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1972-03-30 第68回国会 衆議院 農林水産委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月三十日(木曜日)     午前十時五十九分開議  出席委員    委員長 藤田 義光君    理事 仮谷 忠男君 理事 熊谷 義雄君   理事 松野 幸泰君 理事 三ツ林弥太郎君    理事 渡辺美智雄君 理事 千葉 七郎君    理事 合沢  栄君       江藤 隆美君    小沢 辰男君       鹿野 彦吉君    小山 長規君       佐々木秀世君    中尾 栄一君       野原 正勝君    藤本 孝雄君       別川悠紀夫君    角屋堅次郎君       田中 恒利君    中澤 茂一君       芳賀  貢君    長谷部七郎君       松沢 俊昭君    相沢 武彦君       瀬野栄次郎君    小宮 武喜君       津川 武一君  出席政府委員         農林政務次官  伊藤宗一郎君         農林大臣官房長 中野 和仁君         農林省畜産局長 増田  久君         林野庁長官   福田 省一君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      山口 光秀君         厚生省環境衛生         局乳肉衛生課長 神林 三男君         農林省農林経済         局統計調査部長 中沢 三郎君         日本国有鉄道貨         物局営業開発室         農鉱品課長   藤井  徹君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ――――――――――――― 委員の異動 三月十七日  辞任         補欠選任   森下 元晴君     愛知 揆一君 同日  辞任         補欠選任   津川 武一君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   東中 光雄君     津川 武一君 同月十八日  辞任         補欠選任   瀬野栄次郎君     林  孝矩君   津川 武一君     谷口善太郎君 同日  辞任         補欠選任   林  孝矩君     瀬野栄次郎君   谷口善太郎君     津川 武一君 同月二十二日  辞任         補欠選任   鶴岡  洋君     林  孝矩君 同日  辞任         補欠選任   林  孝矩君     鶴岡  洋君 同月二十三日  辞任         補欠選任   相沢 武彦君     中野  明君   津川 武一君     谷口善太郎君 同日  辞任         補欠選任   中野  明君     相沢 武彦君   谷口善太郎君     津川 武一君 同月二十七日  辞任         補欠選任   愛知 揆一君     森下 元晴君 同月三十日  辞任         補欠選任   美濃 政市君     芳賀  貢君 同日  辞任         補欠選任   芳賀  貢君     美濃 政市君     ――――――――――――― 三月二十一日  農業災害補償法及び農業共済基金法の一部を改  正する法律案内閣提出第九六号)(予) 同月十八日  米価値上げ反対に関する請願中井徳次郎君紹  介)(第一六四七号) 同月二十三日  林業振興に関する請願草野一郎平紹介)  (第一八八二号)  外国産生糸の輸入規制に関する請願小川平二  君紹介)(第一八八三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月二十九日  総合農政推進に関する陳情書  (第  一六七号)  森林政策推進に関する陳情書  (第一六八号)  国有林の伐採に関する陳情書  (第一六九号)  林業振興に関する陳情書外三件  (第一七〇  号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件(乳価及び豚肉価  格安定に関する問題等)      ――――◇―――――
  2. 藤田義光

    藤田委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  この際、政府より畜産振興審議会経過等について説明を求めます。増田畜産局長
  3. 増田久

    増田(久)政府委員 法律の定めるところによりまして、年度末までに豚肉及び加工原料乳につきまして価格決定する。そのために審議会意見を聞いて、その答申を得て政府はきめるわけでございますが、去る二十八日に豚食肉部会を、昨二十九日に酪農部会を開催いたしまして、それぞれ御答申を得たわけでございます。  まず、豚から申し上げます。お手元に資料としてお配りしたと思いますが、ごらん願いたいと思います。  豚のほうで「記 昭和四十七年度の指定食肉安定価格については、最近における肉豚生産動向豚肉需給事情および物価に与える影響を考慮して、決定されたい。」こういう答申でございます。御承知のとおり、諮問事項というものは、安定価格をきめるにあたって留意すべき事項、こういうことで諮問をいたしたわけでございますが、これに対してこういう答申をいただいたわけでございます。  内容は、そのままですと非常におわかりにくいかと思いますが、審議過程におきまして、最近の需給事情なり生産事情を見て、現在の価格水準のもとにおきまして十分生産意欲というものは上向傾向にある、したがって、政府試算として出しました昨年度三百五十五円に対して一円上げ価格は、一応据え置きと理解し、指定食肉を据え置くべきであるという意見の方と、そうではない、やはり公害問題その他において豚肉農家生産意欲というものは減退している、価格上げるべきだ、こういう意見の方とが鋭く意見が対立いたしまして、その結果として、一本の具体的な政府の試案に対してどうという答申は得られず、両方の最大公約数としてこういう表現によって御答申を得たわけでございます。  なお、建議として、「一、養豚経営合理化豚肉安定的供給および消費の増進を図るため、豚肉生産から消費に至る過程改善合理化対策を進めること。二、環境汚染問題の重要性にかんがみ、養豚経営におけるふん尿処理等の新技術の開発を進めるとともに、制度資金の拡充その他必要な対策を強化すること。三、養豚経営安定的発展を図るため、飼料価格引下げに努めること。四、養豚経営における素畜重要性にかんがみ、その価格安定等必要な措置を強化すること。五、肉豚資質現況にかんがみ、引続き優良純粋種豚確保等改良増殖体制整備を一層強力に推進すること。六、豚肉卸売価格安定価格帯の間に維持するよう需要に見合った生産の指導、関税減免制度の機動的運用等適切な措置を講ずること。」という御答申を得たわけでございます。  続きまして、原料乳につきましての御答申を得たわけでありますが、それはまず第一に、「指定乳製品安定指標価格については、据置きとすること。」御承知のとおり、バター、脱脂粉乳練乳等について定めます安定指標価格は最近ずっと据え置いておりますが、諸般情勢から見て、これは従来どおり据え置きとすることが適当であるという御答申でございます。  二番目に、「加工原料乳保証価格については、乳製品需給の現状および酪農経営の安定、合理化の方向に即して適正に定めること。」これにつきましてもわかりにくいかと思いますが、そこにございます酪農乳製品需給現況というものの認識において非常に鋭く意見の対立があったわけでございまして、その総合的な意見のまとめとしてこういう表現を得た。したがって、政府原案といたしまして、前年度に対しまして三十一銭アップの保証価格につきまして、一本のそれに対する適否についての御意見は得られなかったわけでございます。  三番目に、「加工原料乳基準取引価格については、指定乳製品安定指標価格を適正に反映することを旨として定めること。」ということで、いろいろの御議論はございましたが、政府の定めております三十七円七十八銭の基準取引価格はおおむね妥当であろうという御答申でございます。  四番目、「生産者補給交付金の対象となる加工原料乳数量最高限度については、需給の通常の変動を考慮してこれを適正に定めること。」ということで、私どもは需給推算をいたしまして、来年度は百五十九万四千トンという限度数量を定めたわけでございますが、その見方につきましては、いろいろの御議論はございますけれども、大局的に見ておおむね妥当ではないかという御答申を得たわけでございます。  次に、建議といたしまして、「一、消費拡大生産意欲の向上を図り、酪農安定的成長を確保するため、長期的な観点に立って金融施策等諸般対策を総合的に推進すること。二、飲用牛乳流通合理化を促進するとともに、生乳広域流通による市乳化の促進を図ること。三、酪農経営安定的発展を図るため、飼料価格引下げにつとめること。」という御建議をいただいたわけでございます。   〔委員長退席熊谷委員長代理着席
  4. 熊谷義雄

  5. 中沢三郎

    中沢説明員 四十六年の牛乳生産費を二十七日に公表いたしておりますので、それに基づいて要点を御説明申し上げます。  四十六年の酪農経営生乳生産に投下した費用、すなわち生産費でございますが、生乳百キログラム当たり四千二百九十六円となっておりまして、前年対比二百四十円の増、五・九%の増加ということになっております。四十年度以降を比較いたしますと六年間に年率平均二・九%で増加しておる計算になっております。  それから、百キログラム当たり生産費搾乳牛一頭当たりに換算いたしますと二十一万四千六百八十三円となりまして、前年の生産費に比べまして一万七百七十三円高くなっておりますが、パーセントで申しますと五・三%増となっておるわけでございます。  このように四十六年度も引き続き生産費上昇いたしましたのは、主として飼料費労働費増加したためでございます。  生産費の構成を見てみますと、飼料費が五五%、労働費が二四%、搾乳牛償却費が九%を占めておりまして、この三費目生産費全体の八八%に達しておる関係から、これらの主要な費目につきましての変化生産費動向を左右するというふうになるわけでございます。  そこで、主要な費目につきまして御説明申し上げますと、まず飼料費でございますが、流通飼料費は百キログラム当たりで千六百五十円でありまして、前年対比四・七%の増加でございます。一頭当たりで見ますと、前年対比四・一%上回っておるわけでございます。これは主として配合飼料の値上がりによる増加でございます。  それから、自給飼料といたしましての牧草・放牧・採草費でございますが、百キログラム当たりで七百七十五円、前年に比べまして七・三%の増加、一頭当たりに換算しますと六・八%増加しておるわけでございますが、この増加は主として、牧草自給飼料費費用価計算しておりますが、労賃上昇に伴う増加でございます。  次に、労働費でございますが、百キログラム当たりで申しますと千四十五円で、前年対比五・二%、それから一頭当たりで換算いたしますと四・六%それぞれ増加しておるわけでございます。飼養労働時間は毎年減少しておりますが、その労働時間の減少を越えまして労賃水準上昇している関係から、労働費増加しておるわけでございます。  ちなみに四十年当時の労働時間と比べますと、現在ほぼ四割ほど労働時間が減少している計算になっておるわけでございます。これは大体飼養規模拡大とか、あるいは牛乳処理施設整備などによりまして、各種の労働作業にわたりまして省力化が進んでおる関係上、投下労働時間が減少しておるわけでございます。  乳牛の償却費は、百キログラム当たりで三百八十九円でございまして、前年との比較で申し上げますと四・四%低下しておるわけでございます。これは搾乳牛価格が値下がりしておる関係でございます。  以上の状況でございますが、なお関連いたしまして、酪農経営収益状況を御参考までに申し上げますと、一頭当たりで見ました酪農経営の粗収益は、四十六年二十六万五百四円でございましたが、前年の実績をわずかに下回っておるわけでございます。これは搾乳量が前年よりも減少しておりますが、販売乳価がやや高値に推移した関係でございまして、販売額はほぼ前年並みを維持しておるわけでございます。しかし、酪農経営におけるもう一つの生産物でございます子牛価格が値下がりしておる関係上、粗収益に影響しておることも、こういう状態の大きな原因となっておるわけであります。  生産費増加したのに対しまして粗収益がこのように減少しておりますので、当然差し引きの利潤は昨年と比較しますと三一・五%も下回っておりまして、金額で二万八十二円にとどまったわけでございます。酪農経営はもちろん家族経営でございますので、その指標としての所得を見ますと、搾乳牛一頭当たりで九万二千六百七十四円でございまして、前年よりも五・五%下回る、こういうような結果になっておるわけでございます。  家族労働報酬でございますが、一日当たり報酬は、規模拡大しておる中で上昇が目立っておりまして、四十六年は前年と比較しまして二・二%、わずかでありますが下回っておりまして、それでも四十年当時と比べますと三・四倍の家族労働報酬額というものが計算すると出てくるわけでございます。  なお、これを経営規模別に見てみますと、やはり頭数の規模の大きいものと小さいものとの差が歴然と出ておりまして、たとえば五、六頭の規模までですと千円台の水準でございますが、二十頭から二十九頭になりますと三千円をこえ、三十頭以上になりますと五千円をこえるような家族労働報酬が出てくるわけでございます。もちろん、これは経営規模が大きいほど省力化が進みまして、労働時間が非常に少なくなっているという関係から、規模別労働報酬の格差というものが非常に大きく出ているわけでございます。  以上、概要でございますが、主要な費目と若干の収益状況につきまして御説明申し上げました。     —————————————
  6. 熊谷義雄

    熊谷委員長代理 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。芳賀貢君。
  7. 芳賀貢

    芳賀委員 ただいま畜産局長並びに統計調査部長から説明がありましたけれども、順序を追って質問いたします。  まず第一に、昭和四十七年度の加工原料乳保証乳価の問題ですが、いま局長から説明のあった昨年の保証価格よりも三十一銭上げキロ当たり四十四円七十九銭、この政府試算による保証乳価原案については、これは農林省だけの単独の案であるか、政府部内で、特に財政当局大蔵省とも相談して、四十七年度の保証乳価並びに豚肉基準価格等については政府案としてこの数字が適当である、そういうことでまとめて昨日の畜産審議会政府試算として提出したというふうに考えてよろしいですか。
  8. 増田久

    増田(久)政府委員 審議会諮問する責任者農林大臣でございますので、農林省としての試算として出したわけでございます。ただし、その過程において当然財政当局とも相互に十分検討を深めまして、これがおおむね妥当であるということで出したわけでございます。
  9. 芳賀貢

    芳賀委員 大蔵省主計官、来ていますか。——ではその点について。
  10. 山口光秀

    山口説明員 ただいま農林省からお答えしたとおりであります。
  11. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは今後政府部内でこれを再検討する必要はないわけですね。
  12. 増田久

    増田(久)政府委員 これからわれわれといたしましては、政府内部としてはすでに意見の統一が出ているわけでございますから、その他いろいろ諸般情勢変化のない限りにおいては、この原案で進みたい、かように考えております。
  13. 芳賀貢

    芳賀委員 畜産審議会の、二十八日は豚肉、昨日二十九日は乳価答申をいま見たのですけれども、何を審議して何を答申したということが近ごろは全然わからぬですね。全く政府御用審議会と化して、具体的にどうだということが何もないでしょう。政府試算が妥当であるとも書いてないし、適切でないとも書いてなくて、これでは審議会なんというものは要らぬじゃないですか。政府としてもたよりないでしょう、いいとも悪いともはっきりできないようなものでは。
  14. 増田久

    増田(久)政府委員 価格決定する責任政府にあるわけでございます。その過程において各層を代表しておられます委員の方々の意見を聞くということは、われわれが最後の意見決定するにあたっては非常に重要なる御意見を聞かしていただいた、かように考えているわけでございます。
  15. 芳賀貢

    芳賀委員 重要な意見答申に全然出てないじゃないですか。  それは別として、昨日、畜産局長審議会に対してことしの乳価決定に対する方針を述べておるわけですが、これは局長あいさつの一〇ページに載っておりますけれども、大事な点は、指定乳製品安定指標価格については、四十三年度以降据え置かれてきたところであるが、四十七年度においても乳製品市況動向から見て、かつ、乳製品消費の安定に資する観点からこれを据え置くことといたしております、これが問題なわけですね。いまの政府乳価算定方式は積み上げ方式ではないわけですね。まず据え置きをやるということを政治的にきめる、そうしてそれには四十三年度から指定乳製品を毎年毎年これはくぎづけにしておるわけだから、乳価計算の場合には指定乳製品指標価格から製造業者製造費用販売費用をまず引く、その残りから販売業者マージンを引く、その残りが結局原料代ということになるわけです。余った金額ですね。それも正当性があってもなくても、とにかく会社が要るだけの費用農林省報告して、農林省はそれに基づいて製造経費あるいは利潤販売経費広告代からあるいは会社接待費まで全部引いてしまうわけだ、その残りから今度は販売業者の必要なマージンを引いた残り金額、これを乳代とみなしてそれを基準取引価格に当てはめるという、そういうやり方でやっておるわけでしょう。これは逆なわけだね。ほんとうは一番大事な原料代というものを基礎にして、それに製造販売経費販売業者マージンを加算して乳製品の適正な価格をきめるというのが順序だけれども、まず、畜産局長あいさつでは、指定乳製品安定指標価格くぎづけにするということは、当然必要なものを引いた残り基準取引価格というものは、前年の範囲にとどまるということになるわけだし、保証価格の場合は、安定基準価格政府補給金を加えた価格ということになっておるが、これもことしの畜産予算を見ても、去年よりは保証価格に要する補給金は十億円はふえておるんですね、確かに。したがって、予算面からこれは拘束を受けておるわけだからして、結局どのように生産事情というものが変化しても、統計調査部が毎年適正な生産費動向というものを発表しても、それとはおかまいなしに毎年据え置き据え置きということをやっておるわけですね。そういうやり方はおかしいじゃないですか。  そこで、基本的には、まず必要な生乳生産費というものをきめて、それから製品価格をきめるということにやり方を変えなければだめだと思うんですよ。そういう点はどう考えているか。いままでそうだから毎年同じことをやるということでやるわけですか。
  16. 増田久

    増田(久)政府委員 先生承知のとおり、いまの不足払い制度というものは、取引条件が非常に不利であろう加工原料乳の再生産を確保するために、まずそこの生産費を補償するという制度になっているわけでございます。したがって、まず生産者の側から見るならば、そこの価格保証されるならば、少なくとも再生産は可能であろう、こういう価格になるわけであります。一方、安定指標価格から導かれます基準取引価格というのは、業者サイドから見た乳代支払い可能価格でありますから、その差額がいわゆる不足払い額ということに相なるわけでございます。したがって、制度としては私はこれが適切なものだと考えておるわけでございます。  なお、安定指標価格を据え置いたといいます諸般情勢につきましては、先生もすでに御承知のとおり、わが国の酪農近代化合理化というものは日進月歩で進んでまいっておりますけれども、乳製品価格水準というものは、残念ながら国際的にまだ非常に割り高水準にあって、特に脱脂粉乳のごときは倍近いような価格差がある。しかも、そういうことでそういう高い脱脂粉乳というものを続けておきますことは、当然これを使う側からいろいろ批判の出るところでございます。そういう意味で、われわれとしては酪農の姿勢といたしまして、安定指標価格据え置きというのが至当である、かように考えておるわけでございます。
  17. 芳賀貢

