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1972-03-29 第68回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月二十九日(水曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 鬼木 勝利君    理事 大坪 保雄君 理事 神田  博君    理事 藏内 修治君 理事 地崎宇三郎君    理事 中川 俊思君 理事 岡田 利春君    理事 相沢 武彦君 理事 伊藤卯四郎君       有馬 元治君    佐々木秀世君       篠田 弘作君    進藤 一馬君       三池  信君    山崎平八郎君       細谷 治嘉君    松本 七郎君       八木  昇君    田畑 金光君  出席政府委員         通商産業政務次         官      稻村左近四郎君         通商産業省鉱山         石炭局長    莊   清君         通商産業省鉱山         石炭局石炭部長 青木 慎三君         労働省職業安定         局失業対策部長 桑原 敬一君  委員外出席者         参  考  人         (日本石炭協会         会長)     倉田 興人君         参  考  人         (日本石炭鉱業         連合会会長) 植田  勲君         参  考  人         (日本炭鉱労働         組合中央執行委         員長)     里谷 和夫君         参  考  人         (全国石炭鉱業         労働組合中央執         行委員長)   道下 一治君         参  考  人         (全国炭鉱職員         労働組合協議会         議長)     木崎 順二君         参  考  人         (住友金属工業         株式会社社長) 日向 方斉君         参  考  人         (電気事業連合         会会長)    加藤乙三郎君         参  考  人         (北海道電力株         式会社社長)  岩本 常次君         参  考  人         (電源開発株式         会社総裁)   大堀  弘君         参  考  人         (東京ガス株式         会社社長)   安西  浩君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭対策に関する件(石炭対策基本問題)      ————◇—————
  2. 鬼木勝利

    鬼木委員長 これより会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を進めます。  本日は、お手元に印刷配付してございますとおり、石炭対策基本問題に関連して意見をお述べいただくため、午前、午後にわたり、参考人の御出席お願いいたしております。  まず、午前は、参考人として、日本石炭協会会長倉田興人君、日本石炭鉱業連合会会長植田勲君、日本炭鉱労働組合中央執行委員長里谷和夫君、全国石炭鉱業労働組合中央執行委員長道下一治君、全国炭鉱職員労働組合協議会議長木崎順二君の御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらず、本委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございました。  わが国石炭鉱業現状は、関係各位の御努力にもかかわらず、依然として困難な状況にありますことは、まことに憂慮にたえないところであります。  ただいま本委員会におきましては、石炭対策基本問題について調査をいたしておりますが、直接企業に携わっておられる参考人各位におかれましては、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存ずる次第であります。  なお、はなはだかってではありまするが、参考人各位からの御意見の開陳は、お一人十分程度お願いすることとし、その後、委員からの質疑があれば、これにお答えいただくことにいたしたいと存じます。  それでは、御発言の順序は、かってながら委員長に御一任願い、倉田参考人からお願いいたしたいと存じます。倉田参考人
  3. 倉田興人

    倉田参考人 私、日本石炭協会会長をいたしております倉田興人でございます。  石炭問題につきましては、かねてから本委員会先生方に格別の御配慮をいただいておりますが、本日はまた、今後の石炭対策について業界意見を申し述べる機会をいただきまして、心から感謝いたしております。  御承知のように、エネルギー革命下のこの十年余りの間に、政府におかれましては、相次ぐ対策によって石炭再建のための手厚い助成策を講じられ、また大口需要業界からは、いわゆる政策需要の要請による引き取りのほかに、炭価値上げの御協力をいただき、ありがたく存じております。  もちろん、われわれ石炭業界といたしましても、懸命の合理化努力を続けてまいりました。それにもかかわらず、経営状況は好転いたしませず、昨四十五年度におきましては、大手各社平均実質赤字トン当たり三百数十円に達しております。本年度四十六年度はさらに増加する見込みでありまして、各企業とも特にこの石炭産業にとって市中金融はきわめて困離な実情にありますので、資金繰りは極度に窮迫しております。その上、昨秋以来鉄鋼業界の不況のため、内外の原料炭需給逼迫状況が緩和されるとともに、最近の公害問題の深刻化に伴って電力用一般炭需要見通しがますますきびしくなるなどございまして、需要確保の面においても困難な情勢変化が起きております。  われわれといたしましては、今後もさらに一そうの機械化とか省力化を進めることによりまして、保安確保前提とした生産性の向上をはかる所存でございます。また、市場条件に即応して、原料炭についてはより一そう取得率を向上させるようにつとめておりまして、一般炭につきましても、低硫黄炭確保、及び原料炭生産に付随して出てまいります一般炭の低硫黄化など、国内炭混炭方式によりまして適正品質化を進め、さらに需要の開拓の方途とも取り組んでいく所存でございます。その一環として、すでに一般炭コークス化による新技術は一応成果を見つつあります。また、湿式排煙脱硫による新方式装置が運転開始する段階にまで来ております。  しかしながら、実際問題といたしましては、自然条件の悪化や労務費上昇等によりまして、コストアップは不可避でございまして、需要確保の前途もまたきびしいだけに、政府施策による助成強化と、炭価その他における需要家の御協力がぜひとも必要でございます。  そのような情勢を踏まえまして、御承知のように、石炭鉱業審議会体制委員会において、昨年九月以来、新たな長期対策立案に向かって審議が続けられております。去る十二月には、緊急対策について決議が行なわれました。この決議に基づいて、もう数日後に始まります明四十七年度の石炭関係予算案には、一般炭安定補給金トン当たり百五十円の増額等が織り込まれておりますが、新長期対策実施されますまでの間に、つなぎ対策がさらに必要な実情にあります。ところが、本春に予定されております国鉄の運賃値上げ改定案どおり石炭について実施されますと、運賃負担増のために、せっかく安定補給金増額していただきました分二十一億円は全部吹っ飛んでしまうというような始末でございます。先般来、本委員会先生方にも、値上げが行なわれないよう御配慮お願いいたしました次第でございます。したがいまして、新対策実施までのつなぎ対策とともに、国鉄運賃問題につきましても今後ともひとつせっかく御配慮をお重ねいただきますようにお願い申し上げる次第でございます。  新長期対策根本対策については、近く石炭鉱業審議会において結論が出されようとしておりますが、われわれ石炭業界としては、石炭産業が存立していくために、少なくとも次の諸点が実現されますように切望を申し上げる次第でございます。  第一には、新対策基調といたしまして、新対策は、いわゆる静かな撤退をねらいとする現行の第四次対策基調を変えて、いわゆる石炭位置づけ、これを確定することが根本であります。この位置づけについては、現下の経済情勢に伴う国内炭需要動向のみにまかせて策定されることなく、総合エネルギー国策に基づく国産エネルギー活用基調に立って確定していただきたいのであります。  御承知のように、欧州における英国は一億五千万トン、西独は一億トン、フランスは二千五百万トン、国営または共同体確保方針を立てて国内炭位置づけ政策的にいたしておりまして、私どもうらやましく思っている次第でございます。  石炭位置づけを裏づけするために、石炭石油特別会計の十二分の十を四十九年度以降もひとつ獲得していただき、所要の財源を絶対確保していただくとともに、直接的な維持助成対策への重点化をひとつはかっていただき、また、施策としては、特に完全肩がわり安定補給金増額実施していただきまして、差し迫っておる資金不足対策を早急にひとつ講じていただきたいとお願いする次第でございます。  第三には、需要確保のための方策といたしましては、政策需要確保をしていただきたい。そのために、価格問題につきましては、原料炭については輸人炭との格差を、電力用一般炭につきましては石油との格差引取交付金として需要業界に支給していただき、また、公害問題につきましては、特に電力用炭については暫定的には混炭方式によって、国内炭はもちろん、輸入一般炭まで拡充いたしまして防止いたしたいと思いますが、根本的には、湿式排煙脱硫装置を、需要者供給者とそうして政府とで三分の一ずつ負担するような助成金を支給していただいて、そうしていわゆる三分方式公害防止を進めたいというようなことをお願い申し上げたいのでございます。  もちろん、石炭業界といたしましても、きびしい環境に思いをいたしまして、新対策のもとでわれわれみずからが最善の努力を尽くすべく決意をいたしておるものでございます。本委員会先生方におかれましても、この上ともひとつ特段の御配慮お願い申し上げる次第でございます。  どうぞよろしくひとつお願いいたします。ありがとうございました。
  4. 鬼木勝利

    鬼木委員長 次に、植田参考人お願いいたします。植田参考人
  5. 植田勲

    植田参考人 私は日本石炭鉱業連合会の副会長植田勲であります。  石炭政策につきましては、かねてより格段の御高配を賜わり、厚く御礼申し上げます。また、本日は石炭政策について意見を申し述べる機会を与えられましたことを深く感謝申し上げます。  石炭鉱業は、四次にわたる石炭対策実施にもかかわらず、きわめて困難な事態に立ち至っていることは、諸先生方すでに御高承のとおりであります。この点、経営者としては深く反省いたしておるところでありますが、業界は、エネルギー革命に対処して三十四年以降懸命の合理化努力を続け、能率は四倍以上に上昇し、西欧諸国の水準を凌駕するに至っておるにもかかわらず、経理状況は悪化しておるのであります。一般産業に比べ手厚い国の助成を受けながら何ゆえに今日の状態になったかにつきましては、エネルギー革命という時勢の流れがあったことはいなめませんが、これに対応して国にエネルギー政策について確固たる国策がなく、国内炭をいかに位置づけ、これに基づき徹底した対策がとられなかったことにあると思います。確かに石炭対策として種々の助成策は講ぜられました。しかし、基本が不徹底であり、しかも、実施された対策は、過去の負債の処理、資金対策重点が置かれた対症療法的な傾向が強く、産業安定の基本である企業採算についての前向きの政策が必ずしも十分でなかったことが、数次にわたる政策にもかかわらず、赤字炭鉱の大部分は相次いで閉山を余儀なくされ、また、残った炭鉱も、累積赤字借り入れ金の増大とにより、石炭鉱業危機を繰り返してきた大きな要因でなかったかと存じます。  石炭鉱業は、いまや最後段階に来ております。再び前車の轍を繰り返すことは許されない事態にあります。新たな長期対策については現在石炭鉱業審議会体制委員会において審議が続けられていますが、石炭鉱業全面崩壊を食いとめ、少なくとも今後四、五年間は変更せずに安定し得る対策樹立を切望するものであります。  このため、基本的には、わが国総合エネルギーの中における国内炭位置づけ確立する国策決定前提として、企業採算のとれる対策を推進することにあると存じます。国策決定について、特に本委員会並びに諸先生方特段の御高配お願い申し上げるものであります。この基盤の上に、従来のごとき対症療法的な対策でなく、体質そのものを健全、安定せしめる徹底した方策石炭政策を転換すべきであると考えます。  私は、かねてより提唱しておりました、一手に買い取り、販売を行なう買い取り機関設置を重ねてお願いするものであります。すなわち、個別企業に対する助成はこれを廃止し、各炭鉱において生産された石炭適正炭価にて一手に買い取り、これを需要者に売り渡し、買い取り価格販売価格との差額についてはこれを国が補助するものであります。これにより炭鉱会社流通部門合理化が可能となり、適正炭価で買い取ることにより企業意欲も振起され、その全精力を生産に集中し、合理的な生産が行なわれることとなります。また、買い取り機関においては一手に買い取り、販売することにより流通経費の節減、適正炭安定供給確保され、現行の繁雑な助成が簡略一元化されることになります。  石炭鉱業は、いまや個々の企業意識にとらわれることなく、石炭生産に専念すべきときが来ていると存じます。これによってのみ、今後の石炭鉱業の存在が価値づけられるものと思います。このためにさらによりよき構想があれば、それを受け入れるにやぶさかではありませんが、現段階においては、石炭鉱業における労使の意欲を振起して生産を維持し、需要者に対して安定供給確保するためには、この買い取り機関設置が緊急な課題であると確信するものであります。  以上申し述べましたが、意のあるところをおくみ取りくださいまして、石炭鉱業が現在の危機にある経緯と背景を深く洞察せられ、国策確立効果的対策樹立お願い申し上げ、私の陳述を終わります。  ありがとうございました。
  6. 鬼木勝利

    鬼木委員長 次に、里谷参考人お願いいたします。里谷参考人
  7. 里谷和夫

    里谷参考人 日本炭鉱労働組合里谷和夫であります。  石炭産業はいま重大な危機に追い込まれておりまして、スクラップ化の波は、業界大手企業である住友石炭や三菱にも波及をしている現状であります。現状のまま推移いたしますと、石炭産業は、いまや産業ぐるみ崩壊に瀕することは必至と判断をいたしています。  昭和三十七年十一月の第一次石炭政策以降今日までの十年余の間に、四次にわたる石炭政策実施されてきております。これらの石炭政策は、少なくとも表面的には石炭鉱業の安定、企業自立達成などを目的とするものでございました。しかし、実際にはその標榜するところとはおよそほど遠い、むしろ全くこれと逆行するものでしかなかったのでございます。この十年間に五百の炭鉱閉山をいたしました。スクラップ累計は五千万トンを上回ります。つまり、現状年間生産規模の約二倍にも達していること、これに伴いまして十六万人の炭鉱労働者が職場を追われてきていること、これらの事実の一つ一つがこれを端的に立証しているところだと思うのであります。  現在、石炭鉱業審議会体制委員会において、新長期石炭対策、つまり第五次石炭政策の検討が進められておりますが、われわれは、この第五次石炭政策立案にあたり、今日の石炭危機を招来している根本原因がどこにあるのかをまず見きわめること、次に、これが第一次−第四次石炭政策とどのような関係を持つのかを明確にすることが大切であり、この上に立って第五次石炭政策基本的な方向、すなわち基調確立すべきであると確信をいたしています。  その第一として、石炭危機根本原因であります。  政府によって今日まで推進されてきたエネルギー政策基本は、エネルギー革命という大義名分のもとで国内エネルギー資源の十分な開発利用を放棄し、外国にもっぱら依存しようというものでございます。  このようなエネルギー政策のもとで、一次エネルギー供給量の中に占める石炭比重は、昭和二十九年の四六・三%から四十五年には七・九%へと転落し、石油は一八・九%から七二・二%へと、飛躍的に増大しているのでございます。現行エネルギー政策が続く限り、この傾向は将来さらに拍車がかけられ、総合エネルギー調査会答申では、国内炭比重は、昭和五十年度には四・八%、六十年には二%へと圧縮すると想定をされるのであります。つまり、わが国総合エネルギー政策の中には、国内資源開発利用という視点は全くないと言っても過言でないのであります。  前述の第一次−第四次の石炭政策は、このようなエネルギー政策基本路線を踏まえて作成されたものであり、当然のことながら、わが国石炭産業の縮小、撤退基調としているのであります。しかもその中で、経営基盤確立企業再建あるいは需要確保という名目で、元利補給金再建交付金増加引取交付金等の形で、石炭企業金融機関電力鉄鋼資本に対する救済補給措置を大々的に実施しているのが特徴でございます。つまり、私企業体制を温存し、これに膨大な国民の税金を投入するという私企業救済策に終始してきているのであります。  今日の石炭危機は、以上述べたエネルギー政策石炭政策がもたらした必然的な結末であり、危機の根源は、かかる政府政策自体の中にあるものと判断をいたしています。  第二番目に、エネルギー供給源の将来展望についてであります。  今日までエネルギー問題に関して、エネルギー革命国際的潮流であり、石炭から石油への転換は不可避的な現象である、こういう論調が盛んに宣伝されてまいりました。政府総合エネルギー政策も、このような思想が基調となりまして立案実施されてきたものと判断をいたします。  ともあれ、このような論調に対してわれわれは一貫して強く反論をし、石炭はまだまだ稼行価値があることを訴えてきたところでございます。  このような中で、いま西ヨーロッパ炭国を中心として、石炭の価値について新たな評価が台頭していることに特に注目する必要があると思うのです。そしてこれらの国の政府は、このような展望に立って、現状生産規模維持拡大とこのための閉山停止措置実施、新鉱開発の促進、石炭に対する政策助成強化などを必要な対策としてとりつつあるのであります。  われわれが第五次石炭政策を検討する場合、このような動向を特に重視して、エネルギー供給源の将来展望を十分見きわめつつ、政策確立に当たることが必要ではないかと判断をいたしています。  三番目に、第五次石炭政策基調であります。  第五次石炭政策確立にあたっては、以上触れたわが国エネルギー政策及びこれに基づく第一次−第四次石炭政策根本的な問題点を克服し、また、新たな石炭再認識の動向をも十分考慮し、国内資源有効利用をまず前提条件とした長期展望を持つ政策として確立することが重要だと思うのであります。  以下、第一に、閉山のない、長期安定体制確立をはかっていただきたいと思います。  二番目に、近代的、合理的な生産流通機構確立することだと思います。  三番目に、災害のない、安定した生産体制確立することだと思います。  四番目に、炭鉱労働者生活条件抜本的改善をはかることだと思います。  五番目に、個別私企業体制を変革し、石炭産業長期安定化を保証し得る経営体制確立をすることであります。  以上五点を申し述べます。  最後でありますが、第五次石炭政策に対するわれわれの考え方は、以上触れたとおりでございますが、この第五次石炭政策最後石炭政策になるだろうといわれています。私どもはそうも思っています。したがって、この際、石炭産業再建安定化を阻害する一切の要因を勇断をもって断ち切り、文字どおり最後石炭政策にふさわしいものとすることが大切であると思います。これは三月三十一日に開催をされる石炭鉱業審議会総会で議論されますが、陳述最後にあたりまして、私ども二つお願いを申し上げたいと思うのであります。  その一つは、現行石炭特別会計を、あと五年間の位置づけ決定をしていただきたいということであります。  二つ目として、いま、需要昭和五十年度二千万トンという、体制委員会における中立委員の案が提起をされていますが、このことは私ども炭鉱労働者の容認するところでないのであります。この点を十二分に御判断をいただきまして、三十一日の石炭鉱業審議会以前に何らかの当委員会の適切な御決定をいただければしあわせと思う次第であります。  終わります。
  8. 鬼木勝利

    鬼木委員長 次に、道下参考人お願いいたします。道下参考人
  9. 道下一治

    道下参考人 御紹介いただきました全炭鉱道下です。よろしくお願いいたします。  五次政策立案する大詰めの段階をだんだんと迎えたわけでございますけれども、いまこの段階で私どもの足元を見ますると、大体炭鉱の数で全国で七十炭鉱炭鉱労働者約四万人、閉山規模二千七百万トン台、こういうところに石炭産業の実態というものが落ち込んでまいりました。もちろん、こういうように落ち込んでまいりましたそもそもの原因にはいろいろあろうと思いますけれども、やはり日本には石炭というものはもう必要ないんだ、したがって、こういうものは計画的に閉山をしていくんだ、こういうような考え方で計画的ないわゆる閉山によって今日のような姿に落ち込んでしまったのであれば、これは私なども理解をするわけでございますけれども、私どもはそのように判断は実はいたしておりません。いわゆる大口需要家でありますところの鉄鋼とかあるいは電力、こういう鉄鋼あるいは電力需要、こういうものを考えてみますると、やはり日本には石炭というものは必要である、そういうような観点をわれわれは持っておるわけでございます。したがって、ここまで落ち込んでまいりました石炭については、もうここらあたりでそろそろ閉山の問題について歯どめをしていただく、そういうような政策を鋭意確立をしていただきたい、こういう点を実は考えておるわけでございます。  本日、石特の中で参考意見を述べよということでございますので、四、五点の内容について重点的にお願いを申し上げたい、実はこのように考えておるわけでございます。  まず第一点の問題でございますが、いわゆる五次政策政策自体精神と申しますか、あるいは姿勢と申しますか、この点について第一にお願いをしたいわけですが、前段で申し上げますように、石炭については、われわれ将来ともに、現在程度規模というもの、あるいは現在程度生産量というものは必要である、こういうような考え方でございまするので、現在行なわれておりますところの、スクラップ政策とわれわれは表現をいたしておりますが、四次政策、これについてはひとつ根本的な見直しをしていただきたい、このように考えておるわけでございます。  御承知のように、四十五年の十一月でございますが、中間答申が出てまいりましたが、その中の精神というものは、われわれはこのように理解をいたしております。いわゆる石炭産業というものは、日本産業政策上に必要な産業である、このようにわれわれは、四十五年の十一月に出されました中間答申については、精神として受け取っておるわけでございます。したがって、中間答申でいうこの姿勢と申しますか精神と申しますか、こういうものを今次の策定しようとする五次政策精神にしていただきたい、姿勢にしていただきたい、このように実は考えておるわけでございます。  しかし、君、そう言うけれども、実際中間答申後一年半ばかり期間の経過がございます。したがって、その間には相当の情勢の変化があるではないか、このような意見があろうというように私は考えます。もちろん、これについては、鉄鋼関係、これは粗鋼減産という理由があります。それから電力については、公害ということでいわゆる引き取り量の低下、こういう問題が実はあるわけでございますけれども、たとえば原料炭について申し上げてみますると、大体原料炭は国内の産出量の約五倍ないし六倍、この程度のものを外炭に依存をしておる、こういう状態でございます。したがって、現実的にいえば、国内炭では足らなくて外炭を輸入しておるわけですから、少なくとも国内の原料炭については一トンでも多く掘ってくれ、それは一時的な現象でいまは減産ですけれども、将来の方向から見れば私はそういうものでなくて、国内の原料炭というものを一トンでも多く確保する方向にあるべきだ、このように実は考えておるわけでございます。国内の原料炭を減らすことによって外炭の供給圧迫、こういうものが必ず出てくるのではないか、そういう意味から、私は将来の目で見るならば、原料炭というものはより多く確保する政策をとるべきではないか、このように原料炭については考えておるわけでございます。  それから、本来の一般炭でございますけれども、特にいままでの体制委員会の論議の中で出てまいりましたが、いわゆる公害問題等で電力関係電力炭の引き取り量、こういうものが相当落ち込んだ内容のものとしてわれわれに提示をされております。もちろん、これは公害という問題が私はあるというように考えます。考えてみますると、鉄鋼の場合には、粗鋼を減産しなければならぬという理由による引き取り量の低下であります。しかしながら、一方、電力を見ますると、電力の場合は、供給力の低下、そういうものではない、むしろ電力というものは全国的に需要は増大してくるんだ、そのようにわれわれは判断をいたしております。そうなりますと、電力の場合には需要がふえてくるのに引き取り量を低下しなければならぬという理由についてはどうしても納得できない。したがって、こういうものは外国エネルギーでありますところの重油あるいは原油、こういうものに切りかえていって、将来ともにエネルギーを使う内容について変革をしようというのが電力考え方でございましょうけれども、こういうものは、むしろ、原料炭よりも、事が国際エネルギーであるだけに、供給圧迫という問題は将来に大きな禍根を残すのではないか。したがって、電力関係も、エネルギー資源である石炭については、いわゆる安全弁のためにも現状程度確保というものはぜひお願いをしたい。  こういうことを考えてみますると、私は、むしろ、石炭撤退ではなくて、積極的に国内の石炭産業というものは育成しなければならぬ、積極的に石炭政策強化しなければならぬ、こういうような考え方を実は持っておるわけでございます。したがって、そういう内容のものを考えてみますると、やはり中間答申でいう、われわれが精神として受け取りましたところの前向きの姿勢というものをくずすべきでない、こういう点を考えておりますので、五次政策精神と申しますか、姿勢については、積極的な前向きの対策をとっていただきたい、こういう点を第一点としてお願いをしたいと思います。  それから第二点の問題につきましては、やはり五次政策基本となるもの、いわゆる土台でございますけれども、これは、何といっても国内炭位置づけにあると考えております。先ほど申しますように、現在程度規模というものをひとつ最低限として国内炭位置づけの内容のものを確定をしていただきたい、このように実は考えております。もちろん、これはただ単に、掘り出すわれわれと、使う電力鉄鋼、この双方の話し合いで解決する問題ではございませんので、国家の政策として、政策需要確保、これとあわせて、供給力が維持できるような政策、こういうものを政策基本として策定をしていただきたい、これが第二点の問題でございます。  それから第三点は、五次政策の仕組みと政策の骨格の問題でございます。  仕組みにつきましては、現在まで四回の石炭対策を行なってまいりましたが、大体一般的にいわれますように、今回作成する五次政策は最終対策であろう、われわれもこのように受け取って取り組んでおるわけでございます。したがって、最終対策だという判断のもとに、今後長期にわたって手直しを要しない政策としていただきたい、このように考えておりますが、そのためには、経済情勢の変動に応じた補強策というものを弾力的な方法で考えるべきではないか、弾力的な仕組みに考えるべきではないか、このように実は考えておるわけでございます。  それから政策の骨格といたしましては、マクロ的になりますけれども炭価と国の補給金、これの調整によって手取り炭価が維持できるような制度の骨格としていただきたい、このように考えておるわけでございます。  あわせて、仕組みと骨格をそのように考えた場合には、おのずから財源というものは、天井知らずという内容のものじゃございません、一定のワクがございますから、石炭対策の財源につきましては、個別の炭鉱段階で効率的に運用できるような資金運用、財源運用、こういうものをひとつ考える必要があるのではないか、このように考えているわけでございます。  それから第四点目の問題といたしまして、そのように政策の仕組みあるいは骨格、財源運用、こういうものを考えてみますると、現在のような石炭産業の私企業の体制では今後うまくいかないのではないか。したがって、この問題については、合理的な石炭産業の管理体制というものを確立すべきではないか、このように考えているわけでございます。しかし、全炭鉱の場合には、今後問題になりまするところの管理体制について、このようにしたらどうかという具体的な試案というものは、いまのところ持ち合わせはございません。もちろん、これの基本的な考えといたしましては、まず、具体的な石炭の五次対策政策の細部について、そういう中身の論議の決着を見た上で、政策をカバーするのが体制の問題になりましょうから、中身の論議を経た上で、それをささえるより効果的な管理体制を考えたい、実はこのように考えております。一口で言えば、もちろん業界共同体制、こういうものは強化をしなければならぬ、このように実は考えているわけでございます。  それから第五点目の問題として、これは特段の御配慮をいただきたい点でございますけれども、やはり一番われわれが関心を払っておりまするのは、問題になっておりまするところの需要確保の問題でございます。これは先刻申し上げましたが、たとえば、石炭サイドのわれわれと、使っていただく側との立場の話で解決する問題ではございませんので、これは、やはり何と申し上げましても、国の政策として、需要確保ができる対策というものをぜひ考えていただきたい、このように実は考えておるわけでございます。  それとあわせて、もう一つ大きな問題は、石炭対策の財源にあろうと思います。幸いにして、昭和五十年度までは、石炭石油特別会計、こういうものが存続できる見通しになりました。しかしながら、問題は、四十九年以降の石炭対策財源を石炭勘定分としてどれほど確保できるか、こういうことが今後の石炭産業の寿命に関連する重要な問題だというふうに考えております。したがって、四十九年以降、現在の十二分の十という石炭勘定分については、ぜひ確保できるように、特段の御配慮お願いしたい、このように実は考えております。  以上、要約して五点を申し上げましたが、私どもは労働組合でございますので、特に労務対策、労働問題、こういう点につきましてもお願いを申し上げたいわけでございますけれども、特に労働問題につきましては、機会を設けていただいて、いままでも何回も先生方にもお願いを申し上げておりますので、この問題についての意見については今回の場合は差し控えたい、このように実は考えております。  以上、五点に要約してお願いを申し上げましたが、よろしくお願いを申し上げたいと思います。
  10. 鬼木勝利

