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1972-06-02 第68回国会 衆議院 商工委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年六月二日(金曜日)     午前十時五十五分開議  出席委員    委員長 鴨田 宗一君   理事 浦野 幸男君 理事 小宮山重四郎君    理事 橋口  隆君 理事 武藤 嘉文君    理事 中村 重光君 理事 樋上 新一君       稲村 利幸君    内田 常雄君       小川 平二君    大久保武雄君       神田  博君    北澤 直吉君       左藤  恵君    始関 伊平君       田中 榮一君    松永  光君       山田 久就君    石川 次夫君       岡田 利春君    松平 忠久君       近江巳記夫君    岡本 富夫君       松尾 信人君    川端 文夫君       米原  昶君  出席国務大臣         通商産業大臣  田中 角榮君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      木村 俊夫君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     谷村  裕君         公正取引委員会        事務局経済部長 三代川敏三郎君         経済企画庁国民         生活局長    宮崎  仁君         経済企画庁総合         開発局長    岡部  保君         通商産業政務次         官      稻村左近四郎君         通商産業大臣官         房長      小松勇五郎君         通商産業大臣官         房参事官    増田  実君         通商産業省通商         局長      山下 英明君         通商産業省貿易         振興局長    外山  弘君         通商産業省企業         局長      本田 早苗君         通商産業省繊維         雑貨局長    佐々木 敏君         通商産業省公益         事業局長    三宅 幸夫君         工業技術院長  太田 暢人君         特許庁長官   井土 武久君         中小企業庁長官 高橋 淑郎君  委員外出席者         大蔵省国際金融         局短期資金課長 淡野 勝己君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 六月二日  辞任         補欠選任   塩崎  潤君     左藤  恵君 同日  辞任         補欠選任   左藤  恵君     塩崎  潤君     ————————————— 本日の会議に付した案件  熱供給事業法案内閣提出第八二号  通商産業基本施策に関する件  経済総合計画に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 鴨田宗一

    鴨田委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済総合計画に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。中村重光
  3. 中村重光

    中村(重)委員 官房長いますね。——官房長お尋ねする前に特許庁長官お尋ねをしますが、特許庁庁舎ですね。これは私がいまさら説明申し上げる必要もありませんが、たしか庁舎新築は四十七年度という説明であったと思うんです。おそくとも四十八年度くらいには新しい庁舎建設する。それにまたいろいろ機械設備等説明もあったのですが、その計画はどういうことになっておるのか、一応その点をお伺いしておきたいと思います。
  4. 井土武久

    井土政府委員 現在、庁舎建設は第二期計画進行中でございまして、四十八年度には完成をする予定でございます。この庁舎には、特許庁のような大量の書類の運転をいたしまして事務を処理いたしますような設備、たとえばエアシューターとかダムウエーターとかいう設備をいたしておりまして、現在進行中でございます。
  5. 中村重光

    中村(重)委員 第二期工事というのは、いまの通産省のところに建設をしている庁舎のことですか。
  6. 井土武久

    井土政府委員 現在の通産省の敷地内に建設をいたしております。
  7. 中村重光

    中村(重)委員 官房長お尋ねしますが、いまの旧庁舎を取りこわして、新しい庁舎をつくるための調査費がたしか四十七年度に予算化されていると思う。私が聞くところによりますと、いま特許庁長官は第二期工事が四十八年度に完成したらば、そこへ特許庁を移すのだというお答えであったけれども、そうではなくて、一応調査費は四十七年度について、四十八年度くらいにいまの旧庁舎を取りこわして、そこへ新築をする。したがって、いま旧庁舎に入っている各局を第二期工事で来年度完成をするその新庁舎のほうへ移す。そこで今度は、いまの旧庁舎が四十何年度にでき上がるのか知らないけれども、それが完成をしたときに、第二期工事完成して各局が移って、それをまたいまの旧庁舎を建てかえたところに移す。そのあと特許庁を移すというような計画もあるように伝えられているのだけれどもそこらあたりいかがなんですか。
  8. 小松勇五郎

    小松政府委員 ただいまの問題でございますが、一期、二期の庁舎ができましたあと特許庁庁舎を統合するという基本路線はいまでも変わっておりませんけれども、ただいま先生御指摘のように、現在の本館を取りこわしてはどうかという話が持ち上がっておりまして、建設省につきました百万円の予算でもって調査を鋭意進めておる最中でございます。  これを建てかえるということになりますと、過渡的に現在本館におります各局がどこに行くかという問題が起こってまいります。全体としての能率考えましたときに、予定どおり第二期庁舎特許庁が入居したほうが能率的なのか、現在本館におります人間が一時そこに仮住まいをしたほうが能率的なのかという問題が起こっておるわけでございます。これにつきましてはまだ最終的な結論は出ておりませんが、その全体的な能率考えまして、慎重に研究をいたしたいと考えておるところでございます。
  9. 中村重光

    中村(重)委員 特許庁長官お答えだと、第二期工事にいまの特許庁を移す、こういうわけだ。ところがいま官房長お答えは、私が仄聞したように、いまのような考え方もある、必ずしもまだ最終的な結論が出ていないということになるのじゃないか。特許庁長官としては、第二期工事のほうへ必ず特許庁を移すということになってくると、職員だって前からそういう気持ちになっているだろうし、また特許庁業務というのが非常に複雑だし、いまの庁舎では狭隘であるというだけではなくて、能率上に非常に支障を来たしているということなんです。私ども委員会におきましてその点も十分政府考え方をただしてまいりましたし、たしか附帯決議もつけたと思うのだけれども、それはやはり尊重されるものであると期待をしていた。長官も、そういうことで第二期工事完成をしたならばそこへ移すのだ、こういう考え方なんだけれども、私どもがこの委員会質問し、率直にお答えになることはけっこうなんだけれども質問に対しては食い違いがないように、よその省の関係じゃないのだから十分連絡をとって、正確なお答えということにならなければいけないのじゃないですか。その点両者ともお答えを  いただけますか。
  10. 井土武久

    井土政府委員 特許庁は現在庁舎二つに分かれておりまして、また旧庁舎のほうもきわめて狭隘になっておりまして、事務能率の上でも非常に支障を来たしております。してがいまして、できるだけ早い機会庁舎を統合いたしたいというのはわれわれの強い希望でございます。このような事情官房長も十分承知しておりますので、ただ、先ほど官房長が申し上げたような事情がございまして、まだ最終的には決定いたしておりませんが、われわれといたしましては、できるだけ早い機会特許庁の統合をいたすことができるように期待をいたしておる次第でございます。
  11. 中村重光

    中村(重)委員 この問題については、実際われわれとしては特許庁二つに分かれているということ、それと旧庁舎が非常に狭隘であるということ、それから特許行政が非常に重要であればあるほど早く統合する、そして業務の推進をはかってもらいたいということなんですが、私の最初の質問に対するあなたのお答えは、第二期工事完成したならばそこへ特許庁は移るのだというはっきりしたお答えがあったわけだ。ところが、官房長お答えとなり、また私の質問に対するあなたのお答えはすっかり変わってきたわけだから、そういったあいまいなことではなくて、やはりきちっとした方針をできるだけ早くきめておくということでなければいけないのだと私は思うのですよ。これ以上、その点については申し上げませんが、委員会の意見なりあるいは附帯決議なりというものを十分尊重していくということ、それから特許行政重要性ということも十分念頭に置いてやってもらいたいということを強く要請をしておきたいと思います。  谷村委員長お尋ねをいたしますが、合繊十一社の立ち入り検査をおやりになったという報道がなされているわけですが、この点について詳細な御説明をひとつ伺いたいと思います。
  12. 谷村裕

    谷村政府委員 私ども独禁法第四十六条第一項第四号の規定に基づきまして、いわゆる事件としての立ち入り調査立ち入り検査をやったわけでございますが、これは五月三十日に東京、大阪名古屋地区において十四カ所、同じく三十一日に大阪地区において三カ所、合計十七カ所の化合繊メーカーの本社あるいは営業所等を、証拠収集のために臨検検査いたしたわけでございます。  詳細ということでございますが、何のためにしたかということをまず申し上げますと、一つは、合繊製造業者らがことしの一月ごろからナイロン、アクリル及びポリエステル繊維についてその生産数量協定し、あるいはさらにその後においてその生産制限の強化をやっているのではないかという、いわゆる本来的な意味における自主操短ということではなしに、協定による操短を実行しているのではないかという疑いでございます。第二は、やはりこういった十一社といわれておりますが、欧州合繊繊維製造業者らとの間にナイロンスフ綿輸出について輸出地域輸出数量などを協定しているのではないかという疑いによるものであります。したがって法律的に申しますと、被疑条項と申しますか疑いをかける根拠となる条文は、前者は独禁法第三条後段の不当な取引制限あとのほうは独禁法第六条第一項、不当な取引制限を内容とする国際協定を結んだ疑い、こういうことでございます。いずれもまだ断定的なことは、事件でございますから申し上げられませんが、いろいろな情報からしてそのような疑いがあるという心証を得ましたものですから、臨検検査をしたわけでございます。  それから特に一言申し添えておきますけれども、すでに西独経済省カルテル庁では、たしか四月四日だったと思いますが、本件と同様の国際カルテルドイツ事業者が結んだという容疑で摘発し、かつそれに対して先方独禁法に従っての処理をしている旨の発表があり、その旨は日本においても新聞報道されましたし、また私どものほうも別途両当局間の従来の通報制度に基づいて通報を受ける、そういう話になっております。
  13. 中村重光

    中村(重)委員 この欧州との輸出地域とか数量の調整の協定をやったという問題は、これはどうなんですか、四十年ごろからすでにやっておったのではないかというようなことも伝えられているのですが、そこらあたりはいかがなんですか。
  14. 谷村裕

    谷村政府委員 正確に調べてみないと、まだはっきり何とも言えませんが、ドイツのほうで調べた資料等通報あるいは新聞発表等によりますと、これは少なくとも四年以上前からやっていたかのごとくに受け取られます。しかし詳しくは、私どものほうでも、証拠書類等に基づいて調べた上でないと、ちょっとその辺についてははっきりしたことは申し上げられません。
  15. 中村重光

    中村(重)委員 そうすると、いま委員長お答えになりましたように、西独カルテル庁でことしの四月五日でございましたか、化合繊の九社に対して日本と販売の地域を分割する国際カルテルを結んだということで、総計約四千九百万マルクの罰金を言い渡した。また、チリの国際会議でもそういうようなことが指摘されたというようなことが新聞報道されているわけなんですが、いま通報制度といったようなお話もあったわけですが、そういったことが、今度のこの国際カルテル協定疑いという形でやった端緒になったわけですか。
  16. 谷村裕

    谷村政府委員 私どもがどこから端緒を得るかということについて一つ一ついわばそのソースを申し上げるということもいかがと思いますが、本件につきましては、おっしゃるとおり、たとえば、これはUNCTADの国際会議であったと思いますが、たしか去年の国際会議のときにもそういう話がちらりと出たということがございますし、さらにまた、西独カルテル庁からの通報といったようなこともあったことは、これは事実でございます。
  17. 中村重光

    中村(重)委員 通産省お尋ねしますが、これは本田企業局長関係がありましょうし、佐々木繊維雑貨局長関係があるでしょうが、どちらからでもけっこうですが、いま委員長お答えになりました、また私が指摘をいたしました西独カルテル庁の、日本西独業者との間の国際カルテルを結んだということで、罰金を言い渡されたというこの事実、これは十分おわかりになっておられたでしょうが、これに対する指導はどうなさいましたか。
  18. 佐々木敏

    佐々木(敏)政府委員 ただいま公取委員長からのお話しのように、四月の初めに西独カルテル庁西独合繊メーカー罰金刑を科したというその事情を聞きまして、さっそく私ども業界を呼びまして事情を聴取いたした次第であります。業界は、国際カルテルについてはそのような事実はない、ただ、健全な合成繊維貿易の発展のために、いわゆる輸出秩序維持のために、西独業界といろいろな実情情報交換はしておる、しかし、いやしくも今回の被疑事実のようなことはないというような話であったのであります。私どもといたしましては、業界に対しまして重ねて、秩序ある輸出のための情報交換等は、これをするのはけっこうであろうけれども、いやしくも独禁法等法律違反というような行為にはならないように厳重に指導をした次第であります。
  19. 中村重光

    中村(重)委員 それでは、直接の今回の立ち入り検査の問題についてお尋ねをしていくことにいたしますが、公取委員長は、記者会見でのことだと思うのですが、「秩序ある輸出体制づくりには、政府がなんらかの形で介入すればいい、と考えているのか」ということに対して、「そのへんは微妙だが、要するに、法律に違反しない形で政府が認めたものはいい、ということだ。業者同士秩序ある輸出と称して、ヤミのカルテルを結ぶのは、断じて認められない。政府が一枚かめばいいというのは、政府はその業界利益ばかりでなく、広く一般国民、他の関連業界などの利害も考え、全体の調和をとることができるからだ。貿易は自由を原則とすべきだが、どうしてもその自由を規制する必要があるなら、政府責任を持つべきだ。だから本来、秩序ある輸出政府ベースの話だと思う」こうお答えになっていらっしゃいますが、この報道のとおりお考えになっていらっしゃいますか。
  20. 谷村裕

    谷村政府委員 大体そうでございますが、少しその出方について濃淡があるように思います。私は、本来は輸出フリートレードフェアトレードでやっていただくのが一番いいと思っております。それがまた日本国利益でもあり、世界各国利益でもあると思っております。しかし、そこにある程度何らかの秩序を立てたほうがいいというときには、まず第一義には、その関係業者がいわばモラルといいますか、自分たち態度として、考え方としてやっていただくことは、これはけっこうだと思います。しかし、そこを一歩踏み込んで、自分たちでお互いに協定を結んだり、あるいは相手業者協定を結んで相互に拘束し合うという姿をとるようになるとしますと、それはちゃんと法律に従ったその必要性と、やむを得ないものだといううしろだて法律に従ってとっていただく必要がある、こういうふうに言ったつもりでございます。そのことはなぜかといいますと、二つ意味がございます。一つは、国内的に業者だけの立場からそういう取りきめをし相互に拘束し合うということでなくて、それがやむを得ないならば、すべて国民経済全体の立場からそのことがやむを得ないかどうかという判断をしなければならない。それはまさに政府行政当局責任であるはずだということを言ったのが一つと、もう一つは、そこにあまり書いてございませんが、相手国独禁法に照らしましても、相手国業者日本業者とだけが話し合って何かをするということはやはり先方独禁法制に触れるおそれがある。先方も、少し長くなって恐縮でございますが、たとえば先般参りましたEC委員の方は、自分のほうの独禁法に反することになるから、やはりそこは業者同士だけの話し合いじゃ困るということを言っておられました。また、最近私どもが得ました情報によりますと、ドイツ経済省の担当の課長日本の大使が会ってその辺のことを聞いたときにも、自分のほうとしてはやはり消費者利益その他も考えなければならぬから、ただ一方的に業者同士が話し合うということでは困る、こういうようなことを答えておいでになったようでございます。さような意味で、まず第一には日本独禁法制の問題もございますが、日本業者相手国独禁法制にひっかかるという問題もございますので、業者だけでこっそりその辺の話をお取りきめになることは問題でございます、さように私は言ったつもりでございます。しかし基本的には、本来業者たち態度それ自体もみずからの責任において処理されるということは大事なことだと思っております。
  21. 中村重光

    中村(重)委員 基本的な考え方は、私はそうだと思うのです。  そこで、端的にお尋ねをするのだけれども、表現は「政府が一枚かめば」と言っているんだが、これは政府が介入という意味であろうと思う。また、先ほど私が読み上げましたように、「秩序ある輸出政府ベースの話だと思う」こう言っておられる。この政府ベースの話だということになってくると、これはどういうことなのか。政府が一枚かむというような問題は、単なる行政指導というようなことも考えられる。また、政府ベースということになってくると、政府間協定というようにしか受け取られないような感じもするのだけれども、ここらあたりのあなたの解釈はどういうことなんですか。
  22. 谷村裕

    谷村政府委員 たいへんいいところを御質問いただきましたので、私はそこをはっきりしたいと思うのでございます。私の申し上げていることは、秩序ある輸出という中にも、本来的には業者がみずから自分責任においてそれぞれなさる、そういうマインドでなさっていただくという考え方、これはけっこうでありますけれども、たとえば価格とか数量とかについて、そこにどうしても何らかの一つの取りきめみたいな形をしなければならないという実態がかりにあるとしたならば、そのときにはやはり業者だけでなされるのは困ります、それは業者だけでなくて、やはり政府のほうで、その必要性なり及ぼす影響なりについても、これは日本側でもそうでございます、先方でもそうでございますが、国民経済全体の立場から見ていただくほうがいい。その見ていただくというのはそれじゃ何だというふうにおっしゃいますと、私はそれは単なる勧告や何かでやるというものではなくて、もしそこに協定とか相互拘束とかきちんとした取りきめがあるのだとするならば、それは輸出カルテルならカルテルという形で政府認可をちゃんと受けてもらいたい、そして独禁法適用除外ルールにちゃんと乗っていただきたい、こういうことを言ったわけでございます。政府ベースということばがちょっとそこにあれでございますけれども、私の申し上げている意味は、政府責任がとれるそういうきちんとした形で独禁法適用除外ルールに乗っていただきたい。でありますから、たとえば今度提出しております法律案の中でも、輸出秩序のために通産大臣勧告をすることができるという規定がございますけれども、その勧告に基づいて直ちに独禁法違反のことをしてもいいということでは決してございません。それは先般もここで御答弁申し上げましたが、やはりその勧告に基づいて何かなさるときにはちゃんと現行の法律秩序にのっとってやっていただく、かような意味のことを言ったわけございまして、政府ベースというのはいかにも政府間協定みたいに聞こえるかもしれませんが、そういう意味ではございません。
  23. 中村重光

    中村(重)委員 私は、いまの公取委員長の答弁は独禁法上正確だと思うのです。そうあらねばならない。実は私はたいへんその点を疑問に思っておったのです。「政府が一枚かめばいい」とかあるいは「秩序ある輸出というのは政府ベースの話だと思う」、何かまぎらわしくて、あなた自身が独禁法を軽視するというのか無視するというのか、どうも政府行政指導というもので法をねじ曲げようとしている、それをあなたが追認するというのか容認するというのか、そういったような態度だと実はこの新聞報道から受け取られた。たいへん疑問に思っておったのです。いま正確にお答えになったのでそれでよろしい、こう思うのです。  そこで、今度は通産省お尋ねをいたします。あなたのほうは、今回の公取立ち入り検査についてずいぶんショックをお受けになり、また不満も持っていらっしゃるようなんですが、いまの公取委員長解釈というものに対して御異議はございますまいね。いかがですか。
  24. 本田早苗

    本田政府委員 われわれとしても、輸出秩序の確立ということと独禁法運用という点についての調和については考えねばならないということでおりまして、基本的にはいま公取委員長から御説明のあった考え方でけっこうと存じまして、これからの具体的な運用についてもよく打ち合わして検討を進めたいというふうに考えております。
  25. 中村重光

    中村(重)委員 これから検討を進めるということなんですが、それはどういうことなんですか。あなたのほうは公取に対して何か、公取解釈というものは非常に抽象的でわかりにくい、だからガイドラインを来週中にも作成をして、一つの基準を決めてもらいたいなんということを注文をつけようというような報道もなされているわけですが、私は独禁法というものはあいまいなところはないと思うのです。公取委員長がいまお答えになりましたように、秩序ある輸出をあなたのほうが推進しょうとすれば、国際カルテルというものを一方的に業者が結ぶことではなくて、業界輸取法による輸出カルテルをきちっと結ぶ、それを政府認可をする、通産省認可をするという形であれば何も問題がないでしょう。ですから、これから検討するということは、何を検討しようとお考えになっていらっしゃるのですか。
  26. 本田早苗

    本田政府委員 お答えいたします。  国内的な問題として、輸取法に基づく輸出カルテルということによって独禁法適用が免除されるという形で適法になるということは、これは御指摘のとおりでございますので、その点について問題があるということではなくて、こうしたことが今度は相手国との関係の問題としてはどうなるのかという点につきましては、よく検討を必要とするということでございます。たとえばEC競争制限規定とかアンチトラスト法だとか、いろいろございますが、域外適用等の問題もございますから、これらの点についてはそれぞれの情勢、実情をよく検討する必要があるということございまして、国内的に輸出カルテルをやらずにやるということではなくて、輸出カルテルによって、国内的な独禁法の問題はそれはそれで解決することが必要だ、しかし、そのことがさらに、国際的な問題としては必ずしも現状では明確でない実情にありますから、これらの点については、それぞれの実情に即して判断する必要があるというふうに考えるわけでございます。
  27. 中村重光

    中村(重)委員 それでこの点についてお尋ねしますが、輸取法によって輸出カルテルを結びますね、通産省はこれを認可するわけですが、同じような内容でいわゆる外国の業者協定をする、その場合にはどういうことになりますか。公取委員長解釈を。
  28. 谷村裕

