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1972-05-18 第68回国会 衆議院 社会労働委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年五月十八日(木曜日)    午前十時九分開議  出席委員    委員長 森山 欽司君    理事 小沢 辰男君 理事 増岡 博之君    理事 山下 徳夫君 理事 田邊  誠君    理事 大橋 敏雄君 理事 田畑 金光君       秋田 大助君    有馬 元治君       伊東 正義君    梶山 静六君       蔵内 修治君    小金 義照君       澁谷 直藏君    田中 正巳君       高鳥  修君    竹内 黎一君       中島源太郎君    中村 拓道君       向山 一人君    渡部 恒三君       大原  亨君    川俣健二郎君       島本 虎三君    山本 政弘君       二見 伸明君    寺前  巖君  出席公述人         横浜市立大学教         授       小山 路男君         日本労働組合総         評議会常任幹事 廻神 英雄君         甲府教育委員         長       和田 吉弥君         医事評論家   大熊房太郎君         新電元工業株式         会社相談役   大橋 恭三君         医事評論家   水野  肇君         トーフジ工業株         式会社代表取締         役       武田竹治郎君         主     婦 島田とみ子君  出席政府委員         厚生大臣官房審         議官      江間 時彦君         厚生省保険局長 戸澤 政方君         社会保険庁医療         保険部長    穴山 徳夫君  委員外出席者         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた案件  健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を改  正する法律案内閣提出第四六号)      ————◇—————
  2. 森山欽司

    森山委員長 これより会議を開きます。  健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案について公聴会に入ります。  本日御出席をお願いいたしました公述人方々は、横浜市立大学教授小山路男君、日本労働組合総評議会常任幹事廻神英雄君、甲府教育委員長和田吉弥君、医事評論家大熊房太郎君、新電元工業株式会社相談役大橋恭三君、医事評論家水野肇君、トーフジ工業株式会社代表取締役武田竹治郎君及び主婦島田とみ子さん、以上八名でございます。  この際、公述人方々に、当委員会を代表いたして、一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  御承知のとおり、本案はわが国医療保険制度にとりまして重要なる案件でありまして、当委員会といたしましても慎重な審議を続けているところであります。したがいまして、この機会に広く各界からの御意見を拝聴いたしまして、審議の参考にいたしたいと存ずる次第であります。何とぞ、公述人方々におかれましては、それぞれのお立場から率直な御意見をお述べいただきたく存じます。  ただ、議事の都合上、最初に御意見を十分ないし十五分程度に要約してお述べいただき、そのあと委員からの質疑にもお答え願いたいと存じます。  なお、念のため公述人方々に申し上げます。議事規則の定めるところによりまして、発言の際はそのつど委員長の許可を得ることになっております。また、公述人方々からは委員に対して質疑ができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。  それでは、まず小山公述人意見の陳述をお願いいたします。小山公述人
  3. 小山路男

    小山公述人 それでは、健康保険法改正に関する私の意見を申し上げます。  今回の改正法案は、申すまでもなく政府管掌健康保険財政対策法案であります。この財政対策法案がいわゆる抜本改正法案とどういう関連に立つのかというのが、まず問題になろうかと存じます。率直に申しまして、懸案の抜本改正を抜きに再び財政対策を講ずるということに対しまして、やはり関係者並びに国民が批判をしているのは、これはもう無理のないところでありますが、しかし、抜本改正と申しますのは、やはりこれは制度論として処理さるべきでありまして、政府管掌健康保険赤字対策赤字処理ということでやりますと、抜本改正法案自体性格があいまいになるというふうに思うものであります。つまり、政管健保財政の再検討、安定ということをまずやっておいて、そして抜本に取り組むというのが現実的な態度ではないかと思います。と申しますのは、抜本改正で講じようとしているいろいろな諸施策があるわけでありますが、これがすべて政管健保赤字のしりぬぐいであるというふうに見られるということになりますと、非常に広範囲な利害関係者の理解と納得が得にくくなるのではないかと思われるのであります。したがって、今回の財政対策法案は、抜本改正の実施のための条件整備のようなものでありまして、一応財政対策財政対策として検討すべきものと私は考えております。  次に、法案内容についてでありますが、問題は標準報酬改正と、それからボーナス、いわゆる特別保険料のことから始まると思います。保険料計算の基礎となる標準報酬上限が据え置かれております。これは賃金所得実態と著しく乖離しているわけであります。大体、上限がきめられました四十一年から今日までの賃金等の伸びを見ますと、約倍くらいになってきているわけでありまして、やはり負担の公平と申しますか、所得の再分配という観点から申しますと、上限はできるだけ賃金実態に合わせたほうがいいのではないかと思うのであります。  なお、ここで一言苦言めいたことを申しますと、今回の二十万円の上限がかりに妥当だといたしましても、今日まで長期間標準報酬を放置しておいたということは、これは非常に急激な負担増になるという印象といいますか、感じを与えざるを得ないのでありまして、やはりこういう標準報酬等につきましては、こまめな改正をするような何か方式を考えておいていただきたい。つまり何%になったら上げるとかいうことでございます。それが上限の問題であります。  次にボーナス特別保険料についてはどう考えるかと申しますと、特別保険料をかけないで済めばかけないに越したことはないというのが率直な印象でございます。なぜかと申しますと、特別保険料という考え方は理論的に申しますといわゆる総報酬制につながる、そういう性格を持つ問題でございます。しかし当面総報酬制実現可能性が全くないといっていい状態でございますので、暫定措置としゃむを得ず特別保険料を考えたということになろうかと思います。もっともボーナスを高額にもらう高額所得者とそれから低所得者との問題があるということも事実であります。けれどもその問題を別といたしますと、こういうことは考えておかなければいかぬ。つまりボーナスにかけないで本来の保険料収入でいまの政府の提案のような方式をとりますと、料率を千分の六程度上げなければならぬ計算になるわけです。特別保険料を千分の十徴収するというと、大体それが千分の三ぐらいに押えられるというメリットもございます。そういうこともありますので、かけないで済めばそれがよろしいのですけれども、財源的な問題からいってこういう方策がとられたのではないかと思います。それがボーナスについてでございます。  それから問題は何と申しますと、累積赤字のたな上げと、それから例の弾力条項の問題であります。まず政管健保財政再建をはかるには、過去の累積赤字をどうしてもたな上げしてもらわないと困るわけでありまして、たとえば四十六年度決算におきましては単年度赤字は百五十八億でありましたけれども、累積利子相当分が百十六億という重荷がかかっているわけでございまして、この重荷から解放してもらう、こういうわけで、今回のたな上げ措置というものはきわめてけっこうな措置だろうと考えます。もちろんこういう、ある意味では非常に思い切った措置をとるためには、やはり今後は赤字を単年度で生じないような財政仕組みをはからなければいけないわけでありまして、そのために弾力条項というものが考えられたものと思うのであります。しかし政府が安易に弾力条項を発動しては困るわけでありまして、十分な経営努力が行なわれた上のやむを得ない措置として行なうものでありますし、その弾力条項をチェックする機関としましては、やはりわれわれの所属しております社会保険審議会等で厳重に判断をするという仕組みをとらざるを得ないと思います。多少逆説的に申しますと、大体いままで政管健保保険者である社会保険庁は、財政対策のための法案廃案あるいは修正というようなことになりましたものですから、結局自分で所要の財源措置がとれない、こういうことで、赤字が出てもしようがないというふうに、若干行政当局が居直ったような感じも受けるわけであります。これがやはり保険者としての当事者能力を持たせまして、運営の責任を負わすということは、これは逆に経営責任明確化という意味ではよろしいかと思います。ただ、繰り返しますように、経営姿勢の引き締めをはかってもらいたい。  最後に、国庫補助率でありますけれども、これが最大問題点であることは事実でございます。政管財政再建と安定の実現をはかるためには、この際、何としてでも財政対策法案を成立をはかっていただきたい。これが廃案等になりますと、やはりまた医療保険のどろ沼が続くわけであります。そういう意味で、長期的には保険制度が名目化し、形骸化する危険があるものですから、どうしても安定をはかっていただきたい。そのためには、国庫補助率につきまして、五%の補助率ということになっておりますけれども、これをさらに引き上げるというようなことも考慮していただきたいし、何と申しましても、政管健保というものがほかの保険制度に比べまして、いわば足の弱い制度でございますので、国会先生方もひとつ政管の被保険者のためによろしく御健闘願いたいと思います。  以上で私の公述を終わります。(拍手
  4. 森山欽司

    森山委員長 ありがとうございました。  次に、廻神公述人にお願いいたします。
  5. 廻神英雄

    廻神公述人 廻神です。  健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案について、端的に私の意見を申し述べたいと思います。  最初に、全般的にわたる基本的な問題点について二、三指摘をしたいと思います。  今回の一部改正は、その柱はあくまでも政府管掌健康保険赤字対策だと判断されます。しかしながら、本改正案には前提となります赤字原因なり要因というものについて追及なり具体的な説明が一切なされておらないというふうに私は判断をしておるところです。  私なりに判断をいたしますと、赤字原因最大の第一は、政府管掌健保に加入しております中小零細企業労働者の低賃金がまずあげられると思います。組合管掌共済組合と比べて、約二〇%程度賃金が低いランクにあります。このため十分な財源確保がなされないこと、あわせて、健康管理労働環境などの諸条件内容が大企業や官庁と比べて非常に劣悪であります。これがため疾病率がおのずから高くなり、したがって財政的に収入が少なく、支出が多くなり、赤字を累増せざをを得ない結果を招いていると判断するところであります。  低賃金及び労働条件劣悪の結果は、加入をしております被保険者責任ではなく、国際的に見てもわが国にはいまだ全国最低賃金制度がないこともその要因一つであり、この面から見て政府並びに使用者である経営者責任が大であるといえるのではないでしようか。  第二に指摘をいたしたい点は、都道府県別に見た政府管掌健康保険の被保険者一人当たりの診療費支出指数の問題であります。最低を一〇〇といたしまして、昭和三十六年度最高指数は一三六%を示しております。そして年々この格差は開いていくばかりで、昭和四十四年度最高一六八%という数字が示されております。都道府県ごとになぜこのような格差が年々拡大するか、そしてこれらの理由について何ら当局から具体的な解明がなされておらないのであります。  第三には、政府管掌健康保険昭和三十九年以降、昭和四十年代に入って特にその赤字が増大するに至っておりますが、これについても当局から何ら具体的に赤字増大要因について明らかにされておらないと判断されるところであります。  本来、財政の安定とは、収入面措置とあわせて支出面に対する対策があって初めて完全なものとなるのではないでしょうか。これに対する具体的な諸方策が、何ら見るべき策を講じていない点を強く私は指摘をしたいのであります。  私は、政管健保赤字理由要因について主要な三つの点について指摘をしたところでありますが、少なくともこれらの要因がある程度具体的に解明されない限り、当面政府管掌健康保険赤字処理全額国庫負担で行なうのが筋であるというふうに判断をいたすところであります。  次に、個別の問題について若干の意見を述べてみたいと思います。  いままで述べました基本的問題点前提に立ちますならば、本一部改正案のうち、赤字のたな上げ措置、さらに国庫補助を増額し定率化にすることを除いて、すべて賛成できません。  国庫補助の五%については、さきに述べましたとおり、赤字を生み出した要因なり原因が何ら解明されていない現段階において、赤字全額国庫負担をすべきであるというふうに判断をいたします。  次に、保険料率引き上げにつきましては、千分の七十を七十三にする問題、標準報酬月額上限下限引き上げの問題、さらに特別保険料の問題がありますが、全面的に反対せざるを得ません。そして現行を据え置くべきであるというふうに判断をいたします。  特に、特別保険料すなわちボーナスの問題でありますが、ボーナスから保険料を徴収するという点については、社会保障全般保険料負担率の問題、給付率との関連などから重大な課題を持っておるというふうに判断をいたします。国際的にも例外的なわが国給与体系である年間臨時給与、すなわちボーナスの取り扱いは、年金をはじめ失業保険労働災害保険、さらには療養、休業給付等のあらゆる社会保障給付全般にわたる問題として、適切な機関で慎重な審議を早急に行なうべき課題であるというふうに判断をいたし、個別な問題として軽々にボーナスから保険料特別徴収を取り上げるなどという措置は強く反対をせざるを得ないところであります。  さらに弾力調整の問題については、国会審議を軽視する導入措置的行為として私は非常に大きな関心を持つところであり、特別調整はあくまでも主務大臣の所管にするのではなしに、国会審議を経てこのような措置がなされるべきではないかというふうに判断をいたすところであります。  以上、簡潔に項目別問題点と私の所見を述べて、私の意見にかえる次第です。(拍手
  6. 森山欽司

    森山委員長 ありがとうございました。  次に、和田公述人にお願いをいたします。
  7. 和田吉弥

    和田公述人 改正案への意見を申し上げます前に、二、三、前置きといたしまして申し述べさせていただきたいと思います。  それは、二月の医療費改定によりまして政管健保赤字財政が非常に窮迫をしてきておる。このまま放置ができないという状態であること、そしてそれにはやはり保険法改正せざるを得ないんじゃないかということは私は一応理解いたします。しかしそれには、保険料というものを一挙に大幅に上げるということはぜひ慎重に取り運んでいただきたい。  それからさらに、この機会支出対策を、従来も御苦労いただいておりますけれども、十二分に講じていただきたい、これが一点でございます。  それからさらに、政管健保が正常化されると申しますか、一応抜本改正への地ならしができるわけでございますから、早急にひとつ抜本改正に着手していただきたい。できれば来年度早々実施できるようなところまで御努力をいただきたい、こう思うわけでございます。  そこで、改正案項目に従いまして、順次意見を申し上げてまいりたいと思います。  標準報酬改正の問題でございますが、昭和四十一年に改正したままでございまして、その後経済情勢というものは非常に著しく変化を来たしておりますので、この改正は私は当然だと思います。   〔委員長退席小沢(辰)委員長代理着席〕 ただその場合、二十万円に上限引き上げるという点については、多少感覚的にはどうかなと思う点はございますけれども、低額所得者負担を軽くするという意味もございますし、この際やはり認むべきだ、こう思うわけでございます。  それから第二点の保険料率引き上げでございますが、これは労使全体にかかわる問題でございまして、率は少のうございますけれども、率の引き上げということは非常に大きい問題でございますが、わずかでございますので、この際これも認むべきだ、こう私は判断するものでございます。  賞与に対するいわゆる特別保険料でございますけれども、賞与性格賃金的な性格になってまいっておりますので、これも一%程度保険料対象にするということは、これはもう忍ばなければいかぬじゃないか、こう思うわけでございます。  それから国庫補助率定率にするということは、従来の経過から見まして、大前進と申しますか大進歩だと私は思います。しかしこの赤字は、政管健保の構造的なものに原因があるという点が非常に多いわけでございますので、五%は少々少ないんじゃないか。一〇%近くくらいは配慮していただきたいものだ、こう私は思うわけでございます。しかし社会保障でございませんので、やたらとむやみに補助をふやせという考えはございません。  それから弾力的調整の中での、保険料千分の八十まで保険庁長官に権限を委譲するという問題でございますが、これは今度の改正案の非常に大きいポイントだと私は見ておりますが、これも累積赤字のたな上げとか、あるいはまた順次補助のパーセントをふやすというようなもののからまり合いもございますので、この際は認むべきだ。ただこの運用につきましては保険審の諮問、審議ということが書かれておるようでございますけれども、慎重にやっていただきたい。保険審意見を十分聞き、それに沿って扱っていただきたい、こう思うわけでございます。  それから最後累積赤字の問題でございますが、これも先ほど来申し上げてございますように、政管健保赤字要因というものが構造的なものに大部分あるという判断から、私は、たな上げというものは当然だ、こういうふうに考えるものでございます。  そこで最後に、これは少々蛇足になりますけれども、ここで支出対策について一、二ぜひ申し上げたいと思います。赤字原因につきましては論議も尽くされておるわけでございますけれども、おもに構造的要因ということがあると思います。  二番目には、被保険者保険証乱用、と言いますと語弊がありますけれども、乱受診といいますか、こういう問題、あるいは乱診という問題があるわけでございます。ところが、従来政府もずいぶん御努力はいただいておりますけれども、まだ御努力が足りないという声が世間には高いわけでございますので、この際ぜひひとつ政府は勇気をもって支出対策を推進していただきたい。  それには第一点といたしまして、医療機関指導監査、これは昨年厚生大臣から徹底的にやるぞというような意思表示があったわけでございますけれども、これをひとつ係官を整備いたしまして積極的にやっていただきたい。と同時に、中小企業の被保険者に対しての、保険証乱用と申し上げましたけれども、乱受診、あるいはまた健康管理あるいは保険制度に対する認識というふうなものをやはり啓発していただく活動をやっていただきたい、これが第一点でございます。  第二点といたしまして、診療報酬体系合理化と申しますか、適正化といわれておるようでございますけれども、これも論議が尽くされておりますけれども、この機会にぜひひとつ早急に実現をしていただきたい、こう思うわけでございます。  そうして第三番目には、できる限り政管組合管掌に切りかえていただく、こういうことをやっていただきたいと思います。組合管掌になりますれば、いろいろ御意見はございますけれども、健康管理にいたしましても、あるいはむだな医療を排除するという立場からも、いろいろな面でいい保険制度運用ができる、こういうふうに私は思うわけでございます。  最後にもう一点、いろいろ中央には公的審議機関がございますけれども、不幸にいたしまして政管健保の傘下の関係者代表者は参加いたしておりません。中小企業代表者あるいはそこに働く人たち代表者中央公的審議機関へぜひ参加させて、直接その声を聞くべきだ、私はそう信じます。  以上、簡単でございますが、一応申し上げ意見といたします。(拍手
  8. 小沢辰男

