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1972-03-09 第68回国会 衆議院 地方行政委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月九日(木曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 大野 市郎君    理事 上村千一郎君 理事 大石 八治君    理事 塩川正十郎君 理事 中村 弘海君    理事 豊  永光君 理事 小濱 新次君    理事 門司  亮君       高鳥  修君    中島 茂喜君       永山 忠則君   橋本登美三郎君       宮澤 喜一君    村田敬次郎君       綿貫 民輔君    華山 親義君       山本 幸一君    山本弥之助君       桑名 義治君    和田 一郎君       林  百郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)   中村 寅太君  出席政府委員         警察庁長官官房         長       土金 賢三君         警察庁長官官房         会計課長    下稲葉耕吉君         警察庁刑事局長 高松 敬治君         警察庁刑事局保         安部長     本庄  務君         公安調査庁長官 川口光太郎君  委員外出席者         警察庁刑事局参         事官      斉藤 一郎君         会計検査院事務         総局第二局長  柴崎 敏郎君         地方行政委員会         調査室長    日原 正雄君     ————————————— 三月七日  警察法の一部を改正する法律案内閣提出第七  五号)(予)  地方行政連絡会議法等の一部を改正する法律案  (内閣提出第七六号)(予) 同月四日  ドライブイン等において酒類販売を禁止する  法律制定に関する請願麻生良方紹介)(  第八五五号)  同(佐々木良作紹介)(第八五六号)  同(畑和紹介)(第八五七号)  同(山本政弘紹介)(第八五八号)  同(西田八郎紹介)(第九二四号)  同(八田貞義紹介)(第九二五号)  同(吉田賢一紹介)(第一〇四四号)  東京都の財政危機解消に関する請願小林政子  君紹介)(第一〇三九号)  同(古川喜一紹介)(第一〇四〇号)  同(畑和紹介)(第一〇四一号)  同(山口鶴男紹介)(第一〇四二号)  同(山本政弘紹介)(筋一〇四三号) 同月八日  ドライブイン等において酒類販売を禁止する  法律制定に関する請願宇都宮徳馬紹介)  (第一一〇五号)  同(福田篤泰紹介)(第一一〇六号)  東京都の財政危機解消に関する請願山本政弘  君紹介)(第一一〇七号)  同(松本忠助紹介)(第一二七八号)  地方財政確立に関する請願井出一太郎君紹  介)(第一一六六号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第一一六七号)  同(倉石忠雄紹介)(第一一六八号)  同(小坂善太郎紹介)(第一一六九号)  同(下平正一紹介)(第一一七〇号)  同(中澤茂一紹介)(第一一七一号)  同(原茂紹介)(第一一七二号)  同(松平忠久紹介)(第一一七三号)  同(向山一人紹介)(第一一七四号)  特別区の自治権拡充に関する請願伊藤惣助丸  君外二名紹介)(第一二七七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  警察に関する件      ————◇—————
  2. 大野市郎

    大野委員長 これより会議を開きます。  この際、一昨七日、永年在職議員として本院より表彰されました門司亮君に対しまして、本委員会を代表して、心からお祝い申し上げます。  門司亮君は、昭和二十二年四月二十五日初めて本院議員に当選されまして以来、二十五年間にわたり、本院議員として、憲政のため大いに尽くされ、一昨日、院議により、表彰されたのであります。ここに、地方行政委員会を代表し、心からお祝い申し上げる次第でございます。  また、門司亮君は、第一回国会昭和二十二年六月三日、本委員会の前身であります治安及び地方制度委員会委員に選任せられましたが、自来、今日まで、終始一貫、本委員会委員として精励せられ、ここに、満二十五年の長きに達せられました。その間、特に、第二十六回から第二十八回国会冒頭まで、地方行政委員長として重責をになわれ、その後も、理事及び委員として、常に、本委員会の公正かつ円滑なる運営に尽くされました。  ここに、委員長は、委員各位を代表いたしまして、門司亮君の長年にわたる御功労に対し、深甚なる敬意を表するとともに、今後ますます御自愛の上、地方自治発展のために御尽力あらんことを期待いたしまして、ごあいさつといたします。(拍手)
  3. 門司亮

    門司委員 ありがとうございました。      ————◇—————
  4. 大野市郎

    大野委員長 警察に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山本弥之助君。
  5. 山本弥之助

    山本(弥)委員 過般の浅間山荘事件につきましては、すでに、当委員会におきまして、詳細に質疑応答が行なわれたようでありますが、私、欠席をいたしましたので、あるいは重複する点もあろうかと思いますが、少しくこの点につきまして御質問いたしたいと思います。  人質になっておりました牟田泰子さんが無事に救出せられ、犯人逮捕できたわけでありますが、内田、高見両氏のとうとい犠牲が出、また、多数の警察官が負傷せられましたことは、おなくなりになりました方に対しましては心から弔意を表し、また、負傷せられました警察官の一日も早い御回復を祈りたいと思います。  そこで、従来、学生騒動以来、集団的な過激集団学生騒動あるいは暴力行為というのが行なわれてきたわけでありますが、たまたま、四十四年以降におきましては、小集団で、あるいは爆弾をしかけるとか、あるいは殺人を行なうとかいうような行為が行なわれてまいっておるわけでありますが、この浅間山荘における逮捕事件に至る一連の、そうした小グループによるところの暴力行為といいますか、その関連斉藤さんから一応——どもの了承しておるところによりますと、大部分は、赤軍派だとか、あるいは安保共闘が中心になって動いた一連事件というふうに見られるわけでありますが、そのほかの事件等関連があるのかどうか。従来の表面にあらわれた現象から見ての関係、それらにつきましてお聞かせ願いたいと思います。
  6. 斉藤一郎

    斉藤説明員 ただいま、この、いわゆる浅間山荘事件で、何か、頂点に達したような感じがしておる極左暴力集団のおよその動きというものはどういうものか話をしろという御質問でございますが、たいへん詳しく……。
  7. 山本弥之助

    山本(弥)委員 過去の、たとえば、あれは、四十六年の二月に真岡事件がありましたね。それと関連をして、一方では、金融機関襲撃事件銀行だとか、あるいは農協だとか、それは幾つかのグループがあると思うのですが、それとの関連と、一応のグループ別状況といいますか、その後の推移もありましょうが、どういうふうな状況浅間山荘事件になったか、簡単でけっこうですから……。
  8. 斉藤一郎

    斉藤説明員 ごくかいつまんでいまの御質問にお答えいたしたいと思いますが、四十五年ごろまでは、過激集団も、大体において、いわゆる群集デモ的な犯罪が主でございましたが、昨年のいわゆる真岡事件、二月十七日に始まった猟銃強盗事件以来、ただいま御質問のような極左過激集団が、デモ的な街頭闘争ではもうとうてい目的が達せられない、小集団でもってゲリラテロをやろうという方向に戦術が変わってまいりまして、昨年の二月あたりから、お尋ねのような、小集団の、ほんの四、五人によるテロゲリラ活動に移ったわけでございます。  私どもがいままで見ておるところでは、これら超過激集団は大体三つグループがございまして、一つはいわゆる赤軍派でございます。それからもう一つグループは、日共革命左派と自称しておるグループがございます。それからもう一つグループは、共産RGRGという字を書いて、連中はエルゲーと発音しておりますが、ドイツ語読みでございますが、共産RGというグループがございます。  そこで、まず、赤軍派グループと申しますのは、昨年の二月、千葉県あるいは神奈川県等で、一連銀行強盗事件現象としてやったのでありますが、これは、例の北鮮へ飛びましたハイジャックのグループもこのグループでございます。あれは、当時、海外革命基地をこしらえるんだということで、飛行機をハイジャックしまして北鮮へ行ったわけでございますが、赤軍派作戦としては、海外にそういう世界同時革命基地をこしらえるという一方の戦術。それから、自称M作戦と称しまして、銀行その他金融機関からお金を取って資金を集めるという作戦。それからもう一つP作戦と自称しておりますが、要人その他人質をとって、たとえば、自分たちの大将である塩見というのが獄中におりますが、そういう者を奪還する。ちょうど、南米あたりでありましたと同じようなやり口でもって要人人質にして、それと交換に自分らのグループを釈放させようということをやるといったようなことをいろいろ計画を立てまして、現実に、現象として、彼らから見て一番成功したのは金融機関強盗事件でございます。これは、昨年二月以来、千葉三つ神奈川二つ銀行をやっておりますし、それから、米子銀行を襲おうとして、金は取ったのでありますが、すぐつかまったというような一連事件を犯して、合計千三百二十万円の資金を獲得しておるのであります。先般、浅間山荘でつかまったとき持っておった金も、こうした金の残りを持っておったんではないかというふうに思っております。これらの一連事件で、関係犯人が二十八人おるんではないかと思っておりますが、いままで、その中で二十六人。あと二人残っておるだけだと思いますが、つかまえる者はほとんどつかまえているかっこうになっておるわけであります。  一方、日共革命左派と申しますのは、この一派が、京浜地区でもっぱら主力を占めておるというので、京浜安保共闘とも俗称するのでありますが、これが、昨年の二月十七日、革命をやるためにはどうしても武器を入手する必要があるということで——その前に、警視庁管内で、一昨年になりますか、上赤塚というところ警察官の派出所を襲って、警察官拳銃を奪おうとして殺された事件がありますが、そういう一連のたくらみの一つとして、昨年の二月十七日に、栃木県の真岡でもって猟銃を強奪しておる。当時、猟銃十一丁、実包を二千三百八十発強奪したのであります。これが、その後、捜査によって二丁回収できておりましたが、そのうちの一丁をさらに米子銀行強盗のときに使っておったのが発見され、さらに、その後、警察捜査でもって、広島県の福山でもって一丁発見、残ったのが七丁ございまして、その行くえを極力追っておったのですが、結局、警察が発見しないうちに、先般の浅間山荘事件経過でこの七丁が出てまいった。いまでは全部回収したかっこうになっております。  連中は、こういった猟銃を取って、あるいは密輸入した拳銃などを使って、浅間山荘事件に見られるような行為でもって革命が成就するのだというふうに考えて、凶悪な犯行を犯しておるのでございます。そして、坂口弘だとか、永田洋子、あるいは吉野雅邦などという、これの主犯とおぼしき者を一生懸命追っておったのですが、これは、いずれも今回の事件でつかまっております。  それから、もう一つは、共産RGという一派でございますが、これは、やはり、昨年の秋以来、いろいろな爆弾闘争に取り組んでおった一派だと思われます。この連中を追っていきますと、警視庁総監公邸を爆破した事件、そのほか、方方の警察署爆弾をしかけた事件、こういうものが一部共産RG犯行であるということがおいおい判明してまいっております。  その三派のほかに、ノンセクトラジカルみたいのがございまして、これが、いわば、三派をはずれたノンセクトではあるけれども、過激さにおいてはこの三派に劣らないという連中がおります。その一つが、やはり昨年、朝霞でもって自衛隊を襲撃して、自衛官を殺した。これは赤衛軍と自称しておりましたけれども、一部のノンセクトラジカルみたいな連中であったということがわかっております。  以上が、大体の超極左分子の流れでございますけれども、この連中が、いずれも、だんだん追い詰められてきまして——ほんとうは、赤軍派日共革命左派というのは、革命理論においては、概論を異にするのでありますが、ゲリラテロといった現象行動面においては、お互いにたよりになるのだということを考えまして、赤軍派日共革命左派は、昨年の七月十五日をもって、地下組織軍行動だけを一緒にやろうということを宣言しております。その宣言をした結果、実際にまた、日共革命左派で盗んだ猟銃赤軍の手に渡って、米子事件に使われておった。その程度かなと思っておりましたが、今度、浅間山荘では、武器資金を融通し合うということだけではなくて、両方が組織的にも合体して、追い詰められた両者が一緒になってああいうことをしでかしたということでございます。  以上、概略でございます。
  9. 山本弥之助

    山本(弥)委員 ただいまの御説明よくわかりましたが、そういたしますと、いわゆる警察で、表面にあらわれました一連事件関連しての捜査を続けてこられました被疑者というのは、先ほどの赤軍派が二名みたいでございます。わかっておるのが二名、まだ逮捕していない。そのほかの関係土田警務部長さんのおうちの爆弾事件とか、そういった、まだ、今後一応目途をつけて捜査をし、逮捕を期さなければならないといったのは何人くらいあるわけなんですか。以上、お話を聞きました派の中で、ですね。
  10. 斉藤一郎

    斉藤説明員 赤軍派あるいは日共革命左派、その他RG等構成員がどの程度であるかということは、まだ、連中、まことに秘匿して、地下組織でやっているものでございますからつかめないのでございますが、当初、赤軍派構成員が大体三百人ぐらいと思われておったのでございますけれども、この三百人の中には、合法面において表へ出て活動している者がおります。これは、当面行動犯罪につながらないので、警察としては、見てはおるが、何ともならない。この中で、地下組織でもって、いわゆる軍事組織で、中央軍として行動している者が、出入りがあってなかなかわからないのですが、一ころは、常時五十人くらいいたのではないかと思われます。同じように、日共革命左派の中では、大体そういう者が、地下組織でもってやっておる者が常時四十人前後ではないかというふうに見ておるのであります。その中では、だんだん脱落していきまして、一時追っておっても、いわゆるひよって欠けていく者もおりますので、ほんとうの過激な行動をしておる者は、先ほど申し上げました犯罪経過でもって発見していった数だけで、その中で残っておるのは、いまのところ、当面追っておるのは二名。京浜安保共闘も、今度の浅間山荘でほとんど壊滅したのではないかと思っております。ただ、私どもまことに申し上げにくいのでございますが、私ども視野に入っておらない者で、思わぬ者がある。こまかいことを申し上げますと、たとえば、今度つかまった中の奥沢という男なんか、ほとんど私ども視野に入っていなかった。つかまえてみたらこんなのがいた。それから、十六歳になる少年がおりますが、昨年、おととしあたりはまだ十三、十四の子供が、一年たつとああいう者になるということで、これで残党がいなくなったというふうに楽観はできませんが、警察が追っかけるべき対象はもうほとんど済んでおる。現に、未逮捕の者で追っておるのは、赤軍派十一名、京浜安保では三名。私どもがつかんで意識して追っかけておるのはそれだけでございます。
  11. 山本弥之助

    山本(弥)委員 浅間山荘事件につきましては、非常な成果だと私どもは思っております。警察の御苦労を多といたしておるわけであります。しかし、いろいろな批判があると思うのですけれども、やはり、その批判については謙虚に聞かなければならぬのじゃないか。今後の参考にもなることだし、その点は警察にお願いをしておきたいと思うのでありますが、私、この妙義山アジト捜査からあとの段階において——まあ、大都会は、市民の中にも連帯意識というものがなかなか少ないわけでありまして、近くに行ってもなかなかわからないという場合も多いのではないかと思いますが、山村だとか、あるいは寒村、あるいは地方の小さな町というような場合になりますと、これはもう少し警察間の連絡——地元民恐怖心を与えてもいかぬわけでありますけれども、それとなく連絡をとるといいますか、警察末端組織に対する指導といったような一連関連を考えてみましたときに、浅間山荘に追い込まないうちに逮捕できたのじゃないか。軽井沢駅でも、売店の物を売っておった方の通報あるいは駅員の通報ということで、直接警察よりも、そういった民間の人の協力によって逮捕することができたと思うのであります。これらの関連が多少欠けておったのではないか。そのために浅間山荘に追い込むようなかっこうになったのではないか。また、その前に、浅間山荘に入るときに小休止をしたところもあるようでありますが、その辺の関係は、これはしいて私追及しようという意味ではないのですが、その辺の捜査網といいますか、そういったところに反省するものはなかったかどうかお聞きしておきたいと思うのです。
  12. 斉藤一郎

    斉藤説明員 今回の事件——まあ、今回の事件に限らない。先ほど申し上げました三派のいろいろな事件の場合も同様でございますが、特に、今回の事件を顧みまして、率直にいろいろ考えてみると、まずいことがたくさんございます。たとえば、最初に今回の事件が、榛名山のアジトのところで事柄が起きたのですが、そのときに、せっかくいい端緒がありながら、扱った警察官がうっかり家出人子供連れだと思って、引き取り人も、偽った引き取り人だったのですが、あったものですから、帰しちゃった。あとでよく調べてみたら、これは一味だったらしいということ。そのほか、犯人妙義山からずっと逃げていった経過、そういうものを顧みますと、警察やり方も、結果的に非常に反省すべきものはたくさんあったということを私ども思っておるのでございます。ことに、民間の方の御協力を得るということは、これはなかなかむずかしい。先ほどもおことばがございましたが、あまり言って恐怖心を巻き起こしてもいけないのでございますが、適当に事柄を認識いただいて御協力をいただくという面において、まだまだやり方があろうかというふうに思っておりますし、それから、何と申しましても、ただいま府県警察に分かれておるのでありますが、群馬県、長野県、あるいは周辺の埼玉県だとか、そういう県同士連絡やり方に今後一そうくふうすべきものがある。妙義山事件を起こした者が長野県へ移っていくまでの経過において、もっと努力すれば、結果から見てうまくいった手の打ち方があったかもしれないということを深刻に反省し、今後、今回の事件を通して、十分な手が打てるように、手ぎわのいい措置ができるようにぜひやってまいりたいというふうに考えております。
  13. 山本弥之助

    山本(弥)委員 もう一つ事務的にお聞きいたしておきたいと思いますけれども、あれは渋谷地区のときだったですか、あのときも警察官殉職をしたわけでありますが、また、成田空港の場合もそうですが、応援警察官の活用ということについて十分配慮すれば、あるいは犠牲がなくて済んだのじゃないかというふうな御質問をした記憶があるのですけれども、今回の場合も、まことに多数の警察官が次々に犠牲になっておることで、まことに痛ましいと思っております。ことに、ああいう決死隊を編成いたしまして突っ込むという場合には、士気の問題からいいましても、指揮者の決断といいますか、先頭に立つというようなことが非常に必要になってくるわけでありまして、また、そのことが犠牲になる率も高いのではないか、こう思うのですが、お二方とも練達の指揮者のようであったわけでございますが、正面から顔面を撃たれておられるようであります。いろいろ私が申し上げるまでもなく、その辺のことについては御配慮しておられると思うのでありますが、そういった当然予想されることについての装備、あるいは対処の方法等平素検討はしておられると思うのでありますが、その辺のことについて、何か今後考えてまいらなければならぬ点がございますでしょうか。また、来年度予算等におきましても、その辺のところが予算に盛り込んであるのかどうか、お聞きしておきたいと思います。
  14. 斉藤一郎

    斉藤説明員 いまのお尋ね関連してですが、まず、府県間で応援をして、応援警察官が、新潟警察官警視庁管内殉職し、神奈川県の警察官千葉県の管内殉職し、警視庁警察官長野へ行って殉職する。まことに込み入ったことになるのでございますが、私ども、こういう機動隊の要員というものは、できればその県で十分なだけ養成をしたいというふうに考えておるのでございますけれども、一番頂点に必要なだけの機動隊を十分備えるということは、何ぶんいろいろな都合でできない。したがって、ほんとうに必要なときは、府県間相互応援をするということになる。その場合に、派遣の応援警察官は、その土地の事情その他から考えて、なるたけ他県の人にふさわしい配置につけたいということをかねがね考えております。ところが、そのつもりで——たとえば、渋谷殉職の例を一例申し上げますと、新潟から来た警察官は、渋谷駅あるいは道玄坂の辺の、いわば迷路のようなところで街頭戦をやるようなところに配置したのではむずかしかろう、NHKの施設の周辺でもって固定して警備に当たるということは、道に不案内であってもできようという考えで、新潟警察官NHKのそばの交番のところに配置したわけでありますが、何ぶん、他県から来た警察官というのは、代々木八幡がどっちを向いているか、道玄坂がどっちを向いているかわからない。無線でもって代々木八幡に暴徒三百人あらわれると耳に入っても、一体、江東区のことなのか、青山のことなのか、よくわからない。ところが、自分のすぐそばだということがございまして、やはり応援警察官には、おのずからいろいろな条件からくる限界があるということがございます。そういうことを考慮しながら、しかもそれぞれの適性がございますので、警視庁機動隊警視庁機動隊としての場数を踏んだ経験がございますので、そういう特性を生かしていくという、そういうことを踏まえて、殉職といった痛ましい犠牲がなるたけ出ないように考えてまいりたいというふうに考えております。  それから、その次にお尋ね装備の観点でございますが、過激派の用いる器材、武器がだんだんとエスカレートしてまいりまして、一ころは投石が主であったが、それが火炎びんになり、爆弾になり、ついに鉄砲を撃つ、ライフルを撃つということになったわけでございます。先般殉職をされた二人ともそうでございますが、目を撃たれております。なお、けがをした人も、跳弾でけがをした人以外は、ほとんど目をやられております。というのは、ライフルに耐えるたてというのは、いまのところ、一枚だけではライフル銃に完全に耐えるたてがないものですから、二枚合わせて応急の場合使ったのでございますが、たてにのぞき穴がついておりますけれども、二枚合わせますとのぞき穴からのぞけなくなる。そこで、たての陰から陣頭指揮をすればするほど敵情を見たくなって、つい顔を出す。その瞬間にねらい撃ちされて顔面を撃たれているわけでございます。そこで、今後の装備としては、ライフルその他の銃器に耐えるような防弾マスクその他を用意させる必要がある。あるいは、からだを守るための軽い——いまのたてを二枚合わせたのではたいへん重とうございまして、行動に不便でございますので、できれば、合金のうんと軽い軽装備でもって、しかも防弾性がある、あるいは耐爆性があるといったものを、経費はかかるかと存じますが、関係方面の御協力を得て、できるだけ整備してまいりたいというふうに考えております。
  15. 山本弥之助

