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1972-03-23 第68回国会 衆議院 社会労働委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月二十三日(木曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 森山 欽司君    理事 伊東 正義君 理事 小沢 辰男君    理事 澁谷 直藏君 理事 谷垣 專一君    理事 橋本龍太郎君 理事 増岡 博之君    理事 向山 一人君 理事 田邊  誠君    理事 大橋 敏雄君 理事 田畑 金光君       秋田 大助君    井出一太郎君       大橋 武夫君    藏内 修治君       小金 義照君    竹内 黎一君       箕輪  登君    山下 徳夫君       渡部 恒三君    大原  亨君       川俣健二郎君    後藤 俊男君       島本 虎三君    中村 重光君       山本 政弘君    古川 雅司君       渡部 通子君    寺前  巖君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 斎藤  昇君  出席政府委員         文部省大学学術         局長      木田  宏君         厚生省公衆衛生         局長      滝沢  正君         厚生省薬務局長 武藤き一郎君         厚生省援護局長 中村 一成君  委員外出席者         放射線医学総合         研究所遺伝研究         部長      中井  斌君         大蔵省主計局主         計官      渡部 周治君         厚生省保険局国         民健康保険課長 吉村  仁君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ————————————— 委員の異動 三月二十二日  辞任         補欠選任   大原  亨君     阪上安太郎君   古寺  宏君     沖本 泰幸君 同日  辞任         補欠選任   阪上安太郎君     大原  亨君   沖本 泰幸君     古寺  宏君 同月二十三日  辞任         補欠選任   島本 虎三君     辻原 弘市君   八木  昇君     中村 重光君   古寺  宏君     林  孝矩君 同日  辞任         補欠選任   辻原 弘市君     島本 虎三君   中村 重光君     八木  昇君   林  孝矩君     古寺  宏君 同日  理事伊東正義君及び澁谷直藏君同日理事辞任に  つき、その補欠として向山一人君及び橋本龍太  郎君が理事に当選した。     ————————————— 三月二十一日  身体障害者福祉法の一部を改正する法律案(内  閣提出第九三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  寄生虫病予防法の一部を改正する法律案起草の  件  原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出第一五号)  原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律  及び原子爆弾被爆者医療等に関する法律の一  部を改正する法律案中村重光君外八名提出、  衆法第四号)  麻薬取締法の一部を改正する法律案内閣提出  第一六号)      ————◇—————
  2. 森山欽司

    森山委員長 これより会議を開きます。  寄生虫病予防法の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。  本件について、谷垣專一君より発言を求められておりますので、これを許します。谷垣專一君
  3. 谷垣專一

    谷垣委員 本件につきましては、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党、日本共産党、五党委員の協議に基づく試案がございます。各委員のお手元に配付してありますが、五党を代表して、私からその趣旨を御説明申し上げます。  御承知のように、日本住血吸虫病は、山梨、佐賀、福岡、広島、岡山県において広く蔓延し、農耕その他地域住民日常生活に重大な障害を与えておりますが、この疾病の根絶をはかりますためには、病原虫中間宿主でありますミコイリガイを絶滅する必要があります。  このため、昭和三十二年度より十カ年の基本計画を立て、ミヤイリガイ生息地帯における溝渠コンクリート化が行なわれ、また、昭和四十年には法改正を行ない、新たに昭和四十年度以降七カ年の基本計画を立て溝渠コンクリート化が行なわれているのであります。  このような施策等の結果、新しい患者の発生が著しく減少する等相当の効果をおさめてはおりますが、日本住血吸虫病予防の徹底をはかるため、本案は、さらに昭和四十七年度以降二カ年の基本計画を定めることといたしますとともに、政府は、この基本計画の終わる昭和四十八年度までにミヤイリガイ生息状況等調査し、その結果に基づいて、昭和四十九年度以降の溝渠新設基本計画の策定に関し、必要な法的措置を講ずるものとすることであります。  この際、私は五党を代表いたしまして、動議提出したいと思います。  お手元に配付してあります試案成案とし、これを本委員会提出法律案と決定されんことを望みます。  委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  4. 森山欽司

    森山委員長 本動議について御発言はありませんか。——なければ、本動議について採決いたします。  谷垣專一君外四名提出動議のごとく、お手元に配付した草案を成案とし、これを委員会提出法律案とするに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立
  5. 森山欽司

    森山委員長 起立総員。よって、さよう決しました。  なお、本法律案提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 森山欽司

    森山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  7. 森山欽司

    森山委員長 次に、内閣提出原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案及び中村重光君他八名提出原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律及び原子爆弾被爆者医療等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  質疑を行ないます。申し出がありますので、順次これを許します。田畑金光君。
  8. 田畑金光

    田畑委員 初めに大臣お尋ねをいたしますが、原爆被爆者特別措置に関する法律の一部改正法、毎年改正案が提案されておりますが、同時にまた野党三党からも、御承知のように原爆被爆者に関する特別措置法並びに原爆被爆者医療等に関する法律の一部改正法が提案されておりますが、この野党の提案しておる法律案について、大臣はどのような見解をお持ちであるか。ことに野党の提案している法律原則として、原爆被爆者に対する国の責任をもっと明確にし、この人方のこうむっておる心身、物心両面援護措置を充実していこう、こういう内容法律でございますが、これについてどのようにお考えになっておるか、またこの中で、当然今後の政府施策の中に反映すべき問題点が幾つか入っておると思いますが、この点等について、どのようにお考えになっておられるか、初めにお聞きしたいと思います。
  9. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいまの御趣旨、すなわち、原爆被爆者援護は、国家補償としてやるというたてまえに変えるということはどうかという御意見だと思いますが、この点はかねがね政府として申しておりますように、なるほど原爆被爆者方々はまことにお気の毒でございまして、戦争の被害者であるには間違いないのでありますが、しかし国家補償ということになりますと、他の一般の戦災の被害者という関係もございまして、そういう意味国家補償ということではなくて、一般援護という意味で、社会保障的な福祉的な意味援護を行なうという方針で今日まで貫いてまいっておるのでございます。  しかしながら、原爆によって被爆をせられた方々の苦痛、被害というものは非常に大きうございますので、そういう意味におきまして、今後も相当思い切ってその福祉的な援護を強めてまいらなければならない、かように考えます。しかし、ここで性格を変えるということは、先ほど申し上げましたように、いままでの政府考えといたしましては、いかがなものであろうか、直ちに御賛成申し上げるわけにはまいらない、まことに遺憾でございますけれども、さような見解でございます。
  10. 田畑金光

    田畑委員 援護措置を強化していこう、その方向については当然のことでございますが、今回の法律改正を見ましても、骨子としては、年齢引き下げ、さらに健康管理手当引き上げ措置、言うならばこの二つに限られたわけで、原爆被爆者三十三万、特に、その中における特別被爆者等々についての措置として、政府のやっておる手直しは一体これでいいのかどうか。われわれは不備を、また不完全な面を強く指摘したいと思うのでございます。  たとえば、いま申し上げたように、今度の特別措置法改正を見ましても、健康管理手当支給対象老齢者年齢引き下げ健康管理手当を三千円から四千円に引き上げた、これだけです。また、四十七年度には政令の改正で、医療手当葬祭料引き上げられておるわけでありますが、この特別手当については、何らの配慮も引き上げ措置も講じられていないわけです。特別手当、これは一万円でございましたか。どういうわけでこれだけが据え置かれたのか。引き上げなくてもこれで均衡を失しないという判断は、何を基準にしてなされたのか。この点、ひとつ承りたいと思うのです。
  11. 滝沢正

    滝沢政府委員 特別手当につきましては、四十三年度の創設以来、四十四年、四十五年と二回にわたりまして、所得制限緩和を行なってまいったところでございまして、本年度、四十七年度予算要求にあたりましても、被爆者の中で最も強い要望のございます所得制限緩和ということで対処したわけでございます。  先生も御存じのように、特別手当をもらえるところの認定被爆者は、この特別手当のほかに、医療手当支給されておりますが、この医療手当につきましては、今回、五千円を六千円に、三千円を四千円にそれぞれ引き上げたわけでございまして、一応は認定患者の実情に応じて改善をしたという考え方でございます。しかしながら、他の手当引き上げられたのに、据え置かれたという感じは確かに残ったと思いますけれども、この所得制限緩和等で、約百九十名近い方が該当するものと推定いたしておりまして、金額にいたしまして約二千二百万円程度がこのほうに回るようになるものと考えております。
  12. 田畑金光

    田畑委員 確かに、健康管理手当等々の引き上げ措置は講じられております。また所得制限措置についてもある程度緩和措置が講じられておるが、一万円あるいは五千円程度金額特別手当を据え置いたということ、しかも、これが認定患者であるということ、特別被爆者の中の認定被爆者であるということを考えてみるなら、そして、昨年のこの委員会における附帯決議等々の趣旨を尊重し、これに基づいて原爆被爆者援護措置を発展させようというのであるならば、当然この特別手当等についても、同時並行的に引き上げ措置が講じられてこそ、一歩前進した施策であると評し得ようと思うのです。ことしはすべて、恩給年度その他についても引き上げ措置が講じられておる等々から見ましても、私は、この点は片手落ちだと思うのだが、この点について、今後これを配慮する、あるいは発展させる、そういう用意があるのかどうか、もう一度お答えをいただきたいと思うのです。
  13. 滝沢正

    滝沢政府委員 将来にわたりまして、この引き上げにつきましては十分検討いたしたいと考えております。
  14. 田畑金光

    田畑委員 介護手当支給状況というものは、いまどうなっておるのか、これを御説明願いたいと思うのです。
  15. 滝沢正

    滝沢政府委員 四十三年に制度ができましてからの実績を申し上げますと、介護手当につきましては、四十三年度三百三十三件、四十四年度千百十八件、四十五年度千三百六十七件となっております。
  16. 田畑金光

    田畑委員 そこで、家族介護に当たった場合、これは介護手当支給対象になっていないわけですが、被爆者特別措置法の第九条、介護手当支給、そうして、第九条第一項のただし書きの規定に基づいて、介護手当支給しない場合が出てくるわけでありますが、この介護手当支給しないでもよろしいという場合は、どういう場合を予定しておるわけですか。
  17. 滝沢正

    滝沢政府委員 介護手当は、家族等——先に申しますと、介護手当は、支給された実態に応じまして支給すること、そして限度を、二十日以上一万円というような形で設けております。そういうようなときに、一般的には、家族介護に当たった場合、金銭支給という実態がなければ、これはやはり認めがたい。しかし実際には、広い意味の、まあ親戚等を含めました家族等支給するという形を書類上も市当局がお認めになるような実態がございますれば、それに対して支給された場合は、われわれとしては、これに対して適当と認めるというような考え方をとっております。
  18. 田畑金光

    田畑委員 家族の場合でも親戚の場合でも、実際に介護という事実があって、その上に立って金銭授受があった、介護手当の支払いがなされた、こういう書類上の手続があれば、介護手当支給というものが現実になされておる、またそのような場合は支給してもよろしい、こういうことに理解してよろしいわけですか。
  19. 滝沢正

    滝沢政府委員 さようでございます。
  20. 田畑金光

    田畑委員 そうしますと、この第九条のただし書きの場合は、家族であろうと、あるいは他人であろうと、事実上、介護をしたが、金銭授受関係がない場合は介護手当支給しない、こういう解釈でよろしいわけですか。
  21. 滝沢正

    滝沢政府委員 金銭授受がないという場合については、支給できないということで、先生のおっしゃるとおりであります。
  22. 田畑金光

    田畑委員 長崎それから広島、この二つの市あるいは二つの県において、独自に被爆者に対する援護措置が講じられておることを承知しておりますが、その内容について説明願うと同時に、これは特に私は大臣お尋ねをするわけでありますが、広島市、長崎市が、市独自で被爆者に対するいろいろな援護措置を講じておるわけですね。国のやっていないようなところまできめこまかくやっておるわけです。同様に、県も同じようなことをやっておると聞いておるわけでありますが、私は、やはりこのようなことはまず国がやって、そうして遺憾なきを期するというのが本来のあり方であろう、こう思うのではございまするが、この点もあわせてひとつ大臣所見も承っておきたいと思うのです。
  23. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 おっしゃいますように、広島県、長崎県は、国の援護のほかに特別の対策をやってもらっている。これは非常にありがたいことでございますが、おっしゃいますように長崎県、広島県だけが負うべきものでもない、かように思います。そういった財源を国のほうでどういうように見ておりますか、いわゆる公共団体地方費として、交付税でどういうように見ておりますか、私詳細に存じておりませんが、おそらく交付税算定基準の中に入れておる、かように思います。しかしながら本来は、そういうようなことが国のほうでもできるものであるなら、あるいは国でやる、あるいは財政的措置を講ずるというようなことも必要であろうか、かように考えます。  原爆被爆者調査会におきまして、今後福祉部会を設けて、そういうものの取り扱いもひとつ一緒に検討してもらい、その結果、国の施策としてやるべきことはやりたい。かように考えているわけでございます。
  24. 田畑金光

    田畑委員 局長、具体的なことを……。
  25. 滝沢正

    滝沢政府委員 われわれの手元にございます県、市の単独で実施しております事業のおもなものを申し上げますと、広島県の場合、就職支度金支給雇用奨励金支給等をいたしております。それから広島市の場合、認定被爆者に対する弔慰金被爆者奉仕員派遣被爆生活困窮者自立更生資金というような形のものが考えられております。  それから長崎県、市あわせまして、在宅認定患者見舞い金被爆者温泉保養所交通費、被虞者就職支度金、このようなものがおもなものでございますが、今回福祉部会医療審議会等の中に設けまして、これらの法外援護と申しますか、県単事業を実施しておられる実態を、委員の中に民生部長の御参加を考慮いたしまして、具体的に検討いたしたい、こういう考え方でおります。
  26. 田畑金光

    田畑委員 これはいつごろから独自の援護措置を講じておるわけですか。
  27. 滝沢正

    滝沢政府委員 われわれのいま持っております資料は、四十四年度からの資料でございますが、個々の事業がいつごろからという詳細の資料は手持ちにございませんが、全体として、四十四年度からの事業ごと予算金額等は、資料としてはございます。
  28. 田畑金光

    田畑委員 この種援護事業というのは、本来国がやるべきことではないか、私はこういう感じを強くするわけです。ことにいま局長のお話を聞いておると、四十四年以後の資料しかない、こういうわけでございますが、このためにある厚生省が、当該県や市において独自の施策をやっておることについて正確な状況把握もおくれてしかできてないというようなことは、これはまことに遺憾だと思うのですね。  いまお話し就職支度金あるいは雇用奨励金問題等を見ましても、あるいはまた身体上、精神上の障害を持って日常生活に支障のある被爆者等に対しては家庭奉仕員を独自に派遣しておる、あるいは自立更生資金貸し付け制度を設けておる等々ということは、やはり国がこのようなきめのこまかな援護措置を講ずることが当然のことではないのか。先ほど大臣の御答弁を聞いておりますと、県や市の独自にやっていることについて、一体国がどのような財源措置を講じているか、まだ大臣把握なされていない、こういうことですね。これはまことに遺憾だ、こう思うのです。ようやく医療審議会の中に福祉部会を設けて、このようなことについて当該県などの民生部長等にも御参加願って相談をしていこうということでは、いかにもあとからついていくという行政のやり方で、まことに手おくれだ、こう感ずるわけです。  でありますから、私は冒頭申し上げたように、野党三党が、この原爆被爆者等については、もっと国家責任ということを強く前提にして、きめこまかな、そしてまた原爆被爆者が求めておる、あるいは社会経済上の変化に対応しながら国が手厚い施策を講じていく、これは大事なことだ、こう思うのでございますが、この点、大臣所見をいま一度ひとつ承りたいと思うのです。
  29. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、原爆被爆をされた方々に対しての福祉的な施策を今後どういうように進めていくかということが一つの重要な問題である、かように思います。したがいまして、広島長崎県、市等でやっておられまする状況十分把握をし、そして国としてやるのには、どういうやり方がよろしいかということを検討の上、しかるべき方途を講じたい、かように思って今度福祉部会も設けたわけでございますので、その点は、ひとつ御了承をお願いいたしたいと存じます。
  30. 田畑金光

    田畑委員 沖繩がやがて正規の返還をなされるわけでありますが、沖繩に在住する被爆者に対しては、おくれて原爆医療法に基づく医療の給付がなされておると聞いておりまするが、何と申しましても、沖繩にとって大事なことは、専門医療機関がないということ、あるいは専門医師に欠けておるということ、こういう問題がすぐ出てくるわけでございます。このような問題について、どのような対策を講じて、沖繩原爆被害者等に対して遺憾なきを期されようとするのか、この点をあわせ伺っておきたい、こう思うのです。
  31. 滝沢正

    滝沢政府委員 沖繩原爆患者取り扱いにつきましては、復帰後は当然現行二法の適用をもって対処するわけでございますが、いままでの段階では、米民政府琉球政府日本政府が三者覚え書きによりまして、実際的には本土原爆対策二つ法律が適用されております。  先生御指摘の医療面等につきましては、確かに沖繩におきましては専門医療機関に恵まれないという実態がございますので、過去におきましても、治療の必要な患者につきましては、本土に受け入れまして治療を実施した事例がございます。最近二、三年はそのようなケースがございませんので、将来そのようなケースがある場合、それが実施できるような予算措置は講じてございます。そのほか年二回、いわゆる健康診断のために専門医派遣し、なおかつその際、専門医立場から現地の医師といろいろ打ち合わせをしてくるというような点も、引き続き復帰後も実施いたしたい、こういうふうに考えております。
  32. 田畑金光

    田畑委員 沖繩在住被爆者については、いまお話しのように専門医派遣等々なされておるわけでありまするが、専門医師がいない、あるいは医療機関がない、そうなってまいりますと、当然、長崎であるとか被爆者当該医療機関に迎え入れて、医療に万全を期すること等が必要になってくるわけであります。その場合、旅費の問題はどうなるのか、そういうようなことなども含めて、沖繩在住被爆者についての予算上の措置その他講じられているのかどうか、この点明らかにしていただきたいと思うのです。  私は、沖繩返還に伴うて、いま申し上げたように、沖繩在住原爆被爆者についても本土と何一つ変わりのないような措置を当然講ずるべきであるし、講じられるものと確信をしておりまするが、この点、厚生大臣にも見解を承って、私の質問を終わります。
  33. 滝沢正

    滝沢政府委員 旅費その他につきましても、本人に負担がかからないように予算措置をしてございますので、そのようなケースがございました場合には積極的に受け入れてまいりたい、かように考えております。
  34. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 沖繩復帰をいたしましたならば、いままでより以上に内地と同様の扱いが簡便にできるわけでございますので、そういう意味におきまして、ただいま局長が答えましたように、遺憾なきを期してまいりたい、かように思います。
  35. 田畑金光

    田畑委員 質問を終わります。
  36. 森山欽司

    森山委員長 次に、大原亨君。
  37. 大原亨

    大原委員 逐次質問を申し上げたいと思いますが、第一番は、広島長崎に投下されました原爆による放射能影響調査原爆症に対する治療法研究、さらに被爆者に対する治療、こういう機関は今日厚生省、科学技術庁あるいは文部省関係大学あるいは公的医療機関、そういうものが多数あるわけでありますが、これらのチームワークが十分にとれていない。それぞれ独自の角度から問題を取り上げている。戦後二十八年間、被爆者立場や市民の立場で納得できるようなチームワークを、より強化するような方向における問題のとらえ方が今日必要であると思います。  そこで、私はこの問題に入るにあたって、いま広島長崎ABCC、これはアメリカ原子力委員会からの契約に基づいて学士院専門家集団派遣いたして、占領以来ずっとトルーマン命令でやっておるわけでありますが、このABCCの問題を洗い直してみる必要があるのではないか。  私は、先般の科学技術特別委員会において、関係者参加を求めまして議論をいたしました。専門家意見も、このABCC調査については、放射能影響調査として価値を認めておる。しかしながらこれで十分であるというのではないし、またよって立つ立場、特に日本原子力基本法の公開、民主、平和、自主の四原則、そういう立場に立って被爆者国民が納得できるものであるか、こういう問題についてはたくさんの疑義があるわけであります。したがって、アメリカ日本にそういう機関を設けて、日本厚生省予防研究所がこれと協力をするかっこうでやられておる調査については、いままでの日米のそういう国家間の関係——口上書が出てきておりますが、その背後にはまた問題があります。あるいは先般の沖繩国会においても、日本におけるアメリカ核部隊との関係議論がありましたが、そういう疑惑が残っておるわけでありまして、そういう問題について洗い直して、この際、真に国民が納得できるような調査機関にすべきである、こういうふうに考えるわけであります。  昨日もこの問題は分科会で私も討議いたしましたが、きょうも外務省が出席をいたしておると思いますが、外務省の答弁によりますと、このABCCの改革については、ドル防衛その他も関係しているかと思うけれども、財政上の見地を含めて、アメリカはことしの一月に非公式にたたき台を提案している、こういうことを答弁いたしております。日本側は外務省が窓口でありますが、実質は厚生省であります。厚生大臣なんであります。厚生大臣はこれらの問題にあたって、これを受けてABCCのあり方を洗い直す、こういう問題についてどのような基本的な考え方を持っておられるか、厚生大臣のお考えをお答えいただきたい。具体的な問題の答弁であるならば、政府委員でもよろしい。
  38. 滝沢正

    滝沢政府委員 いまの問題につきましては、アメリカ側が昨年の秋からこのような協議をしたいという申し入れがあることをお聞きしておりましたが、本年になりまして、春以降できるだけ早い機会にいろいろ相談したい、こういうようなことを言ってまいっております。その前からも柳沢所長——これはABCCに予研の支所を置いております関係で、柳沢所長が昨年二、三回他の用務で渡米した際にも関係者にお会いし、いろいろな意見交換がなされておるわけでございます。先生おっしゃるように、厚生省は予研という仕組みの関係の中で共同のことをいたしておりますが、今回アメリカ側が考えておる、あるいは外務省に非公式ではありますが、いろいろの申し入れをしてきておると聞いておりますけれども、これらの関係を考慮いたしますと、基本的には外交上の問題としてまず基本があり、それに対して国内の体制なり、その問題の処理にどう当たるかということでございますので、当面予研というつながりにおいて、厚生省は科学技術庁、文部省、それから外務省等の関係者のお集まりをお願いいたしまして、いろいろ今後の対処のしかたについて検討を重ねておる次第でございます。
  39. 大原亨