    谷村政府委員 本来、相互に自由を拘束する取引制限をするような協定は違法であります。そうして、そういう内容の協定を結ぶことは独禁法の六条によって違反とされているわけであります。協定とは何であるかというときに、やはりそこに俗に話し合いということばがございます。もう少しやわらかいことばで言いますと、情報交換というふうなことばもございます。そこで、どういう段階までいったら協定ということになるかというふうな問題があるかと思いますけれども、少なくとも日本の国内法の手続に従って輸出カルテルを結ぶ、そうして認可を得ようという前提のもとに先方と話し合い、ある程度のことを詰めていくというようなことは、そのこと自体は、私はそれだから直ちに独禁法に反するというふうには言えないと思います。自分たちだけでそっと結んじゃおうという話じゃなくて、前提として、輸出カルテルを結んで政府認可まで得ようという前提のもとにやっている話であります。これは別な例で申しますと、たとえば国内で不況カルテルを結ぼうというときに、どういう不況カルテルを申請しようかということについて業界はみんなそれぞれ話し合います。そうして生産制限をやろうというときにはどの程度のシェアにしようかというようなこともある程度話し合います。話し合って、ではこれでひとつ不況カルテルを申請しようというところまで意思の合致を見ます。その合致をして、しかし不況カルテルをまだ申請していない段階でそれはもう違法であるといって直ちにたたくかというと、そういう問題ではない。むしろ合法的に事を処理するために、ある程度そこに話し合いなり情報交換なりがある、そういう段階であろうかと思います。そこで一たび今度は、そういう話し合いとして、ある程度、そこで相互を拘束するような内容のものはきめていないで輸出カルテル日本業者がとって、そうしてちゃんと関係当局認可も得て合法的なものとなったときには、もはやそこでお互いに協定する必要があるかどうかという問題になってまいります。あるいはまた、そこで協定みたいなことをなさっても、あるいはそのことは輸出カルテルに基づいて必要とされる話でございます。そういうふうに私ども考えております。しかし逆に、やみにやっておったものが気づかれそうになったので、やみのものをちゃんと嫡出子として認めてくれいというような話になってまいりますと、これは扱いが違うんじゃないか、かように考えておりますが、そういった問題について、ケースケースについて実はまだいままでそれほどたくさんの例がございません。また公正取引委員会としてもまだそういうことを詰めて議論したということはあまりございません。しかし、大体いま私が考えておりますようなことが一般的な独禁法についての考え方である、かように申し上げられると思います。
  29. 中村重光

    中村(重)委員 国内で業者が、いまあなたがお答えになりましたように話し合いをやる、そして正式に法的手続を輸出入取引法に基づいて認可を受けるのです。これは、そこで同じような、認可を受けた内容のとおり外国の業者協定をするということは違反になるかどうかいういことでもお尋ねしたのですが、あなたのお答えをこういう形でその業者が悪用というのか、巧みにこれを利用するということになってくると、私は何か抜け道が出てくるような感じがする。欧州その他、外国の業者とまず話し合いをするんです。これは事実上の協定をやるのですよ。そうして今度は国内で欧州のそういう外国の業者と話し合いをつけた内容、それを国内のいわゆる輸出カルテルということで正式な法的手続をやって通産省認可を受ける、そういうような巧みなやり方というものを業者はやるようになってくるのではなかろうかという感じが私はいたします。ところが、やっていることは通産省認可をしている内容のとおりやっているだから、これは別に何も国際的なやみカルテルではないというようなことになるのかどうか、そこらあたりどういうことになりますか。
  30. 谷村裕

    谷村政府委員 法律論としては非常にむずかしい問題もあるかと思いますけれども、ケースケースによって違うと思いますが、少なくとも、たとえば外国の業者日本業者との話し合い、そして、協定というものが相互に拘束するような実態を持ち、そしてそれがまず前提になって、それをただ合法化するためにやるというようなことであっては私はいけないと思います。あくまで日本の国内手続に沿って処理できるということを条件または留保して、そして最後まで詰めておかないという態度が私は必要でないかと思います。そこらは非常に、いま中村先生おっしゃったように、それはやり方次第じゃないかというふうに言われますけれども、大体が、国内でやっておりますいろいろな問題でも、その点では、どこでどうそのけじめをつけるかということは、実際問題として非常にむずかしい問題でございます。ですから、私は原則論的なことしか申し上げられません。ケースケースによってそれは違うと思います。
  31. 中村重光

    中村(重)委員 今度は通産省お尋ねいたしますが、あなたのほうはいろいろ国内では、それは輸出入取引法に基づいてそこで輸出カルテルを結ぶ認可をする、これはそのとおりやるのだ。ところが、外国との関係については、いろいろと詰めていかなければならない点があるのだ。まあ一つの例としていまお答えになったのですが、はっきり聞き取れなかった点もあるのですが、いま公取委員長と私との質疑応答をあなたはお聞きになって、そのやみカルテルではない方法、いわゆる合法的にやれるようなことですね、そういう点でどういうものが余地として残っておりますか。
  32. 本田早苗

    本田政府委員 お答えいたします。  ちょっと質問の御趣旨がよく理解をしかねましたから、御質問の趣旨に合っておるかどうかわかりませんが、実は具体的なケースケースというものにつきましてわれわれとしてはよく実情をこれから確認をして、そして考え方を整理する必要があるというふうに考えておるわけございまして、いま御質問の、どういう点があるかにつきましては、むしろこの際よく整備したいというふうに考えておるわけでございます。
  33. 中村重光

    中村(重)委員 だから、あなたのほうではこれから検討したい、あるいは整理したいと、こうおっしゃるんだけれども国際カルテルというものは、これは合法的ではないわけなんだから、認められないわけなんですよね。国内的では、それは輸出カルテルというものははっきりあなたのほうが認可をするということによってできるわけなんです。そのカルテルを結ぶまでの間の業者情報交換であるとか、いろいろな話し合いは何も差しつかえない。こう言っておるわけだ。ところが外国の業者との間に、地域協定をやったりあるいは生産の協定等々をやるということはいけないことだ、国際的にもこれは認められないことだ、こう言っている。また、アメリカでありますか、消費者から、この日本業者との協定というものによって消費者利益を阻害するものであるということで、訴訟事件等が起こってきておるということは、あなたのほうは御承知のとおりなんだ。してみると、あなたのほうはこれから積極的に一つの基準、ガイドラインをきめてこれは来週中に作成をするということを伝えられているわけだから、そして輸出業界に提示をする、ここまであなたのほうでは検討しているのだったら、どういったようなことを考えているのかというぐらいのお答えはできるのじゃありませんか。あるいは、いろいろと検討して抜け道を考えていくということなんですか。
  34. 本田早苗

    本田政府委員 お答えいたします。  御承知のように、国際カルテルの締結は六条で禁止されておるわけでございます。国際的な取りきめまたは契約をした場合は届け出ねばならないことになっておるわけですが、現状におきまして御指摘のような問題にかかる届け出というものはほとんどないという状況ございまして、われわれとしても今回の化合繊の取引につきましても、四月の状況が出た際に原局のほうで調べてみましても、単に情報交換であって、そうした協定ではないというふうに言っておったわけでございます。したがいましてわれわれとしては、現在その辺の商品別の実情というものを十分承知していないわけでございますので、その辺の実情というものも把握した上で検討を要するという現状でございます。その点御理解をいただきたいと思います。
  35. 中村重光

    中村(重)委員 あなたのほうは業界に対して秩序ある輸出ということで行政指導をやってきたんでしょう。具体的に業界との話し合等もやってきたんでしょう。ただことばだけで秩序ある輸出をやりなさい、やりなさいと、こう言ったのじゃないんでしょう。十分の意見交換というものをやってきて、その場合に通産省通産省としての考え方をお示しになってきているのじゃありませんか。どういう行政指導をやってきたのです。  現に新聞報道によっても明らかなように、業界は戸惑っておる。通産省指導のとおりやったんだ。これは公取から立ち入り検査をやられて、独禁法違反だといわれるようなことは、これは筋違いだなんというようなことで、非常に反発しているのじゃありませんか。ところが公取は、何も業界に対してそういう指導をやってきたのじゃない。通産省がおやりになったわけだから、だから、どういう指導をいままでやってきたのか、秩序ある輸出ということはどういうことなのか、これから先どうしようとお考えになっておられるのか、そこらあたりを明確にお答できるでしょう。
  36. 本田早苗

    本田政府委員 お答えいたします。  われわれが輸出秩序の体制を確立するということをそれぞれの業界に推進してまいってきておりますが、その点につきましてはやはり輸出カルテルに基づいて正式の認可を受けてやるということでやってまいったわけでございますので、それは情報交換にとどまった事前の打ち合わせを前提として日本側の決定を行なって、それを輸出カルテルとして実施してまいるという形でございまして、それぞれの業界に価格あるいは数量あるいは市場別等の拘束をするような、六条に違反するような協定を前提にしてやるという指導をいたしておるわけではございません。したがいましてもしそういうことがあるとすれば、それは実情をよく確認する必要があるということでございまして、われわれが六条に違反する協定を前提にカルテルを進めることを指導してまったということではないというふうに考える次第でございます。
  37. 中村重光

    中村(重)委員 あなたのほうの姿勢が、私は端的に言わしていただければ、なっておらぬと思うのです。先ほど佐々木局長も、この西独化合繊メーカーとの間に摘発され、いわゆる処分をされたという問題について、そういうことは業界は全く知らないことだということで、それを信頼をしておられる。そういうような態度では私はいけないのじゃないか。ともかく通産省は、業界がもう問題を起こさないようにというほんとうの意味秩序ある輸出ということは、やはり消費者利益といったようなものも十分念頭に置いていかなければならないのですね。ところが秩序ある輸出という形において、実際は輸出を伸ばしていこうという考え方の上に立つ。だからして業界との間にいろいろと話し合いをやって、どういうことをやったら問題にならないか、そして輸出をどんどん推し進めていくことができるか、そういったことだけをお考えになって指導しておられる。だから抜け道ばかり考えることになってくるのですよ。公取から指摘をされないように、あるいは外国の政府から摘発を受けないようにといったような、こうやったらいいだろう、ああやったらいいだろうということで、ほんとうの意味秩序ある輸出ということでなくて、脱法行為というものを業界と一体となってさがし求めていこうとする考え方があるのじゃありませんか、だからして先ほどの佐々木局長の御答弁のようなものが返ってくるのじゃありませんか。私はそういう態度は改めなければならぬと思うのですよ。  いま外貨活用の問題だって起こってきている。それについてどう通産省考えておられるのです。これは私の意見として申し上げますが、その点に対する答弁は求めません。輸出を抑制をしていこう、そして輸入をできるだけふやしていこう、そういうことが通産省のたてまえであるということになっている。ところが輸出はなかなか減らない。計画のとおりいかない。輸入はふえない。そういったところから外貨はどんどんたまってきている。そして今度は外貨活用だということをやろうとしていらっしゃるわけでしょう。私は通産省の頭の切りかえをやらなければいけないと思う。やはり消費者利益をどう守っていくか。これは国内の消費者利益だけではありません。外国の消費者利益も守らなければならない。考え方の基本をそこに置いて関連業界のことも考えて、その上に立った秩序ある輸出というようなことで政策を推し進めていくならば、私はいろいろな問題というものは起こらないのではなかろうかという感じがしてなりません。そういったみずからの姿勢を直そうとはしないで、立ち入り検査をやった公取がけしからぬといったようなことで、またいろいろと巧みに抜け道をさがし求めていこうとするような態を持っておられるのではないかという感じがするわけです。  西独の問題にいたしましても、これは非常に重要な問題です。現にあなたのほうでは、この新聞報道されていることが事実であるとするならば、西独カルテル庁が摘発したとき、ある通産省の幹部は、大ごとにならねばいいがとつぶやいた、こういうことを書いておりますね。この事実から考えてみましても、佐々木局長お答えになりましたように、何も日本業者西独業者とそういうことをやっている事実はないのだ、そういうきれいな答弁なんということは私は返ってくるべきではないと思うのですよ。そう思いませんか。
  38. 本田早苗

    本田政府委員 日本の経済が非常に大きくなってまいって、国際経済社会の中での経済活動を行なうにつきましては、基本的にはやはり国際的な体制の中で、協調した体制で処していくことが必要だというふうに考えるわけでございます。その意味でいま御指摘のように、ともかくも脱法的な行為を行なって輸出を進めるという姿勢でいけるような情勢でないという基本的な認識に基づいて、輸出秩序の確立をはかろうということを考えておる次第でございまして、その点は御理解をいただきたいと存じます。
  39. 中村重光

    中村(重)委員 それであなたのほうの見解をもう一度お尋ねをしておきたいと思う。カルテルに応じないと欧州や米国の政府から輸入の規制を受けるから、これはカルテルを結ぶことが必要悪と考える。結局こういったようなことでやみカルテルという形のものが生まれてもきている。こういう考え方は私は、業者利益を守るということに重点が置かれておるのであって、そのことは大衆の犠牲につながっていくことだ、こう思うのですが、通産省の見解はいかがでしょうか。
  40. 本田早苗

    本田政府委員 お答えいたします。  国際経済社会の中での取引ということになる際に、国としての利害というものがそれぞれあろうと思います。その際にやはり国としての考え方を調整して行動してまいるということが、国際経済社会の円滑な経済運営につながるというふうに存ずるわけでございますので、そうした線に沿うて行動することは必要であろうというふうに思うわけでございます。
  41. 中村重光

    中村(重)委員 時間の関係がありますから、最後に公取委員長の見解をお尋ねして質問を終わりたいと思います。  先ほど私の質問に対するお答えで、あくまで法に基づいて業界は行動すべきであるということですね。政府の介入という意味あるいは政府ベースという意味は、そういうことであるというようなお答えがありましたから、それでよろしいと思います。ところが業界がこれに対して非常に反発をしていることも事実であります。またあなたとしても、この秩序ある輸出必要性といったような問題は、いろんな面からお感じになっていらっしゃるのだろうと私は思うわけであります。そこからあまりにも弾力的運用というようなことで、この独禁法というものを骨抜きにするような形のものが生まれてくるということは、私は十分警戒しなければならぬと思います。また業界も今回の立ち入り検査に対して反発をいたしまして、独禁法の改正といったようなことすら口にいたしておるようなことでありますから、相当圧力もかかってくるのであろう、こう思います。今回の立ち入り検査に基づきまして、今後いろいろと問題は出てくるであろうと思う。その点に対して公取委員長としてはどのような態度でお臨みになる御決意なのか、それを伺っておきたいと思う。
  42. 谷村裕

    谷村政府委員 新聞紙上いろいろと伝えられているようでございまするが、私は必ずしも業界が私どもが現在やっておりますことについて反発しているとは思いません。もちろんそういうことを言っていらっしゃる方もおいでになるようでございますが、しかし何といっても独禁政策と申しますか、あるいは競争政策と申しますか、そういうことはむしろ自由私企業体制をもって立つ業界としては一番肝心かなめの大事なことでありまして、それをみずから否定するような言辞は私は言うはずがないと思います。もしいまのような話があるとすれば、それは何か貿易に対して政府が介入するということが非常にいやだという伝統的な考え方に対する一つの反発かもしれません。介入ということばが私は問題であると思いますけれども、本来自由であるべき貿易に対して何らかの規制、いまさっき企業局長お答えいたしましたような意味での国際的、国内的両方を踏まえて調整しなければならないというのであれば、その調整の責任はやはり政府が負うべきである。その前にもちろん業界自分でなさることはけっこうでありますけれども法律上そういうことを許されていないようなことまであえてしなければならぬというときには、これはやはり政府が調整に入るというのが、いまの民主主義法治国家のたてまえであるというふうに私は考えますし、業界のほうもそれをあえて否定なさったり、反発したりなさるようなことはないというふうに私は思います。ただ、私ども説明なり、言い方なりが十分に御理解をいただけてない点もあるかと思いますし、また独禁法についての十分な御理解がないという点があるいはあるかも存じませんけれども、むしろ業界というところは、そういう問題についての正しいやり方というものをこの際お考え願うということであって、いやしくも私どものやっていることについてもっと骨抜きにしろとか、独禁法秩序というものをもっとぐにゃぐにゃしてしまえとか、そういうような考え方で私どものほうにものを申されることはまずない。もっとよく御理解いただき、お話も伺って、その辺のことの具体的なケースケースについてのあり方ということについても御説明すれば、そういうことはまずないというふうに私は考えております。私どもそういうふうにするつもりはございません。
  43. 中村重光

    中村(重)委員 あなたのことばでどうもまぎらわしい点が出てくるわけですよ。先ほどずばりと、政府が介入をすればとかあるいは政府ベースであるとかいうことは、これは法的措置ですね、輸出入取引法に基づくところのいわゆる政府認可であるということを、きっぱりお答えになって、私はそれを支持した。そうあるべきだ。しかし、いまあなたは、いろいろと問題があれば政府がそこに調整に入ることがあたりまえだ、こういうような御答弁が出るのですよ。そうなると、調整とは何ぞやということで、ここらあたりに何か弾力的に処理できる点があるのではなかろうか。そこらあたりに、通産省が、どうも公取考え方というものは何かはっきりしない面がある。だから、もう少し基準を明確にしてもらわなければならないといったような期待というのか、要求というのが、そこへ出てくるんじゃありますまいか。だから政府の介入とか調整というものは輸出入取引法に基づくところの認可以外にないのだというように、ひとつそこをきっぱりしておいてもらいたい。
  44. 谷村裕

    谷村政府委員 たいへんことばを、使い方を十分に吟味せずに申し上げましたけれども法律に基づいてとられるべききちんとした処理をとってやっていくのが当然である、そのことは何かといえば、いま中村委員がおっしゃったとおりのことである、こういうようにお答え申しておきます。
  45. 鴨田宗一

    鴨田委員長 石川次夫君。
  46. 石川次夫

    ○石川委員 きょうは実は公取委員長も来ておられるので、寡占価格の質問をしたいと思ったのですけれども、時間がございません。非常に残念ですが、きょうは省略をいたします。  急遽けさになってから、いまのうちに質問をしておかなければならぬ、今国会中に一応のめどを立てなければならぬということで質問することにいたしましたのは、筑波学園都市の移転の問題でございます。工業技術院長、来ておられますか。——実はこの問題は、担当して答弁をするという部局がないのです。したがって、これはどうしても通産大臣に直に伺わなければならぬ。問題の性質上そうならざるを得ないのですけれども、四十五分にはこちらに見えることになっておりましたが、またお見えになっておらないので、実は各論のほうから入ってしまうという変な質問のかっこうになって、私としてもたいへん残念なんですけれども田中通産大臣が間もなく見える予定のようでありますから、それまで、非常に枝葉末節なことから入って恐縮なんでありますが、工業技術院長に伺いたいのであります。  今度、工業技術院だけではなくて研究機関を筑波の学園都市のほうに総ぐるみでもって移転をさせようという計画のもとに、いろいろ従業員と折衝いたしておるようでありますが、その中で工業技術院関係がたいへん大きな要素を占めておると思います。その中で、特に地質調査所とか、いろんな在京の職員の世論調査などをやった結果、賛成多数というふうに御認識になっておりますか。その点をちょっと伺いたいと思うのです。
  47. 太田暢人

    ○太田(暢)政府委員 これは昨年の後半から特にこの移転決定に関しましていろいろの職員の意見を伺ってきたわけでございますが、少しさかのぼりまして経緯を御説明いたしたいと思います。  工業技術院は四十二年の九月に移転予定機関という閣議了解に入っておるわけでございますが、実際には四十五年の五月の研究学園都市建設法の国会における成立以来、非常にそれに拍車がかかってまいりまして、次第にいろんな条件が整ってまいったわけでございます。その建設法が通りますまでは、実際の計画はありましたけれども、具体的な条件整備はそれほど進行しておりませんでした。それで、建設法が通りましてから、職員の手当の問題あるいは宿舎の問題、道路の問題、都市建設一般に関しましてのいろいろな具体的な検討が進められてまいりまして、昨年の夏あるいは秋のころまでに大かたの基本的な条件は整ったと私どもは見たわけでございます。その間におきまして、職員に対しましては職場を通じまして、あるいは組合交渉の場を通じまして、私どもとしては、この問題は非常に大きな国の研究所の運営に関する問題であると同時に、研究所に属しております二千八百数十名の職員及びその家族の生活問題にもからんでおりますので、事は慎重に進めなければならないということでいろいろ説明をしてまいり、また職員の側からそれに対する批判なりあるいは意見なりというものを十二分に聞いてまいったわけでございます。それで昨年の十二月の六日に省議決定というのをいたしたわけでございますが、その間におきまして、いろいろ組合のといいますか研究所の職員の意見を聞いてきたわけでございます。その意見の中には、かなり多数の人が、現在進められておりますところの計画その他に対しての不信の問題、それからまだ十分整備がされておらないというようなことに対しての不満をいろいろ意見として出しておりました。  私どもは、この問題は、その時点におきましては、基本的な条件はあらかた整備され、客観的に常識的に考えて、従来問題になっておった大きな問題は大体解決しておるというぐあいに解釈しておりますが、その他今後建設を進めていきますにあたりましては、当然いろいろ不安があるだろうということは了解するところでございました。しかしその不安は今後の計画推進の具体化に伴いまして、私どもは職員の意見を十分検討し、取り入れて進行していく決意でおりますので、必ずや職員の期待にこたえ得るものというぐあいに考えておるわけでございます。
  48. 石川次夫

