運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1972-05-25 第68回国会 衆議院 農林水産委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年五月二十五日(木曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 藤田 義光君    理事 仮谷 忠男君 理事 熊谷 義雄君   理事 松野 幸泰君 理事 三ツ林弥太郎君    理事 渡辺美智雄君 理事 千葉 七郎君    理事 斎藤  実君 理事 合沢  栄君       江藤 隆美君    鹿野 彦吉君       小山 長規君    中尾 栄一君       野原 正勝君    別川悠紀夫君       森下 元晴君    安田 貴六君       山崎平八郎君    角屋堅次郎君       田中 恒利君    長谷部七郎君       松沢 俊昭君    美濃 政市君       相沢 武彦君    瀬野栄次郎君       鶴岡  洋君    小宮 武喜君  出席政府委員         農林政務次官  伊藤宗一郎君         農林大臣官房長 中野 和仁君         農林省農林経済         局長      小暮 光美君         農林省蚕糸園芸         局長      荒勝  巖君  委員外出席者         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ――――――――――――― 委員の異動 五月二十四日  辞任         補欠選任   小沢 辰男君     秋田 大助君   中野  明君     鶴岡  洋君   津川 武一君     小林 政子君 同日  辞任         補欠選任   秋田 大助君     小沢 辰男君   小林 政子君     津川 武一君     ――――――――――――― 五月二十二日  倉敷市王島山土地払下げ登記促進に関する請  願(加藤六月紹介)(第四一二九号) 同月二十三日  農林年金制度改善に関する請願中川一郎君  紹介)(第四五〇七号)  中国産輸入羊腸消毒免除に関する請願(樋上  新一君紹介)(第四五〇八号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月二十三日  林業振興に関する陳情書外三十件  (第二七八号)  蚕糸業振興に関する陳情書  (第二  七九号)  農畜産物輸入自由化対策に関する陳情書  (第二八〇号)  食糧管理制度堅持に関する陳情書  (第二八二号)  オホーツク海域におけるさんま漁業入会阻止に  関する陳情書外一件  (第二八四号)  農林漁業政策長期計画確立に関する陳情書  (第二八五号)  農業共済制度改善に関する陳情書  (第二八六号)  物価統制令適用廃止に伴う米価安定に関する  陳情書(第二八七  号)  第五次漁港整備計画拡充強化等に関する陳情  書(第二八九号)  畜産振興に関する陳情書  (等三四八号)  沿岸漁民安全操業等に関する陳情書  (第三四九号)  林道開設事業に対する用地及び物件補償制度の  新設に関する陳情書  (第三五〇号)  農業災害補償制度改善に関する陳情書  (第三五一号)  農業協同組合広域合併推進に関する陳情書  (第三五二号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農業災害補償法及び農業共済基金法の一部を改  正する法律案内閣提出第九六号)(参議院送  付)      ――――◇―――――
  2. 藤田義光

    藤田委員長 これより会議を開きます。  農業災害補償法及び農業共済基金法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。山崎平八郎君。
  3. 山崎平八郎

    山崎委員 私は、このたび提案されました農業災害補償法及び農業共済基金法の一部を改正する法律案につきまして、若干の質問をいたしたいと思います。  実は、これらの法案につきましては、昨年の第六十五国会のおりにも質問機会をいただいており、その際には、農業共済制度全般にわたって、特に基本的な問題を中心に、最近の異常気象にも触れましてお尋ねいたしましたが、このたびの改正のねらいは、申すまでもなく、待望久しかった果樹共済制度本格的実施という点にありますし、また、私の持ち時間も限られておりますので、以下、要点だけを簡明にお答えいただきたいと存じます。   〔委員長退席三ツ林委員長代理着席〕  さて、一口に果樹共済と申しましても、ここに両法案提出されますまでには、去る昭和三十四年、伊勢湾台風等で被災しました果実生産農家及び団体等から、国会及び政府に対し、災害補償制度化について強い要請があって以来、実に十三年という長い歳月を経ております。そして、その間におきまして、当委員会としても、たび重なる附帯決議あるいは単独決議等を通じまして、政府に対し果樹共済制度化を強く要請してきております経緯も御案内のとおりでございます。もとより政府もまたそのつど、これらの要請を受けて、果樹保険制度化のためには十分の調査検討を行なった上、さらに、去る昭和四十三年から五カ年計画で、時限法である果樹保険臨時措置法に基づき、本格的実施を前提とした、現在試験実施中の制度に踏み切ったわけであります。したがいまして、明年三月三十一日にこの法律は失効するので、この際、すでに昭和四十五年十一月に農林省内に設けられていました果樹保険制度のための検討会による専門的な検討の結果を踏まえた最終調整を経て、ここに両法案提出に至った次第と承知いたしております。  そこで、まず農林経済局長にお尋ねいたしますが、昨夜あたりを山場として国会が微妙な段階にあったわけですけれども、そのことは別としましても、これら両法案をあえて本国会で成立させなければならぬゆえんは那辺にあるかということをお尋ねしたいわけでございます。たとえば、何か特にスケジュールでもお持ちならば、詳細御説明を願いたいと思います。
  4. 小暮光美

