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1972-06-06 第68回国会 衆議院 内閣委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年六月六日(火曜日)     午前十時十九分開議  出席委員    委員長 伊能繁次郎君    理事 加藤 陽三君 理事 佐藤 文生君    理事 坂村 吉正君 理事 塩谷 一夫君    理事 山口 敏夫君 理事 大出  俊君    理事 伊藤惣助丸君 理事 和田 耕作君       阿部 文男君    天野 公義君       笠岡  喬君    塩川正十郎君       澁谷 直藏君    竹内 黎一君       辻  寛一君    中村 弘海君       葉梨 信行君    湊  徹郎君       豊  永光君    木原  実君       横路 孝弘君    鈴切 康雄君       松本 忠助君    東中 光雄君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 丹羽喬四郎君         労 働 大 臣 塚原 俊郎君  出席政府委員         運輸大臣官房長 高林 康一君         運輸省自動車局         長       野村 一彦君         運輸省航空局長 内村 信行君         運輸省航空局技         術部長     金井  洋君         労働大臣官房長 藤繩 正勝君         労働省労働基準         局長      渡邊 健二君         労働省職業安定         局長      道正 邦彦君  委員外出席者         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ————————————— 委員の異動 六月五日  辞任         補欠選任   阿部 文男君     椎名悦三郎君   笠岡  喬君     坪川 信三君   中山 利生君     小川 平二君   葉梨 信行君     八田 貞義君   木原  実君     佐々木更三君 同日  辞任         補欠選任   小川 平二君     中山 利生君   椎名悦三郎君     阿部 文男君   坪川 信三君     笠岡  喬君   八田 貞義君     葉梨 信行君   佐々木更三君     木原  実君 同月六日  辞任         補欠選任   天野 公義君     澁谷 直藏君   鯨岡 兵輔君     塩川正十郎君   篠田 弘作君     竹内 黎一君   園田  直君     中村 弘海君   古井 喜實君     豊  永光君   鈴切 康雄君     松本 忠助君 同日  辞任         補欠選任   塩川正十郎君     鯨岡 兵輔君   澁谷 直藏君     天野 公義君   竹内 黎一君     篠田 弘作君   中村 弘海君     園田  直君   豊  永光君     古井 喜實君   松本 忠助君     鈴切 康雄君     ————————————— 六月六日  靖国神社法案保利茂君外五十七名提出衆法  第三一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  労働省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第三三号)  運輸省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第二五号)      ————◇—————
  2. 伊能繁次郎

    伊能委員長 これより会議を開きます。  今国会内閣提出第三十三号、労働省設置法の一部を改正する法律案議題といたします。  他に御質疑もないようでございますので、本案に対する質疑はこれにて終了いたしました。
  3. 伊能繁次郎

    伊能委員長 ただいま委員長手元に、加藤陽三君外三名より本案に対する修正案提出されております。
  4. 伊能繁次郎

    伊能委員長 提出者より趣旨説明を求めます。加藤陽三君。
  5. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 ただいま議題となりました労働省設置法の一部を改正する法律案に対する自由民主党、日本社会党、公明党、民社党、四党共同提案にかかる修正案につきまして、提案者を代表してその趣旨を御説明申し上げます。  案文はお手元に配付いたしてありますので、朗読を省略させていただき、その要旨を申し上げますと、原案では、労働基準局賃金部を改組して福祉部設置することにいたしておるのでありますが、最低賃金をはじめとする賃金行政重要性にかんがみ、この福祉部賃金福祉部に改め、同部に最低賃金家内労働等に関する事務をも行なわせることとし、また、昭和四十七年四月一日としている施行期日を、公布の日から起算して三月をこえない範囲内において政令で定める日から施行することに改めようとするものであります。  よろしく御賛成お願い申し上げます。
  6. 伊能繁次郎

    伊能委員長 これにて修正案についての趣旨説明は終わりました。     —————————————
  7. 伊能繁次郎

    伊能委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に付するのでありまするが、別に討論申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  今国会内閣提出第三十三号、労働省設置法の一部を改正する法律案及び修正案について採決いたします。  加藤陽三君外三名提出修正案について採決いたします。  本修正案賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  8. 伊能繁次郎

    伊能委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除いて原案について採決いたします。  これに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  9. 伊能繁次郎

    伊能委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。  なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 伊能繁次郎

    伊能委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  11. 伊能繁次郎

    伊能委員長 運輸省設置法の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑申し出がありますので、これを許します。木原実君。
  12. 木原実

    木原委員 事故調査委員会の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  実は、事故調査委員会独立をした機関をつくるべきだ、こういうのが私どものかねてからの主張でもございました。したがいまして、今度事故調査委員会設置法が提案されましたのは、制度としましては私はたいへん前進だと考えるわけでございます。ただ、設置法案を拝見いたしまして、せっかくつくるのにこれでいいだろうか、こういう疑問もあるわけであります。特にせっかくつくる制度ですから、きちんとすべき点をきちんとしてまいりませんと、できました制度運営の段階に入りまして立ち枯れてしまうようなことがあってはどうも趣旨に反する、こういう気持ちもいたしますので、そういう観点から、少しこまかくきょうは質問を申し上げたいと思います。  一つは、御承知のように、航空事故というものでございますけれども航空事故、しかも調査をするということは、ある意味では最高科学水準挑戦をする、こういう側面を持っておると思うのです。何百人もの人を乗せて太平洋を数時間で飛ぶ、こういうようなことは、少なくともいまの科学水準最高の粋を集めたものだと思うのですが、しかもそれが事故を起こす、その事故探索するわけでありますから、ある意味では技術の最高水準挑戦をする、そういうような側面を持っておると思うわけです。  そこで、この法案の第一条に、何か少しことばにこだわるようでございますけれども、「適確に行なわせる」、こういうことばが見えるのです。何かことばのあげ足をとるようで恐縮ですけれども、どういう意味を予想しておるのでしょうか。「適確に行なわせる」ということの「適確」という問題について、内容がどうなっておるのか、御意見がありましたら、ひとつ聞かしていただきたいと思います。
  13. 内村信行

    内村(信)政府委員 第一条の「適確に」ということばの問題でございますけれども、これは特にそういう特別の意味を持って設けたものではございません。やはり事故調査というものは確実にしっかりと行なわなければならぬ。何となれば、事故調査目的というものは、その原因を究明する、真実探究することがまず第一でございます。真実探究いたしまして、それによって原因を究明し、今後同様な事故の再発を防止しようということが目的でございますから、それにつきましては、航空事故調査というものがそれこそ適確に行なわれなければならない、そういう意味で確実に行なわれるということを期して書いたものでございます。真実探究が第一の目的でございます。
  14. 木原実

    木原委員 第五条だったかに、「科学的かつ公正」ということばがありますけれども、あえて意味をつければそういうふうな意味合いにとれるのじゃないかと解釈しているのですが、よろしゅうございましょうか。
  15. 内村信行

    内村(信)政府委員 同様な趣旨であろうかと存じます。
  16. 木原実

    木原委員 航空事故は、この数年来たいへん大きな事故が、あるときは集中して起こりましたし、昨年のごときは自衛隊機の接触による事故などが起こりました。こういう制度をつくる場合に考えておかなくてはなりませんことの一つは、たとえば航空機を安全に飛ばすためにさまざまな法律的な規制があります。航空法もあります。それに伴うさまざまな規則もあるわけでありますが、定められた法律なり規則なり、それを完全に守っていてなおかつ事故が起こる、こういうような場合もまたあり得るわけですね。事故の態様というのはさまざまなんですが、技術的なミスや、あるいは科学のはからざる欠陥というようなものが事故につながる場合もありますし、それを補うためにできておる法律規則を完全に守っていても、なおかつ事故が起こる。あるいは国が航空機の安全を確保するためにさまざまな施設その他のサービスを提供しておるわけでありますが、それに何か欠陥があって事故につながるという場合もありましょう。いろいろなことが考えられるわけですが、そういう際にその事故探索をするという場合には、科学的な分野での判断探索と同時に、行政上のミスといいますか、欠陥といいますか、そういうものについてもきびしい探索を行なう、こういうような側面が当然出てくると思うのですね。そうなりますと、事故調査委員会というのは、その仕事性格上、行政そのものをやはり批判をする、こういう立場に当然立つと思うのですね。ところがこの第二条によりますと、「運輸省に置く」、こう書かれてあるわけですけれども、これは法律はこういうことを書くわけなんですけれども性格がどうも少しあいまいなような感じがするわけです。  私がここで問題にいたしたいのは、行政上のそういう欠陥行政に対する批判を含むということになりますと、私ども国会の中で持っておりますたとえば国政調査権、こういうものをささえる一つの一環でもあるような気がするわけです。そうしますと、そういう性格を持っておる事後調査委員会のようなものは、これはたとえば運輸大臣との関係になりますけれども独立性といいますか、行政機関の中での相対的な独立性のようなものを確保しておらなければならないのじゃないか、こういう感じがするわけであります。いろいろな組織についての規定があるわけでありますけれども、その点が私はややあいまいなのでお伺いしたいと思いますが、この委員会独立性運輸大臣との関係、あるいは従来の航空局との関係、あるいはまた、委員会はいわゆる外局として設置されるのかどうか、そういう点についてひとつ御見解を承りたいと思います。
  17. 内村信行

    内村(信)政府委員 ただいま先生指摘になりましたいわゆる航空行政との分離、これは確かに必要なことでございます。私どもが今度、常設的な、また航空局から分離した事故調査委員会をつくろうという趣旨もそこにあるわけでございます。と申しますのは、航空局におきましては、先生指摘のような一般的な制度と申しますか、そういった意味における行政制度をつくり、監督行政をいたしますと同時に、航空保安業務と申します現業業務をやっております。つまり、航空保安施設設置運営でありますとか、あるいは航空交通管制とか、航空安全にじかに密着するようなことをしております。したがいまして、その意味から申しましても、航空局の中に置くということは、私ども公平を期しておりますけれども、はたから見れば必ずしも公平ではないということもあると思います。また、私ども現実に、少なくとも希望といたしましては、なるべく私ども行政ミスなからんことを期しておる、率直に申しましてそういうことを感じておるわけでございます。したがいまして、やはり客観的な制度といたしまして、航空局から切り離しまして、それと別個の立場におきまして航空行政批判し得るという組織をつくること、これはどうしても事故調査委員会としては必要なことでございます。その意味におきまして、航空局から切り離し、運輸大臣直属にするということがこの設置のいきさつでございます。  そこで、先生指摘のように、そういう趣旨があるならば、さらに百尺竿頭一歩を進めて、これを運輸省から全部離したらどうだろうか、運輸大臣直属にしなかったらどうであろうか、こういう御意見があろうかと思います。確かにそういう御意見があることは私ども承知しておりますし、これは一つの考え方であると存じます。実はこの点につきましても、政府部内でもしばしば論議をいたしたところでございますが、結論といたしましては、事故調査というものにつきましては、やはり航空行政と切り離すべきであるけれども、密接な関係がなからざるを得ないのではないか。と申しますのは、事故調査委員会をつくりまして事務局を置きますけれども、やはりその勢力としては十九人程度、そう膨大な勢力でございません。一たび事故が起きますと、やはりその手足となる者が要りますし、現場の物件の保存でありますとか、あるいは現場保存、そういったようなことにつきましてもやはり手足が要る。これは委員会の依頼によってそういうことをやらなければならぬ場合もございますし、また初動調査と申しますが、事故が起きて委員会から到着するまでの間、とりあえず現場保存をするということも必要でございます。そういったことをだれがやるかといいますと、やはり航空局その他の現場の職員がそういうことをやらざるを得ないというのが実情であろうと存じます。そういう点も兼ね合わして考えますと、やはり運輸省の中に置く、ただし航空局から切り離す。しかし、運輸大臣のもとに置くけれども業務の上において指揮監督を受けない、これははっきり独立したものであって、独立した立場において判断を下すということが必要であると考えます。  そこで、この機関の性質は、こういった機関としましては、いわゆる外局と申します三条機関と、いわゆる補助機関である八条機関、この二つが考えられるわけでございますが、今回、私どもの考えましたのは八条機関でございます。と申しますのは、やはり事故調査目的と申しますものが客観的な真実探究ということでございまして、それに伴って、行政処分をするとか、あるいは審決をするとかいうようなことは考えておりません。したがいまして、その限りにおきましては一応八条機関でいいのではないか。行政処分を伴いませんからということで八条機関とする。  そこで、運輸大臣のもとに置くというかっこうになるわけでございますが、それにしても、先ほど先生の御心配のような、やはり運輸大臣のもとで統制されるのではないかというふうな懸念もなきにしもあらずでございます。したがいまして、その点を排除するために、特に委員につきましては、法律上、先ほど先生の御指摘になりました、科学的かつ公正な判断をなし得るというようなこと。さらに欠格条件を設けまして、航空運送会社等との密接な関係を排除するということ。さらに、委員の任命につきましては両院の同意にかけまして、国会の方々に公正に承認を願って委員を選んでいただくというようなことによりまして客観性を担保できるならば、一長一短でございますけれども、やはり運輸省の中におけるそういうような独立性を維持するというのが最も現実的な姿ではないか。したがいまして、諸外国におきましても、アメリカにおきましても、NTSBというのはやはり本省の中にございます。そのほかの国では、ほとんど委員会ではなくて、運輸省の中の航空局民間航空局というようなところでやっておるのが実情でございます。そういった意味から申しましても、やはり運輸省に置いて、しかも独立かつ公正にやるのがいいのではないかというふうに考えた次第でございます。
  18. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 いま一番重大な問題でございますから、私からも私の考えを述べさしていただきます。  実はいま先生指摘いただきました、そういったものを完全に総理府に置いたらどうかといったことは、私どもこれは真剣に考えた次第でございます。いろいろ私どもほんとうに申しわけない次第でございますが、私が就任二日目に「ばんだい号」の事故が起きました。また、その後、全日空事故が起きて、総理府全日空事故調査委員会を置きまして公正を期した次第でございます。実際の問題になりますと、全部私どもがすっかり構想をつくりまして、委員の方にお願いしてやるということで、総理府のほうは名前をかりるだけというようなことが実際は実情でございます。それで、その点で具体的に最近の事故調査は非常におくれてまいりました。どうも私ははっきり正直に申し上げますると、自衛隊とのあれも、委員長とのお話でひとつ早くやっていただきたい、年内には結論をつける、こういうお話、ぜひお願いしたいというのでいままでお願いしている次第でございます。「ばんだい号」のほうもそれと同じようなことをお願いしておる次第でございますが、それもおくれているというようなことでございます。やはりこれはどうしても一緒になりまして、真理の探求と申しますか、原因探求は独自でお願いする。いろいろの便宜を供与するというようなことは、一緒にやっていったほうがやりいいんじゃないかということが一つでございます。  それからもう一つは、大惨事のあれというものはほとんど生存者がおりませんので、これは大きな海難と同じでございまして、そういう意味におきまして、とかく真相究明がおくれがちになる。海難は審判という独立機関司法機関になっておりますが、司法機関にしたらどうかということも非常に論議をした次第でございますが、そうすると、ますますおくれてくる。それで大体原因不明になるというようなことが非常に多いわけでございまして、そういうことでは困るので、やはりこの事故調査というものは、結局は再び事故をなからしめるための原因探求でございますが、できるだけ早く真相を究明してもらうということが主眼でございますので、これはむしろ八条機関といたしまして、それでお願いをしたわけでございます。ただし、いま申しましたような委員の方はほんとうに厳正適格な、先ほど第七条で御質問がございましたような、適正な、ほんとうに片寄らない方にお願いをすべきである。それは十分国会におきましても御指摘をいただきましてやっていただく。  それからもう一つは、確かに、いま申し上げましたこの間の羽田の飛行場の日航の事故におきましても、エンジンがすっ飛んだ、あれは滑走路が悪いんじゃないか、こういうお話もございます。滑走路が悪いとすれば、これは運輸省航空局、私どもの責任でございます。飛行場の管理は私どもですから。そうすると、運輸行政が悪いんじゃないか、こういうことになってまいります。そういう点におきましては、やはり運輸行政につきましてはどんどんと御指摘をいただかなければならぬ。まだ私どもほんとうに未熟でございます。まだまだこれから直していかなければならぬ点が、安全上から考えて非常に多い次第でございます。それでございますから、それは十分御指摘をしていただかなければならぬ。しかしそのことは、運輸省におきましても、運輸省内部運用機関といたしましても、堂々とその点は述べていただくという権威のあるものに盛り立てていかなければならぬ。その点におきましては、独立性というものを十分に身分その他におきまして持っていただきまして、また、そういったような人物を選んでいただくということでやったらどうか。  いま御指摘になりましたことは、もう私も、初め国会でああいう問題で御指摘をいただきまして、どうしてもこれをつくらなければならぬということを再三言明しましてから三、四カ月、その問題で私も事務当局の一員ぐらいになったつもりでいろいろ研究した次第でございます。そういうことを勘案いたしまして、まあこの程度でもしかたがない、こういうことでいま出した次第でございます。
  19. 木原実

    木原委員 いま大臣がお述べになりましたように、実情はそうだと思うのです。ただ制度でございますから、実情からすれば、かりに総理府の中に置きましても、スタッフその他の要員はいまおっしゃったような形になる心配があるわけでございますが、もう少し雄大な構想を、この委員会でも何回かこの問題は出たわけでございますけれども、お持ちの方もおられるわけなんです。実情はそうでございますけれども、実際問題としましては、そういう形で制度を発足させるということになると、あとで二、三の点でそのことに関して触れたいと思いますが、人事運営の面についても、もう少し独立制を付与する方向が必要ではないか、こういうふうに考えるわけなんです。  と申しますのは、これは、調査権や、あるいはまた、かなり強い権限を持つ委員会なんですね。この種の制度としては、ある意味では画期的な中身を持つ委員会だと思うのです。私がそこで一つ心配をいたしますのは、繰り返しになりますけれども、それからまた、運輸省を信頼しないわけじゃないのですけれども、確かに委員等欠格条項については、たとえば事業者関係者ではだめであるとか、幾つかの規定があるわけなんです。しかし、何にいたしましても、自分たちのやってきた仕事について批判を加える、こういう側面が出てくるわけであります。運輸大臣が、先ほど申し上げましたように、これで行くのだという法律規則をお示しになって運用していらっしゃるそのことに欠陥があった、そうすると、同じ運輸大臣指揮監督下にある機関が、今度はそれを批判するということになるわけでありますから、手かげんというとおかしいけれども、それこそ適確調査を遂行する上においては、何かそこにふっ切れないものがある、こういうことだと思うのです。ですけれども、にわかに大きなものが望めないということに相なりますれば、いま大臣の御答弁にもありましたように、現状はそうだということになれば、せめて法律条文その他の中で、運用あるいは人事という面について、ほかの条文にわたりますけれども、もう少し独立性を与えるような面が必要なのではないか、こういうふうに考えるわけです。  それはそれといたしまして、たとえば人事権という形、これは運輸大臣国会同意を得て任命される、こういうことに相なっているわけなんですけれども、これまた、ことばにこだわるようですが、「科学的かつ公正な判断」ができると認める、これはだれが認めるのでしょうか。国会が認めるのか、あるいは運輸大臣が認めるのか。文章の脈絡から言いますと、どこが認めるのかもはっきりしないわけなんですが、その辺はどうでしょうか。
  20. 内村信行

    内村(信)政府委員 これはまず運輸大臣が任命申し上げるわけでございますから、その候補者の方について判断をいたしまして、運輸大臣科学的かつ公正な判断を行なうことができる方であろうということを認めまして、さらにそれを国会のほうに御相談申し上げまして、国会のほうでも両議院で、なるほどこれならば科学的かつ公正な判断を行なう人だとお認めいただいた場合、すなわち両者が認めなければいけないというかっこうになると思います。
  21. 木原実

    木原委員 この種の組織というものは、公正さを保つためには、絶えず制度の上で公正さが保障されるようなものが必要だ、こういうことがありますと同時に、何といいましても、事故というような態様では、おそらく一番公正さを望むのは、被害を受けれらた遺族の方だちとか、あるいは当事者であるとかいうことだと思うのです。やはりそういう面に公正さを期待をされておるわけでありますから、それにこたえていかなければならない。そうなりますと、これはあとの質問にも関連いたしますけれども、ここで調査したものについては、いろいろな過程で調査の経過や、あるいは結果はもちろんでありますが、公表をしていく。公表をしたものが絶えず批判をされていって、批判にたえ得るようなものを絶えず出していく、そういうかまえが必要だと思うのです。そこで公正さを保障するような制度、その制度の中でも、組織を形だけのものにしないで絶えず批判を受け入れていく、こういう側面が必要だと思うのですけれども、それらの点についてはどうでしょうか。
  22. 内村信行

    内村(信)政府委員 それは確かに必要なことでございまして、あらゆる意見を客観的に受け入れなければならないということは必要だと思います。そこで、報告書につきましても、これは公開するということになっておりますが、ただ、その調査の過程においてすべてを公表するかどうか、これについては若干疑問なきを得ないわけでございます。  と申しますのは、いろいろな角度から審議をいたしますので、一回は黒であるというのが、さらにまたほかの資料によって審議をしますと白にもなる場合があり、またそれを審議を続けてまいりますと黒となる場合がある。こういうふうなことを重ねて、最終的にどうかという結論を出すというのが審議の内容になりますので、そういった意味におきましては、その過程において一々発表いたしますと、さながらそれが結論であるというふうになるおそれもございますので、その辺については、必ずしも全部その過程について公表できないかもしれませんが、しかし、全体について事実というものはガラス張りで公表するということが趣旨であろうかと存じます。
  23. 木原実

    木原委員 公表の問題もあとで少しお話し申し上げたいと思うのですが、その次に、この事故委員会が当たる調査の問題ですけれども、これは行政調査とでもいうべき性格のものだと思います。しかし、事故が起こりました場合には、当然刑事捜査の側面からの調査が入ってくる。あるいは場合によれば、民事調査といいますか、裁判を想定いたしまして補償を求めるための調査、そういうものが入り組んでくると思うのです。そのかかわりあいがどういうことになっていくのかという問題が一つあるわけでありますけれども事故調査ということになりますと、一つは、かなり学術的な調査側面というもののウエートが高いと思うのです、従来の例に徴しましても。そうしますと、学者の奪い合いが場合によれば起こるということもございますし、それからもっといろいろなことが想定をされるわけですが、いずれにいたしましても、一方で刑事捜査があったり、あるいは民事訴訟のための調査がからんできたりするわけでありますけれども、しかし、この委員会の権限や機能から申しますと、ある意味では調査権を独占をするような、そういう性格が強いと思うのですね。これに関連をいたしましていろいろな問題があるわけですけれども、たとえば刑事捜査と行政調査のからみ合い、どちらが優先するのかということもおかしな話ですけれども、その辺については何か御検討なさいましたか。
  24. 内村信行

    内村(信)政府委員 この航空事故調査、それから刑事訴訟あるいは民事訴訟との関係でございますけれども、これについての私どもの基本的な立場は、これはあくまでも峻別していきたいというのが基本的な姿勢でございます。と申しますのは、この事故調査目的は、何と申しましても客観的な真理を探求いたしまして、それによって同種の事故の再発を防止するということがその根本的なねらいでございます。したがいまして、この事故調査にあたりましては、あらゆることから隔絶されて、いろいろな心配、周囲に対する心配を顧慮しないで、ほんとうに自由な立場で客観的な事実を求めるというようなものにしなければいけないだろうというのが基本的な考え方でございます。刑事訴訟あるいは民事訴訟はまた別で、一定の事故につきましての責任を追及する、あるいはその責任の程度はいかなるものかをきめるというふうなことが刑事あるいは民事訴訟の問題でございまして、この性質は根本的に異なるものである。したがいまして、刑事訴訟あるいは民事訴訟というふうなことを顧慮しながら事故調査をやったのではいけないというのが基本的な考え方であります。  ただ、先生おっしやゃいますように、事故調査にいたしましても、あるいは、刑事あるいは民事の裁判のほうにいたしましても、権限行使の対象というものは勢いひとしくならざるを得ないという点がございます。したがって、多くの場合には、やはり同じような事柄を対象にいたしまして、片方は捜査をし、片方は調査をするということになると思いますので、この点につきましては、やはり両方がうまく調節されて運営されてまいりませんと、実際の運営にそごを来たすというようなおそれがございます。したがいまして、この点につきましては、まだこれといったはっきりしたものはございませんが、この委員会が出発した段階におきまして、検察当局、司法当局とも十分打ち合わせまして、その両方の調整をはかってまいりたいというふうに考えております。
  25. 木原実

    木原委員 それで幾つかの問題が考えられるのですが、たとえばこの調査は、かなり強い権限をもって、証拠物件を押えたり、あるいは質問をしたりすることになっているわけですが、刑事捜査の場合ですと、たとえば証人から証言を得る場合に黙秘権というような問題があります。ところがこれは、この条文に関する限りは、そういう黙秘権というようなものは予想をしていないという状態ですね。ところが、その点に関連をして言いますと、たとえば証言をなさなかった場合には、三万円以下の罰金というような罰則がついているわけですね。ある意味ではそれほどきびしい追及の権限を持っている。しかしながらそれに対しての黙秘権のことには何ら触れていない。ところが刑事捜査の場合は、これは当然ですけれども、黙秘権というものがある。どういう場合でも、人を殺した場合でも、被疑者になった者は、自分に不利益だと思うことはしゃべらなくてもよろしいということになっているわけですね。事故の態様はいろいろな場合が考えられるわけなんですけれども、それほどきびしい追及の権限を持っていて、答えなかった者に対して罰則が適用されるというほどきびしいのですが、黙秘権の問題はどうですか。
  26. 内村信行

    内村(信)政府委員 この辺、確かに先生の御疑問の点が生ずるような場所であると思います。ただ、私どもの考え方といたしましては、特に事故調査は、先ほど申しましたように、刑事訴訟なり刑事訴追とは根本的に違うわけでございまして、客観的な事実の探求ということでございます。したがいまして、事故調査をいたします場合に、あるいは物件の収集、分析というふうなことにおいて事実を得る場合と、同時に、やはり客観的な事実の証言ということが事故調査の重要な手がかりになるわけでございまして、したがいまして、この場合には、そういう点におきまして、特に黙秘権というふうなものは与えないでまいりたい。ただしかし、これは基本的に刑事訴追といった場合の黙秘権をも否定するものでは毛頭ございません。したがいまして、当該事項について刑事訴追をされるおそれがあるというふうなことについて、証言をされる方がしゃべらないということは、この罰則の対象にならないわけでございます。  と同時に、私どもといたしましては、いまも申しましたように、原因関係者の人権を無視するという気持ちは毛頭ございませんので、一方において、職務上知り得た秘密というものは漏らしてはいけないのだということを設けまして、自由に発言していただくかわりに、その秘密は漏らさないということにいたし、なおかつ、その原因関係者の証言内容等につきましては、だれがどう言ったかというふうなことは事故調査報告には出さないというふうなことにして、秘密は守る、しかし客観的な事実については陳述を得たいというのがこの趣旨でございます。
  27. 木原実

    木原委員 これはなかなかデリケートな、大事な点だと思うのです。私も立法府にいるのですけれども、どうも法律の専門家でないものですから、それこそ的確な解明がなかなかできないのですけれども、たとえばこの調査の結果は、事実を明らかにするというところまでで終わっているわけです。あとは建議をしたり勧告をしたりということになっているのですけれども、しかしながら、ここで明らかにされたことが当然刑事上の責任を追及される一つの基礎資料になるということは、あり得るわけです。そうなりますと、局長の御答弁では、当然刑事責任を追及される、不利益をこうむるということで陳述を拒んだ場合には、それはやむを得ないのだ、こういう御解釈なんですけれども、私はその辺が非常にデリケートで、かみ合ってきていると思うのですね。  そこで、ひとつ別の観点からお伺いをしておきたいのですけれども、たとえばこの調査委員会に対して証人が何かの証言をした、そのことがその証人にとって不利益に使われる。たとえば、その人がどこかの航空会社の従業員であった。その人が、たとえばうちの整備なら整備のやり方が悪かったのだという証言をした。そのことによって、たとえば会社当局と見解が違ったということで懲戒を受ける、あるいは追及をされるというような場合だってあり得るわけですね。そういう場合の保障といいますか、つまり証言をすることによって、証言をした人が他から著しく不利益な処分を受けたり、あるいは懲戒の対象にされたり、そういう可能性がないわけではないと思うのです。そういう場合の保障といいますか、そういうふうにはさせないのだというような何か保障というようなものは考えられわせんか。
  28. 内村信行

    内村(信)政府委員 そのような場合に法的にどうするという措置はございませんけれども、やはり秘密を守る義務というところで、だれがどういうふうに証言したかというようなことは外部に漏らさないということによって実際そういうことが起きないようにしたい、こういうふうに考えております。
  29. 木原実

    木原委員 それは一言で言えばそういうことなんですけれども、しばしばあり得ることだと思うのですね。しかも、それは外部に漏らさないといいましても、それが非常に事故原因のポイントになっているというような場合があるのです。そうしますと外に出さざるを得ませんですね。そしてそのことは、公表すれば、それはだれが証言したかということが自動的にわかる場合がある。そういう入り組んだ場合がある。  もう一つ、これは別な観点から聞きたいのですが、この調査結果に基づいて訴訟が行なわれる。訴訟の資料としてこの調査の結果が使用されるということについてはどうですか。それはもうやむを得ないことですか。
  30. 内村信行

    内村(信)政府委員 私どもの考え方は、先ほども申し上げたわけですが、やはりその訴訟と事故調査とは峻別したいというのが基本的な考え方でございます。したがいまして、事故調査の結果というものは、必ずしも、その刑事上あるいは民事上の裁判、そういったものについての事故認定というものを拘束いたしません。したがってそれは別個にやるようになる。つまり、どういう原因でどうなったか、その責任はどうであるか、その責任追求なりその責任の程度をきめるというふうなことは、これはもっぱら訴訟の問題であって事故調査とは関係ない。事故調査とはあくまで別であるということを割り切りたいというのが私どもの考え方であります。
  31. 木原実

    木原委員 それはそうなんですが、たとえば補償の裁判が行なわれた。裁判の過程の中で、たとえば刑事訴訟の面の資料はある、しかしこれは不完全だ。それじゃ事故調査委員会のほうでいろいろな調査をやっている。公表された部分のほかに大事な問題が明らかにされていない面がある。裁判所が事故調査委員会について、それを資料として提出をしろ、かりにこういう指示があった場合には、資料として提出することができるのですか、できないのですか。木内(信)政府委員 たとえば鑑定を依頼するということがあります。そういう場合にはやはり鑑定依頼を受けて鑑定する。それを科学的な公正な鑑定として出す、こういうことはあり得ると思います。ただ、裁判所のほうで、こういったものの証言をしてくれとか、そういうふうなことにつきましては、やはり趣旨からいきますと、そういうふうなことをすることは今後の事故調査というものが円滑を欠くということが考えられますので、なるべくそういうことはしないようにしたいというふうに考えます。
  32. 木原実

    木原委員 そうしますと、これは仮定のことですからいろいろとあれなんですけれども、たとえばかりに、これから先のいろいろな調査機能を維持するために、事故調査委員会としては裁判所の要求に応じられないという場合がございますね。しかし一方では損害補償という問題で争いがある。利害当事者はそのポイントによって非常に大きな利害の違いを受ける、こういう場合、国の責任が残ると思うのですね。事故についての一番のポイントは国が握っていた。しかし、それは何らかの理由で裁判所には明らかにされていない、こういう状況になる可能性があるのですね。しかしながら、当事者は、補償のことについて争っていてそのポイントを求めている。しかしそれは公にできない、あるいは裁判所に資料としても提出できない、こういうふうな羽目になった場合、今度は国が公表できないけれども、国の判断で補償なら補償の問題について、ある程度の証言をしたり、あるいは裁断を下したり、あるいは方針を出したり、そういう羽目に追い込められると思うのですが、どうですか。
  33. 内村信行

    内村(信)政府委員 これはなかなか微妙でむずかしい問題ではあると思います。しかし、私どもの考えといたしましては、その場合の事実というものは出せる。しかし、どう判断するかというふうなことは、これはおのずから別個の問題である。その事実に基づいて、いわゆる裁判所なり何なりがどう判断するかということによってきまるべきではないかというふうに考えております。
  34. 木原実

    木原委員 繰り返しますけれども、証言をした人が不利益な処分を受けるような場合、そういう場合が想定されるわけですから、そういう証言があったということについては、これはいわゆる秘密の事項だから外へは出さない、こういうことなんですね。そうすると、その部分が秘匿をされた分野として残っていくということになるわけですね。たとえば個人名を明らかにしないということはわかるのです。しかしながら、その人が述べた事実関係というものは、何らかの形で公表しなくてはならない面があるわけですね。これは私は非常にデリケートな問題だと思うのですけれども、やはり証人の立場というものは大事にしていかなくてはならない。一方では、これだけの追及をする権限がこの委員会に与えられているのですから、虚偽のことを述べたり陳述しなかったりすれば、この人がやはり一種の処分を受けるというふうな、そういうきびしい関係にあるわけですね。それだけに、証人の立場というものをできればもう少し法律の上で親切に明記をしておかないと、これは一番デリケートなことだと思うのですね。たとえば機体の構造上のことであるとかなんとかならいいのですけれども、人がからんでくる事故が半ばを占めると思いますから、そうすると、この証人の関係というものは、できましたらもう少し親切にその辺を書いておかないと、一方でこれだけきびしい処置を明記してあるわけですから、そういう気がするわけです。  ですから、ここで繰り返して明らかにしておいてもらいたいことは、そういう場合には、つまり証人のそういう不利益な処分を受けたり懲戒を受けたり譴責をされたり、そういうことがないように保障する。それだからひとつ協力をしてもらいたい、安心して協力ができるようにする、こういう形のものをどこかに盛り込めませんかね。そうでないと、裁判のときも含めましてかなりデリケートだと私は思うのですが、その点が抜けているような感じがするのですが、どうでしょう。
  35. 内村信行

    内村(信)政府委員 確かに、事故調査を円滑に進めますためには、やはり証人の利益保護という点を十分に考えないと進みません。したがいまして、現在の法律上は秘密を守るというふうなことでカバーしていくつもりでございますが、さらにその点、足りない部分がございますれば、あるいは議事規則なり委員会規則、そういったような中で措置していきたいというふうに考えます。
  36. 木原実

