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1972-05-30 第68回国会 衆議院 社会労働委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年五月三十日(火曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 森山 欽司君    理事 小沢 辰男君 理事 橋本龍太郎君    理事 増岡 博之君 理事 山下 徳夫君    理事 田邊  誠君 理事 大橋 敏雄君    理事 田畑 金光君       秋田 大助君    伊東 正義君       大野  明君    大橋 武夫君       藏内 修治君    小金 義照君       澁谷 直藏君    田中 正巳君       竹内 黎一君    中島源太郎君       中村 拓道君    別川悠紀夫君       大原  亨君    後藤 俊男君       山本 政弘君    古川 雅司君       寺前  巖君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         労 働 大 臣 塚原 俊郎君  出席政府委員         厚生政務次官  登坂重次郎君         厚生省公衆衛生         局長      滝沢  正君         厚生省児童家庭         局長      松下 廉蔵君         厚生省年金局長 北川 力夫君         社会保険庁年金         保険部長    八木 哲夫君         労働省労政局長 石黒 拓爾君         労働省労働基準         局長      渡邊 健二君         労働省婦人少年         局長      高橋 展子君  委員外出席者         大蔵省主計局給         与課長     岡島 和男君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ————————————— 委員の異動 五月二十六日  辞任         補欠選任   梶山 静六君     早川  崇君   高鳥  修君     倉石 忠雄君   中村 拓道君     井出一太郎君 同月三十日  辞任         補欠選任  小此木彦三郎君     中村 拓道君     ————————————— 五月二十六日  優生保護法の一部を改正する法律案内閣提出  第一一一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  勤労婦人福祉法案内閣提出第八一号)  国民年金法等の一部を改正する法律案内閣提  出第四八号)  優生保護法の一部を改正する法律案内閣提出  第一一一号)  労働関係基本施策に関する件(政府関係特殊  法人に関する問題)      ————◇—————
  2. 森山欽司

    森山委員長 これより会議を開きます。  勤労婦人福祉法案を議題といたします。  質疑の申し出があります。これを許します。寺前巖君。
  3. 寺前巖

    寺前委員 この法案提出をめぐって労働組合の間では、ほんとう勤労婦人のことを考えるならば、なぜ基準法という、総合的に労働者最低基準を律しているところの法律をもっと強化する内容で、この問題を取り上げないんだという意見が非常に多方面にあります。しかもさらに、勤労婦人仕事をする上において一番直面している問題は、むしろ現実的に保育所をつくっていただいて、そして働くことができる条件整備してもらいたいという問題のほうが大きな問題になっております。ところが、この法案からは、一向そういう魅力を感じないという提起が多方面になされているわけです。これについての御意見を聞きたいわけですが、それに先立って、こういう問題についてどういうふうにお考えになっているか、基準局長さんにひとつお聞きしたいと思うのです。  それは、たまたまこの間の日曜日に私が出身地の京都に帰ったときに、これは松下電器の下請の会社ビラなんですが、「女子社員皆さんへ御家族皆さんへ」という当該会社人事課から、生理休暇についてのビラが、ビラといいますか、一軒一軒に全部「女子社員皆さんへ」という通達というのですか、出ているんですね。御家族皆さんにも……。  ちょっと、それを読んでみます。こういうふうに書いてあるのです。「製造課女子生理休暇取得率 一月五六・七% 二月五六・九% 三月五三・二% 四月五三・八% 当社目標三〇%」こういうふうに書いてあるわけです。「生理休暇取得率は再三の啓もうにもかかわらず、ほとんど他人ごとと思っているのか、一向によくなりません。生理休暇内容をみますと、週五日制になっている現在で五三・八%の取得率であります。生理休暇生理になれば、当然とれる休暇ではありません。生理がひどく働くことができない人のみにとることが許された休暇です。」云々と、こうずっと書いてあって、「自分の生理は、果して働けない程度かどうかを誠実に判断する義務を怠り、生理休暇をとる権利のみを主張している同僚に対して甘えた姿です。しかし、本当に働けない程の生理異常の人は取って当然です。一方では、生理休暇の主旨をよく理解され、真面目に勤務をされている方達もあり、その為にも生理休暇運用についてはぜったいに正常な姿にもどさなければなりません。どうか、女性皆さん、自己に厳しく、他人に甘えることなく、誠実に生理休暇運用して下さい。御家族の皆様におかれましてもよろしく御指導の程お願い申し上げます。」こういうような内容なんです。生理休暇権利だとか義務だとか云々ということばを、私はあえてここでとやかく言うわけじゃないのです。  問題は、現実にこのように生理休暇がとられている。ところが当社目標を三〇%とするんだという立場から、減らすという目的をもっての活動が展開されているわけですけれども、ほんとう女性母体保護していく長期のかまえから見るならば、こういう問題について、私は法律上の問題云々ということを言っているわけではなくして、労働省指導の問題として、このような活動が展開されることを喜ばしく思っているのか、それとも改善してもらわなければならないと思っておられるのか、私はその指導上の姿勢について聞きたいというふうに思います。
  4. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 先生御承知のように、基準法の六十七条におきましては、「使用者は、生理日就業が著しく困難な女子又は生理に有害な業務に従事する女子生理休暇を請求したときは、その者を就業させてはならない。」という規定があるわけでございまして、したがいまして、生理に有害な業務に従事させている女子はもちろんのこと、そうでなくても生理日就業が困難な女子があれば、それは、当然にその女子生理休暇を請求する権利があるわけでございます。使用者はそういう場合には与えなければならぬわけでございますから、そのビラ趣旨が、もしそういう当然の、六十七条に該当するような女子が請求した場合も、なるべく与えたくない、あるいはそういう請求をなるべくさせないようにという趣旨であれば、これは基準法趣旨を十分に理解していない、まことに遺憾な態度である、かように考えます。
  5. 寺前巖

    寺前委員 婦人少年局長さんにお伺いしたいのです。私は、法律上の問題をとやかく言うのではなくして、こういうビラを出して、当社目標を三〇%にするんだというかまえ方ですね。こういう活動会社がしているわけでしょう。こういうかまえ方の活動をやらしているということをいいことと思われるのか、それとも改善されなければならないと思われるのか、私は姿勢をちょっと聞きたいのです。
  6. 高橋展子

    高橋(展)政府委員 ただいま労働基準局長から申し上げたと全く同じ理由で、私も、もしもそういう趣旨でそれが出されたのであるとすれば、遺憾だと思います。
  7. 寺前巖

    寺前委員 私は、どうももう一つ、積極的に婦人少年局というのが、基準法の第百条に基づいての活動をやられる局として、積極的に婦人のこういう問題に対して乗り出していく、そういう立場ほんとうのところは聞きたいわけですが、いまのお話を聞いていると、何か法律上の話にすぐにいかれるようで、もちろん法律に基づいてやるにしても、積極的に——法律最低基準を示すものであって、よりよくさしていくという立場からの活動を、私は労働省はもっと持っていただきたいというふうに思うわけです。  それはさておいて、それじゃ次に、この勤労婦人福祉法案そのものについて聞きたいと思うのです。さっきも言いましたように、この勤労婦人福祉法について、なぜ基準法婦人の希望している問題をもっと強化しないんだという意見が、これは多くの人たちから出ているわけです。これに対する見解と、この法律によって、まあ俗っぽいことばでいうならば、目玉になるものは一体何か、一体これを出して、どういうことが労働者にとって魅力的な法律としての役割りを果たすのだろうかという、その目玉になるのは何かということを端的に御指摘いただきたいと思うのです。
  8. 高橋展子

    高橋(展)政府委員 労働基準法は、御存じのとおり職場におきます労働条件最低基準を定めるものでございます。ただいま御審議いただいておりますこの勤労婦人福祉法案は、これは働く婦人につきまして、職場内外生活を通しまして、その福祉を進めてまいろうというものでございまして、そのために国の基本的な姿勢を示し、また地方公共団体事業主等責務を明らかにするというそういう意味合いで基本法的な性格を持っているものでございます。基本法的性格を持つものでございますから、他の法律運用施行につきましても指針を与える、そのような性格を持つものでございます。  同時にこの法律はこの法律のみで勤労婦人福祉の増進をはかるというものではございませんで、基準法をはじめ各関係法律と相まって福祉を進めてまいろうというものでございます。したがいまして、この法律案労働基準法改正に先行いたしますことは、基準法改正の問題と何ら矛盾するものではないと考えます。  また基準法改正問題そのものにつきましては、まず基準法施行の実態、問題点等につきまして、現在基準法研究会調査研究が行なわれている、このような関係にあるわけでございます。
  9. 寺前巖

    寺前委員 目玉になるものは何。
  10. 高橋展子

    高橋(展)政府委員 目玉といたしましては、まず、いまも申し上げたところでございますが、国として勤労婦人福祉というものを進めていく上の基本的な姿勢を示している、また関係者責務を明らかにしているということが、まず第一の目玉であるかと思います。従来の労働関係法律は、たとえば基準法におきましても、もちろん婦人のための保護規定が行なわれておりますけれども、それは労働条件という面でございます。また、その他の法律におきましても、それぞれの側面から婦人に対する保護が行なわれておりますが、今回の法律案におきまして、初めて勤労婦人というものを一体的にとらえまして、職場内外にわたる望ましい姿というものを打ち出し、それに対して努力することを、国として明らかにしている。これが一つの大きな目玉であるかと思います。  具体的な措置等につきましても、婦人職業生活家庭生活との調和という新しい理念のための措置を示し、また婦人の能力の有効な発揮という理念の達成のための措置を示しているところでございまして、いずれも従来の法律等の及ばなかった点につきまして、新たに設定いたしたものでございます。
  11. 寺前巖

    寺前委員 そういうような内外に望ましい姿がどうやとか、仕事家庭との調和がどうやとか、へ理屈を何ぼ言われたって、国民はそんなことでは、現実に生きている社会において魅力一つもないわけでしょう。問題は、たとえば家庭生活が送れる、仕事もやれる、そのやれる条件をこのようにやりますのやというたときに、初めてなるほどそうか、こういうことになると思うのです。もっと生きた政治というのは、現実ですよ。その現実をどうするのかという内容でもって指摘がない限り、そんなものは魅力がない。  これは普通一般の人がばっと見たときに、簡単にいって、国が責任を持って何を指導するんだろうかなと思って、ぱっぱっとこう見たら、こうじゃないの。職業指導などについて職安機関がいろいろやってくれる。これはしかし、いままでとたいして変わらぬな。職業訓練はどうじゃいな。正直いうと、こうやって見ていくと思うのです。そうすると、一般の人が一番ばっと気がつくのは、妊娠中及び出産後の健康管理に対する配慮をしなさい。ああ、そうだ。育児に関する便宜供与をやりなさい。これはちょっと何か世話してくれるんじゃないのかいな。こういうふうに法律というのは国民が見たときにそういうところに魅力を持つ。しかし、それがどうでもええようなことやったら、何や結局いろいろ書いているけれども、こんなものわれわれと関係ないんじゃないかいな、こう言われてしまう。  だから、ほんとうに国が従来の日本の勤労婦人に対して持っていなかったところのものを、この法律によって新しく描いていくものは何だということを端的にわかるように、ここで言い切れないようなものが、国民にどうしてあんた労働省気ばっていますのやということになりますかいなというんだ。そうでしょう。だから、この中で目玉的にあなたたちが宣伝をして、皆さんのためになる仕事をやってますのやという内容は何じゃと端的に言ってもらわなかったら、こんなものあったって、のうたって、ええやないかと言われたりするのも、私は、端的に言えないところに問題があるのじゃないかと思いますよ。これは端的に言い切れないのですか。言い切れないんだったら、確かに、こんなものしゃあないということになりますよ。何ぼ基本法だって、その基本法的性格のものにも、やはりそれなり魅力がなかったら、うそですよ。労働大臣、どうですのや。
  12. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 今日までの各委員の御質問でも、そういう御批判があることは、私はよく承知いたしております。寺前委員の言うように、そのものずばり目玉商品は何かと言われれば、政府委員からも答弁いたしておりまするように、たとえば育児休業についてと——先ほどあなた保育所お話をなさいましたけれども、そういうものはございません。  これはやはり一つ基本法でありますから、基本法をつくって、そしてこれからいろんな問題に発展していく。しかもこの法案の作成の過程におきましては、各界の人のお集まりである婦人少年問題審議会全会一致の御答申をいただいて、事務当局においてもこれの立法作業を行ない、いま御審議を願っておるわけでありますから、まず基本法をつくって、しかる後にその次の段階に進んでいくという、そういう基本法的な性格というところに重点を置いて私は考えております。     〔委員長退席増岡委員長代理着席
  13. 寺前巖

    寺前委員 あなた、家庭仕事調和、うまいことやろうということで、婦人はみんな悩んでいる。そうでしょう。基本法であったら基本法なりに、それをうまく調和するためにはこういうことが必要だという方向づけを出してこそ、基本法としての仕事ができるのじゃないですか。方向づけがなければ、意味あらへん。その発展、方向づけをするために、こういうふうに片一方母体保護しながら、片一方ではこういうふうにしますのやとか、いや片一方では、こういう施設をつくりまして、こういうふうにやりますのやとか——あなた、いま調和ができないところの問題点は何だということを具体的に明らかにして、基本的方向が出るのと違いますか。それがないところの基本法なんてありますかいな。違いますか。
  14. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 ですから、そのものずばりというものについては、御批判の点も私はよくわかりますが、しかし少なくとも義務規定とはいわれながらも、そういうことを義務づけていくということは、基本法としては一つの進歩であろう、だから、労働大臣として不見識な発言であろうと思われることを前提にして、私がいままでしゃべっていることは、ベストではないが、ベターであるということは、そういう意味であります。  何かこう割り切れないものがおありになることは、私はわかりますが、たとえば事業主義務づける、それをやらなければどうにもしようがないじゃないかという御批判があるかもしれませんが、しかしやはり一つ法律としてそういう義務づけを行なわしめる、またこちらは行政指導をどんどんやっていくということだけでも一つの前進であり、またそれがうまくいかない場合には、さらに第二段の考え方を持っていくというのは、やはり一つのたてまえではないでしょうか、方針ではないでしょうか。それに基づいて、次にだんだん具体策に入っていくということが、当然とらるべき措置であろうと私は思う。  一気かせいにすべてということは——それは一番望ましいですよ。しかし今日の段階において、それがやれない。だから基本法をつくって、第一段はそれ、第二段はさらに具体論に入っていくという形をとるべきであると私は考えております。
  15. 寺前巖