    小暮政府委員 ご承知のように、果樹共済につきましては、昭和四十七年度を最終年次といたします試験実施が現在継続中でございますが、この試験実施が終わりました時点で直ちに本格的な制度に乗り移ることといたしたいというのが私どもお願いでございます。その際、新たな実施をいたしますまでに、この制度は、法律に基づきまして政省令等を詳細定めまして、さらに定款等まで、今年度のうちに、きわめて具体的な計数等を含めてもろもろの準備をいたしまして、さらにこれを、試験実施の際に御参加いただきました生産者団体以外に、広く果樹生産者団体に周知徹底させまして、円滑に明年度から本格実施に移したいというふうに念願いたしておりますので、何とぞ、できるだけ早期にこの法律を御承認いただきたいという趣旨でございます。   〔三ツ林委員長代理退席松野(幸)委員長代理着席
  5. 山崎平八郎

    山崎委員 ただいまの御答弁でよくわかったわけでございますが、特に未加入団体等にこの法案趣旨を十分に普及、徹底、さらに御指導を願いたいと思います。  それから、先ほどもちょっと触れましたが、果樹を対象に共済制度を確立するということは、並みたいていのことではなかったと思います。それは果樹種類が多いこと、そして永年作物であるがゆえに一つのショックが何年影響するか、また、植物の生理生態もおのおの異なり、同一種類でもまたその差異があり、また、経営形態地域性と申しましょうか、そういうもの等々、本質的な問題がたくさんあります。また、公害対策としての薬害の問題、さらには需給事情がリードする価格の変動など、まさに枚挙にいとまのないほどの難題を含んでいます。こういうむずかしいことを一応まとめ上げたわけですから、私ども先輩諸兄及び立案者各位にまず敬意を表するにやぶさかではございません。  次に、この災害補償制度は、あくまで一朝有事に対する備えの問題でありまして、事なきを得れば、ないほうが好ましいのであります。したがって、平常の状態においても成長農産物を主体として経営している農家が、自分ではかたくその成算のもとに取り組んでおりましても、外的要因から、もしも全く採算がとれないような結果を生じたという場合、こういうことが数多く起こるならば全くナンセンスであります。  そこで、蚕糸園芸局長にお伺いいたしますが、この制度の発足にあわせて、果実価格安定制度について何か別途お考えかどうか。  さらに、この際、時間の関係もございますので、ミカンに限って質問いたしますが、先般のエバリー通商代表が触れたかどうかは知りませんけれどもアメリカ農産物自由化に対する向こう一カ年間の休戦というお話もあったにもかかわらず、いろいろのスケジュールが話し合われたわけでございますが、おわかりならば、知らしてほしいと思います。  なお、ついでといっては失礼ですが、この際、現時点におきますアメリカ温州ミカン輸入解禁州と今後の拡大見通し並びにその取引量及び包装等条件、さらにアメリカ以外に輸入を受け入れそうな他の国々をも知らせていただきたいと思います。もっとも、以上は生ミカンのことでありますけれどもジュースとしての可能性はどうか。特に、最近、粉末化に成功したということを聞いておりますけれども、それはただいま実験段階であるのか、それとも実施段階まで進んできたのか、その辺を含めてお答えをいただきたいと思います。
  6. 荒勝巖

