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1972-04-26 第68回国会 衆議院 大蔵委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年四月二十六日(水曜日)     午前十時八分開議  出席委員    委員長 齋藤 邦吉君    理事 宇野 宗佑君 理事 木野 晴夫君    理事 丹羽 久章君 理事 藤井 勝志君    理事 山下 元利君 理事 広瀬 秀吉君    理事 松尾 正吉君 理事 竹本 孫一君       上村千一郎君    奥田 敬和君       木村武千代君    倉成  正君       佐伯 宗義君    地崎宇三郎君       中川 一郎君    中島源太郎君       原田  憲君    坊  秀男君       松本 十郎君    村田敬次郎君       毛利 松平君    森  美秀君       山口シヅエ君    吉田 重延君       佐藤 観樹君    平林  剛君       藤田 高敏君    堀  昌雄君       山中 吾郎君    貝沼 次郎君       小林 政子君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君  出席政府委員         大蔵政務次官  田中 六助君         大蔵省主計局次         長       吉瀬 維哉君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省銀行局長 近藤 道生君         大蔵省国際金融         局長      稲村 光一君         国税庁長官   吉國 二郎君  委員外出席者         参  考  人         (日本銀行副総         裁)      河野 通一君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ――――――――――――― 委員の異動 四月二十六日  辞任         補欠選任   堀  昌雄君     八百板 正君 同日  辞任         補欠選任   八百板 正君     堀  昌雄君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  三号)  相続税法の一部を改正する法律案内閣提出第  四号)  日本開発銀行法の一部を改正する法律案内閣  提出第一九号)  準備預金制度に関する法律の一部を改正する法  律案内閣提出第一八号)(参議院送付)      ――――◇―――――
  2. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 これより会議を開きます。  所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び相続税法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  各案は、昨二十五日、提案理由の説明を聴取いたしております。  これより質疑に入ります。  質疑通告がありますので、順次これを許します。奥田敬和君。
  3. 奥田敬和

    奥田委員 昨日から、所得法人相続の三法の本格的な審議に本委員会は入ったわけでございますけれども、本日総理の御出席を得て質問の機会を得たことを感謝いたします。  私にとっては、総理に対する質問最初でありますし、あるいはこれがまた最後質問になるかもしれません。そういう意味において、私の公人としての非常に記念すべき日であると思いますので、貴重な時間に、総理の積極的な御答弁をお願いいたしたいと思います。  ただ、質問に入ります前に、わが党の総裁として、また政治家としての先輩としての立場で御教示を願いたいわけでありますけれども、かつて英国の名宰相といわれたディズレーリが「私は国家構造の中でよいものをすべて保存しようという保守主義者であるが、悪いものをすべて除去しようという急進主義者でもある。」このことはわが自由民主党の精神でもありますし、今日のように国の政策目標が、経済生産第一主義から総理の言われる福祉優先政策転策をはかるというときに、すべていままでの既存の政策をこの辺で洗い直してみる、新しい価値観で見直さるべき大事なときに、味わうべきことばであろうかと私は思います。総理はこのような考え方をどう評価されますか、お答えを願いたいと思います。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも大蔵委員会あまり関係はないかと思いますが、ただいま御指摘になりましたように、とかく保守ということばがそういうにおいを持つものですから、ただ、いままでのやり方をそのまま守っていく、こういうような感じを持たれるのですが、しかし政治に志す以上、悪いものは勇断をもって処理していく、またいいものは幾ら古いものであろうが墨守していく、こうなくちゃならない、かように私は思います。そこら保守党のよさ、保守党哲学というものがある。しかし、どうもその保守党哲学なるものが理解されておらない、そういううらみもありますからただいまのような発言が出たのだろうか、かように思いますが、そういう意味では、むしろ保守党こそほんとの社会的改良をはかっていく政党ではないか、かように私は思っております。だから大いに胸を張って保守党であることを私は自慢したいような気がいたすわけであります。
  5. 奥田敬和

    奥田委員 税の問題は国民生活に一番密着しておる問題ではありますけれども、たいへんじみでございます。しかし国民間にいろいろな批判の高まったものは、やはり縮小、廃止というようなきびしい政治姿勢で検討していく方向が必要でなかろうかと思います。  ところで、本日の質問も、いままでこの委員会でたびたび必ずといっていいほど問題になり、またさき委員会附帯決議としても決議がなされました租税特別措置法の問題に関連して御質問をしたいわけでございますけれども、法人交際費の問題、これは年々改正方向をたどっておりますけれども、私はこれは税の問題であると同時に企業モラルの問題であると思うわけです。さき附帯決議においても、この租税特別措置法は非常に複雑多岐にわたっておる、総理御存じでしょうけれども、百四十八項目もあります、しかも長期化、慢性化していろいろな意味で租税公平の原則を欠いておるということで、私たちが常に問題にしておるところであります。交際費営業政策としてはなるほど理解できる面もございますけれども、何か役得が社用族を生み、社用族が無責任な消費社会無責任社会、これが諸悪の根源一つとなっておるような風潮になっておるような気が私はいたします。そこで、一転して企業モラルを向上させる意味においても、健全な消費とか、そういう形においてもこの問題はいまこの時点において、明年度税制改正においても直ちにメスを入れるべき大切な課題であろうと私は思っております。交際費課税について基本的に総理はどういう考え方を持っておられるのか、改廃規制強化という方向で積極的に検討されておるのか、お伺いいたしたいと思います。
  6. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは私が申し上げるまでもないことですが、税の問題こそは各国の議会史におきましても最もその中心をなすものであります。何が一番先に問題になるか、税だ、これの国民負担がはたして適正であるかどうか、また公平にそれが負担を要求しておるかどうか、そういうことが一番問題になった、かように思います。だから逆にいえば、議会史は税の扱い方そのものの歴史だといってもいい、ここまでいえるんじゃないか。奥田君が指摘になりましたそういう意味におきまして、この税の取り扱い、個々の税の取り扱いですよ、これは公平の原則に沿っているか、さらにまたそれが適正なる負担であるか、同時に国民負担が適正に使われるかどうか、こういうところに国会の基本的な活動がある、かように私は思っております。  したがって、ただいま言われます交際費取り扱い方の問題にしても、ただいま申し上げるような観点に立って検討されてしかるべきだ、かように思います。いままで大蔵省でとってきたのも、ただいま私が指摘したような意味においてこの問題と取り組んでおる、私はさように理解しております。具体的に、ただいまの状態では直ちに非常な急激な打撃を与えるということはなかなかできない。これがやはり負担の問題同時に公平の問題こういうことでありますから、その是正をするにいたしましても、徐々にそれが是正方向に向かっておる、これにどうももの足らなさを感じている、かような御意見もあろうかと思いますが、そういう意味でやっていることは御理解いただけておるのではないか、かように思います。
  7. 奥田敬和

    奥田委員 総理の御指摘のとおりに、総理の御答弁にもの足らなさを感じます。私は、是正は徐々にやってあまり大きな変化を与えるな、公平の原則、しかし洗い直すべきときだという総理のおなかの中は前向きに取り組んでおられるのだと思います。  ただ、この交際費課税は、昭和二十九年に創設された当時は、いままでほとんど野放しに近い、全部交際費というのは損金算入されておったような状態を、交際費支出というものを抑制しなければいかぬ、企業体質を強化して内部留保をしなければならぬという形で創設されたように聞いております。しかし大きな経済成長の過程の中で年率二〇%近い伸びを示す、しかもこれが既得権化して、健全な形の消費あるいは健全な形の当初の創設の目的に反するような方向にきたということも事実であろうかと思います。まともな給与所得者にとっては非常な大きな怒りになる問題だと思います。私もたまに行って自分で払ってみてびっくりするわけですけれども、ああいう世界というものが、私はそれだけを指摘するわけではありませんけれども、非常に大きな社会矛盾根源になっておるのじゃないかと思います。また、営業行為の中で従業員慰安行為とか会社がお歳暮等に使うようなカレンダーとかうちわとか、売り上げの正規の割り戻しとか、景品売り出しとかという経費の面についてはちゃんと法律上は損金算入措置がとられておるわけです。この行為は、全く供応接待という形だけに、むしろ交際費の使途が限られておる形なんです。したがってこの大蔵委員会でも、交際費が毎年度年度増加していく形に関しては、もう超過額に対しては全額ペナルティーで一〇〇%不算入措置をとっておるとかあるいは交際費を少なく使った会社に対しては税の緩和措置を講ずるとか、法的には努力しておるわけですけれども、これはまだ効果があがってない、そういうぐあいに思うので、私はここで提案いたしたいのでございますけれども、四十五年度一兆七百億近い交際費の中で、大法人中小法人を比べてみますと、中小法人の場合には現在の四百万の限度額、あるいはプラス資本金の千分の二・五という形の中でほとんどプールされております。大企業がそのワクを非常に――会社が大きいからあたりまえだと言われればそれまでですけれども、私はそうではないと思う。そういう形の中で否認割合が六〇%近くなっているわけです。ということは、中小企業にとってみれば四百万という限度の中でほとんどできる。ところが、大企業にとってはこんな四百万なんというのはどうでもないのです。千分の二・五、つまり一千億の大企業は二億五千万のそういう交際費控除措置がある。一億の中小企業会社にとってみれば、こんなものな二十五万か、あるいは一千万の会社にとっては二万五千円ですから、こんな千分の二・五というのは関係ありません。したがって、私はここで一定額控除の四百万を、中小企業には非常に影響あるけれども、この際三百万に減らす。そしてまた大企業にとっては非常に影響のある千分の二・五という率を千分の一に持っていく。そして否認割合が今日七〇%になっているのを八〇%に引き上げる。こういう中小企業も大企業もみんなが苦労し合って、そして財源は、総理の言われる新しい高福祉社会の建設のほうへ持っていこうというわけですから、お互いに血を出し合って、お互いにそういう形の姿勢というものを国民の前に示されることが私は大切だと思いますので、こういう私の提案あるいは考え方は間違っているでしょうか。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 奥田君のただいまの御提案、私はそれなりに評価いたします。ただ、もう一つ考えていただきたいのは、事業において交際費と同じような役割りを果たしておる、そういうようないろいろの問題がございます。そういうものに対する課税交際費免税、そういうものははたして均衡がとれておるかどうか、こういう問題も一つあろうかと思います。狭い範囲でなしに、税として考える以上、やはり広範に考えるべきだろう、かように思います。大蔵省も、そういう意味でこの問題をほうっておくつもりはないようです。また、期限が到来する来年になれば、さらに全般をにらみ合わせて、しかる上に処置をとる、かように申しておりますから、これらの点はもうすでに説明されたことだと思いますが、私からも確認しておきます。
  9. 奥田敬和

    奥田委員 もちろん総理の言わ承るとおりで、これがただ目玉商品である――総理専売特許ですけれども、いわば国民感情に非常にいい効果をもたらすであろうという形における目玉であるという点において、交際費の問題を取り上げたわけです。土地の問題もございますし、いまから触れる医療の問題についても、やはりこの問題はいろいろな形で、決して交際費の問題だけではありません。  次に、医療の問題、医療社会保険診療報酬に関する特例について一言触れたいと思いますけれども、何かいま、医療天国日本と言うたら表現がどぎついかもしれませんけれども、お医者さんにとっても患者さんにとっても、非常にありがたい国であろう。諸外国の例を引くまでもなく、私、実地に行っておりますから実際にそういう感じがいたします。ただ、何か悪いやつほど太るというような形にこの問題がなっていっておるというのが非常に歯がゆいのです。ここに堀先生も本委員会にはいらっしゃいますので、あまり専門的なことはありませんけれども、正当な診療報酬体系確立ということは大事だと思うのです。私も友だちに医者がたくさんおりますから、たとえば盲腸の手術一つするにしても、ことしは上がって一万二千円何ぼになりましたけれども、いままでは六千八百円。しかも補助員をつけて、正規看護婦を二人つけて、補助看護婦をつけて、四人も五人も、いわばそういう法できめられた人を立ち会わせて、しかも手術時間が一時間半もかかって六千八百円というような形は、どうしても診療報酬体系の中に大きな矛盾があるということを、私たちも再三指摘して、今度多少なり上がりましたけれども、とにかく水増しをしなければいかぬ。たとえば薬の問題もありますけれども、製薬会社プロパー医者のところにどんどん売り込みに行って、しかも倍に近いようなリベートをつけて、ただで置いてくるような形の中から、今日製薬メーカーの全生産量にも匹敵するような報酬薬価の請求が行なわれるというような矛盾を生んできておる。また、病人でないような病人診療しなければやっていけないというような形の、常に水増しの中でやっていかなければならないという状態を生んだことは、いろいろな原因があろうと思います。  しかし、そのことは別にしても、今日お医者さんがこういう特例措置の中で七二%に近い形が必要経費であるという形で控除されている恩典というものは、私はこの際洗い直されるべきであろうと思います。やはり十万人のお医者さんが一人平均すれば八十万から百万に近い大きな形の控除規定でありますので、私はこの面について、医療報酬のこういう特例措置については、その点について非常に大きな不満を持っておる人間の一人でございます。ただまじめなお医者さんは、こういう形がなくなっても、必要経費必要経費として、このばらつきのある医療行政にもう少しきめのこまかい形をすれば、必ずしもこれにこだわっておられないと思います。そうしてしかも、このことが時限のきめられていないこういう形においても慢性化してきておる、既得権化してきておる、こういう形も洗い直すべきであろうということを私は非常に痛感するわけでございますけれども、この社会保険診療報酬に対する特例、こういう問題に関しての総理のお考えはどうでしょうか。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 奥田君御指摘のように、これは一つの大きな税制上の問題であるばかりでなく、これは社会的な問題にもなっております。ただ私、冒頭に保守党の理念を申し上げましたが、やはりこの経過を一度たどらないとただいまのような点についての十分の理解が得られないのじゃないか。私は医療制度が不十分だ、社会保障制度が不十分だ、そういう際にお医者さんの免税あるいは減税、そういうことで処理した、それがやはり一つ理由になっておる、こういうところに基盤がある、これを正していかないと、いま要求されるような新しい診療制度、これが確立できない、こうも考えるべきではないだろうか、かように思います。したがって、いま税制調査会やあるいは診療関係審議会等でいろいろ答申しております、そういうものをやはり取り上げて、その線でこの解決をはかっていくということにならなければならない、かように思います。  この問題には医薬分業の問題もあるし、薬の問題になってくれば少し薬が多過ぎやしないか、あるいは誇大広告がありはしないか、この広告の問題もやはり税の対象になり得るのではなかろうか、いろいろ発展すればたいへんな問題だろうと思います。しかし、ただいま中央医療協議会でもこの問題を取り上げておりますし、また税制調査会でもこの問題を取り上げております。その方向でわれわれは答申を尊重して解決方向にはかるべきだ、かように私は考えております。
  11. 奥田敬和

    奥田委員 どうも欠点のない御答弁ばかりいただけるので、私は非常にすれ違いのような感じがいたしますけれども、私は時間がありませんので、この診療体系の正しい意味での確立と租税公平の原則に照らし合わせての既得権化している今日の特例措置問題とはおのずから別個の問題だと思いますけれども、総理総理ですから、あまりこまかいことの面については、あまり私が期待する形の御答弁を望むという形は無理だと思います。  ただ最後に一言、時間だという通告がありますので、触れたいのは、所得減税の問題でございます。大蔵大臣は、平年度ペースにおいてもう二千五百億やっておるのだという形であります。私もそのとおり理解いたします。ただ、一般国民感情からいって、なるほど去年は所得減税の繰り上げ減税していただいて、たいへん大きな福音がありました。しかし一般生活者立場からいうと、ことしはこういうやはり不況立て直し、そしてまた物価高、こういう形の中から何とかこの際政府として積極的に減税に取り組んでほしいということが事実であろうと思います。口ではわあわあ不平は言いますけれども、生活内容は少しずつ豊かになっているのは事実ですから、事実エンゲル係数も年々低下している実態から見ても、そういう問題とは違って、やはり減税という形に対する国民期待は非常に大きい。総理はかつて昭和四十一年度のあの不況のときに、自然増収が一千億近いわずかしがなかったときに、二千億の減税という形を大断行されて今日の経済成長一つの大きな基礎をつくられてきたわけです。したがって、この辺で国民に大きなおみやげと申しますか、ほんとうに大きな政治決断によって減税を断行していただきたい。もちろんこれに対しては野党間の中から財政法四条のいろいろな赤字公債なりいろいろな問題を指摘されると思いますけれども、事少なくとも財源減税に使うという形においては野党もそう反対なさらないだろうと思いますし、こういう意味において、こういう特例措置における縮小改廃における財源も大事ですけれども、と同時に新しい形の所得減税、円の再切り上げ防止にもつながることでもありますし、けさの新聞なんかを見てもはやもう円の再切り上げ世界国際経済社会の中で底流となっておるようなものに関しても、私はやはり年内減税をやっていただくことによって大きな景気浮揚にもなるし、そして大きな形での今日の不況感というものが一掃されるのじゃないか、こういう形において総理年内減税を断行する意思ありやいなやを最後質問にしておきたいと思います。
  12. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 減税は私どもやりたい、そういう気持ちはございますけれども、ただいま年度が始まったばかりで、まだ予算も衆議院は通りましたが、そういう状況でございますから、もうしばらく経済の動向も見きわめて、その上でやらないといけない、かように思います。しかし、いまの御要望、これは当然政府が考えるべき、また頭にしょっちゅう置いて、国民の利益を考えなくてはならない、かように思います。ただ片方で減税財源縮小するのですから、同時に公債だけでもいかぬし、やはり政府のやるべき仕事はうんとありますから、それらのことも考えながらうまくバランスはとっていく、こういうことで期待に沿うように、そこらのところはりっぱな大蔵大臣も控えていますから、やりたいと思います。
  13. 奥田敬和