    山本(弥)委員 先般、国家公安委員長さんの所信表明を承ったのでありますけれども、いま、現状におきましては、極左暴力集団のなまなましいテレビ放送がありましたわけでありますし、また、平穏な住民がいつ何時巻き添えを受けるかわからないというような、目的のない、きわめて自己本位な、また、殺人でも強盗でも何でもやるというような、まことに危険な集団でありますので、この集団の今後に対処いたしまして、組織の根絶をはかって、国民生活の安寧を期するというお考えは私ども全く同感でありますけれども、いわゆる、相当な集団によるところの街頭の暴力行為ということに対処することは、いままで、機動隊の訓練によりまして、昨年の沖繩国会等におきましても、私ども見ておりましても、非常にうまく、少し行き過ぎじゃないかと思われるようなみごとな警備ぶりであるわけであります。この過激集団については、どういうふうな動向をたどるかわからないわけでありますが、やはり、地下にもぐり、小集団での行動ということになるかと思うのでございます。この意味におきましても、全力をあげて、警察の総力をあげて取り締まりに当たるという御決意、よくわかるわけでありますが、警察の総力をあげるにいたしましても、地下にもぐり、あるいは小集団に分かれておるという者の根絶をはかるということは、警察に課せられた使命であるとはいいながら、なかなかむずかしい。やらなければならないことではありますけれども、困難な問題であるわけでありますが、これにつきましては、大臣の決意もお述べになっておりますが、警察としてどう対処していかれるのか。大筋の心がまえといいますか、めどといいますか、その辺のところをお聞かせ願いたいと思います。
  16. 中村寅太

    中村国務大臣 山本議員の御指摘のように、これを未然に防ぐということが第一でございますし、さらに、犯人を早期に検挙するということがやはりきめ手となっていくと思うのでありますが、未然に防ごうといたしますと、彼らの行動というものをやはり的確につかまなければなりません。御指摘のように、非常に広範な範囲の中で、どこにしかけておるかということも全くわからぬようなむずかしさがございますが、しかしながら、警察力を総動員いたしまして、彼らのアジト等をできるだけ探って、そうして未然に防ぐ。さらに、事件の起こりました場合には、早期に検挙するということが基本的な対策だと思いますが、今回も、全国に手配をいたしまして、彼らのあらゆる行動を監視いたしました。それが結局都会からだんだん山のほうに追い上げたというような結果にもなったと思いますが、こういう経験にかんがみまして、今後は未然防止にさらに一段のくふうをせなければならぬ、かように考えておるわけであります。
  17. 山本弥之助

    山本(弥)委員 概括的なお話を承ったのでありますけれども、今後警察の総力をあげて、というお話がありますとおり、私、そのとおりだと思うのでありますが、たとえば四十六年の真岡事件のような、いわゆる銃砲の盗難事件、これは司法事件ともいえるわけですが、あるいは銀行強盗事件、これらの関連が、単なる司法事件であるか。今回の場合は、資金源と銃砲を手に入れるということが大きく問題を発展させたことでありますので、そういった司法事件との関連を、警察の総力において、よく——関連があるかどうか、体制をおとりになることは、これは、私が申し上げるまでもなく、警察内部で十分御配慮になると思うのでありますが、問題は、こういった組織に対する警察として今後とるべき措置は、いわゆる情報活動と、それから国民の協力の問題だと思うのであります。  その第一の情報活動ですが、警察の仕事といたしまして、ある程度の情報活動は当然必要ではなかろうかと私は考えるわけでありますが、しかし、この情報活動につきましては、警察の万全を期するという体制と、あるいは、国民が期待しておるので極左暴力集団は根こそぎにしなければならぬという、そういうことのための情報活動が、いわゆる関係者以外の人権を阻害するというか、人権を無視するような結果になることが間々出てくるのではなかろうか。いわば、範囲を拡大して、労働組合あるいは革新的な考え方を持っておる者というような方面にまで、目的が非常に重要であるということで範囲を拡大していくということになりますと、これは民主警察の大きな後退になるわけでありまして、これなどは非常にむずかしい問題でありますが、今後、おそらく、警察の総力をあげて、——当面一応あらわれた現象に対しまして、壊滅状態に追い込んで、まことにけっこうなことでありますが、その背後にある根深いもの、これを根絶しなければならぬということになると思うのであります。しかし、そのために、いわゆる活動の範囲が拡大しまして、行き過ぎにならないように——過去にも、いろいろ委員会でも指摘されたような事案があったようでありますが、そのために警察が行き過ぎになることにならないように、その辺の配慮は非常にむずかしい問題だと思いますが、この点を十分御配慮する必要があるのではなかろうかと思っております。  もう一つの国民の協力の問題でありますが、いわゆる活動が都会から追い出されましても、東北の片いなかあるいは九州の片いなかに潜伏するということであれば、そういうこともあり得ると思いますけれども、ある活動をするということであれば、おそらく、都会を中心に、その周辺だろうというふうに私は判断をしておるわけであります。したがって、東京周辺に対する警察の体制を整備するということは当然でありますけれども、おそらく、また大都会の中にもぐるということの可能性が大きい。そうしますと、国民の協力を得る場合の、民間協力といいますか、これは、都会におきましては、先ほど申しましたように、非常に連帯観念が薄い。アパートに住んでおりましても、一階と二階ではもう交流はない。子供が小学校の同級生だとかなんとかいう以外は交流はない。あるいは、同じ会社につとめておる者でなければ交流はない。隣で殺人が行なわれておっても気がつかない。あるいは、傍観するというのが現在の大勢だと思います。これについての協力を得る体制は相当苦心しなければなりませんが、それについては、何といっても、警察が信頼されるという体制を常につくっていかなければならぬと私は思っております。したがって、昨年の沖繩国会のときの、いわゆる集団請願等に見られるような、むだな過剰警備によりまして、いたずらに関係のない者を刺激するというようなあり方、これらは極力避けていかなければならぬのではないかということ。また、国民の信頼を受けるためには、長官は、警察官の士気ということが問題になるというふうに指摘されておりますが、確かに、私は、士気を鼓舞するといいますか、そういうことは必要だと思うのであります。  私ども一度問題にいたしました警察官の綱紀の問題、これは今度の事件が起きまして、問題にならなくなったような印象をいまは受けますけれども、あえて申し上げるわけでありますが、その問題は、一片の通達その他ではなかなかできない問題であります。警視庁においての相次ぐ事件、これはやはり、社会の縮図のように、窃盗があり、殺人がありというような犯罪を犯しているわけでありますが、これにつきましては、士気の鼓舞と同時に、綱紀の粛正を常に考えていくんだということが必要ではなかろうかと私は思っております。  時間がありませんので、続けて御質問しますが、外国の警察には、団体交渉権だとか、あるいはスト権まである国もあるようでありますが、そういった、いわば一つの基本的な権利を考えていくんだという意識が全然なくて、上からの命令に従わせる。いわゆる上意下達のかたい組織。それはけっこうなことでありますけれども、しかし、人間としての基本的な人権などを考えるという機会が全然失われておる社会においては、緊張が続いていくと、気のゆるみから常に問題が起こる。また、自分がそういう立場に立たないので、基本的人権という問題を等閑に付している。本来ならば、そうやらなくてもいいデモ行進の過剰警備に、ほかの事案に対すると同じような体制で立ち向かうという事例が出てくるのではなかろうかと思います。士気を鼓舞すると同時に、綱紀の問題、あるいは、国民の協力を得られるような警察官の人間形成といいますか、基本的人権を考えていくんだというような考え方、これらを両々相まって情報活動等にも十分生かし、国民の協力を得られるような体制を形づくることによって、今後の極左暴力集団に対処できるのじゃないか、かように考えるわけでありますが、この点、長官いかがでございましょうか。
  18. 中村寅太

    中村国務大臣 山本委員の御指摘になりました情報活動等の点でございますが、犯罪を未然に防いでいきます場合には、情報活動を活発にやるということは非常に大切なことでございますが、御指摘のように、これはまた、表現の自由とか、あるいは国民の権利を侵すという線とのすれすれの場合等がありまして、なかなか微妙でございますので、私らといたしましては、表現の自由あるいは行動の自由をできるだけ侵さないようにということは、これはやはり警察官の配慮せなければならない第一の点であるといつも戒めておる点でございます。しかしながら、情報をつかむということは、犯罪を未然に防いでいきます基本的な態度でございますから、その点も十二分の努力を続けていくという、二つのことがやはりやっていかなきゃならぬ点であると私は思っております。  特に、御指摘のように、このごろの犯罪の逃げ場が都会の中に集約されてきたという傾向から考えてみましても、都会の情報活動をするということは、御指摘の中にもありましたように、都会の生活というものは隣との間の交流がほとんどないという特殊事情もございまして、非常にむずかしいのでございますが、最近、テレビとか、新聞とか、ポスター等によりまして、犯罪者の実情等を国民の皆さん方にいろいろ知らせることによって、非常に活発な報告、協力の姿勢が出てまいっております。それによって実績をあげてまいったという、これはきわめて最近の顕著な傾向でございますが、私は、国民の協力というものが、犯罪を未然に防ぎ、検挙を早期にやるためにも非常に大切なことであるということをしみじみ考えておるのであります。そういうことを考えますときに、国民に協力をしていただく前提としては、山本委員も御指摘になりましたように、警察官が国民に信頼されるということが非常に大切な要素である。  警察官の綱紀の粛正を要する件等が最近時々起こりまして、まことに遺憾に存じておりますが、私は、警察官のこういう不祥事をなくすためには、やはり、基本的な警察官に対する態度も必要だろうと思う。第一は、警察官に使命感を十分持たせるということが大事でありますが、さらに、若い警察官も人間でございますので、人間としてのいろいろの要求も持っておるし、欲求も持っておると思いますので、そういう点を配慮しながら、生活の安定を与えてやるとか、あるいは教養を高めていくいろいろな施設をするとか、そのほか、先ほども御指摘もありましたが、ふだん持っておるいろいろの不平とか不満とかいうようなもののはけ口として、上の者との間の交流の機会をできるだけつくって、第一線の警察官が不自由を感じておる点だとか、不満を感じておる点だとか、あるいは要求とか欲求というようなものをできるだけくみ上げまして、そうして、彼らのそういう欲望に対する配慮を十二分にしていくというようなことがまた必要ではないか。そういうことをあわせ行なうことによって、警察官の生活も確立するし、さらに教養も高まっていく。こういうことが基本になって、国民から信頼される警察官ができ上がってまいると思うのでありまして、私は、いままでの警察官の実態を見まして、御指摘がありました下意を上達するという点について十二分の配慮が必要であるということを強く感じました。  今後、この点については、画期的に、上の者が下意を配慮いたしまして、そうして遺憾のないような仕組みを考えていく。懇談するような機会を持つとか、あるいは、いろいろ末端の警察官の考えておること、不自由を感じておること、そういうことをスムーズに解決してあげるような、いわゆる警察の仕組みというものもやはり考える必要があると考えております。現在の仕組みの中でそれはやれるということを私は考えておりまして、特に、そういう点に注意してやっておるわけでございます。そういう形で、国民とともに犯罪をたくしていくという体制を強化してまいりたい、かように考えて警察行政をやっておるわけでございます。
  19. 山本弥之助

    山本(弥)委員 長官のお話は、これは、特に重点を置かれたと思うのでありますが、極左暴力団体に重点を置かれてのお話をいただいたわけでありますが、極左暴力と同じように、右翼の暴力集団といいますか、これも等閑に付してはならぬと私は思うのであります。ことに、最近、外交問題だとか、あるいは防衛問題だとか、その他国内の政治問題等にいたしましても、国内の各層において、相当複雑なからみというか、意見がありますし、また、いろいろな生活問題に関連しての不満というものも出てくるわけでありますが、極左と同じように、右翼の暴力集団に対しましても、監視、取り締まりを相当強化していかなければならぬと私は思いますが、いかがでございますか。
  20. 中村寅太

    中村国務大臣 暴力集団につきましては、右翼であろうと左翼であろうと、私は、差別なくこれを根絶することにつとめていかなければならぬと考えておりますが、現在の右翼の動向等につきましても、これは非常に配慮をいたしておりまして、左翼ほどに活発な活動もございませんけれども、しかし、気を許してはなりませんので、暴力集団としての左翼の集団の暴力も排除するし、右翼も排除する。さらに気をつけなければならないのは、左右の暴力集団が互いにほこを交えるような、そういうことのないように、そして、一般の国民に迷惑のかかるようなことのないように、十二分の配慮をしてまいりたいということで、暴力というものに対しましては、何人の暴力であろうとも、これは徹底的になくしていく。大きい過激派集団とか、あるいは右翼とか、そういうものではなくて、地方の国民の静かな生活をじゃまする小さい暴力というものも見のがしてならぬ、私はかように考えて、暴力等に対しては徹底的に対策を考えてまいっておるつもりでございます。
  21. 山本弥之助

    山本(弥)委員 過般、総評を中心といたしますいろいろな国民生活を守る制度の要求のデモ行進が行なわれたわけでありますが、その二日目だったと思いますが、三月一日の十一時五十分ごろに、国鉄本社前で発生いたしました事件なんですが、いわゆる日本学生青年純正同盟というような団体が、正常なデモ行進に対して、これを妨害した。あまつさえ、デモ行進の中に突っ込んできて、殺人的な傷害行為を行なったという事件は、大臣は御存じだろうと思うのであります。これに対しまして、前に質問を申し上げたと思うのでありますが、デモの警備をしておる体制は、どうしてもデモの警備ということに頭があり、また、その辺は交通ひんぱんなところでありますので、交通警察官もいると思うのでありますが、そういったデモの中に車を突っ込んでくるような体制を白昼容認して、しかも、車がある程度までそういう傷害を与えておきながら、デモ行進していた者が追っかけていって車を取り押えて、そこで警察官逮捕したという、こういり事態は、考え方がどうも多少片寄っておるのじゃないかという印象を、私ども現場におりませんので、あとから報告を聞きまして、思うのであります。いわば、そういった総評のデモ行准、あるいは右翼的なそういった団体に対する考え方が、先入主によって、直ちにそういう妨害行為をとめなければいかぬとか、あるいはそういう事案の起きないように十分取り締まらなければいかぬということがゆるがせになっていることは、少し私どもふに落ちないのでございますが、これは大臣、どういうふうにお考えになっておりますか。
  22. 中村寅太

    中村国務大臣 警察といたしましては、正常な諸行事のデモというものに対しましては、できるだけ過剰警備にならないように——警備を少し十分にしますと、すぐ過剰警備だといっていろいろ批判も出ますので、できるだけ薄い警備で、正常なデモ行進というようなものをスムーズにやらせたいというのが考え方でございまして、そういうことで、この間の国鉄の前での事件というものは、全く予期しない事件でございまして、ああいう不法なことをやろうというようなことは常識で考えられないことでございまして、突発的に起こりましたので、そのデモに参加しておった人たちから見ますと、何か、警察官の活動がにぶかったとか、不十分であったとかいう批判が出たろうと思います。しかし、これは何も意識的にやったことでなく、突発的な事件に対する対処がまずかったのじゃないかと率直に考えますが、これは、いま申しましたように、突発的な事故でございまして、今後はこういうことがないように特に注意しなければならぬ。実は、あのときは、浅間山荘事件の直後でございまして、私は、浅間山荘が解決をしました時点で、すぐ、今回の浅間山荘事件は国民にかなりのショックを与えておるので、右翼等の蠢動があって、暴力をふるうようなことがあってはならない、不測の事態が起こってはならぬから、全国にすみやかに手配をして注意をするようにという指図をいたしておった直後でございますから、ああいう事件が起こりましたので、事件に対しましては、厳重に取り調べて、厳正な処置をするようにということをきびしく命じております。さらに、あのときには、総評の市川議長とか、あるいは社会党の国会議員の人も一緒に見えまして、今後の点についてもいろいろ注意してくれということでございましたので、直ちに全国の警察に手配いたしまして、十二分に配慮をして、再びこういうことが起こらないように気をつけるようにという手配をいたした次第でございます。
  23. 山本弥之助

    山本(弥)委員 時間の関係もございますので二点だけお聞きしたいと思うのでありますが、一つは、沖繩の復帰の以前に警察官を派遣する必要があるのかどうかということです。しかし、復帰前ですから、いわゆる国内の派遣という形式はとれないと思うのでありますが、多少間接的に応援する警察官をお出しになるのかどうか。お出しになるときにはどういう形式でやられるのかということが一点であります。  それから、もう一点は、今回も四千人の警察官の増員が行なわれておるわけでありますが、地方公共団体の財政は、本年度はきわめて危機的な財政状態である。しかも、四十一年の経済不況に際しての対策は、不十分ではございましたが、まず将来に不安のない体制、財政対策をとったわけですが、今回の対策は自前の金で——本来ならば、千五十億くらいは国のお世話になったわけでございますが、今回は、大部分は公共団体の借金でまかなうというのが対策なんです。したがって、財政的には非常に苦しい立場に置かれるわけであります。ことに、府県の税の落ち込みが大きいために、府県は苦しいと思うのであります。したがって、増員の可否は、いずれ機会があったらいろいろ内容をお聞きしたいと思っておりますが、そういう体制でありますので、私どもは、超過負担にならないというようなことを十分配慮しなければならぬと思っておりますが、警察費の都道府県警察に対する補助金の関係も、相当超過負担になっているという実例が出ておるわけであります。警察署の庁舎あるいはその他の営繕費にいたしましても、ことしは全般的に検討を加えないたいうのが自治省や大蔵省の方針でありますけれども警察のほうが相当超過負担が大きいように思いますので——これは適当な機会に実情に合った補助金を出すのだからいいじゃないかということではなくて、適正な根拠、単価、規模等、その他十分御勘案になって——将来、ほかのほうの補助金についても私ども問題にいたしたいと思いますが、大蔵省あるいは自治省等にも強く要請をいたしたいと思っておりますが、警察の補助費の、超過負担にならないような配慮が特に本年度は重要であり、来年度も重要になってまいろうと思いますが、非常に窮屈になっております。しかも、人員は相当整理しなければならぬというような体制にあるわけでありますので、この点につきまして、どういうふうにお考えになっているか。  以上、二点について御答弁をいただきまして、質問を打ち切ります。
  24. 中村寅太

    中村国務大臣 警察官の数の増員の問題でございますが、警察官はできるだけ少人数でやるに越したことはございません。私らも、人数をふやさないことが原則であると思いますが、最近の交通事故というものが非常にきびしい情勢でございまして、御承知のように、一年に一万六、七千人も死ぬ。さらに九十万近いけが人を出すというような、きわめて容易ならぬ状態でございます。この交通事故をなくすには、一番的確な方法は、人が中に入って、警察官が中に入って防止するということがどうしても一番適切でございますので、ことしも大体五千人を要請いたしまして、そして、できるだけ交通事故の防止に全力をあげたい、こう考えておりましたけれども、諸般の事情で五千人は認められず、四千人を認めていただいて、その四千人の中の二千五百人くらいは交通の取り締まりに当たらせたいと考えております。あとの千五百人くらいを外勤等に充てたいと思っておりますが、そういうことで、いま、一番大きな問題は、交通事故で一万六、七千人の死傷者が毎年できておるということで、しかも、そのために非常に悲惨な家庭が次々にできてきておるということを防止しなければならぬ。こういうことを考えまして、最小限の要求をいたしたわけでございますが、こういうことで、だんだん警察官の人数もふやさなければならぬという情勢で、いま山本委員の御指摘のように、費用がかなりかかってまいる。これにつきましては、地方で持てるだけは持ってもらいますが、地方に過重負担をかけてはならぬと思いますので、国家財政の許す範囲で、できるだけ国から金を出していくという方向が好ましい、私はこう考えております。そういうことで、努力を今日までもしてまいりましたが、さらに今後ともそういう方向で努力してまいりたい、かように考えております。
  25. 斉藤一郎

    斉藤説明員 沖繩復帰に関連して、復帰の時点で日本の警察官応援に行くかどうかという御質問でございますが、これは五月十五日、いま予定されておる復帰の——厳密に言いますと、五月十五日の午前零時から日本の施政権が沖繩に及ぶ。五月十四日までは、いまの体制でもって、日本の施政権下でなくて、米国の施政権下にあるということでございますので、日本の警察官応援に行く必要があっても、五月十五日以降でなければ権限が行使できません。  そこで、それじゃ、復帰のときにはたして日本の警察官が行く必要があるかどうかという問題ですが、いろいろな情勢からいいますと、五月十五日に復帰になったところで通貨交換が行なわれるそうです。いまドルが流通しておるのでありますが、これを円とかえなければならぬ。五百億円ぐらいといわれておりますが、相当の円を持っていってドルと交換するのですが、これが、いままでの例を見ましても、銀行の窓口でひったくりがあったり、途中で取られたりする。これを千分に警備しなければならぬ。それから、復帰の時点で、復帰の記念行事があったり、あるいはそのほかごたごたする可能性がある。そこで、現在沖繩におります二千人足らずの、千八百六十名の警察官で、警察官が足らないということになりますれば、五月十五日以降の沖繩県警察応援要請をする。そうすれば、内地で都合のいいところから警察官が行くというかっこうになります。それは、ちょうど、成田へ神奈川県の警察官応援に行くというようなことであります。したがって、必要がある場合には、沖繩県公安委員会の要請に基づいて、日本の警察から応援に行く。問題は、五月十五日の午前零時から責任が全部日本側に移りますので、その間の間隙が生ずることがないように、治安維持の責任が果たせるように、したがって、五月十五日にどうしても手が足りないということがございますれば、十四日までは、その準備の行為はある程度やらざるを得ないかと思います。たとえば、なるたけ現地のそばへ行っておるというようなことの手続をやるとか……。ただし、警察官としての権限を行使することは十五日以降でなければできないということになります。
  26. 山本弥之助