    小沢(辰)委員長代理 次に、大熊公述人にお願いいたします。
  9. 大熊房太郎

    大熊公述人 大熊でございます。  この改正案を拝見いたしまして私が率直に感じましたことは、まず政管健保の被保険者にとりましてこれは非常にきびしい内容のものである。もう少し強く申し上げますと、これは酷ではないだろうかというのが私の一番最初に受けた印象でございます。大体政管健保の宿命といいますか、体質といいますか、財政にともすれば赤字が出てくるということは、これは被保険者がどうしても中小企業従業員である関係上、大企業組合健保組合員に比べれば非常にその給与水準が低いということ、それからまた大企業従業員に比べまして、やはり病弱者が多いということ、それから高齢者が多いということ、こういうようなためにどうしても私は、傷病率が高くなってくるのではないか、これがやはり政管健保財政を圧迫する一つの大きな要因ではないかと思うわけでございます。この場合に、純粋に保険主義立場から財政収支均衡がどうのこうのとか、あるいは受益者負担がどうのこうのとか、こういうようなことはあまり私、強く考えるべきではなくて、むしろこれは対象がそういう階層の人たちでありますから、やはり社会保障的な見地からこれに対処していただきたいというふうに思います。  現在、たとえば今度の改正案を拝見いたしまして私非常に驚きましたことは、特別保険料を徴収するということでございます。しかも政管健保からはこれは強制的に徴収するようになっております。組合健保のほうは任意徴収。これは何か社会的な公平を欠くのではないだろうか。元来保険というのは貧富格差を少しでも縮小していくためにあるべきものだ。ところが、このように保険の間に格差ができるということは、かえってますますその貧富格差を拡大していくのではないだろうか。言いかえれば、富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなっていく、そういう弊害が出てくるのではないだろうかという私は危惧を感じるのであります。  それから、これは財政収入面だけについていろいろと論議されておるようでありますけれども、私のような立場の人間から申しますと、なぜ支出面配慮対策がなされないのであろうか、これは明らかに片手落ちであろうと思います。でございますから、たとえば診療報酬体系がいまのようなものでいいのだろうか。たとえば物本位診療報酬体系、これはともすれば薬剤乱費型の治療体系におちいる。こういうようなことに対して、はたしてこの際どのような配慮がなされておるのであろうかという疑問を感じるのであります。  片手落ちという意味においては、一方においては医療保険制度昭和三十六年以来国民保険ということで、医療需要側においては社会化というものが行なわれていながら、医療従事者とか医療施設のあり方については、それに対応した社会化が全く行なわれていない。これはその端的な例が無医地区——厚生省の調べによりますと、約三千カ所の無医地区があるということでござますが、こういうようなことにあらわれてきております。しかもこの無医区ということは何も過疎地帯だけの問題ではなくて、この大都会におきましても、はたして医療機会均等が与えられているかどうか。かりに信頼のできる権威のある病院において専門医の診療を受けようとした場合、特に長期の入院というようなことになりましたら、これはベット確保だけでも容易ではございません。しかもその上にベッドの差額徴収ということが行なわれております。今回こういう改正案がはかられている一方においては、こういう不合理なことが存在しておるわけでございます。これに対してどのような配慮対策が講じられているのか。私考えまするには、財政対策よりもまず現行の医療保険の合理的な、根本的な改正、それに対応しまして、医療制度の合理的なあり方、これには当然診療報酬の合理的なあり方、こういう問題も含まれる、こういう問題をまずきめてから、私はこういう問題にいくべきではなかったのではないかと思うのでございます。私ども国民の願いというものは、いつ、どこでも、だれもが安心して、信頼のできる医療というものを無料で受けられるということが私どもの理想でございます。  私この際委員会の諸先生方にお願いいたしたいことは、そういうような国民のだれもが、いつ、どこででも十分な医療を安心して無料で受けられるような対策、これをまずお考えになっていただきたい。これが私の意見でございます。(拍手
  10. 小沢辰男

    小沢(辰)委員長代理 次に、大橋公述人にお願いいたします。
  11. 大橋恭三

    大橋公述人 結論から先に申し上げます。  細部にわたる修正はあるといたしましても、全体から見てこれは実行に移すべきだというふうに考えております。すなわち全般的に見まして、この法案は先ほど何回もお話がありましたように赤字補てん対策でありますので、赤字対策としては、医療保険制度抜本対策の問題とかあるいは経営管理の推進ということが当然条件になるべきでありますけれども、現在の赤字状況を切り抜けることが焦眉の問題だと考える次第でございます。したがってこれを待っておっては間に合わないというところで、多少修正してもいいからこれを早く実行に移すべきだというふうに考える次第でございます。  なお、この対策の個々の項目に関しましては、総じてこれだけ赤字があるからこれだけ補てんしようということにあると思います。われわれも数字的に、連合会の資料で調べてみますとそうなると思いますけれども、しかし個々別々にこういうふうにしなければならぬというような根拠は薄いと思うわけであります。したがって全般的に赤字補てんができればいいのでありまして、個々別々の項目につきましてはいろいろ御意見もあるわけでありますから、修正に乗り出すということも必要かと考えます。したがって、先ほど申し上げましたとおりに、結論から申し上げますと、細部にわたる修正はあっても、全体から見て直ちに実行に移すべきものだというふうに考える次第でございます。  細目に関しまして、標準報酬の上下限の改定につきましてもいろいろ御意見がございました。重なっていることは省略いたしまして、賃金の上昇に見合う——私も長い間労務管理をやっておりまして、団体交渉を二十年くらいやっておりますけれども、賃金はかなり上がっているわけであります。それで、それに見合うようにやるべきだどいうところと、あるいは保険料引き上げなければ医療費の上がったということがカバーできないというようなことから、これは収入増の一つのベースとして認めてもいいのじゃないか。ただし一挙に二十万円にするというようなことは、これは理屈を超越いたしまして、観念的に無理があるのじゃないか、すなわち漸進的にある程度考えてもいいのじゃないかというように考えます。  その次は政管保険料引き上げでありますが、組合健保でも財政の悪いところは千分の八十にしているところもあるわけでありまして、政管の現状からすれば、この程度引き上げはやむを得ないのじゃないかというふうに考える次第でございます。  その次は特別保険料の徴収でありますが、賞与性格につきましてはいろいろ議論がございまして、私ども経営者としては付加価値の配分いわゆる賞与的の考えを持っているわけでありますが、組合側のほうは、労働者側のほうは給与のあと払いという考えを持っておるわけであります。しかし性格はどうあろうとも、収入には変わりはないので、これに対して特別保険料を課することは全く不合理ではない、不合理ということは言えないと思います。ただし給料による標準報酬の頭打ちがあるという均衡上、これも頭打ちを設けるとか、あるいは、これは社会保険ということから考えまして、これをいつまでも恒久的のものにしないで暫定的の措置にすべきだと考えます。  次は国庫補助定率化の問題でありますが、定率補助のほうがいいということは、これは当然であると思います。しかし国保における国庫補助率との均衡であるとかあるいは政管健保の現在の状況からすれば、五%は少し足らぬのじゃないか。それからなお、私最初に申し上げましたとおり、ほかのほうの修正をするということになりますと、どこかのしわ寄せばやはり国庫に持っていくべきだということで、五%にリジッドに考えることは無理があろうと考えます。  それから保険料率の弾力事項でありますが、理屈は保険であるから、それで財政の問題であって上がったり下がったりしてもいい、こういうことになるわけであります。私も二十二年前に理事長をやってみまして、そういうふうに教えられてきたのでありますが、実際はそんなに簡単にいくものじゃないのです。一回下げたら上げるということは不可能なんです。非常にむずかしい問題であります。私は徹夜で組合会でやったことがあります。寒いときに徹夜でやりまして、二日くらい徹夜をする元気でやろうと言ったところが、まあ徹夜でやられちゃやりきれぬというのでおさまったことがございますが、しかしなかなか上げるということは簡単にいくものではないのです。したがって政府管掌におきましても、すぐはできないとしましても、できるだけ支出面合理化するとかあるいは積み立て金をおろすとかいうことである程度こなしてからで、最少限度にやる。したがって、ただ赤だからということで一方的にきめることは私は無理があると思うのです。われわれのほうの組合健保といたしましてはこれは大問題であります。理事長として非常に頭を悩ましておる問題でありまして、簡単に、おれはこうきめたというふうにいかない問題であります。したがって、理屈はこうでありましても、実行場面において簡単に上げるということは考えるべきでありまして、力の強いある機関にかけて決定するということが望ましいと考えます。  それから累積赤字のたな上げにつきましては、現状やむを得ない措置と考えますけれども、将来、こういう措置赤字を補てんするということを期待して根本問題の解決とか組合内における経営努力ということを忘れないようにしていただきたい、これが条件かと考えます。  重ねて結論を申し上げますと、劈頭申し上げましたように、抜本対策の樹立の問題、経営管理の推進ということは前提とすることでありますけれども、現在の赤字を補てんすることが緊急事項であるところがらして、個々にわたる修正により、補てん及び不足するところは国庫補助項目で調整するということで、赤字によるところの政管健保の危機を脱するためにすみやかにこの法律化を希望するものであります。これが影響は他の保険組合の健全運営にも関係すると考えるものでございます。  以上をもって終わります。(拍手
  12. 小沢辰男

    小沢(辰)委員長代理 次に、水野公述人にお願いいたします。水野公述人
  13. 水野肇

    水野公述人 いろいろの公述人方々から御意見が述べられたわけでございますので、なるべくダブらないようにということで、私はまず最初に申し上げてみたいと思いますのは、確かにこれは一つの、この法案赤字対策だということで、これをやれば赤字は当分出てこないであろうという考え方が基本にあるのじやないかと思うのです。しかし私は実際にもしこれがかりにこのとおり可決されたとしましても、一年か二年かはもつかもわかりませんけれども、やがてまたふえるに違いない。たとえば医療費というのは世界じゅうの歴史をみましても、日本のを見ましても、どうしても伸びるというのが一つの宿命ではないかと私は思うわけであります。それは医学の進展というものが医療費というものをかなり高額なものにしていりていることは事実ですし、もちろん人命は地球よりも重いということがその根底にある以上、それを拒否することはできないということになるのじゃないかと思うのであります。日本経済センターなどの調査と申しますか、予測によりますと、昭和六十年には日本の医療費は二十四兆になるという数字を発表いたしております。もちろんこれは単純計算でございますから、これはそのままうのみにできる数字であるとは私も考えておりませんけれども、いろいろと計算いたしましても、とにかく二十兆くらいに近い数字になるのではないかということがいわれておるわけであります。もちろん昭和六十年までには賃金も上昇するでしょうし、ある意味においてはインフレも高進するかもわかりませんけれども、はたしてその二十兆なりその程度のものは一体だれがどういう形で負担するかということを考えない限り、私は日本の医療というものは何回やってみてもやはり赤字に転落する危険性というものを持っているのではないかということが、まず第一点でございます。  それから第二点は、まあそういう言い方は失礼かもわかりませんけれども、やはりこういう問題を考える場合に、日本のいわゆる保険官僚の方々と申しますかそういう方々の発想の中には、赤字対策であり、そういうものの延長線上のもの以外の考え方というのが比較的発想としては出てこないのではないかと思うのです。しかし私は、たとえばスウェーデンあたりがいま当面しております問題等から考えてみまして、やはりこれ以上病気の人を追っかけるのではなくて、病気にならないという施策を展開しない限り赤字は解消しないのではないかという気持ちを持っておるわけであります。で私は、総論と申しますか全般的に見ました場合には、この法案については非常にその点が強い不満でもあるし、かつ私の印象でもあるということでございます。  ただむずかしい問題は、では二千億にのぼる赤字をほっておいてよろしいのかといわれた場合には、やはり問題があるわけであります。それはそれなりにやはり赤字対策というものも全く無視はできないと思います。しかし全般的に今度の改正案を見た場合には、普通改正案の場合には多少国民の側にもプラスになるというようなものが何かあって保険料も上がるとかというふうな、それが行政であり政治というものではないか、私はそういうふうにいつも思うわけであります。今度の場合は確かに赤字のたな上げというふうなことは大きな問題としてあるわけで、それはそれなりの評価はできると思うのですけれども、それは国民一般についてはあまりぴんとこない問題なんではないかというような感じもいささかあると思います。  そのようなことから考えてまいりますと、この法案の中でやはり一番重要なのは、私は国庫負担だというふうに考えております。これは委員の諸先生方もつとにそのようにお考えになっておられるように思うのでございますが、この国庫負担というのはかつて昭和四十二年には六・二%くらい、定額を出しているわけですね、定率ではないわけであります。現在はこれで計算しますと三・八%くらいだというのが役所側から出された数字でございます。六・二%くらい四十二年に出していて現在三・八%だから、この辺ひとつ足して二で割ろうというのがどうも大蔵の発想のようにとれるわけであります。そうでないかもしれませんけれども、私にはそういうふうに思えるわけであります。  そこで私は、ひとつ別のテーマとして国民健康保険の場合を考えてみたいわけです。国民健康保険というのは、御承知のように、ある意味において政管ないしはそれ以下の健康度の人たちがいらっしゃるわけです。この場合には自己負担が三〇%で給付比が大体七〇%、その七〇%の内訳が大体保険料で二五%、国が四五%ということになっておるわけであります。この場合国が四五%出しているから政管も四五%出せということにはいささかならぬ。それは政管にそれを当てはめました場合には、事業主負担と国の負担というふうに分かれざるを得ないんじゃないか。そこで事業主負担はどれくらいであろうかということをいろいろと考えてみますと、大体三五%くらいだという説が私には有力のように思えるわけであります。そうしますと、残りの国の負担分というのは約一〇%になる。私は定率国庫負担に踏み切ったということはたいへん評価いたしますけれども、五%という数字につきましては、いささか低いのではないか、そう思わざるを得ない。でき得ればやはり二けたということが国民の希望ではないか、そう思います。  そのほかいろいろ申し上げたい点もあるのでございますが、時間があまりございませんので、最後にもう一点だけ、ほかの先生方のおっしゃらなかったことで申し上げてみたいのは、私は政府管掌健康保険というのは、皆さまもおっしゃっておられるように構造的な問題からいろいろな問題をあまりにもかかえ過ぎておると思うのです。しかも一方では、どなたか公述人の方の発言にもございましたように、公式の場でなかなか意見が反映できない面もないではない。もちろんそれは社会保険審議会では被保険者の代表の方々が確かに法律上はやっていられるわけです。しかし私は、それで政管健保というものについては経営委員会というものをつくるべきではないかと思うのであります。そこでいろいろの問題をやっていく、そういうことで、そのいろいろなことを今後考えるようにしていくべきではないかと思います。  いろいろ申し上げたかったんですけれども、時間になりましたので、あとは御質問で……。(拍手
  14. 小沢辰男

