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1972-05-16 第68回国会 衆議院 商工委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年五月十六日(火曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 鴨田 宗一君   理事 浦野 幸男君 理事 小宮山重四郎君    理事 橋口  隆君 理事 武藤 嘉文君    理事 中村 重光君 理事 樋上 新一君    理事 吉田 泰造君       稲村 利幸君    小川 平二君       神田  博君    坂本三十次君       塩崎  潤君    田中 榮一君       羽田野忠文君    前田 正男君       増岡 博之君    松永  光君       山田 久就君    岡田 利春君       加藤 清二君    田中 武夫君       松平 忠久君    岡本 富夫君       広沢 直樹君    川端 文男君       西田 八郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  田中 角榮君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     谷村  裕君         外務省経済局長 平原  毅君         通商産業政務次         官      稻村左近四郎君         通商産業省通商         局長      山下 英明君         通商産業省繊維         雑貨局長    佐々木 敏君 委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      徳田 博美君         会計検査院事務         総局第四局長  田中  稔君         参  考  人         (日本繊維産業         連盟会長)  近藤駒太郎君         参  考  人         (日本化学繊維         協会理事長)  杉村正一郎君         参  考  人         (日本紡績協会         委員長)    河崎 邦夫君         参  考  人         (日本綿スフ織         物工業組合連         合会理事長)  寺田 忠次君         参  考  人         (日本毛麻輸出         組合理事)   八木 弦三君         参  考  人         (日本繊維製品         輸出組合理事) 浅野  豁君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十六日  辞任         補欠選任   椎名悦三郎君     佐藤  恵君   伊藤卯四郎君     西田 八郎君 同    日  辞任         補欠選任   西田 八郎君     伊藤卯四郎君     ――――――――――――― 五月十三日  割賦販売法の一部を改正する法律案に関する請  願(石井一君外一名紹介)(第三〇九六号)  同(吉田泰造紹介)(第三一三五号)  中小企業危機打開に関する請願(浅井美幸君  紹介)(第三〇九七号)  同(有島重武君紹介)(第三〇九八号)  同(近江巳記夫紹介)(第三〇九九号)  同(岡本富夫紹介)(第三一〇〇号)  同(沖本泰幸紹介)(第三一〇一号)  同(北側義一紹介)(第三一〇二号)  同(貝沼次郎紹介)(第三一〇三号)  同(二見伸明紹介)(第三一〇四号)  同(伏木和雄紹介)(第三一〇五号)  同(松尾信人紹介)(第三一〇六号)  同(松尾正吉紹介)(第三一〇七号)  同(渡部通子紹介)(第三一〇八号)  同(中井徳次郎紹介)(第三一三四号)  同(北側義一紹介)(第三一九三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正  する法律案内閣提出第五二号)      ――――◇―――――
  2. 鴨田宗一

    鴨田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は参考人として日本繊維産業連盟会長近藤駒太郎君、日本化学繊維協会理事長杉村正一郎君、日本紡績協会委員長河崎邦夫君、日本綿スフ織物工業組合連合会理事長寺田忠次君、日本毛麻輸出組合理事八木弦三君、日本繊維製品輸出組合理事浅野諸君、以上六名の方々に御出席を願っております。  この際、参考人各位一言あいさつを申し上げます。  参考人各位には御多用中のところ本委員会に御出席いただき、まことにありがとうございます。本委員会におきましては、特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案について審査を行なっておりますが、本日はそれぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、今後の審査参考にいたしたいと存じます。  なお、議事の順序でございますが、初めに御意見をそれぞれ十分程度に取りまとめてお述べいただき、次に委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、まず近藤参考人にお願いいたします。
  3. 近藤駒太郎

    近藤参考人 近藤でございます。  初めに一言おわび御礼を申し上げたいと思います。本日、連盟大屋会長出席をいたしまして親しく先生方にお目にかかり、御礼、ごあいさつを申し上げるはずのところ、御承知のとおりに決算期でございますので、よんどころなく本日私に代理で出よということで出席させていただきましたので、席上おわびをしておいてくれということでございますので、お伝えいたします。  本日参考人といたしまして私出席をさせていただきましたのですが、今回の政府間協定及び昨年三月八日のわれわれの一方宣言による自主規制に始まりまして、先生方にはわれわれ繊維業界のために融資あるいは織機、ミシンの買い上げ一段の御支援と御協力を賜わりまして、昨年度末非常なる危機におちいりました繊維業界が無事に越年でき得ましたのも、ひとえに先生方の御支援、御協力たまものと深く感謝いたしておる次第でございます。ここにつつしんで御礼申し上げます。  昨年十月に日米政府間協定の仮調印をされまして、本年一月の四日に正式の調印を見られましたが、その後の状況は、輸出の伸びるものはやはり押えられますし、またワクのあるものはあまり伸びないというのが現状でございます。加えて国内事情も、繊維に関する限りは非常に不況でございまして、現在その被害が順次出てきておるような状況でございます。私どもといたしましては、中小零細企業の受けるこの被害必要最小限度にとめたいということで、各連盟首脳者におきましては、あらゆる手段をもって各組合ごとに、産地ごとにいろいろ指導いたしておるのでございますが、何さま多種多様にわたる業界でもございまするので、今後の問題点に対しましては非常に危惧をいたしておる次第でございます。つきましては、今回御提案をいただいております特繊法審議の点に対しましても、一段の御支援と御協力を賜わるよう、特にお願いいたす次第でございます。  そこで、先ほど御礼申し上げました、短期的には設備買い上げあるいは長期低利融資の資金でもちまして、業界といたしましては現在のところ大きく支障は来たしておらないようにやっておりますが、一部にはもうすでに危機を来たしておる業界もあるのでございます。  そこで、われわれ繊維業界長期的ビジョンはどうあるべきかということ。繊維産業連盟に加入いたしております化繊協会紡績協会はじめ下はわれわれ縫製業界に至るまで、発展途上国追い上げあるいはまた輸出制限等しわよせを受けておるこの日本繊維業界の今後のあり方に対しましては、長期的にじっくり腰を据えてビジョンづくりをやっていかなければならないのではないかということで、連盟といたしましては寄り寄り協議をいたしておる状況でございます。まことにおこがましゅうございますけれども、私どもといたしましては何もしてほしい、かにもしてほしいんだということを甘えて申し上げるようなことは今後いたしたくはございませんが、長期的に見て、日本繊維産業連盟といたしまして、それぞれの違った業界がどのようにしたならば一番ベターであるかということを業界ぐるみで検討中でございますので、どうか先生方におかれましては、今後ともビジョンづくりに対しまして一段の御支援と御指導を賜わりますようこの席上をかりてお願いいたしまして、私のごあいさつにかえる次第でございます。ありがとうございました。
  4. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次に、杉村参考人にお願いをいたします。杉村参考人
  5. 杉村正一郎

    杉村参考人 私、日本化学繊維協会理事長杉村でございます。  初めに、日ごろ繊維産業のために非常に御支援をいただいております先生方に厚く感謝の気持ちを申し述べたいと思います。あわせて、本日は、この特繊法審議にあたりまして意見を述べる機会を与えてくださいましたことに対し、まことに光栄でございます。ありがとうございました。  特繊法のことにつきましては、政府の説明にもありますように、これは審議会で長い間審議した結果、その答申に基づくものだということでございます。私も及ばずながら審議会には委員として参画いたしました関係もございまして、ぜひその結果であります法案成立をすみやかになし遂げていただきますようにお願い申したいと思います。ただ、審議会を顧みますと、織布につきましては一昨年答申があったわけでございますし、紡績につきましては昨年答申があったわけでございまして、答申後の情勢は、御承知のとおり非常に大幅に変わっております。一つは、先ほど連盟近藤会長さんのお話しになりましたように、輸出規制について政府間協定も行なわれ、いままではそういう伸びる先があったことが、今度はそれで門が狭くなったという大きな変化がございます。それからもう一つは、御承知の円の大幅切り上げでございまして、いままで国際競争力強化ということを目ざしてこの答申もできておるわけでございますけれども、そういう意味からいって、非常にまた条件がきびしくなったという変化がございます。もう一つは、日本全体としまして外貨が非常にたまりあるいはたまり過ぎたと申しますか、輸出もほどほどにせいとかあるいは輸入も大いにはからなければならぬというようなことで、いままでのような輸出至上主義というものに対して大きな反省の時期を迎えたというような事情もあるようでございます。その間政府におかれましては輸出規制その他の業界の苦境をお察しくださいまして、非常に大幅な救済措置を講じていただきました。それが融資なり設備買い上げなりでございますけれども、こういう点につきましても、従来特繊法でいろいろ施策しておりましたことと似ているようなこと、あるいはかえってもっと大規模なようなこともございます。  そういうように、いろいろな情勢が変わりましたので、もしいまの時点審議会として繊維産業構造改善いかにあるべきかということを審議するとしましたならば、おそらくもっと違ったトーンでの答申が行なわれたのではないかと思います。あるいはそのビジョンにしましても、もう少し違ったあらわれ方をしたのではないかと思われます。もちろん、答申は半年ないし一年前のことでございますけれども、そのときにもいろいろな萌芽として新しい事態を示唆するようなことがございました。けれども、全体として重点の置き方が個別企業生産性向上と申しますか、国際競争力強化するためにもっと省力化を進めなければならぬ、それに対して国家としてできるだけの助成をするというような趣旨が多く出ておりまして、その他の点につきましてはコンバーターを中心とした体制をつくれとかあるいは国際的分業についても用意をしろとかいろいろなことが書いてございますけれども重点は何といいましても企業近代化投資設備投資というようなことが中心でございました。それらについてもおそらくは新しい事態では再検討しなければならないのではないかと思われます。たとえて申しますと、国際競争力基準を求めたその為替のレートの変更だけ取り上げましても、いままでよりかもっとシビアな基準で考えなければならぬのではないかというようなことも出てくるわけだと思います。そういうことで、できればこの時点で新しい方向づけをした上で、繊維政策をお進めいただくのが至当だと思いますけれども、何ぶんにもこれは非常にむずかしい問題でございまして、審議に時間もとりましょうし、また業界自体としましても、こういう急変に向かいましていろいろ戸惑っていることもございます。私ども化繊協会におきましても、こういう情勢変化につれましていままでのような輸出依存度を非常に大きく見た高度成長を続けるというような行き方については、もう転換期が来たのではないだろうかという基本認識を持ちまして、中期対策といっておりますけれども、ここ三年ばかりの新しい方向転換について勉強をいたしまして一応の答案を得たわけでございますが、これの具体化についてはこれからでございまして、いろいろといままでと違った考え方をとらなければならぬということを自覚しておるわけでございます。おそらく他業界におかれましても多かれ少なかれそういうことだと思います。  そういうことで、おそらく近いうちに政府におかれましても新しい繊維政策方向をお立てになることになると思いますが、その際には、できるだけ繊維産業のためによい施策がつくられますことを望むわけでありますが、それまでの間じっとしておるということでは困るわけで、先ほど近藤会長さんのおっしゃいましたように、この際、いままで考えられた方向でまだ未完成なもの、これすらできないということでは困るわけでございまして、そういう意味におきまして、今回の延長法律はぜひ御審議の末お通しいただきまして、これに基づく施策をとにかくやる、その間また次のことを考えるというふうにしていただくようにお願いしたいと思うわけでございます。  はなはだ簡単でございますけれども、お招きいただきましたので、私どものこの法律改正につきましての意見を以上のように申し述べた次第でございます。ありがとうございました。
  6. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次に河崎参考人にお願いいたします。
  7. 河崎邦夫

    河崎参考人 私、紡績協会委員長河崎でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  本日は、衆議院商工委員会先生方におかれましては、御多忙中にもかかわりませず紡績業構造改善問題について業界意見をお聞きいただく機会を設けていただきましたことはまことにありがたく厚くお礼を申し上げます。紡績業界を代表いたしまして、本日は、紡績業界の当面いたしております諸問題を説明申し上げ、現在国会に上程されております特定繊維工業構造改善臨時措置法の二年間の期間延長を含む改正法案成立に対し、諸先生方格別の御高配を賜わりますようお願い申し上げる次第でございます。  御高承のごとく、紡績業昭和四十二年度度から現行構造改善法に基づきまして、構造改善対策を実施してまいりましたが、現在すでに基本計画最終年次である昭和四十六年度を終わり、構造改善事業も新たなる段階を迎えるに立ち至っております。業界では四十二年度から、四十六年度までの五年間に、設備近代化過剰設備の廃棄、企業規模適正化などの諸対策を精力的に推進してまいりました結果、構造改善計画で策定していた近代化設備比率は、計画当初の一二・五%から四十六年度末に八〇%強に達するものと見込まれております。また紡績生産性その他をはかります一梱当たりの人員も、四・八人から三・一人へと減少するものと予想されております。また過剰設備については、四十三年度に行なわれた過剰精紡機一括処理中心に約百十二万錘が廃棄されましたほか、企業規模適正化では三十五企業が参加し、九グループの成立がみられるなど、構造改善対策は着実に進捗してまいった次第でございます。  このため、紡績業全体といたしましては比較的安定した産業基盤の確立がはかられ、四十五年度秋以降に顕著となってまいりました景気後退期におきましても、不況影響は相当深刻に受けたのでございますが、従来経験したような過当競争の激化や市況の著しい悪化など、従来の不況時のような極端な事態に直面することはようやくこれを避け得たように考えております。  しかしながら、この間における内外環境変化が当初の予想を上回るほど急激かつ広範であったため、せっかくの構造改善努力の成果が著しく減殺される事態が生じてまいりました。このまま放置すれば紡績業国際競争力を失い、長期的な発展を達成することが困難になる事態が再び懸念されるに立ち至っております。  まず国際環境におきましては、後進国繊維産業の急速な発展がございます。このためわが国繊維品輸出市場において競争が激化しているばかりでなく、近年はわが国のこれら諸国からの繊維品輸入が急増しており、綿製品国内消費に占める輸入比率昭和四十六年度で一一%にも達しております。  特に四十六年八月からは後進国特恵関税が供与せられたため、輸入の増勢に拍車がかかっており、後進国製品と直接競合する製品生産してまいりましたわが国中小紡績業は、大きな影響を受けている次第でございます。  一方、先進国におきましては、西欧主要国の非関税障壁が依然として撤廃されないのみならとず米国中心としてカナダ、オーストラリアなど国内繊維産業擁護のための保護貿易主義の動きが顕著となっております。また、昨年十月には、対米繊維輸出に関する政府間協定が締結され、わが国米国向け繊維品輸出は大幅な減少が予想されており、わが国繊維産業先進国市場でも大きな試練に直面しております。  他方、国内環境については、近年労働不足を背景とした大幅な賃金上昇によりコストアップが毎年続いており、企業経営の大きな圧迫要因となっております。また、所得水準向上に伴ない繊維消費多様化高級化が急速に進展してきたため、新しい需要動向にマッチした経営体制を早急に確立することが必要とされている次第でございます。  このような著しい内外情勢変化に対処し、紡績業長期的繁栄を確保していくためには、四十七年度以降においても引き続き抜本的な業界体質強化を促進することが何よりも重要な課題であることは申すまでもございません。  幸いにして、繊維工業審議会並びに産業構造審議会において、紡績業構造改善問題について御審議いただいた結果、構造改善事業の継続が必要であるとの結論が出され、現行構造改善法期間延長し、その間に革新紡機の大幅な導入により画期的近代化を促進するとともに、消費者志向型の生産販売体制を確立することなどを目標として構造改善事業を推進するよう答申が出されております。  紡績業界といたしましては、このような答申方向に即して、従来にも増して努力を傾注する所存でありますが、何と申しましても、その根拠となる法律の制定とそれに基づく政府の援助がなければ本格的な構造改善事業を推進することは不可能でございます。諸先生方の御尽力により、幸いにして構造改善法延長が実現した場合におきましては、業界は一丸となって構造改善事業を推進し、大幅な省力化と高度な近代化を達成するとともに、高級化多様化しつつある繊維品需要に敏速に即応できる生産流通体制を確立できるものに確信いたしております。  このような方向は、一九七〇年代における先進国型繊維産業として主要先進国目標としているものであり、いわゆるファッション産業としての発展方向をたどりつつ知識的産業の重要な一翼を担うものと考えております。  わが国経済が、今後、重化学工業から知識集約産業へと移行しつつ発展を遂げていく過程において繊維産業もまた大きな役割りを果していくことが期待されており、その中核である紡績業は引き続き重要な責務を果たしていかねばならないものと自覚いたしております。  このような業界の積極的な意欲と、当面しております困難な諸情勢を御勘案いただきまして、現行構造改善法延長を含む改正法案成立格別の御高配と御尽力を賜わりますようお願い申し上げる次第でございます。どうもありがとうございました。
  8. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次に、寺田参考人にお願いいたします。寺田参考人
  9. 寺田忠次