    奥田委員 ありがとうございました。
  14. 齋藤邦吉

  15. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 総理とこの委員会でお目にかかるのは、毎回のことながら年に一回ということでございますが、この場しのぎ答弁じゃなしにどうぞ誠意ある答弁をまずお願いしておきたいと思います。  そこで最初にお伺いしたいことは、いま二十七日、二十八日、非常に大規模な労働者の春闘、賃上げの戦いが行なわれるという事態を目前にしておるわけでありますが、その中でも公労協、三公社五現業、さらに全交運というようなところが大きなストライキをかまえるというような状況になって、国民的に憂慮されておる事態であります。ヨーロッパ先進諸国などでは、非常に長期のストで国民生活ほんとう食料品の確保にまで重大な影響を与えるような長期ストライキになれておりますけれども、まだまだ日本の場合にはそういう事例というものがないわけでありますが、しかし、新幹線までとまるかもしれないというような事態はやはりかなり重大な事態だと考えるわけであります。そういう中で、政府も先般公労協名組合に対して、国鉄を除いて何がしかの六千八百円程度の有額回答をなさいました。これはこれなりにいままでの経過から見れば一歩前進だと評価するわけですけれども、ただしその中で、国鉄が除かれておるというようなことになっておるわけでありまして、国鉄がとにかく不当な差別扱いを受けておるというようなことで、国鉄の職員は非常に憤激しておるというのが偽わらざる実態だと思うわけであります。なぜこのような差別扱いをされるのか、私はやはり政治のあり方として、同じ法律適用を受け、労働関係においてもそういう適用を受け、またそれぞれの公社法なりあるいは国鉄法なりというようなもののたてまえもほぼ同じ思想基盤の上に立っておる、そういう事業体において、そういう差別を設けるということは非常に不当である。これはいろいろ財政的には国鉄経営赤字をかかえて、累積赤字が四十六年度末には約八千六百億くらいになろうというような事態と、国会において予算の問題もあるし、それに加えて国鉄の場合は運賃法の改定という問題、再建の問題をかかえておるというような状況を考慮したのだろうと思いますが、しかし、この春における統一的な労働者賃上げというものはやはりそれはそれなりに何らかの解決をつけなければ、いたずらに紛争長期化するだけで、こういうことしか残らぬだろうと思います。連休前にこの賃上げに決着をつけようと言っておるのに、それが労働者側としても心ならずも、おそらく五月中旬ごろまで、特に世紀の政治といわれる沖繩返還の日あたりまでこの大紛争が長引くというようなことも考えられるわけであります。したがって、いまこそ政府決断を持って、そういうようなことなしに連休前にこの紛争処理をして労働者も満足する、こういうような事態にすべきだと思いますが、この点についての政府最高責任者として、しかも国鉄出身ということで、最も国鉄の事情には精通しておられる首相の見解をお聞きいたしたいと思うわけであります。
  16. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 広瀬君からいきなり国鉄のいまの争議について政府考え方をお尋ねがございました。大体、私が申し上げるまでもなく、争議というものは労使双方にまかす、いわゆる政府が権力的介入などはしない、これが本来のたてまえでございます。しかし国鉄のようないわゆる官営五現業になってまいりますと、どうも政府は同時に当の相手方でもある、そういう意味で、それに介入せざるを得ない、こういうこともありますので、これはいわゆる政治権力をもって介入、こういうようにはとらないようにしていただきたい、かように思います。どうも政府が口を開くと、政治介入、こういうことになるようであります。ことに首相、総理という立場においての発言は、そういう意味であまり好まれない、したがって、今回の五現業に対するあっせんにつきましても私は関係しない、その成り行きを見ていた、こういう状況でございます。これは政府自身が争議の扱い方について、そういう考え方をしておるんだというように御理解いただきたい。これは別に争議について冷淡だ、こういうわけではないので、これはやはり当然のことだろう、かように思います。  そうすると、ただいま言われるように、国鉄だけ別な扱い方は困りはしないか、こういうことを言われますが、これもそれなりに私に理解ができないわけではありません。また、広瀬君も国鉄には特別な事情がある、これは経営上の赤字であるし、また、ただいま運賃法も出しておるし、また再建整備法の御審議もいただいておる、そういうものもこれからどうなるかわからない、そういう状況において政府自身が当事者能力も持たない、いかにもしかたがない、こういうことが言えるのじゃないだろうかと思います。私は五現業といいますが、五現業には五現業のそれぞれの立場があります。ある程度の相違があります。その五現業がどうしても統一行動をとらなければならないという、そこにも私は一つの反省すべき点があるのじゃないだろうか、かように思っております。これは統一行動だ、こういうことで五現業は五現業なりに、それぞれの立場は違っても、同一行動をとらなければならない、こう言われると、そこに少し無理があるのじゃないか、かように思っております。私は、ただいま国鉄の再建について、国会において運賃法あるいは再建整備法、これらについては真剣に御審議いただき、また政府はこれはぜひとも通す、成立を期待している、こういうことで努力している最中であります。私はただいま申し上げるような、ただいまのような状況のもとにおいて、この統一争議、こういうことはいかがかと思う。ただ同じような官業であるという立場において、これは統一行動だ、こう言われても困りはしないだろうか。これから一つの例になってまいりますから、私はそれぞれの公共企業体の特性、それはやはり生きてしかるべきだ、生かされてしかるべきだ、かように思っております。いずれにいたしましても、中労委もこの状態を見てほっておくようなことはしない、かように思いますし、私は中労委がどういうような処置をとりますか、これは十分見守りたい、かように思います。  ただいま御指摘になった別にその点で議論するつもりはありませんが、各国の例を見ると、ずいぶん長期にわたって争議が行なわれておる、英国の最近のローソク――電力ストあるいはアメリカの港湾スト、非常に長期にわたっている。それらの産業ばかりではなく、庶民の生活にまでも非常な影響を与えておる。こういうことが、それは働く者の権利ではありましょうけれども、どうもそこまで無制限にやられてしかるべきかどうか、私は疑問なきを得ない、かように思います。ここらでは私も国鉄の出身者でありますから、国鉄については十分の理解を持ち、いまの時代の組合の諸君が、いわゆる羽目をはずしているとは思いません。私はやはり会って話をすれば十分理解され、そうしてその特殊事情について、余裕のない、聞く耳を持たない、かようにまでは言われない、かようには思いますが、どうもそこらについてやや最近は意思の疎通を欠いているのじゃないだろうか、かように思って残念でたまりません。  ただいま申し上げますように、重ねて申しますが、それぞれの特殊事情がございますから、その特殊事情のもとにおいてやはり考究していただきたいし、ただいま審議しておる諸法案、そのもとにおいて有額回答、これをできないことはこれはおわかりだと思います。しかし、それをしも何らかどうせ有額回答そのものが実施はされないだろう、中労委があっせんすればまた変わった状況にもなるのじゃないか、こういうように見通しを立ててのいろいろの御議論もあろうかと思いますが、それらのことはしばらくおいてこの問題はもっと冷静に処理すべきではないだろうか、かように思います。  私は、最近の国鉄の実際の運行の状況を見まして、まことに残念にたえないものもございます。それを私の、先輩としての佐藤の所見、むしろ総理というよりも佐藤の所見としてお聞き取りをいただきたいと思います。
  17. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 総理からるる答弁があったわけですけれども、どうもなかなかこれは意見がかみ合いそうもない。限られた短い時間で――論争をしなければ総理との距離を埋めるわけにはいかぬわけですけれども、いま事態を見守っておった、政府が出るということはどうかと思うということでありまするけれども、その中ではしなくも総理はいろいろ三公社五現業それぞれ事情が違う、それをなぜ統一をするかということは、これは労働者の権利に属するものであって、そのことについて総理はどうこうを表明されることは、これこそいかがかと思うわけでありまして、むしろこれは総理に取り消してもらいたいくらいのことであります。しかし、まあそのことで論争はしません。しかし結局労働争議というものは、やはり同じような立場で共同の歩調をとろうということは、これは労働者が自主性をもってきめることですから、それについていろいろ経営状態には差があるというようなことを理由にして統一されるのもどうかというようなことではなしに、世界の全部の労働者が、たとえば港湾労働者がアメリカでだいぶ長期にやりました。そうして生産性が三%か、その辺しか上がっていないのに、一五%程度の賃上げはちゃんととっておるわけです。ヨーロッパの諸君は、大体ドイツでも、あるいはフランスでも、イタリアでも、イギリスでも、もう生産性の上昇率をはるかに上回る賃上げをずっと十年来獲得しているのですね。そういう事情だってあるわけです。  国鉄の場合、たとえば確かに経営がいま赤字になっている。このことについても、これはもう問題を本質的に総理にもう一ぺん考えていただきたい。一体、国鉄が何のために赤字を出したか。これは新しい国民に対するサービスのために設備投資にもうすでに第一次計画から第四次までですか、この間に、大体十年程度の間に四兆円の投資をやっているわけです。それを全部自前でまかなってきたというところにあるし、あるいはその他の企業体としてはどうかと思う公共負担というようなものが公共性の名において負担させられてきたというような問題、したがって、そういうものを考えれば運賃、特に貨物運賃なんかを非常に低率に据え置いたということがどれほど日本経済発展に寄与したかというようなことも考えていただきたいし、またその利便を受けたものは、国鉄のすべての赤字は全部国民に還元されている赤字だ、これが本質の問題じゃないのでしょうか。全部これはもう国鉄が、特に職員が高い給料を取って――戦前は高かったのです。これはあなたがおられたころは商工省の次は鉄道省だというような時代があった。その当時は鉄道省員というのはうんと戦前は高かった。それがいまや相対的にうんと低くなっている。これは現実に労働省の調査を見てごらんなさい、今日ほかの公共企業体よりもむしろ安くなっている。全産業のいろいろな職種を産業別賃金を見ましても、それよりも基本給において低くなっている、こういう状態、しかも職員の年齢構成、家族構成というようなものは比較的高い、こういうような事態があるわけなんです。  そういうものに対して赤字を理由にして、そうしてそのカバーのために運賃法を出しているからということを理由にして、有額回答が自主的な立場で出せないという理屈は、先ほどいろいろ例を引きましたけれども、労働問題においてそういうがんこな態度というものはやはり政府がにらみをうしろからきかしておるというところにその有額回答ができないものがあるのではないか、そこのところを聞きたいのです。それをこういう条件で、たとえば予算が通ったならばこの程度のものは出せますということで、よそのところは出しているわけですね、三公社五現業とも出しているわけです。そういうような同じようなレベルに持っていく、そして政府がこれは予算上資金上困難であるという事態には国鉄当局はちゃんと議決を求める案件として国会にも持ってくるんだという、そういう法的整備もなされているわけですから、それはそれなりの形でこういうことが必要だけれどもここまでは出したいということをやることは一向差しつかえないことだと思うのですが、その辺のところを含んでもう小し前向きな答弁をなされないと、これはヨーロッパ並みあるいはアメリカの港湾ストを引かれイギリスの電力ストを引かれましたが、そういう事態にだんだんなっていくということにあなた自身が拍車をかけ、そういう方向に誘導されているという非難をこうむっても、あなた自身これは陳弁できないであろうと思うのです。そういうことを踏まえてもう少し前向きの答弁を願いたいと思います。
  18. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうもこの問題を議論していると、本来の本筋からだいぶはずれるようです。ただ私は、いまの段階において政府最初有額回答ができなかったその事情は先ほど来申し上げたとおりでございます。最近何だかもう少し同一に扱ってほしいというようなあっせん方を依頼もされておりますし、私はそういう点については政府もさらに考慮すべきだ、かように思いますから、この程度にこの問題はこの際はあずからしていただきたいと思います。
  19. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 私もこの問題がきょうは主じゃないのですが、いまの事態でやはりこの問題に触れないわけにいかなかった。いま総理もそういう弾力ある答弁をされたから、その線でぜひひとつ紛争が深刻化し、あるいは国民に大きな迷惑が及ぶようなことのないように、それはそういういろいろな法律的な手段も整備をされているわけですから、その中でやはり国鉄のある程度主体性を持った、そのあとにいろいろの法律的な手続はあるけれども、そういうものを前提にしながらなんですが一そういう方向はとれるはずだという立場で一そう御努力をいただきたいということを要求をいたしたいと思うわけです。  次に、もう時間があまりありませんが、いわゆる所得税の一般減税をことしはおやりにならないということであります。税調では、昨年十二月に年内減税をやって四月から改正ということにしたわけで、その際千六百五十億やったということで、まあ年度当初の減税と両方合わせれば三千億をこえるわけでありますが、その効果がことしに二千五百三十億ばかり持続している、こういうことなんですが、これは主税局長はおわかりになるかもしれぬけれども国民にはちっともわからない論理なんです。しかも政府見通しでも五・三%物価は上がりますということも言われておるわけです。そういう中でことしも所得減税をやるべきであるという声は非常に国民の間に強い。しかも昨年総理景気浮揚のためには非常に有効かつ即効性のある減税、しかも総理の言われる福祉への転換、生産第一主義から人間尊重への転換、生活優先への政治へと、こういう方向にも合致をしながら不況克服をなし遂げることができ、まさに両善の政策であるということが言えるわけなんです。しかも昭和四十六年度の当初予算と比較いたしまして、四十六年度の当初予算に対する四十七年度自然増収は五千七百三十二億と見積もられているわけですね。しかも所得税の増収はその中で五千九百三十二億という、むしろ所得税の自然増収が四十六年度年度当初予算に比べますと上回っているんですね。それで補正後の予算と比較しましても全体的な自然増収が一兆四百八十九億だ、そういう中で所得税の自然増収が六千七百八十二億ということにもなって、補正後に比べても七割、自然増収全体の中で所得税の自然増収は七割を占めている。こういうようなことも考え合わせて、これはやはりまだ景気も底が入った、去年の五千億の公共事業投資というようなものもいまになってかなり効果もあらわしてきているというようなことでやや明るさが出てきたのではないかというような状況にはあるけれども、民間設備投資などは全く二年続き減少をしているというようなことでなかなか景気がもう一つ盛り上がらぬというようなこともあるわけで、そういう景気浮揚対策、しかも政治における発想の転換と称する問題、この問題両者とも満足させていく、そういう意味というものをこの所得減税というものは持つわけであります。そのことを総理も昨年踏まえて年内減税に踏み切られた。これをことしもやはり――老人対策、寡婦対策というようなことで百三十六億ですかぐらいのほんとうに手直し的な減税にとどめて一般減税をやらなかったということはどうしても大きな問題だと思う。そういう点からこの問題を、やはりかなり景気回復が長引く、本格的な景気回復、景気浮揚というものが長引くというような事態を踏まえたら、年内減税をやる御意思があるかどうか。この点を、大蔵大臣はいつでも大蔵委員会で来ていただけますから、総理のお考えを、去年やられた総理のお考えを、ことしもやはりやるべきだという立場に立ってお伺いをしたい。
  20. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 所得減税、これについては先ほど奥田君にお答えをいたしましたから、これで御了承いただきたい。私は、いま年度が始まったばかりですから、ことしの状況がどんなになりますか、その状況を見て、しかる上で処置をする、かように御理解をいただきたいと思います。  ところで、少し時間をとりましてまことに恐縮ですが、昨年年内減税をした。これが最初年内減税をやるべきかどうかたいへん疑問に思っていたのであります。同時にこれは景気浮揚のために減税をやる、今度はしかし景気がよくなったら増税もまた可能だ、こういう議論も成り立つのではないか、こういう学者の意見もありまして、これはなかなか思い切ったことを言われる先生だ……。
  21. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 国民所得が上がれば……
  22. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 だから、それはそのとおりです。所得が上がる。景気が浮揚して所得が上がる。そうなれば必要な社会的な処遇、これを改善もできる。そうしてやはり景気の安定をはかり得るという、そういう押える役割りも今度はできる。そういうこと、その考え方一つ定着するのじゃないか。かような意味において思い切ってこの際に年内減税に踏み切ってみよう、それだけの効果がはたしてあるかということで実はこれをやったのでございます。ところがどうも昨年はずいぶんわれわれの予想しないようなショッキングなできごとが次々に起きた。必ずしも最初期待したとおりの効果ではございません。これは広瀬君も先ほど来言っておられるように、これによって設備投資が非常に活発になった、こういうようなものではございません。また生産状況もただいまのところそう活発に発展しているとは思えない。むしろ伸び悩みの状況。これらのことを考えながら、今回の、ことしの自然増収分というものの見込みは高木君の経験をもってしてもなかなか見通しが立ちにくいんじゃないか。かように実は私思っております。これはいままで大蔵省の連中はたいへんな自信を持って計算をしてまいったものですが、最近はとかくどうも大蔵省のそろばんもはずれがちでございます。したがって、いましばらく模様を見ていただかないといかぬ。  しかし私は、国民景気浮揚をやり、同時に余裕ができて、その余裕が減税にも、さらにまた国内の福祉対策にもその金が使える、こういうような状態ができることを心から実は望んでおるのでございますから、期待は持っていただきたいと思います。そのためにもいまやっておる減税効果あらしめる、そういう方向で十分注意をし、指導をするということがやはり大蔵省当局のただいまの役目ではなかろうか、かように思っております。たいへんいまむずかしい状況でございますから、御期待になるようなずばりお答えができないことはまことに私も遺憾に思いますけれども、了承を得たいと思います。
  23. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 時間がありませんので、それでは私はこれで終わります。
  24. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 佐藤観樹君。
  25. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いまちょうど景気の話しが出た。その続きになりますけれども、景気回復のおくれる理由として当初予算、昨年度予算でも、公共投資をするにしても用地難がある、したがって用地難のために公共投資が非常に予定よりおくれて、それで景気回復がうまくいかないのだということで、用地難の問題として、地価対策が非常に大きな問題になると思うのです。それで私は、こまかい数字は要らないのですが、現在東京証券市場なら市場に上場されている会社は一体どのくらい全国に土地をお持ちか、こまかい数字はいいのですよ、大体頭の中でどのくらいお持ちかという概念が総理ありますか。
  26. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは佐藤君のお尋ねにぴったり答えておるとは思いませんが、私はいまの土地投資、これが非常に全国的に多い、こういうことで、これは何とかその投資を抑制しなければならない。これはもういまのところでは、金融的な面からそういうものをある程度抑制できるかとかように考えております。そういう状態でございます。
  27. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 実は私自身もびっくりしたのでございますけれども、これは昨年の九月にある証券会社が調べた調査ですけれども、東京証券市場に上場されている会社千二百九十三社が持っている土地合わせますと四千六百七十五平方キロ、四千六百七十五平方キロといいますとそう簡単に頭に浮かびませんけれども、これは全国の土地の一・二六%、つまり全国にある市街地の面積とほぼ同じくらいをこの千二百九十三社が持っているということなんですね。四千六百七十五平方キロといいますと、面積だけからいうと京都府の面積と同じくらいなんですね。これはいま私があげた数字というのは、不動産会社の土地、販売用の土地あるいは小会社の土地あるいは上場されていない会社が持っている土地、こういうものは入っていないわけなんです。そうすると、いかにたいへんな膨大な量の土地を保有しているかということがおわかりになると思うのです。  そこで、この前の新聞にも出ておりましたように、大蔵省としては固定資産税の評価がえによって土地保有というのを押えたいという意向でございますけれども、私は、固定資産税の評価がえよりも、現在出ているデータの簿価というものは一平方メートル当たりわずかに五百六十八円十八銭なんですね。したがってこれをもう一度再評価する必要があるんじゃないか。総理も御存じだと思いますけれども、大企業に対する再評価というのは、二十八年の一月一日に再評価をやって以来全然やっていないわけなんですね。私はあとで固定資産税の評価がえについてもお伺いしますけれども、とにかくこれだけ土地を保有しているということ、しかもそれが非常に安い簿価のままになっているということ、これは一度総決算をするためにも、再評価税をもう一度考える必要があるのじゃないか。しかも従来のように、第三次、第四次までやられましたけれども、企業が望めば再評価をするというやり方ではなくして、もう一度ここで総ざらいのつもりで再評価税というものを考えるべきではないかというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  28. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 それも一案かと思いますけれども、ただ土地を持っておるのが全部が全部投機だ、こうきめつけるわけにはいかない。やはりその会社事業の拡大のための必要なもの、そういうものもあるようでございます。また個人用のものもあるようでございます。したがって、ただいまの再評価にいたしましてもそう簡単には結論が出ないように実は思っております。私は、最近のいわゆる、特定の名前は申しませんけれども、開発地域についても、そこらの土地は全部不動産屋あるいは投資会社に買い取られている、こういうような話を聞いて、こんな再開発をするというので前もってそれを買っておるというものに対しては、計画を改めるというのも一つの方法ではないか。一度うんと損をさせてみる。これくらいのことをやらないと、これはうまくいかないのではないか。実は私も非常に憤慨をしておる一人なんであります。しかし、ただいま佐藤君の言われるように、再評価をしてこれが今度は一体どうなるのか。大体税から申せば、現実に売買をしてそして所得があればそれに課税をするというのが本来のたてまえでございますから、それをこわして、特別な理由のために再評価をしてそうして税をかける、これがはたして適当なのかどうなのか。この辺はひとつ高木君のほうに、専門家のほうにまかさせていただいて、私のはあまり権威のある説明にはなりませんから……。
  29. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 まあ、総理がいま言われたようにいろいろ、確かに土地の問題というのはたいへんむずかしいわけですね。特に総理の治世というものの七年半の間にずいぶん土地が上がっているということがあって、これはいま買われている土地の将来の値上がりを見越しての買いがほとんどであると言っても過言ではないと思うのですね。そこで私は、かなり思い切った手をやらないとこれはもうどうにもならぬ、ますますじり貧になってしまうのじゃないか、行き詰まってしまうのじゃないかと思う。  そこで、確かに総理の言われるようにこれは税だけで解決できるものではないと思うのです。それで私たちは、ひとつ土地をそこにだけしか売れないような公社的な、あるいは買うほうも少ししか買えないような公社的なものをつくって、そうして土地売買というのはその一手でしかできないような、そういう公社というものを考える必要があるのじゃないか。確かに税だけではとても解決できないと思いますけれども、しかし現在やっているような土地の譲渡税、このような甘いことでは私は何ら解決にならないのじゃないかと思うわけなんです。  そこで、せっかくのところを、話が続きますので、大蔵大臣にお伺いしてみたいのですけれども、これはこの前の新聞に書いてあることですからほんとうかどうかわかりませんけれども、まあ固定資産税の評価がえ、特にいま負担調整方式でたいへんややこしいやり方になって軽減をされているという問題、あるいは公示価額を上回って売買しても、現在の場合にはそれほど課税になっていないわけですけれども、その辺のところも課税を強めたいというような記事が出ているわけなんですが、そのあたりは大蔵大臣いかがでしょうか。
  30. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ここにその新聞記事がございますが、別にこういうことを私が言ったことはございません。ただ国会での質問におきまして、この問題に対して、地価公示制度がもう少し普及するというようなことであれば、この異常な高価で処分をした所得に対する特別の税というようなものも考えられるが、いまのところではこれはなかなかむずかしい、いま税制調査会でもこの問題は検討をしておるが結論は出ていない、こういう答弁をしたことはございますが、この新聞にある記事とは違っております。
  31. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 ちょっとまあ意外だったわけですけれども、これだけ――とにかく土地対策をやらないことには、公共投資をしようにも、ことしの予算のうちの二割までが土地取得に充てられている。しかもそれもいろいろな問題があって非常にむずかしいというときにあたって、やはり大蔵省としても土地対策上、もちろん課税だけでできるものではありませんけれども、課税の面からも、いわゆる将来の値上がりを見越して、いま金融緩和のときですから、金融業界が土地を買っておく、あるいは土地の不動産に金融業が投資をするというようなことに対して何らかのチェックをしていかないといけない時期に来ているのではないか。そのあたりで――じゃ、保有課税を強化するという方向のことを大蔵大臣としては考えておらないということならば、土地対策として、地価対策として課税強化という方向は考えていらっしゃらないのか、そのあたりいかがでしょうか。
  32. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま金融機関別に最近の土地に対する融資の実情を一つ一つ調査して、実態の把握につとめておるときでございます。最近の貸し出し増加のうちに土地、建物についての貸し出し金額が非常に多いということは事実でございます。しかし、これが実際の建物になり宅地になって有効に使われるのでしたら、これはもう福祉向上の線に沿ったことで問題ございませんが、投機のための融資が実際どのくらい行なわれておるか、これを見ようとしていま調査しておりますが、個々の調査でそういう問題が出たときに指導いたしますし、また定期の銀行監査を通じて監督し指導する、そういう方面からの行政は相当いま強化しております。  税制で土地対策をするということは、私は非常にむずかしいことだと思っております。さっき言われましたような個人の土地所有についての譲渡所得についての税については、いろいろ御承知のような措置をとりましたが、法人に対する措置というものはなかなか実際にはむずかしい問題でございます。先ほど言われましたような再評価をかりにして、再評価についての税を、法人税まではいかぬでしょう、それより軽い税になるでしょうが、取ってしまったとしますと、もしそれがいま工場の敷地になっておったり、あるいはパルプ会社は非常にたくさんの山を持っておりますから、こういう有効に工場のために働いている資産、これは売りに出さないでしょうが、売りに出さないというものについては非常に負担が重くなるし、もし将来売るというために投機の目的で所有した土地ということでしたら、いま再評価をやってしまったら、将来その会社が処分するというときには、いまのままでいるよりは税は安くなっていくという矛盾もございますので、なかなかそこらの点についての踏み切りの税制税制調査会でもまだ結論が出ない、こういう状態でございます。
  33. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 確かに大臣の言われるような問題というのは私もあると思うのです。ただこのあたりで思い切って一歩踏み出さないと、佐藤内閣七年半続いたけれども、踏み切るところがどうも一つおそいんじゃないか、したがってずるずる後手、後手に回ったのじゃないかと思うものですから、またこれは大蔵委員会で討議をさしていただきたいと思うのです。  それからもう一つは、これはまたあとの方から出るかと思いますけれども、現在外貨が百六十六億ドルまで達しているという問題でございます。この本論については、実はきょうどなたかやられると思いますのでやりませんが、これに関連をして法人税の問題なんですね。これは現在三六・七五%ということになっているわけですけれども、少しこれは上げる必要があるんじゃないかというふうに思うわけなんです。と申しますのは、まず一つは、外国に比べまして――これはいろいろ制度が違いますから、直に比べてもまた比較にならない部分がありますけれども、アメリカが四八%、イギリスが四〇%、西ドイツが五二・五三%という数字を考えてみても、外国から円の単独切り上げを迫られるであろう、年内には単独切り上げになるのではないか、しかもそれは一ドル二百五十円ぐらいじゃないか、あるいはもっと下だという話すらあるときに、いわゆるソシアルダンピングの一端として法人税というものは外国に比べてみても低いのではないか。  それから、こまかい数字をあげている時間がありませんから申し上げませんけれども、二十七年ぐらいの四二%からずっと下がって、四十一年に三五%まで下がったけれども、いま付加税率を加えて三六・七五%という数字になっている、こういう経緯、あるいはこれから高福祉、高負担という社会を迎えようというときに、やはりここで企業負担ももう少し考えておかなければいかぬ。こういうことになってくると、この法人税というものをもう少し強化する必要があるのではないか。とにかく現状では四十九年まで三六・七五%ということになっておりますけれども、今後はさらにこれを上げていく必要があるのじゃないかと私考えるわけなんです。私は、これからの国際化していく日本経済の大きな流れの中で、この法人税というものがこのままでいいだろうかと思うわけなんですが、総理の御見解いかがですか。
  34. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 円の国際相場といいますか、それからいろいろ日本経済影響を与える、ある産業はもうかる、ある産業は損しておる、こういう非常に複雑な状況であります。佐藤君の出ておられる地域では、おそらく貿易によっているだけにずいぶん困るような状況ではないかと思っております。そういうことを考えると、いまの状態で直ちに法人税にさわることがどうか。ずいぶん付加している法人税率、これもやめてくれろという強い意見が一方でありました。しかし私ども、ただいまの利益をしておるほうから見ると、佐藤君がいま述べられたような理論からどうも下げるべきではない、かように思いますので、この期限を延長してもただいまの付加税率を維持する、こういう態度をとっておるのであります。しかし、この法人税の税率が適正なりやいなやということは、これは長期にわたって検討すべき問題でございまして、ある産業はもうかったとか、ある産業は損した、こういうだけで税率を左右すべきではない、かように思います。これは税制調査会等におきましても、適正税率を十分考えるべきだ、検討すべきだ、そういう問題でございますから、ただいまそういう意味で取り組んでおる、かように御了解いただきたいと思います。
  35. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 総理、税金というのはだれも上げてくれと陳情するところはないのですね。絶対にこれは下げてくれ、下げてくれと言うところばかりですから、そういうことばかりに耳を傾けていますと、やはり経済の運営というものは私は間違うのじゃないかと思うのです。  少し話が前後するかもしれませんが、最後に、今度の法人税の税収見込みというのは四十七年度予算で二兆五千九百十七億円、今度の四月の暫定予算には三千百三億円という数字が見込まれているわけですけれども、これは大蔵大臣どうですか、予算が執行されたばかりだからまだわからないという答弁になるかもしれませんけれども、法人税の税収見込みというのはこの見込みどおりになるのだろうか。それに関連をして、いま大蔵大臣としては、景気の見通しというのは一体どのくらいの段階に来ているというふうに御判断なさっていますか。
  36. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 法人税の見込みは、私も非常に関心を持って知りたいので、ここにおる主税局長に聞くのですが、ここもどうなるかということしの自信がなくて弱っておるところですが、もう一ぺん主税局長からそれじゃ説明していただきます。大臣には一向説明しないのです。
  37. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 法人税収は、三月、九月に決算期がまいります大きな法人の申告額によって左右されるわけでございます。そこで四十七年度歳入は、この三月期が決算で五月が申告期のものと、この九月に決算期がまいりますものによって非常に影響されるわけでございますが、この上半期につきましては御推察のとおり非常に調子がよくないわけでございます。したがって、大体この見込み額どおりになりますかどうかは、かかって九月の決算がどうなるかということでございます。ただ、この見込みはかなり昨年予算を立てましたときに慎重に見ておりますので、いまのところ何とかこの程度にはいくのではないかという感じでおるわけでございます。
  38. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 最後に、私の後半の質問大蔵大臣にお伺いしておきたいのですけれども、景気の見通しとして大臣は口を開けばこの前までは十五カ月予算を言っておられたわけなんですけれども、いま日銀の統計その他を見るとかなり上向いているという数字もいろいろ出ているわけです。そのあたりについて大臣としては大ざっぱにどのように見ておられますか。
  39. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 やはり各方面で各機関が一応最近いっておりますとおり、景気の底固めに入っておる。しかし、きわめて緩慢な上向きの線をたどるだろうというのがやはり実情じゃないかというふうに思います。しかし、これ以上景気の落ち込みはないというところへは、経済のいろいろな指標から判断してそこまできていることは間違いないと判断いたします。
  40. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 貝沼次郎君。
  41. 貝沼次郎

