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1972-04-04 第68回国会 衆議院 農林水産委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年四月四日(火曜日)委員長の指名で、 次の通り小委員及び小委員長を選任した。  生鮮食料品に関する小委員       江藤 隆美君    仮谷 忠男君       坂村 吉正君    中尾 栄一君       別川悠紀夫君    松野 幸泰君      三ツ林弥太郎君    山崎平八郎君       渡辺  肇君    角屋堅次郎君       田中 恒利君    千葉 七郎君       相沢 武彦君    鶴岡  洋君       合沢  栄君  生鮮食料品に関する小委員長  仮谷 忠男君 ————————————————————— 昭和四十七年四月四日(火曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 藤田 義光君    理事 仮谷 忠男君 理事 熊谷 義雄君   理事 松野 幸泰君 理事 三ツ林弥太郎君    理事 渡辺美智雄君 理事 千葉 七郎君    理事 斎藤  実君 理事 合沢  栄君       安倍晋太郎君    江藤 隆美君       小沢 辰男君    佐々木秀世君       坂村 吉正君    野原 正勝君       別川悠紀夫君    森下 元晴君       渡辺  肇君    角屋堅次郎君       田中 恒利君    長谷部七郎君       美濃 政市君    相沢 武彦君       瀬野栄次郎君    鶴岡  洋君       小宮 武喜君    津川 武一君  出席政府委員         農林政務次官  伊藤宗一郎君         農林省農地局長 三善 信二君  委員外出席者         通商産業省企業         局工業配置室         長       浜岡 平一君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 委員の異動 四月三日  辞任         補欠選任   草野一郎平君     渡辺  肇君 同日  辞任         補欠選任   相沢 武彦君     渡部 一郎君 同日  辞任         補欠選任   渡部 一郎君     相沢 武彦君     ————————————— 三月三十一日  中国産食肉輸入禁止解除に関する請願小林進  君紹介)(第二〇二七号)  加工原料乳保証価格引上げに関する請願(芳  賀貢紹介)(第二一九二号)  農林年金制度改善に関する請願外一件(足立篤  郎君紹介)(第二〇〇三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  土地改良法の一部を改正する法律案内閣提出、  第六十五回国会閣法第一〇〇号)      ————◇—————
  2. 藤田義光

    藤田委員長 これより会議を開きます。  土地改良法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。長谷部七郎君。
  3. 長谷部七郎

    長谷部委員 私は、ただいま議題となっておりますところの土地改良法の一部を改正する法律案につきまして、若干の質問を行ないたいと思います。   〔委員長退席三ツ林委員長代理着席〕  きょうは、参議院の予算関係で、農林大臣もお見えになっておらないようでありますので、大臣にかかわる問題につきましては後刻まで保留させていただきまして、きょうは主として農地局長並びに関係局長お尋ねをいたしたい、こういうぐあいに思います。  まず第一は、土地改良制度基本的な問題についてお尋ねをいたしたいのでありますが、当初、農林省は四十年度を初年度とする十カ年計画、いわゆる長期計画策定されました。この基礎になっておるものは、昭和三十七年に公表されました「農産物需要生産長期見通し」というものを基礎にして事業種別実施目標事業量を定めておりまして、総額二兆六千億円、前期五カ年では一兆一千五百億円という計画を立てまして、それに基づいての仕事をやってこられた、こういうことでございますが、ここ数年来の農業をめぐる情勢というものはたいへん激動しておるわけでございます。特に、農産物需給事情、その中でも米の生産過剰あるいは農業労働力の流出、こういった変化がありますし、加えまして四十三年には「農産物需要生産長期見通し」についても改定が行なわれていますし、その後、新全総あるいは「農業生産地域指標」あるいは新経済社会発展計画、こういう形でいろいろと情勢変化がなされてきたわけでありますが、これに対応した土地改良事業内容も当然変更を要するものとわれわれは考えるのでございまするけれども、これからの土地改良事業中心は、一体どこに置こうとしておられるのか、この基本構想についてまずひとつ所見を承っておきたいところであります。
  4. 三善信二

    三善政府委員 御指摘のように、土地改良の十カ年の長期計画、これは四十年から四十九年までを予定して現在それに基づいて事業実施しておるわけでございますが、事業量も相当毎年大幅に伸びておりますし、事業量の点でも、この長期計画の全体の二兆六千億、これは大体四十七年度予算で充足をするというような状況になっております。  それはそれとしまして、やはり御指摘のような土地改良長期計画基盤となっております農業の諸情勢、いま申されましたようないろいろな情勢変化をしておるわけでございますが、そういった情勢を踏まえて、私ども現在この長期計画改定作業を進めているところでございます。四十七年度を初年度として十カ年計画をつくりたいと思って作業をいたしております。  その基本となります考え方と申しますのは、まず、最近のこの農業情勢変更に対処しまして、一つ需給の問題、この十カ年の需給見通しというのをどういうふうに考えていくかという問題がございます。これにつきましては、いま御指摘ありましたように、現在五十三年度の需給見通しがございますが、その五十三年の見通しをさらに延長したような需給見通しをいま農林省内部検討をいたしております。その需給見通しの上に立って基本的には考えていきたいと思いますが、その中でもやはり基本となります土地改良事業内容でございますが、やはりいままで水田中心とした土地改良というのを畑作振興というようなことに十分重点を置いていきたい。といいますのは、需給が伸びておりますような果樹、畜産、そういった部面を重点的に考える。片や水田生産調整等の問題もございますから、そういう点も踏まえて水田の転換というような事業にも力を入れていきたい。  それから二番目に、やはり最近の事情としまして、農村と都市、農業と他産業との関係、これがいろいろの面で土地利用関係その他水利用調整、そういう面でどうしても他産業との関係調整していかなければならないという問題が一つございます。  それからもう一点は、やはり農村基盤整備環境整備と申しますか、これにつきましても、総合農政の一環として、農林省もいろいろの施策を講じているわけでございますが、その環境整備基盤整備、そういった問題に今後前向きに考えてやっていかなければならない。  いま申しましたような情勢を踏まえまして、土地改良十カ年計画事業内容については、従来の重点的な事項をさらに新しく、今後の十カ年の需給見通しあるいは重点を置いてやっていくべき土地改良事業、そういうのを踏まえまして改定作業を現在している、こういった状況でございます。
  5. 長谷部七郎

    長谷部委員 ただいまの御答弁によりますと、従来の水田中心圃場整備あるいはかん排事業というものについては、これを変更いたしまして、畑作振興重点を置きたい、こういう御説明でございます。なお、他産業との関連において、工業用地の問題あるいは水利用問題等についても調整をしていかなければならない、さらには、環境整備等を考えておる、こういうお話でございますが、私、ここで承っておきたいことは、先般、農林省から昭和五十二年までの「農業生産地域指標」というものが出ておるわけであります。これとの関連をいかように考えておられるのか、もう少し具体的にひとつ承っておきたいと思うのであります。
  6. 三善信二

    三善政府委員 「農業生産地域指標」につきましては、御承知のように、現在、都道府県におろしまして、もう少し実態を加味して都道府県段階でそれを具体化していくというような作業をやっているわけでございます。したがいまして、そういう地域指標の問題も、今度の土地改良長期計画の中に当然考慮しながら、事業重点的な実施事業量問題等も考えていきたいと思っております。
  7. 長谷部七郎

    長谷部委員 ただ、この「地域指標」の中で、農地面積昭和四十五年には五百八十万ヘクタール、そして五十二年には五百五十八万ヘクタール、約二十二万ヘクタール減少の想定がなされておるわけであります一その中で水稲の作付面積でありますが、これは四十四年を三百十七万ヘクタールにすると、昭和五十二年には二百二十七万、実に九十万ヘクタールの水田面積を縮小する、こういうぐあいになっています。そのほか、農地転用基準昭和四十六年に大幅に緩和をしておるわけであります。こういうような計画などを拝見いたしますと、将来のわが国農用地面積というもの、その中で、水田畑地——草地ももちろん入るわけでありましょうが、そういうものをどの程度想定をしてきちんと位置づけておるのか。たとえば資本の側の要求に基づいてずるずるとこの農用地転用されるあるいは工業用地としてつぶれていく、こういう傾向にあるわけでありますが、一体わが国農業農用地面積というものをどの程度に将来押えていこうとしておるのか。  私はいまのような無計画やり方ではたいへんな結果になるのではないか。きょうのテレビなどでも報道しておりまするように、農林省わが国農産物自給率をどの程度に押えていくか、こういうようなことなどについてもいま検討を加えておるという報道がなされていますが、私はそういう全体計画わが国農業というものは、将来どう持っていくかというビジョンを持たないで、その場その場で法律改正、こういうあり方というものはどうも納得ができないところであります。したがって、あくまでもこの法改正前提となる日本農業の姿、こういうものをこの機会に明確にすべきではないか、私はこういうぐあいに考えるのでありますが、これはひとり農地局長だけの問題でもなかろうとは思います。広く政府全体の重大な問題でもあることは承知しておりますけれども、そこら辺のところを描いた上でやっていただかないとうまくないのじゃないか。後段で順次触れますけれども、ひとつ基本的な考え方を承っておきたいのであります。
  8. 三善信二

    三善政府委員 農林省としましても、全然見通しがなくてやっているわけではございませんが、いま御指摘にありましたように、それぞれその計画をつくってこれまでやってきているわけでございます。土地改良は十カ年計画、その土台になりますのは五十二年の需給見通し、またその「地域指標」の問題、そういうことをそれぞれビジョンを立てておりますが、最近の農業情勢変化というのは、非常に急テンポで変化してまいってきているわけでありますから、そういった実態を踏まえて、「地域指標」につきましても末端におろし、いまも御指摘のありました「地域指標」に基づく農用地面積につきましても、それを土地改良十カ年計画の場合には、これは五十二年でございますが、五十六年に現在の「地域指標」を加味してどういうふうに農地面積を算定するか、そういう見通し作業をいたしております。  それから、御指摘のございました農地転用の問題、これにつきましても、水田転用は、御指摘のとおり、これは多少緩和をしておりますけれども、その緩和内容と申しましても、結局は、農用地の集団的な優良農地、そういうのは保存していくというような観点を当然考えてやっているわけでございますから、無秩序に水田農地転用等を考えているわけでもございませんし、将来の農地面積全体の算定にあたりましては、そういった農地の壊廃あるいは造成、そういうことも踏まえて、十カ年の一つ土地改良計画前提となります需給見通しとあわせてこの農用地の問題もきめていきたい。そういうことを、いま農地局を初め、特に官房企画室等中心にして鋭意作業を進めているという段階でございます。
  9. 長谷部七郎

    長谷部委員 そうしますと、いまの御答弁では、現在企画室中心作業中だ、できれば四十七年度を初年度とする十カ年計画を近い将来まとめるのだ、こういうお話でございますが、そうしますと、四十八年度の予算というものは、大体土地改良事業長期計画に基づいて出発をする、こう理解してもよろしゅうございますか。
  10. 三善信二

    三善政府委員 そういうふうにやりたいと思っております。
  11. 長谷部七郎

    長谷部委員 次にお尋ねいたしたいことは、昨年の国会農村地域工業導入促進法が通過をしておるわけであります。それに基づいて今日まで、通産省農林省共管の形でいろいろ作業が進められておると承っておるところであります。  それで、きょう通産省のほうからおいでをいただいておることだと思いますが、農村地域工業導入促進センターが昨年の十一月二十六日に財団法人として発足を見た、こういう経過を承知しておりますが、このセンター中心になりまして、農村地域に対する工業地方分散、こういうものがいま計画をされ、すでに地域指定等についても方針が固まったかのように承っておりますが、この機会にいままでの作業経過をひとつ御説明いただきたい、こう思うわけであります。
  12. 浜岡平一

    浜岡説明員 お答え申し上げます。  農村地域工業導入促進法施行状況でございますが、大体昨年の秋口までかかりまして関係政省令の制定が終わりました。法律に基づきます農村地域工業導入基本方針というものが策定されることになっておりますけれども、昨年の十一月二十五日でございますが、農林大臣、それから通産大臣労働大臣、三大臣の連名で告示が行なわれております。  きわめて大ざっぱに中身を申し上げますと、一つは、農村地域導入をすべき業種といたしましては、いわゆる成長性の高い内陸型業種というようなものを中心計画的、積極的に導入をはかろう、こういうことになっております。一応昭和五十年度を目標年度にいたしておりまして、昭和五十年度までに出荷額ベースにいたしまして約九兆円、それから従業者数にいたしまして約百万人、それから工業用地面積にいたしまして一万五千ヘクタールというような規模工業農村地域計画的に導入するというようなことが柱になっておりまして、これと連携をするかっこうで農業構造改善なりあるいは職業紹介というようなものを推進していこうということが柱になっております。  この基本方針に基づきまして、現在各都道府県農村地域工業導入基本計画策定作業が進んでおるところでございます。いまのところ、四十二都道府県におきましてこの基本計画策定準備が進んでおりまして、現在、主管大臣承認を受けるべく承認申請が出てきておりまして、農林通産労働三省から法律に基づきます関係行政機関への協議を実施しておるところでございます。大体四月半ばぐらいには各県の基本計画というものが出そろうことになるのではないかと思います。  この基本計画を受けまして、いわゆる拠点開発型のものにつきましては都道府県、それから立地計画がほぼ固まりましたケースにつきましては市町村が、それぞれ実施計画策定することになっております。現在、都道府県実施計画というものは、二十六府県で二十九地区を対象に策定準備が進められておるところでございます。それから、市町村実施計画につきましては、全国百十二の市町村策定準備が進められておるところでございます。  それから、お話しの農村地域産業界の間に立ちまして情報の交流なりあるいは立地あっせん等を行ないますものといたしまして、財団法人農村地域工業導入促進センターというものが昨年の十一月の十六日に設立をされまして、現在各都道府県導入計画の細部の調査、それから約六千の企業に対します農村地域への工業立地の予定の有無に関しますアンケート調査というようなものを中心に業務を進めておるという段階でございます。
  13. 長谷部七郎

    長谷部委員 いまのお話では、昭和五十年を目途にいたしまして、出荷額九兆円で従業員が百万人、工業用地として一万五千ヘクタール、この一万五千ヘクタールというのは現在はほとんど農用地と見てよろしゅうございますか。
  14. 浜岡平一

    浜岡説明員 基本方針の上では必ずしも明らかになっておりません。各地方公共団体ケース・バイ・ケースの判断によるということになっております。過去の実績を見てみますと、農地とそれからいゆわる林野と申しますか、この辺が半分半分ぐらいに使われておるというケースが多いのではなかろうかと思います。一律には方針を表には出しておりません。
  15. 長谷部七郎

    長谷部委員 そこで、農地局長に承りたいのでありますが、この土地改良法改正案はただいまお尋ねをいたしました農村地域工業導入促進法とうらはらの関係改正が行なわれる、こういう形で私ども受けとめてまいったところでございます。そこで、農村への工業導入のための工業用地農用地利用調整、この問題について少しくお尋ねをいたしたい、こう思うわけでございます。  つまり、工業導入促進法考え方を受けて、これを積極的に推進をしようとする見地に立って、今度の第一の改正点である非農用地新規需要に対する創設換地改正が出てきたものと私どもは承っておるわけです。もちろん工業用地だけではないでしょうけれども公共用地その他共同利用施設、こういう用地も含まれていることは当然でありますが、主としてこの農村工業導入促進法を受けてこれを積極的に推進するためにこの創設換地という問題が出てきたのではないかというぐあいに解釈をしておるところでありますが、この点につきまして、ひとつ見解を承っておきたいのであります。
  16. 三善信二

    三善政府委員 ただいま通産省のほうから御説明がありましたように、農村工業導入につきまして五十年を目標基本計画をいまつくっているわけでございますが、今回の土地改良法との関係で一体どういうことになるかという御質問だと思いますが、いま先生が申されましたように、非農用地を取り込んで創設換地というような、そういうような換地手法によって工場用地を生み出す、あるいは公共用地施設を生み出す、あるいは農業共同利用施設を生み出す、そういうようなことを考えているわけでございますが、これはただ工場用地を生み出すものだけでなく、一般的にやはり農村における農業と他産業、あるいはもちろん農業内部土地利用調整、こういうことを目的としているわけでございまして、特に基盤整備環境整備といいますか、そういうのも広い意味で含めたやり方を今回の改正では取り入れて実施していこうというねらいでございます。
  17. 長谷部七郎

    長谷部委員 いろいろお話がありますけれども、今回の土地改良法改正法案においては、一定の工場用地あるいは公共用地を、創設換地手法によって圃場整備に際してこれを捻出する、こういう道が開かれる、こういうことになることは間違いないと思うのです。  そこで、いろいろ農民の間に疑問が出てくる。その第一は、現在の土地改良法においては、圃場整備等に際して、農道敷であるとかあるいは水路敷等用地等については、例の三分の二の同意があれば反対者に対しても強制的に減歩がかけられる、いわゆる共同減歩方式による用地の調達が可能になる、こういわれているわけです。ところが、工場用地についても同様な方式が適用されるんではないか、こういう心配一つあるわけでありますが、この点はいかがですか。
  18. 三善信二

    三善政府委員 御指摘のとおり、現在の土地改良法では、土地改良施設については農家の方が共同でこれを利用されるわけでございますから、三分の二の同意共同減歩方式でやるということは、いま申されたとおりでございますが、今回非農用地を取り込んで工場用地を捻出する、生み出すというような場合には、三分の二の同意で強制的にそれを生み出すというようなことではなくて、その人の同意を得てやるわけでございますから、同意をしない場合に、そうかってに生み出すというわけにはまいらない。そういう方式で今度の創設換地は考えているわけでございます。だから、強制的に三分の二で全部ひっくるめて共同減歩のような形で工場用地をやるというような形にはなっていません。  それはなぜかといいますと、やはり工場用地等は、農家の方が共同的にみんなで利用するというようなものでないわけでございますから、そういう共同減歩という方式になじまないということは当然でございまして、そういう意味で、御指摘のような御心配はないと思っております。
  19. 長谷部七郎

    長谷部委員 強制的な共同減歩方式はやらない、こういうお話でありますが、そうなってまいりますと、裏を返すと、工場が新設をしたい、用地取得したい、こういう場合、なかなか農民同意が得られない、こういう場合には、非常に土地取得というものに困難が出てくる。したがって、工業導入促進という問題も進んでいかない、こういうことになると思うのでありますが、そういう工業導入促進するような救済措置というものは別途考慮しておるのですか、その辺はどうです。
  20. 三善信二

    三善政府委員 農村工業導入促進するために何か積極的な対策があるかどうかという御質問でございますが、私どもが今回の土地改良法改正で試みました非農用地の取り込み、これにつきましては、農家の方はじめ市町村その他非常に要望が強かったわけでございます。それで、このままほうっておけば、農村が逆に他産業用地取得のためにスプロール化するというような現象もなきにしもあらず。そういうのを防止するために、むしろ農業のサイドから、農業土地利用合理化効率化、そういう観点から工場用地も積極的に生み出して農村工業導入にも資したいということでございますので、私どもの感じでは、同意をしないために、こういったせっかく土地改良法改正する新しい手法をつくってもあまり進まないのではないかという懸念と申しますか、そういうことはないだろうという感触を持っておりますし、また、現実的にも農村の方々にそういう趣旨を十分説明しながら——工業導入というものはやはり就業構造を改善して農業構造改善の一端をになう問題でございますから、そういう農村地域における土地利用をどういうふうにやっていくか、最も効率的にやっていくという観点において十分説明し、納得していただけば、御心配のようなことにはならないで、工業導入促進にも十分資していくのではなかろうかと考えております。
  21. 長谷部七郎