    木原委員 秘密の問題はまたあとで、これは別の問題で相反する問題ですけれども、少しあれをしたいと思うのです。  ともかく黙秘権という問題についてもはっきり明記していない。それから証人の保障の問題についても明記はされていない。裁判との関係について、この資料、ここの調査結果がどういうふうに使われてはならないのか、あるいは使ってよろしいのか、そういうことも明らかにされていない。しかし他方では、関係者に対しては証言を求める権限が調査委員会には与えられている。しかも虚偽の報告をしたり陳述をしなかったりした場合には三万円以下の罰金だと、こういうことできびしい処置をきめている。それはちょっと片手落ちだと思うのですね。やはりどうしても事故の中には人間がからんでくるわけでありますから、一番大事にしなければならないのは証人の関係じゃないか、こういうふうに考えますので、これはやはり、できましたら法律条文の中に一項起こしてもらいたいと思うのです、政令事項の中ではなしに。それくらいの親切さがございませんと、ちょっと片手落ちだという感じがいたしますが、どうでしょうか。
  37. 内村信行

    内村(信)政府委員 御趣旨はまことにごもっともであると存じます。ただ、現在の私どもの考え方は、そういった趣旨は実行上においてカバーしていきたいと思っております。ことしはこれで臨みたいと思います。
  38. 木原実

    木原委員 あわせて伺っておきますけれども、この調査の結果、事故原因が明らかになったときに、責任を追及したり、あるいは賠償問題、補償の問題、これは結局、事実調査に基づいて行なわれる、そういうことになるわけですか。これと無関係ということなんですけれども、事実問題として、たとえば国が責任を負うというような事故があったといたします。あるいはまた特定の航空会社でもいいわけですが、そういうときに、いろいろな調査が民間のペースにおいても行なわれるでしょう。裁判所のペースでも行なわれるでしょう。しかしながら、この調査結果が一番権威があるものだとすれば、その資料も、補償の場合の資料、あるいはまた責任追及の場合の資料になる、こういうことにはなり得るわけですか。
  39. 内村信行

    内村(信)政府委員 これは本質的にはやはり別個の問題であり、裁判所側が解決すべき問題だと思います。その場合、裁判所がその事故調査委員会の公表しました結果というものをどういうふうに援用するかしないかという問題はあろうと思いますが、基本的には別な問題であろうと思います。確かに先生のおっしゃったような面もあるわけでございますが、実際に事故調査を円滑に、かつ真実探求しようと思いますと、補償はどうなるであろうとか、あるいは裁判上どちらに有利になるであろうとか、そういうようなことにわずらわされますと、ほんとうに客観的な事故調査はできなくなるという気がいたしますので、この場合は、あくまでも補償その他は裁判の問題、事故調査はあくまでも客観的な事実調査の問題というふうに割り切りたいと思います。
  40. 木原実

    木原委員 それはそれでいいのです。私はちょっと観点が違いまして、変な例ですけれども昨年の雫石の事故の場合、どうも全日空のほうにも若干原因があったのではないか、しかし大部分は国のほうの責任であるというようなことで進行しているわけですね。例はよくありませんけれども。そういうような場合、どちらが事故の負担をすべきかという問題で争いがある。最終的には、これは一番権威のある事故調査の結果を待たなければならないということになりがちだと思うのです。ですから、事故調査委員会としては、そういうことを一切考慮に入れないで事実を探求する、調査結果の報告を出した、その出しました調査結果が、それに基づいて今度は政府なら政府が、それは運輸大臣に手落ちがあったのではないかといって運輸大臣が総理大臣から譴責を受けるとか、あるいは担当の局部長が処分を受けるとか、こういうこと。あるいはその当事者に対しても、それでは補償金をどれくらいにしてどこが負担をするのか、こういう問題。そういう資料に使われることは十分あり得るわけですね。このことはいいわけですね。
  41. 内村信行

    内村(信)政府委員 事実問題としてあり得ると思います。
  42. 木原実

    木原委員 その反対に、原因不明だ。何か最近もあったようでありますけれども事故調査委員会の結果がこういうふうに出た場合、これは事実関係については原因が不明であった、こういうことなんですが、しかし現実に事故が起こっている。これはちょっとこの事故調査委員会の話とそれますけれども、そういう場合の最終責任というのはどこが負うのでしょうか。旅客を乗っけていた航空会社が負うのか、あるいはまた、ちょっと例は浮かび上がりませんけれども原因不明と出た場合の責任の所在というのは当然航空会社ですか。
  43. 内村信行

    内村(信)政府委員 賠償責任の問題でございますと、航空会社になると思います。
  44. 木原実

    木原委員 原因不明の問題でなくて、事故の場合に国が負うべき責任の分野、たとえば事故調査の結果、飛行場の安全設備上の手落ちがあったとか、あるいは管制上のミスがあったとか、あるいはその他国が安全のために設備をしていて、そこに欠陥があったとかいうような場合、これは当然国が事故の責任を負うということになりますか。
  45. 内村信行

    内村(信)政府委員 結果として、国の施設の不備その他によって事故が惹起いたしました場合には、国が責任を負うことになります。
  46. 木原実

    木原委員 たとえば機体の構造その他に欠陥があった、こういうような結果がかりに出たといたします。これは責任問題ですけれども、しかし、その際に国としては、例の耐空証明ですか、そういうものを航空法に基づいて出しておりますね。そういう際の国の責任というのはないわけですか。
  47. 内村信行

    内村(信)政府委員 これはやはりケース・バイ・ケースになってくると思います。つまり監督責任がどこまであったかという問題かと思います。
  48. 木原実

    木原委員 いずれにしましても、事故調査そのものと、それからそれが使われていく関係というものが、公表されました事故調査結果に基づいてだけで、何かものごとがたんたんと処理されていくケースの場合だと比較的事態は明白だと思います。しかしながら、なかなかデリケートな、複雑な態様が多いと思いますので、いろいろな複雑な姿になってきた場合に、事故調査委員会は、本来の使命にもかかわらず、たとえば裁判に、たとえば補償の問題に、たとえば責任追及の問題に、からみ合いが出てくると思います。これは事故調査委員会としては関係のないことでございますけれども、しかしながら、運輸省としては、あるいは政府としては無視できない、こういうようなかかわり合いがしばしば出てくると思います。  そこで、これは冒頭の問題にも返るわけですけれども運輸大臣事故調査委員会関係運輸省事故調査委員会関係というものが出てくるのではないかと思います。これは法律案を拝見した限りの中では、どうもその辺は、政令事項か何かにわたるのかもしれませんけれども、不明確なままになっている。ですから、繰り返すようなんですけれども、証人の関係とか、あるいは事故調査の結果の使われ方とか、裁判とかのかかわり合いとの問題ということについては、どこかで明瞭にしておいてもらいたいと思います。  それから特に、事故原因が不明という結論が出た場合、私は相当国が判断しなければならぬようなケースだって出てくると思います。というのは、原因は不明であるけれども実際に事故が起こっていた。しかし不明の中でも、ともかく事故調査委員会が掌握したいろんな事実関係の中で、何がしか事故原因にかかわり合いのありそうな分野の問題だってあるわけです。木村報告じゃありませんけれども。そんなような場合には、事故調査委員会調査にかかわらず、賠償の問題について一定のけりをつける裁断を国がしなければならぬというような場合だってあり得るような感じがいたします。したがいまして、たいへんどうも話がややこしくなりましたけれども、そういう調査結果と他とのかかわり合いの点についても、これは何らかの形で扱い方を明らかにしておく必要があるのではないか、こういう感じがいたしますので、ひとつお願いいたしたいと思います。  そこで、いろいろ申し上げましたけれども、次に移りたいと思いますが、第四条でございましたか、少し逐条的にまいります。委員の構成ですが、「委員のうち三人は、非常勤とする」、こういうことに相なっておるわけですが、これは常勤二人と非常勤三人の根拠があるというとおかしいのですが、この辺が適当だろうとお思いになったというだけのことですか。
  49. 内村信行

    内村(信)政府委員 そう深い意味もございませんけれども、常勤としては委員長ともう一人ぐらいの方がおいでになれば、日常のいろいろな小さい事故その他に対する指示なり調査は行なえるであろう。ただ、大きな事故でもございますとそれだけではなかなかできませんので、そういう際には、ほかの委員の方にも手伝っていただいたらどうか、こういう考え方であります。
  50. 木原実

    木原委員 私は、五人という定員はいいのですけれども、常勤が二人でございますと、「委員長事故があるとき」ということがございますけれども委員長事故があって常勤の方が委員長の代行になられる。そうなりますと、常勤の人は事実上委員長でございますから、現実に動く方は非常勤の方ばかりになってくる。逆にしたらどうですか。常勤の人を三人にして、非常勤の人を二人ぐらいにするほうが運用上スムーズにいくのではなかろうかと思いますが、これはどうでしょうか。
  51. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 その点も私ども非常に考えた次第でございますが、委員の人選というものは非常にむずかしいのでございまして、そういう適格な人がはたしてどのくらいいるか具体的に考えてみろということを言ったわけでございますが、常勤で終始ずっと御奉仕していただく方がほんとうに得られるかどうかということは非常にむずかしい。むしろ非常勤の方だと、専門知識というものを非常に要する、いまもお話がございましたが、しかも、適正に、片寄らないりっぱな人でなければならぬということになってまいりますると、確かにいまお話のございましたように、実際事務から申しますと常勤が多いほうが非常にいいわけでございます。しかし、これは人の問題でございますから、人をほんとうに得られるかどうかということになってきますと、二人得ることもなかなか容易なことじゃない。むしろ非常勤の方を多くしまして、それでお助けを願うというふうな考えのほうがいいのじゃないかということで落ちついた次第でございます。また御意見がございましたらひとつ……。
  52. 木原実

    木原委員 何か修正案を出すみたいで恐縮なんでございますが、「非常勤とする」じゃなくて、三人を「非常勤とすることができる」ということで、少しゆとりを持たしたらどうか。どうですか、大臣は人材を得るのはむずかしいということで、確かに航空界は有能な方が限られておりますから、そう言っては申しわけないのですが、そういう御苦労もおありじゃないかと思うのですね。しかしどうも、まだこれから運営をするわけでございますから、人材は乏しいというけれども、たくさんいるような感じもいたします。ですから法律上のあれは、「非常勤とする」でなくて、「非常勤とすることができる」ということで、少し幅を持たしておいたほうが、少しそちらのほうに都合がいいと思うのですが、どうですか。
  53. 内村信行

    内村(信)政府委員 これは貴重な御意見を伺いまして、ありがとうございました。この点につきましては、大蔵省、行管、定員その他の問題がございます。そういったような事務的な問題もございますが、考えてみたいと思う次第でございます。
  54. 木原実

    木原委員 これはせっかく雄大な画期的な制度をつくろうというわけですから、大蔵省や行管をあまり心配していたのではなんでありますから、これは、私どもの内閣委員長はたいへん運輸省に理解のある方でございますから、御協力をいただきまして、同じやるのならば万全のスタッフで、予算のことはあとで少し触れたいと思いますけれども、やはり思い切った措置を講じて、このことによって一件でも事故が減るということになれば、そんなこと言ってはあれですが、安いものでございますから、どうぞひとつその辺は当委員会委員長の御協力なども前提にいたしまして、おおらかに考えていただきたいと思います。  そこで、その次に第五条に、これは先ほどちょっとお話のありました「科学的かつ公正な判断を行なうことができると認められる者のうちから」、こういうふうに相なっておるわけでありますけれども、これはあとに第七条でございましたか、不適格と認められる場合の措置の問題が出てまいりますね。これと関連をしてくるわけなんですが、議会がたとえば同意を取り消したとき、たとえば議会が同意を与えたあとで不適格と判断をしたときというような場合はあまりいままではないわけですけれども、そういう場合は当然罷免の対象になるわけでございますね。
  55. 内村信行

    内村(信)政府委員 そういうことでございます。
  56. 木原実

    木原委員 第七条に当たるときなんですが、ここで第七条の二項に「運輸大臣は、委員長若しくは委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認めるとき」云々、こういうふうにあるのですが、委員の不適格性は運輸大臣が認めるというのは、指揮監督にあるわけですから当然なんですが、これはむしろ冒頭の話じゃないのですが、委員会自体が判断をする、こういうふうに移せないものでございますか。人事に関してはこの委員会に相当な自主性を持たしていくといいますか、独自性を持たしていく、こういうようなことで人事運用に関しては委員会にもう少し権限を持たせるという意味で、「運輸大臣は」ではなくて「委員会は」、こういうふうなことにはならぬものでしょうか。
  57. 内村信行

    内村(信)政府委員 それも確かに一つの貴重な考え方であろうかと存じますが、私どもといたしましては、一応、運輸省の付属機関ということでありますので、運輸大臣が任命権者になっております。そういうふうなことから、この法文上はそういうふうなたてまえになっております。
  58. 木原実

    木原委員 これは全般のことに関連をいたしますので、これはあとで修正とかなんとかいうことでなくて、詰めなければならぬ問題になると思いますけれども、私は、運用人事等については、ひとつ思い切って委員会の自主性にまかせるというような方向でいくべきではないのか、こういう感じがいたします。  それはそれといたしまして、その次に第五条四項ですが、「事業者の団体の役員又は使用人その他の従業者」、こういう規定がございますね。これはこれでいいわけなんですが、私はやはり、そういう職を去って何年の後云々というようなとを言うのじゃないかと思うのですね。たとえば現にこういうものに従事はしていないけれども、たとえば一週間前までこういう団体だとか事業者の役職員をしていたというような場合があり得るわけですね。これは公務員の場合ですと、御承知のように一定の基準があるわけでありますけれども、それに準じるわけじゃございませんけれども、いま現職じゃない、いまはたまたま浪人している、しかし一週間前までどこかにいたんだというと、法律上の解釈からいきますとそれでもいいということになるわけであります。ですから、この職に従事していてたとえば一年とか二年とか、こういうふうな規定を入れておくと、これがもう少し生きてくるのじゃないかと思うのですが、どうですか。
  59. 内村信行

    内村(信)政府委員 確かにその期間については、一年あったほうがいいか、あるいはもう少し短いほうがいいかわかりませんが、この趣旨は、実体的に支配力を持ってはいけないというのが趣旨でございますから、やはりそういった運用でいくべきだろうと思います。
  60. 木原実

    木原委員 その次に第六条の任期の問題でございますけれども、任期三年、この場合に、もし任期が切れるその前後に事故調査が継続中であった、手がけていたというような場合にぶつかるのじゃないでしょうか。そういう場合の措置はどうですか。
  61. 内村信行

    内村(信)政府委員 一応、「委員長及び委員は、再任されることができる」とございますから、そういった措置によっていくべきではないかと思います。
  62. 木原実

    木原委員 これもなかなかむずかしい問題でございまして、そう言ってはあれですが、大体三年でやめてもらいたいという人がいるかもしれません。しかし、いつかの調査みたいに、足かけ五年もかかるような調査が続いている。あまりいじましいことは考えたくはないのですけれども、非常にむずかしい問題で私も判断がつきませんけれども、再任の項で救済をしていく、あるいは措置をしていくということですが、そうするとまた、この再任のあれとからんできまして、再任を目ざして調査を長引かせるなどということになるとどうも困るわけでありますけれども、何かアメリカの場合はたしか五年だったような記憶があります。五年というのも私は長いような感じがいたしまして、三年あたりが適当だと思うのですが、ただ現実の、責任をもって処理をしなければならない事故調査がたまたまその任期のときに山場に来ていた、こういう場合が間々あり得ると思いますから、これはひとつ何か、私は知恵もありませんけれども、再任で措置をするというのではなくて、何かそこのところは処理ができるように、これはひとりお考えをいただきたいと思います。  それから第七条、これは先ほど申し上げました問題なんですが、欠格条項判断は、ぜひこの委員会へまかしてもらいたいということであります。  その次の八条でございますね。ここでもやはり会議運営の問題なんですが、一つは二項で、「委員会は、委員長及び二人以上の委員の出席がなければ、会議を開き、議決をすることができない」。私はこの場合は、その会議の中身にやはりよるべきじゃないかと思うのです。たとえば委員の個人の資格に関する問題だとか、いろいろな問題があると思うのです。そういう場合にはやはり全員出席ですね。そういう運用の原則みたいなものを、何か明らかにしてもらいたいと思うのです。かなり自主性の高い機関ですから、欠席裁判をやったり、人の問題だから一部の何人かでいろいろ話し合いが行なわれるというのもおかしなものですから、人事に関することは原則として全員一致といいますか、運営は過半数、そしてこの人事等に関する場合は全員の出席というようなことを何か考えていただきたいと思うのです。これは大事な問題ですから、事故原因についての議決をする場合にはぜひ全員出席ということを原則にしてもらいたいと思うのです。あとで少し触れたいと思いますけれども、いままでの調査団の中で、団の会議には一回も御出席にならなかった方があって、しかも賛否には加わった、こういうような話も聞きましたけれども、やはり権威のある委員会ですから、事故調査あるいは人事に関することは全員出席がしかるべきではないのか、こういう感じがいたします。通常の運営はもちろん過半数でいいと思いますけれども。  それから主としてお伺いをいたしたいのは、この三項の「過半数でこれを決し」というこの議決の中に事故原因の問題が入るのかどうか。こういうことなんですが、いかがでしょう。
  63. 内村信行

    内村(信)政府委員 入ると思います。
  64. 木原実

    木原委員 私がこの法律の中で一番ひっかかるところはここなんです。大臣局長も繰り返しお述べになりましたように、この委員会は事実を明らかにしていく。そのほかのかかわりの問題を私はくどくど申し上げましたけれども、とにかく真実を明らかにしていく。それが将来の安全あるいは事故防止の方向に役立つように使われるんだ、こういう大きな前提があるわけですね。ところが事故の場合は、私も触れましたように、ともかくしばしば学術的な要素があったり、あるいはまた高い科学水準挑戦をするというような場合、ある意味では意見が分かれて当然だということがあり得るわけですね。専門家によってウエートの置き方が違うかもわかりませんし、あるいはまた、真実は常に一つだといいましても、非常に複雑な態様の中ですから見解の違いがあり、出て当然だ。その一つ一つの見解は一本にまとまらなくても、その一つ一つの見解が今度は他の事故防止に役立つとか、あるいはこれからの安全上の措置には非常に大事なポイントであったというような場合があり得るわけですね。もし多数決でとっても、多数意見が必ずしも安全に役立たないような原因判断だったら、逆に少数意見のほうが、否決をされたけれども事故防止のためにははるかに示唆の多い判断であったというような場合もあり得るわけですね。だから、事故原因について結論を得るという場合に、一本であることが一番望ましいわけです。全員が一致をして判断をする、このことが一番望ましいわけですけれども、しかしながら、しばしば少数意見ないし場合によれば五人の委員の方がそれぞれ五人の御意見を出すかもわからないという場合があっても、この種の委員会事故原因調査に関してはよろしいのではないか。むしろこれを多数決という形で——まあ国会じゃないわけですから、数だけできめていくというやり方の中には、すでに行政がそこに何かを想定して先ばしっているのではないか。こういう感じがするのですが、いかがでしょうか。
  65. 内村信行

    内村(信)政府委員 私も、先生のおっしゃることに、御趣旨は全面的に賛成なんです。ただ、合議体という形をとっております以上、やはり合議体としての意思決定が必要であるというふうに思いますので、その意味におきましては、やはり多数決で決せざるを得ない場合があろうと思います。と申しますのは、おそらく、こういうふうな委員になられる方々は、それぞれ権威を持った方々でいらっしゃいますから、なかなか容易に自説をくつがえさないというお方が多いわけでございます。したがいまして、ある場合においては全員一致ということが考えられない場合もございます。しかし、合議体としての意思は決定する必要がありますので多数決ということはいたしますが、同時に、この調査委員会趣旨事故の再発を防止するということにあるわけでありますから、先生おっしゃいましたように、少数説は少数説として掲げるということをいたしまして、いろいろな意味から事故防止に役立つということを考えるべきであろうというふうに考えますので、少数説というものも併記する方向をとるべきであると存じます。
  66. 木原実

    木原委員 これはこの委員会調査結果に基づいて、たとえば、責任追求が行なわれたり、あるいは補償の問題が直接出てきたり、そういう性格のものであれば、やはり一つ結論がないと今度は行政の面で判断を誤るわけでありますからね。しかしながら、これはどこまでも事実を明らかにするということが前提で、そうしてその原因を帰納する、こういうことですね。それならば私ば、意見が分かれたときは意見が分かれたままのものが明らかに公表されてしかるべきじゃないかと思うのです。まあ少数意見は併記をするというお話もございましたけれども、それを今度は別の次元で判断をする。たとえば運輸大臣がそれを見て判断をして、ある三人の方ばここに原因を求めているんだ、しかしあとの二人の方はこっちに求めているんだ。まあ技術的なことはいろいろわからないけれども、それじゃまあ多いほうにというふうな判断は、これは、政治家なりあるいは最高運輸大臣なりが判断をすることである。この委員会事故原因について意見が分かれたときは、少なくともそれまでの事実経過を明らかにし、見解を述べ、そこでとどめておくべきじゃないか。ただ、そのために委員会がまとまらなくちゃ困るわけでありますから、委員会は絶えず事故原因について一致を求めるように努力をするというのは、これは当然です。職責上の義務だと思います。しかし、それにもかかわらず意見が分かれたという場合には、私はやはり、五人の意見があれば五人の意見を出しておくのがいいんじゃないかと思うんですがね。何かそういうことに関連いたしまして、いままでの調査団の経験その他でたいへん御苦労なさった経験がおありになるんじゃないかと思うのですが、そういうことにこだわらないで、どうでしょうかね。いかがでしょう。
  67. 内村信行

    内村(信)政府委員 まあ、これはほんとうにいろいろな考え方があると思うのですけれども、やはり合議体というものは、組織上その合議体としての一つの意思決定というものがあるというのがたてまえではなかろうかという気がするわけでございます。ただしかし、かといってこの事故調査委員会というのは先生の御指摘のような意味のものでございますから、必ずしもこの結果によってすぐにそれを補償の問題に持っていくとかいうふうな問題ではございませんから、やはり少数意見があった場合には必ずそれを書くということにして、事故防止のために役立ててはどうかというのが私の考え方でございます。
  68. 木原実

    木原委員 私は、そうなるとこの委員会が逆に、私が一番心配をいたしました、運輸省を信頼をしないわけではないんだがということで申し上げましたね。行政ペースに沿っていくような、あえて結論を求める、一本の結論を出さないと申しわけないということで無理が生ずる。  あまり適切な例じゃないかと思うのですが、たとえば全日空の羽田沖の事故調査のいろいろな経過——私もこのことを調へる過程の中で、実はあらためていろいろなレポートを読みまして驚きました。まあ、ああいうことがあったので、あなたのほうもいろいろ御配慮があるんじゃないかと思うのです。私どももああいうことでは困ると思うのですね。一人の有能な方が、ああいう方が辞任をされていった経過などというものを見ますと、やはり少数意見は少数意見であっても一つの正当な意見として残していく。そういう配慮がありませんと……。私はそれがあって少しも支障はないと思うのです。繰り返すようですけれども、責任追求があったり補償の問題がからんできたりするための仕事でありましたら、これはもう過半数でも何でも——いままでの事故調査団というものばそういう任務がありましたから、かなり強引に一本の結論を出したと思うのです。しかし、こればそうでない側面が強いわけでありますから、五人の方の意見があれば五人の方の意見をやはり併記をする。そのことをどう採用するかはこれは行政の責任ですから、私は少しこだわるようですけれども、何かこの点は一番気になるところでございますので、ひとつお考えおきをいただきたいと思います。まだ修正案を出す段階でございませんので、これ以上こだわりませんけれども、ひとつお願いをいたしたいと思います。  それから、第九条の「秘密」という問題がここで出てくるわけであります。ここでは国家公務員法は適用されないということでございますね、特別職は。
  69. 内村信行

    内村(信)政府委員 特別職は適用されません。
  70. 木原実

    木原委員 そうしますと、ここで「秘密」といっていることは、どういうことを想定しているのですか。この「秘密」ということについての概念規定その他が明らかでないわけでありますけれども
  71. 内村信行

    内村(信)政府委員 「職務上知ることのできた秘密」、こう書いてございますけれども、これは職務上知り得た秘密でございまして、必ずしも公の秘密のみならず私の秘密も入るというふうな考え方でございます。そこで、したがいまして、職務執行に関係なしに知り得たものはこの「秘密」ではない。それから「秘密」というものは、特に個人が、これは秘密ですよというふうに言ったものに限らず、客観的に考えてそのことを他人に知られることによって本人が相当の利益を侵害されるというふうなものにつきましては、客観的に「秘密」として考えるというふうなことでございます。  そこで、具体的に例を申し上げますと、プライバシーの侵害とかそういうふうな点、たとえば事故関係者の方の一身上の問題その他につきましてのもの、そういったものにつきましては「秘密」として扱っていく。それから先ほど来たびたび申し上げておりました証言の問題、そういった問題につきましても「秘密」として扱っていく、そういうふうなことが趣旨でございます。
  72. 木原実

    木原委員 たとえば企業の秘密というふうなものはこの場合に入りますか。
  73. 内村信行

    内村(信)政府委員 それも入ると思います。
  74. 木原実

    木原委員 これは先ほどもちょっと触れましたことなんですが、確かに調査にあたってかなりきびしい立場で証言を求めるわけでありますし、しかも黙否権の問題があいまいでありますから、証人の秘密を守るというようなことは、これは別にはっきりさせるべきだと思うのです。ここで職務上知り得た秘密という問題は、そういうものを包含をしながら、おそらく国家公務員法等に掲げられておるものの準用ではないかという感じがいたします。しかし私は、調査には原則として秘密があってはならないと思うのです。これは事実関係を明らかにして、そして安全措置や事故の防止のために役立てるということでありますから、この秘密を守らなければならないという一つの条項がありまして、そのために縛られて必要なものも公表をしない、あるいは公表すべきものを秘密の分野を拡大をしていく、こういうふうに運用されたのでは、これは何のために事故調査委員会をつくっているのか、これは国民の側からすればとんでもないことになるわけであります。  私は、矛盾をするようですけれども、プライバシーの問題や証人の問題については、きちんとした保障を与えるという意味では「秘密」が必要だと思います。しかしながら、この仕事に関しては、どこまでも公開が原則であって、したがって秘密があってはならない。もし秘密があるなら、その秘匿するものの限界というもの、何が秘密であるのか、こういうことをどこかで明らかにしておく必要があると思うのです。一番関心を持つのは、もうだれでもない、被害を受けた人なんですから、そういう人たちに対しても秘密だということで何も知らない。うちのおやじさんは飛行機で死んじゃったけれども、何であの飛行機落ちたんだかさっぱりわからないという不安が残ったのでは困る。少なくともそういう人たちに対しては、全く秘密というものは許されないと思います、国の機関でやるわけですから。だから、証人を保護するという面の秘密は別にいたしまして、この調査に関してはおよそ秘密の原則があってはならない、こういうふうに私は考えるわけです。いかがでしょう。
  75. 内村信行

    内村(信)政府委員 私どもは全く賛成でございます。この九条の「秘密」の問題これは十九条のいわゆる公表義務、これとの関連と申しますかを相互に考えて読まなければいけない問題でございまして、この九条は、あくまでも、先ほど先生がおっしゃったような、個人の利益保護とか証人の利益保護、そういう立場からの、もう一つ言えば事故調査を円滑に進めるための秘密でございまして、こういった事故調査というものは、ガラス張りの中でだれもがわかるようにやらなければいかぬということがあくまで基本原則でございまして、これは十九条の趣旨からいって当然そういうふうにしなければならないというふうに考えます。
  76. 木原実

    木原委員 企業秘密ということを私ちょっと申し上げたのですが、企業秘密も限界があるようでないようで、工業所有権やいろいろな分野があるわけですけれども、どうですか。社会通念上いろいろなことがいわれているわけですが、はっきりと企業秘密に立ち入るわけですから、それを公表すべき部分と秘匿すべき部分とがあるのではないか。企業秘密の保護と同時に、公表しなければならない義務と、その限界はどの辺に置かれるわけですか。
  77. 内村信行

    内村(信)政府委員 非常にむずかしい問題だと思いますが、やはり秘密を守る義務というのは秘密を守ることによって客観的な事実を言っていただけるというふうなことに目的があるわけでございますから、やはり企業秘密を守るのであるということによって、事故調査原因追及の一手段にすべきであろうというふうに考えております。
  78. 木原実

    木原委員 私はこれは非常にむずかしい問題だと思います。というのは、たとえば機体構造上に欠陥があって、それが事故につながったというような場合、たとえば何かの材質に何が使われていたということは、ある企業にとっては非常に秘密にしていると言えるかもわかりません。しかしながら、それが事故のポイントであったというような場合は、材質から構造から全部明らかにしないと説得力がないわけでありますから、そういう事故に直接つながった場合は、企業秘密があってもこの権限に基づいて世間に公表をしていく、こういうふうに考えてよろしいですか。
  79. 内村信行

    内村(信)政府委員 私もそのように考えます。現実の問題といたしまして、やはり安全性を確保するためにやる事故調査でございますから、その事故調査の結果、たとえば機体にこういうふうに欠陥があったのではないかというときには、むしろはっきりそれをただすべきであるということでありまして、その場合には、企業の秘密よりも公共性のほうが当然優先するというふうに考えます。
  80. 木原実

    木原委員 これは政令事項の中か何かのことなんですが、守るべき秘密の限界というもの、それから公表に関連して、公表をしていくという原則ですから、したがって秘密という問題についての一つの概念規定といいますか、きちっとしたものを出しておいていただきたいと思うのです。人間に関することも大事ですけれども、機体構造上の問題その他の問題について、何といいましても行政機関の中に置かれるわけでありますから、そのうちにだんだんと秘密の分野が大きくなってきて、国民にはただ抽象的な報告しか明らかにされない、こういうことではちょっと困る分野が出てくると思いますので、秘密ということについての限界をどこかで明らかにしてもらいたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  81. 内村信行

    内村(信)政府委員 おっしゃるとおりであろうと思います。
  82. 木原実

    木原委員 次に進みますけれども、第十一条に専門委員規定がございます。これは数はどのくらいを予想しているのでございますか。
  83. 内村信行

    内村(信)政府委員 七名を予定しております。
  84. 木原実

    木原委員 専門委員の資格とか欠格条項といったものは、委員の場合と違いまして別に規定がないわけでありますけれども、これは何か別に定めるわけでございますか。
  85. 内村信行

    内村(信)政府委員 航空に関する事故原因を追及するに際しまして、非常に分野が広うございます。したがいまして、おのおのその専門的なことについての委員を設けるということでございまして、これは必ずしも委員会会議に参与して、その意思決定に参与するというものではございませんので、委員のような条件はつけませんでした。
  86. 木原実

    木原委員 これも私、十一条の第二項にちょっと意見があるのです。非常勤とすることは趣旨のたてまえ上けっこうだと思うのですが、この専門委員の選任その他につきましては委員会に権限をお与えになったらどうですか。「専門委員は非常勤とし、専門委員に関することは委員会で定める」というようなかっこうして、どういうスタッフを必要とするかということは委員会判断にまかせるという趣旨を明らかにしたらどうですか。
  87. 内村信行

    内村(信)政府委員 運輸大臣の任命という形をとりますのでこういうふうにしてございますけれども、どういう専門委員を、またどういう分野の方を専門委員にするかというふうなことにつきましては、当然委員の方々の御意見を承ってやるつもりでおります。
  88. 木原実

    木原委員 そうしますと、実際問題としては委員会の人たちの御意見を中心にして専門委員を任命していく、こういうことになるわけですね。
  89. 内村信行

    内村(信)政府委員 そういうふうにいたしたいと思っております。
  90. 木原実

    木原委員 航空事故に関連をしては、エンジンとか機体とか、あるいは気象関係だとか、いろいろな分野があるのですが、たとえばパイロットミスというような問題がよく起こるわけでありますから、専門委員の中に、パイロットの方とか、パイロット出身の方であるとか、こういう方は運航に関しましてどうしても一名必要だという感じがするわけですが、その辺の御見解だけを承っておきたいと思います。
  91. 内村信行

    内村(信)政府委員 委員の中に入っていただきますか、あるいは専門委員の中に入っていただきますか、いずれにしてもそういうパイロット経験者の方は必要だと思います。
  92. 木原実

    木原委員 こまかいことで申しわけございませんが、十三条に事務局のことがございます。この事務局事務局長を置くということになっておるわけですが、事務局長は役所の内部から出るわけでございますね。
  93. 内村信行

    内村(信)政府委員 そのように考えております。
  94. 木原実

    木原委員 ここが役所とのパイプになると同時に、少し間違いますと運輸大臣ペースになってしまう、こういう危険性もあるので、これは事務局長の人選が非常に大事だと私は思います。人事ですから、私どもはこれ以上立ち入ったあれはできませんけれども、当然、事務局長は委員長の指揮を受ける、あるいはこれを補佐するということになるわけですね。
  95. 内村信行

    内村(信)政府委員 さようでございます。
  96. 木原実

    木原委員 この事務局の構成というのはどういうことになっているわけですか。たとえば庶務的な仕事をする事務官の方たち、それに調査官、こういうような構成ですか。
  97. 内村信行

    内村(信)政府委員 事務局長のもとに総務課というのを置きまして、これは七名を予定しておりますが、その総務課が一般的な庶務事項をやる。そのほかに首席事故調査官が一名と事故調査官が八名、事務局長以下十七名で構成いたす予定にしております。
  98. 木原実

    木原委員 調査官八名ということでございますけれども、その調査官に次ぐ調査官補というようなものをお考えではございませんか。
  99. 内村信行

    内村(信)政府委員 首席事故調査官というのが一名おりまして、その下に普通の事故調査官が八名、こういう考え方をとっております。
  100. 木原実

    木原委員 事故というのは、こちらがちゃんと体制を整えておりまして、それにちゃんと適応したような形で起こってくれればいいのですけれども、しかし四十一年のときを見ましても、せいぜい一カ月ぐらいの間に相次いで大きな事故が集中をしてくる。昨年でもそうですね。「ばんだい号」が起こったかと思うと、すぐ雫石の事故が起こった。なかなかどうも捕捉しがたい相手ですから、人員がこれでいいとか悪いとかいう判断は実はできないわけです。そこで、応援ということをお考えになっていらっしゃると思うのです。ただ、大事なことなんですけれども、たとえば地方の空港等に事故調査を専門にして駐在をする、そういう人のことを考えておりませんか。
  101. 内村信行

    内村(信)政府委員 実はそこまで手が及んでいないというのが実情でございます。
  102. 木原実

    木原委員 五人の委員を中心にして権限が非常に強大であるのに、陣容は八名の調査官中心、それに七名の専門委員、これは何か羊頭を掲げて狗肉を売るような感じがするわけですね。  従来の事故調査団なんかの場合ですと、たとえば大学の先生方に委員お願いすると、そこの研究室等のスタッフを先生方がみなお持ちになっていらっしゃって、そういう人たちが一生懸命研究室の学生や何かも含めて調査に協力するというようなことがあり得たわけですね。これはかなりカバーできた面があったと思うのです。ですから、いざということになったら、応援隊を航空局なら航空局のほうから出す、こういうしかけになっていると思うのですが、しかしもう少しその辺はっきりしておいたらどうでしょうか。横路君がいて悪いのですが、北海道で事故が起こった、そうすると、すぐそこへチームを組んで出かけていく。今度は九州で起こった。相次いで起こった場合には、それにもやはり少なくとも対応できるように、常時設置をする必要はないのですが、いざになったらそれぞれの分野の専門家なり技術官なりがすぐチームを組んで出動できるというような体制を絶えずとっておく必要があるのじゃないのか、そういう感じがするのですが、どうですか。
  103. 内村信行