    小沢(辰)委員長代理 次に、武田公述人にお願いいたします。武田公述人
  15. 武田竹治郎

    ○武田公述人 武田でございます。  健康保険法の一部を改正する法律案につきまして意見を求められておりますけれども、この案は去る十六日に国会に提出されたように承っておりますけれども、そのいわゆる抜本改正案、そういうものの前提というふうに考えられると思われます。したがいまして、中小企業立場から多少なりとも抜本改正への私どもの期待と申しましょうか、願いとでも申しましょうか、そういうものも込めまして、意見を申し述べることをまずお許しいただきたいというふうに思っております。  この案は、今後の単年度におきまして、いわゆる政管健保の収支の赤字をなくし、これを土台といたしまして、医療保険制度に根本的な改善を加えて制度の発展にもっていこうと、そういういわゆるワンステップというふうに考えてみて差しつかえなかろうというふうに思っております。   〔小沢(辰)委員長代理退席、増岡委員長代理   着席〕  まず、収支が均衡いたしますことは、何と申しましても事業運営の基本であるというふうに私は考えます。事業の安定も発展もここから出発すべきではないかというふうに思い、保険方式をたてまえとしている健康保険事業につきましても、当然というふうに考えておるわけであります。したがいまして、そういう場合には一方で収入の増をはかることはもちろんでしょうが、支出においては合理的な努力を行ないましてむだをなくす、すなわち両面から努力していくということが大切であるというふうに基本的に考えます。  内容について、若干項目的に申し上げたいと存じますが、標準報酬の下限につきましては、これはまあ問題はございません。上限を一挙に二十万円まで引き上げるという点につきましては、いろいろと御議論も出ておるようでございます。いささか中小企業にとりましても高いという感じはいたします。しかしながら、たびたび改定されるというわけでもありませんし、保険料負担の公平という見地から考えましても妥当だというふうに思われます。ただ、むしろ中小企業にとりましては、そういうような高給が支払われることを私どもとしてはむしろ望んでおる状況でございまして、現実的な問題として一般従業員にそれほどの実害は少ないというふうに考えております。  料率の引き上げにつきましては、収支の均衡上やむを得ないというふうに思われますけれども、その引き上げ幅につきましては、国庫負担との見合いにおいて十分配慮していただきたいというふうに考えております。  三番目の特別保険料でございますが、これは言うてみると、いわゆる緊急不時の対策の費用に充てるとでも申しましょうか、私どもの家計をとりましても、月々の収入で月々の費用をまかなうことができずに、やや家計に不足を生じた場合に、ボーナスで埋めようかということを俗世間的にやっておりますが、まあそれらにやや相似通ったような感じはいたします。したがって当面収支が償わなければということでありますならば、金額的に見ましても大きな負担とも思われませんので、あえて反対はいたしません。ただ、あくまでこれは緊急的な対策として御考慮いただきたいということでございます。またこのことは、私どもにとりましては、将来総報酬制になるのではないだろうか、総報酬制を採用していくのではないだろうかという実は危惧を抱いております。したがいまして、法案にあります当分の間という表現を変えまして、これを時限を明示していただきたいというふうに考えるものでございます。  なおこの機会に、中小企業立場から総報酬制について申し上げておきたいと思いますが、健康保険はいわゆる厚生年金等も含めまして、労働保険と違いまして、その事務の手続等は、事業主にとりまして、社会保険事務の分野で大体七〇%程度占めております。総報酬制を採用いたしますというと、事業主にとりましてはいま以上の事務上の負担増をしいられるわけでありまして、こういう見地から健保の領域に総報酬制を持ってくることについては反対でございます。  国庫補助につきましては、定額より定率へ移行したことにつきましては、私は国の責任として当然であり、また経済情勢の変動において当然の結果であるというふうに思っております。御承知のとおり政管健保の体質は、地域保険でありますところの国民保険と非常に類似しておりまして、収支の改善には、私ども事業主あるいはまた被保険者負担努力にはおのずから限界があります。したがいまして、そういうことを考えれば、五%ということに拘泥せず、さらに引き上げていただきたいということでございます。  保険料弾力条項でございますが、これは収支均衡という名のもとに安易に発動されるおそれがあるように私どもは思われますので、これは支出に対するところの配慮を十分にされました上で、慎重な運用を強くお願いしたいということでございます。  結びといたしまして、しばしば申し述べられておりますように、政管健保対象中小企業とその従業員及び家族でございます。いままでの各公述人の諸先生方も申し述べられたとおり、その所得水準は低く、また五十歳以上の被保険者が一六%にも及ぶというふうな、いわゆる財政上の収支の不均衡が避けがたいという宿命を負っておるわけであります。事業主といたしましても、従業員健康管理や社会保険の指導教育の上にもずいぶん気を配っておるつもりではございますけれども、これとて残念ながら十分でない現況でございます。また、これら私ども事業主の努力の足りない部分につきまして、社会保険の第一線機関たるいわゆる社会保険事務所に期待はしておりますけれども、公務員の不足であるとかあるいは予算の制約等がありまして、意のままになっていないように思われております。  しかしながら一方、健康保険法の第二十三条には保険者に、被保険者並びにその家族の健康保持増進のために必要な施設をなし、また必要な費用の支出について規定をしております。私どもは、これら前向きの費用の支出というものは、昨今の赤字対策のためにきわめて貧弱な現況であるようにお見受けしております。こういうふうに見てまいりますというと、被保険者及びその家族の疾病予防及び健康保持増進は、結果的には医療費の減につながり、それが保険財政の安定に寄与するということを信じておるものでございます。したがいまして、保険事故発生前のいわゆる事前的、積極的な措置ともいえるこの疾病予防であるとか、あるいはまた保健施設を整備充実しなければいけない。これは、関係者努力すれば決して不可能なことではないというふうに思えるわけであります。  私どもは健康保険制度の上で、昨年保険医総辞退という不幸なできごとに遭遇いたしました。しかしながらまた、私どもは同時にこの中から貴重な体験を得たのであります。それは、月並みなことばではありますけれども、自分の健康は自分で守れということでございます。健康管理と申しましても、ことばではたやすく言えますけれども、実行はなかなかむずかしいことでございますが、常に機会あるごとに被保険者並びに家族に対しまして、自己管理できるような指導、教育を行なうことは、事業主であるわれわれも、また保険者である政府も当然の義務だ、私はこういうふうに考えざるを得ないのであります。  私どもは、長い歴史の上に築かれました医療保険制度を集団社会におけるところの相互扶助の精神として強く心にとどめておるわけでありまして、さらにさらに今後関係者の良識を深められることを念願しておる次第であります。  健康保険財政は未曽有の赤字をかかえまして、瀕死の状態にございます。国民生活に欠くべからざる制度に定着いたしました医療保険制度がこの財政危機を回避いたしまして、さらに発展して国民のためのすばらしい医療保険制度になることを私どもは期待したいのであります。こういう意味合いから、各項目別に申し述べました私どもの内容につきましては、中小企業の犠牲的精神の発露であるというふうにお考えいただきたいのであります。  そういう意味で、最後に各関係者の良識を尊重いたしました抜本的の改正がすみやかに実現されるようにお願いいたしまして、当面の財政対策たる本案には一応賛成するものでございます。  御清聴ありがとうございました。(拍手
  16. 増岡博之

    ○増岡委員長代理 次に、島田公述人にお願いいたします。
  17. 島田とみ子

    ○島田公述人 主婦の立場から、このたびの健康保険法改正案について意見を申し上げたいと思います。  政府管理健康保険財政上の赤字を解消するために保険料引き上げ、その上にボーナスからも特別保険料をとるという今度の改正案は、政管健保の被保険者にとりましてまことに過酷なものであると思います。  保険料は私どもの主人の給料袋からいやおうなく差し引かれるもので、税金と同じでございます。このたびの改正案では給付の改善はなく、保険料だけを引き上げるわけでございますから、実質的な増税となると思います。特に今度の政管健保改正案によりますと、大体年間九百億から一千億円近い保険料を千三百万人の政管健保の被保険者だけに負担させるということになります。この人たちだけが増税の対象となるということは、まことに不公平であると思います。  政管健保の被保険者の働いております事業所はいわゆる中小企業、零細企業で、その特徴は五十五歳以上の高齢者が非常に多いこと、それから女子が多いこと、また病弱者が多いことなどがございます。しかも賃金が大企業より低く、したがって、高齢者が多いために病人も多く出るわけで、医療費がかかるのはやむを得ない事情があるわけでございます。このような中小企業に働く人々の実情を考えますと、今度のような方法で保険料引き上げることは非常に不公平なことであり、社会保障のたてまえからいっても国がめんどうを見るのが本筋であると考えます。  改正案では国庫補助を五%とすることになっておりますが、なぜ五%という数字が出てきたのか、私どもにはその理由が納得できないのでございます。社会保険審議会の答申で、被保険者代表が二〇%の国庫補助率にすることを希望いたしておりますが、せめて野党三党が共同提案しております一二%まで国庫補助率引き上げることによって、このたびの保険料その他の引き上げをなくすようにしていただきたいと思います。  次に、抜本改正とも関連していることでございますが、主婦の立場から、いまの健康保険制度について非常に不公平であると思っている点を申し上げさせていただきたいと思います。  それは、健康保険において本人は十割、家族は五割という、家族給付の低いという問題でございます。家族が病気にかかった場合、医療費の自己負担は家計にとって非常に重荷となります。私が最近支出いたしました医療費をこの際御参考までに申し上げますと、内科でレントゲンの検査が四千四十円、神経科に通院して二週間分の薬代が千五十五円で、一カ月二千百十円、虫歯の抜歯が六百五十円、かぜを引いて七百円、大体一カ月間に合計七千五百円という支出をいたしております。  家族が入院いたしますと、この負担はさらに数倍になるのでございます。これも私が経験いたしたことでございますが、昨年数カ月、国立病院に入院いたしました。当時は私はつとめておりましたから、健保本人で、わずかな負担で済みましたけれども、大部屋のほかの患者さんたちは大部分主婦でございまして、全部健保または国保の家族でございました。その方々の支払いました一カ月の入院医療費は、三万五千円から四万五千円にのぼっております。御主人の職業を見ますと、中小企業や商店の経営者、サラリーマンの場合は役職者でございました。つまり、ゆとりのある中産階級でなければこのような入院料というものは負担できないのが現実でございます。ことに国立病院の大部屋というふうな比較的安い病院であっても、このような家族負担がかかるということをこの際理解していただきたいと思います。  今度の抜本改正案では、家族給付を七割にするという最初の計画が六割給付に後退いたしました。健保の家族といたしましては、できるだけ早く十割給付を実現していただきたいと思うわけでございます。特に、通院医療につきましては何とかやりくりする手もございますけれども、入院給付について、家族の十割給付ということを真剣に考えていただきたいと思うわけでございます。  外国の場合を厚生省の資料で拝見いたしましたところ、イギリスとかフランス、西ドイツ、イタリア、スウェーデンといったヨーロッパの先進国で、本人と家族の医療給付について日本のように差別をつけている国はございません。日本は先進国といいながら、健康保険の家族給付については非常に立ちおくれているのではないかと思います。  最後に、やはり抜本改正で取り上げられている問題でございますが、医師が領収書を発行するという制度制度化していただきたいと思います。私どもはどんな買いものをいたしましても領収書をもらう世の中なのでございますが、医療という買いものをした場合には領収書は全く出ず、医師の言うままに支払うということになっております。ですから、そこで高額の医療費を請求されても、私どもは納得できなくても支払わざるを得ないようなことになっております。領収書を出すことによって、医師の水増し請求というふうな、そういう問題もチェックできるし、私どもも納得して支払いができるということが言えると思います。  以上でございます。(拍手
  18. 増岡博之

    ○増岡委員長代理 以上で公述人意見の陳述は終わりました。     —————————————
  19. 増岡博之

    ○増岡委員長代理 質疑の申し出があります。順次これを許します。大原亨君。
  20. 大原亨

    ○大原委員 最初に、廻神公述人指摘をされました問題で非常に重要な問題があると思いますので、小山公述人その他の方々にお聞きをしたいと思います。  赤字対策にいたしましても、支出面を含む総合対策にいたしましても、患者とか国民一人一人の立場に立って考える、こういうことが私は必要だと思います。最後公述人の御意見もそのとおりだと思います。そこで廻神公述人は、地域的なつまり県による医療費の支出格差指数で言われたわけですが、昭和三十六年に一三六%であったものが、昭和四十四年には一六八%。一人当たりの医療費でいいますと、高いところは五万円をこえておるが、低いところは三万円に下がっておる。その原因は一体どこなんだといって議論は若干あるわけですが、政府はそのことをはっきり言いません。だがその格差是正、保険金と給付のバランスをとるという私どもの改革目標で矛盾を拡大することはいけないと思うのですが、そのことについて、長年保険審議会で議論され、学者でもある小山公述人、あるいは医事評論家方々廻神さん、こういう方々の簡潔な御意見があればひとつ参考にさせていただきたい、こう思います。
  21. 廻神英雄

    廻神公述人 私の現在手元にあります厚生省から出てきました資料は、ただいま大原先生のほうから指摘のあったのと全く同じ内容でございまして、昭和四十四年度政府関係健康保険の被保険者、入院外の一日当たりの支出金額の内容でありますが、一番低い県の佐賀県を一〇〇にした場合、一番高い県の京都が一六八という比率を示しておるのです。これを厚生当局に、なぜこのような一六八という格差が出てきておるのか、たとえば同じかぜだったらかぜで、佐賀県で病院にかかった場合百円で済むものが、京都へ行って同じかぜでかかった場合に百六十八円という結果が出るとしたら、なぜこのような比率で数字が示されるのか、具体的に検討して厚生当局国民の前に明らかにすべきではないかという質問を再三するのでありますが、何ら具体的に明らかになってまいりません。そしてさらにこれを市町村ごとに、一番全国の市町村で診療費の高い町村などについても、具体的な数字をあげて私たちは聞いておるのですが、なぜそのように日本一、日本で二番目または三番目という高額療養費がかかるのかという点についても、何ら具体的に明らかにされておらないところです。私たちは、厚生当局はこのような一〇〇対一六八という格差が出るような結果についてもっと具体的に問題点を明らかにして国民の前に示す、そして国はこれに対してこのような補助を行ない、被保険者である皆さんはこのような負担をしてもらいたいという点を明らかにして議論を整理すべきではないかというふうに考えておるのですが、いまだ何ら明らかにならないという点について、このような時点で被保険者負担率を直ちに千分の七十を千分の七十三に引き上げるとか特別保険料であるとかいう形で上げることについては絶対納得できないという点を明らかにしておるところです。
  22. 小山路男

    小山公述人 大原先生の問題にされます医療費地域差につきまして私も若干勉強してみたのでございますが、はっきり申しましてきめ手がないのでございます。計数的に順位相関の指数を使いまして、都道府県の医療費の差を何が一番順位が似通っているかとやってみますと、率直に申しまして、人口十万対医師数と医療費の高さが非常に高い相関を示す。つまりお医者さんの数が多いところはそれだけ医療のビヘイビアが高くなる。医師の一人当たりの所得をかりに同一額といたしますと、患者の数が少なくなれば当然高額医療に移行せざるを得ないというような面があるのではないかと私は思っております。それが一つ理由でございます。  それからもう一つは、地域ごとの所得水準の差でございまして、これは標準報酬月額の順位と医療費の順位を並べてみますと、やはり標準報酬月額の高い県は比較的に受診率が高い。それから東京などのような場合は、国民健康保険等でも所得が一般に高いものですから、政管健保とそれほど大きな医療費の差がない。ところがこれが所得の低い県、例をあげてみますと、佐賀県なら佐賀県へ参りますと、ちょっと給付率上げますと受診率がうんと上がるのであります。ですからやはり県民所得、一人当たり所得というものが相関がある。それからもう一つ考えられますのは、住民の年齢構成、疾病構造等の差でありますけれども、これはどうも私はまだあまりよくわかっておりません。現在私のつかんでおりますのは、その程度の知識しかございません。お答えになるかならないかわかりませんけれども、一応……。
  23. 大原亨

    ○大原委員 ほかに御意見がある方は……。  いまの点は非常に重要な点で、被保険者立場に立てば、これはたとえば地域保険にしていこうというふうなこと、地域に密着した健康管理をやろう、健康管理の問題を議論する際に、この問題についてのある程度のスタンダードができなければ、理解の合意点ができなければ、私は非常に制度上むずかしい。これは斎藤さんと武見さんといろいろ議論されておりますけれども、この問題は真剣に考えた場合には、その問題は私は問題があると思う。  それからもう一つは、受益者負担の考え方ですね。これは、医療において受益者負担という考えがあるんだろうか。たとえばいまのままでずっといけば、昭和六十年に医療費が二十四兆円にふえる、二十兆円ぐらいにはふえるだろう、こう言われるのですが、しかし国民立場に立ってみれば、一つのお医者さんが一日百件も二百件もやるというようなことは実際不可能だ。お医者さんに聞いてみても不可能だ。そういうことがどんどん行なわれておる。三時間待って三分という医療機関もある。これは国民立場に立ったら納得できないことですね。がまんできないことです。それでやはり疾病構造が、環壊破壊と健康破壊という問題が非常に深刻になっておるから、疾病構造が多元化して、そして病名がどんどんふえていくという現象が出てくる。だから健康管理の必要性があると思うのですけれども、健康管理ということになれば国全体の仕事になる。ですからいまのような病気の場合は、スモン病とかベーチェットとかサリドマイドとかいうことは、またこれも非常に重要な問題にいたしましても、国民立場に立てば病気をした者、患者は受益者であるか。受益者であるということは、私は考え方が、保険主義との関係もありますけれども、保険主義の限界や意義は、私は積極的な意義を若干は理解をしているわけですが、しかし受益者負担という考え方で財政措置赤字対策を講ずるというふうな考え方は、これはさか立ちをしているのではないかと思います。受益者というのがあるのかないのか。この点はひとつずばりと水野先生やその他の学者の先生方、評論家の方から御意見をお聞きしたいと思います。
  24. 水野肇

    水野公述人 簡単にお答えしますが、私はやはり医療の世界においては受益者負担というものは原則としてはあり得ないと思うのです。ただ、私が医療費がふえるであろうと申しましたのは、高額医療費と申しますか、高度の治療を要する医療というものが、世界のほかの国と比べまして日本が安いことは事実であります。それはやはりおいおい水準として上がっていくであろう。だから、高額医療を追っかけていくだけでは、結局は治療だけに重点を置いたのではどうにもならなくなるのではないかというのが問題提起でありまして、そのあと、大原さんのおっしゃるように、要するにそれは疾病構造の変化という問題が当然出てくるのだ。私はそれも全くそのとおりだと思うのです。そこで、健康管理というのをやる。ただ私は、健康管理というのは、一般にいささか勘違いというか、受け取り違いがあると思うのですが、健康管理というものと疾病予防というものとは別だと私は思うのです。疾病予防というのは病気をチェックするためのものである。たとえば、人間ドックというふうなものがそうである。それに対して健康管理というのは何かというと、前向きの姿勢でものごとと取り組めるような精神及び肉体及び社会環境的な状態を自分自身もかちとるように努力するということなんです。だから健康管理というのは、自分がある程度努力する。しかし、その外側に医療の供給体制というものがありまして、それを国民は自由に使えるような、しかもうまい方法で使えるようなものができるというのが健康管理体制というものであろうと思うのであります。それが医療全体としては、健康管理からリハビリテーションまでという、一貫体制といわれておりますものは、要するにその根底はそこのところにある、そういうことになると思うのであります。したがいまして、お答えになるかどうかわかりませんけれども、何か病気がなおったから、それは国民負担しなければならないという考え方は、それは医療の世界では原則としてはやっぱり無理な考え方なんじゃないか。要するに、大原先生の御意見と私はその限りにおいては全く同じであるわけでありますが、ただ、例外的なものは幾らかあると思うのであります。  それはヨーロッパの各国でも多くの国がやっておりますように、非常に軽医療についてはある程度の自己負担を持ってもいいではないかということ。そういうことをやっておる国というのはけっこうあるわけであります。私は日本の医療医療費という角度から考える場合には、何を保障すべきかというものの順位というふうなものが、ほんとうはやっぱりあるのじゃないかと思うのです。その限りにおいては、私はやはりまず重病で入院しておられる方々は、男といえ女といえ、家族であろうがなかろうが、とにかく全員がやはり十割給付であるというのが理想であると思うのです。しかし、いわゆる軽医療というものについては、年に一回の健康診断というものを片側で国が行なうこととするという、その前提条件が要りますけれども、あとは軽医療についてはある部分は、医療費の全体から見たワクから、ある程度の自己負担というものはやむを得ないだろう。その自己負担受益者負担という言い方をするかどうかということは、これはいろいろ見解の相違があると思いますけれども、やはりそれはある程度はいたし方ない。つまり万事が全部ただというわけには結局はいかないのじゃないか。そういう点で、何を保障すべきかということから始まって、順位別にずっとやっていって、最後保険財政もパンクする、国もこれだけ要するに国庫負担を出している、どうだろうか、その先ちょっと持ってくれぬかという話なら、私はそれはわかると思うのです。しかし、重病患者が次々取られるというふうなことについては、やはりこれは問題なんではないか。ちょっと答えにならぬかもしれませんけれども、総じて言えばそういうふうに思っております。
  25. 大原亨

