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1972-04-06 第68回国会 衆議院 社会労働委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年四月六日(木曜日)     午前十時五十二分開議  出席委員    委員長 森山 欽司君    理事 小沢 辰男君 理事 谷垣 專一君    理事 橋本龍太郎君 理事 増岡 博之君    理事 向山 一人君 理事 田邊  誠君    理事 大橋 敏雄君 理事 田畑 金光君       秋田 大助君    有馬 元治君       井出一太郎君    伊東 正義君       大野  明君    大橋 武夫君       藏内 修治君    小金 義照君       斉藤滋与史君    澁谷 直藏君       田川 誠一君    竹内 黎一君       中島源太郎君    箕輪  登君       山下 徳夫君    川俣健二郎君       後藤 俊男君    島本 虎三君       田中 恒利君    山本 政弘君       古寺  宏君    渡部 通子君       寺前  巖君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 斎藤  昇君  出席政府委員         文部政務次官  渡辺 栄一君         厚生政務次官  登坂重次郎君         厚生省環境衛生         局長      浦田 純一君         厚生省薬務局長 武藤き一郎君         厚生省児童家庭         局長      松下 廉蔵君         労働省職業訓練         局長      遠藤 政夫君  委員外出席者         文部省初等中等         教育局特殊教育         課長      寒川 英希君         厚生省医務局国         立療養所課長  野津  聖君         労働省職業安定         局業務指導課長 加藤  孝君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ————————————— 委員の異動 三月五日  辞任         補欠選任   唐沢俊二郎君     坂元 親男君 同日  辞任         補欠選任   坂元 親男君     唐沢俊二郎君 同月六日  辞任         補欠選任   八木  昇君     田中 恒利君 同日  辞任         補欠選任   田中 恒利君     八木  昇君     ————————————— 本日の会議に付した案件  麻薬取締法の一部を改正する法律案内閣提出  第一六号)  厚生関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 森山欽司

    森山委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出があります。順次これを許します。田中恒利君。
  3. 田中恒利

    田中(恒)委員 私は、昭和三十年の夏に西日本二府二十五県にわたりまして発生をいたしました森永ミルク中毒事件について、相当昔にさかのぼるわけでありますけれども、最近森永ミルク中毒事件をめぐって被害者森永との間にいろいろ話し合いも再発をいたしておりますので、この際、当時の状況とこの問題をめぐっての最近の情勢につきまして、厚生省より概要でけっこうでございますが、まず御報告をいただきたいと思うわけです。
  4. 浦田純一

    浦田政府委員 昭和三十年の八月二十四日、岡山県からの報告によりまして本事件発生確認いたしております。  この事件は同年の六月ごろより発生していたものと思われますが、岡山大学医学部の究明によりまして、原因森永乳業徳島工場で製せられましたドライミルクであるというふうに判明いたしまして、その結果に基づきまして厚生省がこの事件を県より報告を受けたのが八月二十四日、こういうことでございます。  患者は主として近畿、中国、四国、九州に多く発生いたしまして、全国的には発生府県の数は二十七府県に及んでおります。  それから昭和三十二年三月一日現在におきまして、患者数が一万二千三百四十四名、死亡者は百三十名という結果に相なっております。  この報告を受けまして、行政措置といたしましては、三十年の八月三十日にその原因物質である添加物として使用されました第二燐酸ソーダ中に含有されておる砒素による中毒というふうに確認いたしましたので、徳島県知事あて食品衛生法第四条違反として告発、並びに三カ月の営業停止指示いたしました。   〔委員長退席向山委員長代理着席〕  それから明けまして三十一年三月二十六日、中毒被災児精密検診の実施につきまして都道府県に通達いたしております。その内容といたしましては、各県医師会と協議の上、各科を具備し、検診設備の完備した医療機関をあっせんして精密検診を実施することという中身でございます。  これに先立ちまして、補償の問題といたしまして昭和三十年十二月二十五日いわゆる五人委員会をお願いいたしまして、森永粉乳中毒事件補償等に関する意見書が提出されております。  そのおもな内容は、本件の補償基準は、死者に対しましては一名ごとに二十五万円を贈呈すべきである。また患者に対しては一名ごとに一万円を贈呈すべきである。また後遺症については補償基準を定めないが、将来後遺症認むべきことが確認されたときは、別に補償方法につき考慮されることといったような中身であります。  一方、裁判は、昭和三十年九月二十日業務過失致死によりまして徳島工場工場長製造課長を起訴いたしております。その後三十八年十月二十五日に徳島地裁で無罪の判決が出ておりますが、検事側は同年十一月七日に一局松高裁検事控訴をいたしております。四十一年三月三十一日に高松高裁原審差し戻し判決、四十一年十二月二十四日被告側最高裁上告、四十四年二月二十七日最高裁上告を棄却いたしまして、四十五年二月九日徳島地裁差し戻し審の初公判が行なわれておるという状況でございます。  その後、必要な法令、たとえば昭和三十年八月三十日におきましては乳糖省令の一部の改正、それから三十二年六月十五日におきましては食品衛生法の一部改正、七月五日に施行令改正、さらに施行規則改正というようなことで添加物定義を改め、化学的合成品定義を改め、規格基準が定められました添加物については食品添加物公定書を作成するという作業を始めております。このようなことで再びこのような事件発生が起こらないように、さらには同じ規則改正の中で、一定の資格を有する食品衛生管理者加糖粉乳調製粉乳を製造加工する施設においては置かなければならない制度を設けております。  このような当時の経過でございましたが、御承知のように昭和四十四年秋に至りまして、岡山公衆衛生学会におきまして阪大の丸山教授森永ミルク中毒被災者追跡調査の結果について発表されまして、後遺症の疑いのある方がおられるのではないかという問題提起をされております。それで、その後厚生省は早速各府県主管課長会議を開催いたしまして、幾つか学会等の御意見その他もございまして、昭和四十五年三月二十五日に岡山済生会総合病院長大和先生にお願いして研究班を組織いたしまして、岡山においてこの後遺症問題についての精密な検診をいたしたのでございます。現在その結果がまとまりまして、最終検討段階にあるように聞いております。  以上が、簡単でございますが、事件発生当時から現在までの森永砒素ミルク中毒事件の概略でございます。
  5. 田中恒利

    田中(恒)委員 私はこの間帰省をいたしました際に、私の県にも「森永砒素中毒の子供を守る会」というのができまして、まだ関係者はわずかでありますけれども、非常に強い、まさに嘆願でありますが、涙を流して要請を受けたわけです。私はそれぞれの関係者意見をお聞きをして帰ったわけでありますけれども、ちょうど十六年たっておるわけでありますので、当時の事情をここで一々つまびらかにすることもたいへんむずかしい事情もあるかと思いますが、いまお話のありましたように、一万二千三百四十四名の患者、そして百三十名の赤ちゃんが、この森永砒素中毒によって死亡したというできごとは、当時これはたいへんな社会的なできごとであったわけであります。  そこで、その問題が現在なお尾を引いております。これは一体なぜかということで、私は関係者要請を受けてこちらへ帰りまして、当時の関係資料、特に国会議事録等をずっと見てまいりました。私はこの国会議事録を見ましても、まことに釈然としない点がたくさんあるわけです。そのものがそのまま十六年続いて、今日問題になって出てきておるような気がしてならないわけであります。  まず第一に、一万二千三百四十四名の患者というもの、この患者確認でありますが、これは当時厚生省が県を通し、保健所を通してミルクを飲んでおった人々把握せられておる数字でありますが、この一万二千三百四十四名というものが厚生省保健所によって握られた時点で、まことにずさんな握られ方をしておる、そういう感じがしてならないわけです。私は関係者から話を聞くと、新聞、テレビそれから保健所、薬局、こういうところからの要請で、三かん森永ミルクを三つ持ってくれば引きかえてやるということでいったわけです。その中で、いわゆる中毒患者になっておる人々ですね、中毒患者と認められる人々をこの一万二千三百四十四名の患者として認定をした。こういうことで聞いておるわけですが、それで間違いないでしょうか。
  6. 浦田純一

    浦田政府委員 厚生省患者認定及び予後の判定などのために、先生御案内のところだと思いますが、日本医師会診断基準等の作成を依頼いたしまして、その答申に基づいて各都道府県知事に通知して、患者確認につとめたのでございます。先生のおっしゃったとおりでございます。その診断基準に基づいて、それに該当する者を患者として把握したわけでございます。
  7. 田中恒利

    田中(恒)委員 当時私の愛媛県では、ミルクかんを三個持っていた者が七百九十四名おるわけです。ところが強弱の判定で七百四名が厚生省認定の中に入りまして、九十名は落ちておるわけです。これもはっきりしております。もっとひどいのは、私の県の新居浜の曽我部さんという人はふたごであります。ふたごでありますが、ふたごの中の一人は、この認定名簿の中へ入って、一人は入っていないのです。だから一人の人は患者としての認定を受けて、その後発病等関係があれば、森永との間で入院料等のある程度の支払いを受けておるようですが、いま一人の人は受けることができないわけです。ふたごであるのに、一人は厚生省名簿に入っておるけれども、一人は入っていない。こういう状態になっておるわけですね。こういう実態が、当時あなたのところが認定をしたというこの患者名簿実態であります。  そこで、いまこの一万二千三百四十四名の人々以外に、森永ミルク中毒厚生省なり森永に握られていない人がおるわけですね。現実にはおると思うのです。そういう人々認定をしなければ、いま森永関係者との間でいろいろ話し合いが進められておりますけれども、この問題の決着がなかなかつきにくい問題が出てきておるわけですね。これは厚生省が握った患者数字でありますから、これに基づいて森永補償その他の交渉等取り扱いをやったといっておるわけでありますから、その前提がすでに漏れがあったということが明らかであれば、私は厚生省として当然未確認児確認という作業をやらなければいけない、こういうふうに思うわけでありますが、この点についてはどういうお考えであるかお尋ねをしたいと思います。
  8. 浦田純一

    浦田政府委員 未確認患者の問題でございますが、当時は非常に多数の方が被害にあわれたということで、あるいは漏れたといったようなこともなきにしもあらずと思いますが、御指摘のように、現在確かに森永砒素ミルクをお飲みになった方で登録されていない方もあるというふうに伺っております。したがいまして、当然これらにつきましては、被災者としてその救済対象にすべきであるという考えで、昨年の夏、直接森永乳業の社長を厚生省に呼びまして、それらの点についての会社側意見をただし、またこちら側からの指示と申しますか、考え方を述べたわけでございます。  その中で、やはり未確認患者の問題はその把握につとめる、そしてその方が患者である、当時森永砒素ミルクを飲用しておったという方であるならば、当然この救済対象としていくということでもって努力するという話が確認されておるわけでございます。これに基づきましていわゆる守る会と森永乳業との間で本部交渉という形でもってその話し合いが進められておる段階でございます。  私どもは、これは技術的になかなか把握困難な問題もあるかと思いますけれども、できるだけ被災者側立場に立って、広くこういった対象確認し、取り上げるという方向でもって進めるように期待しておりますし、また具体的になってまいりますれば、国の立場としても、できるだけ必要な措置はとってまいりたいというふうに考えております。
  9. 田中恒利

    田中(恒)委員 森永に未確認児把握をせよ、そういう行政指導をせられたということですけれども、それではちょっとおかしいと思うのですよ。森永はやはり責任者でありますから、だから森永にさせるのではなくて、これは当然政府が、厚生省が当初乗り出して始まったことでありますから、その厚生省のいわゆる調査の中で漏れがあったということでありますから、当然厚生省責任でその漏れは補完していく、こういう形にならなければ、いわゆる公正な判断ができないと思うのです。森永被害者との間だけでやっていいものなのかどうか、私はやはりこの一万二千名というものが基本になって、この森永中毒のその後の取り扱いというのは全部ここにしぼられておるわけです。ところが、現実にはその周辺相当関係者がおるし、いま後遺症の問題がやかましくなっておりますが、後遺症関係者も含まれておる。私がこの間会った人はわずか十五、六人ですけれども、そのうち六、四でありまして、四割が名簿に入っており、六割は入っていないという割合でありました。だから相当周辺漏れた人がおる。特にあなたのところで、翌年ですか、精密検査をやられた際には、この名簿に載っておる半分ぐらいしか受診をしていないはずであります。あとの半分ぐらいは受診をしていないのですよ。その精密検査の結果で、特に問題のあるという人が、ずっと森永との補償関係後遺症関係取り扱いで処理されてきておるわけでありますから、今日まで非常にしぼられてきておる。大半の人々は放置をされて、十六年の間に妙な症状がぽんぽん起きて、年をとるに従ってどうにもこうにもならなくなって、いま半身不随になっておる人もたくさんおるわけですね。その前提は、この一万二千人のあなたのところの調査原因があるわけでありますから、厚生省のほうで補完作業をやっていく。これはたいへんむずかしいということもわかりますけれども厚生省が中心になって、そういう作業をやっていくという形をとらなければいけないと思いますが、そういう御意思がないのか、もう当事者間にまかしてしまうのかということであります。
  10. 浦田純一

    浦田政府委員 もちろん最終的には厚生省あるいは国といたしましても、被災者方々救済ということについて責任をもって当たらなくちゃならない立場であることは重々承知しているわけであります。したがいまして、昨年の夏もそのような立場から、特に森永側に積極的にこの問題について取り組むように指示をしたところでございます。  実際的な問題として、昭和三十年、事件発生当時、全国的に通知いたしまして患者数把握等につとめてきたのでございますけれども、その後、後遺症の問題につきましては、当時、後遺症についての注意事項というものは、やはり日本医師会のほうからの診断基準の中にも、また五人委員会の中にも示されておったわけでございまして、引き続きそのような患者さんについては医療機関受診をするようにという道は講じておったのでございますけれども、事実上の問題として、患者さん方がなかなか受診に来られなくなって、自然に立ち消えになってしまったというような事実、それからこのような書類保管する保管上の期限問題等もございまして、一昨々年でございますか、岡山丸山教授後遺症の疑いありと問題提起された時点におきましては、残念ながらこれらの書類がすでに散失してしまいまして一部しか残らなかったといったようないきさつでございます。  それから精密検診を始めるにあたりまして、たとえば岡山におきましては、幸いにもある程度患者名簿保管されておりましたので、その名簿に基づきまして該当の方々全部に漏れなく精密検診受診するようにという呼びかけ、通知を行なったところでございますけれども、実際上の問題として受診を希望されない、来られないという方もございまして、故意にこちらのほうでもって受診者をしぼっておるといったことではございません。やはり患者さんのそれぞれのお考えにもよりまして、中には受診を御希望なさらないという方もあるようでございます。  いずれにいたしましても、私どもといたしましては、やはり現在といたしましては、積極的にそういった方々のほうから、当時森永砒素ミルクを飲用しておったという事実を申し出ていただくといったような形でもって把握していくということが、現在残された数少ない手段方法一つじゃなかろうかということでもって、守る会にも、それから森永乳業のほうにも、そういった点で考えたらどうかということを申し上げているのでございます。
  11. 田中恒利

    田中(恒)委員 受診者がだんだん少なくなったと言っておられるのですけれども受診者というのは厚生省認定した一万二千人の中の、しかも厚生省基準を示した診断基準判断に基づいて後遺症が残される可能性があると厚生省確認しておるという関係者だけでありまして、これは非常に限られてくるのでありまして、それ以外の周辺人々で、やはり個人で負担をして病院に十何年ずっと行かせた人もたくさんあるわけですよ。そういう人々確認をどうしていくかということをやらないと、あなたのところは確認してないのに漏れておったということですから、その点を今日の段階では確認をしないと、この問題が最終的に話がつかない、いまこういう状態にあるわけですから、その点を十分お考えになっていただきたいということであります。  それから、いま私が次に続いて質問しようと思っておったことをおっしゃったわけですが、この名簿は、この間の新聞によりますと、森永から厚生省へ移されるということが載っておりましたが、これは事実ですか、その経過はどういうことですか。
  12. 浦田純一

    浦田政府委員 名簿厚生省責任のもとに保管するということは、そういう考えがあることは事実でございます。現在それらの資料森永のほうに保管されておりますが、長年の積み重ねでございますので、一応分類整理した上でその保管の万全を期していくというようなことで、私どものほうから係官が出向いていろいろとその作業をやっておるという段階でございます。
  13. 田中恒利

    田中(恒)委員 厚生省が調べた資料写し森永保管をされておった。いまのお話を聞くと、厚生省は十年の期限が切れたから焼却した、府県もなくなったということでありますが、それは間違いありませんか。
  14. 浦田純一