    長谷部委員 今度、農地保有合理化法人、こういうものが各県に設立をされました。この農地保有合理化法人工業用地取得して造成をする。その造成をする場合に、大体一万五千ヘクタールの工業導入用地取得するためには六兆円の資金が必要である、こういわれております。そのうちいわゆる農協系統資金、つまり農林中金が約一割の六千億円を五カ年間に出そう、こういう構想のようでございます。つまり年間一千五百億円の農協系統資金をこの工場用地取得に回していく、こういうお話どもすでに出ておるわけでありますが、こういう工場用地造成事業主体というものは、農地保有合理化法人あるいは土地改良区、農協、これはいろいろできるわけでありますが、一体、農林省としてはどういう形でこの造成事業というものをやっていこうとしておられるのか、ひとつ承っておきたいと思うのです。
  22. 三善信二

    三善政府委員 圃場整備の中で工場用地を生み出しました場合に、その工場用地取得しますのは土地改良区とか市町村とか農協とか、いま御指摘にありましたような団体を考えておるわけでございまして、農地保有合理化法人がこの生み出された工場用地取得するということは考えておりません。と申しますのは、農地保有合理化法人というのは、これはあくまで農地の売買、農地の貸借、そういうことで農業者規模拡大に資するということを主たる目的にしておりますので、たとえば未墾地を取得してそれを開発して農地にして、その農地規模拡大等に資するために農家に売り渡すというような事業をやるわけでございますから、工場用地合理化法人が取得するということは考えていないわけでございます。
  23. 長谷部七郎

    長谷部委員 そうしますと、農地保有合理化法人造成事業というものについてはやらない、こういう点ははっきりされたわけでありますが、土地改良区が圃場整備をやる、その圃場整備の中に非農用地も取り込んでいく、つまり公共用地あるいは工場用地も含めた形で圃場整備事業というものが行なわれる。その場合に農林中金から農林漁業資金が融資される、こういうことになるのですか。  と同時に、そうなった場合、この事業費というものは工業用地公共用地も含めて圃場整備事業として農民負担でこれをやっていくことになるわけだと私は思うわけですが、その結果でき上がった公共用地あるいは工場用地というものはどういう形で代金を徴収するか、農民に賦課するのか、予定した工場用地が売れないということであれば、一体その償還というのはどこから財源が出てくるのか、こういう問題は非常にいま農民の間で疑問視されておる問題でございます。ですから、この機会創設換地のあり方と関連してひとつ承っておきたいところでございます。
  24. 三善信二

    三善政府委員 先ほども申し上げましたように、生み出した工場用地土地改良区とか農協とか市町村とか、そういうのが一応取得はいたしますが、その造成工事までやるということはしないわけでございまして、その工場敷地を造成した工場を誘致するというのは、やはり工場側で取得した人がそれをやるというかっこうになると思っております。したがいまして、工場用地造成そのものに対しては、これは土地改良事業ではないわけでございますから、生み出すことは土地改良事業で生み出しますけれども、その生み出したものを造成そのものをやるのは土地改良事業としてはやらないわけでございますから、その造成に要した事業費を農民負担にかけるというようなことは考えておりませんし、またあり得ないことでございます。
  25. 長谷部七郎

    長谷部委員 そうしますと、こういうぐあいに理解してよろしゅうございますか。県営なら県営、団体営なら団体営の圃場整備事業をやる。その中には農用地ももちろんある、それから公共用地も含まれておる、工場用地も含まれておる。しかし、工場用地公共用地については造成事業土地改良としてはやらない。  その取得はどういうぐあいになりますか。農地、いわゆる圃場整備の区域内に入った工場用地公共用地取得資金というものは、そうすると、どこから出てくるのですか。
  26. 三善信二

    三善政府委員 それは工場が来れば、工場がその金を払うというかっこうになるわけでございます。  それから、御指摘のように、そういう不安定な、来るか来ないかわからぬようなことを予定してやるのではないかという御心配もあろうかと思いますけれども、こういう工場用地造成といいますか、生み出します場合には、やはり相当確実なのを考えて生み出す。したがって、生み出した工場用地は、大体農村工業導入等により工場が出てくるというような見通しのあるものをやることにしているわけでございます。それから、たとえば公共施設、学校とかそういったものをつくる場合にも、これもやはり計画的にそういう事業が相当確実に行なわれるということを予定してやるわけでございますから、したがいまして、その取得は当然そういう工場なら工場側がやり、工場側が金を払うというかっこうになるわけでございます。
  27. 長谷部七郎

    長谷部委員 そこがどうもしっくりこないのです。たとえばいま実例が一つあるわけです。今度の農村工業導入地域指定を受けまして、開発拠点地区として指定を受けた。そして約百ヘクタールを先行取得する。それでその工場用地造成公共用地造成をも含めまして、その一帯約二百数十町歩の圃場整備計画中の地域がございます。その場合に、用地取得農地保有合理化法人がそれを取得するんだ、そして農林中金の金を借りて土地改良区が事業主体になって圃場の整備をやるんだ、こういう地域がございますけれども、そういうことは、いまやろうとしているわけですが、できませんか。いまの局長の理屈からいうと、できないのではないかと私は思うのですが、どうなんですか。
  28. 三善信二

    三善政府委員 市町村地方公共団体がそれを取得します場合には起債等の対象にはなりますし、それから土地開発公社等が取得する場合にはこれもできるわけでございますから、そういう取得をする場合に、資金的なめんどうは見れるというかっこうになるわけです。
  29. 長谷部七郎

    長谷部委員 そうしますと、ただいま申し上げましたように、内陸型工業団地を県が造成をしようということで、その予定地を県の農地開発公社が買い取る。その場合には農林金融公庫から金が出る。そしてその造成の予定地をがっくるめた一つの大圃場整備事業というものを県営事業としてやっていこう、こういうことができますね。
  30. 三善信二

    三善政府委員 いまのような具体的事例の場合に、土地開発公社等がそれを取得するという場合には、公庫から資金の貸し付けはできません。公庫というのは農業者に貸し付けるわけです。ただ、中金とか、そういうところからはこれはできるということになろうかと思います。
  31. 長谷部七郎

    長谷部委員 公庫じゃなくて、中金からはできる、こういうことですね。
  32. 三善信二

    三善政府委員 中金からは資金の融資は、そういう土地開発公社等に対してやれることになります。
  33. 長谷部七郎

    長谷部委員 その場合に、共同減歩方式というものはとらない。実はいま農地開発公社が取得せんとする地域には一部反対があるわけです。反対があるけれども、それは圃場整備共同施行をやるわけですから、共同減歩方式でその反対用地については確保できると言っております。それはできませんな。あなたの先ほどからの答弁では、私はできないように理解をしたのですが、その理解でよろしゅうございますか。
  34. 三善信二

    三善政府委員 先ほど申し上げましたように、その共同減歩という方式で強制的に三分の二の同意でやることはできませんが、ただ、具体的な事例の場合に、いろいろの村といいますか、その実情に応じてやっている例はあろうかと思います。たとえば共同して十分納得の上で同意を、その場合に当然その人の同意を得るわけでございますから、そういうやり方もあろうかと思いますが、強制的に共同減歩方式ではできないということははっきりいたしております。
  35. 長谷部七郎

    長谷部委員 その場合に、同意した場合には問題がないわけですよね。ところが、一定の二十町歩なら二十町歩の用地農地保有合理化法人工業用地として確保するのだという場合に、なぜ圃場整備と一緒にそれをがっくるめてやるかといえば、一部反対があるものですから、その反対者土地改良法で縛って、そうして共同減歩用地を全部満たしていく、こういうやり方をやっているわけなんですよ。ですから、これは明らかに改正された法律から照らしても違法だ、こういうぐあいに受けとめてよろしゅうございますね。
  36. 三善信二

    三善政府委員 そのとおりでございまして、同意を受けて、納得を受けた上でないとこれはできないということでございます。
  37. 長谷部七郎

    長谷部委員 その次の問題は、非農用地の取り扱いの改善、たとえば、最近われわれ東北の地方におきましては、非常に人口がどんどん流出をして、過疎現象が非常にはなはだしいわけであります。その大きな原因の一つは、生活環境の整備が非常に立ちおくれておる。したがって、今度の総合土地改良あるいは換地制度によりますところの非農用地の取り込みができるようにしようということで、この生活基盤整備——農村の単なる圃場整備じゃなくて、家屋の移転、あるいは宅地の農地への取り込み、こういった生活基盤の整備、生活環境の整備、こういう仕事もこの土地改良法改正によって実施可能だ、こういうぐあいに私、考えておるのでありますが、今回の法改正でそれができるかどうか、ひとつ承っておきたい。
  38. 三善信二

    三善政府委員 今回の改正によりまして、非農用地を取り込み、私どもといたしましては農村基盤整備、特に環境整備も含めた事業をできるようにしたつもりでございますが、これは正面から、土地改良法の性格としまして——土地改良法といいますのは、やはり農地と水、土地と水ということを中心に仕組まれているわけでございます。だから、生活環境整備までを正面から取り組んでやるというわけには、土地改良法改正のワク内では実は無理でございます。  ただ、今回の改正によりましては、非農用地を取り込みまして、創設換地の範囲を拡大する。そうして公共施設とそれから工場用地等の配置を前提としました土地利用計画、それを実現可能にするということを考えているわけでございますが、実質的には環境整備も相当取り組んだかっこうにはなっているわけでございます。ただ、ただいまお話が出ました家屋移転とか、そういったものを正面から、移転する場合に補償費を出すとかいうようなことまでは、この改正のワク内ではできないというふうに考えております。現実的には、これも御承知と思いますけれども、来年度からこの改正法の運用によりまして環境基盤、生活環境基盤等の整備をやろうということで、予算的には全国四カ所で農村基盤総合整備パイロット事業というのを始めることにしておりますが、その場合でも、いま申し上げましたように、家屋移転みたいなことまでは直接的にはこれはできないというふうに考えております。
  39. 長谷部七郎

    長谷部委員 私は、これはずっといままで非常に強く感じてきた問題の一つは、都市における生活環境整備というものは都市計画法に基づいて非常に積極的に取り上げられておるのです。これに対しまして、農村の生活環境整備というものはたいへん立ちおくれておる。私はせっかく法改正機会でありまするから、この都市計画法に対比してもよろしいような農村計画法、こういうものを積極的につくっていくべきではないかと思うのです。単なる土地改良事業だけではなくて、圃場整備や農道整備やあるいは農地造成農用地開発というような事業だけじゃなくて、農村の生活環境を整備する事業土地改良事業の一環として積極的に取り上げていくような方向に持っていくべきじゃないかと思うのです。どうも私は都市計画、都市の生活環境整備に比べて農村のそれは非常に立ちおくれておる。ここに過疎化の一つの大きな原因があると私は思うのです。どうもいまの局長答弁を聞いてみますと、そういう積極的な事業種目は取り上げることはできない、こういうことだとするならば、今回の法改正というものはきわめて中途はんぱなものじゃないか。なぜそういう積極的な方向がとられなかったのか、この際ひとつ見解を承っておきたい。
  40. 三善信二

    三善政府委員 先ほど申し上げましたように、なぜそこまでいかなかったかという問題でございますけれども、やはり土地改良法の性格、土地改良法の中での農村環境整備という点に大ワクとしてはしぼられていくわけでございますから、都市計画法に基づく都市の整備とはちょっと観点が違うかと思います。しかしながら、農村環境整備ということは、これは非常に立ちおくれておるし、今後ともどうしても進めていかなければならないということはだれしも考えているわけでございまして、農林省としても、その点はいろいろな施策を持ちながら一応やってきているわけでございますが、特に今後はこの土地改良法改正機会にしまして、中途はんぱとおっしゃれば中途はんぱなようなところもございますが、一応実態的には相当積極的なやり方ができていくと思っているわけでございます。  そういうふうに私どもも指導してまいりたいと思っているわけでございますが、根本的には農村計画と申しますか、今後そういう意味基盤整備、生活環境の整備をどのテンポでどういうやり方でどういう仕組みで正面から取り組んでやっていけるものかどうか、そういう問題については私たちも前向きにひとつ検討をしていきたいと思っております。とりあえずはこの土地改良法のワク内でできる範囲内で、その環境整備も積極的にやっていくという方向で進めてまいりたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  41. 長谷部七郎

    長谷部委員 どうもそういう面になると非常に実は弱腰だ。皆さん御承知のとおり、農業基本法の二条の一項にも、生活環境の整備をはからなければならないことが規定されておる。それから四十五年度の農業白書の中にも、農村の生活環境整備が非常に立ちおくれておるということが指摘されておる。さらに新全総の中でも、農山漁村の環境保全というものをもっと積極的にやらなければならぬということをうたっておる。こういった閣議決定を受けての新全総ですから、もっと前向きに、もし土地改良法の中でこれができないとするならば、いま局長から話があったような農村計画法というような法を制定して、そうして農山漁村の生活環境整備土地改良事業も含めた方向に持っていくべきではないかと私は思うのですが、どうももの足りない。今度の改正案では、われわれが期待をしておる一番の問題である土地改良事業等を含めて、農村の生活環境を整えていくという面では非常に弱いのじゃないか、私、こういうぐあいに思いますが、これは農林大臣からも見解を承りたいと思いますけれども、ひとつ局長から見解を明らかにしておいていただきたい、こう思うわけです。
  42. 三善信二

    三善政府委員 御指摘のとおりでございます。やはり農村のそういう生活環境の整備ということは、どうしてもこれは今後積極的に進めていかなければならないわけでございますし、そういう意味におきまして、とりあえずはこの土地改良法の一部改正でそのワク内でできる範囲のことはやっていきたい。予算的にも、先ほど申し上げましたような農村基盤総合パイロット事業ということと取り組んで前向きにやることにしているわけでございますが、これに真正面から取り組んでやっていくことにつきましては、先ほど申し上げましたように、私たちも相当前向きにこれを考えて検討していかなければならないと思っているわけでございます。
  43. 長谷部七郎

    長谷部委員 たとえば、今回改正案の最も根幹をなしておるこの非農用地の取り込みあるいは創設換地という問題が出された機会に、私はやはり都市計画法に基づく土地区画整理事業、こういった事業内容に匹敵するような事業を積極的に進めていただきたいと実は思うのですが、いま土地改良法のワク内でできる限り、可能な限り農村整備を積極的に進めたい、こういうお話でございますが、どの程度までできるとあなた方は見られておるのか、この際明らかにしてください。
  44. 三善信二

    三善政府委員 どの程度までできると思うかという御質問でございますが、たとえば先ほど申し上げました農村基盤総合整備パイロット事業、これは全国四地域を取り上げても、もう調査してまいっておりますので、予算が通ればさっそく実施計画をやり、事業ができれば一部始めたいというふうに考えております。  それの内容をちょっと御披露すればどうかと思っておりますが、大体最初のテストパイロット事業でございますから、非常にスムーズにどの程度いくかということも多少は懸念がございます。しかし、調査しました段階で、大体五、六百ヘクタール、六、七百ヘクタールぐらいの一つの範囲をとりまして、九町村の単位ぐらいの範囲にしぼりまして、そこで農業のいわゆる本来の土地改良圃場整備等をやるのはもちろん、それと関連しまして、非農用地を取り込み、その市で予定しておりますような公共施設あるいは公民館の用地とか学校の敷地とか、そういうのを生み出していく、あるいはその圃場整備の中で一区画に工場導入のための工場をつくっていくとか、それからもう一つは、多少手をつけたいと思っておりますのは、簡易水道的なものを何か考えられないかというようなことも一応考えておりますし、そういうことをやりまして、できるだけ市町村の受益範囲の中における農業と他産業との土地利用計画をきちっとつくりながら、そういうのを計画的に配置し生み出していくというようなことを考えているわけでございます。  これもテストパイロット事業でございますから、テストケースでございますから、市町村が積極的に非常に熱意を持ってそういう事業を受け入てれくれるというところがないとなかなか進まないという実態もございますし、その地域農業者あるいは地域の住民の方々のそういう熱意と、それから市町村のそういう財政的な裏づけ等を積極的にやっていくというようなことも、この事業をやっていく上に非常にポイントになっていこうかと思っております。
  45. 長谷部七郎

    長谷部委員 その場合、局長農村整備をやろうとする、簡易水道などを考えておる、こういうお話ですが、農家の宅地を事業区域に取り込むことができるわけですね。その場合に、それと同時に、それだけじゃなくて、たとえば家屋を移転する、そういうようなこと、あるいはそれに対する助成なども考えていただく、こういうようなことはできませんか。
  46. 三善信二

    三善政府委員 先ほどもちょっと申し上げましたけれども土地改良事業の中でそういう家屋の移転費を見るということは、これは非常に困難でございます。ただ、その集落とか家屋とか、そういうのを一カ所に集めるという場合に、何らかのそういう御指摘のような措置がないとうまく円滑にいかないんじゃないかということは予想せられますので、そういう問題につきましては、将来ひとつ前向きに検討してみたいとは思っておりますが、とりあえずは市町村の協力、そういうことを十分指導してまいりたいと思っておりますし、また、現に当事者となっておられますような方にはこの事業の趣旨といいますか、それを十分理解していただくというようなかっこうで進めていくというふうにしたいと思っております。
  47. 長谷部七郎

    長谷部委員 この創設換地水路の道が開かれたということに期待するものが、私、非常に大きいと思うのです。数百町歩の圃場整備をやりまして、住宅団地も一カ所にそろえる、公共用地も一団地に確保する、そうしていままで宅地であったところをも農用地として有効に活用される、こういうことであれば、かなり土地改良事業というものも私は大きく前進することができると思うのですが、ただ、一つそこに困難性が伴うのは、もちろん市町村や県の協力も願わなければならぬわけでありますが、そういう家屋移転がスムーズにできて、住宅の団地もできるというような方向に持っていくためには、農林省政府としてもそれ相当の呼び水的な助成措置というのは、当然私は考慮してもいいのじゃないか、かように実は考えるわけでありますが、将来検討したい、こういうことでありますので、なるべく早く——私はどう考えても都市計画法に基づく土地区画整理事業、こういうものから見ると、かなり農村の場合は立ちおくれておりますから、ひとつ速急に現行法のワク内でもできるように努力していただきたいし、もしどうしても現行法のワクではではないというものであるならば、積極的にひとつ農村計画法を農林省は制定をして、そうして都市にひけをとらない農村の生活環境整備圃場整備土地改良というものをひとつ進めていただくように努力を願いたい、こう思うわけであります。  次に、お尋ねをしたい点は、土地改良事業の総合化の問題で承っておきたいのでございます。今度の法第二条二項の第一号によりますると、「あわせて一の土地改良事業として施行することを相当するものとして政令で定める要件に適合する」場合に限って云々と書いてございます。  そこで、具体的にお尋ねしたいのは、かん排、農道、圃場整備農用地造成等、これをセットにして一つ事業として実施できるようにしていますけれども、政令でどのようなことをきめるつもりか、まずひとつこの点を承っておきたいのであります。
  48. 三善信二

    三善政府委員 御指摘のように、第二条の二項の第一号、これで政令でその要件を定めることになっておりますが、具体的に考えておりますことは、やはり総合事業をやります場合に、その総合事業地域というのは大体一緒であるというようなことと、それから農業経営の合理化という観点から見て、総合事業でやったほうが効果的であるし適当である、そういうふうに認められるような場合を考えております。政令で定めるというふうにしております地域、その事業地域が大体重複している。それから、それをやることによって農業経営の合理化というようなことが非常に促進されるし、またその事業が非常に早期に効果的に行なわれるというようなこと、この二点を中心として要件を定めたいと思っております。
  49. 長谷部七郎

    長谷部委員 それからもう一点、この事業の総合化によって農民の負担が過重となるようなことはございませんか。もしあるとすれば、その対策について承っておきたいんです。
  50. 三善信二

