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1972-03-14 第68回国会 衆議院 商工委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月十四日(火曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 鴨田 宗一君   理事 浦野 幸男君 理事 小宮山重四郎君    理事 進藤 一馬君 理事 橋口  隆君    理事 武藤 嘉文君 理事 中村 重光君    理事 近江巳記夫君 理事 吉田 泰造君       稲村 利幸君    大久保武雄君       海部 俊樹君    神田  博君       北澤 直吉君    左藤  恵君       坂本三十次君    始関 伊平君       塩崎  潤君    田中 榮一君       八田 貞義君    松永  光君       石川 次夫君    田中 武夫君       中谷 鉄也君    松平 忠久君       岡本 富夫君    松尾 信人君       伊藤卯四郎君    川端 文夫君       米原  昶君  出席国務大臣         通商産業大臣  田中 角榮君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      木村 俊夫君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      新田 庚一君         経済企画庁国民         生活局長    宮崎  仁君         経済企画庁総合         開発局長    岡部  保君         外務省経済協力         局長      大和田 渉君         大蔵省国際金融         局長      稲村 光一君         通商産業政務次         官      稻村左近四郎君         通商産業大臣官         房参事官    増田  実君         通商産業省通商         局長      山下 英明君         通商産業省貿易         振興局長    外山  弘君         通商産業省企業         局長      本田 早苗君         通商産業省鉱山         石炭局長    莊   清君         中小企業庁長官 高橋 淑郎君         中小企業庁次長 進   淳君  委員外出席者         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ――――――――――――― 委員の異動 三月十一日  辞任         補欠選任   浅井 美幸君     貝沼 次郎君 同日  辞任         補欠選任   貝沼 次郎君     浅井 美幸君     ――――――――――――― 三月十日  石油開発公団法の一部を改正する法律案内閣  提出第三七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月十一日  日米政府間繊維協定破棄に関する陳情書外三十  件(第六二  号)  円切上げに伴う中小企業対策に関する陳情書外  二件(第六三  号)  日米政府間繊維協定締結に伴う救済対策に関す  る陳情書外十件  (第一二九号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済総合計画に関する件      ――――◇―――――
  2. 鴨田宗一

    鴨田委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件及び経済総合計画に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松平忠久君。
  3. 松平忠久

    松平委員 田中通産大臣のこの間の、施政に関する所信表明があったわけですけれども、これに関連して質問を若干申し上げたいのですが、その前に短期的な観点長期的な観点との立場から質問を申し上げたいと思うのです。  短期的な観点でいま通産省がかなり批判の的になっておりますことは、去る十二月十九日のあの円・ドル固定レート、こういうものが決定してからの日本貿易関係、こういうもののアンバランスというものが克服されない、そしてドルはたまる一方だ、ちっともドルを使うことについての能力がないんじゃないか、こういう批判かなり出ております。しかも、その結果というものは御承知のように円がますます高くなるということになりまして、ある意味の非常な不安を与えているわけなんです。  そこでまず第一にお聞きしたいと思っておりますことは、いま多くの人、ことに外国関係の、外国から伝わってきている情報というものは、大体十一月の半ばごろに円の再切り上げをやる、そういうほとんど確定的なニュアンスで情報が流れております。十一月の半ばごろ日本の円は一応二百八十円もしくは二百七十円台、こういうことで再切り上げをするのではないか、それも大体十一月中にある。これが一般の常識化しておる傾向なんです。これに対して、通産大臣としては、そのような外国方面のインフォーメーション、そういうものをお聞きになっているかどうか、あるいはこれに対してどういう対策政府としては講じようとしておるのか。きわめて重大な問題でいま混乱しておるわけでありますが、それに対する見解を明らかにしていただきたいと思います。
  4. 田中角榮

    田中国務大臣 円平価調整が行なわれてまだ幾ばくもたっておらない現在、円の再切り上げというようなことを論ずべきではないと私も考えておりますし、私自身も円の二回目の切り上げが行なわれるような日本経済実勢ではないということを考えております。また世界各国で、いま御指摘にありましたような円の切り上げということが論じられておることは承知しておりません。おりませんが、いろいろな角度からいまのような御質問がございます。そういうことに対して私は答えておるのでございますが、円だけを対象にして切り上げを求めるというようなことは考えられない。また第二の平価調整を行なうというようなことは考えられても、それはいまのヨーロッパ経済情勢が、経済成長率実質ほとんどゼロであるというような事態から考えてみて、また西ドイツの公定歩合が三%台に落ち込んでおるということ、なお、日本はいま四分七厘五毛、向こうはちょうど一%低い三分七厘五毛ということでございますが、そこまで公定歩合を引き下げても投資意欲をかき立てることができない、実質経済成長率が向上しないという実態から考えて、欧州諸国通貨通貨調整に応じられるような現状にないということでございます。そうすると、残るのは日本の円だけでございますが、私は日本の円の切り上げ幅はそんなに低い切り上げ幅ではなかったと思います。それは昨年一年間を通じて、当初一〇・一%という高い成長率を目途としておりましたものが、実質三%台、ようやく四%というような、想定した経済成長率の半ばにも達しないというような特殊な要因によりまして、輸出伸び輸入が非常に減ったということでございます。対米貿易一つをとってみましても、二二%も対前年度比ふえております。輸入は約前年どおり、ふえても一〇・二%程度しかふえないということでありますので、そのような関連において外貨もたまり、国際収支も大幅に黒字になった。言うならば、跛行的な状態の中における経済現象でございます。それがまだ一向改まらない。そういう意味で、今度一兆九千五百億というような大きな国債を発行して、対前年度比二一・八%というような大きな予算を組んで、それでようやく景気刺激を行なおうという状態でございますし、この予算の執行が行なわれ、経済政策が適正になるならば、輸入ふえ輸出は減るということで、いまよりもいいバランスになる、またそうしなければならないのだということで、一時、一日を争っておるわけでございます。そういう意味外貨貸しその他の問題がございますが、また御質問その他で答えることにいたしますが、外貨使用、それから輸出のダウン、輸入の増大、こういうことが半歳続けば、少なくともいま仰せのあったような円の再切り上げというようなことはなくなるだろうと思いますし、またそういう事態を起こしてはならない。私はもう真剣に、私が通産大臣の職にある限り、いま御指摘になったことは絶対にしないでいいようにするのが私の責務だ、こう考えておるのでございます。
  5. 松平忠久

    松平委員 絶対にしないというのが責務だ、それは大臣立場においては当然考えなければならないことだと思います。ところが、実際にいまのように三百八円に決定しても三百一円とかあるいは次に三百円台を割るとかというようなことになり、そして事実長期契約というものは、二百八十円なり二百八十五円ということを想定して今日は契約を結んでいる、こういう実情があるのであります。そういたしますと、大臣が言われておるように、いわゆる平価の三百八円というものを中心としていろいろ施策をしても、これはうまくいかない、こういうことになるわけです。言いかえるならば、ドルがやはりだめだ、円が高いという方向がみんなの気持ちに入ってまいりますと、いま申しましたように、一応レートはきまっておるけれども二百八十円で内密に契約を結ぶということをやっておるわけなんです。そういたしますと、いま言われたように、将来といえども、いまのような状況が続いていくならば、あなたの言われるような方向ではなくて、どうもやはりとりあえずは変動制の採用というようなことがまた考えられないとも限らない。いまの状態でいくならばおそらく変動制をやってくれという要望が強くなってくると思うのです。それに対して、この変動制に対してはどういうふうに考えておられますか。
  6. 田中角榮

    田中国務大臣 去年の暮れに平価調整が行なわれたわけでございますから、これからまた変動為替相場制に移行するというようなことはいま全然考えておりません。いまの数字で申し上げますと、四十七年度、ドルベース輸出が八・四%増、円ベースに直しますと二二%減、こういうことでございます。輸入ドルベースで一五%増、円ベースでも五%増、このとおりの輸出輸入バランスがとられるということになれば、私はいまのドル安円高というような状態は変わってくると思います。なお平価調整メリットというものは、やはり一年か一年半かかります。これはサンクレメンテ会談におきましても、コナリー財務長官との間にも十分それを話し合ってきたわけでございますが、いま平価調整したから、ぶったところがはれるようにアメリカ経済がすぐよくなるわけではないし、またアメリカ国際収支が好転をするはずもない。少なくとも一年ないし一年半の状態を見てもらわなければならないということを強く申し述べ、向こうも、平価調整メリットは大体一年くらいかかるだろうな、こういうことでありますから、円の切り上げが要求されるということよりも、アメリカ経済政策がうまくいかない場合、ドル切り下げということがあるかもしれませんが、私はそれもないと思います。ドルをあれだけ切り下げたということ自体ヨーロッパ拡大ECは困り果てておるのでありますから、そういう意味では一番影響の多いと思っておったわが国が対米貿易がそれほど落ち込まなかったということだけでございまして、ドルもあれだけ切り下げられた直後、またドル切り下げということがあり得るはずはないわけでございます。  まあ輸出輸入の見通しがこのようでありますと同時に、百六十四億ドル、私は十二月になると、年度中には二百億ドルになるかもしれませんとこう述べたのは、ほんとうにそういう危惧を感じて述べたわけであります。同時に、二百億ドルになっては困るので、大蔵省に対しては強く外貨貸しの制度を説いておりますし、いまの金属鉱石問題等輸入とかストックの問題とか、こういう問題、強くいま要求しておりますし、私は外貨の利用という問題に対しては近く結論を得ることができると思います。そういう意味で二百億ドル——いまのままにしておけばそれは八月、九月を待たずして二百億ドルになるかもしれません。しかし、そういう非常に特異な経済情勢の中から生まれる外貨だまりというものをそのまま放置をしておくことは、私は政策がないといわれてもしようがないと思うのです。しかも、輸出輸入バランスだけではなく、短資が現に流入してきておる、こういうことでありまして、これは公定歩合で一割の差があれば短資は流入するにきまっておるのです。そういう問題にスピーディーに対処していくということで、外貨の急激な増加というものに対しては歯どめをすることもできるだろうと思います。思いますし、またなさなければならない。こういうことで円の切り上げに対しては、これをやったら、こんなことを考えて経済政策をやっておったら、それはもう日本経済が浮揚することがないような状態になるおそれがある、こう考えております。
  7. 松平忠久

    松平委員 いまのお話で、このままでいったら七月、八月に二百億ドルになるかもしれません、私もそういう予想を立てておるわけです。たとえば二月の黒字が六億六千万ドル、こう発表されています。二月は異常であったということでありますけれども、すでにやはり二カ月はたっているわけなんです。したがって、早急に何らかの方法を講じなければならない。いまあなたが言われたように外貨貸し、それからいわゆる資源の買い取りについてのドル優先使用というようなこともありましょう。いろいろ考えられておりますけれども、要は早くこれを実行するということじゃないかと思うのです。  それからもう一つこの機会にお伺いしておきたいのは、一週間ばかり前でありますか、日本の相当有力な商社というか、ユーロダラーのたいへんな買い付けをいたしました。したがってユーロダラー日本に流れてきた。ユーロダラーの値段が上がりました。これは一体どういうわけなんです。政府は知りませんか。
  8. 田中角榮