    大原委員 トルーマン大統領の大統領命令でABCCが設立されました経過は省きますが、その当時、日本政府機関においては、医者を含めて専門家研究機関は予研の支所があったわけですから、予研の支所がこれに対応する協力機関として協力いたしました。しかしながら、今日まで二十数年間のことを考えてみますと、全く協力は有名無実である。つまりつけ足しである。これはやむを得ないのであります。ということは、どういうことかというと、予研は結核やその他の伝染病を研究する機関でありまして、放射能の影響を研究する機関ではないのであります。ですからABCCのデータを持ち帰りまして、予研で検証するというふうなことをしようと思いましても、そういう体制がない。一つも部門がないわけであります。ですから、これは従属的に協力しているだけだということになりまして、市民から見ると、被爆者から見ると、これはモルモットであるということがいわれる、あるいは軍事機密が隠されているということがいわれる、公開の原則に反するということがいわれる。その後御承知のように、科学技術庁の放医研、放射線医学総合研究所ができ、あるいは広島長崎大学に原医研がそれぞれできたわけであります。あるいは公的医療機関原爆病院等があるわけであります。そういう体制の中で私どもは議論いたしまして、厚生省は省として被爆者のそういう政策面は当然担当しているのだから、非常に大切な役割りを果たしているけれども、放射能の影響の研究ということについては、科学技術庁の放医研ができた経過から見て、いまの体制から見て、これに研究を引き継ぐか、あるいは共同研究をするかという議論をすべき対応する機関である。私はこの経緯から見て、こういうふうに判断するわけであります。外務省が窓口ですが、実際にはABCCをどうするかという問題については、厚生省と、それから将来担当すべきが適当であると思われる科学技術庁の放医研等が中心となって、この実質的な話を進めるという責任体制をとらないと、これから二十五年間アメリカも続けていきたいというし、専門家もそういうふうにいっている。当時被爆した一歳の人が五十歳になるまでは研究するのだ、調査するのだといっている。そういうことは実際上市民の協力を得ないと、なすことができないことになるのではないか、この問題については厚生大臣は事情をお聞きであると思うから、厚生大臣から簡単にお答えいただきたい。
  40. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 三、四年前にもこういう問題が非公式にアメリカ側からもあったように当時は私は聞いておりまして、その当時から私はいまも考えが変わりませんが、大体は大原委員のおっしゃるように私も考えております。  これの日本国における研究といたしましては、予研がタッチいたしましたのは、あの当時あれしがなかったから、ああいう形になったものと、私はさように理解をいたします。今日、科学技術庁のほうでやるということは、私は形としては望ましいと、かように考えております。  三、四年前のお話のときに、アメリカは手を引きたい、これは非公式のあれでありましたから、どの程度アメリカの中枢まで通った意見であったかわかりませんが、日本原爆被害を与えたのはアメリカではないか、手を引いて、もう金も出さないというようなことはおかしい。金だけ出して、そしてこちらにやらせるということなら賛成である。その当時、日本もまだ経済的に今日ほどにもなっておりませんでしたし、みみっちい金の問題といえばいえるわけでありますが、やはりそういった研究費はアメリカ日本に引き続いてすべきである、そういう前提なら、私は日本で引き受けてよろしい。厚生省が引き受けるというよりも、いま科学技術庁にそういうものができておりますから、そこに引き継いでやってよろしい。厚生省といたしましては、私はさように考えております。  昨年の暮れ、あるいはことしの一月、非公式の意見があったということは、私はまだ聞いておりません。どういう意見であったか存じませんが、しかし基本方針として、そういう方針で臨むのがよかろう。科学技術庁とも、あるいは外務省とも話をいたしたい、かように思います。
  41. 大原亨

    大原委員 昨日、外務省の大西政務次官と議論をいたしました結果として、アメリカの会計年度は七月でありますが、日本は八月から昭和四十八年度予算編成に取りかかるわけであります。アメリカ側は一月にたたき台を出しておるというふうに答弁をいたしておりますし、厚生省被爆者特別措置法等を主管をいたしておりまして、被爆者の問題は今後もやっていくわけでありますから、政府部内の研究機関を十分取りまとめてチームワークをとっていく責任があると思います。そういう意味において、厚生省は実質的に外務省と連絡をとりながら、外務省は口上書、外交上の問題について洗い直し、それから内容的な問題についてどうするかということについては、アメリカ側の提案等もあるわけですから、日本側で主体的にきめまして、政府部内で統一をして、そして来年度の予質編成に間に合うように、できるだけ成案を得るように、ひとつ努力をしてもらいたいと思いますが、いかがですか。
  42. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 さようにいたしたいと存じます。
  43. 大原亨

    大原委員 いま広島長崎においては、知事や市長さんたち関係者を中心に、地元においてはABCCもいまのままではじり貧になって研究の目的が達成できないだろう、いろいろな誤解や中傷や、あるいは経過等がある、そういうかっこうで、この問題についてはいろいろな意見が出ている。たとえば、日本が全面的に引き受けるべきである。おそらくアメリカ側はABCCを通じて十五億円ぐらい出しておると思います。日本は予研の支所を通じて一億円足らずを出していると思います。ですから、ほんとうに継続する値打ちのあるものという価値判断をするならば、そういう点では、人的にも物的にも共同研究の体制をとるようにすべきである。そして地元のそれぞれの被爆者や市民の立場に立った意見は、知事や市長を通じて厚生省は吸収をしながら早急に意見をまとめるべきであると思うけれども、この原則的な問題についてどのようにお考えか、お答えいただきたい。
  44. 滝沢正

    滝沢政府委員 この問題につきましては、ただいま予防衛生研究所の支所の機能といたしましては、臨床検査の関係と、それから病理検査の関係二つの部門だけがABCCの機能とからみ合っているというかっこうでございます。したがいまして、先生のおっしゃるような機能全体を協力の度合いを高めるということになりますと、根っこにそのような機能のからみ合いを深くしていく、幅を広げていくという問題につながりますと、私は科学技術庁の関係というものとの関連をどうしても考慮に入れて受け入れ体制全体を考えなければならぬのではないかというふうに思います。  要するに、ABCCの協力体制の強化の問題と国内の体制を整える問題とが、やはりからみ合ってくる問題であるというふうに考えております。
  45. 大原亨

    大原委員 いままでの質疑応答を通じまして、窓口は外務省で外交上の問題をやるわけですが、実質的な研究調査の体制の問題については、十分民主的に意見を聞いて、そして早急にいままでの経過を洗い直して整理をしてもらいたい。いままで厚生省が予研支所を通じましてとりました、そういう予算上あるいは手続上の措置については、たくさん問題があるわけであります。私は申し上げる点はたくさんあります。行政のあり方としては、問題のある点がたくさんあるわけですが、そういう問題はしばらく置きまして、前向きに検討してもらいたいということを特に要請いたしておきます。  それから次に、最初申し上げましたように、放射能の影響の調査、それから治療自体に対する研究、それから医療体制の確立、つまり病院との関係でありますが、そういう機関は、申し上げましたように、予研の支所もあるわけですし、厚生省の公衆衛生局もあるわけであります。お話しのような科学技術庁の御意見もありますし、広島長崎大学もあります。原爆病院も、公的医療機関もあります。私は、それらがプロジェクトチームをつくって、被爆者放射能の影響や治療研究については、どうあるべきかという問題に焦点をしぼりながら、そのチームワークを進めていく、こういうことについて、一そう——いままでのことについては非常にちぐはぐであったと私は思いますから、そういう点について、まとまった措置をとってもらいたい。今後さらにそういう点を努力してもらいたいと思いますが、厚生大臣はお聞きになって、どういうふうにお考えでありますか、御答弁いただきます。
  46. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 まことにごもっともに思います。いままでのチームワークは完全であるとはいえないと思います。もっと密にいたしまして、そして被爆者患者治療というような面につきまして、関係機関意見が十分連絡のとれるようなことを考えなければならない、かように思います。
  47. 大原亨

    大原委員 その次の質問は、認定被爆者の問題でありますが、認定の範囲にかかわる問題であります。これは医療審議会の答申を待ってやるわけでありますけれども、認定被爆者という制度自体が一つ問題であります。これは、原爆を受けましたことと因果関係が明確である、こういうことで白血病や白内障や肺ガン等を認定病として指定をいたしておるのであります。   〔委員長退席、小沢(辰)委員長代理着席〕 しかし、この問題は、公害の疾病の認定のときも議論になりましたけれども、学問的に明確になっていない。つまり疑わしい立場のものも、排除する積極的な理由がない以上は、そういう疾病に対しましては、放射能の影響であるというふうに研究をいたしまして、認定の範囲を拡大をしていく。そのときに議論になりまするのは何かというと、肺ガンとか喉頭ガン等は認定の範囲になっておるけれども、胃ガンとか子宮ガンとかあるいは固定症状ケロイド、そういうものが認定からはずれている。ガンというものは、私どもしろうとが考えてみても、転移するものでありますから、そういう問題については、やはり考え方を変えて、疑わしい場合も、無制限に入れるということではないけれども、議論されている問題については、もう少し広い観点から問題を考えていくべきではないか。これが被爆者立場に立った考え方ではない、あるいはいままでABCC研究に対して、冷酷であるという批判があったという立場ではないか。そういう点について、認定のしかたについての基本的な姿勢についてお答えをいただきたいと思います。
  48. 滝沢正

    滝沢政府委員 認定につきましては、確かに過去の考え方におきまして、その白か黒かというような認定の形にややこだわり過ぎた感がございまして、昨年来医療審議会の御意見等を調整し、かつ従来認定してまいりました実態等を踏まえまして、一つの考え方を立てたわけでございます。すなわち、これを三段階の考え方にしまして、従来の考え方ではっきり肯定できるものと、それから先生おっしゃるように、原子爆弾の放射能に起因する可能性を否定することはできないというものについては、厚生大臣に審議会の意見としてあげていただくことによって、これを判定する方向考えておるわけでございます。あとは完全に可能性を否定できるというようなものでございます。  先生が前々からお取り上げになり、また御議論になっております胃ガンの問題につきましては、最近いろいろの見解が出てまいっておりまして、約三千体に近い死体解剖例と、本人が当時受けた放射能の度合い、近距離であったか、あるいは遠距離であったかというものを比較しながら、従来一般的には胃ガンというものが有意の差が出ない、近距離被爆、遠距離被爆、あるいは被爆しなかった者との関連においても影響が出ないという考え方がございましたけれども、最近に至りまして、研究の発表の中で、胃ガンの中にいろいろの型がある。非常にかたい型の硬質のガンと、やややわらかい、腺ガンと申しますが、そのような系統のものとを分類して、なおかつその解剖例を統計処理いたしますと、有意の差が出てきたという見解も出てまいりました。いわゆる被爆者にやや多いという意味の有意の差があるのではないかという見解も出てまいりました。ところが一面また、病理学的な型の分類を別の見方から検討ざれた例が出てまいりまして、これにはどうしても有意差は見出しがたいというようなことで、胃ガンを一般的にとらえますと、そのような見解がございまして、審議会の意見につきましても、まだ結論的な考え方は、それぞれにお考えがあるようでございますが、総体としては胃ガンというとらえ方では、いまのところ、これを認定対象疾患として取り上げるべきだという見解は、最終的にはまだ固まっておりません。  しかしながら、もう一つの見解としては、若年、特に十歳以下で被爆したような事例については、やはりガンの発生についての有意差があるのではないかというような見解が出てまいりました。要するに被爆の条件、若年のときに被爆した者の一般的にガンの発生と、その上さらに胃ガンというような問題について、どういうふうに関係してまいるかということについては、かなり有意の差があるというような見解が出てまいりましたので、総体的に先生が最後にまとめておっしゃいましたように、要するに条件によってはこの問題を取り上げるべきではないかという見解が審議会の先生方にもあるわけでございます。  最終的には、この問題につきましては、審議会の結論を待ちたいと思いますけれども、行政の立場としては、審議会の御意見が固まれば、当然のことこれを取り上げていくということでございますし、審議会が否定している段階では、取り上げることが困難であるということでございます。
  49. 大原亨

    大原委員 審議会の委員専門家が全部石頭であるというわけじゃないのですが、従来の既定の概念でずっと考えておって、そして客観的とか科学的とか言うわけですが、しかし、私どもが承知する範囲でも、ガンというのはビールス説とか刺激説とかいうのがあるわけです。放射能をたくさん身体に受けたならば、どういう説をとろうが、放射能だけでガンは発生するのじゃないけれども、ガンについて悪い影響を与えるということは——あなたは一部を否定し、一部を肯定されましたが、しかし、一部の実際の臨床のグループの意見では、被爆して放射能をたくさん受けた人は、胃ガンや子宮ガン等ガンの発生率が多いということを実証している人もあるわけです。ですから、そういう場合には肺ガンやその他があって転移をするわけですから、専門的なことはともかくといたしまして、そういうものについては疑わしい場合には入れるのだ、やたらに拡大することは別といたしまして、考え方の問題でありますから、そういう点について考え方を変えるべきである。それから、そういう被爆者立場に立った委員を入れるべきだ。実際に接触して臨床歴のある人々を入れるべきだ。昨年来少しずつ改訂をされておりますけれども、そういう点を考えなければならぬ。そういう点は子宮ガンについても同じであります。特に原爆の中心地は五千万度であったというわけでありますが、その熱線によってケロイドを受けておる、その上に放射能を受けておるというような原爆の影響があるわけでありますから、そのケロイドを受けておる人については、相当程度の者については、これはいまの特別被爆者から一歩進めて、健康管理手当から一歩進めて、認定被爆者の中に入れるということを私は検討してもらいたいと思う。これは医学的にそう問題があるわけではない。客観的な問題であります。人道上の問題であります。いかがですか。
  50. 滝沢正

    滝沢政府委員 ケロイドにつきましては、原爆とのつながりが明らかな問題でございますが、やはりケース・バイ・ケースの症状なり、影響の度合いによって、審議の中身においていろいろ議論されると思いますが、胃ガンの問題とは違いまして、その密着性から申しましても、それがどういうふうに個人個人で影響しているかという起因性という問題についての論議はあろうと思いますが、ケロイドについては積極的に当然考慮されていいものと考えております。
  51. 大原亨

    大原委員 ケロイドについては前向きにやる、こういう議論であります。積極的に考えてもらいたいと思います。これは娘さんにいたしましても、若い人にいたしましても、顔から全面やけどいたしましたならば、一生結婚できないのですよ。致命傷なんですよ。ですから、いまも外的な条件が悪いのだから、それを完全に健康管理して国が保障していくということは当然なんですね、一番手厚い保障を与えるということは。ですから、この問題はもう少しきめこまかに、積極的にひとつやっていただきたいと思います。厚生大臣、いかがですか。
  52. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私どももさように考えております。今後審議会に対しましても、行政的な見地から、できるだけ手厚くできるようにということを申し上げ、そういう方向にいまいっておりますので、いまおっしゃいましたような御意見も踏まえましてやってまいりたい、かように思います。
  53. 大原亨

    大原委員 先般増岡委員質問にもあったというふうに承知いたしておりますが、被爆二世の問題であります。原爆を受けたときに胎内にいた胎児は特別手帳をもらえるわけであります。健康管理を一応するわけであります。しかしながら、その母体から生まれてまいりました子供につきましては、この前の議論は、今回研究調査費が一千万円に増額された、四百万円が増額されたわけですが、その研究調査対象になっているのかという点で否定的な答弁があったやに私は聞くわけであります。私は被爆をした母体から子供が生まれたものがすべて遺伝的な影響を持つということを断定する意思はありません。ありませんけれども、最近やかましいPCBにいたしましても、有機水銀にいたしましてもそうですが、血液が汚染される。放射能の場合にも、白血病ですから血液のガンです。白血病が認定患者に指定されるわけですから、血液が汚染される。そういうことを通じまして、身体に残留放射能が滞留する期間があることを想定することは、むちゃなことではないと私は思うわけです。ですから、そういう放射能をたくさん浴びたり、残留放射能がそういう条件にあったら、あるいは放射能の性質から考えてみて、血液が汚染されるということになりますと、白血病との関係だけではありませんけれども、母体を通じましてその後生まれてくる二世にも影響がないということは、断定することはできない。私はこの問題について長い議論はいたしませんが、この問題については不安と疑惑を持っている人は、被爆者の中にたくさんあるわけです。そういう人々の立場に立って、その因果関係を究明しながら、できるだけそういう症状の出ておる人々に対しましては健康管理の道を講ずる、特別手帳等を交付する。こういうこと等も、いますぐ考えるということではないけれども、しかし少なくとも、こういう問題については強い関心を持って、国が、ABCCその他民間機関だけにまかすのではなしに、研究調査費の運営等にあたっても考慮すべきである。この問題を無視して研究調査を国がやるというようなことは私はいけない、こう思います。いかがです。
  54. 滝沢正

    滝沢政府委員 四十七年度の一千万につきましては、従来三つの大きな課題があって、その中に副課題として、各課題ごとに数個の研究があって、さらにまた新しい研究の着手を希望しておられる、こういう実態から申しまして、今回予算のきまりました一千万では、従来の研究を継続していくということでございます。  先生御指摘のように、二世の問題についての関心を持ってこれに対処すべしということでございますが、この点は私も十分考慮しなければならぬと思いますけれども、実は従来の二世のまず遺伝学的な面からのつながりというものは、現段階の研究発表を見ますと、細胞遺伝学的にも、その他の研究の結果を踏まえても、影響は見出しがたいということになっておりますので、どういう場面、どういう体の部分をとらえることで、この二世の健康への影響としてのとらえ方をするかという学問的な問題について、われわれではまだ十分、また学者の皆さんの御意見でもいろいろの見解はあります。  最近アメリカなどにおいて、遺伝学的な検査の方法に新しい方法が開発されたというようなことを聞きますけれども、そのような問題が新たに取り上げられる段階になりますれば、またその別の角度からの影響という問題の把握、すなわち血液をとることによる——従来では、白血球の培養で遺伝学的に見ておる方法論が世界的にも一つの方法でございましたが、別の、赤血球等からも、コンピューターあるいは電子等を使った特殊の検査機械等を駆使することによって可能であるという見解も出てまいっておりますので、そういうような問題が見出されることが契機となりますれば、何をねらうかという議論が可能になろうと思うのでございます。  したがいまして、研究に着手する、あるいはその問題をとらえるということの必要性は感じておりますが、方法論について今後十分学会なり、あるいは学術の進歩に合わせまして考慮するというふうなことを考えておる次第でございます。
  55. 大原亨

    大原委員 先ほど申し上げましたように、ABCC原爆の投下がありました広島長崎調査委員会を設置いたしておるわけですが、当時の赤ん坊が、一歳が五十歳になる、あるいは胎児をどうするということで、五十年間は研究しないと放射能の影響はわからぬ、そういうふうな観点で具体的な調査をいたしておるわけであります。そこだけはしておるけれども、政府研究調査費の対象にはならない、被爆二世の問題はならない、こういうことは私はおかしいと思うのであります。  そこで私は、科学技術庁の稲毛にある放射線医学総合研究所の中井遺伝研究部長と熊取障害臨床研究部長にきょう御出席いただいておりますが、科学技術庁の放医研のほうは、この二世の問題については、私の意見や、それからやや公衆衛生局長の前向きでありましたが、その意見に対して、どういうように考えられるか。化学物質とは違うと思うのです。しかしながら、PCBにいたしましても、問題の有機水銀にいたしましても、メチル水銀にいたしましても、これは血液を通じまして、次の子供に遺伝をするということになるかどうかわかりませんけれども、その血液が汚染をされますと、今度生まれてくる子供に対しまして脳とか肝臓をおかしたり、それぞれの金属の特性に従って蓄積をしていくという疑惑があるわけであります。放射能の蓄積、第二次放射能——放射能が残留するということについては、この学説があるということは承知いたしておりますけれども、私はそのおそれはないということを断定することはできない。であるならば、これは深刻な問題でありますから、人道上の問題ですから、被爆者立場に立ってこの問題を政府が政策として取り上げる第一歩といたしましては、研究項目の対象といたしまして、それぞれの研究機関や現地の学者や臨床家等にこの研究費の運営等にあたって留意をすべきである、こういうふうに私は思うわけです。政策の第一歩として思うわけでありますけれども、科学技術庁の中井、熊取両説明員から御見解をいただきたい。どちらか一人でいいです。
  56. 中井斌

    ○中井説明員 お答えいたします。  先ほど厚生省のほうから言われました答弁、ABCCにおきまして現在のところ調べた結果におきましては、原爆二世についての有意な結果は得られておりません。しかしながら、これは学問的に、定性的に申し上げますと、放射線が当たれば遺伝的な影響が起こるということは、実験動物のレベルでは確かめられておる事実でございます。したがいまして、現在の学問の問題といたしましては、人間においてどれだけの線量で、どれだけの確率で遺伝的に障害が起こるかというところは問題点でございます。そのような見地におきましては、現在広島で調べられている範囲では、有意な結果は得られておりません。  なお、先ほどおっしゃられました血液の生化学的な、遺伝的なケースについての研究計画があるように聞いておりますけれども、そのような研究が進められましたならば、いま申し上げましたような定量的な数値が得られるかもしれません。これは大いに進めるべきであろうというふうに思います。  それから、私ども放医研といたしましては、実験動物を用いてそのような研究を進めるべきであろうと思っております。ただし、これは同様に多くの研究予算を必要といたしますので、われわれとしましては現在いろいろ計画中でございます。
  57. 大原亨

    大原委員 科学技術庁だけでなしに、他にも研究者があるわけでありますから、厚生省のほうもこの研究費の問題については、もう少し前向きに考えてもらいたい。  厚生大臣、つまりこういうことであります。厚生省がやっておる場合には、予研の仕事というのは結核、伝染病の研究所なんです。当時はあれしがなかったから、しかたがなかったんだけれども、非常にいびつなというか消極的だった。それに対して、ABCCは客観的とか科学的とかということを通じまして、できるだけ被害をなくしようとしている、アメリカの罪を小さくしようとしているんだという疑惑、消そうとしているんだという疑惑が依然としてあるわけであります。ですから、そういう問題については軽率に結論を出すことはできないが、ただいま放医研の御答弁でも明らかなように、動物実験では出てきておるわけですから、公害病の認定でも食品衛生法の改正でもそうでありますが、やはりこういう場合には被爆者及び被害者立場に立って、疑わしい問題についてはアプローチをしていくんだ、問題解決のためにやっていくんだという態度が必要であります。一千万の研究予算の運営を含めて、将来の研究予算をとっていくという問題と、それから予研のいまの従属的な月給取りのような研究体制、全部が全部そういうことを言ったらおこるだろうが、そういう消極的な研究体制というものを払拭して、将来科学技術庁自体が積極的にこの問題と取り組むなら取り組む、こういう問題等を含めて研究体制の問題で一千万円の問題を含めて、厚生大臣はいままでの議論を踏まえて、ひとつ前向きに善処してもらいたいと思うが、厚生大臣、いかがですか。
  58. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 放射能の人体に及ぼす影響、これはまだまだ研究すべき点が多々あると思います。また、放射能を受けたところから来た病気に対する治療方法というものも、ただいまおっしゃいましたABCCと一緒になっております。予研は、その仕事の分野は大体一定されておりますので、いまおっしゃいました、また私の述べました分野においては何も予研関係だけでなしに、日本の医学全体を動員をしてやってしかるべき問題である、かように考えます。各種研究機関、各種病院等の連絡を密にするようにとおっしゃったのも、さようであろうと思います。そういう意味で、そういった研究の成果を密にして、さらに新しい研究に踏み出していくということ、それから新しく研究をするものについての研究費、調査費というようなものにつきましては、今後も一そう努力をいたしてまいりたい、かように思います。  なお、二世の問題、だいぶ論議されましたが、これは学問的な問題として十分研究すべきである、大いに研究すべきである、かように考えますが、その可能性が相当強いというのでない段階におきましては、これはやはり結婚問題その他いろいろな影響を及ぼす問題でありますので、よほど断定的な結果が出ない以上は、あまりに不安を与えますことは、被爆された方々に対して非常なショックを与える、かように考えますので、そういう点も気をつけながら、しかし学問的な研究を進めてまいります。
  59. 大原亨