    三善政府委員 これは総合事業と申しますのは、従来個々の事業をそれぞれ申請し、三分の二の同意をとってやっておったわけであります。今度は一緒にそれを一つ事業としてやるわけであります。したがいまして、その事業が非常に効果的に施行されるということに非常に意義があるわけでございまして、特に農民負担がそれによって過重になるというようなことは考える必要はないと思っております。また、現実に、予算的な措置でもございますけれども、総合事業をやります場合に、それぞれの事業の補助率というものがあってばらばらにあるということは、これはちょっとていさい的にもどうかという気もいたしますし、総合事業というからには、やはり一本の補助率というようなことが適当だろうと思っておりますので、そういう方向で補助率等についても検討をしてまいりたいと思っております。
  51. 長谷部七郎

    長谷部委員 私は、この土地改良事業のいわゆる総合事業ですね、これは国営あるいは県営、団体営、この各事業というものを一貫して行なう、さらにまた、先ほど申し上げましたような農村の生活環境の事業も含めて、いわゆる農村建設的な総合事業、こういう形で手続等もあまりむずかしくなくできるような方向にぜひ前進するように善処願いたい、こう思っております。  さらに、今回市町村の特別申請事業、こういうことが出てきたわけでありますが、農業におきましても工業部門と同様、公費負担による先行投資を積極的に行なうべきであるという考えを持っておったのでありますが、今回の改正によってこれができる、こういうぐあいに理解してよろしゅうございますか。
  52. 三善信二

    三善政府委員 今回の改正におきます市町村の特別申請事業でございますけれども、いま先生が申されましたように、一面から見れば、そういった先行投資が可能になったとも考えられますけれども、この市町村特別申請事業というのは、やはりその地域においてもろもろの土地改良事業、末端の事業、そういうのを前提として早急に実施し一なければならない大規模なものを特別にこういう手続をとってやるということでございますので、これをやります場合には、やはり基幹的な申請事業、国営、県営、そういう申請事業に付帯する末端の関連土地改良というものも当然関連してくるわけでございますから、そういう意味では、全然将来の不確定な需要に対して先行投資をやったという意味ではないというふうに理解していただければ幸いだと思っております。
  53. 長谷部七郎

    長谷部委員 この事業ですね、たとえば基幹的なかん排水路、こういうものについては県議会の議決あるいは市町村議会の議決によって、農民同意を得なくてもできる、こういうことになりますね。つまり先行投資でやるわけでございますが、そのあとで市町村営といいましょうか、団体営という形でそれに関連した事業が進められる、こういうことになろうかと思うのでありますが、その場合の基幹事業に対する農民の負担というものは、やがては徴収されることになるんじゃないか、こう思うのでありますが、その場合の手続、方法、こういうものについてはどういうぐあいに考えておられますか。
  54. 三善信二

    三善政府委員 御指摘のとおりに、基幹事業に対する農民の負担というのは当然あとで徴収されるということになるわけでございますが、それはたとえて申し上げますと、市町村特別申請事業で国営事業を始めました場合に、その国営事業の負担金というのは、国営事業が終わってから取ることになっております。おそらく国営事業のその特別申請事業が終わる前に末端の、いま申されましたような関連土地改良事業が始まると思っております。したがいまして、取り方としましては、末端の関連事業が始まっている、片や国営の特別申請事業がある。で、特別申請事業が、国営の事業が終わった段階で末端の事業も進んでいるわけでございますから、その段階で末端の事業の負担金と一緒にしていまの特別申請事業の負担金も取る、こういうように手続的になるわけでございます。
  55. 長谷部七郎

    長谷部委員 たとえば具体的な例で聞いたほうが早いんじゃないかと思うのですが、秋田県で仙北平野の約一万数千町歩ですか、仙北平野の用排水事業というものに今度取りかかるわけであります。これは国営事業として基幹水路についてはやるわけであります。この場合のいわゆる受益者負担というものもこれは当然あるわけでありますが、こういう場合は、この受益者負担については一時当該県が立てかえて国に払うのかどうか。それはどうなっていますか。
  56. 三善信二

    三善政府委員 仙北のこの土地改良事業につきましては、現在やっているわけでございまして、これは従来のやり方でやることになろうかと思いますが、その場合には、国営事業でありますから、国は県から負担金を徴収する。県はそれに基づいて土地改良区等からやるということになります。とりあえずは国は県から徴収するというかっこうになるわけです。
  57. 長谷部七郎

    長谷部委員 従来はそうですね。従来は県が立てかえをして国に払っておる。今度はそれはどうなるのですか。
  58. 三善信二

    三善政府委員 今回の場合にもその点は同じでございまして、市町村の特別申請事業で国営をやる場合に、先ほど申し上げましたような時期的タイミングで負担金を徴収することになるわけでございます。その場合も、従来と同じように、国は県から取るというかっこうになるわけでございます。
  59. 長谷部七郎

    長谷部委員 そうしますと、県が立てかえて国に払う、そのあとで県が土地改良区に賦課をする、土地改良区が受益者にさらに賦課をする、こういう形、従来とそれは変わりありませんね。——そうしますと、この市町村特別申請事業というのは、どこが違いますか。具体的にひとつお示しいただきたいのです。
  60. 三善信二

    三善政府委員 この市町村の特別申請事業というのは、端的に申し上げますと、いままでは三分の二の同意というのをとったあとで事業を始めておった。そういう手続を省く。市町村の議会の議決あるいは県の議会の議決ということで、とりあえず大規模な、しかもその一定地域において農業基盤整備の基幹となるようなものについては、一々三分の二の同意をとってやりますと、タイミング的にも非常におくれますし、しかもどうしてもやらなければならない基幹的事業でございますから、そういう手続の面を従来と変えて、省略して、とりあえず先行的に始める。もちろんそれは先行的に始めると申し上げましても、先ほど申しておりますように、当然末端の関連事業というのはその確実性の見通しをつけて始めるわけでございますから、負担の問題は、これは従来と同じように考えてやっても一つもおかしくないし、また、そういう問題は従来どおりにやることにしているわけでございます。
  61. 長谷部七郎

    長谷部委員 そこで、いまの御答弁によりますと、従来は法に基づく三分の二の同意を得た上で事業を進めておった。今度は県会の議決あるいは関係市町村の議会の議決さえあれば工事を進めることができる。できた暁に農民には負担金を割り当てていく、こういう形に受け取れるわけでありますが、そうなりますると、住民不在の形で事業が進められるという危険性が伴ってくると思うのです。結局、事業の全貌というもの、事業の全体計画というもの、さらには農民の負担はかくかくしかじかが予定されておる、こういうようなことも全然関係受益者は承知しないままに基幹事業が進められるという危険性があるわけでありますが、この辺の調整はどうやるのか。さらにはまた、事業ができた暁に一方的に賦課金を割り当てられても、それに対する協力という問題が非常に困難だ、こういう事態も予測されるわけでありますが、この間の調整もあわせてどうやっていくのか、承っておきたい。
  62. 三善信二

    三善政府委員 その市町村の議会等で議決すれば、するするとできていくというようにお感じになるかもしれませんけれども、そうではなく、やはり市町村の議会で議決する前に土地改良区の意見、ひいては土地改良区を通じて関係農民の方の意見は十分徴してまいるわけでございまして、その際に、どういう事業であるかといったその事業内容等も十分周知さしていくというようなことを指導してまいりたいと思っております。  また、負担金の問題につきましては、そういうふうに農民の方も十分承知して、最初からよく知っておいてもらうように指導いたしますが、それと同時に、関連事業が今度始まります場合に、その関連事業自体は従来の手法によりまして、手続によりまして、三分の二の同意をとって始められるわけでございますが、その関連事業同意をとります際に——当然その関連事業は先行投資しました基幹事業関連した事業でございます、その基幹的な事業についても、農民の方は承知の上で同意をされたというふうに考えるわけでございます。そういう意味で、何も突然負担金を取りだすということではなく、やはり関係農民あるいは土地改良区、そういうものの意見を聞きながらやってまいるわけでございますから、御心配のようなことにはならないだろうと考えております。
  63. 長谷部七郎

    長谷部委員 それは、事業を進める側にしてみると、県会の議決、関係市町村の議決さえとればできる、こういう道が開かれることは、これは都合のいいことだと思うのです。しかし、この法改正内容を読んでみると、今日まで土地改良法の趣旨は、関係受益者の三分の二の同意というものがやはり一つの大きな前提条件になっておったと思うのであります。ところが、それがなくなる、こういうことになると、これは多少の反対があっても強行される、こういうことはもう当然予測されるところであります。するするっとはいかないと思う、関係土地改良区の意見を十分聞く、こういうことでそれを解消したい、こういうお話でございますが、法的な公聴会を開くとか関係受益者の意見を徴するとか、そういった法律上の義務というものは何らうたわれてないわけでありますね。したがって、これはかなり問題を呼ぶことになるのではないか、こういうぐあいに思いますが、将来の紛争をひとつなからしめるために、よほどこれは運営に万全を期してもらわなければいけないことではなかろうか、こう思うのです。一面においては確かに事業実施はやりやすくなるけれども、一面においてはそういった問題が伴ってくるのではないか、こういうぐあいに心配をされるところでありますが、どういう具体的な方法でこういうことを事前になくすように努力されるのか、運営されるのか、もう一度承りたい。
  64. 三善信二

    三善政府委員 私、ちょっと言い忘れた点もありますけれども、この負担金を取ります場合には、関連事業が始まらないと取れないわけでございますから、その点は、関連事業も始まらないでかってに基幹的施設だけの負担金を取るということはあり得ませんので、それは一つつけ加えておきます。  それから、先ほど申し上げましたように、やはり市町村の議会の議決あるいは土地改良区の意見は聞くことに法的になっておるわけでございまして、土地改良区の意見を聞きます場合に、やはり土地改良区としては当然に組合員の方に周知徹底をするというようなことはなさるべきであるし、そういうふうに指導したいと思います。  運営の面で御指摘のような御心配もあろうかと思いますが、この点運営面で十分慎重を期して始めていくというふうなことで指導してまいりたいと思っております。
  65. 長谷部七郎

    長谷部委員 次に、農業用用排水施設利用関係調整について承っておきたいのでありますが、今度の法改正によりまして、農業用水を他に転用する規定を設けようとしておるわけでありますが、このことによって農業者のいわゆる水利権が不当に侵害されていくのではないかという疑念を持っておりますが、この点はどういうぐあいにお考えになっておりますか。
  66. 三善信二

    三善政府委員 農民側からすれば、こういう共有の持ち分権を与えて余剰水を分けていくということになりますと、自分たちの使っていた水がそっちのほうにとられてしまうのではないかというような心配も出てくるかと思いますが、その点、私どもとしましては、こういう共有持ち分権を与え、余剰水を分けてやるという場合には、農林省が、どの程度余剰水が出るか、水が余っているか、そういった測定調査をやりまして、それに基づいて余剰水を分けていくというようなことにしたいと思っておるわけでございます。もちろん、そうします場合に、その土地改良区内の関係農民の意見等は十分聞いてやっていくわけでございますから、現在、農家の方々が使っておられる水が不当に圧迫される、農民が不当に侵害されるというようなことはないようにしていくことになると思いますし、また、その点十分指導もしていくつもりでございます。
  67. 長谷部七郎

    長谷部委員 農業用水がほんとうに過剰である、余っておる、そうして都市の水が足りないということであるならば、これは一定の条件のもとに転用するということも考えられないわけではありませんけれども、そもそも農業用水が余っている、いない、これは大体どなたが判定するのか、ここが問題だと私は思うのです。それから、転用していい、悪いは、一体だれがきめるのか。特に私、ここで問題だと思うのは、最終的に関係農民が、余っておる、分けてもよろしい、こういう判断をする機会というものは一体保障されているのかどうか、この辺がやはり問題となるところだろうと思うのですが、この点、お考えを承りたいのであります。
  68. 三善信二

    三善政府委員 余剰水が出るか出ないか、余っているかそうでないかということにつきましては、先ほど申し上げましたように、これは農林省で測定調査をやりまして、そのあとで当然土地改良区、地元の方々の意見も聞いてこれは決定するということにしたいと思っております。  それから、転用はだれがきめるか、農民の方にそれを相談し、また農民の方に判断をしてもらうという機会は全然ないじゃないかという問題でございますけれども、最終的に、この余剰水をほかに転用いたします場合に、やはりこの水利施設の維持管理計画というものの変更に手続をとらなければいけないというふうに考えているわけです。維持管理計画変更手続は、これは土地改良区の総会にかけるわけでございますから、そういう意味では、最終的に農民の方にも組合員の方にも、それは判断の機会を与えることになりますし、皆さんがこれはそうすべきであるということを決定して他転していくということになろうと思っております。
  69. 長谷部七郎

    長谷部委員 これは十分御承知のこととも思うわけですけれども、えてして農業用水というものは、取り入れ口に近いところは水が余る、ところがだんだん下流部に行くに従って水が不足をする。これは普通の場合でも、よく紛争が起こる問題はここなんですね。ですから、上流部の土地改良区では水が余ったから分けてやってもよろしい、こういうことになりがちなんです。しかし、下流部では、ただでさえ用水の不足で困る、水げんかも起こる、こういう事態も予想されるわけであります。ですから、これはよほど水系別に——やはり関係土地改良区、関係水利組合というものは非常に考えが違うと思うのです、実態が違うと思うのであります。したがって、この間の調整というものはきわめて大事な問題ではないか、私はこう思うのでありますが、それらの調整考え方調整の方法等についてお考えがありましたら、ひとつ承っておきたいのであります。
  70. 三善信二

    三善政府委員 御指摘のような心配はやはりあろうかと思います。上流と下流で農民の方が水を利用しておられる場合に、上流は心配ないけれども下流は心配だ、こういう点は実態的に相当考えられることでございますし、現実的な問題でもあろうかと思います。そういう場合に、先ほど申し上げましたように、余剰水の測定調査といいますのは、そういうことも十分加味した上で判断をするわけでございますから、その点、やはり国がそういう判断をして他用途に向けるということでございますから、そういう心配は必要ないかとも思いますが、また、関係の上流、下流の土地改良区等にも十分それは相談をしながらやっていくということに運用の面でもなっていくわけでございますから、御指摘のような御心配はないように私どもも十分心がけて指導してまいりたいと思っております。
  71. 長谷部七郎

    長谷部委員 それから、農業用水の転用の問題でありますが、いわゆる農村から土地と水を取っていくんだ、こういう形でいままでいろいろ批判をされてきているところは御承知のとおりだと思うのです。今度たまたま、三月二十何日かの日経新聞によりますと、建設省では、いよいよ水利権制度の合理化へ着手する、農業用も使用料を徴収する、こういうような見出しでいろいろ水利権の合理化問題が大きく論じられているわけであります。特に建設省の「調査では昭和六十年時点の水需要は首都圏で年間約三十一億トンの不足、京阪神地域で同十九億トンの不足」が予想されている。したがって、「水利権使用料制度の強化を実現する考えである。」こういうことが大々的に報道をされているわけであります。これは明らかに、今日の飛躍的に発展をした日本の工業工業用水の不足に困っておる、この不足の用水を農業用水からひとつ確保していこう、こういうねらいで進められていることは言うまでもないことだと思うのでありますが、こういう形にどんどん農業用水がとられる、こういうことになりますと、農業経営にも大きく問題が出てくる結果になると私は思うのであります。  先ほど申し上げたように、一つには創設換地制度をつくって工業用地をどんどん農村から取っていく、もう一つは、農業用水利の調整利用ということで農業用水を工業用水に引っぱっていく、こういう形で進められていくのではないか、こういう懸念が強く持たれるわけでありますけれども、こういった業界、特に建設省の動きに対して、農林省は一体どういうぐあいに考えておるのか、見解を承っておきたいのであります。
  72. 三善信二

    三善政府委員 たしか三月六日だったかと思います。日経新聞に御指摘のようなことが出たのは私も読みました。建設省に聞いてみましても、すぐ検討を始めたというようなことは全然やっておりません。むしろ否定的に、まだ何もしていないということでございます。  農林省としましては、いま先生が言われましたように、農業用水から使用料を取るんだ、そして近代化していくんだという話のようでございますけれども、これは現在の河川法でも農業のための流水占用と申しますか、使用料が取れることになっておりますが、旧河川法でもそういうことになっておりますけれども、運用解釈上といいますか、それは現在も取っておりませんし、また、今後それで取るというようなことは、私どもとしては当然考えておりません。建設省に聞いてみましても、そういう気持ちは現在全然持っておりません。そこで、農業用水から使用料を大いにふんだくってやろうというようなことは、私はそれは何かの間違いじゃないかというふうに考えております。  基本的には、この問題につきましては、農林省としても、やはり農業用水の合理化という問題に取り組んでいかなければなりませんし、実態調査もやることにしておりますし、また、用水の合理化事業ということで四十七年度予算措置もいたしまして、そういう調査及び事業等も考えているわけでございますから、この問題は水利権の問題という非常にむずかしい基本的な問題も含まれているわけでございますが、私どもとしては、そういう問題も含めて現在農業用水の合理化の研究会をつくっておりますが、その中で、将来研究会の方々にひとつお知恵を拝借しながら、そこで検討もしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  73. 長谷部七郎

    長谷部委員 時間も参りましたので、もう一点だけで終わりますが、土地改良事業に対する農民負担の問題、もう一つは、米の生産過剰ということから、減反政策が進められておるわけでありますけれども農家経済もかなり行き詰まってきておる、したがって、従来の償還金の延納という問題が非常にいま大きい課題になっておるわけでありますので、この点について承っておきたいと思うのであります。  負担金の問題は、これは現行制度のもとでは国営事業、あるいは県営事業あるいは団体事業と、それぞれ補助率が違う。つまり農民負担にもたいへん不公平がある、こういう現状でございます。したがって、事業規模の大小によって農民負担が違うということも、これは不公平きわまりないことだと私は思うのです。したがって、できれば一率ということが望ましいのでありまするけれども、私は団体営や県営等の負担率が非常に高い分野については底上げをする必要がある、底上げをして農民負担の軽減をはかっていかなければならないのじゃなかろうか、こういうぐあいに考えております。  それからもう一つは、昭和四十四年までの段階土地改良事業をやりましたが、その後減反、休耕、転作と、こういういわゆる政策によって農家の経済というものもかなり詰まってきておる。したがって、農外収入に依存する度合いが非常に高まってきておる。ですから、この減反政策、米の生産調整実施する期間この償還金の延納措置というものをとってもらいたい、こういう声は全国的に私は非常に強まってきておるものと思うのであります。現に私も土地改良区の仕事をやっておるけれども、この休耕、転作、米の生産調整に入ってからというものは、負担金の徴収、賦課金の徴収というものがどうもはかばかしくいかない。非常に償還金には追われるけれども、負担金は集まらない、こういうことでたいへん苦慮しておる段階であります。したがって、こういう政策転換が行なわれたわけでありまするから、増産政策から今度単年度の米の需給の均衡政策への転換が行なわれておることは事実でありまするから、そういった政府の政策転換に伴っての農家経済の窮乏でありまするから、私は、すでに行なった土地改良区が持っておる負債については、一定期間延納の措置というものを当然国は考えてもいいのではないか、こういうぐあいに考えておるわけでありますが、この点についてひとつ御見解を承っておきたいのであります。
  74. 三善信二

    三善政府委員 御指摘のように、生産調整、開田抑利、そういうことによって農家土地改良事業に対する負担というのが非常に重くなっているのじゃなかろうかという御指摘がございますが、これまで私ども調査を一応——ちょっと時期が前になりますけれども調査をしてきました段階では、生産調整の場合には奨励金もございますし、それが直ちに農家負担に影響して非常に困窮しているというような実態がどこまであるのか、その点、私どももはっきりした実情はつかんでおりませんが、そうシビアな考え方を現在の段階では持たなくてもいいのじゃなかろうかという気持ちを持っております。  しかし、生産調整が三年目になりますか、長引いてきますと、そういった問題もちらほらと、非常に過剰であるという一部の意見のあることも承知いたしております。したがいまして、これはもっと実態を詳細に全国的に広い範囲でつかむべきであるということが先決問題だと思いまして、四十七年度予算では相当の金を準備しまして、その実態調査をやっていくことにいたしております。その結果をまって、こういった問題はひとつ検討をしてまいりたいと思っております。  補助率のアップの問題につきましては、これまでいろいろと改善をしてまいりましたけれども、今後の問題として、これもひとつ先ほど申し上げました実態調査関連をとりながら、補助率のアップの問題についても検討をさしていただきたいと思っているわけでございます。
  75. 長谷部七郎