    鬼木委員長 次に、木崎参考人お願いいたします。木崎参考人
  11. 里谷和夫

    木崎参考人 私、炭職協の木崎であります。日ごろ先生方からは石炭に関しまして御指導や御協力を得ているわけでございまして、石炭産業に働く職員を代表いたしまして、本席をかりましてお礼を申し上げたいと思います。  日本におけるエネルギー政策の中での石炭政策はどうなければならないかという根本的な理念問題につきましては、前四者の参考人がいろいろと申し上げておりましたが、私もほぼ同意見でございますので、この点につきましては省略させていただきます。  さて、新長期石炭対策の策定にあたりましては、第一点といたしまして、これまでの政策はなぜ破綻したか、すなわち、予想外の大幅な閉山を招いたかという原因の究明、二番目に、今回の新政策を策定するにあたりまして特に考慮しなければならない問題は何なのかという、以上の二点を明らかにした上で、今後五年程度は破綻を来たさないような政策樹立されねばならない、そういうように私は考えております。  第一点の、これまでの政策はなぜ破綻したのか、すなわち、予想外の閉山を招いたのかという原因でありますけれども閉山原因には、出水、ガス突出、炭量枯渇等、いろいろその原因は多岐にわたっておりますけれども、その大半は、いわゆる収支の予想外の悪化にあったと私は考えております。  では、閉山を招いた予想外の収支の悪化はどういうふうにして生じたのか、その原因は何なのかという話になるわけでありますけれども、いろいろございますが、私は次の五点にあるというふうに考えております。  すなわち、一番目は、生産計画それ自体が過大であったということであります。これを組合用語でいいますと、計画の虚構性ということになりますけれども、単純な生産計画の見込み違いのほかに、政治的な判断が作用したものと思われます。  二番目に、政策決定のバックデータとしての自産炭損益につきまして、全炭鉱、これは大手の全炭鉱でありますけれども大手の全炭鉱の平均値で政策立案されていたのではないか、しかも、その助成策というものは平均的なものであったということからして、収支が平均値以下にある炭鉱の収支は必然的に赤字にならざるを得なかったということがあると思います。  三番目に、急激かつ持続的な労働力の流出は、退職金の支払いが増大することを意味しておりまして、これが収支面に大きな重圧となったと考えられます。  四番目に、労務費の計画での見込みが実勢以下のものであったということは明らかであります。  五番目に、計画と実績の差に直ちに対応できる、少なくとも次の年度には対応できるような政策の仕組みになっていなかったということであります。したがいまして、過去十年間に、二年に一回の割合で政策の見直しをされたわけではありますけれども、いずれも新政策実施というものが炭鉱の実態におくれがちであった。  このほかあると思いますけれども、以上の五点が、閉山を招いた原因の最たるものの収支の悪化を招いた原因であろうかと考えられます。  加えまして、生産計画の過大と続出する閉山による供給の不安定に対しまして、業界が、業界全体としての視点からすみやかに対処されなかったそのことによって、特に大口の需要家に御迷惑をかけたということは、深く反省されねばならないと考えております。  二番目の問題として、今回特に考慮されねばならない問題としてはどういう点があるのかということにつきましては、私は以下の五点を考えてみました。  すなわち、第一点として政策財源、いわゆる石炭石油特別会計における四十九年度以降について石炭分として幾ら確保できるのかという問題があります。  第二番目に、公害と経済的な効率の問題であります。体制委員会におきまして、五十年度鉄鋼五百万トン、電力は二百二十万トン、しかもこれは北海道だけという主張がなされておりますが、特に電力につきましては二百二十万トンしかはけないという理由に、公害を前面に押し出してきているとともに、付属的には、石炭火力発電の効率が悪いということがその理由としてあげられております。特に一般炭につきましては、原料炭の産出には必ず一般炭の産出を伴うわけでありますから、このような大口需要家である電力の見解というものは、需要面に及ぼす影響は甚大であります。したがいまして、現在いわゆる電発では、この公害対策では住民とのトラブルを起こさず、非常にうまくやっているということが、大牟田におきましては、三井アルミで排煙脱硫装置が本格的に四月から動き出すということもあるわけでありまして、対策が全然ないというわけではありません。しかし、これには金がかかりますので、公害対策と、いわゆるメリット差による価格差補給金といいますか、価格差補給的なものについて十分に考慮されねばならないのではないかというふうに考えます。  次に、産炭地域の振興対策でありますが、ここで私の言うところの産炭地域振興対策というのは、閉山後のものではありません。閉山地域における産炭地域対策がいろいろとられてきましたけれども、これは必ずしも十分な実効はあがってはいないのではないかというふうに私には思われます。したがいまして、閉山をしないということそのものが、実は産炭地域振興対策の最も強力なものであるというふうに言えるのではないか。また、閉山をしないことによって、その地域に発電所をつくるなり、または石炭を使う産業を誘致するなりということを行ないますならば、そのことが産炭地域振興対策になるとともに、過密地帯から過疎地帯への産業の転換という国の方策にも合致するのではないかという点を考慮する必要があるのではあるまいか。  四に、労働力の確保でありますけれども、近年の炭鉱においては、流出する労働力の大半は閉山炭鉱からの流入で補充しているのが現状であります。すなわち、他産業や新規採用で補充していくことはきわめて困難な現状にあるということであります。今後閉山がゼロであったといたしましても、当局の一応の試算によりますと、年七ないし八%の割合で労働力が減少するというふうにいわれております。したがいまして、労働力の確保対策が強力に実施されない場合、労働力不足によって閉山を招くことにもなりかねないというふうに考えられます。  五番目として、いわゆる体制問題でありますけれども政策の効率を高めるために、特に助成措置——これについてはあとで若干詳しく申し上げますが、助成措置と、供給の安定のための販売の一元化、それから、やむを得ず閉山する場合の閉山対策、資金繰り等のための一元的な何らかの管理機構が必要ではないかというふうに考えられます。  以上の観点から、第五次石炭政策立案にあたりましては、以下、私が申し述べるような点につきまして、諸先生方の御協力を得たいというふうに考えまして、要請申し上げます。  第一点といたしましては、いわゆる石炭位置づけであります。過去十数年来閉山に次ぐ閉山、首切りに次ぐ首切りにあえいできたわれわれ炭鉱の労働者といたしましては、もうこれ以上閉山はごめんであるという、素朴で、かつ真剣な願いがあります。また、閉山は、一たび閉山を起こしますと、その地域に及ぼす影響というものは甚大であります。  そのような二点の観点から、われわれといたしましては、基本的には、最低限現状程度石炭は維持していただきたいというふうに考えておりますけれども、これとても、財源や需要や供給の確固たる裏づけがなくては、空中の楼閣になりかねません。したがいまして、財源、需要、供給の確固たる裏づけに基づいて、今後五カ年間の維持数量を明確にしていただきたいと存じます。  二番目は、いわゆる所要財源の確保についてでありますけれども石炭対策特別会計制度を昭和四十九年度以降も存続させていただくと同時に、原重油関税収入の十二分の十を石炭分として確保していただきたいと思います。  三番目に、需要確保対策でありますけれども、大口の消費者に対して国内炭の使用を義務づけていただきたいと思います。はたして義務づけることがいいのか、現在のやり方がいいのかは、実は私もわかりません。いずれにいたしましても、大口需要家政策的に国内炭の使用につきまして先生方の御協力を得たいと思います。いやがる国内産の石炭を使わせるわけでありますから、その反対給付と言ってはなにでありますけれども、負担増対策やいわゆる公害問題、これにつきましては十分の対策が必要であろうかと思います。  時間がないそうでございますので、あとはかけ足でやらしていただきます。  供給安定対策についてでありますけれども、労働力確保が大切でありますから、労働条件につきましては、いろいろありますけれども、他産業並みの水準に引き上げるという方向で検討していただきたい。  また、安定補給金及び炭価を物価や賃金の上昇にスライドさせるという制度を確立していただきたい。  三番目に、政策助成の配分につきましては、一定の限度内におきまして炭鉱間に格差を設けて、個別炭鉱対策を講じていただきたい。コストの安いところには薄く、コストの悪いところには厚くという意味であります。  それから、閉山炭鉱の債務が残存炭鉱の重圧とならないように処置していただきたい。現在、赤平が歌志内、奔別の借金をかぶっておりまして、肩がわり分の利子を除き、月の利子の負担が六千万円でございます。このようなことがないようにしていただきたい。  それから、肩がわり対象の借り入れ金のいわゆる完全肩がわりという問題を考えていただきたい。ただ、この問題につきましては、食い逃げの防止対策を講ずる必要があろうかと思います。  それから閉山対策についてでありますが、やむを得ず閉山する場合には、離職者の労務債を完全に保証する制度を確立していただきたい。  それから、再就職対策並びに転業資金の貸し付けについて十分な処置をしていただきたい。  産炭地域振興や一般債権者の対策に万全を期していただきたい。  体制問題については、先ほど申し上げましたように、何らかの管理機構を設けていただきたい。  二番目といたしまして、昭和四十七年度対策でございますが、協会長が申し上げましたように、四十七年度中にも大型閉山を招きかねないような状態にございますので、炭価の引き上げを行なうことと、必要資金の対策について十分な配慮を願いたい。  以上でございます。  現在、石炭は、金の面では国からの金をいただき、需要につきましては政策的にやっていただいている現状でございまして、生産するわれわれとしては、何をやらねばならないかということを反省する場合に、やはり保安を確保し、生産性を上げ、供給の安定をはかることこそが生産者側の責務であろうというふうに考えております。このことは、究極的には経営者の責任でありますけれども、その一半の責任は組合にもあるというふうに私は考えておりますので、この点についてわれわれもいま以上の努力をいたす所存でございますので、諸先生方にも今後の御協力と御指導を何とぞよろしくお願いいたします。  終わります。
  12. 鬼木勝利

    鬼木委員長 以上で午前の参考人各位の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  13. 鬼木勝利

    鬼木委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中川俊思君
  14. 中川俊思

    ○中川(俊)委員 時間がございませんから、ごく簡単に二、三お伺いをいたしたいと思います。  石炭現状につきましては、いま、るる皆さま方から拝聴いたしましたことについては、おそらく本委員会におります者はみな同感でございまして、石炭を今日のような現状に追いやった責任は実に政府にある、この点については、国内産エネルギー資源を確保していかなければならないという点について政府の関心が足りなかった、こういうふうに私自身は考えております。  特に、産業の食べるエネルギー資源の石炭、人間の食べるエネルギー資源の米、米と石炭政策は非常に重大でございまして、食べるものがなくなったら人間は生きていけない、機械も生きていけないということはもうわかっておることでございますから、ただ安易に経済性だけでこれらの問題を処理していくことについては、私自身はかねてから非常な疑念を持っておるわけでございます。したがって、いずれの国におきましても、エネルギー資源に対しては国が補助政策を取っておる、保護政策をとっておる。石炭に金を食うから、経済性に合わないからというので、これを簡単に捨ててしまっておるわけでもございませんが、そういう体制に持っていくということについては、私自身は特に疑念を持っておるわけでございます。  先ほど来、倉田会長はじめるるお述べになりました安定補給金増額の問題であるとか、鉱業審議会の新体制に対する御希望であるとか、あるいは国鉄運賃の問題であるとか、いろいろございましたが、むろん、そういうことについては、私どもは微力でございますが、お手伝いを従来も申し上げておりますし、また今後も申し上げることにやぶさかではございません。ただ、いかにもどうもエネルギー革命が急速に進んでまいりましたために、石炭対策に対する政府の熱意が足らないのと同時に、客観情勢もやむを得ずそういうことになっていったことは、争えない事実だと思うのであります。  そこで、こういう点について努力いたしますが、それについて二、三お伺いをいたしたいと思いますのは、こういうことができるかどうか知らないが、石炭協会なり皆さま方御関係の方が、もっと具体的な対策をお考えいただいたらどうか。たとえば、先般も、日本商工会議所が私どものところに意見を述べられた中に、特にエネルギー資源なんかの備蓄公団をつくったらどうか——先ほど、ここで、買い取り機関というのをどなたかおっしゃっておりましたが、そういうものをもっと拡大強化したようなものですか、そういうものをつくったらどうだろうか。石炭とかあるいは重油とかというものは、そう簡単に備蓄することができないように考えておる向きもございますが、必ずしも私はそうじゃないと思うのです。備蓄の方法はある。したがって、そういうものをおつくりになることに対して御研究になったことがあるかどうか。  それから石炭特別会計五カ年間延長とか何カ年間延長ということ、むろん私どももその観点でみんな協議をいたしておりますし、御案内のとおり、特別会計の延期についてはみんな努力しておるわけでございますが、たとえば五カ年なら五カ年経過した後に、それで石炭問題は解決つくかどうか、こういう点について御確信があるのかどうか。  それからさらに、私は客観情勢なり政府を責めてもしようがないのですが、皆さん方企業家自体も、企業合理化であるとか、あるいは企業合同であるとかいうことについて、過去において熱意が足りなかったんじゃないかという気もする。御案内のとおり、今日は、何も石炭業界ばかりではございません、いろいろな面において企業合同が行なわれ、多極化が行なわれておる。そういう時代に、石炭のみは、全然やっていらっしゃらないわけじゃありますまいが、どうもそういう点に欠けておったのじゃないかという気がいたします。そういう点についてどういうふうにお考えになっておるのか。私はいまからでもおそくはないと思うのでございますが、倉田会長はじめ各位から、そういう問題について御構想がありまするならば、ひとつ承りたいと存じます。
  15. 倉田興人

    倉田参考人 最初の御質問の備蓄の問題でございますが、これは石炭の貯炭場というものを各山元に持ち、あるいは港湾に持っておるということで、過去においてこれは相当の貯炭をしておりました経験を持っております。そこで大体三カ月あるいは半年ぐらいの貯炭を持つということは可能でございます。油のほうでもいわれております三カ月の備蓄という問題に対抗します石炭の半年やその生産量の貯炭ということは、これは可能でございます。ただ私どもは、貯炭をしますことによって金融面の圧迫を非常に受けます。そこで、油の備蓄に対する対策を御考慮くださいますそれと同じように、貯炭の融資だとか、あるいはその金融に対する金利の補給だとかいったようなことが考慮されます場合においては、今日においても相当量の備蓄はできる、こういうことでございます。  それから、今度、石炭石油特別会計でございますが、この特別会計を五カ年なら五カ年やったあと皆無でいけるような状態になるかということでございますが、これはやはり五年後のエネルギー情勢がどうなるかという問題に関連いたしてまいります。いままでの状態で、過去十カ年余りの、いわゆる私どもエネルギー革命のあらしにさらされてという期間の問題からいいますと、世界全体においてエネルギー過剰時代でございまして、特に欧州と日本においては、油源を持たないということによりまして油のダンピング市場になったということで、御承知のように、石炭におきましても、昭和三十四年から三十八年まで五カ年間に千二百円の炭価ダウンをいたしまして、人も合理化もやり、能率もあげいたしまして、そうしてやっとこの千二百円をダウンいたしました。そのときの目標は、C重油一キロ八千四百円というめどを置いて、そして油と同額、決して油は石炭に比較して安くないのだというようなところまで石炭を持っていかなければ競争できないじゃないかということで、千二百円ダウンをいたしました。そしてそれを完成ししましたが、油のほうはその当時はもう六千円を切るといったようなダンピング状況であったわけです。いままで、石炭をたくよりも油をたいたほうが経済性もあるし、エネルギーとしては非常に有効であるということで、油の需要がどんどんとふえてまいりますし、石炭は減っておる、こういう状況をたどっております。そういう経済情勢が今後も続きますれば、これはいまの残っておる炭鉱を維持していただいても、結局五年後には競争はできないということになります。  そこで、今度は石炭の用途といいますか、そういうものをひとつまた開拓していくということで石炭の生きる道を考えるか、いまのままで一般炭は燃料エネルギーとして電力用にたいていただくというようなことで、油と競争していくようなかっこうでずっといって、そして油が、昨年以来のOPEC戦でだんだんと上がって、五年後には倍になるといったような趨勢が見られる今日ですから、五年後にはたして経済的にそういうあれが出てくるかどうかという問題にかかってきます。それが出ないということになりますと、石炭を生かしてもらうためには何がしかの開拓をということになります。  それから、企業合同の熱意が足りないということでございました。これはいままで対策が、日本においては、いわゆる自由主義経済国における私企業のバイタリティーを大いに発揮さしてその生産性を向上して、できるだけコストを下げていくという方法をとられました。イギリスのごとく、フランスのごとく国営とか、あるいはドイツのごとく共同体といったような方向には、これは対策の面からいたしましてもやらなかったわけであります。これが一本になってほんとうに独占企業として日本でやっていけるのか、また国営にしてくださるのか、そういうことで、私ども何も企業を合同するというような熱意を持たなかったじゃないかというおしかりに対しましては、いささかどうも、日本石炭政策の経緯によってこういうかっこうで来ておるということに御了承いただきたいと思います。
  16. 里谷和夫

    里谷参考人 組合として、いまの三点について簡単に考え方を申し述べたいと思うのですが、先ほども申し上げましたように、三十七年の石炭政策が発効する以前の石炭合理化、いわゆる閉山、首切りというのは、貯炭による現象で起きてきたと言っても過言でないと思います。三十七年度以降の閉山あるいは首切りというのは、経済性に合わない石炭、高コストの石炭ということで閉山、首切りが行なわれてきたのじゃないか、こういうふうに思っております。そういう不安定要素がございますから、備蓄の問題を判断をいたしますと、たとえば、いま体制委員会で議論をしています需要と供給の関係からいいましても二千万トン、あるいは現状維持二千八百万トンでありますけれども、こういう趨勢から見ても、備蓄の問題について公団を設けられて安定供給をはかるという意味で御了承いただけるのであれば、私どもは非常に望むところである、こういうように判断をするところです。いまも体制委員会で、そういう面で需要と供給のバランスをとる意味で私どもは主張しております。  それから二つ目の、五年間でいいのかという問題でありますが、これは先ほど来申し上げておりますように、石炭位置づけを明確にする。それから、昨年の九月に田中通産大臣が申しておりますように、十五年ぐらいの長期展望に立つべきである、こういう考え方について全く賛成であります。  そこで、いま労働側の意見から申し上げますと、御承知のように、日本産業の災害率というのは非常に下がっておりますけれども石炭の災害率というのは、全国災害率を五倍も上回るという災害を実は常に引き起こしているわけです。そういう点がございますから、保安を第一にする、命を大事にする、こういう産業政策を明確に立てるということと、石炭産業位置づけを明確にするということになれば、若手労働力が導入されるのではないのか、こういうように判断をします。そういう面から判断をしますと、長期展望に立つ石炭産業の安定というのは必然的に生まれてくるのではないか。  参考までに申し上げますと、いま炭労全体で労働年齢をはじき出しますと、大体四十二・四歳ぐらいの実情でございます。一番若手がいる太平洋炭礦で三十七歳という現状になります。ですから、石炭産業を安定するという面からいきますと、若手労働者を石炭産業に導入するという政策が生まれることによって長期展望は出てくるのではなかろうか、こういうように思います。  それから企業合同の点でありますが、私どもは、四十三年以降、国営公社論を主張しています。これは長い間要求してまいりましたけれども、一顧だに与えられないというのが現状であります。そこで、たとえば公社案をいまここで主張する気持ちはございませんけれども企業合同の必要さについては、先ほど来申し上げておりますように、私企業の限界とともに、その私企業の限界を打破するのは新しい体制をつくることが必要だ、こう思います。  そういう点で二、三申し上げますと、たとえば鉱区の調整において閉山、首切りをしてきた過去の実績もございますので、鉱区調整もはかり得る体制にするということが大事だと思います。  それから、坑内では非常に近代化をして機械化をしていますから、機械の使用の問題あるいは機種の問題でありますけれども、各社ばらばらで機種が採用される、したがって、コストにも非常に違いが出てくる、こういう問題もありますので、企業炭鉱機器の統一などというのも必要でないか。  それから、最後でございますが、供給責任が当然あるわけですけれども、現実に四十六年度の実績が三千万トンをオーバーする供給実績があるのですけれども、この営業政策を見ましても、数少ない企業会社でありますけれども、やはり競合しているというのが現状であります。したがって、競合しないような管理体制をしく、このことは私ども望むところでありますので、そういうことで一日も早く実現をするという点は、企業側にも、現状でも強く要求をして話し合いをしているところであります。その点、考え方を申し上げておきます。
  17. 中川俊思

    ○中川(俊)委員 時間がございませんから、私は、いま申し上げたことを特に御検討いただきたいのですけれども、ここで希望条件を申し述べて、私のお尋ねは終わります。  いまの貯炭の方法でございますが、倉田さんのおっしゃったのは、三カ月ぐらいしか貯炭できないだろうということですが、私は、やはり検討すれば、これはまだ相当貯炭の方法はあると思うのです。そういう点、ひとつさらに検討をいただきたい。そういうことは金融面の圧迫等にも重なってきますが、それはまた別途に方法はあると思います。  それから、炭価の問題でございますが、石油対策石油と比較して必ずしも安くない。安くないどころか高いということでございますが、これらもまた、先ほどちょっと触れました企業合同その他合理化、いろいろな対策をお立てになることによってできるのじゃないだろうか、こういう点もひとつ御検討を願いたい。  それから、備蓄公団というような買い取り機関ですか、これらもそういうムードをひとつ業界で起こしていただいて、どういうふうにしたらその公団を設立した場合にペイしていけるかというようなことについても、皆さんは御専門家でございますから、そういう点についてさらに御検討をいただきたい。  私どもも、この石炭問題に対しましては、与野党に限らず対立的な意思はございません。この石炭委員会というものは、御承知のとおり、与野党非常な平和ムードでやっておりますから、特にみんなでこの問題を協力しなければいけないという気持ちは、私が先ほど述べたとおりでございまして、野党の諸君も同じでございますから、みんなで協力しましてこの問題には取り組みたいと思っておりますので、具体的な問題を御検討いただいて、そうしてまた御提示をいただく、それについて私どもも御協力申し上げる、こういう気持ちでおりますから、どうぞ御遠慮なく。皆さん方は、政府へ行かれるとわりあい遠慮されますが、私どもは遠慮しませんから。私どもは、選挙民といったら遠慮しますけれども、皆さんのほうにはひとつも遠慮しませんから。ですから、ひとつどんどん、私どものところまででもけっこうでございますから、遠慮のない御意見を今後出していただいて、そして緊密な連絡をはかっていきたい、このことを特にお願いを申し上げておきます。
  18. 鬼木勝利

    鬼木委員長 篠田弘作君。
  19. 篠田弘作

    ○篠田委員 関連をいたしまして、具体的な問題で二、三質問をいたします。  まず、石炭消費の問題ですが、現在のように、公害の問題あるいは労働力の減少の問題、あるいはまた消費者の好みの問題、そういったものだけで成り行きにまかしたのでは、石炭の消費は減る一方である、こういうふうに考えるわけです。  そこで、公害が非常にやかましい。一番大きな問題は公害と労働力の問題であると思いますが、その公害につきましても、いろいろなそれを減らすくふうあるいは設備、そういうものがなされなければならないと思います。しかし、これは、いま非常に弱り切った経営者だけにまかせるということは無理でありますが、政府企業側も、あるいは消費者、特に電力等におきまして、三位一体の協力による対策を何か政府として考えておるかどうか、これが一点であります。  第二点は、鉄道運賃値上げによりまして、先般百五十円上げました安定補給金というものがゼロになる。それでは石炭政策は、これはやったもやらぬも同じであります。そこで、鉄道運賃に対する通産省のいわゆる特別運賃の問題はどうなっておるか、あるいはまた、安定補給金増額というものがさらに考えられておるかどうか、石炭値上げの余地があるかないか、この三つについて第二問、これは政府側にお尋ねします。  それから、長い間の石炭問題の過程におきまして、ただいま中川委員からも申しました企業体系の合理化、いわゆる管理体制の一本化という問題がずいぶん長い間論じられまして、御承知のとおり、社会党からは炭鉱国営、また自民党の一部にも、九州一社、北海道一社あるいはまた常磐一社といったような案が出ましたが、これは私有財産との関係から議論が非常に沸騰いたしまして、日の目を見ずに終わったわけです。  そこで、私は、どちらかといいますと、企業管理の一本化には賛成なんでありますけれども、ここにまた一つの疑問を持っておるのであります。その疑問は、先般、社会党の石炭特別委の岡田君であるとか、あるいはまたその他の会派の方々にも質問したのでありますが、いまいろいろ三井とか三菱とかに分かれまして企業をやっておる、その企業経営者のいわゆるメンツと申しますか、競争心と申しますか、そういうものによってできるだけの努力をして、閉山をまずできるだけ少なくしようという企業側の努力が行なわれておるというふうに私は考えておる。ところが、企業が一本化されまして管理が独裁的になるということになると、能率の悪い炭鉱はもう直ちに閉鎖をされてしまうおそれがあるんじゃないか。言いかえれば、炭鉱閉鎖を早める心配がありはしないかどうか。この問題で私もずいぶん考えまして、野党の委員諸君の意見も聞いたわけでありますが、まとまった結論は得ることができなかった。これに対して企業側並びに組合側の御意見をお聞かせ願いたい、こう思うのです。
  20. 鬼木勝利

    鬼木委員長 速記をとめて。   〔速記中止〕
  21. 鬼木勝利

    鬼木委員長 速記を起こして。
  22. 倉田興人

    倉田参考人 企業の一本化と合理化問題でございますが、これは第四次の対策のときにも非常に問題になりました。そこで、組合のほうでは、国営国管というのを非常に希望されるし、業界のほうでは、まだやはりこれは私企業形態でやるべきだ。しかし、地域的に合同するとか、そういうようなことを、西独のルールでやっております共同体といったようなものもいろいろ参考にいたしまして研究もしました。しかし、結論を得ませんで、そこで、そういう体制の問題については、鉱業審議会に体制委員会というのをつくって、そこでひとつ検討をして、体制問題をどうすればいいかということをきめようではないかということで、これはずっと一昨年の四月以来体制委員会が開かれておるわけでございますが、まだ今日まで結論を得ておりません。体制のことを論じておる間にどんどんどんどんなだれ閉山で山はつぶれてしまって、体制どころの騒ぎじゃないじゃないか、当面の問題をどうするかということに追われているのが、いまの体制委員会現状でございます。私どもまだ、これに対してはどうするという結論を持っておりませんけれども、しかし、まあ少なくとも、もうこれだけ炭鉱も少なくなってまいりましたし、そしてまた、供給の責任を果たしていくという面からいたしましても、共同機関的な、共同体的なものを考えていくということが必要ではないか。対策に対して最もメリットのある体制をとっていこうという考え方でおります。
  23. 植田勲

    植田参考人 企業合同につきましてお答えをしますが、私は、その地域別合同を考えて数年前いろいろやったことがあるのです。非常にこれはむずかしゅうございまして、日の目を見なかったのですが、能率の問題ですね、こっちの炭鉱、こっちの炭鉱、この炭鉱という、いろいろ能率が悪いとかいいとかいう問題もありますし、また組合が、こっちは別の組合、こっちは炭労とか、全炭鉱とか中立とか、いろいろございまして、非常に議論沸騰して、これも反対だというようなことでできなかったのです。そういう時代がございまして、なかなか地域別の合同にしても非常にむずかしかったということでございました。それで、現在は、中小炭鉱では非常に炭鉱数が少のうございまして、中小炭鉱だけでは企業合同というのは考えられぬ点じゃないかと思います。  以上でございます。
  24. 里谷和夫

    里谷参考人 私ども、四十三年の第四次政策ができる際にも、現状私企業体制では石炭産業全体の安定というのは期せられないという意味で、国有公社の提言をいたしたわけです。で、結論は何かといいますと、少なくとも株式会社を経営する者は、その責任において産業を育成すべきである、こういう結論でございまして、結果的には経済性の追求ということで、政府の補助は行なうけれども、限界がある場合はその企業は自決をしなさいというのが、いまの四次政策の結論であります。  いろいろ政府とも話をしているのですが、石炭トン数の位置づけのことはさておくにいたしまして、私どもの念願としていましたのは、昭和四十九年の三月末までで三千六百万トンを保持する、そういう体制にしよう、そういう財政補助をしよう、こういうように聞いていますし、その実現のためにわれわれも努力してまいったのですが、結果は、四十六年度、今年の三月末を見ましても、三千万トンをすでに割るというような実情であります。  この結論は何かといいますと、先ほども申し上げましたように、企業が競合し合う実情の中で産業全体の安定をはかるということはきわめて無理だ、私どもが主張してきたことがいまになっても脈々と生きているのではないかと思っています。そういう面では、思想を乗り越えて、炭鉱労働者の稼働条件というのには差がないわけでありますから、補助やあるいは産業そのものの受け皿の問題について、すみやかにいまの限界を越えるためには、やはり企業統台し、新しい、私どもの要求をする国営公社の実現は不可能にいたしましても、せめて国管、国営の中における企業統合の実現をはかることのほうが大事ではないのか、この主張についてはいまも変わらないところであります。  それから、二つ目で低能率炭鉱云々の問題を主張されているのですが、現状の各炭鉱の中では、低能率、高コストの山が確かにございます。しかしながら、これを維持するために私ども労働者が何をしているかといいますと、将来展望を必ずみずからの手でつかみ得る、こういう前提企業といろいろ話をしまして、いままで賃金あるいは福利施設に及ぶいろいろの協定がございますが、これを危機突破をするという意味で、私ども労働条件をあえて切り下げても炭鉱を維持しよう、そういう面で非常にいま企業と話し合いをしているわけであります。ですから、経済的に追求をしてまいりますと、低能率あるいは高コストの山は切り捨てなければならぬという意見が非常に多いのでありますけれども、いまの石炭産業生産を安定させ、現状体制を保持するということになりますと、ここに私どもは補助の施策重点化をしなければならぬ。ですから、平均で各炭鉱の補助を行なっている制度をやめて、個別炭鉱重点的な施策をすることが、いまの低能率あるいは高コストの山を救うものではないのか、こういうことで企業とも話をしていますし、政府にもこの五次政策の中ではそういう分厚い補助をしてもらって、どこの炭鉱でも、能率でもコストの面でも同列に並び得る炭鉱の運営をするようにお願いをしている。その点をひとつとくと御了承いただきたいと思う次第であります。
  25. 鬼木勝利