    山本(弥)委員 官房長から、人件費以外の補助金のことについて……。
  27. 土金賢三

    土金政府委員 補助金の問題についてお答え申し上げますが、補助金につきましても、地方の持ち出しにならないよう、特に、来年度は、地方財政が落ち込み、ただいまお話がありましたように、税収等の落ち込みもありまして苦しいということを私どもも見ておりますので、この点については十分配意して、予算成立の暁には、その執行につきましても配意してまいりたい。たとえば、施設等につきましても、警察署とか、派出所とかいうものをつくる場合に、一定の金額が単価でかかるわけでございますけれども、その補助金の配分ということにつきましては、そういう点について十分配慮を加えてまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  28. 大野市郎

    大野委員長 小濱新次君。
  29. 小濱新次

    ○小濱委員 私は、中村国家公安委員長の所信表明について若干質問をしていきたいと思います。  この所信の内容につきまして、いろいろと予想される法案の内容がだいぶ出ておりますが、この問題については、その時期にまた質問をさしていただきたいと思います。  そこで、一ページに「凶悪犯人を根こそぎ逮捕し、その組織を壊滅することこそ、」と固い決意を披瀝しておりますが、この問題について少し御質問を続けていきたいと考えております。  いろいろとただいま御質問がございましたが、その中で、二月二十八日の、軽井沢の河合楽器浅間山荘人質救出作業事件について、また関連して御質問をしていきたいと思います。  決死の機動隊ライフル銃猟銃でねらい撃ちをしておった連合赤軍、これに催涙ガス弾を撃ち込むとか、大量の放水をする等、熾烈な攻防戦は八時間余も続いたわけでありますが、その人質のとうとい代償といたしましては、殉職警官、死者二名、重傷者十一名となったわけでございます。攻防戦は二百十八時間十五分と記されておりましたけれども人質犯罪史上に例のない長期間の戦いであったわけでございます。何とかしなくては泰子さんは死んでしまうということで、実に真剣な救助作戦があったわけでございます。結果的には、みごと目的を達成できました。私どもも陰ながら非常に喜んでおる次第でございます。このたびの事件は、警察史上類例のない苦い経験であったと私どもも察しておるわけでございます。そこで、主として、公安委員長と官房長にお尋ねをしていきたいと思っております。  御質問の第一は、警視庁機動隊は別といたしまして、地方機動隊の訓練時間が非常に少ない。こういうことで、そのことが警備の弱体を招いている。そこから、事件に対して払う犠牲を大きくしているんだという声もあるわけでございます。いろいろと教えていただきまして、その内容についてよく了解ができたわけでございますが、各府県に、警備部隊の中核として、機動隊が全国でどれくらいありますか、六千弱くらいだろうという推定のようでございます。そしてまた、第二機動隊は専従ではない。事ある場合に各部署から動員をされる。こういう機動隊があるそうであります。月に二回程度訓練をしているようでございますけれども、こういう警備体制ができているという話を私は伺っております。いままで、いろいろと過去に問題がございました経過からしても、これは警備の弱体化ということがやはり言われておりますが、私もそうなるのではないかと考えておるわけでございます。成田の事件にいたしましても、私も、詳細にその現場の資料を集めて研究いたしまして、そういうことになるのかなというふうにも疑問を持ったわけでございます。したがって、地方における警備体制の強化が、今回の浅間山荘事件を通して、いい教訓になったと私どもは考えながら、この必要性に迫られている立場から、警察庁もよく御存じであろうと思いますが、そのことについての考えをぜひともひとつお伺いをしておきたいと思うわけでございます。これは、大臣でも、あるいは官房長でもけっこうでございますので、お答えをいただきたいと思います。
  30. 中村寅太

    中村国務大臣 最近は、凶悪犯罪が非常にエスカレートしてまいりまして、われわれが常識で判断し得ないような悪性な犯罪がだんだんふえてまいりましたもので、御指摘のように、警備体制を強化せねばならぬということは基本であると思いますが、ただ、警備体制を強化いたしますには、まず、警察官の数が一つの問題で、これはなるべく少人数でやるということが基本でございますし、さらに、器材等に関しましても、今回の浅間山荘事件等を振り返って反省してみますと、いままで考えておらなかったような凶悪な状態でございますので、こういう新しい情勢に対応する警備体制というものを考えなければならぬ。器材を整備するとか、いろいろくふうが必要であることを痛感いたしたのでありますが、御指摘のように、警察の力というものは、できるだけ人数は少人数で、そして器材等は有効なものを使って国民の期待にこたえていく。そういう基本的な体制で臨むのが一番よろしいのでございますが、しかしながら、実情等に照らし合わせますと、御指摘のように、警備体制の強化はぜひ早急に整えなければならぬと考えておる次第でございます。
  31. 土金賢三

    土金政府委員 機動隊の人員、人数等でございますが、いわゆる機動隊は、全国で九千七百人おります。そのほかに、ただいま御指摘の第二機動隊が一万五千人余おるわけでございますが、機動隊のほうは、専任と申しますか、専従者でございますので、これは、原則として、ほかの仕事というよりは、事件とか、そういう出動をする場合を除いては、いろいろ訓練をやっております。そのほか、警察集団警備力として機動的に随時出動しておりますが、それ以外のときには訓練をしておるというのが実情であります。  そのほかに第二機動隊がございますが、これは、平素は、外勤警察官とか、そういう日常勤務をいたしておりますので、ただいま御指摘のように、しょっちゅう訓練をするというわけにはいかないという問題がございます。そういうふうな欠点と申しますか、それを補うために、最近、管区機動隊というものをつくりまして、これは、外勤なり、そういう警察官で平素の勤務につくわけでありますけれども、これは、年に二回管区警察学校に入校させまして、ここで一定期間、行動訓練と申しますか、それをして、その練度を高める、こういうようなことをしておるわけでございます。この管区機動隊が四千二百人、全国でおるわけであります。  こういった訓練の強化のほかに、ただいま大臣の指摘のありましたような装備という面でこれを拡充して、警備の万全を期する、こういう体制に相なっているわけであります。
  32. 小濱新次

    ○小濱委員 この警備体制をいまいろいろと数字をあげて御説明をいただきましたけれども、各府県にどのくらいいるかということで計算いたしますと、警視庁が主力でありますから、そんなに大勢はいないわけでございます。そういうところから、いろいろと問題を通して、弱体ということばが出てくるのであろうと思うわけでありますけれども、この警備体制の強化ということは、いわゆるとうとい命をかけての戦いであります。したがって、今回のような事故をまた重ねて起こすようなことがあってはならないということは、これはテレビを見ておった国民の心からの願いであろうというふうに私どもは見ておるわけでございまして、この警備体制の強化ということについては、弱体なんだ、訓練不足なんだ、ふだん忙しいからなかなかそういう時間がとれないんだというところに原因があるのだという声がありましたので、どうか、今後大いにこの国民の声を取り入れていただきたいと心からお願いをするわけでございます。  そこで、装備の問題でございますが、これは部隊装備と個人装備と分けて、まず、部隊装備のほうを少し伺っておきたいと思うのですが、今回の浅間山荘事件を見ても、いろいろとその部隊装備がまだまだ不足しているな、新しいそういう装備も考えなくちゃならないな、あるいはまた、その被害を最小限度に、できるならば無害であの人質を救済できるような、そういう新しい兵器も考えていくときがきているな、こういうふうに私どもは見ておりました。この部隊装備について、いろいろとあるようでございますけれども、今回のあの撃ち合いを通して、教訓として残った問題は何かございましょうか。こういうふうにしたほうがよかったという、教訓として残った問題があったらばお答えいただきたいと思います。
  33. 中村寅太

    中村国務大臣 国民のみなさん方にも非常に御心配をおかけいたしたのでございますが、テレビを通して、私らもあの状態を見まして、実は、警察の機械力というものがいかに弱いかということをまざまざ痛感いたしたのであります。いままでああいう凶悪な犯罪というものを予期していなかったというところに反省しなければならぬ点があると私は思いますが、ああいう一つの立てこもっておる場所をこわそうとしても、なかなかこわす機械がない。あるいは、向こうから鉄砲で撃つというのに対して、唯一の道具がたてであるというようなことで、やはりもっと機械化をくふうする必要がある。彼我ともにけがをしないような形で事件を解決するというための、必要な機械装備というようなものが考えられなければならない。あるいは催涙ガスとか、あるいは化学的な薬によって、できるかできないかわからぬけれども犯人を眠らせるというようなことはできないかというような、そういう点等を考えますときに、やはり科学技術というようなものをもっと取り入れて、もう少し知恵を使う必要があるということを私は痛感いたしました。テレビ等で見ますと、向こうは全くむちゃに撃ってくる。ライフル拳銃、あるいは爆弾等に対して、警察としてはもう肉弾でいくよりしようがないというような状態でございまして、非常に強く反省させられました。今後は、そういう装備の点に対しては、万全を期して、そうして、彼我ともにけがのない形で事件を解決することのできるような目的を持った装備にくふうをしてまいりたい、かように考えております。
  34. 小濱新次

    ○小濱委員 いろいろお話がございましたが、あの機械化の強化という点と、化学的な薬を研究をしていきたいということは、私は、いい思いつきであったと思います。実は、私もそう感じたわけでございまして、あの使っておったたてが、あんなものじゃ、もうライフル銃は貫通です。簡単にあんなものは通ってしまう。したがって、何枚も重ねて持って進んでおった姿を私見ておりましたが、これはまずいなというふうに感じました。いわゆる防弾たてといいますか、これもひとつ研究をしなくちゃならないなということを感じたことと、それから、催涙ガス弾をどのくらいぶち込んだかということです。一部報道されるところによると、千発くらいぶち込んだという話も出ておったのですけれども、あの催涙ガスで攻撃をしたわけですけれども、あれがもっと人体に影響のないような、そういう化学兵器といいますか、いわゆるガス弾はなかろうか。非常に苦しんで、中の赤軍が、窓をこじあけて顔を出しておりました。ほんとうに苦しかったのだろうと思うのですが、あの程度では突入できなかったというふうにも私は見ておったわけです。そこで、催涙ガスにかわるそういう化学兵器を何か考える必要がある。(「睡眠ガスか」と呼ぶ者あり)いま、うしろで、睡眠ガスという声がございましたが、私もそうだろうと思います。  そういうことで、装備の強化ということが大臣からお話がございましたので、そういうことのためにも、これはひとつ早々に研究をしていただいて、そして使用できるようにしていただきたいと思うわけですが、この新兵器については、何かお考えがございましょうか。お答えいただきたいと思います。
  35. 土金賢三

    土金政府委員 ただいまの、新しい装備の開発という問題でございますが、大臣からも、事件中から、あるいは事件直後から、この装備について、不十分である、もう少し早急に開発するようにという指示を受けておりまして、私ども、その線に沿いまして、たとえば大臣からもお話がありましたような点について、早急に検討を開始しておるところでございます。  催涙ガスのガスの問題、あるいはまた、個人装備の問題でも、いろいろあるわけでございますし、部隊装備につきましても、あのたてでございますが、確かに、あれが一枚では——あれは、相当強化した素材をつくりまして、昨年じゅうの経験に照らしまして、いままでのたてよりも急速強化したたてであったわけでございますけれども、なおかつこれがライフルにはあぶないということで、急速二枚にしたわけでございますが、そういうふうな点についても、さらに考えていきたいと思っておるわけでございます。これは、急遽そういうことを検討して、開発してまいりたいと考えております。
  36. 小濱新次

    ○小濱委員 ぜひひとつ、大臣からお話がありましたように——ああした問題、城攻めといいますか、こういう事態が今後発生しないのかどうかということについては、前回の、浅間山荘事件の報告の際に、後藤田長官から決意の披瀝がございましたが、皆無とは言い切れない、今後起こらないとは、言い切れないというお話でございましたので、今後のためにも、どうしてもいまの問題の開発を急いでやっていかなければならぬというふうに考えますので、ぜひひとつ努力をしてくださいますようにお願いを申し上げたいと思います。  次に、今度は、個人装備について少しお話を承りたいと思うのですが、とうとい命を決死隊にささげて戦った隊員の、あの涙ぐましい戦いから、警官の個人装備ということ、すなわち完全武装ということを特に研究する必要が生じたと私どもは見ているわけであります。先ほどもお話がございましたけれどもライフル銃の命中率のよさ、これに対して、何とかして防護対策をしていかなければならない。この個人装備についての将来計画、当然、これも今回いい教訓になったと思うのですが、その将来計画についても、何かお持ちになっておりましたならば、お答えをいただきたいと思います。
  37. 土金賢三

    土金政府委員 ライフル対策が、今後の個人装備としての大きな課題であるということは、ただいまの御指摘のとおりだと私どもも考えております。その点について、科学的な技術等も早急に導入して考えてみたいと思っておるわけでございますが、問題点といたしましては、この間殉職した二人の警官も顔をやられておりますが、顔をおおう方法がないかどうかというふうな問題。それから、鉄かぶとあるいは防弾チョッキも、ライフルではあぶない状態でございます。したがいまして、これをもっと厚くしなければならないということになりますと、現在でも相当の重さがあるわけでありまして、これをさらに個人装備を強化するということになりますと、単純な計算でいきますと、現在の個人装備の重さのさらに十倍ぐらいの重さにしないと、ライフルの雨の中を縦横に活動できるというふうな装備はできないことになります。そうなりますと、十倍も重くなりますと、個人装備としては、そういう活動の面から制約が出るということもございまして、私どもも、その辺をどういうふうに解決していくかという点で、一つの隘路があるわけでございますが、現在の科学技術の時代でもございますので、そういった技術革新の状況等もさらに吸収いたしまして、そういう開発を、ひとつ早急に考えていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  38. 小濱新次

    ○小濱委員 警察官といえども人間でありますから、命の大切なことはよくわかっていると思いますし、そういう点で、今回の事件からも、教訓として、どうしてもこれは早期に、しかも積極的にこの問題の研究をしてあげなくてはならないな、こういうふうに私どもは考えておるわけです。  そこで、たての話がございましたが、あのヘルメットの形ですね。これも、私は、少し研究する必要があるんじゃないかと思うのです。いまお話があったように、重装備と個人の動きの鈍化との関係、これはもうよくわかりますが、したがって、その重さということは考慮に入れなくてはなりませんけれども、このヘルメットの問題と、それから防護衣ですね。これはいろいろ形があるようです。防爆衣、防弾チョッキ、すね当てとか、あるいは腕のほうは腕当てになるのですか、こういうものが個人装備にはあるといいますね。ところが、今回目を貫通された、頭を撃ち抜かれた、こういうことでしょう。そうすると、肩と首と顔、そのヘルメット下の露出部分が、防護体制ができていない。これをどうするかということについて、先ほど、斉藤事官から、防弾マスク等の研究をしていかなくてはならないという話があったように聞いておりましたが、重装備になりますが、かぶって、危険がなく、そして、そういう地点に行ったならば簡単に脱げるような、そういう防弾マスクというもので顔とか肩、首を防護する対策を急がなくてはならないなというふうに私ども感じたわけでございます。私どもも軍人で、ずいぶん撃ち合いをやりましたけれども、これは、ここが一番こわいわけですね。したがって、顔は見せません。変なところへ鉄砲を持ち上げて乱発するような、そういう戦いが多かったのですけれども、これは実戦になるとこわいものです。そういうところから、どうしてもこれは何かひとつ研究をしなければならないと思うわけです。これも、今回の、長時間テレビを見ておった私どもの教訓として残った教えですけれども、この点についてはどうでしょうか。
  39. 土金賢三

    土金政府委員 非常に貴重なサゼストをしていただきまして、私どもも、その点につきましては、全く同感でございまして、その点について何とか検討をいたしたいと考えておりますが、それと同時に、先ほど申し上げましたように、こういった点については、やはり限度というものもあるのではないか、そうすると、それにかわるものとして考えなければならぬのは何かということを考えてみますと、やはり、先ほど御指摘のありました部隊装備という面でこれをカバーしていくという方法もあわせて考えていかなければならないのじゃなかろうか、こういうふうな点がございますが、なお、先生のおことばがございますので、検討してまいりたい、こういうように考えております。
  40. 小濱新次

    ○小濱委員 これは公安委員長にお願いしたいのですが、そういうわけで、また予算の問題が起こってくるだろうと思うわけですね。それから、警察官の数の問題、これも起こってまいります。そういう点で、結局、その予算が出てこなければいまの研究は重ねることはできません。また、整えることもできません。そういうことで、これは大臣に依存するところが多いわけですけれども、ぜひひとつ真剣にこの問題について戦っていただきたいことを御要望申し上げたいと思います。  次に移りますが、これも、先日の当委員会において、殉職せられました警察官に対して補償の内容の説明がございました。そこで、私はまた感じたわけでございまするけれども、とうとい命を失ったそういう警察官に対しての補償額の格差といいますか、これが非常に開きが大きいのですね。これはことばに語弊があるか知りませんけれども、平巡査の場合、なくなったならば、これはぐっと下であるわけです。こういう点で、この補償額の格差というものをできるだけ少なくするという考えが生じてきたように私どもは見ておるわけでございまするけれども、この問題についてはどういうお考えをお持ちでしょうか。お答えをいただきたいと思います。
  41. 土金賢三

    土金政府委員 お答え申し上げます。  殉職警察官に対する補償の問題について、階級的な差別があるのではないか、こういう御質問でございますが、現在の公務災害補償制度によりまして、殉職した場合の補償額につきましては、階級によって直接的に差を設けておるという考え方ではございません。しかしながら、死亡の原因である事故の、その発生時の前三カ月間の平均給与額を基礎としまして、これに、遺族の数とか、あるいは遺族の年齢等の状況に応じまして、一定の比率を乗ずる。現在の制度ではそういう方式をとっておりますために、結果においてはそういう差が出てくる。これは、警察の場合は、たまたま階級というものがございますが、一般の他の国家公務員あるいは地方公務員の場合でも、階級がない場合でも、やはり俸給が基礎となる。こういう点においてそういう差が出てくるということになるわけでございます。  ただ、賞じゅつ金と特別ほう賞金につきましては、そういう差はございません。総理大臣の特別ほう賞金につきましては、功労の程度と申しますか、それによりまして額がきめられております。最高五百万というふうに額がきめられておりますけれども、これは、階級とか、あるいはそういうことによる区別はしておらないわけでございます。したがいまして、今回の浅間山荘事件殉職された警察官につきましては、一時金につきましては、内田警視長が約二千四十八万円、高見警視正が二千四十一万円ということで、そういう点についての差は出てこないわけでございます。
  42. 小濱新次

    ○小濱委員 今回の殉職せられました警察官に対しては、非常な国民注視の中でのああした痛ましい殉職の模様でございましたので、これは、言うならば、はなやかな戦死というふうにも言えるのではないかと思うわけですが、同じ殉職せられました警察官の、その死亡されたときの内容をいろいろ調べてみまするというと、たとえば、路上で交通事故の処理中に——あるいはまた、白バイの隊員等が命を的に戦っておられますが、この事故も、年間相当数出てまいります。こういう人たちは、はなやかな話題はないけれども、陰で働いていて殉職せられました、こういう警察官がいるわけでございます。こういう人たちに対しての補償額が、たとえばいま御説明のあったような内容になるかというと、いままでのいろいろな話を総合いたしまして、非常に差別が生じているということになるようにわれわれは聞いておるわけでございますが、こうした陰の殉職者、非常にじみな場所で命を的に戦っておる警察官の場合、これと同じようになるかどうか。いまの御説明ですと、同じのように聞こえましたけれども、これは違うであろうとわれわれは見ている。こういう人に対しては、補償額がどういうふうになるのかというと、これは、階級的差別といいますか、格差になるであろうと私どもは考えておったわけですが、この点について、誤りがありますか。
  43. 土金賢三

    土金政府委員 交通事故の場合でも、公務災害補償という点につきましては、先ほど申し上げました方法と同じでございます。つまり、俸給が基礎となりまして算定されるということでございます。  それから、一時金のほうは、これは正確に申しますと、補償ということではございません。ほう賞金なり、そういう賞誉的な性質のものでございますけれども、これにつきましては、功労の度合いによりまして差が設けられております。これは階級の差ではなくて、たとえば壮烈な殉職をした場合と、それから不慮の交通事故によるものとの——これも殉職でございますけれども殉職した場合との差、こういう差があるわけでございまして、この点については、これはやむを得ない点もあるのではないかというふうに考えられるわけでございます。
  44. 中村寅太

    中村国務大臣 私は、いまの小濱議員の御指摘の点をお聞きしておりまして感じるのでございますが、私も委員長として平素考えておりますことは、警察官殉職することによって、その家族の生活が脅かされたり、子弟の教育がうまく都合よくできないということになることのないように、基本的にはやはり賞じゅつ金等で考えてあげなければいかぬ。そういう点から考えますと、いま御指摘のように、階級別の差があるなしにかかわらず——ないということでございますけれども、根本的に、殉職者に対する処遇が非常に薄い。やはり、自分の大事な家族の中の大事な柱であり、しかも、殉職しますのが、子供の育ち盛り、まだ子供が力になれないような状態のときが大体多うございますので、私は、殉職によって子弟の将来の運命が暗くなるというようなことのないように、今後基本的な対策を考えなければならぬということを考えております。その考え方に照らしますと、いまの援護処置というものはきわめて微弱であると私は考えておりますので、これを増加していく方向で、皆さん方の御協力を得ながら目的を達していきたい、かように考えております。  私の考え方をこの際申し上げさせていただいたわけであります。
  45. 小濱新次