    田中国務大臣 御指摘の事実に対しては存じません。存じませんが、そのような御発言があれば大蔵省にただします。
  9. 松平忠久

    松平委員 このことが行なわれてから三日ぐらいたったときにも大蔵省はこのことを知らなかった、そういう情報を私は持っております。かなりの額のユーロダラーを買った、何のために買ったのか私にもよくわかりません。いずれは、いわゆる将来のいろいろなことを考えてのことじゃないかと思うのですが、そういうことがやたらと行なわれているということをほったらかしておくということ自体、このことはおかしいと思う。それはあとでもって調査をしてお答え願いたいと思います。  それから、もう一つ短期的な問題としてお聞きしたいのは、ニクソンの訪中のあの前後におきまして、いわゆる中国に対する経済協力一つの国際的な動きというものがあるように私は見ております。その国際的動きというものは、アメリカかんでおると思いますけれども、ヨーロッパは必ずしもかんでおらない。フランスは若干かんでおると思います。そうして華僑もこの中にはかんでおる。そうしてある程度基金というものをつくりまして、中国を含めてのいわゆる経済協力、こういうことをやろうとしておる傾向にあるように思います。日本にも誘いかけというものもあったようでありますけれども、確かなことはわかりません。しかし、かなりの額を集めて一つ基金をつくって、中国を含めた各国に対して、これは銀行に金を貸せる。個々の企業に金を貸せるというのではありません。銀行もしくは政府に貸せる、こういう考え方であります。それはキッシンジャーを通じて先方との間に話が進められましたけれども、当初は北京政府はこれに乗ってこなかったということを聞いております。しかしその後いろいろ懇談を重ねた結果、これは一つ考え方だ、必ずしも資本主義の侵略ではないという考え方になりまして、その構想がある程度受け入れられておるということを聞いておるわけです。これに対して大臣は何か御承知ございませんか。
  10. 田中角榮

    田中国務大臣 日本加入要請があったというような事実は承知しておりませんし、そういう事実はないと思います。うわさの域を出ないわけでございますが、あなたの耳に入ったように私の耳にも幾らかうわさは入ります。そういううわさは聞かないわけではありませんが、それは大中国がそんな幾ばくかの資金援助などを得るはずはないと私は思っておりました。ただ結論的には、まあうわさの域でございますから私もつまびらかにしないのでございますが、金の援助等ということに対しては、これは全然そういうことには乗らないというようなうわさでございまして、これは公式な席上でお答えすることがいいかどうかわかりませんが、うわさによって御質問があり、うわさでも聞いたことがあるかという、こういうことでございますから、前段を申し上げて、私の知る限り申し上げたわけでございます。
  11. 松平忠久

    松平委員 当面のことは以上で一応一段落いたしまして、長期的な展望に立っての方向へ移ってまいりたいと思うのです。  問題は、大臣所信表明にもありましたけれども、やはり現在の国際経済の大きな変化というか、そういうものに対処していくためにいろいろと所信を述べられたわけであります。その述べられておる第一の点は、いわゆる国際経済関係の動向に注目しなければならぬということを強調しておって、そうして経済国際化問題というか、国際化対外面についてそういう方向を強く打ち出していく、自由化推進とか、経済協力の拡充、経済国際化推進というものを大臣は強調しておられるわけです。  そこでお伺いしたいのですが、その一つの大きな問題点は、先ほども触れましたけれども、貿易問題だろうと思うのです。この貿易問題について政府の考えておられることをお聞きしたいのです。それは、たとえば日本貿易輸出入バランスというものは非常にアンバランスなんですね。たとえばアフリカとか東南アジア、これは輸出が多くて輸入が少ない。非常にアンバランスでありまして、そのアンバランスを直すためにいろいろと皆さんは努力をしてきたと思うのです。ジェトロ等につきましてもそういうことで、一昨年でありましたか、そういう方向を打ち出してきたこともわれわれ承知しておるわけなんですが、一体こういったアンバランスをどういうふうにしてやろうとしているのか。いわゆる開発輸入というものももちろんございます。いろいろありますけれども、根本方針として日本貿易の将来というものをどういうふうに持っていこうとする見取り図というか、そういうものを持っておるのかどうか。その見取り図によって、ステップバイステップでやっていくという考え方であろうと思うのですが、そのことについて現在までのやり方、将来の展望というものを、抽象的になりますけれども、お答え願いたいと思うのです。
  12. 田中角榮

    田中国務大臣 輸出入アンバランスというのは、七一年、昨年一年間非常に大きいわけでございます。約二百四十億ドル輸出に対して百九十九億ドルということでございますから、これは約五十億ドル程度アンバランスといえばアンバランスでございます。こういうアンバランスが続くという意味では、どうするのかということになれば、日本貿易立国貿易をしなければならない、輸出が伸びなければわれわれの生活レベルが上がらないという事情にありますから、これはどうしても輸出を伸ばさなければなりません。なりませんが、外国は自分の国との貿易は大体バランスをとりたい、こういうことでございます。その意味で、どうしても貿易バランスがとれない国があります。それは中近東のように石油を多く入れる、そして出るものは少ないということになれば、これはしようがないのです。日本のほうが輸入アンバランスであります。それからキューバのように砂糖をうんと買う、しかし出すものはない、こういうことでありますと、大きな輸入アンバランスであります。それから豪州、ニュージーランドのように羊毛の買い付けが非常に大きい、出すものはあまりないということになると、こちらの輸入アンバランス。去年は輸出のほうがアンバランスになったわけであります。共産圏を見ますと、大体バランスしている。中国大陸を除いては全部バランスがとれております。特に去年を見ますと、西欧が十億ドル輸出に対して十億ドル輸入ECは六億ドルに対して五億ドルEFTA諸国は五億ドルと四億ドル東南アジアが、輸出が二十五億ドル輸入が十六億ドル、こういうふうにアンバランスになっておるわけでございますが、先ほども申し上げたように、七一年の貿易数字というものは過渡的な現象であって、この数字をもって日本を律してもらっては困るということを国際会議で声を大にして言っておるわけでございます。これは、一〇%以上の成長率が十六年間も続いてきた後に、去年三%台に成長率が落ち込んだために輸出が伸び、輸入が減ったんだ、こういうことでありまして、ことしは、先ほど申し上げましたように輸入はうんとふえて輸出が減りますが、こういうことでバランスをとろうとしております。しかし、私は現実的には、輸出というものが罪悪であるような考え方をしておるのは、やはりそういう考え方罪悪だと思うのです。日本輸出する以外にわれわれの生活は伸びないのでございますから、やはり輸出はする。しかし、輸出をしてその金をためていくところに問題があるのですから、その金を国際機関投資をするとか、開発途上国に対して経済援助をするとか、また現地との合弁会社をつくって開発援助をするとか、そういうことに使う。そういうことによって日本の将来が明るくなるのであって、やはり国と国との状態で、どうしてもバランスをとらなければならないという国もございます。ソ連などは、いままではバランスは確実にとれておったわけですが、今度はバランスを言っておれない。チュメニの石油開発に対して十億ドル程度長期投資をしないか一これが行なわれれば数字の上ではアンバランスになるわけでございます。ですから、これは国との間に特殊な事情がございますので、やはりバイケースで考えていく。そして結果的には、日本貿易収支総合収支の上に大きな黒字幅が出て世界からイエローヤンキーエコノミックアニマルというような指弾をされないように、やはり全世界貿易拡大のためにこれを投資をするということでなければならないと思います。  もう一つは、国際ラウンドに対しての御質問でございますが、これはやはり日本貿易の国でございますので、第一次大戦から第二次大戦の間のように縮小均衡になれば日本自体の置かれておる世界の平和も維持できない、こういうことになると思います。そうすれば、やはり拡大均衡方向にわれわれも協力をしていくべきであり、それの先頭に立って協力をし、新政策推進しなければならない、そう考えておるわけでございます。東西問題からすでに南北問題に世界の焦点が移りつつあるときに、やはり主要工業国開発途上国との間の経済的調整をとるために、日本はそれなりの協力をする。まあ国際機関の中でも協力をすると同時に、やはりDACの平均を上回るような開発途上国への投資を進める、こういうことで、言うならば、私は望ましい日本人像、好ましい新しい日本貿易という姿がまず世界に認められる、こう考えておるのでございます。
  13. 松平忠久

    松平委員 まさに抽象的にはそのとおりなんです。そのとおりだけれども、過去においてそういうふうに動いておらない。いまあなたがおっしゃいましたように、エコノミックアニマルだとか、そういうよからぬ代名詞が置かれておる、こういうわけなんです。いまあなたがおっしゃったことをあげ足をとるわけではありませんけれども、DACから勧告がきておりますね。DAC勧告は、日本経済協力についてはもっと条件を緩和しろということなんです、いっておることは。いまあなたはDACのいうことよりももっと緩和しなければならないということを言っておった。しかしDACからは、日本に対してはまさにそういうことを勧告してきておるわけです。それが実行できないのは一体どこに欠陥があるのですか。これは内閣全体の責任であるけれども、この経済協力ということに言及するわけなんですが、その経済協力について十三億ドルばかりやっておりますけれども、その条件というものは、ほかの国に比べてきわめてまずい条件だ。したがって、DACから条件の緩和というものを勧告してきて、おる。ところがそれに対して、日本は若干それは緩和したかもしれませんけれども、その勧告を受けるまでもなく、日本立場としてはやらなければならない。ことに東南アジア等につきましては、もっともっと条件を緩和した経済協力をしなければならぬはずであったにかかわらず、それをやらなかった。それはどこに原因があるか。だれがやるのか。大蔵大臣大蔵省がやらなかったのか、事務的に。しかしその責任は私は内閣にあると思うのです。どうして一体できなかったのですか、これは。
  14. 田中角榮