    大原委員 いまの科学技術庁の放医研の御答弁でもあるように、動物実験では医学的な影響があらわれているというのはかなりの結論が出ているわけです。ですから、そういうものをほうっておくのはいけないわけです。動物実験で出たならば、医学界、学問上の常識では疑わしいということになるのです。ですから、ただいま食品衛生法だって何だって、公害病であっても、そういう立場で認定するという立場に変わりつつあるのです、いま法律というものは。そういう疑惑や問題があることは事実ですから、一千万円の運営を含めて、そういう否定的な答弁ではなしに、さらに私は最初に言ったように各省にまたがっている、ばらばらになっている、でこぼこのチームワークのとれていない研究機関を将来動員をいたしまして、そうして一千万じゃない、一億円でも五億円でも十億円でもよろしい、そういう影響の調査というものに対する研究については、これは成人病にも影響いたします。平和利用にも影響いたします。ですから、放射能はこれからの問題ですから、この経験というものを私ども踏まえながら、被爆者の要求にもこたえるし、時代の流れにもこたえるということが必要である。そういう考え方研究の問題で、積極的に被爆二世の問題を含めて取り組んでいただきたいと思います。これは来年度予算編成その他を通じまして、きょうは大蔵省の主計官も出席をされておるはずでありますから、その点を理解の上でやってもらいたいと思いますが、もう一回厚生大臣いかがですか。
  60. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私は研究をさらに充実をさしていくということに決して否定的な考えを持って申し上げたのじゃございませんで、積極的に大いにやるようにやらなければならない、かように申し上げておるわけであります。ただ、二世の影響は、被爆された方々の今後の救済という意味におきましては非常に意味をなしますが、しかしこれが遺伝をするのかというようなことが、一般的にそうだという確証のない段階においては、これは十分学問的にはひそかに研究しなければならないけれども、そういう予測を持って当たることは、何といいますか、一般の人々、ことに私は結婚問題に大きな影響を来たす、かように考えますので、そういう点は結果の発表というものはよほど慎重にやって、その効率が高いというのでなければ、軽率に扱うと、たびたび申しておりますように、結婚問題をはじめ、社会的に大きな影響を与えますから、そういう配慮をしながら、しかし学問的な研究は大いに進めます。かように申し上げておるわけであります。
  61. 大原亨

    大原委員 対策を立てる前提、結論を出す前提として、研究は大いに進めていく、こういう御答弁であります。  それから、これはおそらく許容量というものがあるでしょう。許容量を越えた場合に、遺伝というのではなくて、血液を通じて二世に影響を与えるということは、今日公害の議論ではかなり決定的な議論になっておるわけですから、いつまでも遺伝をするという考え方ではないわけですから、そういう単純な考えではないわけですから、ですから、私はそうむちゃなことを言っていない。動物実験にあらわれておれば、それをほうっておくことは不満であり、不安である、そういう立場に立って早急に対策を立てるべきである。こういう議論でありますから、予研のことじゃありませんけれども、もう少し積極的に考えてもらいたいということを特に要望いたしておきます。  これは大蔵省からも聞きたいのですが、その次の質問田畑委員からも質問がありましたが、昭和四十三年に特別措置法ができましてから、ずっと特別手当一万円、それから健康管理手当三千円、医療手当三千円と五千円、介護手当一万円というふうに、その前の段階はありますが、ずっと据え置いてあるわけです、物価が上がっているのに。そのことを何回も決議いたしまして、今回千円ずつを増加いたしましたが、介護手当と一万円の特別手当については据え置きであります。ですから諸手当を一千円というふうにときどき思い出したようなことでなしに、やはり私は、百歩譲って政府のような観点に立つにいたしましても、増額については毎年留意をしてもらいたい。ましてや所得制限なんというふうなのは、今回ワクを増大いたしましたが、撤廃してもらいたい。二つの点いかがですか。
  62. 滝沢正

    滝沢政府委員 特別手当介護手当等の据え置かれた問題につきましては、先ほどもお答え申し上げましたように、やはり改善の方向で検討することは必要であろうと思っておりますが、四十七年度は先ほど申し上げたような実態でございます。  それからこれに伴います所得制限の撤廃という考え方は、確かに原爆被爆者の諸手当所得にかかわらず支給するという一つの考え方もあろうと思いますが、しかしながらこの手当の目的が、やはりみずからある程度生活に力があって、その健康、保健衛生上の配慮がなし得る者についてはみずからお願いしたい。そういう意味健康管理手当にも、年齢身体障害ということと母子家庭という特殊な条件をさらに加えてある、こういうことでございまして、まあ撤廃という考え方に近いことではございますけれども、今後やはり所得緩和につとめていくということは、四十七年度所得制限の決定の状況から、あるいは他法との関連等も踏まえまして、できるだけ緩和してまいりたい、こういうふうに考えております。
  63. 大原亨

    大原委員 たとえば認定被爆者特別手当を一万円もらっているというんですが、原爆病院や特別養護老人ホーム等へ入っている人たちは、まだいいわけです。しかし一般民間病院に入っている人は、差額ベッドとか実際上ばく大な持ち出しがあるわけです。一万円の特別手当を出したのだということでずっと毎年据え置いて、しかも今年据え置きということは、私はひどいと思うんです、そういうことは。だからこれはこういう問題も含めて、所得制限の問題もあるから、私はもう少し決意を新たにしてやってもらいたい。厚生大臣、いかがですか。
  64. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 かねて私のほうといたしましては、そういうような見解に基づいておるわけでございますので、今後特別手当の問題、所得制限の問題も、ことに所得制限の問題はもっと前向きに考えてまいりたい、かように思います。
  65. 大原亨

    大原委員 以上まとめて主計官、ABCCの問題、議論いたしました。それから被爆二世の問題を含めて、政策上密着した調査研究費の問題についても議論いたしました。所得制限撤廃や諸手当の問題についても議論いたしました。この点を大蔵省は了解いたしましたか。
  66. 渡部周治

    渡部説明員 お答え申し上げます。  原爆被爆者対策につきましては、現在まだ依然として原爆のつめあとが残っておるという痛々しい現状からいたしまして、その重要性につきましては財政当局としても十分配慮しておるつもりでございます。四十七年度予算におきましては、総額百十五億円の原爆被爆者対策費を計上いたしておるわけでございまして、前年に比べまして二十九億円の増、比率としましては三三%の増でございます。しかしその内容につきましては、まだいろいろ御不満もあろうかと思いますので、今後ともこの面につきましては十分の配慮をして、前向きに対処してまいりたいと思います。  いろいろ御指摘のございました原爆医療研究の問題あるいは各種手当所得制限問題等につきましても、社会保障制度全体の中で、これをどういうように位置づけるかということ関連せしめつつ、また今後の財政事情等とも勘案しながら、関係当局といろいろと御相談の上、前向きに対処してまいりたい、かように考えております。
  67. 大原亨

    大原委員 大蔵省、いまの答弁は一応それだけで了承しておきますが、厚生大臣、こういう問題があるわけです。つまり広島とか長崎市等では特別手帳持っている人が多いわけです。それは常時特別手帳を持っておりますと、老人問題と同じになりますから、自己負担分を国費から出すのであります。そういたしますと、医療原則としてただになりますから、からだの弱い、不安があるということから、診察の度合いが多くなっていくわけでありますから、医療費が増大してくるわけであります。医療費の増大する率が非常に強いわけですから、自治体の負担になるわけです。  当時四、五年前に、この問題を議論いたしましたときに、私は社会労働委員会で、これは結核や精神病と同じように、特別法優先の原則に従って、保険制度からはずして公費負担にすべきではないか。これは医療の老人の問題等の抜本改正議論にも関係いたしますが、特別法優先の原則に従って、保険のワクからはずしてやる、そういう措置をとるならば、該当の自治体に対しまして二重の負担をかける、被爆者をかかえた上に、さらにこの医療費の持ち出しをするという負担をかかえるということは、いかがかということの議論をいたしました。そこでいろいろと附帯決議をいたしました際には、国民健康保険の特別交付金、調整交付金、これ等を配慮するということで、若干の配慮があるわけでありますが、しかしそのことによって医療費全体が影響いたしまして、国民健保や政管健保にいたしましても、負担がふえていくというふうなことは、これは税金で処置すべき問題であります。公費で処置すべき問題であります。これは保険主義に立ってもそうであります。ましてや一歩進めて被爆者の問題は、特別法として一般の社会保険からはずして——特別法優先の原則があるわけですから、そういうことをこの際、あらためて考えるべきではないか。いかがですか。
  68. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 公費負担の点につきましては、ひとつ前向きに検討してみたいと思います。
  69. 大原亨

    大原委員 国民健康保険の特別調整交付金等についても十分配慮してもらいたい。いかがですか、それまでの段階として。関係局長いないですか。保険局長いないですか。
  70. 小沢辰男

    ○小沢(辰)委員長代理 保険課長がいますから、説明員をして説明いたさせます。
  71. 吉村仁

    ○吉村説明員 お答えいたします。  現在、原爆医療給付費は他の医療費に比べまして非常に高うございます。その結果、市町村の国保財政に与える影響が非常に大きいということを考慮いたしまして、財政調整交付金の中で、特別の算定基準に基づきまして、特別財政調整交付金というものを交付しておるわけでございます。広島市の例で申し上げますと、普通国民健康保険におきましては四五%の国庫負担率になっております。全体的には四五%の負担率になっておりますが、広島市に対しましては、これが五四・一%配賦されております。なお原爆医療費だけを取り上げてみますと、六四・七%という高率の国庫補助率になっております。したがいまして、私どもとしては現在のこの方式によりまして、被爆者をかかえる市町村の財政援助を、今後とも続けてまいりたいと思っている次第でございます。
  72. 大原亨

    大原委員 いまの数字は具体的な数字でありますけれども、なお実際上は多くの支出が要っている、こういうことですから、十分検討してもらいたい。  厚生大臣の御答弁は、公費負担の原則を了承されたわけで、これは偉大な答弁です。これは非常に大きな答弁でありますけれども、これは大きな問題で、ぜひ真剣に取り組んでもらいたい。ただし本年度は間に合わないですが、国保法でやっていただく、こういう措置をしていただくということで、被爆者がたくさんおるために、この保険によって医療にかかる率が多くなるわけですから、その負担を自治体がさらにかぶっていくというふうなことは、これは保険の精神からいってもおかしいわけです。他の保険のほうにいくわけですから、特別法優先の原則で、国民全体としてどこが負担するということを考える際には、これは公費という問題を十分検討してもらいたいと思います。  それから最後に一つ質問をいたしますが、厚生大臣は戦争が終わる昭和二十年の八月の十五日には防空本部の——内務大臣が本部長でありましたが、そこの三局長の一人の総務局長であったというふうに私は了承いたしておることは、前に厚生大臣のときに、私はあなたとそういう問題を確かめたことがあります。しかし、日本援護法の体系よりしますると、東京の空襲の犠牲者に影響するというようなことで、防空法の資料を全部焼かしたのであります。そして占領軍が入ってきまして、戦犯として追及するのを免れるために、非戦闘員を戦闘に動員していなかった、非戦闘員に命令によって犠牲を負わしてはいなかったということを立証しようといたしまして、役人の諸君は逃げ回ったわけであります。日本全体はそういうことになったわけであります。あなたもその該当者の一人で——あなただけが全部悪いというわけではありません。私どももみんないろいろな罪を犯しておるのでありますけれども、そういうことであります。  この問題は、私は封印をしてありました閣議決定を取り出して、義勇隊の関係等で、法制局と議論をいたしました。法律的には防空法との関係で、警防団であれ、職場防空であれ、地域防空であれ、六歳以上から六十五歳未満の人たちは防空義務を持っておりましたから、懲役に連れていかれたり、罰金もいまの金に直すと数十万円、命令に従わなかったら取られるわけでありますから、完全に国家権力で強制いたしておるわけであります。大蔵省のある一部の中には、そこまでいけば家まで補償しなければならぬ、こう言うが、しかし人命に関係する問題だけ考えてみても、戦闘員と非戦闘員を分けることはできない。ましてや原爆というふうな非人道的な兵器による被害に対しては、この問題を放置することはできない、こういう議論を私はいたしました。法制局は、法律論上は、これは義勇隊等は援護法の対象になっているわけでありますから、差別をする理由はない。問題は二十数年たって、実態の問題であるというふうな議論がありました。それは一部はもちろん警防団と医療従事者については七万円ずつの弔慰金を出しております。あるいは医大の学生等については、中村委員等から話がありました。しかし、この問題は、法律的には私は絶対に私の主張は曲げることはできないし、正しいと思っておる。防空法の関係から、この援護法というふうな問題にアプローチをするという観点で、この問題は前向きにひとつ取り上げて、医療に伴う特別措置だけでなしに、やはり戦争の犠牲者に対しては公平にやるということで、公平に措置をするという精神に従って、もちろん軍人恩給についても平等の原則でやることはいいけれども、この問題については防空法の観点から、いままでの経過を考えてアプローチをしていく。改善のアプローチをするということは絶対に必要である。  これは斎藤厚生大臣は、申し上げたように防空本部の総務局長でありますから、これはまぎれもない総務局長で、指導者の一人であったわけですから、この命令によって動いた国民が、戦争に因縁がないなどというようなことは、これは口が裂けても言えぬだろうと思うのであります。ですから、この問題に対しまして、私はあなたのお考えや決意を、あらためてひとつお伺いいたしたいのであります。
  73. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 防空業務に命令によって従事し、そのために被災をしたという場合には援護をすべきものだ、かように考えると、私は前に申し上げたように思っておりますが、国民全体に防空の義務があるということから、いわゆる戦争被害を受けたという者につきましては、これは非常に疑問があると申しますか、むずかしいのではないか、そういうように御答弁申し上げたと思っておりますが、現在、その後の扱いにつきましては援護局長からお答えをいたさせます。
  74. 中村一成

    中村(一)政府委員 この防空法に基づきます命令を受けまして、防空業務に従事しました者の中で、防空監視隊につきましては、先生承知のとおり、旧軍の防空体制の一環といたしまして、常勤的に防空に従事したという理由から、援護法の中で準軍属といたしまして処遇するということを昭和四十四年十月からいたしたわけでございまして、現在軍人軍属として取り扱いまして、障害年金三名、遺族年金十九名の方が受けておられます。  次に、医師、歯科医師等の医療従事者につきましては、特殊技能者といたしまして有事の際には救護業務に従事するということになっております。この方々につきましては、あの中の犠牲を負われました方々につきましては、厚生省といたしましては特別支出金を支給するということで、現在まで百件の支給を決定いたしておりまして、その内訳は、障害関係が一件、死亡の遺族が九十九件ということになっておりますが、さらに厚生省以外といたしましては、防空法関係では、警防団員の犠牲の方々につきましては、昭和四十四年、四十五年におきまして、自治省の消防庁におきまして、医療従事者と同様に、死亡者並びに障害者につきまして一時金を支給するという措置をとっておる次第でございます。
  75. 大原亨

    大原委員 これで終わりますが、厚生大臣が御答弁になったのは、防空業務に従事をしていた人の被害者、犠牲者については、これは当然援護法の対象になるだろう、援護局長の御答弁からは、防空法上の防空監視員についての話がありました。ですから、これはもう少し考え方を改めて、実態把握について、時間がたっておるなどというようなことを言わないで、防空業務に従事をして犠牲となった人については、身体障害者、遺族等に対しましても遺族援護法等があるわけですから、それらのバランスを失しないように、戦争犠牲者に対する救済の万全を期するべきである、こういう私の見解を最後に申し述べておきまして、私の質問を終わります。   [小沢(辰)委員長代理退席、委員長着席]
  76. 森山欽司

    森山委員長 次に、中村重光君。
  77. 中村重光

    中村(重)委員 私ども社会、公明及び民社三党から、御承知のとおり、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律及び原子爆弾被爆者医療等に関する法律の一部を改正する法律案、これを提案をいたしておりますが、このことに対しての見解を伺ってみたいと思っております。  まず第一に、障害年令の支給の点ですが、御承知のとおりに、政府認定被爆者に対して一万円、それから健康管理手当支給をしているわけですが、ところがこの支給は、いわゆる認定被爆者に対する手当にいたしましても、むしろこれを拡大をしていく方向ではなくて縮小していく方向ですね。金額は据え置きですけれども、対象となる認定被爆者というものは減っている。じゃ原子病患者というものが減少しておるのかというと、実際はそうではない。健康管理手当の問題にいたしましても、厚生省が指定する八つの病気の一つにかかっても、それに年齢制限がある。これでは健康を維持するためのいわゆる健康管理手当ではないじゃないか。医療手当の範疇にこれは入るというように申し上げることが、端的な指摘だろうと考えておる。私どもの提案は御承知のとおりそうではない。認定被爆者と、それから特別被爆者というものは、症状が重いか軽いかというだけのことであって、科学的にきちっと分けるということは事実上困難である。そういったような点から私どもは症状の重い被爆者に対しましては三万円を支給をする。それから特別被爆者、症状が比較的軽い被爆者に対しましては一万円を支給するということにいたしておりますが、政府案のようなそうしたきびしい制限を加えていない。このことに対して、どのようにお考えになっておられるのか。  それから障害年金の支給の問題にいたしましても、動員学徒であるとか、あるいは徴用であるとか、いわゆる準軍属というものに対して、公務障害によって障害を受けた被爆者に対してのみ御承知のとおりに手当支給されているのにすぎない。それではいけないのだ。被爆者が公務障害であろうともなかろうとも——もっと端的に申し上げれば、先ほど厚生大臣がお答えになりましたが、防空業務というものは、たしか十四歳以上六十歳以下の者は全部防空従事者としての義務を課せられておった。それらの事実等を考えてみますと、広い意味の公務障害であると考えなければならない、私もそのように考えているわけです。してみますと、いわゆる準軍属というようなものに限って障害年金を支給するということは適当ではないのだ。被爆者全体に対して、障害を受けている者に対しては当然障害年金を支給をすべきであるという考え方の上に立って、私どもの提案がなされているわけでありますが、これらの年金に対し、それから障害年金、この二つに対しての御見解はいかがであるか。
  78. 滝沢正

    滝沢政府委員 御提案の援護手当の新設、それは特別手当三万円、健康管理手当として一万円、こういうような御提案でございますが、この点について差がないのではないかとおっしゃるわけでございますけれども、特別手当を受ける側の認定患者の認定疾病というものは、一つの具体的な疾病名をあげております。造血臓器の障害というようなことではなく、白血病というふうになっておる。ところが、八つの疾病のほうは肝臓機能障害、じん臓機能障害、循環器機能障害、非常に広くとらえております。この広くとらえていることが、健康管理手当を条件に合う人にはなるべく広く支給されるというかまえになっております。  認定のほうは、法律に基づく審議会がございまして、いわゆる原爆症として認定された場合、こういう定めになっておりますので、御提案の三万円、一万円に差があることも私は妥当であると思いますし、現行の健康管理手当支給者と認定患者とはやはり明らかに差があるという形を具体的な疾病の把握なり条件の中できめてございますから、そういう意味では現行の制度——ただ金額については確かにいまのままで十分であるというふうには考えていませんので、逐次この問題は他のほうとの関連等、あるいは国民全体の生活条件その他の進展に伴いまして、こういう趣旨手当でございますので改善をはかっていきたい、こういうふうに考えております。  それから障害年金の新設についてでございますが、障害の状態にある被爆者、この点につきましては物理的な障害という問題と放射能による障害という問題とあろうと思いますが、現在われわれが医療法、あるいは援護特別措置法として原爆二法を執行しておる基本的な考えの中には、やはり放射能の影響というものが単なる物理的な影響である。他の爆撃等によるものと基本的に違うということをその根本にとらえておるわけでございますので、あの原爆による爆風その他による物理的障害というものもございましょうけれども、広い意味の放射線による人体への影響、こういうようなもののとらえ方でございますから、原子爆弾による障害の状態というものの解釈の範囲によっては、現在の健康管理手当によってもこれがある程度障害年金とまではいかないわけでございますが、障害者に対する一つの手当として考えられますし、そういう点で障害の状態にある被爆者というものの範囲をどうきめていくかというところに現行法との関連の整理があろうと思います。  その点、私必ずしも明確に承知いたしておりません点は、いまのように物理的な問題、したがって、身体の上の不自由さ、いわゆる機能の不自由さに対する障害か、あるいは内部障害を含めた全体の障害かというような問題点を十分理解してないということを率直に申し上げるわけでございます。
  79. 中村重光