    寺前委員 いや、そうじゃないんだ。あなたのおっしゃるのは、ちょっと先ばしっておるんだな。つとめなければならないというのを、まあ強制力を持つようにしたほうがいいんだということを、あなたはおっしゃろうとしているんだよ。それは私はベターベストの問題だろうと思うけれども、たとえば保育所の問題というのは、いま勤労婦人にとっては一番大きな問題なんですよ。ところが、それは努力内容も何もないんだよ。働く婦人の家はあっても、保育所はないんだよ。そういう意味の……。
  16. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 あります。
  17. 寺前巖

    寺前委員 あるのかね。
  18. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 あります。いま説明しますから……。
  19. 寺前巖

    寺前委員 そういう(働く婦人の家)という項はぱっと出てくるわけだ。レクリエーションその他ぱっぱっぱっと出てくる。ところが、直接公立の保育所とか、あるいは低学年の学童保育とか、そういう要求というのは、婦人の働く上においていま不可欠の問題となっている。それだったら、それがよりベターなりベストなりの内容が出てきてしかるべしだと思うのだけれどもそういうのが出てきておらない。それでいて、何が調和をはかるというようなことになるのじゃないということを私は言っているのであって、ベストベターの問題じゃないのだ。初めから全然らち外だというのだ。何でそのことの大きな位置づけをしないのだろうか。
  20. 高橋展子

    高橋(展)政府委員 保育所の問題も含めまして、この法律案におきましては(関係者責務)といたしまして「国及び地方公共団体は、勤労婦人福祉を増進するように努めなければならない。」ということが規定されているわけでございます。その場合の福祉措置は、この法律に掲げてあります措置以外にも、広く関係各省行政にもまたがって勤労婦人福祉にかかわりのある措置というものを進めていく責務を国みずから明らかにいたしまして、また地方公共団体にもそれを求めているところでございます。  それで、お尋ねの保育所の件でございますけれども、働く婦人にとって、その家庭との調和という点で一番問題になる点は育児との関係であること、これはまことにおことばのとおりでございます。したがいまして、私どもといたしましては、この育児という婦人の負担についての配慮といたしまして、この法律案の中では、いわゆる育児休業措置というものを初めてうたいあらわしていったわけでございますが、この育児休業と並びまして、保育施設整備拡充ということが、きわめて緊急な要請であることもよく存じているところでございます。しかし、この保育所、すなわち保育に欠ける乳幼児につきましては、これは児童福祉法によりまして市町村等が国、都道府県の補助のもとに保育所を設置するたてまえとなっているところでございます。したがいまして、児童福祉法において、そのことは明らかにされ、またその施行を通じまして拡充、強化、整備が行なわれているところでございますし、また本法案の成立によりまして、一そうそのような努力が行なわれることを期待する。そのようなことでございまして、考え方の中に保育所というものは、きわめて大きな位置を持っているわけでございます。
  21. 寺前巖

    寺前委員 関係法案というのは、みなあるのです。職業指導だったら職業関係法案があるのです。全部それぞれ関係法案があるけれども、わざわざ勤労婦人福祉法というのをつくるということは、関係法案の中から抜き出して、そこを強化する立場をおそらく提起しておるのだろうと思う。働く婦人の場合に、一番大きな使命をなしていく内容としては、保育所問題というのは大きな位置を占めるのだから、そうしたら何でその問題を特にクローズアップした立場をここにしないのか、私はそういう意味においては、おかしいじゃないかと思うのです。  これはもう時間があれだから、一応それは置いて、その次に、この勤労婦人が一番魅力を感じられるのは、やはり九条、十条、十一条のところだと思うのですよ、正直言うと。妊娠中、出産後の問題、それから育児に関する便宜供与の問題。これは一番ぱっと食らいついて、ここが一番現実的で、しかもほんとういうならば、これが基準法上保障されるようにあってほしいというのが希望だと思う。その点で労働大臣がせられたベターベストの話は、それはそれなりに聞いておきましょう。だけれども、たとえこれは努力規定か知らないけれども、努力をするという方向を明らかにする以上、政府機関努力規定ではいかぬだろうと思うのですよ。これを国民努力をしなさいという以上は、政府機関は全面的に実施することが必要だろうと思うのです。  そうすると、現在の国の執行している内容の中からこれを実行するということになったら、どのような措置をしなければならぬことになるのかお聞きしたいと思うのです。
  22. 高橋展子

    高橋(展)政府委員 公務員につきましては、公務員使用者である国あるいは地方公共団体が、この法案でいいますところの事業主に当たるわけでございます。その事業主としての国、地方公共団体は、この法律趣旨に沿った措置を講じていくことが期待されるわけでございますが、具体的な点につきましては、これは人事院等関係省庁で行なわれる、そのようになるわけでございます。
  23. 寺前巖

    寺前委員 これを実施するということになったら、いまの公務員の場合には全面的に実施されているのですか。それとも実施されていない面がおるのですか。
  24. 高橋展子

    高橋(展)政府委員 先ほどおあげになりました九条、十条、十一条のうち、九条、すなわち妊婦中の婦人が必要な保健指導あるいは健康診査を受けるための時間の配慮という点につきましては、これは国家公務員につきましては、人事院規則におきまして女子職員についてすでに措置が行なわれております。
  25. 寺前巖

    寺前委員 九条から十一条の件に関して、現実政府機関でこの法律努力規定を提起しているものの中で、いまの法律のもとに、あるいは人事院規則で実行していないものがあるのか。あるとすれば、どういうものがあるのかということを九条、十条、十一条について全面的にちょっと聞かしてくださいと言っているのだ。
  26. 高橋展子

    高橋(展)政府委員 九条につきましては、これは時間の配慮でございまして、この時間の配慮に関しましては、ただいまの人事院規則の中ですでに措置がなされていると考えられると思います。  十条につきましては、これは健康診査に基づきましての配慮でございますが、この法案で期待いたしておりますようなこまかな配慮ということは、まだ措置が行なわれておりませんが、男子も含めて一般的な健康指導という配慮の中で、ある程度の措置人事院規則で行なわれているところと考えております。  十一条につきましては、現在まで育児休業その他の育児に関する便宜供与につきましては、人事院規則等措置は行なわれておらないところでございます。
  27. 寺前巖

    寺前委員 それでは労働大臣にお聞きしますが、育児休業というのは、従来十一条については行なわれていない。そうすると、この法律を出したら、政府機関としては育児休業という問題について直ちに実施するという立場に立って、これをお出しになっているわけですね。
  28. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 法律にうたっておるからには、それを実施する目標で進めなければならないと考えておりまするが、具体的な内容につきましては、人事院をはじめ関係省庁とよく打ち合わせしなければならないと考えます。
  29. 寺前巖

    寺前委員 いや、実施については打ち合わせをしなければならぬけれども、法律を出される以上は、努力規定であっても当然政府機関の場合には育児休業という問題を直ちに検討しなければならぬことは間違いないですね。
  30. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 関係機関と協議いたしまして、その方向努力しなければなりません。
  31. 寺前巖

    寺前委員 そこで、その育児休業という場合に、政府機関が検討される場合に、従来から問題になっておった休業期間の本人の申し出、それから有給制の問題、それからもとの職場に帰るという、この三つの問題が、従来から勤労婦人の間で労働組合などで問題になっておりましたけれども、これについてどのような見解を持って臨まれるのか聞きたいと思います。
  32. 高橋展子

    高橋(展)政府委員 育児休業に関する三つの点のうち選択制と申しますか、強制されることはないという点につきましては、これは、この法律案の中でも「勤労婦人の申出により、」という文言を使いまして、これは本人の自主的な選択ということをあらわしているわけでございます。  それからまた休業という既念自体これは雇用関係を継続するということを前提にいたしておりまして、したがいまして原則として現職に戻るということ、これも予定されているところでございます。  もう一つの点の、有給ということでございますが、この有給、無給につきましては、私どももいろいろと検討をいたしたところでございますが、この法案が全産業の全事業主、全勤労婦人を対象としているものであるわけでございますので、今日の段階で、ここに一律に有給を強制的に要請するということは、これは妥当ではない、そのような考え方で、ここには有給、無給ということは触れませず、これは労使の間の自主的な決定にまかせる、このような立場をとった次第でございます。
  33. 寺前巖

    寺前委員 政府機関はどういうふうに考えて準備をするのですか。
  34. 高橋展子

    高橋(展)政府委員 政府機関の問題、すなわち女子公務員の場合につきましては、先ほども申し上げましたとおり、趣旨といたしましては、この育児休業も含めまして、この九条、十条、十一条につきまして事業主たる国、地方公共団体は、この規定に従った措置をとっていただくことを期待しているところでございます。
  35. 寺前巖

    寺前委員 いやいや、全産業にわたって拘束はできぬと言われた有給問題について、政府機関はどのような見解を持って臨まれるのかという話です。
  36. 高橋展子

    高橋(展)政府委員 この点につきましても先ほど申し上げましたように、具体的な点の検討は、これは人事院と公務員の問題を所管するところの官庁で具体的な御検討をしていただく、このように考えております。
  37. 寺前巖

    寺前委員 ぼくは、政府機関が閣議で決定して出してきた法律ですよ、全産業を律することができないということを言う以上は、自分のところはこうするけれども、全産業はこのようにあってほしいとか、一つの基本的な立場があってこそ、全産業に向かって、努力規定であっても方向づけ指導することができると思うんですよ。     〔増岡委員長代理退席、委員長着席〕 それを政府機関自身は、こういうふうにやること自身が重要なんだという立場も確立せぬといて、そうしてあるべき姿を言おうたって、そういう姿勢ではこれは指導することはできない。私はそういうふうにこの問題を提出するにあたっての姿勢上の問題だ、非常にこれを感ずるわけです。だから労働者が全体として、この法律によって一体何が魅力あるんだろう、ほんとうにやる気だったら基準法でやるべきじゃないかというふうに言う根拠というのは、いまのその政治姿勢にあると私は思うのです。そういう意味において、この法案に対してほんとうに心から理解できないという問題はそこにあるんだということを、労働者の気持ちを、この提出者として私は考えてもらう必要がある。  もう時間もあれですから、これで私の発言を終わりますけれども、労働大臣ほんとう基本法的性格であっても、方向づけを明らかにしようという場合には、政府機関は少なくともこうあるべきだという姿勢を確立して出すべきだ。私の意見を述べて、発言を終わります。      ————◇—————
  38. 森山欽司

    森山委員長 次に、労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出があります。これを許します。後藤俊男君。
  39. 後藤俊男

    ○後藤委員 実は大臣、この間社会労働委員会で問題にいたしました政労協関係の賃金闘争の関係でございますけれども、この間の社会労働委員会の最終的な場面におきましては、毎年毎年同じことを繰り返しておるということはよろしくない、もう本年あたりには何らかひとつ賃金闘争を解決する場をつくるべきじゃないか、そうあるべきだというようなことになりまして、大臣はじめ関係皆さんとしても、言われることはよくわかるけれども、なかなかむずかしい問題ではある。しかし政府関係としても、部内で十分協議をしまして、可及的すみやかに、会期中に返答をいたします、こういうことになっておると私は記憶しておるわけなのです。ですから、二十六日が会期でございましたもので、それまでに何とか返答を聞きたい、こういうつもりでおったわけですけれども、会期延長の形になりましたもので、ここ二、三日まだ何ら聞いておらぬようなわけでございますけれども、再三再四にわたって、この問題は当委員会でも審議をいたしておる問題でございますので、ぜひひとつ、いま申し上げましたところの線に沿った御回答と申しましょうか、御返答を大臣の口から、よくわかるようにお聞かせいただきたい、こう思います。
  40. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 後藤委員並びに関連で大原委員の御質問がございまして、いま後藤委員御指摘のようなお答えを私いたしました。その後、うちの役所を中心としていろいろ調べてみましたところが、確かにその数も百十二以上でありましょうか。内容も実に複雑多岐、非常に困難な問題もあるし、従来の経過等についても私はいろいろ報告を受け、また自分なりの考えも申し上げながら、この問題に対処してまいったわけでありまするが、ただいまの御質問に対して、私の考えをひとつ申し上げさしていただきます。  政府関係特殊法人は、その事業の特殊性、公共性にかんがみ、政府または地方公共団体趣旨等によって設立され、その運営についても政府の交付金、補助金等に負うことが大きく、予算その他についての種々の制約がある。政府関係特殊法人のこのような性格に基づき、これらの職員の給与改定が、国家公務員の給与改定に関する人事院の勧告に準拠して行なわれることは、政府としてやむを得ないものと考えている。しかしながら、本件については種々問題が指摘されていることにかんがみ、労働、大蔵両省が中心となり、関係省庁の協力を得て、政府関係特殊法人の労使双方から実情及び意見を聴取する場を早急に設けることといたしたい、このように考えております。
  41. 後藤俊男