    浦田政府委員 この患者名簿は、厚生省には実はなかったのでございまして、各都道府県において名簿を作成しておったということでございます。それから、森永側が現在持っております名簿は、それらの写しと、さらに森永のほうでいろいろと補償あるいは医療費等支払いをしていくという必要上から書類を作成しておるのでございまして、厚生省としては、実は中央に集中して名簿を持っておるというような手段はとらなかったのでございます。
  15. 田中恒利

    田中(恒)委員 厚生省は持ってなくとも、都道府県にあったわけですね。厚生省にはその全体の集計があったわけですね。それがいまもうなくなったということは、単なる書類保存期限としての十年が経過したから廃棄処分にしたということだと思うのですが、私はそこに問題があると思うんですよ。  国会議事録を見ましても、当時この社会労働委員会相当議論をせられております。その際に、この砒素中毒については後遺症のおそれがあるという問題の提起が、私ども医学の問題はしろうとでありますけれどもしろうとながらも委員の中から指摘をせられております。しかも、当時百三十人の人が死んで何百人の人が重症で病院で治療を受けておる、こういう段階で、あなたのところも当時は精力的に患者確認をやった、その名簿をそのまま、検診者が少なくなっていったからということで、特別に県等に対しての指導もしなくて、普通の書類のように、十年したらもうそのままなくならせる状態に置いてきた原因は一体何ですか。それは十年すれば普通の書類は要らないから焼却すると同じようにやった、これはたいへんな問題ですよ。人間の命に関する問題の資料であります。その資料は十年たったから府県でそれぞれなくなって、森永という加害者が持っておる。この加害者の一方的判断にゆだねてしまっておったという原因は、一体どういうところにあるわけですか。
  16. 浦田純一

    浦田政府委員 官庁におきまする書類保存期限につきましては、ここで私がどうこう申すべき立場ではないと思います。  しかしながら、三十年当時の医学的な常識と申しますか、それに照らしまして、後遺症という問題についての一応の配慮は診断基準等の中にもなされており、また五人委員会の結論の中にもその旨触れておるところでございますが、先ほども申しましたように、事実上の問題といたしまして、当時後遺症というものが確認されなかった。それからあと後遺症のおそれのある方々については引き続き受診をされるように道を講じておったのでございますけれども、これも事実上の問題としてそういった方がなかったといった点から、これはいまからさかのぼって考えますると、まことに残念であり、遺憾なことでございますけれども、通常の書類保管期限というものと同様に扱われたということでございまして、今日となりましては何とか手段を講じて、現在当時の患者さんで確認された方も、もちろん未確認の方も含めまして完全な把握につとめてまいりたいということで、幸いと申しますか、森永のほうである程度の名簿保管されておりましたので、これをむしろ厚生省責任のもとに移すことによって、過去十数年間の空白と申しますか、これらを埋めてまいりたいとつとめておるところでございます。
  17. 田中恒利

    田中(恒)委員 私は政務次官にこの問題について重ねて確認をさせていただきたいと思いますが、こういう重大な問題に関する基礎データ——後遺症というのはいつ起きるかわからない。当時この問題についてあなたのところで後遺症のおそれがないと断定したといわれる西沢委員会報告書におきましても、後遺症が全然なくなるというような意味のものにはなっていない。おそれがあるという含みは多分に持たせながら、現状においては出てきていない、こういう形になっておる。この西沢委員会報告書というものは、あとでまことにずさんであったということになるわけでありますけれども、その西沢委員会ですら、そういうことをいっておるのに、あなたのところが単なる一片の資料としての取り扱いにとどまってきたところに、私はこの問題に対する厚生省当局一つの姿勢を感じざるを得ないわけです。この点は明らかにあなたのところのミスであった、こういうふうに思うわけでありますが、この点について政務次官のほうから、はっきりこの御見解をお聞きしておきたいと思うのです。
  18. 登坂重次郎

    登坂政府委員 田中委員の御趣旨はまことにごもっともだと思うのでありまするが、当時、もう十数年前のわが国の医学状態、また社会情勢において、森永ミルク事件の問題の取り扱いについては、厚生省としても慎重にやったと思うのであります。そして、そういう五人委員会やら、あるいは学会等意見も聞き、当時としては万全の措置を講じたものと考えられるのであります。しかし、だんだんとその後患者等の健康の状態、病状の推移等は、やはり当時の学会の状態と、あるいはやや違った方面に進展したのかもしれませんし、また現状はそういう状態になっておると思いまするが、しかし、各都道府県に対しまして、厚生省はその衛生部長なり、あるいはそういう学会に対してできるだけの精密な調査、検討をお願いした。でありまするから、行政上としては、当時厚生省としては、とにかく国民あるいは幼児の保健衛生を守るということは一絶対のわれわれの責任でありまするから、できるだけの誠意を持ってわれわれは行政指導をしたもの、かように考えられます。  ですから、御趣旨のように厚生省責任ということになりますると、それはいろいろのお考えもありましょうが、厚生省当局としては、その当時としては、五年間また猶予期間も置いて、もしからだに変調があったり病状に進展があったとするなれば、それに対するまた申し出もしてくれ、また精密な調査検診もしようということでありまするから、当時としては、できるだけの万全を期したものと思います。しかし現在に至って、なおかつ、そういう患者さんがおるということになれば、これまた現在の時点で議論するばかりでなくて、われわれ厚生省としてはできるだけ実質に合ったような医療体制なり、あるいは加害者であると目される森永当局に対しましても、もちろん厳重な警告——私は去年森永の大野社長を呼んで、こういう問題はお互いに社会不安を助長するし、また責任者として当然のなすべきことを早くしてくれということで、私が政務次官として厚生省意見を強く申し入れておいたわけです。  ですから、われわれは何も森永だけに責任を負わせる、こういうことじゃなく、幼児の保健衛生という厚生省の大きな責任を痛感いたしつつ今後も対処してまいりたいと思うわけでございます。
  19. 田中恒利

    田中(恒)委員 当時としては非常に万全な処置であったと言われるんですけれども、当時万全でなかったところに、この問題が起きておると私は思うのです。あとでいろいろ議論いたしたいと思いますけれども、あまり昔のことにさかのぼることは当時の関係者もいないわけですからあれですけれども、五人委員会の問題にしても、さっぱりわけがわからないのです。この確認の問題にしても、いわゆる国が責任を持って万全の体制でとられた確認の処置ではないように私ども考えざるを得ないのです。私は当時の手抜かりが今日こういう事態になってきた、特に名簿の問題は具体的な問題だと思うのです。十年間たったから全部なくなってしまったというようなことは、その付近の普通のやりとりの文書と同じような形で取り扱ってきたというところに問題があるので、その資料に基づいて患者発生した場合にどうするかということが問題になるわけですから、これは永久保存として保存しなければいけないということを厚生省指導しなければいけなかったはずです。それをやってなかったからこういうことになって、森永にたった一つしかないというぶざまなことになっておると思うのです。この問題自体の責任森永ですよ。森永でありますけれども、しかし厚生省としても、この問題についての一半の責任もあると思うし、取り組んできた取り組み方の中にやはり手抜かりがあった、こういうように思わざるを得ないのです。  いまの政務次官の御答弁では医学の進歩等でいろいろ問題が変わったというようなことですけれども、そういうものじゃなくて、当時に手抜かりがあった、私はこういうように思うわけですが、この点について重ねて御意見をお聞きしたいのです。
  20. 登坂重次郎

    登坂政府委員 田中委員のおことば、御意見もさようかと存じまするが、しかし行政上、厚生省の監督行政上の立場においてあらゆる注意を払って、当時としては厚生省の行政能力のすべてを結集したとは申せますまいが、でき得る限りの処置を尽くして、厚生省は広い行政をいたしておりまするから、医療行政ももちろん大事でありますし、また各都道府県に委嘱したという点についても、あるいはどうかと思いまするが、とにかく当時の厚生行政のあり方からして、やはりどうしても都道府県の衛生部にお願いをしなければならないし、またそれを厳重に調査して出してもらうように、また特に五カ年間という後々まで猶予期間を置きつつ、絶えず五年間はそういうふうな指導監督の指示をしてまいったものと思います。ですから万全とは言いかねまするけれども、行政庁としては、できる限りの努力を払ったということで御了承を願いたいと思います。
  21. 田中恒利

    田中(恒)委員 ここで厚生省に当時手ぬかりがあった、責任があったということになるといろいろ問題が起きるから、あなたのところはそれ以上言えないということだと思いますけれども、だれが見ても、これはちょっと正常には映らないのですよ。あれだけの大きな問題が起きた名簿加害者森永だけが持って、調査をした主体の国や自治体が全然持ってない、こういうことは一体どういうことかというのが素朴な国民の疑問ですよ。当時の行政のやり方にミスはなかったかもしれませんけれども、十分な配慮をされて、これらの人人の生命を守っていくという基本的な立場に立って、そういう資料については永久保存をして、その後もずっと監視をしていかなければいけない、こういうきめのこまかい処置に欠けておったところにこの問題の背景がある、こういうように私は理解をいたします。  そこで、この名簿は一体今後どういう形で厚生省はこれを保存あるいは利用されるのか。もうすでに相当昔のことですから、住所等も変動しておると思いますので、そういうことについては、この名簿を軸にして重ねて再調査等をせられて、関係者実態を明確に把握せられるというおつもりかどうか。この名簿は今後関係都道府県等でいろいろこの森永ミルク中毒についての独自の対策も立てられておるわけでありますから、そういう場合に当然公開をするのだと思いますけれども、それらについてのこの名簿取り扱いについてのお考えをお聞かせをいただきたいと思います。
  22. 浦田純一

    浦田政府委員 名簿厚生省責任保管するという考え方は、一つ先生が御指摘になりましたように、やはりこの種の名簿というものは、当然公共の立場において保管をするべきであるという考え方をおくればせながらとったのでございます。  それから、どのようにしてこれを保管するかということにつきましては、現在その資料の量、その他につきましてその整理をやっている作業の最中でございまして、まだ具体的にどうというふうには細目をきめておりませんけれども、しかし少なくともその資料が、いわゆる加害者側と思われておりまする森永ミルクだけにあるということはおかしいのでございますから、これがかってにいわゆる加害者側のほうの恣意でもっていろいろなことが手が加えられるといったようなことがないという、それだけの最終的な担保だけはいたしたいというふうに考えております。  また、どのように利用するかということでございますが、これはやはり今後必要に応じまして被災者方々のいわゆる健康の追跡と申しますか、そういったようなことも場合によっては必要ではなかろうかということもございますし、その他いろいろとその方々に、国あるいは森永乳業側としては当然対策を講じていかなくちゃならない、それの基本的な一つのよすがというふうにも利用していくということにも相なろうかと思います。  また名簿の公開の件でございますけれども、これらにつきましては、場合によっては直接にいろいろと被災者方々把握しやすい都道府県当局のほうに名簿写しを送る、あるいは学会その他にこれを公開するかどうかということにつきましては、被災者側方々のいろいろな微妙な感情もございますし、それらの点につきましては、今後の問題として慎重に対処してまいりたいと考えております。
  23. 田中恒利

    田中(恒)委員 公開をせよという声も非常に強いわけです。一方個人のプライバシーに関する問題であるから慎重にしなければいけないという意見もあるわけです。ただ私は最小限関係都道府県——係都道府県につきましては、この問題について当然対処しなければいけない問題をそれぞれ持ち始めてきておるわけでありますし、一体だれを対象にしてやっていいのかわからぬようなことではこれは仕事にならぬわけでありますから、こういう関係府県については、当然厚生省のほうからやはり写しを出すべきだと思うし、さらに関係者——これらの問題について医療陣も取り組んでおるところもあるし、「こどもを守る会」といったようなものもある。それの範囲といったような点はいろいろむずかしい点もありましょうし、そういう関係者関係機関との間で十分話し合いをして、有益であると認める場合には当然これを明らかにしていただきたい。この点を御要請を申し上げておきます。  次に、そこで結論的には最初に申し上げました未確認者の確認ということについて、これもいろいろむずかしい問題はありますが、ぜひ厚生省として、この問題についてどういう方法でやれば厚生省として確認できるか、これはなかなか長い間たっておりますし、当時どうであったかということの確認方法はむずかしい点はあると思いますよ。あると思いますけれども、これは森永なり、あるいは「こどもを守る会」なり、そういった関係者意見もおたくのほうでは常時聞いておるわけでありますから、これに基づいてぜひこの未確認児確認というものを十分にして、おたくの名簿の中にこれが添加をされていく、こういうふうにしていただきたいと思います。この点について十分検討していただけますか。
  24. 浦田純一

    浦田政府委員 守る会あるいは森永乳業との間の話し合いも持たれているところもございますし、また個々に御意見を聞いておりますから、できるだけ先生の御趣旨に沿うように対処してまいりたいと考えております。
  25. 田中恒利

    田中(恒)委員 そこで、いまこの問題をめぐってやはり一番大きな問題になっておるのは後遺症があるかないかという問題であります。これは医学上の問題でありまして、私どもしろうとにはよくわかりかねる点がたくさんあるわけです。ただ私は、森永乳業株式会社がことしの二月に「粉乳中毒事件について」という、こういうパンフレットを相当あちこちに配布をいたして当時の状況森永がとった処置、考え方、こういうもののPRをいま盛んにいたしております。  この文章を見ますると、こういうふうに書いておるのです。いわゆるこの「精密検診は翌年一斉に行われた」というところで、「弊社は」森永は、「精密検診の最終結果が出る前の昭和三十一年十一月に、将来後遺症に不安をもたれる方々のために、なんらかの機関をつくりたいと考え、その旨を国へ申し出ましたが、前記のような検診結果から、その必要はないというご意見でしたので、そのままになりました。」こういうふうに書いておるのです。森永後遺症対策のために何らかの処理をとりたいと厚生省に申し入れをしたが、厚生省はその必要はないと言ったのでやらなかった、こういうふうに書いてあるのですよ、ここで。これは事実ですか。
  26. 浦田純一

    浦田政府委員 御指摘のパンフレット、実は今回初めて見たわけでございますが、昭和三十一年当時のことについて述べているものであろうと読まれますが、私ども当時の記録から考えまする限りにおきましては、このような後遺症がなし、検診の必要なしということを行政庁として申したということはなかったというふうに承知しております。ただ、事実関係として、後遺症がどうもそのときまでには確認されなかったといったようなことも記録としてはございますので、その辺のところを森永乳業がこのような表現でもって書いたのかと思いますが、いずれにいたしましても、「必要はないという御意見でしたので、」ということは、私は事実はないというふうに考えております。
  27. 田中恒利

    田中(恒)委員 これは森永に行って調べられたらいいですけれども、全国に相当ばらまかれておりますよ。これを読みましたら、森永のほうでは、わざわざ後遺症対策のために特別な機関をつくって処置しようと思ったけれども厚生省が必要ないといったからやめたと言っているのですよ。厚生省は、森永がやろうとしても、やる必要ないということで、これは国民に対して与える影響はたいへんな問題ですよ。この取り扱いはどうせられますか。
  28. 浦田純一

    浦田政府委員 さっそく森永乳業のほうの責任者を呼びまして、事実を究明いたしまして、間違ったことに基づいて、こういった記載をしたとすれば、これは取り消すなり何なりしかるべく措置をとらせるように、厳重に注意いたします。
  29. 田中恒利

    田中(恒)委員 これは取り消すといったって、配っておりますよ。回収させますか。
  30. 浦田純一

    浦田政府委員 どのような配布方法を講じたのか存じませんが、それらの事実関係を調べまして、できるだけ回収その他、事実上ないといったようなことになるように、手段をとらせたいと考えております。
  31. 田中恒利

