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浅野参考人 私、
日本繊維製品輸出組合の
理事をいたしております東商株式会社の
浅野でございます。
国会の諸
先生には、近年特にわれわれ
業界のために始終御
高配をあずかりまして、この席をかりて厚く
御礼申し上げます。
参考人として
繊維製品輸出組合の
業界を代表いたしまして、実情を
一言申し上げたいと思います。
われわれの
繊維二次
製品輸出業界というのはほとんど中小の
輸出専
業者からなっておりまして、われわれの組合のメンバーというものは五百三十九社、資本金一億円以下の
企業というものはその中で四百三十四社で八〇・五%を占めております。このように当
業者というものは
輸出を専業とする多くの
中小企業の
業者から成り立っております典型的な
中小企業産業といえると思います。
第二番目に、
繊維二次
製品の特質について申し上げますと、二次
製品というのは御存じのように最終消費者が使用する
製品でありまして、非常にその大部分のものはファッショナブルといいますか、非常に流行の変遷の激しいもので、したがって
輸出国は
米国、ヨーロッパ、カナダ、豪州というふうな
先進国に向かって
輸出されるものが大部分でございます。近年、流行の変遷が非常に激しくなりまして、ファッショナブルな商品、たとえば昨年非常に花形商品であったというものが全くことしは売れなくて、別の新しい品目に爆発的にその
需要が集中してくるという特質を持っております。この上にさらに
後進国の
追い上げというものがありまして、韓国あるいは台湾、香港を
中心にして常にわれわれは
後進国から
追い上げを食っておるのでございます。したがって、常に
先進国向けのファッションというものをよく研究して流行を先取りするといいますか、新しい商品を開発して
後進国の追随を許さないといいますか、そういう商品をいま申し上げた
米国とか
先進国に向かって
輸出する。またそういう国々が小回りといいますか、うまくいかないような商品を開発して
輸出しているという特質を持っております。
三番目に、現在の
輸出状況を申し上げますと、二次
製品は四十六年には八億五千六百万ドル、金額で
輸出をいたしました。これは前年に比べますと約二〇%増でございます。これは昨年ばかりでなくて、年々
高級化とあるいは
国内のコストの上昇というものからいって
輸出の単価が非常に上がっておりまして、金額が二〇%上がったからといって数量は必ずしも二〇%上がっておりませんで、約数%の上昇と
予想されます。いま申し上げました総
輸出額の八億五千六百万ドルの中で三億八千八百万ドル、四五・二%はアメリカ向けでございます。したがって約半分ぐらいはアメリカに依存していることでございまして、全世界で見ますと、全
輸出の七六・二%、すなわち六億五千四百万ドルは化合縫
製品でございます。いま問題になっております毛・化合繊の
製品は、全世界に向けて七六・二%出しております。
繊維製品は、いま
八木参考人からもお話がありましたとおり、大体六カ月先あるいは一年先の契約を現にしているわけでございます。したがって昨年の八月二十八日の変動相場制の移行あるいは十二月十九日の国際通貨調整等を経まして、われわれは既契約について非常な損害を受けましたけれ
ども、長年の海外との
関係もありまして、完全に既契約を履行いたしました。したがって
政府はその間において、いまお話のありました
中小企業産品に対する
政府の予約制度というものを実施していただきまして、これが助けになりまして四十六年の
実績は、いま申し上げました円の変動相場制とかあるいは円切り上げというものに八億五千六百万ドルは大きく
影響しておりません。その間、昨年の暮れの日米の化合繊の
政府間取りきめの
影響というものは、本年以降にあらわれると思います。
その次に、円変動相場制とか、国際通貨とか、あるいは日米の毛・化合繊の
政府間協定の
影響について申し上げますと、まず通貨ではいまお話のありましたとおり
繊維の
実績は二〇%増加を示したうちで、アメリカに対してもやはり二〇%増加しております。そして昨年の八月のドル・ショック当時、六カ月先物を持っておりましたけれ
ども、これは大体ことしの三月、四月ころまでに
輸出されるものを持っておったわけでございますが、これは既契約でありましたから、ばく大な為替差損をこうむりながら船積みいたしましたけれ
ども、本年に入りまして円の変動相場制とか円切り上げ、化合繊の取りきめの実施というものが具体的にあらわれ始めまして、ことしの一-三月の