    鬼木委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  26. 鬼木勝利

    鬼木委員長 速記を起こして。
  27. 篠田弘作

    ○篠田委員 いま私の質問は、企業側と組合側大体一人一人のお話を承りたいという気持で質問したのでありまして、両方から聞きましたから、私はもう大体了承いたします。  ありがとうございました。
  28. 鬼木勝利

    鬼木委員長 藏内修治君。
  29. 藏内修治

    ○藏内委員 委員長及び野党の委員の方々に御了解をいただいて、ごく簡単に関連質問をして済ましたいと思います。  いろいろ先輩議員からもお話がございましたので、私はごく簡単に問題だけを伺いたいと思います。  わが国石炭政策については、やがて第五次対策決定をされようという寸前まで来ているわけですが、これによって今後展開されていく石炭対策、将来なおわが国に残されておる埋蔵炭量は大体二百億トンぐらいあるといわれておるのですが、原料炭一般炭合わして三千万トン前後の今日の出炭ベースで掘っていくといたしますと、二百億トンの中の採算ベースに乗る可採炭量がどのくらいあるかは別として、相当年数掘れるわけです。そこで、これを掘っていくについては、まあ皆さま方からきょういろいろと労使双方の御要望がございますが、いずれにしても、その中で共通しておることは、石炭位置づけが第一であり、その位置づけということは、具体的には、総合エネルギーの中に占めるべき石炭のトン数、どのくらいのトン数を掘っていくかという量、及びこの量を確保するためのあらゆる政府施策、こういうものが裏づけとして必要なんだ、まあ概念的にはそういうことです。それが完備されたことが、すなわち位置づけが行なわれたということになるわけでございますが、この位置づけをやるについて、いまいろいろと行なわれておる、あるいは皆さん方が要望されておるこれらの対策をやっていくについて、先ほども労使双方からの御要望の中で、石炭石油特別会計の中の、要するに重油関税の中の十二分の十だけは絶対確保しろと言われましたが、いま十二分の十の比率において石炭対策にこの金が使われておる、予算が配付されておるが、これでもろくなことはできていない。これを皆さん方の御要望のとおりのものを完備していこうとする場合に、財源として、今後いわゆる石炭位置づけ確立するということは私どもも要望しておるところでありますが、これをやっていくについて、財源が十二分の十で、これさえ確保すればこれでやっていけるとお考えなのであるかどうか、ひとつこれは労使、倉田会長及び里谷さんでけっこうでございますが、里谷さんが組合側のほうを代表してひとりお答えを願いたい。
  30. 倉田興人

    倉田参考人 特別会計の財源の足りるか足りないかという問題でございますが、これは私ども十二分の十を従来石炭特別会計につけていただきまして、それでもって、どちらかというといままでスクラップ・アンド・ビルドということで、スクラップのほうも非常に私どものいううしろ向きですね、この方面に半分以上、四十六年度の予算で申しましても、千一億の中の四百九十六億というのが、前向きの、われわれの維持していこう、再建していこうという側につけられておる金額でございまして、あとの五四%というものは、これはまあ私どもからいえばうしろ向きのほうにつけられておるというような感じも持っておりますので、何とか生きていく側の予算に多くをつけていただくならば、この十二分の十の財源で生きていかれるのではないか、こう考えております。
  31. 里谷和夫

    里谷参考人 私どもも、けさほどの要望で申し上げましたように、十二分の十の補助をすること、これも五年間と、こういうふうに申し上げておりますので、この十二分の十を拡大をするという点については、いろいろ検討しましたが、現状政策上では無理であろう、したがって、十二分の十の財源保持について長期に確保していただきたい、こういうふうに申しております。  それから、足りるか足りないかという問題でありますと、御指摘のとおりでありまして、そういう方面からいいますと、この中身の運営になると思います。一事を申し上げますと、昭和四十六年度の事業計画のスクラップは三百六十万トンでございましたが、結果的には七百万トンをオーバーするというような閉山資金の流用ということに相なってまいります。したがって、いま倉田社長が申し上げましたように、前向きの政策よりも、私どもは、スクラップ・アンド・スクラップの資金が使われているのではないか、スクラップ・アンド・ビルドというのであれば、明確にビルドについての財源を確保することのほうが大事であって、スクラップに金を投資するということを改めていただきたい、こういう議論を政府とも企業とも通じて行なっているところであります。
  32. 藏内修治

    ○藏内委員 いまお話しのとおり、とにかく一千一億しか特会で石炭勘定のほうはないわけでございますが、これをとにかくこの中の配分及びこの中の財政の運用次第で前向きの資金がもっと使えるのじゃないか、これは私どもも痛感をいたしております。やはりうしろ向きの資金が大きな石炭政策上の圧迫になっておる、そういうことをもっと改善していくということは私ども同感でございまして、今後はそういう点の努力はしていこうと私ども思います。  さらにその上に、先ほども組合側のどなただったか、ちょっと失礼してお名前を忘れましたが、御発言の中に、要するに、一般炭、特に電力用炭石炭を多量に政策需要としてつけていくという場合には、これによって発生する公害の防除のための資金というものが相当要る。こういうものを将来の政策として考える場合には、それを何らか助成をしろという御意見だとさつき私は拝聴したのですが、そういう措置を、かりに石炭特会の勘定の中にそういうものが割り込んでくるようなおそれがあれば、石炭政策需要をつけるための反対給付というとおかしいですが、そういうこともしてやろうという際に、その資金は特会の中から支出するんだというような状態が出てきますと、ますますむずかしい石炭、要するに、前向きの石炭政策の資金というものを圧迫してくる要素がそこにも出てくるという心配が私は実はあります。  それはそれとして、もう一点だけ、特にこれは組合側の方にお聞きいたしたいのですが、職員組合の代表の方、全炭、炭労、いずれでもけっこうですが、いまのようなこういう状態、特に石炭のような固型の燃料エネルギーから石油に変わり、液体のエネルギーに変わり、さらに将来原子力というようなぐあいに変わっていく。これはやはり一つの文明の進歩の結果であり、時代の趨勢であろうと思います。そういう過程の中にあって、いかに石炭対策、特に労働者のための対策というものが充実されていっても、やはり産業としての労働環境が基本的に改善されていかないと、私は、労働者というものは、非常に危険というか、こういう特に地下労働という職場にはだんだんだんだん傾向として来ないのじゃないか。いまのように、特に労働条件を切り下げても経営に協力しておるとおっしゃいました。これはもう、ぼくらから見ましても、組合のほうあるいは労働者の方々も非常な努力をして石炭産業の維持ということに貢献されておることは、私どもも高く評価をいたします。いたしますが、とにかくほかの閉山炭鉱から労働力を持ってこなければ、新規労働力が供給できないような現状、これと、いまの時代の大きな流れというものを見ていって、この石炭産業に今後安定的な新規労働力が確保されるについては、私は、やはりもう職場としての労働環境が基本的に改善されたものでなければ、従来のイメージがつきまとったようないわゆる炭鉱という職場ではなかなか人は来ない。これはやはり単に給料の問題だけではないような気が私はするのであります。そういう点についての御意見を、里谷さんと、もう一人、職員組合の方でけっこうでありますが、お聞かせ願いたい。
  33. 里谷和夫

    里谷参考人 確かに、私ども産業不安定な要素がございますので、いろいろの方針の中で協議をしますが、第一の原因として出していますのは、相次ぐ閉山あるいは首切りということになりますし、産業別的に賃金水準を見ましても、中位を下回るというような労働実態でございます。そういう面から判断しますと、労働者としての条件確保の点では、閉山もおそれないで要求していこうではないか、一時期こういう決意をしておるのでございます。これは労働者みずからの産業放棄につながるのではないのかということでいろいろ異論もあるのですけれども、これはやはり労働者の立場として企業に向かう決意として主張しようではないか、こういう統一をしているところであります。  そこで、先ほど来も申し上げておるのですけれども、諸外国の事情から見まして、ヨーロッパの事情は話しましたから省略をいたしますが、たとえば、アメリカで昨年のニクソン・ドクトリンを見ましても、国内のエネルギーを国外に出さないために政策を立てなければならぬということで、一九七八年に向けてのエネルギー改造をしよう、そのときの重点は、やはり国内にある石炭資源を国内で消費をする、この固型燃料を液体燃料にかえていこうではないか、そういうところに重点を置いて施策をされているように聞いています。そういう実情があるのですが、現状では、先ほど来申し上げておりますように、鉄綱の理由あるいは八電力が示しますような理由で需要供給のバランスがくずれるものですから、私は、単純に閉山が行なわれる、首切りが行なわれるのだ、こういうように全体が受けとめていると思うので、ですから、先ほども言いましたように、三百六十万トンのスクラップということで策定をされても、それが七百万トンになる。こうなりますと、政策そのものが持っている内容、あるいは企業が日常実施をしている、あるいは実施をしなければならぬ協定の不履行、こういう問題もございますものですから、たいへんな不信感があると思うのであります。この不信感を除去する努力を続けていけば、先ほど来申し上げていますように、十五年の石炭政策を立ててもこの実現は不可能ではない、私はこういうように考えています。しかもなお、私ども石炭産業の安定を希求しながら、賃金の、いわゆる労働条件の向上を言っていますと、産業そのものがつぶれるのに、どこにその労働条件を上げる原資があるのだ、こういうようなことでたいへんなおしかりや御批判をいただくのでありますけれども、安定をはかるとすれば、そのことが大前提であると思うわけであります。  したがって、職場改善の話にも付言をされましたが、最近の保安を守るという意味では、十年前の保安状況から判断をいたしますと、非常に大幅に向上をいたしています。したがって、まだ完全に納得のいく職場改善だとは思っていませんし、状況だとは思っていませんが、そういう統計的な実績その他から判断をすると、職場改善あるいは福利改善は十二分にされている。十二分という表現は別でありますけれども、十年前から比べれば、もっと端的に言いますと、他産業並みとはいきませんけれども、拡充改善をされている、こういうふうに判断をしております。
  34. 里谷和夫

    木崎参考人 里谷参考人とちょっとニュアンスが違いますが、確かに改善はされておりますが、では世間並みに改善されているかということになると、そうでございませんし、先生の御主張どおりに、単に賃金を上げても、労働環境が悪ければ来ないのじゃないのかという御質問につきましては、まさにそのとおりでありますが、労働条件を引き上げるということが一番効果があるということは言えると思います。  それからなお、労働環境をよくするように、特に保安面についてよくするように、また、石炭についてビジョンが欠けているという点もあるわけでありますけれども石炭に関するビジョンを確立していただくと同時に、特に保安面についての労働環境をよくするということについては、われわれこれからも努力しなければなりませんけれども、それが根本的に解決をされたと仮定いたしましても、何といいましても、地下労働という特殊な労働でございますから、昭和二十年代のいわゆる労働力が余っていた時代の産業構造と、四十年代の労働力が不足している産業構造とでは、明らかに客観情勢が違う。その面では、いろいろな対策を講ずることによって相当程度の求人もできるであろうし、それから流出も防ぐことが可能であると考えますけれども、しかし、それで一〇〇%解決するかということになりますと、私はやや自信がございません。
  35. 藏内修治

    ○藏内委員 ありがとうございました。終わります。
  36. 鬼木勝利

    鬼木委員長 岡田利春君。
  37. 岡田利春

    ○岡田委員 私は、今日のわが国石炭産業現状は、いわば公害、環境破壊、こういうことがいま経済社会で起きているわけですが、全くそういう状態であるのだと思うわけであります。したがって、基本的には、なりふりかまわず高度経済成長政策、さらにまた、腰がふらついているわが国エネルギー政策、こういうところに大きな原因があることをわれわれは見落としてはならないと思います。しかし、今日までの石炭政策を振り返ってみると、きわめて不正確であり、また不徹底であった、いわば虚構の上に石炭対策が立てられてきたという結果が、今日の石炭危機を招いている、このように申し上げなければならないと思うわけです。  そこで、いま参考人から石炭位置づけについて述べられたわけです。しかし、今日の産炭構造の現状は、それぞれ参考人の方々がきわめてきびしく認識されておると思います。そこで、時間がありませんから、石炭位置づけというが、第五次政策展望して五年間、これからの北炭新鉱の出炭が実現してまいりますし、同時に、有明の開発を進める、これも当然五年間のうちには出炭するわけですから、これを含んで、位置づけは数字で一体何千何万トンを希望されておるのか、その数字だけをひとつ端的に、それぞれ一人一人の参考人から意見をお聞きしたいと思います。
  38. 倉田興人

    倉田参考人 私ども日本石炭協会といたしましては、五十年度二千二百万トンという程度のものではないかと考えております。
  39. 植田勲

    植田参考人 私は、現在程度の出炭を確保したいと思っております。
  40. 里谷和夫

    里谷参考人 先ほど来申し上げておりますように、諸対策が当然生かされてこなければならぬと思います。そういう前提で、現状維持の出炭を確保するのがわれわれの任務だ、こういうように思っております。
  41. 道下一治

    道下参考人 第五次政策のいわゆる補強の内容とも関連がありましょうけれども、御指摘がありまたいわゆる新鉱開発、こういうものを含めて二千七百万トン台ですね、これだけのものは、ぜひ位置づけとして確保していただきたい、このように思います。
  42. 里谷和夫

    木崎参考人 われわれの組合といたしましては、位置づけの数字を明確に言う場合のバックデータを有しておりません。また、バックデータがあったといたしましても、それから割り出して何千万トンという明確な数字をここで申し上げるような能力はございません。したがいまして、先ほど意見の中で申し上げましたように、私たちといたしましては、現状程度の出炭量を維持していただきたい、すなわち、来年度二千七百五十万トンですが、その程度の出炭量を維持していただきたいという願いであります。
  43. 岡田利春

    ○岡田委員 石炭産業は、たとえばイギリス、フランス、ドイツのように国有化もしくは統一体制であっても、やはりある程度のスクラップ・アンド・ビルドというものは避けられないわけです。しかし、ヨーロッパの場合には、ようやく石炭生産規模についてはむしろ安定化する、こういう方向に入ってきておるのがヨーロッパの趨勢でありますし、わが国と出炭規模の似ているフランスにおいても、五年後で二千五百万トンを確保する、これがフランスの石炭公社、政府の方針であるわけです。私は、そういうところにわれわれの視点を置いてこれからの石炭政策を組み立てるべきだという意見を持っておることを、この機会につけ加えておきたいと思います。  次に、倉田参考人にお伺いいたしたいのでありますが、この陳述要旨の中に、完全肩がわりの問題について触れられておるわけです。問題は、一次肩がわり、二次肩がわりが行なわれているわけですが、急激な閉山によってそれをかぶった、借金を肩がわりした、一般国民は、これはもうくれてやったもの、こう思っておるわけです。しかし、制度はそうなっていないわけです。ただわれわれが議論する場合に、完全肩がわりすれば、食い逃げするのではなかろうか、むしろそのために閉山が促進されるのではないか、こういう意見がおそらく事務当局内部にも、また、われわれ委員内部にもあることは事実であります。そういう意味で、この完全肩がわりという場合に、一定継続をする時点まで完全肩がわりを解除するが、しかし、では閉山をする場合にはどうなのか、こういう問題が実は残って、非常にむずかしいわけですが、何か完全肩がわりについて具体的な、詰められた、掘り下げた御意見をお持ちかどうか。それと同時に、松島、常磐あるいは住友、こういう閉山がその後起きて、肩がわりが起きて、かぶっている山をそれぞれもし安定させるという場合には、何らかの思い切った措置をしなければこれは安定しないのではないか、こう考えるのでありますが、この点についての意見を承っておきたいと思います。
  44. 倉田興人

    倉田参考人 いまの私どもの主張しております完全肩がわり、これはどうもいまのままで閉山をいたしますと、それが同じ系統、同じ社の残存しておる炭鉱のほうにまた非常な債務が残っていくというようなことで、いわゆるなだれ閉山といいますか、そういう原因になっていきますので、これは第一次の肩がわりは千億していただきました。その中の四年間はもう過ぎておりますから、ここで生き残っておる山についてはもう確定債務としていただいて、そして担保をはずしていただけば、第一次千億、第二次八百五十億に対する担保は二千億からの担保がありますが、もっとも、この担保が全部すぐ役に立つというわけじゃございませんが、少なくとも四百億程度のものは有効にすぐ役に立つという担保でございますから、これをはずしていただくということによって金融がついていくということで、根本的には、収支の悪化、赤字を消していただく安定補給金を上げていただくというようなことでなくちゃなりませんけれども、過渡的な応急策としては、当面の金融をつけていくということにおいて、担保をはずしていただくことが、閉山をしないで維持できていくという、そういう方面のことからお願いをしておるわけです。具体的に、じゃ食い逃げするのをどういう制限をつけるかということについては、私どもまだ的確な案を持っているわけじゃございませんけれども、相対的にいま申し上げて、やはり何かここにメカニズムが必要であるということは感じております。いま申し上げる具体案は持っておりません。
  45. 岡田利春

    ○岡田委員 全参考人から述べられた中で、需要確保ということが今回ほどそろって出されたことはないわけです。いままで国会でずいぶん参考人を呼びましたけれども生産者もしくは労働団体から今度の場合ほど需要問題というのが出されたことはないわけです。私はいずれこれは政府とも議論を詰めるわけですが、非常にふしぎでならないわけです。原料炭の自由化はしましたけれども、これは強粘結に限るということで、しかもその前提は、わが国原料炭は消化をするという前提になおかつ立っている。あとは別に自由化しているわけじゃないわけですから、割り当て制度なんですから、それで余ってたけないということは、従来の政策基本を放棄することになる。私は非常に重大な問題だと思うわけです。にかかわらず、今日すでに体制委員会の中でも、五十年千五百万トンだとか、鉄鋼は五百万トンだとか、こういうことが議論されて、その問題が非常に大きな話題になっていることについて、非常に、従来の政策を放棄した上に議論しているのではなかろうか、こういう感じを私は第一に持つわけです。あるいは電力用炭につきましても、当初の四次政策というのは、昭和四十八年度で三千六百万トン程度ということなんですから、ある程度環境の変化はあったとしても、この点について急激に需要問題がさらに出てきておるということについて、また従来の政策延長を放棄しておる、こう言わざるを得ないのではないかと私は思うんです。私は、むしろそういう意味の積極的な参考人意見が実はほしかったという感じがいたします。  そこで、需要確保というのは、一つは、石炭側の供給が非常に不安定だということが特に一般炭についてはあげられておりますし、原料炭の場合でもそういうことが言われているわけです。こういう声をそのままにしておくということは、ここまで立たされている石炭産業の側として、やはり重大にこれに対応する姿勢を考えなければならぬのではないか。しかもそのことは、単に一手買い取り機関が設けられればそれで事が済むという問題ではないのではないか。買い取り機関というのは、生産したものを買うのであって、生産ができなければ買えないわけですから、だからやはり総合的なものなんですね、安定供給というのは。そういう視点に立って考えなければ、需要供給に対しても胸を張ってものを言うことができないのではないか。私は、そういう意味で、どうしても今日体制のあり方についてそれぞれの関係者が重大な決意をすべきだというのが私の持論であります。たとえば、いま政府政策を全部げたをはずせば、日本炭鉱は全部つぶれるわけですよ。やっていける炭鉱というものはおそらくないと言って過言ではないと思うのですね。やっても一年か二年でとにかくつぶれる。つぶれれば、これは価値は無価値ですよ。ゼロですよ。あと土地とかスクラップを売るだけであって、それは無価値になるわけですから、やはりそういうぎりぎりの気持ちの上に立って、今日石炭産業に対する期待、歴史的に間違いのない使命を果たさせようと考えておる多くの国民、あるいはまた地域社会で今日の過密過疎の中で考えている地域住民の声、こういうものをやはりわれわれはすなおに受けて、いまここでわれわれは裸になってその期待にこたえる、こういう姿勢確立されなければならないのではないか、こう思うわけです。私は、そういう点について、石炭協会としても体制問題についていろいろ議論されておりまますけれども、どの程度まで議論されておるかということについて伺っておきたいと思います。  それと同時に、この際委員長に申し上げますけれども、当委員会としても、われわれはこう考えるというのはきょう大体聞きましたから、こう考えるというのはあまり要らないでしょう。われわれはこうするから、国にこうしてほしいというものを、一度文書でこれはそれぞれ関係団体から本委員会に提出をしてもらう、これは非常にこの段階では重要だと思うわけです。この点は各委員の同意を得て、そういう、こうするからこうしてほしいというものを、どんぴしゃり、ひとつ本委員会に出していただくようにこれはお取り計らいを願いたい。これは委員長に対する要望もつけて、倉田参考人の御意見を承っておきたいと思います。
  46. 倉田興人

    倉田参考人 私ども、体制の問題については、先ほどお話し申し上げましたように、体制委員会というものがあって、それでずっと検討を進めていくということで、それが検討が一応できますればそれに対する対策等もできてくるというかっこうであろうと思っております。ですから、私ども、いまおっしゃいますように、こうするからこうしてくれということを申すべきかどうかについては、まだ私ども業界では結論を得ておりません。ただ、いま体制委員会でそうやっておる、そして対策も、こういうことでおよその全貌が出てきた、そういう場合において、業界としては最もそれに対して効果のあがるような体制をひとつとっていくということについては、各社の利害を超越して、そして一本になって応じていくという態度だけはきめております。
  47. 岡田利春

    ○岡田委員 私は、あまり遠慮をする必要はないと思うのですよ。いろいろな客観情勢、これは指数で出てくるわけですから、その換算数字を使って、ドイツ並びにフランス、イギリス、ヨーロッパ三国が行なっておる政策はやってもらわなければいかぬと、むしろ、油の値段からいえば、それ以上プラスした考え方、あるいはわが国の経済成長なりエネルギーの需要動向を考えて、むしろプラスしたぐらいのことを述べることは、石炭産業をやっていくために当然の権利じゃないか、私はこういう気持ちを持っているわけです。大体、第一次答申だって、重油消費税を千円かけるという答申なんですよ。それをいつの間にか、これはいろいろ需要供給の関係があって、関税一〇%にしちゃったんです。イギリスだってトン二千五百円でしょう。今度は二千円でしょう。ドイツだって二千五百円で、今度は二年間で五百円ずつ下げるといいますけれども、灯油にまで二千円かけているんですよ。そしてなおかつ一般炭は五〇%石炭を引き取らして、しかもこの価格差については補給するというのが政策なわけでしょう。私はきょう参考人意見を聞いて、そういう点についてあまり具体的な意見が聞けなかったということをむしろ非常に残念に思うわけです。私は、そういう組み立て方をすれば、石炭産業に従事しておる者として、やはり主体的な、ここまではやってもらわなければならない、そのために、わが国の体質として、いわば国がどうささえていくのかという問題、あるいはユーザーが非常に少なくなってきている、これに対してどうこたえていくのか——四十五年には総発電量の一〇%が石炭でありますけれども、もう今年あたりは八%を切るわけですよ。五年後には、あの数字でいけば三%か四%にしかならないのですよ。そういう点について、私は特に先ほど委員長に申し上げましたから、おそらくそういう要請が出ると思いますので、きょうは、そういう、われわれはこう考えて、かくしてほしい、そうしたらかくやるというものを出してもらうということを申し上げて、私の質問を終わっておきたいと思います。
  48. 鬼木勝利

    鬼木委員長 ただいまの岡田君の御要望の件につきましては、理事会で協議いたしたいと思いますので、何とぞ御丁承を願いたいと思います。  細谷治嘉君。
  49. 細谷治嘉

    ○細谷委員 時間がありませんから、簡単に……。  若干重複いたしますけれども、けさの新聞を読みますと、電力会社が、公害を理由に、もう石炭を燃さないのだ、こういう記事が大々的に出ております。せんだって、イギリスで炭鉱のストライキがあった、内閣が危殆に瀕する、ヒース首相はもはややめる寸前までいった。こういうことを考えまして、私は、西欧の石炭政策日本石炭政策というのは、その基本姿勢においてずいぶん違うものだ、こういう印象を持っております。そういう印象を前提として、先ほど来参考人の皆さん方の御意見を聞いたわけでありますけれども、また、私どもが産炭地等へ行きまして一番要望される点は、何といっても、石炭位置づけしてくれ、そうすれば安定するのだ、こういうようにとれるようなことばを聞くわけであります。そしてその位置づけということについては、あげて、近く出るであろう鉱業審議会の答申待ち、どうもこういう姿勢ではないか。先ほど来五人の参考人の御意見を聞いたわけで、いま岡田委員からその点指摘があったのでありますけれども、体制問題というのは、数年前この委員会で問題になって、そしてその問題が審議会で検討されておる。今度が最後、今度が最後というわけで、四回の答申というのは作文であったのですね。五度目の最後答申というものに皆さんは期待しているようでありますけれども、私は、いままでの経緯からいって、これにすべてを期待することも困難ではないか、こう思うのですよ。その一番大きな問題は、やはり日本全体が、石炭に取り組む姿勢というものが、スクラップ・アンド・スクラップ、ビルドなんというのはことばだけで、スクラップ・アンド・スクラップ、こういうところから来ているのではないか。お聞きいたしますと、いまも岡田委員から指摘がありましたように、ほんとうのところはもう答申待ちであって、それにすべてをかけている。これが最後答申、こういう考えで、みずからのものをどうもやはりお持ちになっていないのじゃないか。何べん聞いても同じことしか言っていない、こういうことだと思うのですね。でありますから、いま岡田委員から、それぞれの方々がこの段階においてどう石炭を守っていくか——たとえば、言ってみますと、現在の出炭量を確保していただきたい、ある人は二千万トンと言った、ある人は二千七百万トンと言った、ある人は、よくきまっておらぬけれども二千七百五十万トンぐらいです、こういうきわめて消極的な姿勢にあると思うのであります。ですから、岡田委員のように、各人が、こうすれば現状を守れるのだ、あるいは総合エネルギーの中における石炭の役割りというのはこうならなければならぬのだ、こういう点をやはり検討をしていただく。同時に、労使の代表の方が来ておるのですから、この段階においてもっと労使で積極的に話を詰めていって、石炭産業をどう守るか、こういうことについて積極的に取り組む必要があるのではないかということを、お話を聞き質疑を通じて私は痛感いたしました。  いろんなことをお聞きしたいのでありますけれども、そういうことで、いわゆる五次答申をただ指をくわえて待っていて、そうしてそういう受動的な姿勢で対応していこうということなら、これはもう、五年五年ということばがずいぶん出ましたけれども、五年後にはほとんどゼロになってしまうのじゃないかという感じがいたします。そういう点で、やはり労使がこの石炭危機というものをどう乗り切るかということについて、ある意味では審議会をリードしていくという姿勢が必要ではないか、こういうことを痛感しました。  そこで、ひとつ経営者側なりあるいは労働側のほうに、私の意見というのは少しむちゃなのかどうか、この点についてお答えいただけば幸いです。
  50. 倉田興人

    倉田参考人 こうしてくれ、ああしてくれということについては、もうすでに先ほども申し上げたわけですが、いま私ども四十七年に二千七百五十万トンの生産をしていくということで五次段階の数字もきまったわけですが、それも、私のほうといたしましては、最初申し上げましたように、四十五年度においてすでに平均トン当たり三百数十円の赤字を出しておる。そうして四十六年度の春闘においてベースアップをしました。しかし、原料炭については四月からトン五百円値上げをしていただいた。原料炭の占める割合からいいますと半数を切るわけでありますが、その五百円の値上げでもってベースアップをカバーすることができておりません。ですから、少なくともそれでトン百円ぐらいの赤字を重ねておりますので、四百数十円の赤字を四十六年も続けておるということでございます。そういうことで、ただ、四月から今度安定補給金を百五十円助成してやるということで、それでは足りませんということを申しておるところに、さっき申し上げましたように、それが全部鉄道運賃値上げに吹っ飛んでいくというようなことになりますと、何もこれはカバーしていただいたということにはならないのであります。ですから、もう四十七年度の予算では石炭生産していくということも困難になりますが、何とかここに措置を講じてもらいたいということで申し上げているのが、安定補給金を上げてください、肩がわりを確定債務にしてください、こういうことをずっと申し上げておる。それを聞いていただきますならば、これは金融もつきますし、また赤字も消えていきます。ですけれども、申し上げたからというのですぐそれができるというわけじゃございませんので、困っておる次第でございます。
  51. 里谷和夫