    内村(信)政府委員 まことにありがたい御意見なんでございますが、確かにこれだけの陣容では決して十分とは申せません。したがいまして、先ほどもちょっとお話ししたかもしれませんが、各現場におきます空港事務所の職員は、初動調査の立ち上がりとか、あるいは小さな事故においての事実関係の処理とか、そういうことについては全面的な援助をいたします。ただ、中央においてそういうふうな援助ができるかと言いますと、それはやはり問題がございまして、事故調査委員会というものを局と峻別した形から申しましても、そういう援助ができるかどうかということについては、若干問題があろうかと考えておりますが、さらにそういう場合には、専門委員の方だとか、あるいは専門委員のほかにいろいろな部会的なものをつくりますとか、そういうような方向によってこれをカバーしていったらいかがかというふうに考えております。
  104. 木原実

    木原委員 どうも少しばかり心細いような感じがするわけです。たまたまこの陣容に適応したような事故が起こってくれればぴたっといくわけですけれども、いままでの例で見ましても、事故というものはしばしば集中して起こるようなきらいもありまして、そういうときにはたいへんこの事故調査委員会はあわてふためくのじゃないかという感じがいたしますので、自衛隊じゃありませんけれども、常時即応の体制をとる方向でぜひ考えておいてもらいたいと思うのです。  それからもう一つ、これは大事なことなんですけれども事務局調査官八人ということなんですが、御承知のように、航空機というのは日進月歩でございまして、技術的にも進歩の度合いが速い。絶えず勉強したり研修したりする形のものをはっきりさせておきませんと、日常の研究調査ということの項目がございますけれども、そういう意味では、官補というお話をいま申し上げたのですが、絶えずそういう若い人たちをそういう仕事に従事させる、こういう前提のもとで研修をさせ、人材を絶えず送り込んでおかないと、組織というものが形だけのものになってしまうのじゃないか。それだけこの調査能力というものが年を追うごとに落ちていってしまうのじゃないか、こういう感じがするわけです。事故調査のために研修を受けるような人たちを含めて、きちんとした研修制度を立てていくということについての何かお考え方はございませんか。
  105. 内村信行

    内村(信)政府委員 おっしゃいましたように、事故調査というのはきわめて専門的な仕事でございまして、それに対する研修あるいは経験という、ものを積み重ねていきませんと、実際上有用な事故調査ができません。したがいまして、私どもといたしましても、従来から、これは現在の事故調査課の中でもやっておったことでございますけれども、外国に研修に出すとか、あるいは国内での研修を行なうとかいうふうなことによって、絶えず事故調査員の質の向上というものをはかっていきたい、こういうふうに考えております。
  106. 木原実

    木原委員 ぜひともこの組織を立ち枯れさせないように、生き生きとした——しかもかなり高度の知識と経験を必要とする分野の仕事でありますから、これはほかの分野と違いまして、人材の確保とそれの調査能力の向上ということについては、ひとつ格段の御配慮をいただきたいと思うのです。そういうことによりまして、この委員会が生きていくのか、形だけのものになっていくのか、分かれるところになるのじゃないか、こういう気がするわけであります。  その次に第十四条、これは先ほどいろいろお話を申し上げましたが、「関係者に出頭を求めて質問すること」というような項目があるわけでありますが、証人の場合に、一方に罰則があったり、先ほど申し上げましたように黙秘権がなかったりというようなことですから、あとのほうに、二十四条に「陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をした者」という規定があるのですが、私は、証人保護という場合で、これは協力の義務があるというくらいのところに限界を置いたらどうかと思うのです。そうしないと、繰り返すようですけれども、証人を保護するというたてまえからいいまして、どうもバランスがくずれるような感じがいたします。これは私の意見ですけれども、先ほど申し上げましたように証人の保護ということについては何かひとつくふうをこらしてもらいたいと思います。単なる協力の義務を明記するというだけでは足りませんか。少し御意見を聞かせていただきたいと思います。
  107. 内村信行

    内村(信)政府委員 いろいろな考え方があると存じますけれども、一応私どもといたしましては、事故調査原因探究というものを強力に進めるというたてまえからこういった規定を立てましたけれども、その反面として秘密の厳守ということを強く定めまして、証言をしてくださった方には御迷惑をかけないというたてまえをとっておるわけでございますので、先生のおっしゃった御趣旨もわかるつもりでございます。
  108. 木原実

    木原委員 これは先ほど申し上げましたことも含めまして、ひとつぜひ考慮していただきたい点でございます。  それから第十五条に通報のことが書いてございます。たしか海難の場合は、市町村や警察、あるいは海上保安庁等に通報の義務があったような感じがするわけです。ここは運輸大臣のことなんですが、そういう市町村、警察等に協力を求めるという前提で通報の義務を課することがどうかと思うのですが、通報をしてもらうような配慮、そういうことはどうですか。
  109. 内村信行

    内村(信)政府委員 捜索、救難の場合は確かに、直ちに通報いたしまして市町村その他の御援助をいただくということが必要でございますけれども事故調査の場合は若干趣きが違いますので、これはやはり運輸大臣事故調査委員会に通報するということにいたしまして、その後、市町村なりその他の協力をお願いしたい場合には、それはそれとして協力をお願いするというようなたてまえにしたわけでございます。
  110. 木原実

    木原委員 第十六条にいろいろ応援のことが書いてあるのですが、財政の措置は一体どうするのですか。つまり人件費その他の経常費は予算できまるわけですが、事故調査の場合、これまたしばしば不確定な要素ですから、これは本来予備費で扱うのですかどうですか。
  111. 内村信行

    内村(信)政府委員 経常費は一応予算に掲げてございますが、おっしゃるように、突発的な事故その他については予備費をお願いすることにしております。
  112. 木原実

    木原委員 少し先へ進みまして、第十八条に「意見を述べる機会を与えなければならない」、こういうことになっておるわけであります。「原因関係があると認められる者に対し、意見を述べる機会」を与えよということなんですが、しかし意見を求める場合には、この条文からいきますと、意見を述べてもらう段階までの間にいろいろな調査をしたデータや情報を与えておかないとなかなか意見が述べにくいんじゃないかと思いますが、その点はどうですか。つまり中間の公表といいますか、調査の中間の報告に関連をするのですが、そういうことはどうですか。委員会結論が出てから、経過も何も十九条に書いてあるようなものを出すわけですが、中間にさまざまな情報を出すというようなことはお考えじゃないですか。
  113. 内村信行

    内村(信)政府委員 中間の情報につきましては、先ほどちょっと申し上げましたように、一々それを出していくことがいいかどうかという問題がございます。しかし、いまの十八条関係につきましては、その「意見を述べる」ということは、ある程度不利益処分をするような立場に立ちまして、あらかじめその公正を期し、なおその原因関係のある方々の利益を保護しようというたてまえでございますから、当然その前には問題点を知らせてその上で意見を求めるということをやるべきであるというふうに考えております。
  114. 木原実

    木原委員 事故が起こると遺族の方が出られる。そういう方が意見を表明することはないわけですか。
  115. 内村信行

    内村(信)政府委員 やはり事故調査委員会の使命というものが、客観的な事実を見出して、それによって事故原因を追及するということでございますから、必ずしも補償その他の問題というふうには扱っておりません。したがいまして、遺族の方々の意見を伺うということは考えておりません。
  116. 木原実

    木原委員 私は、遺族ということになれば、すぐ補償とかいろいろなことが前提になりがちだと思うのです。事故の問題について、おそらく一番この委員会の動向について関心を持つのは遺族の方だと思うのです。やはり事故原因についても、熱心なだけにいろいろな意見をお持ちの方が出てくる。補償の問題は抜きにしてもそういうことはあり得ると思うのです。だからそういう一番関係の深い人の意見というものは——ただ補償の問題は別ですよ。これでは少しそごを来たすような気がするわけです。どこかでやはり遺族の人たちの意見も聞くということを考える必要があるのじゃないかと思うのだが、どうですか。
  117. 内村信行

    内村(信)政府委員 その問題は心情としてはわかるような気がします。心情はわかるような気がいたしますけれども、やはり事故調査というたてまえからいきました場合に、それが事故調査に益することであろうか、かえってそれが事故調査客観性、ある意味におきましては事故調査というものは冷厳でなくちゃいかぬので、そういったものを惑わすことにもなりはせぬかという気もいたしますので、遺族の方々の御意見を承るということは事故調査とは別にしたいという気が私としてはいたします。
  118. 木原実

    木原委員 その意見は、もっぱら運輸大臣や私どもが聞くことになるかと思いますけれども、これはひとつまた別途考慮をしてもらいたいと思います。  第十九条に報告書の公表あるいは報告書の書き方の問題が規定をされておりますが、これはたしか航空法にはICAOの条約に準じた何か規定があったような気がするわけですが、ICAOの条約との関係は何か明記しておく必要はないのですか。
  119. 内村信行

    内村(信)政府委員 当然、ICAOの条約に従いまして、各部会を設けたり、あるいは報告作成の要領をつくったりするつもりでおりますが、これは必ずしも法律には規定してございませんで、規則その他によってそのことははっきりしたい、こう思っております。
  120. 木原実

    木原委員 それはそれでいいのですが、先ほども申し上げましたように、中間的な必要な情報を出すという仕組みは、いろいろな形の場合があると思うんですよ。たとえば、原因はまだ不明だけれども調査をしておる段階でこういう欠陥があったということをまず発見しますね。これはいままで気がつかなかったことだけれども、すみやかに知らせて、類似の欠陥を持ったものはすみやかに処置をするというような場合があり得るわけですね。ともかく結論は出てないけれども、経過の中で、どうもここがあぶなかったらしい、気をつけたり措置をしよう、こういう場合がありますね。そういうときはもちろん中間報告で出すわけですね。
  121. 内村信行

    内村(信)政府委員 それは中間報告として公に出すかどうかは別といたしまして、当然関係の向きにそういうことを建議するなり何なりいたします。それによってすみやかに改善策をとるということはしたいと思っております。
  122. 木原実

    木原委員 私は、繰り返しになりますけれども、少なくとも物理的な事実の関係というのは秘密なしにすべて公開してもらいたい。しかもテンポの速い時代でありますから、すみやかにそれを公表をしていく、情報として伝達をしていくというような、いわば結論待ちでなくて一つのサービスとして、関係機関へのサービスとしても、国民へのサービスとしても、そういう機能をこの報告、公表の中で考慮をしてもらいたいという考えを持つのですが、どうでしょう。
  123. 内村信行

    内村(信)政府委員 私も、何らかの時点におきまして、事実関係をはっきりするということは必要であると思っております。ただ発表のしかたなんですが、これは実際問題といたしまして、刻々そういうふうなものを発表いたしてまいりますと、往々にして世間はその一点のみを見まして全体を見ない。さながら事故原因はこれにありというふうなことで揣摩憶測ということが実際問題としてあらわれます。そういったことがほんとう事故調査をやる場合にいいかどうかという問題がございますが、その辺はやはり発表の時期というものは考えさせていただきたい。これはむしろ発足の段階においていかにするかということをきめたらいいのじゃないかというふうに私は考えております。
  124. 木原実

    木原委員 私がしばしばおそれますことは、局長も繰り返し申し述べましたように、この委員会仕事は、ともかく事実関係を明らかにする、そこまでだ、こういうことなんですね。しかし、そう言っちゃあれなんですが、やっぱり役所の仕事としてだんだん形だけになっていく可能性がある。結論を得るまで、これは私も驚いたのですけれども、羽田沖の場合なんか足かけ五年かかっているわけですね。その間、断片的なことは、いろいろ新聞のスクープその他で知らされますけれども、あまり事実関係というものが明らかに出ていない。結論を得るまで五年かかった。これでは、大事なことですから時間の問題は問いませんけれども、しかし、そういう場合もあったわけですから、それならば中間で——何か必要ないろいろな問題にぶつかるはずです。それは最終結論は得なくても、ここに一つ欠陥がございましたよ、ここにこういう問題がございましたよというのは、少なくとも関係機関には通報する、これは私はサービスだと思うのです。そういうようなものがなしに、結論待ちで五人の委員の方が中心に内部でいろいろ討議をなさっている。小田原評定で五年も六年もかかってしまった。もう航空機は全然変わったものが飛び出しているという状態になったのでは、この機能は死んでしまいますよ。だから、本来そういう事故防止や安全のためのサービスですから、サービスには公開と迅速な公表という原則を入れてもらいたいと思うのですが、どうですか。
  125. 内村信行

    内村(信)政府委員 私は全く先生のおっしゃるとおりであると思います。大体、前に五年もかかって事故調査をやっておりますけれども、これはほんとうに長過ぎるわけでございまして、やはり事故調査というものは、そう長くたってしまいますと事実関係もだんだんあいまいになるのではないかという気もいたします。したがいまして、やはり原則的には、そのあと一年前後において結論を出していくというふうな方向で進んでいただきたいと思っております。その意味で、今度は常設的な委員会もできまして、事務局のスタッフも強化されますと、短期間に事故調査の処理ができるのではないかというふうに期待しておるわけでございますが、そういった意味におきまして、あまり長過ぎる事故調査というものは望ましくないということ。それから、かりにそういうふうな場合がございましたら、やはり先生おっしゃるように中間報告も必要でございましょう。また長くならないでも、問題点が出ました場合にそれを関係者のほうに通報いたしまして、それによって即刻改善をはかるということは当然必要なことでございまして、そういうふうにいたしたい。たとえば二十一条に「建議」というふうなことばがございますけれども、これは必ずしも事故調査が終わったあとではなくて、事故調査が継続中におきましても、必要なことにつきましては運輸大臣あるいは関係の向きにどんどん建議するというふうなことを趣旨としているわけでございます。
  126. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 ただいまの点、私も、一年以上たったものはほんとう原因調査ができるのかどうか、非常に心配しておる次第でございます。精力的に御調査お願いをすれば、一年の期間があれば相当なあれができるのではないか。私はしろうとでございますけれども、そういうふうにも考えている次第でございます。やっぱり長年たってまいりますと、証拠力を失ってくるとかいろいろなことがありますので、私は今回の「ばんだい号」につきましても、常に会うたびに技術部長を督促いたしまして、まだその結論を得られぬかということをお願いをする次第でございます。何しろ独立機関でございますからあれでございますが、できるだけそういった方法はやりたい。先ほど申しました運輸省の内にということにいたしましても、私はそれが一番大きなねらいでございます。やはり事故原因究明というのはできるだけ早くする。それで、国民の皆さんにお知らせする、われわれも知りまして将来の対策をする。あまり三年も四年もたちますと、機械も変わってまいりますし、いろいろなことで、せっかく真相はわかったけれども実は役に立たなかったというようなこともある。私もそれは先生ほんとうに同感でございまして、この点はぜひそういうふうにやっていきたい、こう思っておる次第でございます。
  127. 木原実

    木原委員 私もそれは同感でございまして、ただここで触れていいかどうかわかりませんけれども、羽田沖の事故調査、たまたまこれを少し勉強しておる間に、いろいろな文献を見ますと、何だか驚くべきいろいろなことがあったような感じがいたします。第一は、足かけ五年もかかったという問題ですね。それを別にいたしましても、今度の委員会は従来の事故調査団とは根本的に違うわけでありますから、そういう轍を繰り返すことはないと思いますけれども、ただ、たとえば当事者のお一人の著名な学者の方が書いておるレポートなどを読みますと、委員会運営自体がたいへん粗雑で、そしてある意味では強行採決のようなことをやった。こういうようなことで、たいへんその間の事情等も沈痛なレポートを書いていらっしゃる、そういうようなこと。  それから、それに関連をいたしまして、私も木村報告書なるものを読んでみましたが、これはむずかしくてとてもわかりません。技術的なことは全然しろうとですから、おそらく大臣も、ごらんいただきまして御理解をいただけたかどうか、失礼ですけれども、そう思うようなものでございました。ただ、お互いに技術的なことは専門家に委嘱したわけでありますから、わからないのはやむを得ませんけれども、日本語でございますから、読んでおりまして、明らかに論理が食い違っておるという面が随所に見られるわけですね。たとえば、あれは事故原因は不明だという結論。そうだということで読んでおりますと、しばしば文章の中に事故原因関係、関連ありと見られるようなものは見出せなかったというような意味の文章が随所に出てくるわけなんですね。そうすると、この事故原因はわからなかったという結論が出ているのに、あらかじめ想定をしている事故原因のようなものが、つまり予断があったのではないかと疑わせるような文章が随所に出てくる。あるいはまた、もうこれはあらためて指摘をする問題ではないのですけれども、非常に論理があいまいです。修辞上の論理があいまいという、ことばとしてのあいまいさならいいのですけれども、ロジックが非常にあいまいな個所があったという問題にぶつかるわけです。そうしますと、私はこの報告書ほんとうに苦労して読みまして感じたことが二つあるわけです。  一つは、これからの委員会運営のあり方は、この調査団の運営のあり方を十分に教訓を踏まえなければならないということが一つなんです。それからいま一つの場合は、おそらく委員長はじめ選任をされる委員の方々、あるいはそれを指揮監督される運輸大臣——委員の方も、全部専門家というわけにもまいらない面が多いかと思います。あるいは裁判官の方がおなりになっても少しもふしぎではありません。あるいはまた、その報告書を受け取られる運輸大臣、そう申しては失礼ですけれども、ある意味では技術的な知識はおそらく国民の平均レベル、こういうことに相なろうかと思うのです。そういう場合でも少なくとも、私どもでも同じことなんですが、その報告書をいただいてチェックできるところはどこかというと、技術的な学問的なところは専門家にはかないませんから、どうにもなりませんけれども、論理の飛躍があったりロジックの間違いがあれば、これはおかしいじゃないかと言って指摘することができると思うのですね。だから「科学的かつ公正な」、こういうことばがこの委員会に関して出てくるわけでありますが、それをどこで判断をするのか。こういう場合に、少なくとも、局長にいたしましても、大臣にいたしましても、われわれにいたしましても、チェックをするポイントというのは、その文章を読んで、文章が整っていればいいというわけではありません。論理に間違いがあったり飛躍があったりするということについては、当然それをチェックをする。そうでないと、運輸大臣でいえば指揮監督ができないわけです。ところが残念ながら、この木村調査報告を読んでみますというと、専門的なこと、山名さんの説がどうだとか、木村さんのお立場がどうだとか巷間伝えられたことは全部除外いたしまして考えましても、明らかにそういう論理上の間違いがたくさんあった。そうしてそれを原因不明だという結論を得て、ある意味では運輸省がこれを了承されているわけです。いまさら言ってもせんないことでありますけれども、はなはだ遺憾なことだと私は思うのですね。航空事故調査史上、これはもうたいへん悪い歴史を残した、こういう感じを抱くわけであります。  これはもし私どもに時間のゆとりがあれば、この調査団の五年間にわたる全活動の経過を、これはもう少し委員会がひまでありましたら、委員長お願いをいたしまして当内閣委員会でも一ぺん調査をしてみたい。これは何もだれかの責任を追及するという意味ではなくて、少なくともこれは、国民の税金を使って国の機関一つとして大事な問題を調査をした機関が、なるほどこういうことをやっていたのかということは、いろいろな機関運用上、これはもうほんとうに教訓にしなければならぬ、こういう問題を含んでいるような気がいたします。この委員会は非常に忙しいので、そういうゆとりはないと思いますけれども、これからの事故調査委員会をそれこそ適確運用をしていくためには、あの委員会のいろいろな明らかな失敗、御苦労なさった経験を十分生かしていく必要があるのではないか、こういう感じを抱いておるわけでありますので、妙なことを発言をいたしましたけれども、過ぎ去ったことですけれども大臣の御見解をひとついただきたいと思います。
  128. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 申しわけない次第ですが、私も木村委員会の五年間の行動につきまして、追跡調査はまださせておりません。いまお話しいただきますと、非常にいろいろな問題を含んでいるようでございますので、直ちに検討させまして、私もこの経過を十分了知いたしまして、そしてそういうような点につきましていろいろ問題点を検討いたしまして、そういったような問題点につきまして、ことにそういう点でせっかく委員になった方の意見がいれられない、また不公平が行なわれたというようなことがありましたら、そういう点については十分に今後の行動につきましてあやまちなきを期して、そして運営上の遺憾なきを期したい、こういうように思います。またいろいろ機会がございまして御指摘、御示唆いただければ幸いだと思います。
  129. 木原実

    木原委員 だいぶ時間が経過をいたしましたので、最後の問題に移りたいと思います。  附則の第七項に、自衛隊法との関係のところが出てまいっておるわけであります。実はここで幾つかお尋ねをいたしたいと思いますけれども、これは自衛隊関係を除外をいたしておるわけですね。これはどういうことですか。
  130. 内村信行

    内村(信)政府委員 これは何度も申し上げておりますように、事故調査目的はいわゆる原因探求、それによって事故再発防止ということでございますが、御承知のように、自衛隊の飛行機は構造、性能あるいは飛行方法につきましても多分に民間機と異なる点があるわけでございます。したがいまして、そういうふうな異なった運航をいたしております航空機事故につきましては、やはりもち屋はもち屋と申しますか、そういった専門的な知識あるいは資料といったものを備えております防衛庁の側でやるということが、むしろ事故調査目的からして合理的ではないかというふうな気がいたしますので、これは除外いたしました。ただし、民間機と自衛隊の飛行機が衝突するというようなことが考えられますが、この際は当然この委員会によって事故調査をいたすというふうにいたしたわけでございます。
  131. 木原実

    木原委員 私はこの委員会で昨年も、これは防衛庁のほうに強く要望したのですけれども、防衛庁の中の航空事故に対する調査というのが、ある意味では非常に閉鎖的なんです。自衛隊の中でさらに閉鎖的であって、昨年の下総基地の何か事故がありましたときには、初めて全防衛庁の規模で委員会をつくった、こういうのですが、これは少しも事故に関連をいたしまして国民の前に明らかにされていない。好んで自衛隊は閉鎖社会の中に閉じこもっているような感じがする。しかも昨年はたまたま雫石のようなこともありました。そうなれば、せっかくこういう形での独立をした航空機に関する事故の権威ある調査機関ができるというのならば、この際に自衛隊はこの中に入っていくべきだ。事故を起こしたときにはやはり申しわけないのですから、自衛隊員がなくなった場合、国民の子供ですからね。そういう場合には、やはり権威ある国の機関事故調査をゆだねるという、そういう制度が望ましい。理屈を言えば、自衛隊は外国並みの軍隊じゃないわけでありますから、そういうことが私は自衛隊にも望ましいという意見を実は持っておるわけです。  そうしますと、話はまた別になりますが、ここでいう事故範囲というのは何か限定されたものがありますか。
  132. 内村信行

    内村(信)政府委員 航空事故と申しますのは、航空法上に書いてございますけれども、七十六条に事故の定義があります。それによりますと、「航空機の墜落、衝突又は火災」「航空機による人の死傷又は物件の損壊」「航空機内にある者の死亡又は行方不明」「その他運輸省令で定める航空機に関する事故」となっておりまして、運輸省令におきましては、「転覆倒立、翼端接地及び胴体着陸」「爆発及び航行中における発動機又はプロペラの脱落」「発動機の故障、燃料の欠乏、凍結、気流の擾乱その他の理由により航空機が緊急事熊にあること」「前各号に掲げる事故に準ずる航空機に関する事故」、そういうようになっております。
  133. 木原実

    木原委員 自衛隊機と民間機が昨年衝突いたしました。こういう際には当然この事故調査委員会調査の権限を持つ、こういうことでございますね。
  134. 内村信行

    内村(信)政府委員 そういうことでございます。
  135. 木原実

    木原委員 そうしますと、その分野ではすでに自衛隊機事故原因調査ということで、自衛隊の分野の中にこの事故調査委員会は踏み込んでいくわけですね。
  136. 内村信行

    内村(信)政府委員 そういうことに相なります。
  137. 木原実

    木原委員 そうなると、局長のおっしゃいましたような、自衛隊航空機というものは特殊なんだ、だから向こうにまかしておいたほうがいいということは、理由のための理由のような感じがするわけです。これは現状を私もよく承知しないわけではありませんからあれですが、希望といたしましては、あるいはわれわれの要求といたしましては、せっかくでき上がる画期的な制度だと思いますので、こういう委員会ができた機会に、自衛隊もこれに協力し、みずからの事故はやはり自衛隊にとっては客観的なところで明らかにしてもらうという、こういう姿勢が望ましいので、私はまた別の機会に防衛庁当局にそういう要求をいたしたいと思いますので、これは運輸省の側でも従来いろいろなことがございましたが、配慮の中に入れておいていただきたいと思います。  そこで、幾つかのケースをお尋ねをしたいのですが、日本の民間機とアメリカの民間機が衝突した場合には、これはICAOの条約か何かによってありますね。
  138. 内村信行

    内村(信)政府委員 これはICAOによりますと、事故発生国で事故調査をやっておりますので、たとえばアメリカで日本の民間機とアメリカの、あるいはアメリカ以外の国の民間機が衝突した場合にはアメリカで事故調査する。逆に日本で、たとえばBOACの事故がありましたが、そういう場合には日本が行なうということになっております。ただし、飛行機の登録国も、外国で行なわれる事故調査に政府代表として立い会い人を派遣するということは認められております。それからその事故調査の結果を登録国にも知らせるということになっております。
  139. 木原実

    木原委員 これは安保を持っておるから非常に複雑になってくると思うのですが、米軍機と外国の民間機が日本の領土の中でぶつかった、こういう場合はどうなりますか。
  140. 内村信行

    内村(信)政府委員 外国の民間機といえども、わが国で発生した事故につきましては当然この事故調査委員会が所掌するわけでございます。ただ米軍機につきましては、いわゆる軍隊というものがある特殊な地位を認められておりますし、それから地位協定によっての地位を持っておりますので、アメリカ軍との合意によりまして、日本側の事故調査委員会、それからアメリカ側の事故調査委員会、これが共同の事故調査団と申しますか、そういうものをつくりまして、共同でその事故調査というものを行なうということになっております。したがいまして、御設例の場合には日本側の事故調査委員会、それからアメリカ側の事故調査委員会、これが共同の事故調査団と申しますか、
  141. 木原実

    木原委員 いろいろなケースということで組み合わせが考えられるので切りがないのですけれども、日本の民間機と米軍機がこの上でぶつかった、こういうような場合は地位協定か何かによって規定がありますか。
  142. 内村信行

    内村(信)政府委員 それもいま申し上げましたことと同様でございます。
  143. 木原実

    木原委員 アメリカの民間機とアメリカの軍用機が日本の上空で事故を起こした、こういう場合は日本の事故委員会はどうなるのですか。
  144. 内村信行

    内村(信)政府委員 これも同様でございます。
  145. 木原実

    木原委員 この附則の第七項のところで、自衛隊の問題に返ってくるわけですけれども、「(自衛隊の使用する航空機自衛隊以外の者が使用する般空機と衝突し、又は接触したことにより発生したものを除く)」、こういうふうにわざわざカッコの中へ入れてあるわけなんですが、私はここで、冒頭に局長が第七項で事故規定をお読みになりましたけれども、衝突というのは明らかな事故ですし、それから接触も事故であることは間違いございません。しかし態様はもっと複雑だと思うのですね。だから私は、もしここに書くとすれば、関係というふうなぐあいにもう少し分野を広げた形で、衝突と接触だけに限ったというのは、おそらく去年のショックがあったのじゃないかと思うのですけれども、どうですか。
  146. 内村信行

    内村(信)政府委員 一応現段階におきまして私どもが考えましたのは、自衛隊相互の、これは先ほど申し上げたような趣旨でございます。そのほかに、自衛隊の飛行機と民間の飛行機とが関係する場合というのは、やはり衝突するとか接触するとかいうことがその典型的な例だろうというふうに考えて、こういうふうに書いたわけでございます。
  147. 木原実

    木原委員 これはある意味では非常に限定をいたしまして、もっと別の形で自衛隊機とのからみ合いの中で事故が起こるという場合もあるわけですね。だから衝突でもない、接触でもない、たとえばいろいろなケースが考えられるような気がするわけです。ですから、あえて衝突と接触だけに問題を限定をしないで、もう少し広げておいたほうが運用上適切なのではないか、こういう感じがするわけです。ですから、ことばを選べば、関係とかいうようなことばに置きかえたほうが運用上適切ではないのか、こういう意見を持っているのですが、これは意見であれなんですが、どうでしょうかね。
  148. 内村信行

    内村(信)政府委員 やはり貴重な御意見として承っておきます。
  149. 木原実

    木原委員 最後に、先ほど来大臣も御心配になっていて、「ばんだい号」はどうなっているのだ、こういうことがあったんですが、「ばんだい号」の事故原因調査、実際どういうことになっているのでしょうか。
  150. 内村信行

    内村(信)政府委員 技術部長から御説明申し上げます。
  151. 金井洋

    ○金井政府委員 まだ最終的に意見一つにまとまっておりませんので、A案、B案、二つ意見がありますけれども、それを調整しておる最中でございます。
  152. 木原実

    木原委員 それは調整ができるような可能性のある意見ですか。
  153. 金井洋

    ○金井政府委員 お互いに相反する意見でありますので、なかなか調整ができないために現在まで日が延びておるわけでございますけれども、まだ何とか調整できるというふうに、事故調査団長はじめ委員先生方も考えておられます。
  154. 木原実

    木原委員 YS11につきましては、かつて松山空港のときもあれはYS11だった。あのときと今度の事故に何か類似性みたいなものはございませんか。
  155. 金井洋

    ○金井政府委員 現在までのところ、特に非常に似ておるということはございません。
  156. 木原実

    木原委員 私も、伝えられるどちらの説がどうという判断をする資料を別に持っておるわけではありませんが、何か事故調査について不明朗な感じがするわけであります。木村調査団のことについては先ほど申し上げましたけれども、「ばんだい号」につきましても、どうも明朗を欠くような——意見が二つそれぞれあるということは、これは別に悪いことではないと思いますけれども、しかし大臣も御心配になりましたように、すでに一年を迎えようとしていてなお大事なところで意見が食い違っていて、ある意味では調査がその辺でとまっていて、部長さんのおことばのような調整ということだと、これは困ると思うのですが……。
  157. 金井洋

    ○金井政府委員 先ほどちょっとことばが足りませんでしたけれども、二つの案を調整しております。しかし、委員長はじめ委員会の方針としましては、大多数の意見はAならAであったけれども、こういうBという意見もあったということを書くという方向では、一致しております。
  158. 木原実

    木原委員 いずれにいたしましても、この事故調査の問題は、冒頭申し上げましたように、たいへん複雑で、その態様もさまざまであります。しかもこれには非常に大事な国民の生命というものが常にかかわっておる問題でございます。せっかくこういう制度ができるわけでございますので、つくる以上は、ひとつ制度としてはもう万全に近いものをつくり出していただきたい、こういうことでいろいろと御質問申し上げたわけでございますけれども、以上で質問を終わりまして、なおこの法案の取り扱い等につきましては、ひとつ委員会で御相談をしてまいりたいと思います。  終わりたいと思います。
  159. 伊能繁次郎

    伊能委員長 大出俊君。
  160. 大出俊

    ○大出委員 先般、大臣に、全港湾なり、あるいは日港労連なり、つまりはしけ回漕なり船内なり、あるいは検数関係、あるいは検量関係等をめぐるコンテナ埠頭を中心とするストライキ問題につきまして、時期的に見て、全日海、日本海運組合のストライキが終わったりすると、たいへんな混雑になるので、時期的には潮どきであろうからお骨折り願いたいというお願いをしましたが、その後たいへん前向きな御努力をいただきまして、大きく様相が変化をしてまいりまして、いまだかつてない方向に前進をいただきまして、事が事でございますから、ここで公にものごとを申し上げることを避けますけれども、前向きな御努力に対しまして御礼を申し上げておきたいわけであります。おそらく将来に向かっていい軌道が敷かれるだろう、こう思っているわけでありますが、来年度予算という話に触れての港湾局長の話もございましたが、今後ともどうかひとつ前向きにお進めをいただきますようにお願い申し上げておきます。  そこで、幾つか問題がございますけれども、あと時間がなくなりますと困りますので、本題でございます本法案にからむ機構の問題について、最初に承っておきたいのでありますが、回を重ねて、運輸大臣おかわりになるたびに私、質問に立っておりますが、運輸省全般の機構という問題につきまして、どうやら暗中模索という感じになっている。何かしきりに模索をされている段階、こういう気がするのであります。特に航空庁問題などが出てまいりまして、海事関係二部門がどうもたいへん減っていくのではないかと心配をした時期が私ございましたが、これもどうやら立ち消えのような感じでございまして、そうなってまいりますと、いぼ運輸省全体として、大臣の私的諮問機関でございます運輸省の機構を考える懇談会ですか、中山伊知郎さんなり、東芝の土光さんなり、日航の松尾さんなり入ってやっているようでありますけれども、この辺は一体どういうふうに事務局を担当する皆さんとして——私的諮問機関とはいいながら、何か出てくると影響があります。そういう意味で、諮問をするにあたっての運輸省のものの考え方は一体どこにあったのかという点を、模索なら模索でいいのでありますけれども、大筋をまずお述べおき願いたいのであります。
  161. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 率直に申しまして、実は先般の四十七年度予算による機構改革におきまして、私は就任以来、いろいろ航空機の大惨事を見ておりまして、航空安全に対しまして非常におくれているということを強く痛感をいたしました。ことに航空機につきましては、民間産業の発達に伴いまして、保安機構その他の点でも非常におくれておるということを痛感をいたしました。機構の点からも拡充をしなければならぬということを痛感をいたしました。とりあえず航空庁というものの昇格を中心といたしまして、これだけでもまとめさせてもらいたいということを強く要望した次第でございますが、私の非力の点で、いままでの各省の一局削減その他の経緯もございまして、よその整備もできないでどうかという問題もございまして、ついに私、不本意ながら率直の話でございますがあれしまして、今度はこの航空局の増強と申しますか、いま御審議を願っておりますが、それと常設の事故調査委員会、これの新設ということに一応した次第でございます。  大体、運輸省開設になりましてからもう二十数年、運輸行政、横から見ると必ずしもそうではございませんが、中に入りますると、われわれやっていますのは縦割り行政ばかりで、横の連絡はない。いまイコールフッティングがいわれているときに、陸上、海上、航空というものが均一性のとれた運輸行政ができておるかということが非常にいわれておる次第でございます。  また、料金体系におきましても、事業体別適正原価主義というものを貫き通せるかどうかという問題がございます。そういうような問題も全般を含めまして、この際思い切ってそういった時勢に適合した運輸行政組織をいま考えるべきじゃないかというのが私の率直な考えなのでございます。これを何とかしてある程度の筋道だけでも立てたいというのが、私の、実ははなはだ非力のくせにいま一生懸命考えているところでございます。  そういう点で、ただいまお話がございましたように、専門的にも、社会的にも、そういった御経験の深い方にいろいろ御意見を聞きながらやっていこうということで、ただいませっかくやっている次第でございますが、具体的の結論はまだ出ていない次第でございます。やがて何とか筋道だけでも立てたい、こういうふうに思って、ただいま苦慮しているところでございます。先生また御意見ございましたら、ぜひひとつお聞かせをいただきまして、貴重な参考にいたしたい、こう思っている次第でございます。
  162. 大出俊