    荒勝政府委員 私の所管関係につきまして御答弁申し上げます。  まず果実価格安定制度と今回の保険制度との関係においてどう処置するかという御質問でございますが、私たちといたしましても、果実生産量国民所得の増大に伴いまして国内においても増大し、かつ、消費も増大してきておりますので、何らかの形で逐次価格の安定を行なうことによって、生産者消費者とも価格の安定の効果を得られるようにしていきたいというのがかねがねの考え方でございますが、さしあたりましてただいま実行いたしておりますのは、生産をいかにして安定するとともにその出荷を安定するかということで、倉庫等を相当助成いたしまして、生産期に一ぺんに出荷しないように、この出荷の安定を行なうことによりまして果実価格安定を行なうようにいたしておる次第でございます。さしあたり原料果実の、特にミカンリンゴでございますが、今後ジュースに非常に大量に消費する機会が多い。またジュース産業に対して、私たちといたしましても、相当今後育成強化していきたいということで、四十七年予算から原料果実価格安定制度を何らかの形で予算的に実行してまいりたいということで、それぞれの農業生産者団体におきましてジュース工場をつくられ、ジュースを主としてつくっておられるそれぞれの県におきまして、その一つ最低価格といいますか、基準価格を設けまして、その基準価格を下回るような取引があった場合には不足払いを行なうということで、各県ごと制度をつくってもらいまして、さらにそれに対して中央から補てんをするという考え方で、中央に法人をつくりまして、価格補てんを実行してまいりたい。こういうことを行なうことによりまして、原料果実価格安定を何らかの形で今後安定的にしてまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。  それから、温州ミカン解禁州の点でございますが、アメリカ温州ミカン解禁州の問題については、その拡大をはかるため、従来から再三再四にわたりまして対米折衝を行なってまいりましたが、本年の四月十一日付のアメリカの官報で新たにハワイ州を追加いたしまして、従来の五州に対してさらに一州、六州ということで、この四十七年産の温州ミカンから輸出を開始いたしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。これにつきましては、今後とも、今回はアメリカ解禁州がわずか一州でございましたが、日本側といたしましてはあらゆる機会をとらえてさらに解禁州の拡大をはかるように努力してまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。  また、アメリカに対する輸出の問題でございますが、数量的には最近アメリカに対しまして、ミカン輸出量といたしましてはどちらかというと漸減ぎみになっておる次第でございまして、四十四年には対米輸出といたしましては六百九十三トンあったものが、四十六年、昨年のミカンは三百六十六トンというふうに減ってきておるわけでございます。これにつきましては、大きな原因といたしましては、一つには、アメリカの、解禁州にはなっておりますが、輸出に際しましていろいろな検疫上やかましい点がございまして、輸出される農家側にとりますと、やはり採算といたしましては非常に難点があって、なかなかこの問題に乗りにくいという点が一つでございます。さらに、基本的には、ミカン生産と需要との関係におきまして、国内におきまして温州ミカン価格が非常に恵まれておりまして、国内に売りさばいたほうが非常に有利だというようなこともありまして、アメリカ向け輸出ミカンの数量が伸び悩んでおるということは事実でございます。  しかし、今回ハワイ州が新たに含まれまして、あそこには日系人も非常に大量におりまして、日本ミカンに対する何か郷愁ともいうべきものも相当潜在的にあると思いますので、ハワイ州の解禁を契機に、今後輸出は相当伸びるのではなかろうかというふうに私たち考えておりますし、輸出関係者におきましてもそういうふうに考えておる次第でございます。  また、先ほどの、輸出ミカンにつきまして包装条件ということで、どうも少し条件としてきびしいんじゃなかろうか、こういう御質問でございましたが、われわれの輸出アメリカ側の規制といたしまして、木箱でなければならないというような条件は実はないのであります。ただ、実際の商取引段階におきまして、ダンボールよりも木箱でないと、アメリカ輸出するに際しまして、向こうで保存したり輸送したりする段階で、ダンボール箱ではどうもまずい、従来どおりの木箱がいい。したがいまして、木箱包装し、かつなわで包装を厳重にするというかっこうになりまして、それらが多少輸出上の難点になっておりますが、これはあくまで両取引関係者の間での一つ希望といいますか、そういう条件になっておりまして、政府間におきます条件ではなってない、こういうふうに思っておる次第でございます。  アメリカ向け輸出量はあまり伸びていないのでありますけれどもアメリカ以外のカナダとかあるいはヨーロッパ向け温州ミカン輸出についてはなおわれわれは努力いたしておりまして、さらに、昨年来ソ連との間にもミカン輸出を今後行なうということで、昨年はモスクワへ輸出ミカン調査団日本から出しましたし、この秋には日本ソ連側関係者を招きまして、ミカン輸出について国内においていろいろな打ち合わせを行なうことを予定しておる次第でございまして、今後こういったミカン輸出はさらに伸ばしていくようわれわれとしては努力をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。  なお、さらにジュース国内対策見通しについてでございますが、われわれといたしましては、政府におきましてミカンリンゴにつきまして、そのジュース生産工場の助成を行なうということによりまして、現在非常に大量に、逐次年々ふえてまいりまして、一昨年にはミカン関係ジュースが五分の一濃縮で約六千トン程度でございましたものが、四十六年から四十七年にかけての年間の見通しでは、一万三千トンをこえる数字で、二倍以上のものができるようになりまして、やがてあと一、二年のうちにはさらに大量のジュース国内において供給されることになると思っておる次第でございます。  また、国内国民消費者のほうにおきましても、従来のようないわゆる希釈されたジュースではなくて、一〇〇%ジュースという形での消費量国民食生活の変化によりまして非常に飛躍的に伸びておりまして、ジュースに対する将来の見通しは相当明るいのではなかろうか、こういうふうに考えている次第でございます。  あと貿易の問題につきましては、経済局長から御答弁申し上げます。
  7. 小暮光美