    ○大原委員 最後に、私ども政策をいろいろ議論する際に、いままで公述人の皆さんからいろんな議論がありましたが、いまお話がありました健康管理という点ですが、予防と健康管理、リハビリテーション、一貫して医療を拡大して考えるということで、治療中心、投薬中心のいまの日本の医療を改革する、こういうことはかなりの合意であると思うのです。そこで、いま私どもやっておる赤字との関係ですが、政府管掌の健康保険は一番中央集権的で、官僚的で、健康管理がなされてない。一番欠陥を持っている。ですから健康管理というところへ手を伸ばすためには、いままで議論があった中でまとめて私の質問をいたしたいと思いますが、中央社会保険審議会等だけでなしに、労働者や事業主も環境改善では責任があるわけですから、早期診断、早期治療でやはり合意があるわけですから、そういう地域ごとに政管に対して労働者あるいは事業者が参加する方式制度的に確立する必要があるのではないか。いま政管健保が一番野放しになっておるのではないか。これは診療報酬体系の問題と関連がありますが、とにかく健康管理がなされていないのが一番大きな欠陥であって、これをほっておいたら赤字基調というのは幾らでも悪循環するのではないか。これは政府がやることではないか、やることをやっておらないではないかという、こういう議論は、保健所の問題等含めて私どもは議論しているところでありますが、中小企業のそういう健康管理を職場に密着してやるのにはどうしたらよいか。いま武田公述人のお話がございましたけれども、御意見があればひとつお伺いいたしたい。
  26. 武田竹治郎

    ○武田公述人 ただいま大原先生から若干御指摘になりました健康管理の問題でございますが、私ども政管並びに事業主という立場から見まして、先ほど申し述べましたように健康保険法の二十三条にそれははっきりあるわけでございますので、そういう面でもっともっと国が財政支出をして、そしてそれをもとに積極的にやってほしいというのが基本的な考え方であります。これは最近の数字をずっと見てまいりますというと、そういうものに支出されておるところの費用というものは、むしろお話にならないくらいな数字、億にいたしましても二億何千万程度、三億に満たないような数字と承っております。組合管掌のことをいっては、これは比較になりませんので、私はそういうことは申しませんけれども、もっともっと財政を安定せしめて、国庫補助も付与していただいて、そしてその中から保険料収入のたとえば何%であるというような、そういうものをもっと前向きに出させていただいて、そしてそれらが私どものいわゆる指導、教育等の費用に充てられるような、そういう道をまず財政の面から講じていただきたいというふうに私ども考えておるわけです。一方私どもの職場を見てまいりますというと、これは健康管理、疾病予防等、やり方がずいぶんいろいろあると思いますけれども、従業員の指導、教育等にあたりましても、中小企業主だけではなかなかできませんので、あるいは事業場を一まとめした単位ごとに専門家の方々のそういう教育、指導を受けるとか、あるいはまたもっともっと積極的に、先ほど申しましたような費用の中からいわゆる宣伝パンフレット、そういうようなものをどんどんつくっていただいて、そして被保険者の教育の資料にしなければいけない。あるいはまた、これはちょっと乱暴だと思われるかもしれませんが、企業には健康診断の制度を命じておりますので、健康診断なども思い切って健康保険の分野の中でまかなってみるというような、前進というか英断というか、そういうようなこともぜひ取り入れていくべきではないだろうかというふうに、中小企業の一人として考えておる次第でございます、たいへんざっぱくな、お答えになるかどうかわかりませんが、そういうふうに考えております。
  27. 大原亨

    ○大原委員 小山先生、御意見ございますか。
  28. 小山路男

    小山公述人 政管健康管理が非常に行き届いていない、おっしゃるとおりだと思います。実は健康管理の問題は、これは単に政管ばかりでなくて、全国民対象として考えた場合に、まだシステムとして確立しておらないのでありまして、健保組合等で若干やっておるところもあります。それから地域の医師会等で、地域でやっておる例もあります。それから国民健康保険で市町村単位でやっておるということでありまして、どういうふうにしたならば健康管理がうまくいくかといいますと、いまのところ摸索の段階で、われわれとしては試行錯誤的にいろいろなことをやって、少しでも国民のためになればいいことでありますから、大原先生の御提案のような考え方も一つの考え方、非常にいいアイデアだと思いますし、もう一つ、保健所の機能を健康管理的なものに変えていくということも大切なことだろうと思います。そういうことを通じて健康管理を行ない、国民の健康を高めていく。たとえば西ドイツのゴールデンプランのような、体力増強のようなことも国家的なスケールで考えてもらうということも大事だろうと思います。  いずれにいたしましても、政管健保健康管理が非常に不十分なことは事実でありますが、これを保険で行なうのか、地域的な行政で行なうのか、あるいは別途労使双方の話し合いで自発的に行なわしめるのか、方法論がいろいろありまして、非常にむずかしいのでありますが、何らかの方法がとれる集団から健康管理というものは進めていかざるを得ない。政管につきましても全く同様でありまして、地域ごとに何らかの方策をとらなければいかぬということは私も十分承知しておりますし、大原先生のお考え方に賛成でございます。
  29. 廻神英雄

    廻神公述人 ただいまの大原先生の指摘されました点につきまして、特に政府管掌の健康保険に限って申し上げますと、健康管理の一番おくれております政管健保の被保険者に限定して、都道府県ごとか、またはいま小山先生の言われました、もっと細分化して社会保険事務所ごとに政管健保保険者健康管理委員会を設置をしていくという内容がより具体化されることを強く望む次第で、全く大原先生と同じ意見でございます。
  30. 増岡博之

    ○増岡委員長代理 次に、川俣健二郎君。
  31. 川俣健二郎

    ○川俣委員 もう少しお聞かせ願いたいと思いますけれども、小山先生にお伺いします。やはり抜本改正の前には条件整備として財政対策は当然なんだという前提で、各項目ごとにお考え方を述べていただきましたが、国庫補助の際に五%では低過ぎるではないか。そこで、もし先生に何%ぐらいが至当であるかというようなことのある程度の理論づけがあれば、お聞かせ願いたいのが一つ。  それから、いま政府は五%を出されましたが、どういう根拠から五%が出されたのかということを毎回ごとに各委員から質問されても、その根拠が明らかにされてないんで、われわれ委員としてはどうにも賛否の考え方が出ないわけです。保険審議会委員のお一人でもありますし、模様などをお聞かせ願いながら、先生は、政府が五%を出されたというのは、根拠じゃなくて、どなたか先生がおっしゃっていましたが、大蔵省あたりが二で割ったものなんだろう、こういうことなのか、もう少しお聞かせ願いたいと思います。  それから廻神公述人にお伺いしたいと思いますが、赤字対策はわかるとしても、やはりその要因にメスを入れなければ赤字対策にならないんだという前提で、各項目全面的に反対で、全額国庫負担ですべきだこういう強い主張がありましたが、それにしても各公述人の各項目ごとの賛否のニュアンスがそれぞれありますだけに、たとえば総評の常任幹事として、上限上げる累進制というようなものぐらいはある程度考えてもいいということなのか、それともこれすらやはりだめだ、こういう考え方なのか、それともやはり前提になる赤字対策は、要因にメスを入れなければどんな項目でもいかぬ、こういう考え方なのか、その辺をまずお伺いしたいと思います。
  32. 小山路男

    小山公述人 お答えいたします。  財政対策を講じる場合に国庫補助は何%が妥当かということになりますと、何%という根拠がない。つまり費用負担をどこで分かち合うかということだけでありまして、特にそれが理論的な根拠に基づいて出されたのではないと私は思います。ただ考えなければいけないのは、ほかの保険集団、たとえば健保組合等についてどうするかとか、それから日雇、国民健康保険、それぞれ制度ごとに国庫補助のあり方が違っているわけでございます。そこでこのたび定率の国庫負担を導入するという一つの考え方が出てきたわけでありますが、私ども社会保険審議会で議論いたしましたときも、どうもまだ低いのじゃないか、もう少し上げてほしいというのはみんなの共通した意見なんですけれども、何%でなければいかぬかというのは結局、料率をどこがどこまで負担すれば国庫負担は少なくて済むとか、上がるとか、何か数字のつじつま合わせの議論だろうと私は思います。お答えになりませんけれども、実際はそういうことでございます。
  33. 廻神英雄

    廻神公述人 川俣先生から御質問のありました、たとえば保険料上限の累進制について、現行の十万四千円を多少なりとも引き上げるというようなことについて総評としてはどう判断するのかという御質問だったというように考えますが、一応今回の一部改正の、特に政管健保赤字対策として、その要因が全く明らかにならないまま被保険者負担の増額という点については、断固として反対せざるを得ません。そして現在の標準報酬月額も当然賃金の上昇に伴って、三千円から十万四千円というワク内において自動的にスライドで保険料が上がっていくのですから、この範囲内でけっこうではないかという点を付加をして、現行の赤字要因の解明がない限り、被保険者を集めている私たちとしては容認することができないという点を重ねて明らかにしたいと思います。
  34. 川俣健二郎

    ○川俣委員 わかりました。  それから水野公述人にお伺いいたしたいと思うのですが、この一部改正赤字対策をやれば赤字が出ないのか、ところがそうでないところに問題があるんだという前提で、専門的なお話を伺わしてもらいまして参考になりましたが、特に現在の保険官僚というのは赤字対策の延長の範囲内でしか医療問題を考えられないというように私は伺いました。そこで昭和六十年には、日本の医療というのは二十四兆、最低二十兆になるのだという警標的な、非常にとうとい御意見がありましたが、その二十兆円を前提として、先生にはよくテレビでお話を聞かしてもらっておりますけれども、二十兆円を前提にして財政的な確保の展望からどういうふうに対策を考えればいいのかということを専門的にお話し願えればありがたいと思います。  それから時間がありませんから次に島田さんにお伺いしたいと思いますが、この案を見て率直に過酷である、千三百万人だけ特別に税金を取られるような感じだというのは非常に偽らざる感じだと思って、私も感銘して伺っておりましたが、その際、医療だけがなぜ領収書を出さないのかという、これも端的ですけれども、非常に重大な問題があるんだと思います。というのは医者側の診療費に対する不信の念がやはり町かどその他、主婦の間で話されておるのか、それともやはり自分のかかった医者代ぐらいはあとの健康管理、予防のこともあって調べてみたいというようなこともあってこういうような公述をされたのか、その辺をもう少しお伺いしたいと思います。以上です。
  35. 水野肇

    水野公述人 お答えします。  第一点の保険官僚云々という話は多少誤解があったかもわかりませんが、私は現在の厚生省保険局にかりに私がおるといたしましたら、やはりその赤字というのが頭の中にいつもあるであろうということはあると思うのです。それからまた、そういうものを追い払ってひとつぜひとも抜本と取り組もうという気持ちもまた片一方にあるであろうということも私はよくわかるわけなんです。ただ、しかし、保険局と医務局と、あるいは薬務局というふうなものは、これは何も厚生省だけではございませんけれども、どこでもそういう各局間の問題とかあるいは各省間の問題というのは、いっでも問題になるわけでございまして、その辺がもう少し水平思考していただけないだろうかという気持ちで申し上げた、これが第一点でございます。  それから第二点の日本経済センターの予測を踏まえて、おまえならどう考えるかというお話なんでありますが、ここで私が奇手妙手を発揮できるようでしたら、それはやはりたいへんなことでございまして、私も奇手妙手はございませんが、ただ一つ申し上げれることは、やはりいまの医療の考え方というのに長期展望——何も私は二十年とかいうようなことを申すのではなくて、五年先の長期展望ということはなかなか考えられない要素がいっぱいあるという問題があるわけであります。ただ、私は率直に言えば、それは考えにくいのだけれども、やはり一つは、先ほど大原先生もおっしゃったように、健康管理あるいは疾病予防というところでチェックするということがどうしても重要だと思うのです。これはそういうことをやりました幾つかのこまかいデータは、幾つかの病院の中ではございますわけです。そういうものによって受診率なり医療費なりが減るということも、実際にはあり得るわけです。ただし初めの二、三年はそれによってふえます。そこでたいていみんな、これは約束と違うではないかということに、えてしてなりがちなわけでありますけれども、ある程度二年なり三年なりやりますと、それから先は大体減っていくというのが多いようであります。それを持ちこたえられるかどうかということが一つあろうかと思います。  それから私は制度全体としてやはり考えなければならないのは、諸先生方がおっしゃるように、やはり国民はどう思っておるかなということであろうと思うのであります。ただその場合に、体制をつくるということは、これはやはり政府なり役所なりがやらざるを得ない仕事であるわけです。まあ具体的な項目としては、私は、これはもう何年も前から出ている話でありますが、やはり医薬分業というやつはどうしてものがせられないものの一つであると思います。  それから国民もやはり、どういう場合にどういう先生にかかったらいいかというふうな、そういう情報提供、あるいはこれは健康教育ということにも関連があろうかと思うのでありますが、私はやはり教育というものをやらずしてなかなかうまくいかないのではないか。だから、それは決して文部省所管事項という意味ではございませんけれども、やはり健康教育というものを大幅に展開する、そして片一方では制度的にいろいろと考えて、そこから先は、私が先ほどお答えいたしましたように、重病を保障しながらやっていくということになりましたら、医療費増というものはいまのようなぐあいにウナギのぼりにはならないであろう。しかし、たとえば人工じん臓だとか、そういうふうなものを導入してくる医学の中では、非常に技術的にトップレベルにあるものは高くならざるを得ない。これはもう私はいたし方ないのじゃないか。だから問題は、軽医療というのが医療費の中でどれだけ占めていて、それをどう処理しながらやっていくかというふうなところの展望というものが、これはなかなか計数的には出しにくいもののようでございますけれども、やはりそこらあたりに努力を払わなければならないのじゃないか。私たちの聞いております範囲では、かなり軽医療というものが日本の場合ヨーロッパよりも多いということが言えるようであります。
  36. 島田とみ子

    ○島田公述人 いまの領収書の件でございますけれども、同じかぜを引いても、Aの医師にかかった場合とBの医師にかかった場合では、請求される金額が違う場合があるわけでございます。その片方では注射をして、片方では注射をしないというふうな診療があります。それは症状にもよる場合があると思いますけれども、私どもとしてはなおればいいわけなんで、適正な診療をしていただきたいわけでございます。その領収書にも、私の希望としては、診察料が幾らで、薬代が幾らで、注射料が幾らであるというふうなことをほんとうは明細をはっきり書いていただきたいのでございます。でないと、総額だけを書いていただいたのでは、あまりはっきりとした診療内容というものが納得できないのではないかと思います。  以上でございます。
  37. 増岡博之

    ○増岡委員長代理 次に、田邊誠君。
  38. 田邊誠

    ○田邊委員 各公述人方々のお話を聞きましたが、最終的に替否の御意向はありまするけれども、いまの政府が出しておる案そのものでいいという方は八人の方々どなたもなかったように思いました。なるほどと思ったのでございますが、そこで、時間がございませんから簡単にお聞きをいたしますが、水野さん、これをどういう形で赤字対策を行なっても、一、二年でまた赤字になるという形ですね、医療費の値上げ等も予測されるわけですから。で、いろいろ病気にならないような方策をとること、いろいろな実はくふうなり努力が必要なんですが、しかし、医療費の値上げを見たときに、今後の赤字になるということは、これは避けられない。これは一体、端的に言って、どういう方法で赤字をこれから生まないようにしていったらいいのか。これはやはり国民負担との関係の中で一体どういうふうに考えていったらいいのか、水野さん、いろいろと専門家ですから、どうでしょう。
  39. 水野肇

    水野公述人 お答えします。  たいへんむずかしい質問なんですけれども、私は一言で答えろとおっしゃったら、やはりこういう問題を考えるシステム的な考え方というのを、もう少し厚生省に取り入れていただきたい。もちろん、政府・与党並びに先生方もみなそうかもしれませんが、私はシステム化ということがやはり一番いまの場合には必要なんじゃないかと思うのです。いまの場合は、とにかく医療費が上がる、それをどこかで負担しなくちゃいけない。そうすると、ごちゃごちゃとやっている間に、どうしたって被保険者のほうにも負担もかかれば、まあ片一方では国がもっと出せという議論がいつも出てくる。そう言っちゃ悪いですけれども、そういうことを長年繰り返してきているわけですね。  そこで、ぼくはやはり、非常に不確定要素というものが医療の中にはあるわけですけれども、もう少しまあこの辺のワク内でというシステム化ということがぼくはやはり要るのじゃないか。要するに、プランニングをして、そうしてそれをどうシステム化していくかという新しい行政のやり方を、これはテスト的でもいいから、ここで一ぺん考えてみていただきたいというのが私の感想でございまして、私がやったらというほど私は実力もございませんし、それほど僣越でもないのでありますが、とにかくそれはちょっと具体的にはむずかしいと思いますけれども、まずそこが一番要ると思うのです。役所間の、各局間のなわ張りなんかというのも実際にはあるわけですから、先ほども申しましたとおり、やはり省全体としてのシステム化ということがまず第一番じゃないか。とりあえずはそういう感じです。
  40. 田邊誠

    ○田邊委員 ありがとうございました。  廻神さん、一応ここで赤字をなくさなくちゃいかぬ、これは国の責任だ。それでなくす形になりましたあと、一番問題になるのは、政管健保の場合、やはりわれわれも公費負担医療をだんだんふやせと主張しているのですけれども、さっき島田さんもおっしゃいましたけれども、家族給付を上げなくちゃならぬのですね。これは一体どういう方法でだんだん上げていったらいいというようにお考えでございましょうか。
  41. 廻神英雄

    廻神公述人 家族給付の引き上げにつきましては、いま川俣先生からの御質問の中で私の考えを明らかにいたしました赤字対策要因を明確にして、諸問題を全部整理をした上で、さて、被保険者負担率はどうあるべきか、使用者負担は、国の負担はという点を明らかにした中で、さて家族給付は十割という線に持っていくべきだと思うのですね。ですから、現在の矛盾点の上にさらに小手先的なことをするのではなしに、根本的な要因を明らかにして、さて労働者の負担は、使用者負担は、国家の負担はという点を納得ずくで議論をした中で、家族の給付は十割に引き上げることを私たちとしては基本的な態度として持っておることを明らかにしたいと思います。
  42. 田邊誠