    田中(恒)委員 このパンフレット全体を見てみますと、森永は一切厚生省指示に従ってやってきておる、こういうことで、いろいろな条項が貫かれております。現実にこの森永ミルク中毒で——森永ミルク中毒でないという人もおりますけれども、少なくともあなたのところで把握をせられた患者さんの中の関係者が重症患者になってベッドに横たわって、十何年間ずっと、十七歳、十八歳になる子がまだ小学校二年生くらいのからだでしかない。知能はものすごくおくれている。年とるに従って悪くなっていくという状態になっているわけですよ。そういう関係者を包んでの一つの大きな森永ミルク中毒関係者を守る市民運動も起きてきておる。そういう人々を中心として、いま森永に対する製品ボイコット運動も起きている。そういう幅広く国民の各階層の中で問題になっておるときに、森永厚生省の言いなりになってやってきたんで間違いありません。そういうところから、いま言われたような御答弁を聞くと、厚生省はそういうようなことを言ってないというようなことまで——しかも重大な問題ですよ。しかもいま後遺症が最大の問題ですから、その後遺症のあれが、厚生省によって必要ないから、つくる必要ないというふうに言われたということが宣伝されて、理解されたらたいへんな問題です。森永に対して非常にはっきりとした処置をとっていただくことを御要望し、その処置を御報告をいただきたい、このことを特に要請をいたしておきます。  それから四十四年に阪大の丸山報告というものが出てきた。これがまた一つの契機になりまして、四十六年の一月には日本小児学会が、厚生省の西沢六人委員会——この西沢六人委員会でもって後遺症はないとまではいってないのですが、現状においては見出せないというような意味の報告書をやって、これが一つの問題に対するピリオドになっておるわけであります。この西沢委員会報告というものは、当時の医学水準からしてもきわめてずさんなものである、こういう学会の表明がなされております。引き続いて四十六年には、昨年の十二月でありますが、京都府の追跡調査でもって京大の西尾教授を中心とする医学陣から、いわゆる森永砒素ミルク中毒によってこういう症状が起きておるというような意味の報告書が出されて、が然いまこの砒素ミルク中毒の問題が再発しておるわけであります。  これに対して厚生省が、先ほども局長報告されましたが、岡山調査をせられたわけでありますが、四十五年の五月十三日のこの社労で、小林委員の質問に対して、当時の政務次官橋本さんのほうから、国の責任医学的究明をやるのだ、こういうふうに言われたわけです。それから現在ちょうど二年たっておるわけであります。この調査の今日の状況は一体どういうふうになっておるのか、ここで明らかにしていただきたいと思います。
  32. 浦田純一

    浦田政府委員 御指摘検診でございますが、検診の実施方法につきまして関係者の間でなかなか合意に達しませんで、かなりスタートがおくれましたが、四十七年三月末現在で、最終的には受診者方々が七百二十八名になっております。この七百二十八名につきましては、すべて必要な検査を終わりまして、目下総合的な検討を進めている段階でございます。関係のお医者さん方が全部集まりまして、結果を持ち寄ってその検討を進めておる、総体的な結論をいま出すべく作業をしておる、こういう段階でございます。
  33. 田中恒利

    田中(恒)委員 大体いつごろまでかかりますか。
  34. 浦田純一

    浦田政府委員 五月中に結論を出していただくように考えております。そのように報告を受けております。
  35. 田中恒利

    田中(恒)委員 厚生省は国の責任医学的な究明をするということでありますが、その対象岡山県で七百二十八名までの検診者を中心として結果を出す、こういう姿勢のようでありますが、現在京都、大阪等で、自治体が中心になって後遺症追跡調査を阪大なりあるいは京大なり、その地域の関係医術陣を動員してやっておりますね。こういう京都や大阪等の自治体で、みずから追跡調査をやった結果報告等も、国の責任で行なわれる調査報告の中に取り入れられて最終的な結論が出されるのか、単にあなたのところが岡山の済生会病院ですか、そこへ委任をせられた六百二十何名の結果だけに基づいてなされるのか、この点をお聞きしておきたいと思うのです。
  36. 浦田純一

    浦田政府委員 それぞれの自治体でやっておられます検査項目も、必ずしもお互いに一致しておりませんけれども、しかし、非常に精力的にやられた調査でもございますし、また私ども、京都でやられた調査の結果も、大阪でやられた調査の結果も、また福井県でやられた結果も、直接その検査をやられた方からいさい説明も受けておりますし、それらを総体的に判断して考えるべきものというふうに考えております。
  37. 田中恒利

    田中(恒)委員 厚生省は、自分のところが委託したんだ、だからその調査だけでというような単純なものではなくて、少なくともこれまでのあなたのところの委託をせられた委員会等の報告の中に、多少問題ではないかという点が尾を引いておるし、学会においてもそのことについての意見が二つに分かれておる段階でありますから、十分にこういうところの意見も聞いて、全体的な観点で、いま言われたような形でこの問題についての結論を出していただきたい。このことも特に御要請をいたしておきたいと思います。  最後に補償の問題につきまして、当時五人委員会という、正直いってわけのわからぬものができたわけですね。いま政務次官は、当時としては万全な処置をとったとおっしゃったが、この五人委員会の性格というものは、いままだなおこの国会におられる方々もおりますけれども議事録に載っておりますけれども一与野党を通じて、きわめて不明快なものである、こういう指摘がなされております。この五人委員会というのは法律に基づくものでもないし、あるいは行政組織にのっとるものではないし、ただ親切心で、両方ではやれぬだろうから、まん中でということで出てまいった。ところがその後調べてみると、五人委員会なるものの必要経費というものは全部メーカーが持っておる。——まあ全部かどうか知りませんけれども、少なくとも日本乳製品協会から、いわゆるミルク業界から金が出されて運営されておるような委員会が、どうして厳正中立な委員会だといえますかね。ともかく五人委員会をめぐっての論議は、当時まことに釈然としないものがあったわけです。単なる第三者的な、公正妥当な補償額を出すんだとおっしゃったが、結果的には五人委員会の出したとおりになってしまいました。  そういう過去のできごとをいまいろいろ申し上げてもいけませんけれども、ただここで確認をさしていただきたいのは、いま補償の問題をめぐりまして問題になっておるのは、森永が因果関係にとらわれずに、道義的な責任を負うて、補償なりあるいは必要な治療費等の支出をしております、こういうことであります。だからその原因、結果はまだわからない、こういっておるわけです。これは一つは、医学的に砒素中毒であるのかどうかということがわからないということなのか。あるいはいま御承知のように裁判になっておりますね。いま御報告があったように、一審で無罪、二審では差し戻し、最高裁も差し戻しです。だからこれは多分に、単に無罪にとどまるとはわれわれは思えない。そういうことの結果によっては、単なる道義上の責任だけでは済まない事態に発展をしていくわけでありますが、今日の段階では、道義上の責任を負うて処置するんだとだけしかいっていないのです。この点が被害者との間に非常に鋭く対決しておる最大の問題であります。被害者は、森永ミルクを飲んだからこういうことになったんだ、死んだんだ、こういうようにいっておるんですね。私はこれはきわめて常識的だと思うのです。ところが、そういうふうには片一方はいっていないんですね。  そこで、もしかりにこの問題の原因、結果というものが、たとえば裁判等の結果で明らかになって——森永乳業でありませんけれども、あれは工場長製造課長ですけれども、しかし森永責任であるというような裁判所の判決が出た場合には、この補償の問題というものは、実質的な補償に転化をしていくというふうになると理解をしてよろしいのですか。
  38. 浦田純一

    浦田政府委員 因果関係の問題、補償の問題でございますが、現在問題になっておりますのは、いまいわれておりますのは、後遺症が、いわゆる後遺症なるものが、はたして三十年当時に起こりました森永砒素ミルクの飲用と因果関係があるかどうか、あるいはさらにさかのぼりまして、後遺症そのものがあるのだろうかどうだろうかという点について、まだ最終的な結論が出ていないと承知しております。したがいまして、この結論を待って補償その他の問題に当たるべきかどうかということでございますが、これに対して会社側は、その因果関係が明らかになる前の段階において、現にいろいろと病気で悩んでおられる方、あるいは生活上困窮しておられる方々について、何らかの形でもってその費用その他お世話をいたしたいということを申しておるのでございまして、この後遺症について、はっきりと医学的に因果関係が明確になった段階においては、これはあらためてその補償問題として、もちろん誠意を持っておりますと、こういうふうな意見だというふうに理解しております。  したがいまして、三十年の事件当時起こりました被災児、患者さんのことについて、ここで因果関係を問うという問題ではないというふうに考えます。
  39. 田中恒利

    田中(恒)委員 いま特に問題になっているのはその点ですけれども、たとえば百三十人の死亡した赤ちゃんに対して、一人当たり二十五万円の弔慰金が出されておるのですね。当時二十五万円は、ミルク飲んでなくなってしまった人に少ないじゃないか——森永のほうは少ないと言っておりませんが、この文書を見たら。当時の洞爺丸とかその他の社会的事件に比べると、非常に手厚いというようなことを書いておりますが、しかし私どもはそういうふうには思わない。性格的に全然違うわけです。これは薬だ、ミルクだと思って飲んだのが毒で死んだということです。洞爺丸事件やら木星号事件が当時ありました。十二月から自動車損害賠償の最高限度が三十万になっておりますね。そういうものとは全然性質が違うのですが、二十五万になっている。  これについて非常に安いという指摘が、たとえば大橋武夫先生、いまなおおられますが、この方なんかも盛んに言われておる。そうすると、あなたのほうは何と言っておるのですか。「つまりこれは一応過失責任があるかどうかということは他日に残されておる」これはおそらく裁判の問題だと思うのです。だから「過失責任が明らかになった場合はまた別といたしまして、」ということで、現在は道義上の責任という点からこの程度にしたんだ、こういうふうな答弁を厚生省国会ではしておるわけですよ。それもからんで、いま申し上げた後遺症の問題も含めて、私は、因果関係なりあるいは過失責任というものが明らかになった場合には、厚生省としての森永に対する行政指導は、補償の問題については、あらためて考え直さなければいけないという立場をとるべきだと思うのですが、この点についてお聞きをいたしておきたいと思うのです。
  40. 登坂重次郎

    登坂政府委員 目下訴訟中のことでありますから、それが結論がどういうふうに出ますか、もし責任ありということになれば、厚生省としては、行政的に法の指示に沿って指導いたします。
  41. 田中恒利

    田中(恒)委員 最後に、厚生省に特に御要請いたしておきたいと思います。  この問題はだいぶ昔のことでありますが、自来やはり尾を引いて、今日たいへんな状態になっておる人がたくさんおります。これらの人々は当時は赤ちゃんでありましたが、いま十七歳から十八歳、高校にも行けない人がたくさんおるようです。あるいはこの重症患者はいろいろな施設に入っておるようでありますが、こういう人々取り扱いは、すでに現在まで特に食品衛生という観点から厚生省の中でも取り扱われてきたわけですけれども、これからこの問題について、いろいろきめのこまかい方策をひとつお考えいただかねばならないと思うのです。そういう場合には厚生省の特に社会福祉というか、そういう観点から対策を立てていただかなければいけないし、この森永砒素中毒問題について今日の段階におけるいろいろな原因なり、結果なり、現状なりの把握に十分取り組んでいただくためにも、厚生省のそういう面を一緒にした、場合によればプロジェクトチーム的なものがつくられて、これに対する対応策をきめこまかくひとつつくっていただきたいと思うのです。  こういう意味で、全体的な関係各局間の統一体制でこの問題と取り組んでいただくように特にお願いをいたしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  42. 向山一人

    向山委員長代理 次に、川俣健二郎君から関連質問の申し出があります。これを許します。川俣健二郎君。
  43. 川俣健二郎

    ○川俣委員 時間がありませんから端的に質問しますから、端的に答えてもらいたいと思います。  というのは、このような食品公害の問題は、当委員会で近く審議されるであろう食品衛生法の一部改正でかなり審議、論議をしなきゃならないと思います。そこで、その法案を私自身が担当者として検討しておる。その際に、厚生省の姿勢をまず聞いておかないといかぬという考え方から質問します。   〔向山委員長代理退席、委員長着席〕  第一番目に、いま同僚の田中委員からの質問の受け答えを聞いてみても、やはりわが社会党がかつて、三十三年ごろですか、農林省、厚生省、通産省、経済企画庁等々、ばらばら行政が、なわ張り争いかなすり合いか知らぬけれども、そういった面がかなり、きちんとした強い行政指導ができないという欠陥になると思うんです。そこで、社会党、あるいは公明党も提案したと思いましたが、この行政一本化というものを提案したのです。それを厚生省がある程度目を通して検討してみたかどうかということをまず端的に質問したいと思います。
  44. 浦田純一

    浦田政府委員 十分に検討させていただいたつもりでございます。
  45. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そういう調子で答えていただきたいと思います。  第二番目は、森永補償させる、そして国みずから補償する、行政指導する、行政監督、いわゆる監視体制ということだと思うんです、大事なのは。その場合に、いま局長のほうから、四国、九州、近畿、中国二十七県にまたがる、こういうんだが、冗談じゃないんです。というのは、東北の秋田のほうに発生したということを知っておるかどうか。
  46. 浦田純一

    浦田政府委員 当時の記録には県名としては載っておりませんが、その後たしか移動で秋田のほうにあったというふうに知っております。
  47. 川俣健二郎

    ○川俣委員 もう一度答えてください。移動でというのは、どういうことですか。もう少しわかりよく……。
  48. 浦田純一

    浦田政府委員 住所が移転したということでございます。
  49. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そういうことであれば、少し時間をかりて……。局長、こういうあれをちょっと聞いてみてください。  森永徳島工場ドライミルクMFが秋田の由利郡矢島町で二十四個販売されていた。そこで、秋田の県衛生研究所では矢島で販売されたドライミルクMFの中から砒素を検出、県衛生部公衆衛生課に報告した。このため、使用二日後に発熱、下痢を催した矢島町の佐藤繁ちゃん(三つ)、大淵政一ちゃん(生後一カ月)は、いずれも砒素中毒であることが確認された云々、こういうようなことであるので、販売が決して二十七県に限られるものではない。  それからさらに質問しますけれども、あの事件発生して、さあたいへんだ、かなり倉庫にある、たなにあるということで、つくったかんが五十万から六十万かんあったわけです。その際に、厚生省に相談したら、鶏の飼料に販売したらどうかと指示があった、これは事実かどうか。
  50. 浦田純一

    浦田政府委員 食品以外に転用しろといったように指導したというふうに聞いております。
  51. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それから次の質問なんですが、この森永砒素ミルク、これは三十年。あれから十七年ですね。それからカネミ油の事件、それからもう五年くらいになる。それからBHCによる牛乳汚染、それからドリン系農楽による野菜汚染事件、それからカドミその他の金属汚染、それから現在の例のPCB、こういうようなものをかかえての食品衛生法案がおたくのほうで非常に前向きで検討されております。その際に、このメタル問題なんですが、メタルとなれば全部排除しなければならないという錯覚がある。ところが人体にどういうメタルがどの程度必要なんだということを厚生省のおたくのほうでつかんでおるかどうか。その辺の理論のあれをしておるかどうか。
  52. 浦田純一

    浦田政府委員 いたしております。
  53. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それから、これはお医者さん、専門、局長も専門でしょうが、この砒素ミルクにかかったものは六割が死ぬか廃人同様になると、こういうようにいわれておるんですが、これは事実だろうか、どうか。
  54. 浦田純一

    浦田政府委員 その摂取量あるいは摂取の状況等が明らかになりませんと、一がいに言えないと思います。
  55. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それから最後に、農林省、厚生省、通産省、経済企画庁と、こうこの問題が分かれると思うのだが、これから食品衛生法相当官庁として、一つの例をあげて言うんだが、この辺までは農林省、この辺までは通産省、そしてここは厚生省ということを、これは少し説明を要すると思うのでお聞かせを願いたいと思います。
  56. 浦田純一

    浦田政府委員 農林省はやはり食糧を生産する、豊富でかつ低廉な食品を国民に与えるといった立場から、いわば積極的、助長的な立場でこの食品の問題に当たっていると思います。経済企画庁は、これは国民の生活を守る、いわば、消費者の立場からのいろいろな問題について当たっていると思います。厚生省は、最終的に人間の健康を維持し増進するという立場から、いわば最後の関所としての立場でもって食品の安全という点について責任をもって行政に当たっておるということだと思います。
  57. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それでは、これが最後の詰めだと思うのでありますが、いま田中委員がずっと質問の形で追及してきた問題で補償の問題があると思います。もう十七年にもなる今日ですから、この後遺症に対する補償その他の問題を、いま現在厚生省だけで処理できるというふうに判断していいかどうか。
  58. 浦田純一

    浦田政府委員 厚生省だけでは処理できない問題だと考えております。
  59. 川俣健二郎

    ○川俣委員 どこができないのか、お願いします。
  60. 浦田純一

    浦田政府委員 主体は食品の衛生に関して最終的な責任厚生省でございますので、それに基づきまするいろいろな事故、これの救済ということについては、私は厚生省が当たるべきだと思います。しかしながら、このような制度を立案するにあたりましては、やはり政府として一体として当たるという意味から、たとえば法案を提出するとすれば法制局、あるいは実際に食品を提供する側のほうに責任があるとすれば、そちらのほうまでさかのぼってその責任を追及しなければならないということになりますと、農林とか水産というところとの連絡、協議ということは当然考えなければならないという意味でございます。
  61. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それでは最後に政務次官にお伺いしたいのですけれども、せっかくいま疑わしきものも罰するという食品衛生の、政府のいう画期的な食品衛生法改正案を出すそうですが、もう少しやはりこの食品公害に対する相当強い指導性、監視体制、責任体制というのを持っていかないと、あの衛生法改正案というのは、全然空文に終わってしまうと思うのです。それがどうも局長のいまの説明だけでは、近く審議される法案の論議に入る用意が、ちょっとわれわれは消極的にならざるを得ないと思うのです。やはり何と言ったって、いろいろあったって、けんかしてでも、やはり食品問題からこういうものが出てきたという後遺症に対する補償問題などは、厚生省責任をもって処理するという考え方が必要だと私は思う。そこで政務次官のその辺に対する考え方を最後に聞いて、私の質問を終わります。
  62. 登坂重次郎