    ○後藤委員 そうしますと、いままでよりかなり前進した考え方を、いろいろ御無理があろうけれども、いままでやっていただいた。これは非常に私はありがたいと思うのです。ところが、御承知のように、きょうから九十六時間ストライキというようなことで、建設省関係の四つの公団ですか、この長いストライキが計画されておるようなわけでございますけれども、そうなりますと、いま大臣が言われました前段のほうはともかくとして、後段のほうでは、各省でひとつ協議して十分検討しよう、こういうふうな話だと私、聞いておるわけですけれども、ことしの春闘——現在戦っておる春闘に対しても、いま大臣が言われました方向で直ちにやってもらえるのかどうか。これは大臣がいまそこで言われました以上は、そうあるべきだと私は考えるわけでございますけれども、現在かまえておる労使の関係というのを、一刻も早く紛争解決のためには、せっかくいろいろ御尽力いただいたいまの方針で、直ちに紛争解決の方向へひとつ御相談をいただく、そういうことになってしかるべきだと私は思うわけでございますけれども、この点、大臣いかがでしょうか。
  42. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 本日からストライキに入るのは、建設省関係の四団体というふうに私は承知いたしております。過般、建設委員会等におきましても、西村大臣に対していろいろ御質問があった。それについて、西村大臣からもいろいろ御相談もちょうだいいたしました。それから、数日前でありまするが、参議院の社労におきましても、参考人等を招致いたしまして、やはりいまのような問題があることを含めながら、いろいろな審議も行なわれたわけでございます。  非常に複雑多岐にわたる問題であり、今日までの経過から見ても、非常に困難な問題であることは、私先ほど申し上げたとおりでありまするが、先ほども御答弁申し上げましたように、労使双方から実情及び意見を聴取する場を早急に設けるということといたしたいということは、この間も後藤委員に対してもいろいろ調べさせていただきたいということを申し上げたのでありますから、確かに百十二という、しかも非常に内容の異なった、各省庁にまたがる問題でありまするから、非常に困難な問題ではあると思いまするが、できるだけ調査を続けていきたい、検討する場を設けて調査を続けていきたい、このように考えております。  ただ、いまおっしゃったように、直ちにきょうから入ったものが、それじゃどうこうと言われても、これは時期的にちょっとどうかなというふうに考えておりまするが、ストライキの実態、その他等についても、直ちに建設省なら建設省とよく連携をとりながら、それを見きわめていかなければならない、このようにも考えております。
  43. 後藤俊男

    ○後藤委員 まあ大臣、長い間やってまいりました問題ですから、ひとつきれいさっぱりになると私も思っておらぬわけなんです。今度労働大臣になられてから、先ほど言われたような方向へ一歩進んでもらえる、いわゆる期待の持てる御返答をきょういただきましたもので、これは私たちとしては、非常に感謝をしておるわけなんです。それが、来年あたりからひとつ考えてみましょうということでは、どうもわれわれは納得できぬわけなんです。  ですから、きょうからストライキをやるから、きょうからすぐというわけじゃございませんけれども、今次春闘につきましても、いま大臣が言われました方向で積極的にこの紛争については乗り出していただいて、できるだけ早く解決する方向へ、いま大臣が言われました方向で進めていただく、これだけはぜひひとつお願いいたしたいと思うのです。先ほどの大臣のおことばはもうちょっとわからぬところがあるのです。もう少しわかるようにお願いしたいのです。
  44. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 こういう政労協全般の問題について、やはり労働大臣の権限というものも、これは後藤委員、よくおわかりのことと私は思います。したがって、そののりを越えないで、しかも長年の問題でありまするし、各方面からの御指摘もいただいておりまするので、むずかしい問題ではあるけれども、調査を続け、 いま起きておる問題を直ちにと言われても、これは先ほど言ったように困難ですけれども、先ほどあなたがおっしゃったように、来年からどうこう、そんなことはございません。この間御質問がありました翌日から、さっそく労政局長を中心といたしまして、私は私なりの報告をいただき、また委員会等において参考人等の招致もありまするので、十分これに耳を傾けまして、検討を続け、調査も続けておるところでございます。
  45. 後藤俊男

    ○後藤委員 じゃ、大蔵省の課長さんでございますか、もうあなたに聞くまでもなく、大臣に聞けば、大蔵省とも十分相談されて、先ほどの回答になった、こう私は思うわけでございますけれども、そうしますとやはり長い間やっておりましたこの問題の中心は大蔵省にあると私は思うのです。大蔵省の態度なり姿勢いかんによりましては、ほとんど一年じゅうその闘争をやらなくても、紛争解決のめどはついたと思うのですが、つかないところは、先ほど前段のほうで言われました予算関係云々がある。できるならば人事院勧告に見習うのが望ましいのだという前段がありましたが、——私はそのことでわかるわけなんです。ところが関連の労働組合が百十幾つありまして、労働組合法適用の組合でございますから、そこにやはり問題があるわけなんです。それも一年や二年やっておることじゃないのです。四年も五年も六年も同じことを続けてきているわけなんです。何かというと、大蔵省がやはりバックにあって、お金の問題があるものですから、解決の方向へ全然進まなかったというのが、今日までの経過だと私は考えておるわけです。  そこで、ただいま大臣が言われましたように、長い間紛争をそのままにしておくということはよろしくない。百十幾つの組合がある。その中にもいろいろな関係がございまして、なかなかむずかしい問題ではあるけれども、大蔵省なり労働省関係、政府の皆さんが十分相談なさって、それじゃひとつ労使の意見を十分聞いて、いままでのように人事院勧告の出るのを待つのじゃなしに、できるだけ早く紛争を解決する方向へひとつ努力をいたしましょう。端的に言えば、そういう考え方をいま労働大臣も披瀝されたのだと私は思っておるわけなんですが、大蔵省も、そう考えて間違いございませんか。
  46. 岡島和男

    ○岡島説明員 政府関係特殊法人の職員の給与につきましては、再々後藤委員から御質問をいただき、また労働大臣をはじめとして、政府のほうにおいても、いろいろ基本的な考え方については、御答弁をしてきたところであります。  それで、いまさら申し上げるまでもございませんが、政府の補助金とか交付金、そういうものにつきましては、国民の税金でございますものですから、その支出につきまして、大蔵省が慎重な態度をとるというのも、大蔵省に与えられた使命ではないかというふうに考えておるわけであります。  それで一方、ただいま後藤委員からお話がございましたように、いろいろこの政府関係機関の特殊法人の職員の給与をめぐりまして、目下紛争があるわけでございますけれども、実定法を見ますと、主務大臣の承認というものと、それから大蔵省大臣との協議という規定がございますものですから、そういう主務大臣承認、大蔵大臣協議というようなものと労働三法との調整をはかっていくということにつきましては、従来なかなかいい方法がなくて、いわゆる大蔵省の内示というふうなシステムによってやっておったわけでございます。これにかわるいいシステムがあるかということになりますと、なかなかいいシステムがいままで見つからないということで、いろいろ御議論があったにもかかわらず、今日まで解決を見なかったということでございます。  そこで、先ほど労働大臣から御発言がございましたように、非常に問題がむずかしいものですから、労働省と大蔵省が中心になりまして、それから各省庁において主務大臣が権限を持っておるということも、これも事実でございます。それからまた、特殊法人そのもの理事者というものの考えも聞かなければなりません。もちろん組合のほうからの意見も聞かなければならないということで、まず意見を聞くということで、先ほど労働大臣から御答弁があった、このように理解しておるところでございます。
  47. 後藤俊男

    ○後藤委員 そうしますと、大臣、いま話がありましたように、労使の意見を十分聞こう、こういうことですが、内示制度というのは、一体これからはどうなるのでしょう。相変わらずいままでと同じように人事院勧告が出る、内示に基づいて賃金がきまっていく、そういうコースをたどるとするのなら、何にも前進はないわけなんです。そうではなしに、労使の意見も十分聞いて、さらに関係省大臣の意見も聞いて、できるだけ早く春闘において紛争を解決するような場をつくっていくのだ、そういうことならば、はっきりすると思うのですけれども、ただ労使の意見を聞くということだけで、内示制度をそのまま持ち越していくというのなら、何ら前進にはならぬと私は思います。その点いかがでしょうか。
  48. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 この問題は、たびたび大臣からも、またただいま大蔵省からも申し述べましたように、非常に長期にわたり、むずかしい問題でございまして、早急にどうこうというふうに割り切るのは非常にむずかしゅうございます。したがいまして、先ほど大臣から申し上げましたように、実情及び意見を聴取する場をつくるということで、真剣に検討いたしたいと思います。その結果によりまして、何らかの方法が考えられますまでは、一応いままでの制度、やり方というもので行くよりほかにいたし方がないのじゃなかろうかというふうに考えております。
  49. 後藤俊男

    ○後藤委員 労政局長、もう少し歯切れのいいものの言い方はできぬものですか。なるほど、労使の意見を聞く場はつくります、十分聞くけれども、そこでいろいろ考えてみて、いい案が出てこない以上は、いままでどおり内示制度でやっていきたい、こういうものの言い方ですけれども、意見を十分聞いて、各省庁で相談をして、せっかくそこまで前進してもらったのならば、そこにおいて十分協議をして、賃金問題については何らか解決する方法を考える。そういうことなら、私は話はよくわかるわけなんです。  これはくどいことを言いますけれども、去年、おととし始まった問題じゃないのですから、あなたのほうも十二分にわかっておるわけなんです。いま労政局長の言われたことは、どうも何ら前進がないような気がするわけなんです。あなたが一生懸命おやりになったということについては、私はよくわかるのですけれども、それならひとつ労使の意見を聞く場をつくってもらう。そこで十分労使の意見を聞いてもらったら、そこで解決する何らかの方法を考えて、やはり労組法適用の組合であるように春闘で解決する。相変わらず年末まで、人事院勧告を待つ、そういうことではないような方向を考えてもらわなければ、私はいかぬと思うのです。これは重ねてお尋ねしますが、いかがですか。
  50. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 先生御指摘のような問題も、もちろんわれわれとしては十分念頭に置いておるわけでございます。そういったような問題も全部含めまして慎重に検討さしていただきたい。しかしながら、その結論というのは早急に出てくるものではなかろうということで、しばらくお時間をおかしいただきたいと思います。先生のおっしゃいましたことも、もちろん十分念頭に置いておるわけであります。
  51. 後藤俊男

    ○後藤委員 それでは大臣、この問題についてはもう繰り返しておりましても同じことになると思いますが、先ほど御返答いただいたところまで検討していただいたのですから、労使の意見を十分聞いていただいて、引き続いてその場で何らか解決する方向を検討をしていただく、こういうことでぜひお願いをいたしたいと思います。いかがですか。
  52. 塚原俊郎

    塚原国務大臣 重ねての御意見を交えての御質問でございますが、私はたびたびお答えいたしておりますように、十分検討いたす考えでおりますから、またよい知恵がありましたら、ひとつ御教示願えれば幸いでございます。      ————◇—————
  53. 森山欽司

    森山委員長 国民年金法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。引き続き、後藤俊男君。
  54. 後藤俊男

    ○後藤委員 最初に、老人対策と年金問題について、現在厚生省がお考えになっておる点をお尋ねいたしたいと思うのです。
  55. 登坂重次郎

    ○登坂政府委員 老人対策につきましては、まず所得保障の意味において老人年金の増額、また医療給付においては七十歳以上の医療の無料化を中心とし、老人の生活、健康の保全のために努力するということ。また生きがいある生活を送っていただくために、老人クラブとか、あるいは老人の健康保持のために、本年度から老人の運動会奨励費をただいま計上して御審議を願っておる。とにかく日本の国は非常に老齢化に向かいつつある、今後老人対策は非常に重要な施策である。そして、老後の保障をできるだけ手厚く考え、そうして生きがいある生活を送っていただくような、そういう施策をしたい、かように考えておる次第でございます。
  56. 後藤俊男

    ○後藤委員 いま次官が言われましたのも、考え方の大筋だろうと思うのですが、今度のこの改正の法律案では、老齢福祉年金が二千三百円から千円引き上げの三千三百円、これは十月一日実施、そういうことだと思うのですが、私聞きたいのは、まあお年寄りの七十歳以上につきまして三千三百円にする。六十五歳以上の人につきましても、身体障害者、これは障害年金とかそういうものをもらっておらない人につきましては、六十五歳から適用ということに昨年の国会で改正になったことを私は記憶しておるのです。  ところが、その三千三百円ではたして生活ができるかどうか、これは本会議意見の発表のときにもありましたように、できた当時はあめ玉年金で現在ではたばこ年金にすぎぬじゃないか、もう少し思い切って引き上げたらどうだ、引き上げるべきである。少なくとも六十五歳から今度の改正では五千円に引き上げる、来年は一万円にする、さらに将来は三万円に持っていく、これぐらい思い切ったことを考えなければいけない段階に今日きておるんじゃないか。さらにまた、先進国の現実にやられておるものを比較いたしましても、当然そうあるべきものだというふうに、われわれとしては考えておるわけなんですが、そうなりますと、いま次官が言われましたように、これからどんどんお年寄りはふえていくであろう、その人方に対する国民年金はどうあるべきか、これはやはり三年なり五年なりの構想というのが厚生省としてはあると思うのです。将来ここを目標にしてこういうふうに改正したい、とりあえずことしは思い切って千円やったんだというのが、あなた方の言い方だろうと思いますので、厚生省として老人と年金、最終的にはどこに目標を置いて、どういうような行程のもとにこれを改正に運んでいくんだ、そういう考え方が全然ないとは私思わないのです。それがあればこそ、ことしは十月から千円引き上げということになるんだろうと思いますから、いま申し上げましたようなことにつきまして、厚生省として、来年はこうするんだ、来年はこうなるんだ、五年後にはこうなるんだ、最終的には老齢福祉年金はこう持っていくんだ、こういう計画があればお聞かせいただきたいと思います。
  57. 登坂重次郎