    長谷部委員 私、いまの答弁ではこれはあいまいだと思うのですよ。局長は、これから調査をする、こういうわけなんですね。もうすでに減反が始まって三年目ですよ。しかも、昭和五十年度までこれが継続される。しかも、生産調整奨励金の中に賦課金などが見込まれておるからあまり過剰な負担になっていないだろう、こういうお話では私は納得できません。払わないというのではありません。生産調整が行なわれている期間は償還期間を延期してもらいたいということなんですよ。そういう特別措置をいま全国の農民は強く求めておる。現に私はこの間ある団体営の小さな圃場整備の竣工式へ行ってまいりましたが、いま一番大きい問題は、やはり事業をやることはいいけれども、この減反で苦しい期間は償還金だけはひとつ先に延ばしてもらえぬか、払わないとは言わぬけれども、先に延ばしてもらいたい、こういう強い要望が出されていることは事実であります。ですから、私はそういう措置を速急に検討していただいて、前向きにひとつ善処願いたいものだ、こういうぐあいに思うのであります。  いろいろ述べたいことはありまするけれども、時間もございませんので、大臣に関する質問は保留させていただきまして、とりあえずこれできょうの質問は終わらせていただきます。
  76. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 午後一時三十分に再開することとし、これにて休憩いたします。    午後零時三十九分休憩      ————◇—————    午後一時四十二分開議
  77. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。瀬野栄次郎君。
  78. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 土地改良法の一部を改正する法律案について、農林省当局に質問をしてまいります。  農林大臣が、本日は参議院の予算委員会で、出席でございませんので、これは明日あるいは明後日の大臣出席のときに質問することにしまして、その点だけは留保させていただきます。  土地改良法は、提案の趣旨にもありますように、昭和二十四年に制定して以来二十四年を経過しておるわけでございます。その間に数次にわたる改正を経て今日に至っておることは御承知のとおりであります。総合農政の一環として土地改良事業の新たな推進をはかることになるので、われわれも一歩前進であるというふうに理解をいたしておりますし、さらには、昨年、事業実施団体であるところの全国土地改良事業団体連合会からも、大会を開いて強力なこれが推進の要請がなされておったわけでございます。従来から懸案事項の改善がはかられまして、一歩前進をするということで私たちもその点一応了とするものでございますが、基本的問題の解決がまだ今後にたくさん残されております。その点はまことに遺憾とすることを、まず最初に申し上げざるを得ません。すなわち、一つには土地改良施設の維持管理の問題、二つには土地改良区の運営の問題、三つには農業水利権等の主要な問題があるわけです。この点は最後のほうで明らかにすることといたしまして、本法案について逐次ただいまから質問をしてまいりたい、かように思うわけでございます。  さて、まず最初に、農林省農業基本法に基づく過去十カ年の農政を顧みられて、その生産調整を契機として農業生産の再編成、米及び普通畑作物の後退の中での地域分担化と地域に即する計画的な生産体制、すなわちガイドポストというものでありますが、自立経営農家を中核とする農家経済の確立並びに生活環境の整備を含む農村社会の建設等に対して、いろいろ反省もし検討もしておられるわけでありますが、土地改良事業は今後どう対処し、いかなる役割りを果たそうとするのであるか、さらには本法改正点を含めて土地改良制度基本的な方針というものをまず冒頭に伺っておきたいのであります。
  79. 三善信二

    三善政府委員 今回の土地改良法改正につきましては、最初御指摘ありましたように、多少基本的な問題を残している点はございます。しかし、これも、先生申されましたように、実態的な運用の面で、要望があった点を相当取り込んで今回の法改正をいたしておりますので、実態の運用面では、相当程度従来の欠けていた点を補なうという意味で効果があろうかと思います。  土地改良制度そのものにつきましては、これも先生御承知のとおり、やはり農業生産性を向上し、農業の問題を解決するためには、どうしても土地基盤整備ということが基本的な問題になっていくわけでございます。そういうことで、最近の農業事情に対処をしまして、あるいは需給の伸びているような作物の土地基盤整備中心にやっていく、あるいは最近の生産調整、そういった問題に関連しまして、畑作振興というようなことに重点を置いていく、また、最近の農業と他産業との土地利用関係あるいはそういう土地利用調整、そういうことを踏まえまして、土地改良事業の果たす役割りというものはますます重大になってきておるわけでございます。予算的にも毎年相当伸びまして、現在、事業実施しているわけでございますが、今後の農業の体質改善あるいは農業生産性向上、そういった面に対処するためにも、土地改良法改正を行ないまして、前向きで諸情勢に対処していくというような意味で、今回の一部改正を行なったわけでございます。  そういう意味で、土地改良法というのは、基本的には、やはり位置づけと申しますか、そういった農業基盤整備という目的を持っておるわけでございますが、その位置づけは従来も果たしてきておりますし、今後もますます重要になっていくというふうに考えているわけでございます。
  80. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 土地改良の七割というものを水田で占めておるわけでございます。そこで、新規開田は昭和四十四年度から一応抑制されております。よって、今後土地改良を行なうということは、その中心となるものは、営農近代化に沿ったところの既存水田圃場整備すなわち区画整理事業であります。さらにはかん排施設、こういったもの等で、畑にするにしても排水施設等が要るわけでございますから、こういったものに重点が指向されていくということは当然のことじゃないかと思います。そこで、水田土地改良というものは限られたものになってくる、こういうふうにわれわれは理解するわけでございます。すなわち、その水田に対する土地改良のあり方というものが、拡張でなく、いままでの条件整備、こういったことになろうかと思うわけでございます。米の生産調整、稲転対策といったことからいろいろ考えまして、今後こういったことをいかに調整していくか、また水田のあり方というものについてはどういうように見きわめていくか、こういったことも冒頭お伺いしておきたいのであります。
  81. 三善信二

    三善政府委員 水田に関する土地改良事業、御承知のように、これまで土地改良事業というと、大体水田が主体でございましたが、先ほど申し上げましたような現在の情勢あるいは今後の方向を考えまして、水田土地改良事業で一部は転作、そういった方向に切りかえていくというのが一つでございますし、また水田自体として、それだから水田土地改良事業を非常に縮小していくということではございませんで、水田につきましては、これも御指摘のように、圃場整備あるいは水利条件の整備、そういった問題はまだ数多く残っているわけでございます。そういう意味におきまして、水田土地改良事業というのは、私どもとしましても、重点的にあるいは水田の経営の合理化、そういう用に資するため、大いに積極的にこの点もやっていかなければならないというふうに思っております。
  82. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、この開田抑制措置が講ぜられまして、先ほども申しましたように、四十四年度以降すでに約十万ヘクタールぐらいの開田中止が行なわれているわけでありますが、現在施行中の国営事業及び補助事業のものは重要な計画変更としてその手続を必要とするのは当然でありますし、受益者負担、賦課金等直接関係してまいりまして、実施面にも大きく影響するように私は思うのでありますが、この点はどのように対処されるのか、この点も明らかにしていただきたいのであります。
  83. 三善信二

    三善政府委員 開田抑制という措置をとってまいっておりますが、これも御承知のように、現在事業実施中のものにつきましては、やはり計画変更をするとかあるいはそのほかの作物にかえていくとか、そういうようなことを考えて指導をいたしております。その際に、そういうふうに計画変更いたしましても、やはりかんがい用水その他は別のほうに振り向けていくわけでございますから、特に農家負担の問題につきましては、特段の措置をするということは必要ではなかろうかと思っております。  また、開田抑制を現にやったところで、さらに圃場ができ上がって、その他生産調整を受ける、こういうところはもうすでにその効果を発生しているわけでございますから、この点につきましても、農民負担を直接どうするというようなことにはならないというふうに考えております。
  84. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 局長は、変更に対しては指導していく、別に振り向けるからいいじゃないかというふうなことをおっしゃったし、特段の措置は必要ないというふうな答弁ですけれども、指導をするといっても、これは実際には負担金はやはり払わなければならないわけです。指導して、負担金を払わなければいいですけれども、やはり払わなければならぬということになると思うのです。工事途中で変更されるということになると、これはやはりたいへんだと思うのですね。事業からはずすということもあるんじゃないかとも思いますけれども、その点はこの機会に明らかにしておいてもらいたいのですが、変更になったからといって、農林省当局も全然知らないといってそっぽを向くわけには私はいかないと思うのです。  また、この事業推進にあたってはいわゆる三分の二の同意を必要として、いろいろ手はずをしてまいっておりますので、変更すれば、当然負担はほかの人たちに影響が及んでくるわけでございますから、その点も含めまして、さらに御見解を承っておきたいのであります。
  85. 三善信二

    三善政府委員 土地改良事業計画から除外するというような面も一部にはあろうかと思います。ただ、そういう地区から除外された農家に対しては、現在も自創資金の融資ということで対処しておりますが、現実にはほとんど現段階までないように私ども考えております。  それから、開田抑制に伴いまして負担金の問題、先ほども指摘がございましたが、開田抑制、生産調整、それによってどの程度影響を受けているかというようなことを四十七年度の予算措置で大々的な実態調査を行ないまして、その上でこの問題については所要の措置を検討してまいりたいと思っております。
  86. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ここで一、二の例をあげてさらに確認をいたしたいのでありますが、八郎潟の干拓地、私も二年前、つまびらかに調査をしてまいったわけですけれども、ここは稲転の影響をまともに受けたところであります。全国にはこういったところがたくさんございますが、八郎潟の例をとりましても、すでに第一次、第二次の入植をして、第三次の入植は中断をし、新農村の建設が計画どおり進行していないわけでございます。現在、工業地にするとかあるいは飛行場をつくるとかいうこともかつて話が出ておりましたが、政府のほうとしては水田を畑地に変更するような方向で進めておられるように伺っておるわけです。こういった場合、負担金の償還その他農家はたいへんこれは困るわけですが、八郎潟の場合等はどういうふうに対処をしておられるか、明らかにしていただきたいのであります。
  87. 三善信二

    三善政府委員 八郎潟の干拓事業につきましては、御承知のように、すでに四百六十戸入植いたしまして、二戸当たり平均十八ヘクタール程度の配分をし、すでに入植者の方は水田を耕作いたしております。  それから八郎潟の残り地と申しますか、あと五千ヘクタールぐらいこれから整備するところがまだ残っているわけでございます。それにつきましては、開田抑制とも関連しまして、農林省としましては、畑作経営のモデル地区をここにつくりたいということで、目下そういう事業として土地基盤の整備もやっておりますし、また、それじゃ、どういう作目を導入したほうがいいかということについても検討をいたしております。そういうことで、残り地の五千ヘクタールについては、畑作経営のモデル地区ということで今後事業を進めてまいりたい。  したがいまして、負担金につきましては、その五千ヘクタールの畑作経営のモデル地区を今後どのような配分にするか。新しい入植者をさらに入れてやるという方法もございますし、現在入植いたしまして水田を耕作しております四百六十戸の農家にまた若干配分をするということも考えられますし、そういった問題につきましては、現在、鋭意検討をいたしております。したがって、特に負担金の問題ということは、この八郎潟については現在のところ生じていないというふうに御了解を願ったらいかがかと思っております。
  88. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 もう一つは、熊本県の横島干拓でございますけれども、米作から畑作に転換をして、国の営農計画が四年ぶりにやっと今回きまったというようなことでございますが、熊本県玉名市の大浜町、玉名郡の横島地先に広がるところの国営横島干拓事業でございますが、国が営農計画変更を打ち出して以来、基本方針がきまらずに、入植者を募集しながら四年間も未決定のまま放置されていたわけであります。これについてはようやく米作から畑作へ転換ということで営農計画を決定しまして、五月中には入植者を決定するような運びになっているように聞いているわけですけれども、これらにしてもいわゆる政府の施策によって、生産調整によってこのような水田から畑作へ切りかえるということになったわけであります。こういったことについて、農業地域分担あるいは農振法との関係等から影響を受けることについて、政府はどのような対処をしていかれるのか。今後この横島干拓等についてはどのように方針を打ち出していかれるものか、この機会にこれまたひとつ明らかにしておいていただきたいと思うのであります。
  89. 三善信二

    三善政府委員 横島の干拓につきましては、御指摘のように、圃場を造成しまして入植者が選考されておりながら、営農計画がきまらなかったために若干延びておったということでございます。しかし、これも畑作経営、特に草地をやる、あるいは酪農をやる、あるいは野菜等の作物を導入するということで、県、農政局、私ども農林省、一緒になってこの営農計画検討してまいりました。大体自信を得ましたので、さっそく選考を始めて入植を実施するというふうなことにしたわけでございます。  この営農計画におきましては、やはりそこへ入植した人はその作物をつくりそれによって十分負担金等も支払えるというような計画を練って考えておりますので、特にここにおいても負担金の問題は別に生じないかと思っておりますが、大きな問題としまして、やはり今後の土地改良事業の推進という上においては、先生も申されましたような地域分担、それを現実に府県段階におろしたそういう実態に応じた地域分担に即したような土地改良事業を推進していく、そういうのも十分配慮して考えていくということに将来の方向としては進めてまいりたいと思っております。
  90. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 横島干拓は四年ぶりにやっと入植がきまりかけておるわけでございますが、県民も待望久しかったのでありますし、当初はかなりの応募者もあって厳選されてきたわけであります。その途中において生産調整が行なわれて、今日のような段階になってまいりましたが、ひとつぜひ、いま答弁があったようなことで推進をはかっていただきたい、かように思うわけです。  そこで、水田転用基準緩和措置についてちょっとお伺いいたしますが、四十六年の四月十七日から水田転用の基準の緩和措置がさらに拡大されて、これによって相当程度面積水田転用可能になるものとわれわれは推定いたしておるわけでございます。この改正にあたっては、合理的な土地利用をはかって優良農地を保全するという基本を維持して、周辺の農業地への被害の防止をはかるというようなことが運用としてなされていくわけでありますが、この運用のいかんによっては、優良農地農業用の施設を損壊したり、あるいは無秩序にこれが利用されるというようなことが行なわれるという心配があるわけですけれども、こういったことについては政府はどのような見解をお持ちであるか。
  91. 三善信二

    三善政府委員 水田転用基準緩和、御指摘のとおりでございます。二回にわたって緩和いたしましたけれども、この内容はやはり優良農地、集団的な優良農地をいかに保存するかというような基本的な観点から考えているわけでございまして、水田の国道沿いあるいは県道沿いあるいは重要な市町村道路沿い二百メートルは、一応一定の基準のもとに転用緩和をするということにいたしておりましても、現実的な問題として運用の面はいま申し上げましたような基本的な考え方に基づいてやっておりますので、無秩序に水田転用され、スプロール化するというようなことはないと考えております。また、そういうふうな指導も非常に積極的に行なっているような次第でございます。
  92. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、いまの御答弁関連してお尋ねいたしますが、創設換地の問題にもなるのでありますけれども、今回の改正案においては、工場用地とか宅地等は創設換地制度により交通整理されておるわけですね。また、さらに予想される弊害についてどうするかという問題がいろいろあるわけでございます。そこで、いま局長からも答弁がありました問題等についてでありますが、農地法に基づいて昭和四十五年二月十九日次官通達で、「水田転用についての農地転用許可に関する暫定基準の制定について」というのが出されております。これによってせっかくやったのが、今回の改正法によってまたくずれて何にもならぬという結果になりかねないということがたいへん心配されます。すなわち、農地農地以外に転用することになって、これがいわゆる抜け道になる、こういうふうになるのではないか、私はこういうふうに思うわけですが、その点は立案にあたって農林省はどのように検討されてこられたか、その精神を伺っておきたい。
  93. 三善信二

    三善政府委員 水田転用の暫定基準につきましては、先ほど御説明したとおりでございます。やはり優良農地を保存するという意味で、無秩序な転用ということはこれは現に指導的にも慎重に運用しているということでございます。今回の非農用地を取り込みまして工場用地あるいは公共用地あるいは農業用の施設用地を生み出す、こういうやり方も、やはり農村において無秩序にスプロール化的に農地がつぶれていく、転用が行なわれるというようなことをむしろ防止するという役割りも当然持っているわけでございまして、基本的には、そうすることによってまた逆に農業の経営の合理化、集団化等、経営の合理化あるいは効率化等に役立たせる、こういう趣旨で、今度の改正法のそういう創設換地考え方を盛ったわけでございます。
  94. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 さっきもそういう答弁がありましたが、一般国道とか都道府県道、この両側は、前は百メートルと私、理解しておったのですけれども改正になって二百メートルになっていますけれども、国道または県道沿いの両側二百メートルというものがいわゆる緩和されるわけでございますね。そうなりますと、たしかあれは第一種は転用を認めないということになっておりますし、第二種は認めるということになっていると思うのですが、隣接して国道、都道府県道の両側二百メートルの範囲を工業用地等として使用する場合、それに関連していろいろな施設ができてくると思われるわけです。それができますと、結局、建物ができればその日陰になる、日照が少ないということになりますと、また建物をつくるというようなことで、結局、通風、日照の関係からだんだん農地へ食い込んでくるというようなことになりかねない。いわゆる建物によるある一種の公害というようなことにもなりかねないわけです。そういったことになってきますと、せっかくのこの本法によって制定してこのように処置しても、結局、またそういった面でだんだんくずれていくということになりかねない、こういったことを思うわけです。したがって、創設換地ができ上がったあとの規制というのがない、こういうふうに思うのです。その点はどういうふうに政府はお考えであるか、それをさらに明らかにしていただきたいと思うのです。
  95. 三善信二

    三善政府委員 農地転用の場合の、先生ちょっと申されました公害と申しますか、そういうことにつきましては、特に個々の転用の場合に、私ども許可いたしますときには、やはりそういう公害の防止の施設等も当然転用する人に考えてもらって、そういうことを十分審査した上で許可をしておりますから、できるだけそういう先生の御心配のようなことは防止するように心がけております。  それから、創設換地で生み出した土地、それがまたそういった問題を生じてくるんじゃなかろうかという御心配だと思いますけれども、これは創設換地取得します市町村土地改良区あるいは農協、そういうところが一応取得をいたしまして、それをほかの利用に向けるということでございますので、農業ないし農民のサイドから十分この点は監視もいたしておりますし、御指摘のような御心配にはならないように、また運用の面でも特に注意をしてまいりたいと思っております。
  96. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 局長は、心配がない、できるだけ防止をしていく、こういうことでありますけれども、実際に全国の広い土地改良、また今後こういった国道、県道の拡張等が行なわれていくということをいろいろ考えてまいりましたときに、はたしてそういった指導、一ぺんでこれができるかどうか、創設換地をしたあと、これがきちっとした規制がないと、これは心配じゃないか、こういうふうに実は思うわけです。公害といっても、工場が来て廃水を流すというようなことは、これはもちろん十分検討されて対処されると思うのですけれども、家が建ちますと、家の日陰によって農地に影をさす、作物ができない、こうなりますと、作物に影響するから、日照の問題でまた宅地にしてしまうというようなことになって、次々に拡張されていくということになりかねないということは、当然予測されるわけです。そういったことを私、心配するものですからお聞きしておるわけですけれども、指導によってできるだけ防止をしていく、こういうことでありますが、創設換地についてでき上がったあと、将来何か規制をするとか、どういうふうにするというような方針は別に何も計画検討しておられませんか、その点いかがですか。
  97. 三善信二