    ○石川委員 十二時になれば、田中通産大臣が来るかと思って各論から入ったのでございますが、まだ来ていない。実は工業技術院だけが問題ではないのです。各省にまたがる研究機関が全部総ぐるみで移ろうという問題になっておりますので、太田さんにだけこのことの責任を追及したり、決意を聞いてみたところで、ちょっとお話にならぬという性質のものでありますけれでも、各省にまたがるいろんな研究機関の世論調査の結果、たとえば典型的なものとして地質調査所というところを見ますと、記名でもって求めますと、「参加すべきである」ほうが五十七名、「参加すべきでない」のが三十一名で、すべきであるほうが多いのです。しかし無記名になりますと、「参加すべきである」が八名、「参加すべきでない」というのが百四十一名、圧倒的に参加すべきでないという意見が出ておるわけです。調査所長の報告によりましても、「省・院責任者のご発言、あらかじめ立てられた短期間のスケジュールに行動を拘束されざるを得なかったことが重なって、強圧的と見られ、反発を招いたことは遺憾ながら否みえない」という報告がはっきり出ておるわけです。それからあなたの傘下の電総研、電子技術総合研究所は所長がはっきりと、絶対に反対である、移転はいたしません、こういう申し入れをしていることは院長自身がよく御承知だろうと思うのです。したがって、この移転はなかなか容易ならぬことだろう。私は、大臣が来れば申し上げようと思ったのでありますが、筑波学園都市というもの、研究学園というものを総合化して一元的に設けるという構想は、昭和三十五年ごろ私が提案をしたと記憶しております。建設委員会のほうで、大都会の過密を阻止するという任務が一つであります。それからあと一つは、都会の中におけるところのいろんな機関、機構というものがあります。教育の機能、研究の機能、それから産業の機能、政治の機能、政府機関というふうないろんな機能があるけれども一つの機能を分割して移転をしたのでは、かえって両方の交流というものが激しくなって非常な混乱を招くであろう。したがって、私は、筑波学園都市に移転をする場合には、一つの機能をそっくり移転をするということでなければ、いわゆる東京都の過密対策にはなり得ないであろう、こういう提案をいたしました。その結果として生まれたのが、当時、科学技術庁長官は中曽根さんであったわけでございますこれども、過密対策として研究機関を一括して移転をしようということになりました。そのとき中央高速道路の計画がございましたので、私としては富士山ろくというのが構想にあったわけでございますが、いつの間にかそれが筑波というふうに変わってまいりました。筑波に変わってまいりますと、これは私の出身県でございますが、地元では相当の反対があったり、移転する側に相当の反対があったり、しかし言い始めたのは私だということで、非常に矛盾に悩んでおるわけなんです。しかし、筑波学園都市問題に関してのいろんな確認事項がございますけれども、閣議決定の中で、実行段階で四〇%の職員が行かなければ計画をやめざるを得ない、こういうふうなことが確認されております。四〇%も行かなかったら、それはもう研究機関が成り立たないことは当然なんですけれども、たとえば二〇%でも相当の機能がそこなわれるだろうと思うのです。したがって、どうしても総ぐるみで向こうに行けるような体制をしなければ、この研究の機能というものは十分に発揮し得ないし、また筑波学園都市というところに移転をした以上は、研究条件というものが整ってさらに成果があがるのだ、こういう目的で移転をする以上は、それに反するような結果になったのでは何にもならないではないか、こう考えておるわけでございます。  田中通産大臣がお見えになりました。これは通産大臣にだけ聞く問題ではございませんが、あなたは、何か聞くところによりますと、総理の最短コースのようでありますから、ぜひこの機会に十分ひとつ考えている点を、偉くなりますとなかなか直接お話しをする機会もないと思うので、この機会に申し上げておきます。  日本の生産、経済成長というものが相当伸びてきた。それに貢献したのはいろいろ要素というものがあるでしょう。ありますけれども、その中で科学技術の貢献度というものが相当高いと思うのです。しかしその科学技術は一体どういうものであったかといいますと、ほとんどが導入技術で、日本古来の技術というものはございません。はっきり言いまして、アメリカでは技術輸入が十に対して輸出が百であります。それから西ドイツあたりは相当進んでおりますから、技術導入百に対して輸出が四十という比率になっておりますけれども日本では残念ながら技術導入百に対して十一か十二。最近ちょっと上がってまいりましたけれども、とてもこれでは問題になりません。  そこで、アイゼンハワー大統領時代にやった政治の中で一番の失政は一体何だったかという反省が行なわれておりますけれども、その反省の最重点は技術輸出というものを安直にやり過ぎた、これから技術輸出をやるべきではないというような反省がアメリカできびしくなされておるわけです。この間ある学会の会合がありまして、公開の席上でいろいろ技術成果の発表会が行なわれるはずになっておったのでありますが、肝心のところになると日本で行なわれた学会では絶対に発表しない、日本発表したら全部いいところを取られて、またそれが生産力につながって、輸出という形になって世界の市場を荒らすというふうな警戒心が相当強く働いておる。したがって、どうしても日本がこれからいままでのように繁栄の道を歩もうとするならば、技術の面で追いつき追い越す以外にはないし、それだけの能力と素質というものは日本人には十分あると私は考えておるわけでございますけれども、残念ながらこれに対する政府の施策というものは先進国の中で最下位である、これはもう私は認めざるを得ないと思うのです。たとえば政府のほうではGNPの中で二・〇一%になった、研究投資というものは相当ふえたのだということを言っておりますけれども、この中身は一体何だ。GNPの中で二・〇一%というのは一体高いのかというと、これは非常に低いわけです。最低三%を割っているところはございません。しかもその二・〇一%の内訳は一体どうなんだということになりますと、四、五年前は政府の分担したのは二八%であったのでありますが、最近は二六%であります。かえって下がっておる。諸外国はどうなっておるかというと、これは釈迦に説法でありますからいまさら言うまでもないのでありますけれども、どこの国でも、研究投資の総額の中で政府が占めておるのが五〇%以下というところはございません。したがって、日本は研究投資に対しては非常に及び腰で、冷たく扱っておるというのが実態であります。これは認めざるを得ない。ほんとうの基礎的な研究というものは、これを民間にゆだねても不可能です。大学ではもちろんやるでしょう。しかしながら民間は基礎研究といっても、それが全部利潤につながり、生産につながるもの以外は基礎研究はいたしません。したがって、そういう基礎研究も含めて、日本政府の研究投資に対するかまえ方というものが先進国に比べて非常に劣勢といいますか、全く劣っておるという点は私は残念でならぬのであります。この点は思い切って立て直さない限り、日本がほんとうに繁栄の道を歩むことは不可能だということを、ひとつ肝に銘じていただかなければならぬと思うのであります。たとえば昭和三十七年に比較いたしますと、国の予算は四倍にふくれ上がっておりますが、国の予算の中で国立研究機関の予算のふくれ方は二四一、二・四倍でありまして、国の予算よりもはるかに低い。その中で私が特に関心を持っておりますのは、厚生省関係予算は一体どうなんだ。これは人命に関することで、いまライフサイエンスとか環境技術とかいろいろなことがいわれておりますけれども、この厚生省関係の研究というものは特に重視されなければならぬ。そういう時代に非常に変わってきておるということは言うまでもないと思うのです。おととい資源調査会でもって東京の木が五十年間で枯れるという報告がされましてある程度のショックを与えたのでありますが、そんなことは私は百も承知であります。それよりもおそろしいことは、実は農林省の食糧研究所のある室長が発表いたしました紀元二〇〇〇年の日本の人口は一体どのくらいかというと、いろいろな条件が積み重なって、悪い条件でありますが、考えていくとどうしても四千万人を割るだろう、こういうショッキングな報告が出ております。これは政府機関の非常に権威のある人が言っておるわけであります。でありますから、木が五十年間で枯れるなんということはこれは当然のことだ。それからあと一つ私はいろいろな統計を見てまいりまして非常にショッキングな報告だと思いましたのは、厚生省の統計協議会で出しております統計の中で、昔は幼児の死亡の第一位というのは胃腸障害かあるいは呼吸器疾患であったのです。最近は一位から四位までは全部先天性異常であります。先天性異常というのが一位から四位まで占めて、五位にやっと胃腸障害並びに呼吸器疾患によるところの死亡というのが出てまいります。いかに世の中が環境が破壊をされておるか。私はその対応策としては、まあ大気汚染もありますけれども口の中に入る食品の関係が相当大きな影響があると思っております、これは今後国会中にぜひ私は社労でもって大いに声を大にして言いたいと思っておるわけでございますけれども、そういう関係で厚生省の研究機関なんかを特に重視をしなければならぬと思うのであります。しかるに国の予算が四倍に伸びたのに厚生省の研究費用というものは二・二倍です。こんなことではどうにもならぬではないか。ビッグプロジェクトに関していろいろな関連予算というものは比較的伸びがいい。これは科学技術庁の関係でありますが、これはこれで私は否定する気持ちは毛頭ございません。これはぜひともやらなければならぬと思うのであります。しかしライフサイエンスとか環境技術というふうなものは、当然これに伴って基礎研究から飛躍的に、これは政府でやらなければならぬ分野でありまして民間ではできないのです。このうちの重要な一環をなしております厚生省の予算が、わずか二・二倍で国の予算の四倍からはるかにおくれておるというような状態では、まことに日本人はこのまま行ったんじゃ半分以下になってしまうんじゃないかというようなことに対応する施策としては不十分きわまるのではなかろうか、こういう感じがしてならないのであります。この点は、これは通産大臣に言うことじゃないのです。田中さん個人に私は申し上げておるわけですが、この点はどうお考えになっておるのか、簡単でけっこうであります。
  49. 田中角榮

    田中国務大臣 日本の技術開発の予算が少ないということは、もう長く指摘をされたことでございます。そういう状態で長くおれるわけではありませんので、これから制度上の問題も拡大をしてまいらなければなりませんし、国や地方公共団体の助成その他の予算もふやしていかなければならぬということは御指摘のとおりでございます。日本は原材料を持たないというハンディがあるのですから、技術開発を行なうということでなければ自由市場で競争することはできない、こういうことでございます。いままでは高度の技術というのは大体、基礎科学とか学問をやる大学とか、その他の研究所でやるものもございましたが、大体軍の力というものが非常に多かったのであります。戦前も日本の臨時軍事費でいろいろなものが開発をされたわけでございますし、委託研究、委託開発ということで膨大もない資金が投入されたのであります。しかし戦後日本の軍隊というものはなくなったわけでございますし、防衛という局限された、ほかの国に比べてみては全く問題にならないほどの予算に占める小さな割合で防衛が行なわれておるわけでございまして、かつてのように、民間に技術開発ということで研究委託をしたり、学校、大学その他に相当な人を送り込むというようなことさえもできないような状態でありますから、これをカバーするにはどうするかということで科学技術庁の設置が行なわれたり、この商工委員会の議員立法として科学研究所法がつくられ、科学研究所法が現に理化学研究所法になっておるわけでございます。民間の技術開発に対して税制上いろいろな処置がとられておりますが、これはやはり御指摘のように技術開発、技術や科学の問題に対しては、制度的にも、それから予算の上でも、もっともっと研究が拡大せられるように、それとまた単年度ということではなく、長い研究が総合的に行なわれるようにやってまいらなければならない、こういうことを深刻に感じておるわけでございます。
  50. 石川次夫

    ○石川委員 研究開発の問題は言い始めると切りがございませんし、その質問をするつもりじゃございませんから、次に移りたいと思いますが、アメリカなんかは大体国家予算の一五%くらいは研究開発費でありまして、日本の場合は三%、これだけ見てもいかに低いか。向こうは軍事開発ということが相当大きなファクターを占めてはおりますけれども、しかし結局は研究開発であることには間違いない。だから日本は軍事費にそう多くの費用をさかないというのは、むしろその予算を思い切って研究開発にさいていく。特に環境開発、ソフトサイエンス、ライフサイエンスというものに重点を置いて、その基礎研究は民間ではできないのだということを十分考えて、国の研究機関というものを優遇し、どう対処していくかということについて十分な配慮をひとつ払っていただかなければならぬし、研究投資も思い切って出すというような断固たる措置をとらぬと、日本の将来というものはまことに危うきかなと、こういう感じがしてならぬわけであります。  ところで具体的な問題の、筑波学園の移転の問題でありますが、これは先ほど来申し上げておったのでありますけれども、実は言い出したのが私のような気がするのです。建設委員会に入って昭和三十五年のころ、東京都の過密対策の一環として、この都市の持っている機能を分散していくのでなくてそっくり持っていく。学校がいいのかあるいは産業がいいのが、あるいはまた文化施設がいいのか、政治機関がいいのか、いろいろ考え方があろうけれども、一括して持っていけということで過密対策をせぬということの考え方がその当時出されて、それを受けて立って科学技術庁長官の中曽根さんが、団地に研究所以下をそっくり持っていきましょうということになったわけでありますから、私はこのこと自体について反対するということは個人的にはできない立場にあるわけなのです。ところがこれがなかなか円滑に進んでおらないということで、私は何かと懸念にたえないわけであります。  その一つに、田中さんが言明をされた中で、大ざっぱに言いますと、四十六年の十一月六日の通産大臣の談話でございますけれども、高水準の試験研究というものを実現させるための研究環境というものをよくしていくのだ、それは職員の生活環境というのを守るのだ、移転困難者へ十分な配慮をする、こういうことになっておるわけでございます。ところで工業技術院だけに例をとって申しますと、工業技術院の計画は、昭和三十八年は三百ヘクタールということになっておったのであります。ところがそれに対して最近の実現の見通しといたしましては百四十六ということで半分以下になってしまったというようなことで、事志と違っておるというふうなのが実態であります。諸外国の環境でありますけれども、これはあまりこまかいことを申し上げるつもりはないのでありますが、大体研究機関の容積率が一〇〇%の中で何%を占めておるかということでありますと、アメリカ、フランスそれからドイツ、イギリス、こう見ると大体九・九%から六%、国によっては三%くらいであります。日本の場合はどうかというと、工業技術院が四九・六%あるいはまた工業試験所が六〇・三%、それから農業技術研究所が五一%、全く比較にならないのです。こういう点で研究環境というものは非常に劣悪な条件に置かれておる。これは面積からいってもそういうことになるわけであります。でありますから、筑波学園都市へ行くならそういう研究環境というものがよくなるという前提で行なったのでありましょうが、三百ヘクタールに対して百四十六ヘクタールということでは、だいぶ事志と違ってきているのではないかということが懸念されるわけでございますけれども、そこで具体的な問題を申し上げたいのであります。  どこの研究試験所も八五%くらい反対であります。反対でありますが、確認事情としては、四〇%減るということになれば実際問題として移転はしないというようなことを確認しております。四〇%行かなかったらもちろんこれは問題になりませんが、二〇%行かなくたってこれはまた問題にならないと思うのです。ところが、在京の職員は、技術関係に携わっている人はどこでも捨い手があるのです、高級な技術を持っている人は。何も不便なところへ行く必要がないのだということから、条件次第によっては全部脱落をしていくという危険性が大いにあるのじゃないか。そうなると、基礎研究というものは国がやらなければいけないのだ、民間にまかせてはとうていできないのだということと全然反対のことになってくるのではないかということを私は心配をしているわけであります。たとえば電子技術総合研究所なんかは所長名で全員反対、八五%反対だから全員反対だというようなことで、意見書も工業技術院のほうには出ておるはずですね。出ておるでしょう。それからその他ほとんどの研究機関が反対、反対ということで、向こうに行くということについては非常な難色を示しておるというのが実情であります。  御承知のように、研究所の中で、移転に伴う生活環境の問題としては、家族の就学の問題があります。就職の問題、ともかせぎの問題、若手研究者が夜間就学ができない、それからその他の退職をしなければならぬとか転職をしなければならぬとかいう問題も当然出てくるでありましょうし、子弟の教育の問題などもいろいろからんで困難な問題が出てきておる。この一々について詳細に対応策をつくるということは容易ならぬことであるますけれども、研究というものがいかに重要か、それから筑波移転をする以上は研究環境をよくして大いに成果をあげなければならぬ、また基礎研究の分野、新しい研究をしなければならぬ分野というのは国家が大いに積極的に負担しなければならぬ、というような使命感を考えますと、非常に困難ではありましょうけれども、これらのいろいろな困難に伴う、それを阻止するような条件というものを一つ一つもみほぐしていかなければならぬきわめて重要な問題ではないのだろうかと考えておるわけでございます。  先ほど申し上げたのでありますが、電総研なんかはほとんど全員そろって、研究所の室長といいますか、研究主任といいますかの氏名で、全員が反対であるということで、移転はいたしません、特にソフトサイエンス、電子、エレクトロニクスの関係なんかは、地方に移転したのでは最新の技術の交流というものが非常にお粗末になってしまう、やっぱり都心にいなければだめなんだという意見もそれに加味されておるわけでございます。そういうことを考えますと、記名でやりますと参加すべきである、移転をすべきであるということが若干多いように見えますけれども、無記名でやりますと圧倒的に移転をしたくないというふうな意見になっているようであります。  私は率直にいって、何とかこれを円満に、それらの悪条件というものを満たして、そして筑波学図都市の移転ができて、生活環境がよくて、よい成果が生まれる、これは各省にまたがる研究機関というものが総合的にあれば、そこでまたお互いの交流の場ができてくることによるところの研究の成果というものが期待できるのではないだろうかという夢に近い熱望を持っているのでありますけれども、現状ではそうはいかないということを心配する立場で御質問をしているわけであります。  そこで通産大臣お尋ねします。談話でいろいろ抽象的な公約をされておるのでありますが、たとえば独身者及び単身赴任者に対する宿舎はどうなるのだということに対して、単身者はおそらくここに住むことになるであろう、あるいはまた家族があって単身赴任をする場合には入居者は複数になるであろうというようなことが答弁をされておるわけです。こういうことが確定的でないのですね、全然確定的ではない。非常に不安定な要素を残したままで移転をしろ、しろといっても、なかなかこれは移転するという形にはならないのじゃないか。でありますから、私が結論的に申し上げたいのは、先ほど申し上げましたように、単身赴任者の寮は一体どうなるのだろう。それから家族の就学は一体どうなるのだ。それから大きな目で見ると、あそこに高速道路というものがつながって東京といつでも交流ができるというような条件が整わなければ、研究機関であるだけに、最新の技術、民間の技術との交流あるいは学界との交流というものが必要でありますから、そういう問題は一体どうなるのだ。それから共かせぎの問題とか若手研究者の夜間就学の問題とかいろいろございますけれども、ともかく住む問題がまず基本になるだろうと思うのでありますが、これがいつまでに具体的にどうなんだということをやはり通産大臣立場として、まず工業技術院が一番大きな中核でありますから、これらに対して具体的な対策というものを詰めて、そうして代表といいますか、あるいは労働組合でもけっこうでありますけれども、そこに了解を求めるということを具体的にやってもらう。これはばく然とした、そのうちにやりますということではなくて、期限を切って、ある程度の具体的な方策というものを示していくという態度がなければならぬのではなかろうかと思っておりますが、その点どういうふうになっておりますか、ひとつ御説明願いたい。
  51. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほどから御発言いただいておりますとおり百四十六ヘクタールでございますが、いま当初の百六十ヘクタールに比べると小さくなっておるというけれども、ほかに確保する団地用地を含めると二百ヘクタールぐらいになっております。規模は当初の考えどおり進めておるわけでありますが、私自身はもっとできるだけ雄大なものでなければならないという考えを持っております。またこれが何年かたつと小さくなるということでは困るので、できるだけ規模は大きく、こう考えております。約二千八百人、現在の七割ぐらいであり、四十三機関が参加決定をしておる、こういうことでございますが、通産省関係は九機関と工業技術院の本院の一部ということで、十機関ということになるわけでございます。これは住宅は全部提供するということでなければなりません。住宅だけでなく、家族の移動に伴い、環境の整備はもちろんのこと、幼稚園、小学校、中学、大学までというような、少なくとも移転をすることが国全体としての合理化のメリットがあり、同時に移転をする人は東京におるよりも移転のメリットがあるということでなければならない、こう思っております。  私自身、初めてこの計画をつくりましたときの大蔵大臣でございました。河野建設大臣といろいろこの問題に対して討議をした経験もございますし、これだけはひとつ成巧さしたい。成巧させるというよりも、一つのモデルケースとして理想的なものをつくらなければならないという考え方を前提にしておるわけでございます。  口では過度集中を排除しなければならぬということをみんな言いながら、さあよき環境を提供しようというと、それは反対である。いまの大学などは、私は率直にいって管理運営ができないと思う。管理能力そのものがないと思うのです。ですから大学は、よき環境のところに、ことに山紫水明のところに若人が精一ぱい活動し、勉強するような自然環境を与えなければならないとみんな考えておるのです。それで議論をしておる。それでつくろうとするとみな反対である。おかしいことだ。おかしいが現実的に反対である。なぜ反対なのかということをやはり解明をして、それにこたえるような条件を具備しなければならない、こう考えておるわけでございます。  先ごろ本院を通過さしていただきました工業再配置の問題もそうなんです。具体的にはものどうにもならないし、やっていただかなければならない。しかし、さて実行するというと、行くか行かないか。やはり分散のメリットというものは十分与えられなければならないし、計算されなければならない。私は筑波山などというものは、これから考えてみると東京都内と全く変わらない、こう思うのです。交通網さえ整備されれば全く変わらないはずです。郊外から、一時間半かかるところから通ってきているのですから。そうして危険である、生命を保しがたい、こういう状態のところから理想的な環境へということでございまして、私は率直に言ってみて、いろいろなことを言うが、公には言えないけれども、内職ができなくなると言った人があります。いみじくも大学の先生が、私の友人の大学の先生でもって、そんなことを言っても内職ができなくなるんだよ、こういう話であるから、内職ができないというなら、内職をしなければならないということ自体が困るのです。おおよその時間を内職しておって、学校で教えるときには疲れておって居眠りばかりしておるということでは、いい先生になれるはずはありません。それなら身分や制度や、ほんとうに給与体系も変えなければならない、こういうことでなければならない。私はそういう意味で、分散ということが必要であるということであるならば、そんなことをいったって——毎日議論をしておりながら、そんなことをいったって実際はあまり行きたくないんだよということではならないと思うのです。だから社会環境を整備する。そして実際において生活環境も社会環境も整備されるということでなければ、円満な移動というものは実現できないと思います。またそういう意味で、閣員の一員として、通産大臣という立場だけではなく、もうすでに七、八年も歳月をかけておるものでございます。ブラジルはブラジリアという新しいものをいま建設しておる。日本もかっては、こんな過密ならば遷都をしなければならないという真剣な議論が行なわれております。そういうことから考えてみれば、この筑波移転ができない。できないというのは、やはり私は政府責任を負わなければならない問題である。政府関係機関の移転ができなくて分散などできるはずがない。そのためにはほんとうに進んで分散に協力をしてもらえるよう環境の整備を行ない、条件を具備すべきだ、こう考えております。
  52. 石川次夫