    里谷参考人 岡田先生や、いま御指摘をいただきました細谷先生の御意見に対しまして、労側側として弱腰でないのか、こういう御指摘を受けましたが、私ども目一ぱい、現状を打破するために、何とか私どもの主張を大方の方々の御賛同を得て実現をしてみたいものだ、こういうことで努力をいたしておる次第であります。したがって、もっと大胆に労働側の意見を主張したらどうだ、こういう観念でありますが、いささかも私どもの主張点について妥協しようとは思っていませんが、私どもの要求理念を各方面に、いわゆる政府あるいは企業に対して提出をして議論をするのでありますけれども、その要求の実現というのはほんとうに大かたの意見を受けられることができるのだろうか、こういう可能性の問題が非常に多く出てくるわけであります。私どもからいいますと、力不足かもしれませんけれども、そういう障害物が非常に多い。労働側の意見がすなおにいれられるという時代になっているのだろうか、こういう点も実は私どもの指導の力不足を自己批判しているところであります。  そこで、御指摘のとおりでありますが、産炭地に行くと、位置づけを行なえ、これは何なんだ、こういうことでありますが、ことばをかえて言いますと、位置づけというのは、閉山と首切りのない数字を確定しなさい、一言に言って、そういうことだと思うのです。ですから、二点目で問題になります五次政策でいうと最後のものだ、こういうように言われると思うのでありますが、私どもの観念から言いますと、いま一千五百万トンや二千万トンの出炭状況を続けていく場合に、産業政策としていまのような政策助成がついていくだろうか、こういう総合エネルギーの位置の中から判断をいたしますと、きわめて希少価値になって、これはやはり切り捨て論議が先に出てきて、石炭産業を安定し将来拡大生産を可能にするという体制を否定をするものではないのか、こういうように思っているわけです。ですから、私どもは、きわめて抽象的ではあったかもしれませんけれども現状を保持し生産を将来拡大し得る体制にしていただきたい、こういう要求をしていることは事実でありますので、そういう面で私どもの主張をいたしますし、先生方の御理解もいただきまして御援助をいただきたいと思うのであります。  二点目の体制委員会の問題でありますが、ざっくばらんにひとつ衣を着せないで所感を述べたいと思うわけでありますが、いま体制委員会で議論をいたしています。中立の委員先生方がおりまして、体制委員会の中に小委員会設置をしていろいろ協議を続けているのであります。それが小委員会の方向ということで体制委員会に提示をされましたのが、需要業界の試算と称する千五百五十一万トンであります。その内容からいいますと、けさの朝日新聞の指摘がありましたが、私どもは、昭和四十八年度になれば九州における電力使用はゼロであり、四九年、五十年になって北海道の北電が一般炭を消費する、そういう数字も実は把握をしているのであります。そういう面で事務当局ともいろいろ話をしているのでありますが、第一点の問題といたしましては、対策財源の確保をどこに位置づけをするかということがいまたいへんなことである、そういうことで主張をされています。中身をもっと申し上げますと、一千七百万トンから一千八百万トンというのが、通産事務当局が判断し得る出炭数量であるということで言われているのであります。私どもの反論として出していますのは、第一義には財政確保をすることが先決であって、その中から石炭位置づけを明確にするという議論を主張いたしていますが、いまの協議の中では、どうしても石炭のいわゆる出炭トン数のほうが大きく叫ばれていまして、ここの確定がない限り対策の次元に入っていかれない、こういう問題があるわけです。ですから、体制委員会を通じての議論といたしましては、先生の指摘のように、リードをするのが当然ではないかと言われますけれども需要供給のいまの議論の中からいえば、この厚い壁をどうやって破るのだろうか。したがって、私どもは、この三十一日の結論が出れば、みずからがみずからの体制を決する以外にない、こういう悲壮感まで議論をされているという現状でありますので、けさほど要望いたしましたように、三十一日の審議会では、二点の要望をいたしましたが、諸先生の御協力もいただいてこの壁を打破することができるようにという陳述になっていますので、その点を御理解いただきたいと思うわけであります。
  52. 細谷治嘉

    ○細谷委員 終わります。
  53. 鬼木勝利

    鬼木委員長 相沢武彦君。
  54. 相沢武彦

    ○相沢委員 時間がございませんので、きわめて簡単に、倉田さん、それから里谷さん、木崎さんに一問ずつお伺いすることにいたします。  最初に倉田さんにお伺いしますが、今後の五次政策私企業救済策だけでは許されなくなる、こう思うわけであります。そこでまた石炭企業内でも、私企業の限界に達したということをおっしゃるような段階になってきた、私はこう認識していますが、しかし、きょうの陳述を見ますと、安定補給金増額とか、あるいは完全肩がわりとか、あるいは政策需要確保してほしい、こういうことが出ているのですが、倉田さんの場合、こういったことだけ、いわゆる資金面、それから需要確保さえできれば、この体制問題には手を触れずともやっていけるというお考えなのか、やはり何とか体制問題には結論を今回は出さなければならないとお考えなのか、その点を伺いたいことと、先ほど、前の御答弁ありましたけれども、実際体制委員会では非常に難航しているのだ、むずかしいのです、もうほとんど結論はなかなか出ませんというような、あきらめたような、そういう感じで私受け取ったのですが、そうならば、国策上この石炭問題を国でどうするかということを考えて、通産当局あるいはこの衆議院の石特委員会で各党から超党派で委員を出して、今後の石炭の体制はいかにあるべきかということに対する統一見解がもしか出た場合、石炭業界としては、それに従って国策のために石炭を掘り出すということを最後まで使命を貫こうと、こういうような姿勢で臨まれるかどうか、この点についてお伺いいたします。
  55. 倉田興人

    倉田参考人 体制の問題につきましては、これは私企業形態でやるか、あるいは国営の形態でやるか、あるいは国管式の形態でやるかというような、体制がいろいろあると思います。いままでの対策というものは、これは私企業形態に対する対策が出されておるわけでございます。これの強化によって、補強によって第五次対策が出るとするならば、そのままで私はいいのじゃないかと思うのでございます。ただ、私ども経営者側からいいますと、日本の自由主義経済組織の中におりますから、ですから私企業内の持てるバイタリティーを大いに活動さして、そしてコストを安くしていくという方向でいくわけでございます。だから、国営というようなことからいいますと、同じ国が金を出す、石炭資源の開発に金を出すという場合に、私企業でやれば、これは私企業利益のためにやっておるのだから、だから高うつく、国営であったら利益なんか要らないのだから安くつくという問題でないということに私は承知いたしております。私ども企業でやっておりますが、てまえの会社のことを言ってはなはだ失礼ですけれども、十年以上とにかく配当というものはやっておりません。まあ無配の会社の社長というのが、今日やはり経営者として立っていく場合にどんなものであるかということを経験されている方はあまりたくさんないんじゃないかと私は思っております。しかし、これは公企業としてやる国のそういう企業体をわれわれが預かってやっておるというような、まあこれでひとつ社会的の責任は果たさなければいかぬという、ただどっちかといいますと国士的な意義にわれわれは感激しながらやっているというのが、今日の石炭会社の経営者なんですね。ですから、利益がどんどん出ていくようなかっこうにされて、そしてそれにあぐらをかいているとか、のほほんとしているとかいうことであるならば、これは国費をむだに使っているとかいうようなそしりも受けると思うのでございますけれども、私どもは、そういうことではなくして、ほんとうにどうしてこの国内資源の開発にわれわれがんばってそして社会的な責任を果たすかということに徹してやっておるわけでございます。ですから、いまの体制をどうするかということにつきましては、出てくる対策によってそれに対応する対策をとるということについては、私どもは何も反対をしないという態度でおります。ですから、いまこちらから、こうしますからこうしてくださいということについては、本来のいままでの石炭対策というものが、私企業を生かして、そしてできるだけ国費を少なく使っていけるような体制で確保したいという趣旨から出てきておる対策でございますから、それに対して私どもは要求をしているという形でございます。しかし、今後は、いや、これは国営でやっていくのだ何だというようなことでそういう対策が出て、そして体制もそうなくては受けられないのだという対策であるならば、これは行政の皆さまに従うということであります。
  56. 相沢武彦

    ○相沢委員 次に、里谷さんにお伺いします。  いま私の申したのは、いきなり国営という結論でなくて、何らかの形の、統一管理機構といいますか、そういったものが出た場合というような意味で申し上げたのですが、いまのと同じ問題で、これからいろいろ討議されて、そういった炭労が主張しているような国有化にいきなりいかなくても、何らかの体制でいくべきだという形が、たとえば国会で論議されて統一的なものが出された場合、従来の方針を取りやめても、炭労としてもそれに協力していく、こういうお考えがあるのかどうか、その点。  それから、いま鉱業審議会で各炭鉱別にいろいろ検討がされているそうです。資金とか、あるいは炭量、坑内条件、いろいろな面で個々診断がされていると聞きますけれども、先ほどお話がありましたように、低能率高コストの山であっても何とかかかえていきたいというお話ですが、いろいろな観点から見て、平均的助成から各炭鉱別の格差助成へ持っていこうと努力しても、どうしてもそのワクに入り切らないような炭鉱があった場合、それについては、今度は、事後策というか、産炭地振興のほうにうんと予算を取ってその善後策を考える。また、日本全体としての出炭量というものをいろいろな観点から考えて、たとえば、おっしゃるような二千七百万トンあるいは現状維持というようなところで保てるとするならば、現行生産規模を最低確保できて、あるいは条件のいい山はもっともっと手を加えて将来拡大生産がはかれるというところに力を入れてやっていくという、そういう方向もとっていこう。いや、そうじゃなくて、とにかく現在稼働している山は一切、政策であるいは資金の助成でかかえていかなければ断じて承服できないのだ、そういうのか、その辺のところを伺いたい。
  57. 里谷和夫

    里谷参考人 私ども四十三年に、先ほど来申し上げておりますように、国有化、そして公社化をすることが石炭産業の安定である、この観念が変わっているわけではございません。しかしながら、当面の石炭問題を議論している私ども内部の問題からいきますと、現状を保持し、それを保持し得る対策を実現することである、したがって、体制問題は、そういう実現の中から新しく論議をしてつくり出していこうではないか、結論を出そうではないか、こういうことであります。抽象的かもしれませんが、国有化を志向しつつ、現実にでき上がる五次政策の中で新しい体制を見出していく、こういういまの指導理念であることを明らかにしておきたいと思います。  二点目の問題でありますが、いろいろ条件がございますので、詳しくは申し上げられませんが、たとえば条件がそれぞれ違うわけであります。一つは、傾斜のある採炭と傾斜のない採炭、そこに起こってくる問題は、傾斜がなければ機械が導入される、傾斜があると機械が導入されない。前者は機械で、後者は人的な採炭ということになると思います。そういうことになりますから、コスト的な問題から対比をしてみますと、高低は明らかに出てくるわけであります。したがって、対策でその個別対策をすれば見通しがある、こういう確信を実は持っているわけです。  それから次の問題として、いまの現状を保持するということになりますと、それでは閉山を認めないのか、こういう問題だと思うのですけれども、私ども通産局ともいろいろ話をしていますが、資金繰りその他の援助は行政指導で目一ぱいの援助を行なう、ただし、保安的に重大災害があってその炭鉱が保持されない場合、あるいは炭量枯渇をしてその炭鉱が保持されない場合、これは論外ではなかろうか、こういうように判断をしておるわけです。先ほど来申しておりますように、いま行なわれているスクラップというのは、どうしても経済性を追求されるスクラップ、こういうのでございますので、この辺を究明をしていけば、直ちにスクラップというのではなくて、その炭鉱展望を考えながら、閉山に追い込む必要はないのではないのか、こういう観点に立って、現状を保持することは可能である、こういう意見であることを申し添えておきたいと思います。
  58. 相沢武彦

    ○相沢委員 最後に、木崎さんにお尋ねします。  収支の予想外の悪化を招いたのは、生産計画が過大であった、計画の虚構性がもたらしたものだと先ほどお話しになりましたが、それが収支の悪化ばかりではなくて、いわゆる保安対策の面にも影響が出てくるのではないかと思いますが、その辺のつながりをどうお考えになっていますか。
  59. 里谷和夫

    木崎参考人 お答えいたします。  その点につきましては特別の関連はないと思います、一般論といたしまして。ただし、それは個々の山について検討しなければわからないことでありまして、一般論としては、ないと考えます。
  60. 相沢武彦

    ○相沢委員 時間ですから、以上で終わります。
  61. 鬼木勝利

  62. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 たいへん時間がたってしまいましたから、一点だけ……。  植田参考人が先ほど一手買い取りの問題を発言されておりました。これは中小炭鉱の問題でなくて、日本炭鉱全体の問題だと思います。そこで、政府が公的な機関をつくって、そこで一手買い取り、一手販売をする。石炭ももう家庭に小さな商売をするというようなそういうものでなくなってしまって、石炭需要家はほとんど代表的なものばかりになっておるのですから、そこで、国がそういう公的な機関をつくって買い取り、販売をするということになれば、私は、これが当面にっちもさっちもいかない石炭問題を解決する根本的な新しい一つの解決策である、こう思うのです。と申しますのは、たとえば、日本の弱粘結原料炭も、輸入する強粘結原料炭と非常に融着性があるということになって使用されておる。それから、今度硫黄分のない一般炭も輸入してこれをたくわけです。日本一般炭にはそれぞれやはりある程度の硫黄分があるのです。これらの問題をやはり融合さしていく、そういうことは、やはり国がそういう機関を持って処理をせなければ、個々の山々あるいは需要家ではできないことですから、それが一つと、もう一つは、炭価が安い。しかし、需要家炭価値上げを要求したって、これは応じてくれません。そういうところから政府も今度一般炭を百五十円上げたわけです。百五十円上げましたけれども、これは国鉄運賃の問題をこの間われわれが田中通産大臣といろいろ議論し合いまして、これらの国鉄運賃は上げさせないようにする。これはいいのです。ところが、今度従業員の人たちのベースアップをやらなければならぬ。そうすると、百五十円せっかく上げてもらったのを、またこれはなくなってきてしまうのではないか、私はこう思うのです。そうすると、結局もう石炭問題は、需要家に渡す点においても、あるいは炭価問題においても、これは炭鉱みずから解決できなくなっているのです。だから、結局、国がそういう機関をつくってやるよりほかには炭鉱の解決の道はありません。たとえば、今度石炭特別会計をつくりました。つくったけれども、これもやはり油の輸入関税と総合調整をしてこれを炭鉱側のほうに活用するということですから、そういうように、ことごとく国がやらなければやれなくなってきてしまっておるのです。そういう点から、いまの当面する石炭問題の解決、そういうことは、いま私がお話しを申し上げておる、また植田参考人から伺ったこと、私は、おそらくこれは大手炭鉱の協会のほうでも倉田会長も賛成だとおっしゃると思うのです。それから、きょうおいでになっておる三つの労働組合の代表もおそらく私は賛成であろうと思うのです。そういたしましたら、ひとつ中小も大手も労働組合も打って一丸となって、この新しい解決策を、あるいは石炭鉱業審議会体制委員会にも、あるいは政府のほうにも、私どものほうにも、それを労使一体の体制になって要請されるということが、この問題を根本的に解決をしていく新しい一つ方策である、こう思いますが、倉田会長、それから労働組合等の方々、これに対して賛成であるかどうか、ひとつ意見を伺わせてもらいたいと思います。
  63. 倉田興人

    倉田参考人 そういう一手買い取りで、そしていわゆる生産炭価と消費者炭価との格差は国費で埋めていただくということで、私どもも私企業でやっている炭鉱会社が、石炭を掘ることによって幾らかの利益を得、そして成り立っていくということでありますれば、これは非常に私どもはけっこうなことでございます。先ほど中川先生の、米は人間の食いものである、石炭は工場の食いものである、食いものはこれはぜひ確保しなければいかぬという御思想からいいますと、かつてのいわゆる食管法で米が助けられたということ、おそきに失しますが、石炭もその類で助けていただくということであれば、私ども大賛成でございます。
  64. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 ちょっと一言申し添えておきますが、私は、生産面に国の公的機関が関与するということではありません。生産面はそれぞれ炭鉱が自由に競争しておやりになることですから、その掘り出された石炭の買い取りと販売だけのことを言っておるのです。そのつもりで……。
  65. 道下一治

    道下参考人 御指摘がありましたいわゆる石炭の一手買い取り機関の問題、これは当然私どももそういう主張をいたしておるわけでございます。したがって、今後政策の中から生まれてくる石炭体制の受け皿、いわゆる体制をどうするかという問題の中で、この問題についての実現をぜひはかっていただきたい、このように実は考えておるわけでございます。  それから、さきの先生からも御指摘がありましたが、特にわれわれきょう五人ここに出していただいて意見を開陳いたしましたけれども、必ずしも労使そのものの意見が完全に一致を見てこの石特委員会出席をして発言をしておるわけではないわけです。したがって、われわれの主張は、とにかく最終対策最後対策であるので、何とかしっかりした政策をつくってもらいたい、こういう主張をやっておるわけですから、御指摘のとおりに、いわゆる経営者と労働組合、こういうものが意見の調整をやって、石炭を掘るわれわれ労使はこういう考え方で今回の補強をやってもらいたい、五次政策をこうつくってもらいたい、こういう考え方で労使の意見が一致を見るような努力が今日まで欠けておる。しかし、われわれはできるだけ一致をさせるように努力をしたいということで今日までやってまいりましたけれども、なかなか細部にわたって、あるいは基本的な問題につきましても一致をしないのが現実の姿でございます。したがって、これから先も、十分いまより以上に労使の意見の調整を行なって、石特あるいは体制委員会の中では一致した意見で当たれるように努力をしたい、この点だけは申し上げておきたいと思います。
  66. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 ほかの炭労、職組のほうはいかがです。
  67. 里谷和夫

    木崎参考人 いまの先生の御質問でございますけれども、一手買い取り、一手販売ということにつきましては、そのものずばりがそれでいいかどうかということは、しさいに検討しなければならないと思いますけれども、先ほどの発言の中には、一手販売をすることによって供給の安定をはかる、すなわち、供給の不安定要素に対して直ちに適応できる体制だという意味と、それから、私が先ほど申しましたように、炭鉱ごとに格差のある助成を行なうという意味がその中に含まれておりますので、私といたしましては、販売の一元化ということにつきましては賛成いたします。
  68. 里谷和夫

    里谷参考人 先ほど来私どもの体制についての意見を申し上げているとおりであります。その意見は、生産あるいは販売を含めまして、国営の公社で行なうという主張でありますので、先生がいま指摘をされている問題については賛成であります。
  69. 植田勲

    植田参考人 この一手販売というのは、私は、現在、電力用炭販売株式会社がございます、あれを強化して、それを利用したら一番いいのじゃないかという考えがあるのです。それで、これは政府でやられるのか、それは民間でやって、それに全部補給金を出して、現在の安定補給金とか、あるいはそれをひっくるめたものをそれに出してやる、それで適正炭価でという問題があるわけですから、各炭鉱のコストはみな違うわけですから、違ったものに対してある程度の補給をやるということになるのですから、非常に私としては——われわれ会議をやりまして、連合会としてはこういう一本の線にまとめたわけです。非常にメリットがございまして、営業部というものは各炭鉱にほとんどなくてもいい、それから輸送の合理化が非常にできる、ミックスする必要がなくなるというような、非常にメリットが多いんじゃないかと思うのであります。一言付言しておきます。  以上です。
  70. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 これはもう釈迦に説法みたいなものですが、戦争中ありました石炭統制会、あれも生産面には統制会は関与していないのです。ただ買い取りと販売のことだけやった。それから国家的に非常に重要であるという、たとえば米のごときは、御存じのようなああいう処置をとっておる。しかし、炭鉱の場合、やはり生産面における山の条件なり、勤勉の度合いなり、いろいろありますから、こういう点はやはりそれぞれこれを認めて、そして能率をよくあげたものはそれに報いられる、これは当然とらなければならない処置でありますが、そういうこまかい問題はここでいま何か議論する必要もないのでありまして、そういう点で、もう実際問題いまの石炭の行きどまっておる現状を、ただ安定補給金を百五十円出した、二百円出したといっても、物価の騰貴とともに従業員の給与も上げていかなければならない。それから油がどんどん安く入ってきます。ところが、石炭が少なくなってきた、炭鉱がやっていけなくなってきたということを見越して、去年油が一方的に値上げをしてきた。値上がり賃だけが二千億円です。ところが、また近くこの油を上げてくるということは必至だといま見られておるわけです。やはりそういう点を見越して、石炭問題は油との総合エネルギーの調整機関として解決しなければ、石炭ばかりで何かもがいておったってこの解決はできない。やはりエネルギー全体が伸びていっておるのですから、その上に立って総合調整の上でこの解決をしていくということが、解決の根本問題だと思うから、大手筋も中小も、炭労も全炭も職員組合も、そういう点は十分打って一丸となって検討した案を出して、これを成功するように努力してもらいたい。そうすれば、われわれも、さっきから意見が出ておりますように、この石炭特別委員会は超党派的にことごとく意見を一致してやっておるのですから、生産者側のほうも、耳の穴の中をほじくるような小さなことでなくて、大乗的な立場に立ってこの問題を解決しなければ、新しい解決の道はないんだ、こういう上に立って、御意見を伺いながら実は私は提案しておるようなことになりますけれども、しかし、これは熱心のあまりですから、皆さんそういうことでぜひ新しい解決案を提案してもらうように要請をいたしまして、私の質問を終わります。
  71. 鬼木勝利

    鬼木委員長 これにて午前の参考人各位に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用中のところ、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。おかげをもちまして、本件調査に資するところ大なるものがあったと存じます。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。  午後二時再開することとし、この際休憩いたします。    午後一時二十五分休憩      ————◇—————    午後二時七分開議
  72. 鬼木勝利

    鬼木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前に引き続き、石炭対策基本問題に関連して、意見をお述べいただくために、住友金属工業株式会社社長日向方斉君、電気事業連合会会長加藤乙三郎君、北海道電力株式会社社長岩本常次君、電源開発株式会社総裁大堀弘君、東京ガス株式会社社長安西浩君の御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらず本委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございました。  ただいま本委員会におきましては石炭対策基本問題について調査をいたしておりますが、参考人各位におかれましては、石炭位置づけ基本をなす需要問題について、それぞれの御立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存ずる次第であります。  なお、はなはだかってではありまするが、参考人各位からの御意見の開陳は、お一人十分程度お願いすることとし、その後、委員からの質疑があればこれにお答えいただくことにいたしたいと存じます。  それでは、御発言の順序は、かってながら委員長に御一任願い、日向参考人からお願いいたしたいと思います。日向参考人
  73. 日向方斉

    ○日向参考人 御指名をいただきました住友金属工業の社長の日向でございます。本日は、石炭対策について鉄鋼業界としての意見を述べるようにとの仰せでございますので、国内原料炭需要家としての立場からの意見を申し上げます。  御承知のとおり、鉄鋼業と石炭業は長年密接な関係にあり、いわゆる第一次石炭対策昭和三十八年に実施されて以来、数量的には、政策需要並びに原料炭傾斜生産の方針に従い、年々引き取り量を増加し、かつまた、価格的にも再三の値上げにより、現在までにトン当たりおよそ千五百円の値上げを行なってまいりました。特に、現在の第四次対策は、経済性に立脚した石炭産業前提として諸対策が展開されたにもかかわらず、対策が始まった翌年、昭和四十五年には原料炭価格五百円の値上げが行なわれ、翌四十六年には再度五百円の値上げを余儀なくされたのであります。特に四十六年は、鉄鋼不況にもかかわらず、価格的には割安な輸入弱粘結炭の引き取りを抑制し、国内炭トン当たり五百円の値上げを行なったわけでございます。その後も、現在に至りますまで、個別の山の事情に応じて、石炭代金の支払い条件の変更など、資金面での融資的協力を個々に行なっておる実情であります。  しかしながら、石炭業を取り巻く昨今の客観的状況の変化、特に円切り上げ後における石炭対策については、基本的に見直されなければならないものがあると考えるのであります。  四十六年度の為替変動、円切り上げは、私ども鉄鋼業にも甚大な影響を与えております。鉄鋼業は輸出ウエートがおおむね三割をこえておりますので、原料輸入の利益を差し引きましても、円切り上げによる為替差損が相当生じておるのであります。現在、日本の鋼材価格は、諸外国に比べ二割ないし四割安いのでございます。したがって、鉄鋼業としてはコストの切り下げにいろいろと努力しているのでありますが、特に鋼材コストに占める原料費のウエートが高いため、原料費の低減には格別努力を傾注しております。  原料炭に直接関係いたしますと、いわゆるコークス比、これは銑鉄一トンをつくるために要するコークスの量のことでございますが、このコークス比が、最近高炉技術の進歩によって著しく低下いたしまして、つい二、三年前までは四百七十キロを要しておったものが、近ごろでは四百キロ以下という高炉が続々あらわれておるのであります。四百七十キロから四百キロに下がっているということは、約二〇%近い石炭の所要量が減るわけでございます。  これに加えまして、今後の鉄鋼生産見通しにつきましても、いわゆる新経済社会発展計画が策定されました当時、昭和五十年度の粗鋼生産見通しは、一億五千万ないしは一億六千万トン程度であると予想されておりましたが、四十五年度下期以降の不況により生産の伸びは落ちてまいりまして、五十年度一億五千万トンを相当下回る可能性が出てきておる状態であります。  一方、原料炭の手当てのほうはと申しますと、昭和四十三年後半から始まりました四十四年、四十五年の鉄鋼生産の急速な伸長時におきまして、一時的に海外原料炭マーケットが過熱いたしました。これに対処して、わが国鉄鋼業は、海外での安定的長期輸入契約の促進、資本技術協力による積極的開発を始めたわけでございますが、その後、先ほど申し上げましたような技術革新によるコークス比の低下、鉄鋼生産の見通しの変化が生じてまいりました。  こうした事情を考慮して、わが国鉄鋼業界は、昭和四十五年度下期以降輸入炭の入荷抑制を大量に行なってまいりました。今後も引き続き抑制を行なっていかざるを得ないのでありますが、現に約定した引き取り量を削減するということは、国際信義上おのずから限度がありまして、特に現在のごとく日本経済が世界的に注視され、国際協調が重視されてまいりますと、一そう困難となったわけであります。  以上申し述べたごとく、鉄鋼業としては、国内炭の引き取りについてまず数量的に制約がある上に、経済的にもなかなか困難があるのであります。鉄鋼業としても、国際競争をしていく以上、国内炭の引き取りについても経済的合理性がなくてはならないのであります。  しかるに、現状では、国内炭を引き取ることは、鉄鋼業の経済的負担を増加しているのであります。いま国内炭と輸入弱粘結炭の炭価の差を国内炭の引き取り量にかけ合わせて算出した数字、それから国内炭引取交付金を差し引いた額を算出してみますと、鉄鋼業が実質的に負担しておる国内炭の引き取りによる負担は、ここ数年間年々五十億円以上になっているのであります。  ところが、昭和四十六年、為替変動及び円切り上げにより輸入弱粘結炭が値下がりしたあとの国内炭との炭価の差はさらに大幅に開き、今後国内炭コストアップを勘案しますと、輸入炭との炭価の差はさらに拡大していく見込みであります。これをかりに国内炭コストアップがそのまま値上げによって転嫁されると仮定するならば、輸入炭と国内炭との炭価の差は開く一方でありまして、これを鉄鋼業の負担にすることはとうていできないのであります。  以上申し上げておりますように、わが国鉄鋼業を取り巻く環境はいよいよきびしく、最近でも二期連続して減配をしたようなありさまでありますから、この上われわれ鉄鋼業の経済的負担を増加するような方向での国内炭引き取り要請、あるいはそれを前提とする石炭対策を打ち出されましても、私ども企業としての協力にはおのずから限度があるのでございます。  また、いわゆる石炭対策費といわれるものは年間一千億円程度といわれておりますが、内容的には相当いろいろ多岐にわたっておるかと思いますし、また、運用面では相当むずかしい問題があるであろうかと思いますが、直接鉄鋼業に対して支給されておる増加引取交付金は、わずかにそのうち二十七億円でありまして、きわめて少額であります。こうした点で、やはり経済事情の変化に応じて、政策の目標に沿った実効ある対策樹立していただきたいと思います。  以上、要するに、鉄鋼業界として、国内炭の引き取り量については、原料炭の需給面からも、輸入炭の引き取り抑制の限界からも、かつまた、経済的に見た鉄鋼業の負担力の点からも、かりに現在の輸入炭と国内炭との実質的価格差が従来以上に拡大しないことを前提としましても、今後国内炭の引き取り量は相当減少するものと予想されます。しかしながら、鉄鋼業界としては、今後とも政府政策に沿って石炭業界との協力を続けるつもりでありますから、その協力鉄鋼業界の負担増加にならぬような政策樹立していただきたいと希望いたします。  なお、これは私個人の意見でありますが、わが国工業発展史上におけるわが国石炭業の残された数々の功績に対し、また、基礎産業としての同じ立場から、石炭業界に対する同情の念を深くするものであります。特に、今回のように円切り上げという戦後最大の激動期における石炭業界のために、政府におかれましては思い切った援助政策を講じていただきますことを希望いたしまして、私の陳述を終わります。
  74. 鬼木勝利