    中村(重)委員 時間的な関係がありますので、ただ見解を伺うにとどめなければならないので、議論をする時間が実はないわけであります。  ただ、しかし、私がぜひ指摘をしておかなければならないことは、何といわれようとも、厚生省で指定しているその疾病にかかっている人でなければ健康管理手当がもらえないという事実は間違いがないわけです。  ところが、被爆者というものは健康が非常に阻害されておる。現実に私が特別被爆者である。自分のことをこういう症状が絶えずあるのだということを申し上げると、非常に参考になろうと思うのだけれども、実は申し上げません。健康が非常に阻害されておる、病気にすぐかかりやすい、また治癒するのが非常におくれるのです。きょうも私は正直に申し上げて湿布を全体にしておりますが、無理を押して実はこの質問に立っておるわけですけれども、とにかく私が一つの例なんです。被爆者が集まりますと、いつもそういうことを話し合うものです。ところが、それでは厚生省が指定するその八つの病気に、はっきり医療審議会が認めておるのに当てはまるのか、それはまたたいへんむずかしいです。  大体医療審議会のあり方というのは、できるだけ手当を出すような被爆者をつくるまいというものの考え方がある。被爆者を救済していこう、援護していこうという考え方よりも、できるだけそういう手当支給していくまいとする、少なくとも厚生大臣のお答えとは逆の方向に現実に運営されておるということは、私は事実をもって指摘し得るわけです。しかし、きょうはそういう具体的な問題について議論をすることを時間的な関係で避けなければなりません。  私どもが申し上げております被爆者に対する手当の問題は、厚生省が指定しておるようなきびしい規制、そういうものであってはならないということ。また障害年金にいたしましても、いわゆる準軍属というようなもの、そういうきびしい規制があってはならぬ。放射能による障害、あるいは爆風であるとか、熱線であるとか、そういうものによって現に障害を受けているのだから、それらの人に対しては当然障害年金が支給されるべきものであるということ。それが私どものこの援護法の中身になっておるということ。いわゆる国家補償の精神、政府法律というものは社会保障の精神です。私は何回も申し上げますが、国際法に違反する兵器を使って、多くの人たちが殺され、傷つけられておる。そして今日苦しんでおる。しかし、講和条約によってアメリカに対するところの請求権を日本政府は放棄をしたんだ。ならば、日本政府がかわってこれら被爆者に対する損害を補償していくということは当然ではないのか。国家補償の精神で、今日被爆者対策が進められていないということ自体が問題があるんだということを私は指摘しなければならない。その点は強く反省を求めておきたい、私はそのように思います。  なお、所得制限の問題にいたしましても、先ほど厚生大臣所得の多い者に対して、それまで手当支給することはいかがなものであろう、こういうお答えがありました。一面から見ると、わかるような感じがいたします。だがしかし、私がるる申し上げましたような被爆者の置かれておる実態、絶えず健康を阻害される状態等々考えてみますと、所得制限というものは、被爆者に対しては、当然これは撤廃されなければならない。所得の多い少ないということによって左右されてはならない、私はこのことも申し上げておきたいと思います。  なお、異議申し立ての期間の規制もあります。行政不服審査法四十五条に基づいて、その処分の通知を受けた日から起算して一年以内に異議の申し立てをしなければ、これはもう無効であるということになっておる。しかし、被爆者——あの原爆の状態、あの実態ということを御存じないあなた方には、おわかりになりますまい。最も近親者のみしか知らないようなああいう状態のときなんです。被爆者が申請をすることが事実であるのか事実でないのか、多くの人は知りません。本人と、いま申し上げたようなきわめて小範囲の人たちだけしか知らない。しかし、非常にきびしい条件、そういうものがある。それに乗らなければだめなんだ。じゃ厚生省が求めるような、そういうものを具備するのに短時日でそれが立証されるのであろうか。なかなかそうはいかないんです。だから、私はこの異議申し立て期間というものも、これを撤廃をしなければならない。私どもはそういう考え方の上に立って、その期間の規制もはずしているわけです。これに対しても、どのようにお考えになるであろうか、お答えをいただきたいと思うわけです。  それから地方自治体に対するところの負担の問題等々に対しましては、先ほど来大原委員からお話もございました。健康保険に対する地方自治体の負担は大きい。ましてや、この介護手当について、地方自治体に対して直接負担をさせておるという、このことも私は適当ではないと思います。これも当然国が全額を負担していくのでなければならないと考えます。私どもはそういう考え方の上に立って、これも全額国が負担をするということにいたしているわけであります。  それから原爆二世の問題、大原委員は動物実験の結果の問題等々から、当然これを対象にすべきであるということを要求をいたしました。厚生大臣もこれに対しては十分調査研究は進めていかなければならぬというお答えはございました。しかし、私は端的に申し上げたい。現実に被爆二世あるいは三世が原子病におかされて苦しんでおるではないか、あるいは死んでいっておるではないか、あるいは自殺をしておるではないか、この現実をどうあなた方はお考えになるのか言いたいんです。さあ調査研究だ、私は決してそれを粗漏にしろとは言いません。しかし、この現実に目をつむることができるのか。それでは被爆者の二世、三世以外の若い青年子女、戦後に生まれたそういう人たちと、原子病にかかっているものとの比較をあなた方はなさったのか。そのことをお考えになるならば、調査研究だというようなことだけによってこの問題が処理されるものであってはならないと思います。  私は、被爆者の二世、三世の全部を被爆者として扱えと言っておるのではありません。現実に原爆症にかかっておるこれらの人たちに認定被爆者として、あるいは特別被爆者として医療手当支給をして、あるいは健康管理手当支給するようにしなさい、こう要求しているのであります。これが無理な要求でありましょうか。さあ調査だ、研究だといって被爆者が納得するでありましょうか。あの広島で、あるいは長崎被爆二世の人たちがすわり込みをしておるというあの現実をあなた方はどうお考えになっていらっしゃるのであろうか。  私は、私どもが提案をいたしました数項目にわたりまして問題を指摘し、考え方を明らかにして、あなた方の見解を伺ってみたいと思います。
  80. 滝沢正

    滝沢政府委員 先生御指摘の異議申し立て等をなくしていくということに関連して手続が非常にむずかしいということでございますが、この点につきましては現地からもいろいろ見解がございまして、やはり私どもは福祉部会で検討すべく一つの——従来の医療部会だけでは、このような問題について論議が十分できませんでしたので、この点については窓口の相談業務の強化とともに手続上の問題については検討いたしたいというふうに考える次第でございます。  それから法外援護と申しますか、県単、市単独でやっておる事業に対する国の補助ということでございますが、この点は、先ほど御質問にお答えしたようなわけでございますけれども、実は、原爆対策全体を考えますと、原爆被爆者の大宗は広島長崎におられるわけでございますが、原爆被爆者全体というものは、やはり各都道府県にもおられるわけでございますので、これらの関連等を考慮いたしまして、国が全体の被爆者にどういう施策を起こすことが可能であり、また必要であるかというような点から検討し具体化をはかってまいりたい、このように考えております。  それから二世の方々の現実に病気になる具体的な姿について先生からの御指摘がございましたが、この点につきましては、確かに、原爆症と非常に関係の深い、あるいは原爆症——被爆者であれば、それに認定されるという疾病でなくなられる、あるいは罹病しておるという状態のあることを承知いたしておりますけれども、これが原爆との、いわゆる放射能との関連という見解について明快なものがございませんので、非常に率直に申しますと、広島長崎、あるいは被爆者以外の方にも日本人の中に起こり得る病気という姿でございます。そういうようなことも踏まえますと、おっしゃるお気持ちに、私は決してそれを否定するとか、あるいはそれに冷たく答えるという気持ちではございませんけれども、ただいまの制度上は、この問題については被爆者以外に、いまの制度を広げることはできないことでございますが、今後この二世の発病なり、あるいは疾病の根拠が、いわゆる被爆者の二世であるという立場を遺伝学的の解明等を待ちまして、それに対する施策を講ずる必要があるということであれば、当然その方向で検討しなければならないというふうに思うわけでございます。  原爆の現実を実際に体験され承知しておられる先生の御発言と、私はやや医学的な点を踏まえてたいへん率直なお答えになりますけれども、そういう点については今後の解明を待って対処しなければならない、こういうふうに考えております。
  81. 中村重光

    中村(重)委員 私どもはよく原爆病院に行くのですが、二世、三世が入院しているのですよ。入院しているのだけれども、医療手当支給もなければ、原爆手帳を持ってませんから、普通の健康保険で五割を負担し、あるいは三割を負担しているというのが実態なんです。だからあなた方は、ただ医学的な点からの研究ということだけではなくて、その実態をまず見て、それから、あなた方は研究の問題とあわせて対策を講じられる必要があるということ。病院長なんかも現に言っています、どうしてこの人たちを被爆者として扱ってくれないのだろうかと。被爆者の声だけじゃないのですよ。病院当局がそう言っているのです。お医者さんが言っているのですよ。  次にお尋ねしますが、被爆者の相談員の制度を今度は設けられることになったわけですね。それから前回の私の質問に対しまして、私は援護審議会をつくれという強い要求を絶えず主張し続けてまいっておりますが、内田前厚生大臣は、そうあなたが言うなら、援護審議会は自分の権限ではできないが、自分の権限でできることをやります、医療審議会の下に援護部会をつくります、こう答えられました。それで援護部会ができるであろう、そして援護部会は援護の名にふさわしい委員の構成なり内容の取り組みをしてくれるだろう、こう私は大きく期待をいたしておったところでありますが、援護部会がいつの間にか福祉部会というように名称が変わってきております。えらい援護をおきらいになる。そのことも私はわかりませんから、どうして前厚生大臣援護部会をつくると、はっきり私の質問にお答えになったのに、これを福祉部会と変更になったのであろうか。それからどのような人をもって委員の構成をなさいますか、どのような内容を検討されるのか、予算的にはどのような措置をしておられるのか等々について、相談員の問題とあわせてお答えをいただきたいと思います。
  82. 滝沢正

    滝沢政府委員 先ほどのお答えの中に一つ落としましたが、先ほど先生が例示されたような小児ガンに相当するものでございましたら、昨年から厚生省の小児ガン対策の一環として費用を自己負担分に対して公費によってお世話する制度が生まれておりまして、具体的な十八歳未満の小児ガン、特に白血病等、長崎のあの新聞に報道されました例のようなケースについては、一般的なそのような小児ガン対策で対応できることを申し落としましたので、つけ加えておきます。  それから相談員につきましては、実は予算要求の中では検討されましたが、今回は予算としては入っておりません。窓口の強化、事務のあり方について福祉部会で十分検討した上でこの問題は考えようということで、一応次年度以降にこの予算獲得と、各府県にまたがるこの制度の確立については、もうしばらく検討さしていただきたいと思っております。  それから福祉部会援護部会の関係でございますが、私の昨年度の国会における議事録を点検しました記憶から申しますと、内田大臣は、援護部会と申しましょうか、福祉部会と申しましょうかというようなことを言っておられまして、先生のお気持ちの援護という気持ちはわからぬことはないが、やはり特別措置法の中の第一条(目的)の最後は福祉の向上をはかるということで、立法の精神がやはり福祉の向上ということでございますので、われわれとしては福祉部会ということで、できるだけ従来足りませんでした、いろいろのきょうお答えの中にも申し上げておるような問題に取り組みたいということでございます。  具体的な予算内容といたしましては、従来の審議会の委員二十名以内に専門委員十名が新たに認められましたので、一応総会という形の下に具体的に医療部会と福祉部会を置きたい。両部会は、委員をそれぞれ分けまして十人、専門委員はそれぞれ五人程度で、十五人の編成でいきたい。これがただいま検討しておる点でございます。  そして医療部会は、従来の開催回数よりも開催回数を多くしませんと認定がおくれるというような御批判もございますので、予算上は毎月一回開催できるような予算措置になっております。福祉部会については四半期ごとに、年四回。予算の要求あるいは成立、その途中のいろいろの実態調査等を踏まえて、福祉部会の活動が予算上は四回認められております。被爆者の福祉の向上に関するいろいろの重要事項を調査、審議するという形と、基本的にはいま申し上げたような福祉の向上に関する重要事項を調査、審議する。それから被爆者実態調査に関して、今後と、従来やりました実態調査の結果を踏まえ、ただいまお尋ねのございました法外援護と申しますか、県単独でやっておる事業の全国的視野からの検討というような問題に取り組みたい。これの人選につきましては、先ほど長崎広島等の衛生部長医療の審議会に参画している事実を踏まえまして、私の段階では少なくとも一人長崎広島民生部長を加えたいということが気持ちにございますので、具体的に例示的に申し上げましたけれども、委員全体の構成を、従来の委員専門委員とを兼ね合わせまして、どういう方にどういうふうにお願いするかという点についてはまだ検討中でございます。
  83. 中村重光

    中村(重)委員 相談員の点は私あなたに一度御連絡申し上げたことがあると思うのですが、被爆者方々も相談員制度に非常に警戒的だったのです。どういった人を相談員に任命されるのか、いろいろ干渉がましいことをやられては困る。むしろ相談員制度を設けられるならば、ほんとうに被爆者のことをわかっている。被爆者の中から相談員を選んでもらう、そういうことでなければごめんこうむりたいというような被爆者団体の方々意見であった。今回は具体化していないようでありますから、将来検討されます場合、それらの点を十分参考にして、被爆者方々が喜ぶような相談員でなけれげならない、こう申し上げておきたいと思います。  それからいまの援護部会が福祉部会になったという問題につきましては、いろいろ申し上げたいのですけれども、そのことは後日また申し上げたいと思います。  被爆者全体の福祉とおっしゃいますが、こはれ非常に広範にわたるであろう。私どもがいろいろと指摘をいたしてまいりました、私どもの提案いたしておりますこの援護法の中に盛られておりますような手当の問題、あるいは所得制限をなくする問題等々、広範にわたってこの福祉部会の中で検討されるものである。そしてまたできるならば、私はこのメンバーに被爆者団体の代表くらいは加えていくというようなことが必要であろう、そのように思います。  いつでも申し上げておることですけれども、いままで旧地主に対する補償であるとか、あるいは引き揚げ者に対する補償、この点は私どもは賛成いたしましたが、どちらかといいますと、いままで補償なり報償をいたしましたが、これらはその団体の方々だけが中心でありました。しかし被爆者に対するところの援護強化は、三十八年の東京地裁の判決を受け、三十九年に両院で「原爆被爆者援護強化に関する決議」を行ない、そしていま政府が提案いたしておりますような特別措置法ができ上がる当時から、私どもは援護法を主張してまいったところであったわけであります。それらの点等考え、いま国民被爆者に対しては何とか手厚い措置を講じなさい、これが国民の声であり、国会の意思である。そのことを十分考えられて、福祉部会の審議の内容あるいは委員の構成を十分配慮していただきたい、このことを申し上げたいと思います。この点は斎藤厚生大臣からひとつお答えをいただきます。
  84. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 いままで局長が今日厚生省考えております現状について御報告及び御意見を申し上げました。いろいろと御意見を承りまして、そういう御意見も十分参考にいたしまして、今後の進展を期してまいりたい、かように考えます。  ことに最後におっしゃいました点は、まことに重要な点だと思いますので、十分御意見を体して進めてまいりたい、かように考えます。
  85. 中村重光

    中村(重)委員 これは局長からお答えいただいてけっこうですが、私はもう距離制限を撤廃されたらどうかということを端的に申し上げたいのです。特別被爆手帳を持っていない被爆者はもうほんのわずかになりました。ところが、被爆者の感情としまして、実に割り切れないものがあるのですよ。二キロ以内、三日以内というのに特別被爆手帳を交付する、そういう制度ができているわけですね。東京にいた人が三日以内に広島、長椅に行ったら、それは特別被爆手帳をもらえるのです。ところが、長崎の場合はそういう限られた地域にいた人でなければ特別被爆手張は交付されていないのです。ところが影響はないのか。特別被爆手帳の交付範囲の外にいた人たちは、熱線であるとか爆風であるとかでいろいろと影響を受けているのです。これらの人たちは特別被爆手帳をもらっていないのです。これらの人たちは言うのです。初めは、七十年間草木もはえない、こういわれておった。ところが、青々と被爆地には草木がおい茂っている。二次放射能にすぐおかされるといわれたけれども、必ずしもそうではなさそうだ。事実、おかされている人たちもいるのですよ。ところが、二キロ以内、三日以内に、どこか遠いところにいた人が入ったということだけでもって特別被爆手帳が交付されるのに、長崎広島にいた人がどうして特別被爆手帳が交付されないのか。これは両市にいた被爆者のほんとうの感情であり、不満なんです。普通手帳を持っている人はほんのわずかです。この際、距離制限を撤廃して特別被爆手帳を交付する、ここまで踏み切ってよろしいのではないかと思いますが、いかがでしょう。これはあとで大臣からお答えください。
  86. 滝沢正

    滝沢政府委員 この問題につきましては、私たちもいろいろ研究してまいりますと、確かにいろいろ整理すべき問題があるようにも感じられますけれども、具体的には特別被爆者の数が年々、施策の進展も加えましたり、あるいは老齢化等の問題もありまして、数字的に申し上げますと、四十一年の三月三十一日と四十六年の三月三十一日のこの数字を比較して、四十一年の三月三十一日を一〇〇といたしますと、特別被爆者が一二九・五というような増加の状況でございますが、一般被爆者のほうは八〇・三というふうに減少してまいっております。一般被爆者の中で死体処理に当たられた項目の該当者が最近ふえておるという点だけが一般被爆者の増加の条件になっております。したがいまして、先生のおっしゃる三日以内に入市という問題が、放射能の測定というものを根拠にいたしまして、三日を経過しますと、その土地ではかり得た放射能のいわゆるレントゲンの量が人間にとって安全だというところまで落ちたという事実で、三日以内というものが私の理解している範囲ではきめられておる、そういうようなことも踏まえますと、先生のおっしゃる個々の実態に合わせますと、やや矛盾した面は残ると思いますが、しかしこの制度は、特別被爆者等の取り扱いその他が全部法律上定めてある事項でございますので、この点については施策の進展によってその差がないような方向に当面は努力したい、こういう考え方でございます。
  87. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 距離制限の点につきましては、おそらくこの法律をつくりましたときに相当検討を重ねた上でこういう距離をきめたのだろう、かように思います。御意見の次第もございますから、特にいまの距離が適当であるか、あるいはそうでないかという、ただこれは感情問題ではなくて、事実問題として、この距離のきめ方が狭過ぎたという実証といいますか、そういうものを見きわめて検討いたしたいと存じます。  いま特別被爆者手帳の請求者が非常に多くなってきた、こういう報告を局長もいたしておりました。実は私も特別被爆者手帳をもらう資格がありますので、先般二年ほど前、大臣になる前でありましたが、あなたももらわないかと、一緒に行った人が言ってくれましたが、私はそう病気もしないからと言ったのですが、年をとってくると、だんだん病気にかかりやすいからということでござました。そういうような意味で、この特別被爆者手帳の請求が多くなってまいったのだろう、かように考えますので、いまの立法がそのままでいいかどうかということは、御意見を踏まえまして検討いたしてまいります。
  88. 中村重光

    中村(重)委員 私は無責任に言っているんじゃないのです。その特別被爆手帳を交付される境界線、これはどこに境界をきめても、そこではずれたところは文句が出るのはあたりまえのことなんです。それから二キロ以内、三日以内、これを、だめなんだから撤廃しろというような考え方は毛頭持っていない。事実、これは二次放射能におかされている人が救護作業を——私も当日から救護作業をやったわけですけれども、遠くから来た人が救護作業をやっているのです。それはそれでいいのです。それももっと五日以内くらいに緩和されたらどうか、こう申し上げたい。  それはそれとして、ともかく両市、その周辺、熱線、爆風、それに影響を受けたような地区は、もう距離制限を撤廃して、それで特別被爆手帳を交付する。そこまで踏み切られる必要がある。もうその段階にきている、こう申し上げたい。それは程度の差はありますけれども、影響を受けていることは事実ですよ。健康を阻害されていることも事実なんです。  それから、近距離被爆者——私も分厚い、精細に調査した資料を持っているのですが、近距離にいた被爆者認定被爆者に変更する必要があるという要求は、無理もないと思っている。この点は、厚生省、どうも非常に頑強にこれに抵抗していらっしゃる。この近距離被爆者に対しては認定被爆者としての取り扱いをするということもほんとうに真剣に取り組んでみてもらいたい、こう思います。  それから、いろいろとお尋ねをし、問題提起をしたいこともあるのですけれども、時間の関係がありますので省略をいたしますが、いま健康管理手当の申請をするにいたしましても、あるいは更新するにいたしましても、非常に手続がうるさい、手数料を取られる。一回一回、医者の証明が要る。ところによりましては、申請をします際に毎回医者の診断書をつけなければならないというようなこともあるのです。非常に煩雑なんですね。だから、被爆者団体がかわって費用を負担してやったり、それからいろいろな手続をしてやっているという実態もありますが、そういった点はほんとうにサービス精神を発揮して、調査もし、被爆者実態に即するようにひとつやっていただきたい。  それから健康管理手当支給を受けますために医者が出します診断書ですが、この「障害の種類」というので八つが記せられてあるのです。それから「疾病と原子爆弾の放射能の影響との関連」というのに、一放射能の影響によるものであることが明らかである。」というのが1。2が「放射能の影響によるものでないことが明らかである。」、3が「放射能の影響によるものであるか否か不明である。」、この三つのどちらかにまるをつけろ、こういっている。医者はなかなかそう簡単に1と3とにはまるをつけられにくいのです。どうしても「放射能の影響によるものでないことが明らかである。」というのにまるをつけがちです。これは厚生省は非常に無責任だと言っています。これはどういう点が無責任というのかということ等も私は詳しく伺っておりますが、もう時間がありませんから、それはあなたのほうでひとつ被爆者団体の声を聞いてください。そしてこれも実態に即するようにしてもらいたい。ほんとうに厚生大臣がお答えになりましたように、被爆者に対する手厚い措置を講じていこうとする考え方であるならば、逆の作用をなしておるこの事務手続、いろいろな処理に対して、これを改めるようにしていただきたいということを強く求めておきたいと思います。  それから、厚生大臣から先ほどもお答えがございましたが、この公務障害によったもの、いわゆる先ほどは防空業務に従事をしたというようなお話がありました。端的に申し上げまして警防団員です。それからいま七万円の見舞い金を受けております人たちとしては長崎医大の学生、看護学校の生徒というのがあるわけですね。これらの人たちに対しては七万円の見舞い金支給をして、これで終わりだという考え方を持っていらっしゃる。これは適当ではない。当然総動員法によって軍人軍属遺族等援護法の対象になっているものが、動員学徒であるとか、徴用工というものが対象になって扶助料を現にもらっている。あるいは先ほど申し上げましたように、障害を受けた人は障害手当をもらっている。ところが、いま申し上げた警防団員とか、それから医大の学生とか看護学校の生徒とか、いわゆる防空業務に従事した者、医療従事者というものが、その軍人軍属扱いにされていないということは、私はこれは問題であると思っております。  しかし斎藤厚生大臣は、前回大臣をしていらしたときに、先ほどもお答えがありましたような、同じような趣旨の御答弁をなされております。これらの人たちに対しましては、当然国家補償的な、援護法的な考え方考えるのも一つの考え方だが、「それも含めまして前向きに検討してまいりたい、かように思うわけでございます。現在のたてまえのような社会保障的な特別措置ということでありますと、すでになくなってしまった人にさかのぼってするということは、ちょっと筋道が合いません。しかし、原爆被害に対する特別措置を、現在のようなたてまえでなくて、国家補償的な援護法的なものに変えるべきじゃないか、こういう御意見も先ほど山田さんからもございました。これは一つの考え方だと思います。そういう方向について全体として検討いたしたい、かように思います。」と答えております。私は、防空法に基づくところの扶助令でもって警防団員特別支出金を支出したのではないかということについてお尋ねし、これは松島、当時の消防庁長官からずっとお答えがあっておりますが、斎藤厚生大臣からなお非常に積極的な御答弁があっておりますのは、私が「防空監視員は軍属と同じくした、公務で死傷した者を援護法の対象とすべく検討中である、」これはその後対象になっておりますが、「原爆に限定しない、公務従事中による死傷者全部を含めるのだ、こうお答えになっておられます。これはいま私が申し上げましたように、防空業務に従事中、あるいは医療従事者のように教育訓練を受けておるというような場合、具体的に申し上げますと警防団は言うまでもない。それから看護学校の生徒あるいは医大の学生、あるいはその他いわゆる防空法に基づくところの業務に従事した者ということになるわけですが、そういうものを称して公務ということになるのだろう、大臣もその意味でお答えになったのだろうと私は思うのですが、いかがでございますか。」と、「そういう意味で検討をいたしたい、かようにお答えをいたしました。いまもそのとおり考えております。」こういうことで、それじゃいま検討しておるということであるが、次の国会で取り上げていくということを大原、山田委員にも答えているが、その点考え方は変わらないかということに対して斎藤厚生大臣は、「できるだけ間に合うように援護問題懇談会でも審議をしていただきたい、かように思っております。なかなか調査その他がめんどうな点もあろうと思いますが、できるだけこれを克服して、次の国会には実現のできるように進めてまいりたい、そういう気持ちで検討いたしております。」とお答えになっているわけであります。  これは具体的な私の、あるいは大原委員、当時の山田委員質問に対してのお答えでございます。ところが今日に至りますまで、まだ警防団員に対しましても、あるいは長崎医大の学生に対しましても、あるいは看護学校の生徒に対しましても、七万円の見舞い金支給されただけ、少しも前進をいたしておりません。これに対してどのようにお考えになっておられるのか、どう措置されるのか、この点をお答えをいただきたいと思います。
  89. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいまお読みになったのは四十四年のときの質疑応答ではなかろうかと思いますが、そこでそういうようにして検討を進めました結果、私がいなくなってからでございますが、四十五年にいまおっしゃいました手当というものができた、また監視員等についても、これは軍属扱いをするとかいうように、そのときの私が発言をいたしましたようなことを踏まえて検討いたした結果が四十五年の改正になったと御了承をいただきたいと思います。私は、さらにこれをもう一度再検討する必要があるかどうかということになりますると、四十四年に申し述べまして、その後審議会等で十分審議をしていただいて結論を出していただいたわけでございますから、一応この問題はこれでケリをつけてもらいたい、こういうようにただいまの心境では思っておるわけでございます。
  90. 中村重光