    寺田参考人 私は、日本綿スフ織物工業組合連合会理事長寺田忠次でございます。  私どもの綿スフ織布業界振興対策につきましては、国会の諸先生から平素格別の御指導と御支援を賜わりまして、業界あげて感謝している次第でございますが、本日また特繊法改正につきまして、業界意見を申し上げる機会を与えていただきまして、重ね重ねの御高配に対しまして、まことにありがたく存じます。厚くお礼を申し上げる次第でございます。  私ども業界の概況を申し上げますと、この業界業者の数は約一万七千でございます。そして従業員の数は十四万人、従業員平均規模は十人足らずの中小規模のものでありますが、これら多数の業者は主として全国六十三の産地を拠点として集中しておりまして、毎年五十億平方メートルの生産をしているわけでございます。この生産高わが国織物生産高の約七割を占めているわけでございます。昨年初めごろには、一昨年来の在庫調整がほぼ終わりまして、市況にも好転のきざしが出て喜んでおりましたわけでありますが、三月には対米輸出自主規制、八月にはニクソンのドル防衛対策、十月には日米政府間の協定による対米輸出規制の実施など、再三にわたりまして外からの大きな衝撃を受け、この非常事態をどうして乗り切るか、また今後どうすればよいのか、憂慮にたえなかった次第でございます。この事態に対しましては、さっそく諸先生から緊急対策について御高配を賜わりまして、二回にわたる過剰設備買い上げや、三回にわたる長期低利融資金融資していただけることに相なりまして、この措置のおかげでわれわれ中小織布業界は大きな混乱もなく今日に至ることができたのでございます。これはひとえに国会の諸先生の御高配たまものであると業界をあげて感謝している次第でございます。厚くお礼を申し上げます。  さて、このたびの特繊法改正につきましてでございますが、私ども業界に特に関係の深い部分は、特定織布業構造改善期間の二カ年延長振興基金制度の創設の二点であると考えますので、この二点につきまして業界意見を申し上げて、御理解を賜わりたいと存ずるわけであります。  まず、構造改善期間延長について申し上げます。私ども業界は、昭和四十二年から四十六年まで五カ年の間、関係御当局の格段の御配慮と御指導をいただきながら、特繊法に基づいて国の大幅な助成を受けて構造改善事業を実施してまいったわけであります。この間の実績を見ますと、設備ビルドの額は四百五十三億円でございます。構造改善以前の実績を大幅に上回っているわけでございます。この構造改善事業を実施したところは、一人当たり生産高におきましても、また付加価値におきましても顕著な効果をあげておりますが、業界全体といたしましては、今後なお一そう構造改善事業に取り組みまして、企業体質強化をはからなくてはならない、かような実情でございます。繊維品は日常の衣料品のほか、家庭用品工業用資材として、今後ますます需要が増大するであろうという傾向にありますが、織布業はこの繊維産業中核となる重要産業であると考えられております。しかし、現下の織布業界は、先進国輸入制限あるいは発展途上国追い上げ労働力不足などの内外情勢予想以上にきびしくございまして、激変してまいりましたので、私ども現に業に携わっている者は、この際いままでの構造改善事業をさらに拡充してこれを継続実施して、強い国際競争力を持つようにしなければ、輸出の減退はもちろんのこと、国内市場をも外国製品に蚕食されることは必至であると憂慮せざるを得ないわけであります。しかし、幸いに現行構造改善事業を完遂することができ得ますれば、わが国のますます増加する国民需要をわれわれの手で充足し、さらに伝統の技術を生かして高級品の輸出の増加をはかることはできると確信する次第であります。このため、特繊法による織布業構造改善事業は、この事業が完成するまで継続実施ができ得ますようにしていただきたい、かように切望する次第であります。このような次第でございますので、このたびの特繊法の二カ年延長につきましては、ぜひとも実現していただきたく、お願い申し上げる次第であります。また二カ年後以降におきましても、織布業の重要性と内外情勢の緊迫性はさらに加重されてくる、かように思いますので、業界振興対策につきましては、引き続き格段の御指導と御高配を賜わりたく念願する次第であります。  さらに振興基金制度について申し上げます。構造改善事業におきましては、設備のスクラップ・アンド・ビルドのほかに、設備開発、商品開発、市場調査あるいは労務対策等の諸事業をあわせまして実施することになっておりますが、この事業を共同で実施するにつきましては多額の資金が必要であります。そうしていままでこの資金の調達がなかなか円滑にいかなかったのでございます。このたびの振興基金の制度は、この共同事業用の資金の原資をつくり、この事業の助成をしようとするものでございまして、この制度が創設、拡充されると、これら共同事業を円滑に実施することができ得ますようになるものと大きな期待をかけているわけでございます。私ども業界は、この見地から、業界から拠出すべき捐金につきましても、相当額の拠出をする覚悟をきめております。このような事情でございますので、この制度の創設につきまして格段の御高配を賜わりますように念願している次第でございます。この制度の創設にあたりまして、四十七年度の政府からの出資は十億円と承っておりますが、この政府出資は毎年継続実施して、最終的には政府出資額が民間出捐を上回ることができ得ますようになることを御高配を賜わりますように、特にお願い申し上げるわけでございます。また、業界からの出捐金は、政府の出資金と合わせて業界振興の共同事業に充当される性質のものでございますが、業界におきましては、業界の責務を自覚して、非常に苦しい中から出捐するわけでございますので、この業界出捐金につきましては、税法上非課税扱いとしていただくことができ得ましたならば、まことに幸甚であります。かように考えるわけでございまして、特段の御高配をお願い申し上げたいのでございます。  特繊法改正に関する綿スフ織布業界意見は以上のとおりでございますが、私ども小織布業界の切望している諸点を御賢察賜わりまして、われわれ中小織布業者が早く法改正の恩恵を受けることができ得ますように、特繊法改正の早期成立につきまして格段の御高配のほどをお願い申し上げる次第であります。よろしくお願いいたします。
  10. 鴨田宗一

    鴨田委員長 御苦労さんです。  次に、八木参考人にお願いいたします。
  11. 八木弦三

    八木参考人 私、日本毛麻輸出組合の理事をいたしております八木弦三でございます。  諸先生方には、平素繊維輸出につきまして何かと一方ならず御高配、御支援をいただきまして、ありがたく厚く御礼を申し上げる次第でございます。  本日は、自分ども毛麻輸出組合の理事長猪崎久太郎に対しまして出席の御指名があったのでございますが、おりあしく海外に出張中でございますので、私かわりまして陳述さしていただきます。  さて、わが国の毛製品輸出は、一九六八年、昭和四十三年でございますが、その二億一千百万ドルを頂点といたしまして漸減の傾向にあるのでございます。ことに昨七一年度の輸出は、一億四千八百万ドルでありまして、その前年七〇年度の一億九千四百万ドルに比べまして、二割四分の減少でございます。これは主要市場である米国をはじめ、香港、カナダ向けの織物輸出が不振であったことによるものでございます。これらは米国輸入制限措置、毛織物のダンピング調査並びに昨年八月以来の変動為替制、これに引き続いての円の切り上げ、さらに最近におきます円再切り上げの不安に影響されたことが大きな原因となっておりますが、業界といたしましても、輸出品構造の高度化と秩序ある輸出の推進をはかる必要がある次第でございます。このため、目下御審議中の構造改善臨時措置改正につきましては、先刻来参考人の皆さま方からお願いいたしておりますとおり、当組合といたしましても、ぜひよろしくお願いいたしたいと思う次第でございます。  なお、この機会に次の諸点の問題解決につきまして特にお願いいたしたいのでございますが、その第一点と申しますのは、対米毛製品協定の破棄でございます。米国よりの規制要求につきましては、すでに繊維関係の諸団体よりその不当なることを訴えましたし、本委員会においてもしばしばお取り上げくだされておりますが、現在におきましては、昨年十月以降貿管令によるきびしい制限を受けておるわけでございます。特に毛織物につきましては一九六八年をピークといたしまして漸減しております。またその品質におきましても、米国国内産のものとは品質的に異なるものが多いわけでございまして、彼我の間にほとんど競合はございません。米国国内産業に何らの被害を与えてはおりませず、彼らの要求はきわめて不当であることは申し上げるまでもございません。よって、このように不当なる条件のもとで押しつけられました毛織物輸入制限協定を破棄されることを要望いたす次第でございます。  第二点でございますが、米国における毛織物のダンピング問題についてでございます。米国業界は、昨年三月日本製梳毛織物に対しましてダンピングの疑いありとして財務省に申し立て、われわれは米国担当官による調査を受けたわけでありますが、これに対しまして業界はダンピングの事実のないことを明確にした資料を作成しまして反論いたしました次第でございます。しかしながら、不当にも米国財務省関税局は、輸出商品の特殊性とか日本国内における流通経路あるいは商慣習といったものを一切無視いたしまして、一方的判断でダンピングの容疑ありとして、去る五月十二日輸入品に対する関税評価の差しとめ発表をいたしました。この結果、日本側の業界といたしましては、暫定的に米税関に対しましてダンピングマージン二〇%の保証金の預託を余儀なくされておるわけでございます。この決定はまことに不当な判定でございます。かような米側の姿勢はダンピング防止法の本来の趣旨を越えたもので、国内産業保護の強化を一そう強めようというねらいにほかならないと考えられますが、政治的配慮によりまして経済問題を抑圧するという無法な態度といわざるを得ません。今後業界といたしましては、あらゆる機会をとらえましてその不当を訴え続ける所存でございますが、日米繊維取りきめによって最近の水準に押えられ、かつまたダンピングという不当なる容疑をかけられました当業界の窮状を御認識くださいまして、政府におかれましても何ぶんの御支援を賜わりますようお願い申し上げる次第でございます。  ここで第三点といたしましてのお願いでございますが、これは為替の先物相場対策でございます。これは当業界のみなりませず、特に中小企業の多い繊維及び雑貨の輸出業界の直面する共通なる重要な問題でございます。昨年の変動相場制への移行と円切り上げの際におきまして、輸出業界、特に防衛手段を持っておりません中小商社が致命的な打撃を受けましたことは、すでに各先生方におきましても御高承のとおりと存じます。しかるに、最近わが国保有外貨の蓄積の増加とともに、円再切り上げの不安は強うございまして、輸出の成約に多大な不安と困難をいたしておるわけでございます。これにつきましていろいろこまかくお願いいたしたいこともございますのですが、本日は以下の二点にしぼりましてお願いしたいのでございます。その一つは、為替予約制度のことでございますが、もしも今後円の変動相場制が再実施される事態の場合におきましては、即刻中小企業製品にかかる輸出成約の円滑化をはかるための外貨預託制度を再実施していただきまして、この外貨預託制度を裏づけとしての外為銀行による中小企業製品輸出にかかる為替予約制度の実施できますようにお願いいたしたいわけでございます。その二といたしましては、為替変動準備金制度の創設につきましてのお願いでございます。私どもが現在因っておりますのは、取引の成約量が比較的多うございまして、しかもその契約に対する為替予約の不可能なる六カ月をこえ一年未満の中期の為替取引を安定させるような措置をはかつていただきたいのでございますが、政府は四十七年度の税制措置におかれまして、長期外貨建て債権については為替変動準備金制度を新設されましたが、短期外貨建て債権につきましてはかかる措置は認められておりません。御承知のように、昨年の円の変動相場制実施による為替差損につきましては何らの救済、補償措置も講ぜられておりません点にかんがみまして、特に中小輸出業者の維持と輸出取引の安定をはかる見地よりされまして、今後起こり得べき中期を含む外貨債権にかかる為替差損に対処せしめるために、前決算年度の輸出取り扱い額に一定比率を乗じたる額の積み立てを認める為替変動準備金制度をぜひ創設をはかっていただきたいとお願いいたしたいのでございます。これは中小輸出業者の念願でありまして、これによってのみ前途にわずかの希望を見出し得るような現状になっておるわけでございます。  なお、この比率でございますが、これは私見を申し述べましてはなはだ恐縮でございますが、私の個人的な考えでございますが、現在のセントラルラインの上下幅であります。四・五%がどうかと考える次第でございます。もちろん毎期の洗いがえでございますから、税の一年間の繰り延べということだけでございます。  最後に申し上げとうございますのは、アメリカ市場の環境悪化の現状の中におきまして、ソ達向け毛糸の輸出が伸長いたしております。わが国一次毛製品輸出に占めますソ達向け毛糸は、六九年度におきましては一六%、七〇年度二二%、本年一-三月におきましては二四%増加し、現在のところ最大の市場となっておりますが、今後の商談の成否いかんによりましては、わが国羊毛産業に重大の影響を及ぼすわけでございます。しかしながら御高承のとおり、対ソ貿易が公団貿易であります点から長期一括契約でありまして、また日ソ貿易支払い取りきめによりまして決済がドル建てとなっておりますために、為替相場の変動によってきわめて危険率が高いということから、商談の進行を妨げておるのが最近の実情でございます。つきましては、円建て契約でもって円滑なる取引の推進がはかれますようお願いいたしたいのでございます。  まだほかにもいろいろこまかなことをお願いしたいのでございますが、時間もありませんもんですから以上を重点的にお願い申し上げた次第でございます。どうもありがとうございました。
  12. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次に、浅野参考人にお願いします。
  13. 浅野豁

    浅野参考人 私、日本繊維製品輸出組合の理事をいたしております東商株式会社の浅野でございます。国会の諸先生には、近年特にわれわれ業界のために始終御高配をあずかりまして、この席をかりて厚く御礼申し上げます。  参考人として繊維製品輸出組合の業界を代表いたしまして、実情を一言申し上げたいと思います。  われわれの繊維二次製品輸出業界というのはほとんど中小の輸出業者からなっておりまして、われわれの組合のメンバーというものは五百三十九社、資本金一億円以下の企業というものはその中で四百三十四社で八〇・五%を占めております。このように当業者というものは輸出を専業とする多くの中小企業業者から成り立っております典型的な中小企業産業といえると思います。  第二番目に、繊維二次製品の特質について申し上げますと、二次製品というのは御存じのように最終消費者が使用する製品でありまして、非常にその大部分のものはファッショナブルといいますか、非常に流行の変遷の激しいもので、したがって輸出国は米国、ヨーロッパ、カナダ、豪州というふうな先進国に向かって輸出されるものが大部分でございます。近年、流行の変遷が非常に激しくなりまして、ファッショナブルな商品、たとえば昨年非常に花形商品であったというものが全くことしは売れなくて、別の新しい品目に爆発的にその需要が集中してくるという特質を持っております。この上にさらに後進国追い上げというものがありまして、韓国あるいは台湾、香港を中心にして常にわれわれは後進国から追い上げを食っておるのでございます。したがって、常に先進国向けのファッションというものをよく研究して流行を先取りするといいますか、新しい商品を開発して後進国の追随を許さないといいますか、そういう商品をいま申し上げた米国とか先進国に向かって輸出する。またそういう国々が小回りといいますか、うまくいかないような商品を開発して輸出しているという特質を持っております。  三番目に、現在の輸出状況を申し上げますと、二次製品は四十六年には八億五千六百万ドル、金額で輸出をいたしました。これは前年に比べますと約二〇%増でございます。これは昨年ばかりでなくて、年々高級化とあるいは国内のコストの上昇というものからいって輸出の単価が非常に上がっておりまして、金額が二〇%上がったからといって数量は必ずしも二〇%上がっておりませんで、約数%の上昇と予想されます。いま申し上げました総輸出額の八億五千六百万ドルの中で三億八千八百万ドル、四五・二%はアメリカ向けでございます。したがって約半分ぐらいはアメリカに依存していることでございまして、全世界で見ますと、全輸出の七六・二%、すなわち六億五千四百万ドルは化合縫製品でございます。いま問題になっております毛・化合繊の製品は、全世界に向けて七六・二%出しております。  繊維製品は、いま八木参考人からもお話がありましたとおり、大体六カ月先あるいは一年先の契約を現にしているわけでございます。したがって昨年の八月二十八日の変動相場制の移行あるいは十二月十九日の国際通貨調整等を経まして、われわれは既契約について非常な損害を受けましたけれども、長年の海外との関係もありまして、完全に既契約を履行いたしました。したがって政府はその間において、いまお話のありました中小企業産品に対する政府の予約制度というものを実施していただきまして、これが助けになりまして四十六年の実績は、いま申し上げました円の変動相場制とかあるいは円切り上げというものに八億五千六百万ドルは大きく影響しておりません。その間、昨年の暮れの日米の化合繊の政府間取りきめの影響というものは、本年以降にあらわれると思います。  その次に、円変動相場制とか、国際通貨とか、あるいは日米の毛・化合繊の政府間協定影響について申し上げますと、まず通貨ではいまお話のありましたとおり繊維実績は二〇%増加を示したうちで、アメリカに対してもやはり二〇%増加しております。そして昨年の八月のドル・ショック当時、六カ月先物を持っておりましたけれども、これは大体ことしの三月、四月ころまでに輸出されるものを持っておったわけでございますが、これは既契約でありましたから、ばく大な為替差損をこうむりながら船積みいたしましたけれども、本年に入りまして円の変動相場制とか円切り上げ、化合繊の取りきめの実施というものが具体的にあらわれ始めまして、ことしの一-三月の実績を推定しますと、前年に比べて一四・三%増にとどまりまして、特に三月は八・四%というふうに一けたの伸びになりまして、特に米国向けはドル・ショック、円問題、きびしい化合繊の規制というものが加わりまして、前年同期に比べまして、アメリカ向けは一-三月で六・二%減少いたしました。三月には実に一五・五%、大幅に二次製品実績が下がりました。これが現状でございます。  今後の見通しでございますが、これは八月のドル・ショックあるいは二次製品輸出成約、あるいは変動相場制実施による為替の不安定、円の大幅切り上げによる採算というものは極端に悪くなりまして、円切り上げ後の先物相場制が不安定でございますので、どうしても、アメリカ向けの化合繊の取りきめのきびしさも加わりまして、全く停とんしているというのが現状でございますし、あるいは将来の見通しといえると思います。  特に昨年の十二月十八日をもって中小企業産品の為替予約というものが廃止されましたので、これ以降はわれわれ中小企業、中小商社を中心とする採算が非常にがんじがらめの規制が実施されていますので、この影響はこれの輸出面に出てくると考えて、非常に業界の見通しは暗うございます。中でも米国向けは流行を先取りしたりあるいはファッショナブルな商品を増進するとかいうことをやる一方、アウト・オブ・ファッションとかいわゆるもうファッションに乗らないものは全然売れなくなる。あるいは後進国追い上げてきたものに対してはその席を後進国に譲って、われわれは高級品なものあるいはファッションの先取りしたものをやっていきますので、全体においてはいいんですが、アメリカの規制というものは御存じのとおり個別規制になっておりますので、なかなかそういうことがやりにくい現状でございます。ことに一般品目といいまして、アメリカとの間に特定品目のほかに一般的な品目がございますが、これは御存じのようにトリガーという、アメリカがある時点になりますとトリガーが引かれまして、日本はまた自主規制に入らなければならぬ、そういうものが現在で十三品目、もう去年の十月から今日までに発生しております。  そういう実情でございまして、本日実は午後からわれわれの組合、われわれの業界では輸出部会を開いておりますが、この見通しは輸出金額で大体一〇%減少するだろうというふうな策定をする予定でございます。これは数字のことでありますが、米ドルで一〇%輸出減少ということは、業者の手取りは三〇%減ることになります、為替で二割減りますから。そして、円切り上げによる高級化によりまして輸出の単価が相当上がりますので、数量から見ると大体二・三〇%は減っていくという見通しでございます。  その次に各国の輸入制限ですが、御存じのように対米の化合繊規制に関連しまして、ほかの国からはダイバーションをおそれまして輸入制限が活発になり、早くも米国以外の他市場にそれが波及しております。カナダはニット生地、エラスティックウエビングというものに新たな規制をすることになりましたし、豪州もニット生地の規制をわが国に迫っておるような状態で、さらにアメリカはわが国の漁網地についてダンピングの容疑をかけておる。そういったように円切り上げに関連しまして、わが国製品がねらい撃ちされておるというふうな現状で、これは大いに警戒していかなければならぬことだと思っております。  その次は、第三国との競合激化については、御存じのように繊維というのは後進国の最もやりやすい――シャツとかブラウスとかズボンとか、そういうものは非常に手がけやすい商品であります。しかも労働集約商品でありますために、どうしても低賃金を武器とするところの後進国にやられているという現状でございます。そういうことでございまして、日本米国に対するシェアは非常に少なくなってきつつあります。  最後に、われわれの輸出方策につきましてでございますが、このような輸出の現状の中で、さらにわれわれが業界の存立のためにやっていくためには、どうしてもほかの国の追従を許さないようなファッション、高級な品物をつくっていかなければならぬ。その素材となりまするいわゆる紡績、化合繊、そういった生地のメーカーさんのいわゆる生産加工体制の整備確立というものが急務とされておると思います。そして、二次製品はそれらの商品を素材にして各国に輸出しているものでございまするから、そういうもののほかの国に負けないような商品を、技術の高度化あるいは設備の導入、機械設備近代化というふうなことをしていただきませんと、われわれの業界としては先がいよいよむずかしくなるという現状でございます。  たいへん長くなりまして恐縮でございますが、御清聴ありがとうございました。
  14. 鴨田宗一