    ○石川委員 約束の時間が経過しているという警告を受けておるので、非常に短い時間でどうにもならないのですけれども、いま通産大臣は、百六十ヘクタールが百四十六ヘクタールになったとおっしゃっていますが、これは最初は百六十ヘクタールじゃなくて三百ヘクタールという構想であったのです。それが推進本部の決定が百六十に減って、百四十六に減ったというふうなことから、いま一事が万事こういうことではなかろうかということで、一つのメジャーとしてこれがとらえられておるということで申し上げたわけであります。  これは、時間がありませんので、端的に私は、さっきの質問を繰り返すようなかっこうになりますが、具体的に申し上げます。生活環境として、単身赴任者の独立住宅の保障。それから女子職員に入居資格を認める。それから中間地帯、松戸とか取手あたりになると思うのでありますけれども、ここに宿舎を建設することになるであろうというようなことではなくて、この中間地帯に宿舎を建設するという、こういうふうな計画をやはり確立をしてあげなければいけないんではないか。それから移転困難者に対しては、その移転困難者という認定が一体どこにあるのだという基準がはっきりいたしません。この移転の困難な人というこの認定の基準というものをはっきりさせる。そして配置転換をする場合も出てくるでありましょう。この移転困難という人に対してはそういう場合も出てくるわけであります。でありますから、その前提としての認定基準というものを明確にする。それから退職手当についても、いろいろと組合の側では不満があるようであります。  こういう点について、具体的に期限をきめて、いつまでにはっきりさせますということを、実力大臣の田中さんからここで約束をしてもらいたいと思うのです。そういうことがないと、このままずるずると行ってしまって、後継通産大臣が出ても、その約束を継承して、これを何とか実現をさせるんだという責任をもって当たるというふうな態度がなければ、いまのままでは八五%反対のままで、現実の問題としてはどうしても移転ができない。建物だけはできても移転ができないということににならざるを得ないと思うのであります。そういうことで、私はまっこうからこれに対して反対という立場で言っているのではないということは再三申し上げているとおりなんでありまして、こういうふうな条件が満たされなければ、そういう雄大な構想の実現ということは不可能であろうということから、いま私が具体的に申し上げたようなことについて、大体いつごろまでにめどを立てて、この従業員といいますか、移転する対象の人と折衝する、これを明示するということにしてもらわなければならぬと思うのであります。この期限を切ってもらいたいと思う。ただばく然と、そのうちとかなんとかというと、いつまでたってもこれはケリがつかぬ問題じゃないか。田中通産大臣だから私はあえて申し上げる。ほかの大臣ではなかなかそういうことは言い切れないと思いますので、ひとつよろしくお願いいたします。
  53. 田中角榮

    田中国務大臣 これは、移転をするときに、いまお述べになりましたような条件を具備しないなどという状態で移転を強行することはできません。住宅を提供する。移転をするなら、女子、男子の区別なく住宅を提供しなければならない、それは当然のことであります。そういう問題に対しての具体的な条件というものは、これは移転機関を決定をするときに同時に出すべきものだったのです。それが、検討いたしておりますと、こういうことであります。事実検討しております。事実検討しておりますが、そういうことがまず、いままでなかなか進捗しなかったことでございますから、それは来年の予算が決定されるまでには、今度はもう予算を、いつから事業を開始する、移転をいつ完了するということになりますから、それまでにはすべての問題に対しては、やはり条件は提示をすべきである。これはもうすべてのものに結論を出すべきであろう、こう私は考えます。これはいつまでということを、もう少し時間をいただいておれば、私も関係省とも相談をしたわけでございますが、いま突然の御発言でありますから、これは来年度の予算編成までにはこの問題に関する限り条件を明確に提示をすべきである。これはもう政治的に私はそのように思っております。
  54. 石川次夫

    ○石川委員 いまの大臣の答弁は、確約をされたと思いますし、あと通産大臣にもそのことをよく伝えていただいて、この移転が円滑にいくような具体的な条件を提示するということをぜひお願いをしておきまして、私の質問を終わります。
  55. 鴨田宗一

    鴨田委員長 中村君から関連質疑の申し出がありますので、これを許します。中村君。
  56. 中村重光

    中村(重)委員 いま石川委員との間に通産省所管の九機関の移転の問題について、工業技術院の当局のやり方が非常に強引だというので、抗議の行動が組合でなされた。十一月二十五日に時間内食い込みの職場大会を実施した。ところが当局は、三月に至って四名、各分会の委員長なんですが、これに戒告を含む処分を実は発表しておる。ところがこの問題は、いま石川委員からも指摘がございましたように、いろいろと院内その他で、組合との間に実は交渉が持たれておった。その交渉の中でいろいろ組合との間に約束をされていることもあるわけです。ところがそれを無視して、一方的に省議決定をしたということがこの抗議行動という形であらわれてきているのです。それに対して処分をしたということは、私は行き過ぎだと思っているんですよ。何も政治的な行動でも何でもないんですね。大臣がおっしゃるように、工業再配置であるとか、大臣のそういった構想、この筑波移転の問題等も、これは当然移転すべきだ、これは政策決定機関並びに実施機関としては当然のことでしょう。だがしかし、働いている職員は、現状においてこれはどういうことをされるのかというようなことで不安を感じて、これに対するいろいろな反対の意向を持つ者もあるだろうし、いろいろな面から交渉するということは、私は当然だと思うんですよ。当局のやることだから何も文句なしについてこいということだけでは無理があるんだ、私はこう思うのです。イデオロギー的でも何でもないことに対して、約束があったのにその約束を全く無視して、一方的に省議決定するということはけしからぬじゃないかといって、若干の時間内に食い込む職場大会をやったというだけで、何も業務に対して影響を及ぼしていないのに処分をしたということは、私は行き過ぎだと思うのです。これはすみやかにこの処分を取り消すべきである、こう思うんですね。これはいろいろ訴訟、当然これに対する異議申し立て等が起こっておりますが、それぞれの措置がなされるでありましょうが、これは通産大臣としてでもこの点はやはり取り消すべきであるという考え方の上に立って、あなたでやれる措置を私は講ずべきである、そう思いますが、その点はいかがでしょう。
  57. 田中角榮

    田中国務大臣 通商産業省、工業技術院も含めてでございますが、これは国民に奉仕をしなければならない公務員として存在をするわけでございます。だからその意味で、この職務の責任を果たすためにはお互いが努力をしなければならないということは申すまでもありません。私は一々の問題をつまびらかに承知いたしておりませんが、そういう処分を行なわなければならないという事態を起こさないように、これはみんなが考えなければならない問題だと思います。私は事情はよく承知しておりませんけれども、いかに何でも、いま通産省でもかりにも運営の問題でトラブルを起こさないように相当細心の配慮をしております。どこまで一体時間をかけるのかというぐらいに努力をしていることは事実であります。ですから、私は先ほど前提として申し上げましたのは、国民に奉仕をする公務員という立場は、これは全く通産省の職員なら、立場は違っても全部がそういう責任があるわけでありまして、私はいま一方的な処分を行なうというようなことは、各省でも行なわれておらない、こういう考えを持っております。これはちょっとでも行き過ぎでもあるとすれば直ちに国会で審議されるものでございますし、そういう意味では処分権発動なんというときには慎重の上にも慎重にということこれは通産省だけじゃないのです。どこもそうなんです。だからそういう意味で処分をすぐ撤回できるのか。撤回するなどということは、私自身もまだ内容をつまびらかにいたしておりませんから申し上げられるようなものでありません。ありませんが、非常な配慮の中で行なわれたものだ。そういうことは再び起こらないようにお互いが努力をすべきである。通産省の代表である私としては、省でそういう処分をしなければならないような事態が起こったこと自体も私にも責任があるわけでございますし、特に筑波移転という政策を行なうというときに、自分が行かなければならない、自分が移転しなければならないというような問題で処分事件を起こしたとすれば、それははなはだ遺憾でございます。遺憾でございますが、これをいま取り消すとかそういうことは述べられるような立場にないということはひとつ中村さんも御理解を賜わりたい、こう思います。
  58. 中村重光

    中村(重)委員 時間がありませんし、関連ですから、あまり議論はいたしません。  大臣がよく承知していない、そのとおりだと思うのです。承知しておられない。国民に奉仕をする公務員としてということなんだけれども、この問題は、いまあなたが大上段に振りかぶって、国民に奉仕する公務員といったような問題としてこれは扱うべきものじゃないのです。やはり移転をするということになると、これは関係者としてはいろいろと自分の身辺の問題その他で心配するのはあたりまえなんですよ。そういうことで交渉をしているのです。交渉して、それに対するそれなりの約束事がなされている。にもかかわらず、それを全く無視して一方的に省議決定したのはけしからぬじゃないかといって、抗議行動をやって、職場大会をやった。それが若干時間内に食い込んだというだけのきわめて単純な問題なんですよ。これを慎重に配慮してやったのかというと、実際はそれはそうじゃないのです。あなたがよく承知していないんだと言われたから、私はそのとおりだと思うのですから、よく事情を確かめられて処分を取り消す。これは人事院へ提訴しているでしょうから、私はおそらく処分取り消しになるだろうと思うのですよ。あなたもおっしゃるようにあなたが責任者なんだから、これに対しては十分事情調査して、そしてそれに適切に対処してもらう、そのことを私は処分の取り消しという意味で適切にというように言っているわけだが、同時にこの処分を取り消された場合、昇給が通常十二カ月であるのを十五カ月に実は引き延ばされる、そういったような不利益処分もなされているわけで、当然これも解決をしていかなければならぬ問題ですから、十分調査をして、こういったことを円満に解決をしなければ、また移転そのものもあなたの計画のとおりうまくいかぬ、こういうことになりますが、よろしいですか。
  59. 田中角榮

    田中国務大臣 詳細を承知いたしておりませんから調査をいたします。いたしますが、こういう仕事は大事業でございますので、やはりお互いが理解をし合ってこれを完成せしむるという方向でやらなければならない。そういうためには万全の態勢をとらなければいかぬ、こう思いますから、とにかく二度とそういうものを起こさないように、通産大臣としても両方を代表しているわけですし、これはもう実際通産省の中では、皆さんからおしかりを受けないように、通産省よくやっておる、こういわれるような通産省をつくっていきたい、こう思います。
  60. 中村重光

    中村(重)委員 いまあなたのお答えのとおり万全の措置を講ずる必要がある。通産省よくやっているということは、内輪でトラブルが起こらないことです。だからあなたが知らなかったことでも、いろいろとそういったような問題が起こったということは事実なんだ。それを職員だけがけしからぬということで、処分をしたのは万全の措置をとってやったんだろう、そういうように判断されないように、調査をすると言われたんだから、そういったようなことを円満に解決をすることが万全の措置を講ずることになるし、あなたが言われる大目的を達成することにつながっていくのだ。そういう考え方でひとつ十分配慮してもらいたいということを要請をいたしておきます。
  61. 鴨田宗一

    鴨田委員長 近江君。
  62. 近江巳記夫

    ○近江委員 きょうは時間がありましたら筑波の問題も相当深くやりたいと思っておったのですが、私は科学技術委員会理事もやっておりますので、そちらの委員会でもやりたいと思います。それで同僚石川委員からもいま筑波の問題について質問があったわけですが、いずれにしてもこれだけ大量に多くの人が移転をするわけでありますし、当然これは住宅だけの問題ではなく、道路、すべての環境整備、当然子供さんもおるわけでありますし、保育所、幼稚園あるいは小学校、各学校建設、施設をはじめとしてその他の福祉施設を当然充実して、むしろそういう恵まれた環境の中で研究ができるのはしあわせだ、むしろみんな行きたいという、そういう万全の態勢をとっていただくことが大事じゃないかと思います。田中大臣は都市計画については内外に高い評価がありますし、それをひとつ実行に移していただく、これが一番大事じゃないかと思います。この点ひとつ簡潔にお答えをいただきたいと思います。
  63. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほども申し上げましたように、分散というものが国のために必要であり、分散は不可避である。しかもこれは計画をきめて実行しておる、こういうことでありますから、これはいまよりも合理的なものにならなければならないということでございます。   〔委員長退席、橋口委員長代理着席〕  それは国の立場からだけではなく、ここにおる研究員も職員もみんなよくならなければならないということでございます。これは国の要請だから、国益を守るためだからその移転に行きなさいというようなものでは全然ないのです。これは解決ができる問題であります。移転をするというなら自分でもって住宅を見つけなさいということではできない。私はその問題は特に強く関心を持っているのです。昔は確かに官庁機構でもって移動がありました。半年でもどんどん移動をされました。いまでもそういうことでは移動をしておる。移動をするかわりに官舎はある。官舎があるから移動ができるのです。官舎が全然なくて移動ができるか。それは見つければいいじゃないか。見つけられない人もあるのです。だから当然必要なものは提供しなければならないし、移転が行なわれた限りにおいては効率的に運営がされなければならない。それは職員が非常に不満や憤りを持っておって、その機能が効率的に動くわけはありませんから、そういう意味で必要なものは、無限に何でもしてあげるということじゃないないのです、移転に伴い当然なさなければならない問題に対しては政府が措置をする。こういうことだと思います。
  64. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから次に問題は変わりますが、米ソ首脳の間で今回米ソ貿易合同委員会の設置というものが合意されたわけです。こういうことによって米ソ貿易拡大が相当進むのじゃないか。そういう点におきまして、今後日ソ貿易あるいは日中貿易等に影響というものがやはり出てくるのじゃないか、このように思うのですが、大臣としてはその点をどのように感じていらっしゃいますか。
  65. 田中角榮

    田中国務大臣 日ソ貿易は御承的のとおり往復でもって千億ドル弱ということで、年々拡大をしておるということでございます。アメリカとソ連との間はあまり貿易は拡大しておらぬのであります。アメリカの状態を聞くと、確かに品物の数は非常に多いが、金額としては大きく伸びておらない。見本のようなサンプルをみんな集めてソ連が輸入するというようなものではないかとさえいわれておるくらいに拡大をしておらなかったわけでございますが、今度のニクソン訪ソによって両国間の緊張の緩和ということもございますし、経済交流を行なおうということでありますので、そういう意味では米ソ間の経済は拡大していくと思います。それから、いまパリでやっておりますココムの制限の大幅緩和もありますので、そういう意味では日ソ間が拡大をしてまいったように、おくればせながら米ソ間の貿易は拡大されていくと思います。しかしそれにおいて日本との貿易が制限をされるというようなことは全くない。これはシェアがまだ非常に小さいことから考えてもそういえるし、年間十億ドルであっても、チュメニ石油一つでも十億ドル、こういうことでございますし、いま七つばかりのプロジェクトを全部合計すると三十五億ドルくらいに計算されるということにもなりますから、そんなに影響を受けるというようなものではない、このような理解です。
  66. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま大臣もココムの緩和等についておっしゃったわけですが、アメリカの訪中に伴って、昨年の秋にココムの緩和の措置がとられたわけですが、米ソのこういう委員会の設置等から考えまして、ココムは早い時期に撤廃されるのじゃないか、私はこのように思うわけです。緩和から撤廃という形になると思いますが、これはわが国としても今後の貿易拡大という点において大いにやっていただかなきゃならないことでありますし、わが国だけでできることじゃありませんけれども、その点について米ソのこういう接近ということがあったわけでございますし、くどいようですけれども、ココムに対する大臣の考え方を重ねてお聞きしたいと思うのです。
  67. 田中角榮

    田中国務大臣 ココム制限というのは現に存在をいたしますが、非常に少なくなってまいりました。いま品目で百六十七品目だと思いますが、大体その程度に詰まってきておるわけでございます。今度のパリの折衝におきましてこれがまた大幅に緩和をされる。私は一月の日米会談においては、全廃の姿勢で臨むから、こう言ったのですが、その姿勢は理解ができます。お互いに利害もあることですから、段階的にということで折衝が行なわれると思います。こういうことでありまして、現に折衝は行なわれました。日本の要求も相当大幅に理解を得られておりますので、ココムの制限緩和というよりもやはり撤廃に向かって動いておる、こう理解していいと思います。
  68. 近江巳記夫

    ○近江委員 私、この間党の第二次訪中団で中国へ行ってきたわけです。広州交易会も見てまいりまして、今年は一万五千人以上の人が参加しておりましたし、アメリカも参加しておりました。そういうことで展示の商品も約二万種類というような非常に活気を呈しておったわけです。日本からもかなりそういう商社の人も来ておりましたけれども、やはり円・元決済の問題ということについて非常に関心を持っておりましたし、現実にヨーロッパにおいても英、仏、西ドイツ、スイス、あるいはカナダの一部がそういう人民元の勘定を設けて決済をやっておる。こういうことでわが国としても非常に不利な立場にもあるのですみやかにそういう問題を解決してもらいたい。こういう意見も言っておりました。そういうことで非常にむずかしい問題もあろうかと思うのですが、円・元決済に対する大臣の取り組みの姿勢についてひとつお伺いしたいと思うのです。
  69. 田中角榮

    田中国務大臣 いままではポンド建てで日中貿易が行なわれておったわけでございます。しかし円・元決済の問題が報道されておりますことは承知いたしております。これは覚書貿易事務所と外国為替銀行を通じてこの問題が話し合われておる、また日本の外国為替銀行との間にもバンクローンを提供するような問題が話されておるか、もしくは話されると思います。これは当然そういうことになってくると思うのです。これはドルやポンドという国際通貨と比べて円そのものが遜色を持たなくなってきたという問題もございます。これは円ベースの貿易もだんだん拡大をしていくということであるので、バンクローンの問題等も含めて円・元決済の話し合いがつけば、政府はそれに対して異議をはさむというようなことはないのです。これは十分話し合われておりますし、話がまとまればそれでいいことだ、このように考えております。
  70. 近江巳記夫

    ○近江委員 話がまとまそばいいことだとおっしゃったわけですが、政府としてそれはいろいろな角度でさらに力を入れていくというもう一歩の姿勢があるものかどうか、見守ってそれがうまくいけばけっこうだというのとニュアンスがだいぶ違うわけです。その点くどいようですが、重ねてお聞きしたいと思います。
  71. 田中角榮

    田中国務大臣 政府は、正式に国会で総理大臣が日中間の国交の正常化を行ないたい、こういうこれを申し上げておるわけでございます。貿易も拡大をさせたい、要請があれば輸銀の使用も認めます。こう言っておるのです。日本が言うことはみな言っておるわけです。ですからあまりこちらからだけ積極的になって、貿易をするためには円・元決済でも何でもということよりも日本政府考え方日本の商社の考え方等は十分理解されておるはずでございます。先方がそういう意思があれば当然外国為替銀行を通じて覚書貿易事務所と話があるようでありますから、向うから要求があるならばそのまますんなりと受け入れられる体制にございます。こういう表現が一番穏当な、あまり刺激をしない表現であるということでひとつおわかりいただきたいと思います。
  72. 近江巳記夫

    ○近江委員 向こうで覚書事務所の人とも会っていろいろ話も聞いてまいりましたが、われわれ考えるのは、今後も相互における滞在の問題とか営業活動の拡大とか緩和といいますか、そういうことも非常に大事ではないかと思うのです。もちろん根本は一日も早く日中国交の回復、これを急いでやる以外に根本的にはないわけでありますが、いま申し上げたそういう滞在の問題とか、あるいは営業活動の緩和の問題とかそういうことについては、大臣としてはどのようにお考えですか。
  73. 田中角榮

    田中国務大臣 これは日中覚書貿易事務所でやってもらっておるということであって、政府自身がこれにタッチをしてどうこうというような状態ではいまないわけです。
  74. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、輸出入のアンバランスの是正ということは、これはいつも問題になるわけですが、わが国としてはかなりの大幅な出超に実はなっておるわけです。結局その原因は、いろいろ考えてみますと、個別ごとのスポット取引というものが非常に多いのではないか。まあ覚書がペースとしては非常に低いところにある。こういういろいろなことが考えられると思うのですが、今後のそういう輸出入のアンバランスの是正について、具体的に何か構想をお持ちでありますか。
  75. 田中角榮

    田中国務大臣 日中貿易は、六九年で輸出が三億九千万ドル、輸入が二億三千万ドル、七〇年で五億六千万ドルに対して二億五千万ドル、七一年で五億七千万ドルに対して三億二千万ドルということですから、二億ドルちょっと輸出超過でございます。これは肥料とかその他いろいろな問題があるわけでございますが、やはり正常な貿易ということを拡大していくためには、どうしても輸出入のバランスがとれることが望ましい。そういう意味で、中国側からの輸入をふやすということによってますます貿易が拡大していく、こう思います。しかし、日本は一億人、中国は七億五千万人、こういう非常に大きいものでございますから、完全にバランスをとるということだけでもないと思うのです。ただ考えてみれば、日本でも中国から入れたいというものはたくさんあるわけです。特に飼料とか雑穀とかいうことを考えれば、まだまだ輸出入のバランスをとりながら貿易総量は十分拡大していく余地がある、こういうことでございます。
  76. 近江巳記夫

