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1972-04-20 第68回国会 衆議院 社会労働委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年四月二十日(木曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 森山 欽司君    理事 小沢 辰男君 理事 谷垣 專一君    理事 橋本龍太郎君 理事 増岡 博之君    理事 山下 徳夫君 理事 田邊  誠君    理事 大橋 敏雄君 理事 田畑 金光君       有馬 元治君    大橋 武夫君       藏内 修治君    小金 義照君       斉藤滋与史君    澁谷 直藏君       高鳥  修君    竹内 黎一君       中島源太郎君    中村 拓道君       別川悠紀夫君    渡部 恒三君       大原  亨君    後藤 俊男君       島本 虎三君    山本 政弘君       古寺  宏君    古川 雅司君       寺前  巖君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 斎藤  昇君  出席政府委員         大蔵政務次官  田中 六助君         厚生政務次官  登坂重次郎君         厚生省医務局長 松尾 正雄君         厚生省保険局長 戸澤 政方君         厚生省援護局長 中村 一成君         社会保険庁医療         保険部長    穴山 徳夫君  委員外出席者         沖繩北方対策         庁総務部総務課         長       小玉 正任君         大蔵省主計局主         計官      渡部 周治君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ――――――――――――― 委員の異動 四月十九日  辞任         補欠選任   島本 虎三君     八百板 正君 同日  辞任         補欠選任   八百板 正君     島本 虎三君     ――――――――――――― 四月十九日  保育所設置認可基準改正等に関する陳情書  (第一九四号)  要指示医薬品に係る厚生省告示第四百八号の撤  廃に関する陳情書  (第二一九号)  乳幼児医療費公費負担に関する陳情書  (第二二〇号)  優生保護法改正に関する陳情書  (第二二一号)  進行性筋萎縮症専門研究機関設置に関する陳  情書(第二二二  号)  原子爆弾被爆者援護法早期制定に関する陳情  書  (第二二三号) は本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す  る法律案内閣提出第四七号)  健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を改  正する法律案内閣提出第四六号)  厚生関係基本施策に関する件(医療保険及び  医療に関する問題)      ――――◇―――――
  2. 森山欽司

    森山委員長 これより会議を開きます。  戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑の申し出があります。順次これを許します。田畑金光君。
  3. 田畑金光

    田畑委員 年々援護法改正が行なわれて、少しずつ内容改善が加えられていることはけっこうなことだと思います。しかし毎年小刻みの改善措置、こういうことだと思います。この間横井庄一さんが二十八年ぶりに帰還された、こういうわけで、あらためて戦後処理の問題がまだ残っているのかな、こういう感じを強くしたわけです。さらにまた、その後衆議院予算委員会等では、敵前逃亡という汚名を着て、非常な打撃を物心両面に受けておる人方が多数ある、こういうことも戦後処理の問題をあらためて想起させたわけでございますが、こういうような問題がまだまだ残っておるわけでございまして、政府としてはこのような問題等について、もう一度戦後処理の方針を立て直す必要がありはせぬかという感じを受けるわけであります。この点についてまず大臣考え方を承っておきたいと思います。
  4. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 おっしゃいますように、いままだ一番戦後処理として残っております問題は、あるいは生存者であってそれが不明である、生きているかもわからないという問題、また遺骨も完全に収集されていないという問題、それから現に援護をいたしております人たちもだんだんと老齢期を迎えてきた、いままでの援護でいいのかどうか、あるいは特別の給付金をいたしました対象方々もその給付期限が切れるというような事柄がまだ処理されてまいらなければならない問題だ、かように考えます。  こまかい点では未処遇の問題もなきにしもあらず、これらの問題も時代の推移につれまして、いままでは済んでいた問題が済まなくなるというものも出てこないとも限らないというような事柄がございます。そういった問題とさらに取り組んでまいりまして、一日も早くこれで戦後は終わったというようにいたしたいものだ、かように考えております。  こまかい点は、必要があれば局長からお答えいたさせます。
  5. 中村一成

    中村(一)政府委員 ただいま大臣からお話がありましたような考え方を、私ども事務当局といたしましてもただいま、もう一度戦後処理の問題につきましてあらためて昭和二十年にさかのぼって見直してみるということで、海外の生存者の救出あるいは遺骨収集の問題、それから諸制度の運用につきまして漏れている点はないか、不公平はないか、不均衡はないかという点につきまして根本的に検討すべく準備をいたしておるところでございます。
  6. 田畑金光

    田畑委員 今度の改正案を読みますと、障害年金であるとか遺族年金等引き上げ措置が講ぜられておりますが、この引き上げ措置基準というものは何を根拠にして引き上げ措置がなされておるのか。これが第一点。  援護法国家補償の精神に基づいてできておる制度でございますが、大臣のいまの御答弁の中にもありましたし、援護法を審議したあと、採決の場合には、常にこの委員会では附帯決議がついておるわけです。昨年の六十五国会における当委員会附帯決議を見ましても、老齢化の現象が進んでおる、この老齢者に対する、あるいはまた妻に対する援護措置をもっと強化しろ、こういうようなことを指摘しておるわけであります。また、いまの答弁の中にありましたように、軍人軍属と準軍属格差をもっと埋めるべし、こういうことが毎度の附帯決議に出ておるわけでありますが、今度のこの法律改正の中にそれらの点がどのように生かされておるのか、この点援護局長から御答弁を願います。
  7. 中村一成

    中村(一)政府委員 昨年の衆議院の本委員会におきまして附帯決議をおつけになりました項目につきまして、その具体的なとりました措置を御報告いたします。  まず、老齢者及び妻の優遇措置を講ずること、援護基準引き上げること、ということにつきましては、年金の額の大幅な引き上げが提案をされておるところでございます。さらに戦没者父母特給法支給対象あるいは戦没者妻特給法あるいは戦傷病者妻特給法支給対象拡大ということが提案されております。  それから準軍属処遇につき、軍人軍属との格差をさらに縮小するという点につきましては、被徴用者等につきましては、今回の改正によりまして軍人軍属と同じ率の額にいたす、その他の方々につきましては、従来八〇%であったものを九〇%に引き上げるという措置を講ずることといたしております。  それから戦傷病者に対する障害年金等改善につきましては、年金額の大幅な引き上げあるいは支給対象拡大と、扶養親族加給金額引き上げを講ずることといたしております。  未処遇者につきましての早急な解決につきましては、日華事変中におきますところの処遇につきまして、この際漏れております点を大幅に取り入れるという措置を講ずることといたしておることでございます。その他未帰還者調査あるいは遺骨収集につきましては、先刻申し上げましたとおり、根本的に案を練り直してこれに対処するということで準備をいたしておるところでございます。
  8. 田畑金光

    田畑委員 戦傷病者戦没者遺族等援護については、当然この委員会でも取り上げておりますように、実態調査、こういうことが大事である、こう指摘されておりますが、この実態調査というのはどのようになっておるのか。調査の結果、どのように把握しているのか。
  9. 中村一成

    中村(一)政府委員 遺族に対しますところのきめこまかい援護を行なうためには、遺族実態把握を行なうことが必要でありますことは当然でありまして、援護局といたしましては従来から実態把握につとめているところでございます。最も新しいものといたしましては、昨年三月末におきますところの調査でございますが、これによりますと遺族の年齢の構成が明らかになっております。六十五歳以上の方々が七三%を占めております。六十歳から六十五歳までは一〇%、六十歳未満が一六・六%という状況を示しております。  なお、遺族実態調査につきましては、昭和四十三年の十一月と十二月の二回にわたりまして、特に戦没者父母、祖父母について調査を行なったものがございます。また恩給局におきましても、昭和四十四年におきましては公務扶助料を受けております妻につきましての調査を行なっておりますが、こういうようなものを私ども参考といたしております。  なお現在、日本遺族会がこの二月現在で遺族実態調査を行なっておりまして、これにつきましては技術的な面で私ども援護局も御協力申し上げ、近くその結果が出ることになっておりますので、そういう点も参考にいたしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  10. 田畑金光

    田畑委員 昭和四十三年の七月二十九日に戦傷病者戦没者遺族等の問題に関する懇談会報告書が出て、それに基づいて四十四年以降援護措置強化が講じられてきておるわけですが、あの報告書内容というものは全部処理されたのか。さらにまたあの報告書の中には、今後問題点について検討して逐次報告書を出すということになっておりますが、あの懇談会がその後何らかの報告書を出しておるのかどうか。
  11. 中村一成

    中村(一)政府委員 遺族問題懇談会の御答申をいただきました点につきましてはその後すべて解決いたしまして、すべて御答申趣旨法律上あるいは予算上の措置が講じてございます上に、その後私どもといたしましても、その点を、御答申趣旨を体しましてさらにそれを上回る改正をいたしておるところでございます。なおその後におきましては、そういうわけで懇談会は任務を終了いたしておるわけでございますが、先ほど大臣お話しございましたとおり、特別給付金という制度がございまして、これの問題につきましては特にまた御検討願うというわけで、懇談会がこの四月に発足いたしまして、これはただいま御検討願っておるという段階でございます。
  12. 田畑金光

    田畑委員 いまお話にありました遺族等特別給付金問題懇談会、この設置目的なりその構成なりまたこの懇談会がいつごろをめどに報告書なり意見書なりを出すように期待しておるのか、この点をまず伺っておきたい。
  13. 中村一成

    中村(一)政府委員 遺族等特別給付金問題懇談会と申しますものは、本年度昭和四十七年度の予算の中に予算が計上せられておりまして、設置が認められておるわけでございます。この懇談会趣旨は、このことばのとおり戦没者父母あるいは妻あるいは戦傷病者の妻に対しますところの特別給付金が終期を近く迎えようといたしております。そこで、その給付金制度につきましてこの際根本的にひとつ御検討願いまして、そうして給付金制度の将来の問題につきまして御意見を伺うという趣旨のものでございます。それで四月に七名の委員方々お願いいたしておりまして、お名前を申し上げますと、専売公社の副総裁の泉さん、それから日本住宅福祉協会理事長紅露みつさん、毎日新聞の顧問五島貞次さん、それから日赤副社長の田辺繁雄さん、それから専修大学教授田邊繁子さん、それから石川島播磨重工業の顧問をしております中山定義さん、それから元復員庁官房長森田俊介さんという七名のいわゆる本問題に関する学識経験のある方々お願いいたしまして御就任いただいておりますが、私どもといたしましては、明年度予算なりあるいは法律制度の問題につきまして準備をいたします関係上、夏ごろまでに御意見を承りたい、こういうふうにお願いを申し上げておるところでございます。
  14. 田畑金光

    田畑委員 いまの答弁の中にありましたように、戦没者父母に対する特別給付金支給というのが、この法律によれば昭和四十二年に発足して五年の償還、そうなってくると、四十七年で償還が終わる、こういうことになっておるわけです。また戦没者の妻に対する特別給付金支給法昭和三十八年に成立を見ておりますし、特別給付金の十年償還、こういうことですから、来年償還期限がくるということになるわけです。そうしますと、今回、遺族等特別給付金問題懇談会はこのようなことをにらんで発足したものと見ておるわけでありますが、政府としては、この懇談会に対しては、戦没者父母やあるいはその妻に対する処遇について新しい立場から、内容強化なりさらに援護充実ということを考えて諮問されておる、あるいは意見を求めておる、こう考えるわけであります。この点について、ことしの夏ごろまでに答申を求めて、来年の予算の中でぜひ実現したい、こういう御答弁でございますが、どういうような構想考えをお持ちなのか。懇談会には当然政府考え方を反映させて意見を求めるというのが通例でありますだけに、この際、その内容について明らかにしていただきたい。
  15. 中村一成

    中村(一)政府委員 私ども懇談会に対しましてこのようにといった、何と申しますか、方向をあらかじめお願い申し上げるということはいかがかと思っておりますが、ただ遺族等の置かれておりますところの現況をつまびらかにいたしまして、なるべくその援護行政一般に関しまして御承知を願いました上で、学識経験のある皆さま方の御意見というものは、おそらくこれは国民の御意見をまた反映するものと私どもは信じておりますので、ぜひこの懇談会におきまして十分御審議の上、やはりみんなの同意の得られる線で、今後の給付金の問題を含めた援護行政の問題につきましては、ひとつ御意見を十分拝聴いたしましてそれを反映したい、こういうふうに考えまして、この懇談会におきましては間違いなく御説明を申し上げたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  16. 田畑金光

    田畑委員 間違いなく御説明を申し上げたい方向が、一体厚生省としては、今後こういう戦傷病者父母なり妻なり、戦没者父母なり妻なりに対してどのような方向委員会をリードする、と言ってはことばが適当でないでしょうが、しかしあなた方としても、一応この特別給付金法律立法目的も大体ことしじゅうにあるいは来年じゅうに終わるという、こういう時期に懇談会意見を求めるとするならば、当然厚生省としても一つの将来についての構想があってしかるべきだと、こう思うのであります。またこれはそうでなければ、この七人の委員にただ自由に討議してくれということで皆さんの期待される答えが出てくるはずがないわけですから、どういう方向に持っていきたいというのか、この点ひとつ大臣からお答えを願いたい、こう思うのです。
  17. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 一昨日この懇談会の発足にあたりまして私もあいさつをし、御趣旨も申し上げて、お願いをいたしました。その趣旨は、いまおっしゃいますように、戦没者父母あるいはまた未亡人の特別給付金の問題について、このままには置けないため、何とかしなければならぬと思うので、それについてひとつ忌憚のない御意見を伺わしていただきたい、政府としては何とかいたしたい、かように思うので、それについて適当な御意見をまず十分戦わせていただきたい、そして予算編成に間に合うように結論を得ていただきたい、こういう趣旨のことを申し上げまして、具体的にこうするああするという、具体案はまだ出しておりません。そういう先生方の御意見も伺いながら、そしてこういうようなところでどうであろうかというものが出せるというようなチャンスになれば出したい、そういうような気持ちで伺っておりますので、まだ事務的な具体案とか、こういう案ではいかがでございましょうというものを出す段階にはなっておりません。なっておりませんが、気持ち田畑委員のおっしゃいますように、そういう気持ちでやっております。事実、こう言ってはおかしゅうございますが、厚生省意見を聞かれたらだんだん申し上げてまいりたい、こう思っております。
  18. 田畑金光

    田畑委員 まあこれ以上この点は追及しませんけれども、それぞれ構想はあろうが、たびたびの附帯決議にも出ておるとおりであるし、質問の中にも出ておるとおりでありますから、援護法充実強化のために、戦傷病者の妻なり戦没者父母なりあるいは妻等に対する処遇改善については、一そう努力されることを要望しておきます。  それから先ほど大臣答弁の中にもありましたし、援護局長答弁の中にもありましたし、昨年の附帯決議の中にも、また常に毎回の附帯決議には出ておるわけでありますが、この未処遇者について早急に具体的な解決策を講ずると、こうなっておりますが、この未処遇者というのはどういう対象考えているのか。当然また今度の懇談会にもこういう問題点を含めて意見を求めるということになるのじゃないかと、こう思うのでありますが、いま厚生省として未処遇者処遇処理、具体的にこれこれはぜひひとつ来年の措置の中で実現をしていきたい一こう考えているのは何と何なのか、明らかにしていただきたい。
  19. 中村一成

    中村(一)政府委員 未処遇の問題につきましては、大きな問題といたしましては準軍属軍人軍属との格差解消するということが一つの柱でございまして、これは一般的な年金額の増加とあわせて、やはり準軍属軍人軍属との格差解消をする、これが第一。それから第二番目は、日華事変その他におきますところの者の処遇問題につきましては、今回の改正法案の中におきまして大部分は解決を見るところでございますけれども、なお一部の準軍属等の問題につきまして残っておる問題がございますので、そういう問題が一つの柱になろうかと思っております。さらにいろいろと技術的な問題で、対象数は少のうございますけれども、しかしやはり均衡解決すべき問題がございますので、そういう点が来年の問題ではなかろうかと考えておる次第でございます。
  20. 田畑金光

    田畑委員 厚生省からもらったこの法律説明資料を見ますと、勤務関連傷病による傷病者処遇改善等について、今回の改正では日華事変中の軍人、準軍人については取り上げられておりますが、軍属、準軍属は未処遇のままに残っておる、こういう問題については来年これを埋める、取り上げて善処する、こういうことだと思いますが、そのように理解してよろしいのか。  それから軍人軍属と準軍属処遇における格差について、今回被徴用者については十分の九から十分の十に、すなわち軍人軍属と同じように取り上げておるわけでありますが、その他の準軍属については十分の八から十分の九に増額はされているが、やはり十分の九で押えられておる、来年はこういう者も是正をする、その格差を穴埋めをする、こういう方向で進めるものだと理解してよろしいかどうか。
  21. 中村一成

    中村(一)政府委員 先生お話しのとおりでございまして、その二点につきまして、つまり軍属及び準軍属につきまして、日華事変中の勤務関連傷病あるいは死亡に関する措置をどうするかということ、それから準軍属の中で依然として九割にとどまっておるグループを、明年度といたしましてはその他のグループと同じように十割にするという点が明年度の大きな課題であろう、こういうふうに存じております。
  22. 田畑金光

    田畑委員 未処遇者処遇改善の問題については、私は軍人軍属と準軍属格差を埋めるだけでなくして、しばしば取り上げておる再婚解消妻遺族年金支給についての期間延長の問題ですね。それから、これは昨年のこの委員会で私がこれも取り上げたわけでありますが、警防団の団員について、四十年度において防空業務従事中の事故による死亡傷害につき、死亡者遺族に七万円、傷害者に五万円の一時金が支給された、こうなっております。これは消防庁から支給されたとなっておりますが、こういうような問題などは検討対象になるのかならぬのか。さらに入営帰郷途上における死亡者遺族に対する特別支出金として四十六年、四十七年度において一人につき十万円支給ですね。これは一時金の支給だけで処理が終わったということになるのか、これも検討対象に取り上げておるのかどうか。さらに私は昨年、医師看護婦助産婦等医療従事者、こういう特別技能者等についてもたしか実態調査中というような答えがあったと記憶しておりますが、これらが一体どうなっておるのか。こういう問題については、これは未処遇の問題として取り上げるのか取り上げないのか、この点もひとつ明らかにしていただきたい、こう思うのです。
  23. 中村一成