    鴨田委員長 以上で参考人意見の開陳は終わりました。
  15. 鴨田宗一

    鴨田委員長 質疑の申し出がありますのでこれを許します。加藤清二君。
  16. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 与えられた時間に制限がございまするので、一切の敬語を抜きにしまして、ずばりずばりとお尋ねしたいと存じます。  私、いつも思うことでございますが、日本の物価高ということが政治不信につながって、国民からたいへん非難を受けておりますけれども、その物価高の中にあって、世界じゅうで一番安いものが日本にあるのですね。それは繊維なんです。デパートあたりがメーカーコストの三倍、五倍に売っていてもなお世界一安いということは、いかに日本繊維メーカーが努力していらっしゃるかという何よりもの証左でございまして、私はその点をいつも感謝しているところでございます。しかし、その繊維が永遠でなければならぬ、まあ当然永遠でございます。永遠ではあるけれども、いま非常に難渋してみえる。その難渋しているのを、メーカーの皆さん、関係者だけでなくてわれわれ政治家も一緒に協力してこの難渋を切り抜けなければならぬ、こういう立場から質問してみたいと存じます。  第一番に近藤さん、きょうは縫製のほうの代表でなしに繊産連の副会長としてお尋ねいたします。  つい最近訴状を各社がお出しになったようです。当然のことだと存じます。そのもとは日米協定ですね。この協定のことについて八木さんからは破棄をするようにという御意見がいま開陳されたわけですが、連盟としましては、訴状を実行に移すと同時に、協定を改定する、破棄するという努力も行なってしかるべきだと存じます。なぜかならば、極東三国と比べてみたら、日本協定は内容が非常に過酷である。ことに被害は全然ない、しかも下降の一途をたどっている毛製品のごときは、当初の数字が、日本と極東三国と比べてみると、日本が一・五だの五%ばかり伸びるのに相手国は八〇%くらい伸びているのですね。伸ばしている。もうとんでもない大間違いなんです。したがって、これは改定を進めると同時に破棄、そのことが、やがて、いま最後に浅野さんのおっしゃられました各国に波及するということを避ける原因にもなりまするし、アメリカの意向でありまするところの、LTAの変更期にあたって十ぱ一からげにして全部組み込もうというそういう野望を防ぐ原因にもなると思うのです。これについての御高説を承りたい。
  17. 近藤駒太郎

    近藤参考人 ただいまの加藤先生の御質問にお答え申し上げたいと思います。  最近あらためて連盟が訴訟したごとくに一部新聞紙上に出ておるのでございますが、訴訟の問題に関しましては当初と何ら変わっておりませんので、適格性、すなわち連盟は法人格でございませんので、各社が適格性を持たすために、確認の意味であらためてああいう処置をとったということを御理解をしていただきたいと思うのでございます。  御指摘のとおりに、今回の日米政府間協定は、しばしば私が申し上げておるとおりに、不当にして過酷な条件のもとにこれを結ばれた。しかもわれわれの業界の了解を得ずして政府間が一方的にお取りきめになったということ。この問題に対しましては、われわれはあくまでも廃棄を求めるつもりで、あらゆる手段をもって対抗いたしておるのでございます。しかしながら、いかにわれわれが血の叫びを起こしてやかましく反対を唱えても、わが国とアメリカ政府とが、かりそめにも一たん結ばれたこの協定を一朝一夕には破棄はでき得ないであろう。そこで、少なくともこの内容の改正に対して徹底的に追及する、そこで将来はやはり先生のお尋ねのとおりにこれを完全に廃棄に持っていくということ。なお来年九月に迫っておりますLTAの問題、これとからめて国際協定を再びあらゆる繊維に結ばれるような事態になれば、先ほど私が劈頭にごあいさつで申し上げましたとおりに、発展途上国追い上げ先進国輸入の制限とのために、まさにわれわれの業界の受ける打撃というものははかり知れないものがある、かように考えておる次第でございます。今後とも、業界といたしましてはあらゆる手段をもつて内容の改正をしていただくよう努力をするとともに、近い将来にこれが完全に廃棄に持っていくということに努力をいたしたい、かように考えておりまするので、諸先生方には一段の御支援と御指導を賜わりますようお願いする次第でございます。
  18. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それに引き続きまして、今度は杉村さんにお尋ねしたいのですが、これは日本業者が困っているだけでなしに、このおかげでアメリカの業者が困っているのですね。すなわち、日本から合繊の糸なりウールの生地なりを輸入して、これをアメリカで加工している方々が、品がすれ、値段が上がる等々のことでたいへんお困りになる。そのことはやがてアメリカの国民が困るということになる。得したのはニクソンと一部のメーカーだけである。いま承りますと、その補完材料である糸あるいはウールの生地等々を、協定関係のない国に日米合弁で会社をつくって、そこで製造してアメリカへ入れてくれないかという交渉があると聞いておりますが、こうなれば、そんなに余分な屋上屋を重ねずに、この際協定を改定して、アメリカの補完材料くらいはこの協定からはずすということのほうが双方にとって利益ではないかと思うのですが、いかがでございますか。   〔委員長退席、小宮山委員長代理着席〕
  19. 杉村正一郎

    杉村参考人 ただいまのお話、まことにごもっともで、事の起こりが、私たちから見ますと、ほんとうに経済的な目で見て、アメリカの繊維業界がどう困って、だから日本輸出を押えてくれというような合理的な経済的なことてはなくて出てきた。それで政治的ないろんなからみ合いがありましてあんなことになってしまったということだろうと私たちは理解しておるわけです。したがって、いま先生が御指摘になりましたように、向こうの実際の事業をしている人から見ますと、あの協定でかえってアメリカの業者としても困る、いろいろな抜け道を考えなければならぬということになるのだろうと思います。  ところで、先ほど近藤さんからお話がありましたように、われわれとしては基本的にはああいう協定は破棄したい、しかしそれはいろいろむずかしければ、少なくともそれが実質的に改定されることを望むわけでございますが、これは業界同士の話し合いでしたらわれわれはすぐにでもやるところでございますけれども、何ぶんにもああいういきさつがありまして政府間同士でやりましたし、ことにアメリカに大統領の選挙を控えているもので、いま協定の改定ということはなかなかむずかしいのではないかと、われわれしろうとですけれども推察するわけでございます。したがいまして、なるべく早い実現の可能性のある時期を目ざしまして、下工作も業界としてすべきことはいたしますけれども、なるべく早い時期に政府がアメリカの政府と話をして、あれの抜け道なり改定なり、あるいは基本的にはやめるというようなことでやっていただくようにしていただければ何よりだろう、こういうふうに思っておるわけでございます。
  20. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 次に八木さんにお尋ねいたしますが、きのうきょうの新聞によりますと、ウールの関税評価を差しとめたということでございますね。そうすると、その関税の価格が不確定であるとなると、先行きの契約ができるかできないかということが一つ。それから、これを協定の立場から考えてみましても、ウールの場合は指定品目になっている。トリガー方式の仲間じゃないのですね。それを、過去に都合が悪いからというので片っ端からねらい撃ちをされたら、これは協定はなきにひとしいですね。協定そのものをアメリカ自伝からくすしているということになって、こんなばかげた矛盾はあり得ない。これもニクソンさんの選挙資金の金子元である方が訴えてみえるようでございますから、大統領選挙に使われるということはもう明らかなことでございますが、しかしこれは考えるのに、協定を結ばせるためのあと押しになっていた。だから、これはもう効果は、目的は済んだわけなんです。それに過去の、去年、おととしのことで追い打ちをかけてきて、将来の協定の数字までくずすというようなことをするということは、あまりにもモンロー主義が激し過ぎるのではないかと思うのですが、毛麻輸出のほうの八木さん、どうお考えでございますか。
  21. 八木弦三

    八木参考人 ただいま加藤先生の御意見、きわめてごもっともでございます。全くそのとおるでございます。先ほど私どもが陳述させていただきましたように、毛織物輸出といたしましては、過去三年間、申し上げましたように、たいへんな減少を来たしているわけでございます。それを先般の協定によりまして、落ちた数字でもって押えられたわけなのでございますが、それに対しましてなおダンピング云々ということを理由に、いわんや関税評価を差しとめ、二割の予納金を納めよということで、これでは買い手として原価が一体幾らになるのか、コストの計算ができないわけでございますな。ですから、これは商売のしようがないということになるわけでありますし、もちろんバイヤーから見れば当然過ぎるほど当然なことでございます。それで先生御指摘がありましたように、先ほど参考人浅野さんからもお話が出ておりましたが、結局LTAに持っていくいやがらせのようなことから出ているのじゃないかと私考える次第なんでございます。この点、先生の御指摘と私どもは全く同じ感じでおるわけでございます。
  22. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 次に河崎さんにお尋ねしたいと思います。  来年九月にLTAの改定時期が迫っているわけなんです。まあ改定時期というよりは期限切れになるわけです。これについて田中大臣それから福田外務大臣等々に予算委員会で質問しましたところ、事前に破棄を通告すべきあるという私の意見に同意の意思表明をなさっていらっしゃるわけです。これについて直接関係のあります紡績協会としてはどういう態度で臨んでいらっしゃるか。  次に、構革の目的の一つに需給のバランスをはかるということがあったわけなんですね。設備が多過ぎる、過剰生産である、出血コストになる、だから自分の手足である設備もダウンしましょう、これは需給の安定をはかるためであった。ところが、需要輸出面がだんだんと制限される。その上なお発屋途上国の追い上げにあいまして、特に、下級といっては失礼でございますが、四十番手以下の太番手と申しておきましょう、この輸入が十七万俵から二十万俵も入ってくるようになった。安ければいいということなんです。これが中国貿易が開かれますと、よけいこの傾向がふえるではないかと考えられます。そこでアメリカが日本に対して総消費量の二%や三%、それで多過ぎるからけしからぬと言うてきたならば、今度は日本はLTAの場においたって、国際会議場においたって、すでに糸で、あなたがいまおっしゃったように一一%も入っている。しぼりのごときは七〇%以上が朝鮮ものなんです。二%や三%でも制限ということが国際的に通用するならば、日本としてはもはや綿についても制限ということを言ってしかるべきではないか、こう思うのですが、発展途上国追い上げについての対策はどうお考えでございますか。
  23. 河崎邦夫

    河崎参考人 ただいまのLTAの延長問題でございますが、これは何と申しましても、世界貿易の原則は、自由貿易のもとに拡大せられなければならないという大きな原則をわれわれは信じております。その一つの大きな例外的なものになっておるわけでございますから、ぜひともこういった例外的なものは、いわゆるガットの暫定措置という点から見ましても、LTAの再々延長は好ましくないというのがわれわれの原則的な考え方でございます。だがしかし、いま先生の御指摘のありましたように、現在の日本繊維工業といいますか、特に紡績業の立たされておる立場というものは、この原則を徹底しますと、先ほど御指摘のあったような、今度は日本の立場というものが非常にむずかしいことになってきて、後進国のほうからどんどん入ってくるというような事態にもなりかねないことが予想せられます。現に先ほど申しましたように、すでにその徴候すら見えておりますので、このことにつきましては、さらに協会といたしましても、特に中小紡、御指摘のありました後進国から輸入せらることの多い太番手を多く生産しておられます方々の利益を十分考えまして、この点についての協会の態度をいま少しく検討してみたいと考えております。  次の需給バランスの問題でございますが、これはもう御指摘のとおりでございますが、いま申しましたように、どんどん――どんどんというわけでもございませんが、少なくとも発展途上国からの輸入は漸増のきざしがございます。これに対抗する手段といたしましては、やはりどうしても日本の中小紡自体も近代化をいま少しく急いでいただき、能率、生産性向上ということに一そうの御努力を願いたいとわれわれは希望する次第で、今回のこの特繊法延長ということがその意味において大きな意義があることと信じておりまして、ぜひとも資金的にも税制的にも、こういった法律のバックアップのもとに現在の日本繊維工業を早急に近代化して、国際競争力強化ということが現在の日本紡績業の将来に対する姿勢でなければならない、かように考えておる次第でございます。  お答え申し上げました。
  24. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 もう与えられた時間が残り少なくなりましたので、簡潔にいたします。  次に、寺田さんにお尋ねしたいのですが、登録というのと、認定、確認というのと、やみという種類が機の中にあるようでございます。通産省の立場としては、登録だけは認めておるようでございます。しかし同じ本省で大蔵省は、所得税をやみから取っておるのですね。これは地方自治庁になりますと、県や市はこれに対して固定資産税をかけておるのですね。幽霊から税金を取るということが行なわれておるのです。こうなりますと幽霊側では、おれらやみじゃない、認められておるんだ、義務は果たしておるんだと言いたくなるのは、これは無理もないことだと思います。さて、さりとてこの構革を進めるにあたって、これをこのまま放置するというわけにまいりません。処理方法とか処置のいいお知恵があったら、ひとつここでお漏らし願いたいと存じます。  それから、今度は構革の今後の問題ですけれども、新しいビジョンを持ってという意見がたくさん出ました。なるほどそのとおりでございます。省力化するとか、グルーピングするとかで、過去の構革はスケールメリットをあげるというところにウエートがあったようでございます。しかし、もはやそれでは消費者指向型でもなければ付加価値生産型でもないわけなので、今後の構革は少なくとも将来に向かって、ますます後進国追い上げにも負けないような、しかも先進国からあまり注目されない方向、すなわち日本の英知と技術をしぼっての製品に向けていくべきだと存じます。そのための具体的方法は、時間がありませんから申し上げませんが、方向変えすべき時期に来ていると思いますが、これについて杉村さんがそれにお触れになりましたから、あとで杉村さんからどうぞ。
  25. 寺田忠次

    寺田参考人 ただいま御質問ございました登録織機と認定織機、無籍織機、これはほんとうに多種多様でございまして、私ども非常に困っております。そのことにつきまして、これをどうすべきかというようなことにつきましては、いろいろな点から業者の間でも利害得失がそろっておりませんので、私どもといたしましては現在これがどうあるべきかということにつきましては大いに研究いたしまして善処したい、こう考えているわけでございます。一応いまのところはまだ結論が出ておりませんので、ひとつよろしくお願いいたしとうございます。
  26. 杉村正一郎

    杉村参考人 先ほど私が申し上げました中で、新しい構革の方向は新しい発想でやるべきだということを申し上げました。これは口でそう申しましても実際なかなかむずかしい問題がありますので、化繊協会としましてもいろいろ考えておりますけれども、これは素材メーカーだけでなしに、それを加工し製品化される業界あるいはその流通業界のほうがむしろ非常に大きな問題だろうと思います。単にスケールメリットをして、量産することによってコストを下げていく、あるいは設備省力化をはかり、能率をあげることによってコストを下げるということについては、もちろん技術的な面で見れば幾らでもやるべきだと思いますけれども、経済的な面で見たら一体それで売れるのかという問題になってきますし、無限に需要の余地があるというような形でやたらに輸出をしていくということは、はたして日本経済の全体にうまく合っていくだろうか、そういう新しい問題に直面しているわけでございますので、近代化あるいは省力化ということと並んで、採算性の向上あるいは国際分業という新しい立場で、繊維産業の新しい方向を求めていくということにどうしても取り組まなければならぬじゃないか。具体的にはちょっと私ここで申し上げるだけの勉強もできておりませんけれども、そういうことをやらなければならぬという必要は実に痛感しているわけでございます。   〔小宮山委員長代理退席、委員長着席〕
  27. 鴨田宗一

    鴨田委員長 中村君。
  28. 中村重光

    ○中村(重)委員 一時からの本会議関係で、参考人の皆さんには十分お答えをいただくことができないこと、たいへん申しわけなく思っておるわけですが、先ほど来近藤参考人あるいはその他の参考人からもお触れになりましたように、何としても私ども政府間協定を阻止しなければならぬと一緒にがんばってまいりましたが、国会決議というのが歯どめにならなかった、これを無視されてしまったということについては、非常に憤りを持っております。しかしこれで自信を失うことなく、廃棄を目ざしてがんばっていく決意でありますから、お答えがございましたように、どうかひとつ業界もそういうことで努力をしていただきたい。冒頭にひとつ要請をいたしておきたいと思います。  近藤参考人に、繊維達盟の代表者であるわけですから、いろいろな角度からお尋ねしたいのですけれども、申し上げましたように、私、十分で質問を終わらなければなりません。杉村参考人の御意見をちょっとメモいたしていたのですが、輸出について転換期に来ているから、業界としても新しい方向で検討しなければならぬ。そこで輸出秩序というようなものがこれは当然問題になってくるのでしょうし、それから輸出輸出市場の多角化、政府に対するいろいろの要請があったわけですが、業界としていろいろと検討をしておられると思うのですが、この点についての考え方をお聞かせいただきたい。  それから河崎参考人から、二年間の特繊法期間延長するというような問題についてお触れになりましたが、この二年間の期間延長ということですから四十九年の六月ですか、これで廃止になることになってまいります。そうなってまいりますと、この二年間の延長ということで構造改善事業というものがその目的を達成するというふうにお考えになっていらっしゃるのかどうか。この廃止後の業界ビジョンということを伺っておきたいと思うのです。  それから寺田参考人から、二年間の期間延長とあわせて、いろいろ振興基金についてのお話があったわけですが、政府が四十七年度に十億を予定いたしている。ところが私どもがいままで説明を受けている限りでは、四十七年ということよりも、政府出資は十億だ、業界が五億ないし六億、七年間で総額三十八億程度ということのようでありますが、政府の出資を民間の出資を上回るという形までしてもらわなければならぬという期待があったようであります。今日までいろいろ通産省と折衝してこられたと思うのですが、その点に対して、政府出資というものを十億以上を期待をしておられるのかどうか。いままでの経過、話し合いの中でそのような期待をお持ちになっていらっしゃるのかどうかという点であります。  なお、業界が現在の政府間協定あるいは特恵関税というようなことで非常な打撃を受けていらっしゃるわけでありますから、この出捐金体制というものもたいへんであろう。業界として十分その点ができているかどうかという点であります。なおまた、金の量よりもこれをどう運用していくかということが一番大切な点ではなかろうか。政府政府なりの考え方があるようですけれども業界としてはこの点に対してどのようなお考えを持っていらっしゃるのか。  その他まだいろいろお尋ねしたいわけでありますけれども、以上の点につきまして、それぞれひとつお答えを伺ってみたいと思います。
  29. 鴨田宗一