    ○大出委員 私も運輸委員会にはおりませんが、長く機構をいじっておりますので、それなりのいろいろな意見がございますが、時間の関係もございますので、一言お願いをしておきたいのは、日本の国の機構が現状でいいとは私も思っていない。手直しをしなければならぬところが、あるいは根本的に考えなければならぬことがたくさんある。国家行政組織そのものを考えてもずいぶんいろいろあります。そこで、何ごとによらずとんざをいたしますのは、その原因一つ側面として労使関係というものが正常化しておりませんと、何を持ち出しても決定的な不信感、その不信感の中からどうにもならぬ谷間に入ってしまう。だから説得しようにもしようがない。つまり労使の信頼関係というものが前提にならぬと、なかなか大きな機構改革ができないと私は思っているのですが、そういう意味で、せっかく運輸省の機構を考える懇談会というものをおつくりになって、いまお話しのように何かをそこで求められるならば、その前に労使関係というものを十分御配慮をいただいておかなければならぬだろうと思う。そういう意味で各省の機構改革は、ときに合理化という名がつくわけでありますが、個々の労働条件なり生活不安に結びつく可能性もあるわけですから、そういう意味でひとつ組合と事前に十分に話すというような姿勢をぜひ貫いていただきたい。お互いに話せばわかるのでありますから。そういうことにぜひこれはしていただきますようにお願いをしたいと思います。よろしゅうございますか。
  163. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 機構の改革にいたしましても、ことに運輸省みたいな現業的な色彩の強いところはなおさら、いまお話しをいただきました労使関係の協調、理解ということが一番必要だろうと思う次第でございます。そういう点ではいまのお話のとおりでございまして、組合にも十分意見を聞きつつ私はやってまいりたい。ただ、私は率直に申しまして、私どももそういう点がございますが、官僚もそういう点がある、組合もそういう点があるというのは、どうも現状になじみやすいという点が非常に多いのではないか。その点になりますと、官僚と組合と一緒になるという点もありまして、私は合理化ということを必ずしも言っているわけでざございません。むしろ時代に即応した機構をどういうふうに持っていくか、そういう点でぜひひとつ官僚にも組合の方にも御協力を願いたい、こういうふうに思っておる次第でございまして、私はいつでも組合の方とひまさえあればいろいろな話し合いをする機会を持ちたいと念願をしております。またときどきお話をしておりますが、そういう方の御協力もいただきたい、こういうふうに思っております。
  164. 大出俊

    ○大出委員 とかくものごとを保守的に考えてはいかぬと思うのですね。これは何も皆さんの政党の保守をさすのではないのですけれども。いずれにせよ、前提はやはり相互理解、相互信頼だと思うのですね。ここのところに最大の論点、ポイントを置かないと、何をやろうにもこれはもう必ずつきまとういざこざになりますので、ぜひそこのところをいまのおことばにございましたように御努力を願いたいと思うのであります。  そこで、できるだけ簡潔にひとつ承ってまいりたいのでありますが、管制保安部ができるということになりますと、一つ間違うと無線部門の大量の請負ということが結果的には出てきはせぬかという問題。通信部門などにいたしましても、自動化の方向が出てくる。ここらのところを一体具体的にはどう考えておられるのかということですね。この航空審議会の答申というようなものなどにいたしましても、下請、公団化などという話も出てくるわけでありますが、ここらの点をまずどう考えとおられるか、概略お話しをいただきたいと思います。
  165. 内村信行

    内村(信)政府委員 御承知のとおり、無線関係と申しますと、いわゆる航空保安業務の中で一番重要な中心でございます。それで私ども航空保安施設の五カ年計画というふうなものも考えておりますけれども、これを完全に行なわせるためには、やはりどうしても人員が必要でございます。たとえて申しますと、今後の無線関係だけを取り上げましても、今後八、九、十年、三カ年に三百九十四名程度の無線の人が要るわけでございます。そこで、こういった人たちをどういうふうに充足させるかということでございますが、実はかりに定員がとれましても、実員を充足するのは非常にむずかしいというのが偽らざる現状でございます。したがいまして、これを充足するためにはいろいろ考えなければいけませんが、まず一つには航空保安大学その他によって要員の増をはかること。それからもう一つは、手当をある程度上げまして、部外から無線有資格者を技術職員に来てもらうようにする。それからもう一つは、業務の一部を、できる部分については民間にゆだねまして、その部分を実際人の要るところに回していくというようなこと。これはある意味におきまして苦肉の策でございますけれども、そういうことをやってまいりませんと、やはり実際の実員に不足を来たすというのが偽らざる実情でございます。したがいまして、そういう方向ではまいりますけれども、やはり無線従事者というものの立場も十分考えまして、いやしくも重要な人の職場がなくなるとか、そういうことがないように考えております。しかしそういうことをやって転換してまいりませんと、実際上充足できないというふうに考えております。
  166. 大出俊

    ○大出委員 私ここに「航空保安体制及び乗員養成体制に関し、今後の航空輸送の急速な発展に対処してとるべき具体的方策について」というのがあるのですね。これは航空審議会が四十六年十月十三日にお出しになっているものでありますが、この一番しまいのほうに「勤務形態の再検討を行ない、合理的な勤務体系の下における待遇改善等、必要な人材確保のため所要の措置をとる」、こういう文言がある。私はいまの内村さんのお話については、具体的にどこがどうなるという正確なものを手にしておりませんから、その意味ではここで意見を申し上げることはとりあえず差し控えますが、どうなっているのかということを中心に知りたいのです。そこで、この「勤務形態の再検討」なるものが、たとえば夜勤をさす、そうなると、ビーコン等の集約管理というようなものを含めまして、勤務形態が変わってくるだろうと思うのです。たとえば、いままでは二十四時間勤務をやっているメンテナンスというものをこの間私は申し上げました。無線保守者でございますか、あるいは無線技術者でございますか、これがいまの話でどう具体化するかわかりませんが、夜勤を全廃をしようとかりに考える。そうすると夜間のメンテナンスはいなくなってしまう。そして適正な再配置を考える、こうなる。そうすると、この対空通信の無線機器がもし故障したような場合、たとえばVORが故障したというような場合、これは航空の灯台でございますからすぐ手はつかない。夜はいないのですから、これは資格がなければいじれませんから、翌日に持ち越す。そうするとこれは、パイロットと管制を結ぶわけでございますから、そういう意味で無線機器の故障というのはそう簡単に放置はできないという問題がある。そうするとこれは、夜間がなくなることは、この個々の働く皆さんにとっては労働条件がよくなるわけですね。だから、私ども立場で反対するというのはおかしなことだが、しかし航空事故、いまいろいろ質問がありましたが、これをとらえて見ますと、無線機器の信頼の度合いというのは一体どこまであるのか。完全に信頼しきれるのか。  先般、私ちょっと例に申し上げたつもりでありますが、あるいは言っていないかもしれませんが、ちょうど昨年の四月ですか五月ですか、箱根航空位置通報所というのがありますが、ここで管制官とパイロットが対話をする無線機器が自動化されている。ところが故障になった。補助機器が作動するはずでございますが、これも故障したというので、夜中に山に登ったという話が出てくる。つまりいまの無線機器の信頼の度合いというものをどの程度に見るかによって、メンテナンスその他夜間勤務者を廃止した場合起こってくる危険の度合い、これをはからなければならないということになってくるのですね。だからそう簡単に、それではここでいう「勤務形態の再検討を行ない」というのは、夜勤をなくすんだと見ていいのかという問題が出てくる。そこらのところを、皆さんのほうで一体どういうふうに見ておられるかということを、まずはっきりしていただきたい。
  167. 内村信行

    内村(信)政府委員 確かに勤務形態の合理化と言うとちょっと言い過ぎかもしれませんが、そういうことは考えなくちゃいけませんが、先生指摘のように、何よりも航空の安全ということは絶対でございます。したがいまして、万が一にもそのために航空の安全というものが阻害されることはいけないということは私どもも十分考えております。したがいまして、こういった夜勤をなくすということは必ずしも考えておりません。主として考えておりますのは、メンテナンスの部分で民間にまかせられるものを民間にゆだねていこうというような考えでございますが、それにつきましても、実際に試行期間といいますか、そういうものを置きながら徐々にやっていくというようなことをやって万全を期してまいりたいというふうに考えております。
  168. 大出俊

    ○大出委員 ここで事前協議ともからみますけれども、各組合がやっておりますが、勤務形態を変えていい場合もあります。ありますが、だがしかし、その背景に待遇を改善しなければ人が集まらぬわけですから、確かにそれは一つの真理をとらえています。だがしかし、いまお話ございましたように、航空の場合は絶対的な使命は安全対策であります。だから航空の安全を守るという大原則に立ってものを考えるということになります。そうすると、へたないじり方をすればその大原則はくずれるということになる。このかね合いを考えて、さて人を集めるにはどうするかということになる。  そこで、私、前回申し上げたように、無線保守といわれるような方々の現状、あるいは採用にあたっての初任給、こういうふうなものは、まず手始めに何とかしなければならないという言い方をこの間したのでありますけれども、そこで内村さん、私も非公式にはこの問題は人事院の給与局長尾崎さんとも話をいたしております。この数年来私は、交代制勤務一般の問題をとらえたり、あるいはYS11に乗っているパイロットの方の滞空時間等々からの手当問題等を取り上げてまいりました。管制官なんかも何がしか改善されております。しかし無線技術者、無線保守者の方々が、他の交代制勤務の方々の関係もありますが、ぼこっと穴になっている。この点を指摘して、将来に向かって相当多数採用しなければならない運輸省の計画からして、人が得られますか、たいへんでしょうねというわけですね。民間にほとんど行っちゃうじゃないですかというわけですね。そこでようやく人事院も腰をあげてくれて、いま来年度に向けての八月勧告を目ざしての人事院の給与の勧告を目途に、民間調査、いわゆる民調なるものを始めているのですね。この民調の中で給与局長のほうから、民間の特にメンテナンス、要するに無線保守、無線技術者一般ということで、さらに交代制勤務ということで気をつけて調べてくれというふうに調査をする方々に指示をしている。だが、その結果が集まる、集まらぬにかかわらず、郵政大臣の試験を通って一級、二級の資格を持っている方々が、運輸、民間、こう比べたときになぜ来ないかといえば、向こうが高いからなんですから、調べなくたって高いことははっきりしている。だから調べた結果は高いものが出ることが想定できるのだから、人事院の給与局長さん、あなたどうするのだ。この間、次長さんが来て、わかったようなわからないようなことをおっしゃったけれども、どうなんだと詰めた。そうしたら、おそらく高く出るでしょう。出たら何とかしなさい。いや、交代制勤務全体とからむ。からんでも、事、航空事故に関するのだから、将来に向かっては管制官と同じ責任をこの無線技術者は負わされてしまう。もうそこまで来ている。そうすると、そういう特殊性をピックアップして、他との関係があっても、そこは切ってこれは上げなければならない。そういう結果に調査の結果はなるかもしれない。こういうやりとりをいま私のほうは私のほうでしているんですけれども、そうすると、その言のはに、いや実は先般運輸省航空局長の内村さんがお見えになったようです、私、ほかのことでお目にかかれませんでしたがと、こういうわけですね。何がしかの資料をお届けいただいたというのでありますが、私も実はこれは、何としても来年度に向けて人事院に、これはほんとうにひとつ腰を入れていただいて、穴になったこの無線関係の技術者、ここは何とか引き上げなければならない、ちょっと執念めいたものをぼくは持っている。したがいまして、ぜひ内村さん、どういうふうな方向での資料を人事院にお出しになったのか、差しつかえなければおっしゃっていただいて、また差しつかえなければそこらの資料をいただきたいのです。その辺のところについて大筋を差しつかえなければお出しをいただきたい、こう思うのであります。
  169. 内村信行

    内村(信)政府委員 大出先生からたいへんありがたいお話で感謝申し上げます。  先般、私、人事院に参りまして、局長さんおいでになりませんで、次長さんとお会いしてお話しいたしました。そのときは資料は持ってまいりませんでした。したがいまして、詳しい数字は出しておりませんが、私どもお願いいたしましたのは、何としても無線のメンテナンスというものは、いまおっしゃったとおり、給与をよくしないと来手がないんだということを強く申し上げました。これは一般に交代制の職員について言えるわけでございますけれども、その中でも、特に無線については問題があるということを強くお願いをいたしまして、まず無線の電子手当と申しますか、そういうふうな手当を創設していただきたいということであります。それから初任給というものがどうしても民間に比べて低うございます。したがいまして、無線技術者の初任給を大幅に引き上げてもらいたいというふうな、それが主たることでございます。そのときさらにつけ加えまして、無線の問題もあるけれども、交代制勤務というものが非常に特殊な勤務なんですということを申し上げまして、その点についてのお願いをいたしました。ある程度の御理解は賜わったような印象を受けて帰ってまいりました。
  170. 大出俊

    ○大出委員 この問題の結論ですが、この間も申し上げましたが、その後、私、人事院といろいろ話しておりますので特に気がつくのでありますが、この間も例にあげましたが、いかんせん無資格者がいろいろやっておるということを見のがすわけにはいかぬのですね。これはあぶなくてしようがない。大臣、航空保安大学校をおつくりになって二カ年ですね。いろいろおやりになって、卒業した。二級の資格をとるのに、みんな落っこっちゃって受からないのですね。これを見たら全員だめなんです。二十名入所して十四名卒業されて全員無資格だ。そうでしょう。人がないんだから、それはやっているのですね、実際には仕事を。名目は有資格者の指示を受けてやっているというわけですよ。ところが、いまの人員配置を見たら、有資格者の指示といったって、有資格者がいないんだから、指示もヘチマもない。指示と言っておかなければ法律違反になるんだからそう言っている。そういうばかげたことをやっていて、事故調査何とか委員会もヘチマもあったものじゃない。運輸省自身があんな提案して、運輸省自身が一番あぶなっかしいことをやっていて、何が一体事故調査だ。まず運輸省調査して、運輸省法律違反調査委員会でもこしらえたら、それが航空保安に一番役立つことになる。だから、そういうことをやってはいけませんよ。大臣、それでなければたいへんなことになるんだから。人事院さんは、幾ら他との関係があるとかないとかいったって、さっきから申し上げておるように、航空の安全、保安が最大の原則なんですから、それにもとることをやらしておくわけにはいかぬのです、人事院だって。だから、そんなことを言うなら調査してみなさい。無資格者をみんなやめさせなさい。動けなくなっちゃう。まさにそういうことです。人事院は知っている。知っていて黙っている。ふざけた話があるか、あなたのところは人事規則をつくっているじゃないか、こういうことなんです。  ですから、これはどうしてもそういう意味で、まずおっしゃるように初任給、これは何としても上げなければならぬ。これは大臣ベースでひとつ人事院の総裁にも言うていただきたいのですよ。みんな持っていかれちゃって、こっちは無資格でやっている。あなたのほうは調査して、いけないといったらみんなやめます。やめたらえらいことになる。それば人事院だって共同責任ですよ。あなたのほうで初任給を民調で上げてくれなければ来ないんだから。これはおっしゃっていただきたいのです。  そして、この無資格の方々の格づけが、これは一号上なんですね。初任給の八の一がなくなりましたから。だから、無線技術士、資格のある方、郵政大臣の所管する試験を受かった方、これが一級の場合に七等級の一号、二級の場合に八等級の四号。ところが妙なことに、二級の例をあげますと、航空保安研修所を二年やると八の五になる。有資格者が入ってくると八の四なんですね。資格のないのが上に行っちゃうというばかなことで、若い学校を卒業した有資格者がそんなところに行きますか、ばかばかしくて。そうでしょう。いまの学生というのはもっときめこまかいですよ。私のむすこが早稲田の理工科の応用化学を来年出るんだけれども、何を言っているかというと、なるべく休みの多いところに行きたいとか、おれは石油化学なんて公害のところは行かない。ぜいたく千万ですよ。そうか、世の中だいぶ違ったなと言うと、いや、日本人はとにかく働き過ぎるんだ、だから公害なんてところに行かなければいいんだ、そうすると公害もなくなる。ちゃんと調べないと行かないのですよ。ちゃんと正規の資格をとって、二級なら二級という資格を持って入っていった。片一方は、試験を落っこったのが中にいて、それが一号上ですなんということで、それは無理ですよ、内村さん。そうでしょう。だからそこらのところは人事院によく言って、実際こういうことになっているんだ。にわかに変えようがない。そうすると、高いほうの八の五に格づけをされる方の足を引っぱるのじゃなしに、八の四になっているほうを上げなければ意味がないですから、そこらをやはり考えて、あわせて、御指摘のとおり、手当にするのか調整額にするのかわかりませんが、そういうものをひとつ積み重ねていただいて民間との均衡をとる、そういうところにことしは人事院の調査一つの中心を置いていただきたい。事故調査委員会などが国会論議される世の中なんですから、人事院の行政もそっちのほうに中心を置かれてふしぎはないのですから。そういう点をぜひひとつ、これは大臣の責任において私は人事院総裁なら総裁にものを言っていただく。いかがでございますか。
  171. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 非常にありがたい御激励をいただきまして、ほんとうに感謝するものであります。実はほんとうに微力で、ほんとうに申しわけない次第でございますが、いま航空局長から言いましたように、技術要員の充足ということ、管制官、また通信官、そういったような保安技術要員の充足ということは一番大きな問題でございまして、そうして私も運輸省に行きましてからその問題をずいぶん人事院ともやっている次第でございます。管制官につきましても、まだまだとても満足する状態でございません。ですから、これはもう公務員制度にまかしておいちゃだめじゃないか。これはイギリスのように公社でもつくって特別にしなければ入ってこないのじゃないかとまで考えて、その点も研究しろと、いま研究さしている次第でございますが、ともあれ、現実の問題といたしましては、管制官並びに通信技術官、保安メンテナンスの要員の待遇改善というのは焦眉の急でございますので、私も責任をもちまして佐藤総裁とも十分話し合いをしてやってみたいと思う次第でございます。  また、ただいませっかくありがたいお話をいただきました。私のほうでできます資料は何でも提出をいたしまして、また御協力をぜひお願いをする次第でございますので、よろしくお願い申し上げます。
  172. 大出俊

    ○大出委員 もう、一生懸命人事院を攻めていますので、材料にこと欠くとなかなか攻め手がにぶりますので、ぜひひとつこれはいただきたいと思います。けんかしているのじゃなくて、人事院の給与局長とも長年のおつき合いですから、仲よく話をしておりますけれども、なるべく材料をいただきたい、こう思います。  そこで、ILSなどがつくようになりますと、これは計器着陸装置でございましょうが、さっき私、申し上げましたように、管制官と無線技術者とが同一の責任を負わされるということになるだろうと思うのですね、全国にILSがつくようになりますと。そうすると、カナダ航空の事故じゃありませんけれども、やはりILSが故障したという問題になる。これは常時起こっているのですから、あぶないわけでございますから、そういう意味でも、これをひとつピックアップをして手当てをしても、一つもふしぎじゃない。私もいろいろなほかの省の関係がありますが、組合員の関係もありますが、そこから文句を食っても、そうじゃないのだ、これは特殊な事情にある、そういう意味説明がつく。だから、どうかそういう意味で前向きにお願いを申し上げたいのでございます。この間も申し上げましたが、重ねて、人事院といろいろやりとりをしている最中で、ございますので、特にお願いを申し上げた次第であります。航空関係をこれで終わらしていただきます。皆さん、どうもありがとうございました。  そこで、二つばかりここで聞いておきたいことがございます。  一つは、野村さんおいでになっておりますが、きょうは自治省呼んでおりません。それはこの次の機会に自治大臣質問をする時期がございますので、そちらに譲っているのでありますけれども。六大都市の交通部門の赤字が累積をしております。このことはもうすでに野村さん百も承知のことでありますが、自治省の鎌田当時参事官が中心になって、財政再建にかかわる法律を提案して久しくなります。私も横浜におりますけれども、横浜の市交通をながめておりまして、ずいぶん苦労を重ねながら路面電車の廃止も四十六年一ぱいで片がつきましたし、まあ歴史を振り返ってさびしい限りでありながらも、不採算ということで消えていったわけでありますが、時代の趨勢には勝てぬところに来た。それから何がしかありました財産も実は全部売ってしまった。さて、合理化といわれるものも、給与体系それ自体に直接的に大きく触れる部門は、労使関係ございますからそう簡単にはできませんが、合理化にたいへんつとめてきた。だがしかし大きく赤字が累積する。これは環境の変化でございます。結果的には走れないということでございます。  したがって、さてそれならば、一体自治省が立てた再建計画というものは失敗したのじゃないか。御指摘の点、その限りにおいてはいまだに成功しておりません、こういう、実は昨年自治省からも答弁がございました。しからばこのあとどうすればいいのだ。東京のように、青山の車庫のところに地所があるとか、大きな財産を持っていれば別、そうでなければ貧乏都市で何をやれといったってできないじゃないか。一般会計に入れろ、それはできない。そうなれば一体どうすればいいのだ。そうしたら料金値上げしか、しかたがないと言うのですよ、自治省の鎌田財政局長は。私は、それならば鎌田さん、あなた再建計画の立案者であって、そして長らく都市交通については努力をさせた。自治体もやってきた。そこでやることはやってしまった。これ以上どうにもならぬところへ来た。しかし赤字は累積していて解消しない。そうすると、何が残ったかというと料金値上げしかないとおっしゃる。だとするならば、その料金値上げを各自治体の責任においてという言い方はいささか酷ではないのか。努力してきたんだから。ならば、やはり国が、横浜はどうなっている、東京はどうなっている、名古屋はどうなっている、神戸はどうなっている、大阪はどうなっているということを調べてカルテを書いて、おまえさんのところはこうしなさいと国が言わなければいかぬじゃないか。再建計画の最終責任者は大臣じゃないのかと言ったら、御指摘の面は確かにそうなんだけれども、にわかに自治省がいまここでものを言うのは早きに過ぎる、もう少し時期を見さしてくれということだった。しかし、そんなことを言っちゃおられませんから、自治大臣、渡海さんになってからですが、渡海さんと次官の長野さん、財政局長と三人並べて、私はじめ神奈川出身の参議院議員あるいは市会の代表者で詰めてみた。その結果、むしろ自治省側は横浜市がやらんとすること以上のことをおっしゃっているけれども、そこまではやれないというので、多少自治省の考えよりはあとに引きまして、段階的に本年の七月から十二月までは四十円、来年の一月からは五十円になるんだ、そういうバス料金の値上げに踏み切った。  社会党の議員の私が料金値上げについて早くやれというのはおかしな話だけれども、しかし、これがもたもたしていますと、運輸審議会は最小限度三週間くらいかかるだろうと私は思う。七月からというのが、運輸審議会その他の議を経なければならぬですから、どこかに値上げ反対である——私も反対なんです。これは反対が前提なんです。国が何とかしてくれれば、市民の皆さんのためには全く上げたくない。だが国が何ともしてくれぬ。そうなれば自治省が何とかしてくれなければならぬのだけれども、ここも料金値上げだと言う。そうなれば万策尽きて方法がない。奇妙な形で市会を通過している。賛成政党、反対政党いろいろおいでになる。そういう苦しい中で、さて七月から十二月まで、一月から、こういうふうに分けまして修正の形で市議会でまとまっている。だからそのように予算が構成されている。九月の補正もそういう見込みでつくらなければいかぬ。それが、七月がおくれるとなると一体その間どうするんだ。実は自治省とやりとりしたときに、鎌田財政局長に、あなたのほうが、もっと早く引き上げて四月なら四月から五十円でいきなさいと言うならば聞いてもいい。しかし、そんなことを言っても、市議会を通らなければどうするんだ。市議会を通らなかったためにやれなかった、そのために穴があいた、そうなった場合に国が責任を負うかと言ったら、いや、そうなればむしろそういう御主張が成り立つでしょう、つまり私のほうも責任の一半をかぶらなければならぬという言い方をしている。それとも、通らぬものはみすみす提案はできませんから、そこで少しずらして、いま私が言ったようなことになっている。そうでしょう。それすらもなかなか決着がつかないで、いつになるかちょっとわからぬということになると、じゃ一体その意味における予算の穴はどこが責任をとってくれるのだということになりますね。  そういうことですから、運輸省の皆さんのほうで、ここから先どういうふうに進むものなのか、大筋をおっしゃっておいていただきませんと、私のほうも地方自治体にものを言う立場上たいへん困る。いかがでございましょうか。
  173. 野村一彦

    ○野村政府委員 六大都市のバス運賃の改定問題につきましては、いま先生から御質問を通じていろいろお話がありましたように、ずいぶん前からいろいろと検討を六大都市でやられたようでございます。現状の時点で申し上げますと、横浜、名古屋、京都、神戸、この四大都市につきましては、それぞれの市議会の議決を経て、そしていま言われましたような、七月一日から四十円、それから半年たって来年の一月一日から五十円にしたいという申請案が陸運局を経由していま本省に出ております。それから東京と大阪につきましては、東京の都議会、大阪の市議会それぞれまだ継続審議ということになっておりまして、したがってまだ申請がなされておりません。ですから、いま私どもはもっぱら四大都市の事案について検討しておるわけでございますが、基本的な考え方、運輸省立場から見ますと、二つの大きな問題がございます。  一つは、いま先生が言及されたことでございますが、お話のように、自治省がいろいろと指導しておられる財政再建計画、これについて、今回の申請のような運賃改定にかりになった場合には、財政再建計画というものは円滑に実施されるという見解をおそらく自治省としては持っておられると思うわけですが、そういう点について経営上今度の運賃値上げと今後の財政再建計画について自治省としてどういう考えるを持っておるかという点について、いまいろいろと自治省当局と会議を持ち、折衝をし、資料もお出し願って検討しておるというのが第一点でございます。  それから第二点は、いわゆるバス事業そのものの立場から、民営と公営とを門わず、私どもがやっておりますのは、昨年の八月運輸政策審議会の都市交通部会から答申のございました大都市におけるバス、タクシー事業のあり方というものに基づいて、今後、大都市におきます交通混雑とかいろいろの公害、あるいは安全の確保という問題から、路線網の再編成をしなければならぬ問題がある。それから乗客の利便の確保のために、いろいろとサービスの改善をやらなければならない。これは公営たると民営たるを問わず必要なものでございます。そういうものについて私どもは主として、そのバス事業者としての市の交通事業当局がそういう問題についてどういうふうに考えておるかという問題、そういう二つの問題を踏まえながら、出されましたこの数字についていまいろいろと検討をいたしておるわけでございます。  事務的には、いま四大都市につきましては、私どもすでに何回もそれぞれの市の交通局長以下おいでいただいて、数字的のお話、それからサービス改善についての考え方、そういうものはかなり進捗を見ておるわけでありますが、仰せのように、これは政府部内の問題といたしまして、まず運輸省としては運輸審議会に諮問をいたしまして、そこで公聴会をやるかやないかという決定をして、そして結論を出されるということになりますと、これは詰めていただくにいたしましても、かなりの日数がかかるのではないか。それからもう一つは、政府部内といたしましてこれは関係閣僚会議の議を経て決定すべき問題でございます。そういう問題がございますが、私どもはそういう問題以前の問題として、いま事務的に数字をいろいろ詰めておりまして、そして四十円、五十円ということについてそれがはたして経営的にどういうふうに改善に資するのか、またどの程度サービス改善というものがこれによって利用者の立場から見てできるのか、そういうことをいま鋭意事務的に検討を事実上やっておる、こういうことでございます。
  174. 大出俊

    ○大出委員 自治省がどう考えておるのかということをおっしゃるけれども、私は、さっき申し上げたように、自治大臣、長野次官、財政局長鎌田氏三人並べて、神奈川選出の片岡参議院議員、竹田参議院議員、私が中心で、市議会の代表二人を入れて詰めたのです。朝お目にかかって、鎌田さんのほうからおたくにも話が当日行っていまして詰めたのです。夕方また、皆さんお待ちになっておったから、自治省の大臣室に詰めた。ところが自治省の言い分は、七月なんてのんきなことを言っちゃ困るというんですよ。四十円なんて弱気になっちゃ困るというんですよ。四月でも五月でも早くやってくれ、四十円じゃ困る、五十円にしてくれ。これは公にすべきことかどうかわかりませんが、自治省だから申し上げるのだけれども、そこまで言っているわけでしょう。財政再建計画の責任は自治省が負っているわけですね。そうすると、その政府路線があって、それを何とかしょうと思って七月から五十円と出したんだが、市議会で修正を食って、十二月まで四十円と、こうなった。これはやむを得ぬ結果ですよ。そうでしょう。そうすると、その路線でものごとが進まぬとなると、これは自治体にとっては非常な迷惑なんですよ。  それは市民一般にとっては、上がらないんだから、いいことになります。だから、上げちゃいけないんならいけないで、そのかわり赤字だ、ちょうちんだとおっしゃっていただきたくない。一番いいことですから、国が責任を負う。特別交付税でも何でも出していただいて、市民の足なんだということで、関接的社会資本なんですから、そういう性格のものなんですから、国が責任を負う。それにこしたことはない。しかし、それはだめだという。だめだから何でもかんでもやれと、こういう自治省の態度。そうでしょう。やむを得ずそれに乗っかって、それでいこうという。それを今度はずるずる延ばして、いまお話の様子からすると、七月一日からじゃ間に合わぬ。きょうの日にちから、どう考えたって、運輸審議会の議を経るといったって、公聴会を省略するといったって、今月中に決着はつかぬでしょう。そうすると、自治省の考えははっきりしているんだけれども、さて一体いつごろまでにどうなるのですか、お先まっ暗で、市の、市会議員の全員協議会を開いたって、交通局長口がきけない。あれだけおれたちが反対するのにという政党だっている。そうでしょう。で、強引に押し通したはいいけれども、できないじゃないか、何を言っているんだと言っている。説明のしようも何もない。だから、それならばそれで、かくかくしかじかの事情これあり、閣僚協議会が開けないなら開けない。運輸審議会の議を経るにしても、こうこういう事情でちょっとそう簡単にいかない。だから、この路線に賛成なら賛成で、さてやっていくにしても七月は間に合わない。じゃ、何月なら間に合うんだというふうなことを言っておいていただかぬと、やはり九月の補正について、もう市議会の了解を得なければならぬ時期に来ている。そうのんびりかまえられたんじゃ、これはおきまりがつかぬ。そこのところはいかがでございますか。
  175. 野村一彦

    ○野村政府委員 私ども、ただいま先生がおっしゃいましたように、暫定的に四十円、あと来年一月一日から五十円という問題が財政再建計画から見てどうなるがということ、もちろん、これは自治省が非常に責任を持ち、またいろいろ指導しておられることでございますので、財政再建の問題については、まさに自治省の全面的な監督といいますか、指導のもとにあることでございまして、私どもがそういう問題にとやかく言うことではないのかもわかりませんが、先ほど申し上げました第二番目の、これはむしろ先生方から従来いろいろと御指摘がありますように、運賃改定をしてもちっともサービスはよくならぬではないか、ただ経営が苦しいから運賃値上げをするというふうなことはいけないということは、私どももそう考えております。世間の批判もそういうことでございますので、したがいまして、私、先ほど申し上げましたように、公営事業につきましては、もちろんそのおもやに火がいているような財政状態ですから、なかなか問題があると思いますけれども、やはりある程度のサービス改善を含めました業務の改善計画というもののめどを少なくともつけていただかないと、ただその企業の収支が赤だから、累積赤字が大きいから運賃改定をするということでは、私ども、タクシーの場合についても、バスの場合についても問題がある。もちろん、四大都市とも、サービス改善をしないとおっしゃているわけじゃございませんので、いまそういう問題についてもいろいろ検討していただいております。したがいまして、私どもはできるだけ、そういう今後のサービス改善計画、四大都市それぞれどういうふうなことをやられるのかを見きわめながら、数字の問題につきましても自治省と連絡をとりながらいろいろ詰めておりまして、できるだけ早く結論を出すように事務的には進めておる、こういう状態でございます。
  176. 大出俊

    ○大出委員 これは七月には間に合いませんな。いつになるのですか。
  177. 野村一彦

    ○野村政府委員 これは私のほうで、いま申し上げました運輸審議会がございますし、それからまた事務的には、もちろん企画庁とも、現在、事実上いろいろ情報交換、連絡はやっております。企画庁との協議もありますし、閣僚協のこともありますので、私からいま、いつごろになるかという日にちのめどはちょっまだお答えできない状態でございます。
  178. 大出俊

