○北川(力)
政府委員 ただいま
お話のございました年金制度全般の改正の問題でございますが、時期の問題、スライドの問題、賦課方式の問題、あるいはまた三党共同提案の中身についての問題、いずれもきわめて重要な問題だと思っております。
私どもはいま
お話にございましたように、次期改正期をいつにするかという問題がまずあるわけでございます。厚生年金、
国民年金ともに従来から五年目ごとに財政再計算を行ないまして、その財政再計算期に合わせて大幅な改正をやってまいっております。ただ、最近の
社会経済
条件の変動の非常に激しい時期でもございますので、現在のところ私どもは、厚生年金につきましては五年目ごとと申しますと、四十九年がその時期に当たり、
国民年金につきましては五十年がその時期に当たっておりますけれども、いずれも四十八年に繰り上げて、次の本格的な大幅改正をいたしたい、このような心づもりで準備をし、かつまた
関係審議会等においても、
審議を促進をしていただいておるような実情でございます。
それからスライド制の問題でございますが、確かに現在のような非常に動きの激しい
社会でございますし、また真に老後を託するに足る、安心できる年金という
意味から申しましても、何らかのかっこうで、このスライド問題ということは決着をつけるようなことが、年金制度の本来のあり方としては一番望ましいのではないかと思っております。昨年の十一月から従来の五年目ごとの改正の中間といたしまして、とりあえず厚生年金の一%のアップを行ないましたけれども、これもいわば一種の政策スライドでございます。今後こういった方式をかなりタームを詰めてやっていくか、あるいはまた西欧諸国でやっておりますような、スライド方式というようなものを参考にして取り入れるか、スライド制はいろいろ問題が多いと思います。
まずスライドにつきましては、何と申しましても、政策スライドをするかどうか、あるいは自動スライドをするかどうか、あるいはいわゆる半自動といわれておりますようなものにするかどうかというスライド制の基本の問題が
一つと、それからもう
一つは、スライドの指標といたしまして物価がいいか賃金がいいか、あるいは
生活水準がいいかというような問題がございます。
なお、それにも増して重要な問題は、現在年金のスライドという場合に、もっぱら給付の面のスライドアップがいわれておりますけれども、スライドという問題は、給付以外に当然にその負担のほうもスライドアップをするわけでございますから、給付のスライドという問題を考える際には、負担増のスライドということと切り離して考えるわけにはまいりませんので、こういう問題をどういうふうに処理をするか、しかも厚生年金、
国民年金、それぞれ仕組みが違っておりますので、そういう面で、実はこの問題はきわめて重要な問題であり、また何とか処理をしなければならない問題でありますだけに、そういうきめのこまかい問題について十分な
配慮を行なっていかなければならぬと思っております。
また、このほかにもスライド制という問題は、それ以外の国の財政や物価問題等にも影響がないとはいえませんから、多角的に検討して、どういうようなしかけをとったほうがいいか、またどういうふうに制度上あるいは運営上この問題を取り入れていくか、これは十分に詰めた検討をしてまいりたいと思っております。
それから賦課方式でございますけれども、この問題もいろいろ議論が行なわれております。私どもは、やはり年金問題は老齢人口が幾らあるかという人口構成が基本的な問題だと思っております。現在の日本の人口構成は、先生も御承知のとおり、いわば人口老齢化の入り口でございまして、大体西欧先進諸国に比べて三十年間くらいのズレがあるということ。だからそういう
段階で、
一般にいわれておりますような賦課方式をとりました場合に、現在の生産年齢人口層に属する
人たちには、きわめて軽い負担で済み、将来の人口構成が非常に老齢化いたしましたときには、非常に大きな負担になる。そういった世代間の負担の不均衡をどう考えるか、あるいはまた将来の負担の激増というものをどういうふうにして回避をするか、こういう問題もございますので、実際上、賦課方式というふうな
方向を指向するとしても、そういう点をどう考えるかという問題があろうかと思います。
また別な面で申し上げますと、現在の年金の方式は修正積み立て方式でございまして、積み立て方式と申しましても、
国民年金については必要保険料の約半分程度しか取っておりませんし、厚生年金の場合には七割程度の保険料しか取っていない、こういう状況でございますので、残った分は全部これを後代に送っておるという
意味では、いわば後代に賦課をしておるという
意味で、実情は、積み立て方式と賦課方式の、いわば中間くらいのところにあるというふうなことが、きわめて常識的にはいえるだろうと思うのであります。
そういう
意味合いで、私どもは今後の人口老齢化ということを十分ながめた上で、現在の方式を維持しながら実情に即した
配慮を加えて、なだらかな負担増を伴っていきながら、将来の年金の財政方式というものを考えていきたい。現在の
段階では、そのように考えております。
それから三党共同御提案になる年金改善要綱の問題でございますけれども、この問題は、いわば
最低保障額を幾らにするかという問題と、それから財政方式を賦課方式にする、それからスライド制を採用する、それからさらに年金制度を被用者年金と
国民年金の二本立てにするという四点が中心かと思います。経過的には、一年間一万円のげたをはかせるという問題がありますけれども、確かにこの問題を考えましたときに、四つの原則につきましては、いま申し上げました答えで大体尽きていると思いますが、そういう中で、基本的な原理原則でございますから、そういうことをわきまえて、来年度改正でどういうふうに問題を処理するかという問題になろうかと思います。
ただ、経過的に一年間だけ一万円のげたをはかせるという問題につきましては、年金制度というものの相当長期の見通しについて検討を行なった上で、また受給者の趨勢とか、費用の負担とか、そういったものも考えてやらなければならない問題でございますので、そういう面から考えますと、相当この点は留意しなければならぬ、このように考えております。