    ○登坂政府委員 御説のとおり、老齢年金については、いまだ必ずしも十分とはいえません。しかしながら、いま年金全体について考慮すべきときにきたことは事実でありますし、私のほうといたしましても、将来年金のあり方について国民年金審議会等にも諮問申し上げておりまして、今後経済の変動、物価の上昇、消費水準の向上、そういうものをあわせ考えまするときに、できるだけひとつその線に沿うように努力してみたい。  しかし、ただいま年金が、厚生年金をはじめ、あるいは国民年金、あるいは遺族年金等、非常に多種に分かれております。しかし、いずれにいたしましても、老齢年金は最も優先的に、かつ老人に対する福祉の一端として実現しなければならない、こういうふうに考えておりまして、無拠出の老人年金あるいは拠出の年金、こういうもののバランスをどうとるべきかということについて、ただいま検討をいたしております。そして、できるだけ御趣旨に沿うように、年金の増額をはかっておる次第でございます。ただいま厚生年金については一万五、六千円の平均でありまするが、これを大幅に改定し、それに伴ういわゆる国民年金のあり方、老齢福祉年金のあり方についても前進的に考慮したい、かように考えておる次第であります。
  58. 後藤俊男

    ○後藤委員 この無拠出の老齢福祉年金というのは年々減少していくと思うのです。何年ごろになると、なくなるかわかりませんが、対象者が将来はなくなると思うのです。だから、予算的に考えてみましても、どんどん数がふえるということじゃございませんので、かなり思い切ったことがやれると私思うわけなんですが、現在この老齢福祉年金の受給者は、昨年はどれだけあって、ことしは一体どれだけあるのでしょうか。それで将来の見通しは一体どういうふうになるのでしょうか。
  59. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 老齢福祉年金は昨年大体三百万でございまして、四十七年度では老齢部分について三百四、五十万まで伸びると思います。  それから、現在のところ、これは推定でございますけれども、大体五十一、二年がピークでございまして、その後、先生御指摘のとおり減り始めまして、大体昭和八十年ごろには、福祉年金というものはなくなっていくのではなかろうか、こういったのが一応の見通しでございます。
  60. 後藤俊男

    ○後藤委員 先ほど次官が説明されましたが、来年なり再来年のことについては、一体どういうふうなお考えでしょうか。これはおそらく、来年度の予算が八月、九月になれば問題になってくると思うのです。そうなればおのずから、厚生省として、来年の年金問題はどうあるべきか、この方針というのがなければ、予算要求もできないと思うのですね。いかがでしょう。
  61. 登坂重次郎

    ○登坂政府委員 来年度の老齢の無拠出につきましては、五千円を目途に予算編成をしたい、かように考えております。
  62. 後藤俊男

    ○後藤委員 まあいずれにしても、この老齢福祉年金の三千三百円というのは、非常に低額だと私は思うのです。もっと思い切って、ことしあたり五千円に引き上げる、来年は一万円というくらいなところまで思い切ってやりましても、まだまだ不十分である。これは先進国と比較すれば、そういわざるを得ぬわけなんです。  それから、この老齢福祉年金の併給の問題なんです。これは公務扶助料につきましては、中尉までの、約二十四万までは併給されると思うのですね。ところが、共済組合関係の年金その他につきましては、ことし引き上げ六万でございますか、六万以上については併給しない、こういうことになるわけなんですね。ですから、この併給問題につきましては、いま次官も御承知のように、生活扶助料、これによりましても、一級地で大体二人家族で二万七千円ぐらいだと思うのです。そうすれば、公務員なり、さらに公共企業体関係の共済年金の受給者ですね、七十歳なり七十五歳の人は、非常に金額が少ないわけなんです。とても、いま申し上げましたこの生活扶助の二万七千円に遠く及ばない金額なんです。非常に安いわけなんです。それだったら、そういう人に対しましても、この老齢福祉年金の併給というのは考えてもいいんじゃないかと私は思うのです。  どういうわけで、公務扶助料だけが中尉までは併給いたしましょう、その他は併給いたしません。ただし、六万円までは併給してよろしいが、六万円以上は併給いたしません。六万円も今度の政令の改正で六万円になると私は思うのです。なぜ一体併給しないのでしょうか。これは併給して当然なことだと思うのです。しかも、これは法律じゃございません。政令できめられるわけなんですね。ですから、ここの委員会で論議をいたしまして、そうあるべきだということになれば、当然併給問題についても再検討していただくことができると思うのですが、いかがでしょう。
  63. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 福祉年金と他の公的年金等との併給につきましては、ただいま先生御指摘のとおり現実の問題といたしましては、非常に問題があるところでございます。ただ制度的に申しますと、やはり福祉年金は、どの年金制度からも年金の支給を、受けることができない者に対しまして、御承知のとおり全額国庫負担で支給されておるものでございますので、そういう意味合いから申しますと、いわば補完的なものが、あるいは経過的なものが、いまの福祉年金である、こういうことがいえるかと思います。  そういうことから申しますと、筋といたしましては他の公的年金を充実いたしまして、そのほうで支給の内容を充実をしていく、こういうことが道筋である。しかしながら、ただいまもお話ありましたように、現に受給をしております公的年金の額が非常に低額でございます場合には、一定の限度で併給をする、こういう仕組みが福祉年金制度発足当時からとられておりまして、発足当時は福祉年金相当額までは併給をする。それから昭和三十七年の改正で二万四千円を限度として併給をする、さらにまた四十六年からは福祉年金相当額を限度として併給をする、こういうような改正が、一般公務につきましては行なわれておるわけであります。  戦争公務者の場合には、やはり戦死者と遺族等に対しますそういう特別な事情もあって、昨年は准尉までは、これは全額併給、それから今年度は改正をお願いいたしまして、これは十月から中尉までは全額併給をする。戦争公務はこういう特別な事例をつくっておりますけれども、一般公務につきましては、先ほども申し上げましたように、制度発足以来の福祉年金の制度の本旨という点から見ましても、経過的、補完的なものでございますので、本来はやはり恩給なり拠出制年金の充実というものがまず先決問題で、そのほうで解決すべき問題である。ただ現実が低いから、ある程度一定限度までは補完をする、こういうような仕組みをとっておるのが現状でございますので、問題はいろいろございますけれども、そういった制度の本質論と、それから今後の福祉年金のあり方と両面からこの問題は考えていかなければならぬ問題だと思っております。
  64. 後藤俊男

    ○後藤委員 いま局長が言われましたことも、話の筋としてはわからぬことはないのです。ただ、いままでの審議の経過から考えてみますと、いま言われましたように、公務の扶助料につきましては中尉までは併給する、そういうことなんですね。ところが一般公務員なり共済年金の関係につきましては、これは局長も御承知だろうと思いますけれども、いまから四、五年前には七十五歳以上は何%、六十五歳から七十歳までは何%、六十五歳以下の者は何%といって引き上げ率に格差をつけておったのです。ところが、三年くらい前からこの格差がなくなったのです。格差がなくなった根拠というものは、スライド制ということもある程度考えたかもわかりません。そのときの話として、政府の回答としては、高齢者については何らか考えなければいけない。これははっきり返答として出ておるわけなんです。前までは、たとえば年金受給者で七十五歳以上の人は、昔の年金ですから、引き上げをしておっても非常に低いわけなんですね。ところが、四、五年前まではそういう低い人は低いように上げる率を高くしておった。ところが、現在は七十五歳であろうと六十歳であろうとみな引き上げ率は一定なんです。  そのときに、ここの委員会でも私は言ったことがあるのです。それじゃ七十歳なり七十五歳以上の人は気の毒じゃないか、何らか高齢者に対しては考えるべきである。それは全くそのとおりです、高齢者に対しては何か厚遇する方法を考えなければいけない。     〔委員長退席増岡委員長代理着席〕  これは審議会の答申の中にもあったと私は思うのです。そうだとするのならば、私は何もいま直ちに先ほど申し上げました年金受給者全部に併給せよと言っておるわけじゃない。公務扶助料年間二十四万までもらえる人が併給されておるのならば、少なくとも六十五歳以上あるいは七十歳以上の人に対しましては、あるいは七十五歳以上の人に対しては、老齢福祉年金くらい支給するのが、いまのとれる方法としては、一番簡単で考えられる方法じゃないかということを言いたいわけなんです。  なぜ一体そこまで一歩前進して考えてもらえぬだろうか、公務扶助料だけなぜ二十四万円それに併給してよろしいということになるのか。七十五歳以上の非常に少ない公的年金受給者が、この老齢福祉年金が来年から五千円、さらに一万円とどんどん引き上がっていくが併給されない。戦争ということがつくかつかぬか別問題にしまして、年寄りを、老齢者を待遇するという意味におきましては、非常に不公平だと私は思うのです。  ですから、七十歳なり七十五歳以上の人に対しては併給するそういう方向でひとつ再検討してもらいたいと私は思うわけなんです。来年といわずに直ちに、これは焦眉の急を告げる重要な問題だという気持ちで申し上げておるわけなんです。これは次官いかがでしょう。
  65. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 後ほど次官からもお答え申し上げますが、やはり福祉年金の改善の全体の中の問題という点が一つあろうかと思います。いまもお話がございましたように、今年度は千円老齢福祉年金は引き上げを行ないまして、かってない引き上げ額になっておるわけでございます。そういったことで福祉年金の問題は、まず第一には、その支給額を引き上げるという問題、あるいはお話に出るかもしれませんけれども、所得制限の問題をどういうふうに処理するとか、そういった非常に大きな問題がありますと同時に、いまおっしゃいましたような併給問題という問題もあるわけでございます。  併給問題の中で、いろいろ御議論はございましょうけれども、やはり戦争公務ということになりますと、その特殊性からいって従来の一定の限度額を設けて併給するということをやめ、昨年は准尉まで、ことしは中尉までというふうに実情を考えた全額併給制度をとっておるわけでございまして、そういった福祉年金全体の改善の中身が非常に大きいということ、それから戦争公務には特殊な事情があるということで、今後も福祉年金はいまお説のとおり、ますます大幅に改善をしていく方向をとらなければなりませんから、そういう全体の改善の中でこの併給問題について、確かに問題点がございますけれども、どの程度の優先の度合いで、どの程度の限度で考えていくか、そういう問題については十分に検討してまいりたいと思います。  なお、もう一点つけ加えて申し上げておきますけれども、六万円の限度額での併給ということでありますが、先ほども申し上げましたように、制度発足当時からの経緯を申し上げますと、福祉年金相当額まで併給する。あるいはその次は二万四千円まで併給する。それから福祉年金が二万四千円になりました時点で、今度は福祉年金相当額まで併給する。それから今度は、福祉年金が年間、三千三百円の十二倍でございますから、大体まあ四万円近いのでございましょうか、そういった段階で六万円まで、そういう限度を設けて併給する、こういう経緯をたどっておりますので、将来、福祉年金の額が相当大幅に引き上げられますのに伴いまして、併給制度というものがある限りにおきましては、その限度額も引き上げられていくというふうにわれわれは考えておりますが、十分問題点は今後検討をさせていただきたいと思います。
  66. 登坂重次郎

    ○登坂政府委員 後藤先生のお話のとおり、年金のあり方、これは今後重大な、厚生省並びに社会保障制度の大きな目玉商品である、かように私ども厚生省としても考えておるわけでございます。併給について、私も先生と同じような前向きの考え方を持っております。とにかく老後の生活の保障、あるいは生活保護との関係、どのぐらい——今後経済、社会が発展していく場合において、最低生活がどのぐらい、それに対して及ばずながらできるだけ、どのぐらいまでに早く年金というものを満たさなければならないか。そういう経済全体の問題と、日本の財政資金との関係もございますけれども、とにかくいまの福祉年金六万円までをもって、それ以上は併給を許さないということも、これもまた考えなくちゃならない、こう思うわけでございます。  それに、もう一つ加えるなれば、扶養義務者の所得制限、この問題についても、私どものほうとしましては、二百五十万という扶養家族の所得があるから、高齢者の者に対しまして併給を、これを支給しないとか、そういうことも、これまたあわせて考えなければならぬ。年金制度全体について考えさせられるべきものが多々ありまするから、先生御指示のように、私どものほうとしましても、できるだけひとつ前向きに検討することにいたしたい、かように考えます。
  67. 後藤俊男