    鴨田委員長 杉村参考人河崎参考人寺田参考人にちょっと申し上げます。ただいまの御質問、ひとつ重点的に御答弁願いたい。  それでは杉村参考人からお願いいたします。
  30. 杉村正一郎

    杉村参考人 先生御指摘のとおり、輸出については秩序ある輸出ということが大切なことは申すまでもございません。その点につきましては、秩序ある輸出ということは当然行なわれるべきことでありますけれども、へたにとられますと、何か規制をやるのだ、規制をする必要があるのだというふうにとられるおそれが多分にありまして、それが非常に私たちとしては心配になるわけでございます。無秩序な輸出が実際行なわれるということはなぜかといいますと、過当な競争がもとになる。過当な競争がもとになるということは、供給が実際の需要をオーバーして行なわれるというところにあるのじゃないか。したがいまして、さまつな規制をやるということではなくて、適正な供給をはかっていくことが基本でないかというふうに考える次第でございます。  われわれ化学繊維業界としましては、特に素材を生産する立場にございますので、そういう意味で、大きな目でどの程度の供給をしていく、どの程度の供給力の増加をはかっていくかということを慎重に考えることが何よりも基本だというふうに考えております。先ほどちょっと申し上げました化繊協会としての地域対策もそこを基本に置きまして、輸出のサイドで非常な競争をしなければならない、秩序を乱さなければならないというようなことの根源を断つような基本的な生産体制をとるのは、まず素材メーカーとしての責任じゃないかというふうに考えておりますので、今後そういうことにできるだけの努力をしたいと考えております。
  31. 中村重光

    ○中村(重)委員 河崎参考人がお立ちいただきました機会にお答え願いたいのは、日米繊維協定に伴って紡績機械の政府買い上げの条件、大手が五年でございますか、中小十年、これで業界は納得したというように伝えられているわけですが、業界としての考え方、それでよろしいのかどうか、それもひとつあわせてお答えいただきたいと思います。
  32. 河崎邦夫

    河崎参考人 最初の、特繊法二年延長後はどうなるか、どう考えておるかということでございますが、二年延長によりますと、四十七年、四十八年がこの延長期間になりまして、四十九年度からは新しい年度に入るわけでございますが、このことにつきましては、今後政府業界において、繊維工業審議会なるものがございますので、四十九年以後のビジョンについてはこの審議会中心にして検討せられることになっております。もちろん協会といたしましても十分考えておりますが、その一つといたしまして、当然二年間以後の将来においては後進国からの追い上げは相当急迫するものがあるでありましょうし、同時に労働力不足による激しい毎年の賃上げも今後続くだろうと一応予想されますので、この際、これらの基礎条件をもとにした上で国際競争力強化ということになりますと、よほどの近代化を進めなければならぬというふうに考えております。したがいまして、当然スケールといいますか、量よりも質というふうに、特にいわゆる生産性本位になっておりましたものからはさらに質的な付加価値向上といったような考え方あるいは消費者志向型というふうな方面に今後の紡績業界を持っていかなければならぬというふうに考えておりますと同時に、当然後進国との間の国際分業論的な考え方もいたさなければならぬかと思っております。また一面、国際化と申しますか、海外企業進出ということも同時に考えていかなければならぬ。かような問題が当然二年後の繊維工業審議会において討議せられるものと予想いたしております。  それから最後に、いま御質問のございましたいわゆる買い上げに対する歯どめの問題でありますが、これは当時の事情からしまして紡績協会においては全面全者一致でこれに賛成したわけではなしに、当然相当の反対がございました。こういう歯どめをすることがせっかく二年前に設備制限を撤廃せられた業界としては、逆行するのじゃないかというような意味において反対の強い意見がございましたけれども、しかし大勢といたしましては、やはり今度の対米問題による救済措置を受けるためにはこういう条件がついてもやむを得ないであろうというようなことを理解いたしまして、中小紡のためにも、実際救済資金を受けないものが歯どめを受けるわけでございますけれども、これもあえて忍ぶというようなことで一応理解したわけでございます。  以上でございます。
  33. 寺田忠次

    寺田参考人 輸出振興基金でございますが、ことしの分はいろいろお願いしてございますが、明年度以降の分につきましてはお約束も何もしてございません。ただ私どもがこうあっていただきたいという念願を申し上げたわけでございます。どうかひとつよろしくお願いいたしとうございます。業界の振興策は、こういったことによってやる以外ないじゃないかというようなことでございまして、ぜひともお願いいたしたい、こういう結論でございます。どうかひとつよろしくお願いいたします。  出捐の体制は、実はいまの三百七十七億ですか、それの一割、三十七億か三十八億ということになっておりますが、業界といたしましては、それより以上に希望がございまして、早く自分のところへよけいもらいたいというような気持ちがございますので、どうかひとつよろしくお願いいたしとうございます。
  34. 鴨田宗一

    鴨田委員長 武藤君。
  35. 武藤嘉文

    ○武藤委員 私も、せっかくお越しをいただきましたので、多少与党からも御意見を承るのがいいのじゃないかということでございますから、十分ちょうだいいたしましてお聞きしたいと思います。  まず第一に、先ほど来お話を承っておりましても、お話の中になかったのでございますが、例の自主規制なりあるいは政府間協定の場合に、業界から非常に困るというお話の中に、現在構造改善を進めておる、それも非常に支障を来たすじゃないかという御意見が実はあの当時あったことは、私、記憶をいたしております。その意味において自主規制なり政府間協定を実施をしたために、構造改善計画においてどういう具体的な支障を来たしたのであろうか、こういうことをひとつぜひ承らしていただきたいのが第一点でございます。  それから第二点は、先ほど杉村さんは、特に具体的にはまだ考えが固まっていないというお話でございましたが、近藤さんからも河崎さんからも、新しいビジョンづくりをしなければならないというお話がございましたので、もし、近藤さんなり河崎さんで、新しいビジョンづくり、どういう繊維政策をこれから打ち立てていったらいいのか、何かお考え方がございますれば承らしていただきたい。これが第二点。  第三点は振興基金のあり方。いま中村さんからも御指摘がございましたが、ことし政府が十億決定をいたしましたが、来年度も一そうふやしていただきたいという寺田さんの御要望、私はごもっともだと思います。ただ、それでは一体、振興基金をどういう形で運営していくのか。私は、金が必要ならば政府を督励してでもぜひとも大蔵省に予算をつけさせなければいかぬと思っております。しかし、実際振興基金がどういう形で運営され、そしてそれによってどういう効果があらわれてくるのか、これが私はまず第一ではなかろうか。それによって、非常にいまのビジョン関係してまいりますけれども、今後の日本繊維産業をこうもっていく上においては――今度の法律を見ておりましても、振興基金の業務の目的は非常にけっこうなことが書いてあるわけでございます。しかし、それは非常に抽象的な表現でございますから、たとえば新製品あるいは新技術の開発あるいは海外における市場調査、こういうこともたいへんけっこうには書いてあるのですけれども、一体具体的に、それじゃその振興基金で技術屋をどれだけ集めて、皆さんからたとえばいろいろ各社が研究しておられるものをそこへ持ち寄ってでもしていただけるんだろうか、あるいは一体、その市場調査といったって、現在せいぜいジェトロか何かを利用するより政府関係としてはできないのじゃないかと思うのですけれども、この振興基金をつくったら、一体具体的にそれじゃ繊維だけの商品なりあるいは原料糸なりの市場調査ができるんだろうかという点も、われわれは実際問題わからないわけでございます。だから実際、業界として振興基金というものが発足したときにはこういう形でやってもらいたいというような、何かそれに対しても具体的なお話がありますと、われわれそれによって、それならこれは政府が十億ばかりじゃ少ないからもっと出資すべきじゃないかということが判断ができるわけでございます。そういう問題についてもひとつ何か御指摘がいただければたいへんありがたい。  そういういまの、新しいビジョンなり振興基金の問題が、もし、きょう現在の時点でまだ何かなければ、ぜひとも将来においてもこの二つの問題はわれわれ聞かしていただきたい。将来日本繊維産業をよりよくしていきたいということは、加藤さん御指摘いただきましたが、私どもも決してやぶさかではないわけでございますから、そういう意味においても、もしきょうお聞かせいただけなければ、ぜひ将来においてお聞かせをいただきたい。  それから最後、四点目は、寺田さんに特にお願いをいたしておきますが、先ほど御指摘がございましたいわゆるやみ織機の問題でございます。私ども非常に心配しておりますのは、たとえば綿スフはいま非常によく構造改革をお進めいただいておりますが、まだ毛の場合は構造改革が進んでおりません。一体、現在のような毛の業界の状態で構造改善ができるだろうか、私はたいへん心配をいたしております。三対二の比率でいわゆるやみがあるのに、その二を捨てておいて構造改善をやれといったって、これはできるはずはないわけでございまして、われわれは、そういう面で今後の構造改善を進める上においても何らかの形でこれは解決をしなければならない。そして、これはやはり先ほど御指摘いただいたように、役所内部でも、片一方では税金を取る、片一方ではいけないと言うというようなちぐはぐなこともございますし、また実際そのやみ織機の確認という面において登録台帳さえ役所にいままでなかった、こういうようなことも非常にあるわけでございますので、いままでの悪かったことは悪かったとして、これからは、繊維構造改善を思い切って進めていく上においては何らかの処置をとらなければいけない。こういう面で、私は私生児を嫡出子にしてくれとは役所にも言っておりませんし、業界の方にも、私生児を嫡出子にするのはむずかしいぞ、しかし何か庶子ぐらいにはしてやらなければいかぬのじゃないかというような空気でいま話を進めておりますので、できるだけそういう面で御協力をいただきたいということをお願いをいたしまして、最初の三点について、御回答いただける方があればぜひお願い申し上げたいと思います。
  36. 河崎邦夫

    河崎参考人 お答え申し上げます。  一括して私からお答えをするようなことになりますので、はなはだ抽象的になるかと思いますが、要するに、繊維工業の将来のあるべき姿と申しますか、ビジョンづくりということが御質問の要点であったように存じます。先ほど申しましたように、具体的な案といたしましては、今後繊維工業審議会中心となって御討議になると思うのでありますが、要するに、前方にいわゆる先進国の圧迫があり、うしろからは後進国からの追い上げがあるという、この日本繊維工業の立たされておるきわめてむずかしい立場というものをいま一度よく認識いたしまして、この中にあってどうあるべきかというのが問題の中心になろうかと思うのでありますが、すでに労働力の点においても相当高い賃金になっており、特に絶対数においても逐次減りつつある上においては、まず何よりも省力的なことが第一のものにならなければならぬということでございます。と同時に、従来の生産本位でございました、言いかえれば大量生産をもってコストダウンをはかるというような考え方は、この際一そうきびしく検討せられなければならぬ。と同時に、現在欧米において実行せられておりますようなきわめて付加価値の高いもの、これによって将来日本国の豊かなる消費生活を一そう豊かにするというような方向づけが、今後の繊維産業の向かうべき方向じゃないかと思うのでございますが、これも言うべくしてなかなかむずかしいので、生産のみならず流通経路の徹底的な合理化ということがなければ、業界としての将来の繁栄ということは非常にむずかしかろうと思うので、ただでさえ中小、零細というようなきわめて数の多い日本繊維産業につきましては、この点やはりある程度の集約、グルーピングというようなことが必要になろうかと考えております。  以上、簡単でございますが、基本だけを申し上げておきます。
  37. 武藤嘉文

    ○武藤委員 政府間協定の、構革の影響は何もなかったんですか。
  38. 寺田忠次

    寺田参考人 御指摘のドルショック以降、非常なものでございままして、もう繊維業界はばったり全く火の消えたようになりまして、あのおりに、もうみんな生産意欲も何もなくなってしまったわけでございますが、ようやく現在になりましてやや見直したというのが現状でございます。  それからやみ織機の問題でございますが、これは非常にむずかしい問題でございまして、御指摘のようにもうほんとうにむずかしい。しかもこれが重要な問題でございまして、これを今後どうあるべきか、このやり方によりましては、私ども業界の組織があるいは崩壊するというようなことまで考えられるわけでございまして、かりにやるとしても、全く正直者がばかをみるということのないようにしなければなりませんし、また私どもといたしましては、業界を崩壊させないというようなことで何らかの方策をお役所のほうにも立てていただき、また先生方にもそういったようなことで方策を立てていただいて、そうしてぐあいのいい、私ども業界発展させるための施策をお立ていただきたい、こう思うわけでございます。どうかひとつ……。
  39. 鴨田宗一

    鴨田委員長 樋上君。
  40. 樋上新一

    ○樋上委員 時間の関係上、簡単に二つの問題を参考人からお聞きしたいのですが、河崎参考人寺田参考人、お二人適当に御答弁願いたい、こう思います。  紡績業界並びに織布業構造改善は、昭和四十二年度から昭和四十六年度までの五カ年計画で、過剰設備の処理、設備近代化企業規模適正化を三つの柱として行なってまいりましたが、最初に紡績業界におきましての設備近代化についてお伺いいたしたいと思うのです。  設備近代化進捗状況企業別に見てみますと、大手紡の七八・五%の達成に比較して、中小紡の達成率は五六%であり、目標の半分しか達成できておらず、この辺の理由はどうなっておるのかということを最初にお伺いいたしまして、続けてまたもう一つお伺いするのですが、また、設備的に見てみますと、ラージパッケージ方式の八五・三%、それからAD・AW方式の七二・五%に比較して、自動連続方式の四五%と、目標の半分も達成することができませんでしたが、この理由は一体どうなっておるのか、これの御説明をお願いいたしたい。  さらに続けてもう一つ、品種別に見てみますと、量産品種は目標の七四・六%の達成率と比較して、非量産の品種の六一・五%の達成率ですが、この辺はいかにお考えであるのか、まずこのところまでお伺いしたいと思います。
  41. 河崎邦夫

    河崎参考人 まず第一点の、中小紡において近代化目標があまりに進んでおらないという御質問でございますが、この点につきましてはやはり従来の近代化の、ただ単に設備をかえるというようなことでは、なかなか将来に備えての近代化ということが困難でございますので、非常に技術を要するという点が問題でございまして、そう申しますと非常に申しにくいのでございますが、まだ中小紡のほうにおいてはこれ以上の近代化をはかる点において技術的にきわめて困難な点が非常に多いので、かような点が大きな理由であろうかとわれわれは想像しております。中小紡のほうにおいて、特に量産でなしに非常に小回りのきくといいますか、多品種小ロットのものをおやりなにっておる特色のある工場はそれなりにまだ十分存在価値がありますので、そういうところはあまり近代化ということに積極的でないようにもお見受けする次第でございますが、それはそれなりにまた意義があろうかと私たちは思うのでございます。  それから二番目の自動連続方式――ラージパッケージのほうが比較的進みながら自動連続方式が進んでおらないという点については、これはわれわれのほうにも経験がございますが、御承知のように、自動連続方式というものは非常にマスプロにつながるもので、従来の生産本位の考え方によるコストダウンというものには大きな貢献をいたしておりますが、今後一品種で多量ということが非常にむずかしくなってきておりますので、したがって、自動連続方式という方式も、ある一定の限度で、それ以上のことはむずかしかろうと思うのでございます。したがいまして、やはり個々的なラージパッケージによる近代化というほうにわれわれ――私自身の会社のことを申しましてもはなはだ恐縮でございますが、われわれもその方式に現在切りかえております。いわゆる多品種小ロットに向く近代化という面に方向づけなければならないと考えております。  三番目の量産の問題でございますが、これもいまのように、将来はマスプロというような品種が非常に少なくなって、まあきまった品種は多少はございますけれども、原則的に、従来のようなものよりも繰り返し申しますような非常にバラエティーに富んだものになってまいりますので、その点むしろ需要のほうは現在われわれが生産いたしたいというものと逆行するような形になっておりますので、この食い違いをどうして埋めるかが今後の近代化の問題の中心になろうかと思っております。
  42. 樋上新一

    ○樋上委員 大体わかるのですが、次に、織布業について御説明願いたいのですが、この設備ビルド進捗状況の達成率はともかくとして、過剰設備の処理の進捗状況は二一・五%と全く悪い達成率ですが、この理由はどうお考えでしょうかということを一つ。  それからまた企業の集約化、いわゆるグルーピングによる効率的な生産体制を確立することを目標にして、一競争単位当たり織機台数が五十六台の目標に対して、現在三十八台の規模にとどまっており、集約化の質を見ても不十分であると思うのですが、この点はどうでしょうか。
  43. 寺田忠次

    寺田参考人 私どもの織布業界構造改善事業が比較的進まないということにつきまして申し上げますと、御承知のように、ここ数年来国内的にもまた国際的にも非常に経済的に不安定でございまして、見込みがつきにくかったということが一つの原因でございます。  第二番目には、需要動向の見通しがきわめてむずかしくありまして、機種の選定がなかなか困難であったということが第二。  三番目は、革新織機は汎用性が比較的乏しいのでございます。そうしてしかも値段が高いということ。  それから第四番目は、構革で国の御援助をいただいておりますけれども、その他にも建物であるとか、そのほかに設備をするためにばく大な経費を要します。で、構革より以上の経費が、要するに機械の革新により以上の経費が要るというようなことでございまして、私どもでなかなかその調達が困難であるというような、大体四つの系統のことが考えられる、こう考えます。  それから、いまの構造改善の実施によります廃棄でございますが、これは構造改善は大体いま非常に廃棄は少ないというようなことに言われましたが、実際は規定どおりの廃棄をいたしておるわけでございまして、構造改善がこれだけおくれていますということが大きな原医でございます。  それから、企業を集約いたしまして合併するというようなことにつきましても、そういったことを大いに推奨はしているわけでございますが、いろんな関係で、あるいは人間関係であるとかいうようなことでなかなか進まないので遺憾に考えているわけでございます。  以上でございます。
  44. 樋上新一