    田中国務大臣 開発途上国に対する経済援助については、DACの平均数字までにならなければならないということを申し上げたわけでございます。これは量的な問題をまず申し上げたわけでございます。国民総生産の一%——現に〇・九三%ということでございますから、これを一%以上にしたい。そうすれば、DACの加盟諸国の平均にもなるわけでございまして、この量的拡大に対しては、私は十分これにこたえていけると思います。ただ質の問題がございます。質の問題は、ほかの国々、まあ先進工業国は特殊な事情もあるのです。これは一つには、かつて自分の植民地であったというような関係で、植民地の間には、特別に無関税制度をとっておったというような状態もございますし、まあ日本とは違う面もございます。アメリカは、これは軍事援助に付随した経済援助ということで現ナマを出しておるということで、言うならば、日本の海外経済協力基金からの援助をもっとふやしなさいということでございます。輸銀中心のコマーシャルベースによるものプラスアルファでは、ほんとうに援助になるのかどうかというところが常に指摘せられておるところでございます。言うならば、海外経済協力基金の資金量をも一つと拡大しなければならない。それと、海外経済協力基金と輸銀との協調融資、これに民間との——民間の銀行団がシンジケートをつくって、これに合わせて段階をつくれば、これは国際的になると思うのです。いま国際的には、主要工業国はIMFがスタンドバイクレジットでめんどうを見ることになっておりますし、SDRの制度でもってお互いが協調し合うようになっております。それから、中進国に対しては世銀が七分二厘五毛でございますかで融資をしております。それから、開発途上国については、第二世銀が無利息、五十年ということでございます。また、それに対していろいろなことをやるのは、第二世銀が半分、世銀が半分、抱き合わせれば三分五厘か何かになるわけでございます。そういうことで、日本開発途上国に出しておる援助はコマーシャルベースプラスアルファであって、これは質の問題の問題がある、こういうことでございますが、これからもひとつ質の問題も大いにやろう。私たちが政府援助などをやると、どうも日本がまたいろいろなことを言われるとまずいので、お互い相対ずくで話をするコマーシャルベースのほうがいろいろな国々の理解を得られると思ってウエートを置いてきたわけでございますが、そうではなく、やはり利息は安いほうがいい、償還年限も長いほうがいい、政府ベースの援助のほうがいいんだということであれば、そのようにだんだんと切りかえていくということはもう御指摘のとおりだと思います。ただ、だれがといいますが、とにかく去年の一月には外貨の手持ち高は四十五億ドルしかなかったわけでございます。そういう意味で、あっという間に百六十四億ドルになったのでございまして、私も通産大臣に就任してからもうすでに半歳余の歳月を経ておるわけでございますから、そういう責任は多分にあるわけでございますので、毎日のように大蔵省とかけ合って、とにかく何とか経済援助というようなものをもっと効率的なものにしたいということ考えております。  ここで一つだけ申し上げておきますのは、いまの外為法の改正を行なわないでやろうとしているところに問題があるわけでございます。円の収縮を伴わない外貨の貸し付けはしないということでございます。そうなると、外貨がたまるたびに国内の流通円はふえるわけでございまして、そういう問題に対しても調整を行なわなければならないのであって、いま幾つかの案を出しまして、大蔵省が短期証券を出してその間にやったらどうとか、ユーザンス期間をうんと延ばしたらどうとか、また場合によっては単行法を出して、ある一定の額の長期的な投資に対しては円の収縮も伴い、しかも金利は安くなる輸銀法の特例ができるかどうか、こういうような問題、これは通産省、外務省、経済企画庁及び大蔵省の四省協議でございますので、そういうことで御指摘を受けるようなことなきにしもあらずということでございますから、今度はプロジェクトが出てきてから半年も一年もかけるような過去のような状態はやらない。大蔵、通産、外務の三大臣に、ある時期が来たら自動的に上がる、上がったら採決を行なってもきめよう、そうすれば、大体海外投資には外務大臣通産大臣は賛成でございますから、いつでも二対一になるわけでございます。そうすれば、特別決議もできるんだからということで、かつてもう五つか六つの大きなプロジェクトをきめておるわけでございまして、おしかりを受けないように、責任の所在等を追及されないうちに私たちもひとつこういう問題を十分効率的に処理してまいります。
  15. 松平忠久

    松平委員 私が質問申し上げたのは、やはり質の問題なんです。量の問題は、大臣が言われたようにだんだんとのぼってきました。ところが、質が問題なので、質についてはいろいろな苦情があるわけなんです。だから、この点については過去においてかなりの苦情があったわけでございますから、早急にこの問題の解決をはかっていただきたい。またこれは後ほど御質問いたします。  そこでもう一つ貿易の関係で質問申し上げたいのは、要するに世界的に貿易自由化というものをはばんでいる一つの要素は、これは言うまでもなくアメリカ経済政策というものが、やはり自由化とは若干異なった自国本位というものを前に出してきております。それからもう一つECとEFTAとの関係、こういうものでも一つのブロック経済に進んできている。私はこういう傾向だろうと思うのです。そういたしますと、いわゆるブロック経済というものが進んでくるということになりますと、そこに世界的な貿易自由化とは逆行したような空気が流れてくる、逆行したような政策というものが行なわれてくる、こういうふうに思います。そういうものを阻止する一つ方向というものは、IMFとかあるいはガットとかこういう世界的な経済の秩序というものについての国際協定というものはあるわけなんでありますけれども、しかしガットあるいはIMFだけでは今度はだめになる要素が一つ出てきはしないか。そういうブロックの形成というものがだんだんとやってまいりまして、そうしていわゆるブロック主義というか、そこまでいきませんけれども、そういう方向へいくと、自由化がはばまれるという世界傾向が出てくると思うのです。ところが、日本ではそのブロックに入っておりませんから、おっしゃったように貿易立国ということをやらざるを得ない。そうなりますと、いまのようなブロック化の傾向が濃くなってくると日本が困るわけですね。したがって、その間において、国際間に、単にガットとかあるいはIMFというような国際協力的な関係の条約以外に、何らかの方法でいわゆる自由化と逆行するものを阻止するということを新たに考えていかなければならない、こういう時代が来ないとも限らない。こういう傾向にいまは見えるわけです。これに対して、政府は何らか関係各省の間において話し合いをしておられるのかどうか、もし話し合いをしておられるとすれば、どういったことを国際的にはもう少し強調しなければならないというテーマですね、そういうものについて、もしおありならばお話しを願いたい。
  16. 田中角榮

    田中国務大臣 御指摘のとおりでございまして、アメリカ経済がニクソン新政策が出ましてから多少閉鎖的になりつつあることはいなめないわけでございます。またドル防衛というテーマを土台にして、シップアメリカン、バイアメリカ政策というものがとられて後に今度の新政策になったわけでございますから、非常に大きな世界経済拠点が、どうも閉鎖的になるおそれが多分にある。そういうことをさせないというために、日米間の繊維協定もその一つでもございます。繊維協定は真にやむを得ないとしても、あとのものに対しては実績を見ながらお互いに考えていこうということでございました。  もう一つ経済的拠点は、先ほども御指摘がございましたように拡大ECでございます。これもイギリスが入って十カ国になり、しかもこの十カ国とEFTA諸国が手を組めば、域内貿易だけを主体にしておる拡大ECが、日本に対して輸出の面、輸入の面で一%から一・五%のシェアしか持ってないということを考えてみても、これが閉鎖的になる場合は非常におそろしいわけでございます。一面、私たちはサンクレメンテ会談において、経済問題としては日本アメリカ拡大ECが参画して一つの正三角形の形を考えようじゃないか。それに大きなソ連及び中華人民共和国というものが加われば五つの結晶の核になる。こういうものが拡大均衡という道を絶対閉ざさない。縮小均衡になれば、持てる者と持たざる者との間に紛争が起き、一次戦争から二次戦争の道を歩んだ歴史を繰り返すわけでありますから、これは絶対に避けよう。それで具体的な問題として提案をしたのが、ことしでもって期限の切れるケネディラウンドの終幕を前に、新ジャパンラウンドの提唱をやったわけでございます。アメリカもこれをのんで、ガットの場でこれが検討され、正式に採用され、決議になったわけでございまして、拡大均衡の道だけはどうしてもお互いが手を握っていこう、こういうことであって、特にアメリカも痛しかゆしだと思います。国内的には多少閉鎖的な、アメリカモンローに閉じ込もるというほどのことではありませんが、何らかうちを建て直すための閉鎖的な方向もやむを得ないと思いながら、アメリカは七百億ドルという大きな海外投資をしておりまして、これが閉鎖経済になる場合は、いつその海外投資が国有化にされるか。もう混乱のもとになるにきまっておりますから、そういう意味ではやはり拡大均衡世界の平和、南北問題というものをテーブルの最大の議題として、これに合う政策推進する以外にないということだけは事実でございまして、ガットとかIMFとか世銀とか、金・ドルの交換が停止をされて以来非常に弱体なものになりつつあることは事実でございますが、これにかわる何をつくるか。これは非常にむずかしい問題でございまして、とにかく日本もいい知恵があれば、これはひとつ大いに——今度のチリのサンチアゴで行なわれる国連貿易開発会議であっても、同じようなメンバーで同じような議題を絶えず話し合うところでありますので、これは何とか国際調整機関というものは必要だと思いますが、いまのところ四五年につくられたこれら国連の下部機構に匹敵をし、これを上回るような性能を持つ機関が具体的には提案されない。お知恵がございましたら拝借したい、こう思います。
  17. 松平忠久

    松平委員 その次に伺いたいのは、日本における貿易の秩序に関してであります。  先ほども出ましたエコノミックアニマルだとかそういったことの代名詞が出てくる一つ問題点といたしましては、私は日本輸出入業者の秩序というものが、いろんな輸出入に関する法律をつくりましたけれども、実際にはそれは行なわれておらない。そこで海外におきまして過当競争を行なっておる。東南アジアにいたしましても、ことにアフリカあたりはたいへんな過当競争なんです。そういった過当競争は法律をつくってもなかなかうまくいかない。そうして、これは貿易業者だけではなくて、その背後にあるメーカー、これがやはり非常な競争原理を持って外国に対して過当競争をやって、そして相手国の商人、貿易業者、事業者というものに損害を与えるという場合が少なくありません。したがって外国は、日本貿易の業者に対しまして信用というものをだんだんと失ってくる。日本貿易会社の信用が失われてくる、こういう現象がいままでずっとあったわけです。ですからいろんな法律なんかつくりましたけれども、これはうまくいっておらない。これが現状ではなかろうかと思います。かてて加えて、いわゆるナショナリズムの発展というものが、この発展途上国の間にはほうはいとして出てきているわけであって、したがってそれを無視しては何もできない、こういうことであります。それに対して日本としての取り組み方は、いま申しましたような秩序を破壊するような業者のやり方、これに対する法律的効果というものはほとんどない。一体どういうふうにしてこれを直していく方法があるのか。日方の貿易業者なりメーカーなりというものが、ただ自由にもうければいいのだ、こういう考え方で海外に進出したり貿易をやっているということでは、いわゆる世界経済秩序を破壊する因子として諸国が認めるということになりますので、これはきわめて大きな問題だろうと思うのです。これに対して法律的ないろんな取り締まりの効果というものはないというような現在の段階におきましては、何かいい方法をもってこの秩序を回復するように頭の切りかえをはかっていかなければならない、こういうふうに思うのですが、これらの問題については通産省としてはどういうふうに一体お考えになっているのか。
  18. 田中角榮