    中村(一)政府委員 ただいまお話のございました再婚解消妻につきまして、その解消期間延長の問題、これはやはり未処遇問題の一つとして検討すべき事項と考えております。  それから御質問の、防空関係医療従事者に関しましては四十五、四十六年度におきまして一時金を七万円差し上げるという予算措置が講ぜられまして、これは現在支給をやっておるところでございます。なお、入営帰郷途中の死亡者に対する遺族特別支出金、これも現在、四十六年、四十七年度の二カ年にわたりまして予算措置が講ぜられまして、ただいま措置をいたしておるところでございます。その他お示しの警防団の問題でありますとか、あるいは戦時中におきますところのいろいろなケースがございまして、それらのことにつきましては当委員会その他いろいろな場合におきまして御議論をいただいているところでございまして、十分検討をいたしておるところでございます。
  24. 田畑金光

    田畑委員 そうすると、入営帰郷途上における死亡者遺族に対する措置はこの一時金の支給でもう処理済みだということでこれはたな上げされるのか、この問題についてなお検討するのかどうか。それからこの医師看護婦助産婦等医療従事者防空関係業務に携わっていた人方について、一時金は支給されておるのですか。
  25. 中村一成

    中村(一)政府委員 医療従事者関係方々につきましては、約百名の方につきましてすでに特別支出金が裁定されまして支給してございます。それから入営帰郷途上におきますところの遺族の方に対しましては、現在までに十七名の御遺族の方につきまして裁定をいたしておるところでございます。私どもといたしましては、この方々につきましては特別支出金を差し上げて御遺族を慰謝申し上げるということで、これを措置いたしておるところでございます。
  26. 田畑金光

    田畑委員 戦没者遺族相談員とか戦傷病者相談員、これはどのくらいいて、どういう活動をしておるのか、こういう人方についての報酬等について引き上げ措置を講ずるような考えがあるのかないのか。
  27. 中村一成

    中村(一)政府委員 戦傷病者相談員それから遺族相談員方々、いずれも九百四十名の方々全国都道府県に配置されまして、援護関係の特殊な非常に複雑なケースでございますので、その相談員方々はほんとうに役立っておると申しますか喜ばれておられるようでございます。私どもといたしましては、この相談員方々につきましてはもっと数をふやしてくれという要望もございますので、今後相談員の数をふやしていきたい。それから相談員に対する謝金でございますが、この謝金につきましては、ほかの相談員との関連もございますが、やはり報酬につきましては金額はふやしていきたいということで今後検討をいたしていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  28. 田畑金光

    田畑委員 この相談員はたいへん喜ばれておる、これは当然のことだと思いますが、九百四十名という数がそれぞれきまっておるようです。また、いま答弁を聞いておりますと、謝金だか報酬だか知りませんが、これはふやしていきたい、こういう話ですが、いま何ぼ払っているのか。私の聞いたところでは五百円である、こういうのですが、そんなに役立ってほんとうに喜ばれておる人方に、謝金とか報酬といって五百円とはこれまた驚いたことで、いつごろから五百円で、その五百円も毎年上げておるのかどうか、すべて上げておるのに五百円で押えておるというのはどういうことなのか、このあたり御説明をいただきたいと思うのです。
  29. 中村一成

    中村(一)政府委員 戦傷病者相談員制度昭和四十年から発足いたしまして、それから遺族相談員のほうは四十五年から発足いたしておるわけでございますが、いま先生御指摘のとおり月額五百円という謝金お願いをいたしておるわけでございます。私どもといたしましては、この五百円の金額につきましては、現在の社会のもとにおきましてあまりにも金額が少のうございますので、増額を希望いたしておるわけでございます。先ほど申しましたとおり、他の民生委員でございますとかあるいは身体障害者相談員、精神薄弱者相談員といったような制度がほかにございますので、やはり制度といたしましてほかにございますとどうしてもほかとの均衡ということが議論されますので、これはほかの委員に関する謝金とともに戦傷病者相談員あるいは遺族相談員につきましても、その謝金の増額はぜひ明年度お願いをいたしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  30. 田畑金光

    田畑委員 大臣、いまの相談員の問題、いまお話しのように民生委員あるいは身体障害者相談員その他いろいろな相談員制度がありまして、それとの均衡から五百円で押えられておると、こういうことでございますが、これは私は、今後、社会福祉というのがわが国の政治の中で一番大事な問題となってくるし、社会保障の充実強化というこの大事な仕事をなさっておる厚生省の使命というものがいよいよ脚光を浴びてきておる今日これからを考えたとき、私はやはりこういう制度のささえとなってくれる相談員なり民生委員なり等々については、いつも感ずることだが、もっと何らか報酬なり謝金等について予算の面から強化していくということが最も大事なことじゃないのか。本体を充実強化すると同時に、やはりこれをはたからささえていくようなこういう人方について格別な措置をだんだん充実していくことが大事な、全体としての社会福祉行政を進めていく柱だと思うのですね。この相談員がいつから五百円なのか。局長答弁を聞いておりますると、とても喜ばれておる。それはそうでしょう。大事なことだと思うのです。それが五百円ということで、いつまでも据え置かれていては、これは非常におくれておると思うのです。この点については格段の御努力を来年あたりから願いたいと思いますが、この点……。
  31. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 この点は、田畑委員のおっしゃるとおりに私も感じております。これは非常に低くて恥ずかしいようなわけでございまして、身体障害者、精神薄弱者の相談員は、おのおの三百円、こんなことではちょっと恥ずかしいような気がいたすわけでございますので、来年度はまあぜひ恥ずかしくない程度にいたしたいというふうに思います。
  32. 田畑金光

    田畑委員 ひとつ来年は御努力をいただきます。  時間が来ましたのでまとめてお尋ねしますが、この間グアム島に厚生省のほうからだれかを、また第二の横井さんのような人がいはしないか、こういうことで調査に派遣されたが、あれはどうなったのか。  それから今度は、話はまた違いますが、戦没者遺骨収集は現在どういう状況になっておるのか。最近の傾向は、国がやらぬで遺族会がやっておるというわけだが、もっと国自体が表に立って努力することが必要でないのか。四十七年度の予算は四千七百万計上されておるわけで、この程度の予算で間に合うのかなという感じを持つわけでありますが、この予算で、四十七年度、どの地域のどういう遺骨収集作業をなされようというのか。ことに近く沖繩が戻ってくる。まさか沖繩遺骨収集がまだなされていないとは私は考えていなかったけれども、去年沖繩に行ってみると、沖繩にまだ遺骨収集されていない場所があちこちにあるわけです。一体これはどういうわけで、こうおくれておるのか。また現地との話し合いは当然大事なことでございますが、現地の感情等も十分配慮しながら、復帰する沖繩については、すみやかに遺骨収集を完了することが必要だと思うのだが、そういうような計画はどうなっておるのか、これを明らかにしていただきたいと思うのです。  さらに未帰還者の実態と帰還状況の問題でございますが、未帰還者を数字から見ますと、昭和四十五年の十二月は三千九百二名、昭和四十六年十二月は三千七百名、したがって、この一年間で二百二名がはっきりしているわけでありますが、この二百二名のはっきりした内容というのはどういうことなのか。さらに、この未帰還者についての実態調査、これなどは当然近隣諸国との関係改善されるにつれて、もっと精力的になさるべきだと思うのだが、それらの計画があるのかないのか、こういうようなことについてお答えをいただきたいと思います。
  33. 中村一成

    中村(一)政府委員 グアム島におきますところの日本兵の捜索でございますが、グアム島政府の要請に基づきまして、厚生省といたしましては、先方の要求によりまして、三月の初めに、グアム島政府と打ち合わせの上で、わがほうから三名の職員を配置いたしました。そして、約一カ月間にわたりまして、グアム島政府の職員と共同の作業をいたしまして、特にグアム島の北部の地域におきますところの調査をいたしてもらったわけでございます。その結果グアム島におきましては、現地の事情に詳しい向こうの警察当局その他の考えによりまして、向こうに即した、かつまたわれわれのほうの意見も十分加えましてやったのでございますけれども、結論といたしましては、この一カ月間の調査努力にもかかわらず、日本兵らしい者の生存というものを発見する端緒がなかったということで、最終的に私どものほうの三名の職員とグアム島政府の総合的なディスカッションの末、現在のところグアム島においては生存者なしというところで調査を打ち切るということで帰ってまいった次第でございます。しかしながら私どもといたしましては、グアム島につきましては今後とも、生存者がいるというような何らかの情報でもあり次第、また私どもといたしましてもその調査については積極的に乗り出してまいりたいということで、グアム島政府にも今後もよくお願い申し上げまして帰ってきた次第でございます。もとよりグアム島政府といたしましては、今後とも日本兵の救出については努力をするということを申しているところでございます。  それから遺骨収集の問題でございますが、本年度におきまして、これは中部太平洋地区におきますところの遺骨収集、それからマレーシアあるいはインドネシアにおきますところの遺骨、これは場所のわかっておる遺骨でございますが、これを収集するということが本年度予算に計上されておるところでございます。なおまたフィリピンに慰霊碑を建立する予算も計上されております。  ことしの予算で十分であるかどうかという問題でございますが、これは冒頭大臣からもお話のありましたとおり、遺骨収集生存者救出についてはもう一度洗い直してやるということで、ただいま検討いたしております。したがいまして、本年度の予算におきましてまかなうことができないような事態になりました場合には、財政当局と御相談をいたしまして、その予算的な措置お願い申し上げたい、こういうふうに考えておるところでございます。  沖繩におきますところの遺骨収集につきましては、これもお示しのとおり、実はまだ沖繩には明らかに遺骨があると思われますところの地下壕等が二十四カ所ございます。それで、そこに約三千数百の遺骨があるということが推定されております。したがいまして、私ども沖繩が復帰しました場合におきましては、遺骨収集に関する責任官庁の厚生省といたしましては、五月十五日以降は積極的にこの沖繩におきますところの遺骨収集に努力いたしたいと考えておりますが、いままで遺骨が残っておりますということは、やはり非常に困難な事情がございました。でございますので、今後ともなかなかむずかしいことがございますけれども、しかしこれは厚生省といたしましては十分努力をして、早急に二十四の壕の中にある遺骨収集いたしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。  それから未帰還のお話でございます。これは四十七年二月一日現在で、三千六百七十三名の未帰還者がございまして、その内訳はソ連地域が三百七十二名、中共地区が二千九百九十二名、北朝鮮地域は百二十一名、南方諸地域が百八十八名となっております。そして四十六年の一月から十二月の一年間に帰ってまいった実績を見ますと、ソ連地域から一名、中共地区から四十五名、韓国から七十五名、計百二十一名が帰還をいたしております。私どもといたしましては、今後ともこの調査につきましては努力をいたしますが、さらに在外公館あるいは日赤ルート等を通じまして、未帰還者の実態を十分把握いたしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  34. 田畑金光

    田畑委員 私の質問はこれで終わりましたが、特に大臣お願いしたいのは、戦傷病者戦没者遺族等援護の問題に関する懇談会答申が出て、それはもう全部処理済みである、こういう局長からの答弁を聞いて非常にうれしく思いますが、今度はまた遺族等特別給付金問題懇談会を四月一日付で発足をさせた。ここでいろいろな問題を検討されると思いますが、この夏ころまでには答申が出るということでありますので、ひとつ援護法を、国家補償の精神に基づくこの制度充実強化のために、この委員会でいろんな角度からいろんな問題まだ未処遇の問題が数々あると指摘されておりますが、これらの問題についてさらに一段の努力と善処をされますように強く要望して、質問を終わります。
  35. 森山欽司

    森山委員長 次に、寺前巖君。
  36. 寺前巖

    ○寺前委員 時間が短時間ですから、事務当局の方は簡単にお答えをいただきたいというふうに思います。  私は、この援護法の性格というのが、いわば公務災害補償的な性格を持っているということを事務当局の方から聞かしていただいております。しかし、公務災害的な性格を持っているといっても、どうしても国際的にも国内的にも解せない問題がありますので、大臣にどういうふうなお考えを持っておられるのかを聞きたいと思うのです。  その一つ。戦争犯罪人が、軍人の場合だったら恩給法が存在するし、あるいはまた戦争犯罪人が軍人でない場合ですか、その場合にはその遺家族がこの援護法の適用になると思うのです。間違っておったら間違いだと言ってもらったらいいですけれども、そうすると国際的に、たとえば中国と日本との間に国交が回復していない、ところが日本ではこういう戦争犯罪人がちゃんともう援護されているということになったときに、外国の諸君たちは日本をどういうふうに見るだろうか。この問題が一つ。  それから今度は国内的に……。だんだん援護法改正されてきて内地も対象になってきました。そこで、たくさんの人が戦争中に爆撃で死んでいると思うのです。艦砲射撃で死んでいると思うのです。けがをした人たちもおります。たまたま横におった人は軍人であった、軍属であった、この場合には恩給法なりあるいは援護法で補償される。ところがそうでない人たちは一体どういう補償があるんだろうか。私はこれはやはり一つの矛盾として、どんなに解釈されようと、一緒におった人のその家族というのはいつまでも残る問題だと思うのです。こういう問題についてどういうふうにお考えになっているのか、これが第二番目の問題です。  それから第三番目の問題。いま沖繩がこの五月十五日に復帰しようという話になってきておりますときに、戦争責任問題委員会、戦争犯罪究明委員会などの現在までの調査だけでも、十九件七百八十人に及ぶ人々が日本軍の手によって虐殺されてきているという事実が摘発されてきております。すでに鹿山元兵曹長の久米島虐殺、これはもう問題になってきておるところですが、赤松大尉の渡嘉敷島集団自決強要とか、梅沢少佐の座間味村三百七人に自決を要求する事件とか、次々と告発をされてきております。この場合にも同じ印象を受けているのは、あの久米島の問題です。島民を戦争の犠牲で虐殺した本人は、刑法上も何も損害を受けていない。それではこれらの村の人たちは一体どういう救済を受けているのか。赤松大尉の渡嘉敷島集団自決強要事件の場合は、手投げ弾でもって全部自決を迫ったというのです。梅沢少佐の事件のごときは、村民の大半はかみそりでもって自殺を強要されたというじゃありませんか。あるいは旧喜屋武村山城部落の場合には、下士官と四人の兵隊がやってきて、毒液で三歳以下の子供たち五人を虐殺する。   〔委員長退席、山下(徳)委員長代理着席〕 戦闘行為の自分たちが隠れるために、そういう子供たちがじゃまになるといって殺してしまう。こういう子供たちを、一体いま復帰をして、沖繩が返ってきてよかったなということでこの事態をそのままに置いて、喜んで了承したなどといえるのだろうか。大臣はこの援護法を提案するにあたって、いまこれらの矛盾についてどのようにお考えになっているのか、私はその点を率直に聞きたいというふうに思います。
  37. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 まず第一点は、軍人恩給あるいは援護法によって処遇をされている、これらはみな戦争犯罪者じゃないか、戦争犯罪者をなぜそんなことをして補償する必要があるか、こういう御意見である、かように考えます……
  38. 寺前巖

    ○寺前委員 違います。全部戦争犯罪者というのじゃないのです。戦争犯罪人として国際的にされた人がおるのです。その家族が補償されているという問題は、国際的にどういうふうに見られるのか。おわかりになりますか、言っている意味が。ちょっと違うのです。
  39. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 軍人軍属で戦争犯罪者とされている者やその遺族、こういうことでございますか。
  40. 寺前巖

    ○寺前委員 そうです。
  41. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 これは、戦争犯罪者というのは一つの、何といいますか、戦敗国が戦勝国から受けた国際的なあれだと、かように考えますが、しかしそれだからといって、とにかくその遺族方々の気の毒なことは変わりがないわけでございますから、したがってそういう意味では、差別はいたすべきではないというので今日まで来ておるのであろう、かように考えます。
  42. 寺前巖

    ○寺前委員 国際的にどう受け取られるかという問題を聞いているのです。
  43. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 国際的にもこれは私は許容されている問題ではないだろうか、かように考えます。その遺族にまで及ぶというのは何ぼ何でもあまり酷なことではないであろうか。もし戦争に負けていなければ、国際的な戦争犯罪者というものがあったわけじゃない。そういうようなことから何も、昔なら罪三等親に及ぶとかというようなことがあるかもしれませんが、そういうような点は私は国際的には非難をされるべき事柄ではなかろう、かように考えます。  それから一般の戦災を受けた人と援護法によって国家的な補償を受けている者、この区別はおかしいじゃないかという御意見のようでございますが、この恩給法なりまた援護法等で援護をいたしておりますのは、とにかく戦争をやる公務に従事をしておった、したがってその公務から来た災害であるから、これはやはり国家補償として見てやる。そうでなくて国民として受けた被害、これは事柄によっては、国が国家補償という意味でなくて、やはり国の他の意味における社会保障的な援護というので見るというように区別を今日までいたしてきておるわけでございます。これはこれなりの理屈があるということで今日まで来ております。私は、それでよろしい、かように考えております。  なお、沖繩の自決強要事件、新聞等にも出ておりますが、これは今後その真相がはっきり究明されてまいったなら、どういうように措置すべきであるか、これは政府として、ただいま総理府で総務長官が、その真相を究明いたしたい、かように言っておられますし、場合によってはあるいは法務省の問題になるかもわかりませんけれども、いまそういった真相を明らかにしておるという段階である、かように御承知おきをいただきたいと存じます。
  44. 寺前巖

    ○寺前委員 第一の問題についてはあとで発言するということにして、ちょっと除いて、一番最後の問題から……。  具体的に調査をしたいと言っておられますけれども、具体的にいまどういう体制をもって調査に当たっておられますか、ちょっとそれを聞かしていただきたいと思います。
  45. 小玉正任

