術差、後継者が力を入れてやっている家と後継者のいない家との差、これは将来共済組合制度の上にも、米麦にも出てくると思います。基準収量の差、そういうものが出てきますから、そういうものを制度の上でどういうふうにしていくかということは、やはりこれからの運用の技術面だと思います。  それから次に、果樹で、共同出荷をして、収穫したものの質的な被害がある程度信憑性をもって把握できるものは、量に修正をして損害で見よう、これは非常にけっこうなことだと思います。それが当然だと思います。金額で見るということになると、これは主要農産物ですから、いろいろ価格変動もあります。今月は高かったけれども来月は安かったという問題がありますから、一応一定の水準で、一定の時期に、一定の量に修正して被害率に戻すというのが方法としては賢明だと思います。それでぜひそういうふうにしてもらいたいと思いますが、現在、麦については、質的損害というよりも収穫時の被害が多いわけですね。米は収穫の時期は、秋になりましてわりかた雨季を通り越しますし、もみをかぶっているから強いけれども、麦の収穫時点の被害は大きいわけです。被害調査をする、損害評価をする余裕もないわけですね。二日ぐらい雨が降るとはえるわけですから、それを顕微鏡で見てちょっと芽がふくらんでいると、これは発芽したからということで、等外になってしまう。そういうことでなかなか——北海道の畑作の大宗地帯は麦作はほとんどコンバインになっております。農林省で麦作改善で乾燥施設に機械の助成を出しておりますから、ああいう方法になって、ほんとうに収穫したものが信憑性をもって確認できる、麦の最終損害についてもいまいったような方法で信憑性をもって収穫後といえどもはっきり間違いなく確認できる、こういうものについての最終確認の方法はどうお考えになっておるか。去年、それでずいぶん問題が起きたわけです。どうですか。今後の課題として、いま的確に答弁ができぬければ、検討するでもいいし、的確に答弁ができておれは——最終確認できるわけですから、コンバイン作業で一貫作業をやっているところは。収穫したもので最終確認はできます、あいまいなものはないから、顕微鏡よりもまだ確実に確認できるわけです。こういう最終損害はいままでなかったけれども、時代の進歩で確認できるわけですから、そういう点はどうお考えになりますか。
  213. 小暮光美

    ○小暮政府委員 くだものの場合には、実は一筆建てと申しますか樹園地建てではなくて、くだものの種類ごとにいわゆる農単という形をとっております。したがいまして、先ほど申しましたような形で出荷段階で正確にこれを押えることができるので、今回特にこういう仕組みを考えたわけでございますが、麦の場合に、まだ一筆建てということで制度が仕組まれております段階では、やはり圃場において確認するというのが現在の仕組みでございます。まだ御指摘のような点までは事態が進展いたしておりませんけれども、しかし、今後営農の実態が大きく変わってくれば、将来に一つの希望が持てるのじゃないかというふうに考えております。
  214. 美濃政市

    美濃委員 最後に、問題点は平行線になったところと、大臣も聞いていただいておりまして、局長も今後努力するという面があって、大臣は農政に非常に明るいのですから、私は果樹はあえて質問いたしません。農林省として今後この制度の充実と農家経済の安定のために、さらに運用——今回出ておる法律そのものは、私は悪いところはないと思いますから、ただ、運用の万全を期していただきたい。これをひとつ大臣から御答弁願って、ちょっと時間は余りますけれども、質問を終わりたいと思います。
  215. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 いろいろお話聞きました。十分御意見やら注意すべきことは注意し、運用は一そうよくやっていきたい、こう思います。
  216. 松野幸泰

    松野(幸)委員長代理 次回は、明七日、水曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時三十九分散会