    田中国務大臣 輸出秩序の確立、オーダリーマーケティングという問題に対しては最大の問題としていま考え、これを実行に移しておるわけでございます。輸出入取引法に基づく輸出カルテル、本年一月一日現在で百六十七件、業種別に見ますと、繊維品六十三件、重工業製品四十五件、雑貨類二十六件、化粧品十八件、農水産物十四件、非鉄金属一件、こういうふうになっております。また輸出令に基づきまして輸出秩序維持貨物として指定しておりますのが、ミシン、双眼鏡、ミカン、かん詰め等二十二品目あります。  実際これは公式答弁でございまして、外国にもいま言われるのは全部それなんです。ソシアルダンピングをやっているんじゃないかということで、私も通産省に参りましてから、業者の会合とは業者が参りますと、とにかくアメリカでもどこでも、何でこんなにたくさん輸出をするのだ、輸出をする価格はみんなダンピングに近いものだ、こう指摘をされておって、そんなに競争をしてなぜ会社がもうからないのだ、出血輸出をするという限りにおいては、輸出秩序が確立しておるとは言えない。これは外交交渉でもって非常に難点となって指摘をせられておるのであって、こういうものに対しては業界の自粛を特に求めたい。業界の自粛が求められないということになれば、これは法規制を行なう以外になくなるから、法規制は最後の手として、なるべく行なうものではないのだから、何とかして——世間からいわれておるにもかかわらず、なお通産省が輸出秩序確立のための法律を出さなければいかぬということになれば、それ見ろということになるのであって、そういうことを避けるためにもぜひひとつ考えてもらいたいということを強く言っております。  同時に、アメリカ等においてはアンチダンピング法の適用等いろいろございますので、紛争が絶えません。そういう意味で、アンチダンピング法の適用に対しては法廷闘争を行なわない前に、事前にひとつ両国でもって話し合いをして、われわれも業界に対しての自粛を求めたい、こういうことも言っております。それから自動車や家電製品等に対しては一〇%以上の値上げを行なわせました。適正な利潤というものを必ず持つべきである。しかも、戦前の日本の製品は、安かろう悪かろうだったそうでございますが、今度のはよかろう安かろうというところに問題がある、こういうことでございます。  日本人は働くのです。なかなか意欲的なんです。私もこの間アフリカの事例を聞きましたが、アフリカのどんな山の中にも日本の商社の出張員が売り込みに来ておる、こういうことでございまして、このたくましさが戦後の日本経済をつくったことではございますが、やっぱり自粛をしないと元も子もなくするということがございますので、各社の協定その他もあまり競争をしないようにということを慫慂しております。  同時に、大きなプロジェクトにつきましては、このごろジョイントベンチャーでやらせることにしたのです。これは私が通産省に参りましてから、アルゼンチンの鉄道でも、それからイランの石油やパルプでも、こういうものはみんな何社か入って、とにかく過当競争は絶対にしない、こういうことでもってやらなければ、日本の国益を守ることはできない、こういうことでそれなりの実績をあげておると思っております。各国との間にも、またこの間ECの代表が来日しましたときも、いろんな事例をあげて、日本製品が洪水のようにやってくるというのはそれは被害妄想である、事実はこういうふうに歯どめを全部してあるし、輸出秩序は確立をされておるので、おそるることはない、こう強く所信を述べておいたわけでございますが、これもあまり官僚統制になってどうにもならないようにするのも、戦時中じゃないわけでございますから避けなければいかぬ。同時に、日本みずからに戻ってくるようなダンピングや過当競争や、そういうものはやっぱり避けてもらうように通産省も鋭意努力を傾ける、こういうことでひとつ御了解のほどをお願いいたしたいと思います。
  19. 松平忠久

    松平委員 ちょっとそれは了解しかねるのですけれども、やはり何といいますか、日本における現在の資本主義体制のもとにおいて、国内においての自由競争、そういう方向で国外に対してはさらにそれを高めていくというような体制だろうと思うのです。したがって、国内においてのいわゆる過当競争的なやり方、何でももうければいいんだ、こういう古い時代の資本主義的な考え方ではなくて、いまは人間優先とか人間尊重とかいうことが非常に叫ばれているわけなんです。そういった意味において、国外に対しましてもなおさらにこれを拡大強化していくという考え方で——私は何も官僚統制、法律をすぐつくれという意味じゃありませんが、何らかの方法でこれをやっていく必要があるのではないか。ジェトロは中小企業のためにもうけられたということがそもそものレーゾンデートルなんですけれども、しかし私は、ジェトロがこれだけ大きくなってきたら、やはりジェトロをもう少し発展的に仕事をさせていくということを考えて、そうしてジェトロ等を通じていまの秩序を確立していくというか、そういうことを考えるのも一つの手じゃないか、こういうふうに思っているわけなんです。いわば貿易業者なりあるいはメーカーなりというものに自覚を与えていくというか、いま大臣がおっしゃったけれども、ときどき呼んだりしていろいろ自動車業界とか家電メーカーとかに言っておられるそうだけれども、そういうものをもう少し秩序立ててやるということにしたらどうか、こういうふうに私は思っているわけなんです。そういう面で、いまのただ気持ちだけではなくて、何らかの制度的な、法律に基づかない制度的なものでもいいのです、そういうものによりましてもっと秩序立てていく、過当競争をやめていく、そうして相手の信用を獲得する、こういうところに本旨を置いたような指導のしかたというものはできないものだろうか、こういうことなんです。
  20. 田中角榮

    田中国務大臣 御指摘のとおり、ジェトロは輸出振興から輸出秩序確立への方向に任務を移しつつございます。私がいま考えておりますのは、これは通産省から各在外公館にひとつ出したい、こう考えておるのです。いままでは在外公館の日本一つの特性でございますが、国益を守るということでございますけれども、どうも一日本の大使館では商売にはなるべく口をききたくないということが原則でございました。商売は民間でやるべきものである。ところが外国に行きますと、そうじゃないのです。外国に行くと、私も外国の相当な偉い人に何回も会うのですが、帰るまぎわになると、保険会社の支店を申請しておりますが御認可を願います、こういうことをすぐ言うのです。飛行機を二、三台どうですという話を平気でやります。国益を守るということにおいては、いまのように経済外交、経済が外交の大宗になりつつあるというときに、私はやはりそういうことをしなければならないと思うのです。そういう意味では、在外公館に専門家を置く、それで絶えずその国の日本の商品に対する、日本経済活動に対するいろいろな情報を収集する、そしてこれを本国に送致をする、同時に本国も出先も、業者の、ことに日本貿易の実態を把握して、そして輸出秩序の確立ということには責任を持てるようにする。いまのところでは、アフリカや南米に行きますと、在外公館が全然知らない商談がどんどん進んでおる、こういうことでございまして、そういうところにやはりメスを入れるべきだ。私は、二百人、三百人の貿易官というものが在外公館にほんとうに常駐できるような体制でないと、通産省自体が現地の状態をつかむことはできませんし、それはほんとうに日本の国益を守るゆえんではない。こういうことで、ことしはできなくてはなはだ遺憾でございますが、いまごろから大蔵省と十分相談をし、外務省にもよく頼み込んで、通産省の職員のワクをふやしてもらって出す、農林省の職員を出す、こういうことになれば、輸出秩序の問題に対してはほんとうに相当な成果をあげることができるのではないかということで、いま鋭意検討を進めておる段階でございます。
  21. 松平忠久

    松平委員 それから貿易の関係でもう一つ伺いたいのですが、この間大臣は参議院のたしか本会議において答弁されているのですが、共産圏に対する吉田書簡の問題についてですが、吉田書簡があるけれども、中国に対しては輸銀の延べ払い制度を使う、ケース・バイ・ケースだ、こういうことを大臣はおっしゃっておったようですが、吉田書簡というものは、吉田さんがおらないわけなんです。これを取り消すことはできませんか。これはきのうでしたか、野田さんも、取り消すということの要望があるならば考えてもいいということを大阪で発言しておるわけなんですが、私は吉田書簡というそのものが問題だと思うのです。ですから吉田書簡というものを取り消す、ただ口で、ないものにするというだけでなしに取り消す、こういう態度を政府はとれないものかどうか、こういうことなんでございます。
  22. 田中角榮

    田中国務大臣 吉田書簡というのはこれは個人的な書簡でございまして、政府がこれを取り消すとか取り消さないとかいう筋合いのものではございません。これは一貫した政府の答弁でございます。どうもこの吉田書簡というのが問題になっていることも事実でございますし、取り消すことができるならばそれも一つの方法だとは思いますが、いま御指摘になったように吉田さんはもうなくなられておるわけでございます。なくなった人が出した私信を、政府が取り消すようなことをすることは一体可能なのかどうかという問題でございます。私は当時大蔵省に在職をしておりまして、吉田書簡が出る前でございますが、日本から経済ミッションが行かれて、そうしてきめてきたのは何かというと、クラレのビニロンプラントでございました。私は当時大蔵省におって、これに決裁を与えて、そして延べ払いを認めたものでございます。その後吉田書簡が中華民国政府に送付せられたのだと思いますが、どうしていまだにそれが障害になっているのか。私自身もまあ政治的な感覚で全然わからないわけじゃありません。わからないわけではございませんが、なくなった人の書簡を取り消すということが、そんな権限が政府に与えられておるのかどうか。私は何回も何回も御質問があるたびに胸に手を当てて考えてみたのでございますが、これはもう取り消す、取り消さないの問題ではないのではないかというのがすなおな感じでございます。
  23. 松平忠久

    松平委員 そういった私信に関して、私信があったからということで延べ払いのケース・バイ・ケースということを言ったけれども、ちっともやっておらないということは、やはり私信が有効だったと思うのです。世間はそう思っています。したがって、これは政治的効果としては私はあれはもう認めないんだ、こういうことを政府が声明すればいいのです。それはできないですか。
  24. 田中角榮

    田中国務大臣 総理大臣が、本会議で同種の質問に対して、吉田書簡に拘束は受けません、こう正規に答えておるわけでございます。
  25. 松平忠久

    松平委員 私は、これはもう少しはっきり政府で声明を出したらいいかと思うのです。それの政治的効果というのがある。それはぜひひとつ考えていただきたいと思います。  それからこれに関連して、大臣は、中国に対する延べ払い制度はやるということをおっしゃいましたが、北朝鮮に対してはやらないという意思表示があったように承っておるわけです。これは中国、北朝鮮、北ベトナム、みな同じでございましょう。そういうところに対しまして区別をして、中国に対しては延べ払いをやる、しかし、そのほかの国に対してはケース・バイ・ケースだ、こういう考えなんですか。
  26. 田中角榮

    田中国務大臣 中国から申請があれば延べ払いは輸銀使用は認める、こう非常に明確にお答えをしてございます。ですから、そういう申請があれば直ちに輸銀使用は実現をいたします。  それから、北朝鮮に対してはどうかということでございますが、これは政府全体としての統一的な考えで外務大臣がまず答えておるわけでございます。外務大臣が、これはバイケースでございます、特に慎重なバイケースでございます、こういうことでございますので、これはもう延べ払いというものに対してはどうしても外務省、大蔵省の協議事項でございまして、うんと言わなければ、通産大臣だけでは行なえないような仕組みになっております。そういう意味で、外務大臣が慎重にということでございますので、私も慎重にこう答えておるわけでございます。私はまあ慎重とは答えておらないので、バイケースでございますとこう答えている。私のほうは商売をし、しかもどこへでも売り、どこからでも買いたい、こういうことでございます。ココム制限などは全廃したいという立場から申し上げておるわけでございますので、私は特には申し上げておりませんが、やはり内閣は統一的な見解を述べておるわけでございます。これはどうしてかというと、この間前尾法務大臣がいみじくも答えましたように、やはり国際情勢の推移に照らし、国益を守る立場から、こういうことでございますので、そこらはひとつその程度で御理解のほどを願いたい。
  27. 松平忠久