    ○田邊委員 和田さんと武田さんから、抜本改正を早急にひとつやってもらいたい、こういうお話があったのですね。しかし、政府から出てまいりました抜本改正案をお読みいただければおわかりのとおり、家族給付を五割から六割、現金給付を幾らか改善する、高額医療についての療養費払いをするという形ですけれども、それに対しては、いわゆる初診時負担、入院時負担、薬代一部負担、それから、いわゆる組合健保との共同事業、国の持ち出しはいわば原則的にしないという、これが抜本改正でしょうか。端的に言いまして、抜本改正としてまずその中心に据えて考えなければならぬものは何であるというふうに和田さんと武田さんはお考えでございましょうか。
  43. 和田吉弥

    和田公述人 お答えいたします。  いま政府で出されております抜本改正案は私どもは一応了承するたてまえでございますので、国庫の負担ということは現在健保改正の中で出ておりますから、一応そういう方向で、財政調整ということはある程度すべきだ、そして利用者はやはりある程度負担すべきだ、家族の給付も、これは給付の公平という面から見まして、現在では低過ぎるという立場から、漸次改めていくべきだ。しかし、先ほど来お話のございましたように、これは鶏が先か卵が先かという問題になりますけれども、並行して、むだの排除という点につきましては、これも徹底的にやっていただくという前提に立っての考え方でございます。
  44. 武田竹治郎

    ○武田公述人 抜本改正案につきまして、二、三、やはり相当問題点があるように指摘されるというふうに思います。  まず、原案ではたしか家族給付は七割であった、これが六割に後退している。私どもはぜひとも、初段階として七割ということは強く望みたいというふうに思っております。  それから、共同事業についての発想がございますが、これなどもやはり一つの前進であるだろうというふうに思っております。  それから、先ほどからいわれておりますような受益者負担の問題がありますけれども、受益者負担ということばが往々にして病気にかかったものをいじめるのだというふうな印象を与えがちでございますが、そういう意味でなくして、健康を維持している者と不幸にしてそれを失った者との間に、若干のそういう負担はあっていいだろうということから見れば、私は初診料の問題にはそう問題はないと思いますし、特に薬剤などは私はこれでいいと思います。と申しますのは、四十二年の特例法がありましたときに、あれはたしか初診料問題と料率の問題と薬剤の問題が大きな柱であったように思いますが、この柱が四十四年にはずされまして、はずされた中には薬剤の問題があるようでございますが、これらがはずされたためかどうかわかりませんが、医療費というのは構成が複雑でございますから一がいにはいえませんけれども、そういうもののために医療費が急激なカーブを描いて上昇したというようなことを私ども見ますと、やはり薬に問題があるのじゃないだろうか。特に薬剤の占める割合というものは高いように聞いておりますし、そういうような問題では、やはり多少の歯どめとでも申しましょうか、そういうことはあってもいいのじゃないか、こういうふうに思っております。  それから、先ほど私強く申し上げましたように、こういう抜本改正の中にも、さらに保険施設の費用の支出につきまして、船員保険法にあるような定率を国が出すのだというようなことを入れて、そして抜本改正の中で、漸進的に先ほどのようないわゆる保険施設の充実であるとか、そういうことをはかりながら、それが結果的には医療費の減につながるような、そういう考え方をぜひこの中に入れてほしい。十全ではございませんけれども、そういうふうなものもさらに取り入れて、より完全なものにしていただきたい、こんなふうに考えておるわけでございます。
  45. 田邊誠

    ○田邊委員 実は私の質問がちょっと不十分でございまして、私は医療制度の改善を前提としながら、医療保険制度抜本改正というものは一体何を柱にして取りかからなければならないか、向かうべき姿は一体何かということをお伺いしたがったのでありますけれども、これは私の質問の面が不十分でございましたので、おわびを申し上げます。  ありがとうございました。
  46. 増岡博之

    ○増岡委員長代理 この際、午後一時まで休憩いたします。    午後零時七分休憩      ————◇—————    午後一時二十四分開議
  47. 森山欽司

    森山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  公述人に対する質疑を続けます。大橋敏雄君。
  48. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 公述人の皆さまに対しましては、本日はたいへんお忙しい中、ほんとうに御苦労さまだと思います。わが国医療危機に関しまして、その問題について先ほどからいろいろと御意見を賜わり、また御見解を賜わったわけでございます。非常に参考になったわけですけれども、お話を伺っておりますと、ただいま当委員会審議をされておりますいわゆる政管健保財政対策案、これが中心にいろいろ論じられたと思うわけです。しかも賛否両論とはいうものの、賛成者側の方も非常に歯切れの悪い態度でものを言っていらっしゃったように伺いました。私は、もっと重要な問題が論じられなければならない。と申しますのは、われわれも今日当委員会財政対策案を審議はしておりますものの、これは本意ではなく、不本意ながら行なっている。と申しますのは、もう皆さんは医療の問題について御見識の高い方であるし、また関心の深い方々でありまして、私から申し上げるまでもなく、四十二年度以来政府は、わが国医療の問題については抜本対策実現する、抜本改正案を提出いたします、こう言いながら今日までこれがなされてこなかった。御承知のとおりに、政府抜本改正案なるものが先般閣議決定され、そして国会のほうに出されたやに伺っておりますけれども、これは両審議会、いわゆる保険審議会やあるいは社会保障制度審議会等で抜本改正の名に値しないと強く指摘された中身でございまして、むしろそれよりも一歩も二歩も後退した中身で出されているようなしろものでございます。したがいまして、私はきょうはむしろこの政府の政治責任について皆さまがどの程度の認識に立っていらっしゃるのか、これも含めてお尋ねをしてみたいと思うわけであります。  そこでまず第一番に小山公述人にお尋ねいたしますが、私は日本の医療というものはこうあるべきである、これはすなわちいまいわれております医療基本法というものの中に決定され、すなわちレールが敷かれた上で、それに基づいて抜本改正案が組み上げられていく、その中で政管健保赤字も当然解消されていくものだというような認識を持っているわけでございますが、小山先生のお話を伺っておりますと、政管健保赤字を安定せしめた上で抜本対策を急がねばならないというようなお話であったように伺いました。これは私は逆論ではないだろうかという気持ちを持ちましたので、この点をまずお尋ねしたいわけでございます。
  49. 小山路男

    小山公述人 お答え申し上げます。  政管健保赤字対策抜本改正とどうかかわるのかと申しますと、もし抜本改正によりまして政管健保赤字を補てんするという方法をとりますと、これは抜本改正政府管掌健康保険赤字対策だということで、利害関係者の合意が得られない。これだけ複雑な利害が対立している中で何らかの調整をとろうと思いますと、どうしても政管のほうを先に財政的に安定させるということをやらざるを得ないと私は思うわけでございます。
  50. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 小山先生のお話を伺っておりますと、確かに抜本改正は必要だ、当然やらなければならぬけれども、いろいろ利害の関係からおくれている。この事実の上に立って、政管健保も何とかしなければならぬのじゃないかというように私には受け取れたわけでございますが、先ほどのお話の中でいま言った逆説論もあったし、その上特別保険料、いわゆるボーナスから受け取るものも、これはかけないで済めばかけないほうがよいのだけれども、やはり財源問題からすればやむを得ないんだ、このようなやむを得ない、やむを得ないというような言い方をなさってきました。たいへん失礼な言い方でございますけれども、小山先生はもともと社会保障のもう大権威者でございまして、そういう基本的なお立場から今回の法案、そして中身を見ていった場合に、私はむしろ大上段に振りかぶられて、こんなのは引っ込めなさい、そして抜本改正案あるいは医療基本法とともどもに、これはセットしながら審議を進めるべきであるというくらいにおっしゃられるんじゃないかと期待していたわけでございますが、その点非常に私自身何となくもの足りない感じをいたしました。  また弾力条項の問題にいたしましても、むしろこれは社会保険庁の主体性といいますか自主性を重んずる立場から見れば、これはあったほうがいいんだというような言い方をなさったような気もいたします。これはまたあとでゆっくり答えていただきますから一応とどめまして、その前に、私は大熊公述人にお尋ねいたしますが、いま私が申し上げました政府の政治姿勢、これについてどうお感じになっているかということが一つ。それから、先ほどの公述の中では弾力条項の問題にせよ、国庫補助の問題にせよ、時間の関係だっただろうと思いますけれども、お触れにならなかったような気がいたします。したがいまして、国庫補助率、今回定率五%ということで出てきている内容、これについての御見解、また、弾力条項についての御意見を承りたいと思います。
  51. 大熊房太郎

    大熊公述人 私は、今回のこの改正法案の提出ということは何か本末転倒しているのではないだろうか。まず最初私が申し上げましたように、一番最初にこの医療保険抜本改正並びにこれに対応した医療制度、これには当然診療報酬体系の合理的な改善、まずそれが先に行なわれるべきであったと私は思うわけであります。で、医療保険抜本改正診療報酬体系の改善、それからそれに対応するような合理的な医療制度、そういうようなものをともかくやりまして、なおかつ赤字が出て今日のような問題になったというなら、私は納得できるのでございますが、昭和三十六年の国民保険以来、そういうことに全く手が打たれないままにここまできまして、今日この赤字対策のこういう問題が起こったということは、私は何か本末転倒しているのではないか。  それから、大橋先生からお尋ねの弾力条項の件でございますが、私はこれはやはり一官庁、一官僚のきめるべき問題ではないと思います。こういう国民生活に重大な影響を与えるような問題につきましては、やはり国民の代表である、最高機関である国会の承認、審議、そういうようなものを得てから私はきめるべきであると思います。  それから、五%定率補助の問題でございますが、これは国民健康保険の場合などから考えましても、私はやはり最低一〇%以上の国庫補助をすべきであるというふうに考えております。
  52. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 国庫補助の問題については、われわれも国民健康保険のいまの補助率立場からいきまして、本来ならば二〇%は当然ではないか、このような考えを持っておりました。しかしながらいろいろ諸条件、環境を勘案いたしまして、当面十二%は必要だ、引き上げるべきでする、これはきのう、おとといの一般新聞等にもわれわれ野党の主張が公表されているわけでございますが、要するに今回の財政対策の中を見ますと、保険料引き上げあるいは特別保険料から徴収するというようなことは、これは国民、被保険者、事業主の負担で解消していこうという姿であり、とても賛成さるべきではない。それよりも社会保障という観点に立って、国庫補助率を五%どころか一二%まで引き上げろ、このように主張しているわけでございます。きょうの公述人の皆さんほとんどが五%ではだめである、少なくとも二けた以上であるということをお述べになっておりました。私は、それは当然なことであろう、今後もこれを堅持してまいりたいと思っております。  また小山公述人に戻りますけれども、弾力条項の件でございますが、私どもはこれは非常に危険視しているわけでございますが、先ほどの小山先生の話ではむしろ、社会保険庁の主体性や自主性を重んじた場合は必要だというようなことでございましたが、確かに何かチェック機関がはっきりしていればいいということばもはさんでいらっしゃったように伺ったんですが、その点も含めてもう一度お述べ願いたいと思います。
  53. 小山路男

    小山公述人 お答えいたします。  定率国庫負担をいたしまして、あと財政の収支のバランスをとっていくという立場になりますと、どうしてもそこに保険料の上下限についてある程度の弾力性を持たせませんと、経営ができないのでございます。国民健康保険が皆さま御存じのとおり四割の定率国庫負担でございます。各市町村とも四割の定率国庫負担を受けながら、毎年苦労して保険料の操作をして賦課をしている現状でございまして、やはり定率国庫負担という思想は、逆に言えば、定率国庫負担を導入したら、あとはおまえのほうで安定した経営をしろ、こういう条件がつくものだろうと私は思います。  いま一つ。この弾力条項保険庁長官にまかせたら、一官庁がかってなことをやるではないかというわけ——まあそういう御意見もごもっともだと思いますけれども、必ずこれはチェックする機関が必要でございまして、具体的に言えば社会保険審議会で労使、利害関係者及びわれわれ公益がタッチいたしまして、財政状況等をよく検討して、その上でやむを得なければ上げる、余裕ができれば下げるというような弾力的な態度でいきませんと、定率国庫負担意味がいささか不明確になるのではないか。そういうことでありますが、ただ、弾力条項運用につきましては、これは極度に慎重に行なわなければいかぬ、こういうふうに私は考えております。
  54. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 これには私はもっと意見があるわけでございますが、時間の関係もございますので、次に移らせていただきますが、政管健保赤字につきまして、先ほどいろいろとその要因といいますか、原因が述べられていたわけでございますけれども、私は、まず医療費に地域差があるということですね。それから薬剤費の占めるウエートが異常に高いということ。それから、政管健保の本人医療費が家族医療費の二倍になっていること。これなどが当然解明されていかなければならない重要事項だと思うわけでございます。この点につきまして、まず小山先生それから廻神先生、大熊先生にお尋ねしたいと思います。
  55. 小山路男

    小山公述人 お答えいたします。  医療費の地域差につきましては、先ほど私も御説明申し上げましたのですが、ただ、御注意願いたいのは、これは政管にのみ独自な現象ではないということでございます。つまり共済組合等をとりまして、全国の共済組合の地域差、一人当たり医療費の地域差を調べてみますと、やはり政管と似通った現象が出ていることは、これは注目すべき事実でございまして、政管の運営の関係から地域差が生じたというのではないというのが私の考え方でございます。  もう一つ。薬剤費の問題でございますが、確かに薬剤費が非常に高いウエートを占めているという問題、したがってこれをチェックするために医薬分業を促進すべきであるとか、あるいは薬剤費の一部負担をかけている国もございます。イギリス等でもまた今度薬剤費の一部負担をかけております。そういうことでございますが、それにもかかわらず薬剤費の比重というものは各国とも年々上がってきておる事実がございます。これはフランスにしましても、イギリスでも、あるいはスウェーデンでも、医療における薬剤費の比重が上がりつつあるという事実がございます。ただ、日本ほどひどくはない。これは診療報酬の支払い方式等の問題から生じてくる問題かと思います。  それから、本人と家族にまあ倍以上の医療費の差がある、これは御指摘のとおりでございまして、でありますから、これはたとえば乳幼児をかかえているとか、あるいは高齢者であるとか、いろいろな条件があろうかと思いますけれども、ただわれわれが将来目標とするのは、本人も家族も同じような給付をしていくべきだ、つまり、本人、家族とも平均して九割相当なら九割相当くらいまで引き上げていく、それがほんとうに国民のための医療保険というものだろうと思います。ただ現状では御存じのような仕組みでございますので、これを改正していくことがどうしても必要かと思います。そのためにはやはり軽微な医療については何かチェックして、高い医療については本人、家族とも十割といいますか、手厚い給付が受けられる、そういう医療保険に早く持っていけるように、これまた先生方も御努力願いたいと思います。それだけでございます。
  56. 廻神英雄

    廻神公述人 医療の問題につきましては、先ほどから各先生方の御意見にありましたとおり、医療供給体制の問題と医療保険というものは全く車の両輪であって、医療の供給体制の上に医療保険がどう完備されていくのかという問題がなければいけないと思うのです。そういう意味で、今回の一部改正医療抜本改正なり医療基本法と切り離してこの場で論議をされておるという点に、大きな疑問と不満を私たちは持っておるところです。そういう前提に立って、医療の供給体制の面から見てなぜ医療費が地域的にこのように大きな、一〇〇対一六八というような格差が出てくるのかという問題について、先ほどから公述人の諸先生方からいろいろな意見が出ておるところですが、私たちのいろいろな調査なり、厚生省当局の答弁を求めても、医療施設が完備されている地域で医療費が高くつくのか、または過疎地帯で無医村の多い地帯ほど医療費が高くつくのか、または地域の住民の年齢構成なりその他独特の風土的な病気の問題その他で医療費が高くつくのかという問題については、何ら明らかにされておらないという点は何回も述べておるところで、ぜひこの社労委員会において、地域差が一〇〇対一六八というような差でなぜ出てこざるを得ないかという点については徹底的に追及をされ、どの地域におっても医療機会均等という問題について国民保険下でぜひ確立されることが望ましいのではないかというように考えて、地域差については一番大きな疑問点を持っておるところです。  さらに、薬剤費のウエートの高い問題についてはいまさら言うまでもありませんが、ぜひ医薬分業の基礎を確立をしていただきたいということを強調せざるを得ないと思います。  さらに、本人と家族の問題につきましても、たとえば最近のヨーロッパ、特にベルギーとかオランダにおける医療は、私病であろうと公症であろうと、たとえば私病である場合には片腕を自動車事故かなんかでもぎ落とした、この男は私病であるがゆえにこういう薬とこういう注射を打っておこう、この患者は公症であるからちょっと上の薬と注射を打とうというようなばかな事態はあり得ないのだというのが、最近の特に医療の進んでいるベルギー、オランダにおける実態であるというふうに私たちの調査で明らかになっておるところですから、ぜひそういう前提に立って、医薬分業の確立と、本人と家族の給付率を同じにする、さらには進んで、健康保険と労災の治療が全く同じになるという方向まで私はぜひ進めていくべきであり、そういう意味で、今回の一部改正が非常に矛盾点に満ちた内容であるという点について、社労委員会の諸先生方のさらに突っ込んだ調査なり実態の把握をぜひお願いしたいというふうに考えておるところです。
  57. 大熊房太郎