    貝沼委員 総理大臣にお伺いいたします。  納税者にとって税金がどのように使われるかということは一番関心を持つところでありますけれども、最近いろいろとニュースなどを見ておりますと、どうも税金がある意味においてはむだ使いの危険性があるのではないか、こういうふうにずいぶん言われております。そういうところから、もしこういうような税金のむだ使いに似たようなことがあり、いわゆる失敗が起こった場合、一体この失敗の責任というのはだれがとられるのか。さらにまた、その原因はどこにあったということを釈明されるのは一体だれなのか。そしてまた、将来それに対してどういうような具体策をとると説明されるのは一体だれなのか。どこでそういうことをされるのか。この点について総理の見解をお伺いしておきたい。
  42. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まず皆さん方に予算の御審議をいただいておる。これがむだ使いのないように、こういうまず最初の関門だと思います。もちろんその前には行政事務当局、これが第一関門で、十分精査して御審議をいただく、こういうことであります。またでき上がったその予算の処理にあたっては、いわゆる決算、これによってベースする、こういうことでございます。それによりまして、そのむだ使いの軽重いかんによってはいろいろの責任の取り方がある、かように御了承いただきます。
  43. 貝沼次郎

    貝沼委員 そうしますと、究極において責任は総理ということになりますか。
  44. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりです。
  45. 貝沼次郎

    貝沼委員 そこで、私は去年日本は円の大幅切り上げをやったわけでありますけれども、その結果、八千六百億円の国損をしたといわれております。日銀の三月期決算は創業九十年の歴史の中で初めて赤字になった、こういわれております。一体、この損失の責任というのは、いまの論理からいきますとこれは総理になりますけれども、一体この原因と責任と、将来これに対してどういう対策をとるかということについての総理の見解をお伺いたいと思います。
  46. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これはちょっと先般参議院でも論じた問題でございますので、先に私から一言述べたいと思います。  私は、非常に国損、国損といって、その責任問題を言われるのですが、もし経済政策がまた別の政策をとって、日本が円が切り下げられるような方向に追い詰められた場合を想像いたしますというと、これは日銀も外為会計も損を出しませんので全部もうけになります。そうなったときには国益であるといってほめられる問題であるかどうかといいますというと、円を切り下げて、そしてもうけたということが国益といってほめられる事態であるのか。そうでなくて、いろいろな経済政策によって円自身が切り上げということで初めて国際間の新しい秩序をつくり直すというところへ追い込められたために、為替差損というものが日銀と外為会計に生じたというものが、これが国損であって責任を問われる問題であるかどうかということはなかなかむずかしいと思います。これによって円自身が強くなって、対外購売力は非常に大きくなって、そして輸入物資が下がって、国民生活というものはこれによって今後どれだけ広範な利益を得るかというようなことを考えましたら、この損益を簡単に私は特別会計の損益で計算して云々するという性質のものでなかろうということを申しましたのですが、その点を考えて、ひとつ総理の御責任を問うということにしていただきたい。一言だけ先に御答弁申し上げます。
  47. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国際間の為替レートの問題では、いろいろ批判の問題が起こると思います。私は、そういうことに対処していくそういう場合の政府の態度というものはなかなかむずかしいんじゃないか。いまの大蔵大臣のような――ようなといってはいかんですが、大蔵大臣から説明されたような、その話もございますけれども、御意見もございますが、私はこういう事柄については、やはり国民がいかに判断するか、こういうことによって出処進退をきめるべきだろう、かように思っております。ただいままでのところ、外化具外為は、――外貨準備はいまだかつてない状態になっておる、こういう状況でありますし、これはたいへんな国の富と申しますか、それが外貨準備で表現される、このことは国民からは非常に高く評価されておる、かように私は思っております。ただいまのような、それが得になったとか、損になったとか、こういうような議論は私にはあまり耳に届かないのです、そういう議論は。  以上で御了承願います。
  48. 貝沼次郎

    貝沼委員 総理の耳にあまり届かないそうでありますけれども、その辺の、たとえばマスコミの書類などを見ますと、ちゃんとそういうものが幾らでも出ておりますから、どうぞきょうお帰りになりましたらひとつゆっくりとごらんいただきたいと思います。  それから、大蔵大臣は先ほど長期的な見地に立たなければはっきりと評価できないということを申されました。しかし、現在の日本の税金を納める人たちは、やはり一年ごとにちゃんと税金を納めているのであるし、現在税金を納めている人があした死ぬかもしれませんし、そう簡単に言えないと私は思うのです。そのときそのときの判断でやるべきことをやり、また長期で評価すべきものは評価するというのが正しいのではないかと私は思います。  それから、輸入物資が下がったという話がありましたけれども、これはこの前の物価連合審査でも下がらないということでずいぶん問題になった点でありますから、そういう点もそうそう計算どおりにはいっていないから、こういう問題を私は言っているわけであります。  それからさらに、いろいろの予想によりますと、やがて政府のいう財政主導型の予算が通るのではないかといわれておりますが、しかし、この場合政府のたてまえと本音が、実際の予算の中身というものが相当開きがあると私は思うのです。たとえば今回のいろいろな国会審議を通じて政府が発想の転換ということをいっておりましたその中身が、実はことばだけであるということがはっきりとあらわれております。たとえば高福祉、高負担を説く一方、高福祉政策の具体的な構図は全然示されておらない。大蔵大臣は、できれば高福祉十カ年計画を立てたいが、それよりも財源確保が先決である、こういうふうに正直に手のうちを見せておるのでありますけれども、総理大臣は、こういう高福祉十カ年計画というようなものをつくるお考えがあるかどうか、この点についてお伺いいたします。
  49. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま高福祉、高負担を簡単に言われましたが、どうもまだ考え方は高福祉、高負担が定着しておらないのではないでしょうか。高福祉はみんな希望しておる。同時に軽負担、このほうの考え方が相当多い、かように私は思いますけれども、高福祉、高負担、これはたいへんけっこうなことで、そういうことになるような経済状態であることが必要なんです。高負担に耐え得るというか、高負担でも別に苦情を言わなくて済む、そういう世の中になる、国民生活をそこにまで持ち上げていかなければならないように思うのであります。そこで、いまの大蔵大臣が言った財源措置が大事だ、こういうことにもなろうかと思います。ただいま新しい経済計画で福祉計画の長期計画を考えております。こういう場合において、やはり資源の配分、こういうことを重点に置いての新しい経済計画が樹立され、それが実行される。もちろんこれは長期にわたるものでありますから、途中において手直しをしていくことは当然でありますが、とにかく目標なしにいまの政治をやる、こういうわけにはいきません。ただいま御指摘になりました福祉、こういう事柄についてはやはり高福祉、高負担、それに耐え得る経済状態、そういうものをつくっていかなければならない、かように私は思っております。
  50. 貝沼次郎

