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1972-04-27 第68回国会 衆議院 社会労働委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年四月二十七日(木曜日)     午前十時五十九分開議  出席委員    委員長 森山 欽司君    理事 小沢 辰男君 理事 谷垣 專一君    理事 橋本龍太郎君 理事 増岡 博之君    理事 山下 徳夫君 理事 田邊  誠君    理事 大橋 敏雄君 理事 田畑 金光君       秋田 大助君    伊東 正義君       大野  明君    梶山 静六君       藏内 修治君    小金 義照君       斉藤滋与史君    澁谷 直藏君       田中 正巳君    高鳥  修君       竹内 黎一君    中島源太郎君       中村 拓道君    林  義郎君       別川悠紀夫君    向山 一人君       渡部 恒三君    大原  亨君       川俣健二郎君    山本 政弘君       古寺  宏君    古川 雅司君       渡部 通子君    寺前  巖君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 斎藤  昇君  出席政府委員         厚生政務次官  登坂重次郎君         厚生省社会局長 加藤 威二君         厚生省保険局長 戸澤 政方君         社会保険庁医療         保険部長    穴山 徳夫君  委員外出席者         参  考  人         (社会保障制度         審議会会長臨時         代行)     近藤 文二君         参  考  人         (健康保険組合         連合会会長)  安田彦四郎君         参  考  人         (日本労働組会         総評議会幹事) 立花 銀三君         参  考  人         (全日本労働総         同盟政治福祉局         長)      小川  泰君         参  考  人         (日本医師会常         任理事)    小池  昇君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ――――――――――――― 四月二十六日  電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法  の規制に関する法律を廃止する法律案田畑金  光君外三名提出衆法第二六号)  保健婦助産婦看護婦法の一部を改正する法律案  (藤原道子君外二名提出参法第六号)(予) 同月二十七日  廃棄物処理施設整備緊急措置法案内閣提出第  九四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  老人福祉法の一部を改正する法律案内閣提出  第四九号)  健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を改  正する法律案内閣提出第四六号)      ――――◇―――――
  2. 森山欽司

    森山委員長 これより会議を開きます。  老人福祉法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。寺前巖君。
  3. 寺前巖

    寺前委員 昨日来、委員各位がこまかく質問をしておられますので、私は二、三の点についてのみ、間口を広げないようにして質問をしたいと思います。  第一番目の問題は、老人医療無料にしようというのは、その前段には老人の健診があるということは当然のことだと思うのです。ところで、老人健診は六十五歳の方から健診をやっている。その健診の結果ぐあいが悪いということになったら、直ちに治療しようではないか、これは常識的な考え方だと思うのです。ところが、その健診した結果についての入院は、七十歳からについては無料にしようということでは、五年間待っていなさいということにひとしいのではないだろうか。常識的に考えたら、健診をやって、そうしてどうぞお入りください、こういう関係でめんどう見るのが普通だと思うのです。特に、最近の資料によると、若干の変化はありますが、言っちゃ悪いですけれども、統計学的にものをあえて言わしていただくとするならば、六十九歳で寿命ということになると、そうするとせっかく健診を受けても治療することなく、死んでしまってから医療無料だという話になっていくという、まあ統計的な話ですけれども、こういう扱いと同じことになるんじゃないだろうか。そういう意味において、せっかく従来六十五歳の健診という問題があったんだから、六十五歳の健診をイコールそのとおり発展させて、六十五歳から、せめてお年寄りの皆さん、お医者さんで十分見てもらってください、めんどう見ましょう、そういうふうに発展させるのが筋道だと思うのですが、なぜ六十五歳と七十歳との間をあけてしまったのだろうか、その間の保障をなぜしないのだろうか、せっかくのこの施策がそこで有名無実に近いという扱いになるんじゃないだろうか、政務次官の御見解を聞きたいと思います。
  4. 登坂重次郎

    登坂政府委員 お説のとおり、老齢者を何歳以上にするか、また社会保障制度全般の問題としてどう考えるか。確かに六十五歳というのは、老齢化されたものと考える筋もあります、またそう考えてもいいのではないかと思いますが、日本の現在の社会保障制度全体のあり方から考えますと、七十歳という医療無料化、諸般の事情から将来はこれも検討すべき問題として政府においても考えておりますが、いま直ちに六十五歳以上の方々を医療無料化ということは、まだ段階的に検討すべき問題である、こういう結論のもとに本年度は七十歳以上という段階的な対策を講じたのでありますが、将来はやはりこれも年齢引き下げという、社会保障長期計画、これからの政府の取り組み方の姿勢としては、やはりそういう方向に改善されるべきものと思いますが、現在の日本社会福祉行政あり方からして、まだ一挙にそこまでは行けない状態でありますが、将来はそういう方向に進むべきものである、またそういう検討をすべきものである、かように考えております。
  5. 寺前巖

    寺前委員 常識的に私は政務次官に聞きたいのですよ。  検査をした結果、治療をしてもらえるということにならなかったら、検査無料で受けるといったって、かえって不安をつくられるだけになるのではないでしょうか。そうしたら、その検査は、お年寄りなんだから、あとめんどう見ますから安心してという検査になったときに、初めてその検査値打ちが出てくるのと違うか。せっかく六十五歳から検査をやるというんだから、六十五歳から無料でめんどう見ましょうということがあるというのが、たてまえとして、基本として考えていいのじゃないだろうか、検査というものは。ただ予算の都合でぐあいが悪いんだ、すぐに組めないんだというなら、そういうふうにはっきりおっしゃったらいいと思うのですが、検査というものは、たてまえは、そうあるべきじゃないでしょうか。そのたてまえをちょっと聞きたいと思うのです。
  6. 登坂重次郎

    登坂政府委員 先生のおっしゃるたてまえということばは、ちょっと意味がわかりませんですけれども、六十五歳以上の人をすべて健診した結果、入院措置をするなり、あるいは医療無料化をする、それを前提としたたてまえということと考えるのでありますが、そうしますと、現在の医療保険制度医療制度あり方、また地方財政との関連性において、いま直ちにそれを実行するということは、現在の状態では、まだ段階的な問題として検討すべきものであるか、かように考えております。
  7. 寺前巖

    寺前委員 その医療制度として、ぐあい悪いというのは、どの点がぐあい悪いのですか。私は、予算上ちょっと準備ができない、これだけの金がかかるのだと言われたら、予算というのは限界がありますから、限界の範囲で検討したらいいと思います。だけれども医療制度のたてまえからということになってくると、一体何が問題なんだろうか。私がさっきから言うのは、せっかく検査をやって、不安になるようなことであったら、検査はみんな、かなわないですよ。検査をやって、安心して検査を受けて、あとあとめんどう見てもらえるということになったら、その検査というのは値打ちが出てくる、検査制度というのは前からある、こうなるわけですよ。だから、そういう意味でお年寄りを大切にするという立場からいうならば、その検査制度ほんとうに生かすということから考えるならば、年齢的に引き続いて同じように扱うのが、たてまえとしてはそれは筋の通った話だと思う。だけれども予算的にと言われたら、それは予算の問題は別の問題として検討しようということになると思う、金の伴う話については。だけれども医療制度上の問題と言われたら、一体どういう問題があるのか、聞かしてほしいです。
  8. 登坂重次郎

    登坂政府委員 現在は、七十歳以上を医療無料化という、政府としてはそういう態度をとっておる関係上、にわかにはそれを全体として取り上げるということは、まだ予算上においても検討する問題もあるし、地方財政との問題点もありますから、御説のとおり検討に値するものであるということはわかりますけれども実行段階には少しまだ段階的な措置を要する、こういうわけでございます。
  9. 寺前巖

    寺前委員 もうこれ以上、私はくどいことを言いません。というのは、どう考えても政務次官のおっしゃる七十というのは、いま七十というとるから、あかんのやという私の問題提起に答えたことにならない。私の言うのは、せっかく検査をやるのだったら、その検査が――効果ある検査というのは、保障するということがあったときに、その検査値打ちが出てくるんだ。これは明らかに、自治体でやっている老人医療無料が背景に伴ったときに、その検査は生きてきているという事実があるから、私はあえて提起しているんだから。老人福祉法の一部改正の中で、そういう方向が出てきているところに、あの検査制度を相伴って前進しているという評価を私は下そうと思っているのに、ああいう言い方をされたら、一体何を考えているんだろうか、私はむしろ疑問に思う。だから、たてまえからいったら、検査治療とは相関連したものとして全体として考えていくということを基本のたてまえにされるべきだ、これは意見として申し上げておきますよ。先ほどからの答弁では、あれは答弁にならぬ。局長さん、おそらくそういうようにお感じになっておるのじゃないですか。まあこれはそれ以上言いません。  それでは次に、少し細部にわたって聞きたいと思うのです。  それは、現に地方自治体老人医療無料ということで公費負担が行なわれているわけです。そこで東京都の例から考えると、医療機関老人医療無料ということをやると、事務上、社会保険事務所にお医者さんは患者にかわって申請書を書くわけですね。いろいろなことを書いて、そしてひとつ支払いをやってくださいという国保なり、健保なりの申請書を出すわけです。同時に自治体に対しても、公費負担分を出してくださいという手続をやるわけですね。そのために、その自治体に対する請求という事務量がふえるというのが事実なんです。  そこで今度、国が老人福祉法に基づいて執行する場合に、お医者さんの事務量はふえないのかふえるのか、ふえるとするならば、東京都の場合だったらできるだけ事務量を減らそうというので、こまかいことを書かなくても額と名前を出してもらって、疑問に思ったときは、東京都のほうから乗り込んで調べたらいいという体制さえ病院のほうでつくっておいてもらったら、それでけっこうです。しかもそれに加えて一件当たり八十円というお世話を願っているお金を出す、きめのこまかい世話をやって、お年寄り無料のために院所のほうの御苦労に対しても、またこたえましょうというやり方をやっているわけです。  おそらくこの法案が出される以上は、すでに過去に自治体が苦労しているんだから、政府はそのことを計算に入れて、どういうやり方をするのが一番いいかということをお考えになってきていると思うわけだけれども、この老人福祉法に基づいてやるのには、どういうやり方をされるのか聞きたいと思うのです。
  10. 加藤威二

    加藤政府委員 老人医療請求並びに支払い関係事務の点でございますが、これは私ども現在まだ最終的な結論を得ておりませんが、医師会関係ともいろいろ折衝いたしておりますし、その考え方としては、私も先生指摘のとおり、できるだけお医者さんの事務、これはそうでなくても保険事務というものでお医者さん非常に苦労されておりますから、老人医療によって、さらに非常に煩瑣な事務が加わることのないようにということを第一に考えたいと思います。同時に、ある程度の正確さというものも必要だと思いますので、その両々相まって検討する必要があるということでございます。   〔委員長退席小沢(辰)委員長代理着席〕  事務量がふえるかふえないかということでございますが、これは新たな制度がつけ加わるわけでございますから、全然ふえないということにはならないと思いますけれども、そのふえ方をできるだけ少なくする、そういうことで考えたいと思います。  東京都は先生指摘のとおり、保険の部分は支払基金に出す、老人医療の分は東京都に出す、こういう二つのやり方をいたしております。私どもまだ結論ではございませんけれども一つの案としては、二カ所に出さないで、たとえば支払基金なら支払基金一つで出してもらう。その場合には、しかしやはり老人医療の分と保険の分と、これは複写の関係になるかわかりませんが、二枚は必要だと思います。しかしそれを別々のところでなくて、一カ所に出してもらう。東京都は別々に出しておりますけれども支払基金なら支払基金へまとめて出してもらう。そして支払基金がそれぞれの保険者に分ける、そういうようなやり方一つやり方であり、それをやれば東京都よりも、より簡便になるんじゃないかということも考えております。  東京都みたいに――東京都は十人くらいの老人名前をずっと書きまして、あと金額とか性別、それから国保健保の違いぐらいということでまとめてやっておりますが、そういうていさいをとるかどうかということはまだ検討中でございますが、いずれにいたしましても、これをきめます場合には医師会ともよく話し合い、先生の御指摘のとおり、できるだけ簡素化したものでやりたいというぐあいに考えております。
  11. 寺前巖

    寺前委員 できるだけ事務量を減らさないと、そのためにまた人を置かなければならないような、煩瑣になるということになると、よくない。ひとつ十分考えていただきたい。  同時に予算の面から言うと、これを事務的に補償するという予算は全然ないのですよね。そうでしょう。院所に対する四十七年度予算の中には、そういうことは全然考えてないわけですね。自治体自身が考えなければならぬということになりかねない要素を持っておりますね。この予算面からいうならば、いまのままでいくと。ですから、私はそういう意味において、せっかく今度はいい制度を――さっきも年齢の話でしましたけれども、いい制度を実施していく場合には、また医療機関自身がいい制度だということで喜んで仕事ができるように、財政的にも補償するくらいにして、これは御検討いただくことを問題提起して、この質問は終わりたいと思うんです。これはあとで一括してまた御返事をいただきたいと思います。  それから第三番目に、今度はお年寄り治療という場合には、これはかなり入院という問題が伴うということは計算しなければならない問題だと思うんです。これは一般治療の場合とちょっと違って、お年寄りの場合は入院というものがかなりのウエートを占める。ところが、お年寄り入院という場合には、これは普通の人と違って、付き添いというものが必ず検討しなければならない問題になってくる。だから親切に付き添いをしてもらえる、この条件を確保するということもまた、老人医療無料の上にとっては重要な問題になる。これは国保なり健保なりで入院して、公費負担あとでつくという問題ですから、もとは国保健保の問題ですから、国保健保付添料というのが問題になるわけですね。  そこで、実際上の国保健保付添料というのは、いま何ぼか知りませんが、たしか千五、六百円のところだと思うんですよ。そうすると、実際上東京都の場合なども考えてみると、それではやっていけないことは、きわめて明らかなんで、二千数百円出さないことにはほんとう付き添いさんというのはできない。だから悪い話が、二人ついたということにして、一人をやるというようなことも起こりかねないという、そういうようなことまでごまかしをやらなければ、ほんとうに親切にならないという実態が起こっているわけですよ。私は、せっかくこのお年寄り医療無料にしようというんだったら、現在の保険制度におけるところの付添料の問題についての再検討をするか、お年寄りの場合に対する特別な施策を今度打って出るというんだから、それじゃ付添料の問題についても特別な施策を打って出るということを考えなければ、ほんとうにお年寄り対策にはならないんじゃないだろうか。その点について、これは保険のほうで付添料をなぶろうとされるのか、それとも公費負担の問題において、その点を検討しようと思っておられるのか、この問題についての見解を聞きたいと思うんです。
  12. 加藤威二

    加藤政府委員 確かに付添料の問題につきましては、保険で認めておる額と、それから実際の慣行料金と申しますか、これは地域によって違いますが、場合によっては非常にレアケースでございますけれども保険で認めておるよりも慣行料金のほうが安いというのが二県くらいあると思いますが、大半は高い。特に大都市におきましては総体的に高い。大体保険で認めておりますものは、付き添い看護で大都会でいま千七百二十円くらいでございます。それに対しまして慣行料金は平均いたしまして千八百円、東京なんかは二千円ないしそれを若干こえるのが実情だと思います。この問題は、私どもも、単に老人の問題だけじゃなくて、生活保護の問題についても非常に頭の痛い問題でございます。  結論を申し上げますと、しかし老人福祉法一部改正の今度の老人医療無料化は、あくまでも保険の上に乗っかって、そして保険で給付する分についてその自己負担分保険で認めている分の自己負担分ということでございますので、保険で認めておるもののさらにプラスアルファということになりますと、これは別の問題でございます。先生いま、どちらで解決するのか、保険のほうで解決するのか、あるいはこういう新しい制度解決するのかという御質問でございますが、私どもといたしましては、これはやはり看護のほうの保険料金実勢状況にできるだけ合わしていただくという方向解決をしてもらうほうがいい。と申しますのは、そうやってもらいますと、生活保護も全部解決されるわけでございますから、私どもはそういう方向でやってもらいたいという気持ちを持っておるわけでございます。
  13. 戸澤政方

    戸澤政府委員 大体いま社会局長の申し上げたとおりでありますけれども付添料につきましては、保険のほうで大体基準をきめまして、全国的にそれを流して療養費払いというかっこうで支払っているわけですが、その基準は大体国立の看護婦初任給等に合わせまして、その後の改定に応じて毎年改定しているのですが、まあ地域によっては実態に合わないというような点もあるのは事実でございます。それでこの改定につきましては、できるだけ実情に合うように考えていかなければならぬと思っておりますけれども老人医療付き添いにつきましては、一般患者付き添いと、あるいは状況が違うというようなこともあろうかとも思いますけれども、この扱いにつきましては、今後保険のほうの付添料改定一本でいくか、それとも何か別途の方途を考える必要があるか、よく関係局とも相談して検討してまいりたいというふうに考えております。
  14. 寺前巖

    寺前委員 保険のほうは、まあ将来考えたい、こちらのほうは、ぜひ保険でと、実際には出発しだしたら、お年寄り付添料は安いさかいにめんどう見る体制にない、こうなるわけだね、政務次官。だから、これは緊急に出発する時点において特別な対策を考えないことには不親切になる。せっかくの法案が不親切なしかたで出発するということは、私は非常に残念だと思うので、政務次官、これは一体どういうふうにやられるつもりなのか、ちょっと御見解を聞きたいと思う。
  15. 登坂重次郎

    登坂政府委員 御承知のとおり、いろいろ問題はありましょう。まあ政府としては、老人対策医療を含めて入院無料化したということは、先生の御見解によると、まだ不十分だ、われわれもそういう点は認めざるを得ないのでありまするが、これもまた段階的と申しては早急に間に合わぬということになりましょうけれども医療保険制度の今度の改正健康保険改正においても、付添料看護料というものは改定した。これはもう年々改定されるべきものであると思いますので、早急に実情に合うようなそういう今後の対策を講じなければいけないと思いますが、さしあたってそれでは現在、ことしからどうするかということについては、いまのところ老人医療無料化をはかった、入院も含めて保険制度の三割を公費負担にするということでいきたいと、こう思うわけでありますが、特別どうしても、そういう特殊な困った人、あるいはそういう場合はまた――いまのところはそういう段階で、そういう方向に今後だんだん解決していくものと思いますが、現在の予算措置からいって、それはどうしても政府としては万全の措置というわけにはいきませんが、今後の検討の課題として取り上げたいと思います。
  16. 寺前巖

    寺前委員 政務次官、私はほんとうに一歩先んじた態度をとるべきだと思うのです。なぜかと言ったら、老人医療の問題が東北地方の市町村から始まって、ずっと全国的に広がってきました。東京都が老人医療無料公費負担という問題を出したときに、厚生省は、いや、それは保険法の違法だとかなんとかということでけちをつけるという事件もありました。当時の政治問題になりました。ところが、いまやそのことは、やはり必要なことだということで、おそらく解決をされたから、こういう形で出てきたのだろうと思うのだけれども、実際には自治体がやっておられる場合には、さっきも言ったように、事務費の問題にしたって、付添料の問題にしたって、全部自治体は真剣に考えてやっているのです。ところが、おくればせながら国がやるときには、そのことは十分に検討ができていないというようなことでは、国の施策としては恥ずかしい話だと思うのです。だからそういう意味において、すでに自治体がやっていることに対して積極的に援助をして、もっと気ばってやれという方向を打って出てこそ初めて国の態度だと私は思うのですよ。そういう点から見たら、私はまだ歴史的な過程から見るときに、国のいまやっているやり方というのは受け身だ。もっと積極的に、老人医療無料化に全面的に、分析して乗り出していただくことを期待をして、発言を終わります。
  17. 小沢辰男

  18. 山本政弘

    山本(政)委員 人口構造変化があって、わが国の人口高齢化現象というのが起こりつつあります。老人社会保障は、ですからそういう意味では整備拡充する必要があると思うのですけれども、現状はたいへん貧困であります、率直に言って。たとえば老齢福祉年金昭和三十四年ですか、にできて、そして千円から出発していま約三千三百円になったのを見てもわかるように、あるいは年金とか医療保障公的扶助あるいは住宅、施設、サービスすべてについて私はそういうことが言えると思うのですけれども医療保障についても同じことが言えるだろうと思う。  老人にとって、健康管理治療、リハビリテーションを含む医療保障の拡充は、いま所得保障に劣らず必要だ、こう思うのですけれども昭和三十八年に老人福祉法が制定されて、老人健康審査公費負担で行なわれておりますね。これは現在六十五歳以上の者に対して、一般審査精密検査が実施されておる対象者昭和四十四年で百四十七万三千人、これは六十五歳以上の人口総数七百七万三千人の二〇・八%であります。受診人員受診率という点では問題があると思うけれども、ともかくもまあ疾病の予防と早期発見につとめるということが必要であり、これは私はけっこうなことだと思うけれども老人のその健康審査の受診の結果、これは一九六九年に行なわれたもので、調査の報告は、厚生省の報告でありますけれども、実数は百四十七万三千人が受診者総数であります。その中で、正常者が七十二万三千人、要療養者が五十一万九千人、要精密検査者が二十三万一千人と、こういうことになっておる。そうしますと、正常者が四九・一%ということで、これは半分以下になりますね。正常者は半分以下。これは六十五歳以上に適用されているわけです。もし、健康審査というものが公費負担で受けられても、療養を必要とするということになれば費用がかかるわけでしょう。そして老人医療無料化というのが四十八年一月、それも七十歳以上から行なわれるということとなれば、一体六十五歳から六十九歳の老人にとって、その費用というものを自分や自分の家族でまかなうということになる。もしそういう見込みがない場合には、療養を要するという診査結果だけで、心配するだけですからね。むしろ受診しないほうがいいという結果になると思う。  きょう私は、なぜ七十歳から適用するようにしたのか、なぜ六十五歳からしないのかということでお尋ねをしたいわけですが、一体そういう点についてどうお考えなのか、まずお聞かせをいただきたいと思います。
  19. 加藤威二

    加藤政府委員 老人医療を適用します老人年齢を七十歳といたしましたので、先生指摘のとおり、健康診査の六十五歳とは五年も開くという点は、確かに私どもも問題があるというぐあいに考えております。で、健康診査との関連のみを考えますれば、これは老人医療無料化というのを六十五歳から始めるほうがいいということはいえると思います。しかし、このたび七十歳ということで踏み切りましたのは、健康状態その他から見まして、やはり七十歳以上の老人に疾病を持った方が非常に多い、そのウエートが多いということ、これは当然でございますけれども、その問題と、それから、昨日からも繰り返し申し上げておりますけれども、各県もうほとんど、四十数県の都道府県で老人医療無料化を実施いたしておりますけれども、そのうちの大半が七十歳以上である。そのほか六十五歳以上の寝たきり老人という条件で実施しているのが約十県ばかりございます。大半の県は七十歳以上であるという都道府県の実施の実情、そういうものを勘案いたしまして、それから財政問題もございます。  最初とにかくスタートするということで、七十歳以上ということに区切ったわけでございます。六十五歳から六十九歳までの方々につきましては、これは確かに老人医療無料化という適用はないわけでございますけれども保険のほうでも高額医療の問題を考えておられるようでございます。そういう制度とも相まちまして、できるだけそういった面で医療費の軽減をはかっていくということで、とりあえずスタートといたしましては七十歳ということにしたわけでございます。
  20. 山本政弘

    山本(政)委員 高額医療とは、何ですか。
  21. 加藤威二

    加藤政府委員 保険のほうで、保険に入っている人で、家族、被扶養者等につきまして一定額以上の、これは三万円ぐらいが一つのめどになっておるようでございますけれども、それ以上の医療費がかかる場合には、保険のほうでそれを見るという制度も考えておるようでございます。そういう点を申し上げたわけでございます。
  22. 山本政弘

    山本(政)委員 昭和三十八年実施の厚生省実態調査、局長は七十歳以上の人が疾病から見ると疾病度が高いと、こうおっしゃったけれども、これは狭義の精神病の有病率を見ますと、五十歳から五十九歳までが一・〇七%、六十歳から六十九歳までが一・二七%、つまり、五十歳から六十歳代を合わせますと二・三四%になるわけです。七十歳以上はむしろ減って、一・六七%でしかない。そうすると、疾病構造は、精神病に関する限りでは、少なくとも七十歳以上に疾病度が高いということにはならぬと思う。この辺は一体どういうふうになりますか。
  23. 加藤威二