    中村(重)委員 それは私はおかしいと思いますよ、大臣。先ほど大原委員から防空法に基づいて質問がございましたね。それに対してあなたは、前回もそういう答弁をしたと私は記憶をするということで、防空従事者に対しての、いわゆる援護法の適用についてのお答えがあったではございませんか。そうでしょう。私がいま申し上げましたのは防空業務に従事した人たちなんです。警防団員、医療従事者であります。私も当時警防団員でございましたが、警防団員は当時出動いたしておりました。それぞれの任務についておりました。そしてそれらの人たちは死亡いたしておるのであります。これが今日ただ七万円の見舞い金支給されただけで、そのまま放置されておるわけであります。医大の学生、これは戦時教育令によって、より戦争目的に沿うために、いわゆる速成教育を受けたのです。医者がどんどんどんどん第一線に出ていく、もう国内には医者がいなくなる、早く速成教育をやって救護もやらせなければならない、治療もさせなければならない、また第一線にも送らなければならない、こういうことで戦時教育令というものが発動されて、夏休みも本人たちの意思ではなくてゲートルをつけて防空訓練もやらされて、あるいは焼夷弾攻撃があると、そこに救護作業に出動して、明らかに医療従事者としての防空法に基づいての行動、それをやってきておるのです。防空監視員と異なるところはありません。動員学徒、徴用工と異なるところはありません。これがどうして今日まで放置されてよろしいものでありましょうか。いま大臣がお答えになりましたように、四十五年の改正によってけりがついた、もうこれでおしまいにしてもらいたい。そういうことでは、前回の具体的な私の質問に対し、あるいは大原、山田委員質問に対する答弁、これに食言をすることになると思う。さらに、先ほどの大原委員質問に対するあなたのお答えに対しての食言にも私はなると思います。そういうことであってはならないと私は確信をいたします。  私はここで具体的に、戦時教育令の問題であるとか、国家総動員法、学徒勤労令、学徒勤労令施行規則、あるいは決戦非常措置要綱に基づく大学教育に関する措置要綱、あるいは医学関係学校臨時短縮に関するいろいろな問題について、これは先ほど大原委員から指摘がございましたが、そのときあなたは総務局長でございました。そのときに、その方針を軍と話し合いをして決定して、それぞれ下部におろして、そういう組織がなされているわけです。学校は学校として報国隊あるいは防護団を結成をして、それぞれの業務に従事をしてきた人たちなんです。これがどうしていまのようなお答えが当を得た答えということになりましょうか。いかがでございますか。
  91. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私が申し上げましたのは、四十四年の二月のときに、防空法等によって特に命を受けて防空業務に従事をしたというような者については、これは援護法のような考え方で対処をしなければなるまいか、同じ防空業務といいましても、国民全部が防空業務に従事したわけでございますから、そこで、警防団の方々になりますと、特に命を受けた者とそうでない者とのちょうど境目になってまいります、それらの点は十分検討いたしますということを私は申し述べました。そこでその結果、防空業務に従事した者の中で、防空監視員は取り上げよう、それから、いま一時金で済ましたとおっしゃいますが、それらも援護法の中に取り上げて一時金の支給にしようというようなことで、いろいろ検討の結果、そういう結果になりましたと、こう私は申し上げているので、さように御了承いただきたいと思います。
  92. 中村重光

    中村(重)委員 違うんです、それは大臣、錯覚を起こしていらっしゃる。あなたが厚生大臣になる前にそういう見舞い金支給されたのです。あなたがああいう答弁をされたあとに支給されたのじゃありません。
  93. 中村一成

    中村(一)政府委員 私、かわってお答えいたしますが、警防団員に対しますところの見舞い金が四十四年、四十五年、医療従事者に関しますところの見舞い金が四十五年と四十六年に支給されているわけでございます。
  94. 中村重光

    中村(重)委員 園田厚生大臣はあなたの前の大臣でいらっしゃいます。ですから、その支給をした時期は、時間的にずっとずれていると思います。七万円が決定をしたときは、文部大臣は有田さんです。そのころ、あなたは大臣ではございません。だから、それは違う。そういう七万円の見舞い金であってはならない。だから私は、それではいけないというので、いま申し上げたような、ずっといろいろな資料を実は調べまして理論展開をしてきたのです。そして、園田元厚生大臣の答弁が引き出された。たとえば、園田厚生大臣はこう言っている。実本元援護局長が、授業中であった、だから防空業務従事中じゃなかった、だから支給されない。こういうことに対して園田厚生大臣は、その瞬間教室に入っておったか外におったかということを問うべきではない、学生がどういう環境の中に置かれておったかということを問題にしなければならない。それによって援護法の対象にするかどうかということをきめることが筋であると答えております。そして、あなたの答弁はより前進をしておるりっぱな答弁なんです。りっぱな答弁であるということは当を得た答弁であるということなんです。それが残念ながら、現実にはそういうことになっていない。だから、そういううしろ向きの答弁ではなくて、もっと前向きに、先ほど大原委員質問に対してお答えになりましたように、実態を十分調査して、あなたの答弁の趣旨に沿った形で、それぞれの措置が講ぜられるようになさる必要がある。私はこう申し上げるのですが、いかがですか。
  95. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私は昭和四十三年の暮れに前の厚生大臣を拝命して、四十四年の二月にそういう答弁をして、それから防空監視員というものを援護法で見るようになったのは、その後の十月です。それから四十五年の一月であったと思いますが、私はやめました。そのすぐ後でございますが、先ほどおっしゃいましたような点ができました。私は四十四年の二月にそういう答弁をし、これらの防空法に基づく防空業務従事者というような人たちについて十分検討してもらいたいと言って、審議会でいろいろ審議をしてもらって、そしてそういう結果になったと私は承知をいたしております。  それが成就いたしましたときには、私はもうやめておりましたけれども、あの結果がこれで実ったな、かように私は思っておったわけでございます。しかし、これで十分とは思いません。思いませんが、一応、当時十分審議会等で審議をせられた結果でございますので、そのときの審議の模様等ももう一度見直してみたいと思いますが、私が前に申し上げました趣旨に従って、審議会でも十分議論をしてもらって、その程度にとどまったということでございますので、その点はひとつ御了承をいただきたい、かように思います。
  96. 中村重光

    中村(重)委員 あなたがそういう答弁をしたのは、四十四年五月七日の社会労働委員会の答弁です。そのとき松島前消防庁長官が——同じ議事録に載っているのだからね。私はこう質問しているのです、松島さんに。  防空法に基づくところの扶助令でもって警防団員に特別支出金を支出したのではないのか——支出したあとですから。これに対して松島さんは、防空扶助令による支給を受けないうちに受給権が消えてしまった方は気の毒だから何とかする必要があるのではないかという発想に基づいて考えられた制度だ、必ずしも防空扶助令そのものを今日に引き直して支給するという考え方ではないのであります。——支給をした結果について私が質問した。それから先、あなたの答弁と、こうなっております。だから、支給したあとなんです。援護局長がいま何か調べてお答えになったが、ずっと支給するのがずれて、おそらく早く支給したのと、おそく支給したのとでもって、そういう答弁をされたのでは、これは話にならない。だから、少なくともあなたが前回の厚生大臣のときにお答えになったこと、それから先ほどの大原委員質問に対してお答えになったこと、その答弁にはやはり責任を持っていただかなければならぬ。  私は、きょうあなたは非常に前向きの答弁がいろいろな面であった、医療費の問題しかりであります。だから敬意を表しておる。被爆者も喜ぶであろうと思う。ところが今度は、私の質問に対してうしろ向きになった。斎藤厚生大臣というのはどういう人だ、ぐるぐるネコの目のように変わる。これは佐藤総理大臣どころの騒ぎじゃないという非難もあなたは受ける、それではいけないと思いますよ。だから、少なくとも答弁には責任をもって、誠意をもって取り組んでいくという態度でなければならないと思いますが、そういう姿勢でもって対処しておいでになりますか。
  97. 中村一成

    中村(一)政府委員 事実関係を私から御説明申しますと、先ほどもあるいは申し上げたと思いますが、警防団関係に対しまする見舞い金を自治省が支出いたしましたのは、会計年度といたしまして四十四、四十五でございます。それから、医療従事者に関しましては四十五、四十六会計年度で計上されておるわけでございます。したがいまして支給されますのは、役所の事務の都合上、四十四年と申しましても、結局は、四十四年の春から準備をいたしますと、四十四年の最初の受給者が出始めますのは、やはり夏から秋にかけてではないかというふうに考えております。  それから旧防空従事者扶助令という昭和十六年の勅令がございまして、それによって扶助金の話を先ほど御指摘ではないかと思うのでございますが、これにつきましては昭和十七年、十八年、十九年、二十年と支出されておりまして、たとえば昭和二十年におきましては百九十三万五千三百四十円が支出されたというふうな記録がございます。(中村(重)委員「そういう事務的なことはよろしい。議事録できちっと質問しておるのだから」と呼ぶ)
  98. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私が前にやめまして後、若干の進展をいたしておりますが、それは私がそのときに申し上げました——私はいまもそのとおり考えておるのでありますが、審議会の審議等でどういうことが論じられ、どういう結果で今日になったかということを、もう一度よう内容を調べてみまして、私の意に染まなければ、またさらに再審議してもらおう、かようなことにいたしたいと思います。
  99. 中村重光

    中村(重)委員 私の意に染まなければというようなことであってはならないのですよ。警防団員のことは、いま私が議事録を読み上げたのでおわかりのとおり、その際、警防団員のことだけを言っているのではない。大学の学生、看護学校の生徒、それに対するあなたの答弁というものが出てきておる。少なくともこの答弁には責任を持ってもらいたい。  先ほどの大原委員質問に対して、これはもう何年も前じゃない。先ほど大原委員質問に対するあなたの答弁をなされたわけだから、そうした答弁というのは、少なくともあなたの頭の中に、こうあらねばならないというお考え方が、ことばとして出てきたわけなんだから、そうした考え方の上に立って取り組んでいただきたい、こういうことなんですよ。それで、もう調べてみまして意に染まなければなんて、先ほどの大原さんの質問に対する答えだけだってはっきりしているじゃありませんか。
  100. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 いや、私は先ほど申し上げましたとおりなんですよ。  そこで、審議会の中でどういう議論でここにとどまってしまったか、もしその議論でこれはやむを得ないと思えばしようがありませんけれども、もっと検討の余地があるということであれば検討をいたす、かように申し上げておるので、気持ちとしては、前に申し上げたことと変わりがございません。  ただ、技術的にあるいは論理的に、私が前に答弁をいたしましたことが、こういうわけでできないんだということで納得せざるを得なければやむを得ませんが、意に染まないと言ったのはそういう意味でございまして、その気持ちを、実現するについてまだこういう方法もあるじゃないかと、これでやってみれないかということがあるならやってみたい、またそういう方向で検討をいたしたい、こう申しておるのであります。
  101. 中村重光

    中村(重)委員 これで終わります、時間が参りましたから。  どうもあなたのお答えというのは納得できないというのか、理解できないですね。防空法に基づいての先ほどの大原委員質問があったのですよ。これは、医療従事者も防空法に基づいているのですよ。警防団員しかりであります。それに対してあなたは、先ほどの答弁というものがなされたのですよ。いまのような答弁であるならば、先ほど大原委員質問に対して、ああいう答弁は私はあるべきじゃないと思うのです。  防空法に基づいて、警防団員の問題にいたしましても、あるいは医大の学生の問題にいたしましても、看護学校の生徒の問題にいたしましても、しさいに検討してこういう措置をいたしております。だがしかし、それに対して、なおいろいろ御意見がありましたから、その御意見に対して、まあ検討してみたいなら検討してみたい、あるいは、あなたがその意見を聞かれて、なるほどと思われたならば、そういう方向措置するようにしたいとか、そういう答弁が当然なければならないと私は思うのです。大原委員質問に対しましては、先ほどああいった答弁をしておきながら、私がいま申し上げておることと大原委員のきょう質問したこととは、内容は、ただ防空法という表現だけで大原委員はいま言われましたけれども、中身は同じなんですよ。具体的なことを私は言っているにすぎないんですよ。  だから、それに対しては、先ほどのお答えがありましたような、あるいは前回すでに七万円の見舞い金支給されたあとの質問に対するお答えなんだから、それによって答弁に責任をもって真剣にあなたは検討してみる、そしてできるだけその趣旨に沿っていくという努力がなされなければならないと私は思うのです。少なくとも大臣のお答えでありますから、私どもは信頼をするのです。期待をするのですよ。それがぐるぐるその答弁が変わってきたのでは、どこに私どもの信頼と期待、また三十万の被爆者方々の信頼というものが出ましょうか。その点を一つお考えにならなければいけないと私は思いますね。もう一度お答えをいただきます。
  102. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私は、大原委員にお答えをいたしましたのも、中村委員にお答えをいたしておりますのも、内容は変わっていないと思っております、もう一度速記録をよう読み直してみますけれども。  さきにも申しましたように、防空業務に命によって従事をしていた方は、これはまあ援護法で見なければなるまいと、そういう趣旨でこの前も申し上げました、いまもそう申しておりますと、そこで、命を受けてやった者というのはどういう範囲であったか、どうであったかということで、いまの結論が出ているわけでありますが、これで狭過ぎるかどうかということをもう一度検討してみたい、こう申しておりますので、気持ちはちっとも変わっておりません。さように御了承いただきたいと存じます。
  103. 中村重光

    中村(重)委員 納得いかないけれども、まあ前段の答弁は非常にいいんだけれども、あとが悪くなるのですよ、あなたは。前段の答弁をあとで打ち消してしまうから。そうでしょう。検討してみます、で、それで終わるんだったらいいんだけれども、それによって措置したんだから、それがそのとおりなされておらないとするならば、これはまた検討いたしますと、こういうことになってくる。  先ほどの大原委員質問に対しては、防空法によって従事して、そしてけがをしたり、なくなったりした人たちに対しては、当然それによって措置をせよという質問に対して、あなたは、前回もこういう答弁をしたと思いますが、私はそういった線に沿って対処するようにしたいという意味の答弁をなさったではありませんか。私に対しては、そういう答弁をしたんだけれども、そしてそれでやったんだけれども、なお調べてみて意に沿わなければこれは何とかいたしましょうと、こういうような答弁になってくるじゃありませんか。違うでしょう、大原委員の先ほどの質問に対する答弁と私の質問に対する答弁と。  前段はいいんだけれども、あとで打ち消すところがよくない、こういうのですよ。そうでしょう。
  104. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 決して打ち消しておるわけではございません。命を受けたという中で、いままでだけで——もっと広く解釈をしてやれないかどうかということをさらに検討する、こう申しておりますので……。
  105. 森山欽司

    森山委員長 この際、午後一時五十分まで休憩いたします。    午後一時十九分休憩      ————◇—————    午後二時二分開議
  106. 小沢辰男

    ○小沢(辰)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。古川雅司君。
  107. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部改正案について、若干お伺いをしてまいりたいと思います。  最初に、原爆医療法に始まりまして、現在この被爆者に対する特別措置法国家被爆者に対して必要な措置を講じているわけでありますが、国の施策と並行して広島県及び広島市、また長崎県、長崎市等において独自の事業も進めていると思いますが、その現状について、ひとつ詳しく御説明をいただきたいと思います。
  108. 滝沢正

    滝沢政府委員 広島長崎両県、市における単独事業の実施状況でございますが、広島県につきましては、健康診断受診奨励金の支給というものをいたしております。それから就職支度金支給、低所得者に四万円を支給いたしております。それから雇用奨励金支給就職支度金の受給対象者を雇用する事業主に対しまして、月八千円を限度として六カ月間支給する。それから被爆者の特別検診、一般手帳を所持している被爆者対象に、胃ガン検診、子宮ガン検診等を無料で実施する。国民一般も胃ガン検診、子宮ガン検診等を実施いたしておりますが、これに対して四十歳以上には胃ガンについて千円、子宮ガンの検診については三十五歳以上について八百円というようなことを実施いたしております。  それから四十七年度から新たに広島県といたしましては、認定被爆者弔慰金並びに被爆生活困窮者更生援護金、介護手当付加金、近距離直接被爆者特別検査促進手当、こういうようなものが出されております。四十七年度以前の四十五年度予算額は二千万程度でございます。  広島市につきましても特別の措置がなされておりまして、胎内被爆高度小頭症患者介護料、特別被爆者介護手当付加金、認定被爆者弔慰金被爆者奉仕員派遣健康診断受診奨励金の支給被爆生活困窮者自立更生資金、胎内被爆高度小頭症患者援護物品支給、こういうようなことで広島市は四十五年度に一千万程度の支出をいたしております。  四十七年度新規の事業といたしましては、近距離被爆者特別検査促進手当というものを出しておられます。  それから、長崎県と市は、これは一本になって実施しておる状況でございますが、被爆者入院患者見舞い金在宅認定患者見舞い金被爆者死亡弔慰金被爆者温泉保養所交通費被爆者入退院交通費被爆者就職支度金被爆者技能習得促進事業被爆者生活見舞い金被爆者内職あっせん事業被爆者特別福祉資金貸し付け事業というようなことで、県が九十一万円、総体で四百四十七万円ということで実施いたしておりますが、四十七年度の新規事業はございません。  以上が広島県、市並びに長崎県、市の被爆者に対する単独事業の実施状況でございます。
  109. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 広島県、市の独自の事業並びに長崎県、市の独自の事業について御説明をいただいたわけでありますが、その両県の間の独自の事業について著しい差がありましたら、その点もあわせて御説明いただきたいと思います。
  110. 滝沢正

    滝沢政府委員 いま申し上げましたような事項の中で、かなり共通的に認められます事項としては、就職支度金あるいは雇用奨励金というようなものが共通してございます。しかしながら具体的には、それぞれの県、市の実情に応じた対策を行なっておるようでありまして、必ずしも歩調を合わせて、あるいは内容等におきましても同一のものという感じはございませんで、かなりそれぞれに違いがある、それぞれの地方の実態と御要望に沿い、また財政その他の観点から、あるいは患者数の違い等による財政上の数字の違いも出てまいっておるのじゃなかろうかと思います。
  111. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 では広島長崎両県以外の県におきまして、こうした被爆者に対して県あるいは市で独自の事業を行なっているところがございましたら、その点もあわせて御説明をいただきたいと思います。
  112. 滝沢正

    滝沢政府委員 必ずしも正確かどうかわかりませんが、われわれのところに資料として各県の事業としてとりました点では、長崎広島に具体的な事例がありますけれども、よその県、市の具体的な事例は、全然ないとは断言できないと思いますが、資料としてはございません。
  113. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 いま私がお伺いした点につきまして、厚生省として掌握をしておかれる必要性はないのでございましょうか。
  114. 滝沢正

    滝沢政府委員 この点につきましては、先ほどもお答えしましたように、被爆者の大宗を占めておるのが長崎広島の県、市でございますけれども、われわれの対策全体としては全国の被爆者に対する対策を考慮する必要がございますので、そういう観点から申しますと、広島長崎でやっておられるこの単独事業福祉部会等で十分検討いたしまして、そして他の県市が実施してない分についても、これを取り上げることが被爆者の福祉の向上に役立つものであれば、これを検討いたしたいと思います。そういう面からも先生おっしゃるように、積極的に他の県市の事業内容というものを、一度福祉部会の検討する資料としても、とりたいというふうな気持ちでおります。
  115. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 この被爆者健康手帳の交付数の実態から見ましても、全国二十三万三千四十五人の被爆者の分布は、もちろん広島長崎に圧倒的に集中しているわけでございますけれども、他の府県においてもそれぞれ、特に県によりましては、かなり集中的に被爆者が実在するわけでありますので、そういった点、国以外に地方自治体として独自で行なっている事業実態については、やはりたんねんに掌握をして、いま局長がお答えになったような方向で、福祉部会でもけっこうでございます。それを中心に、さらにその内容を検討していただきたいと思うものであります。  そこで、国がこうした被爆者に対する特別措置法という法律をもって被爆者措置をしながら、なおかつ地方自治体でこうした独自の事業を進めなければならない、これは一体どういう理由によるものと政府では御判断をしていらっしゃいますか。  と申しますのは、被爆者対策につきましては、これまで数々の意見、そしてまた批判があるわけでございますが、私ども特に気にかかりますのは、被爆者対策は他の社会保障政策と比較をしてすでに上限に達している。これ以上高望みするのは無理だ、このように政府考えているのではないか、厚生省自体にもそういう空気が底流をなしているのではないかという、そういう不信や不安があるわけでありまして、そういったことも含めまして、私はいまお伺いいたしました。国の政策が十分であるとお考えになってはいないと思いますけれども、各地方自治体において、特に広島長崎を中心に、独自の事業を進めていることに対しての政府見解をお伺いしたいと思います。
  116. 滝沢正