    貝沼委員 その経済状態によって、どうも大蔵大臣ことばから考えますと、ほかに何か財源の当てがあるような感じがするわけでありますけれども、そういう考えはこれには含まれておるのでしょうか、それとも含まれてないのでしょうか、大蔵大臣
  51. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 財源はひとり税だけの問題ではないと私は思っております。たびたび申し上げることでございますが、受益者負担ということについての原則をもう少しはっきりさせるということによって、ここから出てくる国費のロスがどのくらい防げるかということを考えますと、非常に大きい金額になるんじゃないかと思います。たとえば食管制度一つ改革することによっても一兆円というものがここで出てくる。国鉄の問題でももう一兆円以上の赤字の累積になってきて、最後はこれが全部国民負担になってきている。健康保険の問題においても同様でございますが、赤字が二千億円も累積するし、もし何らかの措置をとらなければ本年度は三千億の赤字累積になる。こういうものが合理的に防げるということでございましたら、ここでもう二兆も効率的な資金というものが捻出されるということを考えますと、今後福祉政策に踏み切って相当財政需要がたくさん要る、したがって、その財源ということはむずかしいといっても、こういう部面から合理的に捻出できるものも相当あるということは考えられます。  たとえば老人対策で本年度は資金の関係から本年度予算としては二百億円前後の所要経費でございますが、来年度は平年度化して一千二、三百億円になるということも、本年度は財政需要でわずか一千億の資金の余裕がなかったためにそういう措置をとっているということを考えますというと、国費全体の中から一兆、二兆のロスを防げるというようなことが考えられるのでしたら、これによっても福祉政策というものが相当前進できると考えられます。したがって税負担だけではなくてそういう点の福祉政策への踏み切りをここでつけた以上は、いままでの財政についてのそういうものの総洗いをやる必要があるというふうにも考えていますので、こういう問題はこれからの真剣な研究課題であると私は考えております。
  52. 貝沼次郎

    貝沼委員 その総ざらえというのは、どういう方向に向いての総ざらえになるわけですか。いままでのをある程度やめるという考えがあっての総ざらえですか、それともいままでのをもっと継続させるという意味の総ざらえですか、どういうのを考えておられますか。
  53. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 一時いわれておりました財政硬直化のいろいろな原因を除去するというようなあらゆる施策が財政政策においては必要であるというふうに考えるわけであります。
  54. 貝沼次郎

    貝沼委員 それについてもまだ議論があるわけですけれども、先ほどから出ております減税の問題について私は一言申し上げたいと思うのです。  先ほどから話がありますけれども、景気浮揚の一助として個人消費を促そうというので、総理大臣が声をかけてきまった減税でありましたけれども、その後一連の公共料金の値上げ、ただいま話がありました物統令の廃止等があり、あるいは医療費の値上げなどがありまして、減税がむしろ焼け石に水というふうな感じがするわけであります。例を申し上げますと、夫婦子二人の標準家庭でありますが、年収百五十万円くらいの人でありますと、月割りで大体八百七十円余りの減税がある。二百万でありますと、大体千百四十円くらいになりますが、そのうち子供が一人たとえば国立大学に入っているといたしますと、授業料の支出が値上げ前よりも二千四百円増になる。それから教科書代もまた高くなる。定期代も高くなるというぐあいで、減税分なんかむしろ帳消しにされてしまって、これでは消費がふえるどころかむしろ家計としては赤字になってしまって、かえって使いにくくなってしまう。それからまた医療費で見ると、厚生省調べによりますと、国民一人当たりの自己負担額が年間平均大体五千円から六千円といわれております。二月から一二%ぐらいの値上げで考えますと六百円から七百円ぐらいふえることになります。四人家族でありますと年間二千四百円から二千九百円ふえることになります。この辺までくると、結局減税効果は影も形もなくなってしまうということになるわけであります。  こういう実情でありますので、先ほどから主張がありますように、私はやはり物価政策という面から年内に減税すべきである、こういうふうに思うのでありますけれども、総理大臣はこれに対してどういう考え方を持たれるのか。先ほどは予算がまだ通っていないからという話と、それからまたこれからよく見きわめるという答弁でありましたけれども、それならば予算が通った暁においてそれに対する見解を表明されるのか、あるいはまたよく見きわめると答弁がなされておりますけれども、いつごろまでにその結論を出されようと思っているのか、この点についてお願いいたします。
  55. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 誤解を受けては困りますが、いまの御議論は、所得は全然ふえないで固定されていて、ただ減税だけで負担が軽くなる、しかし一方で支出はどんどんふえる、だから非常にアンバランスでこれはちっとも減税も役に立たない、こういう御議論のように受け取れるのです。しかしそうじゃなくて所得もやはりふえておりますから、その所得の増加率が物価の上昇率を上回ると、これは所得がふえているからそこにある程度の楽もあるし、また減税いたしても免税点を切り上げてもやはり税収そのものはふえているとか総額としてはふえるとか、こういうことで国の必要な財源をまかなうことができる、こういうことにもなりますので、ただその前置きがやや私の感じではちょっと違うように思いますので、その点をまず一つ指摘しておきます。  それから、ことしの減税の分につきましては、これは何と申しましても予算が通ったその暁で私どもがとやかく言える筋のものでもないし、一般の景気動向を見、そして収入予測を立てた上で初めてそのことについての取り組み方、政府の態度を明確にできる、かように御了承いただきたいと思います。もちろんそれまでに必要な諸手続をとって初めて政府政府のとるべき処置を明らかにする、かように御理解をいただきたいと思います。
  56. 貝沼次郎

    貝沼委員 これは総理所得が上がっていることは私もわかっているのです。しかしながら、たくさんの人と会っていろいろと具体的なお話を聞きますと、総理がものすごくよけい上がるような感じで言いましたけれども、やはり総じてそうじゃないのです。そう上がるぐらいであれば、これほど不景気ではないのです。それはたとえば給料がきちっときまっているような人は、これはある程度そう言えるかもしれませんけれども、実際は不景気、不景気という時代でありますから、上がるどころか仕事がなくて困っている人が多いのです。したがって、総理が先ほど前提に置いてくつがえされましたけれども、必ずしもそうではない、私はそう申し上げておきます。  それから、あと三分ばかりでありますので、問題だけを出します。  一つは、現在大蔵省あるいは郵政省においていろいろ庶民金融のことについて考えているようでありますけれども、これがなかなか結論が出ません。そこでこれは大蔵大臣に聞いても郵政大臣に聞いても結論が出ないと思いますので、結局最後には総理大臣にお尋ねするわけでありますけれども、政府としてはこの庶民金融の要求に対してどういう施策を今後とられようとするのか。要するにいまのものをやるかやらないかは別にいたしまして、今後の方向としてどういうふうな考えをお持ちなのか。庶民金融をやってくれという声は非常に高いわけです。それに対して政府としてどういうお考えがあるのか、これについての答弁をお願いいたします。
  57. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 庶民金融は大事ですから、これはやらなければならない、ことに無担保に近い金融、これはやらなければいかぬと私は思います。もちろん庶民金融という限りにおいては少額の金融措置、これが必要だ、かように思います。今日農協あるいは労働金庫その他等におきましてもすでに庶民金融はいたしておりますから、ただ新しく金融機関をふやすだけが能ではなくて、その金融が徹底するようにすることが必要だ、かように思います。
  58. 貝沼次郎

    貝沼委員 それならば総理の考えからいきますと、現在郵政省で考えているようなものは妥当だとお考えでしょうか。
  59. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはいろいろ金融機関の問題でございますから、私どもが一部的にこれは適当だとか適当でないとかこう言うことはいかがかと思いますが、私もう少し両省、関係省において十分検討すべきだ、問題ははたしてそれが国民に利益するかどうか、そこをよく考えていかなければならぬ、やはりやる事柄は政治、これは国民相手でございますから、国民の喜ぶことはわれわれも取り組まなければならない、かように思います。
  60. 貝沼次郎

    貝沼委員 それならば、たとえばこういったようなものはどうかという反応を見るために、政府は積極的にそういう政策を出されるお考えはありますか。
  61. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いままでもそういう意味のものをある程度指導しておる、かように私思っておりますけれどもいかがでしょうか。それが不十分だ、こういうことからいまのようなものが出てきておりますけれども、やはり資金そのものはもしもまとめて財投の原資になればこれは役立ちますが、しかしこれをまた小分けいたしますと庶民金融という看板倒れになりましてなかなか十分の効果をあげない、こういう心配もありますので、そこらは金融と言う以上、やはり原資を十分持たなければこれが効果をあげるわけにいかない、かように私思います。そこらのところのむずかしさがある。
  62. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 竹本孫一君。
  63. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は、総理最初に要望をちょっと申し上げたいのですけれども、それは最近の動きを見ておりまして、行政が政治に優先しておる、事務が政治に優先しておるという傾向があるようにも感ぜられます。先ほど大蔵大臣いろいろおっしゃられましたけれども、私は、通貨交渉の場合もあるいはたとえば一つの三百六十円レートを守るという問題も、これは事務的良心からいえばもっともだと思うのです。しかし政治的に判断をすれば、それが何日間もてるか、半月ももてないようなものを三百六十円レートをあたかも死守するかのごとき姿勢で取り組んでみて途中で失敗してやめてみる。そのために日銀はいま四千五百八億円赤字が出たのがいいか悪いか、水田さんだいぶこじつけを言っておられたけれども、とにかく問題は、見通しのないことを一生懸命頭を突っ込んでいくというところにぼくは判断がなかったと思うのですね。これは本格的に議論すればいろいろあります。  それから最近の四次防の問題についても、これも理屈を言えば、私は防衛庁なりあるいは政府が言われておることも事務的に説明だけすれば一応もっともだと思うのです。しかし政治的に判断すれば、いろいろ量的な積み重ねが質的な変化を起こすような場合もありますし、あるいはいろいろな条件の中で政治的な判断を必要とする場合もあるのでああいうふうに、こじれたと思うのです。結局これもやはり事務当局が政治を誤ったようにぼくは思っているのです。  それからわれわれの大蔵委員会で物品税の問題や事業主報酬の問題等についても事務的な議論をされる、その範囲においては一応正しい理屈、理論があると私は思うのです。しかしそれにもかかわらず、全体的な判断をすればやはりわれわれは承服できない。  要するに、いろいろの問題について事務が政治に優先しておるような感じが非常に多いので、これはやはり政治が事務をすべきである。サーバントは幾ら優秀でもマスターにはなれぬ、女中は幾ら優秀でも奥さんとは違うということばもありますが、とにかく政治というものは政治自身の大きな判断が要るということを総理最初に要望として申し上げておきます。  それから、第二番目といいますか第一の質問になるわけですけれども、これは私が三月の初めの予算委員会で要望を申し上げました。もちろん私はその前に国会法に基づきまして事業主報酬の問題について質問書を出し、政府からも御答弁書をいただきました。それに基づいてさらに質問をいたしまして、総理からも前向きで前り組むという御返事をいただきました。そして事実税制調査会においてもこれを取り上げられるということになったようであります。その点は私は高く評価しておる。  私、最近総理に要望を申し上げた問題がもう一つありますが、それは例の独禁法問題で、独禁法はフェアコンペチション、公正な競争ということが中心でフェアプライス、公正な価格を形成するということについては非常に大きな限界がある。したがって、独禁法の再検討を願いたい、再検討ができない前においてもいまの法の運用で、できる限り情勢にマッチした処置をお願いしたいということを申し上げました。これにつきましては、その後の動きを見ておりますと、独禁法第四十条の、調査のための強制権限という問題がありますが、それを発動して、必要な会社から資料の提出なんかを要求しておられるように承っております。したがいまして、これはそういう御指示があったと思いまして、高くこれを評価をいたしております。われわれは常に建設的に議論をしておるつもりでございますので、そういう総理の御答弁の中で約束されたことを次々に具体的に進めていただくということを非常に評価するものでありますが、それとの関連において、この事業主報酬の問題も、税調で取り上げられた以上は、ひとつすみやかに結論を出していただきたいということをきょうは要望しておきたいのです。  この問題も、先ほど申しました事務の問題とちょっと関連があるのですけれども、御承知のように中小企業の場合は、資本収益と勤労性所得とがおもになっております。自分がおやじで、自分が労働者で、自分が経営者であるといった問題が非常に多い。アメリカの場合には自己雇用経営といって、自分を雇用する経営なんですね。だから自分は雇用している主でもあるし、雇用されておる労働者でもあるというような意味で、自己雇用経営ということばがあるようですが、これは労働者であり、経営者であるという立場を最も端的に示しておることばだと思うのです。  そこで、私がこの問題を取り上げるのは、実は二つあるのです、考え方の根本が。一つは、いわゆる法人成りということで、法人にさえなればおやじは社長になる、社長の報酬は損金で落ちる、法人になっていなければ、そのままいまでは何らそれは見てもらえないということで、ちょっと計算しますと、百八十万円くらいの収入があっていく場合に、それがかりに法人成りをして十万円の社長報酬ということになって、百二十万円を引いてあと六十万円の事業所得、それを合算所得で計算するということでやってみると、十二、三万円違うんですね。だから法人になることをすすめる意味で、そういう若干の利益があることはやむを得ませんけれども、ちょっと大き過ぎるというようなこともありまして、税の公正ということから考えても、法人成りということだけで非常に差があるということはおかしいじゃないかということが一つなんです。  これは大蔵省に対して言いたいことなんですが、もう一つある。それは、中小企業の一番大事な問題は数字の観念がないんですね。いままではどんぶり勘定で、表と奥、企業の会計と台所会計とがごちゃまぜになっておる。でありますから、中小企業庁が最近努力をされて、それをいま指導しておられるわけですが、その指導の努力というものが大蔵省の税の課税という面では全然見ておられない。そこに問題があると思うんですね。で、税の公平の問題とともに、中小企業の経営の近代化、原価計算もはっきりさせる。損益計算もはっきりさせる。いま中小企業は、極端なことを申しますと、数字、計算の観念がないものだから、もうけておるか損しておるか、自分でよくわからないんですよ。そういうごちゃまぜ経営、どんぶり勘定をいつまでもやらしておけば、日本経済の近代化に非常にマイナスである。だから私は表と奥とは別にして、事業経営と台所は別にして、いま通産省が指導しようとしておられる努力のような方向を推し進めて、そしてどう計算してみても損にしかならないような事業はやはり産業転換をはからなければならぬ。われわれも産業の転換までちゃんと考えている。そういうことから見ても、それは通産省、大蔵省がばらばら、分裂行進のみではなくて、やはり政府としては一体となって中小企業の近代化のために通産省も努力する、大蔵省もこれをバック・アップする、プラス税の公平の問題もある、こういうことでございますから、せっかく税調に諮問された上は、すみやかにそういう方向で取り組んでいただいて、結論を出していただきたい。  総理からもすでに予算委員会で御答弁をいただいておりますが、この際あらためてもう一度、そういう意味で総合的な立場からこの問題とも取り組むんだという御認識をいただけるかどうか。またその意味でこの結論も早く出して、年内にでも出していただくように、時期的な見通しについてお考えはどうであるかということを、あるいは総理大蔵大臣とお二人から御答弁をいただきたい。
  64. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 基本的ものの考え方、もっと政治家政治家らしく行政事務を指導しろ、こういう考え方、これについては私も政治家なりに理解します。また、そうなければならない。私は官僚出身ではありますが、いつまでも官僚ではございません。もう御了承いただきたいと思います。そういう意味で、竹本君もたしか若いときは役所へおつとめでございました。しかし、これまた今日はりっぱな政治家です。やはり政治家として行政あるいは事務、これにリードされるようではいかぬ。また国会の運営においても、私どもそういう点で特に留意してまいるつもりでございます。  そこで、具体的な問題についていろいろおあげになりました。必ずしも全部が全部、私、賛成だとは申しませんけれども、ただいまの中小企業の問題について、通産省とあるいは大蔵省、その間の意見調整を必要とする現段階において、そういう段階に来ている。その場合に、冒頭の基本的原則に立って官僚組織をひとつリードしろ、かようなおしかりは、私どもこれは十分わかっておりますから……。ただ、そのためには、これは相当準備を必要とするのでございます。その準備がはたして間に合うかどうか。ただいま言われるように、できるだけ早く、しかもことしじゅうにというようなことを言われておりますが、私ははたしてそこまで間に合うかどうか、その点を心配でございますけれども、方向といたしましては、私はこれは可能なことだ、かように思いますし、また通産省が中小企業問題、これと取り組んでおる。通産省が主体でございますから、大蔵省関係においても従としてこれにひとつ協力してもらいたい、かように思います。  ただいま言われたような会社組織、法人成り、法人になることをみんな指導しておる、かように言われますが、どうも法人になる、これが一時非常に流行いたしましたけれども、必ずしも全部徹底したとも言えない。最近は法人になることをちょっとちゅうちょしている向きもある。またどんぶり勘定だ。これは確かに中小企業の一番弱い点でありますから、そういう点がどこまで指導できるか、ここらに問題があるのではないか、かように思います。私はただいまの御指摘の諸点、必ずしも私が竹本君の言われることを全部理解している、かようには竹本君はお考えでもないかもわかりませんが、その方向でとにかくただいま取り組んでおること、これだけはひとつ申し上げますから……。  なお、政府の足らない点は、御叱正、御鞭撻賜わりますようお願いいたします。
  65. 竹本孫一