    加藤政府委員 確かに、先生もいま御指摘のとおり、精神病に限ってというお話でございましたが、精神病に限ってはそういう傾向があるかもしれませんが、一般的にいいますと、これは四十三年の高齢者の実態調査でございますけれども、要するに病気がちという点では、六十五歳から六十九歳までの人は三六%が病気がちであるというのに対して、七十歳以上の人は四五%ということで、一般的に申し上げますと、年をとるにしたがって、これは当然でございますけれども、健康状態が悪くなるということはいえると思うのでございます。
  24. 山本政弘

    山本(政)委員 三六%と四五%、ともに率からいえばかなり高いのですよ。私は、四五%だから七十歳以上の人に適用する、六十五歳から六十九歳までの人は三六%だから適用しないということにはならぬと思う。三六%というのは、少なくとも三分の一をこえた数字ですよ。その三分の一というのをほったらかしにしておって、それで、七十歳以上に適用しましたからということでは済まぬと思う。いまあなたのおっしゃるように三六%、四五%、これは八一%になります。一〇〇%のうちで八一%、そのうちの三分の一を占める人たちがその適用をなぜ受けられないか。これはちょっとおかしいと思うんですね。  もう一つあるわけですよ。厚生省統計調査部一九七一年、これは四十五年の簡易生命表を見ますと、高年齢男女死亡確率比較というのがありますね。女性を一〇〇にしてみますと、男性は六十五歳の場合に一番多いわけです、一八一・三。七十歳の人が一六七・五。男の人は、かせぎにかせいで、そしてほっと一息をして、そしてこれから老後の安定生活に入ろうというときには、ぽっくりとみんないかれるという率なんですよ。そうなるでしょう。人数は別にしてもですね。女性を一〇〇にした場合に、男性の、そういう意味では死亡確率というのは、六十五歳台が一番高い。そうして、七十、七十五、八十というふうに段を区切っていくと、区切っていくにしたがって、高齢になるにしたがって、そういう死亡確率は減っていく。一生懸命働いて、そしてほっとした瞬間に倒れてしまう。残された者にとってもたいへん不幸であるし、悲劇であるし、問題がある。  そうしますと、きょうは私初めから、六十五歳からの年齢の人をなぜ適用しないのかということであれをしますので、私は重ねてお伺いしているのですけれども、先ほど局長が言われた三六%という数字というものは、かなり大きな数字である。そして、死亡確率から見ても六十五歳が一番高いという。そうすると、私はやはり理屈に合わぬと思うんですね。なぜ六十五歳ができないのか、もう一ぺんお伺いしたいと思います。
  25. 加藤威二

    加藤政府委員 六十五歳で絶対にできないというわけではないと思いますけれども、この制度を初めて今度開始するわけでございますが、一つは、先ほど申し上げましたように、やはり都道府県でも実施する場合にそれぞれ検討したと思います。それで、六十五歳という意見もずいぶん出たと思いますけれども、一応ほとんどの県が七十歳で踏み切っているということは、老人医療無料化というものをスタートとして始めます場合には、これは老人のことを考えれば、できるだけ年齢を下げたほうがいいということは当然のことでございますけれども、やはりそれぞれ、地方財政の事情とかいろいろな問題を勘案いたしまして、やはりスタートとしては七十歳ということが、ほとんどの県がそういう体制をとっているということは、わが国の現状からいたしまして、老人医療無料化に踏み切るという場合には、とりあえず七十歳ぐらいが、一応いろいろな点を勘案すると適当ではないかというのが、地方公共団体全体の一つの傾向だと思うのであります。国もやはりその点は同様でございまして、老人の福祉のみを考えますならば、これは先生指摘のとおり、できれば六十五歳あたりから始めたほうがいいという点については、私どもも同じ意見でございます。しかし、いろいろな事情を勘案いたしまして、国の制度として始めますという場合には、とりあえず七十歳から始めるということで、一応そういう七十歳から始めるということに踏み切ったわけでございます。  それから先生、まことに申しわけありませんが、実は昨日の田邊先生の御質問に対しまして、家庭奉仕員の増員要求は四十七年度何人要求したかという御質問に対しまして、どうも取り違えた答弁をいたしましたので、つつしんで訂正申し上げます。正確な数字は、四十七年度の家庭奉仕員の増員要求は七千九百十八名でございました。まことに申しわけありません。つつしんでおわび申し上げます。
  26. 山本政弘

    山本(政)委員 地方自治体が七十歳以上になぜしたかといったら、つまりそういう老人無料医療化というものを実は国がしなかったから、やむなく地方自治体がそれをすることになった。そして地方自治体がそれをするについては、いま局長のお話にあったように、財政事情があって、六十五歳にしたいけれども、七十歳からせざるを得ぬというものがあったと思うのです。  ところが、今度国はここに老人福祉法の一部を改正するというのですよ。老人福祉法改正するならば、なぜ思い切ったことができないのか、こういう問題が私は率直に疑問として浮かぶわけです。いまの医療保障制度を再検討しなければならぬと思うのですけれども医療保険は被用者保険が七種でしょう、被用者以外の地域住民の保険が一種、そして政府はこれを国民皆保険だと、こう言っているのです。ところが、被保険者本人に対しては、一部の自己負担を除いて十割給付。大多数の企業の定年退職年齢というのは五十五歳から五十七歳ですよ、私の調べたところによれば。そして五十八歳から六十歳までが、いま人手が不足だといって、ずっとふえてきたわけですけれども、しかし、このふえてきている傾向というのも、今日不況といわれるような実態の中では、またこれはストップするでしょう。  そこで、定年退職後の再雇用、あるいは雇用継続という場合には、被用者保険の被保険者としての資格が維持されますけれども、多くの場合というのは、定年退職後、とりわけ六十五歳以後は被用者の医療保険の被保険者の資格を失ってしまう場合が多いと思うのですね。そう言えば、健康保険に任意継続被保険者制度があるとおっしゃるかもわかりませんが、局長は前に保険局で練達の士であったと思いますので、そういう御回答をいただくかもしれませんけれども、しかし、やはりこれには所定の要件に該当しなければならぬというものがあるわけでしょう。そしてそれは、たしか一年間しか被保険者期間がないと思うのです。  そうすると、被用者以外の地域住民に対する医療保険というのは、国民健康保険しかない。昭和四十五年三月末現在で四千二百四十二万の被保険者数があったわけだけれども一つは従前から国保に加入している場合がある。もう一つは退職後に国保に加入する場合がある。この場合は七割給付ですね。三割自己負担。むすこさんや、あるいは娘さんが就職しておって、その被扶養者になる場合には五割。この場合は付加給付がつくから、こうおっしゃるかもわかりませんけれども、しかし、それにしても、やはり二割か二割五分は自己負担になるわけです。しかも、年をとってくるにつれて心身の機能が衰えてくる。療養を要することが多くなる。回復はおそい。そしてそういう病気は、病気の進行をとどめるにすぎないような治療が多い場合がある。つまり、平均余命が延びたというけれども、その伸びた残りの老年時というのは不健康の毎日であると言っていいのですよ。  そうしますと、これも四十三年の厚生省の国民健康調査によりますと、そういう人たちは有病率も、それから受療率も高いわけでしょう。特徴的な数字が出ているわけですよ。六十五歳から七十四歳では、病気である者が二三%、医療を受けている者が一〇%。ところが、おもしろいことに、七十五歳以上になると、逆にその比率が減っているわけです。つまり、六十五歳から七十四歳までの十年間が、いろんな意味老人にとっては苦難のときだというふうになる。そうすると、まさに六十五歳から適用しなければならぬ、私はこう思うのですけれども、それが適用がない。きょうはもう私はこれ一本なんですから、なぜ適用しないのか聞かしてもらいたい。もうデータがちゃんとこういうふうにそろっているわけでしょう。七十歳からでなくて、六十五歳から、とにかくそういうふうなデータがきちっと厚生省のデータでそろっているわけでしょう。要するに、自分のところでデータがそろっておって、それは適用いたしませんというのは、私はとるべき態度じゃないだろうと思う。
  27. 加藤威二

    加藤政府委員 最初定年退職のお話がございましたが、先生指摘のとおりだと思います。ただ、一応労働省の調査によりますと、定年退職した人の八七%は再就職している。ただ、そのうちの一二%は自営業でございます。これは当然国保でございます。七五%は雇用者でございます。しかし、その七五%が再雇用される場合にも、零細企業でございますと、五人未満等になりますと、健康保険の適用はございませんから、そういう場合は国保になると思いますけれども、七五%の人の相当多くの部分は再び健保の被保険者本人になる。それが幾つまで続くかわかりませんけれども、そういうことで、定年退職の大半の人は再びまた被用者保険の本人として十割の給付を受けるという形になろうと思います。しかし、そのうちのある程度の人たちが自営業者であり、あるいは零細企業で健保の適用のない事業場に働くということになりますと国保、そうすると三割の自己負担ということになると思います。  そういうことで、確かに先生の御指摘の点、六十五歳にしたほうがいいじゃないかという御質問に対しましては、絶対に六十五歳にすべきでないという議論は、これはとうていできない議論でございます。そういう議論はできないわけでございますが、私どもといたしましては、ほんとう老人福祉ということを考えますと、六十五歳が適当だということはごもっともだと思います。しかし、いろんな事情を勘案いたしまして、なかなか最初からはそこまで踏み切れなかったということで、今後の目標ということで考えてみたいと思います。
  28. 山本政弘

    山本(政)委員 いま、再雇用が多い、こういうお話だった。再雇用が多いのだったら、ますます残りの人は少ないではないか。国で見る分はますます少なくなるじゃないか。それなら、その少ない人たちに対してちっとばかりの金がなぜ出せないのだろうか。大蔵省が出せないというなら、出せないでもいいのです。  要するに、五十五歳で定年退職した人たちの大部分が再雇用されるということになれば、五人未満の場合はこれは全部十割給付ですかね。そうでしょう。そうすると残りのほんの少ない。パーセンテージの人しか残らぬとするなら、なおさらこの金としては出しようがあるのじゃないか、こう言っているのですよ。それくらいのことなら思い切って六十五歳にしたら、それは厚生省というのは非常に老人福祉に対して理解があるというふうに国民にとられますよ。
  29. 加藤威二

    加藤政府委員 再雇用される人は相当多いということは数字でお示しいたしましたけれども、しかし数字的に、たとえば六十五歳にした場合に人員がどのくらいふえるかという点は、七十歳でやりますと約三百七十八万でございますが、これをもし六十五歳からいたしますと六百八十九万、約六百九十万で一・八倍くらいになるという人数からいいましても相当大きな、六十五歳以上にしますと、それだけ対象がふえるということでございます。   〔小沢(辰)委員長代理退席、谷垣委員長代理着席
  30. 山本政弘

    山本(政)委員 それは再雇用した者も入れて六百九十万になるわけですか。
  31. 加藤威二

    加藤政府委員 これは六十五歳に適用しました場合には、被用者保険の本人として、そういう者はみな除かれます。それを除いた結果、六十五歳以上でこの老人医療の対象になるであろうと推計された人が六百八十九万ぐらいということでございます。
  32. 山本政弘

    山本(政)委員 私は無理やりにこじつけて言うのじゃないのです。年齢別有病率、受療率というのを見ますと、有病率が五十五歳から六十四歳が一七・五五、受療率が九・四八、パーセンテージですね。それから六十五歳から七十四歳が有病率が二三・三〇、受療率は一〇・三二、七十五歳以上は一九・五八、受療率は八・六三と、圧倒的に六十五歳からいま適用されようとする年齢を含んだところまでが一番多いので私はそう言うのですよ。  それじゃ次官、いつごろをめどに六十五歳までの適用をなさるおつもりなんですか。なるべく早くということでは、ぼくは納得できないのです。
  33. 登坂重次郎

    登坂政府委員 御説のとおり、これは年齢を引き下げるについては、私のほうとしても相当検討しなければならぬと思っております。それについて、私どもはまた年金のほうもあわせて考えて、医療と、いわゆる年金と、福祉の総合的な問題としてこれをあわせて考える。もちろん無料化医療年齢の引き下げ、これも必要でございます。同時に私どもはまた全体の福祉のあり方として、そういう年金制度改正もやはりあわせて考えたい、こう思っておる次第でございます。
  34. 山本政弘

    山本(政)委員 日本の場合定年がいまのところ五十五歳、老齢福祉年金が七十歳、十五年間の開きがあるのですね。つまり日本の場合の五十五歳というのは、企業の定年の年齢なんですよ。ところが外国の場合に定年という場合には、定年というよりもむしろ老齢年金の受給年齢というものが、国の定めた定年になっているわけです。そういう考え方が私はあると思うのですね。日本の場合には定年というのは企業がかってにきめたものですよ。だから、そういうことがあるから実は労働市場に高年齢層というものが停滞をしていく。私はここに一番根本的に老人福祉というものを考える点があると思うのです。この点はどうお考えですか。
  35. 加藤威二

    加藤政府委員 わが国における定年制度というのは確かに企業別々につくっておりますが、概して若過ぎる。五十五歳ということで、それが若干ずつ伸びつつはありますけれども、しかしまだ六十にはほど遠いということ。それに対して、いろいろな社会保障的な面が年齢的に合わないという御指摘については、ごもっともだと思います。こういう点につきましては、厚生省としては定年制の延長ということを労働省のほうにも働きかけて、できるだけ定年制の延長ということをやってもらう必要があろうと思います。それに伴いまして、ほんとうに仕事をやめたときには、なるべく年金が直ちにつくという形にすることが年金制度としては必要だと思います。  そういう意味で、老人医療の七十歳ということについて先生指摘の点は、一々ごもっともだという感じがいたしますけれども、一応最初の制度としてやむを得ず七十歳から出発しているという実情だけを申し上げているところでございます。
  36. 山本政弘

    山本(政)委員 それじゃ少し小さいことをお伺いしますけれども老人性白内障というのは、これは数としては減少傾向にあるのですか、増加傾向にありますか。
  37. 加藤威二

    加藤政府委員 老人性白内障につきましては、これは四十五年から始めまして、四十五年に三千人だったと思います。それから四十六年に三千人、それで大体六千人やりまして、非常にこれは老人に喜ばれたわけでございますが、その対象がずっと減ってまいりまして、そして四十七年度は対象者が非常に減りまして四百人ばかりに――もう該当者が非常に減ってまいりましたので、それで四十七年度の予算上の数は減っておるわけでございます。しかしこれは該当者があればまたどんどんやるということでございます。
  38. 山本政弘

    山本(政)委員 これの二五ページに「老人ホームの整備拡充」というのがありますが、「ねたきり老人等で入所を要するもの全員を昭和五十年までに完全に入所を目標とした「五カ年計画」を実施する。」、こうおっしゃっておる。これは四十六年からたしか始まったのだと思いますけれども、四十六年度の予算、これは幾らでしょう。
  39. 加藤威二

    加藤政府委員 四十六年度老人ホーム関係の整備は三十一億でございます。
  40. 山本政弘

    山本(政)委員 そうすると、この「四十五億円試算」というのは何ですか。
  41. 加藤威二

    加藤政府委員 四十七年度につきましては、社会福祉施設整備費の補助金として百二十億入っておりますが、これをたとえば身体障害者の施設にどのくらい使うか、あるいは保育所にどのくらい使うかというのは、まだ最終的に予算も通過いたしておりませんのできめておりませんが、一応のめどで、せめて最低このくらいは見たいという数字でございます。
  42. 山本政弘

    山本(政)委員 五カ年計画の総経費はどのくらいになる予定ですか。
  43. 加藤威二

    加藤政府委員 三千五百億でございます。
  44. 山本政弘

    山本(政)委員 初年度に三十一億、第二年度に四十五億で、三千億をこえる五カ年計画の整備計画というのは完遂できるのだろうか、この辺に私たいへん疑問があるのです。少なくとも初年度、それから第二年度の伸びからいけば、第五年度にこんなことが完成できるとは実は思われないのですけれども、いかがなものでしょうか。
  45. 加藤威二

    加藤政府委員 ただいま申しました三千五百億と申しますのは、これは老人ホームばかりじゃございませんで、身体障害者の施設とか保育所、児童の施設全部を包含いたしまして三千五百億ということでございます。そのうち寝たきり老人のための予算は六百五十三億で、しかもこれは国庫補助ばかりじゃなくて、民間資金、たとえば競馬とか自転車振興会の資金とか、それから地方の地方債とか、そういうものを全部合わせました。三千五百億というのは、国の補助金だけではございませんで、あらゆるそういう金を集めた結果、三千五百億でやろうということでございます。そういうことで、一応計画としては、まあまあの線をいっているというぐあいに考えております。
  46. 大原亨

    ○大原委員 問題は二つあると思うのです。厚生省で社会福祉施設についての五カ年計画をつくって、政府は、これは新経済社会発展計画では認めない、こう言って認知しなかったわけでしょう。厚生省がきめておったやつを、実際上大蔵省との折衝に駒いて――大蔵省が、そういう厚生省の中に存在しておるということを認めてやっておったわけだ。これは政府全体の計画で閣議決定してやるべきではないかという議論が一つあったわけです。そうでないと、大蔵省を拘束してやるわけにいかないので、いまのお話のように、ばくちのテラ銭をかき集めてやっておったわけだ。そういういびつなことをすれば――こういうことが一つ。これをぴしっとやれ。  もう一つは、原前労働大臣の発言で、非常に老人ホームが有名になった。それをよく追跡してみると、きのうから話があるように、大部屋主義でしょう。そうだったら、孫や子供がいろいろなみやげものを持ってきたって、食べるときにみんなが見ておるところでやる、あるいは自分の私物についても、隣の者とかち合っているというふうなことで、プライバシーも人権も何もないというふうなことではいけないから、その施設の中身をきちっとして、一人一部屋の国際的な基準に合わせてやるべきである。そういう意味においては、五カ年計画をさらに拡大強化をしてやれ、こういう二つの問題があるのです、いまの議論は。ですから、非常に計画自体もあいまいな基礎じゃないかということが一つ。これは手続きをぴしっとする。  それからもう一つ、やはり原労働大臣がせっかくやめたわけだけれども、やめて、老人福祉のために個人としては献身すると言っておられるわけだから、その発言力や力というものはあまり期待するのも無理だと思うのですけれども考え方基本が非常に問題である。そこに自民党の体質があるのだ。だから、そういう二つの点について、発想転換して、新長期計画の中でやるべきである。こういう二つのことについてのびしゃっと腹をきめた考え方を厚生大臣はっきりお答えいただきたい。
  47. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 ただいまの御意見、私もごもっともに思います。これは新全総計画の中にも入れ、大蔵省もはっきり認め、閣議でも決定して進んでいくということが、これからの新しい行き方であろう。全面的に同意見であります。
  48. 山本政弘

    山本(政)委員 二三ページに「養護委託費」というのがあります。これが月五百円から千円に上がっております。これはいままで食事代をやっておって、食事代にめんどうをかけるからということで月五百円やっておったと思うのですけれども、それを千円に上げた。上げた率からいえば二倍ですけれども、千円に上げたという理由、少なくとも食事代のほかに、養護を委託しておるのですから、しかも一番手のかかる老人を預けておるわけでしょう。それが委託費が千円で十分なのかどうなのかということは、たいへん私疑問なんです。なぜこれを大幅に増額できないのか、これをお聞かせいただきたいのです。
  49. 加藤威二

    加藤政府委員 この養護委託費と申しますのは、民間の篤志家の方々で、老人を預かってやろう、それで部屋の余裕もある、そういう方に、老人ホームも少ないものでございますから、老人を預かっていただいておる。そうすると、食費その他につきましては、養護老人ホーム並みに預かっていただいたお宅のほうにそれは全部支給いたします。あとは預かっていただいておるお礼みたいなもので、それがいままで月五百円だった。あまりにも少ないということで千円に上げたということでございます。したがって、その預かっていただいておる老人の食費、生活費というもの、これは老人ホーム並みに支給して、そのほかのお礼といいますか、そういうことでございますので、金額も少ない、こういうことでございます。
  50. 山本政弘

    山本(政)委員 私が申し上げたいのは、五百円を千円にした。これは額からいえば、まさに倍なんだけれども、こういうやり方というものは善意を踏み台にしておると思うので、そういうことを申し上げたいんで、一体人一人預かって、部屋はあるから、食事代はやるから、お礼は千円でいいといって千円で済ませるものなのかどうか。実態として洗たくもしてやらなければいかぬでしょうし、そのほかいろいろな日常生活の面等も見てやらなければならないはずなのに、その人たちに対するお礼が千円である。もしほんとう老人の福祉を考えるなら、そうしてそういう篤志家というものを拡大をしていきながら、そして一人でも多く老人に対してそういう手厚い保護をするという考えなら、大体私は、こんなものは――こんなものという言い方はおかしいんですけれども、これだけの金額では政策として十分じゃない、こう思うのですよ。これは一体千円ということで十分だと大臣お考えですか。
  51. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 おっしゃるとおり、お礼という意味では、これはあまり胸を張って言えるものじゃないと思います、恥ずかしい程度で。ことしはそれでも五百円を千円にしたわけでありますが、善意に甘えていると言われてもやむを得ない額であろう、かように思います。   〔谷垣委員長代理退席、委員長着席〕
  52. 寺前巖

    寺前委員 先ほど大臣お見えじゃなかったものですから、政務次官にお聞きしておったのですが、すきっとしない問題が一つあるのです。  何かと言うと、六十五歳で老人の健診をずっとやってきたわけですね。健診というのは、健診してもらった結果が不安になったら、うっかり健診をしたらかなわぬ、こうなりますね。だから、検診した結果は安心して、めんどうを見ましょうというこの関連性があって初めて、その健診の値打ちも出てくるし、治療のほうの値打ちも、相互作用を持つものですね。そういう考え方に立って老人医療公費負担というのを考えたら、老人福祉法というのは非常に値打ちの出てくるものだ。だから、せっかく六十五歳の健診をやっておって、今度は七十歳からだということになったら、悪いことばを使うならば、六十五歳で見ておいて、五年間待っておれということになるようなことでは、ちょっとその味も落ちるじゃないか。だから、たてまえとして言うならば、健診と治療とは統一的に考えるというのを、たてまえとすべきじゃないだろうか。ただ予算的にしょうがないと言われるんだったら、予算的にめんどうを見る問題は、別問題として検討するとしても、たてまえとしては、健診と治療が統一的にあるということが非常に重大なたてまえじゃないだろうか。  私は、そういう立場に立っての老人福祉法という問題として見たら、非常に大事な福祉法だというように思うのですが、そのたてまえ論において、さっきの政務次官の話でも、どうもすっきりせぬものだから、大臣にこの点についてお聞きしたい、こう思っているのです。
  53. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 私はこういうふうに割り切っているのです。いま寺前委員のおっしゃるように、健診をして、そして治療をしなければならぬものなら、それも全部一緒にして見てやったら、これも一つのお考えであろうと思いますけれども、ガンの健診、それからまた三歳児までの無料健診もやっておるわけでありまして、それでは、その無料で健診したものはみな無料医療かというと、そういうふうなわけにはまいらない。  ただ、健診をやって、そして治療にかかり得るか得ないかというその境、その点だろうと思うわけでありますけれども、六十五歳以上になれば、ほとんどみな子供かあるいは嫁かに治療費をくれと言わなければならぬような状態なのかどうかというと、そこらはまず七十歳でなかろうか、こう踏み切ったというわけです。  いま各地方で、自発的というか、先にやっている状況を見ましても、七十歳が圧倒的であって、中には七十五歳というものもある。いわゆる医療無料にするのには、社会的なニードとして、それは六十五歳でも無料にしてほしいと要求する人もありましょうし、六十歳で要求する人もありましょうが、年齢で区別するということになれば、七十歳が社会的なニードに合うものではないか、こういうことでいるわけであります。実施をしてみて、そしてやはり六十五歳まで下げなければ意味がないというようなこと、またそういう社会的  ニードということになれば、それはまたそのときに考えていきたい、そういうふうに割り切っておるわけであります。
  54. 寺前巖

    寺前委員 大臣、いま七十歳でやっている自治体が多いというのは、これは財政問題なんですよ。大体、中高年齢者の雇用の特別措置法、あれなんかでも、四十五歳から六十五歳までとなってしまったが、実際は六十五歳以上まで働いても、どうこうというのでないというのが圧倒的実情だし、それから統計学的に見ても、だんだん寿命は長くなっているようだけれども、六十九歳という線が出てきているわけでしょう。そういうことから考えたら、大体健診をするというのは、もう弱ってこられたということで、最後までほんとうに大事にしてあげようということで健診を始めるのだから、安心して健診を受けてください、あとあと見ましょう、この相互作用をやるというのは、当然のことだと思うのですよ。  だから、そういう立場に立ってお年寄りを大切にするように、地方自治体では七十歳からずっと手をつけるようになってきたのだから、もっと積極的に国は六十五歳から健診とあわせて責任を持つというふうな考え方で、ぜひ前進してもらうことを期待して、私の発言を終わります。
  55. 山本政弘