    ○樋上委員 次に労働力の確保についてお伺いするのですが、労働集約的で、若干女子労働力の依存度の高いこの繊維産業において、今後一そう労働力の確保が深刻化すると思いますが、この点はどのようにお考えでしょうかということと、構造改善事業は、これら労働力不足と労賃の上昇に対処して、積極的に省力化を進め、また生産性向上をはかることとしておりますが、設備近代化による高能率設備の導入に伴って、高度な技術、いわゆる技能を備えた労働者の養成と確保が強く要請されているのですが、この点はどのような対策を持っておられるか。特に労働力の確保について配慮し、産地等による共同求人、共同福祉厚生施設、労働環境の改善等についてはどのような対策を講じていらっしゃるのかということを最後にお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  45. 河崎邦夫

    河崎参考人 労働力の確保につきましては、先ほど来申し上げましたように非常に困難を感じておりますが、将来は一そうこれがきびしくなってくるだろうと思っております。したがいまして、現在中学校卒業女子を中核にいたしておりますものが、逐次――現在もすでにそうなっておりますが、高校卒ということに変わってまいりますだけに、従来の繊維工業が持っておりますいわゆる一般厚生施設というものは、まあ何といいますか、いまのことばで申しますとプライバシーというようなことが非常に重点になってまいりますので、たとえば定員十名の部屋は五名にするとかいうような意味で、逐次高年層、年がいっただけに、それだけにその生活環境というものには特殊な配慮をしなければならないというふうに考えております。現在すでに、古い厚生施設等については相当大幅に改善もなされておりますし、特に給食その他においては数年前と格段の相違になっております。それだけにまた、賃上げにおいて食費のほうも徴収することは、相当上がっておることも事実でございます。  同時に、いまの知識集約産業的になってまいりますので、これの教育訓練ということは非常に重要でございますので、すでに十年前から、紡績協会中心に、繊維高校というものを業界中心にいたしまして、高等学校、これに付属するところの一連の通信教育というものも始めておりますが、さらに、こういった教育施設、特にいわゆる定時制の学校への通学の便をはかる。各工場、事業場においてそういった、たとえば女子短大へ通学する便をはかるとかいうような面において、各人の教養のための補助と、あわせて技能的な教育というものについても今後格段の研究もし、同時に男子層の者につきましても、国内留学をするとか、あるいは場合によれば海外留学もさせるとかいうふうなことで、この方面にも、従来に増して一そう重点的に施策を施さなければならぬと考えております。
  46. 鴨田宗一

    鴨田委員長 西田君。  参考人に申し上げますが、一時から本会議ですから……。
  47. 西田八郎

    西田委員 いまの委員長のお話のように一時から本会議がありますので、もうほんとうに時間がありませんから端的にお伺いをいたしたいわけですが、その前に、非常にむずかしい繊維産業の中にあって、それを守り、かつまた日本繊維産業発展のためにいろいろと御努力をしていただいております各参考人、本日、たいへんお忙しいにもかかわらず御出席いただきましたことを感謝申し上げたいと思います。  そこで、杉村さんと河崎さんにお伺いしたいわけですけれども国際競争力強化、あるいはある意味においては国際分業化も必要だ、さらには、これからやはり日本繊維は量産から質の向上、いわゆるファッション化への方向をたどらなければならない、こういうことはもう久しくいわれてきたことでありますけれども、なかなか言うはやすくして実現のむずかしい問題であります。特にこの特繊法が延期されるのは政府案では二年でありまして、四十九年六月三十日をもってこの法律はなくなるということになりますと、四十九年以降、ほんとうに日本繊維産業構造というものをどうするかというのは、きわめてむずかしい問題のように私は考えるわけです。  そこで、日本繊維産業の中枢である化学繊維協会並びに紡績協会として、これからの日本繊維産業が、そうした国際情勢のむずかしい中にあって一体どう伸びていくかということを一応思索しておられると思うのです。その思索しておられる中で、最も必要と思われる、政府に要求されるべき施策は何であるのか、端的にひとつ意思の表明をしていただきたい。これは杉村参考人河崎参考人。  それから寺田参考人にお伺いしたいことは、織布業構造改善が遅々として進みませんでしたが、寺田さんの所属しておられるところは非常に成果をあげておるわけですけれども、今後二年間のこの特繊法延長期間中に、はたして構造改善が可能なのかどうかということが重要な問題の一つだと思うのです。したがって、それが可能かどうか。私はむずかしいと思うのですが、むずかしいとする場合に、一体その溢路は何なのか、そしてそれに対する解決策は何か、この点についてひとつお答えをいただきたい。
  48. 杉村正一郎

    杉村参考人 化学繊維業界としまして今後あるべき姿としてやる――たくさんあるわけでございますが、その中で何が一番重点的であるか、ことに政府に対して何を要望するかということでございますが、非常にむずかしい問題でございますけれども、簡単に申し上げますと、業界のあり方を改めるというのは何といっても業界自身がやらなければならぬことでありまして、政府にああやれこうやれということをワクぎめはしてほしくないと思っております。そうかと申しましても、業界のことにつきましては、外部の条件がいろいろなくてはいけません。ことにいまの時点で問題になりますのは、輸出のやみくもな拡大ということができないとなりますと、やはり国内重点を変えていかなければならぬということになりますが、その意味では、政府でやっておられますいろいろな景気の浮揚策でございますね、いろいろと手を尽くされておられるようでございますけれども、あれが強力に効果的に行なわれる。その進行に伴って業界が自主的に体質を改善していくことが可能になりますので、それをぜひやっていただきたい、これがさしあたりの問題としましては一番の問題ではないかと思うわけでございます。  そのほかにもいろいろございますけれども、時間もございませんので一番重点のことをということでございますので、重点のことだけ一つ申し上げました。
  49. 河崎邦夫

    河崎参考人 私もただ一点だけ申し上げます。あくまでも、将来の繊維産業を考える上において問題は需給のバランスだと思います。したがいまして、この需給のバランスは、外部から強制せらるべきでなくて、むしろ業界自身が考えるべきだというふうに考えますので、二年前にきめられましたような設備制限の撤廃ということは、これはあくまでも筋を通して将来も堅持せられなければならないし、同時に、業界としては、この線に沿って乱立ということのない、あるいは過当競争のないように、業界自身として自粛しなければならぬ。もちろん、この間においては、独禁法との問題がございますから、そういう点も十分配慮しつつ、需給のバランスを常に保っていくということが、今後の繊維業界のあり方であろうと思っております。  以上でございます。
  50. 寺田忠次

    寺田参考人 ただいま御指摘いただきました、これからあと二カ年間、構造改善がよくできていくかどうかということでございます。実に、それも何といいますか世の中の動向がはっきりいたしませんので非常にむずかしいではないか、こう考えます。それともう一つは、先ほども申し上げましたが、構革でお借りする以外に、非常に非常にばく大な経費を要する、建設費を要するということがもう一つ入っております。それから、生産能率をあげるだけの、要するに織機で申し上げますとスーパーローダーであるとかそういうものだけを入れて、量産ができていいというわけでもございませんし、これからほんとうにあらゆる面におきまして構革をやっていかなければなりませんので、そういったことを考えていきますと非常にむずかしい、こう考えます。
  51. 西田八郎

    西田委員 もう一問だけ、それじゃいま河崎さんから需給のバランスというのと、それから杉村さんから景気の浮揚策というものが出されてきたわけですが、当然そこで、先ほども質問に出ておったように流通の近代化ということが出てくると思うのですが、その流通の近代化、それぞれに化繊業界並びに合繊業界で何とか近代化しようというふうに努力をしておられるようですけれども、なかなか思うようにいかない。それがため繊維付加価値というものも他の企業に比べて少ないといわれておるわけですが、この流通の近代化というものについてどういうふうにお考えになっておるか。これは両参考人からお答えをいただきたいと思います。
  52. 河崎邦夫

    河崎参考人 流通の問題は私たちが常に頭を悩ましておる問額でございますが、何ぶん紡績協会は製造業者の協会でございまして、外部団体のことになるわけなんで、なかなか歩調が合いかねませんが、十分繊維をお取り扱いの流通段階の組合とかあるいは協会とかいうものに接触いたしまして、あるいは百貨店とか小売店とかいうようなできるだけこのパイプを、産業として歴史が古いだけに非常に複雑になっておることは事実なんで、これは簡素化したものにしていきたいということは商業ルートの方も同一の御意見なので、この点について今後努力いたしていきたいと思っております。
  53. 杉村正一郎

    杉村参考人 ただいま河崎さんからお話がございましたとおりでございますけれども、私見を申し上げますと、従来は、ことに合繊業界のところでは、どういう技術を持ってどういう規模設備を持つかということが業界の、企業の運命を決する最大の要素だったと思いますけれども、今後はそういうことよりか、むしろどういう加工業者、どういう流通体制をとるかということがその企業の死命を制するのではないだろうか。そういう意味で、これは素材メーカーであります化繊メーカーだけがなし得ることではありませんけれども、商社なり紡績なりあるいは加工業界のこれはと思う企業と手を結んで、どうやっていくか、これにいま各社とも非常に真剣に取り組んでおるところだと思います。したがいまして、一率に画一的にこういう形になるということはむずかしいと思いますけれども、各社それぞれの体質に応じまして、そういう方向に急速に進むのではないか、また当然そうあるべきではないかというふうに思うわけでございます。
  54. 西田八郎

    西田委員 そこで近藤さんにお伺いしたいのですが、業界自身の流通革命というものが実施されてくると、いわゆる輸縫連等の影響がきわめて大きくなってくると思うのです。その場合に、繊維産業連盟としての近藤さんの立場で、一体そういうものが繊維産業全体に受け入れられる体質となり得るかどうか、そういう点についてひとつ御意見を承りたいと思うのです。
  55. 近藤駒太郎

    近藤参考人 たいへん的を得ました質問で私非常に返答に困るのですが、御指摘のとおりに、先ほど両参考人からお話がありましたとおりに、口では言いやすいのですが、伝統ある古い歴史を一挙にくつがえして、直ちに流通革命を起こすということは、事実は非常にむずかしいということであります。しかしながら現状から見ると、先ほど来より各参考人から申し上げておりますとおりに、このまま繊維産業をおいておくと、これは自然消滅することは必然ですね。そこで業者が目ざめて、業者が立ち上がる力でもって構造改善を起こし、かつまた流通革命も起こしていかなければなりません。そこで繊維産業連盟に加盟いたしております各繊維産業別の組合においては利害が一致したようで、一致していない。特に大企業中小零細企業との利害得失、あるいは商社との利害得失等もありますけれども、ここで大局的見地からお互いが互譲の精神でもって話し合いを進めて、一日も早く構造改善を起こし、かつまた流通革命を起こしていくということに努力するということで、近々われわれも話し合いを進めていきたい、かように考えております。
  56. 西田八郎

    西田委員 各業界のトップの方々の貴重な意見を承りました。時間のなかったことは非常に残念なんですけれども、ひとつ今後日本繊維産業、前門のトラ後門のオオカミをそれぞれ控えまして非常にむずかしい時期に来ておりますし、また国内的にも非常なむずかしい状態にあると思うのですけれども、どうかそれらの問題を超越して、各業界協力をされて、さらに発展のために寄与されんことを最後にお願いいたしまして終わりたいと思います。
  57. 鴨田宗一

    鴨田委員長 参考人各位には、長時間にわたりまして、しかも貴重なる時間をおさきくだされまして御意見を賜わりましたことを、委員会を代表いたしまして心から感謝を申し上げます。ほんとうにありがといございました。(拍手)  午後三時開会することにいたしまして、暫時休憩をいたします。    午後零時五十六分休憩      ――――◇―――――    午後三時三十九分開議
  58. 橋口隆

    ○橋口委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  政府に対する質疑を行ないます。質疑の申し出がありますので、これを許します。田中武夫君。
  59. 田中武夫

    田中(武)委員 特繊法改正法案について質問をいたしますが、その前に、特繊法関係も深いのでお伺いいたしたいと思いますが、実はここに五月十二日の日経の記事を持っております。見出しだけ読みますと、「政府の手で輸出を規制へ、新立法か輸取法改正」、こういう意味のことなんです。  そこでお伺いいたしますが、政府の手で輸出を制限するというお考えはあるんですか、いかがですか。
  60. 田中角榮

    田中国務大臣 現在のところ、現行法以外に特別考えてはおりません。
  61. 田中武夫

    田中(武)委員 この記事に出ておる新立法か輸取法を改正するということについては、いま通産省ないしは通産大臣は構想も持っておられないのですか。いかがでしょうか。
  62. 田中角榮

    田中国務大臣 それはどういう状態においてその記事が出ましたかということを申し上げますと、通産省と大蔵省との間に外貨の活用の問題について話し合いを続けておったわけであります。特に第二外為をつくるか、また現行外為法を改正して外為会計から外貨を直接貸せることができるようにするのか、それから特別立法を行なって何らかの処置をするのかというような問題について話し合いを続けておったわけであります。それで、私と大蔵大臣との話し合いの結果、いずれにしても具体的に外貨活用の道を開こうということになっておるわけでございます。そのときに、大蔵省側としては、外貨活用だけではなく、外貨活用を行ない、また低金利の推進ということを私が強く主張いたしておりましたので、そういうものとあわせて秩序ある輸出体制の確立、いわゆるオーダリーマーケティングという面から、何らかの輸出の調整が望ましい、こういうことでございます。その前提としての具体的な問題として、御承知のとおり輸出税とか輸出課徴金という問題が出ておるわけでありますが、私はそういうものには反対である、こういうことを明確にいたしましたが、何らか通産省が輸出秩序を確立する具体策を立てられることが望ましいという応酬があったわけであります。そういうものの片りんが漏れて輸出規制立法かというふうになったんだと思いますが、現実的にそのようなことをいま立案もしておりません。
  63. 田中武夫

    田中(武)委員 あとで加藤委員が引き続き触れると思いますので、あえて繊維の日米協定についてはいまのところ触れる気はございません。  しかし、これはさておきまして、輸出の秩序といいますかあるいは調整ということは、原則として貿易は、輸出は自由である。そしてこれを制限するのに二つの方法をもってしております。一つは輸取法によるところの輸出カルテルであります。これはあくまで業界の自主調整であります。ところが新聞記事によりますと、念のために伺っておくのですが、このカルテルを結ぶように政府すなわち通産大臣が介入をする、勧告をする、そういうようになっておるのです。もしこれに応じないときには一方的な政府の規制を行なう、こういうことですが、一つはいま言ったように輸出入取引法、輸取法による自主規制であります。これはあくまでいわゆる業界のカルテル行為である。もう一つは、外為法を受けた貿管令、これによって行ないますが、これは何回も議論しているように、緊急やむを得ない場合、そうして外為法及び貿管令が定めておるところの三条件、これはもう何回も三条件三条件と言っているから重ねて申しませんが、必要なら読み上げてもよろしいですけれども、国民経済あるいは外国貿易それから外貨準備でしたか、この三つの条件をかぶっているはずであります。そのときのみであります。  そこでお伺いいたすのですが、まずカルテル行為、これを政府が勧奨するあるいは勧告をして行なうというのは、はたしてカルテルといえるのか、独禁法上疑問があるのではなかろうかと思いますが、公取委員長、いかがですか。
  64. 谷村裕

    ○谷村政府委員 一般的に申しまして事業者が共同行為をいたしますことをカルテルというふうに呼ぶといたしますれば、それが自発的に行なわれたか、あるいは政府からの勧告あるいは勧奨あるいは指示、そういうことに基づいて行なったかということによって、カルテルということ自体の内容には差がないというふうに思います。法律的には現在、御指摘のように、輸取法に基づくものが自発的にやるたてまえになっており、また他の法律におきましては政府の指示によってカルテルをつくるというのも法制的に例がある、かように私は聞いております。
  65. 田中武夫

    田中(武)委員 私は独禁法の例外規定によるところのものはいま聞いておりません。政府が介入するあるいは勧告をする、そういうものは独禁法上のいわゆる調整行為とはいえないのではないか。かつて、政府が、行政権が介入することによって独禁法がはずされるなんてばかな議論をやった時代があったと思うのです。私の聞いておるのは、除外立法においてつくるところのカルテルをいま聞いておるのじゃない。そういうことは独禁法上問題がある、こう言っておるのですが、いかがですか。一般論で答えてください。
  66. 谷村裕

    ○谷村政府委員 御質問の趣旨を誤解いたしまして失礼いたしました。  根拠になる適用除外法なしに、単に政府側からの勧奨、指示等によって業者が共同行為をいたします場合には、その内容によりましては当然独禁法違反という問題が起こってまいる可能性が出てまいります。
  67. 田中武夫

    田中(武)委員 答弁をもっと明確に……。その内容によってはとか可能性があるのじゃないかとか――どんぴしゃり、違反です。でないとおっしゃるのならば、独禁法にさかのぼって議論をいたしてもよろしいのです。もら一ぺん答弁やり直してください。
  68. 谷村裕

    ○谷村政府委員 内容が、一定の取引市場において競争を制限することになるようなものであればそういうことになります。しかしながら、同じ共同行為の内容によってもさようなものがない場合にはその問題にはならない、こういうことでございます。
  69. 田中武夫

    田中(武)委員 これはカルテルということばは使っていないのですが、調整行為ですね。調整行為といえば自主的にやるものなんです。そうでなくて、特別の立法なくしてやる場合は、政府が、あるいは行政庁が介入する場合は、これは独禁法上のカルテルではない、これははっきりしておく必要があると思うのです。もう一ぺん確認します。
  70. 谷村裕

    ○谷村政府委員 カルテルという意味をお説のとおり競争を制限するような意味でのカルテルということであれば、まさにお説のとおりでございます。
  71. 田中武夫

    田中(武)委員 カルテル論争についてはいろいろあるのです。たとえば中小企業の行なうのもカルテルといえるかどうかという議論まであるわけんなです。そういうことをいま言ってないのです。厳格な意味でのカルテルの行為です。まあこれでけっこうです。  通産大臣、お聞きのとおり。いや、これは新聞の予測記事だからおれはそんなことは考えていないといえばそれまでなんだが、輸出の秩序をはかるために通産大臣あるいは政府がこれに勧告をするあるいは介入をする、これは独禁法違反でありますので、十分御承知おきを願いたいと思います。いかがですか。
  72. 田中角榮