    ○近江委員 特恵の輸入税率の適用という問題でありますが、これは向こうの立場もあるし、むずかしい問題であろうと思いますが、政府としてはどのようにお考えですか。
  77. 田中角榮

    田中国務大臣 これは、いま国交が正常化しておらない、普通いう未承認国との間というような関係でありますから、特恵を供与していない。こういうことでありますが、実際だんだんと基本税率から特恵を与えておると同じような特態になりつつあるということで、大きな差別でないということは御承知のとおりでございます。ですから、そういう意味で特恵問題で中国の貿易支障を与えておるということはいえないのではないかと私は思います。しかしこれからも貿易拡大のために幾ばくかでも障害ありとすれば、それはだんだん除去してまいらなければならない、こう思います。
  78. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、先ほど申し上げましたように、米ソ二大大国が、言うなら経済の新時代に踏み出したように思うのです。そういう点で、わが国におきましても日朝貿易のそういう拡大の動きが最近あるように思うのですが、私も予算委員会で輸銀使用等の問題についてもお聞きしまして、今後積極的にやっていくというような御答弁があったわけですが、なかなかそれが具体化しないということを私も見ておりますし、そういう点で、いまのこういう時点から踏んまえて、今後の輸銀の使用問題あるいは北朝鮮からのそういう入国問題、こういう問題が非常に大きな問題になっておるのじゃないか、このように思うのです。  そこで、輸銀融資の認可につきまして引き合いはかなり多い、具体的に進んでおるように思うのですが、やはり何といいましても、これは政府の決断にかかっておると思うのです。その点の考え方。それから、入国問題等については外務の問題になろうかと思いますが、政府の最高首脳とされて、その辺については絶えずあらゆる点で話をされておられるわけでありますし、その辺についてどのようにお考えか、その二点についてひとつお伺いしたいと思うのです。
  79. 田中角榮

    田中国務大臣 日朝間の貿易は、六八年五千四百万ドル、六九年五千六百万ドル、七〇年五千七百万ドル、七一年五千八百万ドル、だんだんとこう百万ドルくらいずつふえておる、順調な伸びを示しておる、こう見るべきだと思います。いま日朝間で延べ払い輸出というものについても幾らかあるようでございます。しかし、これはまだ正式に要請がないということであって、これは輸銀の使用が認められないなら出してもしようがないということなんでしょう。正式なものはございませんが、窓口で相談をしておるというものはあります。輸銀を使うかどうかという問題、これを正式に答えておるのは、ケース・バイ・ケースで考えます、こう言っておるわけです。これは中国に対しては、バイ・ケースと言っておったのが申請があれば認めます、こういうふうに変化しておる。北鮮に対しては依然としてバイ・ケースである。これは北越に対してもバイ・ケースである。こう答えておるわけです。それは一体やらないのかやるのか、これは国際情勢の推移もございますしいろいろな問題があります。ですから、一つの行為をやることによって、いままで仲のよかったところとうんと仲が悪くなる、こういうようになれば、それはやはり慎重に考えざるを得ないわけです。ですから、そういう問題もございまして、いま日朝貿易に対しては、申請があればケース・バイ・ケースで考えたいと思いますと、こういうことなんです。あまり進歩がないなあということを言われるかもしれませんが、貿易は自然に拡大をしておる。ことしに入っては特に拡大をしておる。いろいろな方法で民間の信用供与というような問題もございますし、順調な拡大を示しておるということでひとつ御承知いただきたい。
  80. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで入国の問題等については大臣の立場では……。その点ひとつ。
  81. 田中角榮

    田中国務大臣 入国問題は、私はいつでも前尾法務大臣及び福田外務大臣の答弁を聞いておるのでございますが、技術者の入国とかいろいろな問題がございますが、これもやはり申請があったら具体的に検討をいたして処理いたします、こう答えておるわけなんです。実際は入らないんじゃないかということですが、これはいままで法務大臣が答えている以上に私がいまここで別なお答えができるという状態にはありません。
  82. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、昨年繊維の政府間協定ということで一つの非常に大きな問題として、特に繊維業界を中心として日本国内でも非常に大きな問題になったわけですが、今回ガット内に合繊問題作業部会というものが設置されて、そういう設置というものが結局は多国間協定に切りかえになっていくのではないか、また日本が米国の圧力に屈したのではないかと、業界が相当反発しているように私聞いておるのですが、その点政府のそれに参加する意図についてひとつ率直に承りたいと思うのです。
  83. 田中角榮

    田中国務大臣 ガットの作業部会の中に一つの勉強会をつくろうという動きがあることは、ロング事務局長が正式に提案をいたしましたから承知いたしております。また日本側はどうだという意向も聞かれております。日本側は、勉強会であって、お互いが意見を交換するということであれば当然参加をしなければなりません、WPの設置ということについては何も反対することはないのだ。ただ、多国間協定を行なうというような特定な目標を持っておる会合だと簡単には参加できません、私たちはそういうものにいま応じません、こういう基本的な姿勢を出しておるのでありますから、そういうものなら応じられませんという意思を明らかにしておるわけです。しかし、日本が入らない国際会議ということはこれからなかなかなくなりますし、先方もこの問題に対しては、話をしていく過程において、勉強の過程においては、多国間協定とかいろいろなものが出てくることは多少はやむを得ぬじゃないか、それさえも全然議論ができないという勉強会は存在しないのじゃないか、というような意見が一部にあるようでございます。ございますが、通産省は、この問題に対しては国会でも明確に姿勢を述べておりますし、勉強会以外には参加をしない、できないということを言っております。勉強会であるならこれは当然参加いたします、こういうことを申しておるわけでございまして、外務省等の意見もありますし、出先の意見もございますし、私たちの基本的な姿勢はいままで国会で申し上げておるとおりであって、変わっておりません。相手のある話でございますし、国益をどうすれば守れるかという問題もありますし、性格は国際的な機関の中における会議であるということを十分考えながら最終的には対処してまいろう、こう思います。
  84. 近江巳記夫

    ○近江委員 木村長官にきょう出ていただいたわけですが、OECDの会合、御苦労さんでした。きょうはお疲れのところを出ていただいておりますので、ひとつ問題をしぼってお伺いしたいと思うのです。  まずOECDの会合に出席されまして、大臣としてはいろいろ活躍があったと思いますが、率直な御感想、また今後大臣として、わが国としてどうあるべきか、そういうことにつきまして簡潔に承りたいと思うのです。
  85. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 今回の閣僚理事会の背景と申しますか、一つの過渡期であるということでございます。スミソニアン体制と申しますか、通貨多角調整はできたけれども、現実の通貨改革は未だし、それを残している、という意味では準備期でもございます。また通商面におきましては、昨年私が出席いたしましたガットの総会で次期国際ラウンドを提唱いたしましたが、その後日本とアメリカ、アメリカとECとの間にこれに対する共同コミュニケも発表されました。いよいよ一九七三年、来年から国際ラウンドの交渉が開かれる、そういう意味でも準備時期でございます。そういうような過渡期におけるOECD加盟国の責任と協調ということが強調されたというのが今回の閣僚理事会の背景でございます。  その中で特にわが国の最近の影響力、また最近の景気政策における動きというものは非常に各国の注目を浴びておりまして、そこで私は冒頭に発言いたしまして、現在の日本の経済状態、またこれに対する経済拡大と申しますか、景気拡大の現内閣のとっておる措置の内容を説明いたしました。しかしながら率直なところ、各国の受けた印象といたしましては、わが国の黒字があまりにも大きい、また景気拡大が、方向はそのとおりであるが、どうもテンポがまだ非常にスローであるというような不満を持っておるような印象を受けたわけでございます。そこで今後のわが国のとるべき措置といたしましては、現在すでに決定しております経済の方向、特に景気の拡大という面についていま一そうの努力をする必要がある。最近閣議決定いたしました七項目の実質を促進する必要があるということでございます。また今後の問題といたしましては、どうしても通商と通貨とのからみ合いと申しますか、そういう関連が強まる一方でございますから、その面においてわが国は、アメリカとEC諸国とのちょうど中間的立場におりますので、その役割りをよく認識して、国際的な役割りを果たしていくべきだ、こういう感じを受け取ったわけでございます。概括でございますが……。
  86. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでわが国のそういう黒字がまだまだ非常に拡大しておる、そういうように諸外国が受け取っておる。こうなってきますと、いままでよく論議されておりますが、円の再切り上げというようなニュアンスは出ておらなかったのですか。
  87. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 各国のいろいろの発言を総合いたしましても、とにかくせっかくわれわれがつくった国際通貨の調整スミソニアン体制というものを全部の努力でもって守っていこうということが非常に強く出ておりました。わが国に対する、景気対策のなお少し緩慢であるという批判はございますが、さりとて、円の切り上げ幅が小さ過ぎたとか、あるいは円の再切り上げを要求するような声は全然見られなかったということでございます。
  88. 近江巳記夫

    ○近江委員 その点については、あとでまた詳しく承りたいと思います。  それから御承知のように、今年は国鉄の運賃値上げをはじとめして非常に多くの公共料金の値上げが行なわれておるわけです。あと参議院の通過ということになるわけでございますが、そういう点で、最近私鉄大手が、早ければこの六月中にも値上げの申請を出そうかという動きが相当あるように私も聞いているのですが、私鉄のそういうような内容等を見ましても、不動産をはじめいろいろな多角経営をやっておりますし、現実に配当にいたしましてもかなりの線を維持しているわけであります。その一つの理由として、国鉄との間にかなりの値開きができる、それを埋めなければならぬというような点から考えまして、やはり国鉄の値上げというものがいかに大きな影響を与えておるかということをいまさら感じるわけであります。そういう、言うなら追随値上げという点においては、これだけ不況下の中の物価高でありますし、何としても国民生活を守っていただきたいと思うのです。そういう点で政府としては、政府の手で国鉄の値上げもしておりますし、その点は非常にデリケートな立場にあろうとは思うのですが、しかしそういう点はほんとうに国民生活を守るという立場で大いに努力していただく必要があるのじゃないか、このように思うのですが、この点に関しての大臣の御所感をお伺いしたいと思います。
  89. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 私鉄の値上げについてのそういう動きが報道されておりますが、まだ大手私鉄から運輸省に対する申請も出ておりません。そういう段階で政府がとやかく言うのは、まだ時期尚早だと思いますけれども、しかし国鉄運賃と私鉄の運賃と、これは別のカテゴリーで考えなければならぬ問題でございます。したがいまして、運輸省自体も、私が承るところによりますと、この問題に対する態度は非常に慎重である。私はけっこうだと思います。すでに四十五年の十月に上げたばかり、まだ二年もたたない今日でございますから、この点については運輸省に対してもう少し慎重な態度をとってほしいという申し入れをしたいと思っております。
  90. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま大臣おっしゃったように、いま申請が出てくれば約一年半で、そういう短期間で大幅な値上げの動きがあるわけでありますし、大臣がいまおっしゃったように、これはほんとうに慎重に検討していただかないと、国民生活は全く破綻してしまうのではないかと思う。この点は重ねて強く要望いたしておきます。  それから、私鉄の問題もそうですが、米の問題につきまして、農相も生産者米価を引き上げるという意向を示しておられますし、当然これが消費者米価という問題にはね返ってくるわけであります。また、米が上がれば、一般の食料品はまたしても追随値上げということになってくるのは必至でありますし、この点、消費者米価の安定ということにつきまして、大臣としてはどのようにお考えでございますか。
  91. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 農林大臣がどういう発言をされたか、私つぶさに聞いておりませんが、生産者米価の問題はさることながら、消費者米価といいますか、政府の売り渡し価格を値上げすることについては、現段階では適当ではないという考えを持っております。
  92. 近江巳記夫

    ○近江委員 それからまた、公共料金としまして、ガスの値上げがまた最近出ておるわけです。確かに、長年据え置きがあったというような背景もあるように私は思います。しかしながら、やはり国民生活という立場から考えていただくという、常にそこに基盤を置いた上でそれに対処をしていく、これがやはり一番大事じゃないかと思います、特に公益事業ではありますし。しかも、今回のガスの値上げ等見ますと、基本料金という点において非常に大きな値上がりになるわけです。東京瓦斯等も三二・二%という平均でありますが、基法料金においては約倍くらいまで来ているわけですね。特に標準世帯等では、約一千円からの値上げになっておりますし、これがもしもそのまま認可になるというようなになってきますと、当然電力だって、いままでわれわれは値上げしてないんだ、今後はどんどん設備もやっていかなければならぬというようなことで、これまた大幅に続々とそういう申請がくる、このように思うのです。何といいましても、ガスにしろ電力にしろ、これは基幹産業でありますから、国民生活に及ぼす影響というものは非常に大きなものがあるわけです。そういう点、大臣としては、国民の生活を守っていただく最高の立場として、どのようにお考えか。その点をちょっとお伺いしたいと思うのです。
  93. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 ガスの料金、東京瓦斯の申請が出ておりますが、それについてはまだ通産省から正式の協議を受けておりません段階ございますけれども、ガス事業が昭和三十五から十二年間据え置いてきて、客観的な条件が非常に変わってきておるという事情も、私どもよく理解しております。ただ、ガス料金が家計に直接響くという影響を考えますと、これは慎重にならざるを得ない。よく通産省の審査の経過をいろいろ協議を受けました上で、慎重な態度をとって処理したいと思います。
  94. 田中角榮

    田中国務大臣 私は公共料金全般に対してだと思いましたから、経済企画庁長官から答えてもらったわけですか、ガス料金、東京瓦斯については五月四日、御指摘の三二・二%の引き上げ原案が通産省に提出をされております。今月の五日、六日の両日でございますが、公聴会を聞催することにいたしておりますので、公聴会における発言というものを十分しんしゃくしなければならない、この思います。いま御指摘ございましたように、水道料金とか電気料金、ガス料金は生活自体に直接影響のあるものでございます。そういう意味で、慎重に対処しなければならないことは申すまでもありません。ただ、いま経済企画庁長官が述べられましたように、三十五年から十二年間も全然据え置きであるということと、今度は相当、新しい需要に対しての配管その他もあります。それから、天然ガスを使うためのパイプラインというようなものもございます。だから、いろいろなものが行なわれることによって、ガスの供給も低廉、良質、公害のないというようないろいろな目的を持っておりますので、これらを十分調査をする必要がございます。しかも、最終的には経済企画庁に協議をすることはもちろんでございますし、関係閣僚会議にも付議いたしまして、内閣全体の責任として結論を出す、こういう慎重な態度でおります。
  95. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、経企庁長官がお帰りになる直前でありましたが、科学技術庁長官のところに資源調査会が、関東の緑が五十年で全部消滅するというショッキングな報告をされまして、これが結局関東だけではなく、今後大規模に調査をしていきますと、関西はじめそういう密集地帯について同じ結果が出るのじゃないか、私はこのように心配するわけです。そこで、いま新全総の改定作業に当たっておられるわけですが、今回資源調査会が提出したこういう資料というものは非常に貴重な具体例であると私は思ますし、環境保全という点については今回のこの報告書をどのように経企庁としては受けとめておられて、今後またそれをどのように新全総の中に織り込んでいかれるか、その点についてお伺いしたいと思うのです。
  96. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 あの報告は非常に深刻な問題を含んでおりますし、非常に示唆に富んだ報告でもございますので、私ども慎重にこれを検討しておりますが、ただ、関東南部地域はやや特殊事情のようでございます。地形、気象条件、大気の汚染が一種の綿ぼうしのようにしてかぶさってくる。そういう特殊事情はございますけれども、ただ、現状のままで進めば、五十年後にはそういう結果が出るのではないかということでございますから、そういう点はもう特に皆さんの御指摘のとおりでございます。そこで、新全総の総点検をいたしますのもそういう観点からいたしたいということでございますので、御承知のようにいま作業を進めております過程におきまして、十分この点を取り入れていきたい。特に、いままでは産業経済的な角度から見ておりました新全総の中に、もうすでに現行の新全総にもそういう点は基本方針として十分取り入れてはおりますけれども、なお非常に深刻なそういう問題意識をもって取り組みたい。したがいまして、その中では環境庁あるいは気象庁あるいは科学技術庁、そういう面と共同作業に持っていきたい、こう考えております。
  97. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう時間がないから終わりますが、中国へ行きましても、御承知のように中国は、核も持っておりますし、衛星の打ち上げ、そういう先端科学というものも持っておるわけですが、しかし一般の工業技術等を見ますと、その先端科学というものがどれだけ生かされているかといいますと、これはかなりの差があるように私、思うわけです。しかし、工場配置等見ますと、たとえば上海は昔からの工業地帯でありますが、非常に分散をとっているわけです。しかも、その分散の形態を見ますと、上海のそういうふうな密集地帯に絶対ばい煙等も来ないような気象条件のもとに置いております。わが国と比較しまして、それはいろいろな問題あるわけでありますが、しかし、そういう国家的な見地におきまして工場配置等も考えておる。今回商工委員配会でも工業再配置の法案が通過したわけでありますが、今回の資源調査会のこういう報告等を見ますと、ただそこが過疎だからそれじゃ配置したらいいじゃないかというような方向になりますと、これはたいへんなことになるのじゃないかと思いますし、いま木村長官がおっしゃいましたように、十分気象庁とも連携をとり、あらゆる点も含めた上で慎重にひとつその点はやっていただかないと困るのじゃないか、このように思うわけです。この点、田中大臣にひとつお聞きしたいと思いのです。
  98. 田中角榮

    田中国務大臣 御説のとおり、これからまだ日本は六十年、七十年などというものではなく、永久に発展をしてまいらなければならないことでございます。しかし六十年、わずか十二、三年後を展望して以上のとおりでございます。特に、私も工業再配置で述べましたが、関東地域が、いまの二千八百万人が六十年に四千万人を越すというようなことをこのまま是認したならば、東京二十三区の空気中に占める亜硫酸ガスは人間の生存許容量を越すという答えが出ておるのです。しかも、関東地方に関東大震災と同じ規模の地震が来れば、下町の区の人間の生存可能率——どけだけ被害があるというのじゃなく、生存可能率は三%以下であろう。こういう数字というものはおそるべき数字でございまして、こんなことが実際行なわれたら、政治も何も存在しないということになると思うのです。ですから、ほんとうに分散が必要である。そのために法律を御審議いただいて参議院へ送っていただきました。しかし今度あの法律適用されることによって公害がばらまかれるということでは困る。それは当然のことなんです。ですからそれは、公害防除というものに対しては完ぺきなまでの制度、また組織、施策を行なわなければならない。そして生産第一ではないので、人間の生活をよくするということがやはり前提なんだという事実の上に立ってこれからの工業再配置を進めたいという熱意を持っておるわけであります。
  99. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは約束の時間ですのでこれで終わります。
  100. 橋口隆

    ○橋口委員長代理 午後三時再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時三十一分休憩      ————◇—————    午後三時三分開議
  101. 鴨田宗一

    鴨田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。川端文夫君。
  102. 川端文夫

    ○川端委員 大臣がお見えになっておりますので、最初に大臣にちょっとお尋ねしたいのですが、政府はこの国会末期にあたって、対外経済関係調整特別措置法案を国会に提出されております。この法案の審議は、この委員会でいま内容に対してとやかく質問しようとしているのではありませんけれども、この法案の基本発想は、法案の有無にかかわらず政府自身の方針を示したものとしてきわめて重大だと私ども考えおるわけであります。この観点に立って若干伺いたいのでありますが、報道機関の伝えるところによりますと、大蔵大臣と通産大臣のいろいろ折衝の結果、妥協の産物として大蔵大臣が所管になっておる大蔵委員会に提案しようとしている。したがって、この構想の中にいわゆる社会にいわれて流されてきた田中構想なるものがはたして十分織り込まれているのかどうか、この問題点に対して田中通産大臣考え方をまずもって承りたいと思います。
  103. 田中角榮