    山本(政)委員 「老人福祉の現状と将来」という厚生省の資料をいただいたのですけれども、これに書いてあるのは全部六十五歳以上でちゃんと資料が出ているのですよ。七十歳で資料は出ていないのです。だから、あなた方はちゃんと本来なら、六十五歳をやはり老人としてお考えになってその対策を考えておるはずなんだけれども、しかしいま言ったように三歳児以下は無料で診断をやっている、それで七十歳以上もやっている、それで七十歳以上はむすこさんも大きくなるから適当だろう、こういうようにお考えになる。逆でしょう。三歳児以下だったら、子供ですから、親としては、ある意味では夢中になってめんどうを見ますよ。しかしいまの世相では、たいへん残念だけれども、実際は年寄りになったら、もう核家族とかなんとかという傾向でだんだんと疎外をされていくのが、働いてきた人たちの老後の偽らざる人生でしょう。だから、私はむしろそういう人たちに対して手当てをしなければならぬと思うのです。そして保険局長も――さっき私は数字をちゃんと申し上げたのです。つまり健康診断の受診結果を見ても、六十五歳以上の人たちで正常者が半分だというような実態がある。あるいは狭義の精神病においては、むしろ五十歳から六十九歳までの人たちが圧倒的に多い。そして、女性に対する男性の死亡の確率からいいますと、六十五歳から七十歳までが一番多いのだ。しかも六十五歳というのは最高になっておる。こういうデータも実は申し上げて、六十五歳から適用するのが望ましいというふうなお答えを私はいただいていると思うのです。そうすると、やはり六十五歳から適用するのがほんとうだと思うのですけれども、それが適用されない。  それでは、大臣がお見えになっているから、私はお伺いしたいのですけれども、いつごろを目途に六十五歳の年齢の人たちに対してまで適用なさるおつもりなのか、この目安がやはりあっていいだろうと思うのです。老人に対して、少なくとも老人保護の五カ年計画というものをお出しになっておるのだし、そうすればもっと大きな問題として、お年寄りに対する健康の保護というものが政策的に打ち出されていいと思うのですけれども、一体いつごろまでにそういうようなものを実現なさるおつもりなのか、この辺をひとつお伺いしたいのです。
  56. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 私は、六十五歳が適当であるが、いま財政的なわけでそうは急にまいりませんということであれば、これはいつごろまでにそういうようにいたしたい、こういうことも考えなければならぬわけでありますが、私は老人無料医療はいまの社会的なニードから見て七十歳が適当であろう、こう思いますから、したがって年次計画も申し上げるわけにはまいりません。  しかし、これは私どもだけの意見で政治が動くわけじゃございません。また実施をしてみて、国民全体の意向がそうであるということであれば、これも無視できませんから、そういうような政治情勢なり社会的ニードなりを勘案をいたしまして、これは私は鉄則だということを理屈の上で申しているわけではございませんので、したがってそういう事態に対応して善処はいたさなければならぬと思っておりますが、おまえはどう思うか、厚生省はどう思うかと言われると、いまこういうふうに思うておりますと、こう率直に言っているわけであります。
  57. 山本政弘

    山本(政)委員 そうすると、国の老人に対する政策というのは、いつも地方自治体を指標にしながら、そのあとを追っかけていくということが政策なのですか。これは問題ですよ。私が数字をあげて申し上げたところが、それはもっともな数字である、こういうお答えを私は局長からいただいた。しかし現在はということで、いまはそこまでいかないという話ですけれども、大臣のお答えはずっと後退をしているわけですよ。いまのお話を聞くと、地方自治体先行、そしてそのあとを追っかけて老人対策というものを国がやる、こういうことになるんだったら、私はやはりたいへん問題があると思うのです。先ほども申し上げたのですが、いまからずっと高齢化現象というのが起きつつある状態の中で後退をした考え方であるとすれば、私は納得できない。ニードからいったって六十五歳というのは必要になってきているんですよ。それは大臣おかしいです。もう一度御答弁願います。
  58. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 私が六十五歳が適当だと思って、だんだんと七十歳ぐらいに後退したのなら、おまえは後退したと言われてもやむを得ないと思いますが、私は、現在はそういうように把握をしている。しかしまあ委員の御意見や、また世間のニードも、おまえは見当違いをしておるということであれば、これまた率直にあれをいたしましょう、こう申しておるわけであります。
  59. 山本政弘

    山本(政)委員 まあ私は、いまの大臣の御答弁を聞いて、ちょっとがっかりしたのですけれども、総理府の社会保障制度審議会から大臣あてに「老人福祉法の一部を改正する法律の制定について」という答申が出ております。それには「しかしながら、本審議会は、さきの「医療保険制度の改革について(答申)」において各種の案を検討した結果、それぞれの医療保険制度の中に公費をとり入れながら老人に対する給付率を高める方法が最も適当であると提案した。今回の案は、被用者保険の被扶養者および国民健康保険の被保険者について、保険でカバーされない部分を老人医療費として支給しようとするものである。」こう書いてあります。「この方式をとる限り、保険制度の中でなら解決できる部分が残されてしまった。たとえば、所得による適用除外の人がでること、事務手続が煩雑になることなどの点であり、そこに批判が生じている。また、適用年令を七十歳以上とし、引き下げに対する将来の展望を欠くことに疑問をもつ向きが多い。」こう書いてあるのです。それでは大臣はこの答申というものを尊重されないということになりますよ。「保険でカバーされない部分を老人医療費として支給しようとするものである。」しかし残念ながら所得による適用除外の人が出たり、あるいは事務手続が繁雑になったりすることもある。そこに批判が生じておる。こう書いてある。そして最後に、適用年齢を七十歳以上とし、引き下げに対する将来の展望を欠いておるということがある。そうすると、いまの大臣の御答弁を聞く限りにおいては、大臣は社会保障制度審議会の「老人福祉法の一部を改正する法律の制定について」の答申を尊重しないということになると私は思うのですけれども、最後にその点をお聞かせ願いたいと思います。
  60. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 私は、まあ保険でやれば、いまの所得制限というようなこともなくなるわけで、したがって、保険でやるほうがいいのじゃないだろうかということで、まあ老人保険という制度も考えてみたらということであったわけでございますが、結論は、特別な制度を設けることには社会保障制度審議会では反対である。そうして、保険でやれば、いまの所得制限やそんなものをつける必要はないんでということ自体、私は矛盾していると思うのです、保険でやれば、こうなるのにということはですよ。ただ所得制限の問題は、これはもっと漸進的に考えなきゃならぬと考えているわけで、少なくとも扶養家族の所得制限というものはなくしたい。また、所得税を納め得る者は、所得制限してもらえないということも、もっと限度を上げたい、こう申しておるわけであります。  まあ年齢の点は、これは私だけがんばっているわけにはまいりませんから、一般の……。
  61. 山本政弘

    山本(政)委員 問題は、だから私は年齢の点でお伺いしていたわけでしょう。そして答申は、「適用年令を七十歳以上とし、引き下げに対する将来の展望を欠くことに疑問をもつ」こういっているんですよ。
  62. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 まあ、ここに書いておられるように疑問を持つお方が多いということは、私は認識をいたしますよ。七十歳という年齢の引き下げの展望を持たぬことはどうであろうかと疑問を持つ向きが多いということで――まあ疑問を持っておられるから、いまもいろいろ御質問があるんだろう、こう思うわけであります。その点は私は率直に認めます。
  63. 山本政弘

    山本(政)委員 最後のお答えが聞こえなかったのですが、尊重していただけるというわけでしょう。
  64. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 引き下げの展望を持たないことについては疑問を持つ者が多いということは、率直に認めます。
  65. 山本政弘

    山本(政)委員 つまり、いま大臣のお話があったように、私はやはり老人福祉法について現状にそぐわない点がたくさんあると思うのです。これは先ほども申し上げましたけれども年金にしても、療養にしても、施設にしても、サービスにしても、現状にそぐわない点がたくさん出てきていると思うのです。その点について私は二、三指摘したつもりですけれども、ですからそういう点では老人福祉法の要するに抜本的といいますか、根本的な改正というものをはかりながら、将来のお年寄りに対する対策というものを考えていただきたいと思うのですが、この点について大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  66. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 老人福祉法をもう一度考え直す――とにかく今日の経済成長の時点に立って、これから社会福祉へ政策転換をしなければならぬこの時点を踏まえて、もう一度考え直していく必要がある、かように思います。
  67. 山本政弘

    山本(政)委員 終わります。
  68. 森山欽司

    森山委員長 これにて本案についての質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  69. 森山欽司

    森山委員長 これより討論に入るのでありますが、別に申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  老人福祉法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  70. 森山欽司

    森山委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
  71. 森山欽司

    森山委員長 この際、増岡博之君、田邊誠君、大橋敏雄君、田畑金光君及び寺前巖君より、本案に対し、附帯決議を付すべしとの動議が提出されておりますので、その趣旨の説明を聴取いたします。増岡博之君。
  72. 増岡博之

    ○増岡委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党及び日本共産党を代表して、五党共同提案にかかる本動議について御説明を申し上げます。  案文を朗読して説明にかえさせていただきます。    老人福祉法の一部を改正する法律案に対する附帯決議   老人医療費の無料化は、時代の要請に即応したものであるが、なお政府は、老人福祉法の精神にのっとり、老人福祉対策全般の拡充に努めるとともに、特に次の事項についてはすみやかに改善を図るべきである。  一、無料化の対象年齢を六十五歳に引き下げること。特に「ねたきり老人」の対象とりいれについてはその実現を急ぐこと。  二、老人医療費の支給に関する所得制限は撤廃すること。  三、老人医療対策の実施にあたっては、医療供給体制の整備のほか、特別養護老人ホームの拡充、家庭奉仕員制度の充実その他在宅ねたきり老人対策の強化が不可欠であるので、これら対策の充実を図ること。  四、老人の特性にかんがみ、一般医療のほか、介護面の強化、リハビリテーションの充実等のために必要な措置を講ずること。  五、成人病の早期発見、早期治療の実をあげるため、壮年期における健康診査制度を設けること。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。(拍手)
  73. 森山欽司

    森山委員長 本動議について採決いたします。  本動議のごとく決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  74. 森山欽司

    森山委員長 起立総員。よって、本案については増岡博之君外四名提出の動議のごとく、附帯決議を付することに決しました。  この際、厚生大臣より発言を求められております。これを許します。斎藤厚生大臣。
  75. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして検討いたしますとともに、今後老人福祉の向上に一そう努力をいたしてまいりたいと存じます。     ―――――――――――――
  76. 森山欽司

    森山委員長 おはかりいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  77. 森山欽司

    森山委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     ―――――――――――――   〔報告書は附録に掲載〕
  78. 森山欽司

    森山委員長 この際、午後一時まで休憩いたします。    午後零時三十二分休憩      ――――◇―――――    午後一時十二分開議
  79. 森山欽司

    森山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人として社会保障制度審議会会長臨時代行近藤文二君、健康保険組合連合会会長安田彦四郎君、日本労働組合総評議会幹事立花銀三君、全日本労働同盟政治福祉局長小川泰君及び日本医師会常任理事小池昇君に御出席をいただいております。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人の方々には、御多用中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。何とぞ率直な御意見をお述べいただきたく存じます。  なお、議事の都合上、最初に御意見を十分ないし十五分程度に要約してお述べいただき、そのあと委員からの質疑にもお答え願いたいと存じます。  それでは、まず近藤参考人にお願いをいたします。
  80. 近藤文二

    ○近藤参考人 近藤でございます。  私、社会保障制度審議会に関係しておる者として、お呼び出しにあずかったようでございます。したがいまして、審議会を代表しての意見ということになりますと、たぶんお手元にお配りしていただいておると思いますが、二月十六日に、厚生大臣あてに答申いたしました意見が、すなわち私のこれからお述べする意見ということになるわけでございますが、この答申の中には、問題点をただ指摘しただけにとどめておりますもの、あるいはいささか抽象的に過ぎるような表現もないわけでございません。したがいまして、審議会の意見としては、その答申を中心にお考え願いたいと思うのでございますが、もしお許しを得ましたら、私個人として、学識経験者の一人として答申に盛られていない、より具体的な意見を述べさしていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。(「異議なし」と呼ぶ者あり)では、そういうことで率直な私の考えを述べさしていただきます。  まず第一が、標準報酬の上下限を改正するという件でございますが、これにつきまして厚生省側の説明は、大体昭和四十一年四月ごろから現在までの間に賃金がおおよそ二倍になっている。それにいわばスライドさせて考えたのが今度の案である、こういう御説明でございました。しかし、この標準報酬の上下限をいじるということにつきましては、保険料率というものとの関連を考えていく必要があるのでございまして、料率の引き上げとからんで標準報酬の問題を取り扱う必要があるのではないか。そういう点から、今回の提案の説明の場合には、いささか説明が明確でないような点もあったわけでございますけれども、しかし大体において、現在で最高の保険料をお払いになっておる方が七千二百八十円という金額であるのが、今回最高一万四千六百円ということになりますので、料率の引き上げの問題もありますけれども、大体二倍に近い。  それから、もう一つ私が絶えず気にいたしますのは、他の保険との関連でございまして、具体的には国民健康保険の最高保険料というものとの関係を見ておく必要があると思います。現在国民健康保険の最高の保険料は、年間八万円、月額にいたしまして六千六百円程度でございますが、これと先ほど申しました一万四千六百円と比べますと、健康保険のほうが最高額が多くなりますけれども、これは事業主と被保険者とが分担されるわけでございますので、七千三百円ということになりますので、大体六千六百円から見合いますと、少し高いという感じはいたしますが、ある程度厚生省の説明が納得できるのじゃないかというふうに考えます。  ただしかし、十万四千円の上限を急に二十万円に引き上げるというのは、引き上げ方が少し激し過ぎるのじゃないかという考え方もないわけではありませんし、またこの標準報酬の引き上げにつきましては、たとえば厚生年金保険の場合の標準報酬と、これをにらみ合わしたときにどうなるかというような問題、これも当然出てくるかと思います。厚生年金のほうは一万円が下限で、上限が十三万四千円でございます。そういう点も多少考慮に入れなければならないかと思うのでありますが、私個人としては、所得再分配という見地からいって、まずこの上限の引き上げには賛成でございます。  ただし、下限につきましては、実は最低賃金とのからみ合いを考えますときに、私個人としては、三万円ぐらいにしませんと、ちょっと問題があるのじゃないかという気がいたします。それにつきましては、被保険者の負担がかなり増という結果になるという問題があるのでございますが、その場合には大体今日の段階で三万円以下の賃金を払っておるという事業主側にむしろ問題がありますので、そういう場合には、かつて行なわれましたように、この増加分については事業主が負担するというような方法もあるのじゃないかということで、その点は制度審議会も指摘しておるのでございますが、私は最低限はそういう措置をとって最低賃金と見合う程度にまで上げるべきではないか、こういう考えを持っております。  それから、第二の問題は、料率引き上げの問題でございますが、私はできれば、料率をいじるよりは、その料率の基礎になりますところの標準報酬というものを操作して増収をはかるほうが理論的ではないか。さらに、もう一歩進めて、私日ごろの考え方から申しますと、たとえば失業保険に見られますように、賃金総額に料率を掛けるほうが標準報酬の方式よりは事務的にも事業主にとっては便利であり、また、保険保険との間のやりとりの違いというのが、それでなくなるのじゃないか。これは制度審議会も、労働省関係の場合と厚生省関係の場合で保険料算出の基礎が違っておるのはおかしいじゃないか、だから、理論的にはこれを統一すべきであるが、これには相当検討のひまがかかるというふうなことを述べておるのでございますが、ひまがかかるとしましても、もし今回のこの法案が抜本改正というものを踏んまえてのものであるならば、方向としては、そのいずれによるかの方向ぐらいは出さるべきではなかったかというふうに感じます。  それとの関連も出てくるわけでございますが、料率の問題の前に、いわゆる特別保険料の問題が今回の場合には出ておりまして、賞与に対して特別保険料を創設するという案が出されておるのでありますが、これは、私絶対に反対いたします。何となれば、このやり方は大企業には自由にしておいて、中小企業を対象にする政府管掌健康保険の場合、強制するという不合理がまず第一に私の納得できない点でございます。さらに「当分」という字が入りますが、この「当分」というのは、われわれのような正直な者にはわからぬので、当分が十年、二十年というような、日本語にふさわしくないような扱い方が現在見られますので、こういう書き方でおきめになることには異議がございます。  それから、大体総報酬制ということ、あるいは賃金総額主義ということになりますと、当然ボーナスは含まれるわけであります。失業保険の場合はそうなっておると思います。しかも今日、日本でいわゆるボーナスというのは、本来の意味のボーナスではなく期末手当でございまして、賃金あと払いという観点からいえば、これを含めるべきものであるし、三カ月をこえる期間の場合だけが標準報酬から省かれるということは、このいわゆるボーナスの出し方によって、入ったり入らなかったりするという矛盾をもたらすことになります。これは、おそらく事務的な関係から出てきたものと思いますけれども、理論的に申しますとおかしいのでありまして、本来ボーナスは保険料をかけます対象の中に取り入れるべきであって、それを特に中小企業だけに強制するということが納得できないからでございます。  次に、保険料率の問題でございますが、これは先ほども申し上げましたように、標準報酬あるいは賃金総額主義等々勘案いたしまして、措置すべき問題であり、今回の場合は、後に申し上げますように、千分の七十を七十三に上げるのは疑問であるという考えを持っております。その疑問の出てまいりますのは、国庫補助の定率化の問題に関連するわけでございまして、国庫補助の定率化を今度おきめになりましたことは、まさに評価に値すると思うのでございますが、その定率の国庫補助に対して五%という数字は一体どこから出てきておるのかということについては、何ら理論的根拠が示されておりません。私の粗雑な考えでまいりますと、国庫補助が国民健康保険に現在四五%なされております。このうち五%は調整交付金でありますから、これを省きますと四〇%、事業主が負担されないという理屈からいけば、その半額の二〇%という数字が出てまいりますが、国保の場合は七割給付、健康保険の場合は十割給付ということになりますと、二〇%の七割である一四%というのが、まず理論的には国庫補助率として妥当なものではないかと思います。しかし、一四%に対しては財務当局から強い反対があるとするならば、これは理論的でありませんが、かりに譲ることができるとしても、一〇%は出していただかぬと、福祉国家云々ということとはどうもつじつまが合わないような感じがいたします。そういう意味で、かりに一〇%にいたしましても、特別保険料を徴収する必要はなくなってまいりますし、その上に料率の引き上げを千分の七十二でとどめることができるからでございます。  そういうわけで、私個人の意見は国庫補助率をもう少し上げるべきだということになるのでありますが、これと同時に評価されるべきは、累積赤字を今回はいわゆるたな上げするということ、これはまことにけっこうなことだと思うのでございますが、法案を拝見いたしますと「当分ノ間一般会計ヨリ予算ニ定ムル金額ヲ限り同勘定ニ繰入ルルコトヲ得」とございます。その「得」というのがちょっと気に食いませんので、これは「繰入ルルコト」というふうにはっきりしていただくべき筋合いのものではないか。ことに「予算ニ定ムル金額」とございますから、国会の先生方によって適当に配分できるという余地も残しておるのでございますから、そういう意味において、できましたら第十八条ノ九というものを手直ししていただけたら幸いだと思います。  以上、簡単でございますが、許されました時間内、これだけのことを申し上げて、あとは御質問に応じて私の意見を述べさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)
  81. 森山欽司

    森山委員長 次に、安田参考人にお願いいたします。
  82. 安田彦四郎

    ○安田参考人 安田でございます。私も、私の個人的な意見を開陳させていただきたいと思いまするが、後ほど御質問にお答えいたしたいと思います。  まず私といたしましては、保険者として、保険を円滑に運用いたしまするためには、保険財政を健全化するということが最も緊要なことだと思います。健康保険組合は、自主的管理のもとに経営効率をあげておりまして、財政の健全化をはかることに努力いたしておるのでございます。保険者としては、絶えず不当な支出をチェックする、支出の合理化をはかり、なお赤字がある場合に限って収入対策を講ずる、これが正規のたてまえだと私どもは考えて、さような運用をいたしておるわけであります。  今回の健康保険法改正案は、政管健保の赤字累積二千億、このままで参りますと、四十七年度末には三千億になるといわれておりますが、このような状態が続きますれば、財政支出というものができなくなりまして、医療保険の円滑な運営ができない。そのために、被用者保険の中枢でありまする政府管掌の運営を円滑にするというためには、早急に財政対策を講じなければならぬ、これは当然でございます。  財政対策の方法といたしましては、まず私は、ただいま申し上げましたような支出の面につきまして対策を講じ、なお赤字があれば収入面について対策を講ずるというたてまえをとっておるのでありまして、支出面の対策といたしましては、診療報酬体系の合理化、あるいは保険医療機関に対するところの指導監督の強化、あるいは診療報酬支払い方式の改善合理化、なお被保険者に対する教育等たくさんあろうかと思いますが、現在の現物給付出来高払いというような方法におきましては、またいろいろ被保険者の間で問題がありまするが、ただ二千万人、二千五百万人、この一億国民のうちのわずか二割程度のものが全額給付でいいかどうか、さような面では一部負担というものも考えていかなければならぬ、かようなことを考えております。  かかる観点から今回の法案を勘案いたしてみますると、収入の対策のみがありまして、何ら支出面の対策がないのは片手落ちである、私はかように判断いたしておるのでありますが、しかし、政府が引き続き、財政対策だけでなくて、支出面に対するところの医療保険の各法の改正案も出すということでございますので、まずそのような立場に立って、私はこの法案を考えてまいりたいと思っております。  次に、改正案のうちの健保組合が直接関係のあることにつきまして、ことにお聞き取りいただきたい問題があるのでありますが、これは政府管掌でも同じであろうかと思うのでありますが、現行の標準報酬の十万四千円というのは、これはたしか四十一年の四月に決定されたことでありまして、すでに六、七年を経過いたしております。その間に賃金の水準も相当上がっておりまするし、また現在、組合ではおそらく、さようなことに達している者は五人に一人以上の人がいるということでございますので、給料の高い者には多くの保険料を持ってもらうべきでありまして、賃金の上昇に見合って、標準報酬は当然私は改定すべきだ、かように考えております。またその間、医療費が大幅に上がりまして、組合の財政も苦しくなっておりますので、円滑な運営をはかりますのには、この点についても、ぜひ当然引き上げていただきたいと私は考えております。なお、高給者が多く負担するというようになりますれば、給料の低い人はそれだけ負担が軽減するという議論にもつながるわけでございます。  このような観点からいたしますならば、提案に出ておりまする二十万円というものは、私は、毎年これは標準報酬を改定するということは、なかなかむずかしいのでありまするから、今後のこと等を考えますると、必ずしも高額過ぎるというような考えを持つものではございません。  次に、賞与から一%、特別の保険料をとるという点につきまして、賞与の性格から見て、いろいろ議論があるのでありますが、健保組合の場合は、これが組合の自主管理運営方式といいますか、任意といいまするか、労働組合の方と事業主の方と相談してきめるということになっておりますから、これは自主管理運営で特に問題はないと思いまするが、しかし、社会保険料という性格から見まして、賞与についても一定額の限度を置きまして、これを設けるということについては、私は賛意を表するものであります。なぜならば、賞与は賃金のあと払いというようなことを言われておりまするから、これは保険料というものは、賃金の総体にかけるものでありますから、私はこれは当然だと思っております。  次に、その他の項目について二、三の意見を述べさせていただきますならば、累積赤字のたな上げ措置についてでありますが、四十六年度末予想されまする累積赤字は二千億円、一般会計からの繰り入れによりまして、これを補てんするという措置でございますが、これは実質的に見まして、政管健保で二千億円のいわゆる国庫負担をやるということになりますので、これは高く評価して私は賛成でございます。  国庫補助を従来の定額の補助から五%と定率化した。この定率補助に切りかえましたことは、一歩前進であると考えまするが、国民健康保険に対する国庫補助率、ただいま近藤先生が言われたこと、あるいは政管健保の体質の上から、その率は少なくとも私は一〇%あるいはそれ以上の引き上げが必要ではないか、かように考えております。  いわゆる保険料率の弾力条項の件でございますが、関係審議会の意見につきましては、これは消極的であります。しかし、私は、この医療保険というものが短期疾病保険で、一年ごとに計算をいたしますので、多くかかれば、これはふやさなければならぬ、また少なくて済めば減らさなければならぬ、かような収支の財源の状況が変動いたしますので、収支の安定をすみやかにはかるという意味におきましては、理論的に考えて、これは当然考えるべき筋であろうと考えております。組合におきましては、この保険料率は、毎年、収支状況によりまして組合会できめておりまするし、やはりその最高限度というものがきめられております。  ただ、弾力条項につきましては、賛成でありまするが、この運営で注意しなければならぬことは、保険料率を上げるという安易な考え方でなく、まず十分に、前に申し上げましたような支出対策を講じ、最大限の努力をいたした上でなければどうか。なお、これを発動するにあたりましては、今度の法律では、社会保険審議会の答申をまってやるということ、これを十分尊重していただきたい。さような面が、私が強く要望する点でございます。  なお、政管の保険料率の引き上げにつきましては、現状においては私はやむを得ぬ。当然年々上がっておりまするし、また六、七年間も据え置きでありますから、これはしかたがない、当然やるべきだと考えております。  以上、個々の具体的な意見は別といたしまして、全体として、私はこの保険法改正には賛意を表するものでありまするが、財政対策といたしまして、政府は、この支出面の適正合理化をはかる措置を十分に行なうという前提条件に私は立って賛意を表したいと思っております。  政管健保の赤字の原因を徹底的に究明して対策を十分に講ずるということを私は強く要望しておきたいと思うのであります。したがいまして、このような努力が行なわれずに、安易に収入対策のみを考えていくということにつきましては、いわゆる日夜経営努力をいたしておりまするところの組合から、ただいま問題になっておりまする金を取り上げて、二分の一の財政調整をするというようなことになりましては、私はこれはたいへんな問題だと思いますので、この機会に、社会労働委員会先生はおそらく御論議になろうかと思いまするが、この際、絶対にさようなことは私はまかりならぬと思っておりまするし、健保連といたしましても絶対反対いたしておりますので、十分お聞き取りを願いたい。ありがとうございました。(拍手)
  83. 森山欽司