    ○小濱委員 交通事故等でなくなった警察官に対して、たとえば、総理大臣の功労賞がいただけるかどうかということで、いろいろと大きな開きがあるようにわれわれ聞いておりましたので、いろいろお尋ねしたわけですけれども、いま大臣の御答弁がございましたように、この補償規定を何とか抜本的に洗い直す必要がある。われわれはこう考えて御質問をしておったわけでございますが、大臣のいまの御答弁を伺いましたので、どうかひとつそういう方向で努力をしていただきたい、と思います。  次に、表現はまずいのですが、万年警察官についてお尋ねをしていきたいと思います。  いろいろと私が資料を集めてみますというと、二十年、三十年まじめにつとめても平巡査、一番下の階級の巡査。これではあまりにも職務に夢がなさ過ぎると思うのですね。一番下の巡査の実態についていろいろと調べてみましたが、階級章についてこの前改正をしていただいたことについては、警察官はたいへん喜んでおる人が多いようです。最近はべた金の人も多くなっておりますけれども、私も、この階級章にすべてをかけて戦った十年の経験がございますが、階級が一つ上がるということは楽しみなんですね。そしてまた、誇りでもあるわけです。上がらないときは、お茶をひいたのかとか、いろいろなことばで友だちからら——片方は上がって、片方は上がらない、何だまた上がらないのか、またお茶をひいたのかということで、ずいぶん仲間同士でやられるわけですね。そういう点で、階級章というものは、警察官については大事だと思うのです。  そこで、万年巡査の解消について、警察庁は、四十七年度にも予算編成にたいへん努力をされたというふうにもわれわれ聞いておりますが、一部には、大蔵で消されたという報道もあったわけですが、万年警察官の対策について、予算はどういうふうになったのか。この対策について、内訳、内容をお持ちでしたらばお答えをいただきたいと思います。
  46. 中村寅太

    中村国務大臣 いま、小濱議員から非常に適切な御発言をいただいたのでありますが、私も、公安委員長になりまして、警察官が二十年も二十五年も巡査をまじめにつとめて、ただ学校を出ていないということのために万年巡査で終わらなければならぬということは非常に不合理である、まじめにこつこつと与えられた仕事に精進をしておれば、十年あるいは十五年たてば、巡査部長なり、あるいは警部補になっていくというような道が開かれておらなければならぬと考えて——これは開かれてはおりますけれども、非常に狭いということですね。それで、やはり、もっと思い切って階級制度というものをふやさなければいけない。そのふやすというのは、巡査を巡査部長にし、さらに優秀な人は警部補にする、あるいは、やめるときには警部ぐらいになれるような道を開きたいというのが私の考え方でございまして、途中で試験をするなんていったって、これはお互いにわかっておりますように、年を食ってくると、試験なんというものはなかなか苦手です。試験よりも、十年、十五年の年期というもののほうがとうといのであって、そういう意味で、今回は、階級定数の是正をお願いすることにいたしておりまして、大体これは政令の改正でできますので、ことしぜひそれを実現させたい。それと、将来は五〇%ぐらいの巡査になるように減らしていきたい。万年巡査というものが、いまは六六・九%で、約六七%は平巡査で終わらなければならぬというような状態でございますから、この点は、小濱議員も御指摘のように、思い切って改正をしまして、そして、年期というものを大切にする一つの慣行をつくってまいりたい。かように考えておる次第でございます。
  47. 小濱新次

    ○小濱委員 これは官房長にお尋ねしたいのですが、参考までにこれは記録に残しておきたいのですが、全国の警察官の人数、それから現在階級が一番下の巡査のパーセント。いまお示し願いましたけれども、この人数でもけっこうです。それから、二十年以上勤続しても巡査のまま退職していくという人のパーセント、こういうものがおわかりならばお答えいただきたいと思います。
  48. 土金賢三

    土金政府委員 お答え申し上げます。  全国の警察官の数でございますが、十七万五千三百五十人でございます。そのうち、巡査の人員は十一万七千三百四十五人でございます。これは、先ほど大臣からもお話がありましたように、六六・九%に当たります。それから、巡査の階級のまま二十年以上勤続している警察官の数でございますが、これは、全国で一万五千二百二十九人、これは八・六%に相当いたします。そういった数字に相なっております。
  49. 小濱新次

    ○小濱委員 大臣から御答弁がいただけまして、いまのような実態になっておるわけですが、事件も起こっておりますし、部内の士気も低下しているという今日の現状からして、今後の士気を鼓舞するためにも、特にこういう道もきちっとこの際考えてやる必要がある。こういうふうに私は強く感じましたので、お尋ねをしたわけでございますが、この間、朝日新聞に、こういう内容の記事が出ておりました。「お父さんはベテラン刑事です。私服のときは元気がいいが、巡査の階級章がついた制服を着るときだけは悲しい顔になります」という内容の投書でございました。これは、子供さんもやはり親御さんの階級ということについては大きな関心を持っているのだなと私は思ったわけですが、先ほど御答弁があったように、試験制度については、私どもも、昇任のときには全部試験制度でございましたけれども、全然形の違うような、見当違いの勉強をしなければ昇任できないわけです。ただいま大臣は、実務といいますか、そういう年期を重視するという話がございましたので、これはぜひやっていただきたいと思います。この問題については、いろいろと個人的にお話し合いをしてみますと、警察官としての心からの願いのようでございます。いろいろと最近は新聞にも出ておりますし、こういうことを伝え聞いておりますので、どうかぜひともひとつ御努力をしていただきたい。こういうふうに思います。  それで、今度は、もう一つ関連してお尋ねしたいのですけれども、二十年以上勤続しても巡査のまま退職しているという人が、先ほどお話のあったように、八・六%、一万五千二百二十九人ということになっておるようでありますが、この退職警官の退職後の就職問題、いわゆる老後の生活といいますか、老後保障といいますか、こういう問題についても、階級というものが大きく左右しているわけです。たとえば、退職したおまわりさんが就職をしようといたしまして、警察官生活二十五年としますと、階級は、と、必ず聞かれるというのですね。そうして、平巡査ですと言うと、二十五年もつとめても平巡査の階級だということについて、雇用する側の立場になりますというと、何かあったのじゃなかろうか、人物的に問題があるのではなかろうかということで、ちゅうちょしてしまうというのですね。おまわりさんの就職率がいいか悪いか、私はこまかくは知りませんけれども、そういう点で、老後の生活保障にも非常に大きな影響をもたらしているという声がございます。厚生省の老人対策の実態を見ても、非常に力の入れ方が弱い。国としても、福祉優先と言いながら、われわれの希望するような内容にはまだまだほど遠い内容になっております。そこで、こういう老後保障という、退職後の就職という問題についても、各部ごとにどうしても一考していかなくてはならないときがきたと思うわけですが、そういう点からこの問題は取り上げたわけでございます。この万年警察官の解消については、その予算についても、その内容についても、ぜひともすみやかに御検討願い、これが対策をどうかひとつ講じていただきたいと心から念願をする次第でございます。  さらにもう一点お尋ねしたいと思いますが、時間がありませんので、簡単にひとつ御質問をしていきたいと思います。  民家の損害補償という問題ですが、浅間山荘の、あの河合楽器の問題は、村長さんの好意によって破壊物処理ができたという形になりました。御存じのように、あの八時間にわたる攻防戦で、浅間山荘は廃墟と化していったわけであります。あとはおそらく使い道にならない建物のようでございます。これに対して、国家賠償の責任はないというお話でございましたが、大臣の所信表明にもございますような、凶悪犯人を絶滅していくという決意から見ますと、個人の持ち家の損害補償という問題が今後起こってくると想定されるわけです。この民家の損害補償ということについて、たとえば、この間の浅間山荘のような状態が発生して、あの家が民家であった場合、こわさざるを得ないような状態になったあとの損害補償については、やはり検討の要があると思うわけですけれども、この問題についてはどういうお考えをお持ちになっておられるか。お答えをいただきたい。
  50. 土金賢三

    土金政府委員 お答えいたします。  ただいま御指摘のように、捜査の過程におきまして——これは正当な職務行為でございますが、その正当な職務行為である捜査の過程におきまして、そういった民間の方の財産等につきまして損害を生ぜしめた場合、この場合には、国家賠償法の規定の補償をする条件でありますところの、「故意又は過失」という点に該当いたしませんために、これにつきましては、国家賠償法による損害補償ということは適用にならないわけでございます。したがいまして、現在の法制上からは、遺憾ながら、これについて法的な補償を差し上げるということができないのが実情でございます。幸い、長野の軽井沢の山荘の場合は、その所有者の方が、これについては補償は要らないというふうに言っていただいたこともございまして、これにつきましては、私どもとしては、何と申しますか、心ばかりの謝礼ということをする程度でお願いしたいというふうに考えておりますが、一般の場合も、それと違って特別の措置をとるということは、現状ではできない状況でございます。  これについては、警察だけの問題ということでなく、全般の問題として、これは今後の問題ではあろうかと存じますが、私どもといたしましては、そういう捜査の過程においてそういったことが生じた場合には、できるだけ可能な範囲のものを検討いたしましてお願いする。たとえば、自治体の市町村とか、あるいは知事さんとか、そういう方にお願いして、適当な措置をとっていただくというふうなこともあるいはやむを得ないのではないか、こういうふうなことも考えておりますが、法的な現在の措置というものはないというのが実情でございます。
  51. 小濱新次

    ○小濱委員 大臣にお尋ねしたいのですが、いまのような御答弁の内容になってまいります。したがって、個人の持ち家の損害に対して、やはりこれは検討の要があるというふうに私は見るわけですけれども、大臣のお考えはいかがでございましょうか。
  52. 中村寅太

    中村国務大臣 私らも、事件を考えますと、やはり現在の法にはいろいろ不備な点があるのではないかとも考えますが、これはきわめて複雑な内容を含んでおりますので、将来の研究課題であろうと思っておりますが、いますぐどうということはなかなか結論が出しにくいと思います。しかし、建物所有者の、本人には全く責任のない形での大きな災難といいますか、そういうものでございますから、何らかの処置がやはり必要じゃなかろうかということも考えますので、これは研究する必要がある、こういうお答えしかいまの段階ではできないと思います。
  53. 小濱新次

    ○小濱委員 今後大きな課題がたくさんあるように感じられますので、大いに部内の士気を鼓舞するためにも、どうかひとつ一そうの御努力を心からお願いする次第でございます。  予定された時間が参りましたので、これで私の質問を終わります。
  54. 大野市郎

    大野委員長 午後一時十五分から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時四十六分休憩      ————◇—————    午後一時二十四分開議
  55. 大野市郎

    大野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  警察に関する件について質疑を続行いたします。門司亮君。
  56. 門司亮

    門司委員 最初に、公安調査庁の長官、非常にお忙しいそうですから、先にお聞きをしておきたいと思います。  公安調査庁の問題については、きのうの予算委員会で、中谷君からの質問等で、問題の所在等についてはいろいろ究明されたと思いますが、公安調査庁という役所がやっておる仕事の内容その他については、私きょうはこまかく聞こうとは考えておりませんが、これと警察庁との間、これは、いずれにいたしましても、役所の形は違っておりましても、公安関係であることに間違いはないわけであって、ことに、いまの警察で一番やっかいな問題は、何といっても、刑事警察でもなければ、何でもない。やはり公安警察だと考えます。したがいまして、この警察と公安調査庁との関係をこの際少しただしておきたいと思いますけれども、あなたのほうでいろいろ調査されたこと、いろいろ研究されておりますことが、警察関係とは具体的にどういう結びつきになっているのか。ただ法的の関係だけでありませんで、具体的にどういうことになっているのか、その辺をひとつ明らかにしておいていただきたいと思います。
  57. 川口光太郎

    ○川口政府委員 お答えいたします。  御承知のように、破壊活動防止法で、警察と私どものほうは、互いに密接に協力するようにということを規定されておりまして、これが根本でございます。具体的には、私どものほうで調査して、それが警察の警備、捜査等に役立つと思われるものは警察に提供いたしますし、私どものほうの、団体の活動規制あるいは制限というものに役立つと見られる資料は、警察から提供を受けまして、将来の規制の証拠にできるものはするというように、互いに密接に協力しております。
  58. 門司亮

    門司委員 私、最初から聞いておりますように、そういう形は法律の内容ではっきりしておりまするし、私どもまた、この審議に携わった者として、その辺のことはわかっていることでありまして、さっき申し上げましたように、それなら具体的に聞いてまいりますが、今回の浅間山荘のような事件については、いわゆる極左暴力等の関係でどういう連絡がなされておるかということ。この事件については、事件関係者等の問題で、あなたのほうにもむろん具体的な調査の資料があると思います。なければならぬと思いますが、それをどういうふうに警察のほうでは把握しておったのか。警察庁のほうから、この際聞いておきたいと思います。
  59. 斉藤一郎

    斉藤説明員 今回の浅間山荘事件については、警察庁では、けさほど来も申し上げたところでございますが、赤軍派あるいは京浜安保共闘の過去における事件捜査をして、いろいろ連中の動きを察知して、そして事後の犯罪の防止に努力するということをやっておりましたが、公安調査庁でお考えになっておるような破壊活動防止法の関係については、私どもはまだ具体的な必要を感じておりませんので、あの事件について、逐一連絡をするということはいたしておりませんでした。
  60. 門司亮

    門司委員 どうもその辺があいまいですが、そうだといたしますと、公安調査庁は一体何を対象にしているかということである。個人の思想の調査だとか、個人の問題ではございませんで、要するに、連合赤軍というような、団体と団体との集まりさえもうすでにできておる。そしてこれは、思想の体系の中でじっとしているならともかくですけれども、また、勉強すること、思想は自由だというならば、それはそれでよろしいが、やっていることは、最近は、明らかに、もうほとんど活動を具体的にやってきている。したがって、私は、いまのような両方の答弁では納得するわけにはまいりません。その間に破壊活動防止法の適用がされるとかされないとかいうこともこれから議論になろうかと思いますが、しかし、これは何らかの連絡がなければならないのであって、これを単なる個人の思想動向だけだというわけにはもういかない段階に来ているんじゃないかというように私は考えるんだけれども、公安調査庁としては、これはどうお考えになりますか。
  61. 川口光太郎

    ○川口政府委員 お答えいたします。  御指摘のとおり、共産赤軍派、あるいは日共革命左派神奈川委員会所属の京浜安保共闘、これにつきましては、法的にあらゆる措置をとってこの活動を予知しなくちゃいかぬということを考えまして、両派とも一昨々年結成されたものでございますが、私ども、鋭意調査いたしまして、この団体を解放するか、あるいは活動制限するか、これだけの資料があるか、絶えず念頭に置きまして調査を進めてまいりました。警察のほうで、検挙活動によりまして得られた資料、そういうものを全部見せていただいたり、あるいは、押収捜査に立ち合わせていただいたり、そういうことによりまして資料を集めました。しかし、この両派とも、いわゆる法律的にいう団体とは若干違いがあります。綱領、規約、入会の手続、あるいは団体意思の決定、あるいはその伝達、そういう細目につきまして、はっきりしない、単なるグループと目されるような性格に近いものではないかというようなことで、破防法の適用をちゅうちょしていましたところ、その後、警察の検挙活動によりまして、幹部の大半が検挙され、残存した連中はせいぜい三十名から五十名くらいと見ますが、これが、昨年の七月以来、連合赤軍という名前で行動し出したわけでございます。その後、地下にもぐりまして、人数も少なうございますし、全然動きがつかめなかったところ、今度の妙義、浅間のような事件が起こったというわけでございまして、この事前情報は、残念ながら、私のほうはキャッチしておりませんでした。そういうわけでございます。
  62. 門司亮

    門司委員 私は、昨日の中谷君の質問を通じて痛切に感じたのですが、公安調査庁の仕事というのは、単なる個人の思想調査をやるというものではないと私は考えているのですね。これは、何といっても、破壊活動をするような一つ行為に対する考え方でなければならないと考えておる。きのうの予算委員会の中谷君の質問も私聞いておったのでありますが、どうも、何か、思想の取り締まりをやっておる感じを受けてならない。思想はこの際自由だから、どういう思想をお持ちになっていようと、それがどうということは決してない。ただ、それが行動にあらわれて、そうしてそれが社会の秩序を非常に大きく乱すという行動に対しては、答然考えられなければならない。しかし、その行動に移る前段だから、まず思想を調査するんだ、こういう思想の人はどうもこういうことをやりそうだという憶測で、公安調査庁が調査の範囲をだんだんと——きのうの質疑応答なんか聞いていますると、そこまでやらなくてもよかったんではないかと思うような、ある意味においては思想弾圧というようなことにとれないでもないようなやりとり、応答が続けられておる。私は、こういう問題は、公安調査庁の一つのものの考え方の中に、法の制定当時の事情というものとかけ離れたものがどうもあるような気がする。いまのようなあり方であっては、公安調査庁が、単なる思想の調査をするというようなことだけに終わってしまって、何か変なものが出てきやしないか。こういうことを聞くと、長官はお困りになろうとは思いますが、それなら、今度の浅間山荘における赤軍派の幹部と目される者が、あなたのほうのリストにどれだけ載っているかです。そして、それがどういうふうに警察との間に連絡があったかということです。これも、行為にあらわれてくる行為ですからね。結局、行為にあらわれるまでの間に、あなた方は、団体としての一つのものの見方をされていく。行為にあらわれたものは、一つの刑事事犯として、警察がこれを取り締まっていく。これは警察側に聞いてみなければわかりませんが、いまの警察の取り締まっている態度が、公安関係として取り締まっておるのか、殺人、強盗とかいうような、単なる刑事犯として取り締まっているのか、一向わからぬですけれども、それらの問題を解明していくにも、公安調査庁の、破壊活動をしようとするこういう団体に対する態度というものが少し明確でなければならないのじゃないか。私は、いまの公安調査庁の行き方を見ますると、何のことはない、まるで昔の特高の警察みたいで、思想調査だけやっているみたいで、思想弾圧だけにまごまごしておる、行き過ぎやしないかという気がする。それであってはならないのであって、その間は非常に微妙でありまして、いつ行動に移るかということも考えられますが、しかし、少なくとも、外部から見て、一つの団体だと考えられるものがあるとするなら、そういうものは、やはり警察側との十分な連絡が必要ではないか。単に、一つグループのようなものだから、これでいいんだろうというようなことでは、法律をそのまま解釈しても、いささかはずれたような気がしますが、その辺の感じはどうでしょうか。
  63. 川口光太郎

    ○川口政府委員 お答えいたします。  御指摘のとおり、私どもも、こういう過激な集団をそのまま放置してはいかぬということを常に考えておるのであります。ところが、破壊活動防止法は、御承知のように、成立当時の事情によりまして、非常に厳重な手続を要求しておるわけでございまして、団体規制とか、その他こまかい活動制限をする場合でも、事前に全部相方に証拠を見せて、いろいろなことを要求しております。そういうために、いろいろな制約を受けまして、なかなか思うように簡単には適用できないというようになっておるということを御理解願いたいと考えます。  それから、破防法制定当時のこととだいぶ離れておるのではないかというお尋ねでございますが、そういうことはないと私ども確信しております。御承知のように、破壊活動をやり、また、将来もやるおそれのある団体ということで、それを対象にしておるのでございますが、無制限にそれを広げるわけではありませんので、いろいろな事情から、特定団体を公安調査庁の長官が指定いたしまして、それに限っていろいろ職務上のワクをはめまして、限定した範囲内で調査を進めており、そのワクをはみ出したり、横へ曲がったりは決してしないように常々注意しております。
  64. 門司亮