    大熊公述人 その医療費の地域による格差、これは私は個人の力しかございませんので、別に組織にいる人間でもございませんし、個人の力でいろいろといままで調べましたのでございますが、これは私もわからないわけでございます。これはこの機会に本委員会にお願いいたしまして、なぜそうなるかということを国民の前にぜひとも明らかにしていただきたい、これはお願い申し上げます。  それから先ほど私は、要するにいまの診療報酬体系というものは物本位である。ともすれば薬剤乱費型の治療体系になっているのではないだろうか。現にこれは四〇%を上回っております。これは欧米でもふえてきている。たしかそういうふうに、私も何回か欧米に参りましてそういう印象も受けておりますが、しかし四〇%という日本の薬剤の割合、これは明らかに異常であると思います。欧米はせいぜい一〇%台であるというふうに私は記憶いたしております。そういう面から参りまして、これは当然、私が先ほど申し上げましたように、診療報酬体系のあり方、これも今回を機会に御検討を願いたいというふうに考えます。  それから国民保険と言う以上は、やはりこれは被保険者本人でなくても家族も、理想としては、たてまえとしては十割の給付であるべきである。いまのような、たとえば本人が十割である、家族が五割であるというようなことは、労働力としての本人に対する評価しかない。その家族はどうでもいいんじゃないか。これは私の言い過ぎかもしれませんが、やはり国民保険と言う以上は、すべての国民が、家族であろうと老人であろうと、女であろうと子供であろうと、すべてひとしく十割の給付を受けられるのが私は理想であり、またそうなっていただきたいと思います。
  58. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 時間が迫ってきておりますので、水野公述人にお尋ねいたしますが、国庫補助のあり方についてでございますけれども、保険財政の安定対策としての国庫補助の問題がございます。もう一つは、保険給付以外の医療給付に対する国庫補助というものがございます。たとえば医療扶助を今後どう取り扱うかという問題等にもからむわけでございますが、公害とか、老人、健康管理についての国庫負担のものの考え方ですね。こうした基本的な国庫補助のあり方についてお尋ねいたします。
  59. 水野肇

    水野公述人 大橋先生にお答えします。  国庫補助がどれくらいかということについては、先ほど申しましたように私は、自分が国民健康保険に入っているというそういうようなこともあって、いささか国民健康保険に関心があるので、その角度から、たとえばこういう数字はいかがでしょうかという意味で申し上げたとおりで、これはもう申し上げなくてよろしかろうと思います。  それから大橋先生のおっしゃるもう一つの、つまり公的負担と申しますか、そういう意味での医療の中で何を国が持つべきか、そういう御質問なのではないかと思うのでありますが、昔は、本人の責任であるものはまあ除外して、そして本人の責任でなったにしても、社会防衛的なものは国で持たなければならない、こういう解釈だったと私は思うのですけれども、それがやっぱり最近の社会情勢を見ますと、ただいま御指摘のように、たとえば公害というふうなものというのは、これはまあどうしようもない、本人ではほとんど防ぎようのないものが多いわけで、これは当然国が持たなければならないであろう。私は、国が持つという考え方の中にもやはり二通りございまして、国が直接的に国庫から投入してやるというそういう要素と、それからもう一つは、非常に長い間治療を受けなければならないというふうなものがあるわけです。実際には昔は結核があったわけで、現在でも精神病があるわけでございますけれども、そういうようなものも、でき得れば国庫補助にしていただきたい。いわゆる公的負担にしていただきたい。  それから健康管理につきましては、たいへんむずかしいところではないかと思いますが、私は健康管理の中で国がやらなければならないのは、すべての国民健康管理体制というものを利用できるような体制をつくっていただきたいという点が一点。それから、それを利用する場合に、成人病年齢というものについては年に一回、ほんとうは理想は二回だと思いますが、財政等もあると思いますので、年に一回、これは何らかのかっこうで公的なところで負担していただけるということ。そしてこれが医療全体の中では第一関門になるというふうなかっこうで——これはむしろ疾病予防でありまして、健康管理ではないわけでありますが、そういうふうな考え方を持っていくべきではないだろうか。しかし、何でもかんでも全部国で見ろということとはおのずから違うのではないか。普通一般に考えられる疾病というものの中には、必ずしも国だけの責任だというふうに言い切れないものもありはせぬかとも思うわけであります。しかしその中でも、重病のものは考えるというその一つのボーダーラインにあるものが、たとえばガンのようなものではないだろうか。ガンというのは、御承知のように、原因がわからぬから結局はわからぬということではございますけれども、ともかくなったが最後、手おくれであれば必ず死ぬわけですから、その必ず死ぬかもしれないというのではなくて、必ず死ぬというところにウエートをかけて、事前の段階でチェックすることについては、国がたとえば検診等について大いに意を用いるというふうな考え方というのはやはりできるのではないだろうか。私はそういうふうに思っております。  それから老人につきましても、私はそれは全部ただというのはたいへんけっこうだと思いますが、老人は入院についてはぜひとも全部ただにすべきである。ただし外来については、ほんの百円ぐらいの負担というものは、ある意味において交通整理として必要かもしれないという考え方も世の中にはある。私自身はそれは全部ただのほうがよろしいとは思いますが、たとえば一つの疾病について百円というのを取るのと取らないのとで、それが受診制限につながる、つながらないという問題がいつも議論を起こすわけでありますけれども、私は何か重要なやつは全部国が見る、重病については。しかし外来等について、つまり趣味的に医者にかかるということを予防するためには、百円取るということはある意味においては考えられるのじゃないかと思いますけれども、そこはひとつ大目に見て全部ただだというふうに国が打ち出す以上は、それはそれでもけっこうである、そういうふうに思っております。
  60. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 最後にもう一問、大熊公述人にお尋ねいたしますが、先ほど医療機関の偏在が取り上げられまして、都市といなかのアンバランスが問題だ、これはいつも問題になっていることでございますが、先ほどのお話の中で、むしろ大都市の中でも医療機会均等が失われているということが述べられたと思いますが、これをもうちょっと具体的にお答えを願いたいと思います。あまり時間がございませんので、かいつまんで要領よくお願いいたします。
  61. 大熊房太郎

    大熊公述人 私、取材旅行に、たとえば過疎地帯、無医地区に参りますと、この前、保険医の総辞退のあったときでございますけれども、東京とか大阪では保険医総辞退、要するにお金さえ出せば見てもらえるんだ、われわれは一年三百六十五日本日休診なんだというふうに言われました。しかしいま大橋先生のおっしゃいましたように、この大都会の中、東京においても、そういうような医療機会均等が与えられていないという事実はたくさんございます。現に私、最近経験しました例ですが、こういう仕事をしておりますと、いろいろな患者の方から御相談にあずかります。これは小学校三年になる女のお子さんで、昨年全身にひどいやけどをいたしまして、私やけどの専門の医者を紹介いたしました。ところが、あと年ごろになって顔から肩、おなかあたりに瘢痕が残るから形成手術をしなければいけない。ところがベッドを確保するのが容易なことではないわけでございます。それで、三カ月も四カ月も先。私がその病院の入院係に出向きまして、ようやくベッドを確保して形成手術を行なった。   〔委員長退席小沢(辰)委員長代理着席〕 ところが一回だけではだめだ、ことしもやらなければならない。この間も相談に見えて聞きましたら、親の気持ちとしては、学校の関係もあるので、なるべく夏休みを利用して入院して第二回目の形成手術を受けたい。ところが病院の入院係に行ってみると、とんでもない、あいてない、十月か十一月だ、ただし数千円あるいは一万円以上の差額を出せば、夏にでもいまにでも入れる。これは医療機会均等を奪われている一番いい例ではないか。でございますから、何も全国三千あるといわれるいわゆる無医地区だけにおいて医療機会均等が奪われているのではなくて、この大都会、国会のあります東京の町の中においてもそういうことがあるという事実を先生方に御承知おき願いたいと思います。
  62. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 終わります。
  63. 小沢辰男

    小沢(辰)委員長代理 次に、田畑金光君。
  64. 田畑金光

    ○田畑委員 最初に、水野参考人にお尋ねをいたします。  先ほど水野公述人のお話の中で非常に大事な点をお話しになったわけですが、その一つは、政管健保の今日の赤字については、構造的な要因による。この問題の解決については社会保険審議会等においても十分議論はされておるわけだが、やはり言いにくいが、経営委員会等を設けて、この問題についてのいろいろな角度からアプローチが必要じゃないか、こういうお話があったわけです。おそらく医業経営の実態調査についてもなかなか当局はやろうとしないし、やり得ない。やってもまた、その結果の集計なり発表がなされていない。また発表する勇気もない。こういうところに私は大きな問題があろうと考えているわけです。水野公述人のお話にありますように、このままいくと昭和六十年には二十四兆円の医療費にのぼるかもしれぬ、今回の赤字対策も結局は一、二年の赤字対策に終わるであろう、このような指摘もございましたが、この経営委員会の設置等についてもう少し踏み込んでお話しがいただければ、ひとつお話しをいただきたい。  同時に、私はこの際小山公述人にも、先生は審議会の中等で長年取り組んでいらっしゃいますので、こういう問題等についての御意見を聞かしていただければありがたいと思います。
  65. 水野肇

    水野公述人 田畑先生にお答えします。  私が経営委員会を置いたらいかがでしょうかと申し上げましたのは、ただいま御指摘のようなニュアンスもかなりあるということはそのとおりでございます。確かにこれは社会保険庁という官庁が管掌しているわけではありますけれども、役所というもののある意味における一つの限界というものもあるのじゃないか。そういうようなこともございますので、私の考えております経営委員会というのは、その経営委員の数が幾らとかなんとかというふうなことはともかくとしまして、そんなにたくさんの数でなくてもよろしいから、私は常勤的なもので置いていただきたいと思うのです。非常勤とかなんとかというものは、とかくかゆいところに手の届くということが実際問題としてはやりがたい。だから私にもしどういうのをつくるかというて聞かれるといたしましたならば、まず常勤のものでやってほしい。それから二番目には日本は、いろいろいいましても、経営とかそういうような問題については確かに一つの論を持っている方と、もう一つは実際に経営感覚といいますか、経営手腕と申しますか、そういうようなものを持っておられる方は、ぼくは日本はアメリカに次いで多いのではないかというふうに思っております。そういう方々のブレーンと申しますか、知能と申しますか、そういうようなものをうまく吸収する、これはいわばコンサルタント的にお願いしてやっていくということで、その中でたとえば政管健保の組織の問題とか、あるいは経営といいましてもただ赤字を出さないということだけに焦点を置くのではなくて、もっとマクロ的に見まして、やはり非常に幅広い角度で、経営だけでなくて、たとえば健康管理等も含めて、そういうところでいろいろと考えていただいて、それが施策として出てくるというふうにいたしましたならば、政管健保というのはいま非常にたいへんな時期に来ているわけですけれども、幾らか、カンフルというのではなくて、時間はかかるでしょうけれども、最終的には政管の体質というのを全治させる方向に歩めるのではないか、さような意味で経営委員会、もちろん名前はどんなものでもけっこうですし、要するにたとえばという意味で私は申し上げたわけです。
  66. 小山路男

    小山公述人 お答えいたします。  経営委員会という名前が適当かどうかわかりませんが、現在は政府管掌健康保険の事業主及び被保険者が、直接に政管の経営あるいは運営についてタッチしている審議機関がないのです。社会保険審議会はございますけれども、これは政管の事業主である中小企業代表者も入っていない、あるいは被保険者も同様でございます。そういう点がありますので、やはり都道府県単位ごとぐらいにそういうものを設けまして、そして事業主及び被保険者の参加によって、政管の運営あるいは健康管理、増進等をはかることは、まことにけっこうなアイデアだと思います。  以上でございます。
  67. 田畑金光

    ○田畑委員 小山公述人にお尋ねしたいのですが、弾力条項を肯定されたわけです。これはやはり経営の責任をはっきりさせるためには、むしろ役所の判断によって保険料徴収についての弾力的な裁量を認めることが賢明である、こういうような御指摘であります。私はそれも一つの理屈だと思いますが、ただ私たちが心配するのは、政管健保の管理責任者である政府社会保険庁というのが、一体いままで何をなしてきたのか。先ほどから指摘されておるとおり、やはりルーズな管理というのが今日の政管健保赤字の大きな原因をなしておる、そういうことを考えてみますと、たとえば先ほどからお話がありましたように、地域によって医療に著しい格差があるような問題等についても、まだはっきりその原因が確かめられていない。医者がたくさんおるところには患者が少ないから、結局医療費が高くつくというようなことなど考えてみますと、対処策としてはいろいろな問題を解決しなければならぬと思いますが、このような問題については何ら解決がなされていない。そこで弾力条項をかりに認めた場合、役所のルーズな管理によって保険財政に大きな赤字が生じたような場合に、ただ恣意的に、安易に千分の八十を限度にして引き上げ措置を講じられたのでは、たいへん迷惑な話ですが、一体この法律の条文を見ますと、社会保険審議会の意見を聞き保険料率を変更することができるとなっておりますが、意見を聞きというところでチェック機能が果たせるかどうかということですね。ことに私は非常に疑問に思うのは、社会保険審議会の今日までのいろいろな問題の答申を見ますと、いつも並列意見の報告なり答申なり、こういう状況ですね。この場合、社会保険審議会の議というものが、利害対立するあの交渉の中でまとまったものが出るのか出ないのかという問題、もしまとまった答えが出ない場合は、一体この役所はどうすればいいのか、こういうようなことなど、その道の権威者である小山公述人からひとつお聞かせをいただきたいと思うのです。
  68. 小山路男

    小山公述人 弾力条項につきましては先ほど申し上げたとおりでございますが、やはり管理運営の責任の主体であるはずの保険庁あるいは政府が、まるきり手足をしばられたような状態でおりますと、結局打つ手がない。全部国会できめていただいて、料率を上げる、あるいは一部負担を考えるということになると、無責任体制になる、どうも私はそう思うのであります。先ほど来申し上げましたように、定率の国庫負担を導入して、あとは財政の安定をはかっていくということになりますと、どうしても弾力条項が要るのではないか、ただし、弾力条項が設けられたからといって、恣意的に料率を動かされたのでは、これはたまらないのはもっともなことでありまして、そこで社会保険審議会の議を経てということになっておるわけでありますが、確かにわが社会保険審議会は並行答申、並列答申が多いのでございます。それは利害当事者が入ってくれば、どうしてもそうならざるを得ない。一本答申でぜひまとめたいと幾ら苦労いたしましても、今回も徹夜を二度いたしました。結局そういう苦労を重ねて、できるだけ各側の意見のさや寄せをやるわけであります。どうしても合わぬところは並列答申ということになってしまうのでありますが、弾力条項が設けられたときの社会保険審議会のあり方というのは、これは審議会自体の問題として少し検討を要するのではないかと私は思っております。お答えになりませんけれども、ほかの委員意見がどうか、いずれ帰りまして有泉会長ともよく相談したいと思います。
  69. 田畑金光

    ○田畑委員 大熊公述人にお尋ねをしたいのでございますが、これはひとつ水野公述人からも御意見を聞かしていただければありがたいと思うのです。  大熊公述人の御意見の中で、いまのわが国医療の中では、需要の側は社会化されておる、まさにそのとおりだと思うのです。しかし医療供給の側がそれに伴うて社会化されていない、むしろ自由放任であるというところに大きな問題があるように考えるわけなんです。やはりわが国医療の問題で考えるのは、供給体制の整備をどうするか、こういう問題だと思うのです。特にその一番大事な問題が、抜本改正抜本改正といわれておりますが、さらにもう一つ抜本改正のあとの医療基本法という中で、政府はこの問題を考えようとしているわけですね。しかし医療体制の整備というものは、もう昭和三十六年の皆保険制度に入った時点で当然並行的に整備されてしかるべきだったわけなんだ。それがなされていない。そこに先ほどの無医地区のような問題、あるいは大都会においても同じのように、専門病棟においては病床の不足あるいは差額ベッド、こういう問題が出ておるわけですが、私は、この医療機関の適正配置の問題であるとか、あるいは病院と診療所の機能の分化の問題であるとか、あるいは医療施設の整備については、もっと私は公費負担という考え方でいかねばならぬと思うし、特に医師とか歯科医師とか薬剤師等々、こういう医療担当者の教育、あるいは研究開発等については、公費負担というものを医療の公共性の性格から見てももっと出すべきではないか、こういうことを感じておるわけですが、こういうことを考えてみたとき、私は財政対策のこの健保法の一部改正だけが先行して、給付の改善も全然考慮されていない、ましてや医療供給の体制整備は抜本改正のあとの医療基本法の問題、こういうことなど考えてみますと、まことに医療行政の手おくれを痛感するわけでありますが、この需要側社会化と同時に、供給側の体制の整備を進めていくためには、何から一体手をつけたほうがよろしいのか、こういう点について大熊公述人の御意見があればお聞かせいただきたいし、また、こういう問題についての権威者であります水野公述人からも、御意見をあわせて承りたい、こう思います。
  70. 大熊房太郎

    大熊公述人 全く私、先生と同意見でございまして、何から手をつけたらいいかという、何かいまお話でございましたが、これはむしろ私のほうからお尋ねしたいくらいで、こういう複雑怪奇なあれになりますと、どこから手をつけていいか、ちょっと私にもわからないわけでございます。ただ言えますことは、私は政治の場にあられる方々、それから行政の場にあられる責任ある方々が、まず何よりもこの問題に熱意を持っていただきたいということでございます。私いささか失望いたしましたのは、昨年の保険医総辞退、あれほどの大きな問題が起こりながら、私などの感覚をもってしますと、あのあとたとえば臨時国会のようなものが開かれて、先生のおっしゃいましたような医療保険抜本改正、それに対応する医療制度の改善、そういうようなものを、もう昭和三十六年以来いろいろに言われているわけでございますから、あれをいい機会にして臨時国会をあれだけのためにでも開いていただいて、私が最初に申し上げましたように、国民のだれもが、いつ、どこででも、十分に最高医療を無料で受けられ、しかも、休んでいる間には十分な手当を保障されるという方向に行っていただきたかったわけでございます。  ここであらためてお願いいたしたいことは、まず熱意をお持ちになっていただきたい。決して私、熱意がないと言うわけではございませんが、私のようにこういう医療のジャーナリズムだけの世界におりますと、どうしても穴の中に入ってしまった、それこそ私、大熊でございますが、クマのように何かそこだけしか知らないかもしれませんが、やはり私、医療と教育というものは国民にとって一番大事な問題であると思いますので、この機会に私、初めてここに参ったわけでございますが、委員先生方にまず熱意をぜひいま以上にお持ちになっていただきたいということをお願いするわけでございます。
  71. 水野肇