    登坂政府委員 厚生省としては、あくまで国民の健康増進ということを第一義的に考えなければなりませんし、特に食品衛生に関しましては、今回の法律改正にもあるとおり、相当強い姿勢で臨む。食品法というような構想もあるように皆さん方から聞かれるのでありまするが、いまの法律の段階として、また主管事項の厚生省の分野においては、できるだけ厳正公平に、これから食品公害というようなものを極力防ぐ、そういうものが出ないように法的に処置できるものは、まず厳重にこれから善処していきたい、こういうように考えております。
  63. 川俣健二郎

    ○川俣委員 どうもありがとうございました。      ————◇—————
  64. 森山欽司

    森山委員長 麻薬取締法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑を行ないます。質疑の申し出があります。これを許します。田畑金光君。
  65. 田畑金光

    ○田畑委員 沖繩における麻薬犯罪が、この一両年非常にふえてきておると聞いております。当初沖繩における麻薬の犯罪というものは、主として米軍人、軍属、その家族あるいは外国人の旅行者、これがほとんどであった、こういわれておりまするのに、最近沖繩の人方にも広がってきたということでございますが、どのような状況にあるのか、まずそれをひとつ承りたいと思います。
  66. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 昨今の沖繩の麻薬の状況は、いま先生お話しになりましたように、最近はだいぶ増加してきております。いわばちょうど内地の十年前のような状態になってきておりまして、非常に憂慮されるわけでございます。どのような人たちがそういう麻薬の乱用をやっているだろうかというのは、的確にはつかめませんけれども、最近は接客業者とか、あるいはバンドマン等の関係者等を含めまして、数としては一度麻薬に接触した人を含めますと、多い数字は五千人に達するのじゃないかというようなこともいわれております。ところが最近は、たとえば大麻等につきましては一般青少年までも普及してきておるというような状況にあるようでございます。
  67. 田畑金光

    ○田畑委員 いまお話しのように、沖繩における麻薬犯罪の推移というものが、特に四十一年前後はほとんどなかったのが、四十四年以降急にふえてきておる。四十五年以降には、お話のように大麻以外にヘロインとかアヘンあるいはLSD等の刺激の強いものがだんだん多くなってきた、こういうことが資料によって明らかでございます。  ところで、また日本の場合はどうかというと、本土の場合は麻薬取締法あるいは、あへん法違反者は四十一年以降だんだん減ってきて、大麻の違反者が非常にふえてきておる。すれ違ってきておるような現象が見受けられるわけですが、これはどのように理解すればよろしいのか、その辺ひとつ御説明をいただきたい、こう思います。
  68. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 内地におきましては、いま先生がおっしゃいましたように、麻薬、つまりヘロインの関係はずっと減少してきておりまして、大麻による違反がふえておるわけでございます。もちろん全体の推移としては十年前から見ますと、約三分の一程度減ってきておりますが、大麻だけは昨今ずっと伸びてきておる。これは麻薬、特にヘロインあるいはLSD等につきましては非常にきびしくここ十年間国内の関係取り締まり官署が努力しまして成果をあげてきたわけでございますが、昨今の国際的な交流といいますか、旅行の簡易化に伴いまして、南方あるいは外国船員等からの影響を受けて、大麻事犯がふえてきておるわけでございます。  一方沖繩におきましては、最初は大麻等の事犯が多かったわけでございますが、香港あるいはバンコク、そういう方面からの麻薬の密輸あるいは密輸組織による搬入というものが考えられまして、最近は増加の傾向を見ているということでございます。
  69. 田畑金光

    ○田畑委員 今度の法律によれば、九州地区麻薬取締官事務所沖繩支所を設けて麻薬取締官の定数を十名ふやす、こういうことがこの法律のすべてでございますが、沖繩におけるこの取り締まり体制の整備、こういう点から見たとき、この麻薬取締官十名を増員して置くことによって、これが万全なのかどうか。このあたりはどう見ておるわけですか。
  70. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 今回の法律改正によりまして百六十名の取締官を百七十名に増員する予定でございますが、沖繩には十三名配置する予定でございます。そのほか県の取締員として三名がおります。したがいまして、厚生省関係では十六名の取り締まり体制となるわけでございます。  はたして、この十三名プラス三名、つまり十六名程度で取り締まりができるか、こういう先生の御心配だろうと思いますが、関係機関としましては、警察はじめ税関あるいは海上保安庁等々がございます。もちろんこの総合的な取り締まり体制が犯罪を撲滅するわけでございますが、私ども厚生省関係としましては、とりあえず十三名と、それから県におります三名をもちまして発足いたしまして、推移を見まして、九州地区もしくはその他の地区からの応援体制も実態に応じて考えなければいけないんじゃないか。また他の、たとえば警察等におきましてもいろいろ増員が考えられているようでございまして、そういうふうな総合的な強化対策によって沖繩の麻薬対策に対処したい、かように考えております。
  71. 田畑金光

    ○田畑委員 現行の沖繩における麻薬取り締まり体制はどうなっておるのか、復帰後本土のそれとどのような関係になるのか、これをお聞きしたい。
  72. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 現在の沖繩の取り締まり体制は、厚生省関係では県に三名の取締員がいるだけでございます。そのほか警察当局が防犯関係で取り締まりをやっておられますし、それから税関等、つまり、三名の麻薬取締員で日本側としてはやっておるわけでございます。  これに対しまして、今回復帰に伴いまして厚生省関係の九州の支所が十三名、そのほか、警察では何名ぐらいの増員を麻薬関係に向けられるか詳細は私承知しておりませんが、増員等が行なわれますので、当然ある程度の人数が振り向けられることと思います。それから海上保安庁のほうで支分部局が設けられると思いますし、税関も設けられると思います。そういうふうな内地と同様の関係機関が新しく設けられると思いますので、その総合的な対策が従来よりも強化されていく、かように考えております。
  73. 田畑金光

    ○田畑委員 いまの局長の答弁はどうも正確でないんじゃないですか。あなたのお話を聞いておると、現在沖繩には麻薬取締官というのはいない、取締員が三人いるだけ、こういうお話ですが、沖繩の現行の法律によれば、やはり麻薬取締官あるいは麻薬取締員というものを置くことになっているんでしょう。定員どおり置いたかどうかは別にしてですよ。しかし現実には定員に満たない配置状況だ、このように承っておりまするが、この点はどうなのかですね。  さらにもう一つは、沖繩の場合は、現行の取り締まり体制を見ますると、犯罪の取り締まり、不正麻薬の取り締まりまではとても手が届かぬ、いわゆる正規の麻薬取扱者の指導監督に手一ぱいだ、こういう状況だと聞いておるのでございまするが、この点はどうなのかということですね。  そういう状況下にあるにかかわらず、いまの答弁によれば麻薬取締官を十三名増員する、そのことでやっていける、こういうような御答弁だが、なるほど警察とか税関とかあるいは海上保安庁等々の協力体制が別にあること、これは本土の場合でも同じであるわけだが、特に沖繩の場合については、この法律改正による措置だけで全うできるのかどうか、このことを私は心配するのでありまするが、もう一度お答えを願いたいと思うのです。
  74. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 答弁が大ざっぱでございまして、はなはだ申しわけございませんでした。私が先ほど琉球政府には三人と申しましたのは、取締官一名、取締員二名のことでございます。先生が御指摘のように、現在は定員としては取締官二名、取締員五名のワクがございますけれども、実際は官が一名で員が二名という状況で非常に弱体な関係にございます。  それから、そういうような弱体な取り締まり体制では、先生指摘のように正規の麻薬取扱者だけの仕事に忙殺されておりまして、不正麻薬の取り締まりは警察当局にすべてをゆだねている状況でございます。したがいまして、先ほど御説明しましたように、厚生省としましては取締官の支所を設けまして十三名を配置する。県としては現在、官一名、員二名、これを取締員三名として、沖繩の県の職員として取り締まりに当たらせる。そのほか海上保安庁、税関等の設置、それから警察によります増員等によって今後の麻薬取り締まりの体制をやっていきたい、こういう状況でございます。
  75. 田畑金光

    ○田畑委員 法律の面から見ても、沖繩と内地とは違っておるわけなんです。内地の場合は麻薬取締法、あへん法あるいは大麻取締法、刑法の当該条項、こういうことになっておりますが、沖繩の場合は高等弁務官布令というものが現存し、これを法律として採用しておる。その他麻薬取締法等があることも聞いておりますが、取り締まりという点から見た場合、法律上から見た場合に、沖繩の現行法というものは不備がないかどうか。本土のそれに比べてですね。この点はどのように考えておるのか。沖繩が復帰しても、当分の間は特別措置法によって沖繩の現在の法律あるいは制度がそのまま存続するのかと思いますが、この間の事情は一体どういうことになるのか。法律の整備の点から見た場合に、沖繩のそれを本土の関係法に整備する、こういう点はいつごろになるのか、この点についてひとつお答え願いたいと思います。
  76. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 先生指摘のように、現在の麻薬関係の取り締まり法規は、高等弁務官布令と麻薬取締法、それから刑法等でやっておるわけでございます。これは、体系は違いますけれども内容としましては、内地の麻薬取締法、あへん法、大麻取締法、刑法等々と同じでございます。復帰と同時に、法令関係は、現行の内地の取り締まり法が直ちに適用されますので、その点は従来と変わりもございませんし、それから、内地との関係も同一の状況になるわけでございます。
  77. 田畑金光

    ○田畑委員 局長、もう一度……。そうしますと、復帰と同時に、日本の関係の法令がそのまま適用される。したがって、沖繩の現在施行されておる法律はなくなる、こういうことですね、その確認
  78. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 さようでございます。
  79. 田畑金光

    ○田畑委員 先ほど局長の答弁によりますと、沖繩における麻薬中毒患者は約五千名にのぼるであろう。のぼるであろうというわけで、まだ正確な数字はつかんでおらないようでございまするが、これは早急に正確な数字を復帰後把握することが、麻薬行政を進める上に大事なことだと考えておるわけでございます。  そこで、この麻薬取締法によりますると、中毒患者等についてはいわゆる措置入院、こういうようなことで、患者についての療養措置等がなされておるわけでありまするが、現在、一体沖繩においてはどうなっておるのか、復帰後どうするのか。  さらに麻薬取締法五十九条の二によれば、費用負担について規定されておりまするが、沖繩の場合等については、このような措置入院に対する沖繩県に対する国の費用負担、こういうこと等についてこれはどうなるのかですね。
  80. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 中毒者についての現行の沖繩の法的体制は、精神衛生法でやっておられまして、この人数等につきましては、四、五人程度というふうに報告を受けております。  今度復帰に伴いまして、麻薬取締法が施行されますと、麻薬取締法によります措置入院制度に切りかわるわけでございますので、これにつきましての財政措置は、現在、来年度につきましては、私どものほうで十分の八の、法律に基づく負担措置を講じております。
  81. 田畑金光

    ○田畑委員 現行は、沖繩においては、精神衛生法によって、このような中毒患者についての措置がなされておる。いまのお話によると、わずか五名程度だ、こういうことでございますね。五千名はおるであろう。それに対して、五名前後しか療養措置等がなされていないということになってくると、まさに野放しの状態だ、こういうことですね。復帰後については、本土の法律によって、そしてまた本土の予算措置によって、当然にもこれらの必要とする患者については措置入院がなされ、さらにこれは県がやるわけでありまするから、県に対する国の補助措置というものが十分なされなければならぬわけだが、本年度の予算というものはどの程度組んでおるのか、この予算は沖繩現地の必要にこたえられるだけの予算措置が組まれておるのかどうか。  それからもう一つ私がお尋ねしたいのは、局長、この麻薬取締法五十九条の二の二号によれば、十分の八、国は都道府県に補助する、こうなっておりますが、沖繩の場合等については、野放しな状態で、これから相当措置入院のための予算措置が必要になっておるとき、従来の本土と同じように、ただ十分の八の負担だけでできるのかどうか、このあたりは当然十分の十にすべきであったと思うし、これは十分の十になっておるのじゃないですか。この間の沖繩返還に伴う特別措置法でございましたか、あの中においては、これ  はどうなっておるのですか。
  82. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 先ほど私が麻薬の乱用者は五千人にのぼるだろうという推定を申し上げましたのは、先生がいま言われる措置入院の対象とするような中毒者という意味で申し上げたわけではございませんで、いわば一回でも大麻その他のものに接したことがあるという者を考えると、そういうふうな多数にのぼるのではなかろうかということでございまして、現実には、精神衛生法で措置入院をされた患者は約五名ほどだというふうに、私どもとしては報告を受けているわけでございます。  したがいまして、今度復帰に伴いまして、中毒者として麻薬法によりまして、精神衛生法でいう自傷他害と同じ程度の中毒者の関係の予算としましては、少数でございますが、約十人程度の予算措置考えているわけでございます。もちろん先生がおっしゃいましたように、現在のこの麻薬患者の、あるいは麻薬の趨勢からして相当数にのぼるのではないかということにつきましては、当然、法律上、措置入院をいたしますれば、負担は国として考えるということになろうかと思います。  それから、負担関係でございますが、麻薬取締法関係は、やはり現行法と同じように、十分の八が適用されるというふうになっております。
  83. 田畑金光

    ○田畑委員 わが国における麻薬禍は、戦後の混乱と廃退の中で急速に芽ばえて、そうしてヘロイン事犯が非常に多かった。ところが、昭和三十八年の法律改正、罰則の強化、あるいは国の麻薬施策が強化されて以来、ヘロインの事犯というものが急激に減ってきた。なるほど資料を見ますと、そのようになっておりますが、しかしまた、最近の傾向としては、大麻事犯、LSDの事犯がふえてきておる。このLSDの幻覚剤というものに対して、どのような措置がとられておるのか、またとられようとしておるのか、この点が一つですね。  第二の問題としては、すでにこの委員会で取り上げられたと承っておりまするが、大麻、LSD等の幻覚剤を中心とした向精神剤の乱用、これは日本だけでなく欧米諸国においても同様である。そこで、昭和四十六年の二月に向精神剤に関する条約が採択をされて、国際的にもひとつ幻覚剤の規制強化に乗り出そう、こういうことになっておるようです。わが国でも、四十六年の十二月二十一日にこの条約に署名をしたと聞いております。この条約を批准するためには国内法の整備が当然必要である、こう思いますが、国内法はどの法律をどう直せばいいのか。そのためにはやはり準備が必要であると思いますが、どれくらいの期間があれば準備ができるのか、そのような準備を経て、当然政府はこのような条約は批准手続を進めるものと考えておりますが、今後の見通しをひとつお聞かせ願いたい、こう思います。
  84. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 前段の、LSD等の幻覚剤につきましてどういう体制にあるか、こういうお尋ねでございますが、これにつきましては、とりあえず麻薬取締法の麻薬に指定をしておりまして、現在LSDが取り締まられております。したがいまして、今後新しいLSDに準ずるようなものがまいりました場合には、とりあえず麻薬に指定いたしまして、麻薬取締法と同様の厳重な規制をやりたい、かように考えております。  第二点の昨年暮れに署名をいたしました向精神剤に関します条約につきまして、どういうような今後の段取りになるかという御質問でございますが、向精神剤に関します条約は昨年の二月、国連の全権会議で採択されたわけでございまして、現在いろいろの向精神剤に関します乱用その他の不正取引が世界的に問題になっておりまして、世界をあげてこの問題に国際的な観点から協力を行なって厳重に取り締まろう、こういうことでございます。非常に重要な問題を含んでおります。これの対象としてありますのは、先生御存じのように、LSD等の幻覚剤、それから十数年前に一時はやりましたヒロポン等の覚せい剤、それから現在薬事法でいろいろ規制が行なわれております催眠剤とか精神安定剤等三十数品目でございます。これにつきまして、大体麻薬取締法と同じような程度の国際条約の内容となっております。したがいまして、現在わが国の法律では、先生御存じのように、麻薬取締法、それから大麻取締法それから覚せい剤取締法、薬事法等幾つかの法律によって、これらの、私がいまあげました三十数品目につきましての大部分が取り締まられておるわけでございます。  これらの現行法と条約との関係を概括的にお話しいたしますと、覚せい剤につきましては条約よりも相当きつい法律規定になっております。それから麻薬、大麻等は、大体条約と同じ程度の強い規制になっております。薬事法につきましては、薬事法の性格から条約と比較しますと、だいぶゆるい点がございます。したがいまして、多少のでこぼこがございますので、こういう点の具体的な調整を、国内法としまして、それぞれの法律で薬を分類分けしまして取り締まり法規を強化するか、あるいはそれらを総合的に一つの法律として、その中でいろいろ細分化して取り締まりを強化するかということが、今後の国内法の準備体制の一つの課題でございます。  さて、どの程度の準備を要するかということでございますが、これは麻薬の単一条約に伴いまして、麻薬法を制定した場合でも約三年ぐらいの時日を要しておりますので、私どもとしては相当ピッチを上げましても、その程度の時日は要するのではなかろうか、こういうふうに推測しておりますが、とにかくできるだけ早くこの準備体制に取りかかりたい、かように考えております。
  85. 田畑金光