実績を推定しますと、前年に比べて一四・三%増にとどまりまして、特に三月は八・四%というふうに一けたの伸びになりまして、特に
米国向けはドル・ショック、円問題、きびしい化合繊の規制というものが加わりまして、前年同期に比べまして、アメリカ向けは一-三月で六・二%減少いたしました。三月には実に一五・五%、大幅に二次
製品の
実績が下がりました。これが現状でございます。
今後の見通しでございますが、これは八月のドル・ショックあるいは二次
製品の
輸出成約、あるいは変動相場制実施による為替の不安定、円の
大幅切り上げによる採算というものは極端に悪くなりまして、円切り上げ後の先物相場制が不安定でございますので、どうしても、アメリカ向けの化合繊の取りきめのきびしさも加わりまして、全く停とんしているというのが現状でございますし、あるいは将来の見通しといえると思います。
特に昨年の十二月十八日をもって
中小企業産品の為替予約というものが廃止されましたので、これ以降はわれわれ
中小企業、中小商社を
中心とする採算が非常にがんじがらめの規制が実施されていますので、この
影響はこれの
輸出面に出てくると考えて、非常に
業界の見通しは暗うございます。中でも
米国向けは流行を先取りしたりあるいはファッショナブルな商品を増進するとかいうことをやる一方、アウト・オブ・ファッションとかいわゆるもうファッションに乗らないものは全然売れなくなる。あるいは
後進国が
追い上げてきたものに対してはその席を
後進国に譲って、われわれは高級品なものあるいはファッションの先取りしたものをやっていきますので、全体においてはいいんですが、アメリカの規制というものは御存じのとおり個別規制になっておりますので、なかなかそういうことがやりにくい現状でございます。ことに一般品目といいまして、アメリカとの間に特定品目のほかに一般的な品目がございますが、これは御存じのようにトリガーという、アメリカがある
時点になりますとトリガーが引かれまして、
日本はまた
自主規制に入らなければならぬ、そういうものが現在で十三品目、もう去年の十月から今日までに発生しております。
そういう実情でございまして、本日実は午後からわれわれの組合、われわれの
業界では
輸出部会を開いておりますが、この見通しは
輸出金額で大体一〇%減少するだろうというふうな策定をする予定でございます。これは数字のことでありますが、米ドルで一〇%
輸出減少ということは、
業者の手取りは三〇%減ることになります、為替で二割減りますから。そして、円切り上げによる
高級化によりまして
輸出の単価が相当上がりますので、数量から見ると大体二・三〇%は減っていくという見通しでございます。
その次に各国の
輸入制限ですが、御存じのように対米の化合繊規制に関連しまして、ほかの国からはダイバーションをおそれまして
輸入制限が活発になり、早くも
米国以外の他市場にそれが波及しております。カナダはニット生地、エラスティックウエビングというものに新たな規制をすることになりましたし、豪州もニット生地の規制を
わが国に迫っておるような状態で、さらにアメリカは
わが国の漁網地についてダンピングの容疑をかけておる。そういったように円切り上げに関連しまして、
わが国の
製品がねらい撃ちされておるというふうな現状で、これは大いに警戒していかなければならぬことだと思っております。
その次は、第三国との競合激化については、御存じのように
繊維というのは
後進国の最もやりやすい――シャツとかブラウスとかズボンとか、そういうものは非常に手がけやすい商品であります。しかも労働集約商品でありますために、どうしても低賃金を武器とするところの
後進国にやられているという現状でございます。そういうことでございまして、
日本の
米国に対するシェアは非常に少なくなってきつつあります。
最後に、われわれの
輸出方策につきましてでございますが、このような
輸出の現状の中で、さらにわれわれが
業界の存立のためにやっていくためには、どうしてもほかの国の追従を許さないようなファッション、高級な品物をつくっていかなければならぬ。その素材となりまするいわゆる
紡績、化合繊、そういった生地のメーカーさんのいわゆる
生産加工
体制の整備確立というものが急務とされておると思います。そして、二次
製品はそれらの商品を素材にして各国に
輸出しているものでございまするから、そういうもののほかの国に負けないような商品を、技術の高度化あるいは
設備の導入、機械
設備の
近代化というふうなことをしていただきませんと、われわれの
業界としては先がいよいよむずかしくなるという現状でございます。
たいへん長くなりまして恐縮でございますが、御清聴ありがとうございました。