    ○小玉説明員 私のほうでは、沖繩事務局という出先機関がございますので、沖繩事務局に命じまして、久米島事件に関する事実関係調査を目下いたしておる段階でございます。
  46. 寺前巖

    ○寺前委員 そうすると、特別な体制をつくってこの問題を検討しようというわけじゃないのですね。この問題に対してよく調べてきなさいというだけの対策なんですね。というのは、私は、どういうふうに見ておられるか知りませんが、片一方では、二十何年たっておる今日まで、虐殺したところの指揮者の名前も明らかになってくる、次々と出てくる。わからぬままになっている人もたくさんおる。そうすると、どういうことを行なった人たちかという問題になると、これは刑事上も時効だという話もいろいろあるけれども、いずれにしたって、総合的に調査しなければならない実態が一方ではあるのだ。被害を受けた側の実態がどうなっておるかというその後の事態もあるのだ。相当大がかりな内容だと思うのです。そういう大がかりな内容を、単にあすこの沖繩の現地の事務所に、調べて出せと言う程度で、この問題がほんとうに深く――内地に配置されている人の問題から全部総合的に調べようということになったら、現地だけを問題にしているだけではほんとうの意味の調査にはならないのじゃないか、私はそういうふうに思うのだけれども大臣、この問題どういうふうに思いますか。
  47. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 やはりこれは真相を明らかにするということが大事なことでございますから、その真相がどうであったか、これは真剣に明らかにすべきであろう、かように考えます。いま総理府で御答弁になりましたが、何といってもまだ施政権が及んでおりません。したがって、政府の出先機関なりあるいは沖繩政府で、公にはそういうところが中心になって真相を明らかにするという以外に道がないわけでございます。かように御了承いただきたいと思います。
  48. 寺前巖

    ○寺前委員 いや、私の言っているのは、いまの機構、あの沖繩の島に配置されている政府の出先機関の体制だけじゃだめじゃないか、もっと相当大がかりに、あたたかく迎えるというのだったら、真相究明するための対策機構というのを組まなければいかぬのと違うかという問題を提起しているのですよ。それじゃ少し単純過ぎるのじゃないか。
  49. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私が申しますのは、とにかく沖繩復帰までは何といっても施政権が行なわれていないわけですから、したがって、事実的には御承知のようにいろいろとやっているわけですね、沖繩政府に対しても事実的にやっているわけで、これが復帰をして、沖繩県というものができ、県知事もでき、市町村もその体制ができてまいれば、これは本土における行政機構と同じような形でやれるわけでありまするし、これで足りぬと思えば、必要があれば特別の機構も考えられるわけでございます。私は、現在の段階では、いま総理府から御説明を申し上げた程度でやむを得ないであろう、かように申し上げているわけでございます。
  50. 寺前巖

    ○寺前委員 警察でも、一人の人が殺されたら特別捜査班をつくるくらいなんですよ。ましてこれだけの大がかりの事件が発生しておる。長い間苦労しておった沖繩の県民をいま迎えようというこの瞬間に、こういう重大問題を含んでおる。これが自衛隊配置上も大問題になってきておるのじゃないですか。沖繩県民をばかにするなという問題が出てきたのは、そこでしょう。それだけに、特別な体制を組んでも真剣にこの問題は考えるというようなことを検討されてあたりまえじゃないか。これはぜひ御検討いただきたいということを申し入れたいと思うのです。  それから局長さんにちょっと聞きますが、いまの援護法では、沖繩のこれらの事件に対してはどういう扱いになりますか。
  51. 中村一成

    中村(一)政府委員 このケースは本質的に、もし新聞等に報ぜられておるとおりであるとするならば、いわゆる刑事事件というケースになるのじゃないか、こういうふうに考えます。したがいまして、現在法務省におかれましても、総理府の調査の結果によって十分検討したいというふうに承っております。ただ、私どものほうでは、沖繩戦におきます犠牲者の中で、いわゆる犠牲になった民間の方の中で、具体的に戦闘に参加された方でなくなられた方々、戦没された方々遺族方々に対しまして弔慰金あるいは遺族給与金といった年金を裁定いたしております。  それからこのケースにつきまして、それが戦闘参加者というケース処理されることが妥当であるとすれば、それはそういうふうなことも考えられるかと思いますけれども、本質的にはやはり一般的な補償の問題ではなかろうかというふうに考えております。
  52. 寺前巖

    ○寺前委員 そうすると、大部分の問題は、戦闘参加というよりも強引に取り込まれて虐殺されておるという結果になるわけだから、これは援護法という問題のワク外で、国家賠償という形で処理をするとか何かそういうことででも緊急に考えなければならぬ、こういう意味ですか。
  53. 中村一成

    中村(一)政府委員 これは仮定の上の話でございますけれども、新聞等に報道されておるような事態であったとするならば、これはやはり一般の国全体としての補償問題で検討されるべきじゃないかというふうに考えております。
  54. 寺前巖

    ○寺前委員 もう時間がないのでこれ以上やりませんけれども、私は、ほんとうにこのような不幸なことが起こった問題に対して、横におって戦闘に参加しておった軍人とか軍属の場合は、公務災害で将来にわたって家族の補償がある。ところがそうでない人たちは一般的に、内地であっても、死んだ人たちが補償されていないままにある。まして沖繩の場合に、その一緒に横におった人から殺されたという場合に、片一方の援護法の補償よりも、全然補償がないとか、あるいはそれよりも少ないというようなことがあったら、社会生活から見てどうしても解せないというのは私はあたりまえだと思うのです。だから、この問題について緊急に御検討いただいて、沖繩県民を心から本土へ迎えるという処置をとっていただくことを要望して、この問題は終わりたいと思います。  それからもう一つは、第一番目について大臣は、戦争に負けたから今日そういう問題になっておるのであって、犠牲においては同じことだ、だから他国においても別にこの問題についてとやかく言われることはないと思うというような趣旨お話でしたが、戦争に勝とうと負けようと私は、他国との関係の問題において、負けたからすまなかったと言い、勝ったらすまないと言わないというようなばかな話はないと思うのです。侵略的な行動をやったことにおいては、勝っておったら侵略的な行動は公然として許されるんだという話にはならないと思うのです。私はこの問題は重大な失言問題だと思います。日本の大臣が、負けたばかりにえらいこんなふうに問題になるけれども、こんなふうに言うておったということになったら、私はたいへんだと思います。どんな理由があろうと、他国に侵略するということは許される理由じゃないですよ。これははっきりしておいてもらいたい、この問題について釈明を求めたいと思います。  それから、もう一つ私が聞きたいと思うのは、最近私のところに、これは局長さんにお話しした内容昭和二十九年に日本に帰ってこられたインドシナ半島からの引き揚げ者です。この人が本土へ帰ってきて、そうして恩給をもらおうと思って、県の援護課へ行ったら、あなたは逃亡だと言われてびっくりしてしまって、私は何にも逃亡してない、自分の部隊におったところの中隊長がおらなくなったので、私はその中隊長をさがしに行って捕虜になったんだ、それが帰ってきたら逃亡になっているとは何事だ、ところがその申請を出したら却下された。最近また社会的にいろいろ問題になってきたので、今度は県に行ったら、その書類はございませんといって、また却下された。私はそのために恩給もらえないんだという問題の提訴があった。そこで、県のほうでなくしたというものだから、それじゃ厚生省に見せてもらおうと思って調査課へ行ったら、今度は調査課で、本人に見せるわけにいかないという。これは一体どういうことなんですか。自分のからだがどういうふうに位置づけられておるか。帰ってきたときに却下されて、そのために恩給の申請もできない。第一、逃亡という扱いは自分が参加してきめていないのに、どこできめられたんだ、軍法会議にでもかけられたのか、一体これどうしてくれるんだ、名誉にかかわる問題だ。  そこで私は局長さんに、この問題について二つ聞きたいと思うのです。なぜ書類を見せないのか。簡単になぜ却下されてしまったのか。本人が申し出たらそれを素直になぜ検討しなかったのか、これが一つです。もう一つはあの終戦の、あの重大な、複雑な段階のときに、いろいろな形で行方不明が起こっていますよ。隊を離れたからといって、とにかくすべて逃亡扱いにするとは何事だ、この問題について、逃亡の問題については再検討をする必要があるんではないか。この二つの点について聞きたいと思います。
  55. 中村一成

    中村(一)政府委員 最初のお話でございますが、私のほうで一方的に却下したとかあるいは書類を見せないというお話でございますが、この件につきましては、先般も私直接職員に命じまして調べましたところ、これは恩給をもらう資格が十分あるということで、出身の県に御連絡をいたしまして、手続をとらせるように現在いたしておるところでございまして、このケース解決をいたしておるところでございますけれども、しかし、いま書類を見せないというお話でございますが、これはもちろん秘密にする以外の書類につきましてはそう隠すことはないわけでございまして、私もよく調べてみますけれども、どういうことであるのか、一般的に関係者に対しまして資料を隠すということはいたしていないところでございます。この点はしかし、お示しでございますのでさっそく調べてみたいと思っております。  それから二番目の、行方不明即逃亡であるという取り扱いをしておるのではないかということでございますが、結論から申しますと、そうではないのでございまして、いわゆる行方不明、これは終戦前も戦後もでございますけれども、行方不明というものは相当にあるわけでございますが、その中にはいろいろな実態によりまして、いろいろなケースがあるわけでございまして、陸軍刑法あるいは海軍刑法にいいますところの逃亡の罪に当たるといった逃亡というケースと、そうではない、いわゆる行方不明である、わからないというようなこと、特に戦後におきましては、その地域によりましてあるいはシナの山西省におきますような場合とか、あるいは南方におきましてもインドネシア地区あるいはベトナム地区とか、地方地方によりまして、戦後におきましていろいろ事情があるようでございます。したがいまして、個々の一人一人の方につきまして、そういう事情によりまして処理いたしておるわけでございまして、行方不明即逃亡といったような処理はいたしていないわけでございます。したがいまして、先ほど先生が具体的なケースとしてお示しになりました方の場合におきましても、この方々につきましては、これは恩給法によりますところの恩給が裁定できるというような事情にあると私どもは裁定をいたしている次第でございます。
  56. 寺前巖

    ○寺前委員 第一の問題は、私の秘書が本人と一緒に調査課へ行って、土曜日の日ですよ、見せてくれというのに見せなかったんですよ。そうして終わってから課長のところに行って二時間余りおってわあわあやっておったんですよ。そして課長に電話連絡が行って、課長は隠すものではないといって、月曜日の日に行って、また最初はとやかく言われて、隠されながらやっと調べ上げたというのが実情ですよ。私の秘書がついていって本人が申し出て、何で隠すんだ。ましてや一般の人が行ったらおよそ私は見せないだろうと思うのです。あんな態度は私はどうかしていると思うんです。だからいま局長が言われたように、見せないという性質のものじゃないと言われたから、私はもうそれ以上のことについては言いません。それでけっこう。  それから、第二の問題については、逃亡であろうとなかろうと、恩給の処理はするというのだからそれでいいですよ。しかし、それについても逃亡という問題について本人は、私は探しに行ってそれで逮捕されたものを逃亡とレッテルを張られるということは納得できないという問題を提起しておられる。おそらく一人一人の人が逃亡という問題について納得できないといっておられる以上は、全部審査すべきであるにもかかわらず、全然審査もせぬでおいて却下されてきているという事実は一体どうなんです。審査するのかしないのか。申し出があったら本人の意見も十分聞いて客観的にちゃんと取り扱いを直しますというのかどうかという問題、はっきりしてもらいたいと思う。
  57. 中村一成

    中村(一)政府委員 もちろんそういう調査をいたします、本人の申し出によりまして。
  58. 寺前巖

    ○寺前委員 私は先ほど言った大臣の先ほどの答弁、外国が一体どう見るかという問題の中で、戦争に負けたから云々ということを言われたけれども、戦争に勝っていようと侵略は許されることではないでしょう。戦争に負けたからその人をめんどう見ることが云々されるのだ、こういう言い方はおかしいんじゃないでしょうか。
  59. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私の申し上げたのは、もし誤解であれば、さらにそうでないようにいたしたいと思いますが、戦犯として処刑をされた者は、これは戦勝国がいわゆる戦犯裁判を開いてきめたわけであります。私は戦争は、侵略戦争がいいとか悪いとか、そんなことを言っておるのではございません。そこで、その戦勝国のやった、戦犯としてさばかれた者の遺族等処遇については、これは法体系が違うわけでありますから、したがって、援護法なりあるいは恩給法で、戦犯とは無関係処遇をしている、かように申し上げたわけでありまして、これは侵略戦争がいいとか悪いとか、負けたから悪かったと言われるとか、そういう意味で私は申し上げたのではございませんで、いわゆる戦犯というのは、日本の国内法でやったのではなくて、しかも日本が参加をしない戦勝国が、これは戦犯者というてきめてやった裁判であるから、それはそういった意味の国際裁判に付せられれれば、それ以外にありませんけれども、それを引き続いて国内でどう処遇をするかということまで考える必要はなかろう、そういうことでいままできている、こういうことを申し上げたわけであります。
  60. 寺前巖

    ○寺前委員 時間が来ましたので、最後に大臣に、先ほど言いました片一方は軍人軍属の場合には保護されるいろいろな法律があるけれども、そうでない人たちの場合には保護される対象にはならない。この矛盾が、たとえば原爆の場合にも、附帯決議の一番最後のところに出てきた内容一つに、この部類に入る内容があるわけでありますけれども、いまやはり全国的に見ても、そういう疑問というのが一つはあるわけですけれども、これが一つ。  それからもう一つは、沖繩の場合に、もっとそれが日本軍との関係において起こっているという事態に問題がある。援護法で救済されないとするならば、軍人軍属以上の取り扱いを緊急に検討するという問題があるのじゃないか。そして、しかも事件の究明のための特別な対策に、緊急にやはりかかってもらわないことには、だめなんじゃないか。こういう問題が現実の問題として提起されていると思うのです。これに対する御所見を聞いて、私の質問を終わりたいと思います。
  61. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 第一点は、これをしぼって申せば、たとえば広島、長崎で原爆を受けられた、そのときのいわゆる戦争公務に従事していた者とそうでない者との処遇はやり方が違うじゃないか、これは前から提起されている問題でございます。これは今日までは、いわゆる公務として受けた人的損害と、そうでなくて受けた人的損害とは別の法体系で考えている、こう申し上げまして、私はその法体系はやむを得ないものだろう、かように考えております。  沖繩のいま例示にあげられました問題につきましては、やはり真相をきわめて、その結果、日本軍のために自決をしいられたとか、あるいは殺害をされたとかいうものをどう処分するか。これは私の厚生省の守備範囲でないかもしれませんが、しかし、政府、国としては、場合によったら何らか考えなければならぬようなことになるのではなかろうかと思います。それは事態をきわめて、そしてその結果、それらの人はどうなっているかということもきわめて、その上で適切な措置をいたすべきであろう、かように考えます。
  62. 寺前巖

    ○寺前委員 終わります。
  63. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員長代理 大原亨君。
  64. 大原亨

    ○大原委員 私が四、五年来取り上げてまいりました、いわゆる防空法関係の犠牲者に対する援護措置の問題でありますが、最初に政府委員のほうからお答えいただきたいのだが、警防団あるいは医療従事者あるいは防空監視員に対する対策の現状、人員等ですね、これが現在の段階でどうなっているか、弔慰金の問題です。
  65. 中村一成

    中村(一)政府委員 警防国の方々で空襲等によりましてなくなられた方々につきましては、七万円の見舞い金を差し上げることになっておりまして、自治省が担当しておりますが、自治省に前に聞いたところによりますと、二千百件が支給が済んでおるという状況であります。  それから医療従事者方々につきましては厚生省が担当いたしまして、これも同額七万円のお見舞いを差し上げておりますが、現在まで百件のケースが裁定をされておるところでございます。
  66. 大原亨

    ○大原委員 防空監視員はどうですか。
  67. 中村一成

    中村(一)政府委員 防空監視員につきましては、傷害者が三名、遺族が十九名、二十二名の方々が防空監視隊の犠牲者として準軍属の取り扱いをいたしております。
  68. 大原亨

    ○大原委員 戦争犠牲者の援護の公平という議論がずっとなされておるし、先般、別の法案についても議論したわけですが、厚生大臣は防空本部の幹部であったわけでありますが、いつごろまでやっておりましたか。
  69. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 たしか昭和二十年の三月から終戦までやっておりました。
  70. 大原亨

    ○大原委員 昭和二十年の三月から終戦までということになりますと、これは八月十五日ですか、九月ですか……。それでそのときに防空法による防空業務の命令、あなたは防空本部の三局長の筆頭局長、総務局長で、内務大臣が本部長であったと思いますが、国民義勇隊との関係はどうであったか。防空本部と国民義勇隊との関係はどうであったか。あなたは当時直接の当事者ですから、あなたが一番よく知っているはずです。
  71. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 義勇隊と防空総本部とは関係がなかったと思っております。
  72. 大原亨

    ○大原委員 防空総本部長と国民義勇隊の本部長、これはだれがやっておりました。
  73. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 おそらく当時は内務大臣が当たっていたと思います。
  74. 大原亨

    ○大原委員 内務大臣が双方とも当たっておったわけでしょう。
  75. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 さようでございます。
  76. 大原亨

    ○大原委員 内務大臣が防空本部長と国民義勇隊の本部長をやっておったわけであります。あなたは――めったにそういう人にめぐり合わすことがないから、きょうは私は時間をいただいて当時の実相をきわめておきたいと思うのですが、これは私も四、五年来いろいろ資料を、データを出してまいりましたから。  防空本部長と国民義勇隊とは関係あるのですね。実質的に関係ある。国民義勇隊の本部長は内務大臣、防空総本部長も内務大臣、そういうことで、軍との表裏一体の関係で本土空襲や本土決戦に備えた体制でしょう。組織的にはどういうふうになっていますか。
  77. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 そういう御質問をいただくのでしたら、当時の書類等もよく見て検討してまいるつもりであったのでありますが、今日ただ記憶をたどるだけでございますから、あるいは間違っているかもわかりませんが、内務大臣が義勇隊の大将であった、それから防空総本部の大将であった、これは確かにそうであったと思います。しかしながら防空総本部の防空業務としての、内務大臣、本部長を助けるのは、そこにたしか副本部長がおりまして、その下に私たち三局があって、もっぱら民防空ということについての、内務大臣が兼任しておられましたその人を補佐をしておる。それから義勇隊のほうは義勇隊で補佐をしておる。そこで防空総本部と義勇隊というものの直接の関係というものは、事務的にはなかった、かように考えております。
  78. 大原亨