    ○田畑委員 いま局長の答弁などを承って私感ずることは、麻薬取締法第五十四条には、麻薬取締官及び麻薬取締員の職務権限について規定しておりますが、その第五項を見ますと、麻薬取締法、大麻取締法もしくはあへん法に違反する罪、刑法の当該条項に定める罪等については、麻薬取締官、取締員は、刑事訴訟法の司法警察員としての職務を行なう、このようになっております。ところが、覚せい剤取締法については規定がないわけです。いまのこの条約の精神から見ましても、こういう点についても法律上不備があるし、これは当然改めるべきではなかろうか、このように考えるわけでありますが、LSDあるいは幻覚剤について規制がきびしくなっていくというようなことを考えてみますと、私は麻薬取締法第五十四条第五項等についても、これは当然検討すべきだと思いますが、この点についてはどういうお考えですか。また、そのような検討の課題として、これを見直していく用意があるかどうか。
  86. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 ただいま麻薬取締法の五十四条の司法警察権につきましての御質問でございますが、御指摘のように、現行法では覚せい剤につきましては、いわゆる麻薬取締官は司法警察権を持っておりません。この点につきましては、現在でも警察当局と事務的に折衝を続けている段階でございますが、さらにこの向精神剤の条約の批准に伴いますための国内法の整備の段階で、向精神剤につきましての国内法の司法警察権をどの範囲に限定するか、あるいは拡大するかという点につきましては、私どもとしては、取締官としましてはこの向精神剤につきましては、ほぼ全面的に司法警察員としての職務を行なうような方向で事務的に検討を進めたい、かように考えております。
  87. 田畑金光

    ○田畑委員 沖繩が戻ってきますと、私はこの麻薬取り締まり行政の強化というのは、どうしても大事なことだなということを感ずるわけです。たとえば昨年の十月十五日、十七日、十八日の三日にわたって、米海兵隊の岩国航空基地にフィリピンから来たジェット戦闘攻撃機などの軍用機の中から、大量の大麻や麻薬類が発見された。当時新聞に大きく報道をされていたわけでありますが、大麻とかヘロインというのは、大体ベトナムやタイ、バンコクなどの東南アジアルートから来ておる、こういうように聞いております。また覚せい剤は韓国ルート、LSDは特に米国のほうから、こう聞いておりますが、このようにアメリカの基地にアメリカの戦闘機が麻薬類を運んでくるということになってきますと、これを捜査することも、あるいは皆さんがよく言う水ぎわでこれを押えるということもたいんなことだ、基地の中であるだけに。こういう点について日米間の話し合い等については万遺憾のないような話し合いがついておるのかどうか。いま指摘したような事例の場合はどのような処理をなさっておるのか、これが一つ。  それから、特に最近、港の密輸が非常に多いということを聞いておるわけです。たとえば茨城県の鹿島港であるとか、あるいは千葉県の臨海工業地帯における企業のつくった港等において外国の船舶がしばしば密輸をしておるということを聞いておりますが、このような事犯に対しまして一体万全の措置がとられておるのかどうか。特に麻薬取締官は今度ふえて百七十名、こういうことになったわけでありますが、さらに麻薬取締員は百三十五名、こういうことですね。これで万全を期し得るのかどうか。このあたり、特に京浜地区を見た場合に、京浜地区管内はなかなか容易でないということを聞いておるが、このあたりについてどのような措置がとられ、また皆さん方の側から見て、これはもっとこういう面に人をふやすとか、取締官をふやすとか、取締員をふやすとか、必要があるとかないとか、この辺についての見解を承っておきたいと思います。
  88. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 昨年岩国に起きました事件でございますが、これは米軍の関係職員によりまして発見され、岩国署に引き継がれております。  先生御承知のように、基地関係の麻薬犯罪につきましては行政協定によりまして、原則的に米軍が捜査を行ないまして、あとで日本側に引き渡されるわけでございます。もちろん米軍のほうの同意を得まして基地内の捜査も行なえるわけでございますが、両方の捜査機関が緊密な連絡をとって捜査を行なう必要があるということでございます。  それから復帰に伴いまして、関係の空港なり、あるいは関係の港に影響があるのではないか、そういう点の取り締まりはどうかということでございますが、これは当然復帰に伴いまして、そういう体制を十分にとらなければいけないということは申すまでもありません。したがいまして、現在でも税関、海上保安庁、警察それから厚生省の麻薬取締官事務所で協議会を持っておりますが、これらの空港なり、あるいは港を所管しております関係のところでは早急に協議会を開きまして、復帰に伴います体制を能率的かつ円滑に行なうように体制の強化をいたしたい、かように考えております。  それから具体的に京浜地区等につきましては現在の体制では十分であるかどうか心配だという御意見でございます。現在も横浜に分室を設けて重点的にやっておりますが、分室の人数等も、事件内容によりましては本署のほうから動員するとか、あるいは他の地区からの応援等も考えねばなるまい、かように考えております。
  89. 田畑金光

    ○田畑委員 最後に、私は大臣にひとつただしておきたいのでございますが、昭和四十五年の麻薬白書を見ますと、摘発された麻薬犯罪は千百四十九件、人員は千二百八名、件数から見ますと、前年に比べて一三・三%の増、人数から見ますと一七・四%ふえております。ことにその内訳を見ますと、アヘンの使用というものは四〇%減っておるが、マリファナ事犯が七七・五%、ヘロインとLSDが合わせて二・五%、特に心配されることは、このマリファナの使用者が六三%は二十歳台だといわれておる。船員、サラリーマン、無職あるいは学生が含まれておる、こういう傾向ですね。アメリカの場合は大学生から高校生、中学生にまで波及しておるということを聞いておりますが、ことにアメリカの今日の社会の荒廃の一番大きな問題がこのアヘン中毒者、麻薬中毒者。国内において二十万もおる。特にベトナム兵が数万の麻薬中毒者である。これがアメリカの今日の大きな病気の一つ、こういわれておるわけでありますが、私は最近の日本のこの麻薬の犯罪の推移等を見ますと、決してこれは他山の石ではない。やはりわが国においてもさらに姿勢を正して適切な麻薬行政を進めることが大事であると考えておるわけです。そういう面においては、先ほど私が、岩国の基地やあるいは京浜地帯あるいは東京湾の港等に対する密輸ルート等を申し上げましたが、やはり麻薬行政を全うするためには、いろいろ側面的な警察とかあるいは税関とか海上保安庁とかありますけれども厚生省みずからが麻薬取締官であるとか、こういう行政の面等については必要な人員を確保しながら機動力を備える、あるいは捜査技術をさらに向上させながら対処する必要が私は出てきておると考えておりますが、この点について大臣の所見を承って、私の質員を終わりたい、こう思います。
  90. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 おっしゃいますように、麻薬関係の取り締まりは、国民の健康を保持する、あるいは精神状態を正常な状態で保持するという意味において非常に重要なことだと思います。  いまおっしゃいますように、若者が麻薬遊びをするというようなことが風をなすということであっては、まことに一大事だ、かように思います。したがいまして、そういったような社会風潮に対する健全な意見の推進と相まちまして、私どもの取り締まり自身も強化をいたしてまいらなけければならない、かように考えております。そういう意味でまた御指導、御鞭撻を賜わりたいと思います。
  91. 田畑金光

    ○田畑委員 終わります。
  92. 森山欽司

    森山委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  93. 森山欽司

    森山委員長 次に、本案を討論に付するのでありますが、別に申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  麻薬取締法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  94. 森山欽司

    森山委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  おはかりいたします。  ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  95. 森山欽司

    森山委員長 御異議なしと認めさよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  96. 森山欽司

    森山委員長 次に、厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑を行ないます。古寺宏君。
  97. 古寺宏

    ○古寺委員 昨年の暮れでございますが、青森県で精薄者の妹を絞め殺すというような事件発生をいたしております。これは重度精薄者であるために施設に入所ができなくて、こういうような結果になったということが報道されておりますが、、こういう点について厚生省としてはどういうふうにその事実をとらえ、また精薄者に対する対策というものをお考えになっていらっしゃるか、お聞きしたいと思います。
  98. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 精神薄弱、子供、おとなを通じましての精薄対策といたしましては、いま先生指摘のように、非常に社会の問題といたしましても、また家庭あるいは本人自身の人権の問題といたしまして大きな問題でございますので、これは他の障害者対策も同様でございますが、基本的な方針といたしまして、まずできるだけその発生を防止し、あるいは早期発見いたしまして、できるだけ障害が軽くなるようにするということが一つ。それから数も相当にのぼっておりますし、その障害の程度によりましては、できるだけ家庭であたたかく処遇するということが必要でございますので、在宅精薄児者対策を進めていくということが一つ。それから重度あるいは障害の態様によりまして、あるいは家庭の状況によりまして、施設に収容するということが不可欠の精薄児者も多いことでございますので、施設の整備を進めるということが一つ。その三つの方針を柱といたしまして、四十七年度におきましても相当の予算を計上いたしまして、施策を進めておるところでございます。
  99. 古寺宏

    ○古寺委員 そこで、精薄者の実態ということについてお尋ねをしたいのでございますが、現在厚生省把握しておりますところの精薄者の実態でございます。精薄児、精薄者の実態はどういうふうになっておりますか。
  100. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 現在私ども把握しております数といたしましては、昭和四十一年度の八月現在の調査が最も新しい数字でございまして、このときにおきましての精神薄弱児者の数は、総体で在宅の者が約四十八万、それに二万余りの施設に入っておる人がございまして、合わせて約五十万という推定をいたしております。
  101. 古寺宏

    ○古寺委員 この厚生省の発表になっている数字は非常に実態と食い違っておる、こういうことがいわれているわけでございますが、この精薄児者対策と真剣に取り組む以上は実態把握というものをなぜおやりにならないのか、その点についてお尋ねしたいと思います。
  102. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 先生指摘のとおり、精薄者の実態といたしましては、これは結局精薄者の定義が社会との適応性との関連においてとらえられておる、したがって、かなり社会の態様によりまして流動する性格を持っておりまして、その後の変化も考えられるところでございますので、四十六年度におきまして精神薄弱児者の実態調査を新たに実施したところでございます。ただ、まだその結果を得ておりませんので、とりあえず現在申し上げられる数字として、前回の数字を申し上げた次第でございます。
  103. 古寺宏

    ○古寺委員 四十六年に行なわれている実態調査方法についてでございますが、非常に限られた地域の抽出によって行なわれておるということを承っておりますが、これではほんとうの実態というものは出てこないのではないか、こういうふうに心配する向きもあるわけでございますが、その点についてはいかがでございますか。
  104. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 四十六年度において実施いたしました精神薄弱児者の実態調査、これは前回と大体同様な方法をとっておるわけでございまして、予算的には一千百万円余りの予算を計上いたしております。  実施方法といたしましては、これは施設に入っておる精薄児者はすでに強制的に把握されておりますので、それは対象から除きまして、在宅の精薄児者を対象といたしまして、昭和四十年度の国勢調査地区から三百九十分の一の抽出率で無作為抽出いたしました千二百九地区内の精神薄弱児者及びその世帯を対象といたしまして、具体的には、まず基本調査をもってその地区に属する全世帯の全人員について一応の把握をいたしまして、さらに精薄児者の疑いの持たれるものにつきまして専門家による調査を行なうという段階的な調査をいたしたわけでございます。この地区の数につきましては、これは私どものほうの統計調査部等統計調査の専門家の意見によりまして、精神薄弱児者の発生頻度等から考えまして、この程度の抽出率をもっておおむね正確な実態把握できるものという前提調査を行なった次第でございます。
  105. 古寺宏

    ○古寺委員 精薄者の数につきましては二百万人あるいは三百万人ともいわれておりまして、厚生省実態調査に対しては父母の会等が非常に不満を持っておりまして、独自で実態調査をしなければならない、こういうような動きがあるわけでございますが、そういう動きがあるということは、どういうふうにお考えでしょうか。
  106. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、精神薄弱児者の定義というものは、これは先生の御専門でございまして恐縮でございますが、私ども専門家に聞きましたところでは、身体障害者の場合のような医学的に客観的な基準を設けるということが、かなり困難な点があるように伺っております。したがって、その知能指数というような客観的な指標だけでなしに、やはり社会との適応性、そういったことも要素として考えられて、それぞれの複合的な判断によって精神薄弱児者というような福祉の対象にすべきものを把握するという考え方をとっておりますので、福祉の対策が進む、あるいは教育が進むことによりまして、多少客観的な知能指数が低い者につきましても、精神薄弱というような特殊な福祉対策の対象にする必要がない社会的適応性を身につけられる人もあるように承知いたしております。  そういうような意味で、とらえ方によりましては精神薄弱児あるいは精神薄弱者というような定義が多少ずれてまいりまして、数については、とらえ方によっての増減はあろうかと存じますが、私ども厚生省立場といたしましては、精神薄弱児者対策の対象にいたします範囲での精神薄弱児者、これはやはり精神薄弱の福祉施策の対象といたしまして、特に行政的措置を講ずる必要があるもの、そういうような限度におきましての調査、そういう点に重点を置いて調査をしておる次第でございます。  したがいまして親の会等で、親なり家族の御判断によりまして、精薄という印象を持たれる方と数において多少の食い違いはあり得るかと思います。ただ、やはり家庭におきまして、そういう印象を持たれるということ自体は、それだけでも福祉の措置を必要とする面があるわけでございますので、そういう御意見は今後対策を講じていきます点において十分参考にさせていただきたいと考えております。
  107. 古寺宏

    ○古寺委員 四十一年八月の実態調査と、文部省あるいはいろいろな関係方々のおっしゃる数字とは非常に食い違いがあるわけでございます。したがいまして、福祉行政の上に乗っかっていく、いわゆる精薄児あるいは精薄者というものは非常に限定されております。そういう限定された数字をもとにして、いろいろな施設をつくり、あるいは施策を講ずるということになりますと、非常に多くの精薄児あるいは精薄者というものが取り残された形になっているわけでございますので、今後ほんとうの実態というものをとらえて、そしてすべての精薄児あるいは精薄者というものを福祉行政の上に乗っけていく、そういうような施策というものを十分に講じていただきたい、こういうふうに御要望申し上げます。  次に、精薄者あるいは精薄児の施設の問題でございますが、先ほどの御答弁によりますと、施設に入っている方がわずかに二万人というような数字が出ているわけでございまして、五十万人のうちのあとの四十八万人の方が在宅になっているわけでございます。今後この施設の整備拡充ということが非常に大きな問題になっているわけでございますが、これに対して厚生省としてはどういうふうに取っ組んでいかれるお考えなのか、承りたいと思います。
  108. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 先ほどお答え申し上げました中で御説明が不十分で、たいへん失礼いたしましたが、二万人余りと申し上げましたのは四十一年の調査時点における精薄児者施設の入所者でございまして、現段階におきましては、昨年、四十六年十二月一日現在における調査といたしましては、精神薄弱児者の施設に入っておられる方はすでに四万一千人余りでございます。そのほかに、制度的にはやはり広い意味では精薄の施設になります国立コロニー、これが定員が五百五十名、これはすでにもうほとんど満ぱいに近く入っております。それから国立秩父学園が百二十五名、それから重症心身障害児の施設が八千四百名余りということで、約五万人程度の方が施設に入っておられるわけでございます。さらに、今年度からは、軽度の精薄者の職業更正のための施設といたしまして、通勤寮十四カ所が設置されております。そのような意味で、施設の整備は四十一年度の実態調査に比べましてかなり伸びてきておるわけでございますが、なお現時点におきましても、この入っておられる方の倍以上の方がやはり施設に収容を必要とするという推定を私どもいたしておるわけでございます。  特に、比較的施策の発足の早かった精神薄弱児の施設につきましては、施設を要する人たちの六割程度が現在すでに施設に入っておられるというふうに考えておりますが、多少発足のおくれておったというような要素もあろうかと思いますけれども、精神薄弱者、おとなのほうの施設につきましてはなおその必要数の半数にも満たない状況でございますので、これは毎度申し上げておるところでございますが、厚生省といたしまして、昭和四十六年度を初年度といたします社会福祉施設の緊急整備五カ年計画を発足いたさせまして、昭和五十年度までには、特に緊急に入所を必要といたします重度を中心とする精薄児者につきましては、全部の方を収容できるように施設の整備を急いでおる段階でございます。
  109. 古寺宏