    門司委員 それは、長官としてはそういうことで答弁になろうと私は思います。ただ、私ども非常に遺憾に考えておりますのは、今度のような事件が起こり、しかも、その背景になるものは、そういう一つの団体がある。これは、いま、長官は、グループのようなもので、断定はできないとおっしゃっておりますけれども、世間全体はやはり一つの団体として考えておると考えて間違いないと思う。一体、公安調査庁は何をやっておるのだというような感じがないわけではないと思う。ところが、その間の連絡が十分でなかったということであれは、いまの公安調査庁が、単なる思想動向だけを調査するような、さっき言いましたような、昔の特高みたいなものなら、私ども考えなければならぬ。かえって、世の中を混乱させる問題になってくる。だからといって、それなら、出たものを、いかなるものでも、単なる刑事犯のような形で、取り締まりさえすればそれでいいかということになると、そうもいかない。いろいろ警察その他から出されたものを見てまいりましても、それから、この間の公安委員長説明や、警察当局の話を聞いてみましても、大体根こそぎ逮捕されて、そう残ってはいないようだということで、それはそれであるいはいいかもしれない。そこまではそれでいいかもしれませんが、しかし、この団体が全部なくなったとは私どもは言いかねないと考えておる。  そこで、長官、非常に忙しいそうでありますから、私は長く引きとめはいたしませんが、これはあとで公安委員長にもお聞きすることでありますので、両方一緒に聞いておっていただいてけっこうだと思いますが、こういう事件が起こる社会的背景というもの、つまり、これを防止しなければならぬ取り締まりの当局側から見た世相に対する感想がもしこの際言えるなら、はっきりこういう場所で言っておいてもらいたいと私は思う。  この間、後藤田警察庁長官にかなり話を聞いてみましたが、やはり役人としての立場があって、政府を批判するのはとらかというような——そうは言いませんでしたけれども、どうもそういうことらしいので、これ以上私に言わせるのは酷だということで、答弁についてはかなり渋っておりました。私は、後藤田君の立場は立場として了解しないわけにはまいりませんが、しかし、問題は、やはり日本の治安をどうするかということであって、それが特の内閣に遠慮するとか、あるいは時の内閣の顔色を見なければならないとか、——むろん、任命権者である上司のことも配慮しないわけには、人情的にはいかないと私は思う。しかし、職務的には、そういうものにこだわっておったのでは、単に自分のところへ来たものだけを始末するというだけであって、こういう暴力の根絶にはならないというような気がいたします。したがって、これは、あなた方の職務とあるいは離れておるかもしれない。いや、私どもの職務はそうじゃないんだ、法律にはそこまで書いてないので、ただ、現象的に起こってきたものについてどう対処するかというのがわれわれの仕事であって、そこまでわれわれは考えていないんだ、われわれの職務はそこまでであって、したがってそこまでを忠実にやっていればいいんだというようなことも言えようかと私は思います。言えようかと思いますが、私どもの知りたいのは、門外漢と言うといささか言い過ぎかもしれませんが、政治を行なう私どもの感覚、あるいは、世の中のこういう問題についての評論家といわれるような人たち、あるいは、こういう問題を一つの取材としていろいろな小説を書かれておる文筆家の諸君というような人は、推理的に、この問題の背景にはどういうものがあるんだろうかというようなことを新聞に種々書かれておりまして、そしておのおのの批判が出ていることは御存じのとおりでありますが、しかし、それはそれとして、直接皆さんが担当されておる形の中で、特に、警察当局のほうではっきりしてもらいたいと思うことは、取り調べその他の過程で、事実上犯人と接触をいたしておりますので、その背景がどういうところからきているかというようなことはある程度わかるはずだと私は思うわけです。こういう問題がある段階では公にされて、あるいは政府部内でも、国会などでも、そういうものがはっきり明らかになって、そうして、国民全体がそういうもののなくなることのために協力するような体制を整えていきませんと、公安の秩序というものは、どんなに警察がやかましいことを言っても、どんなに強い弾圧法を設けても、これは、素地があればなくなるものではございません。さようは、この間警察庁長官に話したようなやりとりはやめますけれども、いつの時代でも、こういう問題の起こる時代には、必ず時代的な背景があるものであって、単に、教育の問題がいいとか悪いとかいう問題でなくて、もう少し深い意味の土壌があるはずであります。そういう点にもしお気づきの点があって、そして発表される範囲のものがあれば、この際ひとつ公に——まあ、ここでやれは公になりますが、ひとつ勇敢に発表してもらって、そうして、そのことによって、私ども政治に携わる者の反省もありましょうし、また、直接政治を行なっている内閣等に対しても一応の警告をされるという、いわゆる職務の関係からくる勇気がこの際必要ではないかと私は思う。どこまでも政府の任命権者にわれわれは忠実であればいいんだという考え方は、こういう事件が次々に起こるような危険性があるときには、この際ひとつ思い切ってやめていただきたい。  そうして、世の中が平穏になるということばはどうかと思いますが、秩序が守られるような社会になることのために、くどく申し上げたようでありますが、私の気持ちはそういう気持ちからお聞きをするのであって、あなた方が政府を誹謗されるとか、そういうことがかりにあるとしても、決してそれをそのまま私ども受け取るわけではありませんし、また、政府も、こう言ったから、あるいは、どうもけしからぬから首を切ってし願えということは、できない相談だと私は思います。もう少し大きい目で、皆さんの職務を通じて、こうした土壌をなくするにはどうすればいいか、あるいは、この土壌のできた原因はどの辺にあるかというようなこと等について、この際お話が願えるなら、ひとつそういうこと等を話していただきたいと思います。
  65. 川口光太郎

    ○川口政府委員 ただいまは、私どもに対する非常に適切な御指示といいますか、何か、非常に身にしみて拝聴をしたのでございますが、私ども、もちろん、政府の国家公務員でございまして、法律の範囲内で全力をあげているわけでございますが、公務員であるほかに日本人でございまして、日本の国の自由と平和を維持するにはどうしたらいいか。政治から、教育から、社会、経済、いろいろなことを絶えず考え、勉強しながら、自分の仕事につとめております。もちろん不十分でございますが、全力をあげて自分の職務に邁進いたします。法律あるいは国民の期待に沿いたいということしか現在は申し上げられないと思います。それ以上は、いますぐ考えになって出てきませんし、きょうはこれでお許し願いたいと思います。
  66. 中村寅太

    中村国務大臣 門司議員の質問の焦点というものが私にははっきり受け取りにくかったのでございますけれども、こういう過激派集団というようなものがどうして企まれてきたかということだと思います。これは、私は、やはりいろいろの原因があろうかと思いますけれども、今日の過激派集団の状態を見ますと、これは、一つ革命を目標とした人たちが、もう全く、何といいますか、幻想的な考え方に立って、社会の秩序も考えなければ、国民の迷惑も考えない。まあ、われわれから考えれば、気違いじみた行為であるというような結果であると思いますが、こういう人がどうしてできたのかということになってくると思います。生まれてから今日、ああいう反社会的な行為をするまでの過程の中に、いろいろ要素があるだろうと思いますが、どういう要素であるかということにつきましては、私は、勉強不足でことばに言いあらわし得ないのでありますが、やはり、いろいろ複雑な要素があってああいう気違いじみた行為をやるようになってしまっておるんだろうと思います。それが、集団的にだんだんやっておるうちに、エスカレートしていって、今日のような状態になっておる。こういうことではないかと思います。
  67. 門司亮

    門司委員 私は、いまそこまでしかお話しできないとするなら、もう少し意地の悪い質問をしたいと思います。一体、公安調査庁にしたところで、警察にしたところで、何のためにあるかということです。何が使命かということですね。両方の役所の使命というのは、国家の秩序を守っていって、そうしてやはり国が安全である——これは外交的な安全ではありません。国内のお互いが安心して生活のできる社会をこしらえていこうとする。これをせんじ詰めていけば、防犯ということになるんですね。出てきたものだけをつまんでいくというんなら、警察庁というものはきわめて気やすいものである。楽なものである。これは警察官全体の問題もありまするし、また、公安調査庁の役人の方々にも考えてもらわなければならないのだが、自分たちの職務というものは、単なる犯罪をつかまえればそれでいいんだという、社会悪に対して働くだけではなく、そういうものがどうして起こるかということを考えて、これを起こらないようにすることが大事で、最大の任務は防犯の任務だと思う。それが防犯の任務だとするならば、そこにはやはり原因がなければならない。出てきたものだけをつまんで芽をつむというのなら、これは別にどうということはない。しかし、警察の職務、それから公安調査庁の職務というのは、そういう崇高なものであって、また、警察官自身も、そういう立場で、自分たちの力で世の中の法の秩序を守り、秩序ある社会をつくっていくということが大事で、それが望ましい社会である。そこに、やはり、警察官としての誇りがあると私は考えている。職務上の誇りというものは、そこになければならないと思う。自分たちがいるから世の中は静かなんだ、自分たちがいるから世の中が平穏なんだという誇り。しかし、実際は、こういう暴動が起きている。まごまごしていると、今度は右翼がどう出てくるかわかりませんが、世の中の実態があまりそう平穏ではないように見受けられるが、そういうものが出てくる原因というものはやはり——第一線のおまわりさんにそういうことを言ってもなかなかむずかしいと私は思うが、しかし、最高の責任者である国家公安委員長であり、警察庁の長官というような職務におられる方が、出てきたものが、こういう気違いじみたやつがどうして出てくるのだろう、これはどうすればなくなるのだろう、過激派集団というような反社会的な連中が一体どうして出てくるのだろうということを考えないで、その原因をつかれないで、出てくるものだけを処理するというのでは、いつまでたっても世の中はきれいにならない。同時に、そういう職務というものは崇高ではないと思う。  昔のことを言うとおこられるかもしれませんが、昔の第一線の刑事警察を受け持っていた者が、よく、おかっぴきだなんて悪口を言われた。その上に同心がおって、その上に与力がおった。そういうような階級があったが、これと同じように、単に出てきたものだけを処罰するということだけでは、世の中の法秩序というものはできない。同時に、警察や公安調査庁の前線の諸君も、自信を持った活動はできないのではないか。おれたちがいるから世の中は静かになるのだ、おれたちがいるから世の中は法の秩序が守られるのだという、そこまで来ますと、くどいようでありますが、どうしても、よってきたる原因というものを芟除しなければ、結局世の中は平穏にならない。このことは、警察庁の長官なり、公安調査庁の長官なり、あるいは公安委員会委員長という最高の指導部におられる方は、その社会に対する烱眼と反省というものがなければ、ほんとうの意味の警察にはならないのではないか。そこからくる問題が、きのうの中谷君の質問の中にもありましたように、何か、お金を出してスパイ行為みたいなことをやらせるということになり、それに謝礼をするのが何が悪いのだというような態度がそこに出てくる。それは、なるほど、出てきたものを芟除しようとすれば、そういう行為も、あるいは必要かもしれない。しかし、それをやると同時に、こういう行為がなぜ起こるかということの反省というものが絶えずなければならない。そのことをこの際私は聞きたいのでありますが、念のためにもう一度……。  私はそこまで申し上げましたが、それでも、おれたちは職務だけをやっていればいいのだ、警察官は、出てきたものをつんでいればいいのだ、それ以上われわれが考える必要はないのだ、それ以上考えるのは、逆に、政治家のおまえたちの仕事だ、ということになるのかもしれない。しかし、われわれの仕事、政治の行き方が悪いからこういうものができたというふうにかりになるといたし属しても、その辺のことは、率直に、こういう機会に述べられることのほうがよろしいのではないかと私は考える。これ以上私は申し上げませんが、いま申し上げたことで、答弁というか、お答えがもし願えるなら、こういうもののよってきたる原因というものがとういうところにあるか——この前の委員会の、公安委員長のお話を見てみますると、何か、教育がどうもあまりおもしろくなかったのではないかというような口調のくだりがあるようでありますが、むろん、教育のこともあるでしょう。あるいは、世の中が物質万能主義で道徳がすたれてくるとか、あるいは、個人主義になって、連帯性がなくなるとか、そういうようなことがいろいろあると思いますが、そういうものがどういう形で出てくるかということが一つの原因であろうかと私は思います。だから、この際率直に聞いておきますが、社会秩序がこうして乱れるということは、いま申し上げましたように、思想的に、と言うとまた多少語弊があるかもしれませんが、あまりにも個人主義になり過ぎておる。それからもう一つは、露骨に聞いておきますが、これはおそらく、答弁はあなたのほうではむずかしいと思うけれども、何しろ、政権がずっと長く続き過ぎておって、そしてなおかつ、社会の改革、新しい社会というものがなかなかできてこない。若い者は絶えず新しい社会を探求していることは、これは青年の思想でありますから、曲げるわけにはいかない。ところが、政権はかわらないで、ずっと同じようなことをやっていて、ちっとも進歩がないじゃないか、社会の変化というものが見られないじゃないかというような、ごく単純な気持ちからきている問題が、私は、今度のような事件にはあらわれてきていると思うのです。ほんとうに彼らが革命家であるなら、こういうへまなことはやらぬと思うのです。もう少し考えたことをやると思う。赤軍の言っていること、それからこの連中のやっていることは、どうも、自分たちだけを英雄視しておって、何かしら、ものが成就するとかなんとかいうようなこと、革命なんてことを考えているかどうかすらもわからぬような状態だと私は思う。だから、そういうことがなぜ一体起こるかということの一つ二つを、ちょっと片りんだけをいま申し上げましたが、教育の施設が悪ければ教育の施設が悪いでもよろしいが、社会のそういう連帯制の観念がなくなった原因がどういうところにあるかということ、あまりにも世の中が物質的文明になり過ぎて、自分たちの住んでおる社会環境があまりおもしろくないというような、そういう原因があるのだというようなことが、もし、あなたのほうで言えるなら、あなたの方の立場から見た、こういう問題が起こる原因を、私ども政治を行なう者のために、この際ひとつ片りんだけでも——それは、さっき申し上げておりますように、あなた方はやはり防犯の立場にあるということであって、出たものをつむだけが仕事では決してないと私は思う。そういう崇高な、世の中の秩序を保つ上においての職務だということを考えていただいて、奉直にもう少しお話を願えないと、せっかく来ていただいても、ただ通り一ぺんの法律の解釈を聞いただけでは、法律制定当時からこれに携わったものからすると、そのくらいのことはおれのほうではわかっているのだということが言いたくなるわけでありまして、ここのところを、もう少し何とかなりませんか。
  68. 中村寅太

    中村国務大臣 私は、警察の仕事、使命というものは、通り文句のようになりますけれども、やはり、与えられた法の範囲内で犯罪を未然に防ぎ、起こった犯罪をすみやかに検挙して、これを処分の方向に持っていくという使命だと思います。いま、門司委員が仰せられたように、その背景というものを考えながら警察行為というものはやれるものではないのじゃないか。警察は、どこまでも厳正中立の立場に立って、与えられた法律の中でやるべきである。その点については、私は、間違いはないのじゃないかと思います。  ただ、門司委員が心配をせられるいろいろな点は、どこに責任があるというように、ただ一つではなくて、やはり、あらゆる面にこういうことが起こってきた原因はあるのだろうと思うし、この間は、教育というものをただ一つ取り上げただけで、教育——いわゆるこういう社会が生まれておるこのすべてに責任があるといえば逃げ口上のようでありますけれども、結局は、こういう社会が生まれるまでのすべての点からこういうものが出てきておるのじゃないか。ただ、さっき門司議員も仰せられましたように、過激派の今日の行動は、私は、革命家の姿ではないと思うのですね。革命家の姿であれば、やはり、世の中をようなそうというような一つの理念のもとに行動が律せられていると思いますけれども、全く、今日の行動というものは、革命家というものでなく、凶悪な強盗殺人犯というような性格が多分に出ておる。そういうことで、これが政治犯とか、あるいは革命家のやっておることだと考えること自体が少し適切ではないのではないか。かような気持ちすら抱くものでございます。私らはそういう観点から現象だけとらえて、それでは根源を断ち得ないではないかと、ちょっとおしかりを受けますけれども、今日の時点では、警察官警察官の立場でこれを防いでいく以外にない。あと、いろいろの点については、立法等で犯罪を防止しやすいように、あるいは検挙がしやすいように考えていただくということも、こういうものをなくしていく一つの力ではないか。そういうことを考えて、総合的な力というものがこういう社会層を是正していくという方向に発揮されることによって、こういう事犯をだんだん少なくしていけるのではないか。そういう考え方に立って、警察警察の持ち分に万全を期していくという所存でいまやらしておるわけでございます。
  69. 川口光太郎

    ○川口政府委員 過激派集団が非常に発展する原因とか、━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━それでは取り消します。こういう対象団体の調査の過程を通じまして、いろいろ、先ほど、抽象的に、政治、経済、文化とかいうことばで申し上げたのでございますが、そこにあらわれたいろいろな私ども調査した結果から見られる原因、あるいはその対策をどうしたらいいかというようなことにつきまして、私どもの考えを、上司である法務大臣に随時報告いたしまして、閣議その他の発言でそれを実際の政治に生かしていただく、そういうように心がけて仕事をしておるわけでございます。
  70. 門司亮

    門司委員 ひとつ、間違えないように聞いておってもらいたいのですよ。私は思うのですが、思想は自由なんだ。どんな思想があろうと、それは個人の自由でありまして、それがどういうふうになるかということを断定して、こういう思想がこうだああだということでやられるということのほうが実は間違いであって、どんな主義があろうと、どんなものがあろうと、主義だとか主張だとかいってここで議論しておっては果てしのないことなんですね。あなたがそんなことを言うから言うのですけれども、よけいなことですが、世の中はほんとうに、みんな平和をこいねがっておって、人殺しは非常に大きな罪なんですね。ところが、世の中には、戦争という、公然とした人殺しがあるのですね。これは一体だれがやっておるかというと、国家がやっておる。といっても、国家だって人間が形成しているんだ。そのときの経済の問題だとか、いろいろな問題がここに出てきて、やむを得ず、ということばはどうかと思いますけれども、われわれから考えれば、とんでもないことをやっておると思います。ある意味においては、人殺しが平然として行なわれる。しかも、まごまごしていると、そういうことが正義であるかのような錯覚を起こして人殺しをやる。戦争ということをやる。しかし、そういうものを議論していると果てしがないのであって、いまのお話のような、単なる思想だけを追っかけるというようなことでは間違いができるということでありまして、それよりも、むしろ、そうした思想は思想として、こういう過激な行動に出ていることが事実目の前にあるのですから、これが革命的なものがあろうとなかろうと、やっていることがあるのですから、この人たちの思想がどういうものであっても、どうしてこういうものができるかということ、これが非常に大きな問題で、いまお話しのように、法務大臣に報告をして、そしてそれが閣議の治安関係閣僚会議等であるいは議論されておるかとも思います。しかし、その効果はあまりないのではないか。こういう問題が出てくる以上は、あまり効果がないということが考えられる。だから、私は、きょうここでこれ以上あなたに質問しても始まらぬと思うのです。私は非常に失望しておりますが、あなたが出られないというのを無理に来ていただいたのは——そういう問題よりも、むしろ、大臣に報告されたということがあるなら、そういう報告の内容等をちょっと聞かしてもらいたいと私は思うのですが、これは上司に報告したのだから、聞きたかったら上司に聞いてくれというようなことにあるいはなるかもしれない。私は、こういう問題についてはもう少しものの考え方をひとつ変えてもらいたい。  それからもう一つ、私の時間もあと幾らもないようでありますけれども警察関係で聞いておきたいと思いますことは、いまの取り締まりの中からくる、今度の例の浅間山荘事件のような暴力の問題が、端的には、さっき私の言いましたように、革命家のやる仕事ではない、単なる暴力だという感じがするわけでありますが、しかし、内容は必ずしもそういう関係ではなかったのではないか。単なる気違いだということでこれを済ますわけにはいかないというのは何度か繰り返しておりますけれども、原因を——あなた方から見た、こうした世相になったというものが出てくることがわからない。私の聞いておりますのは、警察官が、出てきたものだけをどんなにつみましても、それでなくなるものでは、世の中はないということですね。一つの潮流の流れだということです。これは非常におかしなことを聞くようですけれども、世の中の動きというものについては、古い話ではありますけれども、例の、陽明学者として日本で非常に有名な学者の大塩平八郎がおりますが、これは御承知のように、幕府の、というか、あるいは岡山藩でありますか、大阪の天満の与力までなった人であって、最初はおかっぴきであったと私は思いますが、こういう人たちが、警察官の立場として世の中を取り締まってきた。しかし、それだけ取り締まっただけでは、もう世の中はどうにもならない社会情勢になってきていた。そこで、この社会情勢を何とかして直すには、やはり、ああした、大塩平八郎の暴動だと言われておる暴力行為にも訴えなければならなかった。この悲壮な決意。しかも、あの人の養子であった人も、当時天満の与力であったことは間違いがない。現職であったことに間違いがない。それらの諸君や、前半生は有名な与力として、能力のある与力として認められた人が、なぜああいう暴動を起こしたかということです。その間のいきさつなんです。これはやはり、あの人たちのいままで歩いてきた道が、世の中の犯罪というものをたくしようとして、世の中をよくしていこうとして、悪い者をいままでは取り締まってきたが、しかし、こういう悪い世の中になってきて、もう取り締まりではないんだ、世の中を変えなければだめなんだという次元にきて、大塩平八郎のあの暴動がおそらく起こったものだと私は思う。今日あの人の伝説を読んでみてそういうことが考えられる。私は、この心情はいまでもやはり通用していると思います。そういう心情に立たれて世の中の実際を見てもらいたいということがありますので、いままで聞いたわけでありますが、端的に職務の中から——これも職務外と言われるかどうかわかりませんが、法律の精神から申し上げれば、この法律の精神は、警察法とともに、どこまでも、いわゆる犯罪の防止がこの法律の指導精神だと私どもは考えておる。この考え方に間違いがあるかないかを、ひとつ、この際伺っておきたいと思います。
  71. 川口光太郎

    ○川口政府委員 お答えいたします。  先年の御指摘されたとおりと考えます。
  72. 門司亮

    門司委員 そういうことであっさり逃げられてはかなわぬですがな。そうだとすれば、これを防止するにはどういう施設、どういうものが必要かということですね。公安委員長が、きのうは、教育の一端がどうだとか話されましたけれども、これも一つの世相だと思います。そういうものがあればあるとして、世相だと思います。そのほかに、今度の問題などでも、おそらく親子の断絶みたいなことが考えられる。しかし、これは、われわれ一般の人から見た親子の断絶であって、彼らから言わせれば、大義親を滅すというような崇高な気持ちで、親の言うこともさることながら、おれたちは世の中のためにやっておるんだという考え方があったと私は思うのです。これは、私ども思想運動をしてきたから考えられるのですね。親が何と言おうが、きょうだいが何と言おうが、それは肉親のことである、おれたちは世の中を正そうということを考えているんだからこういう行動に出るんだということ、これは、社会運動をするくらいの者は、それくらいは考えておる。だから、親子の断絶からああいうものが出たとか非難するのは必ずしも当たらないのじゃないか。あの人たちから見てみれば、それは違うんだということになる。だから、彼らが社会正義と考えるのは、いまの世の中が間違っておるという断定がなければ、社会正義ということばは出てこない。その間違っておる点がどこにあるかということです。そこまであなた方に掘り下げて考えていただかぬと、さっきのお話のように思想は自由であるべきものが、ある種の思想を持った者はけしからぬという妙なことになろうかと私は思う。私は、きょうは忙しいところだから、これ以上進めませんが、そういう点、ひとつ一応考えておいていただきたいと思います。  時間もございませんし、約束の時間がありますので、それをあまりオーバーすることはよろしくありませんので、私は、警察庁の長官に一つ二つ聞いておきたいと思いますが、警察で教えております教科書の内容というのはどういうことですか。いま私が申し上げましたような、防犯ということに主力を置いておるのか。あるいは、検挙に主力を置いておるのか。これは、両方一緒だと言われるだろうと私は思いますけれども、どっちに大体主力を置いておりますか。
  73. 土金賢三

    土金政府委員 警察学校、警察の教養といたしましては、警察法に定められておる警察の職務の各般にわたって、それぞれの教養をいたしておる、こういうことでございまして、特にどこを中心ということではないというふうに考えております。
  74. 門司亮