    ○大出委員 これは、タクシー料金の値上げのときでも何でもそうなんですが、だから私は、いまの日本機構というものは根本的に考え直さなければならぬというのはそこなんですけれども、主任の大臣のいない経済企画庁。行政的に主任の大臣というのは総理なんですからね。何の権限もない、経済企画庁というのは。それが、料金値上げだというと、反対だと必ずいう。ほんとうに反対なら、ありがたいのですよ。これは断じて上げないということになれば、国が責任を負わざるを得ないんだから。赤字は国が何とかしなければならぬのだかう。そうでしょう、国が上げないんだから。ところが、上げないと、こう言ってみて、じゃ裏側は何だというと、まあ二、三カ月はしかたがあるまいという。その先は目に見えている。だから七月と市は言ったんだけれども、経済企画庁が反対だといって何か月間かずらしたんだ。それだけ市民サービスになった、上がるやつが上がらないんだから。安かったんだから。そういう全く見え透いたやり方というのは気に食わぬです、大体。反対だと、こう言ってみせる。反対だと言って何月から何月、三カ月かそこらずらして、何か経済企画庁の役所がありましたということだけを明らかにする。これは見せかけですよ、明確な。そんなことをすれば、逆に値上げというほうは、企画庁がそう言うんだから少し早目に出しておけなんということになる。そのパターンの繰り返しでは意味がない。  だから、そういう形式ではなしに、それはサービスの改善、それにこしたことはないんだけれども、赤字赤字の累積で、火の車で、さかさにしても血も出ないようなことになっていて、サービスの改善だ、ちょうちんだといったって、そんなことはできはしない。それもまた形式だ。そんなことよりも、もっと本質的に都市交通というものを基本的にどう考えるのかということが先なんです。運輸政策審議会の答申なんかながめたって、えてかってなことを言って、タクシーというのはどこでどういう役割りを果たしているか、バス路線がどんどん細分化されて伸びてくる。末端のところが、バスがないんだからタクシーの役割りは。そうでしょう。そんなことを言ったって、タクシーはみんなひっくり返っちゃって、みんなやめちゃう。そうでしょう。しかも個人タクシーからまだまだ進んでいく、タクシーの自由化だ、そんなことをぬけぬけと皆さんが出したって三文の価値もない。そんなことを言ったって何もやれないですよ。いまあなたは、すぐ運政審答申と言う。バスの役割り、タクシーの役割りがございましてと、そんなことを言う。バス路線だって、住んでいる人はいますぐどけやしないんだから。もっとちゃんとバスでも何でも走らしてくれと言う。言うけれども、走らせるのには、おたくの商店街の道路を広げなければ走れないんだ、どいてくれ、絶対どかない、こうくる。絶対にどかなければ走りようがないから、みんなそこが隘路になってぶつかっちゃっているわけです。日本の国の、この人が住んでいる家屋もみんなこわして、あらためて国がつくり直すんなら話は別だ。机の上でつまらぬことを何を言う。運政審答申なんて中身を見て。それだから、法人タクシーの関係の組合なんというものは全部反対で、そういう騒ぎを起こしたって、私に言わせれば意味がない。  そうじゃなくて、もっと現実に即して、どうすれば一歩でも進むのかということ、一歩でも市民のふところを軽減できるのかという、そこに中心を置いて考えなければ、形式的に、向こうの役所は待ったをかけてみて、何カ月か様子を見て、経済企画庁ここにありといって、おしまい。あなたはそこで反論をしたいようだけれども、私は経済企画庁に電話をかけた、ほんとうに反対かと。いや、先生御存じのように、いましばらくはしかたがない。しばらくはしかたがないと言う。そんなことを言ったって、そういうこそくなことを大臣させておかぬで、もう少し生きている国民が、生きている自治体があるんだから、もう少し実際にこうなんだということを言ったらどうですか。
  179. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 ただいま大出先生お話のとおりでございます。確かに都市交通、ことに公共事業は非常に赤字で苦しんでいる。私も十分よく知っております。また自治大臣、長野、鎌田両事務当局からもしょっちゅう私も話を聞いております。本日も聞いた次第でございます。確かにこれは何とかしなくちゃならぬと私は思っておる次第でございます。  それで私は、実ははっきり申し上げますと、確かにこの料金は上げないにこしたことはない。しかし私は、いまの自由主義社会におきましては、ある程度の利用者負担というものはやむを得ないんじゃないか。もちろん、それがあまり急激になりまして、それで利用者の負担が非常にひどくなってはいけませんが、私は、ある程度利用者の負担というものがふえていくのは、やむを得ないんじゃないか。ことに交通機関については、私はそういう考えを持っている次第でございます。それは低いにこしたことはございません。御承知のとおり労働集約型の企業でございますから、どうしても経済が成長してくれば所得の向上するのはあたりまえ。それに伴いましてやはりある程度経費がかかってくる。そのうちの一部を、ただ納税者だけでなく利用者に負担してもらうということはあたりまえでございますし、ことにいまのバス料金が、私は必ずしも適正だとは思っておりません。これをある程度適正にすることも必要だろう、こういうふうに実は思っておる次第でございますが、御承知のとおり、いま料金政策、公共事業政策に対しましていろいろいわれております。ただ、物価上昇の寄与率だけでございません。心理的影響というものをやはり考えなければなりませんので、実はこれは私も十分わかっておりまして、できるだけ早く、いろいろ手続の点におきましても、簡素化できるものはできるだけ簡素化しまして御要望に沿いたいと思っておる次第でございますが、ただいま、大体いつごろまでにするということは、私の口からちょっとこの席上では申し上げにくい状態でございますので、御了解を願いまして、十分その事情は私は承知しておる次第でございますので、そのことだけを申し上げまして御了解願いたい、こういうふうに思います。
  180. 大出俊

    ○大出委員 もう一つ聞いておきたいのですが、そうすると、経済企画庁の話が出ましたが、経済企画庁が、ちょっと待ってくれ、あるいはしばらく待ってくれ、こう言うのですか。どこに一体原因があるのですか。
  181. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 これは経済企画庁というより、御承知のとおり、やはり一般に、バスがタクシー値上げと関連いたしまして、どうもそういう時期に来ているせいでございますか、私も、やはり適正原価主義というものはある程度しかたかないと思っておるわけですから、あれするわけじゃございませんけれども、あまり心理的影響が重なってまいります時期的問題もございます。しかし、時期的といっても、ことに全国的じゃございません。いまの問題は、現実の問題としては四大都市の問題でありますが、ちょっといろいろ問題がございますので、これは企画庁の責任というより、主管は私でございますから、企画庁とも十分相談をいたしまして、物価問題は総理もやかましいことでございますけれども、これは責任は私でございますから、私の責任でひとつ万事うまくやってまいりたい、こういうふうに思っておる次第でございます。よろしくお願いいたします。
  182. 大出俊

    ○大出委員 穏やかならぬ話ですね。所管は私でございますからって、物価への影響、寄与率だけでなく、政治的影響もある、心理的影響もある、こういうわけです。そんなこと言えば、心理的影響といえば、あなたがおやりになっている国鉄運賃の値上げ、この問題の心理的影響が一番大きい。国ですよ。地方自治体じゃない、国だ。国が上げようというのですから。私は毎日横須賀線で通っておるけれども、グリーン車に乗ったってすわるところがない。かけ足でかけ込んで、ときには、ぼくなんか細いから宙に浮いて乗ってくるのだ。この前の値上げだって、東京電環で調べてみたら百八億黒字だ。黒字のほうを上げて、赤字になっておる貨物のほうは上げない。これはずいぶん心理的影響が大きいですよ。政治的影響が大きいですよ。佐藤総理も国鉄だし、うちの国対委員長の楯さんも国鉄かもしれぬけれども、それはやはり野党間では割り切って、ぼくらは反対だ、こういうことですよ。だけれども、国鉄運賃がまだ参議院でどうなるかわからぬ。そのときに、そのほうはオーケーで、都市交通のほうは押える。それならそう言えばいいのです。こういう席ではまずいと言ったって、だれもいないんだから。私一人でやっているのだから。そうでしょう。委員だって与党少ししかいない。さっきも私のところの国対委員長が出てきて、だれもいないところで何をやっているのかと言っていたが。だから、そんなにものごとを、テクノクラートの諸君のくせで、何か陰では何だかんだ言っていて、ものを言わぬ。そういうところがやはりいささか政治不信の原因になるという気がする。だからこの国会で何とかしなければならぬ。片がつかなければ——片がつくということは、そこで通る、通らぬを含めて、十六日になれば一切おしまいなんだから。だから、国会が終わってしばらく様子を見てくださいとかなんとか、もうちょっと気のきいた答弁のしかたがないのですか。大臣、これ、いかがでございますか。
  183. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 十分御承知の先生でございますから、先生の御意見に同感でございます。
  184. 大出俊

    ○大出委員 ということだろうと思いますけれども、しかしそうあまり形式にこだわらずに、ひとつ進めていただくものは事務的に進めていただいて、何とかこれはひとつ決着をつけていただかぬと、よかれあしかれ、上げないでいくなら上げないでいいのだから。上げるのなら市民を説得しなければいかぬのです。  ですから、物価問題があって、問題はいまの物価政策というものをどう見るか。これは西ドイツが二回目のマルクの切り上げをやったときの例じゃありませんが、ポンピドーフランス大統領が、フランスのほうは一一%切り下げるからキージンガーさん、西ドイツの総理、何とかあなたマルクを九%切り上げてくれと言った。保守党の総裁であり総理のキージンガー氏が閣内にはかった。連立内閣だから、社会民主党のブラントさんが外務大臣。キージンガーの保守党のほうは、そんなかってなことをフランスが言ったって、絶対にマルクの切り上げなんということは国民のためにできないと言ったら、逆に社会民主党のブラントさんは、この際切り上げに賛成しろ、EEC、欧州六カ国の経済共同体の中に病める病人がいては困る、そういう視野でフランスの経済を再建しなければ、EECの経済自体が前進できない。しかも関税障壁がないのだから、農業国フランスの農産物を大量に西ドイツに入れようじゃないか。重工業中心の西ドイツなんだから、農業部門は価格保障、価格支持制度を活用すればいいじゃないか。そのかわり輸入が安くなるのだから、上がり続ける物価を下げられないまでも押えようじゃないか。とうとうこれは閣内まっ二つに分かれて、解散、総選挙。そうすると、上げるほうに賛成のブラントのほうが圧倒的勝利を得て総理になったじゃないか。そうでしょう。これはつまり政策なんですよ。あり方なんだ。問題はどう考えるかなんです。ほんとうに物価を下げようというなら、庶民一般の話に乗る。そうでしょう。  だから私は、いまの問題は都市交通の基本に触れると申し上げたのは、環境の悪化ということにつながる、こういうわけです。国鉄運賃の値上げを出しておいて、ハイヤー料金も上がりタクシー料金も上がった、沖繩も返ってきましたが、一ドル三百六十円で読みかえをやらないで、そのかわり認可料金はみんな上げてしまうということをやっておって、一つだけは上げません——そんなことはできない。基本的に物価政策をどうするか。第六次公定歩合の引き下げで、金利を引き下げろなんて郵便貯金のほうに言って、だぶついた金を一体どこに使っているかと言えば、「エコノミスト」の調べた中身を読んでみると、東京証券取引所上場会社千二百九十七、これの持っておる土地のパーセンテージが日本列島の中で一・二八%。一・二八%といったら何だと言えば、市街地総面積に当たる。日本列島の市街地の土地はみんな法人企業が持っておる。そんなところにばかり金が流れたって景気刺激策になりゃしません。物価上昇の五倍の早さで土地が上がるのだから。株なら下がることがあるけれども、土地なら下がらないんだから。そうでしょう。そうなれば、物価政策の基本はどこに置くのかはっきりしてください。それをやらないで、四十円がいかぬとか、いや何だかんだと言ってもしようがない。だから、そうじゃないんで、いまのところぐあいが悪いとうなら、ぐあいが悪いでいいから、私もくどいことは言わない。大臣がどうやら本音をおっしゃったから、その辺にしておきます。  次にタクシーなんですが、実は野村さん、前の資料をひっくり返してみますと少し気になる点がある。それはどういうことかと言いますと、前回の、つまり二二・五%でございましたか、タクシー料金の値上げをいたしましたが、あのときの資料から見ると、どうも今回の値上げとからみまして先行きの問題が少し気になるのでありますが、時間がありませんから、私のほうで数字をあげたほうがいいのかもしれませんから言いますが、四十五年の値上げでございましたか、これが二二・五%ですね。ところが、この基礎になっておる資料を、私東京陸運局にもお伺いして当時承った二二・五%値上げした基礎資料ございますか。——ないとはおっしゃれぬわけです、私いただいた。そうしたら、何と四十三年の資料が基礎ですね。四十三年に東京陸運局が東京都内四十社の実態調査をやられまして、それが基礎資料になっている。四十三年に二千七百四十三両調査していますね。これを一〇〇としているのです。  そうすると、まず走行キロを見ますと、一日一車の平均走行キロ数は、四十三年は三百五十一・三ですね。ところが値上げをした四十五年は三百三十七・八に落ちている。だからその意味では、どうも値上げの時点と調査時点とのズレがあり過ぎて、はたして二二・五%になっているのかどうか、疑問を抱かざるを得ない。さてそこで実車率を見ますと、四十三年が六三・七で、四十五年は六三・三ですから、たいした変化はない。そうすると実働率が問題になりますが、実働率というのは、百台あるなら百台の車のうちで、何台運転手さんがいないで休んでいるかということなんですが、四十三年は九四・八%と比較的実働率は高いですね。運転手さんがいた。ところが四十五年を見ると、何と九四・八が八八・一に下がっている。そうすると、百台のうちで十二台というのは遊んでいることになる。そうでしょう。そうなると、二二・五%値上げしたっていったって、実際には一九%前後しか上がったことにならないです。そうしてこの値上げによって、その後の企業とハンドルを持つ諸君との配分率はどうなったかというと、むしろ賃下げに類する。非常に苦い経験なんですね、ハイヤー・タクシー労働者にとっては。  そうすると、この間承りましたが、今回の値上げ後に、一体企業の側は分配率の面でいってどの程度どうなって、さてハンドルを持つ諸君のほうはどの程度どうなるかという点。私の心配しているという点は、この点をはっきりつかんでおきませんと、ハイヤー・タクシー産業が成り立たないからですよ。つまり、ハイヤー・タクシーのハンドルを持つ諸君がなくなっちゃうからですよ。なくならないまでも、どんどん減るからですよ。生活にからみますから。  そういう意味で、つまり今回の料金改定が、ハンドルを持つ方々が逃げない、そしてさて経営をする方の経営意欲を失なわない、その両側面からとらえて上げたはずなんですね。そのほかにサービス改善だ云々だとおっしゃるけれども、それが両方何とか成り立たなければ、サービス改善に回す金はないのですから。あるいは労働条件の改善に回す金はないのですから。だからそういう意味で、そこらのところをどう見るか。さきの春闘これあり、ずいぶん方々まとまったようでありますから。これは労働省に聞いてみたら、労働省もはっきりしない。運輸省に聞いてくれというのです。所管が運輸省でございますから。そうすると、そこらのところを大づかみにどういうふうにごらんになっているか。私、実はまだ東京はとっておりません。前回の値上げのときには、その翌年の春闘の東京都内の全部の資料を私、集めまして持っておりましたが、いまここにあるのは神奈川でまとまった点だけ。私にはそれなりに意見はありますけれども、まず運輸省の側でどういうふうにごらんになっているか承りたい。
  185. 野村一彦

    ○野村政府委員 六大都市におきますタクシーの運賃改定後の状況でございますが、二月、三月、四月、この三カ月をとってみましても、実働一日一車当たりの収入を申し上げます。いずれも四十六年を一〇〇としますと、東京都におきましては、四十七年は一三一・五、横浜は一二一・一、名古屋は一一六・九、大阪は一一八・四、京都は一二〇・六、神戸は一一九・二というふうに、実働一日一車当たりの収入は、大体東京を除く五大都市は二〇%前後、東京は三〇%上がっておるということでございます。
  186. 大出俊

    ○大出委員 それはどこから来た報告ですか。それとも運輸省独自に調査をなさった報告でございますか。
  187. 野村一彦

    ○野村政府委員 地方の陸運局で調べましたものを本省で集計したものでございます。
  188. 大出俊

    ○大出委員 もう少し具体的に例をあげてみますと、必ずしもよくないですね。これは神奈川に神自交という組織がある。これは全自交の神奈川の組織です。ここに比較的わかりやすい数字が載っております。月の営収が十七万円、一日の営収が一万三千七十七円。大体勤続三年というところで、家族三人、そうして固定給が七万三千七百六十二円。それで総収入は、いろいろな手当が、家族給、年給、標準作業手当、実車手当、修理手当等いろいろあります。それらを全部入れて二千キロ越し高、二千キロをこえた一キロ三十六円、ただし欠勤百五十九キロ、差し引き有給が百六十五キロ、つまり全部入れまして総額で七万三千七百六十二円、賃金率で四三・三八。だから、旧賃金率で四五・九二になりますが、賃上げ額でいきますと四千三百三円。このところは旧賃金率よりも下っていく、つまり十七万円ならば。そうして十八万円からはプラスであります。十八万円のところで賃上げ率で八百八十五円上がっておる。それから十九万円のところで千二百六十九円、十九万八千円で四千百四十二円、二十万円のところで四千三百五十一円、二十一万円で五千八十一円、二十二万円で五千八百四十三円、二十三万円で六千五百八十九円、二十四万円で七千三百三十四円、二十五万円で八千八十一円、二十六万円で八千八百二十七円、ここまでしかない。これが天です。そうなりますと、これは神自交傘下の七二年の八社集団交渉の結果です。中心組織ですから。ですから、八千八百二十七円というのが賃上げですね。これをパーセントに直しますと、いまおっしゃるような一二〇・何ぼとかいうことにならない。だから皆さんがどういう方法でこれをおとりになったか、そこらのところを実はもう少しお聞かせいただきたい。  それから私、これだけじゃありませんが、ハイタクという組織がありますが、こちらのほうも調べてみました。しかし、ハイタクのほうが少しいい。大体二十六万円近辺までまいりますと、五千円近くいいわけでありますが、とにかくそういう差がありますけれども、どうも私、ながめた限り、いま運輸省がおっしゃっておるところに行っておるかどうか、疑問に思います。したがって、その点はどういう調査結果で答弁になったのかを、差しつかえがあれば別ですけれども、なければひとついただきたい。
  189. 野村一彦

    ○野村政府委員 これは運賃改定をやりましたときの原価計算対象会社につきましての一日一車の実際の実績でございます。これを原価計算対象会社から陸運局が報告をとりまして、それの平均を出したものでございます。
  190. 大出俊

    ○大出委員 会社側の報告ですな。いま私が申し上げているのは春闘で妥結した結果なんです。つまり、これしかもらえないのですから、だからそういう意味では相当な開きがあるように思います。したがって、その結果を差しつかえありますか、なければ私はいただきたいということです。
  191. 野村一彦

    ○野村政府委員 この資料、後刻お届けいたします。
  192. 大出俊

    ○大出委員 それじゃ二点だけ聞いて、時間ございませんから終わりにいたしますが、東京、横浜をはじめたいへん大きく開きがありまして、横浜のタクシーが羽田の空港に行くと、あそこにとまっているとおこられる。なぜならば、横浜のほうが安いのですから。六郷の橋を渡れば横浜なんですから。横浜のタクシーが羽田へお客を送っていって、そこにとまっていると追い出される。横浜のタクシーと東京のタクシーが空港におれば、安いほうに乗っていきますよ。あたりまえでしょう。なぜ一体そんな差が出たか。今回の値上げにあたって、なぜそんな格差ができたのかという点が一つ。  もう一つ。ハイヤーの場合の待ち時間その他の関係ですが、たいへん不可解なことは、待ち時間料金、タクシーの場合には時間距離併用で二分三十秒ごとに三十円です。ハイヤーは待ち時間が三分とされている。これは、私のところへ送ってきているのはある会社の御大ですから間違いない。そうでしょう。三ツ境という場所でハイヤーをやっている。この相違は一体どこから出てきたかという点。二つだけ答えてください。
  193. 野村一彦

    ○野村政府委員 まず第一点を申し上げますと、東京あるいは横浜との間に運賃改定率に差があるのは、結局、運賃の定め方と申しますのは、東京なら東京、横浜なら横浜という地区におきまする典型的な業界、その業界の収支率を見まして、そして、今度改定したならば三年間は改定しなくてもいい。それで収支原価を償い、適正な利潤を含む、そしてこれが三年間もつというためには、現在の改定前の水準よりも何%上げればいいかという計算をしたわけでございます。したがいまして、その結果、東京は四三%、横浜は三三・五%ですか、という数字が出たわけでございまして、全く区域ごとの原価計算の内容の相違ということでございます。それから、ハイヤーとタクシーの待ち時間の分の差、これはちょっと私いま資料不足でございますので、後刻お答えいたしたいと思います。
  194. 大出俊

    ○大出委員 実はこれやっているのは、会社側の中心の人ですから、赤く、時間その他交代制のあり方、全部書いてありますが、間違ったことを言っているわけじゃない。そこで、これはあとからなぜ違うかという点を御説明いただきたい。  それから、いまのお話の企業の原価。そうすると、この企業はあまりもうかっていない、どうも苦しい、東京の諸君は苦しいから、それに合わせて上げた、こういうことですね。そういう理屈になりますね。横浜との比較では、一口に言えばそういうことですか。
  195. 野村一彦

    ○野村政府委員 それだけでございませんで、もちろん原価計算をするにあたりましては、その実車率とか、それから先生のおっしゃった実働率とか、一日平均走行キロとか、そういう要素が各地区ごとにみな違うわけでございます。そういう要素を前提にいたしまして出したわけでございまして、もちろんある程度企業努力という要素は、これは大臣の当時からの御指示がございまして加味しているわけでございますが、いままでは、先生御案内のように、地方が高くて東京が安かったわけです。それがだんだん交通渋帯が激しくなり、それから労働力不足というのも大都市に集中しているということで、これは東京ばかりの現象じゃございません。地方のローカル都市より地方の中心都市のほうが安かったのが、だんだんそれでは収支が成り立たなくなった、そういう客観的現象が起こりつつある。その一つの過程、プロセスのあらわれである。東京と横浜の場合も、先生御案内のように、いままでの賃率が逆転しつつあるような客観情勢になっている、こういうことでございます。
  196. 大出俊

    ○大出委員 一日一車の平均走行キロだって、東京は広いんだから逃げ場がありますから、だから長いんですよ。横浜のほうが短いんですよ、実際によけい走れるところは、それだけ営収がふえるのだからもうかる勘定ですね。走れないところは、狭いのだからどこに行ったってぶつかってしまう。一日一車の平均走行キロ数というのは、東京に比べて落ちてしまっている。よけい走れるところをよけい上げることはないでしょう。だから私は冗談を言って、東京陸運局のおひざ元だから、何か政治的意図があって東京だけ少しよけい上げたんじゃないか、もってのほかだ、こういうわけなんですよ。野村自動車局長だってインチキじゃないか、こういうことなんですね。陸運局長は平出さんですか。少し彼は政治的にやり過ぎたんじゃないかという、ざっくばらんのそういう声が業界に満ち満ちている。  いまお話を聞いてみてわかりましたが、それも資料を出していただきたい。私もこれは専門的に少し人に調べさしてみたいと思っているんです。安い横浜のタクシーが羽田空港に行った。それは東京と横浜の車がずらっと並んでいてごらんなさい。東京へ行くのにみんな横浜の車に乗っていきますよ。そうでしょう。そういうことになると横浜の車は追い出される。だから帰りには客を拾えない。ばかな話で、横浜に行くのに横浜の車に乗れない。(野村政府委員「そんなことばありません」と呼ぶ)そんなことないと言ったって、あそこに横浜の車がとまっていれば、そういうことがあるんじゃないですか。そこらのところは、やはり横浜の車と東京の車とあれば、横浜の車のほうが安いんだから、みんなそっちのほうに乗る。そういうばかなことをなぜしたか。こんな大きな格差をなぜつけたかということです。これは野村さんの政治的配慮であろうと思って、野村自動車局長はけしからぬと思っているんですがね。その点はどうですか。
  197. 野村一彦

    ○野村政府委員 全然政治的な配慮でございませんで、もっぱら原価計算の数字によってやったわけでございます。  それから、羽田から出る場合に、横浜の人が羽田から横浜に行くのは一向差しつかえございません。羽田から東京都内に行くのがいけないのでございまして、その点はちょっと先生誤解があるのではないかと思います。
  198. 大出俊

    ○大出委員 そんなことを言ったって、乗る人は私は横浜に行きますと言って乗ったけれども、実は蒲田なんだ、そういうことが幾らだって成り立つのです。だから問題の焦点は、橋を渡れば東京と横浜、横浜の車は年じゅう東京に来ているんだから、こういうところでなぜこんな差をつけるかということです。
  199. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 いま局長が非常にあれですが、実はこれは私がやらせたことです。これは実際はいまの問題は、神戸あるいは大阪にも起こる。いま局長が御答弁をしましたように、実車率の問題というものを一番大きく考えました。というのは、乗車拒否というのが非常に多かったわけでございます。それで、実車率をどれくらい引き下げるとかということを一番に眼目に置きました。それと走行キロ、これが非常に交通環境を悪くいたしておりますので、それらを一番の重点に置きました。それからもう一つは収支率。この三者を勘案いたしまして、実は私は、もう絶対に政治的配慮をするな、あくまで基礎数字によってやれ、こういうことでやりましたので、ひとつ御了承願います。
  200. 大出俊

    ○大出委員 町の声を代表してものを言ったのでありまして、町の声も、運輸大臣も野村局長もけしからぬということを言っておるわけであります。後ほど資料をいただきたいと思います。  終わります。
  201. 伊能繁次郎

    伊能委員長 午後二時四十五分より委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後二時休憩      ————◇—————    午後二時四十七分開議
  202. 伊能繁次郎

    伊能委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  運輸省設置法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を続行いたします。松本忠助君。
  203. 松本忠助

    松本(忠)委員 私は、きょう航空事故調査委員会の問題について若干のお尋ねをいたしたいと思います。  航空事故調査委員会設置せよということは、私のかねがねの持論でありますし、血の羽田沖の事故につきまして、四十五年九月、最終報告が出されました時点、この前後に、五回にわたりまして、国会において私は質問をいたしてまいりました。その中で、四十五年の十月九日に、運輸委員会におきましても、この航空事故調査委員会を常設をしなさいということを強くお願いをいたしました。なおまた、同年十一月九日に交通安全対策特別委員会におきましても、木村参考人あるいは楢林参考人の二人を呼びまして、参考人の意見を聴取いたしました。その際にも、当時の橋本運輸大臣に対しまして、この問題を聞こうとしたわけでありますが、当日、残念なことに大臣が出なかったので、翌々十一月十一日に、運輸委員会におきまして、この問題を橋本運輸大臣に詰め寄りました。そのときの答弁でも、常置の事故調査体制の必要性を橋本運輸大臣は認められました。それについては、もちろん法律上の改正等いろいろ必要だというようなことで、当時もこういうふうな答弁があったわけであります。「こういう制度を将来日本としても取り入れる必要がありはしないか」、こういうふうに橋本さんは話し始めまして、「それには、もちろん法律上の改正等が要りますので、いま直ちにこれを実施することは困難ではありますが、そのような制度についても今後検討をしてまいりたい。そして運輸省事故関係の人は、そのスタッフとして下働きをする、かような制度がやはり必要ではなかろうか、こう考えておりまして、このような制度についての検討方を私から関係者に命じております」。当時橋本運輸大臣がこのように前向きな答弁をされました。その後四十六年の七月三日に、函館付近におけるYS11のいわゆる「ばんだい号」の事故、これがありました際にも、七日に現運輸大臣の丹羽さんにも、常設の事故調査委員会をおつくりくださいということを要望いたしました。これに対しまして大臣もその必要性を認められました。その答弁の内容をいまさら申し上げる必要はないと思います。大臣がそこにいらっしゃるわけでありますから。  そうした結果今回こうして航空事故調査委員会設置法という形になって提出されてきたものと思います。その点、私の要望に対しましての結果として出てきたわけでございますから、もろ手をあげて賛成をしたいわけでございますけれども、内容を拝見いたしますと、そうはまいりません。数々の疑問点がございます。そこで、本法の審議が、運輸委員会でなく内閣委員会において行なわれることになりましたので、皆さま方の御同意を得まして質疑の機会を与えていただいたわけでございまして、この点を私、委員長はじめ、委員の各位に対して感謝をする次第でございます。  そこで、私がこれから申し上げることの中には、質問もありますが、要望もあります。こうすべきだ、こう変えるべきだ、こういうふうな点もかなりございます。それというのも、本法がこのままの形で賛成多数というようなことで通過してしまったならば、大きな禍根を残すと私、思います。したがいまして、この問題につきましては徹底した論議がなさるべきではなかろうか、こう思うわけでございます。  そこで、まず各条項についてこれから質疑をするわけでございますが、まず第一条の「目的」、この目的のことにつきましてお尋ねをいたしたいわけでございます。読んでみますと、「この法律は、航空事故原因を究明するための調査適確に行なわせるため航空事故調査委員会設置し、もって航空事故の防止に寄与することを目的とする」となっておりますが、この「適確」ということばであります。この「適確」ということばの内容をもっとさだかにする必要があるのではなかろうか。たとえて言うならば、「公正かつ科学的な」というような表現にすべきであると思うわけでございます。これがまず第一点であります。  御承知のように、航空技術は日に日に進歩しておりますし、とどまるところを知りません。事故調査も、事故防止体制も、それに追随していたのではだめだと思います。一歩前を行くということでなければ、未然に防止するということは不可能だと思います。時代によって調査技術も変化するわけですから、そういうものを巧みに取り入れ、反映していかねばならない、そういう意味もこの「適確」の中に含まれているのではなかろうかと思います。正確に言いますと、「目的」を満たすことを期待する組織だ、こう思います。そうなると、  「目的」を満たしているのかいないのか、だれかがチェックをして、満たされていなかったならば直すようなしかけが、どこかになければならないのではないかという点が第二点であります。このしかけをどこに持つか、中に持つか、外に持つか、あるいは両方に持つか、こういうことが考えられるわけでありますが、その点をどうするかということであります。公正な調査をしよう、科学的な調査をしようとだれもが心がけてやるわけでございますけれども、やってみなければわからないと思うのです。そこで、結果は結果として批判にさらされるというか、チェックのしかけを持つ必要があろうかと思うのであります。そこで、このチェックを、内部にも、あるいは外部にも、あるいはまた内外ともに持たせるということが、公正さを確保するという意味から非常にいいのではなかろうか。この組織が「目的」を満たしているかどうかチェックする、そのチェックをどうするか、こういうようなことがこの「目的」の中に考えられねばならないのではなかろうかと思うわけでございます。この点について、まず大臣の御見解を伺っておきたいわけであります。
  204. 内村信行

    内村(信)政府委員 一応事務的に私から御答弁申し上げまして、それから大臣からお答えいただきたいと思います。  まず第一に、第一条の「目的」、ここに「適確」ということばが使ってございますけれども、この「適確」ということばはいかなることであるか、もう少しそれこそ適確な表現はないだろうか、こういうふうな御質問であろうかと思いますが、私ども考えますのに、やはり事故調査というものは、客観的に真実探求する、それによってきちんとした真実探求した上で原因を客観的に究明する。それによって同種の事故が再発しないように防止をいたします。これが事故調査目的でございます。したがいまして、この「適確」というのは、そういった意味の客観的に真実をはっきりと把握するという意味において「適確」ということばを使っております  これを「公正かつ科学的な」というような表現にしたらどうかという御意見と承りました。これもまた一つの御意見で、けっこうな御意見かと思います。ただ、この中で第五条に「委員長及び委員の任命」という条項がございますが、ここで委員長及び委員につきまして任命する場合に、「科学的かつ公正な判断を行なうことができると認められる者のうちから」云々、こう書いてございますので、この点は委員任命の場合に考えたらいかがであろうかというふうに考えております。  それからもう一つ、チェックシステムの問題でございます。このチェックシステムを中に置くか外に置くかという問題、いろいろむずかしい点があると思いますが、ただいま私どもといたしましては、チェックシステムといたしましては、一応その委員の任命に際しまして、たとえば、航空運送事業とか、あるいは航空機の装備品の製造その他、いわゆる密接に関係のある者、こういうものについては委員にしないというふうな欠格条項をつくり、かつ、その罷免条項を置きまして、「心身の故障」あるいは「職務上の義務違反その他委員長若しくは委員たる適しない行為があると認めるときは、両議院の同意を得て、これらを罷免することができる」というふうなことにいたしまして、このチェックシステムということを考えておるつもりでおるわけでございます。
  205. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 ただいまの松本先生の御質問に対しましては、航空局長から御答弁をいたさせましたとおりでございます。実は「目的」は公正しかも科学的であることは当然でございます。その内容を「適確」ということばで表現をした、こういうふうに思う次第でございます。具体的には、いま申しました委員の人選のときにおきまして、もう少し詳細につくらせた次第でございますので、その点は御了解を願いたいと思う次第でございます。  実は、運輸省の付属機関とするか、内閣の付属機関とするか、こういう問題がございました。これは御承知のとおり、むしろ公正妥当、運輸省航空行政をやっているので、航空行政事故の場合におきまして不備な点がある、そういう指摘をする場合には、むしろ内閣に置くほうが適切じゃないか、チェックのしかたもやりいいのではないかという点もございまして、その点も十分私どもも考慮をいたしまして、どちらにしようかということを非常に論議をいたした次第でございます。御承知のとおり、これはいろいろ御鞭撻をいただきましたけれども、私らもその重大性をあれしまして、踏み切りまして、今回御審議を願った次第でございますので、やる以上ほんとうにりっぱなものをつくりたいということでやった次第でございます。  実は、前回の全日空機の事故調査委員会、「ばんだい号」の事故調査委員会、御承知のとおり、あの委員会総理府にやらしておる次第でございますが、やはり公正という意味において総理府に置いたほうがいいのではないかということで、これは臨時でございますが、置いたわけでございます。ところが実際の仕事というものは、全部運輸省で行なっております。そして私は、はっきり申し上げますと、これらの調査の結果をできるだけ早くわれわれも知り国民にも知らせる、そして次の事故の防止につとめるということがやはり事故調査委員会一つの大きな役目ではないかと思う次第でございます。  いままでの場合におきますと、これは海難審判所もそうでございますが、原因不明なのが非常に多い。しかも原因不明であるかどうかということにつきましても三年も四年もかかる、こういうことが非常に多いことでありまして、私は前にも皆さまに御答弁を申し上げた次第でございますが、「ばんだい号」事件にいたしましても、ただいまの全日空の事件にいたしましても、できるだけ一年以内にやってもらいたいということを、局長を通じまして委員長お願いをしている次第でございます。これはもう独立機関でございますから、いろいろなことがございましょうが、できるだけ早く詳細にきめてもらいたいということを私はいままでお願いをしておる。ところがどうもおくれがちである。それはいろいろあります。ところがやはり、そういうのが運輸省の内部にありますと、わりあいにそういう点をしょっちゅう連絡をいたしまして、この点はどうだろう、どうだろうということでいろいろなお願いをしやすい。それからまた、先般もいろいろございましたが、最近いろいろな事故の連続であり、この間、参議院でもお話がございましたが、これは同じような事故が多いんじゃないか、点から線になるんじゃないかというような御議論がございます。これらを早く追跡調査をいたしまして、その原因を、小事故でありましても事故調査委員会で取り扱っていただきまして、そしてその新しき同じような事故の発生を防ぐというのが、やはり事故調査委員会の大きな仕事でございます。そういうようになってまいりますと、むしろ運輸省の付属機関としておきまして、そうしてそこでもって目的を達成するための一番の具体的の便利性を考えるとともに、独立機関としては、人選その他におきまして厳重に私どももいたしますとともに、国会の御承認を得るということにいたしまして、国会の皆さんの御承認なき人物、厳正、適正な方でなければ委員にできぬという強い制限を設けまして、両方を調和をいたしましてやったほうがいいんではないか、こういうことで今回の原案をつくった次第でございます。
  206. 松本忠助