    小暮政府委員 エバリー特別代表が来日いたしましたときに、経済関係閣僚方を歴訪されまして、七月に事務レベル貿易上の問題を話し合いたいという先方の希望を申し述べて帰ったということでございました。これに対して農林大臣は何か確答を与えておりませんけれども関係各省でできるだけ早い機会にこれに対する態度をきめなければならないと思います。いずれにしても、現在、どういうランクで輸出というようなことについて、まだ一切そういう議論には相なっておりません。
  8. 山崎平八郎

    山崎委員 たいへんこまかに御説明いただきまして、よくわかりました。  いずれにいたしましても、私がこういう問題にたいへんこだわっておりますということは、私自身がこの仕事関係の深い中に生まれ、生きてきたからでございますけれども、実は私自身農業に対する信念を持っておるわけでございます。何といいましても農業という問題に対する意義づけといいましょうか、そういうものに対しての倫理感というようなものを持ち続けておるわけでございます。この恵まれた自然のもとで、しかも、人間の営みのうちで最もすぐれている創造性をつちかいながら、生産と労働とに価値を認めることをはだ身に感じながら生きていく仕事、これが農業であるということでございますけれども、ごく最近問題になっております自然環境の保全という上から見ましても、果樹栽培の意義はたいへん大きなものがありますので、ただいま触れましたような内外の変転きわまりない諸事情を十分に考慮されまして、ぜひともさらに格段の御配慮を願いたいと思います。  次に、農林経済局長にお尋ねいたしますが、これらの法律がいよいよ通ります際に、経過措置がどうなるかという点であります。すなわち、法律に基づくとは申しましても、果樹保険臨時措置法で行なった事柄は、あくまで一つのトライアルであると考えますので、本格実施に移る際の経過措置考えるほうが新規加入者との間の公平が期せられるのではないか、とかように思いますが、いかがなものですか。聞くところによりますと、試験制度実施にあたっては、むしろ余剰金の処分ということを心配して発足したようでございますけれども実情は結果として赤字をかかえておるところもあるように承っておりますが、いかがなものですか、お伺いいたします。
  9. 小暮光美