    森山委員長 次に、立花参考人にお願いいたします。
  84. 立花銀三

    ○立花参考人 私は、総評の組織を代表しまして、特に被保険者、家族をたくさんかかえておる立場から、これに対する率直な御意見を述べさせていただきます。  第一に、今度の一部改正の内容は、いわゆる政管健保の赤字の大半を被保険者並びに事業主に負担をさせる、こういうことであります。これについては、私どもは反対であります。したがって政府は、この問題を抜本的にもう一ぺん考え直していただきたい。ただ、何でも反対というわけではありませんが、一つだけ賛成の項があるのであります。それは、標準報酬の上限については、厚生年金の十三万四千円に合わせていいんじゃないだろうか。これは厚生年金保険法との合理的な運用の面においても賛成をする、こういうことであります。その他の問題については、この際、もう一ぺんこの問題を撤回をして再検討していただきたいということであります。  なぜ私どもが、そういうことを申し上げるかということの理由を申し上げたいと思います。  第一の問題は、政管健保の赤字ということは、なぜこういう赤字になったんだろうか、このことが第一に問題だと思います。私が多くを申し上げるまでもありませんが、政管健保に入っておられます二千数百万という被保険者の方々は、大体、中小企業に働いておりまして、総体的に賃金が低いわけであります。また大企業から定年退職あるいは人員整理などによって首を切られて中小企業に就職する高齢者がたいへん多い、こういうふうな状態の中では、医療費がかさむということが当然の結果だと思うのであります。したがって、こういう政管健保の赤字の性格は、本来、政府社会保障的観点に立って負担をすべきである、こういうことであります。  第二番目に、私どもが考えていることは、いま安田会長のほうからもお話がありましたけれども、政管健保の赤字そのものは、確かに組織上の問題もありますが、いわゆる医療供給体制が、そのほうの整備が十分なされていないんじゃないだろうかということがたいへん大きな問題だろうと思うのであります。これにつきましては、四十五年の四月十三日に当衆議院の決議があるのであります。私が申し上げるよりも、もう議員の皆さんが御承知のとおりでありますが、政管健保の赤字の原因は、医療機関の不当請求などによって多くの損害を与えているんじゃないだろうか。厚生省並びに地方自治体がこれに対する改善の指導監督をやれという決議をしているのであります。そのあと厚生省や地方自治体当局がどういう対策をとったのだろうか、私も保険審議会に参画をしておりまして、当局のほうから再三説明を受けたのでありますが、ほとんどそういうものに対する手が打たれておらないというのが実態なのであります。しかも、最近はにせ医者問題が出るとか、保険があっても差額徴収を取られる、また差額ベッドがあって、ほとんど普通の保険では入院できない問題がある、そういう保険があっても保険自体が十分使えないという状態が今日起きていると思います。そうしてまた、三時間待たして三分間の診療といわれておりますように、医療機関に対して、また医者に対する国民全体の不信感というものはかなり広がっていると思います。そういうものを十分整備をして、そしてかからないと、単に赤字が出たら保険料を上げるということでは、被保険者側のほうは、とうていこれには賛成しかねるという状態であります。こういうことを検討しながら、私は今度の改正案というものについては反対であります。  もう一つ私が申し上げたいのは、制度審議会あるいは保険審議会のほうから二年間にわたって、医療保険体制全体の抜本改正に対する答申案が出ているはずであります。そういういわゆる国民全体の総意を集めたといわれるこの審議会の答申というものが、ほとんど政府法案の作成の場合に無視をされている、ほとんど参考にされておらないのです。参考にしたにしても、ほとんどそれが法案の中身としてあらわれてこない、こういうことを再三繰り返しておるところに、私はいまの大きな問題があると思います。私ども政府が二年間もかかって討議をさした制度審、保険審議会の答申の線に沿って検討すべきじゃないだろうか、それを無視して再度また政府法案をつくるものですから、保険審議会でも、また制度審議会でも、政府の諮問案に対して反対という形が出る。そしてこれに対しては、また政府がそれを無視して法案をつくってしまう、こういうことを繰り返しておるために、被保険者並びに国民全体のほうから見ると、まさに国民不在の法案がまかり通っている、こういうふうな気持ちが被保険者の大多数の意見である、こういうことを私は申し上げたいのであります。  きわめて基本的な問題について申し上げましたけれども、以上申し上げまして、私は政府法案についてはまっこうから反対であり、再度これについては審議をして提案をし直していただきたい、こういうふうに思います。  以上でございます。(拍手)
  85. 森山欽司

    森山委員長 次に、小川参考人にお願いいたします。
  86. 小川泰

    ○小川参考人 私は、同盟の出身でありますので、同盟の本案等に関係する考え方を中心にして申し上げてみたいと思いますが、若干私見も交えながら、いま前三者の参考人の方々の意見に重複をするようなところは避けながら、意見を述べさしていただきたいと思います。基本的には私の前に意見を述べられた総評の立花さんと基調はほとんど変わりございません。そういうことだけ冒頭申し上げておきたいと思います。  私どもこういう問題を組合なりで考える場合、あるいは個人として見る場合にも、医療というものは一体何だろうという基本が明確に、その時代に合った認識としてされずに論議されることは、たいへんこれは方向性としてまずいのではなかろうか、こういう一つの基調を持っております。したがいまして、私どもしろうとが考えてみましても、現在の医療というものの認識は、単に病気にかかったから、それをなおすというだけの範囲のものではなくて、むしろ国民の健康を増進しよう、あるいは病気にかからぬような予防措置をしよう、あるいは管理、そして病気にかかれば治療をし、なお社会復帰するためのリハビリテーションというようなかっこうの、包括的なものの踏まえ方で対応するというのが、現在の医療に対するものの考え方ではなかろうか、このように実は私は考えておるわけであります。  そういった点を前提に置きますと、現在いろいろ保険制度がありますが、保険制度というものは、そういう医療行為というものに対していかに経済的にささえるか、こういうサイドから行なわれるものでありまして、本来保険医療とがダイレクト的に結び合って高い安いの論議をするというところに、私は問題の間違いを起こすポイントがあるのではなかろうかというふうにさえ実は思っておる一人であります。そういう意味合いで、現在の国民の医療全体あるいは保障的な全体のサイドから見ると、いまの仕組みというものが、かっこうはたいへんよくできておりますけれどもほんとうのところをついていないし、整理もばらばらだという意味合いで、まず本案が検討されるにあたっては、そういう前提的な周辺条項に最も的確に、最も大きくひとつメスを入れていただかなければいかぬということを、私ども考えていることを申し上げておきたいと思います。  特に、医療という場合には、必ず病気になれば、あるいは健康を増進しようとすれば、需要というサイドが一つ行なわれます。それにどうこたえるかという意味合いで、供給という問題が起こります。そういう観点からものを見た場合に、一体、いま国も社会もいろいろな制度も、こういう意味合いの保健サービスというものが、どれだけ一つの組織立てて考えられ、組み立てられておるかという点を考えると、たいへんこれから重要な検討を加えていかなければならぬのではないかという観点に立つわけであります。そう考えますと、これからの社会の流れを見た場合に、特にそういう意味合いから見ると、私が強調したいのは、公費というものを前提にしたいわゆる保障、こういう観点で、もう一側面を深めていただかなければならぬというふうに実は考えておるわけでございます。  そういう観点から見ますと、本日呼ばれて、ものを言えといわれたこの法案を散見をいたしますと、これは端的に申し上げまして、いま私が申し上げた中のささいの部分の、またその一部分の赤字対策という、当面対策のみがここに上程されておるというふうにしか受け取れません。したがいまして、本来こういうものを検討する場合には、ものの基本をきめ、そして抜本的な方向性をきめて、その上で原因が明確になって、なお現状がこうだとするならば、その対応策はこうだという意味合いで検討さるべきであって、何かものを進める場合に、さか立ちをしているような感じがしてなりません。そういう意味合いで、この法案の中の具体論に入ることにさえ私自身はちゅうちょせざるを得ないというふうに考えるわけであります。  そこで、そうは申せ、なおこの法案について意見をあえて述べよというふうに言われるならば、いま前者も申し上げたとおり、一番重要なことは、なぜこんなに政管健保が赤字になったのかという原因を関係者あげて私は究明すべきだと思います。原因のわからないところにその解決方法は見つかりません。そういう意味合いで、その点をしっかりひとつ諸先生方の御努力によって国民の前に明らかにしていただきたいものだと思います。そして、その原因がなるほどだということになれば、あえてわれわれもその負担に耐え得る覚悟をしてまいりたい、こういうふうに考えるわけであります。その辺がさっぱりわかりませんので、意見を申し上げる段取りまでまだ届いていないというふうに申し上げざるを得ないと思います。  さらに、その中でも私は申し上げておきたい点は、現在の医療を中心とする供給体制と、国民がひとしく生命というものを尊厳するというたてまえから、医療行為を受けようとする均等性というものを比較してみました場合に、一体現状の無医地区や無医村や、あるいは都市周辺に自由企業的に散在する医療供給体制というものと、国民が病気になったときに、あるいは健康を保持しようとする場合に、均等性が一体これでいいのかという点にまたがりますと、たいへんこれは現状の仕組みというやつは問題が多過ぎる、そういう点をほっておいて、赤字が出たから、それにどこかから金を持ってきて埋めよという点は、これまた私は主客転倒だというふうに考えざるを得ないと思います。その辺を第二番目に強調申し上げておきたいと思います。  第三番目には、私は特に病気になったから治療する、大いにけっこうだと思いますが、本来人間は病気にかからないほうが幸いだと思う。そう考えた場合には、特に保険という立場からではなくて、いわゆる国全体として国民の健康管理というところに、もっともっと私は社会的な立場で力こぶを入れるべきだということを主張申し上げておきたいと思います。そういう費用なり、そういう指導性向なりを出すのが国の責務であり、そこに本来的な公費負担の思想が達成をしてこなければならない、このように私は考えるわけであります。そう考えるときに健康管理あるいは公費負担、そして国の責務、その上になおかつ、保険というものが組み合わされて初めてこれらの制度は全きをしていくのではなかろうかというふうに考えるわけであります。  さて、その次に申し上げたい点は、いま三者からもしばしば触れられておるように、政府当局の諮問機関に、幾つかいろいろな諮問委員会、審議会というものが実はあります。そこでいろいろ論議をされて答申をする、大いに尊重されておるのだろうと思いますが、なかなか最近の傾向を見ますると、何のために審議したのだろうというかっこうで政府は立法措置をとっているという点については、前者も申し上げたので、私はこれ以上申し上げません。  ただそこで、一つ申し上げたい点は、たとえば医療ということになると、これはお医者さんのものだというふうに、ややもすると、そういうふうに結びつけ合う。そして、お医者さんの意見を十分聞こう――私は聞くのは大いにけっこうだと思います。しかし、こういうものを進める場合には、そういうものの見方をしたのでは誤りを起こすのではないかというふうに思います。一億国民おしなべて生きておるわけでありますから、全部が病にかかるという可能性を持っておる。とするならば、そういうものに対してどうやってささえ、あるいは助け合って保障していくかという場合には、医者の分野は医者の分野として分相応にこれは知恵をかしていただく、そういう意味合いで、その基本はあくまで国民の合意、いわゆるコンセンサスの上に立って、制度や仕組みやその財政の負担というものを進めていくという姿勢が基本になければ私はいけないのではないか、そういう意味合いで、これからものを検討する基本としてそういうものを申し添えておきたいと思うわけであります。  特に、生命に関する問題だけに、私は医療というものと医業というもの、いわゆる医療行為というものの意味するものと、その行為を中心にしてなりわいを行なうという面と、この関係というものをひとつ明確にしていただかないと、何か医療行為の中になりわいの問題までも一緒くたにするところに問題の間違いが起こってくるのではなかろうかという意味合いも込めて、全体でひとつこれは大いに検討を加えるべき時期に来ているのではないかというふうに考えるわけでございます。そういう知恵をしぼり合って、いま、現段階で考えられる最適なものができた場合には、われわれ被保険者、あるいは労働組合といえども、内容を明確にし、そのニードが明確になってくるならば、われわれの負担も適正である限り、あえて私はそれにこたえるのが私たちの責務ではないか、こういう観点に立っておりますので、基本的にそういった点を申し上げておきたいと思います。  そういう観点から本題の改正案の内容を標準報酬の問題、あるいは料率の引き上げ、あるいは特別保険料、国庫補助の定率化、あるいは弾力調整条項、さらに加えて累積赤字の一般会計による処置という問題等については、前者が述べたとおり、基本的にはこれに賛成するわけにはまいりません。部分的に意見を述べよといえば、多少はございますけれども、基調をそこに置いておりますので、あえてこまかい内容等には触れることを避けさしていただきたいと存ずるわけでございます。どうぞそういう意味合いで皆さんの御検討をぜひ心からお願いを申し上げたいと思います。  最後に一つだけ、この法案の中に入っているかどうか、ちょっと勉強不足で恐縮ですが、二千億の累積赤字をたな上げする、あるいは来年度になると、三千億の累積赤字をたな上げするということを一般会計で処分するという方向は、近藤先生あたりの言をかりると、たいへん賛成だというふうに言われますが、私はあながちそうは思っておりません。国の金はだれの金か、もとをただせば税収によって行なわれる国民の金であります。そう考えた場合に、はたして二千億の赤字の内容、あるいはやがて三千億になんなんとする赤字の内容の原因というものを明らかにしない限りは、これはまあたまったからしようがない、何らかの方法でやっていこうというふうな安易な国の費用の使い方ということは避けるべきだというふうに私は国民の一人として申し上げざるを得ないと思います。やむを得ざる措置として見るならば、賛成をする一つでありますけれども、踏まえ方としては、そういう考え方でいってほしいと思います。  そう考えますると、医療というものを中心にして、われわれは支出をする側であります。支出をする側があれば、収入を得る側があります。そこに所得の発生が生まれ、所得を中心にして税制というものがそれにかぶってまいるということになれば、当然に赤字をずっとたどっていき、あるいは収支というものをたどっていった場合に、はたしていまの税制が、この国庫の体制の中で正しいのかどうかという問題も同時に追及を願って、二千億なり、三千億なりのさばき方というものがもっと大きな観点からひとつ詰めていただかなければならないというふうな気持ちが一ぱいいたしますので、この点だけを具体論の中につけ加えさしていただいて、その他は総評の立花さんとほとんど変わりございませんので、私の意見とさせていただきます。  終わります。(拍手)
  87. 森山欽司

    森山委員長 次に、小池参考人にお願いいたします。
  88. 小池昇

    ○小池参考人 私は医師の一人といたしまして、今回の法律改正の問題に意見を述べさしていただきます。  本来われわれは医療が良心的に正しく行なわれるということにもっぱら力を注ぐのが本筋であります。そういう意味合いから、現在国民の医療ということに全責任を持って当たっておるわけであります。  で、国民皆保険という国の方策がここですでに定着いたしまして、そういう方式のもとに医療が行なわれるということになれば、当然私たちといたしましても、これに万全の協力をするという体制をずっととってきておるのでありますし、これからもそういう方向で国民皆保険の立場でこれに協力したいと考えておるのであります。しかし、現在の法律は少なくとも私たちが法律上の強制された立場で国民皆保険に参与をしておるのではございませんで、医師の使命感としまして、当然、国民のためを思い、そういう使命感の上に立ちまして全面的な協力を申し上げるということになっております。そういう立場から私たちは国民皆保険制度に賛成をし、また協力しているわけであります。  それで、今回の政管健保の財政対策問題につきましては、これのみを切り離しまして、これをどうこう、賛成であるとか反対であるとか、これを総括的に言ってしまうには、これは影響を及ぼしておる大きな問題がいろいろあるわけでありまして、いわゆる抜本改正と称されているものがこれに関連してきております。でございますが、今回は少なくともこの政管の財政対策という面に限りまして若干の意見を申し上げたいと思います。  医療というものは、学問の進歩が日常非常に早いテンポで進められておりまして、これを即刻取り入れるということが、国民のためにどうしてもわれわれとして主張しなければならない問題であります。したがって、その進歩とともに、あるいは薬学の進歩というものを含めまして、医療費というものは世界各国どこでも年々ふえていく傾向にあるのでありまして、それをあえて医療費がふえるのはけしからぬという目をもって、これに対処していきますれば、これは返り返りまして国民に対する不幸ということになるのではないかというふうに思います。  もう一つは、医療というものが、年々そのような質の変貌がありまして、したがって、これを金銭に換算しますればふえていくということになりまして、これによりまして医療費というものは年々ふえていきます。どこでもふえていくわけでありまして、したがって、保険の立場から、昭和四十七年度は一体収支対策はどうすべきかということを各方面でお考えになりまして、そしてこれだけの医療費が必要だということになれば、それに対する収入の道を考えていただくのも当然なのであります。そういう意味で、私は今回財政対策という点に限って申し上げますれば、一応支出に見合う収入は必ず確保していただきたいということも申し上げねばならないと思います。  しかしながら、そういう操作の中で問題点はたくさんあるわけでありまして、健康保険法律はまず一年に一回、あるいは二年に一回、国会において改正されております。その改正が行なわれるたびに、まずその財政対策におきまして、どういう方向改正の中身としてそれに盛り込んでいかなければならないかと申しますれば、やはり皆さんの立場としては、国民全般的な立場から、その国民に御負担願う保険料のほうを、これは全国民が公平に負担してもらうという立場からお考えになっていただかなければならないと思います。今回までいろいろと健康保険法改正が行なわれてきましたが、そういう意味から、国民の負担を公平にしていくということからは、ほど遠い改正に今回まで終わっておりまして、そういう公正、公平な負担を心がけていくという立場から、改正に盛り込まれたことは今回まで少しもございません。政管健保なら政管健保保険料をどうするかということだけに、そういう狭い範囲から、料率がどうだこうだという議論がなされまして改正が行なわれてきたといたしましても、いわゆる健康保険法の中で、これの対象になります国民の半数というものは、必ずしもこの政管健保だけでございません。政管健保対象者は二千六百万人くらいございますが、それとほぼひとしい組合管掌の保険対象者がおるわけであります。そういう意味から、国民の約半数を支配しております健康保険というものは、やはりその中で少なくとも公平な立場でものごとをきめていかなければいけないのではないかと思います。これをさらに残り半数の国民健康保険対象者まで入れてほんとうは考えるべきでありますが、それは一応抜本という立場から十分御判断願いたいわけでございまして、少なくとも健康保険法改正と銘打ってこれを審議におのせになるのでありますれば、その中でいわゆる政管の被保険者の方々と組合の被保険者の方々は公平な立場でこれを取り扱っていただきたい、そういう方向への改正ということで、少しずつその方向改正を盛り込んでいただかなければ、国民に対しまして不公平な取り扱いを皆さんがなさったという批判は当然受けなければならないのじゃないかと思います。  一例をあげて言えば、いわゆる政管の方々は標準報酬の平均においても少ない。これを一〇〇といたしますれば、組合関係の被保険者はおそらく、これは標準報酬で言いますれば一二六ぐらいになっているのじゃないか。新しい資料は私、持っておりませんが、私が知っている範囲ではそういうふうに違うということは、これははっきり言いまして、国民の半分を政管と組合と二つに分けておる現状では、片方は収入のいい人々のグループだ、片方の政管は収入の劣っているグループだということは、はっきり言えると思うのであります。そういう意味から言いまして、こういう方向をそのままにしておきまして、政管のほうからだけ保険料を上げていって赤字を埋め合わせるという方向は、基本的には私は賛成しがたいのであります。  そういう意味から言いまして、今回の改正の要点は五つあるというふうに、過般、大臣が御説明になったわけでございますが、この保険料の上限、下限の問題とか、これは当然社会の、あるいは経済の状況に合わせまして、おそらく毎年でも改正していっていいことでございます。  また保険料率の問題、一体何%がいいかということを私たち医師の立場からあれこれこまかいことを議論することも論外の人間ではないかというふうに思っておりますが、いずれにしても、この上げるべき料率というものは、国庫負担をどれだけ政府が負担してくださるかということによって、自然的に、この支出のワクがきまっておれば収入のワクもきまる、その中で動かすことでございますから、国庫負担のほうに重点を置きまして、そちらのほうで可能な限りの最大の支出を願いまして、その上でこの政管の方々の保険料率のアップをできるだけ押える方向への努力をしていただきたいわけであります。  また、いわゆる特別保険料につきましては、私たちは、筋といたしましては総報酬制を考えておるのでございます。賞与につきましても、これは賞与をいただく立場の方々が、いまもいろいろお話に出ましたように、もらう際には、何か臨時的なものではなくて給与のあと払い的な、もうきまったものだという概念でこれを受け取り、そこから支出をする場合には臨時的の収入だからというような気持ちも、今度は何か持っていられるように感じるのでありますが、いずれにしても、この被用者保険ということそのものに、いろいろな疑問を私は持っておるのであります。そういう意味から、今回は申し上げませんが、給与だけに限って保険料を課するということになりますれば、少なくともこの特別保険料として賞与も合理的な計算の上で加算をして、総報酬制に一歩でも近づける方向改正していかなければいけないと思うのであります。  ただし、先ほどもどなたかお触れになりましたように、いわゆる政管と組合の公平という立場から、組合のほうはもう賞与からは一銭も取らなくてもいいような解釈ができる法律というのは、私はきわめて不可解でございます。そういう意味で、公平という立場から、特別保険料に対する料率も、今回の改正では、組合で自分の財政状況で自由にできるようになっておるようでありまして、千分の十をあえてとらなくても、千分の一でも二でも、それは組合で自主的におきめになるというような法律のようでございます。そういう立場から、一方の政管は千分の十、つまり本人負担はその半分とはっきりと法律できめてしまうという不公平な立場を強制することにならないようにこれはお考え願いたいわけであります。  現状でも、すでに負担の不公平ということがはなはだしくなっておりまして、特にこれは健康保険組合で出されている年報にあることだから、はっきりしたことだろうと思いますが、一方の政管の被保険者は千分の七十の半分、三十五は、きちんきちんと月給から差し引かれる。しかし、組合関係者のほうは、これは御自分で自主的にある範囲の中でおきめになっている。千分の二十あるいは十五というのもあったようでありまして、ことしはどうなっているか存じませんが、少なくとも公表された資料では、千分の二十しか本人は出していないというところも多々あるわけであります。こういう不公平ということは、私は国民の立場にかわって、ひとつ考えなければいけないのではないかというふうに思います。特に、いろいろ資料を拝見しますと、マスコミ関係の新聞社とか、あるいは放送関係とか、そういったところの組合は、事業主によけい出させて、本人は千分の二十とか、きわめてわずか出してすまし込んでいるということも、これは組合自身がはっきり数字でお出しになっている。  それから、いろいろ差しさわりがあるかとも思いますが、市役所とかああいうところは、本来共済組合であるべき形で出発したのが、健康保険組合のほうが都合がいい――というのは、料率をかってに減らせるから都合がいいのでありまして、私に言わせればそう思うのでありますが、これがみな健康保険組合をつくっている。そして料率は、市役所と労組が交渉なさるかどうか私は知りませんが、マスコミと同じように千分の二十ぐらいに減らして、あとは市役所に出させる、こういう姿は不公平の最たるものでありまして、そういうものはぜひ健康保険改正のたびに頭に入れながら法律改正をしていただかなければいけないのではないかというふうに思うのであります。  時間が参りましたので、また御質問にお答えをする形でいろいろ述べさせていただきますが、国庫負担の関係につきましては、これはもう少しふやしていただきたい。それによって保険率を減らすことが可能になるという意味から、可能な限りふやしていただきたい。  そして累積赤字のほうの、厚生保険特別会計のほうでは、いわゆる赤字のたな上げをしてくださるということであります。本来ならば、これまでの累積赤字というものは、収入の道を講ずる上におきまして非常に不公平があったというところから出てきている、それも原因の一つになっているのでありまして、ひとり政管の被保険者が負うべきものではないと思いますので、これを今回国庫により一応解消いたしまして、四十八年度から新しい立場でりっぱな保険制度にしていただくという意味を感じまして、私としてはこれも賛成いたす次第であります。  以上、私の述べましたことは非常に概念的なことで、お役に立つかどうかわかりませんが、法案の審議にあたりまして私が申しましたことが、いささかでも御参考になれば幸いと存じます。どうもありがとうございました。(拍手)
  89. 森山欽司