    芳賀委員 とにかく会社からの報告に基づいて全部認めておるのでしょう。会社については報告どおり経費を全部認めて、大事な生産者に対しては生産者の実態というものは認めない。これはおかしいんじゃないか。会社は必要なものを全部報告して、それを農林省はオーケーだ。必要なものを取って余ったものが基準取引価格で、これが乳代支払い可能価格なんという、こういうばかなことはないでしょう。会社に対して報告どおり認めるのであれば、生産者に対しても生産者団体あるいはまた統計調査部生産費調査動向というものを反映させるということが大事なわけだが、あなたのところはそれを全然やってないでしょう。そんなもの答弁する必要ないですよ。だから、そういうことで毎年毎年やっておると、たとえば昭和四十五年はキロ当たり二十一銭しか上がっておらぬでしょう。これは前年に対して〇・五%しか数字が変わってないですからね。ところが、統計調査生産費調査は一年あとでしか出ないけれども、四十五年については五・一%生産費は前年対比上昇しておるわけです。昨年の場合は七十五銭しか価格が変わっていないわけですからして前年度価格に比べると、これはおおよそ一・七%ということになるわけです。ところ、がただいまの中沢統計調査部長説明によると、昨年度は四十五年に対して六%生産費上昇しておるということになっておるわけです。農林省が確実な生産費調査をやって五・一%あるいは六%前年対比生産費上昇しておるということを全く無視して、しかも、価格算定の各要素については、統計調査調査結果というものを悪用して据え置き据え置きということをやっておるわけだから、その結果どういうことになるかというと、たとえば用途別加工原料乳価格それから飲用向け生乳価格というものが毎年毎年その差が拡大しておるわけでしょう。去年は飲用向けキロ当たり六十円から六十三円ということになっておる。加工向けは、これは国が保証すると言いながら、四十四円四十八銭しかなっておらぬということになれば、同じ生産者生産した生乳において、価格差というものがキロ当たり二十二円ないし二十五円開いておる、こういうことになっておるでしょう。そうすると、飲用乳価は何ら政府決定もしてないし保証もしておらぬけれども、そういう市場価格が形成されるということは、需給関係から見て、需給実勢価格というものは日本においては自然に成り立っておるということになるわけです。これを全く無視して、飲用加工向け価格差というものを行政的に毎年毎年拡大しておるということ、これは非常に問題があるわけですよ。こういう不足払いやり方というものは、局長も昔は乳製品課長をやったこともあるわけだから、このことについては農林省内部では他に遜色のない程度の経験と知識を持っておるでしょう。だから、世界の酪農あるいは価格問題等に対する方策はどういうことでやっておるということは、農林省の中ではあなたが一番知っておると思うのですよ。こういうことを毎年毎年続けるということになれば、いまの補給金法の目的と全く逆行するということに当然なるわけです。だから、この点を十分反省してことしの保証乳価決定をやってもらわぬと、これはたいへんなことになるのですよ。  とにかく農林省生産費調査の結果は一年あとにしかわからぬ。それから保証乳価の場合には年度初めにきめるわけだからして、年度末において当該年度の生産費動向は実態としてどうなったかということを毎年比較検討して、そこに大きな誤謬がある場合においては、次の年度の価格政策の中で是正するということをやらなければ、どこまでいっても誤りを直すことができないで終わってしまうじゃないですか。指定乳製品安定指標価格というものを四年も五年も据え置くのがあたりまえだなんという、そういう実態を知らぬ暴論というのは一体どこから出てくるのだ。結局、いまの不足払い法というものは生産者擁護じゃないでしょう。会社に対して不当な安い基準取引価格というものを保証するためにこれはできておるわけだから、いまでは加工原料乳の主要な生産地の生産者というものは、こういう制度があってよかったという考えは全然ないのですよ。一たん保証価格というものがきまれば、それに七円六銭の政府からの補給金がついておるわけだから、これ以上高く取引できないのです。だから、米以上に厳重な、低乳価によるところの統制価格という、強制的な実行力を持っておるのがいまの保証乳価ということになるわけです。間違ってでも一たんきめたことにおいては、もう手直しをしない。これが生産意欲を刺激して、酪農生産拡大の方向に行っているというのは大間違いですよ。低乳価でどんどん攻められるから、窮迫生産をしなければ酪農の専業的な維持ができないというのが今日の状態ですよ。二十頭で安定的な経営が確保できるとすれば、何も苦しんで三十頭も四十頭も牛の数をふやして、そして家族じゅうが苦労することはないわけだ。ところが、どこまでいっても、幾らふやしても安定経営ができないから、生きるために窮迫的に牛の数をふやさなければならぬ。その結果、また生産費が低減したとか生産性が向上したということで、その生産性向上の努力、成果というものは、メリットは全部マイナス要素で乳価から差し引いてしまう。だから、どこまで苦労しても安定的な酪農経営はできないというのが今日の実情ですよ。  これをわからないでやったというんなら話はわかる。能力も知識もなくて、権力だけでわからぬできめたということであれば、まだ情状酌量の余地もあるが、裏も表も知っておって、こうやればどこまでも低乳価を続けていくことができる、そういう考え方の上に立って、国の権力機構を悪用して毎年毎年生産者をばかにしたような二十一銭とか七十五銭とか三十一銭とか、こういうでたらめな官僚の一番悪いところを露骨にあらわしたような価格操作というものは、断じて委員会としては認めるわけにはいかないですよ。一体これに対してどう考えておるか。本来なら当然赤城農林大臣が来て、こういう点に対しては明快にすべきですけれども、きょうは四月暫定の予算委員会審議のために出られないのでまことに残念ですが、これは伊藤政務次官から、考えがあれば、述べてもらいたい。
  18. 増田久

    増田(久)政府委員 芳賀先生からいろいろのおしかりを受けたわけでございますけれども、われわれといたしましては、厳正に生産費を精査いたしまして、その正確な基礎の上に立って推定生産費というものを算定いたしておるものでございまして、われわれとしてはおおむね妥当な水準がすでに得られているものという確信を持っているわけでございます。これにつきましては、先生ただいま飢餓生産であるというお話がありまして、われわれの自己満足的なという御批判もあろうかと思いますけれども、現在全国で一〇一・五というような低い生産の中にありまして、たとえば北海道のようなところの加工乳地帯において、全国で一番高い一〇六・七という生産の伸びを示してきているということは、やはり私は不足払い制度というものがそこに強いてこ入れの機能を果たしているものという確信を持っているわけでございます。
  19. 芳賀貢

    芳賀委員 局長、そういうつまらぬことを言うもんじゃないですよ。いいですか、専業的な酪農というものは、酪農の経営で所得が上がらぬ場合でも、水田の減反、休耕のように、兼業とか出かせぎをやるというわけにいかないんですよ。先日発表された農業白書の中でも、日本の農業というものはまことに危機的な重大段階に来ておるわけだから、そういう中で相対的には兼業が九割も進んでいく、出かせぎが百二十万以上にもなっておるという中において、生きものを扱っておる畜産農家というものは、出かせぎ、兼業をやるということはできないんですよ。できないから、その経営の中で何とか最低生活を維持するということになれば、牛の数をふやすよりしようがないじゃないか。それが好ましい状態なんということは、とんでもない間違いですよ。それはあなたの手元にも調査してあるでしょう。北海道における頭数別階層農家の固定化負債の状態が一体どうなっておるか。三十頭規模以上の場合においては、最低で五百万円、多いのは二千万円です。なかなか償還できない。利子の支払いだけでも容易でないという五百万から二千万に及ぶ固定化した負債をかかえてやっておるんですよ。そういうことをあなた、わかっておるわけだから、そういう実態を知らないで、北海道の生産拡大されておるから、これは不足払いのせいだというものじゃないですよ。どんどん追い詰めておるじゃないか。そういう点は毎年毎年の保証乳価据え置きの中に大きな欠陥というものが生まれておるわけだからして、そういうやり方というものは、農林省生産費調査というものが保証乳価決定のちょうど一年あとにしか公表されないけれども、政府の年当初にきめた保証価格と一年後の結果として判明した生産費動向というものと比較して、あまりにも大きな格差がある場合においては、やはり価格政策の中で手直しをやるということは当然だと思うのですよ。先ほども言ったとおり、四十五年度の場合には保証乳価は前年度に対して〇・五%しか上げておらぬ。ところが、生産費は五・一%上がっておる。十倍の差があるじゃないか。去年の場合には一・七%しか上げていない。ところが、いま統計調査部報告によると、これは六%上がったということになっておるわけだから、その開きというものは、結局、生産者の犠牲の上に立って低乳価を続けている。そういう状態の中で、乳業会社は毎年キロ当たり三十七円何がしの飲用向けの取引価格よりも二十二円ないし二十五円安い乳価で手に入れて、そうして事業をやっておるということになるわけでしょう。だから、飲用と加工の格差が拡大すればするほど、利潤追求の乳業会社としては、できるだけ極端に安い原料乳というものを数量的に確保したいというそういう経営上の考えに当然向くわけですよ。だから、北海道等においても加工乳の数量等が全然減っていないでしょう。北海道だけで百万トンに及ぶ加工乳を低い補給金でようやく守っていかなければならぬというような状態というものは、飲用拡大して加工向けを少なくするという、この法律の精神とは全く逆なことを政府自身がやっておるわけだからして、この点は、ことしの価格決定については、大臣がいないので残念だけれども、これはあとで直接会って話しますけれども、肝に銘じてことしはやってもらわなければならぬと思うのです。いいですか。  それから、次にお尋ねしたいのは、労働費計算が、ことしもまた原案では解決されておらないですね。自給飼料についての自家労賃の扱いというものがことしも依然として日雇い労賃方式に・よっておるでしょう。こういうものは、委員会で指摘された場合はおいては、率直に直すのが当然ですよ。統計調査部の場合はすべて日雇い労賃というものを採用しておるから、そういうものを用いることに問題はあるけれども、とにかく一貫性はあるわけだ。飼育労働にしても自給飼料労働にしても、とにかく日雇い労賃方式でやっておるわけだから一貫性はあるが、畜産局の場合は、同一労働に対して製造業賃金と臨時日雇い労賃の差別をつけておるという、これはだれが考えてもおかしいじゃないかというやり方をいまだに捨てていない。その理由は、これを続けていけば、キロ当たり一円七十銭ないし二円安く保証乳価をきめることができるというそれだけの根拠で、いつまでたっても手直しをしないということをまだやっておるわけでしょう。いままでの局長は一回言われれば、その年は無理にやった場合があっても、次の年は必ずそういう点は是正しておるですよ。ところが、増田畜産局長は、去年もそういう指摘を私がした、今度のきょうのを見ても、また同じことをやっておるわけですから、こういうのは頑迷というか冷血というか、人間評価の上から見ると、あまりいい点数はつかぬということになる。  そこで、これは統計調査部長にお聞きしますが、一体農業労働というものは、農業の経営者、農業の経営管理をやるところの持続的な労働ですね。それから家族従業者も、これは通年的な労働をやっておるわけだから、こういうものを他産業労賃あるいは日雇い労賃に置きかえる場合において、農家の自家労働というものをいわゆる常用労働として評価すべきか、日々雇われるところの臨時的な日雇い労働として扱うかというところに、これは根本的な問題があるのですよ。自家労働の場合は、いずれにしても日雇いでもないし、常用労働者でもないし、雇用関係はないのだけれども、しかし、農業経営における労働というものは、賃金労働の場合の常用労働者として位置づけをすべきか、臨時日雇い労働者として位置づけをすべきかということは、これは農政の根本に触れる問題でしょう。そうじゃないですか。安い賃金さえとればいいというような考えでやるべきじゃないでしょう。ここらにいまの農林省の役人の認識の不足があるのですよ。これはどう考えているのですか。農業労働というのは、雇用労働の場合の常用労働者とこれをみなすべきか、日々雇われる不安定雇用のもとに置かれておる臨時日雇い労働者とみなしてこれを扱うか、このいずれをとろうとしておるのか。これは統計部長と畜産局長ではっきりしてもらいたい。
  20. 中沢三郎

    中沢説明員 お答え申し上げます。  農業労働、農業経営に従事している労働力を常用の形態にとらえるべきか、日雇いという形態にとらえるべきかという御質問でございますが、これはやはり経営を継続的にしておりますので、労働の性質としては、常用ということばに該当するものだと思います。  ただ、統計調査部生産費調査をしております場合の自家労働の評価を、農村臨時日雇い賃金でやっておりますが、その場合の日雇いと常用ということばの区別でございますけれども、あくまでも労働の性質に基づくというよりも、私たちが生産費調査をやっておりますのは、生産に要された費用をどう計算するかという観点でございますので、自家労賃の評価の基準は何に置くかという場合に、自家労働力が市場に出された場合にどういう支払い賃金を受けるかという観点から考えますと、日雇いということばを使っておりますが、自家労賃を評価する場合の市価としての基準は、現実の農村においては日雇いという形でしかない。常用という形も、年雇みたいな形がわずかでありますが残っておりますけれども、しかし、その評価をどうすべきかということになりますと、これはやはりどこかに別に基準を求める。生計費計算というものをとっておりませんので、生計費計算により得ませんので、やはりどこかに市価というものを求めざるを得ないわけでございます。そういう意味におきまして、臨時ということばを使っておりますが、それは自家労働の評価を市価という形に求める場合に、現実に日雇いという形であるがゆえに日雇いということばを使っておりますが、あくまでも経営の場合における労働の性質は、基本はやはり先生おっしゃるように、常用という労働の形態としての性質のものと考えるべきだと思います。  この生産費計算上その評価の観点からいいますと、やはり日雇いという形であるものを市価という形でとらえたものとして受け取っているわけでございますので、労働の性質問題と、統計調査部でやっている生産費調査の場合の日雇いということばを観点を変えてお考えいただけないか、こういうふうに思う次第でございます。
  21. 増田久

    増田(久)政府委員 生産費計算のあり方としては、私はいま統計調査部長からお答えになったのが妥当だと思っております。  ただ、これは一般の賃金の場合もあることだと思いますけれども、たとえばある労働者が特定の職種に……(芳賀委員「雇用労働者か、日雇い労働者か」と呼ぶ)私は、原則として生産費計算という計算で補償すべき生産費ということであれば日雇い労働であろう……(芳賀委員「常用労働というのはどういう性格のものか聞いている。金のことではない」と呼ぶ)私のいま申し上げておりますことは、いま統計調査部長がお答え申し上げましたとおり、その常用としてとらえるべきであろうということは確かでございますけれども、それのとらえ方としては、いまこれも全く統計調査部長の言ったとおりのことだろう、かように考えております。
  22. 芳賀貢

    芳賀委員 統計調査の場合は、生産費の結果を見るわけですからね。それに自家労賃というものを一定の方式に基づいて当てはめておくということだけなわけだから、それは結果的に自家労働報酬が幾らになっておるということもちゃんと生産費調査の結果としては出ておるわけだから、その程度のことはわかるでしょう。ところが、畜産局のきめる保証乳価というものは生産費じゃないですからね。農業の自家労働というものを評価して、それを実行するということで保証乳価というものをつくるわけだから、それがきまれば、その中に包括されておる自家労働というものはその評価に基づいて実行されるということになるわけだから、取り扱いは全く違うのですよ。農林省の役人を何十年もやっておって、農業の自家労働というものは雇用契約に基づくところの常用労働者と見るべきか、臨時日雇い労働者と見るべきかという、その性格上の位置づけさえもわからぬなんというのじゃしようがないじゃないですか。全然わからぬならいいですよ。わかっておってへたな理屈をつけて、一円でも二円でも保証乳価を切り下げるというような、そういうけちな考えの上に立って、それに正当性をつけるような理屈というものは、この委員会ではやめてもらいたいと思うのですよ。
  23. 増田久

    増田(久)政府委員 私は決して無理なことを言っているつもりはないわけでございまして、われわれは、管理飼養労働については、その周年拘束性と申しますか、それから飼養管理という熟練度を要する特殊技能というものに着目して、かりに五人以上の製造業の労賃をもって評価するということでございまして、私のいままでやっているやり方というものは妥当なものと考えておる次第でございます。
  24. 芳賀貢

    芳賀委員 飼養労働はいいですよ。これも委員会で指摘されて、三年くらいあとで直したのですから。ただ問題は、自給飼料については、飼料価換算による飼料費ということにしないで、配分計算でやっておるわけでしょう。その中の百キロ当たり一・六時間とか一・七時間という労働時間については、これは日雇い賃金で評価しているわけだから、この点だけがおかしいじゃないかということを毎年当委員会においても指摘しておるわけなんですよ。そうしなければならぬという理由は何にもないでしょう。  それでは、この自給飼料は作物だからして、作物生産については臨時日雇い労賃でやっているかというと、そうじゃないでしょう。作物の基幹をなす稲作については、米の生産費をきめる場合、米作の自家労働をきめる場合には、全部他産業労働によっているじゃないですか。同じ作物の中で、米は全部製造業、飼料作物については、これは同じ経営者が労働をしておっても、日雇い労賃というような、こういうばかなことはないじゃないですか。農業経営全体の中で稲作であろうと飼料作物であろうと、経営管理というものを行なって初めて所期の生産目的が達成できるわけですからね。いや、これは日雇い労働者にまかしておけばできるのだというようなものじゃないんじゃないですか。何ら理論的根拠がないにもかかわらず、一円五十銭ないし二円、キロ当たり乳価を下げるために、こういうざまの悪いものをそのまま残しておるわけでしょう。こういう点は来年また繰り返さないように、ことしの乳価決定の場合には、この算式というものは当然改める必要があるわけだ。大蔵省の担当の主計官も来ているわけだから、こういうものは十分政府部内で相談してことしは改めて、それによって保証乳価をきめる、こういうことでぜひやるべきだと思います。結果はあとでわかるわけだから……。  次に、お尋ねしたいのは、結局、保証乳価を大幅に正常に是正するためには、その最も効果的な方法としては、やはり加工原料乳基準取引価格の底上げをやる以外にないのですよ。それは補給金をいまの七円から十円とか十二円に上げるというそういう政府の積極的な考えがあれば、その分だけは乳価が上がるが、そういう大胆な考えはないでしょう。とにかく何銭というみみっちいそろばんをやっているわけですからね。政府の財政支出をしなくて済むという乳価是正の方法としては、基準取引価格の底上げをする。これを上げなければ、どうしようもないでしょう。いいですか。だから、思い切ってこれを引き上げる。いままで保証乳価が四十四円四十八銭だから、少なくともこれを五十円台にまで上げるとすれば、これは約六円ですね、基準取引価格上げることはできるわけですからね。そういうことをやらなければ、会社の顔色だけを見て、取引価格さえ安くしておけばいいというような考えでは、これは根本的な解決はできないですよ。とにかく飲用向け生乳の最低価格キロ当たり六十円であるとすれば、やはり同じ生乳の価値としては少なくとも十円くらいの幅の中でキロ当たり五十円くらいにするのは当然ですよ。とにかく十五円も十七円も保証乳価飲用乳の取引価格が違うという、こういうべらぼうなことは、世界どこをさがしてもないわけだから。だから、政府が金を出し惜しみするのであれば、金を出さぬでも済むところの基準取引価格というものをこの際思い切って適正に引き上げる。そうして少なくとも生産者団体は二十二円程度の引き上げ要求をしているけれども、これは一年間に二十円上げるなんということはなかなかできないでしょう。だから、三年計画でやるとしても、少なくとも毎年六円くらいずつは計画的に上げていくということになれば、大幅値上げの第一年目としては、少なくとも保証価格は五十円台に上げる。そうして政府として七円の補給金をもっとふやす考えがあれば、これは十円くらいにすれば、基準取引価格は三円上げればいいということになるわけだ。そういうやり方というものは増田さんのほうが私よりじょうずなわけだ。われわれはごまかしは絶対できないし、うそは言えぬほうだけれども、いまの農林省というのはごまかしだけに専念しておるわけだから。そういうやり方をしたらどうですか。
  25. 増田久

    増田(久)政府委員 先ほど申し上げましたとおり、私の一番いま心配しておりますことの一つは、わが国における乳製品というものが一体今後どうなるかということでございます。いまでさえ国際的に非常に割高であるということ。したがって、いま基準取引価格上げるということになれば、またその価格上げざるを得ないということになれば、いよいよ乳製品の需要の減退を一方において引き起こし、かつまた、そういう高いものであるならば、乳製品の自由化をすべきだという消費者側の声というものも出る可能性なしとしない。そういうことは私は酪農政策を担当する者としてとるべきでないという確信を持っておる次第でございます。
  26. 芳賀貢