    ○大原委員 あなたはよく記憶が整理されてないわけですよ。あなたより私がよく知っているのです。政府委員、国民義勇隊は準軍属として扱われて、準軍属として援護対象になった人は何人いるか。
  79. 中村一成

    中村(一)政府委員 国民義勇隊では準軍属扱いされましたのは、四千百七十一人でございます。
  80. 大原亨

    ○大原委員 防空法は法律によって、国民に対しまして空襲や艦砲射撃や本土決戦に備えてやったわけですよ。国民義勇隊は勅令と閣議決定に基づいているのですね。国民義勇隊は準軍属として援護法対象になっているが、防空法関係はなぜ準軍属としての対象にならなかったか。
  81. 中村一成

    中村(一)政府委員 防空関係におきましては、防空法に基づきますところの防空監視隊員につきましては、これはもう準軍属の取り扱いをなされておりますけれども警防団員あるいは医療従事者等につきましては、準軍属の取り扱いをいたしてないのでございます。  何ゆえに国民義勇隊が閣議決定で組織されたものなのにかかわらず、準軍属の扱いをいたしたかという理由でございますが、これは国民義勇隊がやはりその組織の点におきまして、軍人軍属に準ずるような組織のもとに、陸海軍の業務に直接支援をするという意味におきまして、この国民義勇隊は、その組織におきましても活動におきましても、軍の軍人軍属に準ずべきところの程度が非常に高いというところにおきまして、準軍属の取り扱いをしているというわけでございます。
  82. 大原亨

    ○大原委員 防空業務に従った者は、同じように本部長は内務大臣ですよ。それから法律によって空襲その他においてはちゃんと責任分担しているわけです。そして一方においては、ちゃんと一年以下あるいは一千円以下の懲役、罰金ということになっているでしょう。一年以下の懲役、一千円以下といえば、いまでいえば五十万円ぐらいになるだろう。国民義勇隊と防空業務に従事した者は実質的に差はなかった。差を立証することは法律上できない。どこに差がありますか。組織からいっても、それから任務や拘束性からいっても差はないですよ。
  83. 中村一成

    中村(一)政府委員 国民義勇隊の場合におきましては、状況が緊迫した場合におきましては武器をとって決起する体制に移行する準備がなされておった。そういう組織がなされておるという点におきまして、国民義勇隊は、防空法に基づくところの警防団員や特殊技能者よりも、その拘束されている組織あるいは拘束の状態が軍人軍属に準ずべきものである、こういうことでございます。
  84. 大原亨

    ○大原委員 何言っている。事実を知らぬじゃないか。それでは事実を調べてないんだ。実態を調べてないんだ。それじゃ聞いてみるけれども、防空法に基づいて防空業務に従った者の種類を言ってごらんなさい。身分を言ってごらんなさい。
  85. 中村一成

    中村(一)政府委員 防空法に基づきますものは、防空監視隊員、これは防空法第六条ノ二の規定に基づきまして……(大原委員「簡単でよろしい」と呼ぶ)はい。それから警防団員、それから特殊技能者、それから一般的に防空の実施地域にある者、一般の国民であります。
  86. 大原亨

    ○大原委員 あなたは、本土決戦の段階で、防空法に基づいて組織されたもので、同じ内務大臣だけれども、義勇隊との間において戦闘の心がまえに差があったと言うけれども、そうじゃないのです。隣組防空だって警防団だってそうだけれども、竹やり訓練なんかやっていたじゃないか。飛行機が落ちてきたり、あるいは敵前上陸したならば、竹やりでやるという訓練をしておったじゃないか。そういう実態がある。ちゃんと私は調べておる。防空業務をやっていた者は、そういうあなたのような説明実態に即していないです。差をつける理由がないじゃないですか。片一方は法律に基づいて権利義務がちゃんとあって、そうして懲役、罰金がある。これは同じだと言っている。法律的に差を設けることは間違いだ、こういうことを言っている。  それでは聞きますけれども、防空法の関係の資料を、閣議決定その他全部封印をして秘密にして資料を焼かしたのは、どういう理由で焼かしたのか。
  87. 中村一成

    中村(一)政府委員 ただいまの点につきましては承知いたしておりませんので、至急調べてみます。
  88. 大原亨

    ○大原委員 つまり防空法関係のものは、これは全部資料を焼かしたわけだ。焼却さしたのです。たまたま私が残っているものを、いま助役をやっているかどうかわからぬが、長崎市の助役をやっている人が、ぼくのところにこんなに持ってきたから、それを逆に調べて閣議決定等の封印を解かしたわけです。封印をしておって外部には出さなかったのです。官房長官の判こが要るそうだけれども。なぜそういうことをしたのだ、そういうことについては、私は当時の責任者から聞いている。これは斎藤さんにも関係があるのです。斎藤さんはそのことの事情を知っておられる。なぜそういうことをやったのか。国民義勇隊と防空隊に組織をされた者の中には、実際言って差はないのですよ。一億本土決戦だといって軍が命令して全部やったんだから、実質的には軍の指揮下でやったんです。差はないのです。であるのに、国民義勇隊については準軍属としてやっておきながら、防空関係はほっておいたのはなぜか。あなただって責任があるでしょう。防空関係で犠牲になった人に対して責任があるでしょう。厚生大臣ありますよ。あなたは戦犯になりましたか。非戦闘員を戦争に追い込んだ責任ということで議論になったことがありますか。
  89. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私はそういうことはございません。戦犯というような意味で調べられたこともございません。  それからいまおっしゃいますように、防空総本部が指令を出して竹やり訓練をさしたということも私は覚えておりませんし、それはございません。もしそういうことであれば、私らも知っていなければならぬはずです。私はそういう覚えはございません。   〔山下(徳)委員長代理退席、委員長着席〕  それから書類を焼くことについては、私どもはまだ内務省におったころ、そういうことをする必要はないじゃないかと私らは主張しておりました。私は八月の末であったと思いますが、他に転職をいたしましたので、したがって現実に焼いたということについては、私は知らないわけであります。
  90. 大原亨

    ○大原委員 斎藤さん、あなたは八月の十五日になったら防空本部はすぐやめたのですか。
  91. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私は八月の二十日過ぎであったかと思っておりますが、神奈川県の次長というところに転任をいたしてまいりました。
  92. 大原亨

    ○大原委員 そのときに防空本部はどうなっていましたか。
  93. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 防空本部は、そのときは残務整理をしておったのじゃなかろうかと思います。記憶にさだかではありませんが、御質問があれば、いろいろ記録等も調べておくべきだったと思います。
  94. 大原亨

    ○大原委員 そうじゃないのです。防空本部は資料を焼かしたのです。焼却さしたのです。日本が無条件降服しましてアメリカ軍が上陸するということになりましたら、すぐ焼かせて、そして防空本部は解体をして事務引き継ぎをやったのです。それはあるのです。あなたが在籍された当時の関係者がおられるからわかるのです。それから竹やり訓練をやっていないという保証はないですよ。隣組防空をやっているのです。要所要所でやっているのです。義勇隊じゃないのですよ。本土決戦の段階で防空隊を義勇隊に逐次切りかえていった。そして中身は一致しておった。そういうところもあるけれども、これは全部内務大臣が本部長。であるけれども、隣組ではバケツリレーやらみんな一緒に竹やり訓練をしている。ぼくがとった写真がある。やっているのです。  それで、やっているということ、さらに空襲その他に対処して軍の命令に従って政府の権力によって国民を防空業務に従事させた。それに違反した場合においては罰則が懲役その他がある。このことは間違いないことでしょう。間違いないことです。これを援護法対象にしないということはおかしい。法律的におかしいのですよ。これは法制局がそういう見解を述べている。なぜかと言えば、これは非戦闘員を戦争に動員したという証拠になるから焼かしたのです。これは当時の関係者の人が言っている。そういうことで焼かしたのです。閣議も封印しているのです。  それじゃ、時間の関係で、あとまだ十分ぐらいありますけれどもお聞きいたしますが、空襲や艦砲射撃等で防空業務に従事した人で犠牲者というか傷害を受けたり死んだ、そういう人は何人あるか。
  95. 中村一成

    中村(一)政府委員 先ほど申しましたとおり、旧防空法関係の犠牲者につきましての処遇をいたしております者は先ほど申し上げましたが、一般的に防空関係者で……。
  96. 大原亨

    ○大原委員 そうじゃない。被害の実態を言っているのです。
  97. 中村一成

    中村(一)政府委員 空襲による被害でございますか。
  98. 大原亨

    ○大原委員 空襲や艦砲射撃による被害、死んだりけがした者は何人か。
  99. 中村一成

    中村(一)政府委員 今次大戦におきますところの一般の戦災死没者の数につきましては、昭和二十四年の四月に経済安定本部が調査いたしましたものがございますが、その調査によりますと死亡者が二十九万九千四百八十五名、うち空襲による者二十九万七千七百四十六名、艦砲射撃その他の者が一千七百三十九名、それから負傷者が三十四万四千八百二十名、これまた内訳といたしまして空襲による者が三十四万三千三百二十三名、艦砲射撃その他の者が一千四百九十七名、こうなっております。
  100. 大原亨

    ○大原委員 つまり防空業務というのは、いま言ったように防空監視員、これは議論を起こしたから援護法対象にしたんだ。防空法関係は抹殺しておったのです。これは空襲にさらされて、そして警戒警報や空襲警報を出しておって被害を受けたのだから、当然放任できない。同じような場所におったところの軍人とか警察官、消防隊等は、これは援護法対象になっておるわけです。  そこで問題は、防空監視員以外に警防団医療従事者、専門技術者、隣組防空、職場防空、そういうような軍隊的な命令系統で軍隊との表裏一体の関係で組織されておった者で防空業務に従事しておった人で被害を受けた人は何人であったか。いままでこれは四、五年来この問題を取り上げて、防空業務については援護対象にすべきであるという見解で何回も決議している。なぜこの実態について調査できないのか。しないのか、できないのか。一般的な空襲の被害者だけじゃないのです。私が言っているのは、いま言ったように、防空業務に従事しておって、けがをしたり死んだ人は何人か。
  101. 中村一成

    中村(一)政府委員 昨年の国会におきまして大原先生の御質問で戦争中の防空要員等の犠牲者の処遇状況はどうであるか調べろという御質問がございました。私どもさっそく調べておるのでございますけれども、現在のところ防空従事者の中につきましての正確な犠牲者の状況に関します資料は残念ながらないわけでございます。ただ旧防空従事者扶助令と申しますものが昭和十六年に勅令でございました。これによりまして扶助金が出ておるという、その扶助金の金額につきましては資料がございまして、その決算額を把握いたしたのでございますけれども、人的な被害につきましての詳細な記銀はわからないわけでございます。ただ、先ほども申し上げましたとおり、たとえば自治省が警防団員につきましてお見舞いを差し上げるといったような場合におきまして全国的に資料をとりました結果、二千百件の申請が出ておるということから、全般じゃございませんが、一部につきましては、これをうかがうことができるわけでございますけれども、残念ながら詳細に関する資料を得ることはできないのでございます。
  102. 大原亨

    ○大原委員 七万円の見舞い金を出すことになったのは、この防空法の問題を議論しだしてからなんです。私が指摘してからなんです。これは法制局は義勇隊と差別をつける理由はない、国との権力関係、命令関係において差はない、こういうことを言っているのです。これはそうなんですよ。私は時間がないから言わないけれども、準軍属の中身をずっと調べてみたら、当然公平の原則からいって防空業務に従事した者を放置することは、当時の実態からいっておかしいのです。いままでは一般東京空襲や広島、長崎の原爆その他空襲や艦砲射撃等で防空業務に従事しておったそういう者について対象としなかったから、こういうことになっておったわけですが、警防団員と医療従事者について見舞い金を七万円ずつ出すということから一応数字が出てきたわけです。当時扶助令千円ですか、扶助令は一般的にみんなあったわけですが、扶助令については生活保護法に引き継いだわけです。しかし、これは私が調べてみたところでは一部の資料しかないのです。防空法関係の扶助令、これは勅令でございますが、一部しかないわけです。ですから、その防空法関係対象別の犠牲者があったのですよ。あったんだけれども、資料を焼却させて、これを対象外にした。これは当時の関係者が言っている。非戦闘員を戦闘にかり出したということになれは、あなただって――あなたは運よく戦犯にならなかったけれども、あなたは戦犯なんだ。そういうことだから、この際、これは占領軍が来る際には全部焼いてしまえということを上から下まで命令したのです。これは当時の関係者が参議院にいまいるけれども、ちゃんとその当時のことをよく覚えております。あなたはだいぶ記憶が薄らいでいるらしいが、それとも意識的に忘れておるのかどうかわからぬけれども、私は、いいことだから、この問題はあなたが前の厚生大臣のときに初めて議論をしだした。二年目くらいだったかのときでしたが、あなたはそれはやります。そうだ、幹部をやっていた。いい人が厚生大臣になったものだ。――私は、戦犯ということになればここに並んでいる人はみんなお互いにすねに傷があるわけだ、そのことを議論しているわけじゃない、お互いにその反省の上に立ってやっているのだから。であるけれども、当時の事情からいってみて国との権力関係はなかった。月給は出して、そして雇用関係があったというのはそれは軍属になっておるのだ。そうでない、命令によって、告示によって戦争に動員された犠牲者というのは概括的に準軍属になっておるのだ、私は時間を省いて言わなかったけれども。だから防空法の従事者についてやらぬ、そんなことは絶対にないのですよ。命令を聞かなかったら懲役にかかっておったのだ、罰金もかかったことがある。だからその間の事情から言うなれば、七万円の見舞い金を出したのは、これで終わるというのではなしに、そういうことを契機にして法律でも何でも仏前に供える、そういうことを通じて実態がわかるだろう、そういうことを通じて援護法の適正を期するべきである、そういう考え方から私は賛成したんであって、第一段階措置として私は了承したんであって、この問題について私が調べ上げた中においては、この問題は解決していない。だから、いろいろな関係法律のときには、私はこの問題についての附帯決議等を要望してきたわけであります。  実際に空襲や艦砲射撃で、特に東京大空襲――最近写真その他が出ておるが、ほんとうにみじめなものだ。東京大空襲、広島、長崎の原爆その他空襲地帯等の都市、実際の空襲の犠牲者というのは、いま言ったあの程度の、二十数万、三十数万の被害者であります。ですから、この人の中で、たとえば防空業務に従事した中で六歳以下はいいとか、六十五歳以上はいいとかいうふうな、詳細な規定はありますけれども、そういうものを除外するしないは別にいたしまして、私はその本土空襲その他で、そういう国との法律関係、権力関係において障害者、犠牲になった人については、これはやるべきである、もう少し調査すべきである、こういうふうに思うわけです。  斎藤厚生大臣の、厚生大臣としての寿命がどのくらいあるかわからぬ、それは未知数だけれども、全く佐藤内閣の運命とともに未知数であるけれども、しかし、この援護法を審議するにあたって、この点については私は斎藤厚生大臣から、その実態に即して、あなたの、いわゆる国務大臣、いまの内閣、政府の担当大臣として納得できる答弁を最後にいただきたい。考え方を、決意をいただきたい。
  103. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 大原委員お話を伺っておりますと、なるほどと思う点もございます。さらによく当時の防空法関係の法的な位置づけその他ももう一度検討いたしまして、その結果を次の機会に御報告申し上げることができるであろうか、かように考えております。
  104. 大原亨

    ○大原委員 終わります。
  105. 森山欽司

    森山委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。
  106. 森山欽司

    森山委員長 ただいままでに委員長の手元に、谷垣專一君、田邊誠君、大橋敏雄君及び田畑金光君より本案に対する修正案が提出されております。     ―――――――――――――   戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正   する法律案に対する修正・案  戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。  附則第一条の見出しを「(施行期日等)」に改め、同条ただし書中「附則第四条」の下に「及び附則第五条」を加え、「同年四月一日」を「公布の日」に改め、同条に次の一項を加える。2 この法律による改正後の未帰還者留守家族等  援護法第十六条第一項の規定、この法律による  改正後の戦傷病者特別援護法第十八条第二項及  び第十九条第一項の規定、この法律による改正  後の戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法  第二条、第二条の二、第二条の三第一項及び第三  条の規定並びに附則第五条第二項の規定は、昭  和四十七年四月一日から適用する。  附則第四条第一項中「昭和四十七年四月一日」を「この法律の公布の日」に改め、同条を附則第五条とし、附則第三条の次に次の一条を加える。  (戦傷病者特別援護法の一部改正に伴う経過措  置)第四条 この法律による改正前の戦傷病者特別援  護法第十八条第二項の規定に基づき昭和四十七  年四月以降の分として支払われた療養手当は、  この法律による改正後の戦傷病者特別援護法第  十八条第二項の規定による療養手当の内払とみ  なす。     ―――――――――――――
  107. 森山欽司

    森山委員長 まず、修正案の趣旨説明を聴取いたします。谷垣專一君。
  108. 谷垣專一

    ○谷垣委員 ただいま議題となりました戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案に対する自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の四党共同提案にかかる修正案につきまして、四党を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。  お手元に修正案が配付いたしてありますので、朗読は省略させていただきますが、その要旨は、本法律案昭和四十七年四月一日施行となっております未帰還者留守家族等援護法による葬祭料の改正規定、戦傷病者特別援護法による療養手当及び葬祭費の改正規定並びに戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法改正規定につきましては、これを公布の日から施行し、昭和四十七年四月一日から適用することとするほか、これに伴ない所要の規定を設けることであります。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。
  109. 森山欽司