    森山委員長 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  90. 森山欽司

    森山委員長 質疑の申し出があります。順次これを許します。大原亨君。
  91. 大原亨

    ○大原委員 それでは、時間に限りがありますが、逐次御質問をさせていただきます。  健保連の安田会長に最初にお尋ねいたしますが、いま政管健保と組合健保の被用者保険における割合は、いままでお話があったとおりですが、政府管掌健康保険から組合管掌健康保険に移行する、つまり組合管掌で健康保険をやる、こういうことの障害といいますか、まあ三百名、千名の問題はありますが、これは一体どこにあるのか。小池さんのお話もありましたが、私は逐次御質問いたしたいと思うのですが、組合管掌の政府管掌に比較をいたしましてのメリットというものは、私はあると思うのです。  なぜかといいますと、労務対策云々の問題はありますが、――いまのお話を通じましてありますが、国際的にも労働者、被用者に対する医療保障について、あるいは社会保障の問題については、やはり国全体の政策の問題であると一緒に、事業主がこの問題については、たとえば児童手当のように、責任を負うていくという考え方があるわけであります。国際的な、そういう議論されました蓄積というか、憲章的なものがあるわけでありますが、組合管掌のメリットは、使用者も労働者のほうも、それぞれ立場が違って利害が一致しないのでありますが、しかし、医療について、治療だけに限定をしないで、予防する、健康管理をやっていく、そしてできるだけ早く病気をなおして、治療費を少なくして、そして元気で労働する、こういうことにおいては、労使は一致点があると私は思うのです。医療に関する限りにおいては、一致点の追求ができる。安全という問題もありますが、そういうふうに私は考える。そこで、組合が労使の代表者を通じまして議論をし、代表者を選んで民主的に運営をしていく、そういうことを通じまして、今日の疾病構造や社会的な条件の変化の中でわれわれが考えることは、病気は複雑になってきているわけですから、そういう点で、予防とか健康管理について力を入れなければならぬ。これは政府の保健所やその他の活動の責任でもありますが、組合自体においても、そういう努力をなされている場合においては、その問題のメリットは私は認めるべきであろうと思うわけです。  そういうことを健保連はかねがね主張いたしておるわけですから、政府管掌の健康保険は、私はいつも言うのですが、一番非能率で中身が悪いというのは何かというと、厚生官僚が中央集権でやっているということもそういうことでありますが、中央集権的であるから、審議会等がございましても、十分にこれが、答申の問題等議論になりましたが、反映できない仕組みになっている。二千数百万の膨大な組織である。一番の問題は、予防とか健康管理については、事業主が労務管理として直接にやること以外には、そういう保険の運営においては、治療との関係においては、これは関係なしに進んでおる。政府管掌はそういう膨大な組織でありまして、労働者や国民が参加できない。そういう官僚的な、中央集権的な、非能率な事務的な組織になっているところが、長所はあっても、これは短所であります。私は社会党ですから、社会主義ということを究極には考えておりますから、国営がいいだろうというようなことを言う人もおるでしょうが、私もそういう議論は、いまの問題については、百分の一かぐらいは持っているわけでありますが、しかしそのことは、現状をどうするか、プロセスをどうするかという問題を除外しては議論いたしていないのであります。  したがって、安田さんにお尋ねしたい点は、組合経営にしていきながら、その長所を発揮するということで、それがいいとするならば、そういう方向へ移行すべきであると思うけれども、その障害は一体何か、こういう点について率直な御意見をお伺いいたします。
  92. 安田彦四郎

    ○安田参考人 私は被用者保険のメリットといいますか長所は、まずその会員がその運営に参加するということであります。したがいまして、ことに労働組合、私から申し上げれば、被保険者の方方が自分の意向を十分反映して運営するというところにあるのであります。したがいまして、その運営にあたりましては労使がともに相談していくというところに長所があるのでありますが、いまの法律では、三百人以上は組合ができるということになっておりますが、やはりこの保険を運営してまいりますのには、あまりファンドが小さいと危険分散というような問題がございまして、そこに法律どおりに組合に移行するということがなかなかできない問題がございます。したがいまして、私どもは組合方式を進めてまいりますのには、やはり地域なり、あるいは小さな小企業でありましても、同業種というようなものが集まりまして、お互いが総合組合とか地域保険というものをつくりまして運営できるファンド、たとえば千名なり二千名、三千名あるいはそういう程度のものができましたならば、組合方式に移行さしていただきたいというのが私の意見であります。  被用者保険の経営主体というものは、政管一本というような大世帯では小回りがききませんので、私は組合方式を進めていくべきだと思いますが、組合方式を進めてまいりますと、やはりいま自由経済の中では格差ができてきますし、いまお話がありましたように、やはり経営の不如意なところも出てまいりますというようなことから、私は将来被用者保険は全部組合に一本化すべきだ。それには、今日の政府管掌をどんどん組合にしていただくのには、組合員がお互いに相互扶助というものをやらなければならぬ、あるいはお互いがお互いに助け合わなければならぬ、それが私どもが今後抜本改正の中でお願いしようという問題でありまして、私どもといたしましては、共同基金というようなものを立てまして、さようなことをお互いが助け合っていく。たとえば不如意な組合に対しましては、一時不如意の金額をお助けするとか、あるいは高額医療費というものに対しましては、それをある一定の限度というものをファンドを通じまして見ていくとか、最近におきます産業機構の改革、あるいはエネルギー革命等による炭鉱等の離職者が非常に多い。それには五十五条関係で離職者を見るというような、さようなものがふえてまいりますと、そのような問題もただいま検討しておりますが、まず組合に移行するという場合には少数ではだめだ、したがって少数の組合ができましても、お互いが組合方式を進行していく場合には、お互いが助け合いをしていくということ、さようなことが確立いたしませんと、なかなか組合に全部移行していくということはむずかしい。  で、いま私どもはさようなものを練っておりまして、やがて先生方にお願いいたしまして立法化さしていただきまして、組合に全部なれるような方式、したがって、お互いが困っても組合間でお互いが助け合いできる、これは一つの組合間におけるところの財政調整でございますから、そういうようなものを将来考えて組合方式を進めてまいりたい、かように考えております。
  93. 大原亨

    ○大原委員 それから近藤先生にお尋ねしますが、国庫負担を一四%、少なくとも一〇%程度導入ということを言われたわけでありますが、私どもはやはり政府管掌健康保険は、言うなれば吹きだまりのようなものでありますから、日本の雇用問題も影響いたしまして、五十五、五十七で定年になった人が中小企業へ行って安い賃金で働き年をとる、そういう人々をも加えておるということであります。ですから、本年は三兆円ですが、年年増大する医療費を税金で負担するか保険料で負担するか、自分はどういうふうに負担するかということをきめるのが政策でありますけれども、やはり政府管掌の健康保険に対しましては国の力をもって、地方財政制度にもそういうのがありますが、底上げをしていきながら保険料の負担と給付の中身というものを公平にしていく、そういう考え方は所得再分配の関係から税金の問題を含めて考える。この問題、国庫負担の問題については各公述人が共通に強調され、御意見があるわけでありますから、制度審議会は総理大臣の諮問機関といたしまして、大所高所から、そういう問題に対しましては政策上される必要があるのではないか。十年前に大内会長のときに出されました、かなり総合的な改革案の中にも若干私はそういう点が見えたと思います。  もう一つの点は、政府は今回出しました一部改正法案、今回の抜本財政改正法案、今度出してまいろうとし、出そうかどうしようか、どういうふうに出そうかというふうに迷っておるらしいのでありますが、いわゆる財政対策の閣法の改正の問題です。これらを共通することは、私は審議会を無視いたしておる、こういうことであるということでございます。政府管掌については、少なくとも健康保険法で審議会等があって、利害関係者が保険料の負担や自己負担等の問題等含めて、医療費の負担については合意をするというふうな仕組みですから、財政法四条との関係におきましても、私はこれは拘束性のある機関であると思う。したがって制度審議会は、大所高所の大きな機関でございますから、問題はあると思いますけれども、審議会の答申を尊重するという観点に立っての抜本改正についての――抜本改正といいますか、閣法改正についての政府の取り扱い方について、私どもは重要な考え方を持っているわけであります。それにつきまして御意見をお伺いさせていただきたい。  それからもう一つは、あらためて小池さんにお尋ね申しますが、私はいま医療の問題で一番大切な点は国民的な合意を得る点だと思うのです。その点では医師会の皆さん方は出るべき審議会には出られて、そしていまのような御意見をどんどん出されることが私は必要ではないかと思う。そこに断絶があることが、いろいろな誤解や対立や中傷を繰り返すということになるのではないか。いまや医療問題は非常に大きな政治問題です、環境破壊や健康破壊の問題がありますから。ですから、医師会の皆さん方は出るべき審議会には代表者を出して、少数意見保留の道もあるのですから、堂々と議論をしてもらいたい、こういうのが私どもの意見であるし、その議論を踏まえて国会においても議論いたしたい、こういう見解を持っておるわけですから、この点に対しまして医師会の御意見をお伺いさせていただきます。  以上であります。
  94. 近藤文二

    ○近藤参考人 先ほど立花さんや小川さんがおっしゃいました基本的な態度の点につきましては、制度審議会としましては、今回の政府案は、実は抜本改正を踏まえてのものではないようだから、意見を述べなくともいいんじゃないかというような議論さえあったのでございますが、審議会の法律的な役割りから申しますと、諮問されたものに対しては答えるべき義務がある、そういう観点から先ほど私やや次元の低いような形でいろいろな意見を申し上げ、個人の意見を申し上げたのでございます。  いまの御質問の問題は、いろいろなところに及んでおるようでございますが、国庫補助の問題につきましては、先ほどは国民健康保険に対する補助との関連で、現在の五%というのが問題であるという指摘をしたわけで、制度審議会は、五%を適当とする根拠は必ずしも明らかでないから問題だという書き方をしておるのであります。それをまた私、積極的に先ほどのような提案をしたのですが、これは実は前提として一人当たり医療費というものが各都道府県ごとにおいて非常な違いがあるというような医療供給側における問題が一つございます。そういうものを踏まえて国庫補助とか保険料率の問題をお出しにならぬと、実際はお返事しにくいということなんでございますが、もう一つ、いまの一人当たり医療費の問題と関連して、最初に大原先生がおっしゃいました組合主義でございますが、私は年来、国民健康保険も組合に戻せという意見なんでございます。これは医療保険と呼ばれるものは、一般保険理論で多数の被保険者がおれば、それで合理的にできるという性格のものではないのだというところから出発しておるのでございますが、健康保険法が制定されましたときも、基本的には組合主義をとっておったはずでございます。ただ組合主義でやっていけないところがあるから、その場合には政府管掌という考え方できたのであります。その証拠に、現行健康保険法の中にも強制設立の項があるのであります。これは一回も活用されておりません。そして政府のほうは政府管掌健康保険というものが中心で、組合保険はむしろそれに対する補足的なものだという宣伝をいたされまして今日に至ったのでございますが、現在は少し政府態度も変わっております。  と申しますのは、今回諮問されないようでございますが、一番問題に私が感じておりますところのものは、未適用労働者の強制適用でございます。これはおそらく百万事業所、二百万人くらいの労働者がおられると思います。中には包括的に健康保険に入っておられる方もおられますが、そうでない方もたくさんおられます。一方労働省の失業保険や労災保険は、ここ数年の間に全面適用をやるというふうに法律その他の面においても整備されてきたわけであります。ところが厚生省のほうは、この問題が非常にむずかしいというので、いまだに解決の緒に入っておらないのですが、これがもし実現されますと、組合を利用しなければ、現在の社会保険事務所の人員ではやっていけるはずがないのであります。したがいまして、そういう意味でも組合というものは必然性を持っておるのみならず、先生のおっしゃいました組合のメリットというのは、事業主と被保険者がお互いに組合によって健康保険に参加する、それが一番大きなポイントだと思います。  そういう意味において、まず組合を地域及び産業別に場合によりますと拡大強化して、そして推し進めていくべきであって、そういうやり方をした場合に、国庫補助の出し方をどうするかという、いろいろな抜本的な問題がございまして、先般制度審議会が答申いたしました昨年九月のこの答申書、たぶん先生のお手元にもいっておると思いますが、これをお読み願いますと、いろいろな構想を出しておるわけであります。ところが政府はこれをほとんど勉強しておられないのじゃないかということでそしててんでんばらばらに、いろいろな法案をお出しになるのは、まことに困るというのが基本的な態度でございまして、これはこれとして、一応さしあたりの財政対策としてお認めいたしますけれども、しかしこの中の弾力的条項というのは、これはむしろ抜本のほうに移すべきものであって、ここでこれをお出しになったことは、結局収支のつじつまが合うような案になっておるとおっしゃりながら、場合によったら、また料率を変えなければならぬということを暗示しておるようなもので、おかしいじゃないかということを私、厚生大臣にも質問したのでございますが、ともかくいろいろな前提条件に対する考え方が、いまのところ、われわれ納得できないようなかっこうになっておるという点では、立花さんや小川さんが言われたような基本的な流れとしてあるのでございます。  しかし、きょうはそういう高所からの問題でなしに、多少技術的になりますが、今度の法案そのものを御審議なさるという立場で、先ほどからいろいろ申し上げておる次第でございますから、したがって、その範囲内において私の意見というものをおくみ取り願いたいと思います。
  95. 小池昇

    ○小池参考人 御質問いただきましたのは、両審議会と私たちとの関係でございます。過去この審議会の検討された内容その他、私たちは逐一これを考え、反省し、そして検討しているわけでございますが、かつては私も社会保険審議会の一員としてその中に入っておった経験をもあわせまして、私の考えを述べさせていただきたいと思います。  先ほどの抜本改正の九月の答申に際しましては、これは総辞退直後の関係もありまして、非常にこの社会保障制度審議会の答申は次元の低い感情的な片寄ったものである。こういう態度で審議に当たる以上は、その中身を尊重をするわけにはいかないということで、はなはだ失礼ながらきつい批評をしたことがございます。また社会保険審議会のほうにおきましても、私はいろいろそこで意見も述べさしていただきましたが、両審議会とも私たちとは基本的な点で非常に違った点がございます。  その一つは、私たちは医療というものは、これが中心になって国民の健康を守るものである。その医療を非常に良心的な立場で医師も行ない、患者の要求もあわせ満足させるという立場から、保険制度というものが、これを助けていくという立場で保険制度があるわけであります。したがって私は、医療というものが中心で、それを育てて、国民の満足する形にするために医療保険というものがあって、それを社会の情勢に合わせまして改善していくという方向考え方が必要なんであります。これが社会保険審議会などにおきましては、まず保険制度をどうしたらよくなるか、そのためには前提として医療はこうやれというふうな考え方でものごとを進めているわけであります。したがって、医療保険というものが車の両輪だなどという議論まで出てくるわけであります。私は、車の両輪というものは、同じ者が同じ立場で、ひとしいものがあって初めて両輪なんでありまして、これは両輪という考え方には私は賛成できない。医療を助けるために回転するのが保険制度であって、これを車の両輪だというふうに対等の立場でものごとを考えていくという考え方は、私たちはとらないのであります。  で、社会保険審議会におきましては委員が二十九人ございます。そのうちの一人は医療の経験者を入れなければいけないというこれは法律になっております。したがいまして、この入れなければいけないということは、私は二十九分の一いればいいのだということには理解しておりません。医療の経験者を入れて、その発言を十分に尊重するという立場から必ず入れという法律になっているのだと思います。過去におきまして、そのような立場からほかの二十八人の方々が審議会に臨んでいろいろ発言をなされているとは私は思われないのであります。今日、一人さえ入っていれば審議会の多数決の意見は、これは医療関係者も従うべきだというふうな考え方で、むしろ入れ、入らなければいかぬということは始終伺っておりますが、尊重するということの実証はいままで一度もないわけであります。  したがって、審議会というものはもう少し、特に人員構成ということを、その人間も含めまして、たいへん失礼ではありますが、この委員となられる方の選び方というところに問題点もございますので、そういう点を考え合わせて、大きな意味での転換をしていただけば、私は参加できる状況になるというふうに思っております。現状では参加いたすつもりは、いまのところはないわけでございます。
  96. 大原亨

    ○大原委員 私は終わりですけれども、小池さん、いままでのいきさつはいろいろあると思うのです。しかし、いまや医療の問題はやはり非常に大きな国の問題です。それから公害や環境破壊の問題とも関係して非常に大きな政策の問題です。ですから経過はともかくといたしまして、医療担当者が大きな責任を負うておられるということはわかるのであります。ですから問題は、発言の質によるわけでありますし、そうしていまの発言の趣旨を考えてみましても、とにかく私どもは、お医者さんを含めて議論したいことがたくさんあることは何かといいますと、医師のいまの養成の問題、僻地医療の問題、こういう問題がまだたくさんあります。それから、たとえばスモン病ならスモン病の問題、そういう問題等におきましても議論したいことはたくさんあるわけです。ですから私は、そういう点でぜひともいままでの経過を離れて、そうして十分出るところに出てお互いに議論をしながら、そこで主張を明らかにしていかれて、そうして国会はその経過を踏まえながら、やはり立法については、重要なその経過を参照するようにしてもらいたい、こういう点を私は特に最後に希望いたしておきまして、私の質問を終わります。
  97. 小池昇

    ○小池参考人 一言申し上げたいのですが、いまお話しありましたいろいろな問題点につきましては医療審議会というのがございまして、そこへは医師会からも多数参加しております。そこで僻地の問題、公害の問題、あるいは公的扶助を要するスモン、その他の疾病すべてそういうところで論ぜられているわけであります。そういう意味では、私たちはお答えできるところにはお答えしていくということを一言申し上げておきます。
  98. 森山欽司

    森山委員長 次に、川俣健二郎君。
  99. 川俣健二郎

    ○川俣委員 たいへん端的にお述べいただきましたので、法改正を審議するにあたって、たいへん参考になりました。ありがとうございました。  そこで、私はせっかくの機会ですから、各参考人に端的に一問ずつお伺いしますことをお許し願いたいと思います。  まず近藤参考人でございますが、全体的にはこんな法はいかぬというお話の中でも、あえてするとすればという項目に国庫補助率の話が出ました。いまの五%というのは、これは根拠は何だというお話から、国保が四五%なんで、それから追っていくと、これぐらいがめどだというのをもう一度たいへん恐縮ですが、簡単にでもけっこうですから、近藤参考人にお伺いしたいと思います。  それから安田参考人にお伺いするのは、参考人各位が全部大体反対のようなお話です。あるいはまた大きく修正すべきだというお話です。しかし安田さんは何となくこう全体的に賛成だというニュアンスに聞こえたので、おやと思いました。ところがよく伺ってみますと、最後に例の財政調整絶対反対、二分の一方式ということで、陳述の中で請願的な力説がありました。  そこで私は、それじゃ一体ひとつこの改正案を引っ込めて、国庫補助をうんと上げて、抜本改正の中で改正するのならいいでしょうという意味なのか、いまの政府から出されたものでやるべきなのかということをもう少しお聞かせ願いたいと思います。その財政調整と切り離して、ひとつお願いしたいと思います。  それから立花さんにお伺いしますが、赤字だから保険料値上げをすればいいのだというのは、これは場当たり的で何ら改正のあれにならないのだということから、抜本改正はやはり何としてでも、その中でやるべきだというお話がありましたが、ひとつ保険審議会の委員でもあるようでございますので、保険審議会の空気も含めて、もう少し立花さんにお話し願えればと思います。  まず以上、三人に最初にお伺いしておきたいと思います。
  100. 近藤文二

    ○近藤参考人 それでは簡単に答えさせていただきます。  政府の提案では五%ということになっておりますが、私は、国民健康保険に対する国庫補助とのバランス論から出発いたしまして、一四%という率を一つ出したわけでございます。それは四五%のうちの五%は財政調整交付金という意味で定率国庫補助ということになりませんので、それを除きますと国保の場合は四〇%というのが現在でございます。国保は御承知のように事業主負担がございませんので、それを国がある程度見るというような意味から申しますと、半分は国庫補助で持つということになりますので、結局二〇というふうな数字が出てくる。しかし国保は給付が七割でございます。政管の場合は本人さんは十割でございます。この点につきましては、実は国保ではきわめてわずかでございますが、家族保険料に当たるものを取っておるわけでございます。政管ではそれを取っておりません。そういうこまかい問題がありますけれども、一応大まかに申しますと、その二〇%の七掛け、七割でございますから、一四%ということで、そろばんをはじいたわけでございます。必ずしもそれが正確な理論とはいえないか知りませんが、何らかそういう形で五%なら五%というものの根拠を示してほしかったのですが、根拠は出ておりませんので、それで私が、あつかましいのですが、一応こういう根拠も考えられるということで申し上げた次第でございます。
  101. 安田彦四郎

    ○安田参考人 次に、安田でございますが、私はこの保険財政の確立ということが、保険者の経営といいますか、だれがやりましても、まず第一に大切なことだと思います。したがいまして、今日被用者保険の中枢は、最初におきましては、やはり組合方式から発達したのでありますが、何といいましても、政府管掌の被用者保険が中核をなしておりますので、もしもこの屋台骨がこわれるということになりますれば、日本健康保険というものが壊滅してしまう、こういうことに相なろうかと思います。したがいまして、いままでの経過を考えてみますと、すでに私は累積赤字がこれまでになるまでも放置しておいでになったということは、おそきに失するという考えを持っております。したがいまして、この支出対策というものをまず手をつけていくべきだということを前にも申し上げましたが、もっと早く私は手をつけていかれるべきであった。さようなことで、私といたしましては、今日おそきに失したのでありますが、これをもって、いまの保険法改正によって政府管掌というものは正規に立て直るのだという政府の御提案でありますから、まず私といたしましては、いま申し上げました支出対策も必要でありますが、これをやっておりますと、多少の時間もかかりますので、まずさようなことをやっていただくとして、支出対策をぜひやっていただきたい。  それから国庫負担も五%ということは、いま近藤参考人も言われたように、私は少ないと思います、国保関係から。少なくとも一〇%あるいはそれ以上、さようなことを、私といたしましては、支出対策もぜひ検討するのだ、これに手をつける、あるいは国庫負担もふやすのだというようなことを、私といたしましては条件といいますか、強い希望を置くといたしまして、方法的にはこの保険財政の確立というものを賛成いたしておるのであります。
  102. 立花銀三