    滝沢政府委員 いま資料で申し上げましたように、非常にきめのこまかい対策が実施されております。これはあのような大きな被害を受けた長崎広島両県市の県民の、またこのような対策に進んで応ずべきであるというそのお気持ちが、このようなこまかい問題に対処してまいったと思うわけでございます。われわれとしては、国全体の被爆者立場から、ただいま二つ法律をもちまして、いわゆる原爆被爆者が置かれました特別の状態であるところの、放射能の影響を受けておる健康の特殊状態というものに着目いたしまして、医療関係法律が先にでき、それから福祉の向上をはかることを踏まえまして諸手当健康管理手当等の支給を中心にいたしました、あるいは認定患者に対する医療手当等を踏まえた特別措置法ができた。したがいまして、いわゆる上限に達したというよりは、その基本的な考え方、条件と申しますか、基礎と申しますか、それはやはり社会保障の精神に基づく被爆者の特殊な状態を配慮したものとして基盤にあるものと私は思います。ですから、これを一つの上なり下なりの線と考えましたときに、今後われわれが福祉の向上をはかるという特別措置法の第一条の目的を踏まえますと、やはり長崎県市が実施しておられます事業を参考にいたしまして、全国の被爆者全体の立場を国としては考慮した上で、もっときめのこまかい法外の問題についての予算措置等による対策ということが今後必要であり、全体として原爆被爆者対策というものは充実していく必要があるというふうに考えております。
  117. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 大臣、いま局長がお答えになったとおりで相違ございませんか。  重ねてお伺いいたしますが、特に被爆者団体等を中心にいたしまして、厚生省原爆被爆者に対する対策は、厚生省自身がすでにこれはもう上限に達しているものであるという認識を持っているのだ、こういう批判をしているわけでありますが、この批判はいわれのないものであるかどうか、その点をはっきり御所見を伺っておきたいと思います。
  118. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 そういう御批判は、あるいは現状からいえば受けなければならないという感じも私はいたします。しかし、いま局長がお答えいたしましたように、私といたしましては被爆者に対する福祉の施策といいますか、援護施策といいますか、援護ということばを使いますと援護法というようなあれと同じようにということになりまして、援護法は身分に基づくものだからというわけで、そこで区別をしておりますし、いま御提案になりました皆さま方の考え方とその点は違います、こう申しておりますが、しかし実際の援護やり方というものは、いわゆるそれに近いものにまで進めていくべきであろう、私はかように考えます。  したがって、いまの限度でこれで十分だというように考えておりません。やはり今後ももう少し手厚くやっていく必要がある、かように考えております。
  119. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 そういたしますと、先ほど来局長の答弁でもお示しになったとおりでありますが、国の施策よりさらに一歩を進んで、広島長崎両県ではきめのこまかい施策をとっているわけであります。これは何も財政が豊かであって金があり余っているからやっているわけではないので、これも被爆者からいえばまだまだ満ち足りない、不満の多い施策であります。しかし国の施策がせめて第一段階として、そうした両県ですでに単独に行なっている事業の線までは追いつくべきであると、局長の答弁から非常にそういう点で積極的なお考えをうかがえたわけでございますが、大臣としては、この地方自治体の単独の事業に対して、国の今後の施策のあり方についてどうお考えか、その点伺っておきたいと思います。
  120. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 局長がお答えいたしましたように、福祉部会で検討いたしまして、国として取り上げるにふさわしい、また取り上げるべきだという結論がおそらく出るだろうと私は思いますが、その線に沿って国として手厚くやってまいりたい、かように考えます。
  121. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 全国三十三万人の被爆者の大多数がいわゆる被爆者援護法の制定を望んでいる。これはそのまま世論であるといっても間違いないと思いますが、昨年の八月六日に、佐藤総理大臣広島の慰霊祭に参加をいたしまして、その際の記者会見で被爆者対策を進めなければならない、前進させなければいけないとしながらも、この援護法制定についてははっきりと否定いたしました。これは被爆者の皆さんを取り巻く最近の情勢、特に原爆の風化というような表現をしておりますけれども、ともすると悲惨な原爆の犠牲が、経済繁栄の中に取り忘れられて、ともするとおろそかにされがちであるという、そういう情勢の中では、これは非常に重大な発言であったのではないかと思います。これはもう一国の総理が記者会見の場とはいえ、そういう態度を表明されたことについて、被爆者の皆さんは非常なショックを受けたわけでありますけれども、この点について、厚生大臣としては、総理の昨年夏のこの発言に対して、今後国民世論の動向によって、原爆被爆者援護法制定の一つの根底的な思想になる国家補償の可能性がまだありとお考えになるかどうか。首相がはっきりあのように発言なさった以上、全くその可能性は残されていないのかどうか。この点についての見解を伺っておきたいと思います。
  122. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 総理が援護法という考え方には賛成しがたいとおっしゃいましたのは、これは政府が、この被爆者特別措置法を設けましたとき以来の考え方でございますので、したがって、いままでの考え方をそのままお述べになったと私はさように理解をいたしております。援護法は、戦争公務に従事をして、そして戦争の被害にかかったという者を、いわゆる援護法という形でまとめておりますので、したがって、戦争公務に従事していたといえない者は、やはり体系は援護法でないほうの体系でいくべきである。しかし先ほど申し上げましたように、公務ではなかったけれども、その被害は、戦争公務に従事した人に非常に近い、あるいは場合によったら、それ以上の被害も受けておられるわけでありますから、内容は今後もっともっと充実していかなければなるまい、こう申し上げておるわけでございます。総理もまた同じ御意見だと私は思います。
  123. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 そうしますと、くどいようですが、今後また国民世論の動向いかんによっては、援護法制定の可能性もまだ残されていると理解してよろしゅうございますか。総理の昨年の広島における記者会見は決定的なものではない、このように私たち理解をしたいと思いますが、それでよろしゅうございますか。
  124. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 それは私が申し上げたのとは違っておりまして、援護法という体系に持っていくのには、戦争公務に従事した者を援護法でまとめている。そうでない者は他の体系でいく、この方針は変わらないであろう。   〔小沢(辰)委員長代理退席、伊東委員長代理着席〕 ただ、福祉といいますか、事実上の援護やり方は、もっともっと充実さしていくべきであろう、いまの体系の中において充実さしていくべきであろう、私は、かように申し上げておるわけでございます。
  125. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 被爆者の団体や、また私たちが援護法の制定を求めるその背景といいますか、その根拠、これを若干あげさしていただきたいと思いますが、その点についての政府見解といささかでもズレがありましたら、御指摘をいただきたいと思います。  まず第一に、すべての被爆者に精神上あるいは財産上の損失を補うための、いわゆる被爆者の年金を支給してほしい。これが一つでございます。  それから原爆死亡者の遺族に対して、ILO条約第百二号の水準で年金を支給してほしい。これが二番目の要望です。  それから第三番目は、原爆による外傷または内部疾患により労働能力を喪失した被爆者に対し、障害年金を支給してほしい。この年金は終身年金とし、最低額として本人の最低生活を維持できる金額にしてほしいということ。  その第四番目は、低所得被爆世帯に対し、生活基準を大幅に上回る特別援護手当支給してほしい。また被爆者が病気のため収入が減少する場合にも同様の手当支給してほしい。  こうした原爆被爆者としての特殊性、これはいまさらここで私がくどくど申し上げるまでもありませんけれども、そうした実情に即して、こうした施策を盛り込んだ、いわゆる援護法の制定という形で要求しているわけでありまして、この点についての御見解を伺っておきたいと思います。
  126. 滝沢正

    滝沢政府委員 この現行の二つ法律は、先ほども申し上げましたように、戦争による被害を受けました国民は、底辺に全般としてあるわけでございますが、その上放射能という特殊な影響を受けたという問題点に着目して、医療とそれから特別措置の二法が制定されております。これは社会保障という観点でとらえたものでございます。したがって、この損害に対する年金の支給というような、その立法なり考え方を具体的にしていく場合、これを援護——ただいま大臣がおっしゃいましたような戦争公務の従事者の援護法と同様の意味の年金ということであれば、現行の社会保障の基盤からは、これを取り上げることは困難だと思いますが、一般的な障害者に対する広い意味の、内臓あるいは四肢機能を含めた障害等に対する問題点につきましては、健康管理手当等の拡充によって、これにかえ得るというふうに私は考えるのでございます。  それから遺族に対する問題も、まさにこれは援護措置でございますので、ILO条約百二号のいわゆる社会保障の基準考え方から、その必要性というものは否定はできませんけれども、性格的に国民の全体の均衡を考慮しましたときに、この問題については、まだまだ問題点が残っておるというふうに思うのでございます。  原爆被爆者の労働能力の喪失に伴いますところの障害年金のような考え方につきましては、これは現行の健康管理手当の中に、年齢にかかわらず、八つの疾病にかかわらず、障害程度に応じて健康管理手当を出しておる制度がございますが、この点の検討は、十分この問題とのからみで私は将来改善の方向を検討すべきではなかろうかと考えるわけでございます。  低所得者の関係の問題につきましては、やはり社会保障の面として、生活保護という基本的な問題が一つございます。その上に、健康上特殊の被爆という状態に置かれた者に対する特別手当なり、あるいは健康管理手当なりの上乗せにつきましては、今後充実することによって、低所得者の特別援護手当的なものにかわることはできないかもしれませんが、それに近づけるという努力は可能であろうと思うのでございます。  死亡者に対する弔慰金等も先ほど申し上げましたことと同様、さかのぼって援護措置として実施するには、現行の法なり社会保障の——特殊な原爆被爆者の状態に着目した現在の立法では、この点は不可能であろうというふうに思うわけでございます。
  127. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 この原爆投下については、いまさらくどくど申し上げるまでもありませんけれども、いずれにしましても、二十六年前広島長崎で、いわゆる国家で引き起こされた戦争で、しかも国際法上違反とされている兵器によって被害を受けたわけでありまして、今日までその後遺症に苦しみ、そしてまた放射能のそうした影響が今日に残って、生活上にも重大な支障を来たしている、そうした被爆者方々に対しては、いわゆる社会保障的なとらえ方だけでは、これは非常に無理のあることでありまして、いまの局長の御答弁からも、大幅な救済の増幅は求められない、期待できないという感じを受けるわけであります。あくまでも、これは国家責任でということが被爆者の要求の大きな柱になっているわけでありまして、それをかわして、今後ただ単に社会保障的な見地で救済をはかっていくということは問題の本質を誤るのではないか、そのことによって、むしろまた被爆者対策におくれをとり、そして被害をさらに大きく残していくことになるのではないか、このように私たち感ずるわけでございますが、大臣、その点いかがでございますか。
  128. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 おっしゃいますように、被爆をされた方に対する特別な措置が、一般の社会保障の中では解決できない。そこで特別措置法をつくって一般の社会保障よりも手厚くした。その手厚くしかたが、これで十分かというと、必ずしも十分とは申し上げかねる。今後日本の社会生活の向上や、あるいは経済力の充実や、それと相まって、もっともっと充実さすべき面があるであろう、かように私は申し上げておるわけです。一例といたしましては、この所得制限なんかも、私のほうは将来は撤廃の方向でいくべきであろう、さように考えておるわけでございます。
  129. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 いま大臣のほうから、まあ被爆者の要求にこたえて諸手当所得制限の撤廃等もはかっているし、将来はこれはなくなる方向に持っていくんだという御答弁もあったわけでございまして、まあ、将来と申しましても、これはずっと先ということを含んでおるわけでありますが、きわめて近い将来にというふうに私たち判断してもよろしいものかどうか、これは、全くその制限をなくしてしまうという意味のはっきりした撤廃という構想なのかどうか、それはいつごろまでにという時間的な目標を示される程度のものであるかどうか、その辺伺っておきたいと思います。
  130. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私は、これは政府を代表してと、まだ申し上げる段階ではございません。私といたしまして、また厚生省といたしましては、できるだけ近い機会にこの特別措置にかかる所得制限は撤廃するように努力をいたしたい、かように申し上げておきたいと思います。
  131. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 あわせて、健康管理手当等の年齢の制限引き下げ、これは昨年の法改正の審議のときにも強い意見が各党から出まして、それを受けて、今回は大幅な年齢制限引き下げを行なったわけでございます。被爆者の実情に即して、さらにこれは進めるべきであると思いますけれども、この点はどのようにお考えでございますか。
  132. 滝沢正

    滝沢政府委員 われわれも、実は健康管理手当が、この原爆被爆者援護に近づける措置としてのいろいろの角度から検討しても、障害者の問題も含んでおりますし、母子家庭の問題も含んでおります。  そこで、もう一つが、この年齢の問題ということ。しかも、特別被爆者所得制限と、年齢制限と、八つの疾患をまず持つという条件といろいろからみあっておるということを考えますと、大臣からお答えがございましたように、所得制限の撤廃は当然のことでございますと申し上げたいほど、われわれとしては所得制限の撤廃は、実はなるべく早くやりたい。しかし、年齢制限については一つの、やはり健康上に着目した問題であるだけに、これを完全に撤廃するということは、これはなかなか大きな問題でございます。そこで、五十五歳まで二年引き続き下げましたが、これもやはり共済組合等の年令の制度が五十五歳というのが多いのでございまして、この点はまあ常識の線まで一応は引き下げたという感じでございます。  しかしながら、さらに原爆被爆者の健康の特殊な加齢現象、比較的年をとりやすい、からだにやはり不安を持っておる、こういうようなことを考慮しますと、もう少しやはり早くに——いまのままにしておきますと、だんだん老齢になっていくから、そっちに繰り込んでいかれるというままになってしまいますので、限界はある程度あろうと思いますけれども、年齢引き下げにつきましては、なるべく近い機会にさらに引き下げをはかりたい、こういう気持ちでおります。
  133. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 年齢引き下げとあわせて、この健康管理手当についてもう一つ問題が指摘されておりまして、いわゆる病気を予防する、発病を予防するという意味健康管理手当が設けられているのじゃないかと思います。そういう意味でも、いま御答弁ありましたような、その年齢の制限の問題が一つありますし、もう一つは、ここにいわゆる支給期間という制約があるわけでございます。病気を予防するというたてまえからすれば、むしろこの支給期間というのは廃止すべきではないか、そういう要求もまた非常に強いわけであります。この辺についてのお考え方、いかがでございますか。
  134. 滝沢正

    滝沢政府委員 この点につきましては、更新と申しますか、手当を受給する受給権の更新の時期が定められておりまして、造血臓器、循環器等の、やはり一度疾患があるときまりますと、そう簡単になおりがたいというようなものについては、三年というような定めになっておりますし、他の障害については、やはり健康を回復したりする場面がございますので、一応これは一年ということで更新のことを定めておるわけでございます。  病気の予防ということでございますけれども、まあ予防という考えを否定するわけではございませんが、現在疾患を持っておるということに対して、健康上特に配慮すべき必要がある人、しかもそれがなかなか、年齢といい、母子家庭という、あるいは障害者という条件のために、みずから自分の健康に配慮することが不十分になりがちな人に、この健康管理手当を出して、まあ予防もさることながら、悪化しない、いわゆる健康をできるだけ管理していってもらおうという意味でございますので、そういう意味からは、若干やはり医学的な条件を踏まえても、一年を二年にするか、あるいは三年を五年にするかというような議論は決して不可能ではないと思いますが、やはりそういうような支給の条件というものは残しておく必要があるのじゃないか。しかし、まあこの点の取り扱いは、問題が健康管理手当でございますから、あまりに手続その他が、福祉の面で受給者にいろいろ問題点があるならば、これらのこまかい点は従来医療部会等だけでは実態把握することが困難でございましたが、今回そういう手続上の問題等福祉部会であわせて検討し、なお医学的なそういう診断書の内容とか、先ほど来御質問のございましたような問題も、医療部会もあわせて検討いたしたい、こういうふうに思っております。
  135. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 被爆者の皆さんからすれば、この健康管理手当については諸制限を一切もう撤廃して、できればもう全被爆者に与えるべきだ、これは私は当然であると思います。いま答弁にもございましたけれども、それはいわゆる八つの病気の制限あるいは年齢所得、それからいまの支給期間、そういうものを撤廃して、なおかつ手当金額を増額してほしい、これはもう被爆者の切実な願いでございます。   〔伊東委員長代理退席、谷垣委員長代理着席〕 局長の御答弁は非常に慎重なかまえでございますけれども、大臣、この点ではいかがでございますか。
  136. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいまの局長の答弁につきましては、私も大体同じように考えておりますので、やはりこの健康の状態というものに着目して健康管理手当というものを設けているわけでございますから、これが合理的に、期間の延長をしなければならぬとか、いろいろの点もあるかと思いますが、それらの点は、やはり科学的に合理的な理由が発見されれば、それに従って変更をしていく、これが当然ではなかろうか、かように考えております。
  137. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 先ほどこの席から中村委員が、御自身、被爆者としての実感から数々の主張を述べられていたわけでございますが、この健康管理手当、どうも大臣の御答弁を拝聴しておりましても、何か被爆者としての健康の実態、健康状態の実態をあまり御存じではないのではないか、御理解が薄いのではないかと思います。非常にいまぴんぴんして元気そうに見えても、ある日突然に症状が起こって、そして床についていく、そういうようなことは、もう広島長崎等においては特にしょっちゅう私たち、目にすることでありまして、そういう意味でも、病気を予防する目的ということが、被爆者には強くまた求められているわけであります。そうした目的でここに措置されている健康管理手当でありますから、こうした制限を一日でも早く撤廃し、そしてまた全被爆者支給すべきものであるということを、被爆者の声を代表して、強くこれは要望申し上げておきたいと思います。  次に移らしていただきますが、沖繩被爆者の問題については先般来、数々の御質問があったわけでございますが、特に私、気になりますことは、いわゆる昭和三十二年から医療法準用に至るその期間の自己負担の医療費、この点について少々疑問がありますので見解を伺っておきたいのでございます。  沖繩被爆者本土被爆者に準じて、いわゆるこの医療法を準用して措置されてきたわけでございますけれども、それまで自分の費用で治療を受けてきた。まあ過去にさかのぼるわけでございますけれども、この点について国で何らかの補償をするというようなお考えをお持ちかどうか、その点、お伺いいたします。
  138. 滝沢正

    滝沢政府委員 たいへん事務的なお答えになって恐縮でございますが、実は沖繩被爆者が現存し、二百七十名ただいまおりまして、特別被爆手帳を持っておる方が二百五十一名という数字はわかっておるわけでございますが、御質問の、本土にその医療に関する法律ができてから沖繩にそのような措置が起こされるまでの間の、本土並みの部分が補償できないかということでございますが、これはやはり施政権の問題等もからみまして、この本土医療法あるいは特別措置法が、二法とも、若干おくれましたけれども取り上げられるようになりましたのは、やはり米民政府琉球政府日本政府との外交上の一つの手続がありまして以来、発効しておるわけでございますので、この点につきましては、施政権が向こうにある状態の沖繩の県民の法の適用という問題を遡及させるということについては、きわめて困難な問題があるのではなかろうかというふうに私感じております。
  139. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 さらに沖繩被爆者で、沖繩では十分な治療、診断を受けることができないという理由で、わざわざ本土へ出てきて、広島あるいは長崎の比較的十分な施設を持った、あるいは専門医を持った、そうした機関に来ているわけでありますけれども、これは非常にたいへんなことでありまして、その点の旅費とか、あるいはそれに要する費用等について、やはりこれも国で考えてあげるべきではないか、こういう声も非常に強いわけでございます。この点はいかがでございますか。
  140. 滝沢正

    滝沢政府委員 この点につきましては、過去にもそのような覚え書きが発効して以来、本土に受け入れた患者がございます。四十七年度予算措置としてはこれを受け入れるように措置してございまして、先生おっしゃるように、旅費その他の費用についても支弁できるように予算化をしてございます。ただ毎年二回、長崎広島大学等の専門医沖繩派遣いたしまして、一般的な健康診断のほか、特殊な方々健康診断あるいは医療機関関係者との打ち合わせ等をいたしておりまして、ここ両三年は本土に受け入れる希望、あるいは受け入れるべきだという診断の下った患者がないために、実績としてはここ二、三年はございません。過去にはございました。将来この問題はあり得ることでございますので、予算上の準備はいたしてございます。
  141. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 いずれにいたしましても、沖繩在住被爆者に対しましては、これまで措置の上でいろいろな格差があったわけでありまして、そのおくれについては、これは今後とも国が十分に考慮をして、本土以上に非常に強い措置を検討していただきたいと思います。  次に、医療審議会のあり方でございますが、これは厚生省としてその運営について実情を掌握し、ないしは当然これに意見を差しはさむ余地はあると思いますけれども、昨年の社会労働委員会の審議の経過から、ここにいわゆる福祉部会を設けることになりまして、福祉部会ができましてから今日に至るいわゆる活動の内容について、簡単に経過を御報告いただきたいと思います。
  142. 滝沢正

    滝沢政府委員 昨年の社労その他の質疑を通じまして、福祉部会の設置の必要性を痛切に感じましたので、四十七年度予算福祉部会の設置が認められたということでございますので、新しい年度において活動を開始いたしますので、その点、先生お尋ねと若干食い違いますが、そういうふうに御理解願いたいと思います。
  143. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 たいへん失礼いたしました。勘違いでございました。  この活動の内容について、すでに構想はお持ちだと思いますので、その点明らかにしていただきたいと思います。
  144. 滝沢正

    滝沢政府委員 福祉部会の設置にあたりまして、従来審議会の委員は二十名でございましたが、専門委員十名の増員が予算上認められました。したがって、われわれはこの審議会を医療部会と福祉部会に分けまして、福祉部会は年四回開催程度予算措置がなされております。これは実態調査等の結果を踏まえ、あるいは将来の対策、先ほど来御論議のいろいろの県単事業等を国で取り上げる問題等を御審議願いたいと思っております。したがって、福祉部会のメンバー構成は十名に五名を足した十五名、医療部会は十五名というふうなおおよその考え方を持っております。医療部会のほうにつきましては、十二回の開催が認められまして、従来は二カ月に一ぺん程度しか開催できないという実態でございましたけれども、これを毎月開催して審議の促進をはかりたい、こういうような内容でございます。
  145. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 医療審議会のメンバーの問題でございますが、医療部会につきましては、これはやはり専門家を中心として編成すべきであるというような理由から、これは被爆者の代表あるいは被爆者団体の代表を審議会委員に加える、部会員に加えることをこれまで差し控えてきたようでありますが、この福祉部会については、その活動内容から当然被爆者の代表をこれに加えるべきであると思いますし、またそういう要望が非常に強いのですけれども、その点について厚生省としては、どういう構想をお持ちでございますか。
  146. 滝沢正

    滝沢政府委員 医療部会につきましては、被爆者の代表というよりも、被爆を経験した方であり、なおかつ医療の問題に造詣の深い学識経験者としての立場から、現地のそれぞれの方々に御参加願っておるわけでございます。そのほか、中央、いわゆる学界その他の社会保障その他の関係者も従来の医療審議会には入っていただいておりましたけれども、これを機能的に福祉部会医療部会に分けて、それぞれに活動を強化いたしたい、こういう考え方でございます。したがって、福祉部会の人選等につきましては、先ほどお尋ねに対して——医療部会には両県の衛生部長が参画していただいておるので、それと一つの例示としては、両県の民生部長福祉部会のほうに新たに御参画願ったらどうかという程度は私の構想にございますが、全体としては委員の人選はまだこれからでございます。私の考え方としては、医療部会同様、被爆経験者でありながら福祉の問題その他に学識経験の深い方というような観点から、現地の皆さま方の御意見も拝聴して人選を考えたいというふうに思っております。
  147. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 日本にはいろいろな審議会がたくさんございますけれども、どの審議会を通しましても、いわゆる専門家と、またいわゆる関係団体の代表がそれに加わっている、その例が非常に多いわけであります。こうした被爆者の問題につきましても、この医療審議会につきましては、学者以上にむしろ被爆者実態あるいは被爆者の声を深く認識をして、その声を代表する人たちがいるわけでありまして、ただ県の担当者の代表や、あるいは医療従事者の中でのいわゆる被爆をしているからという理由で、被爆者代表という考えで含めるだけではなくて、被爆者団体の代表もここに加えて、そうして審議会の運営に当たらせるべきであるというふうに考えます。もちろん党利党略にかかわるような被爆者の代表、被爆者の団体を代表するものであれば、むしろ問題はあると思いますけれども、そうした政党政派にかかわらない、ひとつのいわゆる被爆者の真の声を代表する団体であるならば、むしろその団体の代表として、代表という資格のもとに審議会委員に加えることは決して不自然なことではないという考え方を持つのでございます。くどいようですけれども、もう一度その点いかがでございますか。
  148. 滝沢正