    芳賀委員 あなたの確信といったって、それでは食品全体をくぎづけにできるかというと、いまの政府にはそういう力はないでしょう。消費者米価さえ物統令を取っ払って、今度は消費価格が幾ら上がってもかまわぬというように政府自身がするわけだから。公共料金もみな上げるわけでしょう。その中でただ加工乳だけを何が何でも据え置く、ほかのものは手のつけようがないというような、そういうことじゃ弱い者いじめだけをしておるということになるわけだから、そうじゃないですか。全部徹底したことをいまの佐藤内閣がやるのなら、これは話はわかりますよ。それは外国だって、あらゆる物価に対して凍結令を大統領権限で実行するという、そのくらいの迫力のあることを、いいにしろ悪いにしろ、やれる力を持っておる政府であればこれは別ですよ。一番弱い者だけを苦しめて、乳製品あるいは加工乳価だけは三年も四年も据え置きしましたなんということ、それは国民生活や国民経済にどれだけの一体寄与をするかということなんですよ。いいですか、基準取引価格上げるのが乳製品価格に響くのであれば、この補給金を六円ふやせばいいんだ、それは。七円を十三円出すということにすればそれで解決はできるわけですよ。とにかくこういうことを思い切ってやらなければ、保証乳価の適正な決定ということはできないわけだから、これも十分頭の中に入れて最後の詰めをやってもらいたいと思うのですよ。  それから最後にもう一つ、いまのような、飲用と加工の大幅な格差をつける、格差を拡大されるということになれば、一番大事な生乳の主要生産地帯というものは永久に低乳価地帯として凍結されるということは、これは火を見るよりも明らかでしょう。そういう地帯で、今度は九〇%も乳製品だけを製造する、しかも、その乳製品になったものからまた加工乳というものをつくって、そうして国民に新鮮な生乳でなくて、加工乳の形で牛乳の供給をしなければならぬということにいまなっておるわけですね。大体飲用乳の中で新鮮な生乳と加工乳の割合というのは六対四か、五・五対四・五くらいでしょう。こういう状態が続くと、ちょうど加工乳と生乳の比率が五割、五割ということになるでしょう。こういう加工乳地帯を凍結しておくと、そこで極端な低乳価を進めるということになれば、会社としては三十七円の安い牛乳で製品をつくって、それを今度はまた加工乳にして市販するということをいまやっておるわけだから、結局国民が期待しておる有毒性、有害性のない北海道、東北の新鮮な牛乳というものが国民になかなか届かぬというような、そういう弊害が出ておるわけですよ。これを是正しなければならぬわけだ。  そこで、一たん乳製品にしたものを原料にして加工乳にした場合、一体その加工乳に戻すために牛乳換算にしてキロ当たりどのくらい経費がかかるということをここではっきりしてもらいたいのです。乳製品から加工乳に直す場合の必要経費というものは、牛乳換算一キロについて幾らになるかということを、その点だけをひとつ明確にしてもらいたい。
  27. 増田久

    増田(久)政府委員 まことに恐縮ですが、ただいま手元に資料を持っておりませんので、これは後ほど資料としてお出ししたいと思いますが、私の記憶にあるところで申し上げますと、現在の市乳の価格というものが還元する価格よりも高れけば、それ以上メーカーとしては買うはずがないわけでございますので、その中に入っている。したがって、現在の段階で現在の脱粉を使いバターを使う限りにおいては、いまだ飲用乳から市乳をつくるよりも高い水準にあるというように理解をいたしております。これは後ほど正確な数字は資料としてお出ししたいと思います。
  28. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは牛乳換算でキロ当たり二十二、三円くらいかかるのですか。わからぬければ、あとで委員会が終わるまでに正確なことを言ってください。その問題が一つ。  それからもう一つは、これは前からも問題になっておる点ですが、結局、酪農地帯の優秀な牛乳というのを低乳価くぎづけすると、国民が希望してもそこへ届けることができぬということを打開するためには、当然生乳の処理加工をして飲用牛乳として、遠距離輸送方式をとって大消費地に自由に供給されるという道を開く必要があるわけでしょう。これは総理大臣の諮問機関の物価安定政策会議の特別部会、そこでもできるだけすみやかに原料乳地帯の乳を大消費地に遠距離輸送する方法を講ぜよということは提言として出されておるわけだから、結局こういうことはやる必要があるわけだ。ところが、これもこの不足払い法の審議の当時から、社会党としては牛乳法という法案を出して、理論的な基礎に立って毎年政策論議をしておるわけですけれども、なかなか農林省としてはこれに真剣に取り組みをしない。  そこで、この際、国鉄当局から出席してもらっていますからして、一体国鉄の輸送機能をもって、すでにもう実験段階を終わったわけですけれども、いわゆる専用のコンテナ方式で、たとえば北海道なら北海道の生産地帯で飲用乳をちゃんと処理して、そうして短時間で東京あるいは大阪の大消費地に輸送供給する。これはやはりどういう方法で輸送計画を立てるかということが大事な点ですから、仕事をやる側の国鉄のほうから説明してもらいたいと思います。
  29. 藤井徹

    ○藤井説明員 私、国鉄におきまして乳製品関係の輸送体質の改善を担当いたしておる者でございます。  ただいまの先生の御質問にお答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、北海道のなま牛乳の輸送につきましては、私どもといたしましても、いわゆる乳製品の流通改善に直接大きく貢献するということで、非常に関心を持っておるわけでございます。それで実は昨年二回ほどにわたりまして、北海道のホクレン系の乳業会社先生御指摘のような構想を立てられまして、国鉄のコンテナによる実験を行なったわけでございます。実験の主眼は主として、これは何ぶんにも相当長距離にわたる輸送でございますので、長距離輸送をしてその間において鮮度などが低下いたしまして、そのために飲用に適さなくなるということが懸念されましたので、その点の安全性と申しますか、鮮度保持の点をテストするためにやったわけでございます。その実験は、先ほど申し上げましたように、六月と九月の二回にわたって行なわれましたが、非常に好結果でございまして、技術的には十分これに対応し得る、鮮度保持の点は心配ないという結論が得られたわけでございます。国鉄といたしましては、これに対応いたしまして、北海道地区各地から、高速のコンテナによる特急輸送サービスを設定いたしておりまして、それと輸送容器でございますコンテナにつきましては、現在、冷蔵コンテナを全部で千五百個ばかり持っておりますが、これも冷蔵コンテナにきわめて軽微の改造を加えることによりまして、十分これに対応し得るという確信を持っておりまして、いわゆる輸送者側、国鉄を御利用いただきます側におきます体制が整いまして御要望がございますれば、いつでも輸送サービスをさしていただくという確信を持っております。
  30. 芳賀貢

    芳賀委員 確信はいいが、問題はその輸送費ですよ。幾らかかるということがわからなければ、確信だけ持たれたって、今度の運賃値上げ法案みたいに二〇%も二五%も上げるなんということになれば、これはたいへんなことになるのですからね。いまの運賃制のもとにおいて、これは当然政策的に扱うわけだから、そういう場合は、たとえばコンテナ五トン一個どれだけかかるとか、あるいはまた二百ccの紙容器一個に換算すれば一円になるとか幾らになるとか、そういうことはわかると思うのですがね。そういう点、この委員会で明らかにしておいてもらいたい。それで実行が可能か不可能かという判断の資料になるわけですから、その点までひとつ。
  31. 藤井徹

    ○藤井説明員 ただいまの点にお答え申し上げます。  昨年行なわれました実験におきましては、積み込みましたのが大体百八十ccのテトラパックに包装したものと、それから五百ccと、千ccの同じく紙のパックに包装いたしましたものを混載いたしたわけでございまして、百八十cc、すなわち一合のテトラパック換算で申しますと、第一回目に例をとって申しますと、一万六千二百七十四個に当たるわけでございます。このテストの区間は、具体的に申し上げますと、北海道の帯広から東京向けでございますが、コンテナー個当たり大体三万一千七百円についておりまして、テトラパック一個当たりに引き直しますと、一円九十五銭ということでございます。  なお、これはテストの段階でございまして、コンテナの容量に対しまして比較的軽積みと申しますか、余裕がある積み方をしておるわけでございまして、本格的に実施された段階におきましては、私ども、その利用者でございますホクレン系の乳業会社から聞いておる話では、大体二万個以上は積載可能であるというお話でございますので、この輸送費はさらにそれによって引き下げが可能であると考えておるわけでございます。
  32. 芳賀貢

    芳賀委員 申し合わせの時間をちょっと過ぎましたので、これで結論を申し上げます。  伊藤政務次官、いろいろ質疑の内容を聞いておられたと思うのですよ。大臣が出席しておればあらためて言う必要はありませんが、いまの乳価問題を中心とした数々の論議の主要な点については、ぜひ補佐役の政務次官からも赤城農林大臣に伝えておいてもらいたい。  要約すれば、毎年政府決定する保証乳価据え置きというものは、その一年後の生産費の結果から見ると、生産費動向というものを全然反映しないで据え置き据え置きということを権力的にやっておる。この点は、生産費の結果がどうなったかということを毎年反省して、検討を加えて、大幅な極端な差が出たような場合においては、やはり次年度の価格政策の中で適正にこれを補正するという努力も必要であると思う。  それからもう一つは、いままでの乳価決定の経路というものは、先ほど言ったとおり、指定乳製品指標価格据え置きして、それから逆算的に余った費用というものを基準取引価格にするというような、会社擁護の逆算方式であったので、そうではなくて、一番大事な生乳生産費を基礎にして積み上げて、乳製品指標価格をつくるようにすべきである。それが二点ですね。  それから、乳価を、飲用向けともうキロで十五円ないし十七円開いておるわけですから、これを適正にする場合には、やはり少なくとも保証乳価は今回五十円台に上げる必要がある。そうすると、キロ当たり六円上げなければならぬわけですからね。この方法としては、補給金をそれだけふやせば一番いいわけですけれども、それがいまの政府の能力でできないとすれば、たとえば補給金を七円を十円にするとか、基準取引価格を底上げして三円高めるとか、いろいろな手法というものは大蔵当局と相談してきめればいいと思いますけれども、とにかく五十円台にするという努力はどうしてもしておかなければならぬ。  その次は、いまのように酪農の主要な生産地域の生乳を凍結するような形は望ましくない。そういうことになれば、大消費地向けに政府が、たとえば原料乳に対しては七円の補給金を出しておるわけですから、やはりそれと同じ趣旨に基づいて、遠距離輸送については、飲用向けになる場合にはその地帯に対して、農林省として毎年の計画を立てて、加工原料乳地帯の集乳計画の中から、これだけの分は東京にとにかく飲用向けとして供給する、輸送経費については加工乳の補給金に見合った額を政府が助成するということになれば、これは生きると思うのですよ。七円加工乳に支出するも、七円輸送の経費にするも、国としての経済効果というものは変わらぬと思うのです。だから、そういうことをこの際積極的に具体化する必要があるのではないかというような点ですね。これは国鉄とも十分相談して政策的にやってもらわぬと、二五%上げますとか、政策割り引き、公共割り引きも農林物資から取っ払いますなんということじゃ、これは全然話にならぬわけだから、そういう点もちゃんとやってもらわなければならぬ。  最後にもう一つは、肝心な北海道における酪農家のこげつき負債、固定化負債というものは、先ほど言いましたとおり、飼養頭数が多ければ多いほど雪だるまのようにふえておるわけです。これは中沢部長がつくった統計の資料に明らかになっております。もう三十頭以上になれば、最低五百万から二千万くらいのこげつき負債をみんなかかえておるわけですから、この点はやはり乳価問題だけでは片づかぬと思うのですよ。しかし、乳価を適正にすれば、乳代から借金も利子も払えるわけだけれども、いまの状態では払えないですからね。やはり乳価政策の中で、できるだけ固定負債が償還できるようなそういう価格政策を考える必要があるのと、もう一つは、別途に、酪農家もそうでありますけれども、農家の固定負債の整理対策というものをやはり国の施策として早急に確立する必要があるのではないか。  去年の北海道の冷害問題のときにも、赤城大臣並びに伊藤政務次官にも申し上げましたけれども、いま申したような数々の点は、どれ一つとしてこれは欠くことのできない重要な政策事項だと私は思うのです。こういう点をぜひ大臣にも伝えてもらうと同時に、純真な伊藤政務次官としても、やはり馬力をかけてぜひわれわれの期待に沿うところの乳価決定をするようにがんばってもらいたいわけです。それについての所信をひとつ。
  33. 伊藤宗一郎

    ○伊藤(宗)政府委員 一つ一つの問題については、いまここでお答えするほどのあれもございませんけれども、また事務当局には事務当局としての考え方があることも承知しておりますけれども、私も芳賀先生の驥尾に付して、政治家としては、ただいまの御質問を通じての御高見には全く同感でございます。したがいまして、また酪農、畜産がこれからの日本の農業の最重要部門であることはお互い同感の至りでございますので、そういう方向を目ざしながら、いま御指摘の一つ一つの点について、さっそくにも大臣と打ち合わせいたしまして、できますならば、今年度の乳価は、可能な限りの範囲において早急に乳価の安定あるいは畜産物資の安定のために、また上昇を含めての安定のために大いに努力することを、ここでひとつ御了承いただきたいと思います。
  34. 熊谷義雄

  35. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 乳価、豚価の問題について農林省当局に質問いたします。  畜産物の価格安定等に関する法律に基づいて、明日の年度末までに乳価、豚価を決定すべく、畜産振興審議会諮問し、二十八日には豚食肉部会、二十九日には酪農部会を開いて、それぞれ答申を受けられ、いよいよ明三十一日一政府価格を公示するという重要な時期に来ておるわけでございます。よって、以下質問申し上げるわけでありますが、政府十分検討されて、対大蔵折衝を行なわれ、日本農政の柱の一つである畜産農家の安定と再生産が確保できるよう十分に配意を願いたいことを当初申し上げるものでございます。先ほどから乳価問題についていろいろ論議がされてまいりましたので、時間等の制約もあるので、私は、豚価から質問を申し上げて、時間の許す範囲で乳価問題に入りたい、かように思うわけでございます。  まず最初に、本年は、豚価については据え置きを前提として諮問をされ、またそのような答申がなされておりますが、なぜ据え置かねばならぬようになったのか、その理由を明らかにしていただきたいと思います。
  36. 増田久

    増田(久)政府委員 決して最初から予見として、引き下げあるいは据え置きということを考えて計算したわけではございません。先生御存じのとおり、豚の生産費の中に占めます飼料代のウエートというものは非常に高い。これは御承知のとおりの状況でございまして、それがそのまま生産費のほうに大きく反映いたしまして、その結果として、昨年より一円上げというような計算が得られたわけでございます。
  37. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 昭和四十七年度の指定食肉安定価格を、いまも答弁がございましたように、一円上げられておるわけですが、その一円上げられたという具体的な根拠をひとつ詳細に説明願いたいと思います。
  38. 増田久

    増田(久)政府委員 先生御存じのとおり、豚肉安定基準価格をきめます式というものがあるわけでございます。これはもう従来ともとってきているやり方でございまして、簡単にといいますか、わかりやすく申し上げますと、昭和四十二年から六年までの五カ年間におきます農家の肉豚の庭先販売価格が、一体平均的に幾らであったかという価格を、まず求めます。要するに、五カ年間の平均的な庭先の肉豚価格というものをまずベースに置きまして、その間に一体生産費が指数として何%上がったであろうかということを、その求める価格にかけて出すわけでございます。われわれは俗称、これを需給均衡価格ということで呼んでいるわけでございますが、そういう形で求めましたものに、来年度の需給を想定いたしまして、一体来年は供給不足であるのか、過剰になるのか。そういうことで、もし不足であるならば、価格生産を刺激しなければならない、逆にもし過剰であれば、価格を押えることによって、生産を抑制しなければならない。そういう供給促進係数というものをそれにかけます。それによって出た値に対して——これは肉豚価格で出てまいりますので、求めます肉の安定基準価格というものは枝肉の価格でございますので、これを枝肉に換算をいたします。そうしてそれを標準偏差、これは通年一〇%ということに政策的にきめておりますけれども、これを上下に開くわけでございます。それが上位に出たものが上位安定価格であり、下の価格安定基準価格、こういう価格になるわけでございます。  それで、具体的に申し上げますと、去年五年平均から求めました庭先の肉豚農家販売価格が、昨年度は二百三十円でございました。それがことしは二百三十六円になっております。それから昨年は生産係数が一・〇二一でございましたが、先ほど申しましたとおり、ことしはそれが生産費のほうの下がりが大きくて、これが〇・九八六という形になったわけでございます。それからアルファ、供給促進係数が昨年度は一〇一というのを用いましたが、ことしは一〇二という形を考えたわけでございます。それが、その結果そこの下に書いております価格が二百三十七円三十五銭、したがって、昨年度は二百三十七円十八銭ということでございまして、それを——そこにある係数というのは、これは枝肉換算係数でございますので、換算して上下に開いた、上下とも昨年の一円上げ、こういう形が出た、こういうことでございます。
  39. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いま需給均衡の算定についての一応説明がございましたが、いまの算定でP1=という式を一応説明願ったわけですけれども、いわゆる求める価格について二百三十六円というのが今年度の、すなわち過去の五年間の農家の手取り平均価格、こういうことになろうかと思うのですが、示されたわけです。昨年度は二百五十五円ということで、ことしはこれが十九円安くなっておるわけです。まあ厳密に言うと、四捨五入してありますから約十九円ということになりますが、どうしてことしは二百三十六円にしたのですか。二百五十五円という数字が出ておると思うわけだが、実際問題として修正値が出ておるわけですけれども、その点を説明願いたいと思います。
  40. 増田久

    増田(久)政府委員 先ほど申しましたとおり、昨年採用いたしました片の価格は二百三十円でございます。実際算定に使いましたのは二百三十円でございます。おそらく先生のおっしゃっておりますのは、過去の非常な異常高騰時の価格というものを修正してやるというやり方を従来ともとってまいっておりますけれども、そういうことなしにやればそういう価格になるではないかということをおっしゃっておられるのだろうと思いますけれども、それは従来ともそこの異常高値のところは修正して出すという方式をやってきておるわけでございます。
  41. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、このいわゆる上位価格に、枝肉の卸価格のところの修正値が出ております、この修正値をいわゆる肉豚農家販売価格のほうへ引き直しているというように私は思うわけです。いわゆる単純計算でこのように修正をしている、かように見受けるのですが、従来こういったことは例がないのに、今回なぜこういった修正をするようにしたのか、その点もひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
  42. 増田久

    増田(久)政府委員 従来とも実はこのm、kと申しますか、mを掛けて常数のkを出すというやり方をやっておるわけでございますが、これは最近時でY=mX+k、Yは枝肉一キロ当たりの卸価格、Xはいわゆる農家販売価格ということで、それにk——常数ということで、従来からある算式を一定の回帰式で求めているやり方をやっているわけでございます。これは新しいところが入りますから、昨年とは若干係数が変わってまいります。そういうことで求めた数字でございまして、やり方なりは全く従来のとおりでございます。
  43. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この修正値を見ますと、あくまでも当初から農林省据え置きを前提として考えている、そして審議会諮問をして答申を待つ、こういう姿勢であるから、結果的には据え置きということを前提に逆算して、このような無理な上位価格の修正値を出し、さらには肉豚農家販売価格の修正値を修正して無理に二百五十四円五十銭と出ている。これは四捨五入するから二百五十五円になるわけですが、それを二百三十六円二十銭、これは二十銭を切るので二百三十六円ということで、一円の値上げ、そしていわゆる値上げしたかのようなイメージを与えている。理由はいろいろ飼料が上がっているとか、また労働賃金がどうだとか、また食生活が多様化したとか、いろいろ言っておられるようですが、とんでもない。これならば諮問をしても意味がない。いわゆるロボット審議会みたいな感じがする。乳価の場合と全く同じである。型どおりのきまったものを、ただそういう法律に基づいて審議会にかけるということになっているのでかけたということにしかならない、こういうふうにしか思われない。まことに畜産農家に対して申しわけないと思うのですが、その点はどういうふうに思われますか、畜産局長
  44. 増田久

    増田(久)政府委員 いろいろ出た数字につきましてはそういう御批判もあろうかと思いますけれども、先ほど御説明申し上げましたとおり、私どものほうでは何ら恣意を加えずに、求められた数値を代入してこの数値が得られたということでございますので、私はこれはおおむね妥当な水準であるというふうに考えておる次第でございます。
  45. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 畜産局長はおおむねこれが妥当である、こういうように言っておられますけれども、政務次官にここで一点お尋ねします。  畜産を大いに今後振興していこう、また農業の柱の一つである、こういうふうに言われておる。今後生産調整で大いに畜産の経営を拡大し、また育成していこう、こういうことで、広域農業等もまた今後考えられていくわけですけれども、そういうようなことで実際にこれは畜産を伸ばすことができるかどうか。この点、政務次官はこの答申を見られてどういうふうに思われますか。
  46. 伊藤宗一郎