    森山委員長 修正案について御発言はありませんか。――御発言ないものと認めます。     ―――――――――――――
  110. 森山欽司

    森山委員長 これより本案及びこれに対する修正案を一括して討論に付するのでありますが、別に申し出もありませんので、これより戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案について採決いたします。  まず、谷垣專一君外三名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  111. 森山欽司

    森山委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除く原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  112. 森山欽司

    森山委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  113. 森山欽司

    森山委員長 この際、谷垣專一君、田邊誠君、大橋敏雄君及び田畑金光君より、本案に対し、附帯決議を付すべしとの動議が提出されておりますので、その趣旨説明を聴取いたします。田邊誠君。
  114. 田邊誠

    田邊委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。  案文を朗読して、説明にかえさせていただきます。      戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議   政府は、次の事項につき、格段の努力を払うべきである。  一 戦没者遺族等老齢化の現状にかんがみ、老父母及び妻に対し一段の優遇措置を講ずること。なお、援護の水準をさらに引き上げ、公平な援護措置が行なわれるよう努力すること。  一  準軍属に対する処遇については、軍人軍属との格差をすみやかに縮小すること。    戦傷病者に対する障害年金等処遇については、さらにその改善に努めること。  一  戦後二十数年経過した今日なお残されている未処遇者について、早急に具体的な解決策を講ずること。  一 生存未帰還者の調査については、さらに関係方面との連絡を密にし、調査及び救出に万全を期すること。  一 遺骨収集については、さらにこれを計画的に推進すること。  一 旧防空法関係犠牲者の援護については、さらに検討を加えるとともに、その改善に努めること。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  115. 森山欽司

    森山委員長 本動議について採決いたします。  本動議のごとく決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  116. 森山欽司

    森山委員長 起立総員。よって、本案については谷垣專一君外三名提出の動議のごとく、附帯決議を付することに決しました。  この際、厚生大臣より発言を求められておりますので、これを許します。厚生大臣斎藤昇君。
  117. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいまは、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案を御可決くださいまして、まことにありがとうございます。厚く御礼申し上げます。  なお、ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして、努力をいたす所存でございます。  よろしくお願いを申し上げます。     ―――――――――――――
  118. 森山欽司

    森山委員長 おはかりいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  119. 森山欽司

    森山委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     ―――――――――――――   〔報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――
  120. 森山欽司

    森山委員長 この際、健康保険法一部改正案の審議に先立ち、まず厚生関係基本施策に関する件、特に医療保険及び医療に関する問題について、厚生大臣の所見をただしたいとの申し出があります。これを許します。田邊誠君。
  121. 田邊誠

    田邊委員 今日、日本の医療はきわめて荒廃の極に達しておると思います。われわれは、この日本の医療をこの際、根本から立て直す必要を痛感しておることは、政府もわれわれも一致しておると思うのであります。しかし、現在まで政府がとってまいりましたいろいろな施策、考え方、そしてまた今国会におけるところの政府の各種の法案等をながめたときに、政府に一体、今日の医療の荒廃を救い、そして将来、日本の医療を根本から立て直すところの一つの展望とその具体的な計画、そしてその計画を実施に移すための一大決心と努断というものがあるかといえば、私は全くこの決意に乏しいといわざるを得ないと思うのです。  今日、国民が一体医療に対して何を望み、何を求めているか。この国民の要求というものを的確にとらえて、これにどう対応するかという、こういう政策がなければ、私は、医療の今日のこの事態を打開することはできないと思うのです。したがって、基本的には、よい医療をいつでもどこでも受けられるところの体制、これをつくることがやはり最も基本に据えらるべきであることは言うをまたないと思うのです。この先決要件というものが満たされなければならぬし、この責任はやはり国にある、この大原則を政府は踏まえるべきであろうと思うのです。  したがって医療の供給体制の整備、たとえば公的医療機関の拡充強化等を含めたそういう体制というものがはかられるべきである。しかし、今日までこれらの施策に対して一体どれほどの熱意と努力がなされてきたかといえば、残念ながら、遅々として進まない現状を国民は憂えていると私は思うのです。特に医療の問題は、ただ単に治療だけではなくて、いわゆる健康保持、健康管理から予防、治療、あと保護、こういう一貫した医療制度というものが確立されなければなりません。しかし、そういったことに対して一体政府が、いわば総合的な観点に立った施策を講じたことがあったでしょうか。  私は残念ながらないと思うのです。そういう健康最優先の原則を踏まえて――あらゆる施策の中でこの健康保持、医療の問題は国民にとって最優先さるべきものである、こういう要求にこたえる政府の姿勢というものが今日までなかったことに、今日の医療の極端な荒廃がもたらされておるといわざるを得ないと思うのです。したがって、今日いろいろな法案を提案をしておりますけれども、その基本にいま私が申し上げたような、いわゆる医療の原則というものを踏まえた政府考え方政府の決意と勇断、これがいままでなかったことに私は大きな怒りを感ぜざるを得ないわけですけれども、厚生大臣、あなたも、おととしからまた二度目の大臣として、この問題に対していろいろと考えがあるだろうと思うのですけれども、これをこの際、国民の前に明らかにすべき責任を負わされていると私は思うのです。ひとつ大臣の所見を承りたい。
  122. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいま田邊委員のおっしゃいますように、今日の医療のあり方はこれでいいかということは、これは非常に大きな問題であると考えます。いろいろな科学技術の進歩に応じてその治療の内容も変わってきている、また疾病の様相も変わってきている、国民の健康保持のあり方も変わってきている。いろいろな関係で、いままでのようなままであってはいけないということは、おっしゃるとおりだ、かように考えます。  厚生省といたしましても、いままではびほう的にといいますか、思いついたままをそのときの要請に応じて、ある程度はやっておりましたけれども、しかし、いまおっしゃいますように、やはりこれは抜本的、根本的に考え直す必要がある。その方向はやはり国民のコンセンサスを得た方向で強力にやっていく必要がある、かように私も痛感をいたし、ことに二度目の厚生省を担当いたしまして、特にそれを感じました。  そこで、ひとつ幅広く、いまおっしゃいます国民の健康の保持それから疾病の予防、疾病の治療、さらに進んでリハビリ、これらを含めまして医療の基本法というものを考えて、そしてそのコンセンサスのもとに、一つの統一された方針のもとに抜本的な医療のあり方というものを実現をしてまいりたい、かように思いまして、はなはだ微力でございますが、医療基本法というものを、どうしてもこの国会に提案をして御審議をしていただいて、しかも出します案は、おそらくいろいろとまた御議論もあろうかと思います。それらも十分意を尽くしていただいて、そうしてりっぱな基本法というものを国会でつくっていただき、それに基づいて着々やってまいるということが急務である、かように思って、いま医療基本法の立案を急いでいるわけでありますが、これも関係方面との折衝その他に時日を要しておりましたので、今日まだ提案に至っておりませんが、ごく近い間に提案をいたしまして、そして十分御審議をしていただきたい、かように考えておる次第でございます。
  123. 田邊誠

    田邊委員 いま大臣は、ことばとして言われましたけれども、そういった大臣の姿勢なんというものが具体的にあらわれていないところに政府の無責任政治があると私は思うのです。いま大臣いみじくも、いままでの施策は思いつくままにやってきた、いわば風にそよぐアシのようなものでありまして、こちらから意見があればそちらに片寄り、また違う意見があればそちらに片寄り、そういう形でもって、いわば筋の通った、将来を展望した施策がないということの私の指摘は、そのまま当てはまると思うのです。こういう場当たり的な施策というものが一体どういた結果をもたらしてきたか、政府の無責任な言行不一致というものが、一体どういうような健康破壊をもたらしてきているかということは、例をまたないと私は思うのです。大臣のいま言われた医療基本法の問題、それと並行してやらなければならない医療保険制度の抜本改正という問題、いずれもこれは政府の再三にあたる公約です。  言わずもがなですけれども、四十二年に提出した健康保険法は、国会の中でもって二年の時限立法になった。四十四年までには抜本改正はやらなければならぬという国会と国民に対する責任を政府は負わされた。しかし二年後、無為無策のままこれが実現できなかった。どういたしましたか。四十四年の国会では、佐藤総理が実は異例の本会議における発言をいたしました。なかなか、いまの総理はわれわれに言われても、ほんとうのことを言わぬ人でありますけれども、四十四年の国会では、本会議質問に先がけて発言を求めて、二年間の時限立法において定められた抜本改正ができなかったことは、政府の怠慢でありました。まことに申しわけありませんとあやまったではありませんか。いわゆる公約不履行をあやまったという異例な事実があったわけですね。ところが、どうですか。その二年後の四十六年において、また再び同様の轍を繰り返している。今度は総理はもうあやまることすらもしなかった。もう陳謝をするところの勇気も、国民に対して顔向けもならない、こういう事態だったですね、これは。  私は、このことを思ったときに、いま厚生大臣がいかに言われましても、この、いま続いてまいりましたところの政府の公約不履行、抜本改正に向けるところの決意、こういうものが、ただ単にことばだけに終わっているということを、私は国民の前に指摘せざるを得ないのです。非常に残念だ。今回抜本改正をやると言っているのですね。しかし社会保険審議会、社会保障制度審議会が答申いたしました内容によっても明らかなとおり、政府考えておる抜本というのは抜本に値をしない、いわば当面の、実は財政調整に名をかりたものにすぎないという形であります。機構いじりと財政調整を目的としたものであるという断定を両審議会ともしておるのですね。  ここに、私がいま言い、大臣がいろいろ答えた予防衛生の問題、いわゆる病気の早期発見の問題早期治療の問題、そして予防医療と公共医療機関の整備拡充によるところの緊急医療体制の問題僻地の無医村のいわゆる救済の問題、あるいは医師看護婦の拡充、そのための養成の問題、こういういろいろな問題が一体どのようになっているのか。大臣は、これは医療基本法であると言っているけれども、これらの問題――医療供給体制の整備拡充を一つの大きな柱としたこれらの問題、そして、それに伴うところの国民の負担の軽減と国民の医療保険によって受けるところの利益の増大、給付改善、こういった二本の柱というものがとられて初めて国民は安心して政府にたよる、信頼ができる、こういう状態になると私は思うのです。  しかし、われわれはそれらを目ざしながら、それに対応するところの現在の財政は一体どうなっているのか、こういう順序でもって、ものごとは進むべきだろうと思うのです。いまのあなた方のやっていることはまさにその逆、まさにさか立ちをしているやり方である。これでは国民は納得しようはずはないのであります。膨大な赤字を生んできていると言っています。一体これはだれの責任ですか。この赤字が当面埋まったら、ほんとうに根本的な治療ができるのですか。医療の現在の状態というものをほんとうに打開できるのですか。いわば将来の展望が示されて、それに立って政府は、国民に問うべきものを問うという姿勢がなくて、何で国民がこれに応ずることができるでしょう。公約不履行によるところの、この抜本改正に向ける政府の施策、これに対してあなた方は  一体どう言っていますか。どうですか大臣、どういうお答えがあなたからできるでしょうか。
  124. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 国民の期待、ニードに即応する医療の供給体制、健康の保持から予防から疾病の治癒からリハビリ、全部含んだそういうものを確立することの急務であるということは、おっしゃいますとおりでありますし、政府もさように考えております。  そういう意味から、あるいは国立病院、療養所の強化の問題にいたしましても、あるいはいまやかましくいわれておりまするガンあるいは成人病の中心病院になるセンターの設置でありますとか、あるいは交通その他の被害による救急病院の整備でありますとか、及ばずながらつとめてまいりましたけれども、これはいまおっしゃいますように、ある意味においてはばらばらということでもございましょう。僻地の医療をどうするかということにつきましても、専心あるだけの知恵をしぼってやってまいっております。医者、歯科医師あるいは看護婦等の供給体制も、医者については五カ年で大体十万対百五十人というように整備をするというような方針で、その育成といいますか、学校教育の受け入れ体制も計画的には進めてまいっておるわけでありますが、しかし、そういうものを、一貫した一つの政策の基本というものをはっきりさせて、そしていま言ったようなことに対応するのに、どうしたらいいかということをはっきりさして、その上に立ってやっていくということが必要である、かように痛感をいたしまして、医療基本法というものを、どうしてもこれは必要だということで検討を始めたわけでございます。それに時日を要しておりましたので、まだ今日ここにお目にかけることのできないことは残念でございますが、できるだけ早急にお目にかけて、皆さま方のあらゆる英知を傾けていただきたい、かように考えておるわけです。  医療保険の抜本改正は、おっしゃいますとおりに、四十四年の法案通過の際に、二年以内には必ずいたします、こういう約束をいたしました。私はそのとき担当をいたしておりましたので、その責任を痛感いたしております。したがって、四十四年の春、法案を通過させていただきましたので、二年以内に抜本改正を出すためには審議会においても十分審議をしてもらわなければならぬというので、たしか四十四年の八月でありましたか、両審議会に諮問をいたしまして、その答申を昨年の秋にちょうだいいたしました。  その答申の諮問をいたしました案の中には、御承知のように、健保の被保険者の家族を別に地域保険に入れたらどうであろうかということが一点、それから老人の医療保険は別立てにしたらどうであろうか、そのほかの点も多々ございましたが、大きな点はそういう点が主でございました。しかしながら、これらは両審議会とも、きわめて消極的というよりはむしろ反対でございました。  そこで、そういう構想を、今度は両審議会の意見を尊重いたしますとともに、なるほどこれは無理だということで、今度の抜本改正の中にはそれは入れておりません。そのほかの点はすでに御説明申し上げるまでもございません。  両審会からはすでに答申をちょうだいいたしました。社会保険審議会は、昨日のお昼に答申をもらいました。この両審会の答申を踏まえまして至急に政府原案をつくって、そしてすでに御提案を申し上げております財政対策に関する法案の審議の際にも間に合うように、ぜひこれを提案いたしたい、そして御審議をいただきたい、かように考えております。  この抜本改正も、両審議会から、抜本に値しない、こういうことを言われております。それはいまおっしゃいますように、医療の供給体制を整えなければ意味がないということのようでございます。医療の供給体制を完全に整えることは、先ほど申しますように、そう、きょう言ってあすできるわけのものでもございません。その前に政策の基本となるものをはっきりさせ、その上に立ってやっていくということがぜひ必要である、かように考えて、そして医療基本法というもので入れておるわけでございますが、予防、それからリハビリ、それまでこの保険の中に入れることは、きわめてむずかしい問題がありますので、これはできるだけ公費その他の方法でやっていく必要がある、かように思っておるわけでありまして、私もこの責任を痛感いたしますがゆえに、抜本改正、それから基本法、これをぜひ提案をいたして御審議をわずらわしたい、かように考えております。
  125. 田邊誠

    田邊委員 いろいろと大臣言われましたけれども、あなたの頭の中にあるそういった考え方というものが、政府の具体的な施策として、どういうようにあらわれてきましたか。いみじくもあなた言われたように、ばらばら行政だったというのです。まさにそのとおりです。口の先だけで、小手先だけでやってきたいままでの政府の姿勢というものが、今日まで、いわばぎりぎりのところに来ていると思うのです。  あなた、いろいろとやられたと言います。しかし、一体現状でやれる施策もほんとうに腹を据えてやっているかといったら、やっていないじゃないですか。これはしばしば私が指摘をいたしたとおりです。現在の診療報酬体系の問題にしても、あるいは薬の規制にしても、あるいは再評価の問題にしても、あるいは不正請求や水増し請求や、あるいは無資格の医師の摘発の問題にしても、へっぴり腰、及び腰でやってきて、あっちの顔色をうかがい、こっちの顔色をうかがう中でやってきたところに、政府がそのつど、そのつど場当たり的な策をやっても、何らそれが先行的な投資にならない。いわばおくれにおくれている、こういう状態に来ていると思うのです。  医師看護婦の養成等にしても、いろいろな交通事故や公害のこの多発化の現状の中でそれに追いつけない、こういう状態です。ですから、いわば一つの内閣の、一つ政府の運命をかけるようなつもりで取り組まなければ、この医療の問題、健康の問題は解決しないのですよ。いまの佐藤内閣にそれを望むことは、これはもちろん無理であることは、私は承知しております。しかし、国民のコンセンサスを求める上に立って初めてできるところのこの医療の問題、これをなし遂げようとするところの、そういった政府考え方というのが国民にも示されておらないところに基本があることを、私は繰り返し申し上げたい。行政的な責任やりましたか。行政的には一体、どのくらいの納得のいく仕事をやられてきましたか。行政的な責任と同時に、財政的な責任を政府は一体どうしてきたか。  これは具体的な問題について私は多く触れません。触れませんけれども、いわば予算の逐年の膨張、高度の経済の成長あるいはいろいろな所得の伸び、こういったものに比較をして、そして医療に対するところの国民の要望、要求、そして医療を受けなければならない現在の状態こういったものに比較して、政府の財政的な措置は一体どうでしたか。三十七年から三年間、わずかに五億円でもって過ごした。四十二年から四年間、二百二十五億円という低額でもって国の補助をやってきた。こんなことが一体許されますか。逆説的にいえば、今日の政管健保の赤字は政府がつくるべくしてつくったんじゃないかとすら国民は批判しているのですよ。いわばここまで国庫補助を押えてきて、それで、赤字が出ました、国民の犠牲でもってこれを切り抜けよう、こういう一策のために国庫補助を押えてきたんじゃないかとすらいわれているのですよ。これに対して答弁がありませんでしょう、あなたは。  私は、こういういままでの政府の怠慢、これに対する国民の納得を得ることのできなかった施策、これを、あなたが一体どのくらい反省をし、一体どのくらい謙虚にこれを受け入れてやろうとするところの、あなたの指導力と熱意があるかということを実は問いただしたいと思っておるのです。これはもうあまりあなたのほうで抗弁することはできないと思うのですね。どうですか、大臣、一言何かありますか。
  126. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 抗弁の余地がございませんので、そこで、とにかくこれは基本法というものを検討をさしていただいて、それに基づいて、これは大蔵省も文部省も、みんな一緒になって、そしてやってもらうということでないと、とうていやれない、こう思って、私は基本法に踏み切ったわけであります。その点だけはひとつ御了承いただきたいと思います。
  127. 田邊誠