    田中国務大臣 本件につきましては、去年の七月円対策八項目が行なわれました。その中の最後の八項目目にありましたものが外貨の活用、直接外貨貸し付という問題でございました。この問題を約十カ月ばかり政府部内で調整をし、検討してきたわけでございますが、一つには現行の外為特別会計法は外貨の長中期運用ができないようになっております。これは円の収縮を伴わない外貨の使用はしない、できないということになっておるわけでございます。そういう意味で第二外為法をつくらなければならぬのか、また特別法が必要なのか、特別措置法にするのかというようなことで検討してまいりましたが、最終段階におきまして経済企画庁、大蔵省、通産省の三省が取りまとめをいたしたわけでございます。そうして、一つ輸出入銀行法の特例、第二は海外経済協力基金法の特例、第三は外貨の多角的な活用、第四は輸出に関する勧告等、こういうものを盛りまして法律としてまとめたわけでございます。それで国会にいま提案をして、付託委員会はどうなるのかという問題がございます。いま、これは議運で決定されるものだと思いますが、私は、大蔵委員会に付託をされるものかなあという感じを持っておりましたが、これは最終的に経済企画庁がまとめたわけでございますので、この商工委員会に付託するほうがいいのだという議論も存在するようでございます。この問題は国会の決定でどういうふうに付託されるかは、いまにわかに申し上げられない状態でございます。しかし、第一の問題としては、日米間で繊維交渉を行なわざるを得なかった。第二は、多国間の平価調整を行い円平価は切り上げられました。第三の問題としてはどういうことかというと、このままで推移すると外貨は非常に積み増しをされる。輸出がなかなか押えられない。輸入も拡大をしない。その背景は景気が急速に浮揚しないということでございます。そういう意味で、半年、一年という長期的に見れば別でござまいすが、当面する問題からいうと、外圧は相当強くなっておるわけであります。外圧によっては円の再切り上げがあるのではないかとさえ、皆さまから御指摘を受けておるわけでございます。もし、そのようなことに立ち至ったとしたならば、これは日本経済のためにたいへんなことでございますので、去年七月、円対策八項目をやったより以上の考え方をもって新しい対策を進めなければならないということでございます。その一つは、輸出に対して、輸出の急増を調整できないかという問題が一つございます。長期的に見て輸出秩序の確立、オーダリーマーケティングという問題も存在いたします。もう一つは、急増する外貨を使わないと日本にますます外貨が集まる。外貨はある一定の水準よりもこれを拡大しない、積み増しをしない。そのためには有効に使わなければならない。使うのには、一説には百億ドルを国際通貨基金に寄託すればいいではないか、無償援助に出してしまえばいいではないかという議論もございますが、無償援助に出せるほど日本は豊かできない。国民生活自体を考えてみても、産業公害の実態を考えてみてもそれほど豊かではない。こういうことでございまして、この外貨を、長期的展望に立っても合理的な活用であったといわれるように活用しなければならないということになるわけでございまして、一応の結論を出したわけでございます。半期で三十億ドル程度の外貨の活用をはかりたいということを目標にいたしております。またこの三十億ドルに対しては、そのうち十五億ドルくらいはできれば資源の輸入に充てたい、こういうようなことを考えております。そうするにはどうしても低利、長期ということにならなければ、なかなかいいピロジェクトを見つけるといわけにいきませんので、利子補給の道を講じよう、こういうことになっておるわけであります。初め考えた百億ドル以下にしたいというような考え方にはなかなか進まないかもわかりませんけれども、これはその後低低金利政策等あわせて行なうことにしておりますので、短資は流入しない。外貨建てになっておりますものが円ベースで貿易が進むであろうというようないろいろな問題も加味されますので、そういう意味で今回提出をいたしたようなところに落ちついたわけでございます。これは理想的であるということが言い得るかどうかわかりませんが、現時点においては、相当努力をした結実であるということは申し上げておきたい、こう思うわけでございます。
  104. 川端文夫

    ○川端委員 もちろん、円の再切り上げが行なわれるような状態を避けなければならぬということに対しては、われわれも同意を示すにやぶさかでありませんけれども、いま出されておる発想は、何か片手落ちではないかという印象を深くしておるわけであります。最近、特にここ一カ月でありましょうか、円とドルの先物相場も若干落ちついてきておるようでありまして、大体三百二、三円というところに落ちついておるようであります。これも一時的な小康ではないかと考えられないこともないので、まだまだ十分警戒を要する問題ではあろうと思います。しかし今度の発想の中身は、輸入及び資本輸出による外貨減らし並びに輸出秩序の形成にあるようだが、もう一つ大きい問題が残っているのではないか。私は一番ひっかかるのは、輸出秩序の確立という問題の中に何もかも一緒くたにしているのではないか。総合商社的な性格を持っている大企業と中小企業をひっくるめて、何か輸出している者が外貨をふやすための犯罪人のような考え方をお持ちになっているんじゃないかという感じを、いままで新聞等に出ておる情報から見れば、どうもそういうふうな感じを受ける。特に円の切り上げを防止するということに重点を置いて、日本の産業秩序なり現実というものを無視されているんじゃないか、こういうふうに考えられてならないのです。最近の中小企業輸出の中には、これは大臣も選挙区でいろいろ御存じの点も多いのですが、品目によって違うんだけれども、前年同期に比べて三〇%から最近は四〇%の成約減になっている。ものによっては七〇%も減っているものもある。特に雑貨類なりあるいは輸出用クリスマス電球あるいは双眼鏡等は、いろんな問題点をまだ内蔵しておる実情があるわけであります。大体昨年の十月にあの変動相場制をとった当時、政府が緊急措置をとったときには、一ドル三百二十円を目途として金融の施策を行なわれたわけです。その後十二月に三百八円に一応レートはきまったけれども、大体きょうの段階では三百二、三円というのが相場である。しかも先月の始まりころでありましょうか、この当時は二百九十円台まで落ち込んだというか、円が上がったというか、こういう状態があったことは、事実としてわれわれは聞いておるわけですが、こういう際に通貨の問題、円再切り上げを防止する意味において、輸出というものあるいは輸入というものを、それら外国への投資にばかり重点を置いて、日本の国内問題を軽視しているのじゃないか。昨年の十月ごろの緊急融資以後に、この問題に伴って影響を受けている中小企業に何か具体的な施策を行なって指導されているかどうか、何か案があるならお示しいただきたいと思うのです。やってきたという実績があるのか。ただ通貨の問題に重点を置いてきたというだけのことであるのか。いま中小企業というか零細企業というか、これら雑貨等の輸出業者は相当大きな不安をもって政府の施策を見守っている中にあるわけですが、何かこういうことをやってやっているじゃないかと言えるような問題点があったら、ひとつお示しいただきたいと思うのです。
  105. 田中角榮

    田中国務大臣 先国会で中小企業関係の問題に対しては、制度の新設をお願いしたり、金融上、税制上、財政上の措置をお願いしたり、一部やっておるわけでございます。これは日米繊維交渉その他に関連をするものもございましたし、中小企業そのものに対しての施策もあったわけでございます。しかしこれらは取り立てて言うほどのことはないと言われるかもしれませんが、去年からずっと見ますと金利も低金利になってまいりましたし、それから四十七年度予算編成につきましても中小企業対策を行なったわけでございます。これだけで足れりというわけではございませんが、しかしこれは国際情勢の波動というものに耐えられるように日本の産業、日本の経済を対応させなければならないということで、ずっと考えてまいり、今度国会に提案をした対外経済調整特別措置法なるものも、その対応策の一つでございます。言うなれば去年の八項目対策からことしのこの七項目対策に至るまでの間の臨時国会、通常国会等で御審議をいただいておるものの相当部分は、こういう背景を十分認識して対応する施策として御審議をいただいたわけでございます。しかし中小企業だけに特別に大幅なものをやったか、こう言われれば、こういうものは中小企業だけではなく、中小企業に及ぼす影響というほうが多いのでございますが、しかしすべての日本の産業、輸出産業というもの、輸入産業というものに対する対応策を考えたのでございまして、中小企業、零細企業と大企業とを分けた施策ということになると、特にそういうことにはならないと思います。
  106. 川端文夫

    ○川端委員 いまお答えがあったように、外貨減らしに対してはかなり今度は利子補給までしてやってやろうという意欲をお示しになっておることはわからぬわけではないけれども、しかしながら、今日まで法の保護という中においてはかなり不公平だという印象を持って強く苦悩してきた中小企業は、この問題に対してかまえる見方が強い。私が言うのではなく、中小企業全体は、大企業に対してはかなりいろんな甘いえさもくれるけれども、中小企業には何もしてくれぬじゃないか、こういう見方が強いのだが、もう一ぺん考え直してもらいたい。そこで中小企業としてはこの問題に対しては、われわれの出しているものは単に輸出振興なり保護貿易主義だという非難を受けるほどの金額にもならないじゃないか、いわゆる輸出関係をやっている者は、もうここまでくれば限界であり、それは振興どころか生存権を守るという立場に立って考えてもらわなければならぬという強いいろいろな御意見をわれわれのところにも持ってきているわけです。大臣のところにも行っていると思いますけれども、どうもそういう点は、何としてもそういう長い間貿易のために国益に協力してきた中小企業に対しては何らの恩典がないじゃないか、こういう感じを強く持っておることだけは考えていただきたいし、もう一つは、かりに百歩譲って、日本の円対策というものがどうやら成果があがったとしても、アメリカの国内事情等によってドルの信用が低落してまいった場合には、当然影響を受けざるを得ないじゃないか、こういう心配もあるものに対して、おまえたちは安心して、心配せぬでついてこいということを言い得るような何か施策、御構想があるのかないのかひとつお聞かせ願いたいと思う。
  107. 田中角榮

    田中国務大臣 中小企業対策は過去もずっとやってきておるわけでございます。中小企業そのものは日本の特殊な状態であるということで、中小企業対策というものには遺憾なきを期しておるわけでございます。今度の円対策、外貨の活用政策の中で中小企業にアクセントをつけられないということには確かに問題はあるかもしれませんが、これは中小企業というものと零細企業、大企業と分けてどうこうしておるというものではないわけでございます。外貨を活用する、これをただ外国に出すというわけにはまいりませんから、結局資源の開発輸入というようなことになります。資源の開発輸入をするということになると、中小企業がやれるということよりも大きな商社、大企業ということになりますから、そういう金融面から申し上げますと、低金利というようなものは大企業に有利であって、中小企業には、特に中小企業なるがゆえにそれよりも有利であるという面は何もないじゃないか、こう言われればそのとおりでございます。しかしこれは中小企業であるからといって特に分けて開発輸入をさせるというわけにはいかないわけであります。ですから中小企業対策というのは別な政策ををとるべきであって、この外貨を活用するという面においては、中小企業とか他の企業とかという区別ではなく、日本全体として外貨が有効に活されなければならない、それによって外圧は回避されなければならない、外圧が回避されるような状態になれば、中小企業を含めた日本の経済そのものが安定をする、中小企業そのものも、零細企業そのものも恩恵を受ける。こういうことになるわけでございまして、これらの目的が外貨の活用ということでありますので、どうも中小企業対策というものを特にアクセントをつけて論ずるということになると非常にめんどうなものである。これは結果的に日本の経済が非常に正常なものになり外圧がなくなる、もちろん円の切り上げその他起こるわけはないということになれば、おのずから日本の経済そのものが、産業自体全部が潤うわけでございますし、その政策メリットを享受できるわけでございます。でありますので、この外貨活用という特別な問題から考えますと、中小企業の輸入金融でもやる場合は一般のものよりも安い金利が使えるということにでもなれば、これは大企業との区別がつくかもわかりませんが、事の性質上中小企業、零細企業というようなものと区別をするということはむずかしいものであるというふうに考えられるのですが、何かちょっとちぐはぐな答弁なら、もっと具体的にお示しをいただければお答えいたします。
  108. 川端文夫

    ○川端委員 大蔵省の国際金融局から見えていますか。
  109. 鴨田宗一

    鴨田委員長 大蔵省は見えております。
  110. 川端文夫

    ○川端委員 そこでいま大臣から抽象的ではわかりにくい、具体的に何か案を出せ、こういう御意見もあったのでお尋むしたいのだが、大蔵省がこの問題に対していまおっしゃるような外貨減らし、輸入なり資源の確保という問題だけにこれをしぼるという考え方は、私はどうしても理解できにくい。したがってどうせそうであるならば生存権の問題として、貿易に今日まで長い間従事してきた中小企業くらいには、いま年間全部ひっくるめたって二十億ドルくらいの輸出しかしていないのですから、ある程度の品目を、中堅企業以上がやっているタイヤ等を除けばもっと減るはずですから、これらの連中が不安だ不安だと言っているこの実情の中に、少なくとも将来通貨の変動が起きた場合に対しては、不安のないようにこういう施策をやるぞ、準備したよということがあってしかるべきではないかと思うし、具体的には当面やはり為替変動基金というようなものを、中小企業のみのために外貨の預託でもした制度をつくってもいいのじゃないか。何かしら輸出が悪いのだという扱い方をされている姿の中に非常にわれわれが納得できがたいものがあるのだが、将来為替レートの変動がなければ、国が一銭もめんどうを見なくなったっていいわけだから、逆にドルが円に対して信用が上がって円の切り下げを行なうことになれば、中小企業が楽になるわけですから、いますぐ金が要るわけではないが、これくらいの準備をして、皆さんの中小企業に対してはこれくらいのことはできるのじゃないか、やっているじゃないかということをいえるようなものは準備できるかできぬか、大蔵省の国際金融局からひとつお答え願いたい。
  111. 淡野勝己

    ○淡野説明員 お答えいたします。  ただいまの御質問の最初のほうに、中小企業のためにも今回の措置が適用されてしかるべきではないかというふうに私解した部分がございましたが、今回の措置は一般論といたしまして、中小企業を排除しているわけではございません。いろいろなやり方がありまして、詳しく申し上げますと、いろいろ時間がかかるわけでございますので、その辺は省略させていただきますが、その点をまず御理解いただきたいと思います。  次に為替リスクの問題につきまして基金のようなものを設けて中小企業のために為替リスクをカバーしてやってはどうかという御趣旨の御質問があったと思いますが、先生すでに御指摘のとおり、最近におきましては先物為替の状況は非常に安定しておりまして、中小企業に限らず、為替リスクにつきましては市場で十分カバーがとれておるわけでございます。したがいまして現在は全く問題はないわけでございますが、先生御指摘のとおり将来においてもし通貨情勢が悪くなりまして、いまのような一ドル三百二、三円といった先物レートが二百九十円とか二百八十円台になるというような状態になりましたときに、中小企業の方のためにレートをもっと有利にできるように何らかの措置を講ずる、ないしはもうすでに措置を決定しているということを先生のほうといたしましてはお知りになりたいという御趣旨であったと思いますが、現在問題はございません。中小企業の実情につきましては、私ども常々調査をいたしておりまして、何らかの問題が生じた場合にはそれ相応の配慮をいたしていくという点につきましては、いままでも遺漏なくやっておるつもりでございます。現に昨年十月、変動相場制の続いておりました事態におきまして、中小企業の方々が、先行き入ってくる輸出代金が一ドルについて何円になるかわからない、したがって採算のめどもつかないというような困った状況にございましたときに特定の措置を講じましたことは御存じのとおりでございます。そういったことでもございまして、いろいろな状況下におきましていろいろと配慮してまいるということは当然のことでございますが、いま全然問題のない時点におきまして、将来問題が生じた場合に何らかの措置を講ずることをすでにきめたかという点につきましては、少なくとも現在の時点におきましては、どういう事態が発生したならばどういう措置を講ずるということをお約束できる立場にございませんので、その点は御了承いただきたいと思います。
  112. 川端文夫

    ○川端委員 そこで課長、問題が刊起きてからでは、死んでから医者を呼ぶようなもので、意味がないのですよ。実際問題として現在行なわんとするこの法案の発想は、将来の円の再切り上げを防止する意味において外貨減らしをしようということであって、当面、いま再切り上げが、午前中の質疑の中にも、OECDの会議に行ってこられた経企庁長官の話を聞いても、どこからも出ていないという状態でもあるけれども、国際間の将来の展望に立ってこの対策を用意すべきだというのがいま出されている法律であるわけですね。しかも二つに分けてものを考えた場合に、昨年の十月は三百二十円に大体落ちつくであろう、こういうことで三百二十円で一応めどをつけての金融をされて、現在のところは、五月の初めごろには二百九十八円とか三百円で成約をせざるを得なかった連中もあって、非常に苦しい立場に追い込まれているので、この条件の中では返済期日が来ても返せないのじゃないか。われわれにも利子補給をしていただけないかという要望も、かりに三百八円と三百二十円なら十二円の差額金に対しての利子補給ぐらいはしてもらえないかという陳情が出てきておる事実は御存じないでしょうか。したがって、そういうことから分けて考えてみても、政府がやるときには、見通しは、やはり三百二十円ということだったが、実質的にきまったのは三百八円ではございませんか、そういうことで狂いが出てきたときに、これは何も中小企業と大企業と差をつけたのじゃないという形において突っ放すような考え方は、日本の産業構造の特殊事情というか、中小企業の多い実態の中で、中小企業は多少整理していくのだというなら、整理していくのだという強い方針を出して、そのためには転換なり何かには手を打つということがあってしかるべきではないか。血も涙もないじゃないかという考え方を持たざるを得ないのだが、これらの問題を考えた場合に、それは大蔵省としてはできないが、通産省から要望があればわれわれは受けて立つという声が出るのかどうかということも、もう一ぺん含めてお答え願いたいと思います。
  113. 淡野勝己

    ○淡野説明員 お答えいたします。  繰り返すようで恐縮でございますが、ただいまのところは先行き、たとえば九月か十月、十一月、そういった時点において入ってまいります輸出代金につきましては、中小企業の方々を含め輸出業者すべてについてはっきり三百一円とか二円とかその辺のレートで代金が円として入ってくるということは見通せるわけでございまして、銀行との間に輸出為替予約をとりまして確実に代金の回収ははかれるわけでございます。そういったわけで、いまのところは全く問題ございません。  それから、通産省のほうからいろいろと中小企業の実態についてわれわれのほうはお話を承っております。先ほども触れましたが、昨年十月変動相場制のもとにおいて中小企業の方がいろいろとお困りになった事情通産省の方々から詳細に伺いました。それでしかるべき措置を講じたわけでございますが、そういった中小企業の実態について通産省がお調べになった結果をわれわれにお伝えになられるということにつきましては、われわれももとより歓迎すとところでございまして、そういったお話がありましたときは十分その内容を伺い、検討いたしまして、そのときの状況に応じましていろいろと配慮していくということは当然のことでございます。
  114. 川端文夫

    ○川端委員 これは法案もこっちにかかっているわけじゃないからこれで質問を終わりますけれども、とにもかくにも大臣、昨年の実績から見れば、中小企業の輸出関連の成約は三〇%ないし四〇%減っているものが多い。こういう実態で、なお現在の三百二、三円が生存権のぎりぎりであるという、この心配が非常に強い中に、もし違った円の問題、再切り上げの問題が出てきた場合に、だれが見てくれるだろうか、どうしてくれるのかと心配しているが、あなたとしては、再切り上げのないようにやる、もしできなかった場合には、せめて中小企業だけでもこうでもしてやらなければならぬだろうという考えがおありかどうか、もう一ぺん承って、質問を終わります。
  115. 田中角榮

    田中国務大臣 円の再切り上げなどというものは絶対にやってはならない。そのためには万全の対策をとらなければならない。その対策の第二弾が今度御審議をいただこうとするものでございます。その大宗となっておりますものは外貨の活用、外貨はただ捨てるわけにもまいりませんし、貸し付けたのでは相手が了解をしない問題もありますから、将来を見越しながら、開発途上国とのトラブル等も存在しておる資源輸入というものに対しては、ひとつ外貨を輸入品に置きかえよう、こういうことによって外貨の積み増しがとまるということで外圧を排除できる。こういう政策として御審議をいただいておるわけでございますから、円の切り上げがもし行なわれた場合の為替差損をどうするかという問題とはやはり切り離して考えていただかなければならぬ問題でございます。今度御審議いただくのは、現に持っておる外貨を活用するということでありますので、輸入を促進しようということでございます。で、中小企業その他輸出業者の、円平価というものが将来切り下げられた場合の処置というものは、これは別に考えなければならない問題でございますし、そういうことが起こらないようにということで、いま輸入を拡大しようということを考えておるわけでございますから、まあ私が非常に困っておりますのは、重大な問題でございますのでこの国会でもってぜひ成立をさせていただきたいと思っておるのですが、まだ付託委員会もきまらないというような状態であって、実際もしこの法律案がこの国会で成立を得なかった場合どうなるんだろう、これほんとうに心配をしておるのです。ですから、この、いま御審議をいただこうとしております法律案、これはまあ円対策八項目の次に来た第二段目の外貨活用政策ということでございますが、いま御指摘になられたような円平価不安による中小企業をどう救済するかという問題はまた別個の問題でございますので、これはそういう意味で、別個の立場でもって御審議、まあ審議いただくというよりも御意見も拝聴いたしますし、また政府側も必要があれば対策を立てなければならないということでございますので、今度御審議をいただこうとしておる法律とはちょっと別な問題として、これは、平価調整を避けるためにこういう政策をやります、しかしもしものことがあったならばということでそのときの対策も用意をいたします、という法律体系にするのはこれは無理のように感じます。ですから、この前の臨時国会にも中小企業に対するいろいろな対策をお願いしましたが、それは中小企業や零細企業の国際経済の波動に耐えるような、特に中小零細企業に必要な対策ということで、具体的にあり、その実行が必要であるということであれば、これは別な問題としてひとつ十分強強さしていただきたい。これでひとつ御了承いただきたい。こう思います。
  116. 川端文夫

    ○川端委員 要望だけ申し上げておきます。  日米繊維の問題から、繊維に対しては特繊法をつくったりしてかなりのことをおやりになったが、いま私が申し上げている日本の雑貨産業あるいはそれらの輸出関連産業は、そういう大きな国の経済を動かすような、それほど大きな問題とならないために、いつも法律等をつくらないで切り捨てごめんの姿が繰り返されてきているおそれを私は考えているし、従来からの中小企業対策には何らその問題は入っていない、一般的な問題、中小企業対策としてのいろいろな資金なりいろいろな問題は考えられても、輸出関連産業に対してはという特別な問題点が打ち出されていないというこの事実の上に立って、十分ひとつ対策を考えていただきたいことを要望申し上げて私の質問を打ち切りたいと思います。      ————◇—————
  117. 鴨田宗一

    鴨田委員長 内閣提出熱供給事業法案を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますのでこれを許します。樋上新一君。
  118. 樋上新一