    門司委員 そういうきわめてあいまいな答弁のようでありますが、それでは、もう少し突っ込んで聞いておきますが、警察と住民の連帯性というものが、警察の教養の中にございますか。
  75. 土金賢三

    土金政府委員 警察における教養の目標は、警察職員が、民主警察の本質と警察の責務を自覚して、実務に関する知識、技能を体得し、それによって、公正、明朗、かつ能率的に職務を遂行し得るような警察官を育てるということが警察の教養の本質でございます。その線に沿って、府県警察学校、あるいは管区の警察学校、あるいは大学、それぞれのクラスというか、階級の差に応じまして、それぞれに適した教養をしていく。これが根本の教養の考え方でございます。
  76. 門司亮

    門司委員 どうも、私は、警察と住民との連帯性の中から——いまのような答弁では、単なる警察官だけを養成していこうという行き方のようであるが、これは警察制度の非常に大事な問題であって、これでは、単に警察官が取り締まりをするということだけで、さっきから何度も申し上げておりますように、上に出てきた芽をつむというだけであって、その下まではなかなか入ってこない。警察制度の最も重要なことは、警察官の行なっておる職務というものを住民が十分理解して、そうして、自分たちの住んでおる地域社会からは犯罪人を出さないというような考え方をここに植え込んでいくことです。いわゆる警察と民衆が遊離をしないように、警察と民衆が絶えず連絡をし合って、その地域から犯罪人を出さないという、そういう地域との連帯性がなければ、どんなに強圧な警察官をこしらえたところで、取り締まりはできません。そういうことから、何か、スパイ行為のようなことをする協力者には報償金をやるなんということをやっているそうでありますが、そういうことだけでは、世の中の治安なんかできやしない。だから、警察と民衆との間の連帯性というものについては、もう少しはっきりしておいてもらう必要がありはしないかということです。そうして、警察官は、なじみを住民に非常に深くしていくということです。午前中の小濱君の質問の中で、公安委員長もお聞きになったと思いますが、警察の階級制ということが問題になりましたが、私は、警察の階級制というものはあまり気にしないのですね。警察官に誇りを持たせるということはほかにあるのですね。これは一つの制度でありますが、これは古い話でありますから、別に、いまこれを適用しようとは考えておりませんけれども、私は、ちょうどいまから二十年ぐらい前になろうかと思いますが、アメリカに、この問題でしばらくおったのでありますが、そのときに、アメリカの年をとったおまわりさんが、階級は一番下の階級でしたが、君は何年それをやっているんだと聞いたら、おれは二十六年やっている、これを見ろと言うのです。腕のところに筋があるんですね。おれは警察官を二十六年やっておる、今度ここに新しく署長が来たが、あれは署長としての事務遂行にはおれよりも能力があるからやってもらっていいが、しかし、第一線の犯罪の阻止、犯罪の検挙は、ここの署長よりはおれのほうが向いているんだ、と言って、腕に筋のついたやつを私に見せて非常に自慢しておりました。おれはこれをやるんだという気概、警察官は、階級をさることながら、自分たちのやっていることに誇りを持つという立場を取ってもらいたい。それには、やはり住民の協力が必要だ。理解が必要だ。それを、いままでのような官僚組織で、何かしら、金の筋が入ったのがえらいんだというようなことで、下積みの警察官は、世間から見て、あれはいつまでもちっとも出世しない、あれはだめだというような印象を与えることのないように警察官というものを育て上げなければ、本物の治安の維持には当てられないと考える。そうするには、少なくとも、警察と地域社会との連帯、警察官と住民との連帯性というものを、もう少し教養の中に入れるべきではないか。それがいまのような状態では——時間があと十分しかありませんので、あとこれ以上引き出すわけにはいかぬと思いますが、そういう教養についてはどういうことをされておりますか。ついでに一言だけ話を聞いておきたいと思います。
  77. 土金賢三

    土金政府委員 府県警察学校における外勤警察官のあり方というか、勤務の心得とか、そういう点で教養いたしますほかに、さらに、実地に勤務しておる場合に、実務教養として、いま門司委員がおっしゃいましたような、そういう線に沿って教養いたしておるわけでございます。
  78. 門司亮

    門司委員 これ以上、時間がありませんから聞きませんが、私は、警察学校の教科の内容と実際というものをほんとうはもう少し聞けばいいと思ったのですが、いまここで聞くわけにはまいりませんが、内容等について、もし参考になるような資料があるなら出してもらいたいと思うのです。ことに、世の中がこういうふうに非常に騒然となってきた場合、警察のあり方というものは非常にむずかしい、というより、やりにくいのだから、どういう教科の内容であるかということを、筋書きだけでもけっこうですから——私は、それをみんなもらって全部読むわけにはまいりませんので、できれば、アウトラインだけでけっこうですから、ひとつそれを出してもらいたいということです。  それから最後に、これはちょっと警察と離れますが、交通関係の問題で、たてまえだけをひとつ聞いておきたいと思いますが、これは公安委員長のほうからひとつ御答弁願いたいと思います。  警察行政の中にはいろいろ問題がございまして、犯罪を取り締まるという大きな問題が一つと、それから、それをどう防止するかというようなことも一つございます。ところが、いま、日本で一番人命を損害しておるのは交通の問題であろうかと思います。ところが、この交通の問題に対しては、一般警察とはやや異なった関係が私は必要だと考える。そこで、各府県には、交通の係がずっとおいでになるようでありますけれども、これの専門的の、略して言えば、いわゆる交通警察というものを独立させるような意思はございませんか。
  79. 中村寅太

    中村国務大臣 考え方として、私は、そういうことも一つの新しい行き方であると思いますが、現在の時点では、交通警察だけを独立させてやるというようなことは考えておりません。ただ、今日の交通行政等から考えますると、私は、交通警察に携わっております立場から考えても、交通事故等が年々きわめてふえておる。本年度は昨年度より減ったと申しましても、一万六、七千人もの死者があるし、約九十数万人のけが人があるというようなこの状態は、やはり、交通警察を独立させるかさせぬかは別として、もっと力を入れて取り組まなければならぬ課題であると思っております。  それから、立ったついでに申し上げますが、先ほど門司委員のおことばの中に、大塩平八郎の例をとっていらっしゃいましたけれども、私は、いまの警察官というものは、どこまでも、与えられた法の中で忠実に犯罪を未然に防ぎ、犯罪人を検挙していくという中立的な立場に立つことが必要であると思います。大塩平八郎は、時の幕府に対する一つの違う考え方からああいう直接行動をとったんだと思いますが、私は、やはり、警察官は、こういう複雑な社会では、どこまでも、与えられた法のワクの中で使命を果たしていくということが正しいのではないかと考えております。  それからもう一つ、今日の、階級集団の、あの残虐行為をやっております学生は、あれは革命家とは考えられないのではないか。革命家は、世の中をよくするという基本的な線があるはずでございますから、その線から考えるときに、国民を殺戮するというようなことは、革命家に許されるワクの中には入らぬのじゃないか。今日、もう、そういう域を出てしまって、全く、強盗、強悪犯人そのもののような姿に堕しておるということは、これは注視しなければならぬ観点ではないかと思って、警察としては対処しておるわけでございます。
  80. 門司亮

    門司委員 それ以上押し問答はいたしませんが、私どもの考え方と多少違うようであります。ただ、警察が、出たものだけを芟除すればいいんだという考え方でおるのでは誤りだ。一線の警察官諸君はそれである程度いいと思いますが、少なくとも、警察のたばねをされる人は——警察行政というものは、犯罪検挙をやるのが警察行政ではありませんで、警察行政のよってきたるものは、犯罪を防止するということが最大の任務である。出たものだけをつんでいくというのでは、これは何をか言わんやで、私は、やはり、警察の指導者というものは、犯罪をどうしてなくするかということにぜひ集中をしてもらいたい。犯罪のある社会がいい社会では決してありません。いまの大臣の答弁は、私は。そのままそれを承服するわけにはいきません。赤軍連中行為革命行為であるかどうか。私がさっき申しましたように、ほんとうの意味の革命行為ではないということは、私どもはおおよその見当はつくし、そういうことになろうかと思います。私がとやかく申し上げておることはそういうことである。  それから、警察行政についても、いま申し上げました交通警察の問題をどうするかということは、この犯罪というのは——犯罪ということばを使っていいかどうかしれませんが、一般の犯罪とは違うのですね。この中には、社会的の現象が非常に大きいんですよ。一般の犯罪のようなものではない。これは、人をひき殺そうとして殺す人はきわめて少ないと思う。しかし、出てきたのは、人間が殺されているということである。これは、殺人罪だというのと交通事故だということで分かれているぐらいのことであって、人間の命についてはちっとも変わりはない。それが、一年に一万人。これがもし、刑事事犯として一万人の人間が殺されてごらんなさい。警察としてはどうなりますか。どうにもならぬことになると思うのですね。ただ、これが交通事犯であるから、案外こういう問題が大きく取り上げられないが、人の命は同じことであって、こういうものをなくするには、一つのこれだけの専門の警察を置いて——警察行政というものは、さっき申し上げましたように、その原因はどこから来ておるか、どうすればいいかということで、直接、ということばを使うのはいかがかと思いますが、検討される必要がありはしないか。いまのように、警察官の交流といいますか、内部の交代で、きのうまで一生懸命交通をやっておった者が、警察の都合でどこかへかわっていって、いままでのしろうとが交通に来てやっておるというようなことでは、今日の交通戦争の事態に対処する警察の態度としては、私はどうかと思う。少なくとも、これは一つの罪悪だ、人命を損傷する一つのできごとだとして、それだけをつかさどっていく、連帯性を持った別個の警察の必要がありはしないかということを私は申し上げたい。犯罪には、往々にして、ひき逃げだとか、交通違反だとか、交通関係から来る違反事項が非常に多いから、警察でやることでよろしいかと思いますけれども、普通の犯罪とは全然違うのですね。それから、起こっている原因も全然違う。本人の意思であろうとなかろうと、道路の関係が悪いとか、あるいは諸般の事情でぶつかってきたもので、しかも、この犯罪は人と人との関係である。人と人とが気をつければ、こういう犯罪は起こらぬはずである。そうして、この犯罪を起こして、得はどこにもないということである。どろぼうは、盗むほうが得なんですからね。一方の取られたほうは災難だけれども、取るほうは、それを一つの仕事としている。交通事故だけは、ぶっつけて得をするやつはいないと思う。だから、性格が全然違う。同じような刑を受け、裁判を受けるから、同じ犯罪のように見えますけれども、本質は全然違うと思う。だとすれば、特別の係の者が必要ではないか、そして、専門的に当たることが必要ではないか、こういうことが考えられますので、一応大臣の意向を聞いてみただけであります。
  81. 中村寅太

    中村国務大臣 私も、門司委員と、基本的には大体同じような考え方を持っております。交通事犯というのは、いまおっしゃるように、きわめて単純な犯罪ですね。ひき殺そうと思ってひく者はほとんどおらぬと思います。今日、一万数千の者が死んでおる。しかも、九十万人以上のけが人がある。これが、取り締まりだけでなくて、訴訟等にも非常に大きな数になって、非常に国民の間に問題を起こしておる。門司委員がおっしゃるように、交通事故だけを特別に扱うところ、たとえば、消防関係は消防庁だけでやっておるというような、そういう一つの考え方で処理してもいいのではないかということについては、私も、実は、交通犯というものは、自動車で人をひき殺そうと思ってひくやつはおりはせぬから、人をひいてなくなったというような過程にいろいろ差はありますけれども、きわめて単純ですから、これだけ何か特別に処理する方法はないだろうか——いまおっしゃるように、複雑な警察行政の中に交通行政を取り込んでいくということには非常にむずかしさもあるので、おっしゃるような考え方で検討してみる必要があると考えております。少し、時間をかけて検討してみたいと思います。
  82. 大野市郎

    大野委員長 林百郎君。
  83. 林百郎

    ○林(百)委員 私は、警察予算について質疑をしてみたいと思うわけなんですが、警察予算のうち、特に警備関係予算ですね。警備、捜査に名をかりて、使途が不明であったり、そこから腐敗、不正が出てくるという事例が多いので、その点に重点を置いて聞いてみたいと思うのです。  私が持っておるだけでも、昨年の十二月十五日の日経に、奈良県警の刑事部長が、部下に、旅費の項目に入っておる費用を寸志として払ったという記事があり、そして、刑事部長の談話として「私個人の寸志として出したのは適当でなかったが、どこでもやっていることで悪いとは思っていない。」という談話まで念入りにつけているわけです。  そこでお尋ねしますが、ずっと警備費の予算を見ますと、一九六三年に二十二億、六四年に二十四億、六五年に三十億、六六年に三十億と飛躍的にふえていって、六七年になって、急に一億になり、六八年二億、六九年二億、七一年二億、七二年二億。一九七〇年には記載がなし。これは、三十億までいったものがどうして急に一億になったのですか。
  84. 土金賢三

    土金政府委員 昭和四十二年までは、警備警察に必要な経費は、警備警察のみならず、それぞれの警察の各部門の活動経費というものを、それぞれの部門に計上しておったわけでございますが、四十三年以降は、活動経費は、各部門のものを一括して計上することになったために、警備警察や、それぞれの各部門の予算も、それだけ差し引かれて少なくなっておる。こういうふうなかっこうになっておるわけでございます。
  85. 林百郎

    ○林(百)委員 各部門というのは、どういう部門ですか。いままで分かれていた部門は。
  86. 土金賢三

    土金政府委員 これは、警察の活動経費を含んでおる部門でございます。
  87. 林百郎

    ○林(百)委員 だから、どういう部門ですか。
  88. 土金賢三

    土金政府委員 保安警察とか、あるいは捜査とか、交通とか、おもにそういうものでございます。
  89. 林百郎

    ○林(百)委員 あなたの言うことは不正確ですから、私のほうから言いますが、いままでは、刑事、保安、交通、警備と、この四つの項目に分かれていたわけですよ。それを一括した、こういうことでしょう。
  90. 土金賢三

    土金政府委員 おおむねそのとおりでございます。
  91. 林百郎

    ○林(百)委員 どうして一括にしたのでしょう。
  92. 土金賢三

    土金政府委員 警察活動に要する経費は、先ほどお話しましたように、刑事、保安、交通、それぞれの関係する各種犯罪捜査に必要な活動費を計上しているわけでありまして、しかも、その年における犯罪の実態に応じてその活動経費を使っていく。こういうことになりますので、あらかじめどこの部門が幾らというふうなことは実情に合わないし、また、そういうふうにきめても、実際の支出がそういうふうになるということじゃございませんので、そういう意味でこれを一括計上したわけでございます。
  93. 林百郎

    ○林(百)委員 実情に合わなくとも、一九六六年までは、ちゃんと四つの部門に分けて予算が組んでありますし、そして、さらに、私のほうで、警察庁から来てもらって説明を聞いた場合には、ことしの警備の費用は、捜査費が二十一億、活動旅費が二十七億で、四十八億とちゃんと言っているのですよ。そんな、七十三億もの予算が一まとめにまとまって、どこに使われるかわからぬがかってにお使いなさいといって使うことは、それは、予算の執行上正しくないんじゃないですか。そういうところから不正や腐敗が出てくるのじゃないですか。七十三億もの予算になれば、少なくとも、刑事、保安、交通、警備というような四つの部門ぐらいに分けて、大体、ことしは、刑事にはこのくらい、保安にはこのくらい、交通にはこのくらい、警備にはこのくらいというようにやることのほうが、国民の税金を使うのに、正確に良心的に使うことになるのじゃないでしょうか。しかも、あなたのほうは、私に対する説明で、七二年度は警備費は四十八億とちゃんと言っているのですよ。だから、もし、土金官房長のおっしゃるようなことを言うならば、かんぐって言えば、こういうからくりは、六六年度までの予算項目の立て方では、警備警察費があまりに圧倒的に多くなるので、二十二億から三十億というようにどんどん警備費がふえていくので、これをごまかすために四つの部門を一緒にしてしまって七十三億、こうして、警備費がどう使われているかわからないというようにした、こう言われてもしかたがないのじゃないですか。どうですか。
  94. 土金賢三

    土金政府委員 お答えいたします。  これを一括計上するようになりましたのは、先ほど申し上げましたように、実際に使用するものが、それぞれの犯罪の実情等に応じて、一応のそういった区別なしに使用するということがたてまえになっておる、そのほうがいいということで、こういうふうに一括計上することになりましたわけで、ただいま林委員のおっしゃったような、そういうことではございません。
  95. 林百郎

    ○林(百)委員 まあ、そういうことだ。認めはしないだろうけれども、そうなってしまうじゃないですか。  それならお尋ねしますが、この、あなたのほうから出されました予算の八にあります警察活動に必要な経費七十三億、これは各県へはどういう比率で分けているのですか。各県へ分けた比率を言ってみてください。
  96. 土金賢三

    土金政府委員 お答え申し上げます。  七十三億、これは四十七年度の予算でございまして、いま、国会で審議をしていただいておる予算でございます。これは、その執行については、成立してから考えるわけでございまして、まだ、どこの県が幾らというふうなことは決定いたしておりません。
  97. 林百郎

    ○林(百)委員 どこの県へ幾らやるからというのを総計して七十三億という予算が出てくるわけでしょう。そんな、本年度予算のことぐらい知っていますよ。だから、私は、七二年度予算を言ったのです。  それじゃ、あなたは、どこの県に渡すかわからぬけれども、とにかく、つかみ金で七十三億取っておけ、そうして、予算が通ってから、どこでどう使うかきめよう、こう言うのですか。普通、予算を組むというのは、前年度の実績からいって、ここの県にはこのくらいだ、ここの県にはこのくらいだ、だから、この県へはこのくらいだということを見込んで、七十三億という数字が出てくるのがあたりまえであって、予算が通ってからどこの県へ幾ら分けるかきめますなんて、そんなきめ力はないですよ。
  98. 土金賢三

    土金政府委員 予算は、どこの県に幾らということをきめた上で組むのではございませんで、これは、やはり、犯罪の情勢、あるいは、従来の、前年度までの実績、それから将来の犯罪の見通し等を——これは、何も、警備だけではございませんで、犯罪全体を総合的に勘案しまして予算を積算するということでございまして、どこの県が幾らというふうなことを積み上げた上で予算を出すということにはなっておらないのでございます。
  99. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは、念のためにお聞きしますが、昨年度でけっこうですが、昨年度、東京都、神奈川県、長野県、熊本県には幾ら渡しましたか。
  100. 土金賢三

    土金政府委員 昨年度と申しますと、四十六年度ですね。
  101. 林百郎

    ○林(百)委員 いま、四十七年度の予算を審議しているのですから……。
  102. 土金賢三

    土金政府委員 四十六年度予算につきましては、現年度でございますので、途中なので、まだ、それぞれの県に幾らというふうに、幾ら配分したということは把握しておりません。
  103. 林百郎

    ○林(百)委員 そんなばかなことはないでしょう。去年各県に幾ら分けたか、出てこない。ことしは、予算が通らなければ、各県へ幾ら渡すかわからない。それじゃ四十五年度でいいですよ。四十五年度、東京神奈川長野、熊本に幾ら渡したのですか。一体いつ渡すのですか。この命は、昨年度のものはまだ出てこない。昨年度というのは四十六年度。昨年度といったって、いま三月ですから、もう集計しなければいけない月でしょう。それもまだ出ていないというばかな話がありますか。
  104. 土金賢三

    土金政府委員 その年度の予算は、どこの県にどのくらい行ったかということは、やはり、年度を終わってみないとわからないということでございます。  なお、四十五年度の決算分につきましては、これは、調査すればわからないわけではございません。
  105. 林百郎

    ○林(百)委員 それじゃ、そこで言ってください。
  106. 土金賢三

    土金政府委員 これは、もし御必要なら、後刻林議員に報告することで答弁にかえさせていただきます。
  107. 林百郎

    ○林(百)委員 いや、それを調べて、ここできょう言ってもらうことにちゃんと頼んでおいたのですよ。しかし、それじゃ、四十六年度ですね。まあ、三月までが四十六年度としますと、いままで渡したお金は、東京神奈川長野、熊本で幾らですか。
  108. 土金賢三

    土金政府委員 いままで渡した金と申しますと……。
  109. 林百郎

    ○林(百)委員 年度末にならなければ、全部で幾らになるかわからないと言うから、いままで渡した金は幾ら渡してあるか、そして、まだ残りが幾らあるのかと、そう聞いているのです。
  110. 土金賢三

    土金政府委員 それもまだわかりません。
  111. 林百郎

    ○林(百)委員 そんな予算の使い方がどこにあるんだ。だから、私がそれを聞いているのですよ。  そうしますと、あなたのほうの力が来て——これは、せっかく親切に私に説明してくれた人の一身のことに関係してははなはだお気の毒ですけれども、あなたのほうの方が来て説明されたのは、警察活動に必要な経費の七十三億のうち、ことしの警備警察費は四十八億でありますと、こう答えたのですが、これはどうですか。
  112. 土金賢三

    土金政府委員 ちょっと失礼いたしました。申しわけありませんが……。
  113. 林百郎

    ○林(百)委員 ここに、警察活動に必要な経費七十三億とある。このうち、本年度は、警備費としてはどのくらいを見込んでおるのですかということを聞いたのですよ。そうしたら、その人は、ちゃんと、ことしは約四十八億くらいを考えておりますと答えたのですよ。そうすると、その四十八億の内訳は捜査費二十一億、活動旅費二十七億、合わせて四十八億。これは、根拠がないと言うのですか。
  114. 土金賢三