    滝沢政府委員 先生おっしゃるとおり、学識経験者で適当な方を選びたいというのが原則でございまして、いま先生のおことばにございましたようなことは十分考慮の上、適任者を選ばなければならないと思います。まず基本的には、この福祉部会は利害の調整というような観点ではなくて、したがって代表者のお考えを問うというようなことが必ずしも適切であるかどうかというような観点も踏まえたいと思いますが、しかし先生のおっしゃる意味はわからないわけではございません。よくわかりますので、この点につきましても、十分関係者と御相談の上、適任者を選びたいということでございます。
  149. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 医療審議会の運営については、審議会の委員の皆さんが自主的な判断によって御相談の上、進めていかれるわけでありますが、厚生省としての考え方を伺っておきたいと思いますけれども、いわゆる被爆者の皆さんの要求の中に、傷病の認定のことでありますが、明らかに原爆に起因していないと証明できるものを除いて、被爆者に関するすべての傷病を認定する方向で審査を進めるべきであるという要望については、お考えはいかがでございましょう。
  150. 滝沢正

    滝沢政府委員 この点につきましては、先生のおっしゃいますように、明らかに原子爆弾の放射能の影響を受けている可能性は、否定できるんだ、こういうものについては、これを認定することはできないわけでございますが、従来できるかできないかという割り切り方だけでございました。ややそういうきらいがございましたが、申請者の傷病が、原子爆弾の放射能に起因する可能性を否定することはできないものも、これは考慮すべきであるという考え方を取り入れまして、具体的に検討していただいております。しかしながら、学問的に放射能に起因するというものは、いわゆるパンフレットその他でお示しをしていますように、いまの医学の判断では、先ほど大原先生との論争のございました胃ガンの問題等につきましては、必ずしも学問の根拠をはっきり持たないということで、取り上げる段階に至っておらないようでございますが、そういう点では、新たな学問の進展により取り上げるべき、たとえばいま問題になっておりますのは、上咽頭あるいは唾液腺のガンというような問題については、学問の背景がかなりいろいろ論議が出てきておるようでございますから、そういうものが審議会等で取り上げられることになれば、いま八つの疾患がおもにこれに該当するということで、医療機関等も認定患者の申請にはそれを大体めどにしてお出しいただいておるということでございますので、それが学問的な新しい見解が出れば、それに加わっていく、こういうことでございます。あくまで放射能に起因する疾患ということがやはり根っこにございまして、それが起因するものと肯定できる、あるいは否定できない、完全に否定できる、こういうような考え方で処理するわけであります。
  151. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 原爆症については、まだ専門的に医学的な究明がさらに必要とされているわけでありまして、その研究体制あるいは各機関の連携の問題、これはさきに大原委員からも御質問があったわけでございますから、私は省略いたしますけれども、いずれにしても、数々の疑問が残っているわけであります。したがって、この医療審議会の審議の進行状態につきましては、被爆者としても非常に関心のあるところであり、また一部被爆者団体等においても、この審議の内容をもっとガラス張りにしてほしいという要望がそこから出てくるわけでありまして、現状では、私は、本人をはじめとして関係者の審議会傍聴を認めていないというように理解いたしておりますけれども、その点、ひとつはっきりしていただきたいのが一点と、また、もしそうであるならば、審議の内容は、本人あるいは関係者の要請があった場合に明示できるものであるかどうか、必要があれば、この審議会の内容の経過、議事録等を公表ないし、あるいは私どもにお示しいただけるものかどうか、その辺の事情についてお伺いをしておきたいと思います。
  152. 滝沢正

    滝沢政府委員 ことさら傍聴という形はとっておりませんが、かなり大ぜいの関係者、県の関係者等が来て、審議の事情を聞いておりますから、決してそれを漏らしちゃいかぬとかなんとか言っておりませんので、いろんな審議の経過は、それぞれ関係者が聞いておいていただいておることは、言えると思います。それからいまのような実態、これは個々のケースの事情にもよりますけれども、私は、やはり求められて特に否定したような場合、どういう理由で否定するかということについては、審議会は最終的に明らかにしなければならないと思っております。ですから、その段階の問題と、それから個々のケースの、どこの段階で求められるかということで、審議の途中の経過というようなことじゃなくて、結論についての結果を、理由を知りたいということは、これはやはり回答する通知の中にも、却下の理由というものは明確にすべきじゃないか。また特に事務的には、できるだけそういうことを担当の課に命じて、理由を明らかにすることが必要であるといって、従来以上にその点は配慮を配らせております。
  153. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 特に、この医療審議会の運営について深い疑念があるという、そういう観点ではないのですけれども、本人にしても重大な問題でありますので、審議の経過またその結果に至った理由等を知りたいわけでありまして、いまの局長の御答弁からすれば、本人あるいは関係者が求めれば、審議の日程等を通知してもらえ、なおかつ求めれば傍聴も許される——気持ちの上では理解できるというような御答弁だったのですが、実際問題として今後傍聴が認められ、そしてまたさっきもお伺いしましたけれども、審議の内容について、どうしてそういう結果になったかということをはっきり明示していただけるようになるものかどうか。今日までそれが非常に困難であったわけで、いろいろ不満や不平が多かったわけでありますが、その点いかがでございますか。
  154. 滝沢正

    滝沢政府委員 先ほど傍聴の実態を申し上げましたが、特に審議の経過について関係者、いわゆる県の事務官等の方々も一緒に聞いていただいておるというだけでございまして、厳密な意味でいまのように関係者、特に利害に関係のある方が傍聴して審議内容を聞けるかということになりますと、これは審議会の性格上、論議を尽くしていただいた結果については明らかにすべきであると考えておりますけれども、いま先生が例示されましたように、特定な申請を出した関係者が傍聴できるかということになりますと、この医療審議会の性格上、それはお断わりせざるを得ないというふうに思っております。
  155. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 大臣、その点については医療審議会の運営について、被爆者の間には比較的そうした不満や疑惑が多いわけでありますが、もっとこの内容被爆者の間に明らかにしていくためにも、本人や関係者の傍聴が許されないというような意味合いからしても、医療審議会の中に、特にまた福祉部会等も今度設置されるわけでありますから、この際、被爆者団体の代表を加えるべきである、こういうふうに私たちは思うのでございますけれども、大臣の御所見を伺っておきたいと思います。
  156. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 審議会の中に被爆者の代表を加えるのが適当であるかどうかという点につきましては、私はいろいろ考慮すべき点があるのじゃないだろうかという感じがいたします。被爆者の代表の方に来ていただいて、いろいろ意見を言うていただくとかいうことはけっこうだと思いますが、審議会の委員としましては、こういう被爆者方々に非常に理解を持った人、あるいは援護等に携わっておられる人、そういう経験者というようなことは、私は非常に必要であると思いますが、被爆者代表を審議委員とするかどうかということになりますと、これははたしてどうであろうか。代表の立場においては、それはいろいろ御意見がございましょう。その立場において委員をされるということは、ちょっとどうであろうかという感じが率直にいたします。そういう代表者の方々意見を十分伺う、そういう機会を審議の段階に設けることが必要であろう、かように思います。また個人的に医療審議会で審議をされたその結果について非常に不満であった、あるいは内容について自分の言うておったことが届いたであろうかどうであろうかというような場合には、時によって審議会に出て意見を述べさせてくれというような場を設けてもいいのではないだろうか。ただ審議の時間的な制約もありますから、そう長く発言をされても困るかもしれませんが、必要な方は簡明、率直に意見を述べていただくという機会を持ってもらうようなくふうができないものであろうかと、かように考えます。
  157. 古川雅司

    ○古川(雅)委員 お約束の時間になりましたので、最後に一つだけ伺っておきたいと思いますが、例年広島長崎原爆慰霊祭には、総理を代表として厚生大臣出席をされておりました。昨年は特に内田厚生大臣の強い要請かと思いますが、初めて総理が広島の慰霊祭に列席をしたわけであります。被爆者の皆さんの受け取り方はさまざまでございました。総理はどういう感想をお持ちになってお帰りになったかわかりませんが、これは昨年突発的に総理が出席されたのか、あるいは今後毎年特にスケジュールに支障のない限り、総理がこれからは出席して、被爆者の冥福を祈るその席に連なるということの始まりなのか、その点はまだ明らかになっておりませんので、担当の大臣として、今後総理に対してどういう方向でそれをお進めになっていくか——今回の総理ではありません、次の総理になると推測をいたしますけれども、当局としては今後原爆の慰霊祭、広島並びに長崎市民の敬虔な祈りを捧げる会合に、従来どおり厚生大臣が総理を代表して出席されていく形をとり続けるのか、あるいは去年を初めといたしまして、今後歴代の総理が出席をされることになるのか、その点ひとつ伺っておきたいと思います。  以上で質問を終わります。
  158. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 これは官房長官にでもお答えいただかないと、私ちょっといかがかと思うのでございますが、昨年は陛下もお見えになったというようなこともあったりいたしまして、あれをきっかけに、これから毎年総理が出られるということになったのではないように私は理解をいたしておるのでございます。
  159. 谷垣專一

    谷垣委員長代理 寺前巖君。
  160. 寺前巖

    ○寺前委員 あまりダブったようなことは、もうやめたいと思いますから、端的に、ちょっと残ったような詰めの話みたいなことをやらせていただきますが、お許しをいただきたいと思います。  まず今度出されている法案との関係でいいますと、健康管理手当になると思います。先ほどお話を聞いておりましたら、健康管理手当は健康管理に見合ってこれを考えるのだということをおっしゃっておられたように聞いたわけですが、健康管理に着目して設けるというふうにおっしゃった。健康管理に着目して、実際上健康を害した状況をめぐって私はちょっと聞いてみたいと思うのです。  といいますのは、私の手元広島原爆病院の昨年の概況資料があります。これを見ますと、四十歳未満の成年層に白血病、甲状腺ガン、さらにその他の貧血が半数くらい占めているわけです。こういう病気は大体若い人のほうにそういう症状がたくさん出ている。それから胃ガンとか、肺ガンですか、ガン系統は六十歳以上のお年寄りにたくさんあらわれてきておる、こういうふうに見てきたときに、原爆被害の結果というのは、若いときにあらわれる症状の姿とお年寄りの場合にあらわれてきている症状の姿には、明らかに違いが主要な内容として起こっているんじゃないだろうか。そうすると、健康管理に着目をするというならば、若い人は若い人なりに健康に着目する手を打つ必要があるし、お年寄りにはお年寄りなりの着目したやり方をする、こういうふうに考えてみた場合に、健康管理手当というのは、ほかの話は省いて、年齢の問題について、お年寄りだからということで健康管理に着目したということにはならないんじゃないだろうか。やるんだったら、本当に全面的にやる必要があるんじゃないだろうか。この点について、詰めてお聞きしたいと思います。
  161. 滝沢正

    滝沢政府委員 先生の例に引かれました原爆病院の実態につきまして、特に血液系統の疾患が若い人に多く、ガンが老人に多い。これはまさに実態でございますが、特に老人の原爆症関係のあるガンといま認められておりますものは肺ガン、甲状腺ガンでございまして、胃ガンは先ほど来論議がございましたように、まだ問題点を残しております。したがって、これは若い人にも肺ガン、あるいは甲状腺ガンが一般的な被爆者以外の人よりも起こる可能性は強いわけでございますが、大まかに実態としては先生のおっしゃるとおりでございます。特に、白血病につきましては、放射能の人体に影響する一番の基本のところの造血臓器、いわゆる血液をつくるような関係の器官に最も多く影響があるということは事実でございまして、したがいまして、この白血病等になった場合の処置につきましては、この八つの疾患と健康管理手当とは違いまして、年齢にかかわらず、いわゆる認定患者としての取り扱いになり、特別手当も出る。したがって、これは所得制限はございますけれども、年齢上の制限はないのでございまして、そういう観点から、いわゆる手当なり措置なりの点はできておるわけでございますが、先生のおっしゃる意味は、それ以前の問題のところにあると私は理解するわけです。  したがって、一般被爆者なり特別被爆者が、日常の健康管理というものは健康診断という事業を通じてまたもう一つやっているわけでございます。それについて血液を採取し、なるべく早い機会にその疑いを持って早期に治療するようにもっていく。これはもう手当をもらっている、もらっていないにかかわらず、全般に対して行なわれている施策でございますので、必ずしも先生のお気持ちにぴたり合う答弁になったかどうかわかりませんが、一応そういう仕組みによってなっておる。ただ、健康管理手当というものは八つの疾病を持っているという人に、まずことしは五十五歳までしか今度は出せないという仕組みになっていて、それじゃ五十五より若い人で八つの疾患を持っておる人には出せないのかといわれると、それはいまの段階では出せないでいるというところに、健康管理手当が、八つの疾患を持ったら、みんなに出したらいいじゃないかという理論につながるわけでございます。若干わき道にそれましたけれども、以上のような考え方で整理されておるわけでございます。
  162. 寺前巖

    ○寺前委員 健康管理なんだから、いまのお話のように、それぞれの年齢にふさわしい——ふさわしいというとおかしいが、いろいろな欠陥が生まれているという状況から見ても、あるいは一般的に被爆者の人のからだの特徴から見て、そういう特徴的な姿というものは一般的に常識的にわかると思うんですね。そういう点から考えて、もしも健康管理ということを明確に着目するんだったら、年齢というのは、やはりはずすべきじゃないだろうか。もしも、あえてここで年齢をいうというならば——私は年齢意味はあると思うのです。それは高齢者が病院にたくさん入っていくという実態もあるという事実から見て、高齢者に対する特別な施策というものが必要だと思うのです。だから、それは健康管理手当年齢の問題じゃなくして、別に、たとえば入院しておる全体の状況を見ても、五十歳以上の方々の入院状況というのは、他の一般的な社会の人よりも被爆者の場合は非常に高いようです。そういう実態考えた場合に、五十歳以上の人たちの今度は生活面を含めて、この分野に対する特別な施策というのを分けて考える必要があるのじゃないだろうか。一番いいのは、ほんとうに、福祉年金じゃございませんけれども、被爆者に対して、少なくとも月二万円の高齢者に対する手当というのを別個に考えて、そして健康管理手当は全年齢者に対して考えるというふうな考え方を確立していく必要があるのではないか。せっかく法案で健康管理手当というのが出ましたので、私は考え方を、これは年寄りの健康管理云々の問題でなくして、健康管理というのは健康管理として全面的に考えるということと、それから高齢者の生活を考えるものと分けた、そういう施策というものを検討する必要があるのではないかと思いますが、いかがなものでしょう。
  163. 滝沢正

    滝沢政府委員 私も局長になりました当時、この問題を勉強したときに、率直に申しまして先生と同じような考え方、近い考え方を持ったわけでございます。  それで、この健康管理手当というものも、詰めてまいりますと、原爆被爆した者に起こり得るからだの障害というものを取り上げまして、最初は七つだけでございましたが、その後いろいろ研究の進展によって白内障がやはり関係があるということで取り入れられたわけでございます。  したがいまして、いま年齢で切っておるということに問題の一点はあると思います。健康管理手当を若い者用に回して、老人用は別につくるという考え方も、これも一つの考え方だと思いますけれども、私は、むしろ健康管理手当の条件が八つの疾病を持っておるならば、できたら早い機会に年齢をもっとこだわりなくしたいなという気持ちを率直に持ったわけです。  それで一応二年続きで、従来の懸案のございました制定当時の六十五歳を六十歳、五十五歳と下げてまいりましたけれども、気持ちの上ではいろいろの条件が積み重なっているという状態を、できるだけこの趣旨に沿うように改めていきたいという気持ちにおいては、先生と同様でございますけれども、新たな仕組みを老人用に使い、健康管理手当は若者用に使う、こういう方法論というものは、かなりの変革になりますので、私のいまの段階では、前段申し上げたような考え方だけしか申し上げられないわけでございます。
  164. 寺前巖

    ○寺前委員 別に若い者だけに健康管理手当を出せと提案したのではないのです。健康管理手当は全面的にやられたらいい、お年寄りには別個に考えなければだめなんじゃないだろうか、それは実態がそうなってきておるのではないかということを提起したので、御検討いただきたいと思います。  それからもう一つ、先ほどから論議になっておった点は、被爆二世の問題だと思います。これは時代が新しい時代になってきただけに深刻な問題であるのには間違いない事実です。局長さんの先ほどからの答弁でもそうだし、この間の委員会における答弁でもそうだけれども、被爆二世の放射能の影響が明らかに及んでおるという研究成果は、いまのところ出ていないので、新しい見解が出たら、また別だけれどもということで、具体的な対策というものについては検討していないということを前の委員会でもおっしゃっていたし、きょうも主としてそういう内容じゃないかと私は先ほどから聞いておったわけです。おそらく厚生省がこういう見解をとられたというのは、独自に被爆二世の方々を全面的に調査せられた結果ではなくして、ABCCとの共同研究というのですか、あそこの実態に基づいて、こういう結論をお出しになっているのだろうと思うのですが、他に何か調査ざれたことがありますか。
  165. 滝沢正

    滝沢政府委員 研究の中身につきましては、ABCCのみならず、広島大学等にもございますので、厚生省自身が独自でという形のものはございません。しかしながら、この二世という世代に影響するということは、要するに原爆被爆した当時、胎児であった者までは、存在しておりましたので、見ておるわけです。それからその後その夫婦の間に新たに二子なり三子なり、あるいは第一子として生まれてくる子に影響があるかどうか、こういういわゆる第一代と第二代との人間の影響のつながりでございますが、被爆した者には、先ほど来論議のございますように、白血病が多い、ガンが起こりやすい、特にガンのうちでも、こういうようなガンが起こりやすいという事実はわかってきておるわけでございます。  そこで、その次の世代のつながりがどういう形であるかということ、これについては、その当時広島なり長崎地区に相当放射能が残存しておったのではないか、言うなればそういう考え方もある。それが何か次に生まれた世代の子供に影響しやしないか、この問題がございますが、これは学問的には、当時予想したようないろいろの放射能障害が長く残るだろうという点については、いろいろの測定の結果は、人体に影響のあるような放射能なり放射線はないということでございますから、あの当時からしばらくの間でも、広島長崎の土地にその影響する条件はなかった。そうなりますと、結局まず基本的には遺伝の問題ということ、特に染色体を通じての遺伝の問題、あるいは二世の中に染色体の異常が起こりやすい条件があるかどうかとか、あるいは細胞遺伝学の立場から白血球を培養いたしますと、いろいろ遺伝の要素のあるものは培養の結果出てくる、こういうような研究を積み重ねる、このようないわゆる大数をとらえてやるのではないという点からは、やはり厚生省独自という観点では、いままでのところでは無理じゃないか、今後に検討いたしたい、こういうことでございます。
  166. 寺前巖

    ○寺前委員 そこで、今日の段階ではそういうふうな段階だということを委員会でおっしゃっているので、私はABCCの出している結論の他の一面を局長さんはお読みになる必要があるということを提案したいのです。こういうように書いてあるのです。「調査例数が小さいので、有意差が認められないことは実際に相当大きな差が存在する場合と矛盾しないか、あるいはその否定的結論を支持するための例数が十分であるかどうか、を検討する必要がある。」例数が少ないということをやはり問題にしておるのです。そして「放射線の影響が認められなかったということは、その影響がないということにはならない。それはただ、これまで観察できた範囲内では影響が認められなかったというにすぎない。現在までの経験から、白血病増加の可能性についてF1およびその後の世代の長期観察を実施する必要がある。」という他の一面の指摘をやっているわけです。私はこの分野をもっと厚生省は真剣に考えなければいけないと思うのです。   〔谷垣委員長代理退席、委員長着席〕  先ほど動物実験の話が出ました。動物実験では明らかに遺伝的に問題があるということを指摘されました。現に被爆者の問題について批判されつつも、ABCCにおける一定の結論というのは例数が少ないということを指摘すると同時に、他の一面で長期にわたって観察するということが重要であるという指摘をしているわけです。この事実から見ても、考えなければならないことは、被爆者というのが全面的にどういう実態にあるかということは、ちょっとあとにさておいても、少なくとも被爆者手帳が全国的にわたっているわけです。その人たちの子供たちについて、もちろん本人たちの持つ希望というものを採用しなければいけないと思いますが、全面的に調査をやって観察をするというきわめて重要な責任があるのじゃないか。本人たちが見てもらいたい、調査してもらいたいという要求をするならば、それを無条件に引き入れ、無条件に親と同じように治療の体制に入れていくということによって、初めて今日までの問題に対する責任がとれるのじゃないだろうか。  私は自分の出身地のことを言って恐縮ですが、昨年京都でこういうことをやりました。七百六十七世帯の被爆者の世帯があります。手帳は、夫婦もおりますから、もっと多いわけです。そこでどうじゃという質問を出したら、五〇%余りの人から返事が来ました。そして三百八十七世帯の子供の数を調べると五百二十七名ですが、そのうち半数以上の二百六十六名は、ぜひ健康診断をやってくれという答えを出してきているのです。ほんとうにそうだろうと思うのです。私は多くの子供が、親御さんが、自分の健康がどういう状態にあるかということを隠して不安の中におるよりも、全面的に、系統的に診断をしてもらっておくほうが、もっと科学的であって安心だと思うのです。しかもこういう健康診断というものは一回じゃなくして、系統的にやるところにこそ値打ちがあると思うのです、本人の健康管理の立場から見ても。それに要する費用というのは、実際やってみたら、去年の京都の場合には六十万円の予算を組んだだけで、実際には、全面的に仕事の都合とか学校の都合で行けなくなってしまっている実態が生まれて、予算が残ったという実情から見ても、予算の面から見たら、たいした金ではない。問題はこの二世に対して全面的に調査をし、そしてその治療についても責任を持つという体制に入るかどうか。私はこのことに厚生省が立ち上がるかどうかということについて、率直にお聞きしたいと思います。
  167. 滝沢正