    鬼木委員長 次に、加藤参考人お願いします。加藤参考人
  75. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 御紹介いただきました電気事業連合会の会長加藤乙三郎でございます。  かねて電力用炭の問題につましては、当委員会先生方には格別の御理解を賜わっておりますことに対しまして厚くお礼を申し上げたいと存じます。  本日は、電気事業者から北海道電力と電源開発両社の代表者も出席されておりますので、私からは、石炭問題に対しまして全般的な見地から考えを申し上げたいと存じます。  電力業界は、昭和三十八年のいわゆる第一次政策以来、可能な限り政府石炭政策協力いたしてまいりました。  御案内のとおり、わが国の経済は驚異的な成長を示し、エネルギー需要も飛躍的に増大いたしました。また、これと並行して、産業の技術革新が急速に進み、エネルギーも、固体燃料から液体燃料への転換が世界的な傾向として進められたことも、すでに御案内のとおりであります。  このようなエネルギー革命のうちにおきまして、石炭鉱業は最も影響をこうむったと思いまするが、このような情勢の中で、電力業界は、石炭火力の建設、これは三十七年十月の第一次石炭対策大鋼以来、九電力においても十カ地点、百七十万キロワット、直接ではございませんが、間接的には電源開発会社さんの三地点の約百四十万等の建設、あるいはまた石炭の増加引き取り、これは最大のときには、四十三年かと存じますが、約二千百五十万トン等の引き取り、あるいはまた若干の石炭値上げ等々を通しまして、でき得る限りの協力を行なってまいりましたものと考えております。  しかしながら、近年になりまして、公害が大きな社会問題となり、硫黄酸化物あるいはばいじんの規制が相次いで強化されるに至りまして、発電用燃料につきましては、いかにして良質の燃料を確保するかということが、われわれ電気事業の大きな課題となってまいったのでございます。  それに加えまして、電力石炭火力は次第に老朽化してまいりますために、心ならずも石炭の引き取りに対する協力は限界が出てまいったのが実情でございます。  このように次第に引き取り量が減少していかなければならない理由を若干御説明さしていただきたいと存じます。  まず第一に、硫黄酸化物に対する相次ぐ規制の強化でございます。  御案内のとおり、九州炭は一般的に高い硫黄炭でございまして、これをたこうといたしますると、薄め材といいますか、これが多量の低硫黄重油か良質の石炭が必要となりまするのが、残念ながらその手当ては十分ではございません。したがいまして、九州炭につきましては、公害規制値の強化によりまして、急速に消費量を減らしていかなければならないわけでございます。  第二といたしまして、ばいじんに対する規制の強化でございます。  ばいじんにつきましては、昨年の六月に、石炭ボイラーにつきましては一・二グラム・パー・ノルマル、それが〇・四に強化されました。このため、石炭を混焼することはきわめて大きな制約を受くることとなったのでございます。  なお、最近になって問題になりかけてまいりました窒素酸化物、いわゆるNOxでございます。この規制値がもしきめられるといたしますと、ますます石炭燃焼は不利となり、むずかしくなってまいるものと存じます。  第三といたしまして、地元住民運動とでも申しますか、これがかなり高まってまいったのでございます。  石炭火力は、多く過密都市の中に立地いたしておりまして、その地域の大気汚染の原因と目されがちであります。複合汚染のはなはだしい川崎あるいは四日市などは、石炭は全く忌避せられる状況でございます。そして、このような住民の被害意識は、さらに各地に広がっていくことがたいへん懸念されるのでございます。  第四といたしまして、公害防止協定、自治体の条例等によりまする規制値のいわゆる上乗せでございます。  たとえば千葉火力の場合は、自治体との協定において、ばいじんの許容量は〇・三以下とする上に、四十八年度からは事実上貯炭消化のみといった状態であります。また、横須賀火力の場合は、地元との話し合いによって、四十六年度からは石炭をたけないということになっております。このように、地方自治体の態度はますますきびしさを増してまいると考えるのでございます。  第五といたしまして、石炭火力の老朽化でございます。  電力石炭火力は、戦前から大体昭和三十年代に建設されたものが多くございまして、これらは熱効率も悪いため、新鋭の大容量火力に比較いたしますと、燃料消費量は一〇%ないし二〇%増しぐらいになるかと存じます。御案内のとおり、電力では、増大する需要増加に対処いたしまして、単機容量で五十万キロワットから百万キロワットというような高能率、大容量の新鋭火力を建設しておりまするが、このような新鋭火力が供給力のベースとなり、老朽の石炭火力は次第に運転を落としていかざるを得ないというのが実情でございます。  石炭がたけなくなる理由は種々ございますが、おもなる理由は以上の五点になるかと存じます。  電気の安定供給という社会的責任を負う電力業界といたしましては、今後の石炭政策の策定にあたりましては、こうした需要業界の直面しておりますきびしい事情を十分にごしんしゃくくださいますようお願い申し上げる次第でございます。  次に、このような事情を踏まえました上で、新石炭政策につきまして若干の要望をいたさせていただきたいと存じます。  その第一は、新しい政策に織り込むべき石炭の供給量でございまするが、需要に応じた生産という経済原則に立脚いたしまして、需要業界の実態と意向を十分に尊重して策定せられますよう要望いたしたいと存じます。  次に、石炭生産コスト上昇に対する施策確立でございます。  石炭生産コストは、先般の英国における炭鉱の賃上げ状況を見てもわかりますように、今後労働コストを中心として上昇することは不可避ではないかと考えます。このようなコスト上昇に対しましては、国民経済的観点から国の助成強化等の適切な施策確立されますよう要望いたす次第でございます。  最後に、北海道電力に対する石炭供給の確保でございます。  北海道電力につきましては、岩本社長が参考人として出席しておりまするので、詳細は私からは省略させていただきますが、北海道電力の火力発電所は、いわゆる内陸炭田立地型火力でありますため、これは石炭に依存せざるを得ないのが現状でございます。北海道電力がこのように今日石炭を必要といたしますのは、内陸石炭火力を建設し、石炭政策協力してまいりましたことも一半の理由がありますことを何とぞ御賢察いただきたいのでございます。新政策策定にあたりましては、北海道電力が必要とする石炭は十分確保できますよう、国の助成を含む政策配慮お願いする次第でございます。  以上、はなはだてまえがってなことを種々申し上げましたが、電力業界が直面している現実を十分御理解の上、よろしくお願い申し上げる次第でございます。
  76. 鬼木勝利

    鬼木委員長 次に、岩本参考人お願いします。岩本参考人
  77. 岩本常次

    ○岩本参考人 御指名をいただきました北海道電力社長の岩本でございます。  ただいま、電気事業者の代表として電気事業連合会の加藤会長から電力用炭問題の全般的なことにつきまして御説明されましたので、私は、産炭地におきます電力会社といたしまして、主として当社の電力用炭の引き取りの現状と将来の見通しにつきまして、簡単に御説明申し上げたいと存じます。  まず、当社の石炭引き取り量の経緯と将来の引き取り見込み量でございますが、ただいま加藤会長からお話がございましたように、当社は産炭地におきます電力会社ということもございまして、今日まで石炭政策にはできる限りの協力をいたしてまいったつもりでございます。すなわち、現在運転中でございますところの火力電源はすべて石炭専焼火力でございまして、その設備容量は、江別、奈井江、滝川、砂川の四地点、合わせて約百万キロワットでございます。これらの発電所はいずれも内陸炭田立地型でございますので、発電用燃料は石炭以外に代替性がなく、石炭の消費量も年々増加してまいっております。昭和三十八年度には百万トン足らずでございましたものが、昭和四十五年度におきましては三百五十万トンをこえ、本四十六年度の引き取り量は三百七十万トンに達しまして、電力会社引き取り量の四〇%を占めるに至っております。  かように本年度は三百七十万トンの石炭を引き取りはいたしましたが、御承知のとおり、経済界の不況等によりまして電力需要の停滞等がございましたために、石炭の消費量が三百十万トン程度にとどまりました。したがいまして、四十五年度の繰り越し貯炭三十万トンを含めまして、年度末貯炭は九十万トンをこえる見通しでございます。  明四十七年度につきましては、本年度の消費見込み量であります三百十万トン程度の引き取りを考えております。また、将来の見込み引き取り量といたしましては、四十八年度二百五十万トン、四十九年度二百三十万トン、五十年度二百二十万トン程度を予定いたしております。  今後の北海道におきます石炭産業は、炭層の深部移行によります生産コストの上昇問題、労務者、特に若年労務者確保問題など、さまざまな問題が山積しておりまして、従来にも増して国の強力な御援助なしには安定生産は不可能かと存ずる次第でございます。  先ほど申し上げました当社の将来の石炭引き取り量につきましては、北海道の石炭産業がかような情勢下に置かれておりますことから、当社規格炭の調達可能量はこの程度が適当であろうと考えたからでございます。  また、現在、石炭鉱業審議会におかれまして、石炭位置づけないしは新政策等を総合的に御審議中でございますが、将来にわたって当社規格炭の供給量と価格の安定について特別の御配慮をいただきたいと存ずる次第でございます。  なお、さきに申し上げました将来の見込み引き取り量を増加することにつきましては、価格の安定が得られますならば、電力の需給並びに公害規制などの条件が許す範囲で御協力いたしてまいりたいと考えております。  次に、今後建設すべき電源の燃料選択についてでございます。  発電用燃料の大宗を石炭に仰いでおります当社といたしましては、電力安定供給という使命を果たすためには、電力用炭の量、質並びに価格の面での安定が不可欠でありますことは申し上げるまでもございません。しかるに、昭和三十八年から四次にわたり行なわれました国の石炭産業に対しますところの手厚い助成にもかかわりませず、北海道の石炭産業をめぐる環境はますます深刻化の様相を呈し、今日もなお閉山のおそれが続いておる現状でございますので、将来の当社発電用燃料手当てにつきましては、大きな不安感を抱かざるを得ないのでございます。  たとえば、かつて国の御要請と地元の強い要望によりまして建設中でございました釧路火力が、明治、雄別両鉱の閉山によりまして石炭の入手ができなくなりましたため、昭和四十五年二月その建設中止を余儀なくされ、多大の被害をこうむりました。また、昨年は、当社の主力納入炭鉱でございました住友石炭鉱業の奔別、歌志内両鉱が突如として閉山するという緊急事態を招きまして、その対策のために非常に苦慮いたしたのでございます。かような事例を勘案いたしますと、産炭地電力の当社といたしましても、今後の電力供給責任上、石炭に加えまして、石油糸燃料あるいは核燃料など、燃料源の分散、多様化をはからざるを得ないことは当然でございまして、先年、日本軽金属の苫小牧進出を契機に、同社と当社の折半出資によります苫小牧共同発電株式会社を設立いたし、本道で初の臨海石油火力が誕生しております。この際にも、石炭火力にすべきであるとの御要請を受け、日本軽金属並びに当社におきましても鋭意検討いたしましたが、石炭の供給不安をぬぐい去ることができず、石炭火力を断念いたしました経緯のありましたことをあわせて申し上げておきたいと存じます。  以上、たいへん簡単でございますが、産炭地の電力会社といたしまして意見を申し述べさせていただきました次第でございます。ありがとうございました。
  78. 鬼木勝利

    鬼木委員長 次に、大堀参考人お願いいたします。大堀参考人
  79. 大堀弘

    ○大堀参考人 御指名をいただきました電源開発株式会社総裁の大堀でございます。  先ほどから電気事業連合会会長から全体のお話がございましたので、私からは、当社が担当しております揚げ地石炭火力等の現状と今後の見通し等を中心に申し上げたいと存じます。  去る昭和三十八年、石炭政策の一環として当社が担当することになりました揚げ地石炭火力につきましては、政府助成をいただきまして、昭和三十九年より昭和四十二年までの間に三地点五基を相次いで着工し、昭和四十二年から昭和四十四年にかけて合計百二十八万キロワットの設備の運転を開始いたしました。以来、これら揚げ地三火力、磯子、高砂、竹原の各発電所は、受電電力会社の協力を得まして順調に稼働いたしております。また、これより先、昭和三十八年以来、低質炭活用の火力として運転をいたしておりました若松火力と合わせ、昭和四十六年度までに累計四百十億キロワットアワーを発電し、石炭消費量も約一千六百万トンに達するに至りました。わが国石炭の安定需要確保のため、今日まで多少お役に立ってきたかと存じております。  また、石炭の使用消費にあたりましては、近年、公害問題の深刻化、供給不安、コストアップなど、種々の困難な問題が生じてまいりましたが、当社といたしましては、政策火力としての趣旨にのっとり、でき得る限りの措置を講じて、極力石炭の消化につとめてまいっておる次第でございます。しかしながら、今後のあり方を考えますときに、率直に申し上げまして、いろいろとむずかしい状況が予測され、苦慮いたしておりますので、本席を拝借しまして実情と希望を申し述べさしていただきたいと思います。  石炭消費の現状は、昭和四十四年度は四カ所で三百四十八万トン、昭和四十五年度は三百三十三万トンでございます。昭和四十六年度、本年度におきましては、日炭高松鉱の閉山の影響を受けまして、また高砂火力につきましては、公害規制に対応するための良質の重油混焼等の必要によりまして、若干減少いたしておりますが、なお約三百万トン程度を消化する見込みでございます。昭和四十七年度につきましては、一応昭和四十六年度と同程度の使用をいたしたいと存じておりますが、公害規制のあり方、良質の石炭確保見通しに左右されるところが大きいと思われます。  次に、公害規制との関係をちょっと申し上げさしていただきたいと思いますが、硫黄酸化物、ばいじんなどの公害規制につきましては、昨年六月大気汚染防止法関係政省令が施行され、一段と規制が強化されましたあと、昨年十二月に至りさらに大幅なSO2の排出基準強化が行なわれております。これが運用にあたりましては、地元地方公共団体等と十分協議の上実施いたしております。  北海道炭は低硫黄でありますので、SO2の問題は少ないのでありますが、九州炭は比較的硫黄分の含有量が高いため、石炭の消化対策に苦心いたしており、九州炭に依存する高砂火力におきましては、所要の基準を確保するために、従来の百十メートルないし百二十メートルであった煙突を百八十メートルの高煙突に建てかえました。また、さらに良質の低硫黄重油を混焼し、SO2の低下につとめております。同じく九州炭使用の竹原火力におきましても、同様の設備改良を計画いたしております。  当社は、公害防止につきまして、建設の当初より、地元と十分お話し合いの上、積極的に誠意ある措置を講じ、当時、最新鋭の集じん器、水質汚濁、騒音防止施設等を整備し、公害防止に特に留意してまいりましたが、ただいま申し上げましたように、最近の規制強化の急進展によりまして、さらに集じん機の改造、高煙突化、低硫黄重油受け入れ並びに燃焼設備の改造などを含めて、石炭消化のため次々追加投資を重ねております。  また、有害物質と指定されました窒素酸化物につきましても、将来の動向によりましては相当の追加投資を必要とする場合もあるかと思われます。  石炭は、基本的に、ばいじん、窒素酸化物など、むずかしい問題をかかえておりますだけに、当社としては、この消化に最善の努力を払い、対策を講じてはおりますが、今後国、地方を通じ、環境保全への要請がさらに高まり、公害規制の強化などの措置がとられた場合は、やむを得ず石炭の消費を低下せざるを得ないような事態になることも予測されますので、この辺の事情を十分御賢察いただきたいと存じます。  もう一点、石炭の納入の不安定の問題でございますが、これは岩本社長からもお話ございましたが、最近大型閉山が相次ぎまして、昨年二月、当社若松火力への主要供給元であった日炭高松鉱が突如閉山に至り、さらにまた、磯子火力への有力供給元であった住友奔別鉱の閉山など、閉山の直前までその帰趨を明確化されないものが多く、当社といたしましてもそのつど燃料対策に追われてきたような実情でございます。  今後の問題につきまして申し上げたいと思いますが、今後引き続き石炭の消化を行なうためには、次のような諸点が解決を要すると考えております。  第一は、公害問題の急進展に即応して、今後とも石炭の安定的消費を可能ならしめるためには、まず第一に炭質の確保が必須の条件となってまいりました。この場合、北海道炭につきましては、幸い低硫黄でありますので、安定供給確保され、ばいじんなどの規制が将来強化されない限りは、引き続き磯子火力において使用していきたいと考えております。九州炭につきましては、何ぶん硫黄分含有率が高いために、従来、これを使用するため、公害規制強化に対処して設備改造等当一社として最大の努力と負担を払ってまいりましたが、すでに設備的には改善の限界に達しておりますので、これら設備によって消化し得るよう、炭質面からも基準に対応できる硫黄分の石炭供給が必要でございます。かりに良質炭の供給がむずかしくなります場合には、環境基準を守りますために、良質重油の混焼を行ないますので、石炭の消費量は漸減するような結果になるわけでございます。  第二は、先ほど申し上げましたように、ここ両年来閉山が相次いでおり、当社といたしましては、そのつど供給元の振りかえなどの対応策を講じてしのいでまいりましたが、供給側の事情のみによって供給量の変動、打ち切りが行なわれるようでございますと、私どもユーザーとしてはなはだ困惑いたしますので、今後は十分事前に見通しを持った供給が確保されますようお願いしたいと思っております。  第三に、炭価の問題でございますが、当社の石炭火力は、石炭政策として特段の国の助成措置をいただいて建設運営いたしておりますが、これをもってしてもなおかつ石炭火力のコスト局を完全に解消するに至っておりません。このため、電力各社の特別の御協力を得て石炭引き取りが可能となっておるものでございます。さらにまた、当初計画時以降に行なわれました炭価値上げは、交付金等の措置をいただいておりましてもなお一部負担増を招いております。これら負担にも当然限度がございますので、これ以上負担が加重されるような場合には、石炭の引き取りにも遺憾ながら低下の事情が生ずるという事情も御了察願いたいと思うのでございます。現在価格が安定的に維持されますよう、格別の御支援をお願いいたしたいと思います。  以上申し上げましたように、揚げ地石炭火力の建設当時と異なり、近年大きな情勢変化が続いてまいっております。当社は年間三百万トン程度を消費し得る設備を保有しており、今後引き続き可能な限り引き取りの努力をするつもりでございます。しかし、環境保全問題の動向が、先ほど来申し上げました事情でございます。これらの点につきまして十分政策的に御検討いただきまして、よりよい対策ができますように、何ぶんよろしく御支援をいただきたいと思います。  以上をもちまして陳述を終わりたいと思います。
  80. 鬼木勝利

    鬼木委員長 次に、安西参考人お願いいたします。
  81. 安西浩

    ○安西参考人 ただいま御指名をいただきました東京ガスの社長の安西でございます。  お手元にお届け申し上げました資料は、実は私どもの会社の事務当局が作成したものでございまして、内容はもちろん間違ったことは書いてございませんが、資料を提出するということはきのうの夕方私承りましたので、ちょっと間に合わなかったものでございまして、きょう私ただいまから陳述申し上げますニュアンスは、御提出いたしました資料と多少違った点があるかと存じますが、この点をまず御了承いただきたいと思います。  ところで、現在日本には都市ガスの企業体が二百三十四ございます。企業体と申し上げましたのは、民営と公営とあるから企業体と申し上げましたが、この二百三十四の企業体が集まりまして社団法人日本ガス協会というものをつくっておりまして、私がただいまその会長をいたしております。そうしてこの二百三十四企業体のうちで、石炭を原料として使用しておる企業体は、東京ガス、大阪ガス、東邦ガス、これは名古屋のガス会社です。広島ガス、四社だけでございます。あとの二百三十社は石炭以外のものを原料といたしております。ただし、東京、大阪、名古屋のこの三つの会社で日本全体の八〇%を占めております。また、その八〇%のうちの大きな割合を東京ガスが占めておりますので、本日は東京ガスを中心としてお話しを申し上げていきたいと存じます。  さて、諸先生方は先刻御承知のように、昭和三十年代の初頭から、固体エネルギーから液体エネルギーへのあのエネルギー革命の洗礼を石炭産業は受けたわけでございます。特に昭和三十六年から石油の輸入が自由化されまして、政府でそれが決定されましたものですから、輸入が実施されました。そういう結果、石炭産業は苦難の道を歩んで今日に至った次第でございます。私は、石炭鉱業審議会——諸先生方承知のことと思いますが、この石炭鉱業審議会発足以来十七年間委員といたしまして、石炭政策に対しまして、終始一貫いたしまして日本石炭産業に愛情を持って協力してまいりました。たまたま昨年中央公害対策審議会というのができまして、その委員に就任した結果、政府関係委員が五つ以上になるということで、残念ながら、石炭鉱業審議会委員を御辞退申し上げておる次第でございますが、そういう関係から、この石炭特別対策委員会には、本日はたしか五回目だと思います。過去において四回くらい出席いたしております。  それはそれといたしまして、都市ガス事業から見ました石炭は、御案内のように、かつては主力のエネルギーでございました。石炭だけで十年前は経営しておったのでございます。ところが、エネルギー革命の進展と、これに対応いたします技術革新の結果、私どもの会社も、今日では石油系エネルギーを原料の主力とせざるを得なくなった次第でございます。しかし、私は、通産省から協力を要請されておりますことに対しましては、ただ単に原料の経済性を追求するばかりを考えることなく、今日まででき得る限り国内原料炭の引き取りに協力いたしてまいりました。日本ガス協会の会長として、大阪、名古屋、広島にもその線でやってもらっております。今後も引き続きまして、原料炭は減らしていかないという考えでございます。  御承知のように、石炭政策として基本的に最も大事な柱は、何と申しましても、私は需要確保であると思います。先ほどからも承っておりますが、一般炭につきましては、電力向けの需要は、昭和四十二年に二千百万トン、昭和四十五年には千三百万トンありましたものが、昭和四十七年には四百八十万トン、昭和四十八年には三百七十万トン、昭和四十九年には二百五十万トンとなり、昭和五十年には二百二十万トンにまで急激に低下するものと予想されておる現状であります。また、原料炭につきましては、大口需要家であります鉄鋼業界需要が、昭和四十二年に一千六十万トンあったものが、昭和四十五年には、不況の影響もございましょうが、九百八十万トン、昭和四十七年には八百二十万トン、さらに昭和五十年には五百万トンまで落ち込むことと予想されておる現状でございます。これらの予想につきましては、私は、当該直接の責任者ではございませんので、この需要見通しにつきましての論評は差し控えたいと思いますが、これはおそらく経済性の問題と——先ほど電気事業連合会会長からもるる御陳述がございましたように、近年一段と公害規制が強化されましたことによるものと考えております。このような一般炭原料炭の大口需要の今後の動向は、石炭政策にとってまことに大きな問題であろうと考えます。  一方、私ども都市ガス産業におきましては、都市ガス需要の増大に対処いたしまして、豊富かつ安定的に都市ガスを供給するという公益事業の使命を達成するために、石炭石油系エネルギーのほかに、最近、皆さま方テレビあるいは新聞で御承知と思いますが、海外から液化天然ガス、リクィファイド・ナチュラル・ガス、LNGを導入し始めました。これは非常に大きくクローズアップいたしておりますけれども、今日ではまず二〇%ぐらいなものでございます。全東京ガス供給区域内に、今後十年間ぐらいかかりまして、この供給区域内のガスを公害のない理想のエネルギーに転換しようといたしております。本年七月から埼玉県の一部から天然ガスの供給をいたすことになっております。しかしながら、私は、このような情勢の中におきましても、国の石炭政策協力するという意味で、既存の需要量はでき得る限り確保していくということに決意をいたしておる次第でございます。  抽象的に申してもどうかと思いますので、具体的に今後の計画について申し上げますと、都市の中心部に立地しておりますために、公害対策上問題がございます。千住工場あるいは大森工場の石炭かまどは逐次廃止いたします。しかし、これにかえまして、同じ容量の新鋭の石炭かまどを鶴見工場に目下建設中でございます。そういう関係から、石炭の使用量は減らさないつもりでございます。  一方、先生方も御承知のとおり、原料炭を乾留いたしますと、できるのはコークスでございます。ガス産業におきまして原料炭を使いますことは、コークスの需要ということに非常に関係が深いのでございます。したがいまして、コークスの需要動向につきましては、私どもは重大な関心を抱いておる次第でございます。ところが、昭和四十五年後半から、鉄鋼業界をはじめとするコークス関連産業の不況によりまして、コークスの販売量は徐々に減退傾向にあります。昨今の市況は非常に鈍化してまいりました。このような状況のもとにおきましても、私は、不況にある石炭産業への配慮、セキュリティーの見地から、ただいま申し上げましたように、コークス工場の新設にあえて踏み切った次第でございます。  しかしながら、私どもは、何と申しましても民間企業でありますので、石油糸燃料やあるいは無煙炭のようなコークスの競合燃料と、価格面、品質面において競争してまいらなければなりません。こういう観点から、私どもにとりまして、国内炭、特に原料炭の今後の価格の見通しは大きな関心事であります。先ほども日向社長からお触れになりましたが、私どもは、石炭鉱業審議会において、昭和四十四年に百三十円、昭和四十五年において五百円、昭和四十六年において五百円、千百三十円の国内炭値上げをきめました。ところが、現在私どもが輸入しております豪州弱粘炭は、ちょうど日本原料炭と比べますと千百二十円の価格差がございます。ですから、三年前には豪州炭と同じ価格で日本原料炭は購入できたのでありますが、三回にわたる値上げによって、豪州炭より千百二十円高くなったという状況でございます。石炭産業が徐々に縮小されていく現在の過程におきまして、この価格の上昇を抑制する政策は、労使の協力努力はもとよりでありますが、いまや政府がこの役割りを果たす以外には私は道はないと考えておる次第でございます。特に、需要の大宗である電力鉄鋼向けの需要が激減の見通しにあるとき、政府石炭政策位置づけについて確固たる政策樹立する必要があると考える次第でございます。この場合に、一般炭原料炭は全く別個の需要でありながら、石炭企業収支の観点や価格政策の観点におきましては密接な関連がありますので、この二つを分類して対策を立てるとともに、原料炭の山と申しましても、先生方御案内のように、必ず一般炭も随伴して生産されるものでございますので、石炭政策の見地から相関の配慮をなすべきであろうと考える次第でございます。  また、政府石炭政策についての確固たる位置づけが必要であるということは、石炭鉱業に働く労働者が安んじて国内資源である石炭の採掘に従事してもらうためにも欠くことのできない重大な要件であろうと考えるのであります。  最後に、私は、私ども石炭需要家といたしましては、昭和四十八年度で一応の期限となっております現在の石炭対策費が、昭和四十九年以降にどのように相なるか、それがまだ決定していない現在であります。単に価格の面のみならず、供給面の不安も大きく感ずる次第でございます。  諸先生方承知と存じますが、大蔵大臣の諮問機関であります関税率審議会というのがございます。この審議会におきまして、審議会には日本の一流企業の社長が二十数名委員になっておりますが、昨年のこの審議会の際に、通産、大蔵当局から、四十六年で打ち切るべき石炭対策費につきましては、三カ年延長して四十八年までにしてもらいたいという諮問を受けたことがございます。この石炭対策費は、御承知のように年間約一千億円であります。このために原油関税一キロリットル六百四十円の十二分の十が石炭対策費に回されておることは、御承知のとおりでありますが、この通産、大蔵当局の案に賛成した委員は私一人でございました。あとの委員は強硬な反対意見を述べたのであります。三年、三年と、いつまで延ばすのだ、打ち切るべきであるということで、だいぶもめましたが、私も孤軍奮闘いたしまして、三年間延長になった次第でございます。しかし、四十九年以降については、これは関税率審議会では絶対認めないという附帯決議が付されたことがございます。  政府におかれましては、早急に、四十九年以降の石炭対策の方針を含めまして、需要家石炭使用に協力できるような措置を確立していただきたいと御要望申し上げまして、私の陳述を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  82. 鬼木勝利