    水野公述人 お答えします。  医療の中で一体どこが一番むずかしいのだ、おまえどう思うか、こういう御質問じゃないかと思いますのですが、医療というのは、ある意味では、世界じゅうでどこの国も、これが十分だという国はないわけなんです。それはなぜかということについて私がこの二、三年来ちょいちょい感じておりますことの一つを申しますと、たとえば日本で縦社会ということばがございます。それに対して論理社会と申しますか、そういうのを横社会と、東大の中根千枝さんが考え出したことばですが、その場合に横社会的なものだけで、つまり論理社会だけで全部すっきり割り切れるものというのはわりあいにうまくいくのじゃないかと思うのです。ところが私は、医療というのは、どうもどこか一部分というか、それがある程度核心に近いところなんじゃないかと思うのですが、どうしても縦社会的な要素が残るという印象を私は持っておるわけであります。たとえば、医療というのは医者と患者の人間関係の上にしか成立しないということになっております。これはどういうことかというと、非常に意地の悪い言い方をいたしましたら、医学は科学でないという面を持っておるということです。その場合に一体これは、おまえ幾らやるから、幾らで見ろというふうな考え方だけで律し去ることができるであろうか。そこにやはり医師と患者の人間関係というものがどうしても要るとしましたら、それは、それだけが縦社会的なものとして私はどうも残るのじゃないかと思うのです。これは別に私は専門ではございませんけれども、たとえば教育とか裁判とかいうものの中にも、やはりそういうものがどうも残るように思われるわけなんです。そういうふうに、何かちょうどおできのしんのようなものがございまして、論理社会側から見れば。これがあるものはどうもいまの日本ではうまくいっていないという印象を私は持っております。  そこで、ここの横社会と縦社会のものの考え方を何かうまく結びつけるような方法というものがないだろうか。これは私は、医療というものを非常にうまい形で社会化され、しかもただ単に社会化を単純にしたということだけではないと思うのです。医療国営を行なっております国が、それはそれなりに一つの評価はあるわけですけれども、また一面ではたいへんいま困っておるわけであります。そういうようなことを考えますと、私はやはり日本でこそ、日本流の医療のあり方ということを考え出す以外には方法がない。スウェーデンがよろしいといって持ってくるというわけには全然いかないのじゃないか。それが第一点でございます。  第二点の、何から手をつけたらよいのかという点でございますが、私はこれはその限りにおきましては、田畑先生の御指摘のように、やはりある程度社会化ということはやらざるを得ないであろうと思うのであります。  私はこの数年間「日本の病院」という続きものをやっておりまして、それの取材でうろちょろしているわけですが、そこで私が一つ感じておりますことは、たいへんいい病院というものは、これは入院できるかどうかは別なんですが、たいへんいい病院といわれるものは、これは親方日の丸の国立病院の一部か、そうでなければ健康保険を使わない医療ということをやっておりますところが、たいへんいい病院であるわけであります。これは一体何を意味しているかというと、医療の供給体制とそれから医療保険体制とは車の両輪であるにもかかわらず、そのジョイントのしかたも悪いし、また車の輪がどうもびっこになっておるのではないか。そこからそういうひずみが出てきておるのであろう、そう考えられるわけであります。だから私は、何から手をつけるかというのは、それはやはり単純に申しましたら、二つございまして、一つ医療従事者の教育並びに養成、もう一つ医療施設をどういうふうにやるかということと、そうしてそれに関連した研究、これを行なう。それ以外には私はやはり、ほかにもこまかいことではあるでございましょうけれども、そういうことじゃないかと思うのであります。それをどういう形で行なうかということが、いまの厚生省の考え方では、医療基本法によってきめる審議会のようなものの中できめていくというふうな二重になっておるわけであります。したがいまして、私はもしそれがそのままいくとしましたら、やはりそこで論議されることこそたいへん重要な問題になる、そういうふうに考えております。
  72. 田畑金光

    ○田畑委員 最後に、私はもう一つ小山公述人にお尋ねをしたいのですが、ボーナスについて特別保険料を取るという問題ですが、先ほど来各公述人意見を聞いておりますと、意見が分かれておるわけです。ところで、社会保険審議会の答申を見ましても、これまた意見が分かれておる。公益委員と事業主側の委員は賛成、ただし、上限を設けたらどうかという御意見ですね。私はこの特別保険料を取ることについての見方なり、考え方はいろいろあると思いますが、一番矛盾を感ずるのは、政管健保については特別保険料については「当分 間」徴収する、取らねばならぬとなっておりますね。この「当分ノ間」というのは、これは政府に質問することであるかもしれませんが、社会保険審議会等の中においてはどのように議論されたかということが一つです。  それからもう一つ、これは私、一番疑問に思うことは、この法律の条文によりますと、健康保険組合については「特別保険料ヲ徴収スルコトヲ得」となって、それぞれの規約に基づいて自主的にきめるべしと、こうなっておるわけですね。ことに組合健保政管の健保の体質の違いというのは、先ほど来議論されておるとおりでございまして、この特別保険料の徴収については、私は一番体質のしっかとしておる組合健保については「徴収スルコトヲ得」ということで、体質の弱い政管健保については、徴収すべしというようなこと等について、なかなかこれは理解しにくいのでございますが、この点社会保険審議会等ではどのような議論がなされたのか、あわせて小山公述人の御意見を聞かしていただければありがたいと思います。   〔小沢(辰)委員長代理退席、増岡委員長代理   着席〕
  73. 小山路男

    小山公述人 お答え申し上げます。  ボーナス等に対しまする特別保険料につきましては、冒頭に申し上げましたように、取らないで済むのなら取らないほうがいいにきまっているわけなんでございまして、ただ特別保険料を設けませんと、千分の三ほどよけい料率を上げなければならぬ、いまの国庫負担のやり方では……。それでまことにやむを得ないということで出てきたものなので、費用負担の方法があれば特別保険料を取らないで済むようにぜひいってほしいと思うのです。  そこで、当分の間というのはどういうことかと言いますと、これは、いま政管が非常に財政難で苦しんでおりますので、われわれの理解では緊急避難的なもの、ですから、こんなものは当分の間は、十年も二十年も続けられてはたまらないので、とにかく財政が安定してくればこれはもうはずしていただく、そのために政府は一生懸命努力してもらう、そういうことでございます。   〔増岡委員長代理退席、委員長着席〕 でございますから、国庫負担のあり方あるいは料率のきめ方等で特別保険料が徴収しないでも済むようになれば、それでけっこうだろうと思います。  なお、その特別保険料について上限を設けろというのは、標準報酬月額上限がございますので、ボーナスについて青天井というのはおかしいではないか。ですから、やはりある程度上限を設けるべきだというのが、これは公益もそういう意見でございました。私がこれを書いた本人でございますので間違いございません。私の意見上限を設けるべきだということでございます。
  74. 田畑金光

    ○田畑委員 ありがとうございました。
  75. 森山欽司

    森山委員長 次に、山下徳夫君。
  76. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 小山先生にお尋ねしますが、与党なるがゆえに十五分しか持ち時間がございませんので、ひとつ簡潔にお願いいたします。  先生の御意見では、財政対策抜本改正は分離して考えたほうがいい、そのほうがより実質的であるという御意見のように承りましたが、これをもう少し具体的に御説明願いたいと思います。
  77. 小山路男

    小山公述人 抜本対策でもって財政対策をやるということになりますと、結局、政管健保赤字のしりぬぐいを抜本でやるのじゃないか、こういうことがあるわけです。そうなりますと、利害関係者の納得、協力が得られない。だから、もし抜本対策をやるというのだったら、それはそれでおやり願いたい。ただ、政管のほうはそれまではとにかく赤字問題はきれいにしておく、その上で他の保険集団と交渉を持ちたい、そういう感じでございます。
  78. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 もう一点。政管健保経営責任を持たせるという意味から弾力条項が必要だというふうに私は承ったのでございますが、同時にまた、短期保険でございますから、たとえばインフルエンザが蔓延すると、その年は非常に医療費がかさばるとかいう問題があるのでございますが、その点あわせて、これももう一回結論的なことをお聞かせ願いたいのでございます。
  79. 小山路男

    小山参考人 経営責任を持たせるためには、どうしてもある程度の主体性を持たさなければいかぬということが一つです。  もう一つ、ただいま御指摘のように、短期保険性格上、どうしてもこれはある程度弾力性を持たせなければならぬ、そういうことでございます。  それだけでございます。
  80. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 どうも私が初めに申し上げたので、少し答弁が簡潔過ぎるようでございますけれども、もう一つ社会保険庁に経営委員会を設けたほうがいいという御意見——私も実は——みたいな仕事をやっておりますので、よく御意見を聞いておりませんけれども……(発言する者あり)たしかそのように伺っておりますが、何のために経営委員会を設けるかというその趣旨を、これももう一回結論的にお尋ねしたいと思うのでございます。
  81. 小山路男

    小山公述人 これは私の意見というよりも他の公述人意見でございまして、政管の運営につきまして被保険者も事業主もまるで参加しないということになりますと、自分の保険という意識がなくなるわけでございます。そこで、保険事務所とかあるいは地域ごとにでも、そういう政管人たち健康管理とか、あるいは保険状態について協議し合うような団体、集団というか、そういうものができればいいということでございまして、私もそれならば別に反対する理由も何もない。できるだけ事業主と被保険者政管に関心を持つということと同時に、やはり政管の運営について、もう少し民主的な、官僚が一方的にやるようなことじゃなくて、事業主及び被保険者の理解を深めて協力を得ていくような体制をつくる必要がある、そういうふうに考えております。
  82. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 廻神先生にお尋ねいたしたいのですが、先ほどの陳述の中で、診療報酬が佐賀県を一〇〇とした場合に京都が一六八というおことばがございましたね。私は佐賀県なんですが、その数字によって佐賀県の医者が良心的と直ちに結論づけられるかどうか、これは別問題といたしまして、ただ、なぜそういうばらつきがあるのかということについて、厚生省に何度もただしたが、厚生省が答弁を避けるということに対しては、厚生省はけしからぬと思うのです。これはけしからぬ。けしからぬが、廻神先生はその原因はどのようにお考えでございますか。
  83. 廻神英雄

    廻神公述人 先ほどからの地域格差の問題は、各公述人先生方からも、地域格差がなぜ出るのかという点で、専門家の立場から見てもなかなか解明できないという御返事がありましたが、私も制度審議会の委員として、制度審の席上で、なぜこのような事態が出てきておるのかという点について、厚生省当局に質問をするのですが、何としても納得のいくお答えをいただくことができないのです。私感じますのに、厚生省当局がただ各都道府県から上がってくる、または政管健保なり社会保険庁から上がってくる資料だけで問題を結論的に報告するのではなしに、具体的に現地に行って、なぜこのような事態が起こるのか、たとえば四十四年度は、佐賀県を一〇〇にして京都が一六八、奈良県が一六三、新潟が一四九という数字が出ているのですから、こういう地域に実際に行ってみて、具体的にチェックをしてくる、そしてこういう事例があると思いますというような親切な答弁があっていいのではないかというふうに考えておるところです。
  84. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 水野先生にお尋ねいたします。  いわゆる国庫支出五%、これに対して、先生の先ほどの御陳述では、これは低過ぎるということで、先生のおことばそのまま申し上げますと、でき得れば二けたというおことばをお使いになりましたが、そうしますと、先生のお気持ちからすれば、最低どの程度か、ずばりひとつ……。でき得れば二けただけれども、最低ならばどの程度だということをずばりひとつ……。
  85. 水野肇

    水野公述人 私のほうもでき得ればお答えするというようなお話みたいな感じなんでございますが、先ほど申しましたように、私はやっぱり一〇%と思っておるわけであります。それはさっき国保で申しました、御参考までにいかがでしょうかといって提示いたしました数字、これは私はまあまあというふうな印象を持っておるわけであります。ただ、見方は人によっていろいろ違いますので、あの一〇%というのを、いやおれの見方では一二だとかというふうな御意見は、それは出るかもしれぬと思いますけれども、私が私のいわば取材範囲で調べましたことで申さしていただきましたならば、さっき言いましたようにということなんですが、これはもう一度申し上げなくてもよろしいと思いますが、私は大体一〇%というふうに考えております。したがって、国保で四五%国が出しているという部分が、実は政管健保にすれば、事業主負担が大体三五%ぐらいあるから、あと残りが一〇%だというのが私の考え方です。
  86. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 いまの先生の御答弁だと、でき得ればということばがちょっとおかしくなるのですけれども、私は深追いいたしません。でき得れば二けたということであれば、まあ八%でもやむを得ないという前提があるはずでございますけれども、これは私はあえて追及いたしません。  ついでに先生にもう一言お尋ねいたします。  御承知のとおり、浪速医大の入学の不正事件とかいろいろな問題が最近相次いでおります。これはやはりそういう問題があるから、いわゆる医師を養成するための投資に対する回収という問題も起きてくるわけでございますが、こういうものはどうやったら解決できるか、先生の御意見を一言お伺いしたいのでございます。
  87. 水野肇

    水野公述人 お答えします。  医者づくりというのはたいへんむずかしい問題でございますけれども、時間もないし、衆議院では答えのほうもカウントされるそうですので、簡単に申し上げますが、要するに、優秀な医者が今日必要なんだということがまず第一点であります。したがって、それは施設が十分、教授もいい、いろいろな条件もいい、そういうところへ選ばれた人が入学できるということが必要なんだろうと思うのであります。こういう席ですから、別に何万円のどうとかいうふうな話はさておきましても、いまつくられております新設医科大学、ことしも来年もいずれ許可になると思いますけれども、たしか昭和四十五年から三年間にずらずらっと出てきたわけでありますが、その中で、国立の秋田大学と半官半民のような自治医科大学を除きましては、その中でほんとうに一流だ、将来一流になり得る可能性があるというふうに考えられておりますのは、ほんの一校か二校しかないわけであります。そういうところで養成されました医師というのが、十年先に医師の間でランクがつくというような問題が起きるとしたら、私はたいへんなことなんではないかと思うんです。そういう点で、ただ足らないからつくればよいというふうな単純な思考方式はいけないと思います。ただ、大学設置審議会と、財団をつくってこしらえるわけですが、その財団のつくり方なんかについては、これは厚生省の関係ではございませんが、文部省のほうではもう少しいろいろ考え方もあろうか。しかし、いずれにしましても、医師不足ということは現実としてあるわけでございまして、放置してよろしいとは申しませんが、私は、やはり少なくとも半分以上は国立大学でならなければならない。どうしてもいまつくるのなら、むしろ国立大学の一級のAクラスといわれておりますところ、旧制帝大と旧制六医大というのがございますが、そこで第二医学部をこしらえたほうが優秀な人材が出てくるのではないかというのが、私の提案でございます。
  88. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 関連がありますからこれで私はやめますが、先ほどの私の発言中、——ということばを使いました。いろいろ私も連絡の役目をやっておりますから、ついそういうことばが出ましたけれども、これは取り消さしていただきます。
  89. 森山欽司

    森山委員長 関連して、小沢辰男君。
  90. 小沢辰男

    小沢(辰)委員 ちょっと私、関連で、総評の廻神さんにお伺いいたしたいのですが、日本の医療費の改定という問題は、私は前に実は担当しておった経験があるのでありますけれども、前は厚生省が一つ責任においていろいろ検討いたしまして案をまとめまして、それを中央医療協議会に諮問をしまして、そしてその答申、意見を聞いた上で厚生大臣が告示をしておったわけであります。ところが、最近はこれが変わりまして、中央医療協というものが非常に自主的な権限と責任をお持ちになって、厚生大臣が、幾ら幾ら上げるのは適当だと思うが、その意見はどうかということでなくて、中央医療協自身が、利害関係者並びに公益代表が集まって相談の上できめていく、きめたものを建議しまして、それで厚生大臣がそれを受け取って告示をする、こういう形にいまなっておるわけでございます。それは御承知だろうと思います。  医療費が今度一割二分、一二%アップになったわけでありますが、先ほど水野先生から、昭和六十年のときの総医療費の推定二十兆ないし二十四兆、私はちょっと多いのじゃないかと思いますけれども、少なくとも現在は約三兆円といわれる総医療費であります。そうしますと、一割二分ということは、三千六百億を一ぺんにどこかで負担をするということがきまったわけでございます。これは私ども国会には何ら相談がありませんし、また国会議員は発言権がないわけであります。それで、実はそのあと始末について、われわれいま責任を持ったりいろいろしているわけでございます。ところが、これをおきめになったのは、現実には廻神公述人の所属する総評の代表も被保険者の代表として入っておられる、日経連の代表も入っておる、それからお医者さんあるいは公益代表の学識経験者、この方々が、医療関係者の処遇改善は、今日の事態ではやはり気の毒だから、何とか処遇改善をしなければいかぬという観点から、いろいろ議論された結果、実質的に一割二分の引き上げを是認されたわけであります。  そういたしますと、そのはね返りが、いま審議しております政府管掌の健康保険財政にどの程度影響があるかといいますと、総医療費が今年は約七千八百億と見込まれておるのですか、大ざっぱに、ちょっと上ですけれども八千億としてみれば、九百六十億のはね返りになるわけでございます。これについていろいろその原因、影響等も十分考慮して、政府・与党としては今日の案をつくったわけでありますが、その基礎には、やはり労使双方が医療関係者の処遇改善ということについていろいろ思いをいたされて、これは自主的に御決定になったものであるから、もちろんそこに政府も何がしかの負担をしていかなければいかぬけれども、労使双方それぞれその責任の分担を、やはりある一定の限度においてはしてもらわなければいかぬだろう、またそれが、当然おきめになった方々の考え方の中にも、実はぎめたが、それは正しいと思うけれども、その負担はおれはいやだという考えでなくて、やはり一部はわれわれも責任を果たしましょう、これは自分たちが医療を受ける医療機関の、あるいは医療従業員の処遇改善だからやろうと、こういうことでおきめになったものと私は少なくとも理解をしたいのであります。しかし、それは全部被保険者なり事業主が負担をするとは言いませんけれども、やはりある程度は、まあ平たいことばでいえば覚悟があって、医療費の改定に対して賛成をされたのじゃないかと思うわけであります。  そこで、このいいか悪いかは別問題にして、政府管掌以外につきましては、最初に申し上げた三千六百億から九百六十億を引いた残りの大部分の医療費の負担というものは、各それぞれの保険においても、あるいは国民においても、何ら国庫負担措置なく、今年度負担してくれということになっておるわけでありますから、ひとり政府管掌の被保険者、事業主だけが負担しませんよ、標準報酬引き上げだけは負担するが、あとは全部国でやるべきだというお考えは、私どもにはやはり少し納得がいかない点があるわけであります。  もちろん、先ほど来皆さん方の御意見を聞きますと、政府管掌というのは国庫負担が五%じゃ低過ぎるじゃないかということについては、私どもも、これは何とか財政の許す範囲でできるだけ上げていこうという気持ちは持っておりますけれども、それは別問題にして、どの程度かはまだいろいろ議論がありましょうけれども、労使双方それぞれこの医療引き上げ責任は分担をしようというお気持ちがあるのかないのか。ないとすれば、なぜないのか。いままでの運営が悪いからということは別問題にして、今度の医療費改定の問題についての責任のあり方について、どういうお考えかを一言承りたいと思います。
  91. 廻神英雄