    松平委員 北ベトナムに対してはどうなんです。
  28. 田中角榮

    田中国務大臣 北ベトナムに対しましてはバイケースでございます。
  29. 松平忠久

    松平委員 それでお伺いしたいのですが、外務大臣と大蔵大臣通産大臣の三者の協議だというが、通産大臣立場としては、これは延べ払いを認める、こういうことなんでしょうか。
  30. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほどからるる申し述べておりますように、私も佐藤内閣の閣員の一員といたしまして……。
  31. 松平忠久

    松平委員 気持ちは。
  32. 田中角榮

    田中国務大臣 公の席上でございますので、公の立場の発言をひとつ御了承いただきたいと思います。
  33. 松平忠久

    松平委員 大体それはわかりました。  しかしながら、国益云々ということを言われたのだけれども、中国に対する日本立場、日中両国の立場の上に立っての国益、それから北ベトナムなり北朝鮮と日本との関係における国益なりというものに対して区別をしておられるということなんですね、それでは。そうですか。
  34. 田中角榮

    田中国務大臣 これは外交上の問題でございまして、もう御質問をしておられるあなたが十分御承知のことでございまして、それは日本とほかの国との問題もございます。中国大陸にトラックを送るばかりではなく、今度はアメリカは、ココムにプラスアルファの部分を取り除いただけではなく、ココムの中枢的な品物であった電子工業製品、中継基地の品物を全部そのまま中国に置いてくるというところでございますから、私はそういう意味で、中国アメリカまた中国日本——日本はココム制限は全廃したいという考え方でいま大幅な緩和案を提案をしておるわけでございますから、そういう意味では、これは中国に対してはそうなんで、ところがさてキューバに対すると、アメリカは、トラックもいかぬと、こういうのです。ですから、キューバはトラックを買いたいということでしょうし、砂糖を積んできた船が帰るのですから、から船を帰すことはならぬ、せめてトラックか自動車を積んでやろうということで、いま私は調査を命じておるわけでございますが、やはりいろんな国によって違うと思うのです。ですから、同じ国であっても幾らか違うということは、その時点における国際情勢の推移に徴してということでございますので、そういうことでひとつ御理解を賜わりたい。
  35. 松平忠久

    松平委員 いまおっしゃいましたことは、またあとでもう少し詰めてみたいと思うのですが、大臣が言われたココムですね。ココムの撤廃について、現在はココムの品目はたしか百八十くらいあったと思うのですが、政府考え方は、この中で六十くらいを撤廃するという方針で提案しているということを聞いたのですが、ココムの全廃ということなんですか、それともその中の半分くらいまずやるということなんですか。もう少しココムの撤廃についてのプロセスなり政府考え方を具体的に示してもらいたいと思うのです。
  36. 田中角榮

    田中国務大臣 ココムリストの数量その他は公表しないことになっておりますので申し上げないほうがいいと思いますが、大体御指摘になったような品物、数量でございます。百六十七品目だと思います。そういうものの中で、私がサンクレメンテ会談で提案をいたしましたことは、全廃すべきである、こういうことでございます。私は、どうも考えたら、先見の明があったなと思ったのです。その中には電子計算機とか飛行機とか、いろんな問題がございます。もうすでにイギリスは大型旅客機を入れているわけでございますし、アメリカも、今度米中会談をやればアメリカから買うものといえば飛行機しかないと私は思うのです。飛行機には性能の高い計器が積まれております。それよりももっと性能の高い中継基地の全施設を置いてくるというので各国に協議を申し込んでおるのでありますから、これは私の提案が正しい。全廃というのは非常にショッキングな発言だと言っておりましたが、基本的には日本立場を理解し応援をしようということでございます。いま全廃ということには、なかなかEC諸国家等が踏み切らないようでございますので、いまのリストレビューにおきましては、その中の相当部分をひとつ緩和しよう、今度の上海の問題が起きましたので、もっと拡大しよう、こういう姿勢でいま協議を続けておるということでございます。
  37. 松平忠久

    松平委員 それに関連してもう一つ伺いたいのですが、中国の国連加盟の結果、国連の場におきまして、経済関係で、いろんな経済関係の会議において中国の代表が出てくるわけですね。そういった情勢の変化というものがあるわけですが、国連の場におきまして、経済関係で、いろいろと中国との折衝、接触というものが今後は行なわれてくると思うのです。そういった国連の場における中国側の代表団、ことに経済関係についていろいろと話があると思うのですけれども、そういう場合における日本政府の態度と申しますか、これはどういう態度をとるわけですか。前向きにこれと接触していくということであるのか、知らぬ顔して横向いているというのであるのか、どうですか、それは。
  38. 田中角榮

    田中国務大臣 中国は国連に加盟をいたしました。国連の下部機構であるところの経済機構——IMF、世銀、第二世銀、ガットというようなものにはまだ加盟しておらないわけでございます。その意味で、経済問題、貿易問題通貨問題等はこの下部機構の加盟が原則になっておるわけでございます。ソ連も有力な拒否権を持つ国連加盟国ではございますが、この経済機構には加盟しておりません。そういう意味で、経済問題に対しての発言という場は、非常に狭められているわけでございます。しかし、今度の国連貿易開発会議には中国側も代表を送るというようなことでございますので、私は、加盟するというのも時の問題ではないかと思います。これら国連の場におけるといなとを問わず、中国とは国交正常化をしたいということは、いま日本内閣がきめておる大前提でございますので、経済問題その他についても、中国と十分協議をし、協力をしてまいることは当然のことでございます。いま、日中貿易に対して円・元決済の問題も出ておりますが、これらの問題もきまれば、これを受け入れてよろしいというような、柔軟な態勢をとっておることも御承知いただけると思うわけでございます。特に、開発途上国といわれる東南アジアその他アジアの開発については、やはり日本中国が十分話し合いをして、前向きな姿勢をとっていくということになるのが、最も望ましい姿ではないかということでございます。
  39. 松平忠久

    松平委員 次に、経済協力について若干、質問したいのです。  先ほども触れられましたけれども、経済協力なり、貿易もそうでありましょうけれども、経済協力についての日本国内の機構の多元性というか、そういうものがわれわれには非常に目につくわけなんです。たとえば、海外経済協力基金、これは企画庁の所管である。輸出入銀行、これは大蔵省だ。技術の関係の協力事業団というようなものは外務省だとか、いわゆる海外経済協力について、日本の機構はたいへんに多元化されておるわけです。そういう多元化された機構というものがうまく運営されていくならそれもよろしいけれども、やはり多元化すればするほどいろいろな摩擦もふえてくるし、人的関係の複雑さもふえてくる。そこで、経済協力日本の機構、これはもう少し単一化の方向へいかないものかどうか。非常に複雑で、各省にまたがっておるわけなんです。したがって、海外経済協力関係につきまして、日本は量的には進んでいるけれども、質的にはまだとてもいかぬ、どこかがチェックしている、こういうふうに見えるわけであります。  そこで、将来の経済国際化ということとにらみ合わせてみますと、日本における海外経済協力の機構を何かいじらなくちゃならぬじゃないか、こういうふうに私は見ておるわけです。それについて、政府部内では若干相談したことがあるのかどうか、あるいは大臣自身はどういうことを考えておられるのか。きわめて重大な問題だと思うのですけれども、お答え願いたいと思うのです。
  40. 田中角榮

    田中国務大臣 御指摘の問題は、長い間の懸案の問題として検討したわけでございますが、一応の結論は、いまのまましかないということになったわけでございます。  従来においては、貿易省構想がございました。それから経済協力基金輸出入銀行は統一すべきである。経済企画庁長官がおられますが、経済企画庁の所管になるまでは、ゆえあってなったわけじゃないのです。これは、通産省と外務省で話がさっぱりまとまらぬので、各省でまとまらないのはみな経済企画庁にいくのか、こういうことをあの当時コラム欄に書かれて、非常に困ったような状態もございました。そういう経緯を経て、所管がいま経済企画庁になり、外務省、大蔵省、通産省、四省に分かれておるわけでございます。そういう意味で、現実に、第一世銀の総裁が第二世銀の自動的な総裁である。機構は別であっても、そういうことによって、先ほど申し上げましたように、五十年無利息というものと、世銀の七・二五でございますか、この金利を、国によって、プロジェクト別に、どのくらいのあんばいで、どっちを多くするかということになれば、自動的に金利や償還期限がきまるわけでございますから、そういうことで常に政治問題化さないように、タイムリーにものを運べるようになっておるわけです。そういう意味で、輸銀の総裁が海外経済協力基金の総裁を兼ねるということでなくて、一緒にしたらどうか。特に輸銀問題が国際的にたいへん問題になったときもありますので、そういう意味で改組を考えたこともございますが、しかし、結論は、いまのところでまあ当分やろうということになっているわけでございます。  国会でいまのような御発言がたびたび出てくれば、これにこたえるように機構の合理化というものも進むと思いますし、また、皆さんから御指摘がなくとも、どうすれば一番メリットが多い機構になるのかということに対しては、やはり積極的な検討を続けていくべきだと思います。特に、この経済協力の問題が国際的な問題になり、へたするとみんな、日本商品に対して二国間協定を結ぶような、そういう保護的、閉鎖的な状況を招くおそれのあるような状態、そういうとき、また、経済協力は量から質の問題へ急速に移管しなければならないというときでありますので、これはやはり真剣な一つのテーマだろうと思います。
  41. 松平忠久

    松平委員 先日、あなたのところの事務次官の両角君が、海外経済協力庁というものをつくったらどうか、こういうことを新聞でちょっと述べておりました。通産省としてはそういった考え方を持っておられるのかどうか、そういう構想を通産省全体として今後推進していくという考えなのかどうか、その点を伺っておきたいと思います。
  42. 田中角榮

    田中国務大臣 通産省は、昔から貿易庁そのものはございまして、いまの内局になったわけでございますが、貿易省と通産省との調整をどうするのか、やはり貿易省というものをつくる必要があるんじゃないか、そういうことの一環として、貿易省という名前では、そうではなくとも日本輸出がということでいわれておるんだから、世界的に容認されるもの、望ましい姿と映るもの、そうするとやはり経済協力省か経済協力庁かなということで話し合いはしておるのです。話し合いはしておるのですが、これは大蔵省、通産省、経済企画庁、外務省という四省協議でございますし、つくるとすれば農林省その他からの問題もございますし、そういう意味で急に問題が具体化するという問題ではございませんが、行政機構の改革を行なう、再編成が行ない得るとしたならば、それはもう最も大きなテーマの一つとして考えなければならない問題である。通産省そのものはトレード・アンド・インダストリーといっておって、これがどうも、いまの通商産業省で一体いいのかという問題で、絶えず自己革新をやろうということで研究をし、勉強をしておる、こういう段階でございまして、まだ固まったテーマではないということを明らかにいたしておきます。
  43. 松平忠久

    松平委員 その次に、海外経済協力に対する態度と申しますか、二国間の場合もありますし、それから民間べースということもありますけれども、そのほかに、先ほども出ましたが外国とのジョイントベンチャーというケースもあると思うのです。それから国連を通じてということもあります。そういったいろいろな姿が海外経済協力にはあるのですけれども、この問題について、政府の中には、どういう方式をどの程度やっていく、何%ぐらいは国際間を通じてのやり方がいいのだろう、あるいは何%ぐらいは国と国との間、二国間ということがいいのだろう、そういった構想のようなものはお持ちなんですか。そうじゃなくて、行き当たりばったりに外国から誘われたからやるとか、国連からいわれたからやるとか、こういうことであるのか。その辺の根本的な態度というか、そういうものをお持ちになっているのかどうかということをちょっと伺っておきたいと思う。
  44. 田中角榮