    鬼木委員長 以上で参考人各位の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  83. 鬼木勝利

    鬼木委員長 これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。篠田弘作君。
  84. 篠田弘作

    ○篠田委員 本日は非常に御多忙の中を当委員会参考人としておいでいただき、いろいろのお話を承りました。各位のお話を承っておりますと、石炭に対する理解と愛情は持っておるけれども、しかし、結局、結論は、これ以上の石炭はたけないということにどうもなっているようだと思います。  私は主として電力関係の方にお伺いしたいのでありますけれども、ここにけさの朝日新聞を持ってきておりますが、八社の電力会社のうち、北電を除く七社が、昭和四十九年以降は石炭はたかない意向である、また昭和四十九年までにも年々減らしていって、最後にはたかないという。数字は、新聞の数字でありますけれども、現在八百六十二万トンの発電用の石炭がたかれておる。これは昭和四十六年の数字であります。そうしますと、北電は昭和四十六年には三百六十万トンの石炭をたいておりますが、ことしは三百万トンに減らされておる。そこで、八百六十万トンの石炭の中から、かりに昭和四十九年に、このままいくといたしまして、北電の三百万トンだけが残るとすれば、五百六十万トンの石炭というものをたかなくなる。これは、電力会社の事情その他ということを抜きにいたしまして、石炭という問題だけから見ますと、ほとんど致命的な問題だと私は考えます。  そこで、その理由は、石炭石油の比較であるとか、あるいはまた経済的なものもあります。しかし、主として公害問題が中心になっていると受け取ります。公害は最近非常にやかましくなりまして、公害と消費という問題はたての両面でありまして、公害の問題を解決しなければ消費も伸びない、しかし、消費が伸びなければ石炭産業は全滅である、こういう関係にあるわけであります。そこで問題は、公害をどうしてなくするか、減らすかという問題に石炭の消費の問題がかかっておる。いま、それでなくとも条件の悪い石炭を使うということについては、各社ともある程度の犠牲を払っておられるということはわかりますけれども、しかし、石炭は、何といいましても日本固有の燃料であるし、かつては、終戦直後におきましても、各電力石炭の山を回って石炭生産を督励されたこともある。もし万一、世界情勢の変化とか、あるいは石油問題に何らかの変化があった場合に、やはり固有の石炭というものは必要であるという私たちの判断であります。  いま一つ、いろいろの欠陥は持っておりますけれども日本にとりましてこの石炭というものは基幹産業であるし、これをつぶすということは絶対できないだろう、これは私たちの信念であるわけです。いままでのお話を聞いておりますと、与えられた条件の中で対策が立てられているという感じはいたします。いま安西さんのお話に、われわれが協力できるような政府対策がほしいということを言われました。われわれも十年以上この問題と取り組んでおりますが、どうしたらあなた方が協力ができるのかという具体的な考え方をひとつ出してもらいたい。石炭をたかないという結論の前に、石炭をたくには、どうしてくれればたけるんだという、そういう結論を——結論でなくてもけっこうですけれども意見を出してもらいたいと思います。  私らの考え方から言いますと、石炭の公害のおもなるものは、亜硫酸ガスとか、ばいじんとか、そういうもののようであります。科学が進歩いたしておりますし、また、それらの設備についても、いまはアメリカ製のものが非常に高いようであります。しかし、これをもし日本で製造してたくさんつくるということになれば、コストも下がるし、それも全部消費者側でそれを引き受けなければならないということも私はないと思います。その設備については、政府にどれだけの助成をしてもらう、あるいは消費者の側においても幾分の協力はするとか、あるいはまた、石炭経営者の中でも何分の一を出すとか、そういう話し合いというものが少しもないままに、八電力のうち七電力が四十九年から石炭を使わないという申し入れをしたということは、石炭業界に対して非常な深刻な打撃を与えるばかりでなく、労働者に対しても経営者に対しても、経営のあるいは労働の意欲を失わせる。だから、自分たちの都合だけでこういう爆弾声明が出されて、それが全国の新聞に載るということは、その反響というものをお考えになったならば、電力業界というただ一つの立場に立ってこういうことをやったということは非常にまずいことじゃないか。先ほど来言われたように、長年石炭を愛し、石炭産業実情に対して同情を持っているというならば、もう少し影響力の少ない方法で、あるいは徐々にでもいいけれども、だんだん話し合いを積み上げたその結果、政府に対しても交渉する。いま安西さんの言われたように、どこまで政府がやってくれるんだ——この問題は、はっきり言いまして、成り行きだけでこういう意見を出したものであって、政府に対してそれではどこまでも協力をしてくれるか、われわれとしては、そういう粉じんとか、あるいはまた古い発電所の施設とかというものについて、あらためて金を出してやることができるとかできないとか、そういうことをはっきり述べて、そして通産省事務当局ばかりではなく、そのために政治というものが存在しておるのであるから、われわれ石炭特別委員会に対しても、あるいはまた、その他の政府の首脳に対して直接お話しを願ってもいいけれども、そういう手続が一つも踏まれてない。これでは、もうはっきり言って、真珠湾の攻撃と同じで、言いかえれば奇襲攻撃と同じであると私は考える。お歴々がそろっておられながら、こういったような大きな——少なくとも新聞で五段で扱っております。一流の新聞が五段で扱う記事というものはたいへんなものなんだ。その影響力というものは非常に大きい。それを、少なくとも昭和四十九年以降は石炭をたかないという、そういう声明というか、申し入れが行なわれたということは、非常に重大であると思いますが、その責任についてどういうふうにお考えになっているか。これは加藤さんからお伺いしたい。
  85. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 先ほど陳述の中で申し上げましたように、心ならずもかようなことになるのを心配すると申し上げた所存でございます。私どもも、先ほど来お話がございましたように、同じエネルギーの中の者といたしまして、俗語で申しますれば、年寄りから聞いておりますように、きょうは人の身あすはわが身でございまして、何とかしてわれわれも御協力申し上げたいという気持ちには変わりございません。るる申し上げましたように、なかなかいまのような情勢ではむずかしくなるということを申し上げたのでございまして、どうしたらこれを打開するかというお話でございましたが、私は、何をおいても地域の方々の御理解を得ることがまず第一かと存じます。もちろん、それには、ばいじんをいかにして少なくするか、あるいはSO2をいかにして少なくするかということが大きな問題かと存じます。したがいまして、われわれといたしまして、このSO2なり、ばいじんの規制強化が出るだろうというお話がありましたつど、その筋に、これではなかなか——重油はもちろんでございますが、石炭もたけなくなりますよということを申し上げたわけでございます。しかし、いろいろの情勢で、先ほど来申しましたような強化の一途をたどってまいる。これは将来も強まることはあっても、なかなか弱まることはないだろう。  もう一つは、御案内のとおり、てまえどものつくりました石炭火力は、当時、需要地点からいきまして最も近いところに、いわゆる大体一区域を前提といたしまして火力発電所をつくり、それを石炭火力で発電をいたしたというようなことでございまして、大体そのときの容量は十万キロから十五万キロであったかと思うのでございます。その後、技術革新に革新を重ねまして、先ほども申し上げましたように、一基五十万なり百万になる、これが非常に能率がいいということで、これをベースロードにいたしますと、日を追うて、いわゆる石炭火力だからというのではなくて、能率が低下しておるということにおいて運転時間数が減ってまいる。それがひいては使用量の減少を見るということでございます。  ここであるいは御疑問になるかと存じます。電源開発さんの発電所は大体いけるのじゃないか、なぜ電力会社ばかり減るんだ、こういう御疑問もあるいはお持ちかと存じますが、そもそも、先ほども総裁からお話がありましたように、電源さんは石炭火力を初めから国策協力してつくるのだ、あるいはまた、一会社に送るのではなくて、その地域の二、三の会社を前提としてその地域に発電所をつくられたように承知をいたします。したがって、若干過密地域から離れたところにつくっておいでになる。いわゆる地域的情勢と、それからできましたそもそもの趣旨からいって、われわれがいま当面しているほどの地域的な問題は、ただいまのところでは起こっていないように承知をいたしております。  もう一つは、先ほどもちょっと総裁からお触れになりましたように、この電力は全部電源としては石炭をたかなければならぬから、大体これくらいの発電はしたい、われわれで言いますと、負荷率と言っていますが、大体七五%くらいはぜひたきたいんだ、発電をしたいんだ、こういうお話でございまして、各電力会社とも電源さんの電気を優先的におとりするというような気持ちも持っておるようなわけでございます。それらが、電源さんのように横ばいで使用料を持続するということにはなかなかむずかしいという事情にあることも、御了承いただきたいと存ずるのでございます。決してわれわれはただ経済的の問題のみで申し上げるのではなく、もちろん、企業である以上、経済の問題は一日も忘れるわけではございませんが、しかし、腹には、相見互いといいますか、ともにエネルギーのものの一員としまして、できるだけのことはさしていただきたい、かようなつもりでおるものでございます。  以上、終わります。
  86. 篠田弘作

    ○篠田委員 ばいじんとか亜硫酸ガスというものの規制が、将来強まることはあっても、弱まることはないだろう、その規制の中で、粉じんとか亜硫酸ガスを出す石炭を、しかも古い施設の中でたくということは非常にむずかしい、こういう事情なんです。それはよくわかるのです。しかし、むずかしいということと、不可能ということとは違うわけでありますから、いまのままでやっていけばむずかしいけれども、しかし、先ほど安西さんが言われたように、協力し得る体制を政府につくらせれば、科学も進歩しておりますし、同時にまた、機械諸施設なども国内的にやれるようにやれば、これは私は不可能じゃない、そういうふうに考えます。電源開発が初めから国策で過密地帯から離れたところでやっておる。電源開発の問題で申し上げますと、私、戦後いわゆる考査特別委員長をしておりましたとき、電力界は、御承知だと思いますが、日発から九電力に分割したときの責任者の一人なのです。ですから、そういう意味で、この独占的な一つの日発というものから九電力を分割したわけです。ところが、先ほども申されましたが、電力は私企業であるという考え方ですね。これは考え方根本でありますけれども、確かにそれは形の上で私企業だけれども、しかし、精神の上ではやはり半公共事業である。それならば、政府に対してもう少しものが言えるのじゃないか。われわれも、それはそういう意味におきまして石炭問題もありましょう、しかし、また反面に、コストが上がれば工業生産力も上がるというむずかしい事情もありましょう、そういうものをいろいろ相談して、いまはこれ石炭の問題ですけれども、何かそこに打開の道を、ばらばらに、私企業だからそんなことはできないんだという割り切り方でなしに、もっと話し合いをする方法はないものであろうか。それから、人間の知識なんていうものは、実際、一人一人持っているようで、あまり持っていないのですよ。だから、各産業界が話し合えば打開の道もあるんじゃないかというのが私の考え方です。先ほど少し強いことばで申し上げましたが、電力界の立場はわかるとしても、一産業の立場から他産業が致命的な打撃をこうむるようなそういう申し入れをどうして簡単にされたか、その責任はどうお考えになるかということをいま聞いたけれども、それに対するお考えは一つも聞くことができなかった。これは責任があると思うのですよ。これだけの大騒ぎをさせるということは、それは何もきょうきのうしなくても、適当な時期もあるでしょうし、それからほかの業界にはほとんど影響力といいますか、そういうものはあまり考慮されていないという感じを新聞記事によって受ける。それには、ここに書いてあるとおり、通産省も、石炭業界に対する影響をおそれて、徐々にひとつやってもらいたいという申し入れをしているようです。そういう点につきまして今後話し合いができる余地があるものかないものか、ひとつ御意見を承りたい。
  87. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 先般来、昭和五十年度の出炭を前提としまして需要はどうあるかというような話も聞きました。私どものいまの情勢からいけばそうである。しかし、先ほど来申し上げますとおり、われわれとしましても、できるだけの御協力はさせていただかなければならないということにおいて、いませっかく、どうしたらいまの相当の需給ギャップを埋めることができるかというのを真剣に検討いたしておるようなわけでございます。  それにはどういう方法かといいますと、情勢の許す限り重油混焼率の調整であるとか、あるいは、どうしても年内にたけなければ、その貯炭場の許す限りにおいて何らかの繰り越し貯炭ができはしないか、あるいは、地域によっては重専火の繰り延べができはしないか、あるいはまた、地域によって、その発電所によって設備の改造ができはしないかというようなこと等を基といたしまして、これ以上何らかの増量ができはしないかというようなことをただいま真剣に検討いたしておるような実情でございます。  以上であります。
  88. 篠田弘作

    ○篠田委員 そうしますと、この新聞に発表されておる、昭和四十九年以降は石炭をたかない意向であるというこの方針は、固定した、全然動かすことのできないものではなくて、情勢の変化あるいはまた政府考え方等によりましては、エラスティックに考えることもできる、こういうことですね。
  89. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 先般来の委員会なりあるいはその筋のお役所からも、もう少し考えてみたらどうだというような話もたびたび承っております。したがって、いま委員から御質問いただきましたように、何らかの方法において少しでも増量ができはしないかということを真剣に検討いたしております段階でございます。  以上です。
  90. 篠田弘作

    ○篠田委員 終わります。
  91. 鬼木勝利

    鬼木委員長 岡田利春君。
  92. 岡田利春

    ○岡田委員 参考人には参考意見をありがとうございます。率直に、ずっとお聞きいたしておりますと、ようやく頂上に回ったような感じも非常に強いような気で実は聞いておりました。そこで、時間もありませんので、それぞれ分けて御質問いたしたいと思いますが、初めに日向参考人にお聞きいたしたいと思います。  先ほどの陳述をずっと冷静に聞いておりますと、きわめて石炭に対する一定の見方、そういうものを持ちながら、また住友グループの中でも、石炭問題では非常に積極的な理解の中でずいぶん政府にも協力をされた、私自身こう承っておるわけです。  そこで、述べられたことばで、これ以上値差が開くということは非常に問題がある、ここに非常に重大な意味が含まれておるのではないか、こう私は聞いたわけです。いままで述べられた値差は、これがどんどん国内炭と輸入原料炭の値差が開くことは問題があるのだ、しかし、国際的なエネルギー動向から判断いたしまして、特に世界的な原料炭の価格を引き上げたのは日本だともいわれておるわけですが、しかし、私は、少なくとも原料炭は毎年上がっておる、こういう傾向にあることだけは間違いがないと思うわけです。再び円の切り上げがあるかどうかは別にして、ことしも上がっておるわけですし、来年もまた、たとえばオーストラリアの労働条件の締結内容一つ読みましても、あるいはまた、プライスリーダーであるアメリカの実情を考えましても、高ければ大体一ドルくらい上がっていくのではなかろうか、最低で、大体日本の金に直して百円程度は上がると見なければいかぬのではないか、こう私は実は見ておるわけです。したがって、価格政策の面では、先ほどの、これ以上ということばから判断しますと、これからさらに外国原料炭が上がっていく見合い分については、いますぐ御返事がいただけるかどうか、十分検討して、協力の可能性ありと、私自身の知識からこのことばをそう読んでみたおけですが、この点についてはいかがでしょうか。
  93. 日向方斉

    ○日向参考人 お答えいたします。  現在、これは弱粘同士でありますが、輸入弱粘と日本の国内弱粘と比べますと、平均して千三百円ぐらいの開きがあるのであります。ところが、最近の円の切り上げを計算に入れますと、もっとその開きが開いておるのであります。これが一点。  それから、現在行なわれておる引取交付金でございますが、これはいまの政策ですと、もう四十八年以降なくなることになるのですね。これも一つの問題であります。  それから国内炭の採炭費もだんだん上がっていくと思います。五十年ごろになりますと、現在よりも少なくともトン当たり二千円ぐらい上がっていく。  こう考えていきますと、現在すでに開いておること、円の切り上げによって相対的にもう一つ開いておること、国内の政策、これはぜひお願いしなければならない問題になりますが、これが一応現在では切れることになっておること、それから国内の採炭費がこれからだんだん上がっていくことを考えますと、えらい格差になっていく。そういうものをそのまま鉄鋼業界にかぶせられたのでは、とてもこれは負担できないという感じがいたしますので、少なくとも現在の買取補給金のようなものを出していただいて、なおかつ輸入原料炭との格差、これも広がらないようにしていく、そういうことを前提にすると、まあ現在われわれの考えておる数字、かなり少ないものでありますが、それにも多少の弾力性がないとは言えませんが、しかしながら、この数字を大きく見ていくことは、国内の原料炭の採炭費が非常に上がっていくことになるのです。これらの要素をいろいろかみ合わせてみますと、私は、五十年にゼロになるとか、そんなようなことは毛頭考えておりませんが、その引き取り得る限度は非常に少なくなっていくだろう、また、そのためにも政府において相当思い切った助成策を考えていただきたい、こう申し上げておるのであります。
  94. 岡田利春

    ○岡田委員 関税は、先ほども安西さんから言われましたけれども、四十八年のものがさらに三年延長になりましたから五十一年。ただし、石炭石油特別会計ということで五十一年までこの特別会計は存続されることになる法律案が国会に出ておるわけです。そういう点を拝見して、いま五年間の政策を立てようというわけでありますから、五十二年までの政策、そういうように限定的にものごとを見ていいのではないかと思うわけです。したがって、当然負担増対策はするという前提が立てられなければなりませんし、そういう意味で、先ほど実は私、これ以上の値差が開くことはと言うから、開かない場合にはどうなのかという設問を立ててみましたし、豪州炭でも、これは上がることは間違いがない、こう私自身見ているものですから、その点について実は聞いたわけです。したがって、私は、そういう何か一定の立て方をして、そしてどこまで協力できるのだ、それと財源はどの程度あるのだ、その点、一体安定生産体制はどこまでとれるのか、その結果、では需要もどうするかというぐあいにきめていかなければ、石炭政策というものはとうてい立たないと思うわけです。まして、日本の場合には石炭の輸入も無関税方針できておりますし、油だけの財源で石炭対策をやっている、こういう面、いろいろな諸外国の政策等も勘案して、そうしてわが国としての視点を、これからの第五次政策、五年間をどこに立てるかという意味で、生産者も需要業界も、また政府も、ほんとうに裸になってこれからの第五次政策をつくるということでなければ、私は、また二年ぐらいやってその政策は瓦解するのだ、こう実は思ったものですから、お伺いいたしたわけです。  私自身は、意見を申し上げておきますと、いま申し上げましたように、一定のそういういままでの前提条件を備えていて、これ以上格差をさらに大きくしないということは問題があるが、国際的な価格動向とにらみ合わせて、財源と原料炭動向で、許容できるものについては、上がった見合いぐらいの分については許容しつつ、原料炭の安定生産供給体制をとるということができないだろうか、ここにおのずから結論が出てくる、こういう意見を持っておりますから、お聞きいたしたわけです。  次に、電力関係にお聞きいたしたいのですが、言われておることはごもっともであります。しかし、電力業界自体も、単に石炭問題のみならず、あらゆる意味でいま多くの問題をかかえていると思うわけです。私どもは、電力業界が提案したエネルギー政策に対する要望書、「電力供給力確保についての要望」もいただいておるわけです。私ども単に石炭だけのサイドではなくして、総合エネルギーの立場からもやはり見ていかなければならぬと思っているわけです。これを読みますと、電気事業連合会の要望では「公害防除対策に対する行政指導」「国あるいは都道府県の排出規制値を遵守するものであります限りは、建設計画が認められますよう、国の強力な行政指導が講じられますよう要望いたします。」あとから詳しくまた「公害諸規制運用上の配慮」という要望が出されておるわけです。それと、いわゆるきょう陳述された面を比較いたしてみますと、論理的に見て、こっちは、もう基準には合致しているのだけれども、特別の住民パワーがあるから後退せざるを得ません。こっちのほうは、ひとつ明確に規制するように行政指導してください。論理的にはやはり合わない面があるのではなかろうかという感じが実はするわけです。  それと同時に、公害問題は、いまわが国の場合には質的に問題をとらえておりますけれども、量的に問題をとらまえる時代に私は入ってきたと思うのです。特に過密地帯の川崎や東京なんかでは、やはり総排出量ということを問題にするわけですから、量的な把握ということが問題になっていくわけです。そうなると、一体わが国のエネルギーというものは、そういうものがもう安定的にほんとうに確保できるのか、できるという自信のある方はちょっといないのではないか、これからやらなければならないというところにいま立たされているのだと思うわけです。そういう意味で、やはり注意深くこの問題に対処していくという姿勢が私はどうしても必要ではないかと思います。  それと同時に、前提条件としては、わが国が関税制度をとりましたのは、別に審議会が答申したからではないわけです。各業界の要望があって、重油消費税の答申を変えて関税にした。そして自動車にも石炭財源を負わした。ガソリンにもかけた。原重油にかけたわけですから。しかし、ヨーロッパ三国の政策というのは、すべて重油消費税、二千五百円、二千円、あるいはまた灯油まで消費税をかけてこれを財源にしておる。私は、やはりいま日本石炭産業の置かれている内容、体質を見ますと、せめてヨーロッパ三国の政策というものをある程度頭に描きながらこれからの政策を考えていかなければならぬではないかという気が実はするわけですが、そういう面で、やはり財源の立て方からいっても電力会社はヨーロッパ三国に比べるとメリットがあるわけですね、原重油でいっている場合と消費税でいく場合と違いがあるわけですから。そういうような面もやはり十分冷静に検討する必要があるのではなかろうか。あるいは、では、いまエネルギー問題で経済原則を貫いているという明確な国は、自由世界でどことどこなんだろうかという点もまた考えてみなければならない。過密でやはり資源のないヨーロッパ三国等を考えてみる場合に、決して経済原則が貫かれておるというものではないはずです。こういう点もまた考えなければならない。そしてまた、歴史的な政策の経過からいえば、石炭と重油の混焼をつくる場合においても、これはやはりある一定量の石炭は引き取るという協力前提があって、いままでいろいろな政策が運用されてきた。たとえばボイラー規制法を廃止する場合においても、あるいは政策を立てる場合でも、きめられた一定量は引き取る、これ以上のものについては負担増で金を出します、もちろん、それが十分かどうかの問題は別でありますけれども、そういう前提でやはり立てられてきた、こういう点をわれわれは注意深く考えていかなければならないのではなかろうかという気がするわけです。  先ほど電発からもお話がございましたけれども、磯子の場合には、第二号機についてはこれはまかりならぬというような空気も非常に強かったわけですが、むしろ私どもも前面に出て、ぜひ石炭政策を実現するために協力してもらいたいということで、一定の示された条件下におさめて、今日その基準を守りながら二号機が運開した。われわれは直接横浜市まで行ってお願いした。そしてまた、市議会なんかの答弁を見ますと、石炭については、これこれの基準を守っている限り、これはやはり国の政策にわれわれは協力するという気持ちがあるから、どの程度の基準が守られるならばこの発電所は認めていく、こういうことがやはり横浜の市当局から市議会へ説明されている。こういう点を考える場合に、やはり電力会社としても、一定の基準は基準として協定基準は守るという態度の中で、そういう立場をむしろはっきり説明していくということが必要ではないか、そうでないと、何か公害問題が出てきたからこれをさか手にとって高い石炭を切り捨てたという印象からどうも免れないような気が実はするわけなんです。  たとえば、重油混焼の場合には非常にユニットが小そうございますけれども、同じユニットでいろいろ比較をすると、同じ十五万なら十五万で比較をしていく場合には、もちろんその中に発電コストの差はございますけれども、それをやはり国策協力するということで吸収できないはずが私はないと思いますので、やはりそういうものごとの考え方というものをぴしゃっとしておかないと、今後いろいろな立地政策についてむしろ問題が出てくるのではないのかという気がします。たとえば、言うとおりにしますという原則でいくならけっこうです。そのかわり、油でも巨大な重油専焼火力ができなくなります。まして、原子力発電所などというのはたいへんな問題になってきます。やはり一貫した姿勢、そういう施策に対する考え方というものが貫かれておらなければならないのではないかと思うのですが、この点については加藤さんから御意見を承っておきたいと思います。
  95. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 日本のエネルギーをどうするかという大きな点から見るべきだというお話でございますが、私は全くその御意見に同じでございます。われわれといたしましては、いわゆる電気エネルギーは、あらゆる産業界、あらゆる社会、あらゆる民度に影響するから、エネルギーのいわゆる電力供給の安定はもちろんでございますが、この発生の途中において、いわゆるこのごろいわれておりますクリーンエネルギーを確保するということが一番大きな問題になってまいっております。  特に、いまも御指摘ございましたように、石炭といわず重油といわず、あるいは原子力といわず、それが立地に非常に困っているんじゃないか、そのとおりでございまして、われわれは、いまのような情勢でまいりますと、昭和五十年度以降の電力供給ということにつきましては非常に危惧しておるものの一人でございます。したがって、それが国の唯一の資源であるとかいうことはさておきまして、われわれも何らかこの石炭を通じて、少なくとも要望されておりますクリーンエネルギーを獲得する一つの手段にしなければならぬということについては、先ほど申し上げたとおりでございます。ただ、いま私どもの一番心配しておるのは、感情的といいますか、もう石炭というものはたいてもらっては困る、いまわれわれせっかく集じん装置をつけておりますものの、一〇〇%これを取り除くということはなかなか至難でございます。逆に、地域の方はほんの一つのばいじんでも困るという話でございまして、先ほど申しましたとおり、この点、地域の方々の御理解を得ることが一番大事であると存じます。この点につきまして、何をおいてもそれをやるのが私どもの責任でございますから、われわれは力一ぱいの努力をしておりますが、われわれの努力の至らないところといいますか、信義を得る上について足らない点があると思いますが、電力会社が言っただけでは信用できないということでございまして、せっかくいまお役所にもその点の御理解を得る御努力を、何らかの意味において、手段においていただくようにお願いをいたしておるような次第でございます。先ほど申しましたとおり、われわれとしましては、いまわれわれの置かれている現状からはそういうことになる、しかし、唯一の資源をこの上とも温存するにはというお話もございまして、先ほどの篠田先生にお答えしたとおりでございます。その点は変わらない点を再度申し上げておきたいと存じます。
  96. 岡田利春

    ○岡田委員 先ほど北電からもお話を聞いたわけですが、私は、こういう特殊な環境の中で石炭火力ということを考えると、できればこれは三社が、あるいは一社のほうが非常にやりいいなという感じを率直に持つわけですが、現実に九電力、電発を入れて十電力が存在いたしているわけであります。北海道では、もちろん灰の捨て費を除いて、昭和四十五年の実績で見ますと、石炭がカロリー当たり四十九銭六厘、それから油が七十二銭六厘、こういう数字になるわけです。九州の場合で言いますと、九州は石炭が六十二銭八厘、それから油が六十一銭、こういうことになるわけです。そこで、そういう面から見て、ここ二、三年で九州のほうも石炭をたかない、これはおそらくハイサルファであるという問題が大きいのだろうと思うのですが、北電の場合には送電線がつながっていないものですから、供給力一八%も持って、そしてほかと同じような条件でやらなければならない。それでなおかつここまで持ってこれたということは、安い石炭をたくことができたからだ、逆にこういえるのではないでしょうか。やはり産炭地であることで、石炭がそういう大きな使命を果たしたいということは、私はこの数字からいってもはっきり言うことができると思うのです。  ただしかし、先ほど述べられておるように、供給不安定といいますけれども、これは五千カロリー前後のローカロリーの炭をたくということなものですから、そういうことで問題が起きるわけです。これが、ハイカロリーの炭を含めてたくという立場に立てば、供給問題についてはそう大きな問題は出てこないはずです。今度伊達火力もいま問題になっておりますけれども、たとえば高カロリーをたく場合には、輸送賃が、荷役料と海上運賃だけでも、北海道から見れば、東京に持ってくるのに八百八十六円かかるわけです。それを節約して、北海道の内陸運賃だけをかけて、ほんとうは北海道でたくと一番いいわけです。それだけ安くなるわけです。しかも混焼にしておけば、油は、やはり北海道の海岸地帯ですから何ぼでも供給できる。いざという場合にはそういう供給体制も整えられる、こういう条件は釧路でもあるいは苫小牧でもあるわけなんですが、残念ながら線がつながっていないということ、それと、北電自体としては、電力会社として、やはり原子力も重油専焼も、技術革新の意味からやりたいという気持ちは十分理解できるわけです。そういう意味で、北電の場合には非常にそういう問題をかかえておるわけですが、私はそういういま申し述べた理屈からいって、先ほど釧路火力の問題を述べられていますけれども、私この解決に当たった一員としては、北電にはそう損をかけていないという気持ちで実はおるわけですが、これは余談ですけれども……。そういう意味で、何らかのやはり九電力全体として北海道を考えてやる。もちろん、会社は別でしょうけれども、それは方法はあると思うのです。そういう九電力、十電力連帯という意味で考えていくという姿勢が具体化できれば、九州と北海道については、海岸地帯であれば、むしろ船賃かけないで石炭をたけるではないか。ここをいままでねらっておったのですけれども、これは一応九電力のほうで石炭火力施設があるから引き受けろということであまり議論にならなかったといういきさつがあるわけなんです。そういう点について岩本さんはどういうお考えか、承っておきたい。
  97. 岩本常次