    ○後藤委員 所得制限が現在は百八十万ですか、これが二百五十万まで引き上げられるということだろうと思います。それで、私考えてみますと、次官なり局長が前向きで検討しますと、こう言われますけれども、これで国会が終わり、八月、九月になると、来年度の予算の問題を具体的に出さなければならなくなってくるわけです。そうなってまいりますと、併給問題もかなり予算にもこれは影響してくると思うんですね。  それじゃ次官にお尋ねしますけれども、いま言いましたように、年金の受給者全部とは言いませんけれども、どの年齢の範囲から以上については、来年からは老齢福祉年金を併給するような方向で予算要求もして、来年のこの国会におきましては実現させる、そういうことがはっきり言えるかどうかということなんです。仕組みとしてはそういう仕組みでこれからこの仕事が進んでいくと私は思うのです。しかも、あなたがいまおっしゃいました六万円というものは、十二で割りますと月五千円なんです。ですから、年金受給者で六万五千円もらっておる人は、これは併給にならぬわけですね。一方では、局長の話じゃないけれども、事情はそれは違うかもわかりませんが、二十四万円までもらう人は、これは併給されるわけなんです。まあしかし、戦争で気の毒なお方の遺族であるからということかもわかりませんけれども、そこへ、ただこんなことは理由になるかならぬかわかりませんが、共済組合の公務員関係の年金受給者の中にも、軍隊に行っておった人たち、いわゆる軍歴のある人がたくさんおられると思うのです。いまの年金の法律そのものが、たとえば公務員をやっておった、その中で十カ年間兵隊に行っておった。それもやはり年金のほうへ通算をして、共済組合年金ということで公務員は受給しておるわけなのです。その人は死んどらぬじゃないかと言われれば死んでおりません、生きておりますが、それだけの違いがありますがね。それだったら私は、二十四万まで、中尉クラスまで併給をするということをおやりになるならば、一般の年金の受給者につきましても、せめて七十歳以上の人にはこの老齢福祉年金を併給する。これは局長の話じゃないけれども、老齢福祉年金が生まれたおい立ちというのはいろいろあるでしょうけれども、次官の話じゃないけれども、お年寄りの生活その他を考えるときには、それくらいなことを考えるのが厚生省じゃないですか。この問題につきましても、ことしは、ここで初めてでございますけれども、ほかの場所でもかなり論議が行なわれておると私は思うのです。  さらに、わが党の横山利秋代議士から内閣総理大臣あてに質問書が出ておりますね。これもやはり私が言うた内容の問題なんですよ。同じ内容なんです。公務扶助料で二十四万まで併給しているのに、なぜ一体月五千円以上の年金受給者には併給しないんだ、これは憲法の第何条からいうてもおかしいじゃないかというようなこともいわれておりますけれども、私は、ただ法律がどうこうということは抜きにしましても、公的年金で六万円以上の、六万五千円もらっている人は、これは併給がないのです。  ですから私は、直ちにいま公的年金をもらっている人全部に併給しろということは申し上げませんけれども、少なくとも七十歳以上くらいの人には、老齢福祉年金は併給してよろしい、併給すべきだ、併給せよ、こういうふうに今度の国会にこれを提案されるときには、私は出てくるのじゃないかと思っておったのです。ところが、どうだらこうだらいろいろ御説明なさいまして、残念ながらこれは入っておりませんや。入れようと思えば入ると思うんですよ。だからもう一ぺん次官、これは厚生大臣その他と相談して考え直してみる気にはなれませんか。いかがでしょう。
  68. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 ただいまお話のございましたように、福祉年金というものも、やはり発足の当時と比べまして、現在の段階におきましては、受給者も非常にふえておりまするし、ただいま御指摘のような問題もございますし、従来とは若干違った性格を持ってきておるというふうなことは、われわれも実感として考えております。そういった意味で、今年度の福祉年金の大幅な増額があったわけでもございますけれども、併給問題につきましては、筋としては、現在のところ、私が最初に申し上げたようなことを考えているわけでございますけれども、かりに先生の御指摘のような問題をどう処理するかといたしましても、これを年齢でもって一律に何歳以上は全額併給というふうな仕組みをとったほうがいいのか、あるいはまた限度額というふうなところでより改善するような仕組みをとったほうがいいのか。さらに根本的には、併給問題以前の問題として、本来の年金制度を、本来の公的年金の充実ということをより促進したほうがいいのかというようないろいろな問題が錯綜いたしております。  特に繰り返して申し上げますが、福祉年金問題は、額から、所得制限から、併給問題からいろいろな改善項目が、しかも大幅に改善をする、しかも受給者が大幅にふえてくるそういったむずかしい要素が重複をいたしておりますので、そういうところを十分に検討いたしまして、御指摘のような来年度予算のスケジュールもあるわけでございますから、その過程において十分に検討したい、かように考えます。
  69. 後藤俊男

    ○後藤委員 まあ私、金額で押えよとか、年齢がどうとかいうことは、これはいろいろ検討のしかたがあると思うんですがね。少なくとも年金受給者につきましては、二十四万以下くらいは併給するというくらいなことは考えてもいいと思うのです。年齢でどうこういいましても、非常にむずかしいでしょうけれども、そのことをどうせいこうせい、そういう具体的なことをやはり厚生省で検討していただいて、いま申し上げたような精神を織り込んで改正してもらうのが当然じゃないのかということを言っておるわけです。ですから、ぜひひとついま申し上げました問題につきましても、局長からいまそういう話もございましたし、さらにまた次官といたしましても、これから予算要求その他もいろいろございます。来年の老齢福祉年金は五千円に引き上げるというような話もまたございますし、あわせていま言ったような問題も、ただここだけの答弁に終わらさないように、この併給問題につきましても、来年度はいま言ったような趣旨に基づいて実現するということだけは、ひとつお約束をいただきたいと思うのです。その方向で全力を尽くしますくらいなことは、ひとつ約束してもらってもいいと思うのですが、これは次官どうですか。
  70. 登坂重次郎

    ○登坂政府委員 御承知のとおり年金のあり方については、これが現在の経済機構の中において重要な、考えなければならない立場にある厚生省といたしましては、扶養家族の所得制限とか、あるいは併給の問題、これは前向きに検討するつもりでおります。
  71. 後藤俊男

    ○後藤委員 ぜひひとつ、いまの問題はお忘れなく実現の方向へ御尽力をいただくということでお願いしたいと思います。  それから大蔵省の理財局長さん来ていらっしゃいますか。——では、次官、年金の積み立て金というのは、一体いま金額がどのくらいあるのでしょうか。さらにまた、これがどういうふうな運用のしかたがされておるのか。この点についてお尋ねいたしたいと思います。
  72. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 年金の積み立て金は現在、四十五年度末で約五兆一千億でございます。それから四十六年度末で六兆四千億というふうに見込まれておりまして、四十七年度末には大体七兆八千億程度というふうに見込んでおります。  この資金は、先生も御承知のとおり、国の財投の原資といたしまして資金運用部に預託をされまして、財投の計画において運用されておりますが、四十七年度の財投計画は、御承知のように全体で五兆六千億でございます。その中で厚生年金、国民年金等の資金が一兆四千億で約四分の一、さらに共済資金を加えますと大体一兆五千億程度が年金関係の資金になるわけでございます。  この資金の運用の実態につきましては、その約八〇%に当たります一兆二千億円が住宅とか、あるいは生活環境整備、あるいは老人ホーム等の厚生福祉施設等の国民生活の安定、向上に直接寄与する面に使われておりまして、残りの二割程度のものが、いま申し上げました国民生活の安定、向上の基盤になる道路でございますとか、あるいは地域開発の分野に運用されておりまして、いわゆる基幹産業でございますとか、あるいは輸出産業といったふうなものには使われておりません。大体運用の実態は以上のとおりでございます。
  73. 後藤俊男

    ○後藤委員 次官にちょっとお尋ねしますが、郵便貯金ですね。国民が郵便局へ預ける貯金なんです。これもかなりのお金がたまっておると思うのですね。これもやはり財政投融資ということで使われておると思うのですけれども、これを政府に入れる場合六分五厘だと思うのです。これが最近、利息を安くするとかどうとかという新聞情報を私は読んでおるわけなんです。  これは方角違いの話で、あまり詳しく御存じないかもしれませんが、その関係と、いま局長が言われましたところの約七兆円でございますか、これがやはり六分五厘で政府部内のほうに入っておるわけなんですね。郵便貯金も六分五厘で入っておる。そうなりますと、その郵便貯金のほうの六分五厘を万一下げるというようなことになりましたら、こっちの六分五厘のほうもやはり下げるという方向へ話が進むのじゃないか、そういうような心配も出てくるわけなんですが、ひとつ次官、大蔵省の理財局長にかわって答弁ができたら、お答えいただきたいと思うのです。
  74. 登坂重次郎

    ○登坂政府委員 これは大蔵省の所管事項でありまして、公定歩合、いわゆる政府の金利の統一化ということは、これはもう重大な日本経済の基盤でございますから、公的金利が不公平であるということは納得、説明が非常にむずかしいこととなろうと思います。いま話題にのぼっておる、そういう御説についても、国民は重大なる関心を持っておる。預金者等については、特に大衆預金者、そういう方々の預金の獲得にあたり、これまたいろいろ問題点があろうかと存じます。政府においても慎重に協議の上、決定されるものと思いまするが、いずれにしましても、金利については公平化が望ましい、かように考えます。
  75. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 ただいま政務次官からお答え申し上げたとおりでございますけれども、私ども郵便貯金の問題は詳しくは存じませんが、先生御指摘のとおり、新聞等で問題点を現在知っている程度でございます。ただ郵便貯金の場合におきましても、現在問題になっておりますけれども、これは任意の貯金でございまして、私ども年金の関係は、いわゆる公的年金として当然加入、強制加入ということで調達された資金でございます。しかも従前からこういった資金の運用につきましては、先ほども申し上げました使途別の運用のほかに、できるだけ有利な運用をすべきである。またそうすることが将来の給付のファンドの確保をより確実にするというふうなこともいわれておりまするし、われわれは現在の時点におきましては、かりにもこういった性格の違う年金につきまして、その利回りの引き下げというふうなことがないように、十分に今後留意をしてまいりたいと思っております。
  76. 後藤俊男

    ○後藤委員 ぜひひとつ、いま説明もございましたが、確かにお金の性格が違うと思うのです。だから、その点はひとつ明確に腹に持っていただいて、何を申しましても、かなりばく大なお金でございますから、慎重に配慮していただく、このことが非常に大切だと思います。  それから、その次の問題としまして、これまた最近四、五年間問題になっておりますスライド制の問題なんです。先ほどから局長も、かなりこの年金の充実問題を言っておられますけれども、厚生省としてもスライド制の導入につきましては、もう考える時期に来ておるんではないかと思うのです。来年あたり、昭和四十八年あたりには、年金の大改正ということも考えておられるのではないかと思いますけれども、そのときにスライド制の導入ということも考えられるかどうか。現在厚生省としては、どういうふうにお考えになっておるか。さらにまた、厚生省でスライド制の導入ということが考えられるとするならば、かなり年金関係に及ぼす影響は大きいわけなんです。ですから、われわれとしては一刻も早いスライド制の実施ということが望ましいと考えておるのでありますけれども、このスライド制についてどういうふうにお考えになっておるか。  さらにもう一つの問題としまして、積み立て方式を賦課方式に移行するということなんです。これもいろいろな事情がございまして、非常にむずかしい面もあろうかとは思いますけれども、われわれ野党三党が出しておりますところの年金のこの法案につきましては、これははっきりとそういう点も打ち出しておるわけなんですけれども、厚生省としてスライド制の実施なり賦課方式への移行の問題、これらについてはどういうふうにお考えになっておるかお尋ねいたしたいと思います。  さらにまた、年金関係は四年目か五年目でございますか、改正ですか、計算が行なわれておるわけなんですね。次に年金の改善される時期は一体いつだ。来年なのか、再来年なのか、昭和五十年なのか、これもやはり一つ問題点だろうと私は思うわけなんですが、この点につきまして、どういうふうにお考えになっておるか、三つ目の問題としてお尋ねしたいわけなんです。  四つ目の問題といたしまして、公的年金の年金額等の臨時特例に関する法律案というのが、次官もお読みになったと思うのですが、出ておるわけなんです。これは野党三党の提案でございますが、これに対して一体どういうふうにお考えになっておるか。これに対して、なかなかりっぱだから、来年からこれでやろうと思うとか、そうはいかぬにしたところで、われわれが出してありますところの、この年金の臨時特例に関する法律案に対して、どういうふうにお考えになっておるか、これを第四点目としてお尋ねいたしたいと思います。
  77. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 ただいまお話のございました年金制度全般の改正の問題でございますが、時期の問題、スライドの問題、賦課方式の問題、あるいはまた三党共同提案の中身についての問題、いずれもきわめて重要な問題だと思っております。  私どもはいまお話にございましたように、次期改正期をいつにするかという問題がまずあるわけでございます。厚生年金、国民年金ともに従来から五年目ごとに財政再計算を行ないまして、その財政再計算期に合わせて大幅な改正をやってまいっております。ただ、最近の社会経済条件の変動の非常に激しい時期でもございますので、現在のところ私どもは、厚生年金につきましては五年目ごとと申しますと、四十九年がその時期に当たり、国民年金につきましては五十年がその時期に当たっておりますけれども、いずれも四十八年に繰り上げて、次の本格的な大幅改正をいたしたい、このような心づもりで準備をし、かつまた関係審議会等においても、審議を促進をしていただいておるような実情でございます。  それからスライド制の問題でございますが、確かに現在のような非常に動きの激しい社会でございますし、また真に老後を託するに足る、安心できる年金という意味から申しましても、何らかのかっこうで、このスライド問題ということは決着をつけるようなことが、年金制度の本来のあり方としては一番望ましいのではないかと思っております。昨年の十一月から従来の五年目ごとの改正の中間といたしまして、とりあえず厚生年金の一%のアップを行ないましたけれども、これもいわば一種の政策スライドでございます。今後こういった方式をかなりタームを詰めてやっていくか、あるいはまた西欧諸国でやっておりますような、スライド方式というようなものを参考にして取り入れるか、スライド制はいろいろ問題が多いと思います。  まずスライドにつきましては、何と申しましても、政策スライドをするかどうか、あるいは自動スライドをするかどうか、あるいはいわゆる半自動といわれておりますようなものにするかどうかというスライド制の基本の問題が一つと、それからもう一つは、スライドの指標といたしまして物価がいいか賃金がいいか、あるいは生活水準がいいかというような問題がございます。  なお、それにも増して重要な問題は、現在年金のスライドという場合に、もっぱら給付の面のスライドアップがいわれておりますけれども、スライドという問題は、給付以外に当然にその負担のほうもスライドアップをするわけでございますから、給付のスライドという問題を考える際には、負担増のスライドということと切り離して考えるわけにはまいりませんので、こういう問題をどういうふうに処理をするか、しかも厚生年金、国民年金、それぞれ仕組みが違っておりますので、そういう面で、実はこの問題はきわめて重要な問題であり、また何とか処理をしなければならない問題でありますだけに、そういうきめのこまかい問題について十分な配慮を行なっていかなければならぬと思っております。  また、このほかにもスライド制という問題は、それ以外の国の財政や物価問題等にも影響がないとはいえませんから、多角的に検討して、どういうようなしかけをとったほうがいいか、またどういうふうに制度上あるいは運営上この問題を取り入れていくか、これは十分に詰めた検討をしてまいりたいと思っております。  それから賦課方式でございますけれども、この問題もいろいろ議論が行なわれております。私どもは、やはり年金問題は老齢人口が幾らあるかという人口構成が基本的な問題だと思っております。現在の日本の人口構成は、先生も御承知のとおり、いわば人口老齢化の入り口でございまして、大体西欧先進諸国に比べて三十年間くらいのズレがあるということ。だからそういう段階で、一般にいわれておりますような賦課方式をとりました場合に、現在の生産年齢人口層に属する人たちには、きわめて軽い負担で済み、将来の人口構成が非常に老齢化いたしましたときには、非常に大きな負担になる。そういった世代間の負担の不均衡をどう考えるか、あるいはまた将来の負担の激増というものをどういうふうにして回避をするか、こういう問題もございますので、実際上、賦課方式というふうな方向を指向するとしても、そういう点をどう考えるかという問題があろうかと思います。  また別な面で申し上げますと、現在の年金の方式は修正積み立て方式でございまして、積み立て方式と申しましても、国民年金については必要保険料の約半分程度しか取っておりませんし、厚生年金の場合には七割程度の保険料しか取っていない、こういう状況でございますので、残った分は全部これを後代に送っておるという意味では、いわば後代に賦課をしておるという意味で、実情は、積み立て方式と賦課方式の、いわば中間くらいのところにあるというふうなことが、きわめて常識的にはいえるだろうと思うのであります。  そういう意味合いで、私どもは今後の人口老齢化ということを十分ながめた上で、現在の方式を維持しながら実情に即した配慮を加えて、なだらかな負担増を伴っていきながら、将来の年金の財政方式というものを考えていきたい。現在の段階では、そのように考えております。  それから三党共同御提案になる年金改善要綱の問題でございますけれども、この問題は、いわば最低保障額を幾らにするかという問題と、それから財政方式を賦課方式にする、それからスライド制を採用する、それからさらに年金制度を被用者年金と国民年金の二本立てにするという四点が中心かと思います。経過的には、一年間一万円のげたをはかせるという問題がありますけれども、確かにこの問題を考えましたときに、四つの原則につきましては、いま申し上げました答えで大体尽きていると思いますが、そういう中で、基本的な原理原則でございますから、そういうことをわきまえて、来年度改正でどういうふうに問題を処理するかという問題になろうかと思います。  ただ、経過的に一年間だけ一万円のげたをはかせるという問題につきましては、年金制度というものの相当長期の見通しについて検討を行なった上で、また受給者の趨勢とか、費用の負担とか、そういったものも考えてやらなければならない問題でございますので、そういう面から考えますと、相当この点は留意しなければならぬ、このように考えております。
  78. 後藤俊男