    田中国務大臣 輸出秩序の確立ということは必要なことでございます。そういう意味で、輸出秩序を確立するために業界に勧告等を行なうことがあるわけであります。これは通商産業省設置法に基づく大臣勧告ということでございますが、いまあなたが述べられたような厳密な立場からの御議論もございますので、輸出秩序確立のために勧告というものを明確に法制上しなければならないとしたならば立法措置も考えようということが、大蔵省側との間に話をしたときに出たわけでございます。しかし、そこまで考えなければならぬのかどうか慎重に検討をいたしておるわけでございまして、いますぐ立法するというようなことは作業いたしておりませんということを申し述べたわけでございます。
  73. 田中武夫

    田中(武)委員 もう一つの方法は、これはもう繊維協定によって何回か議論しましたから深くは申しません。これは貿管令によるところの制限、しかし、繊維協定に関連して私何回か申し上げたように、あくまでもまず外為法の二条の再検討条項があるということ。さらに一条の目的で三条件があるということ。この三条件を貿管令では受けておるということ。したがって、きわめて限られた条件のもとに緊急かつやむを得ない場合のみに貿管令が働く、そう考えるべきである。その考え方について確認をしておきますが、いかがですか。
  74. 田中角榮

    田中国務大臣 各国間においても無差別、自由が原則である、これはもう当然のことでございます。が、しかし、二国間、多数国間において新しいいろいろな問題が起こってまいりましたときには、それよりも大きな両国間の友好の維持とか、また長期にわたる貿易を続けるという立場で、お互いが協定をしたり、輸出秩序を確立するためにいろいろな措置を行なうように、国内においても原則は無差別、自由でなければなりませんが、しかし、法律にも規定いたしておりますように、国際収支上のいろいろな問題が起こったときには調整という意味で制限をしたり、望ましいことではないが、必要やむを得ざる措置としての行為ができ得る、こういうのが法律の定めだと思います。
  75. 田中武夫

    田中(武)委員 あなたはへたなことばじりをとらえられて、日米繊維協定でまた蒸し返されないかという心配を持って予防線を張られておるようですが、私はきょうはそれをやらないと言っておるのです。だから原則論なんです。少なくとも外為法の一条ではまず「外国貿易の正常な発展」ということが一つの条件、次に「国際収支の均衡」ということなんです。そして、これは昭和二十四年の法律ではあるけれども、「国民経済の復興と発展」というこの三条件、このもとにのみ、きわめて限られた範囲において行なわれる。しかも前にも申しましたが、これは二十四年の、日本としては貿易の拡大等々のいままで終戦によって途絶せられた貿易を興していくという時期なので例外的なこういう法律を設けた。この法律は緊急な法律である。したがって、第二条で再検討条項というのがありまして、逐次縮小していくように運営する、あるいは検討していくということがうたわれておる。この精神の上に立って考えるべきであって、今日、この法律ができた当時とは全く日本の経済状態その他が変わっておる。その上に立ってなおかつこれを振り回すということは時代錯誤である。したがって、限られた範囲内においてのみ動く法律であり、それを受けての貿管令であることをひとつ十分にかみしめておいていただきたい、いかがですか。
  76. 田中角榮

    田中国務大臣 あなたの申されることはよく理解いたします。理解いたしますが、第六章の「外国貿易」というものにも四十七条、八条、九条で明確な原則をうたっておるわけでございます。これは一条、二条とも同じ法律効果を要求するものでございます。第四十七条(輸出の原則) 「貨物の輸出は、この法律の目的に合致する限り、最少限度の制限の下に、許容されるものとする。」、第四十八条(輸出の承認) 「特定の種類の若しくは特定の地域を仕向地とする貨物を輸出しようとする者又は特定の取引若しくは支払の方法により貨物を輸出しようとする者は、政令で定めるところにより、通商産業大臣の承認を受ける義務を課せられることがある。」、こういう原則論はお互い議論しなくてもよくわかることでございますが、望ましい貿易ということの状態を維持し、確保するためにはある程度の制限はやむを得ないのだという規定が存在する。こういう意味で外国為替及び外国貿易管理法なるものの運用にあたっては、各条文を注意しながら正常な貿易の発展に資するような状態で運用さるべきであることはもちろんでございます。
  77. 田中武夫

    田中(武)委員 四十八条二項を持ってくるならなお明確なんです。一条の文言と四十八条の二項を読んだときにはもっとしぼられておるのです。比べてごらんなさい。しかも法全体を解釈、運営するのはこの法律の目的は何なのか、それを流れる精神は何なのかということに立脚すべきだと思います。いまさら田中大臣をつかまえて法律のいろはを申し上げるつもりはございません。これはこの程度でおきましょう。こういう確認の上に立って、あとは日米繊維協定では加藤委員がおやりになると思います。私がこれをやり出すとあなたはまたあとで繊維協定の問題が出てくると思って、あらかじめそういうことの予防線を張りながらやっておられる。したがって原則的な問題、態度を確認することで、私はきょうはこの程度にしておきます。  次に、この法案改正点についてお伺いいたします。  この改正点の一つは、四十二条の二で、二十四条二項を受けて、繊維工業構造改善事業協会に対して振興基金に政府が出資する。そういうのが改正の要点の一つです。そこでまずひとつお伺いいたしまのが、構造改善協会と略して申しましょう。この構造改善協会の性格は何ですか。
  78. 佐々木敏

    ○佐々木(敏)政府委員 この事業協会の性格はいわゆる広義の特殊法人でありますけれども。狭義の特殊法人ではなくて、特別の法律に基づいて設立されましたいわゆる特別法人もしくは認可法人と称せられるものに入るかと存じます。
  79. 田中武夫

    田中(武)委員 おかしな答弁を聞いたのですが、特殊法人にいままで広義とか狭義とかいうことを使い分けたことがありますか。ならば広義の特殊法人の定義、狭義の特殊法人の定義をお伺いいたします。
  80. 佐々木敏

    ○佐々木(敏)政府委員 広義の特殊法人は特に国の意思が強く反映いたしまして、国の政策目的を反映して法律に基づいて設立されました法人でありまして、一般の民法法人、商法法人とは違うということであろうかと思います。しかし、そのうちで、国が法律によって直接設立するあるいは行政管理庁の審査権があるというものをいわゆる狭義の特殊法人と考えておる次第であります。
  81. 田中武夫

    田中(武)委員 特殊法人とは特別な法律によってつくられた法人である。これが特殊法人なんです。そして政府の政策遂行の機関として――特殊法は人みんなそうですよ。そうでないものをかってに法律でつくるということはないわけですよ。大なり小なりみんなそうなんです。法制局来ておりまのか。特殊法人に狭義とか広義とかいうよな分類がございますか。あったらひとつ明確に示してください。――法制局来ていない。よろしい。いや、私は何も法制局を要求していないのです。  それでは繊維局長、いまの定義をもっと明確にしてください。そんなことは法律上通りませんよ。この構造改善協会はあくまで財団法人です。認可法人だとかなんとかいっておりますが、公益法人は民法三十四条によってすべて主務大臣の認可を必要とするのです。その点だれだって一緒ですよ。だから、この構造改善協会は正確に何かといえば、民法三十四条によってつくられた財団法人、いわゆる営利を目的としないところの俗にいう公益法人ですよ。ただ、法律によって若干のあれがあるというだけであって、特殊法人ではございません。あくまで民間法人です。民法三十四条によるところの公益法人であり、その性格は財団法人である。間違っておれば反論をしてください。
  82. 佐々木敏

    ○佐々木(敏)政府委員 申し上げるまでもなく、この協会はこの特繊法に基づきまして設立されております法人でありまして、一般の民法法人とはさらに一段と公益性の高い法人として特別法に基づいて設立された法人でございます。
  83. 田中武夫

    田中(武)委員 そうですか。これを特殊法人といえますか。特別な法律によって設立せられるものが特殊法人である。これはあくまで民法法人ですよ。では、この正確な名前を言ってください。ならば、この法人の登記謄本を見せてください。要求します。
  84. 佐々木敏

    ○佐々木(敏)政府委員 正確な名前はこの法律に基づいて、繊維工業構造改善事業協会であります。
  85. 田中武夫

    田中(武)委員 それで、財団法人的性格があるのですね。登記謄本取び定款を要求します。それによってひとつ法人を論議したいと思います。これは寄付行為によってなされているのと違うのですか。定款及び登記謄本を要求します。いかがです。出なければ法人格についての論議はできません。これは財団法人ですよ。社団法人ではない。いわんやいわゆる特殊法人ではない。
  86. 佐々木敏

    ○佐々木(敏)政府委員 先生のおっしゃいますように、財団法人的な法人でございますけれども、特別法に基づいて設立されておりまして、いわゆる民法法人ではございません。
  87. 田中武夫

    田中(武)委員 ほかにこういうのは例としてどういうのがありますか。
  88. 佐々木敏

    ○佐々木(敏)政府委員 ただいま手元にございます例といたしましては、農業共済基金、情報処理
  89. 田中武夫

    田中(武)委員 それは特殊法人です。法人を設立することをもって目的とする法律によってつくられたものです。  では会計検査院、この協会に対する検査権はありますか。いかがです。これは補助金があるから、出資しておるから、できますね。いかがですか。
  90. 田中稔

    田中会計検査院説明員 出資金がございますので、検査権がございます。
  91. 田中武夫

    田中(武)委員 いわゆる百十八法人といわれている特殊法人の中に入りませんね。これはあくまで民間法人ですよ。違いますか。
  92. 佐々木敏

    ○佐々木(敏)政府委員 行政管理庁設置法二条の四の二に基づきます行管に審査権のある特殊法人ではございません。
  93. 田中武夫

    田中(武)委員 そうでしょう。いわゆる特殊法人ではない。そこでこのような性格の法人に対していままで政府が、補助金はともかくとして、出資金を出した、出資をした例はございますか。あったら言ってください。
  94. 佐々木敏

    ○佐々木(敏)政府委員 ただいま申し上げました農業共済基金、情報処理振興事業協会等につきまして幾つかの例がございます。
  95. 田中武夫

    田中(武)委員 それは出資ですか。
  96. 佐々木敏

    ○佐々木(敏)政府委員 政府出資でございます。
  97. 田中武夫

    田中(武)委員 万博協会とおっしゃったね、それから一方は基金とおっしゃったね。これはいわゆる特殊法人でしょう。違いますか。これと同じような民間的性格を持つものじゃないでしょう、違うでしょう。
  98. 佐々木敏

    ○佐々木(敏)政府委員 ただいま申し上げました幾つかの協会につきましては、この事業協会と同じように、行政管理庁の審査権のない、しかし公共性が強くて特別な法律に基づいて設置されておる同種の法人でございます。政府出資はいずれもございます。
  99. 田中武夫

    田中(武)委員 少なくともこの法律ができた当時においては、こういうのに出した例はなかったのですよ。そこで、それでは、要求します。いま言われた三つの法人の定款、あるいは財団法人であるならば寄付行為、それから登記謄本、この三つを検討いたしまして、私の主張が間違っておるかどうか、それが明確に済むまでは私の質問は保留いたします。いかがでしょう。
  100. 佐々木敏

    ○佐々木(敏)政府委員 さっそく調べまして先生に御説明申し上げます。
  101. 田中武夫

    田中(武)委員 説明じゃなくて、この公開の場で議論したいと思うのです。だから、あなたが答弁に使った三つの法人の法律的根拠並びに社団的なものであれば定款、財団的なものであるならば寄付行為、これが基礎ですから、それを出してもらう。そうして民法法人でないという証明には、やはり登記簿謄本を見て調べなければわかりません。それをもらった上でなお検討して次の機会に質問をいたします。それまでは委員長理事諸君この質問を保留いたしますがよろしいか。採決させませんよ、それがはっきりするまでは。
  102. 橋口隆

    ○橋口委員長代理 田中君にお答えいたします。  ただいま御要求の定款はできるだけきょうじゅうにお届けしまして、登記簿の謄本は、これはもう物理的に間に合いませんから、十九日に提出させるようにいたします。質問をお続けください。
  103. 田中武夫

    田中(武)委員 いや、私の申し上げておるのは、それがはっきりしないと次の質問はできない、したがって私の質問はきょう終わらないということになるのです。その取り扱いを理事会で協議してくれ、こう申し上げておるのですよ。あえて私はきょう採決をさせないという意味ではありません。この問題については、もう二カ月も前に局長にここを質問するぞといって宿題を与えておったはずですよ。だから、必要なものは当然、法人を問題にする以上は、財団的なものであれば寄付行為、社団的なものであるならば定款、これはせいぜい用意しておくべきですよ。さらにまた、自然人に戸籍があるがごとく、法人には登記があるのですよ。先日この委員会で、登記は法人の人格の取得要件かどうかということを言ったけれども、あれはともかくとして、少なくとも第三者対抗要件、すなわち、この法人はこういうものでありますということで、事業を始めるときに外部に対してその法人格を主張できるのは登記によらなくてはならない。当然そんなことは用意すべきなんです。それぐらいのことは、私が質問する以上はどこまで来るくらいのことは予測をつけておきなさいよ、あなた。しかも、狭義、広義だと言うからこうなるのですよ。はっきりぴしゃっと分けて、いわゆる政府機関たる特殊法人なのか、いわゆる民間法人なのかといえば、これは民間法人に間違いないのですよ、違いますか、民間法人ですよ。そうならば民間法人にいままで出資した例がどれほどあるのかということですよ。少なくとも万博その他については――私は農業何とか基金というのはよく知りませんが、万博はそのほうですね。この法律ができたときにはそういう前例はなかったわけです。そのとき、当時の乙竹繊維局長に注文つけました。私が質問するとこの法律成立しない、採決できない、だからわざとここはよけて通ってやるが、あとでうまくやれ、こういう注文をつけたのですよ。ところがそのままにしてほってあるのだ。そうしてなおかつ出資をやろうという。これまでにもう一回やったかどうか。やったこともあるようですが、そのとき私は商工委員会におりませんから知りません。少なくとも出資する以上ははっきりしなければいかぬですよ。大蔵省どうですか。こういうのに出資することについてどのように基本を置くのか、基礎をはっきりしておかないと今後あいまいになりますよ。と同時に、これは当時は大蔵大臣はだれだったか知りませんが、当時は特殊法人はこれ以上にふやさない、そういうことを政府としてあるいは国会として厳格に言っておったときです。したがって本来ならば特殊法人ができない。それで、できないからというのでこういうもぐりにしたわけです。しかしその後当然法律による補強はなすべきなんです。ところがそれをやっていないのです。これで三回目ですか、出資は。第一回目はそういうことで情をもって私はわざとこの質問は避けてやろうということで――何なら聞きなさい。乙竹君は涙を流して私に感謝をしたのです。私の部屋で。それはそれだけの業界の必要もあったからです。私はわざと避けてやった。次に一回やっておるときは、私は不幸にして委員会が違うておりました。今度やるときにまた商工へ戻っておったのですが、その当時のことを考えた場合、当然やるべきことをやってないんだ。そういうことが先例になって次々にこういうことになるならば、財政上のけじめがつかない。大蔵省いかがです。
  104. 徳田博美

    ○徳田説明員 お答えいたします。  特殊法人の定義でございますが、一応政府のいわゆる特殊法人としては、行政管理庁設置法第二条による審査の対象となる「法律により直接に設立される法人又は特別の法律により特別の設立行為をもって設立すべきものとされる法人」、こういうことになっておりまして、先生の御指導のとおり、この法人は特殊法人ではないわけでございます。したがいまして、特殊法人以外の民法法人あるいは私法法人に準ずる一般法人かと考えられます。法律的な解釈は先生のほうが権威でいらっしゃいますが…。それで財政当局の立場から申し上げますと、財政法上の解釈になるわけでございますが、これも先生がよく御存じのことと思いますけれども、財政法には、御承知のとおり出資先については特段の規定がございません。したがいまして、出資につきましては個別の案件に即して妥当性の有無を判断いたしまして、妥当な場合にはこのような法人にも出資することができるたてまえになっております。
  105. 田中武夫

    田中(武)委員 何かわかったようなわからぬようなことなんだが、私の申し上げているのは、いわゆる政府機関としての特殊法人、これに出資したとすることは当然というか、とやかく申しません。そうでないものに――これもはっきりしたいのですが、おそらくこの法律成立当時は前例がなかったはずです。その後これが通ったからというので――いまの万博協会とか農業何とか基金というのは、一ぺんその条文あるいは定款ないし寄付行為その他を全部対照し、かつ登記簿謄本等を見た上でないと明確にできません。しかし少なくころに限度を置くべきなのか、こういうことに対して一つ基準というかあれがなければ、財政監督上あるいは主計局として予算編成上大きな問題が起きてくる。そのときそのときの都合によって出したり引っ込めたりするということでは許されないと思うのですよ。少なくともこの法律の制定の経緯からいえば、これは特殊法人にすべきであった。また、通産省はしたがったのです。ところがこれ以上特殊法人をふやさぬということで、そこでこういったぬえ的な存在になったことは確かなんです。したがって、法による補給かあるいは出資金を他の補助金等に変えてやるべきであって、政府機関でないものに民間出資と政府出資が混合になった場合、一体どうなるのですか。大臣の認可とかあるいは監督ということを言うが、少なくとも公益法人である限り、民法三十四条の法人にも全部主務大臣は監督権を持っています。同じことですよ。会計検査院は、いわゆる会計検査院の立場からこういうやり方を見てどう思いますか。これも伺っておきます。いかがです。
  106. 田中稔

    田中会計検査院説明員 会計検査院といたしましては、出資の目的をケース・バイ・ケースに判断いたしまして、妥当なものであるかどうか、さらにその出資された目的どおりに事業が遂行されておるかどうかという点を主眼に検査をすべきだというふうに思っております。
  107. 田中武夫

    田中(武)委員 会計検査院も大蔵省も変な答弁をしておると、決算委員会あるいは予算委員会でこれは再燃しますよ。約束しておきます。少なくとも、いまケース・バイ・ケースと言ったが、一体ケースは何なのか。一番最初の先べんをつけたのはこれですよ。これが先べんをつけたからケース・バイ・ケースであるというのですか。これがはっきりしてない限り、国民の税金を出資に使うということに対してはっきりした目安がない。基準がない。そういうことでは、言いたくはないですが、財政民主主義、財政法定主義、憲法にさかのぼって論議をし、あるいは憲法の規定からいってどうなのか、こういうことまで論議しなくてはうけじめをつけますか。もう一ぺん局長、私の部屋に来て泣きますか。いまの答弁では、これはいろいろのこともあろうと思いますが、せっかく理事会においていろいろとスケジュールを立てておられることであろうが、皆さんいかがです。私、無理言ったと思いますか。こういうことで安易にこの法律を採決できますか。どうです。
  108. 田中角榮