    三善政府委員 土地改良法上は特段の規制措置というものはございません。先ほど申し上げましたように、当初計画をつくりますときから、そういう圃場整備土地改良事業計画をつくります段階で、そういった御心配のような点も含めて事業計画を考えていくというようなことがまず一番重要なことではないだろうかと思っております。また、そういう創設換地ができましたあと、これにつきましては、やはり先ほど申しましたように、市町村内部の農家の方々、あるいは地域住民の方々、そういう方々が見守っているわけでございますから、農協土地改良区、市町村、そういうところが十分注意をし、慎重にそれの運用をしてまいれば、御指摘のような御心配はよもやなかろうというように私は考えているわけでございます。
  98. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、土地改良事業の負担金のことで若干お尋ねをしておきますが、土地改良団体では、永久転換の場合に、生産調整奨励金を打ち切ったあとは、国が全額補てんをするか免除せよということを言っておるわけです。さらには、一時休耕の場合には、償還金の延納措置をしていただきたい、また公庫資金の利子補給をやっていただきたいということで、要請が出ておるわけですけれども政府は、いままでの答弁内容等を見てみますと、米の生産調整奨励金の中にいわゆるこういったものが入っているのでカバーし得る、こういうふうに年々の賦課金については言っておられるようであります。ところが、生産調整により米作農家はだんだん農業所得が減少の傾向に現在あります。そういったことから、負担金のほうに大きな影響が出てくる、こういうふうに思うわけであります。もちろん、国の施策によってやってきたわけでありますから、こういった団体の要請に対していわゆる奨励金を打ち切ったあとは国が全額補てんをする、また免除をするという問題、また一時休耕の場合の償還金の延納、こういったことについてひとつ明らかにしていただきたいと思うのです。
  99. 三善信二

    三善政府委員 永久転換をした場合の問題で、奨励金を打ち切った場合に、それをどう措置するかということでございますが、その点、永久転換を農家の方がされます場合には、やはりこの奨励金というのは一応打ち切られるというようなことは当然考えて永久転換をされたものと思いますし、それについて直接どうという対処のやり方を現在考えているわけではございません。  また、生産調整等によって農家の負担状況が非常に苦しくなってきているので、それを延納したらどうかというようなことにつきましても、現段階でどの程度そういう過重負担になっているかというようなことはなかなかすぐつかみにくうございますし、しばしば申し上げておりますけれども、こういった問題を四十七年度に相当大規模実態調査をしまして、実態をもっともっと把握いたしました上で——この実態調査というのも、のんびり私どももやろうという気持ちは一つもございません、できるだけ早くこれをやりまして、その結論を待って、生産調整あるいは開田抑制等によります農家の負担の問題についてもひとつ検討をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  100. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 さらに、水田は国の施策によって転換をさせられたのでありますから、何らかの対策をすべきじゃないかと思うのですが、土地改良事業の過剰投資の問題ですね。従来から負担金を出して土地改良事業をやってきたのですけれども、国の施策によっていわゆる施設が遊ぶことになる、また十分利用しなくてもいいようになってくるわけですが、そういったものに対しては当然農家の負担が重くなってくるのですが、この過剰投資に対する問題等はどのように今回の改正にあたっては対処される考えであるか、お伺いしたいと思うのです。
  101. 三善信二

    三善政府委員 過剰投資と申しますか、施設の遊休化と申しますか、直接そういう生産調整によって施設が遊休化して、現在使っていないというような点はわりあい少なかろうかと思っております。そういう点も含めまして、先ほど来申し上げておりますような調査はいたしたいと思っております。その調査の結果によって、また対処する必要があればひとつ対処をしていきたいというふうに考えております。
  102. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、土地改良事業の総合化の問題でございます。午前中もこういうことがいろいろ論議されたようでありますが、現行方式は一事業一改良区主義と工種別申請主義、こういうふうになっているわけですけれども、同一地域に同一農業者を組合員とする土地改良区が数個に重複して存在するような例があるわけでございます。今後もまたそういったことが総合化によって多くなってくる、こういうふうにも思われるわけです。現在でも農用地造成事業と区画整理の事業とを、いわゆるあわせ事業、こういうのですが、実施されているわけですけれども、さらにこれが拡大されて土地改良事業の総合化が実施されていく場合に、種々利害得失が起きてくるわけです。この点、政府はどのように今回の法律改正にあたって検討されておるか、利害についてはどういった点が問題になったか、明らかにしていただきたいと思うのです。
  103. 三善信二

    三善政府委員 従来、現行法では、いま申されましたように、個々の単一の事業で一申請主義をとってやっているわけでございますが、今回の改正で、総合事業ということで、その事業の効果を早期に実現せしめるために、そういう一緒に一つの申請手続のもとにおいて事業をやるというようなことを開いたわけでございます。従来からあわせ事業ということでやっている点もございますけれども、従来の場合は、やはり付帯的な事業としてあわせてやっているという場合もございますし、あわせてやる場合にいろいろの制限もあるわけでございます。そういったものを今回は一つ事業としてそれを仕組んでいくということで、総合的な効果を出していこうというねらいでございますので、事業の推進という意味から、非常に効果的なその役割りを果たしていけるというふうに考えております。
  104. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 それで、既存事業と総合事業との関係を今後どのように調整されるように考えておられるかということと、総合事業における各工種の組み合わせというものはどういうふうに考えていかれるのか、この点もひとつさらにつけ加えて明らかにしていただきたいと思うのです。
  105. 三善信二

    三善政府委員 現行の個々の事業というのも、やはり個々的にそういう必要性があろうと思いますので、これはそのまま存置していく。それから、現在やっておりますあわせ事業というものも、やはりその地域実態においてその必要性があろうかと考えております。この総合事業というのは、やはり一つの要件と申しますか、これをやっていかれる際には、一定の地域が、その受益地域が大体重複するといいますか、まとまりのある地域で、しかもこの総合事業をやっていく上において農業経営の合理化等が特に効率的に推進がはかられる、そういうところを取り上げて総合事業実施していくということにするわけでございますが、その際、農振計画との関係もございますし、市町村の意見というのも十分聞きながら、この総合事業というのを進めてまいるというふうにしていきたいと思います。現行のやり方はまた現行のやり方で、それぞれ地域実態に応じてやはり必要性があると思いますので、それはそれとして新しく今回総合事業を起こしたというふうに御理解いただければ幸いと思っております。
  106. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この国営、県営、団体営等を通じての一貫施行の問題でありますけれども、総合事業として一貫施行が採用できないというその理由はどういうところにあるわけですか。それもひとつお聞かせいただきたいと思う。
  107. 三善信二

    三善政府委員 御質問の点は、今回の改正による総合事業が、いわば横の一貫事業みたいに考えられる。いま御質問の点は、国営、県営、団体営と、そういう縦の一つの一貫施行といいますか、一貫事業、そういう点だろうと思いますが、一口に言えば、いま申されましたような縦の一貫施行と申しますか、国営、県営、団体営、そういうのを一貫してやるということにつきましては、国営は国営、やはり一つ規模、広がり、そういうものがあるわけでございますから、必ずしも国営と県営とを一貫してやることが効率的であるというわけにもまいりませんし、現在、特に水利施設等の場合には、末端の既存の水利施設というのは、大体従来からの施設があって、その上に国営的なのを乗せていくというのも相当多うございますので、やはり法的な仕組みとして、縦の一貫事業ということをどうしてもしなければこの事業促進あるいは実態に即応しないということにはならないだろうと思いまして、今回の改正は、縦じゃなくて、横の場合を特に新しく制度的に措置したというような状態でございます。
  108. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いま局長から答弁されたように、一貫施行は縦の面であります。先ほど来のはいわゆる横の面である、こういうことになるわけですが、この一貫施行のほうが残されておるわけですね。  それで、幹線水利は国営でやる。そうすると、これがいままでの例からいいますと、平均十年以上かかる。支線は県営でやる。これはまた四、五年かかる。この支線を今度は団体営でやるとなるとこれがまた二年内外かかる。結局十五年から十七年ぐらいかかるということで、その間相当農業情勢も経済も変わってくるわけです。着工から完工まで十六、七年、早くて十年ないし十五年、こういうことになりかねないわけです。そこで、同時着工、一貫施行ということになりますと、いままでの十五年ないし十七年ぐらいかかっておったのが、十年以内でできるということで、ずっと短縮されてくる。いわゆる金の面でもかなりこれがいろいろ節減されて、農業者にとっても負担が軽くなってくるし、また経済効果もそれが早く起きてくるということで、ぜひこういったことをひとつ考えてもらわなければいかぬのですけれども、今回の改正案によれば、これが抜けている。局長はいろいろ答弁しておられるけれども、例の愛知用水は、あれはたしか五年でできたと思いますが、愛知用水なんかはちゃんとこれが実行されておるわけですね。特殊なものだと言えばそれまでかもしれませんが、現にそういったのが実例としてあるわけですね。愛知用水ができて他のものができないということにはならぬと私は思うわけです。  それで、要するに、せっかく面の総合化ができていくのであるから、線のほうのいわゆる一貫施行というほうも当然やるべきじゃないか、こういうふうに私は思うわけです。将来また改正の方向でいろいろ検討はされると思うのだけれども、現在どういうふうにお考えであるか。こういった点については、いずれ農林大臣にもいろいろ伺いたいと思っているのですけれども局長からお考えを伺っておきたい、かように思うわけです。
  109. 三善信二

    三善政府委員 一貫施行の問題でございますけれども、現実にこれは法制的に何かやらなければどうしてもできないという面も、必ずしもそういうふうにきちっと縛られるような問題でもなかろうかというふうにも考えられますし、やはり現実に実態に応じてやるという意味では、先ほど申しました水利施設等がもう末端施設が完備しているので、一貫的にやる必要というのは非常に少ない場合が多い。ただ、畑地かんがい事業等につきましては、現実においても予算的にできるだけ末端のほうまでやれるように措置してやっているわけでございます。で、私、必ずしもこの縦の一貫施行というのは必要性がない、こう断言いたしているわけではございませんで、やはりそういう実態に応じて、必要があれば、そういう点も検討していくということは必要であろうと思っているわけでございます。そういうことで、実態に応じたやり方ということで、まず非常に急いで必要とされます先ほど来の面の横の一貫施行と申しますか、総合事業化ということを、今回の制度改正では特にその点を取り上げたというような次第でございます。
  110. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 局長はえらい政治的な答弁のしかたをされましたが、必要があれば検討していくことは必要であろうと思うというような、実に回りくどい言い方ですけれども局長として現にこういったことは必要でない、ほんとうにいまこういった問題についてはそんなに緊迫した必要を感じてない、こういうふうに思っておられるのですか。
  111. 三善信二

    三善政府委員 差し迫った必要性というのは、先ほど申し上げております横の一貫施行、これは非常に要望も強いし、また実態に即してそういうやり方をしていったほうがきわめて効果的だということも考えまして、法改正に織り込んだということでございます。   〔三ツ林委員長代理退席、松野(幸)委員長代   理着席〕 縦の一貫施行ということについて必要性がない、こう申し上げているわけではございませんので、やはり今後の問題としてこういうのも検討してまいりたいと思いますが、特に先ほど来先生が申されております工期が非常に長引くじゃないか、国がやる、あと終わって県がやる、自治体がやる、工期が非常に長引いて農業情勢もその間に変わってくる、こういうようなやり方はきわめて効率的でないというような御指摘がありましたが、現実問題として、この土地改良事業の工期がわりあいに長くなってきて、それを短縮しろという御要望が非常に多うございます。私どもは、そういう国営の事業をやって、終わってからほかの事業をやるということじゃなくて、やはり工期を短くするためにも、そういう関連した事業をできるだけ早期に始めるようなやり方で、早くこの効果を現実に実現化するということで、今後その点は特に注意してまいりたいと思います。もちろん予算的な問題も当然からまるわけでございますけれども、そういう工期の問題等についても十分配慮してやっていきたいと思っております。
  112. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、法第九十四条の四の二の第二項に関係するわけですが、遊休化している基幹的な土地改良施設について、他目的に供するために農林大臣が個々の場合を判断して特別に必要と認め、かつ本来の用途、目的を妨げない限度において、他目的の事業を行なう者に対し共有持ち分を与えることができることとされておりますが、農業用用排水施設等の利用関係調整、すなわち余った水の利用という問題でございますけれども、相手に共有権を持たせるということにこれはなるわけでございまして、金は入るけれども、あとでしまったということになりはしないかということが懸念されるわけです。いわゆる必要な農業水利権は確実に守ってやらなければならぬ、こういうふうに思うわけでございます。私は、このことにつきまして、国有財産の管理体制に今回の法改正によって穴をあけたということにならないかということを懸念するわけです。もちろん、これはけっこうなことでありますけれども、こういったことが他に派生をして——他に派生というよりも、こういったことがあとで、われわれにも認めてくれということが起きてきた場合に、問題が起きるのではないかという懸念があるので、この機会に御見解を承っておきたい、かように思うわけです。きょうは大蔵省は呼んでおりませんので、当局にお伺いするわけですけれども、要するに、国がつくった施設に対して私権の設定を認めたということになるという画期的なことじゃないかと思うわけです。従来、大蔵省は実に手がたいとされておったし、財産管理については実にきびしいものがあったわけですけれども、よく大蔵省がこれを認めた、こういうように実は思っておるのですけれども、反面、これが抜け穴みたいになって、他にもこれが利用されるということになってきた場合には、いろいろな例を開くのではないかという懸念もするわけですので、この点について政府の見解、また今回の法改正にあたって大蔵省と交渉された経緯等について明らかにしていただきたい。
  113. 三善信二

    三善政府委員 御指摘のように、これはやはり国有財産法の特例を開いたというのは事実でございます。ただ、従来から、多目的ダムをつくります場合に、農業用水あるいは上工用水、そういった場合は共同事業実施してやっているわけでございますが、今回の場合は、当初からじゃなくて、完成したあとの施設について、途中でそういう共有持ち分権を与えるというような道を開いたわけでございますが、御懸念のように、それをイージーにやれば、これは運用いかんによって相当問題があるのじゃなかろうかということも指摘しておられると思いますが、そういう意味ではなくて、やはり従来の施設で、それが農業用水が余剰を生じ、一方、片や都市側、工業用水あるいは上工水等の需要が非常に逼迫してそちらの要望が強いというような場合に、その水の利用調整をこういう道を開いてやるとしたわけでございます。  やり方については、農業用水に確保すべき水、これは農民の方に心配のないようにその点は十分配慮しなければならない。現に今後のやり方としては、その農業用水の調査、これを的確にやりまして、必要水は十分農業用水に回るように判断をして、また土地改良区等とも十分相談をしながら、この問題にあくまで慎重に進めてまいるつもりでございますので、先生いろいろ御心配の向きもあるようにも思いますけれども、そういう点がないように、私ども、新しい制度でございますから、慎重に運用をしていきたいと思っております。
  114. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 局長は、その点がないように慎重に運用していきたい、こういうことでございますが、やはり法改正にあたりまして、私たちもこれはけっこうなことだと思うのですけれども、今後のためにここではっきりとしておかなければいかぬと思ってお尋ねしているわけです。一つの例をとると、愛知用水の場合等においては、当初たしか三万三千ヘクタール予定したのが、二、三年後には計画変更等がありまして、二万ヘクタールになりまして、現在は一万五千ヘクタール、こういわれます。当初から見ると、もうすでに愛知用水の受益面積というのは約半分になっております。こういったことでどんどん進んでいきますと、もう遠からずおそらく千ヘクタールになるのではないかということが懸念されるわけでございます。そうなれば、当然用途廃止をせざるを得ないということになる。もちろん、ゼロになるまで待つと言えばそれまででありますけれども、その点は常識ということもありますし、また、いろいろな客観情勢等から見て判断せざるを得ないという場合も起きてくるでしょうから、そうなりますと、共有財産を持ったところのいわゆる電気会社あるいは水道、工業用水、こういったいろいろな関係から、国民のものがいつの間にか会社のものになりかねないということになるのじゃないか、こういうふうに今回の法改正を見まして感ずるわけです。これは愛知用水を一つの例にとったのですけれども、何も愛知用水に限るわけじゃありませんが、具体的な例を申し上げないと、そちらでも判断の尺度がつかないと思いましたので申し上げたわけですが、そういったことが、全国三万二千カ所からのたくさんの土地改良区があるわけですから、いろいろなものが起きてくるのじゃないかと思っているわけです。そういうことを踏まえまして、明確にこの点に対する見解を述べていただきたい、かように思います。
  115. 三善信二

    三善政府委員 ただいま愛知用水の例をとって、非常に御懸念の点を申されましたけれども、やはり農業用水に必要な分は、これはどうしても残しておくということが先決問題でございまして、農業用水の側から見て、どうしても余っているものを他転に向けるということでございますから、農業用水の面については、それは厳重にそういうふうな指導もし、法的にも、他転ずる場合には、やはり管理規程を変更するということがあるわけでございますから、農民の方も十分納得の上でそういう措置をやっていくということにしておりますので、たびたび申し上げておりますように、私ども事務当局としては、そうむちゃに御懸念のような事態になるようなことはよもやあるまいということで考えておりますし、また、なってはならないということで指導をしていきたいと思っております。
  116. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そういう事態にはなってはいけない、よもやなるまい、こういうことでありますが、それは法的にはどういう歯どめというか、どういうことからそういうことが言えるわけですか。ひとつ心配ないという点を条文を引いて明らかにしておいていただきたいと思うのです。
  117. 三善信二

    三善政府委員 先ほどちょっと触れましたけれども、共有権を与え、そして他転にその余剰水を向ける場合には、当然その土地改良区の管理規程というものを変更することになるわけでございます。管理規程を変更します場合には総会の議決が要りますので、そうかってにそれができるということにはならないというのが第一点でございます。  それから、その余剰水がはたしてどの程度振り向けられるか。農業用水をどの程度確保しなければならないかということにつきましては、農林省で測定調査をしまして、その調査に基づき判断をするわけでございますから、そういう点も水の必要量等につきましても、十分そういう実態の面で決定してまいるということにしておりますので、先ほど来申し上げておりますように、御心配のようにはならないであろうということを申し上げているわけでございます。
  118. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、土地の管理規程等を変更してやっていく、そういう心配がないようにしていくといういろいろ答弁がございましたが、だんだん過疎になって、いわゆる愛知用水に限らず、土地改良でつくった農業用水がほとんど必要がなくなってきたという事態が起きてきた場合に、先ほどからいろいろ論議しておりますように、結局、国または県で投資したものが会社の所有になるというふうなことが、いろいろ農業の今後の推移をずっと見るときに、必ず起きてくるということが懸念されるわけですけれども、いまはそうかもしれませんが、そういった事態が起きるという懸念があるわけですが、そういった場合に、結局は会社の所有になっていくということになるのじゃないか、こういうように思うのです。その点をお聞きしているわけですが、その点どうですか。
  119. 三善信二

    三善政府委員 先ほど来申し上げておりますように、そういうことは私はちょっと考えられないと思っております。そういうふうにもしかりにこの新しく開きました制度が向いていくようなことがあっては、これは重大問題でございますし、そういうことは絶対ないように私どもも十分心がけ、指導もしてまいるつもりでございます。
  120. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この点については、局長はそのような答弁しかできないと思うのですけれども、十分注意して心がけていくということでございますが、この点がたいへん心配になってくるわけです。また同僚委員から質問があると思いますけれども、また後日に残すことにいたします。  次にお尋ねしたいことは、農村地域工業導入法がすでに昨年五月成立しまして、現在準備をしておられる。先ほどからも答弁があったわけですが、本法の改正も、この農村地域工業導入法を基盤としていることは言をまたないわけでございます。そのほか工業再配置促進法案、また同関係公団法案、あるいは新社会開発計画とか、公有地拡大法案、新都市基盤整備法案とか、すでに立法化されたものとこれから立法化するものといろいろ法案がたくさん出てきております。これらの法案と、今回改正をするこの土地改良法案の競合関係でございますけれども、この辺をどう整理をされていくのか、通産省等でいろいろ考えておられる工業再配置促進法案等によってかなり工場が誘導地域等に分散をしていく。とすると、こういった農村地域工業導入法というものがだんだん影が薄くなってくるというふうにも思う。せっかく本法改正によっていろいろと創設換地等をやったりしてやっていこうというときに、何かしらすっきりしないものを感じるわけでございますけれども、その辺をあわせて、本法改正にあたって政府はどのように整理をしていくお考えであるか、ひとつあらためてお伺いいたしたいのです。
  121. 三善信二