    小暮政府委員 果樹に限らず、農産物共済制度すべてに共通した性格だと思いますけれども、危険を地域的に分散する問題のほかに、時系列的に危険を分散するねらいがございます。したがいまして、試験実施ということでございますので、五年ということで年次を切りましたけれども、ちょうどその五年目で切りましたときにいまの時系列的に危険を分散するプロセスで、ある組合にとっては黒字である、ある組合にとっては赤字であるという事態が生ずるのは、これはやむを得ないかと考えております。現在、過去二年間の実績については数字が固まっておりまして、それを見ましてもおおむね同額、要するに、二年目の帳じりが赤字で推移しております組合と、黒字で推移しております組合が、金額的にもそれから組合の数でもほぼバランスいたしております。その意味では、これは時系列上の危険分散一つの経過的な姿を示すものではないか。したがいまして、それぞれの試験実施をやりました組合本格実施に乗らないということを決議なさる場合は別でございますけれども、引き続いて本格実施に移行するという場合には、これらのものを本格実施の勘定に引き継ぐのが一番すなおであるというふうに制度的には考えられます。  ただ、御指摘のございましたように、試験実施のための加入をおすすめする段階で、制度の中身が全くこれからの試行錯誤の問題でございますから、生産者に説明いたしますものとしても、俗なことばで恐縮ですが、はたしてこれでどの程度のごりやくがあるのか、そういうことについて必ずしも的確に言い切れないという問題がございます。そのときには、むしろ事故が起こってどんどん金が受け取れるんなら問題はない。もし試験実施してもさっぱりもらえないという事態があったならばどうするという御指摘がございました。それらの御指摘に対して、試験実施に対する加入を勧奨する意味も含めて、残ったらこれを会員に返そうという趣旨のことを、当委員会からの御指摘を受けて、当時の担当の局長からお答えしたという経緯がございます。この経緯は、私どもとしても尊重いたしたいというふうに考えております。
  10. 山崎平八郎

    山崎委員 ただいまの御意見でよくわかりましたが、私の考えといたしましても、多少の赤字程度ならば、むしろ自主的にかかえ込んでいくというような意気込みがぜひほしいと、かように考えております。しかし、このことが新たな加入への踏み切りをちゅうちょさせるというようなことにでもなるとたいへんですから、私としましては、この問題をこじらそうという気はありませんけれども、いまのお話のように、さらに努力を願いたいと思います。  なお、引き続き農林経済局長に、法案の内容に入りますので、簡単にお答えいただきたいと思います。  数点ございますが、これは実は私の出身地近くの福岡県八女郡黒木町に行きまして、直接いろいろな意見を聞いたわけですけれども、その際にいろいろ要望があっておりますので、逐次お答えをいただきたいと思います。  まず第一が、掛け金国庫負担の増額の問題でございます。これは申し上げるまでもなく、試験期間は国が一〇%、農家が九〇%というのでやってまいりました。そしてこの町におきます実績を見ますと、水稲の場合は国が六〇・六、農家が三九・四、こういう割合になっております。全国ではどうなっておるかわかりませんが、したがって、今回の改正案におきます半々、五〇対五〇というのを、さらに引き上げていただけぬだろうかという点。  それから次の二番目が、掛け金率の設定の問題でございまして、これを地域実情に即したような掛け金率にしてほしい、こういうことでございます。  三番目が、ほかの作目にもありますように、無事戻しの制度を確立してほしい、できますなら政令、施行細則等で具体化してほしい、こういうことでございます。  それから四番目が、共済金及び支払い共済金につきまして、御承知のように、グラフがかかれておりますが、横軸減収割合をとり、縦軸支払い割合をとって、これが減収割合の五〇%のところで中だるみの直線になっております。これが何ゆえにこのようになっておるか、これを修正するお気持ちがあるかどうか、こういうことをお伺いしたいわけでございます。  それから五番目は、組合執行体制確立整備。これはすでに経験したところも未経験のところも含めまして、いろいろ基準収穫量の決定とか被害評価など、なかなかむずかしい技術的な問題等も含んでおりますので、これらに対するいろいろ御配慮がどうかという問題。  さらに六番目の、国庫事務費負担の確保をいたしまして、職員、評価員などの待遇改善をしてほしい、こういうお願いでございます。これはたしか急傾斜地帯にとって、いろいろ事務量もかなり加算されると思いますので、お願いいたします。  それから七番目が、品目の追加の問題でございますが、これも私のほうに特に関係の深いのは、カキとかお茶とかイグサとかそういうものがございますので、これも可及的すみやかにひとつ試験段階から実施段階に移すような御努力を願いたい。  以上七点で、簡単でけっこうでございます。
  11. 小暮光美