    田中国務大臣 今回事業協会に対し新たに振興基金を設置し、これに対し政府出資を行なうというが、事業協会のような隠れ法人に対し政府出資を行なうのは問題があるのではないか、こういうのがあなたの質問であり、あなたの御意見ですね。これに対しての答えは、繊維工業構造改善事業協会は、本協会は民間が発起人となって自主的に設立手続を進め、その業務の公共性を担保するという意味において特定繊維工業構造改善臨時措置法に基づき通商産業大臣が認可したいわゆる認可法人であります。法律により直接に設立をされ、行政管理庁が審査権を持つ狭義の特殊法人とは異なっております。これは先ほど申し上げたとおりです。このような認可法人に対する政府出資の当否については、認可法人が主務大臣の監督という点では、財務及び会計に関する規定、役職員の任命、役職員の地位、これはみなし公務員の規定でございますが、協会に対する一般的監督の規定等の諸点において狭義の特殊法人とは今度は同様でございます。この限りにおいては同様であり、財政法上政府出資は制限されてはいない。これは制限されていないということでございます。それで結局例があるのかというと、事業協会以外でもこのような認可法人に対する政府出資の例は多い。何があるのか。認可法人に対する出資の例でいまの法人と同じようなものは、先ほど申し上げました農業共済基金、これは農業共済基金法によるものでございます。第二は中央開拓融資保証協会、これは開拓融資保証法による認可法人でございます。第三は情報処理振興事業協会、これは情報処理振興事業協会法による認可法人でございます。第四は万国博覧会記念協会、すなわち日本万国博覧会記念協会法によるものでございます。第五は預金保険機構、これは預金保険法によるものでございます。第六は海洋水産資源開発センター、海洋水産資源開発促進法によるものでございます。第七は海洋科学技術センター、海洋科学技術センター法によるものでございます。この事業協会に対する出資は、先ほど申し上げたように四十二年に五億、四十四年に五億、四十五年三億、四十六年に五億、計十八億、四十七年度の予定十九億出資が認められれば、三十七億円の出資になるわけでございます。これは政府出資が三十七億円であり、これに対応する民間出資は五億四千万円プラスアルファということとなって、合計基金総額は四十二億四千万円プラスアルファということになるわけでございます。ですからこの中で問題になり得るところ、財政法上、政府出資はこの種の法人に対して制限をされておりませんというところが論点となれば論点になる、こういうことを私は今日この立法とこの協会に対してはこういう立場とこういう考え方に立っておるということを念のため申し上げるわけでございます。
  109. 田中武夫

    田中(武)委員 次期総裁、総理の第一人者といわれるあなたがおっしゃるのだから、一応はお聞きしておきましょう。しかし、あなた、そんなにあげていいのですか。それなら全部戸籍を出してください。それを私全部調べます。いいですか。これはみんな同じことじゃないと思うのです。いま会計検査院はケース・バイ・ケースと言った。ケースの一番最初になったのはどこなのか。そういうものの一番最初になったのはどこなのか。そのときの事情はどういうことになってそうなったのか。本来そうではなかったのです。こういうのは、そのときはいかなる理由によってそうなったのか。ケース・バイ・ケースの第一番目はどこだったのか。それは私もあらゆるものを見たわけじゃないのですから、この法律が制定される以前に同じようなものが出ていたという例があるかどうかは、私もはっきり知っておりません。しかしいまだいぶ七つ、八つお読みになりました。それならそれを全部洗い直してみましょう。そしてあらためて議論をいたします。よろしいですね。
  110. 橋口隆

    ○橋口委員長代理 速記をとめて。   〔速記中止〕
  111. 橋口隆

    ○橋口委員長代理 速記を始めて。
  112. 田中武夫

    田中(武)委員 いまの通産大臣の答弁では必ずしも了承しかねます。さりとて私はあえて委員会の運営全体に対してこれを妨害するとか、せっかく協議して出てきたスケジュールを変えてしまうという気持ちもございません。そこで委員会の運営は理事会において行なわれる。したがって私はこの問題につきましてはこの程度で保留いたします。そこでどうするかは理事会で協議をし、あらためて通産大臣の見解を述べてもらって、そういうことでこの質問のこの項については、一応留保するというかっこうで次へ入りたいと思います。
  113. 橋口隆

    ○橋口委員長代理 そのとおりに取り計らいます。
  114. 田中武夫

    田中(武)委員 それではいまの質問については委員長が宣言せられたように私も一歩譲りましょう。
  115. 橋口隆

    ○橋口委員長代理 田中君にちょっとおはかりいたしますが、田中通産大臣は参議院において採決の予定だそうですが、ちょっとその間だけ退席したいと思いますが…。
  116. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほど申し上げましたような順序で理事会において協議せられ、そのあとで大臣の答弁を待って採決と考えておりましたが、大臣の都合もあるようですから、その答弁がなければ裁決をやらさないということまでも言いません。しかし文書をもって納得のいくような答弁趣旨、あるいはまた私の要求したものはそろえて出してもらう、これを条件として自後の取り扱いは委員会に一任いたします。
  117. 佐々木敏

    ○佐々木(敏)政府委員 ただいま先生のおっしゃったような趣旨で、資料並びにその文書の回答を取りそろえまして御提出申し上げます。
  118. 田中武夫

    田中(武)委員 それではあとの質問者の関係もありますから、あと一問で終わりたいと思います。  附則の第二条の二を新たに設けて、それも改正の一点なんですが、第二条によると、四十九年六月三十日に廃止する。あともう二年間です。この法律がなくなってからのことを四十二条の二でうたっているようですが、まず法律の所期の目的を達成するのにあと二年でやれる自信があるのかないのか。そうしてこのままである限り、四十九年六月三十日にはこの法律を廃止せられる。そのあとこの協会は何をやるのか。あるいはそれに対して政府はどのような措置を考えておられるのか、これをお伺いいたします。措置というかビジョンというか、そういうものについてお伺いいたします。
  119. 佐々木敏

    ○佐々木(敏)政府委員 まず第一の御質問の、この法律に基づいて考ております構造改善過剰設備の処理、設備近代化あるいはその生産規模適正化、その三つにつきましては、二年間でこの四業種いずれも達成できるか、かように考えております。ただ、これは現在別途政府間協定に伴う救済対策設備買い上げ等々もあわせて繊維産業全体に対しまして実施をするという前提でございます。それと第二の御質問につきましては、このような構造改善は四十九年六月でもって終了するわけでございますけれども、いわゆる振興基金を中心にいたします繊維産業の今後の振興体制につきましては、なお現在から十年間継続する予定であります。  先生のおっしゃいました繊維産業の今後の長期ビジョン、これは一般的に申し上げれば四十八年度をもちまして量的な構造改善を終了いたしまして、四十九年度以降はいわゆる高付加価値、ファッション化等々の質的な繊維産業の体質改善という長期ビジョン方向を定めたい、かように考えている次第でございます。
  120. 田中武夫

    田中(武)委員 やみ織機の問題一つ取り上げても、たいへんなんですよ。これはだれかが質問するであろうし、当然質問があったと思いますから、やみ織機の数だとかそれに対する対策だとか、そういうことは私はもう聞きません。しかし、やみ織機の問題だけを取り上げても、たいへんなことなんです。二年間にほんとうにこの法律の所期の目的を達成する自信があるのかということに対して、いまそう答えられたのですが、では、二年間たってもし出してきたら、今度こそ法律はつぶしますよ。  それから繊維協定の問題等については、いま大きな曲がりかどにきているわけですね。そういうこととも考え合わせて長期計画を立てるべきである、私はそのように思うわけなんです。そういうことで通産省繊維雑貨局等においてそういうような長期ビジョンについて考え方があるか。しかもそれはあくまでも日米繊維協定という上に立ってではなくて、これは、やがてというよりか、私は認めないという立場に立っている。このあと加藤先輩が行なうであろうと思いますが、そういうことをあわせて長期計画を立てばならないと思いますので、そのことだけを申し上げて、私の質問を終わります。
  121. 橋口隆

    ○橋口委員長代理 加藤清二君。
  122. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 大臣は何分ぐらい後に見えますでしょうか、それによって質問の順序を変えなければなりませんので。
  123. 橋口隆

    ○橋口委員長代理 五時十分には帰れる予定です。
  124. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは、外務省の条約局からどなたか来ていらっしゃいますか、条約のおわかりの方。――来ておられませんか。それではどなたでもいいですが、こういうことを教えてもらいたいのです。  その日米繊維協定はあるにもかかわらず、日本からアメリカに輸出しようとした毛製品が関税の査定を拒否されておる。なぜそうなったかといえば、それはアメリカの法律がそうだからだ、こういうことなんです。これは大臣の言い分ですね。ところが、さっきから聞いておりますと、この協定のおかげで日本側はどうするかといったら、これは自主協定を結ばせるか、ないしは輸取法からくるところの貿管令、それを改定してまでもこの協定を実行に移そうとしている。こういうことなんです。そうすると、ここに私が理解のできないことは、日米の繊維協定はアメリカの国内法と比べたときには、アメリカの国内法のほうが優先する。しかし、日本国内法と比べたときには、日本国内法が協定の言いなりにならなければならない。これでは互恵平等でない上にそれこそまた日米友好通商航海条約の条文に違反することになる。それじゃ大臣いらっしゃらないから、外務省の条約局もいらっしゃらなかったから、答えられる人、だれでもどうぞ答えてください。
  125. 山下英明

    ○山下政府委員 今回の毛織物のダンピング措置につきましては、私どもとしましてはきわめて関心ある点でございまして、昨年の十月基本協定を合意し、ことし行政協定を結びまして日本からの対米輸出について数量的な制限まで実質的にしておりますさなかに、その価格差についてダンピングの調査の結論を出した、こういう事態でございます。私どもの当然の解釈としまして、現在の日米繊維協定日本国内法の範囲内で実施していくつもりでございますし、アメリカにおいては当然そういう仕組みだろうと存じますが、実際的に数量の制限までしているものがアメリカにおいて被害があるかどうか、アメリカのダンピング法自身が公正価格の値差を調べ上げると同時に、被害の実証をもってダンピング課税をかけるわけでございますので、私どもとしては被害はないという判断でございます。事は財務省から関税委員会に移りましたので、今後とも先方の成り行きを見、日本側としても主張すべきものを強力に主張していくつもりでございます。
  126. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 行政的には具体的にぜひ主張すべきを強力に主張して、アメリカのあやまちを是正してもらうように努力してもらいたいのですが、外務省いらっしゃらなければきょうここで答えてくださいというのは無理ですから、もう一度あなたのほうへ設問しておきますから、あとで書面でいいから答えていただきたい。わかりますか、いまの質問を。現在協定が結ばれているという段階である、行政協定が結ばれているその最中に、行政協定の中の特恵品目を、トリガー方式を適用して抽出して、またそれ以上の別な案件でこれを取り締まろうとしておる、取り締まるだけならばいいけれども、貿易の量の制限をしようとしている。なぜそうかといったら、それはアメリカの国内法がそうだからという田中大臣の答弁であった。そうなるとアメリカの国内法のほうが協定よりは優先するということですね。そうでしょう。しかるに日本のほうはどうかといったら、いま田中委員の御質問にもあったように、協定あるがゆえに、これを実行するために日本側は何するかといったらまず自主規制、カルテル法を破ってまでもカルテル行為をさせてそれを実行に移すか、または輸出入取引法からくるところの貿管令、これを変更してまでも実行に移させる、こういう話なんです。日本のほうは協定のおかげで国内法がいかようにでも左右されて、協定を生かそうとしておる。ところがアメリカ側は国内法のほうが優先して、この協定の内容を踏みにじろうとしている。これは法的にいってもきわめて不平等である。この不平等は日本とアメリカとで結んでいる日米友好通商航海条約の条項にも違反する行為であると私は判断する。外務省条約局というのはそれでもなお長いものには巻かれろというのか、ニクソンの言うことなら何でもはいはいと聞かなければならぬのか、ニクソンの前には日本の憲法も法律も全部踏みにじられてもそれでもいいとおっしゃるのか、きょうここで御答弁をいただこうとは思わぬ。やむを得ない。だから条約局長と言っておいた。だからひとつ条約局長にその旨を伝えて、書面でもって答弁が願いたい。その期限はこの法案が通過する前、それでよろしいですか。
  127. 平原毅

    ○平原政府委員 いま加藤先生の御引用になりました田中大臣の御説明、私直接立ち会っておりませんので、後ほど正確に通産の同僚から伺いましてこの点条約局長にはかります。御質問の答えはやはり、私経済局長では十分に有権的にお答えできませんので、条約局長にはかりましてお答えを早くするようにいたします。
  128. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 なぜこんなことを二日にわたってお尋ねせんければならぬかというと、及ぼす影響が大きいからなんです。きょうの参考人の発言の中にもたくさんございましたように、日本とアメリカとが繊維協定を結んで輸出制限をしたら直ちにカナダがまねますよということを、もう再三申し上げておいた。案の定でしょう、カナダがまねてきた。それをやられるとその余力をEC諸国に向けられちゃかなわぬというので、ECのほうがまた制限をしてきますよと、それはコットンのときに前例があるからはっきりしたことであるということを、協定が結ばれる前に再三申し上げた。案の定やってきた。案の定EC諸国がまたアメリカと同じように規制をするという申し入れをしてきておる。あなたの耳に入ったか入らぬかは知らぬけれども、コットンは十七年前の話なんです。日本とアメリカが結んだおかげでEEC諸国は報復手段として、おれらにも同じようにさせろ、させた上になおどうしたか。ガット三十五条二項の援用でペナルティーなんです。いまだに日本繊維製品は差別待遇でしょう。十七年間、やがて沖繩と同じになっちゃうがね。これでは日本繊維発展しないのは無理もないのです。この構造改善法のときになぜこういうことを言わなければならぬかといえば、構造改善の目的に合わないからなのです。このことが次から次へと行なわれれば、構造改善をどれだけ金をかけてやってもさいの川原の石積みになるからなんです。設備が多過ぎる、ゆえに設備を制限しましょう。そうして出血生産を防ぎましょう。秩序ある輸出をいたしましょうというのが構造改善一つのポイントなんです。ところがこれは需要供給の調整なんですから、アメリカにこのぐらい売れるであろう、欧州にこのぐらい売れるであろうという想定を立てているんだから、そこが次から次へと制限してくれば、設備制限したってなお設備が余り過ぎるということになるわけなんです。  もう一つの問題は、これは通産省にお尋ねするけれども後進国追い上げという問題があるのです。後進国追い上げの問題をそのままにしておけば、これまた構造改善を何度やったって、これはかご抜けになっちゃうんです。   〔橋口委員長代理退席、浦野委員長代理着席〕 と同時に、もう一つ内地的に問題になるのは、やみ織機の処理なんです。このやみ織機の処理と前段の二つの問題、この三つがうまく調整されて初めて構造改善の目的が達成できるわけなんです。だから、アメリカのことを執拗に申し上げる。アメリカが先例を開きますと、次々と追随者が出てくるんですから。いまアメリカが日本のウールをねらい打ちして、一理もないのにもかかわらず協定からはずしてプラスアルファでもう一つ追い打ちをかければ、またカナダがやるのです。また欧州がやります。これでは構造改善を何度やったって効果があがりません。大蔵省から何ぼ金が出たって、これは効果があがりません。したがって私は、この法的根拠を通産大臣も明らかにしておいていただきたいのです。アメリカの法律だからやむを得ぬなんていうんだったら、日本法律もこんな協定を受け入れるような受け皿はありません。通商局長繊維局長、この点を、この法案が衆議院の審議を終える段階までにきちっとこの対策を答えられるようにしておいてください。  次に、後進国でございますけれども、これもまたきょうの参考人の話に出ておりましたが、後進国と言うといけませんそうですから、発展途上国と申しますが、この発展途上国からはすでに日本へ、あるものは一〇%、あるものは二〇%、一番多いのはしぼり製品の七〇%、日本のオール消費量のそこまで食われておるわけでございます。アメリカは、日本輸出はどうかといえば、オール消費量の二%から三%でもって制限ときたわけなんです。この制限が国際的にも正しい、いいことであるということであるならば、ぜひその筆法を日本発展途上国にやってもらいたい、こういう意見が何度も何度も陳情として行なわれ、私どももこの相談を三木大臣のころからずっと大臣折衝でやってきたところなんです。アメリカに向かって、はいと言うなら、それじゃ同じことを発展途上国に向かってやるべきである。ところがアメリカの言うことは聞いたけれども発展途上国追い上げについては何ら措置されていない、これはどういうことですか。
  129. 佐々木敏

    ○佐々木(敏)政府委員 先生がおっしゃいましたように、まさに構造改善は需給のバランスの正確な把握の上につくられるべきものでありまして、輸出の健全な数量、あるいは膨大な輸入量の阻止、あるいはまた生産能力におきましても、やみ織機の膨大な生産活動ということをできるだけ整理いたしまして、構造改善をするわけでありますが、ただ、先生お話しの輸入の問題につきましては、私ども、まず国内繊維産業構造改善、できるだけ質的向上あるいは合理化、近代化をはかりまして、わが国繊維産業輸入品に対しまして国際的に十分負けない体質改善をはかってまいる、その方向で前向きに考えていきたいと考えておる次第であります。
  130. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 後進国追い上げについてどういう対策をしていらっしゃいますかとお尋ねしている。
  131. 佐々木敏