    土金政府委員 警察の活動費というもののおおよその額というものは、わからないことはないわけで、その点については、おそらく、説明を申し上げたときにお話をしたのだと思いますが、その点については、会計課長から御説明申し上げます。
  115. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉政府委員 会計課長でございますが、警察活動に必要な経費といたしまして七十三億何がし組んでございますが、その中で、活動旅費が四十三億、捜査費が二十九億余でございます。その中の、警備警察に必要な経費について当時御質問かございまして、これは、現在国会で御審議いただいている内容でございます。それで、一括して七十三億の活動経費が組まれておるわけでございまするが、重ねての御質問でございましたので、この予算をお認めいただけるならば、大体従来の実績を基礎といたしまして考えれば、いま林先先のお話しのようなめどの額になるのではなかろうかというような御返事を申し上げたのであります。
  116. 林百郎

    ○林(百)委員 それではついでにお聞きしておきますが、刑事、保安、交通の大体のめどは幾らですか。
  117. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉政府委員 お答えいたします。  これも、現実にそういうふうになるかどうかという問題はございますけれども、従来の実績に照らしまして考えまして、刑事警察関係が二十三億、これは国費だけの問題でございます。補助金を含んでおりません。それから交通警察関係が十五億ぐらいであろうということでございます。
  118. 林百郎

    ○林(百)委員 保安は。
  119. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉政府委員 刑事、保安一緒でございます。
  120. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、土金さんにお聞きしますが、この七十三億を各県へ渡す基準は、どういう基準で渡すのですか。
  121. 土金賢三

    土金政府委員 これは、予算が通った上での話でございますけれども、その基準と申しますと、結局、都道府県警察における犯罪捜査活動等の実績を勘案して配分するということに相なるわけでございます。
  122. 林百郎

    ○林(百)委員 実績というのはどういうことですか。金を幾ら使ったかということが実績ということになるのですか。
  123. 土金賢三

    土金政府委員 これは、捜査人員とか、あるいは犯罪の発生件数とか、あるいはいろいろそういった具体的なデータを参照して、参考にして配分するわけでございます。
  124. 林百郎

    ○林(百)委員 そういう非常にばく然たる基準ですけれども、そういうものがあって配分するというのならば、昨年度、四十六年度ですか、三月で終わりますけれども、各県へどのくらい配分したということがあなたから私に答弁できないはずはないでしょう。そういう基準で分けるというならば、ですね。
  125. 土金賢三

    土金政府委員 これは、一応配分しても、また、特定の県で、たとえば浅間山荘事件みたいな、ああいうことになった場合には足りなくなるというふうな場合もありまして、いつどういう事件がどこで起きるかわからないという状況が年度末まで続くわけでございまして、どこの県にどれだけ行ったから、それで全部済んだというわけにはなかなかいかないというのが実情でございます。
  126. 林百郎

    ○林(百)委員 しかし、予算項目の中には、都道府県警察費補助に必要な経費も百七十一億組んであるのですよ。だから、警察に、あなたの言うような、弾力性が全然ないということはないのだから、少なくとも、もう三月になっているのだから、四十六年度は、私の言った四つの県くらいは、このくらい行っていますということが言えないはずはないじゃないですか。
  127. 土金賢三

    土金政府委員 国費につきまして——補助金と国費とありますけれども、国費について、いま先ほどそういうふうに申し上げたので、補助金につきましても、これは事件の内容によりまして、補助金になるか、国費になるかという問題が分けられるわけでございまして、それが込みになっているというわけではございません。
  128. 林百郎

    ○林(百)委員 だから、込みになるというわけじゃないので、この警察活動に必要な経費を各県へ——私の言ったのは、全部といっても何だから、東京神奈川長野、熊本、これへ四十六年度は幾ら配分してあるか、それを言えと言ったわけです。浅間山荘事件が起きるまで分けてないのですか。浅間山北事件なんというのは、最近起きた事件でしょう。もう、四十六年度の年度末ですよ。本年度で言えば七十三億ですけれども、この警察活動に必要な経費は、一定のものは、それまでにもう分けてなければいけないはずじゃないですか。だから、昨年度幾ら分けたか。もうこの三月で年度が終わるから、四十六年度のを聞いているのですよ。
  129. 土金賢三

    土金政府委員 四十六年度につきましては、先ほども申し上げましたとおり、まだ年度が終わっておりませんので、どういう勃発事件が起こるかわからないというふうなこともありまして、確定的に、どこの県に幾らというふうな配分は、まだ把握できないわけでございます。
  130. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、警察庁で握っている金は幾ら握っているか。どの県でどういうことが起こるかわからぬから、各県へ渡してあるけれども、弾力性を持たせるために警察庁がこれだけの費用を握っているというのは幾らですか。
  131. 土金賢三

    土金政府委員 その点については、具体的に申し上げるわけにはまいりません。
  132. 林百郎

    ○林(百)委員 どうしてまいらないのですか。それじゃ、国会でもって、警察の警備予算というものは全然審議のらち外だということになれば、警察の警備費というもの、ことに国費ですね。これはもう軍隊の機密費よりもっと機密費だなるじゃないですか。  それでは、その使い方の一例を申しましょう。これは少し古い材料ですが、この警備の捜査費がどういうように使われているかというのを、一九五五年四月、五月、島根県警から出た資料で見ますと、まずずっと、言ってみますと——四月、五月、両方言うのはなにですから、五月だけ言ってみますと、五月二日に三万二千六百円、松阪警部渡し。五月五日、五千九百八十五円、御昼食代金。五月六日、七千円、マル協謝礼金。五月六日、五千円、西川警部渡し。五月六日、二万八千五百円、捜査費として課員へ分配。五月七日、八千円、田何巡査部長特別講習行き。五月十一日、一万円、マル協へ謝礼金。五月十二日、一万円、松阪警部渡し。五月十四日、五千円、西川警部渡し。五月十四日、三千三百六十円、ビール代など、小川とめ。女の人の名前が出ていますね。五月十四日、千六百六十円、松屋払い。五月十八日、一万二千六百円、写真機代金。五月二十一日、一万五千五百円、これは、警部補以上だけに捜査費として渡す。五月二十一日、二千三百四十二円、松電社支払い。五月二十一日、千四百円、マル協——これは協力者の「協」で、共産党の「共」じゃないですよ。協力者への謝礼品代金。五月二十一日、千百九十円、会食費。五月二十三日、一万二千二百七十円、会食費。五月二十四日、六千三百円、協力者との懇談会。五月二十五日、四万六千円、各署へ捜査費として分配。五月二十五日、四千九百八十五円、ビール代など、小川とめ。五月二十五日、二千九百円、本部長表彰金。五月二十六日、一万円、松阪警部渡し。五月三十日、五千円、マル協、協力者との懇談会。五月三十日、五千円、会議費。五月三十日、二千円、西川警部渡し。五月三十日、千三百五十円、会食費。五月三十日、三千九百四十円、マル協、協力者との会食。五月三十日、一万三百十二円、雑費。五月三十日、一万二千二百円、マル協、協力者との懇談会。五月三十日、四万九千円、会計課へ返還。五月三十一日、二千六百円、マル協、協力者への謝礼金。五月三十一日、四千七百四十円、マル協、協力者との懇談会。五月三十一日、三千三百八十六円、お酒代。こういうように使うのですか。捜査費というものは、何だかマル協だとか、協力者だとか、小川とめさんだとか、いろいろな名前が出てきますが、一番使うのは会食費ですよ。そしてあとは警部以上の者に特別に配っている。こういう報告書が来ているのですか。警察庁、つかんでいますか。
  133. 土金賢三

    土金政府委員 捜査費の内容について、一々こちらでつかんでおるわけではございません、捜査費の使途別について御説明申し上げますと、捜査本部に必要な施設什器等の借り上げ、及び緊急の場合の交通費、その他捜査本部に使用する雑費とか、あるいは情報提供者、協力者に対する謝礼とか、あるいは張り込み、聞き込み等に必要な緊急交通費とか、そういった諸経費、あるいは有料施設への入場料等も含むわけでございます。そういうふうな費用、そういったものが捜査費として使用されるわけでございます。
  134. 林百郎

    ○林(百)委員 いや、そんなきれいごとで済んでいないのですよ。  じゃ、これを渡すのは県の本部長へ渡すのでしょう。まず、それからお聞きしましょう。この警察活動に必要な経費というのは、各県の警察本部長渡しでしょう。
  135. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉政府委員 お答えいたします。  これは、使い方といたしましては、支出官が、府県の場合には本部長でございますけれども、当該部局の長に渡しまして、当該部局の長が課長、署長に渡して、そうして、現実に、捜査員等が活動上の諸経費を支払いして、領収書なり何なりを、証拠書類を添えて上司に出す。それが支出官の手元に来るというような形になっておるのでございます。  それから、先ほどちょっと、活動経費のうちで、交通関係十五億と申し上げましたが、私の読み違いでありまして、一億五千万でございました。訂正させていただきます。
  136. 林百郎

    ○林(百)委員 これは、判決で確定したものですから、この前も私お聞きしましたが、たとえば背叛社の、間々田警部補が和田俊一に渡した十一万円。彼らはこれを軍資金と呼んでいるのですが、そのほかまた十九万円渡しているわけですが、こういう金はこういうところから、捜査費から出るわけですか。これは判決で確定した数字を出しているのです。
  137. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉政府委員 犯罪捜査関連した経費でございますので、捜査費から出しております。
  138. 林百郎

    ○林(百)委員 そういうのは、受け取りをもらってくるのですか。
  139. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉政府委員 受け取りをもらうのが原則でございまするが、もらえない場合もございます。
  140. 林百郎

    ○林(百)委員 もらえない場合に、渡したと言って、実際渡しているかどうかを確かめるにはどうするのですか。
  141. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉政府委員 本人の申告の書類に、上司が証明するというような様式をとっております。署長なり、あるいは直接担当の課長なりが、具体的に状況がわかるわけでございますので、上司がわかるわけでございますので、証明書を添えて支出官のもとへ出すというような形をとっております。
  142. 林百郎

    ○林(百)委員 それじゃ、これは官房長にお聞きしますが、四十五年度に、そういう、いわゆる協力者ですか、情報提供苦に出した金の総計は幾らですか。
  143. 土金賢三

    土金政府委員 活動経費を具体的に、先ほど出し上げましたような、そういう部門別にどういうふうに使ったかということにつきましては、これは、先ほど申し上げましたように、本部長から艦長というふうに、順に、それぞれ適宜、犯罪の、そのときの情勢に応じて使っておる。こういうことでございまして、これを決算で、そういうふうな部門別に分けて集計をするということはいたしておりませんので、私どものほうでは、それはわからないわけでございます。また、かりにそういうふうにしなければならぬということになりましても、これは非常な手数がかかるということでございまして、残念ながら、そういうふうな集計をいたしておらないわけでございます。
  144. 林百郎

    ○林(百)委員 手数がかかるからやらないとかなんとか言って、受け取りも取らないような金、そして、会食などをした費用がほとんどここから出ている。しかも、国費でありながら、その決算は、警察庁のほうへはあがってこないということになれば、これは全くつかみ金です。警察庁から本部長へ行く、本部長はつかみ金で署長にやる、署長はまた、これをつかみ金で使うということ、全くこれは、どんぶり勘定のつかみ金じゃないですか。非近代的な使い方になるのじゃないですか  それではお尋ねしますが、日経の十二月十五日に出ていた奈良県警の刑事部長浦野氏の事件は、どういう事件だったのですか。
  145. 土金賢三

    土金政府委員 新聞に出ておりました、奈良県の刑事部長が公金を配分したといわれておる事案でございますが、これは、調べてみましたところ、課員に寸志を渡したのは事実のようでありますが、新聞に報道されておりましたように、公金を流用したものではないということがわかりました。実際は、課員が出張する際に、各人に交付されました出張旅費の中から、その一〇%を課のレクリエーションの経費として拠出しまして、それを積み立てていたようでございます。ところが、昨年は、事件が多発しまして、レクリエーションが実施できなくなったというふうな事情で、これを各人に配分したものであるということでございます。それが刑事部長個人の名で渡したというふうなことで、ただいまのような誤解が生じたものと思われます。
  146. 林百郎

    ○林(百)委員 新聞で見れば、警備費のうちの活動旅費に該当する部分を流用したというふうに書いてあります。それで、浦野勝刑事部長は、「私個人の寸志として出したのは適当でなかったが、どこでもやっていることで悪いとは思っていない。」と言っておりますが、浦野勝刑事部長の個人の金でないことは間違いないわけでしょう。そして、これは国から行った金であることも間違いないわけでしょう。しかも、それは、警備の活動旅費として使うべき金でしょう。活動旅費として使うべき金を、レクリエーションができなかったから分けてやろうといって使うとができるのですか。どうですか。もう一度答弁を求めます。しかも、それは、どこでも行なわれている、こう言っているのですよ。
  147. 土金賢三

    土金政府委員 これは、警備ではなくて、刑事の関係でありますので、ちょっとお断わり申し上げておきます。  先ほど申し上げましたように、出帳旅費の中から幾らかをさいて、それを拠出しておいた、そういう金でございます。
  148. 林百郎

    ○林(百)委員 それじゃ、背任じゃないですか。活動旅費として使わなければならない金を、部長個人が、自分の思うように分けてやるということは。そんなことは、あなた、弁解になりませんよ。  それじゃ、もう一つ聞きますが、機動隊の会計係が、入院した同僚の給料八十万円を着服した。これはどういう事件ですか。これは、直接警備費からとは、私は、この新聞の記事からは思いませんが、これはどういうことだったのですか。
  149. 土金賢三

    土金政府委員 これは、元警視庁の第七機動隊に勤務しておりました西という巡査が、同隊の会計係として、公務で負傷した隊員に支給する公務災害補償金八十七万五千五百八十四円を横領した事件で、これはれっきとした横領事件でございます。西巡査は、四十六年七月十二日に、隊員十三人分の補償金八十七万五千五百八十四円を、各人に支給するために、銀行からその金額の支払いを受けたのでございますが、各人にこれを支給しないで、自己の遊興飲食に使用しておった。こういう事案でありまして、まことに遺憾な、申しわけない事案でございます。
  150. 林百郎

    ○林(百)委員 ただいまの西の件は、これは警備費とは別個のものだと私も思いますけれども、しかし、警備費を核として、中心として、そういうどんぶり勘定式に、県では県警本部長が、警察署では署長が、自分のかってに出てきた金を使う。それで、国会質問すれば、まだその準備はできておりませんとか、そういう数字は発表できませんとか、そういうことでここを隠している。そういう機密の部門が警察予算の中にある。ことに、刑事捜査にある。こういうことが、警察の経理が紊乱する根本になるのじゃないか。これはどうですか、大臣。中村さん、どう思いますか。私は、人を取り締まるべき警察が、こういう金について紊乱した使い方をしているということについては、なははだ遺憾だと思いますが、どう思いますか。ことに、警備関係が非常に不明朗なんですよ。これからまだ、私は、実例をあげて質問いたしますけれども、大臣、えらい眠そうだから、ちょっと目ざましにひとつ……。
  151. 中村寅太

    中村国務大臣 会計は、できるだけ明朗であることが望ましいと思います。
  152. 林百郎

    ○林(百)委員 そうでしょうね。それが明朗でないですよ。いまのあなたの酔顔もうろうとしているような、そういうような経理なんですよ、ほんとうに。ここは中村さん——中村さんと敬意を表しますが、これはしっかりやってもらわなければ困ると思うのです。  会計検査現の方にお尋ねしますが、こういうように、たとえば、情報提供者にお礼をやるといった場合、受け取りなど持ってこれないという場合は、会計検査院が調査する場合は、どういう調査方法を講ずるのですか。
  153. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 私どものほうで支出の検査をいたします場合には、一般の経費でありますれば、請求書なり、領収書なり、あるいは契約書なり、そういうものに当たりまして、その事実の確認をいたすわけでございます。それで、そのための手段といたしましては、それらの証書類を会計検査院のほうに提出していただいて、在庁して書面で行なう書面検査と、実地に現場におもむきまして、そこで事情等をお聞きしながらやる実地検査と、二通りあるわけですが、この捜査費の関係につきましては、実は、最初にあげました書面検査の方法といたしまして、特別に簡易な証明の方法をとっております。これは、捜査費が特殊な経費であるというようなところから、そういう方法をとっているわけでございます。したがいまして、この書面検査だけでは十分な検査ができませんので、私どものほうでは、実地に各所に検査に参りました際に、そこに保存されておりますところの証書類に基づきまして事実を確認する。こういう方法をとっているわけでございます。したがいまして、捜査費の中でも、証書類に基づきまして、領収証書のあるものにつきましては、それによって確認をいたしております。しかし、いま先生のおっしゃいました、たまたま領収証書のないような支払い、これにつきましては、実際にその支払いを行ないました最末端の警察官の方なり何なりに、その支払いの事情について説明を受けまして、それに基づいて事実の確認を行なう、こういう手段をとっております。  以上でございます。
  154. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、受け取りがないので、あがってきた書類と、その書類について関係者に聞く、いわゆる簡易証明方式をとる、こういうわけですか。
  155. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 先ほど御説明いたしましたように、書面検査と実地検査と二つの検査の方法がございますが、書面検査についての計算証明については、簡易証明という方法をとっております。
  156. 林百郎

    ○林(百)委員 簡易証明方法と通常の証明方法との違いはどこにあるのですか。そういう受け取りなどが添付されておらないということなんですか。
  157. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 大体そういうことでございますが、原則的に徴すべき受け取りだけではございませんので、決議書、請求書とか、そういうものもついておらない。こういうことでございます。
  158. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、スパイをやる者が警察へ請求書を出すのですか。そういう例があったのですか。スパイというものは隠密にやるわけでしょう。隠密にやる場合、警察へ請求書を出して、受け取りを出して、それで、この金でスパイをいたしますと、こういう例があったのですか。
  159. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 協力者とか、情報提供者につきましても、一応書類としては、名義を書きました領収証書が提出されております。
  160. 林百郎

    ○林(百)委員 名義を変えた……。じゃ、名義を変えた領収書であるから、その領収書がついていればいいので、現実にその名義人のところに行って、それで調べるわけにはいかない。こういうわけですか。
  161. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 私の説明で、あるいは誤解があったかもしれませんけれども、私が申し上げましたのは、協力者とか、情報の提供者、そういう人たちのことですが、そういう人たちの場合には、自分協力したということを明らかにしたことによって、みずからが不利な立場に立つというようなことを心配いたしまして、それで、なるべく名前を隠してくれ、こういうような要望があるやに聞いております。そういう場合には、支払いの請求書は、警察官が取り扱い責任者に出します。そうして、そのお金を協力者なりに払うわけですが、その領収証書は、警察官が徴して保存している。こういう形をとっていると聞いております。
  162. 林百郎

    ○林(百)委員 その領収書は、当該警察官が持っているというのですか。持っているならば、会計検査院では、それをもらえばいいじゃないですか、その人から。
  163. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 その領収書等は、警察官の手から、取り扱い責任者のところで一括して保管をしている。こういう形でございます。それで、それを私どものほうにちょうだいしていない理由につきましては、これは、簡易証明をとっている理由になるわけですが、ただいまもちょっと触れましたように、協力者等に迷惑がかかるというようなこともあるいはあってはいけない。そういった事実が漏れた場合に、ですね。そういうようなことから、それらの事実を明らかにした書類については、なるべく警察当局の内部で保管をしておく必要がある。こういうことで、私どものほうでもそれを了承いたしまして、そのかわりに、実際に現地に参りました際には、つぶさに内容を確認さしてもらう。こういう形をとっているわけでございます。
  164. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、会計検査院も、この警備の捜査費の検査については、簡易証明という方式をとって、普通の方式はとらない。そうして、受け取りなども、実際そういう名前の人が受け取ったかどうかわからないが、受け取りがあるのは、見るのは見るのでしょう。しかし、その先まで行って、こういう金を警察で受け取ったかどうかということを調べるわけにはいかない。こういうわけなんですね。だから、そこに機密を保持するということで、会計検査院の検査にも、一定の限度があって、それ以上は入れない。たとえば、普通の役所なら請求書があり、それから支払いがあり、それから領収書がちゃんとくっついているわけでしょう。もしおかしいと思えば、その領収書を、会計検査院としては、領収書の発行先へちゃんと問い合わせをすることができるわけでしょう。そういうことまではできない事情にある、それは機密を保持しなけれ、はならないからだ、こういうことですか。
  165. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 私どものほうでは、領収書が出ているものについては、それによって支払いの確認をいたしますが、その領収書の出ている金額の内容といいますか、それだけの支払いが、たとえば、その協力に対して妥当なものであったかどうかというな価値判断というところまではなかなかむずかしゅうございますので、支払いの確認ということにとどめておるというのが実情でございます。
  166. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、領収書の出ていないのもあるのですか。みんな領収書があるのですか。
  167. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 中には、領収書のないものもあるそうでございます。そして、その場合には、先ほども当局のほうから御説明があったと思いますが、上司の署長なり何なりの、そういった支払いがあったということの確認と申しますか、証明と申しますか、そういう書類が徴してある。こういう形になっております。
  168. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは、警部補以上でお互いに分け合って、しまっておいて、これは情報提供費だということで、お互いになれ合って書いてしまえば、それ以上調べることはできないじゃないですか。これだけ情報提供者に提供しましたと……。それが一つと、それから、それでは、証明書のある人のところは、その先まで行くのですか。行けないのでしょう。行って調べたことがあるのですか。領収書のあるものについては、ですね。
  169. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 いままでのところでは、行ったことはございません。説明を受けまして、それで、妥当な支払いと申しますか、一応の支払いが行なわれたということの心証を得て、それで検査をとどめておるということであります。  それから、先ほどの、警部補以上で云々という説明の場合ですが、この場合も、その内容を関係者に十分に伺いまして、間違いがないという心証を得るということで検査をいたしております。
  170. 林百郎