    田邊委員 基本法に踏み切ると言われましたね。抜本改正に踏み切ると言われますね。われわれは、四十年からですよ。四十年から、この問題は実はずっと長い経過を経てきておる。あなたは四十四年と言ったけれども、四十二年に、四十四年までにつくるという約束をしたのです。できなかったから、あなたはしりぬぐいをしなかったのですね。  それと同時に、問題のあるのは、基本法をつくります、抜本改正をつくりますと言うけれども、国民のコンセンサスをあなたはどう求めていますか。具体的には、いわばあなたの諮問機関としての社会保険審議会なり社会保障制度審議会の意見を一体あなたはどう踏まえていますか。今度の健康保険法についても、全くこの両審議会の答申を無視しているというこの実態考えたときに、あなたが口でもって、やろうとするというようなことを言いますけれども、一体どういう立場でやろうとしているのか。いわゆる政策の最優先の立場、そして国民の納得の上に立って、この理解と協力の上に立ってやろうとする立場、そしてその前提としての国の責任、これを一体どう踏まえてやろうとするのかということに対して、国民は実は大きな不信感と批判を持っているのですよ。一体今後に向けて、この答申無視と、国民のコンセンサスを求めない独善的な態度に対して、あなたはどう改めていこうとするのか。これは、いわばいままでに対する批判もありますけれども、今後に対するところの意見としても、私はぜひともひとつ大臣の御真意を承っておかなければならない、このように思うわけです。
  128. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 両審議会の意見も、両者の答申のみならず、もうずっと前からの答申もずっと私は見まして、そこで最後腹をきめたのは、先ほどの医療基本法、これなくしては答申にこたえられないということが一点。それから国民のコンセンサスを得る――私は、最後はこの国会で御審議をいただくことが一番の国民のコンセンサスを得るゆえんであろうと、かように考えております。各審議会の意見も、決していろいろいわれておりますように無視しておるわけではございません。重要な点はみな踏まえて私はやっておるつもりでございます。
  129. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 関連して質問させていただきますが、いま田邊委員からいろいろと質問がございましたが、私も、いままでの質問はそのまま同感でございます。  さらに、私は斎藤厚生大臣に責任を追及したいものがあります。なぜならば、あなたは何回国民にうそをつけば気が済むのかということなんです。私は、政治家で最も要請されるものは、その誠意、実行力、責任感だと心得ております。最初に申し上げました誠意については、私は、斎藤昇さん個人的につき合った場合は、これは私はそういう印象を持ってきました。しかし、あなたが厚生大臣の座にすわられたときは、それが消えていきますね。いまも指摘があったとおりです。ましてや実行力あるいは責任感の立場からいきますと、ほんとうに言行不一致、厚顔無恥ということばがありますが、そのままあなたに上げたいですね。よくぞそこにのうのうとすわっておれるものだ、こう言いたいぐらいです。なぜならば……(「関連関連」と呼ぶ者あり)関連だから言っているんですよ。  今回、本委員会に付託されておりますいわゆる政管健保の財政対策案は、御承知のとおりに両審議会の答申を無視した中身でしょう。あなたは、口ではいつも審議会を尊重いたします尊重いたしますとおっしゃっています。口ではですよ。でも実際は無視じゃないですか。私がかってに言っていると思われたら困ります。私も社会保障制度審議会の言貝でございますから、その答申案を持っております。その一部を読み上げますと、「本法案については、」というのは今度提案している法案ですよ。「全く内容同一な議員立法がすでに国会に提出されていると聞く。これは、違法ではないにしても、いまだかつて例をみないところであり、本審議会に対する諮問を形骸化しようとするものと認められ、きわめて遺憾である。」これは、議員提案になっておりましたものは、社労理事会の席で野党にその矛盾を追及されまして、一応それは撤回されました。それは当然のことだと私は思うのですけれども。  いずれにいたしましても、この趣意を見ても、内容同一のものが出されたということは、すでに委員会軽視じゃないか、ばかにしているぞといっているところでしょう。まことにきわめて遺憾であると。その前に「形骸化しようとするものと認められ、」といっておるんですよ。これが一つです。尊重なさるとおっしゃっているけれども、ちっとも尊重なさろうとしない。ましてや「政府管掌健康保険の財政について、将来にわたる安定を目的とするものであり、医療保険の抜本的な改正の前提条件といわれている。もし長期的展望をも含んだものであるならば、医療保険の抜本的改正とあわせて総合的に検討さるべきである。にもかかわらず、本件を切り離して答申を求めようとする政府の態度は、不合理であり無理といわなければならない。」ここにも、もうはっきり大臣の態度を切っているじゃありませんか。そうでしょう。そういう法案をのうのうと、そのままの姿でここに出したということは、普通の人間ではできません。いわゆる個人斎藤昇ならできなかったでしょう、私の知る限りにおいては。厚生大臣になるとたんにあなたは変わるのですよ。あなたの晩年を飾る意味においても厚生大臣をおやめになったほうがいいんじゃないですか。いままではほんとうにすばらしい人柄を持ったあなたですよ。私はこれはあなたのために言っておきます。それが一つです。  もう一つは、この審議を推進しようと思われるならば、いわゆる抜本改正案、それから先ほどおっしゃっておった医療基本法、これをおそろえになる決心はあるでしょうね。また、おそろえになるならば、いつまでにお出しになるのかはっきりしていただきたい。われわれは、もう何べんもだまされてまいりました。私はもうあなたに言っても始まらぬと実は思っているのです。  私は、委員長お願いしたいのですが、この大もとの責任は、やはり総理大臣ですよ。ここに問題があるのです。佐藤総理を当委員会に出席を求めて、その責任を私は追及したい。きょうはここにいないので、やむを得ないから斎藤厚生大臣に言っておりますけれども、とにかくこの三つがそろって初めてこの審議は了解されるのでありまして、これなくして、幾ら財政対策案だけやってくれなんて言われても全く無理でございます。それは、これも先ほど質問があっておりましたように、社会保険審議会も社会保障制度審議会も、今回の抜本対策案はもう抜本改正の名に値しないと冒頭に指摘しておりますよ。  斎藤大臣、もう一つ私はあなたのいかに言行不一致であるかを確認したいことがあります。あなたは今回、健康保険法の財政対策案の提案理由の説明を先週の木曜日にその席でなさった。それはこうだったのです。「医療保険制度の抜本的改正につきましては、つとにその必要性が指摘されてきたところでありますが、政府といたしましては、今通常国会中に、そのための所要の法案につき御審議を願い、昭和四十八年度からこれが実施をはかりたいと考えておるところでございます。」冒頭にこう言っていますよ。ところが、その抜本改正案は全く影も姿もないじゃないですか。そうでしょう。一体こういう矛盾あるいは不合理をあなたはどう言いわけなさろうとするのですか、まず聞きましょう。
  130. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 実行力がない、力が足らぬと言われるのは、私はこれは率直に、まことに申しわけございませんと、そのとおりお受けをいたします。ただ、うそを言う、誠意がないということについては、私はいささかちょっと抗議を申し上げたいように思います。そこで、答申案についてうそを言ったか言わないか。いろいろこれはこまかい点に触れておりますから、いずれ法案審議の際に、詳細述べさせていただきたいと存じます。  他の、抜本に値しないと言われておりますが、これは抜本の考え方のまず第一歩に手を染めたものだ、かように確信をいたしております。これも審議の場で十分ひとつ御審議をいただきたいと思いますが、これが提案のおくれておりますのは、御承知のように、二つの審議会にかけなければならない。しかもこの審議会には私は二月五日にかけておるわけであります。少なくとも一カ月あれば、こう思って要請をいたしたのでありますが、いろいろな状況で審議会では慎重審議をされまして、社会保険審議会はやっと昨日の昼、二カ月有半を費やして、いただいた。しかもこれは審議会の答申なしに出したならば違法だ。また私は答申を待って、その答申を尊重して、そしてもし政府案で修正するところがあれば考え直して出します、こう言っておりますので、これはそのとおりにうそを言わないでやりたいと思って、これはできたならば来週中にでも提案の運びにいたしたい、答申十分検討いたしまして、その上で政府案として出したい。これは私は何も審議会にあれを着せるわけではありませんが、おくれましたのは、そういうわけでございまして、私はもう腹の中ではじりじりしておるわけであります。決してうそを言っているわけじゃございませんので、その点だけは御理解いただきたいと思います。
  131. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 うそということばがどうも気にかかるようですから、それじゃ公約違反です。もっとひどいでしょう。先ほど田邊委員も指摘しておりましたように、これは四十二年からの問題ですよ。私がこの国会に参りまして最初の問題です。五十五国会では廃案になりました。その廃案になった同じ法案をいわゆる健保国会に持ち出されました。大激論がありましたね。与野党激突の末にとうとう二年間の時限立法で成立したわけでございます。その後四十四年までに抜本改正案を提出します、抜本改正をやりますというのが、総理も厚生大臣も確約した公約でございました。ところが、四十四年の八月が期限でございましたが、それじゃできたか。できないじゃないですか。いわゆる臨時特例法案の延長案を出してきたじゃないですか。そこで野党から徹底的に責任追及があって、どうやったかといえば、それを撤回しましたけれども、本法にすりかえてしまったじゃないですか。これもごまかしですよ。しかもその後本法にすりかえたのですから、法案の上では一応のことは決着がついたように思われたでしょう。しかし道義的な問題、つまり抜本改正をやりますと言ったその責任に対する道義的な問題は、いまだに解消されておりませんよ。今国会にまっ先に出るべきじゃないですか。出ておりません。あなたは、審議会には二月からかけておったんだ、こうおっしゃいますけれども、大体審議会にかけている諮問内容そのものが骨抜きじゃございませんか。そういう骨抜きの内容を掲げて、幾ら審議会が審議しようといったって、しようがないじゃないですか。うそと思うならば、今回の答申の中にそのことが指摘されておりますよ。「今回の諮問は、社会的経済的諸事情の変動に応じた改正あるいは単なる技術的細目の改正がその大部分を占め、強いて「抜本対策」の名に価するものを求めようとしても、わずかに「高額医療に対する措置」と「財政調整」の二項目を見出し得るに過ぎない。医療供給関係面その他にわたる多数の項目については何ら触れられていない。」いいですか。もうすでに前回の諮問案に対して社会保障制度審議会がきめこまかい答申を出しております。にもかかわらず、それに触れられないで、今度骨抜きで出てきておるじゃありませんか。「これでは本審議会の答申をどこまで真剣に検討したかを疑わざるを得ない。」こう言っているでしょう。これまた審議会を無視していることじゃないかと言っております。そのもう少しあとのほうに、「総じていえば、今回の諮問は、さきの「健康保険法一部改正案」の諮問と切りはなすことの必要性が認められる部分はすこぶる乏しく、いわば第二次財政対策、よくいっても部分的対策にすぎない。したがって、本審議会の答申も、諮問に答えるよりは、」いいですか、ここが大事ですよ。本審議会の答申も、あなたが出している諮問内容は骨抜きだから、「諮問に答えるよりは、むしろさきの答申で抜本対策上とくに重視すべき点を重ねて強調せざるを得ない結果に終ったことを遺憾とするものである。」こう言っておりますよ。幾ら二月に諮問したからといったって、中身のないものを諮問したって審議のしようがないじゃないですか。じゃ、今度、きのう社会保険審議会の答申が出ておりますが、あなたはそれを尊重なさると言ったけれども、どこまで尊重し、案をつくって、この国会に提出されるのかお尋ねしたいと思う。  時間の関係もありますから私は重ねて聞いておきますが、社会保障制度審議会が抜本対策案に対する答申をしたときに、これは四月六日でしたよ。そのときに近藤文二会長臨時代行に、いわゆる審議会のメンバーの総意としてみんな要請したことがございました。それは答申案をあなたに渡すときに、必ず次の事項を確認してほしい。というのは、医療基本法を審議会に諮問するかどうか、結論的には諮問せよということです。それを確認せよということ。それから、こうした抜本改正に値しない諮問に対する答申だから、法案の今後のつくり方について、はっきり方向を示した答申をしておくので、いずれはそれに沿って、尊重するならば、すばらしい国民的な抜本改正案ができるであろう。もしそれができるならば、審議会に、これは形式的には問わない。形式的には問わないけれども、審議会のメンバーに、その内容ができたならば、正式に国会に提出する前にそれを見せるようにということ。二つのものを会長代行からあなたに確認をとっているはずですけれども、その点を含めてお答え願いたいと思います。
  132. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 いろいろ審議会の御意見等に対しまして、私も私なりの意見を申し上げたい点は多々ございます。いずれこれは本案審議の際に十分私の意見も聞いていだきたい、かように思います。  また審議会の近藤文二代理会長が申し出られました二つの条件につきましては、これは審議会に対してお答えをいたす所存でございます。
  133. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 まだたくさん言いたいことがありますけれども、時間の関係もありますので、私はとにかくいままでの斎藤大臣の御答弁では納得いきません。しかし民社党の先生も、もうさっきからそれこそじりじりしておりますから、かわります。
  134. 森山欽司

  135. 田畑金光

    田畑委員 私は、大臣に簡単に三つの点をお尋ねしますが、田邊委員並びに大橋委員からも質問がございましたが、大臣答弁がはっきりしませんので、もう一度念を押します。  この国会で医療関係の法案の審議が円滑に進むためには、いま提案されておる健保一部改正法、-この財政対策法案だけでなくして、いわゆる抜本改正案についても当然提案されるべきだと思うし、同時にまた、医療供給体制をどうするかという内容を持つ医療基本法案も、この国会に、この委員会に同時に審議するように提案をされませんと、健康保険法の一部改正法の審議も円滑には進むまい。また私もこの間の衆議院の本会議で、この三つの法案は同時審議でなければ、われわれ野党としては審議に協力できませんぞ、こうはっきり申し上げておきましたが、抜本改正法案と基本法案について、いつどの時点に提案されるか、これをはっきりお示しいただきたいと思う。
  136. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 抜本改正法案は、二つの審議会からの答申をいただきましたから、これはさっそく内容検討いたして、私はできたら来週中にでも提案をいたしたい、かように考えております。  それから基本法案につきましては、先ほど大橋委員からおっしゃいましたように、制度審議会から諮問をぜいという注文がついております。それらを踏まえまして、できるだけすみやかに提案をいたしたい、かように考えております。
  137. 田畑金光

    田畑委員 基本法案は、そうしますと、われわれがこの委員会で健保法案の一部改正を審議する、それに間に合うように提案される、提案できる、こういうように理解してよろしゅうございますか。
  138. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 御審議の途中になるかと思いますが、ぜひ、先ほど申しますように、来週中には提案をいたしたい。
  139. 田畑金光

    田畑委員 では、三案同時に審議ができる、そのように政府は責任を持って提案する、このように理解いたしました。  第二点としてお尋ねいたしたいことは、先ほど大臣の、田邊委員質問に対する答弁の中に、昨年の八月、健保制度について両審議会に諮問をした、その中で、たとえば被用者保険の家族については地域保険に入れたい、そういう原案に対して両審議会ともそれにはノーという答えを出したので、今回の抜本改正案からはずした、こう言われておりますが、そういう意味におきまして、今度の抜本改正案については、特に私は一番大きな問題は財政調整の問題だと思いますが、この財政調整の問題については両審議会とも否定的な意見が強いわけです。したがって私は、やはり、今度抜本改正案を提案されるならば、両審議会の答申も十分くんで、この委員会における審議が円滑にいくように、政府は審議会の意見も聞いて、本来政府の案はこうであったけれども、今回こういう提案をした、こういうような形をとるべきだと思うが、その点大臣のお考えをはっきり示しておいていただきたいと思う。
  140. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 先ほど申しました、医療基本法は、もうちょっとおくれるかもわかりませんから、御了承いただきたいと思いますが、やはりこれも御審議中にぜひ提案をいたしたいと思っております。御了承いただきたいと思います。  それから、両審議会の今度の答申の中で、いわゆる財政調整の問題この点につきましては、各審議会とも必ずしも同じ意見ではございません。ある意味においては条件つきというようなことにもなっておりますが、それらの点も踏まえまして、十分検討いたして提案いたしたいと考えております。  私は、いま財政調整はやめるというようには考えておりませんが、あの答申内容をよく読みまして、そしてこれが最善だと思うものを提案をいたしたい、かように考えます。
  141. 田畑金光

    田畑委員 最後に一点だけ。  医療基本法案については、私は、厚生省が中心としてつくっておられる第三次草案ですか、これが法文化されるという、その内容を見ましたが、抽象的な文言で、率直に申しまして内容が何一つございません。大臣のお答えのとおり、政策の理念をうたったのが基本法である、まさに政策の理念をうたっているかもしれません。しかし、政策の理念、その中についても、すでに私は議論する問題は多々あると思います。それは姿勢の問題。率直に申しまして、あまりにも医師会に遠慮し過ぎておる、あるいは医師会だけの声を取り上げておる。それが政策の理念じゃないのか。そういうような抽象的な文言の基本法を出されましても、現実は医療供給体制をどうするか、医療担当者の養成をどうするか、公的病院と診療所の機能の分化をどうはかるか、こういう基本的な政策がなければ、医療基本法を出されましても、これはなかなか、私たちが国民医療のあり方を主張しているその立場から見ましても、あまりにも離れ過ぎておると思う。この点についての、きちんとした大臣考え方だけを承っておきます。
  142. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 基本法の構想につきましては、いろいろ御意見もおありであろう、かように考えます。これらはひとつ、この国会の場で十分御意見を出していただきまして、私は政府が提案をした以上は、これ以外にいいものはないという意味で提案をいたすわけではございません。皆さんの御意見も率直に伺いたい。いい意見を、ひとつ国民のコンセンサスを得てきめていきたい、こういう念願でございますので、よろしくお願いいたします。
  143. 田邊誠