    小暮政府委員 第一点の、掛け金国庫負担の問題でございます。当委員会からも御指摘がございまして、試験実施の一割ということを、本格実施の際にはできるだけ高い国庫負担率にするようにという御指摘を受けております。私ども今回の案をつくりますにあたりまして、その趣旨を十分体したつもりでございますが、ただ、水稲との比較の問題につきましては、御存じのように、水稲につきましては、当然加入という仕組みでございます。昨年一部手直しをお願いいたしましたけれども、御承知のように、食糧増産というたてまえのもとに、およそ稲作を可能とするような地帯ではできるだけ稲作をやるというたてまえのもとに、被害の高いところにはきわめて高い国庫負担率というものを加味した仕組みで長年やってまいったわけでございます。その後、高被害地を高い国庫負担率にすることを一部是正したわけでございますけれども、こうした制度の仕組みから、全体の平均が、先ほど地元で六十対三十九であるという御指摘がございましたが、国全体としては農作物共済では五九%の国庫負担率になっております。なお、当然加入という仕組みが続いております蚕繭共済の場合にも、平均しますと五七%でございます。ただ、くだものの場合には、何と申しましても適地に果樹農業を振興するという考え方がございまして、きわめて高率の被害地域というものを制度的に想定するという考え方には私ども立たないということが一つございます。また、果樹農業の実態から見て、これを地域の集団化と並行いたしまして任意加入という形で制度をもり立ててまいりたいというように考えております。したがいまして、現在、任意加入制のもとに行なわれております家畜共済、これの国庫負担率の平均が四九%程度であること等もあわせ勘案いたしまして、これを一律五〇%というふうに立案いたした次第でございます。  なお、掛け金率を定めます場合には、御指摘のように、果樹の場合には特に地域的な気象条件あるいは土壌条件といったようなものがものをいう農業の分野でございます。しかし、どこまで細分化するかというのは、組合の運営、事務費等が極端にかさばる、あるいは統計資料の整備に適正を欠くという問題を一本に控えますので、無限に細分することは避けなければならないと思いますが、都道府県一本で強行するということでなしに、実情に応じ、被害の発生態様等によって危険階級を地域的に区分するというようなことを考える予定でございます。  それから、無事戻しの問題につきましては、共済制度につきましてこれまで作物あるいは蚕繭で長年の経験があるわけでございます。果樹共済につきましても、これらの先行いたしております制度の無事戻し制度を十分勘案いたしまして、同様な措置をいたしたいというように考えております。  それから、先ほど支払い金額の中だるみの問題について御指摘がございました。これは実はやや経過的な問題でございまして、試験実施の際に足切りについて二通りの足切りを提案いたしまして、これを試験実施いたしたわけでございます。したがいまして、集めました基礎資料も全部五割足切りの場合と三割足切りの場合に即した資料を収集した。それから掛け金率もそういうものに基づいて実は算定したということでございまして、五割足切りというものをやめまして、今回御提案したような一本の足切りにいたしたわけでございますが、関連いたします諸資料すべて五割足切りの場合と三割足切りの場合のあれに基づいておりますので、それぞれそのポイントにつきましては、試験実施の際に申し上げた補てん率というものを堅持いたしまして、これをつないだ結果が御指摘のような形になるわけで、これはこの制度を円満に実施いたしまして、その経過の中において今後引き続き検討してまいりたいというふうに考えております。  それから、事務体制の問題でございますが、確かに水稲共済につきましても、非常に長い歴史の中で現在の共済組合の事務能力と申しますか、こういうものがつちかわれてきたわけでございまして、果樹につきましては、どちらかといいますと、生産出荷段階が多くの組織でこれまで行なわれておったというような実態がございますので、これが完全に事務的に融合いたしますまでにはかなりの努力を必要とするというふうに考えますが、生産出荷段階に対する協力の要請といったようなものも含めまして、事務体制の整備に万全を期したいというように考えております。  なお、果樹共済にかかわる事務量につきましては、本年度においてすでに果樹保険事務量調査ということで六十五万九千円でございますが、調査予算をいただいておりますので、明年からの実施の前に、年内にこれらについても詳細に調査をいたしまして、明年度予算の編成に十分反映させたいというように考えております。  それから、カキにつきましては、試験実施を行ないます際の基礎調査段階で、実は当時もちろん御要望があったのだと思いますが、具体的な経過としては、一県だけが事前の調査に参加されたという事情がございまして、一県の数字でこれを試験実施に仕組むということは適当でないということで、試験実施と並行して、カキについてさらに関係県の協力を求めまして調査を始めております。これらの調査をできるだけ急ぎまして、その結果に基づきまして、カキをこの制度に乗せる方向で検討を急ぎたいというように考えております。  それから茶やイグサにつきましては、これは果樹の問題とちょっと別でございますので、ただいま、カキについてできるだけ基礎調査を整備して果樹共済に乗せたいと申し上げたのとは、ちょっと申し上げ方で変わらざるを得ないと思いますが、茶及びイグサにつきましても、四十五年度からすでに調査研究は始めております。ただ、時間がございませんのであまりくどく申し上げませんが、たとえば茶のように、実を収穫するということでなくて、刈り取りましたあとが逐次また葉が出てまいりまして、その刈り取りの技術と申しますか、その中で収穫まで全体にどれだけの収益をあげるかといった要素が入ってまいりますと、従来米麦あるいは蚕繭、家畜それから今度の果樹というようなもので考えておりますものと、また全く態様の異なる一つの収穫形態でございまして、これらのものについてどのような形での共済制度が仕組めるか、また技術的にさまざまの問題点をかかえております。しかし、鋭意検討を継続いたしたいというふうに考えております。
  12. 山崎平八郎