    ○後藤委員 それでは、大臣も来られまして、時間もきたようでございますので……。  ただ局長、いろいろ御説明いただいて私はありがたがっておる、別に不服は言っておりませんけれども、現在の年金制度は問題点がたくさんあると私は思うのです。しかも、先ほどあなたが言われましたように、来年の昭和四十八年には大改正を行なう。そのときにはスライド制の問題、引き上げの問題、その他の問題につきましても、改正の時点ではかなり考えられると思うのです。そうだとするのならば、昭和四十八年は来年でございますけれども、現在の年金制度で問題点は一体どこにあるか。来年の改正には、こういう問題点が現行の年金制度にはあるから、こういうふうに改正したいという方針は、厚生省としてもお持ちになっておると思うのです。この点だけ、簡潔にお答えいただきたいと思うのです。
  79. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 ただいまお答え申し上げた中にもあったわけでございますけれども、やはり現実に支給されております年金額が十分でなくて、老後の生活の最もベーシックな問題である年金というものが、現状では非常に不十分である、こういう認識をまず第一に持っております。  それから、第二には、現在のような動く社会、そういう動態社会の中で、五年ごとの財政再計算期に合わせた改正ということでは、年金の改善と社会経済的な条件の変動の間にどうしてもズレが生じます。そのズレをどういうふうに埋めていくかというのが、問題であろうかと思います。  なお、第三点といたしましては、きょう冒頭にお話のございました老齢福祉年金等の問題でございますけれども、そういう福祉年金という問題をどういうふうに改善していくか。  なお、従来の改正で、ともすれば忘れられがちでございました老齢年金以外の年金につきましても、どういうふうな改正をするか。このような問題点を、次の改正の問題点として、現在私ども持っているつもりでございます。     〔増岡委員長代理退席、委員長着席〕  なお、これについてどう考えているかという問題でございますけれども、これは先ほど政務次官から申し上げましたが、関係審議会で、現在相当詰めた検討を行なっておりますので、この審議会の結論を十分ひとつ検討いたしました上で、最終的に方針をきめていきたい、このような考え方でございます。
  80. 後藤俊男

    ○後藤委員 大臣、いままで一時間ほど年金問題でいろいろ話をしておったわけですが、第一番の問題は、老齢福祉年金なんです。これは、千円ということで提案されておるわけなんですが、金額的には非常に少ない。われわれの考え方はこれに入っておりますので、もう大臣もお読みになったと思うのですが、こまかいことは一々申し上げませんけれども、もっと思い切って引き上げてもらうということが大事だろうと思うのです。  それと合わせて併給の問題ですが、公務扶助料につきましては、約二十四万までは併給をする。ところが、普通の年金受給者については、月五千円以上は併給しないということになるわけですけれども、これはいかにも、中身を検討してみましても不均衡であり、不公平でもある。それだけではなしに、月五千円では一体何ができるかということにもなるわけなんですが、一般の年金の老齢福祉年金との併給の関係につきましても、ぜひひとつ次の改正のときには配慮をしてもらいたい。これは先ほど次官にも十分お話ししましたので、中身としては十分おわかりだと思いますから、検討をしていただくようにお願いをいたしたいと思います。  さらに、いま局長からも話がありましたように、時期を待っておると昭和五十年か昭和四十九年になるけれども、来年にはひとつ年金について全般的に再検討する。賦課方式の問題、スライド制の問題、その他いろいろな問題がございますけれども、いずれにしても、もっと金額を引き上げるということが大事だと私は思うのですよ。政府としてもそういう考え方は持っておられるとは思いますけれども、年金関係につきましては、もっと思い切って根本的に考え直していただく、これはぜひひとつお願いをいたしたいと思います。  それから、大臣が来られる前の話で、きょうは大蔵省の御出席がなかったわけですけれども、年金の積み立て金の運用の問題です。これは先ほども局長のほうから話を聞きました。さらに六分五厘をどうするこうするという問題も、これから郵便貯金との関係で起こってくると思いますけれども、これらの点につきましても、格段の配慮をしていただいて、利息の問題についても、ひとつ慎重に扱ってもらいたい。  さらにまた、積み立て金が社会福祉のほうへ使われておりますのは、約二割程度でございますね。六兆円ぐらいたまっておるんでしょう。五兆八千億ですか、その中で、いわゆる社会と申しましょうか、そういう関係に積み立て金が運用されておるのは約四分の一じゃないですか。残りは財政投融資のほうでいろいろな方向に使われておる。これは間違いないと思うのです。間違っておったら、あとで訂正してもらえばいいと私は思うのですけれども、そうではなしに、国民年金のこういう掛け金、積み立て金というのは、一〇〇%国民生活方向——すべてが国民生活関係があるとは思いますけれども、もう少し社会福祉の充実のほうへ積み立て金の運用については十分考えてやっていく、このことだけはぜひ考えていただきたいと思います。  最後に、三党提案の当面の措置から、さらに今後の考え方等が提案されておりますから、これらにつきましても、厚生大臣としては十分検討していただいて、われわれが言わんとする方向も十分腹に置いて、これからも努力していただくようにぜひお願いをいたしたい、こう思うわけでございます。  いままでいろいろ質問いたしました内容を簡潔に申し上げて、最終的に大臣のお答えをいただいて終わりたいと思います。
  81. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 年金についてはいろいろと御検討をいただき、また積極的な御意見も承って感謝をいたしております。  一番最後におっしゃいました三党提案の法案内容につきましても、その趣旨は十分腹に入れまして、実現可能な限り、実現に努力をいたしたい、かように考えます。  前から申しておりますように、来年は年金の年にしたい。ことしは医療保険の年にしたい、かように申しておりました。まさしく年金問題はもう放置できない問題だ、かように考えます。御意見の中の、まず、福祉年金の年金額の問題であります。これは実は本年千五百円アップをし、来年は五千円にという計画でおったわけでございますが、予算のいろいろな都合で、本年は千円アップということになりましたが、来年はぜひ五千円まで実現をいたしたい、かように考えております。それから併給問題、ことしも併給問題に若干改善を加えましたが、まだ十分でないと思います。御趣旨の点も踏まえまして、来年さらに併給問題をもう少し漸進的に改善をいたしたい、かように考えます。  それから来年は年金の年という中に、福祉年金をも含めまして——福祉年金の点はいま申し上げましたが、そのほか厚生年金あるいは拠出年金等の年金額の問題これがやはり一番重点になると思います。その資金につきましては、積み立て方式あるいは賦課方式の詰めもいたしておりましたが、賦課方式に対する御意見も非常に強いようでございます。これは予算委員会で私も答弁をいたしましたし、大蔵大臣も答弁いたしておりますが、そういったような考え方を取り入れて、できるだけ改善を加えていきたいと大蔵大臣も言っておられます。これは非常にむずかしい計数、経理のいろいろな点を考え合わせて、総体の負担が重くならないように考えてまいる必要がありますから、いまの積み立て金を取りくずして、どの程度いけるかどうかという点も考えてまいらなければなりませんが、これも真剣に検討を加えてまいりたい。これはここで、ただ答弁のために答弁をしておるのではございませんので、私たちほんとうに納得のできるような、そして皆さま方のおっしゃる賦課方式への移行というものがどの程度取り入れられるかという点を真剣に検討をいたしたい。事務当局もいまそのつもりでおりますから、ひとつ、さように指導しながらまいりたい、かように思います。  それから年金積み立て金の運用の問題でありますが、まず利息の問題、これはきょうも閣議で話で出ておったわけであります。低金利政策をとるということになりますると、公定歩合の引き下げもやらなければなりませんが、同時にこういった貸し付け金の金利も考えなければなるまい。いま郵便貯金の預金利率の問題は審議会で審議をしておられますが、政府といたしましては、これも〇・五%くらいは下げたいというつもりでこういった金融政策を考えておるわけであります。それとにらみ合わせまして、こういった貸し付け金の利下げも当然考えていきたい、かように考えております。これは来年といわず、もし実現できるならば、本年中にでも実現していきたいと考えております。  それから、この積み立て金の運用をもっと国民生活に密着したものにという御趣旨は、私のほうも同感でございます。この運用は、先ほどの数字は御理解いただいておったかどうか、またあとで申し上げますが、方向はおっしゃるとおりに思っております。ただ学校だとか、あるいは住宅とかいう——学校になるとどうなるか、あるいは農業改善というようなことになると、少し離れていこうというような問題もあろうかと思いますが、おっしゃいますように、もっと生活に密着したほうに重点を移行していくというように努力をいたしたい、かように考えております。  三党御提案の問題は、先ほど申し上げましたとおり年金額の問題、賦課方式の問題、それから最低保障の問題、またスライド制の問題等も、これは十分真剣に考えまして、年金の年であるというのにふさわしいような案を得たい、かように考えております。
  82. 後藤俊男

    ○後藤委員 いま終わろうと思ったのですが、ちょっとひっかかるところがあるのです。  金融政策の問題ですが、安い利息でいこう、低金利でいこうという話で、郵便貯金も利息が下がれば国で預かる六分五厘というのも下がるのではないか。一方におきまして、これだけのばく大なお金が、強制的に全部加入させておる、出しておるわけです。そっちが六分五厘が下がるから、こっちも六分五厘を同じように下げましょうということになると、お金の性質が違うから、そういうことをやらないようにしてもらいたいということを、私はここで先ほど申し上げたわけですが、その点は、それだけ言えば大臣もよくわかると思うのです。その辺は異論のあるところだと思いますが、そこはひとつ十分考えていただいて、特に慎重に配慮していただくことが大切であるということを申し上げたいわけです。  終わります。      ————◇—————
  83. 森山欽司