    田邊委員 いま大橋田畑委員から質問がありましたが、私はそのとおりだと思うのです。さらに寺前委員からも実は同様の趣旨の責任追及をしたいという発言もありましたが、時間がないそうでありますから御遠慮いただきましたが、私はやはり同じ強い意見をお持ちだろうと思うのです。  いま大臣からいろいろ弁明がありました。弁明がありましたけれども、これは一種の言いのがれだろうと思うのです。一番大きい問題は、何といっても政府のいままでの政治責任、政府の公約不履行、これについて国民に対して、あなた方は陳謝するという姿勢が見当たらないと私は思うのです。そこからものごとは発しなければ、今後の審議に協力するわけにいかないと思うのです。  したがって、いま大臣がいろいろと弁明、言いわけをいたしましたけれども、その限りでは、私は今後の審議を円滑に行なうことはできないというふうに思いますので、ひとつ委員長にお聞きいたします。  この政府の姿勢、政府のいままでの政治責任、これに対する明確な答弁を求めることを含めて、今後の取り扱いについては、あらためて理事会なり理事懇談会で討議した上でなければ、直ちに健康保険法の審議に入ることはできないというふうに思いますので、そのように取り計らいをいただくことを要望いたします。
  144. 森山欽司

    森山委員長 それでは、御趣旨をよく尊重いたしまして、後ほど理事会あるいは理事懇談会等を開いて、あらためて御相談をすることにいたします。  この際、暫時休憩いたします。    午後一時三十三分休憩      ――――◇―――――    午後四時二十一分開議
  145. 森山欽司

    森山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  休憩前における、医療保険及び医療に関する問題についての田邊大橋田畑理事の厚生大臣に対する発言に関しまして、この際、厚生大臣よりあらためて発言を求められておりますので、これを許します。斎藤厚生大臣
  146. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 厚生大臣といたしましては、再三にわたる政府の公約が今日まで実現できなかったことにつきまして、政府を代表して深くおわびを申し上げます。  また、今回の法案について、予算編成後に審議会に諮問するという仕組みによるという事情があったといたしましても、審議会の御答申に示されました御意向を盛り込めなかったことはきわめて遺憾に存じます。  以上を前提として、この際重ねて所信を明らかにいたしておきたいと存じますが、今日までの医療保険の現状並びに当面する国民医療問題点につきましては、それらに対する各議員からの御批判や、問題のよって来たるゆえんのものについての御指摘を、厚生大臣といたしまして率直かつ真剣に受けとめますとともに、今日までの政府の努力の足りなかった面につきまして十分に反省をし、その上に立って抜本改正医療基本法の制定などの懸案の実現に全力をあげて対処いたしてまいりたいと存じます。  なお、御指摘のありました抜本改正案につきましては、全力をあげて早期提出に努力いたしまするとともに、医療基本法につきましても早急に検討を重ね、所要の手続を経て国会に提出いたしたいと存じます。  以上お含みの上、法案の審議を何とぞ賜わりますよう、よろしくお願いを申し上げます。      ――――◇―――――
  147. 森山欽司

    森山委員長 それでは、健康保険法及び厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、これを許します。山下徳夫君。
  148. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 第六十五国会から懸案となっておりますところの健康保険法案が今国会に再度上程されまして、私がその質疑の第一陣を承るわけでありますが、まず最初にお伺いしたいことは、今回の健保改正法案の提出に先立って、ことしの二月に医療費の一三・七%の引き上げが行なわれたわけであります。御承知のとおり医療費と保険制度、これは密接不可分の関係にありますし、とりわけ政管健保におきましては重大な影響があるわけであります。今回の財政措置を見ないうちに診療報酬のみ、医療料金の引き上げのみを見切り発車をしたということにつきましては、今後の収支の、バランスに重大な影響を与えるのではないか。したがって、この問題につきまして、まず今後の財政状況につきまして大臣の御所見を承りたいと思います。
  149. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 政管健保の財政状態がきわめて悪化しておりますことは、御承知のとおりであります。ただいまおっしゃいますように、その財政対策が十分できないままに診療報酬引き上げを行なったということについての御指摘、御批判もごもっともに存じますが、財政上の問題で診療報酬がくぎづけにされるということは、やはりその診療に当たっておられる医療関係方々のことも考えますると、そうもできなかったという関係から、やむを得ずこういう形になったわけでございます。  そこでこのままに放置をいたしてまいりますと、いまのままでまいりますると、単年度赤字といままでの累積赤字を加えますると、三千億前後の累積赤字をこの年度末には見るというようなことに相なるわけでございます。
  150. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 今回の改正案が実現しました場合には、単年度におきましては一応収支のバランスがとれるようになっておりますが、長期的観望に立った場合に、大臣、確信がおありになるのかどうか。と申し上げますのは、現在、組合健保を定年でやめた人たちがこの政管健保に加入する、そういう傾向がふえておるのであります。組合健保加入事業場の定年がだんだん延びつつある傾向の今日におきまして、そうなるというと、結局政管健保の加入者というものが老齢者が多くなっていくということであります。同時にまた最近の傾向として、受診件数あるいは一日の診療単価あるいは病院の維持費等が漸次上がってきておるという傾向から見ますというと、一応これに盛られておる収支のバランスでほんとうに長期にわたってそろばん勘定が合うかということをお尋ねしたい。
  151. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 御意見のように、政管健保は本来、疾病率が組合健保に比べますると多い人たちを抱えております。そこへいまおっしゃいますように、組合健保をやめて、定年退職をしてそして中小企業に入る、政管健保に入ってくるという数も今後さらにふえてくるであろうと、かように考えます。そういったような関係から、政管健保はやはり受診率も高いということに自然になってまいるわけでございまして、これらの診療報酬もくぎづけにしておくというわけにはまいりません。したがってこれも引き上げてまいらなければなりませんが、同時に標準報酬報酬も上がってまいるわけでありますけれども、本質的にいまおっしゃいますようなものを政管健保が抱えておりますので、このままくぎづけになるということは将来財政的にさらに赤字を増していくであろうと、かように考えます。しかし、ただいま御提案申し上げておりますものによりますれば、政府の補助率も定率にいたしましたし――いままでは定率ではございませんでした。そして今後どうしても保険料率を上げなければならぬというときには、国庫補助率もまたそれに従って上げる。そして単年度赤字の出ないようにというように考えておりますので、この法案を御成立くださいまするならば、ただいま予見せられる事態におきましては、単年度赤字を積まずにまいるであろう、かように考えております。
  152. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 今度のこの改正案の提出にあたって、制度審とか保険審議会の意見を十分聞いてないというようなことをよく聞くのでありますが、もしそれが事実であるとするならば、どういういきさつでこの両審議会の意見を取り入れることができなかったかという点をお尋ねしたいと思います。
  153. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 両審議会の意見、一致しておるところもございますし、一致していないところもあるわけであります。まあ一番の重点を申し上げますると、標準報酬の上限の引き上げが急激過ぎはしないか、引き上げはわかるけれども、いままで十万円余りであったのを二十万円というのは、引き上げが過ぎはしないか、それからボーナスを、暫定的であるといっても、それを対象にして保険料を徴収することはいかがなものであろうか、もちろんそれについては、標準報酬の算定のしかたに実収、報酬を全部入れるほうがいいという意見もあるが、しかしこれは技術的にまだ困難であろうというので、そこらにつきましてはいろいろな意見が併記されているわけであります。その中で一つ考えられることは、急激過ぎはしないかという御意見のようでありまして、その点、これは数字の問題でございますから、二十万円がいいか、十五万円、八万円がいいかという問題もありましょう。私のほうといたしましては、いままで上限を引き上げました際のやり方といいますか、そういう点から考えまするとこの程度はさようでない、こう考えておりましたが、もし答申のとおりにこれを引き下げるということになりますると、財政のつじつまが合わなくなるということで、この点は財政法案として提案をいたしますのに無理があるということで、応じることができませんでした。  それからいま一点は、保険料の弾力条項は抜本対策に入れるべきではないか、このたびの財政対策に入れるのはどうであろうかということでございますが、しかしながら、この抜本改正は政管健保の財政対策という意味ではなくて、これは保険の本来のあり方という意味で抜本対策を考えたい、政管健保の財政対策ということを考えればどうしてもこの法案の中に必要である、かように考え、あとでも御説明を申し上げたわけでありまして、これはどっちの法律に入れるのがいいかという御議論であって、必ずしもこれ自身に非常に反対であるということではなかった、かように了解をいたしておるわけであります。
  154. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 抜本対策につきましては、ただいま大臣が御答弁なすったように、これはただ単に政管だけではなくて、保険本来の姿を規定する、これはごもっともだと思うのです。しかしながら、少なくとも政管健保ととりわけ深いつながりがあることは、これは当然だと思うのです。この抜本対策につきましては、すでに制度審からさきに答申が出ておりますし、また保険審議会からもきのう答申が出ておりますが、今後大臣は、近く提出を予定されております抜本対策につきまして、両審議会から出ました答申とどのようなからみ合わせと申しますか、どのような立場から対処していかれるかということをお尋ねしたいと思います。
  155. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 根本的に両審議会とも、これは抜本に値しない、抜本に値するというならば、医療の供給体制を整える必要があるということでございます。そこで、この医療保険の中で供給体制をきめるということは、これは事実上、法律の体系としては違うわけでありますから、どうしても医療の供給体制を整えるということは別の制度によらなければならないわけでございまして、これは先ほどからも申しておりますように、医療基本法でその政策の根本をきめ、それに従って医療供給体制を整えていく、そのことをはっきりいたしますと、こう言っておりますので、この点は私はやむを得ないと思いまするし、両審議会とも、これを医療保険法の中に入れろということではなかろう。早く供給体制を整える必要がある、それが整うまでに抜本改正をやることはいかがなものであろうかという意味も入っておると思いますが、しかしながらこれは両々相まっていかなければならぬと、かように考えまするので、したがって、考え方といたしましては医療基本法というものを別建てにしてやっていくということでまいりたい、かように考えます。  それから、抜本と言ってもたいしたことはないじゃないか、こうおっしゃるわけでありますが、私は、国民皆保険であるという今日の事態から考えますると、国民はどれかの保険に入っているというだけであって、その間に一つの統一したものがない。皆保険であるという以上は、国民すべてがやはり国民連帯の精神で、そして医療のために出費がかさむという場合に、国民連帯の気持ちでこれを相互扶助していくということがまず皆保険の精神を貫くものであろう、少なくともそういった精神を貫けるような方向に一歩踏み出す必要があるのではないか、これがいわゆる財政対策の面でございます。  保険の給付の公平、保険によって給付が非常に違う、あるいは家族と本人とが違うということも、やはり国民の医療という点から考えますると、これはまことにおかしなことであります。したがって、それを少なくとも国保の七割にまで統一をする、まずこれが第一段階だ、かようにいま考えておるわけでございまして、したがって、このたびの改正はこれをもってもう万全というものではございませんが、そういった趣旨に一歩踏み出すということにおいて、いままでとは考え方の姿勢が違うということでひとつ御了承をいただいて、この姿勢のもとに、今後実情に合うようにさらに改善を加えてまいりたいというのが趣旨でございます。
  156. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 ただいまの大臣の御答弁で、私は抜本改正ということに対してまだ十分理解できないのです。少なくともこの抜本改正の必要性については、もう時間的にかなり前から指摘されてきたわけなんですね。それがいよいよ日の目を見ようとしておる、近いうちに提案されるという以上は、大臣としても抜本改正に対する一つの理念というものをお持ちだろうと思うのです。そこらあたり、できますれば中身についても承りたいと思います。
  157. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 抜本改正の理念を一言で申しますると、国民皆保険の精神を貫きたいということに尽きるわけでございます。いろいろほかにこまかい点もございますけれども、根本的な理念はといえば、各保険の中でばらばらになっているものを国民皆保険の精神で貫いていく、これを基礎にいたしましてその第一歩を踏み出したいというのが理念でございます。
  158. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 現在の保険の制度下におきまして、その健全財政対策というものは収入の増をはかるだけでは解決できないと思うのであります。やはり同時に支出面の対策と申しますか、いわゆる診療報酬の適正化、ここまでやらなければいわゆる健全財政とはいわれないと思うのでありますが、この支出の面の対策について大臣の御意見を承りたい。
  159. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 支出面の対策、この点は、まずこれは常時やってまいらなければならぬ問題だと思います。どの制度の中にありましても、これを放置をしておれば、あるいは乱診乱療ということも避けられないであろう。したがって、これを防ぐための監査制度ということも強化をいたしてまいらなければなりません。ただ、仕組みといたしまして政管は全国一本の保険者ということになっているので、そういった監督といいますか、監査といいますか、これをやるのに、仕組みそのものが監査をやるのに効率的ではないという点があるわけであります。そこで、この点はこのたびの答申にも盛られているわけでありますが、これを仕組みの上でも、さらにいままでよりも組織、仕組みとして効率的な運営ができるというように変える必要があるのじゃないだろうか。この点はいま諮問をいたしております中には入っておりませんが、今度の答申の中に強く指摘されておりますから、その点をどうしても入れる必要があると、ただいまの段階で、これはまあ私だけのいまの考えでありますが、関係方面と連絡をいたしてこれを変えてまいりたい、かように存じます。  なお、仕組みの上から申しますと、いわゆる組合健保は組合員の健康状態あるいは疾病にかかっている状態等もわかりやすい、したがって、保険者としても効率的な運営ができる、監査にも便宜であるということも指摘されております。そこで、いま政管健保に所属をしている被保険者もできるだけ組合健保の形をとったほうがいいのじゃないか。したがって、いままで組合をつくるについてのある程度、何といいますか、赤字の出ないようにということをまず第一の条件として、これが独立した組合になれば赤字になるじゃないか、診療費が高くてそして標準報酬が低い、その計算からいくと赤字になる、したがって、組合をつくらせると赤字組合になるからというて組合をつくらせなかった、そして政管健保で抱いておった。いわゆる政管健保で抱いているのは、組合健保にすれば赤字になるというものをみな抱いているわけであります。そこで、財政調整ができるということであるならば、それは経営の効率化というメリットを尊重して、できるだけ組合をつくらせる。そのほうが、先ほどおっしゃいました支出面の押えということにも仕組みの上でよくなる、かように考えまして、組合をつくることをいままでのような、赤字になるからというて押えないで、そして一定限度のものはむしろ進んでつくらせる、つくりたいというものはみなつくらせるというように変えたい、これが仕組みの上での大きな変化でございます。
  160. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 次に、弾力条項についてお尋ねいたしますが、今回の改正案の中に弾力的規定、調整規定が復活いたしておりますが、生命保険と違って健康保険のような短期保険につきましては、こういった弾力条項も私はやむを得ないと思うのです。しかしながら、その運用いかんによっては安易な値上げにつながると思うのですよ。したがって、これは相当慎重に運用をやってもらわなければいけないのでありますが、この弾力条項の運用につきまして、大臣の御決意というものがおありならばひとつお聞かせ願いたい。
  161. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 弾力条項の発動はきわめて慎重にやらなければならない、かように考えます。診療報酬の改定も、御承知のように、中央医療協議会という三者構成による協議会に諮問をした上でなければやれないことになっておりますので、その面これも政府独自の考えで上げるということはきわめて困難な状況になっております。そういう上に立って行なうわけでございますから、弾力条項の乱用ということはあり得ない、かように思いますが、しかし慎重の上にも慎重な配慮を加えていたすべきである、かように考えます。
  162. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 大蔵省にお尋ねいたしますが、現在、法で規定されております医療保険は八つございますね。このそれぞれの保険の中身はいろいろ違うわけでございますが、これら医療保険に対する国庫負担のあり方、これもまた各保険によって違っておりますが、これに対する財政当局の基本的なお考え方をお尋ねしたい。
  163. 渡部周治

    渡部説明員 医療保険に対する国庫負担についての基本的あり方についてのお尋ねでございますが、申すまでもなく、医療保険は相互扶助を基本といたしまして、保険料をもって医療給付を行なうという制度でございます。そういう保険制度のたてまえからいいまして、本来その保険集団の自主財源でもってその支出をまかなうというのが前提であろうとわれわれは考えております。そういった意味で、租税を財源といたします国庫補助に大きく依存するということは適当でなく、国庫負担につきましては、医療保険の各制度、それから各保険者の財政状況というようなものを総合勘案いたしまして、特別に必要がある場合に行なうというぐあいにすべきものと考えておるわけでございます。一般的に社会保障給付の費用負担のあり方というものにつきましては、これを租税財源である国庫負担によるべきか、あるいは保険制度のような保険料負担によるべきか、さらには受益者負担と申しますか、医療の立場から申しますと患者負担になるわけでございますが、そういうものによるべきかという、費用負担のあり方につきましてはいろいろ議論がございます。しかしながら、一般的な議論といたしましては、社会保障給付の中における国庫負担のあり方としましては、たとえば生活保護のような救貧的な措置、あるいは社会福祉のような救貧的な措置さらには公費負担医療のような社会防衛的な費用というようなものが、国庫負担を使う場合の最も優先度の高いものであるというぐあいにいわれておるわけでございます。  以上のようなことは一般論でございますが、事柄は、政管健保について申し上げますと、本来は、先ほど申し上げましたように、財政当局としましてはその保険の自主的努力でまかなっていただきたいというのが基本的な考え方でございますが、御存じのように、財政状況が極度に悪化しておりまして、累積赤字が二千億になんなんとしておる、このまま放置しますとさらに三千億になる、年間医療給付費の半分にも達するというような巨額な赤字をかかえております。これを放置しておきますと、医療保険の中核をなしますこの政管健保が破綻の危機に瀕するということでございますので、そういうような条件を踏まえまして、財政当局といたしましても、保険会計の自主的な努力を前提といたしまして、特に国としても積極的に監視するというようなことで、政管健保に対しまする財政援助を強化することにいたしたわけでございます。
  164. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 政管健保の財政基盤の強化という立場から、定額制にかえて今度定率制を導入されたのでありますが、それはそれなりに評価していいと思うのであります。ただ前回同様五%で、これは全く上がっていない。何か五%にこだわっておられるのではないかという気がするのですが、この根拠はどういうことなんですか。(「国民健康保険」と呼ぶ者あり)いま国民健康保険という声が出ておりますが、これと比較しましても、いま国保の場合はたしか四五%国庫補助で、これは使用者負担がないからわかるのですが、現在七割給付ですね。そうしますと六三%になるのですよ。この六三%と五%というのはあまりにも違い過ぎるのじゃないか。この五%の根拠とこの食い違いについてひとつ……。
  165. 渡部周治