    ○岩本参考人 いまの岡田先生の御質問でございますが、これはお話しのように、私どもの会社が、いままで非常に立地条件が悪い中で、一応現在までいまの電気料金の水準でやってまいりましたのは、一つには、おっしゃるとおり、石炭が地元でありますために、また、その使っております炭が、無洗炭の非常にカロリーの低い炭でありますために、値段が安い、こういうことでやってまいったわけでございます。したがいまして、今後高い、高カロリーの炭をそれじゃたいたらどうかというお話でございますが、そういたしますためには、いまの発電所ではやはり設計が低品位の炭をたく設計になっておりますので、商品位の炭をたくとすれば、ある程度改造なりその他をしなければならぬということが一つ問題でございます。  その点と、それからこれはまた石炭の値段の問題が出てまいりまして、やはり高カロリーの精炭になりますと相当値段も高くなると思いますが、当社といたしましては比較的石炭をたくさん使っておるわけでございますので、当社の経理の影響に及ぼすところは非常に大きいかと思います。そこで、いまのところその高品位の炭をたくかどうかということにつきましては、すぐお答えはできないのでございますが、先ほどあとのほうでおっしゃいました十電力といいますか、電力全体の考えはどうか、こういうことにつきましては、これは私が申し上げるのじゃなしに、連合会会長の加藤さんからお答えいただいたほうが適当かと存じますので、加藤さんにお願いできたらと存ずる次第でございます。
  98. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 われわれ同業者の同じ仲間としまして、いまの石炭には協力しなければいけない。しかし、お説のように北海道の炭というのはカロリーが少ない。灰分は少ないのですけれども、カロリーがない。これを遠方に持ってくるということは、いまも御指摘になりましたように、船をたくということにもなりかねないと思うのです。したがって、やはり産炭地で、ある点までは遠いところの分をかわってというようなお気持ちもあって、全体としまして何がしかの気持ちを表明しておる現状でございます。その気持ちがそれでは足るかどうか、それがいつまでやるのかということはつきましては、これはいろいろ見方もあると思いますけれども現状は何がしかのその気持ちはあらわしておる、これが現状であります。
  99. 岡田利春

    ○岡田委員 たくさん聞きたいことはありますけれども、時間がありませんから、大堀さんに一言だけ。  お話を聞いておると、こういう状況なんですが、私は、やはり先ほど加藤さんの言われた、九電力側としても努力をする、北電側の要望も出されておる、そういうトータルで、いろいろまた九州も含めて考えてみる。そこで、電発は国の政策石炭をたいておるわけですが、先ほどのお話でいきますと、ある程度の期間は何らか調整できても、ちょっと先を越すと、新しい石炭をたく火力をつくらなければ、これはやはり問題が残るということになっていくのだと思うのです。したがって、産炭地あるいは電発という問題が当然その場合に注目されてくるわけですが、もちろん、これは政府施策よろしきを得なければならぬという問題がございましょうし、そのほかにもいろいろ理由があろうかと思いますけれども、そういう意味で、ある一定の条件が整えば、これは電発としては新しく石炭火力をつくる。あるいは北海道にいってつくるかもしれない。送電線ができなければいかぬですけれどもね。あるいは九州地区でつくるとか、そういう点について検討されておることがあるかどうか。  私は、日向さんいろいろ手当てされておると思いますけれども、将来、原子力製鉄にならない限りは、抱き合わせで外国から一般炭も引き取れという時代が来ると思うのですよ。その場合に、日本の場合、電力でたかなければいかぬわけですから、そういう点も考えながら、長期的な戦略構想をやはりもう一度立てるべきではないかという気持ちがあるが、どうか。  それから安西さんに。非常に安西参考人意見を聞いて私も意を強くいたしておるわけですが、エネルギー問題は、やはり許容限界までは産業連帯とか国際連帯とか、あるいは国際信義とか、やはり日本は安いものなら何でもたくけれども、高いものは全然もう投げるのだということでは、国際的に通用しないわけですから、そういういろいろな連帯あるいは信義に基づいて先ほどの方針もとられておるのではないかと私は考えるわけですが、要するに、わが国の資源で最も多いのは石炭と石灰石で、これに匹敵する資源はないわけです。まして、石炭はエネルギーですから、原料炭を掘れば一般炭は出るし、原料炭だけを考えてもいかぬわけです。ですから、鉄鋼電力、それには電発を通じ、あるいはまた国の施策、ガス業界、こういう全体的な連帯の上に立って、やはりこの日本石炭というものを国際的にも指弾のないように持っていくということが大事ではないか。そういう次元で率直な気持ちをお聞かせ願いたいと思うわけです。
  100. 大堀弘

    ○大堀参考人 新しく石炭火力をつくるという問題については、実は私としては全く考えていなかったことでございます。これは実はいまの石炭火力をやります際に、私、電発に参りまして最初の仕事でございましたので、あらゆることを関係さしていただいたわけですが、当時、早くつくれというお話がございましたけれども、結局後期に回ったわけでございますが、現在考えてみますと、やはり西方面はもうあれが限度であったのではなかろうか、それ以上につくったら、おそらくこれは石炭のほうで供給できないというような状態になったのではないかというふうに思いますので、あちらのほうで新しくつくるということは、まず国内炭に関してはちょっと問題にならないのではなかろうか。私は率直なことを申し上げます。北の方面については、炭の関係は条件は多少よろしいと思うのでございますが、需要がどういうことになるか。本州北海道連系線をつくるという計画がございまして、私のほうでも、五十二年完成を目途に、東地域の電力会社と相談をして計画をいたしておりますが、これはむしろ電気の安定をはかる意味で、かりに北海道に事故があっても、すぐに内地から応援がいく、あるいは東北の北部に事故があってもすぐ電気が流れるといった意味の安定をねらいにした連系線でございまして、電気を送るという考え方ではないわけでございます。むろん送れるわけですけれども、送るという考え方ではなくて、そういった電気の安定ということを目標にしてやっておるわけでございます。北海道でかりに石炭火力をつくってみて、さてその電気を地元で消化することが可能であれば、また話は考える余地はないことはないと思うのでございますけれども、これを内地へ持ってくるということになると、かりに三百キロ、四百キロの地点まで持ってくる、発電地点ぐらいまででもおそらく建設費が三百億ぐらいかかりまして、発電所の建設に加えてそれだけのものがかかってくる。私ども何も経済ベースばかり申し上げておるわけではないのですけれども、あまりに大きく違いますと、これはやはり需要サイドとしては困るという御意見になると思うのでございます。石炭火力五台ありましたときも、実は六百億金がかかりまして、そのうち百億は政府出資をいただいたのです。しかしながら、それにもかかわらず、でき上がった電気をいま電力会社が売っておりますけれども電力会社でおつくりになるのに比べると、約二割くらい高くなる。相当私どもは安くつくったと思っておりますが、それでも高くなるわけです。結局、石炭火力の施設費が、非常に石炭のためによけいな設備をやらなければいかぬ。それから炭価が問題になる。炭価が高い。それから人手も荷役その他でよけいかかりまして、いろんな意味でどうしても高くなってくる。そこへ持ってきて、送電経費をかけるということになると、常識的に考えた範囲で、これは需要地が非常に近ければよろしいのでございますけれども、北海道で起こして東京まで持ってくるというのは、これはたいへんな距離でございます。東北の相当なところまで持ってきても、八戸まででもおそらく三百キロ以上、四百キロ近くあるのじゃないかと思います。現実的にはなかなかむずかしい条件があるのじゃないかと思うのでございます。これは私、ここで思いついただけで申し上げるのでございますが、むしろ、できれば、現在あるものでたけるだけたいて協力するということが、私の立場では望ましいと思いますけれども、しかし、事情はまたいろいろおありのようですから、新しいものをつくるという点については、そういう感じを持っております。
  101. 安西浩

    ○安西参考人 岡田先生は石炭政策の権威であります。ただいま御指摘になりました石炭政策を国際的次元に立って考えられないかという御意見でございましたが、全く同感でございます。
  102. 岡田利春

    ○岡田委員 時間がないから、終わります。  どうぞひとつ、供給予備率が少ないときには心配するな、広域融通電力でちゃんとやる、同じように融通電力料金というものもあるし、電発さんが建てるとすれば、やはり値段の関係、売電価格の関係もあるわけですから、そういう意味で、石炭も、そういう総合的な融通、あるいはまた、長期的にはやはり東北及び北海道がエネルギー供給基地になっていくのじゃないか、新全総を見ましても。やはりそういう展望に立って、次元を高めてものごとを考えるというものがないと、石炭政策はもはや成り立たないと思いますね。そういう点、特に私は皆さんに期待をいたしまして、終わりたいと思います。
  103. 鬼木勝利

    鬼木委員長 八木昇君。
  104. 八木昇

    ○八木委員 二、三の点を承りたいと思うのですが、最初に電気事業連合会の加藤さんにお答えいただきたいのです。  最初にちょっと確認したいのですけれども、けさほどの新聞で、電力業界は、現在八百六十二万トンの火力発電用炭の引き受けをしているが、昭和四十七年度には四百八十万トン、約半減、昭和四十八年度には三百七十万トン、昭和四十九年度に二百五十万トン、昭和五十年度には二百二十万トン、こういうふうに石炭の引き取りを減らすという、そういう報道であったと思うのですけれども、事実そのとおりでございましょうか、そのような決定電力業界のどういう機関でなさったのでございましょうか。たとえば各電力会社の社長会議とか、いろいろあると思うのですけれども、その点をちょっと初めに承っておきたいと思うのです。というのは、もしこのとおりであるとするなら、ことしの一般炭生産が千三百五十万トンですか、こういわれておりますから、そういう状態から考えますと、電力会社の電力用炭の引き取りが三年後には四分の一に減るということは、これはもう事実上炭鉱はつぶれろというあいくちを突きつけたような感じを受けるわけですよ。そこで、そういうような決定は、電力会社のどういう機関で決定をされたのか。そして、それは、先ほども質問が出ておりましたが、一応の決定ということなのかどうなのか。そうしてその決定に基づいて、どの方面に対して今後どういう動きをなさんとしておられるのか。もっと言いますと、通産省やその他官庁方面やあるいは石炭鉱業審議会方面に働きかけるということなのか、それとも、あるいは石炭業界をはじめ、鉄鋼業界あるいはガスとかいうような、石炭との関連のある業界やその他といろいろ話し合いをするというおつもりなのか、その辺をまずちょっとお答えいただきたいのです。
  105. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 私の承知いたしております範囲におきましては、このたび体制委員会で五十年度までの電気事業界における所要炭量を報告するというお話がありまして、それをもとにしまして各電力会社にそれぞれの会社の見込み所要炭量を電気事業連合会で集計をいたしました。それをこの体制委員会に出しました。こういうことでございます。
  106. 八木昇

    ○八木委員 そうしますと、その体制委員会というのは、構成はどういう方々で開いておりますか。
  107. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 私の承知しているのは、圓城寺さんが委員長の、石炭体制委員会ですか、そこでございます。
  108. 八木昇

    ○八木委員 ただいまの電力業界の、体制委員会の一応の態度だということだったのですが、それにしましても——それとの関連で、これは今度は日向さんに伺いたいのですけれども、結局もしそのとおりのことが非常に強硬に主張されてそうなったとするならば、私は、炭鉱は、いわゆる原料炭山といわれておるところだってつぶれるのだろうと思うのです。たとえば、あの山は原料炭山だといったところで、出炭のうちの九〇%は原料炭で、一般炭はその中にまじって出てきて一〇%くらいしかないなどというような炭鉱はほとんど例外的でございます。比較的出炭全体の中で原料炭の割合が多いという状態が現状でございますから、それが実態でございます。原料炭だけを掘って、一般炭は全然出てこないということはあり得ないわけですから、だといたしますると、先ほど来、鉄鋼業界としても国内原料炭の引き取りということが非常に困難になってきたという御意向ではございましたが、だとしましても、本年千四百万トン程度ですか、もう少し少ないですか、正確に知りませんが、相当程度の引き取りをなさっておるので、そこで、そうは申しても、相当数量の——その数量をどの程度と希望しておられるかも承りたいのですが、相当数量の原料炭はやはり国内炭確保しなければならぬということはお考えになっているのだろうと思うのです。そうしますと、一方において、電力業界はいま申し上げたような態度をばんと出しておるとすれば、これは相互に非常にむずかしい関係になるんじゃないか、こう思うのですが……。
  109. 日向方斉

    ○日向参考人 お答えいたします。  石炭鉱業審議会体制委員会の部会長の圓城寺さんのところで、昭和五十年の需要業界の見通しについて各業界意見をとっております。しかし、私が承知しておる範囲では、圓城寺部会長は、一般炭の、ことに電力炭の需要ゼロというようなことを了承しておるとは決して思っておりません。私が出た最近の体制委員会では、むしろ昭和四十六年の一般炭の引き取りについて、主要電力会社がその四分の一の需要想定を出しておるのは非常識ではないかという意見が多かったように思っておりますので、主要電力会社が、五十年に引き取り量がゼロであるということを石炭鉱業審議会体制委員会の部会長が了承しておると私は思いません。これは確証でありませんが、私の想像ではそうであります。これが第一点。  それから第二点は、原料炭のほうもだいぶ減るじゃないか、その場合に一般炭はゼロじゃ原料炭も掘れないというのはごもっともであります。一定量の一般炭が出ますので、これは引き取っていただきませんと、石炭業としてはつぶれざるを得ないと思いますので、そういう意味では、われわれの業界からも、一般炭は相当量消化されることを希望いたしております。  第三点の、鉄鋼業界原料炭としてどのくらい引き取るかという質問に対しましては、先ほど来るる申し上げましたように、コークスの使用量の節減あるいは国際的な信義上の制限あるいはまた経済性の問題、その中には、政府政策がどうあるかということが大きな重点にはなりますが、この経済性の問題、またもう一つは、その経済性の中には、今後さらに賃金等の値上がりによる国内の採炭費が上がっていくのではないか、昭和五十年にはトン当たり二千円くらい現在よりも上がるのではないか、それをどう吸収するか、とても需要業界でそれは吸収できないというような経済性の問題を考えますと、結論的にたくさんの量はなかなか引き取れないとは思いますが、それでも、昭知四十六年の引き取り量の約六割方は引き取っていこうという態度をきめまして、鉄鋼業界としては石炭鉱業審議会体制委員会にはそういう数字も出しております。これとても、全体の石炭業界を維持するためには、やはり各方面の御協力、また政府において従来にも増して格段の援助政策をしていただきませんと、この経済性の問題やいろいろな問題が妥協してそういう引き取り量になっていけないではないか、かように考えておりますので、私どもといたしましては、わが国石炭業が健全に発展するためには、政府におかれまして十分なる援助政策を講じていただきたいというのが、われわれの業界意見であります。
  110. 八木昇

    ○八木委員 お聞きしたいことはたくさんあるのですけれども、質問と答弁で二十分以内ぐらいで終われということですから、あと二つ、三つは一括お聞きして終わりたいと思うのですが、今度も加藤さんにお伺いしたいのです。  先ほど来のお話を聞いておりますと、ばいじんの問題とかSO2の問題ということをしきりとおっしゃってはおるのですけれども、しかし、それは確かに世論もきびしくなっておりますし、それから、政府当局をはじめ各方面のこれに対する態度、対策というものも非常に強化されてきているということは事実なんです。しかし、現在、電力会社がたいております石炭の量は、最盛時よりは少ないわけですし、しかも今後これが年々さらに石炭をたく量をふやそうというわけじゃないのですから、それで電力需要というのは無限大に増加するわけですし、当然、そうなれば石油をたく量だって、先ほど来お話が出ておりますように、どんどん幾何級数的にふえていくわけです。だから、やはりその帰着するところは、そういう公害防止のためにいろいろ万全を期するということにしか帰着はしないと私は思うのですけれども、だとすれば、結局、電力業界のほんとうの気持ちというのは、やはり石炭をたいていたんじゃ、高い上に、いろいろとめんどうでもある、それから労働力も多く要するというところに、いまや石炭問題に対する電力業界のきびしい態度の一番大きな理由があるのじゃないか、私はそう感じておるのです。だとするならば、たとえば石炭引取交付金をふやすとか、あるいは電力用炭の価格の問題について何らかの措置がなされるとか、あるいは公害防止のためのいろいろな施設についての政治的な配慮というものがもっとなされるならばという、そこのほうが真意なのかどうか、その辺のところの気持ちをできる限り、公開の場でありますけれども、率直にお述べいただけないものかどうか、これが一つ。  それから、次の質問は非常に事務的なことなんですけれども、私自身が勉強しなければならぬのでしょうが、現在、石炭火力による発生電力は、日本の発生電力の総量の中の何%を占めておるか。そうして今後、ずっと将来のことを言いませんが、十カ年後には発生電力そのものは現在の何倍になるか。そうすると、火力は八百五十万トンのままずっと十年間今後もたいたとするならば、十年後には一体石炭火力の発生電力日本の全発生電力の中のほぼどのくらいになるか。ほとんど問題にならぬくらいだと思うのです。ですから、それほど大騒ぎして電力業界の側からこの問題をこういうふうに強硬に持ち出すべきものであろうか。世論が高まって、石炭火力なんかやめてもらいたいとか、あるいは公益的な立場から、政府あるいは何らかの公益的な機関が、もう発電所が石炭をたくことはやめるべきじゃないかという動きがそういう方面から出るとかというのなら別ですけれども、どうもそういう点では少し電力業界のなにを若干私も首をかしげるのですけれども、そういった点が第一点。  それからまた、全国電力会社は石炭はたかぬぞ、それで北海道電力石炭だけは確保せよという主張は矛盾があるんじゃないですか。と同時に、少し一人よがり過ぎはせぬかと思うのですけれども、その点三つ一括して……。
  111. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 いま電気事業の置かれております状況は、御案内のとおり、あらゆるコストアップ要因が山積しております。たとえて言えば、OPECによる油の価格の上昇、それからまた、その他の資材の値上げとか、非常に原価高騰の要因が山積しております。したがって、各電力会社とも、いわゆるただいまの料金をいかにして一日でも先に延ばし得るかという点に日夜苦慮しております。そういう現状でございまするから、ただいま先生から御質問いただきましたような点が私はあるのは当然かと思うのですが、しかし、私どもは、先ほどから申し上げておるとおり、それにも増してただいま電気事業として置かれておる一番大きな問題は、電源確保でございます。その電源確保の上において石炭をたかなければならないということでございまして、われわれは、先ほどもこれまた申し上げたとおり、地域の方々の了承を得なければならない。それには、ただ国策であるからだけでは、私は地域の方の御了解はなかなかちょうだいするのはむずかしいと思います。会社としましてもこういう公害の除去をいたしますということを申し上げなければ、なかなか御理解はいただけないと思います。それには、まず油で申しますと、精製会社においてできるだけサルファの少ない油をつくっていただく。それから、いまわれわれもそれだけではいけないから、われわれがたいたときに出ます煙から硫黄分を除去しようということ、それにつきまして、目下三カ地点で乾式によります脱硫方法を検討いたし、実はそれぞれの会社、三社ともいま入っており、中にはもうすでに四月から実用運転に入りたいということでございまするが、なかなかこれ、実験段階では一〇〇%取れるような数字も出ましたのですが、容量を大きくするつど、あらゆる点でトラブルが起きまして、いまだにこれでだいじょうぶですというところまで行っておりません。一方また、いま湿式にやったらどうかというお話もございまして、これまた、いまもう少し大きな容量のものを検討いたしております。しかし、この石炭の場合には、先ほどこれは申しましたように、酸化窒素を取るということがこれがまた大きな問題でございます。しかし、できない、できないじゃだめですから、われわれも一歩ずつそれを解決していって、地域の方の御理解を得るようにつとめたい、かように存じます。  将来になりましてどういうことだ、こういうことでございますが、現在もう一〇%切っておるわけであります。まあエネルギーの変遷を申しますれば、当初二十年前、九電力会社ができましたときに、大体七割から六割は水力でございまして、三割ないし四割が火力でございました。それがいま全く逆になりまして、いまでは、北海道さんはこれは別といたしまして、火力で大体七割からあるいは八割になったかと思います。そのうちで石炭というものはもう一〇%以下になってしまったのが現状でございます。将来、いま景気がいろいろであり、それから、せっかくいま御検討いただいておりますいわゆる産業構造の関係がどうなるかによりまして、従来のような伸びが電気エネルギーで必要であるかどうかは、これはまた別の検討といたしまして、しかし、電力エネルギーが年年伸びるということは、これは事実であると思います。したがって、年をふるほど電気エネルギーはふえてまいる。その場合の位置づけでございますが、いまの日本は、これまた先ほども申し上げたとおり、原子力もやらなければなりませんし、石炭火力ももちろん、あるいは重油もやらなければならない、あるいは場所によっては、先ほども出ましたように、エネルギー火力もつくらなければならない。要するに、あらゆる面からのエネルギー源をもちまして、電気としましての供給の安定の責任を果たしたい、かように思うのでございます。
  112. 八木昇

    ○八木委員 あと二つばかり聞いておったのですけれども石炭の値段の引き下げとか、あるいは増加引取交付金の引き上げとか、そういうものとの見合いでの引き取り量というものの増減という考えがあるのか。
  113. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 先ほどの、それぞれの各社の五十年の予定数量をとりましたときのあの減少、私は、いまのたけないということを前提にしてつくったと思います。もちろん、先ほど来お話がありましたように、相当政府でもこのアップによる値段をできるだけ御協力、御援助いただいたことはいままでございますが、電力が特に減ってまいったというのは、るる申し上げておるような地域情勢によってでございます。  それから、日本は欧州と違いまして、産炭地と電力の消費地が非常に違っているということが、私は欧州あたりと全く比較にならぬ点だと思います。たまたま欧州あたりは産炭地と需要地が日本ほど違っておりません。先ほどもお話がありましたかと思いますが、全国電力の消費がいわゆる東海道ベルト地帯に寄っている。遺憾ながら、そこには、あるいは常盤炭とか中国の宇部炭がありましても、全使用量からいけば比較にならぬものである。たまたまある北海道、九州にそれだけの需要がついていないということが、これは日本のエネルギーのしょった宿命じゃないか。これをどういうふうに打開するか、これがいまの全面的なエネルギーの問題として真剣に検討していただかなければならぬ問題であり、われわれもさように考えるわけでございます。
  114. 八木昇

    ○八木委員 終わります。
  115. 鬼木勝利

    鬼木委員長 相沢武彦君。
  116. 相沢武彦

    ○相沢委員 参考人の方も、だいぶ時間がたちまして、まことに御苦労さまでございます。各参考人に簡単に御質問をしたいと思います。  最初に日向さんにお尋ねいたします。  先ほど岡田委員とのときに、話の中で、きょう石炭対策に関する件で用意をされてきたお考えの中、若干訂正をしなければならないのじゃないかというような点が出てきたと思うのです。それで、特に、最後におっしゃった価格差が今後なくても、国内原料炭の消費は減少するというお話、  これは石炭産業に対する非常に大きな影響を与えると思うのですが、もしか今後石炭政策の上で増加引取交付金等を増大していく、また鉄鋼関係のほうで、長期契約、開発促進という観点から、輸入炭はそんなに簡単に引き取り量を減らせない、  これは国際協調、国際信義の立場からそう簡単に変更ができないとおっしゃったのですが、その点は、また一方から考えれば、やはり地下資源の乏しい日本の国として、国内の資源を有効に活用し  ていくという立場、やはりこちらの立場というものに対してもっと相手を説得できる、あるいは国内資源を有効に活用していくという点についての国際信義を守っていくという観点から話し合いができるのじゃないか、こう思います。現在大体平均千三百円の国内炭と輸入炭の差があるとおっしゃいましたが、これ以上の差ができなければ、四十六年度消費の六割は引き取る、この線は確保できるわけですね。もう一ぺんこの点だけ確認したいと思います。
  117. 日向方斉

    ○日向参考人 お答えいたします。  第一点の国際問題ですが、これは実は昭和四十三年、四年に相当大きくコミットしたのです。それをだいぶ大幅にカットしまして、向こうも法的に訴えられると非常に問題があるのでありますが、まあ長期の契約でありますから、いろいろ歩み寄っておりまして、向こうも困ってはおりますが、あるところまで下がってきておりますし、われわれもそれを続けておるのでありますが、しかし、こういうことを無限に続けていくことは、何といっても、長期に安定した、かつ経済性のある資源確保の意味から、おのずから限度があることが一つ。  それからコークスの使用量がどんどん下がってきております。したがいまして、使用量自体が減ってくる、そういう問題等もありまして、それで国内炭はどこまで引き取るかという問題でありますが、現在の価格差がそのままであるとするならばということを申し上げましたのは、現在なるほど千三百円でありますが、これは円の切り上げを勘定に入れますと、実はもっと差ができてきておるのであります。この問題が一つありますが、しかしながら、現在の引取交付金をつけていただくならば、まず現在の六割程度ぐらいならば、われわれとしても連帯の負担はこの程度は甘んじて受けなければならない、こういうふうに考えておるのであります。その場合でも、かりにそれを豪州炭に切りかえたとすると、もっともっと差は開くのですけれども、そう鉄鋼業だけのことも言えませんので、まずこれ以上政策的に不利にならないような状況を続けていただくならば、現在の六割程度のものは何とか引き取っていくのだというような態度でおるわけでございます。
  118. 相沢武彦

    ○相沢委員 次に、加藤さんにお尋ねしたいと思います。  篠田委員、また八木委員からも取り上げられた、けさの新聞に出ていた、八電力が四十九年以降原料炭を引き取らないという記事でございますが、これはやはり産炭地また石炭企業に非常に大きな影響を与えるので、そういった御配慮はなかったのか、あるいは作戦的に、きょうちょうど参考人意見聴取がある、それが終わってからではどうも発表しづらい、あるいは三十一日に体制委員会で、今後、国としての石炭規模をどうするかということについての一応の結論を出さなければならない、その前に先制パンチをきょうあたり出そうというような、そういう作戦的なことがあったのかどうか、まずその点をお伺いしたい。
  119. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 どうも私、先生のおっしゃる点がわかりかねますが、何にもございません。ただ、三十一日に体制委員会としての何らかの目安をつけたいというお話は聞いております。したがって、先ほど篠田先生に申し上げましたとおり、われわれは何らかのこの上の考慮をして、いま申し上げている数字が少しでも増量にならぬかというのをいま各社で検討をいたしておるということでございます。
  120. 相沢武彦

