○伊藤(卯)
委員 私はさかのぼった話をしようとは思いませんけれ
ども、
大臣も御存じのように、
炭鉱をこんな
状態に追い詰めてしまったのは、過去においての
政府の
石炭政策の実は誤りから来たのです。
昭和三十四年に、油との競争にうちかつためには、
石炭単価を千二百五十円下げなければならぬ、ついては、年々二百五十円ずつ下げて、五年間に千二百五十円下げようとしたわけです。あのころは、御存じのように、とめ
どもなく物価、資材の暴騰をするときで、
石炭だけを、油と競争させるためにということで千二百五十円下げることを強制してしまったのですからね。ところが、最後に、
政府もこれは無理だとたぶん思ったからでしょう、最後の二百五十円だけは値下げをさせなかったが、少なくとも千円は下げた。ところが、油のほうは、
石炭一トンについて二千円に該当する値下げをしてしまった。だから、競争できるどころの騒ぎではなくなってしまったのですね。それがこの十三年間ずっと続いてきたために、
炭鉱は今日のようににっちもさっちもいかなくなってきてしまっておるのです。だから、さかのぼればやはり
政府の
政策、
対策の大きな
考え違いであったということを、やはり一ぺん
考え直してもらう必要があるのですね。
それから、さっきもお話ししましたように、猶予をしてもらうというのではもうやっていけないのです。もう倒れて処置のないのを、鬼の死んだのと同じでもう扱うことができぬというたとえ話がありますけれ
ども、それと同じです。だから、いま
炭鉱をつぶしてしまったら、開銀と事業団とが約二千億円くらい銭を貸して担保を取っておるのですが、つぶれてしまったら、この
炭鉱の担保なんて三文にもなりません。町方ならまだ何とか借金の抵当に取るという手もありますけれ
ども、
炭鉱だけは、つぶれてしまったら三文の価値もないのです。だから、抵当を二千億円取っておる、しかし、
炭鉱はそのためにつぶれてしまった、そうすると、結局その抵当は三文の価値もない、こういうことになってしまいますから、やはりこれは生かして、だんだんと取っていくということが賢明な策だと思うのです。そういう
意味において、この
炭鉱が民間
金融機関から融資を受けられる信用
状態をつくるためには、開銀と事業団が取っておるこの担保を抜いてやる、そうすれば、たとえば三百億なり幾らの金を借りられる保証条件が出てくれば、ここで
一つの再生への道が出てくると思うのです。だから、この問題は、これで全部御破算にしてしまうか、生かして漸次
政府機関からの借金を取っていくか、これが問題です。これはもう何も議論しなくてもすぐわかる話です。そこに局長も
石炭部長も見えておられるが、この問題でもう局長も
石炭部長も頭を悩ましておると思うのです。何としても、どんなに
炭鉱から泣きつかれてきても処置がない、しかし何とかしてやらなければ
炭鉱がつぶれてしまう、しかし方法はないというので、局長や部長がいまどんなに知恵をしぼってもできなくなっている。だから、これはやはり政治的に高い次元において、
通産大臣かあるいは大蔵
大臣、あるいは必要によっては総理とも話し、あるいは閣議ででもこういう問題の処置をしてもらわなければ、これは
事務当局では何ともできない。これをこのままにしておくと
炭鉱はつぶれてしまう、こういう
状態になっておりますから、この点をひとつ
大臣も深刻に
考えて、私はこの打開策を講じてもらいたいと思うのですが、どうでしょう。