    ○伊藤(宗)政府委員 先ほど芳賀先生に対しましての答弁でも申しましたとおり、事務当局には事務当局の考え方があるわけですけれども、私は政治家としては、もう少し配慮をすべきだというような気持ちでおることは事実でございます。しかし、畜産局長からもお話しのように、将来の展望の問題、また国際的な関係の問題、また消費者への配慮等々、これまたわれわれ政治家としても考えなければならない問題もございますので、その点微妙なことでもございますけれども、先ほど芳賀先生に対してお答えしましたとおり、酪農、畜産がこれからのわれわれの日本の農業の最大の柱であることは御同様でございますので、もう少し前向きに、また積極的に施策を講じますように、赤城農林大臣ともこの上とも十二分に連絡をとりたいと思っております。
  47. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで政務次官、いまいろいろ論議を聞いていたと思いますけれども、この修正値というのが、実に、豚価を据え置くために、いわゆる作為的にこれをつくっていると言われてもしかたがない諮問の内容であります。そうして、答申の内容を見ても、こうすべきだ、ああすべきだという具体的なものがない。これは乳価の場合も同じであります。そういったことから、こんないわゆる見せかけみたいな諮問やり方また答申の結果を見て、これではとても納得できないです。そういった意味から、これはもう政府は明らかに最初から据え置きという方針をきめて考えておられたので、それにまさしくつじつまを合わせるためにこういう修正値を出して価格決定をしておられる、こういうふうにだれが見ても思えるわけです。こんなややこしい計算をして、ぎょうぎょうしく答申をしておられるけれども、こんなことならば、もうわざわざ、前々からくどくどしくこういったことをしてやらせる必要はないじゃないか、こういうふうに思えてしようがない。むだな時間と経費を使い、そうしてこんな資料をつくって答申をするということは無意味じゃないかと思えるわけです。せっかくこれを見ても、肉豚農家販売価格が、実際値が二百五十四円五十銭と出ているにもかかわらず、わざわざ上位価格から引き直して修正をして、二百三十六円二十銭というふうに直している。そうしてわずか一円の値上げ、こういったことではとても納得できない。結論がきまって、そうしてこういった算式が答申されていると言われてもしようがないのです。こんなことむずかしいことをくどくどと最初からやる必要はない。いわゆる手の込んだことをする必要はないじゃないか、かように私は思うわけです。これは数字的にまた常識的に考えても当然こうなるのだという、いわゆる積み上げ方式でやるべきである、かように私は思うわけですが、そういう点について、政務次官、もう一ぺん、こういう諮問やり方、今回の答申を見られて、あなたも農業にいわゆるたんのうな方でありますが、どう思われますか。今度の諮問やり方また結果を見られて、真に農家のためになると思われますか。ひとつ政務次官から答弁願いたいと思います。
  48. 伊藤宗一郎

    ○伊藤(宗)政府委員 再三再四同じような答弁で恐縮でございますけれども、お気持ち、またこの問題についての瀬野先生のお考えについてまことに同感でございます。私も身を切られるような、また切歯扼腕の気持ちであるわけでございますが、従来のいろいろの諸事情などもあり、急激にこの壁を破るというようなわけにもまいらない現在でもございますので、私も気持ちの中は非常に切歯扼腕の気持ちでございますけれども、先ほど来申し上げておりますとおり、この壁を突き破って酪農、畜産をほんとうに日本の農業の王座に据えていくためには、もっとわれわれが腹を据えてかからなければならない時点でもいまありますので、先ほど申し上げましたとおり、赤城農林大臣と十二分に連絡をとりまして、できますなれば本年度の問題、また可能な限りの範囲の早い機会において、この問題に一つ一つの前向きの解決をはかるようにさしていただきたいということを申し上げて、御了承いただきたいと思います。
  49. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 政務次官も、同感である、身を切られるような思いである、切歯扼腕しているということですが、そういう、同感で、身を切られる、切歯扼腕しておっても、結果的に出なければどうしようもないですね。行動でもっとはっきり示してもらいたいわけです。きょうはさっきから話があるように、大臣が暫定予算のほうに出ており、答弁を聞くことできませんが、大臣がいないときはかわって政務次官の答弁になるのですから、ひとつ農林大臣が答えておる、こういうように私は理解をしたいのです。従来からの事情もあるからと、こう言われるが、われわれもそれがわからぬでもないけれども、それにしても現在の農業のこの生産調整によって農家をほんとうにどうするかというたいへんなときにあまりじゃないか、かように思うわけです。何としても壁を突き破ってもらいたいと思うのだ。  そこで、農協並びに畜産農家は、この生産費調査に基づいて金を出せ、こういうように言っているわけですね。すなわち生産費方式、こういうようにわれわれは言っておりますが、当然これでやるべきじゃないか、こう思うのです。なぜそういったことはしないのか。その辺について今後はどういうように考えていくかという方向を、ひとつはっきりとしておいてもらいたいと思うのです。畜産局長並びに政務次官からでもけっこうです。
  50. 増田久

    増田(久)政府委員 豚肉については従来からこういう方式でやってきておるわけでございますが、先生おっしゃいますような御意見もございまして、従来から算式2といたしまして、生産費方式で積み上げたら一体どういうことに相なるかという試算をやっておるわけでございます。  そのことしの試算のときの結果を申し上げますと、さっきの、へそ価格とわれわれ言っておりますが、カッコ内の、大ガッコでくくった上のほうで三百九十六円でございます。それに対しまして、積み上げ価格が三百七十六円二十六銭ということでございまして、これを上下に開きますといまよりも下がるという傾向が出てまいります。しかし、われわれとしても、あくまでも豚園は需給均衡ということでございますので、そういうことでこれはひとつこれより下回るということでございますと非常に私は問題だと思いますけれども、それの中に十分入っているというように理解をいたしまして、従来どおりの式を踏襲いたしておるわけでございます。
  51. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 局長がおっしゃることは、もうたいへんあなた自身も身を切るような思いでやっておられるのじゃないかと思うのですけれども、とにかくこれは数字の魔術みたいなものですよ。それで昨年は、安定基準価格は四十五年が三百四十五円で、それに対して三百五十五円でしたから十円上がっているし、また安定上位価格は、四十五年が四百二十二円に対して四百三十四円ですから、十二円上がっているということになるのですが、ことしは一円ということで、これは相当私たちも重大視しております。もちろんあした決定をする、告示をするということになるので、いまから大蔵折衝をされて十分検討していただくと思うのですけれども、ほんとうに大臣にもひとつとくと伝えていただいてぜひとも検討していただきたい、かように思うわけです。  そこで、こればかり論議していてもしようがありませんが、この畜産は御存じのように、これはあえて申し上げるけれども、片手間ではできないわけですね。生きているわけですから、出かせぎに行くとかあるいはちょっと近所に手伝いに行くというようなことにはならない。やはり生きものを扱って飼育しているわけですから、それに専念しなければならぬという特殊な事情があります。したがって、また農外所得がなかなか得られない。こういったことから、どうしても畜産農家に対しては、他の農業と違って、生きものを扱っている関係からめんどうを見てやらなければ、畜産は、酪農にしてもこういった養豚にしても成り立たないということはよくわかっておられると思いますが、その点一円の値上げではどうしようもないのですが、畜産局長はさっきからいろいろお話を聞いておられてどう思われるか、もう一回ひとつあなたの考えをお聞きしておきたいのです。
  52. 増田久

    増田(久)政府委員 私は、先ほど申し上げたことを繰り返すようで恐縮でございますけれども、事務当局といたしまして厳正な調査に基づいて算定をいたしたものでございますので、私は事務当局の責任者として、これを妥当なものと信じております。
  53. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 局長は妥当なものと、こう言っておりますが、普通のときは頭を上げて言うんだけれども、いまは頭を下げたまま答弁しておったけれども、労賃も上がっているわけですね。また素畜も上がっている。消費者物価も御存じのように上がっております。毎年物価も六、七%上がっているわけですね。そういったことから見ましたときに、これは日本の畜産をいろいろと指導し、また担当している局長として、そういう答弁で済むかどうかということを私は思うわけですが、政務次官も先ほど来いろいろ答弁があったわけですので、どうかひとつ当該局長からもよく政務次官等と相談になって、大臣にも伝え、十分な検討をして、そして農家の期待にこたえてもらいたい、かように思うわけです。  そこで、この機会に養豚の問題で若干関連してお聞きをしておきたいですが、まず今回の答申書を見まして、われわれがかねがね思っているようなことが六点盛られております。この中で若干お尋ねしておきますけれども、第二番目の「環境汚染問題の重要性にかんがみ、養豚経営におけるふん尿処理等の新技術の開発を進めるとともに、制度資金の拡充その他必要な対策を強化すること。」ということがございますが、最近、畜産公害という問題が、九州でも養豚の公害等が起きております。酪農集団をしたいと思ってもなかなか資金がないためにできないということで、いろいろあちこち最近とみに問題が起きているわけですけれども、これに対しては、畜産局はことしはどういうように対処していかれるのか。例年同じようなことを繰り返してはいないと思うのですけれども、いずれ予算も決定するわけですが、ひとつ決意のほどを畜産局長から承っておきたいのであります。
  54. 増田久

    増田(久)政府委員 畜産特に養豚につきましては、公害問題が今後の最大の隘路になるだろうということは、もう御指摘のとおりだと思っております。特に大規模化していく養豚農家にとっては、このふん尿問題は死活問題だというふうに私も理解いたしております。そういう意味で、私のほうとしては、この公害対策には来年度予算で格段の力を入れていくつもりでありますが、まだ、率直に申し上げて、技術的に確立し切ってないところがございますので、その点にわれわれとしてもいろいろ考えさせられる点もございますけれども、われわれは、畜産団地で特に市街地化したところはどうにもならないというようなところの移転ということで、従来から団地造成事業というものをやっておりますが、これについては来年度は飛躍的に拡充することといたしております。  それから、これは昨年度から始めた事業でございますが、基本的には養豚農家のふん尿の処理のしかたといたしましては、畑に還元するというやり方を基本にするべきじゃないか。そういうことで、農協等を媒介として養豚農家と一般農家とを結びつける広域厩肥促進事業というものも昨年度から引き続きやっているわけでございます。  なお、ちなみに、ちょっと前後して申しわけありませんけれども、私のほうで統計調査部にお願いいたしまして、特に養豚農家の公害の実態と申しますか、一体昨年よりも施設のふん尿がどういう形で処理をされているであろうかということの調査をお願いしたわけでございます。そういたしますと、全体の九〇%の方が現段階で畑に還元をいたしております。それは自分の畑であるか、人の畑であるかあるいは自分がお金を出して引き取ってもらっているのか、売っているのか、いろいろあると思いますけれども、九〇%は畑に還元されているという統計が得られておりまして、そのうち一%が浄化施設を持っているということになっております。それから七%が一部畑に還元しているけれども非常に弱っている。それから三%はメーファーズと申しますか、どうしようもないというような農家があるという調査が得られているわけでございます。残念なことに、先ほど申し上げましたとおり、浄化施設をつくっておられる方は大体三千戸程度の段階であろうというような実態が得られているわけでございますが、先ほど申しましたとおり、今後そういう方にどんどん積極的にこういうものをやっていっていただくということをぜひやりたいと思っております。  それからなお、新規事業といたしまして、今年度の予算で畜産経営環境保全総合対策指導事業というのを新しく始めたわけでございます。それは何といたしましても個別の農家ではなかなか対処できない。そういうことで、県、市町村、農協を一本にした協議体、指導体制というものを整備してもらいまして、個々の農家と相談しながら一緒になって研究して解決していくという体制を、この際つくりたいというのがそれでございます。  それから二番目に、家畜汚水処理施設整備実験事業ということで、これは液肥型といっておりますけれども、バキュームカーで運んでいって処理するやり方、これは三十カ所、それから大規模処理施設といいますか、それを五カ所、そういうものを新しく実験的にやってみようかと思っております。  それからもう一つは、豚の放飼養豚の経営というものを、ことし施設を実験的にやってみて、その問題の解決に当たらしたいと思っております。  それから資金制度でございますけれども、従来もありましたけれども、名前をちょっと新しく畜産経営環境整備施設資金ということで、昨年十八億でございましたのをことし二十九億にふやしました。これは実を申しますと、あまり消化が十分でなかったというきらいがあるもので、それはなぜかと申しますと、移転の場合だけ認めていたということが、やはり一つの阻害要因になっていたんではないかという感じがあるわけでございますので、本年度からそこを改めまして、移転しなくてもこの資金が借りられるというふうに制度を改めたわけでございます。それから、御存じのように、改良資金で鶏を前からやっていたわけでございますが、新しく乾燥なり焼却施設に対して貸し付け対象としてもらうということをことしから始めたわけでございます。以上でございます。
  55. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 さらに局長、飼料がたいへん問題になっているわけですけれども、この点もあわせてお伺いしたいのです。  いわゆる養豚経営の安定的な発展をはかるために、飼料価格の引き下げということについては、どういうふうな対処方針で臨まれるのか。それもひとつ明らかにしておいていただきたいと思います。
  56. 増田久

    増田(久)政府委員 養豚経営、鶏経営というような中小家畜は、やはり飼料の安定なくして経営の安定はないというふうに思っておりまして、従来とも政府操作飼料等を通じまして、その安定に力を尽くしてきたわけでございますが、今年度は特にアメリカにおける原料の飼料の豊作、またそれに伴うフレートの低下あるいは円の切り上げ、こういうような問題が重なりましたので、強く団体にお願いいたしまして、御存じのとおり、平均して三千四百円の配合飼料の値下がりがあったわけでございます。と同時に、私のほうでは政府飼料をただいま予算にお願いをいたしておりますけれども、来年度から大麦を千七百八十円、それからふすまを、これは専増産ふすまといっておりますけれども、これを三十キロ当たり三十五円下げる方針にいたしておりますが、なおこれだけでは十分じゃないという声もございますので、その点はさらに努力をいたしたいと思っております。
  57. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 もう一点お伺いしますが、素畜の問題ですね。これもなかなか値段が高くて問題なんですけれども、この素畜重要性にかんがみまして、価格安定等の必要な措置をぜひしてもらいたいというのが各団体、畜産農家の要望でもあるんですが、これに対していかなるお考えであるか。これもまたあわせてお伺いしておきます。
  58. 増田久

    増田(久)政府委員 おっしゃいますとおり、子豚の、素豚の価格の変動が非常に激しい、これが非常に問題であることは御指摘のとおりでございます。それで、これも来年度からこれをやってみたいと思って予算をお願いしておるわけでございますが、先生御存じのとおり、子豚安定基金というものが、全部ではございませんけれども、十数県についてあるわけでございます。主要県についてあるわけでございますが、その子豚安定基金に一つの事業団出資、あるいは積み立て金について国の助成をいたしまして、それの対象といたしまして繁殖豚農家、これについては子豚の生産調整についてこれに協力を願う。そういうことを通じて、子豚の不足するときには生産を、余るときには生産の抑制をといういうことを、そういう価格安定制度を通じてはかってまいりたいということで、来年度予算を新規に要求いたしておる次第でございます。
  59. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、乳価の問題で、若干私も質問をしておきたいと思います。  まず、昨年の四月一日に、政府酪農近代化其本方針を打ち出しておるわけですが、これは言うまでもなく、五十二年度を目標にしてあるわけです。その中では生産消費も年率七、八%の伸びがある、こう示しておられるわけです。それで年率七、八%の伸びがあるというふうに示したにもかかわらず、すでに一年目で一%の伸び、こういうことになっております。これはあとで乳価の問題とも関係するわけですけれども、これはどういうことか。初年にしてこういうような一%の伸びであるということ、これはどういうふうに当局は見ておられるか、それからまず御答弁いただきたいと思うのです。
  60. 増田久

    増田(久)政府委員 確かに近代化資金をしますときには、われわれはまだやや楽観的な見方をしていたということは事実でございます。その後生産も需要も非常に停滞するというような異常事態、特に昨年八月、九月、十月に至りましては、生産も需要も対前年比を割るという異常事態が出たわけでございます。そういう事態に対処いたしまして、われわれは酪農問題研究会というものを設けまして、その原因の分析について詳細に検討を加えました。これは先週の土曜日発表をいたしたわけでございますが、その分析をいたしますと、需要の減った要因の中には、一時的なものとそれから構造的なものとがあるんだ。  それで、一時的なものといたしまして、昨年度の場合には、御存じのとおり、飲用乳価が引き上げられました。これはもう引き上げられますと、毎年その年は消費は停滞いたします。これは去年ばかりの特例ではございません。それから二番目に、昨年度は異常なまでに夏の天候が涼しかった。その結果、牛乳消費が停滞した。第三番目に、BHC問題あるいは異種脂肪問題、そういったことで、一般消費者の方の牛乳に対する不信感というものが非常に根強く出ていたということが第三点。それから第四点は、これは過去の実例から見まして、牛乳消費と一般の景気というものが非常に密接な関係があるわけでございます。不況になりますと、おそらく家庭の主婦は、まず節約するところはどうも牛乳のところから節約を始めるという傾向があるように思われます。そういうことで不況ということが、この消費を一時的に抑制した原因だというふうに見られておるわけでございます。  それに対して構造的な問題といたしまして、御存じのとおり、消費水準が高まりまして、栄養指向型と申しますか、従来のような栄養、カロリー、こういうようなことから、食味とか風味とかそういうものも逆に求めていく。それで消費の選択の幅も広げていく。栄養が十分足りているわけでございますから、何もここで栄養食品をあえてとらなければならないというような行動が出てこない。そういう消費の多様化ということに、現在の牛乳というものの供給のしかたに対応し切れなかった点があるのじゃなかろうか。第二点に、これは特に小売り段階、流通段階の問題といたしまして、労働力不足という問題がありまして、日本牛乳の半分が宅配という形で行なわれておりますが、そういったものがどうも労働力不足で小売りが積極的に売る意欲というものを失っている。それからもう一つは、従来は所得の低い階層が所得が伸びるに従って牛乳を飲む、そういうことで牛乳を飲む層が広がっておったのですけれども、それがどうも一巡したのではないか。それからもう一つは、御存じのとおり、小売りの形態というものがメーカーによって系列化されて、いわゆる専売制というものになっております。しかも、販売テリトリーがきまっておりますので、あえて競争する必要もない、したがってその上に小売りがあぐらをかいてしまう、こういう点があるように思われます。それから第三点に、これはメーカーが乳業の、特に飲用乳業の利潤幅の薄さということもあると思いますし、いろんなその他の問題もあると思いますが、非常に投資意欲、もっと業績を広げていこうという意欲というものがどうもない、非常に減退している。そういったこと等、どうも構造的にそういう問題が見られる。  その他いろいろございますけれども、そういうことが総合されて昨年度に出てきたのではないか。したがって、その構造的な問題につきましては、これはいろいろまた私たちも考え直さなければいけませんけれども、前に申しましたような一時的なものにつきましては、幸いにBHC問題も十分安全が確保し得る段階に達しましたし、ここ十二月、一月といたしまして牛乳消費がやや伸びてきたという点にやや明るい見通しを持っておるわけでございます。ただし、この研究会の結論といたしまして、従来のように一〇%をこえるような異常なといいますか、高度の成長というものは今後期待し得ないのではないか。しかしながら、相当長期、中期にわたって適切な対策を講ずるならば、安定的な成長というものも酪農に今後期待し得るのではないという結論をいただいておるわけでございます。
  61. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 畜産局長からいまいろいろと理由を述べられて原因を明かされたわけですけれども、この原因には一時的なものと構造的なものがあるということですが、われわれもそれはある程度わからぬわけではありませんけれども、私は結局、酪農近代化基本方針が定められて一年もせぬうちにこんなに目標がくずれる、こういったことはある程度わかっていたわけですか、結局目標の見方が甘かった、こういうふうに認められるわけでありますか。甘かったということを先ほども言われたように聞いたんですが、その点はっきりと認められますか。
  62. 増田久