    滝沢政府委員 先生ABCCの文献につきましても、私も承知いたしております。私は学者の見解として例数の問題もさることながら、いまの段階で確定的な結論は出せないという問題は、いわゆる学者の良心として当然のことであろうと思うのでございますが、一応出ましたところの、現在許されている医学的な方法論を駆使してやりました遺伝学等の研究上、あるいは統計学的の処理、こういうものを踏まえて、いままで出ました数字を踏まえたものとしては^こうであるという発表をされておる。しかし、この問題についてはABCCも、また予研の共同研究においても、今後継続して観察する必要がある、こういうことでございまして、この点については、いわゆるABCCの存在の問題、あるいは今後二十五年間研究を継続するという大原委員の御質問の問題にもからみ、今後われわれが根っことして検討し、テーマとしても研究が継続するようにいたさなければならないと考えております。  それから先生のお話のありました五百二十七名のうち、二百六十六名血液をとって比較された、こういう問題について私もお聞きしております。ただそのときに血液をとってみたけれども、その血液が問題のある血液なのか、性質なのかを判定する医学の手段が、一般的にいま行なわれておる程度の段階では、他の健康者あるいは被爆関係してないものとの比較はなかなかむずかしいという見解もございます。したがって、この前の委員会、または本日も申し上げましたように、アメリカなどで血液からの三十項目くらいの生化学的なたん白を中心とした分析方法が開発されつつあると聞いておりますし、先ほど法医研の部長もそのことを裏づけておりましたけれども、やはり何か血液を取っただけではほんとうに安心できるという、その医学的な手だけを、いままだわれわれは持たないというところにこの問題がもう一つある。私は、姿勢としては決してやらなくてもいいとかそういう見解をとっていませんけれども、やる方法論について学者の皆さんが確信のあるものをお持ちにならないので、これを検討するにしても時間と、やはりその専門の分野の広がりを考えて、先ほど来お答えしているように各省の関係、各省の遺伝学を含めた研究を強化していく必要があるということについては一致しておるというふうに思っております。
  168. 寺前巖

    ○寺前委員 時間が参りましたので、私は最後に一つだけお許しをいただきたいと思います。  その前に、いま私が提起した問題は、被爆二世あるいは孫の方々に対して系統的に健康診断をやっていくということが非常に重大な、単なるロボットの研究ではなくして、健康管理をしていくということを国家的に保障する必要があるという問題として提起したので、御検討いただきたいと思います。  それから最後にもう一つは、私は、学術会議被爆者実態調査をやるようにということを四十三年に政府に申し入れた。ところが、四十五年の国勢調査のときにやってもらえなかった。五十年の国勢調査の際には、ぜひ日本被爆実態がどういう状況にあったのか、その後はどうなっているのかという立場に立って十分われわれの学会とよく相談をして、そういう調査を全面的にやってもらいたいということをあえてもう一度政府に申し入れる決議を学術会議がやっております。私はこれは非常に重要な問題だと思います。すなおに引き受けていただけるのかどうか、最後にお聞きして、質問を終わりたいと思います。
  169. 滝沢正

    滝沢政府委員 この点につきましては国勢調査の時期とたまたま一致しますが、実は四十五年に原爆被爆者実態調査を国の計画と予算をもちまして実施をいたしました。これは五十年をめどに実施を考えたいと思っております。ただ国勢調査との関連というものは、その総数把握とかある程度の部分の調査はできますけれども、この前実施しましたのは基本調査としてそういう国勢調査に準じた、いわゆる調査地区を訪問指導して調べ、それから健康の問題は二十分の一無作為抽出によって選び、それから千人以上の府県十二県を選んで同様に抽出してやりました。そうしてあとは生活の状態というものを調査しまして、たとえば失業率がどうであるとかこうであるとかいうような結果を出しました。その点も今回福祉部会ができましたので、私は五十年をめどに、先生のおっしゃるような意味実態調査というものを、四十年の条件を踏まえ、改めるところは改めて実施したいという気持ちで現状はおりますし、またその方向で十分準備いたしたい、こういうふうに考えております。
  170. 森山欽司

    森山委員長 これにて内閣提出原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案についての質疑は終局いたしました。      ————◇—————
  171. 森山欽司

    森山委員長 次は、麻薬取締法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。山本政弘君。
  172. 山本政弘

    ○山本(政)委員 昭和四十五年の十二月二日の新聞に、佐藤麻薬二課長の談話が載っております。社会的背景から見て昭和三十年から三十八年の「ヘロイン時代は「貧困からの逃避」に麻薬が使われ、現在は「繁栄からの逃避」のためにLSDやマリファナが若者たちに使われている。」こう言っております。  そこでお伺いしたいのですけれども、繁栄からの逃避というのは、一体具体的に言うとどういうことなのか、まず御説明をいただきたいと思います。
  173. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 昔は貧困からの逃避、現在は繁栄からの逃避というふうに先生おっしゃいましたけれども、繁栄の中にはいろいろ精神的な悩みその他もあろうかと思います。ただ繁栄からの逃避と申しましても、非常に付和雷同的な享楽的なムードもございますし、そういう享楽的な問題に一部の人たちがふける、あるいは精神的な空虚さ、あるいは精神的な支柱を失なって、そういうものからの逃避ということで麻薬等にふけることが考えられます。
  174. 山本政弘

    ○山本(政)委員 つまり社会的背景というものは一体何が原因だろうか、このことを実はお伺いしたいのです。いまおっしゃったようなことについて、そういう社会的な背景というものは一体何が原因になって起こっておるか、それをひとつ聞かしてもらいたいと思います。
  175. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 やはり精神的なよりどころが若い人たちの間にないということが、そういうものの流行を生む一つの根拠ではなかろうかと思います。
  176. 山本政弘

    ○山本(政)委員 どうも簡単に貧困からの逃避とか繁栄からの逃避とかいうおことばをお使いになられたような気がしてならぬわけでありますが、それはあれですけれども、今度の法案で取締官が増員をされたことは、たいへんけっこうなことだと思うのであります。  お伺いしたいのは、沖繩について十名の増員と、——率直にお伺いしますけれども十名で十分なのでしょうか。私は十名では実は十分ではないような感じがするわけですけれども、一体十名で十分なのかどうなのか、それがまず第一点。  第二点は、なるほど麻薬取締官は増員をされておる。しかし麻薬取締員は、それではなぜ増員をしないのか。取締員というのは、麻薬取締法第五十四条で「都道府県に通じて百三十五名以内の麻薬取締員を置く。」こうある。そうしますと、取締官が増員をする必要があるならば、取締員も今度は増員をする必要があるだろう、こういうように実は考えられるわけですけれども、その点は一体どうなっているのか。
  177. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 今回の取締官の増員は十名でございまして、私どもが現在考えておりますのは、内地からの増員を含めまして十三名を考えております。十三名で、十年前の内地と同じような状態にある沖繩に、はたして妥当かどうかということにつきましては、先生がおっしゃるとおり一部の不安もないわけではございませんけれども、麻薬問題は、私どもの取締官事務所だけですべてを解決できる問題ではございませんし、海上保安庁あるいは警察、それから税関、そのほか先生が御指摘になりました取締員、これらの総合的な体制によって取り締まりをしなければならない、かように考えております。  それから取締員は現在三名で少ないではないかということでございますが、これももちろん全体としては百三十何名、内地を含めまして、おるわけでございまして、実際に取り締まりを行なうようになりまして、もしも必要があれば、いろいろ配置転換その他も考える必要があるのではなかろうか、かように考えております。
  178. 山本政弘

    ○山本(政)委員 厚生省の関東信越地区麻薬取締官事務所横浜分室というのがありますね。この警戒区域は、京浜地区の港湾及び船舶関係を中心に千葉、茨城県海域、それから沖繩の内陸部だ、こう私は承っておるわけであります。そこで、十人の取締官で十分かというと、十人の取締官だけでは川崎、横浜地区だけで手一ぱいだ。しかも、最近企業の専用岸壁ができておるわけであります、千葉あたりにも。そして茨城でも鹿島の築港あたりに出ておる。個々の検挙人数というのは、一年間で五百三十九名、四十五年の調べでありますけれども。おそらくこの横浜分室の取締官というのは、私は人手不足をかこっておると思うのです。同時に、沖繩復帰に伴う沖繩からの麻薬の激増が考えられるということになると、単に十名くらいで済むものかどうか、あるいは三名を本土から持っていかれると十三名、ともかくも全体的に沖繩だけでなくて、私はそういう意味では取締官の不足があるはずだと思うのです。十分なら別ですよ。政府などが十分とお考えになっておるなら、話は別でありますけれども、しかし、そうではないというふうに私は感じております。そうすると、この法案が単に沖繩が返ってくることによる十名の増員だけで足りるのかどうか。それ以外に、いま申し上げたように、関東信越地区の麻薬取り締まりの実態を見ても、人手不足をかこっておるわけですから、そうするともっとふやすべきじゃないのですか。なるほど麻薬はある部分については滅っておりますね。減っておりますけれども、しかし、これは減ったからといってほっておけば、すぐふえるものだと私は思うのです。   〔委員長退席、増岡委員長代理着席〕  そういう意味で、沖繩の要員を確保する以外に、本土全体のことを考えてみて、増員計画というものは当初から意図されなかったのかどうなのか。その点お聞かせいただきたいと思います。
  179. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 先生がいま例をあげられました京浜地区の問題につきまして御示唆を受けたわけでございますが、やはり大きな事件がございますと、横浜分室の十名だけでは、京浜地区でも足らない場合があるわけでございます。その場合には、関東信越地区におります本省の連中がいろいろ応援して処理に当たっております。  したがいまして、沖繩の今回の十三名の配置につきましては、沖繩の厚生当局と打ち合わせたわけでございますが、支所が属する九州地区の応援等も、当然事件の推移によっては応援体制をとる必要がある、私どもはそう考えております。
  180. 山本政弘

    ○山本(政)委員 私が申し上げておるのは、いま現在厚生省として取締官がもっと必要であるのかないのかということなんですよ。必要なら十人でも二十人でもふやすべきじゃないかと思うのですけれども、やりくり算段をしてオーバーワークをさして、ほんとうの仕事ができるのかどうなのか。必要ならば、私は、ふやすということがあっていいはずだと思うけれども、実態から見ては、やりくり算段をしてオーバーワークをさしておる実態があるのではないか。そしてもっとふやしてもいいのじゃないか。将来ふやす意向があるならば、私は、ふやす意向があるということを率直にお聞かせいただければ、それでいいのですよ。ふやす必要がなければないと、それだけでけっこうです。
  181. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 麻薬の事犯は、十年以前からしますと、だいぶ減ってまいってきております。取り締まりの人員につきましては増加はいたしておりませんけれども、現在の体制で、過去の最盛期におきましても、何とか切り抜けてきたわけでございます。もちろん人員が多くあれば、それにこしたことはございませんけれども、現在の体制で、何とか現在まで本土につきましてもやってきているという実情でございますので、今回さらに大幅な増員が特に必要であるということは考えておりませんけれども、しかしながら沖繩復帰に伴いまして、いろいろ南方からの密輸その他が増加の傾向を帯びてくる、あるいはLSD、大麻等の事犯が、現在減少しておりますけれども、さらに増加の傾向がありますれば、私どもは増員を考えなくちゃいけない、かように考えております。
  182. 山本政弘

    ○山本(政)委員 厚生白書の四十五年における麻薬犯罪検挙人員と犯罪白書にいう検挙人員との数字の違いがありますけれども、これは一体どういうわけなんだろうか。たとえば厚生白書四十六年版ですけれども、これは前年度調査だと思いますけれども、麻薬取締法による実数は、厚生白書によれば二百四十五名だけれども、犯罪白書によれば二百五十七名、あへん法は厚生白書が二百三十名、犯罪白書が二百四十一名、大麻取締法は、厚生白書は七百三十三名だけれども、ずっとふえて、犯罪白書は七百七十一名になっておる。これはどういうわけで数字がこう違うのか。この点をお聞かせいただきたいと思うのです。
  183. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 何人かの違いにつきまして、現在のところ、私、詳細はわかりませんけれども、直ちにいま調査をやらして、早急にわかりますれば、この席でお答えをいたしたいと思います。
  184. 山本政弘

    ○山本(政)委員 前年度ですから、四十五年のものを四十六年度で報告するのですから、私は、犯罪白書も厚生白書も数字としては合うべきだと思うのですけれども、これはひとつ知らせていただきたいと思うのです。  そこでお伺いしたいのは、最近、麻薬、アヘン、こういう犯罪というのは減っておるけれども、大麻それから覚せい剤などの事犯がふえておる。それで私が危倶するのは、麻薬とかアヘンとかいうのは減ってきておる。しかし、てんびんじゃないけれども、片一方が減ってくると、今度は逆に大麻とか覚せい剤がずっとふえてくる。そしてこれがある時点に達してきたら、中毒になるというか何というか、もっと強いもの、刺激のあるものをということで、これはもっとふえていくのじゃないか。つまり麻薬とかアヘンとかいうものが三十年に非常にふえて、それが四十年に鎮圧をされた。逆に今度は浮かび上がってきたのが大麻とか覚せい剤じゃないか、こう思うのですけれども、その点は一体どういうふうにお考えになっておるのか。
  185. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 最近は、麻薬関係の事犯が減りまして、大麻が、先生が御指摘のように増加しております。  大麻が増加しております理由としましては、南方からのいろんな旅行者あるいは芸能関係の人の横行によりまして、いろいろ流行その他が外人の間で盛んになっておりますので、そういう影響がありまして、まあわが国でも犯罪がふえているわけでございます。この大麻の違反がやはり増加いたしますと、先生御指摘のように、より強い刺激を求めまして、強い薬のほうに移行するというのは当然考えられることでありまして、したがいまして、ヘロイン等の麻薬が減ってきたことは喜ばしいことでございますけれども、大麻が逆にふえていくということは、将来ヘロインその他LSD等の違反の増加がふえることも一つ示唆しておりますので、その点は、大麻の違反が増加しているということは憂慮すべきことだ、かように考えております。
  186. 山本政弘

    ○山本(政)委員 それならば、話がもとに戻りますけれども、取締官あるいは取締員の増員というのは、将来のことも考えると、あなたが示唆をしているという、そして学術的なものを見ましても、そういうことがいわれておるところを見ると、取り締まり人員というものは、やはりいまからふやす必要があるんではないか。事犯が起こってからふやすということでは間に合わぬのではなかろうか、こう思うのですけれども、この点はひとつどうお考えになっておりますか。
  187. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 全体としての事犯件数につきましては減少してきておりますので、いまのところ、現在以上に直ちに増員しなければ、現在の事犯を取り締まることはできないということにはならないと理屈の上では考えますが、先生がおっしゃるようなことも十分私どもは考えておりますので、今後の趨勢を見てこの取り締まり体制の強化については考えていきたい、かように考えております。
  188. 山本政弘

    ○山本(政)委員 局長ね、数字をひとつ見てください。激減していないのですよ。  麻薬取締法昭和四十二年六百六十四から二百五十七に減っている。なるほど減っております。アヘンは六百三十一から二百四十一に減っている。ところが大麻は二百九十から七百七十一になっているのですよ。しかも覚せい剤のほうは七百五十三から千九百五になっているのですから、私は減っておるとは思わないのです。それは数字がちゃんと証明しております。そういう御認識の上に立って私は答えをいただきたいと思うのです。  これは、ひとつ教えていただきたいのですけれども、覚せい剤と、それからシンナーとかボンドとかいうものとはどう違うのですか。
  189. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 覚せい剤は、覚せい剤取締法におきまして、十年ほど前に、いわゆるヒロポンということでいろいろ問題を起こしたものでございます。これは、実は広い意味の麻薬でございますけれども、厚生省の麻薬取締官は司法警察権を覚せい剤については持っておりません。したがいまして、警察のほうで犯罪関係の取り締まりを行なっているところでございます。  それからシンナーの問題は、これは先生いろいろお聞きだと思いますが、青少年が用いておりますプラモデル等につけます接着剤、それから壁にいろいろ塗りますラッカー、ああいうものに含まれておるものでございまして、シンナーにつきまして、青少年がこれを用いましていろいろ事故が起きているということで、関係各省の間でこの対策を練っておりますが、なかなかきめ手がございませんで、いろいろ対策を現在考究中のところでございます。
  190. 山本政弘

    ○山本(政)委員 そこで、お伺いしたいのですけれども、麻薬取締法には司法警察権というものを持っておる。特に五十八条にはおとり捜査というようなこともありますね。幻覚剤にはそういうものがあるわけですか。
  191. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 幻覚剤につきましては、麻薬の法律の中で、政令でとりあえずLSDを指定しておりまして、麻薬と同様取り締まりができることになっております。
  192. 山本政弘

    ○山本(政)委員 大麻についてはどうです。
  193. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 大麻につきましては、大麻取締法という単独の取り締まり法がございます。
  194. 山本政弘

    ○山本(政)委員 その中で、取締官という、麻薬取締官と同じような方法があるわけですか。
  195. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 麻薬、大麻、アヘンにつきましてはそれぞれ独立法規がございまして、厚生省の取締官は司法警察権を持っております。
  196. 山本政弘

    ○山本(政)委員 それじゃ、大麻取締法の司法警察権というものは一体どこなんですか、教えてください。
  197. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 麻薬取締法の五十四条の五項に、大麻とアヘン、それから麻薬に関する司法警察権の規定がございます。
  198. 山本政弘

    ○山本(政)委員 そうすると、いわゆる覚せい剤については、それはないわけですね。
  199. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 さようでございます。
  200. 山本政弘

    ○山本(政)委員 そうすると、覚せい剤についてそういうものがないということになると、覚せい剤というものが、要するに麻薬取締法とか、大麻とか、それからアヘンとかと同じようにそういうものがないということになると、覚せい剤の乱用というものがはんらんをしてくるのではないだろうか。つまり、そういう規制をどこかでやらなければいかぬのじゃないだろうか。  それからもう一つは、シンナーとかボンドとかいうもの、これ、私は意外にちょっとびっくりしたのですけれども、三日ほど続けて新宿へ行ったら、あそこの広場に、シンナーとボンドでしょうね、こうやってやっているわけですよ。中には、袋をかぶって十人くらいおります。これは実は野放しですよ。  そうすると、こういうものの取り締まりがなければ、さっきの話じゃないけれども、麻薬もだめ、取り締まられてきておる、あるいは大麻もだめだということになって、そういう方向へずっと逃げてくるのじゃないだろうか。そして、いまがその状態じゃないんだろうかという感じがするわけですけれども、それに対する的確な法的な規制というものをお考えになっておるのか。そして、そういうものを一体いつを目安に、そういうものをお考えになっておるとするならば、やはり法的に成立をさせようとしておるのか。これはひとつ大臣からお伺いしたいと思うのです。
  201. 武藤き一郎

    ○武藤政府委員 覚せい剤につきましては、覚せい剤取締法というものがございまして、厚生省が所管しておりますが、先生御指摘のように、厚生省の取締官は司法警察権を持っておりません。したがいまして、いろいろ情報その他が入りました場合には、警察当局へ連絡をして、警察当局が司法権の行使をはかるということでございます。その点は、おっしゃるとおり、他のアヘン、大麻、麻薬はあって、同じような覚せい剤につきましては取締官について権利がないという点は、確かに私どもは片手落ちのような感じがいたしますので、そういう点は関係各省と調整をいたしたい、かように考えております。  それから、シンナーの問題は、総理府の薬物乱用対策推進本部で、こと数年来青少年の問題の重要な問題として検討しておりまして、何とかそういうような薬物を使わないで接着剤あるいはラッカー等ができないものか、これは通産省のほうでいろいろ技術的に研究なさっておりますが、なかなか新しいものが開発ができない。警察のほうでは、都道府県の青少年条例に、約十二、三県に若干の取り締まり規定がございますけれども、これはまあ御承知のように青少年保護条例でございまして、指導的な立場で最小限の規制がありまして、なかなかきめ手にはならないということで、関係各省のほうで何とかこれを取り締まることができないかということを研究しておりますが、なかなかいい案が浮かばないで、やはり薬物乱用につきましての総合的な取り締まり法をつくるべきではないかというような根本的な議論はございますけれども、これもなかなか時間がかかりますので、何とかとりあえずの便法を考える方法はないかということを現在研究中でございます。
  202. 山本政弘

    ○山本(政)委員 厚生省として麻薬とか、幻覚剤とか、あるいは覚せい剤をも含めて、要するに統一的なといいますか、そういう法律というものを、あらためて集大成をしたものをおつくりになるという、そういうお考えがあるのかないのか、この点は、大臣、いかがでしょう。
  203. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 おっしゃいますように、ただいまいろいろと取り締まり法ができておりますが、ことにシンナーなんかについては、全然ない。しかし、これらはやはり毒劇物法の中に指定をして、そしてその乱用を規制するような法律を設けなければなるまいか、かような方向研究をいたしております。そこで統一的なものにつきましては、向精神剤の乱用に対する条約に毛加盟をいたしましたので、そういう点から考えまして、できるなら統一的な法律考えてみたい、かようにいま段階的に考えているわけでございます。
  204. 山本政弘

    ○山本(政)委員 なぜそういうことをお伺いするかと申しますと、きょうの新聞にもたしかあったと思うのですけれども、大麻でしたか、LSDでしたか、マリファナでしたか、アメリカでそういう常用者がふえ過ぎているということで、ニューヨーク州の上院が、マリファナの所持、販売に対する罪を大幅に軽減する法案を通過させた、こういう記事を読んだような気憶があるわけです。  もう一つは、きょうでしたか、健康な人がそれを用うる場合にはさして弊害はない、こういうようなことをアメリカの当局が意見を出しているような記事もちょっと見たんです。そうしますと、ちょっと心配になることは、一つは、日本においてもそういう意見が出るおそれなしとはしないと私は思うんですね。  それからもう一つは、先ほど大臣がおっしゃったように、四十六年二月にウィーンで採択された向精神剤に関する条約というものが、これは署名はされたけれども、まだ批准はされていないと思うんですね。そういうこととあわせて、批准をするについて、やはり麻薬取締法とかあるいは大麻取締法とかいろいろ問題があって、外国との間の法的にといいますか、法体系上の調整ができないからだというような感じが私はしてならないわけです。ですから、実はそういうことをお伺いしたわけですけれども、これはひとつぜひそういう集大成といいますか、そういうものをおつくりいただいて、しかもなるべく早くそれをしていただきたい、こう思うわけであります。そういうことについて、もう一ぺん大臣のお答えをいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  205. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 アメリカでマリファナの個人的使用は認めてもいいじゃないかという勧告があった、私は少し前に、そういった意見アメリカの中に相当台頭しているということを聞きました。きょう新聞で、何かそれが勧告されたということです。私どもといたしましては、どうもこの所見には従えない。これは医学的な見地から申しましても、健康保持という見地から申しましても、やはりもっともっと厳重にすべきだ、かように考えておりますので、日本の国内でそういう意見がありました場合にも、私たちは迎合しないで、むしろそれは危険であるというように持ってまいりたい、かように思います。麻薬関係の法の集大成につきましては、先ほど申しましたように検討をいたしまして、向精神剤の条約もなるべく早く批准をいたしたい、かように考えております。
  206. 山本政弘

    ○山本(政)委員 質問を終わります。      ————◇—————
  207. 増岡博之

    ○増岡委員長代理 この際、理事辞任の件についておはかりいたします。  理事伊東正義君及び澁谷直藏君より理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  208. 増岡博之

    ○増岡委員長代理 御異議なしと認め、理事辞任を許可するに決しました。  次に、その補欠選任を行ないたいと存じますが、委員長において指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  209. 増岡博之

    ○増岡委員長代理 御異議なしと認め、理事向山一人君及び橋本龍太郎君を指名いたします。  次回は、来たる二十八日火曜日、午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時十七分散会