    三善政府委員 農村工業導入促進法に基づきまして、今後積極的に農村地域工場導入していくということは、もちろん積極的にわれわれもそれを促進してまいるわけでございますが、お話に出ました工業再配置の促進法でございますか、それも工場の密集地帯から誘導地域工場を移していこうという一つ促進法でございますが、こういった法律に基づいて農村地域に非常に無秩序に工業導入ということがやられていくことは、これは私ども農業のサイドから見れば、非常に好ましくない事態でございますので、この工業再配置促進法に基づいて工場農村地域に移転する、こういう場合には、先ほど申し上げました農村地域工業導入促進法に基づいた一つのルールに乗って原則的には誘導していくというのが一つ。それから、それを、そういった工場導入をまた受け皿として農村基盤を整備していくというのが今回の土地改良法の一部改正創設換地のそのやり方というふうに、非常にはっきり整理しますと、そういうふうになろうかと思いますが、原則はそういうやり方で、通産省等とも、この工業再配置促進法の協議を受けましたときに、そういうことでいろいろと今後の運営のやり方について話し合いをしておるわけでございます。そういうことで、一応は整理して農村地域には一つの秩序あるルールに基づいて工業導入をはかっていくことになろうかと思います。  それからもう一つお話が出ました、いろいろ各省から土地立法等が出ておりますが、こういった問題につきましては、農村におきましてはどうしても農振法というのがありますし、この農振法の土地利用計画、これがやはり主体になっているわけでございますから、その土地利用計画と、新しく各省から出ます土地利用一つの施策、計画等は、農村地域については十分調整をとりながら進めていくというふうに、これも各省と十分話し合いが済んでおりますので、非常に無秩序に、そういうことがばらばらに進められていくということにはならないというふうに考えております。
  122. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 新都市基盤整備法はこの市街化区域内だけでやることになるわけですけれども、市街化調整区域でも、都市計画の手続をとって市街化区域に編入すれば、その地域になるわけでございまして、この場合、たまたま市街化調整区域で土地改良をしていたというような場合はどういうことになるか、この点も本法改正にあたってひとつ明らかにしておいていただきたいと思うのです。
  123. 三善信二

    三善政府委員 新都市基盤整備法は、都市近郊にニュータウンづくりと申しますか、そういうことを促進していくというような法律だと考えております。現在、都市計画法に基づきまして、市街化区域と市街化調整区域とに分けて線引きをしているわけでございますが、その市街化区域につきましては、これは将来十年の期間等を見込んで市街化とすべき地域として指定されておるわけでございます。農業の面でも土地改良事業等非常に長期にわたりますし、そういう事業は原則として市街化区域にはやらないことにしております。現在、やりますのは災害復旧事業とか、そういった種類のものは原状回復程度のことはやりますけれども、積極的に農業基盤の整備をやる、促進するといった意味土地改良事業は、この市街化区域については行なわないということにしておりますので、御質問の点につきましては、直接の関係がないというふうに考えたらどうかと思っております。
  124. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、公有地拡大法案のことでちょっとお伺いしておきますけれども、この公有地拡大法案は、地方公共団体が先行取得するについて土地開発公社をつくっておるわけですけれども農地保有合理化法人と競合するというふうなことが起きてくるのじゃないかということがひとつ心配されるわけです。実は九州でも鹿児島県で鹿児島県開発公社となっておるわけです。さらに他府県にも若干見るとあるように思われるのですけれども農地保有合理化法人といろいろ混合していて、土地改良法の今回の改正によって、片や土地改良法で片や公有地拡大法案でということで、必ず競合問題が起きてくるのじゃないか。こういったことはどういうふうに整理をされて対処されるお考えであるか、お伺いをしておきたいわけです。  御承知のように、農地保有合理化法人設立状況等を見ましても、現在、四十五年度指定済みが十五、四十六年度の指定済みが十三、さらに四十六年度の指定予定が十二と、こういうふうに今後かなりたくさんできてくるわけですが、全部が全部じゃありませんけれども、鹿児島はじめ若干、こういった県の開発公社等がございまして、かなり競合するのじゃないか、こういうふうに思うわけです。その点の御見解を承っておきたいのです。
  125. 三善信二

    三善政府委員 公有地拡大法案に基づきまして、地方公共団体にかわって県に設立されます土地開発公社ですか、そういったところが土地の先行取得をする。この場合の先行取得といいますのは、やはり農地転用取得ということで、農地取得して、その農地農地として使うというための取得ではございません。その農地取得して、農地を宅地に向けるとか、そういった転用取得のための事業をやるわけでございます。農地保有合理化法人といいますのは、これはむしろ農地農地として取得する。転用取得ではないわけでございますから、その事業の目的からして違うわけでございまして、そういう意味では、競合するようなことはなかろうと思っております。  ただ、私、鹿児島の開発公社、いま先生からお聞きしまして、何か両方やっているような感じを受けましたですけれども、そういう開発公社については、今後公有地拡大法案がもし成立しますれば、どういう組織がえ等をやっていくのか、その点まだ私、承知しておりません。  いずれにしましても、いま申し上げましたように目的が違うわけでございますから、両者で競合していくというようなことはないというふうに考えております。
  126. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 私も、実はきょうの質問に間に合えばよかったのですが、照会をいたしておるのですけれども、まだはっきりした返事が来ないので、それ以上のことはいま申されませんけれども、さきに申しましたように、今後かなり設立されていくということがありますと、局長答弁した、目的が違うということは私も十分承知しておりますが、県の開発公社の場合はおそらくこれが競合する、どちらにも関係してくる、こういうふうに伺っておるものですから、その点ひとつ十分、本法改正にあたって検討していただいて、現在たくさんの開発公社がありますが、今後もまた設立されていくわけでございますので、こういったところを十分踏まえて、いろんな紛争が起きないような対策を講じていただくように、指導を十分していただくように今後のために要望をいたしておく次第でございます。  次に、今後の問題として若干お尋ねをしておきたいわけですが、本法改正事項に今回加わっていないところの基本的な問題に、冒頭、私、指摘をしましたように、土地改良施設の維持管理、土地改良区の運営、農業水利権といった重要な問題があるわけです。そこで、本法改正にあたって今後の政府の考えを聞いておきたいわけです。  まず土地改良施設の維持管理上の問題でありますけれども土地改良区が設置したのはみずからが行ない、国、県営によるものはほとんどが土地改良区に委託管理されておるわけです。今日も施設の完成が増大をしてまいっておりますし、特に大規模事業によりまして施設が続々と完成されつつございます。先ほど申しましたように、大は愛知用水から小は部落に入る用水路に至るまであるわけでございます。  そこで、この造成主体と管理主体のあり方、すなわち、土地改良区への管理委託の適否、さらには費用負担のあり方、こういったものについて私は根本的に改善をしなければならぬと思うわけです。たしか三十九年の法改正のときにも国会で「施行主体別に管理の基準を定める等必要な措置を講ずること」という付帯条件が付されておりますし、さらには土地改良施設の経済的性格を明確にしなければならぬ、こういうふうに私は思うわけでございまして、公共投資によって造成されることにかんがみまして、造成主体によるところの処理方式ないしは維持管理費の金額負担の方法を講じていかなければならない、かようにも思われます。社会資本がこういうふうにできていくわけでございますので、それがほんとうの望ましい姿であるというように思うわけでありますが、いずれにしても、こういった土地改良施設の維持管理というものについて将来どういうふうに考えて、また検討される用意があるのか、この機会に、これは本法改正の重要な基本問題でありますけれども、今回の改正には入っておりませんが、将来の考えをひとつお聞きかせいただきたい。
  127. 三善信二

    三善政府委員 御指摘のとおりで、この維持管理の問題につきましては今回の改正に入れておりません。と申しますのは、現在の維持管理にもいろいろ問題が出ているというのは御指摘もありましたとおりでございますが、土地改良区もそれぞれ小さいのから大きいのまで規模がございますし、この施設等も最近非常に大きくなってきております。そういう施設を従来のままのような形で維持管理することが技術的にもまた財務面からもうまくいくだろうかという問題点もあろうかと思っております。また、従来の土地改良区の維持管理のやり方としまして、小規模の補修程度のことはみんなが持ち寄って、賦役と申しますか、みんなで相談して直していこうというような雰囲気もあったわけでございますが、最近そういう点もなかなかむずかしくなってきているとか、具体的に申せば、私より先生のほうがもっと現実的な問題は御承知のことと思います。そういう問題を踏まえておりますので、これを早急にどういうふうに将来持っていくかということの一つ方針を打ち出すということはなかなかむずかしい問題でございまして、最近非常に農業情勢が変わってきておりますし、それを踏まえながら将来のことも見通しながらこういう問題についても取っ組んでいかなければいかぬという気もいたしますので、今後の検討の課題としてこの維持管理の問題については積極的に研究、検討をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  128. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 もう一つは、この土地改良区の運営業上の問題があるわけです。今回の改正案において、工種別申請主義一事業一改良区主義から総合事業主義へと移行されることになるわけです。その過程で土地改良区の合併再編の方向が促進され、土地改良区は公共的性格を一段と強めていくものと思われるわけですが、現在、性格があいまいである、こういうふうになっております。土地改良区の公共団体としての取り扱い、そのあり方というものをどういうふうにするのか、法律で、土地改良区の健全な運営機能を果たすために、国がその方向をきちっと打ち出すべきじゃないか、かようにも思うわけですが、公共団体としての取り扱い、そのあり方、いわゆる性格、こういったものについてどのように考えておられるのか、これもこの機会に伺っておきたいのであります。
  129. 三善信二

    三善政府委員 御指摘のとおり、土地改良区の土地改良事業、やはり土地改良法の中核的なにない手は土地改良区でございます。これについても今回は基本的な問題は見送っております。と申しますのは、やはり維持管理の問題と同様に、土地改良区の実態というのは最近非常に変わってきておりますし、非常に小さいのから大きいものまでいろいろございますし、また、土地改良区の中の組合員と申しますか、最近の農業の変わり方と同時に兼業化が進行するということで、組合員の中でも運用についていろいろギャップと申しますか、そういう点も問題になってきているんじゃなかろうかということも考えております。  したがいまして、この土地改良区を将来どういうふうに持っていくのか、どういう基本的な性格づけ、位置づけをしていくのかということにつきまして、実はことしもその研究会をつくって研究をしております。来年度予算もそう多額の予算ではございませんが、学識経験者等にお集まりいただきまして、土地改良区自体の今後のあり方、その基本的な問題について検討をしていくことにしております。
  130. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 局長、その点で、土地改良区によっては現在看板だけで全然有名無実の団体もあるわけですが、そういったものはどういうふうに検討されておりますか。
  131. 三善信二

    三善政府委員 御指摘のとおりでございまして、非常に小さい、普通は眠っているような組合で、何か水の管理なんかの場合にときどき集まって相談する、そういう実態の組合もあります。職員も特段置いてないとか、あるいは置いてもほんとうに一人置いているというようなところもございます。非常に種々雑多でございます。将来の土地改良区のあり方、基本的性格づけを検討します場合に、そういった御指摘のような組合を合併するとかなんとかいうようなことでやっていけるのかどうか。全然眠っているわけの組合でもございませんし、必要によってはやはり管理等でその機能を果たしている面もございますので、非常にむずかしい問題でございますが、そういう実態をよく調べた上で、そういう点も含めて先ほどの基本的な研究をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  132. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 さらに、農業水利権の問題ですが、水利権は河川法によって流水占用の許可を得るところの許可水利権と、歴史的ないわゆる慣行水利権とがあるわけであります。昭和四十五年、建設省は河川局で広域利水調査をいたしておりますが、この調査によりますと、慣行水利権想定件数が十三万二千件、届け出件数が十一万三千三百十六件、こうなっているわけですけれども、こういったものを見ましたときに、いわゆる施設を共有するということで料金利にして、新規参入者は十分負担をせよということでありますが、この場合、将来権利の問題が起きてくるというようなことが心配されるわけです。この歯どめというか、こういったものに対する姿勢というものをはっきりしておかなければいかぬと思うのですが、将来この権利を擁護するための法制化ということが当然起きてくるのじゃないか、かように思いますし、また、こういったことについて、水利権の問題あるいは運営上の問題、あるいはさっき申し上げました土地改良施設の維持管理の問題、こういったものに関連しまして、農業水利問題研究会でもいろいろと研究され、政府もこの結論を待って、いろいろ将来考えたいというような意向のようでありますが、この水利権の問題はたいへんやっかいな問題が地方によってはあるわけでございますので、可及的すみやかに法改正をまたしなければならぬのじゃないか、こういうふうに思うのですけれども、この点についてもあわせて御見解を承っておきたいのであります。
  133. 三善信二

    三善政府委員 農業の慣行水利権、こういった問題については、御指摘のとおり、非常にやっかいな問題でございます。一がいにすぐこれをどういうふうに法的に権利の内容を整理するということも、非常にむずかしい問題であることは御承知のとおりでございますが、私どもこの農業水利の近代化というようなことを考えていく上において、そういった基本的な問題も今後取っ組んでいかざるを得ないというふうに考えております。まず何を申しましても、そういう水利権の実態、それをもっと詳しく調査をしなければなりませんし、従来からこれはやってまいっておりますが、引き続きそういう調査をすると同時に、先ほどお話に出ました農業用水合理化検討会をやっておりますが、とりあえずは都市周辺の農業用水についてどういうふうに今後考えたらいいかというような中間報告は出ておりますが、農村地域における農業用水の問題については、必要に応じ今後そういう研究会を利用して——利用してというと失礼でございますが、検討会の中でこういう問題も諸先生方に取り上げていっていただいて、ひとつ研究をしてもらいたい、こういうふうに思っております。
  134. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この点についてもう一点この機会お尋ねしておきますが、建設省と農林省と今後こういったことでいろいろ意見の対立というか、相違が出てくると私は思うわけです。建設省、通産省等は、やはり生産調整によって余った水を工業用水によこせというようなことは、ますます今後ひどくなってくると思うのです。農業のほうも、またいつ増産をして水が必要になるかわかりません。現在は過疎化と生産調整によって水が余っていることは事実でありますけれども、先ほど申しましたこの農業水利問題研究会のいろいろな意見等を聞いてみますと、農林省も四十五年一月に専門家よりなるところの研究会を発足させて、いろいろ検討しておられるわけですが、都市化過程におけるところの農業水利の中間報告で、この用水路を管路化したらどうか。いわゆるいまの三方張りの用水路から管路化したらどうか、下水みたいに管を地中に埋めて通す。そうすると、漏水がなくなるとかいろいろなことがいわれるわけです。そうしますと、水田というものは、ああいった水路によって水が漏水し、土地を潤すことによって地下水の還元あるいはまた自然が保たれていく、自然を保護するということになるわけですが、管路化した場合は、おそらく水のむだは省けても、実際にはそういった自然の均衡を阻害するということになってたいへんな問題が起きるのじゃないかとも思われるのです。地盤が安定しないということにもなりかねないと思うのです。今後こういったことがいろいろと論議されていくと思うのですけれども、こういう点についてはいま当局は検討しておられるか、あわせてこの機会にお伺いしておきます。
  135. 三善信二

    三善政府委員 具体的な御指摘でございますが、いま先生言われましたようなそういうパイプ用水、パイプに切りかえていくというようなことでございますが、これは一部やってはおります。ただ、その地域によってそれに合うかどうかというような実態的な問題もございますが、もう一つは、コストがわりあい高いという点がございますし、そういういかにコストを安くしてやれるかというような研究も、たしか私の記憶では土木試験場等で始めておると思っております。将来の方向としては一つの非常にいい方向だと思って、地域実態に応じてそういうようにコストが安くできるようになれば、そういう点、将来は普及したいというふうに考えております。  水利権の問題あるいは用水を他転ずる問題、御承知のように、建設省その他工業用水上の利用というのも非常に逼迫しておりますし、そっちからの要望というものも非常に強いわけでありますが、私ども単に余っておるからやるということでなく、農業用水ということをまず考えた上で、その前提に立って余剰水が出ればそれは振り向けていくのが至当ではないかということで、ただ、振り向ける場合に、先ほどから申し上げておりますように、十分農業のサイドの面を考慮しながらそういうことを措置していくというふうにしていきたいと思っております。
  136. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 以上申し上げました三つの問題は、本法改正に今回入っていない重要な問題で、根本的な、いわば基本的な問題は今後に残されております。これらの問題が解明されなければ、ほんとうの土地改良の推進はなされない、こういうふうに思うわけでございまして、十分検討を進めておられると思いますけれども、いま局長からいろいろと答弁がございましたが、大事な問題が今回の法案からはずされておりますので、十分検討し、近い将来また改正の方向で進めていただくようにお願いをするわけでございます。  そこで、若干最後にお尋ねをしておきますが、土地改良長期計画事業種別の投資実績というものを見てみますと、事業量のデータというものが、政府の示しておるのはヘクタールで示してあります。昭和四十年から四十九年の一一五%、これに対して、長期計画の四十年から四十九年に対して、四十年ないし四十四年の年度実績等をずっと比較したのがあるのですが、長期計画というものがヘクタールで示してないわけですね、すべて金額で示してあります。私は、実際は国営、県営、団体営、こういったものは現在長期計画の数字から見ますと、大体六割くらいの進捗度合いになっているというふうに見ているわけですが、金額で示してあるために、実際の事業実績というものがわれわれははっきりとわからないわけですね。ここが疑問なんですが、金額では、物価の値上がり等があって、十年もたてば必ず一〇〇%をこえることは当然であります。よって事業量で示せば、パーセントは当然下がるにきまっているのですけれども、金額で示すことのほうが上がるものですから、長期計画に対して年度実績との比較を見ますと、一〇九・三%というようになっておるわけですね。四十年度を初年度として四十九年の十カ年を計画してあるわけですから、これを見まして、これは金額ではなくてヘクタールで実績を見ますと、どのくらいのパーセントになりますか、お示しいただきたいと思うのです。
  137. 三善信二

    三善政府委員 なかなか実績をヘクタールで、しかも団体とか県営とかそういうことでこまかく分析することは非常にむずかしゅうございます。といいますのは、整理しますときに非常にダブっている点がございますので、そういう点も考慮して非常にむずかしいわけでございます。  ちょっと一般的な、もっと大きな数字で申し上げますと、たとえば水田の場合でございます。区画整理を中心とした圃場整備及び農用地造成の進捗率ということで、四十年から四十九年までの長期計画では、圃場整備が、水田でございます、八十五万ヘクタールを一応予定いたしております。それが四十年から四十五年の実績では、四十六年はまた多少ふえてますけれども、四十五年までの実績では、前半の五カ年間の実績では二十八万ヘクタール、進捗率が三三%ということになっております。農地造成等につきましては、当初の長期計画の十年間の目標が大体三十五万ヘクタールを予定しておりました。四十五年度までの五カ年間の実績では十六万ヘクタール、進捗率は四六%ということになっております。水田圃場整備等につきましても、ここに見られますように、面積でいくと、進捗の度合いというのはわりあいおくれているというような実態でございます。  ただ、御指摘のように、事業費で申しますと、そういう物価の値上がり等もございまして、トータルの二兆六千億の事業費を十カ年に予定しておりましたが、これが四十七年、もし予算が通りますれば、四十七年度の予算を含めまして一〇〇をちょっとオーバーしたような数字に事業費ベースからはなっているというのが実態でございます。
  138. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いろいろむずかしい点があるかもしれませんが、金額であらわすとかっこういいものだからこういうふうになっておるのですけれども、実際の事業費、ヘクタールでいきますと、かなりパーセントが少ないわけですね。四十年に長期計画が立てられておるわけですけれども、四十九年までのこの長期十カ年計画、これは当然前提額はくずれている。早急にこれは改定をすべきじゃないかと私は思うのですけれども、この点はどうですか。
  139. 三善信二