    増田(久)政府委員 私は率直にやや甘かったということを先ほど申しましたけれども、それを認めざるを得ないと思っております。私は、近く社会発展計画というものが新しく改定される、したがって日本の経済全体の今後の見通しがなされるわけでございますから、その中でわれわれの計画というものを見直してみたい、かように考えております。
  63. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、局長、原因の一つは価格が安い。今年は御存じのように、加工原料乳価が四十六年度四十四円四十八銭に対して四十四円七十九銭、わずか三十一銭の値上がり、こういうことになっておりますが、これではもうお話にならない。いわゆる保証乳価の適正な決定をしなければならない。明日の告示にあたっては、政府はもちろんこれに上積みしてかなりの決定をされるというふうに私は思っておるし、また期待もしておるわけですけれども、こういったことがまたたいへんな原因になっているのではないかと思うのですが、その点についてもう少し突っ込んだ見解を承っておきたいのであります。
  64. 増田久

    増田(久)政府委員 率直に申し上げまして、牛乳生産が停滞をいたしておりますのは、東山、東海、近畿、中国、四国、いわゆる市乳地帯でございます。これにつきましては、従来は、乳価上げますと、その価格効果によりまして生産が伸びてくる、しばらくおくれて需要も回復する、こういうパターンを従来は描いてきておったわけでございますが、昨年御存じのとおり、市乳地帯において六円の値上げということがなされたわけでございますが、それによってもなかなか効果をあらわしてきていない。そこのところに、市乳地帯でも従来と違った酪農の形というものが出てきているのではないか、なおその辺分析を要する点がありますけれども、というふうに私ども考え、ただ価格対策だけでどうこうできない点がどうもありそうであるというふうに理解をいたしております。
  65. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 畜産局長、そこで、酪農近代化基本方針を一応昨年四月出したわけですが、こういうふうに目標を示しておる以上、目標に基づいた生産振興策なりあるいは消費拡大策というものを真剣に考えていかなければならぬ、こういうように思うわけです。土曜日にこういった原因について明らかにしたということですが、現在まではそういったことに対して何らと言っていいほど手を打っていない。いわゆる原因はわかったわけですが、今後これに対してはとりあえず新年度でどういうふうな対処方針で臨まれるのか、その方向、決意等を局長から承っておきたい。
  66. 増田久

    増田(久)政府委員 いろいろわれわれなりにその酪農対策というものをやってきたつもりでおります。率直に言いまして、畜産局の予算の六割以上が酪農関係に向かっているということでございますので、それが十分効果をあげ得なかったということを残念に思っているわけでございます。ただ、先ほど先生おっしゃいましたとおり、消費なり生産にわたって総合的な見直しというものが必要なんではないか、そういうことで、われわれは研究会の答申を得たわけでございますので、それに基づきましてこれから総合的な対策というものを従来の施策の上に乗せてひとつ強力に進めてまいりたい、かように考えているわけでございます。
  67. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、畜産業は昨年度一%の伸びということで戦後最低であるということから、産地帯では今後の将来においていろいろ心配をいたしておるわけです。このまま政府がいうようなことで畜産を伸ばすということはどうしようもない、これではいわゆるお先まっ暗というような感じがするわけでございます。消費のほうも、これはぜひ消費拡大をしていかなければならぬということで、これは何とかしなければならぬということから、先般、私も予算委員会で、九州の熊本県なんかでも関西では兵庫県に次いでの生産県になっております。やがて関西から九州にかけて遠からず第一位の生産県になることは火を見るより明らかでありますが、牛乳の加工処理施設または牛乳の基地としての施設等をぜひつくって今後対処したい、関西方面にもこれをぜひ出していきたい、また消費拡大をはかっていきたいということで、意欲的に事業団等に国の助成をお願いしたいということをいっているわけです。先般、予算委員会の分科会等でもいろいろ質問したわけですが、こういったことを新年度からさっそく手を打ってもらいたいと思うのです。特に熊本県なんかは要望が強いわけなんですが、それに対してさらに一そう局長からその対処方針を承っておきたいと思うわけです。
  68. 増田久

    増田(久)政府委員 熊本県の乳業施設につきましては私も承知をいたしております。ただ、事業団が出資をするということになりますと、御存じのとおり、牛乳生産調整、調整保管ということを目的といたしまして広域に行なうのだということで、従来ともたとえば大分乳業、四国乳業というようなところに出資をしておるわけでございまして、一県だけということになりますと、そういうことはちょっと従来の考え方からは無理があるというように思うわけでございますが、そういう要望があることも承知をいたしておりますので、そういう方法によらなくても、何かできる方法をともどもに考えてあげたい、かように考えております。
  69. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 さらにお伺いしておきますが、今回の消費拡大の面から、学校給食の問題等がいろいろ考えられるわけですけれども、すでに四十七年度目標は三百五十万石、全部やっても三百七十万石、こういわれます。あと二十万石だけしかないわけですが、これでは知れております。そういったことから、今後、これらの消費拡大をはかっていかなければならない。先ほどの理由の中で、いわゆる食生活の多様化だとか、牛乳の栄養をとることが一巡してきたということ、いろいろ説明があったようでありますけれども、学校給食、老人牛乳また妊婦に対する牛乳ということで、積極的にあらゆる方面の施策をしていかなければならぬと思うのです。そういったことを畜産局は新年度どういうふうにお考えであるか、この機会にひとつ明らかにしておいていただきたいと思うのです。
  70. 増田久

    増田(久)政府委員 従来、学校給食が飲用牛乳消費の伸びをささえておったということは事実でございます。そういうことで、政策需要の拡大というものが、今後の重要な一つの柱になろうかと思っておりますので、これにつきましては、文部省あるいは厚生省との関連もございますから、そのほうと連絡をとりながらその拡充につとめてまいりたいと考えております。
  71. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間が参りましたので、最後に総括的にお尋ねをしておきたいと思います。  今回の乳価決定にあたっては、審議会の中でも、三十一銭のアップについて意見の対立が相当あったということでございますけれども、この答申の内容等を見ますと、答申の末尾に建議がなされております。この建議の中に、「消費拡大生産意欲の向上を図り、酪農安定的成長を確保するため、長期的な観点に立って金融施策等諸般対策を総合的に推進すること。」これは当然のことでありますし、二番目には「飲用牛乳流通合理化を促進するとともに、生乳広域流通による市乳化の促進を図ること。」三番目に「酪農経営安定的発展を図るため、飼料価格引下げにつとめること。」こういうふうに建議書にはっきりとうたってあります。どれももっともなことでありますけれども、今回の答申に見るように、据え置きをきめて、そして結論をきめた上で諮問をしているようなやり方でなくて、生産費積み上げ方式で適正な価格決定をすることが一番重要である、かように思っておるわけです。  生産調整によって、いま農家は、いわゆるビッグスリーといわれる米、畜産、果樹、この大きな三つの柱をもって、特に畜産に意欲的に取り組んでおるときに、年々こういった停滞したような、また後退しているような価格決定では、農家はなかなか意欲的に今後生産に進むことはできない、ほんとうに大撤退作戦をやっているような感じであります。そういった面で、この建議書にもあるこういったことを踏まえて、明日の告示にあたっては乳価、また先ほどからるる質疑をしてまいりました豚価についても、政府として対大蔵折衝をされて、十分な検討の上に立って、農家が、またわれわれが納得する価格決定をされるように心から望む次第であります。  そういったことで、政務次官、いままでいろいろお聞きになったとおりでありますが、ひとつ決意を含めて最後に御答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  72. 伊藤宗一郎

    ○伊藤(宗)政府委員 御趣旨を十二分に体しまして善処してまいりたいと思います。
  73. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 以上で質問を終わります。
  74. 熊谷義雄

    熊谷委員長代理 田中恒利君。
  75. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 私は、主として豚の問題で御質問をすることになっておりますが、その前に、乳価の問題についても二、三、農林省の御方針をお尋ねしておきたいと思うのです。  先ほど来、各委員の皆さんから御指摘がありましたように、ことしの乳価と豚価の諮問案を見ますると、私どもたいへんちぐはぐな気がしてならないわけであります。農林省は、三月二十八日、第十一回目の農業白書を発表いたしております。この農業白書は、従来農業に対してとかくの批判をしておりました一般マスコミ紙においてすら、日本農業の地盤沈下とたいへんな危機がこの白書の中で示されておるという論調が一般的であります。そういう状態の中で豚と乳の価格諮問された。それを見ると、いま御指摘になったように、乳価は三十一銭、豚は一円の値上げだ。いまの世の中で、およそ銭とか一円とかという単位が貨幣流通の中にあるのかないのか、このことすらちょっと戸惑うような感じの諮問をせられておる。私は価格政策で問題が解決するとは思いませんけれども、しかし、少なくとも今日の日本の農業の異常な事態の中で、価格政策が果たす役割りはやはり大きいと思う。この点は、赤城農林大臣がしばしば本委員会においても言明をされております。農業白書が出たとたんに出した畜産審議会諮問がこういう状態であるというところに、私は今日の日本の農政の非常に重要な問題点があると思うのです。  私は、この点について、大臣がお見えになっておりませんので、政務次官のほうから、一体農林省は全体的、総合的な観点に立って日本価格対策、豚なり乳なりの対策というものをお考えになって出されたのか、単なる事務的な形式で出されたのか、この点をまずお尋ねしておきたいと思うのです。
  76. 増田久

    増田(久)政府委員 私からちょっと一言、言わせていただきたいと思いますが、私たちの豚とか牛乳につきましては、食管制度のように全量を買ってそれを保証するというやり方ではなくて、あくまでも市場の流通というものを前提として、その下ざさえとしての保証価格、こういう制度でございます。したがって、米でありますれば、何円何銭というのがそのまま農家につながるわけでございますが、これはそういうものではない。そこに制度の差のあることもひとつ御理解を願いたいと思うわけでございます。
  77. 伊藤宗一郎

    ○伊藤(宗)政府委員 先ほど来、諸先生の御質問を通じての御高見に対して、いろいろお答えしましたので、それ以上申し上げることはないのですけれども、いま畜産局長からもお話しのように、酪農は、米作のように、その生産技術が非常に高く、平準化した段階にいま至っておりません。まだ成長段階にある農業でございます。したがって、技術もこれから年々向上してまいりますし、また規模拡大も着実に実現していく。その生産性の向上に大いに期待をしておりますし、その余地も大きいわけでございますので、いま畜産局長からお話があったように、米価の場合のように、所得補償的な見地から政策価格を引き上げることは適当ではないというふうにも考えておるわけでございます。また、先ほど来いろいろ御論議にもございましたように、需給状況から見ましても、最近の生乳生産は伸び悩み傾向にもございますし、飲用需要もきわめて停滞的である。そして全体としての需給のバランスは低位均衡基調ということで推移をしております。また、来年度を見通しましても、需給規模はやや回復すると期待をしておりますけれども、反面、著しい供給の不足ということも想定はされない情勢でございます。したがいまして、この段階で価格政策を通じて供給を刺激するということは必ずしも当を得ないのではないかというような背景もございまして、今回のような答申をしたわけでございますけれども、何度も申し上げますとおり、私は政治家としては非常に切歯扼腕の気持ちであることは再三再四申し上げているとおりでございます。田中先生からもいずれお話があるわけでございますけれども、本日の諸先生、諸委員の御質問を通じての御建議、御高見は十分に尊重いたしまして、できる範囲の対処をしてまいりたいと考えております。
  78. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 事務的に制度的に従来の形に基づいてやられたということでしょうし、いまの政務次官の御説明について私は私なりのいろいろな反論や意見がありますが、ただ、どうも畜産物の価格対策というものについては非常に押えぎみの傾向がこの数年来いろいろな形で出てきておるように思うのです。たとえばことしの乳の生産費は、従来、北海道、青森、岩手、山形さらに福島、長野、鳥取、この一道六県の生産費を採用しておったものが、ことしは一道四県になっておる。長野と鳥取をはずしておる。これは一体なぜはずしたのですか。
  79. 増田久

    増田(久)政府委員 暫定法の第十一条の規定によりまして、われわれのきめます保証乳価というものは、主要加工原料乳地帯の再生産を保障するということになっております。その相当量が加工に向けられる、こういうことが規定されているわけでございます。相当量というものの肯定的な解釈といたしまして、飲用向けが五〇%、加工向けが五〇%、こういう五〇%のラインのところに従来基準を置いておったわけでございます。そういうことでやってまいったわけでございますが、鳥取、長野というものをずっとここ五年間の傾向を見てまいりますと、四十一年から四十五年を申し上げますと、長野県は四十一年から四七・三、五二・八、四九・〇、五〇・〇、五四・九という形で、五年間を平均いたしましても五〇・八ということで、傾向といたしましてこれははっきりと中京地域の市乳地帯と結びついたという形が見られます。また鳥取県について申し上げますと、四十一年が四五・五、その次が四九・四、五〇・五、五二・八、五六・五、平均で五〇・九ということで、これはもうはっきり傾向といたしまして市乳地域に入りつつあるということは認めざるを得ない。そういうことで、この法律制度というものが、取引条件の非常に不利な加工乳の価格の最低を保証するという制度のたてまえから考えまして、こういう県はこの際除いて考えていく、そういうことが法の趣旨に合うもの、かように考えておるわけでございます。
  80. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 私はおかしいと思うのですよ。相当量といま言われたが、相当なということで従来いろいろ議論されておるわけです。それが五〇%であるか六〇%であるかということは——私はいま初めて畜産局長から五〇%を加工乳、市乳という分け方をせられたように聞いたわけですけれども、それにしても現に五カ年の平均は五〇%を上回っているわけでしょう。しかも、何もこの時期に、これほど農業がきびしくなっておるときにわざわざ生産費の高いこの地域——長野と鳥取はほかの県に比べて生産費が高い。高いところを除いて生産費を安くしておるわけでしょう。そういうやり方をとられているわけですよ。政務次官、こういう姿勢が私は問題だと思うのです。下げるという姿勢ではじいておるわけでしょう。この点は直してもらわなければいけないと思うのですが、どうですか。いまの畜産局長の御説明では、五カ年平均五〇%を上回っておるでしょう。五〇%が相当な量であるかどうかという判断も問題があると思う。ところが、五〇・九%とか五〇・八%とかいう状態の二県を除いて、この二県を入れると十八銭か十九銭か上がるはずです。そういう措置をせられておるところに、農林省はこの算定方式の施行にあたって低く押えていく姿勢があると全国の農民は皆さん言っておるわけです。そういう姿勢は今日の客観情勢の中でとるべきではない。いままでの算定方式を取り上げてみても、この点についておそらく政府・与党を含めてあなた方は、最終的にはあるいは本委員会意見を聞かれてされると思うのです。私は今度の場合はこの点を明快にしていただきたい。これからまだいろいろやりますけれども、ちょっとどうですか。
  81. 伊藤宗一郎

    ○伊藤(宗)政府委員 足りなかったら畜産局長から申し上げさせますが、いま田中委員の御指摘のとおりの御趣旨で今明日中に十分善処してまいりたいと思います。
  82. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 次に、畜産局長にお尋ねいたしますが、私もこの間、農協の畜産の大会に参りました。自由民主党を代表して渡辺美智雄先生がごあいさつをしました。私もたいへん同感の点がたくさんあった。結論は、消費をいかに拡大していくかということだ。いやしくも政府・与党を代表してのお考えであります。私も従来この点主張しておったわけです。消費拡大していくということにからんで、御承知のように、生活様式が非常に多様化し、それから食生活がこれに並行して非常に多様化してきた、こういうふうにいわれております。そういう状態の中で、従来から牛乳そのもの、生乳そのものを拡大していくという考え方が一つありました。同時に、何でもかまわぬから飲ませればよろしい、加工乳でもその他の清涼飲料のような形でも、とにかく飲ませればよろしい、こういう考え方もあるわけです。農林省としては一体どういうお考えで消費拡大の方策というものをお考えになっておるか、この際お尋ねをしておきたいと思います。
  83. 増田久

    増田(久)政府委員 牛乳の持つ特性として、やはり生乳で新鮮なまま、自然なまま飲んでいただくということが基本であろうと思いますが、またわれわれもそういうことで考えてまいったわけでありますけれども、先ほど私が瀬野先生に詳しく申し上げましたとおり、消費の実態というものを分析してまいりますと、国民食料として食生活の中に牛乳が溶け込んでいるとは、残念ながら、どうも思えない。たとえば天候とか景気とか、そういうものによって季節変動を示す。こういうことはそういうことを端的に示しておりますし、現に最近では清涼飲料と非常な競合関係を末端で示しているように思われる点が多々あるわけでございます。そういう消費の実態を無視して、ただこうだという一つの考え方で国民に持っていくということでは、やはり問題の本質を失うことになりはしないか。  そういう点で、国民の希望するところは、生活の多様化、消費生活の多様化、食生活の多様化ということを望んでおるわけでございますから、そういう希望に応じ得るような供給体制というものも十分考えていかなければならないと思うわけでございます。現に先生も十分御存じと思いますが、アメリカ等におきましては、牛乳について非常にバラエティーを持たせて、それに応じたPRをやっておるという実態があるわけでございますので、そういう点などもわれわれは十分参考にしていきたい、かように考えております。
  84. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 消費の実態は、牛乳は清涼飲料との競争の状態ができておると言われましたが、そういう面もあるでしょう。しかし、牛乳が清涼飲料と競争をやれるいろいろな条件があるかといったら、ないです、いまの清涼飲料の状態を見てみましたら。だから、清涼飲料は問題があるということで、たとえば果汁等についても私どもも天然のものを飲ますような方向に切りかえるような努力をしておるわけです。そういう形にならないと、いまのように原価一円五十銭とか三円くらいでできるものと牛乳とでは、生産するといったって生産する条件がないです。むしろ政策としては純生牛乳を飲ませていく、そういう方向に向けられなければならないと思うのだが、農林省の考え方の中には必ずしもそうでないような方向があるやに聞く、これはやはり問題だと思います。  厚生省、来ておると思いますが、昨年暮れからインチキ牛乳の問題が表面化をいたしまして、消費者にたいへん大きな問題を投げかけた。国会でも私も取り上げて、厚生省とだいぶ議論をいたしましたが、やはり本物の牛乳を飲ますという方向で、厚生省も、食品衛生という観点でしょうが、乳糖等についてのいろんな省令や規格をやっておりますが、こういう点は明確にしていわゆる生乳というものを飲ましていく、こういう方向に持っていかなければ、国民の栄養という観点からいってもあるいは牛乳消費拡大からもまずい。こういうことで厚生省にも検討を要請し、厚生省もはっきり国会の場で、十分検討してその方向に向かって努力する、こういうことでありましたが、その後どういうふうになっておるのか。農林省との話し合いはではきておるのか。この点をこの機会にお尋ねしておきたいと思うのです。
  85. 神林三男