    ○立花参考人 審議会の内容でありますが、実は審議会としましては、政府が再三諮問をしながら、この答申を彼らが尊重しないというところにたいへん大きな不満があるのであります。たとえば昭和四十三年の三月でありますが、政管の赤字問題についての一つ見解を出しております。それによりましても、単なる赤字対策のみでは、健康保険改正問題としては改正に値しないのだ、そういうふうなかなりきびしい答申を昭和四十四年にしているのでありますけれども、それがほとんど参考にされない。   〔委員長退席、谷垣委員長代理着席〕 去年の十月、二年間かかってまたあの抜本改正を答申しました。それとまたほとんど相反するような諮問をしてきた。そこで審議会のほうとしましては、これはひとつ答申をよく読んでいただきたいのでありますが、かなり含みのある答申であります。今回の諮問は、これはもう抜本改正の諮問の一環としてやるべきものなのだ、それをまたこういう形でやってくるについては、たいへん不満だ。したがって本審議会としては、これは本意とするところではない、こういうものに対して諮問に答えるということは。しかし、どうしてもやれということであるならば、あえて答申をするとすれば次のとおりだということで述べているわけです。  そういうことなんで、私は審議会の中で、今度の場合でも四項目にわたって三者が一致した項目があるのであります。それすらもほとんど、ほとんどじゃなくて全く尊重されなかったということに対して、半ば審議会というものはあっても意味がないんじゃないだろうか、こういうふうな空気になっておることであります。そういう点で一応審議会というのは国民の代表を集めた機関だというふうになっておるわけであります。それを尊重しない政府態度というものは、まさに国民の要望と意見というものを無視してやっている、こういうふうに私どもでは考えざるを得ない。この関係を早急に改善をするように私どもは願っておるところであります。以上であります。
  103. 川俣健二郎

    ○川俣委員 次に、小川さんにお伺いしますが、基調は立花参考人と同じであるということから陳述されました。そこでいまどうやら皆さん方のお話を聞いてみますと、いよいよこれは政府から出されたやつは悪い法律だったということが感じられるわけですが、それにしても提案権が政府にあるし、これを委員会で審議しなければならないと思いますが、立花参考人と基調は同じです。したがって反対だとは言うが、小川さんの立場もあることでしょうが、各項目ごとにあえて政府案を修正というか、このぐらいというところの項目がありますれば、たとえば、先ほどの近藤さんの一四%のように、そういうものがありますれば、お聞かせ願いたいと思います。  それから最後に、小池さんにお伺いしますが、これはせっかくお医者さんに立っていただいたので、観点がちょっと違いますことをお許し願いたいのは、政管健保はなぜ赤字かという話の中に、よくチェック制がない、無統制だという――これはあまり当たっていないかもしらぬが、そこで小池さんも触れられましたが、政管健保と組合健保との違いというお話が出ました。そこで濃厚治療、過剰投薬というものは、これは政管健保と組合健保というものは年齢構成、労働条件等々あまりにも違うわけです。したがって病気にかかりやすいのは、どうしても政管健保のほうに多い。ところが聴診器を持つお医者さんのほうから見ると、――これは御意見が出るか出ないかわかりませんが、これはやっぱりお医者さんだって人間でございますから、この患者はあまり金を持ちそうじゃないということであれば、政管健保のほうをかげんするものなのか。濃厚治療というか過剰投薬というか、この程度でがまんして、あしたかあさってまで様子を見てからまた治療をしようという場合の動きが、政管健保患者と組合健保患者にそういう気持ちが動くものだろうか、せっかくの機会ですから、お聞かせ願いたいと思います。
  104. 小川泰

    ○小川参考人 それではごく簡単にお答え申し上げたいのですが、標準報酬の上下限の問題について、私どもは何もこれはいじってはいかぬという態度ではありません。先ほど申し上げたとおり、それには限度がある、段階性を持て、許容できるならば、いわゆる厚生年金等他の保険との関係等とも十分対比しながら行なわなければならぬ、こういうのが私どもの主張であります。  それから保険料率の引き上げ、これには反対であります。むしろ根元を見ろというのがわれわれの主張点で、そのまま許容するわけにはまいらぬ。  それから賞与の特別保険料についても、これは基本的に反対であります。なぜか。他の人が触れていない点をずばり言わせれば、保険財政を保持するような場合にはきわめて不安定な要素は排除をせよ、こういうものの考え方から、こういうものについては手をつけるべきではない、こういうことであります。  国庫補助の定率化、いままで定額であったやつが定率になった。これは大いにけっこうだ、方向性はけっこうだ。しからば五%はどうだといえば、先ほど近藤先生もおっしゃったように、根拠不十分、われわれにあえて言わせるならば、もしわれわれに率を言えとおっしゃるなら、私は二割ぐらいまで国庫補助は覚悟すべきだ、こういう方向性を持っております。  以上、簡単ですが、お答えします。
  105. 小池昇

    ○小池参考人 医師の立場から言いますれば、どういう種類の被保険者証を持って患者さんが来られたかということによって医療内容の差別ということに思いをいたすことは、これはございません。どういう被保険者であろうとも、医師は同じに扱っているというのがほんとうのところでございます。私がいろいろ今回ここにも参りまして述べているのは、医師全体の立場を代表してきた立場で、日本医師会ということで申し上げているのでありまして、個々のお医者さんがそういういまお述べになったようなことを考えているということは、実際ないはずであります。  それから、チェックの問題につきましても御指摘があったわけでありますが、組合のものと政管のものとでチェックの度合いが違うのではないかというおことばもあったのでございますが、これは組合はそれぞれそういう点に重点を置いているところもありますし、あるいはほとんどそういう点に重点を置かないところもありまして、いろいろございます。政管のほうは、これは全国的な立場で社会保険出張所が十分なさっていると思います。その間に明らかに数字的にこんなにも違うのだということが平均的な数字では出ておらないのであります。若干の違いはあるといたしましても、こんなにも違うのだということにはなっていない。これはある組合、特定の組合を設けて、そればかり一生懸命にやって、いわゆる法律関係、法規に関連しまして、あらさがし的な行為をやれば、ある程度出てくるということもあるとは思いますが、そういうことでなければ、平均的にチェックが特別にどうのこうのということはありません。もちろんチェックするということを私たちは反対だとか何とか言っておるのでございませんで、明らかな間違いは間違いとしまして厳重にチェックすることは、これは当然なことなんでございます。そういう気持ちでおります。
  106. 川俣健二郎

    ○川俣委員 どうもありがとうございました。
  107. 谷垣專一

    ○谷垣委員長代理 山本政弘君。
  108. 山本政弘

    山本(政)委員 安田参考人にお伺いをしたいと思うのです。  特別保険料でありますけれども、これは賃金のあと払いだというようなことで、特別保険料を徴収をするということに賛成というふうな御発言をいただいた。お伺いしたいのですけれども、政管健保というものが持っている本質的な体質というものがあると思うのですね、組合健保に比べて。そしてそれは、かりに賃金のあと払いといっても、着実に賃金のあと払いという役目を果たしているかといったら、私はそれは果たしていないと思うのです。特にいま申し上げたように、政管健保というものの体質というものを考えると、中小企業というのが多いのです。しかも統計によれば零細化するほど病人も多くなってきておるというようなことを考えれば、特別保険料というものを徴収をするということは、安田さんのおっしゃったような意味で、はたして正しいのかどうだろうかという疑問を実は私は一つ持っているわけです。その辺をどうお考えになっているのか。しかもボーナスというものは、特に政管健保に属する企業についていえば、ある場合には出ない場合だってあります。これはたいへん失礼な言い方かもわかりませんけれども、大手の組合とは違う場合がある。そうすると、そういうものに対して特別保険料というものを徴収していいのであろうかどうだろうかという疑問を私はぬぐえないわけです。それが第一点です。  第二点は、保険料も上げていい、それから標準報酬も上げていい、特別保険料も課していいだろうというようなお話があった。つまり率直に私申し上げるのですが、そういう意味では組合健保という立場から見れば、あるいはそういうことが言えるかもわかりません。しかし、それはやはり組合健保という立場に立った上での発言であって、客観性というものを欠いてるんではないだろうかという気が実は私はするわけです。それが第二点であります。  第三点は、弾力条項、いま千分の七十から千分の七十三に上げるのについても、これだけの議論が起きてるわけです。それに対して千分の七十三から千分の八十に上げるについて、これを行政当局の――少なくとも上げた以後は、七十三から八十までについては、あるいは言い過ぎかもわかりませんが行政当局の恣意にまかせていいのだろうかどうだろうか。かつてそういうことがあったけれども、これはやはり、私は国会が云々というつもりで申し上げてるのではありません。しかし、国会の議を経るべき重要な事項であると考えたから、やはりそういうふうにしたんだろうと思うのですけれども、これをもう一ぺん行政当局の恣意にまかせて、しかも幅からいえば千分の七までの幅があるわけですから、それをそのまま弾力条項を認めていいんだろうかどうだろうかという疑問があるわけです。  この三点についてお伺いをいたしたい。
  109. 安田彦四郎

    ○安田参考人 私は賞与というものは賃金と解釈しております。したがいまして、賞与というような名前で賃金が出ている。そういうようなことから、またこの保険料の負担の公平というようなことを考えますと、往々にして賞与という非常にあいまいな形で、把握できないものもあるというようなことから、私は賃金のあと払いということによって、この保険料を算定するということには賛成いたしております。ただし、それが青天井ということにつきましては、標準報酬をとっている以上、上限を設けるべきだ、かように考えております。  それから、いままで政府管掌におきましても、医学医術の進歩その他によりまして医療費が毎年毎年上がっておりまするし、いままでの経過から考えましても、千分の六十五あるいは千分の六十八、千分の七十というふうにやってきておるのでありまして、今回さようなことをしなければ政府管掌というものがつじつまが合わないんだということでありますならば、私は今日の組合の、たとえば千分の八十をとって運営している、あるいは千分の七十五をとって運営しているというようなものの努力から比べますと、政府も大きな組合運営と同じでありますから、それぐらいの努力はしていただきたい。それのかわりに大いなる国庫負担をしていただきたい、こういうことでございます。  それから弾力条項というものにつきましては、必ずしも政府がたくさんとれるということだけを予想しているのではございません。これは千分の七十三にしまして、いま私が申し上げましたような支出の面の対策を講じていただく、あるいは国庫負担を多量にやっていただくということになりますならば、千分の七十三を再び千分の七十あるいは六十八に下げていただくというようなことも私あり得ると思いますので、短期疾病保険を経営いたしますのには迅速にこれをやらなければなりません。それで一たん保険料をきめていただくのに、かような手続をとってやるということにつきましては、とても短期運営の妙を得ませんので、健康保険組合におきましては、先生御存じのとおり、組合会におきまして労働組合の方と事業主の推薦した者とが相談いたしまして、今回は負担がかかるけれども、かような医療費の負担があるので、かような事業をするので、ひとつ千分の八十を持っていただきたい、また、医療費が、たとえば病気以前の問題で、あるいは予防をやったので減ったから、今度は千分の七十にしていただくというふうに、毎年毎年変えておるのでございます。私は、政府管掌におきましても、短期疾病保険をやる以上は、弾力条項というものは思想としては当然あるべきだ、かように考えておりますので、上がることだけ考えておりませんが、上がるという場合には、厳密にかような面では保険審議会の十分なる御審議を経てその答申を尊重しろ、容易に流れてはいかぬ、かような意味で私は申し上げておるのであります。
  110. 山本政弘

    山本(政)委員 重ねてお伺いいたしますけれども、私は、行政当局が保険審議会の答申というものを尊重してない、そういう気がするから、実はあえてお尋ねをしているわけであります。そしてまさしく安田参考人がおっしゃったように、組合の健保というものは企業努力をなさっておる、それじゃ政府当局が一体どれだけの努力をしただろうか、そういうことを抜きにして弾力条項というものを、あらためて行政当局の考え方で取り入れるということに非常に疑問があるわけであります。重ねてもう一ぺん……。
  111. 安田彦四郎

    ○安田参考人 政府の運営というものは一方的な、悪く申し上げますると官僚主義と申しますか、さようなことがありますので、今日いろいろ御議論がありますが、被用者保険の経営主体というものは、組合化すべきだということをまず前提にいたしておるのであります。したがいまして、政府管掌というものがどんどん組合にできますれば、会員が参加いたしまして、いまのような一方的に一人の指導者によってやってしまうということはなくなるのであります。しかし、それにいたしましても、政府管掌千万人といえども、やはり一種の組合でございます。大組合でございますから、その運営の妙をにっちもさっちもいかないようにするということにつきましては、政府の良心で、保険審議会の答申を十分尊重するという確約を得た後に、弾力条項というものは将来保険の運営には、短期疾病保険の妙を得るという理論からいいましても当然あるべきだ、私はかように考えておるわけでございます。
  112. 山本政弘

    山本(政)委員 終わります。
  113. 谷垣專一

    ○谷垣委員長代理 古寺宏君。
  114. 古寺宏

    ○古寺委員 私は安田参考人にお伺い申し上げたいと思いますが、現在組合健康保険政府管掌健康保険では、負担におきましても、また給付の面におきましても、非常に大きな格差があるわけでございますが、この格差を解消するためには具体的に安田参考人はどういうふうになさったらよいとお考えになっていらっしゃるか、まず承りたい。  そして先ほど医療費の値上げは当然考えるべきだというお話もございましたが、この医療費の値上げについては、どの程度を考えていらっしゃるのか、その点についても承りたいと思います。
  115. 安田彦四郎

    ○安田参考人 この政府管掌というものは全国一本でございますから、家族を入れまして約二千五百万人が一本、したがいまして地域的にも京都の医療というもの、あるいは東京医療というものにつきましては、六割も差があるというようなことを考えますと、やはりこれは、一ぺん保険料を出せばあとは親方日の丸で何とかやっていただけるんだという、そういうところに私は政府管掌の甘さがあると思うのであります。したがいまして、やはり政府が効率をあげますのには――組合管掌は小なりといえども、その経営について、あるいは被保険者の指導、管理といいますか、それらの面に目を通しておりますから、いわゆる大まかな経営と違うのでありまして、かつて昭和三十五年でございますが、政府管掌と組合管掌の異同というものは、年間三、四百円の相違しかなかったのでありますが、資料は四十五年と思いますが、その一人の被保険者の一年間の医療費というものは約一万円近くの相違が出てきておるということは、いまの政府管掌の体質、たとえば中小企業の、体質の悪い人だけが集まっているということだけでは私はいえないと思いますし、政府管掌も七、八年前には相当額の積み立て金も保有していたというようなことから考えますと、やはり政府管掌一本の大まかな――あるいは政府管掌と組合管掌との年齢構成が違うのではないか。これは四十四年の資料でありますが、三十二歳と三十一・五歳、〇・五か〇一九しか違いませんから、さようなものではない。やはりそこには自主管理といいますか、責任体制というものが、さようなものが動いていないところに会員の無責任な行動がある。さようなことで、私はいま先生の御質問で、まず政府管掌の府県別あるいは少なくとも市町村単位の責任体制をつくっていくべきだ、そうすることが、おそらく政府管掌内におけるところの同じような医療費の格差というものがなくなって、さようなことで、自然に政府の膨大な医療費が多少縮まると私は考えております。  いま一つは、私は医療費を値上げしろということを申し上げたのではございません。この数年、医療費の大幅な値上げもあったので、その財源を確保しなければならないという意味合いで申し上げたので、医療費を値上げしろということを言ったのではございませんので、どうかその点は……。
  116. 古寺宏

    ○古寺委員 そこで組合健保の中では、同じ組合健保であっても、組合によりましては非常に保険料の高率の被保険者もあれば、あるいは給付の面におきましても、やはり格差があるようでございます。こういうような面については組合健保では財政調整を行なって、これらの問題を資金構想によって解消する、こういうお話が先ほどございました。しかしながら政管健保との財政調整については、これは絶対反対である、こういうような御意見もあったわけでございますが、これは非常に矛盾しているように考えられるわけでございます。この点について、なぜそういうふうに政管健保とは財政調整ができないのか。  第二点は、ただいま各都道府県別に相当の医療費の格差がある。先ほど医師会の小池参考人からは政管健保と組合健保の間のチェック、審査においてはそんなに差がない、こういうようなお話がございましたが、参考までに、毎月の診療報酬の請求の際に審査を行なって医療費をカットしているわけでございますが、組合健保の場合には年間、数字にいたしまして大体どのくらい審査を行なっているか、審査によって査定がなされているか、その点についてお尋ねしたいと思います。
  117. 安田彦四郎

    ○安田参考人 私は政管健保と組合健保の財政調整は絶対に反対であるということを申し上げました。  第一に、大体考えてみますると、五十年間そのままの形でやってきたものを、組合は組合、政府管掌は政府管掌、共済組合は共済組合、それをいまここで財政的に赤字ができたからといって、おまえのほうからよこせということは、これは単にちょっと理屈の面とかそういうことを考えてもおかしくはないでしょうか、そういうこと。  それから、いま経営努力というような面におきまして、あるいは運営という面におきましては、私は政府管掌と組合とは、政府管掌がなまけ者だと申し上げませんが、体質上一緒にすべきものではない、かように考えておりますので、これは私は、政府管掌が組合化された場合には組合間の財政調整をやるということを申し上げておるのでありまするから、どんどん被用者保険の経営主体というものは組合方式でやろうということを申し上げているのでありまするから、ひとつ大いに組合でやっていただきたい。その間には国庫負担なり、そういうものを入れて政府管掌の運営を全くうまくやっていただきたいということでありますので、私は例が当たっておるかどうかわかりませんが、ちょうど最近におきます国鉄の赤字というものがあります。国鉄の赤字を同じ鉄道業であるところの地方鉄道の黒字と一緒に埋めようじゃないかという議論がもしも起こったとすれば、それと同じような思想というものがここに通ずるのではないかというような意味合いにおきまして、私はやはり政管健保の赤字というものは政府管掌が五十年間政府の責任においてやってこられたのでありますから、やや体制の悪いところの中小企業の方が集まっているのは、それだけ国庫負担を入れて、みずから運営するという形をまずとるべきでありまして、組合のお金を取って運営するのだということは二の次、三の次、四の次だと、かように考えておりますので、私としては現段階におきましては、絶対に賛成できない、こういうことでございますので御了承いただきたい。
  118. 古寺宏

    ○古寺委員 査定の問題について……。
  119. 安田彦四郎

    ○安田参考人 これは数字の上ではなかなか申し上げられませんが、私が一組合でなにしますと、ただ誤謬というだけで、わずか一万五千人の組合でございまするが、ただ、診療費がいいとか悪いとかいう誤謬だけで、年間二千万円程度のチェックを組合でいたしておる例を持っておりまするし、私はこの支払基金というものが今日非常に困惑して運営に困っておりますのは、この査定はおかしいではないか、あるいはこの計算は間違っておるのではないかといって組合が突き返すのが相当額にのぼっておると思います。したがって、その額は幾らかということはいまちょっと数字を持っておりませんので申し上げられないと思いまするが、やはり組合は目を通しておりまするから誤謬――お医者さんの不正とかそういうことじゃありません。誤謬だけでも、一組合について一万五千人くらいの組合で二千万近いものがあるということをひとつ御了承いただきたいと思います。
  120. 古寺宏

    ○古寺委員 それから健保連の内部で財政調整のための基金構想があったわけでございますが、これは現在どういうところまで進展しておりますか。
  121. 安田彦四郎

    ○安田参考人 これは私といたしましては、組合方式を進めてまいりますると、前回にも申し上げましたように格差ができてきまするので、同じような同質な経営努力をいたしておりまするものが、さようなことでは困るという場合にはお助けしなければならぬというので、すでに私といたしましては昨年の十一月に決議をいたしまして、さような方向に踏み切っております。それで少なくとも今年末あるいは来年早々には法律改正も要しまするので、私どもとしては共同基金というものを設けております。まず共同基金の仕事というものは窮迫組合を救っていくということ、それから組合方式をどんどん進めていきますと、小さな組合も出てきまするから、高額の医療費にはたえられないということが出てまいります。したがって、今日組合ができないのは、このままではできないというところにあるのでありますから、高額の医療費というものはその基金から補助していくということ。あるいは会社の運営その他によりまして、炭鉱あるいはそういうもので非常に離職者が多くなって、保険料が取れないで医療費を見ていかなければならない、そういうようなものをやはり見ていこうではないかという、まず三段階を考えております。  これはおそらく国会にお願いしまして法律改正がありますので、その後には一組合ではできないことを共同施策として、病気になる前の問題、あるいは何といいますか予防施策の問題等も共同してやっていくという構想を持っておりまするが、現在きまっておりまする構想は共同基金構想ということで、いまさようなことを三点を重点にして審議を進めておりますので、おそらく国会に法律改正をお願いすると、こういう段取りになると思います。
  122. 古寺宏

    ○古寺委員 時間ですから、終わります。
  123. 谷垣專一

    ○谷垣委員長代理 古川雅司君。
  124. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 最初に、社会保障制度審議会の近藤会長臨時代行にお願いします。政府は審議会の答申を繰り返し無視を続けてまいりました。今回の法案提出にあたっても同様のことが行なわれたわけでございますが、今後とも審議会のあり方として、そうした政府の暴挙を許していくのか、御決意のほどをまず伺いたいと思います。  次に、健保連の安田会長にお伺いいたしますが、二分の一財政調整の問題でございますけれども、ただいまも古寺委員からいろいろお伺いしたわけでございますが、すでに健保連としては絶対反対の意向を表明していらっしゃいます。ただ今回の法改正が、いわゆる財政対策に終わっているわけでありまして、私たちはあくまでも法改正の前提には、いわゆる抜本改正がなければいけないというたてまえをとっておりますけれども、その抜本改正の中にこうした財政調整の考え方が入ってきている。この場合今後健保連として、おとりになる姿勢の問題でございますが、会長がおっしゃった、いわゆる保険財政の健全化あるいはまた診療報酬体系の合理化というような方向を強く主張していらしゃいますけれども、こうした方向に今後進められたとしても、なおかつ、組合健保政府管掌健保のそれぞれの被保険者実情にかんがみて、いわゆる相互扶助の精神というものを導入し、それを基調にして財政調整に対して何らかの弾力的な柔軟な姿勢をおとりになるお考えは持っていないかどうか。なおかつ、すでに絶体反対という意思を表明していらっしゃる以上、今後こういう方向で実現がはかられた場合、健保連としては、どういう態度をおとりになるか、すでにその方向がきまっていらっしゃればお伺いしたいと思います。  最後に、日本医師会の小池常任理事にお伺いをいたしますが、医療問題また医療保険制度の問題の非常に重要な焦点は、やはり保険財政の健全化、なかんずく診療報酬支払い体系の問題であると思いますが、従来から非常に問題とされておりまして、医師会態度の動向が注目をされているわけでございますが、いわゆる領収書の発行について、あらためてお考えをお伺いしておきたいと思います。  以上、御三方に御意見を承ります。
  125. 近藤文二

    ○近藤参考人 私、会長臨時代行でございまして、会長でございませんので、私の決意だけで審議会が動くとは思っておりません。それのみならず、会長がいかに決意を固められましても、審議会全体の方の同意を得なければむずかしいと思うのですが、幸いにいたしまして、社会保障制度審議会には十名の国会議員の先生がおいでになっておりまして、最近非常に出席率がよろしゅうございます。圧倒的に出ておられまして、それでお医者さんの関係の方も三人も出ておられますので、いろいろと御発言もされますし、われわれも発言をいたしまして、そして、幸いにしまして、いま問題になっておりますものの答申、それからつい最近、四月七日の日に答申申し上げました医療保険各法の改正案に対する答申におきましても全会一致で答申ができたわけなんでございます。  それで、私たちの決意というより、むしろ審議会がものを申すこと、厚生省なり政府があまりお聞き届けにならないのは検討しておられるんだというふうに、むしろ実は善意に解釈いたしまして、そしてできましたら、ただ単に返上するとかいうようなかっこうじゃなしに、こちらの意見をできるだけ具体的に申し上げて、それを取り入れていただくということでまいっておりますので、この前の抜本改正につきましても、答申というよりは、むしろ注文というところのほうが多く書かれております。できるだけこちらの意向を採用してほしいということで、そして厚生大臣からも、今後はできるだけ尊重しますという言質を実はいただいております。  それから、最近諮問されまして検討しております医療基本法案につきましても、いろいろと法案がきまります前から内容等お話ししていただきまして、そしてわれわれの率直な意見を申しておりますので、できるだけそれを取り入れて法律案を御提出願いたいということで進んでおりますから、その上、国会議員の先生方、きょうもお越しの方いらしゃいますが、どうぞよろしく協力していただきまして、会長を困らさぬようにしていただきたいと思います。
  126. 安田彦四郎