    ○古寺委員 五カ年計画を達成するためには非常に膨大な予算が必要なわけでございますが、今年度の予算を見ましても、非常に少ないようでございます。はたして五十年までにこの五カ年計画が達成できるかどうかということはちょっと疑問なわけでございます。この五年の目標達成のために、政府として、また厚生省としてどういう決意で臨んでおられるのか、これは政務次官からひとつ御答弁願いたいと思います。
  110. 登坂重次郎

    登坂政府委員 御説のとおり、社会福祉の柱として、まず健康管理のいわゆる国民医療の確保ということと、もう一つはその福祉施設の拡充強化ということが最も緊急なものと思われますので、この現在在宅者にしてかつ入院措置を要する者というものについては、ただいま五カ年計画というものを完全に実施し、かつそれができるだけ緊急のものを措置できるようにしたい。それに向かって、毎年度の大蔵省との予算折衝で絶対財政確保をはかる。また、どうしてもそれで間に合わぬ場合は、いわゆる年金の還元融資など、あるいは先取りしてもどうしてもそれに間に合わせるようなそういう緊急措置をとりたい、こういうふうな決意でおるわけでございます。
  111. 古寺宏

    ○古寺委員 五カ年計画は、総予算額で大体どのくらい必要でございますか。それから、それに対して昭和四十六年度、四十七年度の予算額を御説明願いたいと思います。
  112. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 これは建設単価等の変動はあろうかと存じますけれども、一応計画の発足当初において考えております額は、総経費といたしまして約三千五百億でございます。これはもちろん精薄だけではございませんで、社会福祉施設全体の整備計画で申し上げたわけでございます。それで、そのうち四十六年度で予定いたしました総額、これはいま政務次官からお答え申し上げましたように、財政投融資の資金あるいは地方負担等を全部含めた額でございますが、約三百二十億余りでございます。それから四十七年度で予定いたしております額は約五百三十億余りでございます。
  113. 古寺宏

    ○古寺委員 その中で精薄関係の予算は幾らでございますか。
  114. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 これは私どもの所管の分類の関係で、多少肢体不自由児等の施設が入っておるわけでございますが、大体精薄がおもになると存じますけれども、五カ年計画の一環といたしまして約二百億を予定いたしております。
  115. 古寺宏

    ○古寺委員 これは単年度で大体六百億ぐらい必要なわけでございまして、それに対して非常に少ない、こういうふうにいわれているんでございますが、先ほどの政務次官の御答弁によりますと、相当の決意で予算の獲得に臨んでおられる、こういうふうにお話があったわけでございますが、非常に少ないような、これではとうてい達成できないような数字が出ているようでございますが、その点はいかがでございますか。
  116. 登坂重次郎

    登坂政府委員 御承知のとおり、その五カ年計画を立てる前までの基礎資料が少なかったために、ことしは四〇%ほど引き上げたわけでございますが、来年度はこれを起点にしてまた五カ年計画が達成できるように各単年度において予算措置をしたい、かように存じております。
  117. 古寺宏

    ○古寺委員 この精薄児もそうでございますが、精薄者の施設が非常におくれておりまして、これは社会問題になっているわけでございます。この精薄者の収容施設については今後どういうふうに対処するお考えでしょうか。
  118. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 先ほど申し上げましたように、精薄の中でも特に、子供は比べましておとなのと申しますか、者の施設がおくれておるのは残念ながら先生指摘のとおりでございます。これは全体の整備計画の中でも者につきましては、扶養関係等におきましても、最初に例にあげられましたように、多少子供の場合と違っておる要素もございまして、きわめて緊急性が高いと考えております。また重度化の傾向も見られますので、そういった点も含めまして、これは国庫補助等は一括された予算でございますが、その中でできるだけ重点的に整備を進めてまいりたい、かように考えております。
  119. 古寺宏

    ○古寺委員 次に、無認可の重度心身障害者施設でございますね。これが東京都内だけでも七十数カ所あるというふうにいわれておるのでございますが、これに対してどういうふうにお考えでしょうか。
  120. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 御指摘の点は私どもも、申しわけございませんが、実情を必ずしもつまびらかに把握いたしておりませんけれども、ただ先ほど先生からもお話がありましたように、正規の認可された収容施設が非常に少ないということのために、家族といたしましてもやむを得ずそういう施設を利用する向きがあろうかと存じます。そういったところにつきましては、私どもも十分に都道府県とも連絡をいたしまして、できるだけそういった施設を最低基準に合致いたします正規の認可施設にすることができるように、融資等の方法を講じまして指導をしていくということと、それから何よりもやはり、正規の認可施設でそういった方のごめんどうを見られるようにするということが行政の本筋であると存じますので、先ほどお答え申し上げましたような線に沿いまして、できるだけ施設の整備を急いでまいりたい、その両面からそういうものの解消をはかっていきたいというふうに努力いたしたいと考えております。
  121. 古寺宏

    ○古寺委員 地方によりますと現在なお、座敷牢のようなところに収容しているような家庭もあるわけでございます。たまたま国や県の施策がおくれているために、収容施設がないために、こういうような無認可の施設が非常に多いわけでございますので、当然正規の認可される施設になるまで、これはいろいろと国のほうからも融資もし、あるいは援助もしなければなりませんが、さらにそういう段階に至るまで、この無認可の施設に対してやはり補助をしてあげる必要があるんじゃないか、正規でないからこれは何とも援助するわけにはいかぬ、こういうのではなくして、正規の認可の施設になるまでの間、やはり何かしらの助成をしてあげる必要があるんじゃないか、こういうように考えるわけでありますが、政務次官、いかがでしょう。
  122. 登坂重次郎

    登坂政府委員 御承知のとおり、一般に福祉施設がおくれておるのでありますから、そういうどうしても緊急措置しなければならぬ方々が小規模のところにおるとするならば、これはできるだけひとつ措置するように努力いたします。
  123. 古寺宏

    ○古寺委員 次に、精薄児者施設における措置費の問題でございますが、この措置費というものはどういうものに使われているのか承りたいと思います。
  124. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 精薄児、精薄者の施設を通じてのことでございますが、措置費の内容といたしましては、大きく分けますと管理的な経費、それから入所者の処遇のための経費、それから職員のためのいわゆる人件費、そういったような大別ができるわけでございますが、まあ通じて申し上げますと、措置費の内容といたしましては、その施設におきますところの入所者の処遇に必要な経費のすべてが一応措置費の対象となる、そういうふうにお答えして差しつかえなかろうと思います。
  125. 古寺宏

    ○古寺委員 この措置費は、これは本来だれが負担すべきものでしょうか。
  126. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 児童福祉法の条文のたてまえといたしましては、措置をいたしますのは援護の実施機関でございます。この措置費につきましては、その扶養義務者に負担能力がございます場合には、まずその扶養義務者がその全部または一部を負担いたしまして、負担能力の及ばない部分につきまして援護の実施機関がこれを支弁いたしまして、それに対しまして国から十分の八の国庫負担をする、そういうたてまえに相なっております。
  127. 古寺宏

    ○古寺委員 院長はじめ職員の給料、そういうような事務費まで家庭から徴収するということはどうも問題があるように思うのでございますが、その点はいかがでございますか。
  128. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 こういう福祉施設の経費につきましてどのような形で国民の税金とそれから扶養義務者あるいは家庭が負担を分担するかという点は、いろいろな考え方があろうかと存じますが、一応現在とっておりますシステムといたしましては、法律の規定といたしましては、いま申し上げましたように、人件費等も含めまして全体の経費について、負担能力に応じまして全部または一部を徴収するというたてまえになっておるわけでございますけれども、実際の運用といたしましては、それぞれの所得によりましてかなりこまかい階層を設けて、それぞれの階層につきまして所得に応じて一定の額を限度といたしまして徴収するというたてまえをとっております。したがって、大部分の方につきましては、徴収されております額は人件費までまかなうような全額に及ぶものではございませんが、まあ相当高所得の方につきましてはそういった法の規定に従いまして全額が徴収される場合もあるというたてまえでございまして、数といたしましてはごくわずかでございます。
  129. 古寺宏

    ○古寺委員 次に医療費の問題でございますが、重度の心身障害者に対しての医療費を相当家族が負担しているという例が多いようでございます。老人の医療の無料化は推進されておりますけれども、こういうような重度心身障害者の医療費というものについて、今後どういうふうにお考えになっていらっしゃるのか承りたいと思います。
  130. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 ただいまの問題、まず前の御質問とも関連のございます施設の措置費の内容についてお答えいたしますと、精神薄弱児の収容施設につきましては、入所児が病気になりました場合に、その医療費につきましても措置費の内容としてまかなわれるというたてまえになっておりますが、この点は多少発足時の沿革を異にいたしました関係もございますけれども、それがおとなの精神薄弱者の施設につきましては、他の点は大体児の施設と措置費の内容が一致しておるのでございますが、この医療費につきましては必要な場合に別途生活保護の医療扶助で見るというようなシステムがとられておりまして、そういった点は不均衡でございます。精神薄弱児と精神薄弱者は本来その知能発達の程度等から申しましても統一的な運用をするのが望ましいということで、入所者につきましても、者の施設にも十五歳から収容して差しつかえない、児の施設においても、今度の場合二十歳までは十八歳をこえて収容してもよろしいというふうなシステムをとっておりまして、こういった点につきましては、現在生活保護の費用等で、お困りの人は支障のないような運用はいたしておりますけれども、やはり今後の持っていき方といたしましては、児の施設と同様に措置費の内容といたしまして、医療費も自弁できるような手当てをいたしたい、それを早急に努力する考えでございます。
  131. 古寺宏

    ○古寺委員 次に、精薄児の収容施設に嘱託医の制度がございますけれども、この嘱託医の制度が非常に少ない、こういうことが言われているわけでございますが、これに対してはどういうふうにお考えでしょうか。
  132. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 この嘱託医の措置費の上におきます定員につきましては、一応一収容施設について二人ということで予算上の手当てをしておるわけでございます。ただ、先生指摘のように、精薄児者通じましてやはり健康上の欠陥も非常に多くて、一般の健康児、健康人に比べまして、疾病率も高いわけでございます。こういった嘱託医等の医療上の手当てにつきましては、その前に御質問のございました医療費の問題も含めまして、今後さらに充実する必要があろうかと考えております。
  133. 古寺宏

    ○古寺委員 一人月千円でございますか。
  134. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 措置費のたてまえといたしましては、御指摘のように年額一人一万二千円でございますので、お話のとおりでございます。
  135. 古寺宏

    ○古寺委員 年額一万二千円では十分に嘱託医の制度を生かしていくことができないと思いますので、今後はこれを充実していくように増額をしていただきたいと思います。  次に青森県のことでございますが、平内町というところに国立療養所がございました。この国立療養所が、結核療養所であったわけでございますが、医師不足等のためこれが臨浦園という国立療養所と総合いたしまして、この平内の国立療養所のあと地ができるわけでございますが、ここに重度の心身障害児の施設をつくりたい、あるいは精薄者の施設をつくりたい、こういうような計画があるように承っているわけでございますが、こういうような施設をつくる場合に、やはり厚生省としては同じ目的のために、福祉行政のためにこれを使うわけでございますので、県がやるというような場合にはこれを無償で払い下げをして、そして県の計画なりいろいろな施策というものを推進していくような形をとったほうがいいのじゃないか、こう考えるわけでございますが、青森県の計画については厚生当局は知っていらっしゃるかどうか。またこの平内療養所のようなあと地の活用についてはどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、その点について承りたいと思います。
  136. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 いまの点、青森県が国立療養所のあと地を利用して何らかの形で精薄関係の、あるいは障害関係の施設をつくりたいという御希望をお持ちであるということは、私どもは下相談と申しますか、内々の話は承っておりますが、まだ具体的な話を承知する段階までには至っておりません。  それから療養所の敷地の譲渡問題につきましては、これは厚生省ではございますが、医務局の所管でございまして、申しわけございませんが私の所管ではございませんので、後ほど医務局のほうに連絡をいたしまして、よく相談をさせていただきたいと思います。
  137. 古寺宏

    ○古寺委員 この問題につきましては、国立病院あるいは国立療養所等に養護学校をつくる場合に土地の問題が非常に障害になっているわけでございますので、こういうような養護学校をつくったり何かする場合には、当然厚生省も文部省に協力をする、あるいは地方自治体に協力をしましてこういう施設をつくっていかなければならないと思いますので、そういうことに関する厚生省基本的な態度について、政務次官から承りたいと思います。
  138. 登坂重次郎

    登坂政府委員 この療養所及び国立病院というのは特別会計というやっかいないまの財政法のたてまえになっておりまして、これが用地の払い下げあるいは売り払いなどという場合において、現時点においては必ずしも単純に無償払い下げというわけにはいかないのでございます。しかし方向としては、同じ福祉施設でありますから、気持ちとしては私のほうもそういうふうに努力すべきものであるというふうに思うわけでございますけれども、いまの財政法のたてまえからいいますと、厚生省だけの扱いとしてはなかなかしにくい問題でございまするから、そういう福祉施設の強化充実という意味においては、私ども先生と同じように考えるのですけれども、いまにわかに御趣旨に沿うというような御答弁を申し上げかねるのですけれども、方向としてはそうあるべきものと考えて、厚生省としてもそういうふうに善処したい。いま財政当局との話し合いで、どうも特会というやっかいな財政法があることはひとつ御承知願いたいと思います。
  139. 古寺宏

    ○古寺委員 ただいまの御答弁を承りますと、福祉優先か特別会計優先かという問題になるわけでございますが、そういう特別会計のために福祉行政がおくれるというような政府の姿勢というものは改めなければいけないと思います。そういう点については、きょうは大臣がいらしておりませんが、今後特会優先ではなしに、福祉優先の体制で進んでいくということをここで御決意願って、そして今後そういう面で政府も進んでいくように推進をしていただきたいと思いますが、政務次官からもう一度強い御決意を承りたいと思います。
  140. 登坂重次郎

    登坂政府委員 私も、実は本年度の予算獲得にあたりましても、国立病院及び国立療養所の予算獲得にあたってはそういう気持ちで、もうカニが足を食べるようなことをしていくということは国のためによろしくないし、また今後医療行政にもよろしくないということは財政当局にも強く申し入れておりますし、また今後ともそういう態度で進みたいと思います。
  141. 古寺宏

    ○古寺委員 次に文部省についてお尋ねいたしたいのでございますが、義務教育の面におきましては、特殊教育の義務制というものをきめながら非常におくれているわけでございますが、今後このおくれを取り戻すために、文部省としてはどういう体制でお進みになるのか承りたいと思います。
  142. 寒川英希

    ○寒川説明員 精神薄弱児の教育の振興につきましては、これまでも養護学校それから特殊学級の設置を推進してまいりました。その結果、現在精薄児の養護学校は百十七校、特殊学級は約一万五千学級全国にございまして、ここに就学している子供は十二万五千人でございます。この就学率は約四二%でございまして、御指摘のようにまだまだ不十分でございます。  そこで、四十七年度を初年度といたします七年計画で養護学校整備拡充計画を立てております。この七年間に、この養護学校教育の対象となる比較的重い子供につきましてはほぼ全員収容できる養護学校を、約百五十校設置いたす計画でございます。特に四十七年度、四十八年度、この二年間におきまして、現在未設置県が二十三県ございますので、その未設置県を解消する。そのために今年度、四十七年度におきまして、養護学校の建築費に対する補助率を二分の一から三分の二に引き上げております。このための予算措置といたしまして約二十六億円の予算を計上いたした次第でございます。
  143. 古寺宏