    森山委員長 優生保護法の一部を改正する法律案を議題といたします。     —————————————
  84. 森山欽司

    森山委員長 提案理由の説明を聴取いたします。斎藤厚生大臣。
  85. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 ただいま議題となりました優生保護法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。  優生保護法は、優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するとともに、母性の生命健康を保護するという目的のもとに、優生手術、人工妊娠中絶、優生保護相談所等に関し、必要な事項を定めているものでございますが、最近の国民保健の実態の変化にかんがみまして、今回、人工妊娠中絶の要件及び優生保護相談所の業務内容をこれに適合するように改める措置を講じ、もって、優生保護対策の適切な実施をはかることといたしました。  改正の内容といたしましては、まず人工妊娠中絶の要件に関する改正でございますが、その第一点といたしまして、現行法では、妊娠の継続または分娩が身体的理由または経済的理由により、母体の健康を著しく害するおそれがある場合は、母体保護のため人工妊娠中絶を行なうことを認めているところでありますが、このうち、経済的理由という要件につきましては、国民生活水準の向上を見た今日におきましては、このままにしておくことには問題があり、この際、これを取り除き、妊娠の継続または分娩が医学的に見て母体の精神または身体の健康を著しく害するおそれがあるものというように改めたのでございます。  人工妊娠中絶の要件に関する改正の第二点は、優生上の見地からの人工妊娠中絶に関するものでございますが、現行法では、不良な子孫の出生を防止するという見地から、妊婦またはその配偶者が精神病または遺伝性奇型をもつ場合等には人工妊娠中絶を認めているところでありますが、近年における診断技術の向上等によりまして、胎児が心身に重度の障害をもって出生してくることをあらかじめ出生前に診断することが可能となってまいりました。  このため、胎児がこのような重度の精神または身体の障害となる疾病または欠陥を有しているおそれが著しいと認められる場合にも、人工妊娠中絶を認めることといたしましたのが改正の第二点でございます。  次に、優生保護相談所の業務に関する改正でございますが、現行法のもとでは、優生保護相談所は優生保護の見地から、結婚の相談、遺伝その他優生保護上必要な知識の普及向上、受胎調節の普及指導等を行なっておりますが、最近、高年齢初産が問題となってきておりますので、特に、初回分娩が適正な年齢において行なわれるように助言及び指導する等その業務の充実をはかってまいりたいという改正でございます。  以上が、この法律案の提案理由でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。      ————◇—————
  86. 森山欽司

    森山委員長 次に国民年金法等の一部を改正する法律案の議題に戻り、質疑を行ないます。別川悠紀夫君
  87. 別川悠紀夫

    ○別川委員 私は、ただいま議題になっております国民年金法等の一部を改正する法律案について御質問を申し上げたいと思います。  私は、まだ非常に不勉強でございまして、特に年金に関する関係法律、非常にたくさんございまして、十分に私はこれを理解をしておりませんので、高度な専門的な御質問はできないわけでございます。しかしながら、国民が少なくとも政府に対しまして、いろいろと大きな期待を持っておるわけでございます。これはこうしてほしいというふうなばく然とした形ではございますが、現在の政府の社会福祉政策に対しまして、いろいろとたくさんの希望を持っておるわけでございます。したがいまして、私は一介の、一国民立場に立ちまして、卒直に御質問を申し上げたいと思いますので、ひとつ誠意をもって明確に御答弁をお願いいたしたいと思います。  まず第一点は、拠出年金の問題でございます。  今日国民が生きていきますためには、いろいろの不安があるわけでございます。まず第一は、失業の不安でございます。しかし、これは今日かなりの制度が完備されてまいりましたし、さらに経済の繁栄、発展によりまして、完全就業というふうな形が出てまいりました今日におきまして、かなりその心配の度合いが少なくなってきておるわけでございます。  第二は、病気になったときの立場でございます。これにつきましても、健康保険制度というふうなものが完備をされまして、大体病気になったときの心配もなくなってきておるわけでございます。  第三点は、いわゆる老後における社会不安に対する心配でございます。そのうちでも、年をとって病気になったというふうな対策につきましては、先般来七十歳以上の老人に対する医療費を個人の負担にならないようにというふうな制度改正ができまして、まことにけっこうなことだと思うわけでございます。あとに残されておりますのは、いわゆる老後の社会不安に対する、年金制度に対する非常に大きな要望でございます。  まず第一点といたしましては、いわゆるこの拠出年金に対する期待が非常に多いわけでございますが、御案内のように、今日わが国の年金制度はいまだ未成熟でございまして、非常に金額が少ないわけでございます。したがいまして、この年金制度に対する国民の要望というものは、非常に大きなものがあるわけでございまして、何とかひとつこの点について、この際、政府におかれましては、思い切った大胆な取り組み方をしていただきたいという希望が非常に強いわけでございます。先ほどの大臣の御説明によりますと、来年度にはかなり思い切った施策の前進等も考えておるというふうな御答弁があったようでございますが、ひとつ重ねまして、一体どのようにこの問題を今後取り上げていこうというふうに考えておられるのか、御所見を伺いたいと思います。
  88. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 おっしゃいますように、今日老人の所得保障が非常に大きな問題になってまいりました。野党三党からは共同提案の法案が出ておりますが、自由民主党内におきましても、非常に強い御要望があり、またいろいろと御検討を願っておるわけでございます。そういうことを踏まえまして、来年はそういった要望にこたえられるようにするのが政府の施策ではなかろうかと、かように考えまして、来年度はひとつ年金の年だというのにふさわしいような内容を持つ改正をやってまいりたい。ことにいまおっしゃいました拠出年金は、まだ非常に未成熟でございますので、したがって国民の今日の現状から見れば、非常に心細いものだという気持ちがおっしゃるとおり私はあると思います。これをどういうように国民の要望にこたえてまいるかということをまず重点に置いてまいりたい、かように考えます。
  89. 別川悠紀夫

    ○別川委員 大臣の時間があるようでございますので、それでは、私たち地方へ帰りまして、よく要望を受けますのは、老人に対する福祉年金、これをせめて五千円はいただきたいという声が非常に強いわけでございまして、この点についてひとつはっきりお願いいたしたいということと、もう一つ福祉年金の場合の所得制限と、それから併給制限、これに対します要望が非常に強いわけでございますが、こういった点につきましても、ひとつはっきりお考えをお伺いいたしたいと思います。
  90. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 おっしゃいますように、福祉年金を五千円にというのは自民党の御要望でもあったわけでありますし、あるわけであります。本年は千円アップにすぎませんでしたが、来年は、ぜひ皆さまの御支援を得て五千円の福祉年金の実現を期したいと、かように考えます。  なお、所得制限につきましては、少なくとも扶養家族の所得制限は撤廃すべきだという強い御意見がございます。また本人所得ももう少し引き上げるべきだという御意見もあるわけであります。これらの点も踏まえまして、来年は前進をさしたい、かように考えております。
  91. 別川悠紀夫

    ○別川委員 最近、老人問題あるいは年金問題というものが、まさに国民的な課題として取り上げられようといたしておるわけでございますが、そうなってまいりました社会的な背景ということを検討いたしてみますと、まず第一には、わが国もそろそろ老齢化社会になりつつあるということが一つだと思います。それから第二には、民法が変わりまして、いわゆる結婚をいたしますと、新しい戸籍が独立をするというふうな形になりまして、わが国古来の家族制度というものが、だんだん崩壊をいたしてまいりました。いわゆる核家族化というふうな傾向がだんだん進んできたというふうなことがあげられるのじゃないかと思います。それから第三点といたしましては、そういった傾向と相対応いたしまして、だんだん若い人たちの中に老人を扶養しなければならないという、こういう意識が次第次第に薄くなりつつあるというふうなことがあろうかと思います。  なお、最近のように、どんどん諸物価が値上がりをいたしておりまして、長い間ため込んでまいりました貯金等がだんだん価値が減少していく、こういうふうなこともございましょうが、いずれにいたしましても、最近わが国の経済の高度成長に伴いまして、やはり国民一般の感情といたしまして、これだけ国の経済力が強くなったのだから、この際、もっと社会福祉関係の方面にその経済力をさくべきである。特にこの経済成長の恩恵に浴することからおくれがちでございます老人の世帯に対しまして、経済成長の成果を幾分でも分配しようではないかというふうな、いわゆる福祉優先という考え方がだんだん強まってきておる、こういうようなことが、老人問題なり、年金問題というものが最近とみに取り上げられるようになってまいりました一つ社会的な背景であろうと思われるわけであります。  そこで、第一番目にお尋ねいたしたいのは、こうしたわが国の人口老齢化の現況というようなものをどのように見ておられるのか、特に西欧諸国と比べてみたときの現状なり、あるいは今後の人口老齢化の見通しというふうなものをどのように見ておられるのか、この点について御説明をお願いいたしたいと思います。
  92. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 ただいまお話のございました人口老齢化の状況は、通常行なう生産年齢人口に対します六十五歳以上の老齢人口数を指数としてとることが一番適当であると思います。そういう点から見ますと、昭和四十五年にはこれが一〇・二%でございますが、昭和五十年には一一・六%、さらに昭和七十年には一八%、昭和八十年には二二・四%に達するものと予測されております。  いまのお話しございました西欧におきましては、この比率が昭和四十五年におきましてイギリスが二〇・三%、アメリカが二八・一%、昭和四十三年度におきまして西ドイツが一八・五%、フランスが一八・九%、こういった数字でございまして、わが国におきましても今後大体三十年前後いたしまして、昭和七十年ないし七十五年ごろには、この老齢の状況が現在の西欧先進諸国並みになる、このように予測をいたしております。
  93. 別川悠紀夫

    ○別川委員 ただいまの御説明によりますと、わが国におきましても、西欧並みの老齢化社会を迎えるのは間近にあるというふうなことがうかがえるわけでございますが、そうした老後の保障という大きな柱をなします年金、いわゆる老後を託するに足る年金というふうな面に向かって改善をはかっていくということが、緊急の課題であろうというふうに思われるわけでございますが、現在わが国の年金制度の現状はどうなっておるのか、また支給されている年金額の実際と、そういうものがどういうふうになっておるのか、そういった点についてひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  94. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 三十六年に皆年金になりまして、その後十年以上を経過して現在に至っておりますが、現在の状況を申し上げますと、全体から申しますと、厚生年金あるいは国民年金、各種共済を入れまして、加入者は五千百万をこえております。これに対しまして、実際の受給権者は六百四十万程度でございまして、特に老齢はこの中で四百九十万人程度でございます。しかも、その中の三百六十万程度が老齢福祉年金、いわゆる福祉年金でございまして、以上の数から申し上げますと、実際上皆年金ではございますけれども、受給権者は厚生年金あるいは国民年金におきまして非常に少ないのが現状でございます。なお、国民年金におきましては、昨年からいわゆる拠出制の十年年金の支給が始まりまして、また厚生年金の場合も二万円年金ということで、実際上制度上の仕組みは相当進歩いたしておりますが、現実の老齢年金の支給額は、昨年で月額大体一万六千円が平均でございます。  こういう状況でございますのは、やはり年金制度の発足がおそかった、したがって、資格期間が非常に短い者が多い、こういったことが原因でございますので、その点を十分留意いたしまして、今後制度の改善をやっていかなければならぬ、このように考えます。
  95. 別川悠紀夫

    ○別川委員 ただいま御説明をいただきましたが、その中でも、特に老人人口の中で年金の支給を受けておる人の割合というふうなものが、どういうことになっておるのか、その点をひとつ……。
  96. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 昨年の十二月末現在におきまして老齢年金の受給権者数は、厚生年金保険の場合に五十八万人、船員保険が一万五千人、拠出制の国民年金いわゆる十年年金が約十五万人、福祉年金が三百六十一万人、四十六年、昨年の三月末現在の各種共済組合の五十四万人を加えまして四百八十九万五千人というものが実数でございまして、この数は四十五年におきます六十歳以上の人口の一千八十九万人に対しまして四五%というふうな数字になっております。年齢別に見ますと七十歳以上の老人につきまして、大体八〇%以上が年金受給者になっております。これも大半は、いわゆる無拠出の老齢福祉年金でございまして、六十歳台の老人だけで見ますと、年金受給者は二〇%前後の比率でございます。
  97. 別川悠紀夫

    ○別川委員 年金制度の概要について御説明を伺ったわけでございますが、何と申しましても、年金制度の根幹は、保険料を納めます拠出制の年金であろうと思うわけでございます。そこで、年金の充実、改善というふうなことにつきましては、先ほど厚生大臣から、四十八年度にはひとつ思い切った前進をするのだ、こういうふうに非常に力強い御所信を承ったわけでございますので、私といたしましても、非常に大きな期待をかけておるわけでございます。どうかひとつ、こういった私たちの期待を裏切らないようなりっぱなものをつくり上げていただくように、特に御要望を申し上げておきたいと思います。  ただ、これは私もしろうとでございますので、こういうことを申し上げるのは恐縮でございますが、そういった場合に、私はこういうばく然とした不均衡感を持っております。  と申しますのは、拠出制年金で、今後、国民年金あるいは厚生年金というふうなものを中心にされて、おそらく来年度は大幅な改善をなされるわけでございますが、もう一つ公務員なり、あるいはその他の人たちを対象にいたしました共済組合というものがございまして、ここでかなり高額の年金というふうなものが支給をせられておるわけでございまして、言うならば、大体三本の拠出制の年金があるようでございますが、こういった共済組合による年金と、国民年金と、そうして厚生年金と、この間のバランス、ともいたしますと、公務員なんかを中心といたしました年金が、多分に優遇されるというふうな感じがあるわけでございまして、もちろん、これは在職中から相当多額の積み立てをどんどんやってきておるというふうな結果に基づくことであろうとは思いますけれども、ただ国民感情といたしまして、同じ年金なのに、結局お役人をやっておられたり、あるいはいままで特別の共済組合というりっぱな組織があってやってこられた人たちの年金と比べて、どうもそこに不均衡があるんじゃないか、こういう何かばく然たる不均衡感を感ずるのでございます。そういった点について、来年度制度改正をおやりになるというわけでございますが、こういった問題の関連において、どのようにお考えになっておるか、その御所見を聞きたいと思います。
  98. 登坂重次郎

    ○登坂政府委員 別川先生お説のとおり、年金というのは公平にありたい。今日なお経済状態が激変しておりますし、物価も非常に上昇いたしておるというときであり、拠出制のものは、その内容国民にまだよく理解されない状態にある今日において、共済組合の年金と、厚生年金、あるいは国民年金との差に非常に隔たりの多いのは、ほんとうに誤解を生みがちでございます。しかし、われわれといたしましては、年金というものは生活の保障ということでありますから、できるだけ公平にありたいことは御説のとおりであります。  共済組合においては、御承知のとおり長い歴史を持っておりますし、また掛け金においても、拠出金においても、国民年金及び厚生年金よりははるかに率が高くなっております。そういうことをも踏まえて現在の状況になっておりますが、これをだんだんにその間の隔たりを少なくするように、来年度の年金改定にあたりましては、できるだけ配慮するように措置したい、かように考えておる次第でございます。
  99. 別川悠紀夫

