○武田
公述人 武田でございます。
健康保険法の一部を
改正する
法律案につきまして
意見を求められておりますけれども、この案は去る十六日に
国会に提出されたように承っておりますけれども、そのいわゆる
抜本改正案、そういうものの
前提というふうに考えられると思われます。したがいまして、
中小企業の
立場から多少なりとも
抜本改正への私どもの期待と申しましょうか、願いとでも申しましょうか、そういうものも込めまして、
意見を申し述べることをまずお許しいただきたいというふうに思っております。
この案は、今後の単
年度におきまして、いわゆる
政管健保の収支の
赤字をなくし、これを土台といたしまして、
医療保険制度に根本的な改善を加えて
制度の発展にもっていこうと、そういういわゆるワンステップというふうに考えてみて差しつかえなかろうというふうに思っております。
〔
小沢(辰)
委員長代理退席、増岡
委員長代理
着席〕
まず、収支が均衡いたしますことは、何と申しましても事業運営の基本であるというふうに私は考えます。事業の安定も発展もここから出発すべきではないかというふうに思い、
保険方式をたてまえとしている健康
保険事業につきましても、当然というふうに考えておるわけであります。したがいまして、そういう場合には一方で
収入の増をはかることはもちろんでしょうが、
支出においては合理的な
努力を行ないましてむだをなくす、すなわち両面から
努力していくということが大切であるというふうに基本的に考えます。
内容について、若干
項目的に申し
上げたいと存じますが、
標準報酬の下限につきましては、これはまあ問題はございません。
上限を一挙に二十万円まで
引き上げるという点につきましては、いろいろと御議論も出ておるようでございます。いささか
中小企業にとりましても高いという
感じはいたします。しかしながら、たびたび改定されるというわけでもありませんし、
保険料の
負担の公平という見地から考えましても妥当だというふうに思われます。ただ、むしろ
中小企業にとりましては、そういうような高給が支払われることを私どもとしてはむしろ望んでおる状況でございまして、現実的な問題として一般
従業員にそれほどの実害は少ないというふうに考えております。
料率の
引き上げにつきましては、収支の均衡上やむを得ないというふうに思われますけれども、その
引き上げ幅につきましては、国庫
負担との見合いにおいて十分
配慮していただきたいというふうに考えております。
三番目の
特別保険料でございますが、これは言うてみると、いわゆる緊急不時の
対策の費用に充てるとでも申しましょうか、私どもの家計をとりましても、月々の
収入で月々の費用をまかなうことができずに、やや家計に不足を生じた場合に、
ボーナスで埋めようかということを俗世間的にやっておりますが、まあそれらにやや相似通ったような
感じはいたします。したがって当面収支が償わなければということでありますならば、金額的に見ましても大きな
負担とも思われませんので、あえて反対はいたしません。ただ、あくまでこれは緊急的な
対策として御考慮いただきたいということでございます。またこのことは、私どもにとりましては、将来総
報酬制になるのではないだろうか、総
報酬制を採用していくのではないだろうかという実は危惧を抱いております。したがいまして、
法案にあります当分の間という表現を変えまして、これを時限を明示していただきたいというふうに考えるものでございます。
なおこの
機会に、
中小企業の
立場から総
報酬制について申し
上げておきたいと思いますが、健康
保険はいわゆる厚生年金等も含めまして、労働
保険と違いまして、その事務の手続等は、事業主にとりまして、社会
保険事務の分野で大体七〇%
程度占めております。総
報酬制を採用いたしますというと、事業主にとりましてはいま以上の事務上の
負担増をしいられるわけでありまして、こういう見地から健保の領域に総
報酬制を持ってくることについては反対でございます。
国庫補助につきましては、定額より
定率へ移行したことにつきましては、私は国の
責任として当然であり、また
経済情勢の変動において当然の結果であるというふうに思っております。御承知のとおり
政管健保の体質は、地域
保険でありますところの
国民保険と非常に類似しておりまして、収支の改善には、私ども事業主あるいはまた被
保険者の
負担や
努力にはおのずから限界があります。したがいまして、そういうことを考えれば、五%ということに拘泥せず、さらに
引き上げていただきたいということでございます。
保険料の
弾力条項でございますが、これは
収支均衡という名のもとに安易に発動されるおそれがあるように私どもは思われますので、これは
支出に対するところの
配慮を十分にされました上で、慎重な
運用を強くお願いしたいということでございます。
結びといたしまして、しばしば申し述べられておりますように、
政管健保の
対象は
中小企業とその
従業員及び家族でございます。いままでの各
公述人の諸
先生方も申し述べられたとおり、その
所得水準は低く、また五十歳以上の被
保険者が一六%にも及ぶというふうな、いわゆる
財政上の収支の不均衡が避けがたいという宿命を負っておるわけであります。事業主といたしましても、
従業員の
健康管理や社会
保険の指導教育の上にもずいぶん気を配っておるつもりではございますけれども、これとて残念ながら十分でない現況でございます。また、これら私ども事業主の
努力の足りない部分につきまして、社会
保険の第一線
機関たるいわゆる社会
保険事務所に期待はしておりますけれども、公務員の不足であるとかあるいは予算の制約等がありまして、意のままになっていないように思われております。
しかしながら一方、
健康保険法の第二十三条には
保険者に、被
保険者並びにその家族の健康保持増進のために必要な施設をなし、また必要な費用の
支出について規定をしております。私どもは、これら前向きの費用の
支出というものは、昨今の
赤字対策のためにきわめて貧弱な現況であるようにお見受けしております。こういうふうに見てまいりますというと、被
保険者及びその家族の疾病予防及び健康保持増進は、結果的には
医療費の減につながり、それが
保険財政の安定に寄与するということを信じておるものでございます。したがいまして、
保険事故発生前のいわゆる事前的、積極的な
措置ともいえるこの疾病予防であるとか、あるいはまた保健施設を整備充実しなければいけない。これは、
関係者が
努力すれば決して不可能なことではないというふうに思えるわけであります。
私どもは健康
保険制度の上で、昨年
保険医総辞退という不幸なできごとに遭遇いたしました。しかしながらまた、私どもは同時にこの中から貴重な体験を得たのであります。それは、月並みなことばではありますけれども、自分の健康は自分で守れということでございます。
健康管理と申しましても、ことばではたやすく言えますけれども、実行はなかなかむずかしいことでございますが、常に
機会あるごとに被
保険者並びに家族に対しまして、自己管理できるような指導、教育を行なうことは、事業主であるわれわれも、また
保険者である
政府も当然の義務だ、私はこういうふうに考えざるを得ないのであります。
私どもは、長い歴史の上に築かれました
医療保険制度を集団社会におけるところの相互扶助の精神として強く心にとどめておるわけでありまして、さらにさらに今後
関係者の良識を深められることを念願しておる次第であります。
健康
保険の
財政は未曽有の
赤字をかかえまして、瀕死の
状態にございます。
国民生活に欠くべからざる
制度に定着いたしました
医療保険制度がこの
財政危機を回避いたしまして、さらに発展して
国民のためのすばらしい
医療保険制度になることを私どもは期待したいのであります。こういう
意味合いから、各
項目別に申し述べました私どもの
内容につきましては、
中小企業の犠牲的精神の発露であるというふうにお考えいただきたいのであります。
そういう
意味で、
最後に各
関係者の良識を尊重いたしました
抜本的の
改正がすみやかに
実現されるようにお願いいたしまして、当面の
財政対策たる本案には一応賛成するものでございます。
御清聴ありがとうございました。(
拍手)