    ○相沢委員 先ほど加藤さんは、石炭産業について、同じくエネルギーを扱う同業として配慮していかなければならぬというお話をされていましたが、同じ企業に携わる者という立場と、さらに、やはりこの石炭企業の存亡に関して影響を受けるその地域の自治体、またその地域に住んでいらっしゃる多くの住民の方たちのこともあわせて考えて、今後の電気事業連合会の行き方というものについて話し合いをするべきじゃないか、また、していっていただきたい、こう思うわけであります。特にその地域に住んでいらっしゃる人たちもやはり電力を消費しているわけでありますし、そういった観点から、単なる企業の採算性とか企業企業というだけの考え方でなくて、その地域全体の住民に対する影響という点も考えあわせて、さらに引き取り量の増加の方向へ何とかして持っていけないかという道を、そういった姿勢も加えて再検討していただきたいと思うわけであります。  それで、先ほどから公害の問題でいろいろお話がございましたが、将来にわたって、今後各産業ともいわゆる公害防除に対する姿勢がなければ、誠意がなければ、これはもう企業として存立が許されないのだ、こういういまの風潮でございます。他の産業におきましては、生産のために使う資源、原料というものが選択を許されない企業も多くあるわけです。ですから、そういった原料等を使って出るいわゆる公害を防除するために、やはりあらゆる技術革新をして、また努力をして、あるいは国の助成を仰いでその公害の防除につとめなければならない。幸い、電力の場合、石炭を自由に買い入れるという、選択できるものが別にあるから、やりやすいといえばやりやすい。できるだけそういうむずかしい公害防除のための技術革新、あるいはそのためのかかる費用を節減していきたい、そういう経済的な立場に立った考え方もわかりますけれども、全然それが選択が許されないで、その資源を使いながら、しかも公害を防除していかなければならないという立場の企業もあるということを考えた場合、その点に対して、やはりもう一歩積極的に、何としても、この石炭をたいてもその地域住民の人たちに不安を与えない、あるいは地域住民の人たちの要望にこたえられる公害防除をやっていこう、こういう取り組み方をぜひしていただきたいと思いますが、この点いかがですか。
  121. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 先般、地域の方々がおいでになりまして、私、たまたまそのお方々には面会できませんでしたが、てまえどもの副会長がお目にかかりまして、その間の事情は当然承知しておると思います。私もその話を聞きましてこの委員会にも臨んでいるわけでございます。われわれはいま、くどく申し上げるようですけれども、同じエネルギーに関与している企業としまして、できるだけのことはしたい、かように考えております。
  122. 相沢武彦

    ○相沢委員 次に、北電の岩本さんにお尋ねします。  先ほどお述べになった中で、将来見込みの引き取り量として、四十八年度二百五十万トン、四十九年度二百三十万トン、五十年度二百二十万トン、こう出ております。この算定の考え方は、従来のような石炭政策のもとであれば、北電さんとして調達可能量はこの程度が適当だ、こういうことから出した数字でありますが、確かに昨年のドル・ショック以来北海道の経済は落ち込んでいる、しかし、この場合、これはあくまでも石炭政策における石炭供給というものの見通しを立てた上で出されたのですが、第五次石炭政策等でかなり前向きになってくる、企業需要に応じてもっともっと出炭ができると仮定した場合に、北電として、今後の北海道における経済の見通しから、どれぐらいこの電力の消費が可能か、そうした場合に、引き取り量はどれぐらい増加できるか、こういったものの算定ができていましたら、お答えいただきたいと思います。
  123. 岩本常次

    ○岩本参考人 ただいまの将来の電力需要でございますけれども、これの見通しは、御承知のとおり、経済界の動向に非常に大きく影響をされるものでございまして、最近のように経済界の動向が非常に流動的でございますときには、先の見通しというのを立てるのがなかなかむずかしいわけでございます。しかし、私どもといたしましては、この数年先の需要動向を一応算定いたしませんと、発電所の建設その他に差しつかえますので、当社といたしましても一応の見通しを立てておるわけでございますが、これは数字を申し上げてはなはだ恐縮でございますけれども、いま私どもの立てております推定では、四十六年度は大体八十九億八千万キロワットアワーぐらいの需要と見ております。来年度は九十一億五千万キロワットアワーでございまして、あまりふえないわけなんでございますが、その先は、おそらく経済界の状況もだんだんと上昇してまいることと存じまして、多少この需要の伸び率をふやしておりまして、四十六年度から五十年度までの四年間の年平均は約一割弱、こういうふうに見込んでおるわけでございます。  そこで、電力需要がそういうふうにふえるのに、石炭需要が逆に減っているような結果になるじゃないか、こういうお尋ねだろうと思うわけでございますが、先ほど申し上げましたように、私どもといたしましては、釧路火力の建設中止の例に見られますように、石炭の供給の先行きが非常にむずかしい、こういうことでああいった見込みを立てたわけでございます。しかし、一面におきまして、やはり先ほど申し上げましたように、石炭以外に燃料源の多様化をはからなければならない、こういうことで、苫小牧に、先ほど申し上げました日本軽金属との共同火力二十五万キロワットのものを三台、それから私ども自身の会社の重油専焼火力二十五万キロワット一台、これを運転並びに建設中でございます。こういったものが順次運転を開始してまいりますために、だんだんと石炭の消費が少なくなってくる、こういうことになるわけでございます。当社の電力需要が苫小牧とか室蘭など道南方面に集中しておりますので、系統の、何と申しますか、供給の信頼度の観点から、どういたしましても、いま申し上げましたような苫小牧の重専火力を発電する必要がございますので、立地的に道央の石炭火力の発電が減ってまいることになる結果になるわけでございます。しかし、先ほども申し上げましたように、石炭の引き取り増につきましては、ここでは数量などは直ちに申し上げるわけにはまいりませんけれども電力の需給並びに公害規制などの条件が許す範囲内で御協力いたしたい、こういうことを先ほども申し上げたとおりでございまして、できるだけの御協力は申し上げるつもりでございます。
  124. 相沢武彦

    ○相沢委員 岩本さんにもう一問お願いしたいのですが、いま、伊達火力発電で、地元がまあ賛成、反対ありまして、なかなか話し合いがつかないということで苦慮しておるようでございますが、将来、室蘭方面、また苫小牧方面が非常に電力が必要になってくる。それと、もう一つ問題点は、やはり北海道の場合は、石炭産業というものは北海道の経済をささえる大きな柱である。もしかこれで石炭関係が全滅になった場合、石炭産業に働く人、また関連下請産業、それから商店街、それから地域住民、ひっくるめて大体百万人ぐらいは減少しちゃう。これは非常に大きな問題になります。そういったことになると、どうしても北海道の場合は、産炭地はこれは確立させなければならない、石炭産業を守り抜かなければならぬということで一生懸命でやっておるわけですが、今後もっともっと石炭に対する国の抜本的な対策が立てられて、供給が安定する、あるいは拡大できるとした場合、その内陸的な石炭による火力発電を、送電で道南地帯にも送れるということは考えられませんか。そういう送電整備計画というものはないんでしょうか。海岸におけるそういった重油燃焼が非常に立地点の問題で困難になってきていますが、そういったものを補う一つの方法として、産炭地も守り、また、よぶんにできたそういう電気を需要の多いところへ送電する、そういった総合的な計画についてはお考えございませんか。
  125. 岩本常次

    ○岩本参考人 いまのお尋ねは、室蘭とか、そういった需要地のほうへ、産炭地に火力をこさえてそれを送れないか、こういうようなお話でございますね。これはいまもそのとおりでございまして、いま私どもがやっておりまする火力発電所はみな産炭地にあるわけでございます。これがみな石炭専焼でございます。しかし、何と申しましても、この需要地から相当距離がございまして、送電線が長くかかりますので、先般も例がございましたように、非常に荒天の場合でございますとか、そういった不時の場合には、送電線の故障ができるとか、そういったようなことで需要家の方に御迷惑をかけることが多いわけでございます。したがいまして、原則的にはどうしてもやはり需要地に近いところに発電所を置きまして、そういった場合におきましても、できるだけ需要家の方に御迷惑をかけないようにするのが私どものやるべきことだと思っておるわけでございます。いま伊達の場合にいろいろと問題がございますけれども、これはやはり伊達は伊達で十分地元の方とお話し合いをいたしまして、あすこに火力をこさえてまいりたい、かように考えているわけでございます。
  126. 相沢武彦

    ○相沢委員 最後に、大堀総裁にお尋ねいたします。  二点お尋ねしますが、現在電発関係で持っている新鋭の集じん機等は、国の規制あるいは地方自治体の規制の中におさまり切らないんでしょうか、それとも、現在のその施設で十分にやっていけるのか、これ以上規制がきびしくなるとやっていけないというのか、現状でももうだめになっちゃって、新しくかえなければならないのか、その点を聞きたいこと。  それから、意見の中で、今後の問題として良質炭の確保ということが言われておりますけれども、まあこれ以上低硫黄の良質炭をたくさん望めないということになりますと、一つには重油との混焼が考えられますが、重油の混焼の場合と、それから低硫黄の良質の輸入炭を使って混焼した場合と、どのぐらいコストに差ができるのか。また、電発としては重油の混焼のほうを主体に考えるのか、あるいは輸入炭の低硫黄炭との混焼を考えて、一般炭も消化しようとするのか、その辺のところを……。
  127. 大堀弘

    ○大堀参考人 最初の御質問の集じん機の問題でございますが、実は磯子については、現在の規制でちょっと現在の設備はやれなくなってきております。それで、四十七年度に集じん機を新しいものに改造しなければならぬということで準備をいたしております。その他の地点については一応いまの範囲でいける、こういうことでございます。  第二の御質問の点でございますが、輸入炭の話もちらちらございますけれども、私どもとしては、これはまあ鉄鋼のように相当大量にまとめて大きな船で運ぶ場合は、安定した価格というものが可能でございますけれども、私どもほんとに小さな発電所で、それにまぜてやるという微々たる量のものを運んでくるということになると、陸揚げ費とか、その他荷役費とか、かなり輸送経費がかかる。そういったことで、これをまぜてやるというのは、現実の近い話としては無理じゃあるまいか。重油でございますと、なかなか経費が高くなるとむずかしいことはありますけれども、まだわれわれのところはたく量はたいしたことございませんので、重油混焼で現在やっておりますが、これは石炭のほうは海外のものに関してはコンペティティブであれば絶対にいかぬという理屈はないと思うのでございますけれども、現実問題としては非常に——せいぜい一カ所で百万トンくらいのものでございますから、それにどれくらいまぜるか、三池炭などは非常に硫黄分が高いので、これを相当下げようと思うと、海外炭の比率をふやさなければいかぬ、国内炭の量がそれだけ減るわけでございますね。重油のごくいいものを薬のようにまぜたほうがあるいは石炭をよけいたけるかもしれませんし、そういったことでいろいろ考えておりますけれども、輸入炭という話も私は伺っておりますが、急な問題としてはちょっと無理じゃなかろうかと思っておるのです。
  128. 相沢武彦

    ○相沢委員 以上で終わります。
  129. 鬼木勝利

  130. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 参考人の方々、どうもえらく時間がかかりまして、たいへん御迷惑であろうと存じます。私が最後ですから、ちょっとごしんぼういただきたいと思います。  先ほどから原料炭の問題が各委員からそれぞれ出ておりました。実はこのことをちょっと先に伺っておきたいと思いますのは、炭鉱がいま御存じのようにああいう経営がもうどん底におちいってしまっておるものですから、そこで、原料炭のほうが炭価が高いのですから、おぼれる者はわらでもつかむというか、原料炭に切りかえていくために目の色を変えてやっておるというのが炭鉱の今日の現状でございます。そこで、またわれわれも大いにそれを奨励しておるわけですが、報告を受けてみますと、御存じのように、日本の強粘結原料炭は長崎の北松地方にあったのですが、これはなくなってしまいました。いま各地区で出しておる原料炭は、いずれもみんな弱粘結原料炭、それを、強粘結原料炭を輸入したのとこれを融着させてコークスをつくっておるわけですが、その結果はコークスも非常によろしいということを報告を受けておるわけです。  そこで、さっきから伺っておりますと、この国内の弱粘結原料炭は、これもどうもだんだん影が薄くなってくるようなことを伺っておりまして、おそらく、そういうことが炭鉱側の経営者に、また、働いている人の耳に入ると、もう原料炭もだめじゃないかというようなことになってしまうのじゃないかと、実はさっきから聞きながら憂慮しておるわけです。  そこで、強粘結輸入原料炭と国内の弱粘結炭とは、融着性の結果、コークスとしても相当よろしいということになっておるわけですが、あるいはいまは鉄鋼が非常に減産しておりますから、したがってコークスの使用量もそれに応じて少なくなるわけですから、そういう点において、強粘結炭と国内弱粘結炭とを融着させて、できるだけ国内弱粘結炭を使用していく、この数量を減らさないように、鉄鋼業界でも——また、安西さんは非常に石炭問題に対していろいろ配慮されておることをさっきから伺って、私も感謝をしておる一人でありますが、ガスのほうでも、いまのところでおそらく可燃性の天然ガスを使われることが一番安いということにはなっておるわけです。油を使うより、石炭を使うより、安いわけでしょう。そこで、そういう中において安西さんが石炭をいろいろ配慮されておる点は、相当苦心をしていただいておると思うのですが、この国内原料炭と輸入強粘結炭とを融着させて、ガスをとられたあとにコークスが出てくるわけなんですが、このコークスの売れ口というか処理というか、そういうことについてどうもぐあいが悪いので、したがって原料炭も減らざるを得ぬというようなことなんでしょうが、まあ公共事業というけれども、実際経営は私企業ですから、やはりできるだけ採算の合う経営をされるというのは、これは企業のたてまえ上当然だと思うのですが、そういう点で、ひとつ日向さんと安西さんに、国内弱粘結原料炭の今後の使用率についてちょっとお聞かせいただきたい。
  131. 日向方斉

    ○日向参考人 お答えいたします。  伊藤先生だいぶ専門的な御質問にあずかりまして、実はこれはいわゆる粘結炭の流動性の問題というのがありまして、三、四年前には日本の弱粘結炭はどこの国の炭ともすり合わせがうまくいくというので、流動性が高いという意見がありました。事実でありますが、その後の情勢の変化でありますが、実はアメリカの強粘結炭は非常に高いのでございます。たとえて言いますと、現在ではトン当たり八千五百円するのです。豪州の弱粘結炭は五千五百円というふうに安いものでありますから、日本としては、どうしてもアメリカの強粘結炭はだんだん節約して、そうして弱粘結炭を多く使っていくような政策に変えざるを得ないのであります。現在、その当時から比べますと、日本の強粘結炭のアメリカからの輸入は、三分の一くらいになってきてしまっておる。こういうふうな状況になりますと、今度は逆に、その少ない強粘結炭にまぜる弱粘結炭は、むしろ粘結度の高い、揮発分の少ない、いわゆる弱粘結と強粘結のまん中辺のものでないとうまくいかない、こういうふうに事情が変わってまいりまして、先生の言われる流動性の状態が変わってきたのであります。その点が一つありますが、しかし、われわれといたしましては、国内の弱粘結炭もできるだけ使ってはいきたいと思っておるのであります。ただ、一つは、先ほどから申し上げましたように、二、三年前の状況で外国と非常に多量の契約をして、それをどんどんぶった切っておる関係上、去年から豪州からも三べんも陳情団が来まして、法的に訴えられるとうるさいような状況なんですが、何のかんのと言っておるというような状況、これは限度にきております。それからもう一つは、やはり豪州の弱粘結炭、カナダもそうでありますが、国内のものよりずっと安いのであります。そうして、ことに円の切り上げ後には豪州、カナダの石炭はさらに安いのですから、これもやはり考慮に入れなければなりません。  それで、先ほどから諸先生にお願いしておるのは、現在の豪州その他カナダ等の弱粘結炭と国内の弱粘結炭との多少の格差は、値段の差はやむを得ないが、どうかそれは広がらないようにしてくれぬかということをくれぐれもお願いしておるのです。それには政府に金を出してもらう以外に方法がないのでありますが、それが一つと、その政府のお金をうんと出していただければ、たくさんの国内の炭もかなり使えるのでありますが、だんだん国内の炭鉱の事情も、ずっと聞いてまいりますと、やはり能率のいい山でないとだんだん値段が上がっていってしまいまして、昭和五十年ごろまでには、現在以上に、トン当たり二千円ぐらいに上がってしまう。それらのことを考えていきますと、やはりまあ国内炭のほうもできるだけは使いますけれども、先ほど来申し上げました現在の六割とか、業界では、五百万トンぐらいと、こういって通産省のほうへお話ししているのでありますが、その辺までに下がらざるを得ないというような状況でございます。ことに日本鉄鋼業は、御案内のとおり非常にいま不況でありまして、先般来二期続いて減配いたしまして、この三月期には六分配当に転落するというような状況でございますので、やはり国際的に見て合理的な価格で、合理的な配合でいかなければならないというところへきておりますので、いわゆる流動性の問題、経済性の問題等から考えまして、先ほど来申し上げたようなことになってきておるわけであります。  そのほかにも、弱粘結炭を利用してコークスのかわりに使ってみたいとか、いろんな研究をわれわれもしております。ある程度成功もいたしておりますが、これは量的に見てそう急に多くはまいりませんので、極力国内炭の使用には努力いたしておりますが、現状からいいますと、だんだん国内は少なくならざるを得ないというような状況でございますので、この点もお含み願いたいと思います。
  132. 安西浩

    ○安西参考人 伊藤先生の御質問にお答えいたします。  国内原料炭と輸入強粘結炭の問題につきましては、日向社長から詳しくお話がございましたので、重複を避けたいと思いますが、先ほど伊藤先生は、LNG、液化天燃ガスが一番安いからそれに切りかえるのかというお尋ねでございましたが、決してそういうことではございません。御承知のように、中近東の原油は、二ないし三%のサルファを含んでおります。これは全面的に使えませんので、ミナス原油という、インドネシアの非常に高い原油を使っております。いずれにいたしましても、公害対策の、大気汚染、エアポリューションを防遏する意味で、LNGというのは、先生のお話と全く別でございまして、非常に高いものでございます。LNGタンカー、これも最近暴騰してまいりまして、国際的に液化天燃ガスは非常に高くなりましたが、やはりエアポリューション防遏のためには、都市ガスは最終的には天然ガスによらざるを得ない。これは日本ばかりではございません。欧州、アメリカ、全部天燃ガスになってまいりました。しかし、私は、先生の御理解のとおり、国内原料炭については、もう戦後ずっと石炭産業には協力しようという見地から、また、今日の時代から見るとどうかしれませんが、鶴見工場に大コークスかまど、石炭かまどを目下建設中でございまして、従来使っております石炭は、今後五年先もう絶対減らさない、使用量は絶対減らさないという信念でやっておるわけでございます。液化天燃ガスが安いから切りかえたのでは決してございません。そういうわけでございます。  以上でございます。
  133. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 加藤さんと大堀さんにちょっと伺わしていただきます。  どうも一般炭で硫黄分が多いから公害が起こる、そうであろうと思いますが、しかし、いま公害ということばが非常にはやっていますから、公害というと、もうとにかく二の句が継げぬ、こういうようないまの一つの国内の空気です。ところが、私は、ただそれだけで葬ってしまうということは、無責任というか、配慮が足らぬような気がします。たとえば常磐火力発電をつくりますときに、あれは私どもが、ドイツが低品位の火力発電で成功したという、それを日本でもやろうじゃないかというのでやらしたわけでございます。それから北九州の若松の電発も、あそこに日炭高松炭鉱がある、あそこのボタ、低品位の炭をたけばいいじゃないか。常磐も、あそこに常磐炭艦のなにがあるからいいじゃないかというので、常磐火力と北九州の若松の電発は御存じのようにやらした。ところが、さっきからだんだん意見をお聞かせ願っていると、どうも硫黄分が強いから、したがって公害が起こるからいかぬということで、常磐炭艦も閉山してしまいました。日炭高松炭鉱閉山してしまいました。ところが、私が配慮が足らぬじゃないかと言うのは、いまここで私は炭鉱の名前を言いませんけれども、これは私が申し上げれば、ははあ、あそこかということに多分気がつかれるだろうと思います。日本で代表的な炭鉱が、かなり硫黄分が高い。ところが、別途に非常に硫黄分の少ない一般炭がある。それをその大きな山の中に送って混炭をして、火力発電としてけっこうそれは消費をされてしまっている。したがって、今度は国外炭の硫黄分のないのを輸入しておるわけです。これらと、やはり日本の、硫黄分が幾らかあっても、それと混炭をしてやれば、いま私が例をあげたその山と同じような火力発電用としてこれは使用されるわけです。だから、そういう配慮がされていないことを、私はさっきから伺っておりながら、そう思いました。こういう点についての、硫黄分の少ないもの、あるいは輸入一般炭の硫黄分のないもの、ないにひとしいもの、そういうものと、国内の幾ぶんか硫黄分のあるものとを混炭して、やはり国内一般炭需要をふやしていく、そういうことについて、電発なり電気事業連合会、そういうところでお考えになられたことがありましょうかどうか、ちょっとお聞かせいただきたい。
  134. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 てまえどもとしましては、石炭を何とかして少しでも使わしていただきたいというのは、先ほど来申し上げたとおり、わが国に残された唯一の資源である、この意味が一番大きな問題でございます。で、輸入炭を若干入れてそして混炭して少し考えないかというお話でございますが、ある会社におきましては、実はもう相当前から、ある山はカロリーが高いのだが硫黄分が多い、その付近にあるのは、カロリーは低いのだけれども硫黄分は少ないという意味において、私どもは混炭を実はこちらから慫慂し、そうして混炭のたき方を両者で考えまして、相当量使ってきた経緯のある会社もございます。ただ、混炭といいましても、それぞれの発電所におきまして、いわゆる合った炭というもので設計ができております。したがって、混炭即たけるのではなくて、それぞれの合った、要するに、適正炭とわれわれは言っておりますが、その炭を要望するわけでございます。で、輸入炭ということにつきましては、私、あらためて検討させていただきたい、かように存じます。
  135. 大堀弘

    ○大堀参考人 ただいま先生のお話の点、私どもは、西地域では、高砂に二台、竹原に一台、三基、揚げ地火力がございますが、これは相当規制が強化されてはおりますけれども、地元ともお話し合いをし、石炭業界ともお話し合いをして、現在ほとんど高砂が八割くらいでございますか、竹原は一〇〇%近いところを石炭をたいておるわけでございます。私ども相当苦心をしております。これは石炭業界の方よく御存じだと思いますけれども、地元の御了解を得て石炭をできるだけたいております。また、四十七年度もそれくらいはたくということで、いまのところは支障なくいけると思っております。  若松につきましては、これはちょっと事情が違いまして、これは日炭の坑口発電所のようなものであって、日炭から出た炭は大部分近間にありますから、そこから運んでたいておったのでありますが、外から石炭を運び込むような地形になっておりませんものですから、事実問題としてここは石炭がたけなくなってしまった。鉄道輸送して持ってこなければなりません。したがって、これは油に切りかえたということでございまして、これは私どもとしては、実は日炭がやってくだされば、ずっとたくつもりでおったのでございますが、日炭のほうが急に閉鎖になったものでございますから、そういうことに切りかえたわけでございます。むろん若松地区もかなり環境基準がきつくなっておりますから、いかなる無理をしても、あまり高いものではやはり地元の御了解が得られませんのでございますけれども、油にかえました理由はそういうことでございます。
  136. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 いま一点だけお伺いさせてもらいます。  欧米諸国の近代工業国家で、油やガス、石炭を使っておる国々の比率を調べてみました。ところが、欧米各国では、硫黄分が——もちろん、石炭の質もある程度違いますが、日本のように公害というようなことで、あるいは価格の問題というか、そういうことで石炭の消費量が減っておるところはありません。欧米各国はほとんど従来どおりの石炭の比率を維持しています。それは、地下資源として、その国の大切な熱源、宝であるとしてこれを有効に掘り出さして使っております。ところが、日本だけが全くつるべ落としのように落とし込んでしまって、どうすることもできない。いや、それは硫黄分の公害だ、いや、炭価が高いからだ。もちろん、さっきからお話ししておりますように、公益事業としての私企業、いわんや、その他は当然私企業でありますから、非常に競争率の激しい中で企業経営しておられるのですから、したがって、健全経営のためには、そういう安いものをできるだけ用いて能率的につくり上げていこうというのは当然でありますが、しかし、欧米近代国家ではそれが減っていないのに、日本だけが何で一体こんなに石炭が見捨てられてしまっているのか。この辺にやはり政府施策の問題がもちろんあります。けれども、それはきょう皆さん方に申し上げることは失礼ですから申しませんが、やはり私はこの日本でも、もう少し石炭需要度の問題について考えていく、あるいはお互いに協力し合ってやっていく。もちろん、私企業の中ですから限界があります。ですから、その分においては、当然、われわれが高い石炭を使うためにはもっと国にこうしてほしい、あるいは公害を防止するためには、国が公害国立研究所という権威のあるものをつくって、そういうところで、流す水なり、出る煙なりからの公害を防止していく、これは当然国がやらなければならぬ。大きな公害国立研究所でもつくってやらなければならぬことは当然でございます。そういうことは当然近く起こってくるだろうとわれわれは期待をしておるわけです。  そういう点で、日本のみが石炭がこんなまま子扱いの状態になっておるのですから、そこで、欧米近代工業国家は、申し上げるように、石炭需要度は減っていないのですから、そういう点において、石炭を使うものについての国の協力処置が悪いからだ、足らぬからだという点がきっとあるだろうと思います。だから、そういう点について国がこういうような協力処置をしてくれれば、われわれはもっと国内の石炭を使っていいんだ。炭鉱は一ぺん水につければ、もうそれは復興できないのですから、せっかく地下資源のあるものが、炭鉱炭鉱でやっていけぬからといってどんどんつぶれていきます。おまけにそこに持っていって公害がある、あるいは炭価が高い、こういう点で、もう救う道がないようになっているのです。でありますから、それは政府施策のよろしきを得ていないことは当然であります。われわれは、その点は政府との間で解決できるように大いに今後努力しなければならぬと思っております。  つきましては、皆さん方から、それは伊藤、おまえの言うようなこととわれわれの考えておるようなことで石炭を使えるように、炭価の問題、公害その他の問題について政府協力処置をしてくれるなら、われわれも石炭をもっと使ってよろしいんだ、こういうことでおそらく御意見があろうかと存じます。政府協力のよろしきを得るなら、われわれもっと考えてよろしいとお考えになられるか、いや、政府協力ぐらいじゃだめだよということでもう見捨てられるか、その辺について皆さん方から、私は、一言ずつでもよろしゅうございますから、ひとつ御意見を聞かしていただきたい。
  137. 日向方斉

    ○日向参考人 その点は、伊藤先生、政府施策よろしきを得れば、われわれもそういうものを勘案して、少しでもよけい使っていきたいのはやまやまでありますので、先ほど来繰り返し、石炭業のためによろしき施策お願いしてまいっておるのでございます。
  138. 加藤乙三郎

    ○加藤参考人 欧米に比較してというお話しでございますが、電気のエネルギーの面から申しますと、御案内のとおり、わが国はここ大きな伸びをいたしました。電力の面からいきましても、昭和二十年からこの二十年間で約十二、三倍伸びたと思います。したがって、これが需要を満たすためには、大容量の火力をつくるよりこの需要に応ぜられなかった。そしてまた、幸いなことには、いまのどこの地点でも——その当時といたしましては、火力発電所が——なおかつそのときの経済情勢としまして、コンビナートというものが盛んでございました。そういう点が欧米と違った、要するに、需要の急増と立地地点からいって、私は日本のエネルギーが非常に大きく油に転換したと思います。  それはそれといたしまして、いまお話しの点は、私は、供給者需要者政府も三者一体になって、この残された資源の保存といいますか、温存を考えなければならない、かように考えます。
  139. 岩本常次

    ○岩本参考人 私も、産炭地の電力会社といたしまして、皆さん方と同様に、国におきまして十分な御施策お願いできますならば、一応送電線がつながっておらないという面がございますので、無制限に使うということはもちろんできませんでございますけれども需要その他を勘案いたしまして、できるだけの御協力は申し上げたい、かように存ずる次第でございます。
  140. 大堀弘

    ○大堀参考人 皆さんお話しになったと同様でございます。
  141. 安西浩

    ○安西参考人 私は、先ほども申し上げましたように、現在使っております原料炭は今後も減らしません。天然ガスに切りかえるのは、硫黄分の多い原油をカットしてこれを天然ガスに切りかえる。天然ガスに切りかえると申しましても、十二、三年かかることでございますから、当分現在使っておる原料炭は減らしません。  それからもう一つは、公害問題というのは、日本は少し騒ぎ過ぎるのじゃないでしょうか。伊藤先生の御指摘のように、欧米では、石炭はそう変わっているんじゃないのですけれども、SO2とかNO2とかいって、マスコミ公害と言っては失礼かもしれませんが、あまり公害問題を騒ぎ過ぎるという点もあるのじゃないかと思っております。  原料炭は現在の使用量を減らしません。これは大阪ガスも名古屋のガス会社も広島のガス会社も、そういう方針でやるはずでございます。
  142. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 もう時間が、たいへん御迷惑をかけましたから、これで私の質問を終わります。  どうも参考人の皆さん、私、一方的なことを注文しまして、ありがとうございます。
  143. 鬼木勝利

    鬼木委員長 これにて参考人各位に対する質疑は終丁いたしました。  参考人各位には、御多用中のところ、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。おかげをもちまして、本件調査に資するところ大なるものがあったと存じます。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。  次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時三十二分散会