    ○樋上委員 熱供給事業法案の提案理由の一部をいま見ましたんですが、この中に「地域冷暖房事業等の熱供給事業については、第一に、これが地域全体の生活環境の改善に寄与するのはもとより、エネルギーの有効利用、都市災害の防止、大気汚染の防止等にも大きく貢献する」、なおこの法案は「熱供給事業を新たな公益事業として位置づけ、必要な限度で国が監督を行なうことにより、消費者の保護と保安を確保し、あわせて事業の健全な発達をはかろうとするものであります」、こうあるのですが、この提案理由書で見る限りはいろいろな点で私は非常に有益なものであると思うのでございまするが、ただ新規の法案でもありまするし、利用者の立場から何点か質問をいたしたいと思います。  まず、熱供給事業といわれるものには、地域冷暖房のほかにどのようなものが含まれておるのか、まずこれをお聞きしたいと思います。
  119. 三宅幸夫

    ○三宅政府委員 お答えいたします。  熱供給事業というのは新しいことばでございますが、従来は主としてこれは地域冷暖房といわれておったことは御指摘のとおりでございます。今後日本の経済が変化し、流動的なさなかにおいて考えられますのは、熱いお湯を供給する、これは医療用にも使える湯の供給でございますが、あるいはまた将来は工業用のプロセスの蒸気も供給し得ることが予想されます。しかし現在は主として地域冷暖房が熱供給事業という概念の相当部分を占めておるわけでございます。
  120. 樋上新一

    ○樋上委員 現在運転中のところが十カ所ございますね。ところが、これら十カ所の事業主体はどういうところが行なわれておるのか、また供給対象は、どういうところが利用しているのか、現在のつまり経営状況はどうか、こういう点についてお伺いしたいのです。
  121. 三宅幸夫

    ○三宅政府委員 この事業はまだ揺盛期の事業でございますので、御指摘のとおり現在、ここ一、二年の間に稼動を開始したものが十カ所ございます。地域別に見ますと、特に暖房問題に問題がございました北海道が五カ地点、東北が二カ地点、東京が一カ所、大阪が二カ所ということになっております。それから事業の形態別に見ますると、住宅中心の供給形態が四カ所、それから業務用のビルを中心にいたしました形態が四カ所、両者の混合の形が二カ所でございます。  次に経営主体についての御質問でございますが、民間の専業者がやっておる地点が三カ所でございますが、そのうちの二カ所はいずれ地方の公共団体の資本が参加するだろうといわれております。それから公団、市、あるいはいわゆる公共資本が入っております第三セクターによって行なわれているのが三カ所ございます。ガス会社の兼業部門が三カ所ございます。その他仙台の卸商センターが協同組合方式でこの事業を行なっておりますが、この法律の定義、範囲は、あくまで一般の需要に対して供給する方式について所要の消費者保護をはかりたい。むろん法案規制は全般にかかりますが、消費者保護の観点は、一般の需要に対応する供給方式のみを対象としておりますので、仙台の組合方式は本法の事業許可等々の対象にはなっておりません。規模別ではまだ非常に若い産業でございますから、投資金額が一億台のものもございますし、約六十億近い投資を行なったケースもございますが、これらの企業はいずれも当分の間は赤字経営でございます。これは先行投資によります償却費負担あるいは金利負担が非常に当初は大きい反面、計画需要が都市計画との関係で順次実現してまいりますので、初めの三、四年間は赤字経営、累積赤字が解消するのも、大観いたしますと、七、八年はかかるのではなかろうか、かような状況でございます。
  122. 樋上新一

    ○樋上委員 本法案に基準がいろいろと出ておるのですが、この法案が成立したときに、これら十カ所の事業体において、この許可基準に合致しないところも出てくると思うのですよ。その場合、行政指導等について通産省はどういうぐあいに行なわれていくかということをお伺いします。
  123. 三宅幸夫

    ○三宅政府委員 この法案の作成に至ります間、私ども業界をもまじえまして、約一年半の検討をしてまいりました。すでに昨年一月に、こういう法案の提出について総合エネルギー調査会の答申をいただき、法案化につとめてまいったわけでございます。  御指摘の許可基準あるいは技術上の基準の問題でございますが、現在ございます十カ地点は、いずれもこの法律の附則によりまして、法施行後六十日内に届け出があれば事業許可があったものとみなすということになっております。これによりまして既存の企業並びにそれに対応しております需要者の安定をはかりたいと考えるわけでございます。なお、料金その他の関係は、許可されたとみなされた事業についても、あらためて審査を受けることになっております。問題は技術上の問題でございますが、これはすでに、約半年以上熱供給技術委員会というのを当省に設けまして、技術上の基準を現在検討中でございますが、私の見るところでは、現在稼働中の工場はおおむねこの技術基準に相反することはないだろうと思いますけれども、万一のことございますので、いま検討中の基準案を早急にまとめまして、この法律の附則では、施行後直ちに技術上の基準は適用するという姿勢をとっておりますので、事前の指導に万遺憾なきを期したい、そのように考えております。
  124. 樋上新一

    ○樋上委員 大臣にお伺いするのですが、この第三条に、「熱供給事業を営もうとする者は、供給区域ごとに、通商産業大臣の許可を受けなければならない。」というぐあいになっているのですが、この「供給区域」というはどういうふうにきめられるのか。また、この事業は一区域一事業という地域独占性がある。そういうわけですから、この供給区域があまり大きかったり、また事業者の好きなようなところ決定できるのであるならば、これは事業そのものが公共性の強い事業でありますし、あとにいろいろな大きな問題を残すようなことにもなりかねないということを私は思うのでございますが、こういう点については、大臣、どうお考えになりますか。
  125. 田中角榮

    田中国務大臣 これは基準をつくって画一、一律的な区域を設定するわけにはまいりません。その地域によって、都市計画区域に定められておるところとか、また新たに住宅団地を形成するところとか、工場団地になるとかいうところがございまして、そういうものに対して申請をしてくるわけでございます。申請地域に二本も三本も競合させるということになると、経営が弱体になるということにもなりますので、経営、料金、安全性、そういうものを十分顧慮しながら、事業認可を与えるということになるわけであります。そういうことになると、その地方公共団体との関連において地域がきめられる。こういうふうに理解をしていただければいいと思います。これは地域冷暖房でありますから、一つの団地化をしたところでなければだめなわけでございます。そういうわけで、あらかじめ一定の基準を設け、これ以外は許可をしないとか、これ以下でなければならないということはないわけでございます。それはその地域の特性、地方の実情に合うようなものでなければならないということでありますので、地方公共団体との意見を十分調整して区域がきめられる、こう理解していただければいいと思います。
  126. 樋上新一

    ○樋上委員 その場合、業者自分の好きな地域を申請しますね。そうして将来これが、ビルのあるところならよろしいのですけれども、住宅地というようなところまで供給の面が延長されると思うのです。そのときに、そこはいやだ、こっちのほうはやるんだ——事業者の自由選択になったときに、希望者のほうの、将来住宅としてやってほしいところは、その業者がいやだということで、かってに虫食い的にやる場合を心配して私は申し上げるのですが、この点はどうでしょう。
  127. 三宅幸夫

    ○三宅政府委員 この熱供給事業というのは、電力あるいは大都市のガス事業とは違いまして、供給範囲がおのずから限定されてまいります。これは熱のロスの関係もございますが、特に導管の中での圧力のロスが、距離があまりに長くなりますと出てくるわけでございますので、現在の技術的、経済的な観点から分析をいたしますと、常識的に見まして、単一プラントの適正規模は、暖房に例をとりますと四キロ平方くらいではないか、冷房に例をとりますと一キロ平方くらいではないかといわれております。もちろん新しい産業であり、また技術は日々進歩しておりますから、この点はさらに流動で変化してまいるとは思いますが、現在の常識では単一プラントでは、サブスケーションや複数のプラントを組み合わせない限り、おのずから供給区域が物理的にも、経済的にも限定されておる。二戸建てのビルにはとてもまだ残念ながら供給し得るような採算性のある事業ではございません。ただ、おっしゃるとおり、法的に独占的な性格を持たせることになりますので、その点は非常に重要な問題でございますから、ただいま大臣からの御答弁もありましたとおり、地方の都市計画あるいは住宅建設計画あるいは公害防止計画といったようなものを参照し、また地方公共団体の意見を徴しまして、確実で合理的な認可にかかる地域を設定したい。また、虫食い的な供給区域の設定は厳に戒めるべきでございますので、この法律の第五条第二号の基準でもこれを明確にうたっておるところでございます。
  128. 樋上新一

    ○樋上委員 技術的な面で、私はしろうとでございますので、ちょっと老婆心のような点で、そういうことは心配ないんだと言われればそれ限りででございますけれども、しろうと判断から考えて二、三お伺いしたいと思うのです。  この熱供給施設のうちボイラー、熱交換台、冷凍設備は従来から労働基準法及び高圧ガス取締法に基づいて安全の確保がはかられておりますが、導管についでは最近になってあらわれた設備であるために、現在保安上の規制は行なわれていない状況にあります。しかし、導管は交通量の激しい道路下等に直接埋没されるものでありますから、強烈な振動等を受けときに、高温の流体を内蔵し、また熱膨張とひずみが生ずると思うのです。断熱のための構造上の複雑さ等、特殊な条件を考える一方、万一損傷した場合、一般公衆物件に被害を及ぼす危険も考えられますが、こういう点、法案では二十条に「通商産業省令で定める技術上の基準に適合」しと、こうありますが、こういう点はどのような規定を設けようと考えていらっしゃるのですか、御答弁を願いたいと思います。
  129. 三宅幸夫

    ○三宅政府委員 まさに導管の問題は、いま法律的に道路の埋め立てにつきましては、道路法の規制がかかっておりますけれども、導管そのものの性能、機能については、法的に空白でございますので、ただいま御指摘の二十条の技術上の基準によりまして、導管の材質、構造、接合方法、伸縮吸収装置あるいは防食の装置あるいはトンネル内の導管のあり方等々、十数項目にわたりまして技術上の基準を設定して、導管による保安上の不安のないように、万遺憾なきを期したい、かように考えております。
  130. 樋上新一

    ○樋上委員 それからこの利用者側の設備につきましてお伺いするのですが、同様に高温高圧の熱媒体の直接的導入、いわゆる熱交換台の使用等によりまして、利用者に被害を生ずることもあり得ると私は思うのですが、この点について通産省は何かの基準なり法的規制を考えておられるか。たとえて言うならば、既設のビルがあるところへ——新しいこの法案ができて、あとからどんどんビルが建って、そうしてやるのだったらいいのですが、いままでの完備したビルが、そこへ熱を送るのでしょう。その設備が、既設のビル完全だったらいいけれども、完全でないところの、そういう大きなビルではないところへこれを送っていったときに、相手のほうが受け入れられるだけになっておるかなっておらぬか。そこのところへ全部供給するために、設備をものすごく変えていかなければならない。こういったときに、受けるほうの危険ということを私は心配するのですが、この点はだいじょうぶですか。
  131. 三宅幸夫

    ○三宅政府委員 従来われわれが冷暖房を受けております場合、つまり個別のビル冷暖房が行なわれております場合は、建設基準法によりまして安全あるいは衛生面の規制を受けておるわけでございますが、この個別冷暖房の地下等々で発生する熱源を、この法律で対象にしております熱供給事業は集中的に発生させ、配給しよう、こういうことでございますので、個別のビルの中におきます。すなわち先生御指摘の需要家側の設備につきましては、特に従来の建築基準法の規定にさらに上のせの規制をする必要にないと考えております。ただ熱を供給するサイドの技術的な問題といたしまして、もし需要家側の中で、すなわち需要家の設備の中で、事故というよりも故障といったほうがいいかと思いますが、ある部屋で故障が起こりまして、それが隣の部屋あるいは当該ビル全体に熱の供給がとまるという故障がありますと、消費者にとってははなはだ不便なことでございますので、そういうような場合を考えまして、たしか二十三条に設けてございます供給に関する保安規程並びに十五条でございましたか、供給規程の中で、需要者と供給者の間でそういったような場合についての事業者立ち入り検査ないしは点検、これは一種のサービス業務でございますが、そういったことを規定しておるわけでございます。われわれとしては、そういったような供給規程における処理、並びに保安規程の内容によりまして、十分需要者側の事故に対し——事故といいますか故障の波及的な拡大に対しまして対応できるもの、かように考えております。
  132. 樋上新一

    ○樋上委員 今度は金融問題でありますので、大臣にお伺いします。諸外国における熱供給事業は、民間事業によるもののほか、公社ないしそれに類した形態で行なわれているものも相当数あるようでありますが、この事業の開始にあたって多額の先行投資を必要とします。事業が安定経営になるまでは長年月を要するわけであります。しかし公害防止や都市の再開発の見地からも、積極的にこれは進行すべき事業であると思いますが、そこでこの事業の国民経済に与えるメリット、これを認め、いわゆる金融税制面で大幅な助成が必要であると私たちは考えるのです。全国地域冷暖房事業者連絡協議会の要望にもありますが、政府関係金融機関からもこの融資条件の改善を強く望んでおりますが、こういう点、通産省が窓口となって、大蔵省に積極的に働きかけるべきであると私は思うのですが、大臣のお考えをお伺いしたいと思うのです。
  133. 田中角榮

    田中国務大臣 これからの都市は、既存都市、大都市に集中するということは排除しなければなりませんが、社会環境が整備をされた都市の様態というものを求めて集まるということは、これはもう避けがたいものでございます。でありますので、そうなると、どうしても下水道の整備と同じように熱供給や地域冷暖房が行なわれるというのは、これは時代の求めでございます。こういう中で一番合理的にやられておるのはニューヨークのようでして、ごみをたいて全市域に熱を供給しておるというような非常に合理的なものがございましたが、もうそういうものではなく、これは社会的要請として水道電気、ガスと同じように冷暖房を要求するということになってくるわけでございますので、これは税制上も金融上も水道やガスに匹敵するような助成措置を講じなければならないということは、もう方向としてはそのとおりでございます。いまスタートに際して考えておる事務的な問題については、政府委員をして答弁せしめます。
  134. 樋上新一

    ○樋上委員 現在事業を行なっておるものが十カ所ございますが、今後は、これは相当数事業計画をするところがあると思うのですね。そういうときに熱供給施設の設備の方式やこの設計基準がばらばらであってはならないと私は思うのです。そういう場合は、非常に不合理なことでありまして、コストも高くついたり、また利用者の負担も高くなるのでありますが、それを標準化し、統一することによって大幅に安くなり、また設備を施工する場合にも安心でありますし、また設備の検査にいたしましてもやりやすくなる等、あらゆる点で有利であると私は思うのでございますが、こうした標準規格化につきまして、通産省は具体的にどのように考えていらっしゃいますか。
  135. 田中角榮

    田中国務大臣 これは、もう熱供給施設の標準化をはかっていかなければならないということは御指摘のとおりでございます。いま非常に技術も進んでおりますし、諸外国の標準的な例もございます。そういうものを基準にしながら、できるだけ早い機会に最も合理的な基準というものをつくらなければならない、このように考えております。これは計器でもあらゆる機器すべてがそうだと思います。  それから先ほどの御質問にございました熱供給事業関係施設に対する財政的な措置としましては、日本開発量行、北海道東北開発公庫及び公害防止事業団による長期低利の設備資金の融資。税制上の問題としましては、熱供給施設についての工事分担金の圧縮記帳、それから熱供給施設に対する固定資産税の軽減、これは五年間三分の一、次の五年間は三分の二とするといういろいろな問題を考えておりますし、また熱供給事業に使用する軽油に対する軽油引取税の免税、これは地方税法の施行令を改正するというようないろいろの問題を取り上げまして、この事業が円滑、完全に事業目的を達成できるようにしたいということを考えておるわけでございます。
  136. 樋上新一

    ○樋上委員 大臣、十四条に「地方公共団体以外の熱供給事業者は、熱供給の料金その他の供給条件について供給規程を定め、通商産業大臣認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。」、こうなっておるですが、個別冷暖房方式と比較して、どの程度の差が見込まれておるのか、まだ詳しいことはわからぬでしょうが、料金認可に際しての基本的な考え方、基準についてどのように考えていらっしゃいますか、この点お伺いしたいのです。
  137. 田中角榮

    田中国務大臣 こまかくは政府委員から答弁申し上げますが、料金水準というものは、公益事業でございますから、無制限に私益を追及するというわけにはまいりません。これはやっぱり電気事業やガス事業、水道事業と同じような考え方で、公益事業としての基準を守らなければならぬことは言うまでもありません。しかし全国一律、画一的にはいかぬわけです、これは立体的なところに供給する場合と平面的な状態の場合と、家と家との間隔、各一戸一戸の間隔によっても違いますから、そういう意味で、その団地、その地域、その供給事業というものによって、適正な料金が計算されなければならない。しかしそういっても、電気料金は九電力では違いますけれども、世間が納得する料金でございます。水道料金も違います。違いますけれども国民が納得するものでなければならない。そういう考え方から、この事業が目的を達成するための適正な利益以外のものを不当にあげられるような料金であってはならないという、非常に厳密な考え方を前提とした料金を算定をしてきめていく、こういう考え方でございます。
  138. 樋上新一

    ○樋上委員 わかりました。同一地域に対して二つ以上の事業者が許可を申請してきた場合、通産省の裁量によるところが大きいと思うのですが、この場合の処理はどのように行なおうとされますか。
  139. 三宅幸夫

    ○三宅政府委員 おそらくそういうケースはあまりないと思います。といいますのは、この事業の発足にあたりましては、地方公共団体、ことに市町村が相当の対応関係を持つケースが多いと思いますので、あまりないかと思います。しかし万一のこともございますので、第五条の許可基準におきまして、一号から四号までに掲げてある基準のほかに、特に第五号におきまして、相対的に一号から四号までの基準のどちらが有利であるかという判定に関する裁量規定を入れたわけでございます。
  140. 樋上新一

    ○樋上委員 この熱供給事業の特徴は、それが一たび開始されると、他に有力なかわりの暖冷房方式が出現したとしても、切りかえが困難な点にあると思います。こういうことはおそらくないと思いますけれども、またほかにそういうものが出たときには、その切りかえが非常に困難ではないか、こう思うのです。この熱供給事業を新しい公益事業として規制していくには、利用者の意向を十分尊重し、先ほど申しましたように、企業者が事業所等の、ビル集中度の高い有利な地域のみをとらえることなくしてもらいたいということを私は要望いたしておる次第です。そういう点をちょっと要望しておきます。  さらに、地域冷暖房の熱原として、廃棄物の焼却熱等の未利用エネルギーを計画的に組み込むことも可能であると私は思うのです。総合エネルギー調査会熱供給部会の答申にもございましたが、国民経済的見地からエネルギーの有効利用という点で大いに私は取り入れるべきであると思いますが、この点をどうお考えになっていますか。
  141. 田中角榮

    田中国務大臣 有効利用ということの一つの合理的な考え方地域冷暖房である。これは、一軒ずつでふろをたいたり冷暖房施設をやったりということになると非常に高いものになります。この地域冷暖房をやりますと非常に合理的な料金で算定をされる。北海道などで石炭をたいておるというようなことでは年間何万円かかるということと、地域冷暖房、北海道は暖房でございますが、そういう面から計算してみても、公害も起こらないし非常に合理的である、エネルギーの高度利用になるということでございます。先ほど一つ申し上げましたが、ニューヨークではごみをたいて給湯をしておるということでございます。特に密集してまいりますから、一軒一軒では、みずから熱をつくるということになりますと、敷地やいま御指摘ございました廃棄物の処理に困ったり、いろいろな問題が起きます。そういう意味で、ちょうど農村でもいま簡易水道、広域水道をやっておりますが、そういうものと同じように、新しい時代の要請によるものであって、しかも低廉で質のいいものであるということでございます。
  142. 樋上新一

    ○樋上委員 それから、これは各省庁との関連がございましょう。この法律は、税制金融面では大蔵省、導管埋設、道路使用等では建設省、公害発生防止等では環境庁、また地方自治体の事業参加、出資等ではこれまた自治省、保安要員等では労働省等々、各省各庁にまたがっておるわけであります。こういう点、いわゆるなわ張り争いのうるさい官庁でありますから、非常にむずかしい点もあると私は思うのですが、この辺の話し合いがしっかりしているかどうか。もししっかりしていないのであれば、この法律が制定されましても実際の動きが大幅に規制されるのじゃないか、こう私は思うのですが、各省庁との話し合いがどういうところまで進んでおるのか、また今後その点はだいじょうぶか、こういう点を伺います。
  143. 田中角榮

    田中国務大臣 これはもう、法律成案の過程に、各省庁との意思の疎通、話し合いは全部済んでございます。これはこれよりもっとむずかしい、ガスとか石油パイプラインとか、いろいろなものがあるわけでございまして、ちょうど飲料水を取る井戸、工業用水というものに近いものでございます。そういう意味では、特に水道、電気、ガスと同じように生活の必需品である。こういうことで、各省庁がセクショナリズムによって問題を起こしたりすることは絶対にないということを確信いたしておりますし、この法律通産省所管として提出をしているわけでございます。これはガスとか電気供給と同じような意味を持っておりますから、各府県、地方団体とも十分な連絡をとって、この施設をする業者、この熱を利用する住民に迷惑はいきさかもかけないように、自信をもってやってまいりたい、こう思います。
  144. 樋上新一