    ○神林説明員 すでにこの問題に関しましては、いままでの国会でいろいろ答弁申し上げまして検討しておるところでございますが、まだ農林省と私のほうでは正式な話し合いはしてございませんけれども、一応検討した方向といたしましては、厚生省は少なくとも月ぎめの消費者、家庭でもって毎日毎日飲んでおるという消費者の方には、できるだけ牛乳、いわゆる生乳をそのままびん詰めにしたものを届けるということがまず基本になるのではないかというふうに考えておるわけでございます。一方、これは夏場になりまして、牛乳を飲む、ときたまスタンドで飲むというような方には、あるいは牛乳そのものの形で確保できなくて、加工乳という形もあり得るかと思いますけれども、少なくとも毎日家庭で飲む、月ぎめで飲んでいるという人には、まず牛乳を配達するという原則を打ち出してくれということを業界にも強く要望しているところでございまして、業界も大体この方向でいくというふうに言っておるわけでございます。  そこで、私たちやはり栄養上牛乳が一番正しいものであるという考えから、したがって、加工乳というものをいま全面的に否定することは、季節あるいは地域によって日本状況で必ずしもできないわけでございますから、ある程度加工乳というものを認めざるを得ないというふうに考えておるわけでございますが、この場合にも、加工乳のあり方といたしましては、できるだけ牛乳に近いもの、従来は加工乳というと何か牛乳よりもいいものというような考え方が非常に多く、またメーカーもそういうような宣伝もやっておったわけでございますが、私たちはやはりどうしても地域あるいは季節によって牛乳が足りないから、それを補うものであるから、牛乳になるべく近いものという形のもので加工乳をつくってくれというふうに話し合いをいたしまして、これも大体そういう形でやっていきたいというふうになっておるわけでございます。  それからさらに、それに関連いたしまして、当然添加物、これは牛乳には全然他物を入れてはいけませんけれども、加工乳には、現在、微量栄養素といたしましてミネラル、ビタミンというようなものを入れることを許しておるわけでございますけれども、こういうようなものも今後私たちはできるだけ排除いたしたい、規制をいたしたいという考えで、これを牛乳に近くさせるにはそういうものは必要ないのじゃないかという考え、あるいはビタミン、ミネラルというようなものはほかのものでもとれるのじゃないかというようなことで、まずそういう点でひとつ規制をしたいというふうに考えておるわけでございます。  それからなお、先ほど先生の御指摘にありました、従来乳糖等とかカゼインというようなものは非常に問題になっておるわけでございまして、現在でも牛乳の省令の中の基準では、そういう他物は、加工乳にも微量栄養素以外は入れてはいけないという条項がございます。これは解釈でそういうようなことをやっておりますが、練粉乳あるいはバター、そういうようなものに入れていいものを今後はっきり限定して規定していきたいというふうに考えております。  それからもう一つ、これは私たちのところだけでできる問題ではございませんが、やはり原料乳が足りないというような大きな問題がございますものですから、あるいはこれは農林省とも協議いたしまして、濃縮乳のあり方というようなものをどうするかは、今後課題として私たちも検討していきたいというふうに考えているわけでございます。  それからさらに、これは従来の加工乳あるいは牛乳というようなものの表示が必ずしも明確でございませんし、近ごろ紙製の容器というものがかなりできておりますから、この表示につきましても、消費者に牛乳、加工乳というものがかなりはっきり区別がつき得るような表示を設けていきたい、そんなふうに考えているわけでございます。
  86. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 まだはっきりせられてないようですが、ぜひこの問題は早急に詰めて行なっていただきたい。そしてやはり生乳というものを最大限に活用していく。加工乳というものがいますぐどうこうできないという事情は私どももわかりますけれども、できるだけ加工乳の中に、生乳というものが大きなウエートを占めるような状態にしていただくような処置をとっていただきたいと思うし、いまお話のありました濃縮乳の問題も、従来から北海道等からは輸送等の関係も非常に簡便でやりやすいという要望も強く出ているわけです。こういう問題をぜひ積極的に取り上げていただきたいことを特に要請をしておきたいと思うのです。  私は、時間がありませんから、豚の問題で算定方式を中心にして少し御質問いたしますが、いま畜産局長は、豚の算定方式の考え方は需給均衡価格だ、こういうふうに答弁になりましたが、この需給均衡価格というのは具体的には市場価格である、こういうふうに理解をしてよろしいと私は思うのですが、いかがですか。
  87. 増田久

    増田(久)政府委員 原則的には私もそうだと思います。ただし、豚につきましては、従来輸入制限というものをやっております。しかも、一方においては下位価格で買いささえるという制度があります。そういう制度の中における異常低落、異常高騰というものをどう評価するか、それはそのまま需給を正しく反映したものなのかどうか。特に、われわれが求めますのは安定的な指標価格であるわけでございますので、そういうものの法制度の目的との関連においてそれをどう評価するかということがきまってくるのではないか、かように考えております。
  88. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 その点はいまからいろいろお聞きするわけですが、これは瀬野委員のほうからも御指摘があったのでダブる面もありますけれども、なお詰めて明らかにしておかないと、どうもここのところは今度の豚の価格算定についても非常に問題になる点でありまして、いわゆる市場価格であるということになりますと、やはりたてまえとしては、いま瀬野さんもおっしゃったが、二百五十四円五十銭という数字が具体的な市場価格になるはずであります。この二百五十四円五十銭という数字でもしことしの豚の価格というものを算出したら、一体幾らになりますか。これはこの間も言っておったのですから計算できていると思いますが、幾らになりますかちょっと知らしてください。   〔熊谷委員長代理退席、松野(幸)委員長代理   着席〕
  89. 増田久

    増田(久)政府委員 全然無修正でやったといたしますと、安定基準価格が三百八十三円八十八銭、安定上位価格が四百六十九円十八銭ということに相なります。
  90. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 三百八十三円八十八銭と四百六十九円十八銭、こういうことですね。この値段はおそらく生産費に基づいて農業団体等が要請をしておる数字とさほど違わない数字になるのじゃないかと思うのです。本来であれば、市場価格でありますから、農家の庭先価格というのはやはりこの価格でなければいけないのですよ。ところが、それをあなたのところは従来の算定方式だと言われるが、これは昭和四十四年からこういう方式に変わって——従来は農家の庭先価格でやっておったはずであります。ところが、豚の値段がだんだん上がりだしてくるとこういう算定方式に変えてきて、昨年まではたぶん上は押えていくが底は飛ばしておったですね。ことしは最高と最低とを両方含めるという形にして、多少ずつ変わってきておるわけですね。変わってきております。けれども、豚の値段は、御承知のように、従来のように三年サイクルで上がってきておったという、この三年サイクルが四年、五年、こういうふうに長期化してきましたね。これはやはり多頭化が非常に急速に進んでおりますから、多頭化の養豚農家は値段が下がってもなかなかやめるわけにはいかない。豚の値段というのは、いままでのように、国際情勢を別にすれば、三年ごと四年ごとにぐるぐる動くという形をとらないのじゃないかと思う。ほぼ安定の方向に、需給均衡という形でだいぶ安定化していくのじゃないかという気が実はいましております。全体的に豚の値段はそういう形で底上げをずっとしてきた。してくると、こういう算定方式で最高を切っちゃうんですから、この審議会に出された資料、昭和四十二年二月から昭和四十七年一月までの全部合わせると、これは五年間の月別の価格数字を見てみると、私どもから言わせれば、押える月、高く出ていわゆる政府安定価格の上位価格を上回ったということで、この算定数字を押えているのは三十一カ月ですね。政府の安定帯価格の中で動いておるのが二十六カ月。ことしはやっと政府が低いやつを上げる、はずして、底値のところを引き上げた。これはわずか二カ月しかないですね。全体としてはほとんどいまの市場価格を押えていく、上をとるのは。昨年であれば、四百三十四円で切ってしまっているわけでしょう。たとえば、昭和四十六年の十二月の豚の枝肉卸売り価格に換算したものは四百四十三円です。これを四百三十四円で切ってしまっているわけでしょう。いわゆる九円というものは認めない市場価格。こういうケースが全部三十一カ月にわたって出ているわけですよ。こういう数字でやれば、市場価格需給均衡価格だとおっしゃるけれども、実際に高値が出た場合には全部押えていく。そしてあなた方のきめられた上位価格と下位価格安定価格の中で仕組んで諮問をしておるわけでしょう。こういう諮問を出すから、こういうことになるんです。なぜこういうふうに上の値段を押えて切ってしまわなきゃいけないのか。しかも、傾向としてはほとんどの期間が、全体の五カ年のうちの三十一カ月分は、三年分くらいは切ってしまっているんですよ。市価価格を反映していないわけですよ。だから、値段が上がらないんです。なぜそういうことをやらなきゃいけないのか、この理由がよくわからないんです。
  91. 増田久

    増田(久)政府委員 先ほど申しましたとおり、この法律制度の目的というものが、安定的な価格帯というものをどう求めていくかというところにあるわけでございます。高値が確かに出ております。しかし、そのときに、これは政府責任として考えざるを得ないと思いますけれども、もし緊急輸入制度というものを的確に適正にやっているのならば、あの価格はああいう形にならなかった、またすべきでなかったというのが、この制度のたてまえであると私は思います。そういうことで、同時に下ざさえ、価格も買いささえる。こういうことの仕組みの中で考えておるわけでございますので、私はこういう方式をとっておるのが、この制度の目的から見て、適当なものだと考えておるわけでございます。
  92. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 生産費のたてまえをとれば、いま言われたことはわかりますけれども、生産費でいけば、少なくとも農家の再生産確保という観点が貫かれた安定帯価格であれば、市場価格というもの、需給均衡価格というものをたてまえとしてとろうとしておるわけでしょう。その市場価格需給均衡価格というものを政策でもって押えていくということでしょう。緊急輸入すれば下がった。一般的にはそうでしょう。しかし、いま問題になっておるのは、緊急輸入したけれども、豚も下がらないしということで、いろいろ問題になっておる。これを詰めていくと、農林省の畜産振興事業団の中にいろいろ問題があるという話がいま出てきておるわけですね。そういう点があるので、たてまえとして市場価格をとるならば、多少の問題はあるかもしれない。しかし、非常に意識的に、この畜産物の価格算定方式は、何か豚の値が出て来始めるとそれを押えるような算定方式をつくっていく、そういう傾向が、豚、乳には極端に出てきておる。これは国際競争力をつちかわなければいけないから、価格政策としてそういう方向に誘導するのだということが大きなねらいとしてあるかもしれません。あるいは豚肉では、自由化になったから国際価格と大体見合う程度の値段に押えるということが政策としてあるかもしれません。しかし、そう言うかもしれませんけれども、最初申し上げたように、いまの日本の農業、豚にいたしましても酪農にいたしましても——卵だってそうでしょう。世界一の生産性だといっておるけれども、その養鶏農家は一万羽、二万羽、三万羽、羽数をふやしてやっておるだけで、養鶏農家のほんとうのプラスになっていないんですよ。そういうことを考えると、需給均衡価格で上を切っていく。底を切って上げていくならいいけれども、底を切るのはわずかであって、全部上を切っておるわけです。こういう算定方式は、近代経済学で学者が都合のいいような方式をつくったんでしょうけれども、そういうものでやられたんじゃたまったものじゃないということです。だから、こういう点は私はぜひ再検討していただかなければいけない、こういうふうに思いますので、特に御要望申し上げたわけです。  さらに、生産費指数が〇・九八六、生産費が安くなっておるということでありますが、この主要な原因をちょっとお聞かせをいただきたいと思うのです。
  93. 増田久

    増田(久)政府委員 先生御存じのとおり、豚の生産費のうちの九五%までは飼養管理費とえさ代とそれから素畜費できまってくるわけでございます。大体の比率を申しますと、飼養管理費は一〇%、えさ代が四四、五%、素畜費が四一、二%前後、こういうのが過去の傾向から大体見られてくる数値であるわけでございます。そのうちの一番大きいえさ代が今年度下がったということが一番大きく響いた要因でございます。その次に、多頭化のメリットというものが非常に進んでまいりまして、飼養管理費が急速に低下傾向にあることは生産費の上でも明らかになっておる点でございます。この二つが大きく響いた、こういうことでございます。
  94. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 一つは多頭化の影響ということでありますが、そこで、多頭化における生産性の向上分というものを——米価等においては二分の一生産者に返していくとか、こういう方式をとられておるのですけれども、畜産の場合、これはとりにくいですか。
  95. 増田久

    増田(久)政府委員 米価の場合にそういう二分の一を返したということがあるようでございますが、私はそういうものには率直にいって原価性というものはない。生産費といいますか、計算における原価性というものはないと思います。同時に、食管制度の場合は、先ほど申しましたように、全量買うということでございますが、その価格がそのまま農家の所得につながっていく問題でございます。これはあくまでも市場を前提として、その最低の下ざさえ価格なんだ、こういうことでございますので、それがこのメリットである。こういう制度の中で仕組んでいくということは必ずしも適当ではないと考えております。
  96. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 確かに食管制度とは違うわけですけれども、しかし、こういう価格支持政策をしいておるということは、需給の均衡をはかるということもございましょうが、養豚なり酪農なりの安定的な成長をはかっていくということがあると思うのですよ。そうすると、多頭化の方向というのは一つの流れであります。しかし、多頭化をすればするほどメリットが出てくる分を、生産費が下がるということで削られていくのじゃ、多頭化ということについてもブレーキをかけていかざるを得ぬという考え方も出てくると思う。だから、生産性向上分を一これから豚、乳、特に多頭化の方向へもっともっと進んでくると思いますが、その際に多頭飼育農家というものに対して何らかの経営努力を認めてやるという観点の要素が入らないと、何かうしろから借金や行き詰まりに追われて、多頭化はやむを得ぬ。極端に言えば、借金を返済するためにますますやめるわけにいかぬから、多頭化多頭化という形で突っ走ることになって、農政のあたたかさというものが出てこぬように思う。ですから、これは算定方式ではなく、政策論になると思いますけれども、しかし、そういう点も十分考えてみる必要がある、こういうふうに思うわけです。  それから、特にいま生産費の問題の中で大きなウエートを持っておる素豚であります。素豚というのは値段の移り変わりが非常に大きいわけでありますが、農林省は大体何キロぐらいの子豚を素豚として計算しておられるのか。
  97. 増田久

    増田(久)政府委員 算定に使いました素畜費は二十五・二キロで、百キロ当たりになりますけれども、八千六百七十六円ということで算定をいたしております。
  98. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 二十五キロという豚ですね、これが従来から使われておるのですけれども、これはもっと実態調査を明快にやってもらいたいのです。農家では大体豚を飼っております。飼っておりますが、いまはこういう小さな豚じゃないのですよ。いまは、飼っておる豚はもっと大きいのです。これは私どもは調査を個別には持っておりますけれども、全国的、地域的というのはなかなかたいへんです。しかし、少なくとも三十キロに近い子豚というものが一般的に購入せられておるのです。ですから、豚の重量という点で農林省調査はたいへん小さな、安いものが基礎になっております。それから、何か比率でばっと出されておるわけでしょう。三九%か何%かの割合で出しておる。この点も実は現在の子豚の動向とたいへん相違が出てきておると思うのです。こういう点はもっと具体的な実態調査の上に立ってやってもらわないと、大まかに従来の統計と従来の子豚の取引の重量くらいで計算して出されたんじゃ、いま子豚の価格は非常に上がっておりますが、この辺のところが反映できないと思いますが、いかがでしょう。
  99. 増田久

    増田(久)政府委員 先生のおっしゃる点は十分わかっておるつもりでおります。というのは、現在われわれが統計的につかまえておりますもの、市場価格としておりますもののキロ数というのは、市場で取引されておるものは平均で三十二・五キロでございます。ところが、農家の生産費調査でやりますと、子豚の取引の統計を見てまいりますと、市場を経由するものは二五%で、そのほか大部分は隣近所の農家から買ったとか農協から買ったとか、その他家畜商から買ったとかで、自分で生産したのは八%程度であるわけであります。そこら辺で、市場に出てまいりますものは確かにそういう高くて大きいものが出ておりますけれども、統計調査で、そういうものを計算してみた数字が、四十六年の統計で二十五・二キロ、こういうふうになって出ておるわけでございまして、そのままの数字を使わせていただいた、こういうことでございます。  なお、生産費計算の問題になりますけれども、大貫、そういう大きいものを使うということになれば飼養費は下がってくる、こういう因果関係になってくるのだろうと思うわけでございます。
  100. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 その辺もわかりますけれども、しかし、私はどうもこの二十何キロというものでは実態を反映してないと思います。子豚の供給の問題から、子豚価格の問題というのは養豚経営のある面では一つの経営的なメリットを生み出す場合の最大のポイントになっております。この点がどうもあなたのところが出されておる生産費調査を見た範囲では、非常に納得しがたい。これらの点は十分再検討してもらわなければいけないし、特にこれから子豚問題についてのいろいろな調査をひとつやっていただきたい、こういうふうに思います。  それから、供給係数というのが次にあるわけですね。これが一・〇二。この一・〇二というのは需要と供給で簡単にはじき出されておるわけです。この一・〇二というものも推定で、まことに大ざっぱなものですけれども、いま豚の相場というものはたいへん上がっておるわけです。これは国際的な自由化の問題で、どれだけ入るかという問題もありましょうけれども、やはり供給不足ということなんですね。そうすると、いまの供給係数からいくと、もっと高くなるのじゃないかという気がするのです。ところが、これはわずか二%ですが、二%ではたしてよろしいかどうか。これが狂うと、いわゆる政府の安定帯価格をはるかに上回る状態がまたずっと続いてきて、また来年度のほうをぼんぼん切っていくということになるわけですね。この辺を一・〇二で押えている。私は、数字というものは魔術で、これははなはだ失礼だけれども、役人の頭の中で、筆の先で相当操作ができる。ともかく現状据え置きではちょっとおかしいから、一円の値上げでとどめておいて、あとで多少埋め合わせがつくだろうという程度ではじかれて、いろいろな要素からこういう数字が出てきておるのじゃないかという気がしておるのです。いまの豚の相場の状況を見てみると、豚の値段は、政府の安定帯価格上げなければいけない客観的な事情があるわけですよ。あるにもかかわらず、こういう数字を出されておるところに私は問題があると思うのですけれども、これは自信ありますか。どんどん自由化して入れてくるから心配ない、そういう考えですか。
  101. 増田久

    増田(久)政府委員 来年度の需要の見方というものについては、こういう価格弾性の大きい商品でございますので、そこに非常に幅があるということは御承知のとおりでございます。現に家計費調査を調べてまいりましても、一人当たり消費量は、たとえば去年あたりの前半は非常に高い伸びを示したわけでございますが、後半に至りますと、御存じのように、価格が上がりました。そうしますと、一人当たりの購入量が急速に減ってまいっております。そういうことで、対前年比としては一〇七・七という伸びを示しましたけれども、最近の傾向を見てみますと、量としては減っている、支出額としてはほとんど横並びだ、こういうことが家計費調査の中から出てきているわけであります。そういう動向をむしろ伸ばしていけば、需要というものは——これからの価格とも関連いたしますし、輸入がどれくらいあるかということとも関連いたしますけれども、輸入のほうについては、どうもいまの関税制度のもとにおきましては、いろいろ御批判がございましたが、なかなか入ってこれないのが実態のようでございます。そういう意味で、いまの推移を考えれば、むしろ需要というものはやや落ちるのじゃないかという心配すら実は私、持っているわけであります。しかし、これは算式といたしまして、従来から諸支出弾性というものを使って計算をいたしておりますので、計算として八十四万三千トンという推定をしたわけでございますけれども、そこら辺については、この水準で考えざるを得ない点があろうかと思っております。  それに対して供給のほうは、われわれのほうは種つけとか子豚の生産状況というものを基準といたしまして、ことしの十二月までほとんど推定をいたしております。それであと三カ月、若干推定をいたしておる程度でございますので、この供給の七十九万トンという数字はおおむね妥当と申しますか、可能な供給生産量ではないか。そういう意味で、私はこういうものを使ってやりました一・〇二というものは、おおむね妥当な数字ではないかというふうに考えております。
  102. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 算定方式の内容を一々やってみましても、あなたのところは数字の積み上げで出てきたのだと言われるばかりであります。しかし、前段申し上げましたように、全体として市場価格というものをたてまえとしてとっておるのに、市場価格がこの一、二年来急速に上向きの状態になっておるのに、依然として政府の安定帯価格そのものは据え置いていくというこの姿勢、この取り組みでは、いま私は需給の指数であるとか生産費の問題であるとか、そういう点を一、二申し上げたのだけれども、どうも実感として数字を信頼することができない、こういう気が強いわけであります。この点はぜひ政策責任者としての大臣や次官の段階で十分ひとつ配慮していただきたい。  最後に、私は先般、赤城農林大臣と、赤城農政の目玉商品といわれる農業団地構想なるものについて意見の交換をいたしました。その際に、日本農業の一つの方向として私どももこれを評価するにやぶさかではないがきわめて不十分だ、こういうように申し上げました。特にそれは生産から流通、消費の段階が一貫性をとらなければいけない。したがって、計画生産、計画出荷、こういう体制が、たとえばいま問題になっております豚、こういうものについては政府が優先的に価格対策なりあるいは必要な調整保管なりの措置をしなければ効果はあがらない。この点については、赤城大臣は、全くそのとおりだ、こういう御答弁でありましたが、私はいま問題になっております豚の問題につきましても、たとえば農業団地、営農団地等で農協や生産者の共同出荷、共同販売の線に沿うものを、場合によれば、値段が下がった場合優先的に買い上げていく。だんだんこの指定場所の買い上げの率が上がっておりますけれども、こういうものをもっと明快に優先的に買い上げていく。ただ単に市場へあがってきて値段がそこで安定できるというようなことではなくて、農政の路線として団地構想というものを出されておる以上は、この機会にはっきりとそういう形で豚の買い上げについても共同出荷体制のものを最優先的にやっていくのだ、こういうことがことしはとられなければいけないと思っておるわけです。そういう点を最後に次官のほうからお答えをいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  103. 伊藤宗一郎