    渡部説明員 先ほど申し上げましたように、政管健保の財政状況は非常に悪化しております。この財政再建のためには、保険会計の自主的な努力というものを前提といたしまして、国としましても積極的な財政援助をすべきだということを申し上げたのであります。そのような財政対策の一環といたしまして、今回の財政再建法案におきましては、従来の定額国庫補助を定率国庫補助に切りかえた次第でございます。お尋ねは、この五%というものの根拠は何かということでございますが、これにつきましては、一応最近における定額国庫補助の給付に対する割合、四十五年度予算ではたしか三・八九%ぐらいになっておったかと思いますが、そういうようなものを、さらに今回の財政対策といたしまして、この定率国庫補助以外に、保険料の弾力条項を発動しました場合に、それに連動させて国庫補助を上げるというような規定も設けましたし、さらに二千億にのぼる累積赤字も保険の負担からはずしまして、これを一般会計で負担するといったような一連の措置をとりました。そういうような全体の措置を総合勘案いたしまして五%という率を設けました次第でございまして、これによりまして予算額といたしましては、従来の二百二十五億の定額国庫補助に比べまして四十七年度予算では三百七十三億、大幅に国庫補助を増額いたした次第でございます。  それから、国民健康保険に対します国庫補助に比べて、五%の国庫補助は低きに過ぎるのではないかという御指摘でございますが、これは先生お話がございましたように、国民健康保険に対します国庫負担は被用者保険と違いまして、いわゆる事業主負担がないといったようなことが大きく加味されておりますことと、先生御承知のように、昭和三十六年当時は百分の二十五という負担率であったわけでありますが、その後たび重なる給付改善を行ないまして、これは国民皆保険の達成という当時の主要目的のために行なわれたわけでございますが、そういう国民皆保険の要請と、さらにそれと見合う給付改善のためには、できる限り保険料へのはね返りを勘案しながら給付改善をはかっていくという当時の特殊な要請をもちまして、現在のような国庫補助率になったわけでございまして、われわれといたしましては、この国民健康保険の国庫補助率につきましては、そのような従来のいきさつもあるし、性格的には事業主負担がないというようなことからいたしますと、この国庫補助率に比べて被用者保険の五%は低いというようなバランス論は、単純には言うわけにはいかないのではないか、こういうふうに考えます。
  166. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 こういった政府の国庫補助というものは、多ければ多いほどいいのにきまっているのですが、しかし国の財政の立場から何ぼでもというわけにはまいらないでしょう。しかし五%というのは、われわれの考えからしても低過ぎる感じがするのですが、そういうやさきに、一〇%の修正案があるやに先般新聞に記事が出ておる。これは実際、大蔵当局にそういうお気持ちがあられるのかどうか、この点ひとつ念を押しておきたい。
  167. 田中六助

    ○田中(六)政府委員 先ほど事務当局から申し上げましたように、国庫補助率の弾力的調整、あるいは二千百九十四億というようなたな上げで、一般会計からそれを補てんするというようなことを勘案いたしますと、山下委員御指摘のように、政府の財政という観点からもやはり限度があると思いますので、五%というのがほどほどだろうという考えでございまして、一部新聞に載りましたように一〇%というような考えは持っておりませんで、私どもは原案どおり五%でいきたいというふうに考えております。
  168. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 この弾力調整規定による料率の引き上げに伴って、これに対する国庫補助の引き上げも今度織り込まれておりますが、ただ問題はこれもやはり率でありまして、料率千分の一について〇・四%ですか、これはまたずいぶん少ないのですが、これはどうですか、一%ぐらいにまで引き上げられる御意思はないですか。
  169. 渡部周治

    渡部政府委員 保険料の弾力的調整規定を発動いたします際の連動の規定でございますが、これは保険料率を千分の一引き上げる場合に相当する国庫補助の引き上げについては百分の〇・四ということでございます。その考え方は基本的には、保険料負担が上がるような場合には国も相応の財政的な援助をすべきであるという考え方に立ちまして、このような規定を入れたわけでございます。数字的に申し上げますと、おおむね限界的な引き上げ率といたしましては、保険料負担一に対しましてその三分の一相当額を国庫負担として引き上げるというような考え方でございます。保険料率というのは、事業主と被保険者それぞれにとりますと、二分の一、二分の一ということになりますので、おおむね事業主と被保険者が二分の一ずつ負担する、国が三分の一負担するというようなことでありまして、限界的な国庫負担としてはかなり高いものになろうかと思います。
  170. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 財政当局への質問はこれで終わりますが、あと一つ。先ほどから申し上げましたように、今度の改正案が通れば収支のバランスは一応とれておるが、万が一今度の改正案が通らなかった場合にはどうなるかという問題、これはもちろん巨大な赤字が累積して、もう健保制度自体の崩壊につながるというような心配をするのでありますが、もしもそういう事態が起きた場合に、たとえば支払いの遅延であるとか停止、そこまでお考えになっておるのか、これは財政当局と厚生大臣の御見解も承りたい。
  171. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 支払いの遅延あるいは支払いの停止が避けられないのではないかと心配をしておるわけで、私のほうとしてはそういう遅延やあるいは支払い停止なんということはもう大きな社会問題であり、医療の供給をしてもらっている側におきましても、これはめしを食わずにおれというわけですから、とうてい放置できないのではないか、こう思います。大蔵当局としてはそういうたれ流しではもう金を貸さない、こう言われるので、非常に困ったことになる、かように思っているわけでございます。
  172. 田中六助

    ○田中(六)政府委員 いま厚生大臣が申し上げましたように、私どもはこの法律が通らないというようなことをもちろん前提にしておりませんし、何とかしてこれを通してもらわなければ、現在でも資金不足になる医療費の支払いその他に支払い遅延というようなことが起こりますと、医療保険の全体それからもちろん政管健保は財政的に破綻してしまいますし、制度全体が崩壊ということにもなりますので、ぜひともこれを通してもらいたいというふうに考えております。
  173. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 それから、今日の病気ですね、病気の原因をいろいろたどってみると、一つの社会的現象に起因する病気、たとえば交通事故による疾病であるとか、あるいは各種公害ですね、この公害の中には、その病気の原因がわからない、あるいはまだ治療法が不確定であるというようないわゆる難病、奇病等も入っております。これは個人の責めに帰すべきでないことは当然であります。したがって、こういう一つの社会的現象によるところの病気、あるいは広い意味においてたとえば胸部疾患とかあるいは精神病とか、そういうものについては、今回の改正案と別個に相当高率の国庫補助あるいはできれば全額国費でもって見るというようなお考えがあるかないか承りたい。
  174. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 厚生省といたしましては、医療費の公費負担というものを、いまおっしゃいますような疾病の構造の変化あるいは社会状況の変化等によりまして、逐次広めていっておるわけでございます。したがいまして、今後もさらに広めていかなければならぬであろう、いわゆる社会的原因によるような、あるいはものによっては政府の責任によるようなそういう疾病というようなものは、これはやはり公費負担方向でいかなければならぬであろう。公害による疾病等につきましては、その原因者がわかれば、これはその原因者に責任を持ってもらって、その責任者に対して求償をするということも考えるわけでありますが、一応はやはり公費でまずめんどうをみるということが必要であろう、かように考えております。
  175. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 ここで政管健保の赤字のよって来たる原因についてひとつお尋ねしたいと思うのですが、政管健保というのはもともと中小零細企業を対象としておりますから、組合健保に比べて財政が脆弱であることはよくわかるわけでありますけれども、しかし、今日この巨大な赤字を生むに至った原因、これはどこにあるかということをこの際ひとつはっきり承っておきたい。
  176. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 御承知のように、ただいま御指摘のような、政管健保には一つは構造的な問題があるわけでございまして、これを収入と支出の両面に分けて考えますときに、いま先生御指摘のように、中小零細企業が対象になっておりますので、したがって収入も組合健保に比べましてなかなか上がらないというような問題があるわけです。それから支出のほうは、いわゆる年齢構成的にこれを見ました場合に、組合健保に比べまして大体五十五歳以上の老齢者が占める比率が倍になっております。したがって、そういうようないわゆる医療費がかさむ年齢の者を多数かかえているというような問題もあるわけでございます。こういった問題をかかえながらただいままで参りました。三十七年に赤字が発生をいたしましてから、その後数次にわたるいろいろな法改正をしてきたわけでございますが、今日に至るまで十分に均衡を得られませんで、約二千億にのぼる累積赤字というような結果になっておるわけでございます。
  177. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 次に足切り制度についてお尋ねしてみたいと思うのですが、近いうちに国会に出ます抜本改正の審議の過程において足切り制度が論議され検討されたそうでありますが、ついにこれは実現しないということを聞いておりますけれども、厚生大臣は社会保障制度審議会に対する諮問書の中で、「いわゆる足切り制度は現場給付制度の下では技術的に困難であるので、この際軽微な一部負担を求めることとする。」こういうふうに諮問書でおっしゃっておるのであります。そこでこの「技術的に困難」、どういう点が技術的に困難なのか、そこのところをお尋ねしたいわけであります。これは私個人の意見ですけれども、私は足切り制度というものはけっこうであると思うのです。やはり軽微な病気は、たとえば簡単なかぜのようなものは自分のうちで静養して、薬局から薬を買ってきてやるということで私はいいんじゃないかと思うのです。昭和四十五年の四月の統計によりますと、外来患者の数が百点未満でもって、つまり千円以下で全体の約二〇%ですね。ところが、今度の改正案が通りますと、これは初診料も含めてですから、おそらく一カ月に三五%から四〇%は百点以下になると思うのです。そうすると、いままでの百人に対して六十人で済むわけですね。したがって、乱診といういわゆる医師の立場からの過労も軽減される。乱診というものも是正される。そういう意味においては私はこの足切り制度というものには基本的には賛成であります。  同時にまた、そういう足切り制度をつくることによって、いわゆる軽症患者の医療に対する自覚を促すことができるという長所もあるのではないかと思うのであります。したがって、この足切り制度をつくることによって、大体いま申し上げた数字でありますが、この点数構成からいきますと、先ほど申し上げた三五ないし四〇というのは受診の件数でありますが、点数からいくとわずか三%しかないですね。これが上がってもおそらく六%そこそこだと思うのです。それにしても、この分は長期あるいは高額医療に振り向ける、あるいは医師の技術料というのですか、そういう方面にも有効に振り向けることができるというふうに私は思うのでありますが、この足切り制度が現実に日の目を見るに至らなかった理由についてお尋ねしたいのであります。実際問題として患者が非常に負担で苦しむのは、高額あるいは長期ですから、足切り制度をやることによって、高額あるいは長期の疾病を厚くしてやるということのほうが、私は理想ではないかと思うのですが、このことについてお尋ねしたい。
  178. 戸澤政方

    ○戸澤政府委員 現在の健康保険制度について言われます批判の一つとしまして、安い病気、軽い病気には役立つけれども、重い病気、高額の病気について役立たないというようなことが言われます。そういうような意味合いもございまして、健康保険制度の実効を期するためには長期の病気とか高額の医療、こういったものにつきましては、重点的に厚い保険給付をして、そのかわりに軽費診療につきましてはある程度の自己負担を課すという考え方は、お話のとおりに比較的コンセンサスを得られる方法ではなかろうかと思うわけでございます。それで抜本改正案の諮問をつくる際にも、いわゆる足切り補償の問題についていろいろ議論もし、検討したわけでありますが、これは現物給付のもとでは技術的にむずかしいという判断があるわけでございます。これは足切り補償のやり方にもいろいろありましょうが、一番普通に考えられる方法は、一応現在の診療報酬の請求は月を単位にして請求しております。そういう点からしまして、たとえば一カ月千円以下の軽費診療についてはこれを自己負担とする、千円をこえる場合にこれを保険給付とするというような方法が一番典型的な足切り補償の方法かと思いますが、そういう方法をとる場合に技術的に非常に問題がある。と申しまするのは、まず一カ月の千円という診療費を、何回か患者が通ってくる場合に、どういうふうにしてそれをチェックするか、算定するかということでございます。これは医療機関側におきまして、毎日来る患者の医療費を一人一人についてチェックして、千円以上になった場合にそこから保険給付に切りかえるというようなことで、これは医療機関側にとりましても、事務的な非常に大きな負担になるわけでございます。  もう一つ、理論的な問題として大きな欠陥は、月がまたがる場合、月末に医者に行って、それからその翌月までかかるというような場合に、非常に不都合が生ずる。というのは、たとえば合計して千三百円の医療費がかかったという場合に、一カ月のうちに、それが同じ月の中の診療費でありますならば、千円までは自己負担で三百円が保険給付となるわけでありますけれども、月がまたがって五百円と八百円というふうになった場合には、これは両方とも取られる、両方とも自己負担になってしまう。つまり千三百円まるまる自己負担になってしまうというようないろいろな不合理が生じるわけでございまして、そういういろいろ技術的に困難な問題がありまして、やはり一部負担の方法としては現在までやっておるような方法によるしかいたし方ないという結論になったわけであります。
  179. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 大臣が諮問された中の技術的困難という問題は、いまの千三百円の局長の例かと思うのですけれども、そういうことはやはり今後継続して考えれば名案が出てくるのじゃないかと思うのです。たとえば、一つの疾病に関してというようなことです。そうしたら月がまたがっても、一回かぜをひいてそれがなおるまでというような、あなたの例に対しては私も例を提示するのですが。だからそういう問題は今後検討されて、基本的には足切り制度というものはいいのか悪いのかということをもう一回承り、また今後継続して足切り制度というものは検討なさるのかということをお尋ねしたい。
  180. 戸澤政方

    ○戸澤政府委員 考え方としましては、足切り補償という方法は非常にいい方法であろうと思います。これは昔から保険のベテランの間では足切り補償という理論が非常にあるのでありますが、そういう技術的な問題がございますので、いま先生お話しのような、転機までといったような、一件ごとに算定するというような方法もございますが、これもまた難点がございまして実施に踏み切るまでには至らなかったのですが、今後もこの問題は十分検討してまいりたいと思います。
  181. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 大臣に対する質疑は次の一問で終わりたいと思いますが、医療保険制度を今後健全に維持していくためには、一つの財政措置と申しますか、そういうものだけでは私はだめだと思うのです。いわゆる抜本改正あるいは医療基本法の制定といったような根本問題、医療制度の確立のためにはそういった根本問題をやはり解決しなければならないと思うのであります。そうでなければやはり国民の医療負担というものはますます増大して、結局は国民医療の危機は今日以上に重大な時期を迎えることは明らかであろうと私は思うのであります。今日の医療保険一つピンチに立ったという原因をいろいろ探ってみると、いろいろな問題があると思うのです。たとえば、政府が国民に皆保険を強制しながら、医療保険の基礎的な前提条件である医療制度の近代化あるいは合理化というものが非帯におくれておるという問題、したがって、そのためには医療体制が産業、社会、経済あるいは医学などの激しい変化発展に十分対応するようになくてはならないという問題もありましょう。あるいは皆保険制度の基盤として、当然皆保険制度以前にやらなければならない問題、たとえば医療機関の適正配置であるとか、あるいは機能の整備であるとか、こういった問題が全く行なわれておらないということもピンチの一つの原因になっておると思うのであります。あるいはまた、国民の医療確保の方途が国民皆保険政策だけに集中されておる、依存されておるという問題、国家社会として当然に負担すべき公費負担医療あるいは医療機関の整備、医学研究あるいは医療従事者の養成、そういった費用までが多く保険の負担になっておるというところに、これまた矛盾があると思うのであります。あるいはまた、医療保険医療の持つ特殊性からいたしまして、民主的な組織による一つの綿密な管理運営、これがなされなければやはりだめだと思うのであります。こういう点、政府管掌保険のように非常に規模の大きなマンモス保険、こういうマンモス経営をやるためには経営効率が十分に発揮されなければとうていできないという問題、あるいはまた医学の進歩や社会経済の著しい発展にもかかわらず、国民の健康確保に対する国家としての総合的かつまた一貫した医療保障政策というものが十二分に確立されておらないという点、さらには今日に至る医療の不合理と医療保険の危機をもたらした原因として、医療及び医療保険に関する政治、行政の姿勢に欠けるものがなかったかという点、これはわれわれもひとしく反省しなければならない問題だと思うのであります。  以上のような諸問題を深く掘り下げて検討した場合に、先ほど申し上げたように、ただ単に医療保険の財政対策だけでは、この問題は根本的には解決を見ないと思うのでありますが、この今後長期にわたる国民皆保険制度の健全な運営確立という面について、大臣の御所見を承り、私の質問を終わりたいと思います。
  182. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 まことに山下委員のおっしゃるとおりでございまして、そのためには先ほども申し上げましたように医療基本法を御制定願って、そして国民コンセンサスのもとに医療のあり方というものをはっきりさせていただき、その上に立って、いまおっしゃいましたような諸点を十分に達成のできるようにいたしてまいりたいと思いますので、医療基本法を制定していただきますならば、それに基づいてできてくる諸制度またこれに対する財政支出というものも、大蔵省としても非常に出してもらいやすくなるのではないかと思いますので、いまおっしゃいませんでした医薬分業のことも一つの大きな事柄であると思います。抜本改正の中にも医薬分業の点をさらに強調する一条を入れたいと思っておりますし、また政管のマンモス経営の効率的な経営、民主的な経営というものに少しでも近づけるような方途を講じてまいりたい、さように考えております。
  183. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員 終わります。
  184. 森山欽司

    森山委員長 本日の質疑はこの程度をもってとどめ、次回は明二十一日午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十七分散会。