    ○古寺委員 いまお話を承りますと、二十三の県がまだ養護学校が未設置であるということでございますが、これはやはり当然国立病院、国立療養所等に併設をする養護学校でございます。それが、先ほど政務次官からお話がございましたような特会優先の厚生省の姿勢というものがこういう現実をつくっている、こういうふうに思われますので、ただいま文部省から七カ年計画があるように承りましたが、この文部省の計画とあわせてやはり厚生省当局も積極的に養護学校の推進をはかっていかなければならないと思いますので、もう一度厚生政務次官からこの点について承りたいと思います。
  144. 登坂重次郎

    登坂政府委員 特会優先というほどではないのでありまするが、財政法上そういうことになっておるのでありまして、これが今後日本の財政のあり方、また私どものほうといたしまして、いわゆる療養所及び国立病院の充実等もはかりつつ、また財政当局とも相談いたしまして漸次解消するように、現時点においてはいかんせん財政法のたてまえ上特別会計ということになっておりますが、これが改善についてはまた格段の努力を払う所存でございます。
  145. 古寺宏

    ○古寺委員 次に、養護学校あるいは特殊学級の在職率が非常に低いわけでございます。せっかく特殊学級あるいは養護学校に入った方々が、社会復帰する場合に就職をいたします、ところが途中で帰ってくる人が非常に多い、こういうふうにいろいろと苦情の相談を受けるわけでございますが、この点については文部省はどういうような対策を進めていらっしゃいますか。
  146. 寒川英希

    ○寒川説明員 精神薄弱児の職業教育につきまして設備の補助を行ないまして、この精薄児の特性に即した職種の開拓、指導をやってまいっておるところでございます。  それで、その卒業生の就職の状況でございますが、四十三年度の調べによりますと、卒業生一万三千四百人のうち、中学校の特殊学級の卒業生でございますが、就職した者は約九千人でございます。六六・四%というふうな就職の状況でございます。  そこで、こういった子供たちが定着をし、社会に復帰をするという問題がございます。これにつきましては労働省の職業安定所のお立場からいろいろ御援助がなされておりますが、私どもといたしましては、一そう労働省との緊密な協力のもとに、この問題につきまして総合的な施策がとられるように今後努力をしてまいりたいと思います。
  147. 古寺宏

    ○古寺委員 労働省はこの精薄児、精薄者の職業訓練についてはどういうような対策をとっておられますか。
  148. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 こういう精薄者の方々を、労働力というような見方をとりまして、雇用対策なりあるいは職業訓練の対象とすることにつきましてはいろいろ御意見もあろうかと思いますし、こういう人たちの福祉という観点から見ましても問題があるのじゃなかろうかというふうに考えます。ただ、それはそれといたしまして、こういう精薄の方々の中で一応通常の人たちと同じような形で雇用の場につき得るような人たちもかなりあると思います。私どもといたしましては、そういったいろいろな問題を十分考えました上で、一応テストケースといたしまして、こういう精薄の人たちの中で通常の雇用につき得るような人たちを対象にいたしまして、職業訓練を実施いたしております。昭和四十四年から、テストケースといたしまして愛知県の春日井でこういう人たちを対象にした職業訓練校を開設いたしまして訓練を実施いたしております。訓練の内容は、木工とか機械とか縫製、陶磁器とか、そういった五科目で、一応百人の定員でやっております。この二年間の実績では、大体七割程度の人が入所いたしまして、ここで一年間訓練を受けた人たちは、卒業をいたしますとほぼ大部分の人が就職しておるような状況でございます。今後は、こういった実績を十分勘案しながら、こういう精薄の人たちの訓練というものをどういうふうに考えていったらいいか、今後積極的に検討してまいりたい、かように考えております。
  149. 古寺宏

    ○古寺委員 労働省では、この離職率等について追跡調査をやったことがございますか。
  150. 加藤孝

    ○加藤説明員 精薄の方々につきまして、いわば職場への定着指導といいますか、そういった面ではやっておるわけでございますが、そのための職業相談員という制度も、これは精薄の方だけではなくて、心身障害者あるいは新規学卒者、こういう方も対象とするわけでございますが、そういう形でやってはおりますが、特に精薄の方につきましての離職状況調査は、まことに申しわけございませんが、まだそこまで手が及んでおりません。こんな状況でございます。
  151. 古寺宏

    ○古寺委員 労働省もこの精薄者については非常に冷たいと思うわけです。心身障害者の基本法もできたわけでございますので、この問題については積極的に取り組んでいただきたいと思うわけでございます。特に一番大きな問題は、せっかく中学校等を卒業いたしましても社会に適応ができない、あるいは職業教育が徹底していないために、せっかく就職をしても自分のうちに帰される、あるいは帰ってくるという例がほとんどなわけです。したがいまして、そういうような職業訓練あるいは社会に対応できるような訓練をするための中間センターのようなものを労働省としては考えるべきじゃないかと思いますが、いかがでございますか。
  152. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 ただいま申し上げましたように、こういった精薄の人たちが学校で職業教育を受ける、あるいはこういった福祉対策の面で、いろいろな施設等で社会に対する適応能力を付与される、こういったことが行なわれますが、労働省といたしましても、こういった人たちの中で通常の雇用につき得るような、そういった程度の能力を持っている人につきましては、そういう関係施設との連絡を緊密にいたしまして、職業能力を付与するというような形で職業訓練を積極的に行ないたい、かように考えております。
  153. 古寺宏

    ○古寺委員 現在、精薄者に対する職業訓練法あるいは雇用促進法というものが全然ないわけですね。ですから現行の法律を改正するなり、あるいは単独でこういうような精薄者に対する法律を考えるべきだと思うのですが、そういうことを労働省は現在検討はまだしていないと思いますが、今後十二分に精薄者の社会復帰を促進するためにも、また精薄者を持たれている父兄の方々立場に立った、いわゆる措置というものを考えていただきたいと思いますが、その点について労働省の御決意を承りたいと思います。
  154. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 ただいま申し上げましたように、この精薄者の方々を労働力の対象として考えていくということが、こういう人たちの福祉対策の観点からいかがかというような点で、私は非常に問題があるのではないかという感じもいたします。しかしながら、それはそれといたしまして、雇用対策の対象としてとらえ得るような人たちにつきましては、私どもも積極的に職業訓練なり職業相談、指導、こういったことで就職を促進してまいりたい、かように考えておりまして、現在精薄の人を対象にいたしました雇用促進法とかそういった法律はございませんけれども、身体障害者雇用促進法がございます。こういったものの範囲の中でこういう人たちの雇用の促進をはかってまいっておるのが現状でございます。先ほど申し上げましたように、こういう人たちを対象にした訓練等につきましても現在いろいろ行なっておりますので、そういう実績をこれから十分勘案しながら、先生の御趣旨のような方向で検討していきたい、かように存じております。
  155. 古寺宏

    ○古寺委員 等の中に含む、こういう取り扱いではなしに、やはりもっとあたたかい立場で精薄者の今後の社会復帰というものを、労働省としても推進していただきたいと思います。  次に文部省にお尋ねしたいのでございますが、職業教育あるいは社会に対応する教育が十分でないために非常に離職率が高い、こういうふうにいわれているわけでございますが、これに対する文部省の対策はどういうふうになっているのでしょうか。
  156. 寒川英希

    ○寒川説明員 四十六年度から養護学校の教育課程の改定をいたしまして、現在実施に移しておるわけでございますが、この教育課程の改定の中におきまして、養護・訓練という新しい領域を設けました。この養護・訓練と申しますのは、障害の克服あるいは改善といったようなことでさまざまの訓練をいたします。機能訓練、言語訓練、職能訓練、職場適応訓練等をいたします。そういった教育内容の面におきまして、社会自立をはかっているわけでございます。この養護・訓練のための教員の養成あるいは設備の充実という問題もございますが、それにつきましては、本年度新しい予算といたしまして、昨年秋横須賀市の久里浜に開設いたしました国立特殊教育総合研究所におきまして、養護・訓練担当教員の再教育を実施することにいたしております。その予算措置をいたしております。それから設備につきましても養護・訓練設備ということで新しい予算を計上いたした次第でございます。
  157. 古寺宏

    ○古寺委員 中央にそういうような施設をつくりましても、やはり地方の現在実際に現場で働いていらっしゃる教員の中に、そういう適当な教育を受けた人が足りないために非常にこういうような問題が提起されていると思うわけでございますが、少なくとも各都道府県にこういうような先生方の教育あるいは精薄者の指導、いろいろな面で十分に活用できるようなセンターを考えているということを聞いているわけでございますが、これはどういう計画になっておるのでございましょうか。
  158. 寒川英希

    ○寒川説明員 いまお尋ねのございました都道府県立特殊教育センターの設置推進、奨励といったことで実は四十七年度から新たに予算措置をいたしております。本年度におきましては一カ所でございますが、来年度以降、県の設置計画に合わせまして予算措置を拡充してまいりたいというふうに思っておるところでございます。その都道府県立の特殊教育センターは、お話のございましたように、教職員の研修、再教育の場でもございますし、心身障害児の教育相談、診断、検査、判別、さらには早期発見、早期訓練等の県下における中心、センターとしての役割りを持つものでございまして、補助金は施設、設備合わせまして一カ所三千万円でございます。
  159. 古寺宏

    ○古寺委員 養護学校のない都道府県が二十三県もある。また実際に必要な特殊教育センターというものが今年度から初めて一カ所設置される、こういうような非常に情けないような状態でございますが、今後文部省はこの精薄児に対する教育に対してもっと真剣に取り組んでいただかなければならないと思うわけでございますが、政務次官からこの特殊教育、精薄児教育に対するいわゆる御決意というものを承って、私の質問を終わらしていただきたいと思います。
  160. 渡辺栄一

    ○渡辺(栄)政府委員 ただいまの古寺委員の御質問につきましては、課長から具体的に御説明を申し上げたとおりでございますが、従来精薄児に対しまする教育施設というものが必ずしも十分ではなかったということは、私どもも十分反省をいたしておりますが、特に中教審の答申に伴いまして第三次教育改革に着手をしようといたしておりますが、その中におきましても特に特殊学級あるいは養護学校の整備ということにつきましては、いま申し上げましたように、四十七年度を初年度といたしまして積極的に推進をしてまいりたいと思っておるところであります。その中におきましても、精神薄弱児に対します未設置県が二十三県もある、また現在三〇%ぐらいしか就学しておらないというような現状からまいりまして、いま設備といたしましては七年間に百五十校というようなことで、全員これが収容できるようなことを考え、あるいはまた補助の体制等につきましても特別の措置を講ずるようにいたしておりますが、今後さらにそういう設備のみならず、いま御説明申し上げましたような都道府県立特殊教育センターというようなものにつきましても積極的にこれを充実をいたしまして、設備のみでなく教育、指導あるいはその後におきます就職等の円滑な推進ができますように、リハビリテーション的な問題につきましてもひとつ十分意を用いて努力をしてまいりたいと考えておるわけであります。先生の御趣旨につきましては私どもも全く同じような気持ちを持っておりますので、今後さらにひとつ努力をいたしたい、かように考えております。
  161. 森山欽司

    森山委員長 次に、寺前巖君。
  162. 寺前巖

    ○寺前委員 薬務局長さんですね。  きょうの新聞に、第四十二回日本衛生学会で発表された名古屋大学の医学部衛生学教室の田中先生の、公害病に認定されたために、薬の使い過ぎがひんぱんになり、認定される前よりかえって健康が脅かされる結果になったという発表が出ております。この名古屋大学の先生意見だけではなくして、これを見ますと、三重大学の産業医学研究所の調査結果とも一致しているというふうに、一つの傾向の問題として指摘をしております。そして、この指摘がなされている理由として三つの点があげてあります。   〔委員長退席、山下(徳)委員長代理着席〕 まず、「認定患者の医療費を国や市が出すので患者個人に負担がかからない、」第二番目が「治療が健康保険制度で制約され、投薬や注射をしなければ医師が報酬を得られない、」三番目「医師が公害病の本質を見失って、一時しのぎの療法に走る、」こういう点をあげて、結論的に強調しているのは、「公害病認定制度が医師と患者に安易な妥協を促し、住民の医療をゆがめている事実は争えない、」こういう結論を導き出しているのです。さて、認定制度が裏目だというふうな結論になっているわけだけれども、これをそのまま受け取っていいのかどうか。厚生省は一体どういうふうにこの問題について見ておられるのか、聞きたいと思います。
  163. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 先生のいま御指摘のけさの朝日新聞の記事、私も拝見いたしました。認定制度が裏目だということにつきまして、私は公害の所管を担当してもおりませんし、それからまた医務局あるいは保険局の担当でもございません。薬務局を担当しておりますので、厚生省としての責任ある見解ということ、私の口から申し上げるわけにはまいりませんけれども、私もこの新聞を見まして、もしもこの衛生学会で発表された先生の御趣旨のようであれば、せっかくこの公害で苦しんでおられる方々にいろいろの制度を関係者が努力してつくって、一日も早く公害患者に明るい見通しをさせたいというのが全然逆になっているということははなはだ残念であるし、こういうことはやはり認定制度ができて、そうして治療によって公害による疾患が少しでも軽減もしくはなおっていくという方向にいかなければならない、かように痛感しておるわけでございます。
  164. 寺前巖

    ○寺前委員 認定制度が悪いのだというふうにはいかぬと私は思うのです。やはり悪い人は悪いので、それは治療をちゃんと保障していくのは当然のことであって、だから認定制度をやめいということにはならない。問題は、薬を大量に使う過剰投与に問題があるのでしょう。そこで、過剰投与の問題をなくするための行政指導というのは、一体厚生省としてどういうふうにやったらいいのかというところを研究する必要があるだろうと思う。厚生省としては、この過剰投与の問題について一体どういうふうな措置をしておられるのか、聞きたいと思います。
  165. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 一般的に健康保険制度が普及して、また手厚くなってきた段階で、外国におきます薬の使用量と、それからわが国におきます健康保険制度の薬の使用量とで、たとえば日本では健保では薬の費用が四〇%になっている。外国に比して非常に多いのではないかというようないろいろな批判も多いようであります。しかしながら薬そのものの使用はやはり医者が患者に対しまして責任をもって投与するという仕組みでございますので、もちろん保険では治療指針という制度が病気によっては設けられておりますけれども、そのほかの問題は一般的にすべて医者の責任によって治療する、こういうことになっております。ただ一般的に、先生が御指摘のように投薬によって収入を上げる、過剰投与するのではないかという批判に対しましては、私どもといたしましてはやはり、医者の技術料を上げていくという方向でこの問題は解決すべきだというふうに厚生省としても考えているわけでございます。
  166. 寺前巖

    ○寺前委員 医者が患者に対する責任を持つのは、それは当然のことであって、それを医者が、たとえばここで田中先生があげているような、五歳の子供に対して大量の、考えられない薬ののまし方をやっている、こういう問題はもう論外の問題だと思うのです。それにしても傾向として、薬をたくさん患者に渡すという傾向が出ている一つの問題点というのは、経営上の問題が関連しているということは十分いえる問題だろうと思うのですね。だから診療報酬を引き上げてくれという問題で、昨年大問題になったというのは当然のことであって、一面でそういうふうに医者の経営が成り立つという措置をしないことには、問題を常に含んでいく要素を持っているということは十分考えられることだけれども、同時に、それでは医者個人の責任で済ましておいて、行政の面で手を打っていくやり方はないのか、全然考えられないのか、この点についてはどういうことを考えておられるのか、聞きたいと思うのです。
  167. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 先生の御質問のポイントは私の所管する薬務行政以外のことが大部分でございますので、私からお答えするのは適当でないかと思いますけれども、他におりませんので私の知っている範囲でお答え申し上げますが、薬の使用について一定の規制をするとか、一定の基準を設けるということにつきましては、やはり医者の治療というものを制限するということで、私は適当ではないというふうに考えるわけでございます。ただやはりこの薬というものは、私ども薬務局のサイドから見ますと、必ず副作用を伴うものであるということでございます。したがいまして、いままでのいろいろの薬害によります事件を見ましても、やはり長期による、また多量による被害がいろいろ問題として起きております。あるものは製造中止になり、あるものは回収を命じて、現在市場から消し、もしくは休んでいるものもあるわけでございます。したがいまして、やはり薬の使用というものは患者に必要最小限度にあるべきであるというのが一つの原則ではなかろうか、かように考えます。
  168. 寺前巖

