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山中国務大臣 ただいまの本
委員会の
沖繩現地調査報告にありました
政府に対する
要望事項について、
所見を述べさせていただきます。
本年五月十五日の
沖繩の
祖国復帰を
目前にして、いよいよ
復帰準備も最終的な仕上げの段階に入ってまいりました。この重要な時期に、本
委員会より
委員派遣が行なわれ、当面する
沖繩の諸
問題等現地事情についてつぶさに
調査が行なわれましたことは、まことに時宜を得た適切な
措置と考える次第であります。
ただいまの
報告にもありましたように、
復帰が確定した今日、
沖繩のかかえる重大な問題の一つは
通貨の問題であります。この問題の本質は、
ドル通貨圏にある
沖繩をいかにして
本土の
円経済の体系に円滑に移行せしめるかという基本的な
課題に加えて、昨年末における円の
為替レートの
切り上げのもたらした
沖繩への衝撃をいかにして緩和するかという
課題であります。
私は、
沖繩県民が好むと好まざるとにかかわらず、
合衆国通貨をもって唯一の
法定通貨とされ、他方諸
物資の輸入については約八割を
本土の
円経済に依存せざるを得ないという事実に着目したとき、円の
為替レートの
切り上げの
沖繩に与える影響の度合いは
本土のそれとは根本的に異質なものであり、
本土からは想像もつかないほど深刻かつ重大な問題であると考えるものでありますが、このような観点から、われわれ
本土の国民は、
復帰を
目前に控えての
沖繩の
通貨問題の重大さに深い理解をもって対処すべきであることを痛感するものであります。
ところで、
沖繩の
合衆国通貨の
復帰時における取り扱いの基本的な原則は、
沖繩の
復帰に伴う
特別措置に関する
法律に定められているように、
復帰の日前における外国為替の売買相場の動向を勘案して内閣の
承認を得て大蔵大臣が定める交換比率により本邦
通貨と交換するということになっております。しかしながら、この原則のみに固執する場合の、
沖繩県民の生活の基盤そのものに与える深刻な影響を考慮して、実質的にこれらの影響を除去もしくは緩和するための政策的な
措置、たとえば
通貨及び
通貨性資産切替
対策特別給付金の支給、
生活必需物資価格安定資金の設定等の
措置を講じているのであります。
そこで、まず、
通貨問題に関連して
復帰後の
賃金問題が提起されているのでありますが、この問題については、
琉球政府職員等
公務員の
給与は、職員の履歴等によって
本土の
公務員の
給与に再計算をして格づけされるものであり、すでに人事院においては、
琉球政府の協力を得て
給与の仮計算を行なっているところであり、
琉球政府当局と組合との間の話し合いも円滑に進むものと考えております。他方、
民間労働者の
給与については、本来民間の問題には
政府は直接介入しないというのが
政府の一貫した姿勢であります。
しかし、今回、
琉球政府の要望にこたえて、
沖繩の
金融逼迫を緩和し一景気浮揚に資するため
政府がとりました次の
措置は、結果的に民間労使間の
給与問題の話し合いを円滑にすることにも役立ちました。
その
措置は、第一に中小企業
特別対策として、すでに
琉球政府の一九七二会計年度において、産業開発
資金融通
特別会計及び大衆
金融公庫で融資を行なっている三十三億三千百万円に加えて産業開発
資金融通
特別会計へ十億円、大衆
金融公庫へ七億六千万円合計十七億六千万円の範囲内において
資金需要の実態を勘案の上追加融資すること。第二に、電気、バス、タクシー等の許認可料金について
賃金を一ドル三百六十円で換算し得るような料金を新たに設定すること。第三に、
沖繩の
金融機関の貸し倒れ引き当て金の繰り入れ率を現行の千分の十から千分の十五に引き上げ、
復帰後一年を経過した日以後に終了する事業年度から
本土並みの千分の十二の繰り入れ率とすることの三点について決定したのであります。
ところで、昨年八月の為替変動相場制移行に伴う緊急
対策として
措置した
生活必需物資価格安定資金の運用の問題については、
琉球政府としてもかつて経験したことのない
措置であり、また、その運用のための
琉球政府の立法、規則等の制定、その他事務体制の確立等のために相当の準備期間を要し、さらに、輸入業者の補助金申請においても事務的な不なれがあったことなどの理由から、これまで
資金の交付がおくれておりますが、すでに
琉球政府に対して指導を行なっており、事務能率の向上と相まって
資金の交付が円滑に行なわれるものと考えております。
なお、この価格安定
資金に対してすでに本年度予備費から二十億円を支出しておりますが、年度内の不足分については追加支出をし得るよう現在財政当局と協議中であり、また、明年度五月十五日までの所要経費については約十三億八千万円を
昭和四十七年度予算に計上しております。
次に、
軍労働者の雇用問題については、
復帰時における
本土の駐留
軍労働者の場合と同様の雇用形態への円滑な移行をはかるべく、目下
関係省庁において所要の準備が進められておりますが、一方、
沖繩振興開発
特別措置法においても、合衆国軍隊の縮小、撤退等に伴う失業等の避けがたい事態の起こることを想定して、これに対処するため職業の安定をはかるための
特別の
措置を講ずることにしているところであります。
次に、
土地問題については、
沖繩においては戦災による公簿の焼失、地形の変容等により権利
関係が不明な
土地を多く生じているのでありますが、従来より
本土政府の財政援助のもとに
琉球政府の
土地調査庁において
本土の国土
調査法にならった
土地調査法に基づく地籍
調査を実施してきており、その進捗率は
沖繩全土の約五七%に達しております。
復帰後も国土
調査法その他の法令による地籍
調査を進めていくことになりますが、
沖繩本島中部等には権利
関係が不明確なため、国土
調査法等による地籍
調査が困難と思われる地域も多いのであります。
これらの
土地については、
関係地主等の間の話し合いで自主的に境界が定まることが望ましいと考えられますが、
土地の権利
関係の確定、地籍
調査の推進は、今後
沖繩の振興開発をはかる上でも特に急がれる問題でありますので、これを推進するために
関係省庁、
沖繩県及び市町村が協力して解決に当たる必要があると考え、四十七年度予算に
調査費を計上しております。
いずれにしても、
沖繩の
復帰に伴い解決されなければならない問題はいまだ数多いのでありますが、
政府としては、今後ともこれらの問題の解決に最善を尽くすとともに、
沖繩が
祖国復帰した後においては、県民福祉の向上をはかるため、積極的に
沖繩の振興開発を推進していく所存であります。
以上、私の
所見を述べさせていただきました。
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