    山崎委員 いまの問題にちなみまして、前回の改正のおりにいろいろ問題がございましたが、地元の率直な意見が一、二参っておりますので、この際御留意願いたいと思いますが、前回の改正におきましての水稲の農単方式、これは掛り金率が非常に不合理であって、あまり好まれておりません。  それから二番目としては、家畜の国庫負担増額は、これは好評でございましたけれども、肥育牛のうち牡犢の廃用基準、これをもっと緩和してほしいという要望がございます。  この二点は御留意いただきたいと思います。  そこで、官房長にお願いしたいと思いますが、ただいままでお聞きのとおり、るる質問を申し上げてまいりましたが、果樹共済制度の確立を期するということは、ひっきょうしますと、総合農政の重要な一部門をささえるためには不可欠なことであるわけでございます。これはむしろ、言い方はどうかと思いますが、枝葉の問題でありまして、根幹をなすものはやはり総合農政自体にある、かように思われるわけでございます。先般、本会議におきまして農業白書に対する討論の際、農林大臣の御所見は承ったわけでございますけれども、重ねて総合農政に対するお考えを官房長からお伺いしたいと思います。簡単に願います。
  13. 中野和仁

    中野政府委員 米の生産調整を契機にいたしまして、昭和四十五年の二月に「総合農政の推進について」という閣議決定をいたしたわけでございます。それをもとにいたしまして、ただいま総合農政をずっと推進しておるわけでございますが、特に本年度からは、農業団地の育成と、それから農業基盤整備の、畑作も含めました拡充と、それから三番目は価格対策、先ほどもお話がございましたけれども果樹なりその他肉牛なりの価格対策に重点を置く。それからなお、御承知のように、野菜につきまして非常に問題がありましたので、野菜対策を抜本的に拡充するということ等、その四十五年の推進の方向に沿ってやっておったわけでございます。  もう一つは、先般土地改良法の改正もできました。それを機会農業生産の安定、価格の安定のほかに、やはり新しい農村のといいましょうか、近代的な農村をつくるということで、総合基盤パイロット事業ということも興そうという方向に沿っていまやろうとしておりますが、生産調整につきまして、ただいま本格的に、計画的に実施するのは二年目でございまして、ようやく軌道に乗ろうとしておる。またその生産調整をやりますための転作、これもいろいろの金をつぎ込んでおりますけれども、これの定着化をはかるという方向で総合農政を推進したいと考えておるわけでございます。  特に今国会で問題になりましたのは、自給率といいましょうか、今後の需給の問題でございます。これにつきましては、農林省としましてはすでに五十二年の見通しを立ててお示しをしておるわけでございまして、また地域分担等もつくっておりますけれども、より長い先まで見た、それからまた政策も織り込んだ需給の見通しができないかという大臣からの御指示もありまして、せっかく事務的にも検討しておるところでございます。それからなお、ただいま申し上げました方向について、情勢の変化に応じまして新しい施策を盛らなければなりません。そこで、先般成立しました予算で総合農政調査費三千万円の計上をいたしまして、これをもとにいたしまして、ただいまそれをどういうふうに進めるかということについてせっかく検討しておるところでございます。
  14. 山崎平八郎