    ○別川委員 次に、福祉年金の問題について、お伺いいたしたいと思います。  現在の年金の中で、この福祉年金の受給者というものが、ほとんどを占めておるわけでございますので、今後一段と福祉年金の内容の充実、改善をお願いいたしたいと思うわけでございますが、ただこれも私非常におかしく思いますのは、たとえば今度の改正案を見ましても、老齢福祉年金は月額三千三百円にするんだ。それから障害福祉年金は月額五千円にする。それから母子福祉年金は月額四千三百円にする。これは拠出年金の場合でございますが、障害年金を月額八千八百円に引き上げる。また母子年金、準母子年金及び遺児年金は、これを月額八千四百円にする。あるいはまた児童扶養手当あるいは特別児童扶養手当というふうなものを月額四千三百円に引き上げる、こういうふうな改正案が出ておるわけでございます。  私、これを拝見いたしまして非常に不審に思いますのは、一体こういった金額というものは、何を基準におきめになったのか。またいままでの経緯を見ておりますと、毎年ちびりちびりと二百円上げたり、三百円上げたりというふうな経過を見ておるわけでございますが、一体こういう金額をおきめになった基準というのはどこに置かれておるのか。また、毎年二百円、三百円と、ちびりちびりと上げるということは一体どういうことなのか。こういう金額をきめられる場合、少なくともこのくらいの程度のものは必要なんだけれども、現実の財政事情の拘束があって、そこまでいかない。だから毎年毎年財政の許す限り少しでも上げていくというふうなことなのか、こういう点について、私はどうもはっきりわからぬのでございます。なぜこういうふうにそれぞれのものの金額が違っておるのか。この程度のものを支給すべきなのが本来であるけれども、それができないから、現在はこういうふうになっておるということなのか、そういう点について御説明をお願いたしたいと思います。北川(力)政府委員 ただいまお話しの老齢福祉年金の問題等でございますけれども、先刻から申し上げましたように、老齢福祉年金等の福祉年金は、制度発足の当時、年金に当然加入される方々につきまして、七十歳以上について経過的、補完的に全額国庫負担で、こういう年金を支給するということにいたしましたので、発足当時それが千円であったということでございます。それが十三年かかって三千三百円になるというのは、まことにスローテンポであるわけでございますけれども、拠出制の年金と違いまして、いま申し上げましたような性格のものでございますので、そういう意味合いで、せめて千円というものから発足をして、毎年せいぜい物価の上昇を上回る程度の改善だけはやってきた、こういうような次第でございます。  しかしながら、現在の時点におきましては、老齢福祉年金というものも受給者が非常に多うございますから、先ほど大臣からもお話がございましたように、当面明年度は五千円を目ざして改善をするということでございます。また私どもの関係国民年金審議会におきましても、老齢福祉年金の額は現状においても倍額程度であってもおかしくはないというような中間的な意見も昨年七月にいただいております。そういう点から考えまして、今後老齢福祉年金等についての相当思い切った改善をする。今年度の千円引き上げというものは、むしろ従前のおくれを取り戻す段階のものである、このようなつもりで今後の改善に努力をいたしたいと思っております。  なお、障害年金の最低保障額の引き上げの問題は、これは拠出制年金でございますので、このほうは昨年の厚生年金の暫定的な一〇%引き上げに合わせまして行なったのでございまして、一応拠出年金のサイドの改善で、福祉年金とは性格が違ったものでございます。
  100. 別川悠紀夫

    ○別川委員 それでは、一定の何らかの基準によって算出された、この程度のものは出さねばならないというものでなしに、毎年できたら、少しでもよけいに金額を上げていきたい、こういう考え方でございますか。
  101. 登坂重次郎

    ○登坂政府委員 年金のあり方については、なるべく生活の保障になるということがたてまえでありまするけれども、まだ日本の年金制度は発足以来歴史がございません。そういう積み立て金も少ないし、また財政的にもそれだけの余裕がなかったという関係において、今日までそういう小刻みの増額、物価にスライド制をもたせた程度の加算が行なわれてきたのであります。  今後においては、やはり日本も福祉国家を目ざす以上、年金の将来性、ビジョンというものをひとつ描いて、日本の経済発展あるいは経済の諸変化に伴う、それに順応するような、しかも最低生活考え方等も合わせまして、それにマッチしたような年金の充実をはからなければならない、こういう方向でただいま厚生省においても年金全体について考え、なおかつ来年度において実施できるものは、すみやかにお説のような方向で検討したい、かように考えておる次第でございます。
  102. 別川悠紀夫

    ○別川委員 その御努力は非常にわかるわけでございますが、私の希望といたしましては、ただばく然と、そういうふうに毎年ちびりちびり上げるというかっこうでなしに、やはり老齢福祉年金なら大体社会的な通念としてこの程度は必要だという一つ目標をきめて、そこへ一日も早く到達するような御努力をお願いしたいし、また障害福祉年金なり、あるいは母子福祉年金等にいたしましても、少なくともそういった一つの客観的な目標というようにものを策定されまして、そうして努力をする、こういうふうなかっこうでの今後の積み上げをぜひひとつお願いいたしたいと思います。  それでは老齢福祉年金、特に老人の老齢福祉年金を五千円にする、来年度は必ずやるという、さっき大臣の御答弁がございましたので、これは大きく期待をいたすわけでございますが、なお、先ほど触れました所得制限、それから併給制限というふうな点につきまして、大臣のお答え、非常に簡単でございました。なお、先ほど後藤委員のほうからもこういった御質問があったわけでございますが、特にこの二つの問題について、地方に帰りますと、非常に強い要望があるわけでございますので、もう一度この点についての考え方なり、将来のあれについて、ひとつ御説明をお願いしたいと思います。
  103. 登坂重次郎

    ○登坂政府委員 所得制限及び併給ということにつきましては、お説のとおり、今日核家族時代にもなってまいりましたし、扶養義務者が必ずしも扶養する義務というものを、いままでみたいに強く考えていない。従来ほど強くそういうことを考えていない。また社会通念として、だんだんそういうことが常識化されるようになった、こういうことでありまするから、この扶養家族の所得制限及び福祉年金等の併給の問題等は、できるだけその経済に合うような、その世相に合うような、そういう方向で検討したい、かように考えておる次第でございます。
  104. 別川悠紀夫

    ○別川委員 それでは次に、この年金の財政関係について御質問をいたしたいと思います。  先ほど申しましたように、最近、国民感情といたしましては、年金の拡充整備というものに対する要望が非常に強まっておるわけでございます。したがって、いろいろ最近各界あるいは各層のほうから出てまいります一つ意見として、この年金額を引き上げるためには、いまのような、いわゆる積み立て方式に固執しているから、それがなかなか実現しないのであって、この際、思い切って賦課方式に転換をすれば、ある程度の金額の年金というものを実現することができるのではないか、こういう意見が非常に強まっておるわけでございます。  したがいまして、それを受け取る国民といたしましては、なるほどそうだ、そういう道もあるんじゃないかというふうな非常に安易な形で、そういう意見に耳を傾ける場合が非常に多いわけでございまして、そこでもう間もなく選挙もあるわけでございますし、こういった問題が今度の選挙には一つの大きな論争点として出てくるということも私は考えるわけでございますので、この際、こういった点についての政府のはっきりした見解なり、あるいは将来の考え方というふうなものをひとつ明確にしていただきたいと思います。
  105. 登坂重次郎

    ○登坂政府委員 お説のとおり、厚生省といたしましても、来年度は年金問題を大きく取り上げたい。老後の保障なり、あるいは退職後の保障というものは、われわれの生活にとって重大な問題であります。しかるところ、今日まで年金の支給額が御承知のとおり二万円ベースなり、そういうことであっては、また国民の年金においても拠出年金が五千円ということであっては、これはなかなか問題が多い。特に積み立て方式とか賦課方式とか——今日私のほうでは修正積み立て方式を使っておるわけでございまするが、今後、この年金を来年度は大幅に改定したい、かように考えております。  特に現在においては、まだ受給者が少のうございますし、今後ますます増加の一途をたどってまいりますので、にわかにこれを賦課方式に切りかえるということは、いかがであろうか。これはいま関係審議会に諮問をいたしておりまするから、その答申をもあわせ待って、そして漸進的にその折衷案とも申しましょうか、なるべく増額できる方向、そしてまたそれが安定して、だんだん増額支給できるような、そういう方向で考えたい、かように存じておる次第でございます。
  106. 別川悠紀夫

    ○別川委員 次に、スライド制の問題でございますが、これもどんどん毎年物価が上がるわけでございますので、国民のまことに素朴な感情といたしまして、やはり年金にだってスライド制というふうなものが当然適用されてしかるべきではないか、こういう感じが強いわけでございますが、こういった点についての御所見をひとつお伺いいたしておきたいと思います。
  107. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 スライド制問題は、現在のような社会経済事情におきましては、老後保障の年金について、やはりきわめて重要な問題と考えております。厚生年金も国民年金も従来の制度創設以来の改正の際に、消費者物価以外にもいろいろな国民所得とか、あるいは賃金ベースの上昇というふうなものを勘案いたしまして、改善を行なってまいりました。今後ともそういう意味で改善をやっていくつもりでございますけれども、スライド制という問題は先ほども申し上げましたが、いわゆる政策スライドと申しますか、そのときどきの社会経済事情を考慮してやる改正という意味でのスライド制、それから物価、賃金あるいは生活水準というふうなものにリンクしたスライド制というようないろいろなやり方がございまして、そのどの方法をとるかという一つの基本的な問題があるわけでございます。さらにまた、スライド制についてより大きな問題は、スライド制によって給付を上げましても、その費用をどのようにして調達するか、スライド制ということは、いわば給付がスライドアップすれば負担もスライドアップする、こういうふうなことが通常の制度の仕組みでございますから、この辺をどのように仕組んでいくかという問題もあろうかと思います。  また、現在のような年金額を基礎にして、低い年金額のままでスライドをしていいかどうかというような問題もございまして、そういう点どういう方法をとってどういう指標でどの程度のレベルの年金をつくった上で、このスライド制を取り入れるか、またその取り入れ方も制度上これをフィックスするか、あるいは行政運営上この問題を処理していくかというような、非常にむずかしい問題がたくさんございますので、そういう点を十分われわれも検討いたしております。また、先ほど政務次官からも申し上げましたように、次期改正の一つの大きな問題といたしまして、関係審議会におきましても現在議論をしてもらっております過程でございますので、その結論をも十分参考にいたしまして、この問題については考えたい、かように考えております。
  108. 別川悠紀夫

    ○別川委員 次に、積み立て金の運用の問題でございますが、国民の感情といたしましては、相当額の金が積まれておるのじゃなかろうか、そうして聞くところによりますと、それがいわゆる財投資金にかなり流されておる。いわば今日の経済成長を推進いたしてまいりました産業優先というふうなかっこうで、その金が使われておるのではないか。こういう性格の金でございますから、できることなら、この積み立て金の運用につきましては、たとえば住宅とか、あるいは病院を建てるとかあるいは保育所、老人ホーム等、こういう厚生福祉施設に役立つようなかっこうで、それらの積み立て金が大いに活用されてしかるべきではないか、こういう気持ちを非常に強く持っておるわけでございますが、こういった点についての実情が一体どうなっておるのか。  また、ただいま私が御要望申し上げました、そういう方向に沿って今後大いに御努力がいただけるものかどうか、そういう点について、ひとつ御所見を聞かせていただきたいと思います。
  109. 登坂重次郎

    ○登坂政府委員 御承知のとおり、厚生年金の積み立て金は財政投融資という形になりまして、政府の今日の社会福祉関係及びある部分は公共投資等に向けられておるわけでございますが、厚生省といたしましては、できるだけこれを社会福祉優先に使いたい、こういう観点のもとに、老人ホーム及び厚生年金会館、あるいは今後老人福祉の環境整備のために使うように財政当局とも折衝いたしておりまして、今後どんどん福祉優先をはからなければならぬ厚生省といたしましては、御趣旨に沿うように社会福祉優先、こういう方面に使いたいと年々努力いたしておりますが、来年度は特にそういう方向に視点を注ぎたい、かように存じております。
  110. 別川悠紀夫

    ○別川委員 これで質問を終わりますが、最後に、言うまでもなく今日わが国は、国際的にも、また国内的にも、非常な大きな転換期に遭遇いたしておるわけでございまして、特にわが国の経済政策の大きな転換と申しますか、経済の体質の改善と申しますか、そういう一つの大きな転換をなさねばならないというふうなことがいわれておるわけでございます。特に従前のように生産第一主義なり、あるいは輸出第一主義というふうな経済の体質から、国民福祉優先第一主義というふうな形に内政なり、あるいは経済政策の仕組みというものを変えていかねばならないというふうなことがいわれておるわけでございます。  そういう中で、やはり国民が一番大きく期待いたしますのは、われわれの生活内容の充実、とりわけ社会福祉の充実というふうなことに大きな期待をかけておるわけでございます。特に老後の生活安定というふうなことが、今日国民にとって一番大きな一つ目標になっておるわけでございますので、どうかひとつ厚生省におかれましてはこういった国民の気持ちを十分にくみ取っていただきまして、思い切って来年度はりっぱな政策を推進されることを特に御期待を申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  111. 森山欽司

    森山委員長 次回は、明後六月一日木曜日午前十時理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時三十四分散会