    田中国務大臣 明確な基準は持っておりません。おりませんが、大きな流れとして、とにかく単位企業だけで商行為を進めるということではなく、なるべく国内においても、対外国の問題においても、過当競争を避けるというメリットがあることに対しては通産省と十分相談をしてくれということでございまして、いまの一億ドル以上というような長期プロジェクトに対しましては、日本の国内の業者を何社か抱き合わせて、しかもまたアメリカの業者も中に加えようということでイランの石油開発などをやったわけでございます。それからマイニングの問題等に対しては、現地に合弁会社をつくって、そしてこういう形式になるならば輸銀融資を認めましょうというようなケースでやっておるようなものもございます。いままでよりもスピーディーにものが片づいておりますので、そういう意味では業者も企画をするときには通産省の内意を聞いて、なるべくそういう意向に沿うようにということでやっております。  今度のチュメニの問題につきましても、私がサソクレメンテで正式な議題として述べたのは、アメリカ政府がこれに対してオーケーを出すはずはないことを承知の上だったのです。つまり石油は戦略物資でございまして、国家安全保障会議の問題でございますから、政府ベースで受け入れられるとは思いませんでした。しかし、チュメニをもし実行するということになれば、アメリカ政府の意向がさだかにきまっておらないと、アメリカの民間企業も開発活動に参加できないので、アメリカの民間企業日本協力体制をとってチュメニ石油の開発に参加することに異議はないか、こういう第二段の質問をしたわけでございます。民間人がやることに対しては政府は異議はない、それはコナリー長官にもまたスタンズ長官にも、国家安全保障会議のほうもオーケーでしょうな、こう念を押していたわけです。これらは正式のジヨイントベンチャーといえるかどうかわかりませんが、国際的なジョイントベンチャー式のものでございます。そういう複数以上で企業に参加をする、経済協力に参加をしていくということになれば、日本に対する抵抗感というものもなくなると思うのです。アメリカからあれくらい有利な条件で経済援助を受けておってもアメリカに対してあまり好意を持たないということでございますから、その轍を踏んではならない、こういうことでございまして、いま基準をつくって、すべてこの基準のワク内で処理をするということではございませんが、通産省も積極的に関係各省と意見の交換をしながら、理想的な企業参加の形態をとるように努力をいたしております。
  45. 松平忠久

    松平委員 その考えはいいと思うのです。やはり経済国際化ということは、そういう意味からいいましても、ただ日本だけでいくのだ、こういうような考え方ではなくて、やはり世界経済の中の一つという考え方で、ジョイントベンチャーなりあるいは国連を通してなり、そういうことのほうがスムーズにいく、私はこういうふうに思いますので、この点については一つ方向としてそれに重きを置くような海外経済協力の姿勢というものを確立してもらうことが一つの方法ではないか、こういうふうに思っております。これは私は田中大臣と同じ考えなんです。  それから一つ、長くなりますが、次に大臣が、第二の適正な産業の配置と環境保全についてということを発言されております。  そこで、この問題につきまして企画庁の長官に承っておきたいと思うのですが、いわゆる新全総の計画というものが出ておりますね。この新全総の計画というものは、その前の全国総合開発計画ですか、これが出ており、さらに新産都市法というものも出ておるわけです。そういうことで過去のいきさつというものにかんがみて、そうして新全総というものをつくられたと思うのです。ところが新全総の計画によりますと、各地区にブロックのようなものがありまして、そこで工業地帯というものをつくる。その工業地帯に約三十万ヘクタールの土地が必要だ、こういうことをいっておるのですけれども、前の全国総合開発計画というあのときの構想を見てみますと、たしか十万ヘクタールくらいではなかったと思うのです。ところが、今回はその三倍の三十万ヘクタールの用地を確保しなければならないというわけなんですが、非常にむずかしい問題ではないかと思うのです。ことに立地条件といいますか、とんでもないところへ持っていってもだめなんで、臨海とかそういうことの前提もあると思うのですが、そういうことについてはすでに自信を持ってこれを計画の中に入れておられるかどうかということなんです。どうですか。
  46. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 いま、いわゆる旧全総、新全総と私たち言っております。旧全総は、御承知のように都市の過大化の防止と地域格差の是正、これは二つの目標でありましたが、その戦略方法としては、どっちかというと地域拠点開発主義でありました。したがって、いわば既成都市の軒先を借りて工業地をふやすというような方式でありましたので、ある意味では国土の利用の硬直化というものを防ぎ切れなかった。とにかくわが国の経済成長経済、社会情勢の変化のほうが急激で旧全総の計画どおりにはなかなかまいらなかったというのが実情でございます。したがって、そういうような旧全総そのものの拠点開発主義によるたとえば新産都市、工特等のやり方はそれなりの一応の成果はあったと思いますが、その成果を踏まえながら国土利用の硬直性をどうして打開するかという点が大きな課題になってきたわけです。  そこで、新全総におきましては旧全総のそういう地域拠点主義の成果を踏まえながら、なおかつ開発可能性というものを、大きくいえば日本列島全体にひとつこれを拡大するというような考え方から、ただいま御指摘のような大きな遠隔地の大工業基地というようなプロジェクトをやろうというのが新全総の考え方でございます。そのためには、なるほど平地に大きな工業基地をつくるのですから、どうしても全国的なネットワークというものが必要である、これがまず第一前提になります。それと同時に、従来の旧全総ではいわば所得格差の是正にウエートが置かれておりましたが、今後はむしろナショナルミニマムと申しますか、そういうものの生活環境基準というものを是正をする。そういう格差を是正するというようなことからいいまして、広域生活圏という考え方も新全総の中には取り込んでおりますが、またもう一つは、拠点といいますか、その考え方が拠点主義ではどうしても工業に偏しがちでございましたのを、畜産とかあるいは流通という面にウエートを置いた大きな基地の作成、設置、そういうものにもウエートを置くようになったのが新全総の特徴でございます。同時に、環境問題が非常に大きな問題になってまいりまして、環境という点を旧全総以上に重く見てその計画の中に取り入れたのが新全総と旧全総の大きな違いではなかろうか、こう考えております。
  47. 松平忠久

    松平委員 旧全総の評価の上に立ってと言われておるわけなんだけれども、この旧全総を見ますと、たとえば当初予定しておった工業化というものが予定よりもっと進んでしまったという地域と、予定にはなかなかならないという地域があります。たとえば関東、東海というようなところは予定以上に進んでしまっている。ところが、九州、北海道というところは予定にならないわけですよ。ところが、国全体の生産ということを考えますと、関東なり東海というところは農業としては一番いいところなのです。九州は台風が来る、北海道は冷害が来るというようなことでもって、農業には不向きなんです。その不向きなところが工業化をして、そうして天候を克服して工業化を進めていくということに意義があるわけなんです。ところが農業で一番いいという関東なり東海という地区が、農業がどんどん減ってしまって工業がどんどんそこへ興ってくるということは、国土の、気象条件その他からいってこれはいい利用方法とは私は思いません。しかも、過密過疎の問題があって、太平洋ベルト地帯は非常に過密化されておる。そういうものに対して旧全総計画というものが、実はわれわれから言うならば、現在になってみるとちぐはぐというか、そういう感じを受けておるわけです。それらに対してはいままで指導方針なりそういうもので、当初予定されたような工業化の推進ということに何ら力を尽くしてこなかったということに私はなると思うのです。その点はどういうふうに反省しておりますか。   〔委員長退席、進藤委員長代理着席〕
  48. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 やはり旧全総のやり方自身に、いまおっしゃったような急激な日本経済成長についていけなかったという点があることは認めざるを得ません。そういう点を私は反省せざるを得ないと思いますが、しかし、それなりのメリットもございましたので、そういう成果を踏まえながら、今回のいわゆる新全総計画によってその点を是正していこうという考えでございます。
  49. 松平忠久

    松平委員 いま企画庁長官は、環境について、いわゆる公害問題等のことも勘案して新全総をつくったということを言われておりますけれども、いわゆる旧全総計画を実際に見てみますのに、たとえば、むつ小川原に大きな工業地帯をつくる。そこで、青森県のほうといたしましては、公害の問題は十分配慮するからだいじょうぶだ、こういうことを盛んに言っておるわけなんです。しかし、学者等の見解によりますと、むつ小川原で年間二千万キロリットルの原油を消費するというならば、少なくとも一年に六十万トンの亜硫酸ガスが出る。しかも、鉄鋼その他が同時にそこで開発されて行なわれるということになると、七十五万トンの亜硫酸ガスが出るということを公表しておるわけです。ところが、青森県では、これはもう絶対だいじょうぶだと言っている。それが実態なんですね。ところが、七十五万トンの亜硫酸ガスをどういうふうにして始末するつもりなのか。そういうことを考えながら新全総をつくったのかどうか。ということは、いまたとえば大気汚染にいたしましても、一〇〇%公害をなくすというふうな機械はありません。そういう施設はありません。うまくいって四〇%、五〇%、最大でもまず七、八〇%だと思うのです。そういたしますと、これは公害をまき散らしているわけですね。それらの点はどういうふうに考えて新全総を進めていくつもりなんですか。   〔進藤委員長代理退席、委員長着席〕
  50. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 従来の公害防止というのは、なるほど公害が出てから考えるというようなかまえで非常におくれてまいりましたが、新全総ではその当初から公害についてこれを予防的にあるいは広域的にコントロールするという考え方に立っております。御指摘のむつ小川原については、立地計画等はまださだかではございませんが、当然工業立地に先立って広域的に公害問題については、環境保全というものについてはこれを強力にコントロールするという前提のもとにこれは進めるという考えでございます。
  51. 松平忠久

    松平委員 それからそれに関連して、水とかエネルギーの問題があります。新全総にもありますそういうものにつきましては、一応相当実地に調査をしてこれをつくられたものなんですか。それともただ机の上でやられたものであるかどうか。これらにつきましては私はかなり疑問を持っているのです、地下水にしてもエネルギー資源にいたしましても。それは具体的に調査の上でこういうものをつくられたのかどうか、これをお聞きしたい。
  52. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 そういう大きなプロジェクトをやるのですから、当然その中で自然条件の基礎的調査ということは克明にこれをやらなければならぬと思います。そこで、いまの水の問題にいたしましても、これは工業用水だけでなしに、広域生活圏をつくるのですから、その生活用水といいますか、家庭用水の問題にまで踏み込んでわれわれは基礎的調査をしなければならぬと思いますが、現在まだその水の供給量がどの程度まであるかないかにつきましては、建設省で昭和四十五年に広域利水調査の第一次報告書が出ております。これによりまして、いま御指摘のような青森あるいはむつ小川原、そういう地域における大体の見通しは立てております。毎秒何トンまでの数字も出ておりますけれども、しかしこれは昭和六十年度を目標にいたしまして、現時点における調査でございますから、なおこれからもっと具体的にこれは進めなければならぬと、こう考えております。
  53. 松平忠久