    山崎委員 もう一つ、簡単な点をお願いいたしますが、地域分担と果振法の関係、この辺にそごはないかどうか、お伺いしたいと思います。
  15. 中野和仁

    中野政府委員 一昨年暮れに地域分担を示しまして、十四地域について主要な作物についての見通しを立てたわけでございます。果樹振興基本方針におきましても、先般、園芸局のほうで新しく改定をして作成をしたわけでございます。これは地域分担の方向に沿ってやっておるわけでございます。詳しくは園芸局長から申します。
  16. 荒勝巖

    荒勝政府委員 果樹農業基本法に基づきまして三月末に果振基本方針の二回目の改定を行なったわけでございますが、その作業に際しましては、約二年間ほどかかりまして、それぞれの果樹種類ごとに需要の見通しを立て、それに即応する果実の供給体制の確立ということで、それぞれの果実につきまして、また各県とも十分打ち合わせをし、また関係団体とも打ち合わせをいたしまして、作業をいたしました結果を公表した次第でございますが、そのときに当然に、長期見通しを策定いたしました際の果実についての長期見通し、または一昨年、農林省でつくりました地域分担の見通しというものも十分に織り込みまして、それぞれの作業をいたした次第でございまして、基本的におおむね同一の方向の路線に沿っているものと考えておる次第でございます。
  17. 山崎平八郎

    山崎委員 それでは最後に、農林政務次官にお伺いいたしたいと思います。  同じく総合農政に対する御所信を承りたいわけでございますけれども、実は先日の本会議におきます農業白書等に対する江藤隆美君の御意見、私、全く同感でございまして、もはや農業基本法というものは全く時代にそぐわないと断定しているわけでございます。いろいろの面から考えてそのような断定を下したわけでございます。  なおまた、この際でございますから、もう一つ、いよいよ日程が迫っております米価問題に対する基本的な考え方をお伺いいたしたいと思います。特に私は昨年の米価決定のおり、私自身は物価、賃金及び公共料金ということばを使って、その高騰という点をいろいろとついてまいったわけでございます。農協などにもそのようなことをいろいろ協力願ったこともありますけれども、米価自体が公共料金の一つであるということは間違いないわけでございます。この問題を含めましてお伺いいたしたいと思いますが、以上をもちまして私の質問を終わらしていただきます。
  18. 伊藤宗一郎

    ○伊藤(宗)政府委員 十年もたちました農業基本法について、いろいろの情勢の変化があることはわれわれも承知をしておりますけれども、ただいまのところ、基本法そのものを再検討するというところまでの断定といいますか、結論はわれわれとしてはまだ持っていないわけで、先般の本会議でも、農林大臣から江藤議員にお答えしたとおり、目標その他について非常にそごを来たしておりますので、基本法は基本法として、その運営その他でひとつ発想の転換をしてやろうということで、なお農林省としても勉強をしてまいりたいと思っております。  なお、先ほど来山崎先生から農業についての御信念ともいうべき御高見を拝聴いたしまして、われわれも全く謙虚にお聞きをいたしましたし、同感の点も多々ございました。先生御指摘のとおり、農業の健全な発展なくして日本の調和のある発展もないわけでございますので、今後ともわれわれは農業の健全な発展を遂げるようにきめこまかく、また先ほど申し上げましたとおり、発想の転換をも逐次展開しながら、農業の健全な発展を遂げてまいりたいと思っております。  米価につきましては、きのう全農、農中、それから日農両方から今年度の要求米価を示されました。われわれ直接御陳情も受けました。また、三年間据え置きといういままでのきびしい米価に対する態度もわれわれ再検討しなければいけない時期にきておるように感じております。いずれにいたしましても、米価審議会におはかりをいたしましてきめなければならないことでございますので、先生御指摘の点、あるいはまたきのう陳情を受けました農中あるいは日農の要求米価等をも十分しんしゃくをさせていただきまして、ことしの米価には対処してまいりたいと思っております。
  19. 松野幸泰

    松野(幸)委員長代理 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午前十一時三十八分散会