    ○竹本委員 次にもう一つお伺いしたいのは、今度は法人税の関係でございます。  先ほど、法人税を上げろ、昔は四二%であったという議論が出ました。この点について私は、いま不景気の最中でございますから、どこまで上げろとかいう議論はいたしません。ただ根本問題として、一つは、これは大蔵大臣からの御答弁でもけっこうですが、一つは、法人実在説というものと擬制説の問題でございますが、政府は依然としてその点については擬制説に立たれるのか、実在説に変わられるのか、その辺をひとつ承りたいと思います。  それから、それとの関連において、これは総理にお伺いしたいのですけれども、現実に会社一つの主体としてやっておる。そこでいま日本税制でも上のほうの会社は三六・七五%になり、下のほうの会社は二八%になる。もう二つの段になっているのです。そこで私どもが考えるのは、やはり法人税も、法人利潤税というような考え方もあるわけですが、いずれにしましてもそれが企業主体であるということと、それの担税能力ということを考えながら、やはり多段階にして、いまは二八と三五とか三六・七五とかということになっているのを、もう少し段をつけたらどうか。すなわち、弱いほうにはもっと軽くするように、強いほうにはもっと担税力に応じてかけるように、いまはこれをどうするとか何%ではありませんが、考え方の根本として、法人の実在説の上に立って、現在二つの段階になっておるものを三つにするか、五つにするかは議論はいたしませんけれども、多段階の方向に持っていくということのほうが政治姿勢に合うのではないかと思いますが、その点についてのお考えを総理から伺いたい。
  66. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 実在説をとるか、擬制説をとるかという問題は、いまとなってはもうあんまり重要な問題でないと私は思います。法人税率を全然いじらないで、変えないでおって、御承知のように配当控除率を引き下げたというようなことは、すでにもう法人擬制説を離れているということが言えるのだろうと思いますので、この点はいまあまりこだわる問題ではないと思います。  問題は、実在説をとるべきだという議論、そこには法人累進課税の問題とか、あるいはいまの配当控除を全廃しろとかというようないろいろな具体的な問題があってのことであろうと思いますので、そういう問題をどうするかという問題と取り組めば自然に解決する問題であるというふうに考えます。  さっきあなたから言われました中小企業税制の問題にしましても、いつか、三月一日のときに言われましたように、政府はかってなときに法人擬制説をとっておきながら、今度は観念的にりっぱに切り離して考えられる中小企業税制について、これは実際的には一体であるというふうなことを言って、その場合には擬制説をとらないというようなかってな解釈があるかというおしかりを受けましたが、そういう傾きもあると思いますので、この際、こういう問題についてはやはり総合的な抜本的な検討をし直さなければいけないと考えますので、そういう問題とあわせた解決を、これはできるだけ早く、税制調査会にもお願いいたしまして、私ども自身もこれと取り組んでこれを解決したいと思っております。
  67. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 法人税率を多段階でやれ、段階を多くしろ、これは一応ごもっとものように聞こえますけれども、これまた私がとやかく言うよりも、実際の扱いをする事務当局、これは事務当局を指導するという意味で事務当局にまかしたほうがいいんじゃないだろうか。どうもその専門でない者がとやかく言うよりも、またこれは徴税の技術とも関連してまいりますので、これはひとつどうぞよろしくお願いします。
  68. 竹本孫一

    ○竹本委員 いま総理も言われましたように、政治の感覚としてはやはり多段階で考えることが当然なんですね。これはいま論争になりますと時間がありませんからやめますが、水田さんから、このときには擬制説、このときには実在説、いまこういう議論がありました。いまかりにそうなっている場合でもわれわれは大体実在説をとっておる。しかし中小企業を助けるためにはそういうところに一つの擬制をやったらどうかと言っておる。ところが、いまの政府が言っておるのは、大企業を救うために都合のいい議論をやって、中小企業のときはまた――同じように二つ使うにしても、大企業のために二つの立場をとるか、中小企業のために二つの立場をとるかということで非常に違うのですけれども、これは時間がありませんから、最後にもう一つだけやって終わりにします。  これは先ほど議論のありました土地の税制の問題であります。これは再評価税とか――これは財産税的なものになると思います。これは水田さんがさっき仰せの、売り出しをしなければならないというような場合もあるじゃないかという御議論もありましたが、そのとおりだと思うのです。それから保有税という考え方もある。固定資産税をどうするという問題もあります。いろいろありますが、私が研究してみたところでは、やはりこれは譲渡所得にかけていくという以外にない。ところが法人所得を土地の譲渡所得だけ分離してかけるということがまた税の理論でなかなかむずかしくなる。そういう点については、分離課税というものがむずかしければ付加税という形でかけていったらどうかという点を私もいま勉強しています。  そこで、私が最終的にお伺いをいたしたいのは、とにかくこれはまた不動産業者についてはどうするかといったような問題もいろいろありますが、しかし土地の投機ということがこれだけやかましくなりましたので、土地の投機でもうけることだけは許さないんだという政治姿勢がぼくは大事だと思うのですね。そこでぼくは総理にお伺いしたいのですが、ちょっと、私は好きなことばでございますから引用させていただきますが、ローマの法学者キケロが、何びとも害することなく正直に生活をし、彼に属するすべてのものを与える、こういうのがローマ法の根本原則だということを言ったことがあります。これは私は非常にいいことばで、いまでもそのままでいいと思うのですね。すなわち、いまのように土地の値上がりで、家を持とうとする人にも大いに害を与えている。何びとも害することなくではなしに大いに害する。そして自分は正直に生活しているというのではなくて、投機のために生活しておる。そして彼に属するすべてのものでなくて、彼に属しないものまでも結果的には彼に与えておる。土地を、投機した人に与えておるということは、これは法の正義からいって許されないことだと思う。  そこで結論的に、税法の問題についてはいま言ったように技術論がいろいろ考えられまして理論を勉強しなければいけませんが、結論として総理にお伺いしたいことは、土地の投機によって不当な利益を得るということは、税制その他、まあ税制を中心として今後は許さないという政治姿勢佐藤内閣にはあるのかないのか、その点だけ承って終わりにしたいと思うのです。
  69. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これが私どものいまの政治目標でございます。土地の投機によって不当の利益を受ける、もうけをする、こういうことを許してはおかない。このために一体どうしたらいいのか。譲渡所得に対する課税あるいは土地の評価価格というようなものをこしらえたり公示価格をきめたりいろいろしているのも、不当な利益だけは許さない、こういう立場でこの問題と取り組んでおるわけであります。もちろんそれは税だけの問題ではございませんし、金融等においても、また国の政策自身から見ましても、公有の土地あるいは国有の土地、やはり土地は少ないのですから、そういうものを簡単に処分する、こういうことのないように、逆に公有の土地はふやす、こういうような基本的な態度で土地問題に臨むべきだ、かように思っております。この点では大いに監視してもいただくが、同時に政府を鞭撻していただきたい。よろしくお願いいたします。
  70. 竹本孫一

    ○竹本委員 終わります。
  71. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 小林政子君。
  72. 小林政子

    ○小林(政)委員 大蔵省は物品税について全面的な再検討を必要として、現在改定の作業に入っているというふうに伝えられておりますけれども、物品税の洗い直しは一般消費税を前提とするものなのかどうなのか。それからその洗い直しの作業は、どのような構想と方針に基づいて現在進められているのか。さらにまた、物品税の洗い直しで、どの程度の財源確保というものを目標にして検討がされているのか。この点についてお伺いいたしたいと思います。
  73. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 必ずしも財源確保というような見地でございませんで、物品税につきましては四十一年度以来改正が行なわれておりません。そのために社会、経済情勢の変化についていかれないということになっておりますので、そういう意味で、税収に結びつくことなく、税制自体の問題として何とかしなければならぬところに来ておるというふうに考えております。ただし、その改正を考えます際には、間接税体系全体の方向と離反したものであってはならぬという、大きな方向から離れてはならぬということはもちろん絶えず考えるべきではございますが、当面は現在の矛盾をどうするかということが最も問題であろうかと思っております。
  74. 小林政子

    ○小林(政)委員 単なる税制上の改正であって、いわゆるアンバランスの解消、こういったようなことが中心であるということをいま言われたわけですけれども、それでは一体、この洗い直しによって増税を考えているのか、あるいはまた洗い直しをして、そして実質的には減税という方向を打ち出そうとされているのか、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
  75. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 品目によりまして増税もございましょうし、減税もあろうと思います。
  76. 小林政子

    ○小林(政)委員 品目によって減税もあれば増税もあろうかということでございますけれども、私はいままでの大蔵大臣委員会の中での発言等を伺っておりまして、今度の物品税の改正については、いわゆる一般消費税への移行、財源確保というような点については今後検討の余地がある、検討していかなければならない、こういう答弁をされておられ、事実その作業が進められているというふうに伺っておりますけれども、一般消費税、いわゆる付加価値税導入については、総理大臣、この問題について一体どのようなお考えを持っているのか、お伺いいたしたいと思います。
  77. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 ただいま私がお答えいたしましたのは物品税についてでございまして、間接税全体として個別消費税である物品税には限界がございますので、一般消費税、これは付加価値税と限りませんが、一般消費税形態について考えるべき時期が来ていることは事実であると思っておりますし、したがって物品税の再検討にあたっても大きな流れがそこにあることは忘れてはならないと私どもは考えております。
  78. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この税体系としての直接税、間接税、そういう割合の問題はなかなかこれは一つの大きな課題であります。しばしば付加価値税が云々されます。またすでに物品税というものも実施しておる。ところが、これは物品税自身、先ほど来主税局長から説明したように、最近の経済情勢に必ずしも合っておらない。そういうところから物品税を見直すべき段階にも来ておるだろう、かようなことも言われるのです。私は、しかし、ただいまの基本的な問題として、直接税と間接税、この関係をやはり調整する必要があるのではないか、ここはただ政府が、また政治家がとやかく言うのでなくして、これこそ税制調査会において十分論議を尽くされ、どういうようにあるべきか、そこらを考えていただきたい、かように思っております。そこらでやはり基本的な態度がきまらないと、ただ簡単に付加価値税がどうこう、あるいは昔の物品税、一時つくりました、戦後つくったような税、これはなかなか国民になじまない、こういう形もございますから、それらの点でよく議論を尽くされることが必要だ、かように思っております。
  79. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 午後一時三十分より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時一三分休憩      ――――◇―――――    午後二時十六分開議
  80. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  すなわち、準備預金制度に関する法律の一部を改正する法律案について、本日、日本銀行副総裁河野通一君を参考人として出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  81. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  82. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 日本開発銀行法の一部を改正する法律案及び準備預金制度に関する法律の一部を改正する法律案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。堀昌雄君。
  83. 堀昌雄

    ○堀委員 本日は、私がかねて当委員会でも問題を提起いたしていましたこの準備預金制度について、今回金融制度調査会の答申もあって、これまでの限度一〇%を二〇%に引き上げることによってようやく準備預金としての金融操作の効果期待できるところに参ったという点につきましてはたいへんけっこうだというふうに思っております。あわせて、この準備預金制度改正するにあたって、その他当面必要とする諸問題についても改正が行なわれておるわけでありまして、これらについてはおおむね適当だ、こう考えておるわけでありますけれども、この法律の中身として一点だけお伺いをしておきたいと思いますのは、非居住者勘定の取り扱いの問題であります。現在の円転規制その他がかなり行なわれておる時期にこれが直ちに必要かどうかという点は、やや私も疑問があるのでありまして、為替管理の弾力化といいますか、弾力化をした場合には、確かに非居住者円勘定の問題というのはかなり大きな問題として出てくると思うのでありますけれども、当面はこれについての取り扱いをどうするのか、現状における為替管理のもとにおいては、これは当面は大体どういうふうにやられるのか。限度一〇〇%ということはそれなりの法制上の整備でありますから、そのことは私けっこうだと思うのですけれども、現状での取り扱いをちょっと最初に伺っておきたいと思います。
  84. 近藤道生

    ○近藤政府委員 確かにお示しのとおりに、当分の間は為替管理と併用という形になります。どちらにどの程度のウェートを置くかということは今後の問題でございますが、とりあえず、この非居住者預金に対します準備率も、相当の率でできるだけ早くスタートをいたしたいというふうに、これはむしろ国際金融局からお答えを申し上げるべきかもしれませんが、そういう考え方であります。
  85. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの御答弁はそれはそのとおりですけれども、私伺っているのは、これは法律を実施いたしますと――これまではないのですね、この非居住者円勘定に対する準備預金制度というものはなかったわけですから、この法律ができると、それが行ない得るということになり、行ない得るではなくて、やはり現在すでに非居住者円勘定というのはあるわけですから、それの増加については、とりあえずは一体どれだけを積ませるのかという具体的な問題が、法律が実施をされれば当然出てくるのじゃないかと思いますので、ですから、当然それはいまの為替管理のもとにおける取り扱いですね、天井が一〇〇%というのはわかりますけれども、当面は一体何%の処理をすることになるのかをちょっとお伺いしたいと思います。
  86. 近藤道生

    ○近藤政府委員 この点については、国際金融局とまだ最終的な話がかたまっておりませんが、大体五〇%前後というところで考えております。
  87. 堀昌雄

    ○堀委員 それならいまのことでけっこうですが、あわせて準備預金制度法律に関連をいたしまして、当面の金融上の問題を少し伺ってまいりたいと思うのであります。  その一番目は、中央銀行の金融調節手段としては、公定歩合操作と準備預金制度の運用とオープン・マーケット・オペレーション、これが一般的にいわれておる金融調節手段だと思います。しかし、最近の経過を見ておりますと、金利の調整問題というのは、引き上げるときにはかなりすみやかに金利は上昇いたします。これはおそらく金利の操作だけではなくて、窓口における調整手段というものをあわせ併用されるからおそらくそうなるのだと思うのですけれども、どうも金利を下げていくときには、公定歩合の操作によるよりも、どちらかというと、やはり締めるときに量的規制が行なわれると同じように、量的な需給関係がどうも先行して、必ずしも公定歩合操作がこれらの市中貸し出し金利に影響を及ぼしにくい。ですから、その意味では引き締めも解除もともに量的な感じが非常に強い。ですから、その意味ではやはりいまの準備預金が非常に役に立つ、ある意味では役に立ってくると思うのでありますけれども、これも二〇%という程度では、必ずしも下げるほうに、これを下げてきたときにどれだけ有効性があるのかどうか。その点がどうも最近の例を見て、もう少し公定歩合操作というものを下げるときの効果というものに――心理的影響はあると思いますけれども、必ずしも期待されるような実態を伴わないというのが最近における経過だったと思うのであります。  そこで、日本銀行としてはゆるめるときには一体どういうふうにこれらの操作を組み合わせながらこれからおやりになるのか。いまゆるんでいる最中にゆるめる話もおかしいのですけれども、今度のゆるんできた経過の中で、ゆるめるときの問題をやはり考えておく必要があるのではないか、こう思いますので、その点についてのお考えをまず伺っておきたいと思います。
  88. 河野通一

    ○河野参考人 堀委員いま御指摘のように、中央銀行の金融調節手段というのは三つあると思います。この三つは、おそらくどこに重点を置くか、あるいはどれを一義的に考えるかという問題は、そのときどきの金融情勢、あるいは最近のように国際情勢が非常に日本経済というものに影響してまいりますと、国内の情勢だけでなく、海外の情勢も含めて、そのときどきの情勢を判断しながらどこにウェートを置いて考えていくかということを考えなければならぬと思います。一般論といたしましては、従来日本はよくいろいろな形でいわれております過小流動性と申しますか、あるいは逆な意味でいえばオーバーローンという言い方でもいいでしょうが、そういう状況のもとにおきましては、金融を引き締めていかなければならぬ場合の手段というものが非常に強かった。したがって、そういう場合におきましては公定歩合操作というものが、もちろんそのほかのものもありますけれども、われわれの手段としては非常に大きな意味を持っておったということが言えると思います。その後、この数年来、経済実態といいますか、基調というものが非常に変わってきた。原因は御承知のようにいろいろありますけれども、従来の過小流動性が、だんだん流動性が充実いたしてくるようになってまいりますと、現在日本銀行の貸し出しというものは、例の輸出入関係という特別のものを除きますとほとんどゼロ、そういう状態のもとにおきましては、公定歩合というものによって全体の金融を調節するということのきき方というか、また有効性というものがおのずから制約されるのではないか。現に、主として現在のわれわれの政策の中心はオペレーションで、それも従来やられておったオペレーションはむしろ買いであって、いまはむしろ売りというオペレーションによって通貨の吸収をはかっていっております。  それから、先ほどの準備預金制度の問題をどういうふうに考えていくかという問題でございますが、これは先ほど銀行局長から御答弁がありましたとおり、また堀委員の御指摘になりましたとおり、今後におきましてこれの活用ということが非常に重要なことになってくる。ことにいわゆる国際化ということがいわれてまいりますと、ますますそういうことが大事になってくる。ただ、現在さしあたりの問題として考えた場合に、この準備預金制度というものをどういうふうに活用していくかという問題は、確かに過小流動性ということがなくなったことによって、そういうことを活用していく環境というものは整ってまいっておりますけれども、現在の金融政策の基本というものがやはり金融の緩和の状態を続けてきた以上は、もちろんいま以上にさらにゆるめていくという必要はないかと思いますけれども、現在の景気を浮揚さしていくためには金融の緩和基調というものは維持していきたい、そういう事態にございますので、将来に向かって長い見地からいいますと、この準備預金制度というものの活用のウエートはだんだん大きくなるにいたしましても、現在といたしましては、国内問題に関する限りにおきましては、やはり準備預金制度というものをここで急激に高くしていくというようなやり方というものは、私どもは適当でないという判断をいたしております、もっとも、これはだからといって絶対にいま率を上げないという意味ではございませんけれども、少なくとも大幅な引き上げということは私ども現在考えておらないわけでございます。  それでは、一体国際関係から来る非居住者に対する準備預金をどうしていくか、この問題は、先ほど銀行局長から御答弁がございましたが、私どもといたしましてはまだこの問題についてははっきりした結論を出しておりません。これから政府御当局ともこの法律が通りました上におきまして十分御相談をしていきたいとは思っておりますけれども、先ほど御指摘のありましたように、この問題に関してはやはり為替管理という問題と準備預金制度というものの活用ということとを両方にらんでいく。これは一般論で、こういうことを申し上げることは釈迦に説法で、はなはだ恐縮でありますけれども、非居住者に対する準備預金の率を上げていくということは、つまり金利差をねらって外資が入ってきますような場合におきましては、そのコスト効果を通じてこれを押える効果といいますか、そういうことは非常にあるわけであります。しかしながら、かりに入ってくる原因というものが、ことばは非常におかしいのでしょうが、資本逃避といいますか、要するに、通貨に対する不安あるいは先行きに対する見通しをある一つの前提を置いて見て、コスト、金利差をかせぐという意味でなくて、将来の通貨の値下がりであるとか値上がりであるとかいう問題をねらってまいりました場合には、これは外国の例でもおわかりのように、準備預金率を上げるということではなかなか防ぎ切れないという点がございます。いま現在これをどういうふうに判断していくかということが非常にむずかしい問題でありますが、私はしょっちゅう言っておるのでありますけれども、この準備預金制度と為替管理制度というものは、そのときの事情によって、どちらを使っていくか、あるいは両方を使う場合でも、どちらに重点を置くかという問題は、そのときの情勢によって判断されるべきことであって、いまここで、まだ法律の通っていない現在において、ちょっと先ほど銀行局長から御示唆があったようでございますけれども、この法律が通ったらすぐ準備預金の率を幾らぐらいにしていきますということは、少なくとも私としてはまだ申し上げられる段階でないということだけつけ加えさせていただきたいと思います。
  89. 近藤道生