    ○寺前委員 私がこの問題をあえてきょうの新聞を見ながら指摘をするのは、実は当委員会においてこの間、例のスモンですね、キノホルムの大量投与が一つの問題だということをめぐって討論がなされております。私は、その中で少し気になることがあるのです。それは、日本薬局方によると、キノホルムの一日の投与の目安としての常用量というのは〇・六グラムであるということが薬局方に指示しているわけですね、歴史的に。ところが、たとえばチバ製品株式会社で製造し、武田薬品で販売しているところのエンテロ・ヴィオフォルムの薬の中に入っている効能やら書いてあるこの紙を見て検討してみると、その中に含まれているところのキノホルムの量が常用量よりもずっとたくさんの量が入っているわけですね。計算すると、一・五グラムぐらいになるんじゃないですか。あるいはほかに、エマホルムPという田辺製薬で出しているところの薬を見ても、その中に含んでいるキノホルムの量が一グラムぐらいになるんじゃないかと思うのですよ。そうすると薬局方で、このくらいの薬を使ったらよろしいという目安を一方で出しておきながら、具体的に一つずつの薬の許可を与えていく場合に、その倍あるいは三倍の量を認めるというような、そういうことを片一方でやっているということになってきたら、これを見たところのお医者さんは、そういう限界のものを何ぼ使ってもいいんだなあということになって、目安量の水準が上がっていくんじゃないか。かくのごとくにして、一方では経営問題があるし、一方では、厚生省の許可の範囲の問題としてキノホルムの含有量が二倍、三倍が認められていくということになってくると、全体として薬を大量に飲ましてもいいじゃないかということを、私は、口ではちゃんとしなさいと言っているけれども、実際上許可を与えていくという経過から見ていくと、これは薬の投与をふやしていくことを厚生省自身が客観的には認めていっているということになるんじゃないか。この問題についてちょっと意見を聞きたいと思います。
  169. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 キノホルムの局方におきます常用量のことは、先生のおっしゃったとおり〇・六が記載されております。また一方、いま具体的に私どものほうで昔許可をしましたものの中に、一・五のものがございます。これにつきましては、おそらく、許可をした日にちその他私どもはいまちょっとわかりませんけれども、外国の例を見ましても、たとえば英国の例をあげますと、英国の薬局方では一・五が最高になっております。もちろん日本の場合でも、すべてが一・五になっているわけではございませんけれども先生指摘のもののように一・五が最高になっております。したがいまして、一般的に常用量としては〇・六を局方としては記載しておりますけれども、外国等の例を見て、最高おそらく一・五までを許可したというふうに私ども考えております。
  170. 寺前巖

    ○寺前委員 私が指摘した問題は、一定の目安量というのを〇・六としておきながら、厚生省が許可をするその薬は、会社から持って来さして、そしてそれが一・五のキノホルムを許容していく、あるいは一・〇を許していく、要するに倍の使用、三倍の使用。この目安でもって大体いけると言っておきながら、実際は、薬の許可をする場合には高い許可を与えていくというふうになったら、医者全体が、目安量を高めるのはかまわないんじゃないかということを普遍的にしてしまうのではないかということです。   〔山下(徳)委員長代理退席、委員長着席〕 だから、こういうような目安量のきめ方と発表のしかたで行政指導をやっている限りにおいては、一面では医者の経営上の問題が関連しておって、それを保障するということになって、全体として薬の多量の投与ということを許してしまう、こういう結果になるんではないか。ですから、私は、いまお医者さんの中で薬をたくさん飲ますという傾向が全体として出てきている中で、このショックな、公害病認定患者の中で発生している問題を考えた場合に、私は、厚生省として、薬の使い方の問題について再検討をする行政指導が要るのではないか。私は、この問題を提起して質問を終わりたいと思いますので、局長に最後にその意見を聞きたいと思います。
  171. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 先生のただいま御指摘になりました問題点は、一つの問題を含んでおると思います。私は、それなりに一つの御指摘があったと思います。やはりこの局方等で一応標準はきめておりますけれども、薬の使用というものは、医者の責任をもって患者の病状に応じて増減するわけでございますが、やはり厚生省等で外国の例を調べて、いろいろ許可をする場合にも、相当慎重にしなければいけないということは当然だろうと思います。現在、薬の再評価の問題を約四万のものについて行なっておりますが、これも当然、安全性との問題で検討されるべきものだろうということで、特に副作用との関係で効能を認めるかあるいは効果を認めるかという作業を現在やっているわけでございます。そのほか、いままで安全と思われておりました局方でいろいろ問題が起きておりますので、やはり局方につきましても、外国の例、あるいは副作用モニター病院の制度をとっておりますが、これを拡大するとか、効能あるいは安全性、特に安全性の問題につきましては、十二分過ぎるくらいに厳重な注意を今後ともやっていく必要がある、かような基本的態度をとりたい、かように思います。
  172. 寺前巖

    ○寺前委員 時間がありませんので、またの機会にこの問題をさらにやりたいと思いますけれども、人の命にかかわる問題が、薬によって命を奪われるというようなことをしてはたいへんだと思うのです。しかもまた、薬というのは常に、一定の毒性をもっていればこそ効能を発揮するという問題を持っているだけに、十分これについては行政上の注意をする必要があるだろうという意見を付して、この問題を一応終わりたいと思います。  療養所のほう、お見えになっておりますか。——簡単にこの問題について意見を聞きたいと思うのです。  私、最近、各地に結核の療養所がございますが、私の地方にも結核の療養所は幾つかあります。その中で宇多野という療養所があります。そこで、結核の場合に、薬の面からなおしていくという面もそれはあるでしょうけれども、何といっても人間のからだをなおすのは、自力をどう強めるかということが基本的な問題だと思うのです。そういう意味で、患者さんの中で食事の問題というのが非常に重視されるということは当然のことだと思うのです。ところで、私は、この食事の問題で、現場でまかないをやっている人たちの苦労を聞かしていただいた。  その第一番目は、つくったものの三〇%が残飯になっているという問題提起なんです。これは非常にもったいない問題だと思うのです。しかし、これはもったいないだけの問題なんだろうか。なぜ残飯が出るんだろうか。もちろんこれを含めて栄養計算をしているのに、三〇%も残飯になってしまったら、栄養は明らかになくなるんだから、別な形で補食をしなければならないという状況患者さんの中で発生するのは当然だ。だから、そういう三〇%も残飯が出るということになれば、出さないようにするということによって、補食をしなくてもいいようにすることができる問題だと思う。だから、残飯問題は人ごとでないというふうに思うのです。だから、この残飯問題は一体原因はどこにあるというふうにお考えになっておるのか、聞きたいと思うのです。
  173. 野津聖

    ○野津説明員 御指摘ございましたように、調理をいたしまして患者の口に入るということが、病院給食の中でも一番大事なことであるわけでございます。私どももできるだけ残食がないようにというふうなことをいろいろ考慮いたしておるわけでございます。いろいろな原因があると思いますけれども、やはり一つの問題としましては、献立の問題あるいは食事時間の問題等々、いろいろな複雑な理由が重なってきているのではないかというふうに思っているわけであります。
  174. 寺前巖

    ○寺前委員 いろいろあるということでは解決にならないと思うのですね。一つ一つ明確にしなければならないと思います。何が原因か、私は直接現場の人たちの話を聞いてみました。悩んでおられる一つの問題は、健保の別表で、特別食のあれがありますね。その中で高血圧、心臓病の場合は塩五グラム以下を云々というのがある。ところが実際問題としては、そうじゃない処置をしなければならぬ人がある、流動食の問題がある、アレルギー食の問題がある、喀血食や貧血の人の問題がある、こういう場合の特別食が健保の別表の中にないために、この療養所について言うならば、八%だけ特別食のためのこういう別表の予算がついているけれども、実際上は一五%なければこれらの特別食ができないのだ、そこでこれらの特別食ができない予算分をどうするかといったら、全体の一般食の予算から回さなければならぬから、全体として一般食の水準を下げなければならない、こういう行政上の矛盾が一つあるという問題指摘一つです。  それから第二番目の指摘は、材料費の問題です。四百十円の給食費で、二百三十五円というのが材料費ということでずっと指導をしておられたようですね。今度五百五十円に上がる、その場合の材料費としては二百四十九円ぐらいを見当にしておられるようですね。この材料費があまりにも安過ぎる。少なくとも三百五十円ぐらいにしてくれぬだろうか、そうでないと結局むだなことになるのだ、カロリーを上げるために油を入れて、結局そんなもの、年寄りの人が多い中において、食わぬということになって、残飯をつくってしまうという結果にもなるのだ。だから、材料費があまりにも低いというところに原因がある。しかも、今度の医療費のアップの中で、給食費全体としては四百十円が五百五十円となるわけですが、百四十円も上がっているのに、材料費はこの中で十四円しかめんどう見てくれぬということになっているんじゃないか。一体患者さんの食事の問題というのはどういうふうに考えてくれるのだ、少なくともこれだけ上げてくれたら、百円くらい回してくれてもいいのじゃないか、これが実際の患者さんと職員との声なのです。これを処置しなければだめだろうという問題が一つあるのです。  もう一つ出されている問題点は、五百人の食事をまかなうためには、いろいろ特別食をつくりますから、三時間の差が起こる、そうすると冷えてしまうという現象が起こってくる、お年寄りなんかには冷えてしまったという状況では気の毒だ、だからほんとう言えば、もう一度、電子レンジああいうのでぬくめて出してあげるような装置を病棟に置いておくとか、もう少しめんどう見る人の数を、ここでは十五人ですが、あと五人ほどおったら、その時間差三時間というのはもっと縮めることができる、そういう点を全体として考えないと、お年寄りがもう半分近くなってきている現状においてはこの残飯問題もう一つ言うならば、それは健康を回復さして、りっぱにさしていくという保証にはならぬではないかというふうなことを言っているのです。これについてどういうふうに思われるのか、聞かしてほしいと思います。
  175. 野津聖

    ○野津説明員 御指摘ございましたように、現在のいわゆる特別食というのは、健康保険法で定められておりますものにつきまして加算の診療報酬の請求ができるという状態になっておるわけでございますが、国立療養所におきましては、いわゆる治療食あるいは特別食の範囲以外に、お年寄りの方の食事だとか、あるいは喀血をされた方の食事というようなものを給食しているわけでありまして、この分につきましても、現在の健康保険法で請求ができますものにつきましては特別食の1、それからできない、いわゆる一般食でないものにつきましては特別食の2という形で、各施設の実態をとらえてございます。いま御指摘ございましたように、一般食のほうからそちらのほうに材料費が回っていくというふうなことができるだけないような予算措置なり、あるいは指導をしていっておるところでございます。  それから材料費の問題でございますが、これは昭和四十六年度におきましては二百三十五円でございました。昭和四十五年度におきましては二百二十円で来たわけでございます。その材料費のアップにつきましては、物価の上昇というものを主体として考えておるわけでございまして、したがいまして、健康保険の診療報酬の変更にかかわらず、材料費につきましては物価の上昇と合わせていくというようなことと同時に、あるいはやはり内容の改善というようなものを入れまして給食材料費というものを設定していくわけでございます。同じような方式をとりまして、四十七年度におきましては二百四十九円というような単価を設定しているところでございます。  それからまた調理時間の問題でございますけれども、できるだけ温食ができるという方法を考慮いたしております。一部におきましては電子レンジ等も導入いたしております。実際それがどういうふうな形で活用できるかというふうな問題につきましても、研究を進めておるというような状態でございます。いずれにいたしましても、特に慢性疾患の患者さんをお預かりしております国立療養所の場合の給食というふうな問題は、いわゆる急性疾患で早く退院される方と違いまして、そこにやはり生活の一部というものが入っているわけでございます。この辺の面も十分念頭に置きながら、できるだけ残食のないような給食ができるようにということで努力もいたしておるわけであります。
  176. 寺前巖

    ○寺前委員 いま事実の話をされただけで、私の指摘した問題点については答弁しておられないことになるのですよ。たとえば私が一つ提起した問題は、別表にこういうのはやはり考える必要があるという指摘をしておるわけでしょう。私は当然だろうと思うのです。ですから、別表にこういうものをやはり入れておくべきだと思ったら入れるという態度を、あるいは検討するのだったら検討するという態度をはっきりしないといけないと思うのですね。これはどこから考えたって、一般食の費用がそのほうに回るということがぐあいが悪いことは、だれが聞いたってわかる話です。そうさせないように指導しようとしたら、その指導中身は、実際上こういう矛盾が起こっているのだから、この矛盾を解決するという態度を明確にしなければいけないだろうと思う。  それから二番目の問題について言うと、給食費が全体として二月一日から百四十円上がっているのに、材料費がわずか十四円しか上がっていない、一割しか上がっていない。だれが考えたって、もともといい給食の材料費だというふうに思っていないから、たいへんだということを全部知っておるわけだから、それにもかかわらず人件費その他の問題について、上げなければならぬことは事実だけれども、あまりにも人を食った話じゃないか、わしらの食事はこれでいいのかと批判が起こるのはあたりまえだと思うのです。医療費の中における給食費をばかにしているじゃないか。だからこれについても私は当然考えるべきだろうと思うのです。それからほんとうにあたたかいものを食べさせてあげるという立場からいったならば、三時間も上下の差があるような、こういうような給食のやり方を改善する措置を研究する、そういうようなことは率直に検討すべきだと思いますよ。ほんとうのところ、そんなのは思想信条の問題じゃない。あなたがおっしゃったように、療養所で日常生活をしておられる人たちが、ほんとうに自分の力をどう強めるかというところに基本を置いて療養させなければいけないと私は思うのだ。そういうふうに考えた場合には、これは検討してもらわなければいけない問題だと思うのです。  それで、私は最後にもう一度そのことを聞くと同時に、ああいう療養所の中において、娯楽室や集会所に冷暖房が入ってないのだ。そこでみんなが金を出し合って扇風機を買ったり、あるいはストーブを買ってきて、全部金を出し合って部屋をあたためる。療養所でそのくらいのことはやったらどうだ。電気代くらい全部から取らなくたっていいじゃないか。そのくらいのことは考えてしかるべきじゃないか。今日の一般社会の生活からいったら、病棟に一つや二つの冷蔵庫くらい置いて、皆さんが個人で買われたものを入れるくらいのサービスはあたりまえだと思うのです。そのくらいのことを考慮されるのかどうか、これを最後に質問したいと思います。課長政務次官と、両方からお答えいただきたいと思います。
  177. 野津聖

    ○野津説明員 初めの問題でございますが、別表に入っている入ってないという問題は、実は私どもの直接の所管でございません。ただ、私どもは実際に給食する立場でございますので、別表に入っておろうとおるまいと、いわゆる特別食の2というグループの中でこれを把握しまして、できるだけ患者さんに適した給食をしていきたいと考えておるところでございます。  それから材料費の問題でございますけれども、これも御指摘ございましたように、はたして幾らが適正であるかどうかの問題があるかとも思いますが、健康保険の診療報酬の変化にかかわらず、私どもは給食材料費というものを上げているという前提があるわけでございます。また、今年度の物価の動きというものも当然念頭に入れておかなければいけない問題かと思いますけれども、材料費につきましては従来どおりの方式で、物価の上昇という形で処理をしておるわけでございます。  それから温食給与等の問題につきましても、実はあとで御質問のございました療養環境の整備というものとあわせまして、実は食堂におきますいろいろな設備を四十七年度の予算でお願いいたしまして、食堂の、いわゆる療養環境あるいは給食環境というものの整備を、四十七年度において実施していくというふうなことも現在検討いたしているわけでございます。  それから、御承知のように、あるいは御指摘いただきましたように、やはり患者は長いこと療養しているわけでございまして、生活環境というものも当然念頭に置いておかなければいけないわけです。したがいまして建物を逐次建てかえつつ、またあるいは暖房等につきましても整備していくというふうな方法で現在進めている段階でもございますし、また先ほど申し上げましたように、食堂の備品等につきましても整備して、そしてできるだけ快適な療養環境をもって、早く社会復帰していただくというふうにしてまいりたいと思います。できるだけ患者さんが早くなおって、早く社会復帰していただくということを念頭に置きまして、国立療養所の運営につきましては患者中心にしていこうというふうなことで進めつつございますし、またその決意で運営をやっておるところでございます。
  178. 登坂重次郎

    登坂政府委員 ただいま事務当局からるる御説明を申し上げましたとおり、厚生省といたしましては、療養所の皆さんにできるだけあたたかい措置をもって当たりたいという誠意と熱意は持っておるわけでございますが、財政当局との折衝の過程もこれあり、しかし物価も上昇するし、また福祉増進というたてまえからいたしまして、今後改善するように努力することをお約束いたす次第でございます。
  179. 森山欽司

    森山委員長 次回は来たる十二日水曜日、午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時三十六分散会