    松本(忠)委員 大臣の御高説を拝聴いたしましたけれども、まあ局長の面と両々お話を伺っておりまして、その「適確」ということを、いま五条においてそのように書いてあるから、一条もそうなんだということですが、むしろ一条にこのことは明瞭に書くべきじゃないか。ほんとう科学的かつ公正な判断をできると認められる者がやっても、非常に問題点を残していることは、もう局長も御存じだと思うのです。松山の事故におきましても、あるいは羽田沖の事故にしましても、あの報告書というものが今日になおまだ疑問点がたくさんある、まずい点があると指摘されているのはそこなんですね。ですからやはり、公正な科学的なそうした判断をできると思われる人がやってさえも、あの寄り合い世帯であったがゆえに大きな失敗があった。ましてや木村委員会のごときは、木村団長自身が認めているように、編成の過程において失敗があったということも言っているぐらいですから、この問題を、単に「適確」というようなばく然としたようなことばで表現するのでなくて、もっとこれははっきりしていくべきじゃないか。そしてまたそのチェックの機関を設けなければならぬと思うのですね。そういうことがなくて単に、つくったものはそれでいいんだ、これで間違いないんだというようなことを言っても、これは通らないと思うのです。やはり私は、そういう面からいって、ここにチェックの機関というものを設けるべきだ。  また、五条のほうまで大臣が触れられまして、両院の同意を経た上でやるんだからということになると、両院のほうに責任を持たせているみたいですよ。運輸大臣が任命する、しかしその任命する前の過程において両院の同意を得るというふうに条文では書かれておりますけれども、私は、「適確」なお方というのはなかなか見つからないんじゃないかということをいまから心配しているわけです。  こういう点を考えますと、私は、いわゆる事故調査委員会というものをつくるにあたって、まず「目的」の事項からそれをはっきりし、チェックという問題もきちっとしておかなければ、後々にそういう問題でいろいろな批判にさらされることになると思うのです。こういう点を私、考えるわけです。チェックのしかけといいますか、機関を持つ必要はないんだというような解釈でありますし、これはおそらく平行線だろうと思います。このままやっていたのでは、これは時間ばかりかかってどうにもならないと思いますから、私もこの問題については私の意見として、やはりチェック機関を、内部なり外部なり、あるいは両方なりに置いておくということを考えなかったならば、二の舞い、三の舞いをするのではなかろうか、こういうふうに思うのですよ。  そういう点から私は、この「目的」の中における「適確」という字句、これをもっともっと具体的に書けということが一点。それからチェックの機関をどうするかという点、これもはっきりしておかなければいけない、こう思います。とにかくその時代によって航空機の進歩発達というものは毎日のように変わっていくわけです。いつまでも十年一日遅々としているというわけではありません。そうなってくれば、それに対応するということを考えなければいけないと思うのです。そういう点からも私は、当然、ここで任命されるべき人が、やはりほんとう事故調査についてしっかりした信念を持ち、そしてまたやれるような人を選定するためにも、法律としてきちっとその点をしておかなければいけないのではないか、こういうふうに考えるわけです。この点について、私としてもまだ十分に了解できておりません。この点についてはなおまた保留し、なおよく意見も戦わしたいと思いますが、一応第二条のほうへ移ってみたいと思います。  第二条におきまして、いま大臣から、「運輸省に、航空事故調査委員会を置く」、こうなった、この点については、内閣に置くのか、運輸省に置くのかということでずいぶん中で議論をしたんだ、こういうお話がございました。要するに、事故調査委員会運輸省の付属機関なのか、それとも運輸大臣の指揮命令に従属するものか、あるいは単独、別個のものなのか。この「置く」ということばをもう少しはっきりとここでしてもらいたいと思うのです。
  207. 内村信行

    内村(信)政府委員 「置く」ということばでございますが、組織法上は三条機関と八条機関と両方の種類がございますが、この場合は八条機関でございます。すなわち付属機関でございます。そこで運輸大臣のもとに置くわけでございますけれども事故調査自体につきましては、運輸大臣指揮監督を受けるものではございません。独立して判断をして一つ結論を出すという性格のものでございます。
  208. 松本忠助

    松本(忠)委員 要するに事故調査委員会は付属の機関である、調査ということについては独自の問題である、こういうわけですね。これはもう局長大臣も十分御承知のことと思うのですけれども、アメリカにおいてはどんな方向になっているかといえば、アメリカにおいての航空事故調査の主体となるのは、国家運輸安全委員会、NTSB、こういうふうな略語で呼んでいるようでありますけれども、この委員会は一九六六年に運輸省法によって設置されて、運輸省外局として存在するが、その機能、権限、義務の行使においては、運輸省長官及び運輸省のその他の管理から独立的存在を持っている。こういうふうに明確に独立的存在である。いま日本のほうは、調査の権限についてのみ、こういうふうに言われるわけですね。私は、確かにこの設置法について、ここらが一番問題点じゃないかと思うのですね。これからいろいろな問題を私このあとに提議したいと思っているけれども、公正を保つ、こういう意味からいって、単独、別個のものであって、要するに運輸大臣の政治的配慮などによる圧力のかからないところに置かなければいけないのではないかと思うのです。こういう例はないんだ、なかったんだ、こう言えばそれまでですけれども、やはりそうばかりは言えないだろうと思うのですね。この調査委員会運輸行政の責任を追及するという立場がこれから出てくると思うのです。ある種の事故があって、その事故について調査した結果については運輸行政の責任を追及する、大臣の責任を追及する、こういう場合も当然出てくると思います。そうした場合を考えまして、この委員会はあらゆる面において独立したものであるというほうが好ましいのじゃなかろうか、こう思うのですがいかがでしょうか。
  209. 内村信行

    内村(信)政府委員 この点、先ほど大臣からもお話し申し上げましたように、実はずいぶん議論になった点でございまして、事故調査委員会性格から申しますと、いわゆる航空行政から独立したほうがいいということは確かに言えることでございます。したがいまして今回も、従来と異なって、大臣のもとではございますけれども航空局から完全に切り離しまして独立機関を置いたというのがその趣旨でございます。  それならば、さらにその議論を進めれば、運輸省からも離したらどうであろうか、いっそ総理府にでも置きまして、運輸大臣の権限外に置くということがいいのではないかという趣旨だろうと思います。その議論も確かにございました。ただ、理屈の上ではそうでございますが、反面、実情を見ますと、やはり委員会というものができまして、その事務当局もできましても、必ずしもそれは相当強力な全国的な組織網は持ち得ないというのが実情でございます。そこで、実際の事故調査をやります場合にどういたしますかと申しますと、実際に事故が起こった場合、まずその立ち上がり、初動動作とも申すべきものがございます。そういうものにつきましては、中央から行きます前に、現場の空港事務所等の職員がまず現場におもむいて事故現場保存するとか、そういった事実を認識するとか、そういったことをやらなくてはいけない。それからまた、事故調査委員会は必ずしも人員をたくさん用意しておりませんので、ある場合には運輸大臣に依頼しまして、物件の収集とか、あるいは現場の保全とか、そういった行為をやってもらうということも必要でございます。そういうふうにいたしませんと、円満なる事故調査業務というものが実際上進まないというのが反面の実情でございます。  そこで、それやこれやを考えまして、今回は航空事故調査委員会というものは運輸大臣のもとに置く、しかし航空行政からは完全に切り離す。それから、運輸大臣のもとに置くのでありますけれども、その事故調査仕事については、運輸大臣の指示は受けないというような形をとったわけでございます。  なお、アメリカの場合におきましても、NTSBは運輸大臣のもとに置くわけでございますが、これは外局という意味で若干違います。お説のとおりであります。ただこの場合に、事故調査委員会のやりますのは、日本の場合私どもが考えておりますのは、審決を行なうとか、あるいは行政処分、懲戒処分を行なうということまでは考えておりません。ひたすら事故原因が何であるかという客観的な事実を究明いたしまして、事故原因を明らかにするということまででございます。そういたしますと、これは行政処分という問題はございませんので、外局というような必要もないということから付属機関というものでとどめたということでございます。  なお、運輸省に置く問題につきましては、諸外国の例を見ましても、米国は、先ほど先生お話ございましたように、運輸省の中に置かれておりますし、その他の国は、委員会ではございませんが、みなほとんどが運輸省の内部に置きまして、それぞれの担当部局において行なっておるというのが、必ずしも外国の例がいいというわけではございませんが、参考に申し上げた、そういうことでございます。
  210. 松本忠助

    松本(忠)委員 先ほど私申し上げましたように、そういうことはあってはならないわけですけれども運輸大臣が政治的配慮、圧力をかけるというようなことが起きないとも限らないと申し上げました。このことはやはり、これから事故調査の結果によって、このことによって責任を追及されるというのは何も運輸省ばかりじゃないわけですね。たとえて言うならば、パイロットにしましても、あるいは航空会社にしましても、責任の追及があるということを考えますと、自分に都合の悪いことは、要するに調査の結果がそういうものが出たら困るから、会社にしても、パイロットにしましても、調査委員会に対して力を行使し、権力を媒介にして影響を与えること、こういうおそれが多分にあるだろうと思うのですよ。これはないとは言えないと思うのです。そういうところから考えましても、私は、やはりその面の影響を受けないように万全の処置をとっておくべきだ、こういうふうに思いますけれども大臣、その点どうでしょうか。
  211. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 確かにお説のとおりでございまして、影響を受けるようなことがあってはいかぬと思う次第でございます。これは恐縮な話でございますが、たとえ総理府に置きましても、そういったようななにで自分のほうで非常に不利だということで、会社からも、また運輸省からも、それからよその役所から働いて、それで影響を受けるような人があればやはり同じことではないか。やはりその点は、構成分子の委員長はじめ委員の人格、見識というもののほうが、私は非常に強いのではないかというふうに思っておる次第でございます。したがいまして、やはりその点の人選等について十分配慮をすることが、一番のまず何よりの必要な大事であります。先ほども私、申しましたとおり、そういった点につきまして、事故調査委員会の本来の性格といたしまして、できるだけ早く真相を究明する、公正妥当にするということに中心を置きますると、やはりその人を選ぶとともに、機構といたしましては運輸省内にある——運輸大臣がやはり、いまの運輸行政、ことに航空行政につきましていろいろ御指摘を受ける点は、私は多々あると思う次第でございます。それを率直に喜んで受けるという体制が、何よりも国民の生命を守り交通の安全を守る一番の根本である。それを自分のところが痛いからといって忘れるようなことがあっては、私は運輸大臣としては不適格と思う次第でございまして、私は、その点はむしろ運輸大臣の人柄というようなものにあると思う次第でございます。この点は、もし総理府に置きましても、そこまでまいりましても、どうせ下の下部機関というものは運輸省から行った者が代替をいたすということになる次第でございますので、そういう点はやはり、運輸省とはしょっちゅう密接な連絡がある、また密接な連絡なくしては円満にその仕事が遂行できないということでございますから、これはやはり運輸大臣の人柄による、そういうような運輸大臣は不適格、私はそういうふうに思う次第でございます。
  212. 松本忠助

    松本(忠)委員 どうも平行線ですが、大臣いま言われましたけれども、要するに事故調査というものは、これは次の事故を起こさないために、未然に防止するために必要だということ、そのため・に迅速な調査をしなければならない、これは当然だと思うのです。しかし、現実に727のごときは、発生してから報告を出すのに四年半かかっておるわけです。これでは何の役にも立たない。そういう点から、確かに早くやることは必要ですが、また、早いゆえにそれに間違いがあってはならないわけです。どうしてもそれをやりますと、この調査委員会のいわゆる委員の任命というものはたいへんな問題であります。  そこで、例の雫石の問題にしても、函館の問題にしても、一体いつごろこの調査の結果が出るのか、この見通しを聞いておきたいと思います。
  213. 内村信行

    内村(信)政府委員 本件につきましては、大臣の御意向もあり、なるべく早く結論を出していただきたいというふうに委員会のほうにお願いしているわけでございますが、委員会としましても、一応、独立を保っておりますので、必ずしもこちらの注文どおりにはまいらないということでございます。  そこで、大体の見通しといたしましては、私どもといたしましては、六月中には何とか目鼻をつけてほしいというお話をしておりましたが、六月中にはいささか無理であろうかと存じます。七月に入りましてからは何とか結論を出していただきたい、こんなふうに考えております。
  214. 松本忠助

    松本(忠)委員 六月は無理だが七月だ、それは雫石も函館も両方の意味ですか。
  215. 内村信行

    内村(信)政府委員 さようでございます。
  216. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 実はこれは私が、ことに雫石の問題のときは、起こりました直後に、山県委員長に、ぜひ年内に結論を出してもらいたいというお願いを、はなはだ僣越ですが、いたしました。できるだけそうしよう、こういうことでございました。事あるごとにお願いをしている次第でございますが、おくれてまいっておる次第でございます。私は、あまりおくれてまいりますと、証拠その他の点につきましてやはり非常に信憑性をまた——これは技術のことだからよくわかりませんが、だいぶ薄れてくるおそれがあるのではないか、将来の問題といたしましても、いろいろぼやけてくる点もあるんじゃないかというようなことを心配しまして、こういったものは将来とも、これからの事故調査委員会事故探究の問題でございますが、できるだけ早いときに真相を追及するという態度で臨んでいただきたい。これはぜひともこれからもそうしてまいりたいと思っておる次第でございます。
  217. 松本忠助

    松本(忠)委員 なるべく早い時期に正確な事故報告書が出ることを期待してやみません。  そこで、第三条に入りますけれども、その三条で委員会の所掌事務がきめられているわけです。ここにありますように、航空事故、これは「航空法第七十六条一項各号掲げる事故」、こうなっていますが、この原因を究明するための調査を行なうということであります。その調査を行なうためのいわゆる事故調査委員会がここに置かれるわけですけれども、国家行政組織法によるところの行政機関、これをつくるわけですね。所掌事務の範囲と権限へ組織、こういったものを明確にしておく必要があると思います。その点で、また非常に不明確な点が多いのですけれども、これをまず第一番の問題として、三条のこの「原因を究明するための調査を行なう」とありますけれども、その航空事故調査をする相手の飛行機ですね。言うならば一体どういう飛行機なのか。これもいろいろあとからずっと出していけばだんだん出てくるわけですけれども、この航空事故の定義というもの、これが「第七十六条第一項各号に掲げる事故」、こうなっております。ここではおそらく、民間機の事故、あるいは民間機同士の事故、こういうふうに対象がなっている。もちろんそれは日本の空において、あるいは日本の地上においてというふうに場所が限定されるわけだと思うのですけれども、昨今問題になっておるところの航空事故すべてが含まれていないように思います。これは、この際質問を通じて明確にしておく必要があるんじゃないかと思うのです。  そこで、たとえば具体的にこれからいろいろと申し上げてみたいと思いますが、現在日本の置かれている立場からすると、日本の民間機は当然でありますけれども、そのほかに米軍機を中心とするところの国連軍機もあると思いますね。それから米軍のチャーターする民間機もある。それから自衛隊機。それから自衛隊が将来民間機をチャーターするということも考えられるのではなかろうかと思います。これはあるかないかわかりませんけれども、予測しておく必要があるんじゃなかろうか、こう思いますね。そうしたことを考えてみました場合に、ここに接触、衝突、こういうふうなことばが使われているんですけれども、この接触あるいは衝突、こういうものばかりでもないようにも思うのですね。いろいろな疑問点があるんですよ。そこでまず、私はここにひとつ局長に聞いてみたいと思いますから、お答えを願いたいと思うのです。  自衛隊機のみの事故については、これは適用除外だということは明瞭になっております。今度は、自衛隊が日本の民間航空の飛行機をチャーターして使用する場合、これが将来あるだろう、こう思われるわけですね。そうした場合に、自衛隊の使用する飛行機という解釈で、自衛隊機と同じようにみなすのか。その辺はどうですか、はっきりしてください。
  218. 内村信行

    内村(信)政府委員 これはまだ現実の問題になっておりませんが、私どもは、一応チャーターもいろいろ形があると思いますが、運航責任を民間が持っておる場合には、これはやはり本委員会の対象になるというふうに考えております。
  219. 松本忠助

    松本(忠)委員 いまの局長ことば、もう一度繰り返してください。
  220. 内村信行

    内村(信)政府委員 チャーターの形にもいろいろあるかと思いますが、その当該飛行機についての運航責任、これを民間側が持っておる場合、この場合には、この調査委員会調査の対象になるというふうに考えております。
  221. 松本忠助

    松本(忠)委員 民間がその飛行機を持ち、民間の人が操縦するわけですよ。そして自衛隊からチャーターを受けている。いいですか。自衛隊のチャーターによって、自衛隊が民間機を雇い入れているわけですよ。その雇い入れている民間機が事故した場合、これは対象になるわけですね。
  222. 内村信行

    内村(信)政府委員 そのように考えております。
  223. 松本忠助

    松本(忠)委員 そうすると、その自衛隊のチャーターした民間機と自衛隊機が接触した場合は。
  224. 内村信行

    内村(信)政府委員 その場合にも当然対象になると思います。
  225. 松本忠助

    松本(忠)委員 それでは、米軍の飛行機も飛んでいると思うのです、これと自衛隊機そのもので事故を起こした場合、どうなりますか。
  226. 内村信行

    内村(信)政府委員 この場合は、おそらく対象にならないと思います。
  227. 松本忠助

    松本(忠)委員 そうすると、自衛隊のチャーターした民間機と米軍機の場合はどうなりますか。
  228. 内村信行

    内村(信)政府委員 その場合は対象になると思います。なると思いますけれども、ちょっと御説明申し上げますと、米軍機、これはつまり、合同委員会の地位協定、ないしそれに基づく合意書によって禁止されておりますので、米軍機のみの事故の場合には対象になりません。それから米軍機とわが国の民間機、これがたとえば衝突するような事故の場合、これは双方で共同の事故調査団をつくりまして、そこで共同の事故調査をやるということになります。したがいまして、いま先生の御説明の場合には、自衛隊の運航権が民間にある場合には、自衛隊のチャーターでございますから、その場合には、日本の民間機と米軍機とが衝突したという場合と同じでございまして、米軍側と日本側と両方で共同で事故調査を行なうということになると思います。
  229. 松本忠助

    松本(忠)委員 その共同で事故調査をやる場合のやり方については、どこにどういうふうにして指定してありますか。
  230. 内村信行

    内村(信)政府委員 それは日米合同委員会の合意に基づくものでございますので、法律には規定しておりません。この場合の日本側の機関としてはこの事故調査委員会が当たるのが至当であろうというふうに考えます。
  231. 松本忠助

    松本(忠)委員 そうなった場合にこの事故調査委員会が当たることになるのだということであって、それは現在審議しているところの航空事故調査委員会設置法の中には書かれていないわけでしょう。あなたがそう言うだけの話じゃないんですか。書いておく必要はないでしょうか。
  232. 内村信行

    内村(信)政府委員 それは書かれておりません。
  233. 松本忠助

    松本(忠)委員 大臣、その問題ですがね。要するに航空事故調査委員会設置法の中に、この問題を明瞭に書いておく必要はありませんか。
  234. 内村信行

    内村(信)政府委員 いま、日米の合同でございますけれども、その内容をざっと申し上げますと、在日米軍、それから日本国政府両方が「航空機事故調査の責任を負う航空機を含む航空機事故に対しては航空機事故共同調査委員会がこれを調査する」とございまして、この共同調査委員会の内容については、この合意の中ではきめておりません。したがいまして、その共同調査委員会の日本側の代表としてどういう者を選ぶかというのはもっぱら政府にまかされておることでございますけれども、こういうふうな新しい事故調査委員会というものができました限りにおいては、この委員会にまかされるのが至当である、こういう意味で申し上げた次第でございます。
  235. 松本忠助

    松本(忠)委員 ですから、そういうことが起きることはあるだろうということですけれども、共同して事故調査に当たるということも指定されているけれども、その場合には、こういう航空事故調査委員会ができたんだから、この航空事故調査委員会がやるのがあたりまえなんだ、こういうふうなことでなくて、その問題もはっきりここへ書いておく必要がないのかということなんです、私の言うのは。
  236. 内村信行

    内村(信)政府委員 書いておけばベターかもしれませんが、書かなくても一応日本における事故調査の権限を持っている唯一の機関がこの委員会でございますから、この委員会にまかされるのではないかというふうに考えます。
  237. 松本忠助

    松本(忠)委員 唯一だからこれにまかせられるんだろうというのは、あくまであなたの推測ですよ。そうでしょう。これがたった一つしかないんだから、これにまかせるのはあたりまえなんだというような考え方でなくて、そういう事故が起こることが当然予想されるのならば本法にも書いておくべきだ、私はこう思うのですよ。その点どうでしょうか。
  238. 内村信行

    内村(信)政府委員 そのほうがベターであるかもしれません。
  239. 松本忠助

    松本(忠)委員 大臣、ベターなことがあったら、なぜそれをここに書かないのですか。大臣どうでしょう。
  240. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 ちょっと先に……。
  241. 内村信行

    内村(信)政府委員 そういうふうな見方もあるわけでございますが、一応、法律解釈としては、私の初め申し上げたことでもいいのではないかというふうな解釈でこういたしたわけでございます。
  242. 松本忠助

    松本(忠)委員 あなたとやっていても、これはだめだ。ベターなものがあるならば、そういうことが予測されるのなら、そのことは書いておくのが当然じゃないかと私は思うのですよ。これは質問を保留しておきます。こういうはっきりしない点があとで問題になるのです。それが明文化されてないところが問題になるのです。  それから、いろいろのケースを伺いましたけれども、米軍がチャーターする民間機ですね。これは必ずしも米国の飛行機とは限らないだろうと思うのです。おそらく常識的にいえば、それは米軍がチャーターするのだから米国の飛行機ということは言えるでしょう。しかし、あるいは日本の民間機をチャーターする場合もおそらくあるんではなかろうか。ないとは言えない、予想もされるということを考えましたときに、このチャーターされた民間機と米軍の飛行機、これが衝突あるいは接触という事故が起きたときには、日本の飛行機であろうとも、米軍の飛行機であろうとも、これは同じ解釈ですか。
  243. 内村信行

    内村(信)政府委員 米軍機と米軍にチャーターされた日本の航空機が衝突した場合は、ただいまと同じように、日米の共同の調査が行なわれるというふうになっております。
  244. 松本忠助

    松本(忠)委員 それではもう一つ聞いておきたいことは、ことしの三月六日に事故がございました。事故じゃないのですけれども、新聞によりますと「ヒヤリ百八十五人乗り全日空機」ということで、横田エリアの管制ミスがあったために、事故には至らなかったけれども事故の一歩手前というような状態のことがあったことが新聞に報道されています。これは三月六日の午前十一時ごろ、神奈川県の相模湾上空で、全日空機の前方をパンアメリカン航空機が横切った。これは事故にはならなかったわけでありますけれども局長も御承知のように、この事故については、新聞の報道によりますと「全日空機に横ゆれを起こさせたのは、亜音速で飛行する大型ジェット機特有の“航跡乱流”。航跡に沿って両翼端から後方に激しい渦巻き状の気流の乱れが発生する現象で、通過後約五分間は影響が残るといわれている」。これは明らかに管制ミスだったと思うのですけれども、こういうものによって事故が起きないとはいえないと思うのですよ。そうしますと、この中に規定されているのは接触、衝突ということだけなんですね。接触、衝突以外でこういう事故が起きた場合には一体どういうことになるのですか。これは幸いにして起きなかったからいいけれども
  245. 内村信行

    内村(信)政府委員 先生の御質問は、米軍の飛行機と日本との場合でよろしゅうございますか。
  246. 松本忠助

    松本(忠)委員 いや、そうでなくてよろしい。この三月六日に起きた事故というのはお互いに民間機同士ですよ。民間機であるけれども、パンアメリカン航空機というのは横田から出ているのですから、おそらくチャーター機であると思いますよ。それで接触はしなかった。衝突はしなかったから事故にはならなかったわけですけれども事故の可能性が非常に多いと思うのですよ、こういうことは。ですから、ここで規定されているのは、事故というものについては、接触とか、あるいはまた衝突とかいうことのみに限定されていると思うのですよ。どうでしょうか。要するに今度は事故じゃないわけでしょう。接触しなかったのだから事故にはならない。だけれども、ニアミスは非常に危険なことだと思うのですよ。気流も非常に危険だと思うのですよ。「通過後約五分間は」と新聞には書いてありますけれども、その気流の渦に巻き込まれた飛行機が落っこちた、これは接触でもなければ衝突でもないわけですよ。しかし事故になって落っこちるということが予想されると思うのです。こういうものは事故として認めるのかどうなのかということです。
  247. 内村信行

    内村(信)政府委員 その場合に、その影響によって落っこちたとすれば事故でございます。しかし、先般の問題のように、そういうふうな影響があったけれども落っこちなかったという場合は事故になりません。
  248. 松本忠助

    松本(忠)委員 要するにこの三月六日の場合は事故じゃなかったというわけですね。これは理解できます。落っこちれば完全に事故ですな。その原因がたとえば接触とか衝突とかいう事態でなくても、それが原因で落っこちたということになれば。それはこの法文のどこに書いてありますか。規定しているのは、接触と衝突、そういうふうにしか私どもは理解できていないのですけれども、その点はどうなんでしょうかね。
  249. 内村信行

    内村(信)政府委員 この航空事故の定義でございますけれども航空法七十六条に書いておるとおりでございます。それが第三条の一号に書いてございます。そこで航空事故とは何かと申しますと、「航空機の墜落、衝突又は火災」「航空機による人の死傷又は物件の損壊」「航空機内にある者の死亡又は行方不明」「その他運輸省令で定める航空機に関する事故」でございます。その運輸省令と申しますのは、「転覆、倒立、翼端接地及び胴体着陸」「爆発及び航行中における発動機又はプロペラの脱落」「発動機の故障、燃料の欠乏、凍結、気流の擾乱その他の理由により航空機が緊急事態にあること」「前各号に掲げる事故に準ずる航空機に関する事故」でございますから、原因は何にせよ、墜落した場合には事故になります。
  250. 松本忠助

    松本(忠)委員 要するに、その点が明確になっていれば私はいいと思うのです。  それでは次に移りますけれども、この三条一号の「事故原因を究明するための調査を行なうこと」、この行ない方、これは航空法第一条に規定されていると思います。この航空法自体が「国際民間航空条約の規定並びに同条約の附属書として採択された標準、方式及び手続に準拠して」云々とあります。この第一条がこの航空事故調査委員会設置法の中には生かされていないと私は思いますが、その点はどうなんでしょうか。すなわち、この法律案には国際民間航空条約との関連性がどこにも書かれていない。一体どのようなやり方で事故調査をするかということを明確にしておく必要があるのじゃなかろうか、こう思うのですね。
  251. 内村信行

    内村(信)政府委員 確かに先生指摘のとおり、前の事故調査の場合、これは航空法第一条に「国際民間航空条約」云々と書いてございますので、そのつながりがはっきりする。しかし今度の場合にはそれが書いてないからつながりがはっきりしない、こういう御趣旨だろうと思います。確かにおっしゃるとおりでございます。書いてはございませんが、実際は当然国際民間航空条約の基準によりまして、各部会を設け、また事故調査のやり方、あるいは報告等についてもその基準によって行なうことになっております。その点につきましては、委員会規則なり何なりで規定いたしたい、こう考えております。
  252. 松本忠助

    松本(忠)委員 大事なことですから、この調査委員会設置法の中でそのことは当然きめておくべきじゃないかと思うのです。あたりまえの話なんですからね。それを、委員会ができて、委員会の中でやるのだからそれでいいんだという言い方でなくて、これは、たとえて言うならば、国際民間航空条約で定めた基準にのっとってということばがそこに入れば、それでいいと思うのですよ。おそらくいまからこの設置法を直すなんてことはせぬだろうと思いますけれども、私はこれは絶対直してもらいたいと思う。あたりまえの話なんですから。そのあたりまえのことがこの事故調査委員会設置法の中には載っかっていないところが問題だと思うのです。それは航空法には載っかっておるのですから。なぜそれを載っけなかったか。非常にその点について私はお粗末過ぎると思うのです。これは当然載っけるべきじゃないですか。これを引っ込めてちゃんと載っけて出し直すということをしなかったら、後日に禍根を残すと思うのですよ。その点どうでしょう。
  253. 内村信行

    内村(信)政府委員 確かに航空法の場合には目的自体にそういうものがございまして、これは全般にかぶっておりますから、国際民間航空機関との関係がはっきりするわけでございますが、いろいろ個別的な法律になりますと、必ずしも外国の国際条約に沿って云々ということは書かれていないのが通例でございますので、自然そういうことに従って書いたわけでございますが、精神は先生のおっしゃるとおりでございまして、実際のところはそういうふうにやるということを考えております。
  254. 松本忠助

    松本(忠)委員 さっきいろいろな例で、要するに米軍機あるいは米軍のチャーターした飛行機、こういったものが、日本の上空において、あるいは日本の空港において事故を起こしたという場合も予想されるわけですから、国際民間航空条約というもので定められた基準というもの、そういうものが当然適用されることはあたりまえなんだ。ですからこれは、航空法そのものにもうりっぱに第一条の中に載っかっている。しかしこっちはその必要はないのだ。だが国内法だけではないのですから、やはり外国の飛行機も入ってくる。外国の飛行機だって日本の国内で事故になれば当然事故調査委員会なんかが発動すると思うのですよ。そういう点を考えれば、やはり国際民間航空条約で定める基準にのっとりということを一つ大ワクを定めておくことが、私は絶対必要だと思うのです。この点も了解できません。これはやはり直すべきじゃないかと私思います。  それから日本の民間機または民間機同士の事故の場合でも、727の羽田沖の事故、この場合にはボーイングの本社へ事故調査結果を送ったと思うのです。そしてその了承を得たといいますか、それが日本に戻ってきてから初めて発表したというような、まことに日本の国威を失墜するようなことがあったわけですね。こういうことになるということは、今後はわれわれはやめたいわけでありますけれども、727の羽田事故においては現実にそれがあったわけです。しかもあの事故が起きたときもボーイング社から三名の技術者が来てある程度のブレーキをかけたであろうということもわれわれは指摘をしているわけですから、そういうことを考えれば、やはり報告書の内容というものも国際的にとこへ出しても恥ずかしくないもの——これはもちろんあとのほうに「報告書」というところで詳しく述べてあります。十九条ですか、そこについてまた私もあとで言いたいと思いますけれども、やはりこの国際民間航空条約に定めたとおりに書くということを前提としているのですから、当然のこと、繰り返すようですけれども、これは載っけるべきじゃないか、こういうふうに思うわけです。これを明確にしておく必要は絶対あるのだということを申し上げておきます。  それでは次の三条の二号、「勧告」ということがありますけれども、この「勧告」というのは、一体、運輸大臣事故当事者か、どっちに調査委員会は勧告するのか。それからどんな方法で勧告するのか。またいつやるのか。そういったことについて、この中には「勧告すること」ということだけであって、その時期であるとか、だれにであるとかいうようなことがあまり明確でないように思いますけれども、この点はどうでしょうか。
  255. 内村信行

    内村(信)政府委員 この勧告は「事故調査の結果に基づき」でございますから、事故調査が終了してから運輸大臣に勧告をする、こういう意味でございます。
  256. 松本忠助

    松本(忠)委員 そうしますと、事故調査が終わらなければ勧告はやらないということですね。勧告の時期というものは事故調査が終わったときだ、こういうわけですね。そうなりますと、そのことは二十条にも明確に書いてありますよ。「委員会は、航空事故調査を終えた場合において、必要があると認めるときは、その結果に基づき、航空事故の防止のため講ずべき施策について運輸大臣に勧告することができる」と二十条に書いてありますね。これはいま局長の言うのは終えた場合ですよね。終えないけれども調査の過程において、途中において、これはどうしても早く勧告しなければいけないということが起きた場合には、その勧告はやらないのですか。
  257. 内村信行

    内村(信)政府委員 これは二十一条で「建議」ということが書いてございますが、これは、調査が終了するまでもなく、調査の途中で随時必要な事項については建議をするということがきめられております。
  258. 松本忠助

    松本(忠)委員 その随時というのはどこに書いてあるのですか。
  259. 内村信行

    内村(信)政府委員 「委員会は、必要があると認めるときは、航空事故の防止のため講ずべき施策について運輸大臣又は関係行政機関の長に建議することができる」。この「必要であると認めるときは」ということで、必ずしも終わった段階でなくともよろしい、途中でもよろしい、こういうふうに考えております。
  260. 松本忠助

    松本(忠)委員 でも、その上に「航空事故調査を終えた場合において、必要があると認めるときは」ですよ。だから終えないときですよ。終えた場合において、必要がなければ勧告しなくたっていいんですよ。そういう意味ですよ。
  261. 内村信行

    内村(信)政府委員 ただいまの私が申し上げたのは二十一条のことでございます。説明不足でございましたが、二十一条の「建議」という項目がございます。ここでは「委員会は、必要があると認めるときは」と書いてございまして、これは調査中でも必要があれば随時建議するというふうに解釈しておるわけでございます。
  262. 松本忠助

    松本(忠)委員 そうすると、二十一条の「建議」ということですね。勧告じゃないんですね。あなた、勧告だと言ったじゃないですか。
  263. 内村信行

    内村(信)政府委員 私の御説明がまずくて申しわけございませんでしたが、「建議」のほうでございます。
  264. 松本忠助

    松本(忠)委員 それじゃ理解します。確かに「勧告」と「建議」ということがあると思います。ですから建議は当然中間においてもなされなければならぬと思うのですよ。ですけれども「勧告」は、こういうふうに書いたように、事故調査を終えた場合において勧告するのだ、中間においては建議するのだ、こういうことですね。  じゃもう一点、ついでに聞きますけれども、その勧告なり建議をしますね。それを大臣が航空関係の会社に一応通知する。それを守れば事故がなかったのに守らなかったために事故になったとしたら、これはどういうことになりますか。どこに責任があるのですか。
  265. 内村信行

    内村(信)政府委員 これはまたその際の事故調査の問題になるかと思いますけれども、それを守らなかったことがその次に起こした事故とどういうふうに相当因果関係にあるかどうかというふうな関係によってきまってくる事柄ではないかと思います。
  266. 松本忠助

    松本(忠)委員 これは非常に微妙な問題ですね。この辺のところ、私も非常に考えさせられる問題が多々あると思うのですよ。いずれにしましても、事故を未然に防止するということが最大限に必要な問題であり、そのためにこの調査委員会を置くのですから、こういう事故が起きた場合それを一刻も早く調査するんだ、完了するんだということは、大臣がしばしば言われたとおりでありますから、当然のことでありますけれども、その結果についても、また途中においても、そういうことがわかればすぐそれを実施に移していく、そういう配慮は当然のことだと思いますね。  そこでこの三条の四号に戻りますが、「前三号に掲げる事務を行なうため必要な調査及び研究を行なうこと」、こういうふうにあります。これは確かにいま大臣が言われるように、急速に展開する航空技術に対しては、それにマッチした調査、研究、これが必要なことと思います。それから事故統計、あるいは日本の国以外で発生した事故、そういった調査、それからその原因等の資料、記録、こういったものすべてが含まれると私は思うんですね。これをやはりふだんからやっておかなければ、事故が起きた場合に比較するものがないわけですから、ふだんから継続的にずっとやっていかなければならないと思うのですが、こういうものに対する予算措置、これは具体的に言ったらどういうふうに持っていくのか。この内容についてひとつ聞かせてもらいたいと思います。
  267. 内村信行