    ○安田参考人 先生の御質問は、私が申し上げました財政調整絶対反対というのはどうしてもだめか、こういうお話でございますが、現段階におきましては、政府管掌とやるということにつきましては、私は賛成できません。と申しますのは、政府管掌の体質上あるいはこのままの形でやりますれば、政府管掌は安易に流れますし、また組合の経営努力というものはなくなってしまいます。したがいまして私といたしましては、おそらく先生は一本化というのがいいんではないかという御思想が裏面におありになるのではないかと思いますが、私は、組合に一本化していただきまして、同じような経営努力の線につきまして、いま先生の御指摘のようなお互いのスタートに立って財政調整というものをお互いが助け合いをしていくというのが私どもの理念でございますし、ビジョンでございます。   〔谷垣委員長代理退席、委員長着席〕  したがいまして、政管と、このままの形で財政調整をやるということは、どうしても私といたしましては、体質上、大まかなものと小回りのきくものとを一緒にするということは、政府管掌を安易に流すということ、組合の経営努力をなくす、これは絶対に反対でございますので、再度申し上げておきます。
  127. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 あとにお伺いしました、もしこのまま押し切られるようなことがあったらどういう態度をおとりになるのか。
  128. 安田彦四郎

    ○安田参考人 私は、そのまま押し切られるということは、おそらく社会保障制度審議会の答申が尊重されれば、そんなことはないと思います。社会保障制度審議会におきましても、政府管掌と一本化、あるいはこの一本化と国営につながるようなことは考えるべきではない。したがって、同じような政府管掌か、あるいは共済組合か、国保においても、お互いにやるべきだということでありまして、私は、先生のおことばでありますが、そのまま押し切られるというようなことは、社会保障制度審議会の答申無視、こういうことで大いにまた反対をしなければならぬ、かように考えておりますが……。
  129. 小池昇

    ○小池参考人 いわゆる領収書の問題でありますが、この領収書発行を強制したいという御意見もあることは承知しております。これについては、現在、入院治療とか、あるいは室料の高額になる場合、長期になる場合、そういった場合については受け取りというものは、強制されようがされまいが、病院というものは出していると思います。  問題は、各医療機関の窓口における毎日のこまかいところにあろうかというふうに思うのでありますが、これは現在の医療需要と、それから医師の非常に忙しいという状況をあわせて考えますと、実施不可能というふうに私は思っております。これを強制的に実施すれば、必ず医療の面でのマイナスが当然ここへ出てくるものであるというふうに思います。  本来、一部負担金というものは保険者が徴収すべきものであると私は思います。これを窓口で一応代行をしているというのが私たちの考え方でございますので、これ以上の負担をかけられるということは忍びないところでありますし、国民の側にとってはマイナスだろうと思います。ただ、一部負担につきまして、あるいは家族療養費につきまして、その間に何か疑いの気持ちがあって領収書を要求されるので、そういう御意見が出てくるのだろうと思いますが、これは私たちが明細書を出しておりますので、その間におきまして、もしもかりに、あまりに差があるということがありましたら、これは幾らでも調査の道があるわけであります。  そういう意味で、この際完全な、強制的な領収書発行というものは、私としましては、できないというふうな意見を持っております。
  130. 森山欽司

    森山委員長 次に、田畑金光君。
  131. 田畑金光

    田畑委員 初めに小川参考人にお尋ねしますが、あなたのお話の第二番目に、公費医療負担の問題がございましたが、このことについてもっと詳しくお話を承りたい、こう思うのです。健康管理からリハビリに至るまで、あるいは社会的な諸疾病、公害であるとか、あるいは職業病、成人病、あるいはまたさらに交通災害等々、こういう面について公費医療を拡大すべきだということは、今日の一つの傾向だと思うし、また当然の趨勢だ、こう考えておりますが、国民の健康を守るのが医療保障であるとすれば、従来の医療あり方から、そういう方向に行くのは、これは当然だと思いますが、あなたのこの問題についてのお考えをまず第一にお聞かせいただきたい。
  132. 小川泰

    ○小川参考人 時間がありませんので、ごく大づかみに考え方だけ申し上げてお答えにかえさせていただきます。  私ども考えています公費負担、俗にいう医療費の公費負担という意味合いも含めた中で、広くいえば私どもは公費保障、こういう立場でものを見ておるわけであります。したがってごく簡単に、項目的にお話をさせていただきます。  そこで御判断を願いたいと思うのですが、私どもが考えていますのは、子供をおなかの中に身ごもってから、そして生まれ、幼年期を通し、青年期に入り、勤労の段階に入り、老人になる、こういういわゆるライフサイクル的に人間の一生を見た場合に、そのそれぞれのサイドに国がどれだけ保険サービスという面で対応するのが一番よかろうか、こういう考え方で公費保障というものを実は見ておりますので、多岐にわたります。  一、二の例だけを申し上げてみたいと思うのです。たとえばおなかにおったり、あるいは出産、あるいは幼児の保育という問題を総合的に申せば、母子保健のサービスセンター、いわゆる母子健康センターというふうなものを国の費用によって各都道府県にきちっと配列をするという中で、総合的に手当てをしたらどうだろうというふうなことも考えています。あるいは分べんにおける安全、その費用、施設の完備、こういうものも上がってまいりますし、あるいは家族計画、母性の保護あるいは栄養指導、乳幼児の健康の審査の強化、あるいは学校におけるところの健康診断、こういうふうにして、ずっと成人にわたるまで、そういう健康のサービスというものを大いにひとつ保障のたてまえから行なったらどうだろうかというものの考え方をしているわけであります。  さらに疾病、傷害というものにあたっては、特に、いまでもありますが、伝染病であるとか、あるいはらい病であるとか、そういったようなものは、もちろんいまでも行なわれております。そういうものをずっと類推をしていきますと、最近特に廃棄物、ごみ処理、あるいは採尿処理、野犬対策とか、あるいは建物一切にわたって、周辺問題としてこれまた補っていかなきゃならないという考え方一つあります。さらにはリハビリテーションというようなサイドから、いま申し上げたような一連の対策をささえていかなければならない。さらに産業公害から守る地域対策という意味合いの保健サービスというものが立てられなければならないというので、先生指摘のような、いま盛んに別サイドで論議されている環境というものに対して多くの手当てをしていかなければならない。単にそれは外ワクだけではなくて、食品衛生に至るまで十分な手当てをしていく必要がある。  最後に自然環境の施設という意味合いで、公園とかあるいはスポーツ、こういうものを通して保健のいわゆる健康の維持を進めよう、こういう意味合いをひっくるめた意味合いで公費保障、こういうふうに考えておりますので、多岐にわたりますが、そういうものが整えられることによって疾病の機会を減らす、減らすことによって保険の健全化をしていく、こういうかっこうを全体的にとっていかなきゃならぬというのがわれわれの考え方の基調でありますので、参考のためにお答え申し上げます。
  133. 田畑金光

    田畑委員 立花委員にお尋ねいたしますが、この給付の改善という点で今度の抜本改正では、被用者保険の家族の七割給付と、こういうことになっておるわけですが、将来わが国の医療の中において、この給付の改善というのは、どこを目標にやるべきか。端的に申しますと、本人と家族について、たとえば被用者保険には十割給付――本人は十割給付、家族は五割給付、こうなっておりますが、やはり行く行くは、本人と家族の給付というのは一律に持っていくべきじゃなかろうか。その場合、全部十割給付にするかどうかということは、これはまた問題があろうと思うんです。ただし、今度の抜本改正の中にも、これはいい面として出ておりますのは、長期高額療養については一定額以上は保険で見る、こういうことになっておりますが、私は長期高額療養あるいは入院については、これは全部本人、家族を含めて十割見る。ただしその他については、本人、家族を含めて一定の割合は自己負担というのをやはり課すべきじゃないのか、こういうような感じを持つわけでありますが、この点について立花さんのお考えを聞かしていただければありがたいと思うんです。
  134. 立花銀三

    ○立花参考人 今日の病気の内容は、私も専門家じゃありませんが、社会的な環境の影響からくる場合が非常に多いと思います。公害にしましても、仕事の変化というものに対して。そういう点では、まさにそういう医療については十割給付を本人、家族とも――まあ本人はやっていますが、家族とも全部十割給付をやるべきだ、そのことについては全くそのとおりでございます。問題は、一部負担というものをどう考えるかということだと思います。  去年の十月の答申案は、私どもの代表も参加しまして満場一致きめておる答申であります。その内容は、十割給付に見合って一部負担を考慮するということが、あの答申の中に入っております。そういう点で私どもは、十割給付をやった中において一部負担というものは考えていくべきである。それについては慎重に今後検討して、一部負担の問題については適宜みんなの話し合いの中で額をきめていくべきじゃないだろうか、こういうふうに思っております。
  135. 田畑金光

    田畑委員 安田参考人にお尋ねするわけですが、この財政調整については反対である、きょうの参考人の多くは反対である、こういう御意見でありますが、この財政調整というのは、やがて健康保険制度の一本化に通ずる一つの道程じゃなかろうか。すなわち負担の公平、給付の公平、こういう見地からいうと健康保険制度を一本化する、これが望ましいことであるけれども、しかし現実の問題として、被用者保険とそれから国民健康保険を見るならば、構成する組合員の給与の実態なり、所得の把握なり、生活の環境等々から見て、なかなかそれはむずかしい。やっぱり被用者保険と国民健康保険、こういう二本立てにいくべきだ、こういう方向に大体関係審議会の意向等は来ておると思うのでございますが、いまここに財政調整という問題が起きてくる、現実に起きている。この点はやがて被用者保険の当然一本化の方向ということも考えての一つの思想ではないかと、こう思うのでありますが、この財政調整と将来の保険制度あり方という点から見た場合に、これはどのように位置づけるべきか、この点御意見を承らしていただきたいと思うのです。
  136. 安田彦四郎

    ○安田参考人 今日の財政調整というのは、負担の公平ということがいわれておりますが、私は負担の公平とかいうようなことをいいまするならば、給付の公平というものもなければならぬと思いますが、さような理念の面に立たれたものではなくて、私が憶測いたしますのに、やはり政府管掌の赤字を補足的に埋めるというのが第一の発端だと思うのであります。したがいまして、私は一本化必ずしも不賛成ではございません。しかしドイツ式のように、組合方式に一本化すべきだという議論を持っておりますので、先生はおそらく被用者保険地域保険との二本立てというものは是認していただいておりますので、将来被用者保険の一本化というものは組合方式に一本化される。その中で私どもがお互いに助け合いをする、財政調整的な理念を入れていくということについてはやぶさかではございません。ただ、何回も申し上げまするように、今日のような、あの膨大な小回りのきかない政府管掌の体質との財政調整というものは、お互いのためによくない、こういうことから、私どもは不賛成でございますので、どうか組合化一本のための財政調整ということになりますなれば、私どもも将来努力してまいりたい、かようなことでございます。
  137. 田畑金光

    田畑委員 小池参考人にお尋ねしたいのですが、いまの医療問題で一番の問題点医療供給の問題だ、こう言われておるわけです。御承知のように、需要者の側から見れば保険を強制的に負担する、いわば社会化されておる。しかるにまた、供給する側から見ると、御承知のように自由開業医制度、こういうところに問題があるんだ、こう端的に指摘されておるわけです。同時にまた、もう一つは今日の医療担当者というのは、医師をはじめ各パラメディカル職種に至るまで不足しておる、こういう問題も出ておるわけであります。  そこで、今日その医療担当者が不足しておるというような問題等が、つい最近浪速医大の建設に伴うああいう問題が起きておるし、昨年は大阪大学の入試に伴ういろいろな問題等が起きておる、こういうことなどを考えてみますると、医療供給体制をどう整備するかという問題、あるいは医療担当者の教育養成をどうするかという問題、まあ医療担当者養成の問題は文部省の所管等ということに主としてなってまいりますが、この問題等について医師会等において何か建設的な御意見等がありますならば、ひとつこの際お聞かせをいただきたいと思うわけです。
  138. 小池昇

    ○小池参考人 医療供給体制ということがよく言われるのでありますが、医療というものは供給しようとかすまいとかいう気持ちで行なえるものではないのでありまして、これはそういう供給体制ということばは、私はいささか疑問に思っておるのであります。その中で、今日自由開業制ということがいろいろ問題になっておりますが、この自由開業制といいますれば、公的な医療機関との対比でいろいろ言われておるのだろうと思います。自由開業といいましても、どこでもかってに好きなところに、あしたから医業ができるというほど、そういうかってなことは、日本の現況では決してできないのでありまして、それは公的医療機関と同じくかなりの制限は自然的に出てきておるわけです。そういう意味でどこででもかってにできる、一応そういうたてまえにはなっておりますけれども、そういうことには決して現状はなっておらないのであります。  もう一つは、この自由開業制ということによりまして、いわゆる開業医制度というものが、今日の地域医療ほんとうの基盤をなしているのであります。いわゆる公的病院は、名前は公的であっても救急医療にも参加しない、あるいは夜間救急体制には応じないという現状もたくさん見られているわけであります。これはなかなか人間関係、労働問題がやかましいし、予算関係もあって、そういう欠点は、この自由開業の趣旨からいいまして、われわれが自由な立場から地域医療に協力をいたしておるわけであります。したがって、この自由開業制ということを一応問題点にされますならば、そういう地域にどれだけ貢献いたしまして、この開業医が参加しているかという点をよく御研究になった上で、その問題点にいろいろ御意見をいただきたいというふうに思います。私は、今日の状況では、国民医療の基盤をなすものが、この地域の各所にありまする開業医制度であろうというふうに確信を持っておるわけでございます。
  139. 田畑金光

    田畑委員 時間がありませんから、最後に近藤参考人にお尋ねをしたいのですが、先ほど小川参考人のお話の中にも出ておりましたが、例の二千億の政管健保の赤字をたな上げする、そしてこれは一般会計で埋める、この問題については皆さん大方御賛成であるわけでありますが、このような赤字が出てきた原因、これを埋めるについての措置等については十分に慎重に検討してくれ、これが先ほどの小川参考人の御意見じゃなかったか、こう思うのです。これは直接それとこれと結びつくわけじゃございませんが、いま国会でもいろいろ議論されておる中で、医師の診療報酬の税負担についての特別措置、この問題については税金の公平の面から検討すべきだと税制調査会等でも強く意見が出されておることは御承知のとおりです。同時にまた、そもそもこのような租税特別措置法による減税措置がとられたのは昭和二十九年当時であったかと思いますが、あのときこの措置がとられるきっかけというのは、当時の診療費の引き上げ措置が、国の財源で十分行なわれないから、税制面でそれを補っていこう、こういう趣旨で特別措置法というものができたわけでありますが、この問題について制度審議会等々でも論議されたことを記録では承知いたしておりますが、この問題について制度審議会としての御意見あるいは会長代行としての近藤参考人の御意見を、この際承っておきたいと思います。
  140. 近藤文二

    ○近藤参考人 第一点の国庫補助の問題に関連しましての赤字の始末の問題でございますが、これは分析していきますと、日本の税制の問題にまでもちろん関係すると思いますけれども、しかし、さしあたってすでにできておる赤字をどうするかというときには、赤字をつくり出した原因がはっきりわかっておったら、そこへ取り立てに行くというのが一番いいわけです。そういうことは事実上むずかしいということになりますと、保険料のほうへかぶさって、これから後の政管健保の被保険者保険料という形でそれを負担するか、あるいは一般会計で負担していただくかしか方法がないと思うのでございます。それで、現在ああいう形で赤字が累積しますと、利子を払わなければならぬ。その利子も実は保険料で払っておるという現状がございますので、今日の段階においては、やはり一般会計の中でそれを見ていただくというよりしかたがないんじゃないか。しかし問題は、それよりも今後そういうようなものができないように厳重にいろいろな行政的な措置をとっていただきたい、こういうことで私賛成したのでございまして、税制問題まで関係してきますと、いろいろまたむずかしい問題が出てくるかと思います。  それからもう一つの七二%の問題でございますが、これはもともと武見会長から、私はじかに聞いて知っておるのですが、お医者さんは今後技術、学問の発展に伴って研究を絶えずやっていかなければいけない。研究をやらぬようなお医者さんはだめだ。その研究をするためには相当本を買ったり、あるいは研究室というものが要る。それをああいう形で必要経費として認めてもらうようにしたのだ。裏はわかりませんが、表はそういうことになっております。その場合に私たちが問題にするのは、特に私が問題にしますのは、研究にお使いになっておるのは平均して大体五〇%くらいじゃないかということもいわれておりますが、研究も何もしないお医者さんもあれだけ必要経費として認められるというところに問題があるのじゃないか。だから、ほんとうに研究しておられて、研究のために必要だという必要経費なら、これは必要経費として認めてもいいんじゃないか、一律でああいうものを認めるのがおかしいというのが私の考えであり、また制度審議会も大体そういう考えなので、そのあとの問題につきましては、これは税制の関係でございますから、われわれが何%がいいかというようなことを言うべき立場におりませんで、むしろ現実的に解決していただくほうが一番いいんだ、ただ、いま私が申しましたように、必要であるものならば必要経費として認めていいけれども、必要でないような人まで認められておるところに問題がある、こういうふうにひとつ御了承願いたいと思います。
  141. 田畑金光

    田畑委員 終わります。
  142. 森山欽司

    森山委員長 次に、大橋敏雄君。
  143. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私に与えられております時間は非常に少ないのでございますが、まず参考人の方方に順を追って一人ずつ最初に全部聞いてまいりますので、お答えのほうを、要領よくまとめていていただきたいと思います。  まず最初に、近藤参考人にお尋ねするわけでございますが、先ほど小川参考人のほうからこういう話がありました。抜本改正案がまとまらないうちに、すでに政管健保の財政対策案が国会に提出されたということはまさにさか立ち論である。私はそれを聞きながら、全く同感だという感じでございますが、私はそれをもう一歩進めまして、日本医療は、医療基本法というもので、それこそレールががっちり敷かれて、そのレールの上に抜本改正案が組み込まれてくる。その中で必然的に政管健保の赤字は解消されていくものだ、こういう考えを持っているわけですが、このような考えがはたして正しいか間違っているか、それに対する御意見を承りたいこと。  もう一つは、先般社会保障制度審議会に医療基本法案が諮問されたわけでございますが、そのときの委員のほとんどの意見は、こんなずさんな基本法があるものか、厚生大臣の意見を聞こうではないかということで、たしか昨日それが行なわれているはずでございます。私も当然そこに出席するはずだったのでございますが、国会の委員会関係でついに出られませんでしたので、どういう経過になったのか、かいつまんで御報告をしていただきたいと思います。これが近藤参考人に対する質問です。  次は、安田参考人にお尋ねいたしますが、重複を避けますけれども、組合健保でも、弱小組合は現在でもすでに財政調整をなされているわけでございます。ところで、政管健保との財政調整は反対だけれども、政管健保が組合方式に変わってくることには賛成であるということになれば、政管健保は非常に弱小でございまして、おそらく大きな財政負担になろうかと思いますが、その点はどう考えておられるのかというのが一つ。  もう一つは、先ほど給付の公平の話が出ておりましたけれども、それに関連いたしまして、組合の保険料が、あるいは千分の七十取っているところもありますし、あるいは千分の二十のところもあります。非常にアンバランスでございます。組合の力が弱ければ弱いほどむしろ保険料のほうは高くなっていると思います。同じ組合でありながらアンバランスになっている、その問題についてどのように解消なさるのか、これは付加給付の問題についても同様でございます。  以上でございます。  それから立花参考人にお尋ねいたします。  国庫補助率の五%については、近藤参考人から、これは少ない、一四%が妥当だ、少なくとも最少限一〇%という話がなされておりましたけれども、立花参考人は、この点についてどのような御意見を持っておられるか、それをお伺いいたします。  それから小川参考人にお尋ねいたしますが、先ほど政管健保の赤字の問題云々が述べられておりましたけれども、徹底的に追及していくべきである――われわれいままで、政管健保は中小企業、零細企業であるし、高齢者が多いし、低賃金である、当然これは罹病率も高くて赤字になるんだという、一般的な赤字の原因を考えていたわけでございますが、小川参考人の先ほどのお話では、それ以外にもっと大きな、何かわからぬけれども、赤字の原因があるはずだ、それを突きとめなさいというような印象を受けたわけでございますが、小川参考人として、大体この方面にそういうものがあるのではないかという、もしも示唆されることがあればお願いしたいと思います。  最後に、小池参考人にお尋ねいたしますが、もうすでに健康保険は皆保険体制がしかれたわけでございますので、制度の一本化は、理論からいけば当然そうあるべきだという考えをわれわれは持っているわけでございますが、その点についてどのような考えであるか。  もう一つ、先ほど申し上げました、政府がつくっております、いま諮問しております医療基本法について、一言でよろしゅうございますので、どのような意見をお持ちなのか、お尋ねいたします。  それから先ほど、社会保障制度審議会、社会保険審議会、両審議会とも医師会代表はボイコットしているということについて、現在の両審議会の構成メンバーに問題がある、あるいはその審議のあり方に異論があるので、ボイコットしているんだというお話がありましたけれども、私は、医療保険の抜本改正につきましては、医師と、それから保険者、それから被保険者、これが基盤でございますので、やはり同じテーブルについて、もし不満があれば、意見があれば、その場で堂々と戦っていくことによって、より効果的な抜本対策が行なわれるのではないか。先ほどの御意見では少し逃げられているような、弱腰みたいな感じを受けてなりませんので、その点をお尋ねいたします。  以上です。
  144. 近藤文二

    ○近藤参考人 第一のお尋ねにつきましては、答申の中で書いておりますように、今度の法律改正のようなものを抜本対策と切り離して出すという態度、これは不合理であり、無理であるということを言い切っておるわけでございます。それで、ことに弾力的な条項といわれております問題は、これはいま政府がこれから提案されようとしております、いわゆる抜本改正に関する法律案の中にむしろ入れるべきじゃないかという意見を述べたことは、先生も御承知のとおりであります。  それで、私個人の意見になりますが、今度のこの法律案は、筋道から申しましたら、もう一ぺん出直しておいでなさいという筋道のものでございますけれども、しかし中に、国庫補助の定率化とか標準報酬の上限の改定とかいうような、まあやってもらったほうがいいというようなものもありますので、せっかくですから、それだけでもやっていただいたほうがいいのじゃないか。政府はいつも先取りがお好きのようでございますから、私も先取りがこの場合必要じゃないかという感じを持ちますが、これは先生方がどういうふうに御判断なさいますか。  それから医療基本法案の審議につきましては、昨日、老人医療でだいぶ大臣御苦労になったあとでしたが、一時間半ばかり出席されまして、いろいろ懇談的にお話しを申し上げました。  そしてわれわれのほうからは、事務局案が前に二回出ておりますが、あれと比べてだんだん悪くなってきておる、これは法制局なんかとの折衝の結果、だんだんそういうふうに短くなったのと、それから何々の原則というのが数カ条ございましたが、あれが前文の中に全部入ったのもそういう意味だからという説明が大臣のほうからもございましたのですが、本来からいえば、むしろ最初に出された事務局案のほうがいいんじゃないかという多数の方の御意見があり、したがいまして大臣も、一応今度は要綱の形で簡単なものを諮問して、参考資料として、法案をつくるとしたらこういうものだという、かなり詳しいものを提議したのだから、もしいろいろと御意見があったら、その御意見をできるだけ取り入れるようにしたいというふうな非常に謙虚な態度でお話をなさいましたので、私、正直者ですから信用いたしまして、そういうふうにしていただくなら、こちらもいろいろ意見を申し上げたほうがいいんじゃないかということで終わっておりますから、この次は先生ひとつよく見てくださいまして……。
  145. 安田彦四郎

    ○安田参考人 ただいまの組合方式を進めていけば弱小組合が今度はどうするんだという先生のお尋ね、これは私は、弱小組合がふえまするならば、やはりお互いが相互扶助するほかに、当然国庫負担を入れていただく――組合には国庫負担が要らないということを申し上げておるわけではございません。しかし組合になりますれば、お互いが相互扶助と経営努力をしてまいりますれば、現在政府管掌に要するところの国庫負担よりもごく少額で済む、こういう理念を持っておりますので、今日の財政というものは国庫負担をお願いいたしまして、経営効率をあげていく、お互いが助け合うということで立ち行くものと考えております。  それから組合間の格差、これは事業の格差でありまするから、どうすることもできませんが、しかし、したがって事業の格差で標準報酬が高いもの、保険料率の少ないものは、やはり保険料率と標準報酬を勘案いたしまして拠出していただくことといたしておりますので、これは共同事業というかっこうで解決いたしたいと思っておりますが、これがいま研究いたしておる問題でございます。
  146. 立花銀三