    ○近藤政府委員 ただいま副総裁からお話があったとおりでございまして、あえて腰だめの数字を、個人的な見解として言えという仰せでございましたので申し上げただけのことでございまして、今後国際金融局あるいは日本銀行当局と御相談の上きめてまいりたいということで、現在のところまだ全くきまっていないのが実情でございます。
  90. 堀昌雄

    ○堀委員 いまのはそれでけっこうなんですけれども、そこで、私がちょっと副総裁にお伺いをしましたのは、ゆるめていくときの手段ですね。ゆるめていくときには、準備預金の積み増しがあればこれを取りくずさせるということが一つの量的なコントロールになりましょう。また、いまお話しのように、しかしそうはいっても、ゆるめ過ぎているときには、オペレーションで逆に引き上げなければならぬ問題もあるという情勢もあるわけですから、そういうときに、いま問題にされておる、産業界からもう一回ここで公定歩合を引き下げろという要請が出ておりますね。私は、現状の段階で公定歩合を引き下げてみたところで、あまり有効性はないのじゃないか。ある意味では、これまで日本の公定歩合というのは公定歩合主導型、プライムレート追従型といいますか、そういうかっこうだったわけですが、だんだんとやはり日本の場合にも、いま必ずしも民間主導型とは思いませんけれども、これまでの日本のような姿ではなくなりつつある。ややアメリカ的といいますか、アメリカほどはっきりはなりませんでしょうけれども、実際問題は、そういう資金量の需給関係のほうでより大きな問題があるという感じがするものですから、その点あわせてもう一度少し正確に伺うと、私は、現在の諸情勢から見ていつ引き下げるかという話ではなくて、公定歩合の引き下げの必要は当面ないのではないかと考えているわけですね。その点については、日本銀行ではどういうふうな方向で考えておられるかをお伺いいたします。
  91. 河野通一

    ○河野参考人 長い将来の問題につきましていまここで申し上げるわけにいきませんが、当面私どもは、公定歩合の引き下げということは現在考えておりません。いまの金利の状況から見ますと、市中金利は御案内のようにだいぶ下がってまいりました。三月末における都市銀行の平均約定金利はたしか六・八八ぐらいになっておりまして、これはおそらく戦後最低の水準だと思います。しかしながら、一昨年の十月に私どもが公定歩合の引き下げを始めてから最近まで五回、通計で一・五%の公定歩合の引き下げを行なったのでありますが、これに対して、まだ正確な数字はわかりませんけれども、全国銀行のこの間における平均約定金利の下がり方というものは、まだ〇・五%に達していないのではないかという気がいたします。そういう状態のもとにおきましては、むしろいま実態はどういうことか。景気を浮揚させていくためには、金利はさらにある程度は下げていくべきだと私は思いますけれども、その場合に、公定歩合がもう少し下がらなければ全体の水準が下がらないというような金利の状態ではいまございません。むしろ公定歩合と市中金利との下がり方の幅というものは、これは何も基本原則というものがあるわけではございませんけれども、われわれの過去の経験から見ますとまだ幅が残っておる。それを押えているものは何かといえば、結局預金金利だと思います。この点についてはいろいろな観点から論じなければなりませんので、これ以上は私も差し控えたいと思いますけれども、少なくとも預金金利がいまのような状態にあるならば、私は公定歩合を下げたって何をしたって、公定歩合を下げなかった場合と同じことなんだというような感じがする。したがって、いまの公定歩合のままでも、まだ一般の買し出し金利はある程度は下がるでしょう。ただ下がり方は、預金金利の下ざさえということによって、下がっていく限度はだんだん縮まっていくということではないか。そういう状態のもとにおいて、少なくとも単独で公定歩合を引き下げるということは意味のないことで、われわれとしてはいまのところ全然考えていない、こう申し上げざるを得ないと思います。
  92. 堀昌雄

    ○堀委員 その点は私も同感の点があるわけですが、いまの預金金利との関係の問題については、しかし依然として特に都市銀行その他では実はかなりの収益があがっておるわけですね。収益をかなり犠牲にして金利をさらに下げていくということになりました場合には、私ども預金金利の問題というものはまた別個の角度で考えなければならぬ余地もあるかと思うのですが、実は決算の状態を私どもが報道で拝見しておる限りでは、どうもまだ金融機関の利益が相当たくさん出ておる。ですから、そこのところとの関連では、私はこの前予算委員会でもちょっと大蔵大臣に申し上げたのですけれども、金利の問題というのは考えてみるとやはり二つではないか。一つは、長期金利に関するものは企業サイドとの関係で、企業側の需要が低くなれば金利は下がる。ところが預金金利の問題は、これは国民生活関係がありますから、やはり物価との関連である程度配慮をしませんと、要するにすべてが企業金融という名のもとに、物価が非常に上昇しておるにもかかわらず、預金金利は企業金融を有利にするために下げるべきだと一がいに言えないのじゃないか。  ですから、私はこの前も委員会で申し上げたのは、片や租税特別措置税制上の不公平をも顧みず貯蓄奨励を大いにやっておりながら、片方では物価上昇にもかかわらず預金金利は下げるのだということになると、政策としての斉合性に欠けてくるのではないか。ですから、私は預金金利を絶対に下げるなとは言わないけれども、預金金利を下げるならば、そういう不公平な貯蓄奨励の税制は先にやめてみたらどうか。そういうものをやめない限り、それは残しておいてただ預金金利を下げるというのは、いかにも政策として納得のしにくい問題がある、こういうような議論をしたわけであります。私も貸し出し金利が下がることは望ましいと思うのですが、どうもやはり前段ではそういう銀行の利益との関連も含めて考えていい問題ではないか。  あとで私はちょっと拘束預金の問題にも触れるわけでありますけれども、これだけ金融が緩和してきた場合に、もう少しこれらの拘束預金の問題等についても改善が見られるかと思うと、いま一つ依然としてそうでもないというところを見ますと、いまの金利の問題というものはかなり金融機関の自己利益というものがかなり働いておるような感じがいたしてならないわけであります。これについては、ひとつ日銀副総裁及び銀行局からも、いまの貸し出し金利と銀行の利益との関係の問題そのために起きておるもろもろの問題はあとで次々に触れてまいりたいと思うのですが、ここらは金融機関自身がこういう情勢に対応したときにはもう少しその情勢に見合うようなビヘービアに立ってもらう必要があるのじゃないだろうかというのが私の率直な感じでありますけれども、それについてはいかがでございましょうか。
  93. 河野通一

    ○河野参考人 いま御指摘のように、いまの公定歩合を前提の上、しかも預金金利の現状のままにおいても、具体的にいえば都市銀行ということになりましょうか、これらの銀行におきましては、まだ確かに収益上余裕があることは言えると私は思います。したがって、こういう金融機関におきましては、私は現状の預金金利、公定歩合のもとにおいても、貸し出しの金利の低下ということはさらに進んでいる、また確かに申し上げましたように、ある程度はまだ貸し出し金利は下がるということはそういう意味で申し上げました。ところが、これはむしろ大蔵省の銀行行政の問題に実は関係してくるので、後ほど銀行局長の御答弁を伺ったほうがいいかと思いますけれども、もっと小規模の金融機関、たとえば信用金庫でありますとか相互銀行でありますとか、そういった金融機関の中におきましては、もうすでにいまの預金金利と貸し出し金利がこれだけ下がってくるとなかなか経営がむずかしいというところも出てまいります。もちろんいますぐつぶれるというような問題ではございませんけれども、だんだん収益上の余裕が乏しくなってくるようなものもだんだん出てきておるのではないかと思います。そういうわけで、銀行行政上、収益の効率がよくてわりあい収益がまだ余裕のあるものと、そういったいわゆる中小企業金融機関的なところでコストがわりあい高くついてそういう余裕も比較的少ないものをどういうふうに扱っていくかという問題が基本的に私は大事な問題だと思いますけれども、この問題は後ほど銀行局長から御答弁をいただいたほうがいいかと思いますので、私からは意見を差し控えさしていただきたいと思います。  一点だけ申し上げさしていただきたいのでありますが、預金金利の問題について、もちろん消費者物価がいまのように上がっておる、消費者の利益というものを考えていく場合に、そう軽率に安易に預金金利を下げたらいいのじゃないかということを言うべきではない。そのことは私も全く同感でございます。しかしながら、預金金利も金利体系の中における一つの問題である、それを全体の金利というものの構成の中でどういうふうな位置づけをするか、その位置づけがある程度された以上は、そこですべての金利というものが動かなければならぬということであるならば、これは金利政策なり金融政策というものは動かないと思います。私の個人的な意見であるかもしれませんが、これはお許しいただけると思いますけれども、金利というものはもう少し弾力化し自由化していかなければならぬ、そうした場合におきましては、当然その一環である預金金利ももっと弾力化し、自由化していかなければならぬ。この原則だけは先ほど申し上げました預金者に対する配慮というものももちろん考えなければいけませんけれども、原則だけはくつがえしてはいけない、その点だけ私はかたくそう信じておりますので、ちょっと申し上げておきます。
  94. 近藤道生

    ○近藤政府委員 ただいま副総裁からお答えいただきましたとおりの感じを私も持っております。  先ほど堀委員から御指摘がございましたように、確かに金融機関はみずからの体質を合理化することによりまして、貸し出し金利は安く、預金金利はでき得れば高くというふうな方向でやってまいるということが一番いい形でございます。そういう意味で過去四年半にわたりまして金融制度調査会を舞台といたしましてそのような議論、いわゆる効率化行政の議論も展開されてまいったわけでございます。ただ、先ほど副総裁からもお話がございましたように、体質の合理化その他にも一定の限界がございます。その意味で、ある限度に達しますれば預金金利が下げられるということは当然のことになろうかと存じます。そしてまた弾力的に下げるべきときに下げておきませんと、上げるべきときにも上げられないという問題があろうかと存じます。そういうことはございますけれども、大筋におきましてただいま副総裁からお話のあったとおりであると考えております。
  95. 堀昌雄

    ○堀委員 いま日本の物価なり企業なりのいろいろな関連を見ておりまして、たとえば日本の場合、いろいろな企業群の中で大きなものと小さなものとの間の格差というものは非常に強くあるものが多いわけであります。そこで、たとえばかつてこういう例があるわけでありますけれども、しょうゆの業界で、ひとつしょうゆを値上げしてもらいたい。しょうゆの業界というのは約三千ぐらいの小中の業者がある。上のほうにはキッコーマン、ヤマサ等の巨大なしょうゆ産業がある。そうしますと、一番生産性の低いところは値上げをしてもらわなければやっていけない。そうするとその値上げというのはどこが基準になるかというど、そういう限界的な部分が基準になってここでしょうゆの値上げをされる。されますとキッコーマンやヤマサはもうかってしかたがない。しかしなおかつしょうゆの値上げは行なわれる。国民がそれのあおりを食うというのが現実の姿です。  これは単にしょうゆだけでなくて日本企業には非常にたくさんこういう問題があるわけです。金融の場合もやはりそういう情勢があると思うのです。いまお話しのように市中銀行等で見ますとまだ十分余裕があるけれども、小、特に信用金庫その他におきましても大きいものはまだ競争力があるけれども、小さいものは競争力がなくなる。私はいまのしょうゆ産業でもそうだと思うのですけれども、その中で生産性を上げながら、必要があれば規模を大きくするとかいろいろな方向によって国民生活に役立つような政策が、強制されることは望ましくありませんけれども、自然に行なわれるのは、国全体としての効率化に資することになるのではないか。そうしますと、ある意味では現状の金融緩慢というものがかなり長期に続くであろうという諸情勢の中で、きわめてコストの高い金融機関が、過去の金融がタイトであったときにはそれでいけたけれども、今後それでいけるかというとなかなかそうはいかない。しかしその金融機関をそのまま置いておくためには、いまのように預金金利も下げなければならないというこのメカニズムについては、また別の角度からの金融政策という面があってしかるべきではないか。  私もおっしゃるように本来は金利自由化論者ですから、いまかたくなにいまの預金金利を絶対動かすなという気持ちはないわけです。ないけれども、片面においてそういう余裕がある金融機関があって利益が出ている、片方はたまたま規模が小さくてコストが高いためにたいへん困難だ、この金融機関を救済するために預金金利を下げましょうというような話は、すべての国民が納得するものではないのではないか、こういうような一つの側面も実はあるわけですね。だからといって、私はいまの情勢をてこに銀行局が上から指導をしてこうしろああしろと言われることはやはり抵抗も起こるしいろいろ問題もあろうから、そこまでやっていただきたいと言うつもりはありませんけれども、しかしこれは資本主義社会における企業の経営者はみずから自己責任において自分たち企業を守るのが当然の義務だと私は思っておりますので、そこらはそういう人たちが利益といいますかロットが大きくなることによってコストが下がるという資本主義一つ原則もあることですから、そういうものとが並行して行なわれる過程で、国民がまあそういうことがあってもそう急にそれが進むわけでもないからここらでほどほどのところでは預金金利は引き下げてもやむを得ない、こういうことになるのなら、私は預金金利の問題というものはもう少し考えていい問題だと思うのですが、どうもいまの現状だけから見ますと、いまここでただ単に預金金利を下げろ、それはもう要するに企業に金利を安くするのだということだけではちょっと納得しにくいというのが私の率直な感じでございますが、これについては銀行局及び日本銀行ではどんなふうな感じを持っておられるか、ちょっと伺いたいと思います。
  96. 近藤道生

    ○近藤政府委員 ただいまおっしゃったとおりの感じを実は私どもも持っておる次第でございます。
  97. 堀昌雄

    ○堀委員 副総裁にひとつ。
  98. 河野通一

    ○河野参考人 結論的にはなかなかむずかしいことだと思います。だけれども、私はいまお話がございましたような問題点はまさにそこにある。これを自由主義経済のもとにおけるそういった問題をどのように解決するか。それが今度はそれじゃコストが安くなること一点ばりを考えて中小企業専門の金融機関がどんどん大きくなって大きな企業に対してのみ貸すほうにシフトしていくということであっても、これは本来の目的から逸脱するという問題がある。そういう問題をこの自由主義経済の体制の中でどういうふうに調節あるいは調整していくかということが結局問題であり、確かにむずかしい問題だと思いますけれども、問題意識としては私どもはそういうものを持っているということは申し上げられますけれども、それじゃどういう解決方法があるかということになりますとなかなかむずかしい、現実的な個々の問題について調整をとっていくということでなければいけないのではないか、かように考えておるわけであります。
  99. 堀昌雄

    ○堀委員 いま副総裁お触れになりました。私もそういう際に縦に再編がされるということは望んでいないわけです。やはり横の再編によってある程度、その地域の金融ですから、地域の金融は依然として地域で残さなければいけないけれども、その地域が非常に狭い地域であっていいのかやや広い地域になっていいのか、こういう問題ではないかと思うのでありまして、そこらはそんなに皆さんと私どもと考えが違うわけではないようであります。  次の問題に移りますけれども、実は最近昭和四十六年十一月末の拘束性預金に関する資料をちょうだいをいたしました。それを見ておりますと、だんだんと改善をされてまいりました。しかしこの資料で拝見をいたしましても、都市銀行の中小企業向けの貸し出しについては、貸し出しに対する拘束性預金の比率というのはまだ九・六%程度にとどまっておりますし、地方銀行は同じく九・九%、相互銀行は一一・五%でありますが、いま特に私が問題を提起しております信用金庫については二一・四%、依然として非常に高い拘束の状態にあるわけですね。私はここまで金融が緩和をされておるならば本来はもっと拘束性預金というものが下がっていいにもかかわらず下がらないのは、いまのコストの問題といいますか、これは両建てにしておけばそれだけの表面上の貸し出し金利を安くしてもそれだけ減殺をされるわけでありますから、この中にいまの問題が象徴的にどうもあらわれているのではないか、私はこういう感じがいたしてならないわけであります。現在の拘束預金の状態についてひとつ皆さんの御意見を聞きたいと思うのです。
  100. 近藤道生