    松平委員 次にお伺いしたいのは、通産省で工業再配置ということを考えておられるわけだけれども、この工業の再配置というものは新全総の計画に沿った考え方でおやりになるということであるか。つまり新全総との関係というものはどういうことなんですか、それを伺っておきたい。
  54. 田中角榮

    田中国務大臣 新全総と十分連絡をとりながら、新しくつくられる新全総が修正を必要とすれば新全総を修正してもらいますし、また私のほうが新全総計画からはみ出すようなものが考えられれば、経済企画庁、建設省、農林省との間で十分協議をしながらやってまいりたい、こういう考えです。
  55. 松平忠久

    松平委員 旧全総の結果、いろいろな欠点が出てきておる。そして、いまや日本経済の相当大きな転換をはかる時期に来ているわけなんだ。したがって私は、そういうことからいいまして、新全総を基調としていろいろなことを今後やっていかれるという段階におきましては、相当緻密な考え方に立つと同時に、やはり国際経済の中における日本立場ということを考えてやらないといかぬと思うのです。言いかえるならば、国際分業の一端を日本の工業が受け持っているわけなのですから、そういう考え方でやっていくべきである、こういうふうに私は考えております。  そこで、時間があまりありませんので、あとの方が待っておられますので、私はまだたくさん質問があるのですけれども、最後に質問申し上げたいと思うのです。  これは通産大臣にお願いしたいのですが、いわゆる国際分業の中で日本の産業の受け持つ立場というもの、そういうものを現在具体的に把握しておられるかどうか。私はこれはむずかしいと思うのです。東南アジアその他の国々におけるいわゆる経済の追い上げといいますか、そういうものもございますし、先進国との間におきましては、いわゆる水平な関係における立場協力関係というものを緊密にしていかなければならぬということがあります。そういう場合におきまして、日本はやはり貿易立国だということになりますと、日本の産業全体に対して、ことに工業に対しまして、日本は国際分業の中でどういう点を受け持つべきだということが必要になってくる。そうしていままでは、お話にありますとおりに、重化学工業重点できた。これがある程度行き詰まりを来たした。そこで知識集約型の産業というようなことも出ておるわけなんです。しかし、それは模索の過程であるというふうに理解しておりますけれども、国際間の分業体制という中で、日本はどういうものを受け持っていったならば将来非常にいいのかということについて、やはり一つ見取り図のようなものを早くつくらなくてはならぬと思うのです。それについて政府部内におきましては、新全総との関係もありますけれども、これに対してどういつだ見取り図のようなものを持っておられるのか。持っておらないとするならば、その日取り図を早くつくるという作業を進めておられるのかどうか。それは見込みとしてはいつごろまでにそういう見取り図をつくらなければならぬというお考えなのか。それをお伺いしまして、私はあとの質問は一応保留いたしまして、近江君に譲りたいと思うのです。
  56. 田中角榮

    田中国務大臣 国際分業の問題は、御指摘のとおり各国がいま検討しておる問題でございまして、通産省でも検討いたしております。おりますが、国際分業はなかなかその話がつかないのです。  一つの例を申し述べますと、この間のサンクレメンテ会談でもそうでございましたし、その前の日米経済閣僚会議のときもそうでございましたが、国際分業論がアメリカ側からも出ました。けっこうでございます、国際分業論はけっこうでございますが、総人口に対して一次産業人口が一七・四%もある日本に——アメリカは一次産業人口は四・四%である、四・四%でしかないアメリカの農民が一七・四%もある日本にオレンジを買え、子牛を買えとはおかしいじゃないか、こう言ったら、ちょっと向こうはぎゃふんとしておったのです。向こうはもう一つ、今度国際分業で電子計算機はアメリカがやったほうがいい、電子計算機というものは、西ドイツもフランスもイギリスもやったけれども、この国のIBMのシェアを考えれば九〇%以上ということだから、こういうものはやはり月の探検もやったようなアメリカにまかすほうが安いものが入ると思う、飛行機もそのとおりだ、こう言ったから、私はそれはいい考えである、こうまで述べたのですが、では自動車とテレビは全部日本がつくろうじゃないか、こう言ったら、もう向こうは二回目の発言をしなかったわけでございます。そういう意味で国際分業という面で話をどういうふうに詰めていくのか、これは国際的にはなかなか重要な問題です。これはもう国際間において秩序ある関係を保とうとすれば、当然考えなければいけません。  いま中国大陸との問題をどうするのかといえば、日本の総合農政を考えてみますと、先進工業国並みに六%まで減るとすれば二%も減るわけであります。そうすれば一体農業人口は幾ら出るのかというと、一七・四%の一次産業比率が九・四%になれば六百五十万人、五%にすれば八百九十二万六千人という余剰人口が出てくるわけでございます。この人たちを一体どうするのかということもいま考えて、工業再配置等を考えたり、農村地帯工業導入法等も考え、また新全総の中でどう位置づけするかを考えておるわけでございます。ですからそのときに、日本のように高い国民所得水準がこれからだんだんと高くなるところにおいて、牧草とか飼料はつくれるかというと、北海道を除いてはつくれないということでございます。三千億以上、十億ドル以上の飼料を毎年輸入しておるわけでありますから、こういうものを長期的に輸入をするというようなことになれば、これは一つの分業体制になる。そういういろいろなものを各国との間に検討いたしておるわけでございます。  工業再配置の問題をちょっと申し上げますと、経済企画庁長官が退席したから申し上げるのじゃございませんが、旧全総そのものは、明治から百年間の多少対症療法的な自然発生を是認したものがスタートの数字であったということがいえると思います。そういう意味で、五カ年間の経過を待たずして社会資本投資の二十七兆五千億を倍の五十五兆円に直さなければならぬ。それがまたすぐ直るということでございますから一相当数字の移動があったことは事実でございます。それは過密の速度が早かったからというけれども、それはやはり自然発生を是認しておったということ、調整権が発動されることを考えなかった一つの計画であったということでございます。しかし、これから一〇%成長でいけば昭和六十年には三百四兆円になりますし、七・五%成長でいけば二百十六兆円、いまのような五%成長でいっても百五十二兆円という数字は自動的にはじき出されるわけでございます。そうすると四十年に十万ヘクタールであったものが五十年には二十万ヘクタール、六十年には三十万ヘクタールということになるわけです。私はこの計算をこの間やりましたら、東京を中心に半径五十キロ、名古屋を中心に半径五十キロ、大阪を中心に半径五十キロ、この三つの五十キロ圏にいま三千二百万人が住んでおるわけでございます。こんなことを続けておって、公害の退治も何もできるものではない。水質汚濁とかそういったものが解決できるものではない。そこに工業再配置ということを考えたわけであります。ですから農村から余剰人口としてはじき出される九百万人に近い人たちをそこに定着せしめる。それも重化学工業中心ではだめなので、知識集約的産業に移していかなければならない、こういうことです。先ほどあなたが申されたとおり、確かに肥沃な南の土地はみな一次産品地帯であります。アメリカのミズーリ川の両岸も全部一次産品地帯であって、五大湖の周辺が工業地帯である。工業国十カ国、ソ連も含めて十一カ国の工業地帯はみな北であるにもかかわらず、日本だけが東海道、関東中心に二次産業の発達ができたということは、すでに限界である、こういう考え方で工業再配置というものを踏み出したわけでございまして、新全総及び工業再配置、農村地域工業導入促進法、それから北海道、東北開発法のように拠点中心主義の地方開発法、中部開発法とかいろいろなものがございますが、こういうものを一つのつながりを持たせて計画的に誘導政策を行なうという一つの前提に立って工業再配置を考えておるということでございますので、つけ加えて申し上げます。
  57. 鴨田宗一

  58. 近江巳記夫

    ○近江委員 きょうはあと予算委員会との関連もありますので、時間がそうないわけでありますが、あすまた引き続いてやりたいと思いますが、その時間まで質問をしたいと思います。  先ほどもココムの問題が出たわけでございますが、特に田中大臣も、日中貿易につきましては力を入れていくということについて所信表明でもおっしゃっていらっしゃるわけですが、特に先ほどもお話に出ましたが、アメリカのRCA社製の通信地上局設備、これを上海に設置をした、北京政府に売却をするということになっておるように聞いておるわけですが、これについてはココムの承認を得るような措置がとられておるわけですか。
  59. 田中角榮

    田中国務大臣 ココム加盟国に対してアメリカ側からこれを承認されたいという正式な要請を受けております。
  60. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうするとわが国もその要請は受けたわけですか。
  61. 田中角榮

    田中国務大臣 わが国も要請を受けております。
  62. 近江巳記夫

    ○近江委員 それに対してわが国としてはどういう回答をなさったわけですか。
  63. 田中角榮

    田中国務大臣 正式な回答はまだ最終的にいたしておりません。しかし、これは承認をいたします。全廃をしろという持論を持つ私でございますから、これは承認をいたします。いたしますが、日本がいまパリで提案をしておるものを全部認められたい、こういうことを一つ条件にしておるわけでございまして、そこらはもう政治家の当然なすべき責務だと考えております。——失礼いたしました。もうオーケーの訓令を出したそうでございます。訂正をいたします。
  64. 近江巳記夫

    ○近江委員 わが国としてそういう積極的な姿勢で臨まれた。当然このココムリストの大幅緩和にまで今回のこの処置を起点として発展するんじゃないかと私は非常に期待をしておるわけなんですが、ところが今回の輸出について、ココム規制の例外措置として取り扱われて、ココムリストは依然として残るという心配があるわけです。こういう点、諸外国の反応なりココムとしてどういう出方をすると判断なさっておるわけですか。
  65. 田中角榮

    田中国務大臣 アメリカの要請は、個別品目の例外措置として認めたようでございますが、これは一つ認めれば一波万波ということでございますから、方向はそういう方向に参るということは確信いたしております。先ほど松平さんの御質問に答えましたが、イギリスは高性能の飛行機を入れておりますし、それからアメリカがニクソン訪中で米中で商談が成り立つとすれば、それは常識的にだれが考えても飛行機である、こういうことでありますから、そういう意味ではもう最も精巧な高度な計器は飛行機に採用されておるわけでございますので、私は今度の例外品目として容認をするということは、すなわち全く兵器のかっこうをしておるもの以外は、技術的なものに対しては緩和をしていくということのはしりだと理解しております。
  66. 近江巳記夫

    ○近江委員 英国、フランスあるいはカナダなど国交回復した国々に対して中国政府が非常に商談を優遇するというような傾向があるということをわれわれ伝え聞いておるわけですが、そうしますと、わが国が予定しておりますココムリストのこういう制限緩和が実現したとしたならば、この対中貿易というものについて今後どの程度伸びが期待されるのか、その辺について試算とかそういうものについて大体のお考えを持っていらっしゃいますか。
  67. 田中角榮