    廻神公述人 今回の一部改正の、特に政府管掌健康保険赤字要因については、先ほど来全く明らかになっておらないという点を述べておるところです。特に私のほうでつけ加えたいのは、経営責任において、政府管掌健康保険ですから、政府がどこまで実態を明確につかんで、なおかつ、これだけ努力したけれどもこういう赤字が出るんだ、よって、他の被保険者と違って、保険料率の若干の引き上げなり、先ほどから問題になっております特別保険料、すなわちボーナスからの保険料についても政管健保の被保険者は応じてもらいたいというような内容が具体的な資料に基づいて出てくるのでしたら、当然保険審議会なり制度審議会などで議論が十分かみ合っていくと思うのです。ただ、経営責任体である政府が、または社会保険庁が、これらの問題を全く明らかにしないままに、先ほどから言う地域差、一〇〇対一六八などという地域差がそのまま放置されて、被保険者よ、保険料率または特別保険料で見てくれという点については、何としても納得がいかないという点を私たちは再び繰り返さざるを得ないと思うのです。そしてなお総評なり労働四団体でつくっております社会保険対策委員会等でいろいろ議論しておる点は、ヨーロッパの先進諸国における、たとえば健康保険だったら健康保険の被保険者負担率と使用者なり政府負担率についていろいろな資料を集めておるところですが、私たちは、おおむね日本の実態に合わせて労働者の負担が三、政府使用者負担が七という比率が、ヨーロッパの先進国の実態から見て、日本の現状に合うのではないかという基本的な考え方を持っておるところなものですから、あらためて保険料率の大幅引き上げ、特に経営責任体である政府なり社会保険庁がその要因を明らかにしないままに、被保険者負担増にかかってくる問題については、現時点においてはいかんとしても了解できないという態度を堅持しておるところです。
  92. 小沢辰男

    小沢(辰)委員 もう一つ水野先生にお伺いしたいのですが、先ほど山下委員からも国庫負担のあり方について御意見を承りました。水野先生、先ほど国保との比較においてという限定でお話がありまして、事業主負担がないから、事業主負担部分を定説として約三割五分見当と考えれば、差し引き一〇%が政府管掌としては国庫負担として適当ではないかというお話があったわけでありますが、そういたしますと、国保の被保険者所得程度と、小なりといえどもやはり五人以上の事業所を対象にする政府管掌の被保険者所得の比較については、私どもは、国保の階層は政管健保の階層よりはやはり低いのではないかと思っておるわけであります。そういたしますと、やはり事業主負担部分を定説として大体三割五分と踏んで、一〇%残るとすれば、一〇%の国庫負担をやれば国保との均衡はむしろ政府管掌に、若干ですけれども、補助の過剰になるのじゃないだろうか、国保との比較においては。したがって、一〇%でなくて八%なり七%なりといいますか、その辺の、どうも計算がよくできませんけれども、そういう点が若干差が出てくるのではないかと思いますが、この点についてのお考えを承っておきたいと思います。
  93. 水野肇

    水野公述人 お答えします。  その国庫負担はどれくらいがいいかというのは、小山先生もおっしゃったように、定説というものもないし、それから最初ぼくが申し上げたときに、多少失言であったかもわかりませんが、要するに、いままで出しておったのを大蔵が足して二で割ったのではないかという印象をぼくは持っておるということを申したのですが、私が出した数字というのは、確かに先生のおっしゃるように、そういう点は私は幾らかあると思うのです。でき得ればということは、私が言いたいことは、こういうものの改正案のときには、何か少しかっこうのついたものというのがやはり政治の中では要るんじゃないか、あるいは行政では必要じゃないか。これもちょっと申し上げましたが、そういう意味において、でき得れば一〇%ということを申し上げたわけで、そこが、でき得ればか、でき得ないかはこれからの問題だと思いますが、確かにそういう見方は、おっしゃるとおりに私はできると思うのです。ただ、微妙な問題といたしましては、政管のほうがちょっとばかり国保よりいいであろう。それからその掛け金も全然違うという問題もございますし、ここらあたりの計数整理というのは、そういう専門家の方に伺いましても、結局はできないというのが結論みたいなんです。おおむねこういうものが最後きまるのは、やはりコンセンサスみたいなきまり方をするというようなことになるのじゃないかと思うのでありますが、私ができ得れば一〇%と申しましたのは、そうすればやはり国民も納得してくれるのじゃないかという、そういうニュアンスがおもにあった。さようなことで、先生のおっしゃることについての論理というのは、それはそれなりに確かにございます。そういうふうに思います。
  94. 小沢辰男

    小沢(辰)委員 よくわかりました。ありがとうございました。終わります。
  95. 森山欽司

    森山委員長 次に、寺前巖君。
  96. 寺前巖

    ○寺前委員 最後の十分間の質問をさしていただきます。  早朝来どうも御苦労さんでございました。十分でございますので、全先生方にいろいろお聞きをしたいと思っておりましたのが不可能でございますので、小山先生と廻神先生と水野先生に、あまりダブらない範囲でお聞きをしたいと思います。  一つは、先ほどのお話の中にありましたが、今度の医療費が上がった内容というのは、全体としての医療費が上がっているという内容と、診療報酬の引き上げという問題が根拠になって、財政対策を従来の分をどうするかということと、それから今後の分をどうするかという問題となって出てきたと思うのです。ところがその医療費の四〇%どころかもう五〇%近くまでが薬剤費になってきているという問題が、先ほど少し論議になりました。今度は、薬剤費の中で占める部分ですが、先ほど論議になったのは、乱診乱療という表現がよく使われるその内容ですが、まあわかりやすく言えば、お医者さんの経営をどういうふうにやっていくかという立場から、ここに薬剤の使い方に問題があるのじゃないか。検査をせいとか、あるいは云々とかいう問題が先ほど論議になりました。そういう方向においては、医薬分業という方向を体制として考えたらどうであろうかという問題のお話だったと私は思うのです。  ところが薬剤費の問題は、二つの問題を考えなければならない。一つは、私はこの間調べてみたが、製薬会社の利益率の問題です。上位十社の利益率を調べたら、十年ほど前までは四、五%がいいところの利益率でしたが、最近では七、八%近くまで利益率が上がっている。他の産業は三、四%という段階だ。だから利益率が、製薬の上位十社を調べてみると非常に高い。私は、この問題はメスを入れる必要がある内容だ、医療費全体の中に占める薬剤費の位置が高ければ高いほど、この問題はメスを入れる必要があると思うのですが、この問題に対する御見解をお聞きしたいというのが一つです。  それから薬剤費の他の面は、先ほど出ましたところの、今度はお医者さんの経営との関連の問題になります。ところが今回出されたところの診療報酬の引き上げ、あれによって、患者さんの六十何%を占める第一線の開業医さんがはたして——よくお薬をたくさん出すということばがありますが、この問題についての改善がされるというふうに見られるのかどうか。よくお薬をたくさん出すという問題がありますね。患者さんの側から言えば、患者の側が整理をせんならぬということをよく言ったりするぐらい話になります。これはよく経営との関係だと言われるのですね。だからはたしてこの間の診療報酬のあれが、経営を安定させる内容になっているのかどうか。特に開業医さん問題について、この問題についての御見解を聞きたいと思うのです。これが一つです。  それからその次の問題は、これは労働者の健康保険のことですから、私は、労働者の健康上の問題として考えなければならないのは、労働災害の問題だと思うのです。労働災害がずんずんふえておるのですが、実際上は労災保険の適用というのが、認定という形態があって、むずかしい状態になっている。私は、そこの職業に起因して病気になっているのに、ある一定の水準をきめて、それ以上ば認定しましょうとかしないとかいうのはおかしいと思うのです。労働災害について、そこの職場に起因しているものは無条件に全部する、そこに起因していないということが、当局の側が立証をやって、うちじゃないということが明確であったらそれは別ですけれども、こういうふうにして労働災害の問題というのは明確に切り離す。経営の健全を言うのだったら、労災保険の適用の問題を明確にする。これは公害の問題についても言えると思うのです。起因が明確なんだから、そこを明確にしてしまう。この明確にするという責任を持たぬ限りにおいて、経営の健全を云々するということは、えらそうに言いなさんなということを言わなければならぬと思うのです。  それからさらに、高額医療の問題とよくいわれます特定疾患の問題に対する対策。私は、こういうような問題は社会的に保障してやらなければならない性格だと思うのです、医療の進行をすべての国民が享受するという立場からいうならば。そうでなければ、もしも保険財政に従属させるということになったら、悪いことばになりますが、財政立場から、処置の方法はあるのだけれども使うてもろうたら困るんじゃということになっていってしまう。だから、こういう問題は明確に切り離して、公費負担とするというふうにけじめをはっきりする必要があるのじゃないかと思うのですが、その辺の御見解をお聞きしたい。  最後に、これは政府管掌も一般健康保険も、いずれにしたって労働者の保険の問題です。フランスやイタリアの労働者諸君たちの話を聞いておると、大体労働者の賃金、家族の生活全体にわたって、教育費から健康から全部、それは資本家が労働者のめんどうを見るというのが基本だ、そういう立場からいうならば、保険なんかは一対三十なり四十なり、資本家がたくさん持つという立場、こういう立場を先進諸国の資本家と労働者関係というのは確立していると思うのです。年金の問題だってそうだと思う。そういうふうに見てきた場合に、いまの政府管掌健康保険というのは、全体の労働者の中で経営の弱い面における労働者の保険の問題だ。とするならば、これはやはり先進的な健康保険の労働者の水準に政府が援助してやるという立場をとらなければ、この保険はだめなんだというのが私は基本的なものの見方になると思う。先ほど小沢さんから、診療報酬の引き上げをやるとき労使双方が賛成してきめたのだから、健康保険の他の分野は全部責任をお持ちになるのに、この政府管掌の労働者のほうはその問題について責任をお持ちにならぬのはおかしいのじゃないかと言わんばかりのお話だったと思うのです。ところが、それじゃ私は聞きたいのですが、現在の先進といいますか、大企業の労働者などがやっている健康保険の労働者の掛け金と、政府管掌健康保険の労働者の掛け金を見たときに、政府管掌健康保険の労働者が、同じ賃金水準の場合に出し分が少ないということになるのか。少ないのだったら、片方のほうは多いのに責任を負うておるのに、こっちは責任を負わぬというのはけしからぬという理論は成り立つと思うのですけれども、はたしてそこは少ないのだろうかどうか。多いのに、しかも赤字だというのだったら、やはり補償してやらなければならぬという理屈が立つのじゃないだろうか。その辺に対する御見解を聞きたい。  以上でございます。
  97. 森山欽司

    森山委員長 どなたに……。
  98. 寺前巖

    ○寺前委員 小山廻神水野さんのお三人に。
  99. 小山路男

    小山公述人 お答え申し上げます。  国民保険になりまして、すべての医療保険あるいは公費負担で提供されているわけですけれども、製薬会社から見ますと、これほど安定した市場はないわけです。ですから利益があがってくる、確かに御指摘のとおりだと思います。ただ、どうしたらそれがチェックできるかということでございまして、一つは、国際的な競争力というようなもので、国際競争にさらせば、それだけいい商品が安く手に入るかもしれない。それからもう一つの方法は、政府が薬品を一括して買い上げてこれを提供するという方法も、国によってはとっておるようでございます。  いずれにいたしましても、この問題は、日本のように自由企業といいますか、資本主義を前提としているところでは、競争条件適正化ということで取り組まなければいけないと思います。そういうのが私の考え方でございます。  それから、先般の一三・何%、実質一二%の改定で、はたして開業医の先生方は満足しておられるかどうかという御質問でございますが、私は正直申しまして、お医者さんのことですからよくわからない。というのは、お医者さまといいましても、経営の非常によくいっている方と、お年をとられて困っておられるお医者さんもいらっしゃるので、よくわからないとしか申し上げようがございません。ただ調剤料の剤数日数比例方式はたしかやめまして、だんだんと従来矛盾があったような支払い方式が改善されているように私は印象を受けております。この程度のお答えしかできません。  それから、労災等につきましては、これは私は深くやっておりませんので特にお答えはできないのですが、確かに職業上に起因する疾病については、これは労災の適用で優先的にやっていただく。できるだけ政管健保のほうに重荷がかからないようにという観点からいってもそうでありますし、また公費負担、高額医療、特定疾患等につきましては、これは先生の御指摘のとおり、公費で見るべきものと保険料で対応するものと、それぞれ原理原則を明らかにした上で整理しなければならないと思います。  ただ公費負担医療の一番いやなところは、疾患名を特定いたしますと、合併症等が起こった場合になかなか公費負担で見きれないという面が一つございます。それからもう一つの問題は、限りある財源で医療費を見ていくわけでありますから、結局、やりようによっては所得制限をかけられるという問題がございまして、この所得制限をかけるということは、公平なようでいて実ははなはだ問題の多いところなので、その辺もどういうふうに整理していくのか、将来の宿題だと私どもは存じております。  それから、政管の被保険者の地位と申しますか、確かに賃金は低いし料率は高いのが実態でございまして、でありますからこそ、私きょう申し上げたのですが、政管健保というのは足の弱い保険集団なんだから、ぜひ国庫負担もお考え願いたいということを申し上げておるわけでありまして、実際、こういう財政対策法案などというものは、あまりいい気持ちで出てきて先生方意見を申し上げたくないような問題なんですけれども、これだけ破局的になりますとやむを得ないかなと思って、実はいやな気分で出てまいった次第でございます。
  100. 森山欽司

    森山委員長 次に廻神公述人。時間の関係がございますから、できるだけ簡潔に。
  101. 廻神英雄

    廻神公述人 簡潔に私の考え方をお答えいたしますが、一応、製薬企業の規制の問題については、ただいま小山先生からお話のあった、必要な薬は政府が一括して買い上げるというような思い切った措置をしない限り、いまのようなままで放置をして、宣伝とか看板とか、テレビとか新聞を通じてじゃんじゃん宣伝して国民に売りつけていくというような事態をこのまま放置しておくことは限度に来ているのではないかという判断から、規制するとしたら、政府が必要な薬を一括して買い上げて病院なり診療所にという形の方向が、一番望ましいのではないかというふうに考えておるところです。  労働者の健康管理の不備の問題と労災の認定の問題について、直接お答えになるかどうかわかりませんが、現在通勤途上災害の問題が、公症として扱うのかどうかというのが、長年、ここ四、五年来の懸案として労働者、使用者政府の間で議論が活発に行なわれております。現在なおかつ通勤途上の公症問題が日の目を見ておらないという実態から見て、わが国における労災の扱い、特に認定が非常にきびしいという内容などについて、十分先生方の御判断をいただきたいというふうに考えておるところです。  それから高額医療の問題につきましては、公費医療の問題とさらに差額ベッドなどの問題もあわせて、非常に生活の苦しい労働者を中心にして、公費医療の増額の問題、さらに差額ベッドの規制問題などについても、真剣な論議をさらに深めていく必要があるのではないかというふうに考えております。  最後政管保険者保険料率の問題については、組合健保共済組合の被保険者から見て、非常にきびしい保険料率を賦課されておるところですから、これ以上さらに引き上げるという問題については、経営責任体が政府である限り、政府責任において、当面の赤字の根源が明らかになるまで、全額政府負担をするというたてまえをぜひ確立をしていただきたいというふうに考えておるところです。  以上です。
  102. 森山欽司

    森山委員長 次に、水野公述人。できるだけ簡潔に願います。
  103. 水野肇

    水野公述人 きわめて簡潔に申し上げます。  製薬会社の問題について、利益率が高いのは、ほかの先生方がおっしゃった以外の要因としては、日本の企業では研究開発投資が少ない。ヨーロッパでは大体一〇%ないし一五%。これが日本では大体、多いところでも数パーセントである。そこの差が非常に大きいと思います。  それから二番目の、この間の診療報酬体系の改善によって開業医は幾らか喜んでいるかという問題は、非常にむずかしいですけれども、幾らかは違う、しかし、十分に満足しているということではないと思います。  それから労働災害については、私も小山先生の答えと同じで、あまりよく知りません。  それから、高額医療については、やはりこれは国の責任においてできるだけ持つような方向に持っていかなければ、結局は金の切れ目が命の切れ目ということになる可能性はきわめてある。  それから、最後の問題でございますが、やはりそれは賃金が低く掛け金が高い、それをある程度はやはり政府でめんどうを見なければならないと思いますが、それはしかし、そこの部分だけを見るのではなくて、たとえば全体として、それじゃ税金はどれぐらい取るかというふうなところ等にも関連してくると思いますので、やはりそれはそれなりの、それぞれの主張はあると思いますけれども、その限度内において議論というものがあるのではないか、そういうふうに考えております。
  104. 寺前巖

    ○寺前委員 どうもありがとうございました。
  105. 森山欽司

    森山委員長 以上で公述人に対する質疑は終わりました。  公述人方々には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございます。厚く御礼申し上げます。(拍手)  これにて公聴会は散会いたします。午後三時三分散会