    内村(信)政府委員 その事故調査費具体的な事故調査じゃなくて、事故調査をするための調査経費でございますが、これにつきましては、一般の庁費、そのほかにいわゆる研修等を考えております。国内の研修あるいは国外での研修ということによってそういう措置をしてまいりたいというふうに考えております。
  268. 松本忠助

    松本(忠)委員 これはぜひ、やはり相当のスタッフも要るし、また予算措置も必要だと思います。そういうものに対して完全にこれが実施され施行されていくような組織がやはりつくられなければいかぬと思います。そういった組織についてもまたこの次に質問いたしたいわけでありますけれども、要するに組織というものは、それの中心であるところの人間の選定が、さっきからも再々申し上げてるように、大事なことだと思うのですね。そして四条から十三条にかけては組織のことがずっと書いてあるわけですね。その中で、私が思いますのに、組織とその運営のしかた、事務局の問題それから財政的な裏づけ、こういった四つの問題点があると思うのですね。  まず、順序が逆になりますけれども一番の問題点はやはり財政ではないか。財政に対しては一体どういうふうになるのかということなんですね。この調査委員会の公正を保つために、形として一応運輸省につくけれども調査のことについては独自の力を持って独自の組織でやるんだ、こういうことになっていますが、財政的な独立、これは当然予算支出が必要ですね。それからまた、どれくらい、どんな事故が起きるかということはわかと思うのです。
  269. 内村信行

    内村(信)政府委員 財政的には、結局予算ということになりますけれども、予算要求は、本委員会において、大臣を通じて直接大蔵省に要求するということに相なります。
  270. 松本忠助

    松本(忠)委員 そうしますと、独立の予算を組んで、形としては、運輸大臣を経由し、運輸大臣が大蔵大臣に折衝してもらうんだということですね。そうすると、それに対して出てきたものは何でもうのみするのですか。それとも大臣がチェックするのですか。
  271. 内村信行

    内村(信)政府委員 つまり予算要求の際の大蔵省の査定に対してどうするかということでございますか。
  272. 松本忠助

    松本(忠)委員 要するに、調査委員会としては、スタッフがこうこういうことを継続してずっとふだんやっていきたいんだという場合に、そこには当然予算支出が必要ですね。それからまた、どれくらい、どんな事故が起きるかということはわからぬわけですよ。だから相当の予備費といいますか、そういったものも必要になるだろうと思うのです。そういう大ワクをきめまして、それを調査委員会としては、四十八年度にはこれだけは必要なんだ、こうきめますな。きめたものは運輸大臣を通じて大蔵大臣のほうへ折衝してもらう、こうなるわけでしょう。そのときに、運輸大臣がまず大蔵大臣に折衝する前に、委員会から出てきたものは運輸大臣はうのみなのか。それとも、この点は多過ぎるから減らせとか、これは少な過ぎるからふやせということを運輸大臣がやるのですか、やらないのですか。
  273. 内村信行

    内村(信)政府委員 運輸大臣はできるだけ自主性を尊重してやるということでございます。
  274. 松本忠助

    松本(忠)委員 自主性を尊重してその調査委員会の要求どおりやる、それは大蔵省で削られればやむを得ないんだ、こういうわけですな。とにかく自主性を発揮してもらうように大いにつとめなければいかぬと思いますけれども。  そこで、予備費といいますか、これは全くわからないと思うのですよ。予備費という項目で起こすのかどうかわかりませんけれども、とにかく、事故が実際幾つ起きるのか、全然起きないのか、四十一年のように連続して起きるのか、これは全く予測できないと思うのです。そういったものに対して、どういうところからそれを算定するか。これは基礎、基準が全くないと思うのですね。この調査委員会だってこれからできるわけですよ。どういう人が任命されるかわからないけれども、五人任命される、この法律が通れば。通ればの話ですよ。そういうことになっている。ですから、それがどれくらいの予備費があったらいいかというようなことも、かいもくわからぬと思うんです。世界の例で、たとえばアメリカあたりはすでにこの委員会が発足しているわけですが、こういうものに対して、どのくらい予備費といいますか、調査のための費用を別個に持っているか。継続して調査していくという費用でなくて。それからまた、経常費、たとえば人件費とかそういったきまりきったものでなくて、突発的に起きるところの事故に対してはどのくらいのものを予算化して持っているものか、参考のために伺っておきたい。
  275. 内村信行

    内村(信)政府委員 アメリカでどのくらいの予備費か存じませんけれども、わが国の場合におきましては、大蔵省で一般的には予備費を持っております。大きな事故が起こるつど、大蔵省に対して要るだけの額を請求いたしまして、大蔵省でもって予備費等の中から出してもらうということをやっております。そういった意味の予備費でございます。
  276. 松本忠助

    松本(忠)委員 それでは、ちょっと先に飛びますけれども、十三条の事務局のことです。「事務局に、事務局長その他の職員を置く」と二項にございますが、この事務局長は、この委員会の性質からいって、私は技術関係の者を充てるべきだと思いますが、これに対してどのようにお考えですか。
  277. 内村信行

    内村(信)政府委員 確かに航空事故調査でございますから、やはり航空の各方面について相当造詣のある者が必要であると思います。ただこの場合に、必ずしも技術者ということには限定しない、少なくとも航空に関してのいろいろな知識のある人というふうに考えたいと思っております。
  278. 松本忠助

    松本(忠)委員 それでは「その他の職員」というのは一体どういうものをさすわけですか。大綱がわかっていたらお知らせいただきたい。
  279. 内村信行

    内村(信)政府委員 大体の事務局機構の案を申し上げます。  事務局には事務局長一名を置く、その下に総務課という課を一つ置きます。総務課長一人、補佐官一人、一般五人、計七人がこの総務課の中に入ります。それからそのほかに首席事故調査官というのが一名置かれます。その下に事故調査官が八名、したがいまして事故調査官が九名でございます。以上合計いたしまして十七名が事務局の構成ということになると思います。
  280. 松本忠助

    松本(忠)委員 そこで、確かにいまおっしゃるような総務課が七人、事故調査関係の者が九人それから事務局長、こういうことですね。しかし、この事故調査を行なう人、実際上、この委員の下になって下働きをする事故調査官、あるいはそのキャップであるところの首席事故調査官、こういうものが九人で間に合うという根拠は何ですか。
  281. 内村信行

    内村(信)政府委員 これは事故の数等にもよるわけでございますけれども、一応いままでの経験から考えまして、従来は事故調査課の全員が八人でございますが、いろいろな事故の場合に、もちろん民間の委員の方々は委嘱いたしましたけれども、その手足となって働くのは八名あっただけでございます。したがいまして、今度十七名になりましても、必ずしもこれで十分とは申せませんが、従来の経験から申しますと、まあ一応これで従来よりは相当いけるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  282. 松本忠助

    松本(忠)委員 これはアメリカの例を持ち出すまでもありませんけれども、非常にむずかしい問題だと思います。私もそれはわかります。はたしてこれのメンバーだけで間に合うかどうか、これは全くむずかしい問題だと思いますけれども、アメリカの例を一つとってみれば、それは角度の大きさからいっても大きく違うわけですから当然のことだと思いますけれども、この調査官の中には、やはりいろいろなシステムを専門的にやる者が当然できてこなければならないと思うのです。たとえてみれば、運航担当の者であるとか管制担当者の者、気象担当の者、エンジン担当あるいはフライトレコーダー担当とかいうふうないろいろなものができてくると思うのです。またつくらなければいけないと思うのです。そういうチームをつくる。アメリカの例では、十人くらいで一つの単位にしてそういうものを常置して、何チームかつくっているわけです。日本においても、四十一年のようなああいう事故が頻発するということはまずそう考えられないのですけれども連続して起こった場合にはどうにもならないと思う。そこでその調査官というものに対しても、いわゆる調査官の卵といいますか、これをつくって養成しておく必要があるんじゃないかと私は思うのです。そういったことに対する配慮がないと、とにかくこれから航空機の発達につれてやはり事故もあるだろうと思うのです。無事故ということは考えられないと思う。であるならば、やはりその調査官の養成、要するに調査官をつくるための研修所というか、あるいはまた、その研修所については当然建物も要るだろうし、教官も要るだろうし、いろいろよけいな費用もかかることになるだろうと思うのですけれども、これらの点を考えてみますと、やはり全然対策を立てずにおくというのは少し冒険過ぎるんじゃないか、こう思いますが、この点どうでしょう。
  283. 内村信行

    内村(信)政府委員 確かに先生の御指摘のように、事故調査官というのは非常に専門的な職種でございまして、事故調査に対する経験、知識というものがいろいろないと、事故調査の能率というものはあがってまいりません。そこで私どもといたしましても、この研修ということが非常に必要ではないかと思っておるわけでございます。現在の事故調査課におきましても、若干名ずつ外国の研修等に出しておりましたけれども、この新しい組織ができましても、研修制度というものを十分に活用していかなければならぬというふうに考えておりまして、さしあたり、十分とは申せませんが、一応の予算といたしましては、二名を四週間ぐらい米国のNTSBへ派遣して研修するというふうなことは考えておりますし、また国内における研修というふうなことにつきましてもある程度考えておるわけでございます。
  284. 松本忠助

    松本(忠)委員 要するにその卵を養成する、それがさしあたって二名、そういうことですね。しかしこれは大臣、やはり考えておいたほうがいいと思います。こうした事故が頻発することを歓迎するわけじゃありませんけれども、それに対する対策が十分できていなければ、事故が起きても、それを解決するというか、原因を究明するということが何もできないと思うのです。一つのチームがやっている。四十一年の事故のようにまた落っこちた。この間も現に「ばんだい号」があり、しかも雫石の問題もあるというふうに、大臣就任以来まことに事故続きで、お気の毒なほど事故が起きているわけです。こういう点を考えますと、やはり事故調査官というもの、あるいは事故調査官の卵といいますか、こういうものの研修のために、これはやはり実地にそれを習うということが必要だと思います。そういう点で二名では少しお粗末過ぎるように思いますけれども、全然考えていないわけじゃないですから、これはけっこうだと思いますけれども、この点についても十分の対策を練っておく必要があるんじゃなかろうか、こう思うのです。  それで、いろいろと事務局の内部組織についても運輸省令で定めるということになっていますから、定めるのはけっこうですけれども、そのときに調査委員会ができてから当然定めることになると思うのですよ。そのときに、調査委員の五人のメンバーの意見によって定めるのか、あるいはまた運輸省で独自につくってしまって、それを押っつけるのか、この辺は……。
  285. 内村信行

    内村(信)政府委員 これは委員会ができた暁に、委員の方々の御意見によってつくるべきであろうというふうに考えます。
  286. 松本忠助

    松本(忠)委員 当然そうでなければならぬと思います。そうして、第一回に任命になる委員がどんなメンバーかわかりませんけれども、とにかくこの任命については十分慎重にやることと思いますから、その委員意見というものを十分尊重してやってもらいたい、こう思います。  そこで、もとに戻りますが、四条に「委員会は、委員長及び委員四人をもって組織する」、こうなっています。アメリカが五人だからやはり日本も五人にしたわけじゃないと思うのですけれども、偶然でしょう、五人になっているわけなんですけれども、この五人だけではたして間に合うのかどうなのか。この辺はどうですか。しかも委員のうち三人は非常勤だ。常勤は二人ですよ。委員長ともう一人の委員、この二人しか常勤はいないわけですね。それではたしてできるのかどうか。
  287. 内村信行

    内村(信)政府委員 これも理想的に申しますと、委員がもっと数多くおられたほうがいいのかと思いますが、現実の問題といたしましては、委員五名、そのほかに専門委員を七名考えております。したがいまして、委員の方五名と専門委員の方七名、それに先ほど申し上げました事故調査官、こういう方々が一つのチームを組みまして、事故調査をやっていくということになろうかと思います。  そこで、この五人のうち三人は非常勤ではないかという御指摘、まことにそのとおりの問題がございます。ただ、これは現実の問題にひるがえって考えてみますと、実は事故調査委員会委員の方、この人選は非常にむずかしいのではないかと思うわけであります。と申しますのは、公正かつ科学的な判断ができる方、それもなおかつ航空機のほうに相当造詣の深い方々というふうなことを考えてまいりますと、なかなか常勤でもってしょっちゅう来ていただける方は少ないのではないかという意味から申しますと、かえって非常勤で来ていただくというふうなことが、現実的にはいい方に来ていただけるのではないかというふうなこともございまして、三名は非常勤ということになっておるわけでございます。
  288. 松本忠助

    松本(忠)委員 常勤が二人だが、専門委員が七名いるから間に合うのだと言ったけれども、十一条によれば専門委員は非常勤ですよ。委員のほうも三人は非常勤。そして専門委員の七名も非常勤でしょう。そうすると、ほんとうにやるのは委員長委員、二人じゃないですか。これでいいんですか。いま局長の言うのは、専門委員が七人いるからだいじょうぶだというふうな話ですけれども、非常勤の専門委員で役に立つのかどうか。これはどうでしょう。
  289. 内村信行

    内村(信)政府委員 まず、事故調査委員が中心になり、事故調査官、これがその手足になって事故調査が進められるというふうに考えられますけれども、大きな事故の場合、そういった場合には必ずしも十分に各分野がカバーしきれないであろうというふうなことから、そういった場合に備えて、特定の事故の場合に、必要があれば専門委員の方をお願いしていろいろな分野についての調査を専門的な見地からお願いしたいということでございます。平常のいわゆる小さな事故につきましては事故調査官が主体になってやる。そして大きな事故の場合には、いま申し上げたような委員の方、それから専門委員の方及び事故調査官、これがセットになると思いますが、チームを組んでやるというふうに考えたわけでございます。
  290. 松本忠助

    松本(忠)委員 要するに常勤でない非常勤の委員ですね。これは当然ほかの職業についていると思うのですね。おそらく大学の先生、そういう人が予定されているのじゃないかと思いますが、そうしたもので十分対応できるだろうという見込みですね。そこで、常勤の委員長ともう一名の委員、これだけが担当部門というのをきめておくのですか。それともきめておかないのですか。そしてさらに、その三人の非常勤、これも担当部門というものはきめておくのですか。きめておかないのですか。この辺のところはどうですか。
  291. 内村信行

    内村(信)政府委員 実はこれは委員にどういう方がおなりになるかによっても変わってまいりますので、具体的な委員の人選を行なう際に、その委員がきまりました段階におきまして、ある程度の担当分野というものをきめたらいかがであろうか。その辺は、委員会ができましてから、委員の方々皆さまであるいは御相談しておきめになることかもしれないと思います。
  292. 松本忠助

    松本(忠)委員 確かに、いま初めてつくる機構ですから、それまで聞いても無理かもしれません。しかしやはり、こういう担当部門はどうしても、機体の面はこうで、気象面はこうなんだというような、あるいはパイロットの操縦技術という面、運航ですね。一番大事なものは、やはりそういうものを予定して委員お願いしなければならぬと思うのですね。確かに、この委員になるといってもかなりむずかしい問題があろうと思いますし、この人選は非常に問題点が多かろうと思います。ですけれども、やはりこの委員という方の手腕、力量のいかんによって、事故が起きて迅速な処置ができて、その原因の究明ができて、そして次の事故を起こさないようにしていくという目的からすれば、やはり部門というものはあらかじめきめておいて、それに適応した人を選ぶのだという方向でないと、委員を受諾してくれた人が集まってきてからみんなで担当をきめようじゃないかと言っても、残念なことに気象関係だけ一人抜けちゃったというのでは役に立たないと思うのです。ある程度目標をきめて、それに当たってみる必要があると思うのですけれども、その辺のことは考えていますか。
  293. 内村信行

    内村(信)政府委員 おっしゃるとおりでございます。そこで、大体大まかに申し上げますと、航空に関する諸般の知識についての造詣が深いというようなことで表現できますが、さらにそれを砕いて申し上げますと、先生が御指摘のように、航空機の構造でございますとか、運航あるいは動力装置、そういった各種のシステム、あるいは管制、そういったようなそれぞれ専門の方をお願いしたらいかがであろうか。もちろん、この点は委員の方、あるいは専門委員の方、いろいろな組み合わせがございますけれども、そういったような航空関係の事柄につき造詣の深い方々というふうに考えておるわけでございます。
  294. 松本忠助

    松本(忠)委員 それから非常勤の委員に対する給与の問題ですけれども、「委員長及び委員の給与は、別に法律で定める」、この委員というのは非常勤の委員も含んでいるわけですね。そうなると、非常勤の委員にも給与を与える、この十条は、こう解釈していいわけですね。
  295. 内村信行

    内村(信)政府委員 これはそのとおりでございますけれども、その給与という意味が違いまして、常勤の方については、いわゆる月給というふうな意味の給与でございます。非常勤の方々は、委員会の手当といった意味の給与でございます。したがいまして、出席されるたびに支給される手当、そういうものでございます。
  296. 松本忠助

    松本(忠)委員 それはこういう書き方をするのだと言えばそれまでの話ですけれども、やはりこれだけ見ますと、委員には二通りあるのだ。「委員の給与は、別に法律で定める」となっているけれども、従来からいえば、片方の常勤のほうは給与だ、非常勤のほうは出てきた場合だけ手当だ、こういうことですね。どうもその辺のことは、ここだけ見たのでははっきりしませんね。
  297. 内村信行

    内村(信)政府委員 たいへん表現がわかりにくいかと存じますけれども、給与の中には、いわゆる俸給と委員手当、二つに分かれるわけでございます。そこで、この委員の場合には、委員長も、常勤の方も、あるいは非常勤の方も特別職の委員でございます。したがいまして、同じ委員手当につきましても、特別職の方につきましては一般の委員よりは高い額、具体的に申し上げますと、一日七千五百円ということになっておりますけれども、そういった意味で、委員長及び委員の給与というものは別に法律で定める。その定める内容と申しますのは、常勤の方については俸給を定め、非常勤の方については委員手当を定める、こういう趣旨でございます。
  298. 松本忠助

    松本(忠)委員 事のついでに聞いておきますけれども委員長並びに常勤の委員一名については、給与はどれくらい当て込んでいるものですか。
  299. 内村信行

    内村(信)政府委員 たしか四十万と三十六万ぐらいではなかったかと思います。
  300. 松本忠助

    松本(忠)委員 四十万が委員長、それから三十六万が常勤委員、こうですね。しかし、やはりこれだけの方をお願いして、事故防止のために他のものをなげうって専心やらなければならないわけでしょう。ここに書いてありますけれども、「委員長及び常勤の委員は、在任中、運輸大臣の許可のある場合を除くほか、報酬を得て他の職務に従事し、又は営利事業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行なってはならない」ということですから、四十万、三十六万で、はたして引き受け手があるかですよ。引き受け手がなかったらどうするのです。せっかくできたけれども、受ける人がなかったら一体どうするか。四十万や三十六万でいまどき生活できますか。
  301. 内村信行

    内村(信)政府委員 御指摘の点は確かにありますけれども、現在の給与制度におきましては、特別職にしてやっとここまでになるわけでございまして、その意味もございまして、特に国会の御承認を得まして特別職にするということでございます。いまの制度の中では一番高いクラスでございます。
  302. 松本忠助

    松本(忠)委員 人格高潔なお方に就任していただく以外にないと思います。そのために肝心の委員会が動かなかったということでは何もならぬと思う。いわゆる仏つくって魂入れずのたとえになってしまいますから、この辺のところは私は考えるべきじゃなかろうかと思います。調査委員会ができたけれども委員長になってくれる人がない。極端に言えば、みんな非常勤になってしまったのじゃどうにもならぬわけでありますから、やはり常勤の委員あるいは委員長、こういうものについての十分のお手当というものは必要であると思います。  それから、ちょっと戻りますけれども、五条の趣旨は「委員長及び委員は、委員会の所掌事務の遂行につき科学的かつ公正な判断を行なうことができると認められる者のうちから、両議院の同意を得て、運輸大臣が任命する」、その「科学的かつ公正な」という問題につきまして、最初もやりましたけれども、「科学的かつ公正な」という中身、かりに科学的かつ公正な人間を持ってくることができたとしても、その事故調査の結果が、科学的かつ公正な事故調査結果になるとは言いがたいと私は思うのです。現実社会にありましてはなかなかむずかしい点があると思います。えらい人がやったのだからその結果は絶対なんだ、誤りがないのだ、これは言いがたいと思うのです。そこで、調査結果を絶対にのまなければならないということば、捨てるべきじゃないかと思うのです。調査結果が出るでしょう。科学的かつ公正な判断を行なう人がかりに任命になった。その人が一生懸命やってくれたとして、調査結果が出た。しかし、その調査結果というものは絶対なものだとも言いがたいと思うのです。これは第一条のところでも述べたとおりでありますけれども、正確に言えば、要するに目的を満たすための期待する組織なんですから、そのことを考えてみたときに、委員というものはなかなかむずかしい人選を要するだろう、こう思います。そういう点から考えまして、いま局長が考えている委員長または委員、こういうものに対する腹案、どういう方を持ってきたらば科学的かつ公正な判断ができるか、局長の腹案があったらひとつ示してみてください。
  303. 内村信行

    内村(信)政府委員 これはなかなかむずかしい御質問でございまして、抽象的に申し上げますと、科学的というのは必ずしも科学者でなくてもよろしい、人文科学でもけっこうでございます。しかし、いわゆる科学的なものの考え方ができる方、そして公正な判断ができる方というふうなことを考えておるわけでございますが、具体的にたとえばだれかとおっしゃいますと、これという方がいるというふうな腹案も、現実にはまだ持っていないような段階でございます。
  304. 松本忠助

    松本(忠)委員 それはむしろ答えろというほうが無理かもしれません。しかし、私どもはこれを決して通そうとは思っとおりません。こんなものはもう一度出し直してもらいたいと思います。これがことしはたして通るかどうか。自民党の議員さんが多数で通してしまえば別ですけれども、われわれは絶対反対です。そのことを考えてみて、いずれは何年か後に通るかもしれない。そのときのことも考えてやはり腹案は持っているべきだろうと思いますが、いま出ないのはやむを得ないと思います。  そこで任期の問題です。第六条の一項に任期は三年と明示してあるわけです。そこで、いままで、事故が起きてからその報告が完了するまでに、かなりの年月がかかっているわけですね。727の羽田沖の事故にしてみても、四年有半かかっていますね。こうしたことを考えて、三年というような時期をきめてしまうことははたしていいのかどうか。一つ事故に手をつけていると、その事故調査結果が出るまでは再任は妨げないということになっていますけれども、再任ということよりも、そのままの形でずっといって事故調査を完了するという方向が望ましいと思いますけれども、この点についてどうですか。
  305. 内村信行

    内村(信)政府委員 考え方は先生のおっしゃるとおりだろうと思います。そこで、三年という結論でございますけれども、おおむねこの種の委員会の任期は三年ということもございますけれども事故調査の期間というものが、先ほど大臣からもお話し申し上げましたが、あまり長くてはいけないというふうに考えております。あまり長くなりますと、むしろ客観的な証拠というものもだんだん薄れてしまうのじゃないかということもございますので、せいぜい一年前後において一つ事故についての原因を出していただきたいという考え方を持っております。それから申せば、大体三年あれば十分ではなかろうか。さらに、もちろん期間が満了する直前の事故がございますので、その際にはやはり再任ということも必要でございますけれども、それによってカバーしていったらどうだろうかというふうに考えております。確かに先生のおっしゃるように、一つ事故についての責任者の継続性ということは必要なことだろうというふうに考えます。
  306. 松本忠助

    松本(忠)委員 それからもう一点。これは注文といいますか、希望でありますけれども委員の年齢の上限をきめておくべきじゃないかと思う。具体的に言うならば、六十五歳という年齢ですよ。この年齢の上限をきめておきませんと、大学の先生ばかりでなくて官僚が入り込んでくるのじゃないかと思うのですよ。そんな気がしてならないわけです。この年齢の上限をきめる意思があるかないか。
  307. 内村信行

    内村(信)政府委員 お説のとおりであるとは思いますけれども、現在年齢の上限はきめようと思っておりません。と申しますのは、実際問題として、先ほど先生指摘ございましたように、この給与が必ずしもそういい給与ではございません。そういたしますと、いわゆる働く年齢もだんだん伸びておりますので、その職をなげうってこちらに来ていただけるという方は、実はなかなかむずかしいのではなかろうか。そういたしますと、ある程度相当な経験、知識をお持ちになってある程度な年齢に達した方でないと、実際問題としておいでいただけないのではないかというふうな懸念もございますので、この際は必ずしも年齢は限りたくないというのが私どもの気持ちでございます。
  308. 松本忠助

    松本(忠)委員 そういうことも言い得るでしょう。しかし老化現象ということも考えられるわけですよ。日々進歩しているこの時代の航空行政あるいは航空技術、こういったものにマッチしていかなければならぬわけですから、そういう点を考えますと、お年寄りを決して私は軽べつするものでも何でもございません、長い長い経験は私は尊重しなければならぬと思いますけれども、そうした点から、若い人との意見の対立ということも考えられるわけですね。それをまとめていくために、どうしてもこうしてもがんこに自説を押し通して曲げないというような方がこの委員長にでもすわりますと、なかなかたいへんな問題になると思います。そういった点から、この上限をきめるべきじゃないかという提案をするわけですけれども局長はその考えがないということならば、一応これはこれで聞いておきます。  それから七条の罷免の問題です。ここで、心身の故障その他もろもろの個人的事情によって職務の遂行ができないと認めるときにはやめることになると思うのですが、だれが認めるのですか。
  309. 内村信行

    内村(信)政府委員 これは運輸大臣が認めるということになっております。ただしその際に、罷免をする場合には両議院の同意が必要でございますから、同様に議院にも御同意、お認めを願った場合というふうにおとり願いたいと思います。
  310. 松本忠助

    松本(忠)委員 固有名詞を申し上げますとまことにまずいことでありまして、差し控えますけれども、727の羽田沖の事故につきまして、委員事故調査に直接携わっていた人の罷免といいますか、あるいはみずから辞任といいますか、結局身を引いたことについて、世間ではいろいろ取りざたしておるわけですよ。明らかにいびり出された、こういう発言をする人もいますね。だから、要するに人事の問題、委員、あるいはまたその手足となって動く人でも、専門委員の場合でもいいですが、やめるというときは、本人を除いた四人が完全に同意しなければ罷免できないとする。そして、それを大臣に上申し、大臣から両院の同意を得て罷免された、こういうふうになるわけでしょう。それから、やめたいという当事者、これを一名除いたほかの四名が完全に意見の一致を見たときでなければやめられないのだというようなことは必要ありませんか。
  311. 内村信行

    内村(信)政府委員 この場合に実はいろいろな事態が考えられると思います。先ほどの例に合致するかどうかわかりませんけれども、かりに一人の方が非常に意見が対立した、そこで、自分としてはやめたくないのだけれども、ほかの四人の方が、どうしてもやめるべきであるというふうに意見が一致していびり出してしまったというふうなことにしてもまずいかと思いますので、やはり委員の方々の意見は十分伺い尊重する必要がございますけれども、最終的にそれを認めるのは運輸大臣ではないかという考え方もあるのではないかというふうに考えます。
  312. 松本忠助

    松本(忠)委員 八条の「会議」の三項に採決の問題があります。要するに、可否同数の場合には委員長の決するところ、こういうふうになっていますけれども、いまの人事の問題、確かに局長の言うように、四人の意見が一致してその人はやめてもらいたいのだ、こういう場合もあろうかと思います。ないとは言えないと思いますけれども、しかしこの問題は十分考えなければならない問題だと思うのです。前例があるといいますか、そういうことを言っては差しつかえがあるかもしれませんけれども、巷間伝えるところでは、727のあの問題についてはかなりの問題がいま残っておるわけであります。そういうことを考えましたときに、この罷免の問題については、よくよく大臣も、この問題について委員会の意向があったとしても、その意向を十分にアドバイスということばが適当かどうかわかりませんけれども、考えなければいけないのじゃないかと思います。そして、大臣から両院の同意を得たからいいのだ、おれの責任でないのだという言い方は、これまたまずいと思います。ですから、やはり当事者五人の委員が何ごとにおいても全部意見が一致するということはなかなか望めないだろうと思いますが、しかし人事の問題は、局長の言うように、四人がそろって一人の人をのけものにし、そしていびり出すというようなことは、まずおそらく私はないのじゃないかと思うのですね。そういう点でこの問題は、十分ひとつ今後の問題として考えておかなければいけないのじゃないだろうかと思うのですね。  運営に関する問題については過半数でもいいと思うのですよ。あしたの委員会は何をやるのだとか、あるいは運営はこうしようというようなことば過半数できめてもいいと思いますけれども事故原因をきめる最終のときが一番大事じゃないかと思うのです。これは無理にきめてしまう必要は私はないと思うのです。それぞれの人の意見を言うなり、あるいは書くなり発表するなり、そして全会一致でないときには無理に決定する必要はない、こう私は思います。無理に事故原因一つにしぼってしまう、こういうことはやらないほうがいいと思いますね。事故調査ということは、要するに犯人を規定するということではないわけですから、疑問の点が幾つかあれば、それの中から、特定の疑問、この事故原因であるというふうな規定はできなくてもいい、こういう前提に立って、これは一本にしぼらないでおくということ、こういうことをあらかじめきめておかないと、何でもかんでも一本にしぼるのだということになりますと、どうも、そのことに対して不満を持ち不服を持つ者が、おれはやめるというようなことになる。こういう点を考えますと、事故原因の最終のまとめというもの、これについてはよくよく注意をしておかなければいけないと思うのですね。事故調査の過程におきまして、事故原因に関して疑問の点が見つかった、これは三つあれば三つ、それを注意すればいいわけですから、何でもかんでも一つにしぼってしまわなくて、こういうものも、こういうものも、こういうものもあるのだという、そういったことを三つなら三つ、これは何も無理に一つにしないで、その三つを発表をし、そしてそのことに気をつけていくということが航空安全をはかる要点だと思います。こういう点については、今後の運営の問題で非常に重要な問題じゃないかと思いますので、この点について当局としてはどのように考えられているか。
  313. 内村信行

    内村(信)政府委員 この点も先生指摘のとおりと私は思っております。委員会というものは合議体でございますから、意思決定をするというために多数決できめるということはやむを得ないことかと存じますし、ICAOあたりでもそういうふうにきめております。しかし、先生おっしゃるように、これは責任の帰属をどうこうという問題ではございません。同じような事故を再び繰り返さないという事故防止のための手段でございますから、その意味におきましては、多数説がこうあると同時に少数説はこういう意見がありますということがあっても、決して差しつかえないし、むしろそういうことによって、それなりのそれぞれの防止策を講ずればいいわけでございますから、運用におきまして、先生も御指摘のとおり、必ずしいて一本にしない、少数説があれば少数説も併記する、あわせて掲げるということをすべきだろうというふうに私は考えます。
  314. 松本忠助

    松本(忠)委員 その点は強く望んでおきます。  次に九条の「服務」の点でありますけれども、ここに「職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職務を退いた後も、同様とする」、こうあります。「職務上知ることのできた秘密」というのは、具体的に言うと何をさすわけですか。
  315. 内村信行

    内村(信)政府委員 「職務上知ることのできた秘密」、これは個人的な秘密も公の秘密もあるわけでございますけれども、特にこれは秘密ですから漏らしてもらっては困りますよ、こういうふうに言われたもののみならず、客観的に考えて、こういうことがよその人に漏れれば当人が不利益をこうむるだろうというものについては、すべて「秘密」というふうに考えております。  具体的に申しますと、事故関係者のプライバシーの問題とかいろいろございます。それから証言をする人につきましても、この証言は特に人に言わないでくれというふうな場合もあろうかと思います。そういった意味におきまして、事故調査というものを円滑に進め、なおかつ個人の利益を守るために「秘密」というものを考えたわけでございます。
  316. 松本忠助

    松本(忠)委員 局長の答弁はよくわかります。要するに個人的な秘密、こういうものは当然あるだろうと思いますが、その秘密を侵してはならぬ、これは基本的な人権を守る上から当然のことだと思います。それならば、その基本的人権を侵害しない限りは一切公表せよという考え方を私は持っていますが、この点はどうですか。
  317. 内村信行

    内村(信)政府委員 それば十九条の「報告書」との関連かと存じますけれども、少なくとも事故調査の結果は公表しなければならないとしておりますし、その趣旨は、やはり先生指摘のとおり、なるべくガラス張りでおやりなさい、あらゆる事実関係ははっきり出していくということが趣旨でございます。  ただ、先ほど申し上げましたように、証言とか、だれがどう言ったとか、こう言ったとか、こういうふうなことは事故調査の円滑な遂行上思わしくないと思いますので、それは出せないと思いますが、少なくとも事実についてはすべてを明らかにすることが必要であろうというふうに考えます。
  318. 松本忠助

    松本(忠)委員 この問題は局長も御存じだと思いますが、四十五年十一月十一日に、参考人を九日に呼んだその翌々日の問題ですけれども、運輸委員会でやったときにも、当時の橋本運輸大臣からも、記録あるいは資料、こういうものについてはもちろんこれは差しつかえないものでありますから、必要あれば公開してもよろしい、こういうふうに言われたわけですね。いままでの経過から言って、結果的に十九条の報告書は確かに発表になりますよ。しかしその間において、事故調査の過程において当然発表してもいいと思われるものすらも発表されないで今日に至っているわけですよ。たとえば運輸省で、航空局で保管してあるといわれるところのいわゆる727の事故調査委員会における発言のテープのような問題、こういうものは、私は明らかに自己の不利益になるような個人的なプライバシーの問題を除けば、一つの事実としての究明の手がかりになるものですから、当然発表すべきじゃないかと思いますが、この辺、どうも運輸省は歯切れが悪いのですが、今後そうしたことをやはり繰り返すのではないかと思う。繰り返すということは事故防止にちっともつながらないのだ。私は、すべからく発表すべきだ、発表して、それが事故防止に役立つものでなければならないと思う。これもこれもプライバシーに関する問題だといいましても、それをたとえばAという委員、Bという委員というような、あるいはまた調査した対象、その意見を聞き取った方の個人の名前は出さないで、ある符号をもって言うならば、これは当然出してもいいのじゃないかと思いますがね。この点どうですか。
  319. 内村信行