    三善政府委員 御指摘のとおりでございます。現在の長期計画は四十年から四十九年の十カ年間の長期計画、これに基づいて事業を推進してまいったわけでございますが、進捗状況は先ほど申し上げたとおりでございます。もっと大きく、農業情勢が非常に変わってきておりますので、そういった農業情勢を含めまして、具体的には将来の需給見通し等も十分考慮しながら、今後十カ年計画をあらためて改定をするということで、現在作業中でございます。四十七年中にはこの作業が終わって新しい十カ年計画をつくっていきたいということで検討し、作業をいたしている段階でございます。
  140. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 四十七年度には作業が終わって新しい十カ年計画をつくるということでございますが、当然そうすべきだと思うのです。政府が責任を持って農民にその方向を示していかなければならぬ、かように思われてなりません。  時間ということでいま御注意がございましたので、あと最後に一点だけ伺って一応終わることにいたしますが、「農産物需要生産長期見通し」並びに「農業生産地域指標」というのも打ち出されましたし、農振法による農村土地利用計画、また国土総合開発計画、各種地域開発計画等が現在具体化しつつあります。今回、土地改良法の一部改正が提案されておるわけでありますが、土地改良長期計画というものを再検討して確立することが、いままでいろいろ質問あるいは答弁によってお伺いしましたところ、これは当然必要なことは明らかであります。現在、法改正がなされようとしておるときに、さらにまた改正をということもどうかと思いますが、今回の改正は一歩前進ではあるが、将来のことをおもんばかりますと、早急に本制度の改正をしていかなければならぬ、私はかように思えてなりません。そこで、政府としても、これは当然長期計画についてはいろいろ御検討なさっておるだろうと思いますけれども、農政及び土地改良制度全般とも関連しまして、さらに十分な検討を行なって、今回の改正土地改良制度の不十分なところをさらに一そうの改善充実を期するために長期計画改定が必要である、かように思うわけです。  そういった点についてひとつ大臣のほうからなお伺いたいと思うのですが、次官はきょうおいででありますので、最後に、その決意のほどまた将来のお考えを伺って、質問を終わりたいと思います。
  141. 伊藤宗一郎

    ○伊藤(宗)政府委員 ただいままで局長がいろいろ事務的にお答えをしましたけれども基本的には、そういう事務の詰めも待ちながら、また瀬野委員指摘のいろいろの問題点もございまして、私にも同感の点が多々ありました。また、御質問の途中にもいろいろ触れられました地域分担の問題あるいは農産物需給見通し問題等々、いろいろ省内の研究会等で詰めておる問題もございますので、それらを十二分に組み入れまして、御指摘の点も含めまして長期計画を早急につくり上げたいと思っております。
  142. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 以上で質問を終わります。
  143. 松野幸泰

    松野(幸)委員長代理 小宮武喜君。
  144. 小宮武喜

    ○小宮委員 私は、まず土地改良制度基本問題について質問したいと思います。  その第一は、総合農政土地改良制度の役割りについてであります。  農林省は、昭和四十五年度農業の動向に関する年次報告において、現在の農業の分析と今後の課題について指摘しております。たとえば、米の生産調整を契機として農業生産の再編成や地域分化と地域に即する計画的な生産体制及び自立経営農家を中核とする農業構造の近代化並びに生活環境の整備を含む農村社会の建設等云々と述べられておりますが、一体、土地改良事業はこれにどう対処し、いかなる役割りを果たそうとしているのか、土地改良制度基本的なあり方について質問いたします。
  145. 三善信二

    三善政府委員 非常に基本的な問題でございます。今後の農政の方向ということで、いま御指摘になりましたような点を十分対処しながら考えていかなければならないわけであります。その場合に、基本的に、やはり農業生産基盤ということを整備していくということが何にも増して先決の問題として必要であることは申すまでもないわけであります。そういう意味におきまして、その役割りを果たしていますのがこの土地改良事業でございます。  で、今後、農政の方向に即してこの土地改良事業の推進拡充をはかっていきたいと思っているわけでございますが、今回の改正におきましては、そういう方向を十分とらえまして、現実の実態に合うような仕組み等を制度的に新しく設けるというようなことで対処いたしているわけでございます。もちろん、御承知のように、土地改良法で何でもやれるというわけではございません。土地改良法のワク内においてこういう問題を取り上げて、前向きな方向で対処するという考え方で今回の改正を行なっているわけでございます。
  146. 小宮武喜

    ○小宮委員 第二の問題は、米の生産調整土地改良制度関係ですが、昭和四十五年から始まった米の生産調整土地改良事業に大きな影響を与えております。すなわち、四十五年発表の「農業生産地域指標の試案」によりますと、農地面積は、四十五年の五百八十万ヘクタールから五十二年は五百五十八万ヘクタールに、また水稲作面積は、四十四年の三百十七万ヘクタールから二百二十七万ヘクタールに減少するであろうとされております。他方、土地改良事業を見ますと、従来、水田中心に推進されてきております。たとえば四十一年から四十四年度までの基盤整備事業のうち四分の三が水田を対象とした事業であったのが、四十四年度からは新規開田は抑制されて、今後はゼロにひとしいと思われますが、今後の土地改良事業は何を中心にやっていくのか、その点について御答弁を願います。
  147. 三善信二

    三善政府委員 御指摘のように、従来の土地改良事業というのは、やはり何を申しましても水田中心であったということは間違いないことでございます。ただ、最近のこの事情変化生産調整実施してまいらなければならないような事態になってきておる、そういう一つ農業情勢を踏まえまして、水田土地改良事業も、できるだけ水田を転換して畑作の振興というようなことに切りかえてやっていくということも現実に積極的に推進してまいっておると同時に、それは水田をほったらかすというようなことを考えているわけじゃございません。やはり水田水田として、用排水の問題あるいは圃場整備の問題、これはやはり立ちおくれている面もございますので、それはそれとしてまた推進をしてまいりたい。  それと、大きな問題としましては、需給変化ということも当然大前提として踏まえていかなければいけないわけでございまして、需要の伸びているような畜産とかあるいは果樹とか、そういった面を中心に、今後の土地改良事業は、それに関する道路の整備、圃場の整備あるいは用排水の整備、水利施設の設置、そういうことを拡充していきたいと思います。  もう一点は、やはり今後の大きな問題としまして、農業と他産業との関係、これがいろいろと、その土地利用調整の問題もございますし、そういうのを含めまして、同時に、農村一つ環境整備基盤整備、環境基盤の整備と申しましょうか、それもまただんだんその重要性を増していくという観点から、そういうことも踏まえながら土地改良事業の推進強化ということを今後はかってまいりたい、こういうふうに考えております。
  148. 小宮武喜

    ○小宮委員 四十四年度以降約十万ヘクタールの新規開田が中止されたわけですが、現在施行中の国営事業及び補助事業計画変更となって、受益者の負担金とか賦課金等の関係で非常に実施面で大きな影響を及ぼすことになっておりますが、その影響にどう対処をしていくのか、その点いかがですか。
  149. 三善信二

    三善政府委員 開田の抑制あるいは生産調整、これと関連しまして土地改良事業の負担金の軽減あるいは償還延期とか、そういう問題が先ほど来取り上げられているわけでございますが、私どもとしましては、もっとそういう実態を十分調査をいたしまして、これらの問題を検討してまいりたい、こういうふうに基本的には考えております。来年度予算で相当、八百万円でございますか、この実態調査予算を計上しておりますので、予算が通りますれば、できるだけ早くこれに取りかかり、調査を進めてまいりたい。その結果を待って、いま指摘されましたような問題につきましても十分検討をしてまいりたい、このように考えております。
  150. 小宮武喜

    ○小宮委員 先ほどの質問にちょっと触れられておりましたが、稲作転換による水田転用土地改良区に及ぼす影響として一番大きな問題は、土地改良事業の負担金だと思いますが、負担金については、永久転換の場合は、国県営の負担金の年賦償還金、公庫借り入れ等の相当部分が直ちに農家の負債として残ることになるわけですが、こういった農家の負担に対して、特に永久転換の場合の負担金については、先ほどからの質問にありましたように、米の生産調整奨励金の打ち切り後は、国がたとえば全額負担するとかあるいは免除するとか、あるいは一時休耕の場合でも、これは償還金の延期措置とかあるいは公庫資金の利子補給等の措置を講じてやるべきではないかと思うのですが、その点は先ほどの質問に出ておりましたけれども、さらにひとつ重ねてお伺いします。
  151. 三善信二

    三善政府委員 いろいろそういった問題がございます。永久転換の場合あるいは一時休耕の場合、それに対して農家負担を少しでも軽減するとかあるいは打ち切っていくとか、そういうことを講じたらどうかということはいろいろいわれておりますし、その御指摘のことだろうと思いますが、先ほど私、申し上げましたように、どの程度農家に影響を与えているのか、私どものこれまでの調査では、そう深刻な影響を与えているとも考えられない点もございますので、もっと実態を十分調査をいたしまして、調査をした結果に基づきまして、そういう問題についてどういうふうに対処していくかということを、早急に検討さしてもらいたいと思っております。
  152. 小宮武喜

    ○小宮委員 これもさっきの質問で若干触れておられましたけれども重ねて質問いたしますが、土地改良長期計画についてです。現行の土地改良計画昭和三十七年公表の「農産物需要生産長期見通し」等を基礎にして策定されておるわけですが、その後農業をめぐる諸情勢変化は非常に激しく、計画作成の前提条件がもうすでに作成当時に比べて非常に変化をしておるという状況の中で、やはり新長期計画を早急に樹立すべきではないかと思うのですが、この点、先ほどの質問の中ではっきりいたしておりませんので、さらにひとつ御答弁を願いたいと思います。
  153. 三善信二

    三善政府委員 新しい土地改良長期計画、十年計画でございますが、先ほども私、お答えしましたように、事業費の面から見ますと非常に進捗をいたしているように見えます。現実に事業費の面では、四十年から四十九年までの長期計画の二兆六千億の事業費を、もう四十七年度の予定されております予算では一応オーバーしております。その問題もございますし、また、いま御指摘のように、やはり前提となっている農業を取り巻く諸条件というのが急テンポで変わってきている、こういう実態もあるわけでございますが、この長期計画につきましては、できるだけ早い機会改定をいたしたい、現在その作業をやっております。四十七年中にこの改定を実現すべく努力をいたしているところでございます。
  154. 小宮武喜

    ○小宮委員 四十七年中にということは、四十七年度中にこの新長期計画を確立するということですか。いま作業をやっておるわけですから。
  155. 三善信二

    三善政府委員 そのように理解していただいてけっこうでございます。
  156. 小宮武喜

    ○小宮委員 その際、四十五年度農業動向に関する年次報告では、高能率の農業展開には、その基盤の確保と整備が前提条件であるにもかかわらず土地改良等の基盤整備促進されていない要因をあげて、今後効率的な利用促進するためには、個々の利害調整を含めて公共投資を主体とした長期的な土地利用計画に基づいて生産基盤の整備が重要である、ということを強調しておりますが、これらの問題について、その長期計画を決定するにあたってどのように反映し取り入れるつもりなのか、この点、お伺いします。
  157. 三善信二

    三善政府委員 失礼いたしました。いま先生の言われましたポイントを、ちょっと私、そらしましたので失礼いたしましたが、土地基盤整備の進捗がおくれておるということはやはり事実でございまして、基本的に農業の体質改善をはかり、あるいは農業経営の合理化、近代化をはかっていくということの上において、どうしても基本となりますこの土地改良事業農業基盤の整備事業ということが、中心と申しますか、基本になっていくわけでございますから、それの推進強化ということには私ども一段と力を入れてまいりたいと思っております。今回の土地改良法改正も、そういう点を踏まえまして、いままでいろいろと補足すべき点を十分補なうという意味で、前向きにいろんな仕組みを考えて対処したいというあらわれでございますので、そういう意味におきまして、基盤整備事業に積極的に今後取り組んで、事業の進捗をはかっていきたいというふうに考えております。
  158. 小宮武喜

    ○小宮委員 農業用水利権をめぐって、いろいろの問題についても先ほど質問がありましたが、先ほど御答弁のあった、いま現在、中間報告があって、そうして各種各項目についてさらに検討を続けておるということでしょう。その問題について農業水利問題研究会が現在検討しておる状況はどうなっておるのか、また、最終結論はいつごろ出るのか、その点をさらに付加して説明願いたいと思います。
  159. 三善信二

    三善政府委員 農業水利合理化の問題につきまして、学識経験者に集まっていただいて検討してもらいまして、中間報告を、四十六年の何月でございますか、ちょっとど忘れいたしましたが、いただいたわけでございます。中間報告におきましては、主として、基本的な問題というより、都市周辺地域農業用水の今後の対処のしかた、そういうことを中心にしていただいたわけでございます。今後大きな問題としまして、その慣行水利権の問題、そういう問題もございましょうし、農業地域におけるそういった農業用水の利用調整、あるいはそれを含めた農業水利権の問題等基本的な問題として学識経験者の方々に取り上げて研究をしていただきたい、こういうふうに思っているわけでございます。  いつごろ結論が出るかという御質問でございますが、非常にむずかしい問題でもございますし、いつごろということをいまここで申し上げるわけにもまいりませんが、私どもとしましては、十分いろいろな資料も集めまして、そういう問題と真剣に取っ組んでいきたい、こういうふうに考えております。
  160. 小宮武喜

    ○小宮委員 農業用水の問題については、これは長崎県でもいろいろ問題が起きておるわけですけれども、この問題について四十五年の二月、閣議で、農業用水等慣行水利権を洗い直して総合的な水利用をはかるために、内閣審議室で総合的に検討するようになったということも伺っておるわけですが、その点は事実なんですか。
  161. 三善信二

    三善政府委員 内閣審議室のほうでこの問題につきまして検討しているというのは事実でございます。
  162. 小宮武喜

    ○小宮委員 これは建設省でも水資源合理化促進法という立法を考えて検討しておるようなことも聞いておるのですが、それは農林省としては承知しておるのですか。
  163. 三善信二

    三善政府委員 何か新聞にそういう記事が出た、その新聞は承知しておりますが、さっそく建設省のほうに聞いてみました。建設省のほうでは、そういうことはやっていないということで、否定しておりますので、私ども、建設省でそういうことを基本的に検討して何か対策を考えているというようなことではないと信じております。
  164. 小宮武喜

    ○小宮委員 そういうような中で、農林省としては農業用水利の権益を擁護するという立場と、それから農業用水の合理化の問題については、今後どのように対処していくのか、考え方があればひとつお聞きしておきたいと思います。
  165. 三善信二

    三善政府委員 農業用水の権利を確保していくという問題でございますが、現在も河川法によって、たとえば農業用水から使用料を取れるという規定はあるわけでございます。旧河川法の時代もございましたし、現行法にもございます。しかし、河川法に規定はありましても、慣行水利権としてやっておりますこの農業用水の問題については使用料は取っておりません。それは解釈上とか運用上とかいろいろな事情があると思いますが、現にそういうものは取っておりませんし、また将来そういう方向で、何といいますか、農業サイドの意向を無視して近代化するといっても、これは簡単にできる話ではございませんし、またそういうことにはならぬように私どもも十分注意して見守っていきたい、こういうふうに考えております。
  166. 小宮武喜

    ○小宮委員 次は、改正案の中で重要と思われるものについてちょっとお尋ねをいたします。  まず、都市計画等都市政策との調整をどうするかという問題ですが、今回の改正案では、非農用地を取り込む場合の要件を定めて、さらに市街化区域において圃場整備事業を行なわないことにしておりまして、これ以外の都市計画区域においても都市計画の論理を尊重することになっておりますが、具体的に、市街化調整区域において、都市計画法による開発許可制度との調整はどうするのかということをひとつお聞きします。
  167. 三善信二

    三善政府委員 御指摘のとおりでございまして、市街化区域におきましては土地改良事業はやらない。効果が非常に長期的に、しかも工期も長いわけでございますから、そういう土地改良事業はやらない。災害復旧等の緊急を要する原状回復的な事業はやりますけれども土地改良事業はやらない。市街化調整区域につきましては、これは市街化をむしろ抑制する地域でございますから、農地につきましての転用等も非常にきびしく縛っております。それから土地改良法事業をやります場合も、今回の改正によって非農用地を取り込んで工場用地を生み出す、そういった場合には、やはり市街化調整区域の開発許可という問題がひっかかってまいるわけでございますから、そういう開発許可を前提として、私どものやります圃場整備も仕組んでいく、計画していくというようなことで調整をとってまいりたい、こういうふうに考えております。
  168. 小宮武喜

    ○小宮委員 次は、換地技術者制度の件についてであります。今回の改正案でこの制度の創設を見ることになっておりますが、この換地技術者の処遇の問題、それから研修をどうやって強化するかという問題あるいは人員確保等、事業実施するにあたってそれに対応する整備対策をどうするかというような問題についてひとつお答え願います。また、この場合、国は何か助成をするのかどうか、この点についてもあわせてお答えを願いたい。
  169. 三善信二

    三善政府委員 換地技術者の制度を今回新設するわけでございますが、国が試験を行ないまして、その換地技術者の試験に通った者につきましては技術者として大いにその資質を向上させ、それを活用するということを考えているわけでございます。  そもそもこの換地技術者については、人員の確保もございますけれども、処遇の改善という問題もあるわけでございまして、その点につきましては、やはり国家試験等をパスしてやればそういう問題も一部実現していくようなことにもなろうかと思っているわけでございます。現実に換地技術者の研修あるいは講習、まあ換地というのは非常にむずかしい問題でございますので、常にそういう講習など技術者の訓練をやっていかなければいけないわけでございますが、四十七年度も、非常にわずかではございますけれども、百三十万円ぐらいの予算の措置は講じておりますので、そういう講習あるいは訓練等をやっていきたい。  そして土地改良事業をやっていきます際に、実は換地がおくれている面が非常に多いわけでございますから、そういうおくれを取り戻すためにもこういう国家試験をやったりあるいは資質を向上させたり、待遇の問題等も将来考えていくというようなことで優遇しながら、本質的には換地促進ということを積極的にはかっていきたいと思っております。
  170. 小宮武喜

    ○小宮委員 次は、土地改良事業の総合化についてでございますが、今回の改正案では、土地改良事業を効果的に実施するため、同一地域内において相互依存関係を持ち、総合的計画的に一つ事業として実施できることにいたしますとともに、農用地造成事業についても、その施行地域に点在する既耕地もその地域に含めて行なうことになっていますが、これは現在でも農用地造成事業と区画整理事業のあわせ事業実施されております。これがさらに拡大されて実施される場合、既存の事業と総合事業との関連はどのように調整されるのか。その点いかがですか。
  171. 三善信二

    三善政府委員 結局、現行法でもあわせ事業というのを行なっております。それから、今回新しくまた制度化いたしまして総合事業という一つの仕組みを起こしたわけでございますが、まず手続の面で、従来のあわせ事業は、個々の事業をそれぞれ一緒にしたというんじゃなく、同時に施行するというやり方でございますが、今回の場合には、それを同時にというより、むしろ一緒に一括してやるということで申請手続等も一個でいいということにするわけでございます。手続上のそういう非常に便利な面もございますと同時に、一緒にやったほうが当然効果的にも非常に充実してまいろうかと思っているわけでございます。  ただ、何でもかんでもそういうことでやるということもいかがであろうかと思っておりますので、制度上は一つのしばりをかけております。それは、一定の地域で、地域が重複すると申しますか、同じような地域事業を一緒に始めるということが一つと、それから、やはり農業経営の合理化基本的に必要で、そのために効率的に一緒に事業をやるということが必要であるというようなことを前提として、この総合事業をやるというふうに限定はいたしているわけでございます。それぞれ既存の事業も今回のこの総合事業も、そういう地域実態に応じてやっていく必要があると思いますので、既存のやり方は既存のやり方、新しいやり方は新しいやり方実態に応じて考えていきたい、こういうふうに思っております。
  172. 小宮武喜