    ○近藤政府委員 確かにこの十一月末の数字で見ます限り相互銀行などはある程度下がっておりますが、そのほかの金融機関につきましては下がり方がそれほど多くはないわけでございます。その後の情勢におきましてはある程度下がってきているように私どもの平生の検査の結果等で見ますと、感じといたしましてはかなり下がってきていると思いますが、この時期におきましてはまだたとえば貸し出し金の回収についてやや渋りがちであるとかそういったような現象もございますし、まだあまり下がっていなかったという感じはいたします。
  101. 堀昌雄

    ○堀委員 その下がっていないことはこれはもうわかるのですが、その下がらない理由ですね、それは一体どういうふうに考えておられますか。
  102. 近藤道生

    ○近藤政府委員 ただいまも申し上げましたように、昨年の十一月ごろの状況では、たとえば貸し出し金の回収等について渋るといったような現象がございまして、その点で拘束預金比率があまり下がっていなかったわけでございますが、その後、特に新年になりましてからかなり緩和の情勢が進んでまいりましたので、拘束預金比率もかなりの改善を見つつあるというふうに考えます。
  103. 堀昌雄

    ○堀委員 この機会をのがして私はこの拘束預金の問題が正常化する時期はないと思うのですね。私もいろいろ当委員会で長年この拘束預金問題をやってまいりましたけれども、最終的に私なりに感じたのは、もうこれは金融がある程度タイトである間はしかたがないな、幾ら言ってもなかなか金融機関の姿勢は直らない、こう思ったわけでありますが、いまおっしゃるように、確かに昨年の十一月は今日に比べるとそれほどまだゆるみが十分でなかったと思いますから、この次の五月の末の資料に期待をいたしたいわけでありますけれども、ぜひこの際指導も強化をしていただいて、ひとつ拘束預金の比率をもう一段と下げるように指導を強めていただきたいと思います。  それからこの際、かねてからよく問題になっておりましてそのままになっておる問題が一つあります。この前預金保険機構をいろいろ検討いたします際に、私の一つの持論であったわけでありますけれども、日本の金融機関の支払い準備の問題がどうも不十分ではないかということで、ひとつ支払い準備をもう少し厚くするように考えてもらいたい、こう申しておりましたけれども、何さまこれも金融がタイトのときに支払い準備をふやせといってもなかなかふやすわけにまいりません。現在相互銀行法十三条はその支払い準備について法定をいたしておるわけであります。預金の支払い準備、「相互銀行は、預金の支払準備として、その定期性預金の総額の百分の十に相当する金額と定期性預金以外の預金の総額の百分の三十に相当する金額との合計額以上に相当するものを、現金、他の金融機関への預け金若しくは貸付金又は国債、地方債その他大蔵大臣の指定する有価証券をもって保有しなければならない。」相互銀行法十三条でございますが、この法律は私は各金融機関に関する立法の中でたいへんすぐれていい法律だと思っておるわけです。あわせて相互銀行の皆さんがいつも問題にしておられるもう一点の第十条の一人に対する給付等の制限、「相互銀行は、同一人に対する第二条第一項第一号の契約に基いて給付した金額から既に受け入れた掛金額を控除した金額と貸付の金額との合計額が、その資本及び準備金(利益準備金、資本準備金その他株主勘定に属する準備金をいう。)の合計額の百分の十に相当する金額をこえることとなるときは、当該人に対し給付又は貸付をしてはならない。」というのが規定されておるわけでありますので、私はこの二つは他の金融機関立法の中にない部分で、相互銀行の皆さんは他の金融機関との権衡上、これは両方とも取りはずしてもらいたいというのが強い御希望であるわけですが、私は相互銀行の皆さんとの会合に出ましても、これはたいへんすぐれた立法であって金融機関の健全性を保つ意味においてはいずれもたいへん有効な一つのルールだと考えておるので、その他の金融機関にもこれを及ぼすべきであって、これを取り去ってその他の金融機関並みにするのは適当でない、こういつも申し上げておるわけであります。幸いにして現在金融が非常に緩和されてきておる今日でありますので、この際金融制度調査会においてもこれらの問題を、金融機関のそういう政策の斉合性という面からも一歩踏み込んで金融機関の安全性といいますかに資するための検討をしていただくいい時期ではないか、こういうふうに私、いま考えておるわけでありますが、これについての皆さんの見解をひとつ承っておきたいと思います。
  104. 近藤道生

    ○近藤政府委員 金融制度調査会におきまして、次の議題といたしまして、いまのところきめられておりますのは金利問題、住宅金融問題ということに相なっておりますが、なおそのほかの問題幾つかにつきましてもときどきの情勢に応じまして検討をしていくということになっております。  そこで、ただいま御指摘のございましたこの相互銀行法十条並びに十三条は、確かに法の形式といたしましては関連諸法律と異なっておりまして、相互銀行の場合のみ法定されているという状況にございますが、この法律形式上の不符合をどういうふうに考えていったらいいか、その辺についての議論も一応近い将来に行なうというようなことを内々で議論をいたしておる段階でございます。
  105. 堀昌雄

    ○堀委員 大体これまでの場合ですと、日本では金融が緩和をされてもまたすぐタイトになるということの繰り返しでありましたから、こういうような多少思い切った政策を問題提起をするのはなかなか困難でありますから、今日までこういうことに触れなかったわけでありますけれども、私どもの感じでは、この金融緩和の状態はいましばらく続くだろう、いまのようにたいへんゆるんでいるかどうか、これはまた別問題でありますけれども、そうかといってたいへんタイトになるという感じまではいかない、ややニュートラルのような情勢がしばらく続くのではないかと私感じておりますので、この際ひとつこれらの問題についてすみやかに準備をし、こういうときにやっておいていただけば比較的やりやすいのではないかと思いますので、これの御検討をお願いしておきます。  その次に、最近私どもが耳にいたしておりますし、この間銀行局からも通達か何か指示なすったようでありますけれども、最近の株価の上昇の一つの要因に、金融機関が株を買っておられる現象が見受けられます。その金融機関が株を買っておられることがどうも私は必ずしもちょっと適切でないなという感じがいたしておりますのは、株を買うことによって将来の自分たちの貸し出しについて影響を与えたいというような買い方がかなり見受けられるわけであります。私は金融機関の皆さんも十分知っておりますが、この話は金融機関からはわかりませんが、証券界の皆さんを通じて最近の金融機関の株の買い方についてしばしばいろいろ御高見を承る場合が多うございます。金融機関がそういう他の産業の株を買うことによって、だんだん金融が緩和しておる際における貸し出しのルートを確立をしていこうなどということは、まさに系列化を促進することになりまして、本来の金融機関の中立性という面から見ると、私は逆行しているというような感じがしてなりません。要するに金融機関が余資を運用されることについては、これも私はある程度は理解をいたしますが、余資の運用のしかたにもいろいろあろうか、こう考えるのでありますけれども、これらについてひとつ指導の立場にある銀行局及び日本銀行からお答えをいただきたいと思います。
  106. 近藤道生

    ○近藤政府委員 実は最近、確かに金融機関による株式の買い入れの量がふえております。そこで先週来銀行局といたしましては各種金融機関から聞き取り調査をいたしまして、その場合、土地、株式及び先ほどもちょっとお話のございました拘束預金、それらの点を重点項目といたしまして聞き取り調査を行なっております。そしてただいまの、株式をどういう動機で、どういう買い方で買っているか、その辺につきまして十分事情を聴取いたしまして、その結果によりましては警告を発するというようなことも考えているわけでございます。
  107. 河野通一

    ○河野参考人 最近の金融機関の株式保有につきましては一少なくともそれが投資価値と申しますか直接の資産運用価値としていまのように多額の株式の保有を進めておるとは思わない。経営上、いろいろな形の経営的な価値といいますか、いまの系列という問題も含めて、そういった配慮がむしろ非常に大きく動いているということは御指摘のとおりだと思います。  ただ問題は、それではどこまではいいのであってどこまではいけないのかという問題、この具体的な範囲とかそういうことになりますと、なかなかむずかしい問題がある。したがって私どもはしょっちゅう言っているのですけれども、窓口ではそういう問題については常にいろいろ様子は承っておりまして、そういうことであまり目に余ることはいろいろ御注意はいたしておりますけれども、結局は抽象的な――スエージョンと申しますか、そういうことを申し入れるわけにはいかない。少なくとも私どもは行政権限を持っているわけではございませんので、その程度のものを申し入れるわけにはいかない。しかし常にそういった問題については、先ほど銀行局長が申されましたようによくフォローしておって、ウォッチをしておりまして、その問題に対して行き過ぎがないようにできるだけやっていきたいという気持ちは持っております。繰り返して申し上げますが、具体的にそれじゃ一社で何億株、何分の一までの株を持つのがいいかという問題としては、これはなかなか扱いにくい問題であるということで、結局私はスエージョンの問題に帰する、かように考えております。
  108. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの株の問題でちょっとつけ足しておきますと、ある事業会社の株を持っているとしますと、そのうちのトップのものはこれはメーンバンクでありましょうからさておいて、二番目、三番目にいるのはトップのすぐあとに、決してトップを越えないようでありますが、しかしこれはぴしゃっとくっついて株の買い増しをする。三番目がそういうことをすれば二番目もやはりこれは困るというんでまたそういうことが起こる。そうするとトップのほうは下がもうごく下まで接近してくるとメーンバンクとしてどうもぐあいが悪いということでまたメーンバンクがあれするというような現象もあるやに聞いておるわけでございまして、いまのそういう企業に対する影響力を拡大することも、やや過当競争的な現況もあるような感じがいたしますので、ここらを含めてひとつ指導をきちんとしていただきたい。  もう一つ、いまお話が出ました土地の問題でありますけれども、これはもう実はすでに新聞でも出ておりますし、けさでしたか、きのうでしたか、不動産の問題についてはあまり介入してもらっては困るのだというような見出しだけで、中身を読むひまがなかったのでありますけれども、銀行筋の意見も出ておったかのようであります。庶民一般からしますと、預金をした金が土地に投資をされて、そしてまたそこでバンクローンで住宅金融で金を借りて家を建てようと思えば、建てる土地は銀行が先回りして買っておったために高くなったということでは、庶民の住宅に対する希望がいま非常に強いのに、政策的にも少し問題がある。だからこの問題は、余資の運用先として確かに土地はきわめて的確な値上がりを示しますから、収益対象としては望ましいかもしれませんけれども、しかし、金融機関の公共性という面から見ますと、これもおのずから限度があってしかるべきもので、これも皆さんのほうの通達で不動産比率その他について規制をしていらっしゃいますから、銀行がプロパーでそのものは買わなくとも、各種の関連のそういうものを通じて買っておるというのが私は現状だ、こう考えますので、このほうは株より以上にきびしい規制をやっていただかないと、国民的利益に反する行為を、公共性のある金融機関が金融機関の利益のために行なうなどということでは、私どもとして全くどうもこれは納得できないことでありますので、この点は少しきびしく、金融機関からのいろいろな意見もございましょうけれども、国民の側に立った指導を強化をしていただきたい、こう考えるわけでありますけれども、いかがでしょうか。
  109. 近藤道生

    ○近藤政府委員 確かに金融機関が、これは公共的な免許を受けて成立している機関でございますから、土地の投機というようなことについて融資をする、金融をつけるということになりますと、これは非常に大きな問題だと思いますし、反社会的な行為と断ぜざるを得ないわけでございます。そこで、そういうことのないように、金融機関の経営者というものは存在するわけでございますので、その点につきまして、私どもといたしましても、ただいまの聞き取り調査においては最も重点を置きまして、どのようなビヘービアで土地に対する融資をいたしておるか、その辺を現在調査をいたしておるところでございます。そこで、その結果を見まして、投資と投機との差別、その辺の区別は単なる聞き取りだけではなかなか区別はむずかしいかと存じますが、どの程度の審査、チェックをして土地関係の融資をしているか。最近建設業、不動産業等に対する融資がかなりふえていることは事実でございます。それらについての融資のビヘービアを、十分個別の問題について聞き取りをいたしまして、その上で判断をいたしたいと考えております。
  110. 堀昌雄

    ○堀委員 どうかこの二点については、さっき申し上げましたような金融機関の公共性ともあわせて、十分強力な指導をお願いしておきたいと思います。  最後に、国際金融局長も入られましたから、当面する国際金融の情勢、最近当委員会では国際金融問題を論じる時間も少しありませんでしたから、やや落ちつきぎみであるかなという感じもしておるわけでありますけれども、しかし、四月は新聞の伝えるところでは外貨準備もあまり表に出ているものはふえないように新聞では見ておるわけですが、ちょっと最近の情勢を簡単にひとつお答えをいただきたいと思います。
  111. 稲村光一

    ○稲村(光)政府委員 国際金融情勢一般に関しまして、通貨調整が昨年の十二月にございましてからあと概括して申し上げますと、二月の末あるいは三月の初めと申し上げたほうがよろしいかと存じますが、それまではいろいろな要素がございまして、欧州各国それから日本におきましても資金の関係、主として資本移動の関係でございますけれども、それをもとにいたしまして若干為替市場に不安といいますか、これがあったかと存じます。  その一番大きな原因は二つございまして、一つはアメリカの短期金利水準が非常に低くて、ヨーロッパ及び日本との金利差が大きくなっていたということ、もう一つはドルに対する信認といいますか、この不安から、アメリカの金価格引き上げ法案がなかなか議会に提出されないというような状況もございまして、それから新しい国際通貨制度に関する議論がなかなか始まらないということもございまして、そういう通貨面での不安というものがあった。こういう二つの理由で各国とも短資の流入に悩むという状況でございます。日本も同様であったわけでございますが、それに対しまして各国ともそれぞれ公定歩合の引き下げなりあるいは種々の短資規制の手段をとりました。日本におきましては、二月二十五日に輸出前受けの規制という手段によりまして、短資規制を行なったわけであります。こういうようなことで三月の初めまで至ったわけでございますが、このころから実はアメリカの短期金利が若干上向いてまいるという情勢がございました。  他方、ECの通貨のナローバンドと申しますか、変動幅の縮小が大体きまりまして、これが一つ方向として一時はEC通貨の対ドル関係ではフロートするのではないかというようなあれもあったわけでございますが、実はそういうような方向にはまいりませんで、これはむしろ安定的にいくのじゃないかというほうが次第に定着をしてまいり、他方、アメリカの金価格引き上げ法案もいろいろな心配をされておりましたけれども、順調に成立をする。それから新しい国際通貨制度に関します国際的な議論もだいぶ具体的に始まりかけてきておるというようなこともございまして、心理的には、世界全体といたしまして通貨問題についての鎮静化がだいぶはっきりいたしてまいりました。そういうような状況で、わが国におきましても短資の流入は一月、二月で終わりまして、三月はむしろ従来の輸出前受け金が輸出に充当されるということで、まだ国際収支の最終的な確報は出ておりませんけれども、短資誤差脱漏のところではむしろ流出になる、三角になるということであります。四月はそういうような情勢が続いておりまして、為替市場はきわめて平静に推移をいたしております。  他方、大臣が何回も御答弁になっておりますとおりの外貨活用策が先月から行なわれておりまして、為銀に対する預託でございますとかその他の効果が次第に出てまいりまして、今月におきましてはあと二、三日のところでございますが、大体において外貨準備は三月末の百六十六億ドルをむしろ若干下回る程度になるのではなかろうかというふうに現在のところ存ぜられるところでございます。
  112. 堀昌雄

    ○堀委員 いろいろと事務当局からの話を承りました。政務次官、さっき私が申し上げました拘束預金の問題とか金融機関の株とか土地とかその他の諸問題については、やはり国民が非常に関心を持っておる問題でもありますので、大蔵省としてできるだけすみやかに的確な処置によって国民がそういうことについて不満を持たないような措置を進めていただきたいと思いますが、最後の締めくくりに政務次官から御答弁をいただいて、私の質問を終わります。
  113. 田中六助

    ○田中(六)政府委員 堀委員指摘のように、金融機関の公共性ということを肝に銘じて、政府といたしましてもその観点から十分行政指導してまいりたいと思います。
  114. 堀昌雄

    ○堀委員 終わります。
  115. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 竹本孫一君。
  116. 竹本孫一

    ○竹本委員 最初に、日銀の副総裁のほうにまずお伺いしたいのですが、今度の準備預金制度は、もちろん公定歩合の持っている役割りというものを排除するものではないと思いますけれども、こういう新しい金融政策手段ができるということになりますと、重点がこちらにいくような傾向もないではないが、しかしながら私は、今度の制度ができても、なお、公定歩合の操作というものが果たす金融政策上の役割りは最も大きいものであると思うんです。そういう立場から、簡単に一、二のことを伺いたいのですけれども、一つは、日本の、あるいは日銀の公定歩合の動かし方というものはもう少し弾力的であっていいんじゃないか。昔といいますか、前に公定歩合ではなくて固定歩合であるといわれたこともありますけれども、もう少しフレキシブルに、そのときの金融情勢に応じて動かすことのほうが本来の使命を十分果たすことになるんじゃないか。この点について副総裁のお考えをまず伺いたい。
  117. 河野通一

    ○河野参考人 公定歩合政策の運用をできるだけ弾力的と申しますか、機動的といいますか、そういった形で行なってまいらなければならぬことは、私、いま御指摘ございましたとおりと考えております。現に、いろいろ批判がございましょうけれども、一昨年の十月から約一年ちょっとの間に五回の引き下げをいたしました。その引き下げの幅が大きかったか少なかったか、これはいろいろ議論があるかと思いますけれども、私どもとしては、別に自慢をしたくはございませんけれども、わりあいフレキシブルに公定歩合操作というものをこの最近におきましては行なってきておると考えますし、今後におきましても、金融情勢の推移をよく見ながら、あまりかたくなに、公定歩合というものをそう固定的に考えないような行き方で運用してまいりたいという気持ちは変わっておりません。
  118. 竹本孫一