    ○林(百)委員 だって、警部補以上へ渡しておいて、これは情報提供者に渡したということで口をふいていれば——会計検査院か、来るから、お互いに分け合った金は、ひとつ、こういうことにしたということにしよう、さっきの奈良県警のように、こういうようにしようじゃないか、情報提供者に渡したということにしようじゃないかといって、そして、あなたの問い合わせに対して答えれば、それ以上調べることはできないでしょう。要するに、情報提供なんというものは、現実に目に見えるものじゃないのですからね。
  171. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 いま、検査を実際に行なった者から聞いたところですが、警部補以上で分けたというような事態は、形で出ているものはなかったということでございます。
  172. 林百郎

    ○林(百)委員 なかったと言っても、新聞に出ているじゃないですか。これをごらんなさい。会計検査院までがそういう甘いことをやっているなら、これはますますどろ沼ですよ。いいですか。川下部長が、部下に旅費を流用して分けている。そしてそれが問題になって、実は、「捜査員の功労を認める報賞金は報賞費として別ワク予算があり、県警本部長の決裁を受けなければならないが、旅費の処分は捜査費の決済であるため、刑事部長の独断で出来る。浦野部長はこの金を自分の裁量でランク付けして一部の捜査員に“私的報賞金”として配分した」というのです。ところが、その分けた刑事部長の話によると「私個人の寸志として出したのは適当でなかったが、どこでもやっていることで悪いとは思っていない。」と言っているのですよ。「どこでもやっていることで悪いとは思っていない。」と言っていることを、会計検査院は、一度もまだお口にかかったことがないと言う。そんな会計検査院の検査というものがありますか。本人はこう言っているのですよ。それであなた、つとめを果たしていると思いますか。
  173. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 ただいまの例の場合は、まだ現地に私ども検査に行っておりませんので、当局のほうから説明を受けたわけでございますが、その説明の限りでは、一たん各人に支給をいたしました旅費の中から、一〇%それぞれ拠出をしたという形をとって、それをレクリエーションの経費に充てようとしていたものである。こういう説明を受けております。したがいまして、その限りにおきましては、一たん各人に支給された後の金の中から、それぞれが任意に拠出をしたものである。このように聞いております。
  174. 林百郎

    ○林(百)委員 それはあなた、聞いただけでしょう。行って調べてきたわけじゃないでしょう。
  175. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 ですから、お答えしましたように、まだ実際には検査しておりません。
  176. 林百郎

    ○林(百)委員 大臣が来るまで一つ聞きますが、ここに、「警備情報収集及警備活動費」として、出金の際の伝票が、昭和三十年六月八日付の島根県警のものがありますが、それを、見ますと、こういう書類だけなんですね。「警備情報収集及警備活動費として左記の通り捜査費を支出しては如何ですか」として、一万四千九百四十円。金額、三万七千六百円。情報収集費、五千円、石川警部。三万二千円、松阪警部。三千三百四十円、協力者工作費、加茂川。こういう形で情報収集費というものを出しているのですか。それで、松阪警部というのは、どうも署長らしいのですけれども、毎月毎月五万円くらいを情報収集費として受け取っているのですけれども、これをちょっと会計課の方、見てください。こういう形で金を出せるのですか。ただ、幾らをだれだれ渡しと書いてある。これでいいですか。
  177. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉政府委員 お答えいたします。  それは、支出についてのお伺いだろうと思うのでございますが、証拠上は、先ほど来申し上げておりますように、それに添付される書類があるはずでございます。先ほど来御説明しておりますように、協力してくれる人の領収書がいただければ、それが当然つくわけでございますし、それから、領収書がいただけない場合には、具体的に、末端の協力者に手交した人間の、手交の状態に対する証明と、そして、その状況というものを、署長なり課長がわかっているわけでございますから、それについての証明の書類というふうなものが必要でございます。
  178. 林百郎

    ○林(百)委員 出すときには、これで出すのですか。出したあとの収拾はそうすると、言うのですか。
  179. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉政府委員 それは、出す場合には、そういうふうな形で出すことがあるわけでございます。
  180. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、会計検査院の方、見てください。そんな形で金が出る場合がありますか。「情報収集費」と書いてあるだけですね。
  181. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 このような形で支出を行なっているということでございます。
  182. 林百郎

    ○林(百)委員 警察は、ですね。  大臣、ちょっとこれを見てください。こんな形で、捜査費というのは、出すことが簡易にできるわけですね。何々警部へ幾ら出して、いかがでしょうか、いかがでしょうかと書いてあるだけです。たとえば、どこのだれにどういうようにするとかなんとか、そんなことは何にも書いてない。普通なら、どこの店に何を何個という請求書をつけて、こういうものをこれだけ買いたい、請求書はこれだから、これに対する支払いを要求すると出るわけでしょう。これを見れば、「情報収集費」として、松阪警部に幾ら、だれだれに幾らとある。松阪警部には三万幾らくらい出ています。それだけで金が出てくるわけですか。
  183. 中村寅太

    中村国務大臣 私は、会計には非常に弱いほうですが、やはり、下にこの金を渡すときには、それの次から次にきちっとして渡していると思います。これだけぱっとやるんじゃなくて。それは、警察のことですから、銀行のようにきちっとはいかぬかもしらぬけれども、やはり、末端にずっと渡すときには、ある程度のきちっとしたかっこうで渡しているはずだと思います。
  184. 林百郎

    ○林(百)委員 それじゃそれ返してください。もういいでしょう。(中村国務大臣「あなたのですか。」と呼ぶ)私のですよ。あなた見たことないんで……。  これは、島根県警から出た書類をそのまま写真に写してあるんで、そんなものは何にもついてないですよ。そうして、これを見たってわかるでしょう。それじゃ、大臣、これを見てください。協力者へ幾ら渡したと書いてあるだけで、どこの協力者へ、いつ、幾ら渡したとも何とも書いてないでしょう。マル協、「協」というのは、情報提供者ですよ。「ビール代など」幾らと書いてあるだけです。いつ、どこで、だれとやったか、何も書いてない。こんなずさんな会計帳簿なんて、どこの役所にあるのですか。これはもう実際出てきたものなんですから、どう見たっていいですよ。時間がないから、早く見てください。あとでゆっくり見てください。もういいです。  要するに、その警察費の中で、警察活動に必要な経費ということで、ことに、警備費が非常にずさんに使われているということが、これではっきり出ていると思うのです。  最後に、私は、警察官から私への投書がありますから、参考に読みますから、首脳部はよくこれを聞いてください。ある県の警察官から来ているんです。「県警の幹部は、国費、県費の別なくうその領収証をつくり、会計監査をごまかし、」会計検査院もよく聞いておいてください、「ごまかし、私腹を肥やしております。十二月十五日付の日経で報道していた奈良県警察本部の刑事部長が捜査費を流用していた、あんなことは氷山の一角にすぎません。ある県の県警本部幹部の一例を申しますと、あるところの署長の某は、署員三百五十名の時間外勤務手当の、巡査に月六千田ぐらい支給せねばならないのを、一人当たり三千円ぐらいしか支給せず、その半分は署長が横領しております。国費関係では、県警本部公安課から共産党のスパイ工作費として毎月ある署へ二十万くるけれども、署長はその二十万のうちから毎月五万円ずつを取っております。」と言うのです。いま言った、こういう簡易な書類で、ですね。「また、それだけでなく、保安課、刑事課、交通課からも毎月五万円ずつ取って自分の私腹を肥やしているのです。最近、全署員に対し、暮れの手当として、巡査に一人当て五百円、警部に二万円、警視には四万円、警部補には五千円、巡査部長に三千円ずつを配りました。この金もみな県民の税金です。県警本部公安課では、次席が国費の配分を受け、課長に月五万円、次席某に三万円、課長補佐の警部が一万円、警部補五千円、巡査部長三千円を毎月配分しております。」公安課では、ですね。「昨年の八月二十八日ごろ、ある警務部長は、某管区へ転勤していくとき、四十五年度安保闘争の警備費として残っていた装備品を、買わないのに買ったようにうその書類をつくって、装備品費百万円を持っていってしまいました。国費関係の中には、密航監視哨というのがあります。県下では五カ所、それぞれの各署に書類をつくり、監視哨員に渡す金を一人月千円しか渡さず、残りを各署で使っているそうです。とにかく、一度国会で究明してください。」これは、ほんとうに経験している警察官でなければ、こんな投書はできないはずですよ。あなた方はいろいろごまかしていますけれども、内部ではこういうことをやっている。それが、捜査だとか、あるいはスパイだとか、あるいはスパイの協力費だとか、そういう名目で簡易に金を出してきている。そして、ある署長のごときは、共産党のスパイ費だといって、毎月本部長からくる二十万円の金のうちの五万を私腹に入れている。それで会計検査院が行けば、簡易証明で済ましている。これが警備費の実態。これが警察活動に必要な経費の使い道なんですよ。これは事実だと私は思う。うそならこんなことが書けるはずはないですよ。だから、この警備に関する警察の費用というものは、これはもう、いわゆる国防費よりももっと秘密のベールに包まれている。こういうように断言せざるを得ません。  したがって、私は最後に、もっと警察官としての綱紀を粛正し、会計検査院も、こういう秘密がスパイから提供されているということについて、秘密なんだからこの限度で踏みとどまっておこうというようなことでなくて、徹底的に調査して、この黒い霧を晴らすように努力することを要求して、私の質問を終わります。
  185. 中村寅太

    中村国務大臣 私から林委員に申し上げますが、私は、いまの投書は、投書のとおりであるとは考えられない。まず、警察の費用というものは、林委員も御承知のように、なかなかきびしいもので、そんなずさんな金をばらばら使うような、そんな金は実際にはありませんよ。また、私にその投書が来ておるのならばまだわかるけれども——私らに来る投書というのは、大体ちょっと頭の変な人のやるのが多い。しかし、その投書を、私にやるというのならわかるけれども、林さんにやっているところに、私にはどうも、その投書が一〇〇%信憑性があるとは思われない。林さん、なかなか手きびしくおっしゃるけれども警察にはそんな金はありません。そんな金があるように予算をうんと組んでもらえればありがたいし、もっと警察の活動が十分できると思いますけれども、私は、公安委員長をして見て、警察というところは金をくれぬところじゃないかと思ったくらいに、ほんとう予算はきびしいものであります。だから、私は、そういうふうに、投書のとおりのずさんさであるとは必ずしも考えられないということだけ申し上げておきます。
  186. 林百郎

    ○林(百)委員 せっかく大臣の答弁があったから、一言言って、私はこれでもうやめます。  国家公安委員長にこんな手紙を出せば、掘りつぶされてしまうのですから、あなたのところに出しっこないじゃないですか。国会で問題にしてくれといえば、野党に出すよりしようがないでしょう。それに、あなたは、国家公安委員長になりたてだから、また、あなたは人のいいところがあるから、あなたの知らないところで何をやっているかわからぬのだから、まあ、私のきょう言ったことをよく他山の石として、十分綱紀を粛正するように、ひとつ、あなたもこの上一そう努力をしてもらいたい。こう思うのですよ。
  187. 中村寅太

    中村国務大臣 わかりました。
  188. 大野市郎

    大野委員長 華山親義君。
  189. 華山親義

    ○華山委員 ただいま、林委員からいろいろ御質疑のあったことに特に関係があるわけでございますけれども、報賞金というのは、予算で幾らつけておりますか。
  190. 土金賢三

    土金政府委員 お答え申し上げます。八千七百万の予算になっております。
  191. 華山親義

    ○華山委員 いまのいろいろな金の使い道でございますけれども、報賞金の中に、先ほど会計検査院のおっしゃいました簡易証明の部分と、そうでない部分とございますね。どの部分が簡易証明の部分でございますか。全部が簡易証明になっておりますか。——担当の方、いらっしゃらないのですか。いらっしゃらないのならよろしゅうございます。  そこで、先ほど林委員がいろいろと御質問をなさいましたけれども、私は、報償金と捜査活動費との間の分界が非常に不分明なのじゃないかと思う。いろいろな情報等を提供してもらった人にお礼をする。これは報償費から出すべきものじゃないか。お礼なんだから。それは捜査費とか、あるいは警備費とか、そういうもので出す性格のものじゃないと思うのだけれども、どうでございますか。
  192. 土金賢三

    土金政府委員 お答え申し上げます。  「報償費は、各省、各庁の長又は責任を有する職員が、その職務に属する事務又は事業を円滑かつ効果的に遂行するために、何らかの寄与があると認めた場合に、部内者、部外者を問わず予算の範囲内において、最も適当と認める方法で給付をすることができる経費。」でございます。  したがいまして、報償費の使い方でございますけれども、これは、永年勤続とか、あるいは賞じゅつ金とか、部内のそういったもののほかに、協力者に対する報賞というものもございますけれども、具体的な事件についての捜査関連して、その実際の協力者に対して出す、そういう謝礼、謝金というものは、これは実費というものを考えて出すべき性質のものでございます。したがいまして、この報償費というものは、そういう実費ということでなく、ちょっと考え方がやはり少し違うのじゃないか、こういうふうに考えております。
  193. 華山親義

    ○華山委員 外務省にもたくさん報償費がありますね。外務省では、いろいろな情報をとらなければいけない。外国人にも出さなければいけない。そういうふうなことで、これは報償費で出しておりますよね。その点が非常にあいまいになっておるのじゃないかと思う。たとえば、福井県で、ある共産党員に対しまして、ずいぶん長い年月にわたって出している。これは特定のことじゃないわけですね。とにかく、情報を集めるために金を出している。そういうふうなものは、これは捜査費ではないのじゃないか、報償費じゃないのか、その分界がきわめて不明確なんじゃないか、こういうふうに思います。それは、この簡易証明の中には、警察ばかりでなくて、法務省あたりもそういうものになっております。しかし、私は、その分界が明白でないためにいろいろな混乱が起きておるのじゃないかと思うのですよ。それで、八千何百万円のうちで、成規の手続によって、たとえば、特に功労のあった人とか、永年勤続者だとか、犠牲になった方とかに出す金につきましては、これは簡易証明ではありません。きちんとした証明を出さなければいけないわけです。そして、一部簡易証明になっておるのでして、その簡易証明になっている部分と捜査費というものとをごっちゃにするからいろいろな問題が起きるので、これは厳然として分けるべきものじゃないのか、こう思うのですが、どうですか。それだから、先ほど林委員が言われたようないろいろな混乱が起きる。この問題については、私は、前にも言ったことがある。昔、機密費というのがありましたね。若いお役人は御存じないでしょうけれども、機密費というのがあった。機密費というのはいまはありません。この機密費の系統を踏んでおるものは、いまは何かということを大蔵大臣に聞きますと、それは報償費だと、こう言うのです。そのほかに交際費というのが別にある。その二つはきちっと分けて予算を立てて経理すべきものなのじゃないか、こう思うわけですが、どうでしょうか。
  194. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉政府委員 ただいま官房長がお答えいたしましたように、現実に、現在警察庁が報償費として使用いたしております内容は、表彰によります経費でございますとか、あるいは先般来いろいろ殉職者が出ておりますが、そういうような者に対します賞じゅつ金でございますとか、あるいは、警察官が職務の過程で負傷をいたしたりいたします、そういうふうな際、あるいは相当長期にわたりまして非常に条件の悪いところで苦労を重ねて仕事をやっておるとか、そういうふうな者に対しまして賞揚金というふうな形で出しておるのが多いわけでございまするが、一部、いま御指摘のように、協力者報償費に類するようなものがあるわけでございます。これにつきましては、捜査費の全部と、それから報償費のうち、いま申し上げましたように、協力者に対する報償費につきましては、簡易証明につきまして検査院の御了解をいただいていることでございます。いま先生御指摘のようなことにつきましては、私どもも十分検討しなければならぬことだとかねがね考えておるわけでございます。報償費の性格等につきましては、現実の問題といたしまして、実行上の中心としてやっておるのが報償経費、それから賞じゅつ金、賞揚金であるというふうなことでございますので、あわせてひとつ検討さしていただきたいと思います。
  195. 華山親義

    ○華山委員 それで、福井県で起きました、何か、共産党の町会議員にスパイを強要したという記事の中に、共産党の委員会だと思うのですけれども、その抗議に対して県警本部の警備課長は「共産党、社会党、労働組合などからも情報をもらう。その報酬は出さないが、謝礼をする。謝礼金は国費になるので公表できない」と言っていますね。そうしますと、こういうふうな金というものは自民党のほうには出てないようですけれども共産党も社会党も労働組合もみな出ているわけですね。そういうふうな金の出し方をしているのかどうか。それがまた、先ほどのように、簡易証明であろうと何であろうと、とにかくわからない金の中から出ていく。それも連続して出ていく。そういうふうなことは、私はおもしろくないと思うのですよ。それは、私も警察をやった経験もありますからわかります。もう大っぴらで、何もかもみなわかるような金ばかりじゃ仕事はできません。わかりますけれども、そういうふうなことについて、できるだけ、こういう金はこの費目から出すんだ、こういう金はこの費目から出すんだということをきめておかないと、私は、おかしなことになりはせぬかと思う。厳然と分けた予算をおつくりになったらどうですか。八千何百万円のうちで、ほんとうに公然と、簡易証明でないやり方でお出しになったのは幾らぐらいになりますか。
  196. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉政府委員 具体的な数字を持っておりませんけれども、少なくとも、四十六年度の執行状況を、まだ最終的ではございませんが、見ておりますと、ほとんどが、警備実施でございますとか、あるいは極左暴力学生に対する殉職等が多うございましたので、そういうふうな関係で支出いたしておるような状況でございまして、簡易証明で出しておるのはごくわずかだと思います。
  197. 華山親義

    ○華山委員 まあ、私、これは申しませんけれども、こういうふうな金は、県の会計、出納——それはどういう関係になりますか。
  198. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉政府委員 お答えいたします。  これは、国費の普通の執行と同じかっこうでございまして、会計法上の部局の長が、本部長でございますが、支出官を兼ねておりますから、というようなことで、支出負担行為相当官の相当行為がございまして、そして支出が行なわれるというふうな形になります。
  199. 華山親義

    ○華山委員 県の出納責任者とは何の関係もございませんね。
  200. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉政府委員 国費に関する分はございません。
  201. 華山親義

    ○華山委員 補助金以外はね。
  202. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉政府委員 はい。
  203. 華山親義

    ○華山委員 同じような性格のものが、捜査費等として、府県の経費で出ておりませんか。
  204. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉政府委員 御質問の趣旨が、ちょっとわかりませんが……。
  205. 華山親義

    ○華山委員 捜査費とかなんとかいって、いま出ておりましょう。警備費とか、捜査費とかいうことで出ておりましょう。まあ、警備費は別ですけれども。そういうふうなものが県の負担で別に出ておらないかということです。
  206. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉政府委員 これは、警察関係の費用の負担区分につきましては、警察法三十七条に規定がございまして、先生も御承知のとおりだと思います。これにつきましては国庫が支弁することになっておりまして、たとえば、警視正以上の階級にある警察官の俸給その他の、人件費でございますとか、あるいは教養施設の維持管理、あるいは警察学校における教育訓練に要する経費、以下規定されておるわけでございます。そして、警察法三十七条の既定を受けまして、警察法施行令の二条、三条では、「国庫が支弁する都道府県警察に要する経費」というものが二条にこまかく規定してございまして、それから三条には、警察法第三十七条三項の規定によりまして「道府県の支弁に係る都道府県警察に要する経費」につきまして、国が補助金として出す内容をきめてございます。それ以外のものは県単独の経費というふうなことで、警察関係の経費は三本立てになっておるわけでございます。したがいまして、警備事件の担当につきましては第三十七条。それから、警察法施行令の関係で全額国庫というふうな形になりますけれども、刑事事件でございますとか、あるいは保安関係事件、あるいは交通、そういうふうなものにつきましては、原則として県費でございまして、それに対しまして国が補助金を出すというふうな内容があるわけでございます。したがいまして、都道府県の、いわゆる警察活動に要する経費というふうなものは刑事警察、保安警察、それぞれ別個にあるわけでございまして、それは、都道府県の議会の議決を経ましてきまるというような形になっております。  したがいまして、先ほど来いろいろ御検討いただいております内容のものは、私ども答弁いたしておりますのは、国費の活動経費について御答弁申し上げておるわけでございまして、先生御指摘のような内容につきましては、それぞれの府県がそれぞれの府県の立場で、知事部局が予算を組みまして、都道府県議会の議決を経て、活動経費その他、これは人件費が非常にパーセンテージとしては多いわけでありまするが、組まれているというのが府県警察経費の実情でございます。
  207. 華山親義

    ○華山委員 それで、この新聞に出ておるように、国費のほうは秘密だ、国費でないほうは秘密じゃないんだ、ということばが出てくるわけですね。私はおかしいと思うのですよ。報償費なら報償費として、厳然として、これは秘密でございます、情報を取るための金でございます、と、きちんとしたらいい。それを、捜査費というような中から出したり何かするからおかしなかっこうになって、あっちから金が出てみたり、こっちから金が出てみたりするんじゃないですか。そういうきちんとしたことをまず形の上から整えられることが、私は必要だと思うわけです。ことに、この新聞に出ているように、これは私だけで言うのですけれども、一生懸命に情報をとっていた警察官、この警察官は国費を出している。しかし、この人の報酬は一体何だ。県費から出しているのでしょう。活動することは国の仕事であって、給料は県から出ているという不分明な点が起きている。県費というものと国費というものの点は、これはあいまいにすべきものでもないし、また、ほんとうに機密であるというものは機密としてやっていったらいい。そうでなくて、機密費的なものでなしに、一般的の経費として支出するからおかしな結果が出てくるのじゃないかと私は思う。将来、この点をひとつ勉強していただいて、よく分けていただきたいと思う。大臣、どうですか。
  208. 中村寅太

    中村国務大臣 経理全般については、随時検討を加えて、正常な経理方式をとっていきたいと思います。
  209. 華山親義

    ○華山委員 終わります。
  210. 大野市郎

    大野委員長 次回は、明十日金曜日、午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時二分散会