    ○伊藤(宗)政府委員 そのとおりだと思いますので、大臣とも十分連絡をとって善処いたします。
  104. 松野幸泰

    ○松野(幸)委員長代理 小宮武喜君。
  105. 小宮武喜

    ○小宮委員 政務次官にお尋ねします。  加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の目的の第一条によれば、「生乳価格形成の合理化牛乳及び乳製品価格の安定を図り、もつて酪農及びその関連産業の健全な発達を促進し、あわせて」云々となっておりますね。そうすると、生乳価格形成の合理化とは具体的にどういうものなのか、御説明を願いたいと思うのです。
  106. 増田久

    増田(久)政府委員 法律の目的はそのとおりでございますが、この法律において特に生乳取引の合理化ということでわれわれが新しくやりましたことは、御存じのとおり大きい点で二つあると思います。  一つは、従来は農協というものがそれぞれメーカーと直結をいたしまして、悪いことばで言うと、酪農小作というようなことばが使われていたような実態があったわけでございますが、それを全部指定生産者団体というものをつくりまして、それで牛乳というものはその指定生産者団体を通じて売るということによって生産者の地位を高め、業者に対して対等な地位に置いて、それで公平な立場において乳価の交渉なりをやれるような措置をとったということがその第一点でございます。  それからもう一点は、従来の、この制度ができます前の乳価の取引におきましては、混合乳価ということで、一体どういう根拠でこの値段が出たのかというのが全然わからないような仕組みに実はなっていたわけであります。どんぶり勘定でデータは何もなしに、メーカーの言いなりの値段で言うことを聞かざるを得ないような立場にあったわけであります。それに対して、外国で行なわれておりますように、用途別取引というものをやりまして、市乳は市乳の値段、それぞれ加工乳のほうについては加工乳の交渉をして、それでそれを指定生産者団体のところではじめてプールして、それで農家に払っていく。そういう意味で、この乳価が、いままで平均でいいますと、農家は五十円の乳価でございますけれども、それがなぜそういうことになるのかということの基礎が明らかになった。こういう点はこの法律制度の非常なメリットであったというように考えておるわけでございます。
  107. 小宮武喜

    ○小宮委員 関連産業という範囲はどこまでですか。
  108. 増田久

    増田(久)政府委員 これは普通乳業業者、それから卸、小売り、この段階を考えておるわけでございます。
  109. 小宮武喜

    ○小宮委員 いままでの政府の政策を見ておると、結局、生産者の生活安定よりはむしろそういった関連産業の利益の確保に一生懸命になっておるのじゃないかというような印象を受けるのですが、こういうような質問をしても、決してそうじゃありませんと言うに違いないと思いますが、そういった、一般国民の目から見れば、生産者の利益の確保よりは、むしろそういった関連産業の利益の確保を優先しておるというような印象を受けるのですが、どうですか。
  110. 増田久

    増田(久)政府委員 先生から先にお答えをいただいたような形になりましたけれども、私たちはそういうつもりは毛頭ございません。たとえば、先ほど芳賀委員からの御質問にもお答え申し上げましたけれども、基準取引価格というものをきめます場合のコスト計算、これ等につきましては非常に厳密に精査いたしまして、査定を加えている。こういうようなことで、これにつきまして業者の方面から非常に強い反感といいますか、があるという実態があるわけでございます。それは私たちのやっておりますことが適切であるというふうに自信を持っておりますので、今回も三十六銭上げるという、これは合理化メリットだと思いますけれども、それをこちら側にいただくということをあえてやったわけでございまして、われわれとしては業者の言いなりになる、あるいはその利益を擁護するという立場は全然とっておらないつもりでございます。
  111. 小宮武喜

    ○小宮委員 その関連産業、つまりメーカー、卸、小売り、こういうような人たちの利益は、結局いまの市販の一般の飲用乳価の中で、どうなっておりますか。
  112. 増田久

    増田(久)政府委員 総資本利益率という点で大手メーカーを見させていただきたいと思いますけれども、これは何と比較するかということですけれども、製造業と比較しますと、それと大体見合ったところにある。たとえば昭和四十五年で申し上げますと、これは申しわけございませんけれども、そういう資料がとれますのは大手三社でございますが、上期で製造業は総資本利益率が五・九、四・七、これに対し直して乳業は、年間一本決算でございまして、四・九、こういうことで、そう大きい差はないという実態でございます。また、卸につきましては、ずっと調べてまいりますけれども、これも一実をいうと十分の調査はありませんけれども、卸売りのマージン率、売り上げ利益率というものは三%前後であって、これも一般のとほとんど変わっていない。それに対しまして小売りの段階でございますが、いわゆる総売り上げ高利益率といって一種の荒利益だとお考えになっていいと思っておりますけれども、これはほかの業種に比べて一番高い。たとえば穀類を扱っているものは一〇%とか衣料品が二五というのに対して、小売り屋さんが三六というようなことでございますが、ところが、ほかの業種に比べてこの業種は、経費の七割が人件費に食われてしまうということで、経常利益率としては業界の中で穀類と並んで最も低い業界に相なっておるわけでございます。
  113. 小宮武喜

    ○小宮委員 わかりやすくいって、たとえば市販されております牛乳一本の値段の中で生産費が幾らで、メーカー、卸、小売りの利益はどうなっておるのですか。
  114. 増田久

    増田(久)政府委員 牛乳の段階別のシェアというものがあるわけでございます。それで生産者の取り分が一体どうなっているかというと、四十四年で申し上げますと四三・七%、それからメーカーの取り分が一九・六%、卸、小売り業者のとっておりますのが三八・七%でございます。三八%であるということですから、たとえ━━━━十五円ということで小売りいたします━━━━━荒っぽく計算して、一本当たり八円━━━━━━こういうことになりますと、そのうちの七割は人件費に払わなければなりませんので、実際そのほうで店の償却費だとか経営費だとかいうものを引いていきますと、わずかそのうちの一・何%しか残ってこない、こういうような実態でございます。
  115. 小宮武喜

    ○小宮委員 建議にうたわれておる、酪農の健全な発達が促進されているというように考えておられますか。
  116. 増田久

    増田(久)政府委員 この健全というものをどう考えるかということで、お答えも非常にむずかしい点があるわけでございますが、先ほども申し上げましたとおり、牛乳生産というものは、全体とすると非常に停滞的であるということを率直に言わざるを得ないわけでございます。しかしながら、これを地帯別に見てまいりますと、北海道とか九州、こういう地帯では顕著に堅実に生産が伸びておる。それに対しまして東山、東海、近畿、中国、四国というところでは非常に牛乳が停滞的だというようなことでございまして、いわゆる地域特化とわれわれ申しておりますけれども、地域特化傾向というものが非常に顕著に出てきて、地帯によってあるいは経営によってもう一方、階層分化というものが非常に行なわれておりますので、それによって非常に違った形の評価ができるだろうと思うわけでございます。
  117. 小宮武喜

    ○小宮委員 きょうも陳情の方がたくさん来られましたが、酪農家の経営の実態をどう認識されておるか。
  118. 増田久

    増田(久)政府委員 酪農家の経営というものを一体どう評価しているかということについての見方というのは非常にむずかしいし、データがなかなかむずかしいのでございますが、たまたま昭和四十四年に酪農家の経済調査というものが行なわれまして、酪農家の経営内容が統計的に把握されたわけでございます。ちょっといま数字が見当たりませんけれども、一般農家に比べまして——というのは、酪農家といいましても、平均的に見ますと、ほとんどが兼業農家でございます。兼業というよりも複合経営という形で行なわれているのが実態でございまして、その酪農だけでどうのこうのというのはなかなか申しにくいわけでございますが、そういう平均で見ますと、一般の農家の平均よりも、農家所得も、農業所得もやや高いというのが実態でございます。
  119. 小宮武喜

    ○小宮委員 一般の農家所得より高いと言っていますけれども、この一年間に酪農経営に見切りをつけてやめていった農家はどのくらいありますか。
  120. 増田久

    増田(久)政府委員 三十八年に四十一万戸以上ありました農家が現在は二十七万九千戸ということで、昨年度だけで九%減ったわけでございます。  なお、先ほど、ちょっと数字で申し上げるのを忘れたわけでございますが、四十四年で酪農家の農業所得は九十万四千五百円、ただし、これは酪農だけではございませんので、その点、御了承願いたいと思いますが、それに対して一般農家の平均は五十一万五千八百円でございます。農家所得百三十四万一千八百円、それに対して一般農家は百二十五万二千三百円、こういうような実態があるわけでございます。
  121. 小宮武喜

    ○小宮委員 酪農だけによる収入はわかりませんか。それで、結局、一人一日当たり労賃がどれくらいになるのか。
  122. 増田久

    増田(久)政府委員 酪農家の専業の農家というものについて特に調査したものはございませんのであれでございますが、たとえば平均的に申し上げますと、きょうの統計調査部の統計で、平均的に酪農の得ている一頭当たりの農家の所得というのは九万二千円であると出ております。一方の大きい階層についてはこれよりはるかに高い所得が得られているわけでございますので、それがたとえば二十頭というようなことでありますれば、そのうち搾乳率が幾らになりますか、おおむね一頭当たり十万円の所得は得られているものというふうに考えていいかと思うわけでございます。
  123. 小宮武喜

    ○小宮委員 専業酪農家のそういった収入がわからぬということは非常に残念ですけれども、そういったものをぼくらは非常に聞きたいのです。そういった意味で、酪農経営に従事していられる方々が他産業の労働者の賃金と比べてどうなっているのか。この点、どうですか。
  124. 増田久

    増田(久)政府委員 先ほど申し上げましたとおり、四十六年の一日当たり生産費から得られます家族労働で一人当たりの所得は、酪農家の場合は二千三百九十円、それに対して他産業の労働賃金は全国で三千二百八十三円ということでございますから、一日当たり八百九十三円の格差があるということであろうかと思うわけでございます。
  125. 小宮武喜

    ○小宮委員 それは一般他産業の労働者の賃金に比べれば安いですね。それから、これは先ほどもいろいろ論議になりましたが、私はよくわかりませんので質問しますが、飼育家族労働費については製造業の賃金で評価をしておる。一方、自給飼料労働については臨時日雇いのやつで評価している。なぜこのように分けなければならない理由があるのか。この点、どうですか。
  126. 増田久

    増田(久)政府委員 酪農家の労働の中に飼育管理部門と飼養作物部門があるわけでございます。一方のほうは牛を飼ったり、乳をしぼったり、運んだり、それから敷きわらを取り出したり入れたり、畜舎を掃除したり、こういうようなことで、この労働については周年拘束性があるわけであります。それと同時に、牛を飼う、生きものを扱うというようなことでございますので、これについては相当の技術が要る。それはとても余人をもってかえがたいという特殊性があると思うわけでございます。それに対して飼料作物をつくるのは一般耕種でございますから、これは雇用労賃といいますか、人を雇っても十分生産可能な分野でございます。そういう意味で、この労働評価というものを変えているわけでございまして、たとえば一般の賃金の場合でも、ある一定の特殊の作業に従事するときには特別の手当を出すというような制度がございますけれども、そういうものだというふうに御理解願えればよろしいかと思うわけでございます。
  127. 小宮武喜

    ○小宮委員 酪農を経営されておられる方々は、どちらのほうも同一人がやろうし、またむしろ、最近、日雇い、臨時雇いということで雇ってきた人でこれくらいの賃金で働く人はおらぬだろうし、少なくともわれわれが考えてみた場合に、別々に区別すること自体に非常に矛盾を感ずるわけです。したがって、先ほどからもいろいろ問題はありますが、この問題についてはやはり統一すベきだ。日雇い、臨時雇いのこの問題は、製造業の平均に統一をすべきだというように考えるのですが、それについて先ほどからいろいろ御答弁を聞いておりますが、やはり統一する意思ありやなしや、その点、どうですか。
  128. 増田久

    増田(久)政府委員 私側の考え方といたしまして、私たちのやっておるやり方が一番適切なものと信じておるわけでございます。
  129. 小宮武喜

    ○小宮委員 またこの保証価格の算定についても厩肥の評価分を差し引いていますね。これをなぜ控除するのか、私はよく理解できぬのです。最近、厩肥は、やはり酪農家でも公害その他いろいろ問題があって処置に因っておるというような状態の中で、なんでこれを副産物価格として控除しなければならぬのか、この点もよくわからぬ。この点についてどうですか。
  130. 増田久

    増田(久)政府委員 おっしゃるとおり、厩肥の処理に困っているという酪農家がずいぶん出ておることも承知いたしております。それで、われわれ生産費計算いたします際に、実際に自分の畑に使ったというようなものについて評価をする、あるいは自分のつくったものが売れたという場合には、これはそのまま売れた価格で評価をいたします。売れている農家もずいぶんあるわけでございます。それから逆に、自分でただで運んでどこかへ持っていって捨ててきた、こういう場合には労働費の中にその費用は逆に加算されるわけでございます。それから、人に頼むから持っていってくれといって金を払った、こういう場合には賃料料金という費用項目の中に入ってくるわけでございます。逆に、ただでくれてやる、こういった場合には全然これは控除の対象にはいたしていないわけでございます。そういうことで、自分があくまで売ったか使用したかというものだけをここで評価しているわけでございますが、なお、われわれは全部それをそのままやるのではなしに、当然ここにはロスが出てまいります。それを従来の調査によりますと、ロス率が八〇%という調査がありますので、その八〇%というものを掛けてこの副産物の価格計算しているわけでございます。
  131. 小宮武喜

    ○小宮委員 大体生乳一キロを生産するのに、生産費はどれだけかかりますか。
  132. 増田久

    増田(久)政府委員 全国の平均で申し上げますと、第一次生産費のところで昭和四十五年が一キロ当たり四十円五十銭、四十六年で四十二円九十六銭ということでございます。  なお、御承知置き願いたいと思いますけれども、これは階層によって非常に差がございます。その幅は一、二頭層が四十九円七十三銭に対して三十頭層が三十八円二十五銭というように、三十八円から四十九円の間までに実はばらつきがあるということがこの酪農の実態であるわけで、先ほど申し上げましたとおり、経営によって非常に問題があると申し上げたのはここを申し上げておるわけでございます。
  133. 小宮武喜

    ○小宮委員 いまのようないろいろな説明を聞いておると、農林省の考え方が一番正しいのであって、きょうのような陳情をされても、あるいは保証価格を一キロ当たり六十七円九銭以上に上げてくれというような陳情もそれは不当な陳情だというふうに理解されておりますか。
  134. 増田久

    増田(久)政府委員 私ども完全な人間ではございませんので、われわれの計算が完全であるというほどうぬぼれてもおりませんけれども、われわれのやり得るベストは尽くしたつもりでおりますので、それなりに現在の段階では最善のものと考えているわけでございます。  なお、六十九円七銭というような乳価というものが保証価格に支払われたということをもし想定いたしますと、これはどのメーカーでも加工乳をつくってしまって、日本全体の牛乳の流通というものは大混乱を来たしてしまうだろうと思うわけでございます。したがって、ああいう価格を出すということについては、現在の不足払い制度そのものをこわしてしまう価格の要求である、かように考えております。
  135. 小宮武喜

    ○小宮委員 それでは、今後の需給の見通しはどういうように見ておられるか、その点、説明を願いたい。
  136. 増田久

    増田(久)政府委員 来年度の需給の見通しでございますが、非常に停滞的な四十六年度よりはやや需要は伸びてくるものというふうに考えておりますけれども、それでもおおむね四十五年段階程度ではなかろうか。特に一般の飲用につきましてまず申し上げますと、一般の牛乳でございますが、これは一人当たり消費が実は現在落ちてきているという傾向がありますので、いろいろ計算してみますと、人口増程度は伸びると思いますけれども、絶対量としてはほとんどことしの横並び程度の形しか伸びる可能性はない。したがって、一般飲用乳としてはことしの二百十六万五千トンに対して二百十六万七千トンという程度ではないか。それに対して学校給食が、御存じのとおり、ことしは大幅に伸びておりますので、それが六十五万六千トンということで、全体としての飲用は二百八十二万三千トン、昨年の二百六十万九千トンに対して一〇四・九%は伸びる、約五%の伸びになるのではないか。いま申し上げましたように、一般の飲用に対しまして学校給食がその需要をささえているという年になるのではないかというように考えられます。  それから一方、乳製品でございますが、特定の、われわれの指定乳製品等でございますが、これは今年に比べて六・三%くらい伸びる百六十九万九千トンくらい期待される。と申しますのは、これは一般のあれよりも特に最近乳酸飲料、いろいろな新しい乳酸飲料がございますが、カルピスまがいとかヨーグルトまがいのものでございます。ああいうものが猛烈に伸びてきておる。それによる脱粉等の需要が目ざましくそれにささえられて一〇六・三%、それから、その他と申しまして育成粉乳とか、クリープとかいってコーヒーに入れるものでございますが、これがことしの五十一万八千トンに対して五十三万六千トンということで若干伸びてくる。ということで、乳製品といたしましては対前年比一〇〇・六、二百二十三万五千トンくらいの伸びになるのじゃないか。その他自家用は、これは年々減る傾向にありまして、十三万七千トン程度ということで、総計といたしましては、需要としては五百十九万五千トン、対前年度比一〇四・九という伸びになるということでございます。  一方、供給でございますが、これはもう現在二月一日の頭数が得られているわけでございます。これは現在いる牛からでなければ乳が出てこないわけでございますから、それをずっと積み上げ計算をいたしますと、大体五百九万トンということで、全体としては前年度に対して一〇四・八%ということで十万トンばかり不足するという形に計算上はなりますけれども、これは現在、事業団に生乳換算で二十万トンの在庫を持っておりますので、全体としての需給は十分まかなえるし、なお、事業団が在庫を解消するというわけにはどうも来年はいきそうにない、かように考えております。
  137. 小宮武喜