    ○立花参考人 五%をどのくらいふやすかということでありますが、その論拠が十分じゃないということであります。私どもそう思いまして、たとえば日雇健保あるいは国民健保の三五、四五というもの、これまた何の根拠があるかということになるわけですけれども、その見合いなどを考えまして、そして現在の単年度の赤字問題を被保険者にかぶぜない。そうしてなおかつ、当面目標にしております家族給付の八割程度を確保していくということに漸進的に考えますと、現在二〇%程度の国庫負担によって単年度の赤字問題を被保険者にかぶせない、そしてかなりの給付改善ができる、こういうことを当面目標にしてやるべきだ、こういうように思います。
  147. 小川泰

    ○小川参考人 たいへんむずかしい質問で、実は私自身もどこに原因があるのだろうか、こういうものにしっかりした根拠の持ち合わせがなかったので、ぜひひとつ国会のほうでも探求してほしい、こう申し上げたので、前段お断わりしておきたいと思います。  各管掌保険の間の構成の差、もちろんこれは収支という面に出てきます。それから構成の中にはもちろん年齢の差、年齢によって罹病の頻度の差、こういうものは大体みんなが言われている範囲内で大方数字的にも統計的にもつかまれるということは明らかだと私は思っております。ただしかし、それだけかというふうに詰めてみますと、私はもっとほかにあるのではないか、たとえばいま安田参考人が別の質問に答えましたね、そういうものが、もう少し詰めれば、管理あるいは努力の面で相当出てくる可能性を秘めておる、私はこういうふうに見ております。  さらに加えて言わしていただきますならば、もちろん政府管掌健康保険と組合管掌健康保険が赤字か黒字かという比較論ですれば、いま言ったようなものが出てきますけれども、むしろ私は組合管掌健康保険といえども、いまの診療報酬という面と、それから保険の収入という面と、国のいろいろなサイドのささえという問題と、まあ小池先生に言うとしかられるかもしらぬけれども医療の供給側の仕組み、体制というものとがもっともっと私は全体の保険システムの中から見れば改善されなければならぬものがおしなべてある、こういう見方を私はしておるわけであります。  一番いい参考は、昨年のたしか七月だったと思いますが、例の保険医総辞退が起きた月の総医療費の動向はどうなっておったかということが明らかに数字上出ておると思います。その前の月、行なった月、終わったその後の波及効果の月の、この傾向を見れば、何もその間だけ私は突然病気が少なくなったということはあり得ない。ああいう、たまたま途中において実験を見て、そこをぐっと詰めてみれば、幾つかの題材が私はころがって出てくるというふうに思いますので、そういう供給サイドからも十分ひとつ検討いただかなければならぬ、こういうふうに思っております。
  148. 小池昇

    ○小池参考人 第一が、制度の一本化についての意見でありますが、これは私が言うまでもなく、日本医師会医療保険改正ということについて抜本的な意見をすでに三年前に公表しております。その中で、国民の一人一人は、どんな職業にあろうと、どんな階層にあろうと、金持ちであろうが、あるいは貧しい者であろうが、医療を受ける立場としてこれは平等でなければいけないという立場から、当然一本の制度で国がめんどうを見るべきだというふうに述べてあります。そういう筋道へ行く方向として、健康保険制度改正をその方向でやっていきたいという意見を持っております。したがって、いまいろいろ議論になっておりますように、あるグループ、金持ちのグループ、貧乏人のグループだけで幾ら中身でまぜ合わせたところで、これは将来への正しい道はたどらないと思います。そういう意味で、ある組合なら組合だけの中での財政調整という問題は、これは富めるグループだけの中で幾らかきまぜておってもいいものはできない。日雇健保あるいは政管健保と、よそはよそだ、おれのほうの中で、一家眷族の中で、たまたま貧乏人が出たらめんどうを見てやろうというような考えは、これはもうナンセンスだというふうに私は考えております。  第二が医療基本法についてでありますが、医療基本法というのは医療のあるべき姿を基本的に定めていこうということでありまして、これは私、先ほど述べましたように、まず医療のあるべき姿があって、そしてそれに対して保険制度がどういうふうにこれを助けていくか、そういう順序でいくべきだと思うのであります。したがって、ただいま社会保障制度審議会にまっ先にこの問題を大臣がはかったということは、私としては筋違いではないかと思うのであります。もしあえてこれを諮問する、あるいは相談するとすれば医療審議会のほうではないかというふうに思うわけであります。そういうわけで、私はこの問題はもう少し各方面の意見をいれまして、いいものにしていきたい、そう願っておるわけで、日本医師会としても、これに対しては私たちの考え方を当局にいろいろ申し上げている段階でございます。  第三番目の、審議会問題につきましては、先ほど所論の一端を述べたわけでありますが、現在の審議会は、やはりこの際皆さんに反省していただいて、これを改めてよりよきものにするとか、あるいはそれがなかなか実現不可能でありますれば、人選について大いに考慮していただいて、過去五十年来の、あるいは五十年前の考え方にしがみついているような方は御遠慮していただきたい、こう思うわけであります。そういう意味で、医療を正しく理解できる方、これがお出になっているという実証がありますれば、私たちも喜んでこれに参加したいと思っております。
  149. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 言いたいことがたくさんありますけれども、もう時間がオーバーいたしましたので、私はこれでやめます。
  150. 森山欽司

  151. 寺前巖

    寺前委員 全部の先生方に一々御意見を承りたいと思いますが、三つの問題について限った方にお伺いをしたいと思います。  第一の問題、これは医療費全体から考えるならば、薬価の位置はきわめて高い位置にあると思います。最近の五、六年間の状況を見ましても、四十一年には三八・九%、四十二年には四二・二%、四十三年には三九・六%、四十四年には四一・九%、四十五年には四三・一%と、どんどん薬剤費が医療費の中に占める位置は高くなってきております。最近では五割近くまでなってきているんじゃないかといわれております。とするならば、保険財政を考えるときに、この医療費の中に占める薬剤費の問題について検討を要しないのかという問題は、大きな問題だと私は思います。  そこで、昨年の上半期の大きな会社の利益の状況を見ますと、たとえば有名な武田製薬が八十数億の純利益を示しておりまするように、あるいはまた製薬大会社十社の宣伝費一つ見ても、四十五年度四千数百億円というお金を使っている実情を見ても、私は薬剤費の占める位置にメスを入れることが、きわめて大事だというふうにいわなければならないと思うのです。ところが、いま出されている抜本の案にしても、あるいは政管のすでに出されている法案にしても、この薬剤費にメスを入れるということが全然なされておりません。私は、ここにメスを入れるやり方こそ、今日急務ではないかというふうに思うわけですが、それについて近藤先生、立花先生、小池先生の御意見を聞きたいと思います。これが一番です。  第二番目に、多くの国民の側からいうと、金の切れ目が命の切れ目になりたくないというところに、私どもはお互いに保険に入ったりして、そしてたくさんのお金を出しながらも、その日のためにがんばっていると思うのです。たとえば労働者は病気になったときに困ると思って健康保険をかけます。失業したときに困ると思って失業保険をかけます。年いったときに困ると思って厚生年金をかけています。そうしてこれらの掛け金は、全体としていうならば、一年間の収入の約一カ月分をこれらの掛け金にかけているわけであります。ですから、私は労働者の側からいうならば、このような状態におる労働者が自分のいまかけている金でまだ足らぬ、赤字だといわれてかけていくならば、ほんとうにこんなものかかっておっていいんだろうかという疑問も持たざるを得ないという面が出てくるのじゃないかと思います。  そこで、私は第二番目に聞きたいのは、ほんとうにずいぶんお金のかかるところのいわゆる難病、奇病といわれるようなこういう費用、あるいはまた公害の病気、あるいは職業に起因しているところの労働災害、現在では職業に起因していながら、なかなか認定されないところから、全面的に労災で見てもらえずに、健康保険で見ているというのがかなりあります。あるいは公害の問題でも差額の公費負担になっております。あるいはまた難病、奇病の問題でも、若干部分の公費負担という問題は出てきていますけれども、全体としてはやはり泣かされております。私は保険を考える場合に、同時に、これらの分野について全面的に公費負担を、これは社会的な事業として国が打って出るべき性格だと思うのですが、その問題についてどういうふうにお考えになっているのか、近藤先生と立花先生の御意見を聞きたいと思います。  第三番目に、政府管掌健康保険と、いわゆる健康保険との違いの問題です。これは、政府管掌健康保険はどちらかというと、中小零細な企業の労働者が入っております。大企業との間には明らかに格差があります。  少々資料は古いですが、私の持っている資料によると、四十五年度の政管の労働者の平均標準報酬が四万六千七百七十六円、健保に入っておられる人の標準報酬が五万九千十三円となって、一万円以上にわたっての収入面におけるところの政管の労働者の低さがあります。また、一人当たりの給付の側からいうならば、政管のほうは三万九千七百八十六円で、健保のほうは三万二千六百四十三円と、逆に政府管掌のほうがよけい給付を必要としています。そのことは、中小企業の経営の実態から、労働者の賃金が低く、労働強化が強くあるということを実態として示している数字だと思います。とするならば、大企業の経営に対して、たとえば特権的な減免制度でもっていろいろな処置をしたり、援助をしているけれども、中小の企業を援助し、そこの労働者を援助するというのは、やはり国家的な使命といわなければなりません。ここに国家の助成を高めなければならないという理由があるというふうに思います。  ところで、そのときの保険料の平均を比べてみますと、法定給付についていうならば、政府管掌健康保険の労働者のほうの掛け金の状況が三・五に対して、健保のほうは二・四三というふうに、労働者の持ち分が法定給付についていうならば、明らかに政府管掌のほうがよけい持っているというのが実態です。その面から見ても、国庫の助成というのはもっとやらなければなりません。それはすなわち、赤字に対する対策と同時に、給付の改善面まで盛ったところの改善をする必要があるというふうに見るならば、五%の低率にしたということが、はたして誇るべき国家の補助率ということができるでしょうか。  従来の助成率を調べてみても、四十一年からの額の助成ではありますが、四十一年は率に直すと四・七八、四十二年は六・三〇、四十三年は五・四二、四十四年は四・七〇、四十五年は三・八六、四十六年は四・一〇となっていますが、六・三という補助率をしたときもあるぐらいなんです。それでいて、今日の二千億、三千億になるところの赤字があるとするならば、もしもそれを政府が全部たな上げにして持つということになるならば、助成率は、一〇%以上の助成率を今日までの過程でもしたということになるんじゃないでしょうか。一〇%以上の補助率を今日までしたとすることを含めて考えるならば、そうしたら、大企業との格差を是正する立場から見るならば、助成率というのはもっと大きな補助率を必要とするというふうに私は考えられるのじゃないかと思うのですが、その点についての立花さんの見解を聞きたいと思います。  以上です。
  152. 近藤文二

    ○近藤参考人 私に対します御質問は二点にしぼられておるようでございます。  まず第一の薬の問題でございますが、先般の、昨年の九月の答申におきまして、たとえば医薬品、医療用品及びフィルムなどの衛生材料に対する輸入税の廃止、それから国産品につきましては、価格引き下げのために有効な政策を積極的に実施せよといったようなことを申しておりまして、薬の問題を決して軽視しておりません。ただ、薬効の問題と、それからいわゆる保健剤と医薬品という区別、健康保険扱います薬の種類がずいぶん多いのでございますが、そういうような点まで整理しまして、そして製薬資本がどういうふうな形で利潤をとっているかどうかというような問題。その一つに、たとえば広告費の問題も資料を提出していただきまして、なかなかむずかしいのでわからないのですが、私がずっと前に関係しました七人委員会以来、薬の広告というような問題も取り上げておりますので、全く先生と、薬の問題につきましては同じような考えております。  それから、もう一点お尋ねのございました公費医療の問題でございますが、これは私かねてから、結核予防法というもので、結核の一定の治療をやるものについては公費負担という原則があるんですが、公費負担が優先していない、保険のほうがむしろ優先しておるという実情がありますので、結核予防審議会におりましたときも、当時の局長にその点をだいぶんなじったんでございますが、もし結核予防法の公費の問題を優先的に扱えば、政管の赤字はだいぶん減るんじゃないかとまで考えております。それから、その上にさらに、御指摘のいろんな新しい病気が出てきた。これは公害とも関連がありますし、それから、業務災害というのは、私は、最近は労働災害とか産業災害という考え方に移すべきであるという考え方を持っておるんでございますが、この公費医療の方面において税金をどんどんと使っていただくというほうが、保険の中に入れるよりはむしろ有効じゃないかというような考えも持っておりますから、基本的には全く先生と同じでございます。
  153. 立花銀三

    ○立花参考人 三点ばかり御質問がありまして、かなりむずかしい点がありますので、満足いける答弁ができるかどうかしれません。  薬の問題でありますが、御指摘のとおりだと私思います。今日、私は合化労連の出身でありまして、私の労働組合の関係からも、たくさんの薬業の労働者をかかえております。私どもが見る場合には、非常に過当競争の中に現在日本の薬業業界が置かれている。この販売のために、いわゆる販売要員が一カ月のうちほとんど一週間足らずしか家庭にいることができない。そういう非常に激しい販売競争をしいられて、そして今日の医療産業というものが成り立っているというふうに思います。こういう状態の過当競争をそのままにしておくと、いまは確かに御指摘のような利益をあげて、また薬業労働者の賃金も、一般から見るとかなり高い水準にあることも確かであります。しかし、こういうことが続いた場合には、早晩やはり破綻が来るんじゃないだろうかというふうに私も思うのであります。  多くを申し上げるわけにいきませんが、私ども合化労連では、もう十年前から、いまの日本の石油化学工業の過当投資というものは、かなりの問題を起こすということを再三にわたって指摘したのであります。それは今日そのとおり。現在、一センター何千億とかけた石油化学センターがほとんど半分ぐらいしか動いていない。そして、やむを得ず最近はその何千億かけたセンターを二つぐらい全部とめてしまうというふうな状態に今日来ているのであります。そういうものが結局は消費者のほうに負担がかかってくるという事態がまた起きてくると思います。  そういう点で、薬業業界についても、いま若干厚生省が行政指導に乗り出しておりますけれども、それも私は多くを期待できないと思いますので、願わくば議会の皆さん方のほうも、国民の健康を保持するという重要な問題に関連しておると思いますから、この薬業の問題に対する、どういう行政指導といいましょうか、私どもは、最終的にこれをもっと国家の一つの管理した方向にと考えておりますが、もちろんこれは薬だけをやるわけにいかないと思いますが、ひとつ、このままの過当競争の状態に放置しておくことは、将来大きな問題を残すんじゃないだろうかということを、私どものとうとい経験の中からも申し上げておきたいと思います。  それから二番目の、公害、労災の認定患者が、実質は労災であっても、それは健康保険のほうにまかされているという事態は、そのとおりであります。もう御案内のように、いま労働災害で死亡している労働者が年間六千人であります。あるいは負傷者が大体十数万というふうにいわれているのであります。これはまさにきびしい現在の労災認定を受けた数なんでありまして、それ以外に労災、実際は労働災害であるけれども労災認定を受けられないという方が非常に多いのであります。現在でも非常に多い問題は鉛中毒の問題。これはもう、大体、ほとんど労災に認めるべきものであるけれども、なかなか認めない。それから腰痛の問題。これは輸送関係の自動車の運転手の場合、ほとんど腰痛患者になっていますが、これもなかなか労災認定されない。そういうものが健保のほうにかぶさってきているという問題なども、これは労災制度、労働行政の中で、ひとつ別な方向解決をしていただくように私どもは申し上げているところであります。  三番目の問題でありますが、私は、二〇%の補助金を出すべきじゃないかということを当面申し上げます。これはもう、資料に出ておりますように、医療費がどんどんふくれ上がっていく。その原因についてはいろいろありますけれども、それに対して政府が四年間も定額の二百二十何億という金額に据え置いたという点を、私は、大いに政府として反省をしていただいて、まあ、少なくとも当面二〇%の補助金を出すことによって単年度の赤字、かなりの給付改善ができるということだけは、ぜひとも実施をしていただきたいということを申し上げたいと思います。  以上であります。
  154. 小池昇

    ○小池参考人 私に対しましては、薬剤費のことで御質問があったのでございます。  薬剤費は年々増加していくということは、数字の上で出ております。これにつきましては、私は、全体の医療費というものの中で比率で、つまりパーセントでどれだけ伸びたかということだけでは、これは実態を示すものではないと思うのであります。中医協におきましても、この問題はかなり論議されましたし、私たちとしても、薬剤費に付随した形で医療費が伸びていくという形はとるべきでない、これはもう純粋の技術料のほうを十分に上げるようにという主張をしておりまして、ここ数回の中医協はそういう形で技術料の引き上げが行なわれているわけであります。しかしながら薬剤費のふえる原因の中には、薬剤が非常に高価になってきたということ、つまり、開発が進みまして、いい薬ができて、それが決して安くない。どんどん高い薬が使われていくということにかなり大きな原因があるし、そういうところも考えていかなければいけないんではないかと思います。  したがって、これは単にパーセントだけでこの問題は解決しないのでありまして、たとえば再診料が五十円というような技術評価ではとうてい――この薬剤の問題より先にそちらを解決しなければいけないんじゃないかというふうに思います。ただ、むだな医療、むだな薬剤費というものは厳重に慎むということは、私としても、当然だろうというふうに思っております。
  155. 寺前巖

    寺前委員 どうもありがとうございました。
  156. 森山欽司

    森山委員長 次に、山下徳夫君。
  157. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 まず、安田参考人にお尋ねいたしますが、この医療保険というものが短期保険であるということは御指摘のとおりでございます。したがって短期間に収支のバランスをとるということが非常にむずかしい。たとえばインフルエンザ等が蔓延した場合には、直ちに医療費が非常にかさんでくるということでございますから、ある程度幅を認めなければならないということは御指摘のとおりであります。そこで、このことについては私も同感で、この弾力条項については賛成の意を表するものでありますが、私は、安田参考人にお尋ねしたいことは、御承知のとおり他の社会保険、たとえば失業保険であるとか、あるいは労災であるとか、あるいは共済組合、こういうものにも弾力条項があるのでありますが、これらと何か違った、政管については違うんだという何か御意見がおありですか。あるいは全く同じ考え方でいいんだというお考え方か。これが第一点であります。  それから第二点は、標準報酬の問題ですが、保険料や現金給付の計算の基礎にこの標準報酬がなるということでございますから、この標準報酬が賃金と完全に見合っているかどうかということはきわめて重大な問題であって、もしも高額所得者のほうが相対的に低いということになると、社会保障制度一つの根幹ともなるべき、こういう保険制度に重大な影響を及ぼすということになると思うのでありますが、仄聞するところによると、健保組合の場合、非常に何か不自然な様相を呈しておることを聞くのであります。そこで先ほどの参考人の御意見を伺いますというと、標準報酬の上限のかさ上げにつきましては二十万円でも低いんだ、もっと上げるべきだという御意見があったと思うのですが、これはひとつ組合長というお立場からの御意見を伺わせていただきたいと思うのであります。  それから第三点は、特別保険料であります。これも参考人としては大体肯定なすったと先ほどの御意見で記憶をいたしております。そこで私はお伺いしたいことは、この特別保険料は参考人の御意見では賃金のあと払いだということだったんです。そうしますと、特別保険料の今度の自己負担の率というものは〇・五%ですから、千分の五になるわけですね。そうしますと、標準報酬のほうは千分の七十三ですから、非常にアンバランスになるわけですよ。そういうバランスをとるという面からすると、特別保険料というものは、やや低きに失するのではないか、こういう考えも出てくるわけですが、この三点についてまずお伺いしたいと思います。
  158. 安田彦四郎

    ○安田参考人 いまの弾力条項の点でありますが、これはただいまの他の保険、労災とかそういうようなものにありますので、私は、政府管掌が短期疾病保険でありまするし、いま先生のお話のように、その場その場に合わせていかなければならぬというようなたてまえ、あるいは増額すれば増額、減額すれば減額というたてまえをとっておりますが、当然弾力条項は制度としてあるべきだ、かように考えております。ただこの運用につきましては、前回申し上げましたように、保険審議会の答申を十分、絶対に尊重するようにということを私は条件をつけて申し上げておるのでありまして、弾力条項としては他の保険の振り合いからいって当然あるべきだと考えております。  それから上限の点は、二十万円というのは、四十一年に十万四千円になりまして、その間全然手をつけておりません。賃金ベースその他も相当進んでおりまするし、今日十万四千円程度の標準報酬が最高だということになりますると、もう五人に一人はさような者がおるのでありまして、低額の所得者のほうに、いわゆるしわ寄せをしまして、高額の者がその保険料を食ってやっているということでありますので、私は二十万円をただ、いま低過ぎるから上げろとは申しませんが、二十万円というものは当然やってしかるべきだ。しかもこれは毎年上げ下げができるという問題でございますれば別でありますが、ここしばらくは私は、上限になかなか手をつけられないという状況から考えますると、この社会保障制度審議会におきましても、一ぺんに上げるのはどうかという御意向も出ておりますが、私はしばらくの間、今日のような賃金が上がってくる場合におきまして、二十万円というものはそんなに高いものではない、かような考えを持っておるものであります。  なお賞与の点でありまするが、私はやはり賞与という点につきましては、いまの先生の御指摘のように保険料の差額というものがありまするが、これは千分の十がいいのか、被保険者として千分の五がいいのかどうかという問題は大いに検討していただく要がありまするが、私は特別保険料として賃金のあと払い、賃金の一つでありまするから、当然保険料というものはその中から算定されていい。ただし、その千分の十がいいか、五がいいか、あるいは幾らがいいかということは大いに検討していただきたいと思いますが、ただ青天井でやるということにつきましては、私は標準報酬も一応上限があるのでございますから、限度をつけていく、かような考えを持っております。
  159. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 次に、立花参考人にお尋ねいたしますが、今回の政管健保の財政措置ですね。これが原因はいろいろありますが、その一番大きな問題は、ことしの二月に医療費の値上げをやったということであります。このままいけば、今年度の推定赤字は約千三百億円、その中の八百億円というものがこの医療費に振り向けられると大体推定される。そこでもちろん、今日のお医者さんというのは非常に経営難で困っておられるから、この八百億円というものは、そういう一つの経営の立て直し、あるいは施設の改善というふうにも向けられましょう。  それからもう一つの問題は、医療労働者の待遇の改善、給与の引き上げであるとか、あるいは厚生施設とか、そういうものにも引き当てられると思うのであります。  したがって、そういう観点からすれば、私はずばり言えば、この趣旨からして、当然これはすみやかに通すべきであるという観点に立って審議をされるべきであると思うのですが、どうも参考人の御意見を聞くと、とにかく反対だというお立場なので、そこの基本理念からいくと、そういうことになりゃしませんか、どうですか。そのために今年度の中央社会保険医療協議会、これが三者一体になって一応原則としては認めておられるというのも、その根拠はそこらあたりにあるのではないかと思うのでございますが、その点をお尋ねしたい。
  160. 立花銀三

    ○立花参考人 第一に、政府の見通しなんでありますが、いま単年度の赤字が千何百億になるだろうといっておられますけれども、これはもう少し検討の要があると私は思います。たとえば昭和四十七年度の厚生省が発表しました見通しによりますと、政管健保の赤字が五百何十億という予想数字が出たのです。ところが今度決算をしてみましたら、これがたぶん三百億足らずだと思います。ここに二百億程度の大幅な――五百億のうち二百億というかなり大きな問題ですね、そういうふうな差額が出たわけですね、なぜ出たのだろうか。見方によると、この前の総辞退の問題もあるといろいろいわれておりますけれども、やはり過大な赤字の見通しを立て過ぎるのではないだろうかというのが、私もまだあまり深くは入っていませんが、第一の問題はそういう気がするのです。したがって過大な赤字を表示しながら、たいへんだたいへんだということで、さあ皆さんもかぶってください、こういうふうなやり方が少し政治的過ぎるように私は思うのであります。その点で、確かに今年度の政管健保の赤字の金額はどのくらいになるかということを、もう少し正確にはじいていただきたいということが第一の問題であります。  それをはじいた上で、どういうふうな財政対策をとるべきかということになると、さっきも申し上げましたように、医療費が二倍以上に、この四、五年をとっても、ふくれ上がった。しかし政府の補助金が二百二十五億に四年間もきたということを考えると、私は、その程度のものは政府の支出によって当然まかなっていくべきものだというふうに思うのであります。こういう点で、何でもかでも反対ということじゃなしに、かなり筋の通った反対だというふうに私は思っておるところであります。  以上であります。
  161. 森山欽司

    森山委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。  各参考人には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼申し上げます。(拍手)  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時三十八分散会