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田中国務大臣 私は率直に申し上げて、
日米繊維交渉というものは必要であってやったわけでございますし、それは理解していただけると思うのです。それに対して、
日米の
貿易量が年間二千億であるものを、その
金額に匹敵する以上の
対策も行なっておる
政府の施策というものの誠意も認めてもらわなければいかぬと思うのです。まあ一部においては、しかしここで法律的判例を求めるのだという議論もございますし、こうしておくことが
通産大臣がやりやすいだろうといういろいろ御同情のある
お話もございます。しかし私は、やはりこれだけ努力をしても裁判を受けなければならぬのかということ、これは公の立場でやむにやまれぬかもわかりませんが、どうも私自身釈然といたしておりません。それで、すなおに
考えれば貿管令というものもありますし、それから為替管理法もありますし、いろいろな法律がありまして、それは必要であって、国会の議決を経てその法律が法律として存在をしておる。これはこの現行法は違憲ではない。これはもう
日本の産業のために必要である。輸出の長期的な目から見たら、正常な輸出をするためには必要なんだということで貿管令もあり、いろいろな法律があるわけですから、この法律の存在を認めながら、やむにやまれぬ、外交交渉による
——それも
日本の、長期的に見たらそのほうが合理的であり得なんだ、これは利益を守るために真にやむを得ざる
日米繊維協定だ。この
協定が無効であるという
考え方の、どうも実効のない裁判提起ということも
考えられますし、まあこれは私の立場を求めておられますから私の立場で申し上げるのですが、どうも私は
通産大臣をやめてから
考えてみても、もうここらで片づけてもらいたいものだ、こういう
感じがいたします、ほんとうに。私はそういう意味で……(「破棄したら片づく」と呼ぶ者あり)これはまた破棄できるものでもないんです、実際。そういうことを
考えますと、まあこの裁判は早く取り下げてもらうことによって、もっと業界も私もみんな一緒になって
現実的な
繊維産業というものに取り組む
方法は幾らもあるのであって、まあ私としては、どうもあまりいい
感じじゃございません。こういうことでどういうメリットがあるのかな、どうもそこがはっきり
——私はメリットがあればまたそれなりの評価をいたしますが、どうもこの裁判を提起して、この裁判が一体どういうメリットがあるのか、ちょっと理解しかねるということでございます。