    ○樋上委員 熱供給事業者が使用する燃料の点ですが、これは私、問題があると思うのです。新宿の副都心における事業においては都市ガスを使っております。しかし、都心にガスタンクがあり、もし事故があるとしたらこれはどうなるか、非常に心配な問題でございますし、それこそ大きな被害であると私は思います。その他重油にしろ灯油にしろ、それをタンクローリー等で運搬する、ガス供給のないところは毎日相当な量が使用されるのではなかろうかと思います。こういう貯蔵設備や安全設備等をしっかりしておかなければならないと思うのですが、この点だいじょうぶでしょうか。
  145. 田中角榮

    田中国務大臣 これはもうガスはガス供給ということで、タンクもタンクローリー等も十分な法律上の規制を受けております。石油の場合もしかりでございます。石油は、町かど町かどには石油の供給所があるわけでございます。スタンドが存在するわけでございます。まあ大量の、貯蔵するガスタンク等に対しては民家との距離等もございましたが、このごろはもう民家との距離ということは、水平距離を幾ら離すというわけにはまいりませんから、構造物の安全性というものが非常に高められておるわけでございます。そういう意味で、この地域冷暖房施設による燃料の貯蔵というもので、現在のガスや石油や電力の供給と違った危険度というものは全く考えられない、こう思います。
  146. 樋上新一

    ○樋上委員 終わります。
  147. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次に川端君。
  148. 川端文夫

    ○川端委員 この法案の中身に対しては同僚の樋上さんよりかなりこまかく質問があったので、重複を避けて一、二点だけお尋ねしてみたいと思うのだが、先ほども質問あったけれども、言うなら、既存のものの、この法案ができてからの監督管理の問題ですね。たとえば、新しい法律によれば導管の使用前検査というものまで、二十二条ですか、明らかにあるわけですね。いままでのものは経過措置としてやむを得ないと考えて認めていくのか、これから埋設するものに対して事前検査までやるということを明らかにされているのだが、この辺どうなるのでしょう。まあ十カ所ぐらいだからたいしたことないと考えておいでなのか。
  149. 三宅幸夫

    ○三宅政府委員 附則におきまして、事業許可等は届け出によって一応みなし規定が置かれておりますが、ただ、その許可をみなし規定によって受けた人も供給規程、すなわち消費者保護に関連するところはあらためて認可を受ける必要があるわけでございます。問題は、保安上の問題でございますが、すでに地下に埋設されておりますものをもう一度掘り起こして使用前検査をかけるということは技術的に不可能でございますから、それにつきましては、二十七条と八条の報告徴収権の発動並びに立ち入り検査によりまして、漏洩がないかどうかということをチェックいたしたいと考えております。  なお、保安上の規定は事業規制の規定と違いまして、施行と同時に適用されることになっておりますので、その限りにおきましては、施行と同時に工事に着手しようとする者は、附則の第二条第五項で、本則とは若干ていさいが変わっておりますが、あらかじめ使用前検査を受ける必要がある、こういうことになっておるわけでございます。
  150. 川端文夫

    ○川端委員 どうもはっきりしないのだが、いままでのものはもう一ぺん見直すわけにいかぬし、みなし規定でやっていく以外にあるまい。したがって、これからはやかましくやるというこの法律だと理解せざるを得ないのですが、そこで、かりに三十二条に書いてある経過措置というものを、どれぐらいの期間を経過措置の期間とするのか、これはどういう意味をあらわしているのか。一切のものを経過措置とするのか、特別のものだけを見ているのか、この点をもう一つ……。
  151. 三宅幸夫

    ○三宅政府委員 私の答弁、舌足らずであったかと思いますが、みなし規定はあくまで事業許可の問題でございまして、保安につきましては施行と同時に適用が開始されます。ただ、すでに埋設されております導管について掘り近して使用前検査をすることは技術的にできませんので、二十七条並びに二十八条の規定によりまして、報告を徴収し、あるいは漏洩等がないかということの立ち入り検査をいたしたい、こういう趣旨で申し上げたわけでございます。  なおこの法律の施行は、公布後政令で定むるところによりまして六カ月以内に施行いたしたいと考えております。
  152. 川端文夫

    ○川端委員 もう一つの私の心配する問題は、大都市——ニュータウンのような新しくつくる都市は比較的楽ではないかと思うけれども、大都市等において新しくこういう計画あとからできてくる。時代の趨勢だといえばそれまでであるけれども、地下埋設物がそれぞれの耐久年限の違うものがばらばらに入っていくおそれがあるのではないか。東京を見ていると、貧乏人の普請と同じなんだな。まあ言うなら、ことしはこの辺を建て増しして、来年は屋根を直すというようなことで、一ぺんにやればずいぶんやりいいものが、繰り返し繰り返しいじくらざるを得ないというあり方と同じように、ほとんど主要道路は、地下埋設物の入っている道路は、東京等は年じゅう掘り起こして、満足に使えるような道路は何がしあるんだと考えざるを得ないんだが、そういう問題に対しての心配はどういうふうに除去してもらえるのか、しようとしているのか、ひとつお答え願いたいと思います。
  153. 三宅幸夫

    ○三宅政府委員 お答え申し上げます。導管につきましては、先ほど申し上げましたとおり、導管の機能につきましてはいま法的にブランクになっておりますので、この際所要の技術上の基準あるいは工事計画の届け出、さらには使用前検査という制度をかけたいと思っております。  次に御質問の点は、地下埋設物全体をどういうぐあいに保安対策上考えておるのか、こういう御質問だったかと思いますが、御存じのとおり、一昨年四月に大阪におきましてガスの爆発が遺憾ながらございました。そのときの対策本部の決定によりまして、地方の道路管理者が主宰する地方連絡協議会を強化拡充する、あるいはシードル工法その他工法の安全化を推進する、あるいは、従来必ずしも明確でございませんでした総合的な地下の埋設物の台帳を整備するというような措置が決定されました。さらに、これらの措置を具体化するために、これは建設省が中心になって進められたのでございますが、一昨年の十月、地下埋設工事等による道路の掘り返しの規制及びこれによる事故の防止に関する対策要綱というのが政府の意思として決定されました。これに対応する所要の道路法上の政令改正が行なわれたわけでございます。したがいまして、中央もさることながら、主として地方で具体的な問題といたしましてその点の連絡調整の強化がはかられておるわけでございます。  私どもといたしましてはすでに、まだ法律は施行されておりませんけれども、現在ございます熱供給事業者に対しましては、この地方の道路管理者が主宰いたします連絡協議会に積極的に参加して、他の地下埋設物の管理者との間に所要の協定も結び、工事の日程等についてもしかるべき調整をはかるように指導してまいっております。  なお、今後この法律が幸いにして成立を見ますならば、建設省との連絡を一そう強化いたしまして、保安の確保のための対策を十分講じたい、かように考えております。
  154. 川端文夫

    ○川端委員 これはまあガス管のような危険は少ないとわれわれもしろうとなりに理解はできるのだが、たとえば東京都の一つの例をとると、水道はかなりの漏水があって、あるいはガス管もかなりガスの漏洩がある。私が都議会時代にいろいろ問いただしたところによれば、今日のような大型自動車が通らない時代に埋設したものであるから、部分的には順次直しておるけれども、全体の地下堀り下げはなかなかできかねているところに泣きどころがあるというお話はたびたび聞いてきておるわけなんですね。この問題に対して、いま現在の時点で道路の耐久力というものか、あるいは道路の負荷力というもの、荷のかかり方ですね、現在の時点で計算されているのか、将来何かそこに幅を見て、かなり安全率を持って埋設物に対する問題点を出しておいでるのか。その辺はどうされているのか。局長もう一ぺんお答え願いたいと思うのです。
  155. 田中角榮

    田中国務大臣 これはちょっと私からお答えいたします。これは建設省の問題でございますし、私は道路法と道路構造令を、各党を代表しまして現行道路法の提案者として、現行の道路構造令をみずから手がけたものでございますので、この件に関しては、公益事業局長よりも私のほうがいいかと思います。そういう意味お答えいたしますが、いまの道路構造令は確かに道路の埋設物に対しては安全度を見ております。見ておりますが、これはまあ舗装する場合に十トン舗装、二十トン舗装、三十トン舗装というふうになっておりますから、いまのように無制限に地上を重車両が走るということになると問題がないとはいえません。これは問題がないとはいえません。その意味で、今度の高圧ガスパイプラインなどというものは、非常に材質とジョイント部分に対しては規制が行なわれております。これはもうどんな場合でも爆発をしないように、損傷が起こらないように、しかもくい打ちなどの衝激においても破損しないようにということをやっております。おりますが、ときどき大阪のガスのように爆発も起こるということで、全く皆無ではない。ただ重いものの垂直荷重に耐えられるようにはなっておるが、大きな地震でジョイント部分が破損するということは絶対にないとはいえません。これは相当のものには耐えられる。ですから、国道はもう問題はないのですが、ただ市町村道等は、道床の構造そのものによって、非常に重車両が運行するときには圧力のかかるものもあります。そういうところは特に埋設構造は厳重に規制をいたしておるわけでございます。いまのところ、ガス管や電話のケーブルとか水道とか、いろいろなものが入っておるわけでございますが、ガス管がもつことになっておりますから、だからその限りにおいてはそんな心配はない。給湯、給水の場合には、熱やそれから冷房という問題に対しては問題はない。こう言い得るわけでございます。ただ主要幹線、あなたが先ほど質問になった東京のような、大阪のようなところをどうするかという問題、これはなかなかかめんどうな問題であります。だから、これは都市計画地域においては、当然地下共同溝をつくりまして、その中には何でも全部入れられるように——何でも全部入れても、これは危険度によってパイプの材質が違いますから、それによって同じところに入れても支障がない、こういうことになるわけでございまして、これはしょっちゅう掘り起こすことによって災害の危険というものはあるわけでありますので、主要幹線、メインパイプというものはやはり共同溝を通すというふうにしなければならない。ですから、これはいま赤坂見附から例の大宮御所のあの十字路までは地下共同溝がつくられておりますが、その先ができておらないということであって、東京、大阪など既存都市の中の熱供給という問題に対してはいろいろな問題があると思います。しかしこういう大きなものは特殊な会社というよりも、地方公共団体が主体になってやらざるを得ないということになりますので、これは道路とか道路構造とか、関連の調整は十分できる、こういうふうに考えるべきだと思います。
  156. 川端文夫

    ○川端委員 大臣が道路に対しての権威だということを初めて承って意を強うしたわけですが、まあそれはそれとして、やはり先ほどから言っておりますように、終戦直後のあの荒野の中において、共同溝というものは東京都の都市計画をつくるときにいろいろ議論したのですが、金がかかり過ぎるということで、結局先ほどから言われておるように、部分しかできなかった。部分しか進んでいない。かなり高額の資金が要るというところに問題点があるわけでして、都市というものをつくって、あるいは維持していく上においては、やはりそういう先行投資的なものがかなり要るのではないか、こういうことも言いたかったわけで質問をしておったわけですが、東京都を見てきた中においては、いろいろな資金の関係上、やりたくてもできないで、今日、都民にえらい迷惑をかけて繰り返している問題も多いということ。もう一つは、先ほど大臣は、同僚の質問に答えていい話をしていてあげたけれども、東京都も最近はこれに近い仕事をやっているんですね。ごみ焼き場はなかなか住民の反対が多いので、熱供給事業者は、地域に全部とはいえないが、少なくともいわゆる焼却場の周辺なりあるいは焼却場の中に熱供給をして、老人のための浴場をつくったりしてやっているのですが、科学的に研究して、これが将来日本のため、あるいは公害等のためにいいという考え方があるのならば、東京都が独自でやる。この広い区域は、あの焼却場だけでできるかどうか疑問でしょうけれども、少なくとももう少し焼却に対してのあの燃料を——日本でいえば石油なんかほとんど輸入しなければ使えないのですから、あれだけのものを単に燃やしておるだけではなく、もう一歩進めて、この法律を契機にして全体の角度から、現在でも部分的にやっていることをもう少し熱量をふやす炉をつくらせるとか、炉をつくるための援助をすることによってできる場所もあるのじゃないか。こういうふうにも考えるのだが、大臣、そういう新しい発想でひとつ、将来総理大臣になられるかもしれぬから、いまのうちに聞くだけは聞いておかないといかぬから……。
  157. 田中角榮

    田中国務大臣 それはもうほんとうに将来の夢ではなく、いま現実の問題でございます。これは先ほど申し上げましたように、ニューヨークなどは、ごみをたいて給湯しておるわけでございます。これが給湯することができるというのは、平面的にあまり広いところだと、熱をずっと保たせるということに無理がありますから、やはりコストが高くなる。途中でもってまた温度を上げなければならぬということになったら、これはめんどうなんです。ですからそういう意味で、給湯人口が非常に多くて、そうして面積は小さいことが理想的なんです。その場合は何かというと、箱のように立体都市が地域冷暖房には非常に効率的に動くわけでございます。そういうことからいくと、一・七階平均という、日本の東京とか大阪地域冷暖房施設をやるということは、これは実際においてはたいへんでございます。そういう意味で都市計画区域、区画整理区域においては、地下共同溝をつくって地下埋設物を同一にすることである。だから、パリはもうすでに二百年前に総延長二千キロ以上に及ぶ地下道があって、その地下道で、ごみの収集から郵便の集配まで全部できることになっているわけでございますから、そういう意味でやはり都市の立体化というものを進めなければならない。立体化が進めば給湯、給水、冷暖房全部地域的になるということは言うまでもありません。  そこでごみの問題がある。このごみは、外国でできるものを何で日本のごみができないのか。というのは日本のごみの質が悪い。水分が非常に多い。簡単にプレスでもって自動的に圧縮すればいいので、何でこんなことをやらぬのかとだれでも言っているのですが、このごろその部面に参りました。プラスチック等の雑ごみもありますから、こういうものも全部圧縮をすると十分の一以下くらいになるわけです。それを高圧焼却をする以外にない。セメントでもってかたくして東京湾を埋めたら、それでなくても東京湾の汚染されているものをごみで埋めることはないのです。それで夢の島を埋め、この間のテレビでも新聞の朝刊でも、昭和五十七年になると東京湾のもう一つつくる夢の島も飽和点を越して東京湾はごみだけになる。こんなことはやはり自民党政府責任だと私はしみじみと感じたわけでございまして、これは高圧焼却をすれば簡単に片づく。高圧焼却をするということになれば、多量の熱を発生するわけですから、これは冷暖房に転化すれば済むわけであります。そういう意味で、あなたがいみじくも指摘をされたこの問題は、これは将来の問題ではなく、東京都や日本の都市改造の現実の問題である。ごみを処理をして、その上に地域冷暖房を提供できる。このくらいのことをほんとうに直ちにやらなければいかぬ。特に高圧焼却ということが前提になると、熱の利用は非常に効率的に考えられる。これはもう御説に敬意を払っておきます。
  158. 川端文夫

    ○川端委員 そこまで話されると、東京都の財政状態を知っている私どもとしては、東京都にそういう高圧焼却という一つのものをつくるだけの予算がなかなかできないで、全体を焼却するためにはかなり苦労している実情を知っているわけです。政府の現在の補助率ではなかなかそれだけのものはできにくい、こういう現実もわからぬわけじゃないので、これは美濃部だから憎いからやらぬということでなしに、言うならばそこまで構想をお持ちならば、少なくとも東京は日本の首都であるという立場から国際的な顔ですから、だれが知事であろうとモデル的にもやはり政府も思い切った援助をして、それくらいのことをやらせなければおかしいじゃないか。現にごみの問題でも現代が変わってきて、もうあきびんは回収しないのですね。したがってビールやいろんなあきびんもこなごなにして、びんで回収すれば運賃や人件費が高いから、その場で粉にして持っていけばけっこうまだ利用価値があるのだが、あのままで運搬しておったのじゃかえってコストが高くついて、新規につくるより損だという違った現象。廃物利用が違ってきておる。昔のような廃物利用するよりも、輸送費や人件費が高いため、そういう多様化していくときに、わかっていてできないという地方自治体の内情に対して、もっと一つのモデルケースとして思い切ったことをしてやる。しかも権威ある田中さんがそこまで考えておいでだとするならば、ひとつ勇断を望みたい、こういうふうに思うのですが、いかがでしょう。何かひとつ東京を日本の顔としてもう一ぺん見直して、ごみ戦争といわれている時代にひとつくふうをして、モデル的なものとして大きな国立焼却場でもいいからつくるくらいの意気込みで、これを熱供給事業の一環に入れていくというくらいの構想を持ってもらえないかどうか承っておきたいと思います。
  159. 田中角榮

    田中国務大臣 ごみ問題は私は地方公共団体でやることが望ましいが、地方公共団体でなくとも、いまの熱供給事業法によって地域冷暖房にいろいろな助成をするというくらいのことを考えれば、これは民間の企業としても成り立つものである。熱を利用するということであれば十分成り立つ、こういうふうに考えられます。もとはただ車の中に紙のようなごみを積んでおったのですが、このごろはだんだんと進化して、ごみを入れると圧搾をしながら、水分を全部出すようなことはできませんが、いずれにしても固形にして、いままでの無蓋車に積むよりも何倍か量を積めるようになっております。あれはいま小さいです。それは四メートル道路ということを、どこの私道でもみんな入っていくということを前提にしてつくられているから車は小さいのですが、あの車でも三倍になり五倍になって、中でもって水も下水にホースではじき出してということになれば、あのごみの十倍も積めるわけでございますし、先ほど言った水分をもっとプレスして、プレスでもってうんと圧縮をして水分をほとんどなくして、これを高圧焼却へ入れたら、すべてのものが焼却できるのです。熱はたいへん大きな熱を放出するわけですから、これを利用しないなどということはもう間違いであります。ただこれに対して一つは、あまり平面都市のごみを集めると金がかかるのであって、立体的になりますと、ダストシュートでずっと下までおりてくると、そこにプレスがあって自動的に圧搾されてそのまま固形物として搬出をされる。先進国の都会にはそういう都市機能というものがありますが、日本は明治時代と大正と現代が同居しておるところに非常にむずかしさがある。そういう意味では都市機能そのものが変わってくれば、こんなもの簡単にやれるわけです。どこでもやっているものが日本だけやれないわけはない、そう思いますが、やはりそういう日本の平面都市という特殊性というものもあります。ありますが、今度通産省は熱供給事業法という法律を出して主管省になるわけですから、これはもうごみの処理でも何でもひとつ、何も石油だけでなく、ごみをたいたって熱は発生するわけですから、そういう問題も十分ひとつ真剣に考えて、社会公共のために貢献しよう、こう思います。
  160. 川端文夫

    ○川端委員 法案からだいぶはずれた議論になりましたけれども、言うならばやはり中央官庁の石頭というか、ぼくは都市計画の第一回に、昭和二十三年に参画したときに、やはり一番ガンになったのは宮城です。宮城の中を地下道をつくってあそこをやらしてくれと何回か言ったけれども、言うならば宮内庁が反対して、いまでも迂回しながらやっているところに交通渋滞は目に見えている。あの祝田橋なりあそこいらにある。言うならば地方自治体でできないことがかなり多い。中央集権だと悪口を言おうとしているんじゃないけれども、もっと先見性をもって地方自治体を指導する。これは総理大臣になったと考えて、総理大臣心得としての大臣に要望申し上げておきます。  東京都の立場から見ればまだまだ言いたいこともあるし、頼みたいこともあるけれども、今日の網の目のようなこまかに立法化されたこの時代においては、東京はそういう奇抜な意見がなかなか出しにくいという一面になっておる。終戦直後は出したけれども通らなかった。こういう一面もあることも十分理解して、やはりこの熱供給事業というのは都市の問題でしょうから、都市改造とあわせて御工夫御苦心を願いたい、こう思うのです。  そこでもう一つ、これで終わりますが、局長、話がだいぶ横にいったから、待っている皆さん、ほかに用があるようですからやめますけれども、この供給区域の問題では、私はこれでいくと、さっきから言ったように平面都市を広く大きくやれるものではない。この熱供給事業の性格からいって、都市の中に幾つかの会社ができる、この法律の条件にはまれば幾つもできるということになるのか、あるいは府県を中心に一つの会社なり何かにやらせるかということに対して、どのような構想でこの法律を出されているか、局長にちょっと承りたいと思います。
  161. 三宅幸夫

    ○三宅政府委員 まだ揺籃期の産業でございますので、ガス会社の兼営あるいは第三セクター、つまり都道府県あるいは市町村が団地あるいはそれに準ずる形でかんだものでもいろいろございますが、まだその辺明確な仕切りをこの際つけるのはこの揺籃期の産業に適当でない。あくまで、この法律で御審議をお願いしておりますように、真に公益事業としてのふさわしい経営方針、経理的基礎、技術的能力があれば、それは認めていきたい、かように考えております。特に第三セクターという形で今後いろいろなケースが出てくるのではないかという期待を持っております。  なお、先ほど大臣からうんちくのあるお話がございまして、局長として恐縮しておりますが、ごみ焼却炉の問題も私どもの問題意識の中にあるわけでございまして、すでに北海道の札幌下野幌団地における熱供給事業は、ごみ焼却炉による熱の利用を平面的にやっていきたいという決定をしております主体は第三セクターでございます。
  162. 川端文夫

    ○川端委員 もう質問をやめますけれども、非常にいい法律を発想されたんだから敬意を表したいと思うのですが、先ほどから大臣いみじくも答弁を広げて、いろいろな都市改造に対する御見識を承ったのですが、やはり一つのものをつくってこれを幅広く奥深く考えれば、いろいろな発想がわいてくるわけですから、いま行き詰まりつつある東京の過密都市に、単に工場再配置だけではなく、現在あるものを活用する意味においての都市改造に対しても御見識を発揮されんことをお願い申し上げて、私の質問を終わりたいと存じます。
  163. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十二分散会