    ○竹本委員 重ねて伺いますが、そういう意味からいって、頻度もたびたび、あるいは自由に、あるいは機動的に公定歩合は動かしたほうがよろしいし、その幅もそのときの情勢に応じて、〇・二五できめたようなことでなくてもやったらいいというような意味で、いまの不景気に対して第六次の公定歩合の引き下げの議論もあるわけですけれども、私はいろいろ、それができないというか、あるいはやりたくないという考えの根拠を考えてみると、やはり根本において、あまりたびたび動かしてはとか、あまり大幅に動かしてはいけないんだということのほうがむしろほんとうの根拠になっているんじゃないかと思いますが、その辺いかがですか。
  119. 河野通一

    ○河野参考人 私どもそういうふうに考えておらないのであります。しかし、公定歩合操作ということは、先ほど竹本委員も御指摘のとおり、中央銀行の政策としては重要な政策一つ、柱でございますから、ただ思いつきとか、何と申しますか、やっつけ仕事で公定歩合を動かすということは許されない。公定歩合を操作いたします場合には、その公定歩合を、上になり下になり、動かすということが非常に必要である。そして、したがってそれをやった結果、金融政策として、あるいは金融情勢に対して有効な作用を及ぼすことができるという判断のもとでないと公定歩合というものは扱うべきことではない。そういう意味において、弾力的には扱いますけれども、安易といいますか、手軽にやっちまえというようなことで公定歩合というものを考えるべきではない、かように私どもは考えております。
  120. 竹本孫一

    ○竹本委員 これは抽象論で言うとほとんど議論にならぬと思うのです。機動的に動かせと言えば、それはもっともだ、慎重にやれ、それももっともだと、もっともともっともではどうにもわからないが、問題はいまの不況の判断の問題になると思うのですね。日銀あたりも、底固めとかいうようなことで、いろいろ議論があるようですが、私どもは、非常にこれは設備投資の行き過ぎということから、ずっと歴史が根が深いんだから問題は深刻である。したがって特に公定歩合の心理的効果というものを考えて、この不況ムードの沈滞ムードを打ち破るためには何かの一つの刺激が要るといって、そのために公定歩合の引き下げなら引き下げということを言っているわけだから、決して思いつきで言っているわけじゃないんです。しかし、これは現在の不景気の深さをどう評価するかという問題ですから、議論になりますのでこのくらいでやめますけれども、しかし私は、この際公定歩合も引き下げるべきだし、不況に対してもう少し深刻に受けとめなければ、従来の景気の波とは違う。すなわち構造的矛盾といいますか、われわれからいえば資本主義的な矛盾というものが相当深刻に根底にあるんだということを申し上げるにとどめておきたいと思います。  そこで、先ほどの公定歩合操作と今度の準備預金の制度という新しい政策手段とは、ある場合は並行していく、またいくべきであろうと思うのですね。しかし国際短資の動きその他のいろいろの条件もありますから、今後の場合には、普通の常識でいえばそれが逆にいくということも大いにあり得るし、あってもしかるべきだと思うが、この点については基本的な考え方として、銀行局長と副総裁とそれぞれ、これは逆にいくことはあり得るんだという御認識があるのかどうか、ひとつ聞いておきたいと思います。
  121. 近藤道生

    ○近藤政府委員 ただいま御指摘のように、逆にいく場合というのは、しばしばあろうかと存じます。
  122. 河野通一

    ○河野参考人 いま銀行局長から御答弁あったようにしばしばあるか、ちょっと私もわかりませんが、そういうことはあり得ると考えております。
  123. 竹本孫一

    ○竹本委員 次の問題に入りますが、今度の準備預金制度というのは量的規制ということでしょうが、この場合に私一番心配するのは、日本の、いろいろ金融機関によって違いますけれども、金融機関もそうだし、ことに金を借りるほうの事業立場から申しますと、かりに金利が高くても、この際はその金を借りて事業を進める、あるいは守るということが必要な場合が多々あると思うのですね。しかし公定歩合の場合には、公定歩合が上がる、全体の金利が上がる、それに応じて少しがまんすれば金は借りられるのですね。ところが量的規制というものは、幾らがんばってみても、金はないんだから貸せない。また、それがこの制度のねらいなんですね。そこに大きな矛盾があると思うのですね。その矛盾があるということを認められるかどうか、また、認められたならば、その場合に対してはどういう打開の手があるのか、それを承りたい。
  124. 近藤道生

    ○近藤政府委員 ただいまの御質問のポイントは、準備預金の場合には量的規制であるから、引き締め政策としてはいいけれども、借りられないことによって非常に摩擦が大きくなるのではないかということかと思います。まあ、準備預金制度は、市中の通貨量をコントロールすることによりまして景気調節をはかろうとするものでございまして、景気引き締めのために有効な手段でございますが、景気上昇のためにも、準備率を引き下げて通貨量を増大させるということによって役立てることができるわけでございます。金利の引き上げによる引き締めのほうは、本来市中の通貨の需給関係を逼迫させて、その結果として金利を上昇させることにより引き締めを行なおうとするものでありますけれども、準備預金制度による引き締めの効果は第一義的には市中の通貨量が収縮するということでございます。第二義的には、その結果として金利が上昇するということでございます。まあその意味では本質的差異はあるいはないという見方もできようかと思います。摩擦が大きいか小さいかということは、引き締めの手段によって違ってくるというよりは、むしろそれぞれの上げ下げの程度と申しますか、運用の程度によってかわってくるというふうに考えております。
  125. 竹本孫一

    ○竹本委員 ちょっと御説明でまだよくわからないことがありますが、大体金をうんと貸してやろう、金利も下げてやろう、これは両方並行していけますね。ところがこんな場合に、金利も上げる、通貨量も収縮させるという場合に、その結果どうにもならなくなる。本来ならばこれがなければ、量的規制という手段のない場合なら、金利が上がるということだけで、金利負担を確保させるとすれば、一応問題は片づく。それから量的な場合にはないのだから絶体絶命です。絶体絶命で困ってしまう場合があるのではないか、そういう場合があり得ることを想定されますか、想定されるならば対策は何でありますかという点を端的に一つ伺いたい。
  126. 近藤道生

    ○近藤政府委員 いまお示しのございました金利と準備預金とそれからもう一つオペレーション、これはあるいは日本銀行のほうからお答えいただくほうがいいのかもしれませんが、その三者を併用しながら、その時々の情勢によってやってまいるわけでございまして、ただいま御指摘のありましたようなどうにもこうにもならない、ぎりぎりの締め方をしなければならないような場合にはやはりそういうこともしなければいけないというふうに考えております。
  127. 竹本孫一

    ○竹本委員 これは絶体金を貸してはならぬような場合ということになるのでしょうけれども、その場合でも企業立場からいえば、金利が、金を借りるどこかに余地があればそれを借りて急場をしのぐといいますか、ことが可能だけれども、その最後の望みを断ってしまうということがありはしないか。それはもちろん経済政策全般の立場からそれを押えてしまわなければならぬかもしらぬが、それは金融政策で締め上げてしまって、たとえばまいらしてしまうということは行き過ぎなんで、金融政策がそこまでいくことはどうかという、また政策の限界の問題もあろうかと思うのですね。ですから、運用に特に慎重を期していただくということを要望しておきたいと思う。  それから、次の問題に入りますが、海外からの短資の流入について国内の金融市場の撹乱をされるという心配があるということについて、ひとつ具体的にどういう場合を想定しておられるかお伺いしておきたいと思います。
  128. 稲村光一

    ○稲村(光)政府委員 これは抽象的なケースについての御質問だと思いますので、その例を申しますと、典型的な例はドイツに起こったわけでございますが、ドイツでは為替管理をやっておりませんために、ことに銀行部門におきましては準備預金制度でもってこれを操作することができたわけでございますが、企業以外の部門につきましては、短資の流入を防ぐという手段がなかったために、非常に為替の投機が起こりまして、多額の外資が入ってきたというためにドイツが非常に流動性の超過ということですか、それで非常にインフレ的な状態になったということが一つの例として投機的な――マルクに対する投機が起こりますときには常に起こっていたわけでございます。そういう状況日本においても起こり得る一つのケースと考えられます。
  129. 竹本孫一

    ○竹本委員 今後そういう具体的な場合が想定されますか。
  130. 稲村光一

    ○稲村(光)政府委員 わが国につきましては、ドイツと異なりまして、従来から為替管理の手段によりまして、短資が入ってくるという点につきましては、国際収支上の問題もございますので、これを抑制をするという手段をとってきております。したがいまして、一般論として申し上げますと、おそらく外国から短資が入ってくるという場合に二つの誘因があるだろうと存ぜられますが、一つは内外金利差でございます。一つは為替投機と申しますか、レートに対する不安であろうかと存じます。そのうちの内外金利差のほうに関しましては、内外金利差を平衡化するという措置、たとえばただいま御審議願っております準備預金の制度の活用によりまして、その金利差をニュートラルにできるということになりますと、ほとんど輸入の圧力は減殺されるということになると存じます。他方レートに関する不安につきましては、やはりそういう不安が強い間は為替管理によりまして短資の流入を防ぐという措置を続けておりませんと、なかなか短資流入の抑制はむずかしいのではないかというふうに考えております。
  131. 竹本孫一

    ○竹本委員 副総裁に伺いますが、いまいろいろ御説明がありましたけれども、短資を押えるということになると、これはどろぼうを見てなわをなうとかいうことばがありますが、実際は去年の八月以降の国際通貨危機あるいは円の問題がやかましくなったときに、むしろその前にこれがあったほうがベターではなかったか。いまごろ考えつくのはちょっとタイミングをだいぶ誤っているのではないかというふうに思うがどうかということが一つ。  時間がないからあわせて聞きますが、第二番目にはそれらと関連して、為替管理がわが国はあるとかいっていろいろ議論になりましたけれども、日銀ではこの前の円騰貴といいますか、円買いといいますか、それが行なわれることによって、ドルで言うならばどのくらいのものが行なわれ、ドルが売られて円が買われるかという問題について何十億ドルぐらいと見ておったか、その辺がわかれば教えてもらいたい。  それから三番目は、これと関連をして、一ドル三百六十円を守るといって必死にやられたわけだけれども、あのやり方は成功であったといまでも思っておられるか、あるいはほかの考えを持っておられるか、この三つをちょっと承りたい。
  132. 河野通一

    ○河野参考人 あるいはお尋ねの点を聞き間違えておるかもしれませんから、もし間違っておりましたら御注意いただきたいと思います。  第一の非居住者に対する準備預金の制度をもう少し早くつくっておいたらどうかという御質問かと思います。実はそれはそういう意見ももちろんあり得ると思うのですけれども、何ぶんにも金融制度調査会で、金融制度調査会の委員をやっておりますが、ここでいろいろ審議をいたしまして、そうしてその審議の結果、やはりこれは法律を直さなければいけないものですから、なるべく早くということで、いま国会で、この委員会で御審議を願っておるわけでございまして、そういう手続上の問題でこの問題がおくれたということになっているわけでございまして、これはむしろ私が御答弁するよりも政府御当局から御答弁いただいたほうがいいかと思いますけれでも、まことにやむを得なかったのではないかと考えております。  それから第二点の、去年の夏から去年の暮れにかけて日本銀行はドルを相当買いました。これがどのくらいを買うことになると予想しておったかという御質問のように伺ったのでありますが、これは遺憾ながら私どもにも見当がつきませんでした。それでその当時は、これは当然に日本経済というもの、ことに貿易というものがドル建ての輸出入というものが非常に多いわけでございますから、その関係からいいますと、どうしてもそのとき、わが国におきましては一ドル三百六十円というそのときのレートを維持していく、そのために必要ならドルはどんどん買っていかなければならぬという方針をとってまいりましたために、もちろん少なければ少ないほうがよかったかもしれませんけれども、ああいう結果になったものと思います。ただその後もドルの流入が意外に多かったために、いろいろな為替管理上の措置が幾つもとられて、これは詳しくは大蔵御当局からお聞き願いたいと思うのでありますけれども、ただその措置をとってきたのが、いかにも結果論としては何かあとを追っかけてという印象をお受けになった方がたくさんおいでになったと思います。また、そのことはもっともだと思いますけれども、私どもとしては、あの当時においては、やはりどうしても一ドル三百六十円は維持していかなければならない、そしてそのために必要なドルは買っていかなければならぬという方針でやってまいったわけでございます。もちろんこの点については、先ほど申し上げましたように御批判はいろいろあったのではないかと思います。  それから、三百六十円を堅持していった政策そのものがよかったか悪かったかということにつきましては、はなはだ弁解がましいことを申し上げますが、結果論としてはいろいろな御意見があると私は思います。しかしあの当時、あれだけの不安定状態が続いており、しかも日本が、先ほど来申し上げました、ドル建ての輸出入というものがウェートが非常に高いという特殊の事情からいいますと、取引を円滑にしてまいりますためには、あとう限り一ドル三百六十円のレートは守っていきたい、こういう政策をとってまいりましたことは、あの当時としては私はやむを得なかった、かように考えます。
  133. 竹本孫一

    ○竹本委員 これは非常に時間を要する問題ですから、結論だけ言ったのではどうにもならぬと思うのだけれども、ただ、いまの御答弁では、ちょっと納得できない点が多いです。たとえばやむを得なかったと言われる。あの当時のやり方としてやむを得なかった。やむを得なかったということは、それぞれの人、それぞれの機関でやむを得なかったと思っておられるのかもしれないけれども、国会政治責任を中心にして議論をする場合に、客観的にそう思ったことが正しかったかどうかという問題がまた別個にあると思うんですね。そういう意味からほんとうに本格的な議論をしなければ、はたしてやむを得なかったかどうかということは大いに議論があると思います。あるということだけぼくは申し上げておいて、時間がないからやめますけれども、たとえばドルをどれだけ日銀が買わなければならぬか、買うかといったような問題について、円買いがどのくらいあるだろうか。私はある政府の有力者から、十五億ドルまではとてもいく心配はないということをわれわれは思っておったということを、個人的に雑談的に聞いたこともあるのです。まあ名前は言いませんが……。少なくとも為替管理があるからだいじょうぶだと大蔵省は現に言っておった。そういうようなことで、政府の計算とか、いまのやむを得なかったというような議論は、いつでも大きく狂っているのですよ。たとえば、八大政策といいましたか緊急政策をやって、これで円の切り上げの問題は避けると言っていたけれども、思惑というものは一週間に何十億ドルと動くというと、輸入政策をちょっと強化して何億ドルドルが解決するか、ちょっとわれわれが計算してみれば、あの政策で円の切り上げを避けるなんということはおよそ考えられないことですよ、極端にいえば。政府はいまだにそれを言うておるけれども、とにかく言うことはいいですよ、それは必要なことだから。全部間違っているわけではない、それ自身はいいのだから。ただ、それで円の切り上げを避けられると思っておったところに大きな間違いがあった。それを私はあのときにも指摘したかったけれどもあまり機会がなかったから。とにかく間違っておる。そういう意味で、ドルを幾ら買い上げるかというようなことについても見通しがつかなかったというなら、つかないならまだいいのです。私が言いたいのは、ほんとうは見通しを誤っておったのですよ。つかないのと誤ったというのと違う。このくらいしかいかないだろうと思っていたのが、うんとドルを買い上げて日銀が四千五百八億円損したでしょう。そういうようなことになったのは、見通しがつかなかったというならまだわかるのだ。しかし、そうじゃない。逆に見ておったのだから。  逆に見ておった例を言えといえば、私はいろいろ言いたいけれどもやめますが、たとえば一番いい例は、いま三百六十円の問題をおっしゃったけれども、あのとき世界の市場の中で、たとえば為替市場を開く、株式市場を開く、三百六十円を守るということが常識として受け取っておられたとあなた思っていますか。八月十六日かの段階で為替市場も開く、株式市場も開く、三百六十円も守るということが世界の常識で、それは日本は正しいことをやる、いいことをやる、あたりまえのことをやるとあなたは受け取っておられたかということはどうです、印象的に。
  134. 河野通一

    ○河野参考人 その当時正しいと思って国民がおられたかどうかという点ですが、私は、その辺は、率直に申し上げまして、どうもよくわかりません。ただ、私どもはあの当時いろいろな案を考えてみましたけれども、それがあり得るいろいろな議論の中では、先ほどやむを得ないということばを使いましたけれども、このやむを得ないというのは、やはり先ほど申し上げましたような方向でいくのよりほかにいい方法がない、いろいろ選択をしました結果それよりほかにあの当時においては方法がないという判断をいたしたわけであります。
  135. 竹本孫一

    ○竹本委員 そうではないのです。あのときに、本来ならば即座に円を切り上げるか、少なくとも切り上げることについての幅がなかなか決定できないということもありますから、あるいは外国に対して責任転嫁をしなければならぬという日本政策立場もありますから、少なくともすぐフロートすべきですよ。私どもはフロートするだろうと思ったし、ぼくはちょっとあのとき外国におりましたが、フロートするだろうと言ったし、フロートするのがほんとうだと言った人もおったのです。例を言えば幾らでもありますが、ことに私が言いたいことは、二週間ももてないような政策を一生懸命やってみるということ自体もおかし・い。だから私は、あの政策は、いまおっしゃるようにやむを得ないものと解釈するわけにはいかない。やはり政府なり日銀なりが見通しを誤っておった、あるいは対策を誤っておったと実は思うのです。  いまさらその問題を言ってもじかたがありませんけれども、しかし、情勢判断というものは、けさもちょっと言ったのだけれども、いわゆる事務的判断でやるだけではいけない。もう少し、それは国際的なマインドも必要でしょうし、政治的な見通しも必要なので、ひとつ、副総裁なり総裁もいらっしゃるのだから、もっと高いステーツマンシップで最高の政策をやっていただかないとという点だけを要望にして、私の質問を終わります。
  136. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 河野参考人には、御多用中のところ、ありがとうございます。厚く御礼を申し上げます。  どうぞお引き取り願いたいと思います。  ただいま議題となっております両案中、準備預金制度に関する法律の一部を改正する法律案に関する質疑はこれにて終了いたしました。     ―――――――――――――
  137. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 これより討論に入るのでありますが、本案につきましては討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  準備預金制度に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  138. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  次に、おはかりいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  139. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――   〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  140. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後三時五十分散会