    田中国務大臣 去年度は約九億ドルでございます。この九億ドルというのは、五億四、五千万ドル日本輸出でございまして、三億数千万億ドル輸入であるということからいいますと、二億ドルくらい輸出超過でございます。こういう事態は望ましいことではないので、やはり中国から輸入できるものがあればどんどんと輸入しなければならない、こう思っております。まあおととし、去年の趨勢を見ますと、ことしの対中貿易は十億ドルをこすでございましょうと私は公式には述べておるわけでございますが、しかし延べ払いの要請でもあって輸銀の使用が始まるようになれば、これは相当なものになるだろうということでございます。
  68. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、米中の首脳会談の結果、この四月の中旬からの春の広州交易会、これにアメリカ企業が参加するということはほぼ確実になっておるわけですけれども、そういう動向というものはきわめてわれわれも注目しておるわけでございますが、こういう点についてどのように受けとめておられますか。
  69. 田中角榮

    田中国務大臣 アメリカが対中貿易に対して参加をするということは、これは政治的には非常に意義のあることだと思います。これはニクソン訪中の第二弾だと考えて、緊張緩和ということで非常にいいことだと私は考えておりますが、しかしアメリカ中国に売るものは、私はやはり飛行機とかそういうものしか中国は望まないと思います。これは電子工業製品は一番望むことであろうと思いますが、中国自体からアメリカがそんなに買えるものはないと思うのです。中国ではいま農産品、一次産品、また牛肉とかいろいろのものがございますが、これらはみんなアメリカ日本に押しつけようと——押しつけるというのはよくないですからこれは取り消しますが、日本にもっと輸入ワクをふやしてくれと絶えず日米間の経済交渉の焦点になっておるものでございますから、そういうものが米国に輸入されるということはないと思います。繊維またしかりでございます。生糸もしかりでございます。そういう面から考えるとやはり必要な高度なもの、ココムリストの中でもって禁止品目になっておるようなものが政治的にも実態的にも私は要求されるものだ。また家電製品とかそれから生活用品とかいうようなもの、まあ肥料にしてもどれはやはり日本が一番安くていいのじゃないか。アメリカ拡大ECでさえも日本製品は安過ぎて困るというような品物でございますから、これはやはり日中貿易の拡大によってバランスをとりながら買ってもらう、こういうことだと思いますよ。
  70. 近江巳記夫

    ○近江委員 これは見通しの問題ですから、はっきりしない点はわかるわけですけれども、しかしこの見通しについて、先般米中貿易についての見通しということでジェトロが発表しておるのですが、その中で今後鉄鋼、化学品、特に肥料です。それから機械類のこの三大品目を中心にして、日本、西欧諸国、アメリカが互いに中国市場での競争を強めていくということが指摘されておるわけです。そうしますと、西欧諸国においては国交回復もやっておる国がたくさんあるわけですし、アメリカもすでにニクソンの訪中も実現しておるわけです。ところが日中間においては戦後処理もあるいは国交回復も達成されておらない現在を考えますと、同じ土俵で相撲をとるということはきわめて不利な状態になってくるのじゃないか。いま大臣がおっしゃったような、そういう目玉商品ということだけであればこれは一つの考えも出てくるのじゃないかと思いますが、ジェトロがこのように指摘しておる以上、わが国としても今後は非常に大きな差をつけられていくのじゃないか、この点を心配しておるのですが、この点についてはどうお考えですか。
  71. 田中角榮

    田中国務大臣 やはり貿易というのは片貿易では困るのでございまして、貿易バランスをとらなければいかぬ、こういうことでございます。日本バランスがとれるわけでございます。日本は御承知のとおり、いま一次産品というものに対しては農村保護ということでもっていろいろ問題はございますが、しかし肉は不足でございます。また、先ほども申し上げましたように、一億ドル以上の飼料の輸入をしておるわけでございます。これも年々ふえていくわけでございます。こういうものは長期的な輸入として日本は引き受けられる体制にございます。これは長期的に飼料を先進工業国が引き受けるという国はありません。そういう意味では、日中の利害というものは一つに結ぶ可能性が十分あるということでございます。また、肥料のように非常に大きな船腹を要するもの、かさの張るもの、こういうものがアメリカから出てくるとも私は思いません。これはかつて西ドイツから出たこともございますが、地中海がまだ閉鎖のままであり、スエズが開かれておらないという状態で、喜望峰回りでとても肥料を運べるというわけではないでしょう。そういう意味で、私はやはり日中間は、いま言われたような外交上のハンディは確かにあると思います。しかし、日本が日中間のバランスをとるために中国大陸からの輸入を拡大していく、しかも長期的な見通しでこれを拡大するということであれば、アメリカ拡大EC諸国に押されて、中国大陸のシェアが非常に大きく荒らされるというようなことを考えることはないと思います。そうかといって、あまり考えて言っておるわけではありません。七億五千万余の国民を擁する隣国でございますから、まじめな、真摯な立場で日中間の貿易を拡大していくということであると思います。私は、だから日中間では、先ほどから申し上げておりますように、輸銀の使用、延べ払いの要請というものが商社からあるとすれば、これは相当なスピードで日中間の貿易は拡大するという考えは間違いない、そう考えていいと思います。
  72. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま大臣は、地域的なメリットあるいは日中間のバランスというような点でいろいろとお話があったわけですが、いまおっしゃった中で肉の問題があるわけですけれども、現実に肉の輸入ということは中国からされてないわけです。途中のいろいろなそういう対策はとられておるようですが、中国としては応じないということもありまして、その辺はただお互いに意見の相違だけで、肉は輸入する意思はあるのだということだけで、やはり結果が出てこなければ何もならぬと思うのです。その点さらにこれを一歩進められる具体的な方法をお持ちでございましょうか。
  73. 田中角榮

    田中国務大臣 肉は輸入したいというのが通産省の意向でございます。その意味で、四十一年から四十六年まで見ますと、千円の肉が千四百五十円になっておるということ一つ指摘をされても、もうそのとおりでございます。肉の消費量は年々歳々上がっていくということでございますから、隣国からの輸入ということは、これはもう当然考えなければならぬ問題でございます。ただ農林省の防疫上の問題として、口蹄疫の問題がございます。口蹄疫の問題というのは、なかなかこれはめんどうな問題でございまして、われわれから言いますと、日本の議員が訪中をして中国の肉を食べておるわけでございますからという考え方でございますが、これはなかなか技術上の問題と、もう一つは煮沸をすればいいということで、私もかつて自民党の幹事長当時、これを入れるために相当努力をいたしました。煮沸工場をつくればいいじゃないか。それができなければ煮沸ができる船を持っていって、その船の中で煮沸すればいいじゃないか。かん詰め工場ができないか。そのまま船の中でカニ工船のようにかん詰めをつくって入れたらいいじゃないか。そうでなければ、日本には島がたくさんありますから、あいている島に煮沸施設をつくって、かん詰め施設をつくって、そこでやればいいじゃないかということでやったのですが、そういうような問題に対しては相手国、いわゆる中国側がそういうものを容認しないという事実があったようでございます。公害問題、防疫問題その他に世界で最高の権威を誇ることもいいが、人体に無害である、また口蹄疫というものに対しては、学問的な問題は別として、事実日本人には問題がないんだということであるならば、もう少し別なことを考えてもらったらどうかということで、技術官にその旨を要請しておるわけであります。  同じ問題がカナダからの鶏肉で、ございました。これは日本とカナダとの問題としては相当な問題があったのです。横浜まで持ってきて、それを全部荷揚げをさせない。その肉はどこへも行かないで香港へ行った。日本人が香港へ行ってその鶏肉を食べておる、こういうことでありまして、おかしいじゃありませんか。このような問題に対しては、私もいろいろカナダ側と相談をしまして、カナダに日本と同じ防疫施設をつくろう。これは制度が違う、法律が違うという上からくるトラブルでありますから、日本の防疫に合うようなものを積み出し港につくってくれ、そこで処理をして船積みをしてもらいたいということで、カナダ側はそれをオーケーしました。今度はカナダからの鶏肉が日本に陸揚げされないということはないでしょう。口蹄疫の問題に対しては、それが日中間で話し合いがつかないという問題が一つあるわけでございます。まあしかしそれらの問題も両国の貿易拡大という意味からもっと知恵を出さなければいかぬ。もっと知恵を出してやるべきだ、こういう考えでございます。
  74. 近江巳記夫

    ○近江委員 きょうは時間があればもっといろいろその問題についても聞きたいのですけれども、この口蹄疫は何回も私はこの委員会でやっておりますが、田中調査団をはじめ、口蹄疫は中国にはないということを何回もその調査団の報告の中にも出ておるわけですね。そういうようなところを、私は非常にその辺はっきりせぬわけです。ですから、そうした点を、まあ今後の日中のバランスを考えても、これはやはり具体的にその進める方法を真剣にひとつ考えて、輸入を促進していただきたい。きょうはこの要望にとどめておきます。  それから吉田書簡の問題もあったわけですけれども、とらわれないということで、実は現実にそれにとらわれているわけです。そういう現実の点をもっと認識をされて、はっきり政府として態度を出されぬならば、これは言ってもまた同じ答弁しか出てこないと思いますから、私は強く、この点はさらに一歩前進されるように要望しておきます。  それから、もう時間がありませんので——特に中小企業の問題でございますが、御承知のように、一昨年の秋ごろから不況が続きまして、特に昨年は繊維の政府間協定あるいはドル・ショック、さまざまなことかございまして、一番波をかぶっておるのは中小企業でございます。御承知のように、いよいよ年度末を迎えるわけでございますが、昨年初めてこの年度末対策というものもできたわけでございますが、今年は、さらに非常に中小企業、零細企業は心配をいたしております。そういう点、いかなる強化の対策をとっていただけるのか。具体的にひとつその対策をお聞きしたいと思うわけです。
  75. 田中角榮

    田中国務大臣 去年のドル・ショック、平価調整で一番心配をいたしておりまして、これは前の国会にもいろいろな法律案等の御審議をお願いしたわけでございますし、通産省も財政当局と連絡をしながら可能な限り最大の努力を続けてきたつもりでございます。おかげさまで、あのような状態にありながら、昨年末、一月、二月の倒産件数その他を見てみますと、対前年比、四十五年に比べて七〇%ないし八〇%程度でございます。まあこれは必ずしも私は、内容がよくて倒産が出なかったのだとは思っておりません。一面においては、ドル・インフレともいわれておりますように、円が市中に出回って大幅な散超になっておるということが一つだと思います。金利も引き下げられたことも大きく響いておると思います。また信用補完その他の手当てもいたしました。そういう意味で倒産件数が少ないというようなことになっているのだと思いますが、この実態は、御指摘があるように相当苦しいものもあると思います。そういうものに対して、やはり最大な施策を行なわなければいかぬだろうということを考え、目下大蔵省と協議いたしまして、年度末金融その他に支障がないのか、打つべき手があるならばこれを打たなければならないので、早急に結論を出したいということで、通産省も関係各省と話し合いながら、また金融機関それから中小三公庫等の実態も十分調べて、資金需要と原資が見合うのかどうか、見合わなければそれに対して至急措置をしようということで、万全な対策を講じつつあるわけでございます。
  76. 近江巳記夫

    ○近江委員 じゃ、きょうは時間がありませんからあすに残して、これで一応きょうは終わります。
  77. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次回は、明十五日午前十時理事会、十時三十分委員会を開くこととし、本日はこれにて散会いたします。   午後一時散会