    内村(信)政府委員 先生指摘のように、確かに、いろいろな事実を出すということにつきましては、そのタイミング、時点の問題についてはいろいろ問題があろうかと思います。と申しますのは、事故調査の経過中にいろいろな事実が出ますと、周囲ではとかくそのことだけを着目いたしまして、全体を見そこなってしまう、そしていろいろな憶測が多くなる、また推定が多くなるというふうなことがあって、かえって事故調査の妨げになる場合もございます。しかし、そういうふうなタイミングの問題もございますけれども、原則論としては、先生のおっしゃるように事実関係はみんな出していくことが必要だろうと思います。ただ、いまも御指摘のように、だれがこう言ったとかあれがこう言ったというふうなことはできないかと考えますが、事実関係についてはやはり出して、正々堂々とガラス張りの中でやるというふうな精神が必要であろうというふうに考えます。
  320. 松本忠助

    松本(忠)委員 事実関係は、これは事故防止の見地から当然のことであって、秘密主義、秘密主義で何でも秘密の中に閉じこめてしまうということは、私は賛成できない。知り得た秘密を漏らしてはならないということ、これはわかりますけれども、これは基本的人権に関する問題だけであって、その他は大いに公表して事故防止に当たるというようなことでなければ、この委員会をせっかくつくっても何にもならないだろうと思うのですね。この点について、いまのお話で一応理解はしますけれども、なお事実関係についての公表という問題、これはぜひとも考えてもらいたいと思います。それをしなければやはり事故防止にはつながらない、こう思います。  それから専門委員の問題でありますけれども、十一条「委員会に、専門の事項を調査さるため、専門委員を置くことができる」。この専門委員は七人で非常勤だということですね。そうしますと、何か事故が起きたときにのみ招集するのですか。それとも定例的に招集し、研究し、テーマを与えてやってくということをお願いするのですか。
  321. 内村信行

    内村(信)政府委員 これはまだはっきりした定見がないわけでございますけれども、と申しますのは、専門委員の方をお願いいたしますのは、事故の種類によりまして、委員の方々及び事故調査官によっては全体の分野をカバーしきれないというふうな場合にお願いしたいと考えておりますので、あるいはそのつど任命するというふうなことなるかもしれませんが、あるいは場合によりましては、そのうちの何人かの方々はあらかじめ任命しておきまして、いま先生のおっしゃったような角度から事故調査に御協力いただくというふうなことも考えられるかと思います。ちょっとまだその辺は、いずれの態様もあり得るというふうに考えます。
  322. 松本忠助

    松本(忠)委員 その専門委員というのは、私ども考えますと、民間の航空会社に勤務しているような人、こういう者を当てるような考えじゃないか、こう思いますけれども、その点どうですか。
  323. 内村信行

    内村(信)政府委員 そういうふうなこともあるかと思います。そういった意味におきましては、特定の事故が発生した場合に、つまり、その事故と索連関係のある人というものはお願いできませんから、したがいまして、そのときに、各委員のメンバーから見まして不足な部分についてその牽連関係のないところからお願いするというふうなことになるかと思います。
  324. 松本忠助

    松本(忠)委員 そうしまと、いまのお答えによりますと、専門委員というものは事故が発生したときに委嘱する、こういうことですね。
  325. 内村信行

    内村(信)政府委員 ただ、先ほど申し上げましたように、そうでもなく、あらかじめ一応、こういう分野における専門委員になるんですよということを含んでおいていただいて、いざ事故が出た場合に実際に事故調査お願いするという場合もあるかと思います。ただ、そういう場合には、特定の事故がその当該専門委員の方と牽連関係がある場合には、当然その専門委員はそういう仕事はできなくなりますから、あらためて人をかえて委嘱しなくちゃならぬというふうに考えます。この問題につきましては、いずれにせよ、委員会が発足しました段階において、委員の方々の御意向も徴しましてきめるべきじゃないかというふうに考えます。
  326. 松本忠助

    松本(忠)委員 何もかも、その委員会ができなければどうにもならないんだというお話じゃ、しょうがないわけでありますけれども構想というようなものは、私は聞いておきたいと思ったわけです。  その専門委員を、七名と限定しちゃっている。だけれどもこれは、事故が二つ続いて起きてくれば、七名以上になってくるんだろうと思うんですよ。専門委員は七名だと、こうきめる必要はないと思う。この点は非常にフリーにしておかないとまずいんじゃないかと思う。そしてまた、いろいろな問題について事故調査官がやっているけれども事故調査官というものは、事故ができたときにその現場へ飛んでいくという、そういうシステムのほうだと思うんですよ。ふだんからずっといろいろな諸外国で起こるところの事故など、そういうものを調査研究しているというような人は一体どういうふうになるのか。これは、事故調査官が手のあいているときにやるのか。それとも専門委員にこういうことをお願いしておいてふだんから調べておいてもらうのか。その辺のところはどうですか。
  327. 内村信行

    内村(信)政府委員 やはり常時の調査ということは、事務局機構の中で総務課の一部、あるいは事故調査官がやるということにならざるを得ないと思います。専門委員はやはり非常勤でございますから、常時そういう仕事お願いするのは無理かと思います。
  328. 松本忠助

    松本(忠)委員 非常勤にしてみても、やってもらうテーマといいますか、そういうものはきめておかなければいかぬと思うんですよ。事務局長の下にあるその総務課がそういったことまでやるんですか。技術的な問題、そういうものまでもふだんから調査して研究しておくんですか。その点のところもはっきりしておいてくださいよ。
  329. 内村信行

    内村(信)政府委員 総務課の主体はおそらく庶務的なことになろうかと思いますけれども、何ぶん人員が限られておりまして、事故調査官は首席外八名でございますので、その総務課の中の人員でも、多少なりともそういうふうなことに余裕があればそういうふうなことにも使っていったらいかがということでございます。
  330. 松本忠助

    松本(忠)委員 専門委員の任免といいますか、それから資格ですね。あるいはまた権限、服務規程、こういったものについては、いろんな規程はどういう形できめるのか。要するに省令とか、あるいは政令とかということになるんだろうと思いますけれども、やはり事故調査委員会というものがきめるということにしておかないとまずいんじゃないかと思いますね。たとえばお医者さん、これはやっぱり航空医学という面から専門委員としても必要だろうと思います。あるいはまたエンジンの専門家。そういうものがいろいろ必要になってくると思いますので、調査委員会というものができてからきめるという方向、それからまた、服務規程というようなもの、あるいは権限、そういったものも全部、委員会ができてからきめるということ、こういうふうなことは確実にひとつやってもらいたいと思いますが、どうですか。
  331. 内村信行

    内村(信)政府委員 お説のようにいたしたいと思います。
  332. 松本忠助

    松本(忠)委員 それから、アメリカのことを持ち出したんじゃいかぬかもしれませんが、事故調査委員会で、委員長のもとに四名の委員がいるわけです。都合五名ですね。この意見が二対二というふうに分かれた場合には、委員長の一票で決することにきめられているんですけれども、アメリカの場合は、その委員のもとに、もう百名をこえるいわゆるスタッフといいますか、技術の調査官がいるわけですね。そこで調査したところの膨大なデータをまとめて判定する、これをするのが五名の委員ですね。日本の機構では、五名の委員と七名の専門委員。これは、採決のときにどういう関係になるのか。
  333. 内村信行

    内村(信)政府委員 採決に関するのは委員だけでございます。
  334. 松本忠助

    松本(忠)委員 そうすると、採決に当たるのは五名の委員だけ、これでやるんだ、専門委員は、自分の承知したこと、調べたこと、それを単に委員に報告をする、こういうことですね。
  335. 内村信行

    内村(信)政府委員 さようでございます。
  336. 松本忠助

    松本(忠)委員 それではもう一つ尋ねておきますが、事故が起きますと現地調査、あるいはやはりふだんから実験、こういうこともしておかなければならぬと思いますね。当然のこと、おのおのその専門的な知識が必要だと思います。その一人の委員が発表したことに対して、専門外の他の委員というものは、くちばしをいれることをやっぱり遠慮するだろうと思うんですね。そういう点を考えましたときに、五人の委員というものは、総合的に、いろんな意見を、専門委員からも聞くでしょうし、あるいは事故調査官からも耳にして、そして判断をするわけですね。その公正な判断をしなきゃならぬわけですけれども、やはり五人の委員の中に、その自分の担当している問題、こういうものに対して、やはりかなり自信を持つだろうと思いますね。他人のデータというものよりも、やはり自分の集めたデータ、自分の調査したもののほうが信頼があるというのは当然のことだろうと思うのですね。そこで判定に際して、委員が何としても、そういう個々の小さな問題にとらわれないで、全般的な大きな意味から判定を下すということでないと、間違いが起きてくる。自分の知り得たもの、自分の専門、こういうものはどうしてもやはり自分が責任もあるであろうし、当然また自信もあるでしょうから、そういうものに対して強力な発言をするというようなことになると、この委員会の五人で決定することについて争いごとといいますか、議論を戦わすということも当然起こるのじゃないかと思いますね。そういったときに、この委員長というものが重大なポイントを占めるわけですけれども、二対二と意見が全く分かれたという場合の委員長が裁決を下さなきゃならないというとき、やはりこのアメリカのような方式によって、委員長の裁決によってきめていくということを日本でも考えているのですか。
  337. 内村信行

    内村(信)政府委員 やはりその二対二に分かれた場合には、委員長が決するというようなことを考えております。  そこで、先生指摘のように、この辺は非常にむずかしい問題をはらんでおりまして、要するに委員長はもちろんのこと、各委員の方々の人選に関してくることでございますけれども、やはりそこで、科学的な、あるいは公正なというふうなことであらわしておりますけれども、単にそういうふうな専門の知識、経験以上にもっと高度な健全なる常識と申しますか、高度なる公正なる判断力というふうなものを持った方々をお願いいたしまして、自分の専門のみならず、いろいろな専門委員のことも聞き、かつほかの立場委員のことも聞いて、それで最終的に総合判断するわけでございますから、そういった意味において非常に高い意味の常識を備えた方をお願いしなければならないというふうに考えております。
  338. 松本忠助

    松本(忠)委員 そのことは今後の運営に関する問題でありますから、一応伺っておきましょう。  そこで、十四条の「航空事故調査」、ここでございますけれども、処分権の問題は私もいいと思うのですけれども関係者に黙秘権がないという問題、これは私、非常に疑問に思います。たとえば雫石の問題にしましても、函館の事故にしましても、一方では現在刑事訴訟をしている、一方ではまた行政調査もしているわけですね。一方では黙秘権があり一方ではないという点について、この点をどうお考えになりますか。
  339. 内村信行

    内村(信)政府委員 黙秘権というのは、そもそも刑事訴追を受けた場合に、自分に不利なことを話さないでもよろしいということだろうと思いますけれども、この事故調査の場合にも、質問に対して答えをしていただけるわけにはいかないということは、そういった基本的な黙秘権までも否定する意味ではございませんで、たとえば氏名、年齢どうこうというふうなことについてはお答え願わなければいけませんけれども、かりにそういうふうなことで刑事訴追を受けた場合に、自分の不利になるであろうというふうな場合には、当然黙秘をされても違反の対象にはならないというふうに考えております。
  340. 松本忠助

    松本(忠)委員 そうしますと、自分の不利なことはだれもしゃべりたくないから、しゃべらない。そうすると、本来の事故調査というものに対して、事故原因追及という面について、その一点がぼかされたまま、解明されないままに終わってしまう、こういう点があるじゃないですか。
  341. 内村信行

    内村(信)政府委員 そこで、いま申し上げましたように、刑事訴追を受けるおそれがあるというふうな場合に、それに対する黙秘権を認めないのは、これは基本的人権にかかる問題で、これはできないと思います。しかし、そうでない、本来、先生もいま御指摘になりましたように、事故調査というものはなるべく客観的な真実をつかまえるものであるというふうなことが目的でございますから、一般の場合には、質問に対しては御答弁いただくということを義務づけまして、ただそれも当然その御当人のプライバシーの問題もございましょうから、一方において秘密順守というものを設けまして、これは絶対に人には漏らさないものであるからこういった点ははっきり言ってほしい、というふうなたてまえで答弁をお願いするというふうな考え方であろうと思います。ただし基本的に、刑事訴追を受けるようなものについては、当然これについて強制することはできないというふうに考えます。
  342. 松本忠助

    松本(忠)委員 これにはいろいろと問題があろうと思います。この問題はぜひ私は参考人を呼んで意見を聞くべきじゃないかと思うのです。やはりここには大きな問題を残しておくといけないと思いますので、この参考人を呼んで意見を聞くということについて、大臣どう思いますか。
  343. 内村信行

    内村(信)政府委員 先生いまの御指摘意味とあるいは違うかもしれませんけれども、私ども、この事故調査委員会設置法案を審議する際に、航空法検討委員会というものを置いたわけでございますが、その中で、その委員の方々に御検討を願いました。その委員の方々の構成というものは、それぞれの学識経験者、航空関係の経験者もおられますし、あるいは航空関係の評論家の方、またあるいは一般の新聞関係のいわゆる世論を代表すると思われるような論説委員の方々、こういった方々も広くお入り願いまして、この問題については十分御検討を願ったわけでございます。いま先生のおっしゃいました、この国会の席上か何かで参考人を呼んで意見を聞いたらどうかという御趣旨かと思いますけれども、そこまでには至りませんが、大体広く世間一般の方々の御意見は承ったつもりでおります。
  344. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 ただいま航空局長から御答弁をいたせましたが、実はこれをつくります場合に、運輸省の官房に、事故調査委員会も含めまして、航空に関する法律制定の各学識経験者その他を集めまして、一応の御審議を願った次第でございます。また、刑事訴訟あるいは民事訴訟と調査委員会調査権につきましては、内閣法制局とも十分打ち合わせをいたしまして、調査委員会調査権、これが黙秘権の規定のないというような点につきましても、十分調査は一応している次第でございます。しかし、いま松本先生そういう意味のことでいろいろの御質疑がございました。これは委員会御自体でひとつおきめをいただきたい、こういうふうに思う次第でございまして、私のほうといたしましては、私のほうなりに、司法あるいは刑事また民事との関係は一応の解明をいたしまして今日法律案として出しておる、こういうふうに申し上げておきます。
  345. 松本忠助

    松本(忠)委員 大臣お話のように、運輸省内においても十分検討はした、そういうお話でございますけれども、私はやはりこの国会の場において、この黙秘権の問題ばかりでなくて、いろいろな問題がこの航空事故調査委員会にはあると思います。そういう意味から、やはり国会の場において参考人を呼んで意見を聞くということぐらいは当然じゃなかろうかと思っております。この問題ばかりではなくて、いろいろな問題がここに含まれておりますので、私たちは、学者、そういう方を国会にお呼びして、国会のこの場において公開の場で意見も聞いてみたい、こう思いますので、その点も申し上げておくわけです。  それから次に十五条のことであります。「航空事故の発生の通報」ということでありますけれども、この十五条では運輸大臣委員会に通報することになっていますね。その前に運輸大臣はだれから通報を受けるのか、これはここの面では明確になっていないように思います。たとえば交通事故の場合などは、まず第一に当事者でしょう。当事者が死亡するような場合、これは目撃者といいますか、こういう者が警察に一一〇番するということが常識的じゃないかと思うのです。また海難審判法、これなどでも規定があるように思いますが、この法律においては、大臣に対して、警察とかあるいは事故現場の市町村長、こういうものがその通報をするということの義務づけ、こういうものは書かれていないように思いますが、その必要はあると思いますが、どうでしょうか。
  346. 内村信行

    内村(信)政府委員 この七十六条の場合には、機長に事故の報告を義務づけております。そこで航空の場合でございますけれども、普通、陸上の事故その他につきましては、やはり警察とか公共団体、そういったようなところが情報をキャッチするのが早いということでございましょうけれども、航空の場合には、全損の事故の場合を除きまして、生存者がおります場合には、たいてい機長が一番早く事故を発見するので、これは機長に報告させる。それから、そのほかの場合はどうかと申しますと、フライトプランが出まして、大体何時に着く予定であるということが飛行場のタワーのほうに、あるいは管制部のほうに入ってまいりまして、その予定時刻が過ぎても飛行機があらわれないということから捜索が始まりまして、それから事故が発見されるというふうなことが常でございます。そういう意味では、地元の警察機関や地方公共団体において事故を初めに発見するチャンスというのは、むしろわりに少のうございまして、管制官とか、あるいは飛行場のタワーのほうが早くわかるというのが航空事故の常でございますので、この際はそういった警察その他に対しての義務づけを行なわないということにしたわけでございます。
  347. 松本忠助

    松本(忠)委員 局長の言われる、そういう飛行機ばかりじゃないと思うのです。完全に無線機器から自動操縦装置から積んで、常にコントロールタワーと連絡をとりながら飛んでいる飛行機ばかりじゃないと思うのです。この間の北海道の事故なんかはどういうことになって事故がわかったわけですか。機長ももちろん、会社からも通知がなかったのじゃないかと私は思う。
  348. 内村信行

    内村(信)政府委員 あれは有視界飛行でございますから、管制部にはフライトプランの書類は参りません。しかし、フライトプランを通報いたしまして、出発地の飛行場へ通報を出しまして、到着地のほうにも何時にこういうふうなものが行くという通報がございますので、先般の場合も、到着地のほうで、予定時間に来ない、しかもある地点の上空は何時に通過したという報告が入って、なおかつ予定時刻に着かないというふうなことから捜索を始めたわけでございまして、これもやはり空港のタワーが一番先に知ったわけでございます。
  349. 松本忠助

    松本(忠)委員 この通報という問題は、やはり人命救助にからんでくることだと思うのです。全損しているかどうか、これは全く事故現場に到着してみないことにはわからないわけですから、その中で、まだかろうじて息があって、骨折であるとか、あるいはいろいろ大きな事故を負って、しかしまだ生命は保っている、こういうものもあろうと思いますから、どうしても、その事故をいち早く確認した者が、いわゆる警察なり地元の市町村なりが責任をもって通報するということを義務づけておくほうが、人命救助という点においてはいいのじゃなかろうか。飛行場あるいは航空会社、機長が当然だといっても、しかし、機長が死んでしまう場合もありますし、それから会社から確認するまでには、いままでの事故の場合はいつでも手間どっているわけですね。やはり現場でどういう状態であるということをつかんだものが一番最初に運輸大臣に報告してくるということ、こういうことを義務づけるほうが、私は人命救助という面からいっても当然じゃなかろうかと思いますが、その必要は全くありませんか。
  350. 内村信行

    内村(信)政府委員 私はいままでの例から申し上げたわけでございますが、確かにそういう例に該当しない場合もあるかもしれません。そこで早く見つけたら早く知らせるということは必要だと思います。と同時に、私ども、これはまず行くえ不明の捜索という段階から普通発展してまいります。捜索の段階では、まず警察その他にもお願いいたしまして、通常の捜索その他の捜索をやっていただくというふうなことにしておりまして、その辺の捜索はやっているつもりでございます。ちょっと先生の御質問趣旨が違ったかもしれませんが……。
  351. 松本忠助

    松本(忠)委員 この面についてはまだ意見が相違しておりますけれども、この問題はやはり煮詰めなければならない問題だと思います。  そこで時間もだいぶ食いましたので、次の十六条の問題でございますが、ここで運輸大臣事故調査委員会に対して航空事故調査の権限を与えながら、なお若干の調査権大臣が持っているというふうに私は理解するんですが、この点はどういうふうな解釈ですか。
  352. 内村信行

    内村(信)政府委員 御指摘のように、若干の調査権をなお保留しております。その趣旨は実は二つございます。一つの場合には、事故が起こった場合に、事故調査委員会が中央にございますので、必ずしもすみやかに現場に行くということができないわけでございます。したがって、その立ち上がりのときに、いろいろな物件を保存しておくとか、必要な物件を収集するとか事実の調査とかいうことにつきましては、やはりもよりの空港事務所の職員が協力してこれを行なったほうが事故調査の遂行上円滑にいくのではないかということが一つと、それから先ほど人の数を申し上げましたけれども、必ずしも現場保存その他をいたしますためには十分な人数ではございません。したがいまして、一番もよりの空港事務所の職員等に依頼いたしまして、事故調査委員会の職員の指示を受けまして、その手足となっていろいろ現場保存その他をはかるということがやはり必要であろうかというふうに考えまして、この二つの点から、若干の事実調査あるいは現場保存ということにつきまして、運輸大臣の権限、事実は運輸大臣の部下である現場職員にやらせることを認めておるわけでございます。
  353. 松本忠助

    松本(忠)委員 それでは、その現場職員の知り得た事実、これを調査委員会のほうに連絡といいますか、報告といいますか、そのことについては確実な規定がありますか。
  354. 内村信行

    内村(信)政府委員 一つは「運輸大臣は、航空事故が発生したことを知ったときは、直ちに当該航空事故について事実の調査、物件の収集その他の委員会航空事故調査を円滑に開始することができるための適切な措置をとらなければならない」と書いてございますけれども、この「適切な措置」というところでもってそういうことを行ない、また連絡をするというふうに一応考えております。
  355. 松本忠助

    松本(忠)委員 だいぶ広義な解釈です。この「適切な措置」ということで一切それを含むんだという御答弁ならば、それも一ついいでしょう。しかし、やはり、そういうものについて私は明確にしておくべきではないかというふうにも思うわけです。この調査委員会というものが大臣から独立した機関であるということになれば、当然それに対して通報するというか、それを義務づけておくということをはっきりしておくべきではないか、こう思うわけです。  それからその次の十八条「原因関係者意見の聴取」、ここに「意見を述べる機会を与えなければならない」と、与えてあるわけですね。この意見を述べる機会を与えられている原因関係者というのは、一体いかなる人をいうのですか。
  356. 内村信行

    内村(信)政府委員 本条の趣旨でございますが、この委員会の行ないます事故原因の確定、これが法律上直接に、民事あるいは刑事の裁判、あるいは行政処分におきます事実認定を拘束するものではございません。しかし、事実上それにある程度の影響を与えるということはございますので、通常の行政庁が不利益処分を行ないます場合に本人の利益を保護するという意味、それからさらに、そういうことによって委員会判断の公正を担保するという二つのねらいでございます。したがいまして、その原因関係者と申しますのも、先ほど申し上げましたように、たとえば、当該航空機の機長とか、あるいは整備関係の者であるとか、あるいは会社であるとか、そういうところがおもな原因関係者でございまして、被害者はこの原因関係者に入らないというふうに考えております。
  357. 松本忠助

    松本(忠)委員 被害者は除くということですけれども、その飛行機の操縦士、あるいは整備士、あるいは航空士、あるいはまた飛行場のほうの管制官、こういったものを全部含むわけですか。
  358. 内村信行

    内村(信)政府委員 事故調査結論が出ることによって、あるいは自分の責任が生ずるとか、自分に不利を生ずるとかいうふうなことの発生するおそれのある人々でございますから、そういった意味では、場合によりましては管制官も含まれると思います。
  359. 松本忠助

    松本(忠)委員 それではもう一つ聞きますけれども、目撃者は含みますか。含みませんか。
  360. 内村信行

    内村(信)政府委員 目撃者につきましては、不利益処分ということではございませんから、含まないと思います。
  361. 松本忠助

    松本(忠)委員 いま局長の言われているたくさんの関係者が集まって、全体としての信頼性といいますか、安全性といいますか、こういうものが保たれるわけですね。単独に航空士だけではいけないし、あるいはまた整備士が一人優秀だからとしても、これでできるわけじゃない。やはり全体が集まって、そして安全性が保たれる、こういうふうに考えるわけですね。ですから、どこまでが自分の責任範囲かということは、これはちょっと明確にできないだろうと思うのですね。またそれを明確にするというような必要が起こるならば、全体がわからなければやはりわかってこないと思います。  そこで、たとえば自分の、無実ということばを使っちゃいけないかもしれませんけれども、無実を証明するために、罪の度合いを軽減するといいますか、そのためにも、チャンスを与えられたことはいいんですけれども、全体がわからなければ言うこともできないし、またかりに言ったときに自分が不利になることも考えられるということであれば、全体を知るということが必要だと思うのですよ。ですからそれは、要するにこれは、まだ事故報告書が発表されない前の段階ですから、一般的に公表されてない場合に、その事実の全体を知る機会というものがなければならないと思う。自分が発表する、述べるチャンスは与えられているわけです。しかし、知る権利はここではどういうふうに規定されているのか。やはりそういうものを知っていなければ、全体で要するに安全性を保っていくんだということになれば、自分の責任範囲、これを明確にするためにも、そしてまた、自分が何の関係もないんだ、無実なんだということを言うためにも、これはやはり知る権利がなければならないと思います。この点についてどうでしょうか。
  362. 内村信行

    内村(信)政府委員 これは当然でございまして、その事故調査を終える前に意見を述べる機会を与えるわけでございますから、意見を述べるためには、当然先生おっしゃったように、こういうものであるということがわからなければ意見の述べようがないと思います。したがいまして、意見を述べさせる前に、それまでの事故調整委員会結論といいますか、そういうものを知らせるチャンスを与え、その上で意見を聞くというのが当然であろうというふうに考えます。
  363. 松本忠助

    松本(忠)委員 それから先ほど、被害者は含まないと言いましたね。そういう話がありましたが、飛行機が事故を起こして墜落した、たまたまその下に民家があった、そうするとその人は被害を受けるわけです。そうなりますと、被害を受けた人も、やはり被害の請求を求めたくなると思いますね。事実上自分が損害を受けているのですから。その場合にも、その加害者の責任を追及する意味からも、この人たちに対しても事故調査に関するところの情報というものを提供しなければできないと思う。そういうことになりますと、自分が知らなければ請求できません。ただいきなり、飛行機が落っこってきたんだ、自分の家屋敷はこれだけの損害を受けたんだから請求するんだということだけでいいのか。やはり、その事故原因なるものも、この場合に知った上での請求が至当であると思いますが、局長、どう考えますか。
  364. 内村信行

    内村(信)政府委員 まず本来、この事故調査目的と申しますのは、事故原因を客観的に究明して真実をつかむ、それによって二度と同じような事故が起こらないように防止するということが趣旨でございまして、民事上あるいは刑事上の責任を追及するとか、責任の度合いをきめるとか、そういった民事、刑事の問題とは一応別であるというふうに考えてはおります。  しかし、したがいまして、この原因関係者意見の聴取ということにおきましては、被害者はその中に入れておりませんけれども、十九条でもって事故調査の結果を公表しますに際しましては、一般的にはこれは航空関係者、報道機関ということでございますけれども、特に被害者の方から御要望があれば、これも知らせてあげるというふうに考えております。
  365. 松本忠助

    松本(忠)委員 じゃ理解しておきましょう。  それから、時間の関係もありますからもう結論のほうに移りますが、報告書の問題ですが、報告書の書式といいますか、こういったものは当然ここに書かれたような「航空事故調査の経過」「認定した事実」「事実を認定した理由」「原因」こういうことにわたって書かれることは当然のことだと思うのですけれども事故の公正かつ科学的な調査が行なわれることを期待して、こうした組織をつくるわけですね。その調査をした結果、その期待、要するに目的がこの組織によって満たされたかどうかということをチェックする、これはやはり報告書だ。そうなりますと、この報告書も当然批判をされる、チェックされると思います。また、その批判、チェックにたえる報告書でなければならないと私は思うのですね。  そこで、先ほどから再々言いますけれども、公正かつ科学的な判断のできる人間がやっても間違えることばあると思うのです。全然間違えないということは言えないと思うのですね。だから、その報告書批判をして、調査委員会調査のしかた、調査委員会そのものが批判されるということにもなるわけだと思います。それがなされなければ世の中はよくならないと私は思うのです。やはりその事故防止というものにつながっていかないと思う。そういう意味での媒体がいわゆる報告書だろうと思うのですね。そこでもちろん、ここに書かれた四つの項目というものはICAOの規定に準拠しておる、こう思います。ここの最後の四番目の「原因」と、こう書かれてあること、原因が出るという前提のもとに書式が定められておると思うのですね。原因不明という場合もあったわけですし、あり得ると思うのですね。また原因がどれか一つというふうに確定する必要はないということは先ほども申し上げました。そういう点から考えて、ここの「原因」と書かれてあることは、要するに幾つも幾つも原因と思われるものが出た場合には、それを併記するということと理解していいですか。
  366. 内村信行

    内村(信)政府委員 私はそれでよろしいと思います。
  367. 松本忠助

    松本(忠)委員 そこで問題は、原因不明という場合の責任といいますか、事故調査委員会で、原因不明だ、わからないんだと言った場合には、全くこれはナンセンスだと思うのですけれども、今後やはりこの原因不明ということも起こり得ると思いますか。
  368. 内村信行

    内村(信)政府委員 これはやはり起こり得ると思います。と申しますのは、航空事故につきましては、もうほとんど全損して生存者もなくなると  いうようなことでございますので、それは海底深く落っこった場合とかで、いろいろな調査もできない場合もございましょう。そういった場合を考えますと、やはり原因は幾ら探求しても不明というのが正しいんだということもあると思います。その際に、特に原因不明という場合に、事故調査委員会の責任を追及いたしますと、かえって公正妥当な客観性のない結論を出すということにもなりますので、どうしてもわからない場合には、やはり不明として処理する場合もあり得るし、あり得ていいのではないかと私は考えます。
  369. 松本忠助

    松本(忠)委員 それからもう一つ言えることは、事故調査ということですね。これはやはり一つの研究だと私は思うのです。ですから事故を今後起こさないためには、未然に防止するためにはどういうことによって事故が起きたか、それを調査するわけでしょう。ですから、結局研究するわけですから、この調査報告書というものは研究論文とも言えると思うのですね。そこで、いろいろここには今後原因不明ということが結果的に出てくるとしても、それに対してこうこうこういうことだから原因不明なんだ、こう出てこなければならないと思うのです。いままだ尾を引いておるといいますか、例の727の羽田事故ですね。あれがどうしても事故原因不明ということで、いまもってどうも航空関係者の話題になっておる。大体あの年に四つ事故があって、外国の関係事故は二つとも完全に原因がはっきりしておる。日本のほうがとうとう二つが二つとも事故原因が不明というふうになってしまっておるわけですね。こういう点で圧力だとかいろいろなことがいわれておるわけですね。  ここでもう一点、私、この機会にただしておきたい点があるのです。これは何も技術に関する問題じゃないと思いますので、むずかしい問題じゃないのですから、大臣にもよく聞いてもらいたいと思うのですけれども、羽田の事故の最終報告書結論、このa、調査結果の3と4に同じ表現があるのですよ。これは具体的に言いますと、「事故原因に関連があると認められる不具合が接水前に発生したことを示す証拠は発見されなかった」というのが二つ、同じように3と4に書いてありますね。記憶ありますか。そこで、確かに発見されなかったのだ、これは事実でしょう。発見されなかったということは事実としても、発見されなかったから原因ではなかったのだということではないと私は思うのですよ。日常の会話では、発見されなかったという場合に、それが原因でなかったというふうに同意義にとる場合もあるかもしれませんけれども、少なくとも事故調査というような科学的な立証をすべき場合には、そうとるべきじゃないと私は思うのです。しかしながら、あの報告書を書いた人は、発見されなかったのだから原因ではないのだというように、同意義にとって書いたというふうにしか私には思えない。この点が、まことに非科学的だといわれ、非難されている個所だと思うのです。これは私も重大な誤りじゃなかったかと思うのです。何となれば、この事故報告書の最終結論というものは原因不明なんです。ですから、原因でないと表現しながら結論は不明だ、こういうふうにつじつまが合わない表現がここに出てきてしまっている。また、関連があったのかなかったのか、どうしてわかったのかというのです。それがわからなかったのでしょう。明らかにしてないのですよ。ですから、重ねて言いますけれども、発見できなかったということは、ないということと違うわけでしょう。どうですか。これは局長、発見できなかったということは、ないということとは違うのだ、私はそう理解する。もし、ないと言いたいならば、ばらばらな残骸状況がすべて接水後に起きたということが立証されなければならないと私は思う。そうでなければ、接水前に破損しなかったと言うことはできないと思います。もし、ないと言いたいならば、そこまで書かなければならないと私は思うのです。そうでなければつじつまが合わないと思うのですよ。こういったまことに不可解な表現があって、結論原因不明というたった四文字に片づけてしまったところに、あの羽田沖事故に関する非難が依然としてくすぶっているということになると思うのです。  そこで、今後、事故がないことを希望するわけです。あっては困るわけです。ただ、あった場合に、要するに事故調査委員会報告書というものが、あらゆる面から批判にたえられる報告書とし、先ほども申し上げましたように、研究論文として後世に残してもらいたいと思うのです。それでなければこの調査委員会をつくる意義がないと思うのです。そういうところで、羽田沖の事故報告書に対しての反省があるならば率直に述べてください。技術の面でなくてけっこうです。あの文字に対して……。
  370. 内村信行

    内村(信)政府委員 羽田沖の問題、これは事故調査委員会お願いいたしまして、事故調査委員会としての責任において発表をなすったことでございますから、私どもといたしまして、それに対する批判というものは、これは差し控えなければいかぬと思います。しかし、少なくとも世上いろいろな議論が出まして、まじめな関心を持っておる方々がそれに対して相当いろいろな批判があるということば、客観的に見て、やはりわれわれとしても十分反省をし、今後、事故調査委員会を設けてそれを運用するためにあたりましては、やはりそういった事柄を他山の石として考えていかなければならぬというふうに考えます。
  371. 松本忠助

    松本(忠)委員 局長のお答えを私、一応耳にしておきます。  そこで二十条の「勧告」の問題、それから二十一条の「建議」の問題は、さっき詰めましたから一応これで終わることにします。  要するに、この事故調査委員会設置法というものについて、私はまだ理解しない点がたくさんあります。率直なことばで言うならば反対です。やはりこの問題はもっともっと時間もかけるべきではないかと思う。一刻も早くこの調査委員会設置法というものをつくる必要はあります。私もそれは力説しました。つくってもらいたい、常駐の委員会をつくれと言っておりますけれども、どうもこの委員会は完全に意を満たしているかということについては、まだ非常に疑問点が多いと思うのです。学者の先生方にも私、二、三当たってみました。しかし、これについては、完全にこれでいいとは言っていません。さっきも申し上げましたように、やはり公開の場所で参考意見を聞く必要があるのではないか。われわれもその場に出て意見をお伺いする、かつ、われわれも学者先生方に対して率直に質問させていただく、こういうような機会を設ける必要があろうと私は思う。いずれにしましても、この法案については、このままで通してしまっては禍根を残すことが多分にあると思います。そういう点から、次の国会までに十分内容を検討して、そうして再提出すべきではないか、私はこういうふうに考えます。要は簡単なことばで言えば反対だということです。つくることそのものにはけっこうでございますけれども、この内容についてはまだまだ不十分である、こういう点を私、申し上げておきたいと思います。  以上いろいろと申し上げました中に、局長あるいは大臣の答弁に対しても、私も満足のいった面ばかりはございません。非常に不満足な点もございますし、検討を要する点も多々あろうかと思います。そういった点について、なお機会を得て質問させていただきたい、このように思っております。  以上で終わります。
  372. 伊能繁次郎

    伊能委員長 次回は、明七日水曜日、午前十時理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十七分散会