    ○小宮委員 総合事業実施する場合に、受益者負担と補助制度の問題はどうなりますか。
  173. 三善信二

    三善政府委員 負担の問題につきましては、これは従来と変わらないわけでございます。ただ、個々の一つ事業をやる場合には、一つ事業の負担だから非常に安いとか、総合事業をやる場合には土地改良施設を一緒に二つ三つ合わせてやるから負担が重いじゃないかという御懸念もあろうかと存じますが、そういうことではなくて、やはり効率的にその事業をやる、しかも工期等の問題も同時にあわせてやるわけでございますから、非常に効果が従来の場合と違ってくると思うわけでございます。そういう意味で、負担の問題等につきましては、別に過重負担になるというようなことは考えておりませんし、またそういうやり方でやっていきたいと思っているわけです。  現実に、ただ、現行の補助率というのは個々の事業についてそれぞれきまっているわけでございますが、それはばらばらで、実際事業をやっていく場合に、こま切れ的にばらばらに補助事業を当てはめていくというようなこともいささかどうかと思いますし、また、こういう総合事業促進をはかる上においても、そういう補助率等の問題についてもやはり前向きに検討していかなければならないというふうに考えております。総合補助率的なものを将来検討して考えていくというようなことも必要かと思っております。
  174. 小宮武喜

    ○小宮委員 さらに、農業振興地域整備計画に基づく基幹事業実施方式についてお尋ねします。  改正案では、農振法に基づく農業振興地域整備計画の達成に支障を来たすと考えられる場合には、三条資格者の三分の二の同意の手続を省略して、関係土地改良区等の意見を聞いた上で、市町村議会の議決を経て、市町村特別申請事業として、国、県営事業の申請をすることができるように改正されております。この場合、三条資格者の意思反映はどうなるのか、その点、どうですか。
  175. 三善信二

    三善政府委員 市町村特別申請事業の問題でございますが、これは、いま先生が指摘されましたように、その一定の地域において基幹となるような大規模施設等を考えているわけでございますが、先行的にそういう施設をまずやっていく、そのあとでその施設関連した事業がついてくるというような仕組みをとっているわけでございます。  そこで、この基幹的な特別申請事業は、三分の二の同意を最初からとるわけじゃございません。そこが違うわけでございますが、市町村の議会の議決、関係土地改良組合の意見等も十分聞くわけでございます。そこで、現地の三分の二の同意はとりませんけれども関係農民の方には、そういう土地改良区を通じまして十分周知徹底してやるということが一つでございます。それから、この事業を始めます際には、この事業を始めたあとで関連して出てくる関連土地改良事業が必ず始められるという確実な見通し、それを受けた上でスタートするということになっているわけでございますから、三分の二の同意を最初からとらなくても、そういうやり方でもって同意をとったと同じようなかっこうでスタートするということになろうかと思います。  それからもう一つは、関連土地改良事業が始まります場合には、これは当然従来の手法でもって三分の二の同意をとるわけでございます。その同意をとるときに、もともと基幹事業は最初にスタートしておりますが、それについても農民の方々は知っておられるわけでございますから、負担金の問題等につきましては、この三分の二の同意をとって始まる関連事業と負担金と一緒にして、基幹的な先行的な投資の市町村特別申請事業についてもとるようにいたしているわけでございまして、そういう見通しの上に立ってこの市町村特別申請事業をやるわけでございますが、そういうことはないと思いますけれども、万一関連事業が始まらないという場合には、関係農民から負担金を取るわけにはまいりません。そういうことにもなるわけでございますから、末端の、関係農民の方々、土地改良区の意見、そういうのは十分反映してスタートをするということに御理解をしていただいてけっこうだと思っております。
  176. 小宮武喜

    ○小宮委員 私が心配するのも、この受益農業者の方々がみずから申請する場合には、負担額の問題とか、受益のいろいろな態様の問題とか、事前にある程度明らかになるわけですけれども、問題は、市町村の特別申請事業では、形としては事前にやられたにしても、結果的には、正式には事後同意というようなことになりはせぬかというような場合に、負担金の徴収等について、あとあと感情的なしこりが残りはせぬかというようなことを懸念しておるわけですが、その点は心配要らぬということですな。
  177. 三善信二

    三善政府委員 御指摘のような点が当然懸念されるだろうと思います。したがいまして、先ほど申し上げておりますように、そういうことであとでごたごたが起こらぬように、最初スタートのときからやはり十分関係農民の方にもよく知ってもらってスタートする。その点慎重に配慮して指導してまいりたいと思っております。
  178. 小宮武喜

    ○小宮委員 次は、農業用用排水路施設利用関係調整についてでありますが、まず国営造成施設の他種用水との共有化の問題です。  改正案では、遊休化している施設については本来の目的または用途を妨げない限度で他目的に利用させることができるようにしておりますが、その判断の権限は農林大臣が持つようになっておりますね。そこで、九十四条では余剰農用水を他種企業に譲渡することを規定しておりますが、どの程度まで他目的に譲渡するのか、その判断の基準あたりはどうですか。
  179. 三善信二

    三善政府委員 どの程度まで他目的に転用を認めるか、そういう判断の基準はどこに置くかという御質問でございますが、他用途に転用します場合に、どの程度その水量として転用ができるかという、基本的な測定調査農林省がやることにしております。国営のそういう施設につきまして今後予定されるのが現在の調査では十カ所ぐらいではなかろうかと思いますけれども、その点十分農林省が測定調査をいたしまして、その測定調査も、上流の農民の方、下流の農民の方、そういういろいろな利害の調整もありましょう、そういうのを十分加味して、その水量の測定をきめていく、しかも、それは当然土地改良区等と相談をしていく。また、他転をします場合には、管理規程の中に、その支払いの対価の徴収のやり方とか、いろいろな管理規程を一部変更するということは、当然行なわれてくるわけでございます。そういう段階には、土地改良区の総会にかけて同意をとっていくというごとも手続上なっておりますので、農家の方々に心配をかけないように、農業用水は十分確保できるように、そういうやり方でこれはやっていきたいと考えております。
  180. 小宮武喜

    ○小宮委員 それから、水路等の基幹的土地改良施設については、農林大臣は、個々の場合を判断し、特別の必要ある場合は共有持ち分を他種企業体に与えることになっておりますね。この特別必要あると認める場合とは、大体どのような場合ですか。また、その判断の基準はどうなんですか。その点ちょっと具体的に例をあげて説明してもらいたいと思います。
  181. 三善信二

    三善政府委員 特別の必要ありというその解釈でございますけれども調査は、先ほど申し上げましたように、そういう水量調査をいたします。それで、片や工業用水、上工水、そういう需要は逼迫し、そちらのほうから熾烈な要望がある。片や農業用水のほうは、水田転用、その他市街化の進行等によって末端の水利等はもう要らなくなってきた、水量は余ってくる、余剰水ができてくる。こういう実態が当然あるということでこの問題が起きるわけですが、その共有権を——他転ずる場合には他転の対価は当然とるわけでございますけれども、やはり他転を受けるほうの人は、単に対価だけじゃなく、共有持ち分権もほしいという要望は、これは当然出てくると思うわけでございます。権利としてそれを確保しておきたいという要望は当然出てくるわけでございまして、いま多目的でダムをつくる、当初からつくるような場合にはそういうことはやっているわけでございますが、今度はその施設が完成したあとそういうことをやるということで、特別な必要のある場合というのは、やはり共有持ち分権を与えなければその事業がスムーズに行なわれない、そういうように判断をされる、せんじ詰めていけばそういうことになろうかというふうに考えております。
  182. 小宮武喜

    ○小宮委員 先ほど質問がありました農地保有合理化法人への事業実施資格等の付与の問題ですが、改正案においては、農地保有合理化法人に対しても事業参加の道を開くため、三条の資格を与えるほか、事業実施の主体となることができるようにしておりますね。それからまた、国や県営農用地造成事業の申請主体としてさらに干拓地の配分対象としての道も開いて、交換分合の実施主体となることができるようになっておりますが、農地保有合理化法人は、私が聞くところによれば、各県においてもまだようやく設立されたり、また設立準備中のところも多いというふうに聞いておるわけですが、このような状況の中でこういうふうな機能を与えても、実際に実効性の問題はどうかということなんです。そのため、よほど国が政策的にバックアップしてやらなければどうにもならないのじゃないかというふうな気もするのですが、農地保有合理化法人に対してこのような措置を与えてもだいじょうぶということになりますか。
  183. 三善信二

    三善政府委員 農地保有合理化法人は、現在、指定しておりますのがたしか全国で三十一でございます。本格的な農地保有合理化事業を始めるのはこれからだということになるわけでございますが、御指摘のように、三条資格を与える、あるいは干拓地の配分を保有合理化法人にできるように道を開く、そういうことで、今後の農業規模拡大、経営の規模拡大、そういう面においてこの農地保有合理化法人をできるだけ積極的に使っていきたいという趣旨から、こういう土地改良法にも一役しょわしていこうということで道を開いたわけでございますが、これは事業を円滑に進めていくためには、今後いろいろな面で私ども指導ないしその他の関係で支援していかなければいかぬ点もあろうかと思います。何ぶんにも昨年から事業を一部始め、今年から大体本格的に事業をやっていこうという段階でございますので、今後この活躍に期待をしていきたいということで、指導も積極的にしてまいりたいと思っているわけでございます。
  184. 小宮武喜

    ○小宮委員 土地改良事業の場合、農業者負担は農林漁業金融公庫から八割の融資を受け、また土地取得についてもやはり農林漁業金融公庫から二十五年償還、年利三分五厘で融資を受けておりますが、この農地保有合理化法人に対してもこれと同じような措置をするのかどうか、この点、いかがですか。
  185. 三善信二

    三善政府委員 農地保有合理化法人は、公庫法の関係からいいますと、農業者に公庫資金は貸せるわけでございますが、農地保有合理化法人には貸せないということになるわけでございます。しかし、事業を進めていきます場合に、どういうふうな援助体制をとっていったらいいかということを私ども検討していかなければならないと思いますが、とりあえずは系統資金等を利用しながら措置していく、さしあたってはそういうやり方をやっていく。今後もうちょっと積極的に、また前向きにこの農地保有合理化法人事業の推進に対して国が力を入れていくということになれば、また何らかの方法を考えていく必要があろうかとも考えておりますが、いまの段階ではまだそこまで行っておりませんので、将来の問題として前向きに検討していきたいと思っております。
  186. 小宮武喜

    ○小宮委員 農地保有合理化法人に加盟しておる農業者は、もちろんいまのような措置が受けられるわけですね。団体にはしないけれども農業者個人にはやるわけですね。
  187. 三善信二

    三善政府委員 農地保有合理化法人は、これは法人でございますから、加入とか加盟とか、そういうのは農業者はいたしていないわけでございますが、こういうことであろうと思います。  農業者は、土地取得資金で、これは低利の融資が公庫資金からできます。また、土地改良事業の負担金については、補助残融資というのもあるわけでございますから、農業者に対しては従来のやり方で十分対処していけると思っております。
  188. 小宮武喜

    ○小宮委員 次は、農地転用に伴う公共投資の回収についてお尋ねしますが、改正案では、国営改良事業についてその施行地域内の土地が一定期間内に目的外用途に供されたり所有権の移転等がなされた場合には、国または地方公共団体はその負担した事業費の範囲内で三条資格者から特別徴収金を徴収することができるというようになっております。そこで、国等が農地転用者から国庫投資額等を強制的に徴収するということは、他の公共事業においてはあまり見られないことでありますが、国あたりがこういうふうに強制的に行なう事業でもあるし、その意味では、公平の立場から見て、その妥当性はどうかということについてちょっと疑問を持つわけですが、その点、いかがですか。
  189. 三善信二

    三善政府委員 一般の公共事業についてはそういうことはございません。御指摘のとおりでございますが、土地改良事業というのは、やはり農地農業用地利用価値の増進といいますか、土地改良を施してその農地利用を増進するという側面を有しているわけです。しかも、その農地農民の個人の財産である、そういう点につきまして違っているということが一つ言えると思います。それからもう一つは、土地改良事業というのは、農民の発意に基づいて、根本的には、同意に基づいてこの土地改良事業に参加している、そういう意味では、当然、受益者負担というのは、これは農民も最初から同意をして始めていく事業であるわけです。そういう点におきまして、一般の公共事業とは違うということは言えると思うわけでございます。したがいまして、国も政策的な観点から相当高額の補助をいたしましてその土地改良事業はやっているわけでございます。しかも、その効果は農民個人に帰着するというのがこの事業の特質かと思います。したがいまして、これを農業目的で土地改良事業をやった、その目的外に転用するとか使用するということになると、その政策目標にも違反してくるということになりますし、そういった場合に、補助事業であれば、補助金の返還ということは当然ほかの場合でもやっております。国営の土地改良事業の場合には、従来は干拓地の場合はありましたけれども、ほかはなかった。今回、制度改正で、国営事業全般についてそういう措置をとったわけです。このこともやはり一般の公共事業とはちょっと特殊の性格でございますので、別にそれと比べて不公平なやり方というようなふうには考えられないというふうに思っております。
  190. 小宮武喜

    ○小宮委員 国営事業については、完了後直ちに受益者は負担金を徴収されることになっております、また県営事業についてはそのあと数年を経て完成される、また団体営はそのあとになるというような事業実施実態ですが、転用がその過程で行なわれるような場合には、特別徴集金のそれぞれの額の算定や徴収方法等について、いろいろ困難とかまた矛盾が発生することも予想されますが、大体徴収は円滑にいくと思いますか。
  191. 三善信二

    三善政府委員 これにつきまして、現在の事例で、干拓地の場合なんか四件ぐらいございます。それから、補助金の返還を命じたのは、これはまだないと思っております。今回は、全体的に国営事業全般にそういうことをやるわけでございますし、それから、私は、そういう他転にしたような場合に、それを当然キャッチして、そういう返還をやるということは確実にそれはできると思いますし、実効性はまた上がると思います。また、上げていかないと、せっかく造成した土地をほかの目的にかってに使ってしまうということは、これは造成の目的からしまして、土地改良の目的からして、やはり好ましいことではないわけでございますから、むしろ厳格にこういう点は実施していったほうがかえって今後の土地改良事業の推進のためには役に立つというふうにも考えております。運用の面でこれは実効を期するようにいろいろな努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  192. 小宮武喜

    ○小宮委員 今度の国営事業において、特別徴収金の徴収を行なわない場合として、一時的に目的外用途に供したときまたは災害により利益を受けなくなったときその他政令で定める場合と、こうなっておりますね。具体的に「政令で定める」ということはどういうような場合をさすのか、ひとつ説明を願いたいと思います。
  193. 三善信二

    三善政府委員 それは、公共用地みたいなものに転用する、あるいは道路敷地にするとか、そういう土地改良施設の敷地にするとか、公共用地と一口に言えばいいと思いますが、そういうふうに転用した場合には、これは公共目的のために転用したんだ、単に個人が恣意的にその転用をしたというわけでもございませんので、そういう点はひとつかんべんしてやろうという趣旨でございます。
  194. 小宮武喜

    ○小宮委員 農林省農業土木に関する試験場としては、神奈川県の平塚に農業土木試験場があって、それから九州で佐賀に九州地域全体の農業土木事業をやる支場がありますね。ところが、最近、農林省の研究機関の機構改革の問題が取り上げられて、この佐賀支場が廃止されるといううわさが非常に強くなりまして、九州の土地改良事業団体では非常に心配しておるのです。したがって、特に団体では、これまでこの佐賀支場が果たしてきた役割り、また今後九州におけるこういう開発に対する役割り等考えた場合に、ぜひ存続してほしいということがいろいろな形でわれわれにも陳情が来るわけですが、廃止するという単なるうわさですか、それともこれは事実ですか。
  195. 三善信二

    三善政府委員 農林省の試験場全体については、技術会議で管轄しておりますので、私、いま先生のお話を初めて聞きました。建設部長から聞いて見ますと、佐賀のは土木試験場の支場で、干拓のいろいろな実験、研究をやっておるわけであります。私どもが聞いておりますところは、有明海の長崎干拓をやろうということでいま計画してやっているわけでございますが、そういう今後大きな問題もあるので、ぜひあすこは残してくれないかというようなことは聞いておりますが、基本的には、この支場を機構改革との関連においてどういうふうにするのか、それは私、ちょっとわかりませんので、技術会議のほうで検討していると思いますので、そちらのほうに相談してひとつあとから返事させていただきたいと思っております。
  196. 小宮武喜

    ○小宮委員 この点は、これはもう佐賀支場の場合は、九州全域を担当してやっておるわけですから、今後の長崎干拓の問題もあるし、そのほかにもいろいろ九州全体の中でこの佐賀支場が果たしておる役割りは非常に大きいわけですから、これは長崎県とか佐賀県とかいうことじゃなく、九州全域の問題ですから、そういった意味で、特に技術会議等で、この問題については存続をぜひ強く要請してもらいたいというふうに考えます。  せっかくいまの話の中で長崎干拓、つまり長崎の南部地域総合開発の問題が出ましたので、あわせてちょっと質問しておきたいと思いますが、これは大体四十七年度に調査は完了しますか。
  197. 三善信二

    三善政府委員 長崎干拓のあすこの問題は、一つは、漁業補償の問題がまだひっかかっているわけでございます。漁業補償が済みませんことには何とも私どもしようがないということで、いま現実には知事と農政局——熊本にございます九州農政局が十分相談をしまして、漁業者に当たっている段階でございます。これまで受けました情報によりますと、漁業者も、従来のような感情より非常にやわらいで、そういう補償交渉に応じようという気配が非常に強くなってきているということで報告を受けております。まずもってその問題を解決することが先決問題でございますので、その上で、調査する問題はこれまでもやっておりますし、これからその漁業補償さえ解決すれば、何とか私としましてもこれは実現していきたい、また努力したいというふうに考えております。
  198. 小宮武喜

    ○小宮委員 それでは、知事も漁業者の方々と話し合いをやっておるようですし、特に以前からすれば漁業者の方々も非常に態度がやわらかくなっておるということも聞いておりますので、この問題も早晩そう長い時間がかからずに解決すると思いますが、結局、その話が解決しなければ、それでは調査は完了しないということになるわけですか。だから、この前いろいろ質問したとき、大体四十七年度に調査を完了して、四十八年度から着工するということを言われておるわけです。したがって、私は本年度中に調査は完了して、来年度から着工するのかということをあらためて確認を求めておるわけです。
  199. 三善信二

    三善政府委員 調査が終わるとか終らぬとかいう問題よりも、私ども四十七年度中にこれをやるかやらぬか、その見通しをはっきりつけたい、こういうことで、さっきの漁業交渉の促進ということをいまやっていただいておるというような状態であります。
  200. 小宮武喜

    ○小宮委員 それでは、確認しますが、四十七年度中にやるかやらないかはっきりしたい、そのためには漁業者の方々との話し合いの問題がやはり一番問題になる、それが話し合いさえつけばやるということに、ことばをかえれば考えていいわけですね。
  201. 三善信二

    三善政府委員 そのとおりでございます。
  202. 小宮武喜

    ○小宮委員 時間も来たようですから、これで質問を終わります。
  203. 松野幸泰

    松野(幸)委員長代理 次回は、明五日、水曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十三分散会