    ○小宮委員 国民の栄養水準の推移を見てみますと、動物たん白質が伸びていますね。その伸びの中で牛乳なり乳製品はどの程度の比率を占めておりますか。  その前に、われわれが一応見てみますと、たとえば牛乳を売っておる、いろいろな清涼飲料水を売っている。その中でわれわれが見るのは、いろいろな清涼飲料水を牛乳と一緒に自動販売機に入れて売っている。そうすると、そこで牛乳も飲みなさい、好きな人はコーラでも飲みなさい、いろいろな清涼飲料水を飲みなさいという選択になるわけですね。その中でもっと牛乳を伸ばすような方法はないのか。だから、われわれは、牛乳は一般の清涼飲料水とは見ずに、食料と見るべきだというような考え方もするわけですが、もっとそういうような消費を伸ばすために、何か具体的にうまい考え方はないものかどうかということで、むしろ畜産局あたりで頭をしぼって消費拡大のほうを、学校の給食だけがねらいのようですけれども、ほかにそういうものがないかどうか、もっと知恵をしぼってもらいたいと思うのですが、具体的な考えはありますか。
  138. 増田久

    増田(久)政府委員 先ほど御質問のありました、国民一人一日当たりの供給たん白質の中で、一体牛乳乳製品がどういう位置を占めているかと申しますと、全体を一〇〇として約五%、こういう位置でございます。ちなみに、肉類が八・七、卵類が六・七ということで、全体で、畜産物として二〇・六%、こういうことでございます。ですから、わが国は魚を食う民族でございまして、魚が二〇・八ということで、大体魚と並んだという段階でございます。  それから、御指摘のとおり、やはりこれからの問題は、需要をどうやって伸ばすかというやり方でございますが、一番問題になりますのは、構造的な問題もいろいろありますけれども、最近の傾向で、たとえば飲用の伸びている地帯というのはどういうところかということを見てまいりますと、たとえば北海道が実は非常に伸びている。これは販売のほうで小売りと生協とが激しい競争をやっているわけです。そういう競争があるところが一つ非常に伸びている。それからもう一つは、東京とか大阪ではスーパーにおきましての段階で、紙容器という形での販売というものが伸びてきているわけでございます。そういう点に今後の一つの方向が出てきているわけでございますので、その新しい流通チャネルというものをどう求めていくかという点で、いまの流通機構の中にどういうふうに新風を吹き込んでいくかということが一つの問題。それをきめるかぎは、やはり紙容器製というものをどう入れ込んでいくか。これはゴミ公害等の問題等がありますので、なかなかむずかしいわけでございますが、そういう問題が一つのきめ手になるのではないか。たとえばスーパーがああいう形で売れますのも、紙容器という技術が開発されたところにあるわけでございますので、やはりそういう問題があるかと思っております。  それからもう一つは、やはり生乳で飲ますという原則は原則で正しいと思いますけれども、消費が多様化しておるわけでございますから、やはり新しい商品を伸ばしていく。先ほど申し上げましたけれども、乳酸飲料というものが爆発的に伸びてきているというところにもわれわれはその示唆を感ずる化けでございまして、乳は何でもなまで飲むという形だけにこだわらないで、全体として酪農を伸ばすためには、消費を伸ばさなければいかぬわけですから、新製品の拡大ということも考えていく課題ではないか、かように考えております。
  139. 小宮武喜

    ○小宮委員 これは政務次官にお尋ねしますが、確認の意味で、政務次官は先ほどの答弁の中で、いわゆる生乳保証価格にしても、豚肉の基準価格にしても、善処しますということを言われた。まあ、ややもすれば、お役人方はその場限りの儀礼的な答弁として、研究をしますとか善処しますとか、これは佐藤総理大臣以下みんな言っているわけですが、政務次官のいまの善処しますという意味は、いまの保証価格にしても、それから豚肉安定基準価格にしても、答申案を上回るように努力をします——努力ではちょっと弱いですね、上げますというような意味での善処だと私、理解するわけですが、どうですか。
  140. 伊藤宗一郎

    ○伊藤(宗)政府委員 まことに手きびしい確認の意味での御質問でおそれ入っているわけですけれども、御趣旨に沿うように努力しますが、要は赤城農林大臣の御決定に待つわけでございますので、本日の各委員の御論議、御質問を通じての要点は十二分にお伝えいたします。時期も迫っておるわけでございますので、必ずしも十二分のお報いをすることができるかどうかわかりませんけれども、私としては全力を尽しまして、皆さま方の御意思をさっそく大臣に伝えまして、大臣の御決定を待ちたいと思っております。
  141. 小宮武喜

    ○小宮委員 十二分ではなくても、まあまあでもけっこうですから、とにかく答申案より上回るようなことをぜひひとつしてもらいたいと思うのです。  それから、これは研究の問題で一つ林野庁長官にお尋ねしたいと思います。  というのは、林野庁当局は日林労との団体交渉の中で、この前もちょっと質問しましたが、非常に長年の懸案事項になっておる特別昇給制度について、四十六年の四月にさかのぼって実施をするということを約束して、しかも、予算措置もしておるというふうに承っておるわけです。そうしますと、四十六年の四月にさかのぼるということになりますと、四十六会計年度はもうすでに終わりですから、この労働組合との約束を実施するのかしないのか、その点、いかがですか。
  142. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 ただいま御指摘がございましたように、日林労との間には昨年の四月一日に遡及して実施するように努力したい、かようなことを前長官が申しております。したがいまして、私、この前先生の御質問にお答えしまして、できるだけの努力をしてまいりたいと、こうお答えしたわけでございますが、この勤評を実施する目的は、特別昇給制度をぜひ実施したいというのがねらいでございます。  そこで、一般会計におきましては、勤務評定をいたしますと、直ちに自動的に特別昇給ができるようになっておりまして、それを現に実施しておるわけでございますが、国有林野事業特別会計におきましては、勤務評定だけではできませんで、労使双方の間におきまして特別昇給の基準について労働協約を締結しなければならないということが法定されているわけでございます。したがいまして、私たちは二つの組合がございますが、両方の組合とこの点について鋭意団体交渉を重ねてまいったのでございますけれども、御指摘のように、本日は三月三十日でございます。もう一日しかございません。遺憾ながら、今年度遡及しまして実施するということはむずかしい情勢になってきたのでございます。したがいまして、今後これを継続いたしまして、四十七年度に入りましてもさらに両組合との間で鋭意団体交渉を重ねまして、全庁あげて努力してまいりたいと考えておるわけでございます。実は二月十日に、私のほうから公労委に調停を申請した答えが出てまいったのでございます。その趣旨の中にも、この制度については労使双方信頼関係の基盤に立って、全職員にこれが徹底するようによく話し合いしなさいという調停案をいただいておるわけでございます。したがいまして、四十七年度に入りましても一日も早くこれが妥結いたしますように努力してまいる覚悟でおる次第でございます。
  143. 小宮武喜

    ○小宮委員 いま長官が信頼感の問題を言われたわけですが、結局そういった意味では、四十六年の四月から実施するということをお約束したけれども、このような事情で実施できないなら実施できないなりに、事前にやはり実施することを了解し、約束した組合に対しては、その旨の事前の了解なり理解なりを求めるような努力をされておりますか。
  144. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 御指摘の組合に対しましては、私から組合の役員に対して話をいたしております。
  145. 小宮武喜

    ○小宮委員 そういうようなことで、労使の信頼感というものを——やはりお互い約束したものを破る場合、また実行できない場合は、十分にやはり話し合って、お互いの不信感を招かないようにしてもらいたい。  さらに、この国有林野事業は、御存じのように、赤字財政におちいって、今度の四十七年度の予算においても百億の赤字ということになっておりますが、実質的に私はそれ以上だと思うのです。これはつまり、四十六年度においても五十億の赤字が出ると聞いておりましたが、現在どうなっておるかよくわかりませんが、あとでこの問題はただしますけれども、そういった意味では、農林省国有林野事業の今後の抜本的な対策について、林政審議会か何かで検討しておるというようなことを聞いておるわけですが、こういった国有林野事業の抜本策についても、三月中に組合に提示するということを約束しておったようですが、これももうすでに三月中といってもあした一日ですから、この点はどうなっておりますか。
  146. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 国有林の抜本的な制度改正につきましては、ただいま先生からお話がありましたように、林政審議会にかけて、その中に国有林部会というのを設けまして、国有林だけの問題につきまして鋭意検討をお願いしておるところでございます。当初の予定におきましては、ただいま御指摘がありましたように、年度内にこの問題についての結論を説明したいというふうに考えておったわけでございます。しかしながら、いろいろとむずかしい問題もございまして、本日も実は国有林部会を開催しておるわけでございます。ことしに入りましてからも、毎月三回前後必ず開催しまして、従来の事業の合理化の問題、あるいはまたそれに関連する経営形態の問題とか、さらに制度問題等につきまして鋭意検討中でございます。  ただ、この問題はいつまでもほっておくわけにまいりません。従来方式によりますところの予算編成は、四十七年度限り不可能になるわけでございます。と申しますのは、国有林の特別会計の事業は、先生承知と思いますけれども、主として木材を販売した代金でまかなっております。収入の約九割以上が木材販売収入でございます。さらにまた、支出の中の人件費が、最近では六割くらいになっておるわけでございます。過去におきましては、収入と支出の差額が相当ございまして、これを全部積み立てておったのでございますけれども、最近は木材価格の横ばい、人件費の上昇によりまして、積み立て金は四十七年度をもってゼロになるわけでございます。したがいまして、従来の方式による予算編成は、四十八年度以降は不可能になります。したがいまして、従来の事業につきましては、徹底した近代化合理化を行ないまして、なおそれで足らぬ面につきましては、最近、御承知のように、国有林に対する公益的な使命についての要請も非常に強いわけでございますから、私たちもその要請にこたえて、従来の施業方針というものを実は変えることにしたわけでございます。端的に申しますと、伐採する面積は大面積は避けて、小面積にする。さらにその小面積にした周囲には、できるだけ天然林を残す。したがいまして、伐採量が減少してまいります。さらに収入が苦しくなるわけでございます。しかしながら、やはり国民全般の要請にこたえていきますためには、これは環境庁から言われなくても、私たちはやはり自然保護ということを重点にしました経営でいかなければならぬと考えておるわけでございます。  そこで、いま申し上げましたような徹底した近代化合理化をはかった上で、公益的な面についての経費の負担については、国の負担をお願いするというふうに持っていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。そういったようなことを中心にしまして、きめのこまかい検討を、ただいま国有林部会で検討しておりまして、四十八年度の予算編成に間に合うように——端的に申し上げますならば、五月中には林政審議会答申をいただきまして、それを尊重して、早急に四十八年度以降の制度改正を考えてまいりたい、かように思っておる次第でございます。
  147. 小宮武喜

    ○小宮委員 時間も参りましたので、国有林事業の問題については、また別の機会にゆっくり質問させていただくことにいたしまして、きょうの質問はこれで終わります。
  148. 松野幸泰

    ○松野(幸)委員長代理 津川武一君。
  149. 津川武一

    津川委員 私たちは、農産物の価格は、農民が都市労働者と同じ生活ができる、都市労働者と同じ額の労働賃金をやるべきだと思っておるわけです。この立場から、加工原料乳保証価格にあたってのことを若干聞いてみますが、飼料作物費の中の家族労働費、これは原案では一時間どのくらいに見ているか。まず局長に答えていただきます。
  150. 増田久

    増田(久)政府委員 百九十一円でございます。
  151. 津川武一

    津川委員 その百九十一円を算出した根拠が何であるか、これが一つ。  もう一つには、労働省と建設省と農林省が三省協定でつくりました四十七年度の公共工事設計労務単価表によりますと、単純な普通の作業で、北海道で一これは日雇い日当ですが、三千百五十円、飼料作物をつくるときの農民の労働賃金は、百九十一円になりますから、これは千五百二十八円。この根拠が、同じ農林省でつくって、どうしてこのように違いが出たのか。これをつくった根拠がわかっておるならば答弁していただきたい。わかっていなかったならば、後刻でもよろしいが、これが一つ。  そこで、農林政務次官にお尋ねしますが、この農民の飼料をつくる家族労働の賃金は、こう低く押えて、しかも、あなたたちがつくった公共事業における普通作業——これは普通単純作業です、これは三千百五十円、片一方が千五百二十八円、こういう差が出ているので、乳価の算定にあたってはこの労働省等との三省協定と同じように扱うべきだ、こう思うのですが、これは次官から答弁していただきます。
  152. 増田久

    増田(久)政府委員 先に、御質問ございました労賃の評価の問題ですが、これは統計調査部生産費の中から出てきた労働賃金単価というものは、一時間当たり百七十七円六十七銭でございます。これを、最近の十一月から一月の物資の中の賃金の単価が出ておるわけでございますが、それを季節修正いたしまして、その最近の賃金の上昇率をかけまして百九十一円四十銭という値段を算出しておるのであります。
  153. 伊藤宗一郎

    ○伊藤(宗)政府委員 八時間労働で、ほとんど半分になるわけで、まことにおかしなことですけれども、いま畜産局長から説明を申し上げたとおりの事情で、目下はこういうことになっておるようです。  しかし、津川先生御指摘のとおり、農業者の労賃も他産業並みあるいはまた都市産業並みという御趣旨には私も全く同感でございますので、そういう面からは大いにこれらの諸点についてわれわれとしても反省しなければならないと思っております。
  154. 津川武一

    津川委員 そうすると、政務次官、ことしの加工原料の乳価でこれを実現したほうがいいと思う。来年からやるつもりなのか、ことしからやれるのか、この点が一点。  それから、時間がないので続けますが、もう一つの問題は、私たちは農産物の価格は、農民が再生産するだけでなく、拡大生産していくような価格保証されないと農業が伸びていかない、こういう立場をとっているわけです。そこで、最近のいろいろな農政上の都合で、生産者米価がああなる、減反がああなるで、米作農民は、出かせぎに行ってその問題が解決できる。ところが、酪農農民は、生きものを扱っているから、出かせぎに行くわけにいかないのです。そこで、生きていくためには、どうしても頭数をふやす以外に方法がないのです。局長も言っているとおり、頭数がふえている。このふえていることの見方に対して、やはり価格の安定がないからこうなった。だから、現実に酪農農民の借入金はどれぐらいあるかというと、北海道の農業協同組合の中央会が出している資料だけでも、一戸平均五百九十三万円。このうちで系統資金やいろいろの利益を受けられないでいるお金が百六十五万。昨年の冷害で私たち旭川から名寄へずっと行ってみたら、一千万円の借金でこういう高い金利のものが二百五十万ある。こうして初めて酪農農民が生産を続けているわけです。この大きな借金、この表面に出てこない借金の減価償却費、これも乳価に盛るべきだし、酪農を維持するためには、こういう借金の元金償還が始まっているから、これは借りかえなければならない、利子を下げなければならない。ここに決定的な問題があるわけです。米作農民は出かせぎ、酪農農民はしかたがないから頭数をふやす、無理して借金しておる。この借金を乳価の上でどう実現するか。この借金を少しでも減じてあげる方法が考えられてしかるべきだと思うのですが、これはひとつ政府から次官に答えていただきます。
  155. 増田久

    増田(久)政府委員 確かに酪農というものはそもそも資本集約的なものでございますから、どうしても投下資本というものが多額にわたるということはいなめない事実だと思うわけでございます。先生のおっしゃいましたとおり、借金は、消費する金ではございませんので、そこらは当然資産に変わっているわけでございます。したがって、直ちにこれが借金がふえた、ふえたというような感覚、ものの考え方には、私はすなおにちょっとついていけないものが一つあるわけでございます。と同時に、現在の総合資金というものは、御存じのとおり五分、据え置き期間中は四分五厘、据え置き期間十年以内、償還期間は二十五年、こういう長期の金がはたしていまの一般の金融事情なり何かから見てどうか。こういうことについて私は必ずしもこれが低利なものではないというふうには言えないと思うわけでございます。  それで、なお私のほうで特に北海道についていろいろ私たちなりに疑問を感じます点は、近代化資金で四号資金というものがありまして、これは六分の金で二十八カ月据え置きの七年償却で育成代を貸すという制度がある。これはえさ代だと思いますけれども、これが一つの運転資金になる。これがほとんど借りられていない。そして全部一割以上のプロパー資金でまかなわれているという事実があるわけでございます。そういったところに絶対的な——制度金融がいいか悪いかという、これはいろいろな見方がおありだと思いますけれども、いまの制度の中でも、農家の方なり農協の方々がなお改善すべき余地というものは多々あるように思うわけでございます。  しかし、そういうことも含めまして、われわれの立場としましては、酪農家の安定というのが一つの使命でございますから、そういう点はなお検討さしていただきたいと思います。
  156. 伊藤宗一郎

    ○伊藤(宗)政府委員 いま畜産局長からもお話しあったとおりでございますが、低利、長期、据え置き期間の長いものを、酪農に限らず、農業者のためになお充実をさせていかなければならぬということは御趣旨のとおりでございます。私もそのように思っておりますので、いま畜産局長が申し上げたこともありますけれども、そういう面なども十分考慮に入れた上で、そういう低利、長期、据え置き期間の長い制度の金融については、なお政府としても、われわれの所属しております党としても検討してまいるつもりであります。
  157. 津川武一

    津川委員 そこで、政務次官にもう一回尋ねますけれども、さっきの労賃の差、これはことしの乳価に実現できるか、来年どのように考慮を払うのか、これが一つ。  最後に、なま牛乳消費拡大ですが、学校給食にやっている分がかなり大きな消費になっている。そこで、もう一つ進んで、幼稚園の子供さんたち、これは四十八年度からやる計画も聞いております。しかし、幼稚園よりもっと多いのは保育所の子供さんたち、さらに今度は妊婦。そういうふうに広げていくこと、私は非常に大事なことだと思うのです。先ほどたん白質源、脂肪源の問題が出ましたけれども、日本人のたん白質、脂肪に対する牛乳の貢献度が非常に多いので、この点はぜひやらなければならないと思うのですが、この二点を答えていただきます。  それから局長には、この間、私たち北海道に行って、北海道の農業協同組合の中央会というのは実によくやっておりまして、一人一人の農民にずっと資産表をみんな持たしている。そうしたら、工場の資本の償却期間がぐんぐん短くなっている。農民の投資している固定資産が六兆円をいまこしているけれども、この償還期間が短くなっていない。これを短くすると経費になってくるので、また乳価というものにもはね返ってくる可能性があって、実際数えてみたら四%以上だと無理だ。この点を指摘しておいて、次官に二つの点を答えていただきます。
  158. 増田久

    増田(久)政府委員 私から答えさしていただきたいと思いますが、私は、いまの保証価格制度不足払い制度のもとにおいて、他の労働に十分代替し得る飼料作物の労賃を評価がえをするということについては制度上困難である、むずかしいというように考えます。  それから、妊産婦等につきましては、これは政策的な需要拡大ということでございますので、これは文部省なり厚生省の所管もございますから、十分協議して考えてみたいと思っております。
  159. 伊藤宗一郎

    ○伊藤(宗)政府委員 いま畜産局長から答弁したとおりでございますが、なお、われわれは政治家として、事務当局のいままで壁の破れない点を破っていくこともわれわれのつとめだと思います。特に牛乳消費拡大の面については、各省間のなわ張り争いの問題もありますので、そういう問題を十分調整をして、保育所、妊婦等の問題についても、ぜひ、できるだけ早急に善処をしたいと思っております。
  160. 津川武一

    津川委員 そこで、次官、幼稚園、保育所、妊婦、これを農林省自身から厚生省と文部省に申し入れるつもりであるならば、私は質問をやめます。ひとつ答えていただきます。
  161. 増田久

    増田(久)政府委員 これは、先生の御指摘の点も大事な点でございますので、持ち帰りまして十分慎重に検討して対処したいと思います。
  162. 津川武一

    津川委員 終わります。
  163. 松野幸泰

    ○松野(幸)委員長代理 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時散会