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橋本(龍)
委員 実は私の持ち時間は
あと三十秒なんでありますが、
あとの質問者もまだ見えておられないようなので、私はこの
機会にひとつ
大臣にぜひお考えを願いたい。そして確かにその作業にもうすでに着手をしておられるはずでありますが、急いでいただきたいと思うことがあります。
いま
社会局長からその
療護施設における援護の内容というものを具体的に
説明がありました。その内容を聞いても、これはたいへんな作業であります。そして今日多かれ少なかれ
福祉関係の
仕事に従事をされる
方々は、それが
身体障害者にかかるものであれ、お年寄りにかかるものであれ、あるいは幼い子供たちにかかるものであれ、きわめて大きな
負担を背負っておられます。しかもそれが定員のワクに縛られて
相当過重な内容にもなってきている。年々少しずつ定員の
改正はされておりますけれ
ども、こうした
施設が
ほんとうに完全に運営されていくためには、その
施設の中で働かれる
方々の処遇というものが十分に行なわれなければなりません。
そしてまた、
福祉職というものが
一つの職種として確立をされていくこともまた必要であります。今日、学校の
先生方、教職員というものは
一つの職種として確立をしております。これが聖職であるとかないとかいう議論を私はするつもりはありませんが、教職というものは世間からもそれだけの大きなウエートを置いて考えられている。私は、いろいろな意味での
ハンディキャップを負った
方々、あるいは力弱くしてほかの人々の助けをかりなければ生活をしていけない
方々、こうした
方々の世話をしていく
方々の職種というものも、また当然
一つの独立した職種として確立をされなければならないと思います。こうした
福祉施設関係者の処遇というものを私は十分に考えていただきたい。そして職種としての独立した権威を与えていただきたい。そこに働く
方々として十分自分の
仕事に誇りを持てるだけの待遇を与えていただきたい。これをこの
機会に、
厚生省で現在進められておると聞いておる作業をなお急いでいただきたいというお願いとともに、つけ加えたいと思うのであります。
私は、自分の子供のころからを考えまして、いまだにどうしても抜けない記憶が幾つかあります。おそらくここの部屋におられるすべての
方々が、子供のころ御自分の父親におぶってもらったり、あるいは抱いてもらったりした記憶をお持ちだろうと思います。私は実は自分の父親におぶってもらったり抱いてもらった記憶を全然持っておりません。私が覚えておりますのは、とにかくおやじの
あとをちょこまかちょこまかついて走っただけの記憶であります。私が生まれてもの心がついたころは、私の父親はまだ両方松葉づえをついておりました。そして私は、自分の父親が他の
方々に比して人間としての
能力において決して劣るものではないといまでも信じておりますし、それだけの力も持っておったと思っておりますけれ
ども、子供心でいまでも覚えておりますのは、ただ松葉づえをついて歩いているということだけで、まわりの
方々から向けられる好奇心にあふれた、といえば聞こえがいいのでありますけれ
ども、さげすみの目でありました。私は、何で自分の父親がほかの人と同じようにして歩けないのか、ずいぶん考えたことをいまでも覚えております。そしてそれと同時に、足が不自由だった父親を周囲の
方々に対して恥ずかしく思った記憶もあります。いいかげん年がいきましてから、むしろそういう好奇心を向ける、あるいは五体が健全だからというだけで自分のほうがすぐれた人間であるかのような眼を向ける
方々に対して怒りを覚えるようになりました。私は、いかに設備をつくり金をつぎ込んでいっても、
障害者の
ほんとうのしあわせをつくり出すために必要なことは、その
障害のあるなしにかかわらずその人々の持っている
能力というものを正当に評価し、公正な競争の
機会をその人々に与えていくことだと思っています。
ハンディキャップがあるならあるなりに、五体健全の
人たちと同等な競争の
機会を与えてあげること、それが実は
障害者福祉というものの基本でなければならないと私はいまでも信じております。今日そうした意味で
わが国の世間
一般の
障害者に対する眼というものは、必ずしも私が子供心にくやしさを覚えたころから完全に回復したとはいえません。
社会教育の中でこうした問題についてもなお取り上げていかなければならないことは多くあるはずでありますし、また国の施策そのものの中においても、そうした
ほんとうの意味でのあたたかみを取り込んでいく
努力というものは、なお多くなされなければならないはずであります。そして
厚生行政のワクを越えて、働く
機会というものをこの
人たちに与えていく
努力というものも、また最大限になされなければならないと考えています。
子供のころから一度は多くの
人たちの前で聞いていただきたかったことを、私はきょうたまたま申し上げる
機会を得まして、
大臣はじめ
厚生省の
事務当局の
方々も、また各党の同僚
委員の
方々においても、ただ単に法律の条文の文字の上に書かれたことばかりではなく、法律に書けない
国民一人一人の心の中における
障害者に対する眼を変えるための御
努力というものを払っていただくように、この
機会に心からお願いを申し上げておきたいと思います。
竹内
委員から関連質問をしたいというお話がありました。竹内
委員からの御意見もお聞き願い、今後の
厚生行政の中における、また
政府全般の施策の中における
障害者行政というものを進めていただきたい、心からそう願います。