    ○佐々木(敏)政府委員 後進国追い上げにつきましては、関税の問題特に特恵関税についてできるだけ慎重な前進をいたしております。それと同時に、後進国追い上げに負けないようなわが国繊維産業の体質改善、高級化付加価値の高いもの、あるいは生産能率の近代化、合理化というような体質の向上、その二つでもって後進国追い上げに対しまして対処していっておる次第であります。
  132. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それじゃ、私が具体的に申し上げますから、それに対する検討をしてください。もはや抽象論で事が足りるときじゃないのです。私どもは、ことしになりましてから、産地を十地区調査いたしました。ほとんど中小企業が多い。どこもかしこもみんな言うのです。後進国追い上げにあってかないませんと言う。その原因がどこにあるかといいますと、日本の大きい資本が、発展途上国の安い労賃を使うという目的で、向こうへプラントを輸出して、日本の技術を持っていって向こうの人間を教育して、それでつくって、売り先はどこかといったら、日本の内地へ向けて売り込んできておるのです。こういう指導政府がしてみえる。それからもう一つは、発展途上国の技術養成員を内地へ迎えて、その教育者に日本中小企業のベテランをつけて教え込まして、そして国へ帰らして、これらが日本で学んだ技術でつくり上げたものをもう一度こちらへ輸出してきておる。これはだれがそんなことをやらしておるかというたら、また政府がやらしておるというのです。だから、発展途上国の研修員の講師に招かれることはわが組合はごめんでござると断わり状が来たところがあるでしょう。こういうことをやってみえるのです。もちろん、いまの繊維局長とかいまの通商局長になってからやっておるとは言わぬ。このはしりがそもそも南朝鮮に対して有償無償八万ドル、特融四億ドル、あの時代から始まっておるのです。あのときに八億ドルの内訳はと尋ねたら、何と生産性本部と政府とが結託して、百五十万錘の綿紡と、一万錘に対して三百台の織機を持っていく。その織機は何かといったら、この際はっきり言いましょう、やみ織機なんです。すでに廃棄処分にしなければならなかったやみ織機をオーバーホールして塗りかえして、そして持っていったのです。それに引き続いて染色整理からしぼりからどんどんついていったのです。それがいま日本の海外のシェアを食うだけでなくして、日本へ敵前上陸してくることになっておる。だからあのときに、有償、無償八億ドルのときに、私は予算委員会で、かくすればかくなる、さようなものを実物供与すべきでないということを何度も口をすっぱくして言ったのです。そうしたら、そのときの言いざまがおもしろい。日本はそれ以上に技術が発達しております、だからそのころには段違いによくなっていますからよろしい、こういう話なんです。それは大企業だけの話なんです。中小零細企業の方々は、空気精紡機を使うといったってそんなことはできませんよ。できっこないのです。結果、日本中小零細企業を殺して発展途上国を助けた、こういうことになっておるのです。だから発展途上国追い上げに対する対策は、政府がまいた種なんです。何も田中通産大臣が種をまいたとは言わない。田中通産大臣が郵政大臣のころからこれは始まっておることなんですから。しかし、まいた種には間違いない。刈り取ってもらいたい。
  133. 山下英明

    ○山下政府委員 きわめて具体的に御指摘がございましたが、実は現在日本の通商産業政策としまして一番むずかしい点の御指摘があったわけでございます。御承知のように、発展途上国に対します経済協力としては、現地技術者の養成、それから投融資に関しましては、相手国産業そのものの発達をできるだけ助けるという課題でいろいろな施策をやっておりますが、それが日本において重要な産業であり、かつその構造改善に最も神経を使わなければならない繊維産業の場合には、言うまでもなくそのバランスをどこにとるか。そしてかりにそういう施策でひずみができた場合、あるいはタイミング等も含めまして、どういうぐあいに実際の運用をやっていくか、私どもとしてもきわめてむずかしい、かつ細心の注意が要る点だと心得ております。御承知のように、日本の関税その他の制度は、比較的規定は持っておりますけれども発展途上国からの輸入急増あるいはダンピングというような事態に対しては、その運用の経験実績がございませんが、一つには輸入制限、割り当て制度で長い間なれてきたせいもあろうかと存じますが、今後はそうはまいりませんので、そういう事態に対しても、十分の備えを用意していきたいということで関係省でも検討をしておる次第でございます。ことしに入りまして、生糸の問題でもすでにそういう例が出てきたことは御承知のとおりでございます。
  134. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 大臣、いまお話のありましたとおり、絹糸につきましては全国の蚕糸業者や養蚕業者が大会を一度やっただけで、ぱっぱっと法律ができて、そして、政府買い上げる底値を下げさせない、後進国から入ってきても日本業者が困らないように輸入した生糸も政府が買い取る、こういう制度を一ぺんにつくっちゃったですね。ところがいまや、きょうの参考人のお話にも出ておりましたが、綿の四十番手以下のあれは二十万俵ぐらい入っておる。これはオール生産の一一%から、ものによっては二〇%に至っているのです。さっきも申し上げましたが、しぼりのごときは、オール消費量の七〇%が朝鮮ものなんです。日本はどんどん食われていっちゃったのです。京都の民芸品までがそうなんです。たいへんな食われ方なんです。アメリカは二%や三%食われるというと、日本を制限する。日本は七〇%食われても知らぬ顔をしておる。よほど日本のほうが大もののようですね。これでいいですか。政治家は大ものであっても、それで倒れていく中小企業の身になったら、たまったものじゃないですよね。この対策いかん。大臣にお尋ねする。
  135. 田中角榮

    田中国務大臣 まあそういう問題はあります。これはいま御指摘のように、緯国に経済協力をして、韓国から経済攻勢を受けておる。もっと大きなものは、二十五年、二十七年にアメリカから日本は援助を受け、そして日本の経済を復興せしめ、そしてアメリカは日本商品の攻勢に悲鳴をあげる、こういうことでございますが、これはこれから中国大陸と国交を開けばまた同じような問題も参ります。そこで、国際的な分業問題とか、国際的に経済交流を進めていき、しかも、縮小均衡の道を選ばず、拡大均衡によって世界の平和を維持確保しようという限りにおいては、輸出秩序を確立しなければならない、こういうことになるわけでございまして、国際的にはいろいろの問題が起こってまいりますけれども、この国際的波動に対処して、やはり国内産業を守っていくための施策というものは、適切に行なわなければならないわけでございます。そういう意味で、繊維対策等も行なっておるわけでございますので、これからほんとうにいろいろな問題が起こってまいると思います。これはもう繊維やそういうものだけではなく、ちょうど香港フラワーのような問題もあったわけでありますし、かつてアメリカに出ておったクリスマスツリーとか電球とかいうものは、全く日本からの輸出は、影をひそめてしまったというような面もあります。そういう国際的波動に対しては、やはり国内産業を絶えずこの波動に対応できるように、体質改善が行なえるように施策を進めてまいるということでなければならない、こう思います。  絹糸の問題に対しては、これは超党派でもって議員立法の措置がいま行なわれておるわけでございますが、その他、他の問題に対しても、きめこまかい施策を行ないながら、国際的波動にたえていけるような体質改善を行なうというように、育成強化を進めるべきだと思います。
  136. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 いま抽象論の時期じゃないですね。大臣、抽象論を言うておる時期じゃないのです。絹糸の施策が直ちにできたというのは、これは農林省の姿勢ですね。農民に対する姿勢がきわめて愛情があると申しましょうか、響きに応ずるようにできている。ところが、通産省の中小企業に対する施策というものは、もう耳にたこが当たっているのですから、何度言うても抽象的なことばだけは返ってくるけれども、具体的な施策というものが生まれてこないというところにうらみがあるわけなんです。そういう態度だから、朝鮮のほうはえたりかしこしでまた一歩進んできた。しぼりに例をとりますと、以前は日本で柄をつけて、すなわち日本の生地で柄をつけて向こうへ持っていって、しぼることだけをやらせておったのです。称して保税加工貿易といっておった。近ごろはだんだんその技術を覚えちゃった。そこでどうなったかというと、朝鮮の生地で柄は日本から盗んだもので、それで朝鮮で染めて、それでなければ日本へは輸出しない。つまり付加価値をふやさなければ日本輸出しないということは朝鮮のほうが先にやっておるのですよ。こういうことに対して日本政府はどういう施策をとりましたか。
  137. 田中角榮

    田中国務大臣 御指摘の問題もわからないわけじゃないのです。これは、下請に使っておった大島つむぎを韓国でつくって韓国大島つむぎということで入ってくるとわからなくなってしまう、こういう問題があります。これはまあいろいろこういう問題ほんとうに起こってくるわけです。下請に使っておって、安い労働賃金などということでもってやっておると、これはアメリカの海外投資と同じ問題が起こってくるわけであります。ですから、そういう問題も両国の間でもっていろいろ円満にものを運ぶようにしなければならないわけでございますが、しかし、これも法律的になかなかむずかしい問題でございます。まあ登録商標とかいろんな問題がございますが、しかし、非常にむずかしい、困難な調整はあります。だから、そういう具体的な問題に対して、それをシャットアウトするとか調整するとかいうこともさることながら、やはりそういう体制が起こる場合、前の国会でいろいろな中小企業や零細企業に対しての制度上の助成策をお願いをいたしましたように、やはり国内産業、国内企業特に零細企業というものを育成強化するということ以外にはなかなかむずかしい問題だ。これはもう自由化する一歩手前の問題であります。自由化をすると、洪水のように安いものが入ってくるということの前に、そういう下請をやっておったものがほとんど内地でつくられるものと同じもの、より以上のものはできないと思いますが、まあ二級品、三級品、しかし、これはよほどよく見なければ一級品か二級品の差もわからないというようなものが輸入される。これはもう一番大きな問題では、日本人が韓国へ行って教えたノリが、いまでは韓国からノリが入ってくると日本のノリが暴落して困るというような問題もあるわけです。だから、そういうような問題に対処して、これは一つずつそういう現象に対して歯どめを行なうということよりも、やはり日本の産業自体をこれに対応できるような体制まで助成をしていくということ、これをやらざるを得ないわけでございます。
  138. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 大臣、私に与えられた時間はそんな無制限にないのです。きょうノリのことまで話し合おうとは思っていないのです。これは私の専門なんですからね。  ところで、申し上げたいことは、中小企業をそれに対応できるまで育て上げるとおっしゃるけれども、口でばかりそんなことをおっしゃったって、それじゃしぼりを、どう指導して、どう転業させるのですか。それはないのでしょう。具体策はないでしょう。なければ、かってやったように、国会で議決するという手がある。本委員会で議決したことがある、ノリも。数量制限をやったことがあるのです。  それからアメリカは、これは農業法の延長で制限をしておる。この合成繊維まで別途協定を結んで制限をしたんでしょう。その筆法がいいというなら、それ一歩手前に、アメリカがやったところの農業法二百四条の適用ができるわけなんだ。日本もそれと同じをやればいい。道としてはまだガットの場でやるという手もある。ガットの場でいままでしぼりのことを日本政府のだれかが一言半句でもしゃべったことがありますか。一度もないでしょう、ここでは、やります、やりますと言っておりながら。この対策をどうするんです。朝鮮のしぼりなんか簡単ですよ。保税加工以外は受け取らぬと言ったら、これでしまいでしょう。協定も何もつくる必要ないです。どうです、これ。
  139. 佐々木敏

    ○佐々木(敏)政府委員 先生、もちろん申し上げるまでもなく、かってしぼりの日本から韓国に対する輸出加工の問題が一つございまして、これにつきましては現在輸取法で輸出組合の規約として継続をいたしておる次第であります。  ただ、その先生のおっしゃる、韓国でできました原反で、向こうでしぼり加工して入ってくるという問題につきましては、今後わが国のしぼり業界、非常に大きな影響があろうかと存ずる次第でありますが、現在特恵関税の対象にはいたしておりませんが、これだけでは不十分である場合には、今後十分な検討をしてまいりたい、かように考えております。
  140. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 検討だけではいけないのです。あなたたちが検討検討と言っている間に、ばたばたと倒れつつあるのです。だから私が一生懸命になって、このおそい時間にも申し上げておることなんです。これは東尾張から西三河路にかけて一帯の特殊産物なんです。これがいまがたがたといかれておる。京都はもうほとんどいかれてしまったのです。政府が慎重検討、慎重検討、何年続けたらいいか知らぬけれども、私が委員会でこれを言い出してからもう十年になるのです。十年たっても一日のごとく検討検討という答えを聞くほどこっちも気が長くないのです。その間にどんどん縮小されてしまったのです。なぜ縮小されたか。倒産したからだ。手当てをする、手当てをするとおっしゃるけれども、その倒産の連中に対してどういう手当てをなさったんです。何ぞ救いの手を伸ばされたことがありますか。聞いたことないのです。せめて勲章をやってくれと言ったら、それもできなかった。そういう手当てのしかたなんです。だから、本件は、実力大臣である田中さんのような方が大臣をやっていらっしゃるときならばできることなんです。農林省でやったのですから、何で通産省でできない。至急やる用意があるかないか。
  141. 山下英明

    ○山下政府委員 直接的な輸入制限は、先生も御承知のように、ここ二、三年来せっかく一つ一つ討議を重ねまして、現在三十三品目、大部分は農林鉱山物資でございますが、そういうところまで自由化を進めてまいりましたわけで、いまここでさらに輸入制限品目をふやすということはきわめて至難だと思いますが、ただ国内において被害があり、急増するもしくはその輸入を放置できないという場合のために、緊急関税なり相殺関税なりあるいは緊急的な輸入制限という措置現行法でございますので、ただそれをいままでなかなか発動しなかったわけでですが、今後はそういう措置事態に合わせてやれるようにということで大蔵省、通産省、農林省、現在相談しておる段階でございます。いま御指摘のしぼりその他について具体的に検討してどういう結論になるかということをいま申し上げられませんが、そういう心がまえでおります。
  142. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 至急対策具体化してもらいたい。これはぜひ田中通産大臣が大臣をやっていらっしゃる間にやっておいてもらいたいのです。  それからもう一つ、次の問題です。その構造改善の次の大事な柱は需給のバランスをとるということでございますから、この市場の拡大でございますが、あるいは市場転換と申してもけっこうでございますが、アメリカの制限をまねてカナダ、ている。そういうやさきに中国とソ連、東欧諸国は日本の原材料、糸、これは合繊もウールもたいへんな引き合いが出てきております。しかしこの引き合いを実行に移すにはいろいろな難点がございまするが、第一番は外務省の態度を直してもらいたい。共産圏というとクレームをつける、クレームをつけておれば自分の首が安全だと思っているのでしょう。  次の問題は、公団貿易であったり組合貿易であったりするわけなんです。その結果、長期で一括契約になるわけなんです。このような外貨の不安定なおりには長期のあれができないわけなんです。したがって、どうするかといえば、長期で一括契約であるならばぜひ円建てで、これがドル建てになっておるのですから、ソ連との貿易をする、中国との貿易をするときに、何も不安定なドルを通貨にする必要はないわけなんです。これはアメリカの通貨が非常に安定していたころの前例で来ておるわけなんですから、これはひとつぜひ円建てに変えるようにしていただきたいが、これはできないとおっしゃるのですか。
  143. 田中角榮

    田中国務大臣 ドル建てでなくとも話がまとまればバイ・ケースで考えます。これはポンド建てでやっておるところもございますし、また日中間においても円元決済の問題もあります。円元決済も話がまとまれば実行していこうという考え方でございます。ですから、それはそんなにドル建てでなければならないというふうに、全くそれ以外に考えておらぬということではないので、バイ・ケースで処理をしてまいられる、こういうように考えております。
  144. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 吉田書簡を破棄して、あるいはもう忘れて、輸銀融資をこれまた考えるという考え方を大臣は何度も表明されております。したがって、輸銀の融資までするだけの余裕があり幅があるならば、当然共産圏との貿易において円建て契約を認めてしかるべきだと思うのです。  そこでもう一度念を押しておきます。それじゃ、円建てで契約してこうしますと持ってきたら通産省は許可いたしますですね。
  145. 田中角榮

    田中国務大臣 これもバイ・ケースで十分考えます。
  146. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 わかりました。それでけっこうです。  それじゃ、理事さんの御意見もこれあり、最初に申し上げましたところが大臣がお留守でお答えになっておりませんからそこだけを答えてください。――それじゃ簡単に申し上げましょう。大臣がお留守でありましたけれども進めろということでしたから進めた一番大事な問題です。アメリカがなぜトリガー方式を発動して日本のウールの関税査定を中止さしたか、これはやがてペナルティーとなって二〇%の罰金を科せられるという前提なんです。なぜそうかとお尋ねしたら、あなたはこの聞こうおっしゃった。それはアメリカの法律がそうだからやむを得ぬ、こういうことだった。時間がなかったから次へ行きましたが、それならばこれはたいへんなことになる。日本協定を実行に移すためにいわゆる独禁法に触れるおそれのあることをしても自主規制をさせるとかあるいは輸取法からくるところの貿管令をある程度手直ししてもこれは実行に移させる。つまり協定日本国内法を変えるだけの権威があるはずなんです。、ところが、アメリカの国内法はというたら協定を打ち破ってまでもなお日本のものを制限するという。これは矛盾ではないか、きわめて矛盾である。それは互恵平等、内国人待遇をうたったところの日米友好通商航海条約に違反することになるではないか。ゆえにこのことをよくアメリカに認識させてかかる間違いをさせないようにするか、それができなければ日本の貿管令をなぶるの、独禁法をなぶるのなどということを言わないほうがいいということであります。
  147. 田中角榮

    田中国務大臣 協定品目につきましてダンピング関税をすることは妥当でない点が多いので、米国に対しまして今後とも強力に話し合っていくつもりでございます。基本的にはそうでございますが、アメリカは制度があって業者が提訴するのでこういうことになるわけですが、実際こういうことをやっていると、あなたがいま述べたように私自身でも日米間でもっておもしろくないことになるから事前の話し合いをしようということで、専門家会議の常置を行なったわけでございます。それで専門家会議でもって、幾ら制度があるからといっても、またアメリカに日本と違って簡単に裁判に訴えるというようなことが日常茶飯のような状態であっても、こっちはそうはとれないので、ひとつ事前に調整をしようということで専門家会議等をつくっていま臨んでおるわけでございます。  そういう意味で、御指導になったように日米間、いまアメリカから日本に品物が怒濤のように来ておるのじゃなくて、日本のほうから行っておるというところにいろいろな問題があるのですが、アメリカ側からいうと、普通からいえばもっと制限をしなければならない状態にあるにもかかわらず、まあ日米間であるので話し合いでもってまとめよう、こういっておるんだから、日本側も、日米貿易の正常な発展のためには輸出の正常化、輸出環境の正常化というもの、輸出秩序の確立というものにひとつ努力をしてもらいたいというような、アメリカ側としての立場上言わなければならないようなこともあるようであります。しかし、いずれにしても当面しておる問題だけではなく、長期にわたる日米両国の貿易を正常に拡大をしていくためには、意思の疎通をはかって、両国の間にトラブルが起こらないように全力を傾けてまいるつもりでございます。
  148. 浦野幸男

    ○浦野委員長代理 次回